« 2010年7月 | トップページ | 2010年9月 »

2010年8月27日 (金)

第236回:内閣府・第3次男女共同参画基本計画に盛り込むべき施策に関する提案募集に対する提出パブコメ

 今現在、内閣府の男女共同参画局から8月31日〆切でかかっている、第3次男女共同参画基本計画に盛り込むべき施策に関する提案募集(内閣府の意見募集ページ参照)に対してパブコメを書いて提出したので、内容としては以前出した中間整理に対する提出パブコメとあまり変わりはないが、念のため、ここにも載せておく。

 中間整理案と比べると、多少はマシになっているとは言え、「第3次男女共同参画基本計画策定に当たっての基本的な考え方(答申)」には問題はまだまだ多く残っている。直接読んで頂ければ分かると思うが、やはり、第9分野 女性に対するあらゆる暴力の根絶(pdf)第13分野 メディアにおける男女共同参画の推進(pdf)の2つは、印象操作を多く含み、根拠なく児童ポルノ規制の強化や創作物規制の推進を唱道しているなど問題だらけである。

 何故中間整理に対する意見募集の後で、こうも慌ただしくまたパブコメをかけるのだかさっぱり分からないが、折角の機会ではあるので、前回パブコメを出された方など、表現規制問題に関心のある方には今回も意見を出すことを検討することをお勧めしたい。

 一緒に最近の話も少し紹介しておくと、8月23日に、文化庁で文化審議会著作権分科会の基本問題小委員会の最終会合が開かれ、報告書がとりまとめられている(日経パソコンの記事、文化庁HPの議事次第・資料参照)。報告書自体は大したことは書かれていないが、とりあえず文化庁がこの小委員会を使って有害無益な規制強化のごり押しを図ってこなかったのは良いことである。

 また、8月24日には、内閣府の行政透明化検討チームも、とりまとめ案(pdf)概要(pdf))をまとめている(共同通信の記事、行政透明化検討チームのHP参照)。この報告書は個人的には踏み込みの点で物足りないところもあるが、情報公開法の改正は地道に進めるべきなのは間違いなく、混沌とする政治情勢の中でどうなるかは何とも分からないが、この法改正の今後には大いに注目している。

 次回は、また海賊版対策条約(ACTA)の話を書きたいと思っている。

(8月30日の追記:静岡県からも、他と同様の携帯・ネット規制を含む青少年条例改正案に関するパブコメが9月15日〆切でかけられている(静岡県のHP参照)。静岡県在住で、このような問題に関心のある方は、是非提出をご検討頂ければと思う。)

(以下、第8分野「女性に対するあらゆる暴力の根絶」に対する提出パブコメ)

○ページ番号:p.41~46

○項目番号:Ⅲ1(1)、(2)⑤、4(1)、(2)①~⑥、Ⅲ8(1)、(2)①~④

○提案内容
1.広報啓発等について(p.41、Ⅲ1(1)/p.45、Ⅲ8(1)、(2)①)
 これらの項目において、「一部メディアに氾濫する性・暴力表現は、男女が平等でお互いの尊厳を重んじ対等な関係づくりを進める男女共同参画社会の形成を大きく阻害する」、「女性をもっぱら性的ないしは暴力行為の対象として捉えたメディアにおける性・暴力表現は、男女共同参画社会の形成を大きく阻害するものであり、女性に対する人権侵害となるものもある」、「女性をもっぱら性的ないしは暴力行為の対象として捉えたメディアにおける性・暴力表現は、男女共同参画社会の形成を大きく阻害するものである」と根拠なく断言しているが、表現をどのようにとらえるかは人によるものであり、一部の者の一方的な見方を押し付けることにしかなりようのない、このような歪んだ観点からの広報啓発は行われてはならない。

2.公共の場における広告等に対する規制について(p.41、Ⅲ1(2)⑤)
 この項目において、「公共の場における女性をあからさまに性的な対象とする広告等に対する規制を含めた実効的な対策について、表現の自由を十分尊重した上で検討する」としているが、否応なく通行者の目に入る街中の広告等と、通常一人での利用が想定され、受信者による主体的な情報の遮断が可能であり、表現に接することを望まない人の自由と権利が既に確保されているインターネット等は混同されてはならない。広告等に対する新たな規制の検討の必要性自体疑問であるが、たとえ検討を進めるとしても、「公共の場」として現実の街中とインターネットのような場の混同を故意に惹起するような暴論に基づく議論は厳に慎むべきであり、各々の状況をきちんと区別し、問題の本質を理解した上で、現行の規制の必要性から問い直すことがまず行われるべきである。

3.児童ポルノ規制、ブロッキングについて(p.43、Ⅲ4(1)、4(2)③/p.46、Ⅲ8(2)③)
 閲覧とダウンロードと取得と所持の区別がつかないインターネットにおいては例え児童ポルノにせよ情報の単純所持や取得の規制は有害無益かつ危険なもので、憲法及び条約に規定されている「知る権利」を不当に害する。意図に関する限定を加えたところで、エスパーでもない限りこのような積極性を証明することも反証することもできないため、このような規制の危険性は回避不能であり、思想の自由や罪刑法定主義にも反する。現行法で既に規制されている提供によって生じる被害と所持等との混同は許され得ない。実際の被害者の存在しないアニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現への対象拡大も児童保護という法目的を大きく逸脱する異常規制に他ならない。利用者から見てアドレスリストの妥当性のチェックが不可能なブロッキングも、表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ない。児童ポルノ規制については、定義の厳密化、単純所持・創作物規制といった非人道的な規制の排除の国際的な働きかけ等のみを検討するべきである。
 なお、実写と見紛うCGの規制については、確かに実在の児童が絡む事件の捜査の妨げになる可能性があるが、今の所捜査の妨げの事実はなく、その規制の検討も時期尚早である。

4.出会い系サイト規制等について(p.44、Ⅲ4(2)④)
 出会い系サイト規制法の改正は、警察庁が、どんなコミュニケーションサイトでも人は出会えるという誰にでも分かることを無視し、届け出制の対象としては事実上定義不能の「出会い系サイト事業」を定義可能と偽り、改正法案の閣議決定を行い、法案を国会に提出したものであり、他の重要法案と審議が重なる中、国会においてもその本質的な問題が見過ごされて可決され、成立したものである。憲法上の罪刑法定主義や検閲の禁止にそもそも違反している、今回の出会い系サイト規制法の改正についても、今後、速やかに元に戻すことが検討されるべきである。
 なお、青少年ネット規制法についても、そもそも、あらゆる者から反対されながら、有害無益なプライドと利権を優先する一部の議員と官庁の思惑のみで成立したものであり、速やかに廃止が検討されるべきものである。

5.犯罪の前兆行為の規制について(p.44、Ⅲ4(2)⑤)
 この項目において、「性犯罪の前兆となり得るつきまとい等の行為に対する捜査・警告を積極的に実施するとともに、これらの前兆行為に関する対応の在り方を検討する」としているが、犯罪行為と犯罪の前兆行為は混同されるべきではなく、これらをきちんと区別した上で、国民の生活と安全に対し警察権力による不当な介入・侵害がなされないよう、単なる前兆行為への対応については、特に慎重に検討するべきである。

6.調査について(p.46、Ⅲ8(2)②)
 内閣府は対面調査で回答の誘導を行うなど有害かつ悪質な世論操作を行った前科がある。調査を行う場合は、役所の関与を極力無くし、複数の調査機関により項目の偏向をチェックし、ウェブ調査も含め幅広い調査にするべきである。

7.ゲーム等の一般メディア規制について(p.46、項目番号:Ⅲ8(1)、(2)④)
 ゲーム等の一般メディアについて、「国際的に重大な懸念が表明されるコンテンツの流通が現実問題となっている」としているが、文化の相違を無視し、他国の極一部の者の歪んだ主張を一方的に是とするが如き暴論に取るべきところは何一つない。一部の者の一方的な見方によって、民主主義の最重要の基礎である表現の自由や言論の自由、思想の自由等々の最も基本的な精神的自由そのものを危うくする規制強化が是とされるべきではない。今現在の日本において、メディア表現について規制強化をするに足る根拠は一切なく、DVD、ビデオ、パソコンゲーム等バーチャルな分野等における性・暴力表現のさらなる規制の検討に反対する。かえって、固定観念にとらわれない多様な男女両性の性表現を確保し、多様な価値観を互いに許容し合う真の男女共同参画社会を目指すため、既に時代遅れとなっている現行の猥褻物規制の緩和について、政府レベルでの検討を開始するべきである。

8.リテラシー教育等について(p.43、4(1)①、②、⑥)
 今後は、基本に立ち返り、メディアリテラシー教育の推進、現実の暴力の取り締まり等の地道な対策のみに注力した検討が進められることを期待する。

(以下、第13分野「メディアにおける男女共同参画の推進」に対する提出パブコメ)

○ページ番号:p.59~60

○項目番号:Ⅱ、Ⅲ1(1)、(2)①~⑥

○提案内容
1.広報啓発、メディアへの自主規制の働きかけ等について(p.59、Ⅱ/p.60、Ⅲ1(1)、Ⅲ1(2)②、③)
 これらの項目において、「女性や子どもをもっぱら性的ないしは暴力行為の対象として捉えたメディアにおける性・暴力表現は、男女共同参画社会の形成を大きく阻害するものであり、女性や子どもに対する『人権侵害』となるものもある」、「女性や子どもの人権を侵害するような違法・有害な情報」がある、「女性や子どもの人権を侵害するような表現」があるなどと根拠なく断言している。しかし、表現をどのようにとらえるかは人によるものである。また、特定の個人・個々の状況を超えて、一般的な創作表現による人権侵害があるとすることは、具体的な被害者がいない以上、公権力に表現内容の是非を恣意的に判断させる権限を与えるに等しく、実質表現の自由を殺すに等しい極悪非道の暴挙に他ならない。違法な情報と有害な情報を混同することも不当に規制の範囲を拡大することにつながる危険なことである。一部の者の一方的な見方を押し付けることにしかなりようのない、このような歪んだ観点からの啓発や自主規制等の働きかけは行われてはならない。
 特に広報啓発については、人権問題は単純でなく、その真の理解を周知することが重要であること、児童ポルノ規制等が国民の基本的な権利である表現の自由や通信の秘密等にも関わる非常に重大な問題であることを考え、表現の自由に関する問題に詳しい情報法・憲法の専門家、児童ポルノ法の実務に携わりその本当の問題点を熟知している法律家、規制強化に慎重あるいは反対の意見を有する弁護士等も各種の場に呼び、児童ポルノ規制問題等について、多様な意見の取り入れを図るとともに、様々な意見があることを広めるべきである。
 特に表現に関する自主規制について検討を行うのであれば、既存のメディアにおける各種自主規制が不当に萎縮的なものとなっていないかのチェックこそ行うべきであり、表現の自由を最大限確保し、固定観念にとらわれない多様な男女両性の性表現を確保し、多様な価値観を互いに許容し合う真の男女共同参画社会を目指すため、合理的な理由のない自主規制の排除の働きかけこそ行うべきである。

2.公共性の高い空間やメディアにおける規制について(p.59、Ⅱ)
 この項目において、「公共性の高い空間やメディアにおける性・暴力表現については、青少年やそのような表現に接することを望まない人の権利を守るため、情報の隔離を適切に行う取組が必要である。とりわけ、インターネット等の普及により、女性や子どもの人権を侵害するような違法・有害な情報の発信主体が多様化し、受信も容易となっている状況を踏まえ、対策を検討する」と書かれているが、「公共性の高い」といった語により、否応なく通行者の目に入る街中の広告等と、通常一人での利用が想定され、受信者による主体的な情報の遮断が可能であり、表現に接することを望まない人の自由と権利が既に確保されているインターネット等を混同することがあってはならない。また、電波という稀少な公的資源の有限性からある程度の規制が正当化される放送メディアとそのような有限性のないインターネット等でも状況は異なる。新たな規制の検討の必要性自体疑問であるが、たとえ検討を進めるとしても、「公共の高い空間」などとして現実の街中とインターネットのような場の混同を故意に惹起するような暴論に基づく議論は厳に慎むべきであり、各々の状況をきちんと区別し、問題の本質を理解した上で、現行の規制の必要性から問い直すことがまず行われるべきである。

3.国際発信について(p.60、Ⅲ1(2)①)
 特に国際的に日本のメディアに対する誤解があるようであれば、早急にその誤解を解くよう、実際の被害者の存在しない創作物に対する性あるいは暴力を理由とした根拠のない曖昧かつ広汎な表現規制はかえって表現の自由の不当な規制、非人道的な人権侵害となると、国際的な場で働きかけをするべきである。

4.調査について(p.60、Ⅲ1(2)④)
 内閣府は対面調査で回答の誘導を行うなど有害かつ悪質な世論操作を行った前科がある。調査を行う場合は、役所の関与を極力無くし、複数の調査機関により項目の偏向をチェックし、ウェブ調査も含め幅広い調査にするべきである。

5.ゲーム等の一般メディア規制について(p.60、Ⅲ1(2)⑤)
 一部の者の一方的な見方によって、民主主義の最重要の基礎である表現の自由や言論の自由、思想の自由等々の最も基本的な精神的自由そのものを危うくする規制強化が是とされてはならない。今現在の日本において、メディア表現について規制強化をするに足る根拠は一切なく、DVD、ビデオ、パソコンゲーム等バーチャルな分野等における性・暴力表現のさらなる規制の検討に反対する。かえって、固定観念にとらわれない多様な男女両性の性表現を確保し、多様な価値観を互いに許容し合う真の男女共同参画社会を目指すため、既に時代遅れとなっている現行の猥褻物規制の緩和について、政府レベルでの検討を開始するべきである。

6.リテラシー教育等について(p.60、Ⅲ1(2)⑥)
 今後は、基本に立ち返り、メディアリテラシー教育の推進、現実の暴力の取り締まり等の地道な対策のみに注力した検討が進められることを期待する。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2010年8月24日 (火)

番外その27:「児童の性的搾取を防止・根絶するためのリオデジャネイロ宣言及び行動への呼びかけ」(2008年11月)の全訳

 今回は番外として、今から約1年9ヶ月前の2008年11月25日から28日に、ブラジルのリオデジャネイロで開催された児童の性的搾取に反対する第3回世界会議の宣言文、いわゆるリオ宣言の全訳を載せる。

 このリオ宣言は、当時の会合のHPを見ればすぐに分かるように、世界からいつもの各国ユニセフやらECPATやらといった規制カルト団体が集まって出来レースで作り上げたカルト戦闘宣言とも言うべきもので、その狂っているとしか思えない数々の文章は読んでいて胸がむかついてくるが、児童ポルノ問題において危険かつ有害な規制強化プロパガンダの手段として使われて行くだろうと考えられるので、今後の参考にここで全訳を作成した。(翻訳に使用したのは、外務省のHPに載せられている宣言文(pdf)だが、このような狂気に満ちた宣言文が堂々と一国の政府のHPに載っていることに、規制派の政治力の強さに心底私は恐ろしさを感じる。)

 到底この文書の問題点の全てをここであげつらうことはできないので、詳しいことが気になる方は、直接原文にあたるか、ファイル(訳文(txt)訳文(pdf)訳文(doc))か、下に載せた全訳を直接読んでもらえればと思うが、このリオ宣言の狂気の頂点は、やはり、「C.行動の呼びかけ」中の児童ポルノに関する以下のような記載だろう。(訳文は全て自分で訳したものなので、誤訳等あればご指摘頂ければと思う。)

(4) Criminalize the intentional production, distribution, receipt and possession of child pornography, including virtual images and the sexually exploitative representation of children, as well as the intentional consumption, access and viewing of such materials where there has been no physical contact with a child, legal liability should be extended to entities such as corporations and companies in case the responsibility for or involvement in the production and/or dissemination of materials.

(4)バーチャルな画像と児童の性的搾取の表現物を含め、児童ポルノの故意の製造、頒布、入手及び所有、並びに、児童との肉体的接触を含まないものであったとしても、そのようなマテリアルの故意の消費、アクセス及び閲覧を犯罪化すること、法的責任は、マテリアルの製造及び/又は拡散に関わるなどの責任がある場合には、企業のような主体にも拡張されるべきである。

(10) Set up a common list of websites, under the auspices of Interpol, containing sexual abuse images , based on uniform standards, whose access will be blocked; the list has to be continuously updated, exchanged on international level, and be used by the provider to perform the access blocking.

(10)インターポールの指揮下で、児童の性的虐待画像を含むウェブサイトの共通リストを作ること、統一的基準に基づき、そのアクセスはブロックされることになる;このリストは、継続的に更新され、国際的なレベルで交換され、アクセスブロッキングの実行のためにプロバイダーによって使用される。

 単純所持、創作物規制、ブロッキング等の危険性についてはさんざん繰り返してきているので一々繰り返すことはしないが、ユニセフやECPATといった規制カルト団体は、ここでその狂気を剥き出しにして、はっきりと情報と表現の自由に関する人々の基本的な権利を全面的に踏みにじり世界的に魔女狩りと大検閲の導入を推進すると全世界に向けて大々的に宣言して来ているのである。(「バーチャルな画像」("virtual images")、「児童の性的搾取の表現物」("the sexually exploitative representation of children")とは何かという解釈の問題もないことはないが、これらには解釈次第で創作物、それこそ文章表現まで含めほとんど何でも入り得てしまう上、法的文書でもないので、解釈についてどうこうという話をすることにあまり意味はないだろう。)

 この宣言には何ら法的拘束力はないということに注意しておく必要があるが、先月とりまとめられた児童ポルノ排除総合対策(pdf)でも「国内での周知に努める」と日本政府も露骨にプロパガンダに使うと明言して来ているなど、彼らの政治力が格段に勝っていることは間違いない。通して読めばこの宣言も別に悪いことばかりが書かれている訳ではないが、いつものパターンだと、日本国内の規制カルト団体とこれと結託した日本政府の一部の官僚たちは、他の全ての部分、自分たちにとって都合の悪い部分は特に無視して、危険かつ有害な情報規制をごり押しするためのプロパガンダのツールとしてのみ使って来ることだろう。児童ポルノ問題については、残念ながら、今後も厳しい状況が続くと私は思っている。

 ただ、このブログでは何度も繰り返していることだが、このような狂った宣言や、魔女狩りと検閲に喜々として勤しんでいる欧米キリスト教諸国の一部の話のみをもって国際動向とされることがあってはならない。世界的に見ても、不合理な情報規制の危険性はネットを中心に認知が広まりつつあると、児童ポルノ問題についても合理的な議論を求める声が大きくなりつつあると言って良い。この問題は決して単純ではなく、一筋縄では行かないだろうが、例えどうなろうと、私も一国民・一利用者として政策決定レベルに自分の声を届けようとする努力を止めるつもりはさらさら無い。

(胸のむかつきに耐えられるようなら読む程度で良いと思うが、カルト規制団体が作文し、子供に読ませたと思しき、最後の付録の青少年による閉会宣言など、私欲による児童の利用を止めよという者たちが最も児童を自分たちの私欲のために使っているという極めてグロテスクな戯画を示している。その場に並んでいるカルト規制団体のメンバーとその仲間たちは、これを聞きながら心中勝利の凱歌をあげていたのかも知れないが、ちょっとでも普通の理性がある者であれば、このような醜怪な光景を目にしたら、ぞっとして背を向け、自分のもっと切実な仕事のため、そそくさとその場を立ち去ることだろう。「腐敗こそ効果的な法執行と児童保護に対する主たる障害であると認識し、法執行と司法並びに他の児童のケアの義務を負う機関における腐敗に対抗する」と書きながら、全文書を通して随所に腐敗の徴が見られるのは凄絶という他ない。)

 恐らく、次回は、8月31日〆切の男女共同参画会議のパブコメ(内閣府のHP参照)に関するエントリになるのではないかと、次々回が、先週第10回の会合があった(時事通信の記事、経産省の概要リリース参照)、海賊版対策条約の話になるのではないかと思っている。(海賊版条約もMIAUで訳を作ったが(MIAUのHP参照)、リオ宣言といい、何故ユーザーが一々政府のHPに載っているような文書について日本語訳を作らなければならないのか理解に苦しむ。およそどこの省庁も日本国民のために交渉などしていないのだろうが、下らない報告書の作成などに使う予算があるなら、重要な国際文書についてのきちんとした翻訳とその公開に回す方がよほど世の中の役に立つだろう。)

(8月25日の追記:「Запретная Зона」で、このリオ会議で外務省の官僚である志野光子人権人道課長が独断で「創作物が児童を性の対象とする風潮を助長する」という根拠のない説を政府として認めるという暴挙を行っているという話を取り上げられていたので、ここにもリンクを張っておく。関心のある方はリンク先もご覧頂ければと思う。)

(以下、全訳)

児童と青少年の性的搾取を抑止し、止めるためのリオ・デジャネイロ宣言と行動の呼びかけ

前文

児童と青少年の性的搾取に対する第3回世界会議の参加者の、政府代表、政府間組織、非政府組織、人権団体、オンブズマン、民間部門、法執行・法律コミュニティ、宗教指導者、国会議員、研究者と大学関係者、市民団体と児童と青少年(注1:この文書を通じて、「児童」と「児童と青少年」とは、18歳以下の全ての人類を指すものとして使われる。)である私たちは、1996年のストックホルム宣言と行動アジェンダと、2001年の横浜世界宣言のフォローアップとして取られた進展と行動を点検し、学んだことと主立った試みを確かめ、児童と青少年の性的搾取(注2:この文書を通じて、「児童と青少年の性的搾取」とは、家庭と家族、学校と教育、ケアと司法機関、コミュニティと職場においてなどあらゆる状況におけるあらゆる形式の18歳以下の人の性的搾取を指すものとして使われる。)を抑止し、その被害を受けた児童に必要な支援を提供するための行動宣言の目的と目標の実施を自ら言明するために、ブラジルのリオ・デジャネイロに集まった(2008年11月25-28日)。

(1)児童の性的搾取は、その人間としての尊厳と肉体的・精神的全体性の尊重の権利に対する甚大な侵害であり、あらゆる状況において容赦し得ないものであると、私たちは繰り返す。

(2)全世界で児童と青少年の性的搾取が高いレベルで推移していること、特にインターネットと新らたに発展している技術の悪用により、そして、旅行として移動しやすくなった結果として、ある形式の児童と青少年の性的搾取が増加していることについての懸念を、私たちは表明する。

(3)貧困、社会的・男女の不平等,差別、薬物とアルコールの濫用、児童との性交渉に対する継続的要求、環境の悪化、エイズ、強制移動、占領、武力衝突その他の児童の保護に責任を有する家族の基本単位に歪みを作る危機、並びに、社会的寛容、共謀と無責任の環境によって支えられた全世界における児童との性交渉に対する根強い要求の結果として、多くの児童たちがさらされている性的搾取の危険の増大を、深い懸念とともに、私たちは指摘する。

(4)性的搾取からの児童たちの保護を確保するためにあらゆる適切な手段を取ることを各参加国に求める、1989年の国連児童権利条約、並びに、参加国にそれらの行為の禁止、犯罪化及び訴追を求める、児童の人身売買、児童の売春及び児童ポルノに関する条約の付属議定書について、私たちは再び呼びかける。

(5)第3回世界会議に対する、96ヶ国からの282の青少年の活動的で意味のある参加と、性的搾取に対抗するためのその重要な貢献について、私たちは認める。彼らは、この文書に付属する「性的搾取を止めるための青少年宣言」において団結する。ネットワークを作り、ピア・ツー・ピアの取り組みを通じて、その重要な行動を続けることを、少年少女たちに、私たちは促す。

(6)児童と青少年の性的搾取に向けた、児童の権利委員会と他の関係する国際的、地域と国の人権機構の働きを、私たちは歓迎する。

A.進歩と主立った試みの点検

2001年の日本の横浜での第2回世界会議以来の、児童と青少年の性的搾取に対し、達成された以下の進歩を、私たちは歓迎する。

(1)児童の人身売買、児童の売春及び児童ポルノに関する条約の付属議定書(2008年11月15日に129ヶ国によって批准された)などの中心となる国際的ツールの発効、及び1999年の児童労働の最悪の形式の根絶に関するILO条約182、及び国際組織犯罪に関する国連条約を補完する、人身売買、特に女性と児童の売買の抑止と訴追のための議定書(パレルモ議定書)のより多くの国による批准、そして、人身売買対策と性的搾取からの児童の保護とサイバー犯罪に関する欧州理事会条約を含む新たな地域ツールの採択。

(2)児童の被害者及び犯罪の証人に関する事項についての司法国連ガイドラインを考慮に入れ、加害容疑者の捜査と裁判手続きにおける性的搾取から被害者の児童を保護するための法規定の施行を含め、国際的義務に一致する形での性的搾取からの児童の保護の強化のための法的措置をより多くの国が取り入れたこと。

(3)児童のための世界的調和を作るためのより広く重要な国家的な枠組み作りの文脈においてますます増えている、児童を性的搾取から保護するための、国家的なアジェンダ、戦略又は計画の作成と実施。

(4)性的搾取目的での児童の売買を抑止し、これと戦うための多部門間の取り組みの確立。

(5)児童と青少年の国境を越える人身売買と性的搾取を抑止し、これと戦うため、並びに、その責任を有する者を探知し、捜査し、告訴し、処罰するための努力における効果的な協力を確立することを目指した、2国間又は多国間の協定の妥結。

(6)旅行と観光における性的搾取からの児童の保護のための行動指針への署名により、旅行と観光に従事する会社がより多くこれを支援したこと。

(7)性的搾取からの児童の保護とその抑止及び被害者の支援にかかわる専門家の訓練、並びに目的とする意識向上と教育キャンペーンの両方のいくつかの国での増加。

(8)国連と国連関連組織、国の又は国際的非政府組織、他の市民団体、人権団体及び政府間組織の、児童と青少年の性的搾取を抑止し、これを止めるための行動におけるより多くの参加。

進歩を認めるに当たり、私たちは、特に以下の試みと関心について書き留める。

(9)ますます増える活発な児童の試みも含め、性的搾取に対して弱い児童の特定、出される表明にどう向かい、どう答えるのかということの認知と理解、児童と青少年の性的搾取の様々な形式における動向とますます複雑化する性質において、なお多大なギャップが残っていること。

(10)あらゆる形式の性的搾取から児童を保護することにかかわる様々な利害関係者の間における、特に政府機関の間における協力行動が欠如していること。これを直すため、部門をまたぐ施策の統合と効果的な行動のためのより調和の取れた枠組みの作成の努力をしなければならない。

(11)多くの国において、法律が、適用される国際基準に一致する形で、様々な形式の児童と青少年の性的搾取を適切に規定し、犯罪化しておらず、そのために、児童の効果的な保護並びにその犯罪の訴追が妨げられていること。

(12)統一の取れた法執行と刑事免責の終止が、実施のためのリソースと構造の欠如及び関係者に対する適切な訓練の欠如によりあまりにも多く妨げられていること。

(13)児童と青少年の性的搾取の加害者の刑事免責が、犯罪のなされた国において加害者が捜査、訴追されないために、永続することが間々あり、統一の取れた効果的な国境を越える司法手続きが欠如し、これが「双罰性」の要件によって妨げられることも間々あり、そして、必要な犯人の引き渡しと相互の法的な助力に関する協定と実務が欠如していること。

(14)児童と青少年との性交渉に対する要求を減らし、根絶する措置に対する注力が不十分であり、いくつかの国においては、児童の性的虐待者に対する罰が不適切であること。

(15)あらゆる行政と司法の手続きを含め、その生活にかかわる全ての事項についてしかるべく考慮してその見解を持ち、表明する児童の権利が、各国の法律と実務において一貫する形で組み込まれていないこと;そして、特に、児童の繊細な被害者がこの権利を行使し、その証言手続きを行う効果的な機会が欠如していることから、性的搾取を経験した児童にさらなるトラウマを与えていること。

(16)その年齢に応じた、児童の性的発達の保護が、児童と青少年に対して性的搾取に対抗する力を与えるが、このことが十分に認識されていないこと。

(17)適切な国際協力を含め、児童と青少年の性的搾取を抑止する第一の要素である、全ての児童に対する、自由で、誰にでもアクセス可能で、安全で、品質の高い教育の確保について、不十分なリソースしか入手可能でないこと。

(18)性的搾取の目的を含め、人身売買に向けられた法とプログラムが、児童の見地に立って、その出身地に帰す場合の児童の安全を保証し、その権利の完全な回復を行う本国送還手続きを通じたものを含め、児童の被害者の特別な状況とその特別な保護の権利をあまりにもしばしば認めていないこと。

(19)多くの国が、その完全な社会復帰とその完全な肉体的、精神的回復を含め、性的搾取の児童被害者のあらゆる適切な支援を確保する目的でのあらゆる実行可能な措置を取っていないこと;そして、この支援が、(法執行、入国管理、ソーシャルワーカー、精神的、肉体的健康の専門家、住宅と教育のサービスを含め、)必要なパートナー間の効果的な協力の欠如によって危うくなることも良くあること。

(20)児童と青少年の性的搾取と家庭暴力の間の結びつきが、十分に警察とプログラムにおいて認識されていないこと。

(21)児童と青少年の性的搾取の発生率と性質、及び児童と青少年の性的搾取を抑止し、止め、その被害を受けた者を支援するための、法的、社会的その他の措置の効果に関する、信頼できる、地域毎のデータが欠如し続けていること。

(22)情報が、児童の保護と抑止、法執行と被害者支援の領域において、更新されている知識と現場ベースの経験の蓄積に基づかない形で、流通し続けていること;そしてえ、経験と学んだことについて、不十分な積極的共有しかないこと・

B.宣言

 児童と青少年の性的搾取に対する第3回世界会議の参加者の、政府代表、政府間組織、非政府組織、人権団体、オンブズマン、民間部門、法執行・法律コミュニティ、宗教指導者、国会議員、研究者と大学関係者、市民団体と児童と青少年は、児童と青少年の性的搾取を抑止し、止めるために必要な措置を自ら優先事項として取ることを誓約する。

(1)あらゆる形式の虐待と搾取から児童を保護するための国家の義務の履行についての国際的な人権基準が、私たちの導きとなる。

(2)児童と青少年の性的搾取を抑止し、止めるための私たちの努力は、より広い政策枠組みの中で、主流の戦略により、この児童の権利の深刻な侵害の根本原因に向けられなければならないと、私たちは認める。特に、極貧の中で生きる人々の割合を半減し、全ての児童が初等教育を全うすることを確保し、エイズの拡散を止め、引っ繰り返すための、ミレニアム・ディベロップメント・ゴールを達成することを、私たちは再び言明する。

(3)両親、(拡大された)家族と他のコミュニティの世話人が、性的搾取から児童を保護、抑止することにおいて果たし得る重要な役割と、彼らと他の世話人に適切な支援を提供する必要性とを、私たちは認める。

(4)児童に対する暴力に関する国連事務局研究における勧告を、私たちは歓迎し、そのフォローアップ、財政的、人的その他のリソースにより支援すると言明し、(任命されることになっている)児童に対する暴力に関する国連事務局特別代表並びに児童と武力紛争に関する国連事務局特別代表と、関係する特別な手続き、特に、児童の売買、児童の売春と児童ポルノに関する特別報告者と人身売買に関する特別報告者の仕事に助力する。

(5)児童と青少年の性的搾取に対する包括的な対策は、あらゆる形式の児童の労働に対する戦いに注力するべきであると、私たちは認め、それにより182の参加国が-児童と青少年の性的搾取を含め-これら全ての形式を2016年までに根絶すると自ら言明した、国際労働機関の児童の労働の最悪の形式に対する世界行動計画による2006年の裏書きを、私たちは歓迎する。

(6)国際的、地域的、そして国の人権団体と市民団体への、その児童と青少年の性的搾取に対する措置の実施を推進し、報告を作成する努力における協力と支援を、私たちは行う。

(7)例えば、適切な資金を整えられた児童と青少年の勧告委員会、コミュニティベースのプログラムとピア・ツー・ピアの取り組みなどを通じたものなど、持続可能な形で全てのレベルにおいて、性的搾取の児童の被害者として又はそのリスクにさらされている者としてを含め、意味のある児童の参加を組織化する措置と構造を、私たちは支援し、リオ会議において作られた青少年勧告の実施を目的とする措置も(この勧告文書については、この文書の付録を見よ)、私たちは支援する。

(8)的を絞った、性に関する情報伝達、教育とコミュニティの動員を通じて、あらゆる深刻な児童と青少年の性的搾取を否定し、その否定的な影響を、特に、児童と青少年の性的搾取、児童を性的な対象物として扱い又は見ることを許容し、持続させている信仰と価値観を否定する努力を、私たちは強化する。

(9)あらゆる形式の児童と青少年の性的搾取、特に児童と青少年の性的搾取の性質と範囲;児童の性的搾取の精神的、肉体的健康への影響;用いられる様式、行為者、機構と場所の変化を含む新たな現れ、学校とケアと司法機関における児童と青少年の性的搾取;児童と青少年の性的搾取を抑止し、止め、これに対抗するために取られた、法的、社会的又は他の措置の実施とその影響;児童と青少年の性的搾取を持続させている要求;児童に対する性犯罪の助長と行為に関わっている者;少年の性的搾取;性的搾取との関係における児童の脆弱性と回復力;児童と青少年の性的搾取を抑止し、保護することに対する、様々な社会的、文化的文脈中での、児童間のバーチャルな交流の性質と影響とその潜在的な力;社会的価値と振る舞いにおける、特に児童と青少年の性的搾取における、世界的な消費者文化の影響;介入が適切で効果的なものであることを確保する観点からの、加害のパターン;に関する調査について、私たちは開始し、資金を供給し、その結果を共有する。

(10)取られる行動は全て児童の最善の利益にかなうものであり、全く害のないものであることを確保する観点とともに、効率の特別な指標を開発し、児童と青少年の性的搾取の領域で私たちが作成又は実施する全ての試作と計画の児童に対する影響を測ることに、私たちは取り組む;そして、将来のより良い理解と行動に寄与し、可能な限り実証に基づいた情報が、児童と青少年の性的搾取を抑止し、保護する効果的な施策と計画の作成と実施に用いることを確保し、その被害を受けた者を支援するために、-肯定的なものと否定的なものの双方ともについて-学んだ事項を共有する。

C.行動の呼びかけ

 非政府組織、民間部門と青少年も含め、国際機関と市民団体の支援を受け、あらゆる形式の性的搾取から児童と青少年を保護する強固な枠組みを確立し、実施するため、私たちは、以下のことを行うよう全ての国々に呼びかける:

Ⅰ-国際、地域ツール

(1)適切なものとして、児童の権利に関する国連条約と児童売買、児童売春と児童ポルノに関する付属議定書、1999年の児童の労働の最悪の形式に関する国際労働機関条約182、国際組織犯罪に対する国連条約を補完する、人身売買、特に女性と児童の売買を抑止し、抑圧し、処罰するための国連議定書、女性差別撤廃条約等がある、関係する国際的ツールの批准に向けて努め続けること。

(2)適切なものとして、児童の権利と福祉に関するアフリカ憲章、ASEAN憲章、未成年の国際売買と女性に対する暴力に関するアフリカ間人権条約、売春のための女性と児童の売買の抑止と対抗に関するSAARC条約、欧州理事会の非参加国でも批准可能な、人身売買対抗、サイバー犯罪と性的搾取と性的虐待に対する児童保護に関する欧州理事会条約があげられる、関係する国際的ツールの批准に向けて努め続けること。

(3)その国の報告内容の文脈において児童の権利委員会の結論と勧告を適切に考慮に入れ、参加各国は、児童の人権と、児童売買、児童売春と児童ポルノに関する条約の付属議定書の実施に必要な全ての措置を取るべきである。全ての国は、これを重要な参考として用いることを促される。

Ⅱ-性的虐待の形式とその新たなシナリオ

児童ポルノ/児童虐待画像

(4)バーチャルな画像と児童の性的搾取の表現物を含め、児童ポルノの故意の製造、頒布、入手及び所有、並びに、児童との肉体的接触を含まないものであったとしても、そのようなマテリアルの故意の消費、アクセス及び閲覧を犯罪化すること、法的責任は、マテリアルの製造及び/又は拡散に関わるなどの責任がある場合には、企業のような主体にも拡張されるべきである。

(5)児童のオンライン及びオフラインの虐待への誘引のための、及び児童ポルノと他のマテリアルを製造し拡散するためのインターネットと新技術の使用と、児童ポルノとを抑止し、止めるため、特別な、的を絞った行動を取ること。被害者の特定と、特別なスタッフによる支援とケアが優先的に行われるべきである。

(6)インターネット、携帯電話と他の新技術の児童の性的搾取のための利用のリスクの理解を深める見地から、どのように自身を守り、児童ポルノとオンラインの児童搾取事件についてどう助けを求め、報告するべきかについての情報を含め、児童、親、教師、青年組織、他の児童と関係して及び児童のために働く者に焦点を置いた、教育的な、意識向上キャンペーンを行うこと。

(7)インターネット・サービス・プロバイダー、携帯電話会社、検索エンジンと他の関係者に、児童ポルノサイトと児童の性的虐待画像を報告し、削除することを求めるために必要な法的措置を取り、結果を監視するための指標を開発し、その努力を促すこと。

(8)インターネット・サービス・プロバイダー、携帯電話会社、インターネットカフェと他の関係者に、そのビジネスにおける児童保護措置の採用を可能とする法的ツールの開発とともに、自主行動指針と他の社会的協力責任機構を開発し、実施するよう、呼びかけること。

(9)金融期間に、児童ポルノへのアクセスを助長している、そのサービスを通じた金銭取引の流れを追い、止めるための行動を取るよう、呼びかけること。

(10)インターポールの指揮下で、児童の性的虐待画像を含むウェブサイトの共通リストを作ること、統一的基準に基づき、そのアクセスはブロックされることになる;このリストは、継続的に更新され、国際的なレベルで交換され、アクセスブロッキングの実行のためにプロバイダーによって使用される。

(11)民間部門の領域において、デジタル電子機器によって取られた画像を特定し、それを追い、取り下げ、その加害者の特定の役に立つ、強固な新技術の研究開発を行うこと。

(12)その性的搾取を即刻止め、その完全な回復に対して必要な全ての支援を提供する観点から、被害者を調査し、これを追う、強固な新技術の、公的/民間の協力による研究開発を促進すること。

(13)フィルタリング利用支援等、児童の不適切で有害な画像をブロックするための、親と他の世話人に簡単に入手可能で手頃で使いやすい技術を作るここと。

売春における児童と青少年の性的搾取

(14)成人が児童の年齢を知らなかった場合であったとしても、児童から性的サービスを受けるための、性の売買又は他のあらゆる形式の取引を、刑法下の犯罪行為とすることで、児童を売春に導く要求に対抗すること。

(15)売春において搾取された児童のための特別で適切なヘルスケアを提供し、児童の回復の集中的な地方モデル、ソーシャルワークシステム、現実的な経済的選択肢と総合的な対策のためのプログラムにおける協力を支援すること。

旅行における児童と青少年の性的搾取

(16)旅行、観光と旅館部門において、例えば、旅行と観光における児童保護のための行動指針への参加とその実施などにより、職業的行動指針の採用を促し、支援すること;児童保護を中心とする企業の社会的責任戦略を適切に取り入れたビジネスを用いることを促進すること;そして/又は、これらの参加に対する他のインセンティブを提供すること。

(17)国内及び国際旅行者による児童と青少年の性的搾取を抑止するため、統制の取れていない観光について、全ての利害関係者が特別な注意を払うことを確保すること。

(18)適用される法律と人権基準に一致する形で、インターポールの「グリーン・ノーティス」システムのような、国際的な旅行通知システムの確立のために協力すること。

(19)捜査を保証し、十分な証拠が存在する場合には、外国で児童を性的に搾取したと報告された又はその容疑を受けた自国民に対して適切な告訴がなされ、強力に追及されることを確保すること。

(20)観光における児童の性的搾取を宣伝するマテリアルの製造と拡散を禁止すること;そして、児童を性的に搾取した場合には、刑罰が科されることについて旅行者に注意をすること。

(21)新たに登場して来ている旅行者の目的地を監視し、観光サービスの開発に関わる民間部門の協力者と協力して、公平な開発を促進する社会的及び環境的に責任の取れる戦略の使用を含め、児童と青少年の性的搾取を抑止するための積極的な措置を確立すること。

児童と青少年の人身売買と性的搾取

(22)児童を人身売買に対して脆弱にしている社会的規範と慣習と経済社会的条件について対話し、これを批判的に点検する観点から、児童と青少年を含め、コミュニティを動員し、適切な場合に、彼らがそのプログラムの実施と監視に参加するように、彼らを戦略とプログラムの作成に取り込む手続きを確立すること。

(23)コミュニティベースの、児童の人身売買の被害者のための抑止と回復と更正と復帰のプログラムの成功モデルを先導し、採用し、反復すること。

(24)国境を越えるものだけでなく、国際的な児童の人身売買に向けられた、なにより、出身地への児童の帰還の必要性とリスクの注意深い評価など、児童の見地に立った児童の安全な送還及び帰還のための標準的な手続きを含む、児童の最善の利益の考慮を確保するための施策とプログラムを確立すること。

(25)例えば、その権限を有している機関の間の協力を確立し、児童を中心とする人身売買事件の捜査ため、犯罪者としてではなく保護を必要とする被害者として売買された児童を扱うための明確なガイドラインを出す等、法執行機関員の国境を越える国際協力の強化を続けること。

(26)全ての同伴者のいない売買された児童のために守護者が遅滞なく指名されることを、復帰のための効果的なシステムと全ての売買された児童の書類作成の確立を、全ての売買された児童に、長期間の保護だけでなく、その長期に渡る完全な回復と社会復帰のために必要な経済的、精神社会的支援が提供されることを確保するための法的その他の措置を取ること(人身売買の被害児童の保護のためのユニセフガイドラインと児童の最善の利益の評価のためのUNHCRマニュアルに一致するように)。

(27)市民団体と児童の関与する形で、児童の人身売買を抑止し、止めるためのプログラムと施策の、そして、例えば、婚姻、無償教育、養子と移住、出生登録、市民権の付与、難民又は他の地位に関する法律について、人身売買に影響する立法の、定期的な評価を行い及び/又は支援すること。

Ⅲ-法的枠組みと法律のエンフォースメント

(28)性的同意又は婚姻又は文化的慣習の年齢にかかわらず、成人が児童の年齢を知らなかった場合であったとしても、その管轄において、あらゆる児童と青少年の性的搾取行為を、既存の国際的人権基準に一致する形で、規定し、禁止し、犯罪化すること。

(29)加害者の効果的な訴追と適切な処罰を達成するため、児童と青少年の性的搾取罪については相罰性の要件を撤廃し、効果的な越境管轄を確立し、相互の法的助力を容易にすること。あらゆる児童と青少年の性的搾取行為を、既存の又は新たに確立された送還条約において、送還可能な罪とすること。

(30)その国の状況において適切な場合に、児童と青少年の性的搾取に関係する越境法規を積極的に執行する、主導的法執行機関を指定すること。

(31)性的搾取の児童被害者が、その性的搾取に直接的に関係するその行為によって、犯罪者とされたり、罰されたりされず、法的に被害者の地位を与えられ、そうとして取り扱われることを確保すること。

(32)児童に対する性犯罪に対処し、司法と法執行機関員に専門の訓練を施すため、警察権力中に、特別の性/児童に関する部署を設置すること、それが適切な場合には、ヘルスケア、ソーシャルワーカーや教師といった他の職業の者も取り込むこと。

(33)腐敗こそ効果的な法執行と児童保護に対する主たる障害であると認識し、法執行と司法並びに他の児童のケアの義務を負う機関における腐敗に対抗すること。

(34)リスク評価と加害者の管理プログラム、(刑事罰においてではなく適切な場合に追加される)自主的な拡張総合復帰サービスの規定、有罪判決を受けた加害者の安全な復帰、グッドプラクティスの収集と共有と、適切な場合には性犯罪者登録を通じたものなど、性犯罪者の振る舞いと再犯を防ぐための、国際的、地域の、国の法的機構とプログラムを確立し、実施すること。

Ⅳ-部門を超えた統合施策と国の行動計画

一般事項

(35)児童と青少年の性的搾取に対する国家総合行動計画の作成と実施、又は、国家開発計画のような既存の関係する計画の枠組みにこれを含め、この計画が、全ての利害関係者がともに総合的で統一の取れた枠組みの中で行動するよう、多部門間の口頭での意見交換アプローチに基礎を置いたものであることを確保すること。この計画は、適切な監視と評価を目的としたリソースと、児童と青少年の性的搾取を抑止し、止め、性的搾取の児童被害者を支援するための取り組みの実施のための市民団体等、指定される責任を有する関係者とともに、性に関する戦略、社会的保護措置と実行計画を組み込むこと。

(36)例えば、(性を基礎とするもの等の)差別、有害な慣習、児童の結婚と性的搾取を許容する社会規範等の、児童と青少年の性的搾取に寄与する現象に対抗するため、総合的な国の児童保護システムの枠組みにおける、コミュニティベースの計画等、多部門の施策と計画を促進し、支援すること。

(37)意識向上と、児童と青少年の性的搾取と人身売買を抑止することを目的とした、キャンペーンにより、ピア・ツー・ピア青少年計画を通じて、施策と計画のデザイン、監視及び評価において、あらゆるレベルで児童と青少年の意味ある参加を促進し、そのために資金を供給すること。

(38)適用される法律に一致する形で、児童に対する助力を促し、児童との性交渉の要求に対抗するため、信頼のおける情報の収集と共有と国境を越える協力を開始し、支援し、被害者と加害者のデータベースに貢献すること。

抑止

(39)その領域内において生まれる全ての児童が、その出生後、即座に、無料で登録されることを確保し、未登録児童、リスク下、取り残された状況下にある児童に対して特別な注意を払うこと。

(40)教育機関の役割と、あらゆる形式と源における児童の性的虐待と性的搾取に対し、これを探知し、告発し、助力するスタッフを強化すること。

(41)例えば、意識向上のための教育的キャンペーン、親の支援、貧困の根絶等を通じて、児童と青少年の性的搾取の抑止を強調し、その一方で、性的搾取の被害を受けた児童に支援とサービスを提供する多部門の照会機構を強化し、確立すること。

(42)性的搾取から解放されるため、自身の権利についてより深い知識と、児童が、成人の協力を得て、性的搾取を止められるよう、虐待に対抗する上で助けとなる入手可能な手段を得られるよう、児童を支援すること。

(43)変わりつつある同時代の価値と規範と、その性的搾取に対する脆弱性の増加の潜在との意味のある形での批判的検証を、児童に促すこと。

(44)少年と男性による少女と女性の権利の尊重を促進、強化し、児童と青少年の性的搾取へのその関与を止め、思いとどまらせるための行動の取り組みに彼らを参加させる、様々な文脈を通じた要素を特定するため、同時代の少年と男性の社会化のパターンに関する調査を行うこと。

児童保護

(45)必要な予算の割り当てを含め、児童をあらゆる形式の暴力と虐待から保護することを目的とし、児童が最もリスクにさらされる状況の特定に基礎を置いた、総合的で統合された国家児童保護システムの開発を通じて、児童と青少年の性的搾取に対抗する努力を増すこと。

(46)児童福祉に責任を有する地位にある者に対して報告義務を課すこと等により、2013年までに、実際の性的搾取またはそう疑われる事件の児童被害者についての報告、フォローアップと支援のための、効果的でアクセス可能なシステムを確立すること。

(47)性的搾取の報告を秘密に行い、適切なサービスの照会を探すことを、児童に促し、世話人に求めるため、特に、ケア及び司法機関にある児童のために、電話又はウェブベースの既存の救援ラインを開発又は強化し、このような報告機構のオペレーターが適切に訓練され、監督されることを確保すること。

(48)差別無く、少年少女の、全ての性的搾取の児童被害者に、その完全な肉体的、精神的回復と社会復帰と、適切な場合に行われる、家族の再統合と、さらなる搾取のリスクを低減するための支援と強化を家族に行う介入とを提供するため、既存の国の児童保護サービスを強化するか、新たなサービスを確立すること。

(49)これらのサービスが、児童の、親の又は法的保護者の人種、色、性(又は指向)と社会的出身にかかわらず、障害を持った児童も含め、あらゆる差別なく全ての児童に届き、少数人種、先住民の児童、避難民、国内で従事する又は路上に住む児童、紛争又は緊急事態により移住した児童からも、アクセス可能で、適切なリソースを受け、総合的で、児童と性を意識したものとされることを確保すること。

(50)性的就業者の児童と売春宿に住む児童に支援と保護を提供するプログラムを開発すること。

(51)その国の関係法規と手続きを考慮に入れ、捜査又は裁判手続きにおける特定、又はメディアによる公開からの保護のため、性的搾取の児童被害者と児童加害者のプライバシーを促進、保護し、これらの手続きが児童に優しく、その手続きにおいて、その加害者を司法に導くことを児童に可能とすることを確保すること。

(52)他の児童と青少年に有害な性的暴力行為を見せる児童と青少年が、適切なケアと、最初のオプションとして、他の者の安全に関する適切な考慮と彼らの最善の利益の間のバランスが取られ、児童から自由を奪うことは最終手段としてのみ追及されるべきであるという原則に一致することが確保された、性を意識した、児童中心の措置とプログラムを通じた注意とを受けることを確保し、このような児童のケアに責任を有する者が、関係する文化的に適切な訓練と能力を有する者とすることを確保すること。

Ⅴ-国際協力

(53)児童と青少年の性的搾取行為に責任を有する者の抑止、捜査、訴追と処罰のための、多国間、地域の、二国間の協定を強化するのに必要なあらゆるステップを取ること。

(54)児童と青少年の性的搾取を抑止し、止めるための具体的な行動を可能とし、これを支援する観点から、政府の大臣、基金体、国連の機関、非政府組織、民間部門、就業者と従業員の団体、メディア、児童の組織と他の市民団体の代表の間の協力の増進のため、2013年までに、国の、地域の、国際的レベルでの協力を促進するための具体的な機構及び/又は手続きを確立及び/又は改善すること。

(55)なされた勧告の実施における進展を監視し、フォローアップを強化するために、性的搾取に対抗するものもの含め、児童保護について、交換、協力、その進展の監視のための、既存の地域の機構の効率を強化、改善すること。

(56)そうするべき地位にある時には、児童と青少年の性的搾取に対抗するための多国間、地域の、二国間その他の既存のプログラムを通じて、財政的、技術的その他の助力を提供すること;そして、この領域における児童と青少年の取り組みのための基金の可能性を探ること。

(57)企業経営、特に、観光、旅行、運輸、金融サービス、そして、通信、メディア、インターネットサービス、広告と娯楽部門の、企業の社会責任を促進し、支援するための施策とプログラムを、それが適切な場合は、国連の機関、非政府組織、市民団体組織と民間部門、就業者と従業員の団体の支援を受け、開発すること;児童の権利を中心とする施策、基準と行動指針は、サプライチェーンを通して実施され、独立の監視機構を含む。

(58)インターポールの国際児童の性的虐待画像データベースを支援し、これに寄与し、児童と青少年の性的搾取の国内のデータを素早く更新するために、国内で中心となる責任を有する者か組織を指名し、国境を越える(国際的な)法執行の支援とその効率の強化のために、この情報を体系的にインターポールと共有し、特に警察の捜査活動のために多国間の協定を結ぶこと。

(59)児童の商業的性的搾取への犯罪組織の関与を抑制し、止め、この形式の組織犯罪に責任を有する自然人又は法人を司法へと導くための、国際的、国の協力措置を取ること。

Ⅵ-社会的責任に関する取り組み

(60)プログラムと計画の開発(パラグラフ22、23、56と57);行動指針(パラグラフ8と16);調査(パラグラフ11と44);協力と行動(パラグラフ5、6、9、12、13、21、42と43)に加えて、その製造チェーン並びに就業者と従業者の団体を通じて、そのノウハウ、人的、金銭的リソース、ネットワーク、構造及びてこ入れの力による貢献により、児童と青少年の性的搾取を抑止し、止めるあらゆる努力に積極的に参加することを、私たちは、民間部門に促す。

Ⅶ-監視

(61)児童のオンブズマン、又はそれと等しいもの、又は既存の人権団体又はオンブズマン組織において児童の権利に焦点を当てるもののような、独立した児童の人権団体を、2013年までに確立し、参加国に、児童の権利委員会の第2一般委員会の国連児童権利条約の重要性を際立たせること;児童と青少年の性的搾取の抑止、このような性的搾取からの児童の保護と、性的に搾取された児童の権利の回復のために取られる行動の独立監視、効果的な法的枠組みと執行の宣伝と、必要な場合は、これらの組織の前で非難を述べることの可能性も含め、児童の被害者が効果的な回復措置を受けることを確保する上で、これらの主体は、主要な役割を果たすべきである。

私たちは、児童の権利委員会に、次のことを促す:

(62)性的搾取から児童の権利を保護する参加国の義務の履行の進展の点検をし続け、児童の権利条約とその付属議定書の下での報告の検討において、リオ行動宣言における勧告に特別な注意を払うこと。

(63)この点についての国内法と施策の進展、実施と執行に関する国への細かな指導も含め、性的搾取、性的な目的での人身売買、児童の誘拐と売買からの児童の権利の保護に関する一般コメントを優先事項として採用すること。

(64)児童の権利保護について人権最高理事局との協力を続け、関係する国際的、地域の人権機構の意識を向上させること。

私たちは、他の国連の人権条約関連機関、人権理事会の特別手続きと、国連事務局の特別代表並びに地域の人権機構に、次のことを促す:

(65)その個々の権限内で、その国の報告、視察を通じた、そのテーマの仕事及び/又は他の活動における、児童と青少年の性的搾取との戦いに特別な注意を払うこと。

私たちは、人権理事会に、次のことを強く勧める:

(66)児童と青少年の性的搾取を抑止し、止めることを含め、そのような搾取の児童被害者の権利が完全に尊重されるよう、世界定期検証プロセスが、国の児童に対する義務の履行の厳格な審査を含むことを確保すること。

私たちは、任命されることになっている児童に対する暴力に関する事務局の特別代表、児童と武力紛争に関する事務局の特別代表、児童売買、児童売春と児童ポルノに関する特別報告者と、人身売買に関する特別報告者と、児童の権利委員会と協力している他の適切な権限を有する者に、次のことを強く勧める:

(67)児童の性的搾取の抑止及びこれへの対抗の領域におけるそのワークマップの経験を通じて、重複を避けて働き、児童と青少年の性的搾取を抑止し、止めるその効果を最大化すること、そしてその効率を評価すること。

私たちは、国連の機関、非政府組織と人権団体に、次のことを促す:

(68)児童と青少年の性的搾取の程度とこれへの対抗に関する情報について支援し、これをこれらの主体に提供すること。

(69)児童を性的搾取から保護することについて、その教育と能力向上における役割を強化するよう、広告において児童を性的に扱うことを含め、メディアの有害な力を削ぐように、メディアに働きかけること。

私たちは、世界銀行と国際通貨基金のような国際金融機構に、次のことを呼びかける:

(70)社会サービスと権利へのアクセスを必然的に制限するローンの条件を含め、児童とその家族に対するあらゆる否定的な社会的影響に対抗するという観点から、その現在のマクロ経済と貧困削減の戦略を再点検し、児童の性的搾取のリスクを最小化すること。

私たちは、宗教コミュニティに、次のことを呼びかける:

(71)児童を含め、あらゆる者の本質的な尊厳に関するその総意に照らして、児童と青少年の性的搾取を含め、あらゆる形式の児童に対する暴力を排除し、この点で、多宗教間の協力と、政府、児童組織、国連の機関、非政府組織、メディアのような他の中心利害関係者と協力関係を構築し、その精神的権威、社会的影響力と指導力を用いて、児童と青少年の性的搾取の終止に向けてコミュニティを指導すること。

D.フォローアップ

(1)私たちは、この行動宣言の最も有効なフォローアップのため、以下のことを言明する:

-国のレベルで、特に、リオ行動宣言の実施のために取られた措置に関する2年毎の公開報告により、実施の監視について責任を負う名をあげられている機構において、なされた進展となされるべき試みに関する議論を促進/開始すること、その一方で、このような要請を児童の権利委員会の国の報告に統合すること。

-国際的レベルで、リオ行動宣言に関する意識を維持し、その実施を促進する観点から、関係する人権条約機関、人権理事会の特別手続きと国連事務局の特別代表の協力行動を促進、支援すること。

(2)民間部門に、国連グローバル・コンパクトに参加し、児童と青少年の性的搾取に対抗する観点でのその実施の進展を報告することを促し、企業の協力んおためのこのプラットフォームの実現を支援し、ベスト・プラクティスを共有すること。

付録

児童と青少年の閉会宣言

2008年11月28日、リオ・デジャネイロ、ブラジル

私たち、世界の子どもたちは、世界の現在と未来である、私たち子どもに、この第3回世界会議で発言の機会を与えてくれたことについて、ブラジル政府と他の各国政府と責任を有する機関を賞賛します。

児童はあまりにも多くの成人による性的搾取により苦しんで来ました。しかし、組織化され、統一され、私たちは、被害者から行為者となりました。私たちの児童組織は、自分たちを守り、自分たち自身の権利を守る強さを私たちに与えてくれました。

私たちはここで、この問題との戦いの進展に寄与し、さらに大きくなり続けているこの問題に関する意識を向上させたいと思っています。私たちは、大人を、私たちの両親と、私たちの様々な国の生活規則を尊重しています。ですが、私たちは、あなた方皆からの尊重も求めます。あらゆる者が、尊重を受ける権利を有しており、これは全ての者が取るべき態度です。

しかしながら、私たちに発言の機会を与えてくれたことだけでは十分でなく、あなた方は聞かなければなりません。緊急の行動を求める私たちの呼びかけを聞き、私たちの経験を聞き、最も重要なこととして、私たちの解決策を聞かなければなりません。

私たちがここで始めた仕事は、ここで今日、会議室が空になり、白熱した議論がここリオ・デジャネイロで沈黙した時に、終わるものではありません。私たちは、特に性的搾取の事項に関する児童の権利に関する議論が再び沈黙することを許せません、私たちは、以前とは異なり、世界中で変化の呼びかけを喚起していかなければならないのです。

今、私たちは、子どもの性的搾取との戦いと高いリスクにさらされているか被害者となった子どもの救援のため、政府、非政府組織、メディア、民間部門、地方の権威とより多くの子どもが私たちに加わることを必要としています。

私たち、世界の子どもたちは、自分たち自身、そして同じくあなた方に、この会議の手続きの公開を、あなた方のコミュニティ、あなた方の国と地域と共有し、このメッセージをさらに続かせることを求めます。

私たちが、おぞましく邪悪な子どもの性的搾取の問題をひとたび永遠に歴史の遺物とするとできるとして、あなた方、政府、非政府組織その他の社会的協力者は、次のことをしなければなりません:

1.より子どもに優しいサービスと子どもと青少年の性的搾取事件のより効果的な抑止、監視と取り扱いを促進するよう、子どもの権利の効果的で完全な実施が、全ての部門で改革されることを確保するため、それぞれの国で、オンブズマン組織を設立すること。

2.この癌のような問題に脆くもさらされ続けている者を保護するため、世界中で、ユニセフその他の国際的又は地域グループの資金供給を受け、地域コミュニティに、児童保護機関又はセンターを設置すること。

3.さらに、子どもによって主導される、子どものためのフォーラムと組織が、性的搾取の抑止における子どもと青少年の参加を確保するために、設立される必要があります。

4.私たちは、子どもの権利を取り扱う主だった政府機関と国際機関が子ども大使を持つことを求めます。

5.この会議に従って、この会議の決定に手を付け、採用し、6月以内に私たちの様々な文化的現実に合わせる、国と地域の意見交換を、私たちは求めます。さらに、世界の政府に、私たち子どもに、自分たち自身の声を聞かせることを促すよう求めます。

6.追加として、毎年6月毎に、この意見交換を続け、子どもの性的搾取と一般的な子どもの権利に関する事項について議論し、子どもの参加の制度化を促進することを、私たちは望みます。この意見交換から持ち上がってくる、地域の報告は、ユニセフに送られ、国際報告とされて、世界中に拡散されます。

7.今この時に、私たちは、地域と国際的レベルの両方で、子どもの利益、保護と福祉を増す法律と施策を実行するよう、政府の行動を呼びかけます。しかしながら、これらの子どもに対する攻撃を食い止めるという空約束を政府がするということを単純に許すことはできません。したがって、私たち、子どもたちは、この各国における行動計画を監査する行動委員会が作成されることを求めます。

8.意識向上キャンペーン、大会と行進における努力を子どもが主導する、国際的な日の採用も、私たちは呼びかけます。この日の範囲をさらに広げるため、国際的な芸術、エッセイとスピーチコンペティションを組織し、この日にとりまとめられることを、私たちは求めます。

9.メディア、特に世界中で何百万もの子どもに対する最大の脅威の1つとなっているインターネットに、私たちは今注意を向けています。

Stop X.orgは、この会議から、性的搾取に対する戦いにおいて大きなリソースを出しました。したがって、このウェブサイトが、この世界会議の全ての活動と結論のアジェンダをリスト化し、文書を投稿する掲示板を提供し、私たちの仕事の進展を近く監視し、最も重要なこととしてこの事項とアイデアの進展に関する議論を続けることを、私たちは求めます。

10.私たち子どもたちは、インターネット、特に、児童ポルノと類似の他の形式の虐待に対する厳格で懲罰的な立法を、各国政府に追及させるため、私たちは、自分たちの誓約を知らしめます。

11.このウェブサイトとコミュニティの中で、強力なサイバー安全ルールが広く伝搬されることを、私たちは同じく求めます。この目的のため、子どもの性的搾取に関する補足情報を提供することに加えて、インターネットの脅威に向けられた子ども、教師、親と家族のマニュアルがより多く開発されるよう、私たちは呼びかけます。

12.さらに、この問題についての知識を増すため、文書、報告、書類、CD、ビデオその他のマテリアルを集めることを、私たちはメディアに委任します。

私たち、世界の子どもたちは、これらの施策を熱心にかつ情熱的に追求し、今日世界中で悩みの種であり続けているこの現象を終わらせるために肯定的なステップが取られていないと見られる場合、私たちの政府に行動を呼びかけることを誓います。

世界の子どもと青少年は、全イベント参加者に、あなた方が私たちの年齢で、私たちと同じ発展段階にあり、人々の心に触れることはより易しかった時のことを思い出し、世界中で、子ども・青少年時代を通じた幸福で調和の取れた発展を阻害するこの世界的問題を根絶するため、交差する前線で、ともに戦うという私たちの言明を熟考し、確認することを求めます。

私たち、世界中の子どもと青少年は、この結びの文書によって、私たちが感じ、考え、子どもの性的搾取に対する戦争に対する勝利のために達成したいと思っていることを表明していることをここで確認します、というのも、既に開会文書で述べたように、決定は私たちの手の中にあるのですから。

疑いなく、第3回の世界会議の閉会から私たちが面と向かう最大の挑戦は、様々な影響をもたらすことでしょう。

全人類は、偶然の産物ではなく、その足跡を残すべく、私たちは、自分たちの現実と経験を通じて人生にもたらされる自分たちの目的を実現しなければならないものであると、私たちは確信しています。もし私が自分の両親が私に残したのと同じ世界を残すとしたら、私の人生は無意味なものでしょう、ですが、もし私の人生が私の後継者を富ませるとしたら、私の人生は正当化されることでしょう。

今日、私たちは、この重要な世界のイベントに参加し、世界によりよい地位を与えようと自分たちの砂粒を積み上げるという言明を示すことだけからも、歴史を作りつつあります。最初の世界会議から第3回の世界会議まで、この問題についてより大きな社会的意識が作られていますが、私たちはより少なく語り、より多く行動する必要があるでしょう、というのも、それにより各国の当局によって多くの決定がなされて来た提案と提言の結果を見るまで始めた時から10年以上が経過しているのですから、彼らには次のように私たちは言うでしょう:

私たちは、政府、社会、非政府組織、国際機関と、子どもと青少年の性的搾取と戦うと言明した全ての者とともにあります。子どもの創作力、青少年の参加と成人の経験を合わせれば、私たちは、私たちの見解を、子どもと青少年の性的搾取を止めよという1つの叫びに変えられるのです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年8月14日 (土)

第235回:総務省・ICTの利活用を阻む制度・規制等についての意見募集に対する提出パブコメ(その2:一般的な情報・表現・ネット規制関連)

 前回の続きで、8月20日〆切で、総務省からかかっているパブコメの「ICTの利活用を阻む制度・規制等についての意見募集」(総務省のリリース、電子政府HPの該当ページ参照。internet watchの記事ITproの記事も参照)に対する提出パブコメを載せる。ここに載せるのは、下の目次で、(10)の出会い系サイト規制から(19)携帯電話事業者による差別的なダウンロード容量制限までである。

 良いニュースは何もないが、一緒に少し最近の話も紹介しておくと、「チラシの裏(3周目)」や「表現規制について少しだけ考えてみる(仮)」で取り上げられているように、男女共同参画会議が8月31日〆切で再びパブコメを募集している(内閣府のHP参照)。この会議もいい加減何をどうしたいのだかさっぱり分からないが、このパブコメについては私も出すつもりでいる。

 また、京都では府知事が児童ポルノ単純所持条例の検討をすると言い出すなど(共同通信の記事参照)、相変わらず地方自治体での危険な動きも止まるところを知らず、地方自治体絡みでも当分キナ臭い日々が続きそうである。

 次回のエントリは、リオ宣言の話か、海賊版対策条約の話か、上の男女共同参画会議の話か、書けたものから載せたいと思っている。

(目次)
(1)ダウンロード違法化
(2)DRM回避規制
(3)コピーワンス・ダビング10・B-CAS
(4)私的録音録画補償金制度
(5)著作権保護期間
(6)一般フェアユース条項の導入による著作権規制の緩和
(7)著作権の間接侵害・侵害幇助
(8)著作権検閲・ストライクポリシー
(9)模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)
(10)出会い系サイト規制
(11)青少年ネット規制法・青少年健全育成条例・携帯フィルタリング義務化
(12)児童ポルノ規制・サイトブロッキング
(13)インターネット・ホットラインセンター・日本ガーディアン・エンジェルス・日本ユニセフ協会
(14)情報公開法
(15)国際組織犯罪防止条約・サイバー犯罪条約及びこれらの締結に必要な法改正・ウィルス作成罪
(16)公職選挙法
(17)天下り
(18)メール検閲・DPI技術を用いた広告
(19)携帯電話事業者による差別的なダウンロード容量制限

(以下、提出パブコメ)

(10)出会い系サイト規制
○項目
 出会い系サイト規制

○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
 出会い系サイト事業者の届け出の義務化を中心とする、出会い系サイト規制法の改正法が年の5月に成立し、同年12月から施行されている。その後、2009年の2月から3月にかけて、警視庁が、SNS各社に対して書き込みの削除要請をし、あるSNSでは内容の精査も無いまま「出会い」に関するコミュニティが全て削除されるということが起こった(http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0904/02/news085.html参照)。2009年5月には、やはり警視庁が、SNSサイトの年齢確認の厳格化を要請しており(http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20392643,00.htm参照)、2009年6月には、無届け出会い系サイト運営容疑で逮捕者まで出ている(http://journal.mycom.co.jp/news/2009/06/02/057/index.html参照)。

 警察による出会い系サイト規制法の拡大解釈・恣意的運用によって、ネット利用における不必要かつ有害な萎縮効果が既に発生していることは、一般サイト事業者に対する警察からの要請とその反応から明らかである。

 この出会い系サイト規制法の改正は、警察庁が、どんなコミュニケーションサイトでも人は出会えるという誰にでも分かることを無視し、届け出制の対象としては事実上定義不能の「出会い系サイト事業」を定義可能と偽り、改正法案の閣議決定を行い、法案を国会に提出したものであり、他の重要法案と審議が重なる中、国会においてもその本質的な問題が見過ごされて可決され、成立したものである。憲法上の罪刑法定主義や検閲の禁止にそもそも違反しており、表現の自由などの国民の最重要の基本的な権利をないがしろにするものである、今回の出会い系サイト規制法の改正については、今後、速やかに元に戻すことが検討されなくてはならない。

 既に逮捕者まで出ているが、出会い系サイト規制法は、その曖昧さから別件逮捕のツールとして使われ、この制度によって与えられる不透明な許認可権限による、警察の出会い系サイト業者との癒着・天下り利権の強化を招く恐れが極めて強い。出会い系サイト規制法を去年の改正前の状態に戻すまでにおいても、この危険な法律の運用については慎重の上に慎重が期されるべきである。

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
 出会い系サイト規制法(正式名称は「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」)

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
・出会い系サイト規制法を改正前の状態に速やかに戻す。

(11)青少年ネット規制法・青少年健全育成条例・携帯フィルタリング義務化
○項目
 青少年ネット規制法・青少年健全育成条例・携帯フィルタリング義務化

○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
 携帯電話におけるフィルタリングの義務化を中心とする、青少年ネット規制法が、2008年6月に成立し、2009年4月から施行されている。

 また、東京都等の地方自治体が、青少年保護健全育成条例の改正により、各自治体の定める理由によってしか子供のフィルタリングの解除を認めず、違反した事業者に対する調査指導権限を自治体に与え、携帯フィルタリングの実質完全義務化を推し進めようとしている。

 しかし、そもそも、フィルタリングサービスであれ、ソフトであれ、今のところフィルタリングに関するコスト・メリット市場が失敗していない以上、かえって必要なことは、不当なフィルタリングソフト・サービスの抱き合わせ販売の禁止によって、消費者の選択肢を増やし、利便性と価格の競争を促すことだったはずである。一昨年から昨年にかけて大騒動になったあげく、ユーザーから、ネット企業から、メディア企業から、とにかくあらゆる者から大反対されながらも、有害無益なプライドと利権の確保を最優先する一部の議員と官庁の思惑のみから成立した今の青少年ネット規制法による規制は、一ユーザー・一消費者・一国民として全く評価できないものであり、速やかに法律の廃止が検討されるべきである。

 フィルタリングに関する規制については、フィルタリングの存在を知り、かつ、フィルタリングの導入が必要だと思っていて、なお未成年にフィルタリングをかけられないとする親に対して、その理由を聞くか、あるいはフィルタリングをかけている親に対して、そのフィルタリングの問題を聞くかして、きちんと本当の問題点を示してから検討してもらいたいとパブコメ等で再三意見を述べているが、今に至るもこのような本当の問題点を示す調査はなされていない。繰り返しになるが、フィルタリングについて、一部の者の一方的な思い込みによって安易に方針を示すことなく、本当の問題点を把握した上で検討を進めるべきである。

 また、東京都等の地方自治体の推し進める携帯フィルタリングの実質完全義務化について、このような青少年ネット規制法の精神にすら反している行き過ぎた規制の推進は、地方自治体法第245条の5に定められているところの、都道府県の自治事務の処理が法令の規定に違反しているか著しく適正を欠きかつ明らかに公益を害していると認めるに足ると考えられるものであり、同じく不適切なその他の情報規制推進についても合わせ、総務大臣から各地方自治体に迅速に是正命令を出すべきである。

 なお、フィルタリングについては、その政策決定の迷走により、総務省は携帯電話サイト事業者に無意味かつ多大なダメージを与えた過去がある。携帯フィルタリングについて、ブラックリスト方式ならば、まずブラックリストに載せる基準の明確化から行うべきなので、不当なブラックリスト指定については、携帯電話事業者がそれぞれの基準に照らし合わせて無料で解除する簡便な手続きを備えていればそれで良く、健全サイト認定第3者機関など必要ないはずである。ブラックリスト指定を不当に乱発し、認定機関で不当に審査料をせしめ取り、さらにこの不当にせしめた審査料と、正当な理由もなく流し込まれる税金で天下り役人を飼うのだとしたら、これは官民談合による大不正行為以外の何物でもない。このようなブラックリスト商法の正当化は許されない。今までのところ、フィルタリングサービスであれ、ソフトであれ、今のところフィルタリングに関するコスト・メリット市場が失敗しているとする根拠はなく、かえって必要なことは、不当なフィルタリングソフト・サービスの抱き合わせ販売の禁止によって、消費者の選択肢を増やし、利便性と価格の競争を促すことだったはずであり、廃止するまでにおいても、青少年ネット規制法の規制は、フィルタリングソフト・サービスの不当な抱き合わせ販売を助長することにつながる恐れが強く、このような不当な抱き合わせ販売について独禁法の適用が検討されるべきである。

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
 青少年ネット規制法(正式名称は、「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」)
 各地方自治体の青少年健全育成条例の改正検討(東京都の条例の正式名称は、「東京都青少年の健全な育成に関する条例」)

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
・青少年ネット規制法を廃止する。

・廃止するまでにおいても、規制を理由にしたフィルタリングに関する不当な便乗商法に対する監視を政府において強め、フィルタリングソフト・サービスの不当な抱き合わせ販売について独禁法の適用を検討する。

・東京都等の地方自治体における青少年保護健全育成条例の改正の検討に対し、その不適切な情報規制推進について、地方自治体法第245条の5に基づき、総務大臣から各地方自治体に迅速に是正命令を出す。

(12)児童ポルノ規制・サイトブロッキング
○項目
 児童ポルノ規制・サイトブロッキング

○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
 現行の児童ポルノ規制法により、「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの 」という非常に曖昧な第2条第3項第3号の規定によって定義されるものも含め、児童ポルノの提供及び提供目的の所持まで規制されている。最近も、2009年4月に、アフィリエイト広告代理店社長が児童ポルノ規制法違反幇助容疑で送検され、、2009年5月に、児童ポルノサイトへのリンクを張ることについて、児童ポルノ公然陳列幇助容疑で2名が送検され(http://www.j-cast.com/2007/05/09007471.htmlhttp://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2007/05/09/15641.html参照)、2009年6月には、女子高生の水着を撮影したDVDを児童ポルノとして製造容疑でビデオ販売会社社長他が逮捕されるなど(http://www.47news.jp/CN/200907/CN2009071901000294.html参照)、警察による法律の拡大解釈・恣意的運用は止まるところを知らず、現行法の運用においてすら、インターネット利用の全てが極めて危険な状態に置かれている。

 このような全く信用できない警察の動きをさらに危険極まりないものにしようと、与党である自民党と公明党は、児童ポルノ規制法の規制強化を企て、「自身の性的好奇心を満たす目的で」という主観的要件のみで児童ポルノの所持を禁止する、いわゆる単純所持規制を含む法改正案を第171回国会に提出し、民主党はやはり危険な反復取得罪を含む法改正案を提出し、国会で審議が行われた。第171回国会の解散によって、これらの改正法案は一旦廃案となったが、自民公明両党によって再提出され、今なお継続審議とされているのであり、インターネットにおけるあらゆる情報利用を危険極まりないものとする法改正の検討が今後も続けられかねないという危うい状態にあることに変わりはない。

 2009年6月には、警察庁、総務省などの規制官庁が絡む形で、検閲にしかなりようがないサイトブロッキングを検討する児童ポルノ流通防止協議会が発足し、この協議会で児童ポルノ掲載アドレスリスト作成管理団体運用ガイドラインが作られ、さらに、警察庁からアドレスリスト作成管理団体の公募が行われ、2010年7月には、内閣府の児童ポルノ排除対策ワーキングチームと犯罪対策閣僚会議によって、2010年度中にサイトブロッキングを自主規制として導入するという目標を含む児童ポルノ排除総合対策がとりまとめられている。

1.単純所持規制及び創作物規制について
 閲覧とダウンロードと取得と所持の区別がつかないインターネットにおいては、例え児童ポルノにせよ、情報の単純所持や取得の規制は有害無益かつ危険なもので、憲法及び条約に規定されている「知る権利」を不当に害するものとなる。「自身の性的好奇心を満たす目的で」、積極的あるいは意図的に画像を得た場合であるなどの限定を加えたところで、エスパーでもない限りこのような積極性を証明することも反証することもできないため、このような情報の単純所持や取得の規制の危険性は回避不能であり、思想の自由や罪刑法定主義にも反する。繰り返し取得としても、インターネットで2回以上他人にダウンロードを行わせること等は技術的に極めて容易であり、取得の回数の限定も、何ら危険性を減らすものではない。

 児童ポルノ規制の推進派は常に、提供による被害と単純所持・取得を混同する狂った論理を主張するが、例えそれが児童ポルノであろうと、情報の単純所持ではいかなる被害も発生し得えない。現行法で、ネット上であるか否かにかかわらず、提供及び提供目的の所持まで規制されているのであり、提供によって生じる被害と所持やダウンロード、取得、収集との混同は許され得ない。そもそも、最も根本的なプライバシーに属する個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ることは、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の基本的な権利からあってはならないことである。

 アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現に対する規制対象の拡大も議論されているが、このような対象の拡大は、児童保護という当初の法目的を大きく逸脱する、異常規制に他ならない。アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現において、いくら過激な表現がなされていようと、それが現実の児童被害と関係があるとする客観的な証拠は何一つない。いまだかつて、この点について、単なる不快感に基づいた印象批評と一方的な印象操作調査以上のものを私は見たことはないし、虚構と現実の区別がつかないごく一部の自称良識派の単なる不快感など、言うまでもなく一般的かつ網羅的な表現規制の理由には全くならない。アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現が、今の一般的なモラルに基づいて猥褻だというのなら、猥褻物として取り締まるべき話であって、それ以上の話ではない。どんな法律に基づく権利であれ、権利の侵害は相対的にのみ定まるものであり、実際の被害者の存在しない創作物・表現に対する規制は何をもっても正当化され得ない。民主主義の最重要の基礎である表現の自由や言論の自由、思想の自由等々の最も基本的な精神的自由そのものを危うくすることは絶対に許されない。

 単純所持規制にせよ、創作物規制にせよ、両方とも1999年当時の児童ポルノ法制定時に喧々囂々の大議論の末に除外された規制であり、規制推進派が何と言おうと、これらの規制を正当化するに足る立法事実の変化はいまだに何一つない。

 児童ポルノ規制法に関しては、既に、提供及び提供目的での所持が禁止されているのであるから、本当に必要とされることは今の法律の地道なエンフォースであって有害無益な規制強化の検討ではない。児童ポルノ規制法に関して検討すべきことは、現行ですら過度に広汎であり、違憲のそしりを免れない児童ポルノの定義の厳密化のみである。

2.サイトブロッキングについて
 警察などが提供するサイト情報に基づき、統計情報のみしか公表しない不透明なリスト作成管理団体等を介し、児童ポルノアドレスリストの作成が行われ、そのリストに基づいて、インターネット・サービス・プロバイダー、検索サービス事業者あるいはフィルタリング事業者がブロッキング等を行うことは、実質的な検閲に他ならず、決して行われてはならないことである。いくら中間に団体を介そうと、一般に公表されるのは統計情報に過ぎす、児童ポルノであるか否かの判断情報も含め、アドレスリストに関する具体的な情報は、全て閉じる形で秘密裏に保持されることになるのであり、インターネット利用者から見てそのリストの妥当性をチェックすることは不可能であり、このようなアドレスリストの作成・管理において、透明性・公平性・中立性を確保することは本質的に完全に不可能である。このことは、このようなリストに基づくブロッキング等が、自主的な民間の取組という名目でいくら取り繕おうとも、どうして憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や通信の秘密、検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないかということの根本的な理由であり、小手先の運用や方式の変更などでどうにかなる問題では断じて無い。現時点でこの問題の克服は完全に不可能であり、アドレスリスト作成管理団体のガイドライン、公募、これに対する血税の投入等を全て白紙に戻し、このような非人道的なブロッキング導入の検討を行っている各種検討会を全て即刻解散するべきである。

 さらに言えば、このように自主規制と称しながら、内閣府の児童ポルノワーキングチームや犯罪閣僚会議といった官主導の会議で実質的な検閲に他ならないブロッキングの導入方針を決めるなど、異常極まりないことである。政府にあっては、速やかに自らの過ちを認め、閣議決定等により危険かつ有害無益な規制強化の方針決定の撤回を行うべきである。

 政府において、児童ポルノを対象とするものにせよ、いかなる種類のものであれ、情報の単純所持・取得規制・ブロッキングは極めて危険な規制であるとの認識を深め、このような規制を絶対に行わないこととして、前国会のような危険な法改正案が2度と与野党から提出されることが無いようにするべきである。

 違法コピー対策問題における権利者団体の主張、児童ポルノ法規制強化問題・有害サイト規制問題における自称良識派団体の主張は、常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。今後は、このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むべきである。同じく、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な著作権検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むべきである。

 なお、ブロッキングに関する広報・啓発を行う必要があるとすれば、現時点では、権力側によるその濫用の防止が不可能であり、表現の自由や通信の秘密といった憲法に規定された国民の基本的な権利に照らして問題のない運用を行うことが不可能であるという問題の周知にのみ努めるべきである。

3.プロバイダーのセーフハーバーについて
 警察の恣意的な運用によって、現行法においてすら児童ポルノ規制法違反幇助のリスクが途方もなく拡大し、甚大な萎縮効果・有害無益な社会的大混乱が生じかねないという非常に危険な状態にあることを考え、今現在民事的な責任の制限しか規定していないプロバイダー責任制限法に関し、刑事罰リスクも含めたプロバイダーの明確なセーフハーバーについて検討するべきである。

4.国際動向について
 児童ポルノの閲覧の犯罪化と創作物の規制まで求める「子どもと青少年の性的搾取に反対する世界会議」の根拠のない狂った宣言を国際動向として一方的に取り上げ、児童ポルノ規制の強化を正当化することなどあってはならないことである。児童ポルノ規制に関しては、最近、ドイツのバンド「Scorpions」が32年前にリリースした「Virgin Killer」というアルバムのジャケットカバーが、アメリカでは児童ポルノと見なされないにもかかわらず、イギリスでは該当するとしてブロッキングの対象となり、プロバイダーによっては全Wikipediaにアクセス出来ない状態が生じたなど、欧米では、行き過ぎた規制の恣意的な運用によって弊害が生じていることも見逃されるべきではない。アメリカだけを取り上げても、FBIが偽リンクによる囮捜査を実行し、偽リンクをクリックした者が児童ポルノがダウンロードしようとしたということで逮捕、有罪にされるという恣意的運用の極みをやっている(http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20080323_fbi_fake_hyperlink/参照)、単なる授乳写真が児童ポルノに当たるとして裁判になり、平和だった一家が完全に崩壊している(http://suzacu.blog42.fc2.com/blog-entry-52.html参照)、日本のアダルトコミックを所持していたとして、児童の性的虐待を何ら行ったことも無く、考えたことも無い単なる漫画のコレクターが司法取引で有罪とされている(http://wiredvision.jp/news/200905/2009052923.html参照)などの、極悪かつ非人道的な例が知られている。単純所持規制を導入している西洋キリスト教諸国で行われていることは、中世さながらの検閲と魔女狩りであって、このような極悪非道に倣わなければならない理由は全く無い。

 しかし、欧米においても、情報の単純所持規制やサイトブロッキングの危険性に対する認識はネットを中心に高まって来ており、アメリカにおいても、2009年1月に連邦最高裁で児童オンライン保護法が違憲として完全に否定され、2009年2月に連邦控訴裁でカリフォルニア州のゲーム規制法が違憲として否定されていることや、2009年のドイツ国会への児童ポルノサイトブロッキング反対電子請願(https://epetitionen.bundestag.de/index.php?action=petition;sa=details;petition=3860)に13万筆を超える数の署名が集まったこと、ドイツにおいても児童ポルノサイトブロッキング法は検閲法と批判され、既に憲法裁判が提起され(http://www.netzeitung.de/politik/deutschland/1393679.html参照)、去年与党に入ったドイツ自由民主党の働きかけで、法施行が見送られ、ドイツは政府としてブロッキング撤廃の方針を打ち出し、欧州レベルでのブロッキング導入にも反対していること(http://www.welt.de/die-welt/vermischtes/article6531961/Loeschung-von-Kinderpornografie-im-Netz.htmlhttp://www.zeit.de/newsticker/2010/3/29/iptc-bdt-20100328-736-24360866xml参照)なども注目されるべきである。スイスにおいて最近発表された調査でも、2002年に児童ポルノ所持で捕まった者の追跡調査を行っているが、実際に過去に性的虐待を行っていたのは1%、6年間の追跡調査で実際に性的虐待を行ったものも1%に過ぎず、児童ポルノ所持はそれだけでは、性的虐待のリスクファクターとはならないと結論づけており、児童ポルノの単純所持規制の根拠は完全に否定されているのである(http://www.biomedcentral.com/1471-244X/9/43/abstract参照)。欧州連合において、インターネットへのアクセスを情報の自由に関する基本的な権利として位置づける動きがあることも見逃されるべきではない(http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=MEMO/09/491&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en参照)。政府・与党内の検討においては、このような国際動向もきちんと取り上げるべきであり、一方的な見方で国際動向を決めつけることなどあってはならない。

 かえって、児童ポルノの単純所持規制・創作物規制といった非人道的な規制を導入している諸国は即刻このような規制を廃止するべきと、そもそも最も根本的なプライバシーに属し、何ら実害を生み得ない個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ること自体、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の国際的かつ一般的に認められている基本的な権利からあってはならないことであると、日本政府から国際的な場において各国に積極的に働きかけるべきである。

5.児童ポルノ排除対策ワーキングチームについて
 上で書いた通り、政府の会議で自主規制と称して実質的な検閲の導入方針が決定されること自体異常極まりないことであるが、このような危険かつ有害無益な規制強化の方針を含む児童ポルノ排除対策ワーキングチームは、ホームページなどを参照する限り、2回しか開かれておらず、議事録も不十分であり、有識者として呼ばれたと分かるのは、児童ポルノ規制について根拠無く一般的かつ網羅的な表現・情報弾圧を唱える非人道的な日本ユニセフ協会のアグネス・チャン氏1名のみである。その下のワーキンググループに至っては議事概要すら公開していない。児童ポルノ排除総合対策案に対するパブコメの期間も実質10日程度とあまりにも短く、到底国民の意見を聞く気があるとは思えない形で意見募集が行われている。パブコメの結果についても、運用以前の問題としてブロッキング等に反対する意見が圧倒的多数だったと思われるにもかかわらず、「運用面での配慮を求める意見が相当数寄せられた」と国民から寄せられた意見を勝手に歪曲し、結果概要にパブコメとは無関係の新聞記事を付けて印象操作を行うなど、到底許されざる恣意的操作を内閣府はパブコメ結果に加えた。

 このワーキングチームあるいはグループは議事録、議事の進め方、対策のとりまとめ方等あらゆる点で不透明であり、このような問題だらけのワーキングチームで表現の自由を含む国民の基本的権利に関わる重大な検討が進められることなど論外である。このような検討しかなし得ない出来レースの密室政策談合ワーキングチーム・ワーキンググループは即刻解散するべきである。

 このワーキングチームは即刻解散するべきであるが、さらに今後児童ポルノ規制について何かしらの検討を行うのであれば、その検討会は下位グループまで含めて全て開催の度数日以内に速やかに議事録を公表する、一方的かつ身勝手に危険な規制強化を求める自称良識派団体代表だけで無く、表現の自由に関する問題に詳しい情報法・憲法の専門家、児童ポルノ法の実務に携わりその本当の問題点を熟知している法律家、規制強化に慎重あるいは反対の意見を有する弁護士等も呼ぶ、危険な規制強化の結論ありきで報告書をまとめる前にきちんとパブコメを少なくとも1月程度の募集期間を設けて取る、提出されたパブコメは概要のみではなく全文を公開するなど、児童ポルノ規制の本当の問題点を把握した上で検討が進められるようにするべきである。

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
 児童ポルノ規制法(正式名称は「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」)

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
・違憲のそしりを免れない現行の児童ポルノ規制法について、速やかに児童ポルノの定義の厳格化のみの法改正を行う。

・児童ポルノを対象とするものにせよ、いかなる種類のものであれ、情報の単純所持・取得規制・ブロッキングは極めて危険な規制であるとの認識を深め、このような規制を絶対に行わないことと閣議決定する。

・憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むこと、及び、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な著作権検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むことを検討する。

・プロバイダー責任制限法に関し、被侵害者との関係において、刑事罰リスクも含めたプロバイダーの明確なセーフハーバーについて検討する。

・児童ポルノの単純所持規制・創作物規制といった非人道的な規制を導入している諸国は即刻このような規制を廃止するべきと、そもそも最も根本的なプライバシーに属し、何ら実害を生み得ない個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ること自体、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の国際的かつ一般的に認められている基本的な権利からあってはならないことであると、日本政府から国際的な場において各国に積極的に働きかける。

・児童ポルノ流通防止協議会、内閣府の児童ポルノ対策ワーキングチーム等を解散し、サイトブロッキングの導入に関する検討を完全に停止する。

(13)インターネット・ホットラインセンター・日本ガーディアン・エンジェルス・日本ユニセフ協会
○項目
 インターネット・ホットラインセンター・日本ガーディアン・エンジェルス・日本ユニセフ協会

○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
 単なる民間団体に過ぎないにもかかわらず、一般からの違法・有害情報の通知を受けて、直接削除要請を行っている、インターネット・ホットラインセンターという名の半官検閲センターが存在している。

 同じく民間団体に過ぎないにもかかわらず、日本ガーディアン・エンジェルスという団体が、犯罪に関する情報を匿名で受け付け、解決に結び付いた場合に情報料を支払うということを行っており、この7月からネットでの受理まで開始している。

 また、日本ユニセフ協会は、「なくそう!子どもポルノ」キャンペーン等の根拠無く一般的かつ網羅的な表現・情報弾圧を唱える危険な児童ポルノ規制強化プロパガンダに募金を流用し、さらに、2009年6月26日の衆議院法務委員会でも、感情論のみで根拠無く児童ポルノの単純所持規制の導入を訴えるなど、寄付行為に書かれた財団法人の目的を大きく逸脱し、明白に公益を害する行為を繰り返し行い、インターネットにおけるあらゆる情報利用を危険極まりないものとしようとしている。

 サイト事業者が自主的に行うならまだしも、何の権限も有しないインターネット・ホットラインセンターなどの民間団体からの強圧的な指摘により、書き込みなどの削除が行われることなど本来あってはならないことである。このようなセンターは単なる一民間団体で、しかもこの団体に直接害が及んでいる訳でもないため、削除を要請できる訳がない。勝手に有害と思われる情報を収集して、直接削除要請などを行う民間団体があるということ自体おかしいと考えるべきであり、このような有害無益な半官検閲センターは即刻廃止が検討されて良い。このような無駄な半官検閲センターに国民の血税を流すことは到底許されないのであって、その分できちんとした取り締まりと削除要請ができる人員を、法律によって明確に制約を受ける警察に確保するべきである。

 日本ガーディアン・エンジェルスについても同断であり、直接害が及んでいる訳でもない単なる一民間団体が、直接一般からの通報を受け付け、刑事事件に関与して、解決に結び付いた場合に情報料を支払うということ自体異常である。インターネット・ホットライン・センターにせよ、この日本ガーディアン・エンジェルスにせよ、警察の本来業務を外部委託することがそもそもおかしいのであり、日本ガーディアン・エンジェルスに無駄に国民の血税を流すべきでは無く、その分できちんとした情報受け付けと事件の解決ができる人員を、法律によって明確に制約を受ける警察に確保するべきである。また、このようなことに手を染めている日本ガーディアン・エンジェルスは、特定非営利活動法人あるいは認定特定非営利活動法人の名に値するものでは無く、その取り消しが検討されるべきである。

 また、日本ユニセフ協会は、「なくそう!子どもポルノ」キャンペーン等の根拠無く一般的かつ網羅的な表現・情報弾圧を唱える危険な児童ポルノ規制強化プロパガンダに募金を流用し、さらに、この6月26日の衆議院法務委員会でも、感情論のみで根拠無く児童ポルノの単純所持規制の導入を訴えているが、日本ユニセフの寄付行為(http://www.unicef.or.jp/about_unicef/about_kifu.html参照)において、根拠無く焚書と表現弾圧を叫ぶことは、ユニセフの趣旨には入っていないと考えられ、このようなことが事業としてあげられている訳も無く、このような行為は寄付行為違反である。さらに、民主主義の基礎中の基礎である表現の自由等の精神的自由の重要性を考えると、寄付行為違反を超えて、このような行為は明白に公益を害するものである。「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」第96条に基づいて、日本ユニセフ協会に対して、所管の外務省から改善命令を出すべきである。また、このような法人は、公益法人あるいは特定公益増進法人の名に値するものでは無く、新公益法人制度への移行申請において公益認定をしないとするか、あるいは、それ以前に、公益法人及び特定公益増進法人の認定取り消しをするべきである。(なお、日本ユニセフ協会は、そのHPhttp://www.unicef.or.jp/cooperate/coop_tax.htmlにおいて、募金の税法上の優遇について、特定公益増進法人への寄付が優遇措置を受けられると書いているが、公益法人改革の一環として、既に全ての公益法人に対する寄付に対して同等の優遇措置が認められているのであり(財務省HPhttp://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/koueki01.htmの注参照)、これもかなり悪質なミスリードである。)

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
 特定非営利活動促進法
 租税特別措置法第66条の11の2
 公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律
 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
・インターネット・ホットラインセンターを廃止する。

・日本ガーディアン・エンジェルスにおける警察の委託事業を停止する。また、同時に、日本ガーディアン・エンジェルスに対して、特定非営利活動促進法及び租税特別措置法第66条の11の2に基づく特定非営利活動法人及び認定特定非営利活動法人の認定の取り消しを検討する。

・日本ユニセフ協会に対して、所管の外務省から公益を害する活動を止めるよう改善命令を出す。また、日本ユニセフ協会に対して、新公益法人制度への移行申請において公益認定をしないとするか、あるいは、それ以前に、公益法人及び特定公益増進法人の認定を取り消す。

(14)情報公開法
○項目
 情報公開法

○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
 政策決定に関わる重要文書・資料の保存義務とその義務違反に対する罰則が不明確である。さらに、曖昧な理由に基づいて行政機関等が文書の不開示を決めることが可能である上、その後の客観的な事後救済制度の整備も不十分である。

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
 情報公開法(正式名称は、「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」である。)

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
・他省庁、議員、審議会等委員、関係団体とのやり取りに使用された政策決定に関わる文書は全て作成者と使用者の個人名と役職を付して最低10年保存を義務化し(メール、FAX、電話、面談等全てのやり取りの記録と保存を義務化するべき)、5年でHP上に全て自動公開されるシステムを法制化するべきである。

・全文書に適用される期限を法定し、それ以降は理由によらず必ず公開されるとするべきである。

・文書を廃棄する場合は、HP等による事前告知を義務化するべきである。

・文書管理責任者を明確にし、故意又は過失による廃棄又は虚偽主張に処分を加えられるとするべきである。

・開示の実施の方法は、原則として請求者の求める方法によらなければならないと法定し、オンライン開示、電子媒体による開示の促進を図るべきである。

・不開示情報である「公にすることにより、国の安全が害されるおそれ、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれ等がある情報」かどうかの判断に、行政機関等の裁量を大きく認めるべきでない。

・国等における審議・検討等に関する情報で、それを公にすることにより、「不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ」がある情報についても、行政機関の裁量が大きく入る余地があるため、原則開示とすべきである。

・情報公開法6条1項から「容易に」とただし書きを削除し、可能な限り情報は切り分けて開示しなければならないと明確化するべきである。

・情報公開法5条1号ハに公務員の氏名を加え、公務員の個人名も原則開示にし、5条5号・6号二を削除・修正し、省庁の検討情報と天下りも含め人事に関する情報も後に原則開示されるとするべきである。

・開示請求から開示決定等までの期限を短縮する。

・特例としての開示の無期限延長を見直す。

・実費と利用者の負担の両方のバランスを考慮し、手数料の減額を検討する。

・不服申立てがなされてから審査会への諮問を行うまでの法定期限を導入する。

・情報公開訴訟を、原告の普通裁判籍所在地の地方裁判所にも提起できるようにする

・裁判所が、行政機関の長等に対し、対象文書の標目・要旨・不開示の理由等を記載した書面(いわゆるヴォーン・インデックス)の作成・提出を求める手続を導入する・

・裁判所が対象文書を実際に見分し、不開示情報の有無等を直に検討できるインカメラ審理手続を導入する。

・衆議院事務局は申し訳程度に規定を設けているようだが、それだけではなく、参議院事務局、会派又は議員の活動に関する情報を含め、各議員も含め国会全体におけるきちんとした文書保存制度と情報公開制度を整え、立法府についても保存年限に応じた文書の自動公開システムの法制化を行うべきである。

(15)国際組織犯罪防止条約・サイバー犯罪条約及びこれらの締結に必要な法改正・ウィルス作成罪
○項目
 国際組織犯罪防止条約・サイバー犯罪条約及びこれらの締結に必要な法改正・ウィルス作成罪

○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
 国際組織犯罪防止条約の締結には、共謀罪の創設が必要とされているが、現状でも大規模テロなどについてはすでに殺人予備罪があるので共謀罪がなくとも対応でき、その他、個別の立法事実があればそれに沿った形で個別の犯罪についての予備罪の適否を論ずるべきであって、広範かつ一般的な共謀罪を創設する立法事実はない。実行行為に直接つながる行為によって、法益侵害の現実的危険性を引き起こしたからこそ処罰されるという我が国の刑法学の根幹を揺るがすものである共謀罪は、決して導入されてはならない。組織要件の厳密化にしても、今現在国会に提出されている修正案のような、その目的や意思のみによる限定は客観性を全く欠き、やはり恣意的な運用しか招きようのない危険なものである。このような危険な法改正を必要とする国際組織犯罪防止条約は日本として締結するべきものではない。

 サイバー犯罪条約は、通信記録や通信内容等の情報の保全・捜索・押収・傍受等について広範かつ強力な手段を法執行機関に与えることを求めているが、このような要請は、我が国の憲法に規定されている国民の基本的な権利に対する致命的な侵害を招くものであり、この条約も日本として締結するべきものではない。前国会に提出されていた法改正案中でも、差し押さえるべき物がコンピューターである場合には、このコンピューターと接続されているあらゆる記録媒体とそこに記録されている情報を差し押さえ可能であるとされていたが、昨今のインターネットの状況を考えると、差し押さえの範囲が過度に不明確になる懸念が強く、裁判所の許可無く捜査機関が通信履歴の電磁的記録の保全要請をすることが出来るとしていた点も、捜査機関による濫用の懸念が強く、このような刑事訴訟法の枠組みの変更は、通信の秘密やプライバシー、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がない限り、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利、といった我が国の憲法に規定されている国民の基本的な権利に対する致命的な侵害を招くものと私は考える。

 また、ウィルス作成等に関する罪についても、以前の法改正案の「人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える」電磁的記録という要件は、客観性のない人の意図を要件にしている点でやはり曖昧に過ぎ、このような客観性のない曖昧な要件でウィルス作成等に関する刑罰が導入されるべきではない。

 留保・解釈を最大限に活用しても、憲法に規定されている国民の基本的な権利に対する致命的な侵害を招くことになるだろう、これらの条約は、日本として締結するべきものではないものである。前国会に提出されていた法案は廃案のままにするとともに、条約からの脱退を検討し、今後、ウィルス作成等に関する刑罰の導入を検討するのであれば、その要件が十分に客観性のあるものとなるよう、慎重の上に慎重を期すべきである。

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
 国際組織犯罪防止条約(正式名称は、「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」)
 サイバー犯罪条約(正式名称は、「サイバー犯罪に関する条約」)
 刑法の改正検討

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
・前国会に提出されていた、国際組織犯罪防止条約及びサイバー犯罪条約の締結のための法改正案は廃案のままにすると閣議決定を行う。同時に、条約からの脱退を検討する。

・ウィルス作成等に関する刑罰の導入を検討するのであれば、その要件が十分に客観性のあるものとなるよう、慎重の上に慎重を期す。

(16)公職選挙法
○項目
 公職選挙法

○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
 公職選挙法によって、選挙運動期間中にネットを選挙運動に用いることが完全に禁止されている。2009年7月21日に閣議決定された答弁書(http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/171/toup/t171234.pdf参照)により、twitterの利用まで公職選挙法違反であるという政府見解が示されている。

 選挙運動期間中の選挙運動に関するネット上の掲示は全て、公職選挙法の第146条で規制の対象となっている文書図画の掲示とされ、完全に禁止されているが、これは、インターネットにおける正当な情報利用を阻害する一大規制となっている。

 第148条で、選挙の公正を害しない限りにおいて新聞・雑誌に対し報道・評論を掲載する自由を妨げるものではないと明文で規定しているが、新聞紙にあつては毎月三回以上、雑誌にあつては毎月一回以上、号を逐つて定期に有償頒布するものであり、第三種郵便物の承認のあるものであり、当該選挙の選挙期日の公示又は告示の日前一年以来そうであったもので、引き続き発行するものと、ブログ等は無論のこと、大手ネットメディアですら入らない、あまりにも狭い規定となっている。第151条の3で放送についても同様の規定があるが、放送法を参照しており、当然のことながら、動画サイトなどは入らないと考えられる。

 紙媒体であろうが、ネットだろうが、実名だろうが、匿名だろうが、報道・批評・表現の本質に変わりはない。表現の自由は、憲法に規定されている権利であり、民主主義を支える最も重要な自由として、その代表を選ぶ選挙において、その公平を害しない限りにおいて、あらゆる媒体に最大限認められなくてはならないものであることは言うまでもない。もし、公職選挙法が杓子定規に解釈され、各種ネットメディアに不当な規制の圧力がかけられるようなら、公職選挙法自体憲法違反とされなくてはならない。

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
 公職選挙法

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
・第142条と第143条の認められる文書図画の頒布・掲示の中に、電子メール・ブログ・動画サイト等様々なネットサービスの利用類型を追加すること等により、公職選挙法第146条の規制を緩和し、ネット選挙を解禁する。

・公職選挙法第148条の規制を緩和し、新聞等に加えてネットにおける報道及び評論の自由も明文で認め、民主主義を支える最も重要な自由として、その代表を選ぶ選挙において、その公平を害しない限りにおいて、ネットメディア、動画サイト、ブログ等における表現の自由を最大限確保する。

(17)天下り
○項目
 天下り

○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
 2007年6月23日号の週刊ダイヤモンドの「天下り全データ」という特集で、天下りとして2万7882人という人数が示されている。中には他愛のない再就職も含まれているだろうが、2万5千人を超える元国家公務員が各省庁所管の各種独立行政法人や特殊法人、公益法人、企業などにうごめき、このような天下り利権が各省庁の政策を歪めているというのが、今の日本のおぞましい現状である。2010年8月に公表されたの内閣府の特例民法法人調査でも、このような特例民法法人だけで6千人を超える天下り理事がいるとしており、これで1割程度減っているというものの、以前の調査と合わせて考えると、様々な団体・企業になお数万人規模の天下り役人がいるのではないかと考えられる。

 しかし、法改正によって得られる利権・行政による恣意的な許認可権を盾に、役に立たない役人を民間に押しつけるなど、最低最悪の行為であり、一国民として到底許せるものではない。さらに、このような天下り役人が国の政策に影響を及ぼし、国が亡んでも自分たちの利権のみ伸ばせれば良いとばかりに、国益を著しく損なう違憲規制を立法しようとするに至っては、単なる汚職の域を超え、もはや国家反逆罪を構成すると言っても過言ではない。

 知財・情報政策においても、天下り利権が各省庁の政策を歪めていることは間違いなく、政策の検討と決定の正常化のため、文化庁から著作権関連団体への、総務省から放送通信関連団体・企業への、警察庁から各種協力団体・自主規制団体への天下りの禁止を決定するべきである。これらの省庁は特にひどいので特に名前をあげたが、他の省庁も含めて決定するべきである。また、天下りの隠れ蓑に使われている特殊法人、公益法人、特定非営利活動法人、特定非営利活動法人等は全廃をベースとして検討を進めるべきであり、天下りを1人でも受け入れている団体・法人・企業は各種公共事業の受注・契約は一切できないという入札・契約ルールを全省庁において等しく導入するべきである。

 また、大臣の承認を受ければ良いとするような迂回天下りや、嘱託職員として再就職するような隠れ天下りや、人事院の「公務員の高齢期の雇用問題に関する研究会」などにおいて提案されている、60歳を過ぎてから公務員の身分のまま公益法人などに出向するといった新たな天下りルートも許されるべきでない。

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
 国家公務員法

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
・閣議決定により、国家公務員法で規定されている再就職等監視委員会を凍結し、大臣の承認を受ければ良いとするような迂回天下りや、嘱託職員として再就職するような隠れ天下りや、公務員の身分のまま公益法人などに出向するといった新たに提案されている天下りルートも含め、天下りを完全に禁止する。

(18)メール検閲・DPI技術を用いた広告
○項目
 メール検閲・DPI技術を用いた広告

○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
 総務省の「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」の提言において、通常のメールと同様SNSサービス中の「ミニメール」の内容が通信の秘密に該当するのは当然のこととしても、メッセージ交換サービスにおけるメールの内容確認を送信者に対しデフォルトオンで認める余地があるかの如き整理がなされている。同じく、DPI(ディープ・パケット・インスペクション)技術を用いた行動ターゲティング広告について、現状でも基準等の作成により導入が可能であるかの如き整理がなされている。

 しかし、メッセージ交換サービスにおけるメールの内容確認を送信者に対しデフォルトオンで認める余地があるとすることは、実質、送信者が受信者しか知り得ないだろうと思って送る情報の内容について、知らない内に事業者に検閲されているという状態をもたらす危険性が極めて高い。受信情報のフィルタリングに関する要件を一方的に拡大解釈し、送信者に対するデフォルトオンのメールの内容確認の余地を認めることは、実質的にメール・通信の検閲の余地を認めるに等しく、憲法にも規定されている通信の秘密をないがしろにすることにつながりかねない極めて危険なことである。これはデフォルトオンでメールの内容確認を行う場面が限定的であるか否かという問題ではなく、総務省にあっては、実質的なメールの検閲を是とするかの如き通信の秘密に関する歪んだ整理を速やかに改めるべきである。

 この部分において、DPI(ディープ・パケット・インスペクション)技術を用いた行動ターゲティング広告についても、利用者の同意がなければ通信の秘密を侵害するものとして許されないのは当然のこととして、DPI技術はネットワーク中のパケットに対して適用されるものであり、一旦導入されてしまうと、その存在と対象範囲について通常の利用者は全く意識・検証し得ないものである。DPI技術についても、利用者が知らない内に通信内容が事業者に検閲されているという状態をもたらす危険性が極めて高く、実質的な検閲をもたらしかねない危険なものとして安易な法的整理はされてはならない。契約書によったとしても、それだけでは、明確かつ個別の同意が十分に得られ、利用者からDPI技術の存在と対象範囲について十分に意識・検証可能となっているとすることはできない。DPI技術の利用については、通常の利用者の明確かつ個別の同意を得ることは現時点では不可能であり、この部分の記載は、現時点で、法的課題を克服することは困難であり、基準等の作成もされるべきではないとされなくてはならない。

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
 なし

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
・総務省において、SNSサービスにおけるメール監視やDPI技術を用いた広告のような実質的な検閲を是とするか如き歪んだ法的整理を早急に改め、大臣レベルでその見解を公表する。

(19)携帯電話事業者による差別的なダウンロード容量制限
○項目
 携帯電話事業者による差別的なダウンロード容量制限

○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
 総務省の「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」の提言によると、一部の携帯電話事業者が、公式サイト以外のサイトからダウンロードできるファイルの容量制限を行っているとのことであるが、携帯電話事業者による、このような容量制限は、公平性の観点からも、独禁法からも明らかに問題がある。

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
 なし

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
・携帯電話事業者による公式サイト以外のサイトからダウンロードできるファイルの容量制限を排除する。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

第234回:総務省・ICTの利活用を阻む制度・規制等についての意見募集に対する提出パブコメ(その1:知財・著作権規制関連)

 8月20日〆切で、総務省からかかっているパブコメの「ICTの利活用を阻む制度・規制等についての意見募集」(総務省のリリース、電子政府HPの該当ページ参照。internet watchの記事ITproの記事も参照)に対して、パブコメを提出したので、去年の7月の内閣官房への提出パブコメ(その1その2)や今年の1月のハトミミ.comへの提出パブコメ情報公開制度についての提出パブコメ)とあまり違いはないが、念のため、ここに載せておく。

 長すぎるので2つに分けるが、まず、その1として、下に書いた目次で(1)のダウンロード違法化から(9)の模倣品・海賊版対策条約までの知財・著作権規制関連の項目についての提出パブコメをここに載せる。

(8月17日の追記:(9)海賊版対策条約の項目中に誤記があったので訂正した(「法廷損害賠償」→「法定損害賠償」)。)

(目次)
(1)ダウンロード違法化
(2)DRM回避規制
(3)コピーワンス・ダビング10・B-CAS
(4)私的録音録画補償金制度
(5)著作権保護期間
(6)一般フェアユース条項の導入による著作権規制の緩和
(7)著作権の間接侵害・侵害幇助
(8)著作権検閲・ストライクポリシー
(9)模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)

(10)出会い系サイト規制
(11)青少年ネット規制法・青少年健全育成条例・携帯フィルタリング義務化
(12)児童ポルノ規制・サイトブロッキング
(13)インターネット・ホットラインセンター・日本ガーディアン・エンジェルス・日本ユニセフ協会
(14)情報公開法
(15)国際組織犯罪防止条約・サイバー犯罪条約及びこれらの締結に必要な法改正・ウィルス作成罪
(16)公職選挙法
(17)天下り
(18)メール検閲・DPI技術を用いた広告
(19)携帯電話事業者による差別的なダウンロード容量制限

(以下、提出パブコメ)

(1)ダウンロード違法化
○項目
 ダウンロード違法化

○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
 文化庁の暴走と国会議員の無知によって、 2009年の6月12日に、「著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合」は私的複製に当たらないとする、いわゆるダウンロード違法化条項を含む、改正著作権法が成立し、2010年1月1日に施行された。

 しかし、一人しか行為に絡まないダウンロードにおいて、「事実を知りながら」なる要件は、エスパーでもない限り証明も反証もできない無意味かつ危険な要件であり、技術的・外形的に違法性の区別がつかない以上、このようなダウンロード違法化は法規範としての力すら持ち得ない。このような法改正によって進むのはダウンロード以外も含め著作権法全体に対するモラルハザードのみであり、これを逆にねじ曲げてエンフォースしようとすれば、著作権検閲という日本国として最低最悪の手段に突き進む恐れしかない。改正法は未施行であるが、既に、総務省の「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」において、中国政府の検閲ソフト「グリーン・ダム」導入計画に等しい、日本レコード協会による携帯電話における著作権検閲の提案が取り上げられるなど、弊害は出始めている。

 そもそも、ダウンロード違法化の懸念として、このような著作権検閲に対する懸念は、文化庁へのパブコメ(文化庁HPhttp://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/houkoku.htmlの意見募集の結果参照。ダウンロード違法化問題において、この8千件以上のパブコメの7割方で示された国民の反対・懸念は完全に無視された。このような非道極まる民意無視は到底許されるものではない)や知財本部へのパブコメ(知財本部のHPhttp://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keikaku2009.htmlの個人からの意見参照)を見ても分かる通り、法改正前から指摘されていたところであり、このような著作権検閲にしか流れようの無いダウンロード違法化は始めからなされるべきではなかったものである。文化庁の暴走と国会議員の無知によって成立したものであり、ネット利用における個人の安心と安全を完全にないがしろにするものである、百害あって一利ないダウンロード違法化を規定する著作権法第30条第1項第3号を即刻削除するべきである。

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
 著作権法第30条第1項第3号

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
・著作権法第30条第1項第3号を削除する。

(2)DRM回避規制
○項目
 DRM回避規制

○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
 現状、不正競争防止法と著作権法でDRM回避機器等の提供等が規制され、著作権法でコピーコントロールを回避して行う私的複製まで違法とされている。

 DRM回避規制については、2010年4月に公開された海賊版対策条約(ACTA)案において、DRM回避規制の対象行為の拡大(製造及び回避サービスの提供)や対象の拡大(「のみ」要件の緩和)等が必要な条文案が選択肢を示さない形で提示されており、さらにこのような規制強化について知財計画2010においても具体的な制度改革案を2010年度中にまとめるとされている。

 しかし、2009年2月にDRM回避機器についてゲームメーカー勝訴の判決が出ていることなどを考えても、現時点で、現状の規制では不十分とするに足る根拠は全くない。

 かえって、著作権法において、私的領域におけるコピーコントロール回避まで違法とすることで、著作権法全体に関するモラルハザードとデジタル技術・情報の公正な利活用を阻む有害無益な萎縮効果が生じているのではないかと考えられる。

 デジタル技術・情報の公正な利活用を阻むものであり、そもそも、私的なDRM回避行為自体によって生じる被害は無く、個々の回避行為を一件ずつ捕捉して民事訴訟の対象とすることは困難だったにもかかわらず、文化庁の片寄った見方から一方的に導入されたものである、私的領域でのコピーコントロール回避規制(著作権法第30条第1項第2号)は撤廃するべきである。コンテンツへのアクセスあるいはコピーをコントロールしている技術を私的な領域で回避しただけでは経済的損失は発生し得ず、また、ネットにアップされることによって生じる被害は公衆送信権によって既にカバーされているものであり、その被害とDRM回避やダウンロードとを混同することは絶対に許されない。それ以前に、私法である著作権法が、私的領域に踏み込むということ自体異常なことと言わざるを得ない。

 ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ないこれ以上のDRM回避規制の強化は検討されるべきでないのは無論のこと、このような危険なものとしかなり得ない規制強化条項を含めた形での条約交渉を、何ら国民的なコンセンサスを得ない中で、一部の者の都合から政府が勝手に行うなどおよそ論外である。日本政府として、海賊版対策条約(ACTA)へのDRM回避規制関連条項の導入に反対し、同時に、DRM回避規制の強化による情報アクセスに関する国民の基本的な権利の侵害の危険性について国際的な場で議論を提起するべきである。

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
 著作権法第30条第1項第2号
 著作権法第120条の2
 不正競争防止法第2条第1項第10号、第11号
 海賊版対策条約(検討中)

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
・著作権法第30条第1項第2号を削除する。

・合わせ、DRM回避規制に関して、ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ないこれ以上の規制強化をしないと閣議決定する。

・海賊版対策条約(ACTA)条約交渉においてDRM回避規制関連条項を取り除くよう日本政府から強く働きかける。

(3)コピーワンス・ダビング10・B-CAS
○項目
 コピーワンス・ダビング10・B-CAS

○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
 無料の地上放送の全てに、2008年まではコピーワンスというコピーを1個しか認めない異常に厳しいコピー制限がかけられていた。2008年からわずかに緩和されたが、やはりダビング10という不当に厳しいコピー制限が今も維持されている。このようなコピー制限を維持するためとして、無料の地上放送の全てにB-CASによりスクランブル・暗号化が施されているという状態が今もなお続いている。

 2009年の総務省の情報通信審議会の中間答申で、ようやく無料の地上放送へB-CASシステムとコピーワンス運用の導入を可能とした2002年6月の省令改正についての記載が加えられた。このように以前、無料の地上放送へのスクランブル・暗号化を禁じる省令が存在していた理由についての記載はやはり無いが、これは、無料地上放送は本来あまねく見られるべきという理念があったことの証左であろう。過去の検討経緯についてよりきちんとした情報開示を行い、このような過去の省令に表れている無料の地上放送の理念についても念頭においた上で再検討が進められなくてはならない。

 本来あまねく見られることを目的としていた無料地上波本来の理念をねじ曲げ、放送局と権利者とメーカーの談合に手を貸したという総務省の過去の行為は見下げ果てたものである。コピーワンス問題、ダビング10問題、B-CAS問題の検討と続く、無料の地上放送のスクランブルとコピー制御に関する政策検討の迷走とそれにより浪費され続けている膨大な社会的コストのことを考えても、このような省令改正の政策的失敗は明らかであり、総務省はこの省令改正を失策と明確に認めるべきである。

 B-CASシステムは談合システムに他ならず、これは、放送局・権利者にとっては、視聴者の利便性を著しく下げることによって、一旦は広告つきながらも無料で放送したコンテンツの市場価格を不当につり上げるものとして機能し、国内の大手メーカーとっては、B-CASカードの貸与と複雑な暗号システムを全てのテレビ・録画機器に必要とすることによって、中小・海外メーカーに対する参入障壁として機能している。

 以前は総務省令によって、無料の地上放送へのこのようなスクランブル・暗号化の導入は禁止されていたが、総務省は、平成14年6月にこの省令の改正を行い、 本来あまねく見られることを目的とする無料の地上放送へB-CASシステムとコピーワンス運用の導入を可能として、無料地上波本来の理念をねじ曲げ、放送局と権利者とメーカーの談合に手を貸すと見下げ果てた行為を行っている。コピーワンス問題、ダビング10問題、B-CAS問題の検討と続く、無料の地上放送のスクランブルとコピー制御に関する政策検討の迷走とそれにより浪費され続けている膨大な社会的コストのことを考えても、このような省令改正の政策的失敗は明らかであり、この省令改正を失策と総務省に明確に認めさせるべきである。

 昨年運用が開始されたダビング10に関しても、大きな利便性の向上なくして、より複雑かつ高価な機器を消費者が新たに買わされるだけの弥縫策としか言いようがなく、一消費者・一国民として納得できるものでは全くない。さらに、ダビング10機器に関しては、テレビ(チューナー)と録画機器の接続によって、全く異なる動作をする(接続次第で、コピーの回数が9回から突然1回になる)など、公平性の観点からも問題が大きい。

 現在の地上無料放送各局の歪んだビジネスモデルによって、放送の本来あるべき姿までも歪められるべきではない。そもそもあまねく視聴されることを本来目的とする、無料の地上放送においてコピーを制限することは、視聴者から視聴の機会を奪うことに他ならず、このような規制を良しとする談合業界及び行政に未来はない。

 コピー制限技術はクラッカーに対して不断の方式変更で対抗しなければならないが、その方式変更に途方もないコストが発生する無料の地上放送では実質的に不可能である。インターネット上でユーザー間でコピー制限解除に関する情報がやりとりされる現在、もはや無料の地上放送にDRMをかけていること自体が社会的コストの無駄であるとはっきりと認識するべきである。無料の地上放送におけるDRMは本当に縛りたい悪意のユーザーは縛れず、一般ユーザーに不便を強いているだけである。さらに、B-CASカードのユーザー登録の廃止(地上デジタル放送専用の青カードについては既にユーザー登録が廃止されており、BS・CS・地上共用の赤カードについても来年3月に登録が廃止される予定である。http://www.b-cas.co.jp/www/whatsnew/100325.htmlhttp://www.b-cas.co.jp/www/whatsnew/100705.html参照)により、B-CASカードによるユーザーに対するコピー制御の技術的なエンフォースは完全に不可能となっており、既に存在意義を完全に失っているB-CASカード・システムは速やかに完全に地上デジタル放送から排除されるべきである。

 2009年の情報通信審議会の中間答申において、現行のB-CASシステムと併存させる形でチップやソフトウェア等の新方式を導入することが提言されており、今も恐らく企業レベル等で検討が進められているものと思うが、無意味な現行システムの維持コストに加えて新たなシステムの追加で発生するコストまでまとめて消費者に転嫁される可能性が高く、このような弥縫策は、一消費者として全く評価できないものである。さらに言うなら、これらの新方式は、不正機器対策には全くならない上、新たに作られるライセンス発行・管理機関が総務省なりの天下り先となり、新方式の技術開発・設備投資コストに加え、天下りコストまで今の機器に上乗せされかねないものである。この審議会において同じく検討課題とされていた、制度的エンフォースメントにしても、正規機器の認定機関が総務省なりの天下り先となり、その天下りコストがさらに今の機器に上乗せされるだけで、しかも不正機器対策には全くならないという最低の愚策である。

 無料の地上放送の理念を歪め、放送局・権利者・国内の大手メーカーの談合を助長している、無料の地上放送にかけられているスクランブル・暗号化こそ問題なのであって、B-CAS類似の無意味なシステムをいくら併存させたところで、積み上げられるムダなコストが全て消費者に転嫁されるだけで何の問題の解決にもならず、同じことが繰り返されるだけだろう。基幹放送である無料地上波については、B-CASシステムを排除し、ノンスクランブル・コピー制限なしを基本とすること以外で、この問題の本質的な解決がもたらされることはない。

 法的にもコスト的にも、どんな形であれ、全国民をユーザーとする無料地上放送に対するコピー制限は維持しきれるものではない。このようなバカげたコピー制限に関する過ちを二度と繰り返さないため、無料の地上放送についてはスクランブルもコピー制御もかけないこととする逆規制を、政令や省令ではなく法律のレベルで放送法に入れることを私は一国民として強く求める。

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
 なし

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
1.無料地上波からB-CASシステムを排除し、テレビ・録画機器における参入障壁を取り除き、自由な競争環境を実現する。

2.あまねく見られることを目的とするべき、基幹放送である無料地上波については、ノンスクランブル・コピー制限なしを基本とする。

3.無料地上波については、ノンスクランブル・コピー制限なしとすることを、総務省が勝手に書き換えられるような省令や政令レベルにではなく、法律に書き込む。

(4)私的録音録画補償金制度
○項目
 私的録音録画補償金制度

○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
 私的複製によって生じる著作権者の経済的不利益を補償するため、MD、CD-R、DVD-R等の分離型録音録画専用デジタル録音録画機器・媒体に私的録音録画補償金が賦課されている。文化庁文化審議会において、数年に渡り縮小・廃止に向けた検討が行われ、補償金のそもそもの意義が問われた中で、その解決をおざなりにしたまま、2008年の6月にダビング10解禁のために文部科学大臣と経済産業大臣の間で暫定的な措置としてブルーレイ課金の合意がなされ、消費者不在の中、2009年の5月に著作権施行令の改正によってブルーレイへの課金まで実施された。さらには、この問題について、メーカーと補償金管理協会の間で訴訟が行われるにまで至っている。

 確かに今はコピーフリーのアナログ放送もあるが、ブルーレイにアナログ放送を録画することはまずもって無いと考えられるため、アナログ放送の存在もブルーレイ課金の根拠としては薄弱であり、そのアナログ放送も2011年には止められる予定となっている。

 特に、権利者団体は、ダビング10への移行によってコピーが増え自分たちに被害が出ると大騒ぎをしたが、移行後2年以上経った今現在においても、ダビング10の実施による被害増を証明するに足る具体的な証拠は全く示されておらず、ブルーレイ課金に合理性があったとは私には全く思えない。

 わずかに緩和されたとは言え、今なお地上デジタル放送にはダビング10という不当に厳しいコピー制限がかかったままである。こうした実質的に全国民に転嫁されるコストで不当に厳しい制限を課している機器と媒体にさらに補償金を賦課しようとするのは、不当の上塗りである。このような不当に厳しいコピー制限が維持される限り、私的録画補償金は廃止するべきである。

 文化庁の文化審議会著作権分科会における数年の審議において、補償金のそもそもの意義についての意義が問われたが、今に至るも文化庁は、天下り先である権利者団体のみにおもねり、この制度に関する根本的な検討を怠っている(文化庁は、基本問題小委員会を設けたが、始めからメンバーが権利者団体のみに片寄っており、このような腐った小委員会で著作権の根本に関わる問題など検討できないことは明白である。)。

 世界的に見ても、メーカーや消費者が納得して補償金を払っているということはカケラも無く、権利者団体がその政治力を不当に行使し、歪んだ「複製=対価」の著作権神授説に基づき、不当に対象を広げ料率を上げようとしているだけというのがあらゆる国における実情である。表向きはどうあれ、大きな家電・PCメーカーを国内に擁しない欧州各国は、私的録音録画補償金制度を、外資から金を還流する手段、つまり、単なる外資規制として使っているに過ぎない。

 この制度における補償金の対象・料率に関して、具体的かつ妥当な基準はどこの国を見ても無いのであり、この制度は、ほぼ権利者団体の際限の無い不当な要求を招き、莫大な社会的コストの浪費のみにつながっている。機器・媒体を離れ音楽・映像の情報化が進む中、「複製=対価」の著作権神授説と個別の機器・媒体への賦課を基礎とする私的録音録画補償金は、既に時代遅れのものとなりつつあり、その対象範囲と料率のデタラメさが、デジタル録音録画技術の正常な発展を阻害し、デジタル録音録画機器・媒体における正常な競争市場を歪めているという現実は、補償金制度を導入したあらゆる国において、問題として明確に認識されなくてはならないことである。

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
 著作権法第30条第2項
 著作権法第5章
 著作権法施行令第1章

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
1.そもそも、著作権法の様な私法が私的領域に踏み込むこと自体がおかしいのであり、私的領域での複製は原則自由かつ無償であることを法文上明確にする。また、刑事罰の有無に関わらず、外形的に違法性を判別することの出来ない形態の複製をいたずらに違法とすることは社会的混乱を招くのみであり、厳に戒められるべきである。

2.特に、補償金については、これが私的録音録画を自由にすることの代償であることを法文上明確にする。すなわち、私的録音録画の自由を制限するDRM(コピーワンスやダビング10ほどに厳しいDRM)がかけられている場合は、補償措置が不要となることを法文上明確にする。

3.また、タイムシフト、プレースシフト等は、外形的に複製がなされているにせよ、既に一度合法的に入手した著作物を自ら楽しむために移しているに過ぎず、このような態様の複製について補償は不要であることを法文上明確にする。実質権利者が30条の範囲内での複製を積極的に認めているに等しい、レンタルCDやネット配信、有料放送からの複製もこれに準じ、補償が不要であることを明確にする。

4.私的録音録画の自由の確保を法文上明確化するとした上で、私的録音録画を自由とすることによって、私的複製の範囲の私的録音録画によってどれほどの実害が著作権者に発生するのかについてのきちんとした調査を行う。
 この実害の算定にあたっては、補償の不必要な私的複製の形態や著作権者に損害を与えない私的複製の形態があることも考慮に入れ、私的録音録画の著作権者に与える経済的効果を丁寧に算出する。単に私的録音録画の量のみを問題とすることなど論外であり、その算定に当たっては入念な検証を行う。

5.この算出された実害に基づいて補償金の課金の対象範囲と金額が決められるべきである。特に、その決定にあたっては、コンテンツ産業振興として使われる税金や受信料・電波の割当といった各種の公的に与えられている既得権益も補償金の一種ととらえられることを念頭に置くべきである。この場合でも、将来の権利者団体による際限の無い補償金要求を無くすため、対象範囲と金額が明確に法律レベルで確定される必要がある。あらゆる私的録音録画について無制限の補償金要求権を権利者団体に与えることは、ドイツ等の状況を見ても、社会的混乱を招くのみであり、ユーザー・消費者・国民にとってきちんとセーフハーバーとして機能する範囲・金額の確定が行われなくてはならない。
 あるいは、実害が算出できないのであれば、原則にのっとり、私的録音録画補償金制度は廃止されるべきである。

6.集められた補償金は、権利者の分配に使用されることなく、全額違法コピー対策やコンテンツ産業振興などの権利者全体を利する事業へ使用されるようにするべきである。

 なお、天下り先の権利者団体のみにおもねり、国益を無視して暴走する腐り切った文化庁には、もはや、この問題の検討能力は完全に無い。上記のような方向性で検討する必要があると私は考えているが、無理なようであれば、この制度を現行のまま完全に凍結すると閣議決定することも、合わせ検討するべきである。

(5)著作権保護期間
○項目
 著作権保護期間

○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
 現行の日本の著作権法において、著作権の保護期間は著作者の死後50年とされている。実演、レコード及び放送に関する著作隣接権については、それぞれ実演を行った時、音を最初に固定した時、放送を行った時から50年とされている。文化庁の文化審議会において、延長の検討がなされて来ており、権利者団体と文化庁を除けば、延長を否定する結論が出そろっているにもかかわらず、文化庁は保護期間延長に関して継続して検討しようとし続けている。

1.著作権そのものの保護期間について
 著作権そのものに関しては、現行でも著作者の死後50年という極めて長い期間に渡って著作権が保護されることになっている。また、著作者人格権については保護期間が切れるということはない。

 文化的に、ひ孫の孫くらいのことまで考えて創作をしている人間がいるとも思われず、文化の多様化のためにはこれ以上の延長はほとんど何の役にも経たず、経済的にも、著作者の死後50年を経てなお権利処理コストを上回る財産的価値を保っている極めて稀な著作物のために、このコストを下回るほとんど全ての著作物の利用を阻害することは全く妥当でない。

 また、保護期間延長問題は金銭的な話でないとするリスペクト論もよく権利者側が持ち出すのだが、創作者が世に出したいと思う形のまま、創作者の名前を付けて著作物を流通させるために、同一性保持権や氏名表示権といった著作者人格権が、既に保護期間が切れることのない権利として規定されているのであり、人格権と財産権を混同した主張は取り上げるに値しない。延長問題は、あくまで権利の財産的な側面のみを考慮して考えられなくてはならない。

 これほど長期間に渡る著作権の保護期間は、過去の圧倒的多数の著作物の新たな技術による公共利用、 過去の大多数の著作物のデジタル情報としての公共利用に対する一大阻害要因となっており、著作権者の個々のメリットに比して社会的デメリットがあまりにも大きな有害な規制として機能している。このような著作権の保護期間については、短縮が検討されてしかるべきである。

 また、権利者団体と文化庁を除けば日本国内では、この点に関しては延長しないということでほとんど結論が出そろっているのであり、文化庁の保護期間延長に関する検討は完全に止められるべきである。

2.実演家の著作隣接権の保護期間について
 同一性保持権や氏名表示権などの実演家の人格権も特に保護期間と一緒に切れるということはないので、 実演家の著作隣接権の保護期間についても人格権と財産権をごっちゃにするリスペクト論は全く当てはまらない。

 実演から50年を超えて保護期間を延長することが、文化的な実演を多く生み出すためのインセンティブとなり、このインセンティブが、保護期間延長によって生じる公共利用に対するディスインセンティブを超えるという明確な論拠が示されるならばともかく、実演から50年という期間はかなり著名かつ長命の実演家でなければ切れることがない期間であり、今のところ、実演家の著作隣接権の保護期間延長についても、これを是とするに足る根拠は何一つなく、これも延長されるべきでない。

 なお、著作隣接権の中でも、実演家の権利と、レコード製作者・放送事業者の権利は大きく性質が異なっているものであり、これらを混同することは百害あって一利ないものである。

3.レコード製作者あるいは放送事業者の著作隣接権の保護期間について
 レコード製作者と放送事業者という創作者ではない流通事業者の著作隣接権は、単にレコード会社や放送局が強い政治力を持っていたことから無理矢理ねじ込まれた権利に過ぎず、その目的は流通コストへの投資を促すことのみにあったものである。インターネットという流通コストの極めて低い流通チャネルがある今、独占権というインセンティブで流通屋に投資を促さねばならない文化上の理由もほぼ無くなっているのであり、これらの保護期間は速やかに短縮することが検討されるべきである。

 なお、放送事業者の権利の保護期間については、今でもローマ条約及びTRIPS協定)で放送から20年と規定されているだけであり、短縮するのに国際的障害はない。合理的な理由無く決められた保護期間を短縮することが憲法上問題になる訳もない。

 なお、過去、保護期間の短縮を行った国としては、ポルトガルとスペインが存在しており、保護期間の短縮は国際的に見て完全に不可能とされるものでは無い。

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
 著作権法第2章第4節
 著作権法第4章第6節
 ベルヌ条約第7条
 万国著作権条約第4条
 ローマ条約第14条
 レコード製作者の保護に関する条約第4条
 実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約第17条
 TRIPS協定第12条及び第14条

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
・文化庁における著作権保護期間延長の検討を閣議決定により停止する。

・放送に関する著作隣接権に関しては、速やかに保護期間を放送を行った時から20年とする。

・合わせ、現行ですら余りに長い著作権及びレコード製作者あるいは放送事業者の著作隣接権の保護期間短縮のため、日本政府からベルヌ条約他の関係条約の改正提案を行うことを、政府レベルで検討する。

(6)一般フェアユース条項の導入による著作権規制の緩和
○項目
 一般フェアユース条項の導入による著作権規制の緩和

○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
 ほぼ全国民が利用者兼権利者となり得、考えられる利用形態が発散し、個別の規定では公正利用の類型を拾い切れなくなるインターネットのような場においては、現行の個別の権利制限規制を前提とする著作権法全体がデジタル技術・情報の公正な利活用を阻害するものとなっている。

 今現在、文化庁の文化審議会において著作権法における一般フェアユース条項の導入が検討されているが、2010年6月の法制問題小委員会「権利制限の一般規定に関する中間まとめ」で示された方針は、「A その著作物の利用を主たる目的としない他の行為に伴い付随的に生ずる当該著作物の利用であり、かつ、その利用が質的又は量的に社会通念上軽微であると評価できるもの」、「B 適法な著作物の利用を達成しようとする過程において合理的に必要と認められる当該著作物の利用であり、かつ、その利用が質的又は量的に社会通念上軽微であると評価できるもの」、「C 著作物の種類及び用途並びにその利用の目的及び態様に照らして、当該著作物の表現を知覚することを通じてこれを享受するための利用とは評価されない利用」のみを権利制限の一般規定の対象とするべきとその範囲は不当に狭い。確かに法的安定性を高めるという点ではこれらの類型について権利制限を設けることは重要であるものの、これほど限定したのでは、これはもはや権利制限の「一般」規定の名に値しない。これでは、既存の個別制限規定がことごとく不当に狭く使いにくいものとされているという現状から来る問題に対処する上では極めて不十分な、狭く使いにくい「個別」規定が新たに追加されるに過ぎず、著作権をめぐる今の混迷状況が変わることはない。

 インターネットのように、ほぼ全国民が利用者兼権利者となり得、考えられる利用形態が発散し、個別の規定では公正利用の類型を拾い切れなくなるところでは、フェアユースのような一般規定は保護と利用のバランスを取る上で重要な意義を持つものであり、著作物の公正利用には上記以外の変形利用もビジネス利用も考えられ、このような利用も含めて著作物の公正利用を促すことが、今後の日本の文化と経済の発展にとって真に重要であえることを考えれば、形式的利用、付随的利用あるいは著作物の知覚を目的とするのでない利用に限るといった形で不当にその範囲を狭めるべきでは無く障害者福祉、教育、研究、資料保存やパロディ等のための利用、個人の情報発信に伴う利用、ネットワークサービスに関連する利用、企業内における著作物の利用等、個別の権利制限規定による対処が不可能な全ての公正利用の類型が含まれるよう、その範囲・要件はアメリカ等と比べて遜色の無いものとして、権利制限の一般規定を可能な限り早期に導入するべきである。

 なお、個別の権利制限規定の迅速な追加によって対処するべきとする意見もあるが、文化庁と権利者団体がスクラムを組んで個別規定すらなかなか入れず、入れたとしても必要以上に厳格な要件が追加されているという惨憺たる現状において、個別規定の追加はこの問題における真の対処たり得ない。2009年6月に成立した法改正においても、図書館におけるアーカイブ化のための権利制限の対象を国立国会図書館のみに限り、検索エンジンの権利制限の対象も、「業として行う者」と業規制をかけた上で、政令でその基準を定めようとし、研究目的の権利制限についても、大量の情報の統計解析のみを対象としているなど、不当に厳しい制限が課されており、天下り先の権利者団体のみにおもねる腐り切った文化庁による法改正の検討の弊害は如実に現れている。

 また、権利を侵害するかしないかは刑事罰がかかるかかからないかの問題でもあり、公正という概念で刑事罰の問題を解決できるのかとする意見もあるようだが、かえって、このような現状の過剰な刑事罰リスクからも、フェアユースは必要なものと私は考える。現在親告罪であることが多少セーフハーバーになっているとはいえ、アニメ画像一枚の利用で別件逮捕されたり、セーフハーバーなしの著作権侵害幇助罪でサーバー管理者が逮捕されたりすることは、著作権法の主旨から考えて本来あってはならないことである。政府にあっては、著作権法の本来の主旨を超えた過剰リスクによって、本来公正として認められるべき事業・利用まで萎縮しているという事態を本当に深刻に受け止め、一刻も早い改善を図ってもらいたい。

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
 著作権法

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
・著作権法に、その範囲・要件はアメリカ等と比べて遜色の無いものとして、権利制限の一般規定を可能な限り早期に導入する。

 ただし、フェアユースの導入によって、私的複製の範囲が縮小されることはあってはならないことである。

(7)著作権の間接侵害・侵害幇助
○項目
 著作権の間接侵害・侵害幇助

○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
 動画投稿サイト事業者がJASRACに訴えられ、今なお係争中である「ブレイクTV」事件や、レンタルサーバー事業者が著作権幇助罪で逮捕され、検察によって姑息にも略式裁判で50万円の罰金を課された「第(3)世界」事件等を考えても、今現在、著作権の間接侵害や侵害幇助のリスクが途方もなく拡大し、甚大な萎縮効果・有害無益な社会的大混乱が生じかねないという非常に危険な状態にある。

 今現在、著作権の間接侵害・侵害幇助のリスクが途方もなく拡大し、甚大な萎縮効果・有害無益な社会的大混乱が生じかねないという非常に危険な状態にあり、民事的な責任の制限しか規定していないプロバイダー責任制限法に関し、被侵害者との関係において、刑事罰リスクも含めたプロバイダーの明確なセーフハーバーについて検討するべきである。

 さらに、著作権の間接侵害事件や侵害幇助事件においてネット事業者がほぼ直接権利侵害者とみなされてしまうことを考えると、プロバイダー責任制限法によるセーフハーバーだけでは不十分であり、間接侵害や著作権侵害幇助罪も含め、著作権侵害とならないセーフハーバーの範囲を著作権法上きちんと確定することが喫緊の課題である。

 セーフハーバーを確定するためにも間接侵害の明確化はなされるべきであるが、現行の条文におけるカラオケ法理や各種ネット録画機事件などで示されたことの全体的な整理以上のことをしてはならない。特に、今現在文化庁の文化審議会で検討されているように、著作権法に明文の間接侵害一般規定を設けることは絶対にしてはならないことである。確かに今は直接侵害規定からの滲み出しで間接侵害を取り扱っているので不明確なところがあるのは確かだが、現状の整理を超えて、明文の間接侵害一般規定を作った途端、権利者団体や放送局がまず間違いなく山の様に脅しや訴訟を仕掛けて来、今度はこの間接侵害規定の定義やそこからの滲み出しが問題となり、無意味かつ危険な社会的混乱を来すことは目に見えているからである。

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
 著作権法第7章及び第8章
 刑法第62条
 プロバイダー責任制限法(正式名称は、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」)

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
・プロバイダー責任制限法に関し、被侵害者との関係において、刑事罰リスクも含めたプロバイダーの明確なセーフハーバーについて検討する。

・合わせ、今現在の文化庁の文化審議会における、著作権法に間接侵害一般規定を設けることに関する検討を停止し、間接侵害や著作権侵害幇助罪も含め、著作権侵害とならないセーフハーバーの範囲を著作権法上きちんと確定するための検討を開始する。

 ただし、このセーフハーバーの要件において、標準的な仕組み・技術や違法性の有無の判断を押しつけるような、権利侵害とは無関係の行政機関なり天下り先となるだろう第3者機関なりの関与を必要とすることは、検閲の禁止・表現の自由等の国民の権利の不当な侵害に必ずなるものであり、絶対にあってはならないことである。

(8)著作権検閲・ストライクポリシー
○項目
 著作権検閲・ストライクポリシー

○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
 まだ実施されてはいないと思われるが、総務省の 「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」において、携帯電話においてダウンロードした音楽ファイルを自動検知した上でそのファイルのアクセス・再生制限を行うという、日本レコード協会の著作権検閲の提案が取り上げられている。

 同じく、著作権検閲に流れる危険性が極めて高い、フランスで今なお揉めているネット切断型のストライクポリシー類似の、ファイル共有ソフトを用いて著作権を侵害してファイル等を送信していた者に対して警告メールを送付することなどを中心とする電気通信事業者と権利者団体の連携による著作権侵害対策が、警察庁、総務省、文化庁などの規制官庁が絡む形で進められており、さらに、ストライクポリシーの導入の検討を著作権団体が求めている。

 しかし、通信の秘密という基本的な権利の適用は監視の位置がサーバーであるか端末であるかによらないものであること、特に、機械的な処理であっても通信の秘密を侵害したことには変わりはないとされ、通信の秘密を侵害する行為には、当事者の意思に反して通信の構成要素等を利用すること(窃用すること)も含むとされていることを考えると、日本レコード協会が提案している違法音楽配信対策は、明らかに通信の秘密を侵害するものであり、さらに、憲法に規定されている表現の自由(情報アクセス権を含む)や検閲の禁止に明らかに反するものとして、このような技術による著作権検閲に他ならない対策は決して導入されてはならないものである。

 また、本来最も基本的なプライバシーに属する個人端末中の情報について、内容を自動検知し、アクセス制限・再生禁止等を行うことは、それ自体プライバシー権を侵害するものであり、プライバシーの観点からも、このような措置は導入されるべきでない。

 付言すれば、日本レコード協会の携帯端末における違法音楽配信対策は、建前は違えど、中国でPCに対する導入が検討され、大騒ぎになった末、今現在導入が無期延期されているところの検閲ソフト「グリーン・ダム」と全く同じ動作をするものであるということを政府にははっきりと認識してもらいたい。このような検閲ソフトの導入については、日本も政府として懸念を表明しているはずであり、自由で民主的な社会において、このような技術的検閲が導入されることなど、絶対許されないことである。

 このような提案は、通信の秘密や検閲の禁止、表現の自由、プライバシーといった個人の基本的な権利をないがしろにするものである。日本レコード協会が提案している、検閲に該当するこのような対策は絶対に導入されるべきでなく、また技術支援・実証実験等として税金のムダな投入がなされるべきではない。

 警告メールの送付とネット切断を中心とする、著作権検閲機関型の違法コピー対策である3ストライクポリシーについても、2009年6月に、フランス憲法裁判所によって、インターネットのアクセスは、表現の自由に関係する情報アクセスの権利、つまり、最も基本的な権利の1つとしてとらえられるものであるとして、著作権検閲機関型の3ストライクポリシーは、表現の自由・情報アクセスの権利やプライバシーといった他の基本的な権利をないがしろにするものとして、真っ向から否定された。フランスでは今なおストライクポリシーに関して揉め続けているが、日本においては、このようなフランスにおける政策の迷走を他山の石として、このように表現の自由・情報アクセスの権利やプライバシーといった他の基本的な権利をないがしろにする対策を絶対に導入しないこととするべきであり、警察庁などが絡む形で検討が行われている違法ファイル共有対策についても、通信の秘密やプライバシー、情報アクセス権等の国民の基本的な権利をきちんと尊重する形で検討を進めることが担保されなくてはならない。

 これらの提案や検討からも明確なように、違法コピー対策問題における権利者団体の主張、児童ポルノ法規制強化問題・有害サイト規制問題における自称良識派団体の主張は、常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。今後は、このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むこと検討するべきである。同じく、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な著作権検閲やストライクポリシー、サイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むことを検討するべきである。

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
 なし

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
・憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むこと、及び、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な著作権検閲やストライクポリシー、サイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むことを検討する。

・閣議決定により、日本レコード協会が提案している、日本版著作権グリーン・ダム計画について技術支援・実証実験等として税金のムダな投入を行わないこととする。

・同じく閣議決定により、警察庁などが絡む形で進められている違法ファイル共有対策についても、通信の秘密やプライバシー、情報アクセス権等の国民の基本的な権利をきちんと尊重する形で検討を進めることを担保する。

(9)模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)
○項目
 模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)

○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
 模倣品・海賊版拡散防止条約の検討・交渉が政府レベルで交渉が行われている。

 2010年4月に公開されたこの条約の条文案には、法定損害賠償に関する条項が含まれているが、この法定賠償制度は、アメリカで一般ユーザーに法外な損害賠償を発生させ、その国民のネット利用におけるリスクを不当に高め、ネットにおける文化と産業の発展を阻害することにしかつながっていないものであり、日本において導入されるべきとは到底思えない制度である。選択肢の形になってはいるが、このような不合理な制度の導入を求めている一部の者によって、国内法改正の検討の際に不当に利用される恐れもあり、法定賠償に関する条項については削除を求めるべきである。

 また、日本の現在の法制度と比較した時、DRM回避規制について今以上の規制強化を必要とする条項も条文案に含まれている。しかし、2009年2月に、DRM回避機器に対して、ゲームメーカー勝訴の判決が出ていることを考えても、今以上の規制を是とするに足る立法事実は何一つなく、かえって、今以上の規制強化はユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ない。このような危険なものとしかなり得ない規制強化条項を含めた形での条約交渉を、何ら国民的なコンセンサスを得ない中で、一部の者の都合から政府が勝手に行うなどおよそ論外である。日本政府として、海賊版対策条約(ACTA)へのDRM回避規制関連条項の導入に反対し、同時に、DRM回避規制の強化による情報アクセスに関する国民の基本的な権利の侵害の危険性について国際的な場で議論を提起するべきである。

 同じ条文案には、プライバシー保護に関する条項を入れることを検討すると書かれているものの、条文案には、インターネットにおけるプロバイダーの責任制限等についての条項も含まれており、この部分の法制化によりユーザーの情報アクセスに関する基本的な権利が不当な侵害を受ける恐れがあることを考えると、プライバシーの保護に関する条項だけでは不十分である。国際的・一般的に認められている個人の基本的な権利である情報アクセスの権利等の情報の自由に関する権利を守るということも、条約に書き込むべきであると日本から各国に積極的に働きかけるべきである。

 また4月時点での条約案こそ公開されたものの、依然として交渉に関しては日本政府は要領を得ない概要の公開のみでごまかしている。交渉会合に際しては、毎回速やかに自国の交渉スタンスと各国政府の反応について、議論の詳細を公開するべきである。このような情報の公開に他国の承認が必要であるとするなら、交渉の場で条約に関する詳細情報の公開についての議論を日本政府として積極的に提起し、他国の承認を得るようにするべきである。ほとんど全世界のインターネットユーザーつまり、全世界の全国民の情報アクセスに多大な影響を及ぼしかねないこの条約の交渉については、その交渉に関する全情報が公開されて良い。

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
 模倣品・海賊版拡散防止条約(検討中)

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
・模倣品・海賊版拡散防止条約から、法定賠償とDRM回避規制に関する条項について日本政府として削除を求める。

・同時に、DRM回避規制の強化による情報アクセスに関する国民の基本的な権利の侵害の危険性について国際的な場で日本政府から議論を提起する。

・プライバシーの権利だけではなく、国際的・一般的に認められている個人の基本的な権利である情報アクセスの権利等の情報の自由に関する権利を守るということも、条約に書き込むべきであると日本から各国に積極的に働きかける。

・交渉会合に際し、毎回速やかに自国の交渉スタンスと各国政府の反応について、議論の詳細を公開する。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年8月 2日 (月)

第233回:総務省・情報通信審議会第7次中間答申「地上デジタル放送の利活用の在り方と普及に向けて行政の果たすべき役割」に対する提出パブコメ

 主に地デジのコピー制御問題を検討していた総務省の情報通信審議会の「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」が今年は何故か止まっており、多少スジが悪いのだが、黙ってもいられないので、「地上デジタル放送推進に関する検討委員会」の方の第7次中間答申「地上デジタル放送の利活用の在り方と普及に向けて行政の果たすべき役割(pdf)」に対する意見募集(8月5日〆切。総務省のリリース、電子政府HPの該当ページ参照)に地上デジタル放送におけるコピー制御に関する意見を提出した。

 去年の提出パブコメとほとんど違いはないが、念のため、ここに載せておく。

 かなり間が空いてしまったが、合わせてここ半月ばかりの話も紹介しておくと、まず、著作権法への一般フェアユース条項の導入について、7月22日に、文化庁で、文化審議会の法制問題小委員会が開催され、検討の続きが行われ、追加のヒアリングをするものとされた(PC onlineの記事、文化庁HPの議事次第・資料、電子政府HPのパブコメ結果参照)。この8月3日・5日も開催が予定されており(開催案内参照)、いまさら何をするつもりか知らないが、文化庁のことなので、また権利者団体中心にヒアリングしてあのレベルのほとんどフェアユースといえないような日本版フェアユースすら潰しに来るつもりだろうか。

 7月23日には、内閣府が「第3次男女共同参画基本計画策定に当たっての基本的な考え方(答申)」についてを公表している(内閣府HPのパブコメ結果あるいは電子政府HPのパブコメ結果も参照)。「第9分野 女性に対するあらゆる暴力の根絶(pdf)」と「第13分野 メディアにおける男女共同参画の推進(pdf)」では、多少書きぶりが改められ、表現の自由を十分に尊重した上でといった記載が入ったが、創作物の規制も含め規制強化を検討するとの記載自体は残されており、次にどこから何が出て来るか分からないが、いつも通り規制ありきで検討が進むのは覚悟しておいた方が良いだろう。

 児童ポルノ規制絡みということでは、やはり、7月26日に内閣府で開催された児童ポルノ排除対策ワーキングチーム(議事次第参照)、翌7月27日に開催された犯罪対策閣僚会議議事次第参照)で、パブコメを完全に無視し、原案通り、「児童ポルノ排除総合対策(pdf)」(概要(pdf))が決定されている。ブロッキングの導入についてなど、日本では間々あることとは言え、民間の自主規制が大臣会議で決定されることなど異常以外の何物でもないと少し考えてみれば分かることだろう。パブコメ無視もいつも通りと言えばいつも通りだが、よほどあからさまに反対意見ばかりで格好がつかないと内閣府の官僚が思ったのか、児童ポルノワーキングチームで用いられたパブコメ結果概要(pdf)では、勝手に日弁連と日本ユニセフと京都市PTAの意見についてのマスコミ煽動記事を追加している。この話は「チラシの裏(3週目)」や「表現規制について少しだけ考えてみる(仮)」でも取り上げられており、私も今までパブコメではおよそ官僚による恣意的なまとめばかり見てきているが、これほどデタラメかつ恣意的な印象操作付きのパブコメ結果概要の公表は私の知る限りない。表に見えないところでのやりとりは良く分からないが、関係する部分の記載に変更がなかったことからしても前以上にブロッキングについて何か具体的なことが決まっている様子はない中、引き続きブロッキングの導入の検討についても危険な状態が続くことだろう。

 また、今度は京都府から、携帯・ネット規制を強化する内容の「青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例(案)」に対する意見募集が8月20日〆切でかかっているので(京都府のHP参照)、京都在住の方で、こうした問題に関心を寄せている方は、是非提出を検討頂ければと思う。

 「P2Pとかその辺の話」で取り上げられている、アメリカ著作権局によるにいくつかのDRMの解除の合法化の決定の話に関するコメントなども時間があれば書きたいと思っているが、次回のエントリは、8月20日〆切で、総務省からかかっているパブコメの「ICTの利活用を阻む制度・規制等についての意見募集」(総務省のリリース、電子政府HPの該当ページ参照。internet watchの記事ITproの記事も参照)についてか、MIAUから4月時点の条文案の翻訳が公表され(MIAUのリリース参照)、7月時点の条文案もリークされている(laquadrature.netの記事参照)、海賊版対策条約(ACTA)についてか、上の児童ポルノ排除総合対策でもプロパガンダに使うと明記しているリオ宣言についてか、書けたものから載せたいと思っている。

(以下、提出パブコメ)

氏名:兎園(個人・匿名希望)
連絡先:

(ページ)
全体

(意見)
 今年の情報通信審議会においては、去年までコピー制御の問題等を検討していた「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」による検討が今年は何故か止められ、今回の中間答申「地上デジタル放送の利活用の在り方と普及に向けて行政の果たすべき役割」でも、地上デジタル放送におけるコピー制御の問題は全く触れられていない。しかし、コピー制御のコピーワンスからダビング10への緩和も、到底評価できない弥縫策にすぎず、コピー制御に関する問題は、地上放送のデジタル化における重要な問題であり、決してなおざりにされるべきものではないことを考え、本中間答申への意見という形で、地上デジタル放送におけるコピー制御の問題について、以下の通り意見を提出する。

 私は一国民として、デジタル放送におけるコピー制御の問題について、以下の通りの方向性を基本として検討し直すことを強く求める。

1.無料地上波からB-CASシステムを排除し、テレビ・録画機器における参入障壁を取り除き、自由な競争環境を実現すること。
2.あまねく見られることを目的とするべき、基幹放送である無料地上波については、ノンスクランブル・コピー制限なしを基本とすること。
3.これは立法府に求めるべきことではあるが、無料地上波については、ノンスクランブル・コピー制限なしとすることを、総務省が勝手に書き換えられるような省令や政令レベルにではなく、法律に書き込むこと。
4.B-CASに代わる機器への制度的なエンフォースの導入は、B-CASに変わる新たな参入障壁を作り、今の民製談合を官製談合に切り替えることに他ならず、厳に戒められるべきこと。コンテンツの不正な流通に対しては現在の著作権法でも十分対応可能である。

 現行のB-CASシステムと併存させる形でのチップやソフトウェア等の新方式についても、無意味な現行システムの維持コストに加えて新たなシステムの追加で発生するコストまでまとめて消費者に転嫁される可能性が高く、このような弥縫策は、一消費者として全く評価できないものである。

 なお、補償金制度は、私的録音録画によって生じる権利者への経済的不利益を補償するものであって、メーカーなどの利益を不当に権利者に還元するものではない。上記1~4以外の方向性を取り、ダビング10のように不当に厳しいコピー制御が今後も維持され続けるようであれば、録画補償金は廃止しても良いくらいであり、全く議論の余地すらない。上記1~4が実現されたとしても、補償金の対象範囲等は私的な録音録画が権利者にもたらす「実害」に基づいて決められるべきであるということは言うまでもない。

 また、今回の平成22年5月の調査でようやくアンテナ問題の認識等も含めた調査が行われたが、地上デジタルへの移行において、今のままでは、アンテナ工事、共同受信施設・難視聴における対応、アナログテレビの廃棄の問題等を中心に非常に大きな混乱が予想される。移行まで1年を切っているが、今後、混乱回避のためアナログ停波の延期も含めて検討するべきである。

(理由)
 去年の中間答申「『デジタル・コンテンツの流通の促進』及び『コンテンツ競争力強化のための法制度の在り方』」へのパブコメでも書いたことだが、B-CASシステムは談合システムに他ならず、これは、放送局・権利者にとっては、視聴者の利便性を著しく下げることによって、一旦は広告つきながらも無料で放送したコンテンツの市場価格を不当につり上げるものとして機能し、国内の大手メーカーとっては、B-CASカードの貸与と複雑な暗号システムを全てのテレビ・録画機器に必要とすることによって、中小・海外メーカーに対する参入障壁として機能しているのである。

 前回の中間答申で、ようやく無料の地上放送へB-CASシステムとコピーワンス運用の導入を可能とした平成14年6月の省令改正についての記載が加えられた。このように以前、無料の地上放送へのスクランブル・暗号化を禁じる省令が存在していた理由についての記載はやはり無いが、これは、無料地上放送は本来あまねく見られるべきという理念があったことの証左であろう。過去の検討経緯についてよりきちんとした情報開示を行い、このような過去の省令に表れている無料の地上放送の理念についても念頭においた上で再検討が進められなくてはならない。

 本来あまねく見られることを目的としていた無料地上波本来の理念をねじ曲げ、放送局と権利者とメーカーの談合に手を貸したという総務省の過去の行為は見下げ果てたものである。コピーワンス問題、ダビング10問題、B-CAS問題の検討と続く、無料の地上放送のスクランブルとコピー制御に関する政策検討の迷走とそれにより浪費され続けている膨大な社会的コストのことを考えても、このような省令改正の政策的失敗は明らかであり、総務省はこの省令改正を失策と明確に認めるべきである。

 コピー制限なしとすることは認められないとする権利者の主張は、消費者のほとんどが録画機器をタイムシフトにしか使用しておらず、コンテンツを不正に流通させるような悪意のある者は極わずかであるということを念頭においておらず、一消費者として全く納得がいかない。消費者は、無数にコピーするからコピー制限を無くして欲しいと言っているのではなく、わずかしかコピーしないからこそ、その利便性を最大限に高めるために、コピー制限を無くして欲しいと言っているのである。消費者の利便性を下げることによって権利者が不当に自らの利潤を最大化しようとしても、インターネットの登場によって、コンテンツ流通の独占が崩れた今、消費者は不便なコンテンツを選択しないという行動を取るだけのことであり、長い目で見れば、このような主張は自らの首を絞めるものであることを権利者は思い知ることになるであろう。

 昨年運用が開始されたダビング10に関しても、大きな利便性の向上なくして、より複雑かつ高価な機器を消費者が新たに買わされるだけの弥縫策としか言いようがなく、一消費者・一国民として納得できるものでは全くない。さらに、ダビング10機器に関しては、テレビ(チューナー)と録画機器の接続によって、全く異なる動作をする(接続次第で、コピーの回数が9回から突然1回になる)など、公平性の観点からも問題が大きい。

 現在の地上無料放送各局の歪んだビジネスモデルによって、放送の本来あるべき姿までも歪められるべきではない。そもそもあまねく視聴されることを本来目的とする、無料の地上放送においてコピーを制限することは、視聴者から視聴の機会を奪うことに他ならず、このような規制を良しとする談合業界及び行政に未来はない。

 コピー制限技術はクラッカーに対して不断の方式変更で対抗しなければならないが、その方式変更に途方もないコストが発生する無料の地上放送では実質的に不可能である。インターネット上でユーザー間でコピー制限解除に関する情報がやりとりされる現在、もはや無料の地上放送にDRMをかけていること自体が社会的コストの無駄であるとはっきりと認識するべきである。無料の地上放送におけるDRMは本当に縛りたい悪意のユーザーは縛れず、一般ユーザーに不便を強いているだけである。さらに、B-CASカードのユーザー登録の廃止(地上デジタル放送専用の青カードについては既にユーザー登録が廃止されており、BS・CS・地上共用の赤カードについても来年3月に登録が廃止される予定である。http://www.b-cas.co.jp/www/whatsnew/100325.htmlhttp://www.b-cas.co.jp/www/whatsnew/100705.html参照)により、B-CASカードによるユーザーに対するコピー制御の技術的なエンフォースは完全に不可能となっており、既に存在意義を完全に失っているB-CASカード・システムは速やかに完全に地上デジタル放送から排除されるべきである。

 なお、前回の中間答申では、現行のB-CASシステムと併存させる形でチップやソフトウェア等の新方式を導入することが提言されており、今も恐らく企業レベル等で検討が進められているものと思うが、無意味な現行システムの維持コストに加えて新たなシステムの追加で発生するコストまでまとめて消費者に転嫁される可能性が高く、このような弥縫策は、一消費者として全く評価できないものである。さらに言うなら、これらの新方式は、不正機器対策には全くならない上、新たに作られるライセンス発行・管理機関が総務省なりの天下り先となり、新方式の技術開発・設備投資コストに加え、天下りコストまで今の機器に上乗せされかねないものである。制度的エンフォースメントにしても、正規機器の認定機関が総務省なりの天下り先となり、その天下りコストがさらに今の機器に上乗せされるだけで、しかも不正機器対策には全くならないという最低の愚策である。

 冒頭書いたように、無料の地上放送の理念を歪め、放送局・権利者・国内の大手メーカーの談合を助長している、無料の地上放送にかけられているスクランブル・暗号化こそ問題なのであって、B-CAS類似の無意味なシステムをいくら併存させたところで、積み上げられるムダなコストが全て消費者に転嫁されるだけで何の問題の解決にもならず、同じことが繰り返されるだけだろう。基幹放送である無料地上波については、B-CASシステムを排除し、ノンスクランブル・コピー制限なしを基本とすること以外で、この問題の本質的な解決がもたらされることはない。

 法的にもコスト的にも、どんな形であれ、全国民をユーザーとする無料地上放送に対するコピー制限は維持しきれるものではない。本来立法府に求めるべきことではあるが、このようなバカげたコピー制限に関する過ちを二度と繰り返さないため、無料の地上放送についてはスクランブルもコピー制御もかけないこととする逆規制を、政令や省令ではなく法律のレベルで放送法に入れることを私は一国民として強く求める。

 なお、付言すれば、本来、B-CASやコピーワンス、ダビング10のような談合規制の排除は公正取引委員会の仕事であると思われ、何故総務省及び情報通信審議会が、談合規制の緩和あるいは維持を検討していたのか、一国民として素直に理解に苦しむ。今後、立法府において、行政と規制の在り方のそもそも論に立ち返った検討が進むことを、私は一国民として強く望む。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

« 2010年7月 | トップページ | 2010年9月 »