第311回:閣議決定された地理的表示保護法案の内容
4月25日に第309回で取り上げた著作権法改正案と特許法等改正案がそれぞれ衆参を通過し、成立した(関連条約の視聴覚的実演に関するに関する北京条約と意匠に関するハーグ・ロカルノ協定も衆議院を通過し参議院の審議待ちという状態にある)。そして、知財本部から5月16日〆切で開始されている知財計画2014向けのパブコメも出すつもりでいるが、やはり4月25日に閣議決定され、国会提出がされた地理的表示保護法案が農水省のHPで公開されているので先にその内容を紹介しておきたいと思う。
地理的表示保護法(正式名称は「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律」)については2012年の農水省研究会での検討以降さっぱり音沙汰がなく、どうなっているのかと思っていたものだが、提出された法律案(pdf)(概要(pdf)、要綱(pdf)、理由(pdf)も参照)を見る限りそれほど違和感はなく、このまま通っても特に問題はないだろうと思える内容になっている。
そうは言ってもこれは新法によって知的財産の保護拡大を図るものであり、決して小さな話ではないので、ざっとポイントとなる部分の条文を見て行くと、第二条の定義で、
(定義)
第二条 この法律において「農林水産物等」とは、次に掲げる物をいう。ただし、酒税法(昭和二十八年法律第六号)第二条第一項に規定する酒類並びに医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第二条第一項に規定する医薬品、同条第二項に規定する医薬部外品、同条第三項に規定する化粧品及び同条第九項に規定する再生医療等製品に該当するものを除く。
一 農林水産物(食用に供されるものに限る。)
二 飲食料品(前号に掲げるものを除く。)
三 農林水産物(第一号に掲げるものを除く。)であって、政令で定めるもの
四 農林水産物を原料又は材料として製造し、又は加工したもの(第二号に掲げるものを除く。)であって、政令で定めるもの2 この法律において「特定農林水産物等」とは、次の各号のいずれにも該当する農林水産物等をいう。
一 特定の場所、地域又は国を生産地とするものであること。
二 品質、社会的評価その他の確立した特性(以下単に「特性」という。)が前号の生産地に主として帰せられるものであること。3 この法律において「地理的表示」とは、特定農林水産物等の名称(当該名称により前項各号に掲げる事項を特定することができるものに限る。)の表示をいう。
と書かれ、ここで対象を農林水産物、飲食料品に限定し、酒や医薬・化粧品を明示的に除外しつつ、地理的表示とは生産地と特性を特定できる名称の表示であると定めている。
そして、第六条で、
(特定農林水産物等の登録)
第六条 生産行程管理業務を行う生産者団体は、明細書を作成した農林水産物等が特定農林水産物等であるときは、当該農林水産物等について農林水産大臣の登録を受けることができる。
と書かれている通り、地理的表示の保護のためには登録が必要とされている。
その登録のための申請の様式は第7条に規定されており、第8条で登録の申請から公示が行われることが、第9条で申請の公示から三ヶ月間誰でも意見の提出が可能とされることが、第10条で意見提出期間満了後に学識経験者の意見の聴取を経て登録が行われることが書かれている。
登録拒否要件は第13条に書かれているが、その第3号及び第4号(生産団体関連以外)は、
三 登録の申請に係る農林水産物等(次号において「申請農林水産物等」という。)について次のいずれかに該当するとき。
イ 特定農林水産物等でないとき。
ロ その全部又は一部が登録に係る特定農林水産物等のいずれかに該当するとき。
四 申請農林水産物等の名称について次のいずれかに該当するとき。
イ 普通名称であるとき、その他当該申請農林水産物等について第二条第二項各号に掲げる事項を特定することができない名称であるとき。
ロ 次に掲げる登録商標と同一又は類似の名称であるとき。
(1)申請農林水産物等又はこれに類似する商品に係る登録商標
(2)申請農林水産物等又はこれに類似する商品に関する役務に係る登録商標
というもので、申請名称が普通名称になっている場合や既存の登録商標と同一又は類似の場合は登録が拒否されることとなっている。(ただし、同条第2項で商標権者の承諾を受けている場合は除くとされている。)
その権利行使に関しては、直接行使の規定はないので、(一般的な民法上の損害賠償請求はできると思うが)以下の第5条に定められている農水大臣命令を通じた執行が原則となるのではないかと思う。
(措置命令)
第五条 農林水産大臣は、次の各号に掲げる規定に違反した者に対し、当該各号に定める措置その他の必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
一 第三条第二項地理的表示又はこれに類似する表示の除去又は抹消
二 前条第一項登録標章を付すること。
三 前条第二項登録標章又はこれに類似する標章の除去又は抹消
商標権との関係ということでは、第3条第2項で既存の商標権を有する者は商標をそのまま使用できるとされ、合わせて入る商標法の改正で、地理的表示を付することには商標権の効力が及ばないとされるので、権利の間の抵触が大きな問題となることもないだろう。
別になくとも分かる方には分かると思うが、上で書いたことをまとめて、この法律で新たに作られる地理的表示保護制度はどのようなものかということを示すために、最も近く重なりが大きいと考えられる地域団体商標制度との比較表を試しに作ってみると以下のようになる。
このように比較してみると権利として弱いところがあるのは否めないものの、新法としては十分だろうし、法案が成立すれば、商標法と比較した上でより良い保護が受けられる方を(あるいは両方を)選択して行くことができるようになるだろう。
全体的に見て特に大きな問題は見当たらず、商標法との関係をどうするかということを含めて長年の懸案だった日本における地理的表示保護法制の形について一定の方向性を定めるものとして、この法案もこのまま成立してくれて良いと私は思っているが、今年になって突然この法改正が浮上した背景にはTPP交渉の進展があるのだろうとも踏んでおり(地理的表示の保護とTPPの関係については第303回や第304回参照)、日本の知財法制にとっても大きな影響を間違いなく持つTPP交渉の行方について私はなお非常に大きな懸念を抱いている。
次回は知財計画パブコメ提出エントリの予定である。
(以下、条文案の転載)
特定農林水産物等の名称の保護に関する法律
目次
第一章 総則(第一条・第二条)
第二章 特定農林水産物等の名称の保護(第三条—第五条)
第三章 登録(第六条—第二十二条)
第四章 雑則(第二十三条—第二十七条)
第五章 罰則(第二十八条—第三十二条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、世界貿易機関を設立するマラケシュ協定附属書一Cの知的所有権の貿易関連の側面に関する協定に基づき特定農林水産物等の名称の保護に関する制度を確立することにより、特定農林水産物等の生産業者の利益の保護を図り、もって農林水産業及びその関連産業の発展に寄与し、併せて需要者の利益を保護することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「農林水産物等」とは、次に掲げる物をいう。ただし、酒税法(昭和二十八年法律第六号)第二条第一項に規定する酒類並びに医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第二条第一項に規定する医薬品、同条第二項に規定する医薬部外品、同条第三項に規定する化粧品及び同条第九項に規定する再生医療等製品に該当するものを除く。
一 農林水産物(食用に供されるものに限る。)
二 飲食料品(前号に掲げるものを除く。)
三 農林水産物(第一号に掲げるものを除く。)であって、政令で定めるもの
四 農林水産物を原料又は材料として製造し、又は加工したもの(第二号に掲げるものを除く。)であって、政令で定めるもの
2 この法律において「特定農林水産物等」とは、次の各号のいずれにも該当する農林水産物等をいう。
一 特定の場所、地域又は国を生産地とするものであること。
二 品質、社会的評価その他の確立した特性(以下単に「特性」という。)が前号の生産地に主として帰せられるものであること。
3 この法律において「地理的表示」とは、特定農林水産物等の名称(当該名称により前項各号に掲げる事項を特定することができるものに限る。)の表示をいう。
4 この法律において「生産」とは、農林水産物等が出荷されるまでに行われる一連の行為のうち、農林水産物等に特性を付与し、又は農林水産物等の特性を保持するために行われる行為をいい、「生産地」とは、生産が行われる場所、地域又は国をいい、「生産業者」とは、生産を業として行う者をいう。
5 この法律において「生産者団体」とは、生産業者を直接又は間接の構成員(以下単に「構成員」という。)とする団体(法人でない団体にあっては代表者又は管理人の定めのあるものに限り、法令又は定款その他の基本約款において、正当な理由がないのに、構成員たる資格を有する者の加入を拒み、又はその加入につき現在の構成員が加入の際に付されたよりも困難な条件を付してはならない旨の定めのあるものに限る。)であって、農林水産省令で定めるものをいう。
6 この法律において「生産行程管理業務」とは、生産者団体が行う次に掲げる業務をいう。
一 農林水産物等について第七条第一項第二号から第八号までに掲げる事項を定めた明細書(以下単に「
明細書」という。)の作成又は変更を行うこと。
二 明細書を作成した農林水産物等について当該生産者団体の構成員たる生産業者が行うその生産が当該
明細書に適合して行われるようにするため必要な指導、検査その他の業務を行うこと。
三 前二号に掲げる業務に附帯する業務を行うこと。
第二章 特定農林水産物等の名称の保護
(地理的表示)
第三条 第六条の登録(次項(第二号を除く。)及び次条第一項において単に「登録」という。)を受けた生産者団体(第十五条第一項の変更の登録を受けた生産者団体を含む。以下「登録生産者団体」という。)の構成員たる生産業者は、生産を行った農林水産物等が第六条の登録に係る特定農林水産物等であるときは、当該特定農林水産物等又はその包装、容器若しくは送り状(以下「包装等」という。)に地理的表示を付することができる。当該生産業者から当該農林水産物等を直接又は間接に譲り受けた者についても、同様とする。
2 前項の規定による場合を除き、何人も、登録に係る特定農林水産物等が属する区分(農林物資の規格化等に関する法律(昭和二十五年法律第百七十五号)第七条第一項の規定により農林水産大臣が指定する種類その他の事情を勘案して農林水産大臣が定める農林水産物等の区分をいう。以下同じ。)に属する農林水産物等若しくはこれを主な原料若しくは材料として製造され、若しくは加工された農林水産物等又はこれらの包装等に当該特定農林水産物等に係る地理的表示又はこれに類似する表示を付してはならない。ただし、次に掲げる場合には、この限りでない。
一 登録に係る特定農林水産物等を主な原料若しくは材料として製造され、若しくは加工された農林水産物等又はその包装等に当該特定農林水産物等に係る地理的表示又はこれに類似する表示を付する場合
二 第六条の登録の日(当該登録に係る第七条第一項第三号に掲げる事項について第十六条第一項の変更の登録があった場合にあっては、当該変更の登録の日。次号及び第四号において同じ。)前の商標登録出願に係る登録商標(商標法(昭和三十四年法律第百二十七号)第二条第五項に規定する登録商標をいう。以下同じ。)に係る商標権者その他同法の規定により当該登録商標の使用(同法第二条第三項に規定する使用をいう。以下この号及び次号において同じ。)をする権利を有する者が、その商標登録に係る指定商品又は指定役務(同法第六条第一項の規定により指定した商品又は役務をいう。)について当該登録商標の使用をする場合
三 登録の日前から商標法その他の法律の規定により商標の使用をする権利を有している者が、当該権利に係る商品又は役務について当該権利に係る商標の使用をする場合(前号に掲げる場合を除く。)
四 登録の日前から不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的でなく登録に係る特定農林水産物等が属する区分に属する農林水産物等若しくはその包装等に当該特定農林水産物等に係る地理的表示と同一の名称の表示若しくはこれに類似する表示を付していた者及びその業務を承継した者が継続して当該農林水産物等若しくはその包装等にこれらの表示を付する場合又はこれらの者から当該農林水産物等(これらの表示が付されたもの又はその包装等にこれらの表示が付されたものに限る。)を直接若しくは間接に譲り受けた者が当該農林水産物等若しくはその包装等にこれらの表示を付する場合
五 前各号に掲げるもののほか、農林水産省令で定める場合
(登録標章)
第四条 登録生産者団体の構成員たる生産業者は、前条第一項前段の規定により登録に係る特定農林水産物等又はその包装等に地理的表示を付する場合には、当該特定農林水産物等又はその包装等に登録標章(地理的表示が登録に係る特定農林水産物等の名称の表示である旨の標章であって、農林水産省令で定めるものをいう。以下同じ。)を付さなければならない。同項後段に規定する者についても、同様とする。
2 前項の規定による場合を除き、何人も、農林水産物等又はその包装等に登録標章又はこれに類似する標章を付してはならない。
(措置命令)
第五条 農林水産大臣は、次の各号に掲げる規定に違反した者に対し、当該各号に定める措置その他の必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
一 第三条第二項地理的表示又はこれに類似する表示の除去又は抹消
二 前条第一項登録標章を付すること。
三 前条第二項登録標章又はこれに類似する標章の除去又は抹消
第三章 登録
(特定農林水産物等の登録)
第六条 生産行程管理業務を行う生産者団体は、明細書を作成した農林水産物等が特定農林水産物等であるときは、当該農林水産物等について農林水産大臣の登録を受けることができる。
(登録の申請)
第七条 前条の登録(第十五条、第十六条、第十七条第二項及び第三項並びに第二十二条第一項第一号ニを除き、以下単に「登録」という。)を受けようとする生産者団体は、農林水産省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書を農林水産大臣に提出しなければならない。
一 生産者団体の名称及び住所並びに代表者(法人でない生産者団体にあっては、その代表者又は管理人)の氏名
二 当該農林水産物等の区分
三 当該農林水産物等の名称
四 当該農林水産物等の生産地
五 当該農林水産物等の特性
六 当該農林水産物等の生産の方法
七 第二号から前号までに掲げるもののほか、当該農林水産物等を特定するために必要な事項
八 第二号から前号までに掲げるもののほか、当該農林水産物等について農林水産省令で定める事項
九 前各号に掲げるもののほか、農林水産省令で定める事項
2 前項の申請書には、次に掲げる書類を添付しなければならない。
一 明細書
二 生産行程管理業務の方法に関する規程(以下「生産行程管理業務規程」という。)
三 前二号に掲げるもののほか、農林水産省令で定める書類
3 生産行程管理業務を行う生産者団体は、共同して登録の申請をすることができる。
(登録の申請の公示等)
第八条 農林水産大臣は、登録の申請があったときは、第十三条第一項(第一号に係る部分に限る。)の規定により登録を拒否する場合を除き、前条第一項第一号から第八号までに掲げる事項その他必要な事項を公示しなければならない。
2 農林水産大臣は、前項の規定による公示の日から二月間、前条第一項の申請書並びに同条第二項第一号及び第二号に掲げる書類を公衆の縦覧に供しなければならない。
(意見書の提出等)
第九条 前条第一項の規定による公示があったときは、何人も、当該公示の日から三月以内に、当該公示に係る登録の申請について、農林水産大臣に意見書を提出することができる。
2 農林水産大臣は、前項の規定による意見書の提出があったときは、当該意見書の写しを登録の申請をした生産者団体に送付しなければならない。
(登録の申請の制限)
第十条 次の各号のいずれにも該当する登録の申請は、前条第二項並びに次条第二項及び第三項の規定の適用については、第八条第一項の規定による公示に係る登録の申請について前条第一項の規定によりされた意見書の提出とみなす。この場合においては、農林水産大臣は、当該各号のいずれにも該当する登録の申請をした生産者団体に対し、その旨を通知しなければならない。
一 第八条第一項の規定による公示に係る登録の申請がされた後前条第一項に規定する期間が満了するまでの間にされた登録の申請であること。
二 当該登録の申請に係る農林水産物等の全部又は一部が第八条第一項の規定による公示に係る特定農林水産物等の全部又は一部に該当すること。
2 前項第二号に該当する登録の申請は、前条第一項に規定する期間の経過後は、することができない。ただし、第八条第一項の規定による公示に係る登録の申請について、取下げ、第十三条第一項の規定により登録を拒否する処分又は登録があった後は、この限りでない。
(学識経験者の意見の聴取)
第十一条 農林水産大臣は、第九条第一項に規定する期間が満了したときは、農林水産省令で定めるところにより、登録の申請が第十三条第一項第二号から第四号までに掲げる場合に該当するかどうかについて、学識経験を有する者(以下この条において「学識経験者」という。)の意見を聴かなければならない。
2 前項の場合において、農林水産大臣は、第九条第一項の規定により提出された意見書の内容を学識経験者に示さなければならない。
3 第一項の規定により意見を求められた学識経験者は、必要があると認めるときは、登録の申請をした生産者団体又は第九条第一項の規定により意見書を提出した者その他の関係者から意見を聴くことができる。
4 第一項の規定により意見を求められた学識経験者は、その意見を求められた事案に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならない。
(登録の実施)
第十二条 農林水産大臣は、登録の申請があった場合(第八条第一項に規定する場合を除く。)において同条から前条までの規定による手続を終えたときは、次条第一項の規定により登録を拒否する場合を除き、登録をしなければならない。
2 登録は、次に掲げる事項を特定農林水産物等登録簿に記載してするものとする。
一 登録番号及び登録の年月日
二 第七条第一項第二号から第八号までに掲げる事項
三 第七条第一項第一号に掲げる事項
3 農林水産大臣は、登録をしたときは、登録の申請をした生産者団体に対しその旨を通知するとともに、農林水産省令で定める事項を公示しなければならない。
(登録の拒否)
第十三条 農林水産大臣は、次に掲げる場合には、登録を拒否しなければならない。
一 生産者団体について次のいずれかに該当するとき。
イ 第二十二条第一項の規定により登録を取り消され、その取消しの日から二年を経過しないとき。
ロ その役員(法人でない生産者団体の代表者又は管理人を含む。において同じ。)のうちに、次のいずれかに該当する者があるとき。
(1)この法律の規定により刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から二年を経過しない者
(2)第二十二条第一項の規定により登録を取り消された生産者団体において、その取消しの日前三十日以内にその役員であった者であって、その取消しの日から二年を経過しない者
二 生産行程管理業務について次のいずれかに該当するとき。
イ 第七条第二項の規定により同条第一項の申請書に添付された明細書に定められた同項第二号から第八号までに掲げる事項と当該申請書に記載されたこれらの事項とが異なるとき。
ロ 生産行程管理業務規程で定める生産行程管理業務の方法が、当該生産者団体の構成員たる生産業者が行うその生産が明細書に適合して行われるようにすることを確保するために必要なものとして農林水産省令で定める基準に適合していないとき。
ハ 生産者団体が生産行程管理業務を適確かつ円滑に実施するに足りる経理的基礎を有しないとき。
ニ 生産行程管理業務の公正な実施を確保するため必要な体制が整備されていると認められないとき。
三 登録の申請に係る農林水産物等(次号において「申請農林水産物等」という。)について次のいずれかに該当するとき。
イ 特定農林水産物等でないとき。
ロ その全部又は一部が登録に係る特定農林水産物等のいずれかに該当するとき。
四 申請農林水産物等の名称について次のいずれかに該当するとき。
イ 普通名称であるとき、その他当該申請農林水産物等について第二条第二項各号に掲げる事項を特定することができない名称であるとき。
ロ 次に掲げる登録商標と同一又は類似の名称であるとき。
(1)申請農林水産物等又はこれに類似する商品に係る登録商標
(2)申請農林水産物等又はこれに類似する商品に関する役務に係る登録商標
2 前項(第四号ロに係る部分に限る。)の規定は、次の各号のいずれかに該当する生産者団体が同項第四号ロに規定する名称の農林水産物等について登録の申請をする場合には、適用しない。
一 前項第四号ロに規定する登録商標に係る商標権者たる生産者団体(当該登録商標に係る商標権について専用使用権が設定されているときは、同号ロに規定する名称の農林水産物等についての登録をすることについて当該専用使用権の専用使用権者の承諾を得ている場合に限る。)
二 前項第四号ロに規定する登録商標に係る商標権について専用使用権が設定されている場合における当該専用使用権の専用使用権者たる生産者団体(同号ロに規定する名称の農林水産物等についての登録をすることについて次に掲げる者の承諾を得ている場合に限る。)
イ 当該登録商標に係る商標権者
ロ 当該生産者団体以外の当該専用使用権の専用使用権者
三 前項第四号ロに規定する名称の農林水産物等についての登録をすることについて同号ロに規定する登録商標に係る商標権者の承諾を得ている生産者団体(当該登録商標に係る商標権について専用使用権が設定されているときは、当該農林水産物等についての登録をすることについて当該専用使用権の専用使用権者の承諾を得ている場合に限る。)
3 農林水産大臣は、第一項の規定により登録を拒否したときは、登録の申請をした生産者団体に対し、その旨及びその理由を書面により通知しなければならない。
(特定農林水産物等登録簿の縦覧)
第十四条 農林水産大臣は、特定農林水産物等登録簿を公衆の縦覧に供しなければならない。
(生産者団体を追加する変更の登録)
第十五条 第六条の登録に係る特定農林水産物等について生産行程管理業務を行おうとする生産者団体(当該登録を受けた生産者団体を除く。)は、第十二条第二項第三号に掲げる事項に当該生産者団体に係る第七条第一項第一号に掲げる事項を追加する変更の登録を受けることができる。
2 第七条から第九条まで及び第十一条から第十三条までの規定は、前項の変更の登録について準用する。この場合において、第七条第一項中「次に掲げる事項」とあるのは「第一号に掲げる事項、登録番号及び第九号に掲げる事項」と、第八条第一項中「前条第一項第一号から第八号までに掲げる事項」とあるのは「前条第一項第一号に掲げる事項、登録番号」と、第十一条第一項中「第十三条第一項第二号から第四号まで」とあるのは「第十三条第一項第二号及び第四号(イを除く。)」と、第十二条第一項中「同条から前条まで」とあるのは「同条、第九条及び前条」と、同条第二項中「次に」とあるのは「変更の年月日及び第三号に」と、第十三条第一項中「次に掲げる場合」とあるのは「第一号、第二号及び第四号(イを除く。)に掲げる場合」と、同項第二号イ中「これらの」とあるのは「登録番号に係る前条第二項第二号に掲げる」と読み替えるものとする。
(明細書の変更の登録)
第十六条 登録生産者団体は、明細書の変更(第七条第一項第三号から第八号までに掲げる事項に係るものに限る。)をしようとするときは、変更の登録を受けなければならない。
2 前項の場合において、第六条の登録に係る登録生産者団体が二以上あるときは、当該登録に係る全ての登録生産者団体は、共同して同項の変更の登録の申請をしなければならない。
3 第七条第一項及び第二項、第八条、第九条並びに第十一条から第十三条までの規定(第一項の変更の登録に係る事項が農林水産省令で定める軽微なものである場合にあっては、第九条及び第十一条の規定を除く。)は、第一項の変更の登録について準用する。この場合において、第七条第一項中「次に掲げる事項」とあるのは「第一号に掲げる事項、登録番号及び第三号から第八号までに掲げる事項のうち変更に係るもの」と、第八条第一項中「前条第一項第一号から第八号までに掲げる事項」とあるのは「前条第一項第一号に掲げる事項、登録番号、同項第三号から第八号までに掲げる事項のうち変更に係るもの」と、第十二条第一項中「同条から前条まで」とあるのは第一項の変更の登録に係る事項が当該農林水産省令で定める軽微なものである場合以外の場合にあっては「同条、第九条及び前条」と、同項の変更の登録に係る事項が当該農林水産省令で定める軽微なものである場合にあっては「同条」と、同条第二項中「次に掲げる」とあるのは「変更の年月日及び変更に係る」と、第十三条第一項第二号イ中「同項第二号」とあるのは「同項第三号」と、「事項」とあるのは「事項のうち変更に係るもの」と読み替えるものとする。
(登録生産者団体の変更の届出等)
第十七条 登録生産者団体は、当該登録生産者団体に係る第十二条第二項第三号に掲げる事項に変更があったときは、遅滞なく、その旨及びその年月日を農林水産大臣に届け出なければならない。
2 農林水産大臣は、前項の規定による届出があったときは、当該届出に係る事項を特定農林水産物等登録簿に記載して、変更の登録をしなければならない。
3 農林水産大臣は、前項の変更の登録をしたときは、その旨を公示しなければならない。
(生産行程管理業務規程の変更の届出)
第十八条 登録生産者団体は、生産行程管理業務規程の変更をしようとするときは、あらかじめ、農林水産大臣に届け出なければならない。
(生産行程管理業務の休止の届出)
第十九条 登録生産者団体は、生産行程管理業務を休止しようとするときは、あらかじめ、農林水産大臣に届け出なければならない。
(登録の失効)
第二十条 次の各号のいずれかに該当する場合には、登録(当該登録に係る登録生産者団体が二以上ある場合にあっては、第十二条第二項第三号に掲げる事項のうち当該各号のいずれかに該当する登録生産者団体に係る部分に限る。以下この条において同じ。)は、その効力を失う。
一 登録生産者団体が解散した場合においてその清算が結了したとき。
二 登録生産者団体が生産行程管理業務を廃止したとき。
2 前項の規定により登録がその効力を失ったときは、当該登録に係る登録生産者団体(同項第一号に掲げる場合にあっては、清算人)は、遅滞なく、効力を失った事由及びその年月日を農林水産大臣に届け出なければならない。
3 農林水産大臣は、第一項の規定により登録がその効力を失ったときは、特定農林水産物等登録簿につき、その登録を消除しなければならない。
4 農林水産大臣は、前項の規定により登録を消除したときは、その旨を公示しなければならない。
(措置命令)
第二十一条 農林水産大臣は、次に掲げる場合には、登録生産者団体に対し、明細書又は生産行程管理業務規程の変更その他の必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
一 その構成員たる生産業者が、第三条第二項若しくは第四条の規定に違反し、又は第五条の規定による命令に違反したとき。
二 その明細書が第十二条第二項第二号に掲げる事項に適合していないとき。
三 第十三条第一項第二号(イを除く。)に該当するに至ったとき。
(登録の取消し)
第二十二条 農林水産大臣は、次に掲げる場合には、登録の全部又は一部を取り消すことができる。
一 登録生産者団体が次のいずれかに該当するとき。
イ 生産者団体に該当しなくなったとき。
ロ 第十三条第一項第一号ロ((1)に係る部分に限る。)に該当するに至ったとき。
ハ 前条の規定による命令に違反したとき。
ニ 不正の手段により第六条の登録又は第十五条第一項若しくは第十六条第一項の変更の登録を受けたとき。
二 登録に係る特定農林水産物等が第十三条第一項第三号イに該当するに至ったとき。
三 登録に係る特定農林水産物等の名称が第十三条第一項第四号イに該当するに至ったとき。
四 第十三条第二項各号に規定する商標権者又は専用使用権者が同項各号に規定する承諾を撤回したとき。
2 第八条、第九条及び第十一条の規定は、前項(第二号及び第三号に係る部分に限る。)の規定による登録の取消しについて準用する。この場合において、第八条第一項中「第十三条第一項(第一号に係る部分に限る。)の規定により登録を拒否する場合を除き、前条第一項第一号から第八号までに掲げる事項」とあるのは「登録番号、取消しをしようとする理由」と、同条第二項中「前条第一項の申請書並びに同条第二項第一号」とあるのは「前条第二項第一号」と、第十一条第一項中「第十三条第一項第二号から第四号まで」とあるのは「第二十二条第一項第二号及び第三号」と読み替えるものとする。
3 農林水産大臣は、第一項の規定による登録の全部又は一部の取消しをしたときは、特定農林水産物等登録簿につき、その登録の全部又は一部を消除しなければならない。
4 農林水産大臣は、前項の規定により登録の全部又は一部を消除したときは、その旨を、当該登録の取消しに係る登録生産者団体に通知するとともに、公示しなければならない。
第四章 雑則
(公示の方法)
第二十三条 この法律の規定による公示は、インターネットの利用その他の適切な方法により行うものとする。
2 前項の公示に関し必要な事項は、農林水産省令で定める。
(報告及び立入検査)
第二十四条 農林水産大臣は、この法律の施行に必要な限度において、登録生産者団体、生産業者その他の関係者に対し、その業務に関し必要な報告を求め、又はその職員に、これらの者の事務所、事業所、倉庫、ほ場、工場その他の場所に立ち入り、業務の状況若しくは農林水産物等、その原料、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人にこれを提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(農林水産大臣に対する申出)
第二十五条 何人も、第三条第二項又は第四条の規定に違反する事実があると思料する場合には、農林水産省令で定める手続に従い、その旨を農林水産大臣に申し出て適切な措置をとるべきことを求めることができる。
2 農林水産大臣は、前項の規定による申出があったときは、必要な調査を行い、その申出の内容が事実であると認めるときは、第五条又は第二十一条に規定する措置その他の適切な措置をとらなければならない。
(権限の委任)
第二十六条 この法律に規定する農林水産大臣の権限は、農林水産省令で定めるところにより、その一部を地方支分部局の長に委任することができる。
(農林水産省令への委任)
第二十七条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のための手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、農林水産省令で定める。
第五章 罰則
第二十八条 第五条(第一号に係る部分に限る。)の規定による命令に違反した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第二十九条 第五条(第一号に係る部分を除く。)の規定による命令に違反した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
第三十条 第十一条第四項(第十五条第二項、第十六条第三項及び第二十二条第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反した者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
第三十一条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
一 第十七条第一項又は第二十条第二項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
二 第十八条の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をして生産行程管理業務規程の変更をした者
三 第十九条の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をして生産行程管理業務の休止をした者
四 第二十四条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
第三十二条 法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。以下この項において同じ。)の代表者若しくは管理人又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
一 第二十八条三億円以下の罰金刑
二 第二十九条一億円以下の罰金刑
三 前条同条の罰金刑
2 法人でない団体について前項の規定の適用がある場合には、その代表者又は管理人が、その訴訟行為につきその法人でない団体を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。
附則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
ただし、附則第六条の規定は、公布の日から施行する。
(検討)
第二条 政府は、この法律の施行後十年以内に、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
(調整規定)
第三条 この法律の施行の日が食品表示法(平成二十五年法律第七十号)の施行の日前である場合には、同日の前日までの間における第三条第二項の規定の適用については、同項中「農林物資の規格化等に関する法律」とあるのは、「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律」とする。
(商標法の一部改正)
第四条 商標法の一部を次のように改正する。
第二十六条に次の一項を加える。
3 商標権の効力は、次に掲げる行為には、及ばない。ただし、その行為が不正競争の目的でされない場合に限る。
一 特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(平成二十六年法律第号。以下この項において「特定農林水産物等名称保護法」という。)第三条第一項の規定により商品又は商品の包装に特定農林水産物等名称保護法第二条第三項に規定する地理的表示(以下この項において「地理的表示」という。)を付する行為
二 特定農林水産物等名称保護法第三条第一項の規定により商品又は商品の包装に地理的表示を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為
三 特定農林水産物等名称保護法第三条第一項の規定により商品に関する送り状に地理的表示を付して展示する行為
(登録免許税法の一部改正)
第五条 登録免許税法(昭和四十二年法律第三十五号)の一部を次のように改正する。
別表第一第八十七号の次に次のように加える。
八十七の二 登録生産者団体の登録又は変更の登録
−特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(平成二十六年法律第号)第六条(特定農林水産物等の登録)の登録生産者団体の登録又は同法第十五条第一項(生産者団体を追加する変更の登録)の変更の登録
−登録件数
−一件につき九万円
(政令への委任)
第六条 附則第三条に定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定める。
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