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2010年3月27日 (土)

番外その24:日弁連の児童ポルノ規制法改正に関する意見書について

 今週も様々な動きがあったが、3月23日に日弁連が「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」の見直し(児童ポルノの単純所持の犯罪化)に関する意見書を公表している(日弁連のリリース意見書本文(pdf))。個人的にはネットとの関係における踏み込みの点で少し物足りないところもあるが、法律の専門家集団らしく、今後の法改正の議論をする上で非常に良い立脚点となる意見であり、様々なところで既に触れられているが、念のためここでも少し紹介しておきたいと思う。(個別の団体の意見の紹介なので、やはり番外とする。)

 その趣旨は、意見書(pdf)の最初に書いてある通り、

1 現行法における児童ポルノの定義を限定かつ明確化すべきである。
2 現行法の児童ポルノの定義を限定かつ明確化したうえで,児童ポルノの単純所持を禁止すべきである。ただし,犯罪化することには,反対する。

というものである。

 そして、「第1 はじめに」で去年から今までの法改正の議論の概況を紹介した上で、この意見書の「第2 児童ポルノの定義の限定かつ明確化の必要性」において、「定義の曖昧性・不明確性は,現行法上犯罪とされている犯罪類型においても問題となる。現行法は,処罰規定が漠然不明確ゆえに違憲無効の疑いを免れないことから,後述のような単純所持の犯罪化の問題とは切り離して,ただちに改正が必要である」とされ、さらに、民主党案(第162回参照)の定義についても、「『殊更に』『児童の性器等(注:性器,肛門又は乳首をいう。)が』『強調されている児童の姿態』も『児童性行為等姿態描写物』に含むとされているところ,『強調されている』というのがどういう状態を含むのか,必ずしも客観的に明確とは言えない。すなわち,例えば,乳首を花びらで隠した場合,それは,隠されており『露出』していないとして,児童性行為等姿態描写物に該らないということになるのか,逆に『強調されて』いるということになるのか,見る者によって相当に受け止め方は異なり得る。したがって,民主党案であっても,曖昧性は残っており,結局,捜査機関の恣意を十分に排除できないと言わざるを得ない」と批判しているのは非常に大きい。(赤字強調は私が付けたもの。以下同じ。)

 この意見書の児童ポルノの定義に対して、

3 したがって,児童ポルノの定義は,客観的で明確であり,範囲も限定的なものとしなければならない。
定義の明確化と限定の要点は,以下のとおりである。
① 児童ポルノを規制することにより守るべき法益は,被写体となる児童の人権ないし権利(身体的自由,精神的自由,性的自由,性的自己決定権,プライバシー権,名誉権,成長発達権等)であって,善良な風俗ではない。
 したがって,児童ポルノの定義は,この法益を守るために必要十分なものでなければならない。この観点からは,児童ポルノの定義に見る側の主観的要件を入れることは適当ではない。
② 芸術的価値があるものや学術研究目的・報道目的で収集した資料は,児童ポルノの定義から明示的に外すべきである。
③ 自分の子どもの乳幼児時代の裸体や水着を着ている姿態が児童ポルノに含まれると解釈される余地のない定義にすべきである。

という明確化・厳格化を求める部分についてほとんど付け加えることはない。

 次の「第3 単純所持の犯罪化には反対」において、

1 児童ポルノの単純所持を犯罪化することについては,反対である。
 その理由は,単純所持を犯罪化することによって得られる利益より,犯罪化に伴う弊害の方が大きく,単純所持の犯罪化の立法事実が欠けると考えられるからである。すなわち,憲法上の要請である比例原則からして,単純所持の犯罪化は,行き過ぎであると考える。

としていることももっともである。立法事実に欠ける理由として、現行の児童ポルノ規制法で、既に児童ポルノを特定又は少数者に提供する目的での保管(所持)、不特定多数者に提供する目的での保管(所持)まで処罰されていることから、単純所持罪がさらに処罰することになるのは、ファイル共有ソフトの利用やウィルスの感染によって,他のユーザーに児童ポルノデータが、本人の知らないところでインターネットに流出した場合といったかなり特殊な場合となるが、処罰すべきは、その画像の元となる写真を撮影した者であり、それを頒布した者であって,そうでなければ,児童ポルノの根絶には結びつかないことをあげているが、これも妥当なことだと思う。

 また、単純所持を犯罪化したからといって,児童ポルノの根絶に大きな効果をもたらすかというと,そのような効果が上がる可能性については何ら合理的な説明がなされていない。それにもかかわらず,これを犯罪化することによる弊害は後述のとおり,無視できないほど大きいものと言わざるを得ないとし、弊害として、単純所持を犯罪化することにより,単純所持罪が他の重大な犯罪の捜査に利用されるといういわゆる別件逮捕が行われる可能性が高まるなど,捜査権の濫用が懸念される、「わが国では捜査の可視化さえ実現しておらず,自白偏重主義も根強い中で,そのような別件逮捕勾留が行われて,虚偽の『自白』を強いられるという事態も否定し難いところである」、「捜査機関が,怪しそうだと目をつけた通行人に職務質問と所持品検査を行い,所持しているパソコンに保存されているデータ中に児童ポルノ画像が発見されれば,それが自分が知らない間に取得されたデータであったとしても(例えば,他の人がそのパソコンを利用して児童ポルノ画像をダウンロードしたとしても),ただちに現行犯逮捕されるという事態になりかねない」、「自分が知らない間に,第三者が自分のパソコンを使用して児童ポルノサイトを閲覧し,児童ポルノ画像のキャッシュ(一時的な記憶)がパソコンに残っていることを本人は全く知らないというような場合に,本人の意図しない所持だと証明できるかは極めて疑問である」と、捜査権の濫用の懸念をあげているが、最近の様々なひどい冤罪事件を見るにつけ、これももっともな懸念と言わざるを得ない。ここで、民主党案の有償・反復取得罪について、「『有償』『反復』の解釈いかんによっては,広範な処罰が可能となってしまい,曖昧さはぬぐいきれない」と、その問題点が指摘されていることも大きい

 ここまでは、ほとんど文句のつけようがないので(できれば民主党案の「姿態を取らせ」の要件を抜いた製造罪の問題についても触れて欲しかったと個人的には思うが(第162回参照))、「第4 単純所持の禁止を明記すること」で、その前とは著しい論理の矛盾を示しながら、罰則なしの児童ポルノの単純所持規制を求めていることは、本当に残念と言わざるを得ない。

 例えば、その理由として、「特にわが国の社会の中には,児童ポルノを所持すること自体は許されるという風潮が一部あることは否定できず,わが国がインターネット等を通じて児童ポルノの主要な発信国となっている背景には,このような児童ポルノの所持についての社会の風潮・認識が存在すると思われる」としているが、この主張には全く根拠がない。規制のためのみに規制強化を目論む印象操作プロパガンダ以外で、このような風潮があるだとか児童ポルノの主要な発信国になっているということは私は聞いたことがない

 また、「児童ポルノの所持に関しても,社会の認識を変えるために,法律の明文で,その違法性を宣言してこれを禁止することは,子どもの人権侵害行為を根絶する観点から必要なことであり,有益なことである」として、児童虐待防止法やDV防止法など実際の複数の人の間の行為にかかる規制法のみを例としてあげ、罰則なしの規制に効果があるとしているが、これは必ずしも情報と1人のみによる行為を対象とする場合には当てはまらない。このことは、著作権におけるダウンロード違法化問題を考えても分かることである(ダウンロード違法化についても真の評価のためにはまだ時間がかかるが、評価が固まるのは時間の問題だろう)。

 特に、ダウンロード違法化後、著作権団体(日本レコード協会)が、日本版著作権グリーン・ダム計画を推し進めようとしていること(第203回の知財本部提出パブコメ参照)や便乗詐欺が発生していること(「P2Pとかその辺のお話@はてな」の関連エントリ1エントリ2エントリ3参照)などを考えても、また、児童ポルノサイトブロッキングに関する最近の動きを考えても、このような情報の単純所持規制は、罰則のありなしにかかわらず、詐欺・脅迫のために利用されたり、一般的かつ網羅的なネット検閲のための理由として政府あるいは政府と癒着した団体によって濫用される懸念がある。意見書の最後で「児童ポルノの『取得』という外部的な行為と離れて,個人がいかなる情報を所持するかどうかは,個人の内心にも通じる私的領域に属するものである。そのような私的領域に対して違法の宣言をすることや公的権力の介入を認めることは,極めて慎重でなければならない」とまで書いているのに、詐欺・脅迫に用いられることやネット検閲の理由として濫用される懸念も含め、日弁連が罰則なしの単純所持規制についてきちんとした法的検討を加えず、これを根拠なく是としたことは非常に残念である。(情報の取得行為自体、他人が絡む行為ではなく、個人の私的領域に属し、また表現の自由に含まれる情報アクセス権とも関係するより深い考察を要する論点であると私は考えているが、この点はここではひとまずおく。)

 法改正の問題は常に単純ではない。合憲性と、立法事実の有無、規制の弊害はそれぞれ全てきちんと検討が加えられなければならない点である。第215回で書いたように罰則なしの情報の単純所持規制がただちに違憲であると言えるとは私も考えていないが、それと法改正を是とするに足る立法事実があるかどうかはまた別問題であり、さらに導入されるべきか否かは、規制のメリット・デメリットも考慮の上で決められなければならない。今のところ、罰則なしの児童ポルノの単純所持規制についてこれを是とするに足る立法事実は全くなく、詐欺・脅迫に用いられることや一般的かつ網羅的なネット検閲の理由として濫用される懸念も含めて考えるとかえってデメリットの方が大きく、罰則なしであったとしても児童ポルノの単純所持規制は導入されるべきでないと私は考えている

 罰則なしでギリギリとは言え単純所持規制について妥協を見せることは危険ではないかと思うが、それでも全体としてしっかりとした法的な見地から慎重姿勢を明確に示しているこの意見書は、今後の児童ポルノ規制法改正の議論においてきちんと尊重され、今後はここから、さらに罰則なしの単純所持規制の問題についての検討が深められることを期待したいものである。

 しかし、内閣府の男女共同参画会議の、前田雅英首都大学東京教授や後藤啓二ECPAT顧問弁護士といったお馴染みの面々が居並ぶ女性に対する暴力に関する専門調査会(委員名簿参照)が、「女性に対するあらゆる暴力の根絶」について(pdf)と称する3月18日付けのペーパーで、「インターネット上の児童ポルノ画像の流通・閲覧防止対策等、児童ポルノの根絶に向けた総合的な対策を検討・推進するとともに、併せて児童ポルノ法の見直し(単純所持罪の新設、写真・映像と同程度に写実的な漫画・コンピュータグラフィックスによるものの規制等)について検討する」、「あらゆる形態のメディアにおける女性に対する性・暴力表現が、重大な人権侵害であり、男女共同参画社会の形成を阻害する許されない行為であることを社会に認識させる」、「性・暴力表現が人々の心理・行動に与える影響についての調査方法を検討する」、「ブロッキングの開発と普及促進等インターネット上の児童ポルノ画像の流通・閲覧防止対策を推進する」、「メディア産業の性・暴力表現の規制に係る自主的取組の促進、DVDやビデオ、パソコンゲーム等バーチャルな分野における性・暴力表現の規制を含めた対策の在り方を検討する」とやはり何の根拠もなく一般的かつ網羅的なネット検閲・表現規制を唱えていることなどを考えても、規制のためのみに規制を推進している連中は、法律の専門家の意見すら無視しようとして来るだろうと容易く想定される。(いつも同じ片寄ったメンバーで審議会を構成し何の根拠もなく危険な規制強化を唱えれば唱えるほど、このようなやり方を繰り返せば繰り返すほど、行政・立法・司法に対する市民の信頼を、引いては法改正プロセス、法律自体に対する信頼を著しく損なうことになり、法の規範力はどんどん失われて行く。規制のためのみに規制を推進している連中は分かっていないのだろうが、これは本当に危険なことである。)

 また、internet watchの記事になっているが、警察の息のかかった半官検閲センターであるインターネット・ホットラインセンターを運営し、総務省と経産省が所管する財団法人のインターネット協会が事務局をやっている児童ポルノ流通防止協議会は、児童ポルノ掲載アドレスリスト作成管理団体運用ガイドライン案(実質ネット検閲ガイドライン案。第211回参照)を多少修正し、ブロッキングと通信の秘密の関係についてさらに議論が必要とする報告書をまとめたようである。マイクロソフト社の楠正憲氏がそのtwitterで教えて下さっている通り、総務省系の安心ネットづくり促進協議会でも、ブロッキングと通信の秘密の関係の検討が続けられているようであり、内閣府の児童ポルノ排除対策ワーキングチームでも検討が行われると考えられ、ネット検閲としかなりようのないブロッキングについても、先送りとされたものの、非常に危うい状態は続くだろう。(なお、検索エンジンも寡占状態のためグーグルとヤフーが談合するだけで甚大な影響が出るのであり、アドレスリストの検索結果への反映についても安易に実行されるべきではない。)

 児童ポルノ規制について多少なりとも合理的かつ論理的な議論がなされることを期待したいと常々思っているが、残念ながら、今後も厳しい状態が続くのは間違いない。この問題についても気を緩めることは全くできない。

 最後に一緒に触れておくと、今週、知財本部では、この3月23日に第5回コンテンツ強化専門調査会(議事次第参照)が、3月24日に第5回インターネット上の著作権侵害コンテンツ対策に関するワーキンググループ(議事次第参照)が、3月26日に第5回知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会(議事次第参照)が開催された。特に、インターネット上の著作権侵害コンテンツ対策に関するワーキンググループでは、立法事実も、関係者のコンセンサスも、国際動向も全て無視され、ほぼ役人(事務局)の片寄った作文で危険な規制強化のみがあがっている中間とりまとめ案(pdf)が了承されたようである。

 日本政府は相変わらず全く信用できないが、laquadrature.netの記事の通り、2010年1月18日バージョンの海賊版対策条約案(ACTA)の全文がリークされたので、次回は、まだ取り上げていない部分について翻訳紹介を行いたいと思っている。(主要国が透明性向上について揉めている間に海賊版対策条約案全文がリークされるなど、海賊版対策条約の議論自体完全に各国民をバカにした形で進んでいる状況を端的に示している。)

(2010年3月29日の追記:既に「チラシの裏(3周目)」や「表現規制について少しだけ考えてみる(仮)」で取り上げられているので、リンク先をご覧頂ければ十分と思うが、大阪府が、東京都青少年健全育成条例改正案(番外その22参照)のメチャクチャな定義で、青少年性的視覚描写物、青少年を性的対象として扱う図書類等の実態調査を行うと公表した(大阪府のリリース、添付資料1青少年を性的対象として扱う図書類の実態把握・分析について(pdf)、添付資料2「青少年健全育成条例」における性的表現の規制状況(pdf)3月25日の大阪府部長会議の概要参照)。今の都条例改正案の曖昧な定義でまともな調査ができる訳がないので、これも規制強化の結論ありきの出来レース調査になる可能性が高い。どこの地方の調査・検討であれ他にも必ず影響して来るので、大阪府の動きも要注意である。)

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2010年3月21日 (日)

番外その23:青少年健全育成条例改正案についての都の見解に対する個人的見解

 この3月18・19日に、東京都議会の総務委員会で番外その22で取り上げた青少年条例(正式名称は、「東京都青少年の健全な育成に関する条例」)改正案の審議・採決が行われ、継続審議とされ、この改正案は6月の定例議会に先送りされる見通しとなった(時事通信の記事ITmediaの記事参照)。

 勝ち負けの問題ではないが、前からこの問題を追っていた身としては可決も覚悟していただけに、今回の都条例が継続審議になった意味は大きい。最近の反対の広がりには驚くばかりであり、多過ぎて恐らく全部追い切れていないところもあると思っているが、反対意見の表明をして下さった団体としては、私の知る限り、コンテンツ文化研究会全国同人誌即売会連絡会表明意見)、モバイルコンテンツ審査・運用監視機構表明意見)、東京地婦連青少年問題協議会答申案への意見)、インターネットユーザー協会意見書)、出版労連要請書(doc))、 ネットビジネスイノベーション研究コンソーシアム表明意見(pdf))、図書館協会要請書)、書協雑協表明意見(pdf))、出倫協(書協・雑協・出版取次協会・書店商業組合連合会。表明意見(pdf))、日本アニメーター・演出協会表明意見(pdf))、流対協公表声明)、日本ペンクラブ(公表声明)がある。反対意見の表明をして下さった大学としては、東京工芸大学マンガ学科意見書)と京都精華大学マンガ学部・マンガ研究センター(意見書)がある。反対意見の表明をして下さった企業としては、楽天見解)と竹書房がある。また、作家・漫画家ということでは、評論家の藤本由香里明治大学准教授や翻訳家の兼光ダニエル真氏がそれぞれ陳情をとりまとめ(the-journal.jpの記事も参照)、コミック10社会も「マンガ作家有志およびコミック10社会構成出版社一同」の名義で作家の意見をとりまとめ(コミックナタリーの記事参照)、太田出版も900名以上の署名を取りまとめている(太田出版ニュース参照)。他にも、携帯電話関連では、都議会民主党の総務部会に出席し、意見を述べた藤川大祐千葉大准教授も懸念を表明している(そのブログ記事1記事2参照)。他ブログ等で意見・運動の表明をされている方々は数え切れないくらいである。様々な視点からこれだけ団体・企業・大学・人が動いて下さったのは本当に心から嬉しいと思う。

 これだけの団体・企業・大学・人が反対を表明しなければならないという時点で、相当の非常事態なのだが、この条例改正案は継続審議とされただけなので、6月には確実にまた審議されることになる。さすがにこれだけの反対が集まったからには、都議会で、これらの意見を出した団体・企業・大学・人、また都民の意見も広く聴取した上で公正透明かつ合理的な議論がなされることを期待したいが、これまでの経緯を見ていると、また条例の改正案を実質的に作った都庁の役人(今まで名前が出て来ているのは倉田潤青少年・治安対策本部長と櫻井美香青少年課長(2人とも警察庁からの出向者)、古宮伸浩副参事(恐らく警視庁からの出向者。青少年・治安対策本部のpdf版の都の見解に名前が載っていたのだが、何故かこのpdf版は今消されてしまっている))と特にこれとつるんでいる議員(主として自公議員)が改正の根拠など全て無視して危険な規制強化を押し進めようとして来ることが容易く想定されるので、残念ながら、今後も非常に辛い状態が続くだろうと思っている。個人的にもできることはしたいと思っているが、この問題に関心を寄せている方は、継続審議の採決に気を緩めることなく、片時も都庁・都議会周りから目を離さないことを強く勧める。

 反対が大きく広がる中で、さすがに泡を食ったのか、極めて異例なことに東京都が3月17日付けで様々な指摘に関する見解を出した(東京都のリリース参照)。この見解はほとんど条文に基づいておらず、法律論としてあまりにお粗末でお話にならないレベルのものである。反対の論客に山口貴士弁護士(そのブログ参照)など弁護士の先生も立っており、今回反対意見を表明した多くの人々がこのような拙劣なペーパーに誤魔化されることはないだろうし、継続審議となったことで条文も変わってくると、今の時点で突っ込むことにあまり大きな意味はないと思うので、番外とするが、それでも、これが今のところ規制を進めようとする者が書いた最も公式に近い文書であり、先日の都議会での議論も完全なすれ違いに終わり(himagine_no9氏やmishiki氏によるtwitter実況、「ZEO PROJECT」ブログ記事「草冠に西」ブログ記事他様々な方が書いて下さっている都議会総務委員会傍聴記参照)、条例改正の根拠としてこの文書に書かれている以上のことは出て来ていないようであり、今後反対運動を進めていく上で誰かの参考になるかも知れないので、ここで、念のため、個人的な見解として、この都の見解への突っ込みを入れて行きたいと思う。

 児童ポルノ/第7条・8条・18条の6の2関係では、国においても議論中の児童ポルノの「単純所持」について、都が条例で規制するのは拙速であり、違憲の可能性もあるとの指摘について、都の役人は、

児童ポルノ法は処罰を目的とするものであり、厳密な定義やえん罪防止のための十分な配慮が必要であることは当然。
しかし、条例の規定は、処罰を目的とするものではなく、児童ポルノの被害に遭った青少年の苦しみを考慮し、児童ポルノの根絶に向けて、「児童ポルノは悪であり、許さない」という都民の意識を醸成するとともに、インターネット上等で現に流通している児童ポルノの拡散防止と流通削減のための取組につなげるため、正当な理由がある場合を除いて所持しない、意図しないまま所持していたことに気が付いた場合はこれを削除する、インターネット上で児童ポルノを発見した場合にはプロバイダへの削除依頼を行うなどの自主的取組を都民に心がけていただくためのもの。
このため、「児童ポルノを所持してはならない」との禁止規定の形式をとらず、「児童ポルノをみだりに所持してはならない責務を有する」と規定したもの。
自主的な取組を行わないことについて、罰則等一切の規制は存在しない。
なお、明らかに法が禁止している規制を条例が行うことは違憲であるが、児童ポルノ法が児童ポルノの根絶に向けた自主的な取組及びその促進を明らかに禁止しているものとは考えられない。

と答えているが、そもそも何故青少年の健全育成を目的とする青少年健全保護条例で何故児童ポルノを規制するのかという法目的に照らしたときの根本的疑問に何ら答えていない。さらに、このような規制の影響は、罰則のあるなしにかかわらず、特にコンプライアンスを重視するだろう図書館・企業・個人・団体に確実に及ぶのである。国会審議においてすら児童ポルノの定義に混乱が見られる中で、罰則なしであったとしても、このような単純所持規制の導入は児童ポルノを巡る社会的混乱にさらに拍車をかけることは間違いない。自主的な取組と称して、曖昧な形で焚書の呼びかけがなされる恐れすら無しとしない。罰則さえ無ければ何をどう規制しても良いとするかの如き暴論に取るべきところは何一つ無い。条例における罰則なしの児童ポルノの単純所持規制が表現の自由を規定する憲法第21条に照らして違憲と言えるかどうかは微妙だが、これは法律の範囲内でのみ条例を制定することができるとした憲法第94条には明らかに違反している

 また、不健全図書指定の現行制度として、岐阜県条例の合憲判断最高裁判決のことをあげているが、これも姑息なミスリードである。この最高裁判決は自販機における販売の規制について、つまりゾーニング規制について合憲と判断したに過ぎず、今の条例改正案の合憲性を示したものでも何でもない。昔の規制が合憲だったからと言って別の条文に基づく新しい規制が自動的に合憲なるなどといったバカげたことは無い。このことについては故意に見解中から落としているのだろうが、今回の改正で彼らが入れようとしている規制強化中のゾーニング規制を超える部分(繰り返し指定を受けた者に対する勧告・その名前の公表を規定する第9条の3第2項から第4項)は過去の判例に照らしても明らかに表現の自由を規定した憲法第21条に違背する。(なお、青少年条例に関する最高裁判決の話はまた別途詳しく書きたいと思っている。)

 この都の見解のバカバカしさは、第7条第2号・第8条第1項第2号の「非実在青少年」に関する部分で頂点に達する。実在しない青少年の性を描写した漫画等を規制するのは、表現の自由を著しく損ない、自由な創作活動や芸術文化の振興を脅かすものとする指摘に関する答えは、

現に、近年の不健全指定図書の多くは漫画だが、これにより、「作家の自由な創作活動や芸術文化の振興が脅かされている」との認識が広く都民一般に共有されているとは考えられない。

であるが、都民一般に広く認識されていなければ表現の自由をいくら侵しても良いとするのはメチャクチャである。あくまで表現の自由の基本は権力からの自由であって、その侵害の事実が広く知られているか否かにかかわらず、あらゆる者に対して守られなければならないものである。(都の役人は、自分で持ち出しておきながら何故過去の青少年条例に関する裁判が最高裁まで行っているのかということを全く理解していないと見える。また、この文章は漫画は芸術ではないのでその自由な創作活動をいくら脅かしても構わないとも読めるが、こういう露骨に曖昧な文章を書く連中が条文を作っているかと思うと心底ゾッとする。恐らくこう読む方が役人の見解として正しいのだろうと思っているが。)

 「非実在青少年」の定義が曖昧であるとする極めてもっともな指摘に対する都の役人の見解は、

この規定は、作品の設定として、年齢や学年、制服(服装)、ランドセル(所持品)、通学先の描写(背景)などについて、その明示的かつ客観的な1)表示又は2)音声による描写(台詞、ナレーション)という裏づけにより、明らかに18歳未満と認められるものに限定するための規定であり、表現の自由に配慮して、最大限に限定的に定めたもの。
このような明示的かつ客観的な裏付けがないにも関わらず、単に「幼く見える」「声が幼い」といった主観的な理由で対象とすることはできず、恣意的な運用は不可能。
(例えば、視覚的には幼児に見える描写であっても、「18歳以上である」等の設定となっているものは該当しない。)
なお、青少年への閲覧制限を目的とする不健全図書指定制度や自主規制制度において、著作者が規制されることはなく、創作行為や出版、成人への流通は自由であり、「検閲、弾圧につながる」「漫画・アニメ業界の衰退を招く」との批判は当たらない。

だが、恣意的見解もここまで来ると呆れる他ない。そもそもこのような非実在青少年の性表現規制の根拠は何かとする根本的な疑問に全く答えていない上、表現の自由の制約法令において行政が恣意的な解釈を示そうとすること自体問題であるが、突然「作品の設定」という全く条文に基づかない奇怪な解釈が出て来るという凄まじいデタラメさである。さらに言えば、このような規制と18歳未満の青少年の性表現との関係、18歳未満の青少年の性を表現すること自体を社会的にどう考えるかという多くの人が抱いている根本的な問題意識にも答えていない。また、今回の規制強化にはゾーニング規制を超える部分が含まれているのであり、創作行為や出版、成人への流通は自由などというのも条文に基づかない嘘っぱちである

 「性交又は性交類似行為」については、都は、

条例改正案第7条第2号や第8条第1項第2号における「性交又は性交類似行為」とは、児童ポルノ法等において使用されている法令用語であり、「性交類似行為」とは、手淫、口淫、肛門性交、獣姦、鶏姦など、実質的に性交と同視し得る態様における性的な行為を指すとされている。
本規定は、これらの性交又は性交類似行為を直接明確に描写したものに限定され、性交を示唆するに止まる表現や、単なる子どもの裸や入浴・シャワーシーンが該当する余地はない。

という見解のようである。そもそも無理矢理創作物の規制に児童ポルノ規制法の文言を当てはめようとして無理が出ているのだが、念のために書いておくと、性交類似行為の範囲は必ずしも明確に定まっている訳ではない。言葉で切っている以上、法律用語に必ず曖昧さは残り、概念的な重なりもある。比較の問題とならざるを得ないが、用語としては性交行為<性交類似行為<性器接触行為の順に範囲は広くなる(奥村徹弁護士の過去のブログ記事など参照)。行為として何が「性的」で「性交と同一視し得る」かは主として行為者の主観によらざるを得ないので、行為に関する法律用語を表現規制に当てはめようとしてここでも甚だしい無理が発生している。(そもそも条文に無理があるので書いていてバカバカしくなって来るのだが、確かに単なる裸の描写は該当しないにしても、裸で抱き合う描写などは主観的には問題になることがあり得るだろう。また、18歳未満の青少年の性を表現すること自体を社会的にどう考えるかという多くの人が抱いている根本的な問題意識の答えにはやはり全くなっていない。なお、この都の見解を書いた者が日本語が不自由であることは分かっているのだが、一応突っ込んでおくと鶏姦とは男性同士の同性愛のことであって実質肛門性交を意味する。言葉の並びから見て、この見解を書いた極めて不健全な都の役人は鳥類との性交を想起したのではないかと思うが。)

 「みだりに」「性的対象として」「肯定的に」との規定が曖昧であり、青少年の性行動を肯定的に表現した漫画は全て規制され得るという指摘については、

「みだりに」とは、正当な理由なくということであり、学術的見地、犯罪捜査等の目的で描くものを除外する趣旨である。「性的対象として」とは、読者の性的好奇心を満足させるための描写としてという意味である。「肯定的に」とは、不当に賛美し、又は誇張して、という意味である。
したがって、全体として、みだりに性的対象として肯定的に描写したものとは、未成年者の性交・性交類似行為を直接明確に描いたもののうち、読者の性的好奇心を満足させるための描写として、殊更にその行為を賛美し、あるいは殊更にその行為を誇張して描いたもののことをいう。
したがって、単なるベッドシーンや、主人公が性的虐待を受けた体験の描写がストーリー上含まれるだけで規制されることはない。

と答えているが、やはり全て言い換えているだけであり、言い換えても曖昧であることに変わりはない。いくら言い換えようと表現をどう捉えるかは受け手によるので客観的に決めようがない。さらに規則などでいくら細かく言い換えたところで同じことであり、このような創作物規制の基準を客観的に定めることは不可能である。都の役人は否定しているが、これは現時点での無意味な行政見解に過ぎず、運用次第で単なるベッドシーンや主人公が性的虐待を受けた体験の描写なども恣意的に対象とされることは十分に考えられる。

「18歳未満のキャラクターによる肯定的な性描写」を規制することは、青少年の知る権利を奪い、性を自分の問題として考えるための道を閉ざすものという指摘に対する、

上記の通り、単なる「18歳未満のキャラクターによる肯定的な性描写」を規制するものでは全くない。
今回、新たに指定基準に追加することにより青少年の閲覧を規制しようとするのは、漫画等の設定において明らかに18歳未満の青少年の性交又は性交類似行為を描いたもので、みだりに性的対象として肯定的に描写したもののうち、強姦等著しく悪質なものであるが、これは、青少年がこうした性暴力の対象となることや、近親相姦等の対象となることについて「社会が是としている」というメッセージを、閲覧する青少年に与えることは、青少年の健全な性に関する判断能力の形成を阻害するおそれがあるからである。

という都の見解も全く同断である。作品の設定で決めると言っておきながら18歳未満のキャラクターによる性描写を規制するものではないとするところからして矛盾があり、そもそも対象が曖昧なところでこのような議論をしても無意味であるが、何故、18歳未満の設定のキャラクターの強姦等の性描写によって青少年の性に関する健全な判断能力の形成が阻害されるのか完全に謎という他ない。繰り返しになるが、このような根拠薄弱な強力効果論は表現規制の根拠たり得ない都の役人は青少年の情報の受け手としての能力を完全にバカにしているが、私はこのような青少年の判断能力を一方的に低く見る見解に全く与しない。(ここで言われているところの第8条第2号で強姦「等」と「等」が入っていることも注意しておいた方が良い。「等」を入れた上で、「社会規範に反する行為」という語が大括りになっていることには、将来的に性的描写を超えて反社会的・反道徳的表現を規制したいとするこの条文を作った者の本音が透けて見えるのである。)

 現行第8条第1項の「著しく性的感情を刺激する」で規制可能であり、新たにこのような規定を立てるのは、取り締まりの範囲を限定しているように見せるための目くらましとする指摘についての

「著しく性的感情を刺激」しない程度の表現に止まるものであっても、青少年に対する性暴力や近親相姦等を是とする漫画等を、青少年に閲覧させることは、その健全な性に関する判断能力の形成が阻害される面で適当でない。
一方、これを閲覧規制の対象とするため、「著しく性的感情を刺激し」という現行条文の解釈を、立法によらず、行政が勝手に拡大・変更することは、まさに行政の恣意的な運用による表現の自由の過度な規制であるとのそしりを免れないもの。

という都の見解も、性的感情を刺激しない強姦等の表現によって青少年の性に関する健全な判断能力の形成が阻害されるという強力効果論を根拠なく一方的に押し付けようとするものであり、全くお話にならない。(さらに言えば、今の「著しく性的感情を刺激し、甚だしく残虐性を助長し、又は著しく自殺若しくは犯罪を誘発する」という現行条文自体、現行の東京都規則(pdf)に照らしても広汎かつ曖昧であり、現行規制すらそもそも違憲ではないかと私は思っているが、そうでなくとも、今回の条例改正案は、このような曖昧な規定とゾーニングを超える規制を組み合わせる点でも違憲規制を構成するのは明らかである。)

 業界の自主的な取組を尊重すべきとの指摘に対する、

従前通り、自主規制を基本とした上で、著しく悪質なものに限って都が指定する制度に変わりはない。
運用に当たっては、業界との意見交換や周知により、規定の趣旨への共通理解を十分に形成した上で適切に運用していく。

という答えだが、業界・都民の意見を全く聴取せず、不透明かつ不合理な形で規制をごり押ししようとして、これだけの反発を招いた都の役人がこのようなことを書いても信用されることなどもはやないだろう。今の条例改正案について共通理解を形成することなどもはや不可能であり、何を言おうと不信が不信を呼ぶだけである。

 「非実在青少年」規制は、児童ポルノ法に画像を含めようとすることを企図したものという指摘には、

児童ポルノ法は、実在の児童の被害防止を目的とし、その実現のために処罰規定を置くもので、処罰の対象は成人・青少年を問わない。
一方、条例の不健全図書指定制度は、青少年の性的判断能力の形成の阻害の防止を目的とし、その実現手段は青少年への閲覧規制に止まるもの。
両者は明確に目的や手段を異にするものであり、今回の規定と、児童ポルノ法に画像を含めることは全くの別問題。
なお、国の法律においては、青少年の健全な成長を阻害する図書類の青少年への閲覧規制を定めたものはなく、自治体が条例制定権に基づいてその必要性や範囲を判断すべきもの。

と答えているが、児童ポルノの所持規制に関する条文を青少年条例に突っ込んだ当事者が無関係と言っても何の説得力も無い。確かに児童ポルノ法と青少年条例の法目的が異なるのはその通りだが、今回の都条例についても、都の担当者を調べてみれば分かるように、実質的に青少年問題協議会を動かし、条文を作ったのは警察官僚であり、児童ポルノ法改正問題と今回の都条例問題が深いところで繋がっていることはまず間違いない

 出版社などのメディアが東京に集中している現状では、改正条例は国の法律と同じ効果を持つとの指摘については、

青少年への閲覧規制の効力は都内のみ。

と答えているが、これも全く答えになっていない。特に流通が東京に一極集中していることを考えると、このような規制の影響は相当広範囲に及ぶと考えておいた方が良い。上でも書いた通り、罰則のあるなしにかかわらず、大手になればなるほどコンプライアンスには気を使うので、このような規制強化は表現に関する相当の萎縮効果が見込まれるのである。

 第18条の6の2第2項について、「まん延の抑止」とは、青少年のみならず、成人に対しても規制するものという指摘については、

第18条の6の2の規定における「まん延の抑止」とは、同規定が定義する「青少年性的視覚描写物」を青少年が閲覧又は観覧することを抑止する、という意味である。成人への規制を意味するものではない。
このことは、都や事業者、都民に努力を求める責務を定めた条文(18条の6の2、3、4)において、それぞれ、「青少年が容易に閲覧又は観覧することのないように」と規定していることからも明らかである。

と答えているが、「まん延」という曖昧な語が使われていること自体問題であり(やはり良く使われる「流通」という語と同じく危うい)、この解釈にも現実にはかなり疑問が残る。特に、第18条の6の2第4項で、「都は、事業者及び都民による児童ポルノの根絶及び青少年性的視覚描写物のまん延の抑止に向けた活動に対し、支援及び協力を行うように努めるものとする」と、青少年が容易に閲覧又は観覧することのないようにという限定抜きでまん延抑止の支援を都が行うと書かれていることと合わせ注意しておいた方が良い。(なお、第18条の6の2から第18条の6の4までにわざと児童ポルノと青少年性的視覚描写物を一緒に書き込んでいることからは、都の役人が、条文を使って悪質に両者の混同を狙っていることが見て取れる。また、一緒に書いておくが、第18条の6の5の青少年を性的対象として扱う図書類等に係る保護者等の責務もかなり曖昧である。)

 インターネット・携帯電話関係の見解もおよそおかしなものばかりである。

 青少年ネット規制法との関係について、都の役人は、

昨年4月の法施行後も、法施行後も、インターネット上のコミュニティサイトやプロフィールサイトなどの非出会い系サイトを通じて被害に遭う青少年が増えるなど、インターネットに関し青少年が被害者や加害者となる様々な問題が発生。
「民間の自主的かつ主体的な取組を尊重する」という法の趣旨を遵守することは当然であるが、現に青少年の被害等の減少が見られず、逆に増加している現状にかんがみ、青少年の福祉を阻害する行為を防止し、その健全育成を図る責務を負う都としてはこれを座視することはできない。
このため、同法の規定の趣旨を定着させ、その実効性を向上させるために、フィルタリングの実効性確保に向けた事業者の努力義務など、都として必要な規定を設けるもの。
法の趣旨に反して、民間の自主的な取組を規制し、後退させるものではない。また、個別具体的な有害情報の判断やフィルタリングの基準設定を行おうとするものではない。

と答えているが、この条例改正案は民間における自主的な取組を完全にないがしろにしているので、青少年ネット規制法の理念には無論違反している。大体、青少年の被害の減少が見られず、逆に増加しているということ自体デタラメである。(必ずしも実勢を表していないのでこの数字で一喜一憂することは無意味だが、公式統計上かえって被害児童数が全体としてなお減少傾向にあることは、警察庁の資料(少年非行等の概要(pdf)出会い系サイトに関係した事件の検挙状況(pdf)など)を良く見ればすぐに分かることである。この都の見解を実質的に書いているのはまず間違いなく警察からの出向者なので、これは勘違いでも何でもなく完全に都民を舐めてわざとデタラメを書いていると考えられる。)

18条の6の6の「都が…青少年に対して行われるインターネットの利用に関する啓発についての指針を定めるもの」は、指針という名目で民間の自主活動が規制されるものとする指摘については、

指針について事業者が従うべきとの規定はなく、事業者の自主活動を規制するものではない。
そもそも、本指針は、事業者が主体となって行うものに限らず、広く青少年に対するインターネット利用に係る啓発活動において、インターネット利用に伴う危険性や弊害、その除去に必要な知識を青少年が確実に習得できるよう、その啓発に際して必要に応じて参照可能な指針を定めることにより、多様な主体による青少年への啓発活動の水準の確保と拡大を図るもの。

と都の役人は答えている。これは指針の内容次第だが、この条例案を作った連中の考え方からすると、このネット指針がより規制的なものとなる恐れは十分にある

 18条の7の「自己若しくは他人の尊厳を傷つけ、違法若しくは有害な行為を行い、又は犯罪若しくは被害を誘発することを容易にする情報」は、法の「青少年有害情報」の定義を超えるものであり、インターネット上の有害情報の基準を、「都が」「実質的に規定する」・「拡大解釈する」・「サイト規制を行う」・「表現の自由を侵害する」おそれがあり、また、範囲が不明確であり、自主的な取組を阻害し、フィルタリングの方式を実質的に利用者に強要するものとの指摘については、

法がフィルタリングの対象とすべきものとして定める「青少年有害情報」の定義は「青少年の健全な成長を著しく阻害するもの」。
本条も、法を前提とした上で、「青少年が有害情報の閲覧により健全な成長を著しく阻害されないようにするためのフィルタリング」という法の原点に立ち返り、事業者がフィルタリングの実効性を向上させる際の視点を、現実の青少年の現実の被害・トラブルを踏まえて示した規定。1)の情報が法の「青少年有害情報」の範囲内にあることを前提としている。

本条の主語は「事業者」。
これにより明らかなとおり、1)の情報に何が該当するかの解釈や判断は、法の枠組みどおり事業者が行うものであることから、「都による」「基準の実質的規定」や「拡大解釈」、「サイト規制」「表現の自由の侵害」が行われるおそれはなく、自主的な取組を阻害することもない。

本条の主語は「事業者」であり、利用者がどのようなフィルタリングを選択するかとは無関係。

と都の役人は答えている。これについては、青少年ネット規制法(第101回参照)で、青少年有害情報が定義ではなく例示とされていることが響いている。私自身は青少年ネット規制法自体廃止されるべきだと思っているが、「自己若しくは他人の尊厳を傷つけ、違法若しくは有害な行為を行い、又は犯罪若しくは被害を誘発することを容易にする情報」という規定はあまりにも広汎かつ曖昧であり、重なりが無いとは言えないが、「青少年の健全な成長を著しく阻害するもの」という青少年ネット規制法によって規定される「青少年有害情報」を超える部分は間違いなく出て来るだろう。又はと若しくはの使い方から考えて、「自己若しくは他人の尊厳を傷つける」情報、「違法若しくは有害な行為を行う」情報、「犯罪若しくは被害を誘発することを容易にする」情報という3種類の情報が並列で並べられているのだと思うが、どれも「青少年の健全な成長を著しく阻害するもの」とは言い難いものばかりである。また、事業者が提供する選択肢を狭めるように規制することは、自動的に利用者の選択を狭めることになるのであり、条文の主語が「事業者」であるからといって利用者の選択とは無関係とすることはできない。このような条例による規制は、青少年ネット規制法を超える過剰規制となることだろう。

 18条の7の2の、「フィルタリング解除の申し出に際した書面の提出」は、保護者の自由な選択を可能とする法の趣旨を超えて保護者の意思を制限するものという指摘については、

法第6条は、フィルタリングの利用等により青少年のインターネット利用を適切に監督する保護者の努力義務を規定。また、青少年の有害情報閲覧機会を減少させるフィルタリングは、法第17条により、保護者の申し出がない限りは提供されるもの。
したがって、保護者の意思において敢えてフィルタリングを解除し、青少年の有害情報閲覧機会を増大させる場合には、法6条の規定にかんがみれば、保護者がフィルタリング以外の方法で青少年を適切に監督するよう努める必要があるもの。
本条は、このような保護者の責任と監督に関する自覚を促す機会として、書面の提出を求めるものであり、法6条の趣旨の実効性の確保に資するもの。
書面の提出を解除の要件とする規定ではなく、書面提出の有無にかかわらず解除は可能であるため、法17条の趣旨にも反しない。
なお、同様の規定は兵庫県条例で既に存在し、埼玉県でも議会提案中。

と答えているが、同様の条例の存在が、都における規制強化を正当化することがないのは当たり前のことである(他人がしていることのみをもって自分もしても良いとするか如きは理性とモラルある大人として最低の言動である)。また、書面提出を解除の要件としないと都の役人は言っているが、保護者が携帯電話フィルタリングを利用しない旨の申出をするときは、正当な理由その他の事項を記載した書面を携帯電話インターネット接続役務提供事業者に提出しなければならないと明確に条例で定めているので、これは何を言っているのかさっぱり分からない。さらに、この見解では故意に落とされているのだと思うが、この点で事業者に対する勧告・調査権限を都に付与しようとしていることは、明らかに青少年ネット規制法を超える過剰規制を構成する

 18条の8の「保護者への指導・助言」及びこれに必要な「調査」は、有害行為に至らない程度の迷惑行為に税務調査並みの権限を与えるものという指摘について、

本条の規定は、現実に、特定の者に対するいじめを呼びかける書き込みを行ったようなケースなどで、現実に青少年の健全な成長を阻害する行為が明らかに行われた場合において、その再発を防止するため、行政が保護者に対し、適切に監督するよう指導・助言をするもの。
調査は、指導・助言に必要な事実確認のため、関係者の同意の下に任意の聞き取り等を行うものであり、強制処分を前提とし、強制力を伴う立入調査が可能な税務調査とは全く異なる次元のもの。

と都は答えているが、何故わざわざ税務調査を持ち出しているのかさっぱり分からない。罰則による間接強制こそあるものの税務調査も基本は任意調査であるという突っ込み以前の問題として、指摘の部分で税務調査を持ち出していること自体悪質なミスリードである。任意だとしても都の役人がやって来て条例でこう決まっているからと言って調査・指導・助言をごり押しして来た場合に、拒否できる都民がどれほどいるだろう。インターネット利用において本当に違法あるいは犯罪行為があるとしたら、書き込んだ者が何人であるかを問わず、まずは警察が一義的に対応しなければならない話であり、都が乗り出す話ではない。違法あるいは犯罪行為以外の有害あるいは迷惑行為については、それぞれ状況に応じて、家庭、学校、事業者等々で社会的に対応する話であって、やはり都の役人の入り込む余地は無い。どうせ実質的にこの指導・助言を行うのは都の青少年・治安対策本部青少年課の役人だと思うが、ここまで狂った条例案を作る頭のおかしな役人が、子供のインターネット利用について、家庭も学校も警察も超えて、直接家に訳の分からない道徳・思想の押し売りをしに来ると考えるだけで私はゾッとする。いまや子供のインターネット利用を完全に止めるのは現実的ではないだろうし、本当に今のまま条例案が通ったら、子供を持つ都在住の親には東京都からの引越しを真剣に検討することを私は勧めざるを得ない。

 東京の一千万全都民が全く法律を知らないとするが如きこんな拙劣なペーパーを作ってごまかそうとするような連中が権力に近いところで暗躍している限り、この問題はさらに拡大し続けるだろうし、もはや止めようと思っても止まらないだろう。私も今回の継続審議に尽力された都議の皆様にお礼を書くなど地道にできることをして行きたいと思っているが、この問題に関心を寄せている方は、どうするにしても、是非様々な情報を集めて自分なりの考えをきちんとまとめてから、引き続き都議になるべく直に意見が伝わるよう地道に運動を続けて行くことを強くお勧めする。

 この問題から表現規制問題について始めて知った方も、問題への個別対処に追われる人も、喉元過ぎれば熱さを忘れるという人も多いことだろうが、できることなら、ちょっとした合間に、どうしてこのような明らかな違憲条例案が民主主義国家のあらゆる機構的チェックをすり抜けて議会に提出され、かろうじて継続審議となったが今後可決の見込みもなお強いとされるのか、どうして都庁の中の青少年対策本部・青少年課の主要ポストが全て警察関係者で固められているのか、どうして条例案が実質違憲であるということが分からないはずがないこれらの警察官僚・幹部が国民の基本的な権利も意見もないがしろにして情報統制・表現弾圧にここまで執念を燃やすのか、という国の根本的な仕組みの問題についても少しでも目を向けてもらえればと思う。このような表現規制の問題は表面的・論理的には表現の自由の問題だが、実際には権力の腐敗の問題につながる非常に根の深い問題である。表現の自由からこのような表現規制に論理的に反対するのは簡単だが、表面に現れている問題の根底に潜む権力の腐敗の問題に取り組むことは決して一筋縄ではいかない。権力の腐敗はいくら考えても即効性の対策のない永遠の課題だが、なるべく多くの人に問題の遠因を自分の頭で考えてみてもらいたいと私は心から願う。そのためにこそ表現の自由はあるのだから。

(2010年3月21日の追記:内容は全く変えていないが、誤記をいくつか訂正し、文章を少し整えた。)

(2010年3月24日の追記:1ヶ所誤記を訂正した(「第9条」→「第9条の3」)。)

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2010年3月14日 (日)

第219回:新たにリークされた文書から見る模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)に対する日本政府のスタンス(民事エンフォースメント関連部分)

 今回は、前回に続いて、カナダのオタワ大教授がそのブログ記事で取り上げた海賊版対策条約(ACTA)についての新たなリーク文書(pdf)(en.swpat.orgで作成されているテキスト版)の民事エンフォースメント関連部分を訳出する。日米共同提案の欄に2010年1月18日段階のものとしてあげられているのは、以下のような条文である。(翻訳はいつも通り拙訳。他の国のコメントも重要ではあるのだが、やはり煩雑になるので注釈については日本政府のスタンスを示すもの以外は省略した。)

1. SECTION 1: CIVIL ENFORCEMENT

Article 2.1 Availability of Civil Procedures

1. Each Party shall make available to right holders [US/J: civil judicial][Mex/NZ: or administrative] procedures concerning the enforcement of any [US/J: intellectual property right] [Sing/Can/NZ: copyrights and related rights and trademarks] [Kor: as provided for in the following individual articles in this Section].

Proposed article 2.1.1 moved to Article 2.X Injunction - Option 1

Article 2.X Injunctions

Option 1: In civil judicial proceedings concerning the enforcement of [Can/NZ: copyright or related rights and trademarks] [US/J: intellectual property rights], each Party shall provide that its [US/J: judicial authorities] [NZ: competent authorities] shall have the authority to issue an order to a party to desist from an infringement, including an order to prevent infringing goods from entering into the channels of commerce [US/Aus/Kor/Mor/NZ: and to prevent their exportation].

Article 2.2 Damages

1. Each Party shall provide that:
(a) in civil judicial proceedings, [US/J: its judicial authorities] [Mex/NZ: or competent authorities] [EU/NZ: on application of the{EU: injured party}{NZ:right holder}] shall have the authority to order the infringer [EU/NZ: who knowingly or with reasonable grounds to know, engaged in infringing activity] of [Can/Sing/NZ: copyright or related rights and trademarks] [US/J: intellectual property rights] to pay the right holder
(i) damages adequate to compensate for the [EU: actual] injury the right holder has suffered as a result of the infringement; or [EU: or]
(ii) [US/Mor/Aus/Kor/Sing: at least in the case of copyright or related rights infringement and trademark counterfeiting,][MX: in the case of IPR infringements] the profits of the infringer that are attributable to the infringement, which may be presumed to be the amount of damages referred to in the clause (i)[Aus/Sing/NZ/EU: which may be presumed to be the amount of damages referred to in clause (i)]; and
[(iii) Can/NZ: For greater certainty, a Party may limit or exclude damages in certain special cases.]

(b)
in determining the amount of damages for [Can/Sing/NZ: copyright or related rights infringement][MX: IPR] infringement [US/J: of intellectual property rights] [Can/Sing: and trademark counterfeiting], its [US/J:judicial][NZ: competent] authorities [US/J: shall][Aus/Can/NZ:may] consider, inter alia, [Can/NZ: any legitimate measure of value that may be submitted by the right holder, including] [EU/Can/NZ: the lost profits], the value of the infringed good or service, measured by the market price, [Can: or] the suggested retail price [NZ: suggested retail price], or other legitimate measure of value submitted by the right holder [Can/NZ: or other legitimate measure of value submitted by the right holder], [EU: the profits of the infringer that are attributable to the infringement].

2.
At least with respect to works, phonograms, and performances protected by copyright or related rights, and in cases of trademark counterfeiting, in civil judicial proceedings, [EU/Can: As an alternative to paragraph 1,] each Party [US/J: shall][EU/Can/NZ: may] establish or maintain a system that provides [Sing/NZ: for]:
(a) pre-established damages; or [Sing: a system that provides for]
b) presumptions for determining the amount of damages sufficient [US/Can: to constitute a deterrent to future infringements and] to compensate [US: fully] the right holder for the harm caused by the infringement.

Footnote: Such measure [Option J: shall][US/Sing/Can/EU: may] include the presumption that the amount of damages is (i) the quantity of the goods infringing the right holder's intellectual property right and actually assigned to third persons, multiplied by the amount of profit per unit of goods which would have been sold by the right holder if there had not been the act of infringement or (ii) a reasonable royalty [EU: or (iii) a lump sum on the basis of elements such as at least the amount of royalties or fees which would have been due if the infringer had requested authorization to use the intellectual property right in question].

3. Each Party shall provide that the right holder shall have the right to choose the system in paragraph 2 as an alternative to the damages in paragraph 1.

4. Each Party shall provide that its judicial [NZ: competent] authorities, except in exceptional circumstances, [EU: unless equity does not allow this], shall have the authority to order, at the conclusion of the civil judicial proceedings [US/J : concerning copyright or related rights infringement, patent infringement {Can/NZ: patent infringement}, or trademark infringement] [EU: concerning copyright or related rights infringement, patent infringement, or trademark infringement], that the prevailing party [US/J: shall][Can: shall] be awarded payment by the losing party of [NZ: appropriate ] court [{EU: reasonable and proportionate}EU/CAN/NZ: legal] costs or fees. Each Party [US/J:shall] [Mor: may] also provide that its [US/J: judicial] [NZ: competent] authorities, [US/Can/Mor/MX/NZ: except in exceptional circumstances] [EU: unless equity does not allow this], [US/Can/Aus/Mor: {US/Aus/Mor: at least }in proceedings concerning copyright or related rights infringement or willful trademark counterfeiting,] shall have the authority to order, [J/Can/Aus/NZ: in appropriate cases][MX: in appropriate cases], that the prevailing party be awarded payment by the losing party of [US/J: reasonable][NZ: appropriate] attorney's fees. [US/Aus/Mor: Further, each Party shall provide that its judicial authorities, at least in exceptional circumstances, shall have the authority to order, at the conclusion of civil judicial proceedings concerning patent infringement, that the prevailing party shall be awarded payment by the losing party of reasonable attorney's fees.][Mor: ,fees should be left to the discretion of the judge who determine the reasonable level of these fees][EU: Further, each Party shall provide that its judicial authorities, at least in exceptional circumstances, shall have the authority to order, at the conclusion of civil judicial proceedings concerning patent infringement, that the prevailing party shall be awarded payment by the losing party of reasonable attorneys' fees.

Article 2.3 Other Remedies

1. [US: At least] [Can: At least]with respect to goods that have been found to be [US/Aus/Can/Sing/Kor/NZ: pirated or counterfeit] [J/EU/MX: infringing an intellectual property right], each Party shall provide that in civil judicial proceedings, at the right holder's request, [J/Aus/EU/Can/MX/Kor/NZ: its judicial{NZ:competent} authorities shall have the authority to order that] such goods shall be [NZ: forfeited to the right holder] [US/J: destroyed], [EU/Can/NZ: recalled or definitively removed from the channel of commerce,] except in exceptional circumstances, [Can: except in exceptional circumstances,]without compensation of any sort.

2. Each Party shall further provide that its judicial authorities shall have the authority to order that materials and implements [J/Can/EU: the predominant use of which has been] [US/Aus/NZ: that have been used] [EU: that have been used] in the manufacture or creation of [J/MX/EU: infringing {MX: of IP}] [US/Aus/Can/Sing: pirated or counterfeit] goods [NZ : infringing copyright or relate rights or trademarks ] shall be, without compensation of any sort, [US/EU/MX: promptly][Aus: promptly] [Can: without undue delay][NZ: forfeited to the right holder] [US/J: destroyed] or [US/EU/MX/NZ: in exceptional circumstances,][Aus: in exceptional circumstances,] disposed of outside the channels of commerce in such a manner as to minimize the risks of further infringements.

3. In regard to counterfeit trademarked goods, the simple removal of the trademark unlawfully affixed shall not be sufficient [J/Aus/Can/MX:, other than in exceptional cases,] to permit the release of goods into the channels of commerce.

Article 2.4 Information related to Infringement

[EU: Without prejudice to other statutory provisions which, in particular, govern the protection of confidentiality of information sources or the processing of personal data,] Each Party shall provide that in civil judicial proceedings concerning the enforcement of [US/J: intellectual property rights][Can: copyright or related rights and trademarks], its judicial authorities shall have the authority upon a justified request of the right holder, to order the infringer to provide, [US/J; for the purpose of collecting evidence] [EU: for the purpose of collecting evidence][Mor: within the framework of measures of inquiry or investigation], any [Can: relevant] information [EU: information on the origin and distribution network of the infringing goods or services on a commercial
scale] [J: in the form as prescribed in its applicable laws and regulations] that the infringer possesses or controls, [J/Can/EU/MX: where appropriate,] to the right holder or to the judicial authorities. Such information may include information regarding any person or persons involved in any aspect of the infringement and regarding the means of production or distribution channel of such goods or services, including the identification of third persons involved in the production and distribution of the infringing goods or services or in their channels of distribution. [Can: For greater clarity, this provision does not apply to the extent that it would conflict with common law or statutory privileges, such as legal professional privilege.]

Article 2.5 Provisional Measures

[X. EU: Each Party shall provide that its judicial authorities shall have the authority, at the request of the applicant, to issue an interlocutory injunction intended to prevent any imminent infringement of an intellectual property right. An interlocutory injunction may also be issued, under the same conditions, against an intermediary whose services are being used by a third party infringe an intellectual property right. Each Party shall also provide that provisional measures may be issued, even before the commencement of proceedings on the merits, to preserve relevant evidence in respect of the alleged infringement. Such measures may include inter alia the detailed description, the taking of samples or the physical seizure of the documents or of the infringing goods.]

OPTION1 [1. US/EU/Sing: Each Party shall provide that its judicial authorities shall act expeditiously on requests for provisional measures inaudita altera parte] [Sing: and shall endeavor to make a decisions on such requests within ten days except in exceptional cases .] [US/EU: , and shall endeavor to make a decision on such requests {US: within ten days}{EU: without delay}{MX: within twenty days}, except in exceptional cases.]

OPTION2 [1. J: Each Party shall ensure that, where proceedings for provisional measures are conducted inaudita altera parte, the {J: judicial}{MX: competent} authorities shall be expeditiously make a decision on the request for provisional measures.]

OPTION3 [1. Can/Aus/Kor/NZ: Each Party's authorities shall act on requests for {Can/Aus: relief}{Kor/NZ: provisional measures} inaudita altera parte {Can: without undue delay} {Kor/Aus/NZ: expeditiously} in accordance with the Party's judicial rules.]

2. [US/J/NZ/MX: In civil {US/J: judicial}{NZ: or administrative} proceedings {MX: or administrative remedies} concerning copyright or related rights infringement and trademark counterfeiting{NZ: infringement}], [EU: In civil judicial proceedings concerning copyright or related rights infringement and trademark counterfeiting], each Party shall provide that its judicial authorities shall have the authority to order [Can/NZ:, in appropriate cases,] the seizure or other taking into custody of suspected infringing goods, materials, and implements relevant to the act of infringement [US/Aus/Can/NZ: and, at least for trademark counterfeiting, documentary evidence relevant to the infringement ][Sing: used to accomplish the prohibited activity ].

3. Each Party shall provide that its [US/J: judicial][MX: competent] authorities have the authority to require the plaintiff, with respect to provisional measures, to provide any reasonably available evidence in order to satisfy themselves with a sufficient degree of certainty that the plaintiff's right is being infringed or that such infringement is imminent, and to order the plaintiff to provide a reasonable security or equivalent assurance set at a level sufficient to protect the defendant [EU/Can:,ensuring compensation for any prejudice suffered when the measure is revoked or lapses due to any reason,] and to prevent abuse, [US/J: and so as not to unreasonably deter recourse to such procedures] [Can:  an so as not to unreasonably deter recourse to such procedures].

[4. EU/Can: Each Party shall ensure that the provisional measure referred to in paragraphs 1, 2 and 3 are revoked or otherwise cease to have effect, upon request of the defendant, if the applicant does not institute proceedings leading to a decision on the merits of the case before the competent judicial authority, either within a reasonable period to be determined by the judicial authority if the laws of a Party so permit or within a period not exceeding 20 working days or 31 calendar days.][NZ: Delete this paragraph.]

第1章 民事エンフォースメント

第2.1条 民事手続きの整備

第1項 各加盟国は、[本章の以下の各条に規定されている通り][日/米:知的財産権][シンガ/加/NZ:著作権、著作隣接権及び商標権]のエンフォースメントに関する[日/米:民事司法的][メキシコ/NZ:あるいは行政的]手続きを権利者のために整備する。

(注:提案されている第2.1.1条は、第2.X条 差し止めに移されるーオプション1)

第2.X条 差し止め

オプション1:[加/NZ:著作権あるいは著作隣接権及び商標権][日/米:知的財産権]のエンフォースメントに関する民事司法手続きにおいて、各加盟国は、その[日/米:司法当局][NZ:権限を有する当局]が、侵害品の流通チャネルへの流通[米/豪/韓/モロッコ/NZ:及びその輸出]を止める命令を含め、侵害を抑止する命令を当事者に出す権限を有することを規定する。

第2.2条 損害賠償

第1項 各加盟国は、以下のことを規定する:
(a)民事司法手続きにおいて、[欧/NZ:{欧:被侵害者}{NZ:権利者}の申し立てに基づき]その[日/米:司法当局][NZ:権限を有する当局]が、[欧/NZ:故意に、あるいは、知っていたと思われる合理的な理由がある場合において、侵害行為を行った][加/シンガ/NZ:著作権あるいは著作隣接権及び商標権][日/米:知的財産権]の侵害者に、権利者へ次の支払いを命じること
(ⅰ)侵害の結果として権利者が被った[欧:実際の]被害を適切に補償する損害賠償;あるいは[欧:あるいは
(ⅱ)[米/モロッコ/豪/韓/シンガ:少なくとも著作権あるいは著作隣接権及び商標権侵害のケースにおいて][メキシコ:知的財産権侵害のケースにおいて]、(ⅰ)に記載されている損害賠償の量と推定し得る[欧/豪/シンガ/NZ:(ⅰ)に記載されている損害賠償額と推定し得る]侵害に起因する侵害者の利益;及び
[(ⅲ)加/NZ:明確化のため、加盟国は、特別なケースにおける損害賠償に制限あるいは例外を設けることができる。]

(b)[加/シンガ/NZ:著作権あるいは著作隣接権侵害][加/シンガ:及び商標権侵害][日/米:知的財産権の][メキシコ:知的財産権]侵害の損害賠償額の決定において、その[日/米:司法][加/シンガ:権限を有する]当局が、市価、[加:あるいは]示される小売価格から計算される侵害品あるいは侵害サービスの価値、あるいは、権利者によって主張される他の正当な価値算定法[加/NZ:、あるいは、権利者によって主張される他の正当な価値算定法]、[欧:侵害に起因する侵害者の利益]を考慮に[日/米:入れる][豪/加/NZ:入れることができる]。

第2項 少なくとも、著作権あるいは著作隣接権によって保護される著作物、録音と実演に関しては、そして、商標権侵害のケースにおいては、民事司法手続きにおいて、[欧/加:第1項の代わりに、]各加盟国は、以下のことを規定する法制を整備・維持する:
(a)予め決められた損害賠償額;あるいは
(b)[米/加:将来の侵害を抑止し、]権利者に侵害によって生じた損害を完全に補償するのに十分な損害賠償額の推定

脚注:このような措置は、損害賠償額は、(ⅰ)侵害行為が無かったとしたら権利者によって販売されていただろう物の1個あたりの利益額を、権利者の知的財産権を侵害し、本当に第3者に帰す侵害品の数にかけた額あるいは(ⅱ)合理的な利用料[欧:あるいは(ⅲ)少なくとも問題の知的財産権の利用許可を侵害者が求めたとしたら、得られただろう合理的な利用料のような要素に基づいた総額]であるとする推定を[日:含む][米/欧/シンガ/加:含むことができる]。)

第3項 各加盟国は、権利者が、第1項に規定されている損害賠償に代えて第2項の法制を選ぶ権利を有することを規定する。

第4項 各加盟国は、例外的な状況を除き、[欧:公平性の原理によって許される限りにおいて、]その司法[NZ:権限を有する]当局が、[日/米:著作権あるいは著作隣接権侵害、特許権侵害{加/NZ:特許権侵害}、あるいは商標権侵害に関する][欧:著作権あるいは著作隣接権侵害、特許権侵害、あるいは商標権侵害に関する]民事司法手続きの終結時に、[NZ:適切な]法廷[欧:{合理的でバランスの取れた}欧/加/NZ:法的]費用について敗訴当事者が勝訴当事者に[日/米:支払わなければならない][加:支払う]ことを命じる権限を有することを規定する。各加盟国は、[米/加/豪/モロッコ:例外的な状況を除き、][欧:公平性の原理によって許される限りにおいて、][米/加/豪/モロッコ:{米/豪/モロッコ:少なくとも}著作権あるいは著作隣接権侵害あるいは故意の商標権侵害に関する手続きにおいて、]その[日/米:司法][NZ:権限を有する]当局が、[日/加/豪/モロッコ:適切なケースで、][メキシコ:適切なケースで、][日/米:合理的な][NZ:適切な]弁護士費用について敗訴当事者が勝訴当事者に支払うことを命じる権限を有することも[日/米:規定する][モロッコ:規定できる]。[米/豪/モロッコ:さらに、各加盟国は、その司法当局が、少なくとも例外的な状況において、特許権侵害に関する民事司法手続きの終結時に、合理的な弁護士費用について敗訴当事者が勝訴当事者に支払うことを命じる権限を有することを規定する。][モロッコ:、費用は、その合理的な水準を決める裁判官の判断に委ねられる。][欧:さらに、各加盟国は、その司法当局が、少なくとも例外的な状況において、特許権侵害に関する民事司法手続きの終結時に、合理的な弁護士費用について敗訴当事者が勝訴当事者に支払うことを命じる権限を有することを規定する。

第2.3条 その他の救済措置

第1項 [米:少なくとも][加:少なくとも][米/豪/加/シンガ/韓/NZ:海賊版あるいは模倣品][日/欧/メキシコ:知的財産権を侵害するもの]と分かった物について、各加盟国は、民事司法手続きにおいて、権利者の求めに応じ、何らの補償なく、例外的な状況を除き、[加:例外的な状況を除き、]そのような物の[NZ:権利者への没収を、][日/米:破棄を、][欧/加/NZ:商業チャネルからのリコールあるいは完全な除去を、][日/豪/欧/加/メキシコ/韓/NZ:その司法{NZ:権限を有する}当局が、命じる権限を有すること]を規定する。

第2項 さらに各加盟国は、その司法当局が、[日/欧/メキシコ:{メキシコ:知的財産権}侵害品][米/豪/加/シンガ:海賊版あるいは模倣品][NZ:著作権あるいは著作隣接権侵害品]の製造に[米/豪/NZ:用いられた][欧:用いられた][日/欧/加:主として用いられる]材料と装置について、何らの補償なく、[米/欧/メキシコ:速やかな][豪:速やかな][加:不当な遅滞の無い][NZ:権利者への没収][日/米:破棄]、あるいは、[米/欧/メキシコ/NZ:例外的な状況で、][豪:例外的な状況で、]さらなる侵害のリスクを最小化するような形での商業チャネルからの除去を命じる権限を有することを規定する。

第3項 商標権侵害品に関しては、[日/豪/加/メキシコ:例外的な状況を除き、]違法に付された商標の単なる除去は商業チャネルに物品を流すのを認めるのに十分でない。

第2.4条 侵害に関する情報

[特に、個人情報の処理あるいは情報源秘匿の保護に関する他の法規定にかかわらず、]各加盟国は、[日/米:知的財産権][加:著作権あるいは著作隣接権及び商標権]のエンフォースメントに関する民事司法手続きにおいて、その司法当局が、権利者の正当な求めに基づいて、[日/米:証拠を集めるために、][欧:証拠を集めるために、][モロッコ:審理における措置の枠内で、]その有するあるいは管理しているあらゆる[加:関連する]情報[欧:商業的な規模での侵害品あるいはサービスの起源と頒布ネットワークに関する情報]を、[日:適用される法令に規定された形式で、][日/欧/加/メキシコ:それが適切な場合は、]侵害者が権利者あるいは司法当局に提供することを命じる権限を有することを規定する。このような情報は、侵害品あるいはサービスの製造あるいは頒布あるいはその頒布チャネルにかかわる第3者を特定可能な情報など、何らかの形で侵害にかかわっている者に関する、そして、そのような物あるいはサービスの製造手段あるいは頒布チャネルに関する情報を含み得る。[加:より明確に、この規定は、コモンローあるいは法的な職業上の権利のような法規定上の権利に反しない限りにおいて適用される。]

第2.5条 仮の措置

第X項 欧:各加盟国は、その司法当局が、申立人の申し立てにより、知的財産権の差し迫った侵害を抑止するための仮処分を出す権限を有することを規定する。仮処分は、そのサービスが第3者によって知的財産権侵害に用いられている仲介者に対しても、同様の条件で、出され得る。各加盟国は、本訴訟が始まる前であっても、侵害の疑いについて関連する証拠を保全するためにも、この仮の措置が出され得ることを規定する。このような措置は、とりわけ、詳細な説明、サンプルの取得、あるいは、文書あるいは侵害品の物理的な差し押さえを含み得る。]

オプション1 [第1項 米/欧/シンガ:各加盟国は、その司法当局が、申し立てに基づき、他方当事者の意見を聞くことなく、迅速に仮の措置について行動し、[シンガ:例外的な状況を除き、その申し立てに基づき、10日以内に決定を行うよう努める][米/欧:例外的な状況を除き、その申し立てに基づき、{米:10日以内に}{欧:遅滞なく}{メキシコ:20日以内に}決定を行うよう努める]ことを規定する。]

オプション2 [第1項 日:各加盟国は、仮の措置の手続きが他方当事者の意見を聞かずに行われる場合、その{日:司法}{メキシコ:権限を有する}当局が、仮の措置の申し立てに基づき、迅速に決定を行うことを担保する。]

オプション3 [第1項 加/豪/韓/NZ:各加盟国の当局は、国内の司法法令に則り、{加/豪:救済命令}{韓/NZ:仮の措置}の申し立てに基づき、他方当事者の意見を聞くことなく、{加:不当な遅滞なく}{韓/豪/NZ:迅速に}行動する。]

第2項 [日/米/NZ/メキシコ:著作権あるいは著作隣接権侵害及び商標権侵害に関する民事{日/米:司法}{NZ:あるいは行政}手続きにおいて][欧:著作権あるいは著作隣接権侵害及び商標権侵害に関する民事司法手続きにおいて]、各加盟国は、その司法当局が、[適切な場合に、]侵害が疑われる物と、侵害に関係する材料と装置[米/豪/加/NZ:と、少なくとも商標権侵害について、侵害に関係する証拠文書]の差し押さえあるいは保全を命じる権限を有することを規定する。

第3項 各加盟国は、その[日/米:司法][メキシコ:権限を有する]当局が、仮の措置に関して、原告の権利が侵害されているか、その侵害が差し迫ったものであることについて十分に確証を得られるよう合理的に入手可能な証拠を提供することを原告に求める権限と、被告の保護と濫用の防止のため、[米/日:そして、このような手続きにおける償還を不当に制限することがないようにしつつ、]十分な程度の合理的なあるいは同等の保証金の供託を命じる権限を有することを規定する。

第4項 欧/加:各加盟国は、20営業日あるいは31日を超えない期間内か、加盟国の国内法が認めるようであれば司法当局によって決められる合理的な期間内に、権限を有する司法当局における本訴訟を申し立て人が起こさない場合、第1、2及び3項に記載された仮の措置は却下されるか、さもなければ効力を失うことを担保する。][NZ:本項削除。]

 詳しくは上を読んでもらえればと思うが、この民事エンフォースメント関連部分については、インターネット関連部分ほどの問題はないものの、第2.2条第2項にいわゆる著作権侵害(と商標権侵害)の法定賠償が入って来ていることには注意しておいた方が良い。何度かパブコメでも指摘している通り、法定損害賠償制度は、アメリカで一般ユーザーに法外な損害賠償を発生させ、その国民のネット利用におけるリスクを不当に高め、ネットにおける文化と産業の発展を阻害することにしかつながっていないものであり、日本において導入されるべきとは到底思えない制度である。このような条文が入っていることは、以前の知財本部の「インターネット上の著作権侵害コンテンツ対策に関する調査」(提出パブコメ参照)に「損害賠償額の算定を容易にするための方策」についての項目があったことや、日本レコード協会などの権利者団体などが法定賠償制度の導入を求めていること(第2回インターネット上の著作権侵害コンテンツ対策に関するワーキンググループ(議事次第議事録)の日本レコード協会資料(pdf)参照)と決して無関係ではないと私は考えている。この部分については選択になっており、法定賠償制度の導入が必要となるとは条文上必ずしも読めず、日本政府のコミットメントも不明だが、この部分についてもポリシーロンダリングの危険性があるだろう。

 海外でこの条約の不透明性が大きな問題となって来ていることは何度か取り上げて来ているが、ドイツでは法務大臣が海賊版対策条約に絡んでストライクポリシーを導入することはないと言い(Spiegelの記事(ドイツ語)参照)、さらに、欧州議会で海賊版対策条約の透明性向上決議が633対13の圧倒的多数で議決されるなど(zdnet.frの記事(フランス語)、ガイスト氏のブログ記事1参照)、欧州において、その秘密性に対する不信、透明性を上げようとする力はこの上なく高まっている。これに対し、アメリカは欧州の透明性向上のための提案を拒否し、例によってこの条約もほぼ自国法制の押し付けに使っているので当然と言えば当然だが、今のまま条約の検討を進めることを主張しているというのが今の大まかな世界の状況である(nationaljournal.comの記事、ガイスト氏のブログ記事2参照)。

 しかし、翻って日本を見ると、つい先日の12日に開催された第4回知財本部のコンテンツ強化専門調査会(議事次第参照)でも、その資料インターネット上の著作権侵害コンテンツ対策についての検討状況(pdf)で、具体的な条文を隠したまま、プロバイダーの責任制限とDRM回避規制の強化について「ACTA交渉における主な課題の1つであることを踏まえ、優先して検討」と一方的に宣言した上で、プロバイダーに無意味に責任を押し付け、その免責という形での、侵害行為を繰り返す利用者に対するサービスの停止(ストライクポリシー)やフィルタリングの強制、DRM(アクセスコントロール)回避機器規制における刑事罰の付与、アクセスコントロール回避行為そのものの規制を行うべきとやはり変わらず露骨に危険な規制強化色を出し続け、国民の意見も、関係各者の意見も無視して、政府がぬけぬけとポリシーロンダリングを図っているというのが日本の惨憺たる現状である。欧米における法規制の具体的解釈・運用の問題を勝手に無視して、やはり一方的に国際動向を決めつけているあたりなど、知財本部もやはり日本の官庁の例に洩れず、デタラメな国際動向プロパガンダを行っていることも見逃されてはならない。

(さらに、他の資料「知的財産財推進計画(仮称)」骨子に盛り込むべき事項(案)(コンテンツ強化関連)(pdf)では、「デジタル化・ネットワーク化に対応した著作権制度の在り方(保護期間、補償金等の権利の在り方を含む)について総合的な検討を行い、検討の結果、措置を講じることが可能なものから順次実施しつつ、2012年までに結論を得る。(中期)」という項目も入っているが、既に文化庁と権利者団体以外ではほぼ結論の出そろっている保護期間延長問題について、文化庁のデタラメな采配の結果既に裁判にまで発展している補償金問題について、今現在行政でこれ以上何を検討する必要があるのかさっぱり分からない。この点でも国民の意見は踏みにじられようとしている。)

 政府内の役人は何も考えていないのだろうが、端的に言って、海賊版対策条約(ACTA)について、日本は、自分で言い出しておきながら最も議論が遅れ、他国の異質な法制を一方的に押し付けられようとしているという、さらに、今のままでは日本は丸損の上ネット検閲条約の提案国として世界的に指弾されることになりかねないという愚かにもほどがある状況にある。明日15日にも、知財本部で第4回のインターネット上の著作権侵害コンテンツ対策に関するワーキンググループが開催されるが(開催案内参照)、どのような中間とりまとめ案が出されるか、私は極めて不安である。

 また、前の提出パブコメから公益法人関係の奴を抜き出して少し手を入れただけなので、新しくエントリを立てて載せることはしないが、ハトミミ.comで3月23日〆切で行われている独立行政法人及び公益法人関係のパブコメも提出したので、最後に合わせ書いておく。

(2010年3月16日夜の追記:先日15日に知財本部で第4回のインターネット上の著作権侵害コンテンツ対策に関するワーキンググループが開催された(議事次第参照)。その事務局作成の論点整理資料(pdf)でも、規制の問題点も多少一緒にあげられているものの、相変わらず、知財本部はその問題点の十分な検討もしないまま一方的に、DRM回避機器の規制について、「製造」及び「回避サービスの提供」まで対象行為を広げ、「のみ」要件の緩和・主観的要件と客観的要件の組み合わせによる規制等で対象機器の範囲を広げ、アクセスコントロール回避機器の頒布等に刑事罰を設け、回避機器の水際規制を設け、個人のアクセスコントロール回避行為を規制することが必要ではないかと、プロバイダー責任制限法により、無意味にプロバイダーの責任を増し、その免責条件として、ネット切断などの対策が含まれてくるだろうガイドラインをプロバイダーに押し付けることが必要ではないかと危険な規制強化の項目ばかりを並べ続けている。次回のコンテンツ強化専門調査会は3月23日だが(開催案内参照)、到底実のある議論がされるとは思えず、私の不信は高まるばかりである。)

(2010年3月20日の追記:またも一方的な論点整理が事務局から提示され、要領を得ない議論がなされるのではないかと私は懸念しているが、次回の第5回インターネット上の著作権侵害コンテンツ対策に関するワーキンググループは3月24日開催予定となっている(開催案内参照。コメント・情報ありがとうございます)。また、特許などが中心で他の話に比べるとそこまで問題が大きくないため、あまり取り上げていないが、次回の第5回知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会は3月26日開催予定となっている(開催案内参照)。)

(2010年5月1日の追記:一ヶ所翻訳中の誤記を訂正した。)

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2010年3月 3日 (水)

第218回:新たにリークされた文書から見る模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)に対する日本政府のスタンス(インターネット関連部分)

 前回に少し追記という形で書いたが、カナダのオタワ大教授がそのブログ記事で、海賊版対策条約(ACTA)について新たなリークがあったことを取り上げている。このブログ記事中にリンクが張られている欧州理事会の新リーク文書(pdf)en.swpat.orgで作成されているテキスト版)には、各国政府のスタンスも書かれており、非常に重要な情報が多く含まれているので、新たにエントリを立てることにする。(この文書も偽物にしてはできすぎており、本物であろうと私は思っている。)

 このリーク文書(pdf)において、日米共同提案の欄に2010年1月18日段階のものとしてあげられているインターネット関連部分の条文は、以下のようなものである。(他の国のコメントも重要ではあるのだが、煩雑になるので注釈については主として日本政府のスタンスを示すもの以外は省略した。翻訳はいつも通り拙訳。このリーク文書には、民事エンフォースメント部分も含まれているのだが、この部分についてはまた別途翻訳・紹介したいと思っている。)

[US/AUS: ARTICLE [2.17]{MX: 2.18}: ENFORCEMENT PROCEDURES IN THE DIGITAL ENVIRONMENT

1. Each Party shall ensure that enforcement procedures, to the  extent set forth in the civil and criminal enforcement sections of this Agreement, are available under its law so as to permit effective action against an act of [US: trademark {AUS: infringement}, copyright or related rights][J/EU:intellectual property rights] infringement which takes place [US: by means of the Internet][EU: in the digital environment], including [US: expeditious remedies][MX: measures] to prevent [US/EU: infringement and remedies which constitute a deterrent to further infringement.][MX: or deter such infringements.][EU: Those measures, procedures and remedies shall also be fair and proportionate.]

[J: Japan suppose overall concept of Paragraph 1. However, it should be noted that infringement of intellectual property rights other than trademark, copyright or related rights on the Internet is also a serious problem. This infringement which takes place by means of the Internet should not be limited that of trademark and copyright or related rights.]

2. Without prejudice to the rights, limitations, exceptions or defenses to [{J: patent, industrial design, trademark and}{US: copyright or related rights}] [EU: intellectual property rights] infringement available under its law, including with respect to the issue of exhaustion of rights, each Party [US: confirms that][CH: shall provide for][US/J:  civil remedies][MX: administrative, civil or penal actions], as well as limitations, exceptions, or defenses with respect to the application of such [US: remedies][MX: actions], are available in its legal system in cases of third party liability for  [{J: patent, industrial design, trademark and}{US: copyright or related rights}][EU: intellectual property rights] infringement.

[J: Japan basically supports Paragraph 2 but would like to confirm or propose the matters below:
- "civil remedies...are available" will be implemented if a Party at least makes available either damages or injuctions. In other words, a Party is not obliged to make both damages and injuctions available.
- Infringement of rights to patent, industrial design and trademark by third parties is also a serious problem, so Japan proposes a reference to these rights.
- If this paragraph is to be moved to the Civil Enforcement Section, the question on where this provision should be located in the Civil Enforcement Section should be carefully considered since the original US proposal refers to copyright or related rights while the Civil Enforcement Section bascially does not limit its scope.]

...
Footnote: [J: For the purpose of "civil remedies" shall mean both damages and injonctions or either one of these]

Footnote: For greater certainty, the Parties understand that third party liability [{US: means}{AUS/NZ: may include} liability for any person who authorizes for a direct financial benefit, {US: induces through or by conduct directed to promoting} {CH: induces an} infringement, or knowingly and materially aids any act of {US: copyright or related rights} {J: copyright or related rights} infringement by another.][EU: refer to the concept of holding other persons other than the actual infringer liable for their involvement in the infringement.][US: Further, the Parties also understand that the application of third party liability may include consideration of exceptions or limitations to exclusive rights that are confined to certain special cases that do not conflict with a normal exploitation of the {EU: service or of the product or in the case if copyright of the} work, performance or phonogram, and do not unreasonably prejudice the legitimate interests of the right holder, {US: including fair use, fair dealing, or their equivalents.}{EU: including fair use, fair dealing, or their equivalents}{J: Further the Parties also understand liability may include consideration of exceptions or limitations to exclusive rights that are confined to certain special cases that do not conflict with a normal exploitation of the work, performance or phonogram, and do not unreasonably prejudice the legitimate interests of the right holder, including including fair use, fair dealing, or their equivalents}

Footnote:[J: The first sentence of Footnote (1) is basically acceptable. The second sentence refers to "three-step test" and Japan understands this rule is important, however, the reference is not appropriate because "three-step test" applies to copyright, while the scope of Paragraph 2 should not be limited to copyright or related rights. In addition, making reference to a specific country such as "fair use" is inappropriate in this context.]
...

3. OPTION1 [US Each Party recognize that some persons use the services of third parties, including online service providers, for engaging in copyright or related rights infringement. Each Party also recognises that legal uncertainty with respect to application of {US: intellectual property rights}{AUS: copyright and related rights}, limitations, exceptions, and defenses in the digial environment may present barriers to the economic growth of, and opportunities in, electronic commerce. Accordingly, in order to facilitate the continued development of an industry engaged in providing information services online while also ensuring that measures to take adequate and effective action against copyright or related rights infringement are available and reasonable,{MX: in its legal remedies}][EU: (a) In this respect] each Party [US: shall][CH: may]:

[J: It is worth considering moving 1st and 2nd sentences of paragraph 3 to the preamble of the Agreement or a political declaration to be made on announcing ACTA.]

(a) provide limitations on the [US: scope of civil remedies available against an][EU: on the liability of] online service provider[EU:s} for infringing activities that occur by
(i) automatic technical processes, [US: and][EU: or][MX: Define automatica technical processes]
(ii) the actions of the provider's users that are [US: not directed or] [EU: not directed] initiated [EU: nor modified] by that provider and when the provider does not select the material, [US: and][EU: or]
(iii)[US: the provider referring or linking users to an online location,]
[EU: the storage of information provided by the recipient of the service or at the request of the recipient of the service,] when, in cases of subparagraphs (ii) and (iii), the provider does not have actual knowledge of the infringemetn and is not aware of facts or circumstances from which infringing activity is apparent; and
[EU: when exercising the activities as stipulated in the paragraph 3(a)(ii) and/or (iii) the online service providers act expeditiously, in accordance with applicable law, to remove or disable access to infringing material or infringing activity upon obtaining actual knowledge of the infringement or the fact that the information at the initial source has been removed or disable.]

(b) conditions the application of the provisions of subparagraph (a) on meeting the following requirements:
(i) an online service provider adopting and reasonably implementing a policy to address the unauthorized storage or transmission of materials protected by copyright or related rights [US: except that no Party may condition the limitations in subparagraph (a) on the online service provider's monitoring its services or affirmatively seeking facts indicating that infringing activity is occuring][J: except that no Party may condition the limitations in subparagraph (a) on the online service provider's monitoring its services or affirmatively seeking facts indicating that infringing activity is occuring]; and
(ii) an online service provider expeditiously removing or disabling access to material or [US: activity][MX: alleged infringement], upon receipt [US: of legally sufficient notice of alleged infringement,][MX: of an order from a competent authority] and in the absence of a legally sufficient response from the relevant subscriber of the online service provider indicatig that the notice was the result of mistake or misidentificatin. except that the provisions of (ii) shall not be applied to the extent that the online service provider is acting solely as a conduit for transmissions through its system or network.]

OPTION 3
[J: c) if a Party does not adopt the mesures under subparagraphs (a) and (b), such Party shall ensure that civil remedies to compensate for damages are available against an online service provider who does not take appropriate measures such as removing or disabling access to material or activity to prevent copyright or related rights infringement initiated by its users only when:
(i) it is technically possible to take measures for preventing the infringement, and
(ii) the provider knows or there is a reasonable ground to know that the infringement is occuring.

3 bis. Each Party shall not impose general obligation on online service providers to regularly monitor its service or affirmatively seek facts indicating infringing activity on a daily bassis in order to claim the application of the provision on limitations described in paragraph 3(a) or (b).

3 ter. Each Party shall enable right holders, who have given effective notification to an online service provider of materials that they claim with valid reasons to be infringing their copyright or related rights, to expeditiously obtain from that provider information on the identity of the relevant subscriber.

3 quater. Each Party shall promote the development of mutually supportive relationships between online service providers and right holders to deal effectively with patent, industrial design, trademark and copyright or related rights infringement which takes plce by means of the Internet, including the encouragement of establishing guidelines for the actions which should be taken.]]

[J: The current paragraph 3 proposed by the US is not consistent with Japanese legislation. Provisional texts shown here are still under examination.

Further, the IS Act of Japan provides the limitation on the scope of the ISPs' liability under certain circumstances but the Act limits the scope of civil damages only. That is, the ISP Act mentions nothing about availability of the injuction against an ISP and the courts decide whether the injuction order should be issued on case by case basis.

The ISP Act of Japan does not categorize ISPs into "conduit," "hosting," "caching" or others. In addition, the Act denies civil liabilities for ISPs under the following conditions:
(a) it is technically impossible for an ISP to take measures for preventing the transmission of information; or
(b) an ISP does not know and does not have a reasonable ground to know that infringing activity is occurring.

Meeting the conditions described in subparagraphs (b)(i)and (b)(ii) of US proposal are not required under the ISP Act of Japan. However, adopting and reasonably implementing a policy or removing material upon receipt of notice may be taken into consideration when courts decide whether condition (a) or (b) above is met. Therefore, there is a difference between the structure of the present ACTA draft and the ISP Act of Japan.

Thus, Japan indicates a revision to paragraph 3. The blue sentences are added or modified by Japan to show clearly the difference between present ACTA draft and the ISP ACT of Japan.

Japan would like to clarify whether providing stricter conditions for the limitations of ISP in the Party's national law, compared to the conditions provided in the present ACTA text, will be regarded as a proper implementation of this paragraph or not.]

...
Footnote: An example of such a policy is providing for the termination in appropriate circumstances of subscriptions [US: and][AUS:or] accounts on the service provider's system or network of repeat infringers.

Footnote: [J: The present legislation of Japan does not require an ISP to adopt and implement a "policy," so Japan is now examining how to adjust Footnote (6) to Japanese legislation or vice versa. ]

Footnote: For purposes of this Article, online service provider and provider mean a provider of online services or network access, or the operators of facilities therefore, and includes any entity offering the transmission, routing, or providing of connections for digital online communications, between or among points specified by a user, of material of the user's choosing, without modification to the content of the material as sent or received. [CAN: Examining scope of "modification".][NZ: It is unclear whether the definition of "online service provider" includes a person who hosts material on websites or other electronic retrieval systems that can be accessed by a user.][J: Japan needs to consider further wehter this footnote is acceptable.]

4. OPTION 1
[US: In implementing Article 11 of the WIPO Copyright Treaty and Article 18 of the WIPO Performances and Phonograms Treaty regarding] [CAN/J/EU: In implementing Article 11 of the WIPO Copyright Treaty and Article 18 of the WIPO Performances and Phonograms Treaty regarding] [AUS: In order to provide][EU: Each Party shall provide] adquate legal protection [US: and effective legal remedies][EU: and effective legal remedies] against the circumvention of effective technological measures that are used by authors, performers or producers of phonograms [CH: or any other copyright owner or owner of an exclusive license] in connection with the exercise of their rights and that restrict unauthorized acts in respect of their works, performances, and phonograms, [US: each Party shall provide for civil remedies, as well as criminal penalties] [EU: each Party shall provide for civil  remedies, as well as criminal penalties] in appropriate cases of willful conduct, that apply to:
(a) the unauthorized circumvention of an effective technological measure [US: that controls access to a protected work, performance, or phonogram] [EU: that controls access to a protected work, performance, or phonogram]; and
(b) the manufacture, importation, or circulation of a technology, service, device, product, component, or part thereof, that is: marketed or primarily designed or produced for the purpose of circumventing an effective technological measure; or that has only a limited commercially significant purpose or use other than circumventing an effective technological measure.

[EU: 4.2 Each Party may provide for measures which would safeguard the benefit of certain exceptoins and limitations to copyright and related rights, in accordane with its legislation.]

4. OPTION 2 [J: Each Party shall provide for civil remedies that apply to:
(a) the importation, assignment, delivery of (i) a device (including a machine incorporating such device) or, (ii) data storage media or a machine on which a program having sole function of circumventing an effective technological measure is stored; or
product, component, or part thereof, that is: marketed or primarily designed or produced for the purpose of circumventing an effective technological measure; or that has only a limited commercially significant purpose or use other than circumventing an effective technological measure.
(b) the provision through an electric telecommunication line, of a program having sole function of circumventing an effective technological measure.

[J: Japan understands that the WIPO treaties do not require the Parties to implement the restriction on circumvention of access control. Thus, making reference to the WIPO treaties is inappropriate. The Copyright Act and the Unfair Competition Prevention Act of Japan restrict circumvention of effective technological measures under certain conditions (The Copyright Act does not restrict circumvention of access control.). However, these Laws do NOT provide:
- a restriction on circumvention of access control itself,
- a restriction on manufacture, importation and circulation of a technology for circumvention of access control,
- a restriction on importation or circulation of services for circumvention of access control,
- a restriction on manufacture of devices for circumvention of access control, and
- criminal penalties for circumvention of access control or any related acts, such as manufacturing of or trafficking in devices for circumvention of access control.
Therefore, Japan is now examining how to fix the difference between its legislation and present ACTA draft, with due regard to maintaining a balance between the rights of authors and the larger public interest, e.g. education, research, and cannot provide definitive comments on Paragraph 4 at this time. Japan reserves the right to make further comments on Paragraph 4.

Japan would like to know from the US or other countries which adopt a restriction on circumvention of access control, the concrete example and data and background of the legislation. That is, amount of harm by circumvention of access control, how effective the legal remedy against the circumvention of access control was (e.g. shrinkage of harm, number of litigation cases, what kind of major actions were ceased in terms of copyright protection perspective.).]

...
Footnote: [US: The][EU: In accordance with the applicable national legislation, the] obligations in paragraphs (4) and (5) [US: are][EU: may be] without prejudice to the rights, limitations, or defenses to copyright or related rights infringement. Further, [US: in implementing paragraph (4), no Party may][EU: paragraph (4) does not imply any obligation to] require that the design of, or the design and selection of parts and components for, a consumer electonrics, telecommunications, or computing product provide for a response to any particular technological measure, so long as the product does not otherwise violate any measures implementing paragraph (4).[CAN: clarification of relationship of exceptions to access control measures.][J: Japan reserves its position on Footnote (8) because the acceptability of this Footnote depends on the scope of Paragraph 4. The current legislation of Japan does not mandate devices to respond to any particular technological measure.]
...

[5. Each Party shall provide [US: that a][EU: adequate legal protection against a] violation of a measure implementing paragraph (4) [US: is a separate civil or criminal offense,][EU: is a separate civil or criminal offence] independent of any infringement of copyright or related rights. Further, [US: each Party may adopt exceptions and limitations to measures implementing {US: subparagraph (4)}{J: paragraph 4} so long as they do not significantly impair the adequacy of legal protection of those measures or the effectiveness of legal remedies for violations of those measures.][EU: each Party may provide for measures which would safeguard the benefit of certain exceptions and limitations to copyright and related rights, in accordance with its legislation.]

[J: Japan accepts the concept of the first sentence of Paragraph 5, which provides that the liability for the infringement of copyright or related rights and the circumvention of effective technological measures are separate from and independent of each other. Japan reserves its position on the second sentence, especially the phrases following "so long as" since we would like to examine those phrases in connection with Paragraph 4.]

6. [US: In implementing Article 12 of the WIPO Copyright Treaty and Article 19 of the WIPO Performances and Phonograms Treaty on providing][CAN: In implementing Article 12 the WIPO Copyright Treaty and Article 19 of the WIPO Performances and Phonograms Treaty regarding][AUS: In order to provide] adequete and effective legal remedies to protect [J: electronic] rights management information, [EU: In implementing Article 12 the WIPO Copyright Treaty and Article 19 of the WIPO Performances and Phonograms Treaty on providing adequete and effective legal remedies to protect rights management information] each Party shall provide [US: for civil remedies, as well as criminal penalties][EU: adequate legal protection to protect electronic rights management information] in appropriate cases of willful conduct, that apply to any person performing any of the following acts knowing [J: or with respect to civil remedies having reasonable grounds to know] that it will induce, enable, facilitate, or conceal an infringement of any copyright or related right [J: covered by the treaties above]:
(a) to remove or alter any [AUS/J/EU: electronic] right management information
(b) to distribute, import for distribution, broadcast, communicate, or make available to the public [J: without authority], copies of works, performances, or phonograrns, knowing that [AUS/REU: eleetronicirights management information has been removed or altered without authority.

[EU: 6.2 Each Party may adopt appropriate exceptions to the requirements of subparagraphs (a) and (b)]

[J: The word "electronic" should be inserted before "rights management information" in paragraph 6 because WIPO treaties explicitly confine the Contracting party's obligations concerning RMI to providing the remedies against removing or altering electronic RMI, and other acts with the knowledge of such removing and altering. It should be noted that Article 12 of the WCT and Article 19 of the WPPT stipulate "Contracting Parties shall provide adequate and effective legal remedies against any person knowingly performing any of the following acts knowing, or with respect to civil remedies having reasonable grounds to know, that will induce, enable...Infringement..." Thus, the expression of this provision should be examined again in civil remedies context.

The word "without authority" should be inserted as it is in the WCT and the WPPT.]

[7. Each Party may adopt appropriate limitations or exceptions to the requirements of subparagraphs (a) and (b) of paragraph (6) [J: so long as they do not significantly impair the adequacy of legal protection or effectiveness of legal remedies against the acts of provided in that paragraph.]

[J: The brackets in paragraph 7 intends to confirm that exceptions to the requirements regarding electronic RMI are permissible but they should not impair the adequacy of the restrictions stipulated in paragraph 6.]

[米/豪:[第2.17条]{メキシコ:2.18} デジタル環境におけるエンフォースメント手続き

第1項 各加盟国は、インターネットを用いることで発生する、[米:商標権{豪:侵害}、著作権あるいは著作隣接権権][日/欧:知的財産権]侵害行為に対する効果的な措置を取ることを可能とするよう、侵害を抑止する[米:迅速な救済措置]、[米/欧:さらなる侵害を防止する救済措置][メキシコ:そのような侵害を防止あるいは抑止する手段]を含め、本条約の民事的・刑事的エンフォースメントの章に書かれている限りのエンフォースメント手続きを国内法で担保しなければならない。[欧:この手段、手続きと救済措置は、公平でバランスの取れたものでなくてはならない。]

(注:日:全体として第1項のコンセプトを日本は支持する。しかし、商標権、著作権あるいは著作隣接権以外のインターネットにおける侵害も深刻な問題であるということに注意するべきである。インターネットを用いることで発生するこの侵害は、商標権、著作権あるいは著作隣接権に限定されるべきではない。)

第2項 権利の消尽に関する事項を含め、その国内法で担保されている[{日:特許権、意匠権、商標権及び}{米:著作権あるいは著作隣接権}][欧:知的財産権]に対する権利、権利制限、例外あるいは抗弁にかかわらず、各加盟国は、[{日:特許権、意匠権、商標権及び}{米:著作権あるいは著作隣接権}][欧:知的財産権]に関する第3者責任(訳注:間接侵害)のケースにおける[日米:民事的救済措置][メキシコ:行政、民事あるいは刑事上の措置]、並びにその[米:救済措置][メキシコ:措置]の適用に関する制限、例外あるいは抗弁の担保をその法体系中でしなければならない。

(注:日:日本は基本的に第2項を支持するが、以下のような事項を確認するか、提案する:
ー「民事的救済措置を...担保する」について、加盟国は、少なくとも損害賠償か差し止めを担保することで国内法への取り入れがなされたこととする。つまり、加盟国は、損害賠償と差し止めの両方を担保することを求められることはない。
ー第3者による、特許権、意匠権、商標権の侵害も深刻な問題であり、日本はこれらの権利への言及を提案する。
ーこの項が民事エンフォースメント章に移される場合、アメリカの原案が著作権と著作隣接権のみを言及しているのに対し、民事エンフォースメント章は基本的にその範囲を限定していないため、この規定が民事エンフォースメントの章に置かれるべきか否かは注意深く検討されなくてはならない。)

(脚注:[日本:「民事的救済措置」について、これは損害賠償か差し止めの両方かそのどちらかを意味する。])

(脚注:明確性のため、各加盟国は、第3者責任は[他者による{米:著作権あるいは著作隣接権}{日:著作権あるいは著作隣接権}侵害行為を、直接的な経済的利益を得るために、{米:その振る舞いによって}侵害に寄与するか、意図的かつ具体的に幇助することを{米:意味する}{豪NZ:含む}][欧:侵害に関与し責任を負う実際の侵害者以外の者を押さえることに関するものである。][米:さらに、加盟国は、この責任は、{米:フェアユース、フェアディーリングあるいはこれらと同等のものを含め、}{欧:フェアユース、フェアディーリングあるいはこれらと同等のものを含め、}排他的権利の例外あるいは制限が、著作物、実演あるいは録音の{著作権が問題となる場合は、そのサービスあるいは製品の}通常の利用を害さず、権利者の正当な利益を不当に害しない特別な場合に限定されるという考慮を含むと理解する。][日:さらに、加盟国は、この責任は、フェアユース、フェアディーリングあるいはこれらと同等のものを含め、排他的権利の例外あるいは制限が、著作物、実演あるいは録音の通常の利用を害さず、権利者の合法利用を不当に害しない特別な場合に限定されるという考慮を含むと理解する。])

(脚注:[日:脚注(1)の第1段落は基本的に受け入れ可能である。第2段落は「3ステップテスト」に言及しており、日本はこのルールが重要であることを理解している、しかし、第2段落の対象は著作権あるいは著作隣接権に限定されるべきではないため、「3ステップテスト」は著作権に適用されるものであるから、この言及は適切でない。さらに、この文脈において、「フェアユース」のような特定の国への言及を行うことも適切でない。])

第3項 オプション1 [米:各加盟国は、オンライン・サービス・プロバイダーを著作権あるいは著作隣接権の侵害のために用いる者がいることを認める。各加盟国はまた、デジタル環境における{米:知的財産権}{豪:著作権及び著作隣接権}、権利制限、例外と抗弁の適用に関する法的不明確性が、電子取引の経済的成長とその機会の障害となっているだろうことも認める。したがって、オンラインの情報サービス産業の持続的発展を促進し、著作権あるいは著作隣接権侵害に対する適切で効果的な措置を[{メキシコ:法的な救済措置として}][欧:(a)この点で]合理的な形で担保するため、各加盟国は、以下のこと[米:を行わなければならない][スイス:ができる]:

(注:[日:第3項の第1段落と第2段落を条約の前段あるいは海賊版対策条約についてなされるだろう政治的宣言中に移すことは検討に値する。])

(a)次のことによって発生する侵害行為について、オンライン・サービス・プロバイダー[米:に対して使用可能な民事救済措置の範囲][欧:の責任]についてその責任制限を行うこと:
(ⅰ)技術的な自動プロセス、[米:及び][欧:あるいは][メキシコ:技術的な自動プロセスの定義]
(ⅱ)プロバイダーがそのデータを選別しない場合の、プロバイダーによって[米:管理あるいは開始されたものでは][欧:管理・開始されたものでも、変更されたものでも]ないプロバイダーのユーザーの行為、[米:及び][欧:あるいは]
(ⅲ)小段落(ⅱ)と(ⅲ)のケースで、プロバイダーが、侵害を実際に知らず、その事実あるいは侵害行為が見られる状況に気づいていなかった場合に、[欧:かつ、第3項(a)(ⅱ)及び/あるいは(ⅲ)に規定されている行為を実行するオンライン・サービス・プロバイダーが、適用される法律に従い、侵害を実際に知ったことから権利侵害物あるいは侵害行為の除去あるいはアクセスの停止を迅速に行った場合に、][欧:サービスの受け手の求めに応じてあるいはサービスの受け手によって提供される情報の蓄積を、][米:オンラインのある場所をユーザーに参照させる、あるいは、その場所とユーザーを接続すること];そして、

(b)(a)の規定の適用は、以下の要件を満たす場合とすること:
(ⅰ)オンライン・サービス・プロバイダーが、著作権あるいは著作隣接権によって保護される物の不正蓄積あるいは不正送信に対する対策を採用し、合理的に実施する場合。[米:ただし、この(a)の責任制限において、いかなる加盟国も、オンライン・サービス・プロバイダーがそのサービスを監視すること、あるいは、侵害行為が生じていることを示す事実を積極的に探すことを条件とすることはできない][日:ただし、この(a)の責任制限において、いかなる加盟国も、オンライン・サービス・プロバイダーがそのサービスを監視すること、あるいは、侵害行為が生じていることを示す事実を積極的に探すことを条件とすることはできない];及び
(ⅱ)オンライン・サービス・プロバイダーが、侵害の疑いの法的に十分なノーティスの受け取りに基づいて、そのノーティスの内容あるいは宛先が間違いであることを述べるオンライン・サービス・プロバイダーのユーザーからの返答がない場合に、その物へのアクセスあるいは[米:行為][メキシコ:侵害の疑いのある行為]を、迅速に止めるか取り除く場合。ただし、オンライン・サービス・プロバイダーがそのシステムあるいはネットワークを通じて単に伝送者として振る舞っている場合には、この(ⅱ)の規定は適用されない。]

オプション3
[日:(c)小段落(a)及び(b)に規定されている手段を加盟国が採用しない場合、次の場合にのみ、その利用者によって開始される著作権侵害あるいは著作隣接権侵害を防止するため、その物あるいは行為を除去あるいは停止する適切な手段を取らなかったオンライン・サービス・プロバイダーに対する損害賠償請求の民事的救済措置を担保しなければならない。
(ⅰ)侵害を防止するための手段が技術的に取り得る場合、そして
(ⅱ)プロバイダーが侵害が生じたことを知っているか、知ったとする合理的な理由がある場合。

第3項の2 第3項(a)あるいは(b)の規定の適用を求めるに当たり、日々恒常的にそのサービスを監視し、侵害行為を示す事実を積極的に探す義務をオンライン・サービス・プロバイダーに課すことはできない。

第3項の3 各加盟国は、権利者が、著作権あるいは著作隣接権を侵害されているとする有効な理由に基づく請求として有効な通知をオンライン・サービス・プロバイダーに送った権利者に、関係する契約者の個人情報をプロバイダーから迅速に得ることを可能としなければならない。

第3項の4 各加盟国は、取られるべき措置についてのガイドライン策定の促進など、インターネットを用いることで派生する、特許権、意匠権、商標権と著作権あるいは著作隣接権侵害に適切に対処するための、オンライン・サービス・プロバイダーと権利者の間の相互協力の発展を支援しなければならない。]]

(注:アメリカの提案による現在の第3項は、日本の法制と一致しない。この部分の規定の文言はまだ検討を要する。

 さらに、日本のプロバイダー責任制限法は、インターネット・サービス・プロバイダー(ISP)の範囲をある状況に制限しており、この法律は範囲を民事的な損害賠償請求のみに限定している。つまり、プロバイダー責任制限法は、ISPに対する差し止めについて言及しておらず、差し止めを出すか否かは裁判所がケースバイケースで決定することになっている。

 日本のプロバイダー責任制限法は、ISPを通信、ホスト、キャッシュ等に分類していない。さらに、この法律は次の条件下におけるISPの民事的な責任を否定している。
(a)情報の通信を防止する技術的手段を取ることがISPに不可能である場合;あるいは
(b)侵害行為が発生したことを知らないか、知ったとする合理的な理由がない場合。

 アメリカの提案中の小段落(b)(ⅰ)と(b)(ⅱ)に書かれた条件を満たすことは、日本のプロバイダー責任制限法では求められない。しかし、通知を受け取り、その物を除去するポリシーを採用し、合理的に実行することは、上記の(a)あるいは(b)の条件を満たすかどうかについて裁判所が判断する時に考慮に入れられる。したがって、今のACTA案の構成と日本のプロバイダー責任制限法の間には違いがある。

 したがって、日本は第3項の改訂を示唆する。日本によって追加されたあるいは変更された青字の文章は、今のACTA案と日本のプロバイダー責任制限法の間の違いを明確に示すものである。

日本は、今のACTAの文言で規定されている条件と比較して、国内法でISPの制限により厳しい条件を規定することがこの項の適切な国内法への導入とみなせるかどうかについての確認を求める。)

(脚注:このような対策の例として、適切な状況において、サービス・プロバイダーのシステムあるいはネットワークにおける繰り返しの侵害者のアカウント[米:及び][豪:あるいは]契約の停止がある。)

(脚注:[日:日本の現行法制は、「ポリシー」を採用し、実行することをISPに求めていない、つまり、日本は今いかに脚注(6)を日本の法制に合わせるか、あるいはその逆とするかを検討しているところである。])

(脚注:本条について、オンライン・サービス・プロバイダーとプロバイダーは、オンラインサービスあるいはネットワークアクセスの提供者、あるいは、その設備のオペレーターを意味し、送受信される物の内容に変更を加えない、利用者の選択による物の、利用者によって特定される点の間の、通信、ルーティング、デジタルオンライン通信への接続の提供を行うあらゆる者を含む。[加:「変更」の範囲について要検討。][NZ:利用者によってアクセスされ得る、ウェブサイト上の物をホストする、あるいは、他の電子的検索システムが、「オンライン・サービス・プロバイダー」に含まれるのかどうか不明確である。][日:日本は、この脚注が受け入れ可能かどうかさらに検討を要する。]

第4項 オプション1 その権利の行使に関係する形で著作権者、実演家あるいはレコード製作者[スイス:あるいは他の著作権の権利者あるいは排他的権利のライセンサー]によって用いられ、その著作物、実演あるいは録音に関する不正行為を制限する、有効な技術的保護手段の回避に対する適切な法的保護[米:と法的救済措置][欧:と法的救済措置][米:に関する、WIPO著作権条約の第11条とWIPO実演・レコード条約の第18条を取り入れ、][日/欧/加:に関する、WIPO著作権条約の第11条とWIPO実演・レコード条約の第18条を取り入れ、][欧:を、]加盟国は、適切な意図的行動のケースにおいて[米:民事的救済措置と刑事的救済措置を]規定する。この手段は、次のことに適用される。
(a)[米:著作物、実演あるいは録音へのアクセスをコントロールする][欧:著作物、実演あるいは録音へのアクセスをコントロールする]有効な技術手段の不正な回避;及び
(b)つまり、主として有効な技術的保護手段を回避する目的で販売されるか、主としてその目的のために設計されている、あるいは、有効な技術的保護手段を回避する以外に重要な商業的目的を持たない、技術、サービス、機器、製品、部品あるいはその一部をなす物の製造、輸入あるいは流通。

[欧:第4.2項 各加盟国は、その国内法に従い、著作権と著作隣接権への例外と権利制限の利益を保持することができる。]

第4項 オプション2 [日:各加盟国は、次のことに適用される民事的救済措置を規定する:
(a)有効な技術的手段を回避する機能のみを有する(ⅰ)機器(そのような機器を組み込んだ装置も含む)あるいは(ⅱ)プログラムを有する媒体あるいは装置;あるいは、有効な技術的手段を回避する目的のためのみに販売されるか、主として設計あるいは製造された製品、部品あるいはその一部;あるいは、有効な技術的手段を回避する以外には限定された商業的目的あるいは用途しか持たない物の輸入、譲渡、頒布。

(b)有効な技術的手段の回避の機能のみを有するプログラムの電気通信回線を通じた提供。]

(注:[日:WIPO条約は、アクセスコントロール規制の導入を加盟国に求めるものではないと日本は理解している。したがって、WIPO条約への言及は不適切である。日本の著作権法と不正競争防止法は、ある条件下で有効な技術的手段の回避を規制している(著作権法は、アクセスコントロールの回避を規制していない。)。しかし、これらの法は、次のことを規定していない:
ーアクセスコントロール自体の回避の規制
ーアクセスコントロール回避技術の製造、輸入と流通の規制
ーアクセスコントロール回避サービスの輸入あるいは流通の規制
ーアクセスコントロールのための機器の製造の規制、そして
ーアクセスコントロール回避、あるいは、アクセスコントロール回避機器の製造あるいは売買のような関係する行為に対する罰則。
したがって、著作者の権利と、教育、研究といったより大きな公益とのバランスの維持を尊重しつつ、今のACTA案と国内法制の間の差を埋める検討を行っているところであり、現時点で第4項について決定的なコメントをすることはできない。第4項についてさらなるコメントをする権利を日本は留保する。

そのアクセスコントロール規制を採用しているアメリカと他の国から、その法制の具体的な例とデータと背景についての情報を日本は求める。つまり、アクセスコントロールの回避によって生じる被害の量、アクセスコントロール回避に対する法的な救済措置がどれほど有効であるか(例えば、被害の縮小、裁判となったケースの数、著作権の保護につい主としてどのような行為が止まったか)といったことについてである。)

第5項 第4項に書かれている手段を破ること[米:が、][欧:に対する適切な法的保護を、]著作権あるいは著作隣接権侵害とは独立に、[米:別々の民事あるいは刑事上の侵害行為となることを、][欧:別々の民事あるいは刑事上の侵害行為となることを、]各加盟国は規定しなければならない。さらに、[米:第4項に書かれている手段について、この手段の適切な法的保護あるいはこの手段を破ることに対する法的救済措置の有効性を大きく損なうものでない限りにおいて、各加盟国は、第4項に書かれていいる手段について制限あるいは例外を採用することができる。][欧:加盟国は、その国内法に従い、著作権と著作隣接権の例外の利益を保持することができる。]

(注:[日本は、著作権あるいは著作隣接権の侵害の責任と有効な技術的手段の回避が別個のものであると規定する第5項の第1文のコンセプトを受け入れる。ただし、第4項との関係で、その語の意味を検討したいと考えるため、日本は第2文、特に「限りにおいて」以前の部分の語についての態度を保留する。])

(脚注:[欧:適用される国内法に従う、]第4項と第5項の義務は、権利、制限あるいは、著作権あるいは著作権侵害に対する抗弁にかかわらない[欧:ものであり得る]。さらに、別な形で第4項で規定されている手段を破るものでない限りにおいて、特定の技術的手段に反応するものでない、電子製品、通信機あるいは計算機の設計、あるいはその部品の設計と選択に対する義務を[米:第4項を国内法に導入するに当たり、どの加盟国も課されることはない。][欧:第4項によって課されることはない。][加:権利制限とアクセスコントロール回避との関係を明確化する必要あり。][日:この脚注を受け入れられるかどうかは、第4項の範囲によるため、日本は脚注(8)に対する態度を留保する。日本の現行法制は、機器に特定の技術的手段に反応することを義務づけるものではない。]

第6項 [日:電子的な]権利管理情報の保護のための適切で効果的な法的救済措置の規定[米:に関する、WIPO著作権条約の第12条とWIPO実演・レコード条約の第19条を国内法に取り入れ、][加:に関する、WIPO著作権条約の第12条とWIPO実演・レコード条約の第19条を国内法に取り入れ、][欧:権利管理情報の保護のための適切で効果的な法的救済措置の規定に関する、WIPO著作権条約の第12条とWIPO実演・レコード条約の第19条を国内法に取り入れ、]加盟国は、適切な意図的行動のケースにおいて[米:民事的救済措置と刑事的救済措置を][欧:電子的な権利管理情報の保護のための適切な法的措置を]規定する。この手段は、それが[日:この条約によってカバーされる]著作権あるいは著作隣接権侵害に寄与するか、それを可能とするか、助長するか、隠すだろうことを知りながら、[あるいは、知ったとする合理的な理由がある場合の民事的救済措置に関し、]次の行為を行う者に適用される:
(a)不正な[日/欧/豪:電子的な]権利管理情報の除去あるいは改変;及び
(b)その権利管理情報が不正に除去されているか改変されていることを知りながら、[不正になされる]著作物、実演あるいは録音の複製物の頒布、頒布のための輸入、放送、送信あるいは公衆送信可能化。

[欧:6.2項 小段落(a)と(b)の要件に対して、各加盟国は適切な例外を設けることができる。]

(注:WIPO条約は明確に権利管理情報について、電子的な権利管理情報の除去あるいは改変、そして、そのような除去または改変を知って行う他の行為に対する救済措置のみを規定しているため、第6項の「権利管理情報」の前に「電子的な」を入れるべきである。WIPO著作権条約の第12条とWIPO実演・レコード条約の第19条は、「加盟国は、...侵害...を可能とし、それに寄与すると知りながら、あるいは知ったとする合理的な理由がある場合の民事的救済措置に関し、次の行為の実行を意図的に行う者に対する適切で有効な法的救済措置を規定しなければならない」と規定していることが注意されるべきである。したがって、この規定の書きぶりは、この民事的救済措置の文脈で再検討されなければならない。

WIPO著作権条約とWIPO実演・レコード条約と同じく、「不正になされる」という語を入れるべきである。)

第7項 [日:第6項で規定されている行為に対する法的救済措置の適切な法的保護あるいは有効性を大きく損なうことがない限りにおいて、]各加盟国は、第6項の小段落(a)と(b)の要件について適切な制限あるいは例外を採用することができる。

(注:第7項の括弧は、権利管理情報に関する要件の例外は可能であるが、第6項に規定されている制限の有効性を損なうものであってはならないということを確認することを目的としている。)

 詳しくは上を読んでもらえればと、かなり略した部分もあるのでさらに詳しくは原文を読んでもらえればと思うが、日本政府は、一応かなりの留保をしているものの、この条文と注から、海賊版対策条約(ACTA)のインターネット関連部分において対象を著作権だけでなく特許権などまで広げようとしていたり、第3項の3で、プロバイダーの責任制限について、権利者が個人情報を迅速に得ることを可能とするといった国内法の改正が必要となるだろうことを勝手に提案していたりとかなり大きなコミットメントを一方的に行っていると分かる。これがポリシーロンダリングでなくて何だと言うのか。(なお、変更の提案箇所を見ると、第216回で紹介したリーク文書はアメリカ提案の条文であったことが分かる。)

 また、他の点でも留保してはいるが、プロバイダーの責任制限とセットにしたストライクポリシーの導入やDRM回避規制強化などについて、今のACTAの条文案と国内法制を合わせられるかどうかの検討を行うと2010年1月時点で明言しており、これらの点でも、日本政府はポリシーロンダリングをやる気であると知れる。知財本部で今異常なペースで検討が進められているのはその所為だろうが、このような詳しい条文案と国内法制の差異、コミットメントに関する情報を隠したまま検討を進めるなど姑息以外の何ものでもない。

 この新たにリークされた文書は、今の日本政府の姑息なポリシーロンダリング、知財本部における検討を理解する上で、第1級の資料である。4月の次の会合に向けて、知財本部がこの条文案に沿い、極めて危うい形で拙速に結論を出そうとして来るのではないかという私の危惧はこれでますます強まった。今日も開催されることになっているが、知財本部の検討からは全く目が離せない。

(2010年3月4日の追記:昨日インターネット上の著作権侵害コンテンツ対策に関するワーキンググループの第3回が開催された(議事次第参照)。その資料事務局による論点の再整理について(pdf)に書かれていることは、プロバイダーに無意味に責任を押し付け、その免責という形での、侵害行為を繰り返す利用者に対するサービスの停止(ストライクポリシー)や、迅速な削除の強制、裁判外での個人情報の開示、アクセスコントロール回避行為そのものの規制、規制対象となるDRM回避機器の「のみ」要件の、主観的要件あるいは「主たる」、「専ら」といったより曖昧な形への拡大と、知財本部・事務局は、案の定、今の海賊版対策条約(ACTA)の条文案を完全に意識し、危険な規制強化色を露骨に出して来ている。)

(2010年5月1日の追記:翻訳中の誤記をいくつか訂正した。)

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2010年3月 2日 (火)

第217回:知財本部のDRM回避規制強化・プロバイダーの責任制限(ストライクポリシー)・海賊版対策条約(ACTA)に関する検討資料

 「P2Pとかその辺のお話@はてな」でDRM回避規制強化の検討の話を取り上げているが、今現在、知財本部で「コンテンツ強化専門調査会」と「知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会」という2つの検討会が設けられ、さらにコンテンツ強化専門調査会の下位の検討会として「インターネット上の著作権侵害コンテンツ対策に関するワーキンググループ」という名のワーキンググループが設けられ、様々な検討が行われている。今回は、コンテンツ強化専門調査会とインターネット上の著作権侵害コンテンツ対策に関するワーキンググループの2つの検討会の資料から、DRM回避規制強化やストライクポリシー、海賊版対策条約(ACTA)などの特に危険な項目に関する今の検討の流れを追って行きたいと思う。

(1)DRM回避規制強化
 DRM回避規制強化については、2月16日の第1回「インターネット上の著作権侵害コンテンツ対策に関するワーキンググループ」(議事次第議事録)で大々的に取り上げられているが、その資料アクセスコントロールの回避規制の在り方に関する主な論点(pdf)で主な論点としてあげられていることを抜き出すと以下のようになる。

1.保護目的について
 現在、アクセスコントロールについては、コンテンツ提供事業者間の公正な競争を確保する観点から不正競争防止法において回避機器の頒布等を規制しているが、現在の状況を考えると、新たに著作物を保護する観点からも規制することが必要ではないか。

2.回避機器の規制について
①刑事罰の導入について
 規制対象となっている行為を民事措置では十分に抑止できない中で、回避機器の頒布等に対する刑事罰を導入することが適当か否か。
②水際規制の導入について
 中国等から輸入される回避機器を水際で食い止める観点から、水際規制を導入することが適当か否か。
③規制行為の範囲の拡大について
 規制の実効性を高める観点から、回避機器の「製造」及び「回避サービスの提供」を規制することが適当か否か。
④対象機器の範囲の拡大について
 意図的に他の機能を付した規制対象とならない機器に対応するため、規制対象機器の範囲(不正競争防止法上は「のみ」)を拡大することは適当か否か。
⑤主観的要件による規制について
 実質的に回避することに使えることを名目に、現行の規制対象とならない機器(「のみ」要件を満たさないもの)を販売している行為等を防止する観点から、主観的要件(例えば「回避に用いられることを知りながら」)によって規制範囲を拡大することは適当か否か。
⑥例外規定について
 企業の研究開発行為等を阻害しないようにするための例外規定を整備することは必要か否か。

3.回避行為の規制について
①規制範囲について
 著作物の保護手段としてのアクセスコントロールの重要性の高まりを踏まえ、回避行為そのものを規制することは適切か否か。また、規制する場合は、刑事罰の是非についてどう考えるか。
②例外規定について
 正当な著作物の利用を阻害しないようにするための例外規定を整備することは必要か否か。

 細かなところでは両論併記とされているところもあるが、この項目を見ただけでも、a.著作権法にアクセスコントロール回避規制を導入する、b.アクセスコントロール回避機器の頒布等に対する刑事罰を導入する(現行では不正競争防止法により民事的措置のみ規定されている)、c.DRM回避について機器の製造やサービスの提供まで規制の対象とする、d.DRM回避機能のみを有する機器といった現行法の「のみ」要件を「主として」といったさらに曖昧な要件に改める、e.主観的要件により機器等の対象範囲を曖昧にすることを許し実質的にDRM回避規制について間接侵害を明文化する、f.アクセスコントロール回避行為そのものを規制すると、知財本部もおよそ危険な規制強化のことしか考えていないことがすぐに分かる。

 しかし、著作権法にアクセスコントロール回避(機器)規制を入れることは、著作権法が対象とする複製権を完全に超えて、間違いなく個人の情報アクセスに多大の制約を課すことになるアクセスコントロール回避機器の頒布等に対する刑事罰の導入や、「のみ」要件を「主として」といったさらに曖昧な要件とすることはマジコン訴訟で示された法解釈・現行法制の有効性を無視する危険な規制強化であり、DRM回避規制に関する法的不安定性をさらに増すことにしかならないだろう(マジコン訴訟については番外その15参照)。機器の頒布等を超えて、機器の製造やサービスの提供まで規制することは、メーカーやネットサービス事業者における技術開発に甚大な萎縮効果を発生させることになるだろう。間接侵害の明文規定の危険性については何度も繰り返しているが、DRM回避を対象とする場合でもその危険性は同じことであり、明文の間接侵害規定を作った途端、権利者団体や放送局がまず間違いなく山の様に脅しや訴訟を仕掛けて来、今度はこの間接侵害規定の定義やそこからの滲み出しが問題となり、無意味かつ危険な社会的混乱を来すことは目に見えているのである。個々の行為による被害が不明であり、その捕捉が困難である場合には民事による規制すらなされるべきではないとする当然の原則が忘れられ、個人のアクセスコントロール回避行為そのものの規制という検討項目が政府の公式の検討資料に出て来ること自体異常なことと言わざるを得ない、さらにこのような捕捉不可能な行為について刑事罰をかけることなどそれこそあり得ない話である。(海外でアクセスコントロール規制を著作権法で規定している国が多いのも、単に法制定時にアクセスコントロールとコピーコントロールの区別がそれらの国できちんとついていなかったことを示すに過ぎず、何の参考にもならない。既に問題とされている国もあるが、ほとんどの国で今後行き過ぎたアクセスコントロール回避規制は大きな問題となって行くことだろう。)

 例外さえ設ければ大丈夫といったバカげた考えも見られるが、技術の発展を見越して適切な例外を設けることが不可能であることは、文化庁における権利制限の検討を見ればすぐに分かることである。さらに、今の一般フェアユース条項に関する議論を考えても、一旦規制を強化してしまったら、いかに合理性があろうと、ある程度柔軟な対応を可能とする一般的な例外を設けることすら不可能に近くなるのは目に見えている。

 つい昨日の3月1日の第3回の「コンテンツ強化専門調査会」(議事次第)の資料知的財産財推進計画(仮称)」骨子に盛り込むべき事項(コンテンツ強化関連)(pdf)でも、「アクセスコントロールの回避規制を強化する。(中期)」(第8ページ)、「製品開発や研究開発等の萎縮を招かないよう適切な除外規定を整備しつつ、アクセスコントロールの回避規制の強化を図る。(短期)」(第10ページ)とされており、まだこのような危険な規制強化の検討を続けるつもりと見えるが、現行法の成立経緯と今の運用を完全に無視したこのようなバカげた規制強化の検討に取るべきところは何1つ無い。(なお、現行の規制とその成立経緯については、第36回第45回参照。)

(2)プロバイダーの責任制限(ストライクポリシー)
 2月22日の第2回ワーキンググループ(議事次第議事録)では、プロバイダーの責任制限が取り上げられている。その資料プロバイダの責任の在り方に関する主な論点(pdf)で主な論点としてあげられていることを抜き出すと以下のようになる。

1.プロバイダによる侵害対策措置について
①プロバイダの役割の変化
 プロバイダ責任制限法(2001年)制定時と比較し、ブロードバンド環境の進展によって音楽・動画等の著作権侵害コンテンツが氾濫する等の状況変化の中、プロバイダには、その性格に応じ、要請に応じた削除以上の役割を求めるべきか否か。
②侵害対策措置の範囲
 プロバイダ責任制限法は、対象として接続プロバイダから動画共有サイトから動画共有サイト等を広く含んでいることに加え、個人や事業者の区別をしていないが、プロバイダに求められる侵害対策措置とは、プロバイダ一般なのか、動画共有サイト等の限定されたプロバイダを射程とするものか。
③実効性について
 侵害対策措置を推進するにあたっては、現実的にどのような対象に重点を置くべきなのか。すなわち大手等なのか、「アウトロー」まで及ぼすことに重点を置くのか。
④プロバイダの侵害対策措置の法律的枠組み
 仮にプロバイダに対して一定の侵害対策措置の実施を促すためには、例えば、法律的にはどのような枠組みが考えられるか。

2.迅速な削除について
 プロバイダの管理するサーバーにアップロードされた著作権侵害コンテンツを迅速に削除するためには、どのような仕組みが必要か。
 通知があった際に削除すれば完全に免責とするセーフハーバー条項を設けることについてはどうか。
 また、迅速に削除することを法令上明確にすることについてはどうか。

3.発信者情報の開示について
 権利者による警告、損害賠償請求等の権利執行を迅速に行うため、発信者情報の開示についてどのような仕組みが必要か。

 詳しくは元の資料を見て頂ければと思うが、ここでもおよそ知財本部は、g.法律により、同一人により繰り返し行われる著作権侵害について利用停止等の措置をアクセス・プロバイダー等に強制し、コンテンツの監視とフィルタリングを動画共有サイト等に強制する(法律で直接的にやるか、プロバイダー責任制限法なり間接侵害なりの免責によるかという2つのオプションが提示されているがこれらは結果として同じである)、h.プロバイダーの責任を無意味に増し、法的不安定性を増幅する形でのプロバイダーに対するコンテンツの迅速な削除の義務化(これは日本の現行の法体系を無視して、アメリカ型のノーティス・アンド・テイクダウン制度を極めて不用意な形で導入することに等しい)、i.裁判所の命令によらないメールアドレスなどの個人情報開示(現行のプロバイダー責任制限法でも完全に不可能な訳ではないが、基本的に裁判の命令によっている)と、危険な規制強化のことしか考えていない

 第215回などでも書いた通り、いかなる形を取るにせよ、検閲の禁止に反し、表現の自由などの国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ない、ストライクポリシーや強制フィルタリング、ブロッキング等の新たに登場した類型の検閲は導入されるべきではないものである。アメリカ型のノーティス・アンド・テイクダウン制度を、不用意に今のネット利用における法的不安定性をさらに増幅する形で導入することもあってはならないことである。どのような緩和を考えているのか詳細は不明だが、電子メールなどの重要な個人情報について、権利者団体の一方的な主張に基づいて開示が認められるというのでは、安心してネットを使うことはもはやできなくなるに違いない。いかに自主規制といった言葉で表を取り繕おうと、このような規制強化をした日には、日本は、最悪の検閲国家の1つとして世界的に指弾されることになるだろう。

 同じく昨日のコンテンツ強化専門調査会の資料「知的財産財推進計画(仮称)」骨子に盛り込むべき事項(コンテンツ強化関連)(pdf)でも、「プロバイダに関して侵害対策措置の策定・実施や迅速な削除を促す仕組みを設ける。(短期)」とされており、やはり知財本部はこの危険な規制強化の検討を続けるつもりと知れるが、このような危険極まりない規制強化の検討など即刻停止した方が良いものである。

(3)模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)
 上であげたaからiまでの項目を良く見ると、これが第216回で取り上げた海賊版対策条約(ACTA)のリーク部分に書かれていることと驚くほど一致していることが分かる。DRM回避規制強化については主としてメーカーが大反対をしており、プロバイダーに対するストライクポリシーの強制などは主としてプロバイダーが大反対をしており、資料にそれなりに両論が出て来ていることからも分かるように、国内的にまとまる余地は少ないので、日本政府はここで姑息にポリシーロンダリングを狙って来ているのだろう。

 特に、2月16日の第1回のワーキンググループの参考資料インターネット上の著作権侵害コンテンツをめぐる状況について(pdf)で、2009年11月から議論開始として、

○デジタル環境における執行
(インターネット上の著作権等侵害等、新たな技術が知財執行にもたらす特別な課題を規定)
・プロバイダの法的責任の制限
・技術的制限手段の回避(例外と制限を含む)
・権利管理情報の保護 等

という項目をあげ、さらに留意点として、「ACTAの交渉において提示される規制のレベルによっては国内法の改正の可能性あり」とまで書かれているのは、ポリシーロンダリングをやると政府自ら公言しているに等しいだろう。(この資料で、各国とも揉めている現状を全て無視して、ストライクポリシーを導入している国だけを海外における著作権侵害対策の状況としてあげているところや、オーストラリアの検閲の話まで最近の状況として入れ、「世界において強力な著作権侵害コンテンツ対策を実施する国が増えている」としているのは噴飯ものである。)

 同じく昨日のコンテンツ強化専門調査会の資料「知的財産財推進計画(仮称)」骨子に盛り込むべき事項(コンテンツ強化関連)(pdf)でも、「2010年中にデジタルコンテンツの保護を含めた模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)の交渉を妥結するとともに、締結後、中国等を初めとした加盟国を増やし、世界大に保護の輪を広げる。(中期)」とされているが、やはりこのような拙速な検討は極めて危険であり、海賊版対策条約も今の状況で決して妥結されてはならないと私は考えている。

 また明日3月3日には、第3回のインターネット上の著作権侵害コンテンツ対策に関するワーキンググループが開催され(開催案内参照)、第2回資料の検討スケジュール(pdf)によると、3月15日には中間とりまとめとあるが、知財本部が非常に危ない形で短絡的に結論を出そうとするのではないかという強い危惧を私は抱いている。この知財本部の検討は本当に要注意である。

(2010年3月2日夜の追記:カナダのオタワ大教授がそのブログ記事で、海賊版対策条約(ACTA)について新たなリークがあったことを取り上げている。このブログ記事中にリンクが張られている欧州理事会の新リーク文書(pdf)には、各国政府のスタンスも書かれており、これは、ACTAの検討状況、日本政府のポリシーロンダリングを知る上で必読の資料である。もう少し時間がかかるかも知れないが、非常に重要な情報が多く含まれているので、次回はこの新リーク文書を取り上げたいと思っている。)

(2010年3月2日夜の再追記:知財本部の第2回ワーキンググループの議事録が公開されたので上にリンクを追加した。)

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