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2024年10月14日 (月)

第503回:主要政党の2024年衆院選公約案比較(知財政策・情報・表現規制関連)

 3年ぶりの衆院選が10月15日公示、10月27日投開票の予定で行われる。その公約案が出揃ったので、いつもの様にその中の知財政策・情報・表現規制関連の項目を下に抜き出しておく。(大体どこの党もほぼそのまま同じものを使っているが、正式には公示日以降に公開されるものが選挙公約である。)

<自民党>
◯我が国の脅威となり得るあらゆるリスク・事象を特定した上で、先端半導体、AI、量子、バイオ等の世界経済や秩序をけん引できる先端分野における技術開発に向けた強力な投資、半導体、医薬品、電池、重要鉱物等の重要技術・物資のサプライチェーンの強靱化、経済的威圧への取組み、機微技術の管理やインテリジェンス体制の強化を図ります。

◯自由、民主主義、人権といった価値を守り、有志国と連携して法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を実現しつつ、我が国の生存、独立、繁栄を経済面から確保するために経済安全保障政策を推進します。

◯能動的サイバー防御を導入するなどサイバー安全保障分野における対応能力を欧米主要国と同等以上に向上させます。

◯ネット上の偽・誤情報や誹謗中傷などから国民を守るため、情報流通プラットフォーム対処法による対応、利用者のリテラシー向上や相談体制の充実、対策技術の研究開発など、表現の自由を最大限考慮しつつ、制度整備も含め総合的な対策を推進します。

<国民民主党>
◯防衛産業の育成・強化、能動的サイバー防御の年内法制化

(政策各論より)
◯知的財産戦略の推進

 特許や著作権など、知的財産を守り積極的に活用するため、国際的な知的財産戦略を推進します。また、國酒をはじめとする日本の食文化やアニメや漫画などのコンテンツ(クールジャパン)を海外に積極的に展開し、ソフト分野でも稼ぎ、雇用を増やす産業構造をつくります。

◯能動的サイバー防御

 従来領域(陸、海、空)において不十分であった継戦能力の確保や抗堪性の強化を抜本的に見直して整備するほか、防衛技術の進歩、宇宙・サイバー・電磁波などの新たな領域に対処できるよう専守防衛に徹しつつ防衛力を強化するため、必要な防衛費を増額します。

 サイバー安全保障を確保するために、我が国においても平時の段階からサイバー攻撃者の動向を探り、対処を行う能動的サイバー防御(アクティブ・サイバー・ディフェンス)について、能力整備と実施体制の整備を行うとともに、「サイバー安全保障基本法(仮称)」を年内に制定します。

 情報収集衛星を質・量ともにレベルアップを図るとともに、イギリスのJIC(※Joint Intelligence Committee 合同情報委員会)などを参考にしつつ、日本のインテリジェンス能力を高めます。

 安全保障上の観点から、公共インフラやカーナビ情報等の実情について調査し、所要の対策を講じます。

◯憲法
(略)
 人権分野では、憲法制定時には予測できなかった時代の変化に対応するため、人権保障のアップデートが必要です。特に人工知能とインターネット技術の融合が進む今、国際社会では個人のスコアリングと差別の問題や、国民の投票行動に不当な影響を与えるネット広告の問題などが指摘されています。デジタル時代においても個人の自律的な意思決定を保障し、民主主義の基礎を守っていくため、データ基本権を憲法に位置付けるなど議論を深めます。同性婚の保障や子どもの権利保障などについても検討を進めます。
(略)

<立憲民主党>
◯日本が世界に誇る文化芸術や伝統文化、コンテンツ産業への支援を強化します。

(主な政策項目より)
◯国民の知る権利を守るため特定秘密保護法を見直し、国会や第三者機関の権限強化も含め行政に対する監視と検証を強化します。

◯インターネットのターゲット広告、投資詐欺等に誘導する著名人のなりすまし広告の規
制など、個人情報保護や広告審査基準の明確化の促進を強化します。

◯「ヘイトスピーチ解消法」における取り組みを拡大し、国際人権基準に基づいて、人種などを理由とする差別的言動を禁止する法律の制定など、あらゆる差別撤廃に向けた動きを加速させます。

◯インターネットやSNS上の差別や誹謗中傷、人権侵害等への対策を強化します。

〇文化芸術振興基本法の支援対象に「場」や「担い手」を加えることや、劇場法(劇場、音楽堂等の活性化に関する法律)の支援対象に映画館や小規模音楽会場を加えること等を含めた、さらなる文化芸術振興の在り方を検討します。また、芸術家の地位と権利を守り、生活基盤を支える「芸術家福祉法」を制定します。

(政策集より)
◯特定秘密保護法については、民意を顧みずに強行採決された経緯にも鑑み、国による情報の恣意的・不適切な秘匿を防止するため、廃止します。廃止されるまでの間は、国民の知る権利を守るため特定秘密保護法を見直し、国会や第三者機関の権限強化も含め行政に対する監視と検証を強化します。具体的には、当該行政機関の恣意性を排除するため、内閣府に設置する第三者機関(情報適正管理委員会)が指定基準を定め、基準非該当の秘密指定を知った秘密取扱者は、委員会への通知義務を負うこととします。

◯個人の情報の権利利益の保護を図るため、個人情報保護法など国内関連法をEU一般データ保護規則(GDPR)など海外の法制度を基準に改正します。自己に関する情報の取り扱いについて自ら決定できる権利(自己情報コントロール権)、本人の意思に基づいて自己の個人データの移動を円滑に行う権利(データポータビリティ権)、個人データが個人の意図しない目的で利用される場合等に当該個人データの削除を求める権利(忘れられる権利)、本人の同意なしに個人データを自動的に分析又は予測されない権利(プロファイリングされない権利)を法律上、明確化します。

◯インターネットのターゲット広告、投資詐欺等に誘導する著名人のなりすまし広告の規制など、個人情報保護や広告審査基準の明確化の促進を強化します。デジタル広告、不正または悪質なレビュー、パーソナルデータのプロファイリングに基づく表示等の課題について、消費者の利益保護の観点から必要な対策を検討します。

◯誹謗中傷やフェイクニュースなど自己実現や民主主義を阻害する有害無益な情報が膨大に流通しています。インターネットやSNS上の差別や誹謗中傷、人権侵害等への対策を強化します。「表現の自由市場」に委ねるだけでは、実質的な保障に資さないことから、個々人が多様な情報にバランスよく触れることで、フェイクニュース等に対して一定の「免疫」(批判的能力)を獲得している状態を実現するため、「情報環境権」を保障し、そうした環境を積極的に作り出します。

◯インターネット・SNSの発達、DXの急速な進展が国民に数多くのメリットをもたらしている反面、個人の意思を離れたデータの収集・分析に起因した「アテンション・エコノミー」「マイクロターゲッティング」「フィルターバブル」「エコーチェンバー」といった問題が生じています。GAFAなどの巨大デジタルプラットフォーム企業に対し、データの利活用とのバランスを図りつつ、「自己情報コントロール権」に基づき、個人情報保護やセキュリティ確保の観点から、適切な規制を行います。

◯AIの利活用に当たっては、規制とイノベーションのバランスが重要です。著作権や個人情報の侵害、誤情報の拡散、監視や差別につながることのないよう、倫理的な考慮や技術的な対策を講じつつ、社会的な規制のルール作りを行います。イノベーションを育むためにデータサイエンスなどの基礎的なリテラシーとディーセントな価値観を醸成する教育及び人材育成を進め、生産性、効率性、成長率を高めることで豊かな社会づくりを牽引します。

◯先端技術や知的財産権の保護・強化を図ります。

◯標準、規格、特許の分野での人材育成を強化し、国際標準を主導します。

◯メディアにおける性・暴力表現について、子ども、女性、高齢者、障がい者をはじめとする人の命と尊厳を守る見地から、人々の心理・行動に与える影響について調査を進めるとともに、情報通信等の技術の進展および普及のスピードに対応した対策を推進します。

◯2016年に成立した「ヘイトスピーチ解消法」における取り組みを拡大し、国際人権基準に基づいて、人種・民族・出身などを理由とする差別的言動を禁止する法律の制定など、あらゆる差別撤廃に向けた動きを加速させます。

◯インターネットを利用した人権侵害を許さず、速やかに対応できるように、プロバイ
ダが被害救済のための対応をとることを義務付けるなどの法改正や窓口の創設
を実現します。

◯「能動的サイバー防御」の導入に当たっては、通信事業者からの情報提供の是非や個人の人権にもかかわる重大な問題であり、表現の自由やプライバシーの権利等の侵害につながらないよう、憲法で保障されている「通信の秘密」を遵守します。

◯インターネットやSNS上の差別や誹謗中傷、人権侵害等への対策を強化するとともに、インターネットのターゲティング広告に関しては適切な規制を講じ、個人情報保護を強化します。

◯インターネットやSNS上の差別や誹謗中傷、人権侵害等への対策を強化します。政府は侮辱罪を厳罰化しましたが、侮辱罪での現行犯逮捕を完全には否定しないなど、表現の自由が萎縮する懸念が残りました。相手の人格を攻撃する誹謗中傷行為を刑法の対象とするため、「加害目的誹謗等罪」を創設するとともに、プロバイダ責任制限法を改正して発信者情報の開示を幅広く認めることなどを柱とする「インターネット誹謗中傷対策法案」の成立を目指します。

◯知的財産権に関する紛争処理機能を強化することで、特許紛争の早期解決を図り、知財システムの実効性を担保するとともに、新産業やベンチャー企業の創出を支援します。

◯幅広い分野で、知的財産の保護、情報セキュリティ、企業統治などを強化するとともに、通信・デジタル・クリーンエネルギー技術・宇宙などの経済分野に係る国際的なルールの形成を主導し、日本の優位性を確立するための「経済安全保障戦略」を策定し、総合的な国力の増進を図ります。

◯SNSなどを活用した情報戦など非軍事と軍事行動が同時展開するハイブリッド戦に備え、フェイクニュースへの対応能力等を早急に高めます。また、宇宙・サイバー・AI・データなどの分野でのルール形成において主導的役割を果たしていきます。

◯サイバー攻撃は平時から発生しており、常時パトロールを行う「積極的(能動的)サイバー防御」(アクティブサイバーディフェンス、ACD)が必要とされます。権限などを法的に明確化する必要があれば、国民の権利を最大限に保障しながら、電気通信事業法や不正アクセス禁止法等の改正を視野に入れつつ、サイバー安全保障基本法のような包括的な立法を早急に検討します。また、より強い権限をもった司令塔組織、例えばデジタル庁と統合したサイバー省(仮称)の創設も検討します。同様にインテリジェンスにおいても省庁の垣根を越えた連携を強化します。在外大使館で活動する防衛駐在官を拡充し、情報収集・分析能力を強化するとともに、体制の抜本的強化を行います。

◯映画や音楽、アニメ・漫画・ゲーム等の幅広い分野での振興と助成を推進します。

◯表現の自由を尊重し、二次創作分野などの発展を図る観点から、著作権法改正を含む検討を行います。

◯著作権管理団体の権利者への権利料・使用料の分配については、若手や新人のアーティスト・演者・作家などに配慮し、文化の発展に資するという法の目的に沿うよう著作権管理事業法の改正を検討します。

<共産党>
◯10、女性とジェンダー
(略)
―――オンライン上の暴力について、通報と削除の仕組みを強化し、被害者のケアの体制をつくります。
(略)
―――児童ポルノは「性の商品化」の中でも最悪のものです。児童ポルノ禁止法(1999年成立。2004年、2014年改正)における児童ポルノの定義を、「児童性虐待・性的搾取記録物」(*「記録物」とはマンガやアニメなどを含むものではありません)と改め、性虐待・性的搾取という重大な人権侵害から、あらゆる子どもを守ることを立法趣旨として明確にし、実効性を高めることを求めます。

 日本は国連機関などから、極端に暴力的な子どもポルノを描いた漫画やアニメ、CG、ビデオ、オンライン・ゲーム等の「主要な制作国となっている」と批判されています。人工知能(AI)による膨大な児童ポルノ作成など、新たな問題もひろがっています。ジェンダー平等をすすめ、子どもと女性の人権を守る立場から、幅広い関係者で大いに議論をすすめることが重要だと考えます。「表現の自由」やプライバシー権を守りながら、子どもを性虐待・性的搾取の対象とすることを許さない社会にしていくことが必要であり、議論と合意をつくっていくための自主的な取り組みを促進していくことが求められています。そうした議論を起こしていくことは、「児童ポルノ規制」を名目にした法的規制の動きに抗して「表現の自由」を守り抜くためにも大切であると考えています。
(略)

◯34、GAFA、プラットフォーマー
(略)
―――GAFAなどのプラットフォーマーに社会的責任を果たさせるよう、デジタル・プラットフォーム透明化・公正化法を改正して、禁止行為を明記し、厳格な罰則規定を作ります。

―――プラットフォーマーの優越的地位の乱用を防ぐため、公正取引委員会の活動や体制を強めます。

―――EUのデジタルサービス法のようなプラットフォーマーに対する監督、調査、監視、執行する権限を有する独立したデジタル監督官(仮称)を設けます。
(略)

◯66、AI
(略)
日本版AI規制法を制定して、リスクに応じた厳格な管理を行います
(略)

著作権法を見直し、著作者の権利を守ります

 AIが著作物を無断で学習することを認めている現行の著作権法をめぐっては、法改正せずに、例外的に一部を認めないケースを示す方向の政府に対して、日本新聞協会などからは早急な法改正を求める声が強まっています。

 AI事業者がコンテンツを無断利用し、生成AIによる検索結果として示せば、新聞など報道機関の発行物やサイトを見る人が大幅に減り、事業者は行き詰まりかねません。

 報道コンテンツの利用は許諾を得たうえで、正確性を十分確保するなど、生成AI事業者に責任ある対応を求めます。

 文化・芸術分野でも同様なことがおきかねません。例えばあるアーティストの楽曲を、生成AIに繰り返し学習させ、当該アーティスト風の楽曲を生成して大量に利用・流通させた場合、このアーティストの活動を著しく阻害することになります。生成AIによる開発・学習及び生成・利用を無制限に認め、創作者たる著作者の創作意欲を削ぐようなことがあっては、著作権法の目的に反することになります。

 著作権法を改正しアーティストや作家、作曲家、映画監督、スタッフ、実演家などの権利と利益を守ります。

◯71、文化
(略)
著作者の権利を守り発展させます

 著作権は、表現の自由を守りながら、著作物の創造や実演に携わる人々を守る法律として、文化の発展に役立ってきました。ところが、映画の著作物はすべて製作会社に権利が移転され、映画監督やスタッフに権利がありません。実演家も映像作品の二次利用への権利がありません。国際的には視聴覚的実演に関する北京条約(2012年)が締結され、日本も加入するなど、実演家の権利を認める流れや、映画監督の権利充実をはかろうという流れが強まっています。

―――映画の著作権に関しては、著作権法を改正し、映画監督やスタッフ、実演家の権利を確立します。

―――デジタル化、ネット配信など多様化する二次利用に対しては、著作者や実演家の不利益にならないよう対策を求めます。

―――私的録音録画補償金制度は、デジタル録音技術の普及にともない、一部の大企業が協力業務を放棄したことで、事実上機能停止してしまいました。作家・実演家の利益を守るために、私的複製に供される複製機器・機材を提供することによって利益を得ている事業者に応分の負担を求める、実効性のある補償制度の導入をめざします。

―――生成AIの「学習」段階については、現行の著作権法では著作者の許諾が不要になっており、無許諾で使用される事例が増加しています。著作権者の権利を守る立場での法改正、AI規制法の制定を求めます。

憲法を生かし、表現の自由を守ります

 芸術は自由であってこそ発展します。「表現の自由」は、多様な立場や価値観を持った人たちが生活する民主主義社会を支える上で欠くことのできない大切な人権です。憲法は「表現の自由」を保障していますが、自公政権のもとで、各地の美術館や図書館、公民館などの施設で、創作物の発表を正当な理由なく拒否することが相次いできました。2019年のあいちトリエンナーレでは、政治家の介入を受けて、文化庁が「安全性」を理由に助成金をいったん不交付にしたり、名古屋市が一部負担金の支払いを拒否したりしました。日本芸術文化振興会が映画「宮本から君へ」に対して「公益性」をもちだして助成金を打ち切ったりするなど、「表現の自由」への介入・侵害が相次ぎました。こうした権力からの介入は、自由な創造活動に「忖度」や「萎縮」効果をもたらすことにつながるものであり、司法の場でも厳しく批判されています。

 また、文化庁の助成は応募要綱などが行政の考え方に沿って決められ、芸術団体などの意見が十分反映されていません。諸外国では、表現の自由を守るという配慮から、財政的な責任は国が持ちつつ、専門家が中心となった独立した機関が助成を行っています。

 日本共産党は、「表現の自由」を守り、文化芸術基本法や憲法の基本的人権の条項をいかした支援を求めます。

―――「アームズ・レングス原則」(お金は出しても口は出さない)にもとづいた助成制度を確立し、萎縮や忖度のない自由な創造活動の環境をつくります。

―――すべての助成を専門家による審査・採択にゆだねるよう改善します。

―――公共施設などでの創作物の発表、展示への脅迫・妨害行為に毅然とした対応を求め、「表現の自由」を保障します。

―――「児童ポルノ規制」を名目にしたマンガ・アニメ・ゲームなどへの法的規制の動きに反対します。青少年のゲーム・ネットの利用について、一律の使用時間制限などの法規制に反対します。
(略)

 前回2021年の衆院選時の公約(第446回参照)と比べ、AIや能動的サイバー防御についてなど最近の話題を盛り込んでいるものの、全体としては各党ともさして変わり映えしないものであり、今回も、この様な細かな政策項目に関する事が争点になる事はなく、主として、自民党の裏金問題であったり、今までの政権与党の経済財政政策などに対して有権者の判断が示される事になるのではないかと思える。

 具体的には選挙後の政府検討次第としか言いようがないが、各党の公約を読むと、少なくとも、情報規制という観点で、引き続きAI規制、ネットでの誹謗中傷対策、大手ITプラットフォーマー規制、能動的サイバー防御などが焦点となるだろう事は確実に見て取れる。

(2024年10月16日の追記:各党から正式版の公約集が公開されているので、もう一度改めてここにリンクを張っておく。また、このタイミングで自民党が政策BANK(政権公約に含まれる)と総合政策集2024を追加し、日本維新の会がマニフェスト全文を追加しているので、念のため下に知財・情報・表現規制関連の追加項目の抜粋を作っておくが、格別新しい事が書かれているという事はない。

<自民党>
(政策BANKより)
◯「知的財産推進計画2024」に基づき、イノベーションを創出・促進する知財エコシステムの再構築に向けて、知的財産の創造・保護・活用全般にわたる施策を推進します。また、「新たなクールジャパン戦略」に基づき、コンテンツ産業の国際競争力の強化、インバウンド誘致、農林水産物・食品の輸出、地域の魅力発信等の横断的な取組みを推進します。

◯競争力強化と安全性確保の観点から、広島AIプロセスの実績をベースに、AIに関する国際的な議論を主導するとともに、法規制と、事業者ガイドラインなどのソフトローを組み合わせた国内の制度整備を進めます。また、我が国のAI開発力強化に向けた取組みを進めます。

○青少年健全育成のための社会環境の整備を強化するとともに「青少年健全育成基本法」を制定します。また、ITの発達等による非行や犯罪から青少年を守るための各種施策を推進します。

◯ネット上の偽・誤情報や誹謗中傷などに対応するため、情報流通プラットフォーム対処法の円滑な施行、利用者のリテラシー向上や相談体制の充実、偽・誤情報対策技術の研究開発など、表現の自由を最大限考慮しつつ、制度整備も含め総合的な対策を推進します。

◯表現の自由を最大限考慮しつつ、インターネット上の誹謗中傷や差別、フェイクニュース等への対策を推進するとともに、人権意識向上の啓発活動を強化し、様々な人権問題の解消を図ります。

◯農林水産物・食品の国際競争力の強化に向け、優良品種の海外流出を防止し、戦略的な海外展開を推進するとともに、「家畜遺伝資源法」等のもと、我が国固有の財産である和牛を守ります。また、模倣品対策や地理的表示(GI)の活用等を強化します。

(総合政策集より)
◯コンテンツ戦略と海賊版対策

 コンテンツ産業は、海外売上において約5兆円となり鉄鋼業や半導体産業の輸出額にも比肩する我が国の基幹産業の一つになっており、地方創生に資する高い波及効果を有しています。インバウンド需要などを通じた経済波及効果も高く、我が国のソフトパワーを高める手段としても有効な分野です。官民の健全なパートナーシップのもと、コンテンツ産業の強化に向けて、関係省庁等及びコンテンツ関係者と議論を重ね、クリエイターが安心して持続的に働ける環境の整備や、クリエイターを中心とする海外展開・情報発信、デジタル化、エンタメ分野のスタートアップ支援等に対応したコンテンツ産業の改革等について取組みを進めていきます。

 また、海賊版に対する対策強化として、日本のコンテンツの海賊版が生成AIにより学習されるおそれや、外国での被害も深刻化する中、国外犯処罰の導入検討も含め、国際執行を強化するとともに日本企業による海外プラットフォーム買収等も活用しつつ、海外への正規版の流通を促進します。

◯「クールジャパン戦略」の推進

 海外の人々が良いと思う日本の魅力をマーケットインの考え方に基づき効果的に発信し、インバウンドや輸出の拡大等にもつながるクールジャパン戦略を強化・拡充します。

 コンテンツ、インバウンド、食・食文化の各分野において政策を総動員して取組みを進めてまいります。我が国の強いIP(コンテンツ、多様でおいしい食、様々な地域の自然・伝統など、広義の意味での知的資産)を活用し、新たな技術(Web3やNFT等)も取り入れて「イノベーション」を起こし、多層化・深化した「日本ファン」に対して高い「体験価値」を提供しながら、高い利益をあげて外貨を獲得し、関係者による再投資に回していくという好循環を確立していきます。

 今後も取組みを更に強化することにより、今後5年間で30兆円以上(2028年)、10年間で50兆円以上(2033年)とすることを目指します。

 2025年大阪・関西万博を地域活性化につなげるべく、地域における機運醸成の取組みや、万博と日本各地をつなぐ観光資源の磨き上げや文化創造に向けた支援を行います。海外においても、現地人材の活用等を通じて、在外公館やジャパン・ハウス等の発信・展開拠点を強化します。

◯「クールジャパン」関連コンテンツの振興

 世界的に動画配信サービスが普及していく中、アニメやゲームを中心に日本のコンテンツの人気は世界中で非常に高まっています。また、コンテンツ人気がインバウンドにも大きな波及効果をもたらしています。

 製作現場のデジタル化、先進デジタル技術を活用したビジネスの創出、クリエイターやビジネス・プロデューサー等の、人材育成、エンタメ分野のスタートアップ支援を進め、コンテンツ産業の振興と海外展開を図ります。

 併せて、東京国際映画祭などコンテンツの中心としての日本の魅力を高める取組みや日本のクリエイターの海外発信を進めます。また、国内への大型映像作品のロケ誘致は、作品を通じて日本の魅力を発信するだけにとどまらず、海外の映像製作のノウハウを日本のコンテンツ産業にもたらします。諸外国の制度も参考にしつつ、ロケ誘致の一層の推進を図ります。

 文化芸術の需要の裾野を拡大し、クリエイターに資金を循環する環境を整備するため、企業・地域によるアートの積極的な活用の促進を図ります。

◯持続的なイノベーションの創出に向けたシステム改革

 新たな社会や経済への変革が世界的に進む中、デジタル技術も活用しつつ、未来を先導するイノベーション・エコシステムの維持・強化が不可欠です。このため、企業の事業戦略に深く関わる大型共同研究の集中的マネジメント体制の構築、政策的重要性が高い領域や地域発のイノベーションの創出につながる独自性や新規性のある産学官共創拠点の形成を推進します。更に、スタートアップの創出・成長支援や小中高校生から大学生等までのアントレプレナーシップ教育などを推進します。また、地域発のイノベーション創出に向けて、地域の様々なプレイヤーが事業化に向けたチームとして活動を行い、事業化の成功事例を蓄積する取組みを推進します。

 我が国の人材育成及び学術研究の中心的役割を担う国公私立大学の抜本的改革を確実に進めるとともに、運営費交付金や施設整備費補助金、私学助成などの基盤的経費を拡充します。「研究成果の最大化」を使命とする国立研究開発法人の基盤的経費を充実するとともに、2025年までに大学・研究開発法人などに対する企業の投資額を2014年の水準の3倍とする目標を踏まえ、600兆円経済の実現に向けて科学技術イノベーションの活性化を図り、経済の好循環を実現するため、科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律に基づく研究開発法人による出資業務を推進します。

 更に、研究開発税制や寄附金税制をはじめとするイノベーション促進に向けた税制改革や、革新的な技術シーズの事業化のためのリスクマネー供給などの政策金融の改革、特許などの知的財産の迅速な保護及び円滑な利活用を促進するための知的財産制度の改革、イノベーションの隘路となっている規制や社会制度などの改革や新技術に関する優先的な政府調達の実現、中小企業などに対する産学官連携などを強力に推進します。

 国際標準の獲得を目指す各国の動きが一層活発化していることから、官民協働による戦略的な国際標準化活動を着実に推進します。また、我が国が優れた先端技術を持つ基幹インフラについて、建設から運用、人材養成への寄与までを一体システムとして捉え、官民協働による海外輸出・展開活動を大幅に強化します。

◯経済安全保障推進法の着実な実施

 2022年5月に成立した「経済安全保障推進法」の4分野について、制度の着実な実施と不断の見直し、更なる取組みの強化を行います。

 具体的には、サプライチェーン強靱化については、半導体や抗菌薬など、国民の生存や経済活動にとって重要な物資の安定供給確保に向けて、引き続き不断の点検・評価を行い、これまでの措置の効果を踏まえた上で、実効性のある対応を講じます。

 電気、ガス、水道等を対象とした基幹インフラの事前審査制度については、2024年5月より、重要設備の導入・維持管理等の委託に関して国による事前審査を開始したところであり、これを着実に実施し、基幹インフラ産業の自律性を高め、強靱化を図ります。

 先端的な重要技術の開発支援については、経済安全保障重要技術育成プログラムの研究開発ビジョンで示された重要技術について、協議会による伴走支援を引き続き実施するなど、我が国の技術優位性を確保できるよう努めます。

 特許出願の非公開制度については、具体的な保全審査等に際して、出願人との丁寧な意思疎通を行うなど、円滑な制度運用に引き続き万全を期します。

◯宇宙・サイバー・電磁波領域における体制強化の加速

 宇宙・サイバー・電磁波領域における体制強化に向けた取組みを加速化します。宇宙分野においては、「宇宙基本計画」に基づき、衛星コンステレーションの構築に必要な措置を進めるなど、宇宙の安全保障に関する総合的な取組みを強化します。サイバー分野については、「国家安全保障戦略」を踏まえ、能動的サイバー防御を導入するなど、欧米主要国と同等以上にサイバー安全保障分野での対応能力を向上させます。そのための関連法案を早期に国会提出するとともに、「自衛隊サイバー防衛隊」の体制強化、今年改編された陸自システム通信・サイバー学校をはじめとする部内教育の拡充、高度な知見を有する部外の人材の登用や教育・研究基盤の拡充・強化等を進めます。また、能動的サイバー防御の実施に向けて、不正アクセス禁止法等の現行法令等との関係の整理及びその他の制度的・技術的双方の観点、インテリジェンス部門との連携強化の観点から、早急に検討を行います。電磁波分野については、「電子作戦隊」の拡充やゲーム・チェンジャーとなり得る将来の技術の研究等により、電磁波領域における能力を強化します。

◯能動的サイバー防御導入に向けた体制強化等

 高度なサイバー攻撃から我が国のインフラ機能を保護し、安全保障を確保するための政府と基幹インフラ事業者等の間の情報共有枠組みや、基幹インフラ事業者による政府へのサイバー攻撃の被害等の報告義務づけなどの仕組みを創設します。

 外国政府主体等が関与する高度かつ重大なサイバー攻撃に対処するため、政府が通信情報を収集・分析する必要があります。その際、重大なサイバー攻撃への対処という公共の福祉の観点から必要最小限の通信情報の利用を可能とし、欧米主要国を参考に、サイバー攻撃防止の実効性を確保しつつ、国民の権利との関係が整理された制度とします。

 被害が瞬時かつ広範に拡散するというサイバー攻撃の特性を踏まえ、攻撃の未然防止や被害拡大防止のため、被害発生のおそれを認知し次第、被害防止措置をとれる権限整備を検討します。

 また、重大なサイバー攻撃に対し我が国の持てる能力を最大限活用するため、内閣官房を司令塔として機能させつつ、警察、防衛省・自衛隊が必要に応じ、的確に措置を実施できる制度とします。その際、平素から柔軟に対応できるよう「事態認定方式」ではない新たな自衛隊の行動類型を整備することを検討します。

 サイバーセキュリティ戦略本部の機能を強化することに加え、司令塔組織への権限付与等、政府全体の予算・体制・能力を抜本的に強化します。また、キャリアパスの明示、官民人材交流、国際的な官民枠組みへの参画、国内外の演習への参加などを通じて、サイバー分野における魅力あるキャリアを描ける人材育成・確保策を検討します。

◯デジタルトランスフォーメーション(DX)時代に対応した著作権制度・政策

 DXの推進は、文化芸術における創作・流通・利用にも大きな影響を与えており、DX時代における社会・市場の変化やテクノロジーの進展に柔軟に対応したコンテンツ創作の好循環を実現する必要があります。そのため、DX時代に対応した簡素で一元的な権利処理方策の着実な実施に加え、コンテンツの利用円滑化とそれに伴う適切な対価の還元について取り組みます。また、著作権侵害に対する実効的な海賊版対策の実施、我が国の正規版コンテンツの海外における流通促進、デジタルプラットフォームサービスに係るいわゆるバリューギャップ等への対応、著作権制度・政策の普及啓発・教育方策を進め、コンテンツの権利保護を図ります。

◯ネット上の誹謗中傷等の対策推進

 SNS等のネット上における偽・誤情報や誹謗中傷等に対応するため、情報流通プラットフォーム対処法の円滑な施行、プラットフォーム事業者の積極対応の促進、利用者のリテラシー向上や相談体制の充実、偽・誤情報対策技術の研究開発など、表現の自由を最大限考慮しつつ、制度整備を含め、総合的な対策を推進します。また、会社法の外国会社登記の徹底、捜査機関の体制強化などにも取り組みます。

<日本維新の会>
(マニフェスト全文より)
◯表現の自由に十分留意しつつ、民族・国籍を理由としたいわゆる「ヘイトスピーチ(日本・日本人が対象のものを含む)」を許さず、不当な差別のない社会の実現のため、実効的な拡散防止措置を講じます。

◯SNSなどにおける誹謗中傷問題につき、表現の自由に十分に配慮しつつ、中傷被害者の救済を迅速・確実に図るとともに、誹謗中傷表現の抑止のための国、自治体、事業者の責務を明確にした対策をすすめます。また、民事裁判手続きの負担軽減策や、放送事業者による出演者からの相談体制整備など、総合的な被害者支援策を実施します。

◯特許侵害をした者への制裁が有効に働かずにモラルハザードが起き、抑止できていない現状に鑑み、実効性のない刑事罰は見直し、特許が尊重されるよう法律を整備します。

◯生成AIの技術開発の速さや適用範囲の広さを踏まえ、これからのAI時代にふさわしい「アジャイル・ガバナンス」をベースにした制度設計を取り入れ、生成AIに関する事業者の自主的取組やアカウンタビリティを促します。また、デジタルプラットフォーマーに対しては、その社会的な影響の大きさに鑑み、生成AIに関する各種リスクに対する安全性や透明性を確保するための規律を設けます。

◯偽・誤情報の拡散、サイバー攻撃、人権侵害や著作権侵害といった、生成AIが及ぼす重大なリスクに対しては、世界共通の課題として国際的な枠組みの下で議論を主導し、国際連携を強化します。加えて、覇権主義的な国家による、生成AIを使った情報戦やサイバー戦に対しては、我が国の民主主義や基本的人権を守るため、能動的サイバー防御も含めた情報戦対策と必要な法整備に向けた検討を行います。

◯種苗の開発者の育成者権を守り、種苗の不正な海外流出を防ぐ環境を整備するとともに、積極的に研究開発を行う農家・開発者による新たなビジネスモデルの構築を支援します。また、収穫量増大・生産コスト低減や、有機農業に適した品種の開発にも注力します。

◯表現の自由を最大限尊重し、マンガ・アニメ・ゲームなどの内容に行政が過度に干渉しないコンテンツ産業支援を目指します。MANGAナショナルセンターの設置による作品アーカイブの促進、インバウンドを意識した文化発信やクリエイターの育成支援などを行います。

◯文化的コンテンツ等をデジタルデータとしてブロックチェーン上に記録したいわゆるNFT(非代替性トークン)について、イノベーションを阻害しないルール作りによる市場の拡大支援を行い、日本の強みであるマンガ・アニメ・ゲーム等のコンテンツ産業・アート市場のさらなる発展を後押しします。

(2024年11月10日の追記:10月27日の日本の総選挙では自公の与党が過半数割れをし、11月5日のアメリカ大統領選挙ではトランプ氏が勝利した。この選挙の結果は今後の日米の政策判断に大きな影響を与えて行く事だろう。)

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