2020年1月21日 (火)

第419回:文化庁「侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会」における議論のまとめの内容

 文化庁のHPで、「侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会」における議論のまとめ(pdf)が公開ざれている。

 その内容は、前回取り上げた侵害コンテンツのダウンロード違法化の制度設計等に関する検討会の第2回資料とほぼ変わらず、報道されていた以上の事が含まれているわけではないが、念のため、ここでその内容を見ておく。

 この議論のまとめは、冒頭に、

 本検討会では、別紙1(20ページ)の基本方針の下、パブリックコメントや国民アンケートの結果等を十分に踏まえつつ、「深刻な海賊版被害への実効的な対策を講じること」と「国民の正当な情報収集等に萎縮を生じさせないこと」という2つの要請がバランスよく並び立つ、適切な制度設計等について検討を行ってきた。その検討結果は、下記1.~4.のとおりである。

 文化庁提案の3点の措置及び二次創作作品・パロディなどの除外等については全会一致で了承された一方で、一部の要件((ウ)(6ページ)に記載の「著作権者の利益を不当に害することとなる場合に限定すること」)については本検討会として意見を一つに集約するには至らなかったが、いずれにしても、早急に当該要件の採用の可否等を判断の上、法整備を進める必要があることについては認識が共有された。

 今後、政府においては、当該要件に関して、7~13ページに記載の様々な意見(折衷的な提案を含む。)を吟味し、当該要件が「海賊版対策の実効性等に与えるマイナスの影響」と「国民の情報収集等に与えるプラスの影響」を見極めた上で、両者のバランスの観点から国民の理解を得られる適切な制度となるよう、採用の可否等について判断を行った上で、適切な法整備を速やかに行うことを期待する。

 その際、リーチサイト対策については「前倒しで施行すべき」という意見があったことを受け、法案の施行期日についても留意すべきである。

と書いている通り、ダウンロード違法化・犯罪化の対象拡大の法改正を押し進める方向性をやはり打ち出している。

 そして、国会提出を断念した法案からの変更点について、

1.文化庁提案の3点の措置について

 昨年2月時点の当初案に、少なくとも下記の3点の措置を追加的に講ずることについて、条文イメージ(別紙2:21~24ページ)を含めて了承された。

(1)改正案の附則に、普及啓発・教育等や刑事罰に関する運用上の配慮、施行状況のフォローアップについての規定を追加すること

(2)写り込みに関する権利制限規定(第30条の2)を拡充することで、スクリーンショットを行う際に違法画像等が入り込むことを違法化しないこと

(3)数十ページで構成される漫画の1~数コマなど、「軽微なもの」のダウンロードを違法化しないこと(判断基準・具体例は、別紙3(27ページ)を参照)

2.その他の要件追加等の提案について

(ア)採用する方針が了承されたもの

 「二次創作作品・パロディなどのダウンロードを対象から除外すること(民事)」については、翻訳物が除外されないように措置(変形によって創作されたフィギュアなどの画像や、編曲された楽曲の歌詞は除外されるように措置)した上で、採用することが、条文イメージ(別紙2:25・26ページ)を含めて了承された。

(イ)採用しない方針が了承されたもの
(略)

とあるので、文化庁が今度国会提出を狙って来る条文案は、議論のまとめの第25ページ等に書かれている様に、以下のものとなると考えられる。(なお、細かな点だが、検討会の第2回資料と比べると、民事刑事(第30条第1項第4号及び第119条第3項第2号における原著作者の権利(第28条)の除外について翻訳以外とされている点、第30条の2で「当該複製伝達行為が営利を目的とするものであるか否かの別」という要素が「当該付随対象著作物の利用により利益を得る目的の有無」になっている点が異なっている。)

(私的使用のための複製)
第三十条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
一・二(略)
 著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。次号において同じ。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画(以下この条において「特定侵害録音録画」という。)を、特定侵害録音録画であることを知りながら行う場合
 著作権(第二十八条に規定する権利(翻訳以外の方法により創作された二次的著作物に係るものに限る。)を除く。)を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の複製(録音及び録画を除く。以下この号において同じ。)(当該著作権に係る著作物のうち当該複製がされる部分の占める割合、当該部分が自動公衆送信される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものを除く。以下この号及び次項において「特定侵害複製」という。)を、特定侵害複製であることを知りながら行う場合

 前項第三号及び第四号の規定は、特定侵害録音録画又は特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行う場合を含むものと解釈してはならない。

(略)

(付随対象著作物の利用)
第三十条の二 写真の撮影、録音、録画、放送その他これらと同様に事物の影像又は音を複製し、又は複製を伴うことなく伝達する行為(以下この項において「複製伝達行為」という。)を行うに当たつて、その対象とする事物又は音(以下この項において「複製伝達対象事物等」という。)に付随する事物又は音(複製伝達対象事物等の一部を構成するものとして対象となる事物又は音を含む。以下この項において「付随対象事物等」という。)に係る著作物(複製伝達行為により作成され、又は伝達されるもの(以下この条において「作成伝達物」という。)のうち当該著作物の占める割合、作成伝達物における当該著作物の再製の精度その他の要素に照らし当該作成伝達物における軽微な構成部分となるものに限る。以下この条において「付随対象著作物」という。)は、当該付随対象著作物の利用により利益を得る目的の有無、当該付随対象事物等の当該複製伝達対象事物等からの分離の困難性の程度、当該作成伝達物の性質と当該付随対象著作物との関連性の程度その他の要素に照らし正当な範囲内において、当該複製伝達行為に伴つて、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。

 前項の規定により利用された付随対象著作物は、当該付随対象著作物に係る作成伝達物の利用に伴つて、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りではない。

第百十九条(略)
(略)
 次の各号のいずれかに該当する者は、二年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
 第三十条第一項に定める私的使用の目的をもつて、録音録画有償著作物等(録音され、又は録画された著作物又は実演等(著作権又は著作隣接権の目的となつているものに限る。)であつて、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権又は著作隣接権を侵害しないものに限る。)をいう。)の著作権を侵害する自動公衆送信又は著作隣接権を侵害する送信可能化に係る自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきもの又は著作隣接権の侵害となるべき送信可能化に係るものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画(以下この条において「有償著作物等特定侵害録音録画」という。)を、自ら有償著作物等特定侵害録音録画であることを知りながら行つて著作権又は著作隣接権を侵害した者
 第三十条第一項に定める私的使用の目的をもつて、著作物(著作権の目的となつているものに限る。以下この号において同じ。)であつて有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権を侵害しないものに限る。)の著作権(第二十八条に規定する権利(翻訳以外の方法により創作された二次的著作物に係るものに限る。)を除く。以下この号及び第五項において同じ。)を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の複製(録音及び録画を除く。以下この号において同じ。)(当該著作権に係る著作物のうち当該複製がされる部分の占める割合、当該部分が自動公衆送信される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものを除く。以下この号及び第五項において「有償著作物等特定侵害複製」という。)を、自ら有償著作物等特定侵害複製であることを知りながら行つて著作権を侵害する行為を継続的に又は反復して行つた者

 前項第一号に規定する者には、有償著作物等特定侵害録音録画を、自ら有償著作物等特定侵害録音録画であることを重大な過失により知らないで行つて著作権又は著作隣接権を侵害した者を含むものと解釈してはならない。

 第三項第二号に規定する者には、有償著作物等特定侵害複製を、自ら有償著作物等特定侵害複製であることを重大な過失により知らないで行つて著作権を侵害する行為を継続的に又は反復して行つた者を含むものと解釈してはならない。

 これに加えて、冒頭にもあるが、「著作権者の利益を不当に害することとなる場合に限定すること」については、第6ページの2.(ウ)で、

(ウ)採用の可否について意見が一つに集約されなかったもの

 「著作権者の利益を不当に害することとなる場合に限定すること(民事・刑事)」については、(ⅰ)国民から示された様々な懸念・不安を払拭する等の観点から採用すべきである((イ)に記載された他の様々な提案を採用しないのであれば、この要件の採用は不可欠)という肯定的な意見と、(ⅱ)ユーザーの居直り侵害を招くなど海賊版対策の実効性低下を回避する等の観点から採用すべきでないという否定的な意見の双方がほぼ拮抗し、本検討会として意見を一つに集約するには至らなかったが、いずれにしても、早急に採用の可否等を判断の上、法整備を進める必要があることについては認識が共有された。 議論の中では、権利者側の立証負担の軽減及びユーザーの居直り防止等の観点から、「著作権者の利益を不当に害しない場合を除く」や「著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別の事情がある場合を除く」と規定してはどうかという折衷的な提案も複数構成員からあった。

として、文化庁は、法案提出ありきで検討会レベルのとりまとめすら放棄している。今後この点も含め政府与党内で何かしらの議論がされるのかも知れないが、今まで書いて来た通り、この様に著作権者の利益を不当に害することとなる場合に限定することでそれなりにましになるとも思うものの、これも問題の本質的な解消には繋がらないものである。

 また、リーチサイト規制についても、親告罪とする事が一定の歯止めにはなるとは思うが、それ以上議論が深められる事なく法改正が進められようとしている事に変わりはない。

 この様に文化庁がダウンロード違法化・犯罪化の対象拡大の法改正をごり押しして来るだろう事は予想された事とは言え、国民の声を聞いて丁寧に議論を進めるという科白は何だったのかと私は今も強い憤りを感じている。

 前回も書いた通り、このまま行くと、利用者が通常するであろうほとんどあらゆる場合のカジュアルなスクリーンショット、ダウンロード、デジタルでの保存行為が違法・犯罪となる可能性が出て来、意味不明の萎縮が発生するだろう事に変わりはなく、これは、今の録音録画に関するダウンロード違法化・犯罪化同様、海賊版対策としては何の役にも立たず混乱をもたらすだけの百害あって一利ない最低最悪の著作権法改正の一つとなると私は断言する。

(2020年1月22日夜の追記:条文案中のテクニカルな部分の転記ミスを幾つか修正した。)

| | コメント (0)

«第418回:2019年の終わりに(文化庁第2回検討会のダウンロード違法化・犯罪化対象範囲拡大条文案他)