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2019年8月18日 (日)

第412回:インターネット海賊版対策としてアクセス警告方式の導入は法的にも技術的にも難しいとする総務省の報告書

 8月8日に総務省からインターネット上の海賊版サイトへのアクセス抑止方策に関する検討会報告書(pdf)が公表された(総務省のリリース参照)。この報告書は、インターネット海賊版対策としてアクセス警告方式の導入は現時点で法的にも技術的にも難しいという極めて妥当な結論を出しているものであるが、今後の政府検討の前提となると思うので、ざっとその内容を見ておく。

 この報告書では、第2ページ以下の第1章で、今までの経緯、出版広報センターからのヒアリング内容と、インターネットの特性やユーザーの意見も踏まえた検討を行うべきといった前置きを書いた後、第7ページ以下の「第2章 ネットワーク側におけるアクセス抑止方策(アクセス警告方式)」でアクセス警告方式の是非を取り上げている。

 まず、第2章の「4.アクセス警告方式の実施の前提となる法的整理」(第9ページ~)で、法的整理、通信の秘密との関係について書いているが、ここで、アクセス警告方式の様な通信の侵害となる方式の実施には原則として明確な個別の同意が必要であるとしながら、例外的に包括同意が許される条件を考えると「ISPが海賊版サイトへのアクセスを警告することを目的として、ユーザのアクセス先を検知し、警告画面を表示することについて、『一般的・類型的に見て、通常のユーザであれば承諾すると想定し得る』か否かが問題となる」(第11~12ページ)が、この様な方式の実施に対して慎重又は否定的なアンケート調査及びパブリックコメントの結果から、「現時点でのユーザの意識・意向を踏まえると、アクセス警告方式の実施について、『一般的・類型的に見て、通常のユーザであれば承諾すると想定し得る』とはいえないと考えられる。したがって、ISPは、ユーザから個別具体的かつ明確な同意を取得する場合にはアクセス警告方式を実施することは可能であるが、現状では、契約約款等による包括同意を有効な同意とみることは困難と考えられる。また、この点は、ダウンロード行為が違法とされる場合であっても同様に考えられる。」(第13ページ)というごく真っ当な結論を出している。

 次に、「5.アクセス警告方式の導入及び実施のための技術的な課題及びコスト」(第13ページ~)で、技術的な課題についても書いているが、ここで、

  • (a)DNS+プロキシ方式:ユーザが海賊版サイトにアクセスしようとした場合にDNSサーバ上で当該アクセスを検知し、アクセス先を海賊版サイトから警告画面を表示するサイトに書き換え、別のサーバ(プロキシサーバ)に誘導して警告画面を表示する手法
  • (b)プロキシ方式:ISPにおいて新たに用意するプロキシサーバを経由してユーザよるwebサイトへのアクセスを提供し、同サーバにおいて警告画面の表示や本来のコンテンツの表示の切替え等を行う手法
  • (c)DPI方式:ISPの管理するネットワークにパケットの中身を解析する機能(DPI装置)を実装する手法

の全てについて、技術的な課題及びコストの問題があり、さらに、海賊版サイトが暗号化通信に対応している場合、電子証明書のエラーから警告画面表示ができないが、「このような証明書エラーの問題を回避し、警告画面を表示させるためには、ISPが保有する警告画面表示用のサーバの証明書を『信頼できるルート証明書』としてユーザのブラウザに追加してもらう方法が考えられるが、そのような方法はセキュリティリテラシーの観点から適切ではなく、現実的な対応策ではないと考えられる。」としているのは当然の帰結である。

 この第2章の結論は、「7.アクセス警告方式に係る今後の検討課題」(第20~21ページ)で、次の通り、個別同意を前提とした試行的実施や技術の進展に伴うコストの将来的な低下などの記載に多少の未練が見られるものの、上で抜き出した部分をそのままなぞる形で書かれている。

 以上の検討を踏まえると、アクセス警告方式は、警告画面を表示させることで、多くのユーザが海賊版サイトにアクセスすることを思いとどまるものと見込まれることから、海賊版対策として一定の効果があると考えられるものの、アクセス警告方式の実施に係る法的整理に関しては、現時点でのユーザの意識や意向を前提とすると、ユーザから個別具体的かつ明確な同意を取得すればアクセス警告方式を実施することは可能である。しかし、現状では、契約約款等による包括同意によってユーザの有効な同意があるとの法的整理を行うことは困難である。また、ダウンロード行為が違法とされたと想定した場合についても、ユーザの意識や意向に大きな違いは見られないことから、同様の整理になるものと考えられる。
 また、アクセス警告方式を実現するための技術的な仕組みや関連機器・システムのコストの面でも、現状では、様々な課題があることが示された。しかしながら、例えば、既に関連機器やシステムを保有しているISPなどもあることから、個別同意を前提としたアクセス警告方式の試行的実施などの技術検証を進めていくほか、インターネットを取り巻く技術の進展は目まぐるしく、また、それに伴って、関連機器・システムのコストも将来的に低下していくことも考えられることから、今後とも海賊版の被害状況や総合的対策メニュー案に示された各施策の取組状況も踏まえつつ、引き続きユーザの意識や意向、技術動向・コスト動向などアクセス警告方式をめぐる状況把握に努めていくことが適当である。
 なお、前述のとおり、アクセス警告方式には海賊版対策として一定の効果が見込まれると考えられるところ、カジュアル・ユーザによる海賊版サイトへのアクセスを防ぐことによって著作権者の被害拡大を防止する仕組みは、ネットワーク側におけるアクセス抑止方策であるアクセス警告方式に限られず、端末側においてアクセス警告方式類似の対策の実装を図ることも可能である。したがって、アクセス警告方式に関する課題については、上記のとおり、引き続き技術検証や状況把握等に努めていく一方で、現状では、後述のとおり端末側でアクセス警告方式類似の方策をすでに実施しており、ネットワーク側ではなく、端末側においてアクセス警告方式類似の対策の実装を図ることがより即時性が高い方策であると考えられることから、上記ネットワーク側におけるアクセス抑止方策への対応と併せて、端末側におけるアクセス抑止方策を着実に促進していくことが適当である。
 意見募集においても、ネットワーク側よりも、端末側において実装を図る方が効率的又は本来のネットワークのあるべき姿に相応しい等の意見も多く寄せられたところであり、こうした声も踏まえて、次章では、端末側におけるアクセス抑止方策について検討を行う。

 報告書の端末側のフィルタリングによる対策について記載している部分は、ブロッキングやアクセス警告方式ほどの問題がある訳ではないので、ここでは省略するが、総務省は8月9日に青少年の安心・安全なインターネット利用環境整備に関するタスクフォース青少年のフィルタリング利用促進のための課題及び対策(pdf)も公表している(総務省のリリース参照)。

 随所にアクセス警告方式に対する未練が見られる点で全く難点がないとまでは言い切れないものの、アクセス警告方式の導入は法的にも技術的にも難しいとするこの総務省の報告書の結論は極めて妥当なものと思うし、パブコメを出したことも無駄ではなかったと思うが(私の提出パブコメは第407回参照)、これでインターネット上の海賊版対策に関する検討が大きな問題なく進められるとは行かないのではないかと私は危惧している。7月26日には、知財本部で検証・評価・企画委員会の第1回が開催され(議事次第・資料参照)、その場でブロッキング導入のための議論再開を求める意見が出されたとの報道もあった(時事通信のネット記事参照)。ダウンロード違法化の対象範囲拡大についてはまだ議題に上っていないようだが、8月9日には文化庁の文化審議会・著作権分科会・法制・基本問題小委員会の第1回も開催されている(議事次第・資料参照)。ブロッキングやアクセス警告についてもそうだが、国会提出が見送られた著作権法改正案(その内容については第406回参照)も巻き込んで、知財本部、文化庁、総務省など各官庁、与党・国会議員への権利者側のロビー活動が止む事はないだろうし、以前と同様ごり押しで秘密裏にロクでもない検討が進められる可能性はなお高く、これからも危ない状況が続くと私は見ている。

 サイトブロッキングにしても、アクセス警告方式にしても、総務省の報告書の最後(第34~35ページ)に参考として、

 サイトブロッキングに関しては、本検討会会合における構成員等からの意見として、例えば、「意見意見募集の結果を見ると、通信の秘密の侵害に対して強い懸募集の結果を見ると、通信の秘密の侵害に対して強い懸念が持たれているということを非常に強く感じる。ブロッキングを可能にする法律を作るにせよ、アクセス警告方式を可能にする包括同意の整理をするにせよ、いずれにしても、簡単にできることではないという指摘が多かったので、これらの点を今後の海賊版サイト対策全体を考える上でもこれらの点を今後の海賊版サイト対策全体を考える上でも心掛ける心掛けるべきべき」、「意見募集において、海賊版対策パッケージ全体として、通信の秘密を侵害する形で進めるべきではないという意見がはっきりと出てきており、アクセス警告方式のみならず、ブロッキングについても反対の意見が多いことにの意見が多いことに留意すべき」といったコメントがあった。

と書かれているコメントの通りであって、これらの様なユーザー・利用者の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ない非道なネット検閲の検討より先になすべき事が山の様にあると思うが、今までの日本の政策動向を見るにつけ、政府・与党がその様な地道な取り組みのみを進めようとしないのは本当に残念でならない。

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2019年8月 4日 (日)

第411回:情報・表現の自由と著作権に関する7月29日の欧州司法裁判所の3つの判決

 7月26日に知財本部で今年の検証・評価・企画委員会の第1回が開催されており(議事次第・資料参照)、インターネット上の海賊版対策の議論が再開されているようだが、三崎尚人氏がtwitterで書かれている様に、その政策判断のための有識者会議における発言者を特定しないことを求めているらしい。

 去年の知財本部のブロッキング検討でキーとなった2018年2月16日の会議(議事次第・資料参照)が非公開だった(いまだに議事要旨(pdf)しか公開されていない)のも大いに批判され続けなければならないポイントであることを私は忘れるつもりはないし、去年は炎上したから今年ははなるべくこっそり議論したいとか、バカ丸出しでどうしようもなく酷い話であり、内容以前の問題として知財本部の考え方、議論の仕方そのものを変えるよう声を上げ続けなくてはならないと私は考えている。

 そして、今の所ブロッキングを導入する方向という話にはなっていない模様だが、総務省のインターネット上の海賊版サイトへのアクセス抑止方策に関する検討会の報告書(案)が8月5日に開催される会合で説明される予定というのも気になるのだが(開催案内参照)、第381回で取り上げたドイツ最高裁からの付託質問に対して、先週7月30日に欧州司法裁判所が情報・表現の自由と著作権に関わる3つの判決を出しているので、ここで簡単にその内容を取り上げておきたい。

(1)楽曲サンプリングの著作権法上の取り扱いについて(C-476/17)
 ドイツ最高裁からの付託された質問の内容と状況については第381回を参照いただければと思うが、欧州司法裁は、楽曲サンプリングの著作権法上の取り扱いについて、そのリリース(pdf)にある通り、楽曲サンプリングについて、レコードから取ったものの、変更され、聞いても再認識できない形にされた楽曲断片の利用は許諾がなくとも権利の侵害とはならないという結論を出した。

 その判決(ドイツ語)から、最後の質問への回答部分を訳出しておくと以下の通りである。

1. Art. 2 Buchst. c der Richtlinie 2001/29/EG des Europaischen Parlaments und des Rates vom 22. Mai 2001 zur Harmonisierung bestimmter Aspekte des Urheberrechts und der verwandten Schutzrechte in der Informationsgesellschaft ist unter Berucksichtigung der Charta der Grundrechte der Europaischen Union dahin auszulegen, dass das ausschliesliche Recht des Tontragerherstellers aus dieser Bestimmung, die Vervielfaltigung seines Tontragers zu erlauben oder zu verbieten, ihm gestattet, sich dagegen zu wehren, dass ein Dritter ein - auch nur sehr kurzes - Audiofragment seines Tontragers nutzt, um es in einen anderen Tontrager einzufugen, es sei denn, dass dieses Fragment in den anderen Tontrager in geanderter und beim Horen nicht wiedererkennbarer Form eingefugt wird.

2. Art. 9 Abs. 1 Buchst. b der Richtlinie 2006/115/EG des Europaischen Parlaments und des Rates vom 12. Dezember 2006 zum Vermietrecht und Verleihrecht sowie zu bestimmten dem Urheberrecht verwandten Schutzrechten im Bereich des geistigen Eigentums ist dahin auszulegen, dass es sich bei einem Tontrager, der von einem anderen Tontrager ubertragene Musikfragmente enthalt, nicht um eine "Kopie" dieses anderen Tontragers im Sinne dieser Vorschrift handelt, da er nicht den gesamten Tontrager oder einen wesentlichen Teil davon ubernimmt.

3. Ein Mitgliedstaat darf in seinem nationalen Recht keine Ausnahme oder Beschrankung in Bezug auf das Recht des Tontragerherstellers aus Art. 2 Buchst. c der Richtlinie 2001/29 vorsehen, die nicht in Art. 5 dieser Richtlinie vorgesehen ist.

4. Art. 5 Abs. 3 Buchst. d der Richtlinie 2001/29 ist dahin auszulegen, dass der Begriff "Zitate" in dieser Bestimmung keine Situation erfasst, in der das zitierte Werk nicht zu erkennen ist.

5. Art. 2 Buchst. c der Richtlinie 2001/29 ist dahin auszulegen, dass er eine Massnahme zur vollstandigen Harmonisierung des materiellen Gehalts des in ihm geregelten Rechts darstellt.

1.情報社会における著作権及び著作隣接権の特定の側面の調和に関する2001年5月22日の欧州議会及び理事会の欧州指令第2001/29号の第2条cは、欧州連合の基本権憲章の考慮の下、その規定によりそのレコードの複製を許可又は禁止するレコード製作者の排他的権利は、第三者が他のレコードに導入するためにそのレコードの楽曲断片-非常に短いものだったとしても-を利用する事を止めるのを許容する、ただし、その断片が、その断片が、変えられ、聞いても再認識できない形で他のレコード内に入れられた場合を除く。

2.知的財産権の領域における著作権に関する特定の権利における貸与権についての2006年12月12日の欧州議会及び理事会の欧州指令第2006/115号の第9条第1項bは、他のレコードから移された音楽断片を含むレコードは、レコード全体又はその本質的な部分を取り入れていない限り、この規定の意味における、他のレコードの「コピー」とはならないと解釈される。

3.加盟国は、その国内法において、欧州指令第2001/29号の第5条において想定されていない、本指令の第2条cからのレコード製作者の権利に関する例外又は制限を想定する事は許されていない。

4.欧州指令第2001/29号の第5条第3項dは、その規定における「引用」の概念は、引用された著作物が認識できない状況は含まないと解釈される。

5.欧州指令第2001/29号の第2条cは、そこで規制される権利の実質的な内容の完全な調和のための手段を示していると解釈される。

 欧州司法裁は、判決の理由の部分で、他の基本的な権利とのバランスから、知的財産権も、無制限、無条件に保障されるものではないとして、

34 Dieses Recht muss namlich gegen die anderen Grundrechte abgewogen werden, darunter die durch Art. 13 der Charta garantierte Freiheit der Kunst, die es ermoglicht, am offentlichen Austausch von kulturellen, politischen und sozialen Informationen und Ideen aller Art teilzuhaben, weil sie zur Freiheit der Meinungsausserung gehort, die durch Art. 11 der Charta und Art. 10 Abs. 1 der am 4. November 1950 in Rom unterzeichneten Europaischen Konvention zum Schutz der Menschenrechte und Grundfreiheiten geschutzt ist (vgl. in diesem Sinne EGMR, 24. Mai 1988, Muller u. a./Schweiz, CE:ECHR:1988:0524JUD001073784, § 27, EGMR, 8. Juli 1999, Karatas/Turkei, CE:ECHR:1999:0708JUD002316894, § 49).

35 Insoweit ist festzustellen, dass die Technik des "Elektronischen Kopierens von Audiofragmenten" (Sampling), bei der ein Nutzer - zumeist mit Hilfe elektronischer Gerate - einem Tontrager ein Audiofragment entnimmt und dieses zur Schaffung eines neuen Werks nutzt, eine kunstlerische Ausdrucksform ist, die unter die durch Art. 13 der Charta geschutzte Freiheit der Kunst fallt.

36 In Ausubung dieser Freiheit kann der Nutzer eines Audiofragments (Sample) bei der Schaffung eines neuen Werks das dem Tontrager entnommene Fragment so andern, dass es im neuen Werk beim Horen nicht wiedererkennbar ist.

34 これらの権利は、他の基本的な権利に対して特に重いものではない、そこには憲章の第13条により保障される芸術の自由があり、それは文化的、政治的及び社会的な情報及び観念の開かれた交換にあらゆる形で参加する事を可能にするものである、というのも、それは、憲章の第11条並びに1950年11月4日にローマで署名された人権及び基本的な自由の保護に関する欧州条約の第10条第1項により保護される意見表明の自由に属するものだからである(この意味について、欧州人権裁、1988年5月24日、ミューラー他/シュワイツ、第27セクション、欧州人権裁、1999年7月8日、カラタス/トルコ、第49セクション参照)。

35 その限りにおいて、利用者が-少なくとも電子機器を用いて-レコードから楽曲断片を取り出し、新たな著作物の創作に利用するものである、「楽曲断片の電子的コピー」(サンプリング)は、一つの芸術的な表現形式であって、憲章の第13条によって保護される芸術の自由に入るものである。

36 この自由の行使において、楽曲断片(サンプル)の利用者は、新たな著作物の創作においてレコードから取り出した断片を、その新たな著作物において聞いても再認識できない形に変える事ができる。

とも言っている。この判決は、例外及び制限について比較的厳しい事も合わせて言っているが、表現の自由も考慮に入れ、新たな著作物を作るために他の著作物を利用する場合において全て許諾を求める必要はないという事を明らかにしている点で重要である。今後、ドイツの裁判所がこの様な欧州司法裁の回答の趣旨を考慮してこの楽曲サンプリング事件について最終的な結論を出すことになる。

(2)政府のリーク文書の著作権法上の取り扱いについて(C-469/17)
 次に、政府のリーク文書をドイツ政府が著作権で止めようとしていた事件における質問については、欧州司法裁は、そのリリース(pdf)にある通り、問題となっている軍事報告書について、国内裁判所が、その例外又は制限に該当するかを検討する以前にまずその著作権保護のための前提条件が満たされているかどうかを検討するべきという一般論で問題への積極的介入を避けた。

 その判決(ドイツ語)の回答部分には以下の様に書かれている。

1. Art. 2 Buchst. a und Art. 3 Abs. 1 der Richtlinie 2001/29/EG des Europaischen Parlaments und des Rates vom 22. Mai 2001 zur Harmonisierung bestimmter Aspekte des Urheberrechts und der verwandten Schutzrechte in der Informationsgesellschaft sind dahin auszulegen, dass sie Massnahmen zur vollstandigen Harmonisierung des materiellen Gehalts der in ihnen enthaltenen Rechte darstellen. Art. 5 Abs. 3 Buchst. c Fall 2 und Buchst. d dieser Richtlinie ist dahin auszulegen, dass er keine Massnahme zur vollstandigen Harmonisierung der Reichweite der in ihm aufgefuhrten Ausnahmen oder Beschrankungen darstellt.

2. Die Informationsfreiheit und die Pressefreiheit, die in Art. 11 der Charta der Grundrechte der Europaischen Union verankert sind, konnen auserhalb der in Art. 5 Abs. 2 und 3 der Richtlinie 2001/29 vorgesehenen Ausnahmen und Beschrankungen keine Abweichung von den ausschlieslichen Rechten des Urhebers zur Vervielfaltigung und zur offentlichen Wiedergabe aus Art. 2 Buchst. a bzw. Art. 3 Abs. 1 dieser Richtlinie rechtfertigen.

3. Das nationale Gericht muss sich im Rahmen der Abwagung, die es zwischen den ausschlieslichen Rechten des Urhebers aus Art. 2 Buchst. a und Art. 3 Abs. 1 der Richtlinie 2001/29 auf der einen Seite und den Rechten der Nutzer von Schutzgegenstanden aus den Ausnahmebestimmungen in Art. 5 Abs. 3 Buchst. c Fall 2 und Buchst. d dieser Richtlinie auf der anderen Seite anhand samtlicher Umstande des Einzelfalls vorzunehmen hat, auf eine Auslegung dieser Bestimmungen stutzen, die unter Achtung ihres Wortlauts und unter Wahrung ihrer praktischen Wirksamkeit mit den durch die Charta der Grundrechte der Europaischen Union gewahrleisteten Grundrechten voll und ganz im Einklang steht.

1.情報社会における著作権及び著作隣接権の特定の側面の調和に関する2001年5月22日の欧州議会及び理事会の欧州指令第2001/29号の第2条a及び第3条第1項は、そこに含まれる権利の実質的な内容の完全な調和のための手段を示していると解釈される。本指令の第5条第3項cケース2及びdは、関係する例外又は制限の範囲の完全な調和のための手段を示しているとは解釈されない。

2.欧州連合基本権憲章の第11条において保障される情報の自由及び報道の自由自体で欧州指令第2001/29号の第5条第2及び3項において想定される例外及び制限を超えて本指令の第2条a並びに第3条第1項の複製及び公衆送信に関する著作者の排他的権利からの逸脱が正当化される事はない。

3.国内裁判所は、その検討において、一方で欧州指令第2001/29号の第2条a及び第3条第1項の著作者の排他的権利、他方で第5条第3事項cケース2及びdにおける例外規定による保護対象の利用者の権利を、個別ケースの全体的状況も考慮に入れて、取り上げなくてはならない、その際、その文言に気をつけ、その実効性を守りつつ、欧州連合基本権憲章によって保障される基本的な権利とも完全に合致するように、それらの規定に基づかなくてはならない。

 一般論で問題への積極的介入を避けたとは言っても、この判決の理由において、そもそもこの様な政府の報告書が著作権法の保護を受けるられるかどうか疑問であるとしながら、さらに、

74 Wie der Rechtsprechung des Europaischen Gerichtshofs fur Menschenrechte zu entnehmen ist, hat dieser mit Blick auf die Abwagung zwischen dem Urheberrecht und dem Recht auf freie Meinungsauserung u. a. auf die Notwendigkeit hingewiesen, zu berucksichtigen, dass die Art der betreffenden "Rede" oder Information insbesondere im Rahmen der politischen Auseinandersetzung oder einer Diskussion, die das allgemeine Interesse beruhrt, von besonderer Bedeutung ist (vgl. in diesem Sinne EGMR, 10. Januar 2013, Ashby Donald u. a./Frankreich, CE:ECHR:2013:0110JUD003676908, § 39).

75 Im vorliegenden Fall ergibt sich aus den dem Gerichtshof vorgelegten Akten, dass Funke Medien die UdP nicht nur auf ihrer Website veroffentlicht hat, sondern sie auch in systematischer Form prasentiert hat, versehen mit einem Einleitungstext, weiterfuhrenden Links und einer Einladung zur interaktiven Partizipation. Unter diesen Umstanden und unterstellt, dass die UdP als "Werke" im Sinne von Art. 2 Buchst. a und Art. 3 Abs. 1 der Richtlinie 2001/29 einzustufen sind, ist davon auszugehen, dass die Veroffentlichung der UdP eine "Nutzung von Werken … in Verbindung mit der Berichterstattung uber Tagesereignisse" im Sinne von Art. 5 Abs. 3 Buchst. c Fall 2 der Richtlinie 2001/29 darstellen kann. Die Veroffentlichung kann daher unter diese Bestimmung fallen, sofern deren ubrige Voraussetzungen erfullt sind, was zu prufen Sache des vorlegenden Gerichts ist.

74 その判例から見て取れる様に、欧州人権裁判所は、著作権と自由な意見表明等に関する権利の間の検討をするにあたり、一般の利益に関わる、特に政治的な討論又は議論における、問題となる「演説」又は情報の方法が特別な意味を持つと必然的に指摘している(この意味で、欧州人権裁、2013年1月10日、アシュビー・ドナルド他/フランス、第39セクション参照)。

75 本ケースにおいて、裁判所に提出された書類からは、放送メディアは「議会用」(UdP)を単にそのウェブサイトで公開したのではなく、紹介の文章、誘導リンク及びインタラクティブな参加への招待と合わせ系統立った形で提供した事が見て取れる。この状況において、UdPが欧州指令第2001/29条の第2条a及び第3条第1項の意味における著作物であると仮定してであるが、UdPの公開は欧州指令第2001/29条の第5条第3項cケース2の「時事報道と関連する著作物の利用」であり得る。その公開が他の前提条件を満たす限り、ここでの公開はこの規定に該当するが、それには当裁判所の事実をさらに検証しなければならない。

と、情報・表現の自由の重要性に言及しつつ、本ケースにおいて時事報道の例外の適用もあり得るとしている点は、欧州司法裁としてドイツ最高裁に一定の見解を示そうとしたのだろう。

(3)政治的論文の著作権法上の取り扱いについて(C-516/17)
 最後に、政治的論文の著作権法上の取り扱いが問題となったケースでは、そのリリース(pdf)にある通り、欧州司法裁は、時事報道における保護を受ける著作物の利用は原則として著作者の事前の許諾を必要とせず、以前に適法に公衆にアクセス可能とされた著作物の引用である限り、ハイパーリンクによって著作物を引用する事も可能という順当な結論を出している。

 上の2つと重なる部分もあるが、その判決(ドイツ語)から、同じく最後の結論部分を以下に抜き出しておく。

1. Art. 5 Abs. 3 Buchst. c Fall 2 und Buchst. d der Richtlinie 2001/29/EG des Europaischen Parlaments und des Rates vom 22. Mai 2001 zur Harmonisierung bestimmter Aspekte des Urheberrechts und der verwandten Schutzrechte in der Informationsgesellschaft ist dahin auszulegen, dass er keine Massnahme zur vollstandigen Harmonisierung der Reichweite der in ihm aufgefuhrten Ausnahmen oder Beschrankungen darstellt.

2. Die Informationsfreiheit und die Pressefreiheit, die in Art. 11 der Charta der Grundrechte der Europaischen Union verankert sind, konnen auserhalb der in Art. 5 Abs. 2 und 3 der Richtlinie 2001/29 vorgesehenen Ausnahmen und Beschrankungen keine Abweichung von den ausschlieslichen Rechten des Urhebers zur Vervielfaltigung und zur offentlichen Wiedergabe aus Art. 2 Buchst. a bzw. Art. 3 Abs. 1 dieser Richtlinie rechtfertigen.

3. Das nationale Gericht muss sich im Rahmen der Abwagung, die es zwischen den ausschlieslichen Rechten des Urhebers aus Art. 2 Buchst. a und Art. 3 Abs. 1 der Richtlinie 2001/29 auf der einen Seite und den Rechten der Nutzer von Schutzgegenstanden aus den Ausnahmebestimmungen in Art. 5 Abs. 3 Buchst. c Fall 2 und Buchst. d dieser Richtlinie auf der anderen Seite anhand samtlicher Umstande des Einzelfalls vorzunehmen hat, auf eine Auslegung dieser Bestimmungen stutzen, die unter Achtung ihres Wortlauts und unter Wahrung ihrer praktischen Wirksamkeit mit den durch die Charta gewahrleisteten Grundrechten voll und ganz im Einklang steht.

4. Art. 5 Abs. 3 Buchst. c Fall 2 der Richtlinie 2001/29 ist dahin auszulegen, dass er einer nationalen Regelung entgegensteht, mit der die Anwendung der in dieser Bestimmung vorgesehenen Ausnahme oder Beschrankung auf die Falle begrenzt wird, in denen ein vorheriges Ersuchen um Erlaubnis zur Nutzung eines geschutzten Werks fur die Zwecke der Berichterstattung uber Tagesereignisse bei vernunftiger Betrachtung nicht moglich ist.

5. Art. 5 Abs. 3 Buchst. d der Richtlinie 2001/29 ist dahin auszulegen, dass der Begriff "Zitate" in dieser Bestimmung die Verlinkung auf eine selbstandig abrufbare Datei umfasst.

6. Art. 5 Abs. 3 Buchst. d der Richtlinie 2001/29 ist dahin auszulegen, dass ein Werk der Offentlichkeit bereits rechtmasig zuganglich gemacht wurde, wenn es der Offentlichkeit zuvor in seiner konkreten Gestalt mit Zustimmung des Rechtsinhabers, aufgrund einer Zwangslizenz oder aufgrund einer gesetzlichen Erlaubnis zuganglich gemacht wurde.

1.情報社会における著作権及び著作隣接権の特定の側面の調和に関する2001年5月22日の欧州議会及び理事会の欧州指令第2001/29号の第5条第3項cケース2及びdは、関係する例外又は制限の範囲の完全な調和のための手段を示しているとは解釈されない。

2.欧州連合基本権憲章の第11条において保障される情報の自由及び報道の自由自体で欧州指令第2001/29号の第5条第2及び3項において想定される例外及び制限を超えて本指令の第2条a並びに第3条第1項の複製及び公衆送信に関する著作者の排他的権利からの逸脱が正当化される事はない。

3.国内裁判所は、その検討において、一方で欧州指令第2001/29号の第2条a及び第3条第1項の著作者の排他的権利、他方で第5条第3事項cケース2及びdにおける例外規定による保護対象の利用者の権利を、個別ケースの全体的状況も考慮に入れて、取り上げなくてはならない、その際、その文言に気をつけ、その実効性を守りつつ、欧州連合基本権憲章によって保障される基本的な権利とも完全に合致するように、それらの規定に基づかなくてはならない。

4.欧州指令第5条第3項cケース2は、保護を受ける著作物の時事報道の目的のための利用許諾を事前に求めようとする事が合理的に見て不可能である場合に、その規定にある例外又は制限の適用が限定されるとする国内規則を排除するものと解釈される。

5.欧州指令第5条第3項dは、その規定における「引用」の概念は、独立して呼び出す事が可能なデータへのリンクを含むものと解釈される。

6.欧州指令第5条第3項dは、著作物は既に適法に公衆にアクセス可能とされたものであり、それは著作権者の合意とともに、強制ライセンスにより又は法的な許容により具体的な形な形で以前に公衆にアクセス可能とされた場合であると解釈される。

 これらの判決を見ると、引き続き著作権の例外及び権利制限について厳格に解釈しようとする傾向もあるものの、欧州レベルでも、全体として著作権と情報・表現の自由などの他の基本的な権利の間でバランスをどう取るかは悩ましく、ぎりぎりの判断をしようとしている様に私には見える。

 また、今まであまり時間がなく取り上げてなかった話として、ここではそれぞれリリースへのリンクを張るだけに留めるが、単にアクセスを有している家族の名前をあげるだけで違法ファイル共有に使われたインターネットコネクションの所有者が免責される事はないとする2018年10月18日の欧州司法裁の判決(リリース(pdf)参照)や、著作権を侵害するデータに用いられるファイルホスティングサービスの責任について質問を付託する2018年9月20日のドイツ最高裁の決定(リリース(ドイツ語)参照)もあり、後者についてはその判決が出たらまた紹介したいと思っているところである。

 繰り返しになるが、インターネットと著作権の関係について、個々のケースの状況も考慮に入れて判例としてある程度示されている事はあるものの、ドイツを含む欧州で既に法的な答えが明らかに出されているという事はない。日本政府自らしょっちゅうしている事なので本当にうんざりするのだが、国際動向と称して偏頗な一部の抜き出しを行い政策的に何かを言おうとする事は間違いの元でしなく、非常に危ない事である。

(2019年8月5日の追記:幾つか誤記を直し、文章を整えた。)

(2024年1月21日の追記:1箇所誤記を直した(「腰は」→「今年は」)。)

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