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2014年9月 2日 (火)

第319回:二次創作規制の緩和を言うクールジャパン提言

 この8月26日に英語特区を筆頭に極めて頭の悪い政策項目の並ぶクールジャパン提言(pdf)が政府のクールジャパン推進会議でまとめられた。

 この提言は、そのことがなければtwitterでつぶやくだけで放っておこうと思ったくらい本当にどうでもいいことしか書かれていないのだが、1ヶ所だけ特筆に値することが書かれているので、念のためブログでも取り上げておこうと思う。

 その部分は、第13ページの、

3 規制緩和でクリエイティブを応援する

若者のクリエイティビティの発揮を促すために、過剰な規制や無駄な不自由を減らしていく。若者が創造性を自由闊達に発揮し、そのクリエイティビティが他者にも伝播するような環境づくりを行う。

クリエイティビティを阻害している規制についてヒアリングし規制緩和する。コンテンツの発展を阻害する二次創作規制、ストリートパフォーマンスに関する規制など、表現を限定する規制を見直す。また知財以外にも、空地や空き家利用が困難になっている原因となる建築基準法規制、若い建築家が一級建築士取得の要件を満たしづらい状況になってしまった2006年の建築士法変更についての再検討等、規制緩和でクリエイティブを積極的に推進する。

という部分で、ここで、表現規制としての二次創作規制を見直すとはっきり言っているのである。

 これを過去の知財計画2011の(第252回参照)、

・創作基盤としての二次創作の円滑化
 パロディに関する法的課題を検討するとともに、インターネット上の共同創作や二次創作の権利処理ルールの明確化のための取組を勧める。

というルールの明確化という書き方と比べて見ると、クールジャパン提言は二次創作についてはっきりと規制緩和の方向で見直すと書いており、如何に踏み込んだ記載になっているかが分かるだろう。

 政府レベルの政策会議の提言に二次創作についてこれほど踏み込んだ記載が入ったのは始めてではないかと思うし、この書きぶりを見る限り、二次創作が日本の文化的創作の原動力の一つになっており、その推進のために現状の規制を緩和する必要があるということについてどうやら政府でも一定の認識は持っているのだろう。

 ただ、二次創作規制の緩和とはすなわち著作権規制の緩和であり、一般フェアユース条項の導入とまでは行かなくとも、最低でも二次創作のための権利制限、風刺やパロディ、パスティーシュのための権利制限を明確に著作権法に入れることを意味するのだが、このことを果たしてクールジャパン推進会議のメンバーはどこまで理解しているのだろうか。

 そして、上で引用した知財計画2011の後で、文化庁のパロディワーキングチームで2012年から2013年にかけてパロディの権利制限についての検討が行われたが、その報告書(pdf)に「少なくとも現時点では、立法による課題の解決よりも、既存の権利制限規定の拡張解釈ないし類推適用や、著作権者による明示の許諾がなくても著作物の利用の実態からみて一定の合理的な範囲で黙示の許諾を広く認めるなど、現行著作権法による解釈ないし運用により、より弾力的で柔軟な対応を図る方策を促進することが求められているものと評価することができる」と書かれている通り、結局どうにもならなかったという今までの経緯も果たして分かっているのかどうか。

 会議メンバーの理解はさておき、およそ脳味噌お花畑のしょうもない項目か既存の施策の焼き直しばかりが並ぶ他の部分を見ても、このクールジャパン提言が叩かれるのは当然だと思うし、全体としての実現可能性を私も大いに疑問視しているが、そうは言っても、政府の正式な政策会議で決まったことには違いなく、二次創作規制の緩和が政府レベルで決められたがその後どうなっているのかと繰り返し言い続けても構わないだろうし、私はそうするつもりでいる。

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