2020年1月21日 (火)

第419回:文化庁「侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会」における議論のまとめの内容

 文化庁のHPで、「侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会」における議論のまとめ(pdf)が公開ざれている。

 その内容は、前回取り上げた侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会の第2回資料とほぼ変わらず、報道されていた以上の事が含まれているわけではないが、念のため、ここでその内容を見ておく。

 この議論のまとめは、冒頭に、

 本検討会では、別紙1(20ページ)の基本方針の下、パブリックコメントや国民アンケートの結果等を十分に踏まえつつ、「深刻な海賊版被害への実効的な対策を講じること」と「国民の正当な情報収集等に萎縮を生じさせないこと」という2つの要請がバランスよく並び立つ、適切な制度設計等について検討を行ってきた。その検討結果は、下記1.~4.のとおりである。

 文化庁提案の3点の措置及び二次創作作品・パロディなどの除外等については全会一致で了承された一方で、一部の要件((ウ)(6ページ)に記載の「著作権者の利益を不当に害することとなる場合に限定すること」)については本検討会として意見を一つに集約するには至らなかったが、いずれにしても、早急に当該要件の採用の可否等を判断の上、法整備を進める必要があることについては認識が共有された。

 今後、政府においては、当該要件に関して、7~13ページに記載の様々な意見(折衷的な提案を含む。)を吟味し、当該要件が「海賊版対策の実効性等に与えるマイナスの影響」と「国民の情報収集等に与えるプラスの影響」を見極めた上で、両者のバランスの観点から国民の理解を得られる適切な制度となるよう、採用の可否等について判断を行った上で、適切な法整備を速やかに行うことを期待する。

 その際、リーチサイト対策については「前倒しで施行すべき」という意見があったことを受け、法案の施行期日についても留意すべきである。

と書いている通り、ダウンロード違法化・犯罪化の対象拡大の法改正を押し進める方向性をやはり打ち出している。

 そして、国会提出を断念した法案からの変更点について、

1.文化庁提案の3点の措置について

 昨年2月時点の当初案に、少なくとも下記の3点の措置を追加的に講ずることについて、条文イメージ(別紙2:21~24ページ)を含めて了承された。

(1)改正案の附則に、普及啓発・教育等や刑事罰に関する運用上の配慮、施行状況のフォローアップについての規定を追加すること

(2)写り込みに関する権利制限規定(第30条の2)を拡充することで、スクリーンショットを行う際に違法画像等が入り込むことを違法化しないこと

(3)数十ページで構成される漫画の1~数コマなど、「軽微なもの」のダウンロードを違法化しないこと(判断基準・具体例は、別紙3(27ページ)を参照)

2.その他の要件追加等の提案について

(ア)採用する方針が了承されたもの

 「二次創作作品・パロディなどのダウンロードを対象から除外すること(民事)」については、翻訳物が除外されないように措置(変形によって創作されたフィギュアなどの画像や、編曲された楽曲の歌詞は除外されるように措置)した上で、採用することが、条文イメージ(別紙2:25・26ページ)を含めて了承された。

(イ)採用しない方針が了承されたもの
(略)

とあるので、文化庁が今度国会提出を狙って来る条文案は、議論のまとめの第25ページ等に書かれている様に、以下のものとなると考えられる。(なお、細かな点だが、検討会の第2回資料と比べると、民事刑事(第30条第1項第4号及び第119条第3項第2号における原著作者の権利(第28条)の除外について翻訳以外とされている点、第30条の2で「当該複製伝達行為が営利を目的とするものであるか否かの別」という要素が「当該付随対象著作物の利用により利益を得る目的の有無」になっている点が異なっている。)

(私的使用のための複製)
第三十条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
一・二(略)
 著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。次号において同じ。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画(以下この条において「特定侵害録音録画」という。)を、特定侵害録音録画であることを知りながら行う場合
 著作権(第二十八条に規定する権利(翻訳以外の方法により創作された二次的著作物に係るものに限る。)を除く。)を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の複製(録音及び録画を除く。以下この号において同じ。)(当該著作権に係る著作物のうち当該複製がされる部分の占める割合、当該部分が自動公衆送信される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものを除く。以下この号及び次項において「特定侵害複製」という。)を、特定侵害複製であることを知りながら行う場合

 前項第三号及び第四号の規定は、特定侵害録音録画又は特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行う場合を含むものと解釈してはならない。

(略)

(付随対象著作物の利用)
第三十条の二 写真の撮影、録音、録画、放送その他これらと同様に事物の影像又は音を複製し、又は複製を伴うことなく伝達する行為(以下この項において「複製伝達行為」という。)を行うに当たつて、その対象とする事物又は音(以下この項において「複製伝達対象事物等」という。)に付随する事物又は音(複製伝達対象事物等の一部を構成するものとして対象となる事物又は音を含む。以下この項において「付随対象事物等」という。)に係る著作物(複製伝達行為により作成され、又は伝達されるもの(以下この条において「作成伝達物」という。)のうち当該著作物の占める割合、作成伝達物における当該著作物の再製の精度その他の要素に照らし当該作成伝達物における軽微な構成部分となるものに限る。以下この条において「付随対象著作物」という。)は、当該付随対象著作物の利用により利益を得る目的の有無、当該付随対象事物等の当該複製伝達対象事物等からの分離の困難性の程度、当該作成伝達物の性質と当該付随対象著作物との関連性の程度その他の要素に照らし正当な範囲内において、当該複製伝達行為に伴つて、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

 前項の規定により利用された付随対象著作物は、当該付随対象著作物に係る作成伝達物の利用に伴つて、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りではない。

第百十九条(略)
(略)
 次の各号のいずれかに該当する者は、二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
 第三十条第一項に定める私的使用の目的をもつて、録音録画有償著作物等(録音され、又は録画された著作物又は実演等(著作権又は著作隣接権の目的となつているものに限る。)であつて、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)をいう。)の著作権を侵害する自動公衆送信又は著作隣接権を侵害する送信可能化に係る自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきもの又は著作隣接権の侵害となるべき送信可能化に係るものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画(以下この条において「有償著作物等特定侵害録音録画」という。)を、自ら有償著作物等特定侵害録音録画であることを知りながら行つて著作権又は著作隣接権を侵害した者
 第三十条第一項に定める私的使用の目的をもつて、著作物(著作権の目的となつているものに限る。以下この号において同じ。)であつて有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権を侵害しないものに限る。)の著作権(第二十八条に規定する権利(翻訳以外の方法により創作された二次的著作物に係るものに限る。)を除く。以下この号及び第五項において同じ。)を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の複製(録音及び録画を除く。以下この号において同じ。)(当該著作権に係る著作物のうち当該複製がされる部分の占める割合、当該部分が自動公衆送信される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものを除く。以下この号及び第五項において「有償著作物等特定侵害複製」という。)を、自ら有償著作物等特定侵害複製であることを知りながら行つて著作権を侵害する行為を継続的に又は反復して行つた者

 前項第一号に規定する者には、有償著作物等特定侵害録音録画を、自ら有償著作物等特定侵害録音録画であることを重大な過失により知らないで行つて著作権又は著作隣接権を侵害した者を含むものと解釈してはならない。

 第三項第二号に規定する者には、有償著作物等特定侵害複製を、自ら有償著作物等特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行つて著作権を侵害する行為を継続的に又は反復して行つた者を含むものと解釈してはならない。

 これに加えて、冒頭にもあるが、「著作権者の利益を不当に害することとなる場合に限定すること」については、第6ページの2.(ウ)で、

(ウ)採用の可否について意見が一つに集約されなかったもの

 「著作権者の利益を不当に害することとなる場合に限定すること(民事・刑事)」については、(ⅰ)国民から示された様々な懸念・不安を払拭する等の観点から採用すべきである((イ)に記載された他の様々な提案を採用しないのであれば、この要件の採用は不可欠)という肯定的な意見と、(ⅱ)ユーザーの居直り侵害を招くなど海賊版対策の実効性低下を回避する等の観点から採用すべきでないという否定的な意見の双方がほぼ拮抗し、本検討会として意見を一つに集約するには至らなかったが、いずれにしても、早急に採用の可否等を判断の上、法整備を進める必要があることについては認識が共有された。 議論の中では、権利者側の立証負担の軽減及びユーザーの居直り防止等の観点から、「著作権者の利益を不当に害しない場合を除く」や「著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別の事情がある場合を除く」と規定してはどうかという折衷的な提案も複数構成員からあった。

として、文化庁は、法案提出ありきで検討会レベルのとりまとめすら放棄している。今後この点も含め政府与党内で何かしらの議論がされるのかも知れないが、今まで書いて来た通り、この様に著作権者の利益を不当に害することとなる場合に限定することでそれなりにましになるとも思うものの、これも問題の本質的な解消には繋がらないものである。

 また、リーチサイト規制についても、親告罪とする事が一定の歯止めにはなるとは思うが、それ以上議論が深められる事なく法改正が進められようとしている事に変わりはない。

 この様に文化庁がダウンロード違法化・犯罪化の対象拡大の法改正をごり押しして来るだろう事は予想された事とは言え、国民の声を聞いて丁寧に議論を進めるという科白は何だったのかと私は今も強い憤りを感じている。

 前回も書いた通り、このまま行くと、利用者が通常するであろうほとんどあらゆる場合のカジュアルなスクリーンショット、ダウンロード、デジタルでの保存行為が違法・犯罪となる可能性が出て来、意味不明の萎縮が発生するだろう事に変わりはなく、これは、今の録音録画に関するダウンロード違法化・犯罪化同様、海賊版対策としては何の役にも立たず混乱をもたらすだけの百害あって一利ない最低最悪の著作権法改正の一つとなると私は断言する。

(2020年1月22日夜の追記:条文案中のテクニカルな部分の転記ミスを幾つか修正した。)

(2020年2月2日夜の追記:Twitterで既に書いたが、INTERNET Watchの記事になっている通り、1月30日に与党自民党の知的財産戦略調査会が、ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大について「著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合は除外する」事とする申し入れ案を取りまとめている。そうする事でさらに緩和が図られるだろうとは言え、この問題の本質はそこではないし、私はなおダウンロード違法化・犯罪化自体に反対だが、今後は自民党のこの様な要請に合わせて著作権法改正が進められて行くのだろう。)

| | コメント (0)

2019年12月29日 (日)

第418回:2019年の終わりに(文化庁第2回検討会のダウンロード違法化・犯罪化対象範囲拡大条文案他)

 もう年末年始に入り、今年も政策に絡むイベントは一通り終わったと思うので、文化庁のダウンロード違法化・犯罪化対象範囲拡大検討会の第2回資料に加えて、あまり触れて来なかった著作権以外の知財政策動向についてまとめて書いておきたいと思う。

 今年の知財政策における最大の論点はダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大の検討だろうが、文化庁は、11月27日に第1回の侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会を開催した後、12月18日に第2回を開催し(議事次第・資料参照)、次の第3回を年明け早々1月7日に開催するとしており(開催案内参照)、異常なハイペースで検討を進めようとしている。

 第1回の資料について前回書いた通りで、追加で多く書く事もないのだが、第2回の資料1(pdf)では、以下の様な、写り込みの権利制限の拡充と合わせて対象から軽微なものを除く条文案が示されている。(以下では、資料から条文案だけを抜き出し、順序を条文順に改めた。)

(私的使用のための複製)
第三十条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
(略)
 著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。次号において同じ。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画(以下この号及び次項において「特定侵害録音録画」という。)を、特定侵害録音録画であることを知りながら行う場合
 著作権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の複製(録音及び録画を除く。以下この号において同じ。)(その著作物のうちその複製に供される部分の占める割合、その複製に供される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものを除く。以下この号及び次項において「特定侵害複製」という。)を、特定侵害複製であることを知りながら行う場合

 前項第三号及び第四号の規定は、特定侵害録音録画又は特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行う場合を含むものと解釈してはならない。

3(略)

(付随対象著作物の利用)
第三十条の二 写真の撮影、録音、録画、放送その他これらと同様に事物の影像又は音を複製し、又は複製を伴うことなく伝達する行為(以下この項において「複製伝達行為」という。)を行うに当たつて、その対象とする事物又は音(以下この項において「複製伝達対象事物等」という。)に付随する事物又は音(複製伝達対象事物等の一部を構成するものとして対象となる事物又は音を含む。以下この項において「付随対象事物等」という。)に係る著作物(複製伝達行為により作成され、又は伝達されるもの(以下この条において「作成伝達物」という。)のうち当該著作物の占める割合、作成伝達物における当該著作物の再製の精度その他の要素に照らし当該作成伝達物における軽微な構成部分となるものに限る。以下この条において「付随対象著作物」という。)は、当該複製伝達行為が営利を目的とするものであるか否かの別、当該付随対象事物等の当該複製伝達対象事物等からの分離の困難性の程度、当該作成伝達物の性質と当該付随対象著作物との関連性の程度その他の要素に照らし正当な範囲内において、当該複製伝達行為に伴つて、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

 前項の規定により利用された付随対象著作物は、当該付随対象著作物に係る作成伝達物の利用に伴つて、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りではない。

第百十九条(略)
(略)
 次の各号のいずれかに該当する者は、二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
 第三十条第一項に定める私的使用の目的をもつて、録音録画有償著作物等(録音され、又は録画された著作物又は実演等(著作権又は著作隣接権の目的となつているものに限る。)であつて、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)をいう。)の著作権を侵害する自動公衆送信又は著作隣接権を侵害する送信可能化に係る自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきもの又は著作隣接権の侵害となるべき送信可能化に係るものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画(以下この号及び次項において「有償著作物等特定侵害録音録画」という。)を、自ら有償著作物等特定侵害録音録画であることを知りながら行つて著作権又は著作隣接権を侵害した者
 第三十条第一項に定める私的使用の目的をもつて、著作物(著作権の目的となつているものに限る。以下この号において同じ。)であつて有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権を侵害しないものに限る。)の著作権(第二十八条に規定する権利を除く。以下この号及び第五項において同じ。)を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の複製(録音及び録画を除く。以下この号において同じ。)(その著作物のうちその複製に供される部分の占める割合、その複製に供される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものを除く。以下この号及び第五項において「有償著作物等特定侵害複製」という。)を、自ら有償著作物等特定侵害複製であることを知りながら行つて著作権を侵害する行為を継続的に又は反復して行つた者

 前項第一号に規定する者には、有償著作物等特定侵害録音録画を、自ら有償著作物等特定侵害録音録画であることを重大な過失により知らないで行つて著作権又は著作隣接権を侵害した者を含むものと解釈してはならない。

 第三項第二号に規定する者には、有償著作物等特定侵害複製を、自ら有償著作物等特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行つて著作権を侵害する行為を継続的に又は反復して行つた者を含むものと解釈してはならない。

 この様な条文案に加えて、資料2(pdf)で、除外される軽微なものの基準は、その著作物全体の分量から見てダウンロードされる分量がごく小部分である場合や、それ自体では鑑賞に堪えないような粗い画像をダウンロードした場合などであるとしている。

 この様な条文案と基準によれば、文化庁が資料3(pdf)で示している通り、スクリーンショットで違法画像が付随的に入り込む場合や、ストーリー漫画の数コマ、論文の数行、粗いサムネイル画像のダウンロードの場合といった僅かな場合は除かれるだろうが、利用者が通常するであろうほとんどあらゆる場合のカジュアルなスクリーンショット、ダウンロード、デジタルでの保存行為が違法・犯罪となる可能性が出て来、意味不明の萎縮が発生するだろう事に変わりはないのであって、文化庁は国民の声・懸念に対し何ら聞く耳を持っていないとしか私には思えない。(ここで常々書いている通り、同じく問題のある現行の映像音楽に関するダウンロード違法化・犯罪化も本来なされるべきでなかったものであると私は考えている。)

 この資料では、さらに「二次創作作品・パロディなどのダウンロードを対象から除外」する場合として、国会提出を断念した条分案の刑事の第119条からだけでなく、民事の第30条についても「第二十八条に規定する権利を除く」という文言を追加する案も出されているが、これも同断であって、第28条に規定される2次著作物の利用に関する原著作者の権利が除外されるに過ぎず、2次創作・パロディのダウンロードが全て対象外となるものではない事は、文化庁が同じく資料3(pdf)で書いている通りである。

 第2回検討会での議論についての弁護士ドットコムの記事などを見ても、文化庁は、この案をほぼ既定路線として、著作権者の利益を不当に害することとなる場合をさらに除くかどうかという枝葉末節に議論を押し込め(追加すればそれなりにましにはなるだろうが、これも問題の本質的な解消には繋がらないものである)、雪辱とばかりに来年の通常国会に向けてダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大をごり押しするつもりであると知れるが、前回も書いた通り、本当に国民の声を丁寧に聞くというなら、この様な非常に危険かつ拙速な検討を中止して条文案から対応部分を削除するのみならず、録音録画についての現在のダウンロード違法化・犯罪化そのものの効果を検証し、その廃止・撤廃を速やかに検討するべきと私は思っているが、文化庁にそうする気が全く見られないのは日本の国益と文化にとって極めて不幸な事である。

 また、リーチサイト規制についても、運営行為に対する刑事罰を非親告罪から親告罪に変更すること以外は国会提出断念版の条文案のままにするとしている。これについても、親告罪とする事が一定の歯止めにはなるとは思うが、文化庁が、「公衆を侵害著作物等に殊更に誘導するものであると認められるウェブサイト等」、「主として公衆による侵害著作物等の利用のために用いられるものであると認められるウェブサイト等」といった条文案の定義から、海賊版対策とは無関係のものとして、パブコメで懸念するものの例としてあげられた、引用要件違反のまとめサイト、剽窃論文、ライセンス違反のスライド、GPL違反のソフトウェア、ツイッターの違法アイコン等へのリンク集及びこのリンク集におけるリンクは規制の対象外となるとしているが、これも文化庁の現時点での希望的観測という他なく、これらの例だけを取っても、通常リンク先が剽窃やライセンス違反である事を指摘するためにそう明記して作られるものが多いだろうし、定義から除外されると完全に言えるかどうか疑問である。第414回に載せた提出パブコメの通り、今後の定義の拡大の恐れもあり、脅しや嫌がらせが増え、インターネット利用のリスクが無意味に高まるのではないかと私はやはり懸念している。

 以下、その他の知財法を巡る動きについて書いて行く。

 特許法については、今年の特許法等の改正の後、特許庁で、産業構造審議会・知的財産分科会特許小委員会が開催され、二段階訴訟の話などが検討されているが、次の法改正がどうなるかという意味では特に方針が出ている訳ではない。また、法改正とは関係ないが、審査基準専門委員会ワーキンググループで、進歩性の審査の進め方に関する参考資料の作成の話がされている。

 商標法については、商標制度小委員会で、店舗の外観・内装の商標制度による保護の話が検討され、商標審査基準ワーキンググループでそのための商標審査基準の改訂が検討され、対応する商標法施行規則改正案と商標審査基準の改訂案について1月20日〆切でそれぞれパブリックコメントにかかっている(特許庁HPの意見募集1意見募集2参照)

 意匠法については、意匠審査基準ワーキンググループで、法改正を受けた意匠審査基準の改訂が検討され、その改訂案が1月9日〆切でパブリックコメントにかかっている(特許庁HPの意見募集3参照)。

 農水省では、種苗法について、優良品種の持続的な利用を可能とする植物新品種の保護に関する検討会が開催され、海外流出防止のため、登録品種の販売における国内利用限定や栽培地域限定の条件に反する行為への育成者権の行使を可能とする、自家増殖を含め登録品種の増殖は育成者権者の許諾を必要とするといった内容のとりまとめ(pdf)が出され、農業資材審議会・種苗分科会で報告がされている。また、来年はこの様な種苗法の改正案とともに、家畜遺伝資源保護法案も国会に提出される事になるのだろう、和牛遺伝資源の流通管理に関する検討会で、家畜遺伝資源の保護も検討されている。

 知財本部では、また名前を変えたくなったのか、今年は構想委員会なるものが2回開かれている。今の所およそ内容のない話しかしていないが、じきに募集されるだろう次の知財計画パブコメにもまた意見を出すつもりである。

 最後に少しだけ書いておくと、この12月19日に、ウェブサイトを通じた電子書籍の中古販売は著作権者の許諾を必要とする公衆送信であるとする、欧州司法裁判所の判決が出されている(欧州司法裁のリリース(pdf)も参照)。これは、第332回で取り上げたオランダの控訴審判決の続きの話で、欧州で電子書籍中古販売が合法(電子データに対するデジタル消尽あり)とされるのは難しいのではないかと思っていた通りなのだが、こうした国際動向についても時間がある時にまたまとめて書きたいと思っている。

 今年もこれで最後になるが、政官業に巣食う全ての利権屋に悪い年を、このブログを読んで下さっている方々に心からの感謝を。

| | コメント (0)

2019年12月15日 (日)

第417回:文化庁検討会のダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大に関するパブリックコメント・アンケート調査結果概要

 11月27日に侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会の第1回が開催されたばかりだが、12月18日に第2回が開催される予定であり(開催案内参照)、去年国会提出を断念させられた遺恨からか、文化庁はかなり速いペースでダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大の検討を進めようとしている。この第2回の前に、今回は、文化庁のHPで公開されている第1回の資料の内容を見ておきたい。

 その資料2-1の出版広報センター説明資料(pdf)と資料2-2の関係団体調査結果整理資料(pdf)は、相変わらず、

  • 被害額の算定根拠が不明
  • 市場調査の数字から見ると、市場はより長期間で順当に伸びている中、電子コミックとその他電子書籍ともにその伸び率にはかなりの変動があり、他にも影響を与えた要素はあるだろうに、整合性やより深い分析の事をまるで考えずに別のコミック電子書店調査を使って一部の対前年月比のみのグラフを作って海賊版サイトの影響を煽る
  • 漫画村の様な本当に悪質な海賊版サイトに対して権利者側が現行法で本当にどの様に対処して来たのか、どうして現行著作権法の規制では不十分とするのかの根拠が不明
  • あらゆる著作物の種類について発生している事象をきちんと分析した上でそれぞれの特性も考慮して著作権法として横断的に必要とされる事は何かという検討が必要であるにも関わらず、各団体のいい加減な被害の主張のつまみ食いに終始
  • ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大がこの様なインターネットにおける著作権侵害への有効な対策になる根拠がまるで不明

と、突っ込みどころ満載である。

 これらはいつもの著作権団体ロビー資料に過ぎず、これで法改正をと言われても鼻白むだけのものだが、資料3-1として「侵害コンテンツのダウンロード違法化等に関するパブリックコメント」の結果について(全体像)(pdf)、資料3-2として「侵害コンテンツのダウンロード違法化等に関するパブリックコメント」の結果概要(個人:「(別紙)質問事項及び回答様式」)(pdf)、資料3-3として「侵害コンテンツのダウンロード違法化等に関するパブリックコメント」の結果概要(個人:「意見提出フォーム」)(pdf)、資料3-4として「侵害コンテンツのダウンロード違法化等に関するパブリックコメント」の結果概要(団体等)(pdf)も公開されている。

 団体の意見はそれぞれの立ち位置から予想通り賛否両論に分かれているが、個人の意見が4386件と2007年のダウンロード違法化パブコメ(文化庁の過去のパブコメ結果参照)以来の数字となっているのは、この問題に対する関心の高さを示すものだろう。

 個人の意見について概要だけではなく全体の詳細データを出してもらいたいと思うが、文化庁としてはダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲拡大の結論ありきで何が何でも細かな追加要件の議論に持ち込みたいのだろう、個人のパブコメ結果概要において最も基本的な質問回答の部分について件数のみをあげてグラフを作らないところに作為が見え隠れしているので、ここでそれを作っておくと以下のようになる。(なお、今回のパブコメでは別紙による入力を求めていたはずだが、意見提出フォームも公開してしまっていたのは文化庁の単なるミスだろう。)

Pub2019_result_graph
Pub2019_result_graph2

 この様に「どちらかといえば反対」も含め反対意見が圧倒的であり、最も主要な意見が要件によらずダウンロード違法化を行うべきではないというものである事を考えれば、本当に国民の声を丁寧に聞くというなら、ダウンロード違法化・犯罪化の対象拡大の検討の完全な中止のみならず、録音録画についての現在のダウンロード違法化・犯罪化そのものの廃止・撤廃の提案も視野に入って来なければならない筈だが、資料5の侵害コンテンツのダウンロード違法化に係る制度設計等の検討に当たっての基本方針(案)(pdf)、資料6の侵害コンテンツのダウンロード違法化等に係る制度設計・論点(案)(pdf)や資料7の侵害コンテンツのダウンロード違法化に関する主な事例の取扱い(案)(pdf)を見ると、文化庁は、姑息にも国民の声を捻じ曲げ、現行の著作権法におけるダウンロード違法化・犯罪化を一方的に是認して、今の写り込みの権利制限の拡充による違法な部分を含むスクリーンショットの適法化とその延長線上にある一部分の軽微な利用の除外という弥縫策でダウンロード違法化・犯罪化の対象拡大を押し通そうとしていると分かる。

 この弥縫策によって確かに問題の軽減を多少図れるかも知れないが、前回載せたもう一つの写り込みに関する権利制限拡充についてのパブコメで書いた通り、その様な僅かな軽減すら要件次第であって(スクリーンショットに問題を矮小化する事は厳に慎むべき事だが、さらに念のため言っておくと、今の文化庁案では通常考えられるスクリーンショットが全て適法化される訳でもない)、これらはダウンロード違法化・犯罪化の本質的な問題の解消には到底繋がらないものである。これらが回答を恣意的に誘導しながら列挙した懸念の一部にしか対応していない事は文化庁自身認めている上、他の懸念や指摘に対する回答をきちんと示していないあたり、そのやり口はいつも通り不誠実極まるものと言わざるを得ない。文化庁の案には他の要件の検討についても書かれているが、パブコメ等で何度も書いている通り、それぞれ多少の問題の緩和になるかも知れないが、他のものも含めて追加の要件をどうしようがダウンロード違法化・犯罪化の本質的な問題が解消する事はないと私は確信している。

 他にも資料5として侵害コンテンツのダウンロード違法化に関するアンケート調査の結果(pdf)という資料も出されている。これもいつものためにする文化庁調査で有意な情報が取れるものではほぼないが、

  • 「違法にアップロードされた漫画・書籍・雑誌・論文・プログラム・イラスト・画像等を,それが違法にアップロードされたことが確実だと知りながら,個人が楽しむ目的でダウンロードすることは現行の著作権法に違反する行為でしょうか(※)現行の著作権法上は,『2.違反しない』が正しい回答」という質問に対して「1.違反する」という回答が79.7%となっていて、
  • 侵害コンテンツのダウンロード経験の有無についてありと答えた場合その多くは漫画の二次創作かスクリーンショットであり、
  • 最初の違法性の認識の回答との関係がどうなっているのか不明だがダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲が拡大されたら違法行為を止めると答えた者が7割程度

と、文化庁と権利者団体が法改正についてどう考えてどう周知しようが、一般の人々は自分なりに著作権法を理解してそれに沿って意味不明の萎縮が発生するだろうという事だけは言える。わざとだろうが、ここで現行の録音録画に関するダウンロード違法化・犯罪化に関する調査・評価を省いているのもタチが悪い。

 今まで他でも使われていた参考資料1の文化庁当初案の概要・条文等について(pdf)と参考資料3のインターネット上の海賊版に対する総合的な対策メニュー及び工程表について(pdf)の他に参考資料2として侵害コンテンツのダウンロードに関する主要国の著作権法制について(pdf)というものもある。ここで「外務省を通じて各国大使館等に調査訓令を発して得られた回答に,事務局で一部必要な情報を追記して作成したもの」という注で外務省に責任転嫁するのもどうかと思うが、ドイツとフランスについて民事・刑事両方の適用事例ありとし、アメリカ、韓国、台湾について侵害コンテンツのダウンロードについてフェアユース該当性が否定された事例が存在するとしているのはかなり悪質な印象操作を含んでいる。ドイツにおいてもアップロードとダウンロードを同時に行うファイル共有におけるダウンロード行為以外の単なるダウンロードに適用した事例はなく、フランスにおいてもファイル共有に対する3ストライクポリシーの適用事例であって、米韓台でも同様にファイル共有に対する適用事例であるからである。明確にダウンロード違法化・犯罪化をしたとする国自体決して多くないと思うが、何度も書いてきている通り、私の知る限り単なるダウンロードに対する適用事例は世界中見渡しても皆無であって、フランスやドイツでもダウンロード違法化・犯罪化や3ストライクポリシーの法改正によって混乱こそすれ海賊版対策として有益な効果は何一つもたらされていないのである。

 資料1の開催要綱(pdf)の別紙構成員名簿を見ても、一応そこまで偏ったメンバーにはなっていない様に見えるが、文化庁の資料と同じHPに載っている第1回の議事録を見ても追加の要件に関する細かな議論にほぼ終始しており、ダウンロード違法化・犯罪化とリーチサイトの問題について拙速な検討がされないかと非常に心配である。

(2019年12月16日夜の追記:文章は変えていないが、アンケート調査に関する記載を箇条書きにした。)

| | コメント (0)

2019年11月24日 (日)

第416回:文化庁・法制・基本問題小委員会「写り込みに係る権利制限規定の拡充に関する中間まとめ」に関する意見募集(11月30日〆切)への提出パブコメ

 今最も気になっているのは11月27日から始まる文化庁の侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会だが(開催案内参照)、その間に、11月30日〆切で掛かっている、前回取り上げた文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会「写り込みに係る権利制限規定の拡充に関する中間まとめ」に関する意見募集(文化庁のHP、電子政府のHP参照)に意見を出したので、ここに載せておく。私は念のため最後に範囲外のダウンロード違法化・犯罪化などについても意見を書いているが、この中間まとめ自体は写り込みに関する権利制限の拡充のみを示しているので、細かな問題はあるものの、大きな問題がある訳ではない。

(以下、提出パブコメ)

現行の写真等における写り込みに関する権利制限規定である著作権法第30条の2について、その趣旨から、その対象を生放送・生配信、スクリーンショット、模写等に拡大し、不要と考えられる分離困難性及び著作物創作要件の要件を削除する事に賛同する。

ここで、分離困難性及び著作物創作要件の要件の削除についてはその削除のみに留めるべきであって、追加の要件による不必要な限定を加えてはならない。これらの要件を削除するのみであっても、他に、付随性及び軽微性の要件もあれば、スリーステップテストをそのまま記載したただし書きもあり、必要十分なだけ限定されているのであって、本中間まとめの第5ページに記載されている様に、「映画の盗撮等の違法行為に伴う写り込みについても適法となり得ることには留意が必要」という事はなく、第6~7ページに記載されている様に、「その著作物の利用が主目的であるにもかかわらず、それを覆い隠すために本規定を利用するといった濫用的な行為まで可能となってしまうおそれ」もないからである。

本中間まとめの第5ページに、「主たる行為が著作権法上許容されないものであるにもかかわらず、それに伴う写り込みを適法とする必要はない(写り込んだ著作物の著作権者による権利行使が出来なくなるのは不合理である)という考え方」「を採用する場合には、例えば、端的に、著作権を侵害する行為に伴う写り込みは本規定の対象外とする旨の要件を設定することが考えられる」と記載されているが、この様な追加の要件を設定すると、外形的に違法とされ得る軽微な構成部分を含む場合の写り込み・スクリーンショット等が全て違法となる解釈が生じ得るため、かえって適切ではない。

この点については、追加の不要な要件を設定する事なく、本中間まとめの第4ページにおいて、「『自らが著作権を有する著作物が掲載された雑誌の記事を複製する際に、同一ページに掲載された他人の著作物が入り込んでしまう場合』などについても、日常生活等における一般な行為に伴い付随的に他人の著作物が利用される場面であり、写真の撮影等の場合と比較して権利者に与える不利益の程度に特段の差異がないと考えられることから、対象に含めることが適当」とされている通り、外形的に違法とされ得る軽微な構成部分を含む場合も含めて写り込みとして明確に適法化し、現行の著作権法の問題の軽減化を図るべきである。

また、本中間まとめの第7ページにおいて、「メインの被写体と付随して取り込まれる著作物が別個のものである場合(事例1)」と「街の雑踏を撮影する場合のように被写体(雑踏の光景)の中に当該著作物が含まれる場合(事例2)」の両方の場合が含まれる事を明確化するため、「現行規定のように『写真の撮影等の対象とするAに付随して対象となるB』といった規定ぶりを維持し」つつ、「事例1と事例2を併記することにより、事例2についても対象に含まれることを明確化することが適当」としている。しかし、ここで、現行の規定の「対象とするA」という部分まで維持する必要はなく、単に「写真の撮影等に付随して対象となる他の著作物」とすれば足りる。この様にしても、付随性の要件は維持され、他に軽微性の要件もあれば、スリーステップテストをそのまま記載したただし書きもあるのであって、想定外の事例が対象に含まれる事はない。

第7~8ページにおいて、「軽微な構成部分といえるか否かが上記のような総合的な考慮によるものであることを明確化し、利用者の判断に資するようにするため、法第47条の5第1項の規定(『・・その利用に供される部分の占める割合、その利用に供される部分の量、その利用に供される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものに限る』)も参考にしつつ、考慮要素を複数明記することが適当」としている。考慮要素の明記自体に反対はしないが、必ず「その他の要素」も含め、考慮要素が限定列挙と解釈されない様にするべきである。

最後に、本パブコメの範囲外となるが、他のパブコメで書いて来た通り、今後著作権法改正案を提出するのであれば、前回国会提出を断念した条文案からのダウンロード違法化・犯罪化の対象拡大に関する全ての条項の削除のみならず、著作権法第30条第1項第3号及び第119条第3項を削除し、ダウンロード違法化・犯罪化を完全に撤廃することを速やかに行うべきである。また、現行現行の著作権法における民事の間接侵害(カラオケ法理)あるいは刑事の著作権侵害幇助との関係整理をおざなりにした、著作権侵害コンテンツへのリンク行為に対するみなし侵害規定の追加及び刑事罰付加にも反対する。そして、研究のための権利制限の導入検討も今年度に速やかに行うべきであり、合わせアメリカ等と遜色ない形で一般フェアユース条項を可能な限り早期に導入するべきである。

| | コメント (0)

2019年11月17日 (日)

第415回:ダウンロード違法化・犯罪化を含まないスイスの著作権法改正、写り込み等に関する文化庁の権利制限拡充検討、ブロッキング訴訟東京高裁判決

 文化庁でさらに検討が進められるのだろう、前回パブコメを載せたダウンロード違法化・犯罪化の対象拡大の検討には引き続き最大限の注意が必要だと思っているが、この様なインターネット海賊版対策の動きにも関連する幾つかの重要な国内外の動きについてまとめて書いておきたい。

(1)ダウンロード違法化・犯罪化を含まないスイスの著作権法改正
 既にGIGAZINEで記事になっている通り、スイスでもこの9月に最近著作権法改正がその国会を通っている。

 この著作権法改正は、スイス国会の法案審議に関するHPに掲載されている、政府の法案説明資料(ドイツ語)(pdf)フランス語版(pdf))の最初の概要に、

Der Bundesrat will das Urheberrecht modernisieren. Im Zentrum der Gesetzesrevision stehen Massnahmen, mit denen die Internetpiraterie besser bekampft werden kann, ohne dabei die Konsumentinnen und Konsumenten solcher Angebote zu kriminalisieren. Zudem sollen verschiedene gesetzliche Bestimmungen an neuere technologische und rechtliche Entwicklungen angepasst werden, um die Chancen und Herausforderungen der Digitalisierung im Urheberrecht nutzen bzw. meistern zu konnen. Profitieren soll insbesondere die Forschung. Gleichzeitig enthalt die Vorlage eine Reihe weiterer Massnahmen, mit denen zentrale Anliegen der Kulturschaffenden, der Nutzerinnen und Nutzer sowie der Konsumentinnen und Konsumenten erfullt werden. Schliesslich sollen zwei Abkommen der Weltorganisation fur geistiges Eigentum ratifiziert werden.

スイス政府は著作権を現代化したいと考えている。法改正の中心は、消費者がその提供により犯罪者とされる事がないようにしつつ、インターネット海賊行為とより良く戦う手段にある。そこで様々な法規制は著作権においてデジタル化の機会と挑戦を利用若しくは向上できるよう新しい技術的、法的発展に適合されるべきである。特に研究の利便が図られるべきである。同時に法案は文化創造者、利用者並びに消費者の主要な要求を満たす一連の様々な手段を含んでいる。最後に2つの世界知的所有権機関の条約が批准されるべきである。

とある通り、消費者を犯罪者にしないという事を明確にしており、そのためダウンロード違法化・犯罪化は最初から含まれていない。

 この点については、2018年12月13日の法案の最初の国会審議でも、以下の通り、多くの党の議員が賛同している。

Bauer Philippe (RL, NE), pour la commission:
...
Le but de la modification de la loi sur le droit d'auteur est de moderniser notre droit, de l'adapter aux evolutions technologiques, de permettre de lutter contre le piratage sur Internet, tout en essayant de ne pas criminaliser les consommateurs.
...

Merlini Giovanni (RL, TI):
...
Revisionsbedarf ist insoweit gegeben, als es notig ist, die Rechte der Kulturschaffenden und der Kulturwirtschaft zu starken und sie insbesondere vor den illegalen Piraterieangeboten im Internet zu schutzen. Unsere Fraktion teilt zudem das Anliegen des Bundesrates, die Konsumenten rechtswidriger Angebote nicht zu kriminalisieren.
...

Marti Min Li (S, ZH):
...
Umso erstaunlicher und umso bemerkenswerter ist es, dass in einem langjahrigen Prozess an einem runden Tisch mit allen Akteuren ein Kompromiss gefunden werden konnte. Dieser Kompromiss liegt Ihnen hier vor. Dass bei einem Kompromiss nicht alle glucklich sind und dass nicht alle Punkte in allen Fallen fur alle Seiten befriedigend gelost werden konnten, liegt in der Natur der Sache. Dennoch sind wir uberzeugt, dass dieser Kompromiss im Grossen und Ganzen diese sehr schwierige Balance gefunden hat. Fur uns war immer zentral, dass die Kulturschaffenden und Kulturproduzentinnen und -produzenten zu ihren verdienten Einnahmen gelangen konnen, dass aber auch die Konsumentinnen und Konsumenten nicht kriminalisiert werden durfen. Das ist hier gelungen.
...

Gmur-Schonenberger Andrea (C, LU): Es ist an der Zeit, dass das Urheberrechtsgesetz modernisiert und den Herausforderungen der Gegenwart angepasst wird. Die CVP-Fraktion unterstutzt dieses Ziel. Dabei geht es darum, einerseits die Internetpiraterie zu bekampfen, andererseits die Chancen der Digitalisierung besser zu nutzen. Wichtig ist uns, dass die Konsumentinnen und Konsumenten nicht kriminalisiert werden. Auch Netzsperren sind keine vorgesehen, was wir begrussen.
...

Schwander Pirmin (V, SZ):
...
Der rasche Zugang zu Buchern, Filmen und Musik hat dazu gefuhrt, dass auch Internetpiraterie entsteht und dadurch den Urheberinnen und Urhebern Einnahmen entgehen. Deshalb ist es sehr wichtig, dass wir hier Remedur schaffen und die Rechte der Urheberinnen und Urheber starken. Das ist ein Ziel, das hier erreicht werden soll und unseres Erachtens auch erreicht wird. Die Konsumentinnen und Konsumenten ihrerseits wollen attraktive Angebote zu fairen Preisen. Deshalb ist es wichtig, dass wir keine Netzsperren einfuhren und dass wir die Konsumentinnen und Konsumenten auch nicht kriminalisieren. Wir mussen aber darauf schauen, dass die Konsumentinnen und Konsumenten durch diese neue Gesetzgebung nicht doppelt oder mehrfach belastet werden. Das zu diesem Spannungsfeld. Ich glaube, der vorliegende Kompromiss sollte eine Mehrheit finden.
...

Sommaruga Simonetta, Bundesratin: Das Internet hat auch im Bereich Kultur viele Vorteile. Es ermoglicht einen sofortigen, einfachen Zugang zu Kultur. Es reichen oft ein paar Klicks, und schon erhalten wir Zugang zu Buchern, zu Fotografien, Filmen, Musikstucken und naturlich auch zu Buchern, die langst vergriffen sind, oder zu historischen Fotografien. Das alles ist die schone, die positive Seite des Internets.
Die Kehrseite ist, dass viele Angebote illegal sind. Fur die Buchverlage, fur die Filmindustrie, die Plattenfirmen und naturlich auch fur die Kulturschaffenden stellen illegale Angebote ein ernsthaftes Problem dar; erstens naturlich, weil ihnen Einnahmen entgehen, und zweitens, weil ihre Urheberrechte - das sind ja Eigentumsrechte, Rechte am geistigen Eigentum - verletzt werden. Sie sind auch insofern problematisch, als sie die Entstehung von legalen Angeboten erschweren oder sogar verhindern. Der Bundesrat mochte darum effizienter gegen die Internetpiraterie vorgehen, ohne aber dass die Konsumenten kriminalisiert werden.
...

バウアー・フィリップ(自由民主党、ノイエンブルク)、委員会に:
(略)
法改正の目的は私たちの法を現代化し、技術的発展にそれを適応させ、インターネット上の海賊行為と戦う事を可能にする事にありますが、消費者を犯罪者にするつもりは全くありません。
(略)

メルリーニ・ジョヴァンニ(自由民主党、ティチーノ):
(略)
法改正の必要性は、文化創造者と文化経済を強化し、特にインターネットにおける違法な海賊版の提供からそれを守るのに必要な限りにおいて存在しています。私たちの党は、違法な提供について消費者を犯罪者にしないという事において政府の要請と同じ立場に立っています。
(略)

マルティ・ミンリ(社会民主党、チューリッヒ):
(略)
全ての関係者によるラウンドテーブルでの長年に渡る検討において一つの妥協が見つかり得たという事は非常に驚くべき、瞠目すべき事です。この妥協は今皆さんの前にあります。妥協においては皆に都合が良いという事はなく、あらゆる場合におけるあらゆる点について全員が満足する様に解決されている訳でもないという事は当然の事です。ですが、この妥協が全体において多くそのとてもむずかしい均衡を見つけたと私たちは確信しています。文化創造者及び文化製作者が収入を得る事ができる事もそうですが、消費者が犯罪者にされない事も私たちにとっては常に中心的な関心事項でした。ここでそれは上手く行っています。
(略)

グミュール-シェーネンベルガー・アンドレア(キリスト教民主党、ルツェルン):著作権法が現代化され、現在の要請に応える時が来ています。キリスト教民主党はこの目的を支持します。そのため、一方でインターネット海賊行為と戦い、他方でデジタル化の機会をより良く使える様にするべきでしょう。私たちにとって重要な事は消費者が犯罪者とされない事です。インターネットブロッキングが考えられていない事も私たちは喜ばしく思っています。
(略)

シュワンダー・ピルミン(国民党、シュヴィーツ):
(略)
本、映画及び音楽への急激なアクセスによってインタネット海賊行為が生じ、それにより著作権者が収入を逃す事になっていました。したがって、ここで私たちが対策を講じ、著作権者の権利を強化する事はとても重要です。それはここで私たちが達成するべき目的の1つであり、私たちの考えは達成されるでしょう。消費者は、彼らも公正な価格での魅力的な提供を求めています。したがって、私たちがインターネットブロッキングを導入せず、消費者を犯罪者にもしない事が重要です。この新たな法改正によって消費者に2重、多重に負担がかからない様にしなければなりません。それはこの議論の場の仕事です。今のこの妥協は多数の賛同を得ると私は信じています。

ソンマルーガ・シモネッタ、政府連邦参事会:インターネットは文化領域においても多くの利点を有しています。これは文化への即時の簡単なアクセスを可能にしています。数クリックで十分な事も多く、それで私たちはすぐに本、写真、映画、楽曲へのアクセスが手に入ります、もちろん長く絶版になっていた本や歴史的写真にもです。これら全てはインターネットの素晴らしい、肯定的な面です。
反対の面は、多くの提供が違法な事です。出版社にとって、映画産業、レコード会社にとって、もちろん文化創造者にとっても違法提供は深刻な問題です。もちろんまず収入を逃すからですが、第2に、その著作権-財産権、知的財産権です-が侵害されるからです。これはまた適法な提供の発生を困難にする又は抑止してしまうだけ問題です。そのため政府は、消費者が犯罪者にされる事がないようにしつつ、より効果的にインターネット海賊行為に対抗したいと考えました。
(略)

 ドイツなど近くの国でダウンロード違法化・犯罪化が全く上手く行っていない事を見ている所為だろうか、上でリンクを張った政府による法案説明資料にも書かれている通り、2012年から消費者・利用者も入った検討会で著作権法改正についてきちんと議論を積み重ねて来た結果だろうか、現時点でスイスでは政府・国会によってダウンロード違法化・犯罪化は否定されているのである。インターネットブロッキングについての言及もあるが、やはりその導入に否定的である事は注目されていいだろう。

 今まで散々書いてきた事だが、この様なスイスの著作権法改正の例を持ち出すまでもなく、広くダウンロードを違法・犯罪にして消費者・利用者・ユーザーをことごとく侵害者・犯罪者にしたところで良い事が何もないのは日の目を見るより明らかな事である。このごく当たり前の事が日本の政府与党・国会での検討でなかなか通じないのは極めて残念な事と私は常々思っている。

 なお、詳細は省くが、スイス国会における著作権法改正として、最終的に原案通り法改正(pdf)フランス語版(pdf))、北京条約批准(pdf)フランス語版(pdf))、マラケシュ条約批准(pdf)フランス語版(pdf))が通っており、全体として、

  • 写真の著作物の定義の拡充・明確化
  • 視聴覚著作物の送信可能化における著作権管理団体を通じた補償金請求権の法定
  • 孤児著作物規定の全ての著作物への適用拡大とその利用条件の明確化
  • 研究のための例外の創設
  • 図書館等における目録作成のための例外の創設
  • インターネットホスティングサービス提供者のテイクダウン・ステイダウン義務の法定
  • 代表著作権管理団体による拡大集合ライセンス規定の創設
  • 視聴覚的実演に関する北京条約批准
  • 視聴覚障害者等の著作物利用促進のためのマラケシュ条約批准

などの事項が含まれている。

 確かに著作権保護強化の方向である事には違いないので、海賊党がこの法改正に対して国民投票を目指し署名を集めようとしているという報道もあるが(nzz.chの記事(ドイツ語)、rts.chの記事(フランス語))、このスイスの著作権法改正はそこまで一般国民に影響の出るものではなく、反対の国民投票が成功する事はないのではないかと私は見ている。

(2)写り込み等に関する文化庁の権利制限拡充検討
 これもtwitterで少し触れていた点になるが、文化庁の法制・基本問題小委員会で写り込み等に関する権利制限の拡充について検討が進められている。

 一番最近の10月30日の第3回委員会の資料として、写り込みに係る権利制限規定の拡充に関する中間まとめ(案)が出されている。その「3.論点整理」から、現行の著作権法第30条の2に関する主な改正の方向性の部分を以下に抜き出す。

(1)対象行為
(略)
①生放送・生配信の取扱い
 生放送・生配信については、写り込みが生じる場合が多く想定される一方で、録音・録画の方法による場合と比較して権利者に与える不利益が大きいわけではないと考えられることから、対象に含めることが適当である。

②固定方法の拡大(スクリーンショット、模写等)
 写真の撮影・録音・録画以外の固定方法については、①スクリーンショットやプリントスクリーンのように、単に固定技術が相違するに過ぎないものと、②模写やCG化のように、不可避的な写り込みが生じない(著作物を除いて創作することが比較的容易である)という点で性質が異なるものが存在する。
 ①については、スマートフォンやタブレット端末等の急速な普及・発展により、日常生活においてごく一般的に行われるようになっているところ、著作物性のない文章や自らの著作物を保存する際に他人が著作権を有する画像が入り込む場合など、不可避的な写り込みが生じることが想定される一方で、技術の相違によって権利者に与える不利益に特段の差異はないと考えられることから、対象に含めることが適当である。②については、不可避的な写り込みが生じないとしても、被写体を忠実に再現するために著作物の複製等を行う必要がある場合も想定されるところ、写真の撮影等による場合と比較して権利者に与える不利益に特段の差異がない以上、そのような模写等の行為を行う自由を確保することが創作活動の促進・文化の発展等の観点からも望ましいと考えられることから、対象に含めることが適当である。
 なお、写り込みとは若干場面が異なるが、例えば、「自らが著作権を有する著作物が掲載された雑誌の記事を複製する際に、同一ページに掲載された他人の著作物が入り込んでしまう場合」などについても、日常生活等における一般な行為に伴い付随的に他人の著作物が利用される場面であり、写真の撮影等の場合と比較して権利者に与える不利益の程度に特段の差異がないと考えられることから、対象に含めることが適当である。

③条文化に当たっての留意事項
 上記を踏まえ、条文化に当たっては、技術・手法等にかかわらず幅広い行為が対象に含まれるよう、包括的な規定とすることが適当である。ただし、それによって、写り込みが生じ得るものとして想定している場合(様々な事物等をそのまま・忠実に固定・再現したり、伝達する場合)以外が広く対象に含まれてしまうことは適切でないため、適用範囲が過度に絞り込まれることのないよう注意しつつも、適切な表現で対象行為を特定する必要がある。

(2)著作物創作要件
(略)
イ.見直しの方向性
 現行規定の要件は、盗撮行為等に伴う写り込みを権利制限規定の対象から除外するとともに著作物の創作行為を促進する観点からは一定の合理性を有するとも考えられるが、固定カメラでの撮影等の場合にも、不可避的に写り込みが生じる場合が多く想定されるところ、本規定の主たる正当化根拠は、権利者に与える不利益が特段ない又は軽微であるという点にあるため、著作物を創作する場合か否かは必ずしも本質的な要素ではないと考えられる。このため、著作物を創作する場合以外も広く対象に含めることが適当である。
 ただし、単純に「著作物を創作するに当たつて」という要件を削除した場合には、映画の盗撮等の違法行為に伴う写り込みについても適法となり得ることには留意が必要である。この点については、①映画の盗撮等の行為自体が違法とされることをもって足りる(当該行為自体が違法となることで、そのような行為は十分に抑止されており、写り込み部分についてあえて違法とする必要はない)という考え方と、②主たる行為が著作権法上許容されないものであるにもかかわらず、それに伴う写り込みを適法とする必要はない(写り込んだ著作物の著作権者による権利行使が出来なくなるのは不合理である)という考え方の両方があり得る。
 仮に②の考え方を採用する場合には、例えば、端的に、著作権を侵害する行為に伴う写り込みは本規定の対象外とする旨の要件を設定することが考えられるが、本規定の主たる正当化根拠は権利者に与える不利益が特段ない又は軽微であるという点にあるところ、主たる行為が違法であることのみをもって一律に権利制限規定の適用対象外とすることが妥当か否かには一定の疑義もあり、そういった問題意識から①の考え方を支持する意見も複数あった。この点については、ただし書や他の要件の解釈に委ねることによる対応の可否も含め、法整備に当たって、適切な整理・措置がなされることが適当である。

(3)分離困難性・付随性
(略)
イ.見直しの方向性
①両者の関係性及び「分離困難性」の要否
 本規定の正当化根拠については、その著作物の利用を主たる目的としない他の行為に伴い付随的に生じる利用であり、利用が質的又は量的に社会通念上軽微であることが担保されるのであれば、著作権者にとって保護すべきマーケットと競合する可能性が想定しづらい(したがって権利者の利益を不当に害しない)という点に本質があるものと考えられるところ、これを担保する観点からは、「付随性」が重要な要件であると考えられる。 一方で、「分離困難性」については、「付随性」を満たす場合の典型例を示すものではあるが、この要件を課することが、本規定の正当化根拠からして必須のものとは考えられず、「付随性」や「軽微性」等により権利者の利益を不当に害しないことは十分に担保できると考えられる。このため、日常生活等において一般的に行われている行為を広く対象に含める観点から、この要件は削除することが適当である。

②「分離困難性」の削除に伴う要件追加の要否
 単に「分離困難性」の要件の削除のみを行った場合には、例えば、「分離が容易かつ合理的な場合であって、社会通念上、その著作物を利用する必要性・正当性が全く認められないような状況において意図的に写し込むこと」など、その著作物の利用が主目的であるにもかかわらず、それを覆い隠すために本規定を利用するといった濫用的な行為まで可能となってしまうおそれがある。
 このため、適用範囲が過度に絞り込まれることのないよう注意しつつも、例えば、主たる行為を行う上で「正当(又は相当)な範囲内において」などの要件を追加することにより、一定の歯止めをかけることが適当である。

③被写体の中に当該著作物が含まれる場合の取扱い
 本規定の対象として、メインの被写体と付随して取り込まれる著作物が別個のものである場合(事例1)のほか、街の雑踏を撮影する場合のように被写体(雑踏の光景)の中に当該著作物が含まれる場合(事例2)も含めるべきことには異論はないと考えられるが、現行規定のように「写真の撮影等の対象とするAに付随して対象となるB」といった規定ぶりを維持した場合には、事例2が対象に含まれるか否かが不明確となる。
 このため、条文化に当たっては、事例1と事例2を併記することにより、事例2についても対象に含まれることを明確化することが適当である。ただし、その際には、例えば、多数の著作物で構成される集合著作物・結合著作物(個々の著作物は、当該集合著作物・結合著作物の軽微な構成部分となっている)自体をメインの被写体とすることなど想定外の事例が対象に含まれることのないよう、注意する必要がある。

(4)軽微性
イ.見直しの方向性
 軽微な構成部分といえるか否かが上記のような総合的な考慮によるものであることを明確化し、利用者の判断に資するようにするため、法第47条の5第1項の規定(「・・その利用に供される部分の占める割合、その利用に供される部分の量、その利用に供される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものに限る」)も参考にしつつ、考慮要素を複数明記することが適当である。
 なお、ここでいう「軽微」については、利用行為の態様に応じて客観的に要件該当性が判断される概念であり、当該行為が高い公益性・社会的価値を有することなどが判断に直接影響するものではないことに注意が必要である。

(5)対象支分権
(略)
イ.見直しの方向性
 上記(1)の対象行為の拡大に伴い、「公衆送信(送信可能化を含む)」、「演奏」、「上映」等を広く対象に含める観点から、第2項と同様に、「いずれの方法によるかを問わず、利用することができる」という形で包括的な規定とすることが適当である。

 文化庁の資料はいつも通り長ったらしく分かりにくいが、要するに、現行の写真等における写り込みに関する権利制限規定の対象を、生放送・生配信、スクリーンショット、模写等に拡大し、不要な分離困難性の要件を削除するという事であって、その事自体は写り込みの権利制限の性質から考えて当然の事としか思えず、今更何をと思うが、ここで、著作物創作要件の項目で、「著作物を創作する場合以外も広く対象に含めることが適当である」としながら、「違法行為に伴う写り込みについても適法となり得ることには留意が必要」で、「写り込み部分についてあえて違法とする必要はない」という考え方と「著作権を侵害する行為に伴う写り込みは本規定の対象外とする旨の要件を設定する」という考え方があり、「この点については、ただし書や他の要件の解釈に委ねることによる対応の可否も含め、法整備に当たって、適切な整理・措置がなされることが適当である」と奥歯に物の挟まった様な言い方をしている事には注意しておくべきだろう。

 ダウンロード違法化・犯罪化の対象拡大の問題において違法スクリーンショットの問題がかなり取り上げられたが(私は別にスクリーンショットのみの問題とはカケラも思っていないが)、今までやって来た事を考えても、違法な部分が含まれるスクリーンショット等を軽微な写り込みとして完全に合法化し、この点でわずかながらでも問題の軽減化を図ろうとする考えは文化庁にはない様に見えるのである。

 もう1つ、研究目的に係る権利制限規定の創設に当たっての検討について(案)(pdf)という資料も出されている。研究のための一般的な権利制限など今すぐあって良いものと私は思うが、こちらも、今年度は議論と調査研究で、来年度以降に権利制限規定の制度設計等について検討と極めて見通しが悪い。

 いずれにせよ、文化庁の検討についてはまた中間まとめのパブコメ(文化庁のHP、電子政府のHP参照)などで意見を出したいと思っている。

(3)ブロッキング訴訟東京高裁判決
 最後に、弁護士ドットコムの記事になっているが、10月30日にNTTコミュニケーションズに対するブロッキングに関する訴訟の判決が東京高裁で出された。この記事にも書かれ、また、訴訟を提起した中澤佑一弁護士がそのtwitterで引用している様に、

本件ブロッキングを実施した場合には,第1審被告によりユーザーの全通信内容(アクセス先)の検知行為が実行され,このことが日本国憲法21条2項の通信の秘密の侵害に該当する可能性があることは,第1審原告が指摘するとおりである。児童ポルノ事案のように,被害児童の心に取り返しのつかない大きな傷を与えるという日本国憲法13条の個人の尊厳,幸福追求の権利にかかわる問題と異なり,著作権のように,逸失利益という日本国憲法29条の財産権(財産上の被害)の問題にとどまる本件のような問題は,通信の秘密を制限するには,より慎重な検討が求められるところではある

と、傍論ながら、著作権ブロッキングが通信の秘密の侵害となり得るという判断を裁判所が示した事はかなりの重みを持つものと私も考える。今のところ、総務省の検討結果でも(第412回参照)、インターネット海賊版対策としてブロッキングやアクセス警告方式の導入は困難とされているが、この様な裁判所の判断はブロッキングのみならず同じくユーザーの全通信内容の検知行為が実行されるものであるアクセス警告方式についても当然通用するに違いないのである。

(2019年11月18日夜の追記:幾つか誤記を直し、文章を整えた。)

(2019年11月20日夜の追記:11月30日〆切でかかっている文化庁の中間まとめに対するパブコメについて上でリンクを追加した。)

| | コメント (0)

2019年10月20日 (日)

第414回:侵害コンテンツのダウンロード違法化等に関するパブリックコメント(10月30日〆切)への提出意見

 文化庁から10月30日〆切で侵害コンテンツのダウンロード違法化等に関するパブリックコメントがかかっている(電子政府のHP、文化庁のHP参照)。

 以前著作権法改正案の国会提出は数多くの批判を受けて一時見送られたが、案の定この選挙後のタイミングで再度提出を狙っているのだろう、文化庁はダウンロード違法化・犯罪化の拡大を含む法改正案についてパブリックコメントの募集を行って来た。

 私も意見を提出したので、内容としては基本的に今まで書いて来た事をまとめただけだが(去年の法制・基本問題小委員会中間まとめに対する提出パブコメは第402回、著作権法改正案条文については第406回参照)、ここに載せておく。設問等の作り方で恣意的に回答を誘導しようとしているなど文化庁はいつも通り姑息な手段を弄しているが、このパブリックコメントの結果は今後の法改正の検討において非常に大きな意味を持つと思うので、この様な著作権問題に関心のある方は是非提出してもらいたいと思う。

(以下、提出パブコメ)

1.基本的な考え方
(1)「深刻な海賊版被害への実効的な対策を講じること」と「国民の正当な情報収集等に萎縮を生じさせないこと」という2つの要請を両立させた形で、侵害コンテンツのダウンロード違法化(対象となる著作物を音楽・映像から著作物全般に拡大することをいう。以下同じ。)を行うことについて、どのように考えますか。①~⑤から一つを選択の上、回答欄に記入して下さい。

①賛成
②どちらかというと賛成
③どちらかというと反対
④反対
⑤分からない

<回答欄>
④反対

2.懸念事項及び要件設定
(1)侵害コンテンツのダウンロード違法化を行うことによる懸念事項として、下記(ⅰ)~(ⅶ)のそれぞれについて懸念される程度を、①~⑤から一つを選択の上、回答欄に記入して下さい。その他、懸念事項があれば(ⅷ)に記入して下さい。

(ⅰ)インターネット上に掲載されたコンテンツは、適法にアップロードされたのか違法にアップロードされたのか判断が難しいものが多いため、ダウンロードを控えることになる。

①とても懸念される
②どちらかというと懸念される
③あまり懸念されない
④全く懸念されない
⑤分からない

<回答欄>
①とても懸念される

(ⅱ)重要な情報をスクリーンショットで保存しようとする際に、違法画像等(例:SNSのアイコン)が入り込むことが、違法になる。

①とても懸念される
②どちらかというと懸念される
③あまり懸念されない
④全く懸念されない
⑤分からない

<回答欄>
①とても懸念される

(ⅲ)漫画の1コマのダウンロードや、論文の中に他人の著作物の違法引用がされている場合の当該論文のダウンロードなど、ごく一部の軽微なダウンロードでも違法になる。

①とても懸念される
②どちらかというと懸念される
③あまり懸念されない
④全く懸念されない
⑤分からない

<回答欄>
①とても懸念される

(ⅳ)原作者の許諾を得ずに創作された二次創作・パロディのダウンロードが、違法になる。

①とても懸念される
②どちらかというと懸念される
③あまり懸念されない
④全く懸念されない
⑤分からない

<回答欄>
①とても懸念される

(ⅴ)無料で提供されているコンテンツ(例:無料で配布・配信されている雑誌、漫画、ネット記事)が違法にアップロードされている場合に、そのダウンロードが違法になる。

①とても懸念される
②どちらかというと懸念される
③あまり懸念されない
④全く懸念されない
⑤分からない

<回答欄>
①とても懸念される

(ⅵ)権利者がアップロードを問題視していない(黙認している)場合でも、ダウンロードが違法になる。

①とても懸念される
②どちらかというと懸念される
③あまり懸念されない
④全く懸念されない
⑤分からない

<回答欄>
①とても懸念される

(ⅶ)権利者により濫用的な権利行使がされる可能性や、刑事罰の規定の運用が不当に拡大される可能性がある。

①とても懸念される
②どちらかというと懸念される
③あまり懸念されない
④全く懸念されない
⑤分からない

<回答欄>
①とても懸念される

(ⅷ)その他、懸念事項があれば記入して下さい。

<回答欄>(自由記述)
 上記の(ⅰ)~(ⅶ)の回答において他に選びようがないため全て「①とても懸念される」を選択したが、これらの質問及び回答の設定自体法的な論点として到底十分なものになっておらず、不適切なものと言わざるを得ない。

 ダウンロード違法化・犯罪化の問題点については、2.(2)(ⅵ)及び3.(1)に記載するが、日本の著作権法において研究など公正な利用として認められるべき利用についての権利制限が不十分であって、その様な利用についてまで本来の目的とは異なるが私的複製によってある程度カバーされ適法とされているという現状を重く見るべきであろう。

(2)上記の懸念などを踏まえ、具体的にどのような要件・内容とすることが望ましいと考えますか。下記(ⅰ)及びその回答に応じた(ⅱ)~(ⅵ)の回答欄に記入して下さい。

(ⅰ)侵害コンテンツのダウンロード違法化に関する文化庁当初案(添付1~3参照)について、どのように考えますか。①~⑤から一つを選択の上、回答欄に記入して下さい。

①適切である(文化庁当初案のままで良い)
②違法となる対象が広い(文化庁当初案よりも違法化の対象を絞りこむべき) 
③違法となる対象が狭い(文化庁当初案よりも違法化の対象を広げるべき)
④具体的な要件の適否は分からないが、バランスのとれた内容とすべき(政府における検討に委ねる)
⑤要件にかかわらず、侵害コンテンツのダウンロード違法化自体を行うべきではない

<回答欄>
⑤要件にかかわらず、侵害コンテンツのダウンロード違法化自体を行うべきではない

(ⅱ)(ⅰ)で①を選択した場合、その理由を教えて下さい。その際、「深刻な海賊版被害への実効的な対策を講じること」と「国民の正当な情報収集等に萎縮を生じさせないこと」の2つの要請のバランスに留意しつつ、記入をお願いします。

(ⅲ)(ⅰ)で②を選択した場合、どのような要件にすべきと考えますか、理由とともに記入して下さい。その際、「深刻な海賊版被害への実効的な対策を講じること」と「国民の正当な情報収集等に萎縮を生じさせないこと」の2つの要請のバランスに留意しつつ、記入をお願いします。

(ⅳ)(ⅰ)で③を選択した場合、どのような要件にすべきと考えますか、理由とともに記入して下さい。その際、「深刻な海賊版被害への実効的な対策を講じること」と「国民の正当な情報収集等に萎縮を生じさせないこと」の2つの要請のバランスに留意しつつ、記入をお願いします。

(ⅴ)(ⅰ)で④を選択した場合、その理由を教えて下さい。

(ⅵ)(ⅰ)で⑤を選択した場合、その理由を教えて下さい。

<回答欄>(自由記述)
 過去の意見募集においても繰り返しているが、一人しか行為に絡まないダウンロードにおいて、「事実を知りながら」なる要件は、エスパーでもない限り証明も反証もできない無意味かつ危険な要件であり、技術的・外形的に違法性の区別がつかない以上、このようなダウンロード違法化・犯罪化は法規範としての力すら持ち得ず、罪刑法定主義や情報アクセス権を含む表現の自由などの憲法に規定される国民の基本的な権利の観点からも問題がある。このような法改正によって進むのはダウンロード以外も含め著作権法全体に対するモラルハザードのみであり、今のところ幸いなことに適用例はないが、これを逆にねじ曲げてエンフォースしようとすれば、著作権検閲という日本国として最低最悪の手段に突き進む恐れしかない。

 また、世界的に見ても、アップロードとダウンロードを合わせて行うファイル共有サービスに関する事件を除き、どの国においても単なるダウンロード行為を対象とする民事、刑事の事件は1件もなく、日本における現行の録音録画に関するダウンロード違法化・犯罪化も含め、この様な法制が海賊版対策として何の効果も上がっていないことは明白である。また、ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大は、研究など公正利用として認められるべき目的のダウンロードにも影響する。

 この様な問題はダウンロード違法化・犯罪化に内在する本質的な問題であって、どの様な要件の追加によっても解消するものではない。「深刻な海賊版被害への実効的な対策を講じること」と「国民の正当な情報収集等に萎縮を生じさせないこと」の2つの要請は、いかなる形を取ろうとダウンロード違法化・犯罪化によってそもそも満たされるものではない。

 過去の文化庁へのパブコメ(文化庁HPhttp://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hokoku.htmlの意見募集の結果参照)や知財本部へのパブコメ(知財本部のHPhttp://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keikaku2009.htmlの個人からの意見参照)等を完全に無視して行われたものであり、さらなる有害無益な規制強化・著作権検閲にしか流れようの無い、百害あって一利ないダウンロード違法化・犯罪化を規定する著作権法第30条第1項第3号及び第119条第3項の削除を速やかに行うべきである。

3.その他
(1)侵害コンテンツのダウンロード違法化に関して、上記のほかに御意見があれば、記入して下さい。

<回答欄>(自由記述)
 今回の意見募集の設問において、文化庁は勝手に「『深刻な海賊版被害への実効的な対策を講じること』と『国民の正当な情報収集等に萎縮を生じさせないこと』という2つの要請を両立させた形で」という前提を追加しているが、この様なそもそもダウンロード違法化・犯罪化によって満たされ得ない要請を設問に追加し、回答を恣意的に誘導しようとしている事について私は文化庁に猛省を求める。本当に国民の声を丁寧に聞いて今後の手続きを進めるというのであれば、この様な要請がダウンロード違法化・犯罪化によって果たして満たされ得るのか、現行のダウンロード違法化・犯罪化条項が本当に有効なのか、有害無益なものとして削除・廃止するべきではないかという事から聞くべきである。文化庁にあってはこの様な偏った意見募集のやり方について猛省の上、もう一度前提のない形で意見募集を行ってもらいたい。また、この問題について今後さらに検討の場を設置するのであれば、そのメンバーの選定自体について意見募集を行い、偏りのない形にするべきである。

 私の意見は2.(2)(ⅵ)に書いた通りであるが、添付資料のダウンロード違法化・犯罪化関連部分についてさらに以下の通り意見を補足する。

 今回の意見募集においては、添付資料1及び2として具体的な著作権法改正の条文案を添付している。この様な条文案の提示は国会提出を見送った結果に過ぎないであろうが、条文は法解釈における最も基本的な根拠であり、いつもの審議会報告書のみによる法改正に関する意見募集は常に不確実かつ不透明にならざるを得ないものである。国民の生活に密接に関係し得る著作権法の改正においては、今後は国会提出前に審議会報告書のみならず具体的な条文案も提示する形で常に意見募集を行ってもらいたい。

 添付資料1の第1ページにおいて、権利者団体側の一方的な主張に基づき被害額を試算して被害が甚大であるかのような印象操作がされているが、これも一方的な主張に過ぎず、送信可能化・アップロードとの関係でダウンロードによる損害額がどう算定されるのかすら分からない中、推定に推定を重ねたアクセス数に著作物の単価を掛けるような試算は乱暴の極みと言うほかなく真摯な立法論の基礎とするに足るものでは全くない。また、同ページの「海賊版被害の拡大が防止され、著作権法の目的である『文化の発展』に資する」などという言葉も、文化庁の勝手な思い込みと言う他ない。

 添付資料1の第11~13、15~17ページ、添付資料3の第1~9、17ページにおいてダウンロード違法化・犯罪化に関する条文案の解説が示され、添付資料2に条文案の新旧対照が示されている。

 これらの条文案において、民事に関する第30条の方で、「その事実を知りながら行う場合」を「特定侵害複製であることを知りながら行う場合」に変え、「特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行う場合を含むものと解釈してはならない」といった条件をつけ加える事で、限定を加えたつもりなのだろうが、これらはともに主観要件であって、はっきり言って、これで現行条文との間で解釈上本当に違いが出て来るかどうか疑問であり、一個人しか絡まないダウンロードにおける要件の立証・反証の問題に対する解決になるものでは全くない。

 刑事に関する第119条の方では、対象者について、第30条と同様の、「有償著作物等特定侵害複製であることを知りながら行」った者という条件と「自ら有償著作物等特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行」った者は含まれないという条件に加えて、「継続的に又は反復して行つた」者という条件もつくが、「継続」や「反復」とはどの程度の継続や反復なのか不明であり、ネット利用者に対するセーフハーバーになっていると言えるものでは到底ない。なお、刑事罰規定において、著作権法第28条の2次著作物についての原著作者の権利が除かれているが、この事はこの問題の本質とは関係がない。昨今のウィルス(不正指令電磁的記録関連)罪の摘発の状況を見ても、親告罪とされるだろうとはいえ、今後警察や検察が著作権法の違法ダウンロード罪について無茶な摘発をしようとして来る可能性は常にあり、その時、現行法だろうが、改正条文案だろうが、無罪の立証にはかなりの労力を要するであろうし、場合によっては、恣意的に摘発されたネット利用者の生活と安全が一気に危険に晒される事になる。

 添付資料1の第14ページに、諸外国における取り扱いについて書かれ、ドイツ、フランス、カナダ、アメリカ、イギリス等の国でダウンロード違法化がされており、効果が上がっているような印象操作がされているが、アップロードとダウンロードを合わせて行うファイル共有サービスに関する事件を除き、どの国においても単なるダウンロード行為を対象とする民事、刑事の事件は1件もなく、日本における現行の録音録画に関するダウンロード違法化・犯罪化も含め、このような法制が海賊版対策として何の効果も上がっていないことは明白である。また、スイスでも最近著作権法改正案が国会を通っているが、消費者・利用者を犯罪者とするべきではないとしてダウンロード違法化・犯罪化は含まれていない。

 添付資料3の第10~15ページのQ&Aにおいても文化庁は極めて恣意的な回答を示している。

 問1のアップロードの取り締まりについて何がそのボトルネックとなっているのかの具体的な検討もなく一方的にダウンロード違法化・犯罪化の強化が必要であると決めつけている。

 問2のストリーミング型の海賊版サイトについて効果がないのはその通りと認めたくないのだろう、ダウンロード型の海賊版サイトには効果があると何の根拠もなく独りよがりのすれ違い回答をしている。私はダウンロード型の海賊版サイトに対してもダウンロード違法化・犯罪化は効果はないと考えているし、警告表示を行う仕組みなど危険なネット検閲に他ならないと考えている。海賊版サイト対策としては広告出稿抑制の様な地道な取り組みの方がよほど効果的である。

 問3のいきなり権利行使や逮捕・告訴がされたりするのかという設問自体も誘導的かつ恣意的と言わざるを得ない。問題としている側は違法・犯罪になる事自体を問題としているのであって、そこで文化庁は違法・犯罪にして萎縮効果を狙おうというにも関わらず、ここで黙認・寛容的な利用を持ち出したり、権利者がまずアップロード者に対する権利行使を行うものと勝手な希望的観測を述べる事は矛盾という他ない。

 問4の法改正の実効性に関しても、自ら違法ダウンロードを行っている旨をSNSなどで誇示している場合や違法アップロードに関する捜査・訴訟等の過程でダウンロードの事実が確認された場合などに権利行使・摘発が可能としているが、その様な例が現実的にどれくらいあり得るのかを示さずにこの様な事を言うのは適切ではない。さらに、仮にこれらの様な例、SNSなどで違法ダウンロードを行っている事の書き込みや違法アップロード事件におけるダウンロードの事実が現実的にあったとしても、主観的要件による違法ダウンロードの事実をどの様に証明するのかや、恣意的に警告・権利行使・摘発された場合にどの様に反証するのかはやはり解決不能な問題として残るのであって、文化庁の回答は回答になっていないと言わざるを得ない。

 また、添付資料3の第16ページの補足資料で、平成25年12月の調査を引用しているが、この調査は文化庁と権利者団体中心のお手盛り調査であって何ら信頼に足るものではない。ファイル共有ソフトのノード数の減少はダウンロード犯罪化の運用が不明な中での一時的な現象であろうし、政府の委託調査で広くアンケートを取り違法行為をしているかと聞けば控えたと答えるに決まっているのでそのような回答の傾向はユーザーの行動の実態を表しているとは言えない。この様なお手盛り調査の我田引水は論外であるが、ダウンロード違法化・犯罪化がされた当時と比較して音楽と映像に関して違法にアップロードされている著作物のダウンロードは減っているのではないかとも思うが、それは単にストリーミングサービスも含めて利便性の高い正規のサービスが充実して来たことの結果に過ぎず、ここでダウンロード違法化・犯罪化がほとんど何の役にも立ってない事は日本のみならず世界的に同じ傾向が見られる事からも明らかであろう。

 なお、違法サイトかどうか利用者からは区別がつかないという事はダウンロード違法化・犯罪化の議論当初から問題にされており、当時音楽団体がエルマークを持ち出したと記憶しているが、2018年12月の法制・基本問題小委員会中間まとめ又は2019年2月の著作権分科会報告書で言及されていた、出版社の「ABJマーク」なども、残念ながら、上の平成25年の文化庁委託調査ですら認知度が低い事が示されており、その後も認知が進んでいるとは到底思えない音楽団体のエルマークと全く同じ道を辿る事であろう。

 問5~7のインターネット上での資料収集や論文等のための利用の萎縮についても同断であって、ここで寛容的な利用などを持ち出すのは矛盾という他ない。さらに敢えて書いておくと、剽窃の指摘・告発等のための善意の保存についてわざわざ事前に権利者に許諾を取るのは現実的ではないであろうし、ダウンロード違法化・犯罪化が引用に影響を与えない事自体はその通りだろうが、その準備行為は必要かつ合理的と認められる限度においてのみ許容されているのであって、ダウンロードの違法化・犯罪化の下で引用のためであったとしても著作権侵害コンテンツのダウンロードが完全に許容されるとは考えがたい。

 問8の警察による捜査権の濫用についても、回答は単なる文化庁の希望的観測の域を出ない。昨今のウィルス(不正指令電磁的記録関連)罪の摘発の状況を見ても、親告罪とされるだろうとはいえ、今後警察や検察が著作権法の違法ダウンロード罪について無茶な摘発をしようとして来る可能性は常にあり、その時、現行法だろうが、改正条文案だろうが、無罪の立証にはかなりの労力を要するであろうし、場合によっては、恣意的に摘発されたネット利用者の生活と安全が一気に危険に晒される事になるのである。

 問9のスクリーンショットの問題についても同様であって、ここでその様な利用を著作権者が問題視することは想定しづらいとするのは矛盾という他ない。文化庁は恣意的にすれ違いの回答をしているが、問題としている側は、SNSなどで違法画像が使用されている場合にそれが違法であると知りながらスクリーンショットで保存する事が違法となる事自体を問題としているのであって、これはその通りになるのである。また、ダウンロード違法化・犯罪化の拡大は画像のみならずあらゆるコンテンツに及び、あらゆる複製に及ぶのであって、ここで画像のみを取り上げているのもわざと問題を矮小化しているのだろうと思わざるを得ない。

 問10の視聴が違法化・犯罪化されない事は当たり前の事であり、メールによる送りつけの問題も添付ファイルであれば違法・犯罪とならないのはその通りだろうが、メール中にURL等が書き込まれていた場合なども考えると、話はそう単純ではない。

 問11の2次創作物についても、条文案の刑事罰規定において、著作権法第28条の2次著作物についての原著作者の権利が除かれているが、この事はこの問題の本質とは関係がない。

 問12のインタビュー記事のダウンロードについても同様であって、ここでその様な利用を著作権者が問題視することは考えづらいとするのは矛盾という他ない。さらに敢えて書いておくと、既にそれ自体としては販売が終了している定期刊行物の記事等であってもバックナンバーやアーカイブとして長期間に渡って販売される事もあるのであって、販売が終了している新聞記事等のダウンロードは刑事罰の対象外というのも非常に安易で危うい想定である。

 問13の親告罪となっている事も当然の事である。

 問14、15の主観要件の判断について、現行の録音録画に関するダウンロード違法化・犯罪化の条文の要件だろうが、示されている条文案の要件だろうが、これらはともに主観要件であって、はっきり言って、いずれにせよ、一個人しか絡まないダウンロードにおける要件の立証・反証の問題に対する解決になるものでは全くない。権利者から警告された後もユーザーがダウンロードを継続しているような場合に認定される事が想定されるとも書かれているが、その様な事が現実的に起こるのか、その様な事がどの様に証明され得るのかは全く不明という他なく、ここで書かれている事は法律について無知な者の戯言としか思えない。

 すなわち、これらの添付資料のほぼ全てが、何ら合理的な根拠もなく、結論ありきでダウンロード違法化・犯罪化の範囲の拡大を正当化しているものであって、到底法改正のための真摯な根拠たり得ない文化庁の妄言を垂れ流しているに過ぎない。

 今後著作権法改正案を提出するのであれば、本条文案におけるダウンロード違法化・犯罪化の対象拡大に関する全ての条項の削除のみならず、ダウンロード違法化・犯罪化を規定する著作権法第30条第1項第3号及び第119条第3項を削除し、ダウンロード違法化・犯罪化を完全に撤廃することを速やかに行うべきである。

(2)リーチサイト対策に関して御意見があれば、記入して下さい。

<回答欄>(自由記述)
 現行現行の著作権法における民事の間接侵害(カラオケ法理)あるいは刑事の著作権侵害幇助との関係整理をおざなりにした、著作権侵害コンテンツへのリンク行為に対するみなし侵害規定の追加及び刑事罰付加に反対する。

 本当に悪質な場合について現行法で不十分というところがあれば、その点について立法による対処も当然あり得るだろうが、権利者団体側がリーチサイト等に対して現行法に基づいてどこまで何をしたのか、現行法による対処に関する定量的かつ論理的な検証は何らされておらず、本当にどのような場合について現行法では不十分なのかは全く不明である。

 例えば、2018年12月の法制・基本問題小委員会中間まとめ又は2019年2月の著作権分科会報告書でロケットニュース事件やリツイート事件を取り上げているが、これらの事件はニュースサイトやツイッターの様なSNSサイトにおけるリンク行為を取り扱ったものであって、いわゆるリーチサイトとは性質を異にすると考えるべきものである。カラオケ法理に関してはネットワークを通じた提供を含めて各種の民事での判例があり、著作権侵害幇助に関する刑事事件もあるのであって、判例と現行法の解釈についての分析すら不十分であると言わざるを得ない。さらに言えば、ここで本当に問われるべきは、権利者団体が悪質なケースがあると主張しているにもかかわらず、その悪質なリーチサイトに対して何故いまだに民事・刑事での明確な裁判例が積み重なっていないのかということであろう。

 さらに、このような間接侵害あるいは幇助の検討において当然必要とされるはずのセーフハーバーの検討も極めて不十分であって、インターネット利用における民事・刑事のリスクに関する不確実性を増すだけである、このような不十分な検討に基づくリンク行為へのみなし侵害規定の追加及び刑事罰付加に私は断固反対する。

 今現在、カラオケ法理の適用範囲がますます広く曖昧になり、間接侵害や著作権侵害幇助のリスクが途方もなく拡大し、甚大な萎縮効果・有害無益な社会的大混乱が生じかねないという非常に危険な状態がなお続いている。間接侵害事件や著作権侵害幇助事件においてネット事業者がほぼ直接権利侵害者とみなされてしまうのでは、プロバイダー責任制限法によるセーフハーバーだけでは不十分である。リーチサイト規制としての著作権侵害コンテンツへのリンク行為に対するみなし侵害規定の追加及び刑事罰付加については全て白紙に戻し、間接侵害や著作権侵害幇助罪も含め、間接侵害や刑事罰・著作権侵害幇助も含め、著作権侵害とならない範囲を著作権法上きちんと確定し、著作権法へセーフハーバー規定を導入することのみを速やかに検討するべきである。

 私の意見は上記の通り、リーチサイト規制としての著作権侵害コンテンツへのリンク行為に対するみなし侵害規定の追加及び刑事罰付加にそもそも反対するというものであるが、提示されている条文案についての意見を以下の通り補足する。

 添付資料1の第3~10ページにおいてリーチサイト規制に関する条文案の解説が示され、添付資料2に条文案の新旧対照が示されている。

 この条文案の第113条第2項は、「公衆を侵害著作物等に殊更に誘導するものであると認められるウェブサイト等」又は「主として公衆による侵害著作物等の利用のために用いられるものであると認められるウェブサイト等」における、「送信元識別符号」の「提供」により「侵害著作物等の他人による利用を容易にする行為」を、「当該行為に係る著作物等が侵害著作物等であることを知つていた場合又は知ることができたと認めるに足る相当の理由がある場合」に、著作権侵害とみなすというものであって、要するに、著作権侵害のために公衆に利用されるウェブサイト等で、リンク先の著作物が侵害著作物である事を知りながら又は知る事ができたとする相当の理由がありながら、リンクを提供する事を規制し、さらに、第120条の2で、刑事罰もつけて犯罪化するというものであり、プログラム(アプリ)を用いる場合も同様とされている。また、第113条第3項では、ウェブサイト等の運営者には放置に関する責任があるとし、第4項で、ウェブサイト等の範囲は政令で定められるものとし、第119条で、ウェブサイト等の運営者をリンク提供者より厳罰に処すとしている。

 一応もっともらしく限定されている様に読めるものの、これは、著作権侵害ウェブサイト等における、侵害とされ得るあらゆる著作物への単なるリンク提供行為を規制するものである。しかも、ウェブサイト等の範囲が文化庁主導の政令で定められるので、当初の範囲がどうあれ、今後、検索やSNSなど様々なサービスにおける細かなリンクの提供あるいはサービス自体の提供まで法改正抜きで広範な規制が可能となる様に作られているのは悪質である。さらに、ダウンロード犯罪化と同様リンク提供行為については非親告罪とされる様だが、サイト運営者については非親告罪とされる様である点も問題である。

 この条文案で本当に法律ができれば、リンクの提供がインターネット上で非常にカジュアルに行われている事を考えると、まず間違いなく、国内のネットサービス提供者や利用者のリンク提供行為に対する脅しや嫌がらせが増え、インターネット利用における民事・刑事のリスクが無意味に高まる事になるであろう。

(3)その他、海賊版対策全般に関して御意見があれば、記入して下さい。

<回答欄>(自由記述)
 情報の自由や検閲の禁止、通信の秘密といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ない、サイトブロッキングやアクセス警告方式の導入ありきの海賊版対策の検討に反対する。インターネットにおける海賊版対策の検討においては、まず、アップロードによる著作権侵害に対する民事・刑事の権利行使においてどこにボトルネックがあるのかを明らかにした上で、そのボトルネックを解消するための地道な取り組みのみに注力するべきである。この点については、2019年8月の総務省のインターネット上の海賊版サイトへのアクセス抑止方策に関する検討会の報告書の整理を守るべきである。

 ネット上の違法コンテンツ対策、違法ファイル共有対策については、通信の秘密やプライバシー、情報アクセス権等の国民の基本的な権利をきちんと尊重しつつ対策を検討してもらいたい。この点においても、国民の基本的な権利を必ず侵害するものとなり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害することにつながる危険な規制強化の検討ではなく、ネットにおける各種問題は情報モラル・リテラシー教育によって解決されるべきものという基本に立ち帰り、現行のプロバイダー責任制限法と削除要請を組み合わせた対策などの、より現実的かつ地道な施策のみに注力して検討を進めるべきである。

 また、不正競争防止法と著作権法による二重保護の問題やDRM保護のそもそもの必要性について本来なされるべき検討もせずに行われようとしている、今回の意見募集の対象の著作権法改正の条文案に含まれている、DRM回避規制に関する2つの法律の条文の辻褄合わせのような法改正のための法改正にも私は反対する。

 経済産業省の産業構造審議会知的財産分科会不正競争防止小委員会において2018年1月にとりまとめられた「データ利活用促進に向けた検討中間報告」において書かれたDRM回避規制強化のための法改正を是とするに足る立法事実の変化はなく、このような法改正のための法改正はされるべきではなかったものである。

 このような無意味なDRM規制強化の検討は全て白紙に戻し、今ですら不当に強すぎるDRM規制の緩和のための検討を不正競争防止法と合わせ速やかに開始するべきである。

 特に、DRM回避規制に関しては、有害無益な規制強化の検討ではなく、まず、私的なDRM回避行為自体によって生じる被害は無く、個々の回避行為を一件ずつ捕捉して民事訴訟の対象とすることは困難だったにもかかわらず、文化庁の片寄った見方から一方的に導入されたものである、私的な領域でのコピーコントロール回避規制(著作権法第30条第1項第2号)の撤廃の検討を行うべきである。コンテンツへのアクセスあるいはコピーをコントロールしている技術を私的な領域で回避しただけでは経済的損失は発生し得ず、また、ネットにアップされることによって生じる被害は公衆送信権によって既にカバーされているものであり、その被害とDRM回避やダウンロードとを混同することは絶対に許されない。それ以前に、私法である著作権法が、私的領域に踏み込むということ自体異常なことと言わざるを得ない。また、同時に、何ら立法事実の変化がない中、ドサクサ紛れに通された、先の不正競争防止法改正で導入されたDRM回避規制の強化や、TPP関連として入れられたものも含め以前の著作権法改正で導入されたアクセスコントロール関連規制の追加についても、速やかに元に戻す検討がなされるべきである。

 さらに、著作権の保護期間の延長について元に戻す事を求めるとともに、私的録音録画補償金の対象範囲の拡大に反対し、一般フェアユース条項の導入を求める。

 2018年12月のTPP11協定の発効に合わせて著作権の保護期間の延長が施行されたが、TPP11協定では保護期間の延長は凍結されたのであって、この保護期間の延長は本来必要ではなかったものである。このように何ら国民的なコンセンサスを得ることもないまま、不合理ななし崩しの法改正により甚大な国益の喪失をもたらした事について私は日本政府を強く非難する。日EU(欧)EPA協定にも著作権の保護期間の延長は含まれているが、これもTPP協定同様の姑息かつ卑劣な秘密交渉で決められたものであって、著作権の保護期間の延長の様に国益の根幹に関わる点について易々と譲歩したなど、日本政府は完全に国民をバカにしているとしか言いようがない。この日EU(欧)EPA協定に含まれる著作権の保護期間の延長にも私は反対する。このように何ら国民的なコンセンサスを得ることもないまま、不合理ななし崩しの法改正あるいは秘密の条約交渉によってなされた著作権の保護期間の延長については必要な法改正及び条約改定によって元に戻す事を検討するべきである。

 私的録音録画補償金問題について、補償金のそもそもの意味を問い直すことなく、今の補償金の矛盾を拡大するだけの私的録音録画補償金の対象拡大を絶対にするべきではなく、私的録音録画補償金の対象範囲の拡大にも私は反対する。

 ユーザーに対する意義からも、アメリカ等と遜色ない形で一般フェアユース条項を可能な限り早期に導入するべきである。特に、インターネットのように、ほぼ全国民が利用者兼権利者となり得、考えられる利用形態が発散し、個別の規定では公正利用の類型を拾い切れなくなるところでは、フェアユースのような一般規定は保護と利用のバランスを取る上で重要な意義を持つものである。

| | コメント (3)

2019年3月31日 (日)

第406回:閣議決定されなかった、ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大とリーチサイト規制(リンク規制)を含む著作権法改正案条文

 ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大を含む著作権法改正案は、2月から3月にかけての法案の与党・自民党への説明プロセスの中で差し戻され、閣議決定及び今国会への提出が見送られる事となった。

 この事自体は去年の著作権ブロッキング導入検討の中止と並んで喜ばしい事だが、著作権法も含め知財に関する法案の閣議決定がこの様に与党への根回しの過程で見送られるのは極めて異例であり、文化庁と一部の団体が、また、一部の国会議員が、なお法案の次期(臨時)国会への提出を目指し、これからも表裏で活発な動きを続けて行くだろう事は間違いなく、全く気の抜ける状況ではない。

 今後の議論では、今国会への提出は見送られたものの、政府内プロセスはほぼ終了していたであろう、自民党の部会・調査会に出された説明資料の条文案が軸となると思うので、ここでもその内容を見ておく。

 弁護士ドットコムの記事中の説明資料(pdf)に書かれている法案の概要は、以下のようなものである。

著作物等を巡る近時の社会状況の変化等に適切に対応するため、インターネット上の海賊版対策をはじめとした著作権等の適切な保護を図るための措置や、著作物等の利用の円滑化を図るための措置を講するもの【平成32年1月1日から施行(7.の一部は、「公布日から起算して1年を超えない範囲内で政令で定める日」から施行)】

【著作権等の適切な保護を図るための措置】
1.リーチサイト等を通じた侵害コンテンツへの誘導行為への対応【第113条第2項~第4項、第119条第2項第4号・第5号、第120条の2第3号等】
2.ダウンロード違法化の対象範囲の拡大【第30条第1項第3号・第2項、第119条第3項・第4項等】
3.アクセスコントロール等に関する保護の強化【第2条第1項第20号・第21号、第113条第7項、第120条の2第4号等】
4.著作権等侵害訴訟における証拠収集手続の強化【第114条の3】

【著作物等の利用の円滑化を図るための措置】
5.著作物等の利用許諾に係る権利の対抗制度の導入【第63条の2等】
6.行政手続に係る権利制限規定の整備(地理的表示法・種苗法関係)【第42条第2項】

【その他】
7.プログラムの著作物に係る登録制度の整備(プログラム特例法)【プログラム特例法第4条、第26条等】

 私は自分の提出パブコメ(第402回参照)でも書いた通り、上の法案概要中の「3.アクセスコントロール等に関する保護の強化」にも反対の立場だが、これについては提出パブコメの内容を見て頂くとして、今回は、やはり最も大きな問題を含む「2.ダウンロード違法化の対象範囲の拡大」と、それに次ぐ「1.リーチサイト等を通じた侵害コンテンツへの誘導行為への対応」を順に取り上げる。

(1)ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大
 上でリンクを張った文化庁作成の説明資料は、吹き出しの説明つきでかなりごちゃごちゃしているが、書かれている条文案を抜き出して現行条文と突き合わせて改正条文を作ると以下の様になる。(下線が追加部分。)

(私的使用のための複製)
第三十条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準する限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
(略)
 著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画複製(以下この号及び次項において「特定侵害複製」という。)を、その事実特定侵害複製であることを知りながら行う場合

 前項第三号の規定は、特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行う場合を含むものと解釈してはならない。

第百十九条(略)
(略)
 第三十条第一項に定める私的使用の目的をもつて、録音録画有償著作物等(録音され、又は録画された著作物又は実演等(著作権又は著作隣接権の対象となつているものに限る。)であつて有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)をいう。)著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信著作権(第二十八条に規定する権利を除く。以下この条において同じ。)を侵害する自動公衆送信又は著作隣接権を侵害する送信可能化に係る自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権又は著作隣接権の侵害となるべきもの著作権の侵害となるべきもの又は著作隣接権の侵害となるべき送信可能化に係るものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画複製(以下この条において「有償著作物等特定侵害複製」という。)を、自らその事実有償著作物等特定侵害複製であることを知りながら行つて著作権又は著作隣接権を侵害した侵害する行為を継続的に又は反復して行つた者は、二年以下の懲役若しくは二百万以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

 前項に規定する者には、有償著作物等特定侵害複製を、自ら有償著作物等特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行つて著作権又は著作隣接権を侵害する行為を継続的に又は反復して行つた者を含むものと解釈してはならない。

 ここの条文は、私的複製の例外の例外という形で作られているので元から分かりにくいのだが、その最大のポイントは、第30条第1項第3号と第119条第3項中の「録音又は録画」を「複製」とし、ダウンロード違法化・犯罪化の範囲を録音録画のみからあらゆる著作物の複製に拡大する事にある。

 これらの条文において、民事に関する第30条の方で、「その事実を知りながら行う場合」を「特定侵害複製であることを知りながら行う場合」に変え、「特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行う場合を含むものと解釈してはならない」といった条件をつけ加える事で、文化庁としては限定を加えたつもりなのだろうが、これらはともに主観要件であって、はっきり言って、これで現行条文との間で解釈上本当に違いが出て来るかどうか疑問であり、一個人しか絡まないダウンロードにおける要件の立証・反証の問題に対する解決になるものでは全くない。

 刑事に関する第119条の方では、対象者について、第30条と同様の、「有償著作物等特定侵害複製であることを知りながら行」った者という条件と「自ら有償著作物等特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行」った者は含まれないという条件に加えて、「継続的に又は反復して行つた」者という条件もつくが、「継続」や「反復」とはどの程度の継続や反復なのか不明であり、ネット利用者に対するセーフハーバーになっていると言えるものでは到底ない。なお、刑事罰規定において、著作権法第28条の2次著作物についての原著作者の権利が除かれているが、この事はこの問題の本質とは関係がない。(昨今のウィルス(不正指令電磁的記録関連)罪の摘発の状況を見ても、親告罪とされるだろうとはいえ、今後警察や検察が著作権法の違法ダウンロード罪について無茶な摘発をしようとして来る可能性は常にあり、その時、現行法だろうが、改正条文案だろうが、無罪の立証にはかなりの労力を要するであろうし、場合によっては、恣意的に摘発されたネット利用者の生活と安全が一気に危険に晒される事になる。)

 このダウンロード違法化・犯罪化の拡大については、国際日本文化研究センターの山田奨治教授がそのブログ記事でまとめられている様に、以下の団体から反対や懸念の意見が出されている。

・日本マンガ学会・声明(1月23日)
・情報法制研究所・表明(pdf)(2月8日)
・中山信弘東京大学名誉教授他の呼びかけによる・声明(pdf)(2月19日)
・出版広報センター・意見(pdf)(2月21日)
・アジアインターネット日本連盟・意見(pdf)(2月21日)
・日本独立作家同盟・意見(2月25日)
・日本知的財産協会・意見(2月26日)
・日本漫画家協会・意見(2月27日)
・マンガジャパン・声明(3月1日)
・全国同人誌即売会連絡会・意見(3月10日)
・エンターテイメント表現の自由の会 (AFEE)・声明(3月10日)
・日本建築学会・声明(3月11日)
・日本グラフィックデザイナー協会・声明(3月13日)
・弁護士有志・声明(3月13日)
・日本学術会議有志・意見(3月13日)

 文化庁は相変わらず誤解が広まったと言って回っている様だが、専門家や研究者のレベルで誤解して反対や懸念を述べている様な者がいる訳がない。文化庁の言い分は相変わらず意味不明と言う他ないが、ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲をあらゆる著作物に広げようとする話で、スクリーンショットのみに問題を矮小化する事ほど危険な事はないだろう。

 私自身はそもそも現行の条文にも問題があり、この問題はそもそも解決不能であって、著作権法第30条第1項第3号及び第119条第3項は削除するべきと思っている事に変わりはない。ただ、それでも、明治大学知的財産法政策研究所の高倉成男明治大学教授・中山信弘東京大学名誉教授・金子敏哉明治大学准教授の3氏が出された意見(pdf)要旨(pdf))の通り、「原作のまま」という条件と「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」という条件を追加すればかなりましになるとも思っているが、この様な限定すら文化庁が嫌がっていると見えるので、ダウンロード違法化・犯罪化問題について今後も危うい状況が続くだろう。

(2)リーチサイト規制(リンク規制)
 リーチサイト規制部分も文化庁の資料は説明が前後していて分かりにくいのだが、順番を直して書き起こすと以下の様になる。

(侵害とみなす行為)
第百十三条(略)
 送信元識別符号又は送信元識別符号以外の符号その他の情報であつてその提供が送信元識別符号の提供と同一若しくは類似の効果を有するもの(以下この項及び次項において「送信元識別符号等」という。)の提供により侵害著作物等(著作権(第二十八条に規定する権利を除く。以下この項及び次項において同じ。)、出版権又は著作隣接権を侵害して送信可能化が行われた著作物等をいい、国外で行われる送信可能化であつて国内で行われたとしたならばこれらの権利の侵害となるべきものが行われた著作物等を含む。以下この項及び次項において同じ。)の他人による利用を容易にする行為(同項において「侵害著作物等利用容易化」という。)であつて、第一号に掲げるウェブサイト等(同項及び第百十九条第二項第四号において「侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等」という。)において又は第二号に掲げるプログラム(次項及び同条第二項第五号において「侵害著作物等利用容易化プログラム」という。)を用いて行う行為は、当該行為に係る著作物等が侵害著作物等であることを知つていた場合又は知ることができたと認めるに足る相当の理由がある場合には、当該侵害著作物等に係る著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。
 次に掲げるウェブサイト等
 当該ウェブサイト等において、侵害著作物等に係る送信元識別符号等(以下この項において「侵害送信元識別符号等」という。)の利用を促す文言が表示されていること、侵害送信元識別符号等が強調されていることその他の当該ウェブサイト等における侵害送信元識別符号等の提供の態様に照らし、公衆を侵害著作物等に殊更に誘導するものであると認められるウェブサイト等
 イに掲げるもののほか、当該ウェブサイト等において提供される侵害送信元識別符号等の数、当該数が当該ウェブサイト等において提供される送信元識別符号等の総数に占める割合、当該侵害送信元識別符号等の利用に資する分類又は整理の状況その他の当該ウェブサイト等における侵害送信元識別符等の提供の状況に照らし、主として公衆による侵害著作物等の利用のために用いられるものであると認められるウェブサイト等
 次に掲げるプログラム
(略)(注:リーチサイトと同様にプログラムについて規定している模様。)

 侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等に該当するウェブサイト等の公衆への提示を行つている者又は侵害著作物等利用容易化プログラムに該当するプログラムの公衆への提供又は提示を行つている者が、当該ウェブサイト等において又は当該プログラムを用いて他人による侵害著作物等利用容易化に係る送信元識別符号等の提供が行われていることを知つている場合であつて、かつ、当該送信元識別符号等に係る著作物等が侵害著作物等であることを知つている場合又は知ることができたと認めるに足りる相当の理由がある場合において、当該侵害著作物等利用容易化を防止する措置を講ずることが技術的に可能であるにもかかわらず当該措置を講じない行為は、当該侵害著作物等に係る著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。

 前二項に規定するウェブサイト等とは、識別するために用いられる部分が共通するウェブページ(インターネットを利用した情報の閲覧の用に供される電磁的記録で文部科学省令で定めるものをいう。)の集合物の全部又は一部であつて、同一の者が公衆への提示を行つているものとして政令で定めるものをいう。

第百十九条(略)
 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
(略)
 侵害著作物等利用容易化ウェブサイト等の公衆への提示を行つた者
 侵害著作物等利用容易化プログラムの公衆への提供又は提示を行つた者

第百二十条の二 次の各号のいすれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、文はこれを併科する。
(略)
 第百十三条第二項の規定により、著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者
(略)

 このリーチサイト規制の条文案も、法律用語を用いて書かれているので、分かりにくいが、第113条第2項は、「公衆を侵害著作物等に殊更に誘導するものであると認められるウェブサイト等」又は「主として公衆による侵害著作物等の利用のために用いられるものであると認められるウェブサイト等」における、「送信元識別符号」の「提供」により「侵害著作物等の他人による利用を容易にする行為」を、「当該行為に係る著作物等が侵害著作物等であることを知つていた場合又は知ることができたと認めるに足る相当の理由がある場合」に、著作権侵害とみなすというものであって、要するに、著作権侵害のために公衆に利用されるウェブサイト等で、リンク先の著作物が侵害著作物である事を知りながら又は知る事ができたとする相当の理由がありながら、リンクを提供する事を規制し、さらに、第120条の2で、刑事罰(3年以下の懲役又は300万円以下の罰金)もつけて犯罪化するというものである。(プログラム(アプリ)を用いる場合も同様とされている。)

 また、第113条第3項では、ウェブサイト等の運営者には放置に関する責任があるとし、第4項で、ウェブサイト等の範囲は政令で定められるものとし、第119条で、ウェブサイト等の運営者をリンク提供者より厳罰(5年以下の懲役又は500万円以下の罰金)に処すとしている。

 リーチサイト規制(リンク規制)についても、以前書いた事と重なるのだが(第401回で書いた文化庁の報告書案の内容や第402回の提出パブコメ参照)、一応もっともらしく限定されている様に読めるものの、これは、著作権侵害ウェブサイト等における、侵害とされ得るあらゆる著作物への単なるリンク提供行為を規制するものである。しかも、ウェブサイト等の範囲は文化庁主導の政令で定められるので、当初の範囲がどうあれ、今後、検索やSNSなど様々なサービスにおける細かなリンクの提供あるいはサービス自体の提供まで法改正抜きで広範な規制が可能となる様に作られているのは悪質である。さらに、ダウンロード犯罪化と同様リンク提供行為については非親告罪とされる様だが、サイト運営者については非親告罪とされる様である点も問題だろう。

 このリーチサイト規制(リンク規制)の条文案は、予想通り、みなし侵害規定の追加だけで、特にこの部分でセーフハーバー規定は入らないと見えるので、この条文案で本当に法律ができれば、リンクの提供がインターネット上で非常にカジュアルに行われている事を考えると、まず間違いなく、国内のネットサービス提供者や利用者のリンク提供行為に対する脅しや嫌がらせが増え、インターネット利用における民事・刑事のリスクが無意味に高まる事になるだろうと私は思っている。

 このリーチサイト規制(リンク規制)の問題については、高木浩光氏がそのブログ記事で的確に批判されている事を除くとまだあまり広まっていない様であるが、この部分についても問題点が広く知られ、規定の削除あるいは条文修正の議論が進められる事を私も願う。

 3月29日の知財本部の評価・企画委員会コンテンツ分野会合の事務局資料(pdf)の第2ページで、

・著作権を侵害する静止画(書籍)のダウンロードの違法化のための法制度整備を速やかに行う【文化庁】
・インターネットユーザーを侵害コンテンツへ誘導するウェブサイト(リーチサイト)に対応するための法制度整備を速やかに行う【文化庁】

と書かれている通り、文化庁としては修正なしの法案提出をなお狙っているだろうし、さらに、同ページに、

(アクセス警告方式について)・法制度の変更を前提とせずにユーザーのアクセス抑止効果を最大限高める方式を検討し、海賊版サイトへの対策として実効的な枠組みを提示した上で、速やかに導入する(関係者と協議しながら検討・導入)【総務省】
・ブロッキングに係る法制度整備については、他の取組の効果や被害状況等を見ながら検討【内閣府及び関係省庁】

とある通り、ブロッキングについては抑え気味になっているものの、政府は、今度は代わりにアクセス警告方式を前面に押し出して来ているので、4月以降半年から1年くらいの間で検討・議論が進められる喫緊かつ危険な知財政策上の問題は、ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大、リーチサイト規制(リンク規制)、アクセス警告方式の検討の3つという事になるのだろう。

| | コメント (0)

2018年12月30日 (日)

第403回:2018年の終わりに

 TPP11協定の発効に伴って今日まさに著作権の保護期間の延長が施行された事を始めとして今年も非道い一年だったが、取り上げる暇があまりなかった各省庁の細かな動きについて最後にまとめて書いておきたいと思う。

 まず、知的財産関係の法改正に絡む動きとしては、特許庁から、1月16日〆切で産業構造審議会・知的財産分科会・意匠制度小委員会報告書「産業競争力の強化に資する意匠制度の見直しについて(案)」に対する意見募集の実施についてというパブコメが掛かっている。

 この特許庁の意匠制度の見直しについて(案)という報告書案は、意匠制度小委員会で検討されていたもので、意匠法の大幅な改正、保護強化を打ち出して来ており、「1.画像デザインの保護」、「2.空間デザインの保護」、「3.関連意匠制度の拡充」、「4.意匠権の存続期間の延長」、「5.複数意匠一括出願の導入」、「6.物品区分の扱いの見直し」、「7.その他」という各項目に書かれている事はどれも重要な法改正事項を含むが、ここでは、中でも大きなものと言えるだろう、「1.画像デザインの保護」、「2.空間デザインの保護」、「4.意匠権の存続期間の延長」の内容について以下簡単に紹介する。

 画像デザインの保護については、既存の意匠法の話が前提となっているので分かりにくいが、「操作画像や表示画像については、画像が物品(又はこれと一体として用いられる物品)に記録・表示されているかどうかにかかわらず保護対象とすることが適当」(第3ページ)、「他方、壁紙等の装飾的な画像や、映画・ゲーム等のコンテンツ画像等は、画像が関連する機器等の機能に関係がなく、機器等の付加価値を直接高めるものではない。これらの画像については、意匠法に基づく独占的権利を付与して保護する必要性が低いと考えられることから、保護対象に追加しないこととするべき」(同)と書かれている通りで、物品と一体となっていないような操作画像まで意匠保護の対象とするが、コンテンツ画像までは対象としないという事が書かれている。

 空間デザインの保護では、「現行意匠法の保護対象である『物品』(動産)に加え、『建築物』(不動産)を意匠の保護対象とすべき」(第5ページ)と、建築物の外観や内装まで意匠保護の対象とするとしている。

 意匠権の存続期間の延長としては、「意匠権の存続期間を20年から25年に延長すべき」(第10ページ)、「意匠権の存続期間を『登録日から20年』から、『出願日から25年』に見直すべき」と、保護期間を延長するとしている。

 特に、意匠権の保護期間延長については、報告書案の第10ページで、「意匠権の15年目現存率が、平成24年の17.3%から平成28年の22.0%へと増加していることから、意匠権を長期的に維持するニーズが高まっていることがうかがえる」、「諸外国と比較しても、欧州において、最長25年の意匠権の存続期間が認められている」と一応もっともらしい根拠も少し書かれているが、これも、本当に25年前のデザインを使う事があるのか、使う事があるとして、特許の保護期間ですら通常は20年で25年は例外的な延長の結果として認められるものに過ぎない中で、それは産業の発達のための創作保護法である意匠法で保護するべきものなのかという根本から考えるとかなり疑わしいものである。ただし、意匠権者が専有する権利は、特許と同じく、審査登録制を前提として、あくまで業として意匠の実施をする権利なので、著作権の保護期間の延長によって生じる様な問題は生じないだろう。(本報告書案の内容はともかく、意匠法の本当の問題はやはり著作権法との関係にあるのだが、そのレベルの問題の整理は極めて難しく、世界的に見ても当分進む事はないだろう。)

 特許庁が次に提出する事を考えているのだろう法改正はパブコメに掛かっている報告書案の内容の通り、意匠法中心なのだろうと思うが、特許制度小委員会商標制度小委員会も開催されており、それぞれ直近の12月25日の配布資料と12月27日の配布資料を見ると、証拠収集手続の強化や損害賠償額算定などについて検討が進められているようであり、他の事項も追加されるのかもしれない。

 経産省では、不正競争防止小委員会が11月20日に開催され、その配布資料として、限定提供データに関する指針(案)が示されている。この指針案に対するパブコメはもう締め切られているが、じきに案の取れた正式版の指針が出されるのだろう。(指針のレベルでどうこう言う事はないが、そもそもの法改正の必要性については私はいまだに疑問に思っている。)

 文化庁では、前回その報告書案に対するパブコメを載せた法制・基本問題小委員会以外にも、文化審議会・著作権分科会の下で、著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会国際小委員会が開催されている。直近の12月4日の利用・流通に関する小委員会で、配布資料として、著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会の審議の経過等について(クリエーターへの適切な対価還元関係)(案)という資料が出されており、文化庁と権利者団体は相変わらず私的録音録画補償金の対象拡大を狙っていると知れるが、金さえ取れれば後は何でもいいと言わんばかりで、徹頭徹尾意味不明の理屈をずっと捏ね回している。12月19日の国際小委員会(配布資料参照)では追及権について議論された様だが、文化庁が最終的にどうするつもりなのかは良く分からない。

 知的財産戦略本部では、検証・評価・企画委員会知的財産戦略ビジョンに関する専門調査会が開催されており、各種タスクフォースも開催されているが、来年の知財計画がどうなるのか、ブロッキング問題について知財本部として今後どうするつもりなのかは良く分からない状況である。

 今年は知財本部における著作権ブロッキングの検討が止まった事はかろうじて良かった事の一つとしてあげられるが、本来必要のなかったはずの著作権保護期間延長がTPP関連と称して不合理極まる形で国会を通されて施行されてしまうなど、ここ10年ほどの間で知財政策上悪い意味で大きなターニングポイントとなってしまった年として後世評価される事になるだろう。だからと言って私は諦めるつもりもない。今年も非道い一年だったが、政官業に巣食う全ての利権屋に悪い年を、このブログを読んで下さっている方々に心からの感謝を。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2018年12月27日 (木)

第402回:文化庁・著作権分科会・法制・基本問題小委員会中間まとめに対する提出パブコメ

 前回取り上げた、文化庁の法制・基本問題小委員会の中間まとめに関する意見募集(電子政府のHP、文化庁のHP参照。2019年1月6日〆切。)について、以下のような意見を出したので、内容はほとんどいつも書いていることの繰り返しだが、念のため、ここに載せておく。前回も書いた通り、文化庁がどこまで意見を聞く気があるのか疑問ではあるが、このような著作権問題に関心のある方は是非意見を出す事をお勧めする。

(1)リーチサイト等を通じた侵害コンテンツへの誘導行為への対応について

①意見提出対象の区分:A:リーチサイト等を通じた侵害コンテンツへの誘導行為への対応

②賛成/反対:反対

③御意見(2000字以内):

 現行現行の著作権法における民事の間接侵害(カラオケ法理)あるいは刑事の著作権侵害幇助との関係整理をおざなりにした、著作権侵害コンテンツへのリンク行為に対するみなし侵害規定の追加及び刑事罰付加に反対する。

 本当に悪質な場合について現行法で不十分というところがあれば、その点について立法による対処も当然あり得るだろうが、本中間まとめを読んでも、権利者団体の一方的かつ曖昧な主張が並べられているだけで、権利者団体側がリーチサイト等に対して現行法に基づいてどこまで何をしたのか、現行法による対処に関する定量的かつ論理的な検証は何らされておらず、本当にどのような場合について現行法では不十分なのかは全く不明である。

 例えば、本中間まとめの第12ページでロケットニュース事件やリツイート事件を取り上げているが、これらの事件はニュースサイトやツイッターの様なSNSサイトにおけるリンク行為を取り扱ったものであって、いわゆるリーチサイトとは性質を異にすると考えるべきものである。カラオケ法理に関してはネットワークを通じた提供を含めて各種の民事での判例があり、著作権侵害幇助に関する刑事事件もあるのであって、本中間まとめは判例と現行法の解釈についての分析すら不十分であると言わざるを得ない。さらに言えば、ここで本当に問われるべきは、権利者団体が悪質なケースがあると主張しているにもかかわらず、その悪質なリーチサイトに対して何故いまだに民事・刑事での明確な裁判例が積み重なっていないのかということであろう。

 さらに、このような間接侵害あるいは幇助の検討において当然必要とされるはずのセーフハーバーの検討も極めて不十分であって、インターネット利用における民事・刑事のリスクに関する不確実性を増すだけである、このような不十分な検討に基づくリンク行為へのみなし侵害規定の追加及び刑事罰付加に私は断固反対する。

 今現在、カラオケ法理の適用範囲がますます広く曖昧になり、間接侵害や著作権侵害幇助のリスクが途方もなく拡大し、甚大な萎縮効果・有害無益な社会的大混乱が生じかねないという非常に危険な状態がなお続いている。間接侵害事件や著作権侵害幇助事件においてネット事業者がほぼ直接権利侵害者とみなされてしまうのでは、プロバイダー責任制限法によるセーフハーバーだけでは不十分である。本中間まとめにおけるこの部分は全て白紙に戻し、間接侵害や著作権侵害幇助罪も含め、間接侵害や刑事罰・著作権侵害幇助も含め、著作権侵害とならない範囲を著作権法上きちんと確定し、著作権法へセーフハーバー規定を導入することのみを速やかに検討するべきである。

(2)ダウンロード違法化の対象範囲の見直しについて

①意見提出対象の区分:B:ダウンロード違法化の対象範囲の見直し

②賛成/反対:反対

③御意見(2000字以内):

 ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大に反対する。

 本中間まとめの第47ページから、諸外国における取り扱いについて書かれており、ドイツ、フランス、カナダ、アメリカ、イギリスの条文等を載せ、これらの国でダウンロード違法化がされており、効果が上がっているような印象操作がされているが、アップロードとダウンロードを合わせて行うファイル共有サービスに関する事件を除き、どの国においても単なるダウンロード行為を対象とする民事、刑事の事件は1件もなく、日本における現行の録音録画に関するダウンロード違法化・犯罪化も含め、このような法制が海賊版対策として何の効果も上がっていないことは明白である。

 本中間まとめの第47ページの注41で、平成25年12月の調査を引用しているが、この調査は文化庁と権利者団体中心のお手盛り調査であって何ら信頼に足るものではない。ファイル共有ソフトのノード数の減少はダウンロード犯罪化の運用が不明な中での一時的な現象であろうし、政府の委託調査で広くアンケートを取り違法行為をしているかと聞けば控えたと答えるに決まっているのでそのような回答の傾向はユーザーの行動の実態を表しているとは言えない。この様なお手盛り調査の我田引水は論外であるが、ダウンロード違法化・犯罪化がされた当時と比較して音楽と映像に関して違法にアップロードされている著作物のダウンロードは減っているのではないかとも思うが、それは単にストリーミングサービスも含めて利便性の高い正規のサービスが充実して来たことの結果に過ぎず、ここでダウンロード違法化・犯罪化がほとんど何の役にも立ってない事は日本のみならず世界的に同じ傾向が見られる事からも明らかであろう。

 本中間まとめの第56ページで権利者団体側の一方的な主張に基づき被害額を試算して被害が甚大であるかのような印象操作がされているが、これも一方的な主張に過ぎず、送信可能化・アップロードとの関係でダウンロードによる損害額がどう算定されるのかすら分からない中、推定に推定を重ねたアクセス数に著作物の単価を掛けるような試算は乱暴の極みと言うほかなく真摯な立法論の基礎とするに足るものでは全くない。

 違法サイトかどうか利用者からは区別がつかないという事はダウンロード違法化・犯罪化の議論当初から問題にされており、当時音楽団体がエルマークを持ち出したと記憶しているが、本中間まとめの第68ページで言及されている、出版社の「ABJマーク」なども、残念ながら、上の平成25年の文化庁委託調査ですら認知度が低い事が示されており、その後も認知が進んでいるとは到底思えない音楽団体のエルマークと全く同じ道を辿る事であろう。

 さらに言えば、このようなダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大は、研究など公正利用として認められるべき目的のダウンロードにも影響する。

 すなわち、何ら合理的な根拠もなく、結論ありきでダウンロード違法化・犯罪化の範囲の拡大を正当化している、本中間まとめにおけるこの部分は全て白紙に戻すべきである。

 過去の意見募集においても繰り返しているが、一人しか行為に絡まないダウンロードにおいて、「事実を知りながら」なる要件は、エスパーでもない限り証明も反証もできない無意味かつ危険な要件であり、技術的・外形的に違法性の区別がつかない以上、このようなダウンロード違法化・犯罪化は法規範としての力すら持ち得ず、罪刑法定主義や情報アクセス権を含む表現の自由などの憲法に規定される国民の基本的な権利の観点からも問題がある。このような法改正によって進むのはダウンロード以外も含め著作権法全体に対するモラルハザードのみであり、今のところ幸いなことに適用例はないが、これを逆にねじ曲げてエンフォースしようとすれば、著作権検閲という日本国として最低最悪の手段に突き進む恐れしかない。過去の文化庁へのパブコメ(文化庁HPhttp://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hokoku.htmlの意見募集の結果参照)や知財本部へのパブコメ(知財本部のHPhttp://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keikaku2009.htmlの個人からの意見参照)等を完全に無視して行われたものであり、さらなる有害無益な規制強化・著作権検閲にしか流れようの無い、百害あって一利ないダウンロード違法化・犯罪化を規定する著作権法第30条第1項第3号及び第119条第3項の削除を速やかに行うべきである。

(3)アクセスコントロール等に関する保護の強化について

①意見提出対象の区分:B:ダウンロード違法化の対象範囲の見直し

②賛成/反対:反対

③御意見(2000字以内):

 不正競争防止法と著作権法による二重保護の問題やDRM保護のそもそもの必要性について本来なされるべき検討もせずに行われようとしている、2つの法律の条文の辻褄合わせのような法改正のための法改正に反対する。

 経済産業省の産業構造審議会知的財産分科会不正競争防止小委員会において2018年1月にとりまとめられた「データ利活用促進に向けた検討中間報告」において書かれたDRM回避規制強化のための法改正を是とするに足る立法事実の変化はなく、このような法改正のための法改正はされるべきではなかったものである。

 このような無意味なDRM規制強化の検討は全て白紙に戻し、今ですら不当に強すぎるDRM規制の緩和のための検討を不正競争防止法と合わせ速やかに開始するべきである。

 特に、DRM回避規制に関しては、有害無益な規制強化の検討ではなく、まず、私的なDRM回避行為自体によって生じる被害は無く、個々の回避行為を一件ずつ捕捉して民事訴訟の対象とすることは困難だったにもかかわらず、文化庁の片寄った見方から一方的に導入されたものである、私的な領域でのコピーコントロール回避規制(著作権法第30条第1項第2号)の撤廃の検討を行うべきである。コンテンツへのアクセスあるいはコピーをコントロールしている技術を私的な領域で回避しただけでは経済的損失は発生し得ず、また、ネットにアップされることによって生じる被害は公衆送信権によって既にカバーされているものであり、その被害とDRM回避やダウンロードとを混同することは絶対に許されない。それ以前に、私法である著作権法が、私的領域に踏み込むということ自体異常なことと言わざるを得ない。また、同時に、何ら立法事実の変化がない中、ドサクサ紛れに通された、先の不正競争防止法改正で導入されたDRM回避規制の強化や、TPP関連として入れられたものも含め以前の著作権法改正で導入されたアクセスコントロール関連規制の追加についても、速やかに元に戻す検討がなされるべきである。

(4)その他

①意見提出対象の区分:G:A~F以外

②賛成/反対:反対

③御意見(2000字以内):

 著作権の保護期間の延長について元に戻す事を求めるとともに、私的録音録画補償金の対象範囲の拡大に反対し、一般フェアユース条項の導入を求める。

 TPP11協定の発効に合わせて著作権の保護期間の延長が今まさに施行されようとしているが、TPP11協定では保護期間の延長は凍結されたのであって、この保護期間の延長は本来必要ではなかったものである。このように何ら国民的なコンセンサスを得ることもないまま、不合理ななし崩しの法改正により甚大な国益の喪失をもたらした事について私は日本政府を強く非難する。

 日EU(欧)EPA協定にも著作権の保護期間の延長は含まれているが、これもTPP協定同様の姑息かつ卑劣な秘密交渉で決められたものであって、著作権の保護期間の延長の様に国益の根幹に関わる点について易々と譲歩して協定を発効させようとしているなど、日本政府は完全に国民をバカにしているとしか言いようがない。この日EU(欧)EPA協定に含まれる著作権の保護期間の延長にも私は反対する。

 このように何ら国民的なコンセンサスを得ることもないまま、不合理ななし崩しの法改正あるいは秘密の条約交渉によってなされた著作権の保護期間の延長については必要な法改正及び条約改定によって元に戻す事を検討するべきである。

 また、別の委員会で検討されている事であるが、私的録音録画補償金問題について、補償金のそもそもの意味を問い直すことなく、今の補償金の矛盾を拡大するだけの私的録音録画補償金の対象拡大を絶対にするべきではなく、私的録音録画補償金の対象範囲の拡大にも私は反対する。

 そして、ユーザーに対する意義からも、アメリカ等と遜色ない形で一般フェアユース条項を可能な限り早期に導入するべきである。特に、インターネットのように、ほぼ全国民が利用者兼権利者となり得、考えられる利用形態が発散し、個別の規定では公正利用の類型を拾い切れなくなるところでは、フェアユースのような一般規定は保護と利用のバランスを取る上で重要な意義を持つものである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年12月10日 (月)

第401回:ダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大とリーチサイト規制(リンク規制)の法制化を含む文化庁・著作権分科会・法制・基本問題小委員会中間まとめに関する意見募集の開始(2019年1月6日〆切)

 最後の12月7日の文化審議会・著作権分科会・法制・基本問題小委員会の資料がまだ文化庁のHPにアップされていないが、先日から報道されている通り、文化庁の法制・基本問題小委員会の中間まとめが2019年1月6日〆切でパブコメにかかった。(電子政府のHP、文化庁のHP参照。)

 文化庁の今回の中間まとめはダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大とリーチサイト規制(リンク規制)の法制化を含むものであって、インターネットにおける情報・表現の自由に非常に大きな影響を及ぼす可能性のあるものであり、ここでも、その内容を見て行きたいと思う。

 この中間まとめ(pdf)の章立ては、「第1章 リーチサイト等を通じた侵害コンテツへの誘導行為への対応」、「第2章 ダウンロード違法化の対象範囲の見直し」、「第3章 アクセスコントロール等に関する保護の強化」、「第4章 著作権等侵害訴訟における証拠収集手続の強化」、「第5章 著作物等の利用許諾に係る権利の対抗制度の導入」、「第6章 行政手続に係る権利制限規定の見直し(地理的表示法・種苗法関係)」、「第7章 その他(改正著作権法第47条51項3号規定に基づく政令ニーズ)」となっており、第7章を除いてそれぞれ全て法改正事項として書かれており、以下で順に取り上げて行くが、中でも「リーチサイト等を通じた侵害コンテツへの誘導行為対応」、「ダウンロード違法化の対象範囲見直し」は問題が大きく、「アクセスコントロール等に関する保護の強化」はそれに次ぐと言っていいだろう。(なお、これらは意見募集要領(pdf)ではA~Gの区分とされている。)

(1)リーチサイト規制(リンク規制)の法制化
 まず第1章のリーチサイト等を通じた侵害コンテツへの誘導行為への対応は第2ページから始まるが、権利者団体のリーチサイトについてどこまで現行法による対応を真剣に試みたのか不明な規制強化ありきの主張と、消費者団体等のリンク規制には慎重であるべきとする主張が両論併記の形で並べられた後、第22ページからの検討結果から、リーチサイト規制(リンク規制)の法改正のポイントとなるだろう部分を抜き出して行くと以下のようになる。

(1)民事(差止請求について)(第22ページ~)
ア.総論(略)

イ.場・手段について:「差止請求の対象とするべき『場・手段』は,社会通念上いわゆる『リーチサイト』・『リーチアプリ』として認知されているような,類型的に侵害コンテンツの拡散を助長する蓋然性が高い悪質なものに限定することが適当」(第24ページ)

ウ.主観について:「侵害コンテンツであることへの認識に関し一定の主観要件を課すことが適当」、「具体的には,『違法にアップロードされた著作物と知っている場合,又はそう知ることができたと認めるに足る相当の理由がある場合』等として,侵害コンテンツであることについて故意・過失が認められる場合に限定することが適当」(第24ページ)

エ.行為について:「実質的に侵害コンテンツへの到達を容易に行えるようにする情報の提供等と評価できる行為であれば,これを差止請求の対象とすること(が)適当」(第26ページ等)

オ.対象著作物について
ⅰ 有償著作物等への限定を行うべきか否かについて:「限定を行わないこととするのが適当」(第27ページ)
ⅱ いわゆるデッドコピー等への限定を行うべきか否かについて:「オリジナルの著作物の相当部分をそのまま利用しているようなケースについては差止めの対象とするべきという考え方を基本としつつ,具体的な制度設計に当たっては,差し当たり緊急に対応する必要性の高い悪質な行為類型への対応という今般の制度整備の考え方,対象範囲を限定することによる潜脱のおそれ,対象範囲の限定の仕方が明確でない場合には萎縮効果を生じるおそれがあること,立法技術上の対応可能性なども踏まえ,どのような形で対象を規定するのが妥当かについて検討が行われることが適当」(第29ページ)
ⅲ 国外における侵害コンテンツの取扱い:「国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものに係るリンク情報等についても差止請求の対象とすることが適当」(第29ページ)

カ.その他の要素(正当な目的を有する場合の取扱い等)について:「具体的な制度設計に当たり,場・手段に関する要件の設定の仕方も念頭において,そうした場等において行われる侵害コンテンツへのリンク情報等の提供をする行為のうち差止めの対象外とするべきケースとしてどのようなものがあるかを検討した上で,場・手段の要件の内容も踏まえて特別な除外規定の要否の判断が行われることが適当」(第30ページ)

キ.リーチサイト運営者に対する差止請求について
ⅰ 個々の著作物に係るリンク情報等の提供行為に関する差止請求について:「リーチサイト運営者の個々のリンク情報等に関する責任についての立法的な対応の当否については,以上の点を勘案して検討が行われる必要がある」(第31ページ)
ⅱ リーチサイト運営行為そのものに関する差止請求について:「サイト運営の差止めを請求する権利を個々の権利者に付与することは過剰差止めとなるおそれがあること,及びサイトの中に含まれる適法な情報との関係でも過剰差止めの問題が生じることから,慎重な検討が必要」(第32ページ)

(2)刑事について(第32ページ~)
ア.新たな罰則を設ける必要性について(略)

イ.具体的な制度設計について
ⅰ リーチサイト・リーチアプリ等におけるリンク情報の提供行為に係る罰則:「みなし侵害になるようなリーチサイト等の侵害コンテンツを拡散する蓋然性の高い場等において侵害コンテンツのリンク情報等を提供する行為は,悪質性が強いと認められ,抑止効果が生じるようにすることが適当」(第33ページ)
ⅱ リーチサイト運営・リーチアプリ提供行為に係る罰則:「リーチサイトやリーチアプリといった,侵害コンテンツへの到達を容易にすることによって侵害コンテンツを拡散する蓋然性の高い場の運営や手段の提供を行うことは,個々のリンク情報等の提供を行う者との比較において,違法行為を助長する度合いがより大きく,社会総体として見たときに著作権者により深刻な不利益を及ぼしていると評価できることから,個々の著作物等に係るリンク情報等の提供行為とは独立して,社会的な法益侵害を及ぼすものとして,罰則の対象とするべき」(第33ページ)
ⅲ 法定刑について:「現行著作権法における罰則の法定刑の考え方との整合性に留意しつつ,今般創設する各罰則の法益侵害の度合いに照らして適切な法定刑が検討されることが適当」(第34ページ)

 第35ページ以降の「インターネット情報検索サービスへの対応について」で、「現時点において直ちに立法的対応の検討を進めることはせずに,まずは当事者間の取組みの状況を見守ることとし,協議が一定程度進捗した段階で進捗状況等の報告を受け,必要に応じ対応を検討していくことが適当」(第42ページ)とされているので、検索エンジンについて特別な法改正がされることはなく、また、「最初の対応に当たっての基本的な考え方」で「海賊版蔵置サイトやリーチサイトのような場以外の場(例えば個人が一般的な言論活動を行うことを目的として開設しているSNSのアカウント等)において行われる表現の中に侵害コンテンツのリンク情報が単発的に含まれているようなケースについては,(ゲーム関係者から要望のあった汎用的なUGCサイトにおける事案も含め)その被害実態が必ずしも明らかではない。したがって,正当な表現行為の萎縮が生じないよう,こうした場における表現行為は今般の法的措置の対象とはしないこととし,当該行為に対する差止請求の可否については,引き続き現行法の解釈・運用に委ねることとすることが適当」(第23ページ)と書かれていることにも注意しておくべきだろうが、上で抜き出した部分をまとめると、良く分からない部分も多いものの、文化庁がリーチサイト規制(リンク規制)として考えている法改正は、著作権法第113条のみなし侵害規定の項の一つとして以下のようなものを追加し、合わせて刑事罰も付加しようとするものではないかと思える。(いつものことだが、報告書だけで具体的な条文案をつけない役所のやり方は卑怯という他なく、以下はあくまでダウンロード違法化や検索エンジンの例外などの条文から私が類推したものである。)

著作権又は著作隣接権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)に係る送信元識別符号(注:リンク情報)等を、その事実を知りながら又はそう知ることができたと認めるに足る相当の理由がある場合に、その著作権の侵害を助長する蓋然性が高い方法により、提供する行為は、それらの著作権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。

 このようなリーチサイト規制(リンク規制)の法制化は一応それらしく限定されているようにも読めるが、ここでの最大の問題点は、この文化庁の検討が生煮えもいいところであって、本来先に検討するべき現行の著作権法における民事の間接侵害(カラオケ法理)あるいは刑事の著作権侵害幇助との関係整理を投げ捨てて、みなし侵害規定の追加ありきで法制化を考えている点である。本当に悪質な場合について現行法で不十分というところがあれば、立法による対処も当然あり得るだろうが、本当にどのような場合について現行法では不十分なのか残念ながら報告書を読んでも良く分からず、このような間接侵害あるいは幇助の検討において当然必要とされるはずのセーフハーバーの検討も極めて不十分であって、このような生煮えの検討に基づくみなし侵害規定の追加は、インターネット利用における民事・刑事のリスクに関する不確実性が増すだけと私には思える。

(2)ダウンロード違法化・犯罪化の範囲の拡大
 そのインターネット上の海賊版対策に関する検討会議が頓挫したことから、知財本部が急いで文化庁にねじ込んだためだろうが、次の第43ページからの第2章ダウンロード違法化の対象範囲の見直しとなるとさらに生煮えの感が高まる。

 この点について他の国の状況が何ら参考にならないことはここで繰り返し書いて来ており、日本でも現行の録音録画に関するダウンロード違法化・犯罪化について海賊版対策として何ら効果が上がっていないことは明白だと思うが、文化庁はこの報告書で取ってつけた様に各国でダウンロード違法化がされており、効果が上がっているような印象操作を書いて、第66ページで「録音・録画と同様の要件の下,対象範囲を著作物全般に拡大していくことについては相当程度の合理性が認められる」、第67ページで「対象範囲の拡大に当たっても,抑止効果を確保する観点から,同様に,有償で提供・提示されたものに限って刑事罰を科すことが適当」と、結論ありきでダウンロード違法化・犯罪化の範囲の拡大を正当化しているのである。

 第66ページには、「具体的な対象範囲の在り方としては,録音・録画と同様の要件の下,対象範囲を著作物全般に拡大していくことを基本としつつ,並行してパブリックコメント等を通じて,事務局において引き続きユーザー保護が必要となる事例の有無について更なる検証を進めることが適当である。仮に,その中で,ユーザー保護の必要性・正当性が明らかな事例等が確認された場合には,それに即して,上記(4)で示した選択肢も参考に,悪影響が生じない形での限定方法を検討の上,立法措置に反映させることが適当であると考えられる」と、あたかもパブリックコメントで集めた意見を取り上げるかのような記載もあるが、拡大の結論ありきで報告書が書かれ、ほとんど大した根拠もなく「対象範囲を著作物全般に拡大していくことを基本」とすると決めつけているところで、広く集めた意見を本当にきちんと取り上げる気があるのか甚だ疑わしい。

(ダウンロード犯罪化の拡大については、TPP11関連法で導入される一部非親告罪化との関係も問題となるが、第68ページの「ダウンロード違法化に係る刑事罰については,全て親告罪のまま維持することが適当」ということはあまりにも当然の事でしかない。)

 このダウンロード違法化・犯罪化の対象範囲の拡大について、また昔のように大量のパブコメが提出される事を恐れてか、文化庁らしくもなく、「ダウンロード違法化の対象範囲の見直し」に関する留意事項(pdf)という参考資料がついており、「パブリックコメントに意見を提出いただく前に、必ず御一読ください」という文章とともに、「ダウンロード違法化に関して(中略)ダウンロード型の海賊版サイト等も多数存在しており、それらのサイトによる被害の拡大を防止するための措置として一定の効果が見込めるもの」だとか、「ダウンロード違法化についても(中略:海賊版対策の)手法の一つとして有効かつ重要なもの」だとか、「単に視聴・閲覧する行為は違法となりません」だとか、「視聴・閲覧に伴うキャッシュやプログレッシブダウンロードについても、著作権法第47条の8(平成30年改正後は第47条の4第1項)により適法となります」だとか、「特定少数者間でのメール送信や、個人が使用するクラウドロッカーからの送信等は含まれません」だとか、「ウェブサイトに掲載されたテキスト・画像をプリントアウトする行為や、そこでプリントアウトされたものを更にPDF化してコンピュータに保存する行為は違法とはなりません」だとか、「『複製』とは、手段を問わず著作物を有形的に再製することを指すものですので、右クリックによる保存のほか、スクリーンショット等も対象に含まれます」だとか、「『違法か適法か判断がつかなかった』、『通常であれば、違法だと当然に知っているべき状況だったが、本人は知らなかった』等の場合には、違法となりません」だとか、くどくど書いているが、私はこんなところで誤解などしていないし、今まで文化庁関連のパブコメの結果は十年以上見て来ているが、昔も今も全くないとまでは言わないが、このような基本的なところで誤解して出されている意見はそこまで多く見かけるものではない。

(3)アクセスコントロール等に関する保護の強化
 上の2つに比べると、法改正としては小さい話だが、第70ページからの第3章アクセスコントロール等に関する保護の強化も問題がある。

 細かな条文に関する話は省略するが、ここで書かれているのは、以下の通り、要するに不正競争防止法の技術的制限手段の規制と著作権法の技術的利用制限手段(前は技術的保護手段)の規制を合わせようとするものである。

・「著作権法においても,定義規定の文言上の疑義により近時のソフトウェアの不正使用の態様に適切な対応ができない状況が生じるのは望ましくないと考えられることから,『技術的利用制限手段』の定義規定における『・・とともに』という文言を削除し,アクティベーション方式が含まれることを明確化することが適当」(第73ページ)

・「不正なシリアルコード(指令符号)の提供等は,回避装置・プログラムの提供等と同様に,多くのユーザーによる技術的利用制限手段の回避行為を助長する悪質な行為であり,正規のライセンス購入を減少させ,当該ソフトウェア等の著作権者の経済的利益を不当に害するものであることから,著作権法においても,著作権者の経済的利益の保護に万全を期す観点から,新たに規制対象とすることが適当」(第75ページ)

 既に不正競争防止法の改正が成立しているので、このような法改正の提案は予想されたこととはいえ、私は不正競争防止法やTPP11関連法によるDRM規制の強化にも反対であり、不正競争防止法と著作権法による二重保護の問題やDRM保護のそもそもの必要性についてなされるべき検討もせずに、このような2つの法律の条文の辻褄合わせのような改正には全く賛成できない。

(4)その他
 その他の話はマニアックでかつ特に大きな問題がある訳ではないので、ポイントの抜粋だけに留めるが、第81ページからの第4章著作権等侵害訴訟における証拠収集手続の強化では、今年の不正競争防止法や特許法等の改正に合わせ、「『文書提出命令の申立ての対象書類等が侵害立証・損害額計算のために必要な書類であるか否かを判断する場合』にもインカメラ手続を用いることができるよう見直しを行うのが適当」(第85ページ)、「インカメラ手続に専門委員を関与させることができるよう見直しを行うのが適当」(第86ページ)とされ、第87ページからの第5章著作物等の利用許諾に係る権利の対抗制度の導入では、ライセンスの対抗要件として登録を求めない「対抗要件を要することなく当然に対抗できることとする制度(当然対抗制度)を導入することが妥当」(第108ページ)(平成23年特許法改正に対応するもの)とされ、第135ページからの第6章行政手続に係る権利制限規定の見直し(地理的表示法・種苗法関係)では、「地理的表示法に基づく審査手続や種苗法に基づく審査手続・調査手続において,必要と認められる限度で行われる著作物の複製を権利制限の対象とすることが適当」(第144ページ)(特許庁での手続きについて平成18年著作権法改正で対応されていることから、それに続くもの)とされている。

 ざっと読んだだけだが、この文化庁の報告書に含まれているものの中でも、リーチサイト規制(リンク規制)の法制化とダウンロード違法化・犯罪化の範囲の拡大の問題は非常に大きく、私は今回のパブコメも提出するつもりである。

(2018年12月12日夜の追記:幾つか誤記を直した。)

(2018年12月13日夜の追記:文化庁のHPにも中間まとめに対する意見募集の案内が掲載されていたので上でリンクを追加した。)

(2018年12月30日夜の追記:技術的制限手段は定義として技術的保護手段の次に入れられるもので(このTPP関連として入れられたアクセスコントロール規制の条文については第360回参照)、「技術的利用制限手段(元は技術的保護手段)」というのは少し変なのでこれを「技術的利用制限手段(前は技術的保護手段)の規制」という書き方に改めた。)

| | コメント (1) | トラックバック (1)

より以前の記事一覧