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2008年12月27日 (土)

第145回:今年の落ち穂拾い

 臨時国会も閉幕し、役所も休みに入り、今年のイベントはほぼ終わったと思うので、今年最後のエントリとして落ち穂拾いをやっておきたいと思う。

 この12月22日に、総務省で、デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会が開かれ、B-CASの見直しを検討(配布資料AV watchの記事ITproの記事日経TechOnの記事参照)したようだが、アナログ停波期限(2011年7月24日)まであと2年半あまりしかないという中で、ソフトウェア方式など悠長に方式変更の検討をしている有様なのは唖然とする他ない。このような調子では、地デジの混乱は今後も加速して行くことだろう。

 12月24日には、知的財産戦略本部会合(議事次第朝日のネット記事参照。)が開かれ、ユーザーに対する意義が結局書き込まれなかったのは残念だが、一般フェアユース条項を導入することが適当とする報告書(「デジタル・ネット時代における知財制度の在り方について」、概要)が無事承認されている。この一般フェアユース条項の導入の先行き自体不透明であることに加え、この報告書には、DRM回避規制の強化やプロバイダに対する標準的な著作権侵害防止技術の押しつけといった危険な規制強化案もそのまま残されており、引き続き知財本部の動向には注意を払っておいた方が良いだろう。

 12月25日には、文化庁で、法制小委員会も開かれているが、案の定、ダウンロード違法化問題については文化庁にスルーされた様である(「Copy & Copyright Diary」のブログ記事参照)。

 マイナーな話になるが、知財法の一つである種苗法に関して、農水省で12月12日に種苗分科会(概要)が開かれ、告示や審査基準の改訂といった実務的な変更が決まっている。

 さらに、国内の話では、青少年ネット規制法のフィルタリング推進機関登録省令が1月19日〆切でパブコメにかかっている(電子政府の該当HP意見公募要領(pdf)省令案(概要)(pdf)省令案(本文)(pdf))ので、念のためにリンクを張っておく。

 また、課長級以上の公務員の天下りについて、今年の状況の公表がされた(内閣府の公表資料(pdf)総務省のリリース独立行政法人等への天下り状況総務省分(pdf)警察庁分(pdf))が、退職者1423人中、公益法人等に就職したのが590人(41・4%)と、平成14年以来過去最多となるなど、天下り役人どもが混乱に乗じて自分たちの天下り利権を図々しく伸ばしていることが見て取れる結果となっている。ビジネス上全く役に立たない薹が立った官僚を喜んで再雇用する会社など皆無であろうから、公益法人等だけではなく、営利企業などへの再就職もほとんど天下りと考えた方が良く、再就職の判明している1239人は内実ほとんど天下りではないかと私は思う。課長級以下も考えると、規模にはさらに膨らむものと思われ、天下りの規模と天下り利権による政策判断の歪みを考えるだけで常に私は慄然とする。(例えば、総務省分を見ると、B-CAS問題と関係するところで、放送関係の規格を決めている電波産業会には今年も総務省の役人が天下りしていると分かる。なお、今年の文部科学省分は何故かまだ公表されていない。)

 世界に目を転じると、アメリカでも、対ユーザー訴訟戦略が破綻し、RIAAは3ストライクポリシーに転じ、インターネットサービスプロバイダー(ISP)への圧力を強めようとしている(CNETの記事ITmediaの記事ロイターの記事参照)。3ストライクポリシーに関しては、フランスの動向が特に要注意だが、アメリカ最大の著作利権団体の一つであるRIAAが3ストライクポリシーに転向したことで、来年以降、世界的に、著作権検閲+サービス制限・ネット切断型の違法コピー対策をどうするかということで混乱することになるのではないかと私は思う。この3ストライクポリシーも混乱必至の対策であり、フランスの状況等、分かる限りで今後も紹介して行きたいと思っている。

 あまりフランスの話は紹介されていないようなのでついでに紹介しておくと、フランスでも音楽著作権団体SACEMと動画共有サイトDailymotionのライセンス契約が行われたというニュースもあった(AFPの記事numeramaの記事01.netの記事参照)。アメリカ(4大レーベルとYoutube。internet watchの記事参照)、イギリス(音楽著作権団体MCPS-PRS AllianceとYoutube。MCPS-PRSのリリース参照)、ドイツ(音楽著作権団体GEMAとYoutube。GEMAのリリース参照)、日本(JASRAC・イーライセンス・JRCとYoutube、JASRAC・イーライセンスとニコニコ動画。Youtubeのリリースニコニコ動画のリリース1リリース2参照)に続く形であり、ワーナーとYoutubeとの契約更新が最近決裂した(CNETの記事ITmediaの記事ITproの記事参照)ものの、全体としては、動画共有サイトにおける契約による権利処理はほぼ世界的な流れとなりつつある。(見かけ上著作権戦争の形を取るので分かりにくいが、ワーナーとYoutubeの交渉決裂がある意味象徴的に示しているように、この点については、今後、動画共有サイト事業者による優越的地位の濫用も問題の一角を形成して行くことになるだろう。)

 海賊版拡散防止条約については、この12月17日に関係国会合が開かれている(経産省のリリース外務省のリリース参照)。EUが交渉の透明性を求めており(IP watchの記事、「P2Pとかその辺の話」のブログ記事参照)、次回3月にモロッコで開かれる予定の関係国会合で、透明性を上げる議論がなされることを期待したいが、今のところ何とも言えない状況である。

 私的録音録画補償金を超える、ドイツの奇怪なスキャナー等への私的複製補償金の話だが、ドイツでは、この12月に、ドイツのメーカー団体BITKOMが、新法におけるスキャナーやプリンター等の料率を発表している(BITKOMのリリースheise onlineの記事参照)。ドイツでは相変わらず、消費者不在の中、メーカーと権利者団体の間で訳の分からない妥協が図られ続けているようであり、このようなやり方で問題の本質が片付く訳はなく、スキャナー等へのバカげた補償金賦課に消費者が気づいたところで、ドイツでも補償金問題は再燃することだろう。

 漠然としたものだが、イギリス政府も著作権法の未来について2月までパブコメを取っている(イギリス知財庁のリリース参考資料(pdf))ので、念のために、リンクを張っておく。

 今年は、青少年ネット規制法が成立し、児童ポルノ規制強化法案が国会に提出され、ダウンロード違法化を文化庁が押し進めようとし続けるなど、極めて非道い一年だった。今の政局と役所の混乱ぶりを見ても、来年も波乱の年となることだろうし、このブログで書くことが尽きることは全くないだろう。

 それでは皆様、良い年を。政官業に巣くう全ての利権屋と非人道的な規制強化派に悪い年を。そして、このつたないブログを読んで下さっている全ての人に心からの感謝を。

(12月27日夜の追記:12月24日に予定されていた総務省の「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」での違法有害報告書の取りまとめは延期になったようだが、この12月22日に犯罪対策閣僚会議12月22日の議事次第)で、問題箇所の変更はないまま、「犯罪に強い社会の実現のための行動計画2008」が決定されている(internet watchの記事も参照)。児童ポルノ規制やネット規制、著作権規制の話は言わずもがな、共謀罪等についても来年は勝負の年になるのだろう。)

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2008年12月23日 (火)

第144回:知財本部・第3期基本方針策定に関する意見募集に対する提出パブコメ

 内容は今まで提出して来た各種パブコメをまとめただけだが、念のため、第140回で紹介した知財本部の知的財産戦略に関する政策レビュー及び第3期基本方針の策定に関する意見募集(12月25日〆切)に対する提出パブコメも、ここに載せておく。

(以下、提出パブコメ)

(1)全体について
(意見概要)

 基本方針において、文化庁のような利権官庁に轡をはめ、知財の規制緩和のイニシアティブをきちんと取るとし、かえって各利権官庁に踊らされるまま、国としての知財政策の決定を怠り、知財政策の迷走の原因を増やすことしかできないようであれば、知財本部とその事務局は速やかに解散するとするべきである。

(意見全文)
 最終的に国益になるであろうことを考え、各業界の利権や省益を超えて必要となる政策判断をすることこそ知財本部とその事務局が本当になすべきことのはずであるが、今までの知財計画を見ても、このような本当に政策的な決定は全くと言って良いほど見られない。知財保護が行きすぎて消費者やユーザーの行動を萎縮させるほどになれば、確実に文化も産業も萎縮するので、知財保護強化が必ず国益につながる訳ではないということを、著作権問題の本質は、ネットにおける既存コンテンツの正規流通が進まないことにあるのではなく、インターネットの登場によって新たに出てきた著作物の公正利用の類型に、今の著作権法が全く対応できておらず、著作物の公正利用まで萎縮させ、文化と産業の発展を阻害していることにあるのだということを知財本部とその事務局には、まずはっきりと認識してもらいたい。特に、最近の知財・情報に関する規制強化の動きは全て間違っていると私は断言する。

 今まで通り、規制強化による天下り利権の強化のことしか念頭にない文化庁、総務省、警察庁などの各利権官庁に踊らされるまま、国としての知財政策の決定を怠り、知財政策の迷走の原因を増やすことしかできないようであれば、基本方針において、知財本部とその事務局は、自ら解散するとしてもらいたい。そうでなければ、是非、各利権官庁に轡をはめ、その手綱を取って、知財の規制緩和のイニシアティブを取ってもらいたい。

 特に、知財政策においても、天下り利権が各省庁の政策を歪めていることは間違いなく、知財政策の検討と決定の正常化のため、文化庁から著作権関連団体への、総務省から放送通信関連団体・企業への、警察庁からインターネットホットラインセンター他各種協力団体・自主規制団体への天下りの禁止を知財本部において決定してもらいたい。(これらの省庁は特にひどいので特に名前をあげたが、他の省庁も含めて決定してもらえるなら、それに超したことはない。)

 インターネットにおけるこれ以上の知財保護強化はほぼ必ず有害無益かつ危険なものとなるということをきちんと認識し、真の国民視点に立った知財の規制緩和の検討が知財本部でなされることを期待する。

(2)II-2 模倣品・海賊版対策の強化(コンテンツを除く)について
(意見概要)

 模倣品・海賊版拡散防止条約の検討で、プライバシーや情報アクセスの権利といった基本的権利を守るとする条項を盛り込むよう日本から各国に積極的に働きかけてもらいたい。

(意見全文)
 「模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)(仮称)について、そのような条項がよもや真面目に検討されることはないと思うが、もしどこかの国が、税関において個人のPCや携帯デバイスの内容をチェック可能とすることや、インターネットで著作権検閲を行う機関を創設することといった、個人の基本的な権利をないがしろにする条項をこの条約に入れるよう求めて来たときには、そのような非人道的な条項は除くべきであると、かえって、プライバシーや情報アクセスの権利といった国際的・一般的に認められている個人の基本的な権利を守るという条項こそ条約に盛り込むべきであると日本から各国に積極的に働きかけてもらいたい。

(3)IV-1 コンテンツの創造・流通の促進について
(意見概要)

 一般フェアユース条項について、可能な限り早期に導入することを求める。有害無益なダウンロード違法化及び著作権・著作隣接権の保護期間延長に反対する。基本方針において、一般フェアユース条項の導入を推進すると、また、ダウンロード違法化や保護期間延長などを絶対行わないと明記してもらいたい。

(意見全文)
 一般フェアユース条項について、ユーザーに対する意義からも、可能な限り早期に導入することを求める。特に、インターネットのように、ほぼ全国民が利用者兼権利者となり得、考えられる利用形態が発散し、個別の規定では公正利用の類型を拾い切れなくなるところでは、フェアユースのような一般規定は保護と利用のバランスを取る上で重要な意義を持つものである。なお、フェアユースの導入によって、私的複製の範囲が縮小されることはあってはならないことである。

 権利を侵害するかしないかは刑事罰がかかるかかからないかの問題でもあり、公正という概念で刑事罰の問題を解決できるのかとする意見もあるようだが、かえって、このような現状の過剰な刑事罰リスクからも、フェアユースは必要なものと私は考える。現在親告罪であることが多少セーフハーバーになっているとはいえ、アニメ画像一枚の利用で別件逮捕されたり、セーフハーバーなしの著作権侵害幇助罪でサーバー管理者が逮捕されたりすることは、著作権法の主旨から考えて本来あってはならないことである。政府にあっては、著作権法の本来の主旨を超えた過剰リスクによって、本来公正として認められるべき事業・利用まで萎縮しているという事態を本当に深刻に受け止め、一刻も早い改善を図ってもらいたい。

 また、一人しか行為に絡まないダウンロードにおいて、「情を知って」なる要件は、エスパーでもない限り証明も反証もできない無意味かつ危険な要件であり、技術的・外形的に違法性の区別がつかない以上、ダウンロード違法化は法規範としての力すら持ち得ない。このような法改正を押し通せば、結局、ダウンロード以外も含め著作権法全体に対するモラルハザードがさらに進行するだけであり、これを逆にねじ曲げてエンフォースしようとすれば、著作権検閲という日本国として最低最悪の手段に突き進む恐れしかない。どう転ぼうが、ダウンロード違法化は百害あって一利ない最低の法改正である。プログラムも含め、あらゆる著作物のダウンロード違法化に、私は今なお完全に反対する。

 違法ダウンロードによる権利者の経済的不利益が大きいとする根拠も薄弱であり、去年から状況にほとんど変化はなく、ダウンロード違法化の合理的な根拠は今なおほとんど全くと言って良いほど何もないにもかかわらず、去年の私的録音録画小委員会中間整理に対して集まった8千件以上のパブコメの7割方で示された国民の反対・懸念を完全に無視し、文化庁は、その文化審議会において、ダウンロード違法化の方針を含む報告書を最後まで押し通そうとしている。このような非道極まる民意無視は到底許されるものではなく、知財本部の基本方針において、文化庁の検討を止め、ダウンロード違法化を絶対にしないと必ず明記してもらいたい。

 そして、保護期間延長問題についても、これほど長期間にわたる著作権の保護期間をこれ以上延ばすことを是とするに足る理由は何一つなく、著作権・著作隣接権の保護期間の延長はしないと明記してもらいたい。特に、流通事業者に過ぎないレコード製作者と放送事業者の著作隣接権については、保護期間を短縮することが検討されても良いくらいである。

 基本方針においては、権利者団体等が単なる既得権益の拡大を狙ってiPod等へ対象範囲を拡大を主張している私的録音録画補償金問題についても、補償金のそもそもの意味を問い直すことなく、今の補償金の矛盾を拡大するだけの私的録音録画補償金の対象拡大を絶対にしないということも明記してもらいたい。

 さらに付言しておくと、閲覧とダウンロードと所持の区別がつかないインターネットにおいては、例え児童ポルノにせよ、情報の単純所持等を規制することは有害無益かつ危険なもので、憲法及び条約に規定されている「知る権利」を不当に害するものである。このような情報の単純所持等の規制に私は反対する。一人しか行為に絡まない、個人的な情報アクセスに関する限り、「情を知って」、「性的好奇心を満たす目的で」、「みだりに」などの精神的要件は、エスパーでもない限り、証明も反証もできないものであり、法律上の要件として客観性を全く欠き、恣意的な運用しか生みようがない危険極まりないものである。このような情報の単純所持等の規制の危険性は回避不能であり、罪刑法定主義にも反する。このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、著作権法・通信法等の関係法規に明文で書き込むことを検討してもらいたい。架空の表現に関する規制も同時に議論されているが、ごく一部の国内団体等の根拠のない、保護法益すら無視した一方的な主張で、憲法で保障されている表現の自由が規制されることなどあってはならないことである。

(4)IV-2 コンテンツの海賊版対策について
(意見概要)

 模倣品・海賊版拡散防止条約の検討で、プライバシーや情報アクセスの権利といった基本的権利を守るとする条項を盛り込むよう日本から各国に積極的に働きかけてもらいたい。

(意見全文)
 「模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)(仮称)について、そのような条項がよもや真面目に検討されることはないと思うが、もしどこかの国が、税関において個人のPCや携帯デバイスの内容をチェック可能とすることや、インターネットで著作権検閲を行う機関を創設することといった、個人の基本的な権利をないがしろにする条項をこの条約に入れるよう求めて来たときには、そのような非人道的な条項は除くべきであると、かえって、プライバシーや情報アクセスの権利といった国際的・一般的に認められている個人の基本的な権利を守るという条項こそ条約に盛り込むべきであると日本から各国に積極的に働きかけてもらいたい。
(II-2 模倣品・海賊版対策の強化(コンテンツを除く)に対しても同じことを書いたが、ここに対しても念のため書いておく。)

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2008年12月17日 (水)

第143回:文化庁天下りリスト

 先日、文化庁の私的録音録画小委員会が開かれ、ダウンロード違法化の方針を含む報告書がまとめられた(ITmediaの記事ITproの記事1記事2internet watchの記事日経のネット記事47newsの記事マイコミジャーナルの記事)。

 文化庁は、ダウンロード違法化問題について8千件以上集まったパブコメを完全に無視し去ったのである。まだ、12月25日の法制問題小委員会(開催案内)、来年1月6日の過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会(開催案内)、さらにその後2月くらいまでに開かれるだろう上位審議会の著作権分科会などが残っているが、文化庁や文化審議会には期待するだけムダだろう。

 ダウンロード違法化の問題点は、法制小委員会への提出パブコメ第126回でも書いており、ここで繰り返すことはしないが、文化庁が多くの国民の意見を無視して有害無益な結論を出す根はどこにあるのかと考えていくと、第81回でも書いたように、私の考えはどうしても天下りによる腐敗に行き着く。

 第81回では、衆議院の天下り調査(正式名称は「中央省庁の補助金等交付状況、事業発注状況及び国家公務員の再就職状況に関する予備的調査」)から、計算した合計数字だけを示したが、より詳しい情報も何かの役に立つかも知れない、この調査から文化庁関連部分を抜き出してここに載せておきたいと思う。(行政府から国会に提出された資料として、国会図書館等で誰でも読めるものであり、単に事実を示しているに過ぎず、著作物性はないものと私は判断するが、再配布等を行う場合は自己責任で行って頂けるようお願いする。)

 資料を見るにあたっては、以下の点に注意頂きたい。、

  • 調査全体は非常に膨大であり、ここで抜き出したのはあくまで文化庁所管団体部分のみである。
  • 平成18年4月1日現在での調査であり、現時点のものではない。(例えば、Wikipediaの注にもあるように、JASRAC理事長はもう天下りではない。)
  • およそのことは分かるが、いわゆる公益法人等の各省庁の所管団体への公務員再就職者数を示しているだけで、天下りの実態を本当に正確に表している訳ではない。公務員再就職者の給与等も不明であり、中には他愛のない再就職も含まれていると考えられる。
  • 文化庁分の合計は257人(内訳:非常勤職員1人、常勤職員22人、非常勤役員225人、常勤役員9人。天下り先:公益法人121。)。(文科省全体では、文部科学省全体では、天下り人数は3007人、天下り先団体数934と跳ね上がり、それも大学などの学校が多く、文科省全体としては、教育行政の方が病根は深いことをうかがわせる。)

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 何度でも私は繰り返すが、法改正や規制を盾にした天下りなど再就職ポストを用いた汚職以外の何物でもない。自分たちの利権のみ伸ばせれば良いとばかりに、天下り役人どもはダウンロード違法化のような有害無益な規制強化を押し進めようとするが、その前に、文化庁のような規制官庁と規制業界の天下りによる癒着・腐敗関係の精算こそ必要であると私は言い続けるだろう。

 第41回に載せたダウンロード違法化問題に関する著作権フリー資料もほとんど手を加える必要性を感じない。現時点では文化庁が単に方針を示しただけで、閣議決定・国会提出すらされた訳ではなく、今の政局の混迷具合を見ても、ダウンロード違法化問題の先は長い。著作権問題の中では、ダウンロード違法化問題と一般フェアユース条項の導入は、選挙の争点としても良いくらいの大問題だと私は思っている。

 最後に、最近の知財関連のニュースも少し紹介しておくと、カナダ政府は、ブランクCDへの補償金料率を21セントから29セントに引き上げようとしているようである(「P2Pとかその辺の話」の紹介記事cyberpresseの記事(フランス語))。オーディオカセットについては料率を据え置きとしている点などを見ても、iPhoneに対する課金が最高裁判決によって止まったため、やはり消費者のあずかり知らないところで、カナダでも珍妙な妥協が図られようとしているのではないかと私は思う。

 なお、権利者(放送局)側が最高裁に持ち込むと公言しているので、まだ片付いたとは言えないが、「まねきTV」のサービスを合法とする判決が知財高裁でも支持された(internet watchの記事ITmediaの記事知財情報局の記事)ので、念のために記事へのリンクを張っておく。

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2008年12月16日 (火)

第142回:総務省・「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」最終取りまとめ(案)に対する提出パブコメ

 総務省の「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」最終取りまとめ(案)に対してパブコメを提出したので、ここに載せておく。

(以下、提出パブコメ)

1.氏名及び連絡先
氏名:兎園(個人)
連絡先:

2.意見要旨
(児童ポルノ規制について)
 児童ポルノ対策について今以上の規制は必要なく、児童ポルノを理由とした新たな規制、特に情報・表現に関する国民の基本的な権利の重大な侵害となる単純所持規制・創作物規制の検討に反対する。やはり情報・表現に関する国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないブロッキングについても、その実証実験すらするべきではない。
 児童ポルノの閲覧の犯罪化と創作物の規制まで求める「子どもと青少年の性的搾取に反対する世界会議」の根拠のない狂った宣言を国際動向として一方的に取り上げ、児童ポルノ規制の強化を正当化することなどあってはならない。かえって、児童ポルノの単純所持規制・創作物規制といった非人道的な規制を導入している諸国は即刻このような規制を廃止するべきと、そもそも最も根本的なプライバシーに属し、何ら実害を生み得ない個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ること自体、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の国際的かつ一般的に認められている基本的な権利からあってはならないことであると、日本政府から国際的な場において各国に積極的に働きかけてもらいたい。

(ネット規制について)
 青少年ネット規制法の廃止及び出会い系サイト規制法の法改正前の形への再改正を求める。
 半官天下り検閲センターに他ならないインターネット・ホットラインセンターの廃止を求める。
 「e-ネットづくり!」宣言について、そもそも民間が求めていない、「民間による自主的な取組」など取りやめるべきである。検討が必要であるとしたら、今ですら訳が分からないほど沢山ある各種ガイドラインの整理削減のみである。天下り利権の強化・税金のムダな浪費にしかつながらない、ニーズを無視した「相談センター」の拡充に反対する。「違法・有害情報通報受付」と称する、総務省版の半官天下り検閲センターをさらに作ることなど論外である。

(プロバイダーの責任制限について)
 プロバイダー責任制限法に関し、被侵害者との関係において、刑事罰リスクも含めたプロバイダーの明確なセーフハーバーについて検討することを求める。特に、著作権侵害について、最近の事件から考えて、間接侵害や著作権侵害幇助罪まで含めて、著作権法にきちんとした明確なセーフハーバーが早急に作られるべきである。特に、そのセーフハーバーの要件において、標準的な仕組み・技術や違法性の有無の判断を押しつけるような、権利侵害とは無関係の行政機関なり天下り先となるだろう第3者機関なりの関与を必要とすることは、検閲の禁止・表現の自由等の国民の権利の不当な侵害に必ずなるものであり、絶対にあってはならないことである。

(報告書案全体について)
 この狂った報告書案の危険性は小手先の修正では治癒不能であり、情報モラル・リテラシー教育に関する「4.利用者を育てる取組の促進」以外全て白紙に戻してゼロから検討し直されるべきである。今後は、恣意的な運用しか招きようのない危険な規制強化の検討ではなく、ネットにおける各種問題は情報モラル・リテラシー教育によって解決されるべきものという基本に立ち帰り、政府において、地道な施策のみに注力する検討が進むことを期待する。

3.意見及び理由
(1)「2.(1)安心ネット利用のための基本法制の整備等」(第9~47ページ)関連

意見:
 「社会的公益侵害」・「権利侵害」という意味不明の区別を用いた検討を白紙に戻し、プロバイダー責任制限法に関し、被侵害者との関係において、刑事罰リスクも含めたプロバイダーの明確なセーフハーバーについて検討するべきである。特に、著作権侵害について、最近の事件から考えて、間接侵害や著作権侵害幇助罪まで含めて、著作権法にきちんとした明確なセーフハーバーが早急に作られるべきである。特に、そのセーフハーバーの要件において、標準的な仕組み・技術や違法性の有無の判断を押しつけるような、権利侵害とは無関係の行政機関なり天下り先となるだろう第3者機関なりの関与を必要とすることは、検閲の禁止・表現の自由等の国民の権利の不当な侵害に必ずなるものであり、税金のムダな浪費と技術の発展の阻害につながるだけの危険かつ有害無益な規制強化であり、絶対にあってはならないことである。

理由:
 表現・情報の自由は民主主義の最重要の基礎であり、被害者を伴わない表現・情報に対する規制にほとんど正当化の余地はないのであり、そもそもここで社会的法益侵害と権利侵害という類型分けを使うこと自体不適切である。

 報告書案中で、プロバイダー責任制限法の適用範囲を拡大するニーズが多くないと勝手に決めつけているが、意味不明の社会的法益侵害と権利侵害の区別による是非や発信者との関係での責任の問題だけを取り上げているから奇妙なことになるので、プロバイダーの責任の問題においては、被侵害者との関係において、民事的な責任制限だけではなく、刑事罰リスクまで含め、明確なプロバイダーのセーフハーバーを作ることは非常に重要である。

 特に、そのセーフハーバーの要件において、標準的な仕組み・技術や違法性の有無の判断を押しつけるような、権利侵害とは無関係の行政機関なり天下り先となるだろう第3者機関なりの関与を必要とすることは、検閲の禁止・表現の自由等の国民の権利の不当な侵害に必ずなるものであり、税金のムダな浪費と技術の発展の阻害につながるだけの危険かつ有害無益な規制強化であり、絶対にあってはならないことである。

 さらに言えば、動画投稿サイト事業者がJASRACに訴えられた「ブレイクTV」事件や、レンタルサーバー事業者が著作権幇助罪で逮捕され、検察によって姑息にも略式裁判で50万円の罰金を課された「第(3)世界」事件等を考えても、今現在、間接侵害や著作権侵害幇助のリスクが途方もなく拡大し、甚大な萎縮効果・有害無益な社会的大混乱が生じかねないという非常に危険な状態にある。間接侵害事件や著作権幇助事件においてネット事業者がほぼ直接権利侵害者とみなされてしまうのでは、プロバイダー責任制限法によるセーフハーバーだけでは不十分であることを考え、間接侵害や著作権幇助罪も含め、著作権侵害とならない範囲を著作権法上きちんと確定することが喫緊の課題である。

 また、論外の印象操作等、ほとんど報告書案を全て白紙に戻すべきと私が思っている所以の記載を以下に指摘して行く。なお、以下で指摘して行くのは余りにも目に余る部分だけであるとも念を押しておく。

 そもそも、青少年ネット規制法は、あらゆる者から反対されながら、有害無益なプライドと利権を優先する一部の議員と官庁の思惑のみで成立したものであり、速やかに廃止が検討されるべきものである。また、出会い系サイト規制法の改正は、警察庁が、どんなコミュニケーションサイトでも人は出会えるという誰にでも分かることを無視し、届け出制の対象としては事実上定義不能の「出会い系サイト事業」を定義可能と偽り、改正法案の閣議決定を行い、法案を国会に提出したものであり、他の重要法案と審議が重なる中、国会においてもその本質的な問題が見過ごされて可決され、成立したものであり、憲法上の罪刑法定主義や検閲の禁止にそもそも違反している、今回の出会い系サイト規制法の改正についても、今後、速やかに元に戻すことが検討されるべきである。

 携帯フィルタリングによるブラックリスト商法を大臣要請で後押しするかのような書き方がされているが、ブラックリスト方式ならば、まずブラックリストに載せる基準の明確化から行うべきなので、不当なブラックリスト指定については、携帯電話事業者がそれぞれの基準に照らし合わせて無料で解除する簡便な手続きを備えていればそれで良く、健全サイト認定第3者機関など必要ないはずである。ブラックリスト指定を不当に乱発し、認定機関で不当に審査料をせしめ取り、さらにこの不当にせしめた審査料と、正当な理由もなく流し込まれる税金で天下り役人を飼うのだとしたら、これは官民談合による大不正行為以外の何物でもない。このようなブラックリスト商法の正当化は許されない。

 児童ポルノ規制については主に(5)で述べるが、第23~25ページで、海外からの声として、国会でも批判された根拠の無い米シーファー大使の発言などを取り上げ、一方的に児童ポルノ規制強化を正当化している点など行政の報告書として不当の極みである。児童ポルノ規制強化について、優先度が高く個別対処の検討を必要があるとする合理的根拠は何一つない。また、「権利侵害情報の例としては、名誉毀損情報、プライバシー侵害情報及び著作権や商標権を侵害する情報などがあり、社会的法益侵害情報の例としては児童ポルノ公然陳列罪、わいせつ物公然陳列罪(刑法第175条)、麻薬特例法違反、覚せい剤取締法違反など薬物関連法に係る情報などがある」(第18ページ)、「児童ポルノ関係の情報については、社会的法益侵害情報と整理されるが、被害児童が存在するため権利侵害の側面もある」(第24ページ)と、勝手に児童ポルノ規制の法益を、実在の児童の保護から、意味不明の「社会的法益」に勝手にすり替えようとしていることも、到底許されることではない。

 第30ページの「エ)刑罰法規の厳正な執行の必要性等」で、一方的な見方で刑罰法規による取り締まり強化を唱えている点も到底許せるものではない。レンタルサーバー管理者が著作権幇助罪で逮捕された「第(3)世界」事件のことを考えても、情報の違法性の本質的な相対性を忘れ、情報の流通という姑息な言葉で情報の提供者が誰かという最も重要な論点をごまかし、幇助といった曖昧な概念で刑罰法規の適用範囲を不当に広げることはインターネットの法的安定性を大きく揺るがす危険極まりないことである。

 第31ページ以下の「b)行政機関による措置制度」で書かれている、ほとんど青少年ネット規制法案の初期案の悪夢を彷彿とさせる、行政主導の検閲機関創設案は絶対に導入されてはならない論外の案である。このような問題が大き過ぎる検閲機関創設案が、役所で大真面目に検討されること自体異常なことと言わざるを得ない。

 第34ページの脚注で、憲法上の検閲の禁止について、過去の最高裁の判決を引いてあたかも狭く解釈ができるかの如きことが書かれているが、学説上は必ずしもそのような狭い解釈が取られている訳ではなく、この最高裁判決自体、昨今のインターネットの普及を踏まえたものでなく今日もなお通用するかどうか怪しいものである。今日ではインターネット上でしか発表・流通の機会を持たない表現物が既に多く存在しているのであり、例え事後規制だろうと、そのような表現物の発表・流通を完全に抑制しかねない規制は、やはり検閲に該当すると考える方が妥当である。

 第31ページ以下の「a)プロバイダ責任制限法の適用範囲の拡大」で、発信者の関係で責任制限範囲を拡大するニーズがないとしながら、第36ページ以下の「c)自主的取組にインセンティブを与える形での責任制限等の方策」では、発信者との関係のみで責任範囲を拡大することがインセンティブになるとしているところなど、天下り役人の考えは心底理解に苦しむ。また、現行のプロバイダー責任制限法でも、プロバイダーが、侵害の事実を知りながら、技術的に可能であるにも関わらず不特定の者に対する送信防止措置を取らなけらない場合、その責任追求を免れないのであり、被侵害者との関係で、違法な情報を放置した場合に、現行法よりも責任追及を容易にするとしている点も全く理解不能である。

 「c)自主的取組にインセンティブを与える形での責任制限等の方策」中で触れられているアクセスログの保存についても、プロバイダー責任制限との関係で検討されるべき話ではなく、それ自体で別途きちんと検討されなくてはならない話である。

 第45~46ページで、アメリカのDMCAのノーティス&テイクダウン制度に触れた上で、勝手に否定的な見解を述べているが、別にアメリカのノーティス&テイクダウン制度をそっくりそのまま日本に輸入しなければならない理由もなく、上であげた「ブレイクTV」事件や「第(3)世界」事件等を考えても、著作権について特に早急に手当をしておくべき十分な立法事実があると私は考えている。

(2)「2.(2)国際連携推進のための枠組の構築」(第47~54ページ)関連
意見:
 児童ポルノ規制に関して、児童ポルノの閲覧の犯罪化と創作物の規制まで求めている「子どもと青少年の性的搾取に反対する世界会議」の根拠のない狂った宣言を国際動向として一方的に取り上げ、規制強化を正当化することなどあってはならない。かえって、児童ポルノの単純所持規制・創作物規制といった非人道的な規制を導入している諸国は即刻このような規制を廃止するべきと、そもそも最も根本的なプライバシーに属し、何ら実害を生み得ない個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ること自体、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の国際的かつ一般的に認められている基本的な権利からあってはならないことであると、日本政府から国際的な場において各国に積極的に働きかけてもらいたい。

 また、青少年ネット規制法について国際的に紹介する場合には、この法律は、ほぼあらゆる者から反対されながら、有害無益なプライドと利権の保持に走った一部の議員と官庁の思惑のみによって成立したものであるという経緯や、そもそも成立するべきではなく今でも廃止するべきとする意見もあるということも含め紹介するべきである。

理由:
 例えそれが児童ポルノであろうと、情報の単純所持・アクセス・ダウンロード・収集・取得・閲覧等の規制・犯罪化は、恣意的にしか運用され得ず、利用者から見て回避不能の危険極まるものであり、新たな思想犯罪を作り出す非人道的なものとして絶対導入されるべきでない。そもそも最も根本的なプライバシーに属し、何ら実害を生み得ない個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ること自体、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の国際的かつ一般的に認められている基本的な権利からあってはならないことである。

 また、青少年ネット規制法は、有害無益なプライドと利権の保持に走った一部の議員と官庁の思惑のみによって成立したものであり、そもそも成立するべきではなく今でも廃止するべきとする意見もあるのであり、規制を一方的に是とすることなく、状況が正しく伝えられなくてはならない。

 なお、インターネット・ホットラインセンターについては主に(4)で述べるが、第47~48ページにおける、「2007年中に同センターにあった違法情報の通報のうち海外のサーバに蔵置されていたものは3,307件であるところ、同年3月から12月までの10か月間にわが国から海外の加盟ホットラインに対して行った通報は児童ポルノ情報及びわいせつ情報350件と一部に限られている。」等の印象操作も本当にひどいものである。350件以外は、インターネット・ホットラインセンターが他国に通報しないという判断をしただけだろうと考えられるにもかかわらず、勝手に全通報件数との比較を行って、海外対応に難があるかの如き記載をしているのは本当に許し難い。このような判断を勝手に行っていること自体、この半官天下り検閲センターの問題点を露骨に示している。

(3)「2.(3)様々な連携の推進」(第54~61ページ)関連
意見:

 ニーズの不明な新たな産学連携組織の検討に関しては全て白紙に戻して、そもそものニーズからきちんと再検討がなされるべきである。また、天下りへの国民の血税のムダな浪費はもはや到底許されることではなく、新たな産学連携組織を天下り先とすることなど絶対にあってはならない。

理由:
 「e-ネットづくり!」宣言プログラムの基本的受け皿として必要であると報告書案では書かれているが、、報告書案で書かれている産学連携組織の必要性に合理的根拠はない。このようなムダな産学連携組織は、役人の天下り先となり、国民の血税の天下りへのムダな浪費となる危険性が高く、一国民として到底賛同できるものではない。

(4)「3.(1)違法・有害情報対策の推進」(第63~90ページ)関連
意見:

 「e-ネットづくり!」宣言について、そもそも民間が求めていない、「民間による自主的な取組」など取りやめるべきである。検討が必要であるとしたら、今ですら訳が分からないほど沢山ある各種ガイドラインの整理削減のみである。天下り利権の強化・税金のムダな浪費にしかつながらない、ニーズを無視した「相談センター」の拡充などされるべきでない。インターネット・ホットラインセンターという警察庁の半官天下り検閲センター自体廃止が速やかに検討されるべきものであり、「違法・有害情報通報受付」と称して、総務省版の半官天下り検閲センターをさらに作ることなど論外である。

理由:
 「e-ネットづくり!」宣言は、総務省への参加申請・登録の要請や総務省製のロゴマークの販促といった、ニーズを無視したいつもの官製キャンペーンに過ぎず、普通に考えて税金のムダ使いしかならない。今以上に、規制よりにしかならないだろう官製「自主憲章」やガイドラインなども不要である。「ナレッジベース」について、そもそも今以上にどんなガイドラインについて必要なのか良く分からず、もし何か検討するのであれば、そもそも今ですら山のようにあって訳が分からないガイドライン群の整理削減のみを検討するべきである。

 さらに、「交流プラットフォーム」についても、そもそも現在の「違法・有害情報事業者相談センター」の相談実績が少ないことが、現実のニーズを如実に物語っており、天下り利権の強化・税金のムダ使いにしかならないだろうニーズを無視した相談センターの拡充もされるべきではない。さらに、権利侵害とは直接関係のない天下り先の半官検閲センターに違法性の判断を代替する機能を持たせることなど危険極まりないことであり、インターネット・ホットラインセンターという警察庁の半官天下り検閲センター自体廃止が速やかに検討されるべきものであり、「違法・有害情報通報受付」と称して、総務省版の半官天下り検閲センターをさらに作ることなど論外である。

 以下、やはり目に余る記載について指摘して行く。

 (1)で述べたプロバイダ責任制限法に関する部分では、「大手のプロバイダ等を中心に、既に自主的対応として違法情報の削除が進んで」いるとしながら、こちらでは、対策について民間にデータの蓄積がないとしているなど、この報告書案は矛盾・不合理だらけで到底読むに耐えない。

 第65ページの「近年、これらの情報の流通をきっかけに、マスコミに大きく取り上げられるような事案が頻発しており、インターネットの規制を強化すべきとの議論を拡大させる主な要因となっている。」のような記載は、マスコミの一方的な印象操作に悪乗りする形で、ネガティブな事件のみを取り上げ、ネット規制の強化が正当化されるかのような、ひどい印象操作を含む記載である。なお、第6ページの「さらに、硫化水素による自殺誘引サイトの問題や、2008年6月8日に起きた秋葉原での事件における電子掲示板上の犯罪予告など、インターネット上の違法・有害情報対策として、民間の自主的取組に任せるのではなく、むしろ規制を強化すべきとの声を後押しするような事案も引き続き発生している。」も同断である。

 第73ページの脚注で、プロバイダー責任制限法の「特定電気通信役務提供者」と、青少年ネット規制法の「特定サーバー管理者」を同義と考えて良いと断定している事もあまりにも軽率という他ない。それぞれの条文を読めば分かるが、「特定電気通信設備を用いて他人の通信を媒介し、その他特定電気通信設備を他人の通信の用に供する者」(「特定電気通信役務提供者」)と、インターネットを利用した公衆による情報の閲覧の用に供されるサーバーを用いて、他人の求めに応じ情報をインターネットを利用して公衆による閲覧ができる状態に置き、これに閲覧をさせる役務を提供する者(「特定サーバー管理者」)は同義では全くない。実際に法運用を行っているはずの官庁が公の報告書案にこのようなことを堂々と書くのだから本当に呆れる他ない。

 また、第75~76ページで、インターネット・ホットラインセンターについて、インターネット・ホットラインセンターの協力依頼通りに削除することが当然であり、このような検閲の強化が正当化されてしかるべきであるかの如き記載があるが、インターネット・ホットラインセンターは単なる一民間団体に過ぎず、しかもこの団体に直接害が及んでいる訳でもないため、本来削除を要請できる訳がないのである。勝手に有害と思われる情報を収集して、直接削除要請などを行う民間団体があるということ自体おかしいと考えるべきであるという最も基本的なことも忘れ、国民の基本的な権利をないがしろにしても自身の利権拡大のみ大事とばかりに、あらゆる者はこの半官検閲センターの言うなりに情報を削除しろという傲慢を示すとは、天下り役人の考えは気違い染みている。削除を依頼されたところで、自身のリスクで削除をしないという判断をすることは当然あって良いことである。

 インターネット・ホットラインセンターの事業が警察からの委託事業であるため、そこに蓄積された情報を柔軟に活用し、自主的取組の向上に役立てることは難しいと、インターネット・ホットラインセンターが、民間団体でありながら、ほぼ警察の下部組織であることを政府の報告書が公に認めている点など、完全に語るに落ちている。必要であれば、きちんとした取り締まりと削除要請ができる人員を、法律によって明確に制約を受ける警察に確保するべき話であり、通報受付についてもきちんと警察に設け、それを周知するべき話であって、それ以上の話ではなく、インターネット・ホットラインセンターのような半官天下り検閲センターは即刻廃止が検討されるべきである。

(5)「3.(2)児童ポルノの効果的な閲覧防止策の検討」(第91~100ページ~)関連
意見:

 児童ポルノ対策について今以上の規制は必要なく、児童ポルノを理由とした新たな規制、特に情報・表現に関する国民の基本的な権利の重大な侵害となる単純所持規制・創作物規制の検討に反対する。やはり情報・表現に関する国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないブロッキングについても、その実証実験すらするべきではない。

理由:
 上でも書いたことだが、例えそれが児童ポルノであろうと、情報の単純所持や単なる情報アクセスではいかなる被害も発生し得えない。現行法で、ネット上であるか否かにかかわらず、提供及び提供目的の所持まで規制されているのであり、提供によって生じる被害と所持やダウンロード、取得、収集との混同は許され得ないのである。そもそも、最も根本的なプライバシーに属する個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ること自体、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の基本的な権利からあってはならないことである。海外サーバーの児童ポルノコンテンツについても、児童ポルノの提供が罪になっていない主要国もないのであろうから、日本の警察なりが海外の捜査機関に協力すれば良いだけの話である。例え児童ポルノだろうが、新たな思想犯罪を作り、国民の情報・表現・思想等々の最も基本的な精神的自由と安全を脅かす理由には全くならない。児童ポルノ規制について何か検討することがあるとしたら、今ですら曖昧に過ぎる児童ポルノの定義の厳密化のみである。

 また、ブロッキングについても、総務省なり警察なり天下り先の検閲機関・自主規制団体なりの恣意的な認定により、全国民がアクセスできなくなるサイトを発生させるなど、絶対にやってはならないことである。例えそれが何であろうと、情報の単純所持や単なる情報アクセスではいかなる被害も発生し得えないのであり、自主的な取組という名目でいくら取り繕おうとも、憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないブロッキングもまた導入されてはならないものである。

 対面調査で回答の誘導を行うなど有害かつ悪質な世論操作がそこら中で行われた、全く信用できない今年1月の内閣府の調査をあげ、国民の問題意識が高まっているとしたり、サイバー犯罪条約について未批准であることや児童ポルノ規制に関しては留保条項もあることを明記していなかったり、欧米キリスト教諸国の狂った規制のみを例に挙げていたり、インターネット・ホットラインセンターにおける通報件数のみを使って日本における児童ポルノ事件数が多いかの如き印象を与えようとしたりと、この部分における、悪辣な印象操作・欺瞞も枚挙にいとまがない。

 さらに、第92~93ページの、「1)現在の児童ポルノに対する取組」の、児童ポルノを思想犯罪化し、国民の情報・表現・思想等々の最も基本的な精神的自由と安全を脅かして良いかの如き記載に至ってはもはや絶句するしかない。この文章を書いた役人は完全に気が狂っているとしか思えない。

 なお、児童ポルノ規制に関しては、つい最近、ドイツのバンド「Scorpions」が32年前にリリースした「Virgin Killer」というアルバムのジャケットカバーが、アメリカでは児童ポルノと見なされないにもかかわらず、イギリスでは該当するとしてブロッキングの対象となり、プロバイダーによっては全Wikipediaにアクセス出来ない状態が生じたなど、欧米では、行き過ぎた規制の恣意的な運用によって、明らかな弊害が生じていることも見逃されるべきではない。

(6)「4.(5)違法・有害情報対策の基礎となる調査の実施」(第133~135ページ)関連
意見:

 役所の調査項目作成への関与を極力無くし、予断を与えないように調査項目の作成には細心の注意を払うべきである。複数の調査機関によって項目の偏向をチェックし、対面調査で直接規制の是非を問うような片寄りしか生まない手法を取らないようにし、ウェブ調査も含め、幅広く調査を行うべきである。

理由:
 今年の1月28日に公表された「インターネット上の安全確保に関する世論調査」は、例えば、インターネットホットラインセンターについて、知らない者が9割近くにも上るにも関わらず、その全員に対してその有効性について聞き、「インターネットホットラインセンターは安全を守るために有効と思う」と7割近くの人間に答えさせたり、対面調査によって回答の誘導を行ったりするなど、悪質かつ有害な印象操作・世論操作がそこら中で行われ、政策判断の材料として全く信用できない調査だった。

 このような非道極まる調査を二度と行わないようにするべきであり、特に、役所の調査項目作成への関与を極力無くし、予断を与えないように調査項目の作成には細心の注意を払うよう、複数の調査機関によって項目の偏向をチェックし、対面調査で直接規制の是非を問うような片寄りしか生まない手法を取らないよう、ウェブ調査も含め、幅広く調査を行うよう気をつけるべきである。

(7)報告書案全体について
 国民の基本的な権利をないがしろにしても自身の利権拡大のみ大事とばかりに、腐り切った天下り役人が好き勝手に膿んだ妄想を垂れ流しているこの報告書案は、随所に理解不能の論旨の混乱が見られ、矛盾・不合理だらけで到底読むに耐えないものである。もはや自身の怒りを表すのに十分な言葉を私は持たないが、このように天下り役人が厚顔にも踏みにじっている国民の本当の安全と安心を今すぐ返してもらいたいと私は心から言いたい。

 この狂った報告書案の危険性は小手先の修正では治癒不能であり、情報モラル・リテラシー教育に関する「4.利用者を育てる取組の促進」以外全て白紙に戻してゼロから検討し直されるべきである。

 インターネットの利用環境の整備は、法規制によるのではなく、民間の自主的取組によって推進することが最良の方策であるという言葉を自戒の言葉として、政府においても、今後は、恣意的な運用しか招きようのない危険な規制強化の検討ではなく、ネットにおける各種問題は情報モラル・リテラシー教育によって解決されるべきものという基本に立ち帰り、地道な施策のみに注力する検討が進むことを期待する。

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2008年12月10日 (水)

第141回:イスラエル著作権法におけるフェアユース・私的複製関連規定

 知財本部へのパブコメに少し書いたのだが、一般フェアユース規定を導入している国には、アメリカは言わずもがなだが、第91回で少し紹介した台湾の他にイスラエルがある。文化庁や権利者団体のように、数カ国が導入しているだけで国際潮流と言いつのる気はさらさら無いが、何かの参考になるかも知れないので、ここで、イスラエルの権利制限規定について少し補足の紹介をしておきたいと思う。

 イスラエル著作権法のフェアユース・私的複製関連規定は、WIPOのHPに載っている英訳からの重訳になるが、以下のようなものである。(翻訳は拙訳。)

Chapter Four: Permitted Uses

18. Permitted Uses
Notwithstanding the provisions of section 11, the doing of the actions specified in sections 19 to 30 is permitted subject to the conditions specified respectively in the aforesaid sections and for the purpose of carrying out the objectives specified therein, without the consent of the right holder or payment, however with respect to the activities specified in section 32 - upon payment and in accordance with the provisions of that section.

19. Fair Use
(a) Fair use of a work is permitted for purposes such as: private study, research, criticism, review, journalistic reporting, quotation, or instruction and examination by an educational institution.

(b) In determining whether a use made of a work is fair within the meaning of this section the factors to be considered shall include, inter alia, all of the following:
(1) The purpose and character of the use;
(2) The character of the work used;
(3) The scope of the use, quantitatively and qualitatively, in relation to the work as a whole;
(4) The impact of the use on the value of the work and its potential market.

(c) The Minister may make regulations prescribing conditions under which a use shall be deemed a fair use.

20. Use of works in juridical or administrative procedures
Use of a work in juridical or administrative procedures according to law, including reporting on such proceedings, is permitted to the extent that is justified taking into consideration the purpose of the aforesaid use.

21.Reproduction of a work deposited for public inspection
(a) The copying of a work that is accessible to the public by law is permitted if consistent with the purpose for which the work was made accessible, and to a justifiable extent taking into consideration the purpose of the said use.

(b) The provisions in sub-section (a) shall not apply with respect to works deposited in accordance with The Books Act 2000.

22. Incidental Use of a Work
An incidental use of a work by way of including it in a photographic work, in a cinematographic work or in a sound recording, as well as the use of a such work in which the work was thus incidentally contained, is permitted; In this matter the deliberate inclusion of a musical work, including its accompanying lyrics, or of a sound recording embodying such musical work, in another work, shall not be deemed to be an incidental use.

23. Broadcast or copying of work in public place
Broadcasting, or copying by way of photography, drawing, sketch or similar visual description, of an architectural work, a work of sculpture or work of applied art, are permitted where the aforesaid work is permanently situated in a public place.

24. Computer Programs
(a) Copying of a computer program for purposes of back up is permitted for a person who possesses an authorized copy of the computer program; A person holding such a copy shall destroy it once it is no longer needed to serve the purpose for which it was made.

(b) Copying of a computer program for purposes of maintenance of an authorized copy of the program or of a computer system, or for purposes of providing service to a person in possession of an authorized copy of the computer program, is permitted, provided that it is necessary for using the program.

(c) Copying of a computer program, or making a derivative work there from is permitted for a person who possesses an authorized copy of the computer program, for the following purposes and to the extent necessary to achieve said purposes:
(1) Use of the computer program for purposes for which it was intended, including correction of errors in the computer program or making it interoperable with a computer system or with another computer program;
(2) Examination of the data security in the program, correction of security breaches and protection from such breaches;
(3) obtaining information which is needed to adapt a different and independently developed computer system or program, in such a way that it will be interoperable with the computer program.

(d) The provisions of sub-section (c) shall not apply with respect to the copying of a computer program or the making of a derivative work there from, as stated in said sub-section, if the information which has been obtained through the aforementioned means was used in a manner set forth below, or where such information was readily discernable without use of the aforesaid means:
(1) The said information is transmitted to another person for apurpose different than the purposes set forth in sub-section (c);
(2) The said information is used to make a different computer program which infringes copyright in the said computer program.

(e) In this section, "authorized copy" of a computer program means a copy of the computer program which was made by the copyright holder therein or with his consent.
...

26. Temporary Copies
The transient copying, including incidental copying, of a work, is permitted if such is an integral part of a technological process whose only purpose is to enable transmission of a work as between two parties, through a communications network, by an intermediary entity, or to enable any other lawful use of the work, provided the said copy does not have significant economic value in itself.

27. Additional artistic work made by the author
Making a new artistic work which comprises a partial copying of an earlier work, or a derivative work from an earlier work, as well as any use of the said new work, are permitted to the author of the said earlier artistic work even where said author is not the owner of the copyright in the earlier artistic work, provided the new work does not repeat the essence of the earlier work or constitute an imitation thereof.
...

4章:権利の制限

第18条 権利の制限
 第11条の規定にかかわらず、それぞれの条項に規定されている条件に従い、それらに規定されている目的を達成するために、権利者の同意あるいは支払いなしに、第10条から第30条に規定されている行為をなすことは許される。ただし、第32条の規定に一致し、この第32条に規定されている行為-支払いは尊重される。

第19条 公正利用
(a)私的学習、調査研究、批評、論評、報道、引用、あるいは、教育機関による教育と試験のような目的のための、著作物の公正利用は許される。

(b)ある著作物のある利用が本条の意味において公正かどうかを決めるにあたって、とりわけ、以下の要素全てを考慮しなくてはならない:
(1)利用の目的および性質;
(2)著作物の性質;
(3)著作物全体に対する、質的及び量的な利用の範囲;
(4)著作物の価値及び潜在的市場に対する利用の影響。

(c)大臣は、ある利用が公正利用とみなされる場合に、その条件を既定する規則を作り得る。

第20条 司法あるいは行政手続きにおける著作物の利用
 公表手続きを含め、法に基づいた司法あるいは行政手続きにおける著作物の利用は、その利用の目的を考慮して正当化される範囲において、許される。

第21条 公衆の閲覧に供される著作物の複製
(a)法によって公衆にアクセス可能とされた著作物の複製は、その作品がアクセス可能とされた目的に適う限りにおいて、その利用の目的を考慮して正当化される範囲において、許される。

(b)第(a)項の規定は、2000年書籍法に基づいて提供される作品については適用しない。(訳注:2000年書籍法の詳細は不明だが、恐らく国立図書館への提供のことを言っているのではないか。)

第22条 著作物の付随的な利用
 それを含むやり方に応じて、写真著作物、映画著作物、録音著作物中の付随的な著作物の利用、並びに、そのように著作物が付随的に含まれる著作物の利用は、許される。このことにつき、その歌詞やその著作物を具体化した録音を含め、音楽著作物の他の著作物への意図的な挿入は付随的な利用とはみなされない。

第23条 公共の場に置かれた著作物の放送あるいは複製
建築物、彫刻の著作物、あるいは応用美術の著作物の、放送、写真、描画、スケッチあるいは似たような視覚的描写による複製は、それらの物が永続的に公共の場に置かれているとき、許される。

第24条 コンピュータプログラム
(a)コンピュータプログラムの正規の複製物を所有している者には、そのコンピュータプログラムのバックアップ目的での複製が許される。ただし、それが作られた目的においてもはや必要なくなったとき、そのような複製の所有者はそれを破棄しなくてはならない。

(b)そのプログラムの利用に必要な場合、コンピュータシステムあるいはコンピュータプログラムの正規の複製物のメンテナンスの目的のため、あるいは、コンピュータプログラムの正規の複製物を所有している者へのサービスの提供の目的ための、そのコンピュータプログラムの複製は許される。

(c)コンピュータプログラムの正規の複製物を所有している者には、以下の目的において、その目的を達成するのに必要な限りにおいて、そのコンピュータプログラムの複製あるいは、そこからの派生物の作成が許される:
(1)コンピュータプログラムにおける間違いの訂正、あるいは、コンピュータシステムあるいは他のコンピュータプログラムと相互運用性の確保を含め、それが目的とすることのためのそのコンピュータプログラムの利用
(2)プログラムにおけるデータセキュリティの検査、セキュリティホールの修正、及び、そのようなホールからの保護
(3)そのコンピュータプログラムと相互運用する形の、独立開発コンピュータシステムあるいはプログラムの採用のために必要な情報の入手

(d)前述の手段を通じて得られた情報が、以下に規定されているようなやり方で利用されるか、そのような情報が前述の手段を用いずとも容易に知り得る場合には、第(c)項の規定は適用されない、
(1)第(c)項に規定されている目的以外の目的のために、前記の情報が第3者に伝えられる場合
(2)前記のコンピュータプログラムの著作権を侵害する他のコンピュータプログラムを作るために、前記の情報が使用される場合。

(e)本条の「コンピュータプログラムの正規の複製物」は、著作権者によってかその同意に基づいて作られたコンピュータプログラムの複製物を意味する。

(中略:第25条 放送目的での録音録画に関する権利制限)

第26条 一時的複製
 媒介物によって通信ネットワークを通じ二者間で著作物を伝えることを可能とする、あるいは著作物の他の合法利用を可能とする目的のみを有する技術的プロセスの不可欠な部分をなすとき、付随的な複製を含め、過渡的な複製は許される。ただし、その複製物がそれ自体で何ら重要な経済的価値を持たない場合に限る。

第27条 作者自らによって作られる追加の芸術作品
 新たな作品が以前の作品の本質のり返しでも、その単なる模倣でもない場合、新たな芸術作品を以前の作品の部分的な複製を含む形で作ることや、以前の作品から派生作品を作ること並びにこの新たな作品の利用は、その作者が以前の作品の著作権の所有者でなくなっていたとしても、この以前の著作物の作者に許される。

(後略:第28条 建物の改修や再建築のための権利制限、第29条 教育機関における公演のための権利制限、第30条 図書館のための権利制限等)

 このイスラエルの新著作権法は、2007年11月19日にイスラエルの議会を通過し、2008年5月28日から施行されているものであるが、イスラエルはもともとフェアユース採用国だった訳ではなく、権利制限規定自体少なかったものを、この最近の改正で、フェアユースも含め各種権利制限規定を充実させたようである。

 台湾もそうだが、イスラエルの権利制限規定も、限定列挙型の権利制限を多くあげながら、同時に一般フェアユース条項を導入している点が特徴的である。無論、各国毎の事情は考慮しなければならないだろうが、別に限定列挙型の権利制限を取っているからと言って、一般フェアユース条項が導入できなくなるものでもなく、一般フェアユース条項が必ずベルヌ条約違反となるものでもないだろう。

 また、イスラエルのフェアユース規定は、第117回で紹介したアメリカのフェアユース規定とほぼ同じであるが、良く比べてみると、例示が増えていたり、考慮要素の規定が簡略化されていたりという細かな違いもある。著作権法改正の検討において欧米主要国だけを参考にしなければならない理由もない、日本における一般フェアユース条項導入の検討において、アメリカ以外のフェアユース採用国の規定や事情などを参考にすることも大いにあって良いことだと私は思っている。

(なお、念のために書いておくと、イスラエルにも補償金制度は存在していない。)

 各種パブコメも提出次第載せたいと思っており、次回12月16日の私的録音録画小委員会で文化庁が何を言い出すかも気になるのだが、余裕があれば、次も、他の点についてのちょっとした補足とするかも知れない。

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2008年12月 5日 (金)

第140回:各種知財政策に関する動向(特許の存続期間の例外・審査基準・新しいタイプの商標・営業秘密・医療関係発明・知財本部基本方針パブコメ)

 著作権以外の知的財産権の話はいつも後回しになってしまうが、第53回第95回などに続き、ここで特許などに関する動向の話をまとめて書いておきたいと思う。

 特許庁のHPに載っている特許関連の審議会の構造図で、各検討会の名前と日付を見れば、最近特許等に関して大体どんな検討が動いているか分かるだろう。

 順に取り上げて行きたいと思うが、まず、特許の存続期間の例外の対象範囲の問題について、産業構造審議会・知的財産政策部会・特許制度小委員会・特許権の存続期間の延長制度検討ワーキング・グループが作られ、この10月30日から検討が始まっている。

 期間延長というと、つい、あの度し難い著作権の保護期間延長問題を思い起こしてしまうが、特許については、特許の保護期間の延長というより、特許の存続期間の例外の対象範囲の問題と言った方が良いものである。要するに、特許法には、医薬や農薬など、認可まで長期間の審査が必要な分野においては、特許期間中であるにもかかわらず、認可を受けるまで実施できず、特許権の恩恵を受けられないということがあるために、特に法律上の認可制のためにやむを得ず特許の実施ができなかった期間分だけ、しかも5年という上限つきで申請による延長を例外的に認める制度があるのだが、この例外的な延長申請制度の対象になるものがさらにあるかどうかということを検討しようとしているのである。カルタヘナ法やDDS(ドラッグ・デリバリー・システム)の説明はマニアックに過ぎるので省くが、もし興味があれば、10月30日に開催された第1回検討会の資料を読んでみることをお勧めしておく。

 審査基準の話もマニアックかつ制度ユーザーにしか関係ない話なので、ここでその内容についてまで踏み込むことはしないが、特許の審査基準について、特許制度小委員会・審査基準専門委員会での検討がこの11月5日から始まり、意匠の審査基準について、意匠制度小委員会・意匠審査基準ワーキンググループでの検討が行われている。

 商標制度小委員会・新しいタイプの商標に関する検討ワーキンググループでは、輪郭のない色彩、動画、ホログラム、音、位置、香り・におい、触感、味、トレードドレスなどを商標として認めるべきか否かということを検討している。11月28日の第4回検討会の論点整理はいまいち要領を得ないが、香り・におい、触感、味、トレードドレスについては保護対象外として、輪郭のない色彩、動画、ホログラム、音、位置は追加する方向で検討を続けようとしているようである。しかし、権利範囲の特定が困難であり、必ずしも出所表示として需要者に認識されていないのは、色や音などについても同様だろう。商標権は場合によってはかなり凶悪な権利と化すので、この動きは注意しておいた方が良いと私は感じている。

 また、営業秘密の保護強化について、技術情報の保護等の在り方に関する小委員会(第4回(9月12日):議事要旨配付資料、第5回(9月30日):議事要旨配布資料、第6回(10月28日):配付資料)で、引き続き検討が行われている。刑事訴訟手続きにおける営業秘密の保護などは、憲法第37条や第82条に定められている裁判の公開原則に違背しない限りでやれるようならやれば良いと思うが、資料を読む限りでは、相変わらず、一般的な不正目的での営業秘密情報の取得そのものに刑事罰をかけるだとか、バカげたことをまだ経産省は考えているようである。ここでは何度も繰り返していることだが、情報のアクセス・取得等について主観的な目的要件のみで民事・刑事の罰を課すことは、どこをどうやっても恣意的な運用しか招きようがない危険なことなのであり、第107回でも書いたように、そのことは営業秘密であったとしても変わりはない。正当なアクセス権を有しない場合のアクセスや情報の開示等については既に規制の対象となっているので、経産省は規制をさらに広げようとしているのだろうが、このように、恣意的なものとしかなりようのない、曖昧かつ主観的な目的要件で情報の取得に刑事罰を導入することは、かえって企業の正当な営業活動を萎縮させるだけだろう。

 知財本部では、知的財産による競争力強化専門調査会の下に先端医療特許検討委員会という検討会が作られ、医療関係発明の検討がこの11月25日から始まった。同時に、海外では特許対象となるものの、現時点では我が国において特許対象とならない発明であって、今後特許対象とすることを検討すべきと考えられる発明の具体的事例を教えて欲しいというパブコメが12月18日〆切で行われている。(日経BP知財Awarenessの記事も参照。)

 法律的な議論としては興味深い点がいくつかあるが、実務上無意味な法律論を離れて、具体的に保護すべき新たな対象があるかと考えると、11月25日に開催された第1回の資料中の制度の国際比較資料を見ても、日本で新たに保護すべき対象があるとは個人的には思えない。恐らく、特許関連では、この医関係療発明に関する話が今年から来年にかけての最大のトピックになるだろうが、医療やバイオ技術は生命倫理に関する話であり、軽々しく保護範囲を広げてはならないものだろう。(なお、欧州特許庁でも、ついこの11月25日にES細胞に関する特許出願の拒絶が完全に確定している(欧州特許庁のリリースIP NEXTの記事参照)。医療・バイオ関係の発明の議論は、文化によって異なる生命倫理と直結する非常に厄介な問題である。)

 さらに、知財本部からは、知的財産戦略に関する政策レビュー及び第3期基本方針の策定に関する意見募集というパブコメもかかっている。第3期(平成21年度~平成25年度)向け基本方針について、

全体
I 知的財産の創造
II 知的財産の保護
 II-1 知的財産の適切な保護
 II-2 模倣品・海賊版対策の強化(コンテンツを除く)
III 知的財産の活用
 III-1 知的財産の戦略的活用
 III-2 国際標準化活動の強化
 III-3 中小・ベンチャー企業への支援
 III-4 知的財産を活用した地域の振興
IV コンテンツをいかした文化創造国家づくり
 IV-1 コンテンツの創造・流通の促進
 IV-2 コンテンツの海賊版対策
 IV-3 日本ブランド(食・地域・ファッション)の振興
V 知的財産人材の育成と国民意識の向上
その他

という示されている項目に沿い、意見を出せば良いもの(個人用意見提出フォーム団体用)なので、私も出すつもりだが、今後の知財政策について物申したいことがある方は、是非出すことをお勧めしておく。

 最後に少し最近のニュースもしておきたいと思うが、「第(3)世界」事件においてレンタルサーバー管理者は、略式起訴で50万円の罰金を支払うことが命じられ、即日罰金が支払われた(時事通信のネット記事産経のネット記事朝日のネット記事参照)。略式起訴で微妙な額の罰金の支払いに落とし込む検察のやり口は実に姑息としか言いようがない。やはり刑事罰まで含め、サーバー管理者のセーフハーバーはきちんと作られるべきだろう。

 また、フランスの3ストライク法案については、この11月27日に開催されたEU理事会において、フランス政府の多数派工作が功を奏し、残念ながら、通信ディレクティブ案から、フランスの著作権検閲機関型の違法コピー対策を否定する修正条項138が取り除かれた。その結果、来年のこの修正条項のEU議会における再審議の前、年初に、フランス下院(上院は既に通過済)で法案の審議が行われるだろうということで、息の根を止められたかに見えた3ストライク法案はしぶとく息をつなぎ、情勢はかなり微妙なものとなっている。ただし、この修正条項138はEU議会で88%の多数でもって可決されたものであり、EU議会の議員やEU委員会は、フランス政府の姑息な政治戦術に反発を強めており、フランス国内でも、権利者団体と消費者団体が賛成反対でまっぷたつに割れ、それぞれ大キャンペーンを張り、激しくロビー合戦を繰り広げており、賛成派が多少盛り返したとは言え、混沌とした状態の中、法案が可決されるかどうかは全く予断を許さない。この3ストライク法案については、次の山になるだろう、来年初頭のフランス下院での法案審議に要注目である。(generation-nt.comの記事1記事2le Pointのネット記事silicon.frの記事numeramaの記事la Tribuneのネット記事EU議員ギュイ・ボノ氏のブログ記事参照。)

(12月5日夜の追記:憲法第37条(刑事裁判の公開原則を定めている)の条文番号を書き漏らしていたので、追加した。

 また、新たなタイプの商標の保護の検討について読売のネット記事があり、刑事訴訟手続きにおける営業秘密の保護強化について法務省が反対しているとする産経のネット記事があったので、念のためリンクを張っておく。ICTSDの記事によると、WIPOレベルでの著作権の権利制限と例外に関する検討も続いているようである。)

(12月6日の追記:さらにマニアックな話になるが、特許関係では、特許微生物寄託制度に関する検討委員会という名前の検討会も今年動いているので、念のためにリンクを張っておく。)

(12月13日の追記:「P2Pとかその辺の話」でも上で少し触れたフランスの3ストライク法案の動向に関する記事の紹介をされているので、興味のある方はリンク先もご覧頂ければと思う。)

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2008年12月 2日 (火)

第139回:総務省・「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」最終取りまとめ(案)に対するパブコメ募集(その5:目次・その他)

 前々々々回前々々回前々回前回に引き続き、総務省の「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」最終取りまとめ(案)(12月17日〆切。総務省のリリース意見募集要領電子政府の該当ページinternet watchの記事参照。)の話である。

 細かな文章への突っ込みを入れていく前に、この報告書は長すぎるので目次を作っておきたいと思う。

(1)最終取りまとめ(案)目次

1.はじめに
(1)背景と経緯(第3ページ~)
(2)最終取りまとめのねらい(第6ページ~)

2.安心を実現する基本的枠組の整備
(1)安心ネット利用のための基本法制の整備等(第9ページ~:児童ポルノ規制、プロバイダーの責任制限範囲の拡大、検閲機関創設案、天下り先の第3者機関が定める標準的な違法情報対策の仕組み・技術・違法性の判断の押しつけ等について、第135回第136回参照)
(2)国際連携推進のための枠組の構築(第47ページ~:第138回参照)
(3)様々な連携の推進(第54ページ~:第138回参照)

3.民間における自主的取組の促進
(1)違法・有害情報対策の推進(第63ページ~:「e-ネットづくり!」宣言・総務省版インターネット・ホットラインセンター創設案等について、第137回参照)
(2)児童ポルノの効果的な閲覧防止策の検討(第91ページ~:児童ポルノ規制・ブロッキングについて、第135回参照)
(3)コンテンツ・レイティングの普及促進(第100ページ~)
(4)違法・有害情報対策に資する技術開発支援(第106ページ~)

4.利用者を育てる取組の促進
(1)家庭・地域・学校における情報モラル教育(第111ページ~)
(2)ペアレンタルコントロールの促進(第121ページ~)
(3)コンテンツ事業者等による利用者啓発活動促進(第125ページ~)
(4)利用者を育てる取組の協調的な推進(第129ページ~)
(5)違法・有害情報対策の基礎となる調査の実施(第133ページ~:第138回参照)

5.おわりに(「安心ネットづくり」促進プログラムの策定に向けて)

(2)その他
 本当にこの報告書案はあまりにも問題点が多く、全部は到底指摘し切れない。以下に指摘するのは、あまりにも目に余る部分だけである。

 1.はじめに「(2)最終取りまとめのねらい」第6ページで、

さらに、硫化水素による自殺誘引サイトの問題や、2008年6月8日に起きた秋葉原での事件における電子掲示板上の犯罪予告など、インターネット上の違法・有害情報対策として、民間の自主的取組に任せるのではなく、むしろ規制を強化すべきとの声を後押しするような事案も引き続き発生している

と書いているが、これは、マスコミの一方的な印象操作に悪乗りする形で、ネガティブな事件のみを取り上げ、ネット規制の強化が正当化されるかのような、ひどい印象操作を含む記載である。

3.民間における自主的取組の促進第65ページの

 現行では必ずしも違法ではないが、インターネット上の流通が望ましくないとして、削除等の何らかの対応が必要であると認識されている情報がある。例えば、違法行為を目的とした書き込み、人を自殺に誘引する情報の書き込み、公共の安全や秩序に対する危険を生じさせるおそれのある情報の書き込み、さらには、いわゆる「学校裏サイト」における個人の誹謗中傷の書き込みなどである。近年、これらの情報の流通をきっかけに、マスコミに大きく取り上げられるような事案が頻発しており、インターネットの規制を強化すべきとの議論を拡大させる主な要因となっている

も全く同様のひどい印象操作である。)

 また、2.安心を実現する基本的枠組の整備「(1)安心ネット利用のための基本法制の整備等」の第13ページで、

 とりわけ、青少年の多くが利用している携帯電話については、2006年11月及び2007年12月に総務大臣から携帯電話事業者・PHS事業者に対して導入促進に向けた取組を進めるよう要請を行われたこともあり、積極的な取組が行われてきたが、その過程で、青少年の利用実態(コミュニティサイトの普及等)に照らし、フィルタリングによる閲覧制限の範囲が広範に過ぎるなど、現在の携帯電話フィルタリングが有する課題も浮き彫りになった。こうしたことから、本検討会において、現状の携帯電話フィルタリングを改善するための方策について議論が行われ、4月25 日、現状のモデルを改善し、より良いフィルタリングサービスの在り方を提言した中間取りまとめとなった。この中間取りまとめを踏まえた取組を行うよう、総務大臣から携帯電話事業者等に対して3度目となる要請が行われた。

と自分たちの大臣要請について勝手に積極的評価をしようとしているが、当時大臣要請がもたらしたものは無用の混乱のみであり、はっきり言って全く評価できないものだったと私は断言できる。

 第15ページで、

 総務大臣要請を受け、携帯電話事業者・PHS事業者は、2008年9月12日、フィルタリングサービスの改善に向けた今後の取組内容につき詳細を発表した。それによれば、既に第三者機関(EMA)による認定が行われているサイトについては、各社とも2009年1月から2月にかけて現在提供しているフィルタリングサービスへの反映を行う予定である。

と、フィルタリングによるブラックリスト商法を後押しするかのような書き方をしていることも注意する必要がある。番外その7のついでに少し書いたことだが、そもそも、ブラックリスト方式ならば、まずブラックリストに載せる基準の明確化から行うべきなので、不当なブラックリスト指定については、携帯電話事業者がそれぞれの基準に照らし合わせて無料で解除する簡便な手続きを備えていればそれで良く、健全サイト認定第3者機関など必要ないはずなのである。ブラックリスト指定を不当に乱発し、認定機関で不当に審査料をせしめ取り、さらにこの不当にせしめた審査料と、正当な理由もなく流し込まれる税金で天下り役人を飼うのだとしたら、これは官民談合による大不正行為以外の何物でもなく、このようなブラックリスト商法の正当化は許されないと繰り返し指摘して行かなくてはならない。(無論、それ以前に、青少年ネット規制法は、あらゆる者から反対されながら、有害無益なプライドと利権を優先する一部の寄生議員と規制官庁の思惑のみで成立したものであり、速やかに廃止が検討されるべきと言わなくてはならないだろうが。)

 第30ページで、

エ)刑罰法規の厳正な執行の必要性等
 社会的法益侵害情報は、すべて何らかの刑罰法規に違反するものであり、これらの情報の流通の防止は、本来、当該情報の発信者あるいは積極的に当該違法情報の流通を奨励・幇助する一部のプロバイダ等を取り締まることによって達成すべきものである。積極的に違法情報の流通を奨励、幇助するプロバイダ等はごく一部と考えられ、それらのプロバイダ等に対する取締まりの強化の余地はあるものと思われる。したがって、刑罰法規の厳正な執行は社会的法益侵害情報への対策として重要である。

一方的な見方で刑罰法規による取り締まり強化を唱えている点も極めて危険である。レンタルサーバー管理者を著作権幇助罪で逮捕された「第(3)世界」事件のことを考えても、情報の違法性の本質的な相対性を忘れ、情報の流通という姑息な言葉で情報の提供者が誰かという最も重要な論点をごまかし、幇助といった曖昧な概念で刑罰法規の適用範囲を広げることはインターネットの法的安定性を大きく揺るがす危険極まりないことである。

 半官天下り検閲センターのインターネット・ホットラインセンターそのもの問題点はさんざん繰り返してきたが、第47~48ページの、

 例えば、インターネット・ホットラインセンターが加盟する国際組織INHOPE(theInternational Association of Internet Hotlines )では、違法・有害情報に対する国際的な取組を強化するため、加盟国間で相互通報を行っている。2007年中に同センターにあった違法情報の通報のうち海外のサーバに蔵置されていたものは3,307件であるところ、同年3月から12月までの10か月間にわが国から海外の加盟ホットラインに対して行った通報は児童ポルノ情報及びわいせつ情報350件と一部に限られている

 このように、国内法の適用範囲に限界があることから、一部の悪質なコンテンツ事業者やISP等は、サーバを海外に蔵置することにより、法の適用を逃れているとの指摘もなされている。また、違法情報に対する国内の対応を強化すればするほど、悪意ある発信者が海外に発信元を移転させるインセンティブが働くこととなるため、違法情報の閲覧防止措置を講じるに当たり、国内外で連繋のとれた執行体制を構築することが求められている。

という印象操作も本当にひどいものである。350件以外は、インターネット・ホットラインセンターが他国に通報しないという判断をしただけだろうと考えられるにもかかわらず、勝手に全通報件数との比較を行って、海外対応に難があるかの如き記載をしているのは本当に許し難い。このような判断を勝手に行っていること自体、この半官検閲センターの問題点を露骨に示しているだろう。

インターネット・ホットラインセンターについては、3.民間における自主的取組の促進の第75~76ページの、

「電子掲示板等の管理者」など、より広範囲のプレイヤーが、自主的に違法・有害情報対策に取り組むためには、現状では、①各種ガイドラインを自発的に参照し、自らの取組に反映させること、②新聞紙上等で報道される大手企業等の取組を導入すること、③インターネット・ホットラインセンターの協力依頼があった場合に応じること、④携帯電話インターネット上でのCGMサイトであればEMAの認定を受けることなどが考えられる。このような現状は「電子掲示板等の管理者」にとって十分とはいえない。
(中略)
 インターネット・ホットラインセンターは発足以来二年余りを経過し、その取組への理解は急速に進んでいるが、削除依頼を受けた場合、違法情報はともかく有害情報については、ホットラインセンターと見解が異なる場合もあるようだ。ホットラインセンター側からすれば依頼した後は、それぞれの事業者のポリシーに基づく自主的措置を期待しているのだろうが、一方で、依頼された側からすれば、自社のポリシーと合わず、削除を行わないという選択肢をとった場合、ホットラインセンターの見解に反することになる。インターネット・ホットラインセンターの位置づけや、事業者等の協力関係の在り方が、より明確になっていることが望ましい

という記載もひどいものである。インターネット・ホットラインセンターは単なる一民間団体に過ぎず、しかもこの団体に直接害が及んでいる訳でもないため、削除を要請できる訳がなく、勝手に有害と思われる情報を収集して、直接削除要請などを行う民間団体があるということ自体おかしいと考えるべきであるという最も基本的なことも忘れ、国民の基本的な権利をないがしろにしても自身の利権拡大のみ大事とばかりに、あらゆる者はこの半官検閲センターの言うなりに情報を削除しろという傲慢を示すとは、本当に天下り厄人の考えは気違い染みている。削除を依頼されたところで、自身のリスクで削除をしないという判断をすることは当然あって良いことである。

 第73ページの脚注で、プロバイダー責任制限法(正式名称は、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」)の「特定電気通信役務提供者」と、青少年ネット規制法(正式名称は、「少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」)の「特定サーバー管理者」を

「特定電気通信役務提供者」と「特定サーバー管理者」は同義と考えて良い。

と断定している事もあまりにも軽率という他ない。それぞれの条文を読めば分かるが、「特定電気通信設備を用いて他人の通信を媒介し、その他特定電気通信設備を他人の通信の用に供する者」(「特定電気通信役務提供者」)と、インターネットを利用した公衆による情報の閲覧の用に供されるサーバーを用いて、他人の求めに応じ情報をインターネットを利用して公衆による閲覧ができる状態に置き、これに閲覧をさせる役務を提供する者(「特定サーバー管理者」)は同義では全くない。実際に法運用を行っているはずの官庁が公の報告書にこのようなことを堂々と書くのだから本当に呆れる他ない。

 さらに言えば、第107ページの、

 また、技術開発成果の利用者へのオープンな提供については、一般に開発費用の回収が必要な民間ベースの技術開発には馴染みにくく、どちらかといえば公的な機関の役割として親和性が高い

という記載なども、税金を垂れ流す言い訳に必死なのだろうが、オープンソースなどの最近のオープンな民間の技術開発の流れを完全にないがしろにするものだろう。

 この報告書は、ここ数年で出された役所の報告書の中でも、恐らく類を絶すると言っても過言ではないくらい非道いものである。この報告書には腐り切った天下り厄人の垂れ流す膿がそこら中に溢れ、読んでいて本当に胸がむかついて来る。天下り利権に芯まで蝕まれた厄人にもはや付ける薬はないのかも知れないが、彼らが厚顔にも踏みにじっている国民の本当の安全と安心を返せ、今すぐ返せという言葉を連中の顔面に叩きつけたいと私は心から思っている。

 また、このパブコメも提出次第ここに載せるつもりである。

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第138回:総務省・「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」最終取りまとめ(案)に対するパブコメ募集(その4:国際連携・産学連携組織・基礎調査関連部分)

 前々々回前々回前回に引き続き、総務省の「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」最終取りまとめ(案)(本文1)のパブコメ(12月17日〆切。総務省のリリース意見募集要領電子政府の該当ページinternet watchの記事参照。)の話である。

 引き続き、大枠の方向性について、あといくつか注意しておくべき箇所の指摘をしておきたい。

(1)国際連携関連部分
 まず、国際連携については、2.安心を実現する基本的枠組の整備中、第47ページ以下の「(2)国際連携推進のための枠組の構築」で書かれている。

 本来国際連携や情報交換などは地道にやってくれればそれで良い話なのだが、放っておくと役所は必ず、自分たちの都合の良い例だけを取り上げて国際動向・潮流を騙り、危険な規制利権の強化を図ってくるので、この部分についても釘を差しておく必要があると私は思っている。

 特に、この部分については、昨今の情勢を考えると、児童ポルノ規制に関して、児童ポルノの閲覧の犯罪化と創作物の規制まで求めている「子どもと青少年の性的搾取に反対する世界会議」の根拠のない狂った宣言を国際動向として一方的に取り上げ、規制強化を正当化することなどあってはならないという意見を、かえって、例えそれが児童ポルノであろうと、情報の単純所持・アクセス・ダウンロード・収集・取得・閲覧等の規制・犯罪化は、恣意的にしか運用され得ず、利用者から見て回避不能の危険極まるものであり、新たな思想犯罪を作り出す非人道的なものとして絶対導入されるべきでないと、既にこのような非人道的な規制を導入している諸国は即刻このような規制を廃止するべきであると、そもそも最も根本的なプライバシーに属し、何ら実害を生み得ない個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ること自体、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の国際的かつ一般的に認められている基本的な権利からあってはならないことであると、日本政府から国際的な場において各国に積極的に働きかけてもらいたいという意見を出さなくてはならないと考えている。

 また、もし青少年ネット規制法について国際的に紹介することがある場合には、この法律は、ほぼあらゆる者から反対されながら、有害無益なプライドと利権の保持に走った一部の寄生議員と規制官庁の思惑のみによって成立したものであるという経緯や、そもそも成立するべきではなく今でも廃止するべきとする意見もあるということも含め紹介するべきという意見も一緒に出したいと思っているところである。

(2)産学連携組織関連部分
 また、2.安心を実現する基本的枠組の整備中、第54ページ以下の「(3)様々な連携の推進」で書かれていることもさっぱり要領を得ないが、その結論部分に相当する第61ページの「3)産学連携の結節点となる組織の必要性」で、

 実際、インターネットの利用環境整備は、これまでも民間の自主的取組として努力がなされてきた。しかし、これらは直面する問題への対症療法的取組であったり、各施策間の有機的な連携が不足していたり、ボランタリーに参加する主体も一部のネット関連企業にとどまっていたりと、暫定的かつ個別の取組と言わざるを得ない側面がある。また、企業のCSRが及ぶ範囲も都市部に限られるなど、どうしても地域的に偏り、インターネット利用環境の整備の取組についても様々な格差が生じることが懸念される。

 そのため、今後は、これまで企業や教育機関、NPO等によって個々に行われてきた取組を有機的に連携させることや、単体では社会貢献活動を行うことが困難な中小の企業、意欲ある個人、地域のボランティアグループ、また、インターネットを利用する様々な企業からも、さらに多くのプレイヤーが参画できるようにした上で、総合的かつ戦略的な取組とするとともに、日本全国あまねく実施できるように配慮することで、民間における自主的取組や国民のリテラシー強化の活動を質・量ともに向上させることが不可欠である。

 このための仕組みとして、産学の自主的な取組及び啓発活動の結節点となる組織が必要と考えられる。次章以降、検討を進める中で、その必要性が繰り返し確認されることになるが、この新しい組織が、本最終取りまとめを踏まえて策定される「安心ネットづくり」促進プログラムの実際の受け皿として機能する「基本的枠組み」として期待されるものである。

と、前回取り上げた「e-ネットづくり!」宣言の実際の受け皿となる組織の話がここに書かれている。そもそもニーズの不明な官製キャンペーンなど不要であるという意見を出すつもりであるが、この部分について、天下りへの国民の血税のムダな浪費はもはや到底許されることではなく、この産学連携組織を天下り先とすることなど絶対あってはならないという念押しもしておきたいと思っている。

(3)基礎調査関連部分
 本来、情報モラル・リテラシー教育に関する4.利用者を育てる取組の促進に書かれていることのみに注力するべきだと思うのだが、この部分についても第133ページ以下の「(5)違法・有害情報対策の基礎となる調査の実施」に書かれている、2009年度から取り組むとしている基礎調査だけは注意しておいた方が良い

 理念的には、第135ページに、

 また、ネット利用増大の結果としてしばしば用いられる犯罪率の増加自体についても、科学的な検証が必要である。インターネットを活用した社会活動が増加しているなかで、当該活動全般の増加率よりも明らかに急速なペースでインターネットを利用した犯罪やインターネット上の情報流通による被害が増大しているのであればともかく、そうではない場合にまで、犯罪の増加等の社会問題の原因を安易にインターネットに求めることについては、慎重に考えるべきである。加えて、インターネットの普及がもたらす情報検索の効率化、離れた場所にいる人との交流の拡大、自己表現手段の多様化といった利点についても、公正な判断を行うことが求められる。

 さらに、リテラシーを十分に有する者とそうでない者では、同じ違法・有害情報に接していても被害の程度は大きく異なる。調査により得られた結果に基づき、子どものインターネット利用や健全育成について比較的関心の薄い層を主要なターゲットとして、有効なアプローチを行っていくことが必要であり、その意味からも実態把握は重要である。

 また、昨今、インターネット上の違法・有害情報対策として法規制を導入すべきとの議論がなされることが増えているが、例えば、既存のある法規制がどの程度の実効性を持っているのかを調査することにより、その法規制が手段として有効であるか否かを判断する検証モデルの構築なども視野に入れることが考えられる。

と結構まともなことが書かれているのだが、役人の情報リテラシーの低さを考えると、実際のモニター調査項目は、内閣府の印象操作調査のようにひどいものが並ぶという懸念が極めて強いのである。(去年の内閣府の調査における印象操作のひどさについては、警察庁研究会提出パブコメにも書いた。)

 この部分についても、特に、役所の調査項目作成への関与を極力無くし、予断を与えないように調査項目の作成には細心の注意を払うこと、出来れば複数の調査機関によって項目の偏向をチェックすこと、対面調査で直接規制の是非を問うような片寄りしか生まない手法を取らないこと、ウェブ調査も含め、幅広く調査を行うことといった意見を出しておかなくてはならないと私は感じている。

 後、細かな文章への突っ込みも少ししておきたいと思うので、次回もこの報告書の話である。

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2008年12月 1日 (月)

第137回:総務省・「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」最終取りまとめ(案)に対するパブコメ募集(その3:「e-ネットづくり!」宣言・総務省版インターネット・ホットラインセンター創設案関連部分)

 前々回前回に続き、総務省の「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」最終取りまとめ(案)(本文1)のパブコメ(12月17日〆切。総務省のリリース意見募集要領電子政府の該当ページinternet watchの記事参照。)の話である。

 引き続き、大枠の方向性の話であるが、民間における自主的な取り組みと称して、天下り利権の強化にしかつながらない有害無益かつ危険な規制強化を押しつけるのは役所のいつもの手口であり、3.民間における自主的取組の促進「(1)違法・有害情報対策の推進」の第80ページ、「3)検討すべき方策」で、

 サイト運営者をはじめとする幅広いプレイヤーがインターネットの利用環境整備に参画していることを明らかにする新たな枠組みとして、また、それらの自主的取組を実質的にも強化する仕掛けとして、「自主憲章」的な目標を共有することを宣言する仕組みとして(仮称)「e-ネットづくり!」宣言という施策を提案する。

と書かれている「e-ネットづくり!」宣言の話もその例に洩れない

 その基本構想は、第84ページに、

「e-ネットづくり!」宣言の基本構想は89頁に示すとおりである。まず、参加者が共有すべき目標としての「自主憲章」がある。その目標達成を担保する具体的な取組は2つに分かれる。一つの場は、自主的取組の指針となるガイドラインなどで構成された「ナレッジベース」、もう一つの場は「交流プラットフォーム」である。インターネットにおける状況の変化は激しい。知見が集積した結果としてのテクスト群が「ナレッジベース」となる。これが通常の自主的取組を規定する。一方で、変化に対応するために情報を集積し、新たなルールを議論し生み出す場が「交流プラットフォーム」である。

と書かれており、この「e-ネットづくり!」宣言とやらには、「自主憲章」の他に、「ナレッジベース」と称するガイドライン群と、「交流プラットフォーム」と称する新たな規制を検討する場が含まれるようである。

 まず、この「自主憲章」とは何かとなると、第84ページに書かれているように、

「自主憲章」の示す方向に賛同する法人・団体は、「チーム・マイナス6%」と同様に、申請し、登録すれば、「e-ネットづくり!」宣言をすることができる。これにより「e-ネットづくり!」宣言が提供するロゴマーク等を自ら行う啓発活動等に使用することも可能となる。また、法人・団体のみならず、個人が宣言する場合も想定される。サイト管理者は個人であることが多いので、むしろ積極的な申請・登録が望ましい。まず、「e-ネットづくり!」宣言をすることで、インターネット利用環境整備に積極的に取り組もうとするプレイヤーが「可視化」されることになる。

と、総務省への参加申請・登録の要請や総務省謹製のロゴマークの販促といった、ニーズを無視したいつもの官製キャンペーンに過ぎない。これだけを普通に考えても税金のムダ使いしかならないと思う上、さらに、総務省のことなので「自主憲章」すら規制よりに書かれる可能性が強く、なおさら税金のムダな浪費になる危険性が高い

 また、「ナレッジベース」と称するガイドライン群についても、総務省が主導する以上、これらでも規制よりの話しか出て来ないに違いない。そもそも今以上にどんなガイドラインについて必要なのか良く分からず、もし何か検討するのであれば、そもそも今ですら山のようにあって訳が分からないガイドライン群の整理削減のみを検討するべきだと思うが、第85~86ページに

 また、事業者を念頭に置いたガイドラインだけではなく、利用者向けにガイドライン的な役割を果たす啓発文書の策定も検討すべきであろう。例えば、発信者として守るべきことだけではなく、違法・有害情報に関する一般の受けとめとの乖離を克服し、違法・有害情報とは何を指すのかについて共通理解を求めるためのガイドブックの策定なども視野に入れるべきである、さらに、後述の「交流プラットフォーム」における検討を踏まえ、新たなガイドラインの策定や既存ガイドラインの改定などに不断に対応することが求められる。

に書かれている利用者向けのガイドラインには特に注意しておく必要があるだろう。総務省も、表現の自由などの国民の基本的な権利の重要性と権利の本質的な相対性という最も基本的なことを全く理解していないので、理解不能の「共通理解」を押しつけてくる危険性が高いのである。

 「交流プラットフォーム」に至っては一番危うく、第86~87ページに、

 交流プラットフォームは、ナレッジベースを構成する知識を生み出し、最新の状況に合わせて改定をしていくための機能を果たすとともに、インターネットの利用環境整備を推進するプレイヤーの活性化を図るための交流の結節点となる。「e-ネットづくり!」宣言を状況の変化に応じて改善される柔軟な運動にするための仕掛けである。具体的内容としては、「相談センター」、「違法・有害情報通報受付」、「作業部会」等が想定される。

 「相談センター」は、現在の電気通信事業者向けの「違法・有害情報事業者相談センター」の機能を拡大・強化し、インターネット上のあらゆるプレイヤーを包含する「e-ネットづくり!」宣言を行ったメンバーを対象とした相談窓口であり、違法・有害情報対策全般のポータルとなるべきものである。現在の「違法・有害情報事業者相談センター」の相談実績が少ないことに鑑み、地方への出張相談、もしくは、違法・有害情報対策アドバイザーなどを設けて、要請のあったメンバーの指導に赴くなど、能動的な対応を図ること、また、このセンターへの相談内容を分析し後述の作業部会を立ち上げるなど、実効性をあげるための諸方策を検討すべきである。

 「違法・有害情報通報受付」は、主に「e-ネットづくり!」宣言を行った者からの違法・有害情報通知を受け付けるものである。一般からの違法・有害情報の通知はインターネット・ホットラインセンターが受け付けているが、警察からの委託事業であるため、そこに蓄積された情報を柔軟に活用し、自主的取組の向上に役立てることは難しい。違法・有害情報対策は、その実態を踏まえなければ効果的な対応ができないが、現状では、民間の側にきちんとしたデータの蓄積はない。インターネット・ホットラインセンターとの協力の深化も視野に入れる一方で、「e-ネットづくり!」宣言の基盤として、交流プラットフォームにメンバーからの違法・有害情報の通知もしくは対応実績等、必要な情報を受け付け、分析を行うことが必要である。また、「違法・有害情報通報受付」から発展し、第三者機関的な枠組などを活用し、メンバーが主に違法情報等の判断に迷った場合、判断を代替する機能を持たせることも検討すべきである。

 「作業部会」は交流プラットフォームにおいて最も重要な機能を果たす。ナレッジベースへ新たな知識を加えるとともに、メンバーの相互交流の場となる。その切り口として、まず同種のサービスの担い手同士の議論の場が考えられる。
(中略)
 また、サービスごとの作業部会を設けるだけではなく、例えば、最近話題となっているスパムブログの問題、後述するような児童ポルノへの対応の在り方や、セルフレイティングの普及方策など、事案ごとに関係者が集まって議論する作業部会も随時設けるべきである。さらに、「e-ネットづくり!」宣言のメンバーを対象としたセミナー等の開催など、より柔軟な交流の仕組みも備えるとともに、有意義な取組を行ったメンバーを表彰する制度を設けるなど、自主的取組を顕彰する機能を持つことも考えられる。

と書かれているように、天下り先を増やせとばかりに、自分たちの相談センターの拡充を図ったり、「違法・有害情報通報受付」と称して、総務省版インターネット・ホットラインセンターを作ろうとしていたりと、本当にやりたい放題である。税金のムダ使いにしかならないだろうニーズを無視した相談センターの拡充もされるべきではないと思うが、常に権利の侵害は相対的なものであり、権利侵害とは直接関係のない天下り先の半官検閲センターに違法性の判断を代替する機能を持たせることなど危険極まりないことである。

 そもそも現在の「違法・有害情報事業者相談センター」の相談実績が少ないことが、現実のニーズを如実に物語っているが、この相談センターと「違法・有害情報通報受付」との区別も良く分からず、前回取り上げたプロバイダ責任制限法に関する部分では、「大手のプロバイダ等を中心に、既に自主的対応として違法情報の削除が進んで」いるとしながら、こちらでは、民間にデータの蓄積がないとしてたりと、この総務省の違法・有害報告書案は、本当に読むに耐えない矛盾・不合理だらけである。

 さらに言えば、インターネット・ホットラインセンターの事業が警察からの委託事業であるため、そこに蓄積された情報を柔軟に活用し、自主的取組の向上に役立てることは難しいと、インターネット・ホットラインセンターが、民間団体でありながら、ほぼ警察の下部組織であることを政府の報告書が公に認めている点など、完全に語るに落ちている総務省も自分たちの天下り先としてもう一つ似たような半官検閲センターを作りたいのかも知れないが、別に総務省がやったところで全く同じことだろう。内閣官房の犯罪計画案への提出パブコメでも書いたことだが、サイト事業者が自主的に行うならまだしも、何の権限も有しないインターネット・ホットラインセンターのような民間団体からの強圧的な指摘により、書き込みなどの削除が行われることなど本来あってはならないことである。このようなセンターは単なる一民間団体で、しかもこの団体に直接害が及んでいる訳でもないため、削除を要請できる訳がない。勝手に違法あるいは有害と思われる情報を収集して、直接削除要請などを行う民間団体があるということ自体おかしいと考えなくてはならないのであり、これは、必要であれば、きちんとした取り締まりと削除要請ができる人員を、法律によって明確に制約を受ける警察に確保するべき話である。通報受付についてもきちんと警察に設け、それを周知するべき話であって、それ以上の話ではない。

 最後の結論として書かれている第87~89ページの「(d) 取組にあたっての課題等」も、

「e-ネットづくり!」宣言は、参加のしやすさを念頭に置きながら、従来の業界団体的な組織ではなく、インターネット上のプレイヤーの緩やかな協働関係を構築することを主眼としている。それぞれの立場から、日々の取組の手がかりを得られる仕組みとして機能することを重視しており、強制的な枠組みとしはしない形で提示している。

 そのため、一方では、悪意をもって宣言したメンバーがいる場合はどうなるか、実効性は担保できるのかという疑問が生じる。

 この取組は、「チーム・マイナス6%」と同じく、まずは、インターネットの利用環境を皆で整備しようという善意の思いを宣言してもらうことがねらいである。したがって、そうしたことに関心がないか、もしくは悪意を持ったプレイヤーがわざわざ登録までするのか不明であるが、交流プラットフォームの「違法・有害情報通報受付」への苦情やインターネット・ホットラインセンターからの情報などにより、悪意をもって宣言したメンバーの存在が、ある程度明らかになった場合、別途第三者的な勧告機能を備えることで、宣言にふさわしくないメンバーであることを確認し、自浄努力を促すなど、何らかの措置を執ることも検討すべきかもしれない。

 実効性を担保するという観点からは、前述したとおり、一部のプレイヤーについては自主憲章だけではなく、ガイドライン群の一部についても遵守することを宣言させることが求められるかもしれない。その場合、ヨーロッパ諸国の自主憲章と似通った取組となる。ただし、最近の携帯電話フィルタリングの例に見られるように、業界の自主的取組を踏まえた法制化もあり得るので、遵守を宣言するガイドラインの対象をよほど絞らないと、多くの参画者の同意を得ることは困難であると予測される。

 また、個別のメンバーが実効性ある取組を行っているか否かは、検証困難であるが、「e-ネットづくり!」宣言の取組の全体としての効果を把握することは重要である。そのため、いくつかの指標に基づいて評価する外部機関を設け、一定期間ごとに評価を実施し、それに基づいて「e-ネットづくり!」宣言の仕組み自体を見直していくことも検討すべきであろう。

 「e-ネットづくり!」宣言は広報活動も重要な課題である。参加しやすい枠組みとした以上、法人・団体、個人を問わず、なるべく多くのメンバーが参加できるよう、PRを行うことが必要である。特に、最初のアプローチとして電気通信事業者には効果的に周知を行えるよう、総務省等、関係機関も協力すべきである。

 「e-ネットづくり!」宣言は業界の枠を超えた取組であるため、これを事業として担う主体としては、これまでの業界団体では適さない。青少年インターネット利用環境整備法の成立を踏まえ、民間の自主的取組と利用者を育てる取組を促進するため、前章で提言した産学の連携を促進する新たな組織が担うことがふさわしいと考える。

 また、「e-ネットづくり!」宣言を事業として開始するのは、青少年インター利用環境整備法の施行後、なるべく速やかであることが望ましい。2009年度中の実施をめざして関係者が協力してプロジェクトの具体化を図ることが求められる。

と、総務省は、強制力のない自主的な取り組みとしながら、天下り先の第3者機関に勧告機能を持たせようとしたり、自分たちの大臣要請でムダに混乱を招いたことを忘れて、しゃあしゃあと携帯電話フィルタリングと青少年ネット規制法の例を引いて、ガイドラインの押しつけとその法制化を目論んでいたり、電気通信事業者に周知と称する行政指導による強制参加を促そうとしていたり、新たな天下り先の組織を作ろうとしていたりするなど、このプロジェクトについて実施する前から失敗が約束されているような支離滅裂ぶりを示している

 この部分についても、そもそも民間が求めていない、「民間による自主的な取組」など取りやめるべきであると、今以上に、規制よりにしかならない官製「自主憲章」やガイドラインなど不要であると、検討が必要であるとしたら、今ですら訳が分からないほど沢山ある各種ガイドラインの整理削減のみであると、ニーズを無視した「相談センター」の拡充など天下り利権の強化・税金のムダな浪費にしかつながらないと、インターネット・ホットラインセンターという警察庁の半官天下り検閲センター自体廃止が速やかに検討されるべきものであり、「違法・有害情報通報受付」と称して、総務省版の半官天下り検閲センターをさらに作ることなど論外であるという意見を出さざるを得ないと私は考えている。

 いい加減うんざりしてくるのだが、まだまだ突っ込みどころは尽きないので、次も、この報告書案の話である。

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