第127回:文化庁・過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会の中間整理に対する提出パブコメ
文化庁・文化審議会著作権分科会・過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会の中間整理に対するパブコメを書いて提出したので、ここに載せておく。
(以下、提出パブコメ)
過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会中間整理について下記の通り、意見を提出します。
記
1.個人/団体の別:個人
2.氏名:兎園
3.住所:
4.連絡先:
5.該当ページおよび項目名:
(1)第2章第3節 権利者不明の場合の利用の円滑化について(19~37ページ)
(2)第2章第4節 次代の文化の土台となるアーカイブの円滑化について(38~48ページ)
(3)第3章 保護期間の在り方について(51~97ページ)
6.意見
(1)「第2章第3節 権利者不明の場合の利用の円滑化について(19~37ページ)」に対する意見
権利者が不明であることによって著作物が死蔵され、社会全体にとっての損失となる事態を防ぐために、権利者不明の場合の利用の円滑化について必要な制度的な対応が取られることを期待する。その際には、特に、余計なコストを発生させることがないA案(権利者の捜索について相当の努力を払っても権利者と連絡することができない場合に、著作物の利用をできることとする)を軸に検討が進められるべきである。ここで、第3者機関を介在させた場合、天下りの温床となり、その手続きコストによって貴重な社会的コストがムダに浪費されることになると考えられ、B案には全く賛同できない。
また、「写り込み」等の場合についても、権利制限の見直しなどの検討が今後進むことを期待する。
(2)「第2章第4節 次代の文化の土台となるアーカイブの円滑化について(38~48ページ)」に対する意見
図書館の権利制限について、国立国会図書館における納本直後のデジタル化を法改正で認める方針とされていることに賛成する。しかし、国会図書館はあらゆる資料の保存という特殊な使命を帯びているのは確かにその通りであるが、他の図書館も、多かれ少なかれ資料の保存を目的としていることに変わりはなく、同時に、他の図書館についても、納本直後の資料のデジタル化を認めるようにすることを検討するべきである。デジタル化された資料の館内閲覧やコピーサービスのルール等について、関係者間で協議し、著作物の通常の利用を妨げず著作者の正当な利益を不当に害しない形にするならなおさらである。
また、記録のための技術・媒体の急速な変化に伴う旧式化により、媒体の内容を再生するために必要な機器が市場で入手困難となり、事実上閲覧が不可能となってしまう事態が生じていることから、新しい媒体に移し替えて保存する必要があるという問題点について、このようなデジタル化が現行法上可能であることを早期に明確化するべきである。同時に、他にも、文化庁の異様に厳格な条文解釈によって、本来認められるべき公正な利用まで萎縮しているということがないかということを全権利制限条項についてきちんと洗い直し、問題のある権利制限条項の解釈について同様の対応を検討するべきである。
(3)「第3章 保護期間の在り方について(51~97ページ)」に対する意見
ひ孫の孫くらいのことまで考えて創作をしている人間がいるとも思われず、文化の多様化のためにはこれ以上の延長はほとんど何の役にも経たず、経済的にも、著作者の死後50年を経てなお権利処理コストを上回る財産的価値を保っている極めて稀な著作物のために、このコストを下回るほとんど全ての著作物の利用を阻害することは全く妥当でない。
また、実演家の著作隣接権の保護期間延長についても、今のところ賛成する理由は何一つない。
レコード屋と放送局という流通業者の著作隣接権の保護期間の延長は論外である。レコード会社や放送局の著作隣接権は、彼らが強い政治力を持っていたことから無理矢理ねじ込まれた権利に過ぎず、その目的は流通コストへの投資を促すことのみにあったものであるが、インターネットという流通コストの極めて低い流通チャネルがある今、独占権というインセンティブで流通業者に投資を促さねばならない文化上の理由はほぼ無くなっているのである。
著作権の保護期間の延長について私は完全に反対する。文化庁と権利者団体を除けばほぼ否定的な結論が出そろっているこの問題について、検討が先延ばしにされたこと自体残念であり、最終報告書においては、この問題についてこれ以上検討する必要はないとするべきである。
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