2020年6月 7日 (日)

第425回:ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大を含む著作権法改正案の可決・成立

 残念ながら、先週6月5日の参議院本会議で、ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大を含む著作権法改正案が可決され、成立した(参議院のインターネット審議中継参照)。

 今までの国会審議の経緯は、前回の追記等で書いて来たが、もう一度まとめて書いておくと、衆議院の文部科学委員会で5月20日に実質審議開始(衆議院HPの会議録1参照)、5月22日に委員会可決(会議録2参照)、5月26日の衆議院本会議で可決、参議院へ送付、参議院の文教科学委員会で6月2日に実質審議開始、6月4日に委員会可決(それぞれ参議院のインターネット審議中継参照)、6月5日に参議院本会議で可決・成立と、政府と与野党の間で完全に根回しが済んでいたのだろう、出来レースのスピード審議による可決・成立だった。

 衆参の委員会で条文の解釈に関する質疑もあったが、用意されていたシナリオ通りなのではないかと思える、教科書的な受け答えに終始した。中でも防弾ホスティングや中継サーバー、サイバーロッカー型のサイトなどの存在が持ち出されていたが、いずれもアップロードの取り締まりが本当に困難な理由やダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲を拡大する理由になるものではなく、また、侵害である事を知りながらといった主観要件の立証に関しても、ダウンロードについて警告を受けてなお継続する場合という現実的にあり得ないケースが持ち出されるばかりで、問題の本質にまで踏み込んだ議論がされる事はほぼなかった。(著作権法改正案の条文については第421回、私の考える懸念については前回の私家版Q&Aも参照。)

 また、衆参でそれぞれ、以下のような附帯決議もつけられた(衆議院HPの附帯決議参照、参議院の附帯決議も全く同一である)。

著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議

 政府及び関係者は、本法の施行にあたっては、次の事項について特段の配慮をすべきである。

一 海賊版サイトの形態は多種多様であり、本法の措置では対応ができないストリーミング形式を採用している海賊版サイト等も存在することを踏まえ、本法による規制にとどまらず、今後ともあらゆる手段を通じて海賊版対策の徹底に向けた取組を政府一丸となって行うこと。

二 侵害コンテンツの違法アップロードについては、アップロードを行う者が海外サーバーを利用する事例や、我が国の捜査協力等の要請に対して非協力的な国が存在することも踏まえ、迅速かつ円滑な捜査・摘発に向けて、政府は海外の捜査機関や通信業者等とのさらなる連携強化を促進し、実効性のある違法アップロード対策の実現に努めること。

三 政府は、海賊版対策を講じるための専門的知見、人的資源、資金等が不十分な中小企業等を支援するため、海賊版対策の構築に係る専門的知見の提供や経費の補助等の様々な支援策を講じるよう努めること。

四 本法による侵害コンテンツのダウンロード違法化に係る措置が国民の正当な情報収集等の萎縮をもたらさないよう多くの要件が設けられ複雑な制度設計になっていることを踏まえ、本法附則による国民への普及啓発及び未成年者への教育を行うにあたっては、分かりやすいガイドライン等を作成するとともに、インターネット上や学校現場等の様々な場面での普及啓発・教育に万全を期すこと。

五 政府は、関係者による議論の状況等を踏まえつつ、演奏権等の要件としての公衆に直接見せ又は聞かせる目的の範囲について、必要に応じて社会通念や妥当性の観点から検討するとともに、その結果に基づいて必要な見直しを行うよう努めること。

六 デジタル化・ネットワーク化の進展にともない、従来は受信者であった国民が同時に発信者にもなる時代が到来し、著作物の利用・流通形態の多様化が今後さらに進行すことが想定されることに鑑み、政府は、権利の保護と著作物の円滑な利用の促進とのバランスに十分留意しつつ、時代に即した著作権法制となるよう、そのあり方について不断の検証を行うこと。

 この附帯決議に書かれている、違法アップロード対策の強化と支援は当然の事と思うが、この事について今まで政府においてどこまで具体的かつ実効性のある形で進められて来たのか、進んでいないとしたら、それはなぜかという事こそ法改正以前にまず明らかにされるべきだったろう。

 そして、幾つか細かな要件を追加しながら、ダウンロード違法化・犯罪化の範囲を映像音楽だけから全著作物に大きく拡大する、この複雑怪奇な条文について、来年1月1日の施行に向け、文化庁は今までの解説に毛の生えた程度の要領を得ないガイドラインを作って来るに違いない。本当にその条文、ガイドラインに従って行動する事を求められたら、国民の正当な情報収集にかなりの萎縮が発生するだろうと、漫画についてもそうだが、漫画以外の一般的な著作物についてより大きな悪影響が出るだろうとも思うが、皆今まで通りインターネットで情報アクセスやダウンロードを続けるよう、訳も分からず萎縮しないことを私は願う。また、この様な法改正によって今後増える事が想定される詐欺にも注意してもらいたいとも思う。

 今国会で、新型コロナウィルス対策など他の大問題が重なる中、昨年世論の高まりを受けて提出を見送られ極めて慎重な審議が求められるはずのこの著作権法改正案が、あまり注目が集まらない儘、可決・成立してしまったことは非常に残念な事と言わざるを得ない。参議院の委員会審議でも話に出ていた通り、海賊版対策として最も有効なのは違法アップロード対策とともに適正な正規版の流通を進めることであって、全著作物のダウンロードを違法化・犯罪化して海賊版をなんとかしたいなどというのがそもそも間違いである。今までの映像音楽についても、この著作権法改正で拡大して対象とされる他の著作物についても、ダウンロード違法化・犯罪化は要件の如何に関わらず間違った法制であるという私の考えに変わりはなく、私はこれからもその撤廃・廃止を求め続ける考えである。

| | コメント (0)

2020年5月18日 (月)

第424回:ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大を含む著作権法改正案に関する私家版Q&A

 先週5月15日に、衆議院の文部科学委員会で著作権法改正案の趣旨説明がされ、参考人招致をする事が決まったので(衆議院公報参照)、今後の審議がどうなるかまだ分からないが、早ければ今週にも衆議院でダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大を含む著作権法改正案の実質審議がされるかも知れないという状況である。

 今の新型コロナウィルスに伴う緊急事態宣言も出されている中で、その本質的な問題に踏み込む事なく政府与党間の通り一遍の審議で可決される様な事があれば、これも火事場泥棒と言っていいものである。

 今まで言って来た事の繰り返しとなるが、今回は、著作権法改正案の審議が近いと考えられる事を踏まえ、文化庁のHPで公開されている、余りにもお粗末な回答の並ぶ侵害コンテンツのダウンロード違法化に関するQ&A(基本的な考え方)(pdf)から、私の考えるQ&Aを私家版として作り、ダウンロード違法化・犯罪化の本質的な問題がどこにあるのかをより明らかに示しておければと思う。(著作権法改正案の条文については第421回参照。)

(2020年5月20日夜の追記:以下のQ&Aで1箇所誤記を直した(問9の答えで「1.」を削除)。また、今日5月20日から衆議院の文部科学委員会で著作権法改正案の実質審議が始まった(衆議院のインターネット中継参照)。今日のところは参考人質疑だけで採決はなかったが、案の定議論はあまり深まっていない。このまま行くと金曜5月22日の次回委員会で可決される恐れも強いが、私はこのダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大を含む著作権法改正案の可決に反対する。)

(2020年5月22日夜の追記:極めて残念な事ながら、今日の衆議院文部科学委員会で十分な審議も反対もなく著作権法改正案が可決された(衆議院のインターネット審議中継参照)。以前から、アップロードの取り締まりが難しい理由として防弾ホスティングや中継サーバーの事が持ち出される事が多いが、いずれもアップロードの取り締まりが本当に困難な理由にはなるものではなく、その程度の事で難しいとするなら、なおさら取り締まりがさらに困難なダウンロードの違法化・犯罪化を拡大する理由にはならないだろう。また、以下の様な附帯決議も役に立つとは思えず、複雑怪奇なダウンロード違法化・犯罪化の条文についてわかりやすいガイドラインができるとも思えないが、本当にその条文に従って行動する事を求められたら、国民の正当な情報収集にかなりの萎縮が発生するのは間違いないだろう。)

(2020年5月31日夜の追記:著作権法改正案は5月26日の衆議院本会議で可決されて参議院に送られ、5月28日の参議院文教委員会で趣旨説明と参考人招致が決定された。6月2日には参議院文教委員会での実質審議が始まり、今週中にはこの委員会で可決される恐れも強いが、私はこのダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大を含む著作権法改正案に変わらず反対である。)

(2020年6月2日夜の追記:今日の参議院文教委員会での参考人質疑は衆議院よりは噛み合っていたとは思うが、やはり教科書的な受け答えに終始した(参議院のインターネット審議中継参照)。サイバーロッカー型のサイトは昔からあったので、その仕組みは特別なものではなく、それでダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大が正当化されるということなどない。侵害である事を知りながらといった主観要件の立証に関して、ダウンロードについて警告を受けてなお継続する場合というが、現実的にあり得ないケースである。この複雑怪奇な条文に基づき抑止効果はあるが情報収集の萎縮は発生しないというのも説明として不合理極まる。今週木曜かと思う次回の委員会で可決される可能性が高いが、私がダウンロード違法化・犯罪化自体に反対である事に変わりはない。)

(2020年6月7日夜の追記:5月22日の追記中に記載した附帯決議は次の第425回の本文に移した。また、以下のQ&Aでもう1箇所誤記を直した(問23の答えで「1.」を削除)。)

(以下、私家版Q&A)

【総論】

問1 既に違法となっているアップロード行為を厳格に取り締まれば良く、ダウンロードを行うユーザーまで規制する必要はないのではないか。

(答)
1.その通りです。現行法上も違法アップロード行為については、諸外国と比べても厳格な法定刑(10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又はその併科)が定められており、アップロード者に対する権利行使や摘発は随時行われています。現行法で不十分な場合として本当にどの様な場合があるのかは何ら示されていません。

2.アップロード者が特定できないのはエンフォースメントの問題であって、ダウンロードの問題ではありません。国際条約もあり、著作権法はほとんどどの国にもありますから、海外にいることで免責されるなどという事もありません。

問2 漫画村のようなストリーミング型の海賊版サイトには効果がないため、ダウンロードを違法化しても意味がないのではないか。

(答)
1.ストリーミング型の海賊版サイトに対してダウンロード違法化はそもそも意味がありません。これは現行法における音楽映像に関するダウンロード違法化・犯罪化がストリーミング型の海賊版サイトに対して意味がないのと同じです。

2.ダウンロード型の海賊版サイトも存在しているでしょうが、現行法における音楽映像に関するダウンロード違法化・犯罪化に海賊版対策としての効果は実質的になかったと考えられる事からも、効果はないものと考えられます。

3.また、本法案におけるリーチサイト規制でストリーミング型のサイトも対象としている事はダウンロード違法化・犯罪化の問題と直接関係はありません。

4.海賊版サイトの収入源を絶つための「広告出稿の抑制」などの方がよほど効果的であって、無意味な法改正よりこの様な対策にこそ注力すべきと考えます。

5.なお、法改正にあたり、漫画村事件に対する評価・分析も極めて不十分と言わざるを得ません。

問3 ユーザーが侵害コンテンツをそうと知りながらダウンロードしたかどうかは、外部からは確認できず、権利行使・摘発は不可能であるため、ダウンロードを違法化しても意味がないのではないか。違法化による効果は見込めるのか。

(答)
1.その通りです。ダウンロード違法化・犯罪化に海賊版対策としての効果は全く見込めません。この権利行使・摘発が実質不可能であるという点こそがダウンロード違法化・犯罪化問題における最も本質的な問題と言えます。現行法の音楽映像に関するダウンロード違法化・犯罪化もいまだに権利行使や摘発された例はありません。

2.現行法の音楽映像に関するダウンロード違法化・犯罪化の権利行使・摘発例がない事を考えても、自ら違法ダウンロードを行っている旨をSNSなどで誇示している場合や、違法アップロードに関する捜査・訴訟等の過程でダウンロードの事実が確認された場合というのはおよそ現実的にあり得る事とは思えません。仮に今後あったとしても、侵害である事を知りながらといった主観的要件の証明またはその反証はいずれも不可能です。

3.政府の調査で、ある行為が違法になっても続けるかと聞けば多くの者はしないと答えるに決まっているので、文化庁の過去の調査はこの点ではほとんど役に立ちません。ダウンロード違法化・犯罪化が海賊版対策になったという因果関係を定量的に示した調査はいまだかつてなく、音楽映像について違法ダウンロードが減ったというのも、適法の音楽映像サービスが充実して来た事の帰結と考える方が妥当です。

4.たとえ法規定の外形上ダウンロード違法化・犯罪化がされている様に見える国でも、ダウンロードとアップロードを同時に行うP2Pファイル共有に関する例を除き、単なるダウンロードに対して権利行使や摘発がされた例は1つもなく、どこの国でもダウンロード違法化・犯罪化が海賊版対策として効果を上げているなどという事は全くありません。諸外国で例があるかの様な主張は文化庁の印象操作に過ぎません。

問4 侵害コンテンツのダウンロードを行った場合、いきなり訴訟を起こされたり、逮捕されたりするのか。

(答)
 現状でも、著作権者が問題視しておらず、いわば黙認されているものとして、いわゆる「寛容的な利用」とされるものもあります。通常の権利者は、警告などをする事なく、いきなり訴訟を起こしたり、告発したりする事はあまり想定できません。しかし、違法ダウンロードに限った話ではありませんが、この様な法改正によって訴訟や逮捕などを持ち出して脅すネット上の詐欺が増える可能性はあるでしょう。

問5 昨年提出を検討していた法案から、どのような修正を行ったのか。

(答)
1.昨年提出を検討していた法案からの修正点は、ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大について、①スクリーンショットを行う際の写り込みの例外規定の追加、②軽微なものの除外、③二次創作・パロディにおける原著作者の権利の除外、④著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合の除外です。以下で詳述しますが、この除外によって問題の多少の緩和は図られているものの、これらは本質的な問題を解消するものではありません。

2.なお、リーチサイト運営者等に対する刑事罰については、親告罪とされました。

【違法化による影響・対象範囲】

問6 インターネット上での情報収集等が萎縮するのではないか。

(答)
1.音楽映像に関するダウンロード違法化・犯罪化同様、権利行使や摘発は実質不可能であるため、最終的には規制は無意味となり、萎縮がなくなる可能性もあり、あるいは、この法改正の複雑怪奇な条文が通常のインターネット利用者に理解されず、そもそも萎縮が発生しない可能性もありますが、問5の除外によって救われる範囲は非常に限定的であり、通常の利用者が本当にこの法改正の範囲を正しく理解して行動しようとすると、相当の萎縮が発生するだろうと思います。

2.以下でさらに述べますが、問5で除外されると書いた、①スクリーンショットを行う際の写り込みは一部に付随的に違法なコンテンツが含まれる場合に限られ、②軽微なものも例えばストーリー漫画の1コマ~数コマ程度という非常に軽微な場合に限られ、③二次創作・パロディについても原著作者の権利が除かれているに過ぎず、④著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合もそれなりに正当化事由が示せる場合に限られるので、これでは、利用者が通常するであろう多くの場合のカジュアルなスクリーンショット、ダウンロード、デジタルでの保存行為が違法・犯罪となる可能性が出て来ます。

問7 スクリーンショットができなくなるのか。

(答)
1.適法にアップロードされたコンテンツのスクリーンショットは当然適法ですが、拡大される写り込みに関する権利制限によって適法となり得るのはその一部に付随的に違法なコンテンツが含まれる場合のスクリーンショットに限られます。

2.その他通常の場合としていろいろと考えられる、SNSの投稿を保存する際に違法にアップロードされた画像がかなり大きく入り込んでしまった場合や、違法にアップロードされた記事のスクリーンショットなどは違法とされる可能性があるでしょう。

問8 漫画家・研究者等が行う創作・研究活動や、企業が行うビジネスにも悪影響が及ぶのではないか。

(答)
1.漫画家・研究者等や企業が業務として行うダウンロードは、私的使用目的の複製ではなく、もともと違法であって、この法改正とは直接関係しないというのはその通りですが、これもそのまま四角四面に著作権法を適用しようとすると相当の悪影響が生じる例の1つでしょう。

2.漫画家・研究者等が行う創作・研究活動における複製についても私的複製と苦しい言い訳をせざるを得ないところにも大きな問題があるのですが、この点について文化庁がまともに検討を進める気があるとは思えないのは残念です。

問9 論文に引用するために、インターネット上のコンテンツをダウンロードすることもできなくなるのか。

(答)
 この改正はその他の権利制限を制約するものではなく、引用のための利用(著作権法第32条)などは、従来通り著作権者の許諾なく行うことができます。引用のために必要かつ合理的と認められる限度で違法にアップロードされた著作物を論文等に引用する目的でダウンロードすることも許容されます。

問10 漫画だけを対象にすれば良いのではないか。

(答)
 この法改正案には、海賊版による想定被害や海賊版対策としての実効性のなさとは無関係に、権利者団体からの一方的な言い分により、ダウンロード違法化・犯罪化の全著作物への対象範囲の拡大が入っています。

問11 海賊版サイトからのダウンロードだけを違法化すれば良いのではないか。

(答)
 この法改正案では、海賊版による想定被害や海賊版対策としての実効性のなさとは無関係に、権利者団体からの一方的な言い分により、海賊版サイトへの限定は外されています。

問12 侵害コンテンツを見ただけで違法となってしまうのか。

(答)
1.問2でストリーミングについて書いた通り、著作権侵害コンテンツの単なる視聴・閲覧が違法とされるものではありません。

2.なお、視聴・閲覧に伴うキャッシュやプログレッシブ・ダウンロードは、別途、著作権法第47条の4第1項の規定により適法となります。

問13 メールで著作権侵害コンテンツのファイルを送り付けられた場合にそれを保存すると違法となってしまうのか。

(答)
 メール送信は自動公衆送信に該当せず、メールで著作権侵害コンテンツのファイルを送り付けられた場合にそれを保存しても違法とはなりませんが、問4で書いた通り、リンクをメールで送信し、違法にダウンロードしたと訴訟や逮捕などを持ち出して脅すネット上の詐欺が増える可能性はあるでしょう。

【主観要件】

問14 インターネット上のコンテンツは、適法にアップロードされたか、違法にアップロードされたかの判別が困難な場合も多いのではないか。実際には違法にアップロードされたものであるが、適法にアップロードされたもの(例:適法に引用されたもの)だと勘違いしてダウンロードした場合は、どうなるか。

(答)
1.アップロードが適法か違法か分からない場合や、アップロードが適法だと誤解した場合などは、ダウンロードは違法とならないでしょうが、インターネット上のコンテンツは、適法にアップロードされたか、違法にアップロードされたかの判別が困難な場合がほとんどでしょう。主観要件は立証も反証も実質不可能と見るべきです。

2.なお、出版社は適法サイトにABJマークというマークを表示するという取り組みを進めるとしていますが、マークがないサイトの違法性を示すものたり得ません。残念ながら、音楽映像のエルマーク同様、利用者がほとんど気に留める事はなく、そのうち忘れ去られるのではないかと思います。

問15 違法なアップロードだと知っていたということは、誰がどのように判断するのか。ユーザーが違法だと知らなかったことを証明することは困難ではないか。

(答)
 その通りです。ダウンロードに対するユーザーの法的責任を追及するためには、ユーザーが、違法にアップロードされたことが確実であると知りながらダウンロードを行ったことを立証する必要がありますが、実質これは不可能です。権利者がダウンロードユーザーをどう特定して警告するのかという事1つを取っても、権利者から警告された後もユーザーが侵害コンテンツのダウンロードを継続している場合など、現実的にはあり得ないでしょう。

【除外規定】

<二次創作・パロディ>

問16 そもそも二次創作・パロディを創作・アップロードする行為は違法なのか。

(答)
1.二次創作・パロディについては、黙示の許諾などにより、適法となる場合があるとの見解があり、また多くの場合で黙認されている事もあるでしょう。(注:文化庁の答えでは、引用の類推適用も入っているが、二次創作・パロディに引用を類推適用するのは難しいのではないかと私は思う。)

2.二次創作・パロディの文化的創造性と価値から特別の権利制限規定を作ってもいいのではないかと思いますが、残念ながら、今のところこの点について文化庁がまともに検討を進める気配はありません。

問17 ①二次創作・パロディを二次創作者自身が共有サイトなどにアップロードしている場合、それをダウンロードする行為は違法となるのか。また、②二次創作・パロディを更に第三者が違法にアップロードしている場合、その二次創作・パロディの海賊版をダウンロードする行為は違法となるのか。

(答)
1.問の①のような場合には、ダウンロードは違法となり得ません。一方で、この法改正案では原著作者の権利が除かれているに過ぎないため、問の②のような場合には、二次創作者の権利の侵害として違法となり得ます。さらに、翻訳はこの除外から除外されているため、二次創作であっても翻訳とされるものは、①の場合の様に、翻訳者自身がサイトにアップロードしていても、そのダウンロードは違法となり得ます。

2.上記の1.の内容をダウンロード違法化・犯罪化の対象からの二次創作・パロディの除外というのはミスリードと言わざるを得ず、通常の利用者が正しく理解できるとも思えません。

<軽微なもの>

問18 軽微なものとは具体的にどのようなものを指すのか。

(答)
1.軽微なものとは、典型的には、数十頁で構成される漫画の1コマ~数コマ、長文で構成される論文や新聞記事の数行など、その著作物全体の分量から見て、ダウンロードされる分量がごく小さい場合とされています。

2.このほか、画質が低く、鑑賞に堪えないような粗い画像をダウンロードした場合も軽微なものとされるようです。

3.しかし、それ以外の場合の漫画の数コマ以上、論文や新聞記事の数行以上のダウンロード、通常の画質の画像のダウンロードは軽微なものとはされないので、広く一般的になされるコンテンツのダウンロードでほとんどの場合は軽微なものとはされないと考えられます。


問19 実際には軽微ではないものを軽微なものと勘違いしてダウンロードした場合は、どうなるのか。

(答)
 軽微なものと勘違いしてダウンロードした場合は違法とはならないのだろうと思いますが、この様な解釈は法改正案の条文に基づかないので確実にそうとは断言できません。

<特別な事情がある場合>

問20 著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除くと規定することとしたのはなぜか。具体的にどのような場合がこれに該当するのか。

(答)
1.著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除くと規定することとしたのは、以前の法改正見送りの経緯から、最終的に政府と与党の間で取られた妥協案に過ぎません。(注:第419回参照。)

2.この要件に該当するか否かは、(ア)著作物の種類・経済的価値などを踏まえた保護の必要性の程度、(イ)ダウンロードの目的・必要性などを含めた態様、という2つの要素によって判断され、典型的には、①詐欺集団の作成した詐欺マニュアル(著作物)が、被害者救済団体によって告発サイトに無断掲載(違法アップロード)されている場合に、それを自分や家族を守る目的でダウンロードすること、②無料で提供されている論文(著作物)の相当部分が、他の研究者のウェブサイトに批判ととともに無断転載(引用の要件は満たしていない=違法アップロード)されている場合に、それを全体として保存すること、③有名タレントのSNSに、おすすめイベントを紹介するためにそのポスター(著作物)が無断掲載(違法アップロード)されている場合に、そのSNS投稿を保存することなどが、これに該当するとされていますが、この様に利用者がそれなりに正当化事由を示せる場合は非常に限られるでしょう。

3.また、ダウンロード違法化・犯罪化の実効性の問題はありますが、本当に訴訟等に巻き込まれた場合には、ユーザー側がこの特別な事情を立証する必要があるとされている事もさらに問題をややこしくするだけでしょう。

4.なお、刑事罰の場合は、検察が不当に害しないと認められる特別な事情がないことを立証する必要があるとされるようですが、この様にある事情がないとするアクロバティックな立証を検察に求められるのか甚だ疑問です。

問21 著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合に該当することをユーザーが立証するのは困難ではないか。

(答)
1.ダウンロード違法化・犯罪化の実効性の問題はありますが、本当に訴訟に巻き込まれた場合には、ダウンロードの際に正当性についてほぼ意識する事はないであろう通常の利用者からすると、それなりに正当化事由を示すのは非常に困難な場合がほとんどと考えられます。

2.ダウンロードについて、その正当性の証拠まで残しながら行う事を求めるのは、利用者にとってほとんど不可能な過度の負担であって、本当にその様な事を求めるとするならば、相当の萎縮が発生すると考えられます。

【刑事罰】

問22 刑事罰まで科す必要はあるのか。音楽映像についても摘発事例はないところ、刑事罰を科す意味はどこにあるのか。

(答)
1.現行法の音楽映像に関するダウンロード犯罪化の摘発例がない事を考えても、ダウンロードについて刑事罰を課す意味はありません。萎縮効果が大きくなり得るだけかえって有害です。

2.政府の調査で、ある行為が犯罪になっても続けるかと聞けば多くの者はしないと答えるに決まっているので、文化庁の過去の調査はこの点ではほとんど役に立ちません。ダウンロード違法化・犯罪化が海賊版対策になったという因果関係を定量的に示した調査はいまだかつてなく、音楽映像について違法ダウンロードが減ったというのも、適法の音楽映像サービスが充実して来た事の帰結と考える方が妥当です。

問23 警察による捜査権の濫用を招くのではないか。

(答)
 現行法の音楽映像に関するダウンロード犯罪化の摘発例がないので、ただちに捜査権の濫用を招くとは言えませんが、昨今のウィルス罪に関する無茶な摘発例などを見ても、今後、誤認逮捕や別件逮捕、無茶な刑事訴追を誘発する恐れは拭い切れません。

問24 著作権等侵害罪はTPP整備法により一部非親告罪化されているが、今回もそれが適用されるのか。

(答)
 ダウンロード犯罪化は親告罪となっています。

問25 正規版が有償で提供されているか否かは、ダウンロードするユーザーには分からない場合もあるが、その場合でも、刑事罰を科される可能性があるのか。

(答)
 正規版が有償で提供されているか否かが分からずにダウンロードした場合や、正規版が無償で提供されているものと勘違いしてダウンロードした場合は、刑事罰の対象とはならないと思われますが、ダウンロード犯罪化について、無茶な刑事訴追を誘発する恐れは拭い切れません。

【その他】

問26 今回の改正に伴って、音楽映像の違法ダウンロードについては、要件を変更しないのか。

(答)
 パブリックコメントは数を見るものではありませんが、パブリックコメントで多くの者が現行法の音楽映像のダウンロード違法化・犯罪化にそもそも反対の意見を出していた事を思えば、音楽映像に関するダウンロード違法化・犯罪化そのものの廃止・撤廃の検討もされるべきものだったと思いますが、この様な検討が真面目にされる事はなく、一方的に音楽映像のダウンロード違法化・犯罪化条項は維持するとされました。(注:パブリックコメントの結果については第417回参照。)

問27 附則に規定された「違法アップロード対策の充実」として、何を行っていくのか。

(答)
 今のところ、ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大を除けば、ブロッキングやアクセス警告方式などの危険な取り組みは止まっていますが、今後も危険な検討が続く可能性が強く、要注意です。

問28(追加) この法改正は不要不急ではないか。

(答)
 ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大は世論の高まりを受けて昨年提出を見送られたもので、極めて慎重な審議が求められるのであって、不要不急のものと言わざるを得ず、また、その本質的な問題に踏み込む事なく政府与党間の通り一遍の審議で可決される様な事があってはならないものです。他の部分についても全く問題なしとしませんが、本国会で急ぎ可決しようとするのであれば、少なくともダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大の関連条項は全て削除するべきと考えます。

| | コメント (3)

2020年4月12日 (日)

第423回:2018年著作権法改正のオンライン教育著作物利用補償金制度の早期施行(4月28日施行・2020年度無償)

 既に報道もされているが、文化庁のHPに掲載されている通り、2018年著作権改正のオンライン教育著作物利用補償金制度がこの4月28日に施行される事となった。

 ここではあまり教育に関する著作権問題を大きく取り上げる事はして来なかったが、2018年著作権法改正には、以下の第35条に改正が入り、補償金を支払う事で授業のための著作物の複製のみならず公衆送信まで可能とされた。(法改正全体の内容については第389回参照。)

(学校その他の教育機関における複製等)
第三十五条 学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における使用利用に供することを目的とする場合には、必要その必要と認められる限度において、公表された著作物を複製する複製し、若しくは公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。以下この条において同じ。)を行い、又は公表された著作物であつて公衆送信されるものを受信装置を用いて公に伝達することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び当該複製の部数及び当該複製、公衆送信又は伝達の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

 前項の規定により公衆送信を行う場合には、同項の教育機関を設置する者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。

 公表された著作物については、前項前項の規定は、公表された著作物について、第一項の教育機関における授業の過程において、当該授業を直接受ける者に対して当該著作物をその原作品若しくは複製物を提供し、若しくは提示して利用する場合又は当該著作物を第三十八条第一項の規定により上演し、演奏し、上映し、若しくは口述して利用する場合にはにおいて、当該授業が行われる場所以外の場所において当該授業を同時に受ける者に対して公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行うことができるを行うときには、適用しないただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該公衆送信の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

 この条文の施行日は元々公布の日(2018年5月25日)から3年を超えない日とされていたので、まだ1年くらい準備期間があったものだが、新型コロナ感染症対策として教育のオンライン化が取沙汰される中での早期施行となり、そのため共通目的事業の支出割合を2割とする省令のパブコメも4月1日から4月10日までの短期間でかかっていた(文化庁のパブコメページ、電子政府のHP参照)。

 ここではその条文を全て引用する事はしないが、改正著作権法において、第5章第2節、第104条の11から第104条の17までに、授業目的公衆送信補償金とその管理団体の指定や共通目的事業への支出などが規定されており、そして、この指定管理団体は全国で1つとされていて、構成員としてはいつもの著作権団体がずらりと並ぶ授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)が2019年2月15日に指定されている(文化庁の指定についてのページ参照)。

 文化庁の法改正ページで額の認可に関する審査基準等(pdf)も公開されているが、文化庁の要請(文化庁の配慮願いについてのページ参照)も受けての事だろう、この4月6日にSARTRASが、そのHPで公表している通り、2020年度に限り補償金を無償として認可申請をするとしている。

 まだ文化審議会への諮問と文化庁長官の認可というプロセスもあるが、教育目的でも補償金を無償とするのは極めて異例とはいえ、この非常時に審議会において異が唱えられるとも思えず、4月28日の施行までにそのまま認可されるのではないかと思う。

 そうすると、まず間違いなく、4月28日から2021年3月31日までの間、著作権者の利益を不当に害しない限りという限定は無論つくが、営利目的以外の教育機関で授業のために基本的に無償で著作物をオンラインで公衆送信できるということになるだろう。

 私は前々回も書いた通り、ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大を含む著作権法改正案に反対しているし、文化庁はおよそ碌でもない事ばかりしているとの考えが変わる事はないが、今回このオンライン教育目的補償金制度を予定より早く施行し、1年弱限定とはいえ著作物の無償でのオンライン教育利用を可能とした事は非常時における著作権政策として良い仕事をしたと評価できる。無論、いつも通り、教育政策としてはオンライン教育のためのインフラが大して整っていなかったり、文化政策としては文化芸術部門に対する非常時のサポートが不十分だったりといった問題も大いにあるので、全体として評価できるかというと正直疑問ではあるのだが。

(2020年4月28日夜の追記:文化庁から、文化審議会著作権分科会が開催され、2020年度はオンライン教育補償金を無償とする認可が4月24日にされたというリリースがあったので、ここにリンクを張っておく。なお、文化庁のQ&A(pdf)にも書かれている通り、この無償利用は2020年度に限られ、無償と言っても教育機関からSARTRASに届け出をすることとされているので、利用について完全に手続きなしで無償とするものではないことに注意しておいた方がいいだろう。また、上で一箇所SARTRASをSASTRASと書き間違えていたのに気づいたので合わせ直した。)

| | コメント (0)

2020年3月11日 (水)

第421回:閣議決定された著作権法改正案のダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大関連条文

 去年見送りになったダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大を含む著作権法改正案が、3月10日に閣議決定され、文科省のHPで公開された。第419回で取り上げた文化庁の議論のまとめに与党自民党の知的財産戦略調査会の申し入れの内容を加えた想定通りのものだが、ここで、その内容を見ておきたいと思う。

 概要としては、要綱(pdf)で見てもいいが、概要資料(pdf)の見出しで、

1.インターネット上の海賊版対策の強化
①リーチサイト対策【第113条第2項~第4項、第119条第2項第4号・第5号、第120条の2第3号等】
②侵害コンテンツのダウンロード違法化【第30条第1項第4号・第2項、第119条第3項第2号・第5項等】

2.その他の改正事項
①写り込みに係る権利制限規定の対象範囲の拡大【第30条の2】
②行政手続に係る権利制限規定の整備(地理的表示法・種苗法関係)【第42条第2項】
③著作物を利用する権利に関する対抗制度の導入【第63条の2】
④著作権侵害訴訟における証拠収集手続の強化【第114条の3】
⑤アクセスコントロールに関する保護の強化【第2条第1項第20号・第21号、第113条第7項、第120条の2第4号等】
⑥プログラムの著作物に係る登録制度の整備(プログラム登録特例法)【プログラム登録特例法第4条、第26条等 】

とある通りで、これらの項目のうち、昨年提出を目論んだ著作権法改正条文案との間で違いがある項目は、「1.①リーチサイト対策」で、親告罪化、プラットフォーマーの原則除外、「1.②侵害コンテンツのダウンロード違法化」で、軽微なものの除外、二次創作物における原著作権者の権利の除外、著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合の除外、「2.①写り込みに係る権利制限規定の対象範囲の拡大」で法改正項目自体の追加(これによりダウンロード違法化・犯罪化についても写り込みの場合が適法化される)という事になる。(昨年閣議決定されなかった条文案については第406回参照)

(1)ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大関連
 新旧対照条文(pdf)又は案文(pdf)から、まずダウンロード違法化・犯罪化の対象拡大について、関連条文を抜き出すと以下の様になる。(下線が改正部分)

(私的使用のための複製)
第三十条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
一・二(略)
 著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。次号において同じ。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実(以下この号及び次項において「特定侵害録音録画」という。)を、特定侵害録音録画であることを知りながら行う場合
 著作権(第二十八条に規定する権利(翻訳以外の方法により創作された二次的著作物に係るものに限る。)を除く。以下この号において同じ。)を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の複製(録音及び録画を除く。以下この号において同じ。)(当該著作権に係る著作物のうち当該複製がされる部分の占める割合、当該部分が自動公衆送信される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものを除く。以下この号及び次項において「特定侵害複製」という。)を、特定侵害複製であることを知りながら行う場合(当該著作物の種類及び用途並びに当該特定侵害複製の態様に照らし著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除く。)

 前項第三号及び第四号の規定は、特定侵害録音録画又は特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行う場合を含むものと解釈してはならない。

(略)

(付随対象著作物の利用)
第三十条の二 写真の撮影、録音又は録画、録画、放送その他これらと同様に事物の影像又は音を複製し、又は複製を伴うことなく伝達する行為(以下この項において「写真の撮影等」という。)の方法によつて著作物を創作する複製伝達行為」という。)を行うに当たつて、当該著作物(以下この条において「写真等著作物」という。)に係る写真の撮影等のその対象とする事物又は音から分離することが困難であるため付随して対象となる事物又は音に係る他の著作物(当該写真等著作物における(以下この項において「複製伝達対象事物等」という。)に付随して対象となる事物又は音(複製伝達対象事物等の一部を構成するものとして対象となる事物又は音を含む。以下この項において「付随対象事物等」という。)に係る著作物(当該複製伝達行為により作成され、又は伝達されるもの(以下この条において「作成伝達物」という。)のうち当該著作物の占める割合、当該作成伝達物における当該著作物の再製の精度その他の要素に照らし当該作成伝達物において当該著作物が軽微な構成部分となるもの場合における当該著作物に限る。以下この条において「付随対象著作物」という。)は、当該創作に伴つて複製する付随対象著作物の利用により利益を得る目的の有無、当該付随対象事物等の当該複製伝達対象事物等からの分離の困難性の程度、当該作成伝達において当該付随対象著作物が果たす役割その他の要素に照らし正当な範囲内において、当該複製伝達行為に伴つて、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該複製利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

 前項の規定により複製された利用された付随対象著作物は、同項に規定する写真等著作物当該付随対象著作物に係る作成伝達物の利用に伴つて、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りではない。

第百十九条(略)
(略)
 次の各号のいずれかに該当する者は、二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
 第三十条第一項に定める私的使用の目的をもつて、録音録画有償著作物等(録音され、又は録画された著作物又は実演等(著作権又は著作隣接権の目的となつているものに限る。)であつて、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)をいう。)の著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)又は著作隣接権を侵害する送信可能化(国外で行われる送信可能化であつて、国内で行われたとしたならば著作隣接権の侵害となるべきものを含む。)に係る自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画(以下この号及び次項において「有償著作物等特定侵害録音録画」という。)を、自ら有償著作物等特定侵害録音録画であることを知りながら行つて著作権又は著作隣接権を侵害した者
 第三十条第一項に定める私的使用の目的をもつて、著作物(著作権の目的となつているものに限る。以下この号において同じ。)であつて有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権を侵害しないものに限る。)の著作権(第二十八条に規定する権利(翻訳以外の方法により創作された二次的著作物に係るものに限る。)を除く。以下この号及び第五項において同じ。)を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の複製(録音及び録画を除く。以下この号において同じ。)(当該著作権に係る著作物のうち当該複製がされる部分の占める割合、当該部分が自動公衆送信される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものを除く。以下この号及び第五項において「有償著作物等特定侵害複製」という。)を、自ら有償著作物等特定侵害複製であることを知りながら行つて著作権を侵害する行為(当該著作物の種類及び用途並びに当該有償著作物等特定侵害複製の態様に照らし著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除く。)を継続的に又は反復して行つた者

 前項第一号に規定する者には、有償著作物等特定侵害録音録画を、自ら有償著作物等特定侵害録音録画であることを重大な過失により知らないで行つて著作権又は著作隣接権を侵害した者を含むものと解釈してはならない。

 第三項第二号に規定する者には、有償著作物等特定侵害複製を、自ら有償著作物等特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行つて著作権を侵害する行為を継続的に又は反復して行つた者を含むものと解釈してはならない。

 テクニカルな修正もあるが、これらの条文案で民事の第30条第1項第4号と刑事の第119条第3項第2号で、それぞれ、「当該著作物の種類及び用途並びに当該特定侵害複製の態様に照らし著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除く」、「当該著作物の種類及び用途並びに当該有償著作物等特定侵害複製の態様に照らし著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除く」と、与党自民党の申し入れを受けて、著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除くとした事が文化庁の議論のまとめ時点からの最大の違いである。(その時点と申し入れの話については第419回参照)

 この著作権法改正案の説明資料(pdf)参考資料(pdf)、文化庁のHPで公開されたQ&A(基本的な考え方)(pdf)は、相変わらず、被害推定や法改正の有効性、諸外国の状況などについて、法改正の結論ありきで片寄った主張を垂れ流しているもので、ダウンロード違法化・犯罪化の本質的な問題に対する答えにまるでなっていないが、著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合について言えば、このQ&Aで、

問20「著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除く」と規定することとしたのはなぜか。具体的にどのような場合がこれに該当するのか。

(答)
1.国民の正当な情報収集等への萎縮を防止するため,様々な要素に照らして,違法化対象からの除外を判断できるバスケットクローズ規定(安全弁)を設けることとしたものです。

2.ただし,海賊版対策の実効性が低下することを避ける観点から,①ユーザー側が「不当に害しないと認められる特別な事情」があることを立証する必要があることとする(その立証ができない場合には,ダウンロードは違法となる)(※1)(※2)とともに,②居直り的な利用を確実に防止する(※3)ため,このような規定としています。(※1) 侵害コンテンツ(かつ,軽微でも二次創作・パロディでもないもの=相当分量のデッドコピー)をそうと知りながら利用している以上は,ユーザー側が例外的に「不当に害しないと認められる特別な事情」がある場合だという立証をすることが適当だと考えています。
(※2)なお,刑事罰の場合は,検察が「不当に害しないと認められる特別な事情」がないことを立証する必要があります。
(※3) 漫画の海賊版などを楽しむためにダウンロードしているような場合には,およそ「不当に害しないと認められる特別な事情」がある場合に該当しないことは明らかであるため,居直り(行き過ぎた主張)を確実に防止できます。

3.この要件に該当するか否かは,(ア)著作物の種類・経済的価値などを踏まえた保護の必要性の程度,(イ)ダウンロードの目的・必要性などを含めた態様,という2つの要素によって判断されるものです。
 典型的には,①詐欺集団の作成した詐欺マニュアル(著作物)が,被害者救済団体によって告発サイトに無断掲載(違法アップロード)されている場合に,それを自分や家族を守る目的でダウンロードすること,②無料で提供されている論文(著作物)の相当部分が,他の研究者のウェブサイトに批判ととともに無断転載(引用の要件は満たしていない=違法アップロード)されている場合に,それを全体として保存すること,③有名タレントのSNSに,おすすめイベントを紹介するためにそのポスター(著作物)が無断掲載(違法アップロード)されている場合に,そのSNS投稿を保存することなどが,これに該当します。

と書かれ、案の定、文化庁はそれなりに正当化自由を積極的に必要とする解釈をしていると知れる。

 前回載せた知財計画パブコメや第419回までで書いて来ている通りだが、昨年と比べたときの追加の要件・法改正項目で、スクリーンショットで違法画像が付随的に入り込む場合や、ストーリー漫画の数コマ、論文の数行、粗いサムネイル画像のダウンロードの場合といった僅かな場合が除かれ、また、著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除外する事で、それなりの正当化事由を示せる様な特別な事情がある場合が除かれるが、これは本質的な問題の解消に繋がるものではなく、なお、利用者が通常するであろう多くの場合のカジュアルなスクリーンショット、ダウンロード、デジタルでの保存行為が違法・犯罪となる可能性が出て来、場合によって意味不明の萎縮が発生する恐れがある事に変わりはない。これは、今の録音録画に関するダウンロード違法化・犯罪化同様、海賊版対策としては何の役にも立たない、百害あって一利ない最低最悪の著作権法改正の一つとなるものである。

(2)リーチサイト規制関連
 次に、リーチサイト規制関連についても主な改正条文を抜き出しておくと以下の様になる。

(侵害とみなす行為)
第百十三条(略)
 送信元識別符号又は送信元識別符号以外の符号その他の情報であつてその提供が送信元識別符号の提供と同一若しくは類似の効果を有するもの(以下この項及び次項において「送信元識別符号等」という。)の提供により侵害著作物等(著作権(第二十八条に規定する権利(翻訳以外の方法により創作された二次的著作物に係るものに限る。)を除く。以下この項及び次項において同じ。)、出版権又は著作隣接権を侵害して送信可能化が行われた著作物等をいい、国外で行われる送信可能化であつて国内で行われたとしたならばこれらの権利の侵害となるべきものが行われた著作物等を含む。以下この項及び次項において同じ。)の他人による利用を容易にする行為(同項において「侵害著作物等利用容易化」という。)であつて、第一号に掲げるウェブサイト等(同項及び第百十九条第二項第四号において「侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等」という。)において又は第二号に掲げるプログラム(次項及び同条第二項第五号において「侵害著作物等利用容易化プログラム」という。)を用いて行うものは、当該行為に係る著作物等が侵害著作物等であることを知つていた場合又は知ることができたと認めるに足る相当の理由がある場合には、当該侵害著作物等に係る著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。
 次に掲げるウェブサイト等
 当該ウェブサイト等において、侵害著作物等に係る送信元識別符号等(以下この条及び第百十九条第二項において「侵害送信元識別符号等」という。)の利用を促す文言が表示されていること、侵害送信元識別符号等が強調されていることその他の当該ウェブサイト等における侵害送信元識別符号等の提供の態様に照らし、公衆を侵害著作物等に殊更に誘導するものであると認められるウェブサイト等
 イに掲げるもののほか、当該ウェブサイト等において提供される侵害送信元識別符号等の数、当該数が当該ウェブサイト等において提供される送信元識別符号等の総数に占める割合、当該侵害送信元識別符号等の利用に資する分類又は整理の状況その他の当該ウェブサイト等における侵害送信元識別符等の提供の状況に照らし、主として公衆による侵害著作物等の利用のために用いられるものであると認められるウェブサイト等
 次に掲げるプログラム
 当該プログラムによる送信元識別符号等の提供に際し、侵害送信元識別符号等の利用を促す文言が表示されていること、侵害送信元識別符号等が強調されていることその他の当該プログラムによる侵害送信元識別符号等の提供の態様に照らし、公衆を侵害著作物等に殊更に誘導するものであると認められるプログラム
 イに掲げるもののほか、当該プログラムにより提供されている侵害送信元識別符号等の数、当該数が当該プログラムにより提供されている送信元識別符号等の総数に占める割合、当該侵害送信元識別符号等の利用に資する分類又は整理の状況その他の当該プログラムによる侵害送信元識別符号等の提供の状況に照らし、主として公衆による侵害著作物等の利用のために用いられるものであると認められるプログラム

 侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等に該当するウェブサイト等の公衆への提示を行つている者(当該侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等と侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等以外の相当数のウェブサイト等とを包括しているウェブサイト等において、単に当該公衆への提示の機会を提供したに過ぎない者(著作権者等からの当該侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等において提供されている侵害送信元識別符号等の削除に関する請求に正当な理由なく応じない状態が相当期間にわたり継続していたことその他の著作権者等の利益を不当に害すると認められる特別な事情がある場合を除く。)を除く。) 又は侵害著作物等利用容易化プログラムの公衆への提供等を行つている者(当該公衆への提供等のために用いられているウェブサイト等とそれ以外の相当数のウェブサイト等とを包括しているウェブサイト等又は当該侵害著作物等利用容易化プログラム及び侵害著作物等利用容易化プログラム以外の相当数のプログラムの公衆への提供等のために用いられているウェブサイト等において、単に当該侵害著作物等利用容易化プログラムの公衆への提供等の機会を提供したに過ぎない者(著作権者等からの当該侵害著作物等利用容易化プログラムにより提供されている侵害送信元識別符号等の削除に関する請求に正当な理由なく応じない状態が相当期間にわたり継続していたことその他の著作権者等の利益を不当に害すると認められる特別な事情がある場合を除く。)を除く。) が、当該侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等において又は当該侵害著作物等利用容易化プログラムを用いて他人による侵害著作物等利用容易化に係る送信元識別符号等の提供が行われていることを知つている場合であつて、かつ、当該送信元識別符号等に係る著作物等が侵害著作物等であることを知つている場合又は知ることができたと認めるに足りる相当の理由がある場合において、当該侵害著作物等利用容易化を防止する措置を講ずることが技術的に可能であるにもかかわらず当該措置を講じない行為は、当該侵害著作物等に係る著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。

 前二項に規定するウェブサイト等とは、送信元識別符号のうちインターネットにおいて個々の電子計算機を識別するために用いられる部分が共通するウェブページ(インターネットを利用した情報の閲覧の用に供される電磁的記録で文部科学省令で定めるものをいう。以下この項において同じ。)の集合物(当該集合物の一部を構成する複数のウェブページであつて、ウェブページ相互の関係その他の事情に照らし公衆への提示が一体的に行われていると認められるものとして政令で定める要件に該当するものを含む。)をいう。

10(略)

第百十九条(略)
 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一~三(略)
 侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等の公衆への提示を行つた者(当該侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等と侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等以外の相当数のウェブサイト等(第百十三条第四項に規定するウェブサイト等をいう。以下この号及び次号において同じ。)とを包括しているウェブサイト等において、単に当該公衆への提示の機会を提供したに過ぎない者(著作権者等からの当該侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等において提供されている侵害送信元識別符号等の削除に関する請求に正当な理由なく応じない状態が相当期間にわたり継続していたことその他の著作権者等の利益を不当に害すると認められる特別な事情がある場合を除く。)を除く。)
 侵害著作物等利用容易化プログラムの公衆への提供等を行つた者(当該公衆への提供等のために用いられているウェブサイト等とそれ以外の相当数のウェブサイト等とを包括しているウェブサイト等又は当該侵害著作物等利用容易化プログラム及び侵害著作物等利用容易化プログラム以外の相当数のプログラムの公衆への提供等のために用いられているウェブサイト等において、単に当該侵害著作物等利用容易化プログラムの公衆への提供等の機会を提供したに過ぎない者(著作権者等からの当該侵害著作物等利用容易化プログラムにより提供されている侵害送信元識別符号等の削除に関する請求に正当な理由なく応じない状態が相当期間にわたり継続していたことその他の著作権者等の利益を不当に害すると認められる特別な事情がある場合を除く。)を除く。)
(略)

第百二十条の二 次の各号のいすれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、文はこれを併科する。
・二(略)
 第百十三条第二項の規定により、著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者
(略)

 リーチサイト規制については、親告罪とされた事とプラットフォーマーの原則除外でかなり緩和が図られているとは思うが(一応配慮規定の附則も追加されるようである)、前回載せたパブコメなどでも書いて来ている通り、この様な法改正の本質的な必要性に疑問があり、このそもそもの必要性についての議論が深められる事なく進められようとしている事に私は反対である。

 ダウンロードの違法化・犯罪化の対象範囲の拡大、リーチサイト規制に加えてアクセスコントロール保護強化についてもやはり反対であって、国政における他の重要法改正・事項の審議・検討のどさくさ紛れに、その本質的な問題について十分な審議が尽くされる事なくこの著作権法改正が通らない事を、繰り返し言っている事だが、特に危険なダウンロード違法化・犯罪化についてはこれを規定する全条文が速やかに削除される事を私は心から願っている。

(2020年3月15日夜の追記:上の条文で幾つかあった転記ミスを修正し、合わせ削除部分も追記した。)

| | コメント (2)

2020年1月21日 (火)

第419回:文化庁「侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会」における議論のまとめの内容

 文化庁のHPで、「侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会」における議論のまとめ(pdf)が公開ざれている。

 その内容は、前回取り上げた侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会の第2回資料とほぼ変わらず、報道されていた以上の事が含まれているわけではないが、念のため、ここでその内容を見ておく。

 この議論のまとめは、冒頭に、

 本検討会では、別紙1(20ページ)の基本方針の下、パブリックコメントや国民アンケートの結果等を十分に踏まえつつ、「深刻な海賊版被害への実効的な対策を講じること」と「国民の正当な情報収集等に萎縮を生じさせないこと」という2つの要請がバランスよく並び立つ、適切な制度設計等について検討を行ってきた。その検討結果は、下記1.~4.のとおりである。

 文化庁提案の3点の措置及び二次創作作品・パロディなどの除外等については全会一致で了承された一方で、一部の要件((ウ)(6ページ)に記載の「著作権者の利益を不当に害することとなる場合に限定すること」)については本検討会として意見を一つに集約するには至らなかったが、いずれにしても、早急に当該要件の採用の可否等を判断の上、法整備を進める必要があることについては認識が共有された。

 今後、政府においては、当該要件に関して、7~13ページに記載の様々な意見(折衷的な提案を含む。)を吟味し、当該要件が「海賊版対策の実効性等に与えるマイナスの影響」と「国民の情報収集等に与えるプラスの影響」を見極めた上で、両者のバランスの観点から国民の理解を得られる適切な制度となるよう、採用の可否等について判断を行った上で、適切な法整備を速やかに行うことを期待する。

 その際、リーチサイト対策については「前倒しで施行すべき」という意見があったことを受け、法案の施行期日についても留意すべきである。

と書いている通り、ダウンロード違法化・犯罪化の対象拡大の法改正を押し進める方向性をやはり打ち出している。

 そして、国会提出を断念した法案からの変更点について、

1.文化庁提案の3点の措置について

 昨年2月時点の当初案に、少なくとも下記の3点の措置を追加的に講ずることについて、条文イメージ(別紙2:21~24ページ)を含めて了承された。

(1)改正案の附則に、普及啓発・教育等や刑事罰に関する運用上の配慮、施行状況のフォローアップについての規定を追加すること

(2)写り込みに関する権利制限規定(第30条の2)を拡充することで、スクリーンショットを行う際に違法画像等が入り込むことを違法化しないこと

(3)数十ページで構成される漫画の1~数コマなど、「軽微なもの」のダウンロードを違法化しないこと(判断基準・具体例は、別紙3(27ページ)を参照)

2.その他の要件追加等の提案について

(ア)採用する方針が了承されたもの

 「二次創作作品・パロディなどのダウンロードを対象から除外すること(民事)」については、翻訳物が除外されないように措置(変形によって創作されたフィギュアなどの画像や、編曲された楽曲の歌詞は除外されるように措置)した上で、採用することが、条文イメージ(別紙2:25・26ページ)を含めて了承された。

(イ)採用しない方針が了承されたもの
(略)

とあるので、文化庁が今度国会提出を狙って来る条文案は、議論のまとめの第25ページ等に書かれている様に、以下のものとなると考えられる。(なお、細かな点だが、検討会の第2回資料と比べると、民事刑事(第30条第1項第4号及び第119条第3項第2号における原著作者の権利(第28条)の除外について翻訳以外とされている点、第30条の2で「当該複製伝達行為が営利を目的とするものであるか否かの別」という要素が「当該付随対象著作物の利用により利益を得る目的の有無」になっている点が異なっている。)

(私的使用のための複製)
第三十条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
一・二(略)
 著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。次号において同じ。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画(以下この条において「特定侵害録音録画」という。)を、特定侵害録音録画であることを知りながら行う場合
 著作権(第二十八条に規定する権利(翻訳以外の方法により創作された二次的著作物に係るものに限る。)を除く。)を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の複製(録音及び録画を除く。以下この号において同じ。)(当該著作権に係る著作物のうち当該複製がされる部分の占める割合、当該部分が自動公衆送信される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものを除く。以下この号及び次項において「特定侵害複製」という。)を、特定侵害複製であることを知りながら行う場合

 前項第三号及び第四号の規定は、特定侵害録音録画又は特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行う場合を含むものと解釈してはならない。

(略)

(付随対象著作物の利用)
第三十条の二 写真の撮影、録音、録画、放送その他これらと同様に事物の影像又は音を複製し、又は複製を伴うことなく伝達する行為(以下この項において「複製伝達行為」という。)を行うに当たつて、その対象とする事物又は音(以下この項において「複製伝達対象事物等」という。)に付随する事物又は音(複製伝達対象事物等の一部を構成するものとして対象となる事物又は音を含む。以下この項において「付随対象事物等」という。)に係る著作物(複製伝達行為により作成され、又は伝達されるもの(以下この条において「作成伝達物」という。)のうち当該著作物の占める割合、作成伝達物における当該著作物の再製の精度その他の要素に照らし当該作成伝達物における軽微な構成部分となるものに限る。以下この条において「付随対象著作物」という。)は、当該付随対象著作物の利用により利益を得る目的の有無、当該付随対象事物等の当該複製伝達対象事物等からの分離の困難性の程度、当該作成伝達物の性質と当該付随対象著作物との関連性の程度その他の要素に照らし正当な範囲内において、当該複製伝達行為に伴つて、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

 前項の規定により利用された付随対象著作物は、当該付随対象著作物に係る作成伝達物の利用に伴つて、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りではない。

第百十九条(略)
(略)
 次の各号のいずれかに該当する者は、二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
 第三十条第一項に定める私的使用の目的をもつて、録音録画有償著作物等(録音され、又は録画された著作物又は実演等(著作権又は著作隣接権の目的となつているものに限る。)であつて、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)をいう。)の著作権を侵害する自動公衆送信又は著作隣接権を侵害する送信可能化に係る自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきもの又は著作隣接権の侵害となるべき送信可能化に係るものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画(以下この条において「有償著作物等特定侵害録音録画」という。)を、自ら有償著作物等特定侵害録音録画であることを知りながら行つて著作権又は著作隣接権を侵害した者
 第三十条第一項に定める私的使用の目的をもつて、著作物(著作権の目的となつているものに限る。以下この号において同じ。)であつて有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権を侵害しないものに限る。)の著作権(第二十八条に規定する権利(翻訳以外の方法により創作された二次的著作物に係るものに限る。)を除く。以下この号及び第五項において同じ。)を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の複製(録音及び録画を除く。以下この号において同じ。)(当該著作権に係る著作物のうち当該複製がされる部分の占める割合、当該部分が自動公衆送信される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものを除く。以下この号及び第五項において「有償著作物等特定侵害複製」という。)を、自ら有償著作物等特定侵害複製であることを知りながら行つて著作権を侵害する行為を継続的に又は反復して行つた者

 前項第一号に規定する者には、有償著作物等特定侵害録音録画を、自ら有償著作物等特定侵害録音録画であることを重大な過失により知らないで行つて著作権又は著作隣接権を侵害した者を含むものと解釈してはならない。

 第三項第二号に規定する者には、有償著作物等特定侵害複製を、自ら有償著作物等特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行つて著作権を侵害する行為を継続的に又は反復して行つた者を含むものと解釈してはならない。

 これに加えて、冒頭にもあるが、「著作権者の利益を不当に害することとなる場合に限定すること」については、第6ページの2.(ウ)で、

(ウ)採用の可否について意見が一つに集約されなかったもの

 「著作権者の利益を不当に害することとなる場合に限定すること(民事・刑事)」については、(ⅰ)国民から示された様々な懸念・不安を払拭する等の観点から採用すべきである((イ)に記載された他の様々な提案を採用しないのであれば、この要件の採用は不可欠)という肯定的な意見と、(ⅱ)ユーザーの居直り侵害を招くなど海賊版対策の実効性低下を回避する等の観点から採用すべきでないという否定的な意見の双方がほぼ拮抗し、本検討会として意見を一つに集約するには至らなかったが、いずれにしても、早急に採用の可否等を判断の上、法整備を進める必要があることについては認識が共有された。 議論の中では、権利者側の立証負担の軽減及びユーザーの居直り防止等の観点から、「著作権者の利益を不当に害しない場合を除く」や「著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別の事情がある場合を除く」と規定してはどうかという折衷的な提案も複数構成員からあった。

として、文化庁は、法案提出ありきで検討会レベルのとりまとめすら放棄している。今後この点も含め政府与党内で何かしらの議論がされるのかも知れないが、今まで書いて来た通り、この様に著作権者の利益を不当に害することとなる場合に限定することでそれなりにましになるとも思うものの、これも問題の本質的な解消には繋がらないものである。

 また、リーチサイト規制についても、親告罪とする事が一定の歯止めにはなるとは思うが、それ以上議論が深められる事なく法改正が進められようとしている事に変わりはない。

 この様に文化庁がダウンロード違法化・犯罪化の対象拡大の法改正をごり押しして来るだろう事は予想された事とは言え、国民の声を聞いて丁寧に議論を進めるという科白は何だったのかと私は今も強い憤りを感じている。

 前回も書いた通り、このまま行くと、利用者が通常するであろうほとんどあらゆる場合のカジュアルなスクリーンショット、ダウンロード、デジタルでの保存行為が違法・犯罪となる可能性が出て来、意味不明の萎縮が発生するだろう事に変わりはなく、これは、今の録音録画に関するダウンロード違法化・犯罪化同様、海賊版対策としては何の役にも立たず混乱をもたらすだけの百害あって一利ない最低最悪の著作権法改正の一つとなると私は断言する。

(2020年1月22日夜の追記:条文案中のテクニカルな部分の転記ミスを幾つか修正した。)

(2020年2月2日夜の追記:Twitterで既に書いたが、INTERNET Watchの記事になっている通り、1月30日に与党自民党の知的財産戦略調査会が、ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大について「著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合は除外する」事とする申し入れ案を取りまとめている。そうする事でさらに緩和が図られるだろうとは言え、この問題の本質はそこではないし、私はなおダウンロード違法化・犯罪化自体に反対だが、今後は自民党のこの様な要請に合わせて著作権法改正が進められて行くのだろう。)

| | コメント (0)

2019年12月29日 (日)

第418回:2019年の終わりに(文化庁第2回検討会のダウンロード違法化・犯罪化対象範囲拡大条文案他)

 もう年末年始に入り、今年も政策に絡むイベントは一通り終わったと思うので、文化庁のダウンロード違法化・犯罪化対象範囲拡大検討会の第2回資料に加えて、あまり触れて来なかった著作権以外の知財政策動向についてまとめて書いておきたいと思う。

 今年の知財政策における最大の論点はダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大の検討だろうが、文化庁は、11月27日に第1回の侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会を開催した後、12月18日に第2回を開催し(議事次第・資料参照)、次の第3回を年明け早々1月7日に開催するとしており(開催案内参照)、異常なハイペースで検討を進めようとしている。

 第1回の資料について前回書いた通りで、追加で多く書く事もないのだが、第2回の資料1(pdf)では、以下の様な、写り込みの権利制限の拡充と合わせて対象から軽微なものを除く条文案が示されている。(以下では、資料から条文案だけを抜き出し、順序を条文順に改めた。)

(私的使用のための複製)
第三十条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
(略)
 著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。次号において同じ。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画(以下この号及び次項において「特定侵害録音録画」という。)を、特定侵害録音録画であることを知りながら行う場合
 著作権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の複製(録音及び録画を除く。以下この号において同じ。)(その著作物のうちその複製に供される部分の占める割合、その複製に供される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものを除く。以下この号及び次項において「特定侵害複製」という。)を、特定侵害複製であることを知りながら行う場合

 前項第三号及び第四号の規定は、特定侵害録音録画又は特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行う場合を含むものと解釈してはならない。

3(略)

(付随対象著作物の利用)
第三十条の二 写真の撮影、録音、録画、放送その他これらと同様に事物の影像又は音を複製し、又は複製を伴うことなく伝達する行為(以下この項において「複製伝達行為」という。)を行うに当たつて、その対象とする事物又は音(以下この項において「複製伝達対象事物等」という。)に付随する事物又は音(複製伝達対象事物等の一部を構成するものとして対象となる事物又は音を含む。以下この項において「付随対象事物等」という。)に係る著作物(複製伝達行為により作成され、又は伝達されるもの(以下この条において「作成伝達物」という。)のうち当該著作物の占める割合、作成伝達物における当該著作物の再製の精度その他の要素に照らし当該作成伝達物における軽微な構成部分となるものに限る。以下この条において「付随対象著作物」という。)は、当該複製伝達行為が営利を目的とするものであるか否かの別、当該付随対象事物等の当該複製伝達対象事物等からの分離の困難性の程度、当該作成伝達物の性質と当該付随対象著作物との関連性の程度その他の要素に照らし正当な範囲内において、当該複製伝達行為に伴つて、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

 前項の規定により利用された付随対象著作物は、当該付随対象著作物に係る作成伝達物の利用に伴つて、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りではない。

第百十九条(略)
(略)
 次の各号のいずれかに該当する者は、二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
 第三十条第一項に定める私的使用の目的をもつて、録音録画有償著作物等(録音され、又は録画された著作物又は実演等(著作権又は著作隣接権の目的となつているものに限る。)であつて、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)をいう。)の著作権を侵害する自動公衆送信又は著作隣接権を侵害する送信可能化に係る自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきもの又は著作隣接権の侵害となるべき送信可能化に係るものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画(以下この号及び次項において「有償著作物等特定侵害録音録画」という。)を、自ら有償著作物等特定侵害録音録画であることを知りながら行つて著作権又は著作隣接権を侵害した者
 第三十条第一項に定める私的使用の目的をもつて、著作物(著作権の目的となつているものに限る。以下この号において同じ。)であつて有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権を侵害しないものに限る。)の著作権(第二十八条に規定する権利を除く。以下この号及び第五項において同じ。)を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の複製(録音及び録画を除く。以下この号において同じ。)(その著作物のうちその複製に供される部分の占める割合、その複製に供される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものを除く。以下この号及び第五項において「有償著作物等特定侵害複製」という。)を、自ら有償著作物等特定侵害複製であることを知りながら行つて著作権を侵害する行為を継続的に又は反復して行つた者

 前項第一号に規定する者には、有償著作物等特定侵害録音録画を、自ら有償著作物等特定侵害録音録画であることを重大な過失により知らないで行つて著作権又は著作隣接権を侵害した者を含むものと解釈してはならない。

 第三項第二号に規定する者には、有償著作物等特定侵害複製を、自ら有償著作物等特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行つて著作権を侵害する行為を継続的に又は反復して行つた者を含むものと解釈してはならない。

 この様な条文案に加えて、資料2(pdf)で、除外される軽微なものの基準は、その著作物全体の分量から見てダウンロードされる分量がごく小部分である場合や、それ自体では鑑賞に堪えないような粗い画像をダウンロードした場合などであるとしている。

 この様な条文案と基準によれば、文化庁が資料3(pdf)で示している通り、スクリーンショットで違法画像が付随的に入り込む場合や、ストーリー漫画の数コマ、論文の数行、粗いサムネイル画像のダウンロードの場合といった僅かな場合は除かれるだろうが、利用者が通常するであろうほとんどあらゆる場合のカジュアルなスクリーンショット、ダウンロード、デジタルでの保存行為が違法・犯罪となる可能性が出て来、意味不明の萎縮が発生するだろう事に変わりはないのであって、文化庁は国民の声・懸念に対し何ら聞く耳を持っていないとしか私には思えない。(ここで常々書いている通り、同じく問題のある現行の映像音楽に関するダウンロード違法化・犯罪化も本来なされるべきでなかったものであると私は考えている。)

 この資料では、さらに「二次創作作品・パロディなどのダウンロードを対象から除外」する場合として、国会提出を断念した条分案の刑事の第119条からだけでなく、民事の第30条についても「第二十八条に規定する権利を除く」という文言を追加する案も出されているが、これも同断であって、第28条に規定される2次著作物の利用に関する原著作者の権利が除外されるに過ぎず、2次創作・パロディのダウンロードが全て対象外となるものではない事は、文化庁が同じく資料3(pdf)で書いている通りである。

 第2回検討会での議論についての弁護士ドットコムの記事などを見ても、文化庁は、この案をほぼ既定路線として、著作権者の利益を不当に害することとなる場合をさらに除くかどうかという枝葉末節に議論を押し込め(追加すればそれなりにましにはなるだろうが、これも問題の本質的な解消には繋がらないものである)、雪辱とばかりに来年の通常国会に向けてダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大をごり押しするつもりであると知れるが、前回も書いた通り、本当に国民の声を丁寧に聞くというなら、この様な非常に危険かつ拙速な検討を中止して条文案から対応部分を削除するのみならず、録音録画についての現在のダウンロード違法化・犯罪化そのものの効果を検証し、その廃止・撤廃を速やかに検討するべきと私は思っているが、文化庁にそうする気が全く見られないのは日本の国益と文化にとって極めて不幸な事である。

 また、リーチサイト規制についても、運営行為に対する刑事罰を非親告罪から親告罪に変更すること以外は国会提出断念版の条文案のままにするとしている。これについても、親告罪とする事が一定の歯止めにはなるとは思うが、文化庁が、「公衆を侵害著作物等に殊更に誘導するものであると認められるウェブサイト等」、「主として公衆による侵害著作物等の利用のために用いられるものであると認められるウェブサイト等」といった条文案の定義から、海賊版対策とは無関係のものとして、パブコメで懸念するものの例としてあげられた、引用要件違反のまとめサイト、剽窃論文、ライセンス違反のスライド、GPL違反のソフトウェア、ツイッターの違法アイコン等へのリンク集及びこのリンク集におけるリンクは規制の対象外となるとしているが、これも文化庁の現時点での希望的観測という他なく、これらの例だけを取っても、通常リンク先が剽窃やライセンス違反である事を指摘するためにそう明記して作られるものが多いだろうし、定義から除外されると完全に言えるかどうか疑問である。第414回に載せた提出パブコメの通り、今後の定義の拡大の恐れもあり、脅しや嫌がらせが増え、インターネット利用のリスクが無意味に高まるのではないかと私はやはり懸念している。

 以下、その他の知財法を巡る動きについて書いて行く。

 特許法については、今年の特許法等の改正の後、特許庁で、産業構造審議会・知的財産分科会特許小委員会が開催され、二段階訴訟の話などが検討されているが、次の法改正がどうなるかという意味では特に方針が出ている訳ではない。また、法改正とは関係ないが、審査基準専門委員会ワーキンググループで、進歩性の審査の進め方に関する参考資料の作成の話がされている。

 商標法については、商標制度小委員会で、店舗の外観・内装の商標制度による保護の話が検討され、商標審査基準ワーキンググループでそのための商標審査基準の改訂が検討され、対応する商標法施行規則改正案と商標審査基準の改訂案について1月20日〆切でそれぞれパブリックコメントにかかっている(特許庁HPの意見募集1意見募集2参照)

 意匠法については、意匠審査基準ワーキンググループで、法改正を受けた意匠審査基準の改訂が検討され、その改訂案が1月9日〆切でパブリックコメントにかかっている(特許庁HPの意見募集3参照)。

 農水省では、種苗法について、優良品種の持続的な利用を可能とする植物新品種の保護に関する検討会が開催され、海外流出防止のため、登録品種の販売における国内利用限定や栽培地域限定の条件に反する行為への育成者権の行使を可能とする、自家増殖を含め登録品種の増殖は育成者権者の許諾を必要とするといった内容のとりまとめ(pdf)が出され、農業資材審議会・種苗分科会で報告がされている。また、来年はこの様な種苗法の改正案とともに、家畜遺伝資源保護法案も国会に提出される事になるのだろう、和牛遺伝資源の流通管理に関する検討会で、家畜遺伝資源の保護も検討されている。

 知財本部では、また名前を変えたくなったのか、今年は構想委員会なるものが2回開かれている。今の所およそ内容のない話しかしていないが、じきに募集されるだろう次の知財計画パブコメにもまた意見を出すつもりである。

 最後に少しだけ書いておくと、この12月19日に、ウェブサイトを通じた電子書籍の中古販売は著作権者の許諾を必要とする公衆送信であるとする、欧州司法裁判所の判決が出されている(欧州司法裁のリリース(pdf)も参照)。これは、第332回で取り上げたオランダの控訴審判決の続きの話で、欧州で電子書籍中古販売が合法(電子データに対するデジタル消尽あり)とされるのは難しいのではないかと思っていた通りなのだが、こうした国際動向についても時間がある時にまたまとめて書きたいと思っている。

 今年もこれで最後になるが、政官業に巣食う全ての利権屋に悪い年を、このブログを読んで下さっている方々に心からの感謝を。

| | コメント (0)

2019年12月15日 (日)

第417回:文化庁検討会のダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大に関するパブリックコメント・アンケート調査結果概要

 11月27日に侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会の第1回が開催されたばかりだが、12月18日に第2回が開催される予定であり(開催案内参照)、去年国会提出を断念させられた遺恨からか、文化庁はかなり速いペースでダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大の検討を進めようとしている。この第2回の前に、今回は、文化庁のHPで公開されている第1回の資料の内容を見ておきたい。

 その資料2-1の出版広報センター説明資料(pdf)と資料2-2の関係団体調査結果整理資料(pdf)は、相変わらず、

  • 被害額の算定根拠が不明
  • 市場調査の数字から見ると、市場はより長期間で順当に伸びている中、電子コミックとその他電子書籍ともにその伸び率にはかなりの変動があり、他にも影響を与えた要素はあるだろうに、整合性やより深い分析の事をまるで考えずに別のコミック電子書店調査を使って一部の対前年月比のみのグラフを作って海賊版サイトの影響を煽る
  • 漫画村の様な本当に悪質な海賊版サイトに対して権利者側が現行法で本当にどの様に対処して来たのか、どうして現行著作権法の規制では不十分とするのかの根拠が不明
  • あらゆる著作物の種類について発生している事象をきちんと分析した上でそれぞれの特性も考慮して著作権法として横断的に必要とされる事は何かという検討が必要であるにも関わらず、各団体のいい加減な被害の主張のつまみ食いに終始
  • ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大がこの様なインターネットにおける著作権侵害への有効な対策になる根拠がまるで不明

と、突っ込みどころ満載である。

 これらはいつもの著作権団体ロビー資料に過ぎず、これで法改正をと言われても鼻白むだけのものだが、資料3-1として「侵害コンテンツのダウンロード違法化等に関するパブリックコメント」の結果について(全体像)(pdf)、資料3-2として「侵害コンテンツのダウンロード違法化等に関するパブリックコメント」の結果概要(個人:「(別紙)質問事項及び回答様式」)(pdf)、資料3-3として「侵害コンテンツのダウンロード違法化等に関するパブリックコメント」の結果概要(個人:「意見提出フォーム」)(pdf)、資料3-4として「侵害コンテンツのダウンロード違法化等に関するパブリックコメント」の結果概要(団体等)(pdf)も公開されている。

 団体の意見はそれぞれの立ち位置から予想通り賛否両論に分かれているが、個人の意見が4386件と2007年のダウンロード違法化パブコメ(文化庁の過去のパブコメ結果参照)以来の数字となっているのは、この問題に対する関心の高さを示すものだろう。

 個人の意見について概要だけではなく全体の詳細データを出してもらいたいと思うが、文化庁としてはダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大の結論ありきで何が何でも細かな追加要件の議論に持ち込みたいのだろう、個人のパブコメ結果概要において最も基本的な質問回答の部分について件数のみをあげてグラフを作らないところに作為が見え隠れしているので、ここでそれを作っておくと以下のようになる。(なお、今回のパブコメでは別紙による入力を求めていたはずだが、意見提出フォームも公開してしまっていたのは文化庁の単なるミスだろう。)

Pub2019_result_graph
Pub2019_result_graph2

 この様に「どちらかといえば反対」も含め反対意見が圧倒的であり、最も主要な意見が要件によらずダウンロード違法化を行うべきではないというものである事を考えれば、本当に国民の声を丁寧に聞くというなら、ダウンロード違法化・犯罪化の対象拡大の検討の完全な中止のみならず、録音録画についての現在のダウンロード違法化・犯罪化そのものの廃止・撤廃の提案も視野に入って来なければならない筈だが、資料5の侵害コンテンツのダウンロード違法化に係る制度設計等の検討に当たっての基本方針(案)(pdf)、資料6の侵害コンテンツのダウンロード違法化等に係る制度設計・論点(案)(pdf)や資料7の侵害コンテンツのダウンロード違法化に関する主な事例の取扱い(案)(pdf)を見ると、文化庁は、姑息にも国民の声を捻じ曲げ、現行の著作権法におけるダウンロード違法化・犯罪化を一方的に是認して、今の写り込みの権利制限の拡充による違法な部分を含むスクリーンショットの適法化とその延長線上にある一部分の軽微な利用の除外という弥縫策でダウンロード違法化・犯罪化の対象拡大を押し通そうとしていると分かる。

 この弥縫策によって確かに問題の軽減を多少図れるかも知れないが、前回載せたもう一つの写り込みに関する権利制限拡充についてのパブコメで書いた通り、その様な僅かな軽減すら要件次第であって(スクリーンショットに問題を矮小化する事は厳に慎むべき事だが、さらに念のため言っておくと、今の文化庁案では通常考えられるスクリーンショットが全て適法化される訳でもない)、これらはダウンロード違法化・犯罪化の本質的な問題の解消には到底繋がらないものである。これらが回答を恣意的に誘導しながら列挙した懸念の一部にしか対応していない事は文化庁自身認めている上、他の懸念や指摘に対する回答をきちんと示していないあたり、そのやり口はいつも通り不誠実極まるものと言わざるを得ない。文化庁の案には他の要件の検討についても書かれているが、パブコメ等で何度も書いている通り、それぞれ多少の問題の緩和になるかも知れないが、他のものも含めて追加の要件をどうしようがダウンロード違法化・犯罪化の本質的な問題が解消する事はないと私は確信している。

 他にも資料5として侵害コンテンツのダウンロード違法化に関するアンケート調査の結果(pdf)という資料も出されている。これもいつものためにする文化庁調査で有意な情報が取れるものではほぼないが、

  • 「違法にアップロードされた漫画・書籍・雑誌・論文・プログラム・イラスト・画像等を,それが違法にアップロードされたことが確実だと知りながら,個人が楽しむ目的でダウンロードすることは現行の著作権法に違反する行為でしょうか(※)現行の著作権法上は,『2.違反しない』が正しい回答」という質問に対して「1.違反する」という回答が79.7%となっていて、
  • 侵害コンテンツのダウンロード経験の有無についてありと答えた場合その多くは漫画の二次創作かスクリーンショットであり、
  • 最初の違法性の認識の回答との関係がどうなっているのか不明だがダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲が拡大されたら違法行為を止めると答えた者が7割程度

と、文化庁と権利者団体が法改正についてどう考えてどう周知しようが、一般の人々は自分なりに著作権法を理解してそれに沿って意味不明の萎縮が発生するだろうという事だけは言える。わざとだろうが、ここで現行の録音録画に関するダウンロード違法化・犯罪化に関する調査・評価を省いているのもタチが悪い。

 今まで他でも使われていた参考資料1の文化庁当初案の概要・条文等について(pdf)と参考資料3のインターネット上の海賊版に対する総合的な対策メニュー及び工程表について(pdf)の他に参考資料2として侵害コンテンツのダウンロードに関する主要国の著作権法制について(pdf)というものもある。ここで「外務省を通じて各国大使館等に調査訓令を発して得られた回答に,事務局で一部必要な情報を追記して作成したもの」という注で外務省に責任転嫁するのもどうかと思うが、ドイツとフランスについて民事・刑事両方の適用事例ありとし、アメリカ、韓国、台湾について侵害コンテンツのダウンロードについてフェアユース該当性が否定された事例が存在するとしているのはかなり悪質な印象操作を含んでいる。ドイツにおいてもアップロードとダウンロードを同時に行うファイル共有におけるダウンロード行為以外の単なるダウンロードに適用した事例はなく、フランスにおいてもファイル共有に対する3ストライクポリシーの適用事例であって、米韓台でも同様にファイル共有に対する適用事例であるからである。明確にダウンロード違法化・犯罪化をしたとする国自体決して多くないと思うが、何度も書いてきている通り、私の知る限り単なるダウンロードに対する適用事例は世界中見渡しても皆無であって、フランスやドイツでもダウンロード違法化・犯罪化や3ストライクポリシーの法改正によって混乱こそすれ海賊版対策として有益な効果は何一つもたらされていないのである。

 資料1の開催要綱(pdf)の別紙構成員名簿を見ても、一応そこまで偏ったメンバーにはなっていない様に見えるが、文化庁の資料と同じHPに載っている第1回の議事録を見ても追加の要件に関する細かな議論にほぼ終始しており、ダウンロード違法化・犯罪化とリーチサイトの問題について拙速な検討がされないかと非常に心配である。

(2019年12月16日夜の追記:文章は変えていないが、アンケート調査に関する記載を箇条書きにした。)

| | コメント (0)

2019年11月24日 (日)

第416回:文化庁・法制・基本問題小委員会「写り込みに係る権利制限規定の拡充に関する中間まとめ」に関する意見募集(11月30日〆切)への提出パブコメ

 今最も気になっているのは11月27日から始まる文化庁の侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会だが(開催案内参照)、その間に、11月30日〆切で掛かっている、前回取り上げた文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会「写り込みに係る権利制限規定の拡充に関する中間まとめ」に関する意見募集(文化庁のHP、電子政府のHP参照)に意見を出したので、ここに載せておく。私は念のため最後に範囲外のダウンロード違法化・犯罪化などについても意見を書いているが、この中間まとめ自体は写り込みに関する権利制限の拡充のみを示しているので、細かな問題はあるものの、大きな問題がある訳ではない。

(以下、提出パブコメ)

現行の写真等における写り込みに関する権利制限規定である著作権法第30条の2について、その趣旨から、その対象を生放送・生配信、スクリーンショット、模写等に拡大し、不要と考えられる分離困難性及び著作物創作要件の要件を削除する事に賛同する。

ここで、分離困難性及び著作物創作要件の要件の削除についてはその削除のみに留めるべきであって、追加の要件による不必要な限定を加えてはならない。これらの要件を削除するのみであっても、他に、付随性及び軽微性の要件もあれば、スリーステップテストをそのまま記載したただし書きもあり、必要十分なだけ限定されているのであって、本中間まとめの第5ページに記載されている様に、「映画の盗撮等の違法行為に伴う写り込みについても適法となり得ることには留意が必要」という事はなく、第6~7ページに記載されている様に、「その著作物の利用が主目的であるにもかかわらず、それを覆い隠すために本規定を利用するといった濫用的な行為まで可能となってしまうおそれ」もないからである。

本中間まとめの第5ページに、「主たる行為が著作権法上許容されないものであるにもかかわらず、それに伴う写り込みを適法とする必要はない(写り込んだ著作物の著作権者による権利行使が出来なくなるのは不合理である)という考え方」「を採用する場合には、例えば、端的に、著作権を侵害する行為に伴う写り込みは本規定の対象外とする旨の要件を設定することが考えられる」と記載されているが、この様な追加の要件を設定すると、外形的に違法とされ得る軽微な構成部分を含む場合の写り込み・スクリーンショット等が全て違法となる解釈が生じ得るため、かえって適切ではない。

この点については、追加の不要な要件を設定する事なく、本中間まとめの第4ページにおいて、「『自らが著作権を有する著作物が掲載された雑誌の記事を複製する際に、同一ページに掲載された他人の著作物が入り込んでしまう場合』などについても、日常生活等における一般な行為に伴い付随的に他人の著作物が利用される場面であり、写真の撮影等の場合と比較して権利者に与える不利益の程度に特段の差異がないと考えられることから、対象に含めることが適当」とされている通り、外形的に違法とされ得る軽微な構成部分を含む場合も含めて写り込みとして明確に適法化し、現行の著作権法の問題の軽減化を図るべきである。

また、本中間まとめの第7ページにおいて、「メインの被写体と付随して取り込まれる著作物が別個のものである場合(事例1)」と「街の雑踏を撮影する場合のように被写体(雑踏の光景)の中に当該著作物が含まれる場合(事例2)」の両方の場合が含まれる事を明確化するため、「現行規定のように『写真の撮影等の対象とするAに付随して対象となるB』といった規定ぶりを維持し」つつ、「事例1と事例2を併記することにより、事例2についても対象に含まれることを明確化することが適当」としている。しかし、ここで、現行の規定の「対象とするA」という部分まで維持する必要はなく、単に「写真の撮影等に付随して対象となる他の著作物」とすれば足りる。この様にしても、付随性の要件は維持され、他に軽微性の要件もあれば、スリーステップテストをそのまま記載したただし書きもあるのであって、想定外の事例が対象に含まれる事はない。

第7~8ページにおいて、「軽微な構成部分といえるか否かが上記のような総合的な考慮によるものであることを明確化し、利用者の判断に資するようにするため、法第47条の5第1項の規定(『・・その利用に供される部分の占める割合、その利用に供される部分の量、その利用に供される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものに限る』)も参考にしつつ、考慮要素を複数明記することが適当」としている。考慮要素の明記自体に反対はしないが、必ず「その他の要素」も含め、考慮要素が限定列挙と解釈されない様にするべきである。

最後に、本パブコメの範囲外となるが、他のパブコメで書いて来た通り、今後著作権法改正案を提出するのであれば、前回国会提出を断念した条文案からのダウンロード違法化・犯罪化の対象拡大に関する全ての条項の削除のみならず、著作権法第30条第1項第3号及び第119条第3項を削除し、ダウンロード違法化・犯罪化を完全に撤廃することを速やかに行うべきである。また、現行現行の著作権法における民事の間接侵害(カラオケ法理)あるいは刑事の著作権侵害幇助との関係整理をおざなりにした、著作権侵害コンテンツへのリンク行為に対するみなし侵害規定の追加及び刑事罰付加にも反対する。そして、研究のための権利制限の導入検討も今年度に速やかに行うべきであり、合わせアメリカ等と遜色ない形で一般フェアユース条項を可能な限り早期に導入するべきである。

| | コメント (0)

2019年11月17日 (日)

第415回:ダウンロード違法化・犯罪化を含まないスイスの著作権法改正、写り込み等に関する文化庁の権利制限拡充検討、ブロッキング訴訟東京高裁判決

 文化庁でさらに検討が進められるのだろう、前回パブコメを載せたダウンロード違法化・犯罪化の対象拡大の検討には引き続き最大限の注意が必要だと思っているが、この様なインターネット海賊版対策の動きにも関連する幾つかの重要な国内外の動きについてまとめて書いておきたい。

(1)ダウンロード違法化・犯罪化を含まないスイスの著作権法改正
 既にGIGAZINEで記事になっている通り、スイスでもこの9月に最近著作権法改正がその国会を通っている。

 この著作権法改正は、スイス国会の法案審議に関するHPに掲載されている、政府の法案説明資料(ドイツ語)(pdf)フランス語版(pdf))の最初の概要に、

Der Bundesrat will das Urheberrecht modernisieren. Im Zentrum der Gesetzesrevision stehen Massnahmen, mit denen die Internetpiraterie besser bekampft werden kann, ohne dabei die Konsumentinnen und Konsumenten solcher Angebote zu kriminalisieren. Zudem sollen verschiedene gesetzliche Bestimmungen an neuere technologische und rechtliche Entwicklungen angepasst werden, um die Chancen und Herausforderungen der Digitalisierung im Urheberrecht nutzen bzw. meistern zu konnen. Profitieren soll insbesondere die Forschung. Gleichzeitig enthalt die Vorlage eine Reihe weiterer Massnahmen, mit denen zentrale Anliegen der Kulturschaffenden, der Nutzerinnen und Nutzer sowie der Konsumentinnen und Konsumenten erfullt werden. Schliesslich sollen zwei Abkommen der Weltorganisation fur geistiges Eigentum ratifiziert werden.

スイス政府は著作権を現代化したいと考えている。法改正の中心は、消費者がその提供により犯罪者とされる事がないようにしつつ、インターネット海賊行為とより良く戦う手段にある。そこで様々な法規制は著作権においてデジタル化の機会と挑戦を利用若しくは向上できるよう新しい技術的、法的発展に適合されるべきである。特に研究の利便が図られるべきである。同時に法案は文化創造者、利用者並びに消費者の主要な要求を満たす一連の様々な手段を含んでいる。最後に2つの世界知的所有権機関の条約が批准されるべきである。

とある通り、消費者を犯罪者にしないという事を明確にしており、そのためダウンロード違法化・犯罪化は最初から含まれていない。

 この点については、2018年12月13日の法案の最初の国会審議でも、以下の通り、多くの党の議員が賛同している。

Bauer Philippe (RL, NE), pour la commission:
...
Le but de la modification de la loi sur le droit d'auteur est de moderniser notre droit, de l'adapter aux evolutions technologiques, de permettre de lutter contre le piratage sur Internet, tout en essayant de ne pas criminaliser les consommateurs.
...

Merlini Giovanni (RL, TI):
...
Revisionsbedarf ist insoweit gegeben, als es notig ist, die Rechte der Kulturschaffenden und der Kulturwirtschaft zu starken und sie insbesondere vor den illegalen Piraterieangeboten im Internet zu schutzen. Unsere Fraktion teilt zudem das Anliegen des Bundesrates, die Konsumenten rechtswidriger Angebote nicht zu kriminalisieren.
...

Marti Min Li (S, ZH):
...
Umso erstaunlicher und umso bemerkenswerter ist es, dass in einem langjahrigen Prozess an einem runden Tisch mit allen Akteuren ein Kompromiss gefunden werden konnte. Dieser Kompromiss liegt Ihnen hier vor. Dass bei einem Kompromiss nicht alle glucklich sind und dass nicht alle Punkte in allen Fallen fur alle Seiten befriedigend gelost werden konnten, liegt in der Natur der Sache. Dennoch sind wir uberzeugt, dass dieser Kompromiss im Grossen und Ganzen diese sehr schwierige Balance gefunden hat. Fur uns war immer zentral, dass die Kulturschaffenden und Kulturproduzentinnen und -produzenten zu ihren verdienten Einnahmen gelangen konnen, dass aber auch die Konsumentinnen und Konsumenten nicht kriminalisiert werden durfen. Das ist hier gelungen.
...

Gmur-Schonenberger Andrea (C, LU): Es ist an der Zeit, dass das Urheberrechtsgesetz modernisiert und den Herausforderungen der Gegenwart angepasst wird. Die CVP-Fraktion unterstutzt dieses Ziel. Dabei geht es darum, einerseits die Internetpiraterie zu bekampfen, andererseits die Chancen der Digitalisierung besser zu nutzen. Wichtig ist uns, dass die Konsumentinnen und Konsumenten nicht kriminalisiert werden. Auch Netzsperren sind keine vorgesehen, was wir begrussen.
...

Schwander Pirmin (V, SZ):
...
Der rasche Zugang zu Buchern, Filmen und Musik hat dazu gefuhrt, dass auch Internetpiraterie entsteht und dadurch den Urheberinnen und Urhebern Einnahmen entgehen. Deshalb ist es sehr wichtig, dass wir hier Remedur schaffen und die Rechte der Urheberinnen und Urheber starken. Das ist ein Ziel, das hier erreicht werden soll und unseres Erachtens auch erreicht wird. Die Konsumentinnen und Konsumenten ihrerseits wollen attraktive Angebote zu fairen Preisen. Deshalb ist es wichtig, dass wir keine Netzsperren einfuhren und dass wir die Konsumentinnen und Konsumenten auch nicht kriminalisieren. Wir mussen aber darauf schauen, dass die Konsumentinnen und Konsumenten durch diese neue Gesetzgebung nicht doppelt oder mehrfach belastet werden. Das zu diesem Spannungsfeld. Ich glaube, der vorliegende Kompromiss sollte eine Mehrheit finden.
...

Sommaruga Simonetta, Bundesratin: Das Internet hat auch im Bereich Kultur viele Vorteile. Es ermoglicht einen sofortigen, einfachen Zugang zu Kultur. Es reichen oft ein paar Klicks, und schon erhalten wir Zugang zu Buchern, zu Fotografien, Filmen, Musikstucken und naturlich auch zu Buchern, die langst vergriffen sind, oder zu historischen Fotografien. Das alles ist die schone, die positive Seite des Internets.
Die Kehrseite ist, dass viele Angebote illegal sind. Fur die Buchverlage, fur die Filmindustrie, die Plattenfirmen und naturlich auch fur die Kulturschaffenden stellen illegale Angebote ein ernsthaftes Problem dar; erstens naturlich, weil ihnen Einnahmen entgehen, und zweitens, weil ihre Urheberrechte - das sind ja Eigentumsrechte, Rechte am geistigen Eigentum - verletzt werden. Sie sind auch insofern problematisch, als sie die Entstehung von legalen Angeboten erschweren oder sogar verhindern. Der Bundesrat mochte darum effizienter gegen die Internetpiraterie vorgehen, ohne aber dass die Konsumenten kriminalisiert werden.
...

バウアー・フィリップ(自由民主党、ノイエンブルク)、委員会に:
(略)
法改正の目的は私たちの法を現代化し、技術的発展にそれを適応させ、インターネット上の海賊行為と戦う事を可能にする事にありますが、消費者を犯罪者にするつもりは全くありません。
(略)

メルリーニ・ジョヴァンニ(自由民主党、ティチーノ):
(略)
法改正の必要性は、文化創造者と文化経済を強化し、特にインターネットにおける違法な海賊版の提供からそれを守るのに必要な限りにおいて存在しています。私たちの党は、違法な提供について消費者を犯罪者にしないという事において政府の要請と同じ立場に立っています。
(略)

マルティ・ミンリ(社会民主党、チューリッヒ):
(略)
全ての関係者によるラウンドテーブルでの長年に渡る検討において一つの妥協が見つかり得たという事は非常に驚くべき、瞠目すべき事です。この妥協は今皆さんの前にあります。妥協においては皆に都合が良いという事はなく、あらゆる場合におけるあらゆる点について全員が満足する様に解決されている訳でもないという事は当然の事です。ですが、この妥協が全体において多くそのとてもむずかしい均衡を見つけたと私たちは確信しています。文化創造者及び文化製作者が収入を得る事ができる事もそうですが、消費者が犯罪者にされない事も私たちにとっては常に中心的な関心事項でした。ここでそれは上手く行っています。
(略)

グミュール-シェーネンベルガー・アンドレア(キリスト教民主党、ルツェルン):著作権法が現代化され、現在の要請に応える時が来ています。キリスト教民主党はこの目的を支持します。そのため、一方でインターネット海賊行為と戦い、他方でデジタル化の機会をより良く使える様にするべきでしょう。私たちにとって重要な事は消費者が犯罪者とされない事です。インターネットブロッキングが考えられていない事も私たちは喜ばしく思っています。
(略)

シュワンダー・ピルミン(国民党、シュヴィーツ):
(略)
本、映画及び音楽への急激なアクセスによってインタネット海賊行為が生じ、それにより著作権者が収入を逃す事になっていました。したがって、ここで私たちが対策を講じ、著作権者の権利を強化する事はとても重要です。それはここで私たちが達成するべき目的の1つであり、私たちの考えは達成されるでしょう。消費者は、彼らも公正な価格での魅力的な提供を求めています。したがって、私たちがインターネットブロッキングを導入せず、消費者を犯罪者にもしない事が重要です。この新たな法改正によって消費者に2重、多重に負担がかからない様にしなければなりません。それはこの議論の場の仕事です。今のこの妥協は多数の賛同を得ると私は信じています。

ソンマルーガ・シモネッタ、政府連邦参事会:インターネットは文化領域においても多くの利点を有しています。これは文化への即時の簡単なアクセスを可能にしています。数クリックで十分な事も多く、それで私たちはすぐに本、写真、映画、楽曲へのアクセスが手に入ります、もちろん長く絶版になっていた本や歴史的写真にもです。これら全てはインターネットの素晴らしい、肯定的な面です。
反対の面は、多くの提供が違法な事です。出版社にとって、映画産業、レコード会社にとって、もちろん文化創造者にとっても違法提供は深刻な問題です。もちろんまず収入を逃すからですが、第2に、その著作権-財産権、知的財産権です-が侵害されるからです。これはまた適法な提供の発生を困難にする又は抑止してしまうだけ問題です。そのため政府は、消費者が犯罪者にされる事がないようにしつつ、より効果的にインターネット海賊行為に対抗したいと考えました。
(略)

 ドイツなど近くの国でダウンロード違法化・犯罪化が全く上手く行っていない事を見ている所為だろうか、上でリンクを張った政府による法案説明資料にも書かれている通り、2012年から消費者・利用者も入った検討会で著作権法改正についてきちんと議論を積み重ねて来た結果だろうか、現時点でスイスでは政府・国会によってダウンロード違法化・犯罪化は否定されているのである。インターネットブロッキングについての言及もあるが、やはりその導入に否定的である事は注目されていいだろう。

 今まで散々書いてきた事だが、この様なスイスの著作権法改正の例を持ち出すまでもなく、広くダウンロードを違法・犯罪にして消費者・利用者・ユーザーをことごとく侵害者・犯罪者にしたところで良い事が何もないのは日の目を見るより明らかな事である。このごく当たり前の事が日本の政府与党・国会での検討でなかなか通じないのは極めて残念な事と私は常々思っている。

 なお、詳細は省くが、スイス国会における著作権法改正として、最終的に原案通り法改正(pdf)フランス語版(pdf))、北京条約批准(pdf)フランス語版(pdf))、マラケシュ条約批准(pdf)フランス語版(pdf))が通っており、全体として、

  • 写真の著作物の定義の拡充・明確化
  • 視聴覚著作物の送信可能化における著作権管理団体を通じた補償金請求権の法定
  • 孤児著作物規定の全ての著作物への適用拡大とその利用条件の明確化
  • 研究のための例外の創設
  • 図書館等における目録作成のための例外の創設
  • インターネットホスティングサービス提供者のテイクダウン・ステイダウン義務の法定
  • 代表著作権管理団体による拡大集合ライセンス規定の創設
  • 視聴覚的実演に関する北京条約批准
  • 視聴覚障害者等の著作物利用促進のためのマラケシュ条約批准

などの事項が含まれている。

 確かに著作権保護強化の方向である事には違いないので、海賊党がこの法改正に対して国民投票を目指し署名を集めようとしているという報道もあるが(nzz.chの記事(ドイツ語)、rts.chの記事(フランス語))、このスイスの著作権法改正はそこまで一般国民に影響の出るものではなく、反対の国民投票が成功する事はないのではないかと私は見ている。

(2)写り込み等に関する文化庁の権利制限拡充検討
 これもtwitterで少し触れていた点になるが、文化庁の法制・基本問題小委員会で写り込み等に関する権利制限の拡充について検討が進められている。

 一番最近の10月30日の第3回委員会の資料として、写り込みに係る権利制限規定の拡充に関する中間まとめ(案)が出されている。その「3.論点整理」から、現行の著作権法第30条の2に関する主な改正の方向性の部分を以下に抜き出す。

(1)対象行為
(略)
①生放送・生配信の取扱い
 生放送・生配信については、写り込みが生じる場合が多く想定される一方で、録音・録画の方法による場合と比較して権利者に与える不利益が大きいわけではないと考えられることから、対象に含めることが適当である。

②固定方法の拡大(スクリーンショット、模写等)
 写真の撮影・録音・録画以外の固定方法については、①スクリーンショットやプリントスクリーンのように、単に固定技術が相違するに過ぎないものと、②模写やCG化のように、不可避的な写り込みが生じない(著作物を除いて創作することが比較的容易である)という点で性質が異なるものが存在する。
 ①については、スマートフォンやタブレット端末等の急速な普及・発展により、日常生活においてごく一般的に行われるようになっているところ、著作物性のない文章や自らの著作物を保存する際に他人が著作権を有する画像が入り込む場合など、不可避的な写り込みが生じることが想定される一方で、技術の相違によって権利者に与える不利益に特段の差異はないと考えられることから、対象に含めることが適当である。②については、不可避的な写り込みが生じないとしても、被写体を忠実に再現するために著作物の複製等を行う必要がある場合も想定されるところ、写真の撮影等による場合と比較して権利者に与える不利益に特段の差異がない以上、そのような模写等の行為を行う自由を確保することが創作活動の促進・文化の発展等の観点からも望ましいと考えられることから、対象に含めることが適当である。
 なお、写り込みとは若干場面が異なるが、例えば、「自らが著作権を有する著作物が掲載された雑誌の記事を複製する際に、同一ページに掲載された他人の著作物が入り込んでしまう場合」などについても、日常生活等における一般な行為に伴い付随的に他人の著作物が利用される場面であり、写真の撮影等の場合と比較して権利者に与える不利益の程度に特段の差異がないと考えられることから、対象に含めることが適当である。

③条文化に当たっての留意事項
 上記を踏まえ、条文化に当たっては、技術・手法等にかかわらず幅広い行為が対象に含まれるよう、包括的な規定とすることが適当である。ただし、それによって、写り込みが生じ得るものとして想定している場合(様々な事物等をそのまま・忠実に固定・再現したり、伝達する場合)以外が広く対象に含まれてしまうことは適切でないため、適用範囲が過度に絞り込まれることのないよう注意しつつも、適切な表現で対象行為を特定する必要がある。

(2)著作物創作要件
(略)
イ.見直しの方向性
 現行規定の要件は、盗撮行為等に伴う写り込みを権利制限規定の対象から除外するとともに著作物の創作行為を促進する観点からは一定の合理性を有するとも考えられるが、固定カメラでの撮影等の場合にも、不可避的に写り込みが生じる場合が多く想定されるところ、本規定の主たる正当化根拠は、権利者に与える不利益が特段ない又は軽微であるという点にあるため、著作物を創作する場合か否かは必ずしも本質的な要素ではないと考えられる。このため、著作物を創作する場合以外も広く対象に含めることが適当である。
 ただし、単純に「著作物を創作するに当たつて」という要件を削除した場合には、映画の盗撮等の違法行為に伴う写り込みについても適法となり得ることには留意が必要である。この点については、①映画の盗撮等の行為自体が違法とされることをもって足りる(当該行為自体が違法となることで、そのような行為は十分に抑止されており、写り込み部分についてあえて違法とする必要はない)という考え方と、②主たる行為が著作権法上許容されないものであるにもかかわらず、それに伴う写り込みを適法とする必要はない(写り込んだ著作物の著作権者による権利行使が出来なくなるのは不合理である)という考え方の両方があり得る。
 仮に②の考え方を採用する場合には、例えば、端的に、著作権を侵害する行為に伴う写り込みは本規定の対象外とする旨の要件を設定することが考えられるが、本規定の主たる正当化根拠は権利者に与える不利益が特段ない又は軽微であるという点にあるところ、主たる行為が違法であることのみをもって一律に権利制限規定の適用対象外とすることが妥当か否かには一定の疑義もあり、そういった問題意識から①の考え方を支持する意見も複数あった。この点については、ただし書や他の要件の解釈に委ねることによる対応の可否も含め、法整備に当たって、適切な整理・措置がなされることが適当である。

(3)分離困難性・付随性
(略)
イ.見直しの方向性
①両者の関係性及び「分離困難性」の要否
 本規定の正当化根拠については、その著作物の利用を主たる目的としない他の行為に伴い付随的に生じる利用であり、利用が質的又は量的に社会通念上軽微であることが担保されるのであれば、著作権者にとって保護すべきマーケットと競合する可能性が想定しづらい(したがって権利者の利益を不当に害しない)という点に本質があるものと考えられるところ、これを担保する観点からは、「付随性」が重要な要件であると考えられる。 一方で、「分離困難性」については、「付随性」を満たす場合の典型例を示すものではあるが、この要件を課することが、本規定の正当化根拠からして必須のものとは考えられず、「付随性」や「軽微性」等により権利者の利益を不当に害しないことは十分に担保できると考えられる。このため、日常生活等において一般的に行われている行為を広く対象に含める観点から、この要件は削除することが適当である。

②「分離困難性」の削除に伴う要件追加の要否
 単に「分離困難性」の要件の削除のみを行った場合には、例えば、「分離が容易かつ合理的な場合であって、社会通念上、その著作物を利用する必要性・正当性が全く認められないような状況において意図的に写し込むこと」など、その著作物の利用が主目的であるにもかかわらず、それを覆い隠すために本規定を利用するといった濫用的な行為まで可能となってしまうおそれがある。
 このため、適用範囲が過度に絞り込まれることのないよう注意しつつも、例えば、主たる行為を行う上で「正当(又は相当)な範囲内において」などの要件を追加することにより、一定の歯止めをかけることが適当である。

③被写体の中に当該著作物が含まれる場合の取扱い
 本規定の対象として、メインの被写体と付随して取り込まれる著作物が別個のものである場合(事例1)のほか、街の雑踏を撮影する場合のように被写体(雑踏の光景)の中に当該著作物が含まれる場合(事例2)も含めるべきことには異論はないと考えられるが、現行規定のように「写真の撮影等の対象とするAに付随して対象となるB」といった規定ぶりを維持した場合には、事例2が対象に含まれるか否かが不明確となる。
 このため、条文化に当たっては、事例1と事例2を併記することにより、事例2についても対象に含まれることを明確化することが適当である。ただし、その際には、例えば、多数の著作物で構成される集合著作物・結合著作物(個々の著作物は、当該集合著作物・結合著作物の軽微な構成部分となっている)自体をメインの被写体とすることなど想定外の事例が対象に含まれることのないよう、注意する必要がある。

(4)軽微性
イ.見直しの方向性
 軽微な構成部分といえるか否かが上記のような総合的な考慮によるものであることを明確化し、利用者の判断に資するようにするため、法第47条の5第1項の規定(「・・その利用に供される部分の占める割合、その利用に供される部分の量、その利用に供される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものに限る」)も参考にしつつ、考慮要素を複数明記することが適当である。
 なお、ここでいう「軽微」については、利用行為の態様に応じて客観的に要件該当性が判断される概念であり、当該行為が高い公益性・社会的価値を有することなどが判断に直接影響するものではないことに注意が必要である。

(5)対象支分権
(略)
イ.見直しの方向性
 上記(1)の対象行為の拡大に伴い、「公衆送信(送信可能化を含む)」、「演奏」、「上映」等を広く対象に含める観点から、第2項と同様に、「いずれの方法によるかを問わず、利用することができる」という形で包括的な規定とすることが適当である。

 文化庁の資料はいつも通り長ったらしく分かりにくいが、要するに、現行の写真等における写り込みに関する権利制限規定の対象を、生放送・生配信、スクリーンショット、模写等に拡大し、不要な分離困難性の要件を削除するという事であって、その事自体は写り込みの権利制限の性質から考えて当然の事としか思えず、今更何をと思うが、ここで、著作物創作要件の項目で、「著作物を創作する場合以外も広く対象に含めることが適当である」としながら、「違法行為に伴う写り込みについても適法となり得ることには留意が必要」で、「写り込み部分についてあえて違法とする必要はない」という考え方と「著作権を侵害する行為に伴う写り込みは本規定の対象外とする旨の要件を設定する」という考え方があり、「この点については、ただし書や他の要件の解釈に委ねることによる対応の可否も含め、法整備に当たって、適切な整理・措置がなされることが適当である」と奥歯に物の挟まった様な言い方をしている事には注意しておくべきだろう。

 ダウンロード違法化・犯罪化の対象拡大の問題において違法スクリーンショットの問題がかなり取り上げられたが(私は別にスクリーンショットのみの問題とはカケラも思っていないが)、今までやって来た事を考えても、違法な部分が含まれるスクリーンショット等を軽微な写り込みとして完全に合法化し、この点でわずかながらでも問題の軽減化を図ろうとする考えは文化庁にはない様に見えるのである。

 もう1つ、研究目的に係る権利制限規定の創設に当たっての検討について(案)(pdf)という資料も出されている。研究のための一般的な権利制限など今すぐあって良いものと私は思うが、こちらも、今年度は議論と調査研究で、来年度以降に権利制限規定の制度設計等について検討と極めて見通しが悪い。

 いずれにせよ、文化庁の検討についてはまた中間まとめのパブコメ(文化庁のHP、電子政府のHP参照)などで意見を出したいと思っている。

(3)ブロッキング訴訟東京高裁判決
 最後に、弁護士ドットコムの記事になっているが、10月30日にNTTコミュニケーションズに対するブロッキングに関する訴訟の判決が東京高裁で出された。この記事にも書かれ、また、訴訟を提起した中澤佑一弁護士がそのtwitterで引用している様に、

本件ブロッキングを実施した場合には,第1審被告によりユーザーの全通信内容(アクセス先)の検知行為が実行され,このことが日本国憲法21条2項の通信の秘密の侵害に該当する可能性があることは,第1審原告が指摘するとおりである。児童ポルノ事案のように,被害児童の心に取り返しのつかない大きな傷を与えるという日本国憲法13条の個人の尊厳,幸福追求の権利にかかわる問題と異なり,著作権のように,逸失利益という日本国憲法29条の財産権(財産上の被害)の問題にとどまる本件のような問題は,通信の秘密を制限するには,より慎重な検討が求められるところではある

と、傍論ながら、著作権ブロッキングが通信の秘密の侵害となり得るという判断を裁判所が示した事はかなりの重みを持つものと私も考える。今のところ、総務省の検討結果でも(第412回参照)、インターネット海賊版対策としてブロッキングやアクセス警告方式の導入は困難とされているが、この様な裁判所の判断はブロッキングのみならず同じくユーザーの全通信内容の検知行為が実行されるものであるアクセス警告方式についても当然通用するに違いないのである。

(2019年11月18日夜の追記:幾つか誤記を直し、文章を整えた。)

(2019年11月20日夜の追記:11月30日〆切でかかっている文化庁の中間まとめに対するパブコメについて上でリンクを追加した。)

| | コメント (0)

2019年10月20日 (日)

第414回:侵害コンテンツのダウンロード違法化等に関するパブリックコメント(10月30日〆切)への提出意見

 文化庁から10月30日〆切で侵害コンテンツのダウンロード違法化等に関するパブリックコメントがかかっている(電子政府のHP、文化庁のHP参照)。

 以前著作権法改正案の国会提出は数多くの批判を受けて一時見送られたが、案の定この選挙後のタイミングで再度提出を狙っているのだろう、文化庁はダウンロード違法化・犯罪化の拡大を含む法改正案についてパブリックコメントの募集を行って来た。

 私も意見を提出したので、内容としては基本的に今まで書いて来た事をまとめただけだが(去年の法制・基本問題小委員会中間まとめに対する提出パブコメは第402回、著作権法改正案条文については第406回参照)、ここに載せておく。設問等の作り方で恣意的に回答を誘導しようとしているなど文化庁はいつも通り姑息な手段を弄しているが、このパブリックコメントの結果は今後の法改正の検討において非常に大きな意味を持つと思うので、この様な著作権問題に関心のある方は是非提出してもらいたいと思う。

(以下、提出パブコメ)

1.基本的な考え方
(1)「深刻な海賊版被害への実効的な対策を講じること」と「国民の正当な情報収集等に萎縮を生じさせないこと」という2つの要請を両立させた形で、侵害コンテンツのダウンロード違法化(対象となる著作物を音楽・映像から著作物全般に拡大することをいう。以下同じ。)を行うことについて、どのように考えますか。①~⑤から一つを選択の上、回答欄に記入して下さい。

①賛成
②どちらかというと賛成
③どちらかというと反対
④反対
⑤分からない

<回答欄>
④反対

2.懸念事項及び要件設定
(1)侵害コンテンツのダウンロード違法化を行うことによる懸念事項として、下記(ⅰ)~(ⅶ)のそれぞれについて懸念される程度を、①~⑤から一つを選択の上、回答欄に記入して下さい。その他、懸念事項があれば(ⅷ)に記入して下さい。

(ⅰ)インターネット上に掲載されたコンテンツは、適法にアップロードされたのか違法にアップロードされたのか判断が難しいものが多いため、ダウンロードを控えることになる。

①とても懸念される
②どちらかというと懸念される
③あまり懸念されない
④全く懸念されない
⑤分からない

<回答欄>
①とても懸念される

(ⅱ)重要な情報をスクリーンショットで保存しようとする際に、違法画像等(例:SNSのアイコン)が入り込むことが、違法になる。

①とても懸念される
②どちらかというと懸念される
③あまり懸念されない
④全く懸念されない
⑤分からない

<回答欄>
①とても懸念される

(ⅲ)漫画の1コマのダウンロードや、論文の中に他人の著作物の違法引用がされている場合の当該論文のダウンロードなど、ごく一部の軽微なダウンロードでも違法になる。

①とても懸念される
②どちらかというと懸念される
③あまり懸念されない
④全く懸念されない
⑤分からない

<回答欄>
①とても懸念される

(ⅳ)原作者の許諾を得ずに創作された二次創作・パロディのダウンロードが、違法になる。

①とても懸念される
②どちらかというと懸念される
③あまり懸念されない
④全く懸念されない
⑤分からない

<回答欄>
①とても懸念される

(ⅴ)無料で提供されているコンテンツ(例:無料で配布・配信されている雑誌、漫画、ネット記事)が違法にアップロードされている場合に、そのダウンロードが違法になる。

①とても懸念される
②どちらかというと懸念される
③あまり懸念されない
④全く懸念されない
⑤分からない

<回答欄>
①とても懸念される

(ⅵ)権利者がアップロードを問題視していない(黙認している)場合でも、ダウンロードが違法になる。

①とても懸念される
②どちらかというと懸念される
③あまり懸念されない
④全く懸念されない
⑤分からない

<回答欄>
①とても懸念される

(ⅶ)権利者により濫用的な権利行使がされる可能性や、刑事罰の規定の運用が不当に拡大される可能性がある。

①とても懸念される
②どちらかというと懸念される
③あまり懸念されない
④全く懸念されない
⑤分からない

<回答欄>
①とても懸念される

(ⅷ)その他、懸念事項があれば記入して下さい。

<回答欄>(自由記述)
 上記の(ⅰ)~(ⅶ)の回答において他に選びようがないため全て「①とても懸念される」を選択したが、これらの質問及び回答の設定自体法的な論点として到底十分なものになっておらず、不適切なものと言わざるを得ない。

 ダウンロード違法化・犯罪化の問題点については、2.(2)(ⅵ)及び3.(1)に記載するが、日本の著作権法において研究など公正な利用として認められるべき利用についての権利制限が不十分であって、その様な利用についてまで本来の目的とは異なるが私的複製によってある程度カバーされ適法とされているという現状を重く見るべきであろう。

(2)上記の懸念などを踏まえ、具体的にどのような要件・内容とすることが望ましいと考えますか。下記(ⅰ)及びその回答に応じた(ⅱ)~(ⅵ)の回答欄に記入して下さい。

(ⅰ)侵害コンテンツのダウンロード違法化に関する文化庁当初案(添付1~3参照)について、どのように考えますか。①~⑤から一つを選択の上、回答欄に記入して下さい。

①適切である(文化庁当初案のままで良い)
②違法となる対象が広い(文化庁当初案よりも違法化の対象を絞りこむべき) 
③違法となる対象が狭い(文化庁当初案よりも違法化の対象を広げるべき)
④具体的な要件の適否は分からないが、バランスのとれた内容とすべき(政府における検討に委ねる)
⑤要件にかかわらず、侵害コンテンツのダウンロード違法化自体を行うべきではない

<回答欄>
⑤要件にかかわらず、侵害コンテンツのダウンロード違法化自体を行うべきではない

(ⅱ)(ⅰ)で①を選択した場合、その理由を教えて下さい。その際、「深刻な海賊版被害への実効的な対策を講じること」と「国民の正当な情報収集等に萎縮を生じさせないこと」の2つの要請のバランスに留意しつつ、記入をお願いします。

(ⅲ)(ⅰ)で②を選択した場合、どのような要件にすべきと考えますか、理由とともに記入して下さい。その際、「深刻な海賊版被害への実効的な対策を講じること」と「国民の正当な情報収集等に萎縮を生じさせないこと」の2つの要請のバランスに留意しつつ、記入をお願いします。

(ⅳ)(ⅰ)で③を選択した場合、どのような要件にすべきと考えますか、理由とともに記入して下さい。その際、「深刻な海賊版被害への実効的な対策を講じること」と「国民の正当な情報収集等に萎縮を生じさせないこと」の2つの要請のバランスに留意しつつ、記入をお願いします。

(ⅴ)(ⅰ)で④を選択した場合、その理由を教えて下さい。

(ⅵ)(ⅰ)で⑤を選択した場合、その理由を教えて下さい。

<回答欄>(自由記述)
 過去の意見募集においても繰り返しているが、一人しか行為に絡まないダウンロードにおいて、「事実を知りながら」なる要件は、エスパーでもない限り証明も反証もできない無意味かつ危険な要件であり、技術的・外形的に違法性の区別がつかない以上、このようなダウンロード違法化・犯罪化は法規範としての力すら持ち得ず、罪刑法定主義や情報アクセス権を含む表現の自由などの憲法に規定される国民の基本的な権利の観点からも問題がある。このような法改正によって進むのはダウンロード以外も含め著作権法全体に対するモラルハザードのみであり、今のところ幸いなことに適用例はないが、これを逆にねじ曲げてエンフォースしようとすれば、著作権検閲という日本国として最低最悪の手段に突き進む恐れしかない。

 また、世界的に見ても、アップロードとダウンロードを合わせて行うファイル共有サービスに関する事件を除き、どの国においても単なるダウンロード行為を対象とする民事、刑事の事件は1件もなく、日本における現行の録音録画に関するダウンロード違法化・犯罪化も含め、この様な法制が海賊版対策として何の効果も上がっていないことは明白である。また、ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大は、研究など公正利用として認められるべき目的のダウンロードにも影響する。

 この様な問題はダウンロード違法化・犯罪化に内在する本質的な問題であって、どの様な要件の追加によっても解消するものではない。「深刻な海賊版被害への実効的な対策を講じること」と「国民の正当な情報収集等に萎縮を生じさせないこと」の2つの要請は、いかなる形を取ろうとダウンロード違法化・犯罪化によってそもそも満たされるものではない。

 過去の文化庁へのパブコメ(文化庁HPhttp://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hokoku.htmlの意見募集の結果参照)や知財本部へのパブコメ(知財本部のHPhttp://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keikaku2009.htmlの個人からの意見参照)等を完全に無視して行われたものであり、さらなる有害無益な規制強化・著作権検閲にしか流れようの無い、百害あって一利ないダウンロード違法化・犯罪化を規定する著作権法第30条第1項第3号及び第119条第3項の削除を速やかに行うべきである。

3.その他
(1)侵害コンテンツのダウンロード違法化に関して、上記のほかに御意見があれば、記入して下さい。

<回答欄>(自由記述)
 今回の意見募集の設問において、文化庁は勝手に「『深刻な海賊版被害への実効的な対策を講じること』と『国民の正当な情報収集等に萎縮を生じさせないこと』という2つの要請を両立させた形で」という前提を追加しているが、この様なそもそもダウンロード違法化・犯罪化によって満たされ得ない要請を設問に追加し、回答を恣意的に誘導しようとしている事について私は文化庁に猛省を求める。本当に国民の声を丁寧に聞いて今後の手続きを進めるというのであれば、この様な要請がダウンロード違法化・犯罪化によって果たして満たされ得るのか、現行のダウンロード違法化・犯罪化条項が本当に有効なのか、有害無益なものとして削除・廃止するべきではないかという事から聞くべきである。文化庁にあってはこの様な偏った意見募集のやり方について猛省の上、もう一度前提のない形で意見募集を行ってもらいたい。また、この問題について今後さらに検討の場を設置するのであれば、そのメンバーの選定自体について意見募集を行い、偏りのない形にするべきである。

 私の意見は2.(2)(ⅵ)に書いた通りであるが、添付資料のダウンロード違法化・犯罪化関連部分についてさらに以下の通り意見を補足する。

 今回の意見募集においては、添付資料1及び2として具体的な著作権法改正の条文案を添付している。この様な条文案の提示は国会提出を見送った結果に過ぎないであろうが、条文は法解釈における最も基本的な根拠であり、いつもの審議会報告書のみによる法改正に関する意見募集は常に不確実かつ不透明にならざるを得ないものである。国民の生活に密接に関係し得る著作権法の改正においては、今後は国会提出前に審議会報告書のみならず具体的な条文案も提示する形で常に意見募集を行ってもらいたい。

 添付資料1の第1ページにおいて、権利者団体側の一方的な主張に基づき被害額を試算して被害が甚大であるかのような印象操作がされているが、これも一方的な主張に過ぎず、送信可能化・アップロードとの関係でダウンロードによる損害額がどう算定されるのかすら分からない中、推定に推定を重ねたアクセス数に著作物の単価を掛けるような試算は乱暴の極みと言うほかなく真摯な立法論の基礎とするに足るものでは全くない。また、同ページの「海賊版被害の拡大が防止され、著作権法の目的である『文化の発展』に資する」などという言葉も、文化庁の勝手な思い込みと言う他ない。

 添付資料1の第11~13、15~17ページ、添付資料3の第1~9、17ページにおいてダウンロード違法化・犯罪化に関する条文案の解説が示され、添付資料2に条文案の新旧対照が示されている。

 これらの条文案において、民事に関する第30条の方で、「その事実を知りながら行う場合」を「特定侵害複製であることを知りながら行う場合」に変え、「特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行う場合を含むものと解釈してはならない」といった条件をつけ加える事で、限定を加えたつもりなのだろうが、これらはともに主観要件であって、はっきり言って、これで現行条文との間で解釈上本当に違いが出て来るかどうか疑問であり、一個人しか絡まないダウンロードにおける要件の立証・反証の問題に対する解決になるものでは全くない。

 刑事に関する第119条の方では、対象者について、第30条と同様の、「有償著作物等特定侵害複製であることを知りながら行」った者という条件と「自ら有償著作物等特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行」った者は含まれないという条件に加えて、「継続的に又は反復して行つた」者という条件もつくが、「継続」や「反復」とはどの程度の継続や反復なのか不明であり、ネット利用者に対するセーフハーバーになっていると言えるものでは到底ない。なお、刑事罰規定において、著作権法第28条の2次著作物についての原著作者の権利が除かれているが、この事はこの問題の本質とは関係がない。昨今のウィルス(不正指令電磁的記録関連)罪の摘発の状況を見ても、親告罪とされるだろうとはいえ、今後警察や検察が著作権法の違法ダウンロード罪について無茶な摘発をしようとして来る可能性は常にあり、その時、現行法だろうが、改正条文案だろうが、無罪の立証にはかなりの労力を要するであろうし、場合によっては、恣意的に摘発されたネット利用者の生活と安全が一気に危険に晒される事になる。

 添付資料1の第14ページに、諸外国における取り扱いについて書かれ、ドイツ、フランス、カナダ、アメリカ、イギリス等の国でダウンロード違法化がされており、効果が上がっているような印象操作がされているが、アップロードとダウンロードを合わせて行うファイル共有サービスに関する事件を除き、どの国においても単なるダウンロード行為を対象とする民事、刑事の事件は1件もなく、日本における現行の録音録画に関するダウンロード違法化・犯罪化も含め、このような法制が海賊版対策として何の効果も上がっていないことは明白である。また、スイスでも最近著作権法改正案が国会を通っているが、消費者・利用者を犯罪者とするべきではないとしてダウンロード違法化・犯罪化は含まれていない。

 添付資料3の第10~15ページのQ&Aにおいても文化庁は極めて恣意的な回答を示している。

 問1のアップロードの取り締まりについて何がそのボトルネックとなっているのかの具体的な検討もなく一方的にダウンロード違法化・犯罪化の強化が必要であると決めつけている。

 問2のストリーミング型の海賊版サイトについて効果がないのはその通りと認めたくないのだろう、ダウンロード型の海賊版サイトには効果があると何の根拠もなく独りよがりのすれ違い回答をしている。私はダウンロード型の海賊版サイトに対してもダウンロード違法化・犯罪化は効果はないと考えているし、警告表示を行う仕組みなど危険なネット検閲に他ならないと考えている。海賊版サイト対策としては広告出稿抑制の様な地道な取り組みの方がよほど効果的である。

 問3のいきなり権利行使や逮捕・告訴がされたりするのかという設問自体も誘導的かつ恣意的と言わざるを得ない。問題としている側は違法・犯罪になる事自体を問題としているのであって、そこで文化庁は違法・犯罪にして萎縮効果を狙おうというにも関わらず、ここで黙認・寛容的な利用を持ち出したり、権利者がまずアップロード者に対する権利行使を行うものと勝手な希望的観測を述べる事は矛盾という他ない。

 問4の法改正の実効性に関しても、自ら違法ダウンロードを行っている旨をSNSなどで誇示している場合や違法アップロードに関する捜査・訴訟等の過程でダウンロードの事実が確認された場合などに権利行使・摘発が可能としているが、その様な例が現実的にどれくらいあり得るのかを示さずにこの様な事を言うのは適切ではない。さらに、仮にこれらの様な例、SNSなどで違法ダウンロードを行っている事の書き込みや違法アップロード事件におけるダウンロードの事実が現実的にあったとしても、主観的要件による違法ダウンロードの事実をどの様に証明するのかや、恣意的に警告・権利行使・摘発された場合にどの様に反証するのかはやはり解決不能な問題として残るのであって、文化庁の回答は回答になっていないと言わざるを得ない。

 また、添付資料3の第16ページの補足資料で、平成25年12月の調査を引用しているが、この調査は文化庁と権利者団体中心のお手盛り調査であって何ら信頼に足るものではない。ファイル共有ソフトのノード数の減少はダウンロード犯罪化の運用が不明な中での一時的な現象であろうし、政府の委託調査で広くアンケートを取り違法行為をしているかと聞けば控えたと答えるに決まっているのでそのような回答の傾向はユーザーの行動の実態を表しているとは言えない。この様なお手盛り調査の我田引水は論外であるが、ダウンロード違法化・犯罪化がされた当時と比較して音楽と映像に関して違法にアップロードされている著作物のダウンロードは減っているのではないかとも思うが、それは単にストリーミングサービスも含めて利便性の高い正規のサービスが充実して来たことの結果に過ぎず、ここでダウンロード違法化・犯罪化がほとんど何の役にも立ってない事は日本のみならず世界的に同じ傾向が見られる事からも明らかであろう。

 なお、違法サイトかどうか利用者からは区別がつかないという事はダウンロード違法化・犯罪化の議論当初から問題にされており、当時音楽団体がエルマークを持ち出したと記憶しているが、2018年12月の法制・基本問題小委員会中間まとめ又は2019年2月の著作権分科会報告書で言及されていた、出版社の「ABJマーク」なども、残念ながら、上の平成25年の文化庁委託調査ですら認知度が低い事が示されており、その後も認知が進んでいるとは到底思えない音楽団体のエルマークと全く同じ道を辿る事であろう。

 問5~7のインターネット上での資料収集や論文等のための利用の萎縮についても同断であって、ここで寛容的な利用などを持ち出すのは矛盾という他ない。さらに敢えて書いておくと、剽窃の指摘・告発等のための善意の保存についてわざわざ事前に権利者に許諾を取るのは現実的ではないであろうし、ダウンロード違法化・犯罪化が引用に影響を与えない事自体はその通りだろうが、その準備行為は必要かつ合理的と認められる限度においてのみ許容されているのであって、ダウンロードの違法化・犯罪化の下で引用のためであったとしても著作権侵害コンテンツのダウンロードが完全に許容されるとは考えがたい。

 問8の警察による捜査権の濫用についても、回答は単なる文化庁の希望的観測の域を出ない。昨今のウィルス(不正指令電磁的記録関連)罪の摘発の状況を見ても、親告罪とされるだろうとはいえ、今後警察や検察が著作権法の違法ダウンロード罪について無茶な摘発をしようとして来る可能性は常にあり、その時、現行法だろうが、改正条文案だろうが、無罪の立証にはかなりの労力を要するであろうし、場合によっては、恣意的に摘発されたネット利用者の生活と安全が一気に危険に晒される事になるのである。

 問9のスクリーンショットの問題についても同様であって、ここでその様な利用を著作権者が問題視することは想定しづらいとするのは矛盾という他ない。文化庁は恣意的にすれ違いの回答をしているが、問題としている側は、SNSなどで違法画像が使用されている場合にそれが違法であると知りながらスクリーンショットで保存する事が違法となる事自体を問題としているのであって、これはその通りになるのである。また、ダウンロード違法化・犯罪化の拡大は画像のみならずあらゆるコンテンツに及び、あらゆる複製に及ぶのであって、ここで画像のみを取り上げているのもわざと問題を矮小化しているのだろうと思わざるを得ない。

 問10の視聴が違法化・犯罪化されない事は当たり前の事であり、メールによる送りつけの問題も添付ファイルであれば違法・犯罪とならないのはその通りだろうが、メール中にURL等が書き込まれていた場合なども考えると、話はそう単純ではない。

 問11の2次創作物についても、条文案の刑事罰規定において、著作権法第28条の2次著作物についての原著作者の権利が除かれているが、この事はこの問題の本質とは関係がない。

 問12のインタビュー記事のダウンロードについても同様であって、ここでその様な利用を著作権者が問題視することは考えづらいとするのは矛盾という他ない。さらに敢えて書いておくと、既にそれ自体としては販売が終了している定期刊行物の記事等であってもバックナンバーやアーカイブとして長期間に渡って販売される事もあるのであって、販売が終了している新聞記事等のダウンロードは刑事罰の対象外というのも非常に安易で危うい想定である。

 問13の親告罪となっている事も当然の事である。

 問14、15の主観要件の判断について、現行の録音録画に関するダウンロード違法化・犯罪化の条文の要件だろうが、示されている条文案の要件だろうが、これらはともに主観要件であって、はっきり言って、いずれにせよ、一個人しか絡まないダウンロードにおける要件の立証・反証の問題に対する解決になるものでは全くない。権利者から警告された後もユーザーがダウンロードを継続しているような場合に認定される事が想定されるとも書かれているが、その様な事が現実的に起こるのか、その様な事がどの様に証明され得るのかは全く不明という他なく、ここで書かれている事は法律について無知な者の戯言としか思えない。

 すなわち、これらの添付資料のほぼ全てが、何ら合理的な根拠もなく、結論ありきでダウンロード違法化・犯罪化の範囲の拡大を正当化しているものであって、到底法改正のための真摯な根拠たり得ない文化庁の妄言を垂れ流しているに過ぎない。

 今後著作権法改正案を提出するのであれば、本条文案におけるダウンロード違法化・犯罪化の対象拡大に関する全ての条項の削除のみならず、ダウンロード違法化・犯罪化を規定する著作権法第30条第1項第3号及び第119条第3項を削除し、ダウンロード違法化・犯罪化を完全に撤廃することを速やかに行うべきである。

(2)リーチサイト対策に関して御意見があれば、記入して下さい。

<回答欄>(自由記述)
 現行現行の著作権法における民事の間接侵害(カラオケ法理)あるいは刑事の著作権侵害幇助との関係整理をおざなりにした、著作権侵害コンテンツへのリンク行為に対するみなし侵害規定の追加及び刑事罰付加に反対する。

 本当に悪質な場合について現行法で不十分というところがあれば、その点について立法による対処も当然あり得るだろうが、権利者団体側がリーチサイト等に対して現行法に基づいてどこまで何をしたのか、現行法による対処に関する定量的かつ論理的な検証は何らされておらず、本当にどのような場合について現行法では不十分なのかは全く不明である。

 例えば、2018年12月の法制・基本問題小委員会中間まとめ又は2019年2月の著作権分科会報告書でロケットニュース事件やリツイート事件を取り上げているが、これらの事件はニュースサイトやツイッターの様なSNSサイトにおけるリンク行為を取り扱ったものであって、いわゆるリーチサイトとは性質を異にすると考えるべきものである。カラオケ法理に関してはネットワークを通じた提供を含めて各種の民事での判例があり、著作権侵害幇助に関する刑事事件もあるのであって、判例と現行法の解釈についての分析すら不十分であると言わざるを得ない。さらに言えば、ここで本当に問われるべきは、権利者団体が悪質なケースがあると主張しているにもかかわらず、その悪質なリーチサイトに対して何故いまだに民事・刑事での明確な裁判例が積み重なっていないのかということであろう。

 さらに、このような間接侵害あるいは幇助の検討において当然必要とされるはずのセーフハーバーの検討も極めて不十分であって、インターネット利用における民事・刑事のリスクに関する不確実性を増すだけである、このような不十分な検討に基づくリンク行為へのみなし侵害規定の追加及び刑事罰付加に私は断固反対する。

 今現在、カラオケ法理の適用範囲がますます広く曖昧になり、間接侵害や著作権侵害幇助のリスクが途方もなく拡大し、甚大な萎縮効果・有害無益な社会的大混乱が生じかねないという非常に危険な状態がなお続いている。間接侵害事件や著作権侵害幇助事件においてネット事業者がほぼ直接権利侵害者とみなされてしまうのでは、プロバイダー責任制限法によるセーフハーバーだけでは不十分である。リーチサイト規制としての著作権侵害コンテンツへのリンク行為に対するみなし侵害規定の追加及び刑事罰付加については全て白紙に戻し、間接侵害や著作権侵害幇助罪も含め、間接侵害や刑事罰・著作権侵害幇助も含め、著作権侵害とならない範囲を著作権法上きちんと確定し、著作権法へセーフハーバー規定を導入することのみを速やかに検討するべきである。

 私の意見は上記の通り、リーチサイト規制としての著作権侵害コンテンツへのリンク行為に対するみなし侵害規定の追加及び刑事罰付加にそもそも反対するというものであるが、提示されている条文案についての意見を以下の通り補足する。

 添付資料1の第3~10ページにおいてリーチサイト規制に関する条文案の解説が示され、添付資料2に条文案の新旧対照が示されている。

 この条文案の第113条第2項は、「公衆を侵害著作物等に殊更に誘導するものであると認められるウェブサイト等」又は「主として公衆による侵害著作物等の利用のために用いられるものであると認められるウェブサイト等」における、「送信元識別符号」の「提供」により「侵害著作物等の他人による利用を容易にする行為」を、「当該行為に係る著作物等が侵害著作物等であることを知つていた場合又は知ることができたと認めるに足る相当の理由がある場合」に、著作権侵害とみなすというものであって、要するに、著作権侵害のために公衆に利用されるウェブサイト等で、リンク先の著作物が侵害著作物である事を知りながら又は知る事ができたとする相当の理由がありながら、リンクを提供する事を規制し、さらに、第120条の2で、刑事罰もつけて犯罪化するというものであり、プログラム(アプリ)を用いる場合も同様とされている。また、第113条第3項では、ウェブサイト等の運営者には放置に関する責任があるとし、第4項で、ウェブサイト等の範囲は政令で定められるものとし、第119条で、ウェブサイト等の運営者をリンク提供者より厳罰に処すとしている。

 一応もっともらしく限定されている様に読めるものの、これは、著作権侵害ウェブサイト等における、侵害とされ得るあらゆる著作物への単なるリンク提供行為を規制するものである。しかも、ウェブサイト等の範囲が文化庁主導の政令で定められるので、当初の範囲がどうあれ、今後、検索やSNSなど様々なサービスにおける細かなリンクの提供あるいはサービス自体の提供まで法改正抜きで広範な規制が可能となる様に作られているのは悪質である。さらに、ダウンロード犯罪化と同様リンク提供行為については非親告罪とされる様だが、サイト運営者については非親告罪とされる様である点も問題である。

 この条文案で本当に法律ができれば、リンクの提供がインターネット上で非常にカジュアルに行われている事を考えると、まず間違いなく、国内のネットサービス提供者や利用者のリンク提供行為に対する脅しや嫌がらせが増え、インターネット利用における民事・刑事のリスクが無意味に高まる事になるであろう。

(3)その他、海賊版対策全般に関して御意見があれば、記入して下さい。

<回答欄>(自由記述)
 情報の自由や検閲の禁止、通信の秘密といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ない、サイトブロッキングやアクセス警告方式の導入ありきの海賊版対策の検討に反対する。インターネットにおける海賊版対策の検討においては、まず、アップロードによる著作権侵害に対する民事・刑事の権利行使においてどこにボトルネックがあるのかを明らかにした上で、そのボトルネックを解消するための地道な取り組みのみに注力するべきである。この点については、2019年8月の総務省のインターネット上の海賊版サイトへのアクセス抑止方策に関する検討会の報告書の整理を守るべきである。

 ネット上の違法コンテンツ対策、違法ファイル共有対策については、通信の秘密やプライバシー、情報アクセス権等の国民の基本的な権利をきちんと尊重しつつ対策を検討してもらいたい。この点においても、国民の基本的な権利を必ず侵害するものとなり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害することにつながる危険な規制強化の検討ではなく、ネットにおける各種問題は情報モラル・リテラシー教育によって解決されるべきものという基本に立ち帰り、現行のプロバイダー責任制限法と削除要請を組み合わせた対策などの、より現実的かつ地道な施策のみに注力して検討を進めるべきである。

 また、不正競争防止法と著作権法による二重保護の問題やDRM保護のそもそもの必要性について本来なされるべき検討もせずに行われようとしている、今回の意見募集の対象の著作権法改正の条文案に含まれている、DRM回避規制に関する2つの法律の条文の辻褄合わせのような法改正のための法改正にも私は反対する。

 経済産業省の産業構造審議会知的財産分科会不正競争防止小委員会において2018年1月にとりまとめられた「データ利活用促進に向けた検討中間報告」において書かれたDRM回避規制強化のための法改正を是とするに足る立法事実の変化はなく、このような法改正のための法改正はされるべきではなかったものである。

 このような無意味なDRM規制強化の検討は全て白紙に戻し、今ですら不当に強すぎるDRM規制の緩和のための検討を不正競争防止法と合わせ速やかに開始するべきである。

 特に、DRM回避規制に関しては、有害無益な規制強化の検討ではなく、まず、私的なDRM回避行為自体によって生じる被害は無く、個々の回避行為を一件ずつ捕捉して民事訴訟の対象とすることは困難だったにもかかわらず、文化庁の片寄った見方から一方的に導入されたものである、私的な領域でのコピーコントロール回避規制(著作権法第30条第1項第2号)の撤廃の検討を行うべきである。コンテンツへのアクセスあるいはコピーをコントロールしている技術を私的な領域で回避しただけでは経済的損失は発生し得ず、また、ネットにアップされることによって生じる被害は公衆送信権によって既にカバーされているものであり、その被害とDRM回避やダウンロードとを混同することは絶対に許されない。それ以前に、私法である著作権法が、私的領域に踏み込むということ自体異常なことと言わざるを得ない。また、同時に、何ら立法事実の変化がない中、ドサクサ紛れに通された、先の不正競争防止法改正で導入されたDRM回避規制の強化や、TPP関連として入れられたものも含め以前の著作権法改正で導入されたアクセスコントロール関連規制の追加についても、速やかに元に戻す検討がなされるべきである。

 さらに、著作権の保護期間の延長について元に戻す事を求めるとともに、私的録音録画補償金の対象範囲の拡大に反対し、一般フェアユース条項の導入を求める。

 2018年12月のTPP11協定の発効に合わせて著作権の保護期間の延長が施行されたが、TPP11協定では保護期間の延長は凍結されたのであって、この保護期間の延長は本来必要ではなかったものである。このように何ら国民的なコンセンサスを得ることもないまま、不合理ななし崩しの法改正により甚大な国益の喪失をもたらした事について私は日本政府を強く非難する。日EU(欧)EPA協定にも著作権の保護期間の延長は含まれているが、これもTPP協定同様の姑息かつ卑劣な秘密交渉で決められたものであって、著作権の保護期間の延長の様に国益の根幹に関わる点について易々と譲歩したなど、日本政府は完全に国民をバカにしているとしか言いようがない。この日EU(欧)EPA協定に含まれる著作権の保護期間の延長にも私は反対する。このように何ら国民的なコンセンサスを得ることもないまま、不合理ななし崩しの法改正あるいは秘密の条約交渉によってなされた著作権の保護期間の延長については必要な法改正及び条約改定によって元に戻す事を検討するべきである。

 私的録音録画補償金問題について、補償金のそもそもの意味を問い直すことなく、今の補償金の矛盾を拡大するだけの私的録音録画補償金の対象拡大を絶対にするべきではなく、私的録音録画補償金の対象範囲の拡大にも私は反対する。

 ユーザーに対する意義からも、アメリカ等と遜色ない形で一般フェアユース条項を可能な限り早期に導入するべきである。特に、インターネットのように、ほぼ全国民が利用者兼権利者となり得、考えられる利用形態が発散し、個別の規定では公正利用の類型を拾い切れなくなるところでは、フェアユースのような一般規定は保護と利用のバランスを取る上で重要な意義を持つものである。

| | コメント (3)

より以前の記事一覧