第34回:スイス著作権法改正(DRM回避規制と国民投票運動)
ネットでニュース記事(英語の記事、フランス語の記事、ドイツ語の記事)を見かけたので、また少し予定を変更して、スイスの動向の話をしておきたいと思う。
記事によると、スイスでも、国会で著作権法改正案が可決されたが、この法律に対して、これは民意を正しく反映したものでなく、国民投票でその正否を決めるべきとする運動が起こっているということである。(スイスでは、10万人の署名を集めることで国民による法改正の直接提案が、法律の公示の日から100日以内に5万人の署名を集めることで法律の国民投票を求めることができるようである。)
ただし、スイスの著作権法改正案は、フランスやドイツほど非道なものではなく、アップロードのみを違法として、ダウンロードは引き続き許されるとしているためか、国民投票運動の中でもっぱら問題となっているのは、DRM回避規制の方である。(フランスやドイツの状況をよく知っているスイスが、ダウンロードを違法としなかったことも、注目されてしかるべきである。)
この著作権法改正案は、その第39a条の条文の曖昧さから、目的の営利性・合法性によらず、DRMの回避機器・プログラムの製造・輸入・頒布・貸し出し・提供・広告の全てが禁止される可能性があるため、これは乱暴すぎるという反対意見が出て来ているのである。
これらはDRM回避規制を特に問題にしており、今の日本の論点とは少しずれているが、権利者のみに甘い著作権法改正はおかしいという意識は世界的に見ても高まっていることが見て取れるのであり、これも決して無視して良い動きではないだろう。
ついでに、カナダでの著作権法の改正検討についても、とある大学教授がYoutubeなどを使って反対運動を展開しているというニュース記事があったので、一緒にリンクを張っておく。(記事にリンクが張ってあるYoutubeの映像を見ると、やはり権利制限が限定的でアメリカより厳しいこと、DRM回避規制も例外が少なく教育・研究やプライバシーに対して害を及ぼすことなどを問題としている。)
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