第131回:青少年インターネット規制法の施行令案に対する意見
青少年ネット規制法の施行令案についても意見を提出したので、ここに載せておく。
(問い合わせてみたところ、インターネット提出フォームが再開された。フォームが一時停止していたのは、どうやら何かのミスだったらしい。)
(以下、提出パブコメ)
意見募集の対象とされている「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律施行令(案)」では、法律で定められている各種義務の例外を定める要件の中に契約者数あるいは販売台数の要件が含まれており、インターネットサービスプロバイダーの場合で契約者数5万未満と、インターネット接続機器メーカーの場合で、経済産業省告示で定める種類毎の機器の前年度販売数1万台未満と定めているが、関連資料を読んでもこれらの数値の根拠は全く不明確である。
まず、総務省の規制事前評価書には、この規制事前評価書には契約者5万という数字の根拠が書かれていない。さらに、利用者に追加コストが発生しないとしている点も全く賛同できない。プロバイダー等に「青少年有害情報フィルタリングソフトウェア又は青少年有害情報フィルタリングサービスを提供(紹介)することが求められるため、事務手続の見直しや適切なサポート体制構築のための費用が発生する。また、自ら青少年有害情報フィルタリングサービスを新たに提供する場合には、そのための費用も必要となる」のであれば、プロバイダー等も別に慈善事業ではないのだから、そのコストは必ず利用者に転嫁されるのである。
経産省の規制事前評価書では、販売台数基準を10万台とする案と1万台とする案を比較して1万台という案を選択しているが、10万台としたときのカバー率がPCで9割としながら、1万台としたときのカバー率を書いておらず、また、フィルタリング容易化としてどこまで追加コストが発生するのかの詳細も不明であり、一体どういう評価をしたのだか、さっぱり良く分からない。また、この規制が、PCのみならず、ブラウザを組み込んだ各種携帯デバイスなども対象となるだろうことが考慮されておらず、このような不十分な評価で安易に規制の基準を定めることは危険極まりない。
この規制の評価において、総務省のデタラメな携帯電話フィルタリング大臣要請や経産省のPSE法のデタラメな運用によって生じた無用の社会的混乱の教訓が何ら活かされていないとしか言いようが無く、これらの両省庁にあっては、今までの姿勢を猛省し、このフィルタリング等義務化に関する事前評価を完全にやりなおし、この規制を最小限に止めることを再検討してもらいたい。また、機器の使用が十八歳以上の者に監視される蓋然性が高いと認められる場合や、細かな機種指定やを行う告示もまた非常に重要であり、この経産省告示をきちんとパブコメにかけることも私は求める。
このフィルタリング規制が具体的にどのような影響を及ぼすかは、実際に運用されて行かないと分からないところもあるが、フィルタリングソフト・サービスの不当な抱き合わせ販売を助長することにつながる恐れが強く、政府全体で、特に公正取引委員会において、規制を理由にした不当な便乗商法に対する監視を強め、フィルタリングソフト・サービスの不当な抱き合わせ販売について独禁法の適用を検討してもらいたい。
しかし、そもそも、フィルタリングサービスであれ、ソフトであれ、今のところフィルタリングに関するコスト・メリット市場が失敗していない以上、かえって必要なことは、不当なフィルタリングソフト・サービスの抱き合わせ販売の禁止によって、消費者の選択肢を増やし、利便性と価格の競争を促すことだったはずである。去年から今年にかけて大騒動になったあげく、ユーザーから、ネット企業から、メディア企業から、とにかくあらゆる者から大反対されながらも、有害無益なプライドと利権の確保を最優先する一部の議員と官庁の思惑のみから成立した今の青少年ネット規制法による規制は、一ユーザー・一消費者・一国民として全く評価できないものであり、次の法改正の検討時には速やかに法律の廃止が検討されてしかるべきである。
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