2021年10月17日 (日)

第446回:主要政党の2021年衆院選公約案比較(知財政策・情報・表現規制関連)

 4年ぶりとなるが、10月19日公示、31日投開票の予定で衆院選が行われる予定で、各政党から公約案が公開されている。

 今回は、新型コロナ対応が最大の争点とならざるを得ず、知財政策や情報・表現規制問題は選挙のトピックとなりそうもないが、以下、関連項目・部分を抜き出しておく。

<自民党>
○表現の自由を最大限考慮しつつ、インターネット上の誹謗・中傷やフェイクニュース等への対策を推進するとともに、人権意識向上の啓発活動を強化し、様々な人権問題の解消を図ります。

○自由、民主主義、人権、法の支配等の普遍的価値を守り抜き、国際秩序の安定・強化に貢献するため、「自由で開かれたインド太平洋」の一層の推進等に向け、日米同盟を基軸に、豪、印、ASEAN、欧州、台湾など普遍的価値を共有するパートナーとの連携を強化します。台湾のTPP加盟申請を歓迎し、WHO総会へのオブザーバー参加を応援します。

○権威主義的体制によるデータ独占を阻止するため、自由で信頼あるデータ流通(DFFT)の枠組みを、米欧とともに強力に推進します。

(政策BANKより)
○コロナ後のインバウンドの回復を見据え、ソフトパワーの強化や幅広い日本の魅力発信など、クールジャパンの取組みを進めます。特に、その強力な推進力であるコンテンツについては、制作流通におけるDX推進や構造改革等の競争力強化のための「メディアコンテンツ中期戦略(仮称)」を策定します。

○「改正種苗法」のもと、種苗の海外流出を防止するとともに、「家畜改良増殖法」と「家畜遺伝資源法」のもと、わが国固有の財産である和牛を守ります。

○DFFTルールの具体化において、EUと米国を連結する中核的役割を果たし、国際デジタル秩序の形成を主導します。また、デジタル時代におけるデータの法的権利に係る法整備を検討します。

○安全保障の観点から、わが国の戦略的不可欠性(技術的優越性を含む)と戦略的自律性を支える戦略技術・物資を特定した上で、機微性に応じて、技術情報の管理強化、輸出管理の見直し、特許の非公開制度の導入等を進めていくとともに、投資審査体制の強化、研究環境の健全性・公正性の強化を含め、統合的、包括的な対策を講じます。

○自由、民主主義、人権、法の支配等の普遍的価値を守り抜き、国際秩序の安定・強化に貢献するため、「自由で開かれたインド太平洋」の一層の推進等に向け、日米同盟を基軸に、豪、印、ASEAN、欧州、台湾など普遍的価値を共有するパートナーとの連携を強化します。台湾のTPP加盟申請及びWHO総会のオブザーバー参加を歓迎します。

○表現の自由を最大限考慮しつつ、侮辱罪の厳罰化や削除要請の強化等を通じインターネット上の誹謗・中傷やフェイクニュース等への対策を推進するとともに、人権意識向上の啓発活動を強化し、様々な人権問題の解消を図ります。

○青少年健全育成のための社会環境の整備を強化するとともに「青少年健全育成基本法(仮称)」を制定します。またITの発達等による非行や犯罪から青少年を守るための各種施策を推進します。

<公明党>
(政策集より)
○デジタルデータの取り引きについて、個人情報の保護を図りつつ、諸外国との連携による適正な流通及び活用の枠組みの整備や、国際的なルールづくりなど、安全で安心なデータ流通が円滑に行われるための環境整備を進めます。また企業のグローバル展開を踏まえ、わが国企業の活動を支援するための各種制度の周知、広報等を行います。

○ネットによる誹謗・中傷の根絶のため、SNSや無料アプリ、ゲームなどの特性や、安全なインターネットの使い方を教えるなど、各学校現場での「情報モラル教育」を充実させます。

○インターネット上の誹謗中傷対策として、プラットフォーム事業者による適切かつ迅速な削除やアカウントの停止など自主的取り組みの実効性を高める方策を促進します。また、相談体制の強化や情報モラル教育の充実を図るとともに、侮辱罪の厳罰化を図ります。

○「新たな日常」の早期実現に不可欠であるデジタル化の推進の一環として、国際的なルールづくりを主導します。具体的には、WTOにおける電子商取引のルール交渉をはじめとする、信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)を促進するルールづくりの議論を、OECD等の国際機関や産業界等の多様なステークホルダーと共に加速させていきます。

○FTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)構想の実現も視野に、TPP11及び日EU・EPA等の着実な実施とともに、TPP11への参加国・地域の拡大に向けた議論を主導します。また、昨年11月に署名されたRCEP協定の早期発効と履行確保に向けて取り組みます。さらに、経済連携協定及び投資協定の交渉を促進し、日本企業の海外進出を後押しします。加えて、アジアを中心とした産業保安体制構築支援等を行うとともに、電子商取引のルールづくりや紛争解決制度改革など、WTO改革を主導します。また、国際経済紛争処理の体制強化にも取り組みます。

○デジタル社会において一人ひとりが自律的な個人として尊重される人権保障のあり方を具体的に検討します。
デジタル社会における個人情報の保護について、憲法上の位置づけを検討するとともに、自分の情報に関する自己決定の確保など、個人情報の取扱いについて定める基本法の制定をめざします。

<日本維新の会>
○表現の自由を最大限尊重し、マンガ・アニメ・ゲームなどの内容に行政が過度に干渉しないコンテンツ産業支援を目指します。MANGA ナショナルセンターの設置による作品アーカイブの促進、インバウンドを意識した文化発信やクリエイターの育成支援などを行います。

○文化的コンテンツ等をデジタルデータとしてブロックチェーン上に記録したいわゆるNFT(非代替性トークン)について、イノベーションを阻害しないルール作りによる市場の拡大支援を行い、日本の強みであるマンガ・アニメ・ゲーム等のコンテンツ産業・アート市場のさらなる発展を後押しします。

○国立国会図書館や国立大学に所蔵されている書籍、貴重図書、資料などのデジタル化を推進し、アーカイブの積極的な活用を図るとともに、デジタルアーカイブを担う人材の育成を行います。

○施設等の箱モノ整備や補助金支給にとどまりがちな文化芸術施策を見直し、文化施設のコンセッション方式やアーツカウンシルの導入を促進するとともに、各種法令の規制緩和を行うなど、芸術家等が自立して活動・発表できる機会を多面的に提供します。

○SNSなどにおける誹謗中傷問題につき、行政による過剰な規制や表現の自由侵害には十分に配慮しつつ、発信者情報開示請求を簡素化するなど司法制度を迅速に活用できる仕組みを整備し、被害者保護と誹謗中傷表現の抑止を図ります。

○EPAを基軸として域内経済連携に積極的に関与し、世界規模での自由貿易の推進、自由主義経済圏の拡大をはかります。

○特にTPP11については、覇権国家である中国の加盟希望については慎重かつ戦略的に対応しつつ、台湾や英国などの参加を積極的に促し、経済連携を深めると同時に経済安全保障の強化を図ります。

<国民民主党>
○憲法
(略)
人権分野では、憲法制定時には予測できなかった時代の変化に対応するため、人権保障のアップデートが必要です。特に人工知能とインターネット技術の融合が進む今、国際社会では個人のスコアリングと差別の問題や、国民の投票行動に不当な影響を与えるネット広告の問題などが指摘されています。デジタル時代においても個人の自律的な意思決定を保障し、民主主義の基礎を守っていくため、データ基本権を憲法に位置づけるなど議論を深めます。同性婚の保障や子どもの権利保障などについても検討を進めます。
(略)

<立憲民主党>
○インターネット上の誹謗中傷を含む、性別・部落・民族・障がい・国籍、あらゆる差別の解消を目指すとともに、差別を防止し、差別に対応するため国内人権機関を設置します。

(政策集より)
○国民の知る権利を守るため特定秘密保護法を見直し、国会や第三者機関の権限強化も含め行政に対する監視と検証を強化します。安保法制や共謀罪の違憲部分を廃止します。

○個人の権利利益の保護を図るため、自己に関する情報の取扱いについて自ら決定できる権利(自己情報コントロール権)、本人の意思に基づいて自己の個人データの移動を円滑に行う権利(データポータビリティ権)、個人データが個人の意図しない目的で利用される場合等に当該個人データの削除を求める権利(忘れられる権利)、本人の同意なしに個人データを自動的に分析又は予測されない権利(プロファイリングされない権利)について法律上、明確化します。

○インターネットやSNS上の差別や誹謗中傷への対策に取り組みます。

○メディアにおける性・暴力表現について、子ども、女性、高齢者、障がい者をはじめとする人の命と尊厳を守る見地から、人々の心理・行動に与える影響について調査を進めるとともに、情報通信等の技術の進展および普及のスピードに対応した対策を推進します。

○インターネットを利用した人権侵害を許さず、速やかに対応できるような法改正、窓口創設を実現します。

○刑法の名誉毀損罪の法定刑の上限は懲役3年となっていますが、現状の人権侵害の深刻な状況に鑑みて、上限の引き上げを検討します。

○2017年に強行採決された共謀罪について、監視社会をもたらす恐れがあることや、表現の自由、思想・良心の自由その他の日本国憲法の保障する国民の自由と権利を侵害する恐れがある一方、テロ対策としての実効性は認められないことから、廃止を求めます。

○表現の自由を尊重し、二次創作分野などの発展を図る観点から、著作権法改正を含む検討を行います。

○著作権管理団体の権利者への権利料・使用料の分配については、若手や新人のアーティスト・演者・作家などに配慮し、文化の発展に資するという法の目的に沿うよう著作権管理事業法の改正を検討します。

<社民党>
(重点政策より)
○漁業法、種苗法改悪に反対。食糧自給率50%に
(略)

○公権力の管理・監視強化から個人情報と権利をまもる
(略)

○安保法制、秘密保護法、共謀罪法、重要土地調査規制法廃止
(略)

<共産党>
○10、女性に対する暴力をなくす
(略)
リベンジポルノ、SNSでの誹謗中傷などオンライン暴力への対策を強化します
(略)
――オンライン上の暴力について、通報と削除の仕組みを強化し、被害者のケアの体制をつくります。
(略)

○60、文化
(略)
著作者の権利を守り発展させます

 著作権は、表現の自由を守りながら、著作物の創造や実演に携わる人々を守る法律として、文化の発展に役立ってきました。ところが、映画の著作物はすべて製作会社に権利が移転され、映画監督やスタッフに権利がありません。実演家も映像作品の二次利用への権利がありません。国際的には視聴覚的実演に関する北京条約(2012年)が締結され、日本も加入するなど、実演家の権利を認める流れや、映画監督の権利充実をはかろうという流れが強まっています。

――著作権法を改正し、映画監督やスタッフ、実演家の権利を確立します。デジタル化、ネット配信など多様化する二次利用に対しては、著作者の不利益にならないよう対策を求めます。

――私的録音録画補償金制度は、デジタル録音技術の普及にともない、一部の大企業が協力業務を放棄したことで、事実上機能停止してしまいました。作家・実演家の利益を守るために、私的複製に供される複製機器・機材を提供することによって利益を得ている事業者に応分の負担を求める、実効性のある補償制度の導入をめざします。

憲法を生かし、表現の自由を守ります

 芸術は自由であってこそ発展します。憲法は「表現の自由」を保障していますが、自公政権のもとで、各地の美術館や図書館、公民館などの施設で、創作物の発表を正当な理由なく拒否することが相次いできました。また、2019年のあいちトリエンナーレでは、政治家の介入を受けて、文化庁が「安全性」を理由に助成金をいったん不交付にしたり、日本芸術文化振興会が映画「宮本から君へ」に対して「公益性」をもちだして助成金を打ち切ったりするなど、「表現の自由」への介入・侵害が相次いでいます。

 文化庁の助成は応募要綱などが行政の裁量で決められ、芸術団体などの意見が十分反映されていません。諸外国では、表現の自由を守るという配慮から、財政的な責任は国が持ちつつ、専門家が中心となった独立した機関が助成を行っています。

 日本共産党は、文化芸術基本法や憲法の基本的人権の条項を守り生かして、表現の自由を侵す動きに反対します。

――「アームズ・レングス原則」(お金は出しても口は出さない)にもとづいた助成制度を確立し、萎縮や忖度のない自由な創造活動の環境をつくります。

――すべての助成を専門家による審査・採択にゆだねるよう改善します。

――「児童ポルノ規制」を名目にしたマンガ・アニメなどへの法的規制の動きに反対します。

○64、共謀罪廃止・盗聴法拡大・刑訴法「改正」問題
もの言う市民を監視し萎縮させる憲法違反の共謀罪は廃止を――特定秘密保護法、戦争法と一体に廃止を求めます
(略)

 2017年の衆院選時の公約(第383回参照)や2019年の参院選時の公約(第410回参照)と比べても、どこの政党も今までの方針をなぞって公約を作っており、あまり新味はない。公約案を見ると、自民党も、総裁が変わったところで、政権運営方針についての変化はほぼないと知れる。

 しかし、ここで、著作権問題に関して、立憲民主党が、「表現の自由を尊重し、二次創作分野などの発展を図る観点から、著作権法改正を含む検討を行」うと言っている点は非常にポイントが高い。

 また、特許について、今の日本で秘密特許制度を作る事に何の意味があるのかはさっぱり分からないが、自民党が、「特許の非公開制度の導入等を進めていく」としている点は少し気をつけておいた方がいいだろう。

 情報・表現規制問題については、今後も、インターネットにおける誹謗中傷対策などが中心になると思うが、国際データ流通に絡み行われるデータに関する権利の検討も注意が必要と思える。

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