2021年7月18日 (日)

第442回:知財計画2021の文章の確認

 7月13日に知財本部知財計画2021(pdf)概要(pdf))が決定された。

 今年も、その中では無意味にキーワードばかりが踊っていて、政策や戦略というほどのものは何一つ書かれていないと言って差し支えない代物だが、各省庁でどの様な検討が行われているかという事を知るには便利な検討項目集ではあるので、以下、法改正に絡む項目を拾って行く。(私の提出したパブコメは第436回、去年の知財計画の内容については第426回参照。)

 まず、著作権問題に絡み、第52ページに以下の様な項目がある。

・デジタル時代における著作権制度の確立に向けた工程表を作成する。(短期、中期)(内閣府、総務省、文部科学省、経済産業省)

・文化庁は、デジタル技術の進展・普及に伴うコンテンツ市場をめぐる構造変化を踏まえ、著作物の利用円滑化と権利者への適切な対価還元の両立を図るため、過去コンテンツ、UGC、権利者不明著作物を始め、著作権等管理事業者が集中管理していないものを含めた、膨大かつ多種多様な著作物等について、拡大集中許諾制度等を基に、様々な利用場面を想定した、簡素で一元的な権利処理が可能となるような制度の実現を図る。その際、内閣府(知的財産戦略推進事務局)、経済産業省、総務省の協力を得ながら、文化審議会において、クリエーター等の権利者や利用者、事業者等から合意を得つつ2021年中に検討・結論を得、2022年度に所要の措置を講ずる。(短期、中期)(文部科学省、内閣府、総務省、経済産業省)

 また、第53ページで、

・同時配信等の権利処理の円滑化に関する著作権法改正について、関係者の意向を十分に踏まえつつ、ガイドラインの作成等の円滑な施行に向けた準備を着実に進める。(短期)(総務省、文部科学省)

と、今年の同時配信等のための著作権法改正の事が言及され、第54~55ページで、

・クリエーターに適切に対価が還元され、コンテンツの再生産につながるよう、デジタル時代における新たな対価還元策やクリエーターの支援・育成策等について検討を進めるとともに、私的録音録画補償金制度については、新たな対価還元策が実現されるまでの過渡的な措置として、私的録音録画の実態等に応じた具体的な対象機器等の特定について、結論を得て、可能な限り早期に必要な措置を構ずる。(短期、中期)(文部科学省、内閣府、総務省、経済産業省)

と、いつもの様に私的録音録画補償金制度に関する検討についても触れられている。

 そして、海賊版対策として、第56ページに、

・インターネット上の海賊版による被害拡大を防ぐため、2021年4月に更新したインターネット上の海賊版に対する総合的な対策メニュー及び工程表に基づき、関係府省が連携しながら、被害状況や対策の効果を検証しつつ、必要な取組を進める。(短期、中期)(内閣府、警察庁、総務省、法務省、外務省、文部科学省、経済産業省)

・模倣品・海賊版の購入や、無意識に侵害コンテンツを視聴することは、侵害者に利益をもたらすことから、侵害コンテンツを含む模倣品・海賊版を容認しないということが国民の規範意識に根差すよう、オンラインで著作権を学ぶことが出来るコンテンツを利用した効果的な普及啓発など、各省庁、関係機関による啓発活動を推進する。(短期、中期)(警察庁、消費者庁、財務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省)

・越境電子商取引の進展に伴う模倣品・海賊版の流入増加へ対応するため、個人使用目的を仮装して輸入される模倣品・海賊版を引き続き厳正に取り締まる。また、商標法・意匠法において、海外事業者が模倣品を郵送等により国内に持ち込む行為を商標権等の侵害と位置付ける改正案が国会で成立し、公布されたことから、その施行と同時に、当該侵害に係る物品に対して実効性のある水際取締りを実施できるよう、関税法等の改正を含めて検討の上、必要な措置を講じる。他の知的財産権についても、必要に応じて、検討を行う。(短期、中期)(財務省、経済産業省、文部科学省)

という様に、2021年版のインターネット海賊版対策メニュー及び工程表(pdf)に関する項目などがあり、今年の商標法・意匠法改正に関する項目も一緒に並んでいる。

 第58ページには、

・図書館関係の権利制限規定の見直しに関する著作権法改正を踏まえ、詳細な運用に関する当事者間協議やガイドラインの作成など、円滑な施行に向けた準備を着実に進める。また、研究目的の権利制限規定の創設については、国内の研究者における著作物の利用実態や利用ニーズなどを更に詳細に把握するため、調査研究を実施し、その結果も踏まえ、権利者の利益保護に十分に配慮しつつ、検討を進める。(短期、中期)(文部科学省、国立国会図書館)

という、今年の図書館関係の権利制限の拡充に関する著作権法改正についての項目もある。

 最後に、第65~66ページに、以下の様な種苗法改正等の農水関連の各種法改正に関する項目がある。

・改正種苗法の周知や、税関当局との連携による、海外への育成者権侵害種苗の持ち出し防止を図るとともに、登録品種の許諾方法の簡素化・利用条件の明確化、包括的な許諾等のモデル構築に向けた検討を進める。(短期、中期)(農林水産省)

・改正種苗法に即した品種登録審査の高度化のため、日本の品種登録審査基準の国際基準への調和を進める。また、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構種苗管理センターが行う品種の特性調査について、国際的に調和した栽培試験の推進を図るとともに、果樹の栽培試験、現地調査、病害虫抵抗性等の調査の実施体制を整備する。さらに、品種登録審査への遺伝子情報の活用に関する国際的な技術開発状況を踏まえ、日本においても効率的な品種登録審査が実施できるよう調査する。(短期、中期)(農林水産省)

・家畜遺伝資源に係る不正競争の防止に関する法律の周知とともに、同法に基づく和牛遺伝資源の譲渡の際に締結すべき契約のひな形の普及等による不正競争防止の取組を推進する。(短期、中期)(農林水産省)

・改正家畜改良増殖法の周知とともに、同法に基づく家畜人工授精所からの報告等に伴う都道府県の事務の軽減、情報集約のための全国システムの構築・運用に加え、全国の家畜人工授精所における流通管理の確認・指導等のための定期的な立入検査を実施する。(短期、中期)(農林水産省)

 この様に、ざっと一通り見たところで、既に成立している法改正に関する事項を除くと、新たな法改正の検討事項として明確に言及されているのは、著作権の拡大集中許諾制度のみと、今年の知財計画の内容はいつにもまして薄い。

 ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大のための著作権法改正が通されて施行されたばかりで、アクセス警告やブロッキングについても、今のところセキュリティ対策ソフトにおけるアクセス抑止機能の導入等の促進が中心の様であり、即座に危険な規制強化の検討が動きそうな様子はないが、今年も引き続き最も注意すべきは、海賊版対策に関する検討という事になるのだろう。

 全てを通して見ても、政策的に意味のある事はほとんど書かれておらず、この様な知財計画を作る事自体コストの無駄でしかないだろう。いつも通りの事とは言え、知財政策を巡る迷走が止む事が全くなさそうなのは非常に残念な事である。

(なお、同じく意味のある事はほとんど何も書かれていないが、今年の知財計画の第75ページから始まる、「7.クールジャパン戦略の再構築」という御大層なタイトルの部分でコスプレに関する検討の事が書かれるかと思ったが、明示の言及は含まれていない。そのため、コスプレについては、どこかで検討するのかも知れないが、変な規制強化の検討がされる可能性は低いと見ていいのではないかと私は思う。)

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2021年2月21日 (日)

第436回:「知的財産推進計画2021」の策定に向けた意見募集(3月3日〆切)への提出パブコメ

 今年も、3月3日〆切で知財本部からかかっている、「知的財産推進計画2021」の策定に向けた意見募集(知財本部HP意見募集について(pdf)参照)に意見を出したので、ここに載せておく。

 内容はいつも通りだが、ダウンロード違法化・犯罪化問題等、各項目でそれぞれ今の状況に合わせて書き直している他、プロバイダー責任制限法の改正検討や図書館等における利用のための権利制限の拡充についての項目を追加している。また、コスプレの検討については二次創作の項目で触れる様にした。(去年の提出パブコメは第420回、知財計画2020の記載内容は第426回参照。)

 意見がどれくらい取り入れられるかは分からないが、政府全体の知財政策について意見を出せる年一回の機会なので、関心のある方は是非意見の提出を検討することをお勧めする。

(以下、提出パブコメ)

《要旨》
アメリカ等と比べて遜色の無い範囲で一般フェアユース条項を導入すること、ダウンロード犯罪化・違法化条項の撤廃並びにTPP協定・日欧EPAの見直し及び著作権の保護期間の短縮を求める。有害無益なインターネットにおける今以上の知財保護強化、特に著作権ブロッキング及び補償金の矛盾を拡大するだけの私的録音録画補償金の対象拡大に反対する。今後真の国民視点に立った知財の規制緩和の検討が進むことを期待する。

《全文》
 最終的に国益になるであろうことを考え、各業界の利権や省益を超えて必要となる政策判断をすることこそ知財本部とその事務局が本当になすべきことのはずであるが、知財計画2020を見ても、このような本当に政策的な決定は全く見られない上、2018年には危険極まる著作権ブロッキングのごり押しの検討まで行われ、2020年には非常に危ういダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大を含む著作権法改正までなされた。知財保護が行きすぎて消費者やユーザーの行動を萎縮させるほどになれば、確実に文化も産業も萎縮するので、知財保護強化が必ず国益につながる訳ではないということを、著作権問題の本質は、ネットにおける既存コンテンツの正規流通が進まないことにあるのではなく、インターネットの登場によって新たに出てきた著作物の公正利用の類型に、今の著作権法が全く対応できておらず、著作物の公正利用まで萎縮させ、文化と産業の発展を阻害していることにあるのだということを知財本部とその事務局には、まずはっきりと認識してもらいたい。特に、最近の知財・情報に関する規制強化の動きは全て間違っていると私は断言する。

 例年通り、規制強化による天下り利権の強化のことしか念頭にない文化庁、総務省、警察庁などの各利権官庁に踊らされるまま、国としての知財政策の決定を怠り、知財政策の迷走の原因を増やすことしかできないようであれば、今年の知財計画を作るまでもなく、知財本部とその事務局には、自ら解散することを検討するべきである。そうでなければ、是非、各利権官庁に轡をはめ、その手綱を取って、知財の規制緩和のイニシアティブを取ってもらいたい。知財本部において今年度、インターネットにおけるこれ以上の知財保護強化はほぼ必ず有害無益かつ危険なものとなるということをきちんと認識し、真の国民視点に立った知財の規制緩和の検討が知財本部でなされることを期待し、本当に決定され、実現されるのであれば、全国民を裨益するであろうこととして、私は以下のことを提案する。

(1)「知的財産推進計画2020」の記載事項について:
a)ダウンロード違法化・犯罪化問題について
 知財計画2020の第65~66ページにインターネット上の海賊版に対する総合的な対策メニューについて記載され、2019年10月の総合的な対策メニューにはダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大について記載されている。

 文化庁の暴走と国会議員の無知によって、2009年の6月12日にダウンロード違法化条項を含む改正著作権法が成立し、2010年の1月1日に施行された。また、日本レコード協会などのロビー活動により、自民党及び公明党が主導する形でダウンロード犯罪化条項がねじ込まれる形で、2012年6月20日に改正著作権法が成立し、2012年10月1日から施行されている。

 そして、2018年12月に意見募集がされた文化庁の法制・基本問題小委員会の中間まとめにおいて、極めて拙速な検討から、このダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲を録音録画から著作物全般に拡大するとの方針が示され、その意見募集において極めて多くの懸念が示されたにもかかわらず、文化庁がこの方針を諦めずにダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大を含む著作権法改正案の提出を準備していたところ、批判の高まりを受けて2019年の通常国会提出を断念した。

 その後、文化庁は、2019年10月に侵害コンテンツのダウンロード違法化等に関するパブリックコメントを行い、11月から2020年1月にかけて侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会において著作権法改正案を再検討した。しかし、この検討会における議論も法案提出の結論ありきの拙速極まるものであり、国民の声を丁寧に聞くと言いながら、パブリックコメントに寄せられた最も主要な意見が要件によらずダウンロード違法化を行うべきではないというものであるという事を無視し、写り込みに関する権利制限の拡充、民事における原作者の権利の除外及び軽微なものの除外という弥縫策でダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲を押し通そうとし、2020年2月には、自民党が文科省に海賊版対策のための著作権法改正に関する申し入れを行い、民事刑事の両方において著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除外することを要請した。

 これらの文化庁の議論のまとめ及び自民党の要請を含む形で、2020年6月5日にダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大を含む改正著作権法が成立し、2021年1月1日から施行されている。

 この法改正後のダウンロード違法化・犯罪化において、スクリーンショットで違法画像が付随的に入り込む場合や、ストーリー漫画の数コマ、論文の数行、粗いサムネイル画像のダウンロードの場合といった僅かな場合が除かれ、また、著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除外する事で、それなりの正当化事由を示せる様な特別な事情がある場合が除かれるが、これは本質的な問題の解消に繋がるものではなく、それでもなお、利用者が通常するであろう多くの場合のカジュアルなスクリーンショット、ダウンロード、デジタルでの保存行為が違法・犯罪となる可能性が出て来、場合によって意味不明の萎縮が発生する恐れがある事に変わりはない。これは、録音録画に関するダウンロード違法化・犯罪化同様、海賊版対策としては何の役にも立たない、百害あって一利ない最低最悪の著作権法改正の一つとなるものである。

 過去のパブコメでも繰り返し書いているが、一人しか行為に絡まないダウンロードにおいて、「事実を知りながら」なる要件は、エスパーでもない限り証明も反証もできない無意味かつ危険な要件であり、技術的・外形的に違法性の区別がつかない以上、このようなダウンロード違法化・犯罪化は法規範としての力すら持ち得ず、罪刑法定主義や情報アクセス権を含む表現の自由などの憲法に規定される国民の基本的な権利の観点からも問題がある。このような法改正によって進むのはダウンロード以外も含め著作権法全体に対するモラルハザードのみであり、今のところ幸いなことに適用例はないが、これを逆にねじ曲げてエンフォースしようとすれば、著作権検閲という日本国として最低最悪の手段に突き進む恐れしかない。

 また、世界的に見ても、アップロードとダウンロードを合わせて行うファイル共有サービスに関する事件を除き、どの国においても単なるダウンロード行為を対象とする民事、刑事の事件は1件もなく、日本における現行の録音録画に関するダウンロード違法化・犯罪化も含め、このような法制が海賊版対策として何の効果も上がっていないことは明白である。また、ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大は、研究など公正利用として認められるべき目的のダウンロードにも影響する。

 そもそも、ダウンロード違法化の懸念として、このような不合理極まる規制強化・著作権検閲に対する懸念は、過去の文化庁へのパブコメ(文化庁HPhttps://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hokoku.htmlの意見募集の結果参照。ダウンロード違法化問題において、この8千件以上のパブコメの7割方で示された国民の反対・懸念は完全に無視された。このような非道極まる民意無視は到底許されるものではない)や知財本部へのパブコメ(知財本部のHPhttps://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keikaku2009.htmlの個人からの意見参照)を見ても分かる通り、法改正前から指摘されていたところであり、このようなさらなる有害無益な規制強化・著作権検閲にしか流れようの無いダウンロード違法化・犯罪化は始めからなされるべきではなかったものである。

 文化庁の暴走と国会議員の無知によって成立したものであり、ネット利用における個人の安心と安全を完全にないがしろにするものであり、その後も本質的な問題の解消に繋がる検討をなおざりに対象範囲の拡大がされたものである、百害あって一利ないダウンロード違法化・犯罪化を規定する著作権法第30条第1項第3及び第4号並びに第119条第3項等を即刻削除し、ダウンロード違法化・犯罪化を完全に撤廃することを速やかに行うべきである。

b)著作権法におけるいわゆる間接侵害・幇助への対応について
 2019年10月の総合的な対策メニューにはリーチサイト規制についても記載されている。

 このリーチサイト規制については、2018年12月に意見募集が行われた文化庁の法制・基本問題小委員会の中間まとめにおいて、著作権侵害コンテンツへのリンク行為に対するみなし侵害規定の追加及び刑事罰付加の方針が示されたが、著作権法改正案の2019年の通常国会提出は見送られ、ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大と合わせ、このリーチサイト規制を含む改正著作権法が2020年6月5日に成立し、10月1日から施行されている。

 改正著作権法のリーチサイト規制は、親告罪とされた事とプラットフォーマーの原則除外でかなり緩和が図られているとは思うが、この様な法改正の本質的な必要性には疑問がある。

 リーチサイト対策の検討は、著作権法におけるいわゆる間接侵害・幇助への対応をどうするかという問題に帰着する。文化庁の中間まとめを読んでも、権利者団体の一方的かつ曖昧な主張が並べられているだけで、権利者団体側がリーチサイト等に対して改正前の著作権法に基づいてどこまで何をしたのか、その対処に関する定量的かつ論理的な検証は何らされておらず、本当にどのような場合について改正前の著作権法では不十分であったのかはその後もなお不明なままであり、さらに、このような間接侵害あるいは幇助の検討において当然必要とされるはずのセーフハーバーの検討も極めて不十分なままである。

 確かにセーフハーバーを確定するために間接侵害・幇助の明確化はなされるべきであるが、基本的にカラオケ法理や各種ネット録画機事件などで示されたことの全体的な整理以上のことをしてはならない。特に、著作権法に明文の間接侵害一般規定を設けることは絶対にしてはならないことである。現状の整理を超えて、明文の間接侵害一般規定を作った途端、権利者団体や放送局がまず間違いなく山の様に脅しや訴訟を仕掛けて来、今度はこの間接侵害規定の定義やそこからの滲み出しが問題となり、無意味かつ危険な社会的混乱を来すことは目に見えているからである。

 リーチサイト規制については、その本質的な必要性に疑問のある今回の法改正後の運用を注視するとともに、知財計画2021において間接侵害・幇助への今後の対応について記載するのであれば、著作権法の間接侵害・幇助の明確化は、ネット事業・利用の著作権法上のセーフハーバーを確定するために必要十分な限りにおいてのみなされると合わせ明記するべきである。

 このようなリーチサイト問題も含め、ネット上の違法コンテンツ対策、違法ファイル共有対策については、通信の秘密やプライバシー、情報アクセス権等の国民の基本的な権利をきちんと尊重しつつ対策を検討してもらいたい。この点においても、国民の基本的な権利を必ず侵害するものとなり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害することにつながる危険な規制強化の検討ではなく、ネットにおける各種問題は情報モラル・リテラシー教育によって解決されるべきものという基本に立ち帰り、現行のプロバイダー責任制限法と削除要請を組み合わせた対策などの、より現実的かつ地道な施策のみに注力して検討を進めるべきである。

c)著作権ブロッキング・アクセス警告方式について
 2019年10月の総合的な対策メニューには著作権ブロッキングやアクセス警告方式についても言及されている。

 サイトブロッキングについては、知財本部において、2018年4月の緊急対策の決定後、10月まで検討が行われた。

 このようなサイトブロッキングについて、アメリカでは、議会に提出されたサイトブロッキング条項を含むオンライン海賊対策法案(SOPA)や知財保護強化法案(PIPA)が、IT企業やユーザーから検閲であるとして大反対を受け、その審議は止められている。また、世界を見渡しても、ブロッキングを巡ってはどの国であれなお混沌とした状況にあり、いかなる形を取るにせよブロッキングの採用が有効な海賊版対策として世界の主要な流れとなっているとは到底言い難い。

 サイトブロッキングの問題については下でも述べるが、インターネット利用者から見てその妥当性をチェックすることが不可能なサイトブロッキングにおいて、透明性・公平性・中立性を確保することは本質的に完全に不可能である。このようなブロッキングは、憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止、通信の秘密といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないものであり、決して導入されるべきでないものである。

 幸いなことに、2018年10月で知財本部におけるブロッキングの検討は止まったが、多くの懸念の声が上げられていたにもかかわらず、ブロッキングありきでごり押しの検討を行ったことについて私は知財本部に猛省を求める。知財計画2021においてブロッキングについて言及するのであれば、2018年の検討の反省の弁とともに今後二度とこのような国民の基本的な権利を踏みにじる検討をしないと固く誓うとしてもらいたい。

 アクセス警告方式についても、通信の監視・介入の点でブロッキングと本質的に違いはなく、その導入は法的にも技術的にも難しいとする、2019年8月の総務省のインターネット上の海賊版サイトへのアクセス抑止方策に関する検討会の報告書の整理を守るべきである。

 その提案からも明確なように、違法コピー対策問題における権利者団体の主張は常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。今後は、このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むことを検討するべきである。同じく、憲法に規定されている検閲の禁止及び通信の秘密から、サイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むことを検討するべきである。

d)私的録音録画補償金問題について
 知財計画2020の第64ページでは私的録音録画補償金問題についても言及されている。権利者団体等が単なる既得権益の拡大を狙ってiPod等へ対象範囲を拡大を主張している私的録音録画補償金問題についても、補償金のそもそもの意味を問い直すことなく、今の補償金の矛盾を拡大するだけの私的録音録画補償金の対象拡大を絶対にするべきではない。

 文化庁の文化審議会著作権分科会における数年の審議において、補償金のそもそもの意義についての意義が問われたが、文化庁が、天下り先である権利者団体のみにおもねり、この制度に関する根本的な検討を怠った結果、特にアナログチューナー非対応録画機への課金について私的録音録画補償金管理協会と東芝間の訴訟に発展した。ブルーレイ課金・アナログチューナー非搭載録画機への課金について、権利者団体は、ダビング10への移行によってコピーが増え自分たちに被害が出ると大騒ぎをしたが、移行後10年以上経った今現在においても、ダビング10の実施による被害増を証明するに足る具体的な証拠は全く示されておらず、ブルーレイ課金・アナログチューナー非搭載録画機への課金に合理性があるとは到底思えない。わずかに緩和されたとは言え、今なお地上デジタル放送にはダビング10という不当に厳しいコピー制限がかかったままである。こうした実質的に全国民に転嫁されるコストで不当に厳しい制限を課している機器と媒体にさらに補償金を賦課しようとするのは、不当の上塗りである。

 なお、世界的に見ても、メーカーや消費者が納得して補償金を払っているということはカケラも無く、権利者団体がその政治力を不当に行使し、歪んだ「複製=対価」の著作権神授説に基づき、不当に対象を広げ料率を上げようとしているだけというのがあらゆる国における実情である。表向きはどうあれ、大きな家電・PCメーカーを国内に擁しない欧州各国は、私的録音録画補償金制度を、外資から金を還流する手段、つまり、単なる外資規制として使っているに過ぎない。この制度における補償金の対象・料率に関して、具体的かつ妥当な基準はどこの国を見ても無いのであり、この制度は、ほぼ権利者団体の際限の無い不当な要求を招き、莫大な社会的コストの浪費のみにつながっている。機器・媒体を離れ音楽・映像の情報化が進む中、「複製=対価」の著作権神授説と個別の機器・媒体への賦課を基礎とする私的録音録画補償金は、既に時代遅れのものとなりつつあり、その対象範囲と料率のデタラメさが、デジタル録音録画技術の正常な発展を阻害し、デジタル録音録画機器・媒体における正常な競争市場を歪めているという現実は、補償金制度を導入したあらゆる国において、問題として明確に認識されなくてはならないことである。

e)プロバイダー責任制限法の改正検討について、
 知財計画2020の第66ページに、プロバイダー責任制限法の改正検討について記載されている。

 このプロバイダー責任制限法の改正について、総務省で検討が行われ、2020年12月に発信者情報開示の在り方に関する研究会の最終とりまとめが公表されている。

 この最終とりまとめは、コンテンツプロバイダー及びアクセスプロバイダー等に対する発信者情報の開示命令、コンテンツプロバイダーが保有する発信者情報のアクセスプロバイダへの提供命令、アクセスプロバイダーに対するプロバイダーから提供された情報を踏まえた発信者情報の消去禁止命令という、3つの命令について、新しい原則非公開の非訟手続きを創設する事が適当とするものであるが、これは全く適切なものではない。

 インターネットの仕組みを考えれば、情報流通経路を逆に辿って行かなければならないのであって、一足飛びに前もって分かり得ない後の手続きの当事者を前の手続きに巻き込むべきではなく、これは非訟手続きによればいいなどという事も無論ない。消去禁止命令、すなわちログの保存命令についても、それぞれの段階で、各プロバイダーに発信者情報消去禁止の仮処分の申立てをするしかない筈であり、新たな裁判手続きとの関係でどうこうという問題では全くない。

 さらに、総務省の2011年7月の利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会の提言の整理の通り、通信の秘密等の国民の基本的な権利に関わるものである事から、このような実体的な権利を終局的に確定させる判断は公開の法廷における対審及び判決という訴訟手続によらなければならないと考えられるのであり、原則非公開とされ、一般的なチェックが効かない非訟手続きによって開示を可能とする事自体、国民の基本的な権利の保護が図られなくなる恐れが極めて強く、この事は発信者の権利利益の保護に関する制度設計で解消されるものではない。

 この様に、手続が濫用され、適法な情報発信を行う発信者の保護や表現の自由の確保が十分に図られなくなる恐れが強く、その点で完全にバランスを失しているものであり、また、国際的にも極めて特異かつ異質な制度とならざるを得ないものである、この非訟手続きによる新たな裁判手続きの創設に反対する。

 この総務省の検討は白紙に戻し、今後プロバイダー責任制限法について検討を進める場合には、権利侵害に対する救済が必要なのは無論の事とは言え、制度改正が逆に行き過ぎれば、その濫用や悪用によって発信行為・表現が萎縮し、表現の自由の抑圧に繋がる危険性があるということをきちんと認識し、その間でバランスを取るという基本的な考え方に沿い、現行のプロバイダー責任制限法の手続きの拡充や迅速化など実務的に実効性のある検討のみを進めるべきである。

f)図書館等における利用のための権利制限の拡充について
 知財計画2020の第68ページに、図書館等における利用のための権利制限の拡充について記載されている。

 この権利制限の拡充について、文化庁で検討が行われ、2021年2月に文化審議会著作権分科会の図書館関係の権利制限規定の見直しに関する報告書が取りまとめられている。

 利用者の利便性向上及び国民の情報アクセスの確保の観点から、この報告書に書かれている通り、ID・パスワード等を用いた管理により、一部プリントアウトも認められる形で、国会図書館が絶版等資料のデータを利用者に直接インターネット送信する事を法改正により可能とする事、及び、登録管理により、一定の基準を満たす図書館等が資料のデータを利用者に送信する事を法改正により可能とする事に賛成する。

(2)その他の知財政策事項について:
a)環太平洋経済連携協定(TPP)などの経済連携協定(EPA)に関する取組について
 TPP協定については、2015年10月に大筋合意が発表され、文化庁、知財本部の検討を経て、11月にTPP総合対策本部でTPP関連政策大綱が決定され、さらに2016年2月に署名され、3月に関連法案の国会提出がされ、11月の臨時国会で可決・成立し、2017年1月20日に参加国として初めての国内手続きの完了に関する通報が行われた。

 しかし、この国内手続きにおいて、日本政府は、2015年10月に大筋合意の概要のみを公表し、11月のニュージーランド政府からの協定条文の英文公表時も全章概要を示したのみで、その後2ヶ月も経って2016年1月にようやく公式の仮訳を公表するなど、TPP協定の内容精査と政府への意見提出の時間を国民に実質与えない極めて姑息かつ卑劣なやり方を取っていたと言わざるを得ない。

 そして、公開された条文によって今までのリーク文書が全て正しかったことはほぼ証明されており、TPP協定は確かに著作権の保護期間延長、DRM回避規制強化、法定賠償制度、著作権侵害の非親告罪化などを含んでいる。今ですら不当に長い著作権保護期間のこれ以上の延長など本来論外だったものである。

 その後、日本政府は、アメリカ抜きの11カ国でのTPP11協定を推進し、2017年11月に大筋合意が発表され、その中で最もクリティカルな部分である著作権と特許の保護期間延長とDRM規制の強化の部分が凍結さたにもかかわらず、これらの事項を含む国内関連法改正案を2018年3月に国会に提出し(6月に可決・成立)、2018年12月のTPP11協定の発効とともに施行するという戦後最大級の愚行をなした。このようになし崩しで極めて危険な法改正がなされたことを私は一国民として強く非難する。

 2017年12月には、同じく著作権の保護期間延長を含む日EU(欧)EPA交渉も妥結され、2018年2月に発効している。しかし、この日欧EPA交渉もTPP協定同様の姑息かつ卑劣な秘密交渉で決められたものである。その内容についてほとんど何の説明もないままに著作権の保護期間延長のような国益の根幹に関わる点について日本政府は易々と譲歩した。これは完全に国民をバカにしているとしか言いようがない。

 2020年9月に大筋合意され、2021年1月に発効している、同じく著作権の保護期間延長を含む日英EPAについても同様である。

 これらのTPP協定、日欧EPA及び日英EPAについてその内容の見直しを各加盟国に求めること及び著作権の保護期間の短縮について速やかに検討を開始することを私は求める。

 また、TPP交渉や日欧EPA交渉のような国民の生活に多大の影響を及ぼす国際交渉が政府間で極秘裏に行われたことも大問題である。国民一人一人がその是非を判断できるよう、途中経過も含めその交渉に関する情報をすべて速やかに公開するべきである。

b)DRM回避規制について
 経産省と文化庁の主導により無意味にDRM回避規制を強化する不正競争防止法と著作権法の改正案がそれぞれ以前国会を通され、2018年に不正競争防止法がさらに改正され、2020年の改正著作権法にも同様の事項が含まれているが、これらの法改正を是とするに足る立法事実は何一つない。不正競争防止法と著作権法でDRM回避機器等の提供等が規制され、著作権法でコピーコントロールを回避して行う私的複製まで違法とされ、十二分以上に規制がかかっているのであり、これ以上の規制強化は、ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ない。

 特に、DRM回避規制に関しては、有害無益な規制強化の検討ではなく、まず、私的なDRM回避行為自体によって生じる被害は無く、個々の回避行為を一件ずつ捕捉して民事訴訟の対象とすることは困難だったにもかかわらず、文化庁の片寄った見方から一方的に導入されたものである、私的な領域でのコピーコントロール回避規制(著作権法第30条第1項第2号)の撤廃の検討を行うべきである。コンテンツへのアクセスあるいはコピーをコントロールしている技術を私的な領域で回避しただけでは経済的損失は発生し得ず、また、ネットにアップされることによって生じる被害は公衆送信権によって既にカバーされているものであり、その被害とDRM回避やダウンロードとを混同することは絶対に許されない。それ以前に、私法である著作権法が、私的領域に踏み込むということ自体異常なことと言わざるを得ない。何ら立法事実の変化がない中、ドサクサ紛れに通された、先般の不正競争防止法改正によるDRM規制の強化や、以前の著作権法改正で導入されたアクセスコントロール関連規制の追加等について、速やかに元に戻す検討がなされるべきである。

 TPP協定にはDRM回避規制の強化も含まれており、上で書いた通り、これ以上のDRM回避規制の強化がされるべきではなく、この点でも私はTPP協定の見直しを求める。

c)海賊版対策条約(ACTA)について
 ACTAを背景に経産省及び文化庁の主導により無意味にDRM回避規制を強化する不正競争防止法及び著作権法の改正案が以前国会を通され、ACTA自体も国会で批准された。しかし、このようなユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ない規制強化条項を含む条約の交渉、署名及び批准は何ら国民的なコンセンサスが得られていない中でなされており、私は一国民としてACTAに反対する。今なおACTAの批准国は日本しかなく、日本は無様に世界に恥を晒し続けている。もはやACTAに何ら意味はなく、日本は他国への働きかけを止めるとともに自ら脱退してその失敗を認めるべきである。

d)一般フェアユース条項の導入について
 2018年に個別の権利制限を拡充する著作権法改正がなされており、これはその限りにおいて評価できるものではあるが、本当の意味で柔軟な一般フェアユース条項を入れるものではない。

 一般フェアユース条項については、一から再検討を行い、ユーザーに対する意義からも、アメリカ等と遜色ない形で一般フェアユース条項を可能な限り早期に導入するべきである。特に、インターネットのように、ほぼ全国民が利用者兼権利者となり得、考えられる利用形態が発散し、個別の規定では公正利用の類型を拾い切れなくなるところでは、フェアユースのような一般規定は保護と利用のバランスを取る上で重要な意義を持つものである。

 今後の検討によっても幾つかの個別の権利制限が追加される可能性があるが、これらはあった方が良いものとは言え、到底一般フェアユース条項と言うに足るものではなく、これでは著作権をめぐる今の混迷状況が変わることはない。

 著作物の公正利用には変形利用もビジネス利用も考えられ、このような利用も含めて著作物の公正利用を促すことが、今後の日本の文化と経済の発展にとって真に重要であることを考えれば、不当にその範囲を不当に狭めるべきでは無く、その範囲はアメリカ等と比べて遜色の無いものとされるべきである。ただし、フェアユースの導入によって、私的複製の範囲が縮小されることはあってはならない。

 また、「まねきTV」事件などの各種判例からも、ユーザー個人のみによって利用されるようなクラウド型サービスまで著作権法上ほぼ違法とされてしまう状況に日本があることは明らかであり、このような状況は著作権法の趣旨に照らして決して妥当なことではない。ユーザーが自ら合法的に入手したコンテンツを私的に楽しむために利用することに著作権法が必要以上に介入することが許されるべきではなく、個々のユーザーが自らのためのもに利用するようなクラウド型サービスにまで不必要に著作権を及ぼし、このような技術的サービスにおけるトランザクションコストを過大に高め、その普及を不当に阻害することに何ら正当性はない。この問題がクラウド型サービス固有の問題でないのはその通りであるが、だからといって法改正の必要性がなくなる訳ではない。著作権法の条文及びその解釈・運用が必要以上に厳格に過ぎクラウド型サービスのような技術の普及が不当に阻害されているという日本の悲惨な現状を多少なりとも緩和するべく、速やかに問題を再整理し、アメリカ等と比べて遜色の無い範囲で一般フェアユース条項を導入し、同時にクラウド型サービスなどについてもすくい上げられるようにするべきである。

 権利を侵害するかしないかは刑事罰がかかるかかからないかの問題でもあり、公正という概念で刑事罰の問題を解決できるのかとする意見もあるようだが、かえって、このような現状の過剰な刑事罰リスクからも、フェアユースは必要なものと私は考える。現在親告罪であることが多少セーフハーバーになっているとはいえ、アニメ画像一枚の利用で別件逮捕されたり、セーフハーバーなしの著作権侵害幇助罪でサーバー管理者が逮捕されたりすることは、著作権法の主旨から考えて本来あってはならないことである。政府にあっては、著作権法の本来の主旨を超えた過剰リスクによって、本来公正として認められるべき事業・利用まで萎縮しているという事態を本当に深刻に受け止め、一刻も早い改善を図ってもらいたい。

 個別の権利制限規定の迅速な追加によって対処するべきとする意見もあるが、文化庁と癒着権利者団体が結託して個別規定すらなかなか入れず、入れたとしても必要以上に厳格な要件が追加されているという惨憺たる現状において、個別規定の追加はこの問題における真の対処たり得ない。およそあらゆる権利制限について、文化庁と権利者団体が結託して、全国民を裨益するだろう新しい権利制限を潰すか、極めて狭く使えないものとして来たからこそ、今一般規定が社会的に求められているのだという、国民と文化の敵である文化庁が全く認識していないだろう事実を、政府・与党は事実としてはっきりと認めるべきである。

e)コピーワンス・ダビング10・B-CAS問題について
 私はコピーワンスにもダビング10にも反対する。そもそも、この問題は、放送局・権利者にとっては、視聴者の利便性を著しく下げることによって、一旦は広告つきながらも無料で放送したコンテンツの市場価格を不当につり上げるものとして機能し、国内の大手メーカーとっては、B-CASカードの貸与と複雑な暗号システムを全てのテレビ・録画機器に必要とすることによって、中小・海外メーカーに対する参入障壁として機能するB-CASシステムの問題を淵源とするのであって、このB-CASシステムと独禁法の関係を検討するということを知財計画2021では明記してもらいたい。検討の上B-CASシステムが独禁法違反とされるなら、速やかにその排除をして頂きたい。また、無料の地上放送において、逆にコピーワンスやダビング10のような視聴者の利便性を著しく下げる厳格なコピー制御が維持されるのであれば、私的録画補償金に存在理由はなく、これを速やかに廃止するべきである。

f)著作権検閲・ストライクポリシーについて
 ファイル共有ソフトを用いて著作権を侵害してファイル等を送信していた者に対して警告メールを送付することなどを中心とする電気通信事業者と権利者団体の連携による著作権侵害対策が警察庁、総務省、文化庁などの規制官庁が絡む形で行われており、警察によってファイル共有ネットワークの監視も行われているが、このような対策は著作権検閲に流れる危険性が極めて高い。

 フランスで導入が検討された、警告メールの送付とネット切断を中心とする、著作権検閲機関型の違法コピー対策である3ストライクポリシーは、2009年6月に、憲法裁判所によって、インターネットのアクセスは、表現の自由に関係する情報アクセスの権利、つまり、最も基本的な権利の1つとしてとらえられるとされ、著作権検閲機関型の3ストライクポリシーは、表現の自由・情報アクセスの権利やプライバシーといった他の基本的な権利をないがしろにするものとして、真っ向から否定されている。ネット切断に裁判所の判断を必須とする形で導入された変形ストライク法も何ら効果を上げることなく、フランスでは今もストライクポリシーについて見直しの検討が行われており、2013年7月にはネット切断の罰が廃止されている。日本においては、このようなフランスにおける政策の迷走を他山の石として、このように表現の自由・情報アクセスの権利やプライバシーといった他の基本的な権利をないがしろにする対策を絶対に導入しないこととするべきであり、警察庁などが絡む形で検討されている違法ファイル共有対策についても、通信の秘密やプライバシー、情報アクセス権等の国民の基本的な権利をきちんと尊重する形で進めることが担保されなくてはならない。

g)著作権法へのセーフハーバー規定の導入について
 動画投稿サイト事業者がJASRACに訴えられた「ブレイクTV」事件や、レンタルサーバー事業者が著作権幇助罪で逮捕され、検察によって姑息にも略式裁判で50万円の罰金を課された「第(3)世界」事件や、1対1の信号転送機器を利用者からほぼ預かるだけのサービスが放送局に訴えられ、最高裁判決で違法とされた「まねきTV」事件等を考えても、今現在、カラオケ法理の適用範囲はますます広く曖昧になり、間接侵害や著作権侵害幇助のリスクが途方もなく拡大し、甚大な萎縮効果・有害無益な社会的大混乱が生じかねないという非常に危険な状態がなお続いている。間接侵害事件や著作権侵害幇助事件においてネット事業者がほぼ直接権利侵害者とみなされてしまうのでは、プロバイダー責任制限法によるセーフハーバーだけでは不十分であり、間接侵害や著作権侵害幇助罪も含め、著作権侵害とならない範囲を著作権法上きちんと確定することは喫緊の課題である。ただし、このセーフハーバーの要件において、標準的な仕組み・技術や違法性の有無の判断を押しつけるような、権利侵害とは無関係の行政機関なり天下り先となるだろう第3者機関なりの関与を必要とすることは、検閲の禁止・表現の自由等の国民の権利の不当な侵害に必ずなるものであり、絶対にあってはならないことである。

 知財計画2021において、プロバイダに対する標準的な著作権侵害技術導入の義務付け等を行わないことを合わせ明記するとともに、間接侵害や刑事罰・著作権侵害幇助も含め著作権法へのセーフハーバー規定の速やかな導入を検討するとしてもらいたい。この点に関しては、逆に、検閲の禁止や表現の自由の観点から技術による著作権検閲の危険性の検討を始めてもらいたい。

h)二次創作規制の緩和について
 2014年8月のクールジャパン提言の第13ページに「クリエイティビティを阻害している規制についてヒアリングし規制緩和する。コンテンツの発展を阻害する二次創作規制、ストリートパフォーマンスに関する規制など、表現を限定する規制を見直す。」と記載されている通り、二次創作は日本の文化的創作の原動力の一つになっており、その推進のために現状の規制を緩和する必要がある。これは知的財産に関わる重要な提言であり、二次創作規制を緩和するという記載を知財計画2021においてもそのまま取り入れ、政府としてこのような規制の緩和を強力に推進することを重ねてきちんと示すべきである。

 また、コスプレに関する検討が知財本部において行われるとの報道もあったが、コスプレについて問題とされていないのであれば、これは政府におけるルール化の様な検討にそぐわないものであり、現状において問題はないという整理のみするか、又は、必要に応じて二次創作の一種としてその規制緩和の検討のみなされるべきである。

i)著作権等に関する真の国際動向について国民へ知らされる仕組みの導入及び文化庁ワーキンググループの公開について
 WIPO等の国際機関にも、政府から派遣されている者はいると思われ、著作権等に関する真の国際動向について細かなことまで即座に国民へ知らされる仕組みの導入を是非検討してもらいたい。

 また、2013年からの著作物等の適切な保護と利用・流通に関するワーキングチーム及び2015年からの新たな時代のニーズに的確に対応した制度等の整備に関するワーキングチームの審議は公開とされたが、文化庁はワーキングチームについて公開審議を原則とするにはなお至っていない。上位の審議会と同様今後全てのワーキンググループについて公開審議を原則化するべきである。

j)天下りについて
 以前文部科学省の天下り問題が大きく報道されたが、知財政策においても、天下り利権が各省庁の政策を歪めていることは間違いなく、知財政策の検討と決定の正常化のため、文化庁から著作権関連団体への、総務省から放送通信関連団体・企業への、警察庁からインターネットホットラインセンター他各種協力団体・自主規制団体への天下りの禁止を知財本部において決定して頂きたい。(これらの省庁は特にひどいので特に名前をあげたが、他の省庁も含めて決定してもらえるなら、それに超したことはない。)

(3)その他一般的な情報・ネット・表現規制について
 知財計画改訂において、一般的な情報・ネット・表現規制に関する項目は削除されているが、常に一方的かつ身勝手な主張を繰り広げる自称良識派団体が、意味不明の理屈から知財とは本来関係のない危険な規制強化の話を知財計画に盛り込むべきと主張をしてくることが十分に考えられるので、ここでその他の危険な一般的な情報・ネット・表現規制強化の動きに対する反対意見も述べる。今後も、本来知財とは無関係の、一般的な情報・ネット・表現規制に関する項目を絶対に知財計画に盛り込むことのないようにしてもらいたい。

a)青少年ネット規制法・出会い系サイト規制法について
 そもそも、青少年ネット規制法は、あらゆる者から反対されながら、有害無益なプライドと利権を優先する一部の議員と官庁の思惑のみで成立したものであり、速やかに廃止が検討されるべきものである。また、出会い系サイト規制法の改正は、警察庁が、どんなコミュニケーションサイトでも人は出会えるという誰にでも分かることを無視し、届け出制の対象としては事実上定義不能の「出会い系サイト事業」を定義可能と偽り、改正法案の閣議決定を行い、法案を国会に提出したものであり、他の重要法案と審議が重なる中、国会においてもその本質的な問題が見過ごされて可決され、成立したものである。憲法上の罪刑法定主義や検閲の禁止にそもそも違反している、この出会い系サイト規制法の改正についても、今後、速やかに元に戻すことが検討されるべきである。

b)児童ポルノ規制・サイトブロッキングについて
 児童ポルノ法規制強化問題・有害サイト規制問題における自称良識派団体の主張は、常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。今後は、このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むべきである。同じく、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むべきである。

 閲覧とダウンロードと取得と所持の区別がつかないインターネットにおいては、例え児童ポルノにせよ、情報の単純所持や取得の規制は有害無益かつ危険なもので、憲法及び条約に規定されている「知る権利」を不当に害するものとなる。「自身の性的好奇心を満たす目的で」、積極的あるいは意図的に画像を得た場合であるなどの限定を加えたところで、エスパーでもない限りこのような積極性を証明することも反証することもできないため、このような情報の単純所持や取得の規制の危険性は回避不能であり、思想の自由や罪刑法定主義にも反する。繰り返し取得としても、インターネットで2回以上他人にダウンロードを行わせること等は技術的に極めて容易であり、取得の回数の限定も、何ら危険性を減らすものではない。

 児童ポルノ規制の推進派は常に、提供による被害と単純所持・取得を混同する狂った論理を主張するが、例えそれが児童ポルノであろうと、情報の単純所持ではいかなる被害も発生し得ない。現行法で、ネット上であるか否かにかかわらず、提供及び提供目的の所持が規制されているのであり、提供によって生じる被害と所持やダウンロード、取得、収集との混同は許され得ない。そもそも、最も根本的なプライバシーに属する個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ることは、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の基本的な権利からあってはならないことである。

 アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現に対する規制対象の拡大も議論されているが、このような対象の拡大は、児童保護という当初の法目的を大きく逸脱する、異常規制に他ならない。アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現において、いくら過激な表現がなされていようと、それが現実の児童被害と関係があるとする客観的な証拠は何一つない。いまだかつて、この点について、単なる不快感に基づいた印象批評と一方的な印象操作調査以上のものを私は見たことはないし、虚構と現実の区別がつかないごく一部の自称良識派の単なる不快感など、言うまでもなく一般的かつ網羅的な表現規制の理由には全くならない。アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現が、今の一般的なモラルに基づいて猥褻だというのなら、猥褻物として取り締まるべき話であって、それ以上の話ではない。どんな法律に基づく権利であれ、権利の侵害は相対的にのみ定まるものであり、実際の被害者の存在しない創作物・表現に対する規制は何をもっても正当化され得ない。民主主義の最重要の基礎である表現の自由や言論の自由、思想の自由等々の最も基本的な精神的自由そのものを危うくすることは絶対に許されない。この点で、2012年6月にスウェーデンで漫画は児童ポルノではないとする最高裁判決が出されたことなども注目されるべきである。

 単純所持規制にせよ、創作物規制にせよ、両方とも1999年当時の児童ポルノ法制定時に喧々囂々の大議論の末に除外された規制であり、規制推進派が何と言おうと、これらの規制を正当化するに足る立法事実の変化はいまだに何一つない。

 既に、警察などが提供するサイト情報に基づき、統計情報のみしか公表しない不透明な中間団体を介し、児童ポルノアドレスリストの作成が行われ、そのリストに基づいて、ブロッキング等が行われているが、いくら中間に団体を介そうと、一般に公表されるのは統計情報に過ぎす、児童ポルノであるか否かの判断情報も含め、アドレスリストに関する具体的な情報は、全て閉じる形で秘密裏に保持されることになるのであり、インターネット利用者から見てそのリストの妥当性をチェックすることは不可能であり、このようなアドレスリストの作成・管理において、透明性・公平性・中立性を確保することは本質的に完全に不可能である。このようなリストに基づくブロッキング等は、自主的な取組という名目でいくら取り繕おうとも、憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないのであり、小手先の運用変更などではどうにもならない。

 児童ポルノ規制法に関しては、提供及び提供目的での所持が禁止されているのであるから、本当に必要とされることはこの規制の地道なエンフォースであって有害無益かつ危険極まりない規制強化の検討ではない。DVD販売サイトなどの海外サイトについても、本当に児童ポルノが販売されているのであれば、速やかにその国の警察に通報・協力して対処すべきだけの話であって、それで対処できないとするに足る具体的根拠は全くない。警察自らこのような印象操作で規制強化のマッチポンプを行い、警察法はおろか憲法の精神にすら違背していることについて警察庁は恥を知るべきである。例えそれが何であろうと、情報の単純所持や単なる情報アクセスではいかなる被害も発生し得えないのであり、自主的な取組という名目でいくら取り繕おうとも、憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないサイトブロッキングは即刻排除するべきであり、そのためのアドレスリスト作成管理団体として設立された、インターネットコンテンツセーフティ協会は即刻その解散が検討されてしかるべきである。

 なお、民主主義の最重要の基礎である表現の自由に関わる問題において、一方的な見方で国際動向を決めつけることなどあってはならないことであり、欧米においても、情報の単純所持規制やサイトブロッキングの危険性に対する認識はネットを中心に高まって来ていることは決して無視されてはならない。例えば、欧米では既にブロッキングについてその恣意的な運用によって弊害が生じていることや、アメリカにおいても、2009年に連邦最高裁で児童オンライン保護法が違憲として完全に否定され、2011年6月に連邦最高裁でカリフォルニア州のゲーム規制法が違憲として否定されていること、ドイツで児童ポルノサイトブロッキング法は検閲法と批判され、最終的に完全に廃止されたことなども注目されるべきである(https://www.zdnet.de/41558455/bundestag-hebt-zensursula-gesetz-endgueltig-auf/参照)。スイスの2009年の調査でも、2002年に児童ポルノ所持で捕まった者の追跡調査を行っているが、実際に過去に性的虐待を行っていたのは1%、6年間の追跡調査で実際に性的虐待を行ったものも1%に過ぎず、児童ポルノ所持はそれだけでは、性的虐待のリスクファクターとはならないと結論づけており、児童ポルノの単純所持規制・ブロッキングの根拠は完全に否定されているのである(https://bmcpsychiatry.biomedcentral.com/articles/10.1186/1471-244X-9-43参照)。欧州連合において、インターネットへのアクセスを情報の自由に関する基本的な権利として位置づける動きがあることも見逃されてはならない。政府・与党内の検討においては、このような国際動向もきちんと取り上げるべきである。

 そして、単純所持規制に相当し、上で書いた通り問題の大きい性的好奇心目的所持罪を含む児童ポルノの改正法案が国会で2014年6月18日に可決・成立し、同年6月25日に公布され、2015年7月15日に施行された。この問題の大きい性的好奇心目的所持罪を規定する児童ポルノ規制法第7条第1項は即刻削除するべきであり、合わせ、政府・与党においては、児童ポルノを対象とするものにせよ、いかなる種類のものであれ、情報の単純所持・取得規制・ブロッキングは極めて危険な規制であるとの認識を深め、このような規制を絶対に行わないこととして、危険な法改正案が2度と与野党から提出されることが無いようにするべきである。

 さらに、性的好奇心目的所持罪を規定する児童ポルノ規制法第7条第1項を削除するとともに、児童ポルノの単純所持規制・創作物規制といった非人道的な規制を導入している諸国は即刻このような規制を廃止するべきと、そもそも最も根本的なプライバシーに属し、何ら実害を生み得ない個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ること自体、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の国際的かつ一般的に認められている基本的な権利からあってはならないことであると、また、法的拘束力はないが、明らかに表現の自由に抵触する規制を推奨している、2019年9月の児童の権利委員会による児童ポルノ規制に関するガイドラインは全面的に見直すべきであると、日本政府から国際的な場において各国に積極的に働きかけてもらいたい。

 また、様々なところで検討されている有害サイト規制についても、その規制は表現に対する過度広汎な規制で違憲なものとしか言いようがなく、各種有害サイト規制についても私は反対する。

c)東京都青少年健全育成条例他、地方条例の改正による情報規制問題について
 東京都でその青少年健全育成条例の改正が検討され、非実在青少年規制として大騒ぎになったあげく、2010年12月に、当事者・関係者の真摯な各種の意見すら全く聞く耳を持たれず、数々の問題を含む条例案が、都知事・東京都青少年・治安対策本部・自公都議の主導で都議会で通された。通過版の条例改正案も、非実在青少年規制という言葉こそ消えたものの、かえって規制範囲は非実在性犯罪規制とより過度に広汎かつ曖昧なものへと広げられ、有害図書販売に対する実質的な罰則の導入と合わせ、その内容は違憲としか言わざるを得ない内容のものである。また、この東京都の条例改正にも含まれている携帯フィルタリングの実質完全義務化は、青少年ネット規制法の精神にすら反している行き過ぎた規制である。さらに、大阪や京都などでは、児童ポルノに関して、法律を越える範囲で勝手に範囲を規定し、その単純所持等を禁止する、明らかに違憲な条例が通されるなどのデタラメが行われている。

 これらのような明らかな違憲条例の検討・推進は、地方自治体法第245条の5に定められているところの、都道府県の自治事務の処理が法令の規定に違反しているか著しく適正を欠きかつ明らかに公益を害していると認めるに足ると考えられるものであり、総務大臣から各地方自治体に迅速に是正命令を出すべきである。また、当事者・関係者の意見を完全に無視した東京都における検討など、民主主義的プロセスを無視した極めて非道なものとしか言いようがなく、今後の検討においてはきちんと民意が反映されるようにするため、地方自治法の改正検討において、情報公開制度の強化、審議会のメンバー選定・検討過程の透明化、パブコメの義務化、条例の改廃請求・知事・議会のリコールの容易化などの、国の制度と整合的な形での民意をくみ上げるシステムの地方自治に対する法制化の検討を速やかに進めてもらいたい。また、各地方の動きを見ていると、出向した警察官僚が強く関与する形で、各都道府県の青少年問題協議会がデタラメな規制強化騒動の震源となることが多く、今現在のデタラメな規制強化の動きを止めるべく、さらに、中央警察官僚の地方出向・人事交流の完全な取りやめ、地方青少年問題協議会法の廃止、問題の多い地方青少年問題協議会そのものの解散の促進についても速やかに検討を開始するべきである。

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2020年12月29日 (火)

第434回:2020年の終わりに

 今年は新型コロナウィルスの感染拡大が知財政策にも影響を与えるという類を見ない年だったと思うが、例によって、この年末に今まであまり取り上げて来なかった主に著作権関連以外の話をまとめて書いておきたいと思う。

 まず、特許法について、特許庁から、産業構造審議会・知的財産分科会・特許制度小委員会の報告書「ウィズコロナ/ポストコロナ時代における特許制度の在り方(案)」(pdf)が1月25日〆切でパブコメにかかっている(特許庁のHP1、電子政府のHP1参照)。ほぼ制度ユーザにしか関係しないので詳細は省略するが、この報告書案に含まれている法改正事項は、特許侵害訴訟における第三者意見募集制度(アミカス・ブリーフ制度)の導入、訂正審判等における通常実施権者の許諾の不要化、審判の口頭審理のオンライン化、災害の発生等権利者の責めに帰することができない理由による期間途過の場合の割増特許料等の免除、権利回復の判断基準の故意でない基準への緩和及びその場合の回復手数料の賦課である。

 商標法について、商標制度小委員会の報告書「ウィズコロナ/ポストコロナ時代における商標制度の在り方について(案)」(pdf)が1月18日〆切でパブコメにかかっている(特許庁のHP2、電子政府のHP2参照)。こちらの報告書案に含まれている主な法改正事項は、商標と意匠について海外の事業者を侵害主体として海外から国内に模倣品を直接送付する場合を新たに権利侵害とする事である。

 弁理士法について、弁理士制度小委員会の報告書「弁理士制度の見直しの方向性について(案)」(pdf)も1月21日〆切でパブコメにかかっており(特許庁のHP3、電子政府のHP3参照)、農林水産知財や第三者意見提出の相談業務等を弁理士法に規定する事や一人法人制度の導入などについて書かれている。

 特許庁では、それぞれの委員会の下のワーキンググループ、審査基準専門委員会ワーキンググループで特許関連の審査基準の修正が、意匠審査基準ワーキンググループで意匠関連の審査基準の修正が議論されているが、今年はさらに基本問題小委員会という委員会も立ち上げられている。

 この基本問題小委員会について、委員会ホームページで書かれている通り、「ウィズコロナ/ポストコロナ時代における産業財産権行政の在り方 とりまとめ骨子(案)」(pdf)が公表され、1月13日目途で意見募集がされている様だが、この骨子案を見てもどうにも漠然としていて今後具体的に何をどうして行くつもりなのかまだ良く分からない状況である。

 なお、経産省で、6月3日に不正競争防止章委員会も開かれているが(経産省のHP参照)、最近の取り組みの紹介のみで、不正競争防止法関連ですぐに法改正が提出されそうな様子はない。

 次に、総務省からは、12月22日に発信者情報開示の在り方に関する研究会「最終とりまとめ」(pdf)が公表され(総務省のHP1参照)、12月25日に「インターネット上の海賊版対策に係る総務省の政策メニュー」(pdf)が公表されている(総務省のHP2参照)。後者でのセキュリティ対策ソフトにおけるアクセス抑止は、多少注意すべき点はあるだろうが、事業者と協力が可能であればして良い事と思うが、前者の最終とりまとめでは、結局新たな裁判手続きについて最後までほぼ修正される事なく導入すべきとされてしまった。総務省としてはこのまま法改正案を提出するつもりなのだろうが、この発信者情報開示に関する新たな裁判手続きがまともに機能するのか、かえって危ない制度となりはしないか、今なお私は大きな懸念を抱いている。

 農水省関連では、この12月に種苗法改正が成立している(農水省のHP1参照、このブログでは第422回で取り上げた)が、他に大きな動きはない。なお、知財本部の知財戦略と別に出す意味が良く分からないが、2020年5月に「農林水産省知的財産戦略2020」(pdf)(農水省のHP2参照)なるものも公表されている。

 最後に、知財本部では、構想委員会の下で価値デザイン経営ワーキンググループやコンテンツ小委員会、デジタル時代における著作権制度・関連政策の在り方検討タスクフォースといった検討会が開かれている。知財本部のこれらの検討会の内容はほとんど意味不明としか言いようがないが、またじきに知財計画2021に向けたパブコメが開始されたら意見を出すつもりである。

 来年1月1日からダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大が施行されるなど、今年も良い年をと言う気にはあまりならないが、別に私は諦めるつもりもない。今年もこれで最後になるが、政官業に巣食う全ての利権屋に悪い年を、このブログを読んで下さっている方々に心からの感謝を。

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2020年6月21日 (日)

第426回:知財計画2020の文章の確認

 知財関連法改正の中では種苗法改正案の審議が先送りになったものの、非常に残念な事ながら、著作権法改正案はそのまま可決・成立し、6月17日に国会が閉幕した。今回の著作権法改正の中に含まれるダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大については、じきにその影響が明らかになる事だろう。

 話としては前後するが、5月27日に、知財本部で、知的財産推進計画2020(pdf)概要(pdf))が決定されているので、今回はその内容を見ておきたいと思う。

 この知財計画は、毎年作る意味が良く分からない施策項目集だが、今年は新型コロナの話と混ざり合って、いつにも増して意味不明の内容になっているので、以下では、読んでいて頭が痛くなってくる意味不明のお題目が並んだ部分を全て無視して、法改正事項を中心に見ていく。

 まず、第21~22ページには、

・種苗法改正により、優良品種の海外への流出防止や国内における栽培地域の限定が可能となる予定であることから、新品種を活用した産地づくりが各地域で円滑に進められるよう、育成者権のライセンシング手法について調査し、都道府県等の育成者権者や生産者団体への情報提供を推進する。また、登録品種の利用に関する簡易な許諾方法や許諾料の徴収方法について、海外の事例も含めて情報発信を行うとともに、侵害対策の実効性を高めるための措置についても検討を行う。(短期・中期)(農林水産省)

・種苗法に基づく品種登録審査において、(国研)農業・食品産業技術総合研究機構種苗管理センターが行う品種の特性に関する調査が、育成者権者の立証等にも活用されるよう調査の充実を図る。また、海外の品種登録当局の審査における我が国の審査結果活用の促進を通じ、わが国で育成された品種の海外における育成者権の取得を促進させるため、我が国の品種登録審査基準の国際基準への調和を進め、品種登録審査の高度化を図る。(短期・中期)(農林水産省)

・畜産関係者による長年の改良の努力により付加価値の高まった和牛遺伝資源については、令和2年4月に成立した家畜改良増殖法の一部を改正する法律及び家畜遺伝資源に係る不正競争の防止に関する法律により、その流通管理の徹底を図るとともに、知的財産としての価値を保護することに加えて、我が国の貴重な財産である和牛遺伝資源は事業者自らが守るという意識の醸成に向けた取組の充実を図り、これらの取組により不正な海外流出を防止する。(短期・中期)(農林水産省)

と、種苗法改正と家畜遺伝資源保護法の話が出て来ている。家畜遺伝資源保護法は成立しているが、上でも書いた通り、種苗法改正は先送りになっている。(それぞれの法改正の内容は第422回参照。)

 第27ページには、

・AI・IoT技術の進展に伴い、様々なビジネスモデルが登場し、新たな紛争処理や権利保護のニーズ等が高まり、さらに、オープンイノベーションの進展によりスタートアップ等の役割が高まっている。このような状況を踏まえて、AI・IoT技術の時代にふさわしい、紛争解決機能の強化を含む特許制度の在り方を検討し、必要な施策を講じる。(短期・中期)(経済産業省)

と書かれ、特許庁の特許制度小委員会ででの紛争処理、訴訟に関する法改正の検討について書かれている。(6月16日の小委員会の資料として、AI・IoT技術の時代にふさわしい特許制度の在り方―中間とりまとめ―(案)(pdf)が出されているが、今のところ特に大きな法改正の方向性が出ているという事はない。)

 最後に、第63~64ページに、

・デジタル時代におけるコンテンツの流通・活用の促進に向けて、新たなビジネスの創出や著作物に関する権利処理及び利益分配の在り方、市場に流通していないコンテンツへのアクセスの容易化等をはじめ、実態に応じた著作権制度を含めた関連政策の在り方について、関係者の意見や適切な権利者の利益保護の観点にも十分に留意しつつ検討を行い、2020年内に、知的財産戦略本部の下に設置された検討体を中心に、具体的な課題と検討の方向性を整理する。その後、関係府省において速やかに検討を行い、必要な措置を講ずる。(短期、中期)(内閣府、文部科学省、経済産業省)

・同時配信等に係る著作隣接権の取扱いなど制度改正を含めた権利処理の円滑化について、関係者の意向を十分に踏まえつつ、運用面の改善を着実に進めるとともに、制度の在り方について、具体的な検討を行い、一定の結論を得て、本年度内の法案の国会提出を含め、必要な見直しを順次行う。(短期・中期)(総務省、文部科学省)

・クリエイターに適切に対価が還元され、コンテンツの再生産につながるよう、デジタル時代における新たな対価還元策やクリエイターの支援・育成策等について検討を進めるとともに、私的録音録画補償金制度については、新たな対価還元策が実現されるまでの過渡的な措置として、私的録音録画の実態等に応じた具体的な対象機器等の特定について、関係府省の合意を前提に文部科学省を中心に検討を進め、2020年内に結論を得て、2020年度内の可能な限り早期に必要な措置を講ずる。(短期、中期)(文部科学省、内閣府、総務省、経済産業省)

と、第65~66ページに、

・インターネット上の海賊版による被害拡大を防ぐため、インターネット上の海賊版に対する総合的な対策メニュー及び工程表に基づき、関係府省が連携しながら、必要な取組を進める。その際、各取組の進捗・検討状況に応じて総合的な対策メニュー及び工程表を更新し、被害状況や対策の効果を検証しつつ行う。(短期、中期)(内閣府、警察庁、総務省、法務省、文部科学省、経済産業省)

・インターネット上の海賊版の提供者を特定しやすくし、民事上の責任追及に資するよう、プロバイダ責任制限法における発信者情報開示の対象となる発信者情報の見直しについて検討を行うことに加え、発信者情報の円滑な開示のための情報開示・裁判手続の方策について、国外サーバ等が用いられている場合の訴状の送達等の現状を踏まえ、必要な検討を行う。(短期、中期)(総務省、法務省)

・模倣品・海賊版を購入しないことはもとより、特に、侵害コンテンツについては、視聴者は無意識にそれを視聴し侵害者に利益をもたらすことから、侵害コンテンツを含む模倣品・海賊版を容認しないということが国民の規範意識に根差すよう、各省庁、関係機関が一体となった啓発活動を推進する。(短期、中期)(警察庁、消費者庁、財務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省)

・越境電子商取引の進展に伴う模倣品・海賊版の流入増加へ対応するため、個人使用目的を仮装して輸入される模倣品・海賊版を引き続き厳正に取り締まるとともに、特に増加が顕著な模倣品の個人使用目的の輸入については、権利者等の被害状況等及び諸外国における制度整備を含めた運用状況を踏まえ、具体的な対応の方向性について引き続き検討する。(短期)(財務省、経済産業省)

・関連の法制度整備の状況も踏まえつつ、子供の頃から他人の創作行為を尊重し、著作権等を保護するための知識と意識をより一層醸成するため、インターネットを利用して誰もが学べるオンライン学習コンテンツをはじめ著作権教育に資する教材等の開発や、ポータルサイトなどを通じた様々な資料・情報の周知、教職員等を対象とした研修の充実など、効果的な普及啓発を行う。(短期、中期)(文部科学省)

と、第68ページに、

・絶版等により入手困難な資料をはじめ、図書館等が保有する資料へのアクセスを容易化するため、図書館等に関する権利制限規定をデジタル化・ネットワーク化に対応したものとすることについて、研究目的の権利制限規定の創設と併せて、権利者の利益保護に十分に配慮しつつ、検討を進め、結論を得て、必要な措置を講ずる。(短期、中期)(文部科学省)

と書かれているのが、著作権法、海賊版対策に関する項目である。

 私的録音録画補償金問題について少し踏み込んだ記載になっていることも気になるが、さらに、第65ページの前段で、

2019年10月、知的財産戦略本部検証・評価・企画委員会及び構想委員会における検討を経て、関係府省庁は「インターネット上の海賊版に対する総合的な対策メニュー及び工程表」を公表した。当該対策メニューは、関係府省庁や関係者が幅広く連携しながら、段階的・総合的に対策を実施していくことを内容としたものである。著作権教育・意識啓発、国際連携・国際執行の強化、検索サイト対策、海賊版サイトへの広告出稿の抑制など、できることから直ちに実施するものとして第1段階に位置付けられた対策については、着実に取組が進められている。また、第2段階に位置付けられた対策のうち「リーチサイト対策」及び「著作権を侵害する静止画(書籍)のダウンロード違法化」については、第201回通常国会(令和2年通常国会)に提出された著作権法改正法案の内容に含まれている。第3段階の対策としてブロッキングが位置付けられており、他の取組の効果や被害状況等を見ながら検討することとしている。本年度においても、諸外国における対策の状況等も踏まえつつ、必要に応じて総合的な対策メニュー及び工程表を更新し、実効性のある取組を強化する必要がある。

と書かれている事から、日本政府は、ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大によってインターネット利用者の情報アクセスに関するリスクを無意味に高めただけでは飽き足らず、危険な著作権ブロッキングの導入もまだ諦めていないと知れるのであり、中でも、海賊版対策に関する取組の推進検討には特に要注意だろう。

 また、プロバイダー責任制限法の改正検討自体はなされていいものと思うが、行き過ぎれば、発信者情報開示の濫用による発信行為・表現の萎縮が発生し得るので、総務省の発信者情報開示の在り方に関する研究会での検討も注意をしておいた方がいいに違いない。

 今までコロナ対策としてほぼ唯一意味のあった著作権政策である、オンライン教育著作物利用補償金制度の早期施行(第423回参照)について、第14ページで、

・多様な学びのニーズへの対応等を可能とするオンライン教育を促進するため、とりわけ授業の過程においてインターネット等により学生等に著作物を送信することについて、改正著作権法(授業目的公衆送信補償金制度)の今年度における緊急的かつ特例的な運用を円滑に進めるとともに、来年度からの本格実施に向けて、関係者と連携しつつ、著作権制度の正しい理解が得られるよう教育現場に対する周知等を行うことに加え、補償金負担の軽減のための必要な支援について検討する。

と触れられているが、これも、本来文化の発展に寄与することを目的とする著作権法が、かえって情報アクセスを阻害し、教育や研究やその他の文化活動の妨げになってしまっている事を浮き彫りにする一つの例だろう。本当にコロナ対策でというのであれば、著作権法において、非常時における情報アクセスをどの様に考えるか、非常時に個々の権利はどこまで守られるべきか、さらには文化芸術部門に対する非常時のサポートはどうあるべきかといった事こそ検討されるべきだろうに、知財計画で単なる思いつきとしか思えない行き当りばったりの項目ばかりが並んでいるのは本当にうんざりさせられる。極めて残念な事ながら、今年も、また当分ずっと知財政策の迷走が止まる事はないのだろう。

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2020年2月13日 (木)

第420回:「知的財産推進計画2020」の策定に向けた意見募集(2月17日〆切)への提出パブコメ

 今年も2月17日〆切で知財本部からかかっている、「知的財産推進計画2020」の策定に向けた意見募集(知財本部HP意見募集について(pdf)参照)に意見を出したので、ここに載せておく。

 内容は基本的に今まで書いて来た事をまとめているもので、知財計画2019の記載(第409回参照)に合わせて項目を入れ換え、また、ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大に関して状況を受けて文章を少し直すなどしている。(去年の提出パブコメは第404回参照。)

 意見がどれくらい取り入れられるかは分からないが、政府全体に知財政策について意見を出せる年一回の機会なので、関心のある方は是非意見の提出を検討することをお勧めする。

(以下、提出パブコメ)

《要旨》
アメリカ等と比べて遜色の無い範囲で一般フェアユース条項を導入すること、ダウンロード犯罪化・違法化条項の撤廃並びにTPP協定・日欧EPAの見直し及び著作権の保護期間の短縮を求める。有害無益なインターネットにおける今以上の知財保護強化、特に著作権ブロッキング及び補償金の矛盾を拡大するだけの私的録音録画補償金の対象拡大に反対する。今後真の国民視点に立った知財の規制緩和の検討が進むことを期待する。

《全文》
 最終的に国益になるであろうことを考え、各業界の利権や省益を超えて必要となる政策判断をすることこそ知財本部とその事務局が本当になすべきことのはずであるが、知財計画2019を見ても、このような本当に政策的な決定は全く見られない上、2018年には危険極まる著作権ブロッキングのごり押しの検討まで行われ、今現在同じく非常に危ういダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大の検討が行われている。知財保護が行きすぎて消費者やユーザーの行動を萎縮させるほどになれば、確実に文化も産業も萎縮するので、知財保護強化が必ず国益につながる訳ではないということを、著作権問題の本質は、ネットにおける既存コンテンツの正規流通が進まないことにあるのではなく、インターネットの登場によって新たに出てきた著作物の公正利用の類型に、今の著作権法が全く対応できておらず、著作物の公正利用まで萎縮させ、文化と産業の発展を阻害していることにあるのだということを知財本部とその事務局には、まずはっきりと認識してもらいたい。特に、最近の知財・情報に関する規制強化の動きは全て間違っていると私は断言する。

 例年通り、規制強化による天下り利権の強化のことしか念頭にない文化庁、総務省、警察庁などの各利権官庁に踊らされるまま、国としての知財政策の決定を怠り、知財政策の迷走の原因を増やすことしかできないようであれば、今年の知財計画を作るまでもなく、知財本部とその事務局には、自ら解散することを検討するべきである。そうでなければ、是非、各利権官庁に轡をはめ、その手綱を取って、知財の規制緩和のイニシアティブを取ってもらいたい。知財本部において今年度、インターネットにおけるこれ以上の知財保護強化はほぼ必ず有害無益かつ危険なものとなるということをきちんと認識し、真の国民視点に立った知財の規制緩和の検討が知財本部でなされることを期待し、本当に決定され、実現されるのであれば、全国民を裨益するであろうこととして、私は以下のことを提案する。

(1)「知的財産推進計画2019」の記載事項について:
a)ダウンロード違法化・犯罪化問題について
 知財計画2019の第18ページにインターネット上の海賊版に対する総合的な対策メニューについて記載され、2019年10月の総合的な対策メニューにはダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大について記載されている。

 文化庁の暴走と国会議員の無知によって、2009年の6月12日にダウンロード違法化条項を含む改正著作権法が成立し、2010年の1月1日に施行された。また、日本レコード協会などのロビー活動により、自民党及び公明党が主導する形でダウンロード犯罪化条項がねじ込まれる形で、2012年6月20日に改正著作権法が成立し、2012年10月1日から施行されている。

 そして、2018年12月に意見募集がされた文化庁の法制・基本問題小委員会の中間まとめにおいて、極めて拙速な検討から、このダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲を録音録画から著作物全般に拡大するとの方針が示され、その意見募集において極めて多くの懸念が示されたにもかかわらず、文化庁がこの方針を諦めずにダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大を含む著作権法改正案の提出を準備していたところ、批判の高まりを受けて2019年の通常国会提出を断念した。

 その後、文化庁は、2019年10月に侵害コンテンツのダウンロード違法化等に関するパブリックコメントを行い、11月から2020年1月にかけて侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会において著作権法改正案を再検討した。しかし、この検討会における議論も法案提出の結論ありきの拙速極まるものであり、国民の声を丁寧に聞くと言いながら、パブリックコメントに寄せられた最も主要な意見が要件によらずダウンロード違法化を行うべきではないというものであるという事を無視し、写り込みに関する権利制限の拡充、民事における原作者の権利の除外及び軽微なものの除外という弥縫策でダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲を押し通そうとするものであって、議論のまとめでは検討会レベルのとりまとめすら放棄している。

 さらに、2020年2月には、自民党が文科省に海賊版対策のための著作権法改正に関する申し入れを行い、民事刑事の両方において著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除外することを要請した。

 文化庁の議論のまとめで示されている案では、スクリーンショットで違法画像が付随的に入り込む場合や、ストーリー漫画の数コマ、論文の数行、粗いサムネイル画像のダウンロードの場合といった僅かな場合が除かれるに過ぎない。また、自民党の要請の様に、著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除外する事で、それなりの正当化事由を示せる様な特別な事情がある場合が除かれ、さらにある程度の緩和が図られるであろうが、本質的な問題の解消に繋がるものではなく、それでもなお、利用者が通常するであろう多くの場合のカジュアルなスクリーンショット、ダウンロード、デジタルでの保存行為が違法・犯罪となる可能性が出て来、場合によって意味不明の萎縮が発生する恐れがある事に変わりはない。これは、今の録音録画に関するダウンロード違法化・犯罪化同様、海賊版対策としては何の役にも立たない、百害あって一利ない最低最悪の著作権法改正の一つとなるものである。

 過去のパブコメでも繰り返し書いているが、一人しか行為に絡まないダウンロードにおいて、「事実を知りながら」なる要件は、エスパーでもない限り証明も反証もできない無意味かつ危険な要件であり、技術的・外形的に違法性の区別がつかない以上、このようなダウンロード違法化・犯罪化は法規範としての力すら持ち得ず、罪刑法定主義や情報アクセス権を含む表現の自由などの憲法に規定される国民の基本的な権利の観点からも問題がある。このような法改正によって進むのはダウンロード以外も含め著作権法全体に対するモラルハザードのみであり、今のところ幸いなことに適用例はないが、これを逆にねじ曲げてエンフォースしようとすれば、著作権検閲という日本国として最低最悪の手段に突き進む恐れしかない。

 また、世界的に見ても、アップロードとダウンロードを合わせて行うファイル共有サービスに関する事件を除き、どの国においても単なるダウンロード行為を対象とする民事、刑事の事件は1件もなく、日本における現行の録音録画に関するダウンロード違法化・犯罪化も含め、このような法制が海賊版対策として何の効果も上がっていないことは明白である。また、ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大は、研究など公正利用として認められるべき目的のダウンロードにも影響する。

 そもそも、ダウンロード違法化の懸念として、このような不合理極まる規制強化・著作権検閲に対する懸念は、過去の文化庁へのパブコメ(文化庁HPhttps://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hokoku.htmlの意見募集の結果参照。ダウンロード違法化問題において、この8千件以上のパブコメの7割方で示された国民の反対・懸念は完全に無視された。このような非道極まる民意無視は到底許されるものではない)や知財本部へのパブコメ(知財本部のHPhttp://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keikaku2009.htmlの個人からの意見参照)を見ても分かる通り、法改正前から指摘されていたところであり、このようなさらなる有害無益な規制強化・著作権検閲にしか流れようの無いダウンロード違法化・犯罪化は始めからなされるべきではなかったものである。ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大の検討については全て白紙に戻し、文化庁の暴走と国会議員の無知によって成立したものであり、ネット利用における個人の安心と安全を完全にないがしろにするものである、百害あって一利ないダウンロード違法化・犯罪化を規定する著作権法第30条第1項第3号及び第119条第3項を即刻削除するべきである。

 今後著作権法改正案を提出するのであれば、ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大に関する全ての条項の削除のみならず、ダウンロード違法化・犯罪化を規定する著作権法第30条第1項第3号及び第119条第3項を削除し、ダウンロード違法化・犯罪化を完全に撤廃することを速やかに行うべきである。

b)著作権法におけるいわゆる間接侵害・幇助への対応について
 2019年10月の総合的な対策メニューにはリーチサイト規制についても記載されている。

 このリーチサイト規制については、2018年12月に意見募集が行われた文化庁の法制・基本問題小委員会の中間まとめにおいて、著作権侵害コンテンツへのリンク行為に対するみなし侵害規定の追加及び刑事罰付加の方針が示されたが、著作権法改正案の2019年の通常国会提出は見送られた。

 リーチサイト対策の検討は、著作権法におけるいわゆる間接侵害・幇助への対応をどうするかという問題に帰着する。本当に悪質な場合について現行法で不十分というところがあれば、その点について立法による対処も当然あり得るだろうが、文化庁の中間まとめを読んでも、権利者団体の一方的かつ曖昧な主張が並べられているだけで、権利者団体側がリーチサイト等に対して現行法に基づいてどこまで何をしたのか、現行法による対処に関する定量的かつ論理的な検証は何らされておらず、本当にどのような場合について現行法では不十分なのかは全く不明である。このような現行の著作権法における民事の間接侵害(カラオケ法理)あるいは刑事の著作権侵害幇助との関係整理をおざなりにした、著作権侵害コンテンツへのリンク行為に対するみなし侵害規定の追加及び刑事罰付加に私は反対する。

 さらに、このような間接侵害あるいは幇助の検討において当然必要とされるはずのセーフハーバーの検討も極めて不十分であって、インターネット利用における民事・刑事のリスクに関する不確実性を増すだけである、このような不十分な検討に基づく法改正に私は断固反対する。

 2019年11月から2020年1月にかけての侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会における著作権法改正案の再検討において、リーチサイト規制について親告罪とする方針が示されており、この様に親告罪とする事で一定の歯止めがかかるとは思うが、それ以上法改正の本質的な必要性に関する議論が深められる事なく進められようとしている事に変わりはない。

 今後著作権法改正案を提出するのであれば、リーチサイト規制に関する条項も削除するべきである。

 このようなリーチサイト問題も含め、ネット上の違法コンテンツ対策、違法ファイル共有対策については、通信の秘密やプライバシー、情報アクセス権等の国民の基本的な権利をきちんと尊重しつつ対策を検討してもらいたい。この点においても、国民の基本的な権利を必ず侵害するものとなり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害することにつながる危険な規制強化の検討ではなく、ネットにおける各種問題は情報モラル・リテラシー教育によって解決されるべきものという基本に立ち帰り、現行のプロバイダー責任制限法と削除要請を組み合わせた対策などの、より現実的かつ地道な施策のみに注力して検討を進めるべきである。

 確かにセーフハーバーを確定するためにも間接侵害・幇助の明確化はなされるべきであるが、現行の条文におけるカラオケ法理や各種ネット録画機事件などで示されたことの全体的な整理以上のことをしてはならない。特に、著作権法に明文の間接侵害一般規定を設けることは絶対にしてはならないことである。確かに今は直接侵害規定からの滲み出しで間接侵害を取り扱っているので不明確なところがあるのは確かだが、現状の整理を超えて、明文の間接侵害一般規定を作った途端、権利者団体や放送局がまず間違いなく山の様に脅しや訴訟を仕掛けて来、今度はこの間接侵害規定の定義やそこからの滲み出しが問題となり、無意味かつ危険な社会的混乱を来すことは目に見えているからである。知財計画2020において間接侵害・幇助への対応について記載するのであれば、著作権法の間接侵害・幇助の明確化は、ネット事業・利用の著作権法上のセーフハーバーを確定するために必要十分な限りにおいてのみなされると合わせ明記してもらいたい。

c)著作権ブロッキング・アクセス警告方式について
 2019年10月の総合的な対策メニューには著作権ブロッキングやアクセス警告方式についても言及されている。

 サイトブロッキングについては、知財本部において、2018年4月の緊急対策の決定後、10月まで検討が行われた。

 このようなサイトブロッキングについて、アメリカでは、議会に提出されたサイトブロッキング条項を含むオンライン海賊対策法案(SOPA)や知財保護強化法案(PIPA)が、IT企業やユーザーから検閲であるとして大反対を受け、その審議は止められている。また、世界を見渡しても、ブロッキングを巡ってはどの国であれなお混沌とした状況にあり、いかなる形を取るにせよブロッキングの採用が有効な海賊版対策として世界の主要な流れとなっているとは到底言い難い。

 サイトブロッキングの問題については下でも述べるが、インターネット利用者から見てその妥当性をチェックすることが不可能なサイトブロッキングにおいて、透明性・公平性・中立性を確保することは本質的に完全に不可能である。このようなブロッキングは、憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止、通信の秘密といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないものであり、決して導入されるべきでないものである。

 幸いなことに、2018年10月で知財本部におけるブロッキングの検討は止まったが、多くの懸念の声が上げられていたにもかかわらず、ブロッキングありきでごり押しの検討を行ったことについて私は知財本部に猛省を求める。知財計画2020においてブロッキングについて言及するのであれば、2018年の検討の反省の弁とともに今後二度とこのような国民の基本的な権利を踏みにじる検討をしないと固く誓うとしてもらいたい。

 アクセス警告方式についても、通信の監視・介入の点でブロッキングと本質的に違いはなく、その導入は法的にも技術的にも難しいとする、2019年8月の総務省のインターネット上の海賊版サイトへのアクセス抑止方策に関する検討会の報告書の整理を守るべきである。

 その提案からも明確なように、違法コピー対策問題における権利者団体の主張は常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。今後は、このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むことを検討するべきである。同じく、憲法に規定されている検閲の禁止及び通信の秘密から、サイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むことを検討するべきである。

d)私的録音録画補償金問題について
 第35ページでは私的録音録画補償金問題についても言及されている。権利者団体等が単なる既得権益の拡大を狙ってiPod等へ対象範囲を拡大を主張している私的録音録画補償金問題についても、補償金のそもそもの意味を問い直すことなく、今の補償金の矛盾を拡大するだけの私的録音録画補償金の対象拡大を絶対にするべきではない。

 文化庁の文化審議会著作権分科会における数年の審議において、補償金のそもそもの意義についての意義が問われたが、文化庁が、天下り先である権利者団体のみにおもねり、この制度に関する根本的な検討を怠った結果、特にアナログチューナー非対応録画機への課金について私的録音録画補償金管理協会と東芝間の訴訟に発展した。ブルーレイ課金・アナログチューナー非搭載録画機への課金について、権利者団体は、ダビング10への移行によってコピーが増え自分たちに被害が出ると大騒ぎをしたが、移行後8年以上経った今現在においても、ダビング10の実施による被害増を証明するに足る具体的な証拠は全く示されておらず、ブルーレイ課金・アナログチューナー非搭載録画機への課金に合理性があるとは到底思えない。わずかに緩和されたとは言え、今なお地上デジタル放送にはダビング10という不当に厳しいコピー制限がかかったままである。こうした実質的に全国民に転嫁されるコストで不当に厳しい制限を課している機器と媒体にさらに補償金を賦課しようとするのは、不当の上塗りである。

 なお、世界的に見ても、メーカーや消費者が納得して補償金を払っているということはカケラも無く、権利者団体がその政治力を不当に行使し、歪んだ「複製=対価」の著作権神授説に基づき、不当に対象を広げ料率を上げようとしているだけというのがあらゆる国における実情である。表向きはどうあれ、大きな家電・PCメーカーを国内に擁しない欧州各国は、私的録音録画補償金制度を、外資から金を還流する手段、つまり、単なる外資規制として使っているに過ぎない。この制度における補償金の対象・料率に関して、具体的かつ妥当な基準はどこの国を見ても無いのであり、この制度は、ほぼ権利者団体の際限の無い不当な要求を招き、莫大な社会的コストの浪費のみにつながっている。機器・媒体を離れ音楽・映像の情報化が進む中、「複製=対価」の著作権神授説と個別の機器・媒体への賦課を基礎とする私的録音録画補償金は、既に時代遅れのものとなりつつあり、その対象範囲と料率のデタラメさが、デジタル録音録画技術の正常な発展を阻害し、デジタル録音録画機器・媒体における正常な競争市場を歪めているという現実は、補償金制度を導入したあらゆる国において、問題として明確に認識されなくてはならないことである。

(2)その他の知財政策事項について:
a)環太平洋経済連携協定(TPP)などの経済連携協定(EPA)に関する取組について
 TPP協定については、2015年10月に大筋合意が発表され、文化庁、知財本部の検討を経て、11月にTPP総合対策本部でTPP関連政策大綱が決定され、さらに2016年2月に署名され、3月に関連法案の国会提出がされ、11月の臨時国会で可決・成立し、2017年1月20日に参加国として初めての国内手続きの完了に関する通報が行われた。

 しかし、この国内手続きにおいて、日本政府は、2015年10月に大筋合意の概要のみを公表し、11月のニュージーランド政府からの協定条文の英文公表時も全章概要を示したのみで、その後2ヶ月も経って2016年1月にようやく公式の仮訳を公表するなど、TPP協定の内容精査と政府への意見提出の時間を国民に実質与えない極めて姑息かつ卑劣なやり方を取っていたと言わざるを得ない。

 そして、公開された条文によって今までのリーク文書が全て正しかったことはほぼ証明されており、TPP協定は確かに著作権の保護期間延長、DRM回避規制強化、法定賠償制度、著作権侵害の非親告罪化などを含んでいる。今ですら不当に長い著作権保護期間のこれ以上の延長など本来論外だったものである。

 その後、日本政府は、アメリカ抜きの11カ国でのTPP11協定を推進し、2017年11月に大筋合意が発表され、その中で最もクリティカルな部分である著作権と特許の保護期間延長とDRM規制の強化の部分が凍結さたにもかかわらず、これらの事項を含む国内関連法改正案を2018年3月に国会に提出し(6月に可決・成立)、2018年12月のTPP11協定の発効とともに施行するという戦後最大級の愚行をなした。このようになし崩しで極めて危険な法改正がなされたことを私は一国民として強く非難する。

 2017年12月には、同じく著作権の保護期間延長を含む日EU(欧)EPA交渉も妥結され、2018年2月に発効している。しかし、この日欧EPA交渉もTPP協定同様の姑息かつ卑劣な秘密交渉で決められたものである。その内容についてほとんど何の説明もないままに著作権の保護期間延長のような国益の根幹に関わる点について日本政府は易々と譲歩した。これは完全に国民をバカにしているとしか言いようがない。

 これらのTPP協定及び日欧EPAについてその内容の見直しを各加盟国に求めること及び著作権の保護期間の短縮について速やかに検討を開始することを私は求める。

 また、TPP交渉や日欧EPA交渉のような国民の生活に多大の影響を及ぼす国際交渉が政府間で極秘裏に行われたことも大問題である。国民一人一人がその是非を判断できるよう、途中経過も含めその交渉に関する情報をすべて速やかに公開するべきである。

b)DRM回避規制について
 経産省と文化庁の主導により無意味にDRM回避規制を強化する不正競争防止法と著作権法の改正案がそれぞれ以前国会を通され、2018年に不正競争防止法がさらに改正され、2018年12月に意見募集がされた文化庁の法制・基本問題小委員会の中間まとめにも同様の法改正事項が含まれているが、これらの法改正を是とするに足る立法事実は何一つない。不正競争防止法と著作権法でDRM回避機器等の提供等が規制され、著作権法でコピーコントロールを回避して行う私的複製まで違法とされ、十二分以上に規制がかかっているのであり、これ以上の規制強化は、ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ない。

 特に、DRM回避規制に関しては、有害無益な規制強化の検討ではなく、まず、私的なDRM回避行為自体によって生じる被害は無く、個々の回避行為を一件ずつ捕捉して民事訴訟の対象とすることは困難だったにもかかわらず、文化庁の片寄った見方から一方的に導入されたものである、私的な領域でのコピーコントロール回避規制(著作権法第30条第1項第2号)の撤廃の検討を行うべきである。コンテンツへのアクセスあるいはコピーをコントロールしている技術を私的な領域で回避しただけでは経済的損失は発生し得ず、また、ネットにアップされることによって生じる被害は公衆送信権によって既にカバーされているものであり、その被害とDRM回避やダウンロードとを混同することは絶対に許されない。それ以前に、私法である著作権法が、私的領域に踏み込むということ自体異常なことと言わざるを得ない。何ら立法事実の変化がない中、ドサクサ紛れに通された、先般の不正競争防止法改正によるDRM規制の強化や、以前の著作権法改正で導入されたアクセスコントロール関連規制の追加等について、速やかに元に戻す検討がなされるべきである。

 TPP協定にはDRM回避規制の強化も含まれており、上で書いた通り、これ以上のDRM回避規制の強化がされるべきではなく、この点でも私はTPP協定の見直しを求める。

c)海賊版対策条約(ACTA)について
 ACTAを背景に経産省及び文化庁の主導により無意味にDRM回避規制を強化する不正競争防止法及び著作権法の改正案が以前国会を通され、ACTA自体も国会で批准された。しかし、このようなユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ない規制強化条項を含む条約の交渉、署名及び批准は何ら国民的なコンセンサスが得られていない中でなされており、私は一国民としてACTAに反対する。今なおACTAの批准国は日本しかなく、日本は無様に世界に恥を晒し続けている。もはやACTAに何ら意味はなく、日本は他国への働きかけを止めるとともに自ら脱退してその失敗を認めるべきである。

d)一般フェアユース条項の導入について
 2018年に個別の権利制限を拡充する著作権法改正がなされており、これはその限りにおいて評価できるものではあるが、本当の意味で柔軟な一般フェアユース条項を入れるものではない。

 一般フェアユース条項については、一から再検討を行い、ユーザーに対する意義からも、アメリカ等と遜色ない形で一般フェアユース条項を可能な限り早期に導入するべきである。特に、インターネットのように、ほぼ全国民が利用者兼権利者となり得、考えられる利用形態が発散し、個別の規定では公正利用の類型を拾い切れなくなるところでは、フェアユースのような一般規定は保護と利用のバランスを取る上で重要な意義を持つものである。

 今後の検討によっても幾つかの個別の権利制限が追加される可能性があるが、これらはあった方が良いものとは言え、到底一般フェアユース条項と言うに足るものではなく、これでは著作権をめぐる今の混迷状況が変わることはない。

 著作物の公正利用には変形利用もビジネス利用も考えられ、このような利用も含めて著作物の公正利用を促すことが、今後の日本の文化と経済の発展にとって真に重要であることを考えれば、不当にその範囲を不当に狭めるべきでは無く、その範囲はアメリカ等と比べて遜色の無いものとされるべきである。ただし、フェアユースの導入によって、私的複製の範囲が縮小されることはあってはならない。

 また、「まねきTV」事件などの各種判例からも、ユーザー個人のみによって利用されるようなクラウド型サービスまで著作権法上ほぼ違法とされてしまう状況に日本があることは明らかであり、このような状況は著作権法の趣旨に照らして決して妥当なことではない。ユーザーが自ら合法的に入手したコンテンツを私的に楽しむために利用することに著作権法が必要以上に介入することが許されるべきではなく、個々のユーザーが自らのためのもに利用するようなクラウド型サービスにまで不必要に著作権を及ぼし、このような技術的サービスにおけるトランザクションコストを過大に高め、その普及を不当に阻害することに何ら正当性はない。この問題がクラウド型サービス固有の問題でないのはその通りであるが、だからといって法改正の必要性がなくなる訳ではない。著作権法の条文及びその解釈・運用が必要以上に厳格に過ぎクラウド型サービスのような技術の普及が不当に阻害されているという日本の悲惨な現状を多少なりとも緩和するべく、速やかに問題を再整理し、アメリカ等と比べて遜色の無い範囲で一般フェアユース条項を導入し、同時にクラウド型サービスなどについてもすくい上げられるようにするべきである。

 権利を侵害するかしないかは刑事罰がかかるかかからないかの問題でもあり、公正という概念で刑事罰の問題を解決できるのかとする意見もあるようだが、かえって、このような現状の過剰な刑事罰リスクからも、フェアユースは必要なものと私は考える。現在親告罪であることが多少セーフハーバーになっているとはいえ、アニメ画像一枚の利用で別件逮捕されたり、セーフハーバーなしの著作権侵害幇助罪でサーバー管理者が逮捕されたりすることは、著作権法の主旨から考えて本来あってはならないことである。政府にあっては、著作権法の本来の主旨を超えた過剰リスクによって、本来公正として認められるべき事業・利用まで萎縮しているという事態を本当に深刻に受け止め、一刻も早い改善を図ってもらいたい。

 個別の権利制限規定の迅速な追加によって対処するべきとする意見もあるが、文化庁と癒着権利者団体が結託して個別規定すらなかなか入れず、入れたとしても必要以上に厳格な要件が追加されているという惨憺たる現状において、個別規定の追加はこの問題における真の対処たり得ない。およそあらゆる権利制限について、文化庁と権利者団体が結託して、全国民を裨益するだろう新しい権利制限を潰すか、極めて狭く使えないものとして来たからこそ、今一般規定が社会的に求められているのだという、国民と文化の敵である文化庁が全く認識していないだろう事実を、政府・与党は事実としてはっきりと認めるべきである。

e)コピーワンス・ダビング10・B-CAS問題について
 私はコピーワンスにもダビング10にも反対する。そもそも、この問題は、放送局・権利者にとっては、視聴者の利便性を著しく下げることによって、一旦は広告つきながらも無料で放送したコンテンツの市場価格を不当につり上げるものとして機能し、国内の大手メーカーとっては、B-CASカードの貸与と複雑な暗号システムを全てのテレビ・録画機器に必要とすることによって、中小・海外メーカーに対する参入障壁として機能するB-CASシステムの問題を淵源とするのであって、このB-CASシステムと独禁法の関係を検討するということを知財計画2020では明記してもらいたい。検討の上B-CASシステムが独禁法違反とされるなら、速やかにその排除をして頂きたい。また、無料の地上放送において、逆にコピーワンスやダビング10のような視聴者の利便性を著しく下げる厳格なコピー制御が維持されるのであれば、私的録画補償金に存在理由はなく、これを速やかに廃止するべきである。

 4K放送について、無料放送を録画不可とできるようにする検討が放送局とメーカーで構成される次世代放送推進フォーラムにおいて行われているという報道もあった。その後の検討は不明だが、上で書いたような、コピーワンスやダビング10の愚を繰り返してはならない。このような消費者の利便性に極めて大きな影響を持つ検討については可能な限り速やかに今まで及び今後の検討の公開並びに利用者・消費者からの意見の取り入れを促すべきである。

f)著作権検閲・ストライクポリシーについて
 ファイル共有ソフトを用いて著作権を侵害してファイル等を送信していた者に対して警告メールを送付することなどを中心とする電気通信事業者と権利者団体の連携による著作権侵害対策が警察庁、総務省、文化庁などの規制官庁が絡む形で行われており、警察によってファイル共有ネットワークの監視も行われているが、このような対策は著作権検閲に流れる危険性が極めて高い。

 フランスで導入が検討された、警告メールの送付とネット切断を中心とする、著作権検閲機関型の違法コピー対策である3ストライクポリシーは、2009年6月に、憲法裁判所によって、インターネットのアクセスは、表現の自由に関係する情報アクセスの権利、つまり、最も基本的な権利の1つとしてとらえられるとされ、著作権検閲機関型の3ストライクポリシーは、表現の自由・情報アクセスの権利やプライバシーといった他の基本的な権利をないがしろにするものとして、真っ向から否定されている。ネット切断に裁判所の判断を必須とする形で導入された変形ストライク法も何ら効果を上げることなく、フランスでは今もストライクポリシーについて見直しの検討が行われており、2013年7月にはネット切断の罰が廃止されている。日本においては、このようなフランスにおける政策の迷走を他山の石として、このように表現の自由・情報アクセスの権利やプライバシーといった他の基本的な権利をないがしろにする対策を絶対に導入しないこととするべきであり、警察庁などが絡む形で検討されている違法ファイル共有対策についても、通信の秘密やプライバシー、情報アクセス権等の国民の基本的な権利をきちんと尊重する形で進めることが担保されなくてはならない。

g)著作権法へのセーフハーバー規定の導入について
 動画投稿サイト事業者がJASRACに訴えられた「ブレイクTV」事件や、レンタルサーバー事業者が著作権幇助罪で逮捕され、検察によって姑息にも略式裁判で50万円の罰金を課された「第(3)世界」事件や、1対1の信号転送機器を利用者からほぼ預かるだけのサービスが放送局に訴えられ、最高裁判決で違法とされた「まねきTV」事件等を考えても、今現在、カラオケ法理の適用範囲はますます広く曖昧になり、間接侵害や著作権侵害幇助のリスクが途方もなく拡大し、甚大な萎縮効果・有害無益な社会的大混乱が生じかねないという非常に危険な状態がなお続いている。間接侵害事件や著作権侵害幇助事件においてネット事業者がほぼ直接権利侵害者とみなされてしまうのでは、プロバイダー責任制限法によるセーフハーバーだけでは不十分であり、間接侵害や著作権侵害幇助罪も含め、著作権侵害とならない範囲を著作権法上きちんと確定することは喫緊の課題である。ただし、このセーフハーバーの要件において、標準的な仕組み・技術や違法性の有無の判断を押しつけるような、権利侵害とは無関係の行政機関なり天下り先となるだろう第3者機関なりの関与を必要とすることは、検閲の禁止・表現の自由等の国民の権利の不当な侵害に必ずなるものであり、絶対にあってはならないことである。

 知財計画2020において、プロバイダに対する標準的な著作権侵害技術導入の義務付け等を行わないことを合わせ明記するとともに、間接侵害や刑事罰・著作権侵害幇助も含め著作権法へのセーフハーバー規定の速やかな導入を検討するとしてもらいたい。この点に関しては、逆に、検閲の禁止や表現の自由の観点から技術による著作権検閲の危険性の検討を始めてもらいたい。

h)二次創作規制の緩和について
 2014年8月のクールジャパン提言の第13ページに「クリエイティビティを阻害している規制についてヒアリングし規制緩和する。コンテンツの発展を阻害する二次創作規制、ストリートパフォーマンスに関する規制など、表現を限定する規制を見直す。」と記載されている通り、二次創作は日本の文化的創作の原動力の一つになっており、その推進のために現状の規制を緩和する必要がある。これは知的財産に関わる重要な提言であり、二次創作規制を緩和するという記載を知財計画2020においてもそのまま取り入れ、政府としてこのような規制の緩和を強力に推進することを重ねてきちんと示すべきである。

i)著作権等に関する真の国際動向について国民へ知らされる仕組みの導入及び文化庁ワーキンググループの公開について
 WIPO等の国際機関にも、政府から派遣されている者はいると思われ、著作権等に関する真の国際動向について細かなことまで即座に国民へ知らされる仕組みの導入を是非検討してもらいたい。

 また、2013年からの著作物等の適切な保護と利用・流通に関するワーキングチーム及び2015年からの新たな時代のニーズに的確に対応した制度等の整備に関するワーキングチームの審議は公開とされたが、文化庁はワーキングチームについて公開審議を原則とするにはなお至っていない。上位の審議会と同様今後全てのワーキンググループについて公開審議を原則化するべきである。

j)天下りについて
 以前文部科学省の天下り問題が大きく報道されたが、知財政策においても、天下り利権が各省庁の政策を歪めていることは間違いなく、知財政策の検討と決定の正常化のため、文化庁から著作権関連団体への、総務省から放送通信関連団体・企業への、警察庁からインターネットホットラインセンター他各種協力団体・自主規制団体への天下りの禁止を知財本部において決定して頂きたい。(これらの省庁は特にひどいので特に名前をあげたが、他の省庁も含めて決定してもらえるなら、それに超したことはない。)

(3)その他一般的な情報・ネット・表現規制について
 知財計画改訂において、一般的な情報・ネット・表現規制に関する項目は削除されているが、常に一方的かつ身勝手な主張を繰り広げる自称良識派団体が、意味不明の理屈から知財とは本来関係のない危険な規制強化の話を知財計画に盛り込むべきと主張をしてくることが十分に考えられるので、ここでその他の危険な一般的な情報・ネット・表現規制強化の動きに対する反対意見も述べる。今後も、本来知財とは無関係の、一般的な情報・ネット・表現規制に関する項目を絶対に知財計画に盛り込むことのないようにしてもらいたい。

a)青少年ネット規制法・出会い系サイト規制法について
 そもそも、青少年ネット規制法は、あらゆる者から反対されながら、有害無益なプライドと利権を優先する一部の議員と官庁の思惑のみで成立したものであり、速やかに廃止が検討されるべきものである。また、出会い系サイト規制法の改正は、警察庁が、どんなコミュニケーションサイトでも人は出会えるという誰にでも分かることを無視し、届け出制の対象としては事実上定義不能の「出会い系サイト事業」を定義可能と偽り、改正法案の閣議決定を行い、法案を国会に提出したものであり、他の重要法案と審議が重なる中、国会においてもその本質的な問題が見過ごされて可決され、成立したものである。憲法上の罪刑法定主義や検閲の禁止にそもそも違反している、この出会い系サイト規制法の改正についても、今後、速やかに元に戻すことが検討されるべきである。

b)児童ポルノ規制・サイトブロッキングについて
 児童ポルノ法規制強化問題・有害サイト規制問題における自称良識派団体の主張は、常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。今後は、このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むべきである。同じく、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むべきである。

 閲覧とダウンロードと取得と所持の区別がつかないインターネットにおいては、例え児童ポルノにせよ、情報の単純所持や取得の規制は有害無益かつ危険なもので、憲法及び条約に規定されている「知る権利」を不当に害するものとなる。「自身の性的好奇心を満たす目的で」、積極的あるいは意図的に画像を得た場合であるなどの限定を加えたところで、エスパーでもない限りこのような積極性を証明することも反証することもできないため、このような情報の単純所持や取得の規制の危険性は回避不能であり、思想の自由や罪刑法定主義にも反する。繰り返し取得としても、インターネットで2回以上他人にダウンロードを行わせること等は技術的に極めて容易であり、取得の回数の限定も、何ら危険性を減らすものではない。

 児童ポルノ規制の推進派は常に、提供による被害と単純所持・取得を混同する狂った論理を主張するが、例えそれが児童ポルノであろうと、情報の単純所持ではいかなる被害も発生し得ない。現行法で、ネット上であるか否かにかかわらず、提供及び提供目的の所持が規制されているのであり、提供によって生じる被害と所持やダウンロード、取得、収集との混同は許され得ない。そもそも、最も根本的なプライバシーに属する個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ることは、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の基本的な権利からあってはならないことである。

 アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現に対する規制対象の拡大も議論されているが、このような対象の拡大は、児童保護という当初の法目的を大きく逸脱する、異常規制に他ならない。アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現において、いくら過激な表現がなされていようと、それが現実の児童被害と関係があるとする客観的な証拠は何一つない。いまだかつて、この点について、単なる不快感に基づいた印象批評と一方的な印象操作調査以上のものを私は見たことはないし、虚構と現実の区別がつかないごく一部の自称良識派の単なる不快感など、言うまでもなく一般的かつ網羅的な表現規制の理由には全くならない。アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現が、今の一般的なモラルに基づいて猥褻だというのなら、猥褻物として取り締まるべき話であって、それ以上の話ではない。どんな法律に基づく権利であれ、権利の侵害は相対的にのみ定まるものであり、実際の被害者の存在しない創作物・表現に対する規制は何をもっても正当化され得ない。民主主義の最重要の基礎である表現の自由や言論の自由、思想の自由等々の最も基本的な精神的自由そのものを危うくすることは絶対に許されない。この点で、2012年6月にスウェーデンで漫画は児童ポルノではないとする最高裁判決が出されたことなども注目されるべきである。

 単純所持規制にせよ、創作物規制にせよ、両方とも1999年当時の児童ポルノ法制定時に喧々囂々の大議論の末に除外された規制であり、規制推進派が何と言おうと、これらの規制を正当化するに足る立法事実の変化はいまだに何一つない。

 既に、警察などが提供するサイト情報に基づき、統計情報のみしか公表しない不透明な中間団体を介し、児童ポルノアドレスリストの作成が行われ、そのリストに基づいて、ブロッキング等が行われているが、いくら中間に団体を介そうと、一般に公表されるのは統計情報に過ぎす、児童ポルノであるか否かの判断情報も含め、アドレスリストに関する具体的な情報は、全て閉じる形で秘密裏に保持されることになるのであり、インターネット利用者から見てそのリストの妥当性をチェックすることは不可能であり、このようなアドレスリストの作成・管理において、透明性・公平性・中立性を確保することは本質的に完全に不可能である。このようなリストに基づくブロッキング等は、自主的な取組という名目でいくら取り繕おうとも、憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないのであり、小手先の運用変更などではどうにもならない。

 児童ポルノ規制法に関しては、提供及び提供目的での所持が禁止されているのであるから、本当に必要とされることはこの規制の地道なエンフォースであって有害無益かつ危険極まりない規制強化の検討ではない。DVD販売サイトなどの海外サイトについても、本当に児童ポルノが販売されているのであれば、速やかにその国の警察に通報・協力して対処すべきだけの話であって、それで対処できないとするに足る具体的根拠は全くない。警察自らこのような印象操作で規制強化のマッチポンプを行い、警察法はおろか憲法の精神にすら違背していることについて警察庁は恥を知るべきである。例えそれが何であろうと、情報の単純所持や単なる情報アクセスではいかなる被害も発生し得えないのであり、自主的な取組という名目でいくら取り繕おうとも、憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないサイトブロッキングは即刻排除するべきであり、そのためのアドレスリスト作成管理団体として設立された、インターネットコンテンツセーフティ協会は即刻その解散が検討されてしかるべきである。

 なお、民主主義の最重要の基礎である表現の自由に関わる問題において、一方的な見方で国際動向を決めつけることなどあってはならないことであり、欧米においても、情報の単純所持規制やサイトブロッキングの危険性に対する認識はネットを中心に高まって来ていることは決して無視されてはならない。例えば、欧米では既にブロッキングについてその恣意的な運用によって弊害が生じていることや、アメリカにおいても、2009年に連邦最高裁で児童オンライン保護法が違憲として完全に否定され、2011年6月に連邦最高裁でカリフォルニア州のゲーム規制法が違憲として否定されていること、ドイツで児童ポルノサイトブロッキング法は検閲法と批判され、最終的に完全に廃止されたことなども注目されるべきである(http://www.zdnet.de/news/41558455/bundestag-hebt-zensursula-gesetz-endgueltig-auf.htm参照)。スイスの2009年の調査でも、2002年に児童ポルノ所持で捕まった者の追跡調査を行っているが、実際に過去に性的虐待を行っていたのは1%、6年間の追跡調査で実際に性的虐待を行ったものも1%に過ぎず、児童ポルノ所持はそれだけでは、性的虐待のリスクファクターとはならないと結論づけており、児童ポルノの単純所持規制・ブロッキングの根拠は完全に否定されているのである(http://www.biomedcentral.com/1471-244X/9/43/abstract参照)。欧州連合において、インターネットへのアクセスを情報の自由に関する基本的な権利として位置づける動きがあることも見逃されてはならない。政府・与党内の検討においては、このような国際動向もきちんと取り上げるべきである。

 そして、単純所持規制に相当し、上で書いた通り問題の大きい性的好奇心目的所持罪を含む児童ポルノの改正法案が国会で2014年6月18日に可決・成立し、同年6月25日に公布され、2015年7月15日に施行された。この問題の大きい性的好奇心目的所持罪を規定する児童ポルノ規制法第7条第1項は即刻削除するべきであり、合わせ、政府・与党においては、児童ポルノを対象とするものにせよ、いかなる種類のものであれ、情報の単純所持・取得規制・ブロッキングは極めて危険な規制であるとの認識を深め、このような規制を絶対に行わないこととして、危険な法改正案が2度と与野党から提出されることが無いようにするべきである。

 さらに、性的好奇心目的所持罪を規定する児童ポルノ規制法第7条第1項を削除するとともに、児童ポルノの単純所持規制・創作物規制といった非人道的な規制を導入している諸国は即刻このような規制を廃止するべきと、そもそも最も根本的なプライバシーに属し、何ら実害を生み得ない個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ること自体、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の国際的かつ一般的に認められている基本的な権利からあってはならないことであると、また、法的拘束力はないが、明らかに表現の自由に抵触する規制を推奨している、2019年9月の児童の権利委員会による児童ポルノ規制に関するガイドラインは全面的に見直すべきであると、日本政府から国際的な場において各国に積極的に働きかけてもらいたい。

 また、様々なところで検討されている有害サイト規制についても、その規制は表現に対する過度広汎な規制で違憲なものとしか言いようがなく、各種有害サイト規制についても私は反対する。

c)東京都青少年健全育成条例他、地方条例の改正による情報規制問題について
 東京都でその青少年健全育成条例の改正が検討され、非実在青少年規制として大騒ぎになったあげく、2010年12月に、当事者・関係者の真摯な各種の意見すら全く聞く耳を持たれず、数々の問題を含む条例案が、都知事・東京都青少年・治安対策本部・自公都議の主導で都議会で通された。通過版の条例改正案も、非実在青少年規制という言葉こそ消えたものの、かえって規制範囲は非実在性犯罪規制とより過度に広汎かつ曖昧なものへと広げられ、有害図書販売に対する実質的な罰則の導入と合わせ、その内容は違憲としか言わざるを得ない内容のものである。また、この東京都の条例改正にも含まれている携帯フィルタリングの実質完全義務化は、青少年ネット規制法の精神にすら反している行き過ぎた規制である。さらに、大阪や京都などでは、児童ポルノに関して、法律を越える範囲で勝手に範囲を規定し、その単純所持等を禁止する、明らかに違憲な条例が通されるなどのデタラメが行われている。

 これらのような明らかな違憲条例の検討・推進は、地方自治体法第245条の5に定められているところの、都道府県の自治事務の処理が法令の規定に違反しているか著しく適正を欠きかつ明らかに公益を害していると認めるに足ると考えられるものであり、総務大臣から各地方自治体に迅速に是正命令を出すべきである。また、当事者・関係者の意見を完全に無視した東京都における検討など、民主主義的プロセスを無視した極めて非道なものとしか言いようがなく、今後の検討においてはきちんと民意が反映されるようにするため、地方自治法の改正検討において、情報公開制度の強化、審議会のメンバー選定・検討過程の透明化、パブコメの義務化、条例の改廃請求・知事・議会のリコールの容易化などの、国の制度と整合的な形での民意をくみ上げるシステムの地方自治に対する法制化の検討を速やかに進めてもらいたい。また、各地方の動きを見ていると、出向した警察官僚が強く関与する形で、各都道府県の青少年問題協議会がデタラメな規制強化騒動の震源となることが多く、今現在のデタラメな規制強化の動きを止めるべく、さらに、中央警察官僚の地方出向・人事交流の完全な取りやめ、地方青少年問題協議会法の廃止、問題の多い地方青少年問題協議会そのものの解散の促進についても速やかに検討を開始するべきである。

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2019年9月18日 (水)

第413回:空疎な新クールジャパン戦略他

 今月3日に知財本部クールジャパン戦略(pdf)なるものが取りまとめられて公開されているが、戦略と呼べるような事はおよそ何一つ書かれておらず、いつもの知財計画にもまして徹頭徹尾ほとんど空疎な意味不明の駄文を垂れ流しているに過ぎない。「5.施策の方向性」の最後「(5)知的財産の活用を後押しする取組」(第28~29ページ)で

 CJは、日本 全体のブランディング戦略といえるという面で、知的財産保護の仕組みとも密接に関係しているが、それを構成する個々のコンテンツも知的財産制度と深く関係する。コンテンツにおいて高度な技術が重要であれば特許や営業秘密に関連し、デザインは意匠権、マークやネーミングは商標権、音楽、映像等は著作権に関するものも多い。これらのコンテンツの中には、他者が模倣できるものも多くあり、日本国内のみならず、外国においても適切に知的財産権により保護しておかないと、もともと日本において生み出されたコンテンツが、外国で他者に無断で使用されても、有効な対策を講じることができない事態に陥ってしまう可能性がある。適切な知的財産の保護がなければ、経済的な損失にとどまらず、そこに質の低いものが紛れ込むことで、権利者のビジネス基盤やコンテンツ自体の価値を損なう可能性がある。
 近年のマンガ・アニメなどで問題となっている海賊版による被害は、漫画家やアニメーターの著作物が、悪質な違法行為によって配信・共有化されることにより、漫画家やアニメーターなどの権利が著しく損なわれ、コンテンツビジネスの基盤を崩壊させかねないことを示している。その他 、昨今、和牛遺伝資源を不法に国外に流出させようとする事案が発生し、国内の畜産農家による改良努力の結果高まった和牛のブランド価値が棄損しかねない危険性が高まっており、和牛遺伝資源についても適正な流通管理等に向けて検討を行っていく必要がある。このように、CJを持続させる観点から、不当に価値を棄損したり、あるいは存続自体を危うくさせたりするような行為に対しては、知的財産制度を中心に多様な観点から総合的に対策を講じていく必要がある。
 実効性のある保護の仕組みと同時に、CJコンテンツがさらなる発想との融合によって進化し続け、さらに大きな価値を生み出す潜在性があることにも焦点を当てる必要があり、適正な利用を円滑にすることによってCJを発展させていくための仕掛けも同時に検討する。

と、知的財産制度に関する検討についても記載されているが、具体的な内容としては何も書かれていないに等しい。

 政府の報告書で間々見かける様にここで悪い方向性が書かれてないだけでも良しとしなければならないのかもしれないが、5年前のクールジャパン提言ではっきりと書かれていた二次創作規制の緩和の事がすっかり忘れ去られているのは非常に残念な事である(第319回参照)。

 日本政府が日本の文化と経済の発展のために本当に必要な事を全く理解していないのであろう事は今までの十年来の政策検討を見ても分かるのだが、私としては、二次創作が日本の文化的創作の原動力の一つになっており、その推進のために現状の規制を緩和する必要があるとこれからも言い続けて行くつもりである。

 後は、つい先週9月12日に欧州司法裁判所が興味深い判決を2つ出しているので、その概要を紹介しておきたいと思う。

 1つは、そのリリース(pdf)にある通り、ドイツのベルリン地裁からの質問付託に対して、インターネット検索エンジンに出版社の許可なく新聞や雑誌の抜粋の利用を禁止する法律は欧州委員会への通知なしに適用できないとするものであり、判決(ドイツ語)の結論部分を訳出すると以下の様になる。

Art. 1 Nr. 11 der Richtlinie 98/34/EG des Europaischen Parlaments und des Rates vom 22. Juni 1998 uber ein Informationsverfahren auf dem Gebiet der Normen und technischen Vorschriften und der Vorschriften fur die Dienste der Informationsgesellschaft in der durch die Richtlinie 98/48/EG des Europaischen Parlaments und des Rates vom 20. Juli 1998 geanderten Fassung ist dahin auszulegen, dass eine nationale Regelung wie die im Ausgangsverfahren in Rede stehende, die es ausschlieslich gewerblichen Betreibern von Suchmaschinen und gewerblichen Anbietern von Diensten, die Inhalte entsprechend aufbereiten, verbietet, Presseerzeugnisse oder Teile hiervon (ausgenommen einzelne Worter und kleinste Textausschnitte) offentlich zuganglich zu machen, im Sinne dieser Bestimmung eine "technische Vorschrift" darstellt, deren Entwurf der Europaischen Kommission gemass Art. 8 Abs. 1 Unterabs. 1 der Richtlinie 98/34 in der durch die Richtlinie 98/48 geanderten Fassung vorab zu ubermitteln ist.

1998年7月20日の欧州議会及び理事会の指令第98/48号によって変更された形の情報社会のサービスに対する規則及び技術的な規定の範囲についての情報手続きに関する1998年6月22日の欧州議会及び理事会の指令第98/34号の第1条第11号は、本国内裁判手続きにおいて持ち出されている様な、関係するコンテンツを選別する、検索エンジンの商業的運営者及びサービスの提供者のみに対して、時事記事又はその部分(抜き出された幾つかの語及び小さな文章の抜粋)を公衆提供可能化する事を禁止する国内規則は、指令の意味において「技術的な規定」に該当し、欧州指令第98/48号によって変更された形の欧州指令第98/34号の第8条第1項第1文に従い欧州委員会に通知されなければならない。

 第408回でも書いた通り、ドイツでは時事記事保護法の導入によって現状グーグルニュースがオプトアウトからオプトインになっただけに終わっているのだが、ドイツの文章著作権管理団体VGWortは諦めずにグーグルに対して訴訟を起こし、ベルリン地裁から欧州司法裁判所へ質問付託がされ、上の様な結論が出されるに至ったのである。

 この判決で持ち出されている欧州指令第98/34号第98/48号(改正されて今は欧州指令第2015/1535号になっている)は、本来技術標準について事前通知義務を課しているもので、著作権法に当てはめるには無理がある様にも思うが、ドイツの著作権法改正が検索エンジンを余りにも狙い撃ちにし過ぎていたので、条文上当てはまるとされた。この欧州司法裁判所の判決の結果、ドイツの著作権法改正は適用不能となるので、現時点ではグーグルの勝利という事になるが、この判決も受けて、第408回で書いた通り、今後欧州でのこの様な著作権法改正、関連訴訟はさらに複雑化、長期化するのではないかと私は見ている。

 もう1つは、そのリリース(pdf)にある通り、その実用的な目的を超え特定の美的効果が生じているという理由のみをもってデザインに著作権保護が与えられる事はないとするものである。

 こちらは、ジーンズやTシャツに関する争いについてポルトガル最高裁から質問付託がされていたものだが、同じく判決(ポルトガル語)から結論部分を訳しておくと以下の様になる。

O artigo 2.°, alinea a), da Diretiva 2001/29/CE do Parlamento Europeu e do Conselho, de 22 de maio de 2001, relativa a harmonizacao de certos aspetos do direito de autor e dos direitos conexos na sociedade da informacao, deve ser interpretado no sentido de que se opoe a que uma legislacao nacional confira protecao, ao abrigo do direito de autor, a modelos como os modelos de vestuario em causa no processo principal, pelo facto de, extravasando o fim utilitario que servem, gerarem um efeito visual proprio e marcante do ponto de vista estetico.

著作権及び著作隣接権のある側面の調和に関する2001年5月22日の欧州議会及び理事会の指令第2001/29号の第2条a)は、その実用的な目的を超えて、美的な観点から見て固有の特徴的な視覚効果を生じるという事実から、本事件において問題となっている衣服モデルの様なモデルに、著作権の保護として国内法が保護を与える事を禁じる意味を持つと解釈される。

 実用品がどこまで著作権保護の対象となるかは日本でも悩ましい問題だが、著作権の保護強化に傾きがちな欧州においても何でもかんでも著作権で超長期間の保護を与えればいいという話ではあり得ず、欧州司法裁がその前段で、

53 A este respeito, ha que salientar que, por um lado, como decorre do sentido habitual do termo <<estetica>>, o efeito estetico suscetivel de ser produzido por um modelo e o resultado da sensacao intrinsecamente subjetiva de beleza vivida por cada pessoa que olha para esse modelo. Por conseguinte, esse efeito de natureza subjetiva nao permite, em si mesmo, caracterizar a existencia de um objeto identificavel com suficiente precisao e objetividade, na acecao da jurisprudencia mencionada nos n.os 32 a 34 do presente acordao.

54 Por outro lado, e efetivamente verdade que consideracoes de ordem estetica fazem parte da atividade criativa. Contudo, nao se pode deixar de reconhecer que a circunstancia de um modelo gerar um efeito estetico nao permite, por si so, determinar se esse modelo constitui uma criacao intelectual que reflete a liberdade de escolha e a personalidade do seu autor, preenchendo, assim, a exigencia de originalidade evocada nos n.os 30 e 31 do presente acordao.

53 これに関して、一方、「美的」という用語の通常の意味から、モデルから生じ得る美的な効果は、このモデルを見た各個人が感じた美の本質的に主観的な感覚の結果である。つまり、この主観的な自然の効果は、それ自体で本判決の第32から34段落で言及した判例の意味において十分に正確かつ客観的に特定されるものの存在を特徴づけるものではない。

54 また、他方、美的な秩序の考慮が創作活動の一部であるのも確かである。しかしながら、それでもモデルが美的な効果を生じているという状況は、それ自体でそのモデルが選択の自由とその著作者の人格を反映した知的創造であり、それで本判決の第30及び31段落で持ち出した創作性を満たす事を決定づけるものではない。

と書いている通り、著作権の保護の対象となる著作物であるためには、単に美的といった印象だけでは不十分であって、著作者の人格を反映した創作性が必要としている事は著作権の保護について一定の線引きをしようとするものと評価できるのではないかと私は思っている。

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2019年6月23日 (日)

第409回:知財計画2019の文章の確認

 先週6月21日に知財本部知財計画2019(pdf)概要(pdf))が決定された。

 今年の知財計画は、TPPなどの条約が批准され、関連法改正が一通り国会を通されてしまった事もあるのだろうが、例年にもまして内容が薄く何のために作っているのかさっぱり分からない施策項目集である。とは言え、今年も、各省庁における知財政策の検討状況を把握するという意味で、以下、法改正に関わる部分を中心にその記載を見ておく。

 まず、第15ページには、次の様な今回の特許法等の改正に関する項目がある。

・本年通常国会で成立した、特許法等の一部を改正する法律に基づく、中立な技術専門家が現地調査を行う制度(査証)及び損害賠償額算定方法について、適切な運用に向けた取組を見守るとともに、同法の附帯決議に掲げられた事項について、内外の情勢を踏まえ、関係者の意見を聞きつつ検討する。また、画像及び建築物を保護対象に加える等の意匠制度の見直しについて、意匠審査基準、意匠審査体制の整備等の必要な準備を実施し、これらを含めた改正事項について、広く周知を行う。(短期)(経済産業省)

 次に、第17ページには、次の様な種苗法に対する制度的手当てと和牛遺伝資源の保護に関する記載がある。これらは、それぞれ、農水省の優良品種の持続的な利用を可能とする植物新品種の保護に関する検討会和牛遺伝資源の流通管理に関する検討会での検討に対応するものだろう。また、農水省はその知財戦略2020の改定にも着手するらしい。

・我が国で開発された植物品種の海外への流出に対応するため、引き続き海外への品種登録出願への支援や侵害対応への支援を行うとともに、優良品種の持続的な利用を可能とする観点から、国内外での植物新品種の保護の在り方について、広く関係者の意見を聴いた上で、制度的な手当ても含め検討する。(短期、中期)(農林水産省)

・和牛遺伝資源の不適切な海外流出を防止する観点から、適正な流通管理や保護に向けた検討を進める。(短期、中期)(農林水産省)

・「農林水産省知的財産戦略2020」が定める戦略の実施期間である2019年度を迎えるにあたり、農業分野における新たな知財戦略の策定に向けた検討に着手する。(短期)(農林水産省)

 そして、今現在最大の問題となっていると言っていいだろう海賊版対策については、第18ページに以下の様な項目が並んでいる。この部分で、総合的な対策メニューという言葉こそ使っているものの、ブロッキングやアクセス警告方式に関する明示的な言及がないのは、総務省のインターネット上の海賊版サイトへのアクセス抑止方策に関する検討会で否定的な見解が出されているという報道と符号する。今後について全く予断は許されないが、現時点で、著作権ブロッキングやアクセス警告方式の導入という最悪の結論を政府として出せる状況には至っていないと見ていいだろう。

・インターネット上の海賊版による被害拡大を防ぐため、効果的な著作権教育の実施、正規版の流通促進、国際連携・国際執行の強化、検索サイト対策、海賊版サイトへの広告出稿の抑制等の対策、その他の実効性がある制度の検討等、関係省庁等において総合的な対策メニューを実施するために必要な取組を進める。その際、取組についての工程表を作成し、進捗及び効果を検証しつつ行う。(短期、中期)(内閣府、警察庁、総務省、法務省、文部科学省、経済産業省)

・模倣品・海賊版を購入しないことはもとより、特に、侵害コンテンツについては、視聴者は無意識にそれを視聴し侵害者に利益をもたらすことから、侵害コンテンツを含む模倣品・海賊版を容認しないということが国民の規範意識に根差すよう、各省庁、関係機関が一体となった啓発活動を推進する。(短期、中期)(警察庁、消費者庁、財務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省)

・越境電子商取引の進展に伴う模倣品・海賊版の流入増加へ対応するため、個人使用目的を仮装して輸入される模倣品・海賊版を引き続き厳正に取り締まるとともに、特に増加が顕著な模倣品の個人使用目的の輸入については、権利者等の被害状況等及び諸外国における制度整備を含めた運用状況を踏まえ、具体的な対応の方向性について検討する。(短期)(財務省、経済産業省)

 そして、著作権法改正については、第26ページに以下の様な項目がある。

・2018年の著作権法の改正に伴い、ガイドラインの策定や著作権に関する普及・啓発など、法の適切な運用環境の整備を行う。(短期)(文部科学省)

・研究目的の権利制限規定の創設や写り込みに係る権利制限規定の拡充等、著作物の公正な利用の促進のための措置について、権利者の利益保護に十分に配慮しつつ検討を進め、結論を得て、必要な措置を講ずる。(短期、中期)(文部科学省)

 また、著作権問題という事では、昔から同じ話を続けているが、第35ページに、次の様な同時配信と私的録音録画補償金問題に関する項目もある。

・同時配信等に係る著作隣接権の取扱いなど制度改正を含めた権利処理の円滑化について、関係者の意向を十分に踏まえつつ、運用面の改善を着実に進めるとともに、制度の在り方について、年度内早期に関係省庁で具体的な検討作業を開始し、必要に応じた見直しを本年度中に行う。(短期・中期)(総務省、文部科学省)

・クリエーターに適切に対価が還元され、コンテンツの再生産につながるよう、私的録音録画補償金制度の見直しや当該制度に代わる新たな仕組みの導入について検討を進め、結論を得て、必要な措置を講ずる。(短期、中期)(文部科学省、内閣府、総務省、経済産業省)

 ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大とリーチサイト規制を含む著作権法改正案(第406回参照)が国会提出を見送られた後、まだ今期の文化審議会・著作権分科会が開かれていないので、著作権法改正の検討状況は不明だが、前の法改正案の再提出も含め文化庁の動きに今後も注意が必要なのは間違いない。

 私としては、実際には必要がなかったにもかかわらずTPP11協定の発効とともになし崩しでされた著作権保護期間延長の問題などについても言い続けるつもりだが、今年の知財計画を見ても、日本の知財政策の迷走が止まる事はないと思えるし、引き続き最大限注意すべきは、著作権ブロッキングやアクセス警告方式の導入を巡る海賊版対策に関する検討、ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大とリーチサイト規制を含む著作権法改正問題の行方という事になるだろう。

(2019年6月26日夜の追記:知財本部HPで案の取れた正式版の知財計画が公開されていたので、上のリンクを入れ替えた。)

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2019年2月 3日 (日)

第404回:「知的財産推進計画2019」の策定に向けた意見募集(2月15日〆切)への提出パブコメ

 今年も知財本部から2月15日〆切でかかっている、「知的財産推進計画2019」の策定に向けた意見募集(知財本部HP募集要領(pdf)参照)に意見を出したので、ここに載せておく。

 今年はTPP11協定発効にともなう著作権保護期間の延長、知財本部での著作権ブロッキングの検討、文化庁のダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大の動きを受けて内容をそれぞれの項目で少し書き直している。(去年の提出パブコメは第388回参照、知財計画2018の内容は第395回参照。)

 意見がどれくらい取り入れられるかは分からないが、政府全体に知財政策について意見を出せる年一回の機会なので、関心のある方は是非意見の提出を検討することをお勧めする。

(2019年2月6日夜の追記:1月25日の第8回法制・基本問題小委員会の資料が文化庁のHPにアップされ、その最終版の報告書(pdf)公開されたので、ここにもリンクを張っておく。文化庁としてダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲を拡大する方針に変わりがないことはこの報告書を読んでも分かる。刑事罰について何かしらの限定が入る可能性があるとの報道もあるが、この問題は刑事罰について良く分からない限定を入れればそれで済むような話では全くない。)

(以下、提出パブコメ)

《要旨》
アメリカ等と比べて遜色の無い範囲で一般フェアユース条項を導入すること、ダウンロード犯罪化・違法化条項の撤廃並びにTPP協定・日欧EPAの見直し及び著作権の保護期間の短縮を求める。有害無益なインターネットにおける今以上の知財保護強化、特に著作権ブロッキング及び補償金の矛盾を拡大するだけの私的録音録画補償金の対象拡大に反対する。今後真の国民視点に立った知財の規制緩和の検討が進むことを期待する。

《全文》
 最終的に国益になるであろうことを考え、各業界の利権や省益を超えて必要となる政策判断をすることこそ知財本部とその事務局が本当になすべきことのはずであるが、知財計画2018を見ても、このような本当に政策的な決定は全く見られない上、2018年には危険極まる著作権ブロッキングのごり押しの検討まで行われた。知財保護が行きすぎて消費者やユーザーの行動を萎縮させるほどになれば、確実に文化も産業も萎縮するので、知財保護強化が必ず国益につながる訳ではないということを、著作権問題の本質は、ネットにおける既存コンテンツの正規流通が進まないことにあるのではなく、インターネットの登場によって新たに出てきた著作物の公正利用の類型に、今の著作権法が全く対応できておらず、著作物の公正利用まで萎縮させ、文化と産業の発展を阻害していることにあるのだということを知財本部とその事務局には、まずはっきりと認識してもらいたい。特に、最近の知財・情報に関する規制強化の動きは全て間違っていると私は断言する。

 例年通り、規制強化による天下り利権の強化のことしか念頭にない文化庁、総務省、警察庁などの各利権官庁に踊らされるまま、国としての知財政策の決定を怠り、知財政策の迷走の原因を増やすことしかできないようであれば、今年の知財計画を作るまでもなく、知財本部とその事務局には、自ら解散することを検討するべきである。そうでなければ、是非、各利権官庁に轡をはめ、その手綱を取って、知財の規制緩和のイニシアティブを取ってもらいたい。知財本部において今年度、インターネットにおけるこれ以上の知財保護強化はほぼ必ず有害無益かつ危険なものとなるということをきちんと認識し、真の国民視点に立った知財の規制緩和の検討が知財本部でなされることを期待し、本当に決定され、実現されるのであれば、全国民を裨益するであろうこととして、私は以下のことを提案する。

(1)「知的財産推進計画2018」の記載事項について:
a)環太平洋経済連携協定(TPP)などの経済連携協定(EPA)に関する取組について

 第78ページに継続項目として、TPPなどの協定に関する取組について書かれている。TPP協定については、2015年10月に大筋合意が発表され、文化庁、知財本部の検討を経て、11月にTPP総合対策本部でTPP関連政策大綱が決定され、さらに2016年2月に署名され、3月に関連法案の国会提出がされ、11月の臨時国会で可決・成立し、2017年1月20日に参加国として初めての国内手続きの完了に関する通報が行われた。

 しかし、この国内手続きにおいて、日本政府は、2015年10月に大筋合意の概要のみを公表し、11月のニュージーランド政府からの協定条文の英文公表時も全章概要を示したのみで、その後2ヶ月も経って2016年1月にようやく公式の仮訳を公表するなど、TPP協定の内容精査と政府への意見提出の時間を国民に実質与えない極めて姑息かつ卑劣なやり方を取っていたと言わざるを得ない。

 そして、公開された条文によって今までのリーク文書が全て正しかったことはほぼ証明されており、TPP協定は確かに著作権の保護期間延長、DRM回避規制強化、法定賠償制度、著作権侵害の非親告罪化などを含んでいる。今ですら不当に長い著作権保護期間のこれ以上の延長など本来論外だったものである。

 その後、日本政府は、アメリカ抜きの11カ国でのTPP11協定を推進し、2017年11月に大筋合意が発表され、その中で最もクリティカルな部分である著作権と特許の保護期間延長とDRM規制の強化の部分が凍結さたにもかかわらず、これらの事項を含む国内関連法改正案を2018年3月に国会に提出し(6月に可決・成立)、2018年12月のTPP11協定の発効とともに施行するという戦後最大級の愚行をなした。このようになし崩しで極めて危険な法改正がなされたことを私は一国民として強く非難する。

 2017年12月には、同じく著作権の保護期間延長を含む日EU(欧)EPA交渉も妥結され、2018年2月に発効している。しかし、この日欧EPA交渉もTPP協定同様の姑息かつ卑劣な秘密交渉で決められたものである。その内容についてほとんど何の説明もないままに著作権の保護期間延長のような国益の根幹に関わる点について日本政府は易々と譲歩した。これは完全に国民をバカにしているとしか言いようがない。

 これらのTPP協定及び日欧EPAについてその内容の見直しを各加盟国に求めること及び著作権の保護期間の短縮について速やかに検討を開始することを私は求める。

 また、TPP交渉や日欧EPA交渉のような国民の生活に多大の影響を及ぼす国際交渉が政府間で極秘裏に行われたことも大問題である。国民一人一人がその是非を判断できるよう、途中経過も含めその交渉に関する情報をすべて速やかに公開するべきである。

 なお、トランプ現アメリカ大統領は日米で2国間の通商交渉を行うともしており、このような交渉の中でTPP協定交渉同様に知財規制の強化が求められる可能性があるが、上で書いた通り、これ以上の知財規制の強化は危険なものとしかなり得ないものであり、そのような要求は日本政府として毅然とはねのけるべきである。

b)DRM回避規制について
 経産省と文化庁の主導により無意味にDRM回避規制を強化する不正競争防止法と著作権法の改正案がそれぞれ以前国会を通され、2018年に不正競争防止法がさらに改正され、2018年12月に意見募集がされた文化庁の法制・基本問題小委員会の中間まとめにも同様の法改正事項が含まれているが、これらの法改正を是とするに足る立法事実は何一つない。不正競争防止法と著作権法でDRM回避機器等の提供等が規制され、著作権法でコピーコントロールを回避して行う私的複製まで違法とされ、十二分以上に規制がかかっているのであり、これ以上の規制強化は、ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ない。

 特に、DRM回避規制に関しては、有害無益な規制強化の検討ではなく、まず、私的なDRM回避行為自体によって生じる被害は無く、個々の回避行為を一件ずつ捕捉して民事訴訟の対象とすることは困難だったにもかかわらず、文化庁の片寄った見方から一方的に導入されたものである、私的な領域でのコピーコントロール回避規制(著作権法第30条第1項第2号)の撤廃の検討を行うべきである。コンテンツへのアクセスあるいはコピーをコントロールしている技術を私的な領域で回避しただけでは経済的損失は発生し得ず、また、ネットにアップされることによって生じる被害は公衆送信権によって既にカバーされているものであり、その被害とDRM回避やダウンロードとを混同することは絶対に許されない。それ以前に、私法である著作権法が、私的領域に踏み込むということ自体異常なことと言わざるを得ない。何ら立法事実の変化がない中、ドサクサ紛れに通された、先般の不正競争防止法改正によるDRM規制の強化や、以前の著作権法改正で導入されたアクセスコントロール関連規制の追加等について、速やかに元に戻す検討がなされるべきである。

 TPP協定にはDRM回避規制の強化も含まれており、上で書いた通り、これ以上のDRM回避規制の強化がされるべきではなく、この点でも私はTPP協定の見直しを求める。

c)海賊版対策条約(ACTA)について
 第78ページでは継続項目としてACTAへの言及もなされているが、このACTAを背景に経産省及び文化庁の主導により無意味にDRM回避規制を強化する不正競争防止法及び著作権法の改正案が以前国会を通され、ACTA自体も国会で批准された。しかし、このようなユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ない規制強化条項を含む条約の交渉、署名及び批准は何ら国民的なコンセンサスが得られていない中でなされており、私は一国民としてACTAに反対する。今なおACTAの批准国は日本しかなく、日本は無様に世界に恥を晒し続けている。もはやACTAに何ら意味はなく、日本は他国への働きかけを止めるとともに自ら脱退してその失敗を認めるべきである。

d)一般フェアユース条項の導入について
 第25~26ページで柔軟性の高い権利制限規定について言及されている。2018年に個別の権利制限を拡充する著作権法改正がなされており、これはその限りにおいて評価できるものではあるが、本当の意味で柔軟な一般フェアユース条項を入れるものではない。

 一般フェアユース条項については、一から再検討を行い、ユーザーに対する意義からも、アメリカ等と遜色ない形で一般フェアユース条項を可能な限り早期に導入するべきである。特に、インターネットのように、ほぼ全国民が利用者兼権利者となり得、考えられる利用形態が発散し、個別の規定では公正利用の類型を拾い切れなくなるところでは、フェアユースのような一般規定は保護と利用のバランスを取る上で重要な意義を持つものである。

 今後の検討によっても幾つかの個別の権利制限が追加される可能性があるが、これらはあった方が良いものとは言え、到底一般フェアユース条項と言うに足るものではなく、これでは著作権をめぐる今の混迷状況が変わることはない。

 著作物の公正利用には変形利用もビジネス利用も考えられ、このような利用も含めて著作物の公正利用を促すことが、今後の日本の文化と経済の発展にとって真に重要であることを考えれば、不当にその範囲を不当に狭めるべきでは無く、その範囲はアメリカ等と比べて遜色の無いものとされるべきである。ただし、フェアユースの導入によって、私的複製の範囲が縮小されることはあってはならない。

 また、「まねきTV」事件などの各種判例からも、ユーザー個人のみによって利用されるようなクラウド型サービスまで著作権法上ほぼ違法とされてしまう状況に日本があることは明らかであり、このような状況は著作権法の趣旨に照らして決して妥当なことではない。ユーザーが自ら合法的に入手したコンテンツを私的に楽しむために利用することに著作権法が必要以上に介入することが許されるべきではなく、個々のユーザーが自らのためのもに利用するようなクラウド型サービスにまで不必要に著作権を及ぼし、このような技術的サービスにおけるトランザクションコストを過大に高め、その普及を不当に阻害することに何ら正当性はない。この問題がクラウド型サービス固有の問題でないのはその通りであるが、だからといって法改正の必要性がなくなる訳ではない。著作権法の条文及びその解釈・運用が必要以上に厳格に過ぎクラウド型サービスのような技術の普及が不当に阻害されているという日本の悲惨な現状を多少なりとも緩和するべく、速やかに問題を再整理し、アメリカ等と比べて遜色の無い範囲で一般フェアユース条項を導入し、同時にクラウド型サービスなどについてもすくい上げられるようにするべきである。

 権利を侵害するかしないかは刑事罰がかかるかかからないかの問題でもあり、公正という概念で刑事罰の問題を解決できるのかとする意見もあるようだが、かえって、このような現状の過剰な刑事罰リスクからも、フェアユースは必要なものと私は考える。現在親告罪であることが多少セーフハーバーになっているとはいえ、アニメ画像一枚の利用で別件逮捕されたり、セーフハーバーなしの著作権侵害幇助罪でサーバー管理者が逮捕されたりすることは、著作権法の主旨から考えて本来あってはならないことである。政府にあっては、著作権法の本来の主旨を超えた過剰リスクによって、本来公正として認められるべき事業・利用まで萎縮しているという事態を本当に深刻に受け止め、一刻も早い改善を図ってもらいたい。

 個別の権利制限規定の迅速な追加によって対処するべきとする意見もあるが、文化庁と癒着権利者団体が結託して個別規定すらなかなか入れず、入れたとしても必要以上に厳格な要件が追加されているという惨憺たる現状において、個別規定の追加はこの問題における真の対処たり得ない。およそあらゆる権利制限について、文化庁と権利者団体が結託して、全国民を裨益するだろう新しい権利制限を潰すか、極めて狭く使えないものとして来たからこそ、今一般規定が社会的に求められているのだという、国民と文化の敵である文化庁が全く認識していないだろう事実を、政府・与党は事実としてはっきりと認めるべきである。

e)私的録音録画補償金問題について
 第26ページでは私的録音録画補償金問題についても言及されている。権利者団体等が単なる既得権益の拡大を狙ってiPod等へ対象範囲を拡大を主張している私的録音録画補償金問題についても、補償金のそもそもの意味を問い直すことなく、今の補償金の矛盾を拡大するだけの私的録音録画補償金の対象拡大を絶対にするべきではない。

 文化庁の文化審議会著作権分科会における数年の審議において、補償金のそもそもの意義についての意義が問われたが、文化庁が、天下り先である権利者団体のみにおもねり、この制度に関する根本的な検討を怠った結果、特にアナログチューナー非対応録画機への課金について私的録音録画補償金管理協会と東芝間の訴訟に発展した。ブルーレイ課金・アナログチューナー非搭載録画機への課金について、権利者団体は、ダビング10への移行によってコピーが増え自分たちに被害が出ると大騒ぎをしたが、移行後8年以上経った今現在においても、ダビング10の実施による被害増を証明するに足る具体的な証拠は全く示されておらず、ブルーレイ課金・アナログチューナー非搭載録画機への課金に合理性があるとは到底思えない。わずかに緩和されたとは言え、今なお地上デジタル放送にはダビング10という不当に厳しいコピー制限がかかったままである。こうした実質的に全国民に転嫁されるコストで不当に厳しい制限を課している機器と媒体にさらに補償金を賦課しようとするのは、不当の上塗りである。

 なお、世界的に見ても、メーカーや消費者が納得して補償金を払っているということはカケラも無く、権利者団体がその政治力を不当に行使し、歪んだ「複製=対価」の著作権神授説に基づき、不当に対象を広げ料率を上げようとしているだけというのがあらゆる国における実情である。表向きはどうあれ、大きな家電・PCメーカーを国内に擁しない欧州各国は、私的録音録画補償金制度を、外資から金を還流する手段、つまり、単なる外資規制として使っているに過ぎない。この制度における補償金の対象・料率に関して、具体的かつ妥当な基準はどこの国を見ても無いのであり、この制度は、ほぼ権利者団体の際限の無い不当な要求を招き、莫大な社会的コストの浪費のみにつながっている。機器・媒体を離れ音楽・映像の情報化が進む中、「複製=対価」の著作権神授説と個別の機器・媒体への賦課を基礎とする私的録音録画補償金は、既に時代遅れのものとなりつつあり、その対象範囲と料率のデタラメさが、デジタル録音録画技術の正常な発展を阻害し、デジタル録音録画機器・媒体における正常な競争市場を歪めているという現実は、補償金制度を導入したあらゆる国において、問題として明確に認識されなくてはならないことである。

f)インターネット上の著作権侵害の抑止及び著作権法におけるいわゆる間接侵害・幇助への対応について
 第19~20ページにインターネット上の著作権侵害の抑止について、特にリーチサイト対策の検討について書かれており、2018年12月に意見募集が行われた文化庁の法制・基本問題小委員会の中間まとめにおいて、著作権侵害コンテンツへのリンク行為に対するみなし侵害規定の追加及び刑事罰付加の方針が示された。

 リーチサイト対策の検討は、著作権法におけるいわゆる間接侵害・幇助への対応をどうするかという問題に帰着する。本当に悪質な場合について現行法で不十分というところがあれば、その点について立法による対処も当然あり得るだろうが、文化庁の中間まとめを読んでも、権利者団体の一方的かつ曖昧な主張が並べられているだけで、権利者団体側がリーチサイト等に対して現行法に基づいてどこまで何をしたのか、現行法による対処に関する定量的かつ論理的な検証は何らされておらず、本当にどのような場合について現行法では不十分なのかは全く不明である。このような現行の著作権法における民事の間接侵害(カラオケ法理)あるいは刑事の著作権侵害幇助との関係整理をおざなりにした、著作権侵害コンテンツへのリンク行為に対するみなし侵害規定の追加及び刑事罰付加に私は反対する。

 さらに、このような間接侵害あるいは幇助の検討において当然必要とされるはずのセーフハーバーの検討も極めて不十分であって、インターネット利用における民事・刑事のリスクに関する不確実性を増すだけである、このような不十分な検討に基づく法改正に私は断固反対する。

 このようなリーチサイト問題も含め、ネット上の違法コンテンツ対策、違法ファイル共有対策については、通信の秘密やプライバシー、情報アクセス権等の国民の基本的な権利をきちんと尊重しつつ対策を検討してもらいたい。この点においても、国民の基本的な権利を必ず侵害するものとなり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害することにつながる危険な規制強化の検討ではなく、ネットにおける各種問題は情報モラル・リテラシー教育によって解決されるべきものという基本に立ち帰り、現行のプロバイダー責任制限法と削除要請を組み合わせた対策などの、より現実的かつ地道な施策のみに注力して検討を進めるべきである。

 確かにセーフハーバーを確定するためにも間接侵害・幇助の明確化はなされるべきであるが、現行の条文におけるカラオケ法理や各種ネット録画機事件などで示されたことの全体的な整理以上のことをしてはならない。特に、著作権法に明文の間接侵害一般規定を設けることは絶対にしてはならないことである。確かに今は直接侵害規定からの滲み出しで間接侵害を取り扱っているので不明確なところがあるのは確かだが、現状の整理を超えて、明文の間接侵害一般規定を作った途端、権利者団体や放送局がまず間違いなく山の様に脅しや訴訟を仕掛けて来、今度はこの間接侵害規定の定義やそこからの滲み出しが問題となり、無意味かつ危険な社会的混乱を来すことは目に見えているからである。知財計画2019において間接侵害・幇助への対応について記載するのであれば、著作権法の間接侵害・幇助の明確化は、ネット事業・利用の著作権法上のセーフハーバーを確定するために必要十分な限りにおいてのみなされると合わせ明記してもらいたい。

g)著作権ブロッキングについて
 第19ページではサイトブロッキングへの言及もあり、知財本部において、2018年4月の緊急対策の決定後、10月まで検討が行われた。

 このようなサイトブロッキングについて、アメリカでは、議会に提出されたサイトブロッキング条項を含むオンライン海賊対策法案(SOPA)や知財保護強化法案(PIPA)が、IT企業やユーザーから検閲であるとして大反対を受け、その審議は止められている。また、世界を見渡しても、ブロッキングを巡ってはどの国であれなお混沌とした状況にあり、いかなる形を取るにせよブロッキングの採用が有効な海賊版対策として世界の主要な流れとなっているとは到底言い難い。

 サイトブロッキングの問題については下でも述べるが、インターネット利用者から見てその妥当性をチェックすることが不可能なサイトブロッキングにおいて、透明性・公平性・中立性を確保することは本質的に完全に不可能である。このようなブロッキングは、憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止、通信の秘密といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないものであり、決して導入されるべきでないものである。

 幸いなことに、10月で知財本部におけるブロッキングの検討は止まったが、多くの懸念の声が上げられていたにもかかわらず、10月までブロッキングありきでごり押しの検討を行ったことについて私は知財本部に猛省を求める。知財計画2019においてブロッキングについて言及するのであれば、2018年の検討の反省の弁とともに今後二度とこのような国民の基本的な権利を踏みにじる検討をしないと固く誓うとしてもらいたい。

 その提案からも明確なように、違法コピー対策問題における権利者団体の主張は常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。今後は、このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むことを検討するべきである。同じく、憲法に規定されている検閲の禁止及び通信の秘密から、サイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むことを検討するべきである。

(2)その他の知財政策事項について:
a)ダウンロード違法化・犯罪化問題について

 文化庁の暴走と国会議員の無知によって、2009年の6月12日にダウンロード違法化条項を含む改正著作権法が成立し、2010年の1月1日に施行された。また、日本レコード協会などのロビー活動により、自民党及び公明党が主導する形でダウンロード犯罪化条項がねじ込まれる形で、2012年6月20日に改正著作権法が成立し、2012年10月1日から施行されている。

 そして、2018年12月に意見募集がされた文化庁の法制・基本問題小委員会の中間まとめにおいて、極めて拙速な検討から、このダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲を録音録画から著作物全般に拡大するとの方針が示され、その意見募集において極めて多くの懸念が示されたにもかかわらず、今なお文化庁はこの方針を諦めずにダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大を含む著作権法改正案の提出を準備していると思われる。

 しかし、一人しか行為に絡まないダウンロードにおいて、「事実を知りながら」なる要件は、エスパーでもない限り証明も反証もできない無意味かつ危険な要件であり、技術的・外形的に違法性の区別がつかない以上、このようなダウンロード違法化・犯罪化は法規範としての力すら持ち得ず、罪刑法定主義や情報アクセス権を含む表現の自由などの憲法に規定される国民の基本的な権利の観点からも問題がある。このような法改正によって進むのはダウンロード以外も含め著作権法全体に対するモラルハザードのみであり、今のところ幸いなことに適用例はないが、これを逆にねじ曲げてエンフォースしようとすれば、著作権検閲という日本国として最低最悪の手段に突き進む恐れしかない。

 また、世界的に見ても、アップロードとダウンロードを合わせて行うファイル共有サービスに関する事件を除き、どの国においても単なるダウンロード行為を対象とする民事、刑事の事件は1件もなく、日本における現行の録音録画に関するダウンロード違法化・犯罪化も含め、このような法制が海賊版対策として何の効果も上がっていないことは明白である。また、ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大は、研究など公正利用として認められるべき目的のダウンロードにも影響する。

 そもそも、ダウンロード違法化の懸念として、このような不合理極まる規制強化・著作権検閲に対する懸念は、過去の文化庁へのパブコメ(文化庁HPhttp://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hokoku.htmlの意見募集の結果参照。ダウンロード違法化問題において、この8千件以上のパブコメの7割方で示された国民の反対・懸念は完全に無視された。このような非道極まる民意無視は到底許されるものではない)や知財本部へのパブコメ(知財本部のHPhttp://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keikaku2009.htmlの個人からの意見参照)を見ても分かる通り、法改正前から指摘されていたところであり、このようなさらなる有害無益な規制強化・著作権検閲にしか流れようの無いダウンロード違法化・犯罪化は始めからなされるべきではなかったものである。ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大の検討については全て白紙に戻し、文化庁の暴走と国会議員の無知によって成立したものであり、ネット利用における個人の安心と安全を完全にないがしろにするものである、百害あって一利ないダウンロード違法化・犯罪化を規定する著作権法第30条第1項第3号及び第119条第3項を即刻削除するべきである。

b)コピーワンス・ダビング10・B-CAS問題について
 私はコピーワンスにもダビング10にも反対する。そもそも、この問題は、放送局・権利者にとっては、視聴者の利便性を著しく下げることによって、一旦は広告つきながらも無料で放送したコンテンツの市場価格を不当につり上げるものとして機能し、国内の大手メーカーとっては、B-CASカードの貸与と複雑な暗号システムを全てのテレビ・録画機器に必要とすることによって、中小・海外メーカーに対する参入障壁として機能するB-CASシステムの問題を淵源とするのであって、このB-CASシステムと独禁法の関係を検討するということを知財計画2019では明記してもらいたい。検討の上B-CASシステムが独禁法違反とされるなら、速やかにその排除をして頂きたい。また、無料の地上放送において、逆にコピーワンスやダビング10のような視聴者の利便性を著しく下げる厳格なコピー制御が維持されるのであれば、私的録画補償金に存在理由はなく、これを速やかに廃止するべきである。

 4K放送について、無料放送を録画不可とできるようにする検討が放送局とメーカーで構成される次世代放送推進フォーラムにおいて行われているという報道もあった。その後の検討は不明だが、上で書いたような、コピーワンスやダビング10の愚を繰り返してはならない。このような消費者の利便性に極めて大きな影響を持つ検討については可能な限り速やかに今まで及び今後の検討の公開並びに利用者・消費者からの意見の取り入れを促すべきである。

c)著作権検閲・ストライクポリシーについて
 ファイル共有ソフトを用いて著作権を侵害してファイル等を送信していた者に対して警告メールを送付することなどを中心とする電気通信事業者と権利者団体の連携による著作権侵害対策が警察庁、総務省、文化庁などの規制官庁が絡む形で行われており、警察によってファイル共有ネットワークの監視も行われているが、このような対策は著作権検閲に流れる危険性が極めて高い。

 フランスで導入が検討された、警告メールの送付とネット切断を中心とする、著作権検閲機関型の違法コピー対策である3ストライクポリシーは、2009年6月に、憲法裁判所によって、インターネットのアクセスは、表現の自由に関係する情報アクセスの権利、つまり、最も基本的な権利の1つとしてとらえられるとされ、著作権検閲機関型の3ストライクポリシーは、表現の自由・情報アクセスの権利やプライバシーといった他の基本的な権利をないがしろにするものとして、真っ向から否定されている。ネット切断に裁判所の判断を必須とする形で導入された変形ストライク法も何ら効果を上げることなく、フランスでは今もストライクポリシーについて見直しの検討が行われており、2013年7月にはネット切断の罰が廃止されている。日本においては、このようなフランスにおける政策の迷走を他山の石として、このように表現の自由・情報アクセスの権利やプライバシーといった他の基本的な権利をないがしろにする対策を絶対に導入しないこととするべきであり、警察庁などが絡む形で検討されている違法ファイル共有対策についても、通信の秘密やプライバシー、情報アクセス権等の国民の基本的な権利をきちんと尊重する形で進めることが担保されなくてはならない。

d)著作権法へのセーフハーバー規定の導入について
 動画投稿サイト事業者がJASRACに訴えられた「ブレイクTV」事件や、レンタルサーバー事業者が著作権幇助罪で逮捕され、検察によって姑息にも略式裁判で50万円の罰金を課された「第(3)世界」事件や、1対1の信号転送機器を利用者からほぼ預かるだけのサービスが放送局に訴えられ、最高裁判決で違法とされた「まねきTV」事件等を考えても、今現在、カラオケ法理の適用範囲はますます広く曖昧になり、間接侵害や著作権侵害幇助のリスクが途方もなく拡大し、甚大な萎縮効果・有害無益な社会的大混乱が生じかねないという非常に危険な状態がなお続いている。間接侵害事件や著作権侵害幇助事件においてネット事業者がほぼ直接権利侵害者とみなされてしまうのでは、プロバイダー責任制限法によるセーフハーバーだけでは不十分であり、間接侵害や著作権侵害幇助罪も含め、著作権侵害とならない範囲を著作権法上きちんと確定することは喫緊の課題である。ただし、このセーフハーバーの要件において、標準的な仕組み・技術や違法性の有無の判断を押しつけるような、権利侵害とは無関係の行政機関なり天下り先となるだろう第3者機関なりの関与を必要とすることは、検閲の禁止・表現の自由等の国民の権利の不当な侵害に必ずなるものであり、絶対にあってはならないことである。

 知財計画2019において、プロバイダに対する標準的な著作権侵害技術導入の義務付け等を行わないことを合わせ明記するとともに、間接侵害や刑事罰・著作権侵害幇助も含め著作権法へのセーフハーバー規定の速やかな導入を検討するとしてもらいたい。この点に関しては、逆に、検閲の禁止や表現の自由の観点から技術による著作権検閲の危険性の検討を始めてもらいたい。

e)二次創作規制の緩和について
 2014年8月のクールジャパン提言の第13ページに「クリエイティビティを阻害している規制についてヒアリングし規制緩和する。コンテンツの発展を阻害する二次創作規制、ストリートパフォーマンスに関する規制など、表現を限定する規制を見直す。」と記載されている通り、二次創作は日本の文化的創作の原動力の一つになっており、その推進のために現状の規制を緩和する必要がある。これは知的財産に関わる重要な提言であり、二次創作規制を緩和するという記載を知財計画2019においてもそのまま取り入れ、政府としてこのような規制の緩和を強力に推進することを重ねてきちんと示すべきである。

f)著作権等に関する真の国際動向について国民へ知らされる仕組みの導入及び文化庁ワーキンググループの公開について
 WIPO等の国際機関にも、政府から派遣されている者はいると思われ、著作権等に関する真の国際動向について細かなことまで即座に国民へ知らされる仕組みの導入を是非検討してもらいたい。

 また、2013年からの著作物等の適切な保護と利用・流通に関するワーキングチーム及び2015年からの新たな時代のニーズに的確に対応した制度等の整備に関するワーキングチームの審議は公開とされたが、文化庁はワーキングチームについて公開審議を原則とするにはなお至っていない。上位の審議会と同様今後全てのワーキンググループについて公開審議を原則化するべきである。

g)天下りについて
 最近文部科学省の天下り問題が大きく報道され、全省庁で調査を行うこととなっているようだが、知財政策においても、天下り利権が各省庁の政策を歪めていることは間違いなく、知財政策の検討と決定の正常化のため、文化庁から著作権関連団体への、総務省から放送通信関連団体・企業への、警察庁からインターネットホットラインセンター他各種協力団体・自主規制団体への天下りの禁止を知財本部において決定して頂きたい。(これらの省庁は特にひどいので特に名前をあげたが、他の省庁も含めて決定してもらえるなら、それに超したことはない。)

(3)その他一般的な情報・ネット・表現規制について
 知財計画改訂において、一般的な情報・ネット・表現規制に関する項目は削除されているが、常に一方的かつ身勝手な主張を繰り広げる自称良識派団体が、意味不明の理屈から知財とは本来関係のない危険な規制強化の話を知財計画に盛り込むべきと主張をしてくることが十分に考えられるので、ここでその他の危険な一般的な情報・ネット・表現規制強化の動きに対する反対意見も述べる。今後も、本来知財とは無関係の、一般的な情報・ネット・表現規制に関する項目を絶対に知財計画に盛り込むことのないようにしてもらいたい。

a)青少年ネット規制法・出会い系サイト規制法について
 そもそも、青少年ネット規制法は、あらゆる者から反対されながら、有害無益なプライドと利権を優先する一部の議員と官庁の思惑のみで成立したものであり、速やかに廃止が検討されるべきものである。また、出会い系サイト規制法の改正は、警察庁が、どんなコミュニケーションサイトでも人は出会えるという誰にでも分かることを無視し、届け出制の対象としては事実上定義不能の「出会い系サイト事業」を定義可能と偽り、改正法案の閣議決定を行い、法案を国会に提出したものであり、他の重要法案と審議が重なる中、国会においてもその本質的な問題が見過ごされて可決され、成立したものである。憲法上の罪刑法定主義や検閲の禁止にそもそも違反している、この出会い系サイト規制法の改正についても、今後、速やかに元に戻すことが検討されるべきである。

b)児童ポルノ規制・サイトブロッキングについて
 児童ポルノ法規制強化問題・有害サイト規制問題における自称良識派団体の主張は、常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。今後は、このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むべきである。同じく、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むべきである。

 閲覧とダウンロードと取得と所持の区別がつかないインターネットにおいては、例え児童ポルノにせよ、情報の単純所持や取得の規制は有害無益かつ危険なもので、憲法及び条約に規定されている「知る権利」を不当に害するものとなる。「自身の性的好奇心を満たす目的で」、積極的あるいは意図的に画像を得た場合であるなどの限定を加えたところで、エスパーでもない限りこのような積極性を証明することも反証することもできないため、このような情報の単純所持や取得の規制の危険性は回避不能であり、思想の自由や罪刑法定主義にも反する。繰り返し取得としても、インターネットで2回以上他人にダウンロードを行わせること等は技術的に極めて容易であり、取得の回数の限定も、何ら危険性を減らすものではない。

 児童ポルノ規制の推進派は常に、提供による被害と単純所持・取得を混同する狂った論理を主張するが、例えそれが児童ポルノであろうと、情報の単純所持ではいかなる被害も発生し得ない。現行法で、ネット上であるか否かにかかわらず、提供及び提供目的の所持が規制されているのであり、提供によって生じる被害と所持やダウンロード、取得、収集との混同は許され得ない。そもそも、最も根本的なプライバシーに属する個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ることは、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の基本的な権利からあってはならないことである。

 アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現に対する規制対象の拡大も議論されているが、このような対象の拡大は、児童保護という当初の法目的を大きく逸脱する、異常規制に他ならない。アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現において、いくら過激な表現がなされていようと、それが現実の児童被害と関係があるとする客観的な証拠は何一つない。いまだかつて、この点について、単なる不快感に基づいた印象批評と一方的な印象操作調査以上のものを私は見たことはないし、虚構と現実の区別がつかないごく一部の自称良識派の単なる不快感など、言うまでもなく一般的かつ網羅的な表現規制の理由には全くならない。アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現が、今の一般的なモラルに基づいて猥褻だというのなら、猥褻物として取り締まるべき話であって、それ以上の話ではない。どんな法律に基づく権利であれ、権利の侵害は相対的にのみ定まるものであり、実際の被害者の存在しない創作物・表現に対する規制は何をもっても正当化され得ない。民主主義の最重要の基礎である表現の自由や言論の自由、思想の自由等々の最も基本的な精神的自由そのものを危うくすることは絶対に許されない。この点で、2012年6月にスウェーデンで漫画は児童ポルノではないとする最高裁判決が出されたことなども注目されるべきである。

 単純所持規制にせよ、創作物規制にせよ、両方とも1999年当時の児童ポルノ法制定時に喧々囂々の大議論の末に除外された規制であり、規制推進派が何と言おうと、これらの規制を正当化するに足る立法事実の変化はいまだに何一つない。

 既に、警察などが提供するサイト情報に基づき、統計情報のみしか公表しない不透明な中間団体を介し、児童ポルノアドレスリストの作成が行われ、そのリストに基づいて、ブロッキング等が行われているが、いくら中間に団体を介そうと、一般に公表されるのは統計情報に過ぎす、児童ポルノであるか否かの判断情報も含め、アドレスリストに関する具体的な情報は、全て閉じる形で秘密裏に保持されることになるのであり、インターネット利用者から見てそのリストの妥当性をチェックすることは不可能であり、このようなアドレスリストの作成・管理において、透明性・公平性・中立性を確保することは本質的に完全に不可能である。このようなリストに基づくブロッキング等は、自主的な取組という名目でいくら取り繕おうとも、憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないのであり、小手先の運用変更などではどうにもならない。

 児童ポルノ規制法に関しては、提供及び提供目的での所持が禁止されているのであるから、本当に必要とされることはこの規制の地道なエンフォースであって有害無益かつ危険極まりない規制強化の検討ではない。DVD販売サイトなどの海外サイトについても、本当に児童ポルノが販売されているのであれば、速やかにその国の警察に通報・協力して対処すべきだけの話であって、それで対処できないとするに足る具体的根拠は全くない。警察自らこのような印象操作で規制強化のマッチポンプを行い、警察法はおろか憲法の精神にすら違背していることについて警察庁は恥を知るべきである。例えそれが何であろうと、情報の単純所持や単なる情報アクセスではいかなる被害も発生し得えないのであり、自主的な取組という名目でいくら取り繕おうとも、憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないサイトブロッキングは即刻排除するべきであり、そのためのアドレスリスト作成管理団体として設立された、インターネットコンテンツセーフティ協会は即刻その解散が検討されてしかるべきである。

 なお、民主主義の最重要の基礎である表現の自由に関わる問題において、一方的な見方で国際動向を決めつけることなどあってはならないことであり、欧米においても、情報の単純所持規制やサイトブロッキングの危険性に対する認識はネットを中心に高まって来ていることは決して無視されてはならない。例えば、欧米では既にブロッキングについてその恣意的な運用によって弊害が生じていることや、アメリカにおいても、2009年に連邦最高裁で児童オンライン保護法が違憲として完全に否定され、2011年6月に連邦最高裁でカリフォルニア州のゲーム規制法が違憲として否定されていること、ドイツで児童ポルノサイトブロッキング法は検閲法と批判され、最終的に完全に廃止されたことなども注目されるべきである(http://www.zdnet.de/news/41558455/bundestag-hebt-zensursula-gesetz-endgueltig-auf.htm参照)。スイスの2009年の調査でも、2002年に児童ポルノ所持で捕まった者の追跡調査を行っているが、実際に過去に性的虐待を行っていたのは1%、6年間の追跡調査で実際に性的虐待を行ったものも1%に過ぎず、児童ポルノ所持はそれだけでは、性的虐待のリスクファクターとはならないと結論づけており、児童ポルノの単純所持規制・ブロッキングの根拠は完全に否定されているのである(http://www.biomedcentral.com/1471-244X/9/43/abstract参照)。欧州連合において、インターネットへのアクセスを情報の自由に関する基本的な権利として位置づける動きがあることも見逃されてはならない。政府・与党内の検討においては、このような国際動向もきちんと取り上げるべきである。

 そして、単純所持規制に相当し、上で書いた通り問題の大きい性的好奇心目的所持罪を含む児童ポルノの改正法案が国会で2014年6月18日に可決・成立し、同年6月25日に公布され、2015年7月15日に施行された。この問題の大きい性的好奇心目的所持罪を規定する児童ポルノ規制法第7条第1項は即刻削除するべきであり、合わせ、政府・与党においては、児童ポルノを対象とするものにせよ、いかなる種類のものであれ、情報の単純所持・取得規制・ブロッキングは極めて危険な規制であるとの認識を深め、このような規制を絶対に行わないこととして、危険な法改正案が2度と与野党から提出されることが無いようにするべきである。

 さらに、性的好奇心目的所持罪を規定する児童ポルノ規制法第7条第1項を削除するとともに、児童ポルノの単純所持規制・創作物規制といった非人道的な規制を導入している諸国は即刻このような規制を廃止するべきと、そもそも最も根本的なプライバシーに属し、何ら実害を生み得ない個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ること自体、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の国際的かつ一般的に認められている基本的な権利からあってはならないことであると、日本政府から国際的な場において各国に積極的に働きかけてもらいたい。

 また、様々なところで検討されている有害サイト規制についても、その規制は表現に対する過度広汎な規制で違憲なものとしか言いようがなく、各種有害サイト規制についても私は反対する。

c)東京都青少年健全育成条例他、地方条例の改正による情報規制問題について
 東京都でその青少年健全育成条例の改正が検討され、非実在青少年規制として大騒ぎになったあげく、2010年12月に、当事者・関係者の真摯な各種の意見すら全く聞く耳を持たれず、数々の問題を含む条例案が、都知事・東京都青少年・治安対策本部・自公都議の主導で都議会で通された。通過版の条例改正案も、非実在青少年規制という言葉こそ消えたものの、かえって規制範囲は非実在性犯罪規制とより過度に広汎かつ曖昧なものへと広げられ、有害図書販売に対する実質的な罰則の導入と合わせ、その内容は違憲としか言わざるを得ない内容のものである。また、この東京都の条例改正にも含まれている携帯フィルタリングの実質完全義務化は、青少年ネット規制法の精神にすら反している行き過ぎた規制である。さらに、大阪や京都などでは、児童ポルノに関して、法律を越える範囲で勝手に範囲を規定し、その単純所持等を禁止する、明らかに違憲な条例が通されるなどのデタラメが行われている。

 これらのような明らかな違憲条例の検討・推進は、地方自治体法第245条の5に定められているところの、都道府県の自治事務の処理が法令の規定に違反しているか著しく適正を欠きかつ明らかに公益を害していると認めるに足ると考えられるものであり、総務大臣から各地方自治体に迅速に是正命令を出すべきである。また、当事者・関係者の意見を完全に無視した東京都における検討など、民主主義的プロセスを無視した極めて非道なものとしか言いようがなく、今後の検討においてはきちんと民意が反映されるようにするため、地方自治法の改正検討において、情報公開制度の強化、審議会のメンバー選定・検討過程の透明化、パブコメの義務化、条例の改廃請求・知事・議会のリコールの容易化などの、国の制度と整合的な形での民意をくみ上げるシステムの地方自治に対する法制化の検討を速やかに進めてもらいたい。また、各地方の動きを見ていると、出向した警察官僚が強く関与する形で、各都道府県の青少年問題協議会がデタラメな規制強化騒動の震源となることが多く、今現在のデタラメな規制強化の動きを止めるべく、さらに、中央警察官僚の地方出向・人事交流の完全な取りやめ、地方青少年問題協議会法の廃止、問題の多い地方青少年問題協議会そのものの解散の促進についても速やかに検討を開始するべきである。

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2018年12月30日 (日)

第403回:2018年の終わりに

 TPP11協定の発効に伴って今日まさに著作権の保護期間の延長が施行された事を始めとして今年も非道い一年だったが、取り上げる暇があまりなかった各省庁の細かな動きについて最後にまとめて書いておきたいと思う。

 まず、知的財産関係の法改正に絡む動きとしては、特許庁から、1月16日〆切で産業構造審議会・知的財産分科会・意匠制度小委員会報告書「産業競争力の強化に資する意匠制度の見直しについて(案)」に対する意見募集の実施についてというパブコメが掛かっている。

 この特許庁の意匠制度の見直しについて(案)という報告書案は、意匠制度小委員会で検討されていたもので、意匠法の大幅な改正、保護強化を打ち出して来ており、「1.画像デザインの保護」、「2.空間デザインの保護」、「3.関連意匠制度の拡充」、「4.意匠権の存続期間の延長」、「5.複数意匠一括出願の導入」、「6.物品区分の扱いの見直し」、「7.その他」という各項目に書かれている事はどれも重要な法改正事項を含むが、ここでは、中でも大きなものと言えるだろう、「1.画像デザインの保護」、「2.空間デザインの保護」、「4.意匠権の存続期間の延長」の内容について以下簡単に紹介する。

 画像デザインの保護については、既存の意匠法の話が前提となっているので分かりにくいが、「操作画像や表示画像については、画像が物品(又はこれと一体として用いられる物品)に記録・表示されているかどうかにかかわらず保護対象とすることが適当」(第3ページ)、「他方、壁紙等の装飾的な画像や、映画・ゲーム等のコンテンツ画像等は、画像が関連する機器等の機能に関係がなく、機器等の付加価値を直接高めるものではない。これらの画像については、意匠法に基づく独占的権利を付与して保護する必要性が低いと考えられることから、保護対象に追加しないこととするべき」(同)と書かれている通りで、物品と一体となっていないような操作画像まで意匠保護の対象とするが、コンテンツ画像までは対象としないという事が書かれている。

 空間デザインの保護では、「現行意匠法の保護対象である『物品』(動産)に加え、『建築物』(不動産)を意匠の保護対象とすべき」(第5ページ)と、建築物の外観や内装まで意匠保護の対象とするとしている。

 意匠権の存続期間の延長としては、「意匠権の存続期間を20年から25年に延長すべき」(第10ページ)、「意匠権の存続期間を『登録日から20年』から、『出願日から25年』に見直すべき」と、保護期間を延長するとしている。

 特に、意匠権の保護期間延長については、報告書案の第10ページで、「意匠権の15年目現存率が、平成24年の17.3%から平成28年の22.0%へと増加していることから、意匠権を長期的に維持するニーズが高まっていることがうかがえる」、「諸外国と比較しても、欧州において、最長25年の意匠権の存続期間が認められている」と一応もっともらしい根拠も少し書かれているが、これも、本当に25年前のデザインを使う事があるのか、使う事があるとして、特許の保護期間ですら通常は20年で25年は例外的な延長の結果として認められるものに過ぎない中で、それは産業の発達のための創作保護法である意匠法で保護するべきものなのかという根本から考えるとかなり疑わしいものである。ただし、意匠権者が専有する権利は、特許と同じく、審査登録制を前提として、あくまで業として意匠の実施をする権利なので、著作権の保護期間の延長によって生じる様な問題は生じないだろう。(本報告書案の内容はともかく、意匠法の本当の問題はやはり著作権法との関係にあるのだが、そのレベルの問題の整理は極めて難しく、世界的に見ても当分進む事はないだろう。)

 特許庁が次に提出する事を考えているのだろう法改正はパブコメに掛かっている報告書案の内容の通り、意匠法中心なのだろうと思うが、特許制度小委員会商標制度小委員会も開催されており、それぞれ直近の12月25日の配布資料と12月27日の配布資料を見ると、証拠収集手続の強化や損害賠償額算定などについて検討が進められているようであり、他の事項も追加されるのかもしれない。

 経産省では、不正競争防止小委員会が11月20日に開催され、その配布資料として、限定提供データに関する指針(案)が示されている。この指針案に対するパブコメはもう締め切られているが、じきに案の取れた正式版の指針が出されるのだろう。(指針のレベルでどうこう言う事はないが、そもそもの法改正の必要性については私はいまだに疑問に思っている。)

 文化庁では、前回その報告書案に対するパブコメを載せた法制・基本問題小委員会以外にも、文化審議会・著作権分科会の下で、著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会国際小委員会が開催されている。直近の12月4日の利用・流通に関する小委員会で、配布資料として、著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の審議の経過等について(クリエーターへの適切な対価還元関係)(案)という資料が出されており、文化庁と権利者団体は相変わらず私的録音録画補償金の対象拡大を狙っていると知れるが、金さえ取れれば後は何でもいいと言わんばかりで、徹頭徹尾意味不明の理屈をずっと捏ね回している。12月19日の国際小委員会(配布資料参照)では追及権について議論された様だが、文化庁が最終的にどうするつもりなのかは良く分からない。

 知的財産戦略本部では、検証・評価・企画委員会知的財産戦略ビジョンに関する専門調査会が開催されており、各種タスクフォースも開催されているが、来年の知財計画がどうなるのか、ブロッキング問題について知財本部として今後どうするつもりなのかは良く分からない状況である。

 今年は知財本部における著作権ブロッキングの検討が止まった事はかろうじて良かった事の一つとしてあげられるが、本来必要のなかったはずの著作権保護期間延長がTPP関連と称して不合理極まる形で国会を通されて施行されてしまうなど、ここ10年ほどの間で知財政策上悪い意味で大きなターニングポイントとなってしまった年として後世評価される事になるだろう。だからと言って私は諦めるつもりもない。今年も非道い一年だったが、政官業に巣食う全ての利権屋に悪い年を、このブログを読んで下さっている方々に心からの感謝を。

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2018年9月10日 (月)

第398回:世界のブロッキングを巡る状況の概観

 知財本部でブロッキングに関する検討が異常なほどの急ピッチで継続されており、インターネット上の海賊版対策に関する検討会議は、8月25日に第5回、8月30日に第6回が開かれ、9月13日に第7回が開催される予定となっている(開催案内参照)。

 前回、ドイツの仮処分事件について書いたが、今回はその補足として世界のブロッキングを巡る状況の概観について書いておきたい。ただし、実の所、ブロッキングについては、世界のどの国でも最近それほど大きな動きがあったということはないので、今回の記事は今までの話のまとめに近く新しい情報は含まれていないことをあらかじめお断りしておく。

 ここで、ブロッキングを巡る世界の状況については、上の検討会議の第6回で弁護士の森亮二委員が資料9として提出したブロッキングの法制化に関する疑問(pdf)が、MPAAの話の受け売りで、世界各国でブロッキングが法制化されているかの様な印象操作を含む知財本部の以前の資料について「『世界42カ国』は本当か?」と疑義を呈しているのは正鵠を射ていると言っていい。

 この資料及び知財本部の検討会議で提出されている他の資料なども参照しつつ、以下、世界各国のブロッキングを巡る状況について概観をまとめて行く。

(1)欧州
 ドイツでブロッキングが初めて認容された仮処分事件について前回書いたが、そこでも書いた通り、ブロッキングを巡ってはヨーロッパの状況はなお混沌としていると私は見ている。

 上の森亮二委員の資料で疑義を呈されている知財本部の過去の資料で、欧州でブロッキングを可能とする法制があるとする根拠は、欧州著作権指令(正式名称は「情報社会における著作権及び著作隣接権のある側面の調和に関する2001年5月22日の欧州議会及び理事会の指令第2001/29号」)の第8条第3項だが、これは以下のように書かれているに過ぎない。(以下、翻訳は全て拙訳。)

Article 8 Sanctions and remedies
...
3. Member States shall ensure that rightholders are in a position to apply for an injunction against intermediaries whose services are used by a third party to infringe a copyright or related right.

第8条 罰及び救済
(略)
第3項 加盟国は、著作権又は著作隣接権を侵害するために第三者にそのサービスが使われる仲介者に対する差し止めの申請を権利者に可能とする事を確保しなければならない。

 これは、仲介者への差し止めを可能とすることを規定しているが、これはいわゆる著作権の間接侵害責任のことを言っているだけであり、この部分とブロッキングの可否とは別物と私は理解している。

 大体、解釈は最後欧州司法裁判所で統一されるものの、これはあくまでその具体的な法制化は各国に委ねられる欧州指令である。つまり、欧州各国でこの規定と同程度の間接侵害規定はどこでも法制化されているだろうが、そのこととブロッキングの可否は別の話である。このことは、ドイツの裁判所でブロッキングについて著作権法条の通常の差し止め規定と民法上の一般的な妨害者責任から判断していることからしても分かる事のはずである。

 すなわち、今の所、欧州で著作権侵害を理由としたブロッキングを積極的に可能とするような特別の法制を有している国はなく、他の事情も考慮した上でやむを得ないと司法が判断した場合に間接侵害責任を認めてアクセスプロバイダーにサイトブロッキングを命じている例が幾つかの国であるに過ぎず、それすら成功しているとは言い難いという状況ではないかと私は見ている。(欧州の状況については、オランダのパイレートベイ事件に関する欧州司法裁判所の判決と関連判例を取り上げた第379回も参照。)

 なお、知財本部で今まで取り上げられた欧州の国にはイギリスがある。イギリスの裁判所がブロッキングの根拠としているイギリス著作権法第97A条は、

97A Injunctions against service providers

(1)The High Court (in Scotland, the Court of Session) shall have power to grant an injunction against a service provider, where that service provider has actual knowledge of another person using their service to infringe copyright.

(2)In determining whether a service provider has actual knowledge for the purpose of this section, a court shall take into account all matters which appear to it in the particular circumstances to be relevant and, amongst other things, shall have regard to-
(a)whether a service provider has received a notice through a means of contact made available in accordance with regulation 6(1)(c) of the Electronic Commerce (EC Directive) Regulations 2002 (SI 2002/2013); and

(b)the extent to which any notice includes-
(i)the full name and address of the sender of the notice;
(ii)details of the infringement in question.

(3) In this section "service provider" has the meaning given to it by regulation 2 of the Electronic Commerce (EC Directive) Regulations 2002.

第97A条 サービスプロバイダーに対する差し止め

第1項 高等裁判所(スコットランドにおいては、控訴院)は、サービスプロバイダーが他の者がそのサービスを著作権を侵害する事に使っている事を実際に知った場合、サービスプロバイダーに対する差し止めを認める権限を有する。

第2項 本条の目的のためにサービスプロバイダーが実際に知ったかどうかを決めるにあたり、裁判所は関係する個別の状況においてそこに現れるあらゆる事を考慮に入れなければならず、特に次の事に注意しなければならない-
(a)サービスプロバイダーが、電子商取引(EC指令)規則2002(SI 2002/2013)の規則6(1)(c)に沿って提供する連絡手段を通じて通知を受け取っているかどうか;そして

(b)通知が以下の事をどれだけ含んでいるか-
(ⅰ)通知の送信者の氏名及び住所
(ⅱ)問題となる侵害の詳細

(c)本条において「サービスプロバイダー」は、電子商取引(EC指令)規則2002(SI 2002/2013)の規則2によって与えられる意味である。

というものであるが、読めば分かる通り、これはイギリスで2003年に上の欧州著作権指令に対応する国内法を作ったものであるが、イギリス特有の解釈とはいえ、この規定に基づいてアクセスプロバイダーにブロッキングを命令するのはかなり無理をしていると思わざるを得ない。

 イギリスのことは、上の検討会議の第4回で明治大学の今村准教授が資料1として提出した英国におけるサイトブロッキング法制とその運用状況について(pdf)でも書かれているが、判例法の国であるイギリスの話も非常にややこしく、イギリスのことも含めて欧州の個々の国の著作権事情に関する私の補足はまた別途書きたいと思っている。

(2)アメリカ
 日本政府はどのような政策検討でもいつもアメリカの話を持ち出すが、今回の知財本部の検討会議ではほとんどアメリカの話が出て来ていない。

 森亮二委員がその資料で、今回の知財本部の検討はアメリカで廃案になったSOPAに含まれていた事とほとんど同じではないかと指摘しているのはまさしく慧眼であり、アメリカでは、サイトブロッキング条項を含むオンライン海賊対策法案(SOPA)や知財保護強化法案(PIPA)がIT企業やユーザーから検閲であるとして大反対を受けてその審議が止まり、その後もこの様な法案が復活する気配はないのである。SOPAの話は自分のパブコメでも繰り返し伝えているが、このようにアメリカで著作権サイトブロッキング法案が廃案になったという事実は知財本部での検討にとって都合の悪い事なのだろう。

 2011年から2012年の事でもう皆忘れつつあるのかも知れないが、このブログでの第263回でも当時のホワイトハウスの声明を取り上げるなどしており、当時の騒ぎは相当のものだったと記憶している。(当時の経緯は、SOPAのウィキペディアとPIPAのウィキペディアのそれぞれにもまとめられている。)

(3)その他
 その他の国で何故か知財本部で取り上げられている国はオーストラリアと韓国であるが、知財本部の検討会議の第3回の、慶応大学の奥邨教授提出のオーストラリアにおけるサイトブロッキング制度と我が国著作権法制への示唆(pdf)と、獨協大学の張准教授の韓国における海賊版サイトの接続遮断措置の概要(pdf)に書かれている通り、これらの国でサイトブロッキングのための特別の法制が作られているので、知財本部でわざわざ選んで紹介を各教授に依頼したのではないかという疑念が拭えない。

 確かに、オーストラリアは国外サイト限定の裁判所の判断による司法ブロッキングを法制化しており、韓国は行政命令によるブロッキングを法制化しているが、裏を返せば、オーストラリアと韓国を除けばブロッキングについて特別な法制がある国は他になく、他の国では判例はさらにないと言っていいのだろう。さらに言えば、オーストラリアや韓国でも、本当にブロッキングにより海賊版対策としての効果が上がっているのかは相当疑問である。(繰り返しになるが、ブロッキングにより対象サイトのアクセスが減る事自体は当たり前の事であって、海賊版対策としての効果はそれとは別にきちんと評価されなければならない。)

 知財本部で取り上げられた国を見ると、ブロッキングありきの検討を行うために選んだのではないかという疑念をどうしても抱かざるを得ないが、私の見る限り、ブロッキングを巡っては世界のどの国であれなお混沌とした状況にあり、いかなる形を取るにせよブロッキングの採用が有効な海賊版対策として世界の主要な流れとなっているとは到底言い難いのである。さらに、ネット規制において悪名高い国として常に名があがるイギリスやオーストリア、韓国などはほとんど反面教師にしかならないだろうとも私は考えている。

 知財本部の第6回の事務局資料のブロッキングに係る法制度整備を行う場合の論点について(案)(pdf)中間まとめ骨子(案)(pdf)からも微妙にきな臭さが漂って来るが、今後の会合でブロッキングありきの恣意的なまとめがなされない事を私は心から願っている。

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