« 第472回:新秘密特許(非公開)制度基本指針案に対する意見募集の開始 | トップページ | 第474回:閣議決定された不正競争防止法等改正案の条文 »

2023年3月12日 (日)

第473回:閣議決定された著作権法改正案の条文

 3月10日に、著作権法改正案と不正競争防止法等改正案が閣議決定・国会提出され、公表された(文科省のHPと経産省のHP参照)。この内不競法等改正案は次に回し、今回はまず著作権法改正案(概要(pdf)要綱(pdf)案文・理由(pdf)新旧対照表(pdf)参照、参照条文(pdf)参照)について取り上げる。

 この著作権法改正案の概要については、上のリンク先の概要資料に以下の様に書かれている。

1.著作物等の利用に関する新たな裁定制度の創設等
①利用の可否に係る著作権者等の意思が確認できない著作物等の利用円滑化
・未管理公表著作物等(集中管理がされておらず、利用の可否に係る著作権者等の意思を円滑に確認できる情報が公表されていない著作物等)を利用しようとする者は、著作権者等の意思を確認するための措置をとったにもかかわらず、確認ができない場合には、文化庁長官の裁定を受け、補償金を供託することにより、裁定において定める期間に限り、当該未管理公表著作物等を利用することができることとする。
・文化庁長官は、著作権者等からの請求により、当該裁定を取り消すことで、取消し後は本制度による利用ができないこととし、著作権者等は補償金を受け取ることができることとする。

②窓口組織(民間機関)による新たな制度等の事務の実施による手続の簡素化
・迅速な著作物等利用を可能とするため、新たな裁定制度の申請受付、要件確認及び補償金の額の決定に関する事務の一部について、文化庁長官の登録を受けた窓口組織(民間機関)が行うことができることとする。
・新たな制度及び現行裁定制度の補償金について、文化庁長官の指定を受けた補償金等の管理機関への支払を行うことができることとし、供託手続を不要とする。

2.立法・行政における著作物等の公衆送信等を可能とする措置
①立法又は行政の内部資料についてのクラウド利用等の公衆送信等
・立法又は行政の目的のために内部資料として必要と認められる場合には、必要な限度において、内部資料の利用者間に限って著作物等を公衆送信等できることとする。

②特許審査等の行政手続等のための公衆送信等
・特許審査等の行政手続・行政審判手続※について、デジタル化に対応し、必要と認められる限度において、著作物等を公衆送信等できることとする。
※裁判手続についても、裁判手続のIT化のための各種制度改正に併せて、著作物等を公衆送信等できるよう規定の整備を行う(民訴手続については令和4年民事訴訟法等の一部改正法により措置済み)

3.海賊版被害等の実効的救済を図るための損害賠償額の算定方法の見直し
①侵害品の譲渡等数量に基づく算定に係るライセンス料相当額の認定
・侵害者の売上げ等の数量が、権利者の販売等の能力を超える場合等であっても、ライセンス機会喪失による逸失利益の損害額の認定を可能とする。

②ライセンス料相当額の考慮要素の明確化
・損害額として認定されるライセンス料相当額の算定に当たり、著作権侵害があったことを前提に交渉した場合に決まるであろう額を考慮できる旨を明記する。

 ここに書かれている、(1)拡大集中ライセンス類似の新しい利用許諾制度、(2)立法・行政向けの権利制限の拡充、(3)損害賠償額推定規定の見直しという3つのポイントについて、以下、それぞれに関する主要な条文を順次見て行く。

(1)拡大集中ライセンス類似の新しい利用許諾制度
 今回の著作権法改正の最大のポイントだろう拡大集中ライセンス類似の新しい利用許諾制度については、条文上、以下の様に同じ裁定として整理され、著作権者不明の場合の著作権法第67条の後に、未管理公表著作物の利用に関する第67条の3として追加されている。(下線部が追加部分。以下全てで同じ。)

(著作権者不明等の場合における著作物の利用)
第六十七条 公表された著作物又は相当期間にわたり公衆に提供され、若しくは提示されている事実が明らかである著作物は、著作権者の不明その他の理由により相当な努力を払つてもその著作権者と連絡することができない場合として政令で定める場合(以下この条及び第六十七条の三第二項において「公表著作物等」という。)を利用しようとする者は、次の各号のいずれにも該当するときは、文化庁長官の裁定を受け、かつ、通常の使用料の額に相当するものとして文化庁長官が定める額の補償金を著作権者のために供託して、その裁定に係る利用方法により当該裁定の定めるところにより、当該公表著作物等を利用することができる。
 権利者情報(著作権者の氏名又は名称及び住所又は居所その他著作権者と連絡するために必要な情報をいう。以下この号において同じ。)を取得するための措置として文化庁長官が定めるものをとり、かつ、当該措置により取得した権利者情報その他その保有する全ての権利者情報に基づき著作権者と連絡するための措置をとつたにもかかわらず、著作権者と連絡することができなかつたこと。
 著作者が当該公表著作物等の出版その他の利用を廃絶しようとしていることが明らかでないこと。

 国、地方公共団体その他これらに準ずるものとして政令で定める法人(以下この項及び次条この節において「国等」という。)が前項の規定により著作物公表著作物等を利用しようとするときは、同項の規定にかかわらず、同項の規定による供託を要しない。この場合において、国等が著作権者と連絡をすることができるに至つたときは、同項の規定により文化庁長官が定める額の補償金を著作権者に支払わなければならない。

 第一項の裁定(以下この条及び次条において「裁定」という。)を受けようとする者は、著作物の利用方法その他政令で定める事項裁定に係る著作物の題号、著作者名その他の当該著作物を特定するために必要な情報、当該著作物の利用方法、補償金の額の算定の基礎となるべき事項その他文部科学省令で定める事項を記載した申請書に、著作権者と連絡することができないことを疎明する資料その他政令で定める資料次に掲げる資料を添えて、これを文化庁長官に提出しなければならない。
 当該著作物が公表著作物等であることを疎明する資料
 第一項各号に該当することを疎明する資料
 前二号に掲げるもののほか、文部科学省令で定める資料

 裁定を受けようとする者は、実費を勘案して政令で定める額の手数料を国に納付しなければならない。ただし、当該者が国であるときは、この限りでない。

 裁定においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
 当該裁定に係る著作物の利用方法
 前号に掲げるもののほか、文部科学省令で定める事項

 文化庁長官は、裁定をしない処分をするときは、あらかじめ、裁定の申請をした者(次項及び次条第一項において「申請者」という。)にその理由を通知し、弁明及び有利な証拠の提出の機会を与えなければならない。

 文化庁長官は、次の各号に掲げるときは、当該各号に定める事項を申請者に通知しなければならない。
 裁定をしたとき第五項各号に掲げる事項及び当該裁定に係る著作物の利用につき定めた補償金の額
 裁定をしない処分をしたときその旨及びその理由

 文化庁長官は、裁定をしたときは、その旨及び次に掲げる事項をインターネットの利用その他の適切な方法により公表しなければならない。
 当該裁定に係る著作物の題号、著作者名その他の当該著作物を特定するために必要な情報
 第五項第一号に掲げる事項
 前二号に掲げるもののほか、文部科学省令で定める事項

 文化庁長官は、前項の規定による公表に必要と認められる限度において、裁定に係る著作物を利用することができる。

10 第一項の規定により作成した著作物の複製物には、同項の裁定に係る複製物である旨及びその裁定のあつた年月日を表示しなければならない。

(裁定申請中の著作物の利用)
第六十七条の二 前条第一項の裁定(以下この条において単に「裁定」という。)の申請をした者申請者は、当該申請に係る著作物の利用方法を勘案して文化庁長官が定める額の担保金を供託した場合には、裁定又は裁定をしない処分を受けるまでの間(裁定又は裁定をしない処分を受けるまでの間に著作権者と連絡をすることができるに至つたときは、当該連絡をすることができるに至つた時までの間)、当該申請に係る利用方法と同一の方法により、当該申請に係る著作物を利用することができる。ただし、当該著作物の著作者が当該著作物の出版その他の利用を廃絶しようとしていることが明らかであるときは、この限りでない。

(略)

10 文化庁長官は、申請中利用者から裁定の申請を取り下げる旨の申出があつたときは、裁定をしない処分をするものとする。この場合において、前条第六項の規定は、適用しない。

(未管理公表著作物等の利用)
第六十七条の三 未管理公表著作物等を利用しようとする者は、次の各号のいずれにも該当するときは、文化庁長官の裁定を受け、かつ、通常の使用料の額に相当する額を考慮して文化庁長官が定める額の補償金を著作権者のために供託して、当該裁定の定めるところにより、当該未管理公表著作物等を利用することができる。
 当該未管理公表著作物等の利用の可否に係る著作権者の意思を確認するための措置として文化庁長官が定める措置をとつたにもかかわらず、その意思の確認ができなかつたこと。
 著作者が当該未管理公表著作物等の出版その他の利用を廃絶しようとしていることが明らかでないこと。

 前項に規定する未管理公表著作物等とは、公表著作物等のうち、次の各号のいずれにも該当しないものをいう。
 当該公表著作物等に関する著作権について、著作権等管理事業者による管理が行われているもの
 文化庁長官が定める方法により、当該公表著作物等の利用の可否に係る著作権者の意思を円滑に確認するために必要な情報であつて文化庁長官が定めるものの公表がされているもの

 第一項の裁定(以下この条において「裁定」という。)を受けようとする者は、裁定に係る著作物の題号、著作者名その他の当該著作物を特定するために必要な情報、当該著作物の利用方法及び利用期間、補償金の額の算定の基礎となるべき事項その他文部科学省令で定める事項を記載した申請書に、次に掲げる資料を添えて、これを文化庁長官に提出しなければならない。
 当該著作物が未管理公表著作物等であることを疎明する資料
 第一項各号に該当することを疎明する資料
 前二号に掲げるもののほか、文部科学省令で定める資料

 裁定においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
 当該裁定に係る著作物の利用方法
 当該裁定に係る著作物を利用することができる期間
 前二号に掲げるもののほか、文部科学省令で定める事項

 前項第二号の期間は、第三項の申請書に記載された利用期間の範囲内かつ三年を限度としなければならない。

 第六十七条第四項及び第六項から第十項までの規定は、裁定について準用する。この場合において、同条第七項第一号中「第五項各号」とあるのは「第六十七条の三第四項各号」と、同条第八項第二号中「第五項第一号」とあるのは「第六十七条の三第四項第一号及び第二号」と読み替えるものとする。

 裁定に係る著作物の著作権者が、当該著作物の著作権の管理を著作権等管理事業者に委託すること、当該著作物の利用に関する協議の求めを受け付けるための連絡先その他の情報を公表することその他の当該著作物の利用に関し当該裁定を受けた者からの協議の求めを受け付けるために必要な措置を講じた場合には、文化庁長官は、当該著作権者の請求により、当該裁定を取り消すことができる。この場合において、文化庁長官は、あらかじめ当該裁定を受けた者にその理由を通知し、弁明及び有利な証拠の提出の機会を与えなければならない。

 文化庁長官は、前項の規定により裁定を取り消したときは、その旨及び次項に規定する取消時補償金相当額その他の文部科学省令で定める事項を当該裁定を受けた者及び前項の著作権者に通知しなければならない。

 前項に規定する場合においては、著作権者は、第一項の補償金を受ける権利に関し同項の規定により供託された補償金の額のうち、当該裁定のあつた日からその取消しの処分のあつた日の前日までの期間に対応する額(以下この条において「取消時補償金相当額」という。)について弁済を受けることができる。

10 第八項に規定する場合においては、第一項の補償金を供託した者は、当該補償金の額のうち、取消時補償金相当額を超える額を取り戻すことができる。

11 国等が第一項の規定により未管理公表著作物等を利用しようとするときは、同項の規定にかかわらず、同項の規定による供託を要しない。この場合において、国等は、著作権者から請求があつたときは、同項の規定により文化庁長官が定める額(第八項に規定する場合にあつては、取消時補償金相当額)の補償金を著作権者に支払わなければならない。

 条項の追加などに伴うテクニカルな条文改正に加え、この裁定制度を運用する機関について、第6章として「裁定による利用に係る指定補償金管理機関及び登録確認機関」、条文番号で第104条の18から47までが追加されており、その全文は省略するが、第104条の20、21や33などで以下の様に裁定に関する一部業務を委任できる事が規定されている。

(指定補償金管理機関の業務)
第百四条の二十 指定補償金管理機関は、次に掲げる業務を行うものとする。
 次条第一項及び第二項の規定により支払われる補償金の受領に関する業務
 次条第三項の規定により読み替えて適用する第六十七条の二第一項及び第五項(これらの規定を第百三条において準用する場合を含む。)の規定により支払われる補償金及び担保金の受領に関する業務
 前二号の規定により受領した補償金及び担保金の管理に関する業務
 次条第三項の規定により読み替えて適用する第六十七条の二第八項(第百三条において準用する場合を含む。)及び次条第四項の規定による著作権者及び著作隣接権者に対する支払に関する業務
 第百四条の二十二第一項に規定する著作物等保護利用円滑化事業に関する業務

(指定補償金管理機関が補償金管理業務を行う場合の補償金及び担保金の取扱い)
第百四条の二十一 第六十七条第二項及び第六十七条の三第十一項(これらの規定を第百三条において準用する場合を含む。)の規定は、指定補償金管理機関が補償金管理業務を行う場合には、適用しない。

 指定補償金管理機関が補償金管理業務を行うときは、第六十七条第一項及び第六十七条の三第一項(これらの規定を第百三条において準用する場合を含む。以下この条において同じ。)の規定により補償金を供託することとされた者は、これらの規定にかかわらず、当該補償金を指定補償金管理機関に支払うものとする。この場合において、第六十七条第七項(第六十七条の三第六項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)並びに第六十七条の三第九項及び第十項の規定(これらの規定を第百三条において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の適用については、第六十七条第七項中「申請者」とあるのは「申請者及び第百四条の十九第五項に規定する指定補償金管理機関(第六十七条の三において「指定補償金管理機関」という。)」と、第六十七条の三第九項中「第一項の補償金を受ける権利に関し同項の規定により供託された」とあるのは「第百四条の二十一第一項及び第二項の規定により指定補償金管理機関に支払われた」と、同条第十項中「供託した」とあるのは「指定補償金管理機関に支払つた」とする。

(第3項以下略)

第百四条の三十三 文化庁長官は、その登録を受けた者(以下この節において「登録確認機関」という。)に、第六十七条の三第一項(第百三条において準用する場合を含む。以下この節において同じ。)の規定による裁定及び補償金の額の決定に係る事務のうち次に掲げるもの(以下この節、第百二十一条の三及び第百二十二条の二第三号において「確認等事務」という。)を行わせることができる。
 当該裁定の申請の受付(第百四条の三十五第二項において「申請受付」という。)に関する事務
 当該裁定の申請に係る著作物等が未管理公表著作物等に該当するか否か及び当該裁定の申請をした者が第六十七条の三第一項第一号に該当するか否かの確認(以下この条及び第百四条の三十五第二項において「要件確認」という。)に関する事務
 第六十七条の三第一項の通常の使用料の額に相当する額の算出(以下この節において「使用料相当額算出」という。)に関する事務

(第2項以下略)

 文化庁は同じ機関を指定、登録する事を考えているのではないかとも思うが、指定補償金管理機関が第67条の権利者不明の裁定の補償金も扱うのに対し、登録確認機関の方が担当する確認業務は第67条の3の新しい未管理公表著作物の裁定のみとなっており、書き方はかなり複雑だが、この前の法制度小委員会報告書の、新制度の申請受付は別の機関で行いながら利用許諾の決定は文化庁が行うという内容を条文化したらこの様になるだろうと思えるものである。(文化庁の文化審議会・著作権分科会・法制度小委員会の報告書の内容については第470回参照。)

 以前書いた通り、この新制度が本当に著作物の利用の円滑化に役立つかどうかは、条文レベルで決まる事ではなく、その政省令、具体的な運用次第となるだろう。

 運用開始までの準備期間としてやむを得ないのだろうが、概要資料にも書かれている通り、この部分の施行は公布から3年以内で多少時間が掛かる事になっている。

(2)立法・行政向けの権利制限の拡充
 次に、今回の権利制限の拡充は、著作権法の立法・行政・司法向けの権利制限を以下の様に改めるものである。

政治上公開の演説等の利用)
第四十条 公開して行われた政治上の演説又は陳述及び裁判手続並びに裁判手続及び行政審判手続(行政庁の行う審判その他裁判に準ずる手続を含む。第四十二条第一をいう。第四十一条の二において同じ。)における公開の陳述は、同一の著作者のものを編集して利用する場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。

(略)

(裁判手続等における複製等)
第四十一条の二 著作物は、裁判手続及び行政審判手続のために必要と認められる場合には、その必要と認められる限度において、複製することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

 著作物は、特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)その他政令で定める法律の規定による行政審判手続であつて、電磁的記録を用いて行い、又は映像若しくは音声の送受信を伴つて行うもののために必要と認められる限度において、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。以下この項、次条及び第四十二条の二第二項において同じ。)を行い、又は受信装置を用いて公に伝達することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその公衆送信又は伝達の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

(裁判手続等における複製)(立法又は行政の目的のための内部資料としての複製等)
第四十二条 著作物は、裁判手続のために必要と認められる場合及び立法又は行政の目的のために内部資料として必要と認められる場合には、その必要と認められる限度において、複製する複製し、又は当該内部資料を利用する者との間で公衆送信を行い、若しくは受信装置を用いて公に伝達することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及びその複製、公衆送信又は伝達の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

 次に掲げる手続のために必要と認められる場合についても、前項と同様とする。
 行政庁の行う特許、意匠若しくは商標に関する審査、実用新案に関する技術的な評価又は国際出願(特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律(昭和五十三年法律第三十号)第二条に規定する国際出願をいう。)に関する国際調査若しくは国際予備審査に関する手続
 行政庁の行う品種(種苗法(平成十年法律第八十三号)第二条第二項に規定する品種をいう。)に関する審査又は登録品種(同法第二十条第一項に規定する登録品種をいう。)に関する調査に関する手続
 行政庁の行う特定農林水産物等(特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(平成二十六年法律第八十四号)第二条第二項に規定する特定農林水産物等をいう。以下この号において同じ。)についての同法第六条の登録又は外国の特定農林水産物等についての同法第二十三条第一項の指定に関する手続
 行政庁若しくは独立行政法人の行う薬事(医療機器(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第二条第四項に規定する医療機器をいう。)及び再生医療等製品(同条第九項に規定する再生医療等製品をいう。)に関する事項を含む。以下この号において同じ。)に関する審査若しくは調査又は行政庁若しくは独立行政法人に対する薬事に関する報告に関する手続
 前各号に掲げるもののほか、これらに類するものとして政令で定める手続

(審査等の手続における複製等)
第四十二条の二 著作物は、次に掲げる手続のために必要と認められる場合には、その必要と認められる限度において、複製することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
 行政庁の行う特許、意匠若しくは商標に関する審査、実用新案に関する技術的な評価又は国際出願(特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律(昭和五十三年法律第三十号)第二条に規定する国際出願をいう。)に関する国際調査若しくは国際予備審査に関する手続
 行政庁の行う品種(種苗法(平成十年法律第八十三号)第二条第二項に規定する品種をいう。)に関する審査又は登録品種(同法第二十条第一項に規定する登録品種をいう。)に関する調査に関する手続
 行政庁の行う特定農林水産物等(特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(平成二十六年法律第八十四号)第二条第二項に規定する特定農林水産物等をいう。以下この号において同じ。)についての同法第六条の登録又は外国の特定農林水産物等についての同法第二十三条第一項の指定に関する手続
 行政庁若しくは独立行政法人の行う薬事(医療機器(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第二条第四項に規定する医療機器をいう。)及び再生医療等製品(同条第九項に規定する再生医療等製品をいう。)に関する事項を含む。以下この号において同じ。)に関する審査若しくは調査又は行政庁若しくは独立行政法人に対する薬事に関する報告に関する手続
 前各号に掲げるもののほか、これらに類するものとして政令で定める手続

 著作物は、電磁的記録を用いて行い、又は映像若しくは音声の送受信を伴つて行う前項各号に掲げる手続のために必要と認められる場合には、その必要と認められる限度において、公衆送信を行い、又は受信装置を用いて公に伝達することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその公衆送信又は伝達の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

第四十二条の二第四十二条の三(略)

第四十二条の三第四十二条の四(略)

 権利制限についてはもう少し一般化による条文の整理ができないのかといつも思うが、ここも条文の記載そのものに問題があるわけではない。概要資料にも2024年1月1日施行予定と書かれており、当たり前の話とは思うが、民事訴訟法改正に引き擦られる事なく早めの施行が予定されているのは良い事である。

(3月19日夜の追記:この今回の著作権法改正案では、民訴法等改正による施行前の著作権法第42条の2(第454回参照)が削られているが、代わりに、3月14日に閣議決定された民事関係手続電子化法案(正式名称は「民事関係手続等における情報通信技術の活用等の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案」、法務省のHP法律案要綱(pdf)法律案・理由(pdf)新旧対象条文(pdf)参照)により、上の第41条の2第2項に対してさらに以下の改正が加えられる。

(裁判手続等における複製等)
第四十一条の二
(略)
 著作物は、民事訴訟法(平成八年法律第百九号)その他政令で定める法律の規定による裁判手続及び特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)その他政令で定める法律の規定による行政審判手続であつて、電磁的記録を用いて行い、又は映像若しくは音声の送受信を伴つて行うもののために必要と認められる限度において、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。以下この項、次条及び第四十二条の二第二項において同じ。)を行い、又は受信装置を用いて公に伝達することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその公衆送信又は伝達の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

 この民事関係手続電子化法案により、民事訴訟法による通常の民事訴訟以外の家事事件なども電子化されるが、その部分は政令に委ねるという形でこの権利制限は整理される事になる。)

(3)損害賠償額推定規定の見直し
 次に、損害賠償額推定規定の見直しは著作権法第114条を以下の様に改正するものである。

(損害の額の推定等)
第百十四条 著作権者等が故意又は過失により自己の著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者(以下この項において「侵害者」という。)に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者侵害者がその侵害の行為によつて作成された物(第一号において「侵害作成物」という。)を譲渡し、又はその侵害の行為を組成する公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。同号において「侵害組成公衆送信」という。)を行つたときは、その譲渡した物の数量又はその公衆送信が公衆によつて受信されることにより作成された著作物若しくは実演等の複製物(以下この項において「受信複製物」という。)の数量(以下この項において「譲渡等数量」という。)に、著作権者等がその侵害の行為がなければ販売することができた物(受信複製物を含む。)の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額を、著作権者等の当該物に係る販売その他の行為を行う能力に応じた額を超えない限度において次の各号に掲げる額の合計額を、著作権者等が受けた損害の額とすることができる。ただし、譲渡等数量の全部又は一部に相当する数量を著作権者等が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとする。
 譲渡等数量(侵害者が譲渡した侵害作成物及び侵害者が行つた侵害組成公衆送信を公衆が受信して作成した著作物又は実演等の複製物(以下この号において「侵害受信複製物」という。)の数量をいう。次号において同じ。)のうち販売等相応数量(当該著作権者等が当該侵害作成物又は当該侵害受信複製物を販売するとした場合にその販売のために必要な行為を行う能力に応じた数量をいう。同号において同じ。)を超えない部分(その全部又は一部に相当する数量を当該著作権者等が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量(同号において「特定数量」という。)を控除した数量)に、著作権者等がその侵害の行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額
 譲渡等数量のうち販売等相応数量を超える数量又は特定数量がある場合(著作権者等が、その著作権、出版権又は著作隣接権の行使をし得たと認められない場合を除く。)におけるこれらの数量に応じた当該著作権、出版権又は著作隣接権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額

(略)

 裁判所は、第一項第二号及び第三項に規定する著作権、出版権又は著作隣接権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額を認定するに当たつては、著作権者等が、自己の著作権、出版権又は著作隣接権の侵害があつたことを前提として当該著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者との間でこれらの権利の行使の対価について合意をするとしたならば、当該著作権者等が得ることとなるその対価を考慮することができる。

(略)

 これも、前の報告書に書かれていた通り、既に特許法の第102条などで書かれている内容を著作権法にも取り入れるもので、特に問題があるものではない。この部分も2024年1月1日施行予定である。

 今回の著作権法改正案は、全体を通して文化庁の前の報告書から想定される内容であって、何か問題のある部分が含まれているという事はない。予想としては、通常通りのスケジュールで審議が進み、今国会で成立する事になるだろう。

(2023年4月15日夜の追記:改行の誤記を1箇所直した。)

|

« 第472回:新秘密特許(非公開)制度基本指針案に対する意見募集の開始 | トップページ | 第474回:閣議決定された不正競争防止法等改正案の条文 »

文化庁・文化審議会著作権分科会」カテゴリの記事

著作権」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 第472回:新秘密特許(非公開)制度基本指針案に対する意見募集の開始 | トップページ | 第474回:閣議決定された不正競争防止法等改正案の条文 »