第229回:内閣府・ 児童ポルノ排除総合対策案に対する提出パブコメ
前回取り上げた内閣府の児童ポルノ排除総合対策案(pdf)に対してパブコメを書いて提出した。いつも書いていることと違いはないが、念のため、ここに載せておく。このパブコメは非常に重要なものと私も思っており、普段情報規制問題に疑問や懸念を抱いている方でまだ意見を出していない方がいれば、明日6月7日正午までと残り時間は少ないが、今からでも是非提出を検討頂ければと思う(パブコメについては、内閣府の該当ページ参照。かなり長くなったので私は意見を分割して提出した)。
(なお、internet watchの記事にもなっているが、児童ポルノサイトブロッキングについては、インターネットプロバイダー協会も片寄った報道姿勢に対して懸念表明(pdf)を行い、この対策案に対する意見書(pdf)も提出するなど、業界もかなり神経を尖らせていると知れる。個人的には業界の意見として多少踏み込みが浅いようには思うが、これらの意見書も参考になると思うので、ここにリンクを張っておく。)
次回は、このパブコメのために少し後回しにした今年の知財計画の話を取り上げたいと思っている。
(以下、提出パブコメ)
(1)「1① 協議会の設置」(第1ページ)について
ここで書かれている協議会について、児童ポルノ対策が国民の基本的な権利である表現の自由や通信の秘密等にも関わる非常に重大な問題であることから、表現の自由に関する問題に詳しい情報法・憲法の専門家、児童ポルノ法の実務に携わりその本当の問題点を熟知している法律家、規制強化に慎重あるいは反対の意見を有する弁護士等も多く含む形で構成し、児童ポルノ規制問題について、様々な意見があることを広めるとともに多様な意見の取り入れを図るとここに明記するべきである。
(2)「1② 国民運動の効果的な推進」(第1ページ)について
ここで書かれているシンポジウムについて、上で書いたことと同じく、児童ポルノ対策が国民の基本的な権利である表現の自由や通信の秘密等にも関わる非常に重大な問題であることから、表現の自由に関する問題に詳しい情報法・憲法の専門家、児童ポルノ法の実務に携わりその本当の問題点を熟知している法律家、規制強化に慎重あるいは反対の意見を有する弁護士等もシンポジウムに呼び、児童ポルノ規制問題について、様々な意見があることを広めるとともに多様な意見の取り入れを図るとここに明記するべきである。なお、キャッチコピー、シンボルマーク等についてもそのニーズからまず検討を行い、必要が無ければそもそも公募しないとされるべきであり、特に、このような事業が、根拠無く一般的かつ網羅的な表現・情報弾圧を唱える非人道的な自称良識派団体や天下り団体に丸投げされるようなことがないようにするべきである。
(3)「1⑥ 『女性に対する暴力をなくす運動』における取組」(第1ページ)について
児童問題と女性問題を混同するべきではなく、この項目は削除するべきである。
(4)「1⑧ 国際的取組への参画」(第2ページ)」について
この項目において、「児童の性的搾取に反対する世界会議」の宣言について触れられているが、児童ポルノの閲覧の犯罪化と創作物の規制まで求める「子どもと青少年の性的搾取に反対する世界会議」の根拠のない狂った宣言を国際動向として一方的に取り上げ、児童ポルノ規制の強化を正当化することなどあってはならない。
特に国際動向については(12)「6② 諸外国の児童ポルノ対策の調査」についてに、児童ポルノを理由とした単純所持・取得規制、創作物規制といった非人道的な規制の問題については(14)児童ポルノの単純所持・取得規制等についてに書くが、児童ポルノを理由とした非道な人権侵害を防ぐため、この項目において、リオデジャネイロ宣言に関する記載に代え、「児童ポルノを対象とするものにせよ、いかなる種類のものであれ、情報の単純所持・取得規制・ブロッキングは極めて危険な規制であるとの認識を深め、このような規制を絶対に行わないことと閣議決定し、児童ポルノの単純所持規制・創作物規制といった非人道的な規制を導入している諸国は即刻このような規制を廃止するべきと、そもそも最も根本的なプライバシーに属し、何ら実害を生み得ない個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ること自体、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の国際的かつ一般的に認められている基本的な権利からあってはならないことであると、日本政府から国際的な場において各国に積極的に働きかける。」との記載を追加してもらいたい。
(5)「2(1)① 青少年インターネット環境整備法に基づく総合的な被害防止対策の推進」(第2ページ)について
フィルタリングに関する規制については、フィルタリングの存在を知り、かつ、フィルタリングの導入が必要だと思っていて、なお未成年にフィルタリングをかけられないとする親に対して、その理由を聞くか、あるいはフィルタリングをかけている親に対して、そのフィルタリングの問題を聞くかして、きちんと本当の問題点を示してから検討するべきである。
また、この項目において、青少年ネット規制法について言及されているが、そもそも、青少年ネット規制法は、あらゆる者から反対されながら、有害無益なプライドと利権を優先する一部の議員と官庁の思惑のみで成立したものであり、速やかに廃止が検討されるべきものである。
なお、出会い系サイト規制法の改正も、警察庁が、どんなコミュニケーションサイトでも人は出会えるという誰にでも分かることを無視し、届け出制の対象としては事実上定義不能の「出会い系サイト事業」を定義可能と偽り、改正法案の閣議決定を行い、法案を国会に提出したものであり、他の重要法案と審議が重なる中、国会においてもその本質的な問題が見過ごされて可決され、成立したものである。憲法上の罪刑法定主義や検閲の禁止にそもそも違反している、今回の出会い系サイト規制法の改正についても、今後、速やかに元に戻すことが検討されるべきである。
(6)「2(1)② 青少年保護に向けたメディアリテラシーの向上及び新たな取組に対する支援」(第2ページ)について
総務省に対するパブコメでも書いたが、メッセージ交換サービスにおけるメールの内容確認を送信者に対しデフォルトオンで認める余地があるとすることは、実質、送信者が受信者しか知り得ないだろうと思って送る情報の内容について、知らない内に事業者に検閲されているという状態をもたらす危険性が極めて高い。受信情報のフィルタリングに関する要件を一方的に拡大解釈し、送信者に対するデフォルトオンのメールの内容確認の余地を認めることは、実質的にメール・通信の検閲の余地を認めるに等しく、憲法にも規定されている通信の秘密をないがしろにすることにつながりかねない極めて危険なことであり、この項目から、実質的な検閲につながりかねないメッセージ交換サービス監視に関する記載を削除するべきである。
(7)「2(1)④ フィルタリングの普及促進等のための施策」(第3ページ)について
上の(5)でも書いた通り、フィルタリングに関する規制については、フィルタリングの存在を知り、かつ、フィルタリングの導入が必要だと思っていて、なお未成年にフィルタリングをかけられないとする親に対して、その理由を聞くか、あるいはフィルタリングをかけている親に対して、そのフィルタリングの問題を聞くかして、きちんと本当の問題点を示してから検討するべきである。
(8)「3① 違法情報の排除に向けた取組の推進」(第4ページ)について
この項目でインターネット・ホットラインセンターについて言及されているが、サイト事業者が自主的に行うならまだしも、何の権限も有しないインターネット・ホットラインセンターなどの民間団体からの強圧的な指摘により、書き込みなどの削除が行われることなど本来あってはならないことである。このようなセンターは単なる一民間団体で、しかもこの団体に直接害が及んでいる訳でもないため、削除を要請できる訳がない。勝手に有害と思われる情報を収集して、直接削除要請などを行う民間団体があるということ自体おかしいと考えるべきであり、このような有害無益な半官検閲センターは即刻廃止が検討されて良い。このような無駄な半官検閲センターに国民の血税を流すことは到底許されないのであって、その分できちんとした取り締まりと削除要請ができる人員を、法律によって明確に制約を受ける警察に確保するべきであり、この項目においては、インターネット・ホットラインセンターの廃止を検討すると明記するべきである。
(9)「3④ 児童ポルノ掲載アドレスリスト作成管理団体との連携等を通じた児童ポルノ流通防止対策の推進」(第4ページ)について
児童ポルノ掲載アドレスリスト作成管理団体のガイドライン案に対するパブコメ等でも書いたことだが、警察などが提供するサイト情報に基づき、統計情報のみしか公表しない不透明なリスト作成管理団体等を介し、児童ポルノアドレスリストの作成が行われ、そのリストに基づいて、インターネット・サービス・プロバイダー、検索サービス事業者あるいはフィルタリング事業者がブロッキング等を行うことは、実質的な検閲に他ならず、決して行われてはならないことである。いくら中間に団体を介そうと、一般に公表されるのは統計情報に過ぎす、児童ポルノであるか否かの判断情報も含め、アドレスリストに関する具体的な情報は、全て閉じる形で秘密裏に保持されることになるのであり、インターネット利用者から見てそのリストの妥当性をチェックすることは不可能であり、このようなアドレスリストの作成・管理において、透明性・公平性・中立性を確保することは本質的に完全に不可能である。このことは、このようなリストに基づくブロッキング等が、自主的な民間の取組という名目でいくら取り繕おうとも、どうして憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や通信の秘密、検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないかということの根本的な理由であり、小手先の運用や方式の変更などでどうにかなる問題では断じて無い。現時点でこの問題の克服は完全に不可能であり、アドレスリスト作成管理団体のガイドライン、公募等を全て白紙に戻し、このような非人道的なブロッキング導入の検討を行っている児童ポルノ流通防止協議会を即刻解散するとここでは明記するべきである。
(10)「3⑤ ブロッキングの導入に向けた諸対策の推進」(第4ページ)について
上の(9)「3 ④ 児童ポルノ掲載アドレスリスト作成管理団体との連携等を通じた児童ポルノ流通防止対策の推進」についてで書いた通り、自主的な民間の取組という名目でいくら取り繕おうとも、現時点で、透明性・公平性・中立性を確保することが本質的に完全に不可能であり、権力側によるその濫用の防止が不可能な、実質的な検閲たらざるを得ないリストに基づくブロッキングについて、この項目において完全に導入前提の記載がされているのは一利用者として全く受け入れることができない。この項目は削除するか、さもなくば、ブロッキングについて、インターネット利用者の通信の秘密や表現の自由に不当な影響を及ぼさない運用は不可能であるとの認識を政府として深め、ブロッキング導入に関する政府レベルでの検討を止め、表現の自由や通信の秘密といった国民の基本的な権利を最大限尊重し、他のより地道な施策のみを行うとの記載に全面的に改めるべきである。なお、ブロッキングに関する広報・啓発を行う必要があるとすれば、現時点では、権力側によるその濫用の防止が不可能であり、表現の自由や通信の秘密といった憲法に規定された国民の基本的な権利に照らして問題のない運用を行うことが不可能であるという問題の周知にのみ努めるべきである。
(11)「5② 悪質な関連事業者に対する責任追及の強化」(第8ページ)について
この項目において、サイト管理者、サーバー管理者といった直接的な提供者ではない関連事業者に対する刑事責任等について書かれているが、アフィリエイト広告代理店社長や児童ポルノサイトへのリンク行為について児童ポルノ規制法違反幇助罪が問われるケースが既に発生しており、警察の恣意的な運用によって、現行法においてすら児童ポルノ規制法違反幇助のリスクが途方もなく拡大し、甚大な萎縮効果・有害無益な社会的大混乱が生じかねないという非常に危険な状態にあることを考えるべきであり、今現在民事的な責任の制限しか規定していないプロバイダー責任制限法に関し、刑事罰リスクも含めたプロバイダーの明確なセーフハーバーについて検討するとここに明記するべきである。
(12)「6② 諸外国の児童ポルノ対策の調査」(第9ページ)について
ここでG8について言及されているが、児童ポルノはG8のみの問題ではなく、「G8を中心とした」という記載を削除するべきである。
特に、国際動向については、欧米においても、情報の単純所持規制やサイトブロッキングの危険性に対する認識がネットを中心に高まって来ていることなども見逃されてはならない。例えば、ドイツのバンド「Scorpions」が32年前にリリースしたアルバムのカバーが、アメリカでは児童ポルノと見なされないにもかかわらず、イギリスでは該当するとしてブロッキングの対象となり、プロバイダーによっては全Wikipediaにアクセス出来ない状態が生じたなど、欧米では、行き過ぎた規制の恣意的な運用によって弊害が生じていることや、アメリカにおいても、去年の1月に連邦最高裁で児童オンライン保護法が違憲として完全に否定され、同じく去年の2月に連邦控訴裁でカリフォルニア州のゲーム規制法が違憲として否定されていること、去年のドイツ国会への児童ポルノサイトブロッキング反対電子請願(https://epetitionen.bundestag.de/index.php?action=petition;sa=details;petition=3860)に13万筆を超える数の署名が集まったこと、ドイツにおいても児童ポルノサイトブロッキング法は検閲法と批判され、既に憲法裁判が提起され(http://www.netzeitung.de/politik/deutschland/1393679.html参照)、去年与党に入ったドイツ自由民主党の働きかけで、法施行が見送られ、ドイツは政府としてブロッキング撤廃の方針を打ち出し、欧州レベルでのブロッキング導入にも反対していること(http://www.welt.de/die-welt/vermischtes/article6531961/Loeschung-von-Kinderpornografie-im-Netz.html、http://www.zeit.de/newsticker/2010/3/29/iptc-bdt-20100328-736-24360866xml参照)なども注目されるべきである。また、スイスにおいて去年発表された調査でも、2002年に児童ポルノ所持で捕まった者の追跡調査を行っているが、実際に過去に性的虐待を行っていたのは1%、6年間の追跡調査で実際に性的虐待を行ったものも1%に過ぎず、児童ポルノ所持はそれだけでは、性的虐待のリスクファクターとはならないと結論づけており、児童ポルノの単純所持規制・ブロッキングの根拠は完全に否定されている(http://www.biomedcentral.com/1471-244X/9/43/abstract参照)。欧州連合において、インターネットへのアクセスを情報の自由に関する基本的な権利として位置づける動きがあることも見逃されるべきではない(http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=MEMO/09/491&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en参照)。民主主義の最重要の基礎である表現の自由に関わる問題において、一方的な見方で国際動向を決めつけることなどあってはならないことであり、このような国際動向もきちんと取り上げるべきである。
(13)児童ポルノ排除対策ワーキングチームと本意見募集について
本対策案を作った児童ポルノ排除対策ワーキングチームは、ホームページなどを参照する限り、1回しか開かれておらず、議事録も不十分であり、有識者として呼ばれたと分かるのは、児童ポルノ規制について根拠無く一般的かつ網羅的な表現・情報弾圧を唱える非人道的な日本ユニセフ協会のアグネス・チャン氏1名のみである。その下のワーキンググループに至っては議事概要すら公開していない。今回の対策案に対するパブコメの期間も実質10日程度とあまりにも短く、到底国民の意見を聞く気があるとは思えない形で意見募集が行われている。このワーキングチームあるいはグループは議事録、議事の進め方、対策のとりまとめ方等あらゆる点で不透明であり、このような問題だらけのワーキングチームで表現の自由を含む国民の基本的権利に関わる重大な検討が進められることなど論外である。実際今回の意見募集の対象となっている本対策案にも、ブロッキングを中心として有害無益かつ危険な規制強化の項目が含まれており、このような検討しかなし得ない出来レースの密室政策談合ワーキングチーム・ワーキンググループは即刻解散するべきである。
このワーキングチームは即刻解散するべきであるが、さらに今後児童ポルノ規制について何かしらの検討を行うのであれば、その検討会は下位グループまで含めて全て開催の度数日以内に速やかに議事録を公表する、一方的かつ身勝手に危険な規制強化を求める自称良識派団体代表だけで無く、表現の自由に関する問題に詳しい情報法・憲法の専門家、児童ポルノ法の実務に携わりその本当の問題点を熟知している法律家、規制強化に慎重あるいは反対の意見を有する弁護士等も呼ぶ、危険な規制強化の結論ありきで報告書をまとめる前にきちんとパブコメを少なくとも1月程度の募集期間を設けて取るなど、児童ポルノ規制の本当の問題点を把握した上で検討が進められるようにするべきである。
(14)児童ポルノの単純所持・取得規制等について
閲覧とダウンロードと取得と所持の区別がつかないインターネットにおいては例え児童ポルノにせよ情報の単純所持や取得の規制は有害無益かつ危険なもので、憲法及び条約に規定されている「知る権利」を不当に害する。意図に関する限定を加えたところで、エスパーでもない限りこのような積極性を証明することも反証することもできないため、このような規制の危険性は回避不能であり、思想の自由や罪刑法定主義にも反する。インターネットで2回以上他人にダウンロードを行わせること等は技術的に極めて容易であり、取得の回数の限定も何ら危険性を減らすものではない。例えそれが児童ポルノであろうと情報の単純所持ではいかなる被害も発生し得えない。現行法で提供及び提供目的の所持まで規制されているのであり提供によって生じる被害と所持やダウンロード、取得、収集との混同は許され得ない。そもそも、最も根本的なプライバシーに属する個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ることは、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の基本的な権利からあってはならないことである。
児童ポルノ法によろうが他の法律によろうが、アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現に対する児童の描写を理由とした規制の拡大は、現実の児童保護という目的を大きく逸脱する、異常規制に他ならない。アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現において、いくら過激な表現がなされていようと、それが現実の児童被害と関係があるとする客観的な証拠は何一つない。いまだかつて、この点について、単なる不快感に基づいた印象批評と一方的な印象操作調査以上のものを私は見たことはないし、虚構と現実の区別がつかないごく一部の自称良識派の単なる不快感など、言うまでもなく一般的かつ網羅的な表現規制の理由には全くならない。アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現が、今の一般的なモラルに基づいて猥褻だというのなら、猥褻物として取り締まるべき話であって、それ以上の話ではない。どんな法律に基づく権利であれ、権利の侵害は相対的にのみ定まるものであり、実際の被害者の存在しない創作物・表現に対する規制は何をもっても正当化され得ない。民主主義の最重要の基礎である表現の自由や言論の自由、思想の自由等々の最も基本的な精神的自由そのものを危うくすることは絶対に許されない。
なお、実写と見紛うCGの規制については、確かに実在の児童が絡む事件の捜査の妨げになる可能性があるが、今の所捜査の妨げになっているとの事実はなく、その規制の検討も時期尚早である。
(15)その他報告書全体について
最後に書いておくが、私が言いたいのは、民間の自主的な取り組みといった言葉で上辺を取り繕い、国民の情報の自由に関する基本的権利に対して重大な侵害を行ってでも利権を作ろうとすることは今後一切止めろということである。この点について私は誤解などしていないし、今後の検討の参考にするなどといった役人の遁辞などそれこそ全く求めていない。児童ポルノ規制法に関しては、既に、提供及び提供目的での所持が禁止されているのであるから、本当に必要とされることは今の法律の地道なエンフォースであって有害無益な規制強化の検討ではない。
特に、児童ポルノ規制問題・有害サイト規制問題における自称良識派団体の主張は、常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。今後は、このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むべきである。同じく、憲法に規定されている検閲の禁止から、サイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むべきである。
現行以上に規制を強化するべきとするに足る明確かつ具体的な根拠は何1つ示されておらず、児童ポルノ規制法に関して検討すべきことがあるとしたら、現行ですら過度に広汎であり、違憲のそしりを免れない児童ポルノの定義の厳密化、上で書いた通り、危険な規制強化を止める逆規制、幇助リスクを考慮した刑事罰リスクも含めたプロバイダーの明確なセーフハーバー、児童ポルノの単純所持規制・創作物規制といった非人道的な規制の排除の国際的な働きかけのみである。
今後は、恣意的な運用しか招きようのない危険な規制強化の検討ではなく、情報に関する各種問題は情報モラル・リテラシー教育によって解決されるべきものという基本に立ち帰り、教育・啓発等に関する地道な施策のみに注力する検討が進められることを期待する。
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