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2026年5月24日 (日)

第527回:閣議決定された著作権法改正案等の条文(実演家等へのレコード演奏・伝達権の創設、デジタル教科書のための権利制限の拡充)

 この5月15日の閣議で、著作権法改正案と、著作権法の改正を含む学校教育法等改正案が決定され、文科省のHP1と、HP2でその条文等が公開されているので、ここでも念のためその内容を見ておく。

 ただ、著作権法改正案については、その概要(pdf)に改正の趣旨として、

 アーティスト等への適切な対価還元を図るとともに、音楽の海外展開の促進に繋げるため、音楽CDやインターネット配信音源等(商業用レコード等)が公の場で利用された際に、実演家・レコード製作者が二次使用料を受け取ることができる権利(「レコード演奏・伝達権」)を創設する。

と、また、改正の概要として、

1.実演家及びレコード製作者の「レコード演奏・伝達権」の創設
 公の場で音楽CDやインターネット配信音源等が利用(再生又は伝達)された場合に、実演家やレコード製作者がその二次使用料を受け取ることができることとする。(第95条の2、第95条の3、第97条の2、第97条の3の新設)
※作詞家や作曲家等の著作権者は既に権利が定められている。

2.「レコード演奏・伝達権」に係る指定団体制度の創設等(第103条の2~第103条の8の新設等)
①1.の権利について、文化庁長官が指定する団体がある場合には、その指定団体のみが権利を行使することができることとする。
②指定団体は、二次使用料の額等を記載した二次使用料規程の案を作成し、公示しなければならないこととする。
③指定団体は、二次使用料規程の案について利用者代表から協議を求められたときは応じなければならないこととし、協議が成立しないときは、文化庁長官の裁定を求めることができることとする。
④指定団体は、③の協議の求めがなかったとき、又は協議が成立し、若しくは裁定があったときは、二次使用料規程を文化庁長官に届け出るとともに、公表しなければならないこととする。

と書かれている通りで、新しい権利の創設という意味では大きい法改正といって良いが、著作隣接権者に対して公の場でのレコードの演奏等に二次使用料が受け取れる様にするというもので、一般ユーザーに対する直接的な影響はほぼないものである。

 特に上の概要の1.に対応する条文の内実演家に関する第95条の2と第95条の3をを抜き出しておくと、以下の様になる。(これらは新規条文のため全てに線を引いているが、以下線を引いた部分が追加部分である。著作権法改正案の案文(pdf)新旧対照条文(pdf)参照。また、その要綱(pdf)も参照。)

第九十五条の二 実演が録音されている商業用レコードを用いて、その実演を公に再生した者は、当該実演に係る実演家に二次使用料を支払わなければならない。

 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
 営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けずに公に再生した場合
 第百二条第一項において準用する第三十条の二から第三十条の四まで、第三十二条第一項、第三十三条第二項(同条第五項において準用する場合を含む。)、第三十三条の二第二項、第四十一条、第四十二条の三、第四十二条の四第二項、第四十六条、第四十七条の四又は第四十七条の五第一項の規定により公に再生した場合

 前条第二項及び第四項の規定は第一項に規定する実演家について、同条第三項の規定は第一項の規定により保護を受ける期間について、同条第五項の規定は第一項の二次使用料を受ける権利の行使について、それぞれ準用する。この場合において、同条第二項中「前項」とあり、及び同条第四項中「第一項」とあるのは、「次条第一項」と読み替えるものとする。

 第七十四条(第一項第四号及び第二項を除く。)及び前条第六項から第九項までの規定は、第一項の二次使用料及び前項において準用する同条第五項の団体について準用する。
5前二項に定めるもののほか、第一項の二次使用料の支払及び第三項において準用する前条第五項の団体に関し必要な事項は、政令で定める。

第九十五条の三 商業用レコードに録音されている実演のうち公衆送信されるものを受信装置を用いて公に伝達した者は、当該実演に係る実演家に二次使用料を支払わなければならない。

 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
 放送され、有線放送され、特定入力型自動公衆送信が行われ、又は放送同時配信等(放送事業者、有線放送事業者又は放送同時配信等事業者が行うものに限り、放送又は有線放送が終了した後に開始されるものを除く。次号並びに第九十七条の三第二項第一号及び第二号において同じ。)が行われるものを、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けずに公に伝達した場合
 放送され、有線放送され、特定入力型自動公衆送信が行われ、又は放送同時配信等が行われるものを、通常の家庭用受信装置を用いて公に伝達した場合
 第百二条第一項において準用する第三十条の二から第三十条の四まで、第三十一条第七項(第二号に係る部分に限る。)若しくは第九項(第二号に係る部分に限る。)、第三十二条第一項、第三十三条第二項(同条第五項において準用する場合を含む。)、第三十三条の二第二項、第三十五条第一項、第四十一条、第四十一条の二第二項、第四十二条、第四十二条の二第二項、第四十二条の三、第四十二条の四第二項、第四十六条、第四十七条の四又は第四十七条の五第一項の規定により公に伝達した場合

 第九十五条第二項及び第四項の規定は第一項に規定する実演家について、同条第三項の規定は第一項の規定により保護を受ける期間について、同条第五項の規定は第一項の二次使用料を受ける権利の行使について、それぞれ準用する。この場合において、同条第二項中「前項」とあり、及び同条第四項中「第一項」とあるのは、「第九十五条の三第一項」と読み替えるものとする。

 第七十四条(第一項第四号及び第二項を除く。)及び第九十五条第六項から第九項までの規定は、第一項の二次使用料及び前項において準用する同条第五項の団体について準用する。

 前二項に定めるもののほか、第一項の二次使用料の支払及び第三項において準用する第九十五条第五項の団体に関し必要な事項は、政令で定める。

 これは、非営利無償の場合や放送その儘流す場合、その他の権利制限・例外に該当する場合などを除き、音源の二次利用について実演家等に報酬請求権を与えるという事をその通り書いていると言って良い。

 第522回で取り上げた対応する文化庁の政策小委員会報告書で書かれていた事に、デジタル教科書のための権利制限の拡充があるが、これは、学校教育法等改正案の概要(pdf)の著作権法に関する部分で、

4.著作権法の一部改正
○デジタルな形態を含む新たな教科書の発行・使用等に伴い、音楽や動画を含む著作物等の公衆送信等の利用に係る権利制限の拡充等の措置を講ずる。【第33条、第33条の2、第102条関係】

と書かれている通り、デジタル形態の教科書も教科書とする学校教育法等改正案の方に含まれている。

 これも著作権法改正に関する主要な第33条と第102条に関する部分を抜き出しておくと、以下の様になる。(学校教育法等改正案の案文(pdf)新旧対照条文(pdf)参照。また、その要綱(pdf)も参照。)

(教科用図書等への掲載)(教科書等への掲載等)
第三十三条 公表された著作物は、学校教育の目的上必要と認められる限度において、教科用図書教科書(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第三十四条第一項(同法第四十九条、第四十九条の八、第六十二条、第七十条第一項及び第八十二条において準用する場合を含む。)に規定する教科用図書教科書をいう。以下この条及び次条において同じ。)に掲載することができる。

 前項第一項の規定により著作物を教科用図書教科書に掲載する者は、その旨を著作者に通知するとともに、同項の規定の趣旨、著作物の種類及び用途、前項の規定による著作物の利用の態様及び利用状況、通常の使用料の額その他の事情を考慮して文化庁長官が定める算出方法により算出した額の補償金を著作権者に支払わなければならない。

 教科書に掲載された著作物は、義務教育諸学校の教科書等の無償措置に関する法律(昭和三十八年法律第百八十二号)第十三条の規定による教科書の採択、教科書の発行に関する臨時措置法(昭和二十三年法律第百三十二号)第二条第二項に規定する発行その他これらに準ずる行為として文部科学省令で定めるもの又は学校教育の目的上必要な教科書としての通常の使用(営利を目的としないものに限る。)に伴つて、必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

 (略)

 前三項前各項の規定は、高等学校(中等教育学校の後期課程を含む。)の通信教育用学習図書及び教科用図書教科書に係る教師用指導書(当該教科用図書教科書を発行する者の発行に係るものに限る。)への著作物の掲載並びにその掲載された著作物の利用について準用する。

(教科用図書代替教材への掲載等)
第三十三条の二 教科用図書に掲載された著作物は、学校教育の目的上必要と認められる限度において、教科用図書代替教材(学校教育法第三十四条第二項又は第三項(これらの規定を同法第四十九条、第四十九条の八、第六十二条、第七十条第一項及び第八十二条において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定により教科用図書に代えて使用することができる同法第三十四条第二項に規定する教材をいう。以下この項及び次項において同じ。)に掲載し、及び教科用図書代替教材の当該使用に伴つていずれの方法によるかを問わず利用することができる。

 前項の規定により教科用図書に掲載された著作物を教科用図書代替教材に掲載しようとする者は、あらかじめ当該教科用図書を発行する者にその旨を通知するとともに、同項の規定の趣旨、同項の規定による著作物の利用の態様及び利用状況、前条第二項に規定する補償金の額その他の事情を考慮して文化庁長官が定める算出方法により算出した額の補償金を著作権者に支払わなければならない。

 文化庁長官は、前項の算出方法を定めたときは、これをインターネットの利用その他の適切な方法により公表するものとする。

(著作隣接権の制限)
第百二条 第三十条第一項(第四号を除く。第九項第一号第八項第一号において同じ。)、第三十条の二から第三十二条第三十三条の二まで、第三十五条、第三十六条、第三十七条第三項、第三十七条の二(第一号を除く。次項において同じ。)、第三十八条第二項及び第四項、第四十一条から第四十三条まで、第四十四条(第二項を除く。)、第四十六条から第四十七条の二まで、第四十七条の四並びに第四十七条の五の規定は、著作隣接権の目的となつている実演著作隣接権の目的となつている実演、レコード、放送又は有線放送の利用について準用し、第三十条第三項及び第四十七条の七の規定は、著作隣接権の目的となつている実演著作隣接権の目的となつている実演又はレコードの利用について準用し、第三十三条から第三十三条の三までの規定は、著作隣接権の目的となつている放送又は有線放送の利用について準用し、第四十四条第二項の規定は、著作隣接権の目的となつている実演著作隣接権の目的となつている実演、レコード又は有線放送の利用について準用する、それぞれ準用する。この場合において、第三十条第一項第三号中「自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信」とあるのは「送信可能化(国外で行われる送信可能化」と、「含む。)」とあるのは「含む。)に係る自動公衆送信」と、第三十三条第三項中「その旨を著作者」とあるのは「実演を利用する場合にあつてはその旨を実演家」と、第四十四条第一項中「第二十三条第一項」とあるのは「第九十二条第一項、第九十二条の二第一項、第九十六条の二、第九十九条第一項又は第百条の三」と、同条第二項中「第二十三条第一項」とあるのは「第九十二条第一項、第九十二条の二第一項、第九十六条の二又は第百条の三」と、同条第三項中「第二十三条第一項」とあるのは「第九十二条の二第一項又は第九十六条の二」と読み替えるものとする。

 前項において準用する第三十二条、第三十三条第一項(同条第四項若しくは第二項(これらの規定を同条第五項において準用する場合を含む。)、第三十三条の二第一項、第三十三条の三第一項若しくは第二項、第三十七条第三項、第三十七条の二、第四十一条の二第一項、第四十二条、第四十二条の二第一項若しくは第四十七条の規定又は次項若しくは第四項の規定により実演若しくはレコード又は放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像(以下「実演等」と総称する。)を複製する場合において、その出所を明示する慣行があるときは、これらの複製の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、その出所を明示しなければならない。

 第三十三条の三第一項の規定により教科用図書に掲載された著作物を複製することができる場合には、同項の規定の適用を受けて作成された録音物において録音されている実演又は当該録音物に係るレコードを複製し、又は同項に定める目的のためにその複製物の譲渡により公衆に提供することができる。

 (略)

 次に掲げる者は、第九十一条第一項、第九十六条、第九十八条又は第百条の二の録音、録画又は複製を行つたものとみなす。
 第一項において準用する第三十条第一項、第三十条の三、第三十一条第一項第一号、第二項第一号、第四項、第七項第一号若しくは第九項第一号、第三十三条第二項(同条第五項において準用する場合を含む。)、第三十三条の二第一項、第三十三条の三第一項若しくは第四項第二項若しくは第五項、第三十五条第一項、第三十七条第三項、第三十七条の二第二号、第四十一条、第四十一条の二第一項、第四十二条、第四十二条の二第一項、第四十二条の三、第四十二条の四、第四十三条第二項、第四十四条第一項から第三項まで、第四十七条第一項若しくは第三項、第四十七条の二又は第四十七条の五第一項に定める目的以外の目的のために、これらの規定の適用を受けて作成された実演等の複製物を頒布し、又は当該複製物によつて当該実演、当該レコードに係る音若しくは当該放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像の公衆への提示を行つた者
 (略)
 第三十三条の三第一項又は第三十七条第三項に定める目的以外の目的のために、第三項若しくは第四項の規定の適用を受けて作成された実演若しくはレコードの複製物を頒布し、又は当該複製物によつて当該実演若しくは当該レコードに係る音の公衆への提示を行つた者

 これも条文の引用が多くややこしいが、要するにデジタル教科書に対応し、実演等に関する著作隣接権も上の教科書用の権利制限の対象とするというものである。

 審議会報告書について第522回で書いた通り、私自身は、著作隣接権は、創作者に類する実演家の権利以外、全面的廃止も含めて検討をした方がいいと思っているが、今現在の著作隣接権の構成を前提とした時に、レコード演奏・伝達権の創設については消極的ながら賛成という意見であり、教科書についてもデジタル化の流れは不可避であって、そのための権利制限の拡充もして然るべきものと考えている。

 それにしても、上の条文を見ても、権利制限を作る場合に常に狭く使いづらいものとして来た文化庁の弊害に、法改正の上に法改正を積み重ねることが合わさり、著作権法の条文は余りにも複雑に過ぎる。権利制限の範囲の狭い広いとは別の問題だが、全体的にもう少し一般的に分かり易く書き下せないのかと常に思う所である。

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