2019年9月18日 (水)

第413回:空疎な新クールジャパン戦略他

 今月3日に知財本部クールジャパン戦略(pdf)なるものが取りまとめられて公開されているが、戦略と呼べるような事はおよそ何一つ書かれておらず、いつもの知財計画にもまして徹頭徹尾ほとんど空疎な意味不明の駄文を垂れ流しているに過ぎない。「5.施策の方向性」の最後「(5)知的財産の活用を後押しする取組」(第28~29ページ)で

 CJは、日本 全体のブランディング戦略といえるという面で、知的財産保護の仕組みとも密接に関係しているが、それを構成する個々のコンテンツも知的財産制度と深く関係する。コンテンツにおいて高度な技術が重要であれば特許や営業秘密に関連し、デザインは意匠権、マークやネーミングは商標権、音楽、映像等は著作権に関するものも多い。これらのコンテンツの中には、他者が模倣できるものも多くあり、日本国内のみならず、外国においても適切に知的財産権により保護しておかないと、もともと日本において生み出されたコンテンツが、外国で他者に無断で使用されても、有効な対策を講じることができない事態に陥ってしまう可能性がある。適切な知的財産の保護がなければ、経済的な損失にとどまらず、そこに質の低いものが紛れ込むことで、権利者のビジネス基盤やコンテンツ自体の価値を損なう可能性がある。
 近年のマンガ・アニメなどで問題となっている海賊版による被害は、漫画家やアニメーターの著作物が、悪質な違法行為によって配信・共有化されることにより、漫画家やアニメーターなどの権利が著しく損なわれ、コンテンツビジネスの基盤を崩壊させかねないことを示している。その他 、昨今、和牛遺伝資源を不法に国外に流出させようとする事案が発生し、国内の畜産農家による改良努力の結果高まった和牛のブランド価値が棄損しかねない危険性が高まっており、和牛遺伝資源についても適正な流通管理等に向けて検討を行っていく必要がある。このように、CJを持続させる観点から、不当に価値を棄損したり、あるいは存続自体を危うくさせたりするような行為に対しては、知的財産制度を中心に多様な観点から総合的に対策を講じていく必要がある。
 実効性のある保護の仕組みと同時に、CJコンテンツがさらなる発想との融合によって進化し続け、さらに大きな価値を生み出す潜在性があることにも焦点を当てる必要があり、適正な利用を円滑にすることによってCJを発展させていくための仕掛けも同時に検討する。

と、知的財産制度に関する検討についても記載されているが、具体的な内容としては何も書かれていないに等しい。

 政府の報告書で間々見かける様にここで悪い方向性が書かれてないだけでも良しとしなければならないのかもしれないが、5年前のクールジャパン提言ではっきりと書かれていた二次創作規制の緩和の事がすっかり忘れ去られているのは非常に残念な事である(第319回参照)。

 日本政府が日本の文化と経済の発展のために本当に必要な事を全く理解していないのであろう事は今までの十年来の政策検討を見ても分かるのだが、私としては、二次創作が日本の文化的創作の原動力の一つになっており、その推進のために現状の規制を緩和する必要があるとこれからも言い続けて行くつもりである。

 後は、つい先週9月12日に欧州司法裁判所が興味深い判決を2つ出しているので、その概要を紹介しておきたいと思う。

 1つは、そのリリース(pdf)にある通り、ドイツのベルリン地裁からの質問付託に対して、インターネット検索エンジンに出版社の許可なく新聞や雑誌の抜粋の利用を禁止する法律は欧州委員会への通知なしに適用できないとするものであり、判決(ドイツ語)の結論部分を訳出すると以下の様になる。

Art. 1 Nr. 11 der Richtlinie 98/34/EG des Europaischen Parlaments und des Rates vom 22. Juni 1998 uber ein Informationsverfahren auf dem Gebiet der Normen und technischen Vorschriften und der Vorschriften fur die Dienste der Informationsgesellschaft in der durch die Richtlinie 98/48/EG des Europaischen Parlaments und des Rates vom 20. Juli 1998 geanderten Fassung ist dahin auszulegen, dass eine nationale Regelung wie die im Ausgangsverfahren in Rede stehende, die es ausschlieslich gewerblichen Betreibern von Suchmaschinen und gewerblichen Anbietern von Diensten, die Inhalte entsprechend aufbereiten, verbietet, Presseerzeugnisse oder Teile hiervon (ausgenommen einzelne Worter und kleinste Textausschnitte) offentlich zuganglich zu machen, im Sinne dieser Bestimmung eine "technische Vorschrift" darstellt, deren Entwurf der Europaischen Kommission gemass Art. 8 Abs. 1 Unterabs. 1 der Richtlinie 98/34 in der durch die Richtlinie 98/48 geanderten Fassung vorab zu ubermitteln ist.

1998年7月20日の欧州議会及び理事会の指令第98/48号によって変更された形の情報社会のサービスに対する規則及び技術的な規定の範囲についての情報手続きに関する1998年6月22日の欧州議会及び理事会の指令第98/34号の第1条第11号は、本国内裁判手続きにおいて持ち出されている様な、関係するコンテンツを選別する、検索エンジンの商業的運営者及びサービスの提供者のみに対して、時事記事又はその部分(抜き出された幾つかの語及び小さな文章の抜粋)を公衆提供可能化する事を禁止する国内規則は、指令の意味において「技術的な規定」に該当し、欧州指令第98/48号によって変更された形の欧州指令第98/34号の第8条第1項第1文に従い欧州委員会に通知されなければならない。

 第408回でも書いた通り、ドイツでは時事記事保護法の導入によって現状グーグルニュースがオプトアウトからオプトインになっただけに終わっているのだが、ドイツの文章著作権管理団体VGWortは諦めずにグーグルに対して訴訟を起こし、ベルリン地裁から欧州司法裁判所へ質問付託がされ、上の様な結論が出されるに至ったのである。

 この判決で持ち出されている欧州指令第98/34号第98/48号(改正されて今は欧州指令第2015/1535号になっている)は、本来技術標準について事前通知義務を課しているもので、著作権法に当てはめるには無理がある様にも思うが、ドイツの著作権法改正が検索エンジンを余りにも狙い撃ちにし過ぎていたので、条文上当てはまるとされた。この欧州司法裁判所の判決の結果、ドイツの著作権法改正は適用不能となるので、現時点ではグーグルの勝利という事になるが、この判決も受けて、第408回で書いた通り、今後欧州でのこの様な著作権法改正、関連訴訟はさらに複雑化、長期化するのではないかと私は見ている。

 もう1つは、そのリリース(pdf)にある通り、その実用的な目的を超え特定の美的効果が生じているという理由のみをもってデザインに著作権保護が与えられる事はないとするものである。

 こちらは、ジーンズやTシャツに関する争いについてポルトガル最高裁から質問付託がされていたものだが、同じく判決(ポルトガル語)から結論部分を訳しておくと以下の様になる。

O artigo 2.°, alinea a), da Diretiva 2001/29/CE do Parlamento Europeu e do Conselho, de 22 de maio de 2001, relativa a harmonizacao de certos aspetos do direito de autor e dos direitos conexos na sociedade da informacao, deve ser interpretado no sentido de que se opoe a que uma legislacao nacional confira protecao, ao abrigo do direito de autor, a modelos como os modelos de vestuario em causa no processo principal, pelo facto de, extravasando o fim utilitario que servem, gerarem um efeito visual proprio e marcante do ponto de vista estetico.

著作権及び著作隣接権のある側面の調和に関する2001年5月22日の欧州議会及び理事会の指令第2001/29号の第2条a)は、その実用的な目的を超えて、美的な観点から見て固有の特徴的な視覚効果を生じるという事実から、本事件において問題となっている衣服モデルの様なモデルに、著作権の保護として国内法が保護を与える事を禁じる意味を持つと解釈される。

 実用品がどこまで著作権保護の対象となるかは日本でも悩ましい問題だが、著作権の保護強化に傾きがちな欧州においても何でもかんでも著作権で超長期間の保護を与えればいいという話ではあり得ず、欧州司法裁がその前段で、

53 A este respeito, ha que salientar que, por um lado, como decorre do sentido habitual do termo <<estetica>>, o efeito estetico suscetivel de ser produzido por um modelo e o resultado da sensacao intrinsecamente subjetiva de beleza vivida por cada pessoa que olha para esse modelo. Por conseguinte, esse efeito de natureza subjetiva nao permite, em si mesmo, caracterizar a existencia de um objeto identificavel com suficiente precisao e objetividade, na acecao da jurisprudencia mencionada nos n.os 32 a 34 do presente acordao.

54 Por outro lado, e efetivamente verdade que consideracoes de ordem estetica fazem parte da atividade criativa. Contudo, nao se pode deixar de reconhecer que a circunstancia de um modelo gerar um efeito estetico nao permite, por si so, determinar se esse modelo constitui uma criacao intelectual que reflete a liberdade de escolha e a personalidade do seu autor, preenchendo, assim, a exigencia de originalidade evocada nos n.os 30 e 31 do presente acordao.

53 これに関して、一方、「美的」という用語の通常の意味から、モデルから生じ得る美的な効果は、このモデルを見た各個人が感じた美の本質的に主観的な感覚の結果である。つまり、この主観的な自然の効果は、それ自体で本判決の第32から34段落で言及した判例の意味において十分に正確かつ客観的に特定されるものの存在を特徴づけるものではない。

54 また、他方、美的な秩序の考慮が創作活動の一部であるのも確かである。しかしながら、それでもモデルが美的な効果を生じているという状況は、それ自体でそのモデルが選択の自由とその著作者の人格を反映した知的創造であり、それで本判決の第30及び31段落で持ち出した創作性を満たす事を決定づけるものではない。

と書いている通り、著作権の保護の対象となる著作物であるためには、単に美的といった印象だけでは不十分であって、著作者の人格を反映した創作性が必要としている事は著作権の保護について一定の線引きをしようとするものと評価できるのではないかと私は思っている。

| | コメント (5)

2019年6月23日 (日)

第409回:知財計画2019の文章の確認

 先週6月21日に知財本部知財計画2019(pdf)概要(pdf))が決定された。

 今年の知財計画は、TPPなどの条約が批准され、関連法改正が一通り国会を通されてしまった事もあるのだろうが、例年にもまして内容が薄く何のために作っているのかさっぱり分からない施策項目集である。とは言え、今年も、各省庁における知財政策の検討状況を把握するという意味で、以下、法改正に関わる部分を中心にその記載を見ておく。

 まず、第15ページには、次の様な今回の特許法等の改正に関する項目がある。

・本年通常国会で成立した、特許法等の一部を改正する法律に基づく、中立な技術専門家が現地調査を行う制度(査証)及び損害賠償額算定方法について、適切な運用に向けた取組を見守るとともに、同法の附帯決議に掲げられた事項について、内外の情勢を踏まえ、関係者の意見を聞きつつ検討する。また、画像及び建築物を保護対象に加える等の意匠制度の見直しについて、意匠審査基準、意匠審査体制の整備等の必要な準備を実施し、これらを含めた改正事項について、広く周知を行う。(短期)(経済産業省)

 次に、第17ページには、次の様な種苗法に対する制度的手当てと和牛遺伝資源の保護に関する記載がある。これらは、それぞれ、農水省の優良品種の持続的な利用を可能とする植物新品種の保護に関する検討会和牛遺伝資源の流通管理に関する検討会での検討に対応するものだろう。また、農水省はその知財戦略2020の改定にも着手するらしい。

・我が国で開発された植物品種の海外への流出に対応するため、引き続き海外への品種登録出願への支援や侵害対応への支援を行うとともに、優良品種の持続的な利用を可能とする観点から、国内外での植物新品種の保護の在り方について、広く関係者の意見を聴いた上で、制度的な手当ても含め検討する。(短期、中期)(農林水産省)

・和牛遺伝資源の不適切な海外流出を防止する観点から、適正な流通管理や保護に向けた検討を進める。(短期、中期)(農林水産省)

・「農林水産省知的財産戦略2020」が定める戦略の実施期間である2019年度を迎えるにあたり、農業分野における新たな知財戦略の策定に向けた検討に着手する。(短期)(農林水産省)

 そして、今現在最大の問題となっていると言っていいだろう海賊版対策については、第18ページに以下の様な項目が並んでいる。この部分で、総合的な対策メニューという言葉こそ使っているものの、ブロッキングやアクセス警告方式に関する明示的な言及がないのは、総務省のインターネット上の海賊版サイトへのアクセス抑止方策に関する検討会で否定的な見解が出されているという報道と符号する。今後について全く予断は許されないが、現時点で、著作権ブロッキングやアクセス警告方式の導入という最悪の結論を政府として出せる状況には至っていないと見ていいだろう。

・インターネット上の海賊版による被害拡大を防ぐため、効果的な著作権教育の実施、正規版の流通促進、国際連携・国際執行の強化、検索サイト対策、海賊版サイトへの広告出稿の抑制等の対策、その他の実効性がある制度の検討等、関係省庁等において総合的な対策メニューを実施するために必要な取組を進める。その際、取組についての工程表を作成し、進捗及び効果を検証しつつ行う。(短期、中期)(内閣府、警察庁、総務省、法務省、文部科学省、経済産業省)

・模倣品・海賊版を購入しないことはもとより、特に、侵害コンテンツについては、視聴者は無意識にそれを視聴し侵害者に利益をもたらすことから、侵害コンテンツを含む模倣品・海賊版を容認しないということが国民の規範意識に根差すよう、各省庁、関係機関が一体となった啓発活動を推進する。(短期、中期)(警察庁、消費者庁、財務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省)

・越境電子商取引の進展に伴う模倣品・海賊版の流入増加へ対応するため、個人使用目的を仮装して輸入される模倣品・海賊版を引き続き厳正に取り締まるとともに、特に増加が顕著な模倣品の個人使用目的の輸入については、権利者等の被害状況等及び諸外国における制度整備を含めた運用状況を踏まえ、具体的な対応の方向性について検討する。(短期)(財務省、経済産業省)

 そして、著作権法改正については、第26ページに以下の様な項目がある。

・2018年の著作権法の改正に伴い、ガイドラインの策定や著作権に関する普及・啓発など、法の適切な運用環境の整備を行う。(短期)(文部科学省)

・研究目的の権利制限規定の創設や写り込みに係る権利制限規定の拡充等、著作物の公正な利用の促進のための措置について、権利者の利益保護に十分に配慮しつつ検討を進め、結論を得て、必要な措置を講ずる。(短期、中期)(文部科学省)

 また、著作権問題という事では、昔から同じ話を続けているが、第35ページに、次の様な同時配信と私的録音録画補償金問題に関する項目もある。

・同時配信等に係る著作隣接権の取扱いなど制度改正を含めた権利処理の円滑化について、関係者の意向を十分に踏まえつつ、運用面の改善を着実に進めるとともに、制度の在り方について、年度内早期に関係省庁で具体的な検討作業を開始し、必要に応じた見直しを本年度中に行う。(短期・中期)(総務省、文部科学省)

・クリエーターに適切に対価が還元され、コンテンツの再生産につながるよう、私的録音録画補償金制度の見直しや当該制度に代わる新たな仕組みの導入について検討を進め、結論を得て、必要な措置を講ずる。(短期、中期)(文部科学省、内閣府、総務省、経済産業省)

 ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大とリーチサイト規制を含む著作権法改正案(第406回参照)が国会提出を見送られた後、まだ今期の文化審議会・著作権分科会が開かれていないので、著作権法改正の検討状況は不明だが、前の法改正案の再提出も含め文化庁の動きに今後も注意が必要なのは間違いない。

 私としては、実際には必要がなかったにもかかわらずTPP11協定の発効とともになし崩しでされた著作権保護期間延長の問題などについても言い続けるつもりだが、今年の知財計画を見ても、日本の知財政策の迷走が止まる事はないと思えるし、引き続き最大限注意すべきは、著作権ブロッキングやアクセス警告方式の導入を巡る海賊版対策に関する検討、ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大とリーチサイト規制を含む著作権法改正問題の行方という事になるだろう。

(2019年6月26日夜の追記:知財本部HPで案の取れた正式版の知財計画が公開されていたので、上のリンクを入れ替えた。)

| | コメント (0)

2019年2月 3日 (日)

第404回:「知的財産推進計画2019」の策定に向けた意見募集(2月15日〆切)への提出パブコメ

 今年も知財本部から2月15日〆切でかかっている、「知的財産推進計画2019」の策定に向けた意見募集(知財本部HP募集要領(pdf)参照)に意見を出したので、ここに載せておく。

 今年はTPP11協定発効にともなう著作権保護期間の延長、知財本部での著作権ブロッキングの検討、文化庁のダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大の動きを受けて内容をそれぞれの項目で少し書き直している。(去年の提出パブコメは第388回参照、知財計画2018の内容は第395回参照。)

 意見がどれくらい取り入れられるかは分からないが、政府全体に知財政策について意見を出せる年一回の機会なので、関心のある方は是非意見の提出を検討することをお勧めする。

(2019年2月6日夜の追記:1月25日の第8回法制・基本問題小委員会の資料が文化庁のHPにアップされ、その最終版の報告書(pdf)公開されたので、ここにもリンクを張っておく。文化庁としてダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲を拡大する方針に変わりがないことはこの報告書を読んでも分かる。刑事罰について何かしらの限定が入る可能性があるとの報道もあるが、この問題は刑事罰について良く分からない限定を入れればそれで済むような話では全くない。)

(以下、提出パブコメ)

《要旨》
アメリカ等と比べて遜色の無い範囲で一般フェアユース条項を導入すること、ダウンロード犯罪化・違法化条項の撤廃並びにTPP協定・日欧EPAの見直し及び著作権の保護期間の短縮を求める。有害無益なインターネットにおける今以上の知財保護強化、特に著作権ブロッキング及び補償金の矛盾を拡大するだけの私的録音録画補償金の対象拡大に反対する。今後真の国民視点に立った知財の規制緩和の検討が進むことを期待する。

《全文》
 最終的に国益になるであろうことを考え、各業界の利権や省益を超えて必要となる政策判断をすることこそ知財本部とその事務局が本当になすべきことのはずであるが、知財計画2018を見ても、このような本当に政策的な決定は全く見られない上、2018年には危険極まる著作権ブロッキングのごり押しの検討まで行われた。知財保護が行きすぎて消費者やユーザーの行動を萎縮させるほどになれば、確実に文化も産業も萎縮するので、知財保護強化が必ず国益につながる訳ではないということを、著作権問題の本質は、ネットにおける既存コンテンツの正規流通が進まないことにあるのではなく、インターネットの登場によって新たに出てきた著作物の公正利用の類型に、今の著作権法が全く対応できておらず、著作物の公正利用まで萎縮させ、文化と産業の発展を阻害していることにあるのだということを知財本部とその事務局には、まずはっきりと認識してもらいたい。特に、最近の知財・情報に関する規制強化の動きは全て間違っていると私は断言する。

 例年通り、規制強化による天下り利権の強化のことしか念頭にない文化庁、総務省、警察庁などの各利権官庁に踊らされるまま、国としての知財政策の決定を怠り、知財政策の迷走の原因を増やすことしかできないようであれば、今年の知財計画を作るまでもなく、知財本部とその事務局には、自ら解散することを検討するべきである。そうでなければ、是非、各利権官庁に轡をはめ、その手綱を取って、知財の規制緩和のイニシアティブを取ってもらいたい。知財本部において今年度、インターネットにおけるこれ以上の知財保護強化はほぼ必ず有害無益かつ危険なものとなるということをきちんと認識し、真の国民視点に立った知財の規制緩和の検討が知財本部でなされることを期待し、本当に決定され、実現されるのであれば、全国民を裨益するであろうこととして、私は以下のことを提案する。

(1)「知的財産推進計画2018」の記載事項について:
a)環太平洋経済連携協定(TPP)などの経済連携協定(EPA)に関する取組について

 第78ページに継続項目として、TPPなどの協定に関する取組について書かれている。TPP協定については、2015年10月に大筋合意が発表され、文化庁、知財本部の検討を経て、11月にTPP総合対策本部でTPP関連政策大綱が決定され、さらに2016年2月に署名され、3月に関連法案の国会提出がされ、11月の臨時国会で可決・成立し、2017年1月20日に参加国として初めての国内手続きの完了に関する通報が行われた。

 しかし、この国内手続きにおいて、日本政府は、2015年10月に大筋合意の概要のみを公表し、11月のニュージーランド政府からの協定条文の英文公表時も全章概要を示したのみで、その後2ヶ月も経って2016年1月にようやく公式の仮訳を公表するなど、TPP協定の内容精査と政府への意見提出の時間を国民に実質与えない極めて姑息かつ卑劣なやり方を取っていたと言わざるを得ない。

 そして、公開された条文によって今までのリーク文書が全て正しかったことはほぼ証明されており、TPP協定は確かに著作権の保護期間延長、DRM回避規制強化、法定賠償制度、著作権侵害の非親告罪化などを含んでいる。今ですら不当に長い著作権保護期間のこれ以上の延長など本来論外だったものである。

 その後、日本政府は、アメリカ抜きの11カ国でのTPP11協定を推進し、2017年11月に大筋合意が発表され、その中で最もクリティカルな部分である著作権と特許の保護期間延長とDRM規制の強化の部分が凍結さたにもかかわらず、これらの事項を含む国内関連法改正案を2018年3月に国会に提出し(6月に可決・成立)、2018年12月のTPP11協定の発効とともに施行するという戦後最大級の愚行をなした。このようになし崩しで極めて危険な法改正がなされたことを私は一国民として強く非難する。

 2017年12月には、同じく著作権の保護期間延長を含む日EU(欧)EPA交渉も妥結され、2018年2月に発効している。しかし、この日欧EPA交渉もTPP協定同様の姑息かつ卑劣な秘密交渉で決められたものである。その内容についてほとんど何の説明もないままに著作権の保護期間延長のような国益の根幹に関わる点について日本政府は易々と譲歩した。これは完全に国民をバカにしているとしか言いようがない。

 これらのTPP協定及び日欧EPAについてその内容の見直しを各加盟国に求めること及び著作権の保護期間の短縮について速やかに検討を開始することを私は求める。

 また、TPP交渉や日欧EPA交渉のような国民の生活に多大の影響を及ぼす国際交渉が政府間で極秘裏に行われたことも大問題である。国民一人一人がその是非を判断できるよう、途中経過も含めその交渉に関する情報をすべて速やかに公開するべきである。

 なお、トランプ現アメリカ大統領は日米で2国間の通商交渉を行うともしており、このような交渉の中でTPP協定交渉同様に知財規制の強化が求められる可能性があるが、上で書いた通り、これ以上の知財規制の強化は危険なものとしかなり得ないものであり、そのような要求は日本政府として毅然とはねのけるべきである。

b)DRM回避規制について
 経産省と文化庁の主導により無意味にDRM回避規制を強化する不正競争防止法と著作権法の改正案がそれぞれ以前国会を通され、2018年に不正競争防止法がさらに改正され、2018年12月に意見募集がされた文化庁の法制・基本問題小委員会の中間まとめにも同様の法改正事項が含まれているが、これらの法改正を是とするに足る立法事実は何一つない。不正競争防止法と著作権法でDRM回避機器等の提供等が規制され、著作権法でコピーコントロールを回避して行う私的複製まで違法とされ、十二分以上に規制がかかっているのであり、これ以上の規制強化は、ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ない。

 特に、DRM回避規制に関しては、有害無益な規制強化の検討ではなく、まず、私的なDRM回避行為自体によって生じる被害は無く、個々の回避行為を一件ずつ捕捉して民事訴訟の対象とすることは困難だったにもかかわらず、文化庁の片寄った見方から一方的に導入されたものである、私的な領域でのコピーコントロール回避規制(著作権法第30条第1項第2号)の撤廃の検討を行うべきである。コンテンツへのアクセスあるいはコピーをコントロールしている技術を私的な領域で回避しただけでは経済的損失は発生し得ず、また、ネットにアップされることによって生じる被害は公衆送信権によって既にカバーされているものであり、その被害とDRM回避やダウンロードとを混同することは絶対に許されない。それ以前に、私法である著作権法が、私的領域に踏み込むということ自体異常なことと言わざるを得ない。何ら立法事実の変化がない中、ドサクサ紛れに通された、先般の不正競争防止法改正によるDRM規制の強化や、以前の著作権法改正で導入されたアクセスコントロール関連規制の追加等について、速やかに元に戻す検討がなされるべきである。

 TPP協定にはDRM回避規制の強化も含まれており、上で書いた通り、これ以上のDRM回避規制の強化がされるべきではなく、この点でも私はTPP協定の見直しを求める。

c)海賊版対策条約(ACTA)について
 第78ページでは継続項目としてACTAへの言及もなされているが、このACTAを背景に経産省及び文化庁の主導により無意味にDRM回避規制を強化する不正競争防止法及び著作権法の改正案が以前国会を通され、ACTA自体も国会で批准された。しかし、このようなユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ない規制強化条項を含む条約の交渉、署名及び批准は何ら国民的なコンセンサスが得られていない中でなされており、私は一国民としてACTAに反対する。今なおACTAの批准国は日本しかなく、日本は無様に世界に恥を晒し続けている。もはやACTAに何ら意味はなく、日本は他国への働きかけを止めるとともに自ら脱退してその失敗を認めるべきである。

d)一般フェアユース条項の導入について
 第25~26ページで柔軟性の高い権利制限規定について言及されている。2018年に個別の権利制限を拡充する著作権法改正がなされており、これはその限りにおいて評価できるものではあるが、本当の意味で柔軟な一般フェアユース条項を入れるものではない。

 一般フェアユース条項については、一から再検討を行い、ユーザーに対する意義からも、アメリカ等と遜色ない形で一般フェアユース条項を可能な限り早期に導入するべきである。特に、インターネットのように、ほぼ全国民が利用者兼権利者となり得、考えられる利用形態が発散し、個別の規定では公正利用の類型を拾い切れなくなるところでは、フェアユースのような一般規定は保護と利用のバランスを取る上で重要な意義を持つものである。

 今後の検討によっても幾つかの個別の権利制限が追加される可能性があるが、これらはあった方が良いものとは言え、到底一般フェアユース条項と言うに足るものではなく、これでは著作権をめぐる今の混迷状況が変わることはない。

 著作物の公正利用には変形利用もビジネス利用も考えられ、このような利用も含めて著作物の公正利用を促すことが、今後の日本の文化と経済の発展にとって真に重要であることを考えれば、不当にその範囲を不当に狭めるべきでは無く、その範囲はアメリカ等と比べて遜色の無いものとされるべきである。ただし、フェアユースの導入によって、私的複製の範囲が縮小されることはあってはならない。

 また、「まねきTV」事件などの各種判例からも、ユーザー個人のみによって利用されるようなクラウド型サービスまで著作権法上ほぼ違法とされてしまう状況に日本があることは明らかであり、このような状況は著作権法の趣旨に照らして決して妥当なことではない。ユーザーが自ら合法的に入手したコンテンツを私的に楽しむために利用することに著作権法が必要以上に介入することが許されるべきではなく、個々のユーザーが自らのためのもに利用するようなクラウド型サービスにまで不必要に著作権を及ぼし、このような技術的サービスにおけるトランザクションコストを過大に高め、その普及を不当に阻害することに何ら正当性はない。この問題がクラウド型サービス固有の問題でないのはその通りであるが、だからといって法改正の必要性がなくなる訳ではない。著作権法の条文及びその解釈・運用が必要以上に厳格に過ぎクラウド型サービスのような技術の普及が不当に阻害されているという日本の悲惨な現状を多少なりとも緩和するべく、速やかに問題を再整理し、アメリカ等と比べて遜色の無い範囲で一般フェアユース条項を導入し、同時にクラウド型サービスなどについてもすくい上げられるようにするべきである。

 権利を侵害するかしないかは刑事罰がかかるかかからないかの問題でもあり、公正という概念で刑事罰の問題を解決できるのかとする意見もあるようだが、かえって、このような現状の過剰な刑事罰リスクからも、フェアユースは必要なものと私は考える。現在親告罪であることが多少セーフハーバーになっているとはいえ、アニメ画像一枚の利用で別件逮捕されたり、セーフハーバーなしの著作権侵害幇助罪でサーバー管理者が逮捕されたりすることは、著作権法の主旨から考えて本来あってはならないことである。政府にあっては、著作権法の本来の主旨を超えた過剰リスクによって、本来公正として認められるべき事業・利用まで萎縮しているという事態を本当に深刻に受け止め、一刻も早い改善を図ってもらいたい。

 個別の権利制限規定の迅速な追加によって対処するべきとする意見もあるが、文化庁と癒着権利者団体が結託して個別規定すらなかなか入れず、入れたとしても必要以上に厳格な要件が追加されているという惨憺たる現状において、個別規定の追加はこの問題における真の対処たり得ない。およそあらゆる権利制限について、文化庁と権利者団体が結託して、全国民を裨益するだろう新しい権利制限を潰すか、極めて狭く使えないものとして来たからこそ、今一般規定が社会的に求められているのだという、国民と文化の敵である文化庁が全く認識していないだろう事実を、政府・与党は事実としてはっきりと認めるべきである。

e)私的録音録画補償金問題について
 第26ページでは私的録音録画補償金問題についても言及されている。権利者団体等が単なる既得権益の拡大を狙ってiPod等へ対象範囲を拡大を主張している私的録音録画補償金問題についても、補償金のそもそもの意味を問い直すことなく、今の補償金の矛盾を拡大するだけの私的録音録画補償金の対象拡大を絶対にするべきではない。

 文化庁の文化審議会著作権分科会における数年の審議において、補償金のそもそもの意義についての意義が問われたが、文化庁が、天下り先である権利者団体のみにおもねり、この制度に関する根本的な検討を怠った結果、特にアナログチューナー非対応録画機への課金について私的録音録画補償金管理協会と東芝間の訴訟に発展した。ブルーレイ課金・アナログチューナー非搭載録画機への課金について、権利者団体は、ダビング10への移行によってコピーが増え自分たちに被害が出ると大騒ぎをしたが、移行後8年以上経った今現在においても、ダビング10の実施による被害増を証明するに足る具体的な証拠は全く示されておらず、ブルーレイ課金・アナログチューナー非搭載録画機への課金に合理性があるとは到底思えない。わずかに緩和されたとは言え、今なお地上デジタル放送にはダビング10という不当に厳しいコピー制限がかかったままである。こうした実質的に全国民に転嫁されるコストで不当に厳しい制限を課している機器と媒体にさらに補償金を賦課しようとするのは、不当の上塗りである。

 なお、世界的に見ても、メーカーや消費者が納得して補償金を払っているということはカケラも無く、権利者団体がその政治力を不当に行使し、歪んだ「複製=対価」の著作権神授説に基づき、不当に対象を広げ料率を上げようとしているだけというのがあらゆる国における実情である。表向きはどうあれ、大きな家電・PCメーカーを国内に擁しない欧州各国は、私的録音録画補償金制度を、外資から金を還流する手段、つまり、単なる外資規制として使っているに過ぎない。この制度における補償金の対象・料率に関して、具体的かつ妥当な基準はどこの国を見ても無いのであり、この制度は、ほぼ権利者団体の際限の無い不当な要求を招き、莫大な社会的コストの浪費のみにつながっている。機器・媒体を離れ音楽・映像の情報化が進む中、「複製=対価」の著作権神授説と個別の機器・媒体への賦課を基礎とする私的録音録画補償金は、既に時代遅れのものとなりつつあり、その対象範囲と料率のデタラメさが、デジタル録音録画技術の正常な発展を阻害し、デジタル録音録画機器・媒体における正常な競争市場を歪めているという現実は、補償金制度を導入したあらゆる国において、問題として明確に認識されなくてはならないことである。

f)インターネット上の著作権侵害の抑止及び著作権法におけるいわゆる間接侵害・幇助への対応について
 第19~20ページにインターネット上の著作権侵害の抑止について、特にリーチサイト対策の検討について書かれており、2018年12月に意見募集が行われた文化庁の法制・基本問題小委員会の中間まとめにおいて、著作権侵害コンテンツへのリンク行為に対するみなし侵害規定の追加及び刑事罰付加の方針が示された。

 リーチサイト対策の検討は、著作権法におけるいわゆる間接侵害・幇助への対応をどうするかという問題に帰着する。本当に悪質な場合について現行法で不十分というところがあれば、その点について立法による対処も当然あり得るだろうが、文化庁の中間まとめを読んでも、権利者団体の一方的かつ曖昧な主張が並べられているだけで、権利者団体側がリーチサイト等に対して現行法に基づいてどこまで何をしたのか、現行法による対処に関する定量的かつ論理的な検証は何らされておらず、本当にどのような場合について現行法では不十分なのかは全く不明である。このような現行の著作権法における民事の間接侵害(カラオケ法理)あるいは刑事の著作権侵害幇助との関係整理をおざなりにした、著作権侵害コンテンツへのリンク行為に対するみなし侵害規定の追加及び刑事罰付加に私は反対する。

 さらに、このような間接侵害あるいは幇助の検討において当然必要とされるはずのセーフハーバーの検討も極めて不十分であって、インターネット利用における民事・刑事のリスクに関する不確実性を増すだけである、このような不十分な検討に基づく法改正に私は断固反対する。

 このようなリーチサイト問題も含め、ネット上の違法コンテンツ対策、違法ファイル共有対策については、通信の秘密やプライバシー、情報アクセス権等の国民の基本的な権利をきちんと尊重しつつ対策を検討してもらいたい。この点においても、国民の基本的な権利を必ず侵害するものとなり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害することにつながる危険な規制強化の検討ではなく、ネットにおける各種問題は情報モラル・リテラシー教育によって解決されるべきものという基本に立ち帰り、現行のプロバイダー責任制限法と削除要請を組み合わせた対策などの、より現実的かつ地道な施策のみに注力して検討を進めるべきである。

 確かにセーフハーバーを確定するためにも間接侵害・幇助の明確化はなされるべきであるが、現行の条文におけるカラオケ法理や各種ネット録画機事件などで示されたことの全体的な整理以上のことをしてはならない。特に、著作権法に明文の間接侵害一般規定を設けることは絶対にしてはならないことである。確かに今は直接侵害規定からの滲み出しで間接侵害を取り扱っているので不明確なところがあるのは確かだが、現状の整理を超えて、明文の間接侵害一般規定を作った途端、権利者団体や放送局がまず間違いなく山の様に脅しや訴訟を仕掛けて来、今度はこの間接侵害規定の定義やそこからの滲み出しが問題となり、無意味かつ危険な社会的混乱を来すことは目に見えているからである。知財計画2019において間接侵害・幇助への対応について記載するのであれば、著作権法の間接侵害・幇助の明確化は、ネット事業・利用の著作権法上のセーフハーバーを確定するために必要十分な限りにおいてのみなされると合わせ明記してもらいたい。

g)著作権ブロッキングについて
 第19ページではサイトブロッキングへの言及もあり、知財本部において、2018年4月の緊急対策の決定後、10月まで検討が行われた。

 このようなサイトブロッキングについて、アメリカでは、議会に提出されたサイトブロッキング条項を含むオンライン海賊対策法案(SOPA)や知財保護強化法案(PIPA)が、IT企業やユーザーから検閲であるとして大反対を受け、その審議は止められている。また、世界を見渡しても、ブロッキングを巡ってはどの国であれなお混沌とした状況にあり、いかなる形を取るにせよブロッキングの採用が有効な海賊版対策として世界の主要な流れとなっているとは到底言い難い。

 サイトブロッキングの問題については下でも述べるが、インターネット利用者から見てその妥当性をチェックすることが不可能なサイトブロッキングにおいて、透明性・公平性・中立性を確保することは本質的に完全に不可能である。このようなブロッキングは、憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止、通信の秘密といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないものであり、決して導入されるべきでないものである。

 幸いなことに、10月で知財本部におけるブロッキングの検討は止まったが、多くの懸念の声が上げられていたにもかかわらず、10月までブロッキングありきでごり押しの検討を行ったことについて私は知財本部に猛省を求める。知財計画2019においてブロッキングについて言及するのであれば、2018年の検討の反省の弁とともに今後二度とこのような国民の基本的な権利を踏みにじる検討をしないと固く誓うとしてもらいたい。

 その提案からも明確なように、違法コピー対策問題における権利者団体の主張は常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。今後は、このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むことを検討するべきである。同じく、憲法に規定されている検閲の禁止及び通信の秘密から、サイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むことを検討するべきである。

(2)その他の知財政策事項について:
a)ダウンロード違法化・犯罪化問題について

 文化庁の暴走と国会議員の無知によって、2009年の6月12日にダウンロード違法化条項を含む改正著作権法が成立し、2010年の1月1日に施行された。また、日本レコード協会などのロビー活動により、自民党及び公明党が主導する形でダウンロード犯罪化条項がねじ込まれる形で、2012年6月20日に改正著作権法が成立し、2012年10月1日から施行されている。

 そして、2018年12月に意見募集がされた文化庁の法制・基本問題小委員会の中間まとめにおいて、極めて拙速な検討から、このダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲を録音録画から著作物全般に拡大するとの方針が示され、その意見募集において極めて多くの懸念が示されたにもかかわらず、今なお文化庁はこの方針を諦めずにダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大を含む著作権法改正案の提出を準備していると思われる。

 しかし、一人しか行為に絡まないダウンロードにおいて、「事実を知りながら」なる要件は、エスパーでもない限り証明も反証もできない無意味かつ危険な要件であり、技術的・外形的に違法性の区別がつかない以上、このようなダウンロード違法化・犯罪化は法規範としての力すら持ち得ず、罪刑法定主義や情報アクセス権を含む表現の自由などの憲法に規定される国民の基本的な権利の観点からも問題がある。このような法改正によって進むのはダウンロード以外も含め著作権法全体に対するモラルハザードのみであり、今のところ幸いなことに適用例はないが、これを逆にねじ曲げてエンフォースしようとすれば、著作権検閲という日本国として最低最悪の手段に突き進む恐れしかない。

 また、世界的に見ても、アップロードとダウンロードを合わせて行うファイル共有サービスに関する事件を除き、どの国においても単なるダウンロード行為を対象とする民事、刑事の事件は1件もなく、日本における現行の録音録画に関するダウンロード違法化・犯罪化も含め、このような法制が海賊版対策として何の効果も上がっていないことは明白である。また、ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大は、研究など公正利用として認められるべき目的のダウンロードにも影響する。

 そもそも、ダウンロード違法化の懸念として、このような不合理極まる規制強化・著作権検閲に対する懸念は、過去の文化庁へのパブコメ(文化庁HPhttp://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hokoku.htmlの意見募集の結果参照。ダウンロード違法化問題において、この8千件以上のパブコメの7割方で示された国民の反対・懸念は完全に無視された。このような非道極まる民意無視は到底許されるものではない)や知財本部へのパブコメ(知財本部のHPhttp://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keikaku2009.htmlの個人からの意見参照)を見ても分かる通り、法改正前から指摘されていたところであり、このようなさらなる有害無益な規制強化・著作権検閲にしか流れようの無いダウンロード違法化・犯罪化は始めからなされるべきではなかったものである。ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大の検討については全て白紙に戻し、文化庁の暴走と国会議員の無知によって成立したものであり、ネット利用における個人の安心と安全を完全にないがしろにするものである、百害あって一利ないダウンロード違法化・犯罪化を規定する著作権法第30条第1項第3号及び第119条第3項を即刻削除するべきである。

b)コピーワンス・ダビング10・B-CAS問題について
 私はコピーワンスにもダビング10にも反対する。そもそも、この問題は、放送局・権利者にとっては、視聴者の利便性を著しく下げることによって、一旦は広告つきながらも無料で放送したコンテンツの市場価格を不当につり上げるものとして機能し、国内の大手メーカーとっては、B-CASカードの貸与と複雑な暗号システムを全てのテレビ・録画機器に必要とすることによって、中小・海外メーカーに対する参入障壁として機能するB-CASシステムの問題を淵源とするのであって、このB-CASシステムと独禁法の関係を検討するということを知財計画2019では明記してもらいたい。検討の上B-CASシステムが独禁法違反とされるなら、速やかにその排除をして頂きたい。また、無料の地上放送において、逆にコピーワンスやダビング10のような視聴者の利便性を著しく下げる厳格なコピー制御が維持されるのであれば、私的録画補償金に存在理由はなく、これを速やかに廃止するべきである。

 4K放送について、無料放送を録画不可とできるようにする検討が放送局とメーカーで構成される次世代放送推進フォーラムにおいて行われているという報道もあった。その後の検討は不明だが、上で書いたような、コピーワンスやダビング10の愚を繰り返してはならない。このような消費者の利便性に極めて大きな影響を持つ検討については可能な限り速やかに今まで及び今後の検討の公開並びに利用者・消費者からの意見の取り入れを促すべきである。

c)著作権検閲・ストライクポリシーについて
 ファイル共有ソフトを用いて著作権を侵害してファイル等を送信していた者に対して警告メールを送付することなどを中心とする電気通信事業者と権利者団体の連携による著作権侵害対策が警察庁、総務省、文化庁などの規制官庁が絡む形で行われており、警察によってファイル共有ネットワークの監視も行われているが、このような対策は著作権検閲に流れる危険性が極めて高い。

 フランスで導入が検討された、警告メールの送付とネット切断を中心とする、著作権検閲機関型の違法コピー対策である3ストライクポリシーは、2009年6月に、憲法裁判所によって、インターネットのアクセスは、表現の自由に関係する情報アクセスの権利、つまり、最も基本的な権利の1つとしてとらえられるとされ、著作権検閲機関型の3ストライクポリシーは、表現の自由・情報アクセスの権利やプライバシーといった他の基本的な権利をないがしろにするものとして、真っ向から否定されている。ネット切断に裁判所の判断を必須とする形で導入された変形ストライク法も何ら効果を上げることなく、フランスでは今もストライクポリシーについて見直しの検討が行われており、2013年7月にはネット切断の罰が廃止されている。日本においては、このようなフランスにおける政策の迷走を他山の石として、このように表現の自由・情報アクセスの権利やプライバシーといった他の基本的な権利をないがしろにする対策を絶対に導入しないこととするべきであり、警察庁などが絡む形で検討されている違法ファイル共有対策についても、通信の秘密やプライバシー、情報アクセス権等の国民の基本的な権利をきちんと尊重する形で進めることが担保されなくてはならない。

d)著作権法へのセーフハーバー規定の導入について
 動画投稿サイト事業者がJASRACに訴えられた「ブレイクTV」事件や、レンタルサーバー事業者が著作権幇助罪で逮捕され、検察によって姑息にも略式裁判で50万円の罰金を課された「第(3)世界」事件や、1対1の信号転送機器を利用者からほぼ預かるだけのサービスが放送局に訴えられ、最高裁判決で違法とされた「まねきTV」事件等を考えても、今現在、カラオケ法理の適用範囲はますます広く曖昧になり、間接侵害や著作権侵害幇助のリスクが途方もなく拡大し、甚大な萎縮効果・有害無益な社会的大混乱が生じかねないという非常に危険な状態がなお続いている。間接侵害事件や著作権侵害幇助事件においてネット事業者がほぼ直接権利侵害者とみなされてしまうのでは、プロバイダー責任制限法によるセーフハーバーだけでは不十分であり、間接侵害や著作権侵害幇助罪も含め、著作権侵害とならない範囲を著作権法上きちんと確定することは喫緊の課題である。ただし、このセーフハーバーの要件において、標準的な仕組み・技術や違法性の有無の判断を押しつけるような、権利侵害とは無関係の行政機関なり天下り先となるだろう第3者機関なりの関与を必要とすることは、検閲の禁止・表現の自由等の国民の権利の不当な侵害に必ずなるものであり、絶対にあってはならないことである。

 知財計画2019において、プロバイダに対する標準的な著作権侵害技術導入の義務付け等を行わないことを合わせ明記するとともに、間接侵害や刑事罰・著作権侵害幇助も含め著作権法へのセーフハーバー規定の速やかな導入を検討するとしてもらいたい。この点に関しては、逆に、検閲の禁止や表現の自由の観点から技術による著作権検閲の危険性の検討を始めてもらいたい。

e)二次創作規制の緩和について
 2014年8月のクールジャパン提言の第13ページに「クリエイティビティを阻害している規制についてヒアリングし規制緩和する。コンテンツの発展を阻害する二次創作規制、ストリートパフォーマンスに関する規制など、表現を限定する規制を見直す。」と記載されている通り、二次創作は日本の文化的創作の原動力の一つになっており、その推進のために現状の規制を緩和する必要がある。これは知的財産に関わる重要な提言であり、二次創作規制を緩和するという記載を知財計画2019においてもそのまま取り入れ、政府としてこのような規制の緩和を強力に推進することを重ねてきちんと示すべきである。

f)著作権等に関する真の国際動向について国民へ知らされる仕組みの導入及び文化庁ワーキンググループの公開について
 WIPO等の国際機関にも、政府から派遣されている者はいると思われ、著作権等に関する真の国際動向について細かなことまで即座に国民へ知らされる仕組みの導入を是非検討してもらいたい。

 また、2013年からの著作物等の適切な保護と利用・流通に関するワーキングチーム及び2015年からの新たな時代のニーズに的確に対応した制度等の整備に関するワーキングチームの審議は公開とされたが、文化庁はワーキングチームについて公開審議を原則とするにはなお至っていない。上位の審議会と同様今後全てのワーキンググループについて公開審議を原則化するべきである。

g)天下りについて
 最近文部科学省の天下り問題が大きく報道され、全省庁で調査を行うこととなっているようだが、知財政策においても、天下り利権が各省庁の政策を歪めていることは間違いなく、知財政策の検討と決定の正常化のため、文化庁から著作権関連団体への、総務省から放送通信関連団体・企業への、警察庁からインターネットホットラインセンター他各種協力団体・自主規制団体への天下りの禁止を知財本部において決定して頂きたい。(これらの省庁は特にひどいので特に名前をあげたが、他の省庁も含めて決定してもらえるなら、それに超したことはない。)

(3)その他一般的な情報・ネット・表現規制について
 知財計画改訂において、一般的な情報・ネット・表現規制に関する項目は削除されているが、常に一方的かつ身勝手な主張を繰り広げる自称良識派団体が、意味不明の理屈から知財とは本来関係のない危険な規制強化の話を知財計画に盛り込むべきと主張をしてくることが十分に考えられるので、ここでその他の危険な一般的な情報・ネット・表現規制強化の動きに対する反対意見も述べる。今後も、本来知財とは無関係の、一般的な情報・ネット・表現規制に関する項目を絶対に知財計画に盛り込むことのないようにしてもらいたい。

a)青少年ネット規制法・出会い系サイト規制法について
 そもそも、青少年ネット規制法は、あらゆる者から反対されながら、有害無益なプライドと利権を優先する一部の議員と官庁の思惑のみで成立したものであり、速やかに廃止が検討されるべきものである。また、出会い系サイト規制法の改正は、警察庁が、どんなコミュニケーションサイトでも人は出会えるという誰にでも分かることを無視し、届け出制の対象としては事実上定義不能の「出会い系サイト事業」を定義可能と偽り、改正法案の閣議決定を行い、法案を国会に提出したものであり、他の重要法案と審議が重なる中、国会においてもその本質的な問題が見過ごされて可決され、成立したものである。憲法上の罪刑法定主義や検閲の禁止にそもそも違反している、この出会い系サイト規制法の改正についても、今後、速やかに元に戻すことが検討されるべきである。

b)児童ポルノ規制・サイトブロッキングについて
 児童ポルノ法規制強化問題・有害サイト規制問題における自称良識派団体の主張は、常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。今後は、このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むべきである。同じく、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むべきである。

 閲覧とダウンロードと取得と所持の区別がつかないインターネットにおいては、例え児童ポルノにせよ、情報の単純所持や取得の規制は有害無益かつ危険なもので、憲法及び条約に規定されている「知る権利」を不当に害するものとなる。「自身の性的好奇心を満たす目的で」、積極的あるいは意図的に画像を得た場合であるなどの限定を加えたところで、エスパーでもない限りこのような積極性を証明することも反証することもできないため、このような情報の単純所持や取得の規制の危険性は回避不能であり、思想の自由や罪刑法定主義にも反する。繰り返し取得としても、インターネットで2回以上他人にダウンロードを行わせること等は技術的に極めて容易であり、取得の回数の限定も、何ら危険性を減らすものではない。

 児童ポルノ規制の推進派は常に、提供による被害と単純所持・取得を混同する狂った論理を主張するが、例えそれが児童ポルノであろうと、情報の単純所持ではいかなる被害も発生し得ない。現行法で、ネット上であるか否かにかかわらず、提供及び提供目的の所持が規制されているのであり、提供によって生じる被害と所持やダウンロード、取得、収集との混同は許され得ない。そもそも、最も根本的なプライバシーに属する個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ることは、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の基本的な権利からあってはならないことである。

 アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現に対する規制対象の拡大も議論されているが、このような対象の拡大は、児童保護という当初の法目的を大きく逸脱する、異常規制に他ならない。アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現において、いくら過激な表現がなされていようと、それが現実の児童被害と関係があるとする客観的な証拠は何一つない。いまだかつて、この点について、単なる不快感に基づいた印象批評と一方的な印象操作調査以上のものを私は見たことはないし、虚構と現実の区別がつかないごく一部の自称良識派の単なる不快感など、言うまでもなく一般的かつ網羅的な表現規制の理由には全くならない。アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現が、今の一般的なモラルに基づいて猥褻だというのなら、猥褻物として取り締まるべき話であって、それ以上の話ではない。どんな法律に基づく権利であれ、権利の侵害は相対的にのみ定まるものであり、実際の被害者の存在しない創作物・表現に対する規制は何をもっても正当化され得ない。民主主義の最重要の基礎である表現の自由や言論の自由、思想の自由等々の最も基本的な精神的自由そのものを危うくすることは絶対に許されない。この点で、2012年6月にスウェーデンで漫画は児童ポルノではないとする最高裁判決が出されたことなども注目されるべきである。

 単純所持規制にせよ、創作物規制にせよ、両方とも1999年当時の児童ポルノ法制定時に喧々囂々の大議論の末に除外された規制であり、規制推進派が何と言おうと、これらの規制を正当化するに足る立法事実の変化はいまだに何一つない。

 既に、警察などが提供するサイト情報に基づき、統計情報のみしか公表しない不透明な中間団体を介し、児童ポルノアドレスリストの作成が行われ、そのリストに基づいて、ブロッキング等が行われているが、いくら中間に団体を介そうと、一般に公表されるのは統計情報に過ぎす、児童ポルノであるか否かの判断情報も含め、アドレスリストに関する具体的な情報は、全て閉じる形で秘密裏に保持されることになるのであり、インターネット利用者から見てそのリストの妥当性をチェックすることは不可能であり、このようなアドレスリストの作成・管理において、透明性・公平性・中立性を確保することは本質的に完全に不可能である。このようなリストに基づくブロッキング等は、自主的な取組という名目でいくら取り繕おうとも、憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないのであり、小手先の運用変更などではどうにもならない。

 児童ポルノ規制法に関しては、提供及び提供目的での所持が禁止されているのであるから、本当に必要とされることはこの規制の地道なエンフォースであって有害無益かつ危険極まりない規制強化の検討ではない。DVD販売サイトなどの海外サイトについても、本当に児童ポルノが販売されているのであれば、速やかにその国の警察に通報・協力して対処すべきだけの話であって、それで対処できないとするに足る具体的根拠は全くない。警察自らこのような印象操作で規制強化のマッチポンプを行い、警察法はおろか憲法の精神にすら違背していることについて警察庁は恥を知るべきである。例えそれが何であろうと、情報の単純所持や単なる情報アクセスではいかなる被害も発生し得えないのであり、自主的な取組という名目でいくら取り繕おうとも、憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないサイトブロッキングは即刻排除するべきであり、そのためのアドレスリスト作成管理団体として設立された、インターネットコンテンツセーフティ協会は即刻その解散が検討されてしかるべきである。

 なお、民主主義の最重要の基礎である表現の自由に関わる問題において、一方的な見方で国際動向を決めつけることなどあってはならないことであり、欧米においても、情報の単純所持規制やサイトブロッキングの危険性に対する認識はネットを中心に高まって来ていることは決して無視されてはならない。例えば、欧米では既にブロッキングについてその恣意的な運用によって弊害が生じていることや、アメリカにおいても、2009年に連邦最高裁で児童オンライン保護法が違憲として完全に否定され、2011年6月に連邦最高裁でカリフォルニア州のゲーム規制法が違憲として否定されていること、ドイツで児童ポルノサイトブロッキング法は検閲法と批判され、最終的に完全に廃止されたことなども注目されるべきである(http://www.zdnet.de/news/41558455/bundestag-hebt-zensursula-gesetz-endgueltig-auf.htm参照)。スイスの2009年の調査でも、2002年に児童ポルノ所持で捕まった者の追跡調査を行っているが、実際に過去に性的虐待を行っていたのは1%、6年間の追跡調査で実際に性的虐待を行ったものも1%に過ぎず、児童ポルノ所持はそれだけでは、性的虐待のリスクファクターとはならないと結論づけており、児童ポルノの単純所持規制・ブロッキングの根拠は完全に否定されているのである(http://www.biomedcentral.com/1471-244X/9/43/abstract参照)。欧州連合において、インターネットへのアクセスを情報の自由に関する基本的な権利として位置づける動きがあることも見逃されてはならない。政府・与党内の検討においては、このような国際動向もきちんと取り上げるべきである。

 そして、単純所持規制に相当し、上で書いた通り問題の大きい性的好奇心目的所持罪を含む児童ポルノの改正法案が国会で2014年6月18日に可決・成立し、同年6月25日に公布され、2015年7月15日に施行された。この問題の大きい性的好奇心目的所持罪を規定する児童ポルノ規制法第7条第1項は即刻削除するべきであり、合わせ、政府・与党においては、児童ポルノを対象とするものにせよ、いかなる種類のものであれ、情報の単純所持・取得規制・ブロッキングは極めて危険な規制であるとの認識を深め、このような規制を絶対に行わないこととして、危険な法改正案が2度と与野党から提出されることが無いようにするべきである。

 さらに、性的好奇心目的所持罪を規定する児童ポルノ規制法第7条第1項を削除するとともに、児童ポルノの単純所持規制・創作物規制といった非人道的な規制を導入している諸国は即刻このような規制を廃止するべきと、そもそも最も根本的なプライバシーに属し、何ら実害を生み得ない個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ること自体、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の国際的かつ一般的に認められている基本的な権利からあってはならないことであると、日本政府から国際的な場において各国に積極的に働きかけてもらいたい。

 また、様々なところで検討されている有害サイト規制についても、その規制は表現に対する過度広汎な規制で違憲なものとしか言いようがなく、各種有害サイト規制についても私は反対する。

c)東京都青少年健全育成条例他、地方条例の改正による情報規制問題について
 東京都でその青少年健全育成条例の改正が検討され、非実在青少年規制として大騒ぎになったあげく、2010年12月に、当事者・関係者の真摯な各種の意見すら全く聞く耳を持たれず、数々の問題を含む条例案が、都知事・東京都青少年・治安対策本部・自公都議の主導で都議会で通された。通過版の条例改正案も、非実在青少年規制という言葉こそ消えたものの、かえって規制範囲は非実在性犯罪規制とより過度に広汎かつ曖昧なものへと広げられ、有害図書販売に対する実質的な罰則の導入と合わせ、その内容は違憲としか言わざるを得ない内容のものである。また、この東京都の条例改正にも含まれている携帯フィルタリングの実質完全義務化は、青少年ネット規制法の精神にすら反している行き過ぎた規制である。さらに、大阪や京都などでは、児童ポルノに関して、法律を越える範囲で勝手に範囲を規定し、その単純所持等を禁止する、明らかに違憲な条例が通されるなどのデタラメが行われている。

 これらのような明らかな違憲条例の検討・推進は、地方自治体法第245条の5に定められているところの、都道府県の自治事務の処理が法令の規定に違反しているか著しく適正を欠きかつ明らかに公益を害していると認めるに足ると考えられるものであり、総務大臣から各地方自治体に迅速に是正命令を出すべきである。また、当事者・関係者の意見を完全に無視した東京都における検討など、民主主義的プロセスを無視した極めて非道なものとしか言いようがなく、今後の検討においてはきちんと民意が反映されるようにするため、地方自治法の改正検討において、情報公開制度の強化、審議会のメンバー選定・検討過程の透明化、パブコメの義務化、条例の改廃請求・知事・議会のリコールの容易化などの、国の制度と整合的な形での民意をくみ上げるシステムの地方自治に対する法制化の検討を速やかに進めてもらいたい。また、各地方の動きを見ていると、出向した警察官僚が強く関与する形で、各都道府県の青少年問題協議会がデタラメな規制強化騒動の震源となることが多く、今現在のデタラメな規制強化の動きを止めるべく、さらに、中央警察官僚の地方出向・人事交流の完全な取りやめ、地方青少年問題協議会法の廃止、問題の多い地方青少年問題協議会そのものの解散の促進についても速やかに検討を開始するべきである。

| | コメント (3) | トラックバック (0)

2018年12月30日 (日)

第403回:2018年の終わりに

 TPP11協定の発効に伴って今日まさに著作権の保護期間の延長が施行された事を始めとして今年も非道い一年だったが、取り上げる暇があまりなかった各省庁の細かな動きについて最後にまとめて書いておきたいと思う。

 まず、知的財産関係の法改正に絡む動きとしては、特許庁から、1月16日〆切で産業構造審議会・知的財産分科会・意匠制度小委員会報告書「産業競争力の強化に資する意匠制度の見直しについて(案)」に対する意見募集の実施についてというパブコメが掛かっている。

 この特許庁の意匠制度の見直しについて(案)という報告書案は、意匠制度小委員会で検討されていたもので、意匠法の大幅な改正、保護強化を打ち出して来ており、「1.画像デザインの保護」、「2.空間デザインの保護」、「3.関連意匠制度の拡充」、「4.意匠権の存続期間の延長」、「5.複数意匠一括出願の導入」、「6.物品区分の扱いの見直し」、「7.その他」という各項目に書かれている事はどれも重要な法改正事項を含むが、ここでは、中でも大きなものと言えるだろう、「1.画像デザインの保護」、「2.空間デザインの保護」、「4.意匠権の存続期間の延長」の内容について以下簡単に紹介する。

 画像デザインの保護については、既存の意匠法の話が前提となっているので分かりにくいが、「操作画像や表示画像については、画像が物品(又はこれと一体として用いられる物品)に記録・表示されているかどうかにかかわらず保護対象とすることが適当」(第3ページ)、「他方、壁紙等の装飾的な画像や、映画・ゲーム等のコンテンツ画像等は、画像が関連する機器等の機能に関係がなく、機器等の付加価値を直接高めるものではない。これらの画像については、意匠法に基づく独占的権利を付与して保護する必要性が低いと考えられることから、保護対象に追加しないこととするべき」(同)と書かれている通りで、物品と一体となっていないような操作画像まで意匠保護の対象とするが、コンテンツ画像までは対象としないという事が書かれている。

 空間デザインの保護では、「現行意匠法の保護対象である『物品』(動産)に加え、『建築物』(不動産)を意匠の保護対象とすべき」(第5ページ)と、建築物の外観や内装まで意匠保護の対象とするとしている。

 意匠権の存続期間の延長としては、「意匠権の存続期間を20年から25年に延長すべき」(第10ページ)、「意匠権の存続期間を『登録日から20年』から、『出願日から25年』に見直すべき」と、保護期間を延長するとしている。

 特に、意匠権の保護期間延長については、報告書案の第10ページで、「意匠権の15年目現存率が、平成24年の17.3%から平成28年の22.0%へと増加していることから、意匠権を長期的に維持するニーズが高まっていることがうかがえる」、「諸外国と比較しても、欧州において、最長25年の意匠権の存続期間が認められている」と一応もっともらしい根拠も少し書かれているが、これも、本当に25年前のデザインを使う事があるのか、使う事があるとして、特許の保護期間ですら通常は20年で25年は例外的な延長の結果として認められるものに過ぎない中で、それは産業の発達のための創作保護法である意匠法で保護するべきものなのかという根本から考えるとかなり疑わしいものである。ただし、意匠権者が専有する権利は、特許と同じく、審査登録制を前提として、あくまで業として意匠の実施をする権利なので、著作権の保護期間の延長によって生じる様な問題は生じないだろう。(本報告書案の内容はともかく、意匠法の本当の問題はやはり著作権法との関係にあるのだが、そのレベルの問題の整理は極めて難しく、世界的に見ても当分進む事はないだろう。)

 特許庁が次に提出する事を考えているのだろう法改正はパブコメに掛かっている報告書案の内容の通り、意匠法中心なのだろうと思うが、特許制度小委員会商標制度小委員会も開催されており、それぞれ直近の12月25日の配布資料と12月27日の配布資料を見ると、証拠収集手続の強化や損害賠償額算定などについて検討が進められているようであり、他の事項も追加されるのかもしれない。

 経産省では、不正競争防止小委員会が11月20日に開催され、その配布資料として、限定提供データに関する指針(案)が示されている。この指針案に対するパブコメはもう締め切られているが、じきに案の取れた正式版の指針が出されるのだろう。(指針のレベルでどうこう言う事はないが、そもそもの法改正の必要性については私はいまだに疑問に思っている。)

 文化庁では、前回その報告書案に対するパブコメを載せた法制・基本問題小委員会以外にも、文化審議会・著作権分科会の下で、著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会国際小委員会が開催されている。直近の12月4日の利用・流通に関する小委員会で、配布資料として、著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の審議の経過等について(クリエーターへの適切な対価還元関係)(案)という資料が出されており、文化庁と権利者団体は相変わらず私的録音録画補償金の対象拡大を狙っていると知れるが、金さえ取れれば後は何でもいいと言わんばかりで、徹頭徹尾意味不明の理屈をずっと捏ね回している。12月19日の国際小委員会(配布資料参照)では追及権について議論された様だが、文化庁が最終的にどうするつもりなのかは良く分からない。

 知的財産戦略本部では、検証・評価・企画委員会知的財産戦略ビジョンに関する専門調査会が開催されており、各種タスクフォースも開催されているが、来年の知財計画がどうなるのか、ブロッキング問題について知財本部として今後どうするつもりなのかは良く分からない状況である。

 今年は知財本部における著作権ブロッキングの検討が止まった事はかろうじて良かった事の一つとしてあげられるが、本来必要のなかったはずの著作権保護期間延長がTPP関連と称して不合理極まる形で国会を通されて施行されてしまうなど、ここ10年ほどの間で知財政策上悪い意味で大きなターニングポイントとなってしまった年として後世評価される事になるだろう。だからと言って私は諦めるつもりもない。今年も非道い一年だったが、政官業に巣食う全ての利権屋に悪い年を、このブログを読んで下さっている方々に心からの感謝を。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2018年9月10日 (月)

第398回:世界のブロッキングを巡る状況の概観

 知財本部でブロッキングに関する検討が異常なほどの急ピッチで継続されており、インターネット上の海賊版対策に関する検討会議は、8月25日に第5回、8月30日に第6回が開かれ、9月13日に第7回が開催される予定となっている(開催案内参照)。

 前回、ドイツの仮処分事件について書いたが、今回はその補足として世界のブロッキングを巡る状況の概観について書いておきたい。ただし、実の所、ブロッキングについては、世界のどの国でも最近それほど大きな動きがあったということはないので、今回の記事は今までの話のまとめに近く新しい情報は含まれていないことをあらかじめお断りしておく。

 ここで、ブロッキングを巡る世界の状況については、上の検討会議の第6回で弁護士の森亮二委員が資料9として提出したブロッキングの法制化に関する疑問(pdf)が、MPAAの話の受け売りで、世界各国でブロッキングが法制化されているかの様な印象操作を含む知財本部の以前の資料について「『世界42カ国』は本当か?」と疑義を呈しているのは正鵠を射ていると言っていい。

 この資料及び知財本部の検討会議で提出されている他の資料なども参照しつつ、以下、世界各国のブロッキングを巡る状況について概観をまとめて行く。

(1)欧州
 ドイツでブロッキングが初めて認容された仮処分事件について前回書いたが、そこでも書いた通り、ブロッキングを巡ってはヨーロッパの状況はなお混沌としていると私は見ている。

 上の森亮二委員の資料で疑義を呈されている知財本部の過去の資料で、欧州でブロッキングを可能とする法制があるとする根拠は、欧州著作権指令(正式名称は「情報社会における著作権及び著作隣接権のある側面の調和に関する2001年5月22日の欧州議会及び理事会の指令第2001/29号」)の第8条第3項だが、これは以下のように書かれているに過ぎない。(以下、翻訳は全て拙訳。)

Article 8 Sanctions and remedies
...
3. Member States shall ensure that rightholders are in a position to apply for an injunction against intermediaries whose services are used by a third party to infringe a copyright or related right.

第8条 罰及び救済
(略)
第3項 加盟国は、著作権又は著作隣接権を侵害するために第三者にそのサービスが使われる仲介者に対する差し止めの申請を権利者に可能とする事を確保しなければならない。

 これは、仲介者への差し止めを可能とすることを規定しているが、これはいわゆる著作権の間接侵害責任のことを言っているだけであり、この部分とブロッキングの可否とは別物と私は理解している。

 大体、解釈は最後欧州司法裁判所で統一されるものの、これはあくまでその具体的な法制化は各国に委ねられる欧州指令である。つまり、欧州各国でこの規定と同程度の間接侵害規定はどこでも法制化されているだろうが、そのこととブロッキングの可否は別の話である。このことは、ドイツの裁判所でブロッキングについて著作権法条の通常の差し止め規定と民法上の一般的な妨害者責任から判断していることからしても分かる事のはずである。

 すなわち、今の所、欧州で著作権侵害を理由としたブロッキングを積極的に可能とするような特別の法制を有している国はなく、他の事情も考慮した上でやむを得ないと司法が判断した場合に間接侵害責任を認めてアクセスプロバイダーにサイトブロッキングを命じている例が幾つかの国であるに過ぎず、それすら成功しているとは言い難いという状況ではないかと私は見ている。(欧州の状況については、オランダのパイレートベイ事件に関する欧州司法裁判所の判決と関連判例を取り上げた第379回も参照。)

 なお、知財本部で今まで取り上げられた欧州の国にはイギリスがある。イギリスの裁判所がブロッキングの根拠としているイギリス著作権法第97A条は、

97A Injunctions against service providers

(1)The High Court (in Scotland, the Court of Session) shall have power to grant an injunction against a service provider, where that service provider has actual knowledge of another person using their service to infringe copyright.

(2)In determining whether a service provider has actual knowledge for the purpose of this section, a court shall take into account all matters which appear to it in the particular circumstances to be relevant and, amongst other things, shall have regard to-
(a)whether a service provider has received a notice through a means of contact made available in accordance with regulation 6(1)(c) of the Electronic Commerce (EC Directive) Regulations 2002 (SI 2002/2013); and

(b)the extent to which any notice includes-
(i)the full name and address of the sender of the notice;
(ii)details of the infringement in question.

(3) In this section "service provider" has the meaning given to it by regulation 2 of the Electronic Commerce (EC Directive) Regulations 2002.

第97A条 サービスプロバイダーに対する差し止め

第1項 高等裁判所(スコットランドにおいては、控訴院)は、サービスプロバイダーが他の者がそのサービスを著作権を侵害する事に使っている事を実際に知った場合、サービスプロバイダーに対する差し止めを認める権限を有する。

第2項 本条の目的のためにサービスプロバイダーが実際に知ったかどうかを決めるにあたり、裁判所は関係する個別の状況においてそこに現れるあらゆる事を考慮に入れなければならず、特に次の事に注意しなければならない-
(a)サービスプロバイダーが、電子商取引(EC指令)規則2002(SI 2002/2013)の規則6(1)(c)に沿って提供する連絡手段を通じて通知を受け取っているかどうか;そして

(b)通知が以下の事をどれだけ含んでいるか-
(ⅰ)通知の送信者の氏名及び住所
(ⅱ)問題となる侵害の詳細

(c)本条において「サービスプロバイダー」は、電子商取引(EC指令)規則2002(SI 2002/2013)の規則2によって与えられる意味である。

というものであるが、読めば分かる通り、これはイギリスで2003年に上の欧州著作権指令に対応する国内法を作ったものであるが、イギリス特有の解釈とはいえ、この規定に基づいてアクセスプロバイダーにブロッキングを命令するのはかなり無理をしていると思わざるを得ない。

 イギリスのことは、上の検討会議の第4回で明治大学の今村准教授が資料1として提出した英国におけるサイトブロッキング法制とその運用状況について(pdf)でも書かれているが、判例法の国であるイギリスの話も非常にややこしく、イギリスのことも含めて欧州の個々の国の著作権事情に関する私の補足はまた別途書きたいと思っている。

(2)アメリカ
 日本政府はどのような政策検討でもいつもアメリカの話を持ち出すが、今回の知財本部の検討会議ではほとんどアメリカの話が出て来ていない。

 森亮二委員がその資料で、今回の知財本部の検討はアメリカで廃案になったSOPAに含まれていた事とほとんど同じではないかと指摘しているのはまさしく慧眼であり、アメリカでは、サイトブロッキング条項を含むオンライン海賊対策法案(SOPA)や知財保護強化法案(PIPA)がIT企業やユーザーから検閲であるとして大反対を受けてその審議が止まり、その後もこの様な法案が復活する気配はないのである。SOPAの話は自分のパブコメでも繰り返し伝えているが、このようにアメリカで著作権サイトブロッキング法案が廃案になったという事実は知財本部での検討にとって都合の悪い事なのだろう。

 2011年から2012年の事でもう皆忘れつつあるのかも知れないが、このブログでの第263回でも当時のホワイトハウスの声明を取り上げるなどしており、当時の騒ぎは相当のものだったと記憶している。(当時の経緯は、SOPAのウィキペディアとPIPAのウィキペディアのそれぞれにもまとめられている。)

(3)その他
 その他の国で何故か知財本部で取り上げられている国はオーストラリアと韓国であるが、知財本部の検討会議の第3回の、慶応大学の奥邨教授提出のオーストラリアにおけるサイトブロッキング制度と我が国著作権法制への示唆(pdf)と、獨協大学の張准教授の韓国における海賊版サイトの接続遮断措置の概要(pdf)に書かれている通り、これらの国でサイトブロッキングのための特別の法制が作られているので、知財本部でわざわざ選んで紹介を各教授に依頼したのではないかという疑念が拭えない。

 確かに、オーストラリアは国外サイト限定の裁判所の判断による司法ブロッキングを法制化しており、韓国は行政命令によるブロッキングを法制化しているが、裏を返せば、オーストラリアと韓国を除けばブロッキングについて特別な法制がある国は他になく、他の国では判例はさらにないと言っていいのだろう。さらに言えば、オーストラリアや韓国でも、本当にブロッキングにより海賊版対策としての効果が上がっているのかは相当疑問である。(繰り返しになるが、ブロッキングにより対象サイトのアクセスが減る事自体は当たり前の事であって、海賊版対策としての効果はそれとは別にきちんと評価されなければならない。)

 知財本部で取り上げられた国を見ると、ブロッキングありきの検討を行うために選んだのではないかという疑念をどうしても抱かざるを得ないが、私の見る限り、ブロッキングを巡っては世界のどの国であれなお混沌とした状況にあり、いかなる形を取るにせよブロッキングの採用が有効な海賊版対策として世界の主要な流れとなっているとは到底言い難いのである。さらに、ネット規制において悪名高い国として常に名があがるイギリスやオーストリア、韓国などはほとんど反面教師にしかならないだろうとも私は考えている。

 知財本部の第6回の事務局資料のブロッキングに係る法制度整備を行う場合の論点について(案)(pdf)中間まとめ骨子(案)(pdf)からも微妙にきな臭さが漂って来るが、今後の会合でブロッキングありきの恣意的なまとめがなされない事を私は心から願っている。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年7月16日 (月)

第396回:TPP11関連法の成立と知財本部の著作権ブロッキング検討

 先月のことになるが、極めて残念なことながら、6月28日に参議院の内閣委員会で、6月29日に本会議で、環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案(アメリカ抜きのTPP11協定関連法案)が可決・成立し、7月6日に公布された。

 参議院HP議案情報にTPP11協定関連法案の採決結果が出ているが、主要政党では、自民党、公明党、維新の会、希望の党が賛成し、国民民主党、立憲民主党、共産党、自由党・社民党が反対した。

 第393回で書いた通り、この法案は、凍結によって必要がなくなっているにもかかわらず、TPP11協定の発効に合わせて著作権の保護期間延長を施行するという悪辣かつ姑息な内容のものだが、結局参議院でもこの法案の本質的な問題の議論は深められず、これが与党の手によってなし崩し的に可決されたのは日本の知財政策上痛恨の極みと言っていい。

 元の12カ国でのTPP協定はアメリカの脱退によって発効の見込みが立たなくなっているが、今度のTPP11協定はGDPとは無関係に6カ国の批准で発効することになっており、残念ながら、いずれ発効する見込みは高いと私も見ている。

 参議院内閣委員会の附帯決議(pdf)は、「米国との経済対話や『自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議(FFR)』においては、TPPの合意水準を上回る米国からの要求は断固として拒絶し、我が国の国益に反するような合意は決して行わないこと」といった綺麗事を並べ立てているが、元のTPP協定から脱退したアメリカのトランプ大統領にとってTPP11協定が何の圧力にもならないことは目に見えている上に、この法案自体が著しく国益を損なっているのだから何をか言わんやだろう。

 繰り返しになるが、著作権の保護期間延長がアメリカの強硬な主張によって入れられたことを考えても、このような凍結項目は本来TPP11関連法案から外しておくべきだったものである。にもかかわらず、まとめて法案の中に入れて可決を強行したことは、国として政策判断を自ら放棄する戦後最大級の愚行であり、このことは長きに渡って我が国の根本を蝕むことだろう。(無論、第386回で書いた通り、著作権延長問題については日欧EPAも控えているのはその通りだが、このような多重ポリシーロンダリングは本来許されて然るべきものではない。)

 また、私が今最も注視している政府の検討会に、著作権ブロッキングの是非を検討している、知財本部インターネット上の海賊版対策に関する検討会議があり、既に2回も開催されている。

 6月22日の第1回インターネット上の海賊版対策に関する検討会議(タスクフォース)の設置について(pdf)を見ると、メンバーのバランスは一応取れており、苦肉の策だろうが、著作権ブロッキングを今まで主導していたコンテンツ分野会合の座長だった中村伊知哉氏に加えて、村井純氏が共同座長になっている形であり、第392回で取り上げたネット検閲緊急対策決定後のおよそロクでもない状況において、ここでブロッキングありきの検討が行われる様子がなさそうなのはかろうじて評価できる。(その運営について(案)(pdf)を見ると、検討会議が原則公開となっているのは当たり前として、海賊版サイトの個別名称などが非公開扱いにされている。もはや知財本部・事務局は資料の整合性を取ることもできなくなっているのだろうが、サイト名指しの緊急対策は一体何だったのか。)

 6月22日の主な論点(案)(pdf)には、検討のスコープとして、「①正規版流通の更なる拡大によるコンテンツ視聴環境の整備」、「② 現行法令下での既存の海賊版対策の取組状況の検証及び実効性評価」、「③ 特に悪質な海賊版サイトに対する権利行使を可能とする法制度整備のあり方」といった項目があげられているが、これらは全て緊急対策の決定前に検討すべきだったものであり、このような検討もしない儘になぜブロッキングを要請するネット検閲緊急対策が決定できたのか本当に理解不能である。

 6月26日に開催されていた第2回も、7月18日に開催される予定の第3回も(開催案内参照)、正規版流通と海賊版対策の現状について報告を受ける内容であり、この時点で政策の方向性が打ち出されるということはなさそうである。しかし、6月22日のスケジュールイメージ(案)(pdf)によると、9月には中間取りまとめ案のパブリックコメントを取る予定になっており、政府は非常な急ピッチで検討を進めるつもりと見え、著作権ブロッキングありきの検討が行われる恐れもあり、引き続き注視して行く必要があると思っている。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年6月17日 (日)

第395回:知財計画2018の文章の確認

 先週6月12日に、知的財産戦略本部で、今年の知的財産推進計画2018が決定され、公開された。知財計画の内容はいつも通り寄せ集めの施策項目集に過ぎないが、加えて今年はさらに意味不明の知的財産戦略ビジョンも同時に決定されている。

 先に、この知的財産戦略ビジョン(pdf)について少しだけ触れておくと、その中身は徹頭徹尾駄弁の羅列に過ぎず、政策として何をしたいのか全く理解不能であり、今後何かの意味を持つとは到底思えないが、第49ページに、

リーチサイト等を通じた侵害コンテンツへの誘導行為について法的措置が可能であることの明確化や、サイトブロッキングの法的根拠置の明確化等、悪質な海賊版サイトへの多層的かつ実効性ある対抗手段導入に取り組む。

と書かれていることから、知財本部として犯罪対策閣僚会議とともに緊急対策で決定したところの(第392回参照)、サイトブロッキング要請をとにかく正当化したいのだろうことは読み取れる。

 知財計画2018(pdf)ポイント(pdf))自体も何のために毎年作っているのか良く分からないものだが、政府内の検討状況を知るには便利なまとめなので、ここで、およそどうでもいいお題目を飛ばし、法改正に関わるところを中心に抜き出して行く。

 まず、第9ページに、

・IoT、AI、ビッグデータ等の新技術による社会変革(イノベーション)を促進する「デザイン経営」の奨励及びブランド形成に資するデザインの保護等、「デザイン経営」に資する制度の整備等の観点から、意匠制度をはじめ他の知的財産権制度の在り方について検討し、その結果を踏まえて、法改正を含めた必要な措置を講ずる。(短期、中期)(経済産業省)

と、意匠法改正の具体的な方向性までは書かれていないが、前回取り上げた経産省・特許庁の産業競争力とデザインを考える研究会の報告書を受けた記載が盛り込まれている。

 次に、第10ページには、

・中小企業による知財活用を促進するため、平成30年度特許法等改正によって導入される中小企業の特許料等の一律半減について広く周知するととともに、減免申請手続きの簡素化についても検討する。(短期、中期)(経済産業省)

と、今回の特許法改正の周知の話が出ている。

 第11ページには、

・種苗法における侵害の立証の適正化、権利範囲の明確化、品種登録情報へのアクセスの在り方などについての検討をさらに進めるとともに、職務育成品種の帰属、異議申立などの在り方についても検討を行う。(短期、中期)(農林水産省)

・我が国で開発された植物品種の海外への流出に対応するため、海外への品種登録出願の支援や、重要な品種についての国内での品種保護の在り方について、必要に応じ制度的な手当も含め検討する。(短期、中期)(農林水産省)

・日EU経済連携協定(EPA)に対応し、より高いレベルで地理的表示の保護を図るため、広告・インターネット販売等のサービス分野も地理的表示の保護対象とし、現行法では無期限に認められている先使用期間を制限すること等を内容とする特定農林水産物等の名称の保護に関する法律の改正を行う。(短期、中期)(農林水産省)

・種苗法に基づき品種登録出願された品種の名称が、第三者により悪意で商標出願される問題について、対応策を検討する。(短期)(経済産業省、農林水産省)

と、種苗法と地理的表示保護法に関する項目が4つ並び、今年はこれらの法律の改正検討もさらに進められそうである。

 上でも書いた緊急対策の決定がつい最近あったところの、私が一番注目している海賊版対策については、第19~20ページに以下のように書かれている。

・インターネット上で流通する模倣品・海賊版対策について、有識者及び関係府省における検討の場を設け、各権利者、関係事業者等とも連携しつつ、正規版等の流通の在り方を含む模倣品・海賊版対策について、その実態や官民の取組状況を共有するとともに、サイトブロッキングに係る法制度整備や抜本的な模倣品・海賊版対策に係る論点の検討等を含めた、今後の対策の在り方や方向性を総合的に検討する。(短期、中期)(内閣府、警察庁、総務省、財務省、文部科学省、経済産業省、関係府省)

・リーチサイト等を通じた侵害コンテンツへの誘導行為への対応に関して、権利保護と表現の自由のバランスに留意しつつ、関係者の意見を十分に踏まえ検討を行い、速やかな法案提出に向けて、必要な措置を講じる。(短期)(文部科学省)

・越境電子商取引の進展に伴う模倣品・海賊版の流入増加へ対応するため、個人使用目的を仮装して輸入される模倣品・海賊版を引き続き厳正に取り締まるとともに、特に増加が顕著な模倣品の個人使用目的の輸入については、権利者等の被害状況等及び諸外国における制度整備を含めた運用状況を把握しつつ、具体的な対応の方向性について検討する。(短期)(財務省、経済産業省)

・知財に関する教材の充実の観点から、海賊版対策を含めた著作権教育に資する教材等の在り方を検討した上で、教材等の開発・普及を行う。(短期、中期)(文部科学省)

・模倣品・海賊版を購入しないことはもとより、特に、侵害コンテンツについては、視聴者は無意識にそれを視聴し侵害者に利益をもたらすことから、侵害コンテンツを含む模倣品・海賊版を容認しないということが国民の規範意識に根差すよう、各省庁、関係機関が一体となった啓発活動を推進する。(短期、中期)(警察庁、消費者庁、財務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省)

 第392回で書いた通り、緊急対策と称するブロッキング要請について大きな問題があると私は思っているが、ここで、「サイトブロッキングに係る法制度整備」と法制度の検討にまで踏み込んだ記載となっていることは極めて危険であり、「有識者及び関係府省における検討の場」として知財本部の下に設けられるのだろう、インターネット上の海賊版対策に関する検討会議(6月22日に早速第1回との開催案内が既に出されている)で進められるのだろうサイトブロッキングに関する今後の検討は本当に要注意である。

 リーチサイト規制に関する検討は引き続き文化庁で行われて行くのだろうが、今回の知財計画で、速やかに法案提出と相当前のめりな記載になった。ここで、表現の自由に関する言及もあるものの、今の状況を見る限り、文化庁で危ない検討が行われるのではないかとかなり心配である。

 また、第23ページに、

・2018年度特許法改正により導入される、書類提出命令・検証物提示命令においてインカメラ手続で書類・検証物の提出の必要性を判断できるようにする制度及び中立的な第三者の技術専門家に秘密保持義務を課した上で証拠収集手続に関与できるようにする制度について、適切な運用を見守るとともに周知を行う。(短期)(経済産業省)

と、第24ページに、

・不正競争防止法におけるデータの不正取得等に対する差止めの創設等の整備を踏まえ、法の適切な運用環境を整備するため、ガイドラインの策定、不正競争防止法に関する普及・啓発などの必要な措置を講ずる。(短期、中期)(経済産業省)

と、第25・26ページに、

・著作権法における柔軟性のある権利制限規定の整備を踏まえ、法の適切な運用環境を整備するため、ガイドラインの策定、著作権に関する普及・啓発、及びライセンシング環境の整備促進などの必要な措置を講ずる。(短期)(文部科学省)

という、今回の各法改正の周知項目が含まれている。

 上の記載を見ると、文化庁としては今回の法改正で権利制限の一般フェアユース条項導入を巡る話を幕引きにしたいと思っているようだが、第389回で書いた通り、私は今回の著作権法改正は本当の意味で柔軟な一般フェアユース条項を導入するものとは全く思っていないし、これで諦めるつもりもない。

 第26ページには、

・クリエーターに適切に対価が還元され、コンテンツの再生産につながるよう、私的録音録画補償金制度の見直しや当該制度に代わる新たな仕組みの導入について、文化審議会において検討を進め、結論を得て、必要な措置を講ずる。(短期、中期)(文部科学省、経済産業省)

という、私的録音録画補償金制度の見直しに関する項目も残されている。

 後は、すぐに法改正につながるようには思えないが、第26ページには、

・権利者団体と協力して実施している実証事業の結果等を踏まえ、著作権者不明等の場合の裁定制度の利用円滑化に向けた方策について検討し、必要な措置を講ずる。(短期、中期)(文部科学省)

・著作物等の利用円滑化の観点から、拡大集中許諾制度に係るこれまでの調査研究等の結果を踏まえ、具体的課題について検討を進める。(短期、中期)(文部科学省)

という裁定や集中許諾制度に関する項目もある。

 今年の知財計画では、TPPが微妙な情勢にあることを、海賊版対策条約(ACTA)も死んだものであることを政府自ら認めたのだろう、重点事項からこれらの協定・条約に関する項目が落ちている。しかし、第78ページには、知財計画2017からの継続項目として載っているので別に政府として諦めたなどということは全くないのだろう。

 知財戦略ビジョンを見ても、今年の知財計画を見ても、例によっておよそロクでもないことしか書かれておらず、このような知財本部と知財計画の有様は、十年以上に渡り、日本政府に知財政策に関する戦略やビジョンが全くないことを端的に示し続けている。この体たらくでは、極めて残念なことながら、今後も知財を巡る政策的混乱が止まることはないだろう。

 なお、補足として、政府はよほど著作権法の改正によりサイトブロッキングやリーチサイトの取締りがしたいのだろうと見え、規制緩和方向の検討がなされる話では全くないが、規制改革推進会議の6月4日の第3次答申(pdf)でも、第50~51ページに、以下のような著作権に関する記載が追加されており、こちらではリーチサイト対策について平成31年度通常国会までに法案提出と期限まで書かれている。

②放送コンテンツの海外展開の支援
【a,b,c,f,g:平成30年度上期以降継続的に実施、d:平成31年通常国会までに法案提出、e:平成30年度早期に措置】
(略)
d インターネット上の海賊版サイトにつき、リーチサイト対策のための法整備を進める。
e 国境を越えたインターネット上の海賊版に対する対策の在り方について、有識者、関係府省、権利者、事業者等で連携して検討する場を設ける。
(略)

 また、何をどう検討するのかいまいち良く分からないが、規制改革推進会議の第3次答申の第53ページには以下のように放送コンテンツの流通促進の検討とそれを踏まえた著作権制度の見直しに対する言及もあり、今年は総務省でのコンテンツ流通に関する検討も同時に行われるようである。

②コンテンツ流通の推進
【a:平成30年度中に検討開始し、平成31年度結論・措置、b:平成30年度中に検討開始。検討状況を踏まえ順次実施。著作権制度の在り方についての必要に応じた見直しは平成31年度措置】
(略)
a 音楽分野における効率的な権利処理を実現するため、放送事業者等の利用者の意見を聞きながら権利情報データベースの実証事業(権利情報データベースの構築、当該データベースを活用した権利処理プラットフォームの構築)を進める。さらに、権利情報の集中管理、包括的な権利処理、収益の分配の全体が整合性をとった改革について、総務省が放送コンテンツの流通インフラ整備の必要性や課題を、関係府省の協力を得て整理するとともに、文化庁がその検討状況を踏まえつつ、総務省、経済産業省の協力を得ながら、著作権制度について必要な検討を行い、制度整備を行う。運用を含めその他の課題については、関係府省が必要な取組を行う。その際、ブロックチェーン技術、AI技術を活用した海外実務を参考にする。
b 同時配信に係る著作権等処理の円滑化のため、総務省放送コンテンツの製作・流通の促進等に関する検討委員会での検討結果を踏まえ、放送事業者における具体的な同時配信の展開手法やサービス内容を勘案し、所要の課題解決を行う。その際、例えば、拡大集中許諾制度など、放送に関わる著作権制度の在り方について、著作権等の適切な保護と公正な利用の促進とのバランスを図る観点から、新たな技術の進展なども踏まえ、必要な見直しを行う。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年4月15日 (日)

第392回:政府与党による海賊版対策とは名ばかりのネット検閲推進策の決定

 報道されていた通り、先週4月13日に知的財産推進本部・犯罪対策閣僚会議の合同会合が開かれ、インターネット上の海賊版サイトに対する緊急対策(pdf)概要(pdf)も参照)とインターネット上の海賊版対策に関する進め方について(pdf)が決定された。この著作権ブロッキングを求める政府の緊急対策と対策の進め方は、既に様々なところで批判されているが、徹頭徹尾その理屈は良く分からず、到底まともな議論に耐え得るものではない。

 まず、緊急対策の第1ページに「昨今運営管理者の特定が困難であり、侵害コンテンツの削除要請すらできない海賊版サイト」云々と書かれているが、運営管理者の特定が本当に民事救済におけるボトルネックとなっているのであれば、著作権法やプロバイダー責任制限法をどのようにすればこのような問題を解消できるかという話をすればいいだけである。また、刑事の話をするならば、名指しで挙げられているサイトはリーチサイトですらなく、これらのサイトの提供・運営は明らかに違法なので、刑事訴追できない理由もない。それなりの規模の違法サイトを運営できるだけのサーバーを置ける国で著作権法やプロバイダー責任制限法に相当する法律が整備されていないということも考え難く、サーバーが外国にあることやクラウドサービスであることなどもサイト運営者が免責される理由になる訳がない。必要であれば、その国の弁護士を使って民事裁判をすることができるだろうし、刑事における捜査協力もできるだろう。(前回も書いたが、政府与党にブロッキングを求める前に権利者としてこれらのサイトに対してどこまで権利行使をしようとしたのか甚だ疑わしいと私は思っている。)

 第1~2、4~6ページに、特に悪質な海賊版サイトのブロッキングに関する考え方の整理が書かれているが、ここで書かれていることも法的整理としてはほとんど与太話の域を出ない。今までの官民の整理で著作権ブロッキングが認められる余地がないのは前回も書いた通りである。これでブロッキングをしろと言われてもインターネットサービスプロバイダー(ISP)としては対応に困るだろう。(これも前回の繰り返しになるが、緊急避難かどうかは個々の事案に応じて個別具体的に判断されるべきものであって、産業界、行政、立法の懈怠を誤魔化すために緊急避難が使われることは断じてあってはならないことである。)

 第2ページで結論のように、「当面の対応としては、法制度整備が行われるまでの間の臨時的かつ緊急的な措置として、下記類型の考え方に基づき、民間事業者による自主的な取組として、『漫画村』、『Anitube』、『Miomio』の3サイト及びこれと同一とみなされるサイトに限定してブロッキングを行うことが適当」、「ブロッキングの実施は、以下類型に沿って、あくまで民間事業者による自主的な取組として、民間主導による適切な管理体制の下で実施されることが必要」、「新たに特に悪質な海賊版サイトが登場した際に、速やかに以下類型の考え方に基づいたブロッキングを実施するため知的財産戦略本部の下で、関係事業者、有識者を交えた協議体を設置し、早急に必要とされる体制整備を行う」と書かれているが、民間の自主的な取組という言葉で僅かに取り繕っているものの、政府がどのような基準で選んだのかすら良く分からない特定サイトを名指ししてブロッキングを求めること自体異常極まることという他ない。これがネット検閲命令でなくて何だというのか。これが通るなら、政府与党の指導であらゆるサイトはブロッキングされる危険に晒されることになるし、今後確実に政府与党は自分たちにとって都合の悪い情報を載せたサイトを隠すためにこのようなネット検閲を濫用して来るだろう。(毎日新聞の記事などによると、政府はブロッキングの要請を民間の自主的な取組を促すという言葉に急遽差し替えたらしいが、私には質の悪い言葉遊びとしか思えない。ここでは、単にこれらの3サイトがブロッキングされて然るべきかどうかということが問題なのではない。言うまでもないことだが、さらに念のために書いておくと、一旦可能となったら、このようなネット検閲は著作権の問題に留まらず、あらゆることに拡大解釈されて適用されて行くことになるだろう。)

(なお、そもそも緊急避難は被害の多寡だけの問題ではないが、第4ページの注釈には、「サイトへの訪問者が、『漫画村』では、約1億6000万人(96%が日本からのアクセス)」等とコンテンツ業界がロビー活動の際に使ったと思われる数字がそのまま垂れ流されているが、単純計算で日本に約1億5000万人の利用者がいることになるになるなど、政府としてこのペーパーを書くにあたり内容をまともに検証したとは到底思えない。)

 第2ページで、「インターネット上の海賊版に効果的に対応していくためには、著作権者等による侵害コンテンツの削除要請等の地道な取組や広告出稿抑止等侵害者の資金源を断つための取組のほか、そもそもインターネット上の海賊版の流通・閲覧防止のため、学校関係者、事業者、関係団体等と連携しながら、学校、地域における著作権教育に取り組んでいく必要があり」と書かれているが、本来であれば、この点で今まで何をどうしていたのかということこそ問われるべきであるのに、この部分は最後に取ってつけた様に書かれており、その具体的な内容が全くない。

 次に、インターネット上の海賊版対策に関する進め方について(pdf)だが、上の緊急対策で書かれたネット検閲命令に加えて、こちらでは、次期通常国会を目指す法改正事項として、別紙に以下のような3つの項目が書かれている。

1.海賊版サイトへのブロッキングに関する法制度整備
○一定の要件の下でISP事業者に対してブロッキングの請求を行うことができる規定の整備等、海賊版サイトへのブロッキングが実効性のあるものとするための制度の整備。なお、法制度整備にあたっては、「2.」の措置を踏まえて、リーチサイトの取扱いについても併せて検討を行う。
[→ 対象とするサイト選定の基準、最適な手続手法(司法手続又は行政手続)等が主な論点。]

2.リーチサイト関係の法制度整備
○リーチサイトを通じた侵害コンテンツへの誘導行為について著作権法上「みなし侵害行為」等として法的措置が可能である事を明確にするための手当。
[→ 差止請求の対象として特に対応する必要性が高い行為類型の定義が主な論点。]

3.その他論点となり得るもの
○ 静止画(書籍)のダウンロードの違法化等

 要するに、これは、行政指導によって無理矢理なし崩しの内に入れさせようとしているネット検閲を立法によって合法化しようとするものであり、ここで書かれていることはさらに危険である。

 上の緊急対策ではあくまで民間主導と言いながら、こちらでは法制化によるブロッキングの強制を狙っているなど、児童ポルノ対策においてすら喧々諤々の議論の末にブロッキングの法制化は見送られ民間の自主的な取組としてされていることを忘れているなど、ブロッキングの基準を論点にしており、良く分からない基準で3サイトを選びブロッキングを求めていることを政府自ら認めているなど、ここでの論理破綻は覆い隠すべくもない。

 また、この対策の進め方では、緊急対策では具体的内容がないながら一応書かれていた「削除要請等」や「広告出稿抑止等」の本来取り組むべき地道な海賊版対策の言及すらなくなり、やはりネット検閲に繋がるものでしかない画像のダウンロード違法化(今の著作権法の構成で静止画のダウンロード違法化を追加すると刑事罰付与(犯罪化)も同時にされることになるのではないか)を検討項目として挙げるなど、著作権侵害にかこつけて、海賊版対策そっちのけで、とにかく国民の情報の自由を圧殺してネット検閲を実現したいとする政府与党の犯罪宣言に等しいものとなっている。

 この政府のペーパーの内容が海賊版対策に全くならないことを私は確信しているが、もはや海賊版対策とは名ばかりで、ネット検閲こそが今の政府与党の真の狙いなのだろうと私は見る。曲がりなりにも表現の自由や検閲の禁止、通信の秘密の保護などの情報の自由に関する国民の権利を含む民主主義的な憲法を擁し、法治国家を唱える日本政府において、最初から最後までネット検閲を実現したいということしか書かれていない方針ペーパーが決定されたことを私は極めて深く憂慮する。

 既に報道等もされているが、先週から今週にかけての、政府の著作権ブロッキング推進方針に対する団体などの声明等へのリンクを最後に張っておくが、まず、反対・懸念を表明するものとしては、

  • インターネットユーザー協会と主婦連合会の共同声明(主婦連サイトの共同声明(内容は同じ))(4月11日)
  • モバイルコンテンツ審査・運用監視機構の意見(pdf)(4月11日)
  • インターネットコンテンツセーフティ協会の声明(4月11日)
  • 情報法制研究所の緊急提言(pdf)(4月11日)
  • 日本インターネットプロバイダー協会の声明(pdf)(4月12日)
  • 日本ネットワークインフォメーションセンターの見解(4月12日)
  • 安心ネットづくり推進協議会の意見書(pdf)(4月12日)
  • Internet Society日本支部の意見表明(4月12日)
  • 全国地域婦人団体連絡協議会の意見書(pdf)(4月12日)

があり、歓迎・賛成するものとしては、

  • 集英社の緊急声明(4月13日)
  • 講談社の緊急声明(pdf)(4月13日)
  • KADOKAWAの緊急声明(pdf)(4月13日)
  • 出版広報センターの声明(pdf)(4月13日)
  • コンテンツ海外流通促進機構の声明(4月13日)
  • 日本映像ソフト協会の声明(pdf)(4月13日)
  • 日本映画製作者連盟の声明(4月13日)
  • コミック出版社の会の緊急声明(pdf)(4月20日)
  • 日本弁理士会の声明(4月20日)

がある。

(2018年4月22日夜の追記:コミック出版社の会の緊急声明へのリンクを追加した。)

(2018年4月23日夜の追記:案の取れた資料が知財本部のHPに掲載されていたのでリンクを入れ替え、「(なお、リンク先の資料は案がついたままだが、そのまま決定されて案が取れている。)」という括弧書きを削除し、日本弁理士会の声明へのリンクを追加した。また、具体的にいつ何をどうするのかは不明だが、今日4月23日にNTTグループが著作権ブロッキングを実施する予定と公表したので、ここにリンクを張っておく。)

(2018年4月30日夜の追記:情報法制研究所が、4月27日に、NTTグループのブロッキング実施予定方針について懸念を示す意見(pdf)を出したので、ここにリンクを張っておく。)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年1月28日 (日)

第388回:「知的財産推進計画2018」・「知的財産戦略ビジョン」の策定に向けた意見募集(2月16日〆切)への提出パブコメ

 今年も知財本部から2月16日〆切で知財本部からかかっている「知的財産推進計画2018」・「知的財産戦略ビジョン」の策定に向けた意見募集に対して私が提出した意見をここに載せておく。

 4年前の知的財産政策ビジョン(pdf)の次の長期ビジョンを立てる意味がまるで不明なので、知財計画向けと知財戦略ビジョン向けをまとめて書いており、今年は、TPP協定交渉と日欧EPA交渉の状況を受けて(1)a)を書き直し、経産省の検討状況を受けてb)を書き直してc)を追加し、文化庁の検討状況を受けてe)を書き直す等しているが、パブコメの内容自体は去年と大きな違いはない。(去年の提出パブコメは第373回参照、知財計画2017の記載については第378回参照。)

 どこまで意見が取り入れられるか分からないが、政府に知財政策全体について意見を出せる年1回の機会ではあるので、このような問題に関心のある方は是非提出を検討することをお勧めする。

(以下、提出パブコメ)

《要旨》
アメリカ等と比べて遜色の無い範囲で一般フェアユース条項を導入すること及びダウンロード犯罪化・違法化条項の撤廃を求める。何ら国民的コンセンサスを得ていない中でのTPP協定・日欧EPA批准、有害無益なインターネットにおる今以上の知財保護強化、特に著作権の保護期間延長、補償金の矛盾を拡大するだけの私的録音録画補償金の対象拡大に反対する。今後真の国民視点に立った知財の規制緩和の検討が進むことを期待する。

《全文》
 最終的に国益になるであろうことを考え、各業界の利権や省益を超えて必要となる政策判断をすることこそ知財本部とその事務局が本当になすべきことのはずであるが、知財計画2017を見ても、このような本当に政策的な決定は全く見られない。知財保護が行きすぎて消費者やユーザーの行動を萎縮させるほどになれば、確実に文化も産業も萎縮するので、知財保護強化が必ず国益につながる訳ではないということを、著作権問題の本質は、ネットにおける既存コンテンツの正規流通が進まないことにあるのではなく、インターネットの登場によって新たに出てきた著作物の公正利用の類型に、今の著作権法が全く対応できておらず、著作物の公正利用まで萎縮させ、文化と産業の発展を阻害していることにあるのだということを知財本部とその事務局には、まずはっきりと認識してもらいたい。特に、最近の知財・情報に関する規制強化の動きは全て間違っていると私は断言する。

 例年通り、規制強化による天下り利権の強化のことしか念頭にない文化庁、総務省、警察庁などの各利権官庁に踊らされるまま、国としての知財政策の決定を怠り、知財政策の迷走の原因を増やすことしかできないようであれば、今年の知財計画を作るまでもなく、知財本部とその事務局には、自ら解散することを検討するべきである。そうでなければ、是非、各利権官庁に轡をはめ、その手綱を取って、知財の規制緩和のイニシアティブを取ってもらいたい。知財本部において今年度、インターネットにおけるこれ以上の知財保護強化はほぼ必ず有害無益かつ危険なものとなるということをきちんと認識し、真の国民視点に立った知財の規制緩和の検討が知財本部でなされることを期待し、本当に決定され、実現されるのであれば、全国民を裨益するであろうこととして、私は以下のことを提案する。
 以下の提案は主に知財計画2018に対するものとして記載しているが、知財戦略ビジョン対する意見も同様である。

(1)「知的財産推進計画2017」の記載事項について:
a)環太平洋経済連携協定(TPP)などの経済連携協定(EPA)に関する取組について
 第25ページにTPPなどの協定に関する取組について書かれている。TPP協定については、2015年10月に大筋合意が発表され、その後、文化庁、知財本部の検討を経て、11月にTPP総合対策本部でTPP関連政策大綱が決定され、さらに2016年2月に署名され、3月に関連法案の国会提出がされ、11月の臨時国会で可決・成立し、2017年1月20日に参加国として初めての国内手続きの完了に関する通報が行われた。

 しかし、この国内手続きにおいて、日本政府は、2015年10月に大筋合意の概要のみを公表し、11月のニュージーランド政府からの協定条文の英文公表時も全章概要を示したのみで、その後2ヶ月も経って2016年1月にようやく公式の仮訳を公表するなど、TPP協定の内容精査と政府への意見提出の時間を国民に実質与えない極めて姑息かつ卑劣なやり方を取っていたと言わざるを得ない。

 そして、公開された条文によって今までのリーク文書が全て正しかったことはほぼ証明されており、TPP協定は確かに著作権の保護期間延長、DRM回避規制強化、法定賠償制度、著作権侵害の非親告罪化などを含んでいる。今ですら不当に長い著作権保護期間のこれ以上の延長など論外であり、今回の著作権法改正の法定賠償や非親告罪化の条文にも注意すべきところがあり、今のところ発効はしていないものの、極秘裏に行われた国際交渉の結果としてなし崩しでこのように危険な法改正がなされたことを私は一国民として強く非難する。

 TPP協定についてはトランプ現アメリカ大統領が公約通り既に離脱の大統領令に署名している。その後日本政府はアメリカ抜きの11カ国でのTPP協定を推進し、大筋合意されたとの報道もある。最もクリティカルな部分である著作権と特許の保護期間延長とDRM規制の強化の部分こそ凍結されているようであるが、TPP協定を巡る問題は一部の条文を凍結したからといって解決するようなものではなく、私はこのような11カ国でのTPP協定の署名・批准及び関連する法改正にも反対する。日本政府はTPP協定の批准、関連法改正及び通報を取り消すべきであり、日本もTPP協定から脱退するべきである。

 2017年12月には日EU(欧)EPA交渉も妥結されているが、その中には、著作権の保護期間延長が含まれている。しかし、この日欧EPA交渉もTPP協定同様の姑息かつ卑劣な秘密交渉で決められたものである。その内容についてほとんど何の説明もないままに著作権の保護期間延長のような国益の根幹に関わる点について日本政府は易々と譲歩し、EU側で公表している条文の内容についてすらなお概要説明だけで、その翻訳すら公開しなていない。このように完全に国民をバカにしているとしか言いようがない日E欧EPAの署名、批准及び関連する著作権法改正にも反対する。

 また、TPP交渉や日欧EPA交渉のような国民の生活に多大の影響を及ぼす国際交渉が政府間で極秘裏に行われたことも大問題である。国民一人一人がその是非を判断できるよう、途中経過も含めその交渉に関する情報をすべて速やかに公開するべきである。

 なお、トランプ現アメリカ大統領は既に日米で2国間の通商交渉を行うともしており、このような交渉の中でTPP協定交渉同様に知財規制の強化が求められる可能性があるが、上で書いた通り、これ以上の知財規制の強化は危険なものとしかなり得ないものであり、そのような要求は日本政府として毅然とはねのけるべきである。

b)DRM回避規制について
 経産省と文化庁の主導により無意味にDRM回避規制を強化する不正競争防止法と著作権法の改正案がそれぞれ以前国会を通されたが、これらの法改正を是とするに足る立法事実は何一つない。不正競争防止法と著作権法でDRM回避機器等の提供等が規制され、著作権法でコピーコントロールを回避して行う私的複製まで違法とされ、十二分以上に規制がかかっているのであり、これ以上の規制強化は、ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ない。ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ないこれ以上のDRM回避規制の強化はされてはならない。

 特に、DRM回避規制に関しては、有害無益な規制強化の検討ではなく、まず、私的なDRM回避行為自体によって生じる被害は無く、個々の回避行為を一件ずつ捕捉して民事訴訟の対象とすることは困難だったにもかかわらず、文化庁の片寄った見方から一方的に導入されたものである、私的な領域でのコピーコントロール回避規制(著作権法第30条第1項第2号)の撤廃の検討を行うべきである。コンテンツへのアクセスあるいはコピーをコントロールしている技術を私的な領域で回避しただけでは経済的損失は発生し得ず、また、ネットにアップされることによって生じる被害は公衆送信権によって既にカバーされているものであり、その被害とDRM回避やダウンロードとを混同することは絶対に許されない。それ以前に、私法である著作権法が、私的領域に踏み込むということ自体異常なことと言わざるを得ない。また、同時に、何ら立法事実の変化がない中、ドサクサ紛れに通された、先般の不正競争防止法改正で導入されたDRM回避機器の提供等への刑事罰付与や、以前の著作権法改正で導入されたアクセスコントロール関連規制の追加についても、速やかに元に戻す検討がなされるべきである。

 経済産業省の産業構造審議会知的財産分科会不正競争防止小委員会において2018年1月にとりまとめられた「データ利活用促進に向けた検討中間報告」において、DRM回避規制について、技術的制限手段による保護対象に一般的な電子計算機処理用データを追加し、そのための無効化する装置等の提供行為を不正競争行為とするとともに、技術的制限手段の定義でアクティベーション方式によるものが含まれることを明確化し、無効化装置等の提供と同等とみなされる無効化サービス提供行為、不正な無効化符号提供行為を不正競争行為とするとしているが、これらのDRM回避規制強化のための法改正を是とするに足る立法事実の変化はなく、このような法改正のための法改正に私は反対する。この法改正の対象となるであろう行為類型は、著作権法におけるDRM回避規制も含めて考えると既に現行法で対処可能であるか、かえって正当なものとして認められるべき機器の解析やリバースエンジニアリングなどが阻害されることにつながる可能性が高いものばかりであり、このような無意味なDRM規制強化の検討は全て白紙に戻すべきである。

 TPP協定にはDRM回避規制の強化も含まれているが、上で書いた通り、これ以上のDRM回避規制の強化がされるべきではなく、この点でも私はTPP協定に反対する。

c)不正競争防止法によるデータ保護について
 第15ページにデータそのものの保護について記載されている。この点について、上の不正競争防止小委員会の2018年1月の「データ利活用促進に向けた検討中間報告」において、一定の要件を満たすデータを不正競争防止法の保護対象とするとしているが、そもそも、この中間報告にあげられている全てのケースは既存の法制及び契約によって十分対応可能であり、既存の営業秘密の保護を超え、日本が独自に定義する過度に広範なデータを保護対象とすることに対する法改正ニーズ及び立法事実はなく、私はこのような不正競争防止法の改正に反対する。

d)海賊版対策条約(ACTA)について
 第25ページではACTAへの言及もなされているが、このACTAを背景に経産省及び文化庁の主導により無意味にDRM回避規制を強化する不正競争防止法及び著作権法の改正案が以前国会を通され、ACTA自体も国会で批准された。しかし、このようなユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ない規制強化条項を含む条約の交渉、署名及び批准は何ら国民的なコンセンサスが得られていない中でなされており、私は一国民としてACTAに反対する。今なおACTAの批准国は日本しかなく、日本は無様に世界に恥を晒し続けている。もはやACTAに何ら意味はなく、日本は他国への働きかけを止めるとともに自ら脱退してその失敗を認めるべきである。

e)一般フェアユース条項の導入について
 第15~16ページで柔軟性の高い権利制限規定について言及されており、2017年4月の文化審議会著作権分科会報告書を受けた検討を進めるとしているが、ここで言及されている法制・基本問題小委員会中間まとめは幾つかの個別の権利制限の導入や拡充をしようとしているという点で一定の評価はできるものの、一般フェアユース条項の導入について否定的な結論を結論ありきで出している点で到底納得のできるものではない。一般フェアユース条項については本中間まとめの整理を全て白紙に戻した上で、一から再検討を行い、ユーザーに対する意義からも、アメリカ等と遜色ない形で一般フェアユース条項を可能な限り早期に導入するべきである。特に、インターネットのように、ほぼ全国民が利用者兼権利者となり得、考えられる利用形態が発散し、個別の規定では公正利用の類型を拾い切れなくなるところでは、フェアユースのような一般規定は保護と利用のバランスを取る上で重要な意義を持つものである。

 2012年の法改正によって写り込み等に関する権利制限の個別規定が追加され、今後の検討によっても幾つかの個別の権利制限が追加される可能性があるが、これらはあった方が良いものとは言え、到底一般フェアユース条項と言うに足るものではなく、これでは著作権をめぐる今の混迷状況が変わることはない。

 著作物の公正利用には変形利用もビジネス利用も考えられ、このような利用も含めて著作物の公正利用を促すことが、今後の日本の文化と経済の発展にとって真に重要であることを考えれば、不当にその範囲を不当に狭めるべきでは無く、その範囲はアメリカ等と比べて遜色の無いものとされるべきである。ただし、フェアユースの導入によって、私的複製の範囲が縮小されることはあってはならない。

 また、「まねきTV」事件などの各種判例からも、ユーザー個人のみによって利用されるようなクラウド型サービスまで著作権法上ほぼ違法とされてしまう状況に日本があることは明らかであり、このような状況は著作権法の趣旨に照らして決して妥当なことではない。ユーザーが自ら合法的に入手したコンテンツを私的に楽しむために利用することに著作権法が必要以上に介入することが許されるべきではなく、個々のユーザーが自らのためのもに利用するようなクラウド型サービスにまで不必要に著作権を及ぼし、このような技術的サービスにおけるトランザクションコストを過大に高め、その普及を不当に阻害することに何ら正当性はない。この問題がクラウド型サービス固有の問題でないのはその通りであるが、だからといって法改正の必要性がなくなる訳ではない。著作権法の条文及びその解釈・運用が必要以上に厳格に過ぎクラウド型サービスのような技術の普及が不当に阻害されているという日本の悲惨な現状を多少なりとも緩和するべく、速やかに問題を再整理し、アメリカ等と比べて遜色の無い範囲で一般フェアユース条項を導入し、同時にクラウド型サービスなどについてもすくい上げられるようにするべきである。

 権利を侵害するかしないかは刑事罰がかかるかかからないかの問題でもあり、公正という概念で刑事罰の問題を解決できるのかとする意見もあるようだが、かえって、このような現状の過剰な刑事罰リスクからも、フェアユースは必要なものと私は考える。現在親告罪であることが多少セーフハーバーになっているとはいえ、アニメ画像一枚の利用で別件逮捕されたり、セーフハーバーなしの著作権侵害幇助罪でサーバー管理者が逮捕されたりすることは、著作権法の主旨から考えて本来あってはならないことである。政府にあっては、著作権法の本来の主旨を超えた過剰リスクによって、本来公正として認められるべき事業・利用まで萎縮しているという事態を本当に深刻に受け止め、一刻も早い改善を図ってもらいたい。

 個別の権利制限規定の迅速な追加によって対処するべきとする意見もあるが、文化庁と癒着権利者団体が結託して個別規定すらなかなか入れず、入れたとしても必要以上に厳格な要件が追加されているという惨憺たる現状において、個別規定の追加はこの問題における真の対処たり得ない。およそあらゆる権利制限について、文化庁と権利者団体が結託して、全国民を裨益するだろう新しい権利制限を潰すか、極めて狭く使えないものとして来たからこそ、今一般規定が社会的に求められているのだという、国民と文化の敵である文化庁が全く認識していないだろう事実を、政府・与党は事実としてはっきりと認めるべきである。

f)私的録音録画補償金問題について
 第16ページでは私的録音録画補償金問題についても言及されている。権利者団体等が単なる既得権益の拡大を狙ってiPod等へ対象範囲を拡大を主張している私的録音録画補償金問題についても、補償金のそもそもの意味を問い直すことなく、今の補償金の矛盾を拡大するだけの私的録音録画補償金の対象拡大を絶対にするべきではない。

 文化庁の文化審議会著作権分科会における数年の審議において、補償金のそもそもの意義についての意義が問われたが、文化庁が、天下り先である権利者団体のみにおもねり、この制度に関する根本的な検討を怠った結果、特にアナログチューナー非対応録画機への課金について私的録音録画補償金管理協会と東芝間の訴訟に発展した。ブルーレイ課金・アナログチューナー非搭載録画機への課金について、権利者団体は、ダビング10への移行によってコピーが増え自分たちに被害が出ると大騒ぎをしたが、移行後8年以上経った今現在においても、ダビング10の実施による被害増を証明するに足る具体的な証拠は全く示されておらず、ブルーレイ課金・アナログチューナー非搭載録画機への課金に合理性があるとは到底思えない。わずかに緩和されたとは言え、今なお地上デジタル放送にはダビング10という不当に厳しいコピー制限がかかったままである。こうした実質的に全国民に転嫁されるコストで不当に厳しい制限を課している機器と媒体にさらに補償金を賦課しようとするのは、不当の上塗りである。

 なお、世界的に見ても、メーカーや消費者が納得して補償金を払っているということはカケラも無く、権利者団体がその政治力を不当に行使し、歪んだ「複製=対価」の著作権神授説に基づき、不当に対象を広げ料率を上げようとしているだけというのがあらゆる国における実情である。表向きはどうあれ、大きな家電・PCメーカーを国内に擁しない欧州各国は、私的録音録画補償金制度を、外資から金を還流する手段、つまり、単なる外資規制として使っているに過ぎない。この制度における補償金の対象・料率に関して、具体的かつ妥当な基準はどこの国を見ても無いのであり、この制度は、ほぼ権利者団体の際限の無い不当な要求を招き、莫大な社会的コストの浪費のみにつながっている。機器・媒体を離れ音楽・映像の情報化が進む中、「複製=対価」の著作権神授説と個別の機器・媒体への賦課を基礎とする私的録音録画補償金は、既に時代遅れのものとなりつつあり、その対象範囲と料率のデタラメさが、デジタル録音録画技術の正常な発展を阻害し、デジタル録音録画機器・媒体における正常な競争市場を歪めているという現実は、補償金制度を導入したあらゆる国において、問題として明確に認識されなくてはならないことである。

g)インターネット上の著作権侵害の抑止及び著作権法におけるいわゆる間接侵害・幇助への対応について
 第71ページにインターネット上の著作権侵害の抑止について、特にリーチサイト対策の検討について書かれており、文化庁の法制・基本問題小委員会などで検討が進められている。しかし、このようなリーチサイト問題も含め、ネット上の違法コンテンツ対策、違法ファイル共有対策については、通信の秘密やプライバシー、情報アクセス権等の国民の基本的な権利をきちんと尊重しつつ対策を検討してもらいたい。この点においても、国民の基本的な権利を必ず侵害するものとなり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害することにつながる危険な規制強化の検討ではなく、ネットにおける各種問題は情報モラル・リテラシー教育によって解決されるべきものという基本に立ち帰り、現行のプロバイダー責任制限法と削除要請を組み合わせた対策などの、より現実的かつ地道な施策のみに注力して検討を進めるべきである。

 ここで、リーチサイト対策の検討は、文化庁の法制・基本問題小委員会の論点案でも示されている通り、著作権法におけるいわゆる間接侵害・幇助への対応をどうするかという問題に帰着する。確かにセーフハーバーを確定するためにも間接侵害・幇助の明確化はなされるべきであるが、現行の条文におけるカラオケ法理や各種ネット録画機事件などで示されたことの全体的な整理以上のことをしてはならない。特に、著作権法に明文の間接侵害一般規定を設けることは絶対にしてはならないことである。確かに今は直接侵害規定からの滲み出しで間接侵害を取り扱っているので不明確なところがあるのは確かだが、現状の整理を超えて、明文の間接侵害一般規定を作った途端、権利者団体や放送局がまず間違いなく山の様に脅しや訴訟を仕掛けて来、今度はこの間接侵害規定の定義やそこからの滲み出しが問題となり、無意味かつ危険な社会的混乱を来すことは目に見えているからである。知財計画2018において間接侵害・幇助への対応について記載するのであれば、著作権法の間接侵害・幇助の明確化は、ネット事業・利用の著作権法上のセーフハーバーを確定するために必要十分な限りにおいてのみなされると合わせ明記してもらいたい。

h)著作権ブロッキングについて
 第71ページではサイトブロッキングへの言及もある。このような記載は著作権団体の提案を受けたものと思われるが、アメリカでは、議会に提出されたサイトブロッキング条項を含むオンライン海賊対策法案(SOPA)や知財保護強化法案(PIPA)が、IT企業やユーザーから検閲であるとして大反対を受け、その審議は止められている。

 サイトブロッキングの問題については下でも述べるが、インターネット利用者から見てその妥当性をチェックすることが不可能なサイトブロッキングにおいて、透明性・公平性・中立性を確保することは本質的に完全に不可能である。このようなブロッキングは、憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないものであり、決して導入されるべきでないものである。

 その提案からも明確なように、違法コピー対策問題における権利者団体の主張は常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。今後は、このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むことを検討するべきである。同じく、憲法に規定されている検閲の禁止から、サイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むことを検討するべきである。

i)アーカイブの利活用促進のための著作権制度の見直しについて
 第84ページにアーカイブの構築・充実に関する著作権制度の見直しについて記載されており、美術館等による解説・紹介のための展示著作物のデジタルデータの利用を可能とすることが記載されている。しかし、アーカイブの利活用促進の観点からはこのような権利制限の追加だけでは不十分である。ここで、真に2次利用可能な形で各種アーカイブの構築・充実を考えるのであれば、特に日本において十分になされているとは言い難いパブリックドメイン資料や絶版資料の利活用をより強力に促進するべきであり、著作権法の改正により、(a)現行著作権法第31条で国会図書館のみに可能とされている絶版等資料の電子利用をあらゆる図書館及び文書館に可能とすること、合わせて(b)同条における絶版等資料以外の資料についての「滅失、損傷若しくは汚損を避けるため」という電子化のための要件を緩和してここにアーカイブ化のためという目的を追加し、著作権保護期間満了後の資料公開に備えた事前の電子化を明確に可能とすること、及び(c)個人アーカイブの作成が第30条の私的複製の範囲に含まれることを条文上明記し、個人資料の利活用及び著作権保護期間満了後の公開を促すことを私は求める。このような権利制限又は例外が不必要に狭くされるべきではなく、その他者がアーカイブを直接利用しないことを前提として他者の力を借りたアーカイブ化も可能とされるべきである。なお、諸外国における動向について注視が必要なことも無論であり、政府が強く関与する形で実質オプトアウト方式で強力に絶版作品の電子化を図るフランスの20世紀の絶版作品電子化法や、孤児作品のみならず絶版作品の利用についても規定するドイツの孤児・絶版作品デジタル利用促進法なども参考にされてしかるべきである。

 さらに、法制度上の問題ではないが、国会図書館が著作権切れの著作物について2次利用に関する許諾を原則不要としている通り、NHKによるものを含め国費又は国費相当の予算を用いた各種アーカイブにおいては、インターネットを通じ書誌事項だけではなく全コンテンツの提供を行うことを目標として資料の電子化を行うとともに、公開情報に著作権期間満了日を明示し、合わせて公開された著作権切れの著作物に関しては原則2次利用の許諾を不要とするべきである。そして、特に国会図書館及び国立公文書館のような文書中心のアーカイブに関しては一般ユーザーからの入力を通じたテキスト化システムの実装も検討してもらいたい。

(2)その他の知財政策事項について:
a)ダウンロード違法化・犯罪化問題について

 文化庁の暴走と国会議員の無知によって、2009年の6月12日にダウンロード違法化条項を含む改正著作権法が成立し、2010年の1月1日に施行された。また、日本レコード協会などのロビー活動により、自民党及び公明党が主導する形でダウンロード犯罪化条項がねじ込まれる形で、2012年6月20日に改正著作権法が成立し、2012年10月1日から施行されている。しかし、一人しか行為に絡まないダウンロードにおいて、「事実を知りながら」なる要件は、エスパーでもない限り証明も反証もできない無意味かつ危険な要件であり、技術的・外形的に違法性の区別がつかない以上、このようなダウンロード違法化・犯罪化は法規範としての力すら持ち得ず、罪刑法定主義や情報アクセス権を含む表現の自由などの憲法に規定される国民の基本的な権利の観点からも問題がある。このような法改正によって進むのはダウンロード以外も含め著作権法全体に対するモラルハザードのみであり、今のところ幸いなことに適用例はないが、これを逆にねじ曲げてエンフォースしようとすれば、著作権検閲という日本国として最低最悪の手段に突き進む恐れしかない。

 そもそも、ダウンロード違法化の懸念として、このような不合理極まる規制強化・著作権検閲に対する懸念は、文化庁へのパブコメ(文化庁HPhttp://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hokoku.htmlの意見募集の結果参照。ダウンロード違法化問題において、この8千件以上のパブコメの7割方で示された国民の反対・懸念は完全に無視された。このような非道極まる民意無視は到底許されるものではない)や知財本部へのパブコメ(知財本部のHPhttp://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keikaku2009.htmlの個人からの意見参照)を見ても分かる通り、法改正前から指摘されていたところであり、このようなさらなる有害無益な規制強化・著作権検閲にしか流れようの無いダウンロード違法化・犯罪化は始めからなされるべきではなかったものである。文化庁の暴走と国会議員の無知によって成立したものであり、ネット利用における個人の安心と安全を完全にないがしろにするものである、百害あって一利ないダウンロード違法化・犯罪化を規定する著作権法第30条第1項第3号及び第119条第3項を即刻削除するべきである。

b)コピーワンス・ダビング10・B-CAS問題について
 私はコピーワンスにもダビング10にも反対する。そもそも、この問題は、放送局・権利者にとっては、視聴者の利便性を著しく下げることによって、一旦は広告つきながらも無料で放送したコンテンツの市場価格を不当につり上げるものとして機能し、国内の大手メーカーとっては、B-CASカードの貸与と複雑な暗号システムを全てのテレビ・録画機器に必要とすることによって、中小・海外メーカーに対する参入障壁として機能するB-CASシステムの問題を淵源とするのであって、このB-CASシステムと独禁法の関係を検討するということを知財計画2018では明記してもらいたい。検討の上B-CASシステムが独禁法違反とされるなら、速やかにその排除をして頂きたい。また、無料の地上放送において、逆にコピーワンスやダビング10のような視聴者の利便性を著しく下げる厳格なコピー制御が維持されるのであれば、私的録画補償金に存在理由はなく、これを速やかに廃止するべきである。

 4K放送について、無料放送を録画不可とできるようにする検討が放送局とメーカーで構成される次世代放送推進フォーラムにおいて行われているという報道もあった。その後の検討は不明だが、上で書いたような、コピーワンスやダビング10の愚を繰り返してはならない。このような消費者の利便性に極めて大きな影響を持つ検討については可能な限り速やかに今まで及び今後の検討の公開並びに利用者・消費者からの意見の取り入れを促すべきである。

c)著作権検閲・ストライクポリシーについて
 ファイル共有ソフトを用いて著作権を侵害してファイル等を送信していた者に対して警告メールを送付することなどを中心とする電気通信事業者と権利者団体の連携による著作権侵害対策が警察庁、総務省、文化庁などの規制官庁が絡む形で行われており、警察によってファイル共有ネットワークの監視も行われているが、このような対策は著作権検閲に流れる危険性が極めて高い。

 フランスで導入が検討された、警告メールの送付とネット切断を中心とする、著作権検閲機関型の違法コピー対策である3ストライクポリシーは、2009年6月に、憲法裁判所によって、インターネットのアクセスは、表現の自由に関係する情報アクセスの権利、つまり、最も基本的な権利の1つとしてとらえられるとされ、著作権検閲機関型の3ストライクポリシーは、表現の自由・情報アクセスの権利やプライバシーといった他の基本的な権利をないがしろにするものとして、真っ向から否定されている。ネット切断に裁判所の判断を必須とする形で導入された変形ストライク法も何ら効果を上げることなく、フランスでは今もストライクポリシーについて見直しの検討が行われており、2013年7月にはネット切断の罰が廃止されている。日本においては、このようなフランスにおける政策の迷走を他山の石として、このように表現の自由・情報アクセスの権利やプライバシーといった他の基本的な権利をないがしろにする対策を絶対に導入しないこととするべきであり、警察庁などが絡む形で検討されている違法ファイル共有対策についても、通信の秘密やプライバシー、情報アクセス権等の国民の基本的な権利をきちんと尊重する形で進めることが担保されなくてはならない。

d)著作権法へのセーフハーバー規定の導入について
 動画投稿サイト事業者がJASRACに訴えられた「ブレイクTV」事件や、レンタルサーバー事業者が著作権幇助罪で逮捕され、検察によって姑息にも略式裁判で50万円の罰金を課された「第(3)世界」事件や、1対1の信号転送機器を利用者からほぼ預かるだけのサービスが放送局に訴えられ、最高裁判決で違法とされた「まねきTV」事件等を考えても、今現在、カラオケ法理の適用範囲はますます広く曖昧になり、間接侵害や著作権侵害幇助のリスクが途方もなく拡大し、甚大な萎縮効果・有害無益な社会的大混乱が生じかねないという非常に危険な状態がなお続いている。間接侵害事件や著作権侵害幇助事件においてネット事業者がほぼ直接権利侵害者とみなされてしまうのでは、プロバイダー責任制限法によるセーフハーバーだけでは不十分であり、間接侵害や著作権侵害幇助罪も含め、著作権侵害とならない範囲を著作権法上きちんと確定することは喫緊の課題である。ただし、このセーフハーバーの要件において、標準的な仕組み・技術や違法性の有無の判断を押しつけるような、権利侵害とは無関係の行政機関なり天下り先となるだろう第3者機関なりの関与を必要とすることは、検閲の禁止・表現の自由等の国民の権利の不当な侵害に必ずなるものであり、絶対にあってはならないことである。

 知財計画2018において、プロバイダに対する標準的な著作権侵害技術導入の義務付け等を行わないことを合わせ明記するとともに、間接侵害や刑事罰・著作権侵害幇助も含め著作権法へのセーフハーバー規定の速やかな導入を検討するとしてもらいたい。この点に関しては、逆に、検閲の禁止や表現の自由の観点から技術による著作権検閲の危険性の検討を始めてもらいたい。

e)二次創作規制の緩和について
 2014年8月のクールジャパン提言の第13ページに「クリエイティビティを阻害している規制についてヒアリングし規制緩和する。コンテンツの発展を阻害する二次創作規制、ストリートパフォーマンスに関する規制など、表現を限定する規制を見直す。」と記載されている通り、二次創作は日本の文化的創作の原動力の一つになっており、その推進のために現状の規制を緩和する必要がある。これは知的財産に関わる重要な提言であり、二次創作規制を緩和するという記載を知財計画2018においてもそのまま取り入れ、政府としてこのような規制の緩和を強力に推進することを重ねてきちんと示すべきである。

f)リバースエンジニアリングのための権利制限の導入について
 リバースエンジニアリングのための権利制限は、上の法制・基本問題小委員会の2017年4月の中間まとめにおいても導入するべきとされたが、この点について、2009年1月の文化審議会著作権分科会報告書において早期に措置すべきとされた後の8年間で何度も著作権法改正案を国会に提出する機会があったにもかかわらず、法改正案に入れなかったことは文化庁の怠慢である。技術的な調査・解析は、権利者の利益を害するどころか、技術の発展を通じて社会全体を裨益するものであり、著作権法によってこのような利用まで萎縮することは、その法目的に照らしても本来あってはならないことである。このような権利者の利益を害さず、著作物の通常の利用も妨げないような公正利用の類型についてはきちんとした権利制限による対応が必要である。このような利用を萎縮させて良いことなど全くなく、リバースエンジニアリングについて著作権法上の権利制限を速やかに設けると、知財計画2018には明記してもらいたい。

g)著作権等に関する真の国際動向について国民へ知らされる仕組みの導入及び文化庁ワーキンググループの公開について
 WIPO等の国際機関にも、政府から派遣されている者はいると思われ、著作権等に関する真の国際動向について細かなことまで即座に国民へ知らされる仕組みの導入を是非検討してもらいたい。
 また、2013年からの著作物等の適切な保護と利用・流通に関するワーキングチーム及び2015年からの新たな時代のニーズに的確に対応した制度等の整備に関するワーキングチームの審議は公開とされたが、文化庁はワーキングチームについて公開審議を原則とするにはなお至っていない。上位の審議会と同様今後全てのワーキンググループについて公開審議を原則化するべきである。

h)天下りについて
 最近文部科学省の天下り問題が大きく報道され、全省庁で調査を行うこととなっているようだが、知財政策においても、天下り利権が各省庁の政策を歪めていることは間違いなく、知財政策の検討と決定の正常化のため、文化庁から著作権関連団体への、総務省から放送通信関連団体・企業への、警察庁からインターネットホットラインセンター他各種協力団体・自主規制団体への天下りの禁止を知財本部において決定して頂きたい。(これらの省庁は特にひどいので特に名前をあげたが、他の省庁も含めて決定してもらえるなら、それに超したことはない。)

(3)その他一般的な情報・ネット・表現規制について
 知財計画改訂において、一般的な情報・ネット・表現規制に関する項目は削除されているが、常に一方的かつ身勝手な主張を繰り広げる自称良識派団体が、意味不明の理屈から知財とは本来関係のない危険な規制強化の話を知財計画に盛り込むべきと主張をしてくることが十分に考えられるので、ここでその他の危険な一般的な情報・ネット・表現規制強化の動きに対する反対意見も述べる。今後も、本来知財とは無関係の、一般的な情報・ネット・表現規制に関する項目を絶対に知財計画に盛り込むことのないようにしてもらいたい。

a)青少年ネット規制法・出会い系サイト規制法について
 そもそも、青少年ネット規制法は、あらゆる者から反対されながら、有害無益なプライドと利権を優先する一部の議員と官庁の思惑のみで成立したものであり、速やかに廃止が検討されるべきものである。また、出会い系サイト規制法の改正は、警察庁が、どんなコミュニケーションサイトでも人は出会えるという誰にでも分かることを無視し、届け出制の対象としては事実上定義不能の「出会い系サイト事業」を定義可能と偽り、改正法案の閣議決定を行い、法案を国会に提出したものであり、他の重要法案と審議が重なる中、国会においてもその本質的な問題が見過ごされて可決され、成立したものである。憲法上の罪刑法定主義や検閲の禁止にそもそも違反している、この出会い系サイト規制法の改正についても、今後、速やかに元に戻すことが検討されるべきである。

b)児童ポルノ規制・サイトブロッキングについて
 児童ポルノ法規制強化問題・有害サイト規制問題における自称良識派団体の主張は、常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。今後は、このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むべきである。同じく、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むべきである。

 閲覧とダウンロードと取得と所持の区別がつかないインターネットにおいては、例え児童ポルノにせよ、情報の単純所持や取得の規制は有害無益かつ危険なもので、憲法及び条約に規定されている「知る権利」を不当に害するものとなる。「自身の性的好奇心を満たす目的で」、積極的あるいは意図的に画像を得た場合であるなどの限定を加えたところで、エスパーでもない限りこのような積極性を証明することも反証することもできないため、このような情報の単純所持や取得の規制の危険性は回避不能であり、思想の自由や罪刑法定主義にも反する。繰り返し取得としても、インターネットで2回以上他人にダウンロードを行わせること等は技術的に極めて容易であり、取得の回数の限定も、何ら危険性を減らすものではない。

 児童ポルノ規制の推進派は常に、提供による被害と単純所持・取得を混同する狂った論理を主張するが、例えそれが児童ポルノであろうと、情報の単純所持ではいかなる被害も発生し得ない。現行法で、ネット上であるか否かにかかわらず、提供及び提供目的の所持が規制されているのであり、提供によって生じる被害と所持やダウンロード、取得、収集との混同は許され得ない。そもそも、最も根本的なプライバシーに属する個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ることは、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の基本的な権利からあってはならないことである。

 アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現に対する規制対象の拡大も議論されているが、このような対象の拡大は、児童保護という当初の法目的を大きく逸脱する、異常規制に他ならない。アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現において、いくら過激な表現がなされていようと、それが現実の児童被害と関係があるとする客観的な証拠は何一つない。いまだかつて、この点について、単なる不快感に基づいた印象批評と一方的な印象操作調査以上のものを私は見たことはないし、虚構と現実の区別がつかないごく一部の自称良識派の単なる不快感など、言うまでもなく一般的かつ網羅的な表現規制の理由には全くならない。アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現が、今の一般的なモラルに基づいて猥褻だというのなら、猥褻物として取り締まるべき話であって、それ以上の話ではない。どんな法律に基づく権利であれ、権利の侵害は相対的にのみ定まるものであり、実際の被害者の存在しない創作物・表現に対する規制は何をもっても正当化され得ない。民主主義の最重要の基礎である表現の自由や言論の自由、思想の自由等々の最も基本的な精神的自由そのものを危うくすることは絶対に許されない。この点で、2012年6月にスウェーデンで漫画は児童ポルノではないとする最高裁判決が出されたことなども注目されるべきである。

 単純所持規制にせよ、創作物規制にせよ、両方とも1999年当時の児童ポルノ法制定時に喧々囂々の大議論の末に除外された規制であり、規制推進派が何と言おうと、これらの規制を正当化するに足る立法事実の変化はいまだに何一つない。

 既に、警察などが提供するサイト情報に基づき、統計情報のみしか公表しない不透明な中間団体を介し、児童ポルノアドレスリストの作成が行われ、そのリストに基づいて、ブロッキング等が行われているが、いくら中間に団体を介そうと、一般に公表されるのは統計情報に過ぎす、児童ポルノであるか否かの判断情報も含め、アドレスリストに関する具体的な情報は、全て閉じる形で秘密裏に保持されることになるのであり、インターネット利用者から見てそのリストの妥当性をチェックすることは不可能であり、このようなアドレスリストの作成・管理において、透明性・公平性・中立性を確保することは本質的に完全に不可能である。このようなリストに基づくブロッキング等は、自主的な取組という名目でいくら取り繕おうとも、憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないのであり、小手先の運用変更などではどうにもならない。

 児童ポルノ規制法に関しては、提供及び提供目的での所持が禁止されているのであるから、本当に必要とされることはこの規制の地道なエンフォースであって有害無益かつ危険極まりない規制強化の検討ではない。DVD販売サイトなどの海外サイトについても、本当に児童ポルノが販売されているのであれば、速やかにその国の警察に通報・協力して対処すべきだけの話であって、それで対処できないとするに足る具体的根拠は全くない。警察自らこのような印象操作で規制強化のマッチポンプを行い、警察法はおろか憲法の精神にすら違背していることについて警察庁は恥を知るべきである。例えそれが何であろうと、情報の単純所持や単なる情報アクセスではいかなる被害も発生し得えないのであり、自主的な取組という名目でいくら取り繕おうとも、憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないサイトブロッキングは即刻排除するべきであり、そのためのアドレスリスト作成管理団体として設立された、インターネットコンテンツセーフティ協会は即刻その解散が検討されてしかるべきである。

 なお、民主主義の最重要の基礎である表現の自由に関わる問題において、一方的な見方で国際動向を決めつけることなどあってはならないことであり、欧米においても、情報の単純所持規制やサイトブロッキングの危険性に対する認識はネットを中心に高まって来ていることは決して無視されてはならない。例えば、欧米では既にブロッキングについてその恣意的な運用によって弊害が生じていることや、アメリカにおいても、2009年に連邦最高裁で児童オンライン保護法が違憲として完全に否定され、2011年6月に連邦最高裁でカリフォルニア州のゲーム規制法が違憲として否定されていること、ドイツで児童ポルノサイトブロッキング法は検閲法と批判され、最終的に完全に廃止されたことなども注目されるべきである(http://www.zdnet.de/news/41558455/bundestag-hebt-zensursula-gesetz-endgueltig-auf.htm参照)。スイスの2009年の調査でも、2002年に児童ポルノ所持で捕まった者の追跡調査を行っているが、実際に過去に性的虐待を行っていたのは1%、6年間の追跡調査で実際に性的虐待を行ったものも1%に過ぎず、児童ポルノ所持はそれだけでは、性的虐待のリスクファクターとはならないと結論づけており、児童ポルノの単純所持規制・ブロッキングの根拠は完全に否定されているのである(http://www.biomedcentral.com/1471-244X/9/43/abstract参照)。欧州連合において、インターネットへのアクセスを情報の自由に関する基本的な権利として位置づける動きがあることも見逃されてはならない。政府・与党内の検討においては、このような国際動向もきちんと取り上げるべきである。

 そして、単純所持規制に相当し、上で書いた通り問題の大きい性的好奇心目的所持罪を含む児童ポルノの改正法案が国会で2014年6月18日に可決・成立し、同年6月25日に公布され、2015年7月15日に施行された。この問題の大きい性的好奇心目的所持罪を規定する児童ポルノ規制法第7条第1項は即刻削除するべきであり、合わせ、政府・与党においては、児童ポルノを対象とするものにせよ、いかなる種類のものであれ、情報の単純所持・取得規制・ブロッキングは極めて危険な規制であるとの認識を深め、このような規制を絶対に行わないこととして、危険な法改正案が2度と与野党から提出されることが無いようにするべきである。

 さらに、性的好奇心目的所持罪を規定する児童ポルノ規制法第7条第1項を削除するとともに、児童ポルノの単純所持規制・創作物規制といった非人道的な規制を導入している諸国は即刻このような規制を廃止するべきと、そもそも最も根本的なプライバシーに属し、何ら実害を生み得ない個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ること自体、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の国際的かつ一般的に認められている基本的な権利からあってはならないことであると、日本政府から国際的な場において各国に積極的に働きかけてもらいたい。

 また、様々なところで検討されている有害サイト規制についても、その規制は表現に対する過度広汎な規制で違憲なものとしか言いようがなく、各種有害サイト規制についても私は反対する。

c)東京都青少年健全育成条例他、地方条例の改正による情報規制問題について
 東京都でその青少年健全育成条例の改正が検討され、非実在青少年規制として大騒ぎになったあげく、2010年12月に、当事者・関係者の真摯な各種の意見すら全く聞く耳を持たれず、数々の問題を含む条例案が、都知事・東京都青少年・治安対策本部・自公都議の主導で都議会で通された。通過版の条例改正案も、非実在青少年規制という言葉こそ消えたものの、かえって規制範囲は非実在性犯罪規制とより過度に広汎かつ曖昧なものへと広げられ、有害図書販売に対する実質的な罰則の導入と合わせ、その内容は違憲としか言わざるを得ない内容のものである。また、この東京都の条例改正にも含まれている携帯フィルタリングの実質完全義務化は、青少年ネット規制法の精神にすら反している行き過ぎた規制である。さらに、大阪や京都などでは、児童ポルノに関して、法律を越える範囲で勝手に範囲を規定し、その単純所持等を禁止する、明らかに違憲な条例が通されるなどのデタラメが行われている。

 これらのような明らかな違憲条例の検討・推進は、地方自治体法第245条の5に定められているところの、都道府県の自治事務の処理が法令の規定に違反しているか著しく適正を欠きかつ明らかに公益を害していると認めるに足ると考えられるものであり、総務大臣から各地方自治体に迅速に是正命令を出すべきである。また、当事者・関係者の意見を完全に無視した東京都における検討など、民主主義的プロセスを無視した極めて非道なものとしか言いようがなく、今後の検討においてはきちんと民意が反映されるようにするため、地方自治法の改正検討において、情報公開制度の強化、審議会のメンバー選定・検討過程の透明化、パブコメの義務化、条例の改廃請求・知事・議会のリコールの容易化などの、国の制度と整合的な形での民意をくみ上げるシステムの地方自治に対する法制化の検討を速やかに進めてもらいたい。また、各地方の動きを見ていると、出向した警察官僚が強く関与する形で、各都道府県の青少年問題協議会がデタラメな規制強化騒動の震源となることが多く、今現在のデタラメな規制強化の動きを止めるべく、さらに、中央警察官僚の地方出向・人事交流の完全な取りやめ、地方青少年問題協議会法の廃止、問題の多い地方青少年問題協議会そのものの解散の促進についても速やかに検討を開始するべきである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017年12月29日 (金)

第387回:2017年の終わりに

 既に役所も休みに入り、一通り年内のイベントは終わったと思うので、今年も一年の終わりに今まであまり取り上げる暇がなかった細かな話をまとめて書いておきたいと思う。

 最初に特許庁では、産業構造審議会・知的財産政策部会・特許制度小委員会の報告書案に対する意見募集が1月24日〆切で開始されている。(特許庁のHP1、電子政府のHP1参照。)

 この第四次産業革命等への対応のための知的財産制度の見直しについて(案)(pdf)は、第377回で取り上げた検討会報告書や第378回で取り上げた知財計画2017の後を受けた検討の結果が示されているが、この報告書案によれば、案の定標準必須特許裁定制度の導入は見送られたようであり、後は次のような法改正事項が並んでいる。

  • 証拠収集手続の強化
  • 新規性喪失の例外期間の延長
  • 中小企業の特許料及び手数料の一律半減制度の導入
  • 判定における営業秘密の保護
  • クレジットカードを利用した特許料等及び手数料納付制度の導入

 このうち証拠収集手続の強化は、書類提出命令の必要性判断においてインカメラ手続を導入し、専門委員にインカメラに関与することを可能とするもので、ほぼ知財計画2017などに書かれていた通りのものだが、他の項目はこの報告書案で始めて方向性が明らかにされたものばかりであり、かなり唐突感がある。

 そうは言っても、基本的には全て制度ユーザーの利便性向上のための法改正事項であり、その限りにおいて特に大きな問題はないが、上から2つめの新規性喪失の例外期間の延長について、「このグレース・ピリオドについては、『環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律(TPP担保法)』によって、国際調和の観点から、米国と同様の1 年に延長されることとされているが、その施行を待つことなく早急に措置することが適当である」(第10ページ)とあからさまにTPP関連法の前倒しであることを明言している点は注意しておいてもいいだろう。(前回第384回で書いた通り、著作権の保護期間延長問題については直近ではTPPより日欧EPAの方がより致命的な影響を及ぼしそうな情勢であるが。)

 特許庁では、他にも8月には商標制度小委員会も開かれていたが、こちらの報告書がまとめられているということはまだないようである。また、内容の紹介は省略するが、弁理士制度小委員会の報告書案に対する意見募集も1月24日〆切で行われている。(特許庁のHP2、電子政府のHP2参照。)

 大して内容はないが、意匠絡みで、産業競争力とデザインを考える研究会という研究会が開催されており、11月22日には中間とりまとめが出されている。

 次に文化庁では、文化審議会・著作権分科会の下で、いつも通り、法制・基本問題小委員会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会国際小委員会といった小委員会が開かれており、特に法制・基本問題小委員会でのリーチサイト対策の検討が要注意なのは間違いなく、保護利用小委員会での補償金問題の検討も気になっているが、まだいまいち方向性は見えていない。

 農水省では、日欧EPAの合意に対応し、地理的表示に関して、日EU・EPA(GI分野)の概要(pdf)指定の内容の決定についてを公開している。ただし、農水省の資料としては、知財本部・検・評価企画委員会の12月26日の産業財産権分野会合(第2回)資料(pdf)の方がまとまっていて分かりやすい。

 知財本部では、来年の知財計画に向けた検討が始まっているが、検証・評価・企画委員会に加えて知的財産戦略ビジョンに関する専門調査会が設置されている。この専門調査会は、「2025年~2030年頃を見据え、中長期の社会・経済の変化に対応する今後の知財システムの在り方に関する調査・検討する」ということで、どうやら4年前の知的財産政策ビジョン(pdf)のように意味不明の長期ビジョンをまたぞろ立てるつもりらしい

 今年もおよそロクなことがなかったが、政官業に巣食う全ての利権屋に悪い年を、このブログを読んで下さっている方々に心からの感謝を。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

より以前の記事一覧