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2008年4月22日 (火)

第87回:イタリア著作権法の私的録音録画補償金関連規定

 第85回の続きとして、今回は、イタリア著作権法の私的録音録画補償金関連規定の紹介をしたい。

 まず、第85回ではざっと流した、イタリア著作権法の、私的録音録画に関する第71条の6~8を翻訳すると以下のようになる。(翻訳は拙訳。もし誤訳等あれば、是非教えて頂きたい。)

Art. 71-sexies

1. E' consentita la riproduzione privata di fonogrammi e videogrammi su qualsiasi supporto, effettuata da una persona fisica per uso esclusivamente personale, purche senza scopo di lucro e senza fini direttamente o indirettamente commerciali, nel rispetto delle misure tecnologiche di cui all'articolo 102-quater.

2. La riproduzione di cui al comma 1 non puo essere effettuata da terzi. La prestazione di servizi finalizzata a consentire la riproduzione di fonogrammi e videogrammi da parte di persona fisica per uso personale costituisce attivita di riproduzione soggetta alle disposizioni di cui agli articoli 13, 72, 78-bis, 79 e 80.

3. La disposizione di cui al comma 1 non si applica alle opere o ai materiali protetti messi a disposizione dei pubblico in modo che ciascuno possa avervi accesso dal luogo e nel momento scelti individualmente, quando l'opera e protetta dalle misure tecnologiche di cui all'articolo 102-quater ovvero quando l'accesso e consentito sulla base di accordi contrattuali.

4. Fatto salvo quanto disposto dal comma 3, i titolari dei diritti sono tenuti a consentire che, nonostante l'applicazione delle misure tecnologiche di cui all'articolo 102-quater, la persona fisica che abbia acquisito il possesso legittimo di esemplari dell'opera o del materiale protetto, ovvero vi abbia avuto accesso legittimo, possa effettuare una copia privata, anche solo analogica, per uso personale, a condizione che tale possibilita non sia in contrasto con lo sfruttamento normale dell'opera o degli altri materiali e non arrechi ingiustificato pregiudizio ai titolari dei diritti.

Art. 71-septies

1. Gli autori ed i produttori di fonogrammi, nonche i produttori originari di opere audiovisive, gli artisti interpreti ed esecutori ed i produttori di videogrammi, e i loro aventi causa, hanno diritto ad un compenso per la riproduzione privata di fonogrammi e di videogrammi di cui all'articolo 71-sexies. Detto compenso e costituito, per gli apparecchi esclusivamente destinati alla registrazione analogica o digitale di fonogrammi o videogrammi, da una quota del prezzo pagato dall'acquirente finale al rivenditore, che per gli apparecchi polifunzionali e calcolata sul prezzo di un apparecchio avente caratteristiche equivalenti a quelle della componente interna destinata alla registrazione, ovvero, qualora cio non fosse possibile, da un importo fisso per apparecchio. Per i supporti di registrazione audio e video, quali supporti analogici, supporti digitali, memorie fisse o trasferibili destinate alla registrazione di fonogrammi o videogrammi, il compenso e costituito da una somma commisurata alla capacita di registrazione resa dai medesimi supporti.

2. Il compenso di cui al comma 1 e determinato con decreto del Ministro per i beni e le attivita culturali, sentito il comitato di cui all'articolo 190 e le associazioni di categoria maggiormente rappresentative dei produttori degli apparecchi e dei supporti di cui al comma 1. Per la determinazione del compenso si tiene conto dell'apposizione o meno delle misure tecnologiche di cui all'articolo 102-quater, nonche della diversa incidenza della copia digitale rispetto alla copia analogica. Il decreto e sottoposto ad aggiornamento triennale.

3. Il compenso e dovuto da chi fabbrica o importa nel territorio dello Stato allo scopo di trarne profitto gli apparecchi e i supporti indicati nel comma 1. I predetti soggetti devono presentare alla Societa italiana degli autori ed editori (SIAE), ogni tre mesi, una dichiarazione dalla quale risultino le cessioni effettuate e i compensi dovuti, che devono essere contestualmente corrisposti. In caso di mancata corresponsione del compenso, e responsabile in solido per il pagamento il distributore degli apparecchi o dei supporti di registrazione.

4. La violazione degli obblighi di cui al comma 3 e punita con la sanzione amministrativa pecuniaria pari al doppio del compenso dovuto, nonche, nei casi piu gravi o di recidiva, con la sospensione della licenza o autorizzazione all'esercizio dell'attivita commerciale o industriale da quindici giorni a tre mesi ovvero con la revoca della licenza o autorizzazione stessa.

Art. 71-octies

1. Il compenso di cui all'articolo 71-septies per apparecchi e supporti di registrazione audio e corrisposto alla Societa italiana degli autori ed editori (S.I.A.E.), la quale provvede a ripartirlo al netto delle spese, per il cinquanta per cento agli autori e loro aventi causa e per il cinquanta per cento ai produttori di fonogrammi, anche tramite le loro associazioni di categoria maggiormente rappresentative.

2. 1 produttori di fonogrammi devono corrispondere senza ritardo, e comunque entro sei mesi, il cinquanta per cento del compenso loro attribuito ai sensi del comma 1 agli artisti interpreti o esecutori interessati.

3. Il compenso di cui all'articolo 71-septies per gli apparecchi e i supporti di registrazione video e corrisposto alla Societa italiana degli autori ed editori (S.I.A.E.), la quale provvede a ripartirlo al netto delle spese, anche tramite le loro associazioni di categoria maggiormente rappresentative, per il trenta per cento agli autori, per il restante settanta per cento in parti uguali tra i produttori originari di opere audiovisive, i produttori di videogrammi e gli artisti interpreti o esecutori. La quota spettante agli artisti interpreti o esecutori e destinata per il cinquanta per cento alle attivita e finalita di cui all'articolo 7, corna 2, della legge 5 febbraio 1992, n. 93.

第71条の6

第1項 非営利で、間接的にも直接的にも非商用である場合であって、個人的な目的のために限り、第102条の4に規定されている技術的手段を尊重する形で、自然人によってなされる媒体への録音録画の私的な複製は許される。(訳注:第102条の4は技術的保護手段(DRM)を規定している。)

第2項 第1項に規定されている複製は第3者によってなされてはならない。私的利用のための自然人の録音録画を可能とするサービスをすることは、第13条、第72条、第78条の2、第79条と第80条の規定に従う複製行為についてのみ認められる。(訳注:第13条他は、著作権者・著作隣接権者に許諾権があることを定めている。)

第3項 作品が第102条の4に規定されている技術的手段によって守られ、あるいはアクセスが契約に基づいてなされ、かつ、個々に選ばれる時と場所で誰でもアクセス可能な形で公衆に入手可能とされている、作品あるいは保護を受ける物には、第1項の規定は適用されない。

第4項 作品あるいは保護を受ける物の通常の利用を害さず、権利者の正当な利益を害さない場合に限り、第3項の規定にかかわらず、第102条の4に規定されている技術的手段を適用した場合であっても、作品あるいは保護を受ける物の複製物を合法に入手した、あるいは、合法にアクセスした自然人には、アナログのみにせよ、私的利用のための私的複製ができることを、権利者は認めなければならない。

第71条の7

第1項 作者と録音の製作者、オーディオビジュアル作品の原製作者、実演家、録画の製作者、とその権利承継者は、第171条の6に規定されている録音録画の私的複製に対して補償を受ける権利を有する。この補償金は、アナログあるいはデジタルの録音録画のみを目的とする機器に対しては、その最終小売価格の一部とされ、マルチファンクション機器に対しては、その内部の録音録画に使用されるコンポーネントと等しい性質を持つ機器の価格によって、あるいは、それが不可能な場合には、機器の定価に基づいて計算される。アナログ媒体、デジタル媒体、録音録画に使用される固定あるいは携帯メモリーのような、録音録画媒体に対しては、媒体の記憶容量と比例する額とされる

第2項 第1項に規定されている補償金は、第190条に規定されている委員会と、第1項に規定されいている機器と媒体のメーカーの大多数代表する団体の意見を聞き、文化財産・文化活動大臣令によって定められる。補償金の決定に対しては、第102条の4に規定されている技術的手段を付加しているかいないかということ、及び、アナログコピーと比較したときのデジタルコピーの様々な影響が考慮される。

第3項 補償金は、第1項に指定される機器及び媒体によって利益を上げる目的で、国内で生産、または国内へ輸入する者によって支払われる。このことについて、3ヶ月毎に、イタリア著作権者編集者協会(SIAE)に、支払われるべき補償金と実施される譲渡に関する報告がなされ、これと同時に支払いがなされなくてはならない。補償金の支払いができなかった場合は、記録媒体あるいは機器の販売者も、その支払いに連帯責任を負う。

第4項 第3項に規定されている義務の違反は、課される補償金を倍にするという行政罰によって罰され、より重大な、再犯などのケースに対しては、商業あるいは工業活動の実行のためのライセンスあるいは許可を15日から3ヶ月の間停止するか、このライセンスあるいは許可を取り消すことによって罰される。

第71条の8

第1項 第71条の7に規定されている、録音機器と媒体のための補償金は、イタリア著作権者編集者協会(SIAE)に払われ、SIAEは、50%を著作権者とその権利承継者に、50%を録音の製作者に、その大多数を代表する団体を介するなどして分配する。

第2項 録音の製作者は、遅滞なく、いずれにせよ6ヶ月以内に、第1項であてがわれるその補償金の50%を、関係する実演家に渡さなくてはならない。

第3項 第71項の7に規定されている、録画機器と媒体のための補償金は、イタリア著作権者編集者協会(SIAE)に渡され、SIAEは、そのカテゴリーの大多数を代表する団体を介するなどして、その30%を権利者に、残りの70%を等分にして、オーディオビジュアル作品の原製作者、録音の製作者と実演家に分配する。実演家への分配分は、1992年第93号法の第7条第2項に規定されている活動と目的のためにその55%があてられる。

 イタリアにおいて、第71条の6第3項で、インターネット上でDRMや契約がある場合は、基本的に私的録音録画の権利制限の対象外としながらも、さらに第4項で、このような場合でも、著作物の通常の利用を害さず、権利者の正当な利益を害さない場合には、私的録音録画ができることを権利者は認めなくてはならないとしていることは注目に値する。第85回でもイタリアの著作権法では私的複製が強行規定に近い形で書かれていると少し述べたが、このように私的録音録画についても同じように強行規定に近い書き方がされているのは日本でも参考にされて良い。合法ダウンロードにせよ何にせよとにかく除外して私的複製の範囲を狭めればそれでOKということはないのだ。

 補償金についても、イタリアは、私的録音録画のみ、専用機器・媒体のみを対象とするなど、ヨーロッパの中ではおとなしい国に属する。SIAEの私的録音録画に関するページ(英語版イタリア語)やdritto d'autore.itの私的録音録画に関するFAQなどに料率の話が出ているが、専用媒体は容量に応じた額、専用機器は定率(3%)とバラバラであり、この料率も、導入当時(恐らく1993年)のヨーロッパの平均から決めたとのことであり、何ら客観的な基準では決まっていないことが分かる。(この料率などは、2003年第63号法で決まっているものが今も適用されているのではないかと思われる。)

 第71条の7の第2項で、補償金額の決定に当たっては、DRMを考慮することなどとされているが、全ての専用録音録画機器に対して3%という料率が課されていることを考えると、このような漠然とした規定は、イタリアでも、ほとんど何の役にも立っていないのだろう。

 上のSIAEの解説ページにも書かれているが、イタリアでは、法律には書かれているものの、メモリーに関しては補償金の運用が凍結され、事実上補償金徴収の対象外となっていることも指摘しておこう。経緯はよく分からないが、メモリーにまで補償金を課すことには、大きな反発を受けたのだろう。どこの国であれ、私的録音録画補償金制度は、その客観性・納得性の無さから言って、ユーザー・消費者・メーカーから反発を受けていないはずがないのだ。

 最後に念のため、第85回で書いた通り、明確なダウンロード違法化はイタリアではなされておらず、検討されている様子もなく、かえって、P2Pを多少合法化するような法改正がイタリアでなされているということももう一度繰り返しておく。文化庁はまた自分たちに都合の悪いことを全て隠してくることだろうが、イタリアの著作権法には、他の国で見られない規定が多く含まれており、日本でも参考にすべきところはあるものと私は考えている。

 なお、知財本部で、デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会の第1回が4月24日に開催されるという案内が出ているので、念のためにリンクを張っておく。ここでの検討がどうなるのかはまだ分からないが、この検討会が今年の政府の知財規制緩和にかける意気込みの試金石となることだろう。

 次回は、まとめられれば、番外として、地上放送のデジタル移行そのものの経緯について書いてみたいと思っている。

(4月22日夜の追記:この点だけ取り出してどうこう言うことは間違っているが、別に隠すつもりもないので、念のため追記しておくと、イタリアも、料率などの点でおとなしいとは言えヨーロッパの一国であり、アメリカなどに比べれば当然補償金の対象は広く、アナログオーディオテープやビデオテープなどのアナログ専用録音録画媒体・機器にも課金されている。メモリーに対しては課金を凍結しているが、MP3プレーヤーは専用機器として一律3%の課金がされているようである。対象機器などについては、上のSIAEのサイトなどより、オランダの補償金管理協会(Stichting de Thuiskopie)が出している私的録音録画補償金国際調査(英語)の方が分かりやすいかも知れない(イタリアは第36~37ページ)。今のところ補償金制度見直しの話を聞かないが、専用と汎用の区別が曖昧になる中、汎用機器・媒体へのさらなる拡大の話が出れば、イタリアでもユーザー・消費者・メーカーから大反発を受けるのは必至だろう。私的録音録画補償金に関する限り、どこの国を見ても客観性・納得性は全くない。日本で、専用機器・媒体であってかつ機器と媒体が分離しているもののみを補償金の対象としていることは、補償金制度の無制限な拡大を防ぐ重要なセーフハーバーになっているのであり、ユーザー・消費者にとって、この仕切りは容易に動かされてはならないものである。)

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コメント

thats for sure, man

投稿: Slonsuloubbart | 2008年5月 9日 (金) 06時27分

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