第416回:文化庁・法制・基本問題小委員会「写り込みに係る権利制限規定の拡充に関する中間まとめ」に関する意見募集(11月30日〆切)への提出パブコメ
今最も気になっているのは11月27日から始まる文化庁の侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会だが(開催案内参照)、その間に、11月30日〆切で掛かっている、前回取り上げた文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会「写り込みに係る権利制限規定の拡充に関する中間まとめ」に関する意見募集(文化庁のHP、電子政府のHP参照)に意見を出したので、ここに載せておく。私は念のため最後に範囲外のダウンロード違法化・犯罪化などについても意見を書いているが、この中間まとめ自体は写り込みに関する権利制限の拡充のみを示しているので、細かな問題はあるものの、大きな問題がある訳ではない。
(以下、提出パブコメ)
現行の写真等における写り込みに関する権利制限規定である著作権法第30条の2について、その趣旨から、その対象を生放送・生配信、スクリーンショット、模写等に拡大し、不要と考えられる分離困難性及び著作物創作要件の要件を削除する事に賛同する。
ここで、分離困難性及び著作物創作要件の要件の削除についてはその削除のみに留めるべきであって、追加の要件による不必要な限定を加えてはならない。これらの要件を削除するのみであっても、他に、付随性及び軽微性の要件もあれば、スリーステップテストをそのまま記載したただし書きもあり、必要十分なだけ限定されているのであって、本中間まとめの第5ページに記載されている様に、「映画の盗撮等の違法行為に伴う写り込みについても適法となり得ることには留意が必要」という事はなく、第6~7ページに記載されている様に、「その著作物の利用が主目的であるにもかかわらず、それを覆い隠すために本規定を利用するといった濫用的な行為まで可能となってしまうおそれ」もないからである。
本中間まとめの第5ページに、「主たる行為が著作権法上許容されないものであるにもかかわらず、それに伴う写り込みを適法とする必要はない(写り込んだ著作物の著作権者による権利行使が出来なくなるのは不合理である)という考え方」「を採用する場合には、例えば、端的に、著作権を侵害する行為に伴う写り込みは本規定の対象外とする旨の要件を設定することが考えられる」と記載されているが、この様な追加の要件を設定すると、外形的に違法とされ得る軽微な構成部分を含む場合の写り込み・スクリーンショット等が全て違法となる解釈が生じ得るため、かえって適切ではない。
この点については、追加の不要な要件を設定する事なく、本中間まとめの第4ページにおいて、「『自らが著作権を有する著作物が掲載された雑誌の記事を複製する際に、同一ページに掲載された他人の著作物が入り込んでしまう場合』などについても、日常生活等における一般な行為に伴い付随的に他人の著作物が利用される場面であり、写真の撮影等の場合と比較して権利者に与える不利益の程度に特段の差異がないと考えられることから、対象に含めることが適当」とされている通り、外形的に違法とされ得る軽微な構成部分を含む場合も含めて写り込みとして明確に適法化し、現行の著作権法の問題の軽減化を図るべきである。
また、本中間まとめの第7ページにおいて、「メインの被写体と付随して取り込まれる著作物が別個のものである場合(事例1)」と「街の雑踏を撮影する場合のように被写体(雑踏の光景)の中に当該著作物が含まれる場合(事例2)」の両方の場合が含まれる事を明確化するため、「現行規定のように『写真の撮影等の対象とするAに付随して対象となるB』といった規定ぶりを維持し」つつ、「事例1と事例2を併記することにより、事例2についても対象に含まれることを明確化することが適当」としている。しかし、ここで、現行の規定の「対象とするA」という部分まで維持する必要はなく、単に「写真の撮影等に付随して対象となる他の著作物」とすれば足りる。この様にしても、付随性の要件は維持され、他に軽微性の要件もあれば、スリーステップテストをそのまま記載したただし書きもあるのであって、想定外の事例が対象に含まれる事はない。
第7~8ページにおいて、「軽微な構成部分といえるか否かが上記のような総合的な考慮によるものであることを明確化し、利用者の判断に資するようにするため、法第47条の5第1項の規定(『・・その利用に供される部分の占める割合、その利用に供される部分の量、その利用に供される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものに限る』)も参考にしつつ、考慮要素を複数明記することが適当」としている。考慮要素の明記自体に反対はしないが、必ず「その他の要素」も含め、考慮要素が限定列挙と解釈されない様にするべきである。
最後に、本パブコメの範囲外となるが、他のパブコメで書いて来た通り、今後著作権法改正案を提出するのであれば、前回国会提出を断念した条文案からのダウンロード違法化・犯罪化の対象拡大に関する全ての条項の削除のみならず、著作権法第30条第1項第3号及び第119条第3項を削除し、ダウンロード違法化・犯罪化を完全に撤廃することを速やかに行うべきである。また、現行現行の著作権法における民事の間接侵害(カラオケ法理)あるいは刑事の著作権侵害幇助との関係整理をおざなりにした、著作権侵害コンテンツへのリンク行為に対するみなし侵害規定の追加及び刑事罰付加にも反対する。そして、研究のための権利制限の導入検討も今年度に速やかに行うべきであり、合わせアメリカ等と遜色ない形で一般フェアユース条項を可能な限り早期に導入するべきである。
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