2020年6月 7日 (日)

第425回:ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大を含む著作権法改正案の可決・成立

 残念ながら、先週6月5日の参議院本会議で、ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大を含む著作権法改正案が可決され、成立した(参議院のインターネット審議中継参照)。

 今までの国会審議の経緯は、前回の追記等で書いて来たが、もう一度まとめて書いておくと、衆議院の文部科学委員会で5月20日に実質審議開始(衆議院HPの会議録1参照)、5月22日に委員会可決(会議録2参照)、5月26日の衆議院本会議で可決、参議院へ送付、参議院の文教科学委員会で6月2日に実質審議開始、6月4日に委員会可決(それぞれ参議院のインターネット審議中継参照)、6月5日に参議院本会議で可決・成立と、政府と与野党の間で完全に根回しが済んでいたのだろう、出来レースのスピード審議による可決・成立だった。

 衆参の委員会で条文の解釈に関する質疑もあったが、用意されていたシナリオ通りなのではないかと思える、教科書的な受け答えに終始した。中でも防弾ホスティングや中継サーバー、サイバーロッカー型のサイトなどの存在が持ち出されていたが、いずれもアップロードの取り締まりが本当に困難な理由やダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲を拡大する理由になるものではなく、また、侵害である事を知りながらといった主観要件の立証に関しても、ダウンロードについて警告を受けてなお継続する場合という現実的にあり得ないケースが持ち出されるばかりで、問題の本質にまで踏み込んだ議論がされる事はほぼなかった。(著作権法改正案の条文については第421回、私の考える懸念については前回の私家版Q&Aも参照。)

 また、衆参でそれぞれ、以下のような附帯決議もつけられた(衆議院HPの附帯決議参照、参議院の附帯決議も全く同一である)。

著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議

 政府及び関係者は、本法の施行にあたっては、次の事項について特段の配慮をすべきである。

一 海賊版サイトの形態は多種多様であり、本法の措置では対応ができないストリーミング形式を採用している海賊版サイト等も存在することを踏まえ、本法による規制にとどまらず、今後ともあらゆる手段を通じて海賊版対策の徹底に向けた取組を政府一丸となって行うこと。

二 侵害コンテンツの違法アップロードについては、アップロードを行う者が海外サーバーを利用する事例や、我が国の捜査協力等の要請に対して非協力的な国が存在することも踏まえ、迅速かつ円滑な捜査・摘発に向けて、政府は海外の捜査機関や通信業者等とのさらなる連携強化を促進し、実効性のある違法アップロード対策の実現に努めること。

三 政府は、海賊版対策を講じるための専門的知見、人的資源、資金等が不十分な中小企業等を支援するため、海賊版対策の構築に係る専門的知見の提供や経費の補助等の様々な支援策を講じるよう努めること。

四 本法による侵害コンテンツのダウンロード違法化に係る措置が国民の正当な情報収集等の萎縮をもたらさないよう多くの要件が設けられ複雑な制度設計になっていることを踏まえ、本法附則による国民への普及啓発及び未成年者への教育を行うにあたっては、分かりやすいガイドライン等を作成するとともに、インターネット上や学校現場等の様々な場面での普及啓発・教育に万全を期すこと。

五 政府は、関係者による議論の状況等を踏まえつつ、演奏権等の要件としての公衆に直接見せ又は聞かせる目的の範囲について、必要に応じて社会通念や妥当性の観点から検討するとともに、その結果に基づいて必要な見直しを行うよう努めること。

六 デジタル化・ネットワーク化の進展にともない、従来は受信者であった国民が同時に発信者にもなる時代が到来し、著作物の利用・流通形態の多様化が今後さらに進行すことが想定されることに鑑み、政府は、権利の保護と著作物の円滑な利用の促進とのバランスに十分留意しつつ、時代に即した著作権法制となるよう、そのあり方について不断の検証を行うこと。

 この附帯決議に書かれている、違法アップロード対策の強化と支援は当然の事と思うが、この事について今まで政府においてどこまで具体的かつ実効性のある形で進められて来たのか、進んでいないとしたら、それはなぜかという事こそ法改正以前にまず明らかにされるべきだったろう。

 そして、幾つか細かな要件を追加しながら、ダウンロード違法化・犯罪化の範囲を映像音楽だけから全著作物に大きく拡大する、この複雑怪奇な条文について、来年1月1日の施行に向け、文化庁は今までの解説に毛の生えた程度の要領を得ないガイドラインを作って来るに違いない。本当にその条文、ガイドラインに従って行動する事を求められたら、国民の正当な情報収集にかなりの萎縮が発生するだろうと、漫画についてもそうだが、漫画以外の一般的な著作物についてより大きな悪影響が出るだろうとも思うが、皆今まで通りインターネットで情報アクセスやダウンロードを続けるよう、訳も分からず萎縮しないことを私は願う。また、この様な法改正によって今後増える事が想定される詐欺にも注意してもらいたいとも思う。

 今国会で、新型コロナウィルス対策など他の大問題が重なる中、昨年世論の高まりを受けて提出を見送られ極めて慎重な審議が求められるはずのこの著作権法改正案が、あまり注目が集まらない儘、可決・成立してしまったことは非常に残念な事と言わざるを得ない。参議院の委員会審議でも話に出ていた通り、海賊版対策として最も有効なのは違法アップロード対策とともに適正な正規版の流通を進めることであって、全著作物のダウンロードを違法化・犯罪化して海賊版をなんとかしたいなどというのがそもそも間違いである。今までの映像音楽についても、この著作権法改正で拡大して対象とされる他の著作物についても、ダウンロード違法化・犯罪化は要件の如何に関わらず間違った法制であるという私の考えに変わりはなく、私はこれからもその撤廃・廃止を求め続ける考えである。

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2020年5月18日 (月)

第424回:ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大を含む著作権法改正案に関する私家版Q&A

 先週5月15日に、衆議院の文部科学委員会で著作権法改正案の趣旨説明がされ、参考人招致をする事が決まったので(衆議院公報参照)、今後の審議がどうなるかまだ分からないが、早ければ今週にも衆議院でダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大を含む著作権法改正案の実質審議がされるかも知れないという状況である。

 今の新型コロナウィルスに伴う緊急事態宣言も出されている中で、その本質的な問題に踏み込む事なく政府与党間の通り一遍の審議で可決される様な事があれば、これも火事場泥棒と言っていいものである。

 今まで言って来た事の繰り返しとなるが、今回は、著作権法改正案の審議が近いと考えられる事を踏まえ、文化庁のHPで公開されている、余りにもお粗末な回答の並ぶ侵害コンテンツのダウンロード違法化に関するQ&A(基本的な考え方)(pdf)から、私の考えるQ&Aを私家版として作り、ダウンロード違法化・犯罪化の本質的な問題がどこにあるのかをより明らかに示しておければと思う。(著作権法改正案の条文については第421回参照。)

(2020年5月20日夜の追記:以下のQ&Aで1箇所誤記を直した(問9の答えで「1.」を削除)。また、今日5月20日から衆議院の文部科学委員会で著作権法改正案の実質審議が始まった(衆議院のインターネット中継参照)。今日のところは参考人質疑だけで採決はなかったが、案の定議論はあまり深まっていない。このまま行くと金曜5月22日の次回委員会で可決される恐れも強いが、私はこのダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大を含む著作権法改正案の可決に反対する。)

(2020年5月22日夜の追記:極めて残念な事ながら、今日の衆議院文部科学委員会で十分な審議も反対もなく著作権法改正案が可決された(衆議院のインターネット審議中継参照)。以前から、アップロードの取り締まりが難しい理由として防弾ホスティングや中継サーバーの事が持ち出される事が多いが、いずれもアップロードの取り締まりが本当に困難な理由にはなるものではなく、その程度の事で難しいとするなら、なおさら取り締まりがさらに困難なダウンロードの違法化・犯罪化を拡大する理由にはならないだろう。また、以下の様な附帯決議も役に立つとは思えず、複雑怪奇なダウンロード違法化・犯罪化の条文についてわかりやすいガイドラインができるとも思えないが、本当にその条文に従って行動する事を求められたら、国民の正当な情報収集にかなりの萎縮が発生するのは間違いないだろう。)

(2020年5月31日夜の追記:著作権法改正案は5月26日の衆議院本会議で可決されて参議院に送られ、5月28日の参議院文教委員会で趣旨説明と参考人招致が決定された。6月2日には参議院文教委員会での実質審議が始まり、今週中にはこの委員会で可決される恐れも強いが、私はこのダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大を含む著作権法改正案に変わらず反対である。)

(2020年6月2日夜の追記:今日の参議院文教委員会での参考人質疑は衆議院よりは噛み合っていたとは思うが、やはり教科書的な受け答えに終始した(参議院のインターネット審議中継参照)。サイバーロッカー型のサイトは昔からあったので、その仕組みは特別なものではなく、それでダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大が正当化されるということなどない。侵害である事を知りながらといった主観要件の立証に関して、ダウンロードについて警告を受けてなお継続する場合というが、現実的にあり得ないケースである。この複雑怪奇な条文に基づき抑止効果はあるが情報収集の萎縮は発生しないというのも説明として不合理極まる。今週木曜かと思う次回の委員会で可決される可能性が高いが、私がダウンロード違法化・犯罪化自体に反対である事に変わりはない。)

(2020年6月7日夜の追記:5月22日の追記中に記載した附帯決議は次の第425回の本文に移した。また、以下のQ&Aでもう1箇所誤記を直した(問23の答えで「1.」を削除)。)

(以下、私家版Q&A)

【総論】

問1 既に違法となっているアップロード行為を厳格に取り締まれば良く、ダウンロードを行うユーザーまで規制する必要はないのではないか。

(答)
1.その通りです。現行法上も違法アップロード行為については、諸外国と比べても厳格な法定刑(10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又はその併科)が定められており、アップロード者に対する権利行使や摘発は随時行われています。現行法で不十分な場合として本当にどの様な場合があるのかは何ら示されていません。

2.アップロード者が特定できないのはエンフォースメントの問題であって、ダウンロードの問題ではありません。国際条約もあり、著作権法はほとんどどの国にもありますから、海外にいることで免責されるなどという事もありません。

問2 漫画村のようなストリーミング型の海賊版サイトには効果がないため、ダウンロードを違法化しても意味がないのではないか。

(答)
1.ストリーミング型の海賊版サイトに対してダウンロード違法化はそもそも意味がありません。これは現行法における音楽映像に関するダウンロード違法化・犯罪化がストリーミング型の海賊版サイトに対して意味がないのと同じです。

2.ダウンロード型の海賊版サイトも存在しているでしょうが、現行法における音楽映像に関するダウンロード違法化・犯罪化に海賊版対策としての効果は実質的になかったと考えられる事からも、効果はないものと考えられます。

3.また、本法案におけるリーチサイト規制でストリーミング型のサイトも対象としている事はダウンロード違法化・犯罪化の問題と直接関係はありません。

4.海賊版サイトの収入源を絶つための「広告出稿の抑制」などの方がよほど効果的であって、無意味な法改正よりこの様な対策にこそ注力すべきと考えます。

5.なお、法改正にあたり、漫画村事件に対する評価・分析も極めて不十分と言わざるを得ません。

問3 ユーザーが侵害コンテンツをそうと知りながらダウンロードしたかどうかは、外部からは確認できず、権利行使・摘発は不可能であるため、ダウンロードを違法化しても意味がないのではないか。違法化による効果は見込めるのか。

(答)
1.その通りです。ダウンロード違法化・犯罪化に海賊版対策としての効果は全く見込めません。この権利行使・摘発が実質不可能であるという点こそがダウンロード違法化・犯罪化問題における最も本質的な問題と言えます。現行法の音楽映像に関するダウンロード違法化・犯罪化もいまだに権利行使や摘発された例はありません。

2.現行法の音楽映像に関するダウンロード違法化・犯罪化の権利行使・摘発例がない事を考えても、自ら違法ダウンロードを行っている旨をSNSなどで誇示している場合や、違法アップロードに関する捜査・訴訟等の過程でダウンロードの事実が確認された場合というのはおよそ現実的にあり得る事とは思えません。仮に今後あったとしても、侵害である事を知りながらといった主観的要件の証明またはその反証はいずれも不可能です。

3.政府の調査で、ある行為が違法になっても続けるかと聞けば多くの者はしないと答えるに決まっているので、文化庁の過去の調査はこの点ではほとんど役に立ちません。ダウンロード違法化・犯罪化が海賊版対策になったという因果関係を定量的に示した調査はいまだかつてなく、音楽映像について違法ダウンロードが減ったというのも、適法の音楽映像サービスが充実して来た事の帰結と考える方が妥当です。

4.たとえ法規定の外形上ダウンロード違法化・犯罪化がされている様に見える国でも、ダウンロードとアップロードを同時に行うP2Pファイル共有に関する例を除き、単なるダウンロードに対して権利行使や摘発がされた例は1つもなく、どこの国でもダウンロード違法化・犯罪化が海賊版対策として効果を上げているなどという事は全くありません。諸外国で例があるかの様な主張は文化庁の印象操作に過ぎません。

問4 侵害コンテンツのダウンロードを行った場合、いきなり訴訟を起こされたり、逮捕されたりするのか。

(答)
 現状でも、著作権者が問題視しておらず、いわば黙認されているものとして、いわゆる「寛容的な利用」とされるものもあります。通常の権利者は、警告などをする事なく、いきなり訴訟を起こしたり、告発したりする事はあまり想定できません。しかし、違法ダウンロードに限った話ではありませんが、この様な法改正によって訴訟や逮捕などを持ち出して脅すネット上の詐欺が増える可能性はあるでしょう。

問5 昨年提出を検討していた法案から、どのような修正を行ったのか。

(答)
1.昨年提出を検討していた法案からの修正点は、ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大について、①スクリーンショットを行う際の写り込みの例外規定の追加、②軽微なものの除外、③二次創作・パロディにおける原著作者の権利の除外、④著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合の除外です。以下で詳述しますが、この除外によって問題の多少の緩和は図られているものの、これらは本質的な問題を解消するものではありません。

2.なお、リーチサイト運営者等に対する刑事罰については、親告罪とされました。

【違法化による影響・対象範囲】

問6 インターネット上での情報収集等が萎縮するのではないか。

(答)
1.音楽映像に関するダウンロード違法化・犯罪化同様、権利行使や摘発は実質不可能であるため、最終的には規制は無意味となり、萎縮がなくなる可能性もあり、あるいは、この法改正の複雑怪奇な条文が通常のインターネット利用者に理解されず、そもそも萎縮が発生しない可能性もありますが、問5の除外によって救われる範囲は非常に限定的であり、通常の利用者が本当にこの法改正の範囲を正しく理解して行動しようとすると、相当の萎縮が発生するだろうと思います。

2.以下でさらに述べますが、問5で除外されると書いた、①スクリーンショットを行う際の写り込みは一部に付随的に違法なコンテンツが含まれる場合に限られ、②軽微なものも例えばストーリー漫画の1コマ~数コマ程度という非常に軽微な場合に限られ、③二次創作・パロディについても原著作者の権利が除かれているに過ぎず、④著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合もそれなりに正当化事由が示せる場合に限られるので、これでは、利用者が通常するであろう多くの場合のカジュアルなスクリーンショット、ダウンロード、デジタルでの保存行為が違法・犯罪となる可能性が出て来ます。

問7 スクリーンショットができなくなるのか。

(答)
1.適法にアップロードされたコンテンツのスクリーンショットは当然適法ですが、拡大される写り込みに関する権利制限によって適法となり得るのはその一部に付随的に違法なコンテンツが含まれる場合のスクリーンショットに限られます。

2.その他通常の場合としていろいろと考えられる、SNSの投稿を保存する際に違法にアップロードされた画像がかなり大きく入り込んでしまった場合や、違法にアップロードされた記事のスクリーンショットなどは違法とされる可能性があるでしょう。

問8 漫画家・研究者等が行う創作・研究活動や、企業が行うビジネスにも悪影響が及ぶのではないか。

(答)
1.漫画家・研究者等や企業が業務として行うダウンロードは、私的使用目的の複製ではなく、もともと違法であって、この法改正とは直接関係しないというのはその通りですが、これもそのまま四角四面に著作権法を適用しようとすると相当の悪影響が生じる例の1つでしょう。

2.漫画家・研究者等が行う創作・研究活動における複製についても私的複製と苦しい言い訳をせざるを得ないところにも大きな問題があるのですが、この点について文化庁がまともに検討を進める気があるとは思えないのは残念です。

問9 論文に引用するために、インターネット上のコンテンツをダウンロードすることもできなくなるのか。

(答)
 この改正はその他の権利制限を制約するものではなく、引用のための利用(著作権法第32条)などは、従来通り著作権者の許諾なく行うことができます。引用のために必要かつ合理的と認められる限度で違法にアップロードされた著作物を論文等に引用する目的でダウンロードすることも許容されます。

問10 漫画だけを対象にすれば良いのではないか。

(答)
 この法改正案には、海賊版による想定被害や海賊版対策としての実効性のなさとは無関係に、権利者団体からの一方的な言い分により、ダウンロード違法化・犯罪化の全著作物への対象範囲の拡大が入っています。

問11 海賊版サイトからのダウンロードだけを違法化すれば良いのではないか。

(答)
 この法改正案では、海賊版による想定被害や海賊版対策としての実効性のなさとは無関係に、権利者団体からの一方的な言い分により、海賊版サイトへの限定は外されています。

問12 侵害コンテンツを見ただけで違法となってしまうのか。

(答)
1.問2でストリーミングについて書いた通り、著作権侵害コンテンツの単なる視聴・閲覧が違法とされるものではありません。

2.なお、視聴・閲覧に伴うキャッシュやプログレッシブ・ダウンロードは、別途、著作権法第47条の4第1項の規定により適法となります。

問13 メールで著作権侵害コンテンツのファイルを送り付けられた場合にそれを保存すると違法となってしまうのか。

(答)
 メール送信は自動公衆送信に該当せず、メールで著作権侵害コンテンツのファイルを送り付けられた場合にそれを保存しても違法とはなりませんが、問4で書いた通り、リンクをメールで送信し、違法にダウンロードしたと訴訟や逮捕などを持ち出して脅すネット上の詐欺が増える可能性はあるでしょう。

【主観要件】

問14 インターネット上のコンテンツは、適法にアップロードされたか、違法にアップロードされたかの判別が困難な場合も多いのではないか。実際には違法にアップロードされたものであるが、適法にアップロードされたもの(例:適法に引用されたもの)だと勘違いしてダウンロードした場合は、どうなるか。

(答)
1.アップロードが適法か違法か分からない場合や、アップロードが適法だと誤解した場合などは、ダウンロードは違法とならないでしょうが、インターネット上のコンテンツは、適法にアップロードされたか、違法にアップロードされたかの判別が困難な場合がほとんどでしょう。主観要件は立証も反証も実質不可能と見るべきです。

2.なお、出版社は適法サイトにABJマークというマークを表示するという取り組みを進めるとしていますが、マークがないサイトの違法性を示すものたり得ません。残念ながら、音楽映像のエルマーク同様、利用者がほとんど気に留める事はなく、そのうち忘れ去られるのではないかと思います。

問15 違法なアップロードだと知っていたということは、誰がどのように判断するのか。ユーザーが違法だと知らなかったことを証明することは困難ではないか。

(答)
 その通りです。ダウンロードに対するユーザーの法的責任を追及するためには、ユーザーが、違法にアップロードされたことが確実であると知りながらダウンロードを行ったことを立証する必要がありますが、実質これは不可能です。権利者がダウンロードユーザーをどう特定して警告するのかという事1つを取っても、権利者から警告された後もユーザーが侵害コンテンツのダウンロードを継続している場合など、現実的にはあり得ないでしょう。

【除外規定】

<二次創作・パロディ>

問16 そもそも二次創作・パロディを創作・アップロードする行為は違法なのか。

(答)
1.二次創作・パロディについては、黙示の許諾などにより、適法となる場合があるとの見解があり、また多くの場合で黙認されている事もあるでしょう。(注:文化庁の答えでは、引用の類推適用も入っているが、二次創作・パロディに引用を類推適用するのは難しいのではないかと私は思う。)

2.二次創作・パロディの文化的創造性と価値から特別の権利制限規定を作ってもいいのではないかと思いますが、残念ながら、今のところこの点について文化庁がまともに検討を進める気配はありません。

問17 ①二次創作・パロディを二次創作者自身が共有サイトなどにアップロードしている場合、それをダウンロードする行為は違法となるのか。また、②二次創作・パロディを更に第三者が違法にアップロードしている場合、その二次創作・パロディの海賊版をダウンロードする行為は違法となるのか。

(答)
1.問の①のような場合には、ダウンロードは違法となり得ません。一方で、この法改正案では原著作者の権利が除かれているに過ぎないため、問の②のような場合には、二次創作者の権利の侵害として違法となり得ます。さらに、翻訳はこの除外から除外されているため、二次創作であっても翻訳とされるものは、①の場合の様に、翻訳者自身がサイトにアップロードしていても、そのダウンロードは違法となり得ます。

2.上記の1.の内容をダウンロード違法化・犯罪化の対象からの二次創作・パロディの除外というのはミスリードと言わざるを得ず、通常の利用者が正しく理解できるとも思えません。

<軽微なもの>

問18 軽微なものとは具体的にどのようなものを指すのか。

(答)
1.軽微なものとは、典型的には、数十頁で構成される漫画の1コマ~数コマ、長文で構成される論文や新聞記事の数行など、その著作物全体の分量から見て、ダウンロードされる分量がごく小さい場合とされています。

2.このほか、画質が低く、鑑賞に堪えないような粗い画像をダウンロードした場合も軽微なものとされるようです。

3.しかし、それ以外の場合の漫画の数コマ以上、論文や新聞記事の数行以上のダウンロード、通常の画質の画像のダウンロードは軽微なものとはされないので、広く一般的になされるコンテンツのダウンロードでほとんどの場合は軽微なものとはされないと考えられます。


問19 実際には軽微ではないものを軽微なものと勘違いしてダウンロードした場合は、どうなるのか。

(答)
 軽微なものと勘違いしてダウンロードした場合は違法とはならないのだろうと思いますが、この様な解釈は法改正案の条文に基づかないので確実にそうとは断言できません。

<特別な事情がある場合>

問20 著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除くと規定することとしたのはなぜか。具体的にどのような場合がこれに該当するのか。

(答)
1.著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除くと規定することとしたのは、以前の法改正見送りの経緯から、最終的に政府と与党の間で取られた妥協案に過ぎません。(注:第419回参照。)

2.この要件に該当するか否かは、(ア)著作物の種類・経済的価値などを踏まえた保護の必要性の程度、(イ)ダウンロードの目的・必要性などを含めた態様、という2つの要素によって判断され、典型的には、①詐欺集団の作成した詐欺マニュアル(著作物)が、被害者救済団体によって告発サイトに無断掲載(違法アップロード)されている場合に、それを自分や家族を守る目的でダウンロードすること、②無料で提供されている論文(著作物)の相当部分が、他の研究者のウェブサイトに批判ととともに無断転載(引用の要件は満たしていない=違法アップロード)されている場合に、それを全体として保存すること、③有名タレントのSNSに、おすすめイベントを紹介するためにそのポスター(著作物)が無断掲載(違法アップロード)されている場合に、そのSNS投稿を保存することなどが、これに該当するとされていますが、この様に利用者がそれなりに正当化事由を示せる場合は非常に限られるでしょう。

3.また、ダウンロード違法化・犯罪化の実効性の問題はありますが、本当に訴訟等に巻き込まれた場合には、ユーザー側がこの特別な事情を立証する必要があるとされている事もさらに問題をややこしくするだけでしょう。

4.なお、刑事罰の場合は、検察が不当に害しないと認められる特別な事情がないことを立証する必要があるとされるようですが、この様にある事情がないとするアクロバティックな立証を検察に求められるのか甚だ疑問です。

問21 著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合に該当することをユーザーが立証するのは困難ではないか。

(答)
1.ダウンロード違法化・犯罪化の実効性の問題はありますが、本当に訴訟に巻き込まれた場合には、ダウンロードの際に正当性についてほぼ意識する事はないであろう通常の利用者からすると、それなりに正当化事由を示すのは非常に困難な場合がほとんどと考えられます。

2.ダウンロードについて、その正当性の証拠まで残しながら行う事を求めるのは、利用者にとってほとんど不可能な過度の負担であって、本当にその様な事を求めるとするならば、相当の萎縮が発生すると考えられます。

【刑事罰】

問22 刑事罰まで科す必要はあるのか。音楽映像についても摘発事例はないところ、刑事罰を科す意味はどこにあるのか。

(答)
1.現行法の音楽映像に関するダウンロード犯罪化の摘発例がない事を考えても、ダウンロードについて刑事罰を課す意味はありません。萎縮効果が大きくなり得るだけかえって有害です。

2.政府の調査で、ある行為が犯罪になっても続けるかと聞けば多くの者はしないと答えるに決まっているので、文化庁の過去の調査はこの点ではほとんど役に立ちません。ダウンロード違法化・犯罪化が海賊版対策になったという因果関係を定量的に示した調査はいまだかつてなく、音楽映像について違法ダウンロードが減ったというのも、適法の音楽映像サービスが充実して来た事の帰結と考える方が妥当です。

問23 警察による捜査権の濫用を招くのではないか。

(答)
 現行法の音楽映像に関するダウンロード犯罪化の摘発例がないので、ただちに捜査権の濫用を招くとは言えませんが、昨今のウィルス罪に関する無茶な摘発例などを見ても、今後、誤認逮捕や別件逮捕、無茶な刑事訴追を誘発する恐れは拭い切れません。

問24 著作権等侵害罪はTPP整備法により一部非親告罪化されているが、今回もそれが適用されるのか。

(答)
 ダウンロード犯罪化は親告罪となっています。

問25 正規版が有償で提供されているか否かは、ダウンロードするユーザーには分からない場合もあるが、その場合でも、刑事罰を科される可能性があるのか。

(答)
 正規版が有償で提供されているか否かが分からずにダウンロードした場合や、正規版が無償で提供されているものと勘違いしてダウンロードした場合は、刑事罰の対象とはならないと思われますが、ダウンロード犯罪化について、無茶な刑事訴追を誘発する恐れは拭い切れません。

【その他】

問26 今回の改正に伴って、音楽映像の違法ダウンロードについては、要件を変更しないのか。

(答)
 パブリックコメントは数を見るものではありませんが、パブリックコメントで多くの者が現行法の音楽映像のダウンロード違法化・犯罪化にそもそも反対の意見を出していた事を思えば、音楽映像に関するダウンロード違法化・犯罪化そのものの廃止・撤廃の検討もされるべきものだったと思いますが、この様な検討が真面目にされる事はなく、一方的に音楽映像のダウンロード違法化・犯罪化条項は維持するとされました。(注:パブリックコメントの結果については第417回参照。)

問27 附則に規定された「違法アップロード対策の充実」として、何を行っていくのか。

(答)
 今のところ、ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大を除けば、ブロッキングやアクセス警告方式などの危険な取り組みは止まっていますが、今後も危険な検討が続く可能性が強く、要注意です。

問28(追加) この法改正は不要不急ではないか。

(答)
 ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大は世論の高まりを受けて昨年提出を見送られたもので、極めて慎重な審議が求められるのであって、不要不急のものと言わざるを得ず、また、その本質的な問題に踏み込む事なく政府与党間の通り一遍の審議で可決される様な事があってはならないものです。他の部分についても全く問題なしとしませんが、本国会で急ぎ可決しようとするのであれば、少なくともダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大の関連条項は全て削除するべきと考えます。

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2020年4月12日 (日)

第423回:2018年著作権法改正のオンライン教育著作物利用補償金制度の早期施行(4月28日施行・2020年度無償)

 既に報道もされているが、文化庁のHPに掲載されている通り、2018年著作権改正のオンライン教育著作物利用補償金制度がこの4月28日に施行される事となった。

 ここではあまり教育に関する著作権問題を大きく取り上げる事はして来なかったが、2018年著作権法改正には、以下の第35条に改正が入り、補償金を支払う事で授業のための著作物の複製のみならず公衆送信まで可能とされた。(法改正全体の内容については第389回参照。)

(学校その他の教育機関における複製等)
第三十五条 学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における使用利用に供することを目的とする場合には、必要その必要と認められる限度において、公表された著作物を複製する複製し、若しくは公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。以下この条において同じ。)を行い、又は公表された著作物であつて公衆送信されるものを受信装置を用いて公に伝達することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び当該複製の部数及び当該複製、公衆送信又は伝達の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

 前項の規定により公衆送信を行う場合には、同項の教育機関を設置する者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。

 公表された著作物については、前項前項の規定は、公表された著作物について、第一項の教育機関における授業の過程において、当該授業を直接受ける者に対して当該著作物をその原作品若しくは複製物を提供し、若しくは提示して利用する場合又は当該著作物を第三十八条第一項の規定により上演し、演奏し、上映し、若しくは口述して利用する場合にはにおいて、当該授業が行われる場所以外の場所において当該授業を同時に受ける者に対して公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行うことができるを行うときには、適用しないただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該公衆送信の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

 この条文の施行日は元々公布の日(2018年5月25日)から3年を超えない日とされていたので、まだ1年くらい準備期間があったものだが、新型コロナ感染症対策として教育のオンライン化が取沙汰される中での早期施行となり、そのため共通目的事業の支出割合を2割とする省令のパブコメも4月1日から4月10日までの短期間でかかっていた(文化庁のパブコメページ、電子政府のHP参照)。

 ここではその条文を全て引用する事はしないが、改正著作権法において、第5章第2節、第104条の11から第104条の17までに、授業目的公衆送信補償金とその管理団体の指定や共通目的事業への支出などが規定されており、そして、この指定管理団体は全国で1つとされていて、構成員としてはいつもの著作権団体がずらりと並ぶ授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)が2019年2月15日に指定されている(文化庁の指定についてのページ参照)。

 文化庁の法改正ページで額の認可に関する審査基準等(pdf)も公開されているが、文化庁の要請(文化庁の配慮願いについてのページ参照)も受けての事だろう、この4月6日にSARTRASが、そのHPで公表している通り、2020年度に限り補償金を無償として認可申請をするとしている。

 まだ文化審議会への諮問と文化庁長官の認可というプロセスもあるが、教育目的でも補償金を無償とするのは極めて異例とはいえ、この非常時に審議会において異が唱えられるとも思えず、4月28日の施行までにそのまま認可されるのではないかと思う。

 そうすると、まず間違いなく、4月28日から2021年3月31日までの間、著作権者の利益を不当に害しない限りという限定は無論つくが、営利目的以外の教育機関で授業のために基本的に無償で著作物をオンラインで公衆送信できるということになるだろう。

 私は前々回も書いた通り、ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大を含む著作権法改正案に反対しているし、文化庁はおよそ碌でもない事ばかりしているとの考えが変わる事はないが、今回このオンライン教育目的補償金制度を予定より早く施行し、1年弱限定とはいえ著作物の無償でのオンライン教育利用を可能とした事は非常時における著作権政策として良い仕事をしたと評価できる。無論、いつも通り、教育政策としてはオンライン教育のためのインフラが大して整っていなかったり、文化政策としては文化芸術部門に対する非常時のサポートが不十分だったりといった問題も大いにあるので、全体として評価できるかというと正直疑問ではあるのだが。

(2020年4月28日夜の追記:文化庁から、文化審議会著作権分科会が開催され、2020年度はオンライン教育補償金を無償とする認可が4月24日にされたというリリースがあったので、ここにリンクを張っておく。なお、文化庁のQ&A(pdf)にも書かれている通り、この無償利用は2020年度に限られ、無償と言っても教育機関からSARTRASに届け出をすることとされているので、利用について完全に手続きなしで無償とするものではないことに注意しておいた方がいいだろう。また、上で一箇所SARTRASをSASTRASと書き間違えていたのに気づいたので合わせ直した。)

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2020年3月11日 (水)

第421回:閣議決定された著作権法改正案のダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大関連条文

 去年見送りになったダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大を含む著作権法改正案が、3月10日に閣議決定され、文科省のHPで公開された。第419回で取り上げた文化庁の議論のまとめに与党自民党の知的財産戦略調査会の申し入れの内容を加えた想定通りのものだが、ここで、その内容を見ておきたいと思う。

 概要としては、要綱(pdf)で見てもいいが、概要資料(pdf)の見出しで、

1.インターネット上の海賊版対策の強化
①リーチサイト対策【第113条第2項~第4項、第119条第2項第4号・第5号、第120条の2第3号等】
②侵害コンテンツのダウンロード違法化【第30条第1項第4号・第2項、第119条第3項第2号・第5項等】

2.その他の改正事項
①写り込みに係る権利制限規定の対象範囲の拡大【第30条の2】
②行政手続に係る権利制限規定の整備(地理的表示法・種苗法関係)【第42条第2項】
③著作物を利用する権利に関する対抗制度の導入【第63条の2】
④著作権侵害訴訟における証拠収集手続の強化【第114条の3】
⑤アクセスコントロールに関する保護の強化【第2条第1項第20号・第21号、第113条第7項、第120条の2第4号等】
⑥プログラムの著作物に係る登録制度の整備(プログラム登録特例法)【プログラム登録特例法第4条、第26条等 】

とある通りで、これらの項目のうち、昨年提出を目論んだ著作権法改正条文案との間で違いがある項目は、「1.①リーチサイト対策」で、親告罪化、プラットフォーマーの原則除外、「1.②侵害コンテンツのダウンロード違法化」で、軽微なものの除外、二次創作物における原著作権者の権利の除外、著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合の除外、「2.①写り込みに係る権利制限規定の対象範囲の拡大」で法改正項目自体の追加(これによりダウンロード違法化・犯罪化についても写り込みの場合が適法化される)という事になる。(昨年閣議決定されなかった条文案については第406回参照)

(1)ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大関連
 新旧対照条文(pdf)又は案文(pdf)から、まずダウンロード違法化・犯罪化の対象拡大について、関連条文を抜き出すと以下の様になる。(下線が改正部分)

(私的使用のための複製)
第三十条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
一・二(略)
 著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。次号において同じ。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実(以下この号及び次項において「特定侵害録音録画」という。)を、特定侵害録音録画であることを知りながら行う場合
 著作権(第二十八条に規定する権利(翻訳以外の方法により創作された二次的著作物に係るものに限る。)を除く。以下この号において同じ。)を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の複製(録音及び録画を除く。以下この号において同じ。)(当該著作権に係る著作物のうち当該複製がされる部分の占める割合、当該部分が自動公衆送信される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものを除く。以下この号及び次項において「特定侵害複製」という。)を、特定侵害複製であることを知りながら行う場合(当該著作物の種類及び用途並びに当該特定侵害複製の態様に照らし著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除く。)

 前項第三号及び第四号の規定は、特定侵害録音録画又は特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行う場合を含むものと解釈してはならない。

(略)

(付随対象著作物の利用)
第三十条の二 写真の撮影、録音又は録画、録画、放送その他これらと同様に事物の影像又は音を複製し、又は複製を伴うことなく伝達する行為(以下この項において「写真の撮影等」という。)の方法によつて著作物を創作する複製伝達行為」という。)を行うに当たつて、当該著作物(以下この条において「写真等著作物」という。)に係る写真の撮影等のその対象とする事物又は音から分離することが困難であるため付随して対象となる事物又は音に係る他の著作物(当該写真等著作物における(以下この項において「複製伝達対象事物等」という。)に付随して対象となる事物又は音(複製伝達対象事物等の一部を構成するものとして対象となる事物又は音を含む。以下この項において「付随対象事物等」という。)に係る著作物(当該複製伝達行為により作成され、又は伝達されるもの(以下この条において「作成伝達物」という。)のうち当該著作物の占める割合、当該作成伝達物における当該著作物の再製の精度その他の要素に照らし当該作成伝達物において当該著作物が軽微な構成部分となるもの場合における当該著作物に限る。以下この条において「付随対象著作物」という。)は、当該創作に伴つて複製する付随対象著作物の利用により利益を得る目的の有無、当該付随対象事物等の当該複製伝達対象事物等からの分離の困難性の程度、当該作成伝達において当該付随対象著作物が果たす役割その他の要素に照らし正当な範囲内において、当該複製伝達行為に伴つて、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該複製利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

 前項の規定により複製された利用された付随対象著作物は、同項に規定する写真等著作物当該付随対象著作物に係る作成伝達物の利用に伴つて、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りではない。

第百十九条(略)
(略)
 次の各号のいずれかに該当する者は、二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
 第三十条第一項に定める私的使用の目的をもつて、録音録画有償著作物等(録音され、又は録画された著作物又は実演等(著作権又は著作隣接権の目的となつているものに限る。)であつて、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)をいう。)の著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)又は著作隣接権を侵害する送信可能化(国外で行われる送信可能化であつて、国内で行われたとしたならば著作隣接権の侵害となるべきものを含む。)に係る自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画(以下この号及び次項において「有償著作物等特定侵害録音録画」という。)を、自ら有償著作物等特定侵害録音録画であることを知りながら行つて著作権又は著作隣接権を侵害した者
 第三十条第一項に定める私的使用の目的をもつて、著作物(著作権の目的となつているものに限る。以下この号において同じ。)であつて有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権を侵害しないものに限る。)の著作権(第二十八条に規定する権利(翻訳以外の方法により創作された二次的著作物に係るものに限る。)を除く。以下この号及び第五項において同じ。)を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の複製(録音及び録画を除く。以下この号において同じ。)(当該著作権に係る著作物のうち当該複製がされる部分の占める割合、当該部分が自動公衆送信される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものを除く。以下この号及び第五項において「有償著作物等特定侵害複製」という。)を、自ら有償著作物等特定侵害複製であることを知りながら行つて著作権を侵害する行為(当該著作物の種類及び用途並びに当該有償著作物等特定侵害複製の態様に照らし著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除く。)を継続的に又は反復して行つた者

 前項第一号に規定する者には、有償著作物等特定侵害録音録画を、自ら有償著作物等特定侵害録音録画であることを重大な過失により知らないで行つて著作権又は著作隣接権を侵害した者を含むものと解釈してはならない。

 第三項第二号に規定する者には、有償著作物等特定侵害複製を、自ら有償著作物等特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行つて著作権を侵害する行為を継続的に又は反復して行つた者を含むものと解釈してはならない。

 テクニカルな修正もあるが、これらの条文案で民事の第30条第1項第4号と刑事の第119条第3項第2号で、それぞれ、「当該著作物の種類及び用途並びに当該特定侵害複製の態様に照らし著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除く」、「当該著作物の種類及び用途並びに当該有償著作物等特定侵害複製の態様に照らし著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除く」と、与党自民党の申し入れを受けて、著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除くとした事が文化庁の議論のまとめ時点からの最大の違いである。(その時点と申し入れの話については第419回参照)

 この著作権法改正案の説明資料(pdf)参考資料(pdf)、文化庁のHPで公開されたQ&A(基本的な考え方)(pdf)は、相変わらず、被害推定や法改正の有効性、諸外国の状況などについて、法改正の結論ありきで片寄った主張を垂れ流しているもので、ダウンロード違法化・犯罪化の本質的な問題に対する答えにまるでなっていないが、著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合について言えば、このQ&Aで、

問20「著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除く」と規定することとしたのはなぜか。具体的にどのような場合がこれに該当するのか。

(答)
1.国民の正当な情報収集等への萎縮を防止するため,様々な要素に照らして,違法化対象からの除外を判断できるバスケットクローズ規定(安全弁)を設けることとしたものです。

2.ただし,海賊版対策の実効性が低下することを避ける観点から,①ユーザー側が「不当に害しないと認められる特別な事情」があることを立証する必要があることとする(その立証ができない場合には,ダウンロードは違法となる)(※1)(※2)とともに,②居直り的な利用を確実に防止する(※3)ため,このような規定としています。(※1) 侵害コンテンツ(かつ,軽微でも二次創作・パロディでもないもの=相当分量のデッドコピー)をそうと知りながら利用している以上は,ユーザー側が例外的に「不当に害しないと認められる特別な事情」がある場合だという立証をすることが適当だと考えています。
(※2)なお,刑事罰の場合は,検察が「不当に害しないと認められる特別な事情」がないことを立証する必要があります。
(※3) 漫画の海賊版などを楽しむためにダウンロードしているような場合には,およそ「不当に害しないと認められる特別な事情」がある場合に該当しないことは明らかであるため,居直り(行き過ぎた主張)を確実に防止できます。

3.この要件に該当するか否かは,(ア)著作物の種類・経済的価値などを踏まえた保護の必要性の程度,(イ)ダウンロードの目的・必要性などを含めた態様,という2つの要素によって判断されるものです。
 典型的には,①詐欺集団の作成した詐欺マニュアル(著作物)が,被害者救済団体によって告発サイトに無断掲載(違法アップロード)されている場合に,それを自分や家族を守る目的でダウンロードすること,②無料で提供されている論文(著作物)の相当部分が,他の研究者のウェブサイトに批判ととともに無断転載(引用の要件は満たしていない=違法アップロード)されている場合に,それを全体として保存すること,③有名タレントのSNSに,おすすめイベントを紹介するためにそのポスター(著作物)が無断掲載(違法アップロード)されている場合に,そのSNS投稿を保存することなどが,これに該当します。

と書かれ、案の定、文化庁はそれなりに正当化自由を積極的に必要とする解釈をしていると知れる。

 前回載せた知財計画パブコメや第419回までで書いて来ている通りだが、昨年と比べたときの追加の要件・法改正項目で、スクリーンショットで違法画像が付随的に入り込む場合や、ストーリー漫画の数コマ、論文の数行、粗いサムネイル画像のダウンロードの場合といった僅かな場合が除かれ、また、著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除外する事で、それなりの正当化事由を示せる様な特別な事情がある場合が除かれるが、これは本質的な問題の解消に繋がるものではなく、なお、利用者が通常するであろう多くの場合のカジュアルなスクリーンショット、ダウンロード、デジタルでの保存行為が違法・犯罪となる可能性が出て来、場合によって意味不明の萎縮が発生する恐れがある事に変わりはない。これは、今の録音録画に関するダウンロード違法化・犯罪化同様、海賊版対策としては何の役にも立たない、百害あって一利ない最低最悪の著作権法改正の一つとなるものである。

(2)リーチサイト規制関連
 次に、リーチサイト規制関連についても主な改正条文を抜き出しておくと以下の様になる。

(侵害とみなす行為)
第百十三条(略)
 送信元識別符号又は送信元識別符号以外の符号その他の情報であつてその提供が送信元識別符号の提供と同一若しくは類似の効果を有するもの(以下この項及び次項において「送信元識別符号等」という。)の提供により侵害著作物等(著作権(第二十八条に規定する権利(翻訳以外の方法により創作された二次的著作物に係るものに限る。)を除く。以下この項及び次項において同じ。)、出版権又は著作隣接権を侵害して送信可能化が行われた著作物等をいい、国外で行われる送信可能化であつて国内で行われたとしたならばこれらの権利の侵害となるべきものが行われた著作物等を含む。以下この項及び次項において同じ。)の他人による利用を容易にする行為(同項において「侵害著作物等利用容易化」という。)であつて、第一号に掲げるウェブサイト等(同項及び第百十九条第二項第四号において「侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等」という。)において又は第二号に掲げるプログラム(次項及び同条第二項第五号において「侵害著作物等利用容易化プログラム」という。)を用いて行うものは、当該行為に係る著作物等が侵害著作物等であることを知つていた場合又は知ることができたと認めるに足る相当の理由がある場合には、当該侵害著作物等に係る著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。
 次に掲げるウェブサイト等
 当該ウェブサイト等において、侵害著作物等に係る送信元識別符号等(以下この条及び第百十九条第二項において「侵害送信元識別符号等」という。)の利用を促す文言が表示されていること、侵害送信元識別符号等が強調されていることその他の当該ウェブサイト等における侵害送信元識別符号等の提供の態様に照らし、公衆を侵害著作物等に殊更に誘導するものであると認められるウェブサイト等
 イに掲げるもののほか、当該ウェブサイト等において提供される侵害送信元識別符号等の数、当該数が当該ウェブサイト等において提供される送信元識別符号等の総数に占める割合、当該侵害送信元識別符号等の利用に資する分類又は整理の状況その他の当該ウェブサイト等における侵害送信元識別符等の提供の状況に照らし、主として公衆による侵害著作物等の利用のために用いられるものであると認められるウェブサイト等
 次に掲げるプログラム
 当該プログラムによる送信元識別符号等の提供に際し、侵害送信元識別符号等の利用を促す文言が表示されていること、侵害送信元識別符号等が強調されていることその他の当該プログラムによる侵害送信元識別符号等の提供の態様に照らし、公衆を侵害著作物等に殊更に誘導するものであると認められるプログラム
 イに掲げるもののほか、当該プログラムにより提供されている侵害送信元識別符号等の数、当該数が当該プログラムにより提供されている送信元識別符号等の総数に占める割合、当該侵害送信元識別符号等の利用に資する分類又は整理の状況その他の当該プログラムによる侵害送信元識別符号等の提供の状況に照らし、主として公衆による侵害著作物等の利用のために用いられるものであると認められるプログラム

 侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等に該当するウェブサイト等の公衆への提示を行つている者(当該侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等と侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等以外の相当数のウェブサイト等とを包括しているウェブサイト等において、単に当該公衆への提示の機会を提供したに過ぎない者(著作権者等からの当該侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等において提供されている侵害送信元識別符号等の削除に関する請求に正当な理由なく応じない状態が相当期間にわたり継続していたことその他の著作権者等の利益を不当に害すると認められる特別な事情がある場合を除く。)を除く。) 又は侵害著作物等利用容易化プログラムの公衆への提供等を行つている者(当該公衆への提供等のために用いられているウェブサイト等とそれ以外の相当数のウェブサイト等とを包括しているウェブサイト等又は当該侵害著作物等利用容易化プログラム及び侵害著作物等利用容易化プログラム以外の相当数のプログラムの公衆への提供等のために用いられているウェブサイト等において、単に当該侵害著作物等利用容易化プログラムの公衆への提供等の機会を提供したに過ぎない者(著作権者等からの当該侵害著作物等利用容易化プログラムにより提供されている侵害送信元識別符号等の削除に関する請求に正当な理由なく応じない状態が相当期間にわたり継続していたことその他の著作権者等の利益を不当に害すると認められる特別な事情がある場合を除く。)を除く。) が、当該侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等において又は当該侵害著作物等利用容易化プログラムを用いて他人による侵害著作物等利用容易化に係る送信元識別符号等の提供が行われていることを知つている場合であつて、かつ、当該送信元識別符号等に係る著作物等が侵害著作物等であることを知つている場合又は知ることができたと認めるに足りる相当の理由がある場合において、当該侵害著作物等利用容易化を防止する措置を講ずることが技術的に可能であるにもかかわらず当該措置を講じない行為は、当該侵害著作物等に係る著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。

 前二項に規定するウェブサイト等とは、送信元識別符号のうちインターネットにおいて個々の電子計算機を識別するために用いられる部分が共通するウェブページ(インターネットを利用した情報の閲覧の用に供される電磁的記録で文部科学省令で定めるものをいう。以下この項において同じ。)の集合物(当該集合物の一部を構成する複数のウェブページであつて、ウェブページ相互の関係その他の事情に照らし公衆への提示が一体的に行われていると認められるものとして政令で定める要件に該当するものを含む。)をいう。

10(略)

第百十九条(略)
 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一~三(略)
 侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等の公衆への提示を行つた者(当該侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等と侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等以外の相当数のウェブサイト等(第百十三条第四項に規定するウェブサイト等をいう。以下この号及び次号において同じ。)とを包括しているウェブサイト等において、単に当該公衆への提示の機会を提供したに過ぎない者(著作権者等からの当該侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等において提供されている侵害送信元識別符号等の削除に関する請求に正当な理由なく応じない状態が相当期間にわたり継続していたことその他の著作権者等の利益を不当に害すると認められる特別な事情がある場合を除く。)を除く。)
 侵害著作物等利用容易化プログラムの公衆への提供等を行つた者(当該公衆への提供等のために用いられているウェブサイト等とそれ以外の相当数のウェブサイト等とを包括しているウェブサイト等又は当該侵害著作物等利用容易化プログラム及び侵害著作物等利用容易化プログラム以外の相当数のプログラムの公衆への提供等のために用いられているウェブサイト等において、単に当該侵害著作物等利用容易化プログラムの公衆への提供等の機会を提供したに過ぎない者(著作権者等からの当該侵害著作物等利用容易化プログラムにより提供されている侵害送信元識別符号等の削除に関する請求に正当な理由なく応じない状態が相当期間にわたり継続していたことその他の著作権者等の利益を不当に害すると認められる特別な事情がある場合を除く。)を除く。)
(略)

第百二十条の二 次の各号のいすれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、文はこれを併科する。
・二(略)
 第百十三条第二項の規定により、著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者
(略)

 リーチサイト規制については、親告罪とされた事とプラットフォーマーの原則除外でかなり緩和が図られているとは思うが(一応配慮規定の附則も追加されるようである)、前回載せたパブコメなどでも書いて来ている通り、この様な法改正の本質的な必要性に疑問があり、このそもそもの必要性についての議論が深められる事なく進められようとしている事に私は反対である。

 ダウンロードの違法化・犯罪化の対象範囲の拡大、リーチサイト規制に加えてアクセスコントロール保護強化についてもやはり反対であって、国政における他の重要法改正・事項の審議・検討のどさくさ紛れに、その本質的な問題について十分な審議が尽くされる事なくこの著作権法改正が通らない事を、繰り返し言っている事だが、特に危険なダウンロード違法化・犯罪化についてはこれを規定する全条文が速やかに削除される事を私は心から願っている。

(2020年3月15日夜の追記:上の条文で幾つかあった転記ミスを修正し、合わせ削除部分も追記した。)

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2019年8月18日 (日)

第412回:インターネット海賊版対策としてアクセス警告方式の導入は法的にも技術的にも難しいとする総務省の報告書

 8月8日に総務省からインターネット上の海賊版サイトへのアクセス抑止方策に関する検討会報告書(pdf)が公表された(総務省のリリース参照)。この報告書は、インターネット海賊版対策としてアクセス警告方式の導入は現時点で法的にも技術的にも難しいという極めて妥当な結論を出しているものであるが、今後の政府検討の前提となると思うので、ざっとその内容を見ておく。

 この報告書では、第2ページ以下の第1章で、今までの経緯、出版広報センターからのヒアリング内容と、インターネットの特性やユーザーの意見も踏まえた検討を行うべきといった前置きを書いた後、第7ページ以下の「第2章 ネットワーク側におけるアクセス抑止方策(アクセス警告方式)」でアクセス警告方式の是非を取り上げている。

 まず、第2章の「4.アクセス警告方式の実施の前提となる法的整理」(第9ページ~)で、法的整理、通信の秘密との関係について書いているが、ここで、アクセス警告方式の様な通信の侵害となる方式の実施には原則として明確な個別の同意が必要であるとしながら、例外的に包括同意が許される条件を考えると「ISPが海賊版サイトへのアクセスを警告することを目的として、ユーザのアクセス先を検知し、警告画面を表示することについて、『一般的・類型的に見て、通常のユーザであれば承諾すると想定し得る』か否かが問題となる」(第11~12ページ)が、この様な方式の実施に対して慎重又は否定的なアンケート調査及びパブリックコメントの結果から、「現時点でのユーザの意識・意向を踏まえると、アクセス警告方式の実施について、『一般的・類型的に見て、通常のユーザであれば承諾すると想定し得る』とはいえないと考えられる。したがって、ISPは、ユーザから個別具体的かつ明確な同意を取得する場合にはアクセス警告方式を実施することは可能であるが、現状では、契約約款等による包括同意を有効な同意とみることは困難と考えられる。また、この点は、ダウンロード行為が違法とされる場合であっても同様に考えられる。」(第13ページ)というごく真っ当な結論を出している。

 次に、「5.アクセス警告方式の導入及び実施のための技術的な課題及びコスト」(第13ページ~)で、技術的な課題についても書いているが、ここで、

  • (a)DNS+プロキシ方式:ユーザが海賊版サイトにアクセスしようとした場合にDNSサーバ上で当該アクセスを検知し、アクセス先を海賊版サイトから警告画面を表示するサイトに書き換え、別のサーバ(プロキシサーバ)に誘導して警告画面を表示する手法
  • (b)プロキシ方式:ISPにおいて新たに用意するプロキシサーバを経由してユーザよるwebサイトへのアクセスを提供し、同サーバにおいて警告画面の表示や本来のコンテンツの表示の切替え等を行う手法
  • (c)DPI方式:ISPの管理するネットワークにパケットの中身を解析する機能(DPI装置)を実装する手法

の全てについて、技術的な課題及びコストの問題があり、さらに、海賊版サイトが暗号化通信に対応している場合、電子証明書のエラーから警告画面表示ができないが、「このような証明書エラーの問題を回避し、警告画面を表示させるためには、ISPが保有する警告画面表示用のサーバの証明書を『信頼できるルート証明書』としてユーザのブラウザに追加してもらう方法が考えられるが、そのような方法はセキュリティリテラシーの観点から適切ではなく、現実的な対応策ではないと考えられる。」としているのは当然の帰結である。

 この第2章の結論は、「7.アクセス警告方式に係る今後の検討課題」(第20~21ページ)で、次の通り、個別同意を前提とした試行的実施や技術の進展に伴うコストの将来的な低下などの記載に多少の未練が見られるものの、上で抜き出した部分をそのままなぞる形で書かれている。

 以上の検討を踏まえると、アクセス警告方式は、警告画面を表示させることで、多くのユーザが海賊版サイトにアクセスすることを思いとどまるものと見込まれることから、海賊版対策として一定の効果があると考えられるものの、アクセス警告方式の実施に係る法的整理に関しては、現時点でのユーザの意識や意向を前提とすると、ユーザから個別具体的かつ明確な同意を取得すればアクセス警告方式を実施することは可能である。しかし、現状では、契約約款等による包括同意によってユーザの有効な同意があるとの法的整理を行うことは困難である。また、ダウンロード行為が違法とされたと想定した場合についても、ユーザの意識や意向に大きな違いは見られないことから、同様の整理になるものと考えられる。
 また、アクセス警告方式を実現するための技術的な仕組みや関連機器・システムのコストの面でも、現状では、様々な課題があることが示された。しかしながら、例えば、既に関連機器やシステムを保有しているISPなどもあることから、個別同意を前提としたアクセス警告方式の試行的実施などの技術検証を進めていくほか、インターネットを取り巻く技術の進展は目まぐるしく、また、それに伴って、関連機器・システムのコストも将来的に低下していくことも考えられることから、今後とも海賊版の被害状況や総合的対策メニュー案に示された各施策の取組状況も踏まえつつ、引き続きユーザの意識や意向、技術動向・コスト動向などアクセス警告方式をめぐる状況把握に努めていくことが適当である。
 なお、前述のとおり、アクセス警告方式には海賊版対策として一定の効果が見込まれると考えられるところ、カジュアル・ユーザによる海賊版サイトへのアクセスを防ぐことによって著作権者の被害拡大を防止する仕組みは、ネットワーク側におけるアクセス抑止方策であるアクセス警告方式に限られず、端末側においてアクセス警告方式類似の対策の実装を図ることも可能である。したがって、アクセス警告方式に関する課題については、上記のとおり、引き続き技術検証や状況把握等に努めていく一方で、現状では、後述のとおり端末側でアクセス警告方式類似の方策をすでに実施しており、ネットワーク側ではなく、端末側においてアクセス警告方式類似の対策の実装を図ることがより即時性が高い方策であると考えられることから、上記ネットワーク側におけるアクセス抑止方策への対応と併せて、端末側におけるアクセス抑止方策を着実に促進していくことが適当である。
 意見募集においても、ネットワーク側よりも、端末側において実装を図る方が効率的又は本来のネットワークのあるべき姿に相応しい等の意見も多く寄せられたところであり、こうした声も踏まえて、次章では、端末側におけるアクセス抑止方策について検討を行う。

 報告書の端末側のフィルタリングによる対策について記載している部分は、ブロッキングやアクセス警告方式ほどの問題がある訳ではないので、ここでは省略するが、総務省は8月9日に青少年の安心・安全なインターネット利用環境整備に関するタスクフォース青少年のフィルタリング利用促進のための課題及び対策(pdf)も公表している(総務省のリリース参照)。

 随所にアクセス警告方式に対する未練が見られる点で全く難点がないとまでは言い切れないものの、アクセス警告方式の導入は法的にも技術的にも難しいとするこの総務省の報告書の結論は極めて妥当なものと思うし、パブコメを出したことも無駄ではなかったと思うが(私の提出パブコメは第407回参照)、これでインターネット上の海賊版対策に関する検討が大きな問題なく進められるとは行かないのではないかと私は危惧している。7月26日には、知財本部で検証・評価・企画委員会の第1回が開催され(議事次第・資料参照)、その場でブロッキング導入のための議論再開を求める意見が出されたとの報道もあった(時事通信のネット記事参照)。ダウンロード違法化の対象範囲拡大についてはまだ議題に上っていないようだが、8月9日には文化庁の文化審議会・著作権分科会・法制・基本問題小委員会の第1回も開催されている(議事次第・資料参照)。ブロッキングやアクセス警告についてもそうだが、国会提出が見送られた著作権法改正案(その内容については第406回参照)も巻き込んで、知財本部、文化庁、総務省など各官庁、与党・国会議員への権利者側のロビー活動が止む事はないだろうし、以前と同様ごり押しで秘密裏にロクでもない検討が進められる可能性はなお高く、これからも危ない状況が続くと私は見ている。

 サイトブロッキングにしても、アクセス警告方式にしても、総務省の報告書の最後(第34~35ページ)に参考として、

 サイトブロッキングに関しては、本検討会会合における構成員等からの意見として、例えば、「意見意見募集の結果を見ると、通信の秘密の侵害に対して強い懸募集の結果を見ると、通信の秘密の侵害に対して強い懸念が持たれているということを非常に強く感じる。ブロッキングを可能にする法律を作るにせよ、アクセス警告方式を可能にする包括同意の整理をするにせよ、いずれにしても、簡単にできることではないという指摘が多かったので、これらの点を今後の海賊版サイト対策全体を考える上でもこれらの点を今後の海賊版サイト対策全体を考える上でも心掛ける心掛けるべきべき」、「意見募集において、海賊版対策パッケージ全体として、通信の秘密を侵害する形で進めるべきではないという意見がはっきりと出てきており、アクセス警告方式のみならず、ブロッキングについても反対の意見が多いことにの意見が多いことに留意すべき」といったコメントがあった。

と書かれているコメントの通りであって、これらの様なユーザー・利用者の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ない非道なネット検閲の検討より先になすべき事が山の様にあると思うが、今までの日本の政策動向を見るにつけ、政府・与党がその様な地道な取り組みのみを進めようとしないのは本当に残念でならない。

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2019年5月 2日 (木)

第407回:「アクセス抑止方策に係る検討の論点」に対する意見募集(5月14日〆切)への提出パブコメ

 去年のちょうど今頃知財本部を中心に著作権ブロッキングのごり押しの検討が進められいたと記憶しているが、今もその余波は続いていて、今度はアクセス警告方式が前面に押し出され、知財本部は今でも絡んでいると思うが、その検討のために、4月19日から総務省でインターネット上の海賊版サイトへのアクセス抑止方策に関する検討会が始まっている。

 その検討会の資料として、5月14日〆切で意見募集が掛かっている(総務省HP電子政府HP参照)、アクセス抑止方策に係る検討の論点について、私も意見を提出したので、ここに載せておく。

 その内容は下を見ていただければと思うが、意見募集対象の論点を見ると、サイトへのアクセスにおいて警告画面を表示するアクセス警告方式の導入ありきの検討をしようとしている気配が濃厚に漂うが、アクセス警告方式は利用者・ユーザが一応突破できる点でブロッキングよりは制約的でないと言えるかも知れないが、通信の監視・介入の点で本質的に違いはなく、ほぼ同等の大きな問題を抱えるものである。

 海賊版対策と称して、本来取り組まなければならないはずの送信側・アップロード側の対策そっちのけで、受信側・利用者・ユーザのアクセス制限というネット検閲の検討ばかりが延々と続けられている事には本当に辟易するが(大体、古今東西この手の検閲がうまく行った例はない)、この総務省のパブコメも重要なものの1つと思うので、関心のある方は是非提出を検討する事をお勧めする。

(以下、提出パブコメ)

《要旨》
 情報の自由や検閲の禁止、通信の秘密といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ない、サイトブロッキングやアクセス警告方式の導入ありきの検討に反対する。インターネットにおける海賊版対策の検討においては、まず、アップロードによる著作権侵害に対する民事・刑事の権利行使においてどこにボトルネックがあるのかを明らかにした上で、そのボトルネックを解消するための地道な取り組みのみに注力するべきである。

《全文》
論点0:サイトブロッキング及びアクセス警告方式についてどう考えるか。

(左記論点に対する意見)
 「アクセス抑止方策に係る検討の論点」には最も基本的な論点が欠けているので、ここで、論点0として「サイトブロッキング及びアクセス警告方式についてどう考えるか。」を追加した。

 「アクセス抑止方策に係る検討の論点」に提示された論点を見ると、総務省は、アクセス警告方式の導入ありきでの検討を行おうとしていることが見て取れるが、私はこのような検討に反対する。

 2018年に知財本部において著作権サイトブロッキングについて導入ありきごり押しの検討がされ、幸いなことに、この検討は途中で止まったが、インターネット利用者から見てその妥当性をチェックすることが不可能なサイトブロッキングにおいて、透明性・公平性・中立性を確保することは本質的に完全に不可能である。このようなブロッキングは、憲法に規定されている情報・表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止、通信の秘密といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないものであり、決して導入されるべきでないものである。

 アクセス警告方式は、利用者・ユーザが警告画面を一応突破できるという点でブロッキングよりは制約的でないと言い得るかも知れないが、全国民の通信を監視してその通信に介入するという点ではサイトブロッキングとアクセス警告方式の間に本質的な違いはなく、同様に、情報・表現の自由や検閲の禁止、通信の秘密といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないものである。アクセス警告方式においては、利用者・ユーザーが警告画面を一応突破できるとはいえ、突破したことが妥当であったのかは突破してみなければ分からず、通信の監視によって、利用者・ユーザが警告画面を突破したことについて不利な扱いを受ける恐れが強い状況下で、警告画面の表示は実質的にブロッキングと同等の国民の情報アクセス制限手段として機能することになる。

 また、いかなる形を取るにせよブロッキングの採用が有効な海賊版対策として世界の主要な流れとなっているとは到底言い難いことに加え、アクセス警告方式の導入例に至っては皆無であろう。

 インターネットにおける海賊版対策の検討においては、まず、アップロードによる著作権侵害に対する民事・刑事の権利行使においてどこにボトルネックがあるのかを明らかにした上で、そのボトルネックを解消するための地道な取り組みのみに注力するべきである。

 今後、このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むことを検討するべきである。同じく、憲法に規定されている検閲の禁止及び通信の秘密から、サイトブロッキングやアクセス警告方式のような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むことを検討するべきである。

<検討・実施に当たっての基本的な考え方及び進め方について>

論点1:アクセス抑止方策の検討に際しては、インターネット上の海賊版の現状について関係者の共通認識のもとで議論を進めるべきではないか。

(左記論点に対する意見)
 私はサイトブロッキング及びアクセス警告方式のいずれの導入にも反対するが、あらゆる者の情報アクセスに広く影響を及ぼし得る、インターネット上の海賊版対策の検討にあたっては、権利者団体のみならず、個々の権利者、利用者・ユーザも含む形で、基礎となる事実をきちんと確認した上で議論を進めるべきである。ここで、権利者団体側の一方的な主張に基づく推定に推定を重ねたアクセス数に著作物の単価を掛けるような乱暴な被害額の試算など真摯な政策論の基礎とならないことをまず確認するべきである。

論点2:インターネットの特徴や役割を踏まえて、あるべきネットワークの姿は何かを考慮しつつ議論を進めるべきではないか。

(左記論点に対する意見)
 私はサイトブロッキング及びアクセス警告方式のいずれの導入にも反対するが、国民の基本的な権利である情報の自由を守ることを中心として、インターネットもこのような情報の自由を支える重要な基盤の一つであるという認識に基づいて議論が進められるべきであることは言うまでもない。

論点3: 具体的な方策の検討に当たっては、海賊版サイトにアクセスするユーザにとどまらず、多くのネットユーザにも影響があり得ることから、幅広いユーザの声に耳を傾け、ユーザの理解を十分に得て進めることが必要ではないか。

(左記論点に対する意見)
 私はサイトブロッキング及びアクセス警告方式のいずれの導入にも反対するが、あらゆる者の情報アクセスに広く影響を及ぼし得る、インターネット上の海賊版対策の検討にあたっては、利用者・ユーザの理解を幅広く得ることが必要であることは言うまでもない。ここで、単にこの論点についてのパブコメ結果が理解を得たことの証左とされてはならない。検討会の委員の過半数を利用者代表とすることや、検討会において消費者・利用者団体のすべてに意見を述べる機会を与え、かつ、最終的な報告書においてその意見をきちんと反映するなど、可能な限り利用者の意見を汲み取るようにするべきである。

論点4:アクセス抑止方策の実際の導入に向けた詳細調整・実施は、民間部門において主体的・主導的に進められるべきではないか。

(左記論点に対する意見)
 私は児童ポルノを理由とした、民間主導とされているサイトブロッキングにも反対している。児童ポルノ問題と知的財産権の侵害である著作権侵害問題は混同されるべきではないが、民間主導を建前としても、情報・表現の自由や検閲の禁止、通信の秘密といった国民の基本的な権利の実質的な侵害となるサイトブロッキングやアクセス警告方式は許されてはならないものである。今後、検討の過程において民間主導の話が出されることがあったら、通信関連法を所管する総務省から、そのようなことは民間主導であってもなされるべきではないと述べるべきである。

<アクセス警告方式の実現に向けた検討課題>

論点5:アクセス警告方式を何のために行うのか、どのような意味を持つのか等、実施の前提について議論すべきではないか。ユーザによる海賊版コンテンツのダウンロード行為が違法か違法でないかによって、違いがあるか。

(左記論点に対する意見)
 アクセス警告方式は、全国民の通信を監視してその通信に介入するものであって、情報・表現の自由や検閲の禁止、通信の秘密といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないものである。ここでは、ユーザによるダウンロード行為の違法性以前の問題として、総務省の過去の「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」において児童ポルノブロッキングの著作権ブロッキングへの濫用を戒める整理を敷衍し、アクセス警告方式についても、違法性阻却の余地はないと整理されるべきである。

論点6:アクセス警告方式にはどのようなメリット・効果があると考えられるか。

(左記論点に対する意見)
 アクセス警告方式は、利用者・ユーザが警告画面を一応突破できるという点でブロッキングよりは制約的でないと言い得るかも知れないが、全国民の通信を監視してその通信に介入するという点ではサイトブロッキングとアクセス警告方式の間に本質的な違いはなく、同様に、情報・表現の自由や検閲の禁止、通信の秘密といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないものである。アクセス警告方式においては、利用者・ユーザーが警告画面を一応突破できるとはいえ、突破したことが妥当であったのかは突破してみなければ分からず、通信の監視によって、利用者・ユーザが警告画面を突破したことについて不利な扱いを受ける恐れが強い状況下で、警告画面の表示は実質的にブロッキングと同等の国民の情報アクセス制限手段として機能することになる。すなわち、アクセス警告方式の導入にメリット・有利な効果はない。

論点7:アクセス警告方式の実施の前提としての法的整理に関し、個別の同意が必要か、あるいは、包括同意で足りると整理することが可能か。

(左記論点に対する意見)
 アクセス警告方式は、全国民の通信を監視してその通信に介入するものであって、情報・表現の自由や検閲の禁止、通信の秘密といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないものである。これは、良く理解もされないまま個々の利用者・ユーザの同意さえ得れば良いという問題ではない。通信事業者及び利用者・ユーザに追加のコスト負担が発生しないことを前提に、アクセス警告方式への不参加をデフォルトとして、不利な点も含めてはっきりと説明した上で、全利用者・ユーザから明確な同意が得られれば、アクセス警告方式の実施について同意を前提とし得るかも知れないが、全く非現実的である。

論点8:アクセス警告方式に関する技術的な課題はあるか。

(左記論点に対する意見)
 私はサイトブロッキング及びアクセス警告方式のいずれの導入にも反対する。アクセス警告方式は、全国民の通信を監視してその通信に介入するという点ではサイトブロッキングとアクセス警告方式の間に本質的な違いはなく、情報・表現の自由や検閲の禁止、通信の秘密といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないものであって、サイトブロッキングと同様の技術的課題がある。

論点9:アクセス警告方式の導入及び実施のためのコストについて、どのように考えるか。

(左記論点に対する意見)
 私はサイトブロッキング及びアクセス警告方式のいずれの導入にも反対する。導入及び実施のためのコストを通信事業者が負担する又は利用者・ユーザに転嫁するといった安易な議論に断固反対する。

論点10:その他、導入に当たって、法的・技術的課題以外に検討すべき事項はあるか。

(左記論点に対する意見)
 私はサイトブロッキング及びアクセス警告方式のいずれの導入にも反対する。そもそもこれはアクセス警告方式そのものの法的・技術的課題以前の問題であって、インターネットにおける海賊版対策の検討においては、まず、アップロードによる著作権侵害に対する民事・刑事の権利行使においてどこにボトルネックがあるのかを明らかにした上で、そのボトルネックを解消するための地道な取り組みのみに注力するべきである。

<その他アクセスを効果的に抑制するための方策に係る検討>

論点11:端末側での対応策にはどのようなメリット・効果があると考えられるか。

(左記論点に対する意見)
 完全に携帯端末におけるフィルタリングにより対応するのであれば、通信事業者及び利用者・ユーザに追加のコスト負担が発生しないことを前提に、フィルタリングの不使用をデフォルトとして、不利な点も含めてはっきりと説明した上で、明確な同意が得られれば、同意を前提として個々の利用者・ユーザに対して適用が可能であるかも知れないが、このようなフィルタリングのメリット及び有効性は非常に怪しい。加えて、この場合においても、フィルタリングの使用を強制するようなことがあればアクセス警告方式やサイトブロッキングと同等となることを良く認識した上で、個々の利用者・ユーザから明確な同意を取るようにするとともに、利用者・ユーザからいつでもフィルタリングの解除ができるようにしておくべきである。

論点12:フィルタリング等の端末側での対応策はどのような方法が考えられるか。

(左記論点に対する意見)
 海賊版サイトの主な収入が広告であり、携帯端末からのアクセスが主となっているのであれば、フィルタリングのような有効性の怪しい策より、携帯端末において広告を表示させないサービスを利用者・ユーザに提供することの方がまだ有効ではないかと考える。

論点13:端末側での対応策はどのような技術的課題があるか。

(左記論点に対する意見)
 個々の利用者・ユーザから明確な同意が得られれば、同意を前提としてフィルタリングの適用が可能であるかも知れないが、その有効性は非常に怪しい。加えて、フィルタリングにおいても、対象サイトのリストの管理の問題も発生する。仮に、携帯端末におけるフィルタリングにより対応することを検討するにしても、フィルタリングするサイトのリストは利用者・ユーザから確認可能であるようにするとともに、基本的に対応は端末に閉じるようにするべきであって、通信事業者が利用者・ユーザの特定のサイトへのアクセスを監視することがないよう厳に戒めるべきである。

論点14:端末側での対応策の導入及び実施のためのコストについて、どのように考えるか。

(左記論点に対する意見)
 端末側での対応策の導入及び実施のためのコストについても、通信事業者が負担する又は利用者・ユーザに転嫁するといった安易な議論は慎むべきである。

論点15:その他、端末側での対応策の導入に当たって、法的・技術的課題以外に検討すべき事項はあるか。

(左記論点に対する意見)
 そもそもこれは端末側での対応策の法的・技術的課題以前の問題であって、インターネットにおける海賊版対策の検討においては、まず、アップロードによる著作権侵害に対する民事・刑事の権利行使においてどこにボトルネックがあるのかを明らかにした上で、そのボトルネックを解消するための地道な取り組みのみに注力するべきである。

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2019年3月31日 (日)

第406回:閣議決定されなかった、ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大とリーチサイト規制(リンク規制)を含む著作権法改正案条文

 ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大を含む著作権法改正案は、2月から3月にかけての法案の与党・自民党への説明プロセスの中で差し戻され、閣議決定及び今国会への提出が見送られる事となった。

 この事自体は去年の著作権ブロッキング導入検討の中止と並んで喜ばしい事だが、著作権法も含め知財に関する法案の閣議決定がこの様に与党への根回しの過程で見送られるのは極めて異例であり、文化庁と一部の団体が、また、一部の国会議員が、なお法案の次期(臨時)国会への提出を目指し、これからも表裏で活発な動きを続けて行くだろう事は間違いなく、全く気の抜ける状況ではない。

 今後の議論では、今国会への提出は見送られたものの、政府内プロセスはほぼ終了していたであろう、自民党の部会・調査会に出された説明資料の条文案が軸となると思うので、ここでもその内容を見ておく。

 弁護士ドットコムの記事中の説明資料(pdf)に書かれている法案の概要は、以下のようなものである。

著作物等を巡る近時の社会状況の変化等に適切に対応するため、インターネット上の海賊版対策をはじめとした著作権等の適切な保護を図るための措置や、著作物等の利用の円滑化を図るための措置を講するもの【平成32年1月1日から施行(7.の一部は、「公布日から起算して1年を超えない範囲内で政令で定める日」から施行)】

【著作権等の適切な保護を図るための措置】
1.リーチサイト等を通じた侵害コンテンツへの誘導行為への対応【第113条第2項~第4項、第119条第2項第4号・第5号、第120条の2第3号等】
2.ダウンロード違法化の対象範囲の拡大【第30条第1項第3号・第2項、第119条第3項・第4項等】
3.アクセスコントロール等に関する保護の強化【第2条第1項第20号・第21号、第113条第7項、第120条の2第4号等】
4.著作権等侵害訴訟における証拠収集手続の強化【第114条の3】

【著作物等の利用の円滑化を図るための措置】
5.著作物等の利用許諾に係る権利の対抗制度の導入【第63条の2等】
6.行政手続に係る権利制限規定の整備(地理的表示法・種苗法関係)【第42条第2項】

【その他】
7.プログラムの著作物に係る登録制度の整備(プログラム特例法)【プログラム特例法第4条、第26条等】

 私は自分の提出パブコメ(第402回参照)でも書いた通り、上の法案概要中の「3.アクセスコントロール等に関する保護の強化」にも反対の立場だが、これについては提出パブコメの内容を見て頂くとして、今回は、やはり最も大きな問題を含む「2.ダウンロード違法化の対象範囲の拡大」と、それに次ぐ「1.リーチサイト等を通じた侵害コンテンツへの誘導行為への対応」を順に取り上げる。

(1)ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大
 上でリンクを張った文化庁作成の説明資料は、吹き出しの説明つきでかなりごちゃごちゃしているが、書かれている条文案を抜き出して現行条文と突き合わせて改正条文を作ると以下の様になる。(下線が追加部分。)

(私的使用のための複製)
第三十条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準する限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
(略)
 著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画複製(以下この号及び次項において「特定侵害複製」という。)を、その事実特定侵害複製であることを知りながら行う場合

 前項第三号の規定は、特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行う場合を含むものと解釈してはならない。

第百十九条(略)
(略)
 第三十条第一項に定める私的使用の目的をもつて、録音録画有償著作物等(録音され、又は録画された著作物又は実演等(著作権又は著作隣接権の対象となつているものに限る。)であつて有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)をいう。)著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信著作権(第二十八条に規定する権利を除く。以下この条において同じ。)を侵害する自動公衆送信又は著作隣接権を侵害する送信可能化に係る自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権又は著作隣接権の侵害となるべきもの著作権の侵害となるべきもの又は著作隣接権の侵害となるべき送信可能化に係るものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画複製(以下この条において「有償著作物等特定侵害複製」という。)を、自らその事実有償著作物等特定侵害複製であることを知りながら行つて著作権又は著作隣接権を侵害した侵害する行為を継続的に又は反復して行つた者は、二年以下の懲役若しくは二百万以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

 前項に規定する者には、有償著作物等特定侵害複製を、自ら有償著作物等特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行つて著作権又は著作隣接権を侵害する行為を継続的に又は反復して行つた者を含むものと解釈してはならない。

 ここの条文は、私的複製の例外の例外という形で作られているので元から分かりにくいのだが、その最大のポイントは、第30条第1項第3号と第119条第3項中の「録音又は録画」を「複製」とし、ダウンロード違法化・犯罪化の範囲を録音録画のみからあらゆる著作物の複製に拡大する事にある。

 これらの条文において、民事に関する第30条の方で、「その事実を知りながら行う場合」を「特定侵害複製であることを知りながら行う場合」に変え、「特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行う場合を含むものと解釈してはならない」といった条件をつけ加える事で、文化庁としては限定を加えたつもりなのだろうが、これらはともに主観要件であって、はっきり言って、これで現行条文との間で解釈上本当に違いが出て来るかどうか疑問であり、一個人しか絡まないダウンロードにおける要件の立証・反証の問題に対する解決になるものでは全くない。

 刑事に関する第119条の方では、対象者について、第30条と同様の、「有償著作物等特定侵害複製であることを知りながら行」った者という条件と「自ら有償著作物等特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行」った者は含まれないという条件に加えて、「継続的に又は反復して行つた」者という条件もつくが、「継続」や「反復」とはどの程度の継続や反復なのか不明であり、ネット利用者に対するセーフハーバーになっていると言えるものでは到底ない。なお、刑事罰規定において、著作権法第28条の2次著作物についての原著作者の権利が除かれているが、この事はこの問題の本質とは関係がない。(昨今のウィルス(不正指令電磁的記録関連)罪の摘発の状況を見ても、親告罪とされるだろうとはいえ、今後警察や検察が著作権法の違法ダウンロード罪について無茶な摘発をしようとして来る可能性は常にあり、その時、現行法だろうが、改正条文案だろうが、無罪の立証にはかなりの労力を要するであろうし、場合によっては、恣意的に摘発されたネット利用者の生活と安全が一気に危険に晒される事になる。)

 このダウンロード違法化・犯罪化の拡大については、国際日本文化研究センターの山田奨治教授がそのブログ記事でまとめられている様に、以下の団体から反対や懸念の意見が出されている。

・日本マンガ学会・声明(1月23日)
・情報法制研究所・表明(pdf)(2月8日)
・中山信弘東京大学名誉教授他の呼びかけによる・声明(pdf)(2月19日)
・出版広報センター・意見(pdf)(2月21日)
・アジアインターネット日本連盟・意見(pdf)(2月21日)
・日本独立作家同盟・意見(2月25日)
・日本知的財産協会・意見(2月26日)
・日本漫画家協会・意見(2月27日)
・マンガジャパン・声明(3月1日)
・全国同人誌即売会連絡会・意見(3月10日)
・エンターテイメント表現の自由の会 (AFEE)・声明(3月10日)
・日本建築学会・声明(3月11日)
・日本グラフィックデザイナー協会・声明(3月13日)
・弁護士有志・声明(3月13日)
・日本学術会議有志・意見(3月13日)

 文化庁は相変わらず誤解が広まったと言って回っている様だが、専門家や研究者のレベルで誤解して反対や懸念を述べている様な者がいる訳がない。文化庁の言い分は相変わらず意味不明と言う他ないが、ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲をあらゆる著作物に広げようとする話で、スクリーンショットのみに問題を矮小化する事ほど危険な事はないだろう。

 私自身はそもそも現行の条文にも問題があり、この問題はそもそも解決不能であって、著作権法第30条第1項第3号及び第119条第3項は削除するべきと思っている事に変わりはない。ただ、それでも、明治大学知的財産法政策研究所の高倉成男明治大学教授・中山信弘東京大学名誉教授・金子敏哉明治大学准教授の3氏が出された意見(pdf)要旨(pdf))の通り、「原作のまま」という条件と「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」という条件を追加すればかなりましになるとも思っているが、この様な限定すら文化庁が嫌がっていると見えるので、ダウンロード違法化・犯罪化問題について今後も危うい状況が続くだろう。

(2)リーチサイト規制(リンク規制)
 リーチサイト規制部分も文化庁の資料は説明が前後していて分かりにくいのだが、順番を直して書き起こすと以下の様になる。

(侵害とみなす行為)
第百十三条(略)
 送信元識別符号又は送信元識別符号以外の符号その他の情報であつてその提供が送信元識別符号の提供と同一若しくは類似の効果を有するもの(以下この項及び次項において「送信元識別符号等」という。)の提供により侵害著作物等(著作権(第二十八条に規定する権利を除く。以下この項及び次項において同じ。)、出版権又は著作隣接権を侵害して送信可能化が行われた著作物等をいい、国外で行われる送信可能化であつて国内で行われたとしたならばこれらの権利の侵害となるべきものが行われた著作物等を含む。以下この項及び次項において同じ。)の他人による利用を容易にする行為(同項において「侵害著作物等利用容易化」という。)であつて、第一号に掲げるウェブサイト等(同項及び第百十九条第二項第四号において「侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等」という。)において又は第二号に掲げるプログラム(次項及び同条第二項第五号において「侵害著作物等利用容易化プログラム」という。)を用いて行う行為は、当該行為に係る著作物等が侵害著作物等であることを知つていた場合又は知ることができたと認めるに足る相当の理由がある場合には、当該侵害著作物等に係る著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。
 次に掲げるウェブサイト等
 当該ウェブサイト等において、侵害著作物等に係る送信元識別符号等(以下この項において「侵害送信元識別符号等」という。)の利用を促す文言が表示されていること、侵害送信元識別符号等が強調されていることその他の当該ウェブサイト等における侵害送信元識別符号等の提供の態様に照らし、公衆を侵害著作物等に殊更に誘導するものであると認められるウェブサイト等
 イに掲げるもののほか、当該ウェブサイト等において提供される侵害送信元識別符号等の数、当該数が当該ウェブサイト等において提供される送信元識別符号等の総数に占める割合、当該侵害送信元識別符号等の利用に資する分類又は整理の状況その他の当該ウェブサイト等における侵害送信元識別符等の提供の状況に照らし、主として公衆による侵害著作物等の利用のために用いられるものであると認められるウェブサイト等
 次に掲げるプログラム
(略)(注:リーチサイトと同様にプログラムについて規定している模様。)

 侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等に該当するウェブサイト等の公衆への提示を行つている者又は侵害著作物等利用容易化プログラムに該当するプログラムの公衆への提供又は提示を行つている者が、当該ウェブサイト等において又は当該プログラムを用いて他人による侵害著作物等利用容易化に係る送信元識別符号等の提供が行われていることを知つている場合であつて、かつ、当該送信元識別符号等に係る著作物等が侵害著作物等であることを知つている場合又は知ることができたと認めるに足りる相当の理由がある場合において、当該侵害著作物等利用容易化を防止する措置を講ずることが技術的に可能であるにもかかわらず当該措置を講じない行為は、当該侵害著作物等に係る著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。

 前二項に規定するウェブサイト等とは、識別するために用いられる部分が共通するウェブページ(インターネットを利用した情報の閲覧の用に供される電磁的記録で文部科学省令で定めるものをいう。)の集合物の全部又は一部であつて、同一の者が公衆への提示を行つているものとして政令で定めるものをいう。

第百十九条(略)
 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
(略)
 侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等の公衆への提示を行つた者
 侵害著作物等利用容易化プログラムの公衆への提供又は提示を行つた者

第百二十条の二 次の各号のいすれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、文はこれを併科する。
(略)
 第百十三条第二項の規定により、著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者
(略)

 このリーチサイト規制の条文案も、法律用語を用いて書かれているので、分かりにくいが、第113条第2項は、「公衆を侵害著作物等に殊更に誘導するものであると認められるウェブサイト等」又は「主として公衆による侵害著作物等の利用のために用いられるものであると認められるウェブサイト等」における、「送信元識別符号」の「提供」により「侵害著作物等の他人による利用を容易にする行為」を、「当該行為に係る著作物等が侵害著作物等であることを知つていた場合又は知ることができたと認めるに足る相当の理由がある場合」に、著作権侵害とみなすというものであって、要するに、著作権侵害のために公衆に利用されるウェブサイト等で、リンク先の著作物が侵害著作物である事を知りながら又は知る事ができたとする相当の理由がありながら、リンクを提供する事を規制し、さらに、第120条の2で、刑事罰(3年以下の懲役又は300万円以下の罰金)もつけて犯罪化するというものである。(プログラム(アプリ)を用いる場合も同様とされている。)

 また、第113条第3項では、ウェブサイト等の運営者には放置に関する責任があるとし、第4項で、ウェブサイト等の範囲は政令で定められるものとし、第119条で、ウェブサイト等の運営者をリンク提供者より厳罰(5年以下の懲役又は500万円以下の罰金)に処すとしている。

 リーチサイト規制(リンク規制)についても、以前書いた事と重なるのだが(第401回で書いた文化庁の報告書案の内容や第402回の提出パブコメ参照)、一応もっともらしく限定されている様に読めるものの、これは、著作権侵害ウェブサイト等における、侵害とされ得るあらゆる著作物への単なるリンク提供行為を規制するものである。しかも、ウェブサイト等の範囲は文化庁主導の政令で定められるので、当初の範囲がどうあれ、今後、検索やSNSなど様々なサービスにおける細かなリンクの提供あるいはサービス自体の提供まで法改正抜きで広範な規制が可能となる様に作られているのは悪質である。さらに、ダウンロード犯罪化と同様リンク提供行為については非親告罪とされる様だが、サイト運営者については非親告罪とされる様である点も問題だろう。

 このリーチサイト規制(リンク規制)の条文案は、予想通り、みなし侵害規定の追加だけで、特にこの部分でセーフハーバー規定は入らないと見えるので、この条文案で本当に法律ができれば、リンクの提供がインターネット上で非常にカジュアルに行われている事を考えると、まず間違いなく、国内のネットサービス提供者や利用者のリンク提供行為に対する脅しや嫌がらせが増え、インターネット利用における民事・刑事のリスクが無意味に高まる事になるだろうと私は思っている。

 このリーチサイト規制(リンク規制)の問題については、高木浩光氏がそのブログ記事で的確に批判されている事を除くとまだあまり広まっていない様であるが、この部分についても問題点が広く知られ、規定の削除あるいは条文修正の議論が進められる事を私も願う。

 3月29日の知財本部の評価・企画委員会コンテンツ分野会合の事務局資料(pdf)の第2ページで、

・著作権を侵害する静止画(書籍)のダウンロードの違法化のための法制度整備を速やかに行う【文化庁】
・インターネットユーザーを侵害コンテンツへ誘導するウェブサイト(リーチサイト)に対応するための法制度整備を速やかに行う【文化庁】

と書かれている通り、文化庁としては修正なしの法案提出をなお狙っているだろうし、さらに、同ページに、

(アクセス警告方式について)・法制度の変更を前提とせずにユーザーのアクセス抑止効果を最大限高める方式を検討し、海賊版サイトへの対策として実効的な枠組みを提示した上で、速やかに導入する(関係者と協議しながら検討・導入)【総務省】
・ブロッキングに係る法制度整備については、他の取組の効果や被害状況等を見ながら検討【内閣府及び関係省庁】

とある通り、ブロッキングについては抑え気味になっているものの、政府は、今度は代わりにアクセス警告方式を前面に押し出して来ているので、4月以降半年から1年くらいの間で検討・議論が進められる喫緊かつ危険な知財政策上の問題は、ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大、リーチサイト規制(リンク規制)、アクセス警告方式の検討の3つという事になるのだろう。

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2018年7月16日 (月)

第396回:TPP11関連法の成立と知財本部の著作権ブロッキング検討

 先月のことになるが、極めて残念なことながら、6月28日に参議院の内閣委員会で、6月29日に本会議で、環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案(アメリカ抜きのTPP11協定関連法案)が可決・成立し、7月6日に公布された。

 参議院HP議案情報にTPP11協定関連法案の採決結果が出ているが、主要政党では、自民党、公明党、維新の会、希望の党が賛成し、国民民主党、立憲民主党、共産党、自由党・社民党が反対した。

 第393回で書いた通り、この法案は、凍結によって必要がなくなっているにもかかわらず、TPP11協定の発効に合わせて著作権の保護期間延長を施行するという悪辣かつ姑息な内容のものだが、結局参議院でもこの法案の本質的な問題の議論は深められず、これが与党の手によってなし崩し的に可決されたのは日本の知財政策上痛恨の極みと言っていい。

 元の12カ国でのTPP協定はアメリカの脱退によって発効の見込みが立たなくなっているが、今度のTPP11協定はGDPとは無関係に6カ国の批准で発効することになっており、残念ながら、いずれ発効する見込みは高いと私も見ている。

 参議院内閣委員会の附帯決議(pdf)は、「米国との経済対話や『自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議(FFR)』においては、TPPの合意水準を上回る米国からの要求は断固として拒絶し、我が国の国益に反するような合意は決して行わないこと」といった綺麗事を並べ立てているが、元のTPP協定から脱退したアメリカのトランプ大統領にとってTPP11協定が何の圧力にもならないことは目に見えている上に、この法案自体が著しく国益を損なっているのだから何をか言わんやだろう。

 繰り返しになるが、著作権の保護期間延長がアメリカの強硬な主張によって入れられたことを考えても、このような凍結項目は本来TPP11関連法案から外しておくべきだったものである。にもかかわらず、まとめて法案の中に入れて可決を強行したことは、国として政策判断を自ら放棄する戦後最大級の愚行であり、このことは長きに渡って我が国の根本を蝕むことだろう。(無論、第386回で書いた通り、著作権延長問題については日欧EPAも控えているのはその通りだが、このような多重ポリシーロンダリングは本来許されて然るべきものではない。)

 また、私が今最も注視している政府の検討会に、著作権ブロッキングの是非を検討している、知財本部インターネット上の海賊版対策に関する検討会議があり、既に2回も開催されている。

 6月22日の第1回インターネット上の海賊版対策に関する検討会議(タスクフォース)の設置について(pdf)を見ると、メンバーのバランスは一応取れており、苦肉の策だろうが、著作権ブロッキングを今まで主導していたコンテンツ分野会合の座長だった中村伊知哉氏に加えて、村井純氏が共同座長になっている形であり、第392回で取り上げたネット検閲緊急対策決定後のおよそロクでもない状況において、ここでブロッキングありきの検討が行われる様子がなさそうなのはかろうじて評価できる。(その運営について(案)(pdf)を見ると、検討会議が原則公開となっているのは当たり前として、海賊版サイトの個別名称などが非公開扱いにされている。もはや知財本部・事務局は資料の整合性を取ることもできなくなっているのだろうが、サイト名指しの緊急対策は一体何だったのか。)

 6月22日の主な論点(案)(pdf)には、検討のスコープとして、「①正規版流通の更なる拡大によるコンテンツ視聴環境の整備」、「② 現行法令下での既存の海賊版対策の取組状況の検証及び実効性評価」、「③ 特に悪質な海賊版サイトに対する権利行使を可能とする法制度整備のあり方」といった項目があげられているが、これらは全て緊急対策の決定前に検討すべきだったものであり、このような検討もしない儘になぜブロッキングを要請するネット検閲緊急対策が決定できたのか本当に理解不能である。

 6月26日に開催されていた第2回も、7月18日に開催される予定の第3回も(開催案内参照)、正規版流通と海賊版対策の現状について報告を受ける内容であり、この時点で政策の方向性が打ち出されるということはなさそうである。しかし、6月22日のスケジュールイメージ(案)(pdf)によると、9月には中間取りまとめ案のパブリックコメントを取る予定になっており、政府は非常な急ピッチで検討を進めるつもりと見え、著作権ブロッキングありきの検討が行われる恐れもあり、引き続き注視して行く必要があると思っている。

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2018年4月22日 (日)

第393回:著作権保護期間延長を含むTPP11協定関連法改正案他

 著作権ブロッキングの問題を先に取り上げたが、今回は第390回の続きで今国会に提出されている知的財産法改正案のことである。

(1)TPP11協定関連法改正案
 先月、3月27日に、11カ国でのTPP協定(正式名称は「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」)の妥結に伴い、TPP11協定関連法改正案が閣議決定され、国会に提出されている。(TPP等政府対策本部のHP概要(pdf)要綱(pdf)法律案・理由(pdf)新旧対照表(pdf)参照条文(pdf)参照。)

 概要(pdf)の別紙に、主な改正内容として、

○TPP整備法のうち、現状未施行となっている以下の10本の法律の改正規定について、施行期日を環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11協定)の発効日に改正する(TPP整備法附則第1条)

①関税暫定措置法(※1)
②経済上の連携に関する日本国とオーストラリアとの間の協定に基づく申告原産品に係る情報の提供等に関する法律
③著作権法(※2)
④特許法(※2)
⑤商標法
⑥医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
⑦私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律
⑧畜産物の価格安定に関する法律
⑨砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律
⑩独立行政法人農畜産業振興機構法

※1 牛肉の関税緊急措置の廃止に係る規定の施行期日は、TPP12協定の発効日のままとする(TPP11協定の発効時点では、当該措置は存続)(TPP整備法第4条、第4条の2(新設)及び附則第1条)
※2 TPP11協定上の凍結項目(「著作物等の保護期間の延長」、「技術的保護手段」、「衛星・ケーブル信号の保護」及び「審査遅延に基づく特許権の存続期間の延長」)を含む(TPP整備法附則第1条)
*なお、TPP12協定を引用した箇所については、TPP11協定に対応できるよう規定を整備する。

と書かれているが、この「※2」に書かれている通り、この法改正案は、TPP11協定において凍結されている著作物等の保護期間の延長などの知財関連項目に対応する法改正の施行日を、元の12カ国でのTPP協定ではなく、TPP11協定の発効日にする内容になっている。

 条文上は、未施行の元のTPP12協定のための法律(正式名称は「環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律」)を法改正するという形を取り、附則の第1条で以下のように著作権法などの改正が含まれる全体の施行日をTPP11協定の発効日に変えている。(下線部が追加部分。)

第一条 この法律は、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定環太平洋パートナーシップ協定が日本国について効力を生ずる日(第三号において「発効日」という。)から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
 附則第九条の規定 公布の日
 第三条中商標法第二十六条第三項第一号の改正規定及び第十条の規定 公布の日から起算して二月を超えない範囲内において政令で定める日
二の二 附則第十八条の規定畜産経営の安定に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する法律(平成二十九年法律第六十号) 附則第一条第二号に掲げる規定の施行の日
 第四条中関税暫定措置法別表第一の三第〇四〇四・一〇号の改正規定(「九九円」の下に「(発効日の前日以後に輸入されるものにあつては、三五%及び一キログラムにつき一二○円)」を加える部分に限る。)及び附則第三条第一項の規定 発効日の前日
 附則第十九条の規定 環太平洋パートナーシップ協定が日本国について効力を生ずる日の前日
 第四条の二の規定及び附則第三条第三項の規定 環太平洋パートナーシップ協定が日本国について効力を生ずる日

 このように、この法改正案は、凍結項目とされた著作権の保護期間延長の施行までTPP11協定の発効で行おうとする内容のものとなっているのだが(凍結項目については第384回参照)、12カ国の全GDPの内85%を占める6カ国が国内手続きを完了しない限り発効せず、アメリカが脱退した時点で発効は絶望的となった元のTPP12協定と異なり、TPP11協定は、GDPにかかわらず6カ国の国内手続きの完了で済み、発効のハードルが相当下げられていることを考えると、凍結項目まで含めたこのような関連法改正案の作りは卑劣かつ姑息なものと言わざるを得ない。

 また、条約でわざわざ凍結項目とされた部分についてまで国内法を改正しようとすることは国際的に自ら墓穴を掘る最大級の愚行と言っても過言ではないが、もはや今の日本の政府与党にまともな判断力は全く期待できないのだろう。今現在国会が混乱しており、条約や法改正案の審議の目処が立たない状況なのは良いことである。このままこのTPP11協定の批准も関連法案の可決もされないことを私は心から願っている。

第386回で書いた通り、著作権保護期間延長を含む日欧EPAに合わせて法改正案を出して来るのだろうと思っていたが、私の見通しは甘かった。)

(2)特許法等の改正案
 後は、第390回で取り上げた不正競争防止法等の改正案(経産省のHP概要1(pdf)概要2(pdf)参考資料(pdf)要綱(pdf)法律案・理由(pdf)新旧対照表(pdf)参照条文(pdf)参照)には、特許法なども含まれている。

 この概要1(pdf)に書かれている特許法等の一部改正の項目に改正条文の番号を追加すると以下のようになる。

①これまで一部の中小企業が対象だった特許料等の軽減措置を、全ての中小企業に拡充する。(特許法第109条の2)
②裁判所が書類提出命令を出すに際して非公開(インカメラ)で書類の必要性を判断できる手続を創設するとともに、技術専門家(専門委員)がインカメラ手続に関与できるようにする。(特許法第105条)
③判定制度の関係書類に営業秘密が記載されている場合、その閲覧を制限する。(特許法第186条、意匠法第63条、商標法第72条)
④特許出願等における新規性喪失の例外期間を6月から1年に延長する。(特許法第30条、意匠法第4条)
⑤特許料等のクレジットカード払いを認める。(工業所有権に関する手続等の特例に関する法律第15条の3)
⑥最初に意匠出願した国への出願日を他の国でも出願日とすることができる制度について、必要書類のオンラインでの交換を認める。(意匠法第15条、第60条の10)
⑦商標出願手続を適正化する。(商標法第10条)

 基本的には地道な制度ユーザーのための改正でそれほど問題がある訳ではないので細かな説明は省略するが、第390回で書いたように不正競争防止法の改正案はやはり問題が多いと思っている。

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2018年4月15日 (日)

第392回:政府与党による海賊版対策とは名ばかりのネット検閲推進策の決定

 報道されていた通り、先週4月13日に知的財産推進本部・犯罪対策閣僚会議の合同会合が開かれ、インターネット上の海賊版サイトに対する緊急対策(pdf)概要(pdf)も参照)とインターネット上の海賊版対策に関する進め方について(pdf)が決定された。この著作権ブロッキングを求める政府の緊急対策と対策の進め方は、既に様々なところで批判されているが、徹頭徹尾その理屈は良く分からず、到底まともな議論に耐え得るものではない。

 まず、緊急対策の第1ページに「昨今運営管理者の特定が困難であり、侵害コンテンツの削除要請すらできない海賊版サイト」云々と書かれているが、運営管理者の特定が本当に民事救済におけるボトルネックとなっているのであれば、著作権法やプロバイダー責任制限法をどのようにすればこのような問題を解消できるかという話をすればいいだけである。また、刑事の話をするならば、名指しで挙げられているサイトはリーチサイトですらなく、これらのサイトの提供・運営は明らかに違法なので、刑事訴追できない理由もない。それなりの規模の違法サイトを運営できるだけのサーバーを置ける国で著作権法やプロバイダー責任制限法に相当する法律が整備されていないということも考え難く、サーバーが外国にあることやクラウドサービスであることなどもサイト運営者が免責される理由になる訳がない。必要であれば、その国の弁護士を使って民事裁判をすることができるだろうし、刑事における捜査協力もできるだろう。(前回も書いたが、政府与党にブロッキングを求める前に権利者としてこれらのサイトに対してどこまで権利行使をしようとしたのか甚だ疑わしいと私は思っている。)

 第1~2、4~6ページに、特に悪質な海賊版サイトのブロッキングに関する考え方の整理が書かれているが、ここで書かれていることも法的整理としてはほとんど与太話の域を出ない。今までの官民の整理で著作権ブロッキングが認められる余地がないのは前回も書いた通りである。これでブロッキングをしろと言われてもインターネットサービスプロバイダー(ISP)としては対応に困るだろう。(これも前回の繰り返しになるが、緊急避難かどうかは個々の事案に応じて個別具体的に判断されるべきものであって、産業界、行政、立法の懈怠を誤魔化すために緊急避難が使われることは断じてあってはならないことである。)

 第2ページで結論のように、「当面の対応としては、法制度整備が行われるまでの間の臨時的かつ緊急的な措置として、下記類型の考え方に基づき、民間事業者による自主的な取組として、『漫画村』、『Anitube』、『Miomio』の3サイト及びこれと同一とみなされるサイトに限定してブロッキングを行うことが適当」、「ブロッキングの実施は、以下類型に沿って、あくまで民間事業者による自主的な取組として、民間主導による適切な管理体制の下で実施されることが必要」、「新たに特に悪質な海賊版サイトが登場した際に、速やかに以下類型の考え方に基づいたブロッキングを実施するため知的財産戦略本部の下で、関係事業者、有識者を交えた協議体を設置し、早急に必要とされる体制整備を行う」と書かれているが、民間の自主的な取組という言葉で僅かに取り繕っているものの、政府がどのような基準で選んだのかすら良く分からない特定サイトを名指ししてブロッキングを求めること自体異常極まることという他ない。これがネット検閲命令でなくて何だというのか。これが通るなら、政府与党の指導であらゆるサイトはブロッキングされる危険に晒されることになるし、今後確実に政府与党は自分たちにとって都合の悪い情報を載せたサイトを隠すためにこのようなネット検閲を濫用して来るだろう。(毎日新聞の記事などによると、政府はブロッキングの要請を民間の自主的な取組を促すという言葉に急遽差し替えたらしいが、私には質の悪い言葉遊びとしか思えない。ここでは、単にこれらの3サイトがブロッキングされて然るべきかどうかということが問題なのではない。言うまでもないことだが、さらに念のために書いておくと、一旦可能となったら、このようなネット検閲は著作権の問題に留まらず、あらゆることに拡大解釈されて適用されて行くことになるだろう。)

(なお、そもそも緊急避難は被害の多寡だけの問題ではないが、第4ページの注釈には、「サイトへの訪問者が、『漫画村』では、約1億6000万人(96%が日本からのアクセス)」等とコンテンツ業界がロビー活動の際に使ったと思われる数字がそのまま垂れ流されているが、単純計算で日本に約1億5000万人の利用者がいることになるになるなど、政府としてこのペーパーを書くにあたり内容をまともに検証したとは到底思えない。)

 第2ページで、「インターネット上の海賊版に効果的に対応していくためには、著作権者等による侵害コンテンツの削除要請等の地道な取組や広告出稿抑止等侵害者の資金源を断つための取組のほか、そもそもインターネット上の海賊版の流通・閲覧防止のため、学校関係者、事業者、関係団体等と連携しながら、学校、地域における著作権教育に取り組んでいく必要があり」と書かれているが、本来であれば、この点で今まで何をどうしていたのかということこそ問われるべきであるのに、この部分は最後に取ってつけた様に書かれており、その具体的な内容が全くない。

 次に、インターネット上の海賊版対策に関する進め方について(pdf)だが、上の緊急対策で書かれたネット検閲命令に加えて、こちらでは、次期通常国会を目指す法改正事項として、別紙に以下のような3つの項目が書かれている。

1.海賊版サイトへのブロッキングに関する法制度整備
○一定の要件の下でISP事業者に対してブロッキングの請求を行うことができる規定の整備等、海賊版サイトへのブロッキングが実効性のあるものとするための制度の整備。なお、法制度整備にあたっては、「2.」の措置を踏まえて、リーチサイトの取扱いについても併せて検討を行う。
[→ 対象とするサイト選定の基準、最適な手続手法(司法手続又は行政手続)等が主な論点。]

2.リーチサイト関係の法制度整備
○リーチサイトを通じた侵害コンテンツへの誘導行為について著作権法上「みなし侵害行為」等として法的措置が可能である事を明確にするための手当。
[→ 差止請求の対象として特に対応する必要性が高い行為類型の定義が主な論点。]

3.その他論点となり得るもの
○ 静止画(書籍)のダウンロードの違法化等

 要するに、これは、行政指導によって無理矢理なし崩しの内に入れさせようとしているネット検閲を立法によって合法化しようとするものであり、ここで書かれていることはさらに危険である。

 上の緊急対策ではあくまで民間主導と言いながら、こちらでは法制化によるブロッキングの強制を狙っているなど、児童ポルノ対策においてすら喧々諤々の議論の末にブロッキングの法制化は見送られ民間の自主的な取組としてされていることを忘れているなど、ブロッキングの基準を論点にしており、良く分からない基準で3サイトを選びブロッキングを求めていることを政府自ら認めているなど、ここでの論理破綻は覆い隠すべくもない。

 また、この対策の進め方では、緊急対策では具体的内容がないながら一応書かれていた「削除要請等」や「広告出稿抑止等」の本来取り組むべき地道な海賊版対策の言及すらなくなり、やはりネット検閲に繋がるものでしかない画像のダウンロード違法化(今の著作権法の構成で静止画のダウンロード違法化を追加すると刑事罰付与(犯罪化)も同時にされることになるのではないか)を検討項目として挙げるなど、著作権侵害にかこつけて、海賊版対策そっちのけで、とにかく国民の情報の自由を圧殺してネット検閲を実現したいとする政府与党の犯罪宣言に等しいものとなっている。

 この政府のペーパーの内容が海賊版対策に全くならないことを私は確信しているが、もはや海賊版対策とは名ばかりで、ネット検閲こそが今の政府与党の真の狙いなのだろうと私は見る。曲がりなりにも表現の自由や検閲の禁止、通信の秘密の保護などの情報の自由に関する国民の権利を含む民主主義的な憲法を擁し、法治国家を唱える日本政府において、最初から最後までネット検閲を実現したいということしか書かれていない方針ペーパーが決定されたことを私は極めて深く憂慮する。

 既に報道等もされているが、先週から今週にかけての、政府の著作権ブロッキング推進方針に対する団体などの声明等へのリンクを最後に張っておくが、まず、反対・懸念を表明するものとしては、

  • インターネットユーザー協会と主婦連合会の共同声明(主婦連サイトの共同声明(内容は同じ))(4月11日)
  • モバイルコンテンツ審査・運用監視機構の意見(pdf)(4月11日)
  • インターネットコンテンツセーフティ協会の声明(4月11日)
  • 情報法制研究所の緊急提言(pdf)(4月11日)
  • 日本インターネットプロバイダー協会の声明(pdf)(4月12日)
  • 日本ネットワークインフォメーションセンターの見解(4月12日)
  • 安心ネットづくり推進協議会の意見書(pdf)(4月12日)
  • Internet Society日本支部の意見表明(4月12日)
  • 全国地域婦人団体連絡協議会の意見書(pdf)(4月12日)

があり、歓迎・賛成するものとしては、

  • 集英社の緊急声明(4月13日)
  • 講談社の緊急声明(pdf)(4月13日)
  • KADOKAWAの緊急声明(pdf)(4月13日)
  • 出版広報センターの声明(pdf)(4月13日)
  • コンテンツ海外流通促進機構の声明(4月13日)
  • 日本映像ソフト協会の声明(pdf)(4月13日)
  • 日本映画製作者連盟の声明(4月13日)
  • コミック出版社の会の緊急声明(pdf)(4月20日)
  • 日本弁理士会の声明(4月20日)

がある。

(2018年4月22日夜の追記:コミック出版社の会の緊急声明へのリンクを追加した。)

(2018年4月23日夜の追記:案の取れた資料が知財本部のHPに掲載されていたのでリンクを入れ替え、「(なお、リンク先の資料は案がついたままだが、そのまま決定されて案が取れている。)」という括弧書きを削除し、日本弁理士会の声明へのリンクを追加した。また、具体的にいつ何をどうするのかは不明だが、今日4月23日にNTTグループが著作権ブロッキングを実施する予定と公表したので、ここにリンクを張っておく。)

(2018年4月30日夜の追記:情報法制研究所が、4月27日に、NTTグループのブロッキング実施予定方針について懸念を示す意見(pdf)を出したので、ここにリンクを張っておく。)

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