2012年6月20日 (水)

第277回:ダウンロード犯罪化を含む著作権法改正案の参議院での可決・成立及び今後のこと

 残念極まることに、今日2012年6月20日、参議院文教科学委員会及び本会議で、ダウンロード犯罪化を含む著作権法改正案が可決・成立した(参議院インターネット審議中継ITmediaの記事internet watchの記事朝日のネット記事参照)。

 今日の参院文科委の審議では、昨日あれほど明確に慎重・反対の意見を表明して下さった森ゆうこ議員が委員から外され、何らの質疑・討論もなく、わずか数分で全会一致の採決が行われた。この法案の審議では、議論を尽くすことなく反対意見を持つ者を公の議論の場から排除してその意見表明を封じ、委員会を無理矢理全会一致にするという実に非民主主義的なプロセスが取られ、本会議での可決まで持って行くということが行われたのである。はっきり言って、これはあのデタラメ極まるダウンロード違法化の時の審議をその非道さにおいて上回っている。

 このような非民主主義的な口封じの仕方を推進側を取ったということは、裏を返せば、利用者が抱いていた懸念、国会の審議でも、共産党の宮本たけし議員や民主党の森ゆうこ議員から、また参考人として呼ばれた日弁連の市毛由美子氏やMIAUの津田大介氏から示された懸念は実に正当なものだったと言っているに等しい。今すぐにどうこうできるという話ではないが、このような姑息なやり口で異論を封じ、多様な意見を取り入れて議論を深め最も妥当な結論を導くという民主主義の常道と良識を踏み躙られたからには、今後はこちらもそれをどのようにして乗り越えて行くかを真剣に考えて行かなければならない。

 また、少なくとも、このような著作権法改正のロビーをしたのが主としてレコード協会やエイベックス、音事協といったCD中心のビジネスを展開するレコード業界(必ずしも音楽業界とイコールではない)であることを覚えておく必要があるだろうし、次の選挙に向けて、与党内で最後まで反対の意見を持って下さっていた、民主党の森ゆうこ議員や川内博史議員、また検討の途中の民主党部会で慎重な意見を言って下さったという民主党の林久美子議員といった各先生方の名前を覚えておく必要もあるだろう。ここで、共産党が宮本たけし議員を筆頭として強力に反対して下さったということも忘れてはいけない。また、主に法案を強力に推進していた、自民党の馳浩議員や下村博文議員の名前も推進側の議員の名前として記憶しておかなければならないだろうが、自民党については、検討の過程において、世耕弘成議員や山本一太議員が慎重な意見を表明していたことに注意しておく必要があるだろう。さらに、公明党の池坊保子議員がダウンロード犯罪化修正案の主たる提案者となっているが、一丸となってダウンロード犯罪化を強力に推進していた節がある公明党は本当に党全体として危険だと思っておいた方がいい。

 さらに、参議院での本会議で反対票を投じて下さった12名の議員として、民主党の森ゆうこ議員、共産党の井上哲士議員・市田忠義議員・紙智子議員・田村智子議員・大門実紀史議員・山下芳生議員、社民党の福島みずほ議員・又市征治議員・山内徳信議員・吉田忠智議員、無所属の糸数慶子議員の名前をここでもあげておく(参議院の本会議投票結果参照)。

 実際には、警察・検察の捜査能力が無限大ということはあり得ず、また現実的に考えれば捜査能力が即座に大幅に増強されるということもないので、法改正の施行後すぐにどうこうなるということはないだろうが、立法プロセス中で法案の問題点が明確にされ懸念が解消されるという機会はもはや失われ、ほぼそのまま恣意的な運用が可能なままに行政・司法に丸投げされたのである、ダウンロード犯罪化の検討過程において示された懸念は規模の大小こそ読めないが現実化して行くだろうし、今後このような規制の存在が日本における法規制とビジネスのあり方を順当に歪めて行き続けるに違いない。

 このような非民主主義的かつ姑息なやり口で可決された法律を守れという気は私はさらさらないし、私的違法ダウンロード罪の犯罪としての構成要件は不明確極まるので、インターネットの利用を止めでもしない限り守ろうとしても守れないだろうが、こう言っては何だが政治家を始めとして警察・検察に特にマークされやすい方は特にネット利用に注意した方が良いだろう。

 今から丁度3年前に私はダウンロード違法化の可決の際に一億層海賊時代の到来と書いたが(第177回参照)、今度の法改正によりついに一億総犯罪者時代に突入することが目前に迫った。ダウンロード違法化法成立後後3年を経て、かくしてパンドラの箱は完全に開いた。が、恐らくその底に希望は残されていない。

 法律は作れば終わりというものではなく、私は、何があろうとダウンロード違法化・犯罪化条項は削除するべきものと言い続けるつもりであり、このブログも続けて行くつもりであるが、上でも書いたように今後どうして行くかを真剣に考えなければならない時が来ていると私は思っている。

(2012年6月22日の追記:一箇所誤記を修正した。)

(2012年7月3日の追記:参議院HPで文教科学委員会の6月20日の議事録が公表されているので、念のため、ここにリンクを張っておく。)

(2012年8月5日の追記:参議院文教科学委員会の6月20日の議事録が国会図書館のHPの方に移されたのでリンクを追加しておく。)

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2012年6月19日 (火)

第276回:内閣提出著作権法改正案に対して自公が提案し衆議院で可決された修正案の条文の転載及び参議院での審議の開始

 内閣提出著作権法改正案に対して自公が提案したダウンロード犯罪化修正案が衆議院で可決され、本日6月19日、参議院の文教科学委員会で審議が開始された。

 もはや条文の作りがどうこうといったテクニカルな問題ではなくなっているように思うが、このダウンロード犯罪化修正案の条文がようやく公開されたので(衆議院のHP参照)、改め文を対照条文型式にして、ここにも転載しておく。

 本日の参議院文教科学委員会の審議で(インターネット審議中継internet watchの記事ITmediaの記事、Twitter実況のまとめ1参照)、民主党の森ゆうこ議員が明確に慎重・反対の意見を述べて下さったことや、日弁連の市毛由美子氏やMIAUの津田大介氏のような慎重な立場の方も含め参考人質疑が行われたことは大変ありがたく思うが、残念ながら、ユーザー側が示した懸念は何ら解消されることなく、ダウンロード犯罪化をごり押しする自公の議員や推進の立場の参考人との間の議論はほぼ完全なすれ違いのまま終わっている。

 できれば法学者の先生なども呼んでさらに慎重な議論をしてもらいたいところだが、推進側としてはもうこれで参考人質疑も終わったという扱いにしたいのだろうし、明日10時からの参院文科委員会でこのダウンロード犯罪化の修正案を含む著作権法改正案の採決が行われる可能性も高い。日本の知財政策の今後を占う意味で明日は極めて重要な1日になりそうである。

(2012年7月3日の追記:参議院HPで文教科学委員会の6月19日の議事録が公表されているので、念のため、ここにリンクを張っておく。)

(2012年8月5日の追記:参議院文教科学委員会の6月19日の議事録が国会図書館のHPの方に移されたのでリンクを追加しておく。)

(以下、自公が提案し衆議院で可決された修正案の条文。下線部が追加部分だが、読む際には、この修正案は内閣提出の著作権法改正案(第266回、文科省作成の新旧対象条文(pdf)参照)からの修正であることに注意する必要がある。)

◯著作権法の一部を改正する法律案に対する修正案
第八章 罰則
第百十九条
 著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者(第三十条第一項(第百二条第一項において準用する場合を含む。第三項において同じ。)に定める私的使用の目的をもつて自ら著作物若しくは実演等の複製を行つた者、第百十三条第三項の規定により著作権若しくは著作隣接権(同条第四項の規定により著作隣接権とみなされる権利を含む。第百二十条の二第三号において同じ。)を侵害する行為とみなされる行為を行つた者、第百十三条第五項の規定により著作権若しくは著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者又は次項第三号若しくは第四号に掲げる者を除く。)は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

(略)

 第三十条第一項に定める私的使用の目的をもつて、有償著作物等(録音され、又は録画された著作物又は実演等(著作権又は著作隣接権の目的となつているものに限る。)であつて、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)をいう。)の著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権又は著作隣接権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、自らその事実を知りながら行つて著作権又は著作隣接権を侵害した者は、二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

◯著作権法の一部を改正する法律案の附則に対する修正案
(施行期日)
第一条
 この法律は、平成二十五年一月一日から施行する。ただし、第二条第一項第二十号並びに第十八条第三項及び第四項の改正規定、第十九条第四項に一号を加える改正規定、第三十条第一項第二号の改正規定、第四十二条の三を第四十二条の四とし、第四十二条の二の次に一条を加える改正規定、第四十七条の九の改正規定(「又は第四十六条」を「、第四十二条の三第二項又は第四十六条」に改める部分に限る。)、同条ただし書の改正規定(「第四十二条の二まで」の下に「、第四十二条の三第二項」を加える部分に限る。)、第四十九条第一項第一号の改正規定(「第四十二条の二」を「第四十二条の三」に、「第四十二条の三第二項」を「第四十二条の四第二項」に改める部分に限る。)、第八十六条第一項及び第二項の改正規定(「第四十二条の二まで」の下に「、第四十二条の三第二項」を加える部分に限る。)、第九十条の二第四項に一号を加える改正規定、第百二条第一項の改正規定(「第四十二条の三」を「第四十二条の四」に改める部分に限る。)、同条第九項第一号の改正規定(「第四十二条の二」を「第四十二条の三」に、「第四十二条の三第二項」を「第四十二条の四第二項」に改める部分に限る。)並びに第百二十条の二第一号の改正規定並びに次条並びに附則第四条及び第五条の規定は、平成二十四年十月一日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
 一 附則第七条、第八条及び第十条の規定 公布の日
 二 第二条第一項第二十号並びに第十八条第三項及び第四項の改正規定、第十九条第四項に一号を加える改正規定、第三十条第一項第二号の改正規定、第四十二条の三を第四十二条の四とし、第四十二条の二の次に一条を加える改正規定、第四十七条の九の改正規定(「又は第四十六条」を「、第四十二条の三第二項又は第四十六条」に改める部分に限る。)、同条ただし書の改正規定(「第四十二条の二まで」の下に「、第四十二条の三第二項」を加える部分に限る。)、第四十九条第一項第一号の改正規定(「第四十二条の二」を「第四十二条の三」に、「第四十二条の三第二項」を「第四十二条の四第二項」に改める部分に限る。)、第八十六条第一項及び第二項の改正規定(「第四十二条の二まで」の下に「、第四十二条の三第二項」を加える部分に限る。)、第九十条の二第四項に一号を加える改正規定、第百二条第一項の改正規定(「第四十二条の三」を「第四十二条の四」に改める部分に限る。)、同条第九項第一号の改正規定(「第四十二条の二」を「第四十二条の三」に、「第四十二条の三第二項」を「第四十二条の四第二項」に改める部分に限る。)、第百十九条第一項の改正規定、同条に一項を加える改正規定並びに第百二十条の二第一号の改正規定並びに次条並びに附則第四条から第六条まで及び第九条の規定 平成二十四年十月一日」

(経過措置)
第二条
 この法律による改正後の著作権法(以下「新法」という。)第十八条第三項第一号から第三号までの規定は、前条ただし書に規定する前条第二号に掲げる規定の施行前に著作者が行政機関(行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年法律第四十二号)第二条第一項に規定する行政機関をいう。)、独立行政法人等(独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(平成十三年法律第百四十号)第二条第一項に規定する独立行政法人等をいう。)又は地方公共団体若しくは地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定する地方独立行政法人をいう。以下この項において同じ。)に提供した著作物でまだ公表されていないもの(その著作者の同意を得ないで公表された著作物を含む。)であって、公文書等の管理に関する法律(平成二十一年法律第六十六号。以下この項において「公文書管理法」という。)第八条第一項若しくは第十一条第四項の規定により国立公文書館等(公文書管理法第二条第三項に規定する国立公文書館等をいう。次項において同じ。)に移管されたもの又は公文書管理条例(地方公共団体又は地方独立行政法人の保有する歴史公文書等(公文書管理法第二条第六項に規定する歴史公文書等をいう。以下この項において同じ。)の適切な保存及び利用について定める当該地方公共団体の条例をいう。以下この項において同じ。)に基づき地方公文書館等(歴史公文書等の適切な保存及び利用を図る施設として公文書管理条例が定める施設をいう。次項において同じ。)に移管されたものについては、適用しない。

 新法第十八条第三項第四号及び第五号の規定は、前条ただし書に規定する前条第二号に掲げる規定の施行前に著作者が国立公文書館等又は地方公文書館等に提供した著作物でまだ公表されていないもの(その著作者の同意を得ないで公表された著作物を含む。)については、適用しない。

(略)

(罰則の適用に関する経過措置)
第四条
 この法律(附則第一条ただし書に規定する附則第一条第二号に掲げる規定については、当該規定)の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

(略)

(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部改正)
第六条
 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成十一年法律第百三十六号)の一部を次のように改正する。
  別表第四十八号中「第百十九条」を「第百十九条第一項又は第二項」に改める。

(国民に対する啓発等)
第七条
 国及び地方公共団体は、国民が、新法第三十条第一項(新法第百二条第一項において準用する場合を含む。)に定める私的使用の目的をもって、有償著作物等(新法第百十九条第三項に規定する有償著作物等をいう。以下同じ。)の著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であって、国内で行われたとしたならば著作権又は著作隣接権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、自らその事実を知りながら行って著作権又は著作隣接権を侵害する行為(以下「特定侵害行為」という。)の防止の重要性に対する理解を深めることができるよう、特定侵害行為の防止に関する啓発その他の必要な措置を講じなければならない。

 国及び地方公共団体は、未成年者があらゆる機会を通じて特定侵害行為の防止の重要性に対する理解を深めることができるよう、学校その他の様々な場を通じて特定侵害行為の防止に関する教育の充実を図らなければならない。

 附則第一条第二号に掲げる規定の施行の日の前日までの間における第一項の規定の適用については、同項中「新法第三十条第一項(新法第百二条第一項において準用する場合を含む。)」とあるのは「著作権法第三十条第一項(同法第百二条第一項において準用する場合を含む。)」と、「新法第百十九条第三項に規定する有償著作物等」とあるのは「録音され、又は録画された著作物、実演、レコード又は放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像(著作権又は著作隣接権の目的となっているものに限る。)であって、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)」とする。

(関係事業者の措置)
第八条
 有償著作物等を公衆に提供し、又は提示する事業者は、特定侵害行為を防止するための措置を講じるよう努めなければならない。

(運用上の配慮)
第九条
 新法第百十九条第三項の規定の運用に当たっては、インターネットによる情報の収集その他のインターネットを利用して行う行為が不当に制限されることのないよう配慮しなければならない。

(検討)
第十条
 新法第百十九条第三項及び附則第八条の規定については、この法律の施行後一年を目途として、これらの規定の施行状況等を勘案し、検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講じられるものとする。

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2012年6月18日 (月)

第275回:ダウンロード犯罪化を含む著作権法改正案の衆議院文部科学委員会出来レース審議(議事録)

 先週6月15日に、衆議院文部科学委員会及び本会議で、自公提案のダウンロード犯罪化がねじ込まれる形で内閣提出の著作権法改正案が可決され、法案は参議院に回された。

 内閣提出の著作権法改正案の内容(第266回参照)に関しても私は問題なしとしないが、てんたま氏(Twitter)がそのブログ記事で以下のような要綱の一部を紹介しているが、自公がねじ込んだこのような内容の修正案はほとんど無法極まるデタラメと言っていい。

著作権法の一部を改正する法律案に対する修正案要綱
第一 罰則の整備

 著作権法第三十条第一項に定める私的使用の目的をもって、有償著作物等(録音され、又は録画された著作物又は実演等(著作権又は著作隣接権の目的となっているものに限る。)であって、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)をいう。以下同じ。)の著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であって、国内で行われたとしたならば著作権又は著作隣接権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、自らその事実を知りながら行って著作権又は著作隣接権を侵害した者は、二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科すること。(第百十九条第二項関係)
第二 附則の修正
一 施行期日
 第一及び四の施行期日を平成二十四年十月一日とし、二、三及び五の施行期日を公布の日とすること。

 このような内容は、第256回で紹介した議員立法の内容をほぼそのまま著作権法改正案の修正案としたものであり、その運用に対する懸念は極めて大きいと言わざるを得ない。

 以下に、衆議院インターネット中継から私が作成した衆議院文部科学委員会の議事録を載せるが、ダウンロード犯罪化問題の本質をついた質疑をしてくれているのは共産党の宮本議員くらいで、あとは全て出来レースとしか思えない質疑応答を繰り返している。宮本議員のダウンロード犯罪化に対する質問、懸念に対してもほとんど全て無視する形で採決がおこなわれており、このような委員会運営による修正案採決自体極めて大きな問題があるということは全く宮本議員の指摘の通りだろう。私も第273回でQ&Aを書いているが、私の感じている懸念も、このような審議を見た結果、大きくなりこそすれ全く解消していない。(大体、今週にも参議院で法案が可決されるかも知れないというのに、いまだにまともに最も重要な基礎情報である修正案の条文が公開されておらず、委員会議事録の公開すらないという状態自体、国民をバカにしているとしか思えない。)

 ここで今まで書いて来たことを繰り返し述べることはしないが、この衆議院の審議で明らかになったことに、修正案が、ダウンロード犯罪化だけではなく、有償著作物提供事業者が違法ダウンロード行為を防止するための措置を講ずるよう努めるものとするという努力規定を含んでいるということがある。自民党の下村議員がこれによりLマークがさらに浸透する云々とすっとぼけたことをしれっと言っているが、このような規定によりLマークが関係事業者に本当に強制されるとしたら大問題であるし、それ以上にこのような規定の導入には非常に危険なサイトブロッキングなどの強要につながる恐れすらあるだろう。

 宮本議員のブログ記事でも触れられているように、共産党の宮本議員だけでなく、修正案の採決においては、民主党からも1人が反対、1人が退席をしているのは、やはり与野党問わずこのような内容の修正案や審議のやり方に懸念を持っている慎重派の議員もそれなりにいることを示しているのだろう。

 今のところ、衆議院の審議を経ても様々な問題点に関するユーザーの懸念は解消されるどころかさらに大きくなっているとしか言いようがない。次は参議院で、参議院の文教科学委員会では問題の本質まで突っ込んだ審議と修正案の否決を期待したいが、衆議院がこの体たらくでは、参議院の審議も大いに不安である。

(2012年6月18日夜の追記:議事録の細かな言い回し、誤記を少し修正した。)

(2012年7月3日の追記:衆議院HPで文部科学委員会の6月15日の議事録が公表されているので、念のため、ここでもリンクを張っておく。)

(以下、2012年6月15日の衆議院文部科学委員会の議事録)

石毛えい子委員長(民主党):これより会議を開きます。内閣提出著作権法の一部を改正する法律案を議題といたします。この際お諮りいたします。本案審査のため、本日、政府参考人として、警察庁生活安全局長岩瀬光昭さん、総務省総合通信基盤局電気通信事業部長原口亮介さん、文化庁次長河村潤子さん及び厚生労働省社会・援護局障害保険福祉部長岡田太造さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、ご異議ありませんか。(異議なしの声)ご異議なしと認めます。よって、そのように決しました。これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。下村博文委員。下村委員。

下村委員(自民党):おはようございます。自民党の下村博文です。いよいよ会期末になって参りまして、会期が延長されるかどうかも分からない状況の中ですね、文部科学委員会として、始めての閣法、著作権法、ま、これはこれで粛々とやって行く必要があるという風に思います。

(中略:神本美恵子政務官の政治団体役職在任等に関する質疑応答)

下村委員:本題に入りたいと思います。今日は著作権法ということでございます。今回の著作権法においていわゆる写り込み、これにかかる規定が整備されることになりました。写真撮影、録画、録音の場合に限り、対象物から分離困難な付随物や音等軽微な構成部分として複製、翻案し、その後利用することができる、ただし、著作者の権利を不当に害してはならないとされております。具体例として、写真や映像の背景に映画のポスターや絵画等が写る場合が想定されております。現在はデジタル技術が発達しておりますので、この写真や録画については、写り込みを画像処理で消去、分離することは比較的容易でもあるわけでございます。対象物から分離困難な付随物について何らかの基準や具体例があるのか、またこれからどのように明確にするのか確認をさせて頂きます。

石毛委員長:河村次長。

河村文化庁次長:今お尋ねのございました、改正法案第30条の2は、写真撮影などの際に背景等に有名なキャラクターが写り込んでしまうようないわゆる写り込みについて新たに権利制限の対象とするものでございます。ある著作物を創作する場合に別の著作物を除いて創作することが社会通念上客観的に困難であるということが要件となっております。ですから、具体的には、例えばキャラクターが描かれたTシャツを着た子供がいて、それを親が写真に取る場合、これはキャラクターを除いて子供を撮影することは、こういうケースでは社会通念上客観的に困難でございますので、後に消去できるかどうかということとは別にしてやはりこれは権利制限の対象となるものという風に考えられます。で、こうした条文上の要件をどう考えるのかとか、詳しい主旨などについてやはり十分に周知することが重要だと考えておりまして、もし法案が成立しました時には、関係誌や関係の雑誌などやホームページなどにおける解説の掲載ですとか、セミナー、説明会の実施などといった方法を用いまして、可能な限り分かりやすい周知を図って参りたいと存じます。

石毛委員長:下村委員。

下村委員:この私的利用のための複製をどこまで認めるかなど、著作権に対する全体的な考え方を整理しておく必要がこの際あるのではないかという風に思います。文部科学省の見解をおうかがいします。

石毛委員長:河村次長。

河村文化庁次長:今委員からご指摘のございました、例えば私的使用のための複製、著作権法第30条でございますけれども、このあり方については例えばその、個人的にまたは家庭内その他これに準ずる限られた範囲内といった場合に、どこまでをその範囲とすることが、これだけ技術革新、様々な情報流通が進んでいる中で適当であるのかとか、使用する者が複製することができるとなっているんですけれども、その本人でなければ絶対にいけないのかという議論もございます。こうした様々な課題もございますので、権利者団体や利用者団体の双方の関係者からヒアリングを行うなどいたしまして、昨年の文化審議会著作権分科会でも、検討課題の整理までを行ったところでございます。これらの課題について今後必要に応じて検討に着手して参りたいと存じます。

石毛委員長:下村委員。

下村委員:いよいよこれからTPP交渉が大詰めとなって参ります。このTPPについては農業分野における関税撤廃が注目されておりますけれども、非関税障壁の撤廃という点から、参加国の国内制度を一変させる可能性もあるわけでございます。本日議論されている著作権を含む知的財産もその中に含まれるわけです。国内のTPPへの参加是非を巡る議論において農産物などの貿易問題が注目されておりますけれども、知的財産は実は農業分野を凌ぐ重要な課題であり、アメリカが真にターゲットとしている分野とも言えるところでございます。アメリカの輸出における知的財産分野及び農業分野、自動車分野を調べてみましたら、この知的財産部門においてロイヤリティ収入とライセンス収入の合計で日本円で約7兆円、それから金融サービスでは約18兆円を輸出しております、また農業分野では2兆円、それから自動車分野では約7兆円、ですからこの知的財産部門7兆円という額は大変な額でもあるわけでございます。この中で、この日米経済調和対話、これがアメリカ側の要求を、この日米経済調和対話を見ますと、このTPP協定交渉の著作権分野において、アメリカが我が国に対して、これから自公で修正案を提出することにもなっておりますが、このダウンロード違法化の全著作物への拡大、それから非親告罪化、これを求めて来るのではないかという分析もあるわけでございます。今回の自公の修正案ですね、音楽等の私的違法ダウンロードを処罰する規定を整備するということの中で、アメリカのこの要求に応じてですね、我が国の著作権法が大幅に変更されるのではないか、こういう懸念が一部にあるわけでございまして、これについてちょっと整理をしておきたいという風に思います。今回の、これから出すですね、自公の修正案、このことによって追加される著作権法第119条第3項の保護法益は著作権又は著作隣接権という私権であり、これらに対する侵害行為は著作者等の事後追認又は事後承認により適法化される性格を有するものであると、このため被害者である権利者の意志を無視してまで追訴することは適当でない、このことから親告罪としたところでございます。したがって、今回の、我々が出すこの修正案による、ダウンロード違法化の全著作物への拡大、また非親告罪化が行われることはないという風に考えているところでございます。一方、アメリカの著作権法には、日本のように、私的使用のための複製という制限規定はなく、他人の著作物でも公正な利用ならば著作権侵害ではないというフェアユースと呼ばれる規定がございます。日米経済調和対話などにおいても、アメリカは我が国においてフェアユースの導入は特に要求をしていないわけでございますが、これは貿易相手国にファアユースの下に著作権を柔軟に運用される可能性があるからでございまして、こういう点に留意せずに著作権にかかる法体系をアメリカの主張に沿って変更すればアメリカの知的財産権は厳重に保護されるが我が国における著作権の利用が現在に比べて厳しく制限されるという事態にもなりかねないわけでございます。TPP協定交渉参加に向けた協議などにおいて、このようにですね、我が国の国益が損なわれることのないよう対処する必要があるという風に考えますけれども、現段階においてですね、政府の見解、それから対応状況について文部科学省にお聞きしたいと思います。

石毛委員長:高木文部科学副大臣。

高木文部科学副大臣:ご指摘のとおりTPP交渉において、知的財産分野は大変重要だと思っています。それで知的財産分野の1つとして著作権関連事項が含まれているということはうかがっていまして、個別には、ご指摘のあった、著作権等侵害罪の非親告罪化ということについて議論をされているということは聞き及んでおりますけれども、具体的に現在どのような議論になっているかということについては、把握をしてない、現時点では把握をしてない状況でございます。仮に我が国が交渉に参加して、当該課題が検討される場合には、まさにご指摘のあったとおり、著作権の保護と著作物利用の円滑なこのバランス、それから我が国の国内状況等をよく踏まえた上で慎重に検討して、我が国として主体的に判断をして参りたいという風に考えております。

石毛委員長:下村委員。

下村委員:アメリカの土俵の上に乗ってですね、議論が進まないようにしっかり政府として対応をして頂きたいという風に思います。さて、日本レコード協会の調査によりますと、一年間に違法ダウンロードされるファイルの数は43.6億ファイルにのぼると推計されております。これは正規音楽配信のダウンロード数の約10倍のファイルが違法にダウンロードされているという計算になるわけです。また同じく日本レコード協会等の調査によると、違法にダウンロードされているファイルを正規に配信されている音楽の販売価格に換算した場合、約6683億円になるという風に推計されております。違法に配信されているファイルの違法ダウンロードは、例えばそれが音楽ファイルの違法ダウンロードであれば、1つにはアーティストの著作権やレコード会社の著作隣接権を侵害する行為であるということ、それから多くの人に繰り返しおこなわれること、このことによって音楽産業に多大な損害を与え、引いてはアーティストが次の作品を世に送り出すことが難しくなるということにもつながるわけでございます。こういうことから、自民党、公明党は、これから共同提案で音楽等の私的違法ダウンロードを処罰する規定を整備するための閣法の修正案を提出したいという風に考えております。で、まず、この修正案に対しては、私的使用目的で違法に配信されている有償の音楽、映像を違法と知りながらダウンロードする行為を処罰の対象とすることにより、インターネット社会の健全な発展が阻害されるのではないかという懸念が一部示されております。インターネット上に著作権を侵害する違法なファイルが次々に配信され、多くの人々がそれをダウンロードするような事態が生じていることについては憂慮すべきことであると、これは言わざるを得ないと思います。知的財産立国をかかげる我が国においては、このような事態に適切に対処することがインターネット社会を発展させる上でも非常に重要であるという風に考えます。そもそも、今回のこの修正案で罰則を課そうとしている、違法に配信されているものであることを知りながら有償の音楽、映像を私的使用目的でダウンロードする行為は、1つにはアーティストの著作権やレコード会社の著作隣接権を侵害する行為であるとともに、2つ目に多くの人に繰り返しおこなわれることにより音楽産業に多大な損害を与え、引いてはアーティストが次の作品を世に送り出すことが難しくなる、こういう行為であると、そのようなダウンロード行為が繰り返し行われる状況を放置している、そういうことの方がですね、むしろインターネット社会の健全な発展を阻害するということになるのではないかと考えますが、政府の見解をお聞きしたいと思います。

石毛委員長:平野文部科学大臣。

平野博文文部科学大臣:委員はこの関係のものについての議論の経過も十分ご理解を頂いていると思っております。今わたくしも委員から指摘されて1年間にダウンロードされるファイルの数がかなりの数になるということ、及び、ビジネスベースの換算をすると6000億円を超えてくると、こういうことでございます。そういう意味におきまして、委員ご指摘のように、わたしはやっぱりインターネットの著作物の違法流通に関する権利者の被害というのは深刻な状況にあると、こういう認識に立ってございます。そういう意味合いにおきましても、平成21年の改正法におきましても、私的利用であっても、違法配信と知りながらダウンロードするという行為は違法としていると、こういうことでございます。音楽産業の発展やインターネット社会の健全な発展のためには、このようなルールがきちんと守られる、こういうことが非常に重要であると、かように考えております。また、加えて、この著作権というのは、過去の歴史から見ましても、非常に技術の進歩と、権利と、あるいは保護と、こういう観点でいたちごっこのような状況に来ていることも事実でありますから、やっぱり我々としては、的確に権利者の保護ということをしっかり守っていかなければならない、その対応策が重要であると、こういう認識でございます。

石毛委員長:下村委員。

下村委員:ありがとうございます。これから出す修正案でございますけれども、この文言が、違法に配信されているものであることを知りながら有償の音楽、映像を私的使用目的で複製する行為、私的違法ダウンロードということでございますが、この解釈次第では、ネット社会全体の検閲につながり、警察の捜査権の肥大化を招く危険があるのではないかということを表明する人たちもおられます。さらに、罰則に実効性を持たせようとすると、かなり薄い嫌疑で個々の個人のパソコンを押収できるようにすることになるということになると、それは人々のプライバシー侵害をする、プライバシー侵害する度合いが大きいのではないかと、こういう危惧を持たれる方々もおられます。で、公権力である捜査機関のネットへの介入の典型としてプロバイダからアクセスログを提出させることなどがあげられると考えられますけれども、現在そのような行為は裁判官の発する令状に基づいて行われる、令状主義ですね、ですからいきなり入ってですね、介入すると、個人の自宅に入って回収するということはあり得ないわけでございますし、まして、この修正案においても、この令状主義の範囲内にあるわけでありまして、無制限に捜査機関のネットへの介入を認めるものではないわけでございます。この令状を要しないというような、介入の性質が変容するものではなくて、今までの令状主義の中できちっとやるものであると、したがって、捜査機関がネットへ過剰に介入するのではないかという懸念はあたらないという風に思ってますし、また、薄い嫌疑で個人のパソコンが押収され、プライバシーが侵害されるのではないかという懸念もあたらないという風に我々思っておりますが、一般論として警察から見解をお聞きしたいと思います。

石毛委員長:警察庁岩瀬生活安全局長。

岩瀬警察庁生活安全局長:お答え申し上げます。犯罪捜査は法と証拠に基づいて進められるものでございまして、サイバー犯罪捜査におきましてもこのことは当然のことでございます。したがいまして、今ご指摘のありましたように、捜索、差し押さえ等、証拠収集を行う場合には、裁判官から発布された令状に基づき行なっているものでございます。ご質問のダウンロードにかかるような犯罪というものについて、これがもし新設されまして、警察においてそのような捜査を行う場合でありましても、法と証拠に基づきまして適正捜査に努めて参りたいと考えております。

石毛委員長:下村委員。

下村委員:はい。それから、ネット上に配信されているファイルは違法なものと適法なものが、これが混在していると、そのため、利用者がどれが違法か適法か区別できずですね、ネット上の表現やネットの利用に萎縮効果をもたらすのではないか、こういう懸念を表明されている方々もおられます。今回の修正案においては、故意犯のみ、意図的に分かってですね、犯罪を犯す、こういう故意犯のみを処罰の対象としておりまして、構成要件に該当する客観的事実の認識が必要であります。したがって、ダウンロードしようとする有償著作物等が著作権又は隣接著作権を侵害して違法に配信されたものであると知っていることが必要でありまして、配信されているファイルが違法であるか適法であるかの区別がつかない場合については罪に問われないということでございます。また、今回これから出すこの修正案では、著作、有償著作物等を公衆に提供し又は提示する事業者に対し、違法に配信されているものであることを知りながら有償の音楽、映像を私的使用目的でダウンロードする行為を防止するための措置を講ずるよう努めることとなっておりまして、既に一般に浸透しつつあるLマークの普及等がなお一層進むことが期待されます。で、この事業者の措置にかかる規定は、罰則の規定よりも早く、公布の日から施行することとなっており、罰則の規定が施行するまでの間に利用するサイトが適法か違法かの区別が容易になることが見込まれるところでもございます。したがって、適法か違法かの判断に躊躇してネット上の表現やネットの利用に萎縮効果をもたらすという懸念はあたらないという風に考えますが、政府の見解をお聞きしたいと思います。

石毛委員長:高井文部科学副大臣。

高井副大臣:デジタル化、ネットワーク化の進展にともなって、著作権法が国民生活に深いかかわりを持つようになって来ている、それに加えて、著作権侵害について刑事罰が課される可能性があるということから、著作権法改正にあたっては、著作物の利用に過度な萎縮が生じないように、明確性の原則に十分留意することが必要という風に思ってまして、今回の改正の検討にあたっても関係省庁とも協議を重ねて慎重に検討を行なって参りました。で、平成21年の著作権法改正において、いわゆる違法ダウンロードについて、刑事罰ではないが違法としたと、その時にも違法サイト、今ご紹介頂いた、違法サイトを識別するためのLマークのような取り組みを推進をして参りまして、政府としてもこのような取り組みが広く普及するように、今後も支援して行きたいと思っております。

石毛委員長:下村委員。

下村委員:同様の罰則規定が諸外国では既に実施されておりますが、罰則規定どんな国でどんなことがあるのか、そして、このことによって罰則された事例があるのかどうか、諸外国の例をちょっとあげて頂きたいと思います。

石毛委員長:河村次長。

河村次長:違法な配信からの私的な複製行為、いわゆる違法ダウンロードに対しましては、アメリカですとかドイツなどでは、刑事罰の対象としておりますが、英国では、我が国と同様に、現在の我が国と同様に違法ではございますが、刑事罰の対象とはなっておりません。刑事罰の対象としている国における法定刑の定め方は、一律ではないんでございますけれども、今わたしどもの把握しているところでは、例えばアメリカの場合には1年以下の懲役10万ドル以下の罰金、またはその併科、両方合わせて課すということとされ、ドイツの場合には3年以下の自由刑又は額は定められておりませんけれども、裁判所が決する所定の額の罰金を支払う仕組みという風になっているものと承知をいたしております。で、これらに基づいて現実に刑事罰の対象となった事例は、わたくしども今のところは承知をいたしておりません。

石毛委員長:下村委員。

下村委員:あの、抑止力によって業界が健全に発展されますよう、またネット社会において正常な中で、我が国において発展がされますように、我々は同時にですね、それを目指しながら修正案を出して行きたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。以上で終わります。ありがとうございました。

石毛委員長:次に石井登志郎委員。石井委員。

石井委員(民主党):おはようございます。民主党の石井登志郎でございます。引き続き著作権法の改正について質疑をさせて頂きたいと思います。著作権法は日進月歩の技術開発、特にネット社会への対応等から、大変頻繁に改正が行われておりまして、数えてみましたが、平成に入ってから、これが成立すれば十四回目の改正ということでございます。平成に入ってから十四回目ですから、1年か2年に1回というすごいペースでございます。そして、前回はこの2009年でございますが、その際にですね、衆議院、参議院それぞれ附帯決議が様々なされたところでございます。今質疑された下村委員の中でもですね、その違法ダウンロードに関する件であるとか、もろもろ言及がありました。衆議院の2009年の附帯決議の中でですね、これを1つ1つ確認しているとこれだけで30分過ぎてしまいますので、一番ある意味わたしが大切だなと思いますのがですね、学校等における著作権教育の充実、国民に対する普及啓発活動、これについてがわたしは重要だと思っております。これに努めることと書いてありますが、この前ですね、ちょっとこの著作権ののりとは変わりますけれども、消費者庁の話で、コンプガチャと言いまして、わたしあの時単語を始めて知ったんですけれども、子供がカチャカチャと携帯をいじっておったら請求が何十万円も来たと、まあ、そりゃ子供は何も分からずに一生懸命やるわけですね、まさにそういう意味では、このダウンロードに関してもですね、今の下村委員の質疑の中でも知らなければ、まあセーフということであろうと思いますが、しかしいずれにしましても、こうした違法にダウンロードしてしまう、そして著作者の権利を知らず知らずに侵害をしてしまうことが健全な発展を阻害をしてしまうということが、やはり教えてもらわなければ分からないわけであります。そうした中で、特にこの著作権教育の充実という点に関してですね、この2009年の附帯決議に示されておるところでありますが、文部科学省としての取り組み、現状認識についておうかがいをしたいと思います。

石毛委員長:河村次長。

河村次長:委員からご指摘頂きました附帯決議の中には、学校等における著作権教育の充実や国民に対する普及啓発に努めることといったことがあげられております。で、こうしたご決議に対しまして、文部科学省といたしまして、各種講習会の開催や啓発教材の作成、提供などを通じまして、著作権に関する普及啓発を行なっているところでございます。具体的には、教職員の理解を深めるということのために、教職員を対象とした著作権の講習会によりまして毎年著作権制度の説明、小中高の教員による著作権を題材とした授業の事例発表などをおこないまして、これによって地域で中心となる教職員の育成に努めているということもございますし、また、ホームページを活用いたしました様々な資料の提供もおこなっているという対応状況でございます。

:石井登志郎君。

石井委員:これですね、大臣、やはりよくこの省庁と言いますか、ああいう答弁ではありますが、やっているかやっていないかというとやってるんです。ただ、やっているんですけれども、それが十分かと、著作権というそういう言い方が果たして中学生に浸透しているかというと、それは果たして十分でない部分があろうと思います。中学校の学習指導要領の中を見ると、例えば音楽、美術、技術課程そして芸術、様々なそうした教科書の中にそうした知的財産権そして著作権に対する記述等々あるようでございますが、こうしたことがあるから大丈夫ということではなくて、本当に浸透しているのかというのをしっかりと見て頂いて、そういう、そして今のまま単に、次長の答弁はあれはあれで結構なわけでありますけれども、是非この問題にですね、アンテナの高い大臣でありますから、指導力を発揮頂ければと思います。あの、一方的で恐縮です。それで、あの、続いてですね、またこの2009年の改正の際に附帯決議でありました、障害者のための著作物利用の円滑化にあたってしっかりと一層促進するようにというような項目がございます。この障害者にしてみますと、このIT技術と言いますのは、まさにある意味福音でございましてですね、そういう意味では、これが今まで触れることのできなかった文学に触れることができると、そういう素晴らしい側面があるわけでございます。2009年のその改正の際にはですね、37条3項改正によって法人格のあるボランティアグループは、文化庁に申請して認められれば、著作権者の許諾がなくても視覚障害者のために録音図書や拡大図書を作ることが可能になったと、これは大変歓迎をされているわけでありますけれども、一方でさらにもう一歩、個人で、こうした何と言うんでしょう、ボランティアをやっているような方はですね、法人格を持っていないとなかなかやりにくいというような声があるようでございますが、このことに関して現状の認識と、何か検討の方向性があるのであればお聞かせ頂きたいと思います。

:文化庁河村次長。

河村次長:委員からお話のございました、著作権法第37条第3項の規定に関して若干のご説明をさせて頂きたいと存じます。で、この著作権法第37条第3項により、視覚障害者等のための複製が認められる主体には、一定の条件を満たした者であれば、法人格のないボランティア団体であっても対象となることが実は可能となっております。この一定の条件は著作権法の施行令に書いてございますけれども、視聴覚障害者等のための複製等を的確、円滑に行うことができる、そういう技術的な能力を持っていること、それから経理的な基礎その他の団体としての体制を有することということを求めておりますけれども、そうした場合であれば、法人格がなくても大丈夫でございます。で、一方、個人についてのお尋ねでございますが、これはなかなか個別の視点を個人ということでは今の仕組みではできないわけでございますけれども、その志のある個々人のボランティアの方がある程度集まりましてグループを作り、一定の条件、さきほど申し上げました条件を満たせば、やはり現行法において主体として認められることが可能でございます。現にそうした録音ボランティアグループ、法人格がなくても指定をされている例がございます。で、こうした志のある多くの方が法令の規定に基づいて複製を行えるように、やっぱり今後もう少しこの主旨を広くお伝えすることが重要かなと、今の委員からの話も拝聴して感じましたので、周知指導に努めて参りたいと存じます。

:石井登志郎君。

石井委員:是非今おっしゃって頂いた通り周知等に努めて頂きたいと思います。わたしどもの方にやはり法人格がないと駄目というのはハードルが高いじゃないかと、ただ相談すれば道は開くんだと思います。ただ、それは法人格がなければ駄目と思い込まれている方もいらっしゃるのかと推察いたしますんで、是非そうしたことを周知、普及をして頂ければと思います。続いて、次これは厚生労働省におうかがいをいたしますが、インターネット上で点字図書や録音図書を視覚障害者に配信しているサピエ図書館というシステムがありまして、厚生労働省の方から補助金を毎年支払って運営をしているということであります。ただこの補助金だけの運営では大変限界に来ていると、視覚障害者から個人の会費を徴収しなければならない、もしくは盲学校、障害児の学校で有効活用したいんだけれども、年会費、これ4万円と聞いておりますけれども、これが工面できなくて十分に活用できる環境になっていないというところもあろうと思います。この点に関してですね、やはりそういう意味では、可能であるならば環境をしっかり整備して行きたいというような思いがわたしもあるわけですが、厚生労働省といたしまして、本件に関してのですね、認識と見解、方向性などあればお聞かせ頂ければと思います。

:岡田厚生労働省障害保険福祉部長。

岡田厚生労働省障害保険福祉部長:ご指摘のサピエでございますが、視覚に障害のある方々に対して点字であるとかそれから音声のデイジーデータと言われるデータ、そういった情報を提供する情報システムでございます。日本点字図書館がシステムを管理いたしまして、全国の点字図書館の集まりであります全国視覚障害者情報提供施設協議会が運営をして頂いているという状況でございます。厚生労働省といたしましては、日本点字図書館に対しましてサピエの運営に応じます費用を補助しておりまして、個人会員であります視覚に障害のある方々は無料でサピエが利用できるという形になっています。なお、サピエにつきましては、点字図書館のサービスを充実させるものでありまして、全国の点字図書館による共同運営をおこななって頂くという観点もございますので、全国の点字図書館の他、サピエの利用をおこなう公立の図書館、それから公共図書館であるとか私設団体の方々に年間利用料をご負担頂いているという状況でございます。今後、日本点字図書館に対する補助金をどう効率的、効果的に使って行くかというような観点から、サピエの運営につきまして、日本点字図書館、それから全国視覚障害者情報提供施設協議会など、先生のご指摘も踏まえまして、そういう点も含めて運営のあり方について相談して参りたいという風に考えているところでございます。

:石井登志郎君。

石井委員:この日進月歩の技術の進歩の時代でありますから、単に補助金を増やせということだけでなくて、今回国会図書館にですね、様々な図書館資料の、何て言うんでしょう、この電子納本の制度も整備されたというところであろうと思います。ですから、いい意味でですね、融合できるようなこともあろうと思いますんでですね、是非この技術の革新をドラスティックに、まさに障害者の利益に資するよな形で前に進めて行って頂ければと思います。次に、これは著作権法と少し外れるんですが、ネットの利用とですね、著作権の整備、最終的に著作権法の35条の方にまた行く訳ですけれども、ちょっと外れまして、免許外教科担任に関してですね、少しお話をさせて頂ければと思います。

(中略:免許外教科担任やインターネットを使った教育に関する質疑応答。質疑の中途で平野大臣が退席)

石井委員:関連して著作権35条に関して1点おうかがいをしたいと思います。教育に関する著作権の制限規制を整備、これは平成15年の改正でされたところであります。その後、著作権法第35条ガイドラインというのが、関連の主に著作権者の皆様方が中心となって作られたと、どういうのが良くてどういうのが良くないかということについてガイドラインが作られたということであります。その中でですね、そのガイドラインの前に1点おうかがいしたいのがですね、この第2項関係でですね、つまりこのeラーニングの授業をやる時に、つまり同時送信の時だけよろしいというようなこれ規定なんですが、これを何と言うか録画の方でも、録画をしている場合でもですね、この著作権法35条の規定に準じて著作権が制限されないというような道を開いてくれたらより幅が広がるというようなことを言う仲間がおるんですが、この同時に送信を受けるものに対して公衆送信を行うことができるというところが引っかかっているわけですけれども、これに関してですね、検討状況もしくは何かご所見があればですね、お聞かせ頂ければと思います。

石毛委員長:河村次長。

河村次長:同時中継による遠隔授業のみならず、eラーニングの場合にも著作権者の許諾なく著作物の送信を行えるように、例えば著作権法を改正してはどうかということについては、これまでも文化審議会著作権分科会において審議はされて参りました。で、この審議会の議論では、権利者、その送信される著作物の権利者の立場から、基本的には個々の利用許諾契約によって対応すべきではないかと、で、著作権者に許諾なく行えるようにすることは現時点では必要以上に著作権者の利益を害するという懸念が示されております。で、このために、eラーニングの実態等を踏まえて権利者や学校教育関係者ともさらに検討をおこなって行くことが現時点では適当と考えているところでございます。

石毛委員長:石井委員。

石井委員:このガイドラインにしてみても、今の答弁にしてみてもですね、重要なことなんですが、著作権者の立場が何か強いんですよね、もちろん著作権者の立場が強いんです、強いんで守らなきゃいけない部分は守らなきゃいけないんですけれども、ただ、わたしが先般、高井さん、あのアメリカのですね、フィラデルフィアにあるフューチャースクールというところへ行きました。そこに行きますとですね、生徒一人一人に対して教材をカスタマイズしてですね、そしてほとんどバウチャーをもらっているような、そういう何と言うんでしょう、貧困の地域ですけれども、しかしITというツールを使うことによって、何て言うんでしょうね、その学びの意欲が大いに高まっているわけです。それは今文科省でやっているようなデジタル教科書ができたとかそういう話ではなくてですね、それぞれが教育のために世の中に転がっている様々なそうしたものを組み合わせてそして教育に資するというようなことをやっているわけであります。著作者の権利を守るということが重要である一方で、このインターネットという特性を活かして、より前向きにプログレッシブにですね、対応できるようなことも、是非副大臣、次長ともにお考えを頂ければと思います。ちょっと時間がなくなって参りましたので、後2点淡々とおうかがいしたいと思います。先ほど下村委員の中でもありました、このTPPと著作権に関して1点端的に高井さん、副大臣に所見を確認したいと思います。これよく言われておりますのが、今回議論になって行けばですね、この著作権の保護期間、死後50年というのが我が国でありますけれども、映画は今70年になってますが、他のものは50年ということであります。この50年と70年とどっちがいいのかなと、日本の漫画のことを考えると70年がいいのかなと、ただミッキーマウスのことを考えるとこれ50年の方がいいのかなと、いろいろ考えるんですけれども、どっちですか。

石毛委員長:高井文部科学副大臣。

高井副大臣:あのー、これは本当に両面あると思います。保護期間について延長すべきという意見として、漫画アニメ等の海外での使用にあたって保護期間の延長されることによる国際収支の改善が見込まれるということや、保護期間の延長により収益の増加が見込めるものであるとすれば創作へのインセンティブとなると、そうしたことから延長すべきという意見もございます。ただ、一方この延長に反対する意見としては、国際取引の収支が赤字である中保護期間の延長によって輸入超過の傾向が続くこととなるのではないか、それから著作物が公用となることによって当該著作物の利用の拡大等が逆に図られなくなるという風な、まさに両面本当にいろんな意見がございます。で、双方ともわたくしは傾聴する点があるという風に思ってまして、国益の観点からただちにどちらかという結論を導くということは難しいと思っておりますが、少し今後とも関係者との意見を重ねながら、より国際的な状況も踏まえた上でしっかり検討して行きたいと思います。

石毛委員長:石井委員。

石井委員:今度会った時には高井さんの意見をまとめておいて頂ければと思います。最後に奧村副大臣1点、著作権法と全く関係ありませんが、是非この機会におうかがいしたいと思います。

(中略:海洋研究開発機構の交付金に関する質疑応答)

石毛委員長:次に池坊保子委員。池坊委員。

池坊保子委員(公明党):おはようございます。公明党の池坊保子でございます。著作権法の一部を改正する法律案について何点か質問させて頂きたいと思います。今日ではインターネットが急速に普及して参りました。スマホと言われるようなスマートフォン、この登場によって24時間いつでも世界のどこにいても簡単に映画や音楽を楽しむようになれる、つまり誰もがある意味気楽に文化、芸術に親しめる環境、時代になって来たということは、今を生きているわたくしとしては幸せだなという思いがいたします。でも、そういうことは同時に著作物を巡る環境も急速に大きく変貌を遂げているということでもあって、こうした環境の変貌に著作権法も法制もしっかりと対応することが求められているのが今日の現状ではないかと思っております。で、著作権法の第1条には、文化の発展に寄与すると書かれておりますから、何よりも文化の発展に寄与するようなきめ細やかな著作権法でなければならないと思います。で、先日大臣からの提案理由説明では、著作物等の利用の円滑化を図るとともに著作権等の適切な保護を図るため、必要な改正を行うとのことでございました。で、それを読んだだけでは、そしてこの法律を読んだだけでは本当にちんぷんかんぷんの方が多いと思うんですよね、で、わたくしは説明を聞きました、本当にこういうことなのか、なかなか面白いな著作権法というのはと思いまして、以来わたしは講演なんかでよく皆様方に説明するのですが、まずおうかがいしたいのが著作物の利用の円滑化という観点からおこなわれるいわゆる写り込みなどにかかわる規定の整備です。今回の法案では、著作権者の許諾がなくても自由に利用できる範囲についていくつかの条文、4つの条文というのがあげられております。30条の2の付随対象著作物の利用、30条の3の検討の過程における利用、30条の4の技術の開発又は実用化のための試験の用に供するための利用、47条の9の情報通信技術を利用した情報提供の準備に必要な情報処理のための利用、これ委員長もお分かりになりますか。これだけ聞いただけでね、ぱっと分かる方はわたしよっぽど専門家なんだと思います。ですけれども、法律というのは一人でも多くの方に理解してもらわなければならないわけです。で、今回の改正で、何が具体的に自由利用の対象となるのか、そしてそれをどうなって行くのかということをちょっとご説明頂けたらという風に思います。で、先ほど説明を求めた内容はデジタル化、まずこれについてはいかがですか。

(ここで、平野文部科学大臣が戻って来る。)

石毛委員長:高井文部科学副大臣。

高井副大臣:おっしゃる通りだと思います。この条文を見ると、本当著作権用語とでも言うべきワードが並んでいて大変読んですぐにすっと頭に入るという感じではわたくしもございませんでした。で、ご指摘のこの30条の2、それから3、4、47条の9条という風なことを少し丁寧にご説明したいと思いますけれども、著作物の利用の円滑化を図るというために、権利者の利益を不当に害しない著作物の利用であっても形式的には違法となるというものについて、権利の侵害とならないということを明確にしようとしております。30条の2では、例えば写真撮影の際に背景に有名なキャラクターが写り込む行為とか、キャラクターが写り込んだ行為を自分のブログに載せてインターネットで送信する行為などが対象となります。30条の3は、例えばある企業がキャラクター商品の販売を検討する過程の中で、例えば会議のために用意した企画書にキャラクターが載っているという行為などが対象となります。また30条の4は、例えばある企業が録画機器を開発するために実際に録画を試験的に行うという行為などが対象となると、最後にその47条の9は、例えば動画配信サービスとかSNS、ソーシャルネットワークサービスなどで、データを高速処理するために行われるサーバー内でのデータの大量複製行為などが対象となり、これらを要するに法改正により適法であるということを明確化しようとする法改正でございます。で、こういうことをホームページの活用とか自治体での説明会の実施を通じて可能な限り分かりやすく説明するために努力して参りたいと思います。

石毛委員長:池坊委員。

池坊委員:ありがとうございます。今までだったら会議があって、ディズニーランドのキャラクターを使っちゃいけなかった、これからは拡大されるから、それはいいよと、だけどそれを一般的に流したりしてはいけないよと、そういう種類のことが多いということですよね。で、先ほどご説明を求めた内容は、デジタル化、ネットワーク化の推進の中で、様々な産業のいろんな場面で著作物を利用する機会が増え、誰もが気楽に著作物を利用できるようになっているという点において、わたくしは大事な規定だと思うんですね。しかし、著作物の流通の促進という観点からは、まだまだ十分ではなくて、著作権者の許諾なく自由に利用できる場面について目的を限定するのではなく、自由に著作物を利用できる場面かどうかは、いくつかの考慮要素に基づいて司法が判断して決めるような、いわばアメリカ型のフェアユース規定、米国著作権法第107条のような規定をおくべきだという声も聞かれているんですね。で、今回の一連の規定も、こうした声をきっかけに検討が進められた結果であるとわたくし思っておりますけれども、このようなアメリカ型のフェアユース規定をおくということについてどのようにお考えか、大臣お帰り早々でお大変かも知れませんがご答弁頂けますでしょうか。

石毛委員長:平野文部科学大臣。

平野大臣:今、池坊先生のおっしゃられたように、わたくしはいろんな意味において権利の保護があって始めていろんなものが発展して行くと、こういうことだと思っております。特に、この文化ということにあっては、やっぱりそれぞれ芸術を営んでおられる方々がやっぱり創作意欲と同時にしっかりと権利で守られているということが基本前提であり、その結果の結論として文化活動が活性化して来ると、こういう理念でございます。そういう中で、アメリカ型のフェアユース規定が今アメリカにはありますが、日本にはおかれていないということでございますが、先ほど申し上げた通り、しっかりと、先ほど申し上げましたように、先生も華と、そういう中での創作活動をやっておられる方でございますから、そういうことをしっかり踏まえた上で、これだけ今日科学技術の進展、特にデジタル技術の進展にともないまして、権利とその技術進歩のミスマッチがやっぱり起こって来ているということでございますから、しっかりとしたそういう規定を適切に対応して行く、こうしたことが非常に大事だろうとわたくしは思っております。したがいまして、先生が今おっしゃられたような部分では、いろんな場面で著作物が利用されていると、こういうことでございますし、いくつかの著作物の利用場面を特定せず自由に利用される、こういうことは、司法の判断というのは、こういうことも今先生のご案内の通りでございます。しかし、アメリカのフェアユース、こういう概念の部分で行きますと、百数十年という長い歴史でいろんな経過を積み上げて来た結果のものだと思っておりますし、また、我が国の実法定主義と、こういう考え方の部分と少し違うような気がいたします。したがいまして、わたくしは我が国への導入というのは非常に難しいという風には思っておりますけれども、しかし一方でそういう権利者の保護と、こういうところをしっかり守って行かなければならないと、かように今思っているところです。

石毛委員長:池坊委員。

池坊委員:わたくしも大臣と同じでございます。国民の知的財産に関する権利意識がわたくしはまだまだ極めて低いのではないかという風に思っております。文化がこれから活性化して行くためには、やはりしっかりとした権利が守られなければ誰も文化活動をおこなって行かないとわたくしは考えておりますので、検討しながら、より前進的に、権利、様々な分野における知的財産の権利者の権利が守られるべきである、それがわたくしは消費者にとっても長い目で見ていいことであると信じてやみません。で、これまでの質問は著作物の利用の促進という観点からの規定についての問題提起でございましたが、今回の法案ではもう1つ音楽や映画といった著作物の違法利用、違法流通対策の観点から、技術的保護手段の見直しを行うという規定が盛り込まれております。そこで大臣の提案理由説明にもございましたように、今回の法案では、DVD等に用いられている暗号型技術を技術的保護手段の対象に加えるとのことですが、そもそも暗号型技術とはどういったものなのか、そして、技術的保護手段の対象に加えることでどのような効果をもたらすのかをお答え頂けますでしょうか。

石毛委員長:高井文部科学副大臣。

高井副大臣:今回ご指摘のあったとおり、この暗号型技術を対象とするということで、暗号型技術とは、コンテンツ提供事業者が映画などのコンテンツを暗号化して、そして機器での視聴とか複製を、勝手に複製をさせないようにすることも含めて、ちょっと何回かにするとか、コントロールするという技術であります。で、現在DVDとかブルーレイディスクなどに一般的に用いられておりますが、この暗号型技術というものの回避を可能とするプログラムを頒布する、広げるということを刑事罰の対象とするということであります。このことによって、この暗号型技術というものを不正に回避して複製を可能とするプログラムが広がって行くことを防ぐと、そしてこのようなプログラムにより作成された、不正に作成された映画などの違法物、違法な複製物が瞬時かつ広汎にネット上に広がって行くということを防ぐということを狙いとしております。

石毛委員長:池坊委員。

池坊委員:現在主流となっております著作権保護技術をこうむるようなプログラムをしっかりと押さえなければ、海賊版と言われる、音楽、映画などがインターネットを通じて流通してしまいますので、今回の法改正でしっかりと対応して頂きたいとわたくしは願っております。わたくしは、丁度もう何年になるんでしょうか、文部科学委員長をしておりました時に、その海賊版の逆輸入ですね、日本にやって来ちゃう、それを防ぐための刑罰などを作りました。その時は本当に消費者の方が安く手に入ればいいんじゃないかって、こういう意識があって反対の声もあったのですが、そうじゃないと、しっかりと守るべきものは権利としてしっかりと守って行く法律を作らなければいけないのだと、そういう信念を持っておりましたので、これをおこなったことを、今ご答弁頂きながら思いました。しかし、その一方でこうした著作権保護技術をこうむるようなプログラムが規制されてしまうと、他の権利制限規定で許されている複製、例えば学校の授業でおこなう場合あるいは障害者の方が利用する場合に、技術的保護手段を回避しての複製が結果的に困難になってしまうのではないかと思うんですね。で、このことについては、障害者関係の方々とか、学校現場の方々にはそういう危惧もおありになると思いますけれども、これはいかがでしょうか。

石毛委員長:河村次長。

河村次長:技術的保護手段についての回避規制、それを回避するためのプログラム規制によって事実上そうしたプログラムが出回らなくなってしまう、そうしますと別の障害者や教育の目的で本来使うことができたはずの人たちまで使えなくなってしまうと、そういう効果が生じるという懸念はおっしゃる通りかと存じますので、そこは権利者と利用を必要とする人たちの橋渡しを、わたくしどもとしても何らかの場を設けて行くというような工夫、努力をして参りたいと存じます。

石毛委員長:池坊委員。

池坊委員:この知的財産の権利を守るということは、ある意味で消費者と深くかかわっておりますので、消費者にもそれぞれの立場の方々がいらっしゃいます。ですから、それらのことをやはり考慮しながら、学校現場においてあるいは障害者の方々などが困らないようなことにも目配りをして頂けたらと思います。で、著作権保護の観点から著作物の違法利用、違法流通の元を絶つためには、暗号型技術を技術的保護手段の対象とすること自体は有意義であると思いますが、このことによって、先ほど申し上げたような教育の現場や福祉の現場で混乱がおきてはわたくしはやっぱりならないと思うのですね。ですから、それはきっちりと守って頂きたいと思います。で、もう1つ著作物の違法利用、違法流通の観点から看過できない問題が今起こっているのではないかと思います。それは人気作家の小説や漫画が違法に複製されて、あっという間にインターネット上で流通しているという問題なんですね。で、小説や漫画も、当然のことながら日本の大切な文化です。しかし、こうした小説や漫画といった出版物の権利侵害に対しては、有効に対処できていないのが現状です。例えば小説家が個人で訴訟を起こそうとしても大変な労力が必要となるために、つい二の足を踏んでしまうということがあるということを、失礼いたしました、ちょっと水がこぼれました、これはちょっとカットしておいて下さい、関係者の方々からうかがっております。で、小説家の方々が連名で著作者の権利を守って欲しいというようなことも署名していらっしゃるんですね。で、確かに物をお書きになる方って、訴訟なんてことは苦手な、そういう環境の中にいらっしゃいます。ですから、それをもし出版者が代行してくれたらいいなと、ところが出版者っていうのは訴えられることがあっても訴えることができないということになっております。で、また、こうした出版物の違法流通は、それを世の中に広く送り出している出版者に大きな打撃を与えております。今申し上げたように、出版社に何ら権利がないためにこのような出版物の違法流通に対応できていないというのが問題なんではないかと思います。一生懸命作りましたわたくしの一冊の本が、ばっとこう何と言うんですかしゃ断されましてね、そしてがっとこうインターネットになって、それをまた組み合わせて安くて10分の1くらいで売られてしまいますと、何か涙が出るほど悲しいというような気がいたします。で、わたくしは出版者にも何だか権利を認めることによって、こうした出版物の違法流通に対応する必要があるのではないかという風に考えておりますけれども、この点については、大臣、どのようにお考えでいらっしゃいますか。

石毛委員長:平野文部科学大臣。

平野大臣:今池坊先生のおっしゃられた一番の大きな問題というのは、ご質問は、作家の権利という部分と、その作家が創作した物を出版社がマーケットに出していると、こういう中にあって、侵害をされた時に、作家自身が本来権利者ですから、権利要求をすると、これが非常に面倒くさい、面倒くさいという表現がいいかどうか分かりませんが、作家の活動に専念できないと、しかし、一方、じゃあ出版社がそれを代行してやるというのは何の権利でもって代行するのかという、こういうことなんだろうという風に思います。したがいまして、そういう出版社に何らかの権利を認めて行くべきではないかと、こういうご意見があることも承知をいたしております。先生はこういうご趣旨で、権利を認めて行くべきではないかと、こういうことでございます。したがって、一方では出版社に作家と同じ著作権ということを新たに設けることについても、一方ではそれはいかがなものかという慎重なご意見もあることは事実でございます。したがいまして、文科省としては、こういうご議論があるということがございますので、調査研究をこれからしっかりすると、それで何らかの法制面からの対応ができないかと、法制面的にどう言うかわたし分かりませんが、間接侵害みたいな部分を含めてですね、法制面で対応できないかどうかを今検討しなければならない、いずれにしましても、著作権者がしっかりとした権利が担保できるということが基本にあっての対応をしていかなきゃならないという風に考えております。

石毛委員長:池坊委員。

池坊委員:1つの出版物ができるまでには長い年月を要します。それは著作者だけでなくて、出版社も校正を重ねたり、編集者との打ち合わせとか様々な作業が必要なんですよね。で、それを経て1冊の本ができあがっていく。で、それが安く読めたら消費者にとっては大変嬉しいことではあります、ありますが、じゃあその元の権利がちゃんと保存されなければ、例えば卵はわたくしたち安い方がいいですよね、安くて手に入りたい、手に入れたい、ですが、卵を産む鶏が死んじゃったら、これは卵は産まれないんですよ。それを思いますと、やっぱりきっちりとした権利が守られてこそ、わたくしは、いい卵を産むその鶏の部分がね、もう滅亡しちゃったならば、卵すら手に入らない、だから、消費者がいい卵を手に入れるためにはまずこのいい鶏を飼わなけりゃいけない、まずこの保護が必要じゃないかとわたくしは思っておりますことを申し上げておきたいと思います。それから1点、TPPに関する著作権について、ちょっとおうかがいしたいんですけれども、政府が交渉参加をしているTPPと著作権法の関係についてちょっとおうかがいしたいんですね。で、TPPって21分野が交渉の対象となっております。わたくしどもが目にするのは農産物に関する貿易自由化といった観点、これがあまりにもわたくしは議論になりすぎているのではないかと思います。で、著作権を含む知的財産権も21分野の中によく見ましたら出ているんですね。で、これは著作権については、著作権の保護期間の延長、アクセスコントロールの回避規制などが議論の対象になったと報道では見ております。で、場合によっては我が国の著作権制度の変更をともなうことも考えられるのではないかとわたくしは思います。で、この報道が正しいものであり、こういった制度の変更がなされるのであれば、我が国の著作権制度、ひいては文化政策自体にとっても大きな影響を生じるのではないかと思います。一方、その具体的な内容についてははっきりしたことは示されておりませんので、わたくしたちも議論したくてもできない状況下におります。わたくしは、TPP交渉の中で経済的な視点のみを重視するのではなくて、文化的な視点がないがしろにされないことも、ないがしろにされないか心配しているんですね。経済的な農産物のことなどにみんなの目が行って、そこで大きな流れになって行く中にあって、ふと見たら文化的な視点がそのままTPPの中に織り込まれていると、で、著作権は経済的な視点もさることながら、我が国の文化の保護、発展といった視点から考えて行くべきであると考えております。そのために我が国の文化の価値や重要性について理解している我々日本国民が、国内における議論を十分におこなう必要がある、特にその関係に携わっていらっしゃる方々のご意見なども聞く必要があるという風に考えております。で、文部科学省においては、国内の議論が十分におこなわれるよう、関連情報を適切に公表して頂きたいとわたくしは希望しております。で、TPPにおける著作権制度にかかわる部分について、文部科学省として把握されている内容と、TPPに対する対応方針についておうかがいできたらと思います。合わせて、より広い視野で見た時に、TPPへの参加が我が国の文化芸術に与える影響について、文部科学省としてはどのように考えていらっしゃるのかもちょっとおうかがいしたいと存じます。

石毛委員長:平野文部科学大臣。

平野大臣:先ほど下村議員からもこのTPPに関する議論の状況についてということでご質問ございました。で、特にこのソフトの部分という部分で行きますと、マーケット的に言っても7兆円ぐらいあると、こういうご指摘も頂戴をいたしました。で、文科省といたしましても、昨年11月に発表いたしましたTPP協定交渉参加、この協議を開始すると、こういう方針が出されたわけでありますが、関連する分野情報については今現在収集をいたしているところでございます。加えて、具体的にどういう議論がされているかということについてはまだ十分承知をいたしておりませんけれども、文科省のこの関連に関して行けば、知的財産権分野における著作権関連事項と、こういうことに1つはなろうと思います。もう1つは越境サービス分野における教育サービスの関連分野等々のものがあると考えております。先ほど池坊議員からございました、アメリカとの関係で、海賊版の話、わたしは非常によく承知をいたしております。議員が委員長の時だったと思いますし、わたしは野党の筆頭でございました。あの、党内にもいろいろご議論がございましたが、積極的に委員長の言う通りに対応したつもりでございます(周りで笑い)。したがいまして、わたしはこの問題というのは第一に国益と、やっぱり我が国の文化と、こういうことをしっかり踏まえて、特に著作権保護の観点から模造品とか海賊版の対策強化をしっかりするということを考え、具体的な交渉の中にあっては、我が国の国内の事情を十分に踏まえて判断をしていかなきゃならないと、このように文科省としては思っております。

石毛委員長:池坊委員。

池坊委員:いつも平野文部科学大臣には文化に対しての、文化芸術への力強いご理解とご支援を頂いていることに心から感謝しておりますし、わたくしが委員長時代に本当に党内をまとめて頂くのにご苦労して頂きましたので、わたくしはそのことをしっかりと心に刻んでおりますので、大臣に頭が上がらないという思いが今もしております(周りで笑い)。で、これで最後になりますけれども、これは著作権に関することに対して、あの、大臣のご決意をうかがったらという風に思っております。で、先ほども申し上げましたけれども、第1条に文化の発展に寄与することというのが規定されております、それがこの著作権法のわたくしは目的ではないかと思います。でも、今日ではそれだけではなくて、いわゆるK−POPや韓流映画などが象徴していますように、日本の音楽、映画などがより一層広く海外で受け入れられ浸透して行けばそれだけ日本のファンが増えることになり、大きな収益にもなって行くと思うんですね。やはり文化が果たす経済的力、それからやっぱり人類のこの感性の問題で、何か心の絆ということも見逃すことはできないと思います。で、日本のこうしたコンテンツの振興、文化の振興について、今後どのように取り組んでいらっしゃるかご決意をうかがって、あのわたくしの質問を終わらせて頂きたいと思います。

石毛委員長:平野文部科学大臣。

平野大臣:わたくし先ほど少し席を外しておりましたので、お聞きしておりませんが、池坊議員の方から、著作権法第1条の理念について全て語っておられるという風にお聞きをいたしました。わたくしやっぱり文化活動というのは、わたし非常に大事であると、しかし大事であるが故にきちっとした権利を守るというこの意識をやっぱり啓発しなきゃいけませんし、我が国国民全体がやっぱり持たなければならない。しかし一方、科学技術の進展、デジタル技術の進展、情報化時代に入って来る、権利の保護の範囲が、より技術が先に行くと、こういういたちごっこのような状況にありますが、やっぱり所管をする文部科学省といたしましてはしっかりと著作権者の権利をしっかり守ることによって文化活動のより発展に寄与したいと、かように考えております。

池坊委員:力強いご決意ありがとうございます。それでは終わらせて頂きます。

石毛委員長:次に宮本岳志委員。宮本委員。

宮本岳志委員(共産党):日本共産党の宮本岳志です。政府提出法案はいわゆる写り込み等にかかる制限規定の改正、国会図書館や国立公文書館の利用にともなう権利制限、著作権等の技術的保護手段にかかる規定の整備などいずれも必要なものであり、我が党も基本的には賛成できるものだと考えております。ただ、1点だけ確認をいたしたいと思います。今回の政府案には写り込み等の制限規定が設けられておりますけれども、これらの法改正は写り込み等ある程度事例を限定した上で、現行では形式的に違法となる行為を容認しようとするものであり、現実の利用実態を踏まえたやむを得ないものであると考えます。しかし、これも当初は日本型フェアユース規定の整備ということで検討が進められ、権利者側からは一般規定の導入には異論がありました。そこで確認するんですけれども、今回の規定で、例えば会議資料として新聞記事を大量にコピーしたり、新聞記事の全文をネット上で引用したりする行為が容認されるものではないと思うんですけれども、これはご確認頂けますか。

石毛委員長:平野文部科学大臣。

平野大臣:宮本議員もよくご理解を頂いた上での確認事項だとわたくしも思っていますが、委員ご質問の新聞記事の各利用行為、いずれもいわゆる写り込み等に関する規定の要件を満たすものではない、こういう行為が、本行為が本改正法により適法となるということではございません。こういうことでよろしいでしょうか。

石毛委員長:宮本委員。

宮本委員:今後も一般規定のありようについては議論が続くと思うんです。関係者間でよく議論して慎重に進めて頂きたいと思います。前回の著作権法の改正時に、つまり2009年5月8日の当委員会で、我が党の石井郁子議員が私的録音録画補償金制度の問題を取り上げました。私的録音録画補償金制度はですね、利用者の録音行為を認めつつ、権利者がこうむる不利益を補償する目的で1992年にスタートし、20年が経過しました。この間、デジタル式の録音録画機は様々な形態の機器が開発をされまして、急速に広がり、デジタル複製が誰でも容易にできるという状況になっております。当時の塩谷大臣は石井議員の質問に答えて、全ての利用形態について補償金制度に代わる制度が導入できる環境にないと、現状においては新しい制度がただちに補償金制度に取って代わるという状況にないとしてですね、現在の制度についても意義があると答弁をされておりますけれども、現在でもこの補償金制度の評価は変わっておりませんね、大臣。

石毛委員長:平野文部科学大臣。

平野大臣:今委員ご指摘の補償金制度の意義、これについては変わっていないのかと、こういうご質問でございますが、この私的録音録画補償金制度と、こういうことでは、特に機器の開発、普及によって家庭の中で録音録画が大量におこなわれるようになったと、こういうことから、利用者の録音録画行為を認めつつ、権利者のこうむる不利益を補償すると、こういうことで平成4年に導入された制度でございます。その後、著作権保護技術の導入やパソコン等など録音録画以外の用途に用いられる機器等の普及など録音録画の実態の急速な変化、進展にともないまして、制度の見直しが求められておるわけでございます。これまで文化審議会で検討がおこなわれて来ておりますが、まだ結論を導いておりません。平成21年当時の答弁の通り、補償金制度については見直しが求められている、こういう意味では過渡的な時期においてなお一定の意義が有していると、こういうことでございます。

石毛委員長:宮本委員。

宮本委員:見直しが続けられているが、現状で同じ意義を有していると、こういうことでありますね。この制度の現状なんですけれども、今日は資料をつけておきました。資料1を見て頂きたい。資料1は私的録音補償金の推移であります。2001年度の40億円あまりをピークにして、激減をしております。あの、これは文化庁に確認しますが、どうして私的録音補償金の額はこんなに激減をしておるのですか。

石毛委員長:文化庁河村次長。

河村次長:私的録音補償金の額の減少は、補償金の対象となっていないiPodなどの新たな録音機器等に需要が移って参りまして、補償金の対象である、MDプレイヤー、CDプレイヤーなどの機器や、それに用いられる媒体の販売数の減少にともなうものとわたくしどもは理解しております。

石毛委員長:宮本委員。

宮本委員:新しい機器になかなか対象が広がっていないと、資料の2を見て頂きたい。私的録画補償金、これの推移をつけておきました。これはおおむね20億円前後で推移をして横ばいとなっております。これも文化庁におうかがいするんですが、この私的録画補償金は今後どのような見通しになりますか。

石毛委員長:河村次長。

河村次長:平成22年度、23年度に権利者へ分配されました、私的録画補償金の額は、はい、ほぼ横ばいとなっておりますけれど、今後メーカーが支払いを停止しているアナログチューナーを搭載していない録画機器が販売の中心になることから、減少して行くことが見込まれております。

石毛委員長:宮本委員。

宮本委員:そうなんですね。メーカーが支払いを停止するってことが起こり、今訴訟もやられているようですが、これからこれは減っていくわけですね。現在においても意義ある制度というんですけれども、現状は補償金の額が激減し、もはや崩壊寸前という状況になっております。で、もちろん、対象機器がMDなどの今やもう誰も使わないようなもの、録音で言えばそういうものしかないという状況もあるわけです。それで、知的財産推進計画では毎年見直しが言われておりますし、当委員会でも前回、2009年改正の際に、特に私的録音録画補償金制度については、国際的動向や関係団体等の意見も十分に考慮し、早期に適切な結論を得ることと全会一致の附帯決議までしているわけですね。しかし、この2年間ほとんど検討が進んでいない。これはどういう理由ですかね、大臣。

石毛委員長:平野文部科学大臣。

平野大臣:この制度の見直しについてと、こういうことで附帯決議が課せられております。それを踏まえて、審議会では平成18年から3年間、検討を行なって参りました。特に、この経過の中で、権利者とメーカーの意見対立が起こっておりまして、合意の形成に至っていないと、こういうこと、また、平成21年1月の報告書では、審議会を離れた意見交換の場を設けるなどして関係者の合意形成を目指すということが必要であるという風にされております。その後、文科省としては、関係省庁でございます、経済産業省との事務レベルにおける合同検討会、こういうこともおこなって来ました。また、関係者に対しても、意見交換の場への参加も呼びかけて来たわけでありますが、その支払いを、先ほどもございましたが、拒否をしたと、こういうことで民事訴訟が提起され、現在最高裁で係争中と、こういうことでなかなか関係者の協力が得られていない状況にあると、こういうことでございます。しかしながら、合意形成が得られるように今後とも引き続き努力はして参りたいと、かように思います。

石毛委員長:宮本委員。

宮本委員:訴訟があるということでありますけれども、争われているのは録画補償金の部分であって、録音の部分については争われていないんですね。でまあ、今商品名も出ましたが、携帯オーディオレコーダーなど新たな補償金制度に組み入れることが必要な利用形態が広がっていると、これもしっかり見直す必要があると思うんですね。わたし、少なくともこの録音の部分だけでもですね、やはり見直しを進めるべきではないかと思いますけれども、大臣のご見解をお願いいたします。

石毛委員長:平野文部科学大臣。

平野大臣:録画の部分だから、録音だけでもいいんじゃないかと、それだけでも進めて行くべきだと、こういうご意見だと思いますが、実態の変化にどのように対応するかと、こういうことに対しては録音録画に共通する問題であるわけですから、録音だけを切り離して、やっぱり委員ご指摘のように、そこを先行してそれをやったらどうだということですが、それを録音だけを取り出してやるというこの検討については、なかなか困難性がともなうと、このように認識しております。

石毛委員長:宮本委員。

宮本委員:メーカーが拒否しているってのは、わたしはとんでもないことだと思うんですね。この制度の導入に至るですよ、15年に渡る長い議論の中で、当時JASRAC理事長であった芥川也寸志さんが1988年8月著作権審議会の第10小委員会に提出した意見書「私的録音録画問題と報酬請求権の導入について」という、この文書をわたくしも読ませて頂きました。あの、そこではこう述べられております。「詩人や作曲家たちが音楽を作り、演奏家の皆さんがその音楽を世に送り出します。その受け手は聴衆であり、視聴者であり、ホームテーピングする人たちです。この3者の輪の交流こそ音楽の営みであり、その中で音楽文化は生きて発展して行くのです。作り手、送り手、受け手という循環の中にこそ音楽の営みが存在するという原理は、遠い昔も、科学技術が発達した今日、また将来とも変わりないはずです。この制度によってユーザーの自由は確保され、しかも著作権者等の権利侵害の恐れがなくなるという優れた工夫なのですが、メーカーの方々には販売の前に手数を煩わせなければならないのです。現代の企業が持っている大きな社会的役割や責任から言っても、是非これを引き受けて頂きたいと思っております。」これが芥川さんのお言葉なんですね。こう言って、ソフトとハード、文化と経済の両立は企業にとってもよい結果をもたらすことを指摘し、企業にそれにともなう必要限度の社会的責任を果たすことを求めております。この言葉は今も変わらぬ意義をわたしは持っていると思うんですが、大臣、そう思われますね。

石毛委員長:平野文部科学大臣。

平野大臣:現在のその仕組み、制度につきましては、委員ご指摘のように、その意見に沿ったものであり、基本的な考え方は現在も意義があると、こういう風に思っております。

石毛委員長:宮本委員。

宮本委員:芥川さんも指摘するように、企業にとってもよい結果をもたらす制度なのにですね、それに協力を拒否している企業の側こそ問題だとわたくしは思います。そもそも、この制度は権利者とメーカーが協力してユーザーから補償金を預かり、制度を運用するという前提の下に作られたものなんです。ところが、この間の経過を見れば、メーカー側は協力義務を果たさず、対象機器の減少と自ら補償金の支払いに協力しないことでまるでこの制度の死滅化を待っているかのような対応に終始していると、わたしは思うんですね。で、今やそのメーカーの側から協力の前提が崩されている以上ですね、諸外国のようにメーカーに補償金の支払い義務を負わせることを検討すべきだと、わたくしは思いますが、大臣、そうは思われませんか。

石毛委員長:平野文部科学大臣。

平野大臣:今議員が申されましたように、義務をかけろと、こういうことでございますが、訴訟の状況等々踏まえながら、引き続き検討して行きたいと思っております。しかし、メーカー等が補償金の支払い義務者ではなく、協力義務者とする現行制度、これが実は平成4年の著作権法改正になっておりまして、関係者の大いなる議論の下にこれができあがったものでございます。したがいまして、それを超えていく改正を、見なおそうとこういう方向に今言及することは困難であると、わたくしはそういう風に思います。

石毛委員長:宮本委員。

宮本委員:大臣、いくら優れた録音録画の機械があってもですよ、肝心のコンテンツ、音楽や映像がなくなれば、折角の機器も使われることはないんです。日本の音楽や映像文化を支えて来たクリエーターに対する対価の還元をどうするかってのは重大問題であって、もっと正面からメーカーにはっきり迫るべきだと、わたくしは思うんですね。そうでなければ日本のコンテンツ産業は死滅してしまうと、このことは本当に重大なことだと思います。ところがですね、こともあろうに、メーカーに対しては腰が引けて要求しないまま、今度はユーザーを刑事罰で脅しつけて問題を解決しようという動きが起こっております。本日政府提出の著作権法改正案に対して自民公明両党から、第119条に3項を加え、違法に配信された音楽や映像などを私的使用目的であってもダウンロードしたユーザーに2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金又はそれを併科するなどという重大な修正案が提案されることになっております。我が党は断固これには反対です。そもそも違法ダウンロードに対する刑事罰導入に関しては、日弁連からも厳しい反対の意見書及び会長声明が発出されております。個人の私的生活領域におけるダウンロードに対して刑事罰を課そうとする議論を是認すれば、国家権力が私的領域に直接入り込む余地を与えることになるものであるとまで日弁連は警告しております。そのような重大な内容の修正案をしかも質疑終局後に提出するなどということは言語道断だと言わなければなりません。そこでお聞きしますけれども、そもそも今回問題になっています私的領域において違法にアップロードされた音楽、映像などのダウンロードについては、わずか3年前の2009年の法改正で始めて違法とされたものであります。それ以前は私的領域については違法ですらなかったですね、文化庁。

石毛委員長:河村次長。

河村次長:はい。平成21年の改正により始めて私的使用目的であっても違法配信と知りながら音楽、映像をダウンロードする行為が違法とされたものでございます。

石毛委員長:宮本委員。

宮本委員:この法改正が施行されたのは2010年1月1日ですよ。ですから、そもそもわずか2年あまり前までは、私的領域におけるダウンロードは基本的には違法ですらなかったわけです。これを始めて違法とした3年前の改正時にも、この問題を巡って大きな議論がございました。しかし、この時は、我が党も違法ダウンロードが正規の配信事業を上回る規模になり、正規コンテンツの流通に支障をきたしていること、そして、このような状況が放置されることは由々しき事態であり、日本のコンテンツ産業の成長が阻害される懸念があることから、賛成の立場を取りました。しかし、それはあくまで罰則規定の導入など、国民の基本的人権を脅かすような内容がそこに含まれていなかったからであります。平成21年改正の時には、政府自身がそのことを力説していたと思うんですね。当時の塩谷文部科学大臣は、この2009年の法改正案の法案主旨説明で、なおこの30条の改正については違法なものと知りながらおこなった場合に限るとともに、罰則は課さないこととしておりますと述べております。あの確認しますが、大臣、この時なぜ罰則を課さないことにしたんですか。

石毛委員長:平野文部科学大臣。

平野大臣:そもそも論のところについて、わたくし全てを承知をいたしておりませんが、先ほど来から申し上げておりますように、日進月歩で技術の進展があると、特にネットの社会を含めていろんな意味で、技術進歩が日進月歩だと、こういう背景が1つ。そして、もう1つはやはり何をおいても大事なことは権利者の保護ということをすることによってこの世界が導かれて行く、さらに発展をして行くというのが基本であろうというように思っております。そういう中で、平成21年の改正時どうだったんだと、こういうご指摘でございますが、平成21年の改正の際には、私的利用でも違法配信と知りながらダウンロードすれば違法と、こういう風にしてございます。刑事罰をじゃあなぜかかけなかったのかと、こういうことでございますが、個々の人の違法ダウンロードの事態は非常に軽微であると、こういう判断をその当時されたんだろうという風にわたくしは思っております。もう1つは、やっぱり実効性が、どういう風に違法をトラップするかというところの実効性がどうなのかと、こんなこともご議論されたように思います。しかし、一方ではネット上がより発展すれば、より広汎に広がって行くということも事実と、こういう風に思っておりますし、またなかなかその検証して行く、あの部分が難しいということはありますが、やっぱり刑事罰をかけていくということによって抑止的効果が大いに期待ができるんではないかと、こういう風なご意見もあったと承知をいたしておりまして、そういう両方ある中で、21年度改正の時にはそうしなかったと、こういうことだとわたしは理解しております。

石毛委員長:宮本委員。

宮本委員:この時は違法化ですけれども、罰則はつけなかった、軽微だということでありますけれども、それでも民主党の議員も当委員会でいつ損害賠償請求が送られて来るか分からないというユーザーの不安にどう答えるのかといった議論を相当詳しくしております。この時、高塩文化庁次長は、権利者団体がいきなり利用者に対して損害賠償請求をおこなうことは基本的にないと答弁し、プロバイダー責任制限法におきましても、サイト運営者に対するダウンロードについての個人情報開示の手続きというものはございませんので、ダウンロードをおこなう利用者を特定することは困難だと述べております。その後、何か事情が変わったのか、文化庁、お答え頂けますか。

石毛委員長:河村次長。

河村次長:ご指摘の点につきましては、事情の変更はないものと承知をいたしております。

石毛委員長:宮本委員。

宮本委員:事情の変更はないんですね。それで、このプロバイダー責任制限法、正式には、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律という、まあ長い名前の法律でありますけれども、これを2001年11月6日参議院総務委員会で審議した際、我が党から質問に立ったのは他ならぬわたくしでございました。今日は総務省にも来て頂いております。わたしは2001年11月6日参議院総務委員会でのプロバイダー責任制限法案の質疑で、インターネットでいつどんなサイトにアクセスしたかといったことは個人のプライバシーにかかわる問題であり、法律上も電気通信事業者はそれを通信の秘密として守る責務を負っていると指摘をした上で、電気通信事業者がみだりにそれを開示することは許されないばかりでなく、それを開示させる法令を作ろうという場合でも、憲法上の通信の秘密の適用から除外するに足るだけの十分な理由がある場合に限られるのでなければ憲法違反となると厳しく指摘をいたしました。それに対して、当時の片山総務大臣も、総務省も、発信者情報開示請求権の要件を厳格に定め、通信の秘密をいささかも犯すことのない運用に努めると繰り返し答弁したと覚えておりますが、間違いないですね。

石毛委員長:総務省原口電気通信事業部長。

原口総務省電気通信事業部長:先生おっしゃいました通り、当時宮本委員からご質問頂きまして、当時、総務大臣、総合通信基盤局長から、1点目といたしまして、いわゆる通信の秘密につきましては、憲法上の基本的人権として保障されていること、また、インターネット上のいわゆる電子掲示板への接続の記録も、これは通信の秘密として保護の対象となること、それから、いわゆるこのプロバイダー責任制限法におきまして、発信者情報開示請求の要件については非常に厳格に定められていること、それから、最後に、プロバイダー責任制限法の施行にあたっては、その主旨が十分に理解され、適切な運用が図られるように必要に応じて関係者に周知徹底を図ること、このように答弁をさせて頂いたと承知しております。

石毛委員長:宮本委員。

宮本委員:そうとう厳密な議論をやったんですね。それで、今既に罰則が付されているアップロードという行為、これはもちろん、プロバイダーのところでそのアドレスを特定するということは可能であります。しかし、ダウンロードしたかどうかということをプロバイダーが特定するってのは不可能でありまして、やろうと思えば全てのアクセスを手あたり次第に調べてみる必要が出て来るわけであって、アクセスした全てのIPアドレスを開示請求するってことは許されないことであって、開示請求を受けたところを1つ1つ踏み込んで、パソコンの中を調べてみるってことはとんでもない騒ぎに、とんでもない話になるわけであって、できようがないわけなんですね。ですから、そういう点でも、こういうものに罰則をかけるってのは技術的にもそして憲法上も許されないということを申し上げなければなりません。それで、こういう議論が文化審議会の著作権分科会でもやられて来たと思うんです。で、文化審議会著作権分科会では、昨年著作権法第30条の見直しの議論がされ、関係者からもヒアリングをされて来たと聞いております。そこで、私的違法ダウンロード行為に罰則をかけるというようなことがですね、関係者間で合意されたという事実がございますか。

石毛委員長:河村次長。

河村次長:昨年度文化審議会では、著作権法第30条、その私的使用のための複製の規定でございますが、この規定全般について関係者から広くヒアリングを行い、検討課題を整理したと、そういう段階でございます。

石毛委員長:宮本委員。

宮本委員:合意はできてないですね。

石毛委員長:河村次長。

河村次長:はい、検討課題を整理したという段階ですから、まだそうした、そうした議論をしているということではございません。

石毛委員長:宮本委員。

宮本委員:文化審議会の著作権分科会でも合意に至っていない。こういうものであります。そこでですね、この違法ダウンロードの、この違法ダウンロードが動画投稿サイトで多いと言われております。そこで、その実態について聞くんですが、動画サイトは音楽の利用について権利者と包括的に許諾を得ているサイト、具体名をあげるとニコニコ動画など、それと放送局などの公式ページと、違法にアップロードされた動画が混在するサイト、具体名をあげますとユーチューブなどがあると思うんですが、これは事実ですね、文化庁。

石毛委員長:河村次長。

河村次長:お話のように動画サイトの中には、運営事業者とJASRAC等の著作権等管理事業者やレコード製作者との間で包括的な利用許諾契約を締結している例もある一方で、適法なものと違法にアップロードされた動画が混在しているサイトも存在しているという風に承知しております。

石毛委員長:宮本委員。

宮本委員:動画投稿サイトにある音楽や映像には、適法にアップロードされたものと違法なものが混在しているっていうのが今答弁にあったように実態なんです。これでは、音楽や映像のダウンロードが果たして違法な行為にあたるのかどうかを理解できないままに行われる場合も多く、処罰の対象にすることは過剰な対応だと言わざるを得ないと思います。さらにおうかがいしますが、放送局などの場合ですね、その多くが無償で提供するサイトとそして有償で提供するサイトの両方を運営している他、映画、音楽などもそれぞれの販売目的に応じて期間を限定して無償で提供したり、一部分を無償で提供したりする、そういう実態があると思うんですけれども、これも、文化庁、事実ですね。

石毛委員長:河村次長。

河村次長:お尋ねの点につきましては、放送局が無償又は有償で放送番組等の動画を提供するサイトを運営している例や、映画製作者、音楽事業者が販売促進等の目的に応じて期間や提供部分を限定するなどして無償で提供している例があるという風に承知をいたしております。

石毛委員長:宮本委員。

宮本委員:有償と無償の区別をつけることさえ難しいというのが実態です。こんな状態では、ダウンロードすれば処罰の対象となる音楽、映像なのか、利用者が事前に判断、判別するということは困難であると言わざるを得ないと思います。何が罪になるのか明確になっていないものを、その刑罰を定めるというようなことは許されることではありません。そもそも、新たな刑罰を課す場合、賛否はどうあれ、当然国会において慎重な質疑がなされ、その立法事実、構成要件等を明らかにしなければなりません。とりわけ、この修正案が提起している、違法ダウンロードの処罰化は、今や多くの国民が利用するインターネット利用に大きく影響するものであります。修正案提案者にはそのような修正案の提案は取りやめること、またそのような修正案に何の審議もなく賛成するというようなことはくれぐれも思いとどまることを強く訴えて、わたくしの質問を終わります。

石毛委員長:これにて本案に対する質疑は終了いたしました。副大臣、政務官が席に戻るのを少しお待ち下さい。この際、本案に対し、池坊保子委員他4名から自由民主党無所属の会及び公明党の2派共同提案による修正案が提出されております。提出者から主旨の説明を求めます。池坊保子委員。

池坊委員:ただいま議案となりました修正案につきまして、提出者を代表いたしまして、その主旨及び内容の概要をご説明いたします。本修正案は、違法に発信されているものであることを知りながら、有償の音楽又は映像を私的使用目的で複製する行為、いわゆる私的違法ダウンロードについて罰則を設けるとともに、私的違法ダウンロードの防止に関し、国民に対する啓発、関係事業者の措置などについての規定を追加するものであります。その内容の概要をご説明いたします。まず、私的違法ダウンロードに対する罰則を設けることといたしました。すなわち、一、私的使用の目的をもって、二、有償著作物等の著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、三、自らその事実を知りながら行って著作権又は著作隣接権を侵害した者は、四、二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰則に処し、又はこれを併科することとしております。また、私的違法ダウンロードの防止の重要性についての国民の理解を深めることが重要であると考え、国及び地方公共団体に対し、私的違法ダウンロードの防止に関する啓発、未成年者に対する教育の充実を義務づけることといたしました。その他関係事業者の措置に関する規定、法律の施行後一年を目途とする検討条項を設けることとしております。以上が修正案の主旨及び内容の概要でございます。なにとぞ委員各位のご賛同をお願い申し上げます。

石毛委員長:これにて主旨の説明は終わりました。これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。討論の申し出がありますので、これを許します。宮本委員。

宮本委員:わたくしは日本共産党を代表して内閣提出の著作権法の一部を改正する法律案に賛成、自民党公明党共同提出の修正案に反対の立場から討論します。内閣提出の法律案は写り込みなどある程度事例を限定した上で現行では形式的には違法となる行為を容認しようとするものですし、国会図書館が所有する電子化資料の利用拡大など国民の利便性が向上する面もあり、賛同できるものです。これに対し、自民党公明党共同提案による修正案は、共同提出の法律案とは全くかかわりがない違法ダウンロードを処罰化するものです。まず、このような国民の基本的人権にかかわる重大な内容を含む修正案を政府案の質疑終局後に提出するという委員会運営を強引に進めた修正案提出者及び民主党に対し、厳しく抗議します。現在、動画投稿サイトやファイル交換ソフト等を通じて違法にアップロードされたコンテンツが簡易に無料で入手できる状況にあり、正規コンテンツの流通に支障をきたしていることはもちろん問題です。しかし、その対処は処罰化ではなく、まずはインターネット上にある違法にアップロードされたものの削除などの対策のさらなる強化であるべきであって、違法ダウンロードの処罰化ではありません。そもそも、この問題は個人のインターネット利用のありようにかかわる私的な領域であり、ダウンロードをおこなっているのは未成年者を含む若者が多く、その影響も考慮し、慎重に検討されなければなりません。著作権法制のあり方を検討する、文化庁の文化審議会著作権分科会では、昨年9月に違法ダウンロードの処罰化については、賛否両論の論点整理をまとめているのみで、今年2月の審議経過報告では、今後適宜検討するとされているにすぎず、関係者間の合意はありません。また、現在、ダウンロード違法化の施行からわずか2年あまりが経過したにすぎず、わずかな期間での処罰化は国民の理解を得られません。国民的な合意もないまま、関係者間の議論の途上で、審議会での議論さえ踏まず、罰則を導入するなどは言語道断です。違法ダウンロードがおこなわれているとされる動画投稿サイトには、音楽の利用について権利者と包括的に許諾を得ているサイトと、放送局などの公式ページと、違法にアップロードされた動画が混在するサイトがあり、ユーザーにとってインターネット上にある音楽、映像が違法にアップロードされたものかどうかを事前に判断することは困難です。また、修正案は、有償であるもののみを対象としていますが、放送局などの場合その多くが無償で提供するサイトと有償で提供するサイトの両方を運営している他、映画、音楽などもそれぞれの販売目的に応じて期間を限定して無償で提供したり、一部分を無償で提供したりもしています。有償か無償かを見分けることも容易ではありません。さらに処罰する場合、誰がどのようにして違法ダウンロードをおこなったのかを証明、把握する必要が生じます。日常的に権利者、捜査当局が、個人のインターネット利用の内容、音楽、映像のダウンロード状況を監視、把握することが予想されます。親告罪で、著作権者の告発により捜査がおこなわれると言っても、憶測や疑惑の段階から取り締まりを可能にすることにつながりかねず、結果として、捜査当局の恣意的な捜査を招く危険を排除できません。このような問題の多い修正案をまともな審議ぬきで採決することの不当性を厳しく指摘して、わたくしの討論を終わります。

石毛委員長:これにて討論は終局いたしました。これより採決に入ります。内閣提出著作権法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。まず、池坊保子委員他4名提出の修正案について採決いたします。本修正案に賛成の委員の起立を求めます。(賛成委員の起立)起立多数、よって本修正案は可決されました。次に只今可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。これに賛成の委員の起立を求めます。(賛成委員の起立)起立総員、よって本案は修正議決すべきものと決しました。お諮りいたします。只今議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては委員長にご一任願いたいと存じますが、ご異議ありませんか。(異議なしの声)異議なしと認めます、よってそのように決しました。次回は公報を持ってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。

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2012年6月12日 (火)

第273回:「『違法ダウンロードへの罰則導入』に関するQ&A」に関するQ&A

 ダウンロード犯罪化に反対するための資料としては、日弁連の意見会長声明)やMIAUの反対声明が簡にして要を得ており、さらに追加するべきこともないくらいだが、著作権団体のロビー資料のQ&A(MIAUのツイートあるいは津田大介氏のツイート参照)に書かれているような間違った理解が広まったらそれはそれで大問題なので、前々回で取り上げた海外事情に加えて、そのQ&A全体に対する反論をやはりQ&A形式でここに書いておく。(ただし、ダウンロード犯罪化に関する私の意見自体は第256回でも書いており、内容に大差はない。)

(以下、Q&A。Q19までは著作権団体のロビー資料のものと1対1に対応させたものだが、ロビー資料の回答を見て質問を少し作り変えていることにご注意頂きたい。)

Q1:違法ダウンロードを罰則の対象とすることは「知財立国」や「健全なインターネット社会の発展」のためになるか?

⇒ダウンロード犯罪化はまず間違いなく社会のためになりません。政策決定において、「知財立国」や「健全な社会」のような見てくれの良い言葉で思考停止することほど危険なことはありません。どのような規制にもメリットだけではなくデメリット・コストも存在しています。既に著作権保護強化は行き過ぎて文化や経済の発展を阻害しており到底「知財立国」などとは言えない状態ですし、単なるインターネットアクセスで山のように青少年が逮捕されるような社会は到底「健全」とは言えないでしょう。短絡的な思考停止を避け、メリットだけではなくきちんとデメリットも踏まえ、政策決定はされなくてはいけません。

Q2:平成21年の著作権法改正以降立法事実の変化はあるか?

⇒いまだに単なるダウンロードに対する民事訴訟の例はなく、前回のダウンロード違法化の法改正以来何ら立法事実の変化はありません。もしダウンロード違法化に効果がないというのなら、前回の法改正自体、改正の根拠となる立法事実がなかったということでしょう。

Q3:違法アップロード者を取り締まることでは十分に対応できないのか?

⇒インターネットにおける海賊版対策は基本的に違法アップロードの取り締まりで対応することが可能です。アップロードへの対処で不十分だとする理由は説得力を欠きます。海外においても多くの国でアップロードは違法・犯罪とされているのでしょうから、対応が不可能ということはないでしょう。アップロードへの対処に困難性があるのであれば、その困難性を下げることをまず考えるべきであって、そこからダウンロードを違法化する・犯罪化するといったようなさらにエンフォースに困難性がともなうだろうような規制強化に短絡的に飛びつくのは非常に危険なことです。

Q4:Lマークでコンテンツの合法違法を区別がつけられるか?

⇒Lマークはネット全体のなかでごくわずかなサイト・コンテンツにつけられているだけであって、あらゆるサイト・コンテンツの合法違法の区別をできるものでは到底ありません。そもそもLマークのようなごく一部の業界団体が権利を所有しているマークがネットにおけるあらゆるコンテンツの違法合法の区別を示すなどということは不当以外の何物でもないでしょう。さらに言えば、Lマークの存在自体普通の人はほとんど知らないでしょう。

Q5:違法ダウンロード者を取り締まることは可能なのか(罰則をつけても効果がないのではないか)、違法ファイル共有ユーザーに対する量刑が重くなるか?

⇒故意性やコンテンツの違法性の認識の立証、プライバシーなどに関する数々の問題点をまともに考えたらダウンロードに対する取り締まりは実際にはほとんど不可能です。全ての問題点を踏みにじって著作権団体と警察によりエンフォースが行われることも考えられなくはありませんが、その場合は摘発は恣意的なものたらざるを得ず、やはり非常に大きな問題が発生します。いずれにせよ、ダウンロード違法化や犯罪化のようなやり方は、法のさらなる弛緩か、恣意的な執行による正当な利用の萎縮のどちらかに転ぶしかない最低最悪の手段と言えます。また、実際の司法判断を待たなければ何とも言えないところもありますが、アップロードとダウンロードを同時に行う違法ファイル共有における罪数処理は難しく、量刑が重くなるとは一概に言えないでしょう。そもそも違法ファイル共有が問題であるのならば、スジ違いのダウンロードに対する罰則付与ではなく、違法ファイル共有への対策を特に講じるべきでしょう。

Q6:正規サービスの充実こそ最大の違法コピー対策ではないのか?

⇒ここで問題となるのは価格だけではなくDRM・利便性も含めたサービス全体ですが、正規サービスの充実以外の対策はどこをどうやっても付け焼き刃にしかならないでしょう。

Q7:ダウンロードできないように技術的にコントロールできないのか?

⇒DRMによるコピー・アクセスコントロールの問題はユーザーの利便性や情報アクセス権の観点からも含め別途議論されるべき問題で、ダウンロード違法化・犯罪化問題とは直接関係ありません。

Q8:他国の法制はどうか?

⇒世界でもダウンロードを違法化・犯罪化してまともにエンフォースしようとした国はドイツくらいしかありませんが、そのドイツでは法改正の結果生じた刑事訴訟の乱発による混乱の反動がなお続いており、反面教師としてしか参考にならないでしょう。第271回参照。)

Q9:世界で単なるダウンロードに対する刑事訴追事例はどれくらいあるのか?

⇒単なるダウンロードに対する刑事訴追は世界でも1例もありません。第271回参照。)

Q10:国民への周知はどこまで可能か?

⇒ダウンロード違法化と同程度には文化庁・著作権団体が周知しようとするでしょうが、一般国民の常識と乖離した法改正の周知には自ずと限界があります。ダウンロード違法化すら十分に周知されているとは言い難い現状で犯罪化までしたのではさらに混乱に拍車がかかるでしょう。

Q11:罰則の導入によりインターネットの利用は萎縮しないのか?

⇒あらゆるコンテンツについて合法違法の区別が明確につくなどということはありえず、著作権団体と警察による法律の恣意的な運用によりインターネット全体の利用が萎縮する可能性は十分にあるでしょう。ダウンロード犯罪化条項が実質的にエンフォースされないことにより、萎縮が一時的なものにとどまる可能性もありますが、そのような場合も、やはり法改正は有害無益なものであるとしか言いようがありません。

Q12:罰則の導入は、違法ダウンロードを理由とした警察権力の不当介入につながらないのか?

⇒強制捜査に令状が必要なのは当然のことですが、ダウンロードについて令状の必要性を疎明するために警察がどれだけの事実・資料を必要とするのかという点こそが本質的な問題点です。運用次第ですが、ダウンロードに利用されたと思われるIPアドレスと権利者の告発だけで疎明に足るとしたらほとんど何の制約にもなっておらず、濫用される懸念は非常に強いと言わざるを得ません。アニメ画像1枚の利用でウィルス作成者が逮捕された過去の事件のことを考えても、警察は別件逮捕などのためにこのような条項を使いに来ることでしょう。過剰捜査ということとは少しずれますが、ドイツではダウンロード違法化・犯罪化にともなう刑事訴訟の乱発が社会問題化したことがあります。

Q13:ダウンロードで子供・青少年が摘発されるだろうことについてその育成上の問題はないのか?

⇒このような法改正がなされた場合、子供がコンテンツをダウンロードしたというだけで警察が家に踏み込んで来ることになりかねませんが、このようなことで家庭をメチャクチャにすることが正しいこととは到底私には思えません。後に不起訴となったとしても、警察による捜査・逮捕の時点で家庭は崩壊の危機に瀕することでしょう。なお、このような警察権力の家庭への侵入の問題は別に子供・青少年に限った話でもありません。

Q14:ダウンロードに罰則を付けた場合、動画ダウンロード支援サイト「TUBEFIRE」のようなサイトからのダウンロードユーザーに対する適用があり得ることになるのか?

⇒場合によってダウンロード支援サイトのユーザーに対する罰則の適用もあり得るということになるのでしょうが、本当に適用された場合、コンテンツの違法性の認識の立証、故意性の立証の面で非常に大きな問題が生じるでしょう。このようなサイトを利用していたことのみをもってその証拠とするような運用がされたとしたら、リンクを踏むだけでも警察の捜査・逮捕があり得ることになり、インターネットの利用に対して甚大な萎縮が発生することになるでしょう。また、幇助(民事なら間接侵害)の問題もあり、リンクを張ることすら危なくなるでしょう。

Q15:違法ダウンロードに罰則をつければCDの売り上げが増加するか?

⇒ダウンロード犯罪化でCDの売り上げが増加することはないでしょう。世界を見渡しても、著作権の保護強化がCDの売り上げに有意なプラスの影響を与えた例はありません(第271回参照)。世界で一般的に見られる音楽配信の売り上げ増についても、カタログの充実やDRMの廃止などの正規サービスの充実の方が一般国民の常識を離れた著作権法改正よりはるかに効いていると考える方が妥当です。

Q16:「刑法の謙抑性」の原則から、私的領域における行為に対する刑事罰の導入には極めて慎重であるべきではないのか?

⇒情報へのアクセス・単なるダウンロードは本来他人が知るべきでない私的な行為であり、このような行為に対する刑事罰の導入には極めて慎重であるべきなのは無論のことです。知的財産権はあくまで社会的な便宜のために創設された人工的な権利であり、知的財産侵害品の単純購入や単純所持を禁じていることはありません。この点で、有体物の窃盗と、無体物である知的財産権の侵害を混同するのは、常に論理飛躍をもたらす危険なアナロジーです。

Q17:個人のプライバシー権侵害の懸念はないのか?

⇒Q12に対する答えでも書きましたが、運用次第とは言え、令状の必要性を疎明するためにダウンロードに利用されたと思われるIPアドレスと権利者の告発だけで足りるとしたらほとんど何の制約にもなっておらず、警察の濫用による個人のプライバシー権侵害の懸念は非常に大きいものと言わざるを得ません。

Q18:スイスやオランダは市場規模や自国音楽シェアのみからダウンロードを合法のままとしたのか?

⇒スイスやオランダも市場規模や自国市場における自国音楽のシェアのみからダウンロードを合法のままとしたのではありません。両国とも、ダウンロード違法化・犯罪化のようなやり方が自由でオープンなインターネットに反すること、プライバシーや表現の自由の観点から問題があること、告発・訴訟の乱発・濫用の懸念があることなどを正しく認識してダウンロード違法化・犯罪化をしないと決定しています。第271回参照。)

Q19:ダウンロード行為に刑事罰を付することとした場合、権利者によって情報の流通がコントロールされ、国民の情報アクセス権が害されるおそれはないのか?

⇒ダウンロード犯罪化は、運用次第でインターネットの利用に甚大な萎縮が発生し、引いては国民の情報アクセス権を害しかねない危険な規制強化です。対象を有償著作物に限れば良いとするようなことはあくどい問題のすり替えであって、このような対象の限定は問題の本質とは関係ありません。今のところは恣意的な運用の懸念があるというレベルの問題だと思っていますが、これを本当に完全にエンフォースしようとしたら、あらゆる情報アクセスを監視するために一大ネット検閲システムを警察で構築することが必要になって来るでしょう。そこまでの懸念は杞憂であって欲しいと私も思っています。

<おまけのQ&A>
Q20:3行でお願いできますか?

⇒3行でまとめるのは無理ですが、以前Twitterで上で書いたようなことをつづめて「ダウンロード犯罪化の動きの問題点:1.不透明な立法プロセス、2.違法ダウンロードの民事訴訟もなく立法事実に変化なし、3.違法・合法の区別がつかない、4.パロディ・研究等との関係が未整理、5.警察権力の不当な伸長の恐れ、6.ネット検閲につながる恐れ、7.海外でも訴追例・成功例は皆無」と書きました。さらに言えば、前回のダウンロード違法化自体間違った法改正であり、合法化するべきと私は考えています。

Q21:ダウンロード犯罪化の立法プロセスにおける問題はどこにあるのでしょうか?

⇒議員立法あるいは内閣提出法案の修正自体はあり得るプロセスであり、立法プロセスそのものが違法だということはありませんが、このような全国民に大きな影響を与えかねない法改正を不透明な与野党談合で実質審議なしで通そうとしていることが大問題です。立法府の本来の職務を放棄しているに等しい、このような不透明なやり方は大きな禍根を将来に残すことになるでしょう。

Q22:パロディとの関係はどうでしょうか?

⇒今のところパロディに関する明確な規定は著作権法上になく、パロディとの関係でもコンテンツが合法か違法かを見分けるのは難しいというのが現状です。また、ダウンロード犯罪化は、公正な利用と考えられる、一般的な研究などのための情報入手に影響を及ぼす可能性もあるでしょう。ここで、ダウンロード犯罪化の話は、文化庁が今期の文化審議会で検討するとしているパロディ規定の話とは直接関係ないことにも注意が必要です。

Q23:この問題に懸念を持つネットユーザーはどうしたらいいのでしょうか?

⇒一番重要なことは自分で情報を集め自分の頭で考えて自分で行動することです。衆議院文部科学委員会でダウンロード犯罪化がすぐにも採決されるかも知れないという予断を許さない情勢ですが、もし本当に懸念を持っておられ、何かできることはないかとお考えのようでしたら、メールでも電話でも構わないと思いますが是非まず地元の国会議員の方にご自分の懸念を丁寧に自分の言葉でお伝え下さい。

(2012年6月12日夜の追記:Q7の回答に「や情報アクセス権」という言葉を追加するとともに、いくつか誤記を直して文章を整えた。)

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2009年6月13日 (土)

第177回:参議院文教科学委員会での馴れ合い出来レース審議、ダウンロード違法化を含む著作権法改正案の成立-一億総海賊時代の到来-

 この5月8日に衆議院の文部科学委員会を、5月14日に衆議院を通り、6月11日に参議院文教科学委員会を、6月12日に参議院本会議を通過して、ダウンロード違法化を含む著作権法改正案が、やはり何の修正もなされないまま成立した(その内容と問題点については第160回参照)。参議院でも、法案に対する実質的な審議は何もされていないに等しく、完全な馴れ合い、茶番の出来レースのみで、ダウンロード違法化を含む著作権法改正法案は最後まで通された。(参議院本会議も投票のみで全会一致の完全無風通過である。なお、衆議院文部科学委員会の審議は第171回参照。)

 参議院文教科学委員会の審議の暫定版議事録を下に載せる(国会中継からなるべく丁寧に起こしたつもりだが、どこか間違っている点があれば、是非教えて頂きたいと思う。)が、参議院の審議も、衆議院での審議に勝るとも劣らない非道さである。質問に立っているのは、民主党の2名の議員であるが、やはり、貴重な国会審議において、そんなことは他でやれば良いはずの法案と直接関係ない問題をだらだらと喋っているだけである。

 民主党の友近聡朗議員は、国会図書館とグーグルブック検索について、衆議院での駄弁の繰り返しに等しい、無意味な質問を繰り返し、やはり民主党の那谷屋正義議員は、法案と関係の無い、インフルエンザや特別学校の寄宿舎、拡大教科書そのものの問題についての質問で貴重な時間を大量に浪費した上、法案そのものについては馴れ合いの質問だけで終わらせるという非道さである。

 衆議院・参議院ともに、このような連中が、まがりなりにも選挙で国民の代表として選ばれた者として国会で立法に携わっていることを思う度、私は慄然とする。読めば分かると思うが、国会で、このような馴れ合いの出来レース審議が行われており、また行うことが可能であるというのが、絶望的な今の日本の現状である。どの党も国民と口先では言いながら、本当は国民のことなどカケラも考えていないことを如実に露呈している。与党として閣議決定という形でダウンロード違法化を含む著作権法改正に賛成した自民党(宗教政党である公明党は無論論外である)はおろか、他の党も含め、残念ながら、著作権問題に関して投票できる党は無い。

 国会においても、ダウンロード違法化の本質的な問題点が全く理解されずに終わったことは、痛恨の極みである。即座に影響が出る類の法改正では無いとは言え、どこまで行ってもダウンロード違法化は守られようも守りようもない百害あって一利ない最低の法改正である。このような非道な法改正は、今後、日本をじりじりと蝕んで行くことだろう。

 これで来年の1月からダウンロード違法化が施行されることが確定した訳だが、このようなそもそもの根本から腐った法律は守られようも守りようもない。この国の議員や役人どもは、一億総クリエーターだの、一億総ユーザーだのと口先では調子の良いことばかり言いながら、結局、何のことは無い、国民全員を潜在的な海賊と見なして、ダウンロード違法化を強行し、一億総海賊時代を到来させたのである。この大海賊時代の到来を前に、私も1人の海賊であると、ここに宣言しよう。

 法律は作れば終わりというものではない。私の絶望に底は知れないが、ダウンロード違法化条項は削除されるべきであると今でも私は確信している。日本における政策決定のレベルにまで著作権問題の本質の理解が浸透するにはまだ相当の時間を要するものと思うが、私は、何があろうと反対を続けるつもりである。

(6月28日の追記:以下の議事録も残しておくが、正式な議事録も公開されているので、ここにリンクを張っておく。)

(以下、議事録)

○中川雅治委員長 ただいまから文教科学委員会を開会致します。委員の異動についてご報告致します。昨日、佐藤信秋君、山下栄一君及び藤谷光信君が、委員を辞任され、その補欠として、中曽根弘文君、鰐淵洋子君及び藤原良信君が選任されました。政府参考人の出席要求に関する件についてお諮り致します。著作権法の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議の通り、文部科学大臣官房文教施設企画部長布村幸彦君他3名を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することにご異議ございませんか。ご異議ないと認め、さよう決定致します。著作権法の一部を改正する法律案を議題と致します。本案の主旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。質疑のある方は順次ご発言願います。友近聡朗君。

○友近聡朗委員(民主党・新緑風会・国民新・日本・愛媛県)おはようございます。民主党・新緑風会・国民新・日本の友近聡朗でございます。今日は大臣を筆頭に、国会図書館の長尾館長さんを始め、政府参考人の皆様ありがとうございます。えー、先日の火曜の委員会で、佐藤信秋さんからも報告のありました、盲目のピアニスト、辻井伸行さんが、国際ピアノコンクールで始めて優勝するという快挙をなしとげられましたけれども、やはり文武平等の文教科学委員会としては、スポーツの話題も取り上げて頂きたいということで、ワールドカップで日本代表が4大会連続の出場を決めました。もう出場するのが当たり前のようになっているのかも知れませんけれども、あまり報道等でも大きく取り上げられないところに、嬉しさと歯がゆさがあるんですけれども、大臣、あのー、静岡県のご出身というところで、サッカーどころでありますが、率直な、ワールドカップ南アフリカ大会に向けまして、期待を込めて、率直なご感想とエールをお願いしたいと思います。

○塩谷立文部科学大臣 このたび、日本代表が、来年のワールドカップサッカーに出場を決めたということは大変喜ばしいことでありまして、あと1年後でありますんで、是非、あのー、目標がベスト4ということでございまして、大いに期待し、また文部科学省としてもできるだけの応援をして行きたいと思っております。おめでとうございます。

○友近委員 私は残念ながら日本代表には入っておりませんので、一生懸命皆さんと一緒に応援させて頂きたいと思います。実は、昨日のカタール戦も、私横浜スタジアムに見に行って参りまして、えー、本当に、6万以上の人が横浜スタジアムに集まってましたけれども、あらためてスポールのすばらしさ、そして、先ほどの辻井、辻井さんの話の通り、文化そしてスポーツのすばらしさををあらためて実感した次第でもあります。ただ、昨日の試合は、かなりフラストレーションの溜まる試合でしたので、今日は、政府には明快なご答弁をお願いしたいと思います。えー、今日はサッカー協会の話では無くてですね、サッカー協会の方なんですけれども、えー、権利者の、著作権の権利者の皆さん方に、黒船来航とも言われております、グーグルブックの検索への対応と、国立図書館の図書館電子化構想に関して主に伺いたいと思います。まず、図書館のですね、基本的なことからお伺いしたいと思うんですけれども、図書館が今抱えている課題として、納本というのがあると思います。国会図書館は日本中のあらゆる出版物をきちんと集めなければならないということだと思うんですけれども、これ私はまだまだ社会的、一般的に知られていないんじゃないかなあという風に感じております。私も先日ある本を探したんですけれども、納本がされていませんでした。えー、自費出版の方々にとっては、著者にとってもインセンティブになると思いますし、完璧に集めて頂くためにも、社会全体にこの納本ということを、納本制度ということを知って頂く必要があると思いますので、是非、長尾館長の方から、声を大にして周知して頂くのと同時にですね、現在の納本率というのが分かりましたら、ご説明お願いします。

○長尾国立国会図書館館長 えー、あのー、ご質問にお答え致します。国立国会図書館法の中には、納本制度というのが義務付けられておりまして、これに従って納本がなされておりますが、実際上は100%、完璧ではございません。でー、昨年、国立国会図書館は60周年記念を迎えました。それを機会と致しまして、5月25日を納本の日、納本制度の日と定めまして、社会的にキャンペーンをするということを、去年から積極的にやり始めております。確かにおっしゃるように、納本制度というのは、日本の隅々まで知られていないというのは残念でございます。従いまして、民間出版社や、あるいは国の機関等に、ここにございますような「良く分かる納本制度」というようなパンフレットを作って広く配布したり、あるいは、ブックフェアなどの時に見てもらうという努力をしているところでございます。納本率につきましては、えー、昨年度、平成19年度に行いました調査によりますと、民間の出版物の内で、図書・雑誌につきましては約90%が納本されているということでございますが、あー、その中では、民間出版物でも、音楽とか映像関係の資料は40%ぐらいしか納本されていない訳でございます。一方、官庁出版物につきましては、国の市販のものが90%納本されておりますけれども、国の市販になっていない出版物が沢山ございまして、これについては50%くらいしか納本されておりませんし、地方自治体のものは、約40%が納本というのが実績でございます。従いまして、この率をなるべく高くするために、昨年から、この、積極的にパンフレットを作って、PRをしたりしておりますが、今後とも努力して行きたいという風に思っております。

○友近委員 はい、ありがとうございます。えー、100%では無いということで、ものによっては3割くらのものもあるということで、今の答弁で、納本率が数%でもあがることを期待したいと思いますが、納本制度というのには、罰則があったりですね、えー、適用はされたことが無いそうですけれども、えー、あと永久に本を保存して頂けるということで、今度、私の本も納本させて頂きたいなという風に思っております。あとですね、書庫があと7、8年経つと満杯になってしまうというようなことも報道されておりますが、この事実は間違いないでしょうか。

○長尾館長 あのー、おっしゃる通りでございます。東京本館の書庫のスペースは1200万冊、それから関西館の書庫のスペースは600万冊なんでございますけれども、東京本館につきましては、既に80%を超えております。それで、関西館も3分の2ぐらいがもう既に埋まっております。従いまして、えー、今年、来年、再来年にかけまして、東京本館の資料を少しずつ関西館の方に移動させまして、えー、両館において空きスペースが均等になるようにしながら蓄積を進めたいということにしておりますけれども、いずれにしましても、ご指摘のありましたように、数年で満杯ということになる訳でございまして、書庫の増設につきましても、できるだけ早い時期に建設を行いたいということで、皆様の理解を得る努力をしているところでございます。

○友近委員 はい、ありがとうございました。えー、きちっと集めないといけない一方で、集めれば集めるほど、書庫が満杯になってしまうという矛盾も抱えている訳なんですけれども、えー、これ、大臣、通告していないんですが、いわゆる国立メディア芸術総合センター、マンガの殿堂でございますが、党内でもゴタゴタされておられるようですけれども、平成21年度117億円の予算が付されました。文化庁の構想では、4、5階建て、そして、延べ床面積1万平方メートル程度と言われておりますが、お台場に国営マンガ喫茶を作るのではなくてですね、国会図書館の書庫に活用すれば、多少なりとも国民の理解が得られると思いますが、お考えをお示し下さい。

○塩谷大臣 あのー、まあ、メディア芸術センターについてはですね、あのー、マンガ館ということではなくて、メディア芸術全般に渡った展示とか保存、あるいは、あー、人材育成等々、様々な機能を含めて、今内容を固めているところでございますが、それはそれとして、しっかりと実行する必要があるし、また、あのー、国立国会図書館についてもですね、書庫が必要であれば、今後、しっかりと検討もさせて頂きたいと思っております。

○友近委員 えー、それではですね、そろそろ本題の方に入って参りたいと思います。まず、国会図書館の方にお伺いしたいと思いますけれども、平成18年の12月に資料デジタル化基本計画というものを作成されて、今年の3月に所蔵資料の媒体変換基本計画というのも作られたと聞いております。この概略について、簡潔にご説明お願いします。

○内海啓也国立国会図書館総務部長 3月に策定致しました、平成21年度以降の当館所蔵資料の媒体変換基本計画につきましてでございますけれども、所蔵資料の保存と利用の両立を図るために、資料の媒体変換の基本的な考え方と、優先順位を示したものでございます。計画の大きな柱は、これまで資料の劣化対策としてマイクロフィルム化を行って来ました。この点を修正致しまして、これからは主にデジタル化によって対応することとしたものでございます。

○友近委員 はい、ありがとうございました。えー、大まかな流れを18年からざっくり言いますと、本は基本的にデジタル化しましょうと、そしてスキャンして、将来的にはインターネットで皆さんが見られるようにしましょうということだと理解しております。そこで確認させて頂きたいんですけれども、本著作権法の改正案31条の第2項でありますけれども、この改正案で、国会図書館に納品されてすぐ速やかに資料のスキャン、デジタル化が可能になるということだと思います。この法律案では、資料のデジタル化のみが権利制限の対象となっているという風に思うんですが、その後、スキャンした資料をどういう風に活用するかというのは特段の定めが置かれていないという風に認識しております。そこで、文化庁にお聞きしたいんですけれども、図書館のデジタル化を進める上でですね、この法案の有する意義は非常に大きいという風に思っておるんですけれども、本改正の意義と、あと権利制限の内容をですね、資料のデジタル化に限った理由というのを教えて下さい。

○高塩至文化庁次長 今回の著作権法改正の31条でございますけれども、国立国会図書館のいわゆる納本制度を受けまして、えー、そのデジタル化をただちに進められるというものでございます。これは、先ほど来お話ございますように、国会図書館は大きな使命として、納本制度によりまして、我が国の官庁印刷物、出版物、民間出版物という資料の保存というものを大変大きな使命として持っております。現行の規定によりますと、所蔵資料につきましては、既に劣化したり、損傷が激しいものにつきましてはデジタル化が可能でございますけれども、現に国会図書館の所蔵資料の中にもですね、非常に保存の状態が悪いというものもございまして、そういう段階でデジタル化、電子化致しましても、なかなか資料の保存状態が良くないということがございます。そうしたことに鑑みまして、今回の法改正におきましては、出版物の納本後直ちにですね、良好な状態のまま、将来の文化的な資産として保存されるよう、デジタル化を可能としたということでございます。今回の法改正につきましてはですね、原本に替えましてその複製物を公衆の利用に供することをしていることから、その原本をデジタル化する方式によって複製することが、資料に掲載された情報を保存する上から有効と考えることから、こうした規定を置いた訳でございますけれども、今後、その電子化された資料についてですね、どのような形で利用して行くかということにつきましては、現在、国立国会図書館におきまして、いわゆる著作権者、出版社も参加致します、資料デジタル化及び利用に関する関係者協議という場が設けられておりまして、出版業への影響等も考慮しながら、検討されるものという風に私どもは理解しているところでございます。

○友近委員 はい。皆さんのお手元にあります資料の1を見て頂きたいんですけれども、国立国会図書館の電子データ化の取り組みですけれども、いわゆる本が入って来て、スキャンして、コンピュータでみれますよという予算、平成12年から、大体1億円とか、多くても2億円程度しか予算づけがされていません。今年の、今年度の当初予算も1.3億円でしたけれども、今回の補正予算で、約100倍ですね、予算がつけられています。10年間分約9倍という予算づけでありますけれども、今回の大規模な予算化によって、資料のデジタル化というのが一気に進むことになるかと思います。それは資料3の方を見て頂きますと良く分かりますけれども、資料の緑の部分、グリーンの部分が既にデジタル化されていた部分で、今回の補正予算でブルーの部分がデジタル化されます。右の戦後刊行図書というのがありますけれども、その部分少し小さく見えますけれども、年代別で表記してありますので、残っているのが4分の3くらい、補正予算でデジタル化した後でも4分の3くらは残って行くのではないかという風にお伺いしておりますけれども、この今回は、100倍以上の予算がつきましたので良かったですけれども、今後ですね、どのようなペースでデジタル化を進めて行くのか、そして、優先的にデジタル化する資料などのようなものかというのをお伺いしたいと思います。

○内海総務部長 現在国立国会図書館の所蔵する明治大正期の資料をデジタル化致しまして、インターネット公開する事業を行っております。その総数は14万8千冊を画像情報の形で提供中でございます。図書館では平成21年3月に、先ほど申し上げました資料のデジタル化につきましての基本計画を策定したところでありますけれども、平成21年度の補正予算では、計画を加速致しまして、図書75万4千冊を始めとした大規模なデジタル化を実施致します。これによりまして、先生がおっしゃいました、デジタル化すべき400万冊の図書については、約4分の1のデジタル化が達成される見込みでございます。で、今後のデジタル化につきましては、多額の予算を必要とするところでありますので、引き続き必要な予算の確保等に努め、計画的に推進して参りたいと思います。それから、優先的にデジタル化する資料でございますけれども、資料の劣化・損傷の度合い、それから利用頻度、それから希少性、あまり世に無いもの、希少性というものを考慮して進めて参りたいと考えております。

○友近委員 えー、ありがとうございます。図書館では先ほどからご説明ありました通り、近代デジタルライブラリーというところで、既に著作権保護期間が満了した資料、あるいは、著作権者から許諾を得た資料、そして、文化庁長官の裁定制度を活用することで、インターネットで広く公開して来ていると思います。長尾館長さんは、こうした取り組みを、さらに発展されられて、電子国立国会図書館がデジタル化した資料をですね、第3者機関などに提供して、料金を徴収した上で、広く一般に利用して頂く、電子図書館構想というものを提唱しておられると思います。資料の4番目を見て頂きますと、その構想の大体全容が把握できるかと思いますけれども、私個人的にはこの電子図書館構想、出版関係者や著作権者等と議論を尽くした上でですね、良いモデルを作って頂きたいという風に思っています。私の地元である愛媛県というのは、長崎県に次いで島嶼部の多い地域でもあります。そこの島の子供たちや、おじいちゃんおばあちゃんがが、今でも現実的に図書館に足を運んで本を見るということは今日でも事実上不可能であります。そこで、長尾館長にですね、ご自身の電子図書館構想についてご説明して頂きたいとお願いします。

○長尾館長 あのー、現在、出版活動が電子的な世界にどんどん移りつつございます。これは世界的な動きでございます。その中で、日本において、出版界と図書館が共存共栄できる関係を構築して行くということが、日本の文化を発展させる上で非常に大事なことだと認識している訳でございます。で、私が提案しておりますビジネスモデルは、この資料4にございますけれども、国立国会図書館が電子出版物の納本を出版社から受けまして、紙の資料の電子データの納本、あるいは購入によりまして、収集しました電子形態の資料を、これがデジタルアーカイブと書いてあるものでございますが、その資料を遠隔地からも利用できるような仕組みを作るということを考えている訳でございます。具体的には、右の方に書いてあります、電子出版物流通センターといった組織を設立することを考えておりまして、利用者はこれを経由して、国立国会図書館に蓄積された電子図書を一定期間利用でき、その際には利用料金をこのセンターに支払うという考え方でございます。支払われたお金は、このセンターから出版社あるいは権利者に還元されるというモデルを考えております。どのくらいの利用料金が適切であるのかどうか、あるいは、これで出版事業が成り立って行きますのかどうかといったことは、これからいろいろな実証実験をしてみなければ分からないところでございますけれども、将来は本の流通経路が、現状とは全く違うものになると考えられますが、こういうモデルを早急に打ち立てて、おっしゃいましたように、東京あるいは関西間の近くにおられない方々にも平等に図書館を利用して頂けるような世界を作って行きたいという風に思っているところでございます。

○友近委員 はい、ありがとうございます。えー、出版関係者の方、著作権者の方と議論を尽くしてですね、是非とも良いモデルを作って頂きたいということで、私も応援させて頂きたいと思います。それでは次にグーグルブック検索についてお伺いさせて頂きたいと思います。冒頭、黒船来航という言葉を使わさせて頂きましたけれども、今回の法改正によりまして、図書館の資料のデジタル化というのが、ようやく権利者の許諾無しに行えるようになろうとしております。一方でアメリカの1私企業が、営利企業ですけれども、書籍のデジタル化とインターネットによる公開が、公正な利用であれば権利者の許諾なしに著作物を利用できるという、フェアユース規定という存在の下で大規模に進められています。このグーグルブック検索の概要と、日本に与える影響について、文化庁に簡潔にお答え願いたいと思います。

○高塩次長 グーグルブック検索につきましては、アメリカのグーグル社が、アメリカ国内の大学図書館などと提携致しまして、デジタル化した書籍をウェブ上で検索し、閲覧できるようにするサービスを始めたものでございます。これに対しまして、全米の作家協会及び全米の出版社協会が、これらの行為を著作権侵害として訴えていたところでございますけれども、昨年の10月に、両者間で和解案が合意されたということでございます。それによりますと、グーグル社による米国内でのウェブ上での検索サービスにつきまして、権利者に一定額使用料を支払うなどの内容となっている訳でございます。この当該アメリカの和解の内容でございますけれども、アメリカにはクラスアクション、集団訴訟という訴訟制度がございまして、アメリカ国内で権利を有する我が国の権利者にもそれが及ぶということになっておりまして、我が国の権利者につきまして、和解の参加の是非の判断が求められているという状況でございます。こうしたことを踏まえまして、国内の出版社、それから関係団体などにおきましては、本和解案に関します、権利者への情報提供、また、団体としての権利者の意思表示の取りまとめなどを行っているところでございます。先般、米国の作家協会等が来日いたしまして、日本の文芸家協会等と協議を行い、私どもとも意見交換したところでございます。こうした問題はですね、我が国の権利者にも大変多大な影響を与えるものでございまして、今後の展開にも、権利者の中には不満や懸念を表明しておられる方もおりますので、文化庁と致しましても、注視して見守っているというところでございます。

○友近委員 はい、ありがとうございます。アメリカのですね、集団訴訟、クラスアクションということによって、日本の著作権者にもかなり多大の影響が及ぶ恐れがあるということだと思いますけれども、えー、文化庁においてですね、本当に適切な対応を取っていかなければならない、早急に対応を取らなくてはならないことだと思っています。5月8日の衆議院の文部科学委員会での中で、大臣が、改めて今の件はもう一度検討して行きたいと、そして、高塩文化庁次長の方からは、必要に応じて2国間協議の場ということがあり、特にアメリカとの間では、日米間の著作権協議というのがあるので、そういう場において、この問題をアメリカ政府としてどういう風に考えるのかということの、問題提起を行って行きたいという風に答弁されております。つまり、5月の8日の時点では、特段の具体的な行動を取っておられないという風に聞こえておりますけれども、つい先日、日本と中国が、偽物のブランド品の取り締まりを強化するということで、知的財産保護について協議する場を設けました。中国との閣僚級階段で、知的財産について政府間で定期協議をするということで合意したということが報道されておりますけれども、大臣、著作権に関してもですね、政府間で新たなルール作りを進めて、国単位で解決して行かなければならないという主張があると思いますが、先ほど紹介した5月8日の答弁から約1ヶ月以上が経過していますけれども、その間に、文化庁としてどのような対応を行ったかご説明お願いします。

○高塩次長 えー、グーグルの問題につきましては、5月の8日に衆議院の文部科学委員会の方で質問がございました。それ以降、私どもと致しましては、その際申し上げましたように、米国政府、それからヨーロッパ、アジアの政府関係者との随時の対話というものを行いまして、情報の収集に努めているところでございます。概ね各国の政府としては、政府としての対応ということについては、静観というのが多いのでございますけれども、その間、先ほど申し上げましたように、訴訟の原告団でございます全米作家協会が来日致しまして、私どもと直接の会談もするということで、それを踏まえて、日本の文芸家協会の対応も若干変わったという風に考えております。文化庁と致しましては、そうしたいろいろな国際間の話し合いとともにですね、今後、このですね、書籍のデジタル化の進展ということがともなうことは、我が国の活字文化、出版文化、それから、国際的な著作権のあり方にも深く関わる問題であるという風に認識致しておりまして、文化庁と致しましては、まず、庁内の関係課によります検討会を設置致しまして、今後国内で同様の事業が行われる場合の課題、書籍のインターネット上の流通が、我が国の活字文化、出版文化に与える影響などについて、幅広い観点から検討を行うということを開始致したところでございまして、こうした国際的な動きと合わせて、今後、国内でもこうしたサービスが始まることを前提にですね、適切に対応して参りたいと考えております。

○友近委員 現段階では特段対応を取っていないという風にも感じられますけれども、大臣のご所見をお伺いしたいと思います。

○塩谷大臣 著作物については、国境を越えて利用されているため、これまでも、日米、今も答弁あったように、日米を含む世界各国と、様々な多国間あるいは2国間の協定を結んで、互いに著作物の保護に努めて来たところでございます。本件につきましては、米国の訴訟制度によって、米国で保護を受ける著作物にかかわる世界中の権利者に効力が及んだものでありまして、国際的な視野に立って、著作物の保護のあり方を検討するということで、大変重要性を改めて国内外に認識させた事案ととらえておる訳でございます。我が国としては、こうした状況を踏まえてですね、米国を含む関係国との2国間あるいは多国間の協議の場等において、国際的な著作物の保護の一層の強化に向けて、議論に積極的に努めて参りたいと思っているところでございます。

○友近委員 はい、ありがとうございました。えー、あまり積極的な答弁は得られなかったという風に感じておりますけれども、えー、国会図書館がですね、デジタル化する、そして、グーグルもデジタル化して行くということで、今の議論の中で、皆さんもお感じになられているかと思いますけれども、使用する方としては、図書館であっても、グーグルであっても、インターネットで見るのは同じことだという風に思います。ただ、インターネットを活用した様々な独創的な取り組みを企業が行うということは、日本でも積極的に推進して行かなくてはならないと、一方では、巨大な電子図書館を作る試みを、外国の1私企業に任せてしまう、言い方を変えれば、営利企業による知の独占という風にも言えますので、我が国の健全な文化の発展という面からも懸念を持っているのも事実であります。えー、もう長尾館長等はご存じの通り、ヨーロッパでは、欧州委員会の主導でですね、ヨーロピアーナという電子図書館の構想が構築され進められていると聞きますが、この取り組みは、グーグルブック検索への危機感から始められたという風にもお伺いしております。グーグルの取り組みというのは、世界中の書籍に含まれた人類の叡智を検索可能にしようとする壮大な取り組みであるという風に認識しております。ただ、一方でですね、一般の読者に便利になるのも事実です。そして、絶版になった本が、また日の目を浴びる、新たな収入源を生むという可能性もあるというのも、また事実だと思います。その一方で、利用者の利便性に片寄りすぎてしまえば、権利者の利益が十分に還元されずに、出版界全体の縮小につながる恐れがあるという、非常にデリケートな問題であるという風にも思いますけれども、先ほど申しました、長尾館長にご答弁頂きたいんですが、グーグル社の取り組みについての評価と、グーグルと国会図書館の目指す方向の違い、対比について、ご説明願いたいと思います。

○長尾館長 今仰いましたように、グーグル社は、世界中の情報を整理して、世界中の全ての人の利用に供するという、非常に壮大な目標を立てておりまして、利便性の高い検索サービスも既に提供しているところでございまして、私ども国立国会図書館におきましても見習うべき点は多いと考えております。ただ、ご指摘にもありますように、グーグル社は民間企業でありまして、事業の継続性や安定性の面で一定の制約があるものと思われますし、また、ご指摘のありましたように、1企業が情報を独占することに結果的になるという危険性がございまして、これについては大きな問題であるという風に認識しているところでございます。日本におきましては、日本の文化財としての出版活動、これをしっかり守っていくというのが、日本としてやるべきことだと私は思っておりまして、国立国会図書館はそうしたことも含めてデジタル化をして行きたいという風に思っておりますけれども、私どもは、先ほどご説明がありましたように、まずは、出版物の長期の保存ということを目的としたデジタル化でございまして、それをどういう風に利用に供するかということにつきましては、権利者と良く話し合いの上、お互いに納得できる形でやれるように努力して行きたいという風に思っている訳でございます。

○友近委員 ありがとうございます。それでは少し具体的なことをお伺いしたいと思います。館長の方から、今資料を保存するんだということを言われましたけれども、デジタル化した資料を、公共の図書館へ送信することの実現性の可能性であります。図書館に来た方が、本で見るのか、デジタルで見るのか、対して、さほど利便性を考えれば変わらないことだと思いますけれども、これを広く一般の有権者、失礼、利用者ですね、利用者に向けてインターネット送信するには、現段階では、著作権法上のハードルが高いんだと思いますけれども、そこで、利用者から、先ほど館長の構想の中で言われました、料金を徴収するという風になりますと、国立図書館の無料の原則ということにも絡むために、しばらく時間がかかるのではないかなーという風に感じております。えー、そこでなんですけれども、国会図書館が全国の公共図書館から要請が来た場合にですね、デジタル資料を提供して、それぞれの公共図書館で、その資料を館内で利用するのであれば、無料の原則を維持したまま、資料のさらなる有効活用ができるのではないかなあと考えますけれども、その点についてご答弁お願いします。

○長尾館長 はい、あのー、今ご指摘のありましたように、私ども現時点では公共図書館に対して、えー、デジタル資料を送信することは、著作権法上できないという状況でございまして、これをまあ何とかできるようにしたいと、できないかということを思っておる訳でございますが、これにつきましては、著作者あるいは出版社と良く話し合いをした上で、了解を取り、そして、公衆送信権によって妨げられないような形で送ると、そして、日本中隅々の方々が公共図書館に来れば、国会図書館のデジタル資料が見れるという形に持って行きたいという風に思っておりますが、これにつきましては、なかなか協議に関して時間がかかるんじゃないかという風に思っているところでございますし、また、この資料4にございますようなモデルを上手く構築するにも、なかなか時間がかかると、国会図書館としましては、あくまでも利用に関しては只で、無料で提供するというのが大原則でございますから、利用料金というようなものは、非常に低額のものとして、それが外部にありますセンターがそれの処理をして、国会図書館としてはあくまでも無料原則を守るという形のモデルを何とかして推進して、実現して行きたいなと思っている訳でございます。

○友近委員 はい、ありがとうございます。文化庁のですね、今後国会図書館における電子データのインターネット送信について、どのような検討を行う予定があるのか、文化庁としての見解を示して下さい。

○高塩次長 この電子化された資料をどういう形で利用に持って行くかということにつきましては、その具体的な内容につきましては、ただ今長尾館長からもお話ございましたように、やはり、図書館側と、それから著作権者、出版社、これらの話し合いというのが大変重要でございまして、先ほど申し上げましたけれども、現在、国会図書館におきまして、資料デジタル化及び利用に関する関係者協議会というのが設けられておりまして、文化庁としましても、オブザーバーとして今参加をしているところでございます。その結果、この3月には、第1次合意というのがまとまったという風に承知を致しておりますけれども、私どもとしては、そういった話し合いというものの検討状況を見守っていくという立場にあるということをご理解賜りたいと思います。

○友近委員 ありがとうございます。先ほど申しましたグーグルの取り組みというのは日本にはまだ無い、アメリカのフェアユース規定ということを、公正な利用であれば、権利者の許諾無しに著作物を利用できるというフェアユース規定でありますけれども、その下に実施されていると認識しておりますけれども、日本でもですね、知的財産戦略本部の専門調査会が、日本版フェアユースの導入を答申して、文化庁の文化審議会で、導入の是非に向けた本格的な議論が開始されようとしていると思います。仮に、フェアユース規定が導入された場合、我が国の大学図書館がグーグルブック検索に参加して、権利者の許諾無く、書籍のデジタル化と開を行う、現在米国で生じている問題と同様の問題が生じる可能性があると思いますけれども、そこで大臣にお伺いしたいんですが、日本版フェアユース規定を導入することの是非について大臣の率直な見解をお伺いしたいと思います。

○塩谷大臣 えー、いわゆる日本版フェアユース規定につきましては、いろんな意見があって、積極的に導入する、あるいは、慎重にすべきだということで、現在様々な意見があるということを承知しておりまして、私どもとしましては、文化審議会著作権分科会において、具体的な議論を開始したところでございます。関係者の見解に相違がある論点や、重要な論点が、多々ある訳でございまして、幅広く論点を整理した上で、慎重かつ多角的に検討を進めていく必要があると考えておりまして、また、その検討の状況をまずは見守って行きたいと思っております。

○友近委員 えー、このグーグルの和解案ですけれども、今年の10月7日に公聴会を経た上でですね、アメリカ連邦裁判所の最終判断が下りるいう風に思いますけれども、是非とも政府としても、国家間の意思として、協議をして頂きたいと思います。デジタル化情報というのがですね、大臣、国境を越えて流通する時代のルール作りのモデルになる今が大きな分岐点だという風に感じておりますので、是非ともご関心をお持ちになってですね、取り組みを進めて頂きたいという風に思います。えー、それでは時間が少ししか無いんですけれども、ジャスラックのことについて今日お伺いしたかったんですが、理事長の年間報酬が2600万円とか、あと、評議会のですね、出席した時の手当が、議長になれば6万円とか、1日3万5千円とか、そういったこともお伺いしたかったんですけれども、本日は割愛させて頂きたいという風に思います。今日はグーグルのことと図書館のことについて縷々質問させて頂きましたけれども、やはり大切なのは、公共の利益と権利者保護のバランスということが非常に大切になって来ると思いますけれども、長尾館長には、是非とも大いに頑張って頂きたいという風に思います。えー、大臣、私もスポーツの世界から政治の世界にピッチを移しまして、来月で2年が建とうとしておりますけれども、1つ感じたことがあります。先ほど冒頭にですね、辻井さんのピアノの話をしましたけれども、政治というのは楽器のアコーディオンに似たところがあるなあと、いろんな利害関係のある中で、その蛇腹を閉じたり開いたりしながら、綺麗な音楽を奏でないといけないと、ですけれども、その蛇腹は今閉じっぱなしで、不協和音が鳴るばかりじゃないかなあという風に感じております。そして、親と子供が命を奪い合って、そして、家族を愛せない子に地域を愛せないと思いますし、地域を愛せない子にましてや日本も愛せないのじゃないかなあという風に思います。昨日の横浜スタジアムでも、改めてスポーツの良さ、文化の良さというものを再認識させて頂きました。自民党の皆さんが綺麗な音楽を奏でられないというのであれば、是非とも政権交代をして、民主党・新緑会・国民新・日本の皆さんで、綺麗な音楽を奏でさせて頂くことをお約束申し上げまして、私の質問を終わります。

○中川委員長 那谷屋正義君。

○那谷屋正義委員(民主党・新緑会・国民新・日本・比例)おはようございます。民主党・新緑会・国民新・日本の那谷屋正義でございます。今日は80分というお時間を頂きましたので、まず法案に関する質問の前にですね、まだいまだに感染が広がっている傾向の新型インフルエンザにかかわって、先の予算委員会におきましてもですね、それについて何らかの補正予算で対応するべきではないかという議論がされたところだと思っておりますけれども、あのー、特に、この今ですね、修学旅行ということで、これはもうご案内だと思いますけれども、多くの学校が、このインフルエンザに感染を懸念してですね、キャンセルをする等々が起こる中で、そのキャンセル料が発生したりしている訳であります。で、文科省としては、このキャンセル料については、地域活性化経済危機対策臨時交付金を活用して、そうしたところを補うという風な方針のようでございますけれども、しかし、これだけではですね、決して100%の解決策とは言えないのではないかという風に思うところであります。まず、この地域活性化経済危機対策臨時交付金というものが、運用されるに当たっては、2つのハードルがあると、1つ目は、まず自治体内でこの臨時交付金の対象事業として申請してもらうための合意形成が無ければならないということ、それから、さらにはですね、最終的には内閣府が承認しなければならないという、この2つのハードル、そしてその手間、今後こういったものが出てくる訳であります。総額1兆円ということになっておりますけれども、これは多いようでありますけれども、各省庁の思惑等も、背景等も見え隠れする自治体間の分捕り合戦という風なことが始まった途端にですね、キャンセル料といった後処理の案件については、片隅に追いやられてしまう危険性が大ではないかと思うところであります。修学旅行の意義というものについては、もう大臣も十分認識されていると思いますけれども、この子供達の思い、願いを大切にしたいということであるならばですね、臨時交付金に仮にあぶれたキャンセル料というものがある場合には、出てきた場合には、人任せでは無く初中局の予算を節減してでもですね、この文科省の責任において面倒を見るということを是非ご約束をして頂けないかという風に思うところであります。とりわけ、今回少しこう収束とか何とかという話にもなっていますけれども、この秋になると、この問題がさらに、ウィルスそのものも何かこう悪性を増すような話になっていますし、秋にも修学旅行が実は多くございますから、そういう意味では、この問題は、ここで終わりでは無くて、この秋以降に非常に重要な、深刻な課題になってくると思いますので、是非、大臣のご決意をお伺いしたいと思います。

○塩谷大臣 えー、新型インフルエンザの影響によりまして、修学旅行等が中止あるいは延期になったということで、最近ではある程度収束して、例えば、中止した場合でも、また改めて計画をして実施するというような傾向が見らている訳でございまして、是非、子供達の気持ちからすれば、できるだけ修学旅行を実施して頂くように、我々としては指導しているところでございます。まあ、しかしながら、実際には、一部キャンセル料が発生しておりまして、今ご指摘のありましたように、このキャンセル料については、地域活性化の経済対策臨時交付金で活用するようにということで周知しているところでございます。現在のところ、これにあふれてという実例はまだ上がって来ていませんが、ご指摘の通り、今後、また、インフルエンザが流行したりして、この修学旅行に影響があった場合には、そういうこともある可能性がある訳でございまして、そういう場合には、しっかりと我々としても対応が必要になって来ると思っておりますので、しっかり検討して参りたいと考えております。

○那谷屋委員 えーと、検討するという風に言って頂いたのは少し前進かと思いますけれども、いや必ず対応するようにしますという風に言って頂けると、スパッとこの質問終わりたかったなというところでございますけれども、はい、よろしくお願い致します。それではですね、この本法案の改正点の3つの柱の中の3本目にですね、障害者の情報利用の機会の確保を図るということが1つあります。そういう意味では、今日は折角の機会ですから、こうした障害者の権利保障、あるいは、それだけでなくて、いわゆるインクルーシブな世界、教育、こういったものに目をですね、少しこう広げて、ご質問をさせて頂きたいという風に思います。まず、寄宿舎という問題についてですね、寄宿舎が置かれている状況について、まず質問をして行きたいという風に思います。特別支援学級にかかる寄宿舎問題がかかえる問題の課題解決について、現実に基づいて確認するためにですね、今日は皆様のお手元に配らせて頂いた資料1と2をまずご覧頂きたいと思いますが、これは文科省にご努力を頂いて関連データを整理して頂いたものであります。ここから見えてくるのは、例えば、2005年ですけれども、定数が5077、07年度は5023、それに対して正規の数が05年度は3928、07年度は3829、正規の割合が83.2%が05年度、07年度が81.6%ということで、まあ、低減傾向にある訳であります。で、この雇用形態というのを見て頂くとお分かりになるかと思いますが、05年度で言うと、東京、富山はその100%が実数に占める正規職員の割合になっていますが、一方で、静岡を見るとですね、実数に占める正規職員の割合が、57.7%、07年度を見ますと、東京は相変わらず100%という風になっていますが、佐賀も100%、この佐賀に至っては、定数は117のところを、実数156ということで、そして、その実数に占める正規職員の割合が100%という大変熱心に取り組まれているところもあるかと思えば、福島の方ではですね、実数に占める正規職員の割合が50.9%と、このように都道府県を見てもですね、非常にばらつきがあるということであります。この実態はですね、やはりその寄宿舎という物の重要性がいろいろと認識されている訳でありますけれども、その重要性を考えた時に、本当にこういう風な状況のままで良いのかということが疑問になって来る訳であります。この寄宿舎のあり方について、地方の実勢に任せたいという、いわゆる待ちの姿勢であってはですね、世界的な潮流になっています、共に生き、共に学び育つインクルーシブ教育の推進というのは、なかなか現実のものとなって来ないのではないかという風に思いますけれども、文科省はどのように認識されているかお訊ねをしたいと思います。

○金森越哉初等中等教育局長 特別指導学校の、寄宿舎指導員の内、正規職員の占める割合は、平成17年度に比べまして、平成19年度は減少しておりますが、その主な理由と致しましては、寄宿舎に入る児童・生徒数が年々減少傾向にございまして、今後の動向が不透明なため、正規職員の新規採用を控えていることによると聞いております。また、都道府県による正規職員の割合の差異は、寄宿舎入居生徒・児童数の現状や動向等の違いによるものと認識を致しております。こうした寄宿舎指導員を実際にどのように配置するかは、都道府県教育委員会の判断によるところではございますが、文部科学省と致しましては、寄宿舎における児童・生徒の入居状況を踏まえ、これら児童・生徒の日常生活上の世話や生活指導がしっかりと行われるよう、各自治体において、寄宿舎指導員を適切に配置すべきものと考えているところでございます。

○那谷屋委員 えーと、今、入居希望者の減少という話がありましたけれども、確かにそういったこともあるかも知れませんが、しかしですね、逆に言うと、そこに入舎したくても、そこに現実に指導員が配置されていないがために、もう手一杯だということで、定員が空いているにもかかわらず、入れないという例も実はあるんで、そういうデータを文科省はご存じなのかどうかということが、ちょっと今のお答えを聞いていて、疑問に思った訳であります。必ずしも少ないからどうのこうのということでは無くてですね、やはり本来の実数に対して、やっぱりこの正規職員でない人達がこんなに沢山いるところもあれば、そうでないところもあると、このばらつきそのものは、やはり誰が見ても、このままでは放置できないなという風な認識に立つのが、私は普通の見方だろうと思います。それは、入居者数がどうのこうのという言い方は、あんまり聞きたくないお話だなという風に思いますけれども、あのー、1つですね、この寄宿舎に対して、学校教育法78条にですね、特別支援学校には寄宿舎を設けなければならないという風になっています。で、まー、ただし書き規定というのが、ありますけれども、それはそれとしてですね、この寄宿舎の設置目的というものを考えた時に、単に遠隔地の子供の通学保証というものに限定されている訳ではないという風に私は認識しておりますが、それで間違いないかどうか、イエスかノーかだけでお願い致します。

○金森局長 ご指摘のように、寄宿舎は入舎した障害のある児童・生徒が、毎日の生活を営みながら、生活のリズムを作るなど、生活基盤を整えることができ、これら児童・生徒の自立と社会参加を図る上で一定の役割を果たしているものと考えております。

○那谷屋委員 この役割についてはもう少し、後ほどお話したいと思いますけれども、そうであるならば、東京都に見られるような通学保証に限定した寄宿舎利用を制限させるやり方というのは、やはりこの法に反するというか、法の理念を踏まえたものではないという風に思う訳であります。また、先ほど言いましたけれども、入舎希望者の減少を理由に、統廃合も進められている訳でありますけれども、利用者が定員に満たない寄宿舎でも、指導員の人手が足りずに入舎を制限しているところもあります。開設時から1度も見直されない定員を基準に議論をするのはおかしいという識者の説得的な疑問もある訳でありますけれども、これについてどのようにお考えでしょうか。

○金森局長 寄宿舎は、基本的には通学が困難な児童・生徒のために特別支援学校の設置者である自治体の判断と責任において設置するものでございます。例えば、こうした寄宿舎を統廃合するかにつきましても、設置者である自治体において、特別支援学校の設置状況や児童・生徒の通学状況などを考慮しつつ、適切に判断されるべきものと考えております。私どもと致しましては、寄宿舎の統廃合などによって、特別支援学校に在籍する児童・生徒の通学が困難となることのないよう、それぞれの設置者において、その措置が講じられることが重要と考えているところでございます。

○那谷屋委員 そこまでは大体認識としては共有できるかなと思うんですが、実は、あのー、高等部の寄宿舎においてはですね、卒業後に自らの居住地域で生活して行くためのスキルや人間関係の形成のためにですね、指導員の方が、銀行、郵便局の使い方、あるいは、社会福祉協議会や支援機関、福祉機関などの利用方法の習熟などなどですね、地域との繋ぎ役というものを果たしているケースがございます。多くの寄宿舎の中ではですね、自立生活体験の一環として、水道、ガスコンロ、炊事用具、これは包丁とかまな板とか、これは私も指導頂かなくてはならないかも知れませんが、包丁とかまな板、鍋、食器等、冷蔵庫等が備えられた部屋でですね、一人で生活するために必要な実践の積み重ねなど、卒業後の暮らしを想定した支援も行っています。このようなですね、日々の暮らしを営むために実際に役立つ、移行支援等も大きな役割を占める高等部の寄宿舎機能の充実強化というものが今求められているのではないかという風に思うところでありますけれども、いかがでしょうか。

○金森局長 寄宿舎は、入舎する児童・生徒の自立と社会参加を図る上で一定の役割を果たしており、特に、ご指摘のございましたように、特別支援学校の高等部の寄宿舎では、卒業後の社会生活への円滑な移行に向けた指導が行われることが期待されているところでございます。また、一部の寄宿舎におきましては、生活や就労などに問題を抱えた卒業生のために、卒業後の支援を行っている事例もございます。もうした寄宿舎機能の充実強化を含め、具体的な寄宿舎のあり方につきましては、設置者である自治体において、児童・生徒の障害の状況や地域の特性などを踏まえ、適切にご判断頂くべき事柄でございますが、卒業後の相談・支援につきましては、在籍する生徒・児童への指導が十分に確保されることを前提として行われるべきものと考えております。文部科学省と致しましては、各自治体において、在籍者のニーズに応じ、寄宿舎の充実強化が必要な場合には、例えば、施設設備の整備補助などを通じて、適切に支援して参りたいと考えているところでございます。

○那谷屋委員 是非適切に、前向きにですね、支援をして頂きたいという風に思うところであります。あの、2006年の4月の本委員会でですね、同僚の神本委員が、寄宿舎指導員の役割について、やはり質問をされました。その際、特別支援学校の転換について、こういった教員以外の方が、様々な先端的機能の発揮のために、いろいろな役割を担って行こうということを、私どもも期待していると、当時の、銭谷初中局長でありますけれども、答弁をされております。で、まあ、地域の幼稚園、保育所、小学校、中学校、そして高校のそれぞれの成長段階で、種々の課題を抱える子供達の生活面の相談支援に関して、この寄宿舎指導員が、貴重な、そして必要な役割を担ってきたという実績がございます。例えば、昼夜逆転といった生活の立て直しですとか、家族環境の立て直しのために、一時的に寄宿舎を利用する子供達へのサポート、あるいは、規則正しい生活や生活場面での集団ルールなどを学ぶためにですね、寄宿舎を利用するケースもあり、指導員は、文字通り、24時間対応に近い形でですね、ねばり強く、接して来られています。これらの取り組みというのは、特別支援地域連絡協議会からも高い評価を得ているところでありますけれども、そして、さらにですね、また今後も、指導員の方にすれば、これからも、様々な課題に対応して行くために、日々、努力、創意工夫を重ねられて行く、そういうつもりもあるということであります。こうした認識をですね、共有して頂けるかどうかお訊ねしたいと思います。

○金森局長 学校教育法上、寄宿舎指導員は、寄宿舎における、幼児・児童・生徒の日常生活上の世話や、生活指導に従事することとされております。お話がございましたように、具体的には、例えば、入舎した生徒の、日常的な食事や入浴、洗濯などに対する支援を通じて、基本的な生活技術を身につけさせたり、掃除などを通じて協力する態度を養ったりする他、日用品を管理させることを通じて、金銭を適切に扱う能力を養う指導などが行われております。このような寄宿舎指導員が行ってきた、日常生活上の世話や生活指導は、児童・生徒が毎日の生活を営みながら、生活のリズムを作るなど、生活の基盤を整え、自立し、社会参加をする力を培う上で重要な役割を果たしてきたものと私どもも考えているところでございます。

○那谷屋委員 まあ、今のようないわゆる寄宿舎の役割、そして指導員の方達の行うべきことというか、やって頂くことについて、ほぼ認識は一致するんですけれども、先ほどお話がありましたように、必要とあれば、文科省も、必要な支援をということがありました、例えば、快適な居住環境の保証という風な観点で行きますと、例えば、今ですね、1室4人部屋という風な状況がございます。これは決してですね、良い環境という風にはならないし、そういう意味では、ここのところはきちっと環境整備をして行かなければならないのではないかという風に思うんですけれども、こうした環境整備ということについて、もう少し決意を聞かせて頂けたらと思います。

○布村幸彦文部科学省文教施設企画部長 お訊ねの寄宿舎の居住環境につきましては、計画設計上の留意事項というものを文部科学省で定めております。具体的には、特別学校施設整備指針というものでございますが、その中で、舎室は、利用する幼児・児童・生徒の障害の状態や特性、また利用人数等に応じた規模とすることということを定め、また、複数人で1室とする場合には、発達段階などに応じまして、個人的な利用のできるスペースを適宜計画することが望ましいという形で定めさせて頂いております。これらを踏まえて、基本的に都道府県におきまして、寄宿舎の居室の利用形態を定められているという実態で、文部科学省におきまして、寄宿舎の居室について具体的に1室に何名とするという定め方はしていないという次第でございます。また、舎室の利用人数を変更されて、より快適な居住環境を確保するために必要となる、寄宿舎の増築あるいは大規模な改造の事業が行われる際には、国として、国庫補助制度を設けているところでございます。先生おっしゃられましたように、寄宿舎につきましては、子供達の日常生活の自立を促す環境として、良好な環条件を確保することは重要な課題であると受け止めております。今後とも、各地方公共団体の要望に応じまして、寄宿舎の整備に対しまして、必要な支援に努めて参りたいと考えております。

○那谷屋委員 あのー、公共団体からのご要望にというような話だったかと思いますけれども、それも大事ですけども、それが基本なんでしょうけれども、是非、現場に行って頂いて、その、まあ、ある意味、これではなというところが必ず出てきます。私も静岡の方見に行って参りましたけれども、実際に、子供達が授業が終わって、部屋に行った時に、私の家みたいに、ランドセル、かばんがあっちこっちにほっぽっていなくて、きちっとかけてあると、そういうところがきちっとしているんですけれども、しかし、今言ったように4人で1つ、1つと言っても広かったらいいんですけれども、そうじゃない、ある意味、申し訳ないけれどもウナギの寝床のようなところに4人いるとか、何か寝台列車を思い出すような、そういう風な状況になっているということがありますので、まあ、そういう意味では、折角のそういった思いを遂げるということであれば、是非、その環境整備に力を前向きにですね、自ら受け身だけではなくて、やって頂きたいという風に思います。もう一つですね、この寄宿舎指導員の現状でありますけれども、正規職員の非正規職員への置き換えとか、退職者の不補充とかいうことがあるんです、退職者の不補充ということがあります。えー、そういう意味では、職場の構成が、いわゆる逆ピラミッド化という風になっておりまして、えー、石川県では、もしも今年、今年度その退職者補充が実施されないと19年間連続放置されたままという風な例もございます。一方で、1つ隣の新潟県では補充が完璧に行われているというような面白いことが起こっている訳ですけれども、いずれにしてもですね、この寄宿舎指導員が担う役割の重要性というものをしっかり位置づけて、定数基準の見直しも含めた必要な改善を早急に行うべきだと考えますけれども、それについてどのようにお考えになりますか。

○塩谷大臣 今の寄宿舎のあり方、あるいは、指導員の定数の問題等、資料等を提示して頂いた各県でかなりばらつきがあるということも踏まえてですね、我々としては、これまでもですね、教職員の定数の改善計画によって、寄宿舎の寄宿する生徒への指導の充実や、小規模の寄宿舎における寄宿舎指導員の勤務条件の改善を図るための、定数改善を行って来たところでございますが、あのー、対応を、しっかり状況を踏まえて、必要な定数の確保に今後とも努めて参りたいと考えております。まあ、あの、静岡県の例とか、いろいろと見て頂いたり、そういったことも含めてですね、今後、必要な対応をして行く必要があるかと思っております。

○那谷屋委員 是非、お願いをしたいと思います。今の大臣のお話はですね、現場の方々に勇気と希望が持てる、そんなお答えになれば、それが実現すればそういう風になる訳で、よろしくお願いいたします。それからもう1つですね、拡大教科書問題について、ご質問をして行きたいという風に思います。これも、理事会の方でお許しを頂いてですね、私が文科省の方に泣いて頼んで、この委員会で皆さんに回覧をさせて下さいということをお願いをしたものでございます。で、今回覧させて頂いていますので、是非ご覧頂ければという風に思いますけれども、えーと昨年ですね、議員立法によって、全会一致で、教科書バリアフリー法というのが成立致しました。教科書発行者自らが拡大教科書を発行することが、まあ義務では無くて、一応努力義務として盛り込まれた訳であります。この法律は、今年度から使用される教科書に適用されることになっている訳でありますけれども、義務教育の検定教科書427点の内、新たに出版された拡大教科書は85点に止まり、これまでに出版されていた69点と合わせるとですね、154点ということで、427点中の154点ということで、全体の約35、6%という風なことになっています。で、小中学校の通常学級に通う弱視の子供達は05年度で約1739人、これは、いろいろと見てもらって申し訳ないんですが、お配りしました資料2の方にも載ってございます。資料2の下の方ですね、1739人、で、この年度にですね、拡大教科書を実際に手にできた子供はこの内の604人に過ぎないということでございます。約3分の1強ということでしょうか。07年度の、給与人数は618人とほぼ横ばいの状態で推移している訳であります。拡大教科書の約8割、これは真ん中の円グラフを見て頂ければと思いますが、このピンク色のものがボランティア団体が作られているということで、81%、そして、民間発行者が13%、教科書発行者が6%という、こういう風な状況になっています。で、正にですね、ボランティアの方々の骨身を削るような日々が費やされても、なおこういう現状になっているということであります。えーと、大臣のお手元に今あるんでしょうか、国語の教科書で、手書きの、これはボランティアの方々が作られた教科書ですので、手書きであります。これはですね、あの、字がうまいなーということもありますけれども、本当に何て言うか、見ただけで心が安らぐ、そういう教科書になっています。で、あれはあの、通常の教科書の3分の1になってまして、実際には、教科書1冊分があれの3倍の厚さになるという、そういう風なものになっておりますけれども、それだけ、非常に時間と手間がかかっている訳であります。そういう方達に頼っているのが、8割強ということになっている訳であります。教科書バリアフリー法というのが折角できたにもかかわらずですね、その効力というのがまだまだだなあと思う訳でありますけれども、その原因は一体どんなところにあるのか、お考えをお聞かせ頂ければと思います。

○金森局長 障害のある児童及び生徒のための教科用図書等の普及の促進等に関する法律の成立を受けまして、できるだけ多くの多くの弱視児童・生徒が利用できる拡大教科書の標準規格を文部科学省として策定、公表し、これを発行を教科書発行者などに周知することによって、拡大教科書の発行を促しているところでございます。こうした取り組みによりまして、ご指摘ございましたように、平成21年度から、新たに85点の小中学校の拡大教科書が発行され、教科書会社から発行された拡大教科書は、義務教育段階で、計154点となったところでございます。ただ、一方で、小中学校のいわゆる5教科、国語、社会、算数、理科、英語といった5教科につきましても、まだ1部発行者の教科書については、拡大教科書が発行されてないものがございますし、図画工作や美術などの教科については作成がなされておられないのが実情でございます。このことにつきましては、拡大教科書の標準規格の策定が昨年の12月でございまして、拡大教科書の製作にかかる編集レイアウトの変更や教科毎の特性のノウハウなどが、まだ教科書発行者に十分浸透していないことや、拡大教科書の作成には、相当な労力と時間が必要であることなどが、その原因として考えられるところでございます。

○那谷屋委員 えー、今、あの、拡大教科書の5教科について云々ということがありましたけれども、実は、図工とか美術とか主要教科以外の教科書で、発行に踏み切った会社は、いまだ出ずじまいという状況です。そして、高校の教科書についても、これまで1点の発行も無いままという、いわゆる不名誉なゼロ記録を更新しているという、そういう状況であります。で、まあ、いろんな理由があるんだろうという風に思いますけれども、やはりまず子供達の利益優先というものを先に考えるならばですね、作成に大きな困難が伴うからとか、あるいは、時間を食う割には利用者が少ないとかですね、いわゆる教科書発行者への配慮に重きを置くやり方というものは、そろそろ改めなくてはいけないという風に思う訳であります。まあ、確かに、昨年の12月からということで、期間が短いと、だから今後は展望されるのだという風な期待があるのかも知れませんが、しかし、その一方でですね、向こう1、2年、2、3年の間に、また新たな学習指導要領に基づく教科書が発行されると、どうせそこで変わるんであるならばというような考え方が仮に出てくるとすれば、これはとんでもないことで、それまでの1、2年、3年の間の子供達の学習の権利を妨げることになる訳でありますから、そういう意味ではですね、子供の権利条約第3条3でも、子供の利益が最先に考慮されるべきとうたっている訳ですので、是非、ここのところは、しっかりと取り組んでもらいたいと思いますけれども、もう一度お願い致します。

○金森局長 私どもと致しましては、教科書発行者による拡大教科書発行を促進致しますため、標準規格を策定し、教科書発行者への周知を行って来たところでございます。今後は、作成にかかるレイアウトの変更や各教科毎の特性など、拡大教科書作成のノウハウなどを伝える研修会などの開催を通じて、教科書発行者に対して、標準規格の主旨や内容をさらに周知して参りたいと考えております。また、教科書発行者による拡大教科書発行情報を、教育委員会や学校に一層周知する取り組みを行い、教科書発行者による拡大教科書の発行を促して行きたいと考えております。こうした取り組みにより、今後とも、教科書発行者による拡大教科書の発行を促進するための必要な措置を積極的に講じて参りたいと考えております。

○那谷屋委員 えー、冒頭申し上げましたけれども、教科書バリアフリー法の中でですね、あのー、努力義務になっているというところ、ここが実は私は大きなネックなんだろうという風に思う訳であります。これはもう完全に義務化するべきではないかというくらいに思う、しかし、今言われたように、様々な条件や問題もある中で、現段階では努力義務がやはり妥当なんだろうというの中の、法案の文なんだと思いますけれども、それでは、この問題は先に進んでいかないという風に思う訳であります。やはり現実に、例えば発行者側がどういうものをハードルと思っているのか、どういうことが問題になっていると思うのかという風なことについてですね、真剣に文科省の方としてですね、そこのところは解決に乗り出して行かなければいけないのだろうという風に思う訳であります。例えば、就学時期、健康診断の際に、これは多く入学前の秋頃、行われる訳ですけれども、対象となり得る子供達について、拡大教科書の必要性や要望等を、各設置者が把握をし、この時点で給与人数を確定し、そして、教科書発行者に通知すればですね、ある意味、十分な作成期間も保証できるし、作り損の弊害も最小限のものにできるのではないかと、こんな風に思う訳であります。ところで、そういう意味では、就学時検診ということは、新入生の需要予測しかできない訳ですから、このニーズというものは、そうは言うものの、中学卒業時までは活用できる訳でございます。そういう風な努力あるいは知恵を出し合う中でですね、子供達に必ず行き渡る方法を見つけるということ、この意欲が非常に大事ではないかと思います。なおですね、この就学時検診の問題について、学校現場ではですね、学校保健安全法の第11条で規定されている訳でありますけれども、障害のある子供達の差別・選別の場とならないよう取り組んでいることも、是非、この場で押さえておかなければならないという風に思うところであります。当事者、子供や保護者の要望、意向等を尊重し、具体的な準備等進めて行くことは学校現場に求められている対応という風に言えると思います。この観点からですね、拡大教科書についても、正確なニーズ把握のための機会として活用することも可能ではないかという風に1つの提言をしているところでありますけれども、いかがでしょうか。

○金森局長 拡大教科書の無償給与につきましては、障害のある児童及び生徒の教科用図書等の普及の促進等に関する法律に基づき、都道府県教育委員会から、拡大教科書の需要数の報告を受け、国が教科書発行者に対し、発行の種類や部数の通知をする仕組みとなっております。拡大教科書を無償給与するに当たりましては、ご指摘のように、必要とする児童・生徒のニーズを正確に把握することは重要なことでございまして、都道府県教育委員会等に対して様々な機会を通じて指導するなど、引き続き正確なニーズの把握に努めて参りたいと考えております。就学時の健康診断を活用することにつきましては、新入生についてのニーズを把握するための参考情報の1つとなり得ると考えられますが、児童・生徒のプライバシーに相応の配慮が求められますとともに、弱視の状態は就学後も変化する場合があることに十分留意する必要があると考えております。いずれに致しましても、拡大教科書のニーズの正確な把握のためには、学校、市町村、都道府県などが密に連携して、対応をして行くことが重要でございまして、引き続き指導を行って参りたいと存じます。

○那谷屋委員 えーと、仮に新学期を迎えてですね、不要になってしまった拡大教科書というのが発生した時にですね、それをどうするか、私は、その分は、文科省がですね、責任を持って買い取る仕組みを講じるべきではないかという風に、まあ、端的に言わせて頂きたいという風に思います。これが無駄であるというようなことには、決してならない、あるいは、言えないのではないかという風に思います。子供達の間に横たわる、このいわゆる格差、不平等、権利侵害を無くすための費用に無駄という概念が、私は、入り込む余地など皆無ではないかという風に思う訳であります。07年度の実績額は、約7600万円で、これも、お配りしました資料2をもう一度ご覧頂けれたらと思いますが、07年度は約7600万円です。で、これにかかわる給与人数の割合が、全体の3分の1強と致しますと、まあ、7600万円の3倍で考えればですね、2億円ちょっとということで事足りる計算になる訳であります。この買い取り料の導入を含めた、拡大教科書作成費確保に向けた決意をお聞かせ頂きたいと思います。

○塩谷大臣 あの、今日拡大教科書を拝見させて頂きまして、大変なボランティアの方の努力で素晴らしい教科書ができている、本当に嬉しく思う次第でございますが、実際はまだ3分の1程度ということで、しかしながら、07年度が7600万ということで、これをしっかり予算も取ると同時に、やはりこの手間が相当かかるということで、教科書発行会社に、私どもとしては、あのー、いろんな形で今努力を促しているところでございますので、確実に全ての生徒にですね、要望に応えることができるように、積極的に今後取り組んで参りたいと考えております。

○那谷屋委員 あの、今日は大臣の顔が神々しく見えるのは気のせいかどうか分かりませんが、力強い決意を今頂いたところだと思っております。ボランティア団体では、拡大教科書を作成した際にですね、マスターコピーを取っておきまして、同じ教科書の依頼があった場合は、マスターコピーを利用して拡大教科書を作成しているという風に伺っています。ところが、先ほど申し上げました、新学習指導要領になりますと、小学校では2011年度、中学校では2012年度からなる訳でありますが、全面実施にともなって、使用される新しい教科書については、マスターコピーがしていません。ボランティア団体は1からの作業となるために、非常に負担が大きくなってございます。是非ですね、必要な子供達全員に拡大教科書を届けるためには、遅くとも、新学習指導要領の全面実施の時点では、教科書発行者が、全ての教科書について拡大教科書を必ず発行せざるを得ない具体的政策誘導策をですね、準備すべきであることを、強く要望をしておきたいという風に思います。さらに、この、拡大教科書というか、教科書バリアフリー法では、視覚障害というか、弱視の方だけで無く、発達障害等も含め、障害のある児童・生徒全てが対象になっております。発達障害の児童・生徒には、例えば、マルチメディアデイジー化された教材が適しているという風にも言われています。今後、発達障害の子供達等に関する環境の充実に向けて、実際に効く有効的な施策等をどう講じて行こうと考えていらっしゃるのか、お考えをお聞かせ頂きたいと思います。

○金森局長 障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律、いわゆる教科書バリアフリー法では、発達障害のある児童・生徒が使用する教科用特定図書等の整備、充実を図るため、必要な調査研究を推進する旨が規定されております。これを踏まえ、文部科学省では、今年度から新たに、発達障害等の子供の障害特性に応じた教科書等のあり方や、これらの教育的効果などについて、実証研究を行うことと致しております。この調査研究事業では、先般、専門の委員による審査評価を経て、4つの団体を実施主体として選定したところでございまして、この内、東京大学先端科学技術研究センターでは、パソコンなどの支援技術を活用し、電子化された教材の作成、教育課程との関連性の研究や、協力校での実証研究を行うことと致しております。また、財団法人日本障害児リハビリテーション協会では、マルチメディアデイジー教材に主眼を置き、電子教科書の備えるべき機能の研究や、教科書の試作及び実証研究などを行うことと致しております。文部科学省と致しましては、これらの調査研究成果を踏まえ、発達障害のある児童・生徒が、教科学習における困難を克服し、障害の有無にかかわらず、十分な教育が受けることができるよう、教材等の学習環境の整備を進めて参りたいと考えてございます。

○那谷屋委員 是非お願いをしておきたいと思います。それでは、すいません、やっと法案に関しての質問に移らさせて頂きます。障害者の著作物利用にかかわる権利制限の見直しということで、第37条3項、そして、第37条の2等にうたわれている訳でございますけれども、まずですね、聴覚障害者にかかわる権利制限規定というのは、放送のリアルタイム字幕にこれまで限定されておりまして、非常に厳しいものであったという風に思う訳ですけれども、その理由をどのように捉えられていらっしゃるでしょうか。

○高塩次長 今、先生からご指摘ございましたように、現行の著作権法によります、障害者に関する権利制限規定につきましては、聴覚障害者の著作物利用につきましては、放送の音声部分のリアルタイムの字幕というものに限られている訳でございます。これを今後、いわゆるリアルタイム以外の異時と言いますか、違った時間帯でも、まあ、字幕送信というのを可能に致しますし、これまで対象とならなかった、映画なども対象にするということで、今回の法改正では、大幅な聴覚障害者に対します権利制限をかけるということになっているのでございます。何故、この字幕についての問題が、これまで難しかったかと言いますと、やはり、その映像の問題につきましては、この字幕つきの映像については、健常者の方でも利用できると、また、健常者に利用された場合には、その、権利者側、映画製作者、映画製作会社などにおきまして影響があるということから、相互間の協議というものに時間がかかるとともに、慎重な意見が多かったということでございますけれども、今回、そうした意見調整がなったということで、法改正を行うと、こういう経緯で至ったということでございます。

○那谷屋委員 えーと、まあ、とりあえず、そこのところは権利者側の部分から出て来た問題ということで認識しておきたいという風に思いますが、この複製等を行うことのできる主体というもの、政令で定める者という風になっておりますが、これは一体どこまで拡大をされるのか、第37条第3項、第37条の2第1号と第2号について、それぞれ別個に示して頂けたらという風に思います。例えば、公共図書館、学校図書館、大学図書館、NPO法人というものは主体となり得るのかどうか、よろしくお願いします。

○高塩次長 今回の改正案におきましては、第37条の3項及び第37条の2でございまして、それぞれ視覚障害者と聴覚障害者につきましての、複製が認められる主体につきまして、その範囲を拡大することでございます。現行法の規定はご存じのように、施設を設置していること、障害者の福祉の増大の促進を目的としていることの限定をかけておりますけれども、今回の法改正では、障害者福祉に関する事業を行う者という規定に改めまして、それらを広く対象とするということになっている訳でございます。現時点でですね、どういう形で、えー、これから指定をして行くかということでございますけれども、利用者確認の体制の整備状況なども、これから指定の際には勘案することになりますけれども、今先生からお話ございましたように、広く公共図書館や関係の事業を行っております民間法人などが新たな対象になり得るということを考えておりまして、今後、関係者の意見も聞きつつ、行って参りたいという風に考えております。先生、条文毎にというお話ございましたけれども、37条の3項は視覚障害者でございまして、現行では点字の図書館や大学図書館、美術大学その他特別支援学校の図書館などが認められておりますけれども、今後、これから、私どもで検討する訳ですけれども、これに加えて、公共図書館や録音図書の作成などを行っております社会福祉法人、NPO法人なども対象に入ってくるのではないかと思っております。また、37条の2の第1号、これは、字幕の公衆送信の方でございますけれども、これは現行の聴覚障害者の関連施設に加えまして、現行では、こうした事業を行っているのは、株式会社がございまして、それらについても対象となり得ると思っております。第2号の方では、これは映像の貸し出しの方でございますけれども、これについても、公共図書館や社会福祉法人というのが、新たに加わってくる可能性が高いと考えております。

○那谷屋委員 えーと、まあ、公共図書館はOKということですけれども、学校図書館や大学図書館も大丈夫と考えて良いのでしょうか。

○高塩次長 そういった録音図書の作成や、字幕の作成等を行っておって、そういった体制が整っていることが認められれば、可能性がございます。

○那谷屋委員 現行法で規定されております、聴覚障害者向けのですね、リアルタイム字幕の作成の実施主体というのは、実は、3法人に今限られているということでございまして、今後は政令で定めることという風になっていますけれども、現状とですね、同じ規模に止まってしまう可能性があるんではないかという風なこともございます。こうした疑問に対して、そしてまたですね、こういったことは、聴覚障害者のための、複製、字幕つきの映像を貸し出しを行うことのできる主体をですね、視覚障害者並にですね、拡大することが必要ではないかという風に思うところでありますけれども、いかがでしょうか。

○高塩次長 今先生おっしゃいましたように、これまでは聴覚障害者のための複製、映像貸し出しのための主体はあまり認められていなかった訳でございまして、新たな事業展開ということになりまして、それにつきましては、これまで指定されておる聴覚障害者の情報提供設備に加えまして、公共の図書館や、そういった事業を行っております民間法人というものが対象になって行くものだという風に考えております。

○那谷屋委員 今回の改正によってですね、その他視覚聴覚による表現の認識に障害がある者にまで対象が拡大されています。つまり、視覚、聴覚障害以外の方にというところまで、対象が拡大されている訳でありますが、発達障害や精神障害等の他の障害を、この著作権法上に明確に位置づけられなかったというか、位置づけなかった理由というのは何かあるんでしょうか。

○高塩次長 先生ご指摘のように、今回の法改正では、著作物を視覚障害者、聴覚障害者に限らず、視覚や聴覚により認識することに障害のある者であれば、広くですね、障害の種類を問わずに、権利制限の対象とするという内容でございます。具体的な規定のしぶりについてのご質問でございますけれども、今回は、典型的なものとして、視覚障害者や聴覚障害者を例として示しているものでございますけれども、これはあくまで例示でございまして、その他発達障害や精神的な障害者も含めまして、実際に認識に障害があれば広く規定の対象となるよう、特定の障害者を列挙する形にはしなかったところでございます。具体的に今の法文が、37条と37条の2と、視覚障害者と聴覚障害者と条文を分けて書いてございますけれども、発達障害者の方は双方にもまたがるという部分がございまして、私どもとしては、広く障害者の方を対象にすることから、条文上は明記をしておりませんけれども、そうした方達を今後対象にして行くという考えでございます。

○那谷屋委員 ありがとうございます。今言われたように、そのー、発達障害や精神障害を持つ方々がですね、通常の著作物を読むこと等が困難だったとしても、それは、聴覚による表現の認識の障害によるものなのか、視覚による表現の認識の障害によるものなのかということについては、なかなか定かではないという部分もあると、そういう意味では、またがる部分があるということは、もっともだろうと思うんですけれども、それではですね、本法律案の書きぶりといいますか、そういったもので、全ての障害者が、全てといってあまり大上段に構えて頂かなくても良いんですが、全ての障害者が自分に合った方式の著作物を入手することが可能となるのでしょうか。

○高塩次長 法律によりましても、障害の方達の障害に応じて、それに理解する方式により、そういう媒体を、著作物を提供できるということでございまして、一般的に広く、様々な障害者のための著作物が出されておりますけれども、それらを一律に決めるのでは無くて、個々の障害者の方々の状況を見てですね、そういったものを発行する可能性を広く捉えようという主旨で、今回の法改正の形にしているところでございます。

○那谷屋委員 是非今後もその主旨を活かしてお取り組みをお願いしたいと思います。それから、細かな話になるかも知れませんが、対象者の範囲の限定というのは、どのような方式によって行われるのかということが1つあります。例えばですね、現在、多くの点字図書館では、利用者の登録要件に、障害者手帳の所有を掲げているところが多くございます。しかしですね、対象者の範囲に、過度な制限がかかるということは、本法案の理念を損ねるのではないかと思う訳で、実際にはどういう風になるのか、お答え頂けたらと思います。

○高塩次長 今回の法律案では、視覚又は聴覚による表現の認識に障害を有する者の用に供するための複製等を認めるということでございまして、そのような障害を有する者を確認する方法につきましては、実際の障害者の必要性に応じて柔軟に対応したいということで、法律上の特段の要件を設けなかったところでございます。このため、その確認方法ということで、先生お話ございましたけれども、障害者手帳ですとか、医師の診断書ですとかというものも、1つの方法でございますけれども、実際に録音図書や字幕の作成を行おうとする事業主体が、個別に確認して行くということでございます。また、図書館と文芸家協会の間では、そういった協定、ガイドラインを結びまして、幅広く、そういう方達を対象とするという取り決めが行われておりますので、その状況に応じて柔軟に対応できるようにしたということでございます。

○那谷屋委員 そういったところの柔軟性も大事だろうと思いますので、よろしくこれからお取り組みをお願いしたいと思います。それから、先ほどから触れている、条文のところにですね、まあ、いわゆる対象者の拡大ということがうたわれている訳ですけれども、その両者に、ただし書きというのがございます。で、このただし書きが設けられている主旨をですね、端的にお答え頂ければと思います。

○高塩次長 今回の第37条第3項及び第37条の2のただし書きは、そのいわゆる権利者が、著作権者又は許諾を受けた者達がですね、自らですね、障害者にとって必要な形での著作物を提供する場合には、権利制限の適用をしないということでございます。これはですね、障害者への提供に当たりましては、本来、先ほど来、お話のございますような、福祉施設やボランティアの方達による支援で、障害者の方達のための様々な著作物が提供されておりますけれども、本来の姿として、権利者自らがですね、障害者に対応する形で著作物を提供するということが望ましいという考え方から、そうしたインセンティブを損なわないようにするために、権利制限を適用しないということで、権利者自らが、そういった障害者のための著作物を発行することを促すということでございまして、こうしたただし書きにつきましては、障害者の権利条約ですね、そうした理念にも合致するものであるという風に考えておるところでございます。

○那谷屋委員 まさに今言われた通りだろうと思うんですが、衆議院の審議においてですね、高塩文化庁次長は、音声カセットが発売されている場合には、第37条第3項に基づき、デイジー図書を作成することについて、単にテープよりデイジーの方が容量が大きいとか、そういった物理的な理由では無くて、真に障害者の方がそういった物でなくては、図書などを認識できないという理由が認められれば可能であるという風に答弁をされております。真に必要な理由というものを広く解釈すればですね、主に健常者向けに市販されているオーディオブックなどもただしし書き対象となることが懸念される訳でありますけれども、その部分についていかがでしょうか。

○高塩次長 あのー、権利者というか、著作権者の方が、自ら障害者のための著作物を発行するということが、これから促進を致します、ある訳でございますけれども、権利者の方で作成しますものは、市販のものということで、著作物の方式というものがある程度パターン化されたものになるということが予想される訳でございますけれども、やはり、個々の障害者を見た場合にですね、それぞれ市販されたものではではですね、やっぱりその著作物を理解できないと、こういった状況が当然あろうかと思う訳でございまして、そういう際には、それは市販されておるから、それはもう権利制限の対象外ということでは無くて、個々の状況に応じて、私どもは、その権利制限では無くて、ボランティア団体の方達などが新たにそういうものを作成するということが可能になるという余地を残したと言いますか、そういう考え方にもとづいたということでございます。従いましてですね、容量の方が衆議院の方でお話ございましたけれども、単になされている物と新たに作ろうというものが、言わば利便性の向上のようなものだけの観点のようなものについては対象になりませんけれども、真にですね、正に障害者のための情報格差の解消という観点から、著作物を作るというものであれば、認められて行くものだという風に考えているところでございます。

○那谷屋委員 はい、ありがとうございます。えー、この、本法律案が施行されましたらですね、録音図書が市販されているにもかかわらず、録音図書を作成してしまった場合、
著作権の侵害行為という風になってしまう訳であります。で、それを防止するためにですね、どのような録音図書が今発行されているのかということをですね、早期に周知することができるような手立てを講じなければならないという風に思う訳であります。例えば、出版社等に対して、発行している録音図書の一覧の公表を求めるお願いの文書を発出するとかですね、そういう風なことが考えられるのではないかと思うんですが、文化庁として、どのような対応を取る予定なのか、そして、ただし書きによって、障害者を巡る情報アクセスの状況が現状よりも悪化しないように、万全を期す必要性があるのではないかと思うところでありますけれども、いかがでしょうか。

○高塩次長 お話がございましたように、障害者用の図書が市販されている状況につきまして把握するということはですね、それをこれから作成しようという方達にとりましても、ただし書きがございますので、不測の権利侵害ということにならないというリスクをある程度軽減できるということがございますし、権利者側の方におきましてもですね、いわゆる無断複製の防止ということも可能になりますし、また自ら提供します著作物の購入促進にもつながる利点があると考えております。このため、権利者側におきましてですね、先生からご提言のございました、障害者用の市販図書の一覧の公表など、自ら積極的に行われることが、期待されるところでございまして、実際今でも、一部の権利者団体と図書館団体の間では、そうした情報提供が行われていると聞いておりますけれども、私ども文化庁と致しましては、こうした法案の成立後、こうした取り組みを参考に致しまして、こうした運用が円滑に行われるよう関係者の取り組みを支援して参りたいという風に考えております。

○那谷屋委員 えーと、大臣にお訊ねをしたいと思いますけれども、障害者権利条約の第30条第3項では、締約国は、国際法に従い、知的財産権を保護する法律が、障害者が文化的な作品を享受する機会を妨げる不当な又は差別的な障壁とならないことを確保するためのすべての適当な措置をとるとされています。障害者の情報アクセスの保障に向けて、政令の内容はもとよりですね、公共図書館や福祉施設における実際の運用についても、文化庁が責任を持って主導して行く必要性があるという風に思いますけれども、いかがでしょうか。

○塩谷大臣 えー、今回の改正案につきましては、今ご指摘のありましたように、障害者に関する条約の主旨を踏まえて、障害者の情報格差を解消するために、著作権に関する法律面での課題を解決するものであります。で、文部科学省としては、文化庁の主導の下でですね、改正法の主旨等について、コンテンツ事業者や関係団体、福祉施設等に対して周知をして行くこと、同時に、これらの事業者を所管する関係省庁とも連携して、障害者に対する著作物等の提供が円滑に行われるように、必要な環境整備を図って参りたいと考えております。

○那谷屋委員 よろしくお願い致したいと思います。えー、次に、違法インターネット配信からのダウンロード違法化関係です。違法インターネット配信からのダウンロード数が増加していると、そういうことがある中でですね、これはまあ、権利者団体であるレコード協会等の推計値を元に、文化庁は説明をしている訳であります。一方で、正規の有料配信も年々増加を続けておりまして、平成20年の売り上げは、平成17年の3倍近くに上っています。ある、この法案に対する様々なご意見の中でですね、権利者団体による調査結果をあまりにも鵜呑みにしすぎて、文化庁が中立的な立場から検証を行ってないじゃないかというような批判がある訳でありますけれども、そうしたことに対してですね、どのようにお答えになるのか、お訊ねしたいと思います。

○高塩次長 インターネットによります、音楽映像作品の違法配信の状況につきましては、今ご指摘ございましたように、社団法人日本レコード協会、社団法人コンピュータ・ソフトウェア著作権協会が調査を行っておりまして、この結果は、今次の改正におきまして、検討の参考として、文化審議会の著作権分科会私的録音録画小委員会において報告をされたものでございます。まあ、これらの調査は利用者に対するアンケート結果に基づくものでございまして、違法配信からのダウンロードの件数が、網羅的に調査したものでは当然ございませんけれども、複数年に渡り継続的に行われておりまして、インターネットにおきます違法な状況を知る上で、一定の評価できる資料だという風に考えております。こうした資料につきましては、著作権分科会の小委員会におきまして、委員の方達のご指摘も踏まえまして、より厳正な推定値となるよう、見直しも行ったところでございます。こうしたことを踏まえまして、文化庁と致しましては、こうした調査は、録音録画の実態を理解するための一定の適切な内容のあるものだという風に考えまして、今回の法改正の参考としたところでございます。

○那谷屋委員 まあ、あの、今回の法律によってですね、いわゆるユーザー側も、違法ダウンロードと分かっていて、違法のものであると分かっていてダウンロードしたらば、法に触れるということになる訳でありますけれども、まあ、具体的には特別な罰則等は直接はうたわれておりません。で、そういったことの中でですね、いくつか懸念される点があるのではないかということ、これは衆議院の議論でも指摘をされていますけれども、1つはインターネット利用そのものがですね、萎縮してしまう可能性があるのではないかという風に言われています。そういう意味ではですね、そのことは、そうであるのかどうかという見解をお訊ねするとともにですね、今後やっぱり一定の期間、利用者に対するアンケート調査を行うなど、状況の把握を行うことが必要ではないかという風に、文化庁自らが行うことが必要ではないかという風に思う訳でありますけれども、いかがでしょうか。

○高塩次長 今回の改正につきましては、違法に配信される音楽や映像を複製、ダウンロードする行為が、正規の配信市場を相当上回っているという状況、これも踏まえまして、現行制度下における違法配信者への対処というだけでは、いわゆるアップロード側だけの対処では難しいと、限界があるということから、ダウンロード行為にも、一定のルールが必要という判断に基づいたものでございます。先生からご指摘がございましたように、そうしたことが、ネット利用の萎縮効果を及ぼすのではないかというご指摘があったところでございますけれども、文化庁と致しましては、そうした影響が無いようにですね、今回の制度の主旨、内容につきまして、文化庁のみならず、民間の団体とも、官民一体となってですね、その制度の周知広報に努めて参りたいと思っておりますし、また、必要に応じて適切な措置を講じて参りたいと思っております。

○那谷屋委員 是非、そのことはですね、必要不可欠なことではないかという風に思う訳であります。ところが、こうした制度を設けた時に、まあ、これは定額給付金ですとか、あるいは裁判員制度も同じでありますけれども、必ずこの不正請求という風なものが、そういったものが多発されることが懸念される訳であります。とりわけ今回のものはですね、違法配信からのダウンロードを行ったという、利用者が感じる罪悪感というものにつけ込むものであるために、より被害が拡大することが予想されるのではないかという風に予想される訳であります。本法律案の内容をですね、利用者に説明すること以外に、具体的にやっぱりもう少し踏み込んだ措置が必要ではないかという風に思うのでありますけれども、そうした予定がおありかどうか確認をしたいと思います。

○高塩次長 先生から、今回の改正を契機にですね、いわゆる本規定を悪用した不正請求の詐欺被害というものが生じるのではないかというご懸念でございますけれども、先ほど申し上げましたように、私どもと致しましては、制度内容につきまして広く国民に周知を図る際にですね、その詐欺に関する注意喚起も行って行くことは重要であるという風に考えております。具体的には、今回の法改正の内容につきましては、メディアを通じました広報、それから文化庁のホームページへの今回の法改正内容の解説文の掲載、各種セミナーの開催、あと学校への資料送付によりまして、広く周知を図ることを予定致しておりますけれども、合わせて、制度を悪用した不正請求等の詐欺に関する注意事項についても、広報の中に取り入れて、行って参りたいという風に考えております。

○那谷屋委員 まあ、今あの学校への配布等々といいうお話をされたかなという風に思うんですけれども、あのー、文部科学省の調査によれば、中学2年生では45%、高校2年生では95%の生徒が携帯電話を所有しているという風になっております。携帯電話向けの違法サイトから着うたのダウンロードを行っている者の割合というのは、10代が最も高くなっています。文部科学省は、携帯電話の利用に際しての留意点や、トラブル、犯罪被害などの対策、アドバイスなどを盛り込んだリーフレットを小学校6年生全員に配っているところでありますけれども、こうした携帯電話の利用の注意点の中にですね、著作権教育を含めることの必要性、先ほど、学校にも送付されるというお話でしたけれども、まあ、具体的にはそういったことという風に理解してよろしいんでしょうか。

○高塩次長 今回の法改正内容の周知でございますけれども、先ほど申し上げましたけれども、特に児童・生徒に対しましては、学校に対しまして、児童・生徒を対象とした教材というもの、これは文化庁で独自に作っておりますけれども、そうした新たなものの中に反映をしたいと、また学校に対する解説書、資料というものを送付したいという風に思っている訳でございます。先生がご指摘のございました、いわゆる小学校6年生向けの携帯電話利用の留意点というのを、私ども、スポーツ・青少年局の方で作成を致しておりまして、今後こうしたリーフレットの中でどういう形で入れるかということを担当部局と十分相談して参りたいと思っております。

○那谷屋委員 まあ、先ほど申し上げましたように、10代が最もそうした着うたのダウンロードが多い、高いということでございますので、是非、そういったところにもお取り組みをお願いしたいと思います。えー、実はこの著作権教育っていう風に敢えて言わせて頂きますけれども、年齢が上昇すればするほど、いわゆるその違法サイトからということ、違法であるということを知っていてもですね、罪悪感が薄くなって行くという、そういう結果も実は出ているところであります。そういう意味ではですね、違法サイトからのダウンロードを含めた著作権教育とか、携帯電話やインターネットの利用上のマナー等について、大人に対しても教育を行う必要性があるんではないかという風に思います。具体的にどうするのかというのは、非常に難しい問題だと思いますけれども、もしお考えがあれば、お聞かせを頂きたいと思います。

○高塩次長 今ご指摘のように、もう現在、インターネットやパソコンの情報化の時代を迎えておりまして、著作権に関する知識というのは、国民全てにですね、必要不可欠なものになっているという風に考えております。今現在、文化庁が今行っております、大人向けの普及・啓発施策と致しましては、文化庁のホームページ上でございますけれども、1つには、著作権制度に関する解説を掲示しております、また、2つ目には、著作権に関する様々な疑問に、いわゆるQ&A方式で解説します、著作権なるほど質問箱というものを提供致しております、また企業や大学向けの映像による著作権教材の提供というものも今取り組んでいるところでございます。さらに、そうしたホームページでは無くてですね、文化庁では、図書館職員、教員というものに対する特別の講習会をやっておりますけれども、一般の方々を対象にした各種講習会というのを、昨年度は全国で10カ所、今年度は全国13カ所でございまして、1カ所大体数百名のご参加を頂いておりますけれども、こうした普及啓発、教育というものを行って参りたいという風に思っております。また、この違法ダウンロードにつきましては、いわゆる適法サイトと違法サイトの区別ということにつきましては、関係団体の方が、今エルマークという表示を行っておりまして、これは音楽につきましては、配信の97%まで今エルマーク、エルマークとはライセンスの意味でございまして、これは適法配信だということを示すものでございますけれども、そうした取り組みを行っておりますけれども、この3月からは映像についてもそういった取り組みを行っておりますので、私ども文化庁と民間の取り組みと合わせてですね、著作権意識の啓発というものに努めて参りたいという風に思っております。

○那谷屋委員 エルマークというお話がありましたけれども、エルマークとは一体何ぞやと思われる方も、分からない方も沢山いるのだろうと思うので、そういったことも含めてですね、やはり、しっかりやって行かなければならない部分なのかなあという風には思う訳であります。最後の質問をさせて頂きたいと思います。違法サイトの利用を止める理由、もしこうだったら止めるという風なことですけれども、権利者側の調査によりますと、ダウンロードが違法になったら、なっちゃったら止めるよという風に答えているのが41.1%だったという風に、これを強く前面に出されている訳です。ところが、これは、一番多かった数では無くてですね、有料着うたの料金が下がった場合、要するに価格がもっと下がった場合には、やっぱり違法サイトだったら止めて、安いから、それだったら、安い額を払ってでもダウンロードしようという風になるということが51.1%ということでありまして、そういう意味ではですね、例えば、この法案が成立後ですね、違法配信からのダウンロードが減った分、有料配信の売り上げがさらに延びた場合、3年間で3倍になっていますから、そういった場合にですね、有料配信の価格を下げることによって、より多くの人がより多くの楽曲に触れ、著作権法の目的であります、文化の発展に寄与することになると、レコード会社等が努力する必要があるという風に考える訳であります。様々な関連するところがあると思いますけれども、文部科学大臣の見解をお聞きをしまして、私の質問を終わりたいと思います。

○塩谷大臣 携帯電話向けの着信音楽の値段につきましては、サービス提供事業者のビジネスモデルや、利用者のニーズ等も反映して決定されるものと考えられておりますので、価格がどうかということ、いろいろ高いという話でございますが、私からは、そういう立場に無いと思っておりますが、いずれにしましても、違法な配信の音楽の複製行為に効果的に対処しようとして行くことで、利益者の便益と権利者への対価の還元を両立できる適正な流通市場が拡大し、利用者の利便性が一層高まるような形で提供されるようになることを期待しているところでございます。

○中川委員長 他にご発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。これより討論に入ります、別にご意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。著作権法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定致しました。この際、鈴木君から発言を求められておりますので、これを許します。

○鈴木寛委員(民主党・東京)私はただ今可決されました、著作権法の一部を改正する法律案に対し、民主党・新緑風会・国民新・日本、自由民主党及び公明党の各派共同提案による附帯決議案を提出致します。案文を朗読致します。

著作権法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案

 政府及び関係者は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。

一、違法配信と知りながら録音又は録画することを私的使用目的でも権利侵害とする第三十条第一項第三号の運用に当たっては、違法配信と知らずに録音又は録画した著作物の利用者に不利益が生じないよう留意するとともに、本改正によるインターネット利用への影響について、状況把握に努めること。
 また、本改正に便乗した不正な料金請求等による被害を防止するため、改正内容の趣旨の周知徹底に努めるとともに、レコード会社等との契約により配信される場合に表示される「識別マーク」の普及を促進すること。

二、インターネット配信等による音楽・映像については、文化の発展に資するよう、今後見込まれる違法配信からの私的録音録画の減少の状況を勘案しつつ、適正な価格形成が促進されるよう努めること。

三、障害者の情報アクセスを保障し、情報格差を是正する観点から、本法の運用及び政令の制定に当たっては、障害の種類にかかわらず、すべての障害者がそれぞれの障害に応じた方式の著作物を容易に入手できるものとなるよう、十分留意すること。

四、教科用拡大図書や副教材の拡大写本を始め、点字図書、録音図書等の作成を行うボランティアがこれまで果たしてきた役割にかんがみ、今後もボランティア活動が支障なく一層促進されるよう、その環境整備に努めること。

五、著作権者不明等の場合の裁定制度及び著作権等の登録制度については、著作物等の適切な保護と円滑な流通を促進する観点から、手続の簡素化等制度の改善について検討すること。

六、近年のデジタル化・ネットワーク化の進展に伴う著作物等の利用形態の多様化及び著作権制度に係る動向等にかんがみ、著作物等の利用の一層の円滑化に向けて、著作権法の適切な見直しを進めること。
 特に、著作権制度の在り方をめぐり意見の相違が大きい重要課題については、国際的動向や関係団体・利用者等の意見を十分考慮するとともに、技術革新の見通しと著作物等の利用実態を踏まえた議論を進めること。

七、国立国会図書館において電子化された資料については、情報提供施設として図書館が果たす役割の重要性にかんがみ、読書に困難のある視覚障害者等への情報提供を含め、その有効な活用を図ること。

八、文化の発展に寄与する著作権制度の重要性にかんがみ、学校等における著作権教育の充実や国民に対する普及啓発活動に努めること。

九、教科書、学校教育用副教材のデジタル化など教育目的での著作物利用に関しては、その著作権及び著作隣接権の許諾の円滑化に努めること。

右決議する。

以上でございます。何卒委員各位の賛同をお願い申し上げます。

○中川委員長 ただ今鈴木君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。全会一致と認めます。よって、鈴木君から提出されました附帯決議案は、全会一致でもって、本委員会の決議とすることが決定致しました。ただ今の決議について、塩谷文部科学大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。

○塩谷大臣 ただ今のご決議につきまして、その主旨に十分留意を致しまして対処して参りたいと存じます。

○中川委員長 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長にご一任願いたいと存じますがご異議ございませんか。ご異議なしと認め、さよう決定致しました。本日はこれにて散会致します。

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2009年5月11日 (月)

第171回:衆議院文部科学委員会での著作権法改正法案の馴れ合い出来レース審議

 この5月8日に、衆議院文部科学委員会が、著作権法改正案(その内容と問題点については第160回参照)を何ら修正も無く通した。公式な議事録はまだしばらくかかるものと思うので、暫定版として起こした議事録をここに載せる。(国会中継からなるべく丁寧に起こしたつもりだが、どこか間違っている点があれば、是非教えて頂きたいと思う。)

 貴重な国会審議において、どの党もほとんど、そんなことは他でやれば良いはずの法案と直接関係ない問題をだらだらと喋っているだけであり、法案に対する実質的な審議は何もされていないに等しい。完全な馴れ合い、茶番の出来レースであり、これがまがりなりにも選挙で国民の代表として選ばれた者のやり取りかと思うと、私はほとんど絶望しか覚えない。

 民主党は、その党内会議で、私的録音録画小委員会の委員で最後までダウンロード違法化反対の主張をされていた津田氏から問題点を聞くことまでした上で、この体たらくである。ブログでは、民主党の川内博史議員は「委員会質疑の中で修正を求めます」とまで言っていたが、結局、利用者に対して直接権利行使を行う場合には事前に警告を行うよう文化庁に権利者団体への指導を求め、ユーチューブやニコニコ動画などの動画投稿サイトを見るだけは違法とならないことを確認するに止まり、川内議員からも修正動議は入らなかった。(川内議員は、着うたフルを独禁法違反ではないかとして国会審議内で申告するというトリッキーなことをしているが、これは法案とは直接関係しない。)

 民主党の松野頼久議員は、ジャスラックと独禁法の問題に関して完全な法律の無理解を示して時間をムダに費やし、やはり民主党の和田隆志議員は、教育というところに力点をおいてダウンロード違法化に賛成だという総括をしているが、ダウンロード違法化は教育のためにもならないと私は断言する。和田議員は、やたらに若い人たちのためにと繰り返しているが、その言うところの若い人たちが、この国会でのやり取りを読んだら、日本の未来に対して希望を抱くどころか絶望を感じるだけだろう。

 日本共産党の石井郁子議員も、今回の法案と直接関係しない私的録音録画補償金問題について、権利者団体が言っているようなことをそのままこの場で繰り返し、一方的な見方からメーカーを非難して補償金制度を擁護するなど、著作権法の本質に関わる私的複製問題について、その本質を全く理解していないことを示している。(メーカーの対応にも難はあると思うが、どうせどこかの権利者団体が共産党に吹き込んだのだろう。やはり彼らの手は長い。)

 社会民主党の日森文尋議員も、グーグルブックサーチ問題やフェアユースの話などを聞いているが、これもまた何も言っていないに等しい。(日本文芸家協会が持ち出されているので、吹き込んだのはやはり権利者側だろう。)

 読めば分かると思うが、どの党も国民と口先では言いながら、本当は国民のことなどカケラも考えていないことを如実に露呈している。国会で、このような馴れ合いの出来レース審議が行われており、また行うことが可能であるというのが、絶望的な今の日本の現状である。今後も追いかけて行くつもりだが、与党として閣議決定という形でダウンロード違法化を含む著作権法改正に賛成した自民党(宗教政党である公明党は無論論外である)はおろか、このような審議を見る限り、他の党も含め、残念ながら、著作権問題に関して投票できる党は無い。

 著作権法に限らず多くの法案で、このような腐った馴れ合いの国会審議はザラに見られる。著作権問題を超えて、国会におけるこのような馴れ合いの出来レース審議をいかに無くすか、これを不可能にして行くか、どのように国民の本当の意見が政策決定に反映されて行くようにするかということこそ、今後、考えて行かなくてはならない真の国民的課題である。

 スウェーデンで海賊党が3番目に大きな政党になり次の欧州議会選挙で議席を得るかも知れないということが言われている(TorrentFreakのブログ記事参照)が、ご覧の有様では、日本でもすぐにでも海賊党を作る必要があるのではないかと私は感じている。

(5月12日の追記:特に新しい情報が含まれている訳ではないが、この日の質問概要をまとめた委員会ニュース(pdf)付帯決議は既に公表されているので、念のため、リンクを張っておく。なお、数字を漢数字になおしたり、漢字を開いたりといった程度のものだが、公表されているものの通りに、下の議事録の付帯決議読み上げ部分も直した。)

(5月13日の追記:既に「P2Pとかその辺のお話@はてな」で紹介されているので、興味のある方はリンク先をご覧頂ければと思うが、フランス下院が、一旦は否決したいわゆる3ストライク法案の再議決を行い、今度は通した。この法案はさらに今日明日中くらいに上院でも再可決される予定のようであり、上院も通過して固まったところで、また法案の内容の紹介をしたいと思っている。)

(5月14日の追記:「チラシの裏(3週目)」で既に書かれているので、リンク先をご覧頂ければと十分と思うが、この著作権法改正案は12日に衆議院本会議も通り、参議院(担当委員会は文教科学委員会)に送られた。国会中継を見てもらえばすぐに分かると思うが、議事録を起こす必要性の全くない、質問ゼロ動議ゼロの完全な無風通過である。他の法案も含めてザラに見られる光景であるとは言え、今の国会では、ダウンロード違法化ほどの問題についてこのような馴れ合いの出来レース審議が平気でまかり通るのである。全国会議員が政治に対する参入規制と馴れ合いで心底腐り切っているとしか、これは今の国会議員の誰一人として国民のことなど本当は全く考えていないことを示すものとしか言いようが無い。

 また、フランス上院でも、13日に3ストライク法案が通った(vnunetの記事NetEcoの記事参照)。これで両院を通過したことになるが、EU委員会は事なかれ主義で3ストライク法案は欧州法に違反しないと言おうとしているものの、即座に、3ストライク法案否定条項を主導したEU議会の議員からそのような委員会の態度に文句がつけられるなど(Le Mondeの記事1記事2参照)、さらに憲法裁判所に訴えられる可能性(フランスでは国会を通った法案に対して憲法裁判所に合憲性の審査を求める訴えを提起することが可能。提起された場合は、インターネットへのアクセスがフランス憲法に照らして基本的な権利かどうかという点が争われることになるだろう)も十分にあるなど、もうしばらく混沌とした状況が続きそうである。)

(6月15日の追記:以下の議事録もそのまま残しておくが、正式な議事録も公開されているので、ここにリンクを張っておく。)

(以下、議事録)

○岩屋毅委員長(自民・文部科学委員長・大分県3区)これより会議を開きます。内閣提出著作権法の一部を改正する法律案を議題と致します。本案の審査のため、本日政府参考人として、内閣官房知的財産戦略推進事務局次長内山俊一君、公正取引委員会事務総局審査局長山本和史君、文部科学省スポーツ青少年局長山中真一君、及び、文化庁次長高塩至君の出席を求め、説明を聴取致したいとしたいと存じますが、ご異議はありませんか。ご異議なしと認めます、よって、そのように決しました。これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高井美穂君、高井君。

○高井美穂委員(民主党・無所属クラブ・四国ブロック)おはようございます。民主党の高井美穂です。今日は著作権法の一部を改正する法律案ということで、お時間を頂きましてありがとうございました。ええと、インターネットという手段ができて、著作権が一部の業界人だけが注目していたものが、国民全てがこれに関わるようになったという時代になりまして、まさに誰にどのような著作権を付与するかということは、国民の合意によって決めて行くものだと私は考えております、つまり国民の合意によって決めるということは、この国会で議論して決めると、つまり、著作権法というのは、権利者と利用者のそのどちらもが利害や思想が異なる、どちらの立場を認めて行くかということを国民全てが、国民がかかわる中で、ルールを作るということだと思っておりまして、どちらの立場に立つのが正しいとか、善とか悪とか言う問題ではないと思っております。そうした中で、どういう著作権を付与するのかしないのかを決めて行くのは、産業政策や、人々がどうしたらより利用し易いのか幸福になれるのかという観点から、法律を作る訳だと思いますが、これからさらなる技術の発展や新たなビジネスモデルに対応できるように、不断の改善の努力が必要だという風に考えております。今回の法律改正においては一定の前進だという認識を持っておりまして、とりわけ今日質問させて頂きます、障害者の著作物利用の円滑化という点においては大変な前進だと思いまして、この点から質問を申し上げたいという風に思っております。今回の法改正の中で、国連の障害者の権利条約の第30条3にうたわれている、締約国は、国際法に従い、知的財産権を保護する法律が、障害者が文化的な作品を享受する機会を妨げる不当な又は差別的な障壁とならないことを確保するためのすべての適当な措置をとるという風な精神に則りまして、またこの文化審議会の著作権の分科会の中でも議論がありました、この障害等によって著作物の利用が困難な者を、可能な限り、権利制限の対象に含めるとともに、複製主体、方式も拡大する方向で速やかに措置を講じることが適当という風な、検討結果に沿って今回の法改正がなされようとしている訳で、障害者のために権利者に無許諾で行える範囲を拡大するということは、大変この先ほど申し上げたこの権利条約の主旨にも則ったものとして評価を致しますが、具体的に、この障害者の皆さんや障害児の通う学校や図書館等、また、大きな障害を持つ方々の支えとなっておられるボランティアの方々や様々な活動団体にとってどのようなメリットがあるとお考えになっておられるか、大臣からまずご答弁をお願いしたいと思います。

○塩谷立文部科学大臣 著作権につきましては、今高井委員がおっしゃったように、インターネット等の情報通信が発達する中で、国民全般に関わることとしてこれから状況に応じてしっかりと対応して行かなかければならないということでございまして、今回特に、障害者についての37条3項の改正の意味ということでございますが、これについては、健常者と障害者の情報格差の拡大、さらには障害者の著作権の利用法の多様化、障害者の権利の条約を巡る状況を踏まえてですね、障害者のために権利者の許諾を得ずに著作物を利用できる範囲の抜本的な見直しということで、障害者の情報格差を解消しようとするものでございます。特に具体的にですね。一つは、弱視者、発達障害者なども含めて、視覚による表現の認識に障害のある者が対象となること、二つ目には、録音図書に限らず、拡大写本、デイジー図書の作成など、それぞれの障害者が必要とする方式で複製等が可能となること、また三つ目として、図書館など障害者施設以外の施設でもそれらの作成が可能となること等の改善が図られる訳でございます。こういった措置を通じて、障害者のために著作物の提供が一層、円滑になるようになり、障害者による著作物の利用機会の拡大が図られることとなるものと考えております。

○高井委員 この第37条の3項、今回改正になりますが、障害者福祉に関する事業を行う者を政令で定めることとしております。これまで、弱視の子供たちのための拡大教科書など全国各地のボランティアの皆さんが、一冊一冊手作りで作業を進めて来られて、本来国や教科書会社がきちんとするべき教科書作りを支えて来て頂いた訳です。昨年、教科書バリアフリー法が議員立法で作られ、私もこれに関して何度か質問にも立たせて頂きましたけれども、義務教育段階でかなり普及が進んだことは感謝を申し上げますし、評価致しますが、今度は、ボランティア団体の皆さんも副教材作りについて力を入れて行こうということで、意欲を新たに前向きに頑張っているところでございます。しかし、今回の改正の運用面などの点で、不明確な点がありますので、ちょっと確認させて頂きたいと思うんですが、これからもボランティアで行おうとする教科書以外の拡大写本の作成は、著作権者の許諾を得なければならないのか。そうしなければ違法行為になるのではないか。権利許諾の複雑な手続きが必要になって来るのではないかという風に心配する向きもあがっています。この拡大写本の作成等をしているボランティア等を、例えば事業者として、今回の法律で、この法律の中の政令として組み込むことが難しいのか、定めることが難しくなければ、政令で定めるということになりますと、かなりいろんな団体等を含めなくてはいけない、それ以外の政令で出てこない団体が違法になってしまうのではないかという懸念があるのですけれども、引き続き自発的に行ってる団体等が、権利者の許諾を得なくて済むのかどうかちょっと確認をさせて頂きたいと思います。

○高塩至文化庁次長 先生お訊ねの今回の法律案の改正法の37条3項の複製が認められる主体として政令で定めるものにつきましては、今後、関係者の意見も聞きまして検討を行うこととしております。現時点では、利用者確認の体制整備状況などに応じまして公共の図書館や民間の法人などを対象として行くことを考えているところでございます。このため先生ご質問のございました、拡大図書の作成を行いますボランティア団体が、法人格を得て、組織的に事業の実施ができ、障害者の確認ができる体制が整えられている場合には、政令指定の対象とすることも可能と考えられるところでございます。ただ、個人や少数のグループなどにより活動を規定するは政令としては難しいのではないかと考えます。ただ、政令指定の対象となります公共図書館等の活動に協力するという形態を取ることなどによりまして、これまで同様ですね、ボランティアの方々が拡大写本の作成等を行うことは可能でありますし、そういうことを促進して参りたいと思っております。

○高井委員 今のご答弁からしますと、まあ、政令等にボランティア等を書き込むのは難しいと、ボランティア等の皆さんにNPOなどの法人格を取れば、書き込みやすいということになるのかも知れませんけれども、なかなか個人でやっている方々、いろんなご事情もありますし、そういう風にNPOの資格を取りにくかったりすると思います。でき得る限り、ボランティアの方々がすることについて、違法とならない権利をわざわざ、著作権の利用許諾を得なければならないということが無いように、少なくとも、改正になった後にも皆さんにも広く周知徹底して頂きたいと思います。今のご答弁だと、今まで通りこれからもそういうことでなくて良いと思いますので、ボランティアの皆さんが萎縮しないようにくれぐれも関係者団体の皆さんに対してご支援をお願い申し上げたいという風に思っています。拡大教科書などの電子データが提供されてる場合、今回追加されたこの37条3項のただし書きによってボランティアなどがそれ以上複製できなくなるということは無いと思いますけれども、このただし書きの当該方式の定義の詳細に問題についてお伺いをしたいと思います。音声という媒体についてですけれども、例えば出版社が音読カセットを販売している場合、これを図書館が、視覚障害者のために、デイジー方式といいまして、利用し易い情報システムに、この学習障害とか、障害を持たれている方、高齢や様々な発達障害などにより文章を読むのに困難を有する方々のための、読書の支援のシステムの方式でございますけれども、この音訳図書に複製するということを、図書館がやっても良いということになりますでしょうか。もしくは、そのカセットがある場合、カセットを利用せずに、図書館内で既にカセットがあるものに対して、図書館内でもっと読みやすいデイジー方式、もっと違う形の方式を取る場合、独自で作成したりということはできるのでしょうか。

○高塩次長 先生ご質問の改正案37条第3項のただし書きによりまして、権利者等によりまして障害者に対応した形で著作物の提供が行われている場合には、権利制限を適用しないということをしている訳です。これは、そういう権利者が障害者のための物を作成しているということにつきましてはですね、障害者のための条約でも、それを促進することを求めるということでございまして、このような規定を置いた訳でございます。ただ、このただし書きの適用の有無につきましては、先生からお話のございました、音声カセットが販売されている場合に、デイジー方式の録音図書を複製できるかという問題でございますけれども、これは対象となる障害者が音声のみではその著作物を認識できないと、やはり文字と音声の両方で見聞きする、デイジー方式のみしか、障害上の理由からそういうものが是非必要だと認められる場合には、認められた図書館などで複製が可能だと考えております。ただ、単にテープよりデイジーの方が容量が大きいとか、物理的な理由では無くですね、真に障害者の方がそういうもので無ければ、そのような図書を認識できないという理由が認められれば、音声カセットが販売されておりましても、このデイジー方式のものを複製ということは可能だという風に考えております。

○高井委員 最近のデジタル技術の発展とか情報通信技術の革新は大変目覚ましいものですから、デイジー技術についてもかなりいろんな機能があがってきているのではないかと思いますし、できる得る限り、先ほど冒頭申し上げた権利条約の観点からも、障害者の皆さんが利用しやすいような形を許して行く、許諾して行くということをでき得る限り運用上やって頂きたいという風に思っております。音声というものに加えて、電子データにおいても、同じような問題が生じると思います。例えば、講談社なんかにしても、ドットブックといった形式で、ネット上で、本を、電子図書というものをインターネット上で販売、配信をしています。それを例えば、図書館で、同じようにこのデスのファイル形式に変換をして障害者に貸し出すことは、技術的上は大いに可能だと思いますし、それができるという風に解釈をして行きたいという風に思うんですけれども、スキャナーとかで読み取ってテキストファイル化して行くとかいうことは、今の先ほどのご答弁からすると、同じように障害者のために限定されたものであれば、できるということでよろしゅうございますか。

○高塩次長 今先生からドットブック方式で電子図書がインターネット配信されている場合に、別のファイルに変換する複製ができるのかというようなお話でございますけれども、これは、ドットブック形式が音声読み上げソフトに対応しておらずですね、これが可能となりますファイル形式に変換する必要がある場合など、障害上の理由でですね、ドット方式以外のものが必要であるという場合には、さきほどと同じ考え方で複製できると考えております。

○高井委員 今全ての電子データも音声の読み取り方式にすぐにできるということはないと思いますけれども、それを図書館などが例えば工夫をしながらファイル形式を変換してデイジー方式で対応するようなものに変えて行くということは、一回複製が生じますので、著作権法上問題が生じないかということを確認をさせて頂いた訳ですが、問題が生じないと、限定されたものであり、またそれが必ず障害者のために資する、必要であるということであれば、問題が生じないということで、できるという風に理解を致しました。同条項は、同じく障害者が利用するために必要な方式での公衆への提供がされている場合という風に、その場合は、障害者が利用するために必要な方式での公衆への提供がされている場合には、権利者に無許諾で、許可無く複製ができないという風に規定をされていますが、読み上げソフト等が逆に組み込まれていたりすると、これはダメだということになるんでしょうか。

○高塩次長 この先生から再三ご質問でございますただし書きの主旨というのは、権利者が、自ら障害者に対応した形で著作物の提供が行われている場合にはですね、権利制限を適用しないとするものでございますけれども、こうした主旨に照らせばですね、必要な方式の複製物が形式的に存在すると致しましたとしても、その著作物を実質的に障害者が入手できないような場合にまでただし書きの適用があるという風には考えておりませんので、そういう考え方に立ちまして、ケースバイケースでございますけれども、考えて参りたいと思っております。

○高井委員 ありがとうございます。先ほどご答弁頂きました通り、どうしても入手できないとか、絶版になっているなど、どうしても高くて買えないとか、買いに行けないとか、いろんなケースが、障害者の皆さんにあるかと思いますけれども、そういう場合はできるだけ斟酌をしながら広く適用して頂けるようによろしくお願い申し上げたいと思います。例えば、図書館が、独自に作成をして、それをボランティアの方が音読する、それを例えばテープに取るとか、個々一つ一つやっている場合も図書館によってはあると思います。そういう場合への制約はかからないということで対応よろしくお願いしたいと思います。次に、今回、国立国会図書館のバリアフリー化という条項が入りまして、この点についての質問に移らせて頂きたいと思います。今回は図書館長の長尾館長自らお越し頂きありがとうざいました。かなり積極的にご発言をされているようですので、是非この場でも意見開陳をお願いしたいという風に思っております。今回バリアフリー化ということで条項が入りまして、電子図書館のアーカイブの電子図書が、活字が画像として表示されておりますので、視覚障害者が使う音声読み上げソフトには対応していないと伺っております。ですから、そのスクリーンリーダーなどの音声読み上げソフトを利用する視覚障害者にとって見ると、独力で内容を知ることができないということになっておりますが、社会福祉法人の盲人福祉委員会などから、私の方にも、是非、電子図書館アーカイブも文字として認識できる形式で提供して頂いて、私たち視覚障害者も、拡大文字で読書したり、合成音声で聞くことができるようなホームページにしてもらいたいというご要望もあるのですが、この点いかがでしょうか。

○長尾真国立国会図書館館長 あの、国立国会図書館がインターネットに提供致しますサービスのうち、ホームページによる各種の情報提供と書誌情報の検索サービスにつきましては、文字データである部分については原則として音声読み上げソフトに対応できるようになっております。しかし、電子図書館アーカイブにある本文情報の提供は現状画像情報によるものでありまして、対応するテキスト情報は作成していない訳でございます。その理由は、これまでの対象が明治大正時代の古い資料が中心でありまして、旧かな旧時代資料のテキスト化には多大の費用と労力が必要だからであります。また、刊行年代の新しい時代のテキスト化につきましてては、出版関係者等から商業活動に影響を与える可能性が有るとして強い反対意見が出されています。国立国会図書館と致しましては、昨年度の出版関係者、著作権者等との数回の関係者協議の場を通じまして、利用提供の範囲、条件につきまして合意形成を図る努力を重ねて参りましたんですけれども、テキスト化につきましてはなかなか抵抗が強くて音声読み上げソフトに対応するのは当面難しい状況だということでございます。残念なことではございます。

○高井委員
 確かに、私も昨日通告の段階でいろいろお聞きしまして、昔の資料、明治大正時代の資料、旧字体の資料もなかなか難しいという風にお聞きしましたし、まあ、これから、この電子図書にして行くことに関して、かなりお金も手間暇もかかって行くものと思いますが、ただ、デジタル技術がここまで進んでいる時代において、私はもうちょっと、最近の図書でもどんどん新しく早くできていくものかと思ってたんですが、やはり人手も時間もかかって行くことではありますが、これから是非前向きに検討して行って頂きたいと思います。障害者の権利条約も採択されて、2010年の国民図書年に向けて、図書のバリアフリー化を目指す運動も全国で始まっておりますので、子供たちの読書活動や障害者の皆さんも含めて分け隔てなく情報が手に入りますように、技術的にはこれからできて行くのだと思いますので、我々も含めて努力して行きたいと思いますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。申すまでもなく、教育基本法にも、障害のある者が、その状況に応じて、教育上の必要な支援を講じなくてはならないと規定されておりますので、予算もかかることと思いますが、是非、この点についてこそ、是非、進めて行って頂きたいと、国会の方の意思として予算もつけて進めて行きたいと、私どもの党は少なくとも思っておりますので、よろしくお願いをしたいと思います。そして、今回の改正で、今後、図書館の方で、全ての図書について電子化を進めて行くという風なご予定だと思いますが、アーカイブ形式が促進されるということにおいて、どのようなペースでこれから進めて行かれるのか、この電子保存されたアーカイブ資料は国民の皆さんにどのように活用して頂くご予定があるのか、教えて頂きたいと思います。

○長尾館長 現在国立国会図書館が所蔵する明治大正期の刊行図書を電子化してインターネット公開する事業を行っておりまして、これは14万8千冊を画像情報の形で提供中でございます。それから、国立国会図書館におきましては資料電子化の基本計画を作成しておりますけれども、平成21年度補正予算案では、計画を加速致しまして、図書等の大規模なデジタル画像化を進めるために関係経費127億円を要求しております。これにより、デジタル化すべき図書約400万冊につきましては、その内4分の1が画像形態での電子化がされる見込みでございます。全部やるためにはこの4倍の資金が必要でございますし、さらに雑誌の電子化につきましても同程度の資金が必要であると考えております。で、作成しました電子情報の利用につきましては、原資料の資料の保存の観点から、在館利用者に対して館内提供をするということとともに、今後、出版関係者、著作権者との協議を通じて、さらに利便性の高い利用の仕方を実現するべく努力して行きたいという風に思っているところでございます。

○高井委員 長尾館長、今模範答弁をされましたけれども、館長自身は、いろいろと電子図書館構想等もご検討されているということを報道等で聞きかじりました、もし可能ならばそれを開陳してもらいたいと思いますし、私が新聞報道等で読んだのは、出版社から例えば有料で本やデジタルを購入して、それを外部利用者が利用したい場合には、利用料を頂き、例えばそれを中継役として、単に利用料を単に出版社の方に渡すと、営利目的のものはできないので、単に中継役として、アーカイブを持っている、外部利用者から利用料をもらって出版社に渡すと、そうした構想もお持ちだと伺いましたけれども、これが是非可能であるなら、前向きに検討して頂きたいと思いますし、少なくとも、出版社であったり、図書館の側であったり、利用者の側が、協議をして、現状の枠組みの中でもできるという風にお聞きしたのすけれども、今どのようなお考えで、検討状況にあるのか教えて頂ければと思います。

○長尾館長 あのー、図書館の資料をデジタル化しまして、日本中の人たちに遠いところからでもインターネットを通じて利用して頂くということは理想のところでございますけれども、これを無料でやりますと、出版社あるいは著者が成立しないというところに追い込まれる危険性がございます。日本の文化というのはやはり著者、出版社がしっかりと進んで行く、そして図書館と協調して行くということがなくてはいけない訳でございますので、そういうある種のビジネスモデルを作って行く必要があるのではないかと思っております。これは大雑把に申しますと、音楽のダウンロードで、皆さんがイヤホンで聞いておられる、その時お金を適当に払うというようなモデルでございますが、図書館はあくまでも無料で全ての情報を提供するというのが基本でございますので、お金につきましては、これは、ダウンロードするわずかな金額を集めてこれを出版社あるいは著者に還元するような第3のセンターみたいなものを設けまして、これをうまく活用して、えー、全ての人にこのデジタルな著作物の提供をするということをしてはどうかということを提案しております。で、図書館としましては無料でそのデジタル情報をその外部のセンターなんかにお渡ししまして、そして、そこから要求のある読者に渡すと、こういうモデルを考えておりますが、こういうことにつきましては、著者、出版社あるいは利害関係者と今後良く議論をして、両者が納得する形で作って行ければという風に思っておりまして、今後努力をしたいと思っております。

○高井委員 私はこれから出版社等もまた利用者の利便に資するためにも、すごく前向きな新たなビジネスモデルを提案される館長の姿勢は私はすばらしいと思っておりまして、是非、関係者の方と議論しながら、より前向きに検討を進めて行ってもらいたいと思います。館長おっしゃった通り、私も、徳島でありますけれども、父もちょっと病気をしまして遠くまで外出できません。でも、地方にいても、高齢者であっても、どこからも最新の情報を手に入れられるというのは、そこからお金を払って手に入れられるというのは、本当にすばらしい、技術の発展によりそれができるようになったというのは、私はすばらしいことだと思っておりますので、そうしたビジネスモデルを前向きに検討して行ってもらいたいと思います。今回の改正の中で、聴覚障害者のために、映画や放送番組への字幕や手話の付与を可能とするということも盛り込まれておりますけれども、レンタルのDVD映画等にも義務づけをして頂きたいと運動して来た、バベル、字幕の願いをつなぐ市民の会、今日もお見えになっておりますが、こうした方々からも、様々な期待を持たれております。これまでは、著作権者と映画事業者のコスト負担がネックになっているところもございまして、これはむしろ産業政策の方かも知れませんけれども、できる得る限り、いろいろな形で後押しがして行けるように多くの関係者と協力しながら進めて参りたいと思います。最後の質問になりますけれども、本改正の主旨を、広く国民に周知徹底をして行って頂かなくてはならないと思いますし、最近は、大学のレポートなんかでもコピペという、ウィキペディアからとってそのまま貼付けしたりすということが増えているという話も聞きますし、新聞や週刊誌といったプロの世界でも著作権法違反ということがしばしば問題になります。こういう現状を見るにつけ、冒頭申し上げたように、インターネットという手段を通じて、国民みんなが著作権の利害関係者、利用者となるという立場の中で、著作権の教育の必要性というものに対して、もしかしたら高校生レベルからでも必要ではないかと感じておりますが、大臣はいかがお考えでしょうか。

○塩谷大臣 ご指摘の通り、情報技術の発展によって、国民に広く著作権に関する知識を周知することが必要だと思っておりまして、文部科学省としましても、国民に対する普及啓発事業として、著作権に関する様々な質問に、インターネットを通じて答えるシステムを現在開発しておりまして、運用して行きたいたいと思っております。図書館の職員、教員、一般の方々を対象とした各種講習会の実施に取り組んでいるとことでございます。また生徒や教員を対象にした多様な教材等の作成、配布やホームページを通じた提供など実施して来たところでございますが、特に、平成21年度3月、今年3月ですが、高等学校の学習指導要領の改正において、著作権に関する記述を充実しまして、従来の情報に加えまして、音楽や技術等についても、著作権について指導することとしたところでございます。著作権に関する教育、普及啓発に関しては一層の充実を図って参りたいと考えております。

○高井委員 ありがとうございました。

○岩屋委員長 以上を持ちまして、高井君の質疑は終了致しました。次に松野頼久君、松野君。

○松野頼久委員(民主党・無所属クラブ・熊本県1区)民主党の松野頼久でございます。今日はですね、当文部科学委員会におきましてこうして質問の時間を与えて頂きましたことを委員長、各党の皆様に心から御礼申し上げる次第でございます。早速質問に入りたいと思うんですが、あのー、今年の2月の27日、今日あの公正取引委員長に出席を頂いているんですが、その音楽著作権協会に対して排除命令を出されたということを聞いております。この件についてちょっと若干伺いたいと思うんですが、私も実は学生時代、テレビ局の製作の現場でアルバイトをしていたことがあります。そういう経験から今回の排除命令に非常に違和感を感じたんですね。といいますのは、その、放送事業者、テレビ局の製作の現場では、少なくとも、この曲は、ジャスラックが管理している楽曲だから使いやすいから使おうとかですね、この曲は違う事業者が管理している楽曲だからこれは使うなとかですね、という会話は全くないんですね。で、今回もこの質問に当たって、何人かその知り合いのテレビ局のプロデューサーにヒアリングを致しました、やっぱりこういう現状があるんですかと、どうしてもジャスラックの楽曲以外の楽曲について使いづらいから使わないとかそういう状況なんですかということ伺いましたら、そんなことないぞと、まず自分たちは曲を選ぶ責任者として、これはジャスラックだからとか、これはジャスラックじゃないからとかいう、少なくともそういう選別をした一覧表さえ見たこともないし、そんなことを考えて番組なんか作っていないと。一番考えるのは、まず視聴者にどういうイメージを与えるか、いいイメージを与える曲を選びたいと、そしてそれが自分の作る番組にどういうイメージになるのかと、そういうことだけを考えて、わずか1曲何万円か、数万円か分かりませんけれども、そんなことを気にして番組を作っていないよというのが、やはり現場の実態なんですね。で、確かに、シェアが90数%と高い、そのシェアが高いからこれは私的独占である、その状況だけを見て私は排除命令を出したんではないかという気がしてならない訳です。今日は理事会において承諾を頂いて、その排除命令の文章を配布させて頂きました。この違反行為の概要のところの2番、管理楽曲が放送事業者の放送番組においてほとんど利用されず、また、放送等利用にかかわる管理楽曲としての放送等の利用が見込まれる音楽著作物を、ほとんど確保することができないことから、非常に排除命令にこのほとんどという言葉に違和感を覚えるんですけれども、これは一体どういう根拠でこういう文言になったのか、またどういう状況でこれを調査されたのかということを教えて頂けないでしょうか。

○竹島一彦公正取引委員会委員長 お答え致します。今松野委員が、プロデューサーというのは、そういう誰が管理している楽曲かということにはとらわれずにですね、必要なものを選ぶとこういうことをおっしゃった訳ですが、プロデューサーのレベルは私は良く分かりませんが、少なくとも今回調べた結果そうでは無いと、その、管理しているほうでしょうか、要するに経理のほうなんでしょうか、著作権使用料について管理している放送局の部門から、具体的にはこれはエーベックス、イーライセンスが管理楽曲として扱っていた、エーベックスの関係の楽曲について、これを使用しようとする動きがあったのに対して、そういうことをすると、追加負担が生じると、著作権使用料を余計に支払わなければならないと、だからダメだと、そういう社内における通知なり通達なりががあったと、そういうことがあって、3ヶ月くらいはじゃあ無料で結構ですということまでやったんですけれども、その先が見えないと、結局、まあ使われることに至らずということがあった訳です。で、したがって、これ、ほとんどと書いておりますが、事実上100%に近いということで、100%と書けないからほとんどと書いている訳でございまして、まさしくですね、放送局向けの管理楽曲の許諾ないし利用の使用においてですね、ジャスラックが文字通り私的独占、特に新規参入、平成13年と記憶してますが、この管理事業法ができてですね、新規参入ということが道が開けて、現に手をあげた業者がいて、かつ管理楽曲も確保したにも関わらず、それが放送局において使われることにならなったという事実がある訳でございまして、これはまさに排除型の私的独占に当たるというのが我々の判断でございます。

○松野委員 この独占禁止法第3条、事業者は私的独占、要はこの場合の事業者というのは著作権管理会社だと思うんですね、事業者は私的独占又は不当な取引制限をしてはならない、この第3条に基づいて、今回の排除命令が出されているということであります。それは、あの放送事業者側の問題を今おっしゃっているんではないかと思うんですね、要は、例えば今回で言うと、ジャスラック側が何か私的独占をするとか、これを使わないと一切うちは取引をしませんよとか、何か不当な取引制限をされたという事実はあるんでしょうか。

○竹島公取委員長 おっしゃる通り、これは放送局側がどういう反応を示したかということを今申し上げた。その反応が、その原因を作ったのが我々が見ている、ジャスラック、その原因は何かというと、放送事業収入×契約上は1.5%の利用料を取りますよと、何回使おうがそれで結構でございますと。その結果としてですね、利用割合、逆に言うとその放送局で使われている全管理楽曲に占めるジャスラックの利用割合、我々は利用割合を加味するべきだということをこの命令で言っている訳ですが、そういう風に致しますと、別途イーライセンスのようなものが出て来た場合に、それを使おうとする場合に、それを使ってもですね、追加負担という問題が起きないで済む可能性があると。今はジャスラックのものであれば、もう放送事業収入×1.5%、実際はもうちょっと低い率だと思いますが、それさえ払えばもういい訳なんで、あと別な者と契約しようとすると放送局は追加負担が発生する、追加負担がかかると放送局としては困るもんですから、そうものは使うなということにここでなっちゃいます。したがって、利用割合を加味して下さいと、1%でも2%でも良いのですが、98なり99なりそれはやってみなければ分からないんですが、新規参入者の分が反映されるような、利用割合を加味した徴収、同じ包括徴収であっても、利用割合を加味して頂ければ、今申し上げたような放送局側の反応は無くなるでしょうと。ただ、申し上げておきますが、これは、現行の1.5%で徴収している利用料総額というものが一定、これが正しい、これを維持すべきだということを我々が言っている訳ではありません。それはまさに交渉でですね、当事者同士がお決めになれば良いことです、だけど、利用割合を加味して下さい、そういうことだけ言っています。そういうことが行われた結果、総額としての利用料、利用料総額が増えるか減るかこれは分かりません。これはまさに競争に基づく当事者同士の契約でどうなるか決まって来る訳でございまして、いずれにしても、新規参入者が、利用者側から見てそれを使ったら損だといういうような契約内容をジャスラック側が、これは契約の片方の当事者である訳で、一方に放送局がいる訳ですけれども、そういう契約内容を見直しなさいと言っていう命令をしている訳です。

○松野委員 いやあの、ですからね、ジャスラックが私的独占又は不当な取引制限をしたならば、ジャスラックに対して排除命令を出すことは当然だと思います。ただ、先ほどあげられた、排除命令を出された事実は、それは放送局側の内部通知があったからジャスラックに排除命令を出したんだという、それはちょっと違うんじゃはないかと思うんですよね。この条文によると事業者は私的独占又は不当な取引制限をしてはいけない、ジャスラックが私的独占又は不当な取引制限をしたならば、ジャスラックに対して排除命令を出すのは適当だと思うんですけれども、今回はジャスラックは何も私的独占もしておりませんし、不当な取引制限もしてない訳です。何故ジャスラックに排除命令が出たのかというのは、僕は非常に疑問なんです。ちょっと文科大臣にお聞きするんですけれども、この包括契約というのは世界的に見て日本が独特な契約なんでしょうか、僕は諸外国でほとんど包括契約だと思うんですね。放送事業者と著作権管理者の契約というのは、諸外国もほとんど包括契約をしていると思うんですけれども、その辺ご答弁頂けないでしょうか。

○高塩次長 先生ご指摘の通り、諸外国におきましては、放送事業者が管理事業者に支払う放送使用料につきましては、ほとんどの場合が、欧米先進国も含めまして、ほとんどの場合、包括契約に基づいて行われているとしていると承知しております。

○松野委員 あの、委員長、今聞いて頂いた通りなんですね。要は、諸外国で見ても、ほとんど1曲1曲を放送事業者が、この曲を使いました、これに対する著作権料はいくらです、この曲を使ったんでいくらです、1曲ずつやっている国はほとんど無いんです。どこも包括契約なんです。だから例えば私が今回感じたのは、ジャスラックはジャスラックで包括契約する、新規参入事業者は新規参入時業者でまた別途包括契約をすれば良い訳ですね。決して現場のプロでジューサーにヒアリングしたところ、売れている曲はどこが著作権を持っていても使うんだよと、包括契約があるからと言って絶対に入り込めないような状況じゃあ無いということを何人も証言しているんです。にもかかわらず、先ほど申したように、ジャスラックが私的独占又は不当な取引制限をしていないにも関わらず、そこをしている確認はできているんですか、委員長。

○竹島公取委員長 私どもが言ってますのは、ジャスラックが例えばイーライセンスに対して何か妨害をしたとか排除したとかいったことでは無いんです。このジャスラックが放送事業者側と結んでいる契約、自分のところの利用割合を反映しない、そういう契約を結んでいる行為が排除型私的独占行為に当たると言っているんです。

○松野委員 いや、あの、だからジャスラックが例えばその私的独占をしたり、包括契約をしてうち以外を使ったらばそれはもううちとの取引を止めますよとか、そういう不当な取引制限をしたならば、ジャスラックに対して排除命令が出るのはこれは理解できるんですよ。でも、そういう事実は無い訳ですよね。そういう事実は無いにもかかわらず、この包括契約が他を排除しているから、ジャスラックに排除命令を出したとおっしゃっているんですが、諸外国は皆包括契約なんです。ドイツでは、包括契約をしなければならないと法律で著作権法で決めているんですね。アメリカでも2社が包括契約をしている。ほとんどの国が、1社なり2社という非常に狭い著作権管理事業者が包括契約をしているんです。日本だけそれはダメなんだ、排除命令なんだと、これは私的独占なんだとおっしゃることに、僕は非常に違和感を感じている訳です。で、今回の排除命令で、例えば、じゃあ、公取としては、じゃあ今後どういう風にすれば良いとお考えなんですか。

○竹島公取委員長 今のご質問にお答えする前にですね、私どもも外国において包括契約が行われているということは承知しております。アメリカにおいては、今から数十年前から大変な問題があって、アメリカは確か著作権管理事業者として大きなのが3つあるはずですが、それで包括契約も確かにありますが、パワープログラムちゅうんでしょうかそうじゃないものもありましてですね、それからトラブルがあった場合は、いわば仲裁委員会みたいなもの、料率についての仲裁委員会みたいなものもあって、それで現実に競争が排除されているという状態では無いんだと思うんですが、同じ外見上ですね、ドイツなんかは物の考え方が違うのかも知れませんが、少なくとも日本においては、平成13年に管理事業法を作られて、いわばその1社独占から、そうじゃない新規参入を入れて良い競争をさせることによって、権利者の立場も守り、利用もよりよいもの、より安く利用できるような、そういう条件を整備したはずなんですね。ところが、この契約、こうした利用割合を加味しない契約があるが故に、日本においては少なくとも、全然競争が起きていない、新規参入もない、放送の利用分野においてですね、新規参入はありません。イーラセンスがやろうとして、それが排除されて、それ以来私は無いと理解しておりますが、したがって、あれからもうずいぶん経っているにも関わらず、そういった状態になっている。それは、利用割合を反映して下さいと、利用割合を反映させるために全数を全部把握するということは大変でございます。それは分かります。包括契約の良い点があるということは、十分我々も理解しています。包括契約を止めて下さいとは言っていないんです。言っていないんだけれども、利用割合を加味するようにして下さいと。それは私はできると思っている。今キー曲はもう全数的に把握して、どの曲をどれだけ使ったということをジャスラックさんに報告をしているはずです。それから、それ以外のところも、権利者に対してそのロイヤリティを分配するときに、どなたにいくら払えば良いか分からないんでその目安にするためにサンプル調査もしておられるはずで、精密な利用割合ができなければ、いわばその推計値というようなことは、現実に分配するときにはそういうものが必要な訳ですから、やっている訳なんで、そうした数値を入れるということもことりあえずはできるはずですし、行く行くこれだけ進んでいるそのコンピュータその他が進んでいるときにですね、少なくともキー局は、もう全曲把握して報告もしていることでもある訳なんですから、もっと精密な、誰の曲を何回鳴らしたということはですね、把握できる訳でございますから、ますます精緻な利用割合というものが計算できるようになるはずなんです。そうしたことをお考え下さいと。そのためにそれなり時間が必要でしょう、それは分かっております、常識的に必要な時間は使って下さいと。それから、相手方がある話しですと、放送局側がどういう反映するかによっても変わってくるけれども、そこはまず私どもが指摘している、この、その利用割合を反映しない包括契約というものをですね、直すということで交渉して下さいと、こういうのが公正取引委員会の立場でございます。

○松野委員 そうすると、じゃあ利用割合を割り出して、今のジャスラックとの包括契約のいくらか分かりませんけれども、まあ、いくらの中から割合分で、その新規参入業者に、使ったか使わないか分かんないけれども、今後はその割合で新規参入業者にその割合分を払いなさいと、包括契約の中のお金を外の新規参入時業者に分配をしなさいということですか。

○竹島公取委員長 そうじゃございません。オールジャパンでパイが一定ということではないんです。これはそれぞれの管理事業者が相手方と交渉してお決めになることです。ジャスラックが放送局とお決めになって引き続き包括契約なされれば良い、そのとき利用割合を聞いて下さいと、一方、例えばイーライセンスなり他の管理事業者がいたときにそこともまた包括契約ということもあるでしょう、なされば良い。そういうことでありまして、全体のパイ、今ジャスラックが得ている利用料収入の一部を割愛して誰かに渡して下さいということを言っている訳ではありません。

○松野委員 いや勿論、さきほどからおっしゃっているイーライセンスという会社もですね、僕はすばらしい会社で、今は聞くところによると、インディースという、そういう割と珍しいアーティストの曲を何千曲も今管理をされて、また僕は、それはそれで伸びてくるんだと思うんですよ。それが伸びてくるのは伸びてくるで非常にいいことだと思うんです。また時代を反映して、違う形のマーケットができて、またその事業者も伸びてくると、今あるジャスラックはジャスラックで勿論同じように伸びてくる、それが、僕は、対等な競争で良い事なんではないかと、決して、新規参入業者を排除したとかいう事実は今認定をされてない訳ですから、自由競争の新しい分野をどんどん新規参入業者が広げてくるということで、僕は、何も公取が入って、こうしなさいとか、こうしなさいというようなことでは無かったんじゃないのかなと思っています。自由な競争の中で、世界では、ずーっとそういう形界で、包括契約も当然認められるし、新しいところも、沢山の楽曲を1曲ずつ割り出すのが大変であれば、新規参入業者と放送事業者はまた包括契約をすれば良い。それ以外にも面白い管理をする新規事業者が出てきたならば、またそこも数が沢山になって1曲ずつ出すことが大変であれば、またそこも包括契約をすれば良い。これが、僕はある程度自由な競争なんではないかという風に実は思っているんです。そういう中でいや寡占率があまりにも高いからという事象だけを僕はご覧になって、だから独占しているんだと、だから排除命令をなんだとされたような気がしてならないんで、実は今日こうした質問をさせて頂いている訳です。今何回伺っても、さっきの、えー、法律のですね、ジャスラックが、独占禁止法の第3条に当たる、事業者は私的独占又は不当な取引を制限してはならないに違反しているという事実が無いんですよね、委員長。

○竹島公取委員長 先ほどご答弁申し上げましたように、そういう利用割合を全然加味しない、そういう契約をしたことが排除型私的独占に当たると申し上げているんです。したがって、ただジェアが大きい、よって何か違反だとかそんなことは一切申し上げてません。大きいことが悪いこと必ずしもありませんので。それがこういう契約をすることで、現にイーライセンスという者が参入しようとしたけれどもできなかったという事実がある訳なんで、ただ我々も机上の空論を申し上げている訳ではない。そういう事実があったんで、これは、この契約が、まさに排除型私的独占に当たる、で今委員がおっしゃるような自由な競争、確かにどれもこれも皆さん頑張って包括契約結ぶなら結ばれれば、平成13年に管理事業法ができて、そういう状態が8年経っても一切できていないということに見られるように、決して、今先生がおっしゃったような状態は起きていないと、大きな原因はここにあると、少なくとも、大きな原因の一つがあると見ているんです。

○松野委員 いやいや、そんなことは無いんじゃないんですか。新規参入事業者が管理をしている売れた曲名、僕も聞きましたけれども、テレビでばんばん流れているじゃないですか。あの僕も現場のプロデュサーに聞いたんですが、僕ら使うよと、使っているよと、現に流れているんですよ、委員長、これが全部全くテレビから流れていなくて現に排除されていて、テレビから100%排除されているなら分かります。ただ当然ジャスラックが管理している曲の数と新規参入事業者の管理している現在の数の割合が圧倒的に違うから、新規参入事業者の管理している楽曲の流れる割合が当然低くなるんですけれども、全く流れてないですか、委員長。

○竹島公取委員長 私どもが調べた範囲でですね、特に何回も例に出して恐縮ですが、エーベックス、イーライセンスが扱おうとした管理楽曲、これについて具体的な排除効果が及んだということは我々把握しておりますし、それから冒頭申し上げましたように、放送局の中において、別の管理事業者の曲を使おうをしたらそれはいけないと、追加費用が発生するから使うなと、こういうことになっている。コマーシャルとかなんか使われているものと違う可能性がありますね。コマーシャルでは使われている、それは別な著作権使用料の支払いの形になっている場合があると思いますんで。放送局が流すということに関しては、私が知るところ、ジャスラックの管理楽曲以外は流れていないと理解しております。

○松野委員 まああの概ね時間が来てしまったので、これしかできなかったんですが、何でこんな私は質問をさせて頂くかと言いますと、今日本の音楽にしても、映画にしても、アニメにしても、もう世界的にものすごいレベルにまで達しているんです。特に東南アジアを中心にですね、東南アジアどころか、映画なんかはもうアメリカ本土でも、日本の映画のリメイクをしてですね、ハリウッドが映画を作るような時代にまで来ているんですね。すごく世界標準ということが僕は求められるんではないかという風に思うんです。それで以前から、輸入CD還流防止法案だとか、コンテンツ法案だとか、今回も経済産業の方では、また新しい、コンテンツの管理事業を国が後押しをして作ろうなんていうことを言っている、非常にこのソフトのビジネス、このエンターテイメントのビジネスというものが世界的にものすごく外貨を稼げるんじゃないかと、それくらいのレベルに達しているんで、逆に期待をしているんです。そういう中で、その勿論新規参入事業者もどんどん伸びてもらいたい。いろんな業者が、いろんな管理業者が楽曲を管理して、今度は世界になるともっと著作権の管理はより複雑になってくると思うんです。そういう中で、ある程度世界基準の中で、きちんと日本が、今回の著作権法改正もそうですけれども、きちんと著作権が管理できる状態をまず今固めておかなければならない状況に来ていると思うんですね。世界で日本のアーティストが演奏している音楽が流れる、映画が流れる、そして、その著作権が日本に入るという、こういうことを是非後押しをして行きたいという風な思いがあって、今日あえて、この質問に立たせて頂いたんですけれども、そういう中で、世界的に見て包括契約をほとんどの国をやっていると。で、当事者に対する不当な排除行為が見受けられない状況で、包括契約が新規参入時業者を排除していると、だから、ここに排除命令を出したんだということが、どうも腑に落ちなかったんでですね、今回質問に立たせて頂きました。今日、当委員会にわざわざ委員長にお越し頂きまして、ありがとうございます。議連で一人でやっているときに、いろいろお話を聞かせて頂いて、非常に斬新な考え方をお持ちの委員長で、非常に期待をしているところでございます、どうか今後、是非、そういう観点から私たちもやって行きたいと思って行きますんでよろしくお願い致します。当委員会におきまして、お時間を頂きましたことを心から感謝申し上げまして質問を終わらせて頂きたいと思います。ありがとうございました。

○岩屋委員長 以上で松野君の質疑は終了致しました。次に川内博史君、川内君。

○川内博史委員(民主党・無所属クラブ・九州ブロック)おはようございます。川内でございます。委員長や理事の先生方にお許しを頂きまして、当委員会で発言の機会を頂きましたことにまず心から感謝申し上げたいと思います、ありがとうございます。それでは早速質問をさせて頂きます。著作権法第1条には、この法律は、著作物並びにレコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とするとこう書いてございます。えー、文化的所産の公正な利用に留意しつつ著作者等の権利の保護を図ると、利用が先で、保護が2番目に来るというこの目的規定、それが文化の発展に資するのだということになろうかという風に思いますが、えー、その著作者、著作物を創造する人たちも最初は著作物の利用者であったと、今はもうインターネット時代で、全ての人がクリエーターで全ての人がユーザーであるという風に言えると思うんでございますが、そこで、この著作権法が非常に大事になる訳でございまして、だからこそですね、私自身はこの著作権に関する議論に関して、私自身は利用者の立場に立っていつも議論するようにしております。それによってバランスが保たれるのじゃないかなあと感じております。ます聞かせて頂きますが、今回の著作権法の改正では、利用者の立場から見て、非常にああこれは問題だなあという風に思うのは、30条の私的複製に関してですね、違法にアップロードされているサイトからダウンロードすることは違法ですよという、まあ、私的複製は著作権法上30条で元々どんなものであれ合法だよという風になっていた訳でございますが、今回の改正でダウンロードが違法化されるということでございますが、まず文化庁にお伺いしますけれども、私的使用のためのダウンロードを違法とする規定を設けるに至った立法事実が何なのかということをご説明頂きたいと思います。

○高塩次長 今回30条の改正をおこないましたのは、近年ですね、インターネットの普及、それから大規模な高度化を踏まえまして、特に携帯電話向けの違法音楽配信サイトやファイル交換ソフトによりまして違法に配信される、音楽や映像作品を複製、ダウンロードする行為が正規の配信事業を上回る規模になっていると、こういった指摘がございまして、そういった指摘を踏まえて、今回著作権分科会で審議をした結果、今回の法改正につながっていると考えております。

○川内委員 指摘があって、それを踏まえてそれを踏まえて法改正をしたと、その指摘をしていたのは誰ですか。

○高塩次長 今回審議会におきましては、様々な資料を検討した訳でございますけれども、それにつきましては、権利者団体でございます、日本レコード協会、さらに財団法人のコンピュータソフトウェア協会などの実態調査結果というものを元に、審議会の方で検討したということでございます。

○川内委員 今あのレコード協会などの業界団体の指摘に基づいて、それを立法事実として審議会で議論をして法改正をしたという風なご説明だったかと思いますが、私は、その権利者団体の指摘に基づいて、著作権法を改正します、新たな権利を設けます、損害賠償を請求する権利を設けますということに関してですね、これはあの非常にネットユーザーを不安定な立場に置く訳ですね、これ損害賠償請求がいつ送られてくるか分からないという状況になる訳でございますから、これはあの手続き的にも厳正にすべきではないかという風に考えます。文化庁からのご説明では、仮に損害賠償請求権の権利行使を行う場合には、事前に警告を行うなど慎重な手続きを取るようにに努めるはずであると、権利者はですね、あるいは権利者団体はそのようにするはずであると説明を受けておりますけれども、文化庁としては、これは法律ができればそれはそもそもそういう権利がそういう権利が創設される訳ですから、法律上はいつでも損害賠償請求ができるということになる訳でございまして、これは、どのように関係団体に指導されるのか。明確にですね、議事録に残したいという風に思いますが、お答えを頂きたいと思います。

○高塩次長 今回の法改正におきましても、権利者団体側におきましても、今回の法改正におきまして、先生からご指摘のございました、利用者への法的な措置、損害賠償をいきなり行うというよりはですね、違法ダウンロードというものが適切でないということを、権利者団体としてのホームページやマスメディアを通じますものを周知致しまして、今の違法なインターネット配信の状況をですね、改善するということに努めたいと、また違法行為を助長するような行為の警告につとめたいということで、権利者団体がいきなり利用者に対して先生ご指摘のございましたような損害賠償を請求するということは基本的にはないと考えております。また、先生もご承知のように、インターネットにつきましては、あるサイトからダウンロードを行っているということについてですね、それを発見することが技術的に困難でございます。ご承知のプロバイダー責任制限法におきましても、サイト運営者に対するダウンロードの個人情報の開示の手続きというものはございませんので、ダウンロードを行う利用者を特定するということは困難ではないかと考えております。ただ、私どもとしては、今回この改正を踏まえまして、先生がご懸念しているような恐れを軽減しなければならないという風に考えておりまして、文部科学省と致しましても、利用者への改正内容の周知徹底、違法サイトを識別するための権利者団体による取り組みの支援に加えましてですね、権利者団体に対しまして、仮に権利行使を行う場合には、先生ご指摘のございましたような、事前の警告を行うなど、慎重な手続きを取るよう指導をして参りたいと思っております。

○川内委員 もう一つ条文の解釈を明確にしておきたいと思うんですけれども、47条の8で、電子計算機における著作物の利用に伴う複製、というところがございます、これ分かりやすく言うとですね、ユーチューブとかあるいはニコニコ動画とか、最近あのもう沢山の人がユーチューブあるいはニコニコ動画にアクセスして、それを、まあ、音楽やあるいは動画を見るということをしている訳でございますが、これは、パソコンていうかコンピュータは使い勝手が良いように自動的にキャッシュという形で見たものを複製するという機能を持っている訳でございまして、これなどもですね、ユーチューブやニコニコ動画を見ただけで、これが違法になってしまうというようなことが想定をされてしまうようでは困るということで47条の8が置かれているのだろうという風に思いますが、どのような手続きでアップロードされているものであろうと、ユーチューブとかあるいはニコニコ動画等でただそれを見るだけでは違法にならないよと、見るだけなのは違法ではないですよにはということを、明確に、47条8の解釈を明確にして頂きたいという風に思いますが。

○高塩次長 先生ご指摘の通りでございまして、この法律案では、動画投稿サイトなどにおきまして、違法投稿された動画を視聴する際にコンピュータ内部に作成されるキャッシュ、情報の蓄積物については、この改正案の47条の8項に盛り込まれております、電子計算機の著作物の利用に伴う複製に関する例外規定をおいておりまして、権利侵害にはならないという風に考えております。ただ、こういったキャッシュをですね、さらにキャッシュホルダから取り出して、別のソフトウェアで視聴したりとか、別の記録媒体に保存したりする場合には、例外規定は適用されず、原則通り著作権が及ぶと解しております。

○川内委員 見るだけだというのは全然問題ないと、今回の対象にならないよということですよね。もう一度ちょっと。

○高塩次長 そうでございまして、あの、今回30条は、いわゆる違法な配信からのいわゆる録音録画、ダウンロードでございまして、視聴というものは違法にならないということでございます。

○川内委員 これ電子計算機という言葉が使われている訳ですけれども、携帯電話などでもですね、ユーチューブとかニコニコ動画とか見れるはだと思うんですが、携帯電話などのモバイル機器も同様であるということでよろしいですね。

○高塩次長 そのように考えております。

○川内委員 えーと、そのように考えているというご答弁はちょっと。電子計算機という言葉の中には、文化庁、というか政府が優先解釈権を持つ訳ですから、電子計算機という言葉の中には携帯電話等のモバイル機器も含むのだと明確におっしゃっていただけますか。

○高塩次長 あの、47条の8の電子計算機には携帯電話などモバイル機器を含むと考えております。

○川内委員 さて、あの、大臣にお伺いを致しますが、私はですね、この著作権法の運用に当たってはですね、著作法第1条の目的規定、その、先ほども私が申し上げた通り、公正な利用に留意しつつ、権利の保護を図るというところが大事だろうという風に思うんですけれども、えー、大臣のご所見を承りたいんですけれども、消費者、利用者が利用しやすいようにしながら権利の保護を図って行くという、著作権法のそもそもの考え方について大臣のご所見を承りたいと思います。

○塩谷大臣 著作権法については、今川内委員がおっしゃったように、利用者の公正な利用あるいは権利者の保護という観点で、まあ、時代の変化によって情報化等が進む中で、その状況に応じて、いろいろと改正を重ねて行かなければならない、また、世界的な問題もありますし、これから国際的にはいろんな課題がやはり出てきていますので、ただ、基本はおっしゃったように公正な利用と権利者の保護と、このバランスをどう取って行くかということが非常に重要だと思っております。

○川内委員 そこでですね大臣、私は音楽が大好きで、この携帯電話の中にですね、音楽配信サービスで着うたフルというサービスがありまして、40曲くらい入っているんですけれども、全て合法的にきちんとお金を払ってダウンロードをさせて頂いておりますが、この着うたフルというのは異様に高いんですよ。1曲400円とかですね、1曲でですよ、450円とか、安いものでも350円とかですね、する訳でございまして。これは世界中探してもですね、着うたは150円とかあるんですれども、短いフレーズですね、でも1曲まるまるで400円とか、450円とか、これは世界中探してもそんな国はどこにも無い訳でありまして、外国なら1曲大体100円くらいだと思うんですけれども、この着うたフルの日本のこの高さ、1曲400円というのは、いかにも高いという風に思うのですが、大臣どう思われますか。

○塩谷大臣 まあ、着うたフルの値段1曲400円か450円ということですが、これについてはやはり、サービス事業者のビジネスモデルや利用者のニーズ等によってですね、価格が決定されると思いますので、私から、それが高いかどうかは判断する立場にございません。今ちょっと声が少しございましたが、CDなんかで、2曲入っては1000円とか1500円とか、それに合わせて行くとそれくらいかなあという考え方もあるし、世界的にもっと安いということになれば、今後の需要供給等のバランスも、これもまた、いわゆる価格を決定するのではないかと考えております。

○川内委員 まあ、この、モバイル機器に様々なデータを蓄積してそれを利用するというのは、非常に今日本では、我が国では、世界中でもそうでしょうけれとも、ポピュラーなもうライフスタイルの一つになっている訳でございまして、そういう意味では、中学生や高校生が携帯電話を持つことの是非はまた別に議論すべきことであろうかと思いますが、しかし実態としてもう中学生、高校生が携帯電話を持ち、そこに音楽や映像をダウンロードし、そして利用をしているというライフスタイルがあると。で、その時にですね、私は、なるべく安くする方が、沢山の人がそれを買い易くなるし、ビジネスモデルとしてもその方が大きく発展をして行くのではないかと思っておりますが、文化庁のご説明ではですね、大臣のご説明でも、パッケージの商品ですね、CDとかDVDとかですね、物として、物に固定して売るという、パッケージの商品が最近はこういう電子配信などでどんどんシェアを食われて売り上げが落ちているので、その売り上げをカバーするために1曲400円くらいにせざるを得ないのではないでしょうかというご説明を受けているんですけれども、しかし、主に音楽や映像を楽しむ世代が、若い世代であると、主にですよ、中学生や高校生あるいは大学生、あるいは20代30代の世代が、そういうことに最もお金を使うであろう世代であるとすればですね、なるべく安くしてなるべく多く利用してもらうということが、私は文化の発展に資するということになるのではないかという風に思います。そこで、さきほど同僚の松野委員から、公正取引委員会にジャスラックの件について、公正取引委員会の今回のジャスラックに対する処分て言うんですかね、がちょっと違うのではないかという主旨のご発言があった訳ですけれども、私は全く違う観点からちょっと聞かせて頂きたいという風に思うんですけれども、着うたについてはですね、公正取引委員会は、レコード会社各社が、レーベルモバイルという会社に業務委託をし、そして、そこから着うたを配信しているということに関して、行政処分を、不公正な取引方法になるんですかね、ということで処分をし、今、裁判で、レコード会社各社はそれを認めずにですね、争っているという風に聞いておりますけれども、まず、この着うたについてですね、えー、審判事件の概要について公正取引委員会からご説明を頂きたいと思います。

○山本和史公正取引委員会事務総局審査局長 お答え申し上げます。ただいま先生ご指摘の着うたの事件につきましては、公正取引委員会は、株式会社ソニーミュージックエンターテイメントなど着うたの提供業者5社が共同して設立致しました会社に対して着うたの提供業務を委託する一方で、共同して他の着うた提供業者に対しては原盤権の利用許諾を行わないようにしているという行為が、不公正な取引方法でそして禁止しております、共同の取引拒絶に該当するとして、独禁法19条の規定に違反すると判断し、昨年、平成20年7月に排除命令を出す審判審決を行ったところでございます。本件につきましては、ただ今、先生ご指摘の通り、その後会社4社から、審決取り消し訴訟を提起され、現在東京高等裁判所において継続中でございます。

○川内委員 まあ着うたについて、そのようなことであるということですが、着うたフルもですね、ビジネスモデルが一緒なんですね、着うたと着うたフルは全くビジネスモデルが一緒ですから、ああ、まー、そもそもですね、その変な相談でもしていなければ、1曲400円で配信をですね、堂々とやるなんていうことは私はできないと思いますよ、大臣ね、恥ずかしいですからね、1曲400円で、着うたフル1曲400円でしか変えませんというようなことは、お互い相談していなければ、あるいは他の業者を排除してなきゃできないことですから、私は、着うたフルについても、数社が共同で設立したレーベルモバイル株式会社に業務委託をし、また諸外国と比べて異常に高い、価格競争が全く働いていないということなどからですね、この着うたフルの業務が、独占禁止法の第19条の不公正な取引方法、独占禁止法の第3条の不当な取引制限に当たると思料致します。よって、独占禁止法第45条に基づいて、この事実を公正取引委員会にこの場で申告したいという風に思いますが、公正取引委員会は、この申告を受理して頂けますでしょうか。

○山本局長 お答え申し上げます。ただいま、先生のご指摘のありました件については、申告としてお受けさせて頂きたいと思います。ただ、今申し上げました通り、着うたの件では、着うたの提供事業者が共同して他の着うた会社に、利用許諾を行わないようにしている行為を、共同取引拒絶行為として問題としたものでございますけれども、申告して頂きました内容を検討の上、適切に対処して参りたいと考えております。

○川内委員 適切に対処して頂きたいと思います。あの、私はですね、あのー、要するに、その、著作権法の目的、文化の発展に資するということを実現をして行くためには、ネット社会では、全ての人がクリエーターであり全ての人がユーザーであるという考え方の元に、もう、なるべく多くの人にコンテンツが利用できるような環境というものを作って行かなければならないんだという風に信念として思っております。で、世界中どこを探しても、1曲400円で着うたフルを配信するなどということをやっている国は無い訳でございまして、そういう意味では、これはどんな理屈をつようが、それはおかしなことはおかしなこととして、それがなるべく安くなる方向にして、そして沢山売ることによって売り上げをあげてちょうだいねというビジネスモデルを作って頂きたいなという思いで申告をさせて頂きました。さて次に、次にというより、もう最後ですが、日本版フェアユース規定の導入について質問致します。先ほど、大臣からもまだまだこれから多くの課題があるというご発言がございました。まず、知財戦略本部に伺いますが、日本版のフェアユース規定の導入について政府の基本方針をご説明頂きたいと思います。

○内山俊一知財戦略本部事務局次長 お答え致します。知的財産戦略本部におきましては、本年4月6日に、2009年度から2013年度におきます知財戦略の基本方針を決定したところでございます。この中におきまして、委員ご指摘の権利制限の一般規定、いわゆる日本版のフェアユース規定については、著作権法における権利者の利益を不当に害しない一定の範囲内で、公正な利用包括的に許容し得る、権利制限の一般規定の導入に向け規定ぶりなどについて検討を行い、必要な措置を講じることとしております。知的財産戦略本部におきましては、本基本方針を踏まえまして、今後知財計画2009の策定などにおいて適切に対応して参りたいと思います。

○川内委員 導入に向けて検討を進めるということで良いんですよね。ちょっともう一回済みません。

○内山次長 お答え致します。第3期の基本方針の中では、委員ご指摘のように、権利制限の一般規定の導入に向け規定ぶりなどについて検討を行い、必要な措置を講じることとしております。

○川内委員 日本版フェアユース規定の導入についての文化庁の、政府の知財戦略本部、これは閣僚全て入っているか、閣僚は全て入っているんだよね、閣議決定と似たような決定になるんですよね、政府の方針になると、そこでそういう方針が決められたと、でまあ、文化庁としては、日本版フェアユース規定の導入について、それを受けてどのようにされるのかということをちょっとご説明頂きたいと。

○高塩次長 知財戦略本部の方から、日本版フェアユース規定の導入が必要とする報告書が提出されたことについては、今答弁があったところでございます、このフェアユースの規定を我が国の著作権法に設けることについては、アメリカではフェアユースがある訳ですけれども、両国の違いから従来慎重な見解が多かった訳でございますけれども、文化庁と致しましては、知財本部からの報告書の内容も踏まえまして、幅広く論点を整理した上で、今年度から文化審議会著作権分科会において、具体的に審議を始めたいと思います。

○川内委員 最後に、大臣からもですね、日本版フェアユース規定の導入に向けて、大臣としてもですね、文化審議会での議論を加速して頂けるように督励をして頂きたいという風に私は思いますが、大臣のとしてのご所見を聞かせて頂きたいと思います。

○塩谷大臣 著作権法につきましては、文化審議会の分科会で検討して、必要な改正を行って来ている訳でございまして、今、あの、知財戦略本部の報告、そして我々文化庁としても、それを踏まえて、今まで慎重だった訳でございますが、しっかりと実際の今までの運用等、あるいはヒアリング等もしっかりこちらで行って審議を進めて参りたいと考えております。

○川内委員 終わります。ありがとうございました。

○岩屋委員長 以上で、川内君の質疑は終了致しました。次に、和田隆志君、和田君。

○和田隆志(民主党・無所属クラブ・中国ブロック)民主党の和田隆志でございます。民主党もう4人目のバッターでございますので、ここらで法案に対する姿勢も示しながら質疑を進めたいと思います。あの塩谷大臣、我々今回の法案提出を受けまして何度か会議を持ちましたけれども、今回、法案の提出理由、主旨等については、概ね非常に理解できるという結論でございます。しかし、これから先是非賛成して頂くためにもですね、これから30分から大臣の前向きの答弁を頂いて、私どもも、安心して文科省にこの行政を任せるられるよう感触を持った上で採決に望みたいと思います。よろしくお願い致します。それでは、先に立たれました3人の我が党の同僚の委員の質疑も参考にしながら、ちょっと進めて参りたいと思いますが、まず、塩谷大臣、今回のこの法改正の内容、目的等を拝見しました際、大体として、価値あるものが、世の中に適正な対価をもって取引される環境を整えて行くために一歩を記すのだというようなイメージをもって私自身は受け入れた次第です。先ほど来、何度もご議論が出ていますけれども、常識的に言って、着うた着メロが1曲400円というのは、誰が考えても高いという風に、この委員会室の中にいらっしゃるほとんどの皆様方がお感じになることだと思います。では、本当に適正な対価で、どのような形で取引されるのが、正しい姿なのかを考えて行くべきということから、今回の法改正を提出頂いたものと推測致します。実は、党内での会議でも申し上げたのですが、私今回この法案を自分で担当させて頂くに当たりまして、やっぱり国民の皆様方の反応を聞かなければならないと思いまして、一番若い者が集まります渋谷に行って参ったんです。何百人か聞いた上なんですけれども、今ほとんど、高校生、大学生以上の方々が、必ず1曲か2曲か着うたをダウンロードしていらっしゃる、その方々に一つ一つ携帯を見せて頂きながら、このダウンロードは本当に適法なものか違法なものか知っているという風に訊ねると、ほとんどはそんなもの知りませんよとおっしゃるんですね。若い方々です。私自身も不勉強でしたが、やるうちに、これは海賊サイトだこれは適正なサイトだと分かってくるんですけれども、これらについて、そう言った、現にダウンロードしている方々の意識を聞くと、違法でも適法でもいいじゃない、ダウンロードできるんだからていう風におっしゃる若い方々が多いんです。私ども、今、委員も合わせまして皆さんで、文部科学行政、つまり子供の教育という観点から最も大きな重点を置いて審議しなければいけない場でございますが、私たちの将来の社会を将来担ってくれる若い人たちが、一つの道徳規範を持たないまま、大人になって行くことに、私自身は、若い方々、200人程度当たっていて、すごく怖い感じが致しました。そういった意味で、今回、どの分野であって、正しいことは正しい、間違っていることは間違っているという風に、この私たちの将来を背負ってくれる、若い人たちに認識してもらいたいということから、私今回、この法改正は良いことではないかと感じております。ただし、先ほど申し上げた通り、400円で1曲ダウンロードさせる世の中は、先ほど川内委員からご指摘があったように、我が国くらいのものです。これが適正な価格で取引されるためには、当然、国民の皆様が本当に価値あるものだと認めた上で、その価値に対して適正な対価を支払うという文化、意識を醸成することが、一つの国の役割だろうという風に考えている次第です。そこでなんですけれど、大臣、今回なんですけれど、内容的にはいろいろございます、障害者の方々の利用を促進する条項、当然入れて頂いて結構だと思いますし、また本当に絶版となっているものが、どういう風に著作物として取り扱われるのかについて、そういうものについての規定をおいて頂くのも結構でございます、国会図書館でいろんなデジタル化を図って頂くのも結構でございます。一番議論になっているのは、結局、先ほど来何度も出ているように、最初の元が違法だという風に知りながら、それをダウンロードする、もしくは販売するといったことについての規定を今回置こうとしている訳でございますが、こういった規定を置くことは、最終的に国民の皆様方の幅広い利用を促進するために置く規定だと私自身は解釈しております。そこで、大臣にご意向をお聞きしたいのですございますが、こうした規定を置く以上は、一歩で終わるのでは無く、二歩三歩と歩を進めて頂いて、著作権を扱う業界におかれても、本当に違法と適法を切り分けた上では、適法なものについては適正な価格をつける、400円は普通常識外だと思いますが、そういったことをですね、業界の方にも行政府のトップとして指導するべきではないかと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

○塩谷大臣 あの、まあ、現状は先ほど渋谷の話があったように、誰もがダウンロードしてですね、それが違法かどうか分からないというようなのが現状だと思っていますが、おっしゃるように、いかにこの正しく広く流通させるかということだと思うんですね、そこら辺で、今回は業界側にも、こういう法改正をして、しっかり正しく利用を広めるという方向でおこなってほしいと、その結果、価格も適正なものになるだろうということを期待しての今回は一歩だと思っておりまして、一方で、権利者の方等もお考えの中で、広く普及利用されれば、その分もしっかり確保できるだろうという方向で、今回検討した結果だと考えております。

○和田委員 あの、当然のことながら、各著作物について、その権利者が自分で自分の作品がどれくらいの価値があるものか、それをですね、それを考えて、価格をつける自由を阻害するべきではないという風に思っています。ただ、世の中には著作物以外にも沢山のものが取引されておりますが、そうしたものは一旦価格がついた後でも、当然ことながら、需給原理によって、価格は動いて参る訳でございます。この曲はすばらしいなあとみんながダウンロードしたいなとわっと需要が高まる場合には、普通の物の取引原理で考えると、その着うたの値段がすーっと下がって行くと、そして適正な価格をつけたつもりなんだけれどもと、なかなか売れないなというときは、ちょっとずつ価格を下げて売れるところまで持って行くと、逆に権利者の方が売れるのは俺の著作物の価値が高いからだと、それであれば、もっと価格を上げる下げるということを考えても良いのではないかと、私自身は、こういった市場原理が著作物の中にもしっかりと行き渡ることが本来必要なのではないかと感じております。今回は、発端となったのが、著作物を扱っている業界の方から、もう既に、適法にダウンロードされたり引っ張られたりするものより、違法にダウンロードされたりするものの方が圧倒的に数が多くなっているんです、これはいかにもおかしいんではないかという声を受けての法改正でございました。しかし、その方々の要望を聞くという形もさることながら、最終的に考えなければならないのは、国民の皆様が、先ほどの川内議員の発言、良い発言だと思ったんですが、全てがユーザーであり全てがクリエータであると、そういう原理の中で動かれていて、じゃあ自分は情報を発信してみよう、情報を受けとって見ようという文化を作って行くことに、この法案改正の目的があるのだと思っております。そうした意味におきまして、先ほどの答弁をお聞きしておりまして、ある程度のところは理解するのございますが、一つポイントとして、もう一つお聞きしたいのは、今後、大臣として、この法改正を行ったあと、著作権を管理する団体等について適正な価格として取引されているかどうかという観点から、指導する所存がおありでしょうか。

○塩谷大臣 現在のところ、まあ、価格については、特にビジネスにかかわる問題でございまして、先ほども著作物の価格がどうかと聞かれて、私どもは、その、それを高いどうのと言う立場にない訳でございまして、あの、希望としては期待をするというような言葉で発信することはあると思いますが、指導というところまでは、なかなか、価格については私どもから言う立場にないと考えております。

○和田委員 行政府のトップとしてはそこまでのご答弁が多分限界だと思ってお聞きしました。しかし、我々が、最終的にこの法改正案に賛否を決するときに、意思として表明したいのは、そこまでが行政の限界であれば、当然、今度は、業界側の自主的な方向付けを望むということを意思として表明しておきたいという風に思う訳でございます。この点は、すぐ後の、付帯決議等でも検討して参りたいと思います。それでは次の問題に移りたいと思います。今回、まあ、外国でもこの著作物についてはいろいろな議論が起こっている最中でございます、委員各位にあっても、各新聞に何度か報道されておりますので、ご存知ではないかと思いますが、今世界の中で最も検索サイトとして知られているものにグーグル社というものがございます。このグーグルという会社が先般、自分が絶版だと見なしたような著作物について、自分でいわゆるスキャンと言いますけれども、映像を取って、それをデジタルコンテンツとして配信することを要するに考えていると。ついては、著作物を編み出した権利者、こういった方々にその使用を認めてもらうよう、権利料をある程度払うから意思のある人は言って来て下さい、というような主旨の和解案といいますか、権利者の間でいくつか訴訟になっておりますので、そうした案を示したところでございます。訴訟、ちょっとまだまだ外国の中で賛否両論あったり、権利者団体からすればどっちに動いてよいか戸惑っているというところもありまして、当初この審議の直前、ゴールデンウィークの最中に、期限を迎えるところだったんですが、期限が4ヶ月延長され、9月までに、応じたらどうかというところを期限延長したという報道が出たばかりでございます。そこで、ここまで紹介したところで、委員各位にもお考え頂ければと思いまして、今日は、法律の解釈論としてですね、一般的にどのようになるかということから始めて行きたいと思いますが、内閣法制局の方に来て頂いております。私事前に通告致しておりますので、大体の主旨はご理解頂いているかと思いますが、今回、このグーグル社が和解案に応じてくれと言って来ている範囲の物ですけれども、当然アメリカにある会社で、アメリカの中で著作された物についてはその範囲となっている訳でございますが、しかしですね、実は、アメリカに持ち込まれているものについては全部対象となるという風にアメリカ側の報道では流れていまして、例えば日本で出版されたものがアメリカに持ち込まれて、アメリカで流通している場合には、これはもう既にグーグルの和解案の対象だと、対象だということは、その和解案に応じなければ、アメリカで訴訟をして自分の権利を守らなくてはならないということになるし、応じるのであれば、そこから応じた後は、自分の権利料をグーグルに払って頂く以外は、自分で権利を主張できない、少なくともアメリカ国内においては、ということになっているようでございます。ここまでご説明した上で、一般的に物を持っている方、一つの権利をもたれている方が日本国民であった場合、この日本国民の持たれている権利を、外国の法制上で、クラスアクションといういうんですか集団訴訟という制度があって、その中に自分が入らなければ、その後は、それに応じたものと見なすという風に考えられているということがアメリカの制度ではございます。これとの間でですね、日本国、我々日本国の国会ですが、日本国の権利をきちんと守るという上で、どんなことが可能なんだろうかということをですね、今日ちょっと内閣法制局の方にご答弁頂きければと思っている訳です。もう一度簡単に言いますとこのようになります。一般的に国民の権利が国外で脅かされる危険性がある場合にですね、その権利の有無の確認や、その内容、そしてその保護のあり方について、どういったことが日本の法制上考えられるのでしょうか、ご答弁頂けますでしょうか。

○宮崎礼壹内閣法制局長官 お答え申し上げます。一般論として、かつ著作権法に関してでございますが、ごく一般論として申し上げれば、各国の国内法は当該国内において適用されるというのが原則だと思います。我が著作権法につきましても、日本国民の著作物についての著作権、これが、国外においての保護がされるかどうかということにつきましては、当該著作物の利用行為が行われる国毎に、それぞれの国の著作権法制によって保護されると、こういうことであると、これが基本であると考えております。したがいまして、例えば、米国の著作権法が適用されます、米国の国内において、我が日本国民の著作物の利用行為が行われたと、こういう関係についての問題でありますれば、それは、直接的には我が国の著作権法の適用があるという問題ではなくて、ただベルヌ条約等の相加盟国になっていることによって、アメリカの著作権法により日本国民の著作権が保護されるという状態になっているということだと思いまして、そこで、保護されます権利の具体的内容については各国法で少しずつ違いがあってもそれはやむを得ないということであると。基本的にはベルヌ条約によって、日本の著作権法はアメリカの著作権者を保護しますし、アメリカの著作権法によって我が国の著作権も保護されますが、細かいところについては各国の法制の具体的な内容がどうなっているかということによると、こういうことだと思います。したがって、我が日本国民の持っている権利について、外国の法制度の元でいわば脅かされるような可能性があるかどうかというご質問でございますけれども、著作権者に関して言うと日本国内における利用行為が妨げられる風になれば、これはもうなかなか考えられないことで、それはあってはならないことだと思いますけれども、どうも問題は、我が国民の著作権ではありますけれども、国外における利用行為について、それは、自分の権利の侵害であるから差し止めを求めるであるとか、損害賠償を求めるであるとか、そういう権利の行使については、それぞれ当該外国の著作権法によって保護されているということでございますので、そういう前提で、それでも良いから、我が国としてどういうことができるかとなりますと、それは権利のそれぞれの内容であるとか、当該分野を規定します国際条約の内容がどうなっている等々見ないといけませんので、私どもの立場として一概にお答えすることが難しいと思います。いずれに致しましても、個別のケースに応じて、必要な場合には、関係各国の間で調整が図られることになるであろうという風に思います。

○和田委員 今のご答弁一生懸命追いながら私も聞いておりまして、まだ十分に理解しがたいとところもございますが、委員の皆様方いかがでしたでしょうか。長官、私自身今、ご答弁をお聞きしておりまして、理解したところまで、もし違っていれば正して頂けばと思いますが、日本国民の持っていらっしゃる権利が、外国に何らかの意味で持ち出し可能な場合は沢山あると思いますが、例えば、動産である車を持って出るときだってそうだと思いますが、その権利は本人が主張し続けることが可能ですね、今おっしゃっていた答弁では、この所有権は外国の法制によって守られているはずであると。そこで、日本の法制上、所有権を規定しているような各法制でございますが、そこから一端国外に出たら、外国の法制によって保護されるはずであるという風に受け止めたんですが、この部分は正しいんでしょうか。いかがでしょうか。

○宮崎長官 あの、なかなかごく一般的に所有権まで対象としてどういうことが言えるかにつきましては、確たることを申し上げる自信がございませんけれども、著作権法に関する限りは、法律によって近代生み出された権利でございますから、したがって、法律によって付与されることで始めて生まれる権利という性格がかなり強いのではないかと、その上で、ベルヌ条約等によって考えられている考え方は、各国のその国内法によってそれぞれが保護するということを基本的には前提にした上で、条約で最小限ここまでは各加盟国でお互いに保護しましょうという、国際約束を結び合って、そうして広く保護を普及させるということになっているのだろうと、著作権法についてはそう風に言えるだろうと、そう申し上げました。

○和田委員 一般的なことについてについてのご答弁が難しいということで、著作権法についてお話し頂きましたが、塩谷大臣、今お聞きした通りです、著作権というものは、長官の答弁の通り、元々存在していたというより、法制によって付与された権利ではないかと思います。いずれにせよ、物の所有権を著作権に置き換えると、我々が申し上げたようなことになるのだと思います、つまり、日本の著作権法は、日本国内で著作権が発生して、それが、権利が取引されるところに規制としてかかると、それが外国に出て行った際には、外国の著作権法の規定にかかるのであるということだろうと思います。それがお互いに、今回の場合は、ベルヌ条約という条約によって相互主義的なところがきちんと定められているからこそ、お互いの権利がどちら側に行ったとしても、ちゃんと守られるはずであると、こんな法制の作りになっているものだと、いう風に答弁を解釈したいと思いますが、それでは、大臣、こうした原則の中で、日本の著作物を出してらっしゃる方は、非常に現実問題、沢山の報道で流れている通り、心配していらっしゃいます。その心配というのは、自分がこの和解案に応じれば、グーグルが何かデジタル化する度に何らかの権利料が発生してそれが入ってくるから実利上よろしいのではないかという方もいらっしゃるし、しかし自分の物は他の世界にもどんどん売れて行くはずであってそれを制約されるのは非常に困ると思っている人もいます、そういった方々がいろんな情報を元に悩みに悩までれ得られた、その結論を国の制度上阻害することがあってはならないと思いますが、どちらかと言うと、こういった問題があることを知らないうちに期限が来てしまって、自動的に自分がどちらかの結論の範疇に組み入れられてしまうという仕組みは、どうも私自身は、日本国民を守るという立場から納得行かないのですが、この点について大臣いかがでしょうか。

○塩谷大臣 今回のグーグル問題については、あのー、今おっしゃったように、基本的なところは、まあ、著作物について相手国の法律に従うということでございますが、ただ、それぞれ団体やらいろんな利害等があって、対応が違って来ている、それを国として一つにまとめるのはなかなか難しいのかなあということもありましてまして、ただ、今おっしゃったように、このことを知らないで、そのままこの和解案の決定に従ってしまうような状況、これを避けるべきではないかなというご質問だと思うのですが、そのことは私どもも情報をしっかり収集しながら、権利者に対していろんな情報提供をするとかですね、そういうことを促して参りたいと思っておりますが、改めて今の点は検討して行きたいと考えます。

○和田委員 是非ご検討頂ければと思います。あのー、残りが5分程度になりましたので、今日の総括に入りたいと思いますが、まず、今回の法改正案について、私ども、権利者の保護という観点という狭い観点ではなくて、やはり国民の皆様方にできるだけ健全な各情報の取引をしてもらいたいという観点から、法改正に望んで参りたいという風に思います。そういった意味で、今回、違法と知りながらダウンロードすることはやはり違法なんですよということを定めることには、先ほど申し上げた通り、私たちが将来を託す若い世代の教育のためにも必要ではないかと考えております。この点について、大臣の総括的なご判断として、若い人たちの教育上、この著作権法をどうあつかって行くかということをご決意として述べて頂けますでしょうか。

○塩谷大臣 特に若い人たちに対しては、最初にお話ございましたように、今の情報化時代には、よりこのいろんな行動にしろ、毎日の生活にしろ、その情報化にかかわっていることが多いということで、私どもとして周知徹底をさせることを考えて行かなければならないと、我々のホームページとか各種講習会等を通じてしっかり徹底する、先ほども答弁しましたが、高校の学習指導要領を改正してですね、この著作権については改めて音楽等にもしっかりとかかわるということについて、内容を含めて充実をさせたところでございますので、より一層、この教育に関して力を注いで参りたいと考えております。

○和田委員 今ご決意として伺ったことは私も同感でございます。一つだけ付け加えさせて頂きますならば、先ほど申し上げました渋谷で若い人たちにアンケート的に聞いて参りました、こういったことが、適正な価格で、何か人に認められるような作品を作れば、それが適正な価格で取引されて、自分が収入を得られると、そして、それに対してやりがいを感じられるということが、国民の情報取引の文化上醸成されるなら、もっともっとこうした芸術や音楽といった分野に対して、若い人がどんどん将来の職業として考えて行こうと思うような雰囲気も生まれてくるのではないかと思う訳です。今回も教育的な見地から、私どもも支援して参りたいと思っています。最後にもう一つございます。先ほど来申し上げて来たことでございますが、今回の法改正が、まずもって、先ほどの、価値あるものを適正な価格で取引して頂くという文化を作るための一歩であるという観点からは、この著作物を扱う業界の方に対しましても、また、一旦流通することになった段階で、流通を担う業界においても、適正な価格とは何ぞやということを常に意識した上で、この著作権を取り扱うような雰囲気を作って行くことが国の責務だという風に考えております。その面からの、大臣のご決意を聞かせて頂けるでしょうか。

○塩谷大臣 当然ながら、法律の改正の主旨としても、今おっしゃったような主旨で考えておる訳でございまして、あの、価値あるものが適正な価格だということで、これは勿論、それがいかにまた利用されるかということにかかわっている訳のでございまして、我々としましては、そのバランスといいますかね、権利保護と合わせて考えて行かなければならない、また、適正な価格という観点では、ビジネスモデルという、これからいろんな手法が出てくることも考えられる、正直、この分野においてはIT化の進展が著しい中でなかなか追いついてないというところが現実だと思っておりまして、むしろ若い人たちが大いに利用することが文化の発展につながるということもありますので、それを正しく促して行くような法律改正であるような気持ちでおりますので、今後も、また、あのー、しっかりと状況を見守りながら、対応して行かなければならないと考えております。

○和田委員 常に国民各層の使いやすい環境を整える国会でありたいと思います。ありがとうございました。

○岩屋委員長 以上で和田君の質疑は終了致しました。次に、石井郁子君、石井君。

○石井郁子(日本共産党・近畿ブロック)日本共産党の石井郁子です。今回の法案は、障害者が多様な情報に接する機会を確保するために公共図書館での障害者サービスを充実するために必要な改正が行われております。またインターネットの情報検索サービスなど現行法上課題となる行為についても対応しておりまして、インターネットの発展にともなった改正となっていることから賛成できるものでございます。まあ、このことを表明した上で、今日は、私的録音録画補償金制度について、ホットな問題も生じておりまして、質問を致します。私的録音録画補償金制度の見直しという問題は、長らく著作権分科会で議論がされておりまして、この間、私どももですね、その動向を注目して来たところでございます。しかし、今までのところ見直しは結局できておりません。まずですね、この制度の今日的な意義というものをどのように考えておられるか、この点は、大臣にお伺いを致します。

○塩谷大臣 えー、私的録音録画制度につきましては、利用者の録音行為を認めつつ、権利者が被る不利益を補償するということで、平成4年に導入された訳でございまして、その後、著作権保護技術の導入や、音楽の配信事業のように、著作権保護技術と契約の組み合わせにより家庭内の録音録画について一定の制限を課したり、また契約により使用料を徴収できるような仕組みが整えられつつあり、補償金制度の見直しを求める声が、意見があるということは承知しておりますが、しかしながら、全ての利用形態について、補償金制度に替わる制度が導入できる環境に無い訳でございまして、新しい仕組みについてもまだ関係者の評価が異なるところでありますので、現行においては、新しい制度がただちに補償金制度に取って替わるという状況に無いと考えております。したがって、現在、今の補償金制度について一定の意義を有するということで考えておりまして、いずれにしても、過渡的な時期に位置していると考えておりますが、現在の制度についても意義があるということで今審議をしているところでございます。

○石井委員 あの、現在の制度も意義があるということをはっきりお述べ頂いたという風に思います。で、デジタル複製ができる電気機器が広がっているにもかかわらずですね、現在対象になっている機器というのはMDなどに限られて、補償金の額というのは年々減少して来ているんですね、制度の見直しというのが議論中と、それが進まない訳ですが、その原因はどこにあるんだろうか、それは良く検討されなければならないと思いますが、まず関係者がいろいろいらっしゃる訳でして、やっぱり関係者の合意が進まないと聞いておりますけれども、それが何故できないのかという点は、いかがございますか。

○高塩次長 この私的録音録画補償金制度の抜本的な見直しにつきましては、平成18年から文化審議会の著作権分科会において3年に渡り検討して来たところですけれども、結論を得るに至らなかったというのが現在の状況でございます。この検討に際しましてはですね、例えば先ほど大臣から様々な状況の話がありましたけれども、携帯用のオーディオレコーダーのような記録媒体を内蔵した一体型の機器や、パソコンなどのような録音録画専用機器でない機器が広く普及致しまして、このような機器を用いまして、広汎に録音録画が行われているという状況がございまして、こうした機器を対象とするべきかどうかということにつきましての、著作権改正の議論が行われて来た訳でございます。この委員の中には、おおまかに申しまして、権利者の方々、家電メーカーの方々、消費者の方々、様々な立場の方がおられまして、それぞれの方々が、私的録音録画小委員会の方で、ご意見をお述べになったということでございます。そういった経緯の中で、文化庁としては、おおまかに分けまして3者がいる訳ですけれども、その中で一つの妥協点として文化庁の提案というものを審議会に行った訳でございますけれども、この提案につきましても、最終的にはメーカー側、それから消費者側を含めまして賛同に至らなかったということでございまして、今日なお引き続き検討すると、こういった状況になっている次第でございます。

○石井委員 3者の関係者の間で合意に至らないと、私は何故至らないのかということをもう少しお述べ頂きたかったんですけれども、私がこの著作権分科会の報告書を見てみますと、やっぱりいろいろ隔たりは大きいなということは感じるんですね。その今お述べになった文化庁の事務局提案に対しまして、権利者側の意見としては一定の結論として評価しているという風に出ています、消費者側の意見としては、整理がなされ一定の評価ができるとあるんですよ、学識経験者の意見として、一定の評価を与えるということもございました。この限りでは一定の評価はされていると。しかしですね、メーカーだけがこう言っています。制度の縮小廃止の道筋が見えない、著作権保護技術が拡大すれば当然補償は不要だということで、明らかにこの補償金制度は不要だという立場からの意見を述べられていると、こうなると隔たりが大きい訳ですよね。ですから、メーカーだけがやっぱり合意できないというのが実際ではないのかと思うのですが、いかがですか。

○高塩次長 今先生からご紹介がございましたけれども、私的録音録画小委員会におきまして、関係者の主張につきましては、確かに、権利者、それから消費者、学識経験者、それぞれが一定の評価ということはお述べになった訳ですけれども、メーカー側におきましては、著作権保護技術が機能すればですね、この補償制度というものは不要であるというお立場をなかなか変えるに至らなかったということでございまして、今回の提案につきましては、当面の措置として一体型の機器等の追加というのがございますけれども、そういった対象の機器を増やすことについて、将来この制度を縮小して行くという文化庁側の提案があった訳ですけれども、それと必ずしもその行き先が見えないということから反対をされたということでございまして、文化庁提案というものがそういう主張が主なものとして、まとまるに至らなかったということでございます。

○石井委員 え−、ところでですね、今こうした見直しの議論が進行中にもかかわらずですね、実は重大な問題が起きているということがありまして、この点でただしておきたいという風に思います。パナソニックというね、会社ですけれども、このように言っているんですね、今後デジタル放送専用チューナー搭載機、これはデジタル放送のみ受信できる機械ということになっていますけれども、今補償金を支払わないという立場を表明するに至っているという風に聞いていますけれども、文化庁ご存知ですか。

○高塩次長 今先生からお話のございました、デジタルチューナーのみを搭載した録画機器というものが、ほとんど今年になりまして、電機メーカーの方から販売をされております。このデジタルチューナーのみに対応した録画機器につきましては、いわゆるダビング10と言われます著作権の保護技術が組み込まれていることから、録画機器の製造業者の団体の方で、補償金の支払いの必要性はないのではないかという風な主張をしていることは承知しております。

○石井委員 そのパナソニック側がですね、こう言っているんですよね、無料デジタル放送のデジタル録画に私的録画補償金が課せられているかどうかについては明らかでない状況にある、ということなんですけれども、現行の制度というのは、デジタル録画録音できる機器媒体を対象にして課金しているという風に理解していますが、これでよろしいですか。

○高塩次長 現行法の私的録音録画補償金の支払い義務を定めております第30条第2項では、私的使用を目的として、政令で定めるデジタル方式の機器記録媒体を用いて録音録画を行う者に支払い義務が発生するとしておりまして、その際に、著作権保護技術の有無が支払い義務の発生要件になるかどうかは明示的に規定していないという風に考えております。

○石井委員 えー、どうなんですか、現行の制度というのは、デジタル録画録音できる機器媒体に課金しているんじゃないんですか。ここをはっきりさせて頂きたいんですけれども、もう一度はっきりさせて頂きたいと思います。

○高塩次長 現在政令によりまして、録画であればDVDなど、それから録音であればCDやMDなどを指定しておりますが、これらは補償金の支払いの義務がある機種や記録媒体でございます。

○石井委員 そうしますとですね、パナソニック側の言っている内容で言いますと、どうなんですか、これ私見せて頂いたんですけれども、社団法人の私的録画管理協会宛に、パナソッニク側からこういう4月8日付けの文章があるんですよね。それによりますとね、デジタル放送用DVD録画機は、そもそも補償金の対象機器であるか否かについて疑義があるということから、デジタル放送用DVD録画機について私的録画補償金の徴収に協力することは差し控えるべきであるとこう言っているんですよね。こういうことが通用するのかどうか、という問題なんです。ですから、私は、こういう主張は、現行法からして見ても、これを無視したものになる訳ですし、それから著作権法を持ち出すまでも無く、104条の5、著作権法ではメーカーに徴収に協力することを義務づけているということがありますよね、徴収に協力することができないということはこの法律にも抵触すると、協力を拒否するということなどはできないと思いますけれども、この点は、いかがですか。

○高塩次長 先生ご指摘の文章が、4月8日付けで私的録音録画管理協会に届いたということを承知しております。この文章につきましては、私的録音録画補償管理協会におきましては、今後、この、これはパナソニック株式でございますけれども、と協議をして参りたいという立場を取っているという風に承知しておりまして、私どもとしてはその推移を見守りたいと思っております。

○石井委員 この文章ですけどね、そして最後に結論づけているんですけども、現状について、著作権保護手段と補償の必要性がはっきりしない以上、これは議論されているところだと思うんですけれど、デジタル放送用DVD録画機についての私的録画補償金の徴収に協力することはできないと通知すると一方的な通知になっているんですよ。だから今議論している最中の問題は問題であると思いますけれども、このデジタル放送用DVD録画機の私的補償金の徴収義務に協力することはできないと、こういう主張ができるかという問題なんですけれども、こういうことはできないんじゃないですか。はっきりさせて頂きたい。

○高塩次長 えー、この30条2項の規定につきましては、著作権保護技術の有無ということを問わずに、対象機器の規定をしているということでございまして、私的録音録画補償金の支払い義務が発生するということであれば、104条の5に定めます、機器の製造業者に課された義務は発生するものと考えております。

○石井委員 こういうパナソニックの主張は、私は、こういう行動は、現行法上からも同意でないと思うんですね。こういうことがどんどん許されるたら、次々協力しなくとも何も問題起こらないということになって行きまして、補償金制度そのものが、これはまあ、崩壊しかねないという風に思うんですね。ですから、私は、こういう一方的な文書というのはですね、この法律上、著作権法上に定められている、協力義務がある訳ですから、これに違反すると、政府としても、法に則って対処して行くと、やっぱり是正を求めるべきだと思いますが、この点については、大臣のご見解を伺いたいと思います。大臣、いかがでしょうか。

○塩谷大臣 確かに、その文書につきましては、この補償金制度に照らし合わせて問題があると考えております。まあ、今後この制度をどうするかということにつきましては、先ほど答弁した通りでございまして、あのー、この問題今後もですね、しっかりとした、あのー、この協議を続けて行く必要があると思っておりますので、今の文書の問題と合わせて検討して参りたいと考えております。

○石井委員 まあ、あの、大臣から著作権法に照らしても問題だということをはっきり言って頂いたと思いますけれども、やっぱり私的録音録画補償金制度って言うのが、なし崩し的にですね、空洞化されて言ったり、形骸化して言ったりってことは、私は大変問題だと思っているんですね。そもそも長い期間をかけて、一定の補償金を支払って私的なコピーを自由にできる、これは消費者のための制度でもある訳ですから、これを充実させて行くことは大事だという風に思いますし、今日は、この議論の経過と、この問題に照らしても、メーカー側の責任というか、この在り方ということが非常に問題だという風に思うんですよね、制度そのものについて、メーカー、権利者を含めて、やっぱり議論をお互いにして行くということが重要なんですけれども、現行の制度に協力しなくて良いのだということになってしまってはですね、これは到底、この制度を否定することですから、認めることはできないという風に思います。付け加えればですね、著作物の複製できる機器や媒体を販売してそのことで莫大な利益を得ているのはメーカーですから、やっぱり、文化の維持発展のためにそういう必要な経費は負担すべきだということを、もっときちんと文化庁としても主張して良いのではないかと、主張すべきだと思います。今回のパナソニックの行動は、メーカーに協力義務があるということから見ても大変問題ですし、義務があると答弁されたということは大変重要だという風に思っております。さて、また法案に戻るんですけれども、最後に一点伺っておきます、今回、裁定制度のことなんですが、著作権だけでなく、著作隣接権、実演などですね、にも拡大しています。供託制度も導入するということで、裁定結果が出る前でも暫定利用が可能になる仕組みというのを導入しています。で、放送番組のネット配信を行う際には、全ての権利者の許諾が必要となります。今回の改正で、所在不明だと、許諾を取ることができない権利者がいる場合ですね、裁定制度を利用することでネット配信が可能となるという風に聞いておりますが、そこで確認させて頂きたいのですが、この制度は、あくまでも所在不明の場合であって、現に存在する権利者、実演家が許諾を拒否している場合にまで適用するものではないという風に理解して良いのかどうか、安易に所在不明とされないように、制度的にはどのように担保されて行くのかという点について、明快に答弁頂ければと思います。

○高塩次長 この権利者不明の場合の裁定制度の拡充を今回の法改正に盛り込ませて頂いているところでございますけれども、第1点の、ご質問がございました、権利者が不明ではなくて、存在している場合についてこの制度を活用するというか使用することはないということはその通りでございます、この制度につきましては、そもそも放送番組の2次利用に関しまして、権利者不明の場合の契約交渉の問題点が様々な場所で指摘をされるということがございますけれども、私ども著作権分科会の報告書におきましては、この権利者不明の場合の措置として、まず権利情報の管理など関係事業者の取り組みが進められる中で、民間の取り組みが引き続き行われることを前提としつつ、その取り組みを補完するものだと位置づけておりまして、文化庁と致しましては、この点を踏まえまして、今回の改正と合わせまして、円滑な契約のための関係者の取り組みへの助言協力を行って参りたいと思っております。また、第2点のご質問にございました、裁定制度を利用するためには、権利者の確認といいますか捜索といいますか、それにつきましては、相当な努力を必要とするということが、従来の裁定制度でもございますけれども、この改正後におきましても、同様に相当な努力を課すということを考えておりまして、十分な捜索が行われない安易な利用を認めるという主旨のものではございません。従いまして、今回、相当な努力につきましては、政令において定めることとしておりますけれども、関係者の意見を聞きながら、慎重に検討して参りたいと思っております。

○石井委員 権利者が不利益になることが無いように、この条文については進めて頂きたいという風に思います。若干残しましたが、今日は以上で質問を終わります。

○岩屋委員長 以上で、石井君の質疑は終了致しました。次に日森文尋君。日森君。

○日森文尋委員(社会民主党・市民連合・北関東ブロック) 社民党の日森でございます。最初にですね、ちょっと基本的なことをお聞きしておきたいと思うんですが、今回の法改正ではですね、まあ、あの、デジタルコンテンツの流通促進あるいはその有効活用と同時に違法な著作物の流通抑止という二つの側面を持った改正が行われるということになるのだと思います。著作権の保護と流通促進というのは相反する面がるのではないかと、こう思っている訳です。インターネットの利用拡大の経済効果、これはもうは計り知れないものがあるという風に私も考えておりますが、その効果を手に入れるために、仮に著作権の保護がおろそかになるとかということがあったら、文化財産を目指す知的創造力の弱体化を招くことにもなりやしないかというような心配もしている訳です。そこで、あのー、文科省になりますか、政府全体ということになりますか、えー、この著作権の保護とですね、デジタルコンテンツの流通促進あるいはインターネットの利用による経済効果拡大、この両立について、どうお考えになって行くのかということを、最初にお聞きしておきたいと思います。

○塩谷大臣 ご指摘の点については、そのバランスが非常に重要でございまして、まあ、今回の法律改正も、適切な流通促進あるいは権利者の適切な保護、バランスを保つという点で改正案を提出した訳でございます。えー、公正な利用に配慮した権利制限規定だけでは無く、違法な著作物流通を抑止するための措置も合わせて盛り込んでおりまして、文部科学省としましても、時代の変化あるいは社会の要請を踏まえて、バランスに留意しながら、著作物の円滑な流通の促進と著作権の適切な保護に努めて参りたいと考えております。

○日森委員 えーと、次にですね、先ほど和田委員からもお話しのございました、例の、例のというとおかしいですが、グーグルの書籍検索を巡る紛争といいますか問題についてお聞きしたいと思うんですが、これは、世界中でかなり大きな問題になっているようです。で、この、最初にですね、このグーグル問題の経緯、それから、米国で成立したと言われているその和解内容ですね、これについて簡単に教えて頂きたいと思います。

○高塩次長 アメリカにおきますグーグル社のブックサーチを巡る紛争の経緯について簡単にご説明申し上げたいと思いますけれども、これは2005年の9月にグーグル社がですね、米国内の大学図書館などと提携致しまして、蔵書のデジタル化を行う事業につきまして、これを著作権侵害として訴えておりました、全米作家協会と全米出版社協会との間で2008年の10月に和解が合意されたということでございます。この和解案では、グーグル社は一定の使用料を支払うことで、今後米国内において、デジタル化した書籍データサービスのアクセス権の販売や広告掲載などが可能になるというものでございます。権利者につきましては、和解に参加した場合には、自らの書籍をウェブ上で公開するかどうかの可否を選択でき、また公開を認めた場合には、その公開によって得られました使用料を受け取ることができるということでございます。一方、この和解に不参加をした場合には、そのことをもって、グーグル社からデジタル化した書籍の公開を停止し、データベースから削除をするという保証は無い訳ではないですけれども、米国におきまして、このグーグル社に対しまして、訴訟を起こすことができるということになります。我が国の著作者の著作物が、このグーグル社のブックサーチの中にも数多く含まれておりますが、これはベルヌ条約に基づきまして、米国内でも我が国の著作者の著作物は権利が保護されている訳でございますけれども、今度の和解案は、アメリカの訴訟制度、これは集団訴訟、クラスアクションと言っておりますけれども、これは代表の方が訴訟したものが、その権利を持つ者に全て及ぶというアメリカの連邦民事訴訟規則に定められている方式でございますけれども、このクラスアクションによりまして米国内において著作権を有する全て者を対象としていうことのため、我が国の権利者にも及ぶということになってございます。一定の期限までに、和解に参加するか否かの期限、5月5日という期限があったのですけれども、これは4ヶ月延びて9月4日ということになっておりますけれども、我が国の権利者がこの和解に参加するか不参加にするかという期限が定められておりまして、それに対しまして、我が国の作家の業界や出版の業界などが様々に検討を行っていると、こうした状況にあると承知しております。

○日森委員 えーっと、その和解案、幸か不幸か延期されたんですが、日本文芸家協会というのがございますが、こう言っている訳です、著作権者が米グーグル社に何らの通知を行わなければ、自動的に和解案記載の条件を原則として受け入れたと見なされ、同社は将来に渡って、2009年1月5日以前に出版された著作物についてデジタル化、ネットワーク上での検索への利用、データベースへのアクセス権の販売、今後開発されるその他の商業的利用までできる権利を有することになっていると、すなわち、日本の著作権者が何も知らないか、あるいは何も積極的な行為を取らないままでいれば、日本の著作権法上違法として許されない行為を承認したものと見なされるのであるという風に言っておりまして、米グーグル社は、アメリカの著作権の常識が他国の固有の文化に基づいたそれぞれの国の著作権の常識を壊すことはできないということを強く認識するべきであるという風に批判している訳です。先ほどは、法的な根拠について内閣法制局長官からお話を伺ったんですが、どうもいまいちはっきりしないということがございました。大臣は、これらについて今後検討を加えて行きたいということも先ほどございましたが、改めて、これほど文芸家協会などが心配されているという問題がある訳ですので、その、アメリカにおける和解というのが、改めてなんですが、日本における権利者を拘束できる法的根拠というのをもう少し分かりやすく示して頂きたいと思います。同時にですね、この問題に対する文科省の見解、先ほど大臣の見解をお聞きをしましたが、これも改めてお聞きしたいと思いますし、同時にですね、著作権について国際協議はどのような枠組みで行われているのか、この協議に、我が国はこの問題を通じて我が国がどうかかわっているのか。この3点についてお聞きしたいと思います。

○高塩次長 えーあの、著作物につきましては、国境を超えて利用されるために、世界各国が様々な多国間条約を結びまして互いに著作物を保護している訳でございます。我が国におきましては、これまでこれらの条約形成に積極的に関与して来た訳でございます。今回先生からご指摘のありました、ブックサーチの問題につきましては、米国の訴訟制度によりまして、米国で保護を受ける著作物を有する、我が国の権利者にも効力が及んだものでございまして、これによりまして大きな影響が生じまして、今後の展開等に、権利者の方々に不安、懸念が広がっていることにつきまして、私どもとしてもも大変憂慮致しているところでございます。文部科学省としましては、各国の権利者、政府の対応状況について引き続き感心を持って情報収集等について努めるとともに、必要に応じて2国間協議を通じて情報交換に努めて参りたいと思います。我が国が国際的枠組みに入る際には、大きな著作権側のベルヌ条約、著作隣接権についてはローマ条約というのがございまして、それらを踏まえた条約交渉、さらには放送番組等の条約交渉が行われておりますけれども、そういった国際的な関連条約に私どもとしては積極的に参加して、著作物が世界的に保護されるといいますか、流通する状況になっておりますので、そういうものに適切に対応して参りたいという風に考えております。

○日森委員 問題は9月4日というですね、当面一定の期限があって、これに間に合わないとですね、日本の権利者が重大な被害を受けるという可能性も否定できないということだと思うんです。そういう意味で、今おっしゃったような具体的な取り組みについて、どのようにおこなって行こうとしているのかについてですね、今分かる範囲でお答え頂ければ有り難いと思います。

○高塩次長 ただいまご答弁申し上げたように、私どもとしては、様々な状況につきましての情報収集や、必要に応じます2国間協議の場いうことでございまして、特にアメリカの間では、日米の著作権協議というのがございますので、そういう場においてこの問題をアメリカ政府としてどう考えるのかなどの問題提起を行って行きたいと思っておりますが、現在私どもはアメリカを含め、欧米の諸国に政府としての対応を確認しつつございますけれども、今回本件につきましては、民間のグーグル社に対して、民間の作家協会等が起こした訴訟ということでございまして、政府レベルでは直接干渉しないという国が多いという情報を伺っておりますけれども、そうした情報も含めまして、我が国の権利者に対してですね、適切な情報を収集をし、それを提供して行くといった努力を続けたいという風に思っております。

○日森委員 一つはですね、著作権協会、失礼、文芸家協会などもですね、一応この和解を受け入れた上で、削除させるとかですね、いろんなことを考えて努力はされていると思うんですよ、こうした問題についてもしっかりと受け止めて、しっかり著作権を保護するという観点からですね、対応して頂きたいという風に、要請だけしておきたいと思います。それから、もう1点、これも先ほど委員からご質問が出ましたけれども、日本版のフェアユースについてお聞かせ頂きたいと思います。文化庁もそれから文科大臣も、積極的であったんですかね、導入したいという意向を先ほど示されました。で、ここで、あの、えー、日本版フェアユースというのはですね、一体どのようなものなのか、アメリカとは若干違うんだということであるんですが、アメリカ版のフェアユースと具体的に、基本的にどこがどう違うのかということも含めて、お聞かせ頂きたいと思います。

○高塩次長 アメリカの著作権法におきますフェアユースという包括的な規定がございますけれども、アメリカにも個別の権利制限がない訳ではございませんで、図書館での利用とか障害者の利用といった個別の権利制限に加えまして、ただその権利制限規定、大変数が少のうございまして、個別の適法性について、逐一定めるのではなく、フェアユースと申しますこの包括的な規定でその利用を認める、仮に権利者の方で問題があったときには裁判で明らかにすると、こういったことでございます。アメリカはご承知のように我が国のような成文法系の国ではございませんで、コモンローということで、フェアユース規定につきまいしては以前から判例によって形成されたという経緯がございます、これに対しまして、我が国は、大陸法に基づきます成文法体系を取っておりまして、これまで著作権法におきましては、個別に権利制限規定をおきまして、様々に判断をして来たということがございます。確かに我が国におきましても、フェアユース規定をおくかどうかにつきましては、先ほど申し上げてきましたように、今年度から、文化審議会の著作権分科会の方で検討したいということでございますけれども、様々に我が国とアメリカではよって立つ法体系の基盤が違いますし、裁判によって物を解決するという土壌が必ずしも日本では育っておりませんし、そのためにまた多額の費用がかかあるということもございます。権利者からは、安易に利用されて、権利侵害が起き易く、その度に裁判を起こすのかというような懸念も示されているところでございまして、先ほど申し上げたように、具体的に知財戦略本部からご提案を頂きましたので、この問題について整理した上で、検討して行く場というものを考えて参りたいと思っております。

○日森委員 確かにその通りで、法体系が違うと、訴訟がなかなかなりにくいということもあるんだと思いますが、まあ、段々そのようになっていますが、この知財制度専門調査会の報告書に対して、また日本文芸家協会で恐縮なんですが、まあこういうコメントを出しています。新しいデジタル時代に対応できる制度は、権利制限に関する細目を整備し、法律改正を迅速にするために、利用者と権利者がワーキングチームを作り、観念的な議論だけでは無くて、実質的、現実的な話し合いで対応できるでしょうと、法令によるだけではなく、双方の話し合いによるガイドラインを設定することで、法令に準じた慣行を作ることも可能と考えますという風にコメントを出しておられます。これ、なかなか傾聴に値するという風に私は思っているんですが、同時に、パブコメも、報告書に対するパブコメもやられたようです。パブコメではどのような意見が寄せられていたのか、そして、文科省自身が、日本版フェアユース、あるいはその導入について、このパブコメ等を見た上で、改めてこれから検討とおっしゃっていますが、どういう風にお考えをお持ちなのか、お聞きをしたいと思います。

○高塩次長 知財戦略本部から伺っているところによりますと、知財本部で昨年の11月に発表した資料、報告書の以前に、昨年10月30日から11月17日までの期間にこの日本版フェアユース導入についてのパブリックコメントを受けたということでございまして、45の法人と、49の個人から意見を出されたということでございます。主な具体的な意見は、一方で導入がもたらす効果を検証しつつ慎重に検討するべきという意見、訴訟コストの増加を含め権利者の負担が増加するのではないかという懸念などがございました、その一方で、報告書の中で提案された権利制限の一般規定の導入に賛成し早急に改正を求める意見もあったということでございます。私ども文化庁の法制問題小委員会の今回の最後のまとめにおきましても、フェアユース規定につきまして、今後の検討ということを示した訳でござますが、これにつきましても、私ども文化庁で行いましたパブリックコメントにおきましても、日本版フェアユースについての意見をいくつか頂いておりますけれども、一方で積極的に導入すべきという意見と、慎重にすべきという意見、制度導入について留意すべき意見等々の具体的な提案などもございますので、こういったこれまで寄せられている意見なども参考に致しまして、今年度より、このフェアユースについての検討を著作権分科会で行って参りたいと思います。

○日森委員 まあ、是非知恵を出して、基本的には保護ということがある訳ですので、進めて頂きたいと思います。文化庁長官の裁定制度についてですね、現状について、先ほどちょっと関連の質問がございましたれども、お聞きをしておきたいと思います。裁定制度が改正される訳ですが、現行はですね、手数料が高いとかですね、手続きに時間がかかる、著作権者の調査に多大な時間と費用がかかるとか、著作隣接権を有する俳優さんなどについては適用対象にならないとか、非常に使い勝手が悪いということが言われているようです。最初にお訊ねしたいと思うんですが、この裁定の申請件数というのは年間どれくらいあるんでしょうか。で、この裁定した後でですね、これはもう、著作権者が良くわからない、著作権者が不明の場合だけある訳ですから、裁定後に著作権者が発見されちゃったという例はこれまであったんでしょうか。同時にですね、まあ、今回改正されることで、この申請などがどの程度増大するのか、まあ、見込みがあったら、3点合わせてお答え頂きたいと思います。

○高塩次長 現在の裁定制度についてのお訊ねでですけれども、現在の著作権法で裁定制度が定められ施行されたのは昭和46年でございますけれども、それ以降の件数は、42件でございます。平均すると年1件に満たないという状況でございますけれども、年によってばらつきがございます。それで、裁定後に、権利者が発見されたという例は報告を受けていないということでございます。これは、先ほど申し上げましたように、権利者不明の裁定の際には利用者の方で相当な努力をして捜索した後にこの裁定制度に来るというような制度の中でですね、こういった結果になっているのではないかという風に思われているものでございます。今回の改正におきましては、今紹介がございますけれども、新たに問題となっております、手続きに時間がかかる、著作隣接権に対する適用がないということを解消致しまして、一点目は、著作隣接権者が不明の場合も対象にするということ、もう一点は、制度の要件を政令で明確化致しまして、一定の条件のもと、裁定結果を待たずに担保金を供託することで利用を開始できることを新設致しまして、図りたいと思っている訳でございますが、具体的にどれくらい増大するかの見込みにつきましては、隣接権の制度が始めてでございます。隣接権につきましては、権利者団体の方で権利者の集中システムの構築などが行われているということもございます。権利者の方でそうしたことをしておりますので、明確な予想は困難でございますけれども、こういった制度が、このような改善を踏まえて有効に活用して頂くことを私どもとしては期待しているところでございます。

○日森委員 資料によりますと、レコードやCD映画、これについては、著作権等に関する権利関係が極めて明瞭であって、パソコンへの配信についてもさして問題は生じていないと書かれておりました。しかし、放送番組についてはですね、製作段階において、その後の利用を含めた契約がほとんど行われて来ておらず、放送事業者への権利が集約されていないため、契約ルールが成立していない分野や、団体に属していない権利者との間で権利処理が滞っているという指摘があるんです、そこでお聞きをしたいんですが、何故、この放送業界においてだけ、放映後の権利関係が契約に盛り込まれてこなかったのか、その経緯、原因といいますか、これについてお聞かせ頂きたいと思いますし、文科省はですね、このような現状についてどのように対処されて行くのか、合わせてお聞きしたいと思います。

○高塩次長 放送番組におきまして、この契約が進んでいないということの原因につきましては、放送に関するビジネス上の課題があるとも言われております。ご承知のように、放送番組は、1回の放送利益を回収する仕組みになっておりまして、ネット配信を行うには、著作権使用料を含めまして、新たな経費というものが必要となるということで、これに見合う収入が見込めるかどうか放送局側で判断しづらい面があるということ、それから、また放送時の契約の際に、ネット配信の利用許諾まで含めるということは、なかなか放送局側の収入見込みを含めた場合、難しい場合が多くて、事後に行うことが多いということでございます。しかしながら、こういった状況がある訳でございますが、今後はネット配信のビジネスモデルということが積極的に確立するという動きもございまして、一昨年の2月には、日本経団連を中心に、出演契約のガイドラインが策定されまして、ネット配信を前提とした契約を促進する取り組みがなされているという状況がございますので、私どもとしては、こうした契約が今後多くなって行くものという風に考えておりまして、そうした取り組みに助言や協力をして参りたいと思っております。

○日森委員 最後になりますけれども、インターネットオークションにおける画像利用の円滑化というのがあるんですが、これについて、お聞きしたいと思います。最初にその認識をお聞きしたいんですが、インターネットオークションについて、販売者が官であろうが、民であろうが、東京都なども、税金滞納者から差し押さえたものを競売しているとかいったことにも使われているようですが、インターネットによる通信販売に全てに適用されると、その画像利用の円滑化はですね、こういう理解でよろしいのかどうかということを、最初にお聞きしたいと思います。

○高塩次長 このインターネットオークションにつきましては、インターネットオークションの際にですね、美術品や写真の取引の際には、商品の説明のために画像掲載は出品者の義務として不可欠であるということから、今回の改正を行うものでございまして、美術又は写真の著作物の譲渡等を適法に行うことができる者がその申し出の用に供するために行う場合であれば、販売者を官民問わず、規定の対象とするものでございます。

○日森委員 分かりました。ちょっと時間あと4分ほどありますが終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

○岩屋委員長 以上で日森君の質疑は終わりました。しばらくお待ち下さい。これにて本案に対する質疑は終局致しました。これより、討論に入るのでありますが、その申し出はありませんので、ただちに採決に入ります。内閣提出著作権法の一部を改正する法律案について採決致します。法案について採決致します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。起立総員。よって、本案は原案の通り可決すべきものと決しました。ただいま議決しました本案に対し、馳浩君(注:自民党、石川県1区)他4名から、自民党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の5派共同提案による付帯決議を付すべしとの動議が提出されております。提出者から主旨の説明を求めます。和田隆志君。

○和田委員 民主党の和田隆志でございます。私は提出者を代表致しまして、本動議についてご説明申し上げます。案文を朗読して、説明に変えさえて頂きます。

著作権法の一部を改正する法律案に対する付帯決議案
 政府及び関係者は本法の施行に当たり次の事項について特段の配慮をすべきである。

一 違法なインターネット配信等による音楽・映像を違法と知りながら録音又は録画することを私的使用目的でも権利侵害とする第三十条第一項第三号の運用に当たっては、違法なインターネット配信等による音楽・映像と知らずに録音又は録画した著作物の利用者に不利益が生じないよう留意すること。また、本改正に便乗した不正な料金請求等による被害を防止するため、改正内容の趣旨の周知徹底に勤めるとともに、レコード会社等との契約により配信される場合に表示される「識別マーク」の普及を促進すること。

二 インターネット配信等による音楽・映像については、今後見込まれる違法配信からの私的録音録画の減少の状況を踏まえ、適正な価格形成に反映させるよう努めること。

三 障害者のための著作物の利用の円滑化に当たっては、教科用拡大図書や授業で使われる副教材の拡大写本等の作成を行うボランティア活動がこれまでに果たして来た役割にかんがみ、その活動が支障なく一層促進されるよう努めること。

四 著作権者不明等の場合の裁定制度及び著作権等の登録制度については、著作物等の適切な保護と円滑な流通を促進する観点から、手続きの簡素化と制度の改善について検討すること。

五 近年のデジタル化、ネットワーク化の進展に伴う著作物等の利用形態の多様化及び著作権制度に係る動向等に鑑み、著作権の保護を適切に行うため、著作権法の適切な見直しを進めること。特に、私的録音録画補償金制度及び著作権保護期間の見直しなど、著作権に係る重要課題については、国際的動向や関係団体等の意見も十分に考慮し、早期に適切な結論を得ること。

六 国立国会図書館において電子化された資料については、図書館の果たす役割にかんがみ、その有効な活用を図ること。

七 文化の発展に寄与する著作権保護の重要性にかんがみ、学校等における著作権教育の充実や国民に対する普及啓発活動に努めること。

以上であります。何卒ご賛同下さいますよう、お願い申し上げます。

○岩屋委員長 これにて主旨の説明は終わりました。採決致します。本動議に賛成の諸君の起立を求めます。起立総員。よって、本案に対し、付帯決議を付することに決しました。この際、ただ今の付帯決議につきまして、文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。塩谷文部科学大臣。

○塩谷大臣 ただいまのご決議については、そのご主旨に十分留意致しまして、対処して参りたいと存じます。

○岩屋委員長 お諮り致します。ただ今議決致しました法律案についての委員会報告書の作成については、委員長にご一任して頂きたいとおもいますが、ご異議はありませんか。ご異議なしと認めます。そのように決しました。

(以下、略)

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2008年5月16日 (金)

番外その11:「日本の奇怪な審議会(有識者会議)システム(第89回)」についての津田大介氏のコメント

 音楽・ITジャーナリストMIAUの代表幹事の一人、文化審議会委員と今八面六臂の大活躍を見せておられる津田大介氏が、そのtwitterでこのブログの第89回で書いたことにコメントをして下さっている。

 読んで頂けていただけでも有り難いのだが、これらの一連のコメントは、審議会内部に委員として参加しておられた方からの貴重なコメントとして、非常に興味深いものであり、文化審議会の今の実態を示すものとして、是非多くの人に読んでもらいたいと思うので、ここにも転載させて頂きたいと思う。(津田様、転載の快諾ありがとうございます。)

  • 「さらば!財務省」に、審議会とはどのような場であるか箇条書きで書いてある。http://tinyurl.com/5qwjrr 02:22 AM May 14, 2008 from web
  • 「役所と反対の意見を持つ者はなるべく始めから外す」「審議会が開かれる前にあらかじめ説明を行い、委員の発言を思惑通りに誘導する」「役所に都合の悪い論点は議論のためのペーパーからわざと落とす」「委員自らまとめてきたペーパーは、役所に都合の良いように書き直す」 02:23 AM May 14, 2008 from web
  • 「反対意見を持つ委員が来られない日に審議会をわざと設定する」「意に反する結論が出そうになると、「結論が出なかった」として結論そのものを潰す」「人数を水増しして一人あたりの発言時間を少なくし、委員が実質的なことを何も言えないようにする」 02:24 AM May 14, 2008 from web
  • 「結論がまとまらなければ、座長一任という形にして、役所が結論をまとめる」「結論を出したくないときは、議題をわざと沢山上げて、議論をかき回す」 これらに加えて 02:25 AM May 14, 2008 from web
  • 「自分たちに都合の良いように情報をリークして、マスコミに報道させ、既成事実として政策を誘導する」「新任大臣にはあらかじめ発言してはいけないことを説明して、役所の意図とは異なる発言をしないようにさせる」ということを操作するのが官僚の一般的審議会の手口だということだ。 02:26 AM May 14, 2008 from web
  • さて、2つの審議会に2年間参加した自分の感覚で(比較的冷静な立場で)この11項目を今の私的録音録画小委員会にあてはめて考えてみると…… 02:29 AM May 14, 2008 from web
  • 「役所と反対の意見を持つ者はなるべく始めから外す」←若干権利者寄りが多いものの全体のバランスは気を遣って選んでいる印象。ただ、単に権利者側のステークホルダーが多くて結果的にそれが権利者の声を大きくしている面はある。ITに強い消費者・利用者が絶対数として少なかったのは問題かも。 02:33 AM May 14, 2008 from web
  • 「審議会が開かれる前にあらかじめ説明を行い、委員の発言を思惑通りに誘導する」←誘導するか(できたか)どうかはともかく、とにかく議論の方向を文化庁がリードするため、審議の前に事前説明で調整するということは頻繁にあった。「あー、こういうのが“調整”なのね」と思った。 02:34 AM May 14, 2008 from web
  • 「役所に都合の悪い論点は議論のためのペーパーからわざと落とす」←DL違法化のパブコメは典型的な話かも。パブコメ報告のときの審議会で反対意見が紹介されただけで、それ以降文化庁のペーパーには、その論点は入っていない。消費者側・メーカー側の補償金廃止論についても同様。 02:37 AM May 14, 2008 from web
  • 「委員自らまとめてきたペーパーは、役所に都合の良いように書き直す」←これについては、私的録音録画小委員会では見られなかった。委員が提出した意見書はそのまま出されたのではないかと思う(少なくとも俺が出したものはそのまま提出されている)。 02:38 AM May 14, 2008 from web
  • 「反対意見を持つ委員が来られない日に審議会をわざと設定する」←これは意図的にそうしたかどうかはわからないが、1年目、2年目の早い時期に消費者団体の人が欠席することは何度かあった。 02:40 AM May 14, 2008 from web
  • 「意に反する結論が出そうになると、「結論が出なかった」として結論そのものを潰す」←これは、私的録音録画小委員会が招集されるきっかけとなった2005年の法制小委員会がそうなんだと思う。録音録画小委は概ね権利者側が望むような方向で進んでいるので、結論がどうなるのかはわからない。 02:42 AM May 14, 2008 from web
  • 「人数を水増しして一人あたりの発言時間を少なくし、委員が実質的なことを何も言えないようにする」←私的録音録画小委員会は委員の数もそこまで多くないし、学者先生は基本的にあまり発言しないので、これについてはあてはまらない。 02:43 AM May 14, 2008 from web
  • 「結論がまとまらなければ、座長一任という形にして、役所が結論をまとめる」←これはまさにそう。DL違法化にしても中間整理についても、現在の方向性についても委員会の席上ではまったく意見がまとまらないので、大きな流れとしては座長一任という形で進んでいる。 02:45 AM May 14, 2008 from web
  • 「結論を出したくないときは、議題をわざと沢山上げて、議論をかき回す」←私的録音録画小委員会は、結論をなるべく早く出すべく招集された委員会なので、これについては見られない。 02:45 AM May 14, 2008 from web
  • 「自分たちに都合の良いように情報をリークして、マスコミに報道させ、既成事実として政策を誘導する」←これについては何とも。朝日の先走り報道については記者の勇み足も多々見られる。リークしてるかしてないかは微妙。私的録音録画小委員会の話でいえば文化庁は勇み足報道で迷惑してるかも。 02:47 AM May 14, 2008 from web
  • 「新任大臣にはあらかじめ発言してはいけないことを説明して、役所の意図とは異なる発言をしないようにさせる」←これもわからない。が、著作権行政の問題で文部科学大臣がなんか発言・コミットしたというのは、ここ数年記憶がない。 02:48 AM May 14, 2008 from web
  • まぁなんというか、せっかくインフラも安くなってきたのだから、ああいう審議会は全部ストリーミング中継とかして、議事録も委員の確認いらない速記録でいいからすぐ公開して話題がホットなうちにみんなが参照できるようにすればいいと思いました。 02:56 AM May 14, 2008 from web
  • いろいろ話を聞く限りにおいても、文化庁というのは他の省庁よりも審議会のプロセスを重要視してできるだけ公正な方向でやろうとしている印象がある。が、それもあくまで相対的な話という批判もあるし、審議会システムそのものがおかしいのだ、という観点で話をすれば単に「誤差」の範囲なのかもね。 03:02 AM May 14, 2008 from web

第89回の箇条書きは、高橋洋一氏の「さらば財務省!」の第93~97ページの「官僚たちの高等テクニック」に書かれていた内容と、第234~240ページの「渡辺行革大臣に渡らなかったべからず集」~「大臣と異なる方針を新聞にリークする役人」に書かれていた内容を、私なりにつづめてまとめたものなので、高橋氏の著作でこの通り箇条書きにされている訳ではないことを、念のためここでお断りしておく。うっかりしていたが、タイトルも「さらば!財務省」ではなく、「さらば財務省!」が正しかった、元の記事も今直したが、ここでお詫び申し上げる。)

 インターネットで透明性がいくらでも高められるこのご時世に、高橋洋一氏の著作に取り上げられている、経済財政諮問会議や公務員改革のような超巨大利権が絡む検討から文化審議会に至るまで、官庁毎にカラーの違いはあるにせよ、子供だましのテクニックで国民をごまかしてどうするのかというのは、私もつくづく感じるところである。これも透明性をより高めて行けば変わると思うが、即効薬もなく、現状このような子供だましのテクニックがかなり有効なのも事実なので、今の審議会システムについては本当に頭が痛い。

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2008年5月 3日 (土)

第90回:国会法と議員立法、この日本の不透明な立法システム

 今ネット関連で話題になっているものとして、児童ポルノ法の規制強化と、青少年ネット規制法があるが、これらは内閣から提出されるものではなく、議員立法という形で提出することができないかと政党の議員レベルで検討されているものである。

 ニュースから様々な動きを見ていても、一体何が内閣立法とされ、何が議員立法とされるのかの基準はよく分からない。何となく各官庁・議員の利権と慣習で決まっているだけではないかと思われるが、このように立法に複数のルートがあることも、日本の政策決定・立法システムを極めて不明朗かつ曖昧なものとしている。本当にどうにかしてもらいたいと思うが、内閣立法だろうが、議員立法だろうが、国会で可決されなければ法律とならないのは無論のことなので、今回は、国会関係の法律・ルールの紹介をしておきたい。

 国会は憲法の第4章で定められているるが、細かな国会の運営は、国会法や、衆議院規則参議院規則などに従って行われているが、この立法プロセスも不透明極まるものである。

 まず、法案提出については、国会法の第56条で、

第56条  議員が議案を発議するには、衆議院においては議員二十人以上、参議院においては議員十人以上の賛成を要する。但し、予算を伴う法律案を発議するには、衆議院においては議員五十人以上、参議院においては議員二十人以上の賛成を要する。

とされている通り、法律上、法案提出にはまず、提出者1名に加えて、衆議院で議員20~50人の賛成が、参議院で議員10~20人の賛成が必要とされている。

 しかし、何故か慣習上、法案提出には党の機関承認が必要とされ、かつ最高裁でも、この機関承認は問題ないとされているので、各党の上層部が所属議員の法案提出に対して事実上の拒否権を持っているというのが、実情のようである。(政策空間のネット記事参照。確かにこんな慣習も無くした方が良い。)

 さらに、西川伸一氏の好著「新内閣法制局」によると、法案提出には、議院法制局(衆議院と参議院のそれぞれにある)の審査も通すことが必要とされるようである。やはり同書によると、法制局は、与野党の議員の適当な要望を聞いて、既存の法制と適合するように具体的な条文を作ったりするといったことにも関わるそうである。

 要するに、各党内と各党間、国会事務局内の極めて不透明な立案プロセスを経て、党として法案を出しても良いと承認されてから始めて法案は国会に提出されることになるので、どうやっても、ここで各党には国民の目の届かないことを良いことに利権を作り、後の審議はなるべく省略しようとするバイアスがはたらくことになる

 その後は、国会法の同じ第56条の第2項以下で、

第56条
第2項  議案が発議又は提出されたときは、議長は、これを適当の委員会に付託し、その審査を経て会議に付する。但し、特に緊急を要するものは、発議者又は提出者の要求に基き、議院の議決で委員会の審査を省略することができる。
第3項 委員会において、議院の会議に付するを要しないと決定した議案は、これを会議に付さない。但し、委員会の決定の日から休会中の期間を除いて七日以内に議員二十人以上の要求があるものは、これを会議に付さなければならない。
第4項 前項但書の要求がないときは、その議案は廃案となる。
第5項 前二項の規定は、他の議院から送付された議案については、これを適用しない。

と規定されているように、議院の委員会へ法案が回される。(ここで、国会法第56条の2の議案の本会議における趣旨説明要求を逆手に取ってこの付託を妨害するという工作がされることもあるようである。)

 この第3項と4項で書かれているように、この委員会で本会議に付する必要がないとされた法案は廃案となるのだが、別にここで議論することが必要とされている訳ではないので、与野党で結託して、法案を通すとされたら議論もなくそのまま法案が通るのである。(この委員会は、国会法の第40条以下と、衆議院規則・参議院規則の第7章に、各省庁に対応する形の、内閣委員会、総務委員会等々という形で設けられている常任委員会と、特別に設けられる特別委員会とがある。国会法の第45条で規定されているように、委員はその比率に応じて各会派の議員に割り当てられている。内閣提出の法案も、大体各委員会に付託される。児童ポルノ法や青少年ネット規制法は、「青少年問題に関する特別委員会」が担当している。)

 この委員会の審議で本会議に法案が付されるべきとなれば、委員会からその旨が報告され、本会議での審議に移る。そして、本会議で賛成多数で可決されればもう一方の議院に法案は回され、そこで同じことが繰り返されて可決されれば、法律は成立ということになる。

 また、法案提出に関しては、国会法の第50条の2で

第50条の2  委員会は、その所管に属する事項に関し、法律案を提出することができる。
第2項 前項の法律案については、委員長をもつて提出者とする。

とも規定されているので、委員会からの法案提出という形が取られることもあるようである。与野党の間で調整が済んでおり、与野党一致となるのが明らかな法案が、この委員会提出法案とされるらしいが、何が議員提出の法案とされ、何がこの委員会提出法案とされるのかの基準も良く分からない。このこともまた立法プロセスの不透明度を高めている。

 行政の審議会システムも不透明だが、この国会の立法システムも非常に不透明なものと言わざるを得ない。要するに、各党の議員・ボス間の非公式な協議・裏取引で事前に合意さえ作ってしまえば、委員会だろうが、本会議だろうが、実質的な審議をほとんどせずに法案を通せるようになっているのである。国民の声が届きにくいのも無理はない。もはや、このような政治家だけで好きに利権を作れるシステムが容認される時代ではない。

 今の政治家が、完全に政治利権にたかる寄生虫と化していることは、ガソリン増税法可決のゴタゴタを見ていても明らかであり、このような立法システムの透明度そのものをあげるよう、私は求めていかなくてはならないと感じている。何せ立法を握っている者たちを相手に求めるのであるから、時間がかかるかも知れないが、立法のための1票は国民の手の中にあるのだ、最後不可能ではないと私は信じている。

 そのため、今の国会法の第51条で、

第51条 委員会は、一般的関心及び目的を有する重要な案件について、公聴会を開き、真に利害関係を有する者又は学識経験者等から意見を聴くことができる。
第2項 総予算及び重要な歳入法案については、前項の公聴会を開かなければならない。但し、すでに公聴会を開いた案件と同一の内容のものについては、この限りでない。

と委員会は基本的に公聴会を開くことができるとされているのを改めて、全ての法案について公聴会を開かなくてはならないとしてはどうかと私は考えている。誰から話を聞くかの決定は委員長なりがすることになるだろうが、公聴会には誰でも手をあげられ、かつ、その応募者と決定者の両方のリストを公表することでかなり透明度があがるに違いない。また、公聴会を省略することを許すにしても、その場合はパブリックコメントの募集とそれを踏まえた審議と結果の公表を義務づけるべきだろう。委員会の審議を省略して、直接本会議にかける場合も、同様に必ず公聴会を開かなくてはならないとした方が良いと私は思う。

 また、第52条で、委員会については、基本的に議員と委員長の許可を得たものしか傍聴が許されないとされているが、これも誰でも傍聴できるようにしてもらいたいと私は思う。よほどのことがない限り、審議はオープンした方が良いに決まっている。

 統制されない権力は必ず腐敗する。必要なのは、権力による統制ではなく、権力の統制である。事実上各党の密室談合で法律が決まるような今の国会のシステムは腐敗の温床にしかなっていないのだ。個別の法案についての議論も極めて重要だが、今の立法システムの透明化こそ真に必要なことであると、その透明化のための国会法改正を次期選挙の争点の一つにしてもらいたいと私は考えている。

 最後に、児童ポルノ法と青少年ネット規制法についても書いておくと、まだ、法案提出に至っていないようだが、規制強化派の非常識と狂気は想像を絶しており、デタラメかつ危険な情勢が続いている。

 児童ポルノ法に関しては、与党チームの会合では、単純所持規制に、サイトのブロッキングまで追加するという気違い染みた案を取りまとめてきた(読売のネット記事1記事2東京新聞のネット記事日経のネット記事参照)。繰り返すが、罰則は「性的好奇心を満たす目的」で所持している場合に限定すると言っても、ダウンロード違法化問題と同じく、情報の所持は個人的な行為なので、このような目的はエスパーでもない限り証明も反証もできないものであり、このような限定で法律の運用が可能だと思っている時点で狂っている。ブロッキングも警察なりの恣意的な認定により、全国民がアクセスできなくなるサイトを発生させるなど、絶対にやってはならないことであり、このような案が出てくること自体私には空恐ろしいことと思われる。これが検閲に当たらないとしたら、何が検閲に当たるのか。児童ポルノ法に関しては、既に、提供・販売、提供・販売目的での所持が禁止されているのであるから、今の法律の地道なエンフォースこそ必要なのであって、危険な規制強化・情報統制など絶対にされてはならないことである。(特に、国会の4月10日の青少年特別委員会で児童ポルノに関するシーファー発言のデタラメを突いた吉田議員には、私も心からの拍手を送りたいと思う。)

 青少年ネット規制法に関しても、番外その10の頭で少し紹介したが、大どころの反対が出そろったとは言え、何せ政治家は無意味にプライドだけは高い生き物なので、与野党内・国会周辺での理屈を超えた訳の分からない攻防はまだまだ続くだろう。総務省に近いと思われる自民党の総務部会で、携帯電話でのフィルタリング義務化を柱とする案をまとめた(日経のネット記事参照)り、他の報道(リンク切れなのでリンクは張らないが)によると、内閣部会で高市議員のプロジェクトチーム案の劣化版をまとめたり、国会の青少年特別委員会で参考人を呼んだり(委員会ニュース参照)と、デタラメな状況にあり、当分目が離せる状況にない。

 ここまで政府・各党がデタラメかつ不合理なことをやってくるとなると、私も、一国民・一ネットユーザーとして、解散総選挙を期待する他ない。内閣の支持率は20%を切ったが、今のまま行けば、10%を割ってもおかしくはない。別に情報政策に限らず、今の政府・与党に期待できることはもはや何一つない。解散総選挙は早ければ早いほど良い。即刻、サミット前にも解散してもらいたいと思う。国民の期待を裏切る政府・政党などいらないのだ。

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2008年4月29日 (火)

第89回:日本の奇怪な審議会(有識者会議)システム

 日々、知財政策関連の動きをフォローしていて、日本の審議会システムほど奇怪なものもないとつくづく思う。とにかく、内閣からも法案が提出できるのを良いことに、行政の審議会という名の有識者会議で、行政判断はおろか、立法判断まで示され、かつ、放っておくとそれがそのまま法律になったりするので、油断も隙もあったものではないのだ。
 
 知財関係に限っても、著作権法関連では、文部科学省(文化庁)の文化審議会著作権分科会に、

・法制問題小委員会
・私的録音録画小委員会
・過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会

の3つの小委員会があり、特許・意匠・商標・不正競争防止法関連では、経産省(特許庁)の産業構造審議会知的財産政策部会に、

・特許制度小委員会
・商標制度小委員会
・意匠制度小委員会
・技術情報の保護等の在り方に関する小委員会

と4つの小委員会があり、さら情報通信法、コピーワンス問題や地上デジタル放送問題については、総務省の情報通信審議会に、

通信・放送の総合的な法体系に関する検討委員会
デジタルコンテンツの流通の促進等に関する検討委員会
地上デジタル放送推進に関する検討委員会

があり、さらにダメ押しのような形で、内閣官房に、知的財産戦略本部が設けられ、そこで、

・デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会
・コンテンツ・日本ブランド専門調査会
・有識者本部員会合

などが設けられていると言う状態である(さらにワーキンググループとかワーキングチームとか称してさらに小さな検討会が作られたりもする)。このような2重3重の多重検討は、ほとんどわざと検討を分かりにくくして国民に対して嫌がらせをしているとしか思えない。しかも、協力すると見せかけて仲が悪いのは役所の常で、全部微妙に違うことを言うという念の入れようである。

 これらの審議会あるいは本部には根拠法があり、例えば、文化審議会については、文部科学省設置法で、

(文化審議会)
第30条  文化審議会は、次に掲げる事務をつかさどる。
1  文部科学大臣又は文化庁長官の諮問に応じて文化の振興及び国際文化交流の振興(学術及びスポーツの振興に係るものを除く。)に関する重要事項(第三号に規定するものを除く。)を調査審議すること。
2  前号に規定する重要事項に関し、文部科学大臣又は文化庁長官に意見を述べること。

と規定されているが、行政の権限を考えると当たり前の話で、無論、どこの審議会であれ、審議会で決定された方針を元に法改正案を役所が国会に提出することと法律に書かれているなどということは全くない。(なお、コピーワンス問題は多少異なり、法改正の問題ではなく、完全な民々規制問題で、総務省なり情報通信審議会なりにその変更を決定する権限が全くないことがその隠された問題点の一つであるため、運用開始が延期(日経トレンディネットの記事参照)になるのも無理はない話である。だからこそ、本当に必要なのはノンスクランブル・コピーフリーを放送局にエンフォースする逆法規制であると私は考えているのだ。また、知財本部の根拠は、知的財産基本法である。)

 このような根拠法のある審議会とは別に、各省は何故か勝手に懇談会とか研究会とか称して検討会を開けることになっており、このような研究会の例としては、ネット関連で、総務省の、

インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会
インターネット政策懇談会(いわゆるネットワークの中立性の話を検討している)

や、警察庁の

総合セキュリティ対策会議

もある。さらには、関係省庁の連絡会議と称して、内閣官房にIT安心会議などといった何をしているんだか良く分からない会議まで設けられている。(これとは別にIT基本法を根拠とするIT戦略本部もある。)

 昔の中央省庁改革当時の方針を見ても、懇談会で聴取した意見については、答申、意見書等合議体としての結論と受け取られるような呼称を付さないとしているが、守られているのは名称だけであり、別に根拠法のある審議会でないからといって、法改正の検討・事実上の決定がされない訳ではないということは、警察庁の出会い系サイト等に係る児童の犯罪被害防止研究会で出会い系サイト規制法の強化が検討され、かつ閣議決定までされたことを見ても分かることである。この出会い系サイト規制強化法の問題点は第50回で指摘した通りだが、この法案は今衆議院を通過して参議院に回されている。)

 国民に対する嫌がらせとしか思えないデタラメな状況だが、このような審議会という名の有識者会議システムこそ、行政・立法・司法の役割分担を曖昧にし、官僚の無責任な政策決定を許す今の日本システムの核心である。とにかく、とにかく各省庁の所管法令の改正が内閣立法によってなされなければならない理由は何もないのだが、各省庁とも自分の所管法令の改正権限は自分にあるとばかりに、国民の目が届かないのを良いことに好き勝手をやろうとしてくるのだ。特に、文化庁や総務省、警察庁の検討を見ているだけでも分かるし、書いていてバカバカしくも思うのだが、審議会のメンバーの人選や議事・ペーパー・日程はほぼ役所が決められることを利用して、自分たちに都合良く審議を誘導するために役人たちが使ってくる手口は、以下のようなものがある。(見事にまとめておられるので、その快著「さらば財務省!」で、高橋洋一氏が書いている手口をほぼそのまま箇条書きにさせてもらった。)

・役所と反対の意見を持つ者はなるべく始めから外す。

・審議会が開かれる前にあらかじめ説明を行い、委員の発言を思惑通りに誘導する。

・役所に都合の悪い論点は議論のためのペーパーからわざと落とす。

・委員自らまとめてきたペーパーは、役所に都合の良いように書き直す。

・反対意見を持つ委員が来られない日に審議会をわざと設定する。

・意に反する結論が出そうになると、「結論が出なかった」として結論そのものを潰す。

・人数を水増しして一人あたりの発言時間を少なくし、委員が実質的なことを何も言えないようにする。

・結論がまとまらなければ、座長一任という形にして、役所が結論をまとめる。

・結論を出したくないときは、議題をわざと沢山上げて、議論をかき回す。

 さらに、役人どもはこのような審議会における事務局権限(「庶務権」というらしい。)に加えて、

・自分たちに都合の良いように情報をリークして、マスコミに報道させ、既成事実として政策を誘導する。

・新任大臣にはあらかじめ発言してはいけないことを説明して、役所の意図とは異なる発言をしないようにさせる。

というようなことまで駆使して、自分たちに都合の良い政策を実現しようとして来る。このような手口を使って不合理を無理に押し通すには相当のコストがかかっていはずだが、それだけのコストをかけて役人どもが必死に守ろうとしているのが、国益でも何でもなく、単なる天下り利権なのだから、私は日本の未来に暗雲が立ちこめるのを見る思いがするのだ。まがりなりにも難しい試験を通ったのであろうそれなりに優秀な人材のコストが、次官を頂点とする不合理な天下りシステムの中で、このような非創造的な仕事に使われ、ドブに捨てられているのは本当に日本の損失としか言いようがない

 文化庁や総務省、警察庁の検討を見るにつけ、このような審議会システムは極めて問題が大きいと思うのだが、これに代わるシステムがまだ作られていないこともあり、今も全ての官庁で惰性で続けられているのである。最終的には、我々の1票が真に立法に反映されるよう、我々も意識を改め、大局的な観点から合理的な立法判断をできる人間を国会議員として送り込んだ上で、立法権限を国会に集中して行かなければならないと思うが、今でもできることは何でもしておきたいと思う。

 マスコミも役所とぐるなので、マスコミの報道を見ても、役所が考えていることの裏は分からない。資料のネット公開をわざと遅らせることなども役所の手のうちなので、本当にタチが悪いが、ネットの存在によって透明性があがったおかげで、役所も昔ほど極悪非道をやりづらくなっているのは確かだろうし、この透明性向上の流れを止めてはならない。国民の目が注がれていることを示すことが第一である。パブコメも提出できる限り提出しよう。特定業界と癒着した天下り役人が押し進めようとする規制など、不合理なものは不合理、有害無益なものは有害無益と、私は言い続けよう。

 今の日本システムを変えられるかどうかは、国民一人一人の意識にかかっている。もし、このブログなりを読んで政策関連のことに関心を持った方がいれば、是非、自ら今の日本の政策について調べてみてもらいたい。調べれば調べるほど役人の傍若無人ぶりに言いたいことが出てくるに違いないのだ。(別に知財政策・情報政策に限らず、年金だろうが、道路だろうが、役人のやっていることは一緒であり、各省庁の審議会を追っていけばそれなりのことは分かる。)

(なお、この25日に、「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」の中間とりまとめが公表(公開資料概要本文)され、携帯フィルタリングについてもブラックリスト方式を原則とするよう大臣要請が上書きされたので、ここで突っ込んでおく。特に法規制の方針を出しておらずフィルタリング解除の第3者機関についても、行政は関与すべきではなく、複数の第3者機関が基準を提示することにより、様々な価値観を併存させることで、利用者の選択肢を増やすことにつながることが望ましいとしているのは良いのだが、その注釈で、前段階での作業を担うことや、第三者機関の財政的基盤を支えることなどの行政関与はむしろ必要と書いているなど、全く油断はできない。総務省のことだから、放っておくと、税金の投入などを口実にこの第3者機関を天下り先にしてくるだろう。最終報告までのパブコメでは、第3者機関を絶対に天下り先としないと明記するよう求めたいと私は思う。ブラックリスト方式のフィルタリングも消費者に選択肢として与えられる分には別に構わないが、この中間取りまとめ中で、第3者機関への申請者に審査料負担が求められるとしているとしているのもそんな単純に決めて良いことではない。フィルタリングのコスト負担の問題も考え出すと実に難しい話である。)

 正直なところ、良く分からないところも多いのだが、議員立法も最近騒動の種になっているので、次回は、国会法の話を書きたいと思っている。

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2007年11月19日 (月)

第26回:文化庁のパブコメは多数決か。

 今回は、パブコメに関するちょっとした余談をしよう。

 そもそも、パブコメは個別の論点に係る賛否の数を問うものではないということは、どの意見募集要項(例えば、私的録音録画小委員会の意見募集要項参照)にも書かれていることであり、答えから言うとパブコメは多数決ではない。(実際、パブコメの意図としてはその通りであろうから、私も自分の出した意見では自分なりの主張をするよう気をつけた。)

 そのため、果たして、内容(質)を無視したパブコメ動員がどこまで有効かどうかということがあるのだが、こと文化庁のパブコメに関する限り、文化庁は、過去、パブコメにおける賛否の数を民意として取り扱って来た節があるのだ。(文化庁も最近はあまりこのようなまとめをしていないとは断っておく。)

 例えば、レコードの還流防止措置などが問題となった、平成15年度の著作権分科会(第12回)で公表された意見募集の結果の資料は、リンク先を見てもらえれば分かるように、単に以下のように賛否の数をまとめているひどいものである

「書籍・雑誌等の貸与に係る暫定措置の廃止」について、賛成1,211、反対73、その他29
「日本販売禁止レコードの還流防止措置」について、 賛成676、反対293、その他68
「保護期間の延長」について、賛成2、反対16、その他1

 結果、「書籍・雑誌等の貸与に係る暫定措置」は廃止され、「日本販売禁止レコードの還流防止措置」も導入されている。
 この分科会中でも、委員から「内容では,賛成意見において,事業者団体が傘下の会員などに呼びかけて,そのコピーに署名して送っているというような意見もかなりあったが,賛否両論とも,それぞれの個人の考えをしっかり記述している意見が多かった。」と言われているくらいで、この時は数字から見ても明らかに権利者団体側に動員がかかっていたものと思われる

 また、iPod課金が問題となった平成17年度の法制問題小委員会(第8回)では、当時の著作権課長が、

「私的録音録画補償金の見直しにつきましては、若干重複いたしますが、167件ほどになりますけれども、非常に多くの意見が寄せられました。現行制度自体につきましては、現行制度は制度の周知も図られていないし、補償金の分配等も不透明であるとの否定的なものが16件ございました。
 また、ハードディスク内蔵型録音機器等の追加指定につきましては、追加指定すべきというものが17件、追加指定すべきでないというものが80件ございました。追加指定すべきというものは、MDとの公平性、あるいは個別課金はユーザーの経済的負担がかえって増加する、完全なDRMは存在しないというような意見でございました。追加指定すべきでない80件の内訳といたしましては、二重課金に当たるのではないか、ハードディスク内蔵型は汎用機器である、DRMによる個別課金にすべきという意見のほか、ハードディスク内蔵型はコンピュータにコピーできないように実際なっているのではないか、こうした意見もございました。」

と報告している。このパブコメのおかげかどうかはよく分からないが、結局この時はiPod課金はされていない。
 なお、その次の小委員会(第9回)では、全ての意見をまとめた上で、やはり当時の著作権課長が「ここで件数を言うこと自体もはばかられる状況でもございます」と言っているので、件数をあげつらうことはパブコメの意図から考えて問題があると、この時にようやく文化庁も認識したのであろうと思われる。

 その後はあまりこのようなまとめをしてきていないが、このような前例がある以上、今回の私的録音録画問題(ダウンロード違法化やiPod課金など)等についても、文化庁がまた同じように賛否の数でまとめをしてくることも想定しておかなければならない。今のところ、権利者側のパブコメ動員と文化庁の賛否集計の可能性を否定し切れない以上、MIAUネットユーザー動員活動も誤ったやり方とすることはできないだろう。

 まとめをどうするかは文化庁次第のところもあるが、個人のパブコメについて数のみを集計して、そこに含まれている新たな論点を文化庁で勝手に握りつぶしたりすることがあってはならない。ネットでも大々的な話題となったのだ、数はどうあれ、パブコメ全体を見れば、そこには自ずと本当の民意が現れて来るだろう。
 いかに提出された意見の数が多かろうと、その些細な論点でも握りつぶすことなく、次回の私的録音録画小委員会までに文化庁は全てのパブコメをきちんとまとてくれるものと私は期待する。このような丁寧な整理こそ、行政府に本来求められている機能なのだから。

 ついでに、ここで、行政手続法に基づく意見募集と任意の意見募集の違いの話もしておこう。
 行政手続法には、意見公募手続について、以下のような規定がある。

(意見公募手続)
第39条  命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合には、当該命令等の案(命令等で定めようとする内容を示すものをいう。以下同じ。)及びこれに関連する資料をあらかじめ公示し、意見(情報を含む。以下同じ。)の提出先及び意見の提出のための期間(以下「意見提出期間」という。)を定めて広く一般の意見を求めなければならない。
(中略)

(提出意見の考慮)
第42条  命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定める場合には、意見提出期間内に当該命令等制定機関に対し提出された当該命令等の案についての意見(以下「提出意見」という。)を十分に考慮しなければならない。

(結果の公示等)
第43条  命令等制定機関は、意見公募手続を実施して命令等を定めた場合には、当該命令等の公布(公布をしないものにあっては、公にする行為。第五項において同じ。)と同時期に、次に掲げる事項を公示しなければならない。
一  命令等の題名
二  命令等の案の公示の日
三  提出意見(提出意見がなかった場合にあっては、その旨)
四  提出意見を考慮した結果(意見公募手続を実施した命令等の案と定めた命令等との差異を含む。)及びその理由
(後略)

 しかし、電子政府の窓口からたどっていけば分かるように、今回の文化庁のパブリックコメントは任意の意見募集であって、行政手続法に基づく意見募集ではない

 これは、電子政府の用語集にもある通り、「行政手続法に規定する意見公募手続とは、行政機関が命令等(政令、省令など)を制定するに当たって、事前に命令等の案を示し、その案について原則として30日以上の意見提出期間を定めて、広く一般から意見や情報を募集する手続のこと」であるため、政令や省令を超える法改正に関する意見募集は、当然のことながら、行政手続法に基づきようがないからである。
 要するに、厳密なことを言えば、本来立法権限をもたない行政府が法改正について国民の意見を問うこと自体がおかしいのだ。このような法改正に関する行政府の意見募集という手続き自体、日本における行政と立法の役割分担の曖昧さからもたらされた歪んだ手続きである。このことは、もっと国民に広く知られて良いことに違いない。(なお、これを無くすためには、あらゆる法改正の検討を直接出来るくらいに立法府のキャパシティを高めた上で、内閣法を改正し、行政府からの法案の国会提出(内閣立法)を禁止しなければならない。)

 さて次は、少し河岸を変えて、知財事務局での検討について書いてみようかと思っている。

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