第234回:総務省・ICTの利活用を阻む制度・規制等についての意見募集に対する提出パブコメ(その1:知財・著作権規制関連)
8月20日〆切で、総務省からかかっているパブコメの「ICTの利活用を阻む制度・規制等についての意見募集」(総務省のリリース、電子政府HPの該当ページ参照。internet watchの記事、ITproの記事も参照)に対して、パブコメを提出したので、去年の7月の内閣官房への提出パブコメ(その1、その2)や今年の1月のハトミミ.comへの提出パブコメ(情報公開制度についての提出パブコメ)とあまり違いはないが、念のため、ここに載せておく。
長すぎるので2つに分けるが、まず、その1として、下に書いた目次で(1)のダウンロード違法化から(9)の模倣品・海賊版対策条約までの知財・著作権規制関連の項目についての提出パブコメをここに載せる。
(8月17日の追記:(9)海賊版対策条約の項目中に誤記があったので訂正した(「法廷損害賠償」→「法定損害賠償」)。)
(目次)
(1)ダウンロード違法化
(2)DRM回避規制
(3)コピーワンス・ダビング10・B-CAS
(4)私的録音録画補償金制度
(5)著作権保護期間
(6)一般フェアユース条項の導入による著作権規制の緩和
(7)著作権の間接侵害・侵害幇助
(8)著作権検閲・ストライクポリシー
(9)模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)
(10)出会い系サイト規制
(11)青少年ネット規制法・青少年健全育成条例・携帯フィルタリング義務化
(12)児童ポルノ規制・サイトブロッキング
(13)インターネット・ホットラインセンター・日本ガーディアン・エンジェルス・日本ユニセフ協会
(14)情報公開法
(15)国際組織犯罪防止条約・サイバー犯罪条約及びこれらの締結に必要な法改正・ウィルス作成罪
(16)公職選挙法
(17)天下り
(18)メール検閲・DPI技術を用いた広告
(19)携帯電話事業者による差別的なダウンロード容量制限
(以下、提出パブコメ)
(1)ダウンロード違法化
○項目
ダウンロード違法化
○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
文化庁の暴走と国会議員の無知によって、 2009年の6月12日に、「著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合」は私的複製に当たらないとする、いわゆるダウンロード違法化条項を含む、改正著作権法が成立し、2010年1月1日に施行された。
しかし、一人しか行為に絡まないダウンロードにおいて、「事実を知りながら」なる要件は、エスパーでもない限り証明も反証もできない無意味かつ危険な要件であり、技術的・外形的に違法性の区別がつかない以上、このようなダウンロード違法化は法規範としての力すら持ち得ない。このような法改正によって進むのはダウンロード以外も含め著作権法全体に対するモラルハザードのみであり、これを逆にねじ曲げてエンフォースしようとすれば、著作権検閲という日本国として最低最悪の手段に突き進む恐れしかない。改正法は未施行であるが、既に、総務省の「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」において、中国政府の検閲ソフト「グリーン・ダム」導入計画に等しい、日本レコード協会による携帯電話における著作権検閲の提案が取り上げられるなど、弊害は出始めている。
そもそも、ダウンロード違法化の懸念として、このような著作権検閲に対する懸念は、文化庁へのパブコメ(文化庁HPhttp://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/houkoku.htmlの意見募集の結果参照。ダウンロード違法化問題において、この8千件以上のパブコメの7割方で示された国民の反対・懸念は完全に無視された。このような非道極まる民意無視は到底許されるものではない)や知財本部へのパブコメ(知財本部のHPhttp://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keikaku2009.htmlの個人からの意見参照)を見ても分かる通り、法改正前から指摘されていたところであり、このような著作権検閲にしか流れようの無いダウンロード違法化は始めからなされるべきではなかったものである。文化庁の暴走と国会議員の無知によって成立したものであり、ネット利用における個人の安心と安全を完全にないがしろにするものである、百害あって一利ないダウンロード違法化を規定する著作権法第30条第1項第3号を即刻削除するべきである。
○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
著作権法第30条第1項第3号
○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
・著作権法第30条第1項第3号を削除する。
(2)DRM回避規制
○項目
DRM回避規制
○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
現状、不正競争防止法と著作権法でDRM回避機器等の提供等が規制され、著作権法でコピーコントロールを回避して行う私的複製まで違法とされている。
DRM回避規制については、2010年4月に公開された海賊版対策条約(ACTA)案において、DRM回避規制の対象行為の拡大(製造及び回避サービスの提供)や対象の拡大(「のみ」要件の緩和)等が必要な条文案が選択肢を示さない形で提示されており、さらにこのような規制強化について知財計画2010においても具体的な制度改革案を2010年度中にまとめるとされている。
しかし、2009年2月にDRM回避機器についてゲームメーカー勝訴の判決が出ていることなどを考えても、現時点で、現状の規制では不十分とするに足る根拠は全くない。
かえって、著作権法において、私的領域におけるコピーコントロール回避まで違法とすることで、著作権法全体に関するモラルハザードとデジタル技術・情報の公正な利活用を阻む有害無益な萎縮効果が生じているのではないかと考えられる。
デジタル技術・情報の公正な利活用を阻むものであり、そもそも、私的なDRM回避行為自体によって生じる被害は無く、個々の回避行為を一件ずつ捕捉して民事訴訟の対象とすることは困難だったにもかかわらず、文化庁の片寄った見方から一方的に導入されたものである、私的領域でのコピーコントロール回避規制(著作権法第30条第1項第2号)は撤廃するべきである。コンテンツへのアクセスあるいはコピーをコントロールしている技術を私的な領域で回避しただけでは経済的損失は発生し得ず、また、ネットにアップされることによって生じる被害は公衆送信権によって既にカバーされているものであり、その被害とDRM回避やダウンロードとを混同することは絶対に許されない。それ以前に、私法である著作権法が、私的領域に踏み込むということ自体異常なことと言わざるを得ない。
ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ないこれ以上のDRM回避規制の強化は検討されるべきでないのは無論のこと、このような危険なものとしかなり得ない規制強化条項を含めた形での条約交渉を、何ら国民的なコンセンサスを得ない中で、一部の者の都合から政府が勝手に行うなどおよそ論外である。日本政府として、海賊版対策条約(ACTA)へのDRM回避規制関連条項の導入に反対し、同時に、DRM回避規制の強化による情報アクセスに関する国民の基本的な権利の侵害の危険性について国際的な場で議論を提起するべきである。
○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
著作権法第30条第1項第2号
著作権法第120条の2
不正競争防止法第2条第1項第10号、第11号
海賊版対策条約(検討中)
○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
・著作権法第30条第1項第2号を削除する。
・合わせ、DRM回避規制に関して、ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ないこれ以上の規制強化をしないと閣議決定する。
・海賊版対策条約(ACTA)条約交渉においてDRM回避規制関連条項を取り除くよう日本政府から強く働きかける。
(3)コピーワンス・ダビング10・B-CAS
○項目
コピーワンス・ダビング10・B-CAS
○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
無料の地上放送の全てに、2008年まではコピーワンスというコピーを1個しか認めない異常に厳しいコピー制限がかけられていた。2008年からわずかに緩和されたが、やはりダビング10という不当に厳しいコピー制限が今も維持されている。このようなコピー制限を維持するためとして、無料の地上放送の全てにB-CASによりスクランブル・暗号化が施されているという状態が今もなお続いている。
2009年の総務省の情報通信審議会の中間答申で、ようやく無料の地上放送へB-CASシステムとコピーワンス運用の導入を可能とした2002年6月の省令改正についての記載が加えられた。このように以前、無料の地上放送へのスクランブル・暗号化を禁じる省令が存在していた理由についての記載はやはり無いが、これは、無料地上放送は本来あまねく見られるべきという理念があったことの証左であろう。過去の検討経緯についてよりきちんとした情報開示を行い、このような過去の省令に表れている無料の地上放送の理念についても念頭においた上で再検討が進められなくてはならない。
本来あまねく見られることを目的としていた無料地上波本来の理念をねじ曲げ、放送局と権利者とメーカーの談合に手を貸したという総務省の過去の行為は見下げ果てたものである。コピーワンス問題、ダビング10問題、B-CAS問題の検討と続く、無料の地上放送のスクランブルとコピー制御に関する政策検討の迷走とそれにより浪費され続けている膨大な社会的コストのことを考えても、このような省令改正の政策的失敗は明らかであり、総務省はこの省令改正を失策と明確に認めるべきである。
B-CASシステムは談合システムに他ならず、これは、放送局・権利者にとっては、視聴者の利便性を著しく下げることによって、一旦は広告つきながらも無料で放送したコンテンツの市場価格を不当につり上げるものとして機能し、国内の大手メーカーとっては、B-CASカードの貸与と複雑な暗号システムを全てのテレビ・録画機器に必要とすることによって、中小・海外メーカーに対する参入障壁として機能している。
以前は総務省令によって、無料の地上放送へのこのようなスクランブル・暗号化の導入は禁止されていたが、総務省は、平成14年6月にこの省令の改正を行い、 本来あまねく見られることを目的とする無料の地上放送へB-CASシステムとコピーワンス運用の導入を可能として、無料地上波本来の理念をねじ曲げ、放送局と権利者とメーカーの談合に手を貸すと見下げ果てた行為を行っている。コピーワンス問題、ダビング10問題、B-CAS問題の検討と続く、無料の地上放送のスクランブルとコピー制御に関する政策検討の迷走とそれにより浪費され続けている膨大な社会的コストのことを考えても、このような省令改正の政策的失敗は明らかであり、この省令改正を失策と総務省に明確に認めさせるべきである。
昨年運用が開始されたダビング10に関しても、大きな利便性の向上なくして、より複雑かつ高価な機器を消費者が新たに買わされるだけの弥縫策としか言いようがなく、一消費者・一国民として納得できるものでは全くない。さらに、ダビング10機器に関しては、テレビ(チューナー)と録画機器の接続によって、全く異なる動作をする(接続次第で、コピーの回数が9回から突然1回になる)など、公平性の観点からも問題が大きい。
現在の地上無料放送各局の歪んだビジネスモデルによって、放送の本来あるべき姿までも歪められるべきではない。そもそもあまねく視聴されることを本来目的とする、無料の地上放送においてコピーを制限することは、視聴者から視聴の機会を奪うことに他ならず、このような規制を良しとする談合業界及び行政に未来はない。
コピー制限技術はクラッカーに対して不断の方式変更で対抗しなければならないが、その方式変更に途方もないコストが発生する無料の地上放送では実質的に不可能である。インターネット上でユーザー間でコピー制限解除に関する情報がやりとりされる現在、もはや無料の地上放送にDRMをかけていること自体が社会的コストの無駄であるとはっきりと認識するべきである。無料の地上放送におけるDRMは本当に縛りたい悪意のユーザーは縛れず、一般ユーザーに不便を強いているだけである。さらに、B-CASカードのユーザー登録の廃止(地上デジタル放送専用の青カードについては既にユーザー登録が廃止されており、BS・CS・地上共用の赤カードについても来年3月に登録が廃止される予定である。http://www.b-cas.co.jp/www/whatsnew/100325.html、http://www.b-cas.co.jp/www/whatsnew/100705.html参照)により、B-CASカードによるユーザーに対するコピー制御の技術的なエンフォースは完全に不可能となっており、既に存在意義を完全に失っているB-CASカード・システムは速やかに完全に地上デジタル放送から排除されるべきである。
2009年の情報通信審議会の中間答申において、現行のB-CASシステムと併存させる形でチップやソフトウェア等の新方式を導入することが提言されており、今も恐らく企業レベル等で検討が進められているものと思うが、無意味な現行システムの維持コストに加えて新たなシステムの追加で発生するコストまでまとめて消費者に転嫁される可能性が高く、このような弥縫策は、一消費者として全く評価できないものである。さらに言うなら、これらの新方式は、不正機器対策には全くならない上、新たに作られるライセンス発行・管理機関が総務省なりの天下り先となり、新方式の技術開発・設備投資コストに加え、天下りコストまで今の機器に上乗せされかねないものである。この審議会において同じく検討課題とされていた、制度的エンフォースメントにしても、正規機器の認定機関が総務省なりの天下り先となり、その天下りコストがさらに今の機器に上乗せされるだけで、しかも不正機器対策には全くならないという最低の愚策である。
無料の地上放送の理念を歪め、放送局・権利者・国内の大手メーカーの談合を助長している、無料の地上放送にかけられているスクランブル・暗号化こそ問題なのであって、B-CAS類似の無意味なシステムをいくら併存させたところで、積み上げられるムダなコストが全て消費者に転嫁されるだけで何の問題の解決にもならず、同じことが繰り返されるだけだろう。基幹放送である無料地上波については、B-CASシステムを排除し、ノンスクランブル・コピー制限なしを基本とすること以外で、この問題の本質的な解決がもたらされることはない。
法的にもコスト的にも、どんな形であれ、全国民をユーザーとする無料地上放送に対するコピー制限は維持しきれるものではない。このようなバカげたコピー制限に関する過ちを二度と繰り返さないため、無料の地上放送についてはスクランブルもコピー制御もかけないこととする逆規制を、政令や省令ではなく法律のレベルで放送法に入れることを私は一国民として強く求める。
○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
なし
○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
1.無料地上波からB-CASシステムを排除し、テレビ・録画機器における参入障壁を取り除き、自由な競争環境を実現する。
2.あまねく見られることを目的とするべき、基幹放送である無料地上波については、ノンスクランブル・コピー制限なしを基本とする。
3.無料地上波については、ノンスクランブル・コピー制限なしとすることを、総務省が勝手に書き換えられるような省令や政令レベルにではなく、法律に書き込む。
(4)私的録音録画補償金制度
○項目
私的録音録画補償金制度
○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
私的複製によって生じる著作権者の経済的不利益を補償するため、MD、CD-R、DVD-R等の分離型録音録画専用デジタル録音録画機器・媒体に私的録音録画補償金が賦課されている。文化庁文化審議会において、数年に渡り縮小・廃止に向けた検討が行われ、補償金のそもそもの意義が問われた中で、その解決をおざなりにしたまま、2008年の6月にダビング10解禁のために文部科学大臣と経済産業大臣の間で暫定的な措置としてブルーレイ課金の合意がなされ、消費者不在の中、2009年の5月に著作権施行令の改正によってブルーレイへの課金まで実施された。さらには、この問題について、メーカーと補償金管理協会の間で訴訟が行われるにまで至っている。
確かに今はコピーフリーのアナログ放送もあるが、ブルーレイにアナログ放送を録画することはまずもって無いと考えられるため、アナログ放送の存在もブルーレイ課金の根拠としては薄弱であり、そのアナログ放送も2011年には止められる予定となっている。
特に、権利者団体は、ダビング10への移行によってコピーが増え自分たちに被害が出ると大騒ぎをしたが、移行後2年以上経った今現在においても、ダビング10の実施による被害増を証明するに足る具体的な証拠は全く示されておらず、ブルーレイ課金に合理性があったとは私には全く思えない。
わずかに緩和されたとは言え、今なお地上デジタル放送にはダビング10という不当に厳しいコピー制限がかかったままである。こうした実質的に全国民に転嫁されるコストで不当に厳しい制限を課している機器と媒体にさらに補償金を賦課しようとするのは、不当の上塗りである。このような不当に厳しいコピー制限が維持される限り、私的録画補償金は廃止するべきである。
文化庁の文化審議会著作権分科会における数年の審議において、補償金のそもそもの意義についての意義が問われたが、今に至るも文化庁は、天下り先である権利者団体のみにおもねり、この制度に関する根本的な検討を怠っている(文化庁は、基本問題小委員会を設けたが、始めからメンバーが権利者団体のみに片寄っており、このような腐った小委員会で著作権の根本に関わる問題など検討できないことは明白である。)。
世界的に見ても、メーカーや消費者が納得して補償金を払っているということはカケラも無く、権利者団体がその政治力を不当に行使し、歪んだ「複製=対価」の著作権神授説に基づき、不当に対象を広げ料率を上げようとしているだけというのがあらゆる国における実情である。表向きはどうあれ、大きな家電・PCメーカーを国内に擁しない欧州各国は、私的録音録画補償金制度を、外資から金を還流する手段、つまり、単なる外資規制として使っているに過ぎない。
この制度における補償金の対象・料率に関して、具体的かつ妥当な基準はどこの国を見ても無いのであり、この制度は、ほぼ権利者団体の際限の無い不当な要求を招き、莫大な社会的コストの浪費のみにつながっている。機器・媒体を離れ音楽・映像の情報化が進む中、「複製=対価」の著作権神授説と個別の機器・媒体への賦課を基礎とする私的録音録画補償金は、既に時代遅れのものとなりつつあり、その対象範囲と料率のデタラメさが、デジタル録音録画技術の正常な発展を阻害し、デジタル録音録画機器・媒体における正常な競争市場を歪めているという現実は、補償金制度を導入したあらゆる国において、問題として明確に認識されなくてはならないことである。
○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
著作権法第30条第2項
著作権法第5章
著作権法施行令第1章
○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
1.そもそも、著作権法の様な私法が私的領域に踏み込むこと自体がおかしいのであり、私的領域での複製は原則自由かつ無償であることを法文上明確にする。また、刑事罰の有無に関わらず、外形的に違法性を判別することの出来ない形態の複製をいたずらに違法とすることは社会的混乱を招くのみであり、厳に戒められるべきである。
2.特に、補償金については、これが私的録音録画を自由にすることの代償であることを法文上明確にする。すなわち、私的録音録画の自由を制限するDRM(コピーワンスやダビング10ほどに厳しいDRM)がかけられている場合は、補償措置が不要となることを法文上明確にする。
3.また、タイムシフト、プレースシフト等は、外形的に複製がなされているにせよ、既に一度合法的に入手した著作物を自ら楽しむために移しているに過ぎず、このような態様の複製について補償は不要であることを法文上明確にする。実質権利者が30条の範囲内での複製を積極的に認めているに等しい、レンタルCDやネット配信、有料放送からの複製もこれに準じ、補償が不要であることを明確にする。
4.私的録音録画の自由の確保を法文上明確化するとした上で、私的録音録画を自由とすることによって、私的複製の範囲の私的録音録画によってどれほどの実害が著作権者に発生するのかについてのきちんとした調査を行う。
この実害の算定にあたっては、補償の不必要な私的複製の形態や著作権者に損害を与えない私的複製の形態があることも考慮に入れ、私的録音録画の著作権者に与える経済的効果を丁寧に算出する。単に私的録音録画の量のみを問題とすることなど論外であり、その算定に当たっては入念な検証を行う。
5.この算出された実害に基づいて補償金の課金の対象範囲と金額が決められるべきである。特に、その決定にあたっては、コンテンツ産業振興として使われる税金や受信料・電波の割当といった各種の公的に与えられている既得権益も補償金の一種ととらえられることを念頭に置くべきである。この場合でも、将来の権利者団体による際限の無い補償金要求を無くすため、対象範囲と金額が明確に法律レベルで確定される必要がある。あらゆる私的録音録画について無制限の補償金要求権を権利者団体に与えることは、ドイツ等の状況を見ても、社会的混乱を招くのみであり、ユーザー・消費者・国民にとってきちんとセーフハーバーとして機能する範囲・金額の確定が行われなくてはならない。
あるいは、実害が算出できないのであれば、原則にのっとり、私的録音録画補償金制度は廃止されるべきである。
6.集められた補償金は、権利者の分配に使用されることなく、全額違法コピー対策やコンテンツ産業振興などの権利者全体を利する事業へ使用されるようにするべきである。
なお、天下り先の権利者団体のみにおもねり、国益を無視して暴走する腐り切った文化庁には、もはや、この問題の検討能力は完全に無い。上記のような方向性で検討する必要があると私は考えているが、無理なようであれば、この制度を現行のまま完全に凍結すると閣議決定することも、合わせ検討するべきである。
(5)著作権保護期間
○項目
著作権保護期間
○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
現行の日本の著作権法において、著作権の保護期間は著作者の死後50年とされている。実演、レコード及び放送に関する著作隣接権については、それぞれ実演を行った時、音を最初に固定した時、放送を行った時から50年とされている。文化庁の文化審議会において、延長の検討がなされて来ており、権利者団体と文化庁を除けば、延長を否定する結論が出そろっているにもかかわらず、文化庁は保護期間延長に関して継続して検討しようとし続けている。
1.著作権そのものの保護期間について
著作権そのものに関しては、現行でも著作者の死後50年という極めて長い期間に渡って著作権が保護されることになっている。また、著作者人格権については保護期間が切れるということはない。
文化的に、ひ孫の孫くらいのことまで考えて創作をしている人間がいるとも思われず、文化の多様化のためにはこれ以上の延長はほとんど何の役にも経たず、経済的にも、著作者の死後50年を経てなお権利処理コストを上回る財産的価値を保っている極めて稀な著作物のために、このコストを下回るほとんど全ての著作物の利用を阻害することは全く妥当でない。
また、保護期間延長問題は金銭的な話でないとするリスペクト論もよく権利者側が持ち出すのだが、創作者が世に出したいと思う形のまま、創作者の名前を付けて著作物を流通させるために、同一性保持権や氏名表示権といった著作者人格権が、既に保護期間が切れることのない権利として規定されているのであり、人格権と財産権を混同した主張は取り上げるに値しない。延長問題は、あくまで権利の財産的な側面のみを考慮して考えられなくてはならない。
これほど長期間に渡る著作権の保護期間は、過去の圧倒的多数の著作物の新たな技術による公共利用、 過去の大多数の著作物のデジタル情報としての公共利用に対する一大阻害要因となっており、著作権者の個々のメリットに比して社会的デメリットがあまりにも大きな有害な規制として機能している。このような著作権の保護期間については、短縮が検討されてしかるべきである。
また、権利者団体と文化庁を除けば日本国内では、この点に関しては延長しないということでほとんど結論が出そろっているのであり、文化庁の保護期間延長に関する検討は完全に止められるべきである。
2.実演家の著作隣接権の保護期間について
同一性保持権や氏名表示権などの実演家の人格権も特に保護期間と一緒に切れるということはないので、 実演家の著作隣接権の保護期間についても人格権と財産権をごっちゃにするリスペクト論は全く当てはまらない。
実演から50年を超えて保護期間を延長することが、文化的な実演を多く生み出すためのインセンティブとなり、このインセンティブが、保護期間延長によって生じる公共利用に対するディスインセンティブを超えるという明確な論拠が示されるならばともかく、実演から50年という期間はかなり著名かつ長命の実演家でなければ切れることがない期間であり、今のところ、実演家の著作隣接権の保護期間延長についても、これを是とするに足る根拠は何一つなく、これも延長されるべきでない。
なお、著作隣接権の中でも、実演家の権利と、レコード製作者・放送事業者の権利は大きく性質が異なっているものであり、これらを混同することは百害あって一利ないものである。
3.レコード製作者あるいは放送事業者の著作隣接権の保護期間について
レコード製作者と放送事業者という創作者ではない流通事業者の著作隣接権は、単にレコード会社や放送局が強い政治力を持っていたことから無理矢理ねじ込まれた権利に過ぎず、その目的は流通コストへの投資を促すことのみにあったものである。インターネットという流通コストの極めて低い流通チャネルがある今、独占権というインセンティブで流通屋に投資を促さねばならない文化上の理由もほぼ無くなっているのであり、これらの保護期間は速やかに短縮することが検討されるべきである。
なお、放送事業者の権利の保護期間については、今でもローマ条約及びTRIPS協定)で放送から20年と規定されているだけであり、短縮するのに国際的障害はない。合理的な理由無く決められた保護期間を短縮することが憲法上問題になる訳もない。
なお、過去、保護期間の短縮を行った国としては、ポルトガルとスペインが存在しており、保護期間の短縮は国際的に見て完全に不可能とされるものでは無い。
○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
著作権法第2章第4節
著作権法第4章第6節
ベルヌ条約第7条
万国著作権条約第4条
ローマ条約第14条
レコード製作者の保護に関する条約第4条
実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約第17条
TRIPS協定第12条及び第14条
○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
・文化庁における著作権保護期間延長の検討を閣議決定により停止する。
・放送に関する著作隣接権に関しては、速やかに保護期間を放送を行った時から20年とする。
・合わせ、現行ですら余りに長い著作権及びレコード製作者あるいは放送事業者の著作隣接権の保護期間短縮のため、日本政府からベルヌ条約他の関係条約の改正提案を行うことを、政府レベルで検討する。
(6)一般フェアユース条項の導入による著作権規制の緩和
○項目
一般フェアユース条項の導入による著作権規制の緩和
○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
ほぼ全国民が利用者兼権利者となり得、考えられる利用形態が発散し、個別の規定では公正利用の類型を拾い切れなくなるインターネットのような場においては、現行の個別の権利制限規制を前提とする著作権法全体がデジタル技術・情報の公正な利活用を阻害するものとなっている。
今現在、文化庁の文化審議会において著作権法における一般フェアユース条項の導入が検討されているが、2010年6月の法制問題小委員会「権利制限の一般規定に関する中間まとめ」で示された方針は、「A その著作物の利用を主たる目的としない他の行為に伴い付随的に生ずる当該著作物の利用であり、かつ、その利用が質的又は量的に社会通念上軽微であると評価できるもの」、「B 適法な著作物の利用を達成しようとする過程において合理的に必要と認められる当該著作物の利用であり、かつ、その利用が質的又は量的に社会通念上軽微であると評価できるもの」、「C 著作物の種類及び用途並びにその利用の目的及び態様に照らして、当該著作物の表現を知覚することを通じてこれを享受するための利用とは評価されない利用」のみを権利制限の一般規定の対象とするべきとその範囲は不当に狭い。確かに法的安定性を高めるという点ではこれらの類型について権利制限を設けることは重要であるものの、これほど限定したのでは、これはもはや権利制限の「一般」規定の名に値しない。これでは、既存の個別制限規定がことごとく不当に狭く使いにくいものとされているという現状から来る問題に対処する上では極めて不十分な、狭く使いにくい「個別」規定が新たに追加されるに過ぎず、著作権をめぐる今の混迷状況が変わることはない。
インターネットのように、ほぼ全国民が利用者兼権利者となり得、考えられる利用形態が発散し、個別の規定では公正利用の類型を拾い切れなくなるところでは、フェアユースのような一般規定は保護と利用のバランスを取る上で重要な意義を持つものであり、著作物の公正利用には上記以外の変形利用もビジネス利用も考えられ、このような利用も含めて著作物の公正利用を促すことが、今後の日本の文化と経済の発展にとって真に重要であえることを考えれば、形式的利用、付随的利用あるいは著作物の知覚を目的とするのでない利用に限るといった形で不当にその範囲を狭めるべきでは無く障害者福祉、教育、研究、資料保存やパロディ等のための利用、個人の情報発信に伴う利用、ネットワークサービスに関連する利用、企業内における著作物の利用等、個別の権利制限規定による対処が不可能な全ての公正利用の類型が含まれるよう、その範囲・要件はアメリカ等と比べて遜色の無いものとして、権利制限の一般規定を可能な限り早期に導入するべきである。
なお、個別の権利制限規定の迅速な追加によって対処するべきとする意見もあるが、文化庁と権利者団体がスクラムを組んで個別規定すらなかなか入れず、入れたとしても必要以上に厳格な要件が追加されているという惨憺たる現状において、個別規定の追加はこの問題における真の対処たり得ない。2009年6月に成立した法改正においても、図書館におけるアーカイブ化のための権利制限の対象を国立国会図書館のみに限り、検索エンジンの権利制限の対象も、「業として行う者」と業規制をかけた上で、政令でその基準を定めようとし、研究目的の権利制限についても、大量の情報の統計解析のみを対象としているなど、不当に厳しい制限が課されており、天下り先の権利者団体のみにおもねる腐り切った文化庁による法改正の検討の弊害は如実に現れている。
また、権利を侵害するかしないかは刑事罰がかかるかかからないかの問題でもあり、公正という概念で刑事罰の問題を解決できるのかとする意見もあるようだが、かえって、このような現状の過剰な刑事罰リスクからも、フェアユースは必要なものと私は考える。現在親告罪であることが多少セーフハーバーになっているとはいえ、アニメ画像一枚の利用で別件逮捕されたり、セーフハーバーなしの著作権侵害幇助罪でサーバー管理者が逮捕されたりすることは、著作権法の主旨から考えて本来あってはならないことである。政府にあっては、著作権法の本来の主旨を超えた過剰リスクによって、本来公正として認められるべき事業・利用まで萎縮しているという事態を本当に深刻に受け止め、一刻も早い改善を図ってもらいたい。
○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
著作権法
○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
・著作権法に、その範囲・要件はアメリカ等と比べて遜色の無いものとして、権利制限の一般規定を可能な限り早期に導入する。
ただし、フェアユースの導入によって、私的複製の範囲が縮小されることはあってはならないことである。
(7)著作権の間接侵害・侵害幇助
○項目
著作権の間接侵害・侵害幇助
○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
動画投稿サイト事業者がJASRACに訴えられ、今なお係争中である「ブレイクTV」事件や、レンタルサーバー事業者が著作権幇助罪で逮捕され、検察によって姑息にも略式裁判で50万円の罰金を課された「第(3)世界」事件等を考えても、今現在、著作権の間接侵害や侵害幇助のリスクが途方もなく拡大し、甚大な萎縮効果・有害無益な社会的大混乱が生じかねないという非常に危険な状態にある。
今現在、著作権の間接侵害・侵害幇助のリスクが途方もなく拡大し、甚大な萎縮効果・有害無益な社会的大混乱が生じかねないという非常に危険な状態にあり、民事的な責任の制限しか規定していないプロバイダー責任制限法に関し、被侵害者との関係において、刑事罰リスクも含めたプロバイダーの明確なセーフハーバーについて検討するべきである。
さらに、著作権の間接侵害事件や侵害幇助事件においてネット事業者がほぼ直接権利侵害者とみなされてしまうことを考えると、プロバイダー責任制限法によるセーフハーバーだけでは不十分であり、間接侵害や著作権侵害幇助罪も含め、著作権侵害とならないセーフハーバーの範囲を著作権法上きちんと確定することが喫緊の課題である。
セーフハーバーを確定するためにも間接侵害の明確化はなされるべきであるが、現行の条文におけるカラオケ法理や各種ネット録画機事件などで示されたことの全体的な整理以上のことをしてはならない。特に、今現在文化庁の文化審議会で検討されているように、著作権法に明文の間接侵害一般規定を設けることは絶対にしてはならないことである。確かに今は直接侵害規定からの滲み出しで間接侵害を取り扱っているので不明確なところがあるのは確かだが、現状の整理を超えて、明文の間接侵害一般規定を作った途端、権利者団体や放送局がまず間違いなく山の様に脅しや訴訟を仕掛けて来、今度はこの間接侵害規定の定義やそこからの滲み出しが問題となり、無意味かつ危険な社会的混乱を来すことは目に見えているからである。
○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
著作権法第7章及び第8章
刑法第62条
プロバイダー責任制限法(正式名称は、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」)
○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
・プロバイダー責任制限法に関し、被侵害者との関係において、刑事罰リスクも含めたプロバイダーの明確なセーフハーバーについて検討する。
・合わせ、今現在の文化庁の文化審議会における、著作権法に間接侵害一般規定を設けることに関する検討を停止し、間接侵害や著作権侵害幇助罪も含め、著作権侵害とならないセーフハーバーの範囲を著作権法上きちんと確定するための検討を開始する。
ただし、このセーフハーバーの要件において、標準的な仕組み・技術や違法性の有無の判断を押しつけるような、権利侵害とは無関係の行政機関なり天下り先となるだろう第3者機関なりの関与を必要とすることは、検閲の禁止・表現の自由等の国民の権利の不当な侵害に必ずなるものであり、絶対にあってはならないことである。
(8)著作権検閲・ストライクポリシー
○項目
著作権検閲・ストライクポリシー
○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
まだ実施されてはいないと思われるが、総務省の 「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」において、携帯電話においてダウンロードした音楽ファイルを自動検知した上でそのファイルのアクセス・再生制限を行うという、日本レコード協会の著作権検閲の提案が取り上げられている。
同じく、著作権検閲に流れる危険性が極めて高い、フランスで今なお揉めているネット切断型のストライクポリシー類似の、ファイル共有ソフトを用いて著作権を侵害してファイル等を送信していた者に対して警告メールを送付することなどを中心とする電気通信事業者と権利者団体の連携による著作権侵害対策が、警察庁、総務省、文化庁などの規制官庁が絡む形で進められており、さらに、ストライクポリシーの導入の検討を著作権団体が求めている。
しかし、通信の秘密という基本的な権利の適用は監視の位置がサーバーであるか端末であるかによらないものであること、特に、機械的な処理であっても通信の秘密を侵害したことには変わりはないとされ、通信の秘密を侵害する行為には、当事者の意思に反して通信の構成要素等を利用すること(窃用すること)も含むとされていることを考えると、日本レコード協会が提案している違法音楽配信対策は、明らかに通信の秘密を侵害するものであり、さらに、憲法に規定されている表現の自由(情報アクセス権を含む)や検閲の禁止に明らかに反するものとして、このような技術による著作権検閲に他ならない対策は決して導入されてはならないものである。
また、本来最も基本的なプライバシーに属する個人端末中の情報について、内容を自動検知し、アクセス制限・再生禁止等を行うことは、それ自体プライバシー権を侵害するものであり、プライバシーの観点からも、このような措置は導入されるべきでない。
付言すれば、日本レコード協会の携帯端末における違法音楽配信対策は、建前は違えど、中国でPCに対する導入が検討され、大騒ぎになった末、今現在導入が無期延期されているところの検閲ソフト「グリーン・ダム」と全く同じ動作をするものであるということを政府にははっきりと認識してもらいたい。このような検閲ソフトの導入については、日本も政府として懸念を表明しているはずであり、自由で民主的な社会において、このような技術的検閲が導入されることなど、絶対許されないことである。
このような提案は、通信の秘密や検閲の禁止、表現の自由、プライバシーといった個人の基本的な権利をないがしろにするものである。日本レコード協会が提案している、検閲に該当するこのような対策は絶対に導入されるべきでなく、また技術支援・実証実験等として税金のムダな投入がなされるべきではない。
警告メールの送付とネット切断を中心とする、著作権検閲機関型の違法コピー対策である3ストライクポリシーについても、2009年6月に、フランス憲法裁判所によって、インターネットのアクセスは、表現の自由に関係する情報アクセスの権利、つまり、最も基本的な権利の1つとしてとらえられるものであるとして、著作権検閲機関型の3ストライクポリシーは、表現の自由・情報アクセスの権利やプライバシーといった他の基本的な権利をないがしろにするものとして、真っ向から否定された。フランスでは今なおストライクポリシーに関して揉め続けているが、日本においては、このようなフランスにおける政策の迷走を他山の石として、このように表現の自由・情報アクセスの権利やプライバシーといった他の基本的な権利をないがしろにする対策を絶対に導入しないこととするべきであり、警察庁などが絡む形で検討が行われている違法ファイル共有対策についても、通信の秘密やプライバシー、情報アクセス権等の国民の基本的な権利をきちんと尊重する形で検討を進めることが担保されなくてはならない。
これらの提案や検討からも明確なように、違法コピー対策問題における権利者団体の主張、児童ポルノ法規制強化問題・有害サイト規制問題における自称良識派団体の主張は、常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。今後は、このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むこと検討するべきである。同じく、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な著作権検閲やストライクポリシー、サイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むことを検討するべきである。
○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
なし
○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
・憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むこと、及び、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な著作権検閲やストライクポリシー、サイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むことを検討する。
・閣議決定により、日本レコード協会が提案している、日本版著作権グリーン・ダム計画について技術支援・実証実験等として税金のムダな投入を行わないこととする。
・同じく閣議決定により、警察庁などが絡む形で進められている違法ファイル共有対策についても、通信の秘密やプライバシー、情報アクセス権等の国民の基本的な権利をきちんと尊重する形で検討を進めることを担保する。
(9)模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)
○項目
模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)
○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
模倣品・海賊版拡散防止条約の検討・交渉が政府レベルで交渉が行われている。
2010年4月に公開されたこの条約の条文案には、法定損害賠償に関する条項が含まれているが、この法定賠償制度は、アメリカで一般ユーザーに法外な損害賠償を発生させ、その国民のネット利用におけるリスクを不当に高め、ネットにおける文化と産業の発展を阻害することにしかつながっていないものであり、日本において導入されるべきとは到底思えない制度である。選択肢の形になってはいるが、このような不合理な制度の導入を求めている一部の者によって、国内法改正の検討の際に不当に利用される恐れもあり、法定賠償に関する条項については削除を求めるべきである。
また、日本の現在の法制度と比較した時、DRM回避規制について今以上の規制強化を必要とする条項も条文案に含まれている。しかし、2009年2月に、DRM回避機器に対して、ゲームメーカー勝訴の判決が出ていることを考えても、今以上の規制を是とするに足る立法事実は何一つなく、かえって、今以上の規制強化はユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ない。このような危険なものとしかなり得ない規制強化条項を含めた形での条約交渉を、何ら国民的なコンセンサスを得ない中で、一部の者の都合から政府が勝手に行うなどおよそ論外である。日本政府として、海賊版対策条約(ACTA)へのDRM回避規制関連条項の導入に反対し、同時に、DRM回避規制の強化による情報アクセスに関する国民の基本的な権利の侵害の危険性について国際的な場で議論を提起するべきである。
同じ条文案には、プライバシー保護に関する条項を入れることを検討すると書かれているものの、条文案には、インターネットにおけるプロバイダーの責任制限等についての条項も含まれており、この部分の法制化によりユーザーの情報アクセスに関する基本的な権利が不当な侵害を受ける恐れがあることを考えると、プライバシーの保護に関する条項だけでは不十分である。国際的・一般的に認められている個人の基本的な権利である情報アクセスの権利等の情報の自由に関する権利を守るということも、条約に書き込むべきであると日本から各国に積極的に働きかけるべきである。
また4月時点での条約案こそ公開されたものの、依然として交渉に関しては日本政府は要領を得ない概要の公開のみでごまかしている。交渉会合に際しては、毎回速やかに自国の交渉スタンスと各国政府の反応について、議論の詳細を公開するべきである。このような情報の公開に他国の承認が必要であるとするなら、交渉の場で条約に関する詳細情報の公開についての議論を日本政府として積極的に提起し、他国の承認を得るようにするべきである。ほとんど全世界のインターネットユーザーつまり、全世界の全国民の情報アクセスに多大な影響を及ぼしかねないこの条約の交渉については、その交渉に関する全情報が公開されて良い。
○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
模倣品・海賊版拡散防止条約(検討中)
○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
・模倣品・海賊版拡散防止条約から、法定賠償とDRM回避規制に関する条項について日本政府として削除を求める。
・同時に、DRM回避規制の強化による情報アクセスに関する国民の基本的な権利の侵害の危険性について国際的な場で日本政府から議論を提起する。
・プライバシーの権利だけではなく、国際的・一般的に認められている個人の基本的な権利である情報アクセスの権利等の情報の自由に関する権利を守るということも、条約に書き込むべきであると日本から各国に積極的に働きかける。
・交渉会合に際し、毎回速やかに自国の交渉スタンスと各国政府の反応について、議論の詳細を公開する。
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