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2010年1月26日 (火)

第212回:内閣府「ハトミミ.com」(集中受付期間2月17日〆切)への提出パブコメ

 知財本部の知財計画パブコメのことも書きたいと思っているが、その前に内閣府の「ハトミミ.com」にも意見を書いて提出した。内容自体は第185回第186回に載せた内閣官房提出パブコメとほぼ同じだが、誰かの参考になるかも知れないので、ここにその内容を載せておきたいと思う。(不当に少ない字数制限のために書き切れていないことも多くあるのだが、いつもと比べて短くしたおかげで分り易くなっているところもあるだろう。)

 提出意見でも書いているが、このハトミミ.comは、「ハトミミ.com」で検索すれば分かる通り、政府機関とは関係無い者がこのドメイン名を取っている、集中受付期間の〆切が2月17日であることも含めて周知が十分であるとは到底言い難い、政府の正式サイトの意見の提出の仕方が分かりにくい(トップの絵をクリック→提出方法→受付フォーム→プライバシーポリシーに同意→それで出て来るのはいつもの内閣府規制改革推進室の意見提出フォームという人を舐めた仕様である)、提案の具体的内容の字数制限が250字、提案理由の字数制限が750字と極めて少ないと、あらゆる点で国民の声を広く聞くつもりがあるとは思えない作りになっており、旧来の政策談合・妥協政党の1つとして民主党も党としては全く信用していないが、それでも、現政権が鳴り物入りで始めた取り組みの1つであり、内閣府政務3役が責任をもって意見を受け付け、2月17日正午までに提出した意見については6月までに対処方針をとりまとめる予定とあり(逆に言うと、これまでに出さないと例によって棚晒しにされる可能性も高いだろう)、今の民主党政権がどれほど広く国民の声を聞くつもりがあるのかということを見る点で良いリトマス試験紙となると思うので、各種規制問題に関心をもっておられる方にはここにも意見を提出することを私はお勧めする。

 また、どこの省庁も常々およそ周知広報が全くなっていないと思うが、知財本部から、「新たな『知的財産推進計画(仮称)』の策定に向けた意見募集」が2月15日〆切で昨日からかかっているので、次回はこのパブコメについての予定である。

(2010年2月6日の追記:この4日から内閣府で検討が始まっている(時事通信の記事毎日の記事参照)、児童ポルノ排除対策ワーキングチームの不透明性の問題に関する提出パブコメを最後に(21)として追加した。)

(以下、提出パブコメ。各項目名:(0)ハトミミ.com、(1)ダウンロード違法化、(2)DRM回避規制、(3)コピーワンス・ダビング10・B-CAS、(4) 私的録音録画補償金制度、(5)著作権保護期間、(6)一般フェアユース条項の導入による著作権規制の緩和、(7)著作権の間接侵害・侵害幇助、(8)著作権検閲・ストライクポリシー、(9)携帯電話事業者による差別的なダウンロード容量制限、(10)出会い系サイト規制、(11)青少年ネット規制法・携帯フィルタリング義務化、(12)児童ポルノ規制、(13)サイトブロッキング、(14)インターネット・ホットラインセンター・日本ガーディアン・エンジェルス・日本ユニセフ協会、(15)官製キャンペーン・「安心ネットづくり」促進プログラム、(16)模倣品・海賊版拡散防止条約、(17)国際組織犯罪防止条約・サイバー犯罪条約及びこれらの締結に必要な法改正、(18)音の商標、(19)公職選挙法、(20)天下り、(21)児童ポルノ排除対策ワーキングチーム)

(0)ハトミミ.com
○提案事項名(タイトル)
ハトミミ.com

○提案の具体的内容
今の政府の「ハトミミ.com」について、2月17日正午までという集中受付期間のことも含め、周知を徹底する。全ての受付についておよそ受付後いつまでに対処するかという期限を決める。また、その提案の具体的内容の字数制限を最低でも1500字以上、提案理由の字数制限を最低でも4500字以上とする。「ハトミミ.com」というサービスの名称について改めることを検討する。首相以下、全大臣、全役人に情報セキュリティ教育をやり直させ、「ハトミミ.com」の失態を繰り返さないようにする。

○提案の視点
規制・制度の撤廃や見直し

○提案理由
 今現在の「ハトミミ.com」について、2月17日正午までという集中受付期間が設けられていることも含め、到底周知が十分であるとは言い難い。この第1回の集中受付期間で受け付けた提案については6月を目途に対処方針をとりまとめる予定としているが、それ以外の期間に提出された要望がなおざりにされる可能性もあり、それ以外の期間の受付も含め全ての受付についておよそ受付後いつまでに対処するかという期限を決めるべきである。
 複雑な規制に関する提案について、提案の具体的内容の字数制限が250字、提案理由の字数制限が750字というのもあまりにも少なく、国民の声を聞く気が無いとしか思えない。それぞれ、最低でも1500字以上、4500字以上とするべきである。
 日本の今現在の情報政策・情報セキュリティ政策のお粗末さを端的に示しているが、政府が公表しているガイドライン「政府機関の情報セキュリティ対策のための統一基準」において、「行政事務従事者は、府省庁外の者に対して、アクセスや送信させることを目的としてドメイン名を告知する場合に、以下の政府機関のドメイン名であることが保証されるドメイン名を使用すること。 •go.jpで終わるドメイン名 •日本語ドメイン名の中で行政等に関するものとして予約されたドメイン名」とされているにもかかわらず、首相が「ハトミミ.com」という名称を首相が使い、そのまま今も名称としては使い続けていて、かつ、「ハトミミ.com」というドメイン名は政府とは無関係の者が取っているという状態は愚劣の極みである。
 今の「ハトミミ.com」は「国民の皆様の目線での提案を幅広く受け付け」ているとは到底思えないお粗末な作りとなっており、早急に全面的に改善するべきである。

(1)ダウンロード違法化
○提案事項名(タイトル)
ダウンロード違法化

○提案の視点
規制・制度の撤廃や見直し

○提案の具体的内容
文化庁の暴走と国会議員の無知によって、「著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合」は私的複製に当たらないとする、いわゆるダウンロード違法化条項を含む改正著作権法が成立し、今年の1月1日に施行されたが、この著作権法第30条第1項第3号を削除する。

○提案理由
 一人しか行為に絡まないダウンロードにおいて、「事実を知りながら」なる要件は、エスパーでもない限り証明も反証もできない無意味かつ危険な要件であり、技術的・外形的に違法性の区別がつかない以上、このようなダウンロード違法化は法規範としての力すら持ち得ない。このような法改正によって進むのはダウンロード以外も含め著作権法全体に対するモラルハザードのみであり、これを逆にねじ曲げてエンフォースしようとすれば、著作権検閲という日本国として最低最悪の手段に突き進む恐れしかない。既に、総務省の「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」において、中国政府の検閲ソフト「グリーン・ダム」導入計画に等しい、日本レコード協会による携帯電話における著作権検閲の提案が取り上げられるなど、弊害は出始めている。
 そもそも、このような著作権検閲に対する懸念は、各種パブコメ(文化庁HPhttp://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/houkoku.html参照。ダウンロード違法化問題において、この8千件以上のパブコメの7割方で示された国民の反対・懸念は完全に無視された。このような非道極まる民意無視は到底許されるものではない。知財本部HPhttp://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keikaku2009.htmlも参照)において、法改正前から指摘されていたのであり、このような著作権検閲にしか流れようの無いダウンロード違法化は始めからなされるべきではなかったものである。文化庁の暴走と国会議員の無知によって成立したものであり、ネット利用における個人の安心と安全を完全にないがしろにするものである、百害あって一利ないダウンロード違法化を規定する著作権法第30条第1項第3号を即刻削除するべきである。

○根拠法令等
著作権法第30条第1項第3号

○制度の所管省庁
文部科学省

(2)DRM回避規制
○提案事項名(タイトル)
DRM回避規制

○提案の視点
規制・制度の撤廃や見直し

○提案の具体的内容
著作権法第30条第1項第2号を削除する。合わせて、DRM回避規制に関して、ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ないこれ以上の規制強化をしないと閣議決定する。

○提案理由
 現状、不正競争防止法と著作権法でDRM回避機器等の提供等が規制され、著作権法でコピーコントロールを回避して行う私的複製まで違法とされているが、昨年7月にゲームメーカーがいわゆる「マジコン」の販売業者を不正競争防止法に基づき提訴し、さらにこの2月にゲームメーカー勝訴の判決が出ていることなどを考えても、現時点で、現状の規制では不十分とするに足る根拠は全くない。
 かえって、著作権法において、私的領域におけるコピーコントロール回避まで違法とすることで、著作権法全体に関するモラルハザードとデジタル技術・情報の公正な利活用を阻む有害無益な萎縮効果が生じているのではないかと考えられる。
 デジタル技術・情報の公正な利活用を阻むものであり、そもそも、私的なDRM回避行為自体によって生じる被害は無く、個々の回避行為を一件ずつ捕捉して民事訴訟の対象とすることは困難だったにもかかわらず、文化庁の片寄った見方から一方的に導入されたものである、私的領域でのコピーコントロール回避規制(著作権法第30条第1項第2号)は撤廃するべきである。コンテンツへのアクセスあるいはコピーをコントロールしている技術を私的な領域で回避しただけでは経済的損失は発生し得ず、また、ネットにアップされることによって生じる被害は公衆送信権によって既にカバーされているものであり、その被害とDRM回避やダウンロードとを混同することは絶対に許されない。それ以前に、私法である著作権法が、私的領域に踏み込むということ自体異常なことと言わざるを得ない。
 ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ないこれ以上のDRM回避規制の強化は検討されるべきでない。

○根拠法令等
著作権法第30条第1項第2号、著作権法第120条の2、不正競争防止法第2条第1項第10号・第11号

○制度の所管省庁
文部科学省、経済産業省

(3)コピーワンス・ダビング10・B-CAS
○提案事項名(タイトル)
コピーワンス・ダビング10・B-CAS

○提案の視点
規制・制度の撤廃や見直し

○提案の具体的内容
1.無料地上波からB-CASシステムを排除し、テレビ・録画機器における参入障壁を取り除き、自由な競争環境を実現する。
2.あまねく見られることを目的とするべき、基幹放送である無料地上波については、ノンスクランブル・コピー制限なしを基本とする。
3.無料地上波については、ノンスクランブル・コピー制限なしとすることを、総務省が勝手に書き換えられるような省令や政令レベルにではなく、法律に書き込む。

○提案理由
 B-CASシステムは談合システムに他ならず、これは、放送局・権利者にとっては、視聴者の利便性を著しく下げることによって、一旦は広告つきながらも無料で放送したコンテンツの市場価格を不当につり上げるものとして機能し、国内の大手メーカーとっては、B-CASカードの貸与と複雑な暗号システムを全てのテレビ・録画機器に必要とすることによって、中小・海外メーカーに対する参入障壁として機能している。
 昨年運用が開始されたダビング10に関しても、大きな利便性の向上なくして、より複雑かつ高価な機器を消費者が新たに買わされるだけである。総務省において現行のB-CASシステムと併存させる形で新方式を導入することも検討されているが、無意味な現行システムの維持コストに加えて新たなシステムの追加で発生するコストまでまとめて消費者に転嫁される可能性が高い。これらの弥縫策は、一消費者として全く評価できない。基幹放送である無料地上波については、B-CASシステムを排除し、ノンスクランブル・コピー制限なしを基本とすること以外で、この問題の本質的な解決がもたらされることはない。
 そもそもあまねく視聴されることを本来目的とする、無料の地上放送においてコピーを制限することは、視聴者から視聴の機会を奪うことに他ならず、このような規制を良しとする談合業界及び行政に未来はない。法的にもコスト的にも、どんな形であれ、全国民をユーザーとする無料地上放送に対するコピー制限は維持しきれるものではない。このようなバカげたコピー制限に関する過ちを二度と繰り返さないため、無料の地上放送についてはスクランブルもコピー制御もかけないこととする逆規制を、政令や省令ではなく法律のレベルで放送法に入れることを私は一国民として強く求める。

○根拠法令等
なし

○制度の所管省庁
総務省、公正取引委員会

(4) 私的録音録画補償金制度
○提案事項名(タイトル)
私的録音録画補償金制度

○提案の視点
規制・制度の撤廃や見直し

○提案の具体的内容
そもそも著作権法の様な私法が私的領域に踏み込むこと自体がおかしいのであり、私的領域での複製は原則自由かつ無償であることを法文上明確にする。補償金は私的録音録画を自由にすることの代償であることを法文上明確にする。タイムシフト、プレースシフト、レンタルCDやネット配信、有料放送からの複製について補償が不要であることを明確にする。私的録音録画を自由とすることによって、どれほどの実害が著作権者に発生するのかについてのきちんとした調査を行う。実害が算出できないのであれば、私的録音録画補償金制度を廃止する。

○提案理由
 私的複製によって生じる著作権者の経済的不利益を補償するため、MD、CD-R、DVD-R等の分離型録音録画専用デジタル録音録画機器・媒体に私的録音録画補償金が賦課されている。
 文化庁の文化審議会著作権分科会における数年の審議において、補償金のそもそもの意義についての意義が問われたが、今に至るも文化庁は、天下り先である権利者団体のみにおもねり、この制度に関する根本的な検討を怠っている。
 結果、日本において私的録音録画補償金管理協会と東芝間の訴訟に発展しているが、世界的に見ても、メーカーや消費者が納得して補償金を払っているということはカケラも無く、権利者団体がその政治力を不当に行使し、歪んだ「複製=対価」の著作権神授説に基づき、不当に対象を広げ料率を上げようとしているだけというのがあらゆる国における実情である。表向きはどうあれ、大きな家電・PCメーカーを国内に擁しない欧州各国は、私的録音録画補償金制度を、外資から金を還流する手段、つまり、単なる外資規制として使っているに過ぎない。
 この制度における補償金の対象・料率に関して、具体的かつ妥当な基準はどこの国を見ても無いのであり、この制度は、ほぼ権利者団体の際限の無い不当な要求を招き、莫大な社会的コストの浪費のみにつながっている。機器・媒体を離れ音楽・映像の情報化が進む中、「複製=対価」の著作権神授説と個別の機器・媒体への賦課を基礎とする私的録音録画補償金は、既に時代遅れのものとなりつつあり、その対象範囲と料率のデタラメさが、デジタル録音録画技術の正常な発展を阻害し、デジタル録音録画機器・媒体における正常な競争市場を歪めているという現実は、補償金制度を導入したあらゆる国において、問題として明確に認識されなくてはならないことである。

○根拠法令等
著作権法第30条第2項、著作権法第5章、著作権法施行令第1章

○制度の所管省庁
文部科学省

(5)著作権保護期間
○提案事項名(タイトル)
著作権保護期間

○提案の視点
規制・制度の撤廃や見直し

○提案の具体的内容
文化庁における著作権保護期間延長の検討を閣議決定により停止する。放送に関する著作隣接権に関しては、速やかに保護期間を放送を行った時から20年とする。合わせ、現行ですら余りに長い著作権及びレコード製作者あるいは放送事業者の著作隣接権の保護期間短縮のため、日本政府からベルヌ条約他の関係条約の改正提案を行うことを、政府レベルで検討する。

○提案理由
 著作権そのものに関して、現行でも著作者の死後50年という極めて長い期間に渡って著作権が保護されることになっている。また、著作者人格権については保護期間が切れるということはない。文化的に、ひ孫の孫くらいのことまで考えて創作をしている人間がいるとも思われず、文化の多様化のためにはこれ以上の延長はほとんど何の役にも経たず、経済的にも、著作者の死後50年を経てなお権利処理コストを上回る財産的価値を保っている極めて稀な著作物のために、このコストを下回るほとんど全ての著作物の利用を阻害することは全く妥当でない。権利者団体と文化庁を除けば日本国内では、この点に関しては延長しないということでほとんど結論が出そろっているのであり、文化庁の保護期間延長に関する検討は完全に止められるべきである。
 実演家の著作隣接権についても、実演から50年という期間はかなり著名かつ長命の実演家でなければ切れることがない期間である。今のところ、実演家の著作隣接権の保護期間延長についても、これを是とするに足る根拠は何一つなく、これも延長されるべきでない。
 レコード製作者と放送事業者という創作者ではない流通事業者の著作隣接権は、単にレコード会社や放送局が強い政治力を持っていたことから無理矢理ねじ込まれた権利に過ぎず、その目的は流通コストへの投資を促すことのみにあったものである。インターネットという流通コストの極めて低い流通チャネルがある今、独占権というインセンティブで流通屋に投資を促さねばならない文化上の理由もほぼ無くなっているのであり、これらの保護期間は速やかに短縮することが検討されるべきである。

○根拠法令等
著作権法第2章第4節、著作権法第4章第6節、ベルヌ条約第7条、万国著作権条約第4条、ローマ条約第14条、レコード製作者の保護に関する条約第4条、実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約第17条、TRIPS協定第12条及び第14条

○制度の所管省庁
文部科学省

(6)一般フェアユース条項の導入による著作権規制の緩和
○提案事項名(タイトル)
一般フェアユース条項の導入による著作権規制の緩和

○提案の視点
規制・制度の撤廃や見直し

○提案の具体的内容
著作権法に、一般フェアユース条項を導入する。ただし、意図しない付随的利用に限るといった形で不当にその範囲を不当に狭めるべきでは無く、その範囲はアメリカ等と比べて遜色の無いものとされるべきであり、フェアユースの導入によって、私的複製の範囲が縮小されることもあってはならない。

○提案理由
 フェアユースのような一般規定は、ほぼ全国民が利用者兼権利者となり得、考えられる利用形態が発散し、個別の規定では公正利用の類型を拾い切れなくなるインターネットのような場における、現行の個別の権利制限規制を前提とする著作権法全体によるデジタル技術・情報の公正な利活用の阻害を解消し、保護と利用のバランスを取る上で重要な意義を持つ。
 著作物の公正利用にはビジネス利用も考えられ、このような利用も含めて著作物の公正利用を促すことが、今後の日本の文化と経済の発展にとって真に重要であえることを考えれば、意図しない付随的利用に限るといった形で不当にその範囲を不当に狭めるべきでは無く、その範囲はアメリカ等と比べて遜色の無いものとされるべきである。
 個別の権利制限規定の迅速な追加によって対処するべきとする意見もあるが、文化庁と権利者団体がスクラムを組んで個別規定すらなかなか入れず、入れたとしても必要以上に厳格な要件が追加されているという惨憺たる現状において、個別規定の追加はこの問題における真の対処たり得ない。また、権利を侵害するかしないかは刑事罰がかかるかかからないかの問題でもあり、公正という概念で刑事罰の問題を解決できるのかとする意見もあるようだが、かえって、このような現状の過剰な刑事罰リスクからも、フェアユースは必要なものと私は考える。アニメ画像一枚の利用で別件逮捕されたり、セーフハーバーなしの著作権侵害幇助罪でサーバー管理者が逮捕されたりすることは、著作権法の主旨から考えて本来あってはならないことである。政府にあっては、著作権法の本来の主旨を超えた過剰リスクによって、本来公正として認められるべき事業・利用まで萎縮しているという事態を本当に深刻に受け止め、一刻も早い改善を図ってもらいたい。

○根拠法令等
著作権法

○制度の所管省庁
文部科学省

(7)著作権の間接侵害・侵害幇助
○提案事項名(タイトル)
著作権の間接侵害・侵害幇助

○提案の視点
規制・制度の撤廃や見直し

○提案の具体的内容
プロバイダー責任制限法に関し、被侵害者との関係において刑事罰リスクも含めたプロバイダーの明確なセーフハーバーについて検討する。間接侵害や著作権侵害幇助罪も含め著作権侵害とならないセーフハーバーの範囲を著作権法上きちんと確定するための検討を開始する。ただし、標準的な仕組み・技術や違法性の有無の判断を押しつけるような権利侵害とは無関係の行政機関なり天下り先となるだろう第3者機関なりの関与を必要とすることは、検閲の禁止・表現の自由等の国民の権利の不当な侵害に必ずなるものであり、絶対にあってはならない。

○提案理由
 動画投稿サイト事業者がJASRACに訴えられた「ブレイクTV」事件や、レンタルサーバー事業者が著作権幇助罪で逮捕され、検察によって姑息にも略式裁判で50万円の罰金を課された「第(3)世界」事件等を考えても、今現在、著作権の間接侵害や侵害幇助のリスクが途方もなく拡大し、甚大な萎縮効果・有害無益な社会的大混乱が生じかねないという非常に危険な状態にあり、民事的な責任の制限しか規定していないプロバイダー責任制限法に関し、被侵害者との関係において、刑事罰リスクも含めたプロバイダーの明確なセーフハーバーについて検討するべきである。
 さらに、著作権の間接侵害事件や侵害幇助事件においてネット事業者がほぼ直接権利侵害者とみなされてしまうことを考えると、プロバイダー責任制限法によるセーフハーバーだけでは不十分であり、間接侵害や著作権侵害幇助罪も含め、著作権侵害とならないセーフハーバーの範囲を著作権法上きちんと確定することが喫緊の課題である。
 セーフハーバーを確定するためにも間接侵害の明確化はなされるべきであるが、現行の条文におけるカラオケ法理や各種ネット録画機事件などで示されたことの全体的な整理以上のことをしてはならない。特に、今現在文化庁の文化審議会で検討されているように、著作権法に明文の間接侵害一般規定を設けることは絶対にしてはならないことである。確かに今は直接侵害規定からの滲み出しで間接侵害を取り扱っているので不明確なところがあるのは確かだが、現状の整理を超えて、明文の間接侵害一般規定を作った途端、権利者団体や放送局がまず間違いなく山の様に脅しや訴訟を仕掛けて来、今度はこの間接侵害規定の定義やそこからの滲み出しが問題となり、無意味かつ危険な社会的混乱を来すことは目に見えているからである。

○根拠法令等
著作権法第7章及び第8章、刑法第62条、プロバイダー責任制限法(正式名称は、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」)

○制度の所管省庁
文部科学省

(8)著作権検閲・ストライクポリシー
○提案事項名(タイトル)
著作権検閲・ストライクポリシー

○提案の視点
規制・制度の撤廃や見直し

○提案の具体的内容
総務省における日本レコード協会の著作権検閲の検討を止める。国民の「知る権利」をあらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として通信法に法律レベルで明文で書き込む。憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な著作権検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込む。通信の秘密やプライバシー、情報アクセス権等の国民の基本的な権利をきちんと尊重し、日本においてネット切断型のストライクポリシーを採用しないことを閣議決定により担保する。

○提案理由
 総務省の「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」において、中国の検閲ソフト「グリーン・ダム」と全く同じ動作をする、日本レコード協会の著作権検閲の提案が取り上げられている。
 同じく、著作権検閲に流れる危険性が極めて高い、フランスで今なお揉めているストライクポリシーの導入の検討を著作権団体が求めている。
 最も基本的なプライバシーに属する個人端末中の情報について、内容を自動検知し、アクセス制限・再生禁止等を行う日本レコード協会が提案している違法音楽配信対策は、技術による著作権検閲に他ならず、憲法の表現の自由(情報アクセス権を含む)や検閲の禁止、通信の秘密、プライバシー権等を明らかに侵害するものである。このような対策は決して導入されてはならない。
 警告メールの送付とネット切断を中心とする、著作権検閲機関型の違法コピー対策である3ストライクポリシーについても、フランス憲法裁判所は、表現の自由・情報アクセスの権利やプライバシーといった他の基本的な権利をないがしろにするものとして、真っ向から否定した。フランスの迷走を他山の石として、このように他の基本的な権利をないがしろにする対策を絶対に導入しないこととするべきである。
 このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むことを検討するべきである。同じく、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な著作権検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むことを検討するべきである。

○根拠法令等
なし

○制度の所管省庁
警察庁、総務省、文部科学省

(9)携帯電話事業者による差別的なダウンロード容量制限
○提案事項名(タイトル)
携帯電話事業者による差別的なダウンロード容量制限

○提案の視点
規制・制度の撤廃や見直し

○提案の具体的内容
携帯電話事業者による公式サイト以外のサイトからダウンロードできるファイルの容量制限を排除する。

○提案理由
総務省の「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」の提言によると、一部の携帯電話事業者が、公式サイト以外のサイトからダウンロードできるファイルの容量制限を行っているとのことであるが、携帯電話事業者による、このような容量制限は、公平性の観点からも、独禁法からも明らかに問題がある。

○根拠法令等
なし

○制度の所管省庁
公正取引委員会、総務省

(10)出会い系サイト規制
○提案事項名(タイトル)
出会い系サイト規制

○提案の視点
規制・制度の撤廃や見直し

○提案の具体的内容
出会い系サイト規制法を改正前の状態に速やかに戻す。

○提案理由
 警察による出会い系サイト規制法の拡大解釈・恣意的運用によって、ネット利用における不必要かつ有害な萎縮効果が既に発生していることは、一般サイト事業者に対する警察からの要請とその反応から明らかである。
 この出会い系サイト規制法の改正は、警察庁が、どんなコミュニケーションサイトでも人は出会えるという誰にでも分かることを無視し、届け出制の対象としては事実上定義不能の「出会い系サイト事業」を定義可能と偽り、改正法案の閣議決定を行い、法案を国会に提出したものであり、他の重要法案と審議が重なる中、国会においてもその本質的な問題が見過ごされて可決され、成立したものである。憲法上の罪刑法定主義や検閲の禁止にそもそも違反しており、表現の自由などの国民の最重要の基本的な権利をないがしろにするものである、今回の出会い系サイト規制法の改正については、今後、速やかに元に戻すことが検討されなくてはならない。
 既に逮捕者まで出ているが、出会い系サイト規制法は、その曖昧さから別件逮捕のツールとして使われ、この制度によって与えられる不透明な許認可権限による、警察の出会い系サイト業者との癒着・天下り利権の強化を招く恐れが極めて強い。出会い系サイト規制法を去年の改正前の状態に戻すまでにおいても、この危険な法律の運用については慎重の上に慎重が期されるべきである。

○根拠法令等
出会い系サイト規制法(正式名称は「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」)

○制度の所管省庁
警察庁

(11)青少年ネット規制法・携帯フィルタリング義務化
○提案事項名(タイトル)
青少年ネット規制法・携帯フィルタリング義務化

○提案の視点
規制・制度の撤廃や見直し

○提案の具体的内容
青少年ネット規制法を廃止する。廃止するまでにおいても、規制を理由にしたフィルタリングに関する不当な便乗商法に対する監視を政府において強め、フィルタリングソフト・サービスの不当な抱き合わせ販売について独禁法の適用を検討する。合わせ、フィルタリングで無意味に利権を作ろうとしている総務省と携帯電話事業者他の今の検討については、完全に白紙に戻す。

○提案理由
 そもそも、フィルタリングサービスであれ、ソフトであれ、今のところフィルタリングに関するコスト・メリット市場が失敗していない以上、かえって必要なことは、不当なフィルタリングソフト・サービスの抱き合わせ販売の禁止によって、消費者の選択肢を増やし、利便性と価格の競争を促すことだったはずである。一昨年から昨年にかけて大騒動になったあげく、ユーザーから、ネット企業から、メディア企業から、とにかくあらゆる者から大反対されながらも、有害無益なプライドと利権の確保を最優先する一部の議員と官庁の思惑のみから成立した今の青少年ネット規制法による規制は、一ユーザー・一消費者・一国民として全く評価できないものであり、速やかに法律の廃止が検討されるべきである。
 廃止するまでにおいても、青少年ネット規制法の規制は、フィルタリングソフト・サービスの不当な抱き合わせ販売を助長することにつながる恐れが強く、このような不当な抱き合わせ販売について独禁法の適用が検討されるべきである。
 フィルタリングで無意味に利権を作ろうとしている総務省と携帯電話事業者他の今の検討については、完全に白紙に戻されるべきである。ブラックリスト方式ならば、まずブラックリストに載せる基準の明確化から行うべきで、不当な指定については、携帯電話事業者がそれぞれの基準に照らし合わせて無料で解除する簡便な手続きを備えていればそれで良く、健全サイト認定第3者機関など必要ないはずである。指定を不当に乱発し、認定機関で不当に審査料をせしめ取り、さらにこの不当にせしめた審査料と、正当な理由もなく流し込まれる税金で天下り役人を飼うのだとしたら、これは官民談合による大不正行為以外の何物でもない。このようなブラックリスト商法の正当化は許されない。

○根拠法令等
青少年ネット規制法(正式名称は、「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」)

○制度の所管省庁
総務省、経済産業省

(12)児童ポルノ規制
○提案事項名(タイトル)
児童ポルノ規制

○提案の視点
規制・制度の撤廃や見直し

○提案の具体的内容
違憲のそしりを免れない現行の児童ポルノ規制法について速やかに児童ポルノの定義の厳格化のみの法改正を行う。プロバイダー責任制限法に関し被侵害者との関係において、刑事罰リスクも含めたプロバイダーの明確なセーフハーバーについて検討する。国民の「知る権利」をあらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として通信法に法律レベルで明文で書き込む。児童ポルノの単純所持規制・創作物規制といった非人道的な規制を導入している諸国は即刻このような規制を廃止するべきと日本政府から国際的な場において各国に働きかける。

○提案理由
 閲覧とダウンロードと取得と所持の区別がつかないインターネットにおいては例え児童ポルノにせよ情報の単純所持や取得の規制は有害無益かつ危険なもので、憲法及び条約に規定されている「知る権利」を不当に害する。意図に関する限定を加えたところで、エスパーでもない限りこのような積極性を証明することも反証することもできないため、このような規制の危険性は回避不能であり、思想の自由や罪刑法定主義にも反する。インターネットで2回以上他人にダウンロードを行わせること等は技術的に極めて容易であり、取得の回数の限定も何ら危険性を減らすものではない。例えそれが児童ポルノであろうと情報の単純所持ではいかなる被害も発生し得えない。現行法で提供及び提供目的の所持まで規制されているのであり提供によって生じる被害と所持やダウンロード、取得、収集との混同は許され得ない。そもそも、最も根本的なプライバシーに属する個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ることは、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の基本的な権利からあってはならないことである。
 実際の被害者の存在しないアニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現に対する規制対象の拡大も児童保護という当初の法目的を大きく逸脱する異常規制に他ならない。民主主義の最重要の基礎である表現の自由や言論の自由、思想の自由等々の最も基本的な精神的自由そのものを危うくすることは絶対に許されない。
 現行ですら違憲のそしりを免れない児童ポルノの定義の厳密化、危険な規制強化を止める逆規制、幇助リスクを考慮した刑事罰リスクも含めたプロバイダーの明確なセーフハーバー、児童ポルノの単純所持規制・創作物規制といった非人道的な規制の排除の国際的な働きかけのみを検討するべきである。

○根拠法令等
児童ポルノ規制法(正式名称は「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」)

○制度の所管省庁
警察庁、総務省、厚生労働省

(13)サイトブロッキング
○提案事項名(タイトル)
サイトブロッキング

○提案の視点
規制・制度の撤廃や見直し

○提案の具体的内容
検閲たらざるを得ず、国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ない、アドレスリストに基づくブロッキング等の検討を行っている児童ポルノ流通防止協議会を解散し、その検討を完全に停止する。憲法に規定されている検閲の禁止から、サイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込む。児童ポルノを対象とするものにせよ、いかなる種類のものであれ、情報の単純所持・取得規制・ブロッキングは極めて危険な規制であるとの認識を深め、このような規制を絶対に行わないことと閣議決定する。

○提案理由
 児童ポルノ流通防止協議会において、警察などが提供するサイト情報に基づき、統計情報のみしか公表しない不透明な中間団体を介し、児童ポルノアドレスリストの作成が行われ、そのリストに基づいて、ブロッキング等を行うとする検討が行われている。
 しかし、いくら中間に団体を介そうと、一般に公表されるのは統計情報に過ぎす、児童ポルノであるか否かの判断情報も含め、アドレスリストに関する具体的な情報は、全て閉じる形で秘密裏に保持されることになるのであり、インターネット利用者から見てそのリストの妥当性をチェックすることは不可能であり、このようなアドレスリストの作成・管理において、透明性・公平性・中立性を確保することは本質的に完全に不可能である。このようなリストに基づくブロッキング等は、自主的な取組という名目でいくら取り繕おうとも、憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないのであり、小手先の運用変更などではどうにもならない。このような非人道的な検討しか行い得ない本児童ポルノ流通防止協議会は即刻解散されるべきである。
 また、欧米においても情報の単純所持規制やサイトブロッキングの危険性に対する認識がネットを中心に高まって来ていること、特にドイツにおいて児童ポルノサイトブロッキング法は検閲法であるとの批判が高まりその施行は今なお停止されていること、スイスにおける調査で児童ポルノ所持は性的虐待のリスクファクターとはならず単純所持規制・ブロッキングの根拠は否定されていること、欧州連合においてインターネットへのアクセスを情報の自由に関する基本的な権利として位置づける動きがあることなどの国際動向も注目されるべきである。

○根拠法令等
児童ポルノ規制法(正式名称は「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」)

○制度の所管省庁
警察庁、総務省、厚生労働省

(14)インターネット・ホットラインセンター・日本ガーディアン・エンジェルス・日本ユニセフ協会
○提案事項名(タイトル)
インターネット・ホットラインセンター・日本ガーディアン・エンジェルス・日本ユニセフ協会

○提案の視点
規制・制度の撤廃や見直し

○提案の具体的内容
インターネット・ホットラインセンターを廃止する。日本ガーディアン・エンジェルスにおける警察の委託事業を停止し、特定非営利活動法人及び認定特定非営利活動法人の認定の取り消しを検討する。日本ユニセフ協会に対して、所管の外務省から公益を害する活動を止めるよう改善命令を出し、新公益法人制度への移行申請において公益認定をしないとするか、あるいは、それ以前に、公益法人及び特定公益増進法人の認定を取り消す。

○提案理由
 単なる民間団体に過ぎないにもかかわらず、一般からの違法・有害情報の通知を受けて、直接削除要請を行っている、インターネット・ホットラインセンターという名の半官検閲センターが存在しているが、サイト事業者が自主的に行うならまだしも、何の権限も有しないインターネット・ホットラインセンターなどの民間団体からの強圧的な指摘により、書き込みなどの削除が行われることなど本来あってはならないことである。勝手に有害と思われる情報を収集して、直接削除要請などを行う民間団体があるということ自体おかしいと考えるべきであり、このような有害無益な半官検閲センターは即刻廃止が検討されてるべきである。
 同じく民間団体に過ぎないにもかかわらず、日本ガーディアン・エンジェルスという団体が、犯罪に関する情報を匿名で受け付け、解決に結び付いた場合に情報料を支払うということを行い、去年の7月からネットでの受理まで開始しているが、直接害が及んでいる訳でもない単なる一民間団体が、直接一般からの通報を受け付け、刑事事件に関与して、解決に結び付いた場合に情報料を支払うということ自体異常である。
 日本ユニセフ協会は、根拠無く一般的かつ網羅的な表現・情報弾圧を唱える危険な児童ポルノ規制強化プロパガンダに募金を流用し、国会審議でも、感情論のみで根拠無く児童ポルノの単純所持規制の導入を訴えるなど、寄付行為に書かれた財団法人の目的を大きく逸脱し、さらに、インターネットにおけるあらゆる情報利用を危険極まりないものとしようとし、民主主義の基礎中の基礎である表現の自由等の精神的自由を危うくする、明白に公益を害する行為を繰り返し行っている。
 これらの法人・団体は、公益社団法人・特定非営利活動法人・特定非営利活動法人等の認定に値しない。

○根拠法令等
特定非営利活動促進法、租税特別措置法第66条の11の2、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律

(15)官製キャンペーン・「安心ネットづくり」促進プログラム
○提案事項名(タイトル)
官製キャンペーン・「安心ネットづくり」促進プログラム

○提案の視点
規制・制度の撤廃や見直し

○提案の具体的内容
今以上に規制よりにしかならないだろう官製「自主憲章」の押し付けや、総務省への参加申請・登録の要請や総務省製のロゴマークの販促、天下り利権の強化・税金のムダな浪費にしかつながらない「相談センター」の拡充といった、ニーズを無視したいつもの官製キャンペーンも含め、そもそも民間が求めていない「民間による自主的な取組」を取りやめ、今ですら訳が分からないほど沢山ある通信関係の各種ガイドラインの整理削減や情報モラル教育などの地道な施策のみを行う。

○提案理由
 「安心ネットづくり」促進プログラムが、総務省の「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」の最終報告書を受けて平成21年1月にとりまとめられた。このプログラムでも、児童ポルノサイトブロッキングの実証実験や違法・有害情報対策に資する技術開発支援を行うとされ、「安心ネットづくり」促進協議会で検討が進められているが、別途書いた通り、どうやっても検閲にしかならないサイトブロッキングについては実証実験すらされるべきでなく、日本レコード協会が提案している日本版携帯電話グリーン・ダム計画等の対策も技術的な検閲に他ならず、その開発支援すらされるべきでない。今以上に規制よりにしかならないだろう官製「自主憲章」の押し付けや、総務省への参加申請・登録の要請や総務省製のロゴマークの販促、天下り利権の強化・税金のムダな浪費にしかつながらない「相談センター」の拡充といった、ニーズを無視したいつもの官製キャンペーンも含め、これらのような、そもそも民間が求めていない「民間による自主的な取組」を取りやめ、今ですら訳が分からないほど沢山ある通信関係の各種ガイドラインの整理削減や情報モラル教育などの地道な施策のみを行うべきである。
 また、青少年ネット規制法について国際的に紹介する場合には、この法律は、ほぼあらゆる者から反対されながら、有害無益なプライドと利権の保持に走った一部の議員と官庁の思惑のみによって成立したものであるという経緯や、そもそも成立するべきではなく今でも廃止するべきとする意見もあるということも含め紹介するべきである。

○根拠法令等
なし

○制度の所管省庁
総務省

(16)模倣品・海賊版拡散防止条約
○提案事項名(タイトル)
模倣品・海賊版拡散防止条約

○提案の視点
規制・制度の撤廃や見直し

○提案の具体的内容
模倣品・海賊版拡散防止条約について、税関において個人のPCや携帯デバイスの内容をチェック可能とすること、ストライクポリシーを取ることを事実上プロバイダーに義務づけることといった非人道的かつ危険な条項、危険な規制強化につながる恐れが強いDRM回避規制に関する規定は除くべきであると、かえって、プライバシーや情報アクセスの権利といった国際的・一般的に認められている個人の基本的な権利を守るという条項こそ条約に盛り込むべきであると日本から各国に働きかける。この条約の検討の詳細をきちんと公表する。

○提案理由
 模倣品・海賊版拡散防止条約についての詳細は不明であるが、税関において個人のPCや携帯デバイスの内容をチェック可能とすることや、行政機関の決定や消費者との契約などに基づき一方的にネット切断という個人に極めて大きな影響を与える罰を加えることを可能とする、ストライクポリシーと呼ばれる対策を取ることを事実上プロバイダーに義務づけることといった、個人の基本的な権利をないがしろにする条項が検討される恐れがある。他の国が、このような危険な条項をこの条約に入れるよう求めて来たときには、そのような非人道的な条項は除くべきであると、かえって、プライバシーや情報アクセスの権利といった国際的・一般的に認められている個人の基本的な権利を守るという条項こそ条約に盛り込むべきであると日本から各国に積極的に働きかけるべきである。
 プライバシーや情報アクセスの権利、推定無罪の原理、弁護を受ける権利といった国際的・一般的に認められている個人の基本的な権利の保障をきちんと確保し、ストライクポリシーのような非人道的な取り組みが世界的に推進されることを止めるため、この条約に「対審を必要とする通常の手続きによる司法当局の事前の判決なくしてエンドユーザーの基本的な権利及び自由に対してはいかなる制限も課され得ない」という条文を入れるべきであると、ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ないこれ以上のDRM回避規制の強化はなされるべきでないことを考え、DRM回避規制に関する規定は除くべきであると、日本から各国に強く働きかけるべきである。
 この条約について、政府は、現状のような国民をバカにした概要だけで無く、その具体的な検討の詳細をきちんと公表するべきである。

○根拠法令等
なし

○制度の所管省庁
内閣官房、内閣府、警察庁、総務省、外務省、財務省、文部科学省、経済産業省

(17)国際組織犯罪防止条約・サイバー犯罪条約及びこれらの締結に必要な法改正
○提案事項名(タイトル)
国際組織犯罪防止条約・サイバー犯罪条約及びこれらの締結に必要な法改正

○提案の視点
規制・制度の撤廃や見直し

○提案の具体的内容
以前の国会に提出されていた、国際組織犯罪防止条約及びサイバー犯罪条約の締結のための法改正案は廃案のままにすると閣議決定を行う。同時に、条約からの脱退を検討する。

○提案理由
 国際組織犯罪防止条約の締結には、共謀罪の創設が必要とされているが、現状でも大規模テロなどについてはすでに殺人予備罪があるので共謀罪がなくとも対応でき、その他、個別の立法事実があればそれに沿った形で個別の犯罪についての予備罪の適否を論ずるべきであって、広範かつ一般的な共謀罪を創設する立法事実はない。実行行為に直接つながる行為によって、法益侵害の現実的危険性を引き起こしたからこそ処罰されるという我が国の刑法学の根幹を揺るがすものである共謀罪は、決して導入されてはならない。このような危険な法改正を必要とする国際組織犯罪防止条約は日本として締結するべきものではない。
 サイバー犯罪条約は、通信記録や通信内容等の情報の保全等について広範かつ強力な手段を法執行機関に与えることを求めているが、これは我が国の憲法に規定されている国民の基本的な権利に対する致命的な侵害を招くものであり、この条約も日本として締結するべきものではない。以前の国会に提出されていた法改正案も、昨今のインターネットの状況を考えると差し押さえの範囲が過度に不明確になる懸念が強く、裁判所の許可無く捜査機関が通信履歴の電磁的記録の保全要請をすることが出来るとしていた点も捜査機関による濫用の懸念が強く、このような刑事訴訟法の枠組みの変更は、通信の秘密やプライバシー、場所及び物を明示する令状がない限り、捜索等を受けない権利といった憲法上の国民の基本的な権利に対する致命的な侵害を招くものである。また、ウィルス作成等に関する罪についても、「人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える」電磁的記録というような客観性のない曖昧な要件で導入されるべきものでない。

○根拠法令等
国際組織犯罪防止条約(正式名称は「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」)、サイバー犯罪条約(正式名称は「サイバー犯罪に関する条約」)

○制度の所管省庁
外務省、法務省、警察庁

(18)音の商標
○提案事項名(タイトル)
音の商標

○提案の視点
規制・制度の撤廃や見直し

○提案の具体的内容
音の商標について、少なくとも、他人の著名な旋律・楽曲を登録から除外することを検討する。パブリックドメインに落ちた著名な旋律・楽曲の登録のような不当な利得を得るための登録が排除されない限り、音について、その商標の保護対象への追加をしないこととする。

○提案理由
 特許庁の新しいタイプの商標に関する検討ワーキンググループ報告書で、音の商標を新たな保護対象として追加する方針が示され、特許庁の産業構造審議会・知的財産政策部会・商標制度小委員会で検討が続けられているが、音の商標は、他の視覚的な商標とは異なる特色を有しているということが考慮されるべきであり、音に、会社名を連呼するような音だけでは無く単なる旋律も含まれ得、音の商標の使用に、単なるBGMとしての使用も含まれ得ることから、音については特に慎重に検討するべきである。登録除外についても検討されているが、公益的な音だけでは不十分であり、余計な混乱を避けるため、音について、少なくとも、他人の著名な旋律・楽曲を登録から除外することを検討するべきである、パブリックドメインに落ちた著名な旋律・楽曲の登録のような不当な利得を得るための登録が排除されない限り、音について、その保護類型への追加は決してするべきでない。

○根拠法令等
商標法改正(特許庁で検討中)

○制度の所管省庁
経済産業省

(19)公職選挙法
○提案事項名(タイトル)
公職選挙法

○提案の視点
規制・制度の撤廃や見直し

○提案の具体的内容
第142条と第143条の認められる文書図画の頒布・掲示の中に、電子メール・ブログ・動画サイト等様々なネットサービスの利用類型を追加すること等により、公職選挙法第146条の規制を緩和し、ネット選挙を解禁する。公職選挙法第148条の規制を緩和し、新聞等に加えてネットにおける報道及び評論の自由も明文で認め、民主主義を支える最も重要な自由として、その代表を選ぶ選挙において、その公平を害しない限りにおいて、ネットメディア、動画サイト、ブログ等における表現の自由を最大限確保する。

○提案理由
 公職選挙法によって、選挙運動期間中にネットを選挙運動に用いることが完全に禁止されている。選挙運動期間中の選挙運動に関するネット上の掲示は全て、公職選挙法の第146条で規制の対象となっている文書図画の掲示とされ、完全に禁止されているが、これは、インターネットにおける正当な情報利用を阻害する一大規制となっている。
 第148条で、選挙の公正を害しない限りにおいて新聞・雑誌に対し報道・評論を掲載する自由を妨げるものではないと明文で規定しているが、新聞紙にあつては毎月三回以上、雑誌にあつては毎月一回以上、号を逐つて定期に有償頒布するものであり、第三種郵便物の承認のあるものであり、当該選挙の選挙期日の公示又は告示の日前一年以来そうであったもので、引き続き発行するものと、ブログ等は無論のこと、大手ネットメディアですら入らない、あまりにも狭い規定となっている。第151条の3で放送についても同様の規定があるが、放送法を参照しており、当然のことながら、動画サイトなどは入らないと考えられる。
 紙媒体であろうが、ネットだろうが、実名だろうが、匿名だろうが、報道・批評・表現の本質に変わりはない。表現の自由は、憲法に規定されている権利であり、民主主義を支える最も重要な自由として、その代表を選ぶ選挙において、その公平を害しない限りにおいて、あらゆる媒体に最大限認められなくてはならないものであることは言うまでもない。もし、公職選挙法が杓子定規に解釈され、各種ネットメディアに不当な規制の圧力がかけられるようなら、公職選挙法自体憲法違反とされなくてはならない。

○根拠法令等
公職選挙法

○制度の所管省庁
総務省

(20)天下り
○提案事項名(タイトル)
天下り

○提案の視点
規制・制度の撤廃や見直し

○提案の具体的内容
閣議決定により、国家公務員法で規定されている再就職等監視委員会を凍結し、大臣の承認を受ければ良いとするような迂回天下りや、60歳を過ぎてから公務員の身分のまま公益法人などに出向するといった新たに提案されている天下りルートも含め、天下りを完全に禁止する。

○提案理由
 平成19年の6月23日号の週刊ダイヤモンドの「天下り全データ」という特集で、天下りとして2万7882人という人数が示されている。中には他愛のない再就職も含まれているだろうが、2万5千人を超える元国家公務員が各省庁所管の各種独立行政法人や特殊法人、公益法人、企業などにうごめき、このような天下り利権が各省庁の政策を歪めているというのが、今の日本のおぞましい現状である。
 法改正によって得られる利権・行政による恣意的な許認可権を盾に、役に立たない役人を民間に押しつけるなど、最低最悪の行為であり、一国民として到底許せるものではない。さらに、このような天下り役人が国の政策に影響を及ぼし、国が亡んでも自分たちの利権のみ伸ばせれば良いとばかりに、国益を著しく損なう違憲規制を立法しようとするに至っては、単なる汚職の域を超え、もはや国家反逆罪を構成すると言っても過言ではない。
 知財・情報政策においても、天下り利権が各省庁の政策を歪めていることは間違いなく、政策の検討と決定の正常化のため、文化庁から著作権関連団体への、総務省から放送通信関連団体・企業への、警察庁から各種協力団体・自主規制団体への天下りの禁止を決定するべきである。これらの省庁は特にひどいので特に名前をあげたが、他の省庁も含めて決定するべきである。また、天下りの隠れ蓑に使われている特殊法人、公益法人、特定非営利活動法人、特定非営利活動法人等は全廃をベースとして検討を進めるべきであり、天下りを1人でも受け入れている団体・法人・企業は各種公共事業の受注・契約は一切できないという入札・契約ルールを全省庁において等しく導入するべきである。

○根拠法令等
国家公務員法

○制度の所管省庁
全省庁

(21)児童ポルノ排除対策ワーキングチーム
○提案事項名(タイトル)
児童ポルノ排除対策ワーキングチーム

○提案の視点
規制・制度の撤廃や見直し

○提案の具体的内容
児童ポルノ排除対策ワーキングチームの議事録を開催の度速やかに数日内に公表する、一方的かつ身勝手に危険な規制強化を求める自称良識派団体代表だけで無く、児童ポルノ法の実務に携わりその本当の問題点を熟知している法律家、表現の自由に関する問題に詳しい情報法・憲法の専門家も呼ぶ、危険な規制強化の結論ありきで報告書をまとめる前にきちんとパブコメを取るなど、児童ポルノ規制の本当の問題点を把握した上で検討を進められるよう速やかに改善を図る。

○提案理由
 報道によると、この2月4日から内閣府において、児童ポルノ排除対策ワーキングチームの検討が始まっている。このワーキングチームにおいて、児童ポルノ規制について、国民の基本的な権利を侵害するものとしかなり得ない危険なサイトブロッキングや単純所持・取得規制等について検討される恐れが強いが、このワーキングチームは議事録も公開しておらず、議事の進め方、対策のとりまとめ方等あらゆる点で不透明であり、このようなワーキングチームで表現の自由を含む国民の基本的権利に関わる重大な検討が進められることには極めて大きな問題がある。
 この児童ポルノ排除対策ワーキングチームの議事録を開催の度速やかに数日内に公表する、一方的かつ身勝手に危険な規制強化を求める自称良識派団体代表だけで無く、児童ポルノ法の実務に携わりその本当の問題点を熟知している法律の実務家、表現の自由に関する問題に詳しい情報法・憲法の専門家・法学者も呼ぶ、危険な規制強化の結論ありきで報告書をまとめる前にきちんとパブコメを取るなど、児童ポルノ規制に関する本当の問題点を把握した上で検討を進められるよう速やかに改善を図るべきであり、このような改善を図れないようであれば、この有害無益かつ危険な規制強化の結論しか出し得ないだろう出来レースの密室政策談合ワーキングチームは即刻解散するべきである。

○根拠法令等
児童ポルノ規制法(正式名称は「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」)

○制度の所管省庁
内閣府・警察庁・厚生労働省

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2010年1月18日 (月)

第211回:児童ポルノ流通防止協議会「児童ポルノ掲載アドレスリスト作成管理団体運用ガイドライン(案)」に対する意見募集(1月28日〆切)への提出パブコメ

 このパブコメについては「チラシの裏(3周目)」、「表現規制について少しだけ考えてみる(仮)」、「『反オタク国会議員リスト』メモ」、「表現の数だけ人生が在る」、「ある、古参のエロゲプログラマー(エログラマー)の戯れ言」、「止めろ!規制社会・監視国家ブログ版」等でも取り上げられているので、リンク先もご覧頂ければと思うが、前の目次7で少し書いた通り、今現在、児童ポルノ流通防止協議会から、実質規制官庁主導による(事務局がインターネット協会という、警察の息のかかった半官検閲センターであるインターネット・ホットラインセンターを運営し、総務省と経産省が所管する財団法人であることからも、このガイドラインの作成について実質規制官庁が関与し、主導していることは明らかに分かることである)、「児童ポルノ掲載アドレスリスト作成管理団体運用ガイドライン(案)(pdf)」という、児童ポルノを理由にしたネット検閲ガイドラインのパブコメ募集が1月28日〆切でかかっている(インターネット協会のリリースinternet watchの記事参照)。

 下に書いて提出したパブコメを載せるので、詳しくは下を参照してもらえればと思うが、パブコメの対象となっているガイドライン(pdf)の要点は、警察などが提供するサイト情報に基づき、統計情報のみしか公表しない不透明な専門委員会とリスト作成管理団体を介し、児童ポルノアドレスリストの作成が行われ、そのリストに基づいて、インターネット・サービス・プロバイダー、検索サービス事業者あるいはフィルタリング事業者がブロッキング等を行うとすることにある。

 しかし、いくら中間に団体を介そうと、一般に公表されるのは統計情報に過ぎす、児童ポルノであるか否かの判断情報も含め、アドレスリストに関する具体的な情報は、全て閉じる形で秘密裏に保持されることになるのであり、インターネット利用者から見てそのリストの妥当性をチェックすることは不可能である。このようなアドレスリストの作成・管理において、透明性・公平性・中立性を確保することは本質的に完全に不可能なのであり、そのため、このようなリストに基づくブロッキング等は、自主的な取組という名目でいくら取り繕おうとも、憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないのである。これは、小手先の運用変更などでどうにかなる問題では断じて無い。

 このブログでは何度も繰り返していることだが、ブロッキングはどこをどうやっても検閲にしかならない。この極めてレベルの低いガイドラインは、規制官庁がそろい踏みで関与する不透明な管理団体でアドレスリストを作成してブロッキング等を実施すると、要するに児童ポルノを理由としてネット検閲を実施するとしているものであり、到底看過できるものでは無い。役所のパブコメでは無く、役所の所管する団体レベルのパブコメだが、このガイドラインのレベルはあまりにお粗末であり、その危険性はいつも紹介している各種の役所のパブコメに勝るとも劣らない。情報規制問題に関心を寄せているあらゆる人・企業・団体にこのパブコメは出してもらいたいと私は思っている。

(2010年1月19日の追記:目次7で少し触れた中国におけるグーグル検閲問題について、ITmediaの記事で書かれているように、グーグルは中国政府と交渉を続けるつもりらしく、さらに政治レベルに突入したら先は読めなくなるが、ここまでタンカを切ってこの先中国政府と下らない妥協をした日には、グーグルは世界最大にして最低のネット企業という烙印を押されることだろう。

 日経エレクトロニクスの記事になっているが、今日私的録音録画補償金裁判の第1回口頭弁論が行われる。私的複製問題の本質に関わる大注目裁判として、このことについても目は離せない。

 また、海賊版対策条約(ACTA)の次回メキシコ交渉(1月26日から29日)の交渉アジェンダをニュージーランド政府がそのHPに載せている。交渉アジェンダに「デジタル環境におけるエンフォースメント手続き」が載っており、ここで、ストライクポリシー、実質的なネット検閲が検討されるだろうことは間違いない。ただし、やはりこの条約の「透明性」がアジェンダに載っていることも見逃されてはならないだろう。)

(2010年1月20日の追記:先日開かれた私的録音録画補償金訴訟の第1回口頭弁論の話が、PC Onlineの記事になっている。第1回なので当然意見は言いっぱなしだが、東芝側が論理構成から争うとしていることから考えても、この裁判で私的録音録画補償金のかなりの問題点が明らかになることだろう。

また、今日、文化庁で、文化審議会・著作権分科会・法制問題小委員会が開かれ、著作権の一般規定・フェアユースの議論が行われた(共同通信の記事ITmediaの記事PC Onlineの記事知財情報局の記事参照)。これらの記事を読んだだけでも分かるが、この話も、案の定、文化庁と権利者団体は結託して、全国民を裨益するだろう新しい権利制限を無意味に狭く、使えないものとしようとして来ている。いろいろと例をあげて議論したようだが、このような例示について、今まであらゆる権利制限について、文化庁と癒着利権団体が結託して潰すか極めて狭く使えないものとして来たからこその一般規定の議論であるということがまだこの連中には分かっていないと見える。このフェアユースの議論も、3月くらいまでに中間とりまとめを作ってパブコメ、秋までくらいに結論という文化庁のお決まりのスケジュールに乗るようであり、まだこれからである。この話もまた適当なところで取り上げたいと思っている。)

(2010年1月21日の追記:昨日の法制問題小委員会の資料として、権利制限の一般規定(フェアユース)ワーキングチーム報告書(pdf)とその概要(pdf) 文化庁HPにアップされている。上の追記で書いた通り、この話もまた適当なところで取り上げるつもりであり、今ここで細かな突っ込みをする気は無いが、文化庁のこれらの資料は、例の如く印象操作とミスリード満載の一大悪作文であり、その内容は以前にもまして劣悪である。)

(2010年1月22日の追記:「表現の数だけ人生が在る」のmudan様より、トラックバックを送ったとのコメントを頂いたが、届いていることを確認できなかったので、その代わりにこのエントリの最初の参考リンク中に、mudan様のブログエントリへのリンクを追加した。)

(2010年1月22日夜の追記:エントリの最初の参考リンク中に「ある、古参のエロゲプログラマー(エログラマー)の戯れ言」と「止めろ!規制社会・監視国家ブログ版」を追加した。もしまだご覧になっていないようであれば、是非ご一読をお勧めする。

 また、昨日(1月21日)、アメリカのヒラリー・クリントン米国務長官が、中国におけるグーグル検閲問題に端を発したネット検閲問題について、インターネットにおける情報の自由を全面的に支持するとの演説を行った(共同通信の記事時事通信の記事アメリカ国務省HPに掲載されている演説全文と動画参照)。主要国政府の高官で、インターネットにおける表現の自由の重要性を全面的に肯定し、ネット検閲を明確に大々的に非難したのは恐らくヒラリー長官が初めてであり、今後のアメリカの政策次第ではあるが、この演説は歴史的演説となるだろう。ただし、これほど自由という言葉に反応するアメリカも、残念ながら、なお児童ポルノ規制と著作権規制に関しては狂ったことをやって恬然としている。この演説は1つのターニングポイントにはなるだろうが、まだ道は長い。)

(以下、提出パブコメ)

1.氏名及び連絡先
氏名:兎園(個人)
連絡先:

2.意見
 検閲たらざるを得ず、情報・表現に関する国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ない、アドレスリストに基づくブロッキング等について実施されるべきでないのは無論のこと、そのためのアドレスリストの作成、このリスト作成のための専門委員会・リスト作成団体等の設置もされるべきではない。本ガイドラインを全て白紙に戻し、即刻本児童ポルノ流通防止協議会を解散することを私は求める。

3.理由
 本ガイドラインの要点は、警察などが提供するサイト情報に基づき、統計情報のみしか公表しない不透明な専門委員会とリスト作成管理団体を介し、児童ポルノアドレスリストの作成が行われ、そのリストに基づいて、インターネット・サービス・プロバイダー、検索サービス事業者あるいはフィルタリング事業者がブロッキング等を行うとすることにある。

 しかし、いくら中間に団体を介そうと、一般に公表されるのは統計情報に過ぎす、児童ポルノであるか否かの判断情報も含め、アドレスリストに関する具体的な情報は、全て閉じる形で秘密裏に保持されることになるのであり、インターネット利用者から見てそのリストの妥当性をチェックすることは不可能であり、このようなアドレスリストの作成・管理において、透明性・公平性・中立性を確保することは本質的に完全に不可能である。このことは、このようなリストに基づくブロッキング等が、自主的な取組という名目でいくら取り繕おうとも、どうして憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないかということの根本的な理由であり、小手先の運用変更などでどうにかなる問題では断じて無い。

(検閲の禁止について、税関検査や教科書検定に関する最高裁判決から、あたかも検閲の禁止が事前規制のみに限られるかの如きことを言っている役所もあるが、学説上必ずしもそのような狭い解釈が取られている訳ではなく、これらの最高裁判決自体、昨今のインターネットの普及を踏まえたものでなく今日もなお通用するかどうか怪しいものである。今日ではインターネット上でしか発表・流通の機会を持たない表現物が既に多く存在しているのであり、例え事後規制だろうと、そのような表現物の発表・流通を完全に抑制しかねない規制は、やはり検閲に該当するとする方が妥当である。)

 インターネット利用者から見て透明性・公平性・中立性の確保が不可能な、すなわち濫用の防止が不可能なリストに基づくブロッキング等は、どこをどうやっても検閲にしかなり得ないものであり、その問題はアドレスリスト作成管理に関する運用ガイドラインの修正のような小手先の変更で解決され得るものでは無い。本ガイドラインを全て白紙に戻し、このような非人道的な検討しか行い得ない本児童ポルノ流通防止協議会を即刻解散することを私は求める。

 小手先の修正を求めているのではないことは上に書いた通りであるが、論外の印象操作等、ガイドラインを全て白紙に戻すべきと私が思っている所以の記載を以下に指摘して行く。

・第2ページの「児童ポルノについては、その製造時に個々の児童への著しい性的虐待を伴うことや被害児童に対する脅迫の道具として利用され得るという問題があるほか、児童ポルノがインターネット上に一旦流通した場合には、これを回収することは極めて困難であり、性的虐待の現場を永久に残し、被害児童の心を傷つけ続けることとなるという問題や児童ポルノの流通によって児童を性欲の対象として捉える風潮を助長するという問題がある。そのため、児童ポルノは他の違法情報と明確に区分して対策を行う必要がある。」という記載について:

 これは、根拠の無い印象操作を含む記載である。情報の違法性の本質的な相対性をなおざりにして、情報の「流通」という姑息な言葉で情報の提供者が誰かという最も重要な論点をごまかし、あたかも検閲が正当化されるかの如き印象操作を行うことは許されない。例えそれが児童ポルノであろうと、情報の単純所持や単なる情報アクセスではいかなる被害も発生し得えない。現行法で、ネット上であるか否かにかかわらず、提供及び提供目的の所持まで規制されているのであり、提供によって生じる被害と所持やダウンロード、取得、収集、アクセスとの混同は許され得ない。そもそも、最も根本的なプライバシーに属する個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ること自体、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の基本的な権利からあってはならないことである。

 「児童ポルノの流通によって児童を性欲の対象として捉える風潮を助長する」という記載も全く根拠の無い一方的な決め付けである。上で書いた通り、提供及び提供目的の所持まで規制されているのであり、提供によって生じる被害と所持やダウンロード、取得、収集、アクセスとの混同は許され得ないのであり、このような強力効果論は、児童ポルノ以前に一般的なポルノの規制の根拠としてほぼ完全に否定されているものであり、表現・情報規制の根拠としてほとんど一顧だに値しないものである。

 すなわち、「児童ポルノは他の違法情報と明確に区分して対策を行う必要がある」とするに足る根拠は全く無い。

・同第2ページの「ウェブサイト等には、依然として多数の児童ポルノが流通しており、インターネット利用者がこれらの児童ポルノを容易に検索、閲覧することが可能な状態となっている」という記載について:

 これも具体的なデータが示されておらず、単なる印象の域を出ない記載である。このような単なる印象に基づいて情報に対する規制が正当化されることなど無い。

・同第2ページの「例えば、諸外国においては、既に官民が連携した対策が積極的に行われており、英国、 イタリア、スウェーデン、フィンランドを始めとする多くの欧米諸国では、 ホットラインの運用による児童ポルノの削除のほか、ISPによるブロッキング等の対策が実施されている」という記載について:

 この記載は、欧米においても、情報の単純所持規制やサイトブロッキングの危険性に対する認識がネットを中心に高まって来ていることを完全に無視している。

 例えば、ドイツのバンド「Scorpions」が32年前にリリースした「Virgin Killer」というアルバムのジャケットカバーが、アメリカでは児童ポルノと見なされないにもかかわらず、イギリスでは該当するとしてブロッキングの対象となり、プロバイダーによっては全Wikipediaにアクセス出来ない状態が生じたなど、欧米では、行き過ぎた規制の恣意的な運用によって弊害が生じていることや、アメリカにおいても、この1月に連邦最高裁で児童オンライン保護法が違憲として完全に否定され、この2月に連邦控訴裁でカリフォルニア州のゲーム規制法が違憲として否定されていること、つい最近からのドイツ国会への児童ポルノサイトブロッキング反対電子請願(https://epetitionen.bundestag.de/index.php?action=petition;sa=details;petition=3860)に13万筆を超える数の署名が集まったこと、ドイツにおいても児童ポルノサイトブロッキング法は検閲法と批判され、既に憲法裁判が提起されており(http://www.netzeitung.de/politik/deutschland/1393679.html参照)、総選挙の結果与党に入ったドイツ自由民主党の働きかけで、ネット検閲法であるとして児童ポルノブロッキング法の施行が見送られ、ブロッキングはせずにまずサイトの取り締まりをきちんと警察にやらせ、1年後にその評価をしてブロッキングの是非を判断することとされ(http://www.tomshardware.com/de/Zensur-Internet-ZugErschwG-Provider-Koalition,news-243605.html参照)、ドイツ大統領もこの児童ポルノサイトブロッキング法に対する署名を拒否したこと(http://www.zeit.de/politik/2009-11/sperre-gesperrt参照)なども注目されるべきである。スイスにおいて最近発表された調査でも、2002年に児童ポルノ所持で捕まった者の追跡調査を行っているが、実際に過去に性的虐待を行っていたのは1%、6年間の追跡調査で実際に性的虐待を行ったものも1%に過ぎず、児童ポルノ所持はそれだけでは、性的虐待のリスクファクターとはならないと結論づけており、児童ポルノの単純所持規制・ブロッキングの根拠は完全に否定されているのである(http://www.biomedcentral.com/1471-244X/9/43/abstract参照)。欧州連合において、インターネットへのアクセスを情報の自由に関する基本的な権利として位置づける動きがあることも見逃されてはならない(http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=MEMO/09/491&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en参照)。

 民主主義の最重要の基礎である表現の自由に関わる問題において、一方的な見方で国際動向を決めつけることなどあってはならないことであり、このような国際動向もきちんと取り上げるべきである。

・第2ページの「我が国において、ブロッキングの実施、検索結果からの排除、フィルタリングリストへの反映等の対策を講じるためには、児童ポルノの流通防止対策を推進する事業者等に対して、児童ポルノ該当性についての判断を経た上で作成されたアドレスリストが提供される必要がある。このため、十分な透明性と客観性を確保しつつ、警察庁及びインターネット・ホットラインセンターが把握した児童ポルノに係る情報に基づき、アドレスリストを作成し、児童ポルノの流通防止対策を推進する事業者等にこれらを提供するとともに、当該アドレスリスト上に掲載された児童ポルノに係る情報について検証等を行う機能を有する団体を設けることが重要であることから、リスト作成管理団体を設置することとしたものである」という記載について:

 アドレスリストの作成とその運用自体に関する問題については、該当箇所の記載についてのところでも問題点を指摘するが、同第2ページ注2において、「我が国でのブロッキングの実施について、技術的課題として正確性・導入コスト・実施に伴うリスク等の観点から、法的課題として表現の自由・通信の秘密・利用の公平等の観点から、検討が進められているところである」と書かれている通り、また上でも書いた通り、ブロッキングの実施には乗り越えることが不可能な技術的・法的問題があるのであり、このようにブロッキング等が実施されることを前提としてリスト作成管理団体の設置の必要性が正当化されるとすることは、結論ありきの不適切極まるものである。

・同第2ページから第3ページの「前項で挙げたブロッキング等の対策に対する社会的な評価は、アドレスリストに対する評価に大きく依存するものである。このため、アドレスリストの作成、維持・管理等については、十分な透明性と客観性を確保しつつ、社会から信頼を寄せられるものとする必要がある」という記載について:

 上でも書いた通り、アドレスリストの作成、維持・管理等について、十分な透明性と客観性を確保することは不可能であり、ブロッキングの実施には乗り越えることが不可能な技術的・法的課題があるのであり、「ブロッキング等の対策に対する社会的な評価は、アドレスリストに対する評価に大きく依存する」といったブロッキングの実施を前提とする記載は、結論ありきの不適切極まるものである。そもそも検閲にしかなり得ないブロッキングについて、社会的に評価される、社会から信頼を寄せられるとすること自体、情報に関する個人の基本的な権利を完全にないがしろにすることである。

・第3ページの「児童ポルノについては、提供が禁止されるなど既に表現の自由は制限されているものの、政府機関がアドレスリストの作成、維持・管理等を行った場合、表現の自由に対する過度な規制強化と捉えられるおそれがある。このことから、アドレスリストの作成、維持・管理等については、民間のイニシアティブにて実施することが望ましい」という記載について:

 「児童ポルノについては、提供が禁止されるなど既に表現の自由は制限されている」という記載は、情報の違法性に関する本質的な相対性を無視し、あたかも表現の自由より児童ポルノ規制の方があらゆる点において優先されてしかるべきであるかの如き不適切な印象操作を含む記載である。上でも書いた通り、提供によって生じる被害と所持やダウンロード、取得、収集、アクセスとの混同は許され得ないのであり、情報に関する規制を行うにあたって、具体的な被害・加害行為を超えて、民主主義の最大の基礎である表現の自由を制限することは、憲法違反として断じて許されないことである。

 また、以下でも指摘するが、あたかも民間団体でアドレスリストの作成、維持・管理等を行えば表現の自由の侵害にならないとすることも極めて悪辣なミスリードである。いくら中間団体を介しようと、警察あるいはその下部機関であるインターネット・ホットラインセンターなどからの情報・実質的な要請に基づき、ISP等にリストに基づくブロッキング等が事実上強制されるのであれば全く同じことであり、このような規制は、検閲とならざるを得ず、表現・情報に関する個人の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないものである。

(インターネット協会が運営するインターネット・ホットラインセンターが、民間団体でありながら、警察からの委託事業を行う、事実上の警察の下部組織であることは、総務省の「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」の報告書(http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/2009/090116_1.html参照)も認めているところである。)

・第3ページの「リスト作成管理団体の監督等を行うため、児童ポルノ流通防止協議会において選出された学識経験者、法律専門家、民間団体・業界団体の代表者等の児童ポルノの流通防止に関する知見を有する専門委員から構成される専門委員会を設置する」という記載、及び、同第3ページにおいて、専門委員会は、①リスト作成管理団体の選定、②リスト作成管理団体の監督、③本ガイドラインの見直しを行うとされていることについて:

 上で書いた通り、いくら専門委員会などの中間委員会を介しようと、警察あるいはその下部機関であるインターネット・ホットラインセンターなどからの情報・実質的な要請に基づき、ISP等にリストに基づくブロッキング等が事実上強制されるのであれば全く同じことであり、このようにして行われるブロッキングなどの規制は、検閲とならざるを得ず、表現・情報に関する個人の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ない。このように専門委員会などを中間に介しさえすれば表現の自由に関する問題が回避されるなどということは、まず規制ありきで有害無益な利権を作ろうとする規制官庁あるいはその下部機関が考えそうな妄言・暴論であり、このような専門委員会が設置されるべきでないのは無論のことである。

・同第3ページにおいて、リスト作成管理団体は、①アドレスリストの作成、②アドレスリストの維持・管理、③アドレスリストの提供、④統計情報の集計及び公表を行うとされていることについて:

 上で書いた通り、いくらリスト作成管理団体などの中間団体を介しようと、警察あるいはその下部機関であるインターネット・ホットラインセンターなどからの情報・実質的な要請に基づき、ISP等にブロッキング等が事実上強制されるのであれば全く同じことである。このようなリスト作成管理団体が設置されるべきでないのは無論のことである。

・第4ページにおいて、アドレスリスト作成時の情報提供元の範囲は「原則として、警察庁及びインターネット・ホットラインセンターからの情報提供を受けるもの」とされていることについて:

 何の権限もない民間団体に、警察などへ届け出られた情報をそのまま垂れ流して、それで児童被害が防止できると言うなど、気が狂っているとしか思われない。これは情報を流した先に守秘義務を課せばそれで済むといった類の問題では無い。役所が業務上知り得た情報を、そのまま民間団体に流すとすることに法律とモラルの点の極めて大きな問題がある上、このような情報を一元的に管理して、根拠無くブロッキングなどの検閲の実現のためその使用を推進する団体を作ろうとしていること自体おかしいと考えるべきである。

 本来このパブコメの対象では無いが、ここで一緒にインターネット・ホットラインセンターについても指摘しておくと、有害無益な半官検閲センターであるインターネットホットラインセンターを廃止することがそもそも必要である。サイト事業者が自主的に行うならまだしも、何の権限も有しないインターネット・ホットラインセンターなどの民間団体からの強圧的な指摘により、書き込みなどの削除が行われることなど本来あってはならないことである。このようなセンターは単なる一民間団体で、しかもこの団体に直接害が及んでいる訳でもないため、削除を要請できる訳がない。勝手に違法・有害と思われる情報を収集して、直接削除要請などを行う民間団体があるということ自体おかしいと考えるべきであり、このような無駄な半官検閲センターに国民の血税を流すことは到底許されないのであって、その分できちんとした取り締まりと削除要請ができる人員を、法律によって明確に制約を受ける警察に確保するべきである。

 さらに言えば、この検閲のためのアドレスリストの作成等も、警察等の規制官庁からの委託事業として実施されるだろうこと、警察等の規制官庁は、このような事業によって作られる中間団体を新たな天下り先とするか、あるいは、このような事業によって与えられる権限により今の不当な天下り利権を保持しようとしているのだろうことは容易く想像できるが、このような有害無益な非人道的検閲事業に国民の血税を流すこと、このような非人道的検閲事業によって規制官庁が天下り利権の保持拡大を狙うことは到底許されることではない。このような極悪非道な規制利権強化の動きには一国民として心の底から怒りを覚える。

・同第4ページにおいて、アドレスリストの対象とする範囲は、「・サイト管理者等への削除要請を行ったが削除されなかったもの・海外サーバに蔵置されているもの・サイト管理者等への削除要請が困難であるもの・その他、既に多くのウェブサイト又はウェブページを通じて流通が拡大しているなど、迅速かつ重層的な流通防止対策が必要で、事前に専門委員会の承認を得たもの」のいずれかに該当するものとされていることについて:

 この記載は、警察による削除要請あるいは法執行と、インターネット・ホットラインセンターによる削除要請を故意に混同する悪辣なミスリードを行っている。

 上でも書いた通り、インターネット・ホットラインセンターは単なる一民間団体で、しかもこの団体に直接害が及んでいる訳でもないため、削除を要請できる訳がないのである。このような民間団体からの削除要請に従わなかったからといって、ブロッキングやフィルタリング、検索結果からの除外などに用いられるリストにサイトが載せられることは不当以外の何ものでも無い。上で書いた通り、半官検閲センターであるインターネット・ホットラインセンター自体廃止されるべきであるが、この話は、このセンターも含め、何人であれ、あるサイトが児童ポルノサイトであると判断するのであれば、まず警察に通報するべきであって、後は、法律によって明確に制約を受ける警察により、きちんとした削除要請あるいは取り締まりがなされるべき話であって、それ以上の話では無い。

 あるいは警察からの削除要請等に対して従わないのであれば、現行法で、ネット上であるか否かにかかわらず、児童ポルノ提供及び提供目的の所持まで規制されているのであり、言うまでもなく、その地道なエンフォースが求められる事案となる。警察がきちんと手続きを踏み、令状なりを取って開示を求めれば個人情報であったとしても開示されないということはないはずであり(このような正式な手続きを抜きにして、警察がISP等に情報開示等を迫っているとしたら、その方が大問題である)、ネット上においても現行多くの児童ポルノ事件の取り締まりが行われている現状を考えても、国内においてこのエンフォースが困難であるとは考え難い。

 海外サーバーの児童ポルノコンテンツについても、児童ポルノの提供が罪になっていない主要国もないのであろうから、日本の警察なりが海外の捜査機関に協力すれば良いだけの話であり、海外サーバーにおかれていることのみをもって、表現の自由に含まれる個人の情報アクセスの権利等を侵害することが、検閲とならざるを得ないブロッキング等を行うことが正当化されるということは無い。上でも書いた通り、提供によって生じる被害と所持やダウンロード、取得、収集、アクセスとの混同は許され得ないのである。

 「その他、既に多くのウェブサイト又はウェブページを通じて流通が拡大しているなど、迅速かつ重層的な流通防止対策が必要で、事前に専門委員会の承認を得たもの」というのも極めて曖昧な定義であり、このような極めて曖昧な規定に基づいて、ブロッキング等に用いられるリストが作られ、検閲が行われるということは、表現の自由に対する重大な侵害、恐怖以外の何ものでもない。

 如何なる意味でも、このようなアドレスリストの作成を正当化するに足る理由は無い。

・第5ページにおいて、「アドレスリスト利用事業者は、原則として、アドレスリストの提供について要請のあった国内のISP、検索エンジンサービス事業者及びフィルタリング事業者等とする。また、専門委員会が特に必要と認めたものに対し、アドレスリストの提供を行うことができる。ただし、専門委員会において定められた一定の欠格事項に該当するものは除く」とされ、「アドレスリストの利用目的を、ブロッキングの実施、検索結果からの排除、フィルタリングリストへの反映等、児童ポルノの流通防止対策に限定すること」を含めた契約を締結するとされていることについて:

 ここで、そのメンバー選定からして不透明であり、実質規制官庁が介入してくるに違いない専門委員会が自主的に「特に必要と認めたものに対し、アドレスリストの提供を行う」と書かれていることからも露骨に分かることだが、いくら自主的な取り組みという体裁を装おうとも、このようなアドレスリストは一旦作られたら、警察や総務省、経産省などの規制官庁からの直接間接の曖昧かつ不透明な行政指導により、国内のISP、検索エンジンサービス事業者とフィルタリング事業者等に無理矢理押し付けられ、これらの事業者がブロッキング等を余儀なくされることになるのは日の目を見るより明らかである。これが検閲でなくて何だと言うのか。このような手段は必ず濫用されるのであり、アドレスリスト作成が行われるべきでないのは無論のこと、そのメンバー選定からして不透明であり、実質規制官庁が介入してくるに違いない専門委員会やリスト作成管理団体といった団体は絶対に作られてはならないものである。

・第5ページから第6ページの、リスト作成管理団体の適切な運営の確保のための措置として書かれている、1 統計情報の公表、2 専門委員会への報告、3 情報の管理及び守秘義務、4 リスト作成管理団体の職員に係る留意事項、5 公平性・中立性の確保等の措置について:

 リスト作成管理団体は、統計情報を公表する、運営状況等について専門委員会へ報告するとしているが、一般に公表されるのは統計情報に過ぎす、児童ポルノであるか否かの判断情報も含め、アドレスリストに関する具体的な情報は、全て閉じる形で秘密裏に保持されることになる。そのため、インターネット利用者から見てそのリストの妥当性をチェックすることは不可能であり、このようなアドレスリストの作成・管理において、透明性・公平性・中立性を確保することは本質的に完全に不可能である。このことは、上で書いたドイツに児童ポルノブロッキング法に対する反対においても取り上げられていた本質的な問題であって、このようなリストに基づくブロッキング等がどうして検閲とならざるを得ないかということの根本的な理由であり、小手先の運用変更でどうにかなる問題では無い。このような公表不可能かつ検証不可能な秘密情報に基づく検閲は絶対に行われるべきではないのであり、このようなアドレスリスト作成が行われるべきでないのは無論のこと、そのメンバー選定からして不透明であり、実質規制官庁が介入してくるに違いない専門委員会やリスト作成管理団体といった団体は絶対に作られてはならないのである。

 なお、私はそもそもこのようなリストや団体を作ること自体に反対しているのであって、この点をどうにかすれば問題が解決されると言うつもりは全く無いと念を押しておくが、児童ポルノを収集する者を業務から排除するとしている点について、そもそも他人についてこのような情報は通常知り得ないものであり、これを知ろうとすること自体、プライバシーの権利あるいは内心の自由の観点から見て極めて大きな問題があると言わざるを得ないことである。

・第7ページにおいて、「本ガイドラインの改訂に当たっては、パブリックコメントを実施するなど、広くインターネット利用者の意見を聴いた上で行うこととする」とされていることについて:

 本パブコメにおけるように、ガイドラインの本質的な問題点を隠蔽し、2週間という極めて短い期間でインターネット利用者の意見を聞いたことにするような団体が、このように書くとは片腹痛い。このような姑息極まる利用者無視を続ける限り、児童ポルノ流通対策協議会及びその事務局であるインターネット協会、インターネットホットラインセンター、引いては警察庁や総務省、経産省などの規制官庁に対するインターネット利用者の不信はさらに高まるであろうとここに指摘しておく。

・第8ページで「アドレスリストからの除外要請を受けた児童ポルノが存在した場合に改めて児童ポルノ該当性の判定を行うために、児童ポルノ該当性判定アドバイザー(以下、「判定アドバイザー」という。)を設置する」とされ、サイト管理者あるいはアドレスリスト利用事業者からの除外要請を受け、「判定アドバイザーによる該当性の判定に基づき、リスト作成管理団体にて該当性の判断を行い」、アドレスリストの維持あるいは削除を行うとしているていることについて:

 いかなる形で取り繕おうと、専門委員会などと同様に、そのメンバー選定からして不透明な判定アドバイザーなども設置されるべきではない。児童ポルノに関する事件は、国内であれ国外であれ、最終的には、法律によって明確に制約を受ける公開裁判における司法判断を仰ぐべき話であって、それ以上でもそれ以下でも無い。このような不透明な判定アドバイザーの設置で、透明性・公平性・中立性が確保されるとすることは、憲法に規定されている各種の国民の基本的な権利を完全にないがしろにすることであり、インターネット利用者、引いては全国民を完全にバカにすることに他ならない。

 最後に書いておくが、私が言いたいのは、民間の自主的な取り組みなどという言葉で上辺を取り繕い、規制官庁と結託して、国民の情報の自由に関する基本的権利に対して重大な侵害を行ってでもその利権のおこぼれに預かろうとするとすることは今後一切止めろということである。この点について私は誤解などしていないし、今後の検討に対する参考にするなどといった役人風の遁辞などそれこそ全く求めていない。児童ポルノ規制法に関しては、既に、提供及び提供目的での所持が禁止されているのであるから、本当に必要とされることは今の法律の地道なエンフォースであって有害無益な規制強化の検討ではない。現行以上に規制を強化するべきとするに足る明確かつ具体的な根拠は、上で指摘した通り何1つ無く、児童ポルノ規制法に関して検討すべきことがあるとしたら、現行ですら過度に広汎であり、違憲のそしりを免れない児童ポルノの定義の厳密化のみである。

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2010年1月17日 (日)

目次7

 単なる目次のエントリその7である。(この変わり映えのしないブログを読んで下さっている方々に感謝。)

 次回は、前回の表現の自由の一般論の続きを書こうと思っていたのだが、児童ポルノ流通防止協議会から、実質規制官庁主導による(事務局がインターネット協会という、警察の息のかかった半官検閲センターであるインターネット・ホットラインセンターを運営し、総務省と経産省が所管する財団法人であることからも、このガイドラインの作成について実質規制官庁が関与し、主導していることは明らかに分かることである)、「児童ポルノ掲載アドレスリスト作成管理団体運用ガイドライン(案)(pdf)」という、児童ポルノを理由にしたネット検閲ガイドラインのパブコメ募集が1月28日〆切でかかったので(インターネット協会のリリースinternet watchの記事参照)、一般論の前に、次回はこのパブコメについて書くことにする。このブログでは何度も繰り返していることだが、ブロッキングはどこをどうやっても検閲にしかならない。この極めてレベルの低いガイドラインは、規制官庁がそろい踏みで関与する不透明な管理団体でアドレスリストを作成してブロッキングを実施すると、要するに児童ポルノを理由としてネット検閲を実施するとしているものであり、到底看過できるものでは無い。

 この次のエントリもじきに載せるつもりだが、ここで最近の話の紹介も少ししておきたいと思う。

 既に、「表現規制について少しだけ考えてみる(仮)関連エントリ1エントリ2エントリ3エントリ4エントリ5)」、「『反ヲタク国会議員リスト』メモ」、「二次元至上主義」、「ある、古参のエロゲプログラマー(エログラマー)の戯れ言」等々で既に取り上げられているので、リンク先をご覧頂ければ十分と思うが、1月14日に、東京都は、出来レースでその青少年問題協議会の答申(答申概要答申本文(pdf)パブコメ結果概要東京都のリリース参照)をとりまとめた(産経の記事読売の記事internet watchの記事も参照)。

 自分たちと同じ意見の数が多ければ数こそ正義で思想・言論統制を正当化、都合の悪い意見が多ければ全て「誤解」で無視、どこのイデオロギー独裁国家かと思うが、これが日本の現実である。東京都のパブコメへの回答も全く回答になっていないお粗末極まるものであり、いちいち突っ込むのはバカバカしいのでしないが、それでも、1つだけ突っ込んでおくと、一般的に創作物を規制する根拠を示せという意見に対して青少年条例の判例を持ち出すのはデタラメも良いところである。日本の役人と御用学者はレベルが低いかおよそ狂っているので、本当に混同しているのか意図的なミスリードか判断がつかないが、成人も含めたあらゆる市民の表現の自由・情報アクセスに対する規制と青少年の情報アクセスに対する規制を混同すること、あるいは、これらを混同してミスリードを行うことは許されることでは無い。この話も答申をまとめて終わりというものでは無く、まだこれからである。今後さらにプロパガンダと印象操作が激しくなることだろうが、地道にやれることをやって行くしかない。(なお、児童ポルノの問題の方が大きいのだが、子供携帯の話も非常にタチが悪い。これも例の如く、根拠薄弱なまま印象操作で規制を強化して無意味なお墨付きを高く売り付けようとするいつもの官製規制ビジネスに過ぎない。)

 J-CASTの記事になっているが、原口総務大臣が、マスコミのクロスオーナーシップ規制(新聞社による放送局の支配禁止)の検討を明言したようである。このことについて、当のマスコミは全く報道しないだろうが、総務大臣がマスコミのクロスオーナーシップ規制を明言するというのは日本においては画期的なことである。これは、実現が非常に難しい政策事項の1つであるが、言論の多様性の確保ということを考えると極めて妥当なことであり、今後地道な検討が進むことを期待したい。

 また、グーグルが、中国における大規模なネット検閲に抗議する形で、中国からの撤退を決定し、米中関に微妙な緊張が走っている(時事通信の記事共同通信の記事朝日の記事スラッシュドット・ジャパンの記事ウォール・ストリート・ジャーナル日本版の記事New York Timesの記事参照)。私もグーグルのこの決断には喝采する、政治レベルに突入したら先は読めなくなるが、表現の自由をめぐる世界的議論の展開を期待する。

(以下、目次)

第181回:違憲判決後のフランス3ストライクアウト法案の第2案
(2009年7月 6日)

第182回:総務省・「通信・放送の総合的な法体系の在り方」答申案に対する提出パブコメ(2009年7月10日)

第183回:総務省・「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」第一次提言案に対する提出パブコメ
(2009年7月15日)

第184回:総務省・「『デジタル・コンテンツの流通の促進』及び『コンテンツ競争力強化のための法制度の在り方』」提出パブコメ
(2009年7月17日)

第185回:内閣官房・「デジタル技術・情報の利活用を阻むような規制・制度・慣行等の重点点検」に対する提出パブコメ(その1:著作権規制関連)
(2009年7月25日)

第186回:内閣官房・「デジタル技術・情報の利活用を阻むような規制・制度・慣行等の重点点検」に対する提出パブコメ(その2:一般的な情報・表現・ネット規制関連)
(2009年7月25日)

第187回:主要政党のマニフェスト案比較(知財・情報政策関連)
(2009年8月 5日)

第188回:ネット切断型のストライクポリシーを採用しようとあがくイギリス政府
(2009年9月 7日)

第189回:フィリピン著作権法の権利制限・フェアユース条項
(2009年9月14日)

第190回:スリランカ著作権法の権利制限・フェアユース条項
(2009年9月18日)

第191回:上下院通過後、憲法裁判を提起されたフランスの3ストライク法案の第2案(2009年9月29日)

第192回:EU著作権指令に列挙されている権利制限
(2009年10月 5日)

第193回:PCへの私的複製補償金賦課を否定するオーストリア最高裁の判決
(2009年10月12日)

第194回:ルクセンブルク著作権法の権利制限関連規定
(2009年10月19日)

第195回:フランスの3ストライク法案の第2案に対する憲法裁判所の判決
(2009年10月24日)

第196回:リヒテンシュタイン著作権法の権利制限関連規定
(2009年11月 3日)

第197回:EU通信ディレクティブ妥協案
(2009年11月 9日)

第198回:模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)のインターネット関連部分に関するリーク資料
(2009年11月17日)

第199回:「新たな人身取引対策行動計画」(案)に対するパブコメ募集
(2009年11月20日)

第200回:「新たな人身取引対策行動計画(仮称)」(案)に対する提出パブコメ
(2009年11月25日)

第201回:東京都青少年問題協議会答申素案に対するパブコメ募集
(2009年11月27日)

第202回:東京都青少年問題協議会答申素案に対する提出パブコメ
(2009年12月 2日)

第203回:知財本部「インターネット上の著作権侵害コンテンツ対策に関する調査」に対する提出パブコメ
(2009年12月 4日)

第204回:著作権法施行令の一部を改正する政令案・著作権法施行規則の一部を改正する省令案に対する提出パブコメ
(2009年12月10日)

第205回:知的財産戦略本部会合の資料と特許制度研究会の報告書
(2009年12月15日)

第206回:イギリスのデジタル経済法案(イギリス版ストライクアウト法案)
(2009年12月21日)

第207回:著作権の権利制限に関するイギリス政府の意見募集ペーパー
(2009年12月23日)

第208回:2009年の落ち穂拾い
(2009年12月28日)

第209回:著作権法施行令・施行規則を改正する政省令(+文化庁告示)の転載
(2010年1月 6日)

第210回:表現の自由の一般論(その1:表現の自由の意味と関係する基本的な権利)(2010年1月13日)

<番外目次>
番外その19:最近2年間の情報規制関連の主な動き
(2009年8月 1日)

番外その20:情報・表現規制問題に関する注目選挙区・候補リスト
(2009年8月14日)

番外その21:情報・表現規制問題に関する注目選挙区・候補当落結果リスト
(2009年8月31日)

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2010年1月13日 (水)

第210回:表現の自由の一般論(その1:表現の自由の意味と関係する基本的な権利)

 表現の自由に関しては、今まで折に触れて、個別の問題と絡めて書いて来ているのだが、個人的にきちんとしたまとめを書いておきたいとずっと思っていた。今回から、途中他の話を挟むかも知れないが、数回に渡って、表現の自由に関する一般論を書いて行きたいと思う。ただし、最初に、以下はあくまで個人的なまとめであることをお断りしておく。wikiでも良いのだが、より詳しくは、芦部信喜先生の「憲法」、「憲法学」、佐藤幸治先生の「憲法」、伊藤正己先生の「憲法」、長谷部恭男先生の「憲法」、浦部法穂先生の「憲法」等々の著名な憲法学の教科書を直接ご覧頂ければと思う。

(1)表現の自由の意味
 基本的人権の中でも最重要の権利として、自由の中の自由、自由な民主主義社会の最重要の基礎と言われる表現の自由だが、最近の動きを見ていると、この極めて貴重な自由の享受を当たり前のように思うことから来る気の緩みの中で、その真の意味が世界的に見失われる中、自由でなくてはならない表現を恣意的に規制することで個人の生活と安全が保障されるというキチガイ染みた妄言・暴論を吐く規制派の台頭を許したことが、世界的な情報政策の迷走の最大要因になっているように思われてならない。

 憲法の第21条で、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」と、世界人権宣言の第19条で「すべて人は、意見及び表現の自由に対する権利を有する。この権利は、干渉を受けることなく自己の意見をもつ自由並びにあらゆる手段により、また、国境を越えると否とにかかわりなく、情報及び思想を求め、受け、及び伝える自由を含む」と、国際人権規約のB規約第19条で「すべての者は、表現の自由についての権利を有する。この権利には、口頭、手書き若しくは印刷、芸術の形態又は自ら選択する他の方法により、国境とのかかわりなく、あらゆる種類の情報及び考えを求め、受け及び伝える自由を含む」と書かれている表現の自由の古典的な意味については、上記の各教科書にも書かれているが、およそ、表現の自由には、個人が表現活動を通じて自己を発展させるという自己実現の意味、表現活動によって政治的意思決定に参加するという自己統制の意味があるとされている。

 表現の自由によって確保される思想・情報の自由市場の中で、各個人が、自由に意見・情報を表明・交換し、その中から責任を持って情報の取捨選択を行い、自ら行動を決定し、政策決定に関与して行くということ、この自由によって保障される自由な議論の中で国として最も合理的な判断が選択されるようにして行くことこそ、民主主義の要諦であって、表現の自由は、これが無ければおよそ民主主義などなり立たないと断言できる、民主主義の最重要の基礎である。

 当然のことであるが、表現の自由は、あらゆる表現と表現媒体に及ぶのであり、無論インターネットにも及ぶ。国際人権規約に明確に謳われている通り、国境も関係ない。表現の政治性、芸術性、営利性などから表現を区別して、表現の内容により表現の自由を享受できる程度が異なるとする考えを取る者もいるが、このような、情報・表現に関する判断を「誰」が「いつ」「どこで」「どのように」行うのかという問題を等閑視し、何かしらの絶対的基準、特定のイデオロギーを物差しとして情報・表現の価値を決められると、一部の者が恣意的に情報・表現の価値を決めて良いとするに等しい考え方を私は取り得ない。表現の自由もまた絶対無制約では無いが、情報・表現の評価は常に相対的にしかなされ得ないものであり、その評価にあたっては必ず状況に応じたケースバイケースの慎重な判断が必要となることを忘れてはならない。(第76回で書いた通り、私は、現行のポルノ規制についても、その根拠は実に薄弱であり、そもそも広汎に過ぎ違憲であるとする立場を取る。)

 このことについても誤解している者がたまに見られるが、表現の自由に関する問題は多数決の問題では無い。表現の自由は、少数の表現・意見・思想を単にそれが少数であることのみをもって規制・弾圧することを許さないことも保障しているのである。具体的な被害・加害行為を超えて、多数の者がその表現について気に食わないということのみをもって、少数の者の表現・思想・意見を規制・禁圧・弾圧できる状況では、自由な情報の発信と選択による理性的な自己実現と自己統制に基づく民主主義政治は望むべくも無い。表現の自由の保障には、少数の者の意見・思想を尊重し、自分の判断を一方的に他人におしつけない寛容の精神を養う意味もあるのである。

 さらに、これらの教科書に載っているような古典的な政治的理由に加えて、情報化が進んだ現代社会の活動と発展は自由な情報の伝達をその最大の基礎としていると、表現の自由は既にあらゆる文化・経済活動の最大の基礎となっているとも言えるだろう。私人あるいは私企業間の情報の伝達について、公権力が恣意的に介入し得るという状況では、もはやいかなる文化活動もビジネスも安定的に行うことはできないだろう。

 この情報化時代にあって、あらゆる政治・文化・経済活動、国民の幸福の最大かつ不可欠の基礎としての表現の自由の意味と重要性は増しこそすれ減っていることは無い。

 自由とは何か、表現の自由とは何かという問いは、永遠に真の解の出ない問いの1つだが、それでも、この問いから目を逸らすことはあってはならない。人類の歴史を通じて、いつでも政策の最前線はこの問いとの戦いの中にあったし、今後もあり続けることだろう。

(2)表現の自由に含まれる、あるいは関係する基本的な権利
 また、これも分かっている人間には言わずもがなであるが、表現の自由を支えているのは何もいわゆる「表現の自由」だけでは無い。今回、個別の細かな論点まで突っ込んだ話をするつもりは無いが、憲法第21条で「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」と明確に書かれている通り、まず、言論や出版の自由(報道・取材・放送の自由なども含め)などとともに、集会や結社などの集団的表現活動の自由も保障されている

 さらに、第75回で書いたように、表現の自由には、消極的な情報入手・収集権も含めた知る権利・情報アクセス権が含まれている。個人の自由な思想・意見形成の当然の前提として、自由に情報を入手できることが保障されていなければならない。

 同じ第21条の第2項で「検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない」と書かれていることからも明らかなように、検閲の禁止と通信の秘密は表現の自由と密接な関係を有している。表現の自由から当然に導かれることであるが、公権力あるいはそれに準じる機関が、発表されるべきあるいは発表した表現の内容を事前・事後に審査して、その表現の発表・流通を完全に抑制することは許されない。通信の秘密も通信の内容はもとより、情報の発信人・受信人・通信の日時など通信に関する全ての事項に及ぶものであるが、このような通信の秘密が守られない状況では、いかなる情報も安心して伝達することはできないだろう。(検閲の禁止について、過去の最高裁の判決(税関検査に関する昭和59年12月12日の判決(pdf)や教科書検定に関する平成5年3月16日の判決(pdf)など)から、あたかも検閲の禁止が事前規制のみに限られるかの如きことを言っている役所もあるが、学説上必ずしもそのような狭い解釈が取られている訳ではなく、これらの最高裁判決自体、昨今のインターネットの普及を踏まえたものでなく今日もなお通用するかどうか怪しいものである。今日ではインターネット上でしか発表・流通の機会を持たない表現物が既に多く存在しているのであり、例え事後規制だろうと、そのような表現物の発表・流通を完全に抑制しかねない規制は、やはり検閲に該当するとする方が妥当であると私は考えている。)

 また、憲法第19条で「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」と、第20条で「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する」と明確に書かれている通り、表現の自由の前に、精神的自由の基礎をなすものとして、思想・良心・信仰(内心)の自由がある。国民がいかなる思想を抱こうと、それが内心にとどまる限りは完全に自由であるということであり、国家権力が、国民に特定の思想を強制すること、特定の思想によって不利益な取り扱いをすること、個人が内心で抱いている思想について直接的間接的に聞き出すことは許されないのである。

 憲法第23条で「学問の自由は、これを保障する」と書かれている、学問の自由も、表現の自由と重なるところが多い、精神的自由の1つである。(学問の自由と著作権規制の関係も興味深い論点を提供するが、ここではひとまずおく。)

 憲法第13条で「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」と書かれているところの、幸福追求権を主要な根拠として、判例上明確に認められている権利として、プライバシー権(私生活に干渉されない権利、自己に関する情報をコントロールする権利、自己決定権)と肖像権がある。どちらかと言えば表現の自由と衝突する形で持ち出されることが多い権利ではあるが、これらも、個人の情報の自由に関する基本的な権利として極めて重要なものである。

 このような国民の自由に関する基本的な権利を制度的に保障する上で、憲法第31条で定められている罪刑法定主義・推定無罪の原理、第32条で定められている裁判を受ける権利、第34条から第37条で定められている令状主義、住居等の不可侵、弁護を受ける権利、刑事裁判公開の原則、証人審問権、第38条で定められている自己負罪拒否権(自己に不利益な供述を強要されない権利、強制等による自白の証拠能力の否定、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には有罪とされることが無い権利)、第39条で定められている遡及処罰の禁止などが極めて重要な意味を持つ。(さらに元をたどれば、三権分立の原理も極めて重要である。)

 表現の自由や通信の秘密、検閲の禁止、罪刑法定主義、推定無罪の原理、裁判を受ける権利等々といった原理は全て密接に結びついて、人の最も貴重な精神的自由を保障しているのであり、このような人権思想は、東西の哲学者が長年にわたり営々と築き上げてきた英知の結晶である。違法コピー対策問題において権利者団体が、児童ポルノ法規制強化問題・有害サイト規制問題において自称良識派団体が、あるいはこれらと結びついた御用学者や御用記者が、常に一方的かつ身勝手に非人道的な妄言・暴論を吐き、これと癒着した規制官庁・規制議員が、憲法無視も甚だしい形で危険な規制強化を推進している現状を見るにつけ、私は暗澹とした気持ちにならざるを得ないが、こうした権力の暴走、権力の濫用を招く危険な規制を規制するためにこそ憲法が存在しているということはまずあらゆる者が知っていてしかるべき法学の基本中の基本である。

 今の日本国憲法は、解釈の問題こそあれ、国民の精神的自由権に関する限り非常に良くできている。今の日本でアメリカのレッシグ教授のような戦う憲法学者が出て来ることは望み薄だが、個人の権利に関する闘争において、学者であるか否かは問題では無い。先人がその血で贖った人類の最も貴重な遺産、この現代にあってより一層その重要性を増している、これらの基本的な権利に関する原理は、今の危機的状況にあって必ず守られなければならないものである。憲法に関する議論の重要性は今なお増しこそすれ、減ってなどカケラも無い、私はあらゆる者に憲法論の重要性を知ってもらいたいと思っている。

 国土はその肥沃によって耕されるのではなく、その自由によって耕される。常に自由の中にこそ未来はあるのである。法律を作る者、法律を運用する者、法律を解釈し適用する者が、今のようにこぞって自由の意味を忘れ、権力に酔い痴れて暴走を続ける限り、日本からはさらに10年でも、20年でも失われることだろう。

 最後に、最近のニュースも少し紹介しておくと、第206回で取り上げたイギリス版の3ストライク法案にについて、またどこか切りの良いところで紹介したいと思っているが、早速数々の修正案が出されているようである(PaidContentの記事TorrentFreakのブログ記事参照)。

 第204回で、スペインでも著作権検閲法案が検討されているという話を少し紹介したが、権利者団体から文化省にサイトに対する訴えを出し、文科大臣が傘下の知的財産権委員会にチェックを要請し、サイトが著作権侵害をしていると知的財産権委員会が判断したら、この委員会が裁判所に訴え、裁判所がその訴えを元にサイトのブロッキングを判断するという形(フランスの公的機関に該当するのが、スペインでは、文化省の知的財産権委員会になり、与えられる罰が、フランスではユーザーのシャットダウンだったものが、スペインではサイトのブロッキングになっているという違いである)で、ロクに本質的な議論を経ないまま国会へ提出がされたようである(El Paisの記事(スペイン語)参照)。サイトのブロッキングという、より直接的な検閲であるという点で、スペインの案はフランスの3ストライク法よりなお悪い。第204回でも少し書いたように、スペインでも反対運動が強く起こっており(Publico.esの記事(スペイン語)によると、既に市民、専門家、アーティストとネットユーザーの連合ができ、このような法案は国民の基本的権利を侵害するものと訴えているようである)、国会審議はやはり揉めることになるだろう。

 3ストライク法の施行前に既に混乱の兆候を見せているフランスでは、政府の諮問委員会が、グーグルなどのネット企業やインターネットサービスプロバイダ(ISP)に特別税を課すべきとする無茶な報告書を政府に提出し、波紋を広げている(ITmediaの記事Cnetの記事Le Mondeの記事(フランス語)参照)。さすがにサルコジ大統領率いる非道な著作権強権国家フランスにおいても、3ストライクに加えてネット税を課すという悪辣かつ強欲なデタラメは通らないとは思うが、フランスでも、著作権団体は政治力を不当に行使してこのようなデタラメを押し通そうとしてくることだろう。(なお、付言すれば、ITmediaの記事中で言及されている、コンテンツ学割バウチャー政策についても、ネットにおけるコンテンツビジネスがまだ流動的な状態で、政府が政策的にビジネスに介入することで、将来に渡ってビジネス環境を歪めるリスクがある。ネットにおけるコンテンツビジネスが完全に失敗すると予想され、かつ、既存のコンテンツ事業者のビジネスモデルを維持しなければ文化の十全な保護が図れないという状況においてのみ、このような政策は是認され得るが、今のところ、そのような状況にはまだおちいっていないのではないかと私は思う。政策的に不合理な金の流れを作ると将来に大禍根を残すことになるのは、私的録音録画補償金制度を見ても分かることであり、グーグル税あるいはプロバイダー税、既存の情報伝達媒体・コンテンツ事業者等への補償の導入などの議論はまだ時期尚早と私は考えている。)

 また、1月14日には、青少年問題協議会の第2回総会が予定されており、第201回でその問題点について書いた答申案を、東京都がとりまようとしている(開催案内参照)。この日は出来レースでまとめて来ることだろうが、この話も答申をまとめて終わりというものでは無い、この話はまだまだ続くだろう。

 1月20日には、文化審議会・著作権分科会・法制問題小委員会の第7回の開催が予定されている(開催案内参照)。その議事要旨だけでは何がどうなっているのかさっぱり分からないが、どのような方向性を出してくるか、権利制限の一般規定(フェアユース)ワーキングチームの報告は要注目である。

 次回は、今回の話の続きで表現の自由における違憲基準の話を書きたいと思っている。

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2010年1月 6日 (水)

第209回:著作権法施行令・施行規則を改正する政省令(+文化庁告示)の転載

 前回、著作権法施行令・施行規則を改正する政省令が去年12月28日の官報号外第275号に公表されたということを書いたが、今回は、政省令の転載と一緒に、もう少し突っ込んだ話を書いておきたいと思う。

 第204回に、この政省令案の概要に対する提出パブコメを載せたが、その結果も公表されている(文化庁のリリース電子政府HPの該当ページ1政令案意見募集結果概要(pdf)政令案への提出意見に対する考え方(pdf)電子政府HPの該当ページ2省令案意見募集結果概要(pdf)省令案への提出意見に対する考え方(pdf)電子政府の該当ページ3告示案意見募集結果概要(pdf)告示案への提出意見に対する考え方(pdf)参照)。

 パブコメの回答は例の如く要領を得ないが、以下、特に提出パブコメで指摘した点がどうなったのかということを見て行く。(政省令の具体的な内容は、最後に載せた全文を読んで頂ければと思うが、じきに総務省法令データ提供システムの著作権法施行令施行規則にも反映されるものと思う。)

 まず、美術品等の譲渡等の申出のための画像掲載関係では、政令において、画像の精度等を一般的な要件のみにより規定するべきと書いたのだが、改正政令では、その第7条の4で、「著作物の表示の大きさ又は精度が文部科学省令で定める基準に適合するものとなるようにすること」などとされ、結局省令委任は無くならなかった。この点について、文化庁は、政令案への提出意見に対する考え方(pdf)で、「著作物の表示の大きさ又は精度の基準については、規定の明確性を確保しつつ技術動向に柔軟に対応するため、文部科学省令で定めることとされています」と答えているが、文化庁らしく完全なすれ違いの回答である。彼らがおよそ技術動向を無視して、権利者団体の言うことのみにあまりにも柔軟に対応するからこそ、このようなパブコメを出さざるを得なかったのだが、残念ながら、そのことは彼らの理解するところでは全くないだろう。

 ただし、この表示の大きさ又はなどの基準については、改正施行規則の第4条の2で表示の大きさが50平方センチメートル以下だの画素数が32400以下だのいまいち良く分からない基準が決まっているものの、「著作物の表示の大きさ又は精度が、同条に規定する譲渡若しくは貸与に係る著作物の原作品若しくは複製物の大きさ又はこれらに係る取引の態様その他の事情に照らし、これらの譲渡又は貸与の申出のために必要な最小限度のものであり、かつ、公正な慣行に合致するものであると認められること」といったそれなりに一般的な要件も入っており、最後、実務的にはかなり柔軟に対応することができるのではないかと思える規定となっている。このような一般的なその他条項を入れるということは、文化庁の案には書かれていなかったし、パブコメの回答を見ても文化庁からこのような案が出てくるとは思い難い。省庁間のやりとりは表に出てこないので本当のところは何とも分からないが、何らかの省庁間のやりとりでこのように一般的な要件を省令のところで入れる妥協が成立したのではないかと推察される。

 送信の障害の防止等のための複製関係でも、政令において、「特定送信」を一般的な要件のみにより規定するべきと書いたのだが、改正施行令の第7条の3第2号で、特定送信として「受信者からの求めに応じ自動的に行う送信以外の送信であつて電子メールの送信その他の文部科学省令で定めるもの」とされ、省令委任は無くならなかった。この点についての文化庁のパブコメに対する回答は、オークション関係と全く同じですれ違いのものである。

 ただし、この「特定送信」に関しても、改正施行規則の第4条の3第3号に、「前二号に掲げるもののほか、情報通信の技術を利用する方法を用いて電子計算機により受信されることを目的として行われる通信文その他の情報の送信」というかなり一般的な規定が入っており、実務的にはかなり柔軟な対応ができるようにはされている。やはり何とも言えないのだが、この点も何らかの省庁間の妥協によるものだろうか。

 情報検索サービス関係でも、同様に、検索サービスについて、政令レベルで一般的な要件のみにより規定するべきと書いたのだが、改正政令の第7条の5第2号では、「文部科学省令で定める方法に従い法第四十七条の六に規定する者による収集を禁止する措置がとられた情報の収集を行わないこと」とされ、省令委任は無くならなかった。

 電子計算機における著作物利用に伴う複製関係では、権利制限の適用を受ける電子計算機のキャッシュとしてブラウザキャッシュだけをあげるといったバカげた規定ではなくなり、改正政令の第7条の6で「法第四十九条第一項第七号の政令で定める行為は、法第四十七条の八の規定の適用を受けて作成された著作物の複製物を使用して当該著作物を利用するために必要なものとして送信される信号の受信とする」とかなり一般的な形に書き改められた。この点について、文化庁は、パブコメへの回答で、「御意見中にあるウェブブラウザ以外のプログラムを用いた場合の複製については、改正後の法第47条の8(電子計算機における著作物の利用に伴う複製)により手当されており、御意見のように単一のプログラムを挙げるものではなく、いたずらに法的不安定性を増すとの懸念は生じないと考えております」と、文化庁として何を受けてどこをどう変えたのか要領を得ない回答をしているが、この回答で文化庁が示している技術的無理解から考えても、他の省庁などからの物言いもあって今のような形になったのだろうか。

 今回の法改正で入ったネット関係の権利制限に関して、省令レベルまで考えるとある程度実務的に柔軟に対応できるようにされているとは言うものの、こうした事項は省令はおろか政令委任自体適切では無く、本来、改正法において一般的な要件により規定しておくべきだったものである。結局、文部科学省が単独で変えられる省令レベルでかなり重要な要件が定められてしまったことを考えても、今後も、文化庁に対する警戒はさらに強めて行かなければならないだろう。

 法改正は、法律を変えて終わりというものでは無い。今回の法改正における最大の問題である、この1月1日から施行されたダウンロード違法化については、無論今後も撤廃を求めて行くつもりだが、他の地道な権利制限に関する話も決しておろそかにはできない。あらゆることをなるべく細かなところに落として骨抜きにしようとする者は常に存在している。確かに戦略は細部に宿るのである。

 最後に、多少情報が錯綜しているフランスの3ストライク法の施行の状況に関する話をを少し紹介しておくと、今現在、フランスでは、昨年12月29日の組織令によって3ストライク・著作権検閲機関(正式名称:「インターネットにおける権利保護と頒布促進機関」、略称:HADOPI)が公的には作られた状態になったものの、情報自由委員会(略称:CNIL)のところで施行のための政令が1つ止まっている状態で、今現在法律は実際には施行不能という状態にあるようである(Le Mondeの記事Silicon.frの記事ITespresso.frの記事Numeramaの記事参照)。情報自由委員会がいつ施行令についての意見を出すのかは不明だが、数カ月くらいかかるのではという話もあり、そのため、フランスにおける3ストライク法の施行について既に施行されているという情報と春くらいまで施行が延びたという情報が錯綜している。憲法裁判で合憲という判断がされた3ストライク法案の第2案(第195回参照)が、情報自由委員会レベルで止まることはないと思うが、具体的な施行のために決めなければならないことはまだ山のようにある。フランスの3ストライク法は施行後も混乱しか生まないことだろうが、施行前にもかなりの混乱が予想される。

 今年も、このブログでは地道に政策に絡む話を取り上げて行くつもりである。

(以下、政省令と告示の転載)

◯政令第二百九十九号 著作権法施行令の一部を改正する政令
 内閣は、著作権法の一部を改正する法律(平成二十一年法律第五十三号)の施行に伴い、並びに著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)第三十七条第三項及び第三十七条の二(これらの規定を同法第八十六条第一項及び第百二条第一項において準用する場合を含む。)、第四十七条の二(同法第八十六条第一項において準用する場合を含む。)、第四十七条の五第一項及び第四十七条の六(これらの規定を同法第百二条第一項において準用する場合を含む。)並びに第四十九条第一項第七号の規定並びに第六十七条第一項及び第二項、第六十七条の二第七項並びに第七十条第八項(これらの規定を同法第百三条において準用する場合を含む。)並びに第百二条第九項第七号の規定並びに同法第百三条において準用する同法第七十条第一項及び第二項の規定に基づき、この政令を制定する。

 著作権法施行令(昭和四十五年政令第三百三十五号)の一部を次のように改正する。

 目次中「第二章記録保存所(第三条ー第七条)」を
「第二章 記録保存所(第三条ー第七条)
第三章 美術の著作物等の譲渡等の申出に伴う複製等について講ずべき措置(第七条の二)
第四章 送信の障害の防止等のための複製に係る特定送信等(第七条の三・第七条の四)
第五章 送信可能化された情報の収集、整理及び提供の基準(第七条の五)
第六章 著作物等の送信の受信に準ずる行為(第七条の六) 」
に、「第三章 著作物」を「第七章 著作物等」に、「第八条ー第十二条」を「第七条の七ー第十二条の二」に、「第四章」を「第八章」に、「第五章」を「第九章」に、「第六章」を「第十章」に、「第七章」を「第十一章」に、「第八章」を「第十二章」に、「第九章」を「第十三章」に、「第十章」を「第十四章」に改める。
 第一条の三第一項中「第三十一条」を「第三十一条第一項」に改め、「国立国会図書館及び」を削り、「定める職員」の下に「(以下「司書等」という。)」を加え、同項第二号中「次号において」を「以下」に改める。

 第二条及び第二条の二を次のように改める。
(視覚障害者等のための複製等が認められる者)
第二条 法第三十七条第三項(法第八十六条第一項及び第百二条第一項において準用する場合を含む。)の政令で定める者は、次に掲げる者とする。
一 次に掲げる施設を設置して視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う者(イ、ニ又はチに掲げる施設を設置する者にあつては国、地方公共団体又は一般社団法人等、ホに掲げる施設を設置する者にあつては地方公共団体、公益社団法人又は公益財団法人に限る。)
イ 児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第七条第一項の知的障害児施設及び盲ろうあ児施設
ロ 大学等の図書館及びこれに類する施設
ハ 国立国会図書館
ニ 身体障害者福祉法(昭和二十四年法律第二百八十三号)第五条第一項の視聴覚障害者情報提供施設
ホ 図書館法第二条第一項の図書館(司書等が置かれているものに限る。)
ヘ 学校図書館法(昭和二十八年法律第百八十五号)第二条の学校図書館
ト 老人福祉法(昭和三十八年法律第百三十三号)第五条の三の養護老人ホーム及び特別養護老人ホーム
チ 障害者自立支援法(平成十七年法律第百二十三号)第五条第十二項に規定する障害者支援施設及び同条第一項に規定する障害福祉サービス事業(同条第六項に規定する生活介護、同条第十三項に規定する自立訓練、同条第十四項に規定する就労移行支援又は同条第十五項に規定する就労継続支援を行う事業に限る。)を行う施設
二 前号に掲げる者のほか、視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人(法第二条第六項に規定する法人をいう。以下同じ。)のうち、視覚障害者等のための複製又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を的確かつ円滑に行うことができる技術的能力、経理的基礎その他の体制を有するものとして文化庁長官が指定するもの
2 文化庁長官は、前項第二号の指定をしたときは、その旨を官報で告示する。

(聴覚障害者等のための複製等が認められる者)
第二条の二法第三十七条の二(法第八十六条第一項及び第百二条第一項において準用する場合を含む。)の政令で定める者は、次の各号に掲げる利用の区分に応じて当該各号に定める者とする。
一 法第三十七条の二第一号(法第八十六条第一項において準用する場合を含む。)に掲げる利用
 次に掲げる者
イ 身体障害者福祉法第五条第一項の視聴覚障害者情報提供施設を設置して聴覚障害者等のために情報を提供する事業を行う者(国、地方公共団体又は一般社団法人等に限る。)
ロ イに掲げる者のほか、聴覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人のうち、聴覚障害者等のための複製又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を的確かつ円滑に行うことができる技術的能力、経理的基礎その他の体制を有するものとして文化庁長官が指定するもの
二 法第三十七条の二第二号(法第八十六条第一項及び第百二条第一項において準用する場合を含む。)に掲げる利用
 次に掲げる者(同号の規定の適用を受けて作成された複製物の貸出しを文部科学省令で定める基準に従つて行う者に限る。)
イ 次に掲げる施設を設置して聴覚障害者等のために情報を提供する事業を行う者((2)に掲げる施設を設置する者にあつては国、地方公共団体又は一般社団法人等、
(3)に掲げる施設を設置する者にあつては地方公共団体、公益社団法人又は公益財団法人に限る。)
(1) 大学等の図書館及びこれに類する施設
(2) 身体障害者福祉法第五条第一項の視聴覚障害者情報提供施設
(3) 図書館法第二条第一項の図書館(司書等が置かれているものに限る。)
(4) 学校図書館法第二条の学校図書館
ロ イに掲げる者のほか、聴覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人のうち、聴覚障害者等のための複製を的確かつ円滑に行うことができる技術的能力、経理的基礎その他の体制を有するものとして文化庁長官が指定するもの
2 文化庁長官は、前項第一号ロ又は第二号ロの指定をしたときは、その旨を官報で告示する。

 第十章を第十四章とする。
 第六十五条中「第七十条第二項」の下に「(法第百三条において準用する場合を含む。)」を加える。
 第九章を第十三章とし、第八章を第十二章とする。
 第五十七条の九中「第九十五条第四項」を「第九十五条第五項」に改める。
 第七章を第十一章とする。
 第五十七条の二中「第九十五条の二第二項」を「第九十五条の三第二項」に改める。
 第五十七条の三の表以外の部分中「第九十五条の二第四項」を「第九十五条の三第四項」に、「第九十五条第四項」を「第九十五条第五項」に、「第九十七条の二第四項」を「第九十七条の三第四項」に改め、同条の表第四十七条第一項の項中「第九十五条の二第三項」を「第九十五条の三第三項」に、「第九十七条の二第三項」を「第九十七条の三第三項」に、「第九十五条の二第五項」を「第九十五条の三第五項」に、「第九十七条の二第六項」を「第九十七条の三第六項」に改める。
 第五十七条の四の表以外の部分中「第九十五条の二第四項」を「第九十五条の三第四項」に、「第九十七条の二第五項」を「第九十七条の三第五項」に、「第九十五条第十項」を「第九十五条第十一項」に改める。
 第六章を第十章とする。
 第四十六条及び第四十七条第一項中「第九十五条第四項」を「第九十五条第五項」に改める。
 第四十九条の二第一項中「第九十五条第九項」を「第九十五条第十項」に改める。
 第五十一条第三項中「第九十五条第四項」を「第九十五条第五項」に改める。
 第五十二条第一項中「第九十五条第四項」を「第九十五条第五項」に改め、同項第一号中「第九十五条第五項各号」を「第九十五条第六項各号」に改め、同項第二号中「第九十五条第六項」を「第九十五条第七項」に改める。
 第五十三条第一項中「第九十五条第十項」を「第九十五条第十一項」に改め、同条第三項中「第九十五条第九項」を「第九十五条第十項」に改める。
 第五十四条第一項中「第九十五条第十一項」を「第九十五条第十二項」に改める。
 第五十五条中「第九十五条第九項」を「第九十五条第十項」に改める。
 第五十七条各号中「第九十五条第四項」を「第九十五条第五項」に改める。
 第五章を第九章とし、第四章を第八章とする。
 第三章の章名中「著作物」を「著作物等」に改める。

 第三章中第八条の前に次の一条を加える。
(著作権者と連絡することができない場合)
第七条の七 法第六十七条第一項の政令で定める場合は、著作権者の氏名又は名称及び住所又は居所その他著作権者と連絡するために必要な情報(以下この条において「権利者情報」という。)を取得するために次に掲げるすべての措置をとり、かつ、当該措置により取得した権利者情報その他その保有するすべての権利者情報に基づき著作権者と連絡するための措置をとつたにもかかわらず、著作権者と連絡することができなかつた場合とする。
一 広く権利者情報を掲載していると認められるものとして文化庁長官が定める刊行物その他の資料を閲覧すること。
二 著作権等管理事業者(著作権等管理事業法(平成十二年法律第百三十一号)第二条第三項に規定する著作権等管理事業者をいう。)その他の広く権利者情報を保有していると認められる者として文化庁長官が定める者に対し照会すること。
三 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙への掲載その他これに準ずるものとして文化庁長官が定める方法により、公衆に対し広く権利者情報の提供を求めること。
2 文化庁長官は、前項各号の定めをしたときは、その旨を官報で告示する。

 第八条第一項各号列記以外の部分を次のように改める。
法第六十七条第二項の政令で定める事項は、次に掲げる事項とする。

 第八条第一項第一号中「(法第二条第六項の法人をいう。以下同じ。)」を削り、同項中第四号を削り、第五号を第四号とし、第六号を第五号とし、同項に次の一号を加える。
六 法第六十七条の二第一項の規定により著作物を利用するときは、その旨

 第八条第二項各号列記以外の部分を次のように改める。
法第六十七条第二項の政令で定める資料は、次に掲げる資料とする。

 第八条第二項中第二号を削り、第三号を第二号とし、同条の次に次の一条を加える。
(担保金の取戻し)
第八条の二 法第六十七条の二第一項の規定により担保金を供託した者は、当該担保金の額が同条第六項の規定により著作権者が弁済を受けることができる額を超えることとなつたときは、その超過額を取り戻すことができる。

 第九条第一項第一号中「前条第一項第一号から第三号まで及び第五号」を「第八条第一項第一号から第四号まで」に改め、同条第二項第一号中「前条第二項第一号」を「第八条第二項第一号」に改める。
 第十条第一項第一号中「第三号まで及び第五号」を「第四号まで」に改める。

 第十二条を同条第二項とし、同条に第一項として次の一項を加える。
文化庁長官は、法第六十七条の二第三項に規定する申請中利用者に対して法第七十条第五項の裁定をしない処分をした旨の通知をするとき(当該申請中利用者が当該処分を受けるまでの間に著作権者と連絡をすることができるに至つた場合を除く。)は、併せて法第六十七条の二第四項の補償金の額を通知する。

 第三章中第十二条の次に次の一条を加える。
(著作隣接権への準用)
第十二条の二 第七条の七から第八条の二まで及び前二条の規定は、法第百三条において法第六十七条第一項及び第二項、第六十七条の二第七項並びに第七十条第一項、第二項及び第八項の規定を準用する場合について準用する。この場合において、第八条第一項第六号中「法」とあるのは「法第百三条において準用する法」と、第八条の二中「法」とあるのは「法第百三条において準用する法」と、「同条第六項」とあるのは「法第百三条において準用する法第六十七条の二第六項」と、前条中
「法」とあるのは「法第百三条において準用する法」と読み替えるものとする。

 第三章を第七章とし、第二章の次に次の四章を加える。
第三章 美術の著作物等の譲渡等の申出に伴う複製等について講ずべき措置
第七条の二 法第四十七条の二の政令で定める措置は、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める措置とする。
一 法第四十七条の二に規定する複製
 当該複製により作成される複製物に係る著作物の表示の大きさ又は精度が文部科学省令で定める基準に適合するものとなるようにすること。
二 法第四十七条の二に規定する公衆送信次のいずれかの措置
イ 当該公衆送信を受信して行われる著作物の表示の精度が文部科学省令で定める基準に適合するものとなるようにすること。
ロ 当該公衆送信を受信して行う著作物の複製(法第四十七条の八の規定により行うことができるものを除く。)を電磁的方法(法第二条第一項第二十号に規定する電磁的方法をいう。)により防止する手段であつて、著作物の複製に際しこれに用いられる機器が特定の反応をする信号を著作物とともに送信する方式によるものを用い、かつ、当該公衆送信を受信して行われる著作物の表示の精度が文部科学省令で定めるイに規定する基準より緩やかな基準に適合するものとなるようにすること。
2 法第八十六条第一項において準用する法第四十七条の二の政令で定める措置は、同条に規定する複製により作成される複製物に係る著作物の表示の大きさが文部科学省令で定める基準に適合するものとなるようにすることとする。

第四章 送信の障害の防止等のための複製に係る特定送信等
(特定送信)
第七条の三 法第四十七条の五第一項(法第百二条第一項において準用する場合を含む。)の政令で定
める送信は、無線通信又は有線電気通信の送信で次に掲げるものとする。
一 受信者からの求めに応じ自動的に行う送信であつて自動公衆送信に該当するもの以外のもの
二 受信者からの求めに応じ自動的に行う送信以外の送信であつて電子メールの送信その他の文部科学省令で定めるもの

(特定送信をし得るようにするための行為)
第七条の四 法第四十七条の五第一項(法第百二条第一項において準用する場合を含む。)の政令で定める行為は、次に掲げる行為とする。
一 電気通信回線に接続している特定送信装置の特定送信用記録媒体に情報を記録し、情報が記録された記録媒体を当該特定送信装置の特定送信用記録媒体として加え、若しくは当該記録媒体を当該特定送信装置の特定送信用記録媒体に変換し、又は当該特定送信装置に情報を入力すること。
二 その特定送信用記録媒体に情報が記録され、又は当該特定送信装置に情報が入力されている特定送信装置について、電気通信回線への接続(法第二条第一項第九号の五ロに規定する接続をいう。)を行うこと。

第五章 送信可能化された情報の収集、整理及び提供の基準
第七条の五 法第四十七条の六(法第百二条第一項において準用する場合を含む。第二号において同じ。)の政令で定める基準は、次のとおりとする。
一 送信可能化された情報の収集、整理及び提供をプログラムにより自動的に行うこと。
二 文部科学省令で定める方法に従い法第四十七条の六に規定する者による収集を禁止する措置がとられた情報の収集を行わないこと。
三 送信可能化された情報を収集しようとする場合において、既に収集した情報について前号に規定する措置がとられているときは、当該情報の記録を消去すること。

第六章 著作物等の送信の受信に準ずる行為
第七条の六 法第四十九条第一項第七号の政令で定める行為は、法第四十七条の八の規定の適用を受けて作成された著作物の複製物を使用して当該著作物を利用するために必要なものとして送信される信号の受信とする。
2 前項の規定は、法第百二条第九項第七号の政令で定める行為について準用する。この場合において、前項中「第四十七条の八」とあるのは「第百二条第一項において準用する法第四十七条の八」と、「著作物」とあるのは「実演等」と読み替えるものとする。

附則
(施行期日)
1 この政令は、平成二十二年一月一日から施行する。
(障害者自立支援法の一部の施行に伴う関係政令の整備に関する政令の一部改正)
2 障害者自立支援法の一部の施行に伴う関係政令の整備に関する政令(平成十八年政令第三百二十号)の一部を次のように改正する。
 第二十八条中「施行日」を「平成二十二年一月一日」に、「前条の規定」を「著作権法施行令の一部を改正する政令(平成二十一年政令第二百九十九号)」に、「
第二条第一項第五号」を「第二条第一項第一号チ」に改め、「(専ら視覚障害者を入所させるものに限る。)」を削る。
文部科学大臣 川端 達夫
内閣総理大臣臨時代理
国務大臣 菅 直人

〇文部科学省令第三十八号
 著作権法施行令(昭和四十五年政令第三百三十五号)第二条の二第一項第二号、第七条の二第一項第一号、第二号イ及びロ並びに第二項、第七条の三第二号並びに及び第七条の五第二号の規定に基づき、著作権法施行規則の一部を改正する省令を次のように定める。
平成二十一年十二月二十八日
文部科学大臣 川端 達夫

著作権法施行規則の一部を改正する省令

 著作権法施行規則(昭和四十五年文部省令第二十六号)の一部を次のように改正する。

 目次中「第一章の二 司書に相当する職員(第一条の三・第二条)」を
「第二章 司書に相当する職員(第一条の三・第二条)
第三章聴覚障害者等用複製物の貸出しの基準(第二条の二)」
に、「第二章 一時的固定物の保存状況の報告等(第三条・第四条)」を
「第四章 一時的固定物の保存状況の報告等(第三条・第四条)
第五章 著作物の表示の大きさ又は精度に係る基準(第四条の二)
第六章 受信者からの求めに応じ自動的に行う送信以外の特定送信(第四条の三)
第七章 送信可能化された情報の収集を禁止する措置の方法(第四条の四)」
に、「第三章」を「第八章」に、「第四章」を「第九章」に、「第五章」を「第十章」に、「第六章」を「第十一章」に、「第七章」を「第十二章」に改める。
 第五章から第八章までを一章ずつ繰り下げる。
 第二十二条の二第一号中「第九十五条の二第三項」を「第九十五条の三第三項」に、「第九十七条の二第三項」を「第九十七条の三第三項」に、「第九十五条の二第五項」を「第九十五条の三第六項」に、「第九十七条の二第六項」を「第九十七条の三第六項」に改める。

 第四章を第九章とし、第三章を第八章とし、第二章を第四章とし、同章の次に次の三章を加える。
第五章 著作物の表示の大きさ又は精度に係る基準
第四条の二 令第七条の二第一項第一号の文部科学省令で定める基準は、次に掲げるもののいずれかとする。
一 図画として法第四十七条の二に規定する複製を行う場合において、当該複製により作成される複製物に係る著作物の表示の大きさが五十平方センチメートル以下であること。
二 デジタル方式により法第四十七条の二に規定する複製を行う場合において、当該複製により複製される著作物に係る影像を構成する画素数が三万二千四百以下であること。
三 前二号に掲げる基準のほか、法第四十七条の二に規定する複製により作成される複製物に係る著作物の表示の大きさ又は精度が、同条に規定する譲渡若しくは貸与に係る著作物の原作品若しくは複製物の大きさ又はこれらに係る取引の態様その他の事情に照らし、これらの譲渡又は貸与の申出のために必要な最小限度のものであり、かつ、公正な慣行に合致するものであると認められること。
2 令第七条の二第一項第二号イの文部科学省令で定める基準は、次に掲げるもののいずれかとする。
一 デジタル方式により法第四十七条の二に規定する公衆送信を行う場合において、当該公衆送信により送信される著作物に係る影像を構成する画素数が三万二千四百以下であること。
二 前号に掲げる基準のほか、法第四十七条の二に規定する公衆送信を受信して行われる著作物の表示の精度が、同条に規定する譲渡若しくは貸与に係る著作物の原作品若しくは複製物の大きさ又はこれらに係る取引の態様その他の事情に照らし、これらの譲渡又は貸与の申出のために必要な最小限度のものであり、かつ、公正な慣行に合致するものであると認められること。
3 令第七条の二第一項第二号ロの文部科学省令で定める基準は、次に掲げるもののいずれかとする。
一 デジタル方式により法第四十七条の二に規定する公衆送信を行う場合において、当該公衆送信により送信される著作物に係る影像を構成する画素数が九万以下であること。
二 前号に掲げる基準のほか、法第四十七条の二に規定する公衆送信を受信して行われる著作物の表示の精度が、同条に規定する譲渡若しくは貸与に係る著作物の原作品若しくは複製物の大きさ又はこれらに係る取引の態様その他の事情に照らし、これらの譲渡又は貸与の申出のために必要と認められる限度のものであり、かつ、公正な慣行に合致すると認められるものであること。
4 第一項(第二号を除く。)の規定は、令第七条の二第二項の文部科学省令で定める基準について準用する。

第六章 受信者からの求めに応じ自動的に行う送信以外の特定送信
第四条の三 令第七条の三第一項第二号の文部科学省令で定める送信は、次に掲げるものとする。
一 電子情報処理組織(電子計算機を電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。)を用いて行う通信文その他の情報の送信(アナログ信号伝送用の電話回線のみを用いるものを除き、相手方の使用に係る電子計算機を用いて当該情報が出力されるようにするものに限る。)
二 前号に掲げるもののほか、ファクシミリ装置又は電話機により受信されることを目的として行われる送信(インターネットプロトコル又は当該送信を中継し、及び当該送信に係る情報を記録する機能を有する装置を用いるものに限る。)
三 前二号に掲げるもののほか、情報通信の技術を利用する方法を用いて電子計算機により受信されることを目的として行われる通信文その他の情報の送信

第七章 送信可能化された情報の収集を禁止する措置の方法
第四条の四 令第七条の五第二号の文部科学省令で定める方法は、次に掲げる行為のいずれかを、法第四十七条の六(法第百二条第一項において準用する場合を含む。以下この条において同じ。)に規定する者による情報の収集を禁止する措置に係る一般の慣行に従つて行う方法とする。
一 robots.txtの名称の付された電磁的記録(法第三十一条第二項に規定する電磁的記録をいう。次号において同じ。)で送信可能化されたものに次に掲げる事項を記載すること。
イ 法第四十七条の六に規定する者による情報の収集のためのプログラムのうち情報の収集を禁止するもの
ロ 法第四十七条の六に規定する者による収集を禁止する情報の範囲
二 HTML(送信可能化された情報を電子計算機による閲覧の用に供するに当たり、当該情報の表示の配列その他の態様を示すとともに、当該情報以外の情報で送信可能化されたものの送信の求めを簡易に行えるようにするための電磁的記録を作成するために用いられる文字その他の記号及びその体系であつて、国際的な標準となつているものをいう。)その他これに類するもので作成された電磁的記録で送信可能化されたものに法第四十七条の六に規定する者による情報の収集を禁止する旨を記載すること。

 第一章の二を第二章とし、第二章の次に次の一章を加える。
第三章 聴覚障害者等用複製物の貸出しの基準
第二条の二 令第二条の二第一項第二号の文部科学省令で定める基準は、次のとおりとする。
一 専ら法第三十七条の二第二号の規定の適用を受けて作成された複製物(以下この条において「聴覚障害者等用複製物」という。)の貸出しを受けようとする聴覚障害者等を登録する制度を整備すること。
二 聴覚障害者等用複製物の貸出しに関し、次に掲げる事項を含む規則を定めること。
イ 聴覚障害者等用複製物の貸出しを受ける者が当該聴覚障害者等用複製物を法第三十七条の二第二号に定める目的以外の目的のために、頒布せず、かつ、当該聴覚障害者等用複製物によつて当該聴覚障害者等用複製物に係る著作物を公衆に提示しないこと。
ロ 複製防止手段(電磁的方法(法第二条第一項第二十号に規定する電磁的方法をいう。)により著作物のデジタル方式の複製を防止する手段であつて、著作物の複製に際しこれに用いられる機器が特定の反応をする信号を著作物とともに記録媒体に記録する方式によるものをいう。次号において同じ。)が用いられていない聴覚障害者等用複製物の貸出しを受ける場合に、当該貸出しを受ける者が当該聴覚障害者等用複製物を用いて当該聴覚障害者等用複製物に係る著作物を複製しないこと。
三 複製防止手段を用いていない聴覚障害者等用複製物の貸出しをする場合は、当該聴覚障害者等用複製物に係る著作物とともに、法第三十七条の二第二号の規定により複製を行つた者の名称及び当該聴覚障害者等用複製物を識別するための文字、番号、記号その他の符号の記録(当該聴覚障害者等用複製物に係る著作物が映画の著作物である場合にあつては、当該著作物に係る影像の再生の際に併せて常に表示されるようにする記録に限る。)又は記載をして、当該貸出しを行うこと。
四 聴覚障害者等用複製物の貸出しに係る業務を適正に行うための管理者を置くこと。
2 前項の規定は、法第八十六条第一項及び第百二条第一項において準用する法第三十七条の二の政令で定める者に係る令第二条の二第一項第二号の文部科学省令で定める基準について準用する。

附則
 この省令は、平成二十二年一月一日から施行する。

〇文化庁告示第二十六号
 著作権法施行令(昭和四十五年政令第三百三十五号)第七条の七第一項第一号、同項第二号及び第三号(これらの規定を同令第十二条の二において準用する場合を含む。)の規定に基づき、広く権利者情報を掲載していると認められる刊行物その他の資料等を次のように定める。
平成二十一年十二月二十八日
文化庁長官 玉井日出夫

(広く権利者情報を掲載していると認められる刊行物その他の資料)
第一条 著作権法施行令(昭和四十五年政令第三百三十五号。以下「令」という。)第七条の七第一項第一号(令第十二条の二において準用する場合を含む。)の文化庁長官が定める刊行物その他の資料は、次に掲げるもののすべてとする。
一 著作物、実演、レコード、放送又は有線放送の種類に応じて作成された名簿その他これに準ずるもの
二 広くウェブサイトの情報を検索する機能を有するウェブサイト(広く権利者情報を保有していると認められる者)

第二条 令第七条の七第一項第二号(令第十二条の二において準用する場合を含む。)の文化庁長官が定める者は、次に掲げるもののすべてとする。
一 著作権等管理事業者その他の著作権又は著作隣接権の管理を業として行う者であって、著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)第六十七条第一項(同法第百三条において準用する場合を含む。)の裁定の申請に係る著作物、実演、レコード、放送又は有線放送と同じ種類のもの(以下「同種著作物等」という。)を取り扱うもの
二 同種著作物等を業として公衆に提供し、又は提示する者
三 同種著作物等について識見を有する者を主たる構成員とする法人その他の団体

(日刊新聞紙への掲載に準ずる方法)
第三条 令第七条の七第一項第三号(令第十二条の二において準用する場合を含む。)の文化庁長官が定める方法は、社団法人著作権情報センターのウェブサイトに三十日以上の期間継続して掲載することとする。

附則
 この告示は、平成二十二年一月一日から施行する。

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