第47回:文化を保護せず、天下り利権のみを保護しようとする文化庁の醜態
この1月11日に開催された法制問題小委員会のネット記事(ITproの記事、internet watchの記事)などを読んで、コンテンツ産業にとっての敵の話をする前に、国民の敵である文化庁の話をもう一度しておきたくなった。
ネット記事で、小委員会中、パブコメの形骸化を心配する委員からの発言があったとのことだが、文化庁はこれに対して何と答えたのだろうか。記事が何も伝えていないところを見ると、どうせ要領を得ない回答をしていたのだろう。
どこにおける意見にせよ、ある発言を自らの意見と違うということをもって黙殺・圧殺することこそ、文化にとって最も忌むべきことである。この文化にとっての本質を、もはや文化庁は認識していないのだろう。自由な意見交換を無意味なものした瞬間、普通の人間であれば、意見を言う気力を失うはずであり、法制問題小委員会が沈黙の支配する重苦しい空気で包まれたのも当たり前の話である。
自分たちが守ろうとしているものが実は文化ではないことを自ら露呈していながら、もはやそんなことすらどうでも良く、闇雲に天下り利権を守ろうとする今の文化庁の様は、ただひたすら醜悪である。このような醜態をさらしてもなお平然としていられるくらい、官僚のモラルは低下したのだ。しかし、いくら官僚たちが既存の既得権益の強化を図ろうと、時計の針は元に戻らない。時計の針を逆回転させようとする努力は全て社会的コストの無駄であり、無様な醜態をさらすだけのこととなろう。
法制問題小委員会はさらに24日に予定されており、「機器利用・通信課程における一時的蓄積の取り扱い」や「私的複製の範囲の見直し」といった極めて重いテーマを扱うようであるが、果たしてどうなることだろう。
17日と23日に開催が予定されている私的録音録画小委員会もどうなることだろうか。その文化に対する定見のなさから引き起こされる社会的混乱と国民全体のモラルハザードは、文化庁ごときが責任を取れる話ではない。
今日の日経新聞の記事でも、国会のねじれ状況もあり、ダウンロード違法化の今後は不透明であるとしていたが、これが正しい認識だろう。文化庁だけで法案が提出できる訳でもなく(法案を提出するのはあくまで内閣であって、文化庁ではない)、さらに衆参両院の可決も必要なのである。さらに言えば、法案提出前に総選挙が挟まる可能性も高い。
例え何があろうと、不当なものは不当だと言い続けなければならない。私はそれが一国民としての義務であると思っているし、このブログでも言い続けることを止めるつもりは全くない。
また、自分たちの方針にとって都合の悪い「国際潮流」を日本の政官はほぼ間違いなく黙殺してくるので、欧州も、ネットにおける問題は、規制よりも教育で解決されるべき問題であるとしている(internet watchの記事、EUのプレス記事)ことを、ここではっきりと指摘しておく。欧州当局がいかに著作権の強権化を図っていようと、彼らは同時に、その歴史から、自由な意見表明の場の本質的な重要性についてもはっきり認識しているのであり、これもまた、欧州と日本の当局の責任者・担当者の文化的素養の差を示す好例である。
今まで書き漏らしていたが、MIAUでも、この16日にダビング10シンポジウムを開く予定であるということを、遅ればせながらここでも紹介しておく。コピーワンスあるいはダビング10問題についても混乱を避けるため、今後も最大限の努力がなされなくてはならない。このようなMIAUの地道な活動を私も心から応援したいと思う。
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