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2009年8月 1日 (土)

番外その19:最近2年間の情報規制関連の主な動き

 それ以前も兆候はあったが、この2年の情報規制関連の動きは異常という他なかった。今回は、今後の参考に、番外として、特に出会い系サイト規制法、青少年ネット規制法、ダウンロード違法化、児童ポルノ規制法に関する主な動きを個人的にまとめておきたいと思う。全て書いて行くと分かりにくくなるので、以下では国会における動きのみを書いて行くが、内閣提出法案の場合、その前に各官庁が自前の審議会で法改正に関する報告書を一方的に作った上で、パブコメも無視し、国会における法案審議を出来レースで済ますことが常態化しているし、議員提出法案の場合でも、与野党協議という名の密室談合によって法案をまとめ、実質的な国会審議を省略することが普通にまかり通っているというのが日本の今の政策決定における悲惨な現状である。(以下、赤字で強調したのは、衆議院で危険な情報・表現規制派として知られている衆議院議員であり、青字で強調したのは情報・表現規制慎重派・反対派として知られている衆議院議員である。なお、公明党は、表現・情報規制問題において、1人1人がどうこうということは無く、党全体として極めて危険である。)

2007年11月28日 衆議院・内閣委員会で、高市早苗議員<自民・奈良2区>が、青少年ネット規制法を与党内で検討していることを披露(議事録。高市早苗議員は、自民党内の青少年特別問題委員長として、青少年ネット規制法の導入を強力に推進した中心人物である。)

2008年 2月 4日 参議院・予算委員会で、有村治子議員<自民・比例19年>が、米シーファー大使の読売への寄稿文を取り上げ、単純所持規制の必要性を訴える。(議事録

      2月29日 出会い系サイト規制法(正式名称は、「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」)改正案衆議院提出(内閣(警察庁)提出。問題点については第50回前回のパブコメ参照)

      4月2日・14日 「子供が使用する携帯電話への法規制に関する請願」衆議院・青少年問題に関する特別委員会付託(紹介議員:井澤京子議員<自民党・比例近畿ブロック>、泉健太議員<民主党・京都3区>)

      4月10日 衆議院・青少年問題に関する特別委員会で、吉田泉議員<民主・東北ブロック>が、日本を児童ポルノ大国と決めつける米シーファー大使の発言を批判(議事録

      4月18日 出会い系サイト規制法改正案衆議院・青少年問題に関する特別委員会出来レース審議・可決議事録

      4月22日 出会い系サイト規制法改正案衆議院・本会議可決(実質審議無し)

      5月21日〜6月10日 「インターネットの有害情報から、子供を守るための法規制の早期実現に関する請願」衆議院・青少年問題に関する特別委員会付託(紹介議員高市早苗議員<自民・奈良2区>、やまぎわ大志郎議員<自民・神奈川18区>、安次富修議員<自民・比例九州ブロック>、中森ふくよ議員<自民・比例北関東ブロック>、平沼赳夫議員<自民・岡山3区>、内山晃議員<民主・比例南関東ブロック>、牧原秀樹議員<自民党・埼玉5区>)

      5月21日〜10日 「青少年健全育成のための有害図書類・有害情報規制に関する法整備を求めることに関する請願」衆議院・青少年問題に関する特別委員会付託(紹介議員:大前繁雄議員<自民党・兵庫7区>、下地幹郎議員<国民新・沖縄1区>、奥野信亮議員<自民・奈良3区>、高市早苗議員<自民・奈良2区>、鍵田忠兵衛議員<自民・比例近畿ブロック>、小池百合子議員<自民・東京10区>、西川公也議員<自民党・北関東ブロック>、森山眞弓議員<自民・栃木2区>、萩生田光一議員<自民・東京24区>、田野瀬良太郎議員<自民・奈良4区>、平田耕一議員<自民・比例東海ブロック>、平沼赳夫議員<自民・岡山3区>、高鳥修一議員<自民・比例北陸信越ブロック>、藤井勇治議員<自民・比例近畿ブロック>、船田元議員<自民・栃木1区>、加藤勝信議員<自民・比例中国ブロック>)

      5月23日 「美少女アダルトアニメ雑誌及び美少女アダルトアニメシミュレーションゲームの製造・販売を規制する法律の制定に関する請願」参議院・内閣委員会付託(紹介議員:円より子<民主党・比例16年>、下田敦子<民主党・比例16年>)

      5月27日 出会い系サイト規制法改正案参議院・内閣委員会出来レース審議・可決議事録

      5月28日 出会い系サイト規制法改正案参議院・本会議可決・成立(実質審議無し)

      6月 6日 青少年ネット規制法(正式名称は、「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」)衆議院提出・可決(与野党の密室政策談合により、合意案を青少年問題に関する特別委員長・玄葉光一郎<民主・福島3区>から提出し、実質審議を省略して可決。青少年問題に関する特別委員会議事録。なお、民主党で青少年ネット規制法案の対案をまとめたプロジェクトチームの座長は松本剛明<民主・近畿ブロック>、事務局長は高井美穂議員<民主・四国ブロック>(民主党のリリース参照)。自民党では、高市早苗<自民・奈良2区>が法案推進の中心人物だが、2008年10月6日の衆議院・予算委員会で自ら述べているように、葉梨康弘議員<自民・茨城3区>も青少年の違法・有害情報対策委員会の主査として関わっている。)

         同日 「青少年健全育成のための有害情報規制に関する法整備を求めることに関する請願」衆議院・青少年問題に関する特別委員会付託(紹介議員:林潤議員<自民・神奈川4区>)

         同日・10日 「青少年健全育成のための有害図書類・有害情報に関する法整備を求めることに関する請願」参議院・内閣委員会付託(紹介議員:島尻安伊子<自民・沖縄>、有村治子<自民・比例19年>、亀井郁夫<国民新・広島>)

      6月10日 青少年ネット規制法参議院・内閣委員会出来レース審議・可決議事録

         同日 与党(自民・公明)による単純所持規制を含む児童ポルノ規制法(正式名称は、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律」)改正案衆議院提出(提出者:森山眞弓議員<自民・栃木2区>葉梨康弘議員<自民・茨城3区>富田茂之議員<公明・南関東ブロック>。単純所持・与党案の問題については、第70回番外その14前回のパブコメ参照)

         同日 「インターネット上の青少年有害情報規制に関する法整備を求めることに関する請願」衆議院・青少年問題に関する特別委員会付託(紹介議員:飯島夕雁議員<自民・比例北海道ブロック>)

         同日 「児童買春、児童ポルノ禁止法改悪反対に関する請願」衆議院・青少年問題に関する特別委員会付託(紹介議員保坂展人議員<社民・東京ブロック>

         同日 「子供ポルノ問題に関する請願」参議院・内閣委員会付託(紹介議員:自見庄三郎<国民新・比例19年>)

         同日 「児童買春、児童ポルノ禁止法改悪反対に関する請願」参議院・法務委員会付託(紹介議員:松浦大悟<民主・秋田>)

      6月11日 青少年ネット規制法参議院・本会議可決・成立(実質審議無し)

     10月15日 「児童買春・児童ポルノ禁止法改正に当たり、拙速を避け、極めて慎重な取り扱いを求めることに関する請願」衆議院・法務委員会付託(紹介議員保坂展人議員<社民・東京ブロック>

         同日 「美少女アダルトアニメ雑誌及び美少女アダルトアニメシミュレーションゲームの製造・販売を規制する法律の制定に関する請願」衆議院・法務委員会付託(紹介議員:村井宗明議員<民主・北陸信越ブロック>)

     11月 7日・14日・20日 「児童買春・児童ポルノ禁止法改正に当たって、拙速を避け、極めて慎重な取扱いを求めることに関する請願」参議院・法務委員会付託(紹介議員:中村哲治<民主・奈良>、松浦大悟<民主・秋田>、鈴木寛<民主・東京>)

     12月 1日 改正出会い系サイト規制法施行

     12月15日 参議院・決算委員会で、松あきら議員<公明・神奈川>が、単純所持規制を含む与党の児童ポルノ規制法改正案の早期成立を訴える。(議事録

     12月17日 「子どもの保護に名を借りた創作物の規制、捜査機関による濫用の危険性が高い児童ポルノの単純所持規制反対に関する請願」衆議院・法務委員会(紹介議員保坂展人議員<社民・東京ブロック>

2009年 2月18日 衆議院・予算委員会で、鳩山邦夫総務大臣<自民・福岡6区>が、児童ポルノについて「断固として単純所持を禁止するべき」であり、「表現の自由で守られる法益と児童ポルノによって失われる人権というものとの比較をすれば、それは表現の自由という部分が大幅に削られて構わない」と発言(議事録

      3月10日
 ダウンロード違法化を含む著作権法改正案国会提出(内閣(文化庁)提出。問題点については第160回前々回のパブコメ参照)

      3月19日 民主党による反復取得規制を含む児童ポルノ規制法改正案衆議院提出(提出者:細川律夫議員<民主・北関東ブロック>、吉田泉議員<民主・東北ブロック>枝野幸男議員<民主・埼玉5区>小宮山洋子議員<民主・東京ブロック>、西村智奈美議員<民主・新潟1区>。民主党案の問題点については、第162回参照)

      4月 1日 青少年ネット規制法施行

      4月10日・5月1日・7月3日 「子供の保護に名を借りた創作物の規制、捜査機関による濫用の危険性が高い児童ポルノの単純所持規制反対に関する請願」参議院・法務委員会付託(紹介議員:川田龍平議員<無所属・東京>、松浦大悟議員<民主・秋田>、中村哲治議員<民主・奈良>、福島みずほ議員<社民・比例16年>)

      4月15日 「子どもの保護に名を借りた創作物の規制、捜査機関による濫用の危険性が高い児童ポルノの単純所持規制反対に関する請願」衆議院・法務委員会付託(紹介議員吉田泉議員<民主・東北ブロック>保坂展人議員<社民・東京ブロック>枝野幸男議員<民主・埼玉5区>辻元清美議員<社民・近畿ブロック>

      4月28日 参議院・消費者問題に関する特別委員会で、野田聖子消費者行政担当大臣<自民・岐阜1区>が「児童ポルノの法律の改正というのを随分ユニセフ辺りから言われている」と発言(議事録

      5月 8日 ダウンロード違法化を含む著作権法改正案衆議院・文部科学委員会出来レース審議・可決第171回参照)

      5月12日 ダウンロード違法化を含む著作権法改正案衆議院可決(実質審議無し)

      5月20日 「児童買春・児童ポルノ禁止法改正に当たり、拙速を避け、極めて慎重な取り扱いを求めることに関する請願」衆議院・法務委員会付託(紹介議員保坂展人議員<社民・東京ブロック>枝野幸男議員<民主・埼玉5区>吉田泉議員<民主・東北ブロック>

      6月11日 ダウンロード違法化を含む著作権法改正案参議院・文教科学委員会出来レース審議・可決第177回参照)

      6月12日 ダウンロード違法化を含む著作権法改正案参議院可決・成立(実質審議無し)

      6月19日 「子供ポルノ問題に関する請願」参議院・内閣委員会付託(紹介議員:自見庄三郎議員<国民新・比例19年>)

 

        同日 「子供ポルノ問題のための、児童買春・児童ポルノ等禁止法の改正、厳格な適用等に関する請願」参議院・法務委員会付託(紹介議員:自見庄三郎議員<国民新・比例19年>)

      6月26日 児童ポルノ規制法改正案衆議院・法務委員会審議葉梨康弘議員<自民・茨城3区>は焚書・表現弾圧を明言して違憲発言を繰り返す。富田茂之議員<公明・南関東ブロック>丸谷佳織議員<公明・北海道ブロック>も危険極まりない宗教政党・公明党の構成員として、根拠無く単純所持規制が必要と違憲発言を繰り返す。小宮山洋子議員<民主・東京ブロック>は、民主党案を離れ、単純所持規制を支持していることを暴露。民主党案にも問題はあるものと思うが、枝野幸男議員<民主・埼玉県>は、所持規制における情報と有体物の特性の違いをきちんと理解し、自民党案の主観的要件のみによる情報の単純所持規制による冤罪発生の危険性を的確に指摘。保坂展人議員<社民・東京ブロック>は、この問題におけるほぼ唯一の良心として、必要な規制はきちんとやるべきだが、それによって表現の自由や内心の自由が萎縮するようなことはあってはならないという立場を明確に表明。(会議録目次6参照)

      6月    「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の改正を求めることに関する請願」衆議院受理(紹介議員:宇野治議員<自民・近畿ブロック>、稲田朋美議員<自民・福井1区>、大前繁雄議員<自民・兵庫7区>、やまぎわ大志郎議員<自民・神奈川18区>、藤井勇治議員<自民・近畿ブロック>、松本洋平議員<自民・東京19区>、鈴木淳司議員<自民・愛知7区>、御法川信英議員<自民・秋田3区>)

2010年 1月 1日 ダウンロード違法化施行予定

 前々回前回のパブコメにも書いた通り、これらの法改正による歪みは既に出始めている。出会い系サイト規制法とダウンロード違法化はそれぞれ警察庁と文化庁の暴走によるものであるが、これらの規制官庁の暴走を止めなかったことも含めて今の自公政権の罪は極めて重い。この2年間の役所と国会の審議のレベルは全体的にあまりにも低く、残念ながら選挙後も危険な状態が続くとは思うが、表現・情報規制問題において今度の選挙は非常に重要である。

 各政党のマニフェストは政策としては見る限りロクな項目が無いのだが、次回は、情報・知財政策という観点から、各政党のマニフェストの比較をやっておきたいと思っている。

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