第208回:2009年の落ち穂拾い
およそロクなことは無かったが、年内のイベントも一通り終わったと思うので、今年も最後に落ち穂拾いをしておきたいと思う。
まずは、著作権関係から。「Copy & Copyright Diary」で取り上げられているので、リンク先をご覧頂ければ十分だと思うが、民主党の岸本周平議員が、著作権の保護期間延長を求めて、文部科学副大臣に陳情を行っている。鳩山首相の発言に、民主党の岸本周平議員による陳情を考えても、来年はまた著作権保護期間延長問題が再燃するのだろう。首相の発言も民主党議員による陳情も深いことを考えていたものとは思えないが、それだけにタチが悪い話である。
文化庁の文化審議会・著作権分科会では、法制問題小委員会と基本問題小委員会が相変わらず要領を得ない検討を続けている。議事要旨からは何をやっているのだかさっぱり分からないが、一般フェアユース条項の導入の可否の検討を行っている法制問題小委員会の権利制限の一般規定ワーキングチームの検討は特に要注意である。
細かな話はまた別途書きたいと思っているが、今日の官報号外第275号で著作権法施行令・施行規則を改正する政省令が公表された。
知的財産権でも、他の特許などに関する細かな動きについては、非常にマニアックな話ばかりなのでほとんど取り上げて来なかったが、経済産業省・特許庁で、ここ最近でも、産業構造審議会・知的財産政策部会・商標制度小委員会、意匠制度小委員会・意匠審査基準ワーキンググループ、情報の保護等の在り方に関する小委員会・営業秘密の管理に関するワーキンググループ(知的財産政策部会のHP参照)などが開催されている。ガイドラインレベルの話は落ち着くべきところに落ちるだろうが、音の商標を含む新しい商標の導入の議論については引き続き注意しておいた方が良いだろう。
また、この12月22日に総務省が原口一博大臣の名前を付けて「原口ビジョン(pdf)」なるペーパーを公開している。ハリボテのキーワードが並ぶいつもの総務省ペーパーだが、「ICTの利活用を阻む制度の抜本見直しー規制制度の集中的見直しを完了(2010年中、「ICT利活用促進一括化法」の制定)」ということが書かれていることには注意が必要だろう。総務省のことなので、規制緩和と言いながら有害無益な規制強化を図ってくることが十分に考えられる。
総務省でも山ほどしょうもない検討会が開かれているが、中でも、日本版FCCの話が中心となりそうな「今後のICT分野における国民の権利保障等の在り方を考えるフォーラム」、ホワイトスペース活用に関する検討をすると思しき「新たな電波の活用ビジョンに関する検討チーム」(1月12日〆切で「ホワイトスペースの活用方策など新たな電波の利用方策に関する提案の募集」も行われている。)、日本レコード協会が提案する日本版携帯著作権グリーンダム計画の検討が引き続き行われると思われる「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」は要注意だろう。(特に、この全く利用者視点を踏まえていない「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」の第4回会合資料中の「CGM(シー・ジー・エム)検討WGの設置について(案)(pdf)」の主な検討項目には、「青少年利用者向けに機能制限を行うための利用者年齢認証に向けた課題等の整理(中略)/利用者間のメッセージサービスにおける規約違反行為の監視に関する法的課題の整理 (例)いわゆる『ミニメール』の内容監視ついて、通信の秘密の保護との関係性の検討等/その他、青少年のコミュニティサイト利用に伴う福祉犯被害の防止に必要な施策(フィルタリングの推進等)に関する諸課題の整理」と書かれており、メールの検閲を含め、憲法すら無視した非道な規制強化の方針をこのワーキンググループなり研究会なりで、総務省が打ち出そうとしていると知れる。)
規制改革会議の12月22日の公表資料(pdf)によると、今まで行って来た規制改革の提案受付は、来年1月から開設予定の「ハトミミ.com」に統合されるそうである。どこまで今の政府が聞く耳を持つかは不明だが、こうした窓口に地道に規制緩和の話を突っ込んでいくことも手として考えて行くべきだろう。
世界に目を向けても良いニュースはあまり無いが、オーストラリア政府が中国を彷彿とさせるネット検閲を行おうとしているというニュース(cnetの記事参照)もあった。このような検閲の問題についてはさんざん書いているのでここでは繰り返さないが、最近の日本政府の動きを見るにつけ、このオーストラリアの話も対岸の火事と全く思えない。
2010年1月1日は極悪非道なダウンロード違法化の施行日であり、良い年をと言う気には到底ならないが、政官業に巣くう全ての利権屋と非人道的な規制強化派に悪い年を。そして、このつたないブログを読んで下さっている全ての人に心からの感謝を。
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