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2007年11月10日 (土)

第23回:権利者団体の公開質問状

 昨日、権利者団体がJEITAに公開質問状を出したというニュース(ITproの記事権利者団体の発表資料質問状の全文)があった。

 どこから突っ込んで良いのかよく分からないが、権利者団体がダビング10+録画補償金でユーザー・消費者が納得していると勝手に決めつけているのはいかがなものか。そもそも総務省の答申には、録画補償金の話は一言も出てきていないので、こんなことが総務省の審議会で合意された訳でもあるまい。そのパブコメの結果も発表されておらず、ダビング10を本当に民意が望んでいるかすらよく分からないのだ。

 一人のユーザーの意思表示がどれほど意味があるのかは分からないが、少なくとも私は、どれほどごまかしの機能が付いていようとダビング10録画機を買うつもりは全くないとはっきり言っておこう。録画補償金が上積みされるというならなおさらである。ほとんど欠陥商品と言っても良いデタラメなダビング10録画機(どうしてデタラメなのかは以前に書いた。しかもこのデタラメさはメーカーの技術者がどんなに頑張ろうと回避不能である。)を録画補償金を維持して売るくらいなら、まだ現行のコピーワンスを維持したまま、まず録画補償金を廃止した方が、まだしも混乱を回避できるだろう。

 そうなるとテレビも見なくなるであろうし、ダウンロードも違法化されるとなると、私が取る行動は、インターネットで自分が合法だと思うコンテンツのみをメインで楽しむということになるだろう。しかし、私のように行動する者が多いとしたら、テレビというメディアの衰退がさらに加速するだけのことである。その時一番困るのは、テレビというメディアに依存してコンテンツと機器を売ってきた、既存の権利者団体に所属する有力な権利者や、JEITAに所属する有力メーカーだと思うのだがどうだろうか。

 テレビが完全に衰退した後で、彼らが頭を下げて、インターネットという流通チャネルに参入しようとしても、既にそこには視聴のために特別な機器を必要としない、ユーザーが自ら作り出したコンテンツであふれており、彼らにつけいる隙は無くなっているに違いない。このような未来は、個人的には時間の問題だとは思うが、老婆心ながら、権利者団体ももう少し自分のことを考えて、テレビというコンテンツの流通チャネルを維持するにはどうしたら良いのかを考えた方が良いのではないかと思えてしまう。

 私的複製がどうこうとか、対価云々の前に、何をどう言ったところで、コンテンツはまずユーザーに見られ、聞かれなければどうしようもないのだ。法律だの契約だの技術だの言う前に、本当にユーザーが欲しいと思う機器とコンテンツを作って欲しいと私は思う。ほぼ断言できるが、それさえ作っていれば、制度なんてものは必ず後からついてくる。このように法律と契約と技術のそもそも論で彼らが戦っていること自体、魅力的な機器とコンテンツを作れていないということを自ら告白しているに等しいと私は思っている。

 私的録音録画補償金制度に関して妥協点を探る努力はまだまだこれからの話であろう。法改正の話がまとまらなければ、自動的に今の録画補償金が維持されるので、権利者団体はそれをねらっているのかも知れないが。

 そうは言っても、折角の公開質問状なので、メーカーにも是非率直なところを公開回答状で示してもらいたいと思う。

 本当は、ユーザー・消費者離れの話として、今回はレンタルCDのことを書きたかったのだが、それはまた次回に。

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