第146回:経産省・技術情報の保護等の在り方に関する小委員会「営業秘密に係る刑事的措置の見直しの方向性について(案)」に対する提出パブコメ
前回の落ち穂拾いで書き漏もらしたが、経産省の産業構造審議会・知的財産政策部会・技術情報の保護等の在り方に関する小委員会の報告書案も1月30日〆切でパブコメ(電子政府の該当ページ、意見公募要領(pdf)、報告書案本文(pdf)、参考資料(pdf))にかかっていた。
この検討会の方向性については、第107回と第140回でも取り上げ、既にパブコメも書いて出しており、さらに細々とした突っ込みをするほどのことはないので、大したものではないが、提出したパブコメだけここに載せておく。
今年も、児童ポルノ法改正やダウンロード違法化問題などの動きに加え、特許庁が漠然と大幅な法改正の検討を言い出す(日経のネット記事参照)など、知財政策・情報政策にかかる暗雲は残念ながら当分霽れそうにない。次回からも、気になっていることについて書いていくつもりである。
(1月7日夜の追記:先日文化庁で過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会が開かれているが、保護期間延長問題について先送りのまま報告案がとりまとめられたようである(internet watchの記事参照)。)
(以下、提出パブコメ)
氏名:兎園
連絡先:
意見:
・該当箇所
報告書案「営業秘密に係る刑事的措置の見直しの方向性について(案)」全体
・意見内容
不正競争防止法における、現行の営業秘密侵害罪における「不正の競争の目的」の一般的な「図利加害目的」への目的要件の差し替え及び営業秘密侵害に関する刑事処罰範囲の拡大に反対する。
・理由
不正競争防止法の法目的は、その第1条にも書かれているように、あくまで不正の競争の防止にあるのであって、一般的な図利加害行為の防止にあるのではない。営業秘密侵害罪における目的要件を「不正の競争の目的」から一般的な「図利加害目的」へ差し替えるような法改正は、そもそもの法目的・法主旨・保護法益を超えるものとして完全に不適切なものである。
不正アクセスによって取得した営業秘密をインターネット上で一般公開することによって保有者に損害を与えようとすること等が営業秘密侵害罪の対象外であることなどが問題であるとしているが、このような一般的な不正アクセス行為・図利加害行為はそもそも不正アクセス防止法・刑法の威力業務妨害罪等によって対処されるべき問題であって、不正競争防止法の改正によって対処されるべきものではない。
営業秘密を管理する任務を負う者が、一般的な図利加害目的で、その管理任務に違背して営業秘密を領得することについても、やはり、契約や刑法の背任罪等によって対処されるべき問題である。
そもそもの法目的・法主旨・保護法益を超えることにつながる、営業秘密侵害罪の目的要件の差し替え及び刑事処罰範囲の拡大については慎重の上に慎重を期すべきである。
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