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2008年2月14日 (木)

第60回:イギリスの違法ダウンロード対策素案について

 2月12日付けの英タイムズ紙に、イギリスの違法ダウンロード対策の素案に関するリーク記事が載ったようである。

 タイムズの記事は私は入手できておらず、イギリスの文化省もこの件に関してコメントを避けているようで、信憑性は良く分からないが、関係のネット記事(ITmediaの記事日本語の記事BBCの記事(英語)BBCのブログ記事(英語))によると、2回のメールによる警告を無視して、さらに違法ダウンロード行為を繰り返した場合は、インターネットサービスプロバイダーがユーザーのアクセスを禁止するという、フランスの違法ユーザー対策に近いものを考えているようである。(フランスの違法ユーザー対策・著作権検閲法案については、第58回のついでに続報を書いた。)

 しかし、フランスでは著作権検閲のために公的機関を用意しようとしているのに比べ、これらの記事には公的な著作権検閲機関に対する言及はない。だが、イギリスは、著作権検閲・警告・アクセス禁止をインターネットサービスプロバイダーの責任とするような無茶な案を考えているのだろうか。

 フランスの案も実際の運用を考えると無茶があると私は思っているが、フランスの案をさらに超えて、通信の秘密を侵して著作権検閲を行い、警告を出し、ユーザーのアクセス禁止を行うことを全て民間企業の責任でやらせるのは、明らかに無理がある。そんな案はどこの国でも通らないに違いない。

 やはり公的な著作権検閲機関を用意することや、裁判手続きの利用などを考えているのかも知れないが、イギリス政府が公式にはノーコメントとしていることを考えても、まだそこまで内容は詰まっておらず、法案提出は当分先のことになるのではないだろうか。

 このようなイギリスに関する記事を読んでも、どうやら欧州の主要国は著作権検閲をやりたくて仕方がないようであるが、彼らの案はどれもこれも、どう考えても、著作権と通信の秘密などの基本的な権利同士の間のバランス、ユーザー・プロバイダー・権利者の間の権利と責任のバランスが欠けており、うまく行くとは到底思えないのである。

 今ざっと書けることだけを書いたが、この件に関しては、また書くことがあれば後日追加で書きたいと思っている。

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