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2014年5月11日 (日)

第312回:「知的財産推進計画2014」の策定に向けた意見募集(5月16日〆切)への提出パブコメ

 今年はかなり変則的にゴールデンウィークから5月16日〆切という形で募集されている知財本部の「知的財産推進計画2014」の策定に向けた意見募集にパブコメを書いて提出したので、ここに載せておく。

 内容はほぼ例年通りだが、特にポイントをあげるとすれば、山場が続くTPP交渉関連事項(著作権の保護期間延長、DRM回避規制強化、ISPの間接侵害責任、法定賠償制度、著作権侵害の非親告罪化の導入などに絡む)とタスクフォース検討事項のアーカイブ関連事項となるだろうか。(今回のパブコメ向けにわざわざ営業秘密タスクフォース報告書(pdf)中小・ベンチャー企業及び大学支援強化タスクフォース報告書(pdf)アーカイブに関するタスクフォース報告書(pdf)音楽産業の国際展開に関するタスクフォース報告書(pdf)と4つもタスクフォース報告書が作られている。どれも既存施策の地道な改善に関する話を除けば政策的に意味のあることは大して書かれていないが、問題がないだけでよしとするべきなのだろう。なお、去年提出したパブコメについては第286回、知財計画2013の内容については第292回参照。)

 もはや知財本部の存在意義自体ないのではないかと私は変わらず思っているが、このパブコメは知財問題全般について政府へ意見を言える年1回の機会ではあるので、このような問題について関心のある方は是非提出を検討することをお勧めする。

(以下、提出パブコメ)

《要旨》
アメリカ等と比べて遜色の無い範囲で一般フェアユース条項を導入すること及びダウンロード犯罪化・違法化条項の撤廃を求める。何ら国民的コンセンサスを得ていない中でのTPP交渉参加、有害無益なインターネットにおける今以上の知財保護強化、特に著作権の保護期間延長、補償金の矛盾を拡大するだけの私的録音録画補償金の対象拡大に反対する。今後真の国民視点に立った知財の規制緩和の検討が進むことを期待する。

《全文》
 最終的に国益になるであろうことを考え、各業界の利権や省益を超えて必要となる政策判断をすることこそ知財本部とその事務局が本当になすべきことのはずであるが、知財計画2013を見ても、このような本当に政策的な決定は全く見られない。知財保護が行きすぎて消費者やユーザーの行動を萎縮させるほどになれば、確実に文化も産業も萎縮するので、知財保護強化が必ず国益につながる訳ではないということを、著作権問題の本質は、ネットにおける既存コンテンツの正規流通が進まないことにあるのではなく、インターネットの登場によって新たに出てきた著作物の公正利用の類型に、今の著作権法が全く対応できておらず、著作物の公正利用まで萎縮させ、文化と産業の発展を阻害していることにあるのだということを知財本部とその事務局には、まずはっきりと認識してもらいたい。特に、最近の知財・情報に関する規制強化の動きは全て間違っていると私は断言する。

 例年通り、規制強化による天下り利権の強化のことしか念頭にない文化庁、総務省、警察庁などの各利権官庁に踊らされるまま、国としての知財政策の決定を怠り、知財政策の迷走の原因を増やすことしかできないようであれば、今年の知財計画を作るまでもなく、知財本部とその事務局には、自ら解散することを検討するべきである。そうでなければ、是非、各利権官庁に轡をはめ、その手綱を取って、知財の規制緩和のイニシアティブを取ってもらいたい。知財本部において今年度、インターネットにおけるこれ以上の知財保護強化はほぼ必ず有害無益かつ危険なものとなるということをきちんと認識し、真の国民視点に立った知財の規制緩和の検討が知財本部でなされることを期待し、本当に決定され、実現されるのであれば、全国民を裨益するであろうこととして、私は以下のことを提案する。

(1)アーカイブに関するタスクフォース報告書の記載事項について:
 本報告書の第21ページにアーカイブの構築・充実に関する著作権制度の見直しについて記載されている。しかし、真に2次利用可能な形で各種アーカイブの構築・充実を考えるのであれば、ここに書かれている裁定制度の見直しに関する検討だけでは不十分である。特に日本において十分になされているとは言い難いパブリックドメイン資料や絶版資料の利活用をより強力に促進するべきであり、著作権法の改正により、(a)現行著作権法第31条で国会図書館のみに可能とされている絶版等資料の電子利用をあらゆる図書館及び文書館に可能とすること、合わせて(b)同条における絶版等資料以外の資料についての「滅失、損傷若しくは汚損を避けるため」という電子化のための要件を緩和してここにアーカイブ化のためという目的を追加し、著作権保護期間満了後の資料公開に備えた事前の電子化を明確に可能とすること、及び(c)個人アーカイブの作成が第30条の私的複製の範囲に含まれることを条文上明記し、個人資料の利活用及び著作権保護期間満了後の公開を促すことを私は求める。このような権利制限又は例外が不必要に狭くされるべきではなく、その他者がアーカイブを直接利用しないことを前提として他者の力を借りたアーカイブ化も可能とされるべきである。なお、諸外国における動向について注視が必要なことも無論であり、政府が強く関与する形で実質オプトアウト方式で強力に絶版作品の電子化を図るフランスの20世紀の絶版作品電子化法や、孤児作品のみならず絶版作品の利用についても規定するドイツの孤児・絶版作品デジタル利用促進法なども参考にされてしかるべきである。

 さらに、法制度上の問題ではないが、国会図書館が著作権切れの著作物について2次利用に関する許諾を原則不要としている通り、NHKによるものを含め国費又は国費相当の予算を用いた各種アーカイブにおいては、インターネットを通じ書誌事項だけではなく全コンテンツの提供を行うことを目標として資料の電子化を行うとともに、公開情報に著作権期間満了日を明示し、合わせて公開された著作権切れの著作物に関しては原則2次利用の許諾を不要とするべきである。そして、特に国会図書館及び国立公文書館のような文書中心のアーカイブに関しては一般ユーザーからの入力を通じたテキスト化システムの実装も検討してもらいたい。

(2)「知的財産推進計画2013」の記載事項について:
a)環太平洋経済連携協定(TPP)などの経済連携協定(EPA)に関する取組について

 第8ページにTPPなどの協定に関する取組の強化について書かれている。今までの各種のリーク文書からも、このような交渉に絡み、著作権の保護期間延長、DRM回避規制強化、ISPの間接侵害責任、法定賠償制度、著作権侵害の非親告罪化などについて外国から不当な圧力がかけられていることが想定される。下でそれぞれについても書くが、今ですら不当に長い著作権保護期間のこれ以上の延長など論外であり、アメリカで一般ユーザーに法外な損害賠償を発生させ、その国民のネット利用におけるリスクを不当に高め、ネットにおける文化と産業の発展を阻害することにしかつながっていない法定賠償のような日本に全くそぐわない制度の導入や、責任制限を通じた実質的検閲のISPに対する押しつけや、ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ないこれ以上のDRM回避規制の強化や、被害者が不問に付することを希望しているときまで国家が主体的に処罰を行うことが不適切な、人格権の保護という色彩が極めて強い著作権の侵害の非親告罪化など断じてなされるべきでなく、そのような要求は明らかに不当なものとして毅然としてはねのけるべきである。

 また、TPP交渉のような国民の生活に多大の影響を及ぼす国際交渉が政府間で極秘裏に行われていることも大問題である。国民一人一人がその是非を判断できるよう、このような国際交渉に関する情報をすべて速やかに公開するべきである。

b)海賊版対策条約(ACTA)について
 第34ページに書かれているACTAを背景に経産省及び文化庁の主導により無意味にDRM回避規制を強化する不正競争防止法及び著作権法の改正案が以前国会を通され、ACTA自体も国会で批准された。しかし、このようなユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ない規制強化条項を含む条約の交渉、署名及び批准は何ら国民的なコンセンサスが得られていない中でなされており、私は一国民としてACTAに反対する。今なおACTAの批准国は日本しかなく、日本は無様に世界に恥を晒し続けている。もはやACTAに何ら意味はなく、日本は他国への働きかけを止めるとともに自ら脱退してその失敗を認めるべきである。

c)各知財法改正について
 第10ページに書かれていた商標法や意匠法の改正などが今国会で成立した。また、電子出版をカバーする出版権の拡大を含む著作権法の改正も今国会で成立した。地理的表示保護法案についても閣議決定されており、今国会で成立する可能性が高い。
 今回のこれらの法改正はかなり大きな改正事項を含むものであり、施行前の周知と合わせて関連政令・ガイドライン等の検討にあたってはその審議過程及び改正理由をきちんと公開するとともに、一ヶ月以上の十分な期間を取ってパブコメを取るようにしてもらいたい。

d)インターネット上の著作権侵害の抑止について
 第33ページにインターネット上の著作権侵害の抑止について書かれているが、このようなネット上の違法コンテンツ対策、違法ファイル共有対策について、通信の秘密やプライバシー、情報アクセス権等の国民の基本的な権利をきちんと尊重しつつ対策を進めることを明記してもらいたい。この点においても、国民の基本的な権利を必ず侵害するものとなり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害することにつながる危険な規制強化の検討ではなく、ネットにおける各種問題は情報モラル・リテラシー教育によって解決されるべきものという基本に立ち帰り、現行のプロバイダー責任制限法と削除要請を組み合わせた対策などの、より現実的かつ地道な施策のみに注力して検討を進めるべきである。

e)私的録音録画補償金問題について
 第26ページでは私的録音録画補償金問題についても言及されている。権利者団体等が単なる既得権益の拡大を狙ってiPod等へ対象範囲を拡大を主張している私的録音録画補償金問題についても、補償金のそもそもの意味を問い直すことなく、今の補償金の矛盾を拡大するだけの私的録音録画補償金の対象拡大を絶対にするべきではない。

 文化庁の文化審議会著作権分科会における数年の審議において、補償金のそもそもの意義についての意義が問われたが、文化庁が、天下り先である権利者団体のみにおもねり、この制度に関する根本的な検討を怠った結果、特にアナログチューナー非対応録画機への課金について私的録音録画補償金管理協会と東芝間の訴訟に発展した。ブルーレイ課金・アナログチューナー非搭載録画機への課金について、権利者団体は、ダビング10への移行によってコピーが増え自分たちに被害が出ると大騒ぎをしたが、移行後3年以上経った今現在においても、ダビング10の実施による被害増を証明するに足る具体的な証拠は全く示されておらず、ブルーレイ課金・アナログチューナー非搭載録画機への課金に合理性があるとは到底思えない。わずかに緩和されたとは言え、今なお地上デジタル放送にはダビング10という不当に厳しいコピー制限がかかったままである。こうした実質的に全国民に転嫁されるコストで不当に厳しい制限を課している機器と媒体にさらに補償金を賦課しようとするのは、不当の上塗りである。

 なお、世界的に見ても、メーカーや消費者が納得して補償金を払っているということはカケラも無く、権利者団体がその政治力を不当に行使し、歪んだ「複製=対価」の著作権神授説に基づき、不当に対象を広げ料率を上げようとしているだけというのがあらゆる国における実情である。表向きはどうあれ、大きな家電・PCメーカーを国内に擁しない欧州各国は、私的録音録画補償金制度を、外資から金を還流する手段、つまり、単なる外資規制として使っているに過ぎない。この制度における補償金の対象・料率に関して、具体的かつ妥当な基準はどこの国を見ても無いのであり、この制度は、ほぼ権利者団体の際限の無い不当な要求を招き、莫大な社会的コストの浪費のみにつながっている。機器・媒体を離れ音楽・映像の情報化が進む中、「複製=対価」の著作権神授説と個別の機器・媒体への賦課を基礎とする私的録音録画補償金は、既に時代遅れのものとなりつつあり、その対象範囲と料率のデタラメさが、デジタル録音録画技術の正常な発展を阻害し、デジタル録音録画機器・媒体における正常な競争市場を歪めているという現実は、補償金制度を導入したあらゆる国において、問題として明確に認識されなくてはならないことである。

f)クラウド型サービスのための環境整備について
 第26ページに、クラウド型サービスのための環境整備について書かれている。ここで、「まねきTV」事件などの各種判例からも、ユーザー個人のみによって利用されるようなクラウド型サービスまで著作権法上ほぼ違法とされてしまう状況に日本があることは明らかであり、このような状況は著作権法の趣旨に照らして決して妥当なことではない。ユーザーが自ら合法的に入手したコンテンツを私的に楽しむために利用することに著作権法が必要以上に介入することが許されるべきではなく、個々のユーザーが自らのためのもに利用するようなクラウド型サービスにまで不必要に著作権を及ぼし、このような技術的サービスにおけるトランザクションコストを過大に高め、その普及を不当に阻害することに何ら正当性はない。この問題がクラウド型サービス固有の問題でないのはその通りであるが、だからといって法改正の必要性がなくなる訳ではない。著作権法の条文及びその解釈・運用が必要以上に厳格に過ぎクラウド型サービスのような技術の普及が不当に阻害されているという日本の悲惨な現状を多少なりとも緩和するべく、文化庁の関与を排除して速やかに問題を再整理し、アメリカ等と比べて遜色の無い範囲で一般フェアユース条項を導入し、同時にクラウド型サービスなどについてもすくい上げられるようにするべきである。

g)コンテンツに関する規制緩和について
 第32ページに、外国におけるコンテンツに関する規制の緩和・撤廃を強く働きかけると書かれている。このようなことも無論重要であるが、東京都の青少年健全育成条例改正問題に代表されるように、児童ポルノ法の改正検討や、各地方自治体の青少年条例の改正検討などにより、今の日本のコンテンツ業界に不当な規制圧力が加えられている状態にあるということをそれ以上に重く見るべきである。児童ポルノ規制法と青少年条例改正のそれぞれの問題点については、下に改めて詳しく書くが、これらの規制圧力は、場合によっては今の日本のコンテンツ産業に壊滅的なダメージを与えかねないものである。一方でコンテンツ強化を核とした成長戦略の推進と言いながら、その一方でこのような表現弾圧の動きが政治・行政、特に警察庁を中心として激化している現状は片腹痛いとしか言いようがない。このような百害あって一利ない表現規制の動きは、日本の文化と経済の健全な発展のために到底看過できるものではない。政府・与党にあっては、民主主義の根本たる表現の自由すら脅かしている現在の不当な表現規制圧力について速やかに排除・緩和するための検討を開始するべきである。

(3)その他の知財政策事項について:
a)ダウンロード違法化・犯罪化問題について

 文化庁の暴走と国会議員の無知によって、2009年の6月12日にダウンロード違法化条項を含む改正著作権法が成立し、2010年の1月1日に施行された。また、日本レコード協会などのロビー活動により、自民党及び公明党が主導する形でダウンロード犯罪化条項がねじ込まれる形で、2012年6月20日に改正著作権法が成立し、2012年10月1日から施行されている。しかし、一人しか行為に絡まないダウンロードにおいて、「事実を知りながら」なる要件は、エスパーでもない限り証明も反証もできない無意味かつ危険な要件であり、技術的・外形的に違法性の区別がつかない以上、このようなダウンロード違法化・犯罪化は法規範としての力すら持ち得ず、罪刑法定主義や情報アクセス権を含む表現の自由などの憲法に規定される国民の基本的な権利の観点からも問題がある。このような法改正によって進むのはダウンロード以外も含め著作権法全体に対するモラルハザードのみであり、今のところ幸いなことに適用例はないが、これを逆にねじ曲げてエンフォースしようとすれば、著作権検閲という日本国として最低最悪の手段に突き進む恐れしかない。

 そもそも、ダウンロード違法化の懸念として、このような不合理極まる規制強化・著作権検閲に対する懸念は、文化庁へのパブコメ(文化庁HPhttp://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/houkoku.htmlの意見募集の結果参照。ダウンロード違法化問題において、この8千件以上のパブコメの7割方で示された国民の反対・懸念は完全に無視された。このような非道極まる民意無視は到底許されるものではない)や知財本部へのパブコメ(知財本部のHPhttp://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keikaku2009.htmlの個人からの意見参照)を見ても分かる通り、法改正前から指摘されていたところであり、このようなさらなる有害無益な規制強化・著作権検閲にしか流れようの無いダウンロード違法化・犯罪化は始めからなされるべきではなかったものである。文化庁の暴走と国会議員の無知によって成立したものであり、ネット利用における個人の安心と安全を完全にないがしろにするものである、百害あって一利ないダウンロード違法化・犯罪化を規定する著作権法第30条第1項第3号及び第119条第3項を即刻削除するべきである。

b)一般フェアユース条項の導入について
 一般フェアユース条項の導入について、ユーザーに対する意義からも、可能な限り早期に導入することを求める。特に、インターネットのように、ほぼ全国民が利用者兼権利者となり得、考えられる利用形態が発散し、個別の規定では公正利用の類型を拾い切れなくなるところでは、フェアユースのような一般規定は保護と利用のバランスを取る上で重要な意義を持つものである。

 2012年の法改正によって写り込み等に関する権利制限の個別規定が追加されたが、あった方が良いものとは言え、これは到底一般フェアユース条項と言うに足るものではなく、これでは著作権をめぐる今の混迷状況が変わることはない。

 著作物の公正利用には変形利用もビジネス利用も考えられ、このような利用も含めて著作物の公正利用を促すことが、今後の日本の文化と経済の発展にとって真に重要であることを考えれば、不当にその範囲を不当に狭めるべきでは無く、その範囲はアメリカ等と比べて遜色の無いものとされるべきである。ただし、フェアユースの導入によって、私的複製の範囲が縮小されることはあってはならない。

 権利を侵害するかしないかは刑事罰がかかるかかからないかの問題でもあり、公正という概念で刑事罰の問題を解決できるのかとする意見もあるようだが、かえって、このような現状の過剰な刑事罰リスクからも、フェアユースは必要なものと私は考える。現在親告罪であることが多少セーフハーバーになっているとはいえ、アニメ画像一枚の利用で別件逮捕されたり、セーフハーバーなしの著作権侵害幇助罪でサーバー管理者が逮捕されたりすることは、著作権法の主旨から考えて本来あってはならないことである。政府にあっては、著作権法の本来の主旨を超えた過剰リスクによって、本来公正として認められるべき事業・利用まで萎縮しているという事態を本当に深刻に受け止め、一刻も早い改善を図ってもらいたい。

 個別の権利制限規定の迅速な追加によって対処するべきとする意見もあるが、文化庁と癒着権利者団体が結託して個別規定すらなかなか入れず、入れたとしても必要以上に厳格な要件が追加されているという惨憺たる現状において、個別規定の追加はこの問題における真の対処たり得ない。およそあらゆる権利制限について、文化庁と権利者団体が結託して、全国民を裨益するだろう新しい権利制限を潰すか、極めて狭く使えないものとして来たからこそ、今一般規定が社会的に求められているのだという、国民と文化の敵である文化庁が全く認識していないだろう事実を、政府・与党は事実としてはっきりと認めるべきである。

c)著作権法におけるいわゆる「間接侵害」への対応について
 セーフハーバーを確定するためにも間接侵害の明確化はなされるべきであるが、現行の条文におけるカラオケ法理や各種ネット録画機事件などで示されたことの全体的な整理以上のことをしてはならない。特に、著作権法に明文の間接侵害一般規定を設けることは絶対にしてはならないことである。確かに今は直接侵害規定からの滲み出しで間接侵害を取り扱っているので不明確なところがあるのは確かだが、現状の整理を超えて、明文の間接侵害一般規定を作った途端、権利者団体や放送局がまず間違いなく山の様に脅しや訴訟を仕掛けて来、今度はこの間接侵害規定の定義やそこからの滲み出しが問題となり、無意味かつ危険な社会的混乱を来すことは目に見えているからである。知財計画2014において間接侵害への対応について記載するのであれば、著作権法の間接侵害の明確化は、ネット事業・利用の著作権法上のセーフハーバーを確定するために必要十分な限りにおいてのみなされると合わせ明記してもらいたい。

 なお、スキャン代行業のような私的複製代行業については、著作物の通常の利用を妨げず、著作者の利益を不当に害しない、公正な利用として権利者の許諾なく行えてしかるべき類型もあるものと考えられ、そのような類型について速やかに整理するとともに、公正な利用と考えられる類型について、一般フェアユース条項の導入によりすくい上げられるようにするべきである。

d)保護期間延長問題について
 権利者団体と文化庁を除けば、延長を否定する結論が出そろっているこの問題について、継続検討するとしていること自体極めて残念なことである。これほど長期間にわたる著作権の保護期間をこれ以上延ばすことを是とするに足る理由は何一つなく、知財計画2014では、著作権・著作隣接権の保護期間延長の検討はこれ以上しないとしてもらいたい。特に、流通事業者に過ぎないレコード製作者と放送事業者の著作隣接権については、保護期間を短縮することが検討されても良いくらいである。また今年は、環太平洋経済連携協定(TPP)などの経済連携協定(EPA)交渉に絡み、保護期間延長などについて外国から不当な圧力がかけられる恐れが強いが、今ですら不当に長い著作権保護期間のこれ以上の延長など論外であり、そのような要求は不当なものとして毅然としてはねのけるべきである。

e)DRM回避規制について
 経産省と文化庁の主導により無意味にDRM回避規制を強化する不正競争防止法と著作権法の改正案がそれぞれ以前国会を通されたが、これらの法改正を是とするに足る立法事実は何一つない。不正競争防止法と著作権法でDRM回避機器等の提供等が規制され、著作権法でコピーコントロールを回避して行う私的複製まで違法とされ、十二分以上に規制がかかっているのであり、これ以上の規制強化は、ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ない。ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ないこれ以上のDRM回避規制の強化はされてはならない。

 特に、DRM回避規制に関しては、有害無益な規制強化の検討ではなく、まず、私的なDRM回避行為自体によって生じる被害は無く、個々の回避行為を一件ずつ捕捉して民事訴訟の対象とすることは困難だったにもかかわらず、文化庁の片寄った見方から一方的に導入されたものである、私的な領域でのコピーコントロール回避規制(著作権法第30条第1項第2号)の撤廃の検討を行うべきである。コンテンツへのアクセスあるいはコピーをコントロールしている技術を私的な領域で回避しただけでは経済的損失は発生し得ず、また、ネットにアップされることによって生じる被害は公衆送信権によって既にカバーされているものであり、その被害とDRM回避やダウンロードとを混同することは絶対に許されない。それ以前に、私法である著作権法が、私的領域に踏み込むということ自体異常なことと言わざるを得ない。また、同時に、何ら立法事実の変化がない中、ドサクサ紛れに通された、先般の不正競争防止法改正で導入されたDRM回避機器の提供等への刑事罰付与や、以前の著作権法改正で導入されたアクセスコントロール関連規制の追加についても、速やかに元に戻す検討がなされるべきである。

f)コピーワンス・ダビング10・B-CAS問題について
 私はコピーワンスにもダビング10にも反対する。そもそも、この問題は、放送局・権利者にとっては、視聴者の利便性を著しく下げることによって、一旦は広告つきながらも無料で放送したコンテンツの市場価格を不当につり上げるものとして機能し、国内の大手メーカーとっては、B-CASカードの貸与と複雑な暗号システムを全てのテレビ・録画機器に必要とすることによって、中小・海外メーカーに対する参入障壁として機能するB-CASシステムの問題を淵源とするのであって、このB-CASシステムと独禁法の関係を検討するということを知財計画2014では明記してもらいたい。検討の上B-CASシステムが独禁法違反とされるなら、速やかにその排除をして頂きたい。また、無料の地上放送において、逆にコピーワンスやダビング10のような視聴者の利便性を著しく下げる厳格なコピー制御が維持されるのであれば、私的録画補償金に存在理由はなく、これを速やかに廃止するべきである。

g)著作権検閲・ストライクポリシーについて
 ファイル共有ソフトを用いて著作権を侵害してファイル等を送信していた者に対して警告メールを送付することなどを中心とする電気通信事業者と権利者団体の連携による著作権侵害対策が警察庁、総務省、文化庁などの規制官庁が絡む形で行われており、警察によってファイル共有ネットワークの監視も行われているが、このような対策は著作権検閲に流れる危険性が極めて高い。

 フランスで導入が検討された、警告メールの送付とネット切断を中心とする、著作権検閲機関型の違法コピー対策である3ストライクポリシーは、2009年6月に、憲法裁判所によって、インターネットのアクセスは、表現の自由に関係する情報アクセスの権利、つまり、最も基本的な権利の1つとしてとらえられるとされ、著作権検閲機関型の3ストライクポリシーは、表現の自由・情報アクセスの権利やプライバシーといった他の基本的な権利をないがしろにするものとして、真っ向から否定されている。ネット切断に裁判所の判断を必須とする形で導入された変形ストライク法も何ら効果を上げることなく、フランスでは今もストライクポリシーについて見直しの検討が行われており、2013年7月にはネット切断の罰が廃止されている。日本においては、このようなフランスにおける政策の迷走を他山の石として、このように表現の自由・情報アクセスの権利やプライバシーといった他の基本的な権利をないがしろにする対策を絶対に導入しないこととするべきであり、警察庁などが絡む形で検討されている違法ファイル共有対策についても、通信の秘密やプライバシー、情報アクセス権等の国民の基本的な権利をきちんと尊重する形で進めることが担保されなくてはならない。

 アメリカでは、議会に提出されたサイトブロッキング条項を含むオンライン海賊対策法案(SOPA)や知財保護強化法案(PIPA)が、IT企業やユーザーから検閲であるとして大反対を受け、審議が止められたが、日本においても著作権団体が同様の著作権ブロッキング法の導入を求めてくる恐れがある。

 サイトブロッキングの問題については下でも述べるが、インターネット利用者から見てその妥当性をチェックすることが不可能なサイトブロッキングにおいて、透明性・公平性・中立性を確保することは本質的に完全に不可能である。このようなブロッキングは、憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないものであり、決して導入されるべきでないものである。

 これらの提案や検討からも明確なように、違法コピー対策問題における権利者団体の主張は常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。今後は、このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むことを検討するべきである。同じく、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な著作権検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むことを検討するべきである。

h)著作権法へのセーフハーバー規定の導入について
 動画投稿サイト事業者がJASRACに訴えられた「ブレイクTV」事件や、レンタルサーバー事業者が著作権幇助罪で逮捕され、検察によって姑息にも略式裁判で50万円の罰金を課された「第(3)世界」事件や、1対1の信号転送機器を利用者からほぼ預かるだけのサービスが放送局に訴えられ、最高裁判決で違法とされた「まねきTV」事件等を考えても、今現在、カラオケ法理の適用範囲はますます広く曖昧になり、間接侵害や著作権侵害幇助のリスクが途方もなく拡大し、甚大な萎縮効果・有害無益な社会的大混乱が生じかねないという非常に危険な状態がなお続いている。間接侵害事件や著作権侵害幇助事件においてネット事業者がほぼ直接権利侵害者とみなされてしまうのでは、プロバイダー責任制限法によるセーフハーバーだけでは不十分であり、間接侵害や著作権侵害幇助罪も含め、著作権侵害とならない範囲を著作権法上きちんと確定することは喫緊の課題である。ただし、このセーフハーバーの要件において、標準的な仕組み・技術や違法性の有無の判断を押しつけるような、権利侵害とは無関係の行政機関なり天下り先となるだろう第3者機関なりの関与を必要とすることは、検閲の禁止・表現の自由等の国民の権利の不当な侵害に必ずなるものであり、絶対にあってはならないことである。

 知財計画2014において、プロバイダに対する標準的な著作権侵害技術導入の義務付け等を行わないことを合わせ明記するとともに、間接侵害や刑事罰・著作権侵害幇助も含め著作権法へのセーフハーバー規定の速やかな導入を検討するとしてもらいたい。この点に関しては、逆に、検閲の禁止や表現の自由の観点から技術による著作権検閲の危険性の検討を始めてもらいたい。

i)著作権等に関する真の国際動向について国民へ知らされる仕組みの導入及び文化庁ワーキンググループの公開について
 WIPO等の国際機関にも、政府から派遣されている者はいると思われ、著作権等に関する真の国際動向について細かなことまで即座に国民へ知らされる仕組みの導入を是非検討してもらいたい。
 また、2013年からの著作物等の適切な保護と利用・流通に関するワーキングチームの審議は公開とされたが、文化庁はワーキングチームについて公開審議を原則とするには至っていない。上位の審議会と同様今後全てのワーキンググループについて公開審議を原則化するべきである。

j)天下りについて
 最後に、知財政策においても、天下り利権が各省庁の政策を歪めていることは間違いなく、知財政策の検討と決定の正常化のため、文化庁から著作権関連団体への、総務省から放送通信関連団体・企業への、警察庁からインターネットホットラインセンター他各種協力団体・自主規制団体への天下りの禁止を知財本部において決定して頂きたい。(これらの省庁は特にひどいので特に名前をあげたが、他の省庁も含めて決定してもらえるなら、それに超したことはない。)

(4)その他一般的な情報・ネット・表現規制について
 知財計画改訂において、一般的な情報・ネット・表現規制に関する項目は削除されているが、常に一方的かつ身勝手な主張を繰り広げる自称良識派団体が、意味不明の理屈から知財とは本来関係のない危険な規制強化の話を知財計画に盛り込むべきと主張をしてくることが十分に考えられるので、ここでその他の危険な一般的な情報・ネット・表現規制強化の動きに対する反対意見も述べる。今後も、本来知財とは無関係の、一般的な情報・ネット・表現規制に関する項目を絶対に知財計画に盛り込むことのないようにしてもらいたい。

a)青少年ネット規制法・出会い系サイト規制法について
 そもそも、青少年ネット規制法は、あらゆる者から反対されながら、有害無益なプライドと利権を優先する一部の議員と官庁の思惑のみで成立したものであり、速やかに廃止が検討されるべきものである。また、出会い系サイト規制法の改正は、警察庁が、どんなコミュニケーションサイトでも人は出会えるという誰にでも分かることを無視し、届け出制の対象としては事実上定義不能の「出会い系サイト事業」を定義可能と偽り、改正法案の閣議決定を行い、法案を国会に提出したものであり、他の重要法案と審議が重なる中、国会においてもその本質的な問題が見過ごされて可決され、成立したものである。憲法上の罪刑法定主義や検閲の禁止にそもそも違反している、この出会い系サイト規制法の改正についても、今後、速やかに元に戻すことが検討されるべきである。

b)児童ポルノ規制・サイトブロッキングについて
 児童ポルノ法規制強化問題・有害サイト規制問題における自称良識派団体の主張は、常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。今後は、このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むべきである。同じく、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むべきである。

 閲覧とダウンロードと取得と所持の区別がつかないインターネットにおいては、例え児童ポルノにせよ、情報の単純所持や取得の規制は有害無益かつ危険なもので、憲法及び条約に規定されている「知る権利」を不当に害するものとなる。「自身の性的好奇心を満たす目的で」、積極的あるいは意図的に画像を得た場合であるなどの限定を加えたところで、エスパーでもない限りこのような積極性を証明することも反証することもできないため、このような情報の単純所持や取得の規制の危険性は回避不能であり、思想の自由や罪刑法定主義にも反する。繰り返し取得としても、インターネットで2回以上他人にダウンロードを行わせること等は技術的に極めて容易であり、取得の回数の限定も、何ら危険性を減らすものではない。

 児童ポルノ規制の推進派は常に、提供による被害と単純所持・取得を混同する狂った論理を主張するが、例えそれが児童ポルノであろうと、情報の単純所持ではいかなる被害も発生し得えない。現行法で、ネット上であるか否かにかかわらず、提供及び提供目的の所持まで規制されているのであり、提供によって生じる被害と所持やダウンロード、取得、収集との混同は許され得ない。そもそも、最も根本的なプライバシーに属する個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ることは、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の基本的な権利からあってはならないことである。

 アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現に対する規制対象の拡大も議論されているが、このような対象の拡大は、児童保護という当初の法目的を大きく逸脱する、異常規制に他ならない。アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現において、いくら過激な表現がなされていようと、それが現実の児童被害と関係があるとする客観的な証拠は何一つない。いまだかつて、この点について、単なる不快感に基づいた印象批評と一方的な印象操作調査以上のものを私は見たことはないし、虚構と現実の区別がつかないごく一部の自称良識派の単なる不快感など、言うまでもなく一般的かつ網羅的な表現規制の理由には全くならない。アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現が、今の一般的なモラルに基づいて猥褻だというのなら、猥褻物として取り締まるべき話であって、それ以上の話ではない。どんな法律に基づく権利であれ、権利の侵害は相対的にのみ定まるものであり、実際の被害者の存在しない創作物・表現に対する規制は何をもっても正当化され得ない。民主主義の最重要の基礎である表現の自由や言論の自由、思想の自由等々の最も基本的な精神的自由そのものを危うくすることは絶対に許されない。この点で、2012年6月にスウェーデンで漫画は児童ポルノではないとする最高裁判決が出されたことなども注目されるべきである。

 単純所持規制にせよ、創作物規制にせよ、両方とも1999年当時の児童ポルノ法制定時に喧々囂々の大議論の末に除外された規制であり、規制推進派が何と言おうと、これらの規制を正当化するに足る立法事実の変化はいまだに何一つない。

 既に、警察などが提供するサイト情報に基づき、統計情報のみしか公表しない不透明な中間団体を介し、児童ポルノアドレスリストの作成が行われ、そのリストに基づいて、ブロッキング等が行われているが、いくら中間に団体を介そうと、一般に公表されるのは統計情報に過ぎす、児童ポルノであるか否かの判断情報も含め、アドレスリストに関する具体的な情報は、全て閉じる形で秘密裏に保持されることになるのであり、インターネット利用者から見てそのリストの妥当性をチェックすることは不可能であり、このようなアドレスリストの作成・管理において、透明性・公平性・中立性を確保することは本質的に完全に不可能である。このようなリストに基づくブロッキング等は、自主的な取組という名目でいくら取り繕おうとも、憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないのであり、小手先の運用変更などではどうにもならない。

 児童ポルノ規制法に関しては、既に、提供及び提供目的での所持が禁止されているのであるから、本当に必要とされることは今の法律の地道なエンフォースであって有害無益かつ危険極まりない規制強化の検討ではない。DVD販売サイトなどの海外サイトについても、本当に児童ポルノが販売されているのであれば、速やかにその国の警察に通報・協力して対処すべきだけの話であって、それで対処できないとするに足る具体的根拠は全くない。警察自らこのような印象操作で規制強化のマッチポンプを行い、警察法はおろか憲法の精神にすら違背していることについて警察庁は恥を知るべきである。例えそれが何であろうと、情報の単純所持や単なる情報アクセスではいかなる被害も発生し得えないのであり、自主的な取組という名目でいくら取り繕おうとも、憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないサイトブロッキングは即刻排除するべきであり、そのためのアドレスリスト作成管理団体として設立された、インターネットコンテンツセーフティ協会は即刻その解散が検討されてしかるべきである。児童ポルノ規制法に関して真に検討すべきことは、現行ですら過度に広汎であり、違憲のそしりを免れない児童ポルノの定義の厳密化のみである。

 なお、民主主義の最重要の基礎である表現の自由に関わる問題において、一方的な見方で国際動向を決めつけることなどあってはならないことであり、欧米においても、情報の単純所持規制やサイトブロッキングの危険性に対する認識はネットを中心に高まって来ていることは決して無視されてはならない。例えば、欧米では既にブロッキングについてその恣意的な運用によって弊害が生じていることや、アメリカにおいても、2009年に連邦最高裁で児童オンライン保護法が違憲として完全に否定され、2011年6月に連邦最高裁でカリフォルニア州のゲーム規制法が違憲として否定されていること、ドイツで児童ポルノサイトブロッキング法は検閲法と批判され、最終的に完全に廃止されたことなども注目されるべきである(http://www.zdnet.de/news/41558455/bundestag-hebt-zensursula-gesetz-endgueltig-auf.htm参照)。スイスの2009年の調査でも、2002年に児童ポルノ所持で捕まった者の追跡調査を行っているが、実際に過去に性的虐待を行っていたのは1%、6年間の追跡調査で実際に性的虐待を行ったものも1%に過ぎず、児童ポルノ所持はそれだけでは、性的虐待のリスクファクターとはならないと結論づけており、児童ポルノの単純所持規制・ブロッキングの根拠は完全に否定されているのである(http://www.biomedcentral.com/1471-244X/9/43/abstract参照)。欧州連合において、インターネットへのアクセスを情報の自由に関する基本的な権利として位置づける動きがあることも見逃されてはならない。政府・与党内の検討においては、このような国際動向もきちんと取り上げるべきである。

 自民党及び公明党から、また危険極まりない単純所持規制を含む児童ポルノの改正法案が国会に提出され、審議が開始されようとしているが、政府・与党においては、児童ポルノを対象とするものにせよ、いかなる種類のものであれ、情報の単純所持・取得規制・ブロッキングは極めて危険な規制であるとの認識を深め、このような規制を絶対に行わないこととして、危険な法改正案が2度と与野党から提出されることが無いようにするべきである。今後児童ポルノ法の改正を検討するのであれば、与野党の間で修正協議と称して密室協議に入ることなく、きちんと公開される国会の場で、現行法の問題点についても含め、徹底的な議論をするべきである。

 さらに、かえって、児童ポルノの単純所持規制・創作物規制といった非人道的な規制を導入している諸国は即刻このような規制を廃止するべきと、そもそも最も根本的なプライバシーに属し、何ら実害を生み得ない個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ること自体、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の国際的かつ一般的に認められている基本的な権利からあってはならないことであると、日本政府から国際的な場において各国に積極的に働きかけてもらいたい。

 また、様々なところで検討されている有害サイト規制についても、その規制は表現に対する過度広汎な規制で違憲なものとしか言いようがなく、各種有害サイト規制についても私は反対する。

c)東京都青少年健全育成条例他、地方条例の改正による情報規制問題について
 東京都でその青少年健全育成条例の改正が検討され、非実在青少年規制として大騒ぎになったあげく、2010年12月に、当事者・関係者の真摯な各種の意見すら全く聞く耳を持たれず、数々の問題を含む条例案が、都知事・東京都青少年・治安対策本部・自公都議の主導で都議会で通された。通過版の条例改正案も、非実在青少年規制という言葉こそ消えたものの、かえって規制範囲は非実在性犯罪規制とより過度に広汎かつ曖昧なものへと広げられ、有害図書販売に対する実質的な罰則の導入と合わせ、その内容は違憲としか言わざるを得ない内容のものである。また、この東京都の条例改正にも含まれている携帯フィルタリングの実質完全義務化は、青少年ネット規制法の精神にすら反している行き過ぎた規制である。さらに、大阪や京都などでは、児童ポルノに関して、法律を越える範囲で勝手に範囲を規定し、その単純所持等を禁止する、明らかに違憲な条例が通されるなどのデタラメが行われている。

 これらのような明らかな違憲条例の検討・推進は、地方自治体法第245条の5に定められているところの、都道府県の自治事務の処理が法令の規定に違反しているか著しく適正を欠きかつ明らかに公益を害していると認めるに足ると考えられるものであり、総務大臣から各地方自治体に迅速に是正命令を出すべきである。また、当事者・関係者の意見を完全に無視した東京都における検討など、民主主義的プロセスを無視した極めて非道なものとしか言いようがなく、今後の検討においてはきちんと民意が反映されるようにするため、地方自治法の改正検討において、情報公開制度の強化、審議会のメンバー選定・検討過程の透明化、パブコメの義務化、条例の改廃請求・知事・議会のリコールの容易化などの、国の制度と整合的な形での民意をくみ上げるシステムの地方自治に対する法制化の検討を速やかに進めてもらいたい。また、各地方の動きを見ていると、出向した警察官僚が強く関与する形で、各都道府県の青少年問題協議会がデタラメな規制強化騒動の震源となることが多く、今現在のデタラメな規制強化の動きを止めるべく、さらに、中央警察官僚の地方出向・人事交流の完全な取りやめ、地方青少年問題協議会法の廃止、問題の多い地方青少年問題協議会そのものの解散の促進についても速やかに検討を開始するべきである。

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2014年5月 6日 (火)

第311回:閣議決定された地理的表示保護法案の内容

 4月25日に第309回で取り上げた著作権法改正案と特許法等改正案がそれぞれ衆参を通過し、成立した(関連条約の視聴覚的実演に関するに関する北京条約と意匠に関するハーグ・ロカルノ協定も衆議院を通過し参議院の審議待ちという状態にある)。そして、知財本部から5月16日〆切で開始されている知財計画2014向けのパブコメも出すつもりでいるが、やはり4月25日に閣議決定され、国会提出がされた地理的表示保護法案が農水省のHPで公開されているので先にその内容を紹介しておきたいと思う。

 地理的表示保護法(正式名称は「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律」)については2012年の農水省研究会での検討以降さっぱり音沙汰がなく、どうなっているのかと思っていたものだが、提出された法律案(pdf)概要(pdf)要綱(pdf)理由(pdf)も参照)を見る限りそれほど違和感はなく、このまま通っても特に問題はないだろうと思える内容になっている。

 そうは言ってもこれは新法によって知的財産の保護拡大を図るものであり、決して小さな話ではないので、ざっとポイントとなる部分の条文を見て行くと、第二条の定義で、

(定義)
第二条
 この法律において「農林水産物等」とは、次に掲げる物をいう。ただし、酒税法(昭和二十八年法律第六号)第二条第一項に規定する酒類並びに医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第二条第一項に規定する医薬品、同条第二項に規定する医薬部外品、同条第三項に規定する化粧品及び同条第九項に規定する再生医療等製品に該当するものを除く。
 農林水産物(食用に供されるものに限る。)
 飲食料品(前号に掲げるものを除く。)
 農林水産物(第一号に掲げるものを除く。)であって、政令で定めるもの
 農林水産物を原料又は材料として製造し、又は加工したもの(第二号に掲げるものを除く。)であって、政令で定めるもの

 この法律において「特定農林水産物等」とは、次の各号のいずれにも該当する農林水産物等をいう。
 特定の場所、地域又は国を生産地とするものであること。
 品質、社会的評価その他の確立した特性(以下単に「特性」という。)が前号の生産地に主として帰せられるものであること。

 この法律において「地理的表示」とは、特定農林水産物等の名称(当該名称により前項各号に掲げる事項を特定することができるものに限る。)の表示をいう。

と書かれ、ここで対象を農林水産物、飲食料品に限定し、酒や医薬・化粧品を明示的に除外しつつ、地理的表示とは生産地と特性を特定できる名称の表示であると定めている。

 そして、第六条で、

(特定農林水産物等の登録)
第六条
 生産行程管理業務を行う生産者団体は、明細書を作成した農林水産物等が特定農林水産物等であるときは、当該農林水産物等について農林水産大臣の登録を受けることができる。

と書かれている通り、地理的表示の保護のためには登録が必要とされている。

 その登録のための申請の様式は第7条に規定されており、第8条で登録の申請から公示が行われることが、第9条で申請の公示から三ヶ月間誰でも意見の提出が可能とされることが、第10条で意見提出期間満了後に学識経験者の意見の聴取を経て登録が行われることが書かれている。

 登録拒否要件は第13条に書かれているが、その第3号及び第4号(生産団体関連以外)は、

 登録の申請に係る農林水産物等(次号において「申請農林水産物等」という。)について次のいずれかに該当するとき。
 特定農林水産物等でないとき。
 その全部又は一部が登録に係る特定農林水産物等のいずれかに該当するとき。
 申請農林水産物等の名称について次のいずれかに該当するとき。
 普通名称であるとき、その他当該申請農林水産物等について第二条第二項各号に掲げる事項を特定することができない名称であるとき。
 次に掲げる登録商標と同一又は類似の名称であるとき。
(1)申請農林水産物等又はこれに類似する商品に係る登録商標
(2)申請農林水産物等又はこれに類似する商品に関する役務に係る登録商標

というもので、申請名称が普通名称になっている場合や既存の登録商標と同一又は類似の場合は登録が拒否されることとなっている。(ただし、同条第2項で商標権者の承諾を受けている場合は除くとされている。)

 その権利行使に関しては、直接行使の規定はないので、(一般的な民法上の損害賠償請求はできると思うが)以下の第5条に定められている農水大臣命令を通じた執行が原則となるのではないかと思う。

(措置命令)
第五条
 農林水産大臣は、次の各号に掲げる規定に違反した者に対し、当該各号に定める措置その他の必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
 第三条第二項地理的表示又はこれに類似する表示の除去又は抹消
 前条第一項登録標章を付すること。
 前条第二項登録標章又はこれに類似する標章の除去又は抹消

 商標権との関係ということでは、第3条第2項で既存の商標権を有する者は商標をそのまま使用できるとされ、合わせて入る商標法の改正で、地理的表示を付することには商標権の効力が及ばないとされるので、権利の間の抵触が大きな問題となることもないだろう。

 別になくとも分かる方には分かると思うが、上で書いたことをまとめて、この法律で新たに作られる地理的表示保護制度はどのようなものかということを示すために、最も近く重なりが大きいと考えられる地域団体商標制度との比較表を試しに作ってみると以下のようになる。
Gi2
 このように比較してみると権利として弱いところがあるのは否めないものの、新法としては十分だろうし、法案が成立すれば、商標法と比較した上でより良い保護が受けられる方を(あるいは両方を)選択して行くことができるようになるだろう。

 全体的に見て特に大きな問題は見当たらず、商標法との関係をどうするかということを含めて長年の懸案だった日本における地理的表示保護法制の形について一定の方向性を定めるものとして、この法案もこのまま成立してくれて良いと私は思っているが、今年になって突然この法改正が浮上した背景にはTPP交渉の進展があるのだろうとも踏んでおり(地理的表示の保護とTPPの関係については第303回第304回参照)、日本の知財法制にとっても大きな影響を間違いなく持つTPP交渉の行方について私はなお非常に大きな懸念を抱いている。

 次回は知財計画パブコメ提出エントリの予定である。

(以下、条文案の転載)

特定農林水産物等の名称の保護に関する法律

目次
第一章 総則(第一条・第二条)
第二章 特定農林水産物等の名称の保護(第三条—第五条)
第三章 登録(第六条—第二十二条)
第四章 雑則(第二十三条—第二十七条)
第五章 罰則(第二十八条—第三十二条)
附則

第一章 総則
(目的)
第一条
 この法律は、世界貿易機関を設立するマラケシュ協定附属書一Cの知的所有権の貿易関連の側面に関する協定に基づき特定農林水産物等の名称の保護に関する制度を確立することにより、特定農林水産物等の生産業者の利益の保護を図り、もって農林水産業及びその関連産業の発展に寄与し、併せて需要者の利益を保護することを目的とする。

(定義)
第二条
 この法律において「農林水産物等」とは、次に掲げる物をいう。ただし、酒税法(昭和二十八年法律第六号)第二条第一項に規定する酒類並びに医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第二条第一項に規定する医薬品、同条第二項に規定する医薬部外品、同条第三項に規定する化粧品及び同条第九項に規定する再生医療等製品に該当するものを除く。
 農林水産物(食用に供されるものに限る。)
 飲食料品(前号に掲げるものを除く。)
 農林水産物(第一号に掲げるものを除く。)であって、政令で定めるもの
 農林水産物を原料又は材料として製造し、又は加工したもの(第二号に掲げるものを除く。)であって、政令で定めるもの

 この法律において「特定農林水産物等」とは、次の各号のいずれにも該当する農林水産物等をいう。
 特定の場所、地域又は国を生産地とするものであること。
 品質、社会的評価その他の確立した特性(以下単に「特性」という。)が前号の生産地に主として帰せられるものであること。

 この法律において「地理的表示」とは、特定農林水産物等の名称(当該名称により前項各号に掲げる事項を特定することができるものに限る。)の表示をいう。

 この法律において「生産」とは、農林水産物等が出荷されるまでに行われる一連の行為のうち、農林水産物等に特性を付与し、又は農林水産物等の特性を保持するために行われる行為をいい、「生産地」とは、生産が行われる場所、地域又は国をいい、「生産業者」とは、生産を業として行う者をいう。

 この法律において「生産者団体」とは、生産業者を直接又は間接の構成員(以下単に「構成員」という。)とする団体(法人でない団体にあっては代表者又は管理人の定めのあるものに限り、法令又は定款その他の基本約款において、正当な理由がないのに、構成員たる資格を有する者の加入を拒み、又はその加入につき現在の構成員が加入の際に付されたよりも困難な条件を付してはならない旨の定めのあるものに限る。)であって、農林水産省令で定めるものをいう。

 この法律において「生産行程管理業務」とは、生産者団体が行う次に掲げる業務をいう。
 農林水産物等について第七条第一項第二号から第八号までに掲げる事項を定めた明細書(以下単に「
明細書」という。)の作成又は変更を行うこと。
 明細書を作成した農林水産物等について当該生産者団体の構成員たる生産業者が行うその生産が当該
明細書に適合して行われるようにするため必要な指導、検査その他の業務を行うこと。
 前二号に掲げる業務に附帯する業務を行うこと。

第二章 特定農林水産物等の名称の保護
(地理的表示)
第三条
 第六条の登録(次項(第二号を除く。)及び次条第一項において単に「登録」という。)を受けた生産者団体(第十五条第一項の変更の登録を受けた生産者団体を含む。以下「登録生産者団体」という。)の構成員たる生産業者は、生産を行った農林水産物等が第六条の登録に係る特定農林水産物等であるときは、当該特定農林水産物等又はその包装、容器若しくは送り状(以下「包装等」という。)に地理的表示を付することができる。当該生産業者から当該農林水産物等を直接又は間接に譲り受けた者についても、同様とする。

 前項の規定による場合を除き、何人も、登録に係る特定農林水産物等が属する区分(農林物資の規格化等に関する法律(昭和二十五年法律第百七十五号)第七条第一項の規定により農林水産大臣が指定する種類その他の事情を勘案して農林水産大臣が定める農林水産物等の区分をいう。以下同じ。)に属する農林水産物等若しくはこれを主な原料若しくは材料として製造され、若しくは加工された農林水産物等又はこれらの包装等に当該特定農林水産物等に係る地理的表示又はこれに類似する表示を付してはならない。ただし、次に掲げる場合には、この限りでない。
 登録に係る特定農林水産物等を主な原料若しくは材料として製造され、若しくは加工された農林水産物等又はその包装等に当該特定農林水産物等に係る地理的表示又はこれに類似する表示を付する場合
 第六条の登録の日(当該登録に係る第七条第一項第三号に掲げる事項について第十六条第一項の変更の登録があった場合にあっては、当該変更の登録の日。次号及び第四号において同じ。)前の商標登録出願に係る登録商標(商標法(昭和三十四年法律第百二十七号)第二条第五項に規定する登録商標をいう。以下同じ。)に係る商標権者その他同法の規定により当該登録商標の使用(同法第二条第三項に規定する使用をいう。以下この号及び次号において同じ。)をする権利を有する者が、その商標登録に係る指定商品又は指定役務(同法第六条第一項の規定により指定した商品又は役務をいう。)について当該登録商標の使用をする場合
 登録の日前から商標法その他の法律の規定により商標の使用をする権利を有している者が、当該権利に係る商品又は役務について当該権利に係る商標の使用をする場合(前号に掲げる場合を除く。)
 登録の日前から不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的でなく登録に係る特定農林水産物等が属する区分に属する農林水産物等若しくはその包装等に当該特定農林水産物等に係る地理的表示と同一の名称の表示若しくはこれに類似する表示を付していた者及びその業務を承継した者が継続して当該農林水産物等若しくはその包装等にこれらの表示を付する場合又はこれらの者から当該農林水産物等(これらの表示が付されたもの又はその包装等にこれらの表示が付されたものに限る。)を直接若しくは間接に譲り受けた者が当該農林水産物等若しくはその包装等にこれらの表示を付する場合
 前各号に掲げるもののほか、農林水産省令で定める場合

(登録標章)
第四条
 登録生産者団体の構成員たる生産業者は、前条第一項前段の規定により登録に係る特定農林水産物等又はその包装等に地理的表示を付する場合には、当該特定農林水産物等又はその包装等に登録標章(地理的表示が登録に係る特定農林水産物等の名称の表示である旨の標章であって、農林水産省令で定めるものをいう。以下同じ。)を付さなければならない。同項後段に規定する者についても、同様とする。

2 前項の規定による場合を除き、何人も、農林水産物等又はその包装等に登録標章又はこれに類似する標章を付してはならない。

(措置命令)
第五条
 農林水産大臣は、次の各号に掲げる規定に違反した者に対し、当該各号に定める措置その他の必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
 第三条第二項地理的表示又はこれに類似する表示の除去又は抹消
 前条第一項登録標章を付すること。
 前条第二項登録標章又はこれに類似する標章の除去又は抹消

第三章 登録
(特定農林水産物等の登録)
第六条
 生産行程管理業務を行う生産者団体は、明細書を作成した農林水産物等が特定農林水産物等であるときは、当該農林水産物等について農林水産大臣の登録を受けることができる。

(登録の申請)
第七条
 前条の登録(第十五条、第十六条、第十七条第二項及び第三項並びに第二十二条第一項第一号ニを除き、以下単に「登録」という。)を受けようとする生産者団体は、農林水産省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書を農林水産大臣に提出しなければならない。
 生産者団体の名称及び住所並びに代表者(法人でない生産者団体にあっては、その代表者又は管理人)の氏名
 当該農林水産物等の区分
 当該農林水産物等の名称
 当該農林水産物等の生産地
 当該農林水産物等の特性
 当該農林水産物等の生産の方法
 第二号から前号までに掲げるもののほか、当該農林水産物等を特定するために必要な事項
 第二号から前号までに掲げるもののほか、当該農林水産物等について農林水産省令で定める事項
 前各号に掲げるもののほか、農林水産省令で定める事項

 前項の申請書には、次に掲げる書類を添付しなければならない。
 明細書
 生産行程管理業務の方法に関する規程(以下「生産行程管理業務規程」という。)
 前二号に掲げるもののほか、農林水産省令で定める書類

 生産行程管理業務を行う生産者団体は、共同して登録の申請をすることができる。

(登録の申請の公示等)
第八条
 農林水産大臣は、登録の申請があったときは、第十三条第一項(第一号に係る部分に限る。)の規定により登録を拒否する場合を除き、前条第一項第一号から第八号までに掲げる事項その他必要な事項を公示しなければならない。

 農林水産大臣は、前項の規定による公示の日から二月間、前条第一項の申請書並びに同条第二項第一号及び第二号に掲げる書類を公衆の縦覧に供しなければならない。

(意見書の提出等)
第九条
 前条第一項の規定による公示があったときは、何人も、当該公示の日から三月以内に、当該公示に係る登録の申請について、農林水産大臣に意見書を提出することができる。

 農林水産大臣は、前項の規定による意見書の提出があったときは、当該意見書の写しを登録の申請をした生産者団体に送付しなければならない。

(登録の申請の制限)
第十条
 次の各号のいずれにも該当する登録の申請は、前条第二項並びに次条第二項及び第三項の規定の適用については、第八条第一項の規定による公示に係る登録の申請について前条第一項の規定によりされた意見書の提出とみなす。この場合においては、農林水産大臣は、当該各号のいずれにも該当する登録の申請をした生産者団体に対し、その旨を通知しなければならない。
 第八条第一項の規定による公示に係る登録の申請がされた後前条第一項に規定する期間が満了するまでの間にされた登録の申請であること。
 当該登録の申請に係る農林水産物等の全部又は一部が第八条第一項の規定による公示に係る特定農林水産物等の全部又は一部に該当すること。

 前項第二号に該当する登録の申請は、前条第一項に規定する期間の経過後は、することができない。ただし、第八条第一項の規定による公示に係る登録の申請について、取下げ、第十三条第一項の規定により登録を拒否する処分又は登録があった後は、この限りでない。

(学識経験者の意見の聴取)
第十一条
 農林水産大臣は、第九条第一項に規定する期間が満了したときは、農林水産省令で定めるところにより、登録の申請が第十三条第一項第二号から第四号までに掲げる場合に該当するかどうかについて、学識経験を有する者(以下この条において「学識経験者」という。)の意見を聴かなければならない。

 前項の場合において、農林水産大臣は、第九条第一項の規定により提出された意見書の内容を学識経験者に示さなければならない。

 第一項の規定により意見を求められた学識経験者は、必要があると認めるときは、登録の申請をした生産者団体又は第九条第一項の規定により意見書を提出した者その他の関係者から意見を聴くことができる。

 第一項の規定により意見を求められた学識経験者は、その意見を求められた事案に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならない。

(登録の実施)
第十二条
 農林水産大臣は、登録の申請があった場合(第八条第一項に規定する場合を除く。)において同条から前条までの規定による手続を終えたときは、次条第一項の規定により登録を拒否する場合を除き、登録をしなければならない。

 登録は、次に掲げる事項を特定農林水産物等登録簿に記載してするものとする。
 登録番号及び登録の年月日
 第七条第一項第二号から第八号までに掲げる事項
 第七条第一項第一号に掲げる事項

 農林水産大臣は、登録をしたときは、登録の申請をした生産者団体に対しその旨を通知するとともに、農林水産省令で定める事項を公示しなければならない。

(登録の拒否)
第十三条
 農林水産大臣は、次に掲げる場合には、登録を拒否しなければならない。
 生産者団体について次のいずれかに該当するとき。
 第二十二条第一項の規定により登録を取り消され、その取消しの日から二年を経過しないとき。
 その役員(法人でない生産者団体の代表者又は管理人を含む。において同じ。)のうちに、次のいずれかに該当する者があるとき。
(1)この法律の規定により刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から二年を経過しない者
(2)第二十二条第一項の規定により登録を取り消された生産者団体において、その取消しの日前三十日以内にその役員であった者であって、その取消しの日から二年を経過しない者
 生産行程管理業務について次のいずれかに該当するとき。
 第七条第二項の規定により同条第一項の申請書に添付された明細書に定められた同項第二号から第八号までに掲げる事項と当該申請書に記載されたこれらの事項とが異なるとき。
 生産行程管理業務規程で定める生産行程管理業務の方法が、当該生産者団体の構成員たる生産業者が行うその生産が明細書に適合して行われるようにすることを確保するために必要なものとして農林水産省令で定める基準に適合していないとき。
 生産者団体が生産行程管理業務を適確かつ円滑に実施するに足りる経理的基礎を有しないとき。
 生産行程管理業務の公正な実施を確保するため必要な体制が整備されていると認められないとき。
 登録の申請に係る農林水産物等(次号において「申請農林水産物等」という。)について次のいずれかに該当するとき。
 特定農林水産物等でないとき。
 その全部又は一部が登録に係る特定農林水産物等のいずれかに該当するとき。
 申請農林水産物等の名称について次のいずれかに該当するとき。
 普通名称であるとき、その他当該申請農林水産物等について第二条第二項各号に掲げる事項を特定することができない名称であるとき。
 次に掲げる登録商標と同一又は類似の名称であるとき。
(1)申請農林水産物等又はこれに類似する商品に係る登録商標
(2)申請農林水産物等又はこれに類似する商品に関する役務に係る登録商標

 前項(第四号ロに係る部分に限る。)の規定は、次の各号のいずれかに該当する生産者団体が同項第四号ロに規定する名称の農林水産物等について登録の申請をする場合には、適用しない。
 前項第四号ロに規定する登録商標に係る商標権者たる生産者団体(当該登録商標に係る商標権について専用使用権が設定されているときは、同号ロに規定する名称の農林水産物等についての登録をすることについて当該専用使用権の専用使用権者の承諾を得ている場合に限る。)
 前項第四号ロに規定する登録商標に係る商標権について専用使用権が設定されている場合における当該専用使用権の専用使用権者たる生産者団体(同号ロに規定する名称の農林水産物等についての登録をすることについて次に掲げる者の承諾を得ている場合に限る。)
 当該登録商標に係る商標権者
 当該生産者団体以外の当該専用使用権の専用使用権者
 前項第四号ロに規定する名称の農林水産物等についての登録をすることについて同号ロに規定する登録商標に係る商標権者の承諾を得ている生産者団体(当該登録商標に係る商標権について専用使用権が設定されているときは、当該農林水産物等についての登録をすることについて当該専用使用権の専用使用権者の承諾を得ている場合に限る。)

 農林水産大臣は、第一項の規定により登録を拒否したときは、登録の申請をした生産者団体に対し、その旨及びその理由を書面により通知しなければならない。

(特定農林水産物等登録簿の縦覧)
第十四条
 農林水産大臣は、特定農林水産物等登録簿を公衆の縦覧に供しなければならない。

(生産者団体を追加する変更の登録)
第十五条
 第六条の登録に係る特定農林水産物等について生産行程管理業務を行おうとする生産者団体(当該登録を受けた生産者団体を除く。)は、第十二条第二項第三号に掲げる事項に当該生産者団体に係る第七条第一項第一号に掲げる事項を追加する変更の登録を受けることができる。

 第七条から第九条まで及び第十一条から第十三条までの規定は、前項の変更の登録について準用する。この場合において、第七条第一項中「次に掲げる事項」とあるのは「第一号に掲げる事項、登録番号及び第九号に掲げる事項」と、第八条第一項中「前条第一項第一号から第八号までに掲げる事項」とあるのは「前条第一項第一号に掲げる事項、登録番号」と、第十一条第一項中「第十三条第一項第二号から第四号まで」とあるのは「第十三条第一項第二号及び第四号(イを除く。)」と、第十二条第一項中「同条から前条まで」とあるのは「同条、第九条及び前条」と、同条第二項中「次に」とあるのは「変更の年月日及び第三号に」と、第十三条第一項中「次に掲げる場合」とあるのは「第一号、第二号及び第四号(イを除く。)に掲げる場合」と、同項第二号イ中「これらの」とあるのは「登録番号に係る前条第二項第二号に掲げる」と読み替えるものとする。

(明細書の変更の登録)
第十六条
 登録生産者団体は、明細書の変更(第七条第一項第三号から第八号までに掲げる事項に係るものに限る。)をしようとするときは、変更の登録を受けなければならない。

 前項の場合において、第六条の登録に係る登録生産者団体が二以上あるときは、当該登録に係る全ての登録生産者団体は、共同して同項の変更の登録の申請をしなければならない。

 第七条第一項及び第二項、第八条、第九条並びに第十一条から第十三条までの規定(第一項の変更の登録に係る事項が農林水産省令で定める軽微なものである場合にあっては、第九条及び第十一条の規定を除く。)は、第一項の変更の登録について準用する。この場合において、第七条第一項中「次に掲げる事項」とあるのは「第一号に掲げる事項、登録番号及び第三号から第八号までに掲げる事項のうち変更に係るもの」と、第八条第一項中「前条第一項第一号から第八号までに掲げる事項」とあるのは「前条第一項第一号に掲げる事項、登録番号、同項第三号から第八号までに掲げる事項のうち変更に係るもの」と、第十二条第一項中「同条から前条まで」とあるのは第一項の変更の登録に係る事項が当該農林水産省令で定める軽微なものである場合以外の場合にあっては「同条、第九条及び前条」と、同項の変更の登録に係る事項が当該農林水産省令で定める軽微なものである場合にあっては「同条」と、同条第二項中「次に掲げる」とあるのは「変更の年月日及び変更に係る」と、第十三条第一項第二号イ中「同項第二号」とあるのは「同項第三号」と、「事項」とあるのは「事項のうち変更に係るもの」と読み替えるものとする。

(登録生産者団体の変更の届出等)
第十七条
 登録生産者団体は、当該登録生産者団体に係る第十二条第二項第三号に掲げる事項に変更があったときは、遅滞なく、その旨及びその年月日を農林水産大臣に届け出なければならない。

 農林水産大臣は、前項の規定による届出があったときは、当該届出に係る事項を特定農林水産物等登録簿に記載して、変更の登録をしなければならない。

 農林水産大臣は、前項の変更の登録をしたときは、その旨を公示しなければならない。

(生産行程管理業務規程の変更の届出)
第十八条
 登録生産者団体は、生産行程管理業務規程の変更をしようとするときは、あらかじめ、農林水産大臣に届け出なければならない。

(生産行程管理業務の休止の届出)
第十九条
 登録生産者団体は、生産行程管理業務を休止しようとするときは、あらかじめ、農林水産大臣に届け出なければならない。

(登録の失効)
第二十条
 次の各号のいずれかに該当する場合には、登録(当該登録に係る登録生産者団体が二以上ある場合にあっては、第十二条第二項第三号に掲げる事項のうち当該各号のいずれかに該当する登録生産者団体に係る部分に限る。以下この条において同じ。)は、その効力を失う。
 登録生産者団体が解散した場合においてその清算が結了したとき。
 登録生産者団体が生産行程管理業務を廃止したとき。

 前項の規定により登録がその効力を失ったときは、当該登録に係る登録生産者団体(同項第一号に掲げる場合にあっては、清算人)は、遅滞なく、効力を失った事由及びその年月日を農林水産大臣に届け出なければならない。

 農林水産大臣は、第一項の規定により登録がその効力を失ったときは、特定農林水産物等登録簿につき、その登録を消除しなければならない。

 農林水産大臣は、前項の規定により登録を消除したときは、その旨を公示しなければならない。

(措置命令)
第二十一条
 農林水産大臣は、次に掲げる場合には、登録生産者団体に対し、明細書又は生産行程管理業務規程の変更その他の必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
 その構成員たる生産業者が、第三条第二項若しくは第四条の規定に違反し、又は第五条の規定による命令に違反したとき。
 その明細書が第十二条第二項第二号に掲げる事項に適合していないとき。
 第十三条第一項第二号(イを除く。)に該当するに至ったとき。

(登録の取消し)
第二十二条
 農林水産大臣は、次に掲げる場合には、登録の全部又は一部を取り消すことができる。
 登録生産者団体が次のいずれかに該当するとき。
 生産者団体に該当しなくなったとき。
 第十三条第一項第一号ロ((1)に係る部分に限る。)に該当するに至ったとき。
 前条の規定による命令に違反したとき。
 不正の手段により第六条の登録又は第十五条第一項若しくは第十六条第一項の変更の登録を受けたとき。
 登録に係る特定農林水産物等が第十三条第一項第三号イに該当するに至ったとき。
 登録に係る特定農林水産物等の名称が第十三条第一項第四号イに該当するに至ったとき。
 第十三条第二項各号に規定する商標権者又は専用使用権者が同項各号に規定する承諾を撤回したとき。

 第八条、第九条及び第十一条の規定は、前項(第二号及び第三号に係る部分に限る。)の規定による登録の取消しについて準用する。この場合において、第八条第一項中「第十三条第一項(第一号に係る部分に限る。)の規定により登録を拒否する場合を除き、前条第一項第一号から第八号までに掲げる事項」とあるのは「登録番号、取消しをしようとする理由」と、同条第二項中「前条第一項の申請書並びに同条第二項第一号」とあるのは「前条第二項第一号」と、第十一条第一項中「第十三条第一項第二号から第四号まで」とあるのは「第二十二条第一項第二号及び第三号」と読み替えるものとする。

 農林水産大臣は、第一項の規定による登録の全部又は一部の取消しをしたときは、特定農林水産物等登録簿につき、その登録の全部又は一部を消除しなければならない。

 農林水産大臣は、前項の規定により登録の全部又は一部を消除したときは、その旨を、当該登録の取消しに係る登録生産者団体に通知するとともに、公示しなければならない。

第四章 雑則
(公示の方法)
第二十三条
 この法律の規定による公示は、インターネットの利用その他の適切な方法により行うものとする。

 前項の公示に関し必要な事項は、農林水産省令で定める。

(報告及び立入検査)
第二十四条
 農林水産大臣は、この法律の施行に必要な限度において、登録生産者団体、生産業者その他の関係者に対し、その業務に関し必要な報告を求め、又はその職員に、これらの者の事務所、事業所、倉庫、ほ場、工場その他の場所に立ち入り、業務の状況若しくは農林水産物等、その原料、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。

 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人にこれを提示しなければならない。

 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

(農林水産大臣に対する申出)
第二十五条
 何人も、第三条第二項又は第四条の規定に違反する事実があると思料する場合には、農林水産省令で定める手続に従い、その旨を農林水産大臣に申し出て適切な措置をとるべきことを求めることができる。

 農林水産大臣は、前項の規定による申出があったときは、必要な調査を行い、その申出の内容が事実であると認めるときは、第五条又は第二十一条に規定する措置その他の適切な措置をとらなければならない。

(権限の委任)
第二十六条
 この法律に規定する農林水産大臣の権限は、農林水産省令で定めるところにより、その一部を地方支分部局の長に委任することができる。

(農林水産省令への委任)
第二十七条
 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のための手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、農林水産省令で定める。

第五章 罰則
第二十八条
 第五条(第一号に係る部分に限る。)の規定による命令に違反した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

第二十九条 第五条(第一号に係る部分を除く。)の規定による命令に違反した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。

第三十条 第十一条第四項(第十五条第二項、第十六条第三項及び第二十二条第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反した者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

第三十一条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
 第十七条第一項又は第二十条第二項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
 第十八条の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をして生産行程管理業務規程の変更をした者
 第十九条の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をして生産行程管理業務の休止をした者
 第二十四条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者

第三十二条 法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。以下この項において同じ。)の代表者若しくは管理人又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
 第二十八条三億円以下の罰金刑
 第二十九条一億円以下の罰金刑
 前条同条の罰金刑

 法人でない団体について前項の規定の適用がある場合には、その代表者又は管理人が、その訴訟行為につきその法人でない団体を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。

附則
(施行期日)
第一条
 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
 ただし、附則第六条の規定は、公布の日から施行する。

(検討)
第二条
 政府は、この法律の施行後十年以内に、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

(調整規定)
第三条
 この法律の施行の日が食品表示法(平成二十五年法律第七十号)の施行の日前である場合には、同日の前日までの間における第三条第二項の規定の適用については、同項中「農林物資の規格化等に関する法律」とあるのは、「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律」とする。

(商標法の一部改正)
第四条
 商標法の一部を次のように改正する。
 第二十六条に次の一項を加える。
3 商標権の効力は、次に掲げる行為には、及ばない。ただし、その行為が不正競争の目的でされない場合に限る。
一 特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(平成二十六年法律第号。以下この項において「特定農林水産物等名称保護法」という。)第三条第一項の規定により商品又は商品の包装に特定農林水産物等名称保護法第二条第三項に規定する地理的表示(以下この項において「地理的表示」という。)を付する行為
二 特定農林水産物等名称保護法第三条第一項の規定により商品又は商品の包装に地理的表示を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為
三 特定農林水産物等名称保護法第三条第一項の規定により商品に関する送り状に地理的表示を付して展示する行為

(登録免許税法の一部改正)
第五条
 登録免許税法(昭和四十二年法律第三十五号)の一部を次のように改正する。
 別表第一第八十七号の次に次のように加える。
八十七の二 登録生産者団体の登録又は変更の登録
−特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(平成二十六年法律第号)第六条(特定農林水産物等の登録)の登録生産者団体の登録又は同法第十五条第一項(生産者団体を追加する変更の登録)の変更の登録
−登録件数
−一件につき九万円

(政令への委任)
第六条
 附則第三条に定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定める。

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