2021年4月25日 (日)

第439回:閣議決定された著作権法改正案の条文

 想定通りだが、前々回取り上げたプロバイダー責任制限法改正案について、4月8日の参議院総務委員会で残念ながら通り一遍の審議により全会一致で可決、13日の本会議、20日の参議院総務委員会でも可決され、21日の本会議で可決、成立した。また、前回取り上げた特許法等改正案も、4月21日の衆議院経済産業委員会、22日の本会議で可決され、参議院に送られた。(それぞれ、衆議院のインターネット審議中継、参議院のインターネット審議中継参照。)

 今回は、閣議決定され今国会に提出されているもう1つの知財関連法である著作権法改正案についてである。

 まず、文科省のHPで公開されている閣議決定された著作権法改正案の概要(pdf)から主な説明の部分を抜き出すと、

1.図書館関係の権利制限規定の見直し
①国立国会図書館による絶版等資料のインターネット送信
・国立国会図書館が、絶版等資料(※)のデータを、図書館等だけでなく、直接利用者に対しても送信できるようにする。
(※)絶版その他これに準ずる理由により入手困難な資料
②各図書館等による図書館資料のメール送信等
・図書館等が、現行の複写サービスに加え一定の条件(※)の下、調査研究目的で、著作物の一部分をメールなどで送信できるようにする。
(※)正規の電子出版等の市場を阻害しないこと(権利者の利益を不当に害しないこと)、データの流出防止措置を講じることなど

2.放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化
 同時配信等(※)について、放送と同様の円滑な権利処理を実現する。
(※)同時配信のほか、追っかけ配信、一定期間の見逃し配信を含む。
<措置の内容>
①放送では許諾なく著作物等を利用できることを定める「権利制限規定」(例:学校教育番組の放送)を、同時配信等に拡充する。
②放送番組での利用を認める契約の際、権利者が別段の意思表示をしていなければ、放送だけでなく、同時配信等での利用も許諾したと推定する「許諾推定規定」を創設する。
③集中管理等が行われておらず許諾を得るのが困難な「レコード(音源)・レコード実演(音源に収録された歌唱・演奏)」について、同時配信等における利用を円滑化する。
⇒事前許諾を不要としつつ、放送事業者が権利者に報酬を支払うことを求める。
④集中管理等が行われておらず許諾を得るのが困難な「映像実演(俳優の演技など)」について、過去の放送番組の同時配信等における利用を円滑化する。
⇒事前許諾を不要としつつ、放送事業者が権利者に報酬を支払うことを求める。
⑤放送に当たって権利者との協議が整わない場合に「文化庁の裁定を受けて著作物等を利用できる制度」を、同時配信等に拡充する。

となる。

 次に、新旧対照条文(pdf)案文・理由(pdf)要綱(pdf)説明資料(pdf)も参照)ではそれぞれ別になっているが、図書館関係の権利制限に関する第31条の条文案をまとめて書くと以下のようになる。(以下、下線部が追加部分。)

(図書館等における複製等)
第三十一条 国立国会図書館及び図書、記録その他の資料を公衆の利用に供することを目的とする図書館その他の施設で政令で定めるもの(以下この項及び第三項この条及び第百四条の十の四第三項において「図書館等」という。)においては、次に掲げる場合には、その営利を目的としない事業として、図書館等の図書、記録の資料(以下この条その他の資料(次項及び第六項において「図書館資料」という。)を用いて著作物を複製することができる。
 図書館等の利用者の求めに応じ、その調査研究の用に供するために、公表された著作物の一部分(発行後相当期間を経過した定期刊行物に掲載された個々の著作物国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物(次項及び次条第二項において「国等の周知目的資料」という。)その他の著作物の全部の複製物の提供が著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情があるものとして政令で定めるものにあつては、その全部。第三項において同じ。)の複製物を一人につき一部提供する場合
(略)

 特定図書館等においては、その営利を目的としない事業として、当該特定図書館等の利用者(あらかじめ当該特定図書館等にその氏名及び連絡先その他文部科学省令で定める情報(次項第三号及び第八項第一号において「利用者情報」という。)を登録している者に限る。第四項及び第百四条の十の四第四項において同じ。)の求めに応じ、その調査研究の用に供するために、公表された著作物の一部分(国等の周知目的資料その他の著作物の全部の公衆送信が著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情があるものとして政令で定めるものにあつては、その全部)について、次に掲げる行為を行うことができる。ただし、当該著作物の種類(著作権者若しくはその許諾を得た者又は第七十九条の出版権の設定を受けた者若しくはその公衆送信許諾を得た者による当該著作物の公衆送信(放送又は有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあつては送信可能化を含む。以下この条において同じ。)の実施状況を含む。第百四条の十の四第四項において同じ。)及び用途並びに当該特定図書館等が行う公衆送信の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
 図書館資料を用いて次号の公衆送信のために必要な複製を行うこと。
 図書館資料の原本又は複製物を用いて公衆送信を行うこと(当該公衆送信を受信して作成された電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)による著作物の提供又は提示を防止し、又は抑止するための措置として文部科学省令で定める措置を講じて行うものに限る。)。

 前項に規定する特定図書館等とは、図書館等であつて次に掲げる要件を備えるものをいう。
 前項の規定による公衆送信に関する業務を適正に実施するための責任者が置かれていること。
 前項の規定による公衆送信に関する業務に従事する職員に対し、当該業務を適正に実施するための研修を行つていること。
 利用者情報を適切に管理するために必要な措置を講じていること。
 前項の規定による公衆送信のために作成された電磁的記録に係る情報が同項に定める目的以外の目的のために利用されることを防止し、又は抑止するために必要な措置として文部科学省令で定める措置を講じていること。
 前各号に掲げるもののほか、前項の規定による公衆送信に関する業務を適正に実施するために必要な措置として文部科学省令で定める措置を講じていること。

 第二項の規定により公衆送信された著作物を受信した特定図書館等の利用者は、その調査研究の用に供するために必要と認められる限度において、当該著作物を複製することができる。

 第二項の規定により著作物の公衆送信を行う場合には、第三項に規定する特定図書館等を設置する者は、相当な額の補償金を当該著作物の著作権者に支払わなければならない。

 前項各号第一項各号に掲げる場合のほか、国立国会図書館においては、図書館資料の原本を公衆の利用に供することによるその滅失、損傷若しくは汚損を避けるために当該原本に代えて公衆の利用に供するため、又は絶版等資料に係る著作物を次項次項若しくは第八項の規定により自動公衆送信(送信可能化を含む。同項以下この条において同じ。)に用いるため、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合には、必要と認められる限度において、当該図書館資料に係る著作物を記録媒体に記録することができる。

 国立国会図書館は、絶版等資料に係る著作物について、図書館等又はこれに類する外国の施設で政令で定めるものにおいて公衆に提示することを目的とする場合には、前項の規定により記録媒体に記録された当該著作物の複製物を用いて自動公衆送信を行うことができる。この場合において、当該図書館等においては、その営利を目的としない事業として、当該図書館等の利用者の求めに応じ、その調査研究の用に供するために、自動公衆送信される当該著作物の一部分の複製物を作成し、当該複製物を一人につき一部提供する次に掲げる行為を行うことができる。
 当該図書館等の利用者の求めに応じ、当該利用者が自ら利用するために必要と認められる限度において、自動公衆送信された当該著作物の複製物を作成し、当該複製物を提供すること。
 自動公衆送信された当該著作物を受信装置を用いて公に伝達すること(当該著作物の伝達を受ける者から料金(いずれの名義をもつてするかを問わず、著作物の提供又は提示につき受ける対価をいう。第九項第二号及び第三十八条において同じ。)を受けない場合に限る。)。

 国立国会図書館は、次に掲げる要件を満たすときは、特定絶版等資料に係る著作物について、第六項の規定により記録媒体に記録された当該著作物の複製物を用いて、自動公衆送信(当該自動公衆送信を受信して行う当該著作物のデジタル方式の複製を防止し、又は抑止するための措置として文部科学省令で定める措置を講じて行うものに限る。以下この項及び次項において同じ。)を行うことができる。
 当該自動公衆送信が、当該著作物をあらかじめ国立国会図書館に利用者情報を登録している者(次号において「事前登録者」という。)の用に供することを目的とするものであること。
 当該自動公衆送信を受信しようとする者が当該自動公衆送信を受信する際に事前登録者であることを識別するための措置を講じていること。

 前項の規定による自動公衆送信を受信した者は、次に掲げる行為を行うことができる。
 自動公衆送信された当該著作物を自ら利用するために必要と認められる限度において複製すること。
 次のイ又はロに掲げる場合の区分に応じ、当該イ又はロに定める要件に従つて、自動公衆送信された当該著作物を受信装置を用いて公に伝達すること。
 個人的に又は家庭内において当該著作物が閲覧される場合の表示の大きさと同等のものとして政令で定める大きさ以下の大きさで表示する場合 営利を目的とせず、かつ、当該著作物の伝達を受ける者から料金を受けずに行うこと。
 イに掲げる場合以外の場合 公共の用に供される施設であつて、国、地方公共団体又は一般社団法人若しくは一般財団法人その他の営利を目的としない法人が設置するもののうち、自動公衆送信された著作物の公の伝達を適正に行うために必要な法に関する知識を有する職員が置かれているものにおいて、営利を目的とせず、かつ、当該著作物の伝達を受ける者から料金を受けずに行うこと。

10 第八項の特定絶版等資料とは、第六項の規定により記録媒体に記録された著作物に係る絶版等資料のうち、著作権者若しくはその許諾を得た者又は第七十九条の出版権の設定を受けた者若しくはその複製許諾若しくは公衆送信許諾を得た者の申出を受けて、国立国会図書館の館長が当該申出のあつた日から起算して三月以内に絶版等資料に該当しなくなる蓋然性が高いと認めた資料を除いたものをいう。

11 前項の申出は、国立国会図書館の館長に対し、当該申出に係る絶版等資料が当該申出のあつた日から起算して三月以内に絶版等資料に該当しなくなる蓋然性が高いことを疎明する資料を添えて行うものとする。

 概要に書かれている通りだが、要するに、第31条第2~5項で、著作権者の利益を不当に害しない等の条件を満たす場合に、データの目的外利用を防止する等の措置を講じている特定図書館等が図書館資料を利用者にメール等の手段で送信できる事が書かれており、第6~11項で、国会図書館が絶版等資料を利用者に送信できる事が書かれている。補償金に関する細かな条文案の引用はここではしないが、第5項に書かれている通り、前者の場合には特定図書館等による補償金の支払いもある。

 この内容は文化庁の今年の審議会報告書(パブコメ募集時に書いた第433回参照)に書かれていた通りの図書館関係の権利制限の拡充をほぼそのまま条文化したものであって、細かな事を規定するだろう文部科学省令に少し気をつけておいた方がいいとは思うが、権利制限の拡充の1つとして是非行ってもらいたいと思えるものである。

 また、もう1つのポイントである放送のインターネット再送信の円滑化についても、概要中の説明に書かれている通り、その措置の内容は多岐に渡るが、ここでは、中でも特に主要な部分と言えるだろう定義と許諾推定に関する部分だけ以下に抜き出しておく。

(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
九の五(略)
九の六 特定入力型自動公衆送信 放送を受信して同時に、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力することにより行う自動公衆送信(当該自動公衆送信のために行う送信可能化を含む。)をいう。
九の七 放送同時配信等 放送番組又は有線放送番組の自動公衆送信(当該自動公衆送信のために行う送信可能化を含む。以下この号において同じ。)のうち、次のイからハまでに掲げる要件を備えるもの(著作権者、出版権者若しくは著作隣接権者(以下「著作権者等」という。)の利益を不当に害するおそれがあるもの又は広く国民が容易に視聴することが困難なものとして文化庁長官が総務大臣と協議して定めるもの及び特定入力型自動公衆送信を除く。)をいう。
 放送番組の放送又は有線放送番組の有線放送が行われた日から一週間以内(当該放送番組又は有線放送番組が同一の名称の下に一定の間隔で連続して放送され、又は有線放送されるものであつてその間隔が一週間を超えるものである場合には、一月以内でその間隔に応じて文化庁長官が定める期間内)に行われるもの(当該放送又は有線放送が行われるより前に行われるものを除く。)であること。
 放送番組又は有線放送番組の内容を変更しないで行われるもの(著作権者等から当該自動公衆送信に係る許諾が得られていない部分を表示しないことその他のやむを得ない事情により変更されたものを除く。)であること。
 当該自動公衆送信を受信して行う放送番組又は有線放送番組のデジタル方式の複製を防止し、又は抑止するための措置として文部科学省令で定めるものが講じられているものであること。
九の八 放送同時配信等事業者 人的関係又は資本関係において文化庁長官が定める密接な関係(以下単に「密接な関係」という。)を有する放送事業者又は有線放送事業者から放送番組又は有線放送番組の供給を受けて放送同時配信等を業として行う事業者をいう。

(著作物の利用の許諾)
第六十三条(略)
(略)
 著作物の放送又は有線放送及び放送同時配信等について許諾(第一項の許諾をいう。以下この項において同じ。)を行うことができる者が、特定放送事業者等(放送事業者又は有線放送事業者のうち、放送同時配信等を業として行い、又はその者と密接な関係を有する放送同時配信等事業者が業として行う放送同時配信等のために放送番組若しくは有線放送番組を供給しており、かつ、その事実を周知するための措置として、文化庁長官が定める方法により、放送同時配信等が行われている放送番組又は有線放送番組の名称、その放送又は有線放送の時間帯その他の放送同時配信等の実施状況に関する情報として文化庁長官が定める情報を公表しているものをいう。以下この項において同じ。)に対し、当該特定放送事業者等の放送番組又は有線放送番組における著作物の利用の許諾を行つた場合には、当該許諾に際して別段の意思表示をした場合を除き、当該許諾には当該著作物の放送同時配信等(当該特定放送事業者等と密接な関係を有する放送同時配信等事業者が当該放送番組又は有線放送番組の供給を受けて行うものを含む。)の許諾を含むものと推定する。

 他の部分も含め、この様な条文自体に問題があるという事はないが、前にも書いた通り、私は、放送のインターネットでの再送信が進まない事は主として著作権法上の権利処理の違いに起因している訳ではないと見ており、この様な許諾推定規定等を入れた所で放送の再送信がすぐに劇的に進むとはあまり思っていないがどうだろうか。無論、技術の進展に伴いインターネットにおける情報発信・伝達は今後も否応なく進んで行くとも思っているが。

 今回の著作権法改正案は、全体を通して見ても、珍しく問題がない所か、図書館関係の権利制限が拡充される点で是非今国会での成立を期待すると書けるものである。

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2020年12月16日 (水)

第433回:文化庁の図書館関係権利制限の拡充に関するパブコメ募集(12月21日〆切)と放送の再配信関係法改正に関するパブコメ募集(1月6日〆切)

 文化庁から12月21日〆切で「図書館関係の権利制限規定の見直し(デジタル・ネットワーク対応)に関する中間まとめ」に対する意見募集(文化庁のHP1、電子政府のHP1参照)と、1月6日〆切で「放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する中間まとめ」に関する意見募集(文化庁のHP2、電子政府のHP2参照)がかかっているので、今回はこれらの内容を取り上げる。

(1)「図書館関係の権利制限規定の見直し(デジタル・ネットワーク対応)に関する中間まとめ」に対する意見募集(12月21日〆切)
 やや遅きに失した感はあるが、文化審議会・著作権分科会・法制度小委員会(具体的な検討はその下の図書館関係の権利制限規定の在り方に関するワーキングチームによる)の図書館関係の権利制限規定の見直し(デジタル・ネットワーク対応)に関する中間まとめ(電子政府HP掲載版(pdf))は、図書館関係の権利制限を電子データの送信まで拡充する方針で、歓迎すべき内容となっている。

 まず、この中間まとめの第2ページから始まる「第2章 検討結果」の「第1節 入手困難資料へのアクセスの容易化(法第31条第3項関係)」で、現状、国会図書館による絶版等資料の他の図書館等へのインターネット送信・館内閲覧と利用者への一部分の複製の提供を可能としている著作権法第31条第3項関係の改正について書かれているが、その方向性は第4ページに、

 新型コロナウィルス感染症の流行に伴うニーズの顕在化等を踏まえ、様々な事情により図書館等への物理的なアクセスができない場合にも絶版等資料を円滑に閲覧することができるよう、権利者の利益を不当に害しないことを前提に、国立国会図書館が、一定の条件の下で、絶版等資料のデータを利用者に直接インターネット送信することを可能とすることとする。

と書かれている通りで、国会図書館が絶版等資料のデータを利用者に直接インターネット送信することを可能とするとしているもので、これは利用者の利便性向上の観点から高く評価できるものである。

 制度設計としては、

  • 以下の(ⅰ)~(ⅳ)の視点に基づき議論した結果、まずは、権利者の利益保護を図りつつ、国民の情報アクセスを早急に確保する観点から、「送信対象資料の範囲等について現行の厳格な運用を尊重しつつ、利用者に直接インターネット送信することを可能とし、補償金制度は導入しないこと」とすることで認識が一致した。(第5ページ)
  • 国民の情報アクセス確保の観点から、特定の属性を有する者(例えば、研究者)のみが閲覧できるといった現行の図書館等における閲覧と取扱いを異にした仕組みは望ましくない一方で、権利者の利益保護の観点から、ID・パスワードなどにより閲覧者の管理を行う仕組みを設ける必要があるとの認識で一致した。その場合、ID・パスワードなどの取得・登録時に、利用者に利用規約等への同意を求め、不正な利用を防止することなどが想定される。(第10ページ)
  • ストリーミング(画面上での閲覧)のみを可能とするか、プリントアウトやデータのダウンロード(複製)まで認めるべき否かという点については、様々な意見があったが、①ストリーミングだけでは利便性の観点から問題があること、②紙媒体でのプリントアウトについては、データの不正拡散等の懸念も少ないため、利便性確保のために認めていくべきであることについては認識が一致した。(第10ページ)

と書かれている様に、補償金を取る事はせず、ID・パスワード等を用いた管理により、一部プリントアウトも認められるというものであり、方向性としてはこれも妥当であると私は思う。

 次に、第13ページ以降の「第2節 図書館資料の送信サービスの実施(法第31条第1項第1号関係)」で、国会図書館以外も含む図書館等による資料の一部の複製の提供を可能としている著作権法第31条第1項第1号関係の改正について書かれているが、これも、対応の方向性は、第14ページで、

 図書館等が保有する多様な資料のコピーをデジタル・ネットワーク技術の活用によって簡便に入手できるようにすることは、コロナ禍のような予測困難な事態にも対応し、時間的・地理的制約を超えた国民の「知のアクセス」を向上させ、また、研究環境のデジタル化により持続的な研究活動を促進する上で極めて重要であり、図書館等の公共的奉仕機能を十分に発揮させる観点からも、可能な限り、多様なニーズに応えられる仕組みを構築することが望まれる。

 他方、入手困難資料以外の資料(市場で流通している資料。新刊本を含む。)について、簡便な手続により大量のコピーが電子媒体等で送信されるようになれば、たとえそれが著作物の一部分であっても、正規の電子出版等をはじめとする市場、権利者の利益に大きな影響を与え得ることとなる。

 このため、権利者の利益保護の観点から厳格な要件を設定すること及び補償金請求権を付与することを前提とした上で、図書館等が図書館資料のコピーを利用者にFAXやメール等で送信することを可能とすることとする。その際には、きめ細かな制度設計等を行う必要がある一方で、図書館等において過度な事務的負担が生じない形で、スムーズに運用できる仕組みとすることも重要である。

と書かれている通り、図書館等が利用者に電子データを送信する事を可能とするもので、利用者の利便性向上の観点で評価できるものである。

 こちらの制度設計としては、

  • 具体的な担保の方法について、諸外国においては10%を上限とするなど定量的な定めを設けている例もあるが、権利者の利益を不当に害するか否かは、送信される著作物の種類や性質、正規の電子出版等をはじめとしたサービスの実態、送信される分量など、様々な要素に照らして総合的に判断されるものであることを踏まえると、分量等について一律の基準を設けるよりは、「ただし、・・・に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない」というただし書を設け、実態に即したきめ細かな判断を可能とする方が望ましいものと考えられる。(第15ページ)
  • 利用者のニーズや各図書館等におけるシステム・コスト面での実現可能性等に応じて柔軟に対応することができるよう、FAX、メール、ID・パスワードで管理されたサーバーへのアップロードなど、多様な形態での送信を認めることが望ましい。(第17ページ)
  • 今回、新たにメール送信等を可能とすることに伴って、作成・送信されたデータが目的外で流出・拡散することが懸念されるため、(ア)図書館等においてデータの流出防止のための適切な管理を行うとともに、(イ)データを受信した利用者による不正な拡散を防止するための措置を講ずることが必要である。具体的な措置として、(ア)については、例えば、図書館等においてデータの流出防止に必要な人的・物的管理体制を構築することや、作成したデータが不要となった場合には速やかに破棄すること、(イ)については、例えば、利用者に対して著作権法の規定やデータの利用条件等を明示することや、不正な拡散を技術的に防止する措置を講ずることなどが考えられる。(第17ページ)
  • 法第31条第1項に規定する図書館等であっても、必ずしも全てにおいて送信サービスを実施するニーズがあるわけではなく、また、図書館等によって人的・物的管理体制や技術・システム、財政面等には違いがあり、上記のデータの流出防止措置や後述の補償金制度の運用を含め、全ての図書館等で適切な運用が担保できるとは言いがたいものと考えられる。一方で、国民の情報アクセスを確保する観点からは、特定の種別の図書館等(例:国立国会図書館及び大学図書館)のみを対象とするのは適切ではないと考えられることから、一定の運用上の基準を設定し、法第31条第1項に規定する図書館等のうち当該基準を満たすものに限って送信サービスを実施できるようにすることが適当である。(第18ページ)
  • 上記(1)~(3)の措置によって、正規市場との競合やデータの目的外での流出・拡散などは防止することができるものと考えられるが、図書館等からのメール送信等によって国民が迅速かつ簡易にパソコンやスマートフォンで必要なデータを入手・閲覧することができるようになれば、権利者の利益に大きな影響を与えることが想定される。このため、今回、新たに図書館等によるメール送信等を可能とすることに伴って権利者が受ける不利益を補償するため、補償金請求権を付与することが適当である。(第18ページ)
  • 補償金請求権の対象とする行為について、現在無償となっている「複製」まで含めた場合には、図書館利用者の利便性が著しく低下し、国民の情報アクセスや研究活動等に支障が生じることが懸念されるため、今回新たに権利制限がなされる「公衆送信」のみを対象とすることが適当である。その際、補償金の対象から除外する著作物(例えば、国の広報資料・報告書や入手困難資料)を設けることも考えられる。(第19ページ)
  • 送信サービス利用者による不適切な行為を防止する観点から、図書館等においては、あらかじめ、著作権法の規定やサービスの利用条件等を明示した上で、それに同意した者を登録し、登録した者を対象として送信サービスを実施することとすべきである。(第21ページ)

と、補償金つきで、登録管理により、一定の基準を満たす図書館等によって電子データの利用者への直接送信が可能となるというものであり、これも妥当なものと言えるだろう。

(2)「放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する中間まとめ」に関する意見募集(1月6日〆切)
 もう1つのパブコメは、文化審議会・著作権分科会・基本政策小委員会(具体的な検討はその下の放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関するワーキングチームによる)の放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化に関する中間まとめ(pdf)電子政府HP掲載版(pdf))に対するものである。

 この報告書の内容については、基本政策小委員会の12月14日の資料の中の概要(pdf)が比較的分かりやすいと思うので、その第2~3ページの主な記載内容を抜き出すと以下の様になる。

<対象とするサービスの範囲>

○同時配信のほか、追っかけ配信(放送が終了するまでに配信が開始されるもの)、一定期間の見逃し配信を対象とすることを基本とする。

○放送対象地域との関係を問わず、番組内容の一部変更やCMの差替えも認めるなど柔軟な仕組みとする。

<措置内容の一覧>

(1)権利制限規定の同時配信等への拡充【法改正】
・放送では許諾なしに著作物を自由に利用できることとなっている規定を、同時配信等に拡充。

(2)許諾推定規定の創設【法改正】
・放送番組での利用を認める契約の際、権利者が別途の意思表示をしていなければ、放送だけでなく同時配信等での利用も許諾したものと推定。

(3)同時配信等に係るレコード・レコード実演(被アクセス困難者)の報酬請求権化【法改正】
・レコード・レコード実演の同時配信等に関し、集中管理にがされておらず、個別の許諾を得るのに相当な手続コストを要する被アクセス困難者の権利について報酬請求権化。

(4)リピート放送の同時配信等に係る映像実演(被アクセス困難者)の報酬請求権化【法改正】
・リピート放送の同時配信等に関し、映像実演の被アクセス困難者の権利について、法律上、リピート放送の場合と同様、初回契約時に別段の定めがない限り、報酬請求権化。

(5)裁定制度の改善【法改正・政令改正等】
①協議不調の場合の裁定制度:同時配信等に当たっての協議が整わない場合にも活用可能とする。
②権利者不明の場合の裁定制度:民放についても一定の要件の下で補償金の事前供託を免除、「相当な努力」(広告掲載)の要件を緩和、申請手続を電子化、事務処理を迅速化。

 この放送関連の著作権法改正が実質的に一般ユーザに影響する事はほとんどないのではないかと思うので、ここでこれ以上細かな説明をするつもりはないが、一部の権利制限規定の拡充はしたらいいと思うものの(問題となっている権利制限でなぜ放送のみが取り上げられているのか、放送の再送信だけでなくより一般的な他の通信手段にまで広げられないのかといった点について掘り下げた議論がされなかったのは残念という他ないが)、他はほぼ放送事業者側が最初の契約で権利処理すればいいだけではないかと思える事ばかりである。

 これは規制改革絡みで政治的圧力もあっての決着だとは思うが、著作権法における放送と通信の権利処理の違いについては、同じ放送対象地域での同時再送信について実演家とレコード製作者の権利を報酬請求権化した2006年法改正(文化庁の法改正解説ページ参照)くらいから10年以上延々同じ事を議論しているので、今提案されている法改正も何をいまさらという感じが大いにするものである。放送のインターネットでの再送信が進まない事は主として著作権法上の権利処理の違いに起因している訳ではないだろうと私は見ており、今回の報告書で提案されている法改正が通ったからといって放送の再送信がすぐに劇的に進むとは思えないのだがどうだろうか。(無論、その技術の進展に伴い、インターネットにおける情報発信・伝達は今後も否応なく進んでいくだろうとは思うが。)

 今年の年末年始にかけてのこの2つの文化庁著作権パブコメの内、前者の図書館関係の権利制限の拡充に関するパブコメについて、私は賛成の意見を出すつもりでいるが、ほぼそのまま賛成と書くだけの非常に単純な内容のものとなるので、ここに載せるほどの事はないだろう。

(2020年12月20日の追記:1箇所誤記を修正した(「利用者への電子データの送信」→「利用者に電子データを送信する事」)。)

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2020年6月 7日 (日)

第425回:ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大を含む著作権法改正案の可決・成立

 残念ながら、先週6月5日の参議院本会議で、ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大を含む著作権法改正案が可決され、成立した(参議院のインターネット審議中継参照)。

 今までの国会審議の経緯は、前回の追記等で書いて来たが、もう一度まとめて書いておくと、衆議院の文部科学委員会で5月20日に実質審議開始(衆議院HPの会議録1参照)、5月22日に委員会可決(会議録2参照)、5月26日の衆議院本会議で可決、参議院へ送付、参議院の文教科学委員会で6月2日に実質審議開始、6月4日に委員会可決(それぞれ参議院のインターネット審議中継参照)、6月5日に参議院本会議で可決・成立と、政府と与野党の間で完全に根回しが済んでいたのだろう、出来レースのスピード審議による可決・成立だった。

 衆参の委員会で条文の解釈に関する質疑もあったが、用意されていたシナリオ通りなのではないかと思える、教科書的な受け答えに終始した。中でも防弾ホスティングや中継サーバー、サイバーロッカー型のサイトなどの存在が持ち出されていたが、いずれもアップロードの取り締まりが本当に困難な理由やダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲を拡大する理由になるものではなく、また、侵害である事を知りながらといった主観要件の立証に関しても、ダウンロードについて警告を受けてなお継続する場合という現実的にあり得ないケースが持ち出されるばかりで、問題の本質にまで踏み込んだ議論がされる事はほぼなかった。(著作権法改正案の条文については第421回、私の考える懸念については前回の私家版Q&Aも参照。)

 また、衆参でそれぞれ、以下のような附帯決議もつけられた(衆議院HPの附帯決議参照、参議院の附帯決議も全く同一である)。

著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議

 政府及び関係者は、本法の施行にあたっては、次の事項について特段の配慮をすべきである。

一 海賊版サイトの形態は多種多様であり、本法の措置では対応ができないストリーミング形式を採用している海賊版サイト等も存在することを踏まえ、本法による規制にとどまらず、今後ともあらゆる手段を通じて海賊版対策の徹底に向けた取組を政府一丸となって行うこと。

二 侵害コンテンツの違法アップロードについては、アップロードを行う者が海外サーバーを利用する事例や、我が国の捜査協力等の要請に対して非協力的な国が存在することも踏まえ、迅速かつ円滑な捜査・摘発に向けて、政府は海外の捜査機関や通信業者等とのさらなる連携強化を促進し、実効性のある違法アップロード対策の実現に努めること。

三 政府は、海賊版対策を講じるための専門的知見、人的資源、資金等が不十分な中小企業等を支援するため、海賊版対策の構築に係る専門的知見の提供や経費の補助等の様々な支援策を講じるよう努めること。

四 本法による侵害コンテンツのダウンロード違法化に係る措置が国民の正当な情報収集等の萎縮をもたらさないよう多くの要件が設けられ複雑な制度設計になっていることを踏まえ、本法附則による国民への普及啓発及び未成年者への教育を行うにあたっては、分かりやすいガイドライン等を作成するとともに、インターネット上や学校現場等の様々な場面での普及啓発・教育に万全を期すこと。

五 政府は、関係者による議論の状況等を踏まえつつ、演奏権等の要件としての公衆に直接見せ又は聞かせる目的の範囲について、必要に応じて社会通念や妥当性の観点から検討するとともに、その結果に基づいて必要な見直しを行うよう努めること。

六 デジタル化・ネットワーク化の進展にともない、従来は受信者であった国民が同時に発信者にもなる時代が到来し、著作物の利用・流通形態の多様化が今後さらに進行すことが想定されることに鑑み、政府は、権利の保護と著作物の円滑な利用の促進とのバランスに十分留意しつつ、時代に即した著作権法制となるよう、そのあり方について不断の検証を行うこと。

 この附帯決議に書かれている、違法アップロード対策の強化と支援は当然の事と思うが、この事について今まで政府においてどこまで具体的かつ実効性のある形で進められて来たのか、進んでいないとしたら、それはなぜかという事こそ法改正以前にまず明らかにされるべきだったろう。

 そして、幾つか細かな要件を追加しながら、ダウンロード違法化・犯罪化の範囲を映像音楽だけから全著作物に大きく拡大する、この複雑怪奇な条文について、来年1月1日の施行に向け、文化庁は今までの解説に毛の生えた程度の要領を得ないガイドラインを作って来るに違いない。本当にその条文、ガイドラインに従って行動する事を求められたら、国民の正当な情報収集にかなりの萎縮が発生するだろうと、漫画についてもそうだが、漫画以外の一般的な著作物についてより大きな悪影響が出るだろうとも思うが、皆今まで通りインターネットで情報アクセスやダウンロードを続けるよう、訳も分からず萎縮しないことを私は願う。また、この様な法改正によって今後増える事が想定される詐欺にも注意してもらいたいとも思う。

 今国会で、新型コロナウィルス対策など他の大問題が重なる中、昨年世論の高まりを受けて提出を見送られ極めて慎重な審議が求められるはずのこの著作権法改正案が、あまり注目が集まらない儘、可決・成立してしまったことは非常に残念な事と言わざるを得ない。参議院の委員会審議でも話に出ていた通り、海賊版対策として最も有効なのは違法アップロード対策とともに適正な正規版の流通を進めることであって、全著作物のダウンロードを違法化・犯罪化して海賊版をなんとかしたいなどというのがそもそも間違いである。今までの映像音楽についても、この著作権法改正で拡大して対象とされる他の著作物についても、ダウンロード違法化・犯罪化は要件の如何に関わらず間違った法制であるという私の考えに変わりはなく、私はこれからもその撤廃・廃止を求め続ける考えである。

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2020年5月18日 (月)

第424回:ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大を含む著作権法改正案に関する私家版Q&A

 先週5月15日に、衆議院の文部科学委員会で著作権法改正案の趣旨説明がされ、参考人招致をする事が決まったので(衆議院公報参照)、今後の審議がどうなるかまだ分からないが、早ければ今週にも衆議院でダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大を含む著作権法改正案の実質審議がされるかも知れないという状況である。

 今の新型コロナウィルスに伴う緊急事態宣言も出されている中で、その本質的な問題に踏み込む事なく政府与党間の通り一遍の審議で可決される様な事があれば、これも火事場泥棒と言っていいものである。

 今まで言って来た事の繰り返しとなるが、今回は、著作権法改正案の審議が近いと考えられる事を踏まえ、文化庁のHPで公開されている、余りにもお粗末な回答の並ぶ侵害コンテンツのダウンロード違法化に関するQ&A(基本的な考え方)(pdf)から、私の考えるQ&Aを私家版として作り、ダウンロード違法化・犯罪化の本質的な問題がどこにあるのかをより明らかに示しておければと思う。(著作権法改正案の条文については第421回参照。)

(2020年5月20日夜の追記:以下のQ&Aで1箇所誤記を直した(問9の答えで「1.」を削除)。また、今日5月20日から衆議院の文部科学委員会で著作権法改正案の実質審議が始まった(衆議院のインターネット中継参照)。今日のところは参考人質疑だけで採決はなかったが、案の定議論はあまり深まっていない。このまま行くと金曜5月22日の次回委員会で可決される恐れも強いが、私はこのダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大を含む著作権法改正案の可決に反対する。)

(2020年5月22日夜の追記:極めて残念な事ながら、今日の衆議院文部科学委員会で十分な審議も反対もなく著作権法改正案が可決された(衆議院のインターネット審議中継参照)。以前から、アップロードの取り締まりが難しい理由として防弾ホスティングや中継サーバーの事が持ち出される事が多いが、いずれもアップロードの取り締まりが本当に困難な理由にはなるものではなく、その程度の事で難しいとするなら、なおさら取り締まりがさらに困難なダウンロードの違法化・犯罪化を拡大する理由にはならないだろう。また、以下の様な附帯決議も役に立つとは思えず、複雑怪奇なダウンロード違法化・犯罪化の条文についてわかりやすいガイドラインができるとも思えないが、本当にその条文に従って行動する事を求められたら、国民の正当な情報収集にかなりの萎縮が発生するのは間違いないだろう。)

(2020年5月31日夜の追記:著作権法改正案は5月26日の衆議院本会議で可決されて参議院に送られ、5月28日の参議院文教委員会で趣旨説明と参考人招致が決定された。6月2日には参議院文教委員会での実質審議が始まり、今週中にはこの委員会で可決される恐れも強いが、私はこのダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大を含む著作権法改正案に変わらず反対である。)

(2020年6月2日夜の追記:今日の参議院文教委員会での参考人質疑は衆議院よりは噛み合っていたとは思うが、やはり教科書的な受け答えに終始した(参議院のインターネット審議中継参照)。サイバーロッカー型のサイトは昔からあったので、その仕組みは特別なものではなく、それでダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大が正当化されるということなどない。侵害である事を知りながらといった主観要件の立証に関して、ダウンロードについて警告を受けてなお継続する場合というが、現実的にあり得ないケースである。この複雑怪奇な条文に基づき抑止効果はあるが情報収集の萎縮は発生しないというのも説明として不合理極まる。今週木曜かと思う次回の委員会で可決される可能性が高いが、私がダウンロード違法化・犯罪化自体に反対である事に変わりはない。)

(2020年6月7日夜の追記:5月22日の追記中に記載した附帯決議は次の第425回の本文に移した。また、以下のQ&Aでもう1箇所誤記を直した(問23の答えで「1.」を削除)。)

(以下、私家版Q&A)

【総論】

問1 既に違法となっているアップロード行為を厳格に取り締まれば良く、ダウンロードを行うユーザーまで規制する必要はないのではないか。

(答)
1.その通りです。現行法上も違法アップロード行為については、諸外国と比べても厳格な法定刑(10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又はその併科)が定められており、アップロード者に対する権利行使や摘発は随時行われています。現行法で不十分な場合として本当にどの様な場合があるのかは何ら示されていません。

2.アップロード者が特定できないのはエンフォースメントの問題であって、ダウンロードの問題ではありません。国際条約もあり、著作権法はほとんどどの国にもありますから、海外にいることで免責されるなどという事もありません。

問2 漫画村のようなストリーミング型の海賊版サイトには効果がないため、ダウンロードを違法化しても意味がないのではないか。

(答)
1.ストリーミング型の海賊版サイトに対してダウンロード違法化はそもそも意味がありません。これは現行法における音楽映像に関するダウンロード違法化・犯罪化がストリーミング型の海賊版サイトに対して意味がないのと同じです。

2.ダウンロード型の海賊版サイトも存在しているでしょうが、現行法における音楽映像に関するダウンロード違法化・犯罪化に海賊版対策としての効果は実質的になかったと考えられる事からも、効果はないものと考えられます。

3.また、本法案におけるリーチサイト規制でストリーミング型のサイトも対象としている事はダウンロード違法化・犯罪化の問題と直接関係はありません。

4.海賊版サイトの収入源を絶つための「広告出稿の抑制」などの方がよほど効果的であって、無意味な法改正よりこの様な対策にこそ注力すべきと考えます。

5.なお、法改正にあたり、漫画村事件に対する評価・分析も極めて不十分と言わざるを得ません。

問3 ユーザーが侵害コンテンツをそうと知りながらダウンロードしたかどうかは、外部からは確認できず、権利行使・摘発は不可能であるため、ダウンロードを違法化しても意味がないのではないか。違法化による効果は見込めるのか。

(答)
1.その通りです。ダウンロード違法化・犯罪化に海賊版対策としての効果は全く見込めません。この権利行使・摘発が実質不可能であるという点こそがダウンロード違法化・犯罪化問題における最も本質的な問題と言えます。現行法の音楽映像に関するダウンロード違法化・犯罪化もいまだに権利行使や摘発された例はありません。

2.現行法の音楽映像に関するダウンロード違法化・犯罪化の権利行使・摘発例がない事を考えても、自ら違法ダウンロードを行っている旨をSNSなどで誇示している場合や、違法アップロードに関する捜査・訴訟等の過程でダウンロードの事実が確認された場合というのはおよそ現実的にあり得る事とは思えません。仮に今後あったとしても、侵害である事を知りながらといった主観的要件の証明またはその反証はいずれも不可能です。

3.政府の調査で、ある行為が違法になっても続けるかと聞けば多くの者はしないと答えるに決まっているので、文化庁の過去の調査はこの点ではほとんど役に立ちません。ダウンロード違法化・犯罪化が海賊版対策になったという因果関係を定量的に示した調査はいまだかつてなく、音楽映像について違法ダウンロードが減ったというのも、適法の音楽映像サービスが充実して来た事の帰結と考える方が妥当です。

4.たとえ法規定の外形上ダウンロード違法化・犯罪化がされている様に見える国でも、ダウンロードとアップロードを同時に行うP2Pファイル共有に関する例を除き、単なるダウンロードに対して権利行使や摘発がされた例は1つもなく、どこの国でもダウンロード違法化・犯罪化が海賊版対策として効果を上げているなどという事は全くありません。諸外国で例があるかの様な主張は文化庁の印象操作に過ぎません。

問4 侵害コンテンツのダウンロードを行った場合、いきなり訴訟を起こされたり、逮捕されたりするのか。

(答)
 現状でも、著作権者が問題視しておらず、いわば黙認されているものとして、いわゆる「寛容的な利用」とされるものもあります。通常の権利者は、警告などをする事なく、いきなり訴訟を起こしたり、告発したりする事はあまり想定できません。しかし、違法ダウンロードに限った話ではありませんが、この様な法改正によって訴訟や逮捕などを持ち出して脅すネット上の詐欺が増える可能性はあるでしょう。

問5 昨年提出を検討していた法案から、どのような修正を行ったのか。

(答)
1.昨年提出を検討していた法案からの修正点は、ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大について、①スクリーンショットを行う際の写り込みの例外規定の追加、②軽微なものの除外、③二次創作・パロディにおける原著作者の権利の除外、④著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合の除外です。以下で詳述しますが、この除外によって問題の多少の緩和は図られているものの、これらは本質的な問題を解消するものではありません。

2.なお、リーチサイト運営者等に対する刑事罰については、親告罪とされました。

【違法化による影響・対象範囲】

問6 インターネット上での情報収集等が萎縮するのではないか。

(答)
1.音楽映像に関するダウンロード違法化・犯罪化同様、権利行使や摘発は実質不可能であるため、最終的には規制は無意味となり、萎縮がなくなる可能性もあり、あるいは、この法改正の複雑怪奇な条文が通常のインターネット利用者に理解されず、そもそも萎縮が発生しない可能性もありますが、問5の除外によって救われる範囲は非常に限定的であり、通常の利用者が本当にこの法改正の範囲を正しく理解して行動しようとすると、相当の萎縮が発生するだろうと思います。

2.以下でさらに述べますが、問5で除外されると書いた、①スクリーンショットを行う際の写り込みは一部に付随的に違法なコンテンツが含まれる場合に限られ、②軽微なものも例えばストーリー漫画の1コマ~数コマ程度という非常に軽微な場合に限られ、③二次創作・パロディについても原著作者の権利が除かれているに過ぎず、④著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合もそれなりに正当化事由が示せる場合に限られるので、これでは、利用者が通常するであろう多くの場合のカジュアルなスクリーンショット、ダウンロード、デジタルでの保存行為が違法・犯罪となる可能性が出て来ます。

問7 スクリーンショットができなくなるのか。

(答)
1.適法にアップロードされたコンテンツのスクリーンショットは当然適法ですが、拡大される写り込みに関する権利制限によって適法となり得るのはその一部に付随的に違法なコンテンツが含まれる場合のスクリーンショットに限られます。

2.その他通常の場合としていろいろと考えられる、SNSの投稿を保存する際に違法にアップロードされた画像がかなり大きく入り込んでしまった場合や、違法にアップロードされた記事のスクリーンショットなどは違法とされる可能性があるでしょう。

問8 漫画家・研究者等が行う創作・研究活動や、企業が行うビジネスにも悪影響が及ぶのではないか。

(答)
1.漫画家・研究者等や企業が業務として行うダウンロードは、私的使用目的の複製ではなく、もともと違法であって、この法改正とは直接関係しないというのはその通りですが、これもそのまま四角四面に著作権法を適用しようとすると相当の悪影響が生じる例の1つでしょう。

2.漫画家・研究者等が行う創作・研究活動における複製についても私的複製と苦しい言い訳をせざるを得ないところにも大きな問題があるのですが、この点について文化庁がまともに検討を進める気があるとは思えないのは残念です。

問9 論文に引用するために、インターネット上のコンテンツをダウンロードすることもできなくなるのか。

(答)
 この改正はその他の権利制限を制約するものではなく、引用のための利用(著作権法第32条)などは、従来通り著作権者の許諾なく行うことができます。引用のために必要かつ合理的と認められる限度で違法にアップロードされた著作物を論文等に引用する目的でダウンロードすることも許容されます。

問10 漫画だけを対象にすれば良いのではないか。

(答)
 この法改正案には、海賊版による想定被害や海賊版対策としての実効性のなさとは無関係に、権利者団体からの一方的な言い分により、ダウンロード違法化・犯罪化の全著作物への対象範囲の拡大が入っています。

問11 海賊版サイトからのダウンロードだけを違法化すれば良いのではないか。

(答)
 この法改正案では、海賊版による想定被害や海賊版対策としての実効性のなさとは無関係に、権利者団体からの一方的な言い分により、海賊版サイトへの限定は外されています。

問12 侵害コンテンツを見ただけで違法となってしまうのか。

(答)
1.問2でストリーミングについて書いた通り、著作権侵害コンテンツの単なる視聴・閲覧が違法とされるものではありません。

2.なお、視聴・閲覧に伴うキャッシュやプログレッシブ・ダウンロードは、別途、著作権法第47条の4第1項の規定により適法となります。

問13 メールで著作権侵害コンテンツのファイルを送り付けられた場合にそれを保存すると違法となってしまうのか。

(答)
 メール送信は自動公衆送信に該当せず、メールで著作権侵害コンテンツのファイルを送り付けられた場合にそれを保存しても違法とはなりませんが、問4で書いた通り、リンクをメールで送信し、違法にダウンロードしたと訴訟や逮捕などを持ち出して脅すネット上の詐欺が増える可能性はあるでしょう。

【主観要件】

問14 インターネット上のコンテンツは、適法にアップロードされたか、違法にアップロードされたかの判別が困難な場合も多いのではないか。実際には違法にアップロードされたものであるが、適法にアップロードされたもの(例:適法に引用されたもの)だと勘違いしてダウンロードした場合は、どうなるか。

(答)
1.アップロードが適法か違法か分からない場合や、アップロードが適法だと誤解した場合などは、ダウンロードは違法とならないでしょうが、インターネット上のコンテンツは、適法にアップロードされたか、違法にアップロードされたかの判別が困難な場合がほとんどでしょう。主観要件は立証も反証も実質不可能と見るべきです。

2.なお、出版社は適法サイトにABJマークというマークを表示するという取り組みを進めるとしていますが、マークがないサイトの違法性を示すものたり得ません。残念ながら、音楽映像のエルマーク同様、利用者がほとんど気に留める事はなく、そのうち忘れ去られるのではないかと思います。

問15 違法なアップロードだと知っていたということは、誰がどのように判断するのか。ユーザーが違法だと知らなかったことを証明することは困難ではないか。

(答)
 その通りです。ダウンロードに対するユーザーの法的責任を追及するためには、ユーザーが、違法にアップロードされたことが確実であると知りながらダウンロードを行ったことを立証する必要がありますが、実質これは不可能です。権利者がダウンロードユーザーをどう特定して警告するのかという事1つを取っても、権利者から警告された後もユーザーが侵害コンテンツのダウンロードを継続している場合など、現実的にはあり得ないでしょう。

【除外規定】

<二次創作・パロディ>

問16 そもそも二次創作・パロディを創作・アップロードする行為は違法なのか。

(答)
1.二次創作・パロディについては、黙示の許諾などにより、適法となる場合があるとの見解があり、また多くの場合で黙認されている事もあるでしょう。(注:文化庁の答えでは、引用の類推適用も入っているが、二次創作・パロディに引用を類推適用するのは難しいのではないかと私は思う。)

2.二次創作・パロディの文化的創造性と価値から特別の権利制限規定を作ってもいいのではないかと思いますが、残念ながら、今のところこの点について文化庁がまともに検討を進める気配はありません。

問17 ①二次創作・パロディを二次創作者自身が共有サイトなどにアップロードしている場合、それをダウンロードする行為は違法となるのか。また、②二次創作・パロディを更に第三者が違法にアップロードしている場合、その二次創作・パロディの海賊版をダウンロードする行為は違法となるのか。

(答)
1.問の①のような場合には、ダウンロードは違法となり得ません。一方で、この法改正案では原著作者の権利が除かれているに過ぎないため、問の②のような場合には、二次創作者の権利の侵害として違法となり得ます。さらに、翻訳はこの除外から除外されているため、二次創作であっても翻訳とされるものは、①の場合の様に、翻訳者自身がサイトにアップロードしていても、そのダウンロードは違法となり得ます。

2.上記の1.の内容をダウンロード違法化・犯罪化の対象からの二次創作・パロディの除外というのはミスリードと言わざるを得ず、通常の利用者が正しく理解できるとも思えません。

<軽微なもの>

問18 軽微なものとは具体的にどのようなものを指すのか。

(答)
1.軽微なものとは、典型的には、数十頁で構成される漫画の1コマ~数コマ、長文で構成される論文や新聞記事の数行など、その著作物全体の分量から見て、ダウンロードされる分量がごく小さい場合とされています。

2.このほか、画質が低く、鑑賞に堪えないような粗い画像をダウンロードした場合も軽微なものとされるようです。

3.しかし、それ以外の場合の漫画の数コマ以上、論文や新聞記事の数行以上のダウンロード、通常の画質の画像のダウンロードは軽微なものとはされないので、広く一般的になされるコンテンツのダウンロードでほとんどの場合は軽微なものとはされないと考えられます。


問19 実際には軽微ではないものを軽微なものと勘違いしてダウンロードした場合は、どうなるのか。

(答)
 軽微なものと勘違いしてダウンロードした場合は違法とはならないのだろうと思いますが、この様な解釈は法改正案の条文に基づかないので確実にそうとは断言できません。

<特別な事情がある場合>

問20 著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除くと規定することとしたのはなぜか。具体的にどのような場合がこれに該当するのか。

(答)
1.著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除くと規定することとしたのは、以前の法改正見送りの経緯から、最終的に政府と与党の間で取られた妥協案に過ぎません。(注:第419回参照。)

2.この要件に該当するか否かは、(ア)著作物の種類・経済的価値などを踏まえた保護の必要性の程度、(イ)ダウンロードの目的・必要性などを含めた態様、という2つの要素によって判断され、典型的には、①詐欺集団の作成した詐欺マニュアル(著作物)が、被害者救済団体によって告発サイトに無断掲載(違法アップロード)されている場合に、それを自分や家族を守る目的でダウンロードすること、②無料で提供されている論文(著作物)の相当部分が、他の研究者のウェブサイトに批判ととともに無断転載(引用の要件は満たしていない=違法アップロード)されている場合に、それを全体として保存すること、③有名タレントのSNSに、おすすめイベントを紹介するためにそのポスター(著作物)が無断掲載(違法アップロード)されている場合に、そのSNS投稿を保存することなどが、これに該当するとされていますが、この様に利用者がそれなりに正当化事由を示せる場合は非常に限られるでしょう。

3.また、ダウンロード違法化・犯罪化の実効性の問題はありますが、本当に訴訟等に巻き込まれた場合には、ユーザー側がこの特別な事情を立証する必要があるとされている事もさらに問題をややこしくするだけでしょう。

4.なお、刑事罰の場合は、検察が不当に害しないと認められる特別な事情がないことを立証する必要があるとされるようですが、この様にある事情がないとするアクロバティックな立証を検察に求められるのか甚だ疑問です。

問21 著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合に該当することをユーザーが立証するのは困難ではないか。

(答)
1.ダウンロード違法化・犯罪化の実効性の問題はありますが、本当に訴訟に巻き込まれた場合には、ダウンロードの際に正当性についてほぼ意識する事はないであろう通常の利用者からすると、それなりに正当化事由を示すのは非常に困難な場合がほとんどと考えられます。

2.ダウンロードについて、その正当性の証拠まで残しながら行う事を求めるのは、利用者にとってほとんど不可能な過度の負担であって、本当にその様な事を求めるとするならば、相当の萎縮が発生すると考えられます。

【刑事罰】

問22 刑事罰まで科す必要はあるのか。音楽映像についても摘発事例はないところ、刑事罰を科す意味はどこにあるのか。

(答)
1.現行法の音楽映像に関するダウンロード犯罪化の摘発例がない事を考えても、ダウンロードについて刑事罰を課す意味はありません。萎縮効果が大きくなり得るだけかえって有害です。

2.政府の調査で、ある行為が犯罪になっても続けるかと聞けば多くの者はしないと答えるに決まっているので、文化庁の過去の調査はこの点ではほとんど役に立ちません。ダウンロード違法化・犯罪化が海賊版対策になったという因果関係を定量的に示した調査はいまだかつてなく、音楽映像について違法ダウンロードが減ったというのも、適法の音楽映像サービスが充実して来た事の帰結と考える方が妥当です。

問23 警察による捜査権の濫用を招くのではないか。

(答)
 現行法の音楽映像に関するダウンロード犯罪化の摘発例がないので、ただちに捜査権の濫用を招くとは言えませんが、昨今のウィルス罪に関する無茶な摘発例などを見ても、今後、誤認逮捕や別件逮捕、無茶な刑事訴追を誘発する恐れは拭い切れません。

問24 著作権等侵害罪はTPP整備法により一部非親告罪化されているが、今回もそれが適用されるのか。

(答)
 ダウンロード犯罪化は親告罪となっています。

問25 正規版が有償で提供されているか否かは、ダウンロードするユーザーには分からない場合もあるが、その場合でも、刑事罰を科される可能性があるのか。

(答)
 正規版が有償で提供されているか否かが分からずにダウンロードした場合や、正規版が無償で提供されているものと勘違いしてダウンロードした場合は、刑事罰の対象とはならないと思われますが、ダウンロード犯罪化について、無茶な刑事訴追を誘発する恐れは拭い切れません。

【その他】

問26 今回の改正に伴って、音楽映像の違法ダウンロードについては、要件を変更しないのか。

(答)
 パブリックコメントは数を見るものではありませんが、パブリックコメントで多くの者が現行法の音楽映像のダウンロード違法化・犯罪化にそもそも反対の意見を出していた事を思えば、音楽映像に関するダウンロード違法化・犯罪化そのものの廃止・撤廃の検討もされるべきものだったと思いますが、この様な検討が真面目にされる事はなく、一方的に音楽映像のダウンロード違法化・犯罪化条項は維持するとされました。(注:パブリックコメントの結果については第417回参照。)

問27 附則に規定された「違法アップロード対策の充実」として、何を行っていくのか。

(答)
 今のところ、ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大を除けば、ブロッキングやアクセス警告方式などの危険な取り組みは止まっていますが、今後も危険な検討が続く可能性が強く、要注意です。

問28(追加) この法改正は不要不急ではないか。

(答)
 ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大は世論の高まりを受けて昨年提出を見送られたもので、極めて慎重な審議が求められるのであって、不要不急のものと言わざるを得ず、また、その本質的な問題に踏み込む事なく政府与党間の通り一遍の審議で可決される様な事があってはならないものです。他の部分についても全く問題なしとしませんが、本国会で急ぎ可決しようとするのであれば、少なくともダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大の関連条項は全て削除するべきと考えます。

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2020年4月12日 (日)

第423回:2018年著作権法改正のオンライン教育著作物利用補償金制度の早期施行(4月28日施行・2020年度無償)

 既に報道もされているが、文化庁のHPに掲載されている通り、2018年著作権改正のオンライン教育著作物利用補償金制度がこの4月28日に施行される事となった。

 ここではあまり教育に関する著作権問題を大きく取り上げる事はして来なかったが、2018年著作権法改正には、以下の第35条に改正が入り、補償金を支払う事で授業のための著作物の複製のみならず公衆送信まで可能とされた。(法改正全体の内容については第389回参照。)

(学校その他の教育機関における複製等)
第三十五条 学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における使用利用に供することを目的とする場合には、必要その必要と認められる限度において、公表された著作物を複製する複製し、若しくは公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。以下この条において同じ。)を行い、又は公表された著作物であつて公衆送信されるものを受信装置を用いて公に伝達することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び当該複製の部数及び当該複製、公衆送信又は伝達の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

 前項の規定により公衆送信を行う場合には、同項の教育機関を設置する者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。

 公表された著作物については、前項前項の規定は、公表された著作物について、第一項の教育機関における授業の過程において、当該授業を直接受ける者に対して当該著作物をその原作品若しくは複製物を提供し、若しくは提示して利用する場合又は当該著作物を第三十八条第一項の規定により上演し、演奏し、上映し、若しくは口述して利用する場合にはにおいて、当該授業が行われる場所以外の場所において当該授業を同時に受ける者に対して公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行うことができるを行うときには、適用しないただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該公衆送信の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

 この条文の施行日は元々公布の日(2018年5月25日)から3年を超えない日とされていたので、まだ1年くらい準備期間があったものだが、新型コロナ感染症対策として教育のオンライン化が取沙汰される中での早期施行となり、そのため共通目的事業の支出割合を2割とする省令のパブコメも4月1日から4月10日までの短期間でかかっていた(文化庁のパブコメページ、電子政府のHP参照)。

 ここではその条文を全て引用する事はしないが、改正著作権法において、第5章第2節、第104条の11から第104条の17までに、授業目的公衆送信補償金とその管理団体の指定や共通目的事業への支出などが規定されており、そして、この指定管理団体は全国で1つとされていて、構成員としてはいつもの著作権団体がずらりと並ぶ授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)が2019年2月15日に指定されている(文化庁の指定についてのページ参照)。

 文化庁の法改正ページで額の認可に関する審査基準等(pdf)も公開されているが、文化庁の要請(文化庁の配慮願いについてのページ参照)も受けての事だろう、この4月6日にSARTRASが、そのHPで公表している通り、2020年度に限り補償金を無償として認可申請をするとしている。

 まだ文化審議会への諮問と文化庁長官の認可というプロセスもあるが、教育目的でも補償金を無償とするのは極めて異例とはいえ、この非常時に審議会において異が唱えられるとも思えず、4月28日の施行までにそのまま認可されるのではないかと思う。

 そうすると、まず間違いなく、4月28日から2021年3月31日までの間、著作権者の利益を不当に害しない限りという限定は無論つくが、営利目的以外の教育機関で授業のために基本的に無償で著作物をオンラインで公衆送信できるということになるだろう。

 私は前々回も書いた通り、ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大を含む著作権法改正案に反対しているし、文化庁はおよそ碌でもない事ばかりしているとの考えが変わる事はないが、今回このオンライン教育目的補償金制度を予定より早く施行し、1年弱限定とはいえ著作物の無償でのオンライン教育利用を可能とした事は非常時における著作権政策として良い仕事をしたと評価できる。無論、いつも通り、教育政策としてはオンライン教育のためのインフラが大して整っていなかったり、文化政策としては文化芸術部門に対する非常時のサポートが不十分だったりといった問題も大いにあるので、全体として評価できるかというと正直疑問ではあるのだが。

(2020年4月28日夜の追記:文化庁から、文化審議会著作権分科会が開催され、2020年度はオンライン教育補償金を無償とする認可が4月24日にされたというリリースがあったので、ここにリンクを張っておく。なお、文化庁のQ&A(pdf)にも書かれている通り、この無償利用は2020年度に限られ、無償と言っても教育機関からSARTRASに届け出をすることとされているので、利用について完全に手続きなしで無償とするものではないことに注意しておいた方がいいだろう。また、上で一箇所SARTRASをSASTRASと書き間違えていたのに気づいたので合わせ直した。)

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2020年3月11日 (水)

第421回:閣議決定された著作権法改正案のダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大関連条文

 去年見送りになったダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大を含む著作権法改正案が、3月10日に閣議決定され、文科省のHPで公開された。第419回で取り上げた文化庁の議論のまとめに与党自民党の知的財産戦略調査会の申し入れの内容を加えた想定通りのものだが、ここで、その内容を見ておきたいと思う。

 概要としては、要綱(pdf)で見てもいいが、概要資料(pdf)の見出しで、

1.インターネット上の海賊版対策の強化
①リーチサイト対策【第113条第2項~第4項、第119条第2項第4号・第5号、第120条の2第3号等】
②侵害コンテンツのダウンロード違法化【第30条第1項第4号・第2項、第119条第3項第2号・第5項等】

2.その他の改正事項
①写り込みに係る権利制限規定の対象範囲の拡大【第30条の2】
②行政手続に係る権利制限規定の整備(地理的表示法・種苗法関係)【第42条第2項】
③著作物を利用する権利に関する対抗制度の導入【第63条の2】
④著作権侵害訴訟における証拠収集手続の強化【第114条の3】
⑤アクセスコントロールに関する保護の強化【第2条第1項第20号・第21号、第113条第7項、第120条の2第4号等】
⑥プログラムの著作物に係る登録制度の整備(プログラム登録特例法)【プログラム登録特例法第4条、第26条等 】

とある通りで、これらの項目のうち、昨年提出を目論んだ著作権法改正条文案との間で違いがある項目は、「1.①リーチサイト対策」で、親告罪化、プラットフォーマーの原則除外、「1.②侵害コンテンツのダウンロード違法化」で、軽微なものの除外、二次創作物における原著作権者の権利の除外、著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合の除外、「2.①写り込みに係る権利制限規定の対象範囲の拡大」で法改正項目自体の追加(これによりダウンロード違法化・犯罪化についても写り込みの場合が適法化される)という事になる。(昨年閣議決定されなかった条文案については第406回参照)

(1)ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大関連
 新旧対照条文(pdf)又は案文(pdf)から、まずダウンロード違法化・犯罪化の対象拡大について、関連条文を抜き出すと以下の様になる。(下線が改正部分)

(私的使用のための複製)
第三十条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
一・二(略)
 著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。次号において同じ。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実(以下この号及び次項において「特定侵害録音録画」という。)を、特定侵害録音録画であることを知りながら行う場合
 著作権(第二十八条に規定する権利(翻訳以外の方法により創作された二次的著作物に係るものに限る。)を除く。以下この号において同じ。)を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の複製(録音及び録画を除く。以下この号において同じ。)(当該著作権に係る著作物のうち当該複製がされる部分の占める割合、当該部分が自動公衆送信される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものを除く。以下この号及び次項において「特定侵害複製」という。)を、特定侵害複製であることを知りながら行う場合(当該著作物の種類及び用途並びに当該特定侵害複製の態様に照らし著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除く。)

 前項第三号及び第四号の規定は、特定侵害録音録画又は特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行う場合を含むものと解釈してはならない。

(略)

(付随対象著作物の利用)
第三十条の二 写真の撮影、録音又は録画、録画、放送その他これらと同様に事物の影像又は音を複製し、又は複製を伴うことなく伝達する行為(以下この項において「写真の撮影等」という。)の方法によつて著作物を創作する複製伝達行為」という。)を行うに当たつて、当該著作物(以下この条において「写真等著作物」という。)に係る写真の撮影等のその対象とする事物又は音から分離することが困難であるため付随して対象となる事物又は音に係る他の著作物(当該写真等著作物における(以下この項において「複製伝達対象事物等」という。)に付随して対象となる事物又は音(複製伝達対象事物等の一部を構成するものとして対象となる事物又は音を含む。以下この項において「付随対象事物等」という。)に係る著作物(当該複製伝達行為により作成され、又は伝達されるもの(以下この条において「作成伝達物」という。)のうち当該著作物の占める割合、当該作成伝達物における当該著作物の再製の精度その他の要素に照らし当該作成伝達物において当該著作物が軽微な構成部分となるもの場合における当該著作物に限る。以下この条において「付随対象著作物」という。)は、当該創作に伴つて複製する付随対象著作物の利用により利益を得る目的の有無、当該付随対象事物等の当該複製伝達対象事物等からの分離の困難性の程度、当該作成伝達において当該付随対象著作物が果たす役割その他の要素に照らし正当な範囲内において、当該複製伝達行為に伴つて、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該複製利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

 前項の規定により複製された利用された付随対象著作物は、同項に規定する写真等著作物当該付随対象著作物に係る作成伝達物の利用に伴つて、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りではない。

第百十九条(略)
(略)
 次の各号のいずれかに該当する者は、二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
 第三十条第一項に定める私的使用の目的をもつて、録音録画有償著作物等(録音され、又は録画された著作物又は実演等(著作権又は著作隣接権の目的となつているものに限る。)であつて、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)をいう。)の著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)又は著作隣接権を侵害する送信可能化(国外で行われる送信可能化であつて、国内で行われたとしたならば著作隣接権の侵害となるべきものを含む。)に係る自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画(以下この号及び次項において「有償著作物等特定侵害録音録画」という。)を、自ら有償著作物等特定侵害録音録画であることを知りながら行つて著作権又は著作隣接権を侵害した者
 第三十条第一項に定める私的使用の目的をもつて、著作物(著作権の目的となつているものに限る。以下この号において同じ。)であつて有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権を侵害しないものに限る。)の著作権(第二十八条に規定する権利(翻訳以外の方法により創作された二次的著作物に係るものに限る。)を除く。以下この号及び第五項において同じ。)を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の複製(録音及び録画を除く。以下この号において同じ。)(当該著作権に係る著作物のうち当該複製がされる部分の占める割合、当該部分が自動公衆送信される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものを除く。以下この号及び第五項において「有償著作物等特定侵害複製」という。)を、自ら有償著作物等特定侵害複製であることを知りながら行つて著作権を侵害する行為(当該著作物の種類及び用途並びに当該有償著作物等特定侵害複製の態様に照らし著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除く。)を継続的に又は反復して行つた者

 前項第一号に規定する者には、有償著作物等特定侵害録音録画を、自ら有償著作物等特定侵害録音録画であることを重大な過失により知らないで行つて著作権又は著作隣接権を侵害した者を含むものと解釈してはならない。

 第三項第二号に規定する者には、有償著作物等特定侵害複製を、自ら有償著作物等特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行つて著作権を侵害する行為を継続的に又は反復して行つた者を含むものと解釈してはならない。

 テクニカルな修正もあるが、これらの条文案で民事の第30条第1項第4号と刑事の第119条第3項第2号で、それぞれ、「当該著作物の種類及び用途並びに当該特定侵害複製の態様に照らし著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除く」、「当該著作物の種類及び用途並びに当該有償著作物等特定侵害複製の態様に照らし著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除く」と、与党自民党の申し入れを受けて、著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除くとした事が文化庁の議論のまとめ時点からの最大の違いである。(その時点と申し入れの話については第419回参照)

 この著作権法改正案の説明資料(pdf)参考資料(pdf)、文化庁のHPで公開されたQ&A(基本的な考え方)(pdf)は、相変わらず、被害推定や法改正の有効性、諸外国の状況などについて、法改正の結論ありきで片寄った主張を垂れ流しているもので、ダウンロード違法化・犯罪化の本質的な問題に対する答えにまるでなっていないが、著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合について言えば、このQ&Aで、

問20「著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除く」と規定することとしたのはなぜか。具体的にどのような場合がこれに該当するのか。

(答)
1.国民の正当な情報収集等への萎縮を防止するため,様々な要素に照らして,違法化対象からの除外を判断できるバスケットクローズ規定(安全弁)を設けることとしたものです。

2.ただし,海賊版対策の実効性が低下することを避ける観点から,①ユーザー側が「不当に害しないと認められる特別な事情」があることを立証する必要があることとする(その立証ができない場合には,ダウンロードは違法となる)(※1)(※2)とともに,②居直り的な利用を確実に防止する(※3)ため,このような規定としています。(※1) 侵害コンテンツ(かつ,軽微でも二次創作・パロディでもないもの=相当分量のデッドコピー)をそうと知りながら利用している以上は,ユーザー側が例外的に「不当に害しないと認められる特別な事情」がある場合だという立証をすることが適当だと考えています。
(※2)なお,刑事罰の場合は,検察が「不当に害しないと認められる特別な事情」がないことを立証する必要があります。
(※3) 漫画の海賊版などを楽しむためにダウンロードしているような場合には,およそ「不当に害しないと認められる特別な事情」がある場合に該当しないことは明らかであるため,居直り(行き過ぎた主張)を確実に防止できます。

3.この要件に該当するか否かは,(ア)著作物の種類・経済的価値などを踏まえた保護の必要性の程度,(イ)ダウンロードの目的・必要性などを含めた態様,という2つの要素によって判断されるものです。
 典型的には,①詐欺集団の作成した詐欺マニュアル(著作物)が,被害者救済団体によって告発サイトに無断掲載(違法アップロード)されている場合に,それを自分や家族を守る目的でダウンロードすること,②無料で提供されている論文(著作物)の相当部分が,他の研究者のウェブサイトに批判ととともに無断転載(引用の要件は満たしていない=違法アップロード)されている場合に,それを全体として保存すること,③有名タレントのSNSに,おすすめイベントを紹介するためにそのポスター(著作物)が無断掲載(違法アップロード)されている場合に,そのSNS投稿を保存することなどが,これに該当します。

と書かれ、案の定、文化庁はそれなりに正当化自由を積極的に必要とする解釈をしていると知れる。

 前回載せた知財計画パブコメや第419回までで書いて来ている通りだが、昨年と比べたときの追加の要件・法改正項目で、スクリーンショットで違法画像が付随的に入り込む場合や、ストーリー漫画の数コマ、論文の数行、粗いサムネイル画像のダウンロードの場合といった僅かな場合が除かれ、また、著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除外する事で、それなりの正当化事由を示せる様な特別な事情がある場合が除かれるが、これは本質的な問題の解消に繋がるものではなく、なお、利用者が通常するであろう多くの場合のカジュアルなスクリーンショット、ダウンロード、デジタルでの保存行為が違法・犯罪となる可能性が出て来、場合によって意味不明の萎縮が発生する恐れがある事に変わりはない。これは、今の録音録画に関するダウンロード違法化・犯罪化同様、海賊版対策としては何の役にも立たない、百害あって一利ない最低最悪の著作権法改正の一つとなるものである。

(2)リーチサイト規制関連
 次に、リーチサイト規制関連についても主な改正条文を抜き出しておくと以下の様になる。

(侵害とみなす行為)
第百十三条(略)
 送信元識別符号又は送信元識別符号以外の符号その他の情報であつてその提供が送信元識別符号の提供と同一若しくは類似の効果を有するもの(以下この項及び次項において「送信元識別符号等」という。)の提供により侵害著作物等(著作権(第二十八条に規定する権利(翻訳以外の方法により創作された二次的著作物に係るものに限る。)を除く。以下この項及び次項において同じ。)、出版権又は著作隣接権を侵害して送信可能化が行われた著作物等をいい、国外で行われる送信可能化であつて国内で行われたとしたならばこれらの権利の侵害となるべきものが行われた著作物等を含む。以下この項及び次項において同じ。)の他人による利用を容易にする行為(同項において「侵害著作物等利用容易化」という。)であつて、第一号に掲げるウェブサイト等(同項及び第百十九条第二項第四号において「侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等」という。)において又は第二号に掲げるプログラム(次項及び同条第二項第五号において「侵害著作物等利用容易化プログラム」という。)を用いて行うものは、当該行為に係る著作物等が侵害著作物等であることを知つていた場合又は知ることができたと認めるに足る相当の理由がある場合には、当該侵害著作物等に係る著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。
 次に掲げるウェブサイト等
 当該ウェブサイト等において、侵害著作物等に係る送信元識別符号等(以下この条及び第百十九条第二項において「侵害送信元識別符号等」という。)の利用を促す文言が表示されていること、侵害送信元識別符号等が強調されていることその他の当該ウェブサイト等における侵害送信元識別符号等の提供の態様に照らし、公衆を侵害著作物等に殊更に誘導するものであると認められるウェブサイト等
 イに掲げるもののほか、当該ウェブサイト等において提供される侵害送信元識別符号等の数、当該数が当該ウェブサイト等において提供される送信元識別符号等の総数に占める割合、当該侵害送信元識別符号等の利用に資する分類又は整理の状況その他の当該ウェブサイト等における侵害送信元識別符等の提供の状況に照らし、主として公衆による侵害著作物等の利用のために用いられるものであると認められるウェブサイト等
 次に掲げるプログラム
 当該プログラムによる送信元識別符号等の提供に際し、侵害送信元識別符号等の利用を促す文言が表示されていること、侵害送信元識別符号等が強調されていることその他の当該プログラムによる侵害送信元識別符号等の提供の態様に照らし、公衆を侵害著作物等に殊更に誘導するものであると認められるプログラム
 イに掲げるもののほか、当該プログラムにより提供されている侵害送信元識別符号等の数、当該数が当該プログラムにより提供されている送信元識別符号等の総数に占める割合、当該侵害送信元識別符号等の利用に資する分類又は整理の状況その他の当該プログラムによる侵害送信元識別符号等の提供の状況に照らし、主として公衆による侵害著作物等の利用のために用いられるものであると認められるプログラム

 侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等に該当するウェブサイト等の公衆への提示を行つている者(当該侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等と侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等以外の相当数のウェブサイト等とを包括しているウェブサイト等において、単に当該公衆への提示の機会を提供したに過ぎない者(著作権者等からの当該侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等において提供されている侵害送信元識別符号等の削除に関する請求に正当な理由なく応じない状態が相当期間にわたり継続していたことその他の著作権者等の利益を不当に害すると認められる特別な事情がある場合を除く。)を除く。) 又は侵害著作物等利用容易化プログラムの公衆への提供等を行つている者(当該公衆への提供等のために用いられているウェブサイト等とそれ以外の相当数のウェブサイト等とを包括しているウェブサイト等又は当該侵害著作物等利用容易化プログラム及び侵害著作物等利用容易化プログラム以外の相当数のプログラムの公衆への提供等のために用いられているウェブサイト等において、単に当該侵害著作物等利用容易化プログラムの公衆への提供等の機会を提供したに過ぎない者(著作権者等からの当該侵害著作物等利用容易化プログラムにより提供されている侵害送信元識別符号等の削除に関する請求に正当な理由なく応じない状態が相当期間にわたり継続していたことその他の著作権者等の利益を不当に害すると認められる特別な事情がある場合を除く。)を除く。) が、当該侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等において又は当該侵害著作物等利用容易化プログラムを用いて他人による侵害著作物等利用容易化に係る送信元識別符号等の提供が行われていることを知つている場合であつて、かつ、当該送信元識別符号等に係る著作物等が侵害著作物等であることを知つている場合又は知ることができたと認めるに足りる相当の理由がある場合において、当該侵害著作物等利用容易化を防止する措置を講ずることが技術的に可能であるにもかかわらず当該措置を講じない行為は、当該侵害著作物等に係る著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。

 前二項に規定するウェブサイト等とは、送信元識別符号のうちインターネットにおいて個々の電子計算機を識別するために用いられる部分が共通するウェブページ(インターネットを利用した情報の閲覧の用に供される電磁的記録で文部科学省令で定めるものをいう。以下この項において同じ。)の集合物(当該集合物の一部を構成する複数のウェブページであつて、ウェブページ相互の関係その他の事情に照らし公衆への提示が一体的に行われていると認められるものとして政令で定める要件に該当するものを含む。)をいう。

10(略)

第百十九条(略)
 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一~三(略)
 侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等の公衆への提示を行つた者(当該侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等と侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等以外の相当数のウェブサイト等(第百十三条第四項に規定するウェブサイト等をいう。以下この号及び次号において同じ。)とを包括しているウェブサイト等において、単に当該公衆への提示の機会を提供したに過ぎない者(著作権者等からの当該侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等において提供されている侵害送信元識別符号等の削除に関する請求に正当な理由なく応じない状態が相当期間にわたり継続していたことその他の著作権者等の利益を不当に害すると認められる特別な事情がある場合を除く。)を除く。)
 侵害著作物等利用容易化プログラムの公衆への提供等を行つた者(当該公衆への提供等のために用いられているウェブサイト等とそれ以外の相当数のウェブサイト等とを包括しているウェブサイト等又は当該侵害著作物等利用容易化プログラム及び侵害著作物等利用容易化プログラム以外の相当数のプログラムの公衆への提供等のために用いられているウェブサイト等において、単に当該侵害著作物等利用容易化プログラムの公衆への提供等の機会を提供したに過ぎない者(著作権者等からの当該侵害著作物等利用容易化プログラムにより提供されている侵害送信元識別符号等の削除に関する請求に正当な理由なく応じない状態が相当期間にわたり継続していたことその他の著作権者等の利益を不当に害すると認められる特別な事情がある場合を除く。)を除く。)
(略)

第百二十条の二 次の各号のいすれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、文はこれを併科する。
・二(略)
 第百十三条第二項の規定により、著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者
(略)

 リーチサイト規制については、親告罪とされた事とプラットフォーマーの原則除外でかなり緩和が図られているとは思うが(一応配慮規定の附則も追加されるようである)、前回載せたパブコメなどでも書いて来ている通り、この様な法改正の本質的な必要性に疑問があり、このそもそもの必要性についての議論が深められる事なく進められようとしている事に私は反対である。

 ダウンロードの違法化・犯罪化の対象範囲の拡大、リーチサイト規制に加えてアクセスコントロール保護強化についてもやはり反対であって、国政における他の重要法改正・事項の審議・検討のどさくさ紛れに、その本質的な問題について十分な審議が尽くされる事なくこの著作権法改正が通らない事を、繰り返し言っている事だが、特に危険なダウンロード違法化・犯罪化についてはこれを規定する全条文が速やかに削除される事を私は心から願っている。

(2020年3月15日夜の追記:上の条文で幾つかあった転記ミスを修正し、合わせ削除部分も追記した。)

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2020年1月21日 (火)

第419回:文化庁「侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会」における議論のまとめの内容

 文化庁のHPで、「侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会」における議論のまとめ(pdf)が公開ざれている。

 その内容は、前回取り上げた侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会の第2回資料とほぼ変わらず、報道されていた以上の事が含まれているわけではないが、念のため、ここでその内容を見ておく。

 この議論のまとめは、冒頭に、

 本検討会では、別紙1(20ページ)の基本方針の下、パブリックコメントや国民アンケートの結果等を十分に踏まえつつ、「深刻な海賊版被害への実効的な対策を講じること」と「国民の正当な情報収集等に萎縮を生じさせないこと」という2つの要請がバランスよく並び立つ、適切な制度設計等について検討を行ってきた。その検討結果は、下記1.~4.のとおりである。

 文化庁提案の3点の措置及び二次創作作品・パロディなどの除外等については全会一致で了承された一方で、一部の要件((ウ)(6ページ)に記載の「著作権者の利益を不当に害することとなる場合に限定すること」)については本検討会として意見を一つに集約するには至らなかったが、いずれにしても、早急に当該要件の採用の可否等を判断の上、法整備を進める必要があることについては認識が共有された。

 今後、政府においては、当該要件に関して、7~13ページに記載の様々な意見(折衷的な提案を含む。)を吟味し、当該要件が「海賊版対策の実効性等に与えるマイナスの影響」と「国民の情報収集等に与えるプラスの影響」を見極めた上で、両者のバランスの観点から国民の理解を得られる適切な制度となるよう、採用の可否等について判断を行った上で、適切な法整備を速やかに行うことを期待する。

 その際、リーチサイト対策については「前倒しで施行すべき」という意見があったことを受け、法案の施行期日についても留意すべきである。

と書いている通り、ダウンロード違法化・犯罪化の対象拡大の法改正を押し進める方向性をやはり打ち出している。

 そして、国会提出を断念した法案からの変更点について、

1.文化庁提案の3点の措置について

 昨年2月時点の当初案に、少なくとも下記の3点の措置を追加的に講ずることについて、条文イメージ(別紙2:21~24ページ)を含めて了承された。

(1)改正案の附則に、普及啓発・教育等や刑事罰に関する運用上の配慮、施行状況のフォローアップについての規定を追加すること

(2)写り込みに関する権利制限規定(第30条の2)を拡充することで、スクリーンショットを行う際に違法画像等が入り込むことを違法化しないこと

(3)数十ページで構成される漫画の1~数コマなど、「軽微なもの」のダウンロードを違法化しないこと(判断基準・具体例は、別紙3(27ページ)を参照)

2.その他の要件追加等の提案について

(ア)採用する方針が了承されたもの

 「二次創作作品・パロディなどのダウンロードを対象から除外すること(民事)」については、翻訳物が除外されないように措置(変形によって創作されたフィギュアなどの画像や、編曲された楽曲の歌詞は除外されるように措置)した上で、採用することが、条文イメージ(別紙2:25・26ページ)を含めて了承された。

(イ)採用しない方針が了承されたもの
(略)

とあるので、文化庁が今度国会提出を狙って来る条文案は、議論のまとめの第25ページ等に書かれている様に、以下のものとなると考えられる。(なお、細かな点だが、検討会の第2回資料と比べると、民事刑事(第30条第1項第4号及び第119条第3項第2号における原著作者の権利(第28条)の除外について翻訳以外とされている点、第30条の2で「当該複製伝達行為が営利を目的とするものであるか否かの別」という要素が「当該付随対象著作物の利用により利益を得る目的の有無」になっている点が異なっている。)

(私的使用のための複製)
第三十条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
一・二(略)
 著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。次号において同じ。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画(以下この条において「特定侵害録音録画」という。)を、特定侵害録音録画であることを知りながら行う場合
 著作権(第二十八条に規定する権利(翻訳以外の方法により創作された二次的著作物に係るものに限る。)を除く。)を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の複製(録音及び録画を除く。以下この号において同じ。)(当該著作権に係る著作物のうち当該複製がされる部分の占める割合、当該部分が自動公衆送信される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものを除く。以下この号及び次項において「特定侵害複製」という。)を、特定侵害複製であることを知りながら行う場合

 前項第三号及び第四号の規定は、特定侵害録音録画又は特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行う場合を含むものと解釈してはならない。

(略)

(付随対象著作物の利用)
第三十条の二 写真の撮影、録音、録画、放送その他これらと同様に事物の影像又は音を複製し、又は複製を伴うことなく伝達する行為(以下この項において「複製伝達行為」という。)を行うに当たつて、その対象とする事物又は音(以下この項において「複製伝達対象事物等」という。)に付随する事物又は音(複製伝達対象事物等の一部を構成するものとして対象となる事物又は音を含む。以下この項において「付随対象事物等」という。)に係る著作物(複製伝達行為により作成され、又は伝達されるもの(以下この条において「作成伝達物」という。)のうち当該著作物の占める割合、作成伝達物における当該著作物の再製の精度その他の要素に照らし当該作成伝達物における軽微な構成部分となるものに限る。以下この条において「付随対象著作物」という。)は、当該付随対象著作物の利用により利益を得る目的の有無、当該付随対象事物等の当該複製伝達対象事物等からの分離の困難性の程度、当該作成伝達物の性質と当該付随対象著作物との関連性の程度その他の要素に照らし正当な範囲内において、当該複製伝達行為に伴つて、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

 前項の規定により利用された付随対象著作物は、当該付随対象著作物に係る作成伝達物の利用に伴つて、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りではない。

第百十九条(略)
(略)
 次の各号のいずれかに該当する者は、二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
 第三十条第一項に定める私的使用の目的をもつて、録音録画有償著作物等(録音され、又は録画された著作物又は実演等(著作権又は著作隣接権の目的となつているものに限る。)であつて、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)をいう。)の著作権を侵害する自動公衆送信又は著作隣接権を侵害する送信可能化に係る自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきもの又は著作隣接権の侵害となるべき送信可能化に係るものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画(以下この条において「有償著作物等特定侵害録音録画」という。)を、自ら有償著作物等特定侵害録音録画であることを知りながら行つて著作権又は著作隣接権を侵害した者
 第三十条第一項に定める私的使用の目的をもつて、著作物(著作権の目的となつているものに限る。以下この号において同じ。)であつて有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権を侵害しないものに限る。)の著作権(第二十八条に規定する権利(翻訳以外の方法により創作された二次的著作物に係るものに限る。)を除く。以下この号及び第五項において同じ。)を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の複製(録音及び録画を除く。以下この号において同じ。)(当該著作権に係る著作物のうち当該複製がされる部分の占める割合、当該部分が自動公衆送信される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものを除く。以下この号及び第五項において「有償著作物等特定侵害複製」という。)を、自ら有償著作物等特定侵害複製であることを知りながら行つて著作権を侵害する行為を継続的に又は反復して行つた者

 前項第一号に規定する者には、有償著作物等特定侵害録音録画を、自ら有償著作物等特定侵害録音録画であることを重大な過失により知らないで行つて著作権又は著作隣接権を侵害した者を含むものと解釈してはならない。

 第三項第二号に規定する者には、有償著作物等特定侵害複製を、自ら有償著作物等特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行つて著作権を侵害する行為を継続的に又は反復して行つた者を含むものと解釈してはならない。

 これに加えて、冒頭にもあるが、「著作権者の利益を不当に害することとなる場合に限定すること」については、第6ページの2.(ウ)で、

(ウ)採用の可否について意見が一つに集約されなかったもの

 「著作権者の利益を不当に害することとなる場合に限定すること(民事・刑事)」については、(ⅰ)国民から示された様々な懸念・不安を払拭する等の観点から採用すべきである((イ)に記載された他の様々な提案を採用しないのであれば、この要件の採用は不可欠)という肯定的な意見と、(ⅱ)ユーザーの居直り侵害を招くなど海賊版対策の実効性低下を回避する等の観点から採用すべきでないという否定的な意見の双方がほぼ拮抗し、本検討会として意見を一つに集約するには至らなかったが、いずれにしても、早急に採用の可否等を判断の上、法整備を進める必要があることについては認識が共有された。 議論の中では、権利者側の立証負担の軽減及びユーザーの居直り防止等の観点から、「著作権者の利益を不当に害しない場合を除く」や「著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別の事情がある場合を除く」と規定してはどうかという折衷的な提案も複数構成員からあった。

として、文化庁は、法案提出ありきで検討会レベルのとりまとめすら放棄している。今後この点も含め政府与党内で何かしらの議論がされるのかも知れないが、今まで書いて来た通り、この様に著作権者の利益を不当に害することとなる場合に限定することでそれなりにましになるとも思うものの、これも問題の本質的な解消には繋がらないものである。

 また、リーチサイト規制についても、親告罪とする事が一定の歯止めにはなるとは思うが、それ以上議論が深められる事なく法改正が進められようとしている事に変わりはない。

 この様に文化庁がダウンロード違法化・犯罪化の対象拡大の法改正をごり押しして来るだろう事は予想された事とは言え、国民の声を聞いて丁寧に議論を進めるという科白は何だったのかと私は今も強い憤りを感じている。

 前回も書いた通り、このまま行くと、利用者が通常するであろうほとんどあらゆる場合のカジュアルなスクリーンショット、ダウンロード、デジタルでの保存行為が違法・犯罪となる可能性が出て来、意味不明の萎縮が発生するだろう事に変わりはなく、これは、今の録音録画に関するダウンロード違法化・犯罪化同様、海賊版対策としては何の役にも立たず混乱をもたらすだけの百害あって一利ない最低最悪の著作権法改正の一つとなると私は断言する。

(2020年1月22日夜の追記:条文案中のテクニカルな部分の転記ミスを幾つか修正した。)

(2020年2月2日夜の追記:Twitterで既に書いたが、INTERNET Watchの記事になっている通り、1月30日に与党自民党の知的財産戦略調査会が、ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大について「著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合は除外する」事とする申し入れ案を取りまとめている。そうする事でさらに緩和が図られるだろうとは言え、この問題の本質はそこではないし、私はなおダウンロード違法化・犯罪化自体に反対だが、今後は自民党のこの様な要請に合わせて著作権法改正が進められて行くのだろう。)

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2019年12月29日 (日)

第418回:2019年の終わりに(文化庁第2回検討会のダウンロード違法化・犯罪化対象範囲拡大条文案他)

 もう年末年始に入り、今年も政策に絡むイベントは一通り終わったと思うので、文化庁のダウンロード違法化・犯罪化対象範囲拡大検討会の第2回資料に加えて、あまり触れて来なかった著作権以外の知財政策動向についてまとめて書いておきたいと思う。

 今年の知財政策における最大の論点はダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大の検討だろうが、文化庁は、11月27日に第1回の侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会を開催した後、12月18日に第2回を開催し(議事次第・資料参照)、次の第3回を年明け早々1月7日に開催するとしており(開催案内参照)、異常なハイペースで検討を進めようとしている。

 第1回の資料について前回書いた通りで、追加で多く書く事もないのだが、第2回の資料1(pdf)では、以下の様な、写り込みの権利制限の拡充と合わせて対象から軽微なものを除く条文案が示されている。(以下では、資料から条文案だけを抜き出し、順序を条文順に改めた。)

(私的使用のための複製)
第三十条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
(略)
 著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。次号において同じ。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画(以下この号及び次項において「特定侵害録音録画」という。)を、特定侵害録音録画であることを知りながら行う場合
 著作権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の複製(録音及び録画を除く。以下この号において同じ。)(その著作物のうちその複製に供される部分の占める割合、その複製に供される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものを除く。以下この号及び次項において「特定侵害複製」という。)を、特定侵害複製であることを知りながら行う場合

 前項第三号及び第四号の規定は、特定侵害録音録画又は特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行う場合を含むものと解釈してはならない。

3(略)

(付随対象著作物の利用)
第三十条の二 写真の撮影、録音、録画、放送その他これらと同様に事物の影像又は音を複製し、又は複製を伴うことなく伝達する行為(以下この項において「複製伝達行為」という。)を行うに当たつて、その対象とする事物又は音(以下この項において「複製伝達対象事物等」という。)に付随する事物又は音(複製伝達対象事物等の一部を構成するものとして対象となる事物又は音を含む。以下この項において「付随対象事物等」という。)に係る著作物(複製伝達行為により作成され、又は伝達されるもの(以下この条において「作成伝達物」という。)のうち当該著作物の占める割合、作成伝達物における当該著作物の再製の精度その他の要素に照らし当該作成伝達物における軽微な構成部分となるものに限る。以下この条において「付随対象著作物」という。)は、当該複製伝達行為が営利を目的とするものであるか否かの別、当該付随対象事物等の当該複製伝達対象事物等からの分離の困難性の程度、当該作成伝達物の性質と当該付随対象著作物との関連性の程度その他の要素に照らし正当な範囲内において、当該複製伝達行為に伴つて、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

 前項の規定により利用された付随対象著作物は、当該付随対象著作物に係る作成伝達物の利用に伴つて、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りではない。

第百十九条(略)
(略)
 次の各号のいずれかに該当する者は、二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
 第三十条第一項に定める私的使用の目的をもつて、録音録画有償著作物等(録音され、又は録画された著作物又は実演等(著作権又は著作隣接権の目的となつているものに限る。)であつて、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)をいう。)の著作権を侵害する自動公衆送信又は著作隣接権を侵害する送信可能化に係る自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきもの又は著作隣接権の侵害となるべき送信可能化に係るものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画(以下この号及び次項において「有償著作物等特定侵害録音録画」という。)を、自ら有償著作物等特定侵害録音録画であることを知りながら行つて著作権又は著作隣接権を侵害した者
 第三十条第一項に定める私的使用の目的をもつて、著作物(著作権の目的となつているものに限る。以下この号において同じ。)であつて有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権を侵害しないものに限る。)の著作権(第二十八条に規定する権利を除く。以下この号及び第五項において同じ。)を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の複製(録音及び録画を除く。以下この号において同じ。)(その著作物のうちその複製に供される部分の占める割合、その複製に供される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものを除く。以下この号及び第五項において「有償著作物等特定侵害複製」という。)を、自ら有償著作物等特定侵害複製であることを知りながら行つて著作権を侵害する行為を継続的に又は反復して行つた者

 前項第一号に規定する者には、有償著作物等特定侵害録音録画を、自ら有償著作物等特定侵害録音録画であることを重大な過失により知らないで行つて著作権又は著作隣接権を侵害した者を含むものと解釈してはならない。

 第三項第二号に規定する者には、有償著作物等特定侵害複製を、自ら有償著作物等特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行つて著作権を侵害する行為を継続的に又は反復して行つた者を含むものと解釈してはならない。

 この様な条文案に加えて、資料2(pdf)で、除外される軽微なものの基準は、その著作物全体の分量から見てダウンロードされる分量がごく小部分である場合や、それ自体では鑑賞に堪えないような粗い画像をダウンロードした場合などであるとしている。

 この様な条文案と基準によれば、文化庁が資料3(pdf)で示している通り、スクリーンショットで違法画像が付随的に入り込む場合や、ストーリー漫画の数コマ、論文の数行、粗いサムネイル画像のダウンロードの場合といった僅かな場合は除かれるだろうが、利用者が通常するであろうほとんどあらゆる場合のカジュアルなスクリーンショット、ダウンロード、デジタルでの保存行為が違法・犯罪となる可能性が出て来、意味不明の萎縮が発生するだろう事に変わりはないのであって、文化庁は国民の声・懸念に対し何ら聞く耳を持っていないとしか私には思えない。(ここで常々書いている通り、同じく問題のある現行の映像音楽に関するダウンロード違法化・犯罪化も本来なされるべきでなかったものであると私は考えている。)

 この資料では、さらに「二次創作作品・パロディなどのダウンロードを対象から除外」する場合として、国会提出を断念した条分案の刑事の第119条からだけでなく、民事の第30条についても「第二十八条に規定する権利を除く」という文言を追加する案も出されているが、これも同断であって、第28条に規定される2次著作物の利用に関する原著作者の権利が除外されるに過ぎず、2次創作・パロディのダウンロードが全て対象外となるものではない事は、文化庁が同じく資料3(pdf)で書いている通りである。

 第2回検討会での議論についての弁護士ドットコムの記事などを見ても、文化庁は、この案をほぼ既定路線として、著作権者の利益を不当に害することとなる場合をさらに除くかどうかという枝葉末節に議論を押し込め(追加すればそれなりにましにはなるだろうが、これも問題の本質的な解消には繋がらないものである)、雪辱とばかりに来年の通常国会に向けてダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大をごり押しするつもりであると知れるが、前回も書いた通り、本当に国民の声を丁寧に聞くというなら、この様な非常に危険かつ拙速な検討を中止して条文案から対応部分を削除するのみならず、録音録画についての現在のダウンロード違法化・犯罪化そのものの効果を検証し、その廃止・撤廃を速やかに検討するべきと私は思っているが、文化庁にそうする気が全く見られないのは日本の国益と文化にとって極めて不幸な事である。

 また、リーチサイト規制についても、運営行為に対する刑事罰を非親告罪から親告罪に変更すること以外は国会提出断念版の条文案のままにするとしている。これについても、親告罪とする事が一定の歯止めにはなるとは思うが、文化庁が、「公衆を侵害著作物等に殊更に誘導するものであると認められるウェブサイト等」、「主として公衆による侵害著作物等の利用のために用いられるものであると認められるウェブサイト等」といった条文案の定義から、海賊版対策とは無関係のものとして、パブコメで懸念するものの例としてあげられた、引用要件違反のまとめサイト、剽窃論文、ライセンス違反のスライド、GPL違反のソフトウェア、ツイッターの違法アイコン等へのリンク集及びこのリンク集におけるリンクは規制の対象外となるとしているが、これも文化庁の現時点での希望的観測という他なく、これらの例だけを取っても、通常リンク先が剽窃やライセンス違反である事を指摘するためにそう明記して作られるものが多いだろうし、定義から除外されると完全に言えるかどうか疑問である。第414回に載せた提出パブコメの通り、今後の定義の拡大の恐れもあり、脅しや嫌がらせが増え、インターネット利用のリスクが無意味に高まるのではないかと私はやはり懸念している。

 以下、その他の知財法を巡る動きについて書いて行く。

 特許法については、今年の特許法等の改正の後、特許庁で、産業構造審議会・知的財産分科会特許小委員会が開催され、二段階訴訟の話などが検討されているが、次の法改正がどうなるかという意味では特に方針が出ている訳ではない。また、法改正とは関係ないが、審査基準専門委員会ワーキンググループで、進歩性の審査の進め方に関する参考資料の作成の話がされている。

 商標法については、商標制度小委員会で、店舗の外観・内装の商標制度による保護の話が検討され、商標審査基準ワーキンググループでそのための商標審査基準の改訂が検討され、対応する商標法施行規則改正案と商標審査基準の改訂案について1月20日〆切でそれぞれパブリックコメントにかかっている(特許庁HPの意見募集1意見募集2参照)

 意匠法については、意匠審査基準ワーキンググループで、法改正を受けた意匠審査基準の改訂が検討され、その改訂案が1月9日〆切でパブリックコメントにかかっている(特許庁HPの意見募集3参照)。

 農水省では、種苗法について、優良品種の持続的な利用を可能とする植物新品種の保護に関する検討会が開催され、海外流出防止のため、登録品種の販売における国内利用限定や栽培地域限定の条件に反する行為への育成者権の行使を可能とする、自家増殖を含め登録品種の増殖は育成者権者の許諾を必要とするといった内容のとりまとめ(pdf)が出され、農業資材審議会・種苗分科会で報告がされている。また、来年はこの様な種苗法の改正案とともに、家畜遺伝資源保護法案も国会に提出される事になるのだろう、和牛遺伝資源の流通管理に関する検討会で、家畜遺伝資源の保護も検討されている。

 知財本部では、また名前を変えたくなったのか、今年は構想委員会なるものが2回開かれている。今の所およそ内容のない話しかしていないが、じきに募集されるだろう次の知財計画パブコメにもまた意見を出すつもりである。

 最後に少しだけ書いておくと、この12月19日に、ウェブサイトを通じた電子書籍の中古販売は著作権者の許諾を必要とする公衆送信であるとする、欧州司法裁判所の判決が出されている(欧州司法裁のリリース(pdf)も参照)。これは、第332回で取り上げたオランダの控訴審判決の続きの話で、欧州で電子書籍中古販売が合法(電子データに対するデジタル消尽あり)とされるのは難しいのではないかと思っていた通りなのだが、こうした国際動向についても時間がある時にまたまとめて書きたいと思っている。

 今年もこれで最後になるが、政官業に巣食う全ての利権屋に悪い年を、このブログを読んで下さっている方々に心からの感謝を。

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2019年12月15日 (日)

第417回:文化庁検討会のダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大に関するパブリックコメント・アンケート調査結果概要

 11月27日に侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会の第1回が開催されたばかりだが、12月18日に第2回が開催される予定であり(開催案内参照)、去年国会提出を断念させられた遺恨からか、文化庁はかなり速いペースでダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大の検討を進めようとしている。この第2回の前に、今回は、文化庁のHPで公開されている第1回の資料の内容を見ておきたい。

 その資料2-1の出版広報センター説明資料(pdf)と資料2-2の関係団体調査結果整理資料(pdf)は、相変わらず、

  • 被害額の算定根拠が不明
  • 市場調査の数字から見ると、市場はより長期間で順当に伸びている中、電子コミックとその他電子書籍ともにその伸び率にはかなりの変動があり、他にも影響を与えた要素はあるだろうに、整合性やより深い分析の事をまるで考えずに別のコミック電子書店調査を使って一部の対前年月比のみのグラフを作って海賊版サイトの影響を煽る
  • 漫画村の様な本当に悪質な海賊版サイトに対して権利者側が現行法で本当にどの様に対処して来たのか、どうして現行著作権法の規制では不十分とするのかの根拠が不明
  • あらゆる著作物の種類について発生している事象をきちんと分析した上でそれぞれの特性も考慮して著作権法として横断的に必要とされる事は何かという検討が必要であるにも関わらず、各団体のいい加減な被害の主張のつまみ食いに終始
  • ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大がこの様なインターネットにおける著作権侵害への有効な対策になる根拠がまるで不明

と、突っ込みどころ満載である。

 これらはいつもの著作権団体ロビー資料に過ぎず、これで法改正をと言われても鼻白むだけのものだが、資料3-1として「侵害コンテンツのダウンロード違法化等に関するパブリックコメント」の結果について(全体像)(pdf)、資料3-2として「侵害コンテンツのダウンロード違法化等に関するパブリックコメント」の結果概要(個人:「(別紙)質問事項及び回答様式」)(pdf)、資料3-3として「侵害コンテンツのダウンロード違法化等に関するパブリックコメント」の結果概要(個人:「意見提出フォーム」)(pdf)、資料3-4として「侵害コンテンツのダウンロード違法化等に関するパブリックコメント」の結果概要(団体等)(pdf)も公開されている。

 団体の意見はそれぞれの立ち位置から予想通り賛否両論に分かれているが、個人の意見が4386件と2007年のダウンロード違法化パブコメ(文化庁の過去のパブコメ結果参照)以来の数字となっているのは、この問題に対する関心の高さを示すものだろう。

 個人の意見について概要だけではなく全体の詳細データを出してもらいたいと思うが、文化庁としてはダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大の結論ありきで何が何でも細かな追加要件の議論に持ち込みたいのだろう、個人のパブコメ結果概要において最も基本的な質問回答の部分について件数のみをあげてグラフを作らないところに作為が見え隠れしているので、ここでそれを作っておくと以下のようになる。(なお、今回のパブコメでは別紙による入力を求めていたはずだが、意見提出フォームも公開してしまっていたのは文化庁の単なるミスだろう。)

Pub2019_result_graph
Pub2019_result_graph2

 この様に「どちらかといえば反対」も含め反対意見が圧倒的であり、最も主要な意見が要件によらずダウンロード違法化を行うべきではないというものである事を考えれば、本当に国民の声を丁寧に聞くというなら、ダウンロード違法化・犯罪化の対象拡大の検討の完全な中止のみならず、録音録画についての現在のダウンロード違法化・犯罪化そのものの廃止・撤廃の提案も視野に入って来なければならない筈だが、資料5の侵害コンテンツのダウンロード違法化に係る制度設計等の検討に当たっての基本方針(案)(pdf)、資料6の侵害コンテンツのダウンロード違法化等に係る制度設計・論点(案)(pdf)や資料7の侵害コンテンツのダウンロード違法化に関する主な事例の取扱い(案)(pdf)を見ると、文化庁は、姑息にも国民の声を捻じ曲げ、現行の著作権法におけるダウンロード違法化・犯罪化を一方的に是認して、今の写り込みの権利制限の拡充による違法な部分を含むスクリーンショットの適法化とその延長線上にある一部分の軽微な利用の除外という弥縫策でダウンロード違法化・犯罪化の対象拡大を押し通そうとしていると分かる。

 この弥縫策によって確かに問題の軽減を多少図れるかも知れないが、前回載せたもう一つの写り込みに関する権利制限拡充についてのパブコメで書いた通り、その様な僅かな軽減すら要件次第であって(スクリーンショットに問題を矮小化する事は厳に慎むべき事だが、さらに念のため言っておくと、今の文化庁案では通常考えられるスクリーンショットが全て適法化される訳でもない)、これらはダウンロード違法化・犯罪化の本質的な問題の解消には到底繋がらないものである。これらが回答を恣意的に誘導しながら列挙した懸念の一部にしか対応していない事は文化庁自身認めている上、他の懸念や指摘に対する回答をきちんと示していないあたり、そのやり口はいつも通り不誠実極まるものと言わざるを得ない。文化庁の案には他の要件の検討についても書かれているが、パブコメ等で何度も書いている通り、それぞれ多少の問題の緩和になるかも知れないが、他のものも含めて追加の要件をどうしようがダウンロード違法化・犯罪化の本質的な問題が解消する事はないと私は確信している。

 他にも資料5として侵害コンテンツのダウンロード違法化に関するアンケート調査の結果(pdf)という資料も出されている。これもいつものためにする文化庁調査で有意な情報が取れるものではほぼないが、

  • 「違法にアップロードされた漫画・書籍・雑誌・論文・プログラム・イラスト・画像等を,それが違法にアップロードされたことが確実だと知りながら,個人が楽しむ目的でダウンロードすることは現行の著作権法に違反する行為でしょうか(※)現行の著作権法上は,『2.違反しない』が正しい回答」という質問に対して「1.違反する」という回答が79.7%となっていて、
  • 侵害コンテンツのダウンロード経験の有無についてありと答えた場合その多くは漫画の二次創作かスクリーンショットであり、
  • 最初の違法性の認識の回答との関係がどうなっているのか不明だがダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲が拡大されたら違法行為を止めると答えた者が7割程度

と、文化庁と権利者団体が法改正についてどう考えてどう周知しようが、一般の人々は自分なりに著作権法を理解してそれに沿って意味不明の萎縮が発生するだろうという事だけは言える。わざとだろうが、ここで現行の録音録画に関するダウンロード違法化・犯罪化に関する調査・評価を省いているのもタチが悪い。

 今まで他でも使われていた参考資料1の文化庁当初案の概要・条文等について(pdf)と参考資料3のインターネット上の海賊版に対する総合的な対策メニュー及び工程表について(pdf)の他に参考資料2として侵害コンテンツのダウンロードに関する主要国の著作権法制について(pdf)というものもある。ここで「外務省を通じて各国大使館等に調査訓令を発して得られた回答に,事務局で一部必要な情報を追記して作成したもの」という注で外務省に責任転嫁するのもどうかと思うが、ドイツとフランスについて民事・刑事両方の適用事例ありとし、アメリカ、韓国、台湾について侵害コンテンツのダウンロードについてフェアユース該当性が否定された事例が存在するとしているのはかなり悪質な印象操作を含んでいる。ドイツにおいてもアップロードとダウンロードを同時に行うファイル共有におけるダウンロード行為以外の単なるダウンロードに適用した事例はなく、フランスにおいてもファイル共有に対する3ストライクポリシーの適用事例であって、米韓台でも同様にファイル共有に対する適用事例であるからである。明確にダウンロード違法化・犯罪化をしたとする国自体決して多くないと思うが、何度も書いてきている通り、私の知る限り単なるダウンロードに対する適用事例は世界中見渡しても皆無であって、フランスやドイツでもダウンロード違法化・犯罪化や3ストライクポリシーの法改正によって混乱こそすれ海賊版対策として有益な効果は何一つもたらされていないのである。

 資料1の開催要綱(pdf)の別紙構成員名簿を見ても、一応そこまで偏ったメンバーにはなっていない様に見えるが、文化庁の資料と同じHPに載っている第1回の議事録を見ても追加の要件に関する細かな議論にほぼ終始しており、ダウンロード違法化・犯罪化とリーチサイトの問題について拙速な検討がされないかと非常に心配である。

(2019年12月16日夜の追記:文章は変えていないが、アンケート調査に関する記載を箇条書きにした。)

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2019年11月24日 (日)

第416回:文化庁・法制・基本問題小委員会「写り込みに係る権利制限規定の拡充に関する中間まとめ」に関する意見募集(11月30日〆切)への提出パブコメ

 今最も気になっているのは11月27日から始まる文化庁の侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会だが(開催案内参照)、その間に、11月30日〆切で掛かっている、前回取り上げた文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会「写り込みに係る権利制限規定の拡充に関する中間まとめ」に関する意見募集(文化庁のHP、電子政府のHP参照)に意見を出したので、ここに載せておく。私は念のため最後に範囲外のダウンロード違法化・犯罪化などについても意見を書いているが、この中間まとめ自体は写り込みに関する権利制限の拡充のみを示しているので、細かな問題はあるものの、大きな問題がある訳ではない。

(以下、提出パブコメ)

現行の写真等における写り込みに関する権利制限規定である著作権法第30条の2について、その趣旨から、その対象を生放送・生配信、スクリーンショット、模写等に拡大し、不要と考えられる分離困難性及び著作物創作要件の要件を削除する事に賛同する。

ここで、分離困難性及び著作物創作要件の要件の削除についてはその削除のみに留めるべきであって、追加の要件による不必要な限定を加えてはならない。これらの要件を削除するのみであっても、他に、付随性及び軽微性の要件もあれば、スリーステップテストをそのまま記載したただし書きもあり、必要十分なだけ限定されているのであって、本中間まとめの第5ページに記載されている様に、「映画の盗撮等の違法行為に伴う写り込みについても適法となり得ることには留意が必要」という事はなく、第6~7ページに記載されている様に、「その著作物の利用が主目的であるにもかかわらず、それを覆い隠すために本規定を利用するといった濫用的な行為まで可能となってしまうおそれ」もないからである。

本中間まとめの第5ページに、「主たる行為が著作権法上許容されないものであるにもかかわらず、それに伴う写り込みを適法とする必要はない(写り込んだ著作物の著作権者による権利行使が出来なくなるのは不合理である)という考え方」「を採用する場合には、例えば、端的に、著作権を侵害する行為に伴う写り込みは本規定の対象外とする旨の要件を設定することが考えられる」と記載されているが、この様な追加の要件を設定すると、外形的に違法とされ得る軽微な構成部分を含む場合の写り込み・スクリーンショット等が全て違法となる解釈が生じ得るため、かえって適切ではない。

この点については、追加の不要な要件を設定する事なく、本中間まとめの第4ページにおいて、「『自らが著作権を有する著作物が掲載された雑誌の記事を複製する際に、同一ページに掲載された他人の著作物が入り込んでしまう場合』などについても、日常生活等における一般な行為に伴い付随的に他人の著作物が利用される場面であり、写真の撮影等の場合と比較して権利者に与える不利益の程度に特段の差異がないと考えられることから、対象に含めることが適当」とされている通り、外形的に違法とされ得る軽微な構成部分を含む場合も含めて写り込みとして明確に適法化し、現行の著作権法の問題の軽減化を図るべきである。

また、本中間まとめの第7ページにおいて、「メインの被写体と付随して取り込まれる著作物が別個のものである場合(事例1)」と「街の雑踏を撮影する場合のように被写体(雑踏の光景)の中に当該著作物が含まれる場合(事例2)」の両方の場合が含まれる事を明確化するため、「現行規定のように『写真の撮影等の対象とするAに付随して対象となるB』といった規定ぶりを維持し」つつ、「事例1と事例2を併記することにより、事例2についても対象に含まれることを明確化することが適当」としている。しかし、ここで、現行の規定の「対象とするA」という部分まで維持する必要はなく、単に「写真の撮影等に付随して対象となる他の著作物」とすれば足りる。この様にしても、付随性の要件は維持され、他に軽微性の要件もあれば、スリーステップテストをそのまま記載したただし書きもあるのであって、想定外の事例が対象に含まれる事はない。

第7~8ページにおいて、「軽微な構成部分といえるか否かが上記のような総合的な考慮によるものであることを明確化し、利用者の判断に資するようにするため、法第47条の5第1項の規定(『・・その利用に供される部分の占める割合、その利用に供される部分の量、その利用に供される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものに限る』)も参考にしつつ、考慮要素を複数明記することが適当」としている。考慮要素の明記自体に反対はしないが、必ず「その他の要素」も含め、考慮要素が限定列挙と解釈されない様にするべきである。

最後に、本パブコメの範囲外となるが、他のパブコメで書いて来た通り、今後著作権法改正案を提出するのであれば、前回国会提出を断念した条文案からのダウンロード違法化・犯罪化の対象拡大に関する全ての条項の削除のみならず、著作権法第30条第1項第3号及び第119条第3項を削除し、ダウンロード違法化・犯罪化を完全に撤廃することを速やかに行うべきである。また、現行現行の著作権法における民事の間接侵害(カラオケ法理)あるいは刑事の著作権侵害幇助との関係整理をおざなりにした、著作権侵害コンテンツへのリンク行為に対するみなし侵害規定の追加及び刑事罰付加にも反対する。そして、研究のための権利制限の導入検討も今年度に速やかに行うべきであり、合わせアメリカ等と遜色ない形で一般フェアユース条項を可能な限り早期に導入するべきである。

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