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2010年6月23日 (水)

番外その25:情報・表現規制問題に関する注目候補リスト(2010年参院選版)

 前回書いた通り、今回の選挙も児童ポルノ規制法選挙と思って投票するつもりだが、少なくとも、このような表現・情報規制問題を中心に考えると、創価学会を支持母体とするカルト政党として当然のように危険な規制強化を目論む公明党と、これとほぼ一体となって人の話に聞く耳を持たず規制強化をごり押しする自民党は始めから投票先として論外である。表現・情報規制強化に懸念を抱いているようであれば、選挙に行き、公明党・自民党以外の政党・議員に投票することが第1条件となる。(なお、都条例改正問題でトチ狂った妄言を繰り返し垂れ流し続けている石原慎太郎都知事が噛んでいる時点で、たちあがれ日本も個人的には投票先として考えられない。)

 特に、このような情報・表現規制問題は、規制官庁と少数の規制派議員の暴走から問題が大きくなるのが常なので、ピンポイントに規制派候補がどれくらい落ちるか、慎重派・反対派候補がどれくらい通るかで、今後の動向が大きく左右される。既に、参院選の話については、「表現規制について少しだけ考えてみる(仮)」、「チラシの裏(3週目)」(関連エントリ1エントリ2)、「反ヲタク国会議員リスト」、「選挙に行こう」、「弁護士山口貴士大いに語る」等でも取り上げられており、リンク先をご覧頂ければ十分だと思うが、ここでも念のため番外として注目候補のリストを以下に作っておく。

(1)児童ポルノ規制・表現規制問題において反対・慎重派として特に知られる候補
◯比例区:
・保坂展人候補<社民>(HPtwitterwiki):この問題について内心の自由や表現の自由まで踏み込み、最も問題点を良く理解し明確に反対をして下さっている貴重な候補。社民の比例区候補であり、児童ポルノ問題等情報・表現規制問題に懸念を抱いている皆様には、比例区で保坂展人氏の名前を書くことをお勧めしたいと思う。(非常にややこしく選挙制度自体改正が必要だろうとは思っているが、今の参院比例区は非拘束名簿式(wiki)なので、特定の候補を応援する場合、政党名ではなく個人名を書いた方が良い。)

(2)児童ポルノ規制・表現規制問題において推進派として特に知られる候補
◯比例区:
・後藤啓二候補<みんな>(HPwiki):東京都青少年健全育成条例改正を検討した東京都青少年問題審議会の委員を始め、表現・情報規制問題を追いかけている者にとって説明の必要がないほど、児童ポルノ規制・表現規制の超推進派としてあらゆるところに顔を出している。元警察官僚として警察利権を全力で擁護し、常に根拠なく極めて有害な表現弾圧・情報統制を強力に主張し続ける超一級の危険人物の1人である。

・山谷えり子候補<自民>(HPwiki):ただのマッチポンプだが、去年7月に、当時の自民党の女性局長として、根拠なく有害サイトや性暴力ゲームの規制強化を求める要望書「性暴力ゲームの規制強化に向けた提言」を当時科学技術担当大臣だった野田聖子氏に提出するなど、やはりこのような問題において規制推進派として知られている。

(3)他児童ポルノ規制に対して慎重な検討を求める請願を紹介した元議員候補
◯比例区:
・福島瑞穂候補<社民>(HPtwitterwiki

(4)他ゲーム・ネット・表現規制を求める請願を紹介した元議員候補
◯比例区:
・円より子候補<民主>(HPtwitterwiki
・下田敦子候補<民主>(HPwiki

(5)東京都青少年健全育成条例改正問題に関してイベントに参加し、条例改正に慎重・反対の姿勢を示した元議員候補くりした善行都議のブログ参照)
◯東京都選挙区:
・蓮舫候補<民主>(HPtwitterwiki
・小川敏夫候補<民主>(HPwiki):小川敏夫氏は、平成15年の児童保護に名を借りた創作物の規制反対に関する請願署名にも賛同者として名を連ねている(署名活動に関するページ参照)。

(6)平成15年の児童保護に名を借りた創作物の規制反対に関する請願署名に賛同者として名を連ねている元議員候補署名活動に関するページ参照)
◯比例区:
・家西悟候補
<民主>(HPwiki

(7)他児童ポルノ規制法の改正法案を提出した・成立を求める請願を紹介した元議員候補
◯比例区:
・八代英太候補
<民主>(HPwiki):平成16年に、自民党議員として、改正法案を提出するとともに(衆議院HP1参照)、その成立を求める請願を紹介している(衆議院HP2参照)。

(8)他ブログ等で児童ポルノ規制強化に慎重な姿勢を示している候補
◯比例区

・山田太郎候補<みんな>(HPtwitterwiki):山田太郎氏のブログ記事参照。このような姿勢をブログで示して下さっているのは非常に有り難いと思うが、残念ながら、児童ポルノ規制の超推進派の後藤啓二氏もみんなの党の比例区候補として出ているので、表現・情報規制問題を中心に考えた時、みんなの党に票を入れることはできない。

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第232回:主要政党の参院選マニフェスト案比較(知財・情報政策関連)

 主要政党の参議院選挙用マニフェスト案(公示日以降に配られるものが正式版らしいので、案としているがどうせ例によって大した変更は無いだろう)がほぼ出そろった(民主党(pdf)自民党(pdf)社民党(pdf)共産党(pdf)国民新党(pdf)公明党(pdf)みんなの党(pdf)新党改革(pdf)たちあがれ日本(pdf))。どこの政党のマニフェストも本当に重要な部分で具体性が欠如しているという点ではいつも通り五十歩百歩だが、それでも多少の参考にはなるかと思うので、去年と同じく今年も各政党のマニフェスト案の知財・情報政策関連項目の比較をしておきたいと思う。

(1)知財
<民主党>

クール・ジャパン
 食、音楽、文化、ファッション、デザインなどへの戦略的投資を実施し、海外への情報発信を強化します。
 映像・アニメ・音楽などのコンテンツ保護強化・デジタル化などによる新規ビジネス創出を推進します。

<自民党>
22 世界へ向けた情報発信力の強化、デジタルコンテンツ市場の拡大
 文化・伝統などわが国の持つ魅力(ソフトパワー)を積極的に海外に発信します。特に、世界に広がりをみせる放送コンテンツの海外展開や電子書籍・電子雑誌の流通促進、電子看板(デジタルサイネージ)の推進などにより、デジタルコンテンツ市場の拡大を支援、地域を含めたわが国社会経済の活力を増大させます。国をあげて、アニメ・マンガ・ゲームなどのコンテンツ作成だけではなく、「イベント創造」「営業方法」など、利益を生むトータルでのシステム構築を支援します。

234 世界に誇るべき「文化芸術立国」の創出
 日本文化を戦略的に海外発信するため、アニメなど日本ブランドとしてのメディア芸術の振興や人材育成、制作者の待遇改善を図ります。文化交流の相手先と内容の重点化、優れた芸術の国際交流の推進、海外の日本語教育拠点の100か所への拡充等を行います。海外の美術品等のわが国における公開を促進するため、議員立法で「海外美術品等公開促進法」を制定します。
 文化芸術の創造性が産業や地域の活性化に結びつく取組みを行う「文化芸術創造都市」が全国各地に形成されるよう支援します。また、義務教育期間中に、全ての子どもが、質の高い文化芸術を最低2回(伝統文化と現代文化を各1回)は鑑賞・体験することができるようにします。

<みんなの党>
○日本文化産業
 メディアコンテンツ、ファッション、食、観光などの領域は、新たな輸出産業として大きなポテンシャルを有する。ただし現状では、担い手である企業の殆どに世界市場を積極的に攻めるマインド、経営スキル、企業体力が欠如。また、関連する諸産業に横串を通し、日本の文化価値を総合的に訴求・展開する国家戦略も欠如。これらを大きな産業群に育てるためには、
・カテゴリー横断的な、日本文化産業全体のブランドコンセプトの創出(例:英国の“Cool Britannia”戦略、韓国の“Cool Korea”戦略)
・カテゴリー×エリア軸での重点が明確で、かつ統合的な戦略の策定
・重点地域市場における現地支援プラットホームの設立(市場調査、現地パートナーの紹介・交渉、共同流通網の構築などシェアードサービス的機能を提供)
・関連産業の再編と強いブランドポートフォリオの形成(例:多数の高級ブランドを束ねる持株会社LVMH)、これを可能とするファンド機能とマネジメントチームの組成などが必要。

○科学技術の振興
 基礎研究の振興はもちろん重要だが、開発した技術を世界市場で金にするためには「規格競争」に国としてしっかり取り組むことが重要(例:通信、スマートグリッド、電気自動車、地デジなど、重要産業の多くに該当)。WTO以降の国際標準化の波の中で、ISO(国際標準化機構)・IEC(国際電気標準会議)などで影響力を持ち得ず、関連産業の機会損失が大きいのが現状。

○アジアワイドの規制改革。
・競争政策や知的所有権制度の国際調和
・アジアワイドの医薬品の治験・承認制度の確立など

<新党改革>
●日本の文化(アニメ、アート、ファッション等)を海外に発信し、その競争優位性を高めて行きます。そして、ビジネスとしての文化戦略を実行していきます。

<たちあがれ日本>
・海外・国内での知的財産を守る対策を強化します。

 いつもの如く、どの党も知財に関しては意味のあることを何一つ言っていない。それにしても、都条例改正問題に端的に表れているように、創価学会を支持母体とするカルト政党の公明党とほぼ一体となってマンガ・アニメ・ゲームなどの表現文化の弾圧を強力に推進している自民がアニメなどの振興を唱えるとは噴飯ものである。

(2)児童ポルノ規制
<社民党>
○子どもの人権を守る観点から子ども買春の根絶と児童ポルノの規制強化に取り組みます。規制については、表現の自由を侵したり、表現者に過度の萎縮をもたらすことがないようにします。

<公明党>
児童ポルノの所持等の禁止
●子どもの福祉の観点から、児童ポルノ禁止法を改正し、児童ポルノの所持等を禁止するとともに、自己の性的好奇心を満たす目的での児童ポルノの所持等を処罰する罰則を新設します。

 児童ポルノ規制に関しては、やはり公明党がマニフェストに単純所持規制導入を明記している。去年と同じことをここでも繰り返しておくが、表現・情報規制問題に関する限り、創価学会を支持母体とする宗教政党の公明党には絶対投票してはならない。表現・情報規制強化に懸念を抱いているようであれば、選挙に行き、公明党以外の政党に投票することは第1条件となる。一緒になって児童ポルノの単純所持規制などの有害無益な規制強化を強力に推進している自民党も基本的には同断である。

 ここで、社民党が規制強化に触れながらも、児童ポルノ規制の論点として表現の自由についてまでマニフェスト案で踏み込んで書いていることは高く評価したい。社民党は、保坂展人氏を筆頭に、ほぼ党として明確に児童ポルノの単純所持規制等に反対しているので、この問題に関しては第1に推す党である。

(3)表現・情報規制一般
<社民党>

○国家による監視社会の強化に反対するとともに、医療情報、教育情報、金融情報などのセンシティブ(取り扱いに注意すべき)情報について、プライバシーを守るための個別法の整備をすすめます。

○利用者保護、青少年対策が国家管理と混用されることのないよう、インターネットの環境整備に取り組みます。「有害」や「不正」な情報の扱いについて、直接的な法規制ではないメディアの自律的な対応システムをいかすかたちでの対応を強化していきます。青少年への啓発・啓蒙を充実させ、被害の未然防止と速やかな救済を可能にします。

○インターネットの発達とともに、放送との「融合」が進行している現在、「情報通信インフラは国民の資産」という認識に立ち、新たな法整備に臨みます。「表現の自由」は民主主義の基盤です。市場性や効率性に惑わされることなく、国民全体の利益の基礎を見据えて改革を行うべきです。自由な表現活動が実現する社会をめざし、ビジネス優先での情報分野の規制緩和や公的介入の強化には反対します。

<自民党>
108 情報通信ネットワークの安心・安全の確保
 国民がICTを安心・安全に利用できる環境を整備するため、ネットワーク上の違法・有害情報やウィルス、迷惑メール等への対策を進め、情報セキュリティの確保に努めます。
 学校のICT環境の整備を進め、デジタル教科書の導入や青少年のICTリテラシー(読み書き能力)を向上させる活動を推進、同時に、小・中学生の段階から情報教育の普及に努め、高度ICT人材の育成を推進します。

156 青少年健全育成の推進
 近年の青少年の非行や犯罪被害等の深刻な状況に対し、青少年を健全に育むことができるよう、「青少年健全育成基本法」の制定をはじめ有効な法整備を図るとともに、青少年を取り巻く有害社会環境の適正化のための事業者等による自主規制のあり方など総合的な施策を推進します。また、インターネット上の有害情報による犯罪被害を防止し、青少年の安全・安心なインターネット利用に向けた施策を推進します。
 一人ひとりが社会生活を円滑に営むことができるよう、地域の連携を強化し、ニート・フリーター等困難を抱える若者への支援を推進します。また、若者自立塾の整備・拡充を図ります。

<公明党>
治安の回復を実現
●刑法犯の認知件数を減らし国民生活の安全安心を確保するため、警察官の増員や質の向上などにより、ひったくりなどの街頭犯罪や振り込め詐欺などの防止、取り締まりを強化します。また、DNA型鑑定の一層の活用や、110番通報に対してより迅速に対応するため、携帯電話の発信地を通知する機能の導入を進めます。さらに、性犯罪の厳罰化やパソコンやインターネットなどを悪用したサイバー犯罪への取り締まりを強化し、犯罪仲間を募ったり、犯罪を助長したりするような「闇サイト」を規制する「闇サイト防止法」を制定するとともに、情報モラル教育や啓発活動を推進します。また、自動車のカーナビゲーション装置で、運転者に周辺の歩行者等の交通状況などを視覚・聴覚情報により知らせることで交通事故 を防止するためのシステムの開発・整備などを推進します。特に、自転車の通行環境の整備、ルールの周知と交通安全教育、また、歩行者の安全のための環境整備による交通事故防止に取り組みます。

違法・有害情報対策の推進
●青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするため、全国で青少年のリテラシー(情報の理解力・発信力)を向上させる活動やインターネットが青少年に与える影響の調査を踏まえた的確な対策、違法・有害情報の検出等に資する技術開発への積極的な支援を行います。

 ここでも、社民党が、ネット規制と表現の自由の関係について明記し、特に直接的な法規制に対して明確な反対の姿勢を打ち出していることを私は高く評価する

 これに対し、自民党・公明党は、「青少年健全育成基本法」だの「闇サイト防止法」だのと相変わらず青少年保護の名を借りて国家による情報の直接統制を目論むというおよそお話にならないことをマニフェストに堂々と載せているという有様である。(さらに言えば、今までの経緯を考えても、自民党の言うところの「自主規制」の検討は実質的な官製検閲の検討になることだろう。)

(4)情報公開
<民主党>

 外交文書を含めて行政情報の公開に積極的に取り組みます。
 情報公開法を改正し、国民の「知る権利」を明記します。
 政治資金の全容を一元的に明らかにするため、「国会議員関係政治団体」の収支報告書の連結、総務省への一元的提出、外部監査・インターネット公表の義務付けを行います。

<社民党>
◯国民主権の政治、住民参加の大前提として、徹底した情報公開をすすめることが必要です。国民の知る権利を保障し透明な政府を実現する観点から、情報公開法を抜本的に改正するとともに、国会及び裁判所を対象とする情報公開法をつくります。

○長期にわたる拘留や強要によるウソの「自白」が冤罪の温床となっていることを踏まえ、取り調べの全過程の可視化(ビデオ録画等による)をはかります。事後的な検証を可能とするため、捜査時の試料等の保管を義務付けます。また誤判原因を調査するための機関の創設を検討します。

<公明党>
取り調べ過程の可視化の本格実施
●警察・検察で実施している録音・録画による取り調べ過程の可視化については、冤(えん)罪を防止するため、裁判員制度の実施にかんがみ、刑事手続全体の在り方との関連に留意しつつ、本格的な実施を図ります。

<みんなの党>
行政を情報公開で「ガラス張り」にする
①政治・行政の透明化を図り、国民の信頼を回復するため、官邸に「情報公開局」を設置し、政治・行政を「ガラス張り」に。自民党政権下の意図的に秘匿された情報や「隠し財源」などを明らかに。
②国の会計に複式簿記などの企業会計手法を導入し、行政評価と連動させる等公会計制度改革を推進。

 情報公開についてもどのマニフェスト案にもあまり実質的なことは書かれていないが、情報公開法の改正や取り調べの可視化は地道に進めてもらいたいと私も考えているものである。ただし、やはり、社民党が国会まで含めて情報公開法を作るとマニフェスト案に明記していることは注目に値する。

(5)情報通信
<社民党>

○電波や放送にかかわる事業体の選定に関し、権力の介入を許さないためにも、先進諸国と同様に、現在の行政官庁ではなく、独立した第三者機関に委ねる制度づくりに着手します。

○地上デジタル放送移行に際しては、低所得者への受信機や、チューナー貸与や電波障がい地域の解消など引き続き求めていくとともに、ビル陰などの新たな難視聴問題、マンションなどの共同視聴設備の対策、デジタル波が届かないテレビ難民や経済弱者への支援を強化します。また、障がい者の要求への対応を強化します。バスやタクシーの無線改修などについても必要な対策を講じます。地デジ対応テレビの普及率や低価格チューナーの対応、諸対策の状況などを踏まえ、場合によっては、延期することも含めて検討します。

○地上デジタル放送移行では、電波に空きが出るため、適正な審査により、幅広く電波利用を認め、市民にも空き電波を使う道を開きます。一般市民のメディアへのアクセス権を保障するため、既存放送局に市民作成による番組放送枠を設けるよう働きかけるとともに、パブリック・アクセスチャンネルを整備し、諸外国では一般的な市民による放送事業(コミュニティメディア)にも道を開きます。

○インターネットを利用できない人々に対して、自治体などを通じての支援事業を推進します。また、通信条件の悪い地域への対策も行います。

<自民党>
13 社会全体のICT化
 ICT化により、様々な分野において事業の効率化、サービスの向上など、国民生活の利便性が飛躍的に伸びました。今後、産業がグローバル化する中、産業界においても、さらなるICT化を進めると同時に、国、地方、企業、個人それぞれがICTの恩恵を受けられるよう「社会全体のICT化」を進めます。例えば、電力供給効率化につながるスマートグリッドの導入、ITSによる交通の円滑化、電子政府の実現など、国民生活の利便性向上と環境への負荷低減に向けたICT利活用を力強く推進します。
 情報サービス・コンテンツ産業としてデータセンター等の設備投資は生産波及効果が2倍と大きく、雇用誘発力も高いことから、これらの分野への投資機会を積極的に増やします。

14 ICT産業の成長促進と国際展開を支援
 地場産業をはじめわが国の企業活動の生産性向上を図るためには、あらゆる社会経済活動の基盤であるICT産業の国際競争力を強化することが不可欠です。日本企業の「ガラパゴス化」からの脱却、グローバル展開に向け、地上デジタル放送など重点技術の国際展開支援、クラウドコンピューティングなど新技術・新分野に対する集中的な投資を行い、標準化強化、人材育成、ベンチャー支援などを通じ、ICT産業の競争力を強化、現在約100兆円のICT産業の市場規模を倍増させます。

107 地域におけるICT利活用の促進
 インターネットを活用した地域の特産品の共同受注・一括販売、消費者と直結した新たな市場の創出による地場産業の活性化、地域の観光情報を集約したポータルサイトの構築、伝統文化等をはじめとする地域ならではのコンテンツの発信による観光産業の活性化などの取組みを推進し、元気な地域社会の実現を図ります。
 地域コミュニティにICT関連技術を集中的に投資して、高齢者や児童の見守り、防災情報の配信などを実施し、役立つ先進的な情報通信システムの構築、さらにそのシステムの運用のための地域における体制づくりを支援します。

109 格差のないICT基盤の整備(デジタルディバイドの早期解消)
 情報格差(デジタルディバイド)を放置することは、地域社会・経済の活性化や電子自治体の進展の妨げとなります。
 地理的な条件に関わらず、等しく医療や教育などのサービスを受けることができるネットワーク基盤を整備するため、政府・地方公共団体・民間事業者によるブロードバンド・ゼロ地域解消とサービスの高度化を支援します。また、高齢者・障害者を含む誰もがICTの活用を通じて社会参加できるよう、使いやすいICT技術の開発、字幕放送の普及などを促進、情報バリアフリー環境の整備を推進します。携帯電話がつながらないエリアの早期解消の実現に向けて、特に条件的に厳しい地域の整備を推進します。

110 地上デジタル放送への円滑な完全移行
 国民生活に不可欠なテレビ放送については、地上デジタル対応テレビやチューナーなどのデジタル対応受信機器の更なる普及促進を図るほか、地理的条件や建造物等により受信が困難なエリアにおける難視聴対策を推進するなど、総合的な取組みを推進し、地上デジタル放送への円滑な完全移行を実現します。

<公明党>
ICT産業のグローバル化の推進とICT産業の成長促進
●わが国の優れた情報通信技術(ICT)産業分野について、アジア地域に重点をおいたグローバル展開を積極的に進めるとともに、
「グリーンICT」の推進や研究開発人材育成などに取り組むことで、ICT産業の市場規模の倍増をめざします。

デジタルコンテンツ市場の拡大
●わが国が強みとする放送コンテンツの流通促進を図ります。

国民電子私書箱構想の推進
●国民が自らの年金記録などの情報を入手・管理することができ、また、幅広い分野で24時間簡単にワンストップの行政サービスを利用することができる「国民電子私書箱」構想を推進します。

地上デジタル放送への円滑な完全移行の実現
●2011年7月の地上デジタル放送への円滑な完全移行に向けて、デジタル受信機やチューナーの国民への一層の普及促進を図ります。また、地形や建造物等によるデジタル難視聴対策を推進します。さらに、適正な廃棄・リサイクルの一層の推進など、環境に配慮した取り組みを行います。

デジタルディバイドの早期解消
●「ブロードバンド・ゼロ地域」の解消の早期実現、ブロードバンドと防災・医療等の公共的アプリケーションとの一体的整備を推進します。さらに、携帯電話がつながらない地域の解消をめざします。

ICTによる安心・安全な地域社会の実現
●ICT関連技術を活用して、遠隔医療、児童・高齢者見守り、防災情報提供などの取り組みを推進し、地域住民が安心・安全を実感できる環境をめざします。

テレワークの推進
●子育て中の女性、障がい者等の就業機会の拡大、ワーク・ライフ・バランスの実現等の観点からテレワーク(ICTを活用した場所と時間に制約されない柔軟な働き方)の普及拡大を推進します。

電子行政クラウドの推進による行政の効率化
●クラウドコンピューティング技術などを活用し、中央省庁の保有する情報システムのハードウエアの統合化・集約化などを図り、中央省庁の情報システム経費を削減します。また、地方公共団体の保有する情報システムについても統合化・集約化を推進します。

医療分野におけるICT利活用による医療の質と安全性の向上
●地域の医師不足などの問題に対応するとともに、全国で質の高い安全な医療を受けることを可能とするため、ICTを利用した遠隔医療を推進します。

高度ICT人材の育成
●ICTに関する技術や利活用方法を理解し、高い付加価値を創造できる高度ICT人材について、産学官連携によりその育成拠点の形成を図ります。

情報バリアフリーの推進
●高齢者・障がい者が使いやすい情報通信機器・技術の開発およびサービスの提供の促進等により、ユニバーサルデザインの普及促進を実施するとともに、字幕放送・解説放送等を普及・促進します。

<みんなの党>
○医薬品のインターネット販売は、利用者のニーズをふまえ安全性に配慮しつつ解禁する。学校教育にITやインターネットを取り入れる。eラーニングや電子教科書を使う。また、電子カルテや政府申請、納税申告などすべて100%電子申請を原則とし、行政改革・コスト削減につなげる。また、地域間の格差をなくすため、情報の民主化を進める。

○データ通信インフラを日本全土で整備する。

○医薬品販売規制のほか、食品表示の過度な規制の動きなど、ITビジネスを阻害する過度な規制を排除する。

 情報政策一般についても各党とも項目はそれなりに多いが、やはり意味のあることをどの党もあまり書いていない。自民・公明は、「ICT」を連発して総務省が言っているようなことをずらずら無意味に並べているが、自民・公明のマニフェスト案のこの部分のゴーストライターはやはり総務省だろうか。(なお、みんなの党が医薬品のネット販売解禁について触れているが、みんなの党は、児童ポルノ規制強化の超推進派として知られる後藤啓二ECPAT顧問弁護士(元警察官僚)を候補として擁立するとしており、情報規制問題全体を考えると、このような問題について懸念を抱いている方に投票先として勧めることは全くできない政党である。)

(6)規制緩和一般
<民主党>

規制改革
 幼保一体化に向けた幼稚園、保育所などの施設区分の撤廃、再生可能エネルギーの普及拡大に向けた発電施設などにかかわる規制の見直しなどの規制改革を進めます。

<自民党>
8 不断の規制改革と「グローバルトップ特別区」の創設
 消費者行政とのバランスをとりつつ、各種規制のあり方を不断に見直し、潜在需要を顕在化させて発展的経済活動を支援します。また、新たな立法時における規制の新設についても、国民の安全安心を確保するとともに、自由で活力ある経済活動を阻害しないようにする観点から、引き続き十分な事前審査を行います。各種事業の規制については、事業仕分けの手法を用いた“政策棚卸し”を実施し、見直しを鋭意進め、成長を阻害する規制は直ちに撤廃します。
 さらに、医療研究、サステナブル都市、国際コンテンツ拠点、自治体による国内外の企業や研究施設の誘致促進を可能とするため、財政上の措置も含め「グローバルトップ特別区」を創設します。

<みんなの党>
○官僚統制と中央集権の道具であった規制制度を徹底的に見直す。
・「規制改革会議」の後継機関を設けて、総理や関係大臣出席の下に開催する。国レベル
の最低基準の必要性を精査し、真に必要性が認められた場合を除き、すべての規制制度
を廃止または地方移管する。
・ノーアクションレター制度の適用範囲拡大や利用促進を進め、官僚のさじ加減による裁
量行政を徹底的に排除する。

<新党改革>
●法人税だけでなく、市場の大きさ、制度、金融、物流、人材、治安、生活習慣などの様々な要素から企業立地や経済成長は決まります。この全てにおいて、規制緩和を徹底し、国際社会の中で、日本が最も事業環境が整い、住みやすい国に変えます。
●規制緩和にあたっては、国民や企業からの声を受け付けるだけでなく、各大臣の主導の下、全ての規制について国際比較を行い、自主的に規制緩和を行います。

 規制緩和一般についても、実質的に意味のあることはどの政党のマニフェストにもほとんど書かれていない。

(7)共謀罪
<社民党>
○犯罪の実行前の共謀それ自体を処罰の対象とする「共謀罪」の新設に反対します。通信傍受法(盗聴法)やサイバー犯罪対策に関する刑法・刑訴法を見直し、適用対象や犯罪の構成要件、処罰の範囲等を見直します。

 共謀罪の話も長いが、社民党は今回のマニフェスト案で明確に反対を打ち出している。

(8)人権侵害救済法
<社民党>
○政府から独立した国内人権救済機関を設けるための「人権侵害救済法」を制定します。
○思想・良心・表現の自由、居住・移転・出国の自由、少数民族の権利などを定めた国際人権規約B規約の第一選択議定書等を批准し、国際機関への個人通報制度を設けます。

<公明党>
人権擁護へ、「人権侵害救済法」を制定
●人権侵害による被害を適正かつ迅速に救済するとともにその実効的な予防を図るため、新たな人権救済制度の創設などを含む「人権侵害救済法」(仮称)を制定します。また、人権擁護委員の処遇改善に努めるなど人権擁護施策を総合的に推進することにより人権尊重社会の実現をめざします。

「個人通報制度」の創設
●国際人権(自由権)規約で保障された権利を侵害され、国内の手続きでその救済がなされなかった際に、侵害された個人が、国連の自由権規約委員会に通報し、国に対して勧告を求めることができる「個人通報制度」を定めた国際人権規約の第一選択議定書の批准をめざします。

<たちあがれ日本>
人権擁護法案反対
・言論の自由を損なうような政策には断固反対します。
・人権擁護委員に国籍条項がないことも問題です。

 人権擁護法関連についても変わらず危険な状態が続くと思うが、関連として、ここで書かれている個人通報制度についても注意しておいた方が良いだろう。

(8)天下り
<民主党>
 天下りの温床となっている各種公法人について、廃止を含めた改革に取り組みます。

<自民党>
248 「天下り」根絶宣言—「天下り」発生原因をなくす!
 「天下り」「裏下り」を根絶するため、「天下り」あっせんに刑事罰を科します。給与体系を抜本的に見直して定年まで勤務可能な仕組みを作り、早期退職勧奨(いわゆる「肩叩き」)慣行をなくします。官民人材交流センターの再就職支援機能は直ちに廃止し、給与体系の抜本的見直しにともなって、センターをサンセット(廃止)します。
 やる気と活気に満ちた組織を構築するために、ポストごとの役職定年制を導入します。
 また、人件費を抑制するため、給与体系全体を抜本的に見直します。特に、幹部公務員の給与を本俸と役職手当に区分することで、役職定年後の異動や降任・降給をスムーズにさせます。

249 「天下り」根絶宣言—「天下り」を受けさせない!
 指定法人、認可法人等の常勤役員については、その数の3分の1超、または65歳以上の所管府省出身者を認めません。
 府省出身者が常勤役員の数の3分の1超、または65歳以上で報酬を得て在職している団体や企業等に対しては、その府省等は補助金等の交付や業務委託等の契約を行わないこととします。
 現行の再就職規制を、渡り・裏下りも含め厳格に運用し、再就職に関する国民の疑念を払拭します。
 さらに、「各府省による再就職あっせん禁止」違反に対する罰則規定、「元公務員による働きかけ禁止」違反について、再就職先の団体や企業等も対象とする両罰規定を新たに導入します。また、違反者については、氏名、所属先、違反内容等を公表します。

<社民党>
○在職期間の長期化をはかり、早期勧奨退職慣行による天下りを廃止します。特殊法人、独立行政法人等も含め徹底した規制を行います。公務員の採用試験区分を見直し、閉鎖的で特権的なキャリア制度を廃止するとともに、原則試験制度にもとづく昇格制度を採用し任用時における昇任差別をなくします。

<公明党>
天下りの根絶
●内閣や各省庁による国家公務員の再就職(天下り)あっせんを全面禁止します。また、他の職員の天下りをあっせんした国家公務員
に対し罰則を科します。そして、国家公務員が離職前5年間に在籍していた機関と密接に関連する営利企業、独立行政法人、公益法人への再就職を離職後5年間禁止します。
●天下りの温床となっている“早期退職勧奨”を法律で禁止します。60歳定年の65歳への延長とともに、人件費抑制のため一般職給与法、退職手当法、公務員共済法、定員法の見直しをセットで行います。
●天下りを監視する内部統制を図るため、天下り等に関する内部告発を行いやすくします。

<みんなの党>
2.民主党政権が断念した「天下り根絶」を断行する
①民主党政権で作られた抜け道をふさぎ、真に天下りを根絶。「政務三役によるあっせん」も禁止。裏下り(「OBのあっせん」等と称する天下りあっせん)には刑事罰を導入。
②人材バンク(官民人材交流センター)を時限的に廃止。
③「早期勧奨退職慣行」を撤廃し、定年まで働ける(その代わり、給与の大幅ダウンもある)人事制度を確立。民主党政権が進める「天下りに代わるポスト創設」(高齢職員を処遇するための窓際ポストの創設、独立行政法人などへの現役出向拡大)は認めない。
④天下り官僚OBへの更なる退職金払いの差し止め。

<たちあがれ日本>
官僚の天下り根絶へ、機能する政治主導へ
・官僚の人事制度をいじり回すだけでは「優れた政治主導」は生まれません。天下り根絶、人件費削減など基本ルールは厳守させつつ、閣僚が経営者として役人を徹底的に活用します。政治家が役人の仕事をするのでは行政は停滞します。
・政府参考人制度の廃止などを謳(うた)い、恣意的な法律解釈がまかり通る恐れがある「国会法改正案」には反対します。
・行政改革は、大きな問題が集中している1~2の省庁にまず集中し、成功例をきちんと作ってから全面展開していきます。例)組織分割と再編、外部人材の導入、他省幹部との入替え、若手・女性の抜擢等
・各省ムラ意識の解消と国・地方を通じた円滑な人材移動を促進するために、公務員資格の国・地方を通じた統一、ポストのオープン化、民間人・女性への門戸開放などを進めます。

 天下りに関しては、程度の差はあれ全政党が一致して無くそうとしている。本当に重要なことは、具体的に今後の公務員制度の設計をどうするのかということなのだが、この具体的な制度設計については、どの政党もやはりなおあまり明確でない。(なお、今回のマニフェスト案で社民党がネット選挙の解禁について触れていることは注目に値すると思うが、そのことを除けば、選挙制度や国会改革については、去年(第187回参照)と同じく例によって国民そっちのけで政党間で政争が行われているに過ぎず、ほとんど何も評価できないことに変わりはないので、今回は省略する。)

やはり今回の参院選マニフェスト案でも、表現・情報規制問題における、創価学会を支持母体とするカルト政党、公明党の危険性は明らかである。都条例改正問題に端的に表れ、マニフェスト案からも読み取れるように、この公明党とほぼ一体となり、規制カルト政党と化している自民党も同断である。表現・情報規制強化に懸念を抱いているようであれば、選挙に行き、公明党・自民党以外の政党・議員に投票することは第1条件となる。

 比較の問題に過ぎず、今後も危険な状態が続くとは思うが、表現・情報規制問題に関する限り、多少難点があるものの、今回の社民党のマニフェスト案は、表現の自由について大きく踏み込んだ記載をし、表現の自由を守ると明記している点で私は高く評価する。

 立法府の選挙のための政策集なら、どの法律を具体的にどう変えるのか、国家予算を総合的にどう配分するのかを書いてもらいたいものといつも思っているが、出て来るのは具体的には何を言っているのか良く分からない項目集である。政党の全てがこの体たらくでは、今後も日本の政策決定における迷走は続くと思うが、それでも、少しでもマシな政党・人間を今度の選挙で選ぶことは極めて重要であり、なるべく多くの人に選挙に行ってもらいたいものと私は思っている。

 個人的には、今回も知財問題は争点になりようがないので、今回の選挙も児童ポルノ規制法選挙と思って投票するつもりだが、去年も書いたように、特に、このような情報・表現規制問題については、ピンポイントに規制派候補がどれくらい落ちるか、慎重派・反対派候補がどれくらい通るかで、今後の動向が大きく左右される。他のブログなどでも書かれているが、ここでも次回のエントリを使って、注目候補の紹介をしておきたいと思っている。

(6月23日朝の追記:各党のマニフェスト案を見直して、少し見逃していた項目を追加するとともに、特に内容は変えていないが、上の文章を少し整えた。)

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2010年6月17日 (木)

第231回:文化庁・法制問題小委員会「権利制限の一般規定に関する中間まとめ」(日本版フェアユース)に対する提出パブコメ

 第227回で取り上げた、文化庁・法制問題小委員会「権利制限の一般規定に関する中間まとめ(pdf)」のパブコメ(6月24日〆切。文化庁のリリース、電子政府HPの該当ページ意見募集要領(pdf)参照)に対して意見を書いて提出したので、ここに載せておく。

 また、東京都青少年健全育成条例改正問題について、昨日6月16日の東京都議会本議会において、民主党、共産党、生活者ネットワーク、自治市民の各会派の反対により、条例改正案は否決された(internet watchの記事ITproの記事)。1個人として私もこの否決は本当に嬉しく思う。私も出したいと思っているが、懸念を抱いてこの問題を追いかけて来た方々には、今回広く皆の声を拾い上げ否決に動いて下さった都議の先生方に是非直接お礼のメール等を出すことを考えて頂ければと思う。

 この条例改正案はこれで一旦廃案となるものの、石原慎太郎都知事はさらに再提出すると言っており、まだ問題は続くと考えられるが、その前に、6月24日公示、7月11日投開票で参議院選挙が控えている。今回の参院選も非常に重要であり、次回は、選挙関係のエントリにするつもりである。

(以下、提出パブコメ)

(1)「第2章 既存の個別権利制限規定等の解釈論や個別権利制限規定の改正等による解決について」(第4ページから第6ページ)
◯該当項目および頁数:
 第2章【4頁~6頁】

◯意見:
 この項目において、解釈論と改正までにかかる時間のみをここで取り上げているが、既存の個別の権利制限規定について解釈論と改正にかかる時間以前の問題として、現行の個別の権利制限規定自体非常に狭く使いにくいものとされているという問題があることを報告書中でなおざりにするのは不適切である。
 特に、ワーキングチーム報告書参考資料2の具体的要望として挙げられた中に、障害者のための利用、アーカイブのための利用、教育目的での利用など、本来既存の個別の権利制限で対応がなされているべきであった事例が多く含まれていることを重く見るべきである。このような要望が出されていることからも明らかなように、その文化に対する見識の無さから今まで権利制限を不当に狭く使いにくいものとしてのみ場当たり的に作って来たことについて文化庁の猛省を私は一国民として求める。
 既存の個別の権利制限規定について、さらに利用者・事業者等からきちんと意見を聴取した上で、不十分な点があると評価されるようであれば早急に法改正により対処するべきであり、現実問題として個別の権利制限規定の改正による対処が不可能であるとするのであれば、権利制限の一般規定をより包括的な形に規定することで対処するべきである。

(2)「第4章1(4)既存の個別権利制限規定の解釈による解決可能性がある利用への対応(5)特定の利用目的を持つ利用への対応(6)その他」(第20ページから第24ページ)
◯該当項目および頁数:
 第4章 1(4)・(5)・(6)【20頁~24頁】

◯意見:
 第4章1(5)の項目名を「特定の利用目的を持つ利用への対応」とし、障害者福祉、教育、研究、資料保存やパロディ等のための利用こそ、本来、一般的な公益・表現の自由に照らして真っ先に認められてしかるべきこれらの利用類型を「特定の」ものと一方的に決め付け、ロクな根拠も示さずに今回の権利制限の一般規定の対象とならないとすることは極めて不適切である。
 最終的な報告書からはこの項目から「特定の」という言葉を削除するとともに、第4章1(5)で明記されている類型以外にも、ワーキングチーム報告書参考資料2で具体的に要望されている類型としては、個人の情報発信に伴う利用、ネットワークサービスに関連する利用、企業内における著作物の利用等もあるのであり、要望されている全ての類型について、個別の権利制限規定の改正・創設による対処が可能であるか否かを最終的な報告書の取りまとめまでに検討し、現実問題としてこれらの全ての類型について個別の権利制限規定による早急な対処が不可能であるとするならば、権利制限の一般規定をより包括的な形に規定することで対処するべきである。

(3)「第4章1(7)まとめ」(第24ページ)
◯該当項目および頁数:
 第4章1(7)【24頁】

◯意見:
 まとめとして、「A その著作物の利用を主たる目的としない他の行為に伴い付随的に生ずる当該著作物の利用であり、かつ、その利用が質的又は量的に社会通念上軽微であると評価できるもの」、「B 適法な著作物の利用を達成しようとする過程において合理的に必要と認められる当該著作物の利用であり、かつ、その利用が質的又は量的に社会通念上軽微であると評価できるもの」、「C 著作物の種類及び用途並びにその利用の目的及び態様に照らして、当該著作物の表現を知覚することを通じてこれを享受するための利用とは評価されない利用」のみを権利制限の一般規定の対象とするべきであるとしている。
 確かに法的安定性を高めるという点ではこれらの類型について権利制限を設けることは重要であるものの、これほど限定したのでは、これはもはや権利制限の「一般」規定の名に値しない。これでは、既存の個別制限規定がことごとく不当に狭く使いにくいものとされているという現状から来る問題に対処する上では極めて不十分な、狭く使いにくい「個別」規定が新たに追加されるに過ぎず、著作権をめぐる今の混迷状況が変わることはない。
 インターネットのように、ほぼ全国民が利用者兼権利者となり得、考えられる利用形態が発散し、個別の規定では公正利用の類型を拾い切れなくなるところでは、フェアユースのような一般規定は保護と利用のバランスを取る上で重要な意義を持つものであり、著作物の公正利用には上記以外の変形利用もビジネス利用も考えられ、このような利用も含めて著作物の公正利用を促すことが、今後の日本の文化と経済の発展にとって真に重要であえることを考えれば、形式的利用、付随的利用あるいは著作物の知覚を目的とするのでない利用に限るといった形で不当にその範囲を狭めるべきでは無く、第2章【4頁~6頁】に対する意見、第4章 1(4)・(5)・(6)【20頁~24頁】に対する意見でも書いたように、障害者福祉、教育、研究、資料保存やパロディ等のための利用、個人の情報発信に伴う利用、ネットワークサービスに関連する利用、企業内における著作物の利用等も含め検討を行うべきである。
 特に、現実問題としてこれらの全ての類型について個別の権利制限規定による対処は不可能と私は考えており、個別の権利制限規定による対処が不可能な全ての公正利用の類型が含まれるよう、その範囲・要件はアメリカ等と比べて遜色の無いものとして、権利制限の一般規定を可能な限り早期に導入することを私は求める。

(4)「第4章2 権利制限の一般規定を条文化する場合の検討課題について」(第25ページから第30ページ)
◯該当項目および頁数:
 第4章2【25頁~30頁】

◯意見:
 この項目中で刑事罰との関係について触れられているが、現状の過剰な刑事罰リスクからも、フェアユースは必要なものと私は考える。現在親告罪であることが多少セーフハーバーになっているとはいえ、アニメ画像一枚の利用で別件逮捕されたり、セーフハーバーなしの著作権侵害幇助罪でサーバー管理者が逮捕されたりすることは、著作権法の主旨から考えて本来あってはならないことである。著作権法の本来の主旨を超えた過剰リスクによって、本来公正として認められるべき事業・利用まで萎縮しているという事態を本当に深刻に受け止め、一刻も早い改善を図ってもらいたい。
 ガイドラインについても触れられているが、一般規定の意義に照らし、政令、ガイドライン等で不必要に細かな要件・解釈を作らないようにすると最終報告書において明記するべきである。
 権利制限の一般規定の導入によって、私的複製の範囲が縮小されることはあってはならないことである。
 また、昨年の6月12日にダウンロード違法化条項を含む改正著作権法が成立し、今年の1月1日に施行されたが、一人しか行為に絡まないダウンロードにおいて、「事実を知りながら」なる要件は、エスパーでもない限り証明も反証もできない無意味かつ危険な要件であり、技術的・外形的に違法性の区別がつかない以上、このようなダウンロード違法化は法規範としての力すら持ち得ない。このような法改正によって進むのはダウンロード以外も含め著作権法全体に対するモラルハザードのみであり、これを逆にねじ曲げてエンフォースしようとすれば、著作権検閲という日本国として最低最悪の手段に突き進む恐れしかない。総務省の「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」において、中国政府の検閲ソフト「グリーン・ダム」導入計画に等しい、日本レコード協会による携帯電話における著作権検閲の提案が取り上げられるなど、既に弊害は出始めている。そもそも、ダウンロード違法化の懸念として、このような著作権検閲に対する懸念は、文化庁へのパブコメ(文化庁HPhttp://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/houkoku.htmlの意見募集の結果参照。ダウンロード違法化問題において、この8千件以上のパブコメの7割方で示された国民の反対・懸念は完全に無視された。このような非道極まる民意無視は到底許されるものではない)や知財本部へのパブコメ(知財本部のHPhttp://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keikaku2009.htmlの個人からの意見参照)を見ても分かる通り、法改正前から指摘されていたところであり、このような著作権検閲にしか流れようの無いダウンロード違法化は始めからなされるべきではなかったものである。権利制限の一般規定の導入に合わせ、ネット利用における個人の安心と安全を完全にないがしろにするものである、百害あって一利ないダウンロード違法化を規定する著作権法第30条第1項第3号を削除する法改正を即刻行うことを私は求める。

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2010年6月 8日 (火)

第230回:知財計画2010の文章の確認

 先月の5月21日に知財本部で決定され、そのHP上で知財計画2010(pdf)が公開されている(5月21日の本部会合の議事次第議事録も参照)。政権交代も関係なく、今年も相変わらず浮ついたキーワードや数字が並び、要領を得ない検討項目百科事典になっている。やはり国家戦略も何もあったものでは無く、各省庁の思惑を反映しているに過ぎない検討項目百科辞典を作ることしかできない知財本部の存在意義などもはや無いと私は思っているが、それでも政府内での検討の様子を知る上では便利な資料の1つではあるので、今回は、2010年版の知財計画についてその内容の確認をしておきたいと思う。

 この知財計画2010(pdf)は最初の重点施策の部分と後の具体的な取組の部分で項目の順序や記載が微妙に違っていたりするので分かりにくいのだが、ここでは後の具体的な取組のところから主に法改正・各種規制に関係する項目を順に拾って行く。

 まず、第10ページ以降の「戦略2 コンテンツ強化を核とした成長戦略の推進」の「1.コンテンツを核として海外から利益が入る仕組みを構築する」で第11ページから具体的な取組の項目が並んでいるが、その中に、

(4)外交強化により、アジア市場を拡大する。
8 諸外国におけるコンテンツ規制の緩和(中期)

 地上波における日本ドラマの禁止や外国製ゲーム機販売規制・ゲーム流通規制や映像の外国枠の数量規制といった、諸外国におけるコンテンツ規制の緩和を強く働き掛け、実現する。
(外務省、総務省、文部科学省、経済産業省)

という項目がある。前にも書いたと思うが、外国に日本のコンテンツに対する規制の緩和を働きかけることも確かに重要だろうが、それ以上に、東京都青少年健全育成条例改正問題に端的に表れているような、国内における児童ポルノを理由とした情報・表現規制の圧力を排除する方がより重要だろう。(ただし、今回の知財計画も表現規制の点でロクでもない話が入らなかっただけマシと言えばマシである。)

 次に第13ページからの「2.海外からも優秀な人材が集まる魅力的な『本場』を形成する」で、

(3)クリエーターの裾野を拡大するとともにユーザーによる創造活動を促進する。
19 二次創作の権利処理ルールの明確化
 二次創作(パロディ含む)やネット上の共同創作の権利処理ルールを明確化する。
(文部科学省、経済産業省、総務省)

20 ネット上のコンテンツの部分的引用やネット放送のルール形成(短期)
 インターネット上におけるコンテンツの部分的引用やネット上の放送における利用を始めとして、今後のビジネス展開の円滑化が図られるよう、国際的動向も踏まえながら民間における関係者間のルール形成が促進されるよう支援する。
(文部科学省)

という項目が並んでいる。パロディの話にしても、ネットにおける引用の話にしてもその整理の重要性自体は否定しないが、どんな話でも役所がしゃしゃり出てきた途端に斜め上の方向に話がねじれて行くのが最近の典型的なパターンなので、これらの検討についても注意しておくに越したことはないだろう。

 第17ページからの「3.世界をリードするコンテンツのデジタル化・ネットワーク化を促進する」で、

(1)コンテンツのための新たなメディアを創出する。
24 「コンテンツ特区」の創設(短期)

 「コンテンツ特区」を設け、特定区域において新しい技術やサービスを試行できる環境を整備し、先駆的なコンテンツの創造、国際的なコンテンツ製作の誘致を促進する国際的な場を創出する。
(経済産業省、総務省、文部科学省)

25 新たなメディア創出のためのインフラ整備(短期・中期)
 モバイル放送、デジタルサイネージに関する実証実験や規格策定への支援、完全ブロードバンド化、ホワイトスペースの活用促進、IPTVの普及支援・クラウドコンピューティングの環境整備を通じ、新たなメディアのためのインフラを整備する。
(総務省)

26 コンテンツ配信・放送に関する規制緩和(短期)
 デジタル化に対応した通信・放送の総合的な法体系を速やかに整備するとともに、ホワイトスペースの活用を始めとした電波の有効利用のための方策を2010年度中に策定する。
(総務省)

(2)コンテンツの電子配信を進める。
27 書籍の電子配信の促進(短期・中期)

 書籍の電子配信を促進するに当たって、知の拡大再生産の確保に留意しつつ、非商業分野において国立国会図書館によるデジタル・アーカイブ化の促進や電子納本に向けた環境整備を図るとともに、商業分野において民間における標準規格の策定、権利処理ルールやビジネスモデル形成の取組を支援する。
(総務省、文部科学省、経済産業省)

(4)電子配信ビジネスの前提となる著作権侵害コンテンツを大幅に減らす。
34 ACTA交渉の妥結及び妥結後の加盟国拡大(短期・中期)

 2010年中に模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)の交渉を妥結するとともに、締結後、主要国・地域への加盟国拡大や二国間協定を通じ、世界大に保護の輪を広げる。
(外務省、総務省、法務省、財務省、文部科学省、経済産業省)

36 アクセスコントロール回避規制の強化(短期)
 製品開発や研究開発の萎縮を招かないよう適切な除外規定を整備しつつ、著作物を保護するアクセスコントロールの一定の回避行為に関する規制を導入するとともに、アクセスコントロール回避機器について、対象行為の拡大(製造及び回避サービスの提供)、対象機器の拡大(「のみ」要件の緩和)、刑事罰化及びこれらを踏まえた水際規制の導入によって規制を強化する。このため、法技術的観点を踏まえた具体的な制度改革案を2010年度中にまとめる。
(文部科学省、経済産業省、財務省)

37 プロバイダによる侵害対策措置の促進(短期・中期)
 プロバイダと権利者が協働し、インターネット上の侵害コンテンツに対する新たな対策措置(例えば、警告メールの転送や技術的手段を用いた検知)を図る実効的な仕組みを2010年度中に構築する。併せて、現行のプロバイダ責任制限法の検証を図った上で、実効性を担保するための制度改正の必要性について検討し、2010年度中に結論を得る。さらに、それらの取組の進捗状況を踏まえて、必要な措置を講じる。
(総務省)

(5)デジタル化・ネットワーク化時代に対応した著作権制度を整備する。
42 著作権制度上の課題の総合的な検討(中期)

 デジタル化・ネットワーク化に対応した著作権制度上の課題(保護期間、補償金制度の在り方を含む)について総合的な検討を行い、検討の結果、措置を講じることが可能なものから順次実施しつつ、2012年までに結論を得る。
(文部科学省)

43 著作権制度上の課題の総合的な検討(短期)
 42の著作権制度の総合的な検討のうち、権利制限の一般規定について、これまでの検討結果を踏まえ、2010年度中に法制度整備のための具体的な案をまとめ、導入のために必要な措置を早急に講ずる。
(文部科学省)

44 著作権制度上の課題の総合的な検討(短期)
 42の著作権制度の総合的な検討のうち、著作権法上のいわゆる「間接侵害」に関し、2010年度中に差止請求の範囲の明確化を含め、その要件化に関する一定の結論を得て、必要な措置を早急に講ずる。
(文部科学省)

といった項目が並んでいる。これも前に書いたことだが、特区などと言う前に、本当に全国区で自由な創作の環境を整える方が先だろうし、放送通信関係や国会図書館におけるデジタル・アーカイブ化の話も気をつけておいた方が良いとは思うが、ここで最も注意するべきは、海賊版対策条約(ACTA)、アクセスコントロール回避規制の強化とプロバイダーによる著作権侵害対策措置の促進の項目である。海賊版対策条約(ACTA)について、国際的には反対の声も高まりつつあるのを無視し、国内における詳細な検討もなおざりにして、妥結のための妥結が重要とばかりに2010年という妥結目標をあげ続け、アクセスコントロール回避規制についても、利用者やメーカーの反対の声を完全に無視して一方的に規制強化を打ち出し、プロバイダーによる著作権侵害対策についても、ストライクポリシーの明記こそされなかったものの、権利者団体が引き続きネット切断型のストライクポリシーを求めて来ることが考えられ、これらの検討は今後も十分に注視して行く必要がある。(著作権侵害対策としては、同じところにあげられている、消費者の利便性に即した正規サービスの展開の促進の方が遥かに有効かつ重要だろう。ただし、最後に載せられている工程表によると、これも、アニメ・コミックについて全世界をターゲットとしたネット配信ポータルサイトの支援や映像分野の権利処理一元化の推進といまいち中身がしょぼい上、今までの経緯から考えてもこのレベルですら中途半端に尻すぼみで終わるのではないかと私は思っているが。)

 また、著作権制度に関する記載でも、保護期間延長や私的録音録画補償金制度についての明記は残った。既に文化庁と権利者団体を除いて延長しないという結論の出そろっている著作権の保護期間延長問題や、既に当事者間で裁判にまでなっている私的録音録画補償金問題について、これ以上何を検討するつもりか知らないが、やはりここでも利用者の視点は完全になおざりにされている。一般フェアユース条項についても、具体的な規定ぶりに関する踏み込みは無く、細部は全て文化庁に丸投げという有様であり、やはり文化庁で進んでいる間接侵害規定の検討と合わせ注意が必要である。

 一般ユーザーにあまり関係の無い特許の話などはここでは省略するが、他にも多くの項目が載っており、例によって読みにくい役所の資料ではあるが、政府内での知財問題に関心のある方には是非一読をお勧めする。

 最後に一緒に紹介しておくと、東京都青少年健全育成条例改正問題でも、都議会の第2定例会(予定表質問順序)で、継続審議になった条例改正案について、今日から代表質問が始まっている。民主党の各都議、くりした善行都議のtwitter、野上ゆきえ都議のtwitter、松下玲子都議のtwitter、あさの克彦都議のtwitterなどからもある程度動向がつかめるが、自公がやはり言葉の言い換えで何の問題の解決にもなっていないどころか悪化の恐れもある修正案を出そうとしており、賛成署名と合わせごり押しを狙っているという状況にあり、この点で反対をして下さっている民主党、生活ネット・みらい、共産党の各都議には心から感謝したいと思うが、この問題も全く気が抜ける状況にない。やはりこの問題では大変な尽力をされている藤本由香里明治大学准教授がそのtwitterで書かれているように、今週が審議の山であり、都議会の動向からも目は離せない。(藤本由香里准教授と山口貴士弁護士が中心となって集めている反対署名(山口貴士弁護士のブログ記事参照)も、特に期限が定められているということはまだないので、この問題について懸念を抱かれている方でまだ出していないという方がいれば、是非提出をご検討頂ければと思う。)

 次回は、文化庁のフェアユースパブコメのエントリになるのではないかと思っている。

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2010年6月 6日 (日)

第229回:内閣府・ 児童ポルノ排除総合対策案に対する提出パブコメ

 前回取り上げた内閣府の児童ポルノ排除総合対策案(pdf)に対してパブコメを書いて提出した。いつも書いていることと違いはないが、念のため、ここに載せておく。このパブコメは非常に重要なものと私も思っており、普段情報規制問題に疑問や懸念を抱いている方でまだ意見を出していない方がいれば、明日6月7日正午までと残り時間は少ないが、今からでも是非提出を検討頂ければと思う(パブコメについては、内閣府の該当ページ参照。かなり長くなったので私は意見を分割して提出した)。

(なお、internet watchの記事にもなっているが、児童ポルノサイトブロッキングについては、インターネットプロバイダー協会も片寄った報道姿勢に対して懸念表明(pdf)を行い、この対策案に対する意見書(pdf)も提出するなど、業界もかなり神経を尖らせていると知れる。個人的には業界の意見として多少踏み込みが浅いようには思うが、これらの意見書も参考になると思うので、ここにリンクを張っておく。)

 次回は、このパブコメのために少し後回しにした今年の知財計画の話を取り上げたいと思っている。

(以下、提出パブコメ)

(1)「1① 協議会の設置」(第1ページ)について
 ここで書かれている協議会について、児童ポルノ対策が国民の基本的な権利である表現の自由や通信の秘密等にも関わる非常に重大な問題であることから、表現の自由に関する問題に詳しい情報法・憲法の専門家、児童ポルノ法の実務に携わりその本当の問題点を熟知している法律家、規制強化に慎重あるいは反対の意見を有する弁護士等も多く含む形で構成し、児童ポルノ規制問題について、様々な意見があることを広めるとともに多様な意見の取り入れを図るとここに明記するべきである。

(2)「1②  国民運動の効果的な推進」(第1ページ)について
 ここで書かれているシンポジウムについて、上で書いたことと同じく、児童ポルノ対策が国民の基本的な権利である表現の自由や通信の秘密等にも関わる非常に重大な問題であることから、表現の自由に関する問題に詳しい情報法・憲法の専門家、児童ポルノ法の実務に携わりその本当の問題点を熟知している法律家、規制強化に慎重あるいは反対の意見を有する弁護士等もシンポジウムに呼び、児童ポルノ規制問題について、様々な意見があることを広めるとともに多様な意見の取り入れを図るとここに明記するべきである。なお、キャッチコピー、シンボルマーク等についてもそのニーズからまず検討を行い、必要が無ければそもそも公募しないとされるべきであり、特に、このような事業が、根拠無く一般的かつ網羅的な表現・情報弾圧を唱える非人道的な自称良識派団体や天下り団体に丸投げされるようなことがないようにするべきである。

(3)「1⑥ 『女性に対する暴力をなくす運動』における取組」(第1ページ)について
 児童問題と女性問題を混同するべきではなく、この項目は削除するべきである。

(4)「1⑧ 国際的取組への参画」(第2ページ)」について
 この項目において、「児童の性的搾取に反対する世界会議」の宣言について触れられているが、児童ポルノの閲覧の犯罪化と創作物の規制まで求める「子どもと青少年の性的搾取に反対する世界会議」の根拠のない狂った宣言を国際動向として一方的に取り上げ、児童ポルノ規制の強化を正当化することなどあってはならない。
 特に国際動向については(12)「6② 諸外国の児童ポルノ対策の調査」についてに、児童ポルノを理由とした単純所持・取得規制、創作物規制といった非人道的な規制の問題については(14)児童ポルノの単純所持・取得規制等についてに書くが、児童ポルノを理由とした非道な人権侵害を防ぐため、この項目において、リオデジャネイロ宣言に関する記載に代え、「児童ポルノを対象とするものにせよ、いかなる種類のものであれ、情報の単純所持・取得規制・ブロッキングは極めて危険な規制であるとの認識を深め、このような規制を絶対に行わないことと閣議決定し、児童ポルノの単純所持規制・創作物規制といった非人道的な規制を導入している諸国は即刻このような規制を廃止するべきと、そもそも最も根本的なプライバシーに属し、何ら実害を生み得ない個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ること自体、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の国際的かつ一般的に認められている基本的な権利からあってはならないことであると、日本政府から国際的な場において各国に積極的に働きかける。」との記載を追加してもらいたい。

(5)「2(1)① 青少年インターネット環境整備法に基づく総合的な被害防止対策の推進」(第2ページ)について
 フィルタリングに関する規制については、フィルタリングの存在を知り、かつ、フィルタリングの導入が必要だと思っていて、なお未成年にフィルタリングをかけられないとする親に対して、その理由を聞くか、あるいはフィルタリングをかけている親に対して、そのフィルタリングの問題を聞くかして、きちんと本当の問題点を示してから検討するべきである。
 また、この項目において、青少年ネット規制法について言及されているが、そもそも、青少年ネット規制法は、あらゆる者から反対されながら、有害無益なプライドと利権を優先する一部の議員と官庁の思惑のみで成立したものであり、速やかに廃止が検討されるべきものである。
 なお、出会い系サイト規制法の改正も、警察庁が、どんなコミュニケーションサイトでも人は出会えるという誰にでも分かることを無視し、届け出制の対象としては事実上定義不能の「出会い系サイト事業」を定義可能と偽り、改正法案の閣議決定を行い、法案を国会に提出したものであり、他の重要法案と審議が重なる中、国会においてもその本質的な問題が見過ごされて可決され、成立したものである。憲法上の罪刑法定主義や検閲の禁止にそもそも違反している、今回の出会い系サイト規制法の改正についても、今後、速やかに元に戻すことが検討されるべきである。

(6)「2(1)② 青少年保護に向けたメディアリテラシーの向上及び新たな取組に対する支援」(第2ページ)について
 総務省に対するパブコメでも書いたが、メッセージ交換サービスにおけるメールの内容確認を送信者に対しデフォルトオンで認める余地があるとすることは、実質、送信者が受信者しか知り得ないだろうと思って送る情報の内容について、知らない内に事業者に検閲されているという状態をもたらす危険性が極めて高い。受信情報のフィルタリングに関する要件を一方的に拡大解釈し、送信者に対するデフォルトオンのメールの内容確認の余地を認めることは、実質的にメール・通信の検閲の余地を認めるに等しく、憲法にも規定されている通信の秘密をないがしろにすることにつながりかねない極めて危険なことであり、この項目から、実質的な検閲につながりかねないメッセージ交換サービス監視に関する記載を削除するべきである。

(7)「2(1)④ フィルタリングの普及促進等のための施策」(第3ページ)について
 上の(5)でも書いた通り、フィルタリングに関する規制については、フィルタリングの存在を知り、かつ、フィルタリングの導入が必要だと思っていて、なお未成年にフィルタリングをかけられないとする親に対して、その理由を聞くか、あるいはフィルタリングをかけている親に対して、そのフィルタリングの問題を聞くかして、きちんと本当の問題点を示してから検討するべきである。

(8)「3① 違法情報の排除に向けた取組の推進」(第4ページ)について
 この項目でインターネット・ホットラインセンターについて言及されているが、サイト事業者が自主的に行うならまだしも、何の権限も有しないインターネット・ホットラインセンターなどの民間団体からの強圧的な指摘により、書き込みなどの削除が行われることなど本来あってはならないことである。このようなセンターは単なる一民間団体で、しかもこの団体に直接害が及んでいる訳でもないため、削除を要請できる訳がない。勝手に有害と思われる情報を収集して、直接削除要請などを行う民間団体があるということ自体おかしいと考えるべきであり、このような有害無益な半官検閲センターは即刻廃止が検討されて良い。このような無駄な半官検閲センターに国民の血税を流すことは到底許されないのであって、その分できちんとした取り締まりと削除要請ができる人員を、法律によって明確に制約を受ける警察に確保するべきであり、この項目においては、インターネット・ホットラインセンターの廃止を検討すると明記するべきである。

(9)「3④ 児童ポルノ掲載アドレスリスト作成管理団体との連携等を通じた児童ポルノ流通防止対策の推進」(第4ページ)について
 児童ポルノ掲載アドレスリスト作成管理団体のガイドライン案に対するパブコメ等でも書いたことだが、警察などが提供するサイト情報に基づき、統計情報のみしか公表しない不透明なリスト作成管理団体等を介し、児童ポルノアドレスリストの作成が行われ、そのリストに基づいて、インターネット・サービス・プロバイダー、検索サービス事業者あるいはフィルタリング事業者がブロッキング等を行うことは、実質的な検閲に他ならず、決して行われてはならないことである。いくら中間に団体を介そうと、一般に公表されるのは統計情報に過ぎす、児童ポルノであるか否かの判断情報も含め、アドレスリストに関する具体的な情報は、全て閉じる形で秘密裏に保持されることになるのであり、インターネット利用者から見てそのリストの妥当性をチェックすることは不可能であり、このようなアドレスリストの作成・管理において、透明性・公平性・中立性を確保することは本質的に完全に不可能である。このことは、このようなリストに基づくブロッキング等が、自主的な民間の取組という名目でいくら取り繕おうとも、どうして憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や通信の秘密、検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないかということの根本的な理由であり、小手先の運用や方式の変更などでどうにかなる問題では断じて無い。現時点でこの問題の克服は完全に不可能であり、アドレスリスト作成管理団体のガイドライン、公募等を全て白紙に戻し、このような非人道的なブロッキング導入の検討を行っている児童ポルノ流通防止協議会を即刻解散するとここでは明記するべきである。

(10)「3⑤ ブロッキングの導入に向けた諸対策の推進」(第4ページ)について
 上の(9)「3 ④ 児童ポルノ掲載アドレスリスト作成管理団体との連携等を通じた児童ポルノ流通防止対策の推進」についてで書いた通り、自主的な民間の取組という名目でいくら取り繕おうとも、現時点で、透明性・公平性・中立性を確保することが本質的に完全に不可能であり、権力側によるその濫用の防止が不可能な、実質的な検閲たらざるを得ないリストに基づくブロッキングについて、この項目において完全に導入前提の記載がされているのは一利用者として全く受け入れることができない。この項目は削除するか、さもなくば、ブロッキングについて、インターネット利用者の通信の秘密や表現の自由に不当な影響を及ぼさない運用は不可能であるとの認識を政府として深め、ブロッキング導入に関する政府レベルでの検討を止め、表現の自由や通信の秘密といった国民の基本的な権利を最大限尊重し、他のより地道な施策のみを行うとの記載に全面的に改めるべきである。なお、ブロッキングに関する広報・啓発を行う必要があるとすれば、現時点では、権力側によるその濫用の防止が不可能であり、表現の自由や通信の秘密といった憲法に規定された国民の基本的な権利に照らして問題のない運用を行うことが不可能であるという問題の周知にのみ努めるべきである。

(11)「5② 悪質な関連事業者に対する責任追及の強化」(第8ページ)について
 この項目において、サイト管理者、サーバー管理者といった直接的な提供者ではない関連事業者に対する刑事責任等について書かれているが、アフィリエイト広告代理店社長や児童ポルノサイトへのリンク行為について児童ポルノ規制法違反幇助罪が問われるケースが既に発生しており、警察の恣意的な運用によって、現行法においてすら児童ポルノ規制法違反幇助のリスクが途方もなく拡大し、甚大な萎縮効果・有害無益な社会的大混乱が生じかねないという非常に危険な状態にあることを考えるべきであり、今現在民事的な責任の制限しか規定していないプロバイダー責任制限法に関し、刑事罰リスクも含めたプロバイダーの明確なセーフハーバーについて検討するとここに明記するべきである。

(12)「6② 諸外国の児童ポルノ対策の調査」(第9ページ)について
 ここでG8について言及されているが、児童ポルノはG8のみの問題ではなく、「G8を中心とした」という記載を削除するべきである。
 特に、国際動向については、欧米においても、情報の単純所持規制やサイトブロッキングの危険性に対する認識がネットを中心に高まって来ていることなども見逃されてはならない。例えば、ドイツのバンド「Scorpions」が32年前にリリースしたアルバムのカバーが、アメリカでは児童ポルノと見なされないにもかかわらず、イギリスでは該当するとしてブロッキングの対象となり、プロバイダーによっては全Wikipediaにアクセス出来ない状態が生じたなど、欧米では、行き過ぎた規制の恣意的な運用によって弊害が生じていることや、アメリカにおいても、去年の1月に連邦最高裁で児童オンライン保護法が違憲として完全に否定され、同じく去年の2月に連邦控訴裁でカリフォルニア州のゲーム規制法が違憲として否定されていること、去年のドイツ国会への児童ポルノサイトブロッキング反対電子請願(https://epetitionen.bundestag.de/index.php?action=petition;sa=details;petition=3860)に13万筆を超える数の署名が集まったこと、ドイツにおいても児童ポルノサイトブロッキング法は検閲法と批判され、既に憲法裁判が提起され(http://www.netzeitung.de/politik/deutschland/1393679.html参照)、去年与党に入ったドイツ自由民主党の働きかけで、法施行が見送られ、ドイツは政府としてブロッキング撤廃の方針を打ち出し、欧州レベルでのブロッキング導入にも反対していること(http://www.welt.de/die-welt/vermischtes/article6531961/Loeschung-von-Kinderpornografie-im-Netz.htmlhttp://www.zeit.de/newsticker/2010/3/29/iptc-bdt-20100328-736-24360866xml参照)なども注目されるべきである。また、スイスにおいて去年発表された調査でも、2002年に児童ポルノ所持で捕まった者の追跡調査を行っているが、実際に過去に性的虐待を行っていたのは1%、6年間の追跡調査で実際に性的虐待を行ったものも1%に過ぎず、児童ポルノ所持はそれだけでは、性的虐待のリスクファクターとはならないと結論づけており、児童ポルノの単純所持規制・ブロッキングの根拠は完全に否定されている(http://www.biomedcentral.com/1471-244X/9/43/abstract参照)。欧州連合において、インターネットへのアクセスを情報の自由に関する基本的な権利として位置づける動きがあることも見逃されるべきではない(http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=MEMO/09/491&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en参照)。民主主義の最重要の基礎である表現の自由に関わる問題において、一方的な見方で国際動向を決めつけることなどあってはならないことであり、このような国際動向もきちんと取り上げるべきである。

(13)児童ポルノ排除対策ワーキングチームと本意見募集について
 本対策案を作った児童ポルノ排除対策ワーキングチームは、ホームページなどを参照する限り、1回しか開かれておらず、議事録も不十分であり、有識者として呼ばれたと分かるのは、児童ポルノ規制について根拠無く一般的かつ網羅的な表現・情報弾圧を唱える非人道的な日本ユニセフ協会のアグネス・チャン氏1名のみである。その下のワーキンググループに至っては議事概要すら公開していない。今回の対策案に対するパブコメの期間も実質10日程度とあまりにも短く、到底国民の意見を聞く気があるとは思えない形で意見募集が行われている。このワーキングチームあるいはグループは議事録、議事の進め方、対策のとりまとめ方等あらゆる点で不透明であり、このような問題だらけのワーキングチームで表現の自由を含む国民の基本的権利に関わる重大な検討が進められることなど論外である。実際今回の意見募集の対象となっている本対策案にも、ブロッキングを中心として有害無益かつ危険な規制強化の項目が含まれており、このような検討しかなし得ない出来レースの密室政策談合ワーキングチーム・ワーキンググループは即刻解散するべきである。
 このワーキングチームは即刻解散するべきであるが、さらに今後児童ポルノ規制について何かしらの検討を行うのであれば、その検討会は下位グループまで含めて全て開催の度数日以内に速やかに議事録を公表する、一方的かつ身勝手に危険な規制強化を求める自称良識派団体代表だけで無く、表現の自由に関する問題に詳しい情報法・憲法の専門家、児童ポルノ法の実務に携わりその本当の問題点を熟知している法律家、規制強化に慎重あるいは反対の意見を有する弁護士等も呼ぶ、危険な規制強化の結論ありきで報告書をまとめる前にきちんとパブコメを少なくとも1月程度の募集期間を設けて取るなど、児童ポルノ規制の本当の問題点を把握した上で検討が進められるようにするべきである。

(14)児童ポルノの単純所持・取得規制等について
 閲覧とダウンロードと取得と所持の区別がつかないインターネットにおいては例え児童ポルノにせよ情報の単純所持や取得の規制は有害無益かつ危険なもので、憲法及び条約に規定されている「知る権利」を不当に害する。意図に関する限定を加えたところで、エスパーでもない限りこのような積極性を証明することも反証することもできないため、このような規制の危険性は回避不能であり、思想の自由や罪刑法定主義にも反する。インターネットで2回以上他人にダウンロードを行わせること等は技術的に極めて容易であり、取得の回数の限定も何ら危険性を減らすものではない。例えそれが児童ポルノであろうと情報の単純所持ではいかなる被害も発生し得えない。現行法で提供及び提供目的の所持まで規制されているのであり提供によって生じる被害と所持やダウンロード、取得、収集との混同は許され得ない。そもそも、最も根本的なプライバシーに属する個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ることは、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の基本的な権利からあってはならないことである。
 児童ポルノ法によろうが他の法律によろうが、アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現に対する児童の描写を理由とした規制の拡大は、現実の児童保護という目的を大きく逸脱する、異常規制に他ならない。アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現において、いくら過激な表現がなされていようと、それが現実の児童被害と関係があるとする客観的な証拠は何一つない。いまだかつて、この点について、単なる不快感に基づいた印象批評と一方的な印象操作調査以上のものを私は見たことはないし、虚構と現実の区別がつかないごく一部の自称良識派の単なる不快感など、言うまでもなく一般的かつ網羅的な表現規制の理由には全くならない。アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現が、今の一般的なモラルに基づいて猥褻だというのなら、猥褻物として取り締まるべき話であって、それ以上の話ではない。どんな法律に基づく権利であれ、権利の侵害は相対的にのみ定まるものであり、実際の被害者の存在しない創作物・表現に対する規制は何をもっても正当化され得ない。民主主義の最重要の基礎である表現の自由や言論の自由、思想の自由等々の最も基本的な精神的自由そのものを危うくすることは絶対に許されない。
 なお、実写と見紛うCGの規制については、確かに実在の児童が絡む事件の捜査の妨げになる可能性があるが、今の所捜査の妨げになっているとの事実はなく、その規制の検討も時期尚早である。

(15)その他報告書全体について
 最後に書いておくが、私が言いたいのは、民間の自主的な取り組みといった言葉で上辺を取り繕い、国民の情報の自由に関する基本的権利に対して重大な侵害を行ってでも利権を作ろうとすることは今後一切止めろということである。この点について私は誤解などしていないし、今後の検討の参考にするなどといった役人の遁辞などそれこそ全く求めていない。児童ポルノ規制法に関しては、既に、提供及び提供目的での所持が禁止されているのであるから、本当に必要とされることは今の法律の地道なエンフォースであって有害無益な規制強化の検討ではない。
 特に、児童ポルノ規制問題・有害サイト規制問題における自称良識派団体の主張は、常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。今後は、このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むべきである。同じく、憲法に規定されている検閲の禁止から、サイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むべきである。
 現行以上に規制を強化するべきとするに足る明確かつ具体的な根拠は何1つ示されておらず、児童ポルノ規制法に関して検討すべきことがあるとしたら、現行ですら過度に広汎であり、違憲のそしりを免れない児童ポルノの定義の厳密化、上で書いた通り、危険な規制強化を止める逆規制、幇助リスクを考慮した刑事罰リスクも含めたプロバイダーの明確なセーフハーバー、児童ポルノの単純所持規制・創作物規制といった非人道的な規制の排除の国際的な働きかけのみである。
 今後は、恣意的な運用しか招きようのない危険な規制強化の検討ではなく、情報に関する各種問題は情報モラル・リテラシー教育によって解決されるべきものという基本に立ち帰り、教育・啓発等に関する地道な施策のみに注力する検討が進められることを期待する。

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