第447回:フランスの3ストライク機関の組織変更法改正に対する憲法裁判所の判決
10月31日の衆院選では自公が安定多数を確保し、11月10日に第2次岸田内閣が発足した。当分、今後も自公の政権与党の政策は基本的に今までの路線を踏襲という事になるのだろう。
さて、今回は、第445回の続きとして、フランスの3ストライク機関の組織変更法改正に対して、10月21日に憲法裁判所の判決が出されているので、この事を取り上げる。
想像していた通り、第445回で私が訳出した、全体的に曖昧な形で新機関の権限を規定している部分について、その本質に関わる修正が入る事はなく、些細な修正のみで法改正はフランスの官報で公布され、今までの3ストライク機関(Hadpopi)はその主な仕事を温存した儘2022年1月から視聴覚及びデジタル通信の規制機関(Arcom)に移行する事が確定した。
そのため、フランス憲法裁の判決について細かな内容まで見る意味はあまりないが、以下、極簡単にポイント部分のみ訳出しておく。
2. L'article 25 de la loi deferee insere un deuxieme alinea a l'article 42-2 de la loi du 30 septembre 1986 mentionnee ci-dessus afin de relever le plafond de la sanction pecuniaire qui peut etre infligee a certains des editeurs de services audiovisuels en cas de manquement a leur obligation de contribution au developpement d'oeuvres cinematographiques et audiovisuelles.
...
10. En revanche, en prevoyant, en cas de recidive, une augmentation du montant de la sanction sans definir les conditions, notamment de delai, dans lesquelles cette recidive peut etre constatee, le legislateur a retenu une sanction manifestement disproportionnee. Des lors, les mots << ou le triple en cas de recidive >> figurant a l'article 25 de la loi deferee sont contraires a la Constitution.
...
14. Le paragraphe II de l'article 12 precise les normes auxquelles doivent repondre certains televiseurs et adaptateurs permettant la reception de services de television numerique terrestre en ultra haute definition. Introduites en premiere lecture, ces dispositions ne presentent pas de lien, meme indirect, avec l'article 4 du projet de loi initial qui prevoyait que l'Autorite de regulation de la communication audiovisuelle et numerique assure desormais les missions devolues a la Haute Autorite pour la diffusion des oeuvres et la protection des droits sur internet.
15. L'article 16 modifie les conditions de reprise des decrochages regionaux et locaux sur les reseaux autres que satellitaires. Introduites en premiere lecture, ces dispositions ne presentent pas de lien, meme indirect, avec les articles 12 et 16 du projet de loi initial qui amenageaient le pouvoir de sanction de l'Autorite de regulation de la communication audiovisuelle et numerique.
16. L'article 18 impose aux distributeurs de services en haute definition la reprise, egalement en haute definition, des services de la television numerique terrestre a vocation locale. Introduites en premiere lecture, ces dispositions ne presentent pas de lien, meme indirect, avec celles, precitees, des articles 12 et 16 du projet de loi initial.
17. Ces dispositions ne presentent pas non plus de lien, meme indirect, avec aucune autre des dispositions qui figuraient dans le projet de loi depose sur le bureau du Senat.
18. Sans que le Conseil constitutionnel ne prejuge de la conformite du contenu de ces dispositions aux autres exigences constitutionnelles, il y a lieu de constater que, adoptees selon une procedure contraire a la Constitution, elles lui sont donc contraires.
2.付託された法律の第25条は、映画及び視聴覚著作物の発展への寄与の義務に違反した場合に視聴覚サービスの発行者に課され得る罰金の上限を上げるために上記の1986年9月30日の法律の第42-2条に第2段落を追加している。
(略)
10.これに対し、その条件、特に、この繰り返しが認められ得る期間について定義する事なく、繰り返しの場合に、罰の金額の増加が想定される事において、立法者は明らかにバランスを欠く罰を保持した。ここで、付託された法律の第25条に書かれた、「繰り返された場合に三倍」という語は憲法に反する。
(略)
14.第12条のパラグラフⅡは、上の定義における地上波デジタル放送サービスの受信が可能なテレビ及びアダプタが対応すべき規則を定めている。第1読会において導入されたものである、これらの規定は、視聴覚及びデジタル通信規制機関が、今後、インターネットにおける著作物の頒布と著作権の保護のための高等機関(訳注:元の3ストライク機関)に割り当てられた責務を果たす事を想定していたものである当初法案の第4条と、間接的にも、繋がりを持たない。
15.第16条は、衛星以外の放送網における地域及び地方除外の再開条件を修正している。第1読会において導入されたものである、これらの規定は、視聴覚及びデジタル通信規制機関の罰を与える権限を整えるものであった当初法案の第12及び16条と、間接的にも、繋がりを持たない。
16.第18条は、上の定義のサービスの提供者に、同じく上の定義の、地方の地上波デジタルテレビジョンサービスの再開を課すものである。第1読会において導入されたものである、これらの規定は、上述のものである、当初法案の第12及び16条と、間接的にも、繋がりを持たない。
17.これらの規定は、当初法案の中にある他の規定とも、間接的にも、繋がりを持たない。
18.憲法裁判所が憲法による他の要請へのこれらの規定の内容の適合性について判断する必要はなく、これらは憲法に違反する手続きによって可決されたものであり、よって、違憲であると認められる。
明確に憲法違反と言える所が他にあまりなかったのだろう、フランス上院議員団の訴え提起書(pdf)を見ても、この部分の罰がバランスを欠いている事だけを攻めているので、当然と言えば当然の結果であるが、フランス憲法裁は、要するに、刑罰は厳格に必要な場合のみに限られるとする1789年の人権宣言の第8条と、元の条文と関係がある時に修正が認められるとする1958年の憲法の第45条に基づいて一部の条文を削っただけで、法律の本質的な部分には全く手をつけていないのである。
これによって、フランスでは来年1月1日以降も新機関により3ストライクポリシーが継続される事が確定したという事になるが(ただし、ネット切断の罰はかなり前に廃止されている)、以前書いた通り、新業務も合わせこれは結局無意味なものに終わるのではないかと私は見ており、今後もフランスの状況については折を見て紹介して行きたいと思っている。
| 固定リンク
« 第446回:主要政党の2021年衆院選公約案比較(知財政策・情報・表現規制関連) | トップページ | 第448回:技術と著作権の問題に関する国際動向2つ(DRM回避の例外を拡張するアメリカ著作権規則改正とエラー修正のためのプログラムの逆コンパイルは可能とする欧州司法裁の判決) »
「著作権国際動向(フランス)」カテゴリの記事
- 第447回:フランスの3ストライク機関の組織変更法改正に対する憲法裁判所の判決(2021.11.14)
- 第445回:フランスの3ストライク機関の組織変更法改正案(両院可決版)(2021.10.03)
- 第431回:3ストライク法の一部を違憲無効とするフランス憲法裁判所の判決(2020.10.25)
- 第294回:フランスにおける3ストライク法のネット切断の罰の廃止他(2013.07.22)
- 第271回:欧米主要国におけるダウンロード違法化・犯罪化を巡る現状(2012.06.10)
コメント