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2009年3月15日 (日)

第160回:著作権法改正法案の内容

 前回、全文を転載したが、項目で並べると、以下のようになる。

  1. ダウンロード違法化(第三十条第一項第三号)
  2. 国立国会図書館におけるアーカイブ化のための権利制限の導入(第三十一条第二項)
  3. 障害者のための権利制限の拡充(第三十七条第三項及び第三十七条の二)
  4. オークションのための権利制限の導入(第四十七条の二)
  5. 通信機器の障害の防止・復旧のための権利制限の導入(第四十七条の五)
  6. 通信・コンピュータにおけるキャッシュのための権利制限の導入(第四十七条の五第二項及び第四十七条の八)
  7. 検索エンジンのための権利制限の導入(第四十七条の六)
  8. 情報解析のための権利制限の導入(第四十七条の七)
  9. 裁定制度の拡充(第六十七条及び第六十七条の二)
  10. 登録原簿の電子化の可能化(第七十八条等関係)
  11. 海賊版頒布申出規制(第百十三条及び第百二十一条の二)

(なお、施行は、平成二十二年一月一日を予定。ただし、登録原簿の電子化の可能化については、政令で決め二年以内に施行。)

 およそ、文化庁が出した文化審議会著作権分科会の報告書(第153回参照)通りではあるが、報告書で早急に措置する必要があると書かれていたにもかかわらず何故かリバース・エンジニアリングのための権利制限は入らず、報告書に詳細がほとんど書かれていなかったにもかかわらず裁定制度の拡充がこの法改正に組み込まれ、別に悪い話ではないが、唐突に登録原簿の電子化の可能化が入っている。

 他にも注意しておいた方が良いことがいろいろとあり、以下、今後のために、この法改正案の細かな点について書いて行く。

(1)ダウンロード違法化(第三十条第一項第三号)
 ダウンロード違法化を規定するのは、法改正案の第三十条第一項第三号である。

第三十条(赤字強調部分を追加) 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
(中略)
三 著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合

 ここで、「自動公衆送信を受信して行う」とあるので、対象はほぼインターネット上のダウンロードとなり、「録音又は録画」とあるので、プログラム等は対象外となると考えられる。また、刑事罰はついていないことにも注意しておいた方が良いが、ほぼ文化庁が当初考えていた通りの内容であり、文化庁の報告書で書かれているところの、立法化の検討時にはよく留意して消費者保護を図るべきという少数意見は、条文上は全く反映されていない。(ただし、文化庁の報告書で入るとされていた、違法録音録画物からの録音録画の違法化は含まれなかった。また、「デジタル方式の録音又は録画」とあるので、アナログ方式の録音録画は対象外となると考えられるが、実質的な意味はあまり無いのではないかと思う。)

(2)国立国会図書館におけるアーカイブ化のための権利制限の導入(第三十一条第二項)
 私は、他の図書館における資料のデジタル化についても認めるべきではないかと私は思っているが、残念ながら、今回の法改正案では、

第三十一条第二項(新規追加) 前項各号に掲げる場合のほか、国立国会図書館においては、図書館資料の原本を公衆の利用に供することによるその滅失、損傷又は汚損を避けるため、当該原本に代えて公衆の利用に供するための電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第三十三条の二第四項において同じ。)を作成する場合には、必要と認められる限度において、当該図書館資料に係る著作物を記録媒体に記録することができる。

と、文化庁の報告書通り、図書館のアーカイブ化のための権利制限の対象は国立国会図書館のみとされている。

(3)障害者のための権利制限の拡充(第三十七条第三項及び第三十七条の二)
 障害者のための権利制限についても、何故このような拡充が今までされて来なかったのか理解に苦しむところである。

(4)オークションのための権利制限の導入(第四十七条の二)
 オークションについても権利制限すること自体は妥当だと思うが、

第四十七条の二(新規追加) 美術の著作物又は写真の著作物の原作品又は複製物の所有者その他のこれらの譲渡又は貸与の権原を有する者が、第二十六条の二第一項又は第二十六条の三に規定する権利を害することなく、その原作品又は複製物を譲渡し、又は貸与しようとする場合には、当該権原を有する者又はその委託を受けた者は、その申出の用に供するため、これらの著作物について、複製又は公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)(当該複製により作成される複製物を用いて行うこれらの著作物の複製又は当該公衆送信を受信して行うこれらの著作物の複製を防止し、又は抑止するための措置その他の著作権者の利益を不当に害しないための措置として政令で定める措置を講じて行うものに限る。)を行うことができる。

と、文化庁が勝手に(といってもドイツの立法例を参考にしたと言うのだろうが)、対象を美術の著作物又は写真の著作物のみに限定していることには注意が必要である。また、この程度の権利制限であれば、著作権者の利益を不当に害しない場合に限る等の条文上のみの限定で良いはずのところを、著作権者の利益を不当に害しないための措置を政令で定めるとしている点もタチが悪い。

(5)通信機器の障害の防止・復旧のための権利制限の導入(第四十七条の五)
 通信機器の障害の防止・復旧のための権利制限も必要なものと思うが、この権利制限も、

第四十七条の五(新規追加) 自動公衆送信装置等(自動公衆送信装置及び特定送信装置(電気通信回線に接続することにより、その記録媒体のうち特定送信(自動公衆送信以外の無線通信又は有線電気通信の送信で政令で定めるものをいう。以下この項において同じ。)の用に供する部分(第一号において「特定送信用記録媒体」という。)に記録され、又は当該装置に人力される情報の特定送信をする機能を有する装置をいう。)をいう。以下この条において同じ。)を他人の自動公衆送信等(自動公衆送信及び特定送信をいう。以下この条において同じ。)の用に供することを業として行う者は、次の各号に掲げる目的上必要と認められる限度において、当該自動公衆送信装置等により送信可能化等(送信可能化及び特定送信をし得るようにするための行為で政令で定めるものをいう。以下この条において同じ。)がされた著作物を、当該各号に定める記録媒体に記録することができる。
一 自動公衆送信等の求めが当該自動公衆送信装置等に集中することによる送信の遅滞又は当該自動公衆送信装置等の故障による送信の障害を防止すること 当該送信可能化等に係る公衆送信用記録媒体等(公衆送信用記録媒体及び特定送信用記録媒体をいう。次号において同じ。)以外の記録媒体であつて、当該送信可能化等に係る自動公衆送信等の用に供するためのもの
二 当該送信可能化等に係る公衆送信用記録媒体等に記録された当該著作物の複製物が滅失し、又は毀損した場合の復旧の用に供すること 当該公衆送信用記録媒体等以外の記録媒体(公衆送信用記録媒体等であるものを除く。)

と非常にややこしいが、要するに、通信業者が、アクセス集中による送信遅延あるいは機器の故障による障害の発生時にサーバーを追加でき(第1号)、故障した機器の復旧を行う際、一時的に他の記録媒体にサーバーの内容を記録することができる(第2号)とするものである。何故ここまで複雑に書かなければならないのかは良く分からないが、本来なら、こういうところこそ、他国の規定を参考にして条文を作るべきところだったろう。

(6)通信・コンピュータにおけるキャッシュのための権利制限の導入(第四十七条の五第二項及び第四十七条の八)
 キャッシュについては、

第四十七条の五第二項(新規追加) 自動公衆送信装置等を他人の自動公衆送信等の用に供することを業として行う者は、送信可能化等がされた著作物(当該自動公衆送信装置等により送信可能化等がされたものを除く。)の自動公衆送信等を中継するための送信を行う場合には、当該送信後に行われる当該著作物の自動公衆送信等を中継するための送信を効率的に行うために必要と認められる限度において、当該著作物を当該自動公衆送信装置等の記録媒体のうち当該送信の用に供する部分に記録することができる。

第四十七条の八(新規追加) 電子計算機において、著作物を当該著作物の複製物を用いて利用する場合又は無線通信若しくは有線電気通信の送信がされる著作物を当該送信を受信して利用する場合(これらの利用又は当該複製物の使用が著作権を侵害しない場合に限る。)には、当該著作物は、これらの利用のための当該電子計算機による情報処理の過程において、当該情報処理を円滑かつ効率的に行うために必要と認められる限度で、当該電子計算機の記録媒体に記録することができる。

と、割とシンプルに書かれている。ただし、通信のキャッシュについては、「業として行う者」という業規制が入っているために、業として行っていない個人サーバーなどについては対象外となると考えられることには注意しておいた方が良い。

 電子計算機という語のみを使っている第47条の8も分かりにくい(デジタルテレビ等各種デジタル視聴機器についてもコンピュータとみなせるので問題は無いとしても)が、そもそも権利を侵害しないとしたら、権利制限は必要ないはずであり、この条文における「これらの利用又は当該複製物の使用が著作権を侵害しない場合に限る。」という限定は、意味不明である。解釈不能だが、このような限定がある以上、実際のケースでダウンロードにおけるキャッシュについてどのような判断がされるかは予測不能であり、ダウンロード違法化問題におけるキャッシュの取り扱いに関する懸念第42回参照)も、この条文では全く払拭されていないと言わざるを得ない。(この点について、どなたか合理的な解釈が可能なら、是非教えて頂きたいものと思う。なお、実質的な意味は無いものと思うが、何故か、通信の場合は「効率的」、コンピュータの場合は「円滑かつ効率的」と書き分けられている。)

(7)検索エンジンのための権利制限の導入(第四十七条の六)
 検索エンジンのための権利制限も遅きに失した感すらあるが、

第四十七条の六(新規追加) 公衆からの求めに応じ、送信可能化された情報に係る送信元識別符号を検索し、及びその結果を提供することを業として行う者(当該事業の一部を行う者を含み、送信可能化された情報の収集、整理及び提供を政令で定める基準に従つて行う者に限る。)は、当該検索及びその結果の提供を行うために必要と認められる限度において、送信可能化された著作物について、記録媒体への記録又は翻案を行い、及び公衆からの求めに応じ、当該求めに関する送信可能化された情報に係る送信元識別符号の提供と併せて、当該記録媒体に記録された当該著作物の複製物のうち当該送信元識別符号に係るものを用いて自動公衆送信を行うことができる。ただし、当該検索結果提供用記録に係る著作物に係る送信可能化が著作権を侵害するものであることを知つたときは、その後は、当該検索結果提供用記録を用いた自動公衆送信を行つてはならない。

と、検索結果の提供に必要な限りにおいて翻案まで含めて認められているのは良いのだが、この権利制限において「業として行う者」と業規制をかけた上で、政令でその基準を定めようとしている点はやはり非常にタチが悪い。

(8)情報解析のための権利制限の導入(第四十七条の七)
 研究目的の権利制限についても、ほぼ文化庁の報告書通りとは言え、

第四十七条の七 著作物は、電子計算機による情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の統計的な解析を行うことをいう。以下この条において同じ。)を行うことを目的とする場合には、必要と認められる限度において、記録媒体への記録又は翻案(これにより創作した二次的著作物の記録を含む。)を行うことができる。ただし、情報解析を行う者の用に供するために作成されたデータベースの著作物については、この限りでない。

と、非常に狭いものとされてしまっている。情報解析分野に限るとしたところで、大量の情報の統計解析のみが情報解析では無いだろう。今後、フェアユースの導入の検討の中でさらなる権利制限の必要性について検討されて行くものと思うが、あまりにも不十分である。さらに、リバース・エンジニアリングのための権利制限が入っていない点もどうかと思う点である。

(9)裁定制度の拡充(第六十七条及び第六十七条の二)
 裁定制度の拡充については、その詳細が文化庁報告書の中に書かれていなかったものの、法改正案には含まれている。

第六十七条(赤字強調部分を追加) 公表された著作物又は相当期間にわたり公衆に提供され、若しくは提示されている事実が明らかである著作物は、著作権者の不明その他の理由により相当な努力を払つてもその著作権者と連絡することができない場合として政令で定める場合できないときは、文化庁長官の裁定を受け、かつ、通常の使用料の額に相当するものとして文化庁長官が定める額の補償金を著作権者のために供託して、その裁定に係る利用方法により利用することができる。

第六十七条の二(新規追加) 前条第一項の裁定(以下この条において単に「裁定」という。)の申請をした者は、当該申請に係る著作物の利用方法を勘案して文化庁長官が定める額の担保金を供託した場合には、裁定又は裁定をしない処分を受けるまでの間(裁定又は裁定をしない処分を受けるまでの間に著作権者と連絡をすることができるに至つたときは、当該連絡をすることができるに至つた時までの間)、当該申請に係る利用方法と同一の方法により、当該申請に係る著作物を利用することができる。ただし、当該著作物の著作者が当該著作物の出版その他の利用を廃絶しようとしていることが明らかであるときは、この限りでない。

と、申請中の利用についての規定が加わった点は良いのだが、著作権者と連絡がつかない場合を政令で定めるとしているので、実際にどこまで使える制度になるかは政令次第となるだろう。

(10)登録原簿の電子化の可能化(第七十八条)
 これは唐突に入って来たものと思うが、法改正案には、

第七十八条第二項(新規追加) 著作権登録原簿は、政令で定めるところにより、その全部又は一部を磁気ディスク(これに準ずる方法により一定の事項を確実に記録しておくことができる物を含む。第四項において同じ。)をもつて調製することができる。

と、登録原簿の電子化を可能とする条文もある。第129回で書いたように、著作権登録制度の問題に対する即効性の抜本的な解決策は無いものの、こうした地道な電子化・省力化の取組自体は決して悪いことではない。

(11)海賊版頒布申出規制(第百十三条及び第百二十一条の二)
 海賊版の譲渡告知行為の規制も、文化庁の報告書では、インターネットのみとされていたが、

第百十三条(赤字強調部分を追加) 次に掲げる行為は、当該著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。
 国内において頒布する目的をもつて、輸入の時において国内で作成したとしたならば著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権の侵害となるべき行為によつて作成された物を輸入する行為
 著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為によつて作成された物(前号の輸入に係る物を含む。)を、情を知つて、頒布し、頒布若しくは頒布の目的をもつて所持し、若しくは頒布する旨の申出をし、又は業として輸出し、若しくは業としての輸出の目的をもつて所持する行為

第百二十一条の二(赤字強調部分を追加) 次の各号に掲げる商業用レコード(当該商業用レコードの複製物(二以上の段階にわたる複製に係る複製物を含む。)を含む。)を商業用レコードとして複製し、その複製物を頒布し、その又はその複製物を頒布の目的をもつて所持し、又はその複製物を頒布する旨の申出をした所持した者(当該各号の原盤に音を最初に固定した日の属する年の翌年から起算して五十年を経過した後において当該複製、頒布、所持又は申出又は所持を行つた者を除く。)は、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

と、実際に出てきた条文では、インターネットのみでなく、放送、新聞、雑誌やチラシ等についても含め、全てをカバーするものとなっていることに注意しておいた方が良いだろう。

 結局、最大の問題はダウンロード違法化だと思うが、規制緩和と強化が同時に行われているとは言え、各種権利制限は文化庁が今までさぼっていたことを示しているに過ぎず、研究目的利用等の各種公正利用のための権利制限も狭すぎ、条文がおかしいためキャッシュの問題すら解消しているかどうか怪しく法改正案の全ての条文を見ても、このような立法は、知財計画へのパブコメでも書いた通り、8千件以上のパブコメの7割方で示されたダウンロード違法化に対する国民の反対・懸念を一欠片も払拭していないものである。 

法制小委員会へのパブコメで書いた通り、一昨年のパブコメで示された、①そもそも著作権という私法が私的領域に踏み込むこと自体がおかしい、②家庭内の複製行為を取り締まることはほとんどできず、このような法改正には実効性がない、③通常の録音録画物について違法合法を区別することはできない、④特に、インターネット利用では、キャッシュとして自動的になされるコピーがあるなど、違法合法を外形的に区別できないため、ダウンロードが違法と言われても一般ユーザーにはどうしたら良いのかさっぱり分からず、このような法改正は社 会的混乱しかもたらさない、⑤ダウンロードはその行為に1個人しか絡まないため、エスパーでも無い限り「情を知って」の要件は証明も反証もできないものであり、この要件は司法判断でどう倒されるか分からず、場合によってはインターネットへのアクセスそのものに影響を及ぼし兼ねないこのような法改正は極めて危険である、⑥そもそも違法流通は送信可能化権による対応が可能である上、この送信可能化権との関係でダウンロードによる損害額がどう算定されるのかもよ く分からない、⑦パロディの著作物のダウンロードについて、ごく普通のユーザーにまでリスクを負わせるのはおかしい、⑧研究など公正利用として認められるべき目的の私的複製まで影響を受ける、といった各種の指摘を、この法改正案は全て無視している。)

 繰り返しになるが、特に、一人しか行為に絡まないダウンロードにおいて、「その事実を知って」なる要件は、エスパーでもない限り証明も反証もできない無意味かつ危険な要件であり、技術的・外形的に違法性の区別がつかない以上、このようなダウンロード違法化は法規範としての力すら持ち得ないものである。このような法改正を押し通せば、結局、ダウンロード以外も含め著作権法全体に対するモラルハザードがさらに進行するだけであり、これを逆にねじ曲げてエンフォースしようとすれば、著作権検閲という日本国として最低最悪の手段に突き進む恐れしかない。どう転ぼうが、このような形でなされるダウンロード違法化は百害あって一利ない最低の法改正である。

 選挙がどうなるかも良く分からない中、今後の予定は流動的だが、もし審議(経過)にかかるようなら、衆議院文部科学委員会→衆議院本会議→参議院文教科学委員会→参議院本会議の順に進むはずである。個人でできることは限られるが、今後も適宜様子を見ながら、膨大な数のパブコメで指摘されたダウンロード違法化の問題点は改正条文でも全く払拭されておらず、改正法案から第30条第1項第3号を取り除く修正が必須であることを、各党や国会議員等へ地道に指摘して行くことになるだろう。

 また、立法プロセス自体の改革はまだまだ先のことになるだろうが、少なくとも国民の目が注がれていることを、立法に携わる人間に嫌でも分からせるようにして行かなくてはならない。来るべき選挙の参考とするべく、著作権法の改正案が審議にかかったら、これらの委員会や本会議の審議の様子は全てチェックして、各党の各議員の発言について分かり易い形にまとめるつもりである。

 一つだけニュースも紹介しておくと、ITmediaの記事の通り、フランスの3ストライク法案の下院での審議も揉めている。Le Mondeの記事によると、フランスの多数派工作によって理事会レベルで一旦は取り除かれた、3ストライクアウト法案を否定するディレクティブ修正案(第116回参照)が、欧州議会によって通信ディレクティブ案の中に再度取り入れられたようであり、この3ストライク法案の審議がさらに難航することは必死ではないかと思う。

 次回は、また補償金に関する国際動向の話を取り上げたいと思っている。

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コメント

こんばんわ。
どうもお久しぶりです。

個人的には頭の痛い児ポ法の話題と共にこちらについても遅筆と稚拙な文ながらも一応出しては見ましたが、最近の国会は暴走気味としか思えないので、本当ここ最近ネガティブ気味になってダメですね;
本当このような事例を見ると余りこの言葉自体好きじゃないですが、もはや民主主義国家の根底すら疑いたくなりますね…。

それはそうと勝手に向こうの方メモってしまい申し訳ないです。
いつもながら読んでて参考になるのが多くてつい;
本当、的確な突っ込みをなさっておられるので個人的には何気に勉強になっていたりします。

それでは色々申し訳ないです。
失礼しました。

投稿: りず | 2009年3月17日 (火) 00時47分

りず様

コメントありがとうございます。
私自身、大したことを書いているつもりは全くないので、単なるメモ用に使っているだけのtwitterも含め何かの参考になっているようなら本当に幸いです。
同じく頭が痛いのはどうしようも無いですが、私の方でも、りずさんのブログでの的確な突っ込みにはいつも感心していますよ。

投稿: 兎園 | 2009年3月17日 (火) 22時36分

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