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2009年7月25日 (土)

第186回:内閣官房・「デジタル技術・情報の利活用を阻むような規制・制度・慣行等の重点点検」に対する提出パブコメ(その2:一般的な情報・表現・ネット規制関連)

 前回に続き、内閣官房・IT戦略本部の「デジタル技術・情報の利活用を阻むような規制・制度・慣行等の重点点検」に関する意見募集(8月6日〆切。内閣官房のリリース、電子政府の該当ページ提出様式(doc)参照)に対する提出パブコメの残りを載せる。

 残りは一般的な情報・表現・ネット規制関連として、(10)出会い系サイト規制、(11)青少年ネット規制法・携帯フィルタリング義務化、(12)児童ポルノ規制・サイトブロッキング、(13)インターネット・ホットラインセンター・日本ガーディアン・エンジェルス・日本ユニセフ協会、(14)官製キャンペーン、(15)模倣品・海賊版拡散防止条約、(16)国際組織犯罪防止条約・サイバー犯罪条約及びこれらの締結に必要な法改正、(17)音の商標、(18)公職選挙法、(19)天下りに関するものである。

 前々回にも書いたが、常に規制強化ありきでパブコメを行う性根の腐った日本政府において、このように明確に規制緩和を目的とするパブコメの機会は極めて貴重であり、最近の不合理極まるネット・情報規制の動きに憤りを感じている全ての個人・企業・団体に、このパブコメに対して意見を出すことを重ねて私はお勧めしておきたいと思う。

(以下、提出パブコメ)

(10)出会い系サイト規制
(規制、制度、慣行、又は手続等の名称)
 出会い系サイト規制

(規制、制度、慣行、又は手続等の現状)
 出会い系サイト事業者の届け出の義務化を中心とする、出会い系サイト規制法の改正法が去年の5月に成立し、同年12月から施行されている。その後、今年の2月から3月にかけて、警視庁が、SNS各社に対して書き込みの削除要請をし、あるSNSでは内容の精査も無いまま「出会い」に関するコミュニティが全て削除されるということが起こった(http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0904/02/news085.html参照)。5月には、やはり警視庁が、SNSサイトの年齢確認の厳格化を要請しており(http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20392643,00.htm参照)、6月には、無届け出会い系サイト運営容疑で逮捕者まで出ている(http://journal.mycom.co.jp/news/2009/06/02/057/index.htmlhttp://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/090624/crm0906242247042-n1.htm参照)。

(具体的な問題点)
 警察による出会い系サイト規制法の拡大解釈・恣意的運用によって、ネット利用における不必要かつ有害な萎縮効果が既に発生していることは、一般サイト事業者に対する警察からの要請とその反応から明らかである。

 この出会い系サイト規制法の改正は、警察庁が、どんなコミュニケーションサイトでも人は出会えるという誰にでも分かることを無視し、届け出制の対象としては事実上定義不能の「出会い系サイト事業」を定義可能と偽り、改正法案の閣議決定を行い、法案を国会に提出したものであり、他の重要法案と審議が重なる中、国会においてもその本質的な問題が見過ごされて可決され、成立したものである。憲法上の罪刑法定主義や検閲の禁止にそもそも違反しており、表現の自由などの国民の最重要の基本的な権利をないがしろにするものである、今回の出会い系サイト規制法の改正については、今後、速やかに元に戻すことが検討されなくてはならない。

 既に逮捕者まで出ているが、出会い系サイト規制法は、その曖昧さから別件逮捕のツールとして使われ、この制度によって与えられる不透明な許認可権限による、警察の出会い系サイト業者との癒着・天下り利権の強化を招く恐れが極めて強い。出会い系サイト規制法を去年の改正前の状態に戻すまでにおいても、この危険な法律の運用については慎重の上に慎重が期されるべきである。

(問題により不利益を被っている、困っている人又は団体等)
 全インターネットユーザー

(改善提案)
 出会い系サイト規制法を改正前の状態に速やかに戻す。

(根拠法)
 出会い系サイト規制法(正式名称は「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」)

(関連府省等)
 警察庁

(11)青少年ネット規制法・携帯フィルタリング義務化
(規制、制度、慣行、又は手続等の名称)
 青少年ネット規制法・携帯フィルタリング義務化

(規制、制度、慣行、又は手続等の現状)
 携帯電話におけるフィルタリングの義務化を中心とする、青少年ネット規制法が、去年の6月に成立し、この4月から施行されている。

(具体的な問題点)
 そもそも、フィルタリングサービスであれ、ソフトであれ、今のところフィルタリングに関するコスト・メリット市場が失敗していない以上、かえって必要なことは、不当なフィルタリングソフト・サービスの抱き合わせ販売の禁止によって、消費者の選択肢を増やし、利便性と価格の競争を促すことだったはずである。一昨年から昨年にかけて大騒動になったあげく、ユーザーから、ネット企業から、メディア企業から、とにかくあらゆる者から大反対されながらも、有害無益なプライドと利権の確保を最優先する一部の議員と官庁の思惑のみから成立した今の青少年ネット規制法による規制は、一ユーザー・一消費者・一国民として全く評価できないものであり、速やかに法律の廃止が検討されるべきである。

 青少年ネット規制法の規制は、フィルタリングソフト・サービスの不当な抱き合わせ販売を助長することにつながる恐れが強く、廃止するまでにおいても、政府全体で、特に公正取引委員会において、規制を理由にした不当な便乗商法に対する監視を強めるべきであり、フィルタリングソフト・サービスの不当な抱き合わせ販売について独禁法の適用が検討されるべきである。

 フィルタリングについても、その過去の政策決定の迷走により、総務省は携帯電話サイト事業者に無意味かつ多大なダメージを与えた。この問題については、フィルタリングの存在を知り、かつ、フィルタリングの導入が必要だと思っていて、なお未成年にフィルタリングをかけられないとする親に対して、その理由を聞くか、あるいはフィルタリングをかけている親に対して、そのフィルタリングの問題を聞くかして、きちんと本当の問題点を示してから検討するべきである。

 フィルタリングで無意味に利権を作ろうとしている総務省と携帯電話事業者他の今の検討については、完全に白紙に戻されるべきである。携帯フィルタリングについて、ブラックリスト方式ならば、まずブラックリストに載せる基準の明確化から行うべきなので、不当なブラックリスト指定については、携帯電話事業者がそれぞれの基準に照らし合わせて無料で解除する簡便な手続きを備えていればそれで良く、健全サイト認定第3者機関など必要ないはずである。ブラックリスト指定を不当に乱発し、認定機関で不当に審査料をせしめ取り、さらにこの不当にせしめた審査料と、正当な理由もなく流し込まれる税金で天下り役人を飼うのだとしたら、これは官民談合による大不正行為以外の何物でもない。このようなブラックリスト商法の正当化は許されない。

(問題により不利益を被っている、困っている人又は団体等)
 全インターネットユーザー、全携帯ユーザー

(改善提案)
 青少年ネット規制法を廃止する。

 廃止するまでにおいても、規制を理由にしたフィルタリングに関する不当な便乗商法に対する監視を政府において強め、フィルタリングソフト・サービスの不当な抱き合わせ販売について独禁法の適用を検討する。

 合わせ、フィルタリングで無意味に利権を作ろうとしている総務省と携帯電話事業者他の今の検討については、完全に白紙に戻す。

(根拠法)
 青少年ネット規制法(正式名称は、「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」)

(関連府省等)
 総務省

(12)児童ポルノ規制・サイトブロッキング
(規制、制度、慣行、又は手続等の名称)
 児童ポルノ規制・サイトブロッキング

(規制、制度、慣行、又は手続等の現状)
 現行の児童ポルノ規制法により。「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの 」という非常に曖昧な第2条第3項第3号の規定によって定義されるものも含め、児童ポルノの提供及び提供目的の所持まで規制されている。最近も、この4月に、アフィリエイト広告代理店社長が児童ポルノ規制法違反幇助容疑で送検され(http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2009/04/01/22998.html参照)、5月に、児童ポルノサイトへのリンクを張ることについて、児童ポルノ公然陳列幇助容疑で2名が送検され(http://www.j-cast.com/2007/05/09007471.htmlhttp://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2007/05/09/15641.html参照)、6月には、女子高生の水着を撮影したDVDを児童ポルノとして製造容疑でビデオ販売会社社長他が逮捕されるなど(http://www.47news.jp/CN/200907/CN2009071901000294.html参照。なお、水着を撮影したDVDを児童ポルノとするケースは去年もあり、今も裁判が続いているようである)、警察による法律の拡大解釈・恣意的運用は止まるところを知らず、現行法の運用においてすら、インターネット利用の全てが極めて危険な状態に置かれている。

 このような全く信用できない警察の動きをさらに危険極まりないものにしようと、与党である自民党と公明党は、児童ポルノ規制法の規制強化を企て、「自身の性的好奇心を満たす目的で」という主観的要件のみで児童ポルノの所持を禁止する、いわゆる単純所持規制を含む法改正案を第171回国会に提出し、民主党はやはり危険な反復取得罪を含む法改正案を提出し、国会で審議が行われた。第171回国会の解散によって、これらの改正法案は一旦廃案となったが、選挙後の国会で再提出される可能性も高く、今なお、インターネットにおけるあらゆる情報利用を危険極まりないものとする法改正の検討が今後も続けられかねないという危うい状態にあることに変わりはない。

 また、児童ポルノ規制強化の一環として、この6月に、警察庁、総務省などの規制官庁が絡む形で、検閲にしかなりようがないサイトブロッキングを検討する児童ポルノ流通防止協議会が発足している(http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0906/02/news097.html参照)。

(具体的な問題点)
 閲覧とダウンロードと取得と所持の区別がつかないインターネットにおいては、例え児童ポルノにせよ、情報の単純所持や取得の規制は有害無益かつ危険なもので、憲法及び条約に規定されている「知る権利」を不当に害するものとなる。「自身の性的好奇心を満たす目的で」、積極的あるいは意図的に画像を得た場合であるなどの限定を加えたところで、エスパーでもない限りこのような積極性を証明することも反証することもできないため、このような情報の単純所持や取得の規制の危険性は回避不能であり、思想の自由や罪刑法定主義にも反する。繰り返し取得としても、インターネットで2回以上他人にダウンロードを行わせること等は技術的に極めて容易であり、取得の回数の限定も、何ら危険性を減らすものではない。

 児童ポルノ規制の推進派は常に、提供による被害と単純所持・取得を混同する狂った論理を主張するが、例えそれが児童ポルノであろうと、情報の単純所持ではいかなる被害も発生し得えない。現行法で、ネット上であるか否かにかかわらず、提供及び提供目的の所持まで規制されているのであり、提供によって生じる被害と所持やダウンロード、取得、収集との混同は許され得ない。そもそも、最も根本的なプライバシーに属する個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ることは、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の基本的な権利からあってはならないことである。

 アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現に対する規制対象の拡大も議論されているが、このような対象の拡大は、児童保護という当初の法目的を大きく逸脱する、異常規制に他ならない。アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現において、いくら過激な表現がなされていようと、それが現実の児童被害と関係があるとする客観的な証拠は何一つない。いまだかつて、この点について、単なる不快感に基づいた印象批評と一方的な印象操作調査以上のものを私は見たことはないし、虚構と現実の区別がつかないごく一部の自称良識派の単なる不快感など、言うまでもなく一般的かつ網羅的な表現規制の理由には全くならない。アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現が、今の一般的なモラルに基づいて猥褻だというのなら、猥褻物として取り締まるべき話であって、それ以上の話ではない。どんな法律に基づく権利であれ、権利の侵害は相対的にのみ定まるものであり、実際の被害者の存在しない創作物・表現に対する規制は何をもっても正当化され得ない。民主主義の最重要の基礎である表現の自由や言論の自由、思想の自由等々の最も基本的な精神的自由そのものを危うくすることは絶対に許されない。

 単純所持規制にせよ、創作物規制にせよ、両方とも1999年当時の児童ポルノ法制定時に喧々囂々の大議論の末に除外された規制であり、規制推進派が何と言おうと、これらの規制を正当化するに足る立法事実の変化はいまだに何一つない。

 サイトブロッキングにつても、総務省なり警察なり天下り先の検閲機関・自主規制団体なりの恣意的な認定により、全国民がアクセスできなくなるサイトを発生させるなど、絶対にやってはならないことである。例えそれが何であろうと、情報の単純所持や単なる情報アクセスではいかなる被害も発生し得えないのであり、自主的な取組という名目でいくら取り繕おうとも、憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないサイトブロッキングは導入されてはならないものである。

 児童ポルノ規制法に関しては、既に、提供及び提供目的での所持が禁止されているのであるから、本当に必要とされることは今の法律の地道なエンフォースであって有害無益な規制強化の検討ではない。児童ポルノ規制法に関して検討すべきことは、現行ですら過度に広汎であり、違憲のそしりを免れない児童ポルノの定義の厳密化のみである。

 警察の恣意的な運用によって、現行法においてすら児童ポルノ規制法違反幇助のリスクが途方もなく拡大し、甚大な萎縮効果・有害無益な社会的大混乱が生じかねないという非常に危険な状態にあることを考え、今現在民事的な責任の制限しか規定していないプロバイダー責任制限法に関し、刑事罰リスクも含めたプロバイダーの明確なセーフハーバーについて検討するべきである。

 違法コピー対策問題における権利者団体の主張、児童ポルノ法規制強化問題・有害サイト規制問題における自称良識派団体の主張は、常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。今後は、このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むべきである。同じく、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な著作権検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むべきである。

 また、児童ポルノの閲覧の犯罪化と創作物の規制まで求める「子どもと青少年の性的搾取に反対する世界会議」の根拠のない狂った宣言を国際動向として一方的に取り上げ、児童ポルノ規制の強化を正当化することなどあってはならない。児童ポルノ規制に関しては、最近、ドイツのバンド「Scorpions」が32年前にリリースした「Virgin Killer」というアルバムのジャケットカバーが、アメリカでは児童ポルノと見なされないにもかかわらず、イギリスでは該当するとしてブロッキングの対象となり、プロバイダーによっては全Wikipediaにアクセス出来ない状態が生じたなど、欧米では、行き過ぎた規制の恣意的な運用によって弊害が生じていることも見逃されるべきではない。アメリカだけを取り上げても、FBIが偽リンクによる囮捜査を実行し、偽リンクをクリックした者が児童ポルノがダウンロードしようとしたということで逮捕、有罪にされるという恣意的運用の極みをやっている(http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20080323_fbi_fake_hyperlink/参照)、単なる授乳写真が児童ポルノに当たるとして裁判になり、平和だった一家が完全に崩壊している(http://suzacu.blog42.fc2.com/blog-entry-52.html参照)、日本のアダルトコミックを所持していたとして、児童の性的虐待を何ら行ったことも無く、考えたことも無い単なる漫画のコレクターが司法取引で有罪とされている(http://news.goo.ne.jp/article/wiredvision/nation/2009news1-19920.html参照)などの、極悪かつ非人道的な例が知られている。単純所持規制を導入している西洋キリスト教諸国で行われていることは、中世さながらの検閲と魔女狩りであって、このような極悪非道に倣わなければならない理由は全く無い。

 しかし、欧米においても、情報の単純所持規制やサイトブロッキングの危険性に対する認識はネットを中心に高まって来ており、アメリカにおいても、この1月に連邦最高裁で児童オンライン保護法が違憲として完全に否定され、この2月に連邦控訴裁でカリフォルニア州のゲーム規制法が違憲として否定されていることや、つい最近からのドイツ国会への児童ポルノサイトブロッキング反対電子請願(https://epetitionen.bundestag.de/index.php?action=petition;sa=details;petition=3860)に13万筆を超える数の署名が集まったこと、ドイツにおいても児童ポルノサイトブロッキング法は検閲法と批判され、既に憲法裁判が提起されていること(http://www.netzeitung.de/politik/deutschland/1393679.html参照)なども注目されるべきである。スイスにおいて最近発表された調査でも、2002年に児童ポルノ所持で捕まった者の追跡調査を行っているが、実際に過去に性的虐待を行っていたのは1%、6年間の追跡調査で実際に性的虐待を行ったものも1%に過ぎず、児童ポルノ所持はそれだけでは、性的虐待のリスクファクターとはならないと結論づけており、児童ポルノの単純所持規制の根拠は完全に否定されているのである(http://www.biomedcentral.com/1471-244X/9/43/abstract参照)。
政府・与党内の検討においては、このような国際動向もきちんと取り上げるべきであり、一方的な見方で国際動向を決めつけることなどあってはならない。

 かえって、児童ポルノの単純所持規制・創作物規制といった非人道的な規制を導入している諸国は即刻このような規制を廃止するべきと、そもそも最も根本的なプライバシーに属し、何ら実害を生み得ない個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ること自体、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の国際的かつ一般的に認められている基本的な権利からあってはならないことであると、日本政府から国際的な場において各国に積極的に働きかけるべきである。

 選挙後の国会において、児童ポルノ規制法の改正案が再び提出される可能性も高いが、政府において、児童ポルノを対象とするものにせよ、いかなる種類のものであれ、情報の単純所持・取得規制・ブロッキングは極めて危険な規制であるとの認識を深め、このような規制を絶対に行わないこととして、前国会のような危険な法改正案が2度と与野党から提出されることが無いようにするべきである。

(問題により不利益を被っている、困っている人又は団体等)
 全国民

(改善提案)
 違憲のそしりを免れない現行の児童ポルノ規制法について、速やかに児童ポルノの定義の厳格化のみの法改正を行う。

 プロバイダー責任制限法に関し、被侵害者との関係において、刑事罰リスクも含めたプロバイダーの明確なセーフハーバーについて検討する。

 児童ポルノ流通防止協議会を解散し、サイトブロッキングに関する検討を完全に停止する。

 憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むこと、及び、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な著作権検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むことを検討する。

 児童ポルノの単純所持規制・創作物規制といった非人道的な規制を導入している諸国は即刻このような規制を廃止するべきと、そもそも最も根本的なプライバシーに属し、何ら実害を生み得ない個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ること自体、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の国際的かつ一般的に認められている基本的な権利からあってはならないことであると、日本政府から国際的な場において各国に積極的に働きかける。

 児童ポルノを対象とするものにせよ、いかなる種類のものであれ、情報の単純所持・取得規制・ブロッキングは極めて危険な規制であるとの認識を深め、このような規制を絶対に行わないことと閣議決定する。

(根拠法)
 児童ポルノ規制法(正式名称は「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」)

(関連府省等)
警察庁、総務省、厚生労働省

(13)インターネット・ホットラインセンター・日本ガーディアン・エンジェルス・日本ユニセフ協会
(規制、制度、慣行、又は手続等の名称)
 インターネット・ホットラインセンター・日本ガーディアン・エンジェルス・日本ユニセフ協会

(規制、制度、慣行、又は手続等の現状)
 単なる民間団体に過ぎないにもかかわらず、一般からの違法・有害情報の通知を受けて、直接削除要請を行っている、インターネット・ホットラインセンターという名の半官検閲センターが存在している。

 同じく民間団体に過ぎないにもかかわらず、日本ガーディアン・エンジェルスという団体が、犯罪に関する情報を匿名で受け付け、解決に結び付いた場合に情報料を支払うということを行っており、この7月からネットでの受理まで開始している(http://www.jiji.com/jc/zc?k=200907/2009070100378参照)。

 また、日本ユニセフ協会は、「なくそう!子どもポルノ」キャンペーン等の根拠無く一般的かつ網羅的な表現・情報弾圧を唱える危険な児童ポルノ規制強化プロパガンダに募金を流用し、さらに、この6月26日の衆議院法務委員会でも、感情論のみで根拠無く児童ポルノの単純所持規制の導入を訴えるなど、寄付行為に書かれた財団法人の目的を大きく逸脱し、明白に公益を害する行為を繰り返し行い、インターネットにおけるあらゆる情報利用を危険極まりないものとしようとしている。

(具体的な問題点)
 サイト事業者が自主的に行うならまだしも、何の権限も有しないインターネット・ホットラインセンターなどの民間団体からの強圧的な指摘により、書き込みなどの削除が行われることなど本来あってはならないことである。このようなセンターは単なる一民間団体で、しかもこの団体に直接害が及んでいる訳でもないため、削除を要請できる訳がない。勝手に有害と思われる情報を収集して、直接削除要請などを行う民間団体があるということ自体おかしいと考えるべきであり、このような有害無益な半官検閲センターは即刻廃止が検討されて良い。このような無駄な半官検閲センターに国民の血税を流すことは到底許されないのであって、その分できちんとした取り締まりと削除要請ができる人員を、法律によって明確に制約を受ける警察に確保するべきである。

 日本ガーディアン・エンジェルスについても同断であり、直接害が及んでいる訳でもない単なる一民間団体が、直接一般からの通報を受け付け、刑事事件に関与して、解決に結び付いた場合に情報料を支払うということ自体異常である。インターネット・ホットライン・センターにせよ、この日本ガーディアン・エンジェルスにせよ、警察の本来業務を外部委託することがそもそもおかしいのであり、日本ガーディアン・エンジェルスに無駄に国民の血税を流すべきでは無く、その分できちんとした情報受け付けと事件の解決ができる人員を、法律によって明確に制約を受ける警察に確保するべきである。また、このようなことに手を染めている日本ガーディアン・エンジェルスは、特定非営利活動法人あるいは認定特定非営利活動法人の名に値するものでは無く、その取り消しが検討されるべきである。

 また、日本ユニセフ協会は、「なくそう!子どもポルノ」キャンペーン等の根拠無く一般的かつ網羅的な表現・情報弾圧を唱える危険な児童ポルノ規制強化プロパガンダに募金を流用し、さらに、この6月26日の衆議院法務委員会でも、感情論のみで根拠無く児童ポルノの単純所持規制の導入を訴えているが、日本ユニセフの寄付行為(http://www.unicef.or.jp/about_unicef/about_kifu.html参照)において、根拠無く焚書と表現弾圧を叫ぶことは、ユニセフの趣旨には入っていないと考えられ、このようなことが事業としてあげられている訳も無く、このような行為は寄付行為違反である。さらに、民主主義の基礎中の基礎である表現の自由等の精神的自由の重要性を考えると、寄付行為違反を超えて、このような行為は明白に公益を害するものである。「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」第96条に基づいて、日本ユニセフ協会に対して、所管の外務省から改善命令を出すべきである。また、このような法人は、公益法人あるいは特定公益増進法人の名に値するものでは無く、新公益法人制度への移行申請において公益認定をしないとするか、あるいは、それ以前に、公益法人及び特定公益増進法人の認定取り消しをするべきである。(なお、日本ユニセフ協会は、そのHPhttp://www.unicef.or.jp/cooperate/coop_tax.htmlにおいて、募金の税法上の優遇について、特定公益増進法人への寄付が優遇措置を受けられると書いているが、公益法人改革の一環として、既に全ての公益法人に対する寄付に対して同等の優遇措置が認められているのであり(財務省HPhttp://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/koueki01.htmの注参照)、これもかなり悪質なミスリードである。)

(問題により不利益を被っている、困っている人又は団体等)
 全国民

(改善提案)
 インターネット・ホットラインセンターを廃止する。

 日本ガーディアン・エンジェルスにおける警察の委託事業を停止する。また、同時に、日本ガーディアン・エンジェルスに対して、特定非営利活動促進法及び租税特別措置法第66条の11の2に基づく特定非営利活動法人及び認定特定非営利活動法人の認定の取り消しを検討する。

 日本ユニセフ協会に対して、所管の外務省から公益を害する活動を止めるよう改善命令を出す。また、日本ユニセフ協会に対して、新公益法人制度への移行申請において公益認定をしないとするか、あるいは、それ以前に、公益法人及び特定公益増進法人の認定を取り消す。

(根拠法)
 特定非営利活動促進法
 租税特別措置法第66条の11の2
 公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律
 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律

(関連府省等)
 警察庁、外務省

(14)官製キャンペーン
(規制、制度、慣行、又は手続等の名称)
 官製キャンペーン

(規制、制度、慣行、又は手続等の現状)
 「e-ネットづくり!」宣言として、総務省への参加申請・登録の要請や総務省製のロゴマークの販促といった、ニーズを無視した官製キャンペーンを総務省が行おうとしているところである。

(具体的な問題点)
 総務省への参加申請・登録の要請や総務省製のロゴマークの販促といった、ニーズを無視したいつもの官製キャンペーンに過ぎない「e-ネットづくり!」宣言について、そもそも民間が求めていない、「民間による自主的な取組」など取りやめるべきである。検討が必要であるとしたら、今ですら訳が分からないほど沢山ある通信関係の各種ガイドラインの整理削減のみである。今以上に、規制よりにしかならないだろう官製「自主憲章」やガイドラインなども不要である。天下り利権の強化・税金のムダな浪費にしかつながらない、ニーズを無視した「相談センター」の拡充などされるべきでない。インターネット・ホットラインセンターという警察庁の半官検閲センター自体廃止が速やかに検討されるべきものであり、「違法・有害情報通報受付」と称して、総務省版の半官検閲センターをさらに作ることなど論外である。

(問題により不利益を被っている、困っている人又は団体等)
 全インターネットユーザー

(改善提案)
「e-ネットづくり!」宣言について、規制よりにしかならないだろう官製「自主憲章」やガイドラインも含め、そもそも民間が求めていない、「民間による自主的な取組」を取りやめる。

 今ですら訳が分からないほど沢山ある通信関係の各種ガイドラインの整理削減のみを行う。

(根拠法)
 なし

(関連府省等)
 総務省

(15)模倣品・海賊版拡散防止条約
(規制、制度、慣行、又は手続等の名称)
 模倣品・海賊版拡散防止条約

(規制、制度、慣行、又は手続等の現状)
 詳細は不明であるが、模倣品・海賊版拡散防止条約の検討が政府レベルで行われている。

(具体的な問題点)
 模倣品・海賊版拡散防止条約について、検討中であり、詳細は不明であるが、税関において個人のPCや携帯デバイスの内容をチェック可能とすることや、インターネットで著作権検閲を行う機関を創設することといった、個人の基本的な権利をないがしろにする条項が検討される恐れがある。他の国が、このような危険な条項をこの条約に入れるよう求めて来たときには、そのような非人道的な条項は除くべきであると、かえって、プライバシーや情報アクセスの権利といった国際的・一般的に認められている個人の基本的な権利を守るという条項こそ条約に盛り込むべきであると日本から各国に積極的に働きかけるべきである。

(問題により不利益を被っている、困っている人又は団体等)
 全国民

(改善提案)
 他の国が、税関において個人のPCや携帯デバイスの内容をチェック可能とすることや、インターネットで著作権検閲を行う機関を創設することといった、個人の基本的な権利をないがしろにするような危険な条項をこの条約に入れるよう求めて来たときには、そのような非人道的な条項は除くべきであると、かえって、プライバシーや情報アクセスの権利といった国際的・一般的に認められている個人の基本的な権利を守るという条項こそ条約に盛り込むべきであると日本から各国に積極的に働きかける。

(根拠法)
 なし

(関連府省等)
 警察庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省

(16)国際組織犯罪防止条約・サイバー犯罪条約及びこれらの締結に必要な法改正
(規制、制度、慣行、又は手続等の名称)
 国際組織犯罪防止条約・サイバー犯罪条約及びこれらの締結に必要な法改正

(規制、制度、慣行、又は手続等の現状)
 前国会に提出されていた、国民の基本的な権利に対する致命的な問題を抱えていると考えられる、国際組織犯罪防止条約及びサイバー犯罪条約の締結のための法改正案は、解散により一旦廃案となったが、選挙後の国会において、再提出される可能性は高い。また、法改正の問題以前に、締結が目指されているこれらの条約自体、やはり国民の基本的な権利に対する致命的な問題を抱えている。

(具体的な問題点)
 国際組織犯罪防止条約の締結には、共謀罪の創設が必要とされているが、現状でも大規模テロなどについてはすでに殺人予備罪があるので共謀罪がなくとも対応でき、その他、個別の立法事実があればそれに沿った形で個別の犯罪についての予備罪の適否を論ずるべきであって、広範かつ一般的な共謀罪を創設する立法事実はない。実行行為に直接つながる行為によって、法益侵害の現実的危険性を引き起こしたからこそ処罰されるという我が国の刑法学の根幹を揺るがすものである共謀罪は、決して導入されてはならない。組織要件の厳密化にしても、今現在国会に提出されている修正案のような、その目的や意思のみによる限定は客観性を全く欠き、やはり恣意的な運用しか招きようのない危険なものである。このような危険な法改正を必要とする国際組織犯罪防止条約は日本として締結するべきものではない。

 サイバー犯罪条約は、通信記録や通信内容等の情報の保全・捜索・押収・傍受等について広範かつ強力な手段を法執行機関に与えることを求めているが、このような要請は、我が国の憲法に規定されている国民の基本的な権利に対する致命的な侵害を招くものであり、この条約も日本として締結するべきものではない。前国会に提出されていた法改正案中でも、差し押さえるべき物がコンピューターである場合には、このコンピューターと接続されているあらゆる記録媒体とそこに記録されている情報を差し押さえ可能であるとされていたが、昨今のインターネットの状況を考えると、差し押さえの範囲が過度に不明確になる懸念が強く、裁判所の許可無く捜査機関が通信履歴の電磁的記録の保全要請をすることが出来るとしていた点も、捜査機関による濫用の懸念が強く、このような刑事訴訟法の枠組みの変更は、通信の秘密やプライバシー、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がない限り、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利、といった我が国の憲法に規定されている国民の基本的な権利に対する致命的な侵害を招くものと私は考える。また、ウィルス作成等に関する罪についても、「人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える」電磁的記録という要件は、客観性のない人の意図を要件にしている点でやはり曖昧に過ぎ、このような客観性のない曖昧な要件でウィルス作成等に関する刑罰が導入されるべきではない。

 留保・解釈を最大限に活用しても、憲法に規定されている国民の基本的な権利に対する致命的な侵害を招くことになるだろう、これらの条約は、日本として締結するべきものではないものである。前国会に提出されていた法案は廃案のままにするとともに、条約からの脱退を検討するべきである。

(問題により不利益を被っている、困っている人又は団体等)
 全国民

(改善提案)
 前国会に提出されていた、国際組織犯罪防止条約及びサイバー犯罪条約の締結のための法改正案は廃案のままにすると閣議決定を行う。同時に、条約からの脱退を検討する。

(根拠法)
 国際組織犯罪防止条約(正式名称は、「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」)
 サイバー犯罪条約(正式名称は、「サイバー犯罪に関する条約」)

(関連府省等)
 外務省、法務省、警察庁

(17)音の商標
(規制、制度、慣行、又は手続等の名称)
 音の商標

(規制、制度、慣行、又は手続等の現状)
 特許庁の新しいタイプの商標に関する検討ワーキンググループ報告書で、音の商標を新たな保護対象として追加する方針が示されているところである。

(具体的な問題点)
 音の商標は、他の視覚的な商標とは異なる特色を有しているということが考慮されるべきであり、音に、会社名を連呼するような音だけでは無く単なる旋律も含まれ得、音の商標の使用に、単なるBGMとしての使用も含まれ得ることから、音については特に慎重に検討するべきである。登録除外についても検討されているが、公益的な音だけでは不十分であり、余計な混乱を避けるため、音について、少なくとも、他人の著名な旋律・楽曲を登録から除外することを検討するべきである、パブリックドメインに落ちた著名な旋律・楽曲の登録のような不当な利得を得るための登録が排除されない限り、音について、その保護類型への追加は決してするべきでない。

(問題により不利益を被っている、困っている人又は団体等)
 全国民

(改善提案)
 音の商標について、少なくとも、他人の著名な旋律・楽曲を登録から除外することを検討する。パブリックドメインに落ちた著名な旋律・楽曲の登録のような不当な利得を得るための登録が排除されない限り、音について、その商標の保護対象への追加をしないこととする。

(根拠法)
 商標法改正(特許庁で検討中)

(関連府省等)
 特許庁

(18)公職選挙法
(規制、制度、慣行、又は手続等の名称)
 公職選挙法

(規制、制度、慣行、又は手続等の現状)
 公職選挙法によって、選挙運動期間中にネットを選挙運動に用いることが完全に禁止されている。7月21日に閣議決定された答弁書(http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/171/toup/t171234.pdf参照)により、twitterの利用まで公職選挙法違反であるという政府見解が示されたところである。

(具体的な問題点)
 選挙運動期間中の選挙運動に関するネット上の掲示は全て、公職選挙法の第146条で規制の対象となっている文書図画の掲示とされ、完全に禁止されているが、これは、インターネットにおける正当な情報利用を阻害する一大規制となっている。

 第148条で、選挙の公正を害しない限りにおいて新聞・雑誌に対し報道・評論を掲載する自由を妨げるものではないと明文で規定しているが、新聞紙にあつては毎月三回以上、雑誌にあつては毎月一回以上、号を逐つて定期に有償頒布するものであり、第三種郵便物の承認のあるものであり、当該選挙の選挙期日の公示又は告示の日前一年以来そうであったもので、引き続き発行するものと、ブログ等は無論のこと、大手ネットメディアですら入らない、あまりにも狭い規定となっている。第151条の3で放送についても同様の規定があるが、放送法を参照しており、当然のことながら、動画サイトなどは入らないと考えられる。

 紙媒体であろうが、ネットだろうが、実名だろうが、匿名だろうが、報道・批評・表現の本質に変わりはない。表現の自由は、憲法に規定されている権利であり、民主主義を支える最も重要な自由として、その代表を選ぶ選挙において、その公平を害しない限りにおいて、あらゆる媒体に最大限認められなくてはならないものであることは言うまでもない。もし、公職選挙法が杓子定規に解釈され、各種ネットメディアに不当な規制の圧力がかけられるようなら、公職選挙法自体憲法違反とされなくてはならない。

(問題により不利益を被っている、困っている人又は団体等)
 全国民

(改善提案)
 第142条と第143条の認められる文書図画の頒布・掲示の中に、電子メール・ブログ・動画サイト等様々なネットサービスの利用類型を追加すること等により、公職選挙法第146条の規制を緩和し、ネット選挙を解禁する。

 公職選挙法第148条の規制を緩和し、新聞等に加えてネットにおける報道及び評論の自由も明文で認め、民主主義を支える最も重要な自由として、その代表を選ぶ選挙において、その公平を害しない限りにおいて、ネットメディア、動画サイト、ブログ等における表現の自由を最大限確保する。

(根拠法)
 公職選挙法

(関連府省等)
 総務省

(19)天下り
(規制、制度、慣行、又は手続等の名称)
 天下り

(規制、制度、慣行、又は手続等の現状)
 一昨年の6月23日号の週刊ダイヤモンドの「天下り全データ」という特集で、天下りとして2万7882人という人数が示されている。中には他愛のない再就職も含まれているだろうが、2万5千人を超える元国家公務員が各省庁所管の各種独立行政法人や特殊法人、公益法人、企業などにうごめき、このような天下り利権が各省庁の政策を歪めているというのが、今の日本のおぞましい現状である。

(具体的な問題点)
 法改正によって得られる利権・行政による恣意的な許認可権を盾に、役に立たない役人を民間に押しつけるなど、最低最悪の行為であり、一国民として到底許せるものではない。さらに、このような天下り役人が国の政策に影響を及ぼし、国が亡んでも自分たちの利権のみ伸ばせれば良いとばかりに、国益を著しく損なう違憲規制を立法しようとするに至っては、単なる汚職の域を超え、もはや国家反逆罪を構成すると言っても過言ではない。

 知財・情報政策においても、天下り利権が各省庁の政策を歪めていることは間違いなく、政策の検討と決定の正常化のため、文化庁から著作権関連団体への、総務省から放送通信関連団体・企業への、警察庁から各種協力団体・自主規制団体への天下りの禁止を決定するべきである。これらの省庁は特にひどいので特に名前をあげたが、他の省庁も含めて決定するべきである。

 また、人事院の「公務員の高齢期の雇用問題に関する研究会」において提案されている、60歳を過ぎてから公務員の身分のまま公益法人などに出向するといった新たな天下りルートも許されるべきでない。

(問題により不利益を被っている、困っている人又は団体等)
 全国民

(改善提案)
 閣議決定により、国家公務員法で規定されている再就職等監視委員会を凍結し、60歳を過ぎてから公務員の身分のまま公益法人などに出向するといった新たに提案されている天下りルートも含め、天下りを完全に禁止する。

(根拠法)
 国家公務員法

(関連府省等)
 全省庁、特に、文化庁、総務省、警察庁などの規制官庁

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第185回:内閣官房・「デジタル技術・情報の利活用を阻むような規制・制度・慣行等の重点点検」に対する提出パブコメ(その1:著作権規制関連)

 前回少し紹介した、内閣官房・IT戦略本部の「デジタル技術・情報の利活用を阻むような規制・制度・慣行等の重点点検」に関する意見募集(8月6日〆切。内閣官房のリリース、電子政府の該当ページ提出様式(doc)参照)に対してパブコメを提出したので、ここに載せておく。

 内容は、今までのパブコメをまとめたようなものだが、量がかなり多くなったので、2回に分けたいと思う。まずは、著作権規制関連として、(1)ダウンロード違法化、(2)DRM回避規制、(3)コピーワンス・ダビング10・B-CAS、(4)私的録音録画補償金制度、(5)著作権保護期間、(6)一般フェアユース条項の導入による著作権規制の緩和、(7)著作権の間接侵害・侵害幇助、(8)著作権検閲・ストライクポリシー、(9)携帯電話事業者による差別的なダウンロード容量制限に関するものである。

(以下、提出パブコメ)

(1)ダウンロード違法化
(規制、制度、慣行、又は手続等の名称)
 ダウンロード違法化

(規制、制度、慣行、又は手続等の現状)
 文化庁の暴走と国会議員の無知によって、 今年の6月12日に、「著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合」は私的複製に当たらないとする、いわゆるダウンロード違法化条項を含む、改正著作権法が成立し、来年の1月1日の施行を待つ状態である。

(具体的な問題点)
 一人しか行為に絡まないダウンロードにおいて、「事実を知りながら」なる要件は、エスパーでもない限り証明も反証もできない無意味かつ危険な要件であり、技術的・外形的に違法性の区別がつかない以上、このようなダウンロード違法化は法規範としての力すら持ち得ない。このような法改正によって進むのはダウンロード以外も含め著作権法全体に対するモラルハザードのみであり、これを逆にねじ曲げてエンフォースしようとすれば、著作権検閲という日本国として最低最悪の手段に突き進む恐れしかない。改正法は未施行であるが、既に、総務省の 「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」第一次提言案において、中国政府の検閲ソフト「グリーン・ダム」導入計画に等しい、日本レコード協会による携帯電話における著作権検閲の提案が取り上げられるなど、既に弊害は出始めている。

 そもそも、ダウンロード違法化の懸念として、このような著作権検閲に対する懸念は、文化庁へのパブコメ(文化庁HPhttp://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/houkoku.htmlの意見募集の結果参照。ダウンロード違法化問題において、この8千件以上のパブコメの7割方で示された国民の反対・懸念は完全に無視された。このような非道極まる民意無視は到底許されるものではない)や知財本部へのパブコメ(知財本部のHPhttp://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keikaku2009.htmlの個人からの意見参照)を見ても分かる通り、法改正前から指摘されていたところであり、このような著作権検閲にしか流れようの無いダウンロード違法化は始めからなされるべきではなかったものである。文化庁の暴走と国会議員の無知によって成立したものであり、ネット利用における個人の安心と安全を完全にないがしろにするものである、百害あって一利ないダウンロード違法化を規定する著作権法第30条第1項第3号を即刻削除するべきである。

(問題により不利益を被っている、困っている人又は団体等)
 全インターネットユーザー

(改善提案)
 著作権法第30条第1項第3号を削除する。

(根拠法)
 著作権法第30条第1項第3号

(関連府省等)
 文化庁

(2)DRM回避規制
(規制、制度、慣行、又は手続等の名称)
 DRM回避規制

(規制、制度、慣行、又は手続等の現状)
 現状、不正競争防止法と著作権法でDRM回避機器等の提供等が規制され、著作権法でコピーコントロールを回避して行う私的複製まで違法とされている。

(具体的な問題点)
 昨年7月にゲームメーカーがいわゆる「マジコン」の販売業者を不正競争防止法に基づき提訴し、さらにこの2月にゲームメーカー勝訴の判決が出ていることなどを考えても、現時点で、現状の規制では不十分とするに足る根拠は全くない。

 かえって、著作権法において、私的領域におけるコピーコントロール回避まで違法とすることで、著作権法全体に関するモラルハザードとデジタル技術・情報の公正な利活用を阻む有害無益な萎縮効果が生じているのではないかと考えられる。

 デジタル技術・情報の公正な利活用を阻むものであり、そもそも、私的なDRM回避行為自体によって生じる被害は無く、個々の回避行為を一件ずつ捕捉して民事訴訟の対象とすることは困難だったにもかかわらず、文化庁の片寄った見方から一方的に導入されたものである、私的領域でのコピーコントロール回避規制(著作権法第30条第1項第2号)は撤廃するべきである。コンテンツへのアクセスあるいはコピーをコントロールしている技術を私的な領域で回避しただけでは経済的損失は発生し得ず、また、ネットにアップされることによって生じる被害は公衆送信権によって既にカバーされているものであり、その被害とDRM回避やダウンロードとを混同することは絶対に許されない。それ以前に、私法である著作権法が、私的領域に踏み込むということ自体異常なことと言わざるを得ない。

 また、知財計画2009で今年度にDRM回避規制に関する検討を行うこととされているが、ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ないこれ以上のDRM回避規制の強化は検討されるべきでない。

(問題により不利益を被っている、困っている人又は団体等)
 全国民

(改善提案)
 著作権法第30条第1項第2号を削除する。

 合わせて、DRM回避規制に関して、ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ないこれ以上の規制強化をしないと閣議決定する。

(根拠法)
 著作権法第30条第1項第2号
 著作権法第120条の2
 不正競争防止法第2条第1項第10号、第11号

(関連府省等)
 文化庁、経済産業省

(3)コピーワンス・ダビング10・B-CAS
(規制、制度、慣行、又は手続等の名称)
 コピーワンス・ダビング10・B-CAS

(規制、制度、慣行、又は手続等の現状)
 無料の地上放送の全てに、昨年まではコピーワンスというコピーを1個しか認めない異常に厳しいコピー制限がかけられていた。昨年からわずかに緩和されたが、やはりダビング10という不当に厳しいコピー制限が今も維持されている。このようなコピー制限を維持するためとして、無料の地上放送の全てにB-CASによりスクランブル・暗号化が施されているという状態が今もなお続いている。

今年の中間答申で、ようやく無料の地上放送へB-CASシステムとコピーワンス運用の導入を可能とした平成14年6月の省令改正についての記載が加えられた。このように以前、無料の地上放送へのスクランブル・暗号化を禁じる省令が存在していた理由についての記載はやはり無いが、これは、無料地上放送は本来あまねく見られるべきという理念があったことの証左であろう。過去の検討経緯についてよりきちんとした情報開示を行い、このような過去の省令に表れている無料の地上放送の理念についても念頭においた上で再検討が進められなくてはならない。

 本来あまねく見られることを目的としていた無料地上波本来の理念をねじ曲げ、放送局と権利者とメーカーの談合に手を貸したという総務省の過去の行為は見下げ果てたものである。コピーワンス問題、ダビング10問題、B-CAS問題の検討と続く、無料の地上放送のスクランブルとコピー制御に関する政策検討の迷走とそれにより浪費され続けている膨大な社会的コストのことを考えても、このような省令改正の政策的失敗は明らかであり、総務省はこの省令改正を失策と明確に認めるべきである。

(具体的な問題点)
 B-CASシステムは談合システムに他ならず、これは、放送局・権利者にとっては、視聴者の利便性を著しく下げることによって、一旦は広告つきながらも無料で放送したコンテンツの市場価格を不当につり上げるものとして機能し、国内の大手メーカーとっては、B-CASカードの貸与と複雑な暗号システムを全てのテレビ・録画機器に必要とすることによって、中小・海外メーカーに対する参入障壁として機能している。

 以前は総務省令によって、無料の地上放送へのこのようなスクランブル・暗号化の導入は禁止されていたが、総務省は、平成14年6月にこの省令の改正を行い、 本来あまねく見られることを目的とする無料の地上放送へB-CASシステムとコピーワンス運用の導入を可能として、無料地上波本来の理念をねじ曲げ、放送局と権利者とメーカーの談合に手を貸すと見下げ果てた行為を行っている。コピーワンス問題、ダビング10問題、B-CAS問題の検討と続く、無料の地上放送のスクランブルとコピー制御に関する政策検討の迷走とそれにより浪費され続けている膨大な社会的コストのことを考えても、このような省令改正の政策的失敗は明らかであり、この省令改正を失策と総務省に明確に認めさせるべきである。

 昨年運用が開始されたダビング10に関しても、大きな利便性の向上なくして、より複雑かつ高価な機器を消費者が新たに買わされるだけの弥縫策としか言いようがなく、一消費者・一国民として納得できるものでは全くない。さらに、ダビング10機器に関しては、テレビ(チューナー)と録画機器の接続によって、全く異なる動作をする(接続次第で、コピーの回数が9回から突然1回になる)など、公平性の観点からも問題が大きい。

 現在の地上無料放送各局の歪んだビジネスモデルによって、放送の本来あるべき姿までも歪められるべきではない。そもそもあまねく視聴されることを本来目的とする、無料の地上放送においてコピーを制限することは、視聴者から視聴の機会を奪うことに他ならず、このような規制を良しとする談合業界及び行政に未来はない。

 コピー制限技術はクラッカーに対して不断の方式変更で対抗しなければならないが、その方式変更に途方もないコストが発生する無料の地上放送では実質的に不可能である。インターネット上でユーザー間でコピー制限解除に関する情報がやりとりされる現在、もはや無料の地上放送にDRMをかけていること自体が社会的コストの無駄であるとはっきりと認識するべきである。無料の地上放送におけるDRMは本当に縛りたい悪意のユーザーは縛れず、一般ユーザーに不便を強いているだけである。

 情報通信審議会の今年の中間答申において、現行のB-CASシステムと併存させる形でチップやソフトウェア等の新方式を導入することが提言されているが、無意味な現行システムの維持コストに加えて新たなシステムの追加で発生するコストまでまとめて消費者に転嫁される可能性が高く、このような弥縫策は、一消費者として全く評価できないものである。さらに言うなら、これらの新方式は、不正機器対策には全くならない上、新たに作られるライセンス発行・管理機関が総務省なりの天下り先となり、新方式の技術開発・設備投資コストに加え、天下りコストまで今の機器に上乗せされかねないものである。この審議会において同じく検討課題とされていた、制度的エンフォースメントにしても、正規機器の認定機関が総務省なりの天下り先となり、その天下りコストがさらに今の機器に上乗せされるだけで、しかも不正機器対策には全くならないという最低の愚策である。

 無料の地上放送の理念を歪め、放送局・権利者・国内の大手メーカーの談合を助長している、無料の地上放送にかけられているスクランブル・暗号化こそ問題なのであって、B-CAS類似の無意味なシステムをいくら併存させたところで、積み上げられるムダなコストが全て消費者に転嫁されるだけで何の問題の解決にもならず、同じことが繰り返されるだけだろう。基幹放送である無料地上波については、B-CASシステムを排除し、ノンスクランブル・コピー制限なしを基本とすること以外で、この問題の本質的な解決がもたらされることはない。

 法的にもコスト的にも、どんな形であれ、全国民をユーザーとする無料地上放送に対するコピー制限は維持しきれるものではない。このようなバカげたコピー制限に関する過ちを二度と繰り返さないため、無料の地上放送についてはスクランブルもコピー制御もかけないこととする逆規制を、政令や省令ではなく法律のレベルで放送法に入れることを私は一国民として強く求める。

(問題により不利益を被っている、困っている人又は団体等)
 全国民(無料の地上放送の全ユーザー)

(改善提案)
1.無料地上波からB-CASシステムを排除し、テレビ・録画機器における参入障壁を取り除き、自由な競争環境を実現する。

2.あまねく見られることを目的とするべき、基幹放送である無料地上波については、ノンスクランブル・コピー制限なしを基本とする。

3.無料地上波については、ノンスクランブル・コピー制限なしとすることを、総務省が勝手に書き換えられるような省令や政令レベルにではなく、法律に書き込む。

(根拠法)
 なし

(関連府省等)
 総務省、公正取引委員会

(4)私的録音録画補償金制度
(規制、制度、慣行、又は手続等の名称)
 私的録音録画補償金制度

(規制、制度、慣行、又は手続等の現状)
 私的複製によって生じる著作権者の経済的不利益を補償するため、MD、CD-R、DVD-R等の分離型録音録画専用デジタル録音録画機器・媒体に私的録音録画補償金が賦課されている。文化庁文化審議会において、数年に渡り縮小・廃止に向けた検討が行われ、補償金のそもそもの意義が問われた中で、その解決をおざなりにしたまま、去年の6月にダビング10解禁のために文部科学大臣と経済産業大臣の間で暫定的な措置としてブルーレイ課金の合意がなされ、消費者不在の中、今年の5月に著作権施行令の改正によってブルーレイへの課金まで実施された。

(具体的な問題点)
 確かに今はコピーフリーのアナログ放送もあるが、ブルーレイにアナログ放送を録画することはまずもって無いと考えられるため、アナログ放送の存在もブルーレイ課金の根拠としては薄弱であり、そのアナログ放送も2011年には止められる予定となっている。

 特に、権利者団体は、ダビング10への移行によってコピーが増え自分たちに被害が出ると大騒ぎをしたが、移行後1年以上経った今現在においても、ダビング10の実施による被害増を証明するに足る具体的な証拠は全く示されておらず、ブルーレイ課金に合理性があったとは私には全く思えない。

 わずかに緩和されたとは言え、今なお地上デジタル放送にはダビング10という不当に厳しいコピー制限がかかったままである。こうした実質的に全国民に転嫁されるコストで不当に厳しい制限を課している機器と媒体にさらに補償金を賦課しようとするのは、不当の上塗りである。このような不当に厳しいコピー制限が維持される限り、私的録画補償金は廃止するべきである。

 文化庁の文化審議会著作権分科会における数年の審議において、補償金のそもそもの意義についての意義が問われたが、今に至るも文化庁は、天下り先である権利者団体のみにおもねり、この制度に関する根本的な検討を怠っている。(今年、文化庁は、基本問題小委員会を設けたが、始めからメンバーが権利者団体のみに片寄っており、このような腐った小委員会で著作権の根本に関わる問題など検討できないことは明白である。)

 世界的に見ても、メーカーや消費者が納得して補償金を払っているということはカケラも無く、権利者団体がその政治力を不当に行使し、歪んだ「複製=対価」の著作権神授説に基づき、不当に対象を広げ料率を上げようとしているだけというのがあらゆる国における実情である。表向きはどうあれ、大きな家電・PCメーカーを国内に擁しない欧州各国は、私的録音録画補償金制度を、外資から金を還流する手段、つまり、単なる外資規制として使っているに過ぎない。

 この制度における補償金の対象・料率に関して、具体的かつ妥当な基準はどこの国を見ても無いのであり、この制度は、ほぼ権利者団体の際限の無い不当な要求を招き、莫大な社会的コストの浪費のみにつながっている。機器・媒体を離れ音楽・映像の情報化が進む中、「複製=対価」の著作権神授説と個別の機器・媒体への賦課を基礎とする私的録音録画補償金は、既に時代遅れのものとなりつつあり、その対象範囲と料率のデタラメさが、デジタル録音録画技術の正常な発展を阻害し、デジタル録音録画機器・媒体における正常な競争市場を歪めているという現実は、補償金制度を導入したあらゆる国において、問題として明確に認識されなくてはならないことである。

(問題により不利益を被っている、困っている人又は団体等)
 デジタル録音録画機器・媒体の全ユーザー

(改善提案)
1.そもそも、著作権法の様な私法が私的領域に踏み込むこと自体がおかしいのであり、私的領域での複製は原則自由かつ無償であることを法文上明確にする。また、刑事罰の有無に関わらず、外形的に違法性を判別することの出来ない形態の複製をいたずらに違法とすることは社会的混乱を招くのみであり、厳に戒められるべきである。

2.特に、補償金については、これが私的録音録画を自由にすることの代償であることを法文上明確にする。すなわち、私的録音録画の自由を制限するDRM(コピーワンスやダビング10ほどに厳しいDRM)がかけられている場合は、補償措置が不要となることを法文上明確にする。

3.また、タイムシフト、プレースシフト等は、外形的に複製がなされているにせよ、既に一度合法的に入手した著作物を自ら楽しむために移しているに過ぎず、このような態様の複製について補償は不要であることを法文上明確にする。実質権利者が30条の範囲内での複製を積極的に認めているに等しい、レンタルCDやネット配信、有料放送からの複製もこれに準じ、補償が不要であることを明確にする。

4.私的録音録画の自由の確保を法文上明確化するとした上で、私的録音録画を自由とすることによって、私的複製の範囲の私的録音録画によってどれほどの実害が著作権者に発生するのかについてのきちんとした調査を行う。
 この実害の算定にあたっては、補償の不必要な私的複製の形態や著作権者に損害を与えない私的複製の形態があることも考慮に入れ、私的録音録画の著作権者に与える経済的効果を丁寧に算出する。単に私的録音録画の量のみを問題とすることなど論外であり、その算定に当たっては入念な検証を行う。

5.この算出された実害に基づいて補償金の課金の対象範囲と金額が決められるべきである。特に、その決定にあたっては、コンテンツ産業振興として使われる税金や受信料・電波の割当といった各種の公的に与えられている既得権益も補償金の一種ととらえられることを念頭に置くべきである。この場合でも、将来の権利者団体による際限の無い補償金要求を無くすため、対象範囲と金額が明確に法律レベルで確定される必要がある。あらゆる私的録音録画について無制限の補償金要求権を権利者団体に与えることは、ドイツ等の状況を見ても、社会的混乱を招くのみであり、ユーザー・消費者・国民にとってきちんとセーフハーバーとして機能する範囲・金額の確定が行われなくてはならない。
 あるいは、実害が算出できないのであれば、原則にのっとり、私的録音録画補償金制度は廃止されるべきである。

6.集められた補償金は、権利者の分配に使用されることなく、全額違法コピー対策やコンテンツ産業振興などの権利者全体を利する事業へ使用されるようにするべきである。

 なお、天下り先の権利者団体のみにおもねり、国益を無視して暴走する腐り切った文化庁には、もはや、この問題の検討能力は完全に無い。上記のような方向性で検討する必要があると私は考えているが、無理なようであれば、この制度を現行のまま完全に凍結すると閣議決定することも、合わせ検討するべきである。

(根拠法)
 著作権法第30条第2項
 著作権法第5章
 著作権法施行令第1章

(関連府省等)
 文化庁

(5)著作権保護期間
(規制、制度、慣行、又は手続等の名称)
 著作権保護期間

(規制、制度、慣行、又は手続等の現状)
 現行の日本の著作権法において、著作権の保護期間は著作者の死後50年とされている。実演、レコード及び放送に関する著作隣接権については、それぞれ実演を行った時、音を最初に固定した時、放送を行った時から50年とされている。文化庁の文化審議会において、延長の検討がなされて来ており、権利者団体と文化庁を除けば、延長を否定する結論が出そろっているにもかかわらず、文化庁は保護期間延長に関して継続して検討するとしているところである。

(具体的な問題点)
1.著作権そのものの保護期間について
著作権そのものに関しては、現行でも著作者の死後50年という極めて長い期間に渡って著作権が保護されることになっている。また、著作者人格権については保護期間が切れるということはない。

 文化的に、ひ孫の孫くらいのことまで考えて創作をしている人間がいるとも思われず、文化の多様化のためにはこれ以上の延長はほとんど何の役にも経たず、経済的にも、著作者の死後50年を経てなお権利処理コストを上回る財産的価値を保っている極めて稀な著作物のために、このコストを下回るほとんど全ての著作物の利用を阻害することは全く妥当でない。

 また、保護期間延長問題は金銭的な話でないとするリスペクト論もよく権利者側が持ち出すのだが、創作者が世に出したいと思う形のまま、創作者の名前を付けて著作物を流通させるために、同一性保持権や氏名表示権といった著作者人格権が、既に保護期間が切れることのない権利として規定されているのであり、人格権と財産権を混同した主張は取り上げるに値しない。延長問題は、あくまで権利の財産的な側面のみを考慮して考えられなくてはならない。

 これほど長期間に渡る著作権の保護期間は、過去の圧倒的多数の著作物の新たな技術による公共利用、 過去の大多数の著作物のデジタル情報としての公共利用に対する一大阻害要因となっており、著作権者の個々のメリットに比して社会的デメリットがあまりにも大きな有害な規制として機能している。このような著作権の保護期間については、短縮が検討されてしかるべきである。

 また、権利者団体と文化庁を除けば日本国内では、この点に関しては延長しないということでほとんど結論が出そろっているのであり、文化庁の保護期間延長に関する検討は完全に止められるべきである。

2.実演家の著作隣接権の保護期間について
 同一性保持権や氏名表示権などの実演家の人格権も特に保護期間と一緒に切れるということはないので、 実演家の著作隣接権の保護期間についても人格権と財産権をごっちゃにするリスペクト論は全く当てはまらない。

 実演から50年を超えて保護期間を延長することが、文化的な実演を多く生み出すためのインセンティブとなり、このインセンティブが、保護期間延長によって生じる公共利用に対するディスインセンティブを超えるという明確な論拠が示されるならばともかく、実演から50年という期間はかなり著名かつ長命の実演家でなければ切れることがない期間であり、今のところ、実演家の著作隣接権の保護期間延長についても、これを是とするに足る根拠は何一つなく、これも延長されるべきでない。

なお、著作隣接権の中でも、実演家の権利と、レコード製作者・放送事業者の権利は大きく性質が異なっているものであり、これらを混同することは百害あって一利ないものである。

3.レコード製作者あるいは放送事業者の著作隣接権の保護期間について
 レコード製作者と放送事業者という創作者ではない流通事業者の著作隣接権は、単にレコード会社や放送局が強い政治力を持っていたことから無理矢理ねじ込まれた権利に過ぎず、その目的は流通コストへの投資を促すことのみにあったものである。インターネットという流通コストの極めて低い流通チャネルがある今、独占権というインセンティブで流通屋に投資を促さねばならない文化上の理由もほぼ無くなっているのであり、これらの保護期間は速やかに短縮することが検討されるべきである。

 なお、放送事業者の権利の保護期間については、今でもローマ条約及びTRIPS協定)で放送から20年と規定されているだけであり、短縮するのに国際的障害はない。合理的な理由無く決められた保護期間を短縮することが憲法上問題になる訳もない。

(問題により不利益を被っている、困っている人又は団体等)
 全国民

(改善提案)
 文化庁における著作権保護期間延長の検討を閣議決定により停止する。

 放送に関する著作隣接権に関しては、速やかに保護期間を放送を行った時から20年とする。

 合わせ、現行ですら余りに長い著作権及びレコード製作者あるいは放送事業者の著作隣接権の保護期間短縮のため、日本政府からベルヌ条約他の関係条約の改正提案を行うことを、政府レベルで検討する。

 なお、過去、保護期間の短縮を行った国としては、ポルトガルとスペインが存在しており、保護期間の短縮は国際的に見て完全に不可能とされるものでは無い。

(根拠法)
 著作権法第2章第4節
 著作権法第4章第6節
 ベルヌ条約第7条
 万国著作権条約第4条
 ローマ条約第14条
 レコード製作者の保護に関する条約第4条
 実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約第17条
 TRIPS協定第12条及び第14条

(関連府省等)
 文化庁

(6)一般フェアユース条項の導入による著作権規制の緩和
(規制、制度、慣行、又は手続等の名称)
 一般フェアユース条項の導入による著作権規制の緩和

(規制、制度、慣行、又は手続等の現状)
 ほぼ全国民が利用者兼権利者となり得、考えられる利用形態が発散し、個別の規定では公正利用の類型を拾い切れなくなるインターネットのような場においては、現行の個別の権利制限規制を前提とする著作権法全体がデジタル技術・情報の公正な利活用を阻害するものとなっている。

(具体的な問題点)
 フェアユースのような一般規定は、ほぼ全国民が利用者兼権利者となり得、考えられる利用形態が発散し、個別の規定では公正利用の類型を拾い切れなくなるインターネットのような場における、現行の個別の権利制限規制を前提とする著作権法全体によるデジタル技術・情報の公正な利活用の阻害を解消し、保護と利用のバランスを取る上で重要な意義を持つものである。

 なお、個別の権利制限規定の迅速な追加によって対処するべきとする意見もあるが、文化庁と権利者団体がスクラムを組んで個別規定すらなかなか入れず、入れたとしても必要以上に厳格な要件が追加されているという惨憺たる現状において、個別規定の追加はこの問題における真の対処たり得ない。この6月に成立した法改正においても、図書館におけるアーカイブ化のための権利制限の対象を国立国会図書館のみに限り、検索エンジンの権利制限の対象も、「業として行う者」と業規制をかけた上で、政令でその基準を定めようとし、研究目的の権利制限についても、大量の情報の統計解析のみを対象としているなど、不当に厳しい制限が課されており、天下り先の権利者団体のみにおもねる腐り切った文化庁による法改正の検討の弊害は如実に現れている。

 また、権利を侵害するかしないかは刑事罰がかかるかかからないかの問題でもあり、公正という概念で刑事罰の問題を解決できるのかとする意見もあるようだが、かえって、このような現状の過剰な刑事罰リスクからも、フェアユースは必要なものと私は考える。現在親告罪であることが多少セーフハーバーになっているとはいえ、アニメ画像一枚の利用で別件逮捕されたり、セーフハーバーなしの著作権侵害幇助罪でサーバー管理者が逮捕されたりすることは、著作権法の主旨から考えて本来あってはならないことである。政府にあっては、著作権法の本来の主旨を超えた過剰リスクによって、本来公正として認められるべき事業・利用まで萎縮しているという事態を本当に深刻に受け止め、一刻も早い改善を図ってもらいたい。

(問題により不利益を被っている、困っている人又は団体等)
 全国民

(改善提案)
 著作権法に、一般フェアユース条項を導入する。

 ただし、フェアユースの導入によって、私的複製の範囲が縮小されることはあってはならないことである。

 なお、一般フェアユース条項を導入している国には、アメリカの他に台湾やイスラエルもあり、これらの国の条文等も参考になると考えられる。

(根拠法)
 著作権法

(関連府省等)
 文化庁

(7)著作権の間接侵害・侵害幇助
(規制、制度、慣行、又は手続等の名称)
 著作権の間接侵害・侵害幇助

(規制、制度、慣行、又は手続等の現状)
 動画投稿サイト事業者がJASRACに訴えられた「ブレイクTV」事件や、レンタルサーバー事業者が著作権幇助罪で逮捕され、検察によって姑息にも略式裁判で50万円の罰金を課された「第(3)世界」事件等を考えても、今現在、著作権の間接侵害や侵害幇助のリスクが途方もなく拡大し、甚大な萎縮効果・有害無益な社会的大混乱が生じかねないという非常に危険な状態にある。

(具体的な問題点)
 今現在、著作権の間接侵害・侵害幇助のリスクが途方もなく拡大し、甚大な萎縮効果・有害無益な社会的大混乱が生じかねないという非常に危険な状態にあり、民事的な責任の制限しか規定していないプロバイダー責任制限法に関し、被侵害者との関係において、刑事罰リスクも含めたプロバイダーの明確なセーフハーバーについて検討するべきである。

 さらに、著作権の間接侵害事件や侵害幇助事件においてネット事業者がほぼ直接権利侵害者とみなされてしまうことを考えると、プロバイダー責任制限法によるセーフハーバーだけでは不十分であり、間接侵害や著作権侵害幇助罪も含め、著作権侵害とならないセーフハーバーの範囲を著作権法上きちんと確定することが喫緊の課題である。

 セーフハーバーを確定するためにも間接侵害の明確化はなされるべきであるが、現行の条文におけるカラオケ法理や各種ネット録画機事件などで示されたことの全体的な整理以上のことをしてはならない。特に、今現在文化庁の文化審議会で検討されているように、著作権法に明文の間接侵害一般規定を設けることは絶対にしてはならないことである。確かに今は直接侵害規定からの滲み出しで間接侵害を取り扱っているので不明確なところがあるのは確かだが、現状の整理を超えて、明文の間接侵害一般規定を作った途端、権利者団体や放送局がまず間違いなく山の様に脅しや訴訟を仕掛けて来、今度はこの間接侵害規定の定義やそこからの滲み出しが問題となり、無意味かつ危険な社会的混乱を来すことは目に見えているからである。

(問題により不利益を被っている、困っている人又は団体等)
 全インターネットユーザー

(改善提案)
 プロバイダー責任制限法に関し、被侵害者との関係において、刑事罰リスクも含めたプロバイダーの明確なセーフハーバーについて検討する。

 合わせ、今現在文化庁の文化審議会における、著作権法に間接侵害一般規定を設けることに関する検討を停止し、間接侵害や著作権侵害幇助罪も含め、著作権侵害とならないセーフハーバーの範囲を著作権法上きちんと確定するための検討を開始する。

 ただし、このセーフハーバーの要件において、標準的な仕組み・技術や違法性の有無の判断を押しつけるような、権利侵害とは無関係の行政機関なり天下り先となるだろう第3者機関なりの関与を必要とすることは、検閲の禁止・表現の自由等の国民の権利の不当な侵害に必ずなるものであり、絶対にあってはならないことである。

(根拠法)
 著作権法第7章及び第8章
 刑法第62条
 プロバイダー責任制限法(正式名称は、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」)

(関連府省等)
 文化庁、総務省

(8)著作権検閲・ストライクポリシー
(規制、制度、慣行、又は手続等の名称)
 著作権検閲・ストライクポリシー

(規制、制度、慣行、又は手続等の現状)
 まだ実施されてはいないが、総務省の 「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」第一次提言案において、携帯電話においてダウンロードした音楽ファイルを自動検知した上でそのファイルのアクセス・再生制限を行うという、日本レコード協会の著作権検閲の提案が取り上げられており、今現在、このような著作権検閲の提案が政府レベルで検討されかねない非常に危険な状態にある。

 これも実施されていないと思うが、同じく、著作権検閲に流れる危険性が極めて高い、フランスで今なお揉めているネット切断型のストライクポリシー類似の、ファイル共有ソフトを用いて著作権を侵害してファイル等を送信していた者に対して警告メールを送付することなどを中心とする電気通信事業者と権利者団体の連携による著作権侵害対策の検討が、警察庁、総務省、文化庁などの規制官庁が絡む形で行われている。

(具体的な問題点)
 通信の秘密という基本的な権利の適用は監視の位置がサーバーであるか端末であるかによらないものであること、特に、機械的な処理であっても通信の秘密を侵害したことには変わりはないとされ、通信の秘密を侵害する行為には、当事者の意思に反して通信の構成要素等を利用すること(窃用すること)も含むとされていることを考えると、日本レコード協会が提案している著作権対策は、明らかに通信の秘密を侵害するものである。

 また、本来最も基本的なプライバシーに属する個人端末中の情報について、内容を自動検知し、アクセス制限・再生禁止等を行うことは、それ自体プライバシー権を侵害するものであり、プライバシーの観点からも、このような措置は導入されるべきでない。

 最も基本的なプライバシーに属する個人端末中の情報について、内容を自動検知し、アクセス制限・再生禁止等を行う日本レコード協会が提案している違法音楽配信対策は、技術による著作権検閲に他ならず、憲法に規定されている表現の自由(情報アクセス権を含む)や検閲の禁止に明らかに反するものである。ここで、表現の自由や検閲の禁止という観点からも、このような対策は決して導入されてはならないものである。

 付言すれば、日本レコード協会の携帯端末における違法音楽配信対策は、建前は違えど、中国でPCに対する導入が検討され、大騒ぎになった末、今現在導入が無期延期されているところの検閲ソフト「グリーン・ダム」と全く同じ動作をするものであるということを政府にははっきりと認識してもらいたい。このような検閲ソフトの導入については、日本も政府として懸念を表明しているはずであり(日経のネット記事http://www.nikkei.co.jp/news/main/20090628AT3S2700A27062009.html参照)、自由で民主的な社会において、このような技術的検閲が導入されることなど、絶対許されないことである。

 このような提案は、通信の秘密や検閲の禁止、表現の自由、プライバシーといった個人の基本的な権利をないがしろにするものである。日本レコード協会が提案している、検閲に該当するこのような対策は絶対に導入されるべきでなく、また技術支援・実証実験等として税金のムダな投入がなされるべきではない。

 フランスで導入が検討された、警告メールの送付とネット切断を中心とする、著作権検閲機関型の違法コピー対策である3ストライクポリシーについても、この6月に、憲法裁判所によって、インターネットのアクセスは、表現の自由に関係する情報アクセスの権利、つまり、最も基本的な権利の1つとしてとらえられるものであるとして、著作権検閲機関型の3ストライクポリシーは、表現の自由・情報アクセスの権利やプライバシーといった他の基本的な権利をないがしろにするものとして、真っ向から否定された。フランスでは今なおストライクポリシーに関して揉め続けているが、日本においては、このようなフランスにおける政策の迷走を他山の石として、このように表現の自由・情報アクセスの権利やプライバシーといった他の基本的な権利をないがしろにする対策を絶対に導入しないこととするべきであり、警察庁などが絡む形で検討が行われている違法ファイル共有対策についても、通信の秘密やプライバシー、情報アクセス権等の国民の基本的な権利をきちんと尊重する形で検討を進めることが担保されなくてはならない。

 これらの提案や検討からも明確なように、違法コピー対策問題における権利者団体の主張、児童ポルノ法規制強化問題・有害サイト規制問題における自称良識派団体の主張は、常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。今後は、このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むこと検討するべきである。同じく、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な著作権検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むことを検討するべきである。

(問題により不利益を被っている、困っている人又は団体等)
 全携帯ユーザー、全インターネットユーザー

(改善提案)
 総務省における日本レコード協会の著作権検閲の提案の検討を止め、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むこと、及び、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な著作権検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むことを検討する。

 閣議決定により、警察庁などが絡む形で検討が行われている違法ファイル共有対策についても、通信の秘密やプライバシー、情報アクセス権等の国民の基本的な権利をきちんと尊重する形で検討を進めることを担保する。

(根拠法)
 なし

(関連府省等)
 文化庁、総務省、警察庁

(9)携帯電話事業者による差別的なダウンロード容量制限
(規制、制度、慣行、又は手続等の名称)
携帯電話事業者による差別的なダウンロード容量制限

(規制、制度、慣行、又は手続等の現状)
 一部の携帯電話事業者が、公式サイト以外のサイトからダウンロードできるファイルの容量制限を行っている。(総務省の「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」第一次提言案による。)

(具体的な問題点)
 携帯電話事業者による、このような容量制限は、公平性の観点からも、独禁法からも明らかに問題がある。

(問題により不利益を被っている、困っている人又は団体等)
 一部の携帯電話事業者のユーザー

(改善提案)
 携帯電話事業者による公式サイト以外のサイトからダウンロードできるファイルの容量制限を排除する。

(根拠法)
 なし

(関連府省等)
 総務省、公正取引委員会

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2009年7月17日 (金)

第184回:総務省・「『デジタル・コンテンツの流通の促進』及び『コンテンツ競争力強化のための法制度の在り方』」提出パブコメ

 総務省のB-CAS見直しに関する中間答申(pdf)概要(pdf)、正式名称は、「『デジタル・コンテンツの流通の促進』及び『コンテンツ競争力強化のための法制度の在り方』」、8月28日〆切、総務省のリリース、電子政府の該当ページITmediaの記事ITproの記事も参照)へのパブコメも提出したので、ここに載せておく。

(今回の中間答申で、ようやくB-CASシステムそのものの話にまで遡ったが、それでもなお総務省は、放送局・権利者・メーカー3者の談合システムに他ならない、現行のB-CASシステムを維持しようとしている。この話も進んでいるようで進んでいないので、去年提出したパブコメと内容はあまり変わらない。)

 さらに今、内閣官房・IT戦略本部から今「デジタル技術・情報の利活用を阻むような規制・制度・慣行等の重点点検」に関するパブリックコメントの募集が8月6日〆切で行われている(内閣官房のリリース、電子政府の該当ページ提出様式(doc))。およそ常に規制強化ありきでパブコメを行う性根の腐った日本政府において、このように明確に規制緩和を目的とするパブコメの機会は極めて貴重であり、最近の不合理極まるネット・情報規制の動きに憤りを感じている全ての個人・企業・団体に、このパブコメに対して意見を出すことを私はお勧めする。出会い系サイト規制、青少年ネット規制法、フィルタリング、児童ポルノ規制、ブロッキング、ダウンロード違法化、著作権規制、著作権検閲、B-CAS・ダビング10・コピーワンス等全てまとめて、私は意見を書くつもりであり、次回は、このパブコメへの提出意見を載せたいと思っている。

(以下、提出パブコメ)

氏名:兎園(個人・匿名希望)
連絡先:

(ページ)
第3ページ~第31ページ 第1章 コピー制御に係るルールの担保手段(エンフォースメント)の在り方

(意見)
 私は一国民として、デジタル放送におけるコピー制御の問題について、以下の通りの方向性を基本として検討し直すことを強く求める。

1.無料地上波からB-CASシステムを排除し、テレビ・録画機器における参入障壁を取り除き、自由な競争環境を実現すること。
2.あまねく見られることを目的とするべき、基幹放送である無料地上波については、ノンスクランブル・コピー制限なしを基本とすること。
3.これは立法府に求めるべきことではあるが、無料地上波については、ノンスクランブル・コピー制限なしとすることを、総務省が勝手に書き換えられるような省令や政令レベルにではなく、法律に書き込むこと。
4.B-CASに代わる機器への制度的なエンフォースの導入は、B-CASに変わる新たな参入障壁を作り、今の民製談合を官製談合に切り替えることに他ならず、厳に戒められるべきこと。コンテンツの不正な流通に対しては現在の著作権法でも十分対応可能である。

 現行のB-CASシステムと併存させる形でのチップやソフトウェア等の新方式の導入についても、無意味な現行システムの維持コストに加えて新たなシステムの追加で発生するコストまでまとめて消費者に転嫁される可能性が高く、このような弥縫策は、一消費者として全く評価できないものである。

 なお、補償金制度は、私的録音録画によって生じる権利者への経済的不利益を補償するものであって、メーカーなどの利益を不当に権利者に還元するものではない。上記1~4以外の方向性を取り、ダビング10のように不当に厳しいコピー制御が今後も維持され続けるようであれば、録画補償金は廃止しても良いくらいであり、全く議論の余地すらない。上記1~4が実現されたとしても、補償金の対象範囲等は私的な録音録画が権利者にもたらす「実害」に基づいて決められるべきであるということは言うまでもない。

 また、近年総務省が打ち出している放送関連施策には今なお国民本意の視点が全く欠けており、今のままでは地上デジタルへの移行など到底不可能であるとほとんどの国民が思っているであろうことを付言しておく。

(理由)
 去年のパブコメでも書いたことだが、B-CASシステムは談合システムに他ならず、これは、放送局・権利者にとっては、視聴者の利便性を著しく下げることによって、一旦は広告つきながらも無料で放送したコンテンツの市場価格を不当につり上げるものとして機能し、国内の大手メーカーとっては、B-CASカードの貸与と複雑な暗号システムを全てのテレビ・録画機器に必要とすることによって、中小・海外メーカーに対する参入障壁として機能しているのである。

 今年の中間答申で、ようやく無料の地上放送へB-CASシステムとコピーワンス運用の導入を可能とした平成14年6月の省令改正についての記載が加えられた。このように以前、無料の地上放送へのスクランブル・暗号化を禁じる省令が存在していた理由についての記載はやはり無いが、これは、無料地上放送は本来あまねく見られるべきという理念があったことの証左であろう。過去の検討経緯についてよりきちんとした情報開示を行い、このような過去の省令に表れている無料の地上放送の理念についても念頭においた上で再検討が進められなくてはならない。

 本来あまねく見られることを目的としていた無料地上波本来の理念をねじ曲げ、放送局と権利者とメーカーの談合に手を貸したという総務省の過去の行為は見下げ果てたものである。コピーワンス問題、ダビング10問題、B-CAS問題の検討と続く、無料の地上放送のスクランブルとコピー制御に関する政策検討の迷走とそれにより浪費され続けている膨大な社会的コストのことを考えても、このような省令改正の政策的失敗は明らかであり、総務省はこの省令改正を失策と明確に認めるべきである。

 コピー制限なしとすることは認められないとする権利者の主張は、消費者のほとんどが録画機器をタイムシフトにしか使用しておらず、コンテンツを不正に流通させるような悪意のある者は極わずかであるということを念頭においておらず、一消費者として全く納得がいかない。消費者は、無数にコピーするからコピー制限を無くして欲しいと言っているのではなく、わずかしかコピーしないからこそ、その利便性を最大限に高めるために、コピー制限を無くして欲しいと言っているのである。消費者の利便性を下げることによって権利者が不当に自らの利潤を最大化しようとしても、インターネットの登場によって、コンテンツ流通の独占が崩れた今、消費者は不便なコンテンツを選択しないという行動を取るだけのことであり、長い目で見れば、このような主張は自らの首を絞めるものであることを権利者は思い知ることになるであろう。

 昨年運用が開始されたダビング10に関しても、大きな利便性の向上なくして、より複雑かつ高価な機器を消費者が新たに買わされるだけの弥縫策としか言いようがなく、一消費者・一国民として納得できるものでは全くない。さらに、ダビング10機器に関しては、テレビ(チューナー)と録画機器の接続によって、全く異なる動作をする(接続次第で、コピーの回数が9回から突然1回になる)など、公平性の観点からも問題が大きい。

 現在の地上無料放送各局の歪んだビジネスモデルによって、放送の本来あるべき姿までも歪められるべきではない。そもそもあまねく視聴されることを本来目的とする、無料の地上放送においてコピーを制限することは、視聴者から視聴の機会を奪うことに他ならず、このような規制を良しとする談合業界及び行政に未来はない。

 コピー制限技術はクラッカーに対して不断の方式変更で対抗しなければならないが、その方式変更に途方もないコストが発生する無料の地上放送では実質的に不可能である。インターネット上でユーザー間でコピー制限解除に関する情報がやりとりされる現在、もはや無料の地上放送にDRMをかけていること自体が社会的コストの無駄であるとはっきりと認識するべきである。無料の地上放送におけるDRMは本当に縛りたい悪意のユーザーは縛れず、一般ユーザーに不便を強いているだけである。

 本中間答申では、現行のB-CASシステムと併存させる形でチップやソフトウェア等の新方式を導入することが提言されているが、無意味な現行システムの維持コストに加えて新たなシステムの追加で発生するコストまでまとめて消費者に転嫁される可能性が高く、このような弥縫策は、一消費者として全く評価できないものである。さらに言うなら、これらの新方式は、不正機器対策には全くならない上、新たに作られるライセンス発行・管理機関が総務省なりの天下り先となり、新方式の技術開発・設備投資コストに加え、天下りコストまで今の機器に上乗せされかねないものである。

 なお、審議会では、新方式における受信確認メッセージについても議論されているようだが、現行のB-CASシステムのようにまがりなりにも機器と分けられたカードとユーザーの1対1対応を前提とできるならいざ知らず(この現行システムの前提すら極めて危うく、もはや破綻していると見た方が良いだろうが)、全国民をユーザーとして転々流通する機器に完全に組み込まれるチップあるいはソフトウェア方式において、受信確認メッセージの機能を実装することは技術的に不可能である。このように技術的に不可能なことが審議会で今後の検討対象とされること自体、総務省と情報通信審議会のこの問題に対する技術的無知、検討能力の無さを露呈するものである。

 制度的エンフォースメントにしても、正規機器の認定機関が総務省なりの天下り先となり、その天下りコストがさらに今の機器に上乗せされるだけで、しかも不正機器対策には全くならないという最低の愚策である。

 冒頭書いたように、無料の地上放送の理念を歪め、放送局・権利者・国内の大手メーカーの談合を助長している、無料の地上放送にかけられているスクランブル・暗号化こそ問題なのであって、B-CAS類似の無意味なシステムをいくら併存させたところで、積み上げられるムダなコストが全て消費者に転嫁されるだけで何の問題の解決にもならず、同じことが繰り返されるだけだろう。基幹放送である無料地上波については、B-CASシステムを排除し、ノンスクランブル・コピー制限なしを基本とすること以外で、この問題の本質的な解決がもたらされることはない。

 法的にもコスト的にも、どんな形であれ、全国民をユーザーとする無料地上放送に対するコピー制限は維持しきれるものではない。本来立法府に求めるべきことではあるが、このようなバカげたコピー制限に関する過ちを二度と繰り返さないため、無料の地上放送についてはスクランブルもコピー制御もかけないこととする逆規制を、政令や省令ではなく法律のレベルで放送法に入れることを私は一国民として強く求める。

 なお、付言すれば、本来、B-CASやコピーワンス、ダビング10のような談合規制の排除は公正取引委員会の仕事であると思われ、何故総務省及び情報通信審議会が、談合規制の緩和あるいは維持を検討しているのか、一国民として素直に理解に苦しむ。今後、立法府において、行政と規制の在り方のそもそも論に立ち返った検討が進むことを、私は一国民として強く望む。

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2009年7月15日 (水)

第183回:総務省・「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」第一次提言案に対する提出パブコメ

 表現の自由に関するエントリも書いているところだが、衆議院で不信任案が提出され、参議院で問責決議が可決され、野党が審議拒否に入り、総理が来週の解散を明言する中、児童ポルノ規制法の改正案は今国会では廃案になることがほぼ確定したので、ここで、後2つ残っている総務省のパブコメを先に片付けておきたいと思う。(無論、今国会で廃案になったからと言って、次の国会で再提出される可能性も高いので、児童ポルノ規制法改正問題に関して、今回の選挙が極めて重要であることは言うまでも無く、選挙後も当分この問題については気は抜けないだろう。また、選挙関係のエントリも別途書きたいと思っているところである。)

 今回載せるのは、その内の1つ、「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」第一次提言案(pdf)に対する提出パブコメ(7月28日〆切。総務省のリリース意見募集要領(pdf)、電子政府の該当ページ参照)である。

 この研究会はストリートビュー問題に関する検討の方が注目されているが、この報告書案における最大の問題は、ストリートビュー問題に関する部分では無く、第24~38ページの「Ⅱ 違法音楽配信対策について」で書かれている、日本レコード協会(RIAJ)が提案している携帯電話における著作権検閲である。詳しくは報告書本文を読んでもらえればと思うが、要するに、ダウンロード違法化が通ったのを良いことに、RIAJが総務省に対して早速著作権検閲を提案し、支援を求めているのである。報告書案で、それなりにコストや法律の面で問題点をある程度あげているものの、悪質なお役所検討会の例に洩れず、利権団体には甘く、本質的な問題点をごまかし、権利者団体による著作権検閲を支援・正当化しようとする意図が見え透いている。だこのような技術による著作権検閲は、表現の自由・通信の秘密・検閲の禁止・プライバシーなどの国民の基本的な権利を侵害する危険なものとしかなり得ないのであり、決して導入されてはならないものだろう。このパブコメも決して見過ごすことのできないものである。

 もう1つ、総務省からは、B-CAS見直しに関する中間答申(pdf)概要(pdf)、正式名称は、「『デジタル・コンテンツの流通の促進』及び『コンテンツ競争力強化のための法制度の在り方』」)も8月28日〆切でパブコメにかかっているので(総務省のリリース、電子政府の該当ページITmediaの記事ITproの記事も参照)、次回は、この中間答申に対する提出パブコメを載せるつもりでいる。

(以下、提出パブコメ)

1.氏名及び連絡先
氏名:兎園(個人)
連絡先:

2.意見要旨
 日本レコード協会が提案している技術による著作権検閲に反対するとともに、特に、以下の5点を強く求める。
・この日本レコード協会が提案している対策は、憲法に規定されている、表現の自由・通信の秘密・検閲の禁止・プライバシーなどの国民の基本的な権利を侵害する危険なものであり、絶対に導入されるべきでないと提言に明記すること。
・国民の基本的な権利を侵害する危険な著作権検閲にしか流れようのない著作権法中のダウンロード違法化条項の削除を、総務省から文化庁に強く働きかけること。
・憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法にに法律のレベルで明文で書き込むこと、および、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術による著作権検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律のレベルで明文で書き込むこと。
・青少年ネット規制法の廃止及び出会い系サイト規制法の法改正前の形への再改正。
・公平性の観点から及び独禁法上明らかに問題のある、携帯電話事業者による公式サイト以外のサイトからのダウンロード容量制限の排除。

 今後は、国民の基本的な権利を必ず侵害するものとなる危険な技術による著作権検閲の検討ではなく、ネットにおける各種問題は情報モラル・リテラシー教育によって解決されるべきものという基本に立ち帰り、より現実的かつ地道な施策のみに注力する検討が進むことを期待する。

3.意見
(1)第29~30ページ「Ⅱ 3.(1) フィルタリングの普及」について

 ここで、青少年ネット規制法やフィルタリングについて触れられているが、そもそも、青少年ネット規制法は、あらゆる者から反対されながら、有害無益なプライドと利権を優先する一部の議員と官庁の思惑のみで成立したものであり、速やかに廃止が検討されるべきものである。なお、付言すれば、出会い系サイト規制法の改正も、警察庁が、どんなコミュニケーションサイトでも人は出会えるという誰にでも分かることを無視し、届け出制の対象としては事実上定義不能の「出会い系サイト事業」を定義可能と偽り、改正法案の閣議決定を行い、法案を国会に提出したものであり、他の重要法案と審議が重なる中、国会においてもその本質的な問題が見過ごされて可決され、成立したものである。憲法上の罪刑法定主義や検閲の禁止にそもそも違反している、今回の出会い系サイト規制法の改正についても、今後、速やかに元に戻すことが検討されるべきである。

 フィルタリングについても、その過去の政策決定の迷走により、総務省は携帯電話サイト事業者に無意味かつ多大なダメージを与えた。この問題については、フィルタリングの存在を知り、かつ、フィルタリングの導入が必要だと思っていて、なお未成年にフィルタリングをかけられないとする親に対して、その理由を聞くか、あるいはフィルタリングをかけている親に対して、そのフィルタリングの問題を聞くかして、きちんと本当の問題点を示してから検討してもらいたい。また、フィルタリングで無意味に利権を作ろうとしている総務省と携帯電話事業者他の今の検討については、完全に白紙に戻されるべきである。携帯フィルタリングについて、ブラックリスト方式ならば、まずブラックリストに載せる基準の明確化から行うべきなので、不当なブラックリスト指定については、携帯電話事業者がそれぞれの基準に照らし合わせて無料で解除する簡便な手続きを備えていればそれで良く、健全サイト認定第3者機関など必要ないはずである。ブラックリスト指定を不当に乱発し、認定機関で不当に審査料をせしめ取り、さらにこの不当にせしめた審査料と、正当な理由もなく流し込まれる税金で天下り役人を飼うのだとしたら、これは官民談合による大不正行為以外の何物でもない。このようなブラックリスト商法の正当化は許されない。

(2)第31ページ「Ⅱ 3.(4)DRM、ダウンロード容量の制限」について
 ここで、「一部の携帯電話事業者では、公式サイト以外のサイトからダウンロードできるファイルの容量制限等も行っており」、「公式サイトとそれ以外のサイトに対して、提供する回線の水準を携帯電話事業者側で区別することは、公平性の観点からも議論を喚起する可能性がある」としているが、このような容量制限は、議論の可能性の問題では無く、公平性の観点からも、独禁法からも明らかに問題があるものである。このような容量制限は、公平性の観点からも、独禁法からも明確に問題があると、ここに明記するべきである。

(3)第32~35ページ「Ⅱ 4.(1)新たな技術的対策について」について
 この項目において、コンテンツの種類を、①正規コンテンツ、②個人コンテンツ、③違法コンテンツの3つに分類し、それぞれ、レコード会社と契約をした正規のコンテンツ配信業者から配信されたコンテンツ、一般個人が作曲、演奏した楽曲であり、著作権・著作隣接権を一般の作詞家、作曲者、演奏家が個人で保有するもの、権利者に無許諾で配信されたコンテンツと定義しているが、このような分類は適切でない。

 携帯で視聴されるコンテンツには、正規に購入した音楽CDからユーザーが私的に複製したコンテンツも含まれるのであり、配信のみを正規のコンテンツのソースとみなすような不適切な分類・定義を使用するべきでは無い。もし分類の定義を維持するのであれば、「①正規コンテンツ」の名称を「①正規配信コンテンツ」と変え、正規に購入したレコード会社の音楽CD等から私的に複製したコンテンツと定義される、「④正規の私的複製コンテンツ」という分類を追加するべきである。

 また、この項目において、音源識別やサービス識別によって正規コンテンツと違法コンテンツが識別できると書かれているが、正規の私的複製コンテンツと違法コンテンツは識別不可能であり、これらの識別技術によって正規コンテンツと違法コンテンツを一律に識別することはできないとの記載に改めるべきである。

 正規コンテンツとしてDRMのかかっていない音楽CDが存在している限り、このような対策が取られるべきではないことは自明のことである。

(4)第35~37ページ「Ⅱ 4.(2) 新たな技術的対策の課題」について
 この項目において、「携帯電話事業者のゲートウェイサーバにおいて直接ファイルの内容を監視するという方法でなければ、通信の秘密を直ちに侵害していることにはならないと考えられる」としているが、通信の秘密という基本的な権利の適用は監視の位置がサーバーであるか端末であるかによらないものであり、このような通信法を所管する官庁として余りにも浅墓な見解は削除するべきである。

 特に、機械的な処理であっても通信の秘密を侵害したことには変わりはないとされ、通信の秘密を侵害する行為には、当事者の意思に反して通信の構成要素等を利用すること(窃用すること)も含むとされているのであり、このようなことも含めて考えると、日本レコード協会が提案している対策は、通信の秘密を侵害するものと考える方が妥当であり、ここには、そうはっきり書いてもらいたい。

 この項目において、プライバシーの保護についても触れられているが、同意の取得や情報漏洩以前の問題として、本来最も基本的なプライバシーに属する個人端末中の情報について、内容を自動検知し、アクセス制限・再生禁止等を行うことは、それ自体プライバシー権を侵害するものであり、プライバシーの観点からも、このような措置は導入されるべきでないとはっきり書いてもらいたい。

 最も基本的なプライバシーに属する個人端末中の情報について、内容を自動検知し、アクセス制限・再生禁止等を行う日本レコード協会が提案している違法音楽配信対策は、技術による著作権検閲に他ならず、憲法に規定されている表現の自由(情報アクセス権を含む)や検閲の禁止に明らかに反するものである。ここで、表現の自由や検閲の禁止という観点からも、このような対策は決して導入されてはならないものであると明記してもらいたい。

 付言すれば、日本レコード協会の携帯端末における違法音楽配信対策は、建前は違えど、中国でPCに対する導入が検討され、大騒ぎになった末、今現在導入が無期延期されているところの検閲ソフト「グリーン・ダム」と全く同じ動作をするものであるということを政府にははっきりと認識してもらいたい。このような検閲ソフトの導入については、日本も政府として懸念を表明しているはずであり(日経のネット記事http://www.nikkei.co.jp/news/main/20090628AT3S2700A27062009.html参照)、自由で民主的な社会において、このような技術的検閲が導入されることなど、絶対許されないことである。

 また、正規の私的複製コンテンツは決して排除されるべきものでは無く、正規の私的複製コンテンツを全携帯端末において一律再生不能とすることは、独禁法上の問題が生じうるということについても、ここに明記されるべきである。

(5)第37~38ページ「5.今後の方向性」について
 この項目で、日本レコード協会の提案を検討の叩き台とするとしているが、上記の通り、この提案は、通信の秘密や検閲の禁止、表現の自由、プライバシーといった個人の基本的な権利をないがしろにするものであり、叩き台にすらなり得ない。日本レコード協会が提案している、検閲に該当するこのような対策は絶対に導入されるべきでなく、また技術支援・実証実験等として税金のムダな投入がなされるべきではないと、ここに明記するべきである。

 そもそも、ダウンロード違法化の懸念として、このような著作権検閲に対する懸念は、文化庁へのパブコメ(文化庁HPhttp://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/houkoku.htmlの意見募集の結果参照)や知財本部へのパブコメ(知財本部のHPhttp://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keikaku2009.htmlの個人からの意見参照)を見ても分かる通り、法改正前から指摘されていたところであり、このような著作権検閲にしか流れようの無いダウンロード違法化は始めからなされるべきではなかったものである。このような百害あって一利ない最低の法改正に基づいて対策がなされるべきでないのは無論のこと、文化庁の暴走と国会議員の無知によって成立したものであり、ネット利用における個人の安心と安全を完全にないがしろにするものである、ダウンロード違法化を規定する著作権法第30条第1項第3号を次回の法改正では削除するべきと総務省から文化庁に強く働きかけてもらいたい。

 この提言案からも明確なように、違法コピー対策問題における権利者団体の主張、児童ポルノ法規制強化問題・有害サイト規制問題における自称良識派団体の主張は、常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。今後は、このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むことを是非検討してもらいたい。同じく、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な著作権検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法にに法律レベルで明文で書き込むことを是非検討してもらいたい。

 この項目において、本年度中を目途として合意を得ることが望ましいと、平成22年度中に実施できるよう検討するという記載があるが、このような個人の基本的な権利に絡む大問題については極めて慎重な検討が必要であり、拙速な検討が行われるべきでは無く、期限に関する記載は削除するべきである。

 また、上の(2)でも書いたが、公式サイトとそれ以外のサイトに対して提供する回線の水準を携帯電話事業者側で区別することは、公平性の観点からも、独禁法からも明らかに問題があり、このような容量制限を明確に問題と認識し、これを排除する検討を進めることを、この「5.今後の方向性について」の項目に明記してもらいたい。

 違法音楽配信対策として、今後出てくるかも知れない対策まで完全に否定するつもりは無いが、国民の基本的な権利の侵害とならない範囲で対策が進められなくてはならないのは当然のことである。今後は、国民の基本的な権利を必ず侵害するものとなる危険な技術による著作権検閲の検討ではなく、ネットにおける各種問題は情報モラル・リテラシー教育によって解決されるべきものという基本に立ち帰り、公開情報の検索を行うクローリングと現行のプロバイダー責任制限法と削除要請を組み合わせた対策や、この「5.今後の方向性について」の(2)で示されているような、青少年側に立った施策などの、より現実的かつ地道な施策のみに注力する検討が進むことを期待する。

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2009年7月10日 (金)

第182回:総務省・「通信・放送の総合的な法体系の在り方」答申案に対する提出パブコメ

 総務省の「通信・放送の総合的な法体系の在り方」答申案(pdf)に対する意見募集(7月21日〆切。総務省のリリース電子政府の該当ページ概要(pdf)意見募集要領(pdf)も参照)に対してパブコメを提出したので、ここに載せておく。

 良いニュースは全く無いが、一緒に少し紹介しておくと、昨日の夜の密室政策談合で、自民・公明・民主の3党の間で、単純所持を原則禁止することで合意したとのニュースがあった(TBSの記事参照)。捜査機関に対する努力規定など何の意味も無い。あの喧々諤々の国会審議は一体何だったのか。所詮与党も民主党も、全て同じ穴のムジナであり、全てどこまで行っても、旧来の談合政治しかできない最低の妥協政党である。唯一この問題を正しく理解して下さっている社民党の保坂議員のブログ記事(その論点整理も非常に良くできているので、是非一読をお勧めする)によると、10日と14日は衆議院法務委員会が開催される予定は無いそうだが、この与野党の政策談合による合意でネットに対する死刑宣告は下ったに等しい。保坂議員には是非引き続き頑張ってもらいたいと思うし、個人的に最後まで諦めるつもりはないが、児童ポルノ規制問題については、最低最悪の状態をさらに下に突き抜け、主として流動的な国会情勢に賭けるしか無いという状況に落ち入りつつある。

 児童ポルノに関しては、リンクを張っただけの少年が児童ポルノ公然陳列幇助で逮捕され、書類送検された(internet watchの記事ITmediaの記事J-CASTの記事参照)。印象操作のための捜査としか思えないが、児童ポルノ規制法に関しては、このように現行法ですら危険極まりない、拡大解釈による恣意的な運用が行われているのである。単純所持規制が付け加わった日には、この現代日本で、あり得ない惨状が現出することだろう。

 また、一連の動きの中で関連してくる事件として、児童ポルノでは無いが、海外での騒動の種になった「レイプレイ」の無修正改造版をファイル共有ネットワーク上に流したことが猥褻物公然陳列に当たるとして、逮捕者が出ている(時事通信のネット記事産経のネット記事京都新聞のネット記事参照)。著作権法違反ならいざ知らず、どこまで行ってもCGに過ぎないものであり、このようなゲームが本当に猥褻物に当たるかどうかすら怪しいだろう。今の警察にとって事件は解決するものでは無く、規制強化のために作るもののようである。このように印象操作のためのあまりも露骨な恣意的な捜査を行う警察など、全く信用に値しない。

 最後に1つだけ海外のニュースを紹介しておくと、「P2Pとかその辺のお話」でも紹介されているように、第181回で取り上げた3ストライク法案の第2案が、フランスの上院を賛成189名、反対142名で通過した(Numeramaの記事AFPの記事PC INpactの記事も参照)。この法案もこれで下院での審議に移るが、上院通過版の法案を見ても、本質的な部分で修正が入った訳では無く、まだまだ揉め続けるだろう。

(7月10日夜の追記:保坂議員のブログ記事によると、児童ポルノ規制問題に関しては、与野党の間にまだ隔たりがあるようである。TBSの記事はかなり飛ばし気味だと分かったが、火の無いところに煙は立たないので、捜査機関に対する無意味な努力義務規定で単純所持規制をごまかして通そうとする危険極まりない折衷案が、与野党の密室政策談合で検討されているのだろう。この問題については、断頭台に首が載った状態が続くことに変わりはない。(?様、ぼるてっかー様、コメント・情報ありがとうございます。)

(7月17日の追記:入れ忘れていたので、タイトルに「総務省・」を追加した。)

 また、今日、MIAUが児童ポルノ法改正に関して声明解説)を出したので(internet watchの記事も参照)、これもリンクを張っておく。この声明も、問題点を良くとらえているものと思う。)

(以下、提出パブコメ)

1.氏名及び連絡先
氏名:兎園(個人)
連絡先:

2.意見要旨
 放送が放送法によって包括的な規制を受けている理由として、有限希少な周波数を占用するものであることもきちんとあげ、インターネットによる通信を、放送とともにコンテンツ規律の対象とする必要性は認められないとする考え方を私は強く支持する。今後の具体的な法制の検討においては、このような考え方を厳格に守り、現在の放送・通信法の対象外にまで不必要な規制が及ぼされることがないよう、くれぐれも慎重に進めてもらいたい。今後、危険な規制強化の検討では無く、現在の放送通信各法における不必要な規制の洗い出しと、特に放送がインターネットにおける情報流通と競争できるようにするための放送規制の緩和といった、真に国民全体を裨益する地道な検討のみが行われることを期待する。

 特に個別の論点として、以下の4点を私は強く求める。
・放送関連四法の集約に合わせ、無料の地上放送についてはスクランブルもコピー制御もかけないこととする逆規制を、政令や省令ではなく法律のレベルに入れること。
・現行の「電気通信事業法」を核とした伝送サービス規律に関わる制度の大括り化を図る際、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、法律レベルに明文で書き込むこと。
・同じく、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な著作権検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を法律レベルに明文で書き込むこと。
・青少年ネット規制法の廃止及び出会い系サイト規制法の法改正前の形への再改正。

3.意見
(1)第4ページ「(2)民間の創意工夫を生かした新技術導入の促進」について

 この項目において、技術基準について触れられているが、今現在無料の地上放送にコピー制限のための技術基準として導入されているB−CASシステムは談合システムに他ならない。これは、放送局・権利者にとっては、視聴者の利便性を著しく下げることによって、一旦は広告つきながらも無料で放送したコンテンツの市場価格を不当につり上げるものとして機能し、国内の大手メーカーとっては、B−CASカードの貸与と複雑な暗号システムを全てのテレビ・録画機器に必要とすることによって、中小・海外メーカーに対する参入障壁として機能している。情報通信審議会・デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会において、現行システムと併存させる形でチップやソフトウェア等の新方式を導入することが提言されているが、無意味な現行システムの維持コストに加えて新たなシステムの追加で発生するコストまでまとめて消費者に転嫁される可能性が高いこのような弥縫策は、一消費者として全く評価できないものである。

 総務省は過去の情報通信審議会において、コピーワンスの導入のために無料地上波にB−CASシステムを導入するのが適当という結論を出し、平成14年6月に省令改正(「標準テレビジョン放送等のうちデジタル放送に関する送信の標準方式の一部を改正する省令」)まで行って、その導入を推進している。無料の地上放送へのB−CASシステムの導入をもたらしたこの省令改正を、総務省は失策として認めるべきである。

 技術基準の柔軟性の向上も必要であるが、現在の地上無料放送各局の歪んだビジネスモデルによって、放送の本来あるべき姿までも歪められるべきではない。そもそもあまねく視聴されることを本来目的とする、無料の地上放送において暗号化を施しコピーを制限することは、視聴者から視聴の機会を奪うことに他ならず、このような規制を良しとする談合業界及び行政に未来はない。法的にもコスト的にも、どんな形であれ、全国民をユーザーとする無料地上放送に対するコピー制限は維持しきれるものではない。このようなバカげたコピー制限に関する過ちを二度と繰り返さないため、放送関連四法の集約に合わせ、無料の地上放送についてはスクランブルもコピー制御もかけないこととする逆規制を、政令や省令ではなく法律のレベルに入れることを、私は一国民として強く求める。

(2)第7ページ「(1)伝送サービス規律の再編」について
 ダウンロード違法化問題やプロバイダーにおける違法コピー対策問題における権利者団体の主張、児童ポルノ法規制強化問題・有害サイト規制問題における自称良識派団体の主張は、常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。

 また、児童ポルノに関するネット規制の1つとして検討されているサイトブロッキングについても、総務省なり警察なり天下り先の検閲機関・自主規制団体なりの恣意的な認定により、全国民がアクセスできなくなるサイトを発生させることなど、検閲にしかなりようが無く、絶対にやってはならないことである。例えそれが何であろうと、情報の単純所持や単なる情報アクセスではいかなる被害も発生し得えないのであり、自主的な取組という名目でいくら取り繕おうとも、憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないブロッキングもまた導入されてはならないものである。

 このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、この項目において書かれている、現行の電気通信事業法を核とした伝送サービス規律に関わる制度の大括り化を図る際には、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、法律レベルに明文で書き込むことを検討してもらいたい。同じく、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な著作権検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を法律レベルに明文で書き込むことを検討してもらいたい。

(3)第11ページ「(1)メディアサービス(仮称)の範囲」について
 放送が放送法によって包括的な規制を受けている理由として、有限希少な周波数を占用するものであることもきちんとあげ、インターネットによる通信を、放送とともにコンテンツ規律の対象とする必要性は認められないとする考え方を私は強く支持する。今後の具体的な法制の検討においては、この考え方を厳格に守り、現在の放送・通信法の対象外にまで不必要な規制が及ぼされることがないよう、くれぐれも慎重に進めてもらいたい。

 なお、この項目において、プロバイダー責任制限法についても触れられているが、今後、プロバイダの責任の在り方について検討する際には、被侵害者との関係において、刑事罰リスクも含めたプロバイダーの明確なセーフハーバーについて検討してもらいたい。特に、このセーフハーバーの要件において、標準的な仕組み・技術や違法性の有無の判断を押しつけるような、権利侵害とは無関係の行政機関なり天下り先となるだろう第3者機関なりの関与を必要とすることは、検閲の禁止・表現の自由等の国民の権利の不当な侵害に必ずなるものであり、絶対にあってはならないことである。

(4)第17ページ「(4)「オープンメディアコンテンツ」に関する規律」について
 この項目において、青少年ネット規制法、フィルタリングサービスの導入促進及び改善、「e−ネットづくり!」宣言といった官製キャンペーンについて触れられている。

 しかし、そもそも、青少年ネット規制法は、あらゆる者から反対されながら、有害無益なプライドと利権を優先する一部の議員と官庁の思惑のみで成立したものであり、速やかに廃止が検討されるべきものである。なお、付言すれば、出会い系サイト規制法の改正も、警察庁が、どんなコミュニケーションサイトでも人は出会えるという誰にでも分かることを無視し、届け出制の対象としては事実上定義不能の「出会い系サイト事業」を定義可能と偽り、改正法案の閣議決定を行い、法案を国会に提出したものであり、他の重要法案と審議が重なる中、国会においてもその本質的な問題が見過ごされて可決され、成立したものである。憲法上の罪刑法定主義や検閲の禁止にそもそも違反している、今回の出会い系サイト規制法の改正についても、今後、速やかに元に戻すことが検討されるべきである。

 フィルタリングについても、その過去の政策決定の迷走により、総務省は携帯電話サイト事業者に無意味かつ多大なダメージを与えた。この問題については、フィルタリングの存在を知り、かつ、フィルタリングの導入が必要だと思っていて、なお未成年にフィルタリングをかけられないとする親に対して、その理由を聞くか、あるいはフィルタリングをかけている親に対して、そのフィルタリングの問題を聞くかして、きちんと本当の問題点を示してから検討してもらいたい。また、フィルタリングで無意味に利権を作ろうとしている総務省と携帯電話事業者他の今の検討については、完全に白紙に戻されるべきである。携帯フィルタリングについて、ブラックリスト方式ならば、まずブラックリストに載せる基準の明確化から行うべきなので、不当なブラックリスト指定については、携帯電話事業者がそれぞれの基準に照らし合わせて無料で解除する簡便な手続きを備えていればそれで良く、健全サイト認定第3者機関など必要ないはずである。ブラックリスト指定を不当に乱発し、認定機関で不当に審査料をせしめ取り、さらにこの不当にせしめた審査料と、正当な理由もなく流し込まれる税金で天下り役人を飼うのだとしたら、これは官民談合による大不正行為以外の何物でもない。このようなブラックリスト商法の正当化は許されない。

 官製キャンペーンについても、総務省への参加申請・登録の要請や総務省製のロゴマークの販促といった、ニーズを無視したいつもの官製キャンペーンに過ぎず、普通に考えて税金のムダ使いしかならない、「e−ネットづくり!」宣言のような官製キャンペーンに私は反対する。今以上に、規制よりにしかならないだろう官製「自主憲章」やガイドラインなども不要である。

 この点においては、恣意的な運用しか招きようのない危険な規制強化の検討ではなく、ネットにおける各種の問題は情報モラル・リテラシー教育によって解決されるべきものという基本に立ち帰り、地道な教育・啓発に関する施策のみに注力する検討が進むことを期待する。

(5)第19ページ「5.プラットフォーム規律」について
 コンテンツ規律の中に、既存のプラットフォーム規律である有料放送管理事業に係る規律を位置づけること自体に反対するものではないが、放送に関するコンテンツ規律の中に、異質なプラットフォーム規制を混ぜることによって、現在の放送・通信法の対象外にまで不必要な規制が及ぼされることがないよう、くれぐれも注意してもらいたい。

(6)報告書全体について
 放送が放送法によって包括的な規制を受けている理由として、有限希少な周波数を占用するものであることもきちんとあげ、インターネットによる通信を、放送とともにコンテンツ規律の対象とする必要性は認められないとする考え方を私は強く支持する。今後の具体的な法制の検討においては、このような考え方を厳格に守り、現在の放送・通信法の対象外にまで不必要な規制が及ぼされることがないよう、くれぐれも慎重に進めてもらいたい。

 従来、放送が勝手に相当部分を独占して来た情報流通が、インターネットの発展によって崩れてきたということこそ、通信と放送の関係における問題の本質である。今後は、危険な規制強化の検討では無く、現在の放送通信各法における不必要な規制の洗い出しと、特に放送がインターネットにおける情報流通と競争できるようにするための放送規制の緩和といった、真に国民全体を裨益する地道な検討のみが行われることを期待する。

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2009年7月 6日 (月)

第181回:違憲判決後のフランス3ストライクアウト法案の第2案

 フランスが3ストライク法案を復活させようと画策していることは、「P2Pとかその辺のお話」で既に触れられているが、先週の7月2日に、違憲判決後の3ストライク法案の第2案(正式名称は、「インターネットにおける著作権の刑事的保護に関する法律」)が、フランス上院の委員会を通過した(01netの記事Numeramaの記事参照)ので、今回は、その通過版の法案の紹介をしておきたいと思う。

 多少修正の入った上院委員会通過版を訳しても良いのだが、まだ上院の委員会を通過しただけであり、特に本質的な部分で修正が入った訳でも無く、この後の本会議、下院での審議でどうせまたいろいろと修正が入ると思うので、ここでは、よりシンプルで分かり易い最初の政府提出時の法案を以下に訳出する。(例によって、翻訳は拙訳。)

Article 1er

Apres l'article L. 331-21 du code de la propriete intellectuelle, il est ajoute un article L. 331-21-1 ainsi redige :

<< Art. L. 331-21-1. -- Les membres de la commission de protection des droits, ainsi que ses agents habilites et assermentes a cette fin dans les conditions determinees par decret en Conseil d'Etat, peuvent constater les infractions prevues au present titre lorsqu'elles sont punies de la peine complementaire de suspension de l'acces a un service de communication au public en ligne et de communication electronique.

<< Ils peuvent en outre recueillir les observations des personnes concernees.

<< Leurs proces-verbaux font foi jusqu'a preuve contraire. >>

Article 2

I. -- Apres le onzieme alinea de l'article 398-1 du code de procedure penale (9°), il est insere un alinea ainsi redige :

<< 10° Les delits prevus aux articles L. 335-2, L. 335-3 et L. 335-4 du code de la propriete intellectuelle. >>

II. -- Apres le sixieme alinea de l'article 495 du meme code (5°), il est insere un alinea ainsi redige :

<< 6° Les delits prevus aux articles L. 335-2, L. 335-3 et L. 335-4 du code de la propriete intellectuelle. >>

Article 3

Apres l'article L. 335-6 du code de la propriete intellectuelle, il est insere un nouvel article ainsi redige :

<< Art. L. 335-7. -- Lorsque l'infraction est commise au moyen d'un service de communication au public en ligne ou de communications electroniques, les personnes coupables des infractions prevues aux articles L. 335-2, L. 335-3 et L. 335-4 peuvent en outre etre condamnees a la peine complementaire de suspension de l'acces a un service de communication au public en ligne ou de communication electronique pour une duree maximale d'un an, assortie de l'interdiction de souscrire pendant la meme periode un autre contrat portant sur un service de meme nature aupres de tout operateur.

<< Lorsque ce service est achete selon des offres commerciales composites incluant d'autres types de services, tels que services de telephonie ou de television, les decisions de suspension ne s'appliquent pas a ces services.

<< La suspension de l'acces n'affecte pas, par elle-meme, le versement du prix de l'abonnement au fournisseur du service. L'article L. 121-84 du code de la consommation n'est pas applicable au cours de la periode de suspension.

<< Les frais d'une eventuelle resiliation de l'abonnement au cours de la periode de suspension sont supportes par l'abonne.

<< Lorsque la decision est executoire, la peine complementaire prevue au present article est portee a la connaissance de la Haute autorite pour la diffusion des oeuvres et la protection des droits sur internet, qui la notifie a la personne dont l'activite est d'offrir un acces a des services de communication au public en ligne afin qu'elle mette en oeuvre, dans les meilleurs delais, la suspension a l'egard de l'abonne concerne.

<< Le fait, pour la personne dont l'activite est d'offrir un acces a des services de communication au public en ligne, de ne pas mettre en oeuvre la peine de suspension qui lui a ete notifiee est puni d'une amende de 3750 Euro.

<< Lorsque le reglement le prevoit, la peine complementaire definie au present article peut etre prononcee a l'encontre des personnes reconnues coupables des contraventions de la cinquieme classe prevues par le present code. Dans ce cas, la duree maximale de la suspension est de un mois. >>

Article 4

A la fin du premier alinea de l'article 434-41 du code penal, apres les mots : << ou 131-17 >> sont ajoutes les mots : << , d'interdiction de souscrire un nouveau contrat d'abonnement a un service de communication au public en ligne et de communication electronique. >>

Article 5

La presente loi est applicable sur l'ensemble du territoire de la Republique, a l'exception de la Polynesie francaise.

第1条

知的財産権法の第331-21条の後に、次の第331-21-1条を追加する:

「第331-21-1条 権利保護委員会のメンバー並びに、コンセイユ・デタの政令で定められる条件で、その目的のために宣誓を行い権限を有する代理人が、本部に規定されている違反を立証した時、それは、オンライン公衆通信と電子通信サービスへのアクセスを遮断するという補助的な罰で罰される。

それらは、さらに、問題となっている者の観察をすることができる。

その調書は、反証が出されるまで信用される。」

第2条

Ⅰ.刑事訴訟法の第398-1条(訳注:裁判官1人で構成される軽罪裁判所によって裁かれる罪を列挙している条項)の第11段落(第9号)の後に、次のような段落を追加する:

「第10号 第335-2条、第335-3条と第335-4条(訳注:著作権侵害の罰則規定。なお、権利制限との関係があるので、第173回にも書いたように、純粋なダウンロードがどうなるのかは分からない)に規定された罪。」

Ⅱ.同法の第495条(訳注:軽罪裁判所の略式手続きにかけることができる罪を列挙している条項)の第6段落(第5号)の後に、次のような段落を追加する:

「第6号 第335-2条、第335-3条と第335-4条に規定された罪。」

第3条

知的財産権法の第335-6条の後に、次の新条項を挿入する:

「第335-7条 その違反が、オンライン公衆通信あるいは電気通信サービスを通じて犯された場合、第335-2条、第335-3条、第335-4条に規定されている違反をした者は、あらゆる事業者と同じ性質のサービスの他の契約を同期間中できないという中断を伴う、最長1年のオンライン公衆通信あるいは電気通信サービスへのアクセス遮断という補助的な罰を科される。

電話やテレビサービスのような他のタイプのサービスと複合的に販売されているサービスを購入していた場合、遮断の決定は、これらの他のタイプのサービスには適用されない。

アクセス遮断は、それ自体で、サービス提供者へ支払った契約料金の返還をもたらすものではない。消費者法の第121-84条(訳注:電気通信サービスの提供の契約条件の変更を規制する条項)は、遮断期間中は適用され得ない。

遮断期間中の、契約の偶発的な解約の費用は、契約者によって賄われる。

判決に執行力がある場合、問題の契約者に関する遮断を適切な期間を置いて実施するために、オンライン公衆通信サービスを提供する者にそのことを知らせる、インターネットにおける著作物の頒布と権利の保護のための公的機関に、本条に規定されているこの補助的な罰が知らされる。

オンライン公衆通信サービスへのアクセスを提供する事業者が、通知された遮断の罰を実施しなかったと認められた時、それは、3750ユーロの罰金を科される。

法規則にそう規定されている時、本条で規定されている補助的な罰は、本法の第5級の軽犯罪を認められた者に対しても科され得る。この場合、遮断の最長期間は1ヶ月である。」

第4条

刑法第434-41条(訳注:判決履行義務違反の罰則を定めた条項。2年の禁固と3万ユーロの罰金)の第1段落の後の、「あるいは131-17条」の後に、「、オンライン公衆通信・電気通信サービスの新たな契約をできないという中断。」という語を追加する

第5条

本法は、フランス領ポリネシアを除き、共和国全土で適用される。

 細かなことが気になるようであれば、以前の3ストライク法案と、憲法裁判所の判決を取り上げた、第173回第174回第175回第178回と見比べながら、読んでもらえればと思うが、この法案は、要するに、行政機関が直接ネット切断という罰を科すことが、憲法裁判所で明確に違憲として否定されたので、ネット切断を明確に著作権侵害に対する刑罰の1つとして規定し、警告を送るところまでは公的機関が行うが、そこから先は裁判所に持ち込まれ、罰を科すか否かは最終的には司法判断に委ねるとするものである。

 上でもリンクを張った「P2Pとかその辺の話」の記事や、Nouvel Obsの記事(この記事でリンクを張られている政府調査(pdf)も参照)で、数十分の裁判手続きで年5万件のケースを処理するというフランス政府の見積もりだけで決してバカにならない費用となると書かれているが、5万という数字の根拠も不明であり、本気で運用するとなれば、実際のコストはさらに膨れ上がることだろう。

 費用に関する問題もさることながら、一番の問題は、上の条文にも露骨に現れている、公的機関の役割の不明瞭、推定無罪の原理をないがしろにする推定有罪と、行為に対して明かにバランスの取れていない罰の問題である。

 フランス政府は、とにかく裁判所に判断をさせれば良いのだろうと、最も簡単な簡易裁判所の略式命令で何とかごまかしてネット切断をしようとしているが、公的機関の調書が検察に送られ、そのまま行政機関の作った調書に基づいて裁判がなされるというのは、行政と司法の役割から考えて全くおかしな話であるし、このような調書がまず信用され、反証が無い限り、弁論を必要としない簡易裁判所における略式手続きで、一方的にネット切断という個人に極めて大きな影響を与える罰が科されかねないというのは、推定無罪の原理、弁護を受ける権利を完全にないがしろにするものだろう。このままで、著作権と情報アクセス権という2つの基本的な権利の間できちんとしたバランスが取られるとは到底思えないのである。(無論被告が通常裁判を求めることは可能だろうが、日本と同じく、弁論を省略する略式手続きは、通常軽い罰を科す場合にしか適用され得ないものであり、インターネットにおける著作権侵害という事実の認定からして難しいケースにおいて、ネット切断という個人に対して極めて大きな影響を与える可能性のある罰を与え得る裁判にまで適用されて良いものとは思えない。)

 上院委員会通過版でも、第5種の軽微な著作権違反に対して1ヶ月のネット切断の罰が科され得るのは、警告を受けた者に明らかな懈怠が認められた時とされたり、インターネット・アクセス・プロバイダーへの罰金が3750ユーロから5000ユーロへと増やされたりはしているものの、上記のような、本質的な問題は手つかずのまま残されている。

 この3ストライク法案の第2案は、まがりなりにもネット切断は司法判断によることとしているので、以前の3ストライク法案ほどの大騒ぎにはならないと思うが、フランス国内では既に騒がれており、さらに相当の紆余曲折を経ることになるだろう。今後の国会審議で、権力分立、推定無罪、罪と罰の間のバランス等の最も重要な法原理を尊重する形への修正が図られない限り、この第2案も最後、憲法裁判によって断罪されることになるのではないかと私は予想する。

 次回は、今のところ、表現の自由に関する一般論を書くつもりでいる。

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2009年7月 3日 (金)

目次6

 目次のエントリその6である。(この変わり映えのしないブログを読んで下さっている方々に感謝。)

 次のエントリもじきに載せるつもりだが、また少し時間がかかると思うので、ここで、一通り最近の動きも紹介しておきたいと思う。(児童ポルノ規制法の改正法案審議に関する話はついでと思って書いていたら、ついでとは言えないくらいの分量になってしまったが、特に新しい情報が含まれている訳ではないので、ここに一緒に載せる。既にご存知の方にわざわざ読んで頂くには及ばない話である。)

 表現・情報規制問題では、先週の6月26日の衆議院法務委員会での審議の後、この7月2日に自公と民主党がいつもの政策談合のための密室協議に入り(6日に修正案を提示、9日に再協議の予定のようである。時事通信のネット記事参照)、児童ポルノ規制法改正問題が大炎上を続けている。詳しくは、「チラシの裏(3周目)」、「表現の数だけ人生が在る」、「表現規制について少しだけ考えてみる(仮)」、「カルトvsオタクのハルマゲドン/カマヤンの虚業日記」、「止めろ!規制社会・監視国家ブログ版」、「『反ヲタク国会議員リスト』メモ」、「児童ポルノ関連ソースと統計データ:2ちゃんねるまとめ」、「クリエーター支援&思想・表現・オタク趣味の自由を守護するページ」等々の各関連エントリを見て頂けばと思うが、念のため、ここでも、法務委員会の審議の私なりのまとめを以下に載せておきたいと思う。(以下のまとめは、与党案、民主党案とも隅々まで読み(それぞれ番外その14第162回参照)、国会審議(衆議院TVあるいはニコニコ動画参照)も全て聞いた上で書いている。この極めて重要な法案の審議について、まだご覧になっていないようであれば、次の選挙における参考材料にもなると思うので、是非視聴をお勧めする。なお、各党のこの問題に対する姿勢は、やはりニコ動にアップされている各党の個人電話取材のやり取りからも伺うことができる(ガジェット通信の記事参照)。)

<自民党所属>
○森山真弓議員(栃木県2区):
与党提出者の代表として児童ポルノ改正法案の与党案の主旨を説明。言わずと知れた、表現・情報規制問題における与党最大のガン、国会にいる国民の最大の敵の1人。その本音は、文春の記事にある通り、アニメやマンガ、ゲームも含め、根拠無く一般的かつ網羅的に表現の自由を制限し、自分の気に食わない表現を全て弾圧することにある。

○葉梨康弘議員(茨城県3区):与党案提出者の1人として、宮沢りえの「サンタフェ」であろうが、ジャニーズの写真集・ビデオであろうが、児童ポルノに当たるかも知れないものは全て廃棄するべきと、表現弾圧・焚書を明言。元警察官僚として警察に全幅の信頼を寄せ、足利事件の例を引き合いに出されても、この問題における冤罪の可能性を否定、警察権力の大幅な拡大を全面的に肯定。ロリコンを思想犯罪とし、国民の表現・内心・思想の自由を蹂躙すると宣言。法務委員会の質疑において、最も危険な違憲発言を繰り返し述べていた超危険人物。(その後、葉梨議員は、自身のサイトに話にならない言い訳を掲載するが、そのネットにおける反応・反論については「児童ポルノ関連ソースと統計データ:2ちゃんねるまとめ」のブログ記事をご覧頂ければと思う。葉梨議員は一顧だにしていないが、wired visionの記事にあるように、海外でも冤罪事件は発生している。この記事の事件など、たまたま裁判で問題の写真が児童ポルノに当たらないと判断されたから良かったようなものの、抗弁不能の言いがかりで人生をメチャクチャにされた者も数多くいるのではないかと、この事件は、欧米で猖獗を極めている魔女狩りの被害者の中の氷山の一角に過ぎないのではないかと私は思う。)

○牧原秀樹議員(北関東ブロック):
この問題の本質を本当に理解しているとは到底思えない様子で、葉梨議員の訳の分からない説明に対し、オウム返しに分かったと繰り返す、弁護士資格所有の自民党茶番劇要員。本質を理解していないだけだと思うが、このような答弁では、法曹資格者としての適性が欠けていると言われてもやむを得ないだろう。

<公明党所属>
○富田茂之議員(南関東ブロック):
与党案提出者の1人として、言わずと知れた日本一のカルト教団、創価学会を支持母体とする公明党の立場をそのまま披露し、与党案を全面的に支持。弁護士資格を持っているらしいが、このような違憲法案を作成・提出する時点で、法曹資格に値しない人物であることは明白である。言うまでもなく、公明党が目指すところも、公明新聞の記事にある通り、ネット規制やゲーム規制まで含めた、一般的かつ網羅的なネット検閲と表現弾圧の実施にある。なお、自民党と同じく、自分たちに都合良く選んだ、いつものわずかなキリスト狂国のみの動向を除き、公明党も規制の根拠は全く示していない。

○丸谷佳織議員(北海道ブロック):感情論のみで単純所持を禁止するべきと主張する、公明党茶番劇要員。これも言うまでも無いことと思うが、表現・情報規制問題において、公明党は議員1人1人がどうこうという次元の問題では無く、党全体として極めて危険である。

<民主党所属>
○吉田泉議員(東北ブロック):
野党提出者の代表として、児童ポルノ改正法の民主党案の主旨を説明。なお、吉田泉議員自身は、平成20年4月に衆議院青少年問題委員会でアメリカのシーファー元駐日大使の日本が児童ポルノ大国であるとする言いがかりの根拠を追求し、そのようなことを示すデータは無いという答弁を警察庁から引き出しており、この問題においては、どちらかと言えば慎重派の1人に数えられている。(番外その14参照)

○小宮山洋子議員(東京ブロック):質疑の冒頭で、民主党案を離れて与党案の単純所持規制を支持すると、自身が規制派であることを暴露。両案の良いところを取るべきと妥協を示唆。民主党内の危険人物の1人。

○枝野幸男議員(埼玉県5区):民主党案にも問題はあるものと思うが、所持規制における情報と有体物の特性の違いをきちんと理解し、自民党案の主観的要件のみによる情報の単純所持規制による冤罪発生の危険性を的確に指摘、葉梨議員から数々の違憲発言を引き出す。現行法の2条3号児童ポルノ「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」の曖昧さの問題を指摘。(民主党案の問題点をおけば、無体物である情報と有体物の特性の違いを理解して下さっているという点で、今の国会において、非常に貴重な人物の1人である。このような答弁に拍手を。)

○園田康博議員(東海ブロック):
与党に、何故取得罪とせずに所持罪としたかの理由などを質問。この問題においては鈍感自体罪である気がするが、民主党の可も無く不可も無い質問要員。

<社民党所属>
○保坂展人議員(東京ブロック):
この問題におけるほぼ唯一の良心として、必要な規制はきちんとやるべきだが、それによって表現の自由や内心の自由が萎縮するようなことはあってはならないという立場を明確に表明。主観的要件のみによる児童ポルノの単純所持規制の問題、現行法の2条3号児童ポルノの曖昧さの問題を的確に指摘、根拠無く創作物に規制を及ぼすことについて懸念を表明、芸術性によって社会的に許容されている表現との関係整理も重要と指摘。さらに、イタリアの団体テレフォノ・アルバコーレの調査を引用し、日本が児童ポルノ大国であるという根拠はあるのかと質問、法務省からそのような根拠は無いという答弁を引き出す。(保坂議員の主張については、そのブログ記事1記事2記事3記事4記事5記事6記事7もご覧頂ければと思う。このような答弁について心からの拍手を。また、この話は、社民党ニュースにも載せられている。)

<参考人>
○前田雅英首都大学東京教授:
表現・内心・思想の自由や罪刑法定主義など、自由な民主主義社会の前提となる最重要法原則を全て無視し、与党案を全面的に支持。与党案の「性的好奇心を満たす目的」という主観的要件すら絞りすぎと主張。日本随一の御用刑法学者としての役割を遺漏無く果たす。

○一場順子弁護士:現場の声として、日本において刑事訴訟手続きにおける被害児童の保護が全く考えられてないという問題を指摘、特別な訓練を受けた者がケアを考えて中立的な立場で被害児童の聞き取りを行うようにする、欧米で既に導入されている司法面接制度の導入を提言。現行法の2条3号児童ポルノの定義曖昧さの問題をやはり指摘し、定義を変えないまま単純所持に罰則を課す与党案は非常に問題があると指摘。現実の被害者の存在しないアニメ等の問題は別の問題として切り離して考えるべきと主張。

○アグネス・チャン氏(日本ユニセフ協会):感情論のみで単純所持規制が必要とただひたすら訴える。その論理は徹頭徹尾支離滅裂であり、法律論、政策論として全く取り上げるに値しない。

○田島泰彦上智大学教授:メディア法の専門家として、表現の自由との適切な調整が重要と指摘。自由な市民社会の維持ということの重要性から、単純所持規制と創作物規制に対する懸念を表明。現行法の2条3号児童ポルノの曖昧さの問題を指摘。18歳未満という定義についても別途妥当性を議論する必要があると指摘。

 参考人まで呼び国会審議を行い、現場とまともな識者の意見がきちんと取り入れられるか、国民の代表によって真に理性的・合理的な議論が透明性の高い場できちんとなされるかどうかが正に問われているにも関わらず、今の与野党、自民・公明・民主党がやろうとしているのは、全国民を敵に回す旧来の典型的な密室の妥協・政局政治である。

 今後、与野党間の密室談合で、極めて危険な折衷案が出される可能性が極めて高く(この問題の専門家の1人、奥村徹弁護士がそのブログで示している読みは、残念ながら非常に的確なものだろう)、この問題については非常事態にあると言って良い。私もやれることはしたいと思うが、この問題について懸念を持たれているようであれば、是非、上でリンクを張った各ブログの記事も参考に、各政党や国会議員などに、自分の意見をきちんとした形で伝える手紙やメール等を出して頂ければと思う。

 他のニュースは、この問題と比べるとはっきり言って全て霞むのだが、この1週間は、非常に慌ただしかった。

 主立ったものを紹介して行くと、まず、6月30日には、青少年ネット規制法で規定されている、青少年インターネット基本計画(pdf)(正式名称は、「青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための施策に関する基本的な計画」)が決まった(概要(pdf)47newsの記事も参照)。特にパブコメが反映された様子は無く、児童ポルノサイトブロッキングの検討等の危険な項目は残されたままである。(詳しくは、提出パブコメ参照。)

 同日、文化庁では、第2回の基本問題小委員会が開かれている(internet watchの記事ITproの記事参照)。議論の方向性は見えないが、どこかでいつもの規制強化・利権ありきの議論が始まると思うので、文化庁の動きも気をつけておくに越したことはないだろう。

 7月1日には、「青少年総合対策推進法案」の名前を変え、「子ども・若者育成支援推進法」が成立した(日経のネット記事参照)。中身があまりにも無いため、現時点で非常に危険とまでは言い切れないが、はっきり言って無意味な法律の典型である。ムダな会議や計画をいくら増やそうが、地方自治体で天下り団体を支援機関として選定しようが、ニートや引きこもりの若者の支援には全くつながらないだろう。

 また、同日、警察庁が、委託先のNPO「日本ガーディアン・エンジェルス」で、児童買春や児童ポルノ等に関するネットでの情報提供を受け付けると発表した(時事通信のネット記事参照)。おなじみの半官検閲センターであるインターネット・ホットライン・センターとの関係整理もロクにされていないのではないかと思うが、このガーディアン・エンジェルスにせよ、インターネット・ホットライン・センターにせよ、警察の本来業務を外部委託することがそもそもおかしいのである。このようなことを平然として来る今の警察は全く信用できない。

 7月2日には、総務省が、情報通信審議会のデジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会で、B-CASについて、チップやソフトウェアCASといった新たなシステムを並行して走らせようとする答申案を公表した(ITproの記事AV watchの記事参照)。このような新システムが本当に導入されるのかどうかすら現時点では良く分からないが、第94回にも書いたように、この問題においては、そもそも全国民を視聴者とする無料の地上デジタル放送に暗号化を施していることが問題なので、無意味な現行システムの維持コストに加えて新たなシステムの追加で発生するコストまでまとめて消費者に転嫁される可能性が高いこのような弥縫策は、一消費者として全く評価できないものである。

 少し海外の話も紹介しておくと、アメリカでは、最高裁がハリウッドの上告を退け、ある種のネットワーク録画機はフェアユースで合法とする判決が確定した(マイコミジャーナルの記事参照)。元の判決については、第111回をご覧頂ければと思うが、これは著作権問題において非常に重要な判決の確定である。

 また、中国が、土壇場になって検閲ソフトのPCへの搭載義務付けを見送った(ロイターの記事1記事2参照)。少なくともこの話は延期されたようだが、最近の日本政府、国会の動きを見ていてつくづく思うのは、情報統制・ネット検閲を強力に押し進めている中国の話は対岸の火事では無いということである。

 最後に、特許庁が「仮出願制度」を検討するという日刊工業新聞のネット記事もあったので一緒に紹介しておく。やはり制度導入のニーズは良く分からないが、特許の話なので、最後問題の無いところに落ち着くだろう。

 次のエントリは、違憲判決後のフランスの3ストライクアウト法案の第2案について書こうかと思っていたのだが、あまりにも非道い状況なので、児童ポルノ規制絡みの話を先に取り上げるかも知れない。

(7月4日の追記:J-CASTの記事で奥村徹弁護士が答えているが、今の判例上「性欲を刺激させ興奮させるもの」の解釈から、特に、2条3号児童ポルノとは「性器を写真で大きく、映像で長時間扱ったり、着衣をめくって性器を見せたり、みだらで扇情的なポーズを取っていたりした場合」や「裸の女の子がたくさん写っているケース」などが該当するのであって、医学書や家族の記録のためのヌードは除かれ、股を開いて露出している訳ではない「サンタフェ」も除かれると考えられているようである。

 確かに2条3号の削除は明確化になるだろうが、残っている2号で、それなりに解釈の定着している「性欲を興奮させ又は刺激するもの」という文言を削り、やはり主観的にしか判断され得ない性器等の「強調」のみを要件とするのでは、民主党案は、現行法・与党案とは別の曖昧さを新たに作り出すことにつながるだろう。これは、今までの判例の積み重ねによってそれなりに定着している実務のちゃぶ台返しに等しく、また判例が積み重なるまで実務上相当の混乱を招くことにつながり、恣意的な捜査を招くことにもつながりかねないのではないかと確かに思う。この点について奥村弁護士の指摘は実にもっともである。

 児童ポルノ規制に関しては私も不勉強なところがあり、この可能性を見逃していたのは申し訳ないと思うが、この国会での児童ポルノの定義に関する議論は根本から間違っており、葉梨議員の俺様・警察スタンダード論が論外だったのは言わずもがな、現行法・与党案における不明確性の指摘はともかく枝野議員の民主党案による定義の明確化の議論もズレていたということだろう。本当に「国会での議論がいい加減で、レベルが低いこと」は大問題である。この話に限らず、本当の実務家・専門家の話をロクに聞かずに、密室の政策談合で法律を作り、今の与野党はあらゆる点でムダに世の中を混乱させているが、このような状況は、日本にとって本当に大害悪をもたらしている。

 要するに、この問題においては、与党案の論外の危険性に加え、民主党案も定義の変更の点も含めて危険性があるということであり、元々極めて危険だと思っていたが、出てくるかも知れない妥協案は、さらに危険なものとなると私は認識を新たにした。この児童ポルノ規制問題は、とにかくあらゆる点で危険性が増えこそすれ、決して減ることはないという非道い話である。

 なお、こうなってくると、私自身は、現行法・与党案の「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」であれ、民主党の「殊更に児童の性器等が...強調されている児童の姿態」であれ、主観的にしか判断され得ないものであり、表現の自由に関して合憲限定解釈を当てはめることは決して妥当では無く、いずれにせよ、このように過度に漠然とした曖昧な規定による表現規制はそもそも違憲と考える。現行法についても、その運用で、警察・検察が容疑者の法律上の無知と心理的弱点につけ込んで違憲論を実務的に押さえ込んでいるに過ぎない。今の児童ポルノ規制すら極めて危ういバランスの上にかろうじて立っているのであり、この問題において安易に法改正を行うことは、あらゆる意味で危険極まりないことである。)

(以下、目次)

第151回:イギリス文化省の「デジタル・ブリテン」中間報告書に含まれている海賊版対策
(2009年1月31日)

第152回:ブルーレイを補償金の対象とする著作権施行令のパブコメ募集
(2009年2月 3日)

第153回:文化審議会著作権分科会報告書
(2009年2月 7日)

第154回:ブルーレイ課金著作権法施行令案への提出パブコメ
(2009年2月13日)

第155回:技術情報の保護等の在り方に関する小委員会最終報告書の公表と新しいタイプの商標に関する検討ワーキンググループ報告書(案)に対するパブコメ募集
(2009年2月19日)

第156回:スペインの私的複製補償金関連規定
(2009年2月25日)

第157回:新しいタイプの商標に関する検討ワーキンググループ報告書(案)に対する提出パブコメ
(2009年3月 4日)

第158回:知財本部・知財計画2008の見直しに関する提出パブコメ
(2009年3月 9日)

第159回:著作権法改正法案全文の転載
(2009年3月12日)

第160回:著作権法改正法案の内容
(2009年3月15日)

第161回:フランスの私的複製補償金問題の現状
(2009年3月19日)

第162回:民主党の児童ポルノ2ストライク法案全文の転載
(2009年3月21日)

第163回:イギリス知的財産庁の意見募集ペーパー「デジタル社会における著作権」
(2009年3月24日)

第164回:フランスの3ストライクポリシーを否定する欧州議会のランブリニディス・レポート
(2009年3月29日)

第165回:ポルトガルの私的複製・権利制限関連規定
(2009年4月 3日)

第166回:ポルトガルの私的複製補償金関連規定
(2009年4月 9日)

第167回:アメリカ政府から公表された模倣品・海賊版対策条約の概要資料
(2009年4月15日)

第168回:オランダ著作権法の私的複製関連規定
(2009年4月21日)

第169回:オランダ著作権法の私的複製補償金関連規定・補償金問題の現状
(2009年4月26日)

第170回:内閣府・「青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための施策に関する基本的な計画(素案)」に対するパブコメ募集
(2009年4月29日)

第171回:衆議院文部科学委員会での著作権法改正法案の馴れ合い出来レース審議(2009年5月11日)

第172回:内閣府・「青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための施策に関する基本的な計画(素案)」に対する提出パブコメ
(2009年5月18日)

第173回:フランスの3ストライクアウト法案(その1:著作権検閲機関の創設関連部分他)(2009年5月21日)

第174回:フランスの3ストライクアウト法案(その2:3ストライクアウトルール関連部分)(2009年5月23日)

第175回:フランスの3ストライクアウト法案(その3:その他補足)
(2009年5月28日)

第176回:医療関連発明の保護範囲の拡大・特許制度研究会の検討
(2009年6月 3日)

第177回:参議院文教科学委員会での馴れ合い出来レース審議、ダウンロード違法化を含む著作権法改正案の成立-一億総海賊時代の到来-
(2009年6月13日)

第178回:3ストライクアウトポリシーの本質を否定するフランス憲法裁判所の判決
(2009年6月20日)

第179回:イギリス文化省の「デジタル・ブリテン」最終報告書に含まれている海賊版対策(2009年6月24日)

第180回:知財計画2009の文章の確認
(2009年6月26日)

<番外目次>
番外その15:マジコン事件地裁判決
(2009年3月11日)

番外その16:ダウンロード違法化問題に関する民主党・川内博史議員の質問主意書と政府の答弁書の転載
(2009年4月 6日)

番外その17:Googleブック検索和解案と一般フェアユース条項の無関係
(2009年5月 8日)

番外その18:アダルトゲーム自主規制問題とコンピュータ・ソフトウェア倫理機構の問題(2009年6月 6日)

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