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2023年10月 1日 (日)

第484回:パロディやパスティーシュのための権利制限について欧州司法裁に再び質問を付託する2023年9月14日のドイツ最高裁の決定

 前に第429回で2020年4月30日のドイツ最高裁楽曲サンプリング事件判決を取り上げたが、この事件が高裁に差し戻された後、再び上告され、この9月14日に、ドイツ最高裁が、2021年に導入された新しいパロディやパスティーシュのための権利制限について、欧州司法裁に、元となった欧州司令の解釈を訊ねる質問を再び付託する決定をした。

 過去の経緯として、この事件における2016年5月31日のドイツ憲法裁の判決について第366回、2017年6月1日のドイツ最高裁の最初の質問付託決定について第381回、対応する2019年7月29日の欧州司法裁の判決について第411回を御覧いただければと思うが、最初の地裁判決から、憲法裁、最高裁、欧州司法裁の間を行き来しながら、この事件では実に20年近く延々楽曲サンプリングが著作権侵害となるかが争われている。

 再質問付託決定に関するドイツ最高裁のリリース(ドイツ語)から、今回の決定に関する部分を訳出すると以下の様になる。(いつも通り以下の翻訳はすべて拙訳。)

Der Bundesgerichtshof hat das Verfahren nunmehr erneut ausgesetzt und dem Gerichtshof der Europaischen Union Fragen zur Auslegung der Richtlinie 2001/29/EG des Europaischen Parlaments und des Rates vom 22. Mai 2001 zur Harmonisierung bestimmter Aspekte des Urheberrechts und der verwandten Schutzrechte in der Informationsgesellschaft vorgelegt.

Die Revision hat Erfolg, wenn das Berufungsgericht zu Unrecht angenommen hat, dass die von den Klagern geltend gemachten Anspruche ab dem 7. Juni 2021 ausgeschlossen sind, weil die Ubernahme der Rhythmussequenz aus dem Titel "Metall auf Metall" im Wege des Sampling eine nach § 51a Satz 1 UrhG in der ab dem 7. Juni 2021 geltenden Fassung zulassige Nutzung zum Zwecke des Pastiches ist, so dass keine Verletzung der von den Klagern geltend gemachten Leistungsschutzrechte als Tontragerhersteller oder ausubende Kunstler sowie des Urheberrechts des Klagers zu 1 vorliegt. Hierauf kommt es im Streitfall an, weil das Musikstuck "Nur mir" die Voraussetzungen einer Karikatur oder Parodie des Musikstucks "Metall auf Metall" mangels Ausdrucks von Humor oder einer Verspottung nicht erfullt (dazu BGHZ 225, 222 [juris Rn. 63] - Metall auf Metall IV).

Nach Ansicht des Bundesgerichtshofs stellt sich zunachst die Frage, ob die Schrankenregelung der Nutzung zum Zwecke von Pastiches im Sinne des Art. 5 Abs. 3 Buchst. k der Richtlinie 2001/29/EG ein Auffangtatbestand jedenfalls fur eine kunstlerische Auseinandersetzung mit einem vorbestehenden Werk oder sonstigen Bezugsgegenstand einschlieslich des Sampling ist und ob fur den Begriff des Pastiches einschrankende Kriterien wie das Erfordernis von Humor, Stilnachahmung oder Hommage gelten. Die Pastiche-Schranke konnte als allgemeine Schranke fur die Kunstfreiheit zu verstehen sein, die deshalb notwendig ist, weil der Kunstfreiheit allein durch die immanente Begrenzung des Schutzbereichs der Verwertungsrechte auf eine Nutzung der Werke und Leistungen in wiedererkennbarer Form (vgl. EuGH, GRUR 2019, 929 [juris Rn. 31] - Pelham u.a.) und die ubrigen Schrankenregelungen wie insbesondere Parodie, Karikatur und Zitat nicht in allen Fallen der gebotene Raum gegeben werden kann. Die hier in Rede stehende Technik des "Elektronischen Kopierens von Audiofragmenten" (Sampling), bei der ein Nutzer einem Tontrager ein Audiofragment entnimmt und dieses zur Schaffung eines neuen Werks nutzt, ist eine kunstlerische Ausdrucksform, die unter die durch Art. 13 EU-Grundrechtecharta geschutzte Freiheit der Kunst fallt (EuGH, GRUR 2019, 929 [juris Rn. 35] - Pelham u.a.; zu Art. 5 Abs. 3 Satz 1 GG vgl. BVerfGE 142, 74 [juris Rn. 89]). Die Rechte der Urheber, Tontragerhersteller und ausubenden Kunstler gemass Art. 2 und 3 der Richtlinie 2001/29/EG geniessen den Schutz des geistigen Eigentums gemass Art. 17 Abs. 2 EU-Grundrechtecharta. Dem Ziel des angemessenen Ausgleichs von Rechten und Interessen tragt der in Art. 5 Abs. 5 der Richtlinie 2001/29/EG vorgesehene "Drei-Stufen-Test" Rechnung, dessen Voraussetzungen nach den Feststellungen des Berufungsgerichts erfullt sind.

Sodann stellt sich nach Ansicht des Bundesgerichtshofs die weitere Frage, ob die Nutzung "zum Zwecke" eines Pastiches im Sinne des Art. 5 Abs. 3 Buchst. k der Richtlinie 2001/29/EG die Feststellung einer Absicht des Nutzers erfordert, einen urheberrechtlichen Schutzgegenstand zum Zwecke eines Pastiches zu nutzen oder ob die Erkennbarkeit des Charakters als Pastiche fur denjenigen genugt, dem der in Bezug genommene urheberrechtliche Schutzgegenstand bekannt ist und der das fur die Wahrnehmung des Pastiches erforderliche intellektuelle Verstandnis besitzt.

ドイツ最高裁判所は手続をここで今一度中断し、情報社会における著作権及び著作隣接権の特定の側面の調和に関する2001年5月22日の欧州議会及び理事会の欧州司令第2001/29号の解釈についての質問を欧州司法裁判所に付託した。

控訴裁判所が、サンプリングの手法によるタイトル「Metall auf Metall」からの一連の音の取り入れは、2021年6月7日から施行されている形での著作権法第51条第1項により許されるパスティーシュの目的のための利用であり、原告の主張するレコード製作者又は実演家としての隣接権並びに原告の著作権を侵害しないから、原告が主張する請求を2021年6月7日以降は除外した事は不当であるという事に限り、上告は認められる。楽曲「Nur mir」は、ユーモア又は風刺の印象を欠き、カリカチュア又はパロディーの前提を満たさない事から、本事件はそこが問題となる(2020年4月30日の「Metall auf Metall IV」事件ドイツ最高裁判決、段落63参照)。

次に、ドイツ最高裁判所の見地から、欧州司令第2001/29号の第5条第3項(k)の意味におけるパスティーシュの目的のための利用の権利制限規定は、既存の著作物との芸術的対抗又はサンプリングを含むその他の参照対象についてあらゆる場合を含む包括条項であるのか及びパスティーシュの概念に対してユーモア、模写又はオマージュの要件の様な制限的な基準は適用されるのかという質問がされる。著作物と保護対象を再認識可能な形(2019年7月29日の「Pelham」事件欧州司法裁判決、段落31参照)での利用のための利用権の保護範囲の内在的な制限によって、及び、あらゆる場合ではないが、特にパロディー、カリカチュア及び引用の様なその他の権利制限規定によってのみ、芸術の自由に必要な領域が与えられ得る事から、必須のものであるパスティーシュの権利制限は、芸術の自由のための一般的な権利制限であると理解され得るものである。ここで議論になている技巧の「楽曲断片の電子的複製」(サンプリング)は、利用者がレコードから楽曲断片を取り出しこれを新しい著作物の創作に利用するものであり、欧州連合基本権憲章第13条により保護される芸術の自由に該当する芸術的表現形式である(2019年7月29日の「Pelham」事件欧州司法裁判決、段落35;基本法第5条第3項第1文について2016年5月31日のドイツ憲法裁判決、段落89参照)。著作者、レコード製作者及び実演家の権利は欧州州司令第2001/29号の第2及び3条により欧州連合基本権憲第17条第2項の知的財産権としての保護を享受する。権利と利益の適切なバランスの目的のため、欧州司令第2001/29号の第5条第5項に規定された「3ステップテスト」が考慮されるが、その条件は控訴裁判所の認定により満たされる。

そして、ドイツ最高裁判所の見地から、欧州司令第2001/29号の第5条第3項(k)の意味におけるパスティーシュの「目的のための」利用は、著作権保護の対象をパスティーシュに利用するという利用者の意図の認定を必要とするのか、それとも、参照される著作権保護の対象が分かり、パスティーシュの知覚に必要な知的理解を有する者にとってパスティーシュとして認識が可能である事で十分であるのかという質問もされる。

 上のリリースの通りだが、ドイツ最高裁の決定(ドイツ語)から欧州司法裁への2つの付託質問も念のため以下に訳出しておく。

1. Ist die Schrankenregelung der Nutzung zum Zwecke von Pastiches im Sinne des Art. 5 Abs. 3 Buchst. k der Richtlinie 2001/29/EG ein Auffangtatbestand jedenfalls fur eine kunstlerische Auseinandersetzung mit einem vorbestehenden Werk oder sonstigen Bezugsgegenstand einschliesslich des Sampling? Gelten fur den Begriff des Pastiche einschrankende Kriterien wie das Erfordernis von Humor, Stilnachahmung oder Hommage?

2. Erfordert die Nutzung "zum Zwecke" eines Pastiche im Sinne des Art. 5 Abs. 3 Buchst. k der Richtlinie 2001/29/EG die Feststellung einer Absicht des Nutzers, einen urheberrechtlichen Schutzgegenstand zum Zwecke eines Pastiche zu nutzen oder genugt die Erkennbarkeit des Charakters als Pastiche fur denjenigen, dem der in Bezug genommene urheberrechtliche Schutzgegenstand bekannt ist und der das fur die Wahrnehmung des Pastiche erforderliche intellektuelle Verstandnis besitzt?

1.欧州司令第2001/29号の第5条第3項(k)の意味におけるパスティーシュの目的のための利用の権利制限規定は、既存の著作物との芸術的対抗又はサンプリングを含むその他の参照対象についてあらゆる場合を含む包括条項であるのか?パスティーシュの概念に対してユーモア、模写又はオマージュの要件の様な制限的な基準は適用されるのか?

2.欧州司令第2001/29号の第5条第3項(k)の意味におけるパスティーシュの「目的のための」利用は、著作権保護の対象をパスティーシュに利用するという利用者の意図の認定を必要とするのか、それとも、参照される著作権保護の対象が分かり、パスティーシュの知覚に必要な知的理解を有する者にとってパスティーシュとして認識が可能である事で十分であるのか?

 第429回で取り上げた2020年4月30日のドイツ最高裁判決の後、この事件に対し、2022年4月28日のハンブルク高裁判決(ドイツ語)が、ある程度の長さの一連の音の新しい楽曲に取り入れる事は旧ドイツ著作権法第24条第1項の自由利用であり得るとしながら、特別な音のエフェクトを含む一連の音は第24条第2項項で自由利用が認められるメロディーではないとして著作権侵害と損害賠償を認めた事自体私はいかがなものかと思っているが、その事は上告の対象外とされたので、ここではひとまずおく事にする。

 結果として、この楽曲サンプリング事件で法解釈の論点として残されたのが、2021年6月7日以降に適用される新ドイツ著作権法第51a条のパロディやパスティーシュのための権利制限、特にパスティーシュとの関係という事になり、ドイツ最高裁は新たに上の2つの質問を欧州司法裁に付託したのである。(2021年ドイツ著作権法改正で導入されたパロディ等の権利制限については第441回参照。)

 この質問に対して欧州司法裁がどの様な判断を示すのかは分からないが、ここで問題となっているパロディ、カリカチュア及びパスティーシュのための権利制限は、表現の自由を保障するためにも、サンプリングの様なものも含むようできる限り包括的なものであるべきと、また、立証の困難な主観的要件のみによるべきではないと私は思っており、そう解釈される事を期待している。

 日本でも権利制限に関する検討はなかなか進まないが、この様にヨーロッパでも導入が進むパロディ等のための権利制限は、可能な限り包括的なものとして日本でも速やかに導入して然るべきものであると私は常に考えている。それ以上に一般フェアユース条項の導入ができるならそれに越したことはないとも考えているが。

 いずれにせよ、表現の自由との関係で、この長く続く事件において欧州司法裁が次に示すだろう判断がヨーロッパにおける権利制限について大きな意味を持つ事は間違いなく、その判決が出されたら、またここで紹介したいと思っている。

(2024年1月21日の追記:幾つか誤記を直した(「新し」→「新しい」、「第3条第3項(k)」→「第5条第3項(k)」)。)

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