第143回:文化庁天下りリスト
先日、文化庁の私的録音録画小委員会が開かれ、ダウンロード違法化の方針を含む報告書がまとめられた(ITmediaの記事、ITproの記事1、記事2、internet watchの記事、日経のネット記事、47newsの記事、マイコミジャーナルの記事)。
文化庁は、ダウンロード違法化問題について8千件以上集まったパブコメを完全に無視し去ったのである。まだ、12月25日の法制問題小委員会(開催案内)、来年1月6日の過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会(開催案内)、さらにその後2月くらいまでに開かれるだろう上位審議会の著作権分科会などが残っているが、文化庁や文化審議会には期待するだけムダだろう。
ダウンロード違法化の問題点は、法制小委員会への提出パブコメや第126回でも書いており、ここで繰り返すことはしないが、文化庁が多くの国民の意見を無視して有害無益な結論を出す根はどこにあるのかと考えていくと、第81回でも書いたように、私の考えはどうしても天下りによる腐敗に行き着く。
第81回では、衆議院の天下り調査(正式名称は「中央省庁の補助金等交付状況、事業発注状況及び国家公務員の再就職状況に関する予備的調査」)から、計算した合計数字だけを示したが、より詳しい情報も何かの役に立つかも知れない、この調査から文化庁関連部分を抜き出してここに載せておきたいと思う。(行政府から国会に提出された資料として、国会図書館等で誰でも読めるものであり、単に事実を示しているに過ぎず、著作物性はないものと私は判断するが、再配布等を行う場合は自己責任で行って頂けるようお願いする。)
資料を見るにあたっては、以下の点に注意頂きたい。、
- 調査全体は非常に膨大であり、ここで抜き出したのはあくまで文化庁所管団体部分のみである。
- 平成18年4月1日現在での調査であり、現時点のものではない。(例えば、Wikipediaの注にもあるように、JASRAC理事長はもう天下りではない。)
- およそのことは分かるが、いわゆる公益法人等の各省庁の所管団体への公務員再就職者数を示しているだけで、天下りの実態を本当に正確に表している訳ではない。公務員再就職者の給与等も不明であり、中には他愛のない再就職も含まれていると考えられる。
- 文化庁分の合計は257人(内訳:非常勤職員1人、常勤職員22人、非常勤役員225人、常勤役員9人。天下り先:公益法人121。)。(文科省全体では、文部科学省全体では、天下り人数は3007人、天下り先団体数934と跳ね上がり、それも大学などの学校が多く、文科省全体としては、教育行政の方が病根は深いことをうかがわせる。)
何度でも私は繰り返すが、法改正や規制を盾にした天下りなど再就職ポストを用いた汚職以外の何物でもない。自分たちの利権のみ伸ばせれば良いとばかりに、天下り役人どもはダウンロード違法化のような有害無益な規制強化を押し進めようとするが、その前に、文化庁のような規制官庁と規制業界の天下りによる癒着・腐敗関係の精算こそ必要であると私は言い続けるだろう。
第41回に載せたダウンロード違法化問題に関する著作権フリー資料もほとんど手を加える必要性を感じない。現時点では文化庁が単に方針を示しただけで、閣議決定・国会提出すらされた訳ではなく、今の政局の混迷具合を見ても、ダウンロード違法化問題の先は長い。著作権問題の中では、ダウンロード違法化問題と一般フェアユース条項の導入は、選挙の争点としても良いくらいの大問題だと私は思っている。
最後に、最近の知財関連のニュースも少し紹介しておくと、カナダ政府は、ブランクCDへの補償金料率を21セントから29セントに引き上げようとしているようである(「P2Pとかその辺の話」の紹介記事、cyberpresseの記事(フランス語))。オーディオカセットについては料率を据え置きとしている点などを見ても、iPhoneに対する課金が最高裁判決によって止まったため、やはり消費者のあずかり知らないところで、カナダでも珍妙な妥協が図られようとしているのではないかと私は思う。
なお、権利者(放送局)側が最高裁に持ち込むと公言しているので、まだ片付いたとは言えないが、「まねきTV」のサービスを合法とする判決が知財高裁でも支持された(internet watchの記事、ITmediaの記事、知財情報局の記事)ので、念のために記事へのリンクを張っておく。
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