第139回:総務省・「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」最終取りまとめ(案)に対するパブコメ募集(その5:目次・その他)
前々々々回、前々々回、前々回、前回に引き続き、総務省の「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」最終取りまとめ(案)(12月17日〆切。総務省のリリース、意見募集要領、電子政府の該当ページ、internet watchの記事参照。)の話である。
細かな文章への突っ込みを入れていく前に、この報告書は長すぎるので目次を作っておきたいと思う。
(1)最終取りまとめ(案)目次
1.はじめに
(1)背景と経緯(第3ページ~)
(2)最終取りまとめのねらい(第6ページ~)2.安心を実現する基本的枠組の整備
(1)安心ネット利用のための基本法制の整備等(第9ページ~:児童ポルノ規制、プロバイダーの責任制限範囲の拡大、検閲機関創設案、天下り先の第3者機関が定める標準的な違法情報対策の仕組み・技術・違法性の判断の押しつけ等について、第135回、第136回参照)
(2)国際連携推進のための枠組の構築(第47ページ~:第138回参照)
(3)様々な連携の推進(第54ページ~:第138回参照)3.民間における自主的取組の促進
(1)違法・有害情報対策の推進(第63ページ~:「e-ネットづくり!」宣言・総務省版インターネット・ホットラインセンター創設案等について、第137回参照)
(2)児童ポルノの効果的な閲覧防止策の検討(第91ページ~:児童ポルノ規制・ブロッキングについて、第135回参照)
(3)コンテンツ・レイティングの普及促進(第100ページ~)
(4)違法・有害情報対策に資する技術開発支援(第106ページ~)4.利用者を育てる取組の促進
(1)家庭・地域・学校における情報モラル教育(第111ページ~)
(2)ペアレンタルコントロールの促進(第121ページ~)
(3)コンテンツ事業者等による利用者啓発活動促進(第125ページ~)
(4)利用者を育てる取組の協調的な推進(第129ページ~)
(5)違法・有害情報対策の基礎となる調査の実施(第133ページ~:第138回参照)
(2)その他
本当にこの報告書案はあまりにも問題点が多く、全部は到底指摘し切れない。以下に指摘するのは、あまりにも目に余る部分だけである。
「1.はじめに」の「(2)最終取りまとめのねらい」第6ページで、
さらに、硫化水素による自殺誘引サイトの問題や、2008年6月8日に起きた秋葉原での事件における電子掲示板上の犯罪予告など、インターネット上の違法・有害情報対策として、民間の自主的取組に任せるのではなく、むしろ規制を強化すべきとの声を後押しするような事案も引き続き発生している。
と書いているが、これは、マスコミの一方的な印象操作に悪乗りする形で、ネガティブな事件のみを取り上げ、ネット規制の強化が正当化されるかのような、ひどい印象操作を含む記載である。
(「3.民間における自主的取組の促進」第65ページの
現行では必ずしも違法ではないが、インターネット上の流通が望ましくないとして、削除等の何らかの対応が必要であると認識されている情報がある。例えば、違法行為を目的とした書き込み、人を自殺に誘引する情報の書き込み、公共の安全や秩序に対する危険を生じさせるおそれのある情報の書き込み、さらには、いわゆる「学校裏サイト」における個人の誹謗中傷の書き込みなどである。近年、これらの情報の流通をきっかけに、マスコミに大きく取り上げられるような事案が頻発しており、インターネットの規制を強化すべきとの議論を拡大させる主な要因となっている。
も全く同様のひどい印象操作である。)
また、「2.安心を実現する基本的枠組の整備」の「(1)安心ネット利用のための基本法制の整備等」の第13ページで、
とりわけ、青少年の多くが利用している携帯電話については、2006年11月及び2007年12月に総務大臣から携帯電話事業者・PHS事業者に対して導入促進に向けた取組を進めるよう要請を行われたこともあり、積極的な取組が行われてきたが、その過程で、青少年の利用実態(コミュニティサイトの普及等)に照らし、フィルタリングによる閲覧制限の範囲が広範に過ぎるなど、現在の携帯電話フィルタリングが有する課題も浮き彫りになった。こうしたことから、本検討会において、現状の携帯電話フィルタリングを改善するための方策について議論が行われ、4月25 日、現状のモデルを改善し、より良いフィルタリングサービスの在り方を提言した中間取りまとめとなった。この中間取りまとめを踏まえた取組を行うよう、総務大臣から携帯電話事業者等に対して3度目となる要請が行われた。
と自分たちの大臣要請について勝手に積極的評価をしようとしているが、当時大臣要請がもたらしたものは無用の混乱のみであり、はっきり言って全く評価できないものだったと私は断言できる。
第15ページで、
総務大臣要請を受け、携帯電話事業者・PHS事業者は、2008年9月12日、フィルタリングサービスの改善に向けた今後の取組内容につき詳細を発表した。それによれば、既に第三者機関(EMA)による認定が行われているサイトについては、各社とも2009年1月から2月にかけて現在提供しているフィルタリングサービスへの反映を行う予定である。
と、フィルタリングによるブラックリスト商法を後押しするかのような書き方をしていることも注意する必要がある。番外その7のついでに少し書いたことだが、そもそも、ブラックリスト方式ならば、まずブラックリストに載せる基準の明確化から行うべきなので、不当なブラックリスト指定については、携帯電話事業者がそれぞれの基準に照らし合わせて無料で解除する簡便な手続きを備えていればそれで良く、健全サイト認定第3者機関など必要ないはずなのである。ブラックリスト指定を不当に乱発し、認定機関で不当に審査料をせしめ取り、さらにこの不当にせしめた審査料と、正当な理由もなく流し込まれる税金で天下り役人を飼うのだとしたら、これは官民談合による大不正行為以外の何物でもなく、このようなブラックリスト商法の正当化は許されないと繰り返し指摘して行かなくてはならない。(無論、それ以前に、青少年ネット規制法は、あらゆる者から反対されながら、有害無益なプライドと利権を優先する一部の寄生議員と規制官庁の思惑のみで成立したものであり、速やかに廃止が検討されるべきと言わなくてはならないだろうが。)
第30ページで、
エ)刑罰法規の厳正な執行の必要性等
社会的法益侵害情報は、すべて何らかの刑罰法規に違反するものであり、これらの情報の流通の防止は、本来、当該情報の発信者あるいは積極的に当該違法情報の流通を奨励・幇助する一部のプロバイダ等を取り締まることによって達成すべきものである。積極的に違法情報の流通を奨励、幇助するプロバイダ等はごく一部と考えられ、それらのプロバイダ等に対する取締まりの強化の余地はあるものと思われる。したがって、刑罰法規の厳正な執行は社会的法益侵害情報への対策として重要である。
で一方的な見方で刑罰法規による取り締まり強化を唱えている点も極めて危険である。レンタルサーバー管理者を著作権幇助罪で逮捕された「第(3)世界」事件のことを考えても、情報の違法性の本質的な相対性を忘れ、情報の流通という姑息な言葉で情報の提供者が誰かという最も重要な論点をごまかし、幇助といった曖昧な概念で刑罰法規の適用範囲を広げることはインターネットの法的安定性を大きく揺るがす危険極まりないことである。
半官天下り検閲センターのインターネット・ホットラインセンターそのもの問題点はさんざん繰り返してきたが、第47~48ページの、
例えば、インターネット・ホットラインセンターが加盟する国際組織INHOPE(theInternational Association of Internet Hotlines )では、違法・有害情報に対する国際的な取組を強化するため、加盟国間で相互通報を行っている。2007年中に同センターにあった違法情報の通報のうち海外のサーバに蔵置されていたものは3,307件であるところ、同年3月から12月までの10か月間にわが国から海外の加盟ホットラインに対して行った通報は児童ポルノ情報及びわいせつ情報350件と一部に限られている。
このように、国内法の適用範囲に限界があることから、一部の悪質なコンテンツ事業者やISP等は、サーバを海外に蔵置することにより、法の適用を逃れているとの指摘もなされている。また、違法情報に対する国内の対応を強化すればするほど、悪意ある発信者が海外に発信元を移転させるインセンティブが働くこととなるため、違法情報の閲覧防止措置を講じるに当たり、国内外で連繋のとれた執行体制を構築することが求められている。
という印象操作も本当にひどいものである。350件以外は、インターネット・ホットラインセンターが他国に通報しないという判断をしただけだろうと考えられるにもかかわらず、勝手に全通報件数との比較を行って、海外対応に難があるかの如き記載をしているのは本当に許し難い。このような判断を勝手に行っていること自体、この半官検閲センターの問題点を露骨に示しているだろう。
インターネット・ホットラインセンターについては、「3.民間における自主的取組の促進」の第75~76ページの、
「電子掲示板等の管理者」など、より広範囲のプレイヤーが、自主的に違法・有害情報対策に取り組むためには、現状では、①各種ガイドラインを自発的に参照し、自らの取組に反映させること、②新聞紙上等で報道される大手企業等の取組を導入すること、③インターネット・ホットラインセンターの協力依頼があった場合に応じること、④携帯電話インターネット上でのCGMサイトであればEMAの認定を受けることなどが考えられる。このような現状は「電子掲示板等の管理者」にとって十分とはいえない。
(中略)
インターネット・ホットラインセンターは発足以来二年余りを経過し、その取組への理解は急速に進んでいるが、削除依頼を受けた場合、違法情報はともかく有害情報については、ホットラインセンターと見解が異なる場合もあるようだ。ホットラインセンター側からすれば依頼した後は、それぞれの事業者のポリシーに基づく自主的措置を期待しているのだろうが、一方で、依頼された側からすれば、自社のポリシーと合わず、削除を行わないという選択肢をとった場合、ホットラインセンターの見解に反することになる。インターネット・ホットラインセンターの位置づけや、事業者等の協力関係の在り方が、より明確になっていることが望ましい。
という記載もひどいものである。インターネット・ホットラインセンターは単なる一民間団体に過ぎず、しかもこの団体に直接害が及んでいる訳でもないため、削除を要請できる訳がなく、勝手に有害と思われる情報を収集して、直接削除要請などを行う民間団体があるということ自体おかしいと考えるべきであるという最も基本的なことも忘れ、国民の基本的な権利をないがしろにしても自身の利権拡大のみ大事とばかりに、あらゆる者はこの半官検閲センターの言うなりに情報を削除しろという傲慢を示すとは、本当に天下り厄人の考えは気違い染みている。削除を依頼されたところで、自身のリスクで削除をしないという判断をすることは当然あって良いことである。
第73ページの脚注で、プロバイダー責任制限法(正式名称は、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」)の「特定電気通信役務提供者」と、青少年ネット規制法(正式名称は、「少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」)の「特定サーバー管理者」を
「特定電気通信役務提供者」と「特定サーバー管理者」は同義と考えて良い。
と断定している事もあまりにも軽率という他ない。それぞれの条文を読めば分かるが、「特定電気通信設備を用いて他人の通信を媒介し、その他特定電気通信設備を他人の通信の用に供する者」(「特定電気通信役務提供者」)と、インターネットを利用した公衆による情報の閲覧の用に供されるサーバーを用いて、他人の求めに応じ情報をインターネットを利用して公衆による閲覧ができる状態に置き、これに閲覧をさせる役務を提供する者(「特定サーバー管理者」)は同義では全くない。実際に法運用を行っているはずの官庁が公の報告書にこのようなことを堂々と書くのだから本当に呆れる他ない。
さらに言えば、第107ページの、
また、技術開発成果の利用者へのオープンな提供については、一般に開発費用の回収が必要な民間ベースの技術開発には馴染みにくく、どちらかといえば公的な機関の役割として親和性が高い。
という記載なども、税金を垂れ流す言い訳に必死なのだろうが、オープンソースなどの最近のオープンな民間の技術開発の流れを完全にないがしろにするものだろう。
この報告書は、ここ数年で出された役所の報告書の中でも、恐らく類を絶すると言っても過言ではないくらい非道いものである。この報告書には腐り切った天下り厄人の垂れ流す膿がそこら中に溢れ、読んでいて本当に胸がむかついて来る。天下り利権に芯まで蝕まれた厄人にもはや付ける薬はないのかも知れないが、彼らが厚顔にも踏みにじっている国民の本当の安全と安心を返せ、今すぐ返せという言葉を連中の顔面に叩きつけたいと私は心から思っている。
また、このパブコメも提出次第ここに載せるつもりである。
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コメント
なぜネット上規制なの?、現行で日本の報道各社が日本にとって重要な、国籍法改案という日本を侵略されかねない重要事項も伝えないなど、ひた隠しや捏造が氾濫している中で、ネット規制なの?。
優先的に取り締まるべきは、現報道局らでしょ?。現実から目をそむけて、自分たち売国的報道の都合の良いような法案を作ろうとしているようにしか見えません。
もっと、根本に目を向けてください。
投稿: daice | 2008年12月17日 (水) 19時40分
daice様
コメントありがとうございます。
限られるとは言え、個人レベルでもできることはいろいろとあると思います。1票の権利は皆にあり、パブコメも誰にでも出せるものです。選挙も延びてはいますが、どこまでも延びるものではありません。是非、今後も政策動向に注意し、お思いのことを、各種パブコメや国会議員等への手紙などにきちんとした形で直接お書き下さい。
投稿: 兎園 | 2008年12月17日 (水) 21時58分