第236回:内閣府・第3次男女共同参画基本計画に盛り込むべき施策に関する提案募集に対する提出パブコメ
今現在、内閣府の男女共同参画局から8月31日〆切でかかっている、第3次男女共同参画基本計画に盛り込むべき施策に関する提案募集(内閣府の意見募集ページ参照)に対してパブコメを書いて提出したので、内容としては以前出した中間整理に対する提出パブコメとあまり変わりはないが、念のため、ここにも載せておく。
中間整理案と比べると、多少はマシになっているとは言え、「第3次男女共同参画基本計画策定に当たっての基本的な考え方(答申)」には問題はまだまだ多く残っている。直接読んで頂ければ分かると思うが、やはり、第9分野 女性に対するあらゆる暴力の根絶(pdf)と第13分野 メディアにおける男女共同参画の推進(pdf)の2つは、印象操作を多く含み、根拠なく児童ポルノ規制の強化や創作物規制の推進を唱道しているなど問題だらけである。
何故中間整理に対する意見募集の後で、こうも慌ただしくまたパブコメをかけるのだかさっぱり分からないが、折角の機会ではあるので、前回パブコメを出された方など、表現規制問題に関心のある方には今回も意見を出すことを検討することをお勧めしたい。
一緒に最近の話も少し紹介しておくと、8月23日に、文化庁で文化審議会著作権分科会の基本問題小委員会の最終会合が開かれ、報告書がとりまとめられている(日経パソコンの記事、文化庁HPの議事次第・資料参照)。報告書自体は大したことは書かれていないが、とりあえず文化庁がこの小委員会を使って有害無益な規制強化のごり押しを図ってこなかったのは良いことである。
また、8月24日には、内閣府の行政透明化検討チームも、とりまとめ案(pdf)(概要(pdf))をまとめている(共同通信の記事、行政透明化検討チームのHP参照)。この報告書は個人的には踏み込みの点で物足りないところもあるが、情報公開法の改正は地道に進めるべきなのは間違いなく、混沌とする政治情勢の中でどうなるかは何とも分からないが、この法改正の今後には大いに注目している。
次回は、また海賊版対策条約(ACTA)の話を書きたいと思っている。
(8月30日の追記:静岡県からも、他と同様の携帯・ネット規制を含む青少年条例改正案に関するパブコメが9月15日〆切でかけられている(静岡県のHP参照)。静岡県在住で、このような問題に関心のある方は、是非提出をご検討頂ければと思う。)
(以下、第8分野「女性に対するあらゆる暴力の根絶」に対する提出パブコメ)
○ページ番号:p.41~46
○項目番号:Ⅲ1(1)、(2)⑤、4(1)、(2)①~⑥、Ⅲ8(1)、(2)①~④
○提案内容:
1.広報啓発等について(p.41、Ⅲ1(1)/p.45、Ⅲ8(1)、(2)①)
これらの項目において、「一部メディアに氾濫する性・暴力表現は、男女が平等でお互いの尊厳を重んじ対等な関係づくりを進める男女共同参画社会の形成を大きく阻害する」、「女性をもっぱら性的ないしは暴力行為の対象として捉えたメディアにおける性・暴力表現は、男女共同参画社会の形成を大きく阻害するものであり、女性に対する人権侵害となるものもある」、「女性をもっぱら性的ないしは暴力行為の対象として捉えたメディアにおける性・暴力表現は、男女共同参画社会の形成を大きく阻害するものである」と根拠なく断言しているが、表現をどのようにとらえるかは人によるものであり、一部の者の一方的な見方を押し付けることにしかなりようのない、このような歪んだ観点からの広報啓発は行われてはならない。
2.公共の場における広告等に対する規制について(p.41、Ⅲ1(2)⑤)
この項目において、「公共の場における女性をあからさまに性的な対象とする広告等に対する規制を含めた実効的な対策について、表現の自由を十分尊重した上で検討する」としているが、否応なく通行者の目に入る街中の広告等と、通常一人での利用が想定され、受信者による主体的な情報の遮断が可能であり、表現に接することを望まない人の自由と権利が既に確保されているインターネット等は混同されてはならない。広告等に対する新たな規制の検討の必要性自体疑問であるが、たとえ検討を進めるとしても、「公共の場」として現実の街中とインターネットのような場の混同を故意に惹起するような暴論に基づく議論は厳に慎むべきであり、各々の状況をきちんと区別し、問題の本質を理解した上で、現行の規制の必要性から問い直すことがまず行われるべきである。
3.児童ポルノ規制、ブロッキングについて(p.43、Ⅲ4(1)、4(2)③/p.46、Ⅲ8(2)③)
閲覧とダウンロードと取得と所持の区別がつかないインターネットにおいては例え児童ポルノにせよ情報の単純所持や取得の規制は有害無益かつ危険なもので、憲法及び条約に規定されている「知る権利」を不当に害する。意図に関する限定を加えたところで、エスパーでもない限りこのような積極性を証明することも反証することもできないため、このような規制の危険性は回避不能であり、思想の自由や罪刑法定主義にも反する。現行法で既に規制されている提供によって生じる被害と所持等との混同は許され得ない。実際の被害者の存在しないアニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現への対象拡大も児童保護という法目的を大きく逸脱する異常規制に他ならない。利用者から見てアドレスリストの妥当性のチェックが不可能なブロッキングも、表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ない。児童ポルノ規制については、定義の厳密化、単純所持・創作物規制といった非人道的な規制の排除の国際的な働きかけ等のみを検討するべきである。
なお、実写と見紛うCGの規制については、確かに実在の児童が絡む事件の捜査の妨げになる可能性があるが、今の所捜査の妨げの事実はなく、その規制の検討も時期尚早である。
4.出会い系サイト規制等について(p.44、Ⅲ4(2)④)
出会い系サイト規制法の改正は、警察庁が、どんなコミュニケーションサイトでも人は出会えるという誰にでも分かることを無視し、届け出制の対象としては事実上定義不能の「出会い系サイト事業」を定義可能と偽り、改正法案の閣議決定を行い、法案を国会に提出したものであり、他の重要法案と審議が重なる中、国会においてもその本質的な問題が見過ごされて可決され、成立したものである。憲法上の罪刑法定主義や検閲の禁止にそもそも違反している、今回の出会い系サイト規制法の改正についても、今後、速やかに元に戻すことが検討されるべきである。
なお、青少年ネット規制法についても、そもそも、あらゆる者から反対されながら、有害無益なプライドと利権を優先する一部の議員と官庁の思惑のみで成立したものであり、速やかに廃止が検討されるべきものである。
5.犯罪の前兆行為の規制について(p.44、Ⅲ4(2)⑤)
この項目において、「性犯罪の前兆となり得るつきまとい等の行為に対する捜査・警告を積極的に実施するとともに、これらの前兆行為に関する対応の在り方を検討する」としているが、犯罪行為と犯罪の前兆行為は混同されるべきではなく、これらをきちんと区別した上で、国民の生活と安全に対し警察権力による不当な介入・侵害がなされないよう、単なる前兆行為への対応については、特に慎重に検討するべきである。
6.調査について(p.46、Ⅲ8(2)②)
内閣府は対面調査で回答の誘導を行うなど有害かつ悪質な世論操作を行った前科がある。調査を行う場合は、役所の関与を極力無くし、複数の調査機関により項目の偏向をチェックし、ウェブ調査も含め幅広い調査にするべきである。
7.ゲーム等の一般メディア規制について(p.46、項目番号:Ⅲ8(1)、(2)④)
ゲーム等の一般メディアについて、「国際的に重大な懸念が表明されるコンテンツの流通が現実問題となっている」としているが、文化の相違を無視し、他国の極一部の者の歪んだ主張を一方的に是とするが如き暴論に取るべきところは何一つない。一部の者の一方的な見方によって、民主主義の最重要の基礎である表現の自由や言論の自由、思想の自由等々の最も基本的な精神的自由そのものを危うくする規制強化が是とされるべきではない。今現在の日本において、メディア表現について規制強化をするに足る根拠は一切なく、DVD、ビデオ、パソコンゲーム等バーチャルな分野等における性・暴力表現のさらなる規制の検討に反対する。かえって、固定観念にとらわれない多様な男女両性の性表現を確保し、多様な価値観を互いに許容し合う真の男女共同参画社会を目指すため、既に時代遅れとなっている現行の猥褻物規制の緩和について、政府レベルでの検討を開始するべきである。
8.リテラシー教育等について(p.43、4(1)①、②、⑥)
今後は、基本に立ち返り、メディアリテラシー教育の推進、現実の暴力の取り締まり等の地道な対策のみに注力した検討が進められることを期待する。
(以下、第13分野「メディアにおける男女共同参画の推進」に対する提出パブコメ)
○ページ番号:p.59~60
○項目番号:Ⅱ、Ⅲ1(1)、(2)①~⑥
○提案内容:
1.広報啓発、メディアへの自主規制の働きかけ等について(p.59、Ⅱ/p.60、Ⅲ1(1)、Ⅲ1(2)②、③)
これらの項目において、「女性や子どもをもっぱら性的ないしは暴力行為の対象として捉えたメディアにおける性・暴力表現は、男女共同参画社会の形成を大きく阻害するものであり、女性や子どもに対する『人権侵害』となるものもある」、「女性や子どもの人権を侵害するような違法・有害な情報」がある、「女性や子どもの人権を侵害するような表現」があるなどと根拠なく断言している。しかし、表現をどのようにとらえるかは人によるものである。また、特定の個人・個々の状況を超えて、一般的な創作表現による人権侵害があるとすることは、具体的な被害者がいない以上、公権力に表現内容の是非を恣意的に判断させる権限を与えるに等しく、実質表現の自由を殺すに等しい極悪非道の暴挙に他ならない。違法な情報と有害な情報を混同することも不当に規制の範囲を拡大することにつながる危険なことである。一部の者の一方的な見方を押し付けることにしかなりようのない、このような歪んだ観点からの啓発や自主規制等の働きかけは行われてはならない。
特に広報啓発については、人権問題は単純でなく、その真の理解を周知することが重要であること、児童ポルノ規制等が国民の基本的な権利である表現の自由や通信の秘密等にも関わる非常に重大な問題であることを考え、表現の自由に関する問題に詳しい情報法・憲法の専門家、児童ポルノ法の実務に携わりその本当の問題点を熟知している法律家、規制強化に慎重あるいは反対の意見を有する弁護士等も各種の場に呼び、児童ポルノ規制問題等について、多様な意見の取り入れを図るとともに、様々な意見があることを広めるべきである。
特に表現に関する自主規制について検討を行うのであれば、既存のメディアにおける各種自主規制が不当に萎縮的なものとなっていないかのチェックこそ行うべきであり、表現の自由を最大限確保し、固定観念にとらわれない多様な男女両性の性表現を確保し、多様な価値観を互いに許容し合う真の男女共同参画社会を目指すため、合理的な理由のない自主規制の排除の働きかけこそ行うべきである。
2.公共性の高い空間やメディアにおける規制について(p.59、Ⅱ)
この項目において、「公共性の高い空間やメディアにおける性・暴力表現については、青少年やそのような表現に接することを望まない人の権利を守るため、情報の隔離を適切に行う取組が必要である。とりわけ、インターネット等の普及により、女性や子どもの人権を侵害するような違法・有害な情報の発信主体が多様化し、受信も容易となっている状況を踏まえ、対策を検討する」と書かれているが、「公共性の高い」といった語により、否応なく通行者の目に入る街中の広告等と、通常一人での利用が想定され、受信者による主体的な情報の遮断が可能であり、表現に接することを望まない人の自由と権利が既に確保されているインターネット等を混同することがあってはならない。また、電波という稀少な公的資源の有限性からある程度の規制が正当化される放送メディアとそのような有限性のないインターネット等でも状況は異なる。新たな規制の検討の必要性自体疑問であるが、たとえ検討を進めるとしても、「公共の高い空間」などとして現実の街中とインターネットのような場の混同を故意に惹起するような暴論に基づく議論は厳に慎むべきであり、各々の状況をきちんと区別し、問題の本質を理解した上で、現行の規制の必要性から問い直すことがまず行われるべきである。
3.国際発信について(p.60、Ⅲ1(2)①)
特に国際的に日本のメディアに対する誤解があるようであれば、早急にその誤解を解くよう、実際の被害者の存在しない創作物に対する性あるいは暴力を理由とした根拠のない曖昧かつ広汎な表現規制はかえって表現の自由の不当な規制、非人道的な人権侵害となると、国際的な場で働きかけをするべきである。
4.調査について(p.60、Ⅲ1(2)④)
内閣府は対面調査で回答の誘導を行うなど有害かつ悪質な世論操作を行った前科がある。調査を行う場合は、役所の関与を極力無くし、複数の調査機関により項目の偏向をチェックし、ウェブ調査も含め幅広い調査にするべきである。
5.ゲーム等の一般メディア規制について(p.60、Ⅲ1(2)⑤)
一部の者の一方的な見方によって、民主主義の最重要の基礎である表現の自由や言論の自由、思想の自由等々の最も基本的な精神的自由そのものを危うくする規制強化が是とされてはならない。今現在の日本において、メディア表現について規制強化をするに足る根拠は一切なく、DVD、ビデオ、パソコンゲーム等バーチャルな分野等における性・暴力表現のさらなる規制の検討に反対する。かえって、固定観念にとらわれない多様な男女両性の性表現を確保し、多様な価値観を互いに許容し合う真の男女共同参画社会を目指すため、既に時代遅れとなっている現行の猥褻物規制の緩和について、政府レベルでの検討を開始するべきである。
6.リテラシー教育等について(p.60、Ⅲ1(2)⑥)
今後は、基本に立ち返り、メディアリテラシー教育の推進、現実の暴力の取り締まり等の地道な対策のみに注力した検討が進められることを期待する。
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