第138回:総務省・「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」最終取りまとめ(案)に対するパブコメ募集(その4:国際連携・産学連携組織・基礎調査関連部分)
前々々回、前々回、前回に引き続き、総務省の「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」最終取りまとめ(案)(本文1、2、3、4、5)のパブコメ(12月17日〆切。総務省のリリース、意見募集要領、電子政府の該当ページ、internet watchの記事参照。)の話である。
引き続き、大枠の方向性について、あといくつか注意しておくべき箇所の指摘をしておきたい。
(1)国際連携関連部分
まず、国際連携については、「2.安心を実現する基本的枠組の整備」中、第47ページ以下の「(2)国際連携推進のための枠組の構築」で書かれている。
本来国際連携や情報交換などは地道にやってくれればそれで良い話なのだが、放っておくと役所は必ず、自分たちの都合の良い例だけを取り上げて国際動向・潮流を騙り、危険な規制利権の強化を図ってくるので、この部分についても釘を差しておく必要があると私は思っている。
特に、この部分については、昨今の情勢を考えると、児童ポルノ規制に関して、児童ポルノの閲覧の犯罪化と創作物の規制まで求めている「子どもと青少年の性的搾取に反対する世界会議」の根拠のない狂った宣言を国際動向として一方的に取り上げ、規制強化を正当化することなどあってはならないという意見を、かえって、例えそれが児童ポルノであろうと、情報の単純所持・アクセス・ダウンロード・収集・取得・閲覧等の規制・犯罪化は、恣意的にしか運用され得ず、利用者から見て回避不能の危険極まるものであり、新たな思想犯罪を作り出す非人道的なものとして絶対導入されるべきでないと、既にこのような非人道的な規制を導入している諸国は即刻このような規制を廃止するべきであると、そもそも最も根本的なプライバシーに属し、何ら実害を生み得ない個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ること自体、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の国際的かつ一般的に認められている基本的な権利からあってはならないことであると、日本政府から国際的な場において各国に積極的に働きかけてもらいたいという意見を出さなくてはならないと考えている。
また、もし青少年ネット規制法について国際的に紹介することがある場合には、この法律は、ほぼあらゆる者から反対されながら、有害無益なプライドと利権の保持に走った一部の寄生議員と規制官庁の思惑のみによって成立したものであるという経緯や、そもそも成立するべきではなく今でも廃止するべきとする意見もあるということも含め紹介するべきという意見も一緒に出したいと思っているところである。
(2)産学連携組織関連部分
また、「2.安心を実現する基本的枠組の整備」中、第54ページ以下の「(3)様々な連携の推進」で書かれていることもさっぱり要領を得ないが、その結論部分に相当する第61ページの「3)産学連携の結節点となる組織の必要性」で、
実際、インターネットの利用環境整備は、これまでも民間の自主的取組として努力がなされてきた。しかし、これらは直面する問題への対症療法的取組であったり、各施策間の有機的な連携が不足していたり、ボランタリーに参加する主体も一部のネット関連企業にとどまっていたりと、暫定的かつ個別の取組と言わざるを得ない側面がある。また、企業のCSRが及ぶ範囲も都市部に限られるなど、どうしても地域的に偏り、インターネット利用環境の整備の取組についても様々な格差が生じることが懸念される。
そのため、今後は、これまで企業や教育機関、NPO等によって個々に行われてきた取組を有機的に連携させることや、単体では社会貢献活動を行うことが困難な中小の企業、意欲ある個人、地域のボランティアグループ、また、インターネットを利用する様々な企業からも、さらに多くのプレイヤーが参画できるようにした上で、総合的かつ戦略的な取組とするとともに、日本全国あまねく実施できるように配慮することで、民間における自主的取組や国民のリテラシー強化の活動を質・量ともに向上させることが不可欠である。
このための仕組みとして、産学の自主的な取組及び啓発活動の結節点となる組織が必要と考えられる。次章以降、検討を進める中で、その必要性が繰り返し確認されることになるが、この新しい組織が、本最終取りまとめを踏まえて策定される「安心ネットづくり」促進プログラムの実際の受け皿として機能する「基本的枠組み」として期待されるものである。
と、前回取り上げた「e-ネットづくり!」宣言の実際の受け皿となる組織の話がここに書かれている。そもそもニーズの不明な官製キャンペーンなど不要であるという意見を出すつもりであるが、この部分について、天下りへの国民の血税のムダな浪費はもはや到底許されることではなく、この産学連携組織を天下り先とすることなど絶対あってはならないという念押しもしておきたいと思っている。
(3)基礎調査関連部分
本来、情報モラル・リテラシー教育に関する「4.利用者を育てる取組の促進」に書かれていることのみに注力するべきだと思うのだが、この部分についても第133ページ以下の「(5)違法・有害情報対策の基礎となる調査の実施」に書かれている、2009年度から取り組むとしている基礎調査だけは注意しておいた方が良い。
理念的には、第135ページに、
また、ネット利用増大の結果としてしばしば用いられる犯罪率の増加自体についても、科学的な検証が必要である。インターネットを活用した社会活動が増加しているなかで、当該活動全般の増加率よりも明らかに急速なペースでインターネットを利用した犯罪やインターネット上の情報流通による被害が増大しているのであればともかく、そうではない場合にまで、犯罪の増加等の社会問題の原因を安易にインターネットに求めることについては、慎重に考えるべきである。加えて、インターネットの普及がもたらす情報検索の効率化、離れた場所にいる人との交流の拡大、自己表現手段の多様化といった利点についても、公正な判断を行うことが求められる。
さらに、リテラシーを十分に有する者とそうでない者では、同じ違法・有害情報に接していても被害の程度は大きく異なる。調査により得られた結果に基づき、子どものインターネット利用や健全育成について比較的関心の薄い層を主要なターゲットとして、有効なアプローチを行っていくことが必要であり、その意味からも実態把握は重要である。
また、昨今、インターネット上の違法・有害情報対策として法規制を導入すべきとの議論がなされることが増えているが、例えば、既存のある法規制がどの程度の実効性を持っているのかを調査することにより、その法規制が手段として有効であるか否かを判断する検証モデルの構築なども視野に入れることが考えられる。
と結構まともなことが書かれているのだが、役人の情報リテラシーの低さを考えると、実際のモニター調査項目は、内閣府の印象操作調査のようにひどいものが並ぶという懸念が極めて強いのである。(去年の内閣府の調査における印象操作のひどさについては、警察庁研究会提出パブコメにも書いた。)
この部分についても、特に、役所の調査項目作成への関与を極力無くし、予断を与えないように調査項目の作成には細心の注意を払うこと、出来れば複数の調査機関によって項目の偏向をチェックすこと、対面調査で直接規制の是非を問うような片寄りしか生まない手法を取らないこと、ウェブ調査も含め、幅広く調査を行うことといった意見を出しておかなくてはならないと私は感じている。
後、細かな文章への突っ込みも少ししておきたいと思うので、次回もこの報告書の話である。
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