第152回:ブルーレイを補償金の対象とする著作権施行令のパブコメ募集
ブルーレイを私的録画補償金の対象とする施行令案がパブコメにかかった(3月4日〆切。文化庁のリリース、電子政府の該当ページ、意見募集要領(pdf)、施行令案概要(pdf)、新旧対照条文(pdf)。AV Watchの記事、ITproの記事、internet watchの記事、cnetの記事、マイコミジャーナルの記事も参照)。
ブルーレイは現行のDVD課金の延長にあり、法律改正をせずとも、このような政令改正で追加出来てしまうので、法律が悪いと言ってしまえばそれまでだが、私的録音録画小委員会であれだけ私的録音録画補償金のそもそもの意義が問われたにもかかわらず、そのことを全て棚上げにしたあげく、消費者の頭越しに補償金の対象拡大をするのは本当にどうかと思う。(同じことは第102回のついでにも少し書いたが。)
既に「Copy&Copyright Diary」で細かな突っ込みをされている(エントリ1、エントリ2)ので、リンク先を読んで頂くだけでも十分だと思うが、この施行令案は技術的な要件のみで対象を限定しており、この施行令案がそのまま実施されれば、ほぼブルーレイ課金は恒久的なものとして既成事実化されてしまうことになるだろう。
だが、わずかに緩和されたとは言え、今なお地上デジタル放送にはダビング10という不当に厳しいコピー制限がかかったままである。繰り返しになるが、こうした実質的に全国民に転嫁されるコストで不当に厳しい制限を課している機器と媒体にさらに補償金を賦課しようとするのは、不当の上塗りである。
確かに今はコピーフリーのアナログ放送もあるが、ブルーレイにアナログ放送を録画することはまずもって無いだろうし、そのアナログ放送も2011年には止められる予定となっている。ダビング10への移行によってコピーが増え自分たちに被害が出ると言って権利者団体は大騒ぎをしたが、移行で多少混乱が生じたことを除けば、前後で何かが大きく変わった気はせず、現時点でブルーレイ課金に合理性があるとは私には全く思えない。
ブルーレイ課金についても、補償金のそもそもの意義が問われた中で、その解決をおざなりにしたまま、中途半端にこのような対象拡大をするべきではないという意見を私は出すつもりである。
(政令で料率は決まっていないのでパブコメの対象外だとは思うが、上でリンクを張った各種記事によると、文化庁はブルーレイの料率を現行のDVDと同じとすることを目論んでいるようである。消費者から意見を出す機会はもう無いかも知れないので、料率についても突っ込んでおいても良いかも知れない。)
最後に、EU議会の海賊版対策報告書案に関する記事が「P2Pとかその辺の話」で紹介されているので、興味のある方はリンク先をご覧頂ければと思う。以前、フランスの3ストライク法案を否定する議決をEU議会はした訳だが、その後、フランスの多数派工作によって、その修正条項は除かれ、今度は逆に著作権検閲を是認するかのような報告書案がスペイン出身の議員から出されているようであり、EU議会レベルでのロビー活動も激しくなっていると見え、ヨーロッパの情勢も混沌としている。
(2月4日の追記:コメントで、2008年6月の文科省と経産省で合意されたものという文書に対するリンクを張って頂いた。補償金問題に関する重要な参考資料の一つであり、国の告示等に類し、著作権の権利の目的とならないものと私は判断するので、以下に転載する。出所は確認できていないが、偽物にしてはできすぎており、確かに情報公開請求なりで公開されたものではないかと私も思う。しかし、暫定措置として合意したと各省が言ったところで、そのような合意には本当の拘束力は無い。現行の私的録音録画補償金は、現行の政令指定の仕組みでは一旦対象を追加してしまうと、また各省の合意が無ければそれを取り除くことができないという点でも本質的な問題を抱えているのである。(匿名希望様、情報ありがとうございます。))
(2月6日の追記:権利者団体が集まっていつものようにブルーレイ課金を求める記者会見を開いたようであり、念のために各種記事(AV watchの記事、ITmediaの記事、ITproの記事、日経TechOnの記事、Phile webの記事、権利者団体連合のリリース)へのリンクを張っておく。他にも突っ込みどころは山ほどあるが、2点だけ突っ込んでおくと、著作権法第30条第2項には「政令で定めるもの」という限定が明文で入っており、日本の私的録音録画補償金制度は、私的録音録画が出来たら何でもかんでも補償金という制度には元からなっていないし、両省合意の重みを言うなら、ブルーレイの政令指定が「暫定的な措置」であることが明確に担保されなくてはならないだろう。いつも通りと言えばいつも通りだが、いい加減この程度で人を欺けると思わないでもらいたいものである。)
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コメント
6月の大臣同士の合意の内容が情報公開法の手続きで公開されたそうです(経済産業省より)。RapidShareにうpしてみました。
投稿: 匿名希望 | 2009年2月 4日 (水) 06時48分