第38回:ドイツとフランスの私的複製(私的録音録画)補償金に関する動き
ダウンロード違法化問題については、以前から何回も書いていた(第7回、第20回(提出パブコメその2)など)ため、前回の話は、ネットコンテンツ規制の方に引きずられる書き方になってしまったことをお断りしておく。著作権問題については、著作物の情報化という別の側面も考えに入れなくてはならないのだが、印象操作レトリックに関する限り同じことが言えることはお分かり頂けたのではないかと思う。
さて今回は、来週12月18日に、また文化庁の私的録音録画小委員会が開催されることもあり、それほど大きな話ではないが、ドイツとフランスでの補償金に関する報道を念のために紹介しておこう。
まず、ドイツでは、この12月にプリンターは私的複製補償金の対象とならないという最高裁判決が出された。
なぜプリンターまでと思われるかも知れないが、ドイツでは、私的録音録画のみならず、私的複製に使われ得る機器であれば何に対しても補償金請求権が与えられ、最終的には裁判でその是非を判断するという法律になっているため、権利者団体は、プリンターも私的複製に使われるのだから補償金をよこせとメーカーに言ってきていたのである。そして、その請求金額は半端でない額になるため、権利者団体対メーカーの訴訟は問答無用で最高裁まで行くことになり、今回ようやくプリンターについて確定したという訳だ。
最高裁のHP(プレス記事と判決文掲載予定URLはあるのだが。)でもまだ判決文が読めないため、詳細は分からないが、少なくともプリンターに対する補償金賦課は不当であるということがドイツでも確定した。それにしても、ドイツは、青天井の補償金請求権を権利者団体に与えることは社会的混乱をもたらすだけということを示してくれている反面教師であるとしか言いようがない。
なお、上記の記事によると、ドイツ最高裁は、来年に、マルチファンクションプリンターやPCに関する判決を出すことを予定しているようである。もし新たな報道があれば、何かの役に立つかも知れないので、このブログでも紹介して行きたいと思う。
そして、フランスでは、さらに携帯電話に補償金をかける検討が始められるようである(les echosの記事、zdnetの記事)。
これまた何故と思われるかも知れないが、要するにiPhoneがフランスでも最近発売されたので、そこから金を取りたいというだけの話である。
無論消費者・ユーザーは大反対しているが、フランスにおける補償金委員会の委員比率(第16回でも書いたが、委員長を国の代表として、権利者団体代表が2分の1、メーカー団体代表が4分の1、消費者代表が4分の1となっているので、権利者団体は国の代表を抱き込むだけで課金対象をいくらでも広げることができる)を考えると、課金対象となる可能性は高いだろう。
しかし、これもまた、欧州では大きな家電・PCメーカーがないため、私的録音録画補償金が外資から金を還流する手段、つまり、単なる外資規制として使われてしまっているという背景事情を抜きにして、単純に対象拡大の方向性のみを取り上げて、これを国際的潮流であると見なしてはならない。事実、アップルが成功を収めているアメリカでは、何ら補償金の対象拡大の動きは見られないのだから。
次は、前にもお伝えした通り、番外として、フーリオ(Friio)は取り締まれるかという話を書いてみたいと思っている。
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