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2009年12月10日 (木)

第204回:著作権法施行令の一部を改正する政令案・著作権法施行規則の一部を改正する省令案に対する提出パブコメ

 著作権法施行令の一部を改正する政令案・著作権法施行規則の一部を改正する省令案についてパブコメを書いて提出した(両方とも12月13日〆切。文化庁のリリース1電子政府HP1意見募集要領1(pdf)著作権法施行令改正案概要(pdf)、文化庁のリリース2電子政府HP2意見募集要領2(pdf)著作権法施行規則改正案概要(pdf)電子政府HP3意見募集要領3(pdf)告示案概要(pdf)参照)。かなりマニアックな政省令案に関する意見だが、念のため以下に載せておく。

 相変わらず良いニュースはカケラも無いが、ここで、少し最近の話も紹介して行くと、まず児童ポルノ規制に関して、関係省庁が「児童ポルノ排除対策ワーキングチーム」を作り、来夏に総合対策をまとめるという方針を固めたというニュースがあった(毎日の記事参照)。地道な対策を進めることに反対するつもりはさらさら無いが、今の役所のレベルを考えると、この総合対策でも危険かつ有害なことを言い出す可能性が極めて高く、来年の夏にかけて児童ポルノ規制問題について気の休まる時は無いだろう。

 また、警察利権の拡大のみを至上主義として危険極まる児童ポルノ規制強化を目論む警察庁を擁する内閣府が、一昨年の調査とまったく変わりなく、何の予備情報も与えずに性・暴力表現を規制するべきか否かと直接面談で聞くというひどい印象操作調査を再び行い、その結果を公表している(内閣府HPの「男女共同参画社会に関する世論調査」中の「メディアにおける性・暴力表現に関する意識について」参照。サーチナニュースの記事も参照)。このような世論調査どころか世論操作といった方が良い結果に基づいて言えることは何も無いが、この世論操作調査を用いた官製プロパガンダがまた来年にかけて激しくなると予想される。

 第199回で少し紹介した(「P2Pとかその辺のお話」も参照)、イギリスのストライク法については、早速グーグル、ヤフー、フェースブック、イーベイといったネット大企業が反対に回るなど(BBCの記事、記事中のマンデルソン英経済大臣に対する手紙(pdf)参照)、法案の提案早々混乱を予想させる展開となっている。

 スペインは、さらに悪いことに、政府が一方的にサイトの閉鎖を行えるとする法案を提案して来ているが、提案早々反対運動が盛り上がり、炎上の様相を呈して、サイトの閉鎖を行うことは無いと首相が発言するに至るが、なお問題は当分収まりそうにない状況となっている(New York Timesの記事EXPATICAの記事Winnipeg Free Pressの記事boingboingの記事参照)。

 第120回で紹介したアメリカの著作権皇帝法について、ヴィクトリア・エスピネル氏が上院の承認を受け、知財エンフォースメントコーディネーター、いわゆる著作権皇帝となったというニュースもあった(BroadbandBreakfastの記事NationalJournalの記事参照)。エスピネル氏がどう動くかはまだ分からないが、およそロクでもない自国の制度を他国に押し付けるアメリカの動きが活発化する可能性も強く、アメリカからも引き続き目を離すべきではないだろう。

 現行の欧州特許条約との整理をどうするのかという点も含め今のところ具体性に乏しく、話が簡単に進むとは思えないが、EU共通特許制度・域内の特許の紛争処理を一元処理するEU特許裁判所の創設について、EU理事会が合意したとするニュースもあったので(日経の記事、EUのリリース参照)、念のため一緒に紹介しておく。

 これ以上無意味な知財計画など作ること無く、その役割を終えた知財本部は速やかに廃止してもらいたいものと個人的には思っているが、知財本部でこの8日に本部会合が開かれ(議事次第参照)、残念ながら、知財本部は存続するものと、また来年も知財計画が作られるものとされたようである(時事通信の記事参照)。

 また、特許庁からも、その特許制度研究会でまとめられた報告書(pdf)が公表されている(日経の記事も参照)。

 上でざっと話したことも含め、海外動向の紹介の続きもしたいと思っているが、次回は、その前に、これらの知財本部と特許庁の動きについて取り上げておきたいと思っている。

(以下、政令案に対する提出パブコメ)

1.個人/団体の別:個人
2.氏名:兎園
3.住所:略
4.連絡先:
5.項目名
(1)Ⅱ 美術品等の譲渡等の申出のための画像掲載関係
(2)Ⅲ 送信の障害の防止等のための複製関係
(3)Ⅳ 情報検索サービス関係
(4)Ⅴ 電子計算機における著作物利用に伴う複製関係
(5)その他(ダウンロード違法化について)

6.意見
(1)Ⅱ 美術品等の譲渡等の申出のための画像掲載関係

 政令案概要の本項目において、オークションのための画像掲載が認められるには、「①画像を文部科学省令で定める基準に適合する大きさ又は精度にすること」か、「②画像のインターネット送信を行う際に、電磁的方法により複製を防止する手段(コピープロテクション)をかけ、かつ、画像の精度が①の基準より緩やかなものとして文部科学省令で定める基準に適合するようにすること」を必要とするとしている。

 ここで、さらに要件を文部科学省令に委任しているが、関係省庁が多岐に渡るオークションに関する要件を文化庁あるいは文部科学省単独で制定できる省令に委任することは適切でない。最低でも閣議決定を必要とする政令レベルで全ての要件を定めるべきである。

 また、全ての要件を政令で定めるものとして、さらに技術の進展があると考えられ、ケース毎に様々な適切な対応があり得ると考えられるオークションのような分野において、画一的な技術的要件による限定を用いることは、今後の技術の発展を阻害することにつながる恐れが強く、引いては文化の発展をも阻害する恐れがある。この要件は「著作物の表示の精度が、譲渡若しくは貸与をしようとする著作物の原作品若しくは複製物の大きさ又はこれらに係る取引の態様その他の事情に照らし、これらの譲渡又は貸与の申出のために必要と認められる限度のものであり、かつ、公正な慣行に合致すると認められるものであること」といった一般的な要件のみによるべきである。

 なお、さらに言うなら、このような事項について政令委任自体適切では無く、本来、改正法において一般的な要件により規定しておくべきだったものである。

(2)Ⅲ 送信の障害の防止等のための複製関係
 政令案概要の本項目において、改正法第47条の5の「特定送信」を「①受信者からの求めに応じて自動的に行う送信で自動公衆送信以外のもの(例:ストレージサービスにおけるオンデマンド送信等)」、「②受信者からの求めに応じて自動的に行う送信以外の送信で電子メールの送信その他の文部科学省令で定めるもの」とした上で、権利制限の対象となる著作物について、送信可能化されたものと、「①電気通信回線に接続している特定送信装置の特定送信用記録媒体に情報を記録し、情報が記録された記録媒体を当該特定送信装置の特定送信用記録媒体として加え、若しくは当該記録媒体を当該特定送信装置の特定送信用記録媒体に変換し、又は当該特定送信装置に情報を入力すること」、「②その特定送信用記録媒体に情報が記録され、又は当該特定送信装置に情報が入力されている特定送信装置について、電気通信回線への接続を行うこと」をされたものも含むようにするとしている。

 ここで、さらに要件を文部科学省令に委任しているが、関係省庁が多岐に渡るサーバー管理に関する要件を文化庁あるいは文部科学省単独で制定できる省令に委任することは適切でない。最低でも閣議決定を必要とする政令レベルで全ての要件を定めるべきである。

 また、全ての要件を政令で定めるものとして、技術の発展と様々なケースが考えられる通信技術に関して、今の政令案・省令案にあるようにその類型を列挙型で制限することは、技術の発展を阻害し、引いては文化の発展をも阻害する恐れがあり、決して適切でない。「特定送信」の要件は、「通信ネットワークにおいて第3者間の通信を仲介するための送信で自動公衆送信以外のもの」といった一般的な要件のみによるべきである。権利制限の対象となる著作物の行為についても、無意味な規制となる恐れが強い今の案では無く、「通信ネットワークにおいて第3者間の通信を仲介するための送信をし得るようにするための行為」といった一般的な要件のみによるべきである。

 なお、さらに言うなら、このような事項について政令委任自体適切では無く、本来、改正法において一般的な要件により規定しておくべきだったものである。

(3)Ⅳ 情報検索サービス関係
 政令案概要の本項目において、権利制限の対象となる検索サービス事業者について、「①情報の収集、整理及び提供をプログラムにより自動的に行うこと」、「②文部科学省令で定める方法に従い情報検索サービス事業者による情報の収集を禁止する措置がとられた情報を収集しないこと」、「③ネットワーク上の情報を収集しようとする場合において、既に収集した情報について②の措置がとられたことが判明したときは、当該情報の記録を消去すること」を基準とするとしている。

 ここで、情報の収集を禁止する措置の要件をさらに文部科学省令に委任しているが、関係省庁が多岐に渡る検索サービスに関する要件を文化庁あるいは文部科学省単独で制定できる省令に委任することは適切でない。最低でも閣議決定を必要とする政令レベルで全ての要件を定めるべきである。

 また、全ての要件を政令で定めるものとして、技術の発展と様々なケースが考えられる検索サービスに関して、今の省令案にあるようにその類型を列挙型で制限することは、技術の発展を阻害し、引いては文化の発展をも阻害する恐れがあり、決して適切でない。この要件は、「情報の収集、整理及び提供を自動的に行うこと、公正な慣行に従い情報の収集を禁止する措置がとられた情報を収集しないこと、収集した情報について後に情報の収集を禁止する措置が取られたことを知ったときは、当該情報の記録を消去すること」といった一般的な要件のみによるべきである。

 なお、さらに言うなら、このような事項について政令委任自体適切では無く、本来、改正法において一般的な要件により規定しておくべきだったものである。

(4)Ⅴ 電子計算機における著作物利用に伴う複製関係
政令案概要の本項目において、改正法第47条の8の電子計算機における著作物の利用に伴う複製の目的外利用について、受信者からの求めに応じ自動的に行われる送信の受信(項目には第49条第1項第9号と誤記されているが、改正法第49条第1項第7号の規定より。)に準じるものとして「著作物の送信の求めに応じてブラウザキャッシュの使用のために必要なものとして送信される信号の受信」を規定し、これらの受信を行わずに利用する場合は、このような行為を目的外利用として違法とするとしている。

 しかし、電子計算機上で使われる通信プログラムはウェブブラウザに限るものでは無く、一時キャッシュはほぼあらゆる通信において用いられている技術であることを考えると、このように単一のプログラムのみを挙げることは、いたずらに法的不安定性を増すだけである。類型を追加すれば良いというものでは無く、そもそも技術の発展が考えられるこのような事項について列挙型の制限をかけること自体決して行われるべきでないことである。この要件は、「電子計算機におけるキャッシュとして使用されるために必要なものとして送信される信号の受信」といった一般的な要件のみによるべきである。

 なお、さらに言うなら、このような事項について政令委任自体適切では無く、本来、改正法において一般的な要件により規定しておくべきだったものである。

(5)その他(ダウンロード違法化について)
 本意見募集は政令案を対象としており、法改正自体を対象とするものでは無いが、ここで、非道極まる民意無視が行われた前回の法改正についての意見も合わせ述べる。

 文化庁の暴走と国会議員の無知によって、今年の6月12日に、「著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合」は私的複製に当たらないとする、いわゆるダウンロード違法化条項を含む、改正著作権法が成立し、来年の1月1日の施行を待つ状態である。

 しかし、一人しか行為に絡まないダウンロードにおいて、「事実を知りながら」なる要件は、エスパーでもない限り証明も反証もできない無意味かつ危険な要件であり、技術的・外形的に違法性の区別がつかない以上、このようなダウンロード違法化は法規範としての力すら持ち得ない。このような法改正によって進むのはダウンロード以外も含め著作権法全体に対するモラルハザードのみであり、これを逆にねじ曲げてエンフォースしようとすれば、著作権検閲という日本国として最低最悪の手段に突き進む恐れしかない。改正法は未施行であるが、既に、総務省の「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」第一次提言案において、中国政府の検閲ソフト「グリーン・ダム」導入計画に等しい、日本レコード協会による携帯電話における著作権検閲の提案が取り上げられるなど、既に弊害は出始めている。

 そもそも、ダウンロード違法化の懸念として、このような著作権検閲に対する懸念は、文化庁へのパブコメ(文化庁HPhttp://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/houkoku.htmlの意見募集の結果参照。ダウンロード違法化問題において、この8千件以上のパブコメの7割方で示された国民の反対・懸念は完全に無視された。このような非道極まる民意無視は到底許されるものではない)や知財本部へのパブコメ(知財本部のHPhttp://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keikaku2009.htmlの個人からの意見参照)を見ても分かる通り、法改正前から指摘されていたところであり、このような著作権検閲にしか流れようの無いダウンロード違法化は始めからなされるべきではなかったものである。文化庁の暴走と国会議員の無知によって成立したものであり、ネット利用における個人の安心と安全を完全にないがしろにするものである、百害あって一利ないダウンロード違法化を規定する著作権法第30条第1項第3号を即刻削除するべきである。

(以下、省令案に対する提出パブコメ)

1.個人/団体の別:個人
2.氏名:兎園
3.住所:略
4.連絡先:
5.項目名
(1)Ⅱ 著作物の表示の大きさ又は精度に係る基準
(2)Ⅲ 電子メールの送信その他の送信
(3)Ⅳ 送信可能化された情報の収集を禁止するための措置の方法

6.意見
(1)Ⅱ 著作物の表示の大きさ又は精度に係る基準

 省令案において、著作物の表示の大きさ又は精度に係る基準を定めるとしているが、政令案への意見に書いた通り、関係省庁が多岐に渡るオークションに関する要件を文化庁あるいは文部科学省単独で制定できる省令に委任することは適切でない。最低でも閣議決定を必要とする政令レベルで全ての要件を定めるべきである。

 また、政令案への意見で書いた通り、さらに技術の進展があると考えられ、ケース毎に様々な適切な対応があり得ると考えられるオークションのような分野において、画一的な技術的要件による限定を用いることは、今後の技術の発展を阻害することにつながる恐れが強く、引いては文化の発展をも阻害する恐れがあることを考え、オークションに関する権利制限については、政令において、一般的な要件のみにより規定するべきである。

(2)Ⅲ 電子メールの送信その他の送信
 省令案において、改正法第47条の5の特定送信に含まれる送信の列挙を行うとしているが、政令案への意見に書いた通り、関係省庁が多岐に渡るサーバー管理に関する要件を文化庁あるいは文部科学省単独で制定できる省令に委任することは適切でない。最低でも閣議決定を必要とする政令レベルで全ての要件を定めるべきである。

 また、政令案への意見で書いた通り、技術の発展と様々なケースが考えられる通信技術に関して、今の政令案・省令案にあるようにその類型を列挙型で制限することは、技術の発展を阻害し、引いては文化の発展をも阻害する恐れがあり、決して適切でないことを考え、「特定送信」は、政令において、一般的な要件のみにより規定するべきである。

(3)Ⅳ 送信可能化された情報の収集を禁止するための措置の方法
 省令案において、検索サービスの情報の収集を禁止する措置に関する類型の列挙を行うとしているが、政令案への意見に書いた通り、関係省庁が多岐に渡る検索サービスに関する要件を文化庁あるいは文部科学省単独で制定できる省令に委任することは適切でない。最低でも閣議決定を必要とする政令レベルで全ての要件を定めるべきである。

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コメント

関係省庁が多岐に渡ることばかりなのに、文科省が独占するかのようなことをやってしまってますが、他の省庁は怒らないのでしょうか。
官僚の縄張り争いは有名ですが。

投稿: taffy | 2009年12月13日 (日) 06時12分

taffy様

コメントありがとうございます。他の省庁とどのようなやり取りをしているのかは表に出てこないので分からないですね。

1月1日施行のはずなので、そこで出てくる政省令にどのような修正が入ったかで判断するしかないでしょう。

投稿: 兎園 | 2009年12月15日 (火) 21時05分

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