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2011年12月30日 (金)

第262回:2011年の落ち穂拾い

 今年も最後に、あまり書く機会のなかった特許の話などを中心に少し落ち穂拾いをしておきたいと思う。

 今年、東日本大震災後のドサクサ紛れにDRM回避規制の強化を含む不正競争防止法改正案やウィルス関連罪を含む刑法改正案が国会を通されたのは残念だったが、この不正競争防止法改正と同時に特許法の改正も国会を通っている。

 この特許法の改正は、去年12月のパブコメに対応するもので(第245回参照)、特許庁のHPや経産省のHPに解説が載っているが、主に以下のような項目を含んでいる。

  • ライセンスの登録をしなくても第三者に対抗できることとする、当然対抗制度の導入
  • 冒認出願時に真の発明者が特許権を自らに返還請求できる救済制度の導入
  • 発明者により公表された場合であれば、公表態様を問わず、発明が公になった後でも特許権を取得し得ることとする、発明の新規性喪失の例外規定の見直し
  • 審決取消訴訟提起後の訂正審判の請求の禁止
  • 特許権侵害訴訟の判決確定後に特許の無効審決が確定した場合の再審の制限
  • 請求項ごとに特許権の有効性を判断する、審決の確定の範囲に関する規定の整備
  • 無効審判の確定審決の第三者効の廃止
  • 出願書類の翻訳文提出や特許料等追納の期間徒過に対する救済要件の緩和
  • 商標権消滅後1年間の登録排除規定の廃止
  • 各種料金の引き下げ・減免制度の拡充

 制度ユーザーにしか関係ない話なので、法的な問題点も含め細かな説明をここですることはしないが、来年4月1日を施行日とする(特許庁のリリース参照)、この法改正は実務的には非常に重要である。

 特許法に関しては、今年、他にも、出願審査請求料の値下げ(特許庁のリリース参照)、特許庁の運用を否定する最高裁判決を受けた、特許権の存続期間の延長に関する審査基準の変更などもされている(特許庁のリリース参照)。

 また、他の法律に関して言えば、特許庁の産業構造審議会知的財産政策部会の意匠制度小委員会が、この12月20日に検討を再開している。その配付資料意匠制度の見直し項目(pdf)によれば、ヘーグ協定ジュネーブアクト加盟に向けた対応、3Dデジタルデザインを含む保護対象の拡大、図面提出要件の緩和及び多様化、複数意匠一出願制度・複数物品指定制度の導入、新規性喪失の例外規定の見直しなどが今後検討されて行くようだが、中でも、コンピュータディスプレイ上のアイコンなどの単なる画像まで不必要に意匠法の保護対象にしかねない、画面(2次元)デザインに関する保護対象の拡大に関する検討は要注意である。

 商標制度小委員会はまだ動き出していないようだが、音の商標の導入に関する検討を再開するという報道もあったので、意匠・商標に関する検討を中心に来年は特許庁の動きも気をつけておいた方が良いだろう。

 相変わらず迷走しているが、今年も、文化庁では、文化審議会著作権分科会法制問題小委員会国際小委員会電子書籍の流通と利用の円滑化に関する検討会議が開催されている。文化庁の検討は今のところ迷走しているだけでどうにもなっていないが、来年はダウンロード犯罪化法案やTPPの検討も本格化するだろうし、保護期間延長問題などで合わせて文化庁が何を仕掛けて来るかは大いに注意して行かなければならない。著作権法に関しては、今現在どうなっているのか良く分からない日本版骨抜きフェアユースの行方なども気になる点である。

 マニアックな話だが、農林水産省の農業資材審議会の種苗分科会では、種苗法上の重要な形質の見直しなどが検討されている(12月22日の第11回配布資料参照)。

 また、知財本部では、コンテンツ強化専門調査会知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会が開催されており、関係府省からのヒアリングなどが行われているので、関心のある方はリンク先をご覧頂ければと思う。個人的には知財本部の存在意義自体もうないのではないかと思っているが、例年通り1月か2月に来年の知財計画のためのパブコメが募集されるようであれば今年も出すつもりでいる。

 表現規制問題に目を向ければ、やはり今年は、実質検閲に他ならない児童ポルノサイトブロッキングが自主規制と称しながら警察主導で導入されるなど(インターネットコンテンツセーフティ協会のHP参照)、問題点を全て無視する形で、大阪府で子どもの性的虐待の記録という概念を勝手に作った上でその所持等を規制する青少年健全育成条例(大阪府のHP参照)が通され、京都府で児童ポルノ単純所持規制条例(正式名称は、「児童ポルノの規制等に関する条例」)が通されるなど、およそロクでもない年だった。この7月に全面施行された都条例問題まだまだ尾を引くことだろうし(担当部長と課長が倉田潤氏と櫻井美香氏から樋口眞人氏と黒川浩一氏に変わる中(やはり警察庁からの出向者であることに変わりはないが)、東京都の当局もまだ実際の運用を考えあぐねていると見えるが)、その他細かな規制強化の動きは枚挙にいとまがなく、当分児童ポルノ規制・青少年条例関係の動きを中心に辛い日々が続きそうだが、問題の本質は次第に広まって来ていると思うし、表現規制問題についてもまだまだこれからである。

 来年改正が検討されそうな法律はちょっと考えるだけで、著作権法(ダウンロード犯罪化法案)、児童ポルノ規制法、不正アクセス禁止法、環太平洋経済連携協定(TPP)と極めて重いものが並んでいる。来年もハードな年になるのは間違いなく、到底良い年をと言う気にはならないが、政官業に巣くう全ての利権屋と非人道的な規制強化派に悪い年を。そして、このつたないブログを読んで下さっている全ての人に心からの感謝を。

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2011年12月25日 (日)

第261回:イギリスにおける権利制限関係の著作権法改正議論の進展

 この12月22日に日本の私的録音録画補償金裁判でメーカー側実質全面勝訴の高裁判決が出されたり(ITproの記事日経パソコンの記事参照)、アメリカではオンライン海賊対策法案の審議が続いていたりと(「P2Pとかその辺のお話」のブログ記事参照)、最近も話題に事欠かないが、これらの話はひとまず他にまかせ、ここでは、少しずつではあるが進展を見せているイギリスの権利制限関係の著作権法改正議論のことを取り上げる。

 この12月14日にイギリス知的財産庁が開始した著作権法改正に関する意見募集のリリースには、以下のように書かれている。

Government plans to improve UK's copyright laws

Proposals to modernise the copyright system and remove unnecessary barriers to growth were unveiled by the Government today.

The consultation, which follows up the recommendations in the Hargreaves Review of Intellectual Property and Growth, is part of a wider programme of work from government that includes action to tackle online infringement of copyright and to make sure the copyright system best encourages the creation and use of music, books, video and other copyright material.

The proposals include:

Creating an exception to allow limited acts of private copying - for example making it legal to copy a CD to an MP3 player. This move will bring copyright law into line with modern technology and the reasonable expectations of consumers.

Widening the exception for non-commercial research to allow data mining, enabling researchers to achieve new medical and scientific advances from existing research. Currently researchers cannot use some new computer techniques to read data from journal articles which they have already paid to access without specific permission from the copyright owners of each article.

Introducing an exception for parody and pastiche, to give comedians and other people the creative freedom to parody someone else's work without seeking permission from the copyright holder.

Establishing licensing and clearance procedures for `orphan works' (material with unknown copyright owners). This would open up a range of works that are currently locked away in libraries and museums and unavailable for consumer or research purposes.

Introducing provision for voluntary extended collective licensing schemes, which would make it simpler to get permission to use copyrighted works and help ensure rights owners are paid. These schemes would allow authorised collecting societies to license on behalf of all rights holders in a sector (except for those who choose to opt out).

Modernising other exceptions to copyright including those for education, quotation, and people with disabilities.

Minister for Intellectual Property Baroness Wilcox said:

"The Government is focused on boosting growth and some freeing up of existing copyright legislation can deliver real value to the UK economy without risking our excellent creative industries. We are encouraging businesses to come forward with thoughts and evidence on our proposals to help us achieve this.

"It's an exciting time for the development of intellectual property in the UK. We have already appointed Richard Hooper to run a feasibility study into a Digital Copyright Exchange and this consultation is the next step to ensure copyright legislation in the UK keeps up to date with emerging technologies and consumer demand."

The Government is encouraging responses to the consultation which will close on 21 March.

イギリス政府、著作権法の合理化計画を公表

著作権法制を合理化し、成長に対する不必要な障害を取り除くための提案が、今日政府から公表された。

本意見募集は、ハーグリーヴス報告書の提言を受けたものであり、オンラインにおける著作権侵害に対抗し、著作権法制が、音楽、本、動画等の著作物の創造と利用を最も良く促進することを確かなものとするための行動を含む、政府の広い作業計画の一部をなすものである。

この提案は、以下のことを含む:

私的複製の限定的行為を許容する例外の創設-例えば、CDからMP3プレーヤーへのコピーを合法化することなど。このことにより、著作権法は現代の技術と消費者の合理的期待とより合致したものとなる。

既存の研究から新たな医学的、科学的進展を作り出すことを研究者に可能とする、データマイニングを許容するための非商業的研究のための例外の拡充。現行法の下では、それぞれの記事の著作権者からの特別な許諾なしに、既にアクセスのために支払いをしている刊行物の記事からデータを新しいコンピュータ技術を用いて研究者が読み取ることはできない。

著作権者の許諾を求めることなく他人の作品をパロディ化する創造的自由を、喜劇作家他の人々に与えるための、パロディとパスティーシュのための例外の導入。

「孤児作品」(著作権者不明の著作物)のためのライセンス及びクリアランス手続きの確立。このことにより、現行法の下では、図書館及び博物館で秘蔵され、消費者あるいは研究者に入手不能となっている作品のある程度を開くことができる

著作物の利用許諾を得ることを容易とし、権利者への支払いを確かなものとする助けとなるであろう、自主的な集合ライセンスの仕組みの拡充のための規定の導入。この仕組みは、認可を受けた著作権管理団体に(オプト・アウトを選んだ者を除き)あるジャンルの全権利者の代表としてライセンスを行うことを許すものである。

教育、引用及び障害者のための例外等、他の著作権法上の例外の合理化。

バロネス・ウィルコックス知的財産担当大臣は、以下のように述べている:

「イギリス政府は成長の促進に注力しており、現行の著作権法からの解放は、私たちの素晴らしい創造的産業を危険に晒すことなく、イギリスの経済に真の価値をもたらすであろう。このことの達成に力を貸し、見解と証拠をもってこの提案に前向きに取り組んでくれるよう、私たちは産業界に促している。

今は、イギリスにおける知的財産の発展にとって刺激的な時である。私たちは、デジタル著作権取引所について具体的な検討の実行のためにリチャード・フーパーを指名しており、この意見募集は、イギリスにおける著作権法を最新の技術及び消費者の要求と合わせ続けるための次のステップである。」

イギリス政府は、3月21日を〆切とするこの意見募集に対して積極的な意見提出を求めている。

 このリリースだけでも大体のことは分かると思うが、同時に公表された意見募集用資料(pdf)の内容から、イギリス政府が考えている著作権法改正の主なポイントをあげると以下のようになる。

  • 十分な調査をした後、権利者団体あるいは著作権裁判所などの公的機関の許可により、孤児作品を使えるようにすること。
  • 特定の条件を満たす時、著作権団体が、オプトアウト方式で、その所属メンバーだけでなく、あるジャンル全体の代表としてライセンスを与えられるとすること。
  • 著作権団体の規約の最低基準を設定し、遵守しなかった場合に罰を科せるようにすること。
  • 個人利用のための私的複製の例外の導入。
  • 映像や音楽作品も含め複数の保存用コピーが作れるようにし、図書館だけでなく博物館などでも保存用のコピーを作れるようにする、図書館などのための例外の拡充。
  • 全てのメディアをカバーするよう、研究及び私的勉強のための例外の拡充。また、同施設内での研究及び私的勉強のための著作物の電気通信のための例外の導入。
  • 非商業的な研究のためのデータマイニングを目的とした、著作物全体の複製の可能化。
  • パロディ、カリカチュア及びパスティーシュのための例外の導入。
  • 映像や音楽作品も含め、より広い技術で複製が作れるようにし、複製可能な部分の割合を増やし、遠隔教育もカバーできるようにし、教育機関の定義も広げる、教育のための例外の拡充。
  • 障害者の定義を広げ、映像なども含めるようにする、障害者のための例外の拡充。
  • EU指令に合わせる形で、批評以外の目的での引用もカバーできるようにする、批評のための例外の拡充。
  • 関係資料をオンラインで公開できるようにする、行政のための例外の拡充。

 この新たな意見募集は今年5月のハーグリーヴス報告書の提言を受けたもので(イギリス知的財産庁のHP参照)、多くの重要な論点を含んでおり、意見募集用資料で、より一般的な形でのフェアディーリング規定の導入も検討の選択肢として書かれていることも注目に値するが、私が中でも特に注目しているのは、私的複製の権利制限とパロディの権利制限の導入の提案である。

 まず、私的複製の権利制限については、資料の第61ページから書かれているが、特に、第65ページで、以下のように、その多くの問題点を正しく指摘し、私的録音録画補償金を導入しないという方針が明確にされているのは高く評価するに値する。

Private copying levies

EU law permits exceptions for private copying, but requires that if such an exception causes economic harm to copyright owners, then compensation should be provided to them. With this in mind, many EU countries that have wide private copying exceptions have introduced levy systems - charges on certain digital media and devices that enable copying, such as blank DVDs, scanners and computers.

Levies vary considerably between EU states. They are applied to different media and devices at different rates, and appear to bear little relation to the actual harm caused by private copying. In Sweden, a 64GB iPod attracts a 19 euro levy compared with a 1.42 levy in Latvia. There is also inconsistency in the application of levies to different copying devices. For example, only four EU states extend a levy to personal computers and twelve states extend a levy to printers, whereas most apply levies to blank CDs. Most of the cost of levies is borne by consumers through higher prices.

There is evidence that levies are inefficient and inexact methods of compensating copyright owners, and that they distort markets. They also mean that consumers can end up having to pay twice for the right to copy content - once through the price of content when they buy it, and again via a levy when they buy a copying device. Consumers also have to pay levies if they intend to only store content they have generated themselves - for example copying home videos to blank DVDs.
In view of these problems, the Government does not intend to in troduce a private copying levy. To avoid having to implement a system of compensation, we will therefore need to ensure that any harm caused to copyright owners as a result of a private copying exception is kept to a bare minimum .

私的複製補償金

EU法は私的複製のための例外を認めているが、例外が著作権者に経済的害をもたらすようであれば、権利者に補償がなされることを求めている。このことに留意して、私的複製のための広い例外を設けているEU各国の多くは、補償金制度を導入し-空DVDやスキャナー、コンピュータといった、いくつかのデジタル媒体や機器に課金している。

補償金制度はEU各国で大幅に違う。補償金は、異なる媒体と機器に異なる料率で課され、私的複製によってもたらされる現実の害とほとんど関係がないように見える。スウェーデンで、64GBのiPODは19ユーロの補償金を課されるが、これに対し、ラトビアでは1.42ユーロである。様々な複製機器に対する補償金の賦課も一貫性に欠ける。例えば、EU加盟国の内、ほとんどが空CDに補償金を課しているものの、4カ国だけが補償金をPCにも課し、12カ国が補償金をプリンターにも拡大しているという状態である。値段の上昇によって、補償金のコストのほとんどは消費者により負担されている。

補償金が非効率で不正確な権利者への補償の方法であることは明らかである。このことについて、-一度はコンテンツを購入した時の支払いにより、二度目に複製機器を買う時に補償金を通じて-コンテンツを複製する権利に対する消費者の二重払いになり得るということも言われている。自ら作成したコンテンツの保存-例えば、ホームビデオを空DVDに複製するといったような-のみを目的としていたとしても、消費者は補償金を支払うことになる。このような問題に照らし、イギリス政府は、私的複製補償金制度を導入しようとは思わない。したがって、補償制度の導入を避けるべく、私たちは、私的複製の例外によって著作権者にもたらされる害が最小限に留められるようにしなければならないであろう。

 私的複製の権利制限すなわち補償金ではあり得ないのはこのブログではさんざん繰り返して来たことなので、ここでさらにくどくどと言葉を重ねることはしないが、補償金を巡って欧州大陸で繰り広げられている不毛な争いを見てうんざりしているのか、イギリスが私的複製の権利制限を導入しようとしながら欧州各国の二の轍を踏まないように補償金制度の導入を回避しようとしていることは、補償金を巡る世界動向の中で大いに注目すべき1つの動きに違いない。

 そして、技術的保護手段と私的複製の関係を記載している第69ページの以下の部分も興味深い。

Technological protection measures

7.53 As noted above, the Government is able to intervene in cases where an individual cannot use an existing exception due to Digital Rights Management (DRM) or other technological protection measures, to ensure that they are able to exercise the exception. These powers could be extended to apply to the private copying exception.

7.54 The EU Copyright Directive permits us to extend these provisions to allow the Government to intervene when an individual is unable to copy a work for private use, but only in certain circumstances. Such provisions cannot apply to ondemand services, and cannot prevent copyright owners restricting the number of copies that can be made by users of a private copying exception.

7.55 Extending these powers to cover a private copying exception is likely to deliver greater benefits to consumers. Reasonable technological measures that allow consumers to access services at a time and place chosen by them will be unaffected, but individuals will be able to challenge measures that are unduly restrictive and prevent them realising the full benefits of a private copying exception. In view of these potential benefits, we propose to extend these provisions to cover a private copying exception when it is introduced.

技術的保護手段

7.53 上記のように、著作権保護技術(DRM)あるいは他の技術的保護手段のお陰で個人が存在している例外を利用することができない場合に、例外を行使することができるようにするため、政府が介入することはあって良い。この権限は、私的複製にも適用され得るものである。

7.54 個人が著作物を私的利用のためにコピーできない場合に政府が介入することが許されるよう、このような定めを押し進めることは、EU著作権指令上も許されているが、条件もある。これらのような規定は、オンデマンドサービスには提起用され得ず、利用者が私的複製の例外から作ることができるコピーの数を著作権者が制限することを排除することもできない。

7.55 このような権限を私的複製の例外までカバーするように押し進めることは、より大きな利便性を消費者に与えるように思われる。消費者が自ら選んだ時と場所においてサービスにアクセスできるようにする合理的な技術的手段に影響を与えることはなく、私的複製の例外から全ての利便性を引きだそうとすることを阻害する、不当に制限的な手段に対抗することを個人に可能とすることであろう。このような潜在的な利便性の向上のために、私たちはこのような定めを、それが導入された場合に私的複製の例外まで及ぼすことを提案する。

 技術的保護手段によって私的複製の権利制限が逆に制限され得るという問題は、今後、さらに大きなものとして認識が深められて行くことと思うが、ここで、消費者の利便性と権利者の保護のバランスの問題点を正しく認識し、著作権保護技術(DRM)に対して私的複製が優越し得ることを提案しているのは非常に興味深いことである。

 さらに、この資料では、DRMとの関係だけではなく、契約と権利制限の関係についても、第119ページに以下のように書かれている。

7.248 Consistent with its commitment to better regulation, the Government is exploring whether a non-regulatory approach could deliver its policy objectives in this area. However, given the wide range of users and owners of copyright works affected by contracts, it appears unlikely at present that cross-sectoral agreement to preserve the full operation of copyright exceptions will be either achievable or sufficient.

7.249 The Government is, therefore, proposing to introduce a clause, applying to every exception provided by the Copyright Act, which would make clear that any contract term purporting to prohibit or restrict the use of an exception is unenforceable.

7.250 Some exceptions, including those for education and disabled people, explicitly permit licensing of the acts covered by them. The Government will separately consider the merits of these licensed exceptions. To the extent that they are preserved, any licensing scheme explicitly authorised by an exception will not be affected by the contract override clause.

7.248 規制をより良いものとするという責務に従い、政府は、この分野において非規制アプローチでその政策目的が達成されるかどうかについて検討している。しかしながら、契約によって広い範囲の利用者と著作物の権利者が影響を受けており、今のところ、著作権法上の例外を完全に実施可能なものとして維持する部門間の合意が、達成可能かあるいは十分であるようには見えない。

7.249 したがって、政府は、例外の利用を禁止又は制限することを目的とする契約条項が法的強制力を有さないことを明確にする条項を、著作権法によって規定される全ての例外に適用される条項として、導入することを提案する。

7.250 教育や障害者のためのものも含め、いくつかの例外は明示的にそれによってカバーされる行為のライセンスとなっている。政府は、これらのライセンス例外の利点について別々に検討する予定である。それらが維持される限りにおいて、例外によって認められる全てのライセンススキームは、契約によるオーバーライド条項によって影響を受けるべきではない。

 著作権法上の権利制限がDRMだけではなく契約によっても逆にオーバーライドされてしまうことがあり得るのは世の東西を問わず変わらないが、権利制限が設けられていることの趣旨に照らして考えれば、契約による権利制限のオーバーライドは適切でないことも多いだろう。権利制限の全てを強行規定とするべきかと言われれば必ずしもそうではないだろうが、この権利制限と契約の関係も今後さらに整理して行かなければならないものである。

  また、この資料は、それが表現の自由に関わる問題であることを正しく認識し、パロディの権利制限の導入を提言している点も非常にポイントが高い。

 イギリスのことは既に何度かこのブログでも取り上げており、さらに前の話をすれば、2006年にガワーズ報告書の公表、2008年にそれを受けた第1回の意見募集、2009年に第2回の意見募集(第207回参照)と、かなり前からイギリスは同じような検討をずっと続けており、今後どのタイミングで法案が提出されるのかも良く分からないが、今の方針のままきちんと法制化がなされれば、イギリスの著作権法はかなりマシになるだろう。

 ことある度にダウンロード違法化やストライクポリシーなどの抑圧的手段に関する動向ばかり大きく取り上げられるが、このような権利制限に関する動向も決して見過ごされてはならないものである。どこの国でも抑圧的手段の導入が利権団体の政治的圧力によって先にごり押しで通される中、権利制限に関するまともな議論がなかなか進まないのは残念でならないが、そもそもどのような形の法規制が本当に全国民を裨益するのかというところからきちんとした議論がなされることを私は常に願っている。

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2011年12月12日 (月)

第260回:ダウンロードは著作権法上合法のままであるべきとするスイス政府の報告書

 自公がダウンロード犯罪化法案を次期通常国会に提出する方針というロクでもないニュースもある中(時事通信のネット記事参照)、スイス政府が、さらなる著作権規制の強化をしないこととする報告書をまとめたということが話題になっているので、今回は、このスイスの話を紹介しておきたいと思う。

 まず、スイスの法務・警察省の2011年11月30日のリリースには、以下のように書かれている。(いつも通り、以下の翻訳は拙訳。)

Urheberrechtsverletzungen im Internet: Der bestehende rechtliche Rahmen genugt

Bern. Das Internet hat die Nutzung von Musik, Filmen und Computerspielen fundamental verandert. Auf das kulturelle Schaffen wirkt sich dies voraussichtlich aber nicht nachteilig aus. Und der rechtliche Rahmen ermoglicht es, unerlaubten Werknutzungen angemessen entgegen zu treten. Gesetzgeberischer Handlungsbedarf besteht also nicht. Zu diesen Schlussen kommt der Bundesrat in einem Bericht, den er am Mittwoch verabschiedet hat.

Der Bericht erfullt ein Postulat aus dem Standerat vom 19. Marz 2010. Der Bundesrat wurde darin beauftragt, zu prufen, ob Massnahmen gegen Urheberrechtsverletzungen notwendig sind. Die Hersteller der betroffenen Produkte hatten zuvor uber einen Ruckgang ihrer Einnahmen geklagt. Der Standerat sorgte sich, diese Entwicklung konnte ein Anzeichen fur eine aufkommende Krise im Schweizerischen Kulturschaffen sein.

Der Bericht zeichnet ein Bild der aktuellen Lage. Demnach legen bestehende Untersuchungen zum einen nahe, dass in der Schweiz bis zu einem Drittel der uber 15-Jahrigen Musik, Filme und Spiele herunterladen, ohne dafur zu bezahlen. Zum anderen scheint trotz zahlreichen Medienberichten und Aufklarungskampagnen eine Mehrheit der Internetnutzer nach wie vor nicht zu wissen, welche Angebote rechtlich zulassig bzw. unzulassig sind.

Der prozentuale Anteil am verfugbaren Einkommen, der fur den Konsum in diesem Bereich ausgegeben wird, bleibt konstant. Allerdings sind innerhalb dieses Budgets Verschiebungen festzustellen. So geben die Konsumentinnen und Konsumenten die Mittel, welche sie durch die Tauschborsennutzung einsparen, auch im Unterhaltungssektor wieder aus. Der frei werdende Teil wird statt in Musik- oder Filmkonserven in Konzerte, Kinobesuche und Merchandising investiert.

Von dieser Entwicklung sind vor allem die grossen auslandischen Produktionsfirmen betroffen. Sie mussen sich an das veranderte Konsumentenverhalten anpassen. Die Befurchtungen, die Entwicklung konnte sich nachteilig auf das nationale Kulturschaffen auswirken, bleiben wegen der skizzierten Verschiebungen unbegrundet. Aus diesen Grunden kommt der Bundesrat zum Schluss, dass kein gesetzgeberischer Handlungsbedarf besteht.

インターネットにおける著作権侵害:現行法により対処可能

 インターネットは、音楽、映画、コンピュータゲームの利用を根本的に変えた。しかし、このことが文化的な創造に対して与える影響は不利なものではないとも予想され、現行法によっても違法な著作物の利用に適切に対処することが可能である。すなわち、法改正の必要はない。政府はその報告においてこの水曜にそのような結論に達した。

 本報告は、2010年3月19日の全州議会の要請からなされたものである。スイス政府は、それにより、著作権侵害に対する新たな対策が必要か否かの検討を委ねられた。著作物の製作者らは、その前にその収入減を訴えていた。全州議会は、この変化がスイスの文化的創造に危機をもたらすことになるのではないかということを懸念していた。

 本報告は、現在の状況を示している。つまり、存在している様々な調査から、スイスにおいて、15歳以上の三分の一程度までの者が、支払うことなく、音楽、映画及びゲームをダウンロードしているということが分かる。他にも、多くのメディアの記事や宣伝キャンペーンにもかかわらず、インターネットユーザーの多くがどのサービスが適法でどのサービスが違法なのかを知らないということも見られる。

 可処分所得のうち、この分野に消費者が出す部分のパーセンテージは変わらない。しかしながら、この予算の中の変動はある。つまり、ファイル共有によって節約した資金を、消費者はその娯楽にまた支出するのであり、このことによって浮いた部分は、音楽や映画の保存媒体ではなく、コンサートや映画館や娯楽商品に投資されることになるのである。

 この変化に関係して来るのは、何よりもまず多くの外国の大映画会社である。彼らは自らこの変化する消費者行動に適応しなければならない。この変化が国家の文化的創造に不利な影響を与え得るという懸念には、ここに概略を示した変動に照らしても根拠がない。このような理由から、法改正の必要はないという結論にスイス政府は達した。

 このプレスリリースの文章だけでも大体のことは分かると思うが、ここでは、さらに、スイス連邦政府の報告書(pdf)から、法改正の是非について検討している最後の部分を訳出しておく。

5. Vorgehensmoglichkeiten

Ungeachtet des Umstandes, dass sich gesamtwirtschaftliche Nachteile durch die unerlaubte Nutzung von Werken uber das Internet nicht eindeutig nachweisen lassen, werden unter dem Eindruck des unbestritten betrachtlichen Ausmasses der unerlaubten Verbreitung geschutzter Werke uber das Internet verschiedene Moglichkeiten gesetzgeberischen Handelns propagiert. In einer ersten Phase stand vor allem die individuelle Durchsetzung auf der Grundlage ausschliesslicher Rechte gegen die einzelnen Verletzer im Mittelpunkt. Die Zahl von Rechtsverletzern hat sich als zu gross erwiesen, als dass eine effektive Rechtsdurchsetzung ausschliesslicher Rechte gegen die einzelnen Verletzer noch moglich ware. Zudem ergeben sich Vorbehalte aus datenschutzrechtlichen Uberlegungen (vgl. BGE 136 II 508 "Logistep"). Der Gesetzgeber hat sich deshalb in der am 1. Juli 2008 in Kraft getretenen Teil-revision des Urheberrechtsgesetzes explizit dafur ausgesprochen, die Nutzung unlizenzierter Angebote nicht zu verbieten, d.h. nicht von der Eigengebrauchsschranke in Art. 19 URG auszunehmen. Ein Zuruckkommen auf diesen gesetzgeberischen Entscheid erscheint deshalb nicht geeignet, hier Abhilfe zu schaffen.

Ahnliche Vorbehalte ergeben sich beim Ansatz, Verletzer abzumahnen und im Wiederholungsfall vom Internet auszuschliessen. Die in Frankreich mit der Durchsetzung einer solchen Losung betraute "Haute Autorite pour la diffusion des oeuvres et la protection des droits sur Internet" (Hadopi) vermeldet zwar erste Erfolge, es ist indessen offen, welche Wirkungen die Abmahnungen langerfristig erzielen werden. Bei objektiver Betrachtung scheint dieser Ansatz eher wirkungslos geblieben zu sein.

Dieses "three strikes and you're out" oder "graduated response" genannte Schema erfordert einen betrachtlichen Verwaltungsaufwand. Die jahrlichen Betriebskosten der in Frankreich mit der Durchsetzung betrauten Hadopi belaufen sich gemass Budget 2011 des franzosischen Ministeriums fur Kultur und Kommunikation auf 12 Millionen EUR. Schliesslich ergeben sich Bedenken bezuglich der Vereinbarkeit des franzosischen Ansatzes mit bestehenden internationalen Verpflichtungen. Ein Report zu Handen des Menschenrechtsrats der UNO beurteilte eine Internetzugangssperre als Verletzung von Art. 19 Abs. 3 des Internationalen Pakts uber burgerliche und politische Rechte.

Die jungste Diskussion uber mogliche repressive Massnahmen konzentrierte sich auf eine Einbindung der Internetdiensteanbieter (ISPs), ihrer einzigartigen Stellung bei der Kontrolle des Zugangs zum Internet wegen. Die Einbindung der ISPs bei der Bekampfung der Piraterie wurde auch in den Verhandlungen der Schweiz mit Australien, der Europaische Union, Japan, Kanada, Korea, Marokko, Mexico, Neuseeland, Singapur und den Vereinigten Staaten zu ACTA thematisiert. Dabei zeigte sich, dass es selbst unter gleichgesinnten Staaten nicht moglich ist, einen weitergehenden Konsens zu finden als die Zusage, eine allfallige Zusammenarbeit zwischen den ISPs und den Rechteinhabern zu fordern. Die Zusage enthalt gleichzeitig die Ermahnung, dass dabei der rechtmassige Wettbewerb zu schutzen sei sowie grundlegende Prinzipien wie das Recht auf freie Meinungsausserung, auf faire Gerichtsverfahren und die Achtung der Privatsphare zu beachten seien. Das zeigt das grundsatzliche Unbehagen der Verhandlungsteilnehmer gegenuber solchen Losungen. Gegen Internetsperren, die durch ISPs verhangt werden, sind vergleichbare Vorbehalte wie gegenuber dem "three strikes"-Ansatz anzubringen. Sie sind kaum mit dem Recht auf freie Meinungsausserung vereinbar. Die Problematik wird durch den Umstand verstarkt, dass die Sperre in diesem Fall nicht von einer gerichtlichen Behorde, sondern von einem privaten Unternehmen verhangt wird. Als Alternative wird der Einsatz von Filtertechnologien erwahnt. Dabei ergeben sich aber wiederum Vorbehalte in datenschutzrechtlicher Hinsicht und es wird zudem befurchtet, dass sie die Verbindungsgeschwindigkeit erheblich beeintrachtigen konnten. Auch dieser Ansatz scheint in praktischer Hinsicht gegenwartig wenig erfolgversprechend.

Tatsachlich sind Zweifel angebracht, ob mit repressiven Massnahmen eine Eindammung der Urheberrechtsverletzungen erreicht werden kann. Die praventive Wirkung und damit Lenkungsfahigkeit von Rechtsnormen hangt wesentlich von der Chance ab, dass sowohl die Tat als auch der Tater entdeckt und verfolgt werden. Angesichts des Ausmasses der Rechtsverletzungen stosst aber deren Verfolgung aufgrund der beschrankten Kapazitat der Strafverfolgungsbehorden an Grenzen. Die Steuerung durch in der Gesellschaft allgemein anerkannte sittliche, religiose, politische oder soziale Rechts- oder Wertvorstellungen und durch sozialen Druck ist starker als die Motivation seitens des unvollstandig bekannten und emotionell weit entfernten Rechts. Personen orientieren sich vor allem an ihren Bezugsgruppen und damit an den in ihrem taglichen Lebenskreis geltenden Regeln. Hieraus ergibt sich ein zusatzliches Hindernis, denn das Urheberrecht wird inzwischen dermassen stark als Hindernis fur den Zugang zur Kultur empfunden und dessen Legitimitat in einem Ausmass angezweifelt, dass die Piratenpartei die Befreiung der Kultur vom Urheberrecht gar als Punkt in ihr Parteiprogramm aufgenommen hat.

Wahrend weite Kreise, trotz der starken Zweifel an den Erfolgschancen, an einer repressiven Losung festhalten, gibt es auch Stimmen, die sich fur einen permissiven Ansatz stark machen. Als die Fotokopierer und Tonbandgerate die Hurden fur das private Vervielfaltigen faktisch beseitigten, hat der Gesetzgeber mit einer weitgehenden Lizenz dafur gesorgt, dass die Werknutzer aus der Illegalitat herausgefuhrt werden. Durch Verknupfung der Eigengebrauchsschranke mit der Fotokopier- und Leertragervergutung hat der Gesetzgeber im Gegenzug dafur gesorgt, dass den Interessen der Rechteinhaber ebenfalls Rechnung getragen wird. Indem der Gesetzgeber diese Regelung technisch neutral ausgestaltet hat, befin-den sich in der Schweiz bereits heute diejenigen Nutzer, die unerlaubt zuganglich gemachte Werke im personlichen Bereich und im Kreis von Personen, die unter sich eng verbunden sind, nutzen, nicht in der Illegalitat. Wenn diese Nutzung zu einer Vervielfaltigung auf einem Leertrager fuhrt, wird zudem auch der Rechteinhaber entschadigt.

Da das Internet nun auch die Barrieren fur das Verbreiten von Werken faktisch beseitigte, stellt sich die Frage, ob nicht analog der Vorgehensweise beim Kopieren, auch das nichtgewerbliche Zuganglichmachen von Werken uber das Internet durch das Gesetz erlaubt und mit einem Vergutungsanspruch, der sogenannten Flatrate, verbunden werden soll. Diese Losung hatte den Vorteil, dass vor allem Kinder und Jugendliche aus der Illegalitat herausgefuhrt werden und auch Nutzungen wie das Streaming, die unter dem geltenden System mangels Vervielfaltigung auf einen Leerdatentrager nicht zu Vergutungen fuhren, entschadigt wurden. Allerdings ergeben sich auch gegenuber einer Flatrate Vorbehalte. Zum einen ist die Akzeptanz einer solchen Flatrate fraglich. Die Motion "Copyright-Vergutungen fur Urheber statt fur Prozesse" und die Petition "STOP der SUISA-Gebuhr auf Leerdatentrager" zeigen, dass diese Systeme in der Bevolkerung zum Teil als ungerecht empfunden werden, da sie nur bei einer Gesamtbetrachtung zu einem gerechten Ausgleich fuhren, nicht aber zwingend im Einzelfall. Zum anderen ist fraglich, ob eine derart weitgehende gesetzliche Lizenz mit internationalen Verpflichtungen vereinbar ist. Das Recht, Werke uber das Internet zuganglich zu machen, wurde im WIPO-Urheberrechtsvertrag vom 20. Dezember 1996 (WCT) und im WIPO-Vertrag vom 20. Dezember 1996 uber Darbietungen und Tontrager (WPPT) als ausschliessliches Recht ausgestaltet. Die genannten Abkommen lassen zwar Beschrankungen und Ausnahmen zu, diese sind aber auf Sonderfalle zu beschranken, welche die normale Verwertung nicht beeintrachtigen. Eine generelle Erlaubnis der nichtgewerblichen Werkverbreitung fuhrt dazu, dass ein ausschliessliches Recht in einem Ausmass durch eine gesetzliche Lizenz ersetzt wird, das sich nicht mehr ohne weiteres als Sonderfall qualifizieren lasst. In diesem Zusammenhang ist auch zu bedenken, dass alternativ im Rahmen der Vertragsfreiheit von den Rechteinhabern ahnliche Modelle auch freiwillig vertraglich vereinbart werden konnen und insofern eine Intervention des Gesetzgebers nicht zwingend ist. Denkbar sind beispielsweise Vereinbarungen uber eine weitgehende Erlaubnis verbunden mit einer Flatrate der grossen Medienunternehmen und der Verwertungsgesellschaften mit Zugangsprovidern, welche den Abonnenten der betreffenden Provider die Nutzung ihrer Repertoires erlauben.

6. Schlussfolgerungen

Einerseits wird die technische Entwicklung, d.h. die Zunahme der Bandbreite des Internet und die Dichte der Anschlusse, insbesondere uber mobile Verbindungen weiter rasant zunehmen. Andererseits wird parallel dazu die Zahl der "Digital Natives", d.h. der Internetnutzer, die mit dieser Technologie aufgewachsen sind, ebenfalls steigen. Es ist daher anzunehmen, dass sich eine weitere Verlagerung des Marktes fur Unterhaltungsguter in den digitalen Bereich ergeben wird. Zudem kann davon ausgegangen werden, dass in diesem Zusammenhang durch die Nutzung unlizenzierter Angebote entstehende Einsparungen weiterhin im Unterhaltungssektor ausgegeben werden und sich der Schaden der Branche insgesamt als begrenzt erweist.

In Bezug auf die Bereitstellung neuer digitaler Inhalte gilt es zu beachten, dass sich die Anreize, neue Werke zu produzieren, unter neuen technischen Rahmenbedingungen verandern. Wenn ein neues Produkt zu quasi null Kosten vervielfaltigt und verbreitet werden kann und der Hersteller des Produktes eder eine Moglichkeit sieht, seine Investitionen zu amortisieren, noch einen Gewinn zu erzielen, so wird er auf die weitere Produktion verzichten oder versuchen, mittels weniger leicht kopierbaren Komplementargutern, in der Regel solcher physischer Natur (beispielsweise Merchandising), den entgangenen Umsatz fur das immaterielle Gut zu erwirtschaften. Solche Anpassungs- und Strukturveranderungsprozesse sind jedoch typisch fur Perioden, in welchen der technische Fortschritt eine alte durch eine neue Technik ersetzt.

Auf den Punkt gebracht wurde dies von einem Rechteinhaber im Rahmen der oben erwahnten IGE-Umfrage, der festhielt, dass das Problem eigentlich gar nicht neu sei, sondern bereits in den 70er Jahren bei den Buchern festzustellen war. Immer wenn eine neue Technologie auf den Markt gekommen sei, ob Xerox-Kopierer, VHS-Recorder, Handy oder Internet, sei diese missbraucht worden. Das sei nun mal der Preis, welcher fur den Fortschritt zu bezahlen sei. Gewinner werden dabei diejenigen sein, denen es gelingt, die neue Technik so einzusetzen, dass sie deren Vorteile auch kommerziell nutzen konnen, Verlierer diejenigen, welche diese Entwicklung verpassen und alte Businessmodelle weiterverfolgen. Insgesamt sind aber - zumindest fur die Schweiz - die Prognosen fur die drei in diesem Bericht untersuchten Bereiche Musik, Filme und Computerspiele insgesamt positiv.

Ein unmittelbarer gesetzgeberischer Handlungsbedarf ist somit nicht auszumachen. Es gilt aber, die technische Entwicklung wie auch die Diskussion auf internationaler Ebene aktiv mitzuverfolgen und die Situation periodisch einer Neubeurteilung zu unterziehen, um einen allfalligen Weiterentwicklungsbedarf des Urheberrechts zeitig zu erkennen und aktiv zu werden. Unverzichtbar ist indessen ein Weiterfuhren der Offentlichkeitsarbeit durch die Betroffenen und den Bund, um den geltenden Rechtsrahmen national bekannter zu machen.

5.対処の可能性について

 インターネット上での著作物の合法的な利用による経済全体に対する不利益がはっきりと示されていないという状況にもかかわらず、インターネット上で議論の余地なく相当の不正な著作物の頒布があるという印象から、様々な法的対処の可能性について喧伝されている。まず最初に来るのは、原則として排他的なものである権利を、問題となる個々の侵害者に対してそれぞれ行使することを可能とするというものである。しかし、個々の侵害に対して排他的権利を有効に行使しようにも、著作権侵害の数があまりにも多いことは明白である。それに加え、個人情報保護の問題も生じる(スイス最高裁「Logistep」事件判決(訳注:個人情報保護に照らしてP2PユーザーのIPアドレス収集は許されないとしたケース)参照)。そして、立法府は、2008年6月1日に施行した著作権法の一部改正において、正規ライセンスを受けていないサービスの利用を禁じることはないと、つまり、それは著作権法第19条の私的複製のための権利制限から除外されないとはっきり述べている。この立法府の決定までさかのぼり、ここでさらに変更を加えることは適切でないと思われる。

 侵害者に警告し再び行為を繰り返した時にインターネットから排除するという方法についても、同様の問題が生じる。フランスでこのような方策の遂行を委ねられている「ストライク機関」(Hadopi)は、確かに最初の成果について報告しており、その中で、警告によって長い時間をかけて教育できるという効果などをあげている。しかし、客観的に良く見れば、この方法はむしろ効果を上げていないように思われる。

 この「3ストライクアウト」あるいは「段階的対処」と呼ばれる仕組みは、相当の行政コストを必要とする。フランスでこの方策の遂行を委ねられたストライク機関の年間維持コストは、フランス文化通信省の2011年予算では、1200万ユーロになる。さらには、フランスの方法が既存の国際的義務と合致しない恐れもある。国連人権高等弁務官事務所の手になる報告は、インターネットアクセスの遮断を、市民的及び政治的権利に関する国際規約市民的及び政治的権利に関する国際規約第19条第3項違反と判断しているのである。

 最近の抑圧的な手段の可能性に関する議論は、そのインターネットアクセスのコントロールに対する独特な地位のために、インターネット・サービス・プロバイダー(ISP)の巻き込みに集中している。海賊対策におけるISPの巻き込みは、海賊版対策条約(ACTA)についてのスイスとオーストラリア、EU、日本、カナダ、韓国、モロッコ、メキシコ、ニュージーランド及びアメリカ合衆国との交渉でもテーマになった。そこで示されたのは、同じ考えを持った国々の間でも、ISPと権利者の間のあり得る協力を求めるという約束以上のコンセンサスを見出すことはできなかったということである。この約束は、合法な競争を保護し、表現の自由や裁判を受ける権利、私的領域の尊重のような基本的な原則を遵守しなければならないとする留意も含んでいる。このような方策に対しては、交渉参加国からも原則から来る反感が示されていた。ISPを通じて課されるインターネット遮断に対しては、「3ストライク」法に対するのと同様の留保が作られている。このようなネット切断は表現の自由に関する権利とほとんど合致しない。この問題は、この場合における切断が裁判所ではなく私企業によって課されるという状況では、さらに大きくなる。代替として、フィルタリング技術も言及されている。ここでもまた、個人情報保護の観点における問題があり、接続速度をかなり損なう恐れもある。このような方法は、実際的な見地からは、現在のところほとんど成功の見込みはない。

 実際のところ、抑圧的手段で著作権侵害を防ぐことができるかどうか疑問である。その予防的作用と法規範の運用可能性は、本質的に、行為並びに行為者が発見され、訴追され得るかどうかという可能性にかかっている。しかし、権利侵害の量から見て、その訴追は、訴追機関の能力が限定されていることから、限界にぶち当たる。社会において一般的に認められている、思想に関する、信仰に関する、政治的若しくは社会的な、権利あるいは価値の表明による、又は、社会的圧力によるコントロールは、完全に知られておらず感情から遠ざけられている権利から来る動機づけより強い。人は、まず、自身の関係グループに、そこで日常的な生活圏で認められる規則に従って自らの方針を決める。そこからさらなる障害が出て来ている、つまり、海賊党が文化の著作権からの解放をその党の方針の要点に採用するまでに、著作権が文化へのアクセスに対する障害として強く感じられ、量から著作権法の正当性が疑われているのである。

 成功の見込みに対する強い疑いにもかかわらず、抑圧的な手段への固執が広い範囲で見られる中、寛容な方策を強めるべきであるという声も出て来ている。複写機及び録音機器が私的複製における障害を実質的に取り除いた時、立法者は、そのために広いライセンスを与えて、利用者を違法性から引き出した。私的複製の権利制限と複写機及び空媒体を結びつけることで、立法者は、対して、権利者の利益のために支払いがなされるようにも手当てした。ここにおいて、立法者としては、その法規則を技術的に中立に作り上げている、今現在、スイスで、利用者は、違法にアクセス可能とされた著作物を、私的領域において、及び自身と緊密な結び付きを有する人々の範囲で、違法でなく、利用することができるのである。空媒体に対してこのように複製利用がなされる場合、権利者は補償もされている。

 今やインターネットが著作物の頒布に対する障壁を実質的に取り除いたのであり、従来のコピーに対するアプローチとは異なるが、非商業的送信可能化も法律上許し、補償請求権、いわゆる補償金と結びつけてはどうかという質問が出て来る。このような解決策は、まず子供と青少年を違法性から引き出し、現行の法制下では空媒体への複製を欠き補償されることのない、ストリーミングのような利用についても補償ができるという利点がある。しかしながら、このような補償に対しても問題はある。1つは、このような補償の受け入れ可能性が疑問である。「裁判の替わりに著作権補償を」動議及び「空媒体に対するSUISAの料金徴収停止」請願が、この法制は国民の一部には不当なものと感じられており、全体から見てのみ正当なバランスをもたらすもので、そして個々のケースにおいて納得の行くものではないことを示している。他にも、このようなやり方によるさらなる法的ライセンスが国際的義務と合致しているかどうかが疑問である。インターネット上でアクセス可能とする権利は、1996年12月20日のWIPO著作権条約(WCT)並びに1996年12月20日の実演及びレコードに関するWIPO条約(WPPT)において、排他的権利とされている。上記の条約は、確かに制限と例外を許しているが、それは通常の利用に影響を及ぼさない特別な場合に限られるとされているのである。このような非商業的頒布の一般的な許諾は、排他的権利をかなりの量で法的ライセンスに置き換えることにつながり、あっさりと、もはや特別な場合と評価されるものでなくなる。この関係で、条約の自由の余地における代替案として、似たようなモデルに自発的な契約により権利者を結びつけることが可能であるということも考慮の余地があるが、この場合に立法による介入に納得性はない。例えば、関係するプロバイダーの契約者に、そのカタログの利用を許すというような、補償と結び付いた広範な許諾による、大メディア企業及び著作権団体とアクセスプロバイダーの連合も考慮の余地があるだろう。

6.結語

 一方では、技術的な発展が、つまり、ブロードバンドインターネット及びアクセス密度の増大が、特に携帯からの接続に関して、さらに劇的に伸びていくことだろう。他方では、それと並行して、「デジタルネイティブ」、つまり、このような技術とともに成長して来たインターネットユーザーの数が同じ様に増えて行く。したがって、デジタル分野における家計資産市場のさらなる拡大が見込まれると推測される。この関係で、正規ライセンスを受けていないサービスの利用により生じる節約は、この家計分野にまた支出されることになり、この分野における損害は全体として限定的なものとなることが示されると言い得るのである。

 新たなデジタルコンテンツの製作に関して、新たな作品を作り出すための刺激が新たな技術的条件の下で変わっているということにも注意しなければならない。新たな製品を半ばゼロコストで複製、頒布可能である場合、製品の製造者は、投資の回収の可能性がなく利益を生み出すこともないと見て、さらなる製造を断念するか、より簡単にコピーできない補完財によって、無体財産として逃した売り上げを経営的に手に入れようとするだろう。このような適応・構造変革プロセスは、技術的な進展により、新技術が旧技術を置き換える時代において典型的に見られるものである。

 この点について、前記のIGEアンケートにおける権利者の回答もあるが、そこで彼らは、この問題が本質的には全く新しいものではなく、既に70年代に本において認められたものであることを認めている。新たな技術が市場にもたらされた場合、ゼロックス複写機であろうと、VHS録画機であろうと、携帯電話であろうと、インターネットであろうと、常に濫用されるものである。これは、進歩に対して支払うべき代償であろう。その利点を商業的に使うことができるようにこの新たな技術を適用することに成功したものがそこにおける勝利者となり、この変化に乗り遅れ古いビジネスモデルをなお追求した者が敗北者となるのである。しかし、全体として-少なくともスイスにおいて-この報告において調査されている3つの分野、音楽、映画及びコンピュータゲームに対する見通しは全体として明るい。

 したがって、直接的な法改正の必要性は認められない。しかし、著作権法のさらなる展開の必要性を知り、積極的であるべく、技術の発展や国際的なレベルでの議論を積極的にフォローし、状況について定期的に新たな分析をすることは重要である。ここで、現行法を周知するために、関係者と連邦によるさらなる広報活動が必須である。

 同じくダウンロードの違法化をしていない国であり、人口の年齢構成、ネット普及率等を大体同じくするオランダの調査も引用し現状の分析をしている部分も興味深いので、関心のある方は、直接原文に当たってもらえればと思うが、このようにスイス政府がダウンロード違法化・犯罪化やストライクポリシーを否定し去る報告書を出したことは良いニュースであり、他の国の動向にも微妙に影響して来ることだろう。この報告書の結論にほとんど追加するべきことはないくらいで、これほどリベラルな報告書をスイス政府がまとめたことには正直私も驚いているくらいである。

 これで、スイスがダウンロードを違法化・犯罪化したり、ストライクポリシーを導入したりすることは当分なさそうだが、翻って極めて残念な状況にある日本ではどうかと考えると、いつも海外動向がどうこうと言いつのる日本の著作権団体やら何やらは、このような外国政府の報告書まで無視して来るだろうか。また例によって、今後の法改正の検討の中で彼らは、自分たちに都合の良いところだけ抜き出し、都合の悪い動きは無視を決め込んで恣意的に国際動向を作るつもりかも知れないが、このように非道極まるダウンロード違法化・犯罪化やストライクポリシーが世界的潮流になっているなどということはカケラもないということを私はここで今一度繰り返しておく。

(2011年12月12日夜の追記:誤訳が1箇所あったので修正し(「アナログ以外のコピー手法について」→「従来のコピーに対するアプローチとは異なるが」)、合わせ翻訳の文章に少し手を入れた。)

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