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2008年4月11日 (金)

第84回:ベルギー著作権法の私的複製補償金関連規定

 かなり途中が空いてしまったが、今回は、第69回の続きとして、ベルギーの私的複製補償金関係の規定を紹介する。

 まず、ベルギー著作権法の私的複製補償金関連部分の規定を以下に訳す(翻訳は拙訳。私的複製関連規定そのものについては、第69回をご覧頂きたい)。

CHAPITRE IV. - (De la copie privee d'oeuvres et de prestations.)

Art. 55. Les auteurs, les artistes-interpretes ou executants et les producteurs de phonogrammes et d'oeuvres audiovisuelles ont droit a une remuneration pour la reproduction privee de leurs oeuvres et prestations, y compris dans les cas fixes aux articles 22, § 1er, 5, et 46, alinea 1er, 4, de la presente loi.
La remuneration est versee par le fabricant, l'importateur ou l'acquereur intracommunautaire de supports utilisables pour la reproduction d'oeuvres sonores et audiovisuelles ou d'appareils permettant cette reproduction lors de la mise en circulation sur le territoire national de ces supports et de ces appareils.
Le Roi fixe les modalites de perception, de repartition et de controle de la remuneration ainsi que le moment ou celle-ci est due.
Sous reserve des conventions internationales, la remuneration est repartie conformement a l'article 58, par les societes de gestion des droits, entre les auteurs, les artistes-interpretes et les producteurs.
Selon les conditions et les modalites qu'Il fixe, le Roi charge une societe representative de l'ensemble des societes de gestion des droits d'assurer la perception et la repartition de la remuneration.
Lorsqu'un auteur ou un artiste-interprete ou executant a cede son droit a remuneration pour copie privee sonore ou audiovisuelle, il conserve le droit d'obtenir une remuneration equitable au titre de la copie privee.
Ce droit d'obtenir une remuneration equitable ne peut faire l'objet d'une renonciation de la part des auteurs ou artistes-interpretes ou executants.
Le droit a remuneration vise a l'alinea 1er ne peut beneficier des presomptions visees aux articles 18 et 36.

Art. 56. La remuneration visee a l'article 55 est fixee par arrete royal delibere en Conseil des ministres et est calculee en fonction du prix de vente pratique par le fabricant, l'acheteur intra-communautaire ou l'importateur des appareils permettant la reproduction des oeuvres protegees et, le cas echeant, en fonction du prix des supports.
En l'absence d'un tel arrete, la remuneration est fixee a :
- 3 pour cent sur le prix de vente fixe au premier alinea pour les appareils permettant la reproduction des oeuvres protegees;
- 2 francs l'heure, sur les supports analogiques;
- 5 francs l'heure, sur les supports numeriques.

Art. 57. La remuneration visee a l'article 55 est remboursee selon les modalites fixees par le Roi :
1°aux producteurs d'oeuvres sonores et audiovisuelles;
2°aux organismes de radiodiffusion;
3°aux institutions reconnues officiellement et subventionnees par les pouvoirs publics aux fins de conserver les documents sonores ou audiovisuels;
4°aux aveugles, aux malvoyants, aux sourds et aux malentendants, ainsi qu'aux institutions reconnues, creees a l'intention de ces personnes;
5°aux etablissements d'enseignement reconnus, qui utilisent des documents sonores et audiovisuels a des fins didactiques ou scientifiques.
6°aux etablissements hospitaliers, penitentiaires et d'aide a la jeunesse reconnus.
Le remboursement n'est accorde que pour les supports destines a la conservation des documents sonores et audiovisuels et a leur consultation sur place.
En outre, apres avis de la commission des milieux interesses, le Roi peut determiner par arrete royal delibere en Conseil des Ministres, les categories de personnes, physiques ou morales :
1°soit qui beneficient d'un remboursement total ou partiel de la remuneration percue et repercutee sur les d'ordinateurs qu'elles ont acquis;
2°soit pour lesquelles les redevables de la remuneration vises a l'article 55 sont exoneres ou rembourses totalement ou partiellement de celle-ci pour les ordinateurs acquis par ces personnes.
Le remboursement ou l'exoneration de la remuneration, vises a l'alinea precedent doivent etre dument motives :
1°soit par la necessite de garantir, sans porter atteinte a la creation, l'acces le plus egal pour chacun aux nouvelles technologies de l'information et de la communication, des lors que la remuneration en question constituerait un obstacle a cet acces;
2°soit par la necessite de garantir l'acquisition d'ordinateurs par des personnes qui ne consacrent manifestement pas ce materiel aux reproductions visees a l'article 55.
Le Roi determine les conditions du remboursement ou de l'exoneration.

Art. 58. § 1. La remuneration visee a l'article 55 est attribuee, a raison d'un tiers, a chacune des categories suivantes :
- les auteurs;
- les artistes-interpretes ou executants;
- les producteurs de phonogrammes et d'oeuvres audiovisuelles.
§ 2. Les Communautes et l'Etat federal peuvent decider d'affecter trente pour cent du produit de la remuneration dont question au paragraphe precedent a la promotion de la creation d'oeuvres, par accord de cooperation en application de l'article 92bis, § 1er, de la loi speciale du 8 aout 1980 de reformes institutionnelles.

第4章 (作品と実演の私的複製について)

第55条 作者、実演家と録音録画物の製作者は、第22条第5項と第46条第4項に含まれる作品と実演の私的複製に対する補償金請求権を有する。
 補償金は、そのような媒体と機器を国内で流通させたときにこの複製ができる機器あるいは録音録画媒体のメーカー、輸入者あるいは仲介入手者によって支払われる。
 国王が、この補償金の徴収、分配、管理、並びに、これがいつから課されるかの形を定める。
 国際条約の留保の下、補償金は、第58条に一致する形で、著作権管理団体によって、作者、翻案家と製作者に分配される。
 定めた条件と形に従い、国王は、補償金の徴収と分配を著作権管理団体の集まりに委ねる。
 作者あるいは実演家は、私的な録音録画に対する補償金請求権を譲ったとしても、私的複製の名のもとに得られる補償と等価の補償を得る権利を保つ。
 この等価の補償を得る権利は、作者あるいは実演家の放棄の対象とはならない。
 第1段落の補償金請求権は、第18条と第36条に規定されている推定の利益を受けない。(訳注:第18条と第36条は作者や実演家が、それに反する取り決めがない限り、サブタイトルを付けたり再版をするためなどの独占利用権を製作者に譲るという規定。)

第56条 第55条に規定されている補償金は、閣議で討議される国王令によって定められ、メーカー、仲介販売者、あるいは、輸入者の設定する、保護を受ける作品の複製ができる機器の販売価格、、うまくいかない場合は、媒体の販売価格に従って計算される。
 このような王令が存在しない場合、補償金は以下の額となる:
-保護を受ける作品の複製ができる機器に対しては、前段で決まる販売価格の3%;
-アナログ媒体については時間あたり2フラン;
-デジタル媒体については時間あたり5フラン。

第57条 第55条の補償金は、国王の定める形により、以下の者に返還される:
1°録音録画物の製作者;
2°放送局;
3°公権力によって録音録画物を保存する義務を課されているよく知られた公的機関;
4°視聴覚障害者、並びに、これらの者の意思の下に作られたよく知られた機関;
5°教育研究目的のために録音録画物を使用する、よく知られた教育機関;
6°病院、監獄、よく知られた青少年援助機関。
 返還は、録音録画物の保存に使われた媒体とその場での援助の場合のみに認められる。
 さらに、関係者委員会の意見に従い、国王は、閣議で討議される国王令によって、以下のような自然人あるいは法人のカテゴリーを決めることができる:
1°入手したコンピュータに対して反映され、徴収された補償金の部分的あるいは全体的返還を受けられる者;
2°あるいは、第55項に規定されている補償金の義務を負った者であって、これらの者が入手したコンピュータに対する補償金を、部分的あるいは全体的に返還あるいは免除される者;
 前段落に規定されている、補償金の返還あるいは免除は、次のような正当な理由がなくてはならない:
1°問題の補償金が、情報通信に関する新技術への各々の完全に平等なアクセスを阻害する場合であって、創造性を害することなく、このアクセスを保障しなくてはならない場合;
2°あるいは、第55条に規定されている複製にこの物を明らかに使わない者に対してコンピュータの入手を保障しなければならない場合。

第58条 第1項 第55条に規定されている補償金は、第3者を考慮して、次のカテゴリーの各者に分配される:
-作者;
-実演家;
-録音録画物の製作者。

第2項 各市と連邦政府は、前段落の問題の補償金の全体額の30%を、1980年の制度改正特別法の第92条の2の適用と一致する形で、作品創造のプロモーションに当てることを決められる。

 これ以下の第5章で同じように描画媒体に関する補償金の規定が規定されており、コピー機などにも補償金を課しているなど、ベルギーは相当タチの悪い国に分類されるのだが、上で訳した部分を読んだだけでも、ベルギーでは、メーカーから補償金を徴収しているが、補償金の返還や免除も同時に存在していることが分かる。メーカーが補償金の負担者となっているヨーロッパでは、返還制度が存在していないので無問題などというのは、文化庁の脳内妄想以外の何物でもないのである。(この点はフランスも同じである。フランスではメーカーが補償金の負担者とされながら、返還制度が存在していることは、第21回の文化庁パブコメでも指摘した。フランスの補償金制度そのものに関しては、第16回参照。)

 ベルギーは、フランスより詳細に様々な返還条件を定めているが、さらに、第56条で、補償金の事実上の上限を定めていることも注目に値する。このような補償金の上限規定は、権利者団体の際限のない要求を抑止するためのセーフハーバーとして極めて重要である。

 天下りによる不透明な関係で権利者団体と完全に癒着した文化庁の報告など、もはや私は全く信じない。今後も、文化庁は自らの天下り利権確保のために、その歪み切った脳内妄想を国民に押しつけようとして来ることだろうが、このインターネット時代に、そんなごまかしは全く通用しない。私的録音録画問題は、そんなごまかしでどうにかなるような生やさしい問題ではないのである。(前回、スウェーデンで、フランス型の違法コピー対策が政府に否定されたらしいという話を紹介したが、ダウンロード違法化がされた国でこんなことが問題になる訳がない。スウェーデンやフィンランドがダウンロード違法化をしたということも、極めて怪しいと私はにらんでいる。)

 ついでに、参考のため、納得感のあるものではないが、上で規定されているところの国王令の一例として、デジタル録音録画媒体・機器に対する課金を決めたとおぼしき1996年の国王令(フランス語)へリンクを張っておく。

 最後に、ニュージーランドで著作権改正法案が通ったというニュース(Scoopの記事1記事2stuff.co.nzの記事ニュージーランド国会のHP改正条文現行条文)もあったので一緒に紹介しておく。教育目的や図書館のデジタルアーカイブに対する権利制限の拡充、ノーティスアンドテイクダウン手続きやDRM回避機器規制の導入など盛りだくさんの内容であるが、この改正によって、ニュージーランドでは、フォーマットシフトとタイムシフトが明確に認められるようになった(第81条と第84条)が、私的録音録画補償金制度は導入されていない。私的複製と補償金制度が必ずセットになるとするのも、文化庁のデタラメな脳内妄想の一つに他ならないのだ。(このニュージーランドの著作権法改正については、他にも参考になることがあれば、もっと詳しい紹介を別途したいと思う。)

 また、イタリアでは、視聴覚障害者のために著作物の大規模なデジタル化を可能とする大臣令を出したという記事(Punto-Indformaticoの記事(イタリア語))があったので、念のため、これも紹介しておこう。ヨーロッパでも、別に知財の保護強化だけを行っている訳ではないのだ。

 次回は、来週になると思うが、また他の国の著作権法の紹介をしたいと思っている。

(追記:児童ポルノ法の規制強化について単純所持規制導入に目的をしぼり、プロジェクトチームを与党(自公)で立ち上げるようだ(日経のネット記事毎日のネット記事)が、第70回第75回で書いたように、ダウンロード違法化問題と同じく、情報の所持は完全に個人的な行為のため、どんな要件を加えたところで、その要件はエスパーでもない限り証明も反証も不可能である。情報の単純所持規制の危険性は回避不能であり、絶対に導入されてはならない。児童ポルノ法の規制強化に関する動きも、さらに危険度が高まっていこそすれ、全く気が抜ける状態にはない。私も出すつもりであるが、この問題についても引き続き、与野党・議員へ意見を送ることを私は強く勧める。ただ、念のため繰り返しておくが、問題となるような画像を同封したり、添付したりはしないように。)

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