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2023年6月11日 (日)

第479回:知財計画2023の文章の確認

 いつも通りの施策項目集である事に変わりはないが、今年も先週6月9日に知的財産戦略本部が開催され、知的財産推進計画2023(pdf)概要(pdf)も参照)が決定されたので、ここで、著作権問題や法改正関連など私が特に関心のある部分を見て行く。(去年の知財計画の文章については第460回、私の提出したパブコメについては第475回参照。)

 まず、今年の知財計画2023の最も重要なトピックだろう、生成AIと知財という論点について、「Ⅱ.基本認識」の「3.AI技術の進展と知的財産活動への影響」の方にも総括的な記載があるが、「Ⅲ.知財戦略の重点10施策」の1つとして、第31ページからの「3.急速に発展する生成AI時代における知財の在り方」で、以下の様に書かれている。

(1)生成AIと著作権

(現状と課題)
 AIと著作権との関係では、従前より、どのようなAI生成物が「著作物」となるのか、著作権侵害の疑いがあるAI生成物が大量に作成されるおそれがないか等についての指摘があった。
 これらの論点については、2016年から2017年にかけ、知的財産戦略本部検証・評価・企画委員会の下に開催された新たな情報財検討委員会の検討においても、検討課題とされた。同委員会が2017年3月に取りまとめた「新たな情報財検討委員会報告書」では、AI生成物の著作物性についての基本的な考え方の整理として、以下の考え方を示している。

・AI生成物を生み出す過程において、学習済みモデルの利用者(以下「利用者」という。)に創作意図があり、同時に、具体的な出力であるAI生成物を得るための創作的寄与があれば、利用者が思想感情を創作的に表現するための「道具」としてAIを使用して当該AI生成物を生み出したものと考えられることから、当該AI生成物には著作物性が認められる。

・利用者の寄与が、創作的寄与が認められないような簡単な指示に留まる場合、当該AI生成物は、AIが自律的に生成した「AI創作物」であると整理され、現行の著作権法上は著作物と認められない。

 その上で、具体的にどのような創作的寄与があれば著作物性を肯定されるかなどのAI生成物の著作物性と創作的寄与の関係については、AIの技術の変化等を注視しつつ、具体的な事例に即して引き続き検討することが適当とされた。また、学習用データとして使われた著作物に類似したAI生成物が出力された場合についてどのように考えるかも議論された。この場合、出力された生成物が著作権侵害と判断されるためには、依拠性と類似性が必要とされると考えられるところ、AIを利用した場合の依拠や責任の考え方について、問題となった具体的事例に即して引き続き検討することが適当とされている。
 なお、同報告書における「具体的に検討を進めることが適当な事項等」の提言を受け、2018年の著作権法改正では、いわゆる柔軟な権利制限規定の1つとして、著作権法第30条の4の規定(著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用)が整備され、AIが学習するためのデータの収集・利用等の行為についても、同条第2号の規定に基づき、著作権の権利制限が及ぶこととされた。その際、当該権利制限については、同条ただし書の規定により「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」には適用されないことを定めている。AI技術の進展に伴い、この「不当に害することとなる場合」の要件に該当する場合について、指摘がなされるようになっている。
 2017年3月の「新たな情報財検討委員会報告書」から約6年を経過し、生成AIの技術は格段の進歩を遂げた。最近におけるAIツールの一般ユーザーへの急速な普及拡大により、人間による創作と区別がつかないようなAI生成物が大量に生み出されており、クリエイターの創作活動等にも影響が及ぶこととなる懸念も生じている。
 政府のAI戦略会議が2023年5月にまとめた「AIに関する暫定的な論点整理」においても、オリジナルに類似した著作物が生成されるなどの懸念や、著作権侵害事案が大量に発生し、個々の権利者にとって紛争解決対応も困難となるおそれを指摘すると同時に、生成AIの活用により作品制作の効率化が図られる等の例もあるとして、クリエイターの権利の守り方、使い方が重要な論点となるとしている。その上で、今後、専門家も交えて、AI生成物が著作物として認められる場合やその利用が著作権侵害に当たる場合、著作物を学習用データとして利用することが不当に権利者の利益を害する場合の考え方などの論点を整理し、必要な対応を検討すべきであるとしている。
 以上の状況に鑑み、AI生成物の著作物性やAI生成物を利用・公表する際の著作権侵害の可能性、学習用データとしての著作物の適切な利用等をめぐる論点について、生成AIの最新の技術動向、現在の利用状況等を踏まえながら、

・AI生成物が著作物と認められるための利用者の創作的寄与に関する考え方

・学習用データとして用いられた元の著作物と類似するAI生成物が利用される場合の著作権侵害に関する考え方

・AI(学習済みモデル)を作成するために著作物を利用する際の、著作権法第30条の4ただし書に定める「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」についての考え方

などの論点を、具体的事例に即して整理し、考え方の明確化を図ることが望まれる。

(施策の方向性)
・生成AIと著作権との関係について、AI技術の進歩の促進とクリエイターの権利保護等の観点に留意しながら、具体的な事例の把握・分析、法的考え方の整理を進め、必要な方策等を検討する。(短期、中期)(内閣府、文部科学省)

(2)AI技術の進展を踏まえた発明の保護の在り方

(現状と課題)
 AI関連発明については、上述の「新たな情報財検討委員会報告書」において、「具体的に検討を進めることが適当な事項等」として「学習済みモデルの適切な保護と利活用促進」及び「AI生成物に関する具体的な事例の継続的な把握」が掲げられており、特許庁では、AI関連技術に関する特許審査事例の公表(2017年3月に5事例公表、2019年1月に10事例追加)等の取組を行ってきた。
 同報告書では、「引き続き検討すべき事項等」として、「AIのプログラムの知財制度上の在り方」及び「AI生成物の知財制度上の在り方」が掲げられた。また、同時期に公表された「AIを活用した創作や3Dプリンティング用データの産業財産権法上の保護の在り方に関する調査研究報告書」では、「現時点では、一部の企業からAIによる自律的な創作を実施しているとの情報も得られているが、特許法で保護するに値するAIによる自律的な創作の存在は確認できていない」、「2020年頃には、AIが自律的な行動計画によって動作するようになると予測されている。さらに、2030年頃になると、更に広い分野で人間に近い能力を発揮できるようになり、例えば、判断や意思決定、創造的活動等といった領域でも代替できる部分が増えると見込まれている」との指摘がされていた。
 これまで、AIは、人間の創作を補助するものに過ぎないと考えられていたが、ChatGPT等の出現により、AIによる自律的創作が実現しつつあるとの指摘もされている。従来、技術的思想の創作過程は、①課題設定、②解決手段候補選択、③実効性評価の3段階からなり、このうちのいずれかに人間が(創作的に)関与していればその人間による創作であると評価するとの考え方が示されていた。このような考え方によれば、解決手段に関する技術的な知見がない者であっても、課題設定さえできれば、ChatGPT等のAIを用いて解決手段を得ることにより(なお、③実効性評価についてもシミュレーション等による自動化が容易に想定できる。)、技術的思想の創作(発明)を生み出すことができるようになると考えられる。
 このように、ChatGPT等の万人が容易に利用可能なAIが出現したことにより、創作過程におけるAIの利活用が拡大することが見込まれ、それによって生まれた発明を含む特許出願が増えることが予想される。そのような発明(例えば、上述の創作過程の①~③の一部において、人間が創作的な関与をせず、AIが自律的に行ったもの)の審査において、創作過程でのAIの利活用をどのように評価するかが問題となるおそれがある。そこで、発明の創作過程におけるAIの利活用が特許審査へ与える影響(例えば以下に述べる進歩性や記載要件等の判断への影響)について検討・整理が必要と考えられる。
 進歩性(特許法第29条第2項)の判断については、どのような技術分野で、どのような形態でのAIの利活用が当業者の知識・能力の範囲内とされるかによって、創作過程でAIを利活用した発明はもちろん、AIを用いていないものについても進歩性の有無が左右されるとの研究もある。また、創作過程におけるAIの利活用を、進歩性の評価においてどのように取り扱うかを明確化することが必要との考えもある。進歩性を特許の要件とするのは、当業者が容易に思い付く発明に排他的権利を与えることは、技術進歩に役立たず、かえってその妨げになるからである。これらの点を考慮して、今後の進歩性の審査に当たっては、急速なAI技術の発展(それによるAI技術の適用分野の拡大や技術常識の変遷等を含む。)の影響も踏まえ、大量に生み出されることが予想されるAIを利活用した発明について、適切に進歩性の判断を行う必要がある。
 また、2022年2月に公表された「近年の判例等を踏まえたAI関連発明の特許審査に関する調査研究報告書」によれば、明細書等において、化合物の機能についてマテリアルズ・インフォマティクスによる予測が示されているに過ぎず、実際にそれを製造して機能を評価した実施例が記載されていない場合には、主要国では記載要件違反となり得る旨が示されている。他方で、AI等を用いた機能予測の精度がさらに高まり、(in-silicoの)予測結果の信頼性が実際の(invitro/in-vivo)実験結果と同程度と認められるようになった場合には、異なる判断が必要となる可能性もある。急速なAI技術の発展の中で、特許審査実務上の影響を整理し、その影響に対応していくに当たって、その審査の在り方は、特許権というインセンティブを付与するに際し、AIを利活用した創作において人間の関与がどの程度あるべきかや、AIの利活用が創作過程の各段階に与える影響等も考慮した進歩性等の判断がどうあるべきかということも含め、特許法の目的である産業の発達への寄与という趣旨に立ち返って再検討される必要がある。
 また、これまで以上に幅広い分野で創作過程におけるAIの利活用が見込まれることを踏まえて、特許庁においては、特にこれまでAI技術の活用が見られなかった分野等も含め、AI関連発明の審査をサポートできるような審査体制を整備する必要がある。
 さらに、これらの点も踏まえながら、AI関連発明の特許審査の迅速性・質を確保するために、AI関連発明の審査事例の更なる整理・公表が望まれる。併せて、我が国で創出されたイノベーションについてグローバルに適切な保護を得られるようにするためには、我が国が主導しての特許審査実務のハーモナイズが期待されるところ、そのための端緒として、まずはケーススタディを通じた各国のAI関連発明の審査実務の情報収集・比較が必要と考えられる。
 なお、発明についても、著作物と同様に、AIが自律的に(人間による創作的な関与を受けずに)創作した場合の取扱いについても、諸外国における取扱いの状況も踏まえて、「新たな情報財検討委員会報告書」公表後の新たな課題の有無等を含めて確認、整理しておくことが必要である。

(施策の方向性)
・創作過程におけるAIの利活用の拡大を見据え、進歩性等の特許審査実務上の課題やAIによる自律的な発明の取扱いに関する課題について諸外国の状況も踏まえて整理・検討する。(短期)(内閣府、経済産業省)

・これまで以上に幅広い分野において、創作過程におけるAIの利活用の拡大が見込まれることを踏まえ、AI関連発明の特許審査事例を拡充し、公表する。また、AI関連発明の効率的かつ高品質な審査を実現するため、AI審査支援チームを強化する。(短期)(経済産業省)

 今回は現状認識の部分も重要と思ったので長めに引用したが、生成AIと著作権の問題に関する施策の方向性としては、要するに、

・生成AIと著作権との関係について、AI技術の進歩の促進とクリエイターの権利保護等の観点に留意しながら、具体的な事例の把握・分析、法的考え方の整理を進め、必要な方策等を検討する。(短期、中期)(内閣府、文部科学省)

というものであって、この様に、現行著作権法に基づく考え方の整理と周知に重点を置いた書き方になっているのは、正しい現状認識に基づく妥当な方向性と私も考える。

 上で引用した部分でも書かれている様に、

  1. 著作権法第30条の4によりAI開発における著作物の利用は許諾なく可能だが、必要と認められる限度を超える場合や著作権者の利益を不当に害することとなる場合は権利制限の対象外となる
  2. 利用者の指示が簡単な指示に留まり、創作的寄与が認められない場合、AI生成物は著作物と認められず、利用者に著作権はなく、また、既存の著作物に対して依拠性と類似性が認められる場合、通常の著作権侵害と同様、AI生成物の提供等は著作権侵害となる

という現行著作権法の基本的な考え方を前提として(この考え方については、第477回又は下のAI戦略チームの関係整理ペーパー参照)、生成AI技術の発展に留意しつつ、特に、

・AI生成物が著作物と認められるための利用者の創作的寄与に関する考え方

・学習用データとして用いられた元の著作物と類似するAI生成物が利用される場合の著作権侵害に関する考え方

・AI(学習済みモデル)を作成するために著作物を利用する際の、著作権法第30条の4ただし書に定める「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」についての考え方

という3つの論点について、今後、文化庁を中心にさらに整理が進められるのだろう。

 なお、政府の方向性としては、既に、5月11日の政府のAI戦略チームの第3回で示されたAIと著作権の関係について(pdf)で、同様に現行法の解釈の概要を示しながら、今後の対応として、

・上記の「現状の整理」等について、セミナー等の開催を通じて速やかに普及・啓発

・知的財産法学者・弁護士等を交え、文化庁においてAIの開発やAI生成物の利用に当たっての論点を速やかに整理し、考え方を周知・啓発

・コンテンツ産業など、今後の産業との関係性に関する検討等について

と書かれ、5月26日のAI戦略会議の第2回AIに関する暫定的な論点整理(pdf)の「3.主な論点の整理」の「3-1 リスクへの対応」で、第13ページに、

⑥著作権侵害のリスク
 生成AIがオリジナルに類似した著作物を生成するなどの懸念がある。生成AIの普及によって個々の権利者にとって著作権侵害事案が大量に発生し、紛争解決対応も困難となるおそれもある。一方で、生成AIを利用して映像制作を効率化する例もある。クリエーターの権利の守り方、使い方は重要な論点である。
 政府は、まずは現行の著作権法制度を丁寧に周知すべきである。今後、専門家も交えて、AI生成物が著作物として認められる場合、その利用が著作権侵害に当たる場合や著作物を学習用データとして利用することが不当に権利者の利益を害する場合の考え方などの論点を整理し、必要な対応を検討すべきである。

と書かれていたので、この知財計画は政府としては現状認識まで含めてより詳細に書いたものという事になるだろう。

 また、ここで、AIと特許の問題の詳細に踏み込むつもりはないが、特許法における発明についても同じ事が考えられるのはその通りであって、上では「(2)AI技術の進展を踏まえた発明の保護の在り方」も参考に抜粋した。

 後は今年の知財計画に見るべき所はほとんどないが、「7.デジタル時代のコンテンツ戦略」の「(2)クリエイター主導の促進とクリエイターへの適切な対価還元」で、対価還元について、第72~73ページに以下の様な項目が並んでいる。

・競争政策、デジタルプラットフォーム政策、著作権政策、情報通信政策等の諸政策の動向や、国際的ハーモナイゼーションの観点等を踏まえながら、クリエイター・制作事業者への適切な対価還元や取引の透明性の確保、権利処理・権利保護においてプラットフォームが果たす役割、インターネット上のコンテンツ流通の媒介者である通信関係事業者の役割等をめぐる課題について、各分野の実態把握と課題の整理を進める。(短期、中期)(内閣府、内閣官房、公正取引委員会、経済産業省、総務省、文部科学省)

・クリエイター・制作事業者に適切に対価が還元され、コンテンツの再生産につながるよう、リアルの空間での取組はもとより、デジタル時代に対応した新たな対価還元策について、コンテンツ配信プラットフォームや投稿サイト等における著作物の利用状況(権利侵害を伴う利用実態を含む。)、対価に関する情報の透明性、契約当事者間の関係性、権利保護・権利処理において投稿サイト等が果たすべき役割を踏まえ、関連各分野の実態把握・課題整理の取組と連携しながら、検討を進める。(短期、中期)(文部科学省、内閣官房、内閣府、公正取引委員会、総務省、経済産業省)

・コンテンツ制作者に対してコンテンツ流通取引の場を提供するプラットフォーマーの優位な関係性を考慮し、UGCなどの進展も踏まえたコンテンツ産業の将来的な姿も視野に入れて、欧米の制度も参考にしつつ、インターネット上のコンテンツ流通の媒介者である通信関係事業者の役割の在り方について、関連各分野の実態把握と課題の整理を踏まえて検討し、結論を得た上、必要な措置を講じる。(短期、中期)(総務省、関係省庁)

 ここで、対価還元の検討について、去年のブルーレイに実質的に私的録音録画補償金を賦課する悪辣な政令改正以降、私的複製補償金の対象拡大を諦めたという事は全くなく、確実にどこかで次の動きを仕掛けて来るに違いないと私は思っているが、ここで、プラットフォーマーの役割が強調され、知財計画から私的録音録画補償金に対する明示的な言及はなくなっている。

 同じく、「7.デジタル時代のコンテンツ戦略」の「(3)メタバース・NFT、生成AIなど新技術の潮流への対応」で、第75ページに、

・デジタル空間におけるデザイン保護の一翼を担う措置として、他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡等する行為の規律を含む不正競争防止法の改正を踏まえた制度周知及び普及啓発等の必要な措置を講ずる。
(短期、中期)(経済産業省)

と、「(4)コンテンツ創作の好循環を支える著作権制度・政策の改革」で、第77ページに、

・文化庁は、第211回通常国会において成立した著作権法の一部を改正する法律による新たな裁定制度について、デジタル時代に対応したコンテンツ創作の好循環を促し、コンテンツの流通促進や、クリエイターへの対価還元の拡大等にも資するものとなるよう、関係府省庁との連携の下、利用者、権利者をはじめ幅広いステークホルダーの協力により、窓口組織の整備を図り、当該組織による体制構築やサービス内容等の具体化等が円滑に進められるようにするなど、施行に向けた準備と関係者への周知啓発等を行う。
(短期・中期)(文部科学省、内閣府、経済産業省、総務省、デジタル庁)

と、今年の法改正の周知、運用検討に関する項目がある。(著作権法改正、不正競争防止法等改正の内容については、それぞれ、第473回第474回参照。)

 また、「(6)海賊版・模倣品対策の強化」で、第84~85ページに、

・インターネット上の海賊版による被害拡大を防ぐため、インターネット上の海賊版に対する総合的な対策メニュー及び工程表に基づき、関係府省が連携しながら、必要な取組を進めるとともに、被害状況や対策の効果について逐次検証を行い、更なる取組の推進を図る。(短期、中期)(内閣府、警察庁、総務省、法務省、外務省、文部科学省、経済産業省)

・CDNサービス事業者における海賊版サイトへのサービス提供の停止や、検索サイト事業者における海賊版に係る検索結果表示の削除又は抑制など、海賊版サイトの運営やこれへのアクセスに利用される各種民間事業者のサービスについて必要な対策措置が講じられるよう、それら民間事業者と権利者との協力等の促進、当該民間事業者への働きかけ、権利行使を行う権利者への支援等を行う。(短期、中期)(総務省、文部科学省、経済産業省、内閣府)

・海賊版対策に係る課題と適切な対価還元等に係る課題とを合わせて検討することが必要な領域への対応を含めた対応として、競争政策、デジタルプラットフォーム政策、著作権政策、情報通信政策等の諸政策の動向や、国際的ハーモナイゼーションの観点等を踏まえながら、クリエイター・制作事業者への適切な対価還元や取引の透明性の確保、権利処理・権利保護においてプラットフォームが果たす役割、インターネット上のコンテンツ流通の媒介者である通信関係事業者の役割等をめぐる課題について、各分野の実態把握と課題の整理を進める。(短期、中期)(内閣府、内閣官房、公正取引委員会、経済産業省、総務省、文部科学省)【再掲】

・世界知的所有権機関(WIPO)や二国間協議等の枠組み、国際会議等の場を活用し、海賊版対策の強化に向けた働きかけを行うなど、国際連携の強化を図る。海外海賊版サイトの運営者摘発等に向け、外国公安当局への積極的な働きかけ、国際的な捜査協力等を推進するほか、民間事業者との協力の下、デジタルフォレンジック調査の実施等の取組を進めるなど、国際執行の強化を図る。(短期、中期)(内閣府、警察庁、総務省、法務省、外務省、文部科学省、経済産業省)

・インターネット上の国境を越えた著作権侵害等に対し国内権利者が行う権利行使への支援の取組の充実を図る。併せて、第211回通常国会で成立した著作権法の一部を改正する法律における海賊版被害の救済を図るための損害賠償額の算定方法の見直しについて、円滑な施行に向けた準備や周知を行う。(短期、中期)(文部科学省)

・海賊版・模倣品を購入しないことはもとより、特に、侵害コンテンツについては、視聴者は無意識にそれを視聴し侵害者に利益をもたらすことから、侵害コンテンツを含む海賊版・模倣品を容認しないということが国民の規範意識に根差すよう、関係省庁・関係機関による啓発活動を推進する。(短期、中期)(警察庁、消費者庁、総務省、財務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省)

・越境電子商取引の進展に伴う模倣品・海賊版の流入増加へ対応するため、2022年10月に施行された改正商標法・意匠法・関税法により、海外事業者が郵送等により国内に持ち込む模倣品が税関による取締りの対象となったことを踏まえて、模倣品・海賊版に対する厳正な水際取締りを実施する。加えて、善意の輸入者に不測の損害を与えることがないよう、引き続き、十分な広報等に努める。また、他の知的財産権についても、必要に応じて、検討を行う。(短期、中期)(財務省、経済産業省、文部科学省)

という、いつもの総合的な対策メニューへの言及を含む海賊版対策に関する項目が並んでいるが、ここも去年同様のクラウド・CDNや検索サービス事業者との連携強化といった地道な取り組みを中心とした記載であり、危険な方向性が出ているといった事は特にない。

 引き続き海賊版対策関連も要注意だとは思うが、やはり、今年の知財問題に関する政府の検討で最も注目すべきは文化庁を中心に進められるのだろう生成AIと著作権に関する論点整理という事になるだろう。

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