2016年12月 9日 (金)

第371回:TPP協定・関連法案の参議院可決・成立と今後のこと

 今日12月9日に参議院本会議でTPP協定の承認案と関連法案が可決され、成立した。

 参議院での11月11日から12月9日までの審議も、衆議院同様時間こそそれなりに取られ、知財問題についても何回か触れられたものの、全く議論が深まることはなかったと言っていいものだった。(参議院インターネット中継参照)

 国会会期が延長されたことにともない自然成立もあり得たので、参議院での可決はかなり儀式的なものと言わざるを得ないが、いずれにせよ、確たる見通しも戦略もないまま、このように政府与党が自分たちのプライドのみを優先してTPP協定承認案と関連法案を国会で成立させたことは極めて残念なことである。

 アメリカ次期大統領であるトランプ氏が離脱を明言していることから、TPP協定が当面発効しないことが確実であることが不幸中の幸いとは言え、トランプ氏が二国間協定としてTPP協定以上の内容の押しつけをして来ることも考えられれば、日本政府が今回国内法に取り込んだ内容について協定の発効とは別に施行を考えるべきと言い出すこともあり得、今後も非常に注意が必要な状況が続くことに変わりはないし、私は今後も今回国会を通されたTPP協定とその関連法について反対して行くつもりである。

(なお、TPP政府対策本部のHPに掲載されている法案概要(pdf)にもある通り、関連法の内、地理的表示関連部分はTPP協定本体の発効とは関係なく公布の日から起算して2月を超えない範囲内において政令で定める日に施行されてしまう。国会では全く議論が深まることがなかったが、このような部分が含まれていることもこの関連法の問題点の1つである。)

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2016年11月 9日 (水)

第370回:TPP協定・関連法案の衆議院委員会可決とアメリカ大統領選挙の結果

 先週11月4日にTPP協定とその関連法案が衆議院のTPP特別委員会で可決され、本会議での議決を待つ状態になっている。

 衆議院委員会審議の中で10月31日には知財関係でも参考人が呼ばれ、土肥一史先生がTPPに基づく著作権法改正に賛成の立場から意見を述べ、福井健策先生が慎重な立場から意見を述べている。(衆議院インターネット中継参照。)

 土肥先生は文化庁の著作権分科会・法制・基本問題小委員会の主査としてTPPに絡む著作権法改正案の検討に関わっていたので、このように保護期間延長などについて賛成の意見を述べたのは当然と言えば当然である。

 また、これに対して、福井先生は、保護期間延長は著作物に関する現状の貿易赤字を増やすとともに、ビックデータ時代において実質的に権利処理不能となる著作物を莫大に増やすものであるからこのような法改正には慎重であるべきと述べ、合わせ、非親告罪化や法定賠償についても十分注意しなければならないとの指摘をしている。

 なお、両先生とも、取るべきとする手段において違いはあるものの、今後の著作物の利用円滑化施策の重要性はともに認めていた。

 これで衆議院としては知財部分についても賛成反対の両論を聞き、その主要な問題点についても指摘されたということになるが、衆議院においてTPP協定について本当に真摯な検討がされたということはなく、ほとんど結論ありきの審議で、委員会で可決までされてしまった。

 その中で、今日アメリカ大統領選の結果が出、TPP離脱を公約とする共和党候補のドナルド・トランプ氏が次期大統領になることになった上、同時に行われている上下院選挙でも共和党が多数派になったことで、アメリカでTPPが批准される可能性は完全になくなったと言える。

 衆議院委員会でもアメリカ大統領選との関係で何度も再交渉についてどうするかという話題が持ち上がりながら、首相を始めとして再交渉には応じないとの一点張りで全く議論になっていないが、もはや再交渉の問題ですらない。言わずもがなのことだが、日本の議会での可決によってトランプ氏がそのスタンスについて再考を促されることなど到底あり得ないだろう。

 日本国内における真剣な議論の結果ではなく、アメリカの選挙という外的な要因によることが情けないと言えば情けないが、少なくともTPP協定について今日その命脈が完全に絶たれたことは良いことと私は考えている。そもそもアメリカが批准しなければ絶対に発効しない貿易協定について日本だけで批准・関連法案の可決をすることに全く意味はない。政府与党が自分たちの下らないメンツだけのために衆議院本会議でTPP協定とその関連法案を可決した上で、条約として自然成立させるなどというバカげたことをしないことを私は願っている。

(2016年11月10日夜の追記:発効の見通しの立たない中、今日衆議院本会議でTPP協定とその関連法案が可決された。TPP協定に関する私の考えは変わりはしないが、政府与党がこのように自分たちのメンツだけを優先して協定・法案の衆議院可決を行ったのは残念なことである。)

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2016年4月 8日 (金)

第361回:TPP協定交渉主要事項年表

 既にTPP協定と関連法案の審議が衆議院で始まっており、案の定波乱含みの展開となっているところだが、ここで、過去に作った海賊版対策条約(ACTA)年表(第279回参照)に倣い、今まで書いてきたことを交渉の主要事項と合わせて年表形式でまとめておく。

 詳しくはTPP政府対策本部のHPや外務省のHPも見てもらいたいとは思うが、実際のところ具体的な交渉内容に関してはいまだにほとんど公開されておらず、日本政府が知財関連でどのような交渉をして来たかは2013年8月、2014年5月、2015年5月の3つの時点のリーク条文案と2015年10〜11月の最終条文から推測するしかないのが現状である。今まで書いて来たことで、下の年表中にも書いている通り、これらのリーク条文案から、日本政府がアメリカの圧力に負け、2013年8月までに著作権における法定賠償の導入について、2013年8月から2014年5月の間にDRM回避規制の強化と条件つきの著作権侵害の非親告罪化について、2015年5月から10月の間に著作権保護期間延長について順に飲まされて来ているのが読み取れるが、その理由は全く不明であり、このような譲歩はするべきではなかったと私は今も思っているし、アメリカを中心として国際的な動向も不透明となっている中、国会でTPP協定の批准、関連法案の可決をするべきではないと思っていることにも何ら変わりはない。

(2016年4月9日夜の追記:下の年表中の誤記を直した。)

(以下、年表)

2006年 6月 シンガポール、ブルネイ、チリ及びニュージーランドの4カ国協定として発効(当初のTPP協定における知財関連部分について、第248回参照)

2010年 3月 アメリカ、オーストラリア、ベトナム及びペルーが交渉に参加

     10月 マレーシアが交渉に参加

2012年11月 カナダ及びメキシコが交渉に参加

2013年 7月 第18回会合から日本が交渉に参加(TPP政府対策本部のメディア声明(pdf)参照)

      8月 第19回会合(TPP政府対策本部の結果報告(pdf)参照。8月時点のリーク条文について、第299回第300回第301回第302回及び第303回参照。この時点で日本政府は既に著作権における法定賠償の導入にコミットしている)

      9月 首席交渉官会合(TPP政府対策本部の首席交渉官会見概要(pdf)参照)

     10月 首脳会合(TPP政府対策本部の首脳声明(pdf)参照)

     11月 首席交渉官会合(TPP政府対策本部の首席交渉官代理会見概要(pdf)参照。11月時点の各国交渉スタンスについて、第304回参照)

     12月 閣僚会合(TPP政府対策本部の閣僚・代表声明(pdf)参照)

2014年 2月 閣僚会合(TPP政府対策本部の共同プレス声明(pdf)参照)

      5月 首席交渉官会合、閣僚会合(TPP政府対策本部の首席交渉官会見概要(pdf)閣僚声明(pdf)参照。5月時点のリーク条文案について、第322回第323回第324回第325回第326回及び第327回参照。このリーク条文案から日本政府が2013年8月から2014年5月の間にDRM回避規制の強化についてコミットするとともに著作権侵害の非親告罪化について条件つき賛成に転じたことが分かる)

      7月 首席交渉官会合(TPP政府対策本部の首席交渉官会見概要(pdf)参照)

      9月 首席交渉官会合(TPP政府対策本部の首席交渉官会見概要(pdf)参照)

     10月 閣僚会合(TPP政府対策本部の共同プレス声明(pdf)参照)

     11月 首脳会合(TPP政府対策本部の首脳声明(pdf)参照)

     12月 首席交渉官会合(TPP政府対策本部の首席交渉官会見概要(pdf)参照)

2015年 1月 首席交渉官会合(TPP政府対策本部の首席交渉官会見概要(pdf)参照)

      3月 首席交渉官会合(TPP政府対策本部の首席交渉官会見概要(pdf)参照)

      4月 首席交渉官会合(TPP政府対策本部の首席交渉官会見概要(pdf)参照)

      5月 首席交渉官会合(TPP政府対策本部の首席交渉官会見概要(pdf)参照。5月時点のリーク条文案について、第340回第341回第342回第343回第344回及び第345回参照)

      7月 閣僚会合(TPP政府対策本部の閣僚声明(pdf)参照)

     10月 閣僚会合で大筋合意(TPP政府対策本部の閣僚声明(pdf)参照。TPP協定の概要(pdf)日本政府作成版(pdf))のみ公開)

     11月 TPP協定条文(英語のみ)がようやく公開(10月〜11月の最終条文について、第347回第348回第349回第350回第351回及び第352回参照。この条文から日本政府が2015年5月から10月までの間に著作権保護期間延長についてコミットしたことが分かる)

2016年 1月 TPP協定条文の日本政府訳文がようやく公開(TPP政府対策本部のHP参照)

      2月 交渉参加12カ国が署名

      3月 TPP関連知財法改正案が閣議決定、国会提出(TPP関連知財法改正案の内容について、第360回参照)

      4月 TPP協定及び関連法案が衆議院で審議開始

     11月 TPP協定及び関連法案が衆議院委員会で可決

     11月 TPP協定離脱を公約とするトランプ氏がアメリカ大統領選挙で当選

     11月 TPP協定及び関連法案が衆議院本会議で可決

     11月 ニュージーランド議会がTPP関連法案を可決

     11月 トランプ次期アメリカ大統領が再度TPP協定離脱を明言

     12月 TPP協定及び関連法案が参議院委員会及び本会議で可決

(2016年12月9日夜の追記:2016年11月以降の記載を追記した。)

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2016年3月 9日 (水)

第360回:閣議決定されたTPP関連知財法改正案の条文

 昨日3月8日にTPP関連法案が閣議決定され、TPP政府対策本部のHPで公開された(概要(pdf)要綱(pdf)法改正案(pdf)新旧対照条文(pdf)参照条文(pdf)参照)。内容としては審議会の資料として今まで見て来たことがほぼそのまま条文化されているが、念のため、中でも知財関連の法案がどのような条文になったかを見ておきたい。

(1)著作権法改正案
 著作権法改正案の内容として含まれているのは、第357回などで書いた通り、著作権の保護期間延長、著作権侵害の非親告罪化、アクセスコントロール回避規制、配信音源の二次利用に対する使用料請求権の付与、法定損害賠償の5点だが、この内条文の問題にならない著作権保護期間延長と非常にマニアックな配信音源の二次利用に対する使用料請求権の付与については条文まで詳しく見る必要はないと思うので、その他の3点について見て行く。

 まず、非親告罪化については、この法改正案は、第123条に以下のような第2項及び第3項を追加するとしている。(下線部が追加部分。なお、法改正案にはテクニカルな改正も含まれているので、以下は全て主だった部分のみ抜き出している。)

第百二十三条 第百十九条、第百二十条の二第三号及び第四号、第百二十一条の二並びに前条第一項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

 前項の規定は、次に掲げる行為の対価として財産上の利益を受ける目的又は有償著作物等の提供若しくは提示により著作権者等の得ることが見込まれる利益を害する目的で、次の各号のいずれかに掲げる行為を行うことにより犯した第百十九条第一項の罪については、適用しない。
 有償著作物等について、原作のまま複製された複製物を公衆に譲渡し、又は原作のまま公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。次号において同じ。)を行うこと(当該有償著作物等の種類及び用途、当該譲渡の部数、当該譲渡又は公衆送信の態様その他の事情に照らして、当該有償著作物等の提供又は提示により著作権者等の得ることが見込まれる利益が不当に害されることとなる場合に限る。)。
 有償著作物等について、原作のまま複製された複製物を公衆に譲渡し、又は原作のまま公衆送信を行うために、当該有償著作物等を複製すること(当該有償著作物等の種類及び用途、当該複製の部数及び態様その他の事情に照らして、当該有償著作物等の提供又は提示により著作権者等の得ることが見込まれる利益が不当に害されることとなる場合に限る。)。

 前項に規定する有償著作物等とは、著作物又は実演等(著作権、出版権又は著作隣接権の目的となつているものに限る。)であつて、有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権、出版権又は著作隣接権を侵害するもの(国外で行われた提供又は提示にあつては、国内で行われたとしたならばこれらの権利の侵害となるべきもの)を除く。)をいう。

 これは、①「財産上の利益を受ける目的」又は「著作権者等の得ることが見込まれる利益を害する目的」での、②「有償」で提供されている著作物を「原作のまま」複製した複製物の譲渡等について、③「著作権者等の得ることが見込まれる利益が不当に害される」場合に、非親告罪の対象とするということで、文化庁の審議会の報告書通り、かなりの限定が入っており、これならば、概要(pdf)に書かれている、海賊版の販売は非親告罪になるが、同人誌のコミケでの販売やパロディのブログへの投稿などは対象外になるという基本的な整理に間違いはないだろう。無論微妙なケースは多々存在すると思うが。

 次に、法定損害賠償については、損害の額の推定を規定する第114条に以下のような第4項を入れることとしている。

(損害の額の推定等)
第百十四条
(略)
 著作権者又は著作隣接権者は、前項の規定によりその著作権又は著作隣接権を侵害した者に対し損害の賠償を請求する場合において、その著作権又は著作隣接権が著作権等管理事業法(平成十二年法律第百三十一号)第二条第一項に規定する管理委託契約に基づき同条第三項に規定する著作権等管理事業者が管理するものであるときは、当該著作権等管理事業者が定める同法第十三条第一項に規定する使用料規程のうちその侵害の行為に係る著作物等の利用の態様について適用されるべき規定により算出したその著作権又は著作隣接権に係る著作物等の使用料の額(当該額の算出方法が複数あるときは、当該複数の算出方法によりそれぞれ算出した額のうち最も高い額)をもつて、前項に規定する金銭の額とすることができる。

 これも文化庁の審議会の報告書通りで、この部分については著作権等管理事業者の使用料規程を用いた現行の推定規定の明確化と言って良く、大きな問題になることはないだろう。

 そして、アクセスコントロール規制については、以下のようなかなり長い関連条文を入れることとしている。

(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(略)
二十一 技術的利用制限手段 電磁的方法により、著作物等の視聴(プログラムの著作物にあつては、当該著作物を電子計算機において利用する行為を含む。以下この号及び第百十三条第三項において同じ。)を制限する手段(著作権者、出版権者又は著作隣接権者(以下「著作権者等」という。)の意思に基づくことなく用いられているものを除く。)であつて、著作物等の視聴に際し、これに用いられる機器が特定の反応をする信号を著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像とともに記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は当該機器が特定の変換を必要とするよう著作物、実演、レコード若しくは放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像を変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式によるものをいう。

(侵害とみなす行為)
第百十三条
(略)
 技術的利用制限手段の回避(技術的利用制限手段により制限されている著作物等の視聴を当該技術的利用制限手段の効果を妨げることにより可能とすること(著作権者等の意思に基づいて行われる場合を除く。)をいう。第百二十条の二第一号及び第二号において同じ。)を行う行為は、技術的利用制限手段に係る研究又は技術の開発の目的上正当な範囲内で行われる場合その他著作権者等の利益を不当に害しない場合を除き、当該技術的利用制限手段に係る著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。

第百十九条 著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者(第三十条第一項(第百二条第一項において準用する場合を含む。第三項において同じ。)に定める私的使用の目的をもつて自ら著作物若しくは実演等の複製を行つた者、第百十三条第三項の規定により著作権、出版権若しくは著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者、同条第四項の規定により著作権若しくは著作隣接権(同条第五項若しくは著作隣接権(同条第四項の規定により著作隣接権とみなされる権利を含む。第百二十条の二第三号において同じ。)を侵害する行為とみなされる行為を行つた者、第百十三条第六項第百十三条第五項の規定により著作権若しくは著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者又は次項第三号若しくは第四号に掲げる者を除く。)は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

第百二十条の二 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
 技術的保護手段の回避若しくは技術的利用手段の回避を行うを行うことをその機能とする装置(当該装置の部品一式であつて容易に組み立てることができるものを含む。)若しくは技術的保護手段の回避若しくは技術的利用手段の回避を行うを行うことをその機能とするプログラムの複製物を公衆に譲渡し、若しくは貸与し、公衆への譲渡若しくは貸与の目的をもつて製造し、輸入し、若しくは所持し、若しくは公衆の使用に供し、又は当該プログラムを公衆送信し、若しくは送信可能化する行為(当該装置又は当該プログラムが当該機能以外の機能を併せて有する場合にあつては、著作権等を侵害する行為を技術的保護手段の回避により可能とし、又は第百十三条第三項の規定により、著作権、出版権若しくは著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を技術的利用制限手段の回避により可能とする用途に供するために行うものに限る。)をした者
 業として公衆からの求めに応じて技術的保護手段の回避又は技術的利用手段の回避を行つた者
(以下略)

 この部分は非常に難解だが、文化庁の審議会報告書通り、「著作権者等の利益を不当に害しない場合を除」くとされているものの、やはりそもそも著作権法が対象としていない単なる「視聴」を制限する手段の「回避」そのものが規制され、その回避装置又はプログラムの譲渡等までが規制されるという内容で、非常に大きな問題があると言わざるを得ない。

 この法改正案によってDRM回避規制がどうなるかの概略を第266回に載せた表を作り直して示すと、以下のようになるだろう。(赤字が変更部分。なお、このように視聴(利用)制限回避装置等の譲渡等に対して著作権法でも刑事罰が導入されることとなると、刑事罰に関しては著作権法と不正競争防止法とで適用対象にほぼ違いがなくなる。)

Derm_table4

 internet watchの記事にも書かれているように、この法改正案が通ると、正当化理由を考えづらいマジコン・MODチップや不正B−CASカードなどについて利用そのものが著作権法上違法と評価される可能性が高いだろうが、ここで、「著作権者等の利益を不当に害しない」という例外によってケースバイケースで判断されることになると考えられるものの、同記事で引用されているMIAUの意見書でより一般的に書かれているように、ユーザーが自分の機器で自由なソフトウェアを動作させるための回避行為が著作権法上違法とされかねないのは問題である。さらに、正規ライセンス品ながらDVD、BDやゲームソフトのリージョン設定を回避する場合や、遠隔でコンテンツを視聴・利用する場合や、自己所有のコンテンツが古くなり対応機器等が提供されなくなった時に回避する場合や、回避を他人に手伝ってもらう場合など、微妙なケースが多々考えられ、個人の情報アクセスそのものに影響するこの単純アクセスコントロール回避規制導入の問題は決して小さいものではない。

(2)特許法改正案
 特許法改正案に含まれているのは、発明の新規性喪失の例外期間(グレースピリオド)の6月から12月への延長と、期間補償のための特許権の存続期間の延長制度だが、グレースピリオドは特許法第30条に書き込まれた期間を1年に変更しているだけなので条文は飛ばすとして、特許の保護期間の延長については、第67条に以下のような第2項及び第3項を足し、さらに第67条の2から延長登録出願についての規定を入れるとしている。

第六十七条  特許権の存続期間は、特許出願の日から二十年をもつて終了する。

 前項に規定する存続期間は、特許権の設定の登録が特許出願の日から起算して五年を経過した日又は出願審査の請求があつた日から起算して三年を経過した日のいずれか遅い日(以下「基準日」という。)以後にされたときは、延長登録の出願により延長することができる。

 前項の規定により延長することができる期間は、基準日から特許権の設定の登録の日までの期間に相当する期間から、次の各号に掲げる期間を合算した期間(これらの期間のうち重複する期間がある場合には、当該重複する期間を合算した期間を除いた期間)に相当する期間を控除した期間(以下「延長可能期間」という。)を超えない範囲内の期間とする。
(以下略)

 ここについて何か問題があるということはないのだが、ここで省略した第67条第3項の1〜10号で様々な控除期間が非常に細かく列挙されており、実際の計算はかなりややこしいものになりそうである。

(3)商標法改正案
 商標法改正案の主な内容は法定賠償制度の導入だけだが、これについてはやはり損害額の推定を規定する第38条に以下のような第4項を追加するとしている。

(損害の額の推定等)
第三十八条
(略)
 商標権者又は専用使用権者が故意又は過失により自己の商標権又は専用使用権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その侵害が指定商品又は指定役務についての登録商標(書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであつて同一の称呼及び観念を生ずる商標、外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標を含む。第五十条において同じ。)の使用によるものであるときは、その商標権の取得及び維持に通常要する費用に相当する額を、商標権者又は専用使用権者が受けた損害の額とすることができる。

 これはこれで変な規定だと思うが、概要(pdf)に書かれている通り、損害の最低額として、商標権の取得及び維持に通常要する費用である、商標出願料3,400円+(8,600円×商品の種類数)+登録料28,200円×商品の種類の数という金額を請求できるというだけであれば、そう莫大な額になるといったことはなく、濫用の危険が全くないとまでは言い切れないものの、大きな問題になることはやはりないだろう。

(4)地理的表示保護法改正案
 報道こそ多少されていたものの、これまで農水省でそのために審議会が開催されていた様子がなく、最も内容が不明だった地理的表示保護法改正案について今回の条文の公開で初めて詳細が分かったと言って良いのではないかと思うが、その主な内容は、以下のような外国の特定農林水産物等に関する特例によって、農林水産大臣は外国の地理的表示保護のための指定ができるとするものである。

第四章 外国の特定農林水産物等に関する特例

(外国の特定農林水産物等の指定)
第二十三条
 農林水産大臣は、我が国がこの法律に基づく特定農林水産物等の名称の保護に関する制度と同等の水準にあると認められる特定農林水産物等の名称の保護に関する制度(以下「同等制度」という。)を有する外国(本邦の域外にある国又は地域をいう。以下この項において同じ。)であって、次の各号のいずれにも該当するもの(以下「締約国」という。)と相互に特定農林水産物等の名称の保護を図るため、当該締約国の同等制度によりその名称が保護されている当該締約国の特定農林水産物等について指定をすることができる。
 次に掲げる事項をその内容に含む条約その他の国際約束を我が国と締結していること。
 当該外国が同等制度により我が国の特定農林水産物等の名称を保護すべきものとされていること。
 我が国がこの法律により当該外国の特定農林水産物等の名称を保護すべきものとされていること。
 前号の国際約束において保護すべきものとされている我が国の特定農林水産物等の名称について、その適切な保護を我が国又は当該特定農林水産物等に係る登録生産者団体が当該外国の権限のある機関に要請した場合には、必要な措置を講ずると認められること。

 前項の指定(以下単に「指定」という。)は、次に掲げる事項を定めてするものとする。
 当該特定農林水産物等の区分
 当該特定農林水産物等の名称
 当該特定農林水産物等の生産地
 当該特定農林水産物等の特性
 前各号に掲げるもののほか、当該特定農林水産物等の生産の方法その他の当該特定農林水産物等を特定するために必要な事項
 前各号に掲げるもののほか、当該特定農林水産物等について農林水産省令で定める事項

(以下略)

 これも特に問題があるという話ではないが、TPP協定上必ずしもこのような指定制度による外国の地理的表示の保護が求められている訳ではないということは注意しておいても良いだろう。

(コメントを受けた追記:私はこのような指定制度はTPP協定上必ずしも必要とされないと考えているが、この地理的表示法の改正案はTPP協定第18章(知財章)第18.36条に対応するもののようである。)

(5)施行期日
 最後に、施行期日は、附則により以下のように規定されている。

(施行期日)
第一条 この法律は、環太平洋パートナーシップ協定が日本国について効力を生ずる日(第三号において「発効日」という。)から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
 附則第九条の規定 公布の日
 第三条中商標法第二十六条第三項第一号の改正規定及び第十条の規定 公布の日から起算して二月を超えない範囲内において政令で定める日

(中略)

(特許法の一部改正に伴う経過措置)
第二条 第二条の規定による改正前の特許法第二十九条第一項各号のいずれかに該当するに至った日が、この法律の施行の日(以下「施行日」という。)の六月前の日前である発明については、第二条の規定による改正後の特許法(次項及び第三項において「新特許法」という。)第三十条第一項及び第二項の規定にかかわらず、なお従前の例による。

 実用新案法(昭和三十四年法律第百二十三号)第三条第一項各号のいずれかに該当するに至った日が、施行日の六月前の日前である考案については、同法第十一条第一項において準用する新特許法第三十条第一項及び第二項の規定にかかわらず、なお従前の例による。

 施行日又は環太平洋パートナーシップ協定が署名された日から二年を経過した日のいずれか遅い日以前にした特許出願に係る特許権の存続期間の延長については、新特許法の規定にかかわらず、なお従前の例による。

(中略)

(著作権法の一部改正に伴う経過措置)
第七条 第八条の規定による改正後の著作権法(次項及び第三項において「新著作権法」という。)第五十一条第二項、第五十二条第一項、第五十三条第一項、第五十七条並びに第百一条第二項第一号及び第二号の規定は、施行日の前日において現に第八条の規定による改正前の著作権法(以下この項において「旧著作権法」という。)による著作権又は著作隣接権が存する著作物、実演及びレコードについて適用し、同日において旧著作権法による著作権又は著作隣接権が消滅している著作物、実演及びレコードについては、なお従前の例による。

 新著作権法第百十六条第三項の規定は、著作者又は実演家の死亡の日の属する年の翌年から起算して五十年を経過した日が施行日以後である場合について適用し、その経過した日が施行日前である場合については、なお従前の例による。

 新著作権法第百二十一条の二の規定は、同条各号に掲げる商業用レコード(当該商業用レコードの複製物(二以上の段階にわたる複製に係る複製物を含む。)を含む。)で、当該各号の原盤に音を最初に固定した日の属する年の翌年から起算して五十年を経過した日が施行日前であるもの(当該固定した日が昭和四十二年十二月三十一日以前であるものを含む。)については、適用しない。

 これも想定通り、施行日はTPP協定の発効日とされており、著作権の保護期間延長の遡及適用もないとされているが、附則第1条第2号で、法改正案(pdf)の知財関連改正法案の中でも第10条に書かれている地理的表示保護法改正案だけはTPPの発効とは無関係に「公布の日から起算して二月を超えない範囲内において政令で定める日」とされていることには留意が必要だろう。上で書いた通り、地理的表示保護法改正案だけはTPP関連と言いながらTPP協定で必須とされているものではないので、このような形にしたのではないかと思われるのである。(なお、テクニカルな話だが、商標法第26条第3項第1号も地理的表示保護法の改正にともなう改正である。)

(コメントを受けた追記:この地理的表示保護法の施行日が早いのは、TPP協定第18章(知財章)第18.36条第6項で国際協定に基づく地理的表示の保護がTPP協定合意後に合意した国際協定に課され得るとされているためのようであるが、この第18.36条第6項は適用対象を定めているだけであって、TPP協定が効力を有するのはあくまで発効日であるので、やはりTPP協定上の地理的表示保護の義務を最低限担保するだけであればテクニカルにはこのようなやり方でなければならないということはなかったのではないかと思う。)

 ざっと法改正案の条文を読んでみたが、特に保護期間延長、アクセスコントロール回避規制の導入及び限定つきながら非親告罪化を含む著作権法改正案の問題はそのまま残されている。私がこのような非道な知財規制の強化を含む法改正に、そもそもTPP協定の批准に反対であることに変わりはない。

(2016年3月10日夜の追記:アクセスコントロール規制について、念のため、改正法案中の引用部分で抜けていた第119条(刑事罰除外規定)を追加した。また、上で書いた通り、書き込まれている年数を変更しているだけで条文の問題にはならないが、著作権の保護期間延長については概要(pdf)の下の表が一覧として見る分には便利なので、これも念のため引用しておく。

Extension

(2016年3月12日夜の追記:コメントを受けて地理的表示保護法改正について上に文章を追記した。)

(2016年3月13日夜の追記:アクセスコントロール回避規制について、補足として、「この法改正案によって〜この単純アクセスコントロール回避規制導入の問題は決して小さいものではない。」の文章を追加した。)

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2016年2月28日 (日)

第359回:TPP協定のための特許法と商標法の改正の概要(2月12日の特許庁・産業構造審議会・知的財産分科会の資料)

 著作権法とは違い、そう大きな問題を含んでいる訳ではないのだが、TPP協定批准のためには著作権法だけではなく、特許法や商標法などの他の知的財産法も改正が必要となる。

 その法改正内容の概要については、特許庁で2月12日に開催された産業構造審議会・知的財産分科会で必要となる法改正の概要が示されているので、今まで書いて来たことと多く重なるが、念のため、その内容を見ておきたい。(なお、法運用としては、職務発明ガイドラインの話など他の話も重要でないということはないのだが、ここでは省略する。)

 その概要は、その中の特許庁の資料、TPP協定を担保するための特許法改正について(pdf)の6ページに、

○新規性喪失の例外規定について
・発明の新規性喪失の例外期間(グレースピリオド)について、現行の公表等から6月を12月に延長する。

○期間補償のための特許権の存続期間の延長制度について
・特許権の存続期間について、特許出願の日から5年を経過した日又は出願審査の請求があった日から3年を経過した日のいずれか遅い日(以下「基準日」という。)以後に、特許権の設定の登録があった場合に、出願により延長することを可能とする。
・延長が可能な期間は、基準日から特許権の設定の登録の日までに相当する期間から、特許庁の責めに帰さない理由により経過した期間及び審判・裁判の期間等の特許出願に係る手続や審査に要した期間以外の期間を控除した期間とする。
・存続期間の延長登録に対する無効審判制度その他所要の制度を整備する。

と、同じくTPP協定を担保するための商標法改正について(pdf)の4ページに、

○民法の原則を踏まえ、追加的な損害賠償ではなく、法定の損害賠償に関する規定を整備する。

○具体的には、商標の不正使用による損害の賠償を請求する場合において、当該登録商標の取得及び維持に通常要する費用に相当する額を損害額として請求できる規定を追加する。

と、それぞれ書かれている。

 これらは、今まで政府のTPP関連政策大綱などで示されていたこととほぼ一緒で、グレースピリオド(特許法において出願より前に公表したとしても例外的に新しい発明であると認められる期間)の変更、不合理な遅延を理由とした特許期間の延長、商標法における法定賠償制度の導入の3つなのだが、見るべきは、この資料で商標法における法定賠償制度の内容について多少詳細が示されたことだろう。前回取り上げた著作権法の場合と同様、商標法においても、民法の原則(填補賠償の考え方)を踏まえ、法定賠償として請求できるのは「登録商標の取得及び維持に通常要する費用に相当する額」を請求可能とすることとしているのである。

 具体的な条文の書き方にもより、「登録商標の取得及び維持に通常要する費用に相当する額」がどの程度の額を意味するか解釈の幅があり得るとも考えられるものの、民法の原則である填補賠償の考え方に従っている限り、これがそう大きな額になるということはなく、商標権の取得・維持のためにかかる出願料と登録料程度を意味すると考えておけば良いのだろう。(そうだとしても濫用の危険については十分注意する必要があるが。)

 そのため、TPP協定に絡む特許法と商標法の改正に関しては著作権法の場合のような問題はそこまでないと思えるが、特許庁がTPPに絡む法改正のような重要な論点を含む検討を一般に分かりにくい形で行っていることはやはり問題だろう。

 また、最後に合わせて先週2月24日の文化審議会・著作権分科会・法制・基本問題小委員会で取りまとめられた報告書の内容も見ておくと(文化庁のHPにはまだ掲載されていないが、MIAUがそのツイートの通り資料をアップロードしてくれている)、前々回取り上げた2月10日時点の資料と比べ多少注釈や関係者の意見が追加されているくらいで大きな方針の変更は全くない。

 ただし、前回取り上げた法定賠償制度に関する部分で、協定との関係について以下のような補足の記載が多少追加されているのは、国会での議論を受けて文化庁内部で検討した結果だろうか。

「権利者を補償するために十分な額に定め,及び将来の侵害を抑止することを目的とする」(TPP協定第18・74条第8項)との関係については,現行規定による所定の損害額の請求が可能であることによりこれらの要件を満たし得るとの意見が示された。特に,「将来の侵害を抑止することを目的とする」との規定との関係については,填補賠償を認める現行制度が侵害を抑止する効果を発生させるものであると評価できること,及びTPP協定は自国の法制等の範囲内で協定上の義務を実施することを許容していることから,現行制度によって協定上の当該義務は満たし得るとの意見があった。(第36ページ)

これに関連して,最高裁は,我が国の損害賠償制度について,「加害者に対する制裁や,将来における同様の行為の抑止,すなわち一般予防を目的とするものではない」とするー方で,「もっとも,加害者に対して損害賠償義務を課すことによって,結果的に加害者に対する制裁ないし一般予防の効果を生ずることがあるとしても,それは被害者が被った不利益を回復するために加害者に対し損害賠償義務を負わせたことの反射的,副次的な効果にすぎず,加害者に対する制裁及び一般予防を本来的な目的とする懲罰的損害賠償の制度とは本質的に異なるというべきである」と判示しており,加害者に損害賠償責任を負わせることにより,同種の侵害が抑止され,一般予防が図られるという副次的効果が生ずることがあることを認めている。(萬世工業事件最高裁判決[最判平成9年7月11日民集51巻6号2573頁])。(同第36ページ注93)

なお,新たに整備すべき制度の対象は著作権等管理事業者により管理されている著作物等に限られることとなる点について,協定上の義務との関係をどのように理解すべきかが問題となりえる。この点,今回の制度改正の趣旨は,前記のとおり, 「法定の損害賠償」との関係では,全ての著作物等に適用される法第114条第3項等の規定が既に整備されているところ,これを前提としつつ,協定の趣旨をより適切に反映する観点から,填補賠償原則の枠内で更なる制度の改善の余地がある部分について制度の整備を行うこととするものである。(第39ページ)

 2月29日に文化庁で著作権分科会が開かれるが、恐らく報告書の内容にさらに変更が加えられることはないだろうし、特許庁でもまた審議会が開かれる様子はないので、報道されているように、政府としてはこれらの資料の内容通りの法改正案を3月8日に閣議決定するつもりなのだろう。

 しかし、アメリカでも大統領選を前にTPP反対論がかなり出て来ている中でどうして日本政府がそこまでTPP関連法案の可決を急ぐのか、その著作権法改正案などの施行がTPP発効に合わされるだろうことを考え合わせても実に不可解と言う他ない。私は無論TPP協定の批准にも、これらの法改正案の内容にも反対だが、たとえTPP協定批准のために関連法改正案を検討するにしても、アメリカを中心として他の国の動向も見ながらもっと慎重に進めるべきだろう。

(2016年2月29日の追記:産業構造審議会・知的財産分科会は開催案内が出されており、非公開というのは私の勘違いだったので、記載を修正した(「一般に非公開の形で」→「一般に分かりにくい形で」)。)

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2016年2月21日 (日)

第358回:法定損害賠償制度の見直しを求めるアメリカ商務省の報告書

 先週金曜2日19日の衆議院予算委員会での民主党の福島伸享議員の質問によってにわかにTPP協定により導入を求められている法定損害賠償が話題となっているが(衆議院インターネット中継huffingtonpost.jpの記事ねとらぼの記事参照)、国会でのこのような議論を受け、場合によっては何かしらさらに国内でのTPP問題がややこしくねじれることもあるかも知れないと私は危惧している。

 アメリカでは、著作権法上の法定損害賠償として、その第504条第(c)項に著作物毎に通常750ドルから3万ドル、故意の場合はさらに15万ドルまで増額できるとして非常に大きな額が条文に書き込まれている(米著作権局HPの条文又は著作権情報センターHPの翻訳参照)。しかも、これは著作物一つあたりの額なので、多数の著作物が侵害される場合、個人には到底支払うことができない(恐らく企業であっても支払い難い)莫大な損害賠償額が請求され得るというのがその最大の問題である。

 その問題は私もパブコメ等で何度も指摘しているが、今まで前提をかなり飛ばして書いてしまっているところもあり、丁度良くつい最近の1月28日にアメリカ商務省の出したリミックス、ファーストセール及び法定損害賠償に関する白書(pdf)概要(pdf)リリース1も参照)はアメリカの制度とその問題を知る上で恰好の内容を含んでいるので、今回はこの報告書の内容を紹介する形で、その前提も含め、法定損害賠償の問題を取り上げたいと思う。

 なお、この報告書中のリミックスやファーストセールドクトリンの話も重要でないということはないのだが、それぞれ、リミックスについてはガイドラインを作るべきと、ファーストセールドクトリンについてはデジタル販売にまで拡張するのは時期尚早とそこまで踏み込んだ提言にはなっていないのでここでは省略し、一番大きな見直しを提言している法定損害賠償制度に関する部分のみ取り上げる。

 まず、この報告書の概要(pdf)から、法定損害賠償に関する部分を抜き出すと以下のようになる。(以下、例によって翻訳は全て拙訳。)

The Task Force is mindful that statutory damages serve a critical compensatory and deterrent function, and are particularly important in cases of online infringement, where the scope of the infringing use may not be ascertainable. At the same time, however, excessive and inconsistent awards can risk encouraging disrespect for copyright or chilling investment in innovation. The Task Force's inquiry focused on the appropriate calibration of statutory damages that may be assessed against individual file‐sharers and against online services, which can be secondarily liable for infringement of large numbers of works. It recommends the following three amendments to the Copyright Act to address some of the concerns presented:

  • Incorporate into the Copyright Act a list of factors for courts and juries to consider when determining the amount of a statutory damages award, providing a greater degree of predictability in infringement cases across the country. In considering what factors should be included, the Task Force drew upon existing model jury instructions as well as federal case law.
  • Amend the copyright notice provisions to remove a bar to eligibility for the lower "innocent infringement" statutory damages awards.
  • In cases involving non‐willful secondary liability of online services offering a large number of works, give courts discretion to assess statutory damages other than on a strict per‐work basis.

The Task Force also supports the creation of a streamlined procedure for adjudicating small claims of copyright infringement and believes that further consideration should be given to the proposal of the Copyright Office to establish such a tribunal. This could help diminish the risk of disproportionate levels of damages against individual file‐sharers.

タスクフォースは、法定損害賠償は重要な補償及び抑止機能を果たすものであり、侵害利用の範囲が不明確となり得るオンライン侵害の場合に特に重要であることに留意する。同時に、しかしながら、過大で一貫性のない賠償は著作権の軽視を助長したり、イノベーションへの投資を萎縮させたりする恐れがある。タスクフォースの調査は、個人のファイル共有と、多数の著作物の侵害について二次的な責任を負い得るオンラインサービスに課され得る法定損害賠償の適切な見直しに焦点をあてたものである。タスクフォースは、示された幾つかの懸念への対処として以下の3つの著作権法の改正を勧告する。

  • 法定損害賠償の額を決定する際に裁判所と陪審員が考慮するべき要素のリストの著作権法への導入、これは全国で侵害事件における予見可能性をより高めるものである。どのような要素が入れられるべきかを検討するにあたり、タスクフォースは既存のモデル陪審説示並びに連邦判例法を利用した。
  • 「罪のない侵害」の場合の法定損害賠償の減額に対する適格性の障害を除去するための著作権ノーティス規定の改正。
  • 多数の著作物を提供するオンラインサービスの故意でない時の二次責任に関する場合に、厳密に著作物数を基礎とする以外に法定損害賠償を評価する裁量を裁判所に与えること。

タスクフォースはまた著作権侵害の少額訴訟を裁定するための簡素な手続きの創設を支持し、さらなる検討がそのような裁定所を確立する著作権局の提案のために加えられるべきであると考える。このことは個人のファイル共有に対する不釣り合いな損害賠償の危険を解消することに役立つであろう。

 ここで、アメリカ商務省が「過大で一貫性のない賠償は著作権の軽視を助長したり、イノベーションへの投資を萎縮させたりする恐れがある」と認め、法定損害賠償を制限する方向への法改正を勧めていることの意味は大きいだろうし、この概要部分だけでも簡にして要を得ていると思うが、さらに詳しく見るために、報告書本文(pdf)から、ポイントとなるを抜き出して行くと、まず、個人によるファイル共有侵害との関係における問題について、70ページ以降に以下のように書かれている。

a. The Level of Statutory Damages

The Task Force heard differing viewpoints about whether the full range of statutory damages permitted under current law should be applied to individual file-sharers. Many commenters addressed the perceived fairness of enforcement activities vis-a-vis individual defendants generally, including whether the possibility of large statutory damages awards impedes individuals' ability to defend themselves or gives rise to abusive tactics. The Task Force also received proposals that addressed other concerns about litigation against individual file-sharers.

Much of the discussion focused on the only two such cases with reported trial verdicts, both of which resulted in high statutory damages awards that received considerable publicity.

Those favoring an adjustment of the permissible range of statutory damages pointed to the large jury awards in these cases as examples of the "unpredictability and irrationality" of the statutory damages regime. According to those commenters, individual file-sharers who infringe a handful of works for private, non-commercial purposes should not be required to pay damages that are disproportionate to the market value of the works. Nor, in their view, does it make sense to impose large damages awards on individuals who cannot pay anywhere near the amounts awarded. Some argued that the awards in these cases "exceed[ed] any rational measure of deterrence," noting potential due process concerns.

...

b. Inconsistencies in Application

A number of commenters asserted that because there is no specific set of factors or guidelines to be used in calculating statutory damages awards, troubling inconsistencies in their levels can arise. One commenter pointed out that damages are "untethered from anything." While few examples involving file sharing were offered, the four different verdicts in the two cases discussed above represent a wide array of awards based upon similar or identical facts.

Copyright owner groups as well as consumer advocates and other stakeholders suggested that it would be helpful to provide courts with guidance on factors to consider when setting statutory damages awards. Several noted that although some model jury instructions already exist, they are not being used in a consistent manner or in every circuit.

c. Litigation Abuse

Several commenters claimed that the potential high levels of statutory damages are linked to troubling enforcement tactics, often at the expense of individual defendants. In their view, the statutory damages regime has helped foster a "nationwide plague of lawsuit abuse over the past three years" by entities that they label "copyright trolls." They pointed to reports that attorneys representing copyright holders have filed hundreds of lawsuits against tens of thousands of anonymous Internet users, representing a substantial percentage of copyright suits filed in the federal courts in recent years. According to the commenters, these cases are rarely if ever litigated; instead, attorneys file "boilerplate complaints based on a modicum of evidence, calculated to maximize settlement profits by minimizing costs and effort" and use the courts' subpoena power to identify Internet users, often in multiparty John Doe actions. Then, commenters allege, they engage in a campaign of threats of high potential damages and harassment to coerce their targets into paying settlements of $2,000 to $10,000. This is a particular concern with respect to suits about copyrights covering adult content, where the TaskForce has noted a large number of settlements that may have been motivated in part by the defendants' desire to avoid having their names associated with such content. Such "predatory" enforcement may contribute to a negative public image of copyright.

This behavior was characterized as the product of a "litigation business model where a plaintiff uses copyright law ‘not to protect its property from unlicensed use, but rather to generate profit from use even in the absence of articulable harm to' the plaintiff." One commenter stated that"[h]olders of low-value copyrights in unsuccessful movies or low-cost pornography, and even invalid assignments of rights in newspaper articles, use the threat of statutory damages to turn litigation threats into a profit center." Another predicted that if statutory damages were calibrated to much lower levels, then this behavior would disappear.

...

a.法定損害賠償の水準

タスクフォースは、現行法において許されている法定損害賠償の全範囲が個人のファイル共有に適用されるべきかということについて様々な見解を聞いた。多くの意見は、巨額の法定損害賠償の可能性が個人の被告の自己弁護能力を阻害しているか、濫用戦略をもたらしているかについても含め、一般的に個人のファイル共有に対する権利行使について知覚される公平性に向けられていた。タスクフォースは、個人のファイル共有に対する訴訟に関する他の懸念に対処する提案も受けた。

議論は多く、ともに大きく喧伝されている、高額の法定損害賠償をもたらした、報告された判決のあったそのような2つのケースにほぼ集中していた。

彼らは法定損害賠償のあり得る範囲の適正化を支持し、法定損害賠償制度の「予見不能性と不合理性」の例としてこれらのケースにおける巨額な陪審員賠償をあげた。これらの評者によれば、私的に非商業目的で一握りの著作物を侵害する個人のファイル共有について、その著作物の市場価値と不釣り合いな損害賠償を支払うことは求められるべきではない。また、彼らの見解では、如何なる場合でもそのような損害賠償額をほぼ支払うことができない個人に高額の損害賠償を課すのは馬鹿げている。何人かは、これらのケースにおける賠償は「抑止の合理的な手段を超えている」と主張し、潜在的な適正な法的手続きに対する懸念を示した。

(略)

b.法適用における一貫性のなさ

数多くの評者が、法定損害賠償を算定するための特定の要素一式又はガイドラインがないことから、その水準における問題の多い一貫性のなさが生じ得ると主張している。ある評者は、損害賠償は「あらゆることから解き放たれている」と指摘している。ファイル共有がからむ例は多く提供されていないが、上記の2つのケースにおける4つの異なる判決が同様の又は同一の事実に基づく賠償の広い幅を示している。

著作権者のグループ並びに消費者の代表及び他の利害関係者は、法定損害賠償を決定する際に考慮する要素についてのガイドを裁判所に提供することが助けになると示唆している。何人かは、モデル陪審説示が既に存在しているものの、それは一貫性のある形であるいはあらゆる法廷で使われていないと注意している。

c.訴訟の濫用

何人かの評者は、潜在的に高い水準の法定損害賠償が問題の多い権利行使戦略に結びついており、個々の被告に被害を与えていることも多いと訴えている。彼らの見解では、法定損害賠償制度は、彼らが「著作権トロール」と名づける主体による「3年来の全国での訴訟の濫用の大発生」を助長して来た。彼らは、著作権者を代理する弁護士が何万人という匿名のインターネットユーザに対して何百という訴訟を提起し、これが近年連邦裁判所に提起された著作権訴訟のかなりの割合を占めている可能性があるとの報告があることを指摘している。これらの評者によれば、これらのケースにおいて訴訟が遂行されることはまれである。そうではあるが、弁護士たちは「費用と労力を最小化しながら最大の和解の利益を受けられると見込んで僅かな証拠に基づいて定型の訴えを提起しており」、インターネットユーザを特定する裁判所の召喚権限を用い、これは多数の関係者を含むジョン・ドウ(名なし)裁判によることも多い。すなわち、これらの評者の主張するところ、彼らはあり得る高額の損害賠償により脅迫し、嫌がらせによって相手を2千ドルから1万ドルの和解金を支払うよう追い込むキャンペーンに従事している。このことはアダルトコンテンツを含む著作権に関する訴訟に関して特に懸念される、タスクフォースは、そこではそのようなコンテンツと自身の名前が結び付けられることを避けたいと思う原告の望みがその動機の一部になっている多数の和解があると注意する。このような「人を食い物にする」権利行使は著作権の否定的なイメージの流布に寄与しているであろう。

この振る舞いは、「原告が『不正な利用からその所有権を保護するためではなく、どちらかと言えば、原告に明確に言える害が存在しない場合における利用から利益を生み出すため』に著作権法を利用している訴訟ビジネスモデル」が作り出したものとして特徴づけられる。ある評者は、「成功しなかった映画又は低費用のポルノグラフィーにおける価値の低い著作権の所有者が、また新聞記事の無効な権利譲渡によってすら、法定損害賠償による脅迫を利用して訴訟による脅迫をプロフィットセンターとしている」と述べている。他のある評者は、法定損害賠償が遥かに低い水準に補正されていれば、この振る舞いは消えるだろうと予測している。

(略)

 次に、二次的な責任、つまり、インターネットサービスプロバイダーの間接侵害責任との関係における問題ついて、79ページ以降に以下のように書かれている。

a. Chilling Effects

With respect to online service providers, the question posed by the Task Force was how statutory damages should be calculated in cases involving secondary liability where hundreds of thousands of works may have been infringed. In addition to concerns expressed about statutory damages generally, the comments most relevant to this question focused on whether potentially huge statutory damages awards have a "chilling effect" on innovation and investment.

Critics of the current statutory damages regime pointed to a number of lawsuits against technology companies, generally involving services offering methods of digital distribution that enable large-scale copyright infringement by third parties. In determining the responsibility of these companies for the illegal activities of the users, the courts have applied various theories of direct and secondary liability. Although many of these cases ultimately settled, the levels of potential liability have fueled headlines and commentary.

Technology companies and public interest advocates asserted that the magnitude of statutory damages awards available in such cases have had a chilling effect on innovation and investment. One commenter cited an amicus curiae brief to the Supreme Court by a group of venture capitalists arguing that statutory damages have "crushing implications for vendors of multi-purpose technologies, where damages from unforeseen users can quickly mount in the millions or even billions of dollars[,]" and that in this respect secondary liability for copyright infringement is "qualitatively different from most other sorts of business risks that investors can insure against or build into their business calculations." Another commenter pointed to a survey of investors in digital content intermediaries that it said confirmed "that uncertainty around liability risks deter[ring] investment in this field."

Commenters also pointed to innovative companies that they say were bankrupted by litigation even though they were ultimately found to be non-infringing. According to one commenter, potential statutory damages will deter some new business plans that rely on fair use from moving forward. At the same time, several noted that "[e]vidence for the innovation-chilling effect will ... usually not be readily apparent. In most cases, the public doesn't see and will likely never know about the innovations that don't happen and the features that aren't offered."

...

a.萎縮効果

オンラインサービスプロバイダーに関して、タスクフォースが出した質問は、何十万の著作物が侵害される二次責任が絡む場合にどのように法定損害賠償が算定されるべきかというものである。法定損害賠償について一般的に示された懸念に加えて、ほぼこの質問に関する回答は、莫大なものとなり得る法定損害賠償がイノベーションと投資に対し「萎縮効果」を有するかどうかということに集中していた。

現行の法定損害賠償制度の批判者は、一般的に第三者による大規模な著作権侵害を可能とするデジタル頒布手段を提供するサービスに関わるテクノロジー企業に対する数多くの訴訟があることを指摘している。これらの企業のそのユーザの違法な活動に対する責任を決定する際、裁判所は直接及び二次責任の様々な理論を適用して来た。これらのケースの多くが最終的に和解しているものの、あり得る責任の水準が見出しと論評に燃料を提供して来た。

テクノロジー企業と公共の利益の擁護者は、このような場合に適用され得る多額の法定損害賠償はイノベーションと投資に対し萎縮効果を有していると主張している。ある評者は、法定損害賠償は「予見できないユーザによる損害賠償が即座に何百万ドルか、何十億ドルかにも積み上がり得る、多目的技術の販売業者にとって破壊的な意味を持ち得」、この点で著作権侵害の二次責任は「投資家がそれに対して保険を掛け得るか、そのビジネス勘定の中に組み入れることのできる他のほとんどのビジネスリスクと質的に異なる」と主張するベンチャーキャピタリストのグループから最高裁判所へのアミカスブリーフを引用していた。他のある評者は、「責任リスクに関する不確実性がこの分野への投資を抑止している」のは確かであると言っているデジタルコンテンツ仲介者についての投資家の調査があることを指摘している。

評者は、イノベーション企業は最終的に非侵害であるとされたとしても訴訟で破産し得ると指摘している。ある評者によれば、あり得る法定損害賠償は、フェアユースに依拠する新たなビジネスプランを前に進めることを抑止することもあるであろう。同時に、何人かは、「イノベーションの萎縮効果についての証拠は…通常簡単に出て来ない。ほとんどの場合において、公衆は、起こらなかったイノベーションと提供されなかった機能を見ることはなく、それについて知ることも決してないであろう」と指摘している。

(略)

 最後に、これに対する解決策の提言としては、第85ページ以降に、以下のように書かれている。

1. Overview

In reviewing the positions and proposals set forth by stakeholders, the Task Force is mindful that statutory damages are intended to "provide reparation for injury" as well as to "discourage wrongful conduct." We agree that there is a need for effective enforcement tools, including meaningful statutory damages, to curb the online piracy that can undermine the value of rights and hobble the development of legitimate markets. At the same time, however, it is important to avoid excessive and inconsistent awards that risk encouraging disrespect for copyright law or chilling investment in innovation. And the abusive enforcement campaigns reported by commenters should not be tolerated.

Accordingly, the Task Force recommends three amendments to the Copyright Act to address some of the concerns presented and to better balance the needs of copyright owners, users, and intermediaries. First, we recommend incorporating into the statute a list of factors for courts and juries to consider when determining the amount of a statutory damages award. Second, we recommend changes to the copyright notice provisions that would expand eligibility for the lower "innocent infringement" statutory damages awards. We also propose that, in cases involving non-willful secondary liability for online services offering a large number of works, courts be given discretion to assess statutory damages other than on a strict per-work basis. Together, these changes should maintain the goals of compensation and deterrence that thestatutory damages regime supports while providing courts with improved tools to appropriately calibrate the awards.

2. Recommendations

a. Specify Factors in the Copyright Act to Consider in Assessing Statutory Damages

The Task Force recommends that Congress enact a new paragraph in Section 504 of the Copyright Act specifying factors that must be considered when determining statutory damage award amounts. The aim is to ensure a greater degree of predictability in copyright infringement cases across the country and address some other concerns raised in this proceeding. In considering what factors should be included, we have drawn upon existing model jury instructions as well as federal case law. The Task Force considered proposing federal model jury instructions, but concluded that a statutory set of factors would be preferable since they will be binding on all courts. We believe that litigants and courts would be well-served by requiring consideration of a uniform set of factors designed to result in an appropriate award based upon the facts of each case.

The nine factors listed below are those that will most often be applicable in a statutory damages determination. We believe that they should be non-exclusive, so that courts are not foreclosed from considering other factors that may be relevant in a particular case.

The Task Force proposes a new clause in subsection Section 504(c) as follows:

FACTORS TO CONSIDER -- In making any award under this subsection, a court shall consider the following nonexclusive factors in determining the appropriate amount of the award:

(1) The plaintiff's revenues lost and the difficulty of proving damages.

(2) The defendant's expenses saved, profits reaped, and other benefits from the infringement.

(3) The need to deter future infringements.

(4) The defendant's financial situation.

(5) The value or nature of the work infringed.

(6) The circumstances, duration, and scope of the infringement, including whether it was commercial in nature.

(7) In cases involving infringement of multiple works, whether the total sum of damages, taking into account the number of works infringed and number of awards made, is commensurate with the overall harm caused by the infringement.

(8) The defendant's state of mind, including whether the defendant was a willful or innocent infringer.

(9) In the case of willful infringement, whether it is appropriate to punish the defendant and if so, the amount of damages that would result in an appropriate punishment.

When calculating the total award, all of these factors should be weighed holistically, in the context of the entire case, to ensure that the overall award is appropriate. Below we explain various factors' relevance to the issues raised in the comments and roundtables.

...

1.概観

利害関係者が示した位置と提案を検討するにあたり、タスクフォースは、法定損害賠償は「侵害に対する補填を提供する」とともに「不正行為を阻止する」ことを目的としていることに留意する。我々は、権利の価値を下げ、適法な市場の発展を阻害するオンライン海賊行為を抑制するために意味のある法定損害賠償を含む、有効な権利行使ツールの必要性があることを認めている。同時に、しかしながら、著作権の軽視を助長したり、イノベーションへの投資を萎縮させたりする恐れがある過大で一貫性のない賠償を避けることは重要である。そして、評者の報告する濫用的な権利行使キャンペーンは許容されるべきでない。

したがって、タスクフォースは、示された幾つかの懸念に対処し、著作権者、利用者及び仲介者の必要性をより良くバランスさせるために3つの著作権法改正を勧告する。第一に、法定損害賠償の額を決定する際に裁判所と陪審員が考慮するべき要素のリストの著作権法への導入を勧告する。第二に、我々は、「罪のない侵害」の場合の法定損害賠償の減額に対する適格性の障害を除去するための著作権ノーティス規定の改正を勧告する。我々はまた、多数の著作物を提供するオンラインサービスの故意でない時の二次責任に関する場合に、厳密に著作物数を基礎とする以外に法定損害賠償を評価する裁量を裁判所に与えることも提案する。合わせ、これらの修正は、賠償を適正に補正する改善されたツールを裁判所に与えつつ補償と抑止の目標を維持するべきである。

2.勧告

a.法定損害賠償の評価において検討するべき要素の著作権法における特定

タスクフォースは、議会が、著作権法の第504条において法定損害賠償額を決定する際に検討されなくてはならない要素を特定する新たな項を立法することを勧告する。その目的は、全国での著作権侵害事件における予見可能性の向上を確保し、本手続きにおいて提起された他の幾つかの懸念に対処することにある。どのような要素が入れられるべきかを検討するにあたり、我々はは既存のモデル陪審説示並びに連邦の判例法を利用した。タスクフォースはモデル陪審説示の提案も検討したが、全ての裁判所を拘束するものとなることから要素一式の法定の方が好ましいと結論づけた。それぞれのケースの事実に基づく適切な賠償をもたらすよう適切に設計された統一的な要素一式の考慮を求めることは訴訟当事者と裁判所に非常に役立つことであろうと我々は考えている。

以下にあげる9つの要素は法定損害賠償の決定において最も良く適用されるだろうものである。個別のケースにおいて関係して来得る他の要素を考慮することを排除されないよう、これらは非排他的なものであるべきと我々は考えている。

タスクフォースは第504条第(c)項に以下のような新条項を入れることを提案する。

考慮要素 − 本項の賠償を課すにあたり、裁判所は賠償の適正な額を決定する際に以下の非排他的要素を検討しなければならない:

(1)原告の逸失収入及び損害を証明する困難性。

(2)被告の低減された費用、かすめ取った利益及び侵害から来る他の便益。

(3)将来の侵害の抑止の必要性。

(4)被告の経済的状況。

(5)侵害された著作物の価値又は性質。

(6)それが商業的な性質を持つかどうかも含め、侵害の状況、継続性及び範囲

(7)複数の著作物の侵害が絡む場合において、侵害された著作物の数及び課される賠償の数を考慮に入れ、損害賠償の総額が侵害によって引き起こされた害全体に釣り合っているか。
(8)原告が故意か罪のない侵害者であるかも含め、被告の心理状態。

(9)故意の侵害の場合に、被告を罰するのが適切であるかどうか、そうであるとして、適正な罰となる損害賠償額。

全賠償額を算定する際、賠償全体が適正なものとなることを確保するよう、これらの要素の全てが、総合的に比較衡量されるべきである。以下で我々は意見と討論で提起された問題と様々な要素との関係を説明する。

(略)

 なお、報告書の第71ページの注414に、個人が被告となり、大きく報道された訴訟における損害賠償額として、タンネンバウム事件の67万5千ドル(侵害されたのは30著作物で、1著作物あたり2万2千500)、3つのトーマス事件でそれぞれ22万2千ドル、192万ドル、150万ドル(1著作物あたりそれぞれ9千250ドル、8万ドル、6万2千五百ドル)といった巨額の数字もあげられており、第94ページの注559に、違法ファイル共有に対する法定損害賠償の額として1著作物あたり典型的には750ドルと6千500ドルの間になっているという数字もあげられている。またなお、同じ注414に、多くのケースにおいて訴訟が法定損害賠償額の決定まで行くことは少ないとも書かれ、和解金の範囲は大体3千ドルから5千ドル程度か2千ドルから1万ドル程度とも書かれているが、このような和解金ですらそれなりに大きな額だろう。

 このような報告書を読めば、アメリカの法定損害賠償制度が実際の損害としてはあり得ないほど巨額のデタラメな損害賠償請求を可能としており、著作権トロールによる訴訟の濫用を招き、社会的混乱の原因となっていることが分かるだろうし、インターネットサービスプロバイダーとの関係でイノベーションに対する萎縮効果が生じている可能性が指摘されていることも分かるだろう。アメリカにおいても、このような批判から、法定損害賠償制度について日本における填補賠償の考え方(損害賠償は実際の損害額を補填するものであるという考え方)に近づける形で見直すべきという提案が政府の省庁レベルで出されている状況にあるのである。(ただし、アメリカのことなので、日本と違って、政府省庁が報告書を作ったからと言ってそのまま法改正がされるようなことはほぼないが。)

 そして、TPP協定と法定損害賠償の関係についてだが、TPP協定の条文上、第18.74条の第6項から第8項により、「あらかじめ定められた賠償」すなわち法定損害賠償を選ぶ場合には、「将来の侵害を防ぐ目的も含め、侵害から発生した損害に対し権利者を十分に補償するであろう額として設定されなければならない」とされているのはその通りととは言え、この条文に解釈の幅があることも間違いない。(TPP協定の条文は第532回の私の部分訳か、TPP政府対策本部知財章全文仮訳(pdf)参照。)

 このTPP協定の規定上の「将来の侵害を防ぐ目的」も含む法定損害賠償が本当にアメリカ型の懲罰的かつ抑止的なレベルの法定損害賠償制度を必ず意味するとしたならば、日本の民法上の填補賠償の考え方に全く合わないのは確かである。(前回取り上げた2月10日の文化庁の法制・基本問題小委員会環太平洋パートナーシップ(TPP)協定に伴う制度整備の在り方等について(案)(pdf)でも引用されている萬世工業事件最高裁判決(pdf)がこのような懲罰的又は抑止的損害賠償の考え方を完全に否定している。)

 しかし、前回も書いた通り、今のところの文化庁の整理では、このTPP協定の法定損害賠償規定はそこまで強力な法定損害賠償制度の導入を求めているものではなく、上記の法制・基本問題小委員会の文化庁資料(pdf)においても、「(著作権法の)第114条第3項については、権利者が侵害行為により実際に生じた損害額や損害と侵害行為との因果関係の立証をせずに、侵害者に対して使用料相当額という一定の範囲の額の支払を求める制度であり、上記の『法定の損害賠償』の定義に該当するとして、我が国は同項によって『法定の損害賠償』を担保しているとする考え方も必ずしも排除されない」(第31ページ)、「TPP協定の求める趣旨をより適切に反映する観点から、第114条第3項等の現行規定に加えて、填補賠償原則等の枠内で、実際に生じる損害との関係について合理的に説明が可能な額を法定する規定を別途設けることが適当」(第32ページ)、「著作権等管理事業者の使用料規程により算出した額を同項の使用料相当額として請求することができる旨を法律上明記することが適当」とされている。このような条文の明確化が侵害の抑止に全く結びつかないということもなく、文化庁の今の整理は国際条約の解釈として完全に無理があるということもないだろう。

 2月19日の衆院予算委での、TPP協定で求められている法定損害賠償制度は日本の国内法の損害賠償の考え方(填補賠償の考え方)と合わないのではないかという、TPP協定の条文を普通に読むならば当然想定される民主党の福島伸享議員の質問に対する岩城法務大臣の回答は全く要領を得ず、一面正しいながら今の日本の国内法の整理では損害賠償は抑止効果を持たないとすら言ってしまっているのだが、どうして現職の法務大臣が政府の公開検討の内容すら十分に把握できていないのか正直かなり理解に苦しむ。

 最終的にアメリカから文句をつけられる可能性を排除できないとは言え、今ここでTPP関連法改正案をアメリカ型の強力な法定損害賠償制度に変更することは法案に極めて大きな問題を一つ追加することに他ならず、良いことは何もない。

 例えば、福島議員は質問の中で、通常の填補賠償の考え方に基づくと損害賠償が低くなる場合の例として同人誌が侵害された場合をあげているが、この法定損害賠償の議論と同人誌を守る守らないという議論はちょっと軸が違う話である。普通想定されるところの「同人誌」は一次創作(オリジナル)だけではなく二次創作(パロディ)も含むものだろうし、二次創作は親告罪であることがグレー化に役立っているものの著作権侵害側にも立っているので、本当に厳しい法定損害賠償を入れたらかえって二次創作にとって悪い結果を招くこともあり得るのである。(今更ながら、損害賠償が低くなる例としては、アメリカの報告書であげられているように、全く売れなかった低予算映画や小さな新聞記事などをあげた方が適切だったろう。)

 本当にアメリカ型の強力な法定損害賠償制度を導入したら、さらに違法ダウンロード・アップロード・ファイル共有やインターネットサービスにおける間接侵害との関係なども問題になり、日本でもアメリカ商務省の報告書で指摘されているような個人ユーザに対する巨額の損害賠償、著作権トロールによる訴訟の濫用、インターネットサービスプロバイダーの事業における萎縮効果などの問題が発生して来るに違いない。

 TPP協定そのものに私は反対だが、話を法定損害賠償に限るなら、今の文化庁の整理は悪くないと思っている。文化庁の法制・基本問題小委は次回2月24日に開かれる予定だが(文化庁のリリース参照)、国会での議論から変な方向にねじれて欲しくはない。法定損害賠償のようなかなりマニアックな問題がなかなか理解され難いのはやむを得ないこととは言え、前提と目的をはっきりさせた上で全体的なことを考えて政策判断はしてもらいたいと私は常に思っている。

 なお、単純化のために上では話を著作権法に限ったが、商標法についても同様に法定損害賠償の導入が議論されていることは要注意である(日経の記事参照)。特許庁の2月12日の産業構造審議会・知的財産分科会TPP協定を担保するための商標法改正について(pdf)によると、商標法における法定損害賠償について「商標の不正利用による損害の賠償を請求する場合において、当該登録商標の取得及び維持に通常要する費用に相当する額を損害額として請求できる規定を追加する」とされているところだが、TPP協定と特許法や商標法の改正検討案の関係についてはまた回を分けたいと思っている。

(2016年2月22日夜の追記:2カ所間違っていたリンクを修正し、合わせ少し文章を整えた。)

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2016年2月11日 (木)

第357回:文化審議会・著作権分科会・法制・基本問題小委員会の文化庁資料から見るTPP対応著作権法改正案の方向性

 昨日2月10日に文化庁で文化審議会・著作権分科会・法制・基本問題小委員会が開催され、TPP対応のための著作権法改正についての議論が行われた。(NHKの記事、Togetterの審議実況まとめ参照。)

 文化庁のHPにはまだ資料は掲載されていないが、茂木和洋氏がサイトに上げてくれている文化庁資料の環太平洋パートナーシップ(TPP)協定に伴う制度整備の在り方等について(案)(pdf)には、①著作物等の保護期問の延長、②著作権等侵害罪の一部非親告罪化、③著作物等の利用を管理する効果的な技術的手段(アクセスコントロール)に関する制度整備、④配信音源の二次使用に対する使用料請求権の付与、⑤「法定の損害賠償」又は「追加的損害賠償」に係る制度整備の5つの法改正事項の内容が書かれ、合わせて施行期日についても書かれており、法改正案の条文そのものではないが、これは今までの資料の中では一番詳細なものなので、ここでもその方向性を見ておきたいと思う。

(1)著作権の保護期間延長
 順に見て行くと、まず、第2節の「著作物等の保護期間の延長」では、第8ページに、

 著作物等の保護期間の延長に当たっては、延長の対象となる著作物を著作者の死後50年又は公表後50年の経過以前に著作権登録がされたものに限ることや、これから創作される著作物あるいは現在存命の著作者による著作物に限ること、また、少なくとも大正12年以前の著作物についてはすべてについて、昭和20年以前の著作物については登録の申請がなければ、当該著作物を公有とすることや図書館における著作物利用について保護期間の例外を設けることなど、著作物の保護期間を延長する際の制度設計について、本小委員会における意見聴取の場において関係団体より意見が出された。
 保護期間の延長を行うべき対象として、改正時に著作権が存続するにも関わらずそのうち延長の対象とするものを一定の年以降に創作されたものに限定することや著作者の生死により区別することはTPP協定上許容されないものと考えられる。また、延長の対象を著作権登録がなされている著作物に限定することは、TPP協定や我が国がすでに締結している文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約パリ改正条約(以下「ベルヌ条約」という。)との関係上困難であると考えられる。また特定の利用目的や利用主体を対象とした著作物等の利用円滑化方策については、保護期間における取扱いではなく、権利制限規定において検討されるべき事項であり、今後の必要に応じて検討を行うことにより対応すべきである。以上のことから、保護期間の延長に当たっては、これらの限定を付すことなく、保護期間内にある著作物について一律にその保護期間を延長することとすることが適当である。

と書かれている通り、特に限定もなく保護期間の70年への延長を是認している。

 ただし、第6〜8ページで、「視聴覚的実演についても音の実演と同様に延長の対象とし、保護期間を実演後70年とすることが適当」、「映画の著作物の保護期間をTPP協定上の義務を超えて延長することの要否及びその在り方については、国際的動向や他の著作物とのバランス、映画の著作物の利用状況等を踏まえて、改めて検討することが適当」、「放送事業者等の権利の保護期間を延長することの要否及びその在り方については、国際的動向や放送の利用状況等を踏まえて、改めて検討することが適当」とされているので、法改正案の方向性としては、ほぼTPP協定の要件通り、実演についても保護期間が延長されるが、映画と放送についてまでは延長されないという整理のようである。

(2)著作権侵害の非親告罪化
 次に、第3節の「著作権等侵害罪の一部非親告罪化」では、「著作権等侵害罪の非親告罪化については、一律に非親告罪化するのではなく、著作権等侵害罪のうちいわゆる海賊行為(著作物等の市場と競合する海賊版による侵害行為)のように、被害法益が大きく、また、著作権者等が提供又は提示する著作物等の市場と競合するため著作権者等の事後追認等により適法化されることが通常想定できない罪質が重い行為態様によるものについて、非親告罪とすることが適当」(第12ページ)とされ、さらに、第13〜14ページで、

 TPP協定においては、非親告罪の対象とすべき範囲が、「故意により商業的規模で行われる」侵害行為に限定されており、また、「商業的規模で行われる」行為には、少なくとも「商業上の利益又は金銭上の利得のために行われる行為」及び「商業上の利益又は金銭上の利得のために行われるものではない重大な行為であって、市場との関連において当該著作権者等の利益に実質的かつ有害な影響を及ぼすもの」が含まれるとされている。非親告罪とすべき範囲は、この趣旨を踏まえ、一定の目的をもって行われた悪質な著作権等侵害行為に限定することが適当である。
 具体的には、侵害者が、侵害行為の対価として利益を受ける目的を有している場合や、著作権者等の利益を害する目的を有している場合であることを要件とすることが考えられる。

 また、TPP協定において、非親告罪とする範囲を、「市場における著作物等の利用のための権利者の能力に影響を与える場合」に限定することができるとされている趣旨を踏まえ、非親告罪の対象とすべき著作権等侵害罪を、著作権者等の著作物等の提供又は提示に係る市場と競合する場合に限定することが適切である。換言すれば、市販されている漫画や小説を基に二次創作作品を作成する等、著作権者等の著作物等の提供又は提示に係る市場と競合しない行為態様については非親告罪の対象外とすることが適切である。
 具体的には、まず、侵害される著作物等は、現に市場において権利者により有償で提供又は提示されている著作物等であることを要件とすることが適当であると考えられる。この点に関しては、関係団体からの意見聴取においても、侵害の対象を既に市販している作品等に限定するべきであるとの意見が示されている。
 また、原作のまま、すなわち著作物等に改変を加えずに著作物等を利用する侵害行為であることを要件とすることが考えられる。加えて、著作権者等の得ることが見込まれる利益が不当に害されることとなる場合であることを要件とすることが考えられる。なお、権利者の利益が不当に害されることとなるか否かの判断は、著作物等の種類や用途、侵害行為の態様、正規品の提供又は提示の態様など様々な事情を総合的に勘案して、正規品の販売市場との競合性があるか否かによって判断することが適当であると考えられる。この点に関して、関係団体からの意見聴取においても、非親告罪化の対象を海賊行為に限るため「原作のまま」の用語を用いたり、原著作物の市場での収益性に重大な影響がある場合のみに対象を限定したりすべきであるとの意見が示されたところである。
 非親告罪の範囲については、上記の3つの要件を設けることにより、市販されている作品等に対する海賊行為を非親告罪の対象となる一方で、二次創作行為については、原作のまま著作物等を利用する行為に該当せず、また権利者の利益が不当に害されることとなる場合に該当しないため、非親告罪の対象とならないこととなる。

と書かれているので、かなりの限定が加えられそうな様子であるが、対象となる支分権の範囲は複製権侵害だけではなく、「譲渡権侵害や公衆送信権侵害についても非親告罪の対象とすることが適切」(第15ページ)とされ、権利者の範囲についても、「視聴覚的実演に係る実演家の権利、放送事業者及び有線放送事業者の権利を侵害する行為のうち、権利者へ及ぼす被害が大きく、悪質な権利侵害については、他の権利侵害の場合と同様に非親告罪化の対象とすることが適切」(第16ページ)とされている。

(3)アクセスコントロール回避規制
 第4節の「著作物等の利用を管理する効果的な技術的手段(アクセスコントロール)に関する制度整備」では、「アクセスコントロールにより確保される著作権者等の利益は基本的に著作権法による保護の対象とすべきものと評価し、当該手段の回避行為及び回避機器の流通等に一定の救済を認めることが適切」(第20ページ)とされ、さらに、第21ページで、

 一方、アクセスコントロールを回避する行為については、支分権該当行為ではないものの、多くの場合、回避行為そのものがアクセスコントロールにより著作権者等が確保しようとする対価の回収を困難とする点において著作権者等の保護されるべき経済的利益を直接害する行為であると評価できることに加えて、回避後に行われる視聴行為等は支分権該当行為ではない。このため、権利者の利益を保護するため、回避行為に対して民事上の権利行使が可能となるよう、これを保護の対象とすることが適当である。その方法としては、例えばみなし侵害(第113条)の形で保護することが考えられる。制度設計にあたっては、前述のとおり、国民の情報アクセスや表現の自由との均衡に配慮した制度とすることが適当である。

 次に、技術的保護手段の回避に使用される装置等を流通させる行為や公衆の求めに応じて反復継続してこれを回避する行為については、権利侵害につながる準備的行為として著作権者等の利益を害するものと評価できるため、罰則の対象となっているところである(第120条の2)。アクセスコントロールについても、回避行為を保護の対象とする場合は、同様の趣旨が妥当することとなるため、同様に刑事罰の対象とするのが適切である。

 なお、アクセスコントロールの回避行為に対して刑事罰を科すことについては、回避行為は支分権該当行為ではなく、それと同視できるほどの重大性はないと評価されること、当該回避行為の多くが個人で私的に行われるものであることが想定されるところ国民の情報アクセスや表現の自由との均衡を図る必要があること、及び回避装置の流通行為等を別途刑事罰の対象とすることで著作権者等の利益保護が図られることを踏まえ、慎重であるべきである。

と書かれている通り、著作権法においてアクセスコントロール回避規制を導入するべきとしている。

 ただし、例外について、「権利者に不当な不利益を及ぼさない形で行われる回避行為が広く例外規定の対象となり得るような制度設計とすることが適当」(第22ページ)と書かれ、アクセスコントロール規制に対して広めの例外を設けるべきともされている。

(4)配信音源の二次利用に対する使用料請求権の付与
 これは非常にマニアックな話なので、細かな所までは引かないが、第5節の「配信音源の二次使用に対する使用料請求権の付与」において、「配信音源の二次使用について、商業用レコードの場合(第95条第1項及び第97条第1項)と同様に使用料請求権を付与することが適当」(第25ページ)と書かれている。

(5)法定損害賠償
 第6節の「『法定の損害賠償』又は『追加的損害賠償』」では、「今回の制度整備においては、TPP協定の求める趣旨をより適切に反映する観点から、第114条第3項等の現行規定に加えて、填補賠償原則等の枠内で、実際に生じる損害との関係について合理的に説明が可能な額を法定する規定を別途設けることが適当」(第32ページ)とされ、さらに、第32〜33ページで、

 この点、第114条第3項は、「権利の行使につき受けるべき額に相当する額」(使用料相当額)を権利者が損害額として請求することができるとされている。この使用料相当額の算定方法は基本的には個々の事案に応じて異なり得るものであるが、侵害された権利が著作権等管理事業者によって管理されているものである場合は、当該著作権等管理事業者の定める使用料規程がその算定根拠として広く用いられており、基本的に当該規程により算出した額が同項の使用料相当額として認定されている。このような運用がなされている理由としては、著作権等管理事業者の使用料規程は、著作権等管理事業法に則って定められたものであり、実際に当該事業者に権利が委託されている著作物の利用について許諾する際に受けるべき額を示すものであること、及び使用料規程を定めるに当たっての一定の手続が同法上定められていること等が勘案されているためであると考えられる。
 しかし、その点につき同項においては明文上の定めはなく、使用料規程により算出した額を同項の使用料相当額として請求可能であるのか否かは必ずしも明確ではない。また、使用料規程において適用可能な規定が複数存在する場合、いずれの規定を用いて算出した額を同項の使用料相当額として請求できるのかについても明らかではない。

 このような状況に鑑み、また、使用料規程により算出された額は基本的に「権利の行使につき受けるべき額」に相当するものであること、すなわち、当該額は実際に生じる損害との関係について合理的に説明が可能な額であると評価できることを踏まえ、著作権等管理事業者の管理する権利について同項の規定による請求を行う場合においては、当該著作権等管理事業者の使用料規程により算出した額を同項の使用料相当額として請求することができる旨を法律上明記することが適当である。また、この場合において、使用料規程のうち適用可能な規定が複数存在する場合は、算出された使用料額のうち最大のものを請求することができることとすることが適当である。

と書かれており、アメリカなどがこのような法改正で納得するかは良く分からないものの、法定損害賠償については、実質的に現行の損害額推定規定の範囲内で対処するという方向性になっている。

(6)施行期日
 第7節の「施行期日について」では、「TPP協定の締結に向けた制度整備については、既に検討した国内的な制度整備の必要性に加え、これらの事項が国際的な制度標準となることも考慮すべきであること、また、本小委員会における意見聴取においても、利用者団体より、制度整備がTPP協定の発効に先立ち施行されることに強い懸念が表明されていること等を踏まえれば、これらの事項の制度整備を行う改正法の施行については、TPP協定の発効とあわせて実施することが適切である。」(第35ページ)と、さすがに海賊版対策条約(ACTA)の醜態を踏まえたのか、改正法の施行はTPP協定の発効と合わせることが書かれている。

(7)その他(柔軟性の高い権利制限規定)
 また、同資料の第36ページに、「TPP協定を契機としていわゆる『柔軟性の高い権利制限規定』の導入を求める声が関係団体から複数寄せられたところであるが、これに関連して、新産業創出環境の形成をはじめとするデジタル・ネットワークの発達に対応した権利制限規定の見直しについて、昨年本小委員会に設置した『新たな時代のニーズに対応した制度等の整備に関するワーキングチーム』において検討が進められている。同ワーキングチームにおいては、文化庁の行った著作物等の利用円滑化に関するニーズの募集に寄せられた広範なニーズを基に整理された課題の解決に向けた検討が始められているところであり、引き続き着実に検討を進めることが期待される。」と、柔軟性の高い権利制限規定についての記載もあるが、検討を進めているのが文化庁という時点で正直あまり期待は持てない。

(8)法改正事項の内容のまとめ
 資料に書かれた上の法改正事項の内容をまとめると次のようになるだろう。

保護期間延長
 著作物と実演について保護期間を70年に延長、ただし、映画と放送については延長せず

非親告罪化
 侵害者が、侵害行為の対価として利益を受ける又は著作権者等の利益を害する目的で、現に市場において権利者により有償で提供又は提示されている著作物等を、改変を加えず利用する侵害行為について、かつ、著作権者等の得ることが見込まれる利益が不当に害されることとなる場合について非親告罪化

アクセスコントロール回避規制
 著作権法第113条のみなし侵害規定の改正によりアクセスコントロール回避行為に対して民事上の権利行使を可能とし、合わせてアクセスコントロール回避に使用される装置等を流通させる行為や公衆の求めに応じて反復継続してこれを回避する行為に刑事罰を付加、ただし、アクセスコントロールの回避行為そのものは刑事罰の対象とせず、権利者に不当な不利益を及ぼさない形で行われる回避行為を例外とする

配信音源の二次利用に対する使用料請求権の付与
 商業用レコードの場合と同様に配信音源の二次使用について使用料請求権を付与

法定損害賠償
 使用料相当額を損害額と推定する著作権法第114条第3項において、著作権等管理事業者の使用料規程により算出した額を使用料相当額として請求できることを明記、また、適用可能な規定が複数存在する場合は算出された使用料額のうち最大のものを請求できることとする

 これらの内、多くの限定が入った非親告罪化と実質的に現行法の枠内で対処することとされている法定賠償については悪影響がかなり低減されると思われ、法改正の施行をTPP発効と合わせるとしたことで国内改正まで行ったにもかかわらずいまだに日本しか批准していないACTAの二の舞は最低限避けられると思われるものの、全ての法改正事項についてACTAの時同様結論ありきで、全てTPP批准のためという以外にほとんど法改正の理由はないと言って良く、このような方向性の法改正案は極めて大きな問題を含むものである。前に書いた通り、恐らくもはや政府に対して意見を提出する機会はなく、次の舞台は国会における審議になるのではないかと思っているが、このような大きな問題を含む著作権法改正案、TPP関連法改正案が国会を通らないことを、TPP協定の批准、発効がなされないことを私は心の底から願っている。

(2016年2月22日夜の追記:文化庁のHPに2月10日の法制・基本問題小委員会の環太平洋パートナーシップ(TPP)協定に伴う制度整備の在り方等について(案)(pdf)が掲載されているので、念のため、ここにリンクを張っておく。)

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2015年12月29日 (火)

第355回:2015年の終わりに

 国会は閉会中、役所も正月休みに入り、年内に何か政策的に新しいことが言い出されるということはもうないだろうと思うので、今年も最後にマイナーなことも含め国内の動向についてまとめて書いておきたいと思う。

 まず、知財本部では、知的財産推進計画2016策定に向けた検討が始まっており、検証・評価・企画委員会の下の知財紛争処理システム検討委員会と次世代知財システム検討委員会でそれぞれ知財訴訟制度と自動集積されるデータベースの取り扱いなどに関する検討が進められているが、政策的にはっきりとした方向性はまだ出されていない。第338回で書いた通り、最も気になっているのは、次世代知財システム検討委員会で来年2月に検討される予定の国境を越えるインターネット上の知財侵害への対応についてだが、委員会メンバーはそこまで偏った構成になっておらず、ここでそう変な結論を出して来ることは恐らくないのではないかと踏んでいるがどうだろうか。

 次に、特許庁では、産業構造審議会知的財産分科会の特許制度小委員会や審査基準ワーキンググループ(特許意匠商標)などが開催されており、経産省では、営業秘密の保護・活用に関する小委員会が開催されているが、いずれも地道な法改正のフォローアップや基準の改訂に関する話ばかりで、文化庁と違って、TPPに絡む特許法改正に関する審議会での検討はされていない。(両方ともマニアックなものなので内容の説明は省略するが、それぞれ1月9日と1月19日〆切で、特許庁から、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令案に対する意見募集産業構造審議会知的財産分科会意匠制度小委員会報告書「画像デザインの保護の在り方について」(案)に対する意見募集の2つのパブコメが出されているので、念のためここでもリンクを張っておく。)

 また、農林水産省は、その初回登録に関するリリースにある通り、地理的表示の登録を開始している。

 そして、文化庁では、分化審議会著作権分科会の下で、TPP対応に関することを検討していた法制・基本問題小委員会の他にも、著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会新たな時代のニーズに的確に対応した制度等の整備に関するワーキングチームなども開かれているが、例によって利害関係者の間の意見の隔たりは大きく、現時点でどうともなっていない。

 TPPに絡む法改正については、文化庁、知財本部の検討を経て、TPP総合対策本部の11月25日のTPP関連政策大綱(pdf)において、「Ⅱ TPP関連政策の目標/3 分野別施策展開/(3)知的財産」で、

 TPP協定の締結に必要な国内実施のため、国内法との整合性に留意しつつ、必要な措置を講ずる。また、TPPを契機として、輸出促進に向けた地理的表示(GI)等に関する措置を講ずる。

①特許・商標関係
○不合理な遅延に係る特許権期間延長、特許の新規性喪失例外期間の延長、商標不正使用に対する民法の原則を踏まえた法定の損害賠償制度等に関し、所要の措置を講ずる。
〇地域中小企業等の知財戦略の強化や、特許審査体制の整備・強化を図る。
〇TPP協定実施のための制度の整備状況等を踏まえつつ、知財紛争処理システムの一層の機能強化のための総合的な検討を進める。

②著作権関係
○著作物等の保護期間の延長、著作権等侵害罪の一部非親告罪化、著作権等侵害に対する民法の原則を踏まえた法定の損害賠償制度等に関し、所要の措置を講ずる。その際、権利の保護と利用とのバランスに留意し、特に、著作権等侵害罪の一部非親告罪化については、二次創作への委縮効果等を生じないよう、対象範囲を適切に限定する。
○著作物等の利用円滑化のため、権利者不明等の場合の裁定制度の改善を速やかに行うとともに、社会的諸課題への対応、柔軟性の高い権利制限規定、円滑なライセンシング体制の整備等に関する検討を進める。

と、「Ⅳ 政策大綱実現に向けた主要施策/3 分野別施策展開/(3)知的財産」で、

○地理的表示の相互保護制度整備による農林水産物の輸出促進等
(我が国の地理的表示(GI)の海外での保護を通じた農林水産物の輸出促進を図るための諸外国と相互にGIを保護できる制度整備)

①特許・商標関係
○特許・商標関係の制度整備
(不合理な遅延に係る特許権期間延長、特許の新規性喪失例外期間の延長、商標不正使用に対する民法の原則を踏まえた法定の損害賠償等に関する制度整備)

②著作権関係
○著作権関係の制度整備
(著作物等の保護期間の延長、著作権等侵害罪の一部非親告罪化、著作物等の利用を管理する効果的な技術的手段に関する制度整備、配信音源の二次使用に対する使用料請求権の付与、著作権等侵害に対する民法の原則を踏まえた法定の損害賠償等に関する制度整備)

とまとめられた所で、今後さらに各法改正の詳細が各省庁の審議会と国会で検討されるのではないかと思われる。今年は知財政策についてはTPPに終始したと言っても過言ではない年だったし、来年の通常国会でTPP関連の法改正の審議を行うとの報道もあり、来年もTPP問題が一番の焦点になりそうな様子であるが、そもそも私はTPPに絡む上記の法改正のほぼ全ての点について反対であり、速やかに脱退するべきと思っていることに変わりはなく、TPPについても拙速な検討による法改正がなされないことを、率先して法改正までしたが結局どこの国もついて来なかった海賊版対策条約(ACTA)の二の舞にならないことを強く願っている。

 なお、最後についでに書いておくと、官房長官が図書が有害かどうかで軽減税率の適用・消費税率が変わるような制度を検討すると言い出しているということもあり、どうやら有害図書問題でも来年はきな臭い年になりそうである。

 ここ何年もどうにも良い話がなく、今年も良い年をという気にはならないが、政官業に巣食う全ての利権屋に悪い年を。そして、この拙いブログを読んでくださっている方々に心からの感謝を。

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2015年11月15日 (日)

第353回:日米TPP並行交渉書簡とダウンロード違法化・犯罪化(刑事罰付加)問題

 11月4日と11日に文化庁で法制・基本問題小委員会が開催され(文化庁のHP1HP2参照)、TPP協定と国内知財法の関係に関する危うい検討が始まったところで非常に不安を感じているところだが、11日の資料を見て(internet watchの記事参照)、日米TPP並行交渉にかかる書簡の内容についても大いに危惧を覚えたので、ここでも補足を書いておきたいと思う。

 大体日米の並行交渉も本交渉と同じくらい秘密交渉で行われていたこと自体大問題である上、並行交渉書簡について日本政府のTPP対策本部のHPにもいまだに日本語としては概要(pdf)しか載っていないという状況に私は憤りを感じるばかりである。

 その概要(pdf)

(4)知的財産権
(ア)概要
 両国政府は、TPP協定の関連規定の円滑かつ効果的な実施のために必要な措置をとること、日本政府が著作権の私的使用のための複製の例外の適用範囲について、文化審議会著作権分科会に再び諮ること、及び、両国政府が著作権等の知的財産権の保護の強化に向け取組の継続の重要性を認めることとした。
(イ)主な内容
①両国政府は、TPP協定中の関連規定の円滑かつ効果的な実施のために必要な措置をとる。
②あらゆる違法なソースからのダウンロードに私的使用の例外が適用されないようにすべきかどうかについて、日本政府は文化審議会著作権分科会に再び諮る。
③両国政府は、アジア太平洋地域における著作権等の知的財産権の保護の強化に向け、取組の継続の重要性を認める

という記載は間違っている訳ではないものの、アメリカの通商代表部(USTR)のHPなどに載っている書簡等と比べると、恐らくわざとだろうが、少し情報が落ちているのである。

 例えば、USTRの非関税措置に関する日米並行交渉の概要(pdf)には、以下のように書かれている。

Intellectual Property Rights

Along with TPP commitments on copyright term of protection, technological protection measures and enforcement, Japan will examine the appropriate scope of the application of the private use exception with regard to works other than sound recordings and motion pictures from illegal sources, further improving Japan's intellectual property regime for U.S. companies and artists.

知的財産権

著作権保護期間、技術的保護手段及びエンフォースメントについてのコミットメントと並行して、日本は、違法ソースからの録音及び映像以外の著作物に関する私的利用の例外の適切な適用範囲を検討し、さらに日本の知的財産法制をアメリカの会社及びアーティストのために改善する。

 そして、実際の書簡(pdf)から知的財産権に関する部分を抜粋すると、以下のようになる。(なお、USTRの方が文書が分かれていて読みやすいので使ったが、英文の書簡自体は日本のTPP本部の交換文書(pdf)の最後の方にも載っている。)

INTELLECTUAL PROPERTY RIGHTS

Both Governments will take necessary measures for the smooth and effective implementation of the relevant provisions in Chapter 18 (Intellectual Property) of the TPP Agreement.

Private Copying Exception

On the scope of copyright protection, the Copyright Working Group under the Council for Cultural Affairs of Japan studied the scope of the private use exception and concluded in 2009 that it is appropriate that the private use exception should not be applied for downloading of sound recordings and motion pictures from illegal sources.

The Government of Japan will resume its consultation with the Copyright Working Group with respect to whether the private use exception should not be applied for downloading of other works from any illegal sources as soon as possible and no later than the time when the TPP Agreement takes effect with respect to both countries. In order to facilitate this process, the Government of the United States and the Government of Japan will exchange relevant information in this respect.

Both Governments also recognize that it is important for both countries to continue to work toward enhancing the protection of intellectual property rights in the Asia-Pacific region, including with respect to copyrighted works such as manga, animation, software and books.

知的財産権

両政府はTPP協定の第18章(知的財産)の関連規定のスムースで有効な実施のために必要な措置を取る。

私的複製の例外

著作権保護の範囲について、日本の文化庁の文化審議会の著作権ワーキンググループは私的利用の例外の範囲を研究し、私的利用の例外は違法ソースからの録音及び映像のダウンロードには適用されないのが適当であるという結論を2009年に出した。

日本政府は、私的利用の例外は違法ソースからのその他の著作物のダウンロードにも適用されないべきではないかということに関して著作権ワーキンググループへの諮問を、可能な限り早く、TPP協定が両国に対して発効するときより前に、再開する。このプロセスを促進するため、日米政府はこの点で関連する情報を交換する。

両政府は、漫画、アニメーション、ソフトウェア及び本のような著作物に関することを含め、アジア太平洋領域における知的財産権の保護の強化に向けた仕事を続けることが両国にとって重要であることも認める。

 以前から分かっていたことではあるが、これを読んでも、日本の私的複製の例外の範囲の縮小あるいはダウンロード違法化・犯罪化(刑事罰付加)の範囲の拡大に対するアメリカ政府の並々ならない関心は明らかであり、情報交換と称して今後アメリカ政府から露骨に圧力が掛かるのは目に見えている。

 敢えて言うならTPP協定本文に書かれるよりはマシだったかも知れないが、今までの文化庁の行状を見てもアメリカ政府からの圧力に対して何もせずに済ますということは非常に難しいだろうと思われ(アメリカが日本の著作権法改正事情に通じており、このような形で書簡をまとめていることからも、ダウンロード違法化当時の文化庁の凄まじい法改正理由「諸般の事情」(第39回参照)にはアメリカからの圧力が含まれていたのだろうと想像されるのである)、日本政府は政府として並行交渉でも愚劣極まるコミットメントをしたものであり、私的複製・ダウンロード違法化・犯罪化(刑事罰付加)問題についても今後無傷では済まないのではないかという強い危惧を私は抱いている。

 なお、アメリカが日本の事情に通じていることの証左として、書簡で日本政府の審議会の透明性に関して以下のような注文もつけているので、最後に参考のために一緒に訳出しておく。前に載せるのが概要からの抜粋、後に載せるのが書簡そのものからの抜粋である。日本政府が非常に不透明なやり方で審議会を運営し、自分たちの好きなように規制政策を決定していることはアメリカにもばれているのである。

Transparency

Government-established advisory councils play a critical role in the Japanese regulatory policymaking process. Those advisory councils will be subject to greater transparency requirements, which will make it easier for U.S. firms to participate in the regulatory process and compete on an equal footing with Japanese firms.

透明性

政府設置の審議会が、日本の規制政策決定プロセスにおいて決定的な役割を果たしている。これらの審議会により大きな透明性の要件が課され、このことは、日本の会社と対等の地位で規制プロセスに参加し、競争することをアメリカの会社に容易にするであろう。


TRANSPARENCY

1. Advisory Councils / Committees

The Government of Japan affirms the importance of transparency with respect to the formation and operation of advisory councils and similar groups ("advisory councils") that are established by the Government of Japan to advise or provide recommendations to the Government on the development of regulations and other measures which have an impact on trade and investment between Japan and the United States.

Accordingly, the Government of Japan will ensure that the relevant authorities:
(a) permit interested persons to attend, appear before, or file statements with advisory councils, subject to reasonable rules or regulations, including by providing meaningful opportunities for all interested parties, including foreign parties, to file statements on terms no less favorable than those accorded to its own parties in like circumstances;

(b) provide timely public notice of the formation of advisory councils;

(c) open meetings of advisory councils to the public;

(d) provide timely public notice of each advisory council meeting, such as by posting notifications of meetings on the website of the responsible ministry or agency, so as to ensure that interested persons are notified prior to the meeting date;

(e) make available for public inspection and copying, such as by posting on the website of the responsible ministry or agency, the minutes and other documents made available to the advisory councils;

(f) require detailed minutes of each meeting of the advisory councils to be kept, including a record of the persons present, a complete and accurate description of matters discussed and conclusions reached, and copies of all reports received, issued, or approved by the advisory councils; and

(g) provide interested persons with the opportunity to seek redress in the event of a failure of any of the above mentioned requirements through complaints filed with the secretariats of the advisory councils, which will report to the advisory councils a summary of any comments or complaints received;

with exceptions to these requirements only in the event the relevant authorities determine that a meeting or portion of a meeting needs to be closed to the public for national security or other reasonable grounds (such as protection of information that would otherwise be exempted from disclosure under relevant laws and regulations). In that event, the relevant authorities will be required to make public the reasons for this determination.

Further, the Government of Japan will ensure that any rules enacted for the formation and operation of the advisory councils are made publicly available and are consistent with all general transparency requirements for advisory councils.

透明性

1.審議会/委員会

日本政府は、日米間の貿易及び投資に影響する規制の展開及びその他の措置について日本政府に助言又は提言する、日本政府によって設置された審議会及び類似のグループ(「審議会」)の形成及び運用に関して透明性が重要であることを認める。

したがって、日本政府は関連当局が以下のようにすることを確保する:
(a)外国の関係者も含め、全ての利害関係者に、同様の状況において自国の関係者に与えるものに劣らない期間で意見を提出する意味のある機会を与えることを含め、合理的な規則又は規制に服する審議会に出席するか、参加するか、意見を提出することを利害関係者に認めること;

(b)審議会の形成について時宜を得た形で公的な通知を提供すること;

(c)審議会の会合を公衆に公開すること;

(d)利害を有する者が会合の日よりも前に知らされることが確保されるように、責任を有する省庁のウェブサイトに会合の通知を掲載すること等により、それぞれの審議会の会合について時宜を得た形で公的な通知を提供すること;

(e)責任を有する省庁のウェブサイトに掲載すること等により、議事録及び審議会で入手可能とされたその他の資料を公衆による精査及び複製のために入手可能とすること;

(f)出席者の記録、議論された事項の完全で正確な描写及び到達した結論並びに審議会が受け取ったか、出したか、承認した全ての報告書の複製を含め、審議会の各会合の詳細な議事録の保存を求めること;

(g)上記の要件のいずれかを欠くことがあった場合に、審議会事務局への苦情の提出を通じて、利害関係者に是正を求める機会を提供すること、審議会事務局は受け取ったあらゆるコメント又は苦情の概要を審議会に報告する;

これらの要件の例外は、会合又は会合の一部が国家安全保障又は(関連法規制によって別段開示を除外されている情報の保護のような)その他の合理的な理由によって公衆に閉ざされる必要があると関連当局が決定した場合のみに限られる。この場合、関連当局はこの決定の理由を公にすることを求められる。

さらに、日本政府は、審議会の形成及び運用のために制定されたあらゆる規則が公衆に入手可能とされ、これらが審議会についての一般的なあらゆる透明性の要件と合致することを確保する。

(2015年11月17日夜の追記:11月11日の文化庁の小委員会の配布資料が文化庁のHPにアップされたので、上でHP2としてリンクを追加した。なお、TPP関連の交換文書中には知財関連として戦時加算や地理的表示に関することも書かれているのだが、戦時加算に関しては単なる注意喚起に留まるもので意味はなく、地理的表示に関しては単に保護されるべき酒の名前がリスト化されているだけなので、ここでは省略する。)

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2015年11月 8日 (日)

第352回:TPP協定知財章最終条文(2015年11月版条文から見た今後の日本の法改正事項と条文の部分訳)

 11月5日にニュージーランド政府から公表されたTPP協定知財章の条文(pdf)に対応する日本政府の概要(pdf)法改正検討事項(pdf)の内容がお粗末極まるものなので、ここで、第347回第348回第349回第350回第351回のまとめとして、今まで書いて来たことと変わりはないが、今後の法改正検討事項一覧を以下の通り載せておく。また、ほぼテクニカルな相違に過ぎないが、リーク条文とは条文番号の違い等があるので、合わせて対応する正式公表版の条文の訳も最後にまとめて載せる。

TPP協定関連事項のうち法改正済みのもの

  • 音の商標の導入(第18.18条)
  • 地理的表示保護法の制定(第18.30条〜第18.36条)

今後の法改正検討事項(日本政府コミット済み)

  • 発明の新規性の喪失の例外期間(グレースピリオド)の延長(第18.38条)
  • 手続き遅延を理由とした特許の保護期間延長(第18.46条)
  • 配信音源の2次利用に対する使用料請求権の付与(第18.62条)
  • 著作権保護期間の延長(第18.63条)
  • アクセスコントロール回避行為そのものの犯罪化・刑事罰付加(第18.68条)
  • 著作権侵害における法定賠償制度の導入(第18.74条第6項)
  • 商標権侵害における法定賠償制度の導入(第18.74条第7項)
  • DRM回避規制における法定賠償制度の導入(第18.74条第17項(a)(ⅱ))
  • 著作権侵害の非親告罪化(「権利者が著作物を利用する能力に対する影響がある場合に限定」という条件つき)(第18.77条第6項(g))

条文上義務化はされていないが今後検討が始まる可能性が高い事項

  • 匂いの商標の導入(第18.18条)

 これらの内、著作権関係は文化庁で既に11月4日から検討が始まっているが、残りのグレースピリオドの延長と手続き遅延を理由とした特許の保護期間延長と匂いの商標の導入についてもじきに特許庁で検討が始まるのではないかと思われる。(条文上、それぞれ法定賠償については選択肢として追加の賠償もあり得るが、法定賠償の方向で検討が進む可能性が高いと見て一覧には法定賠償と書いた。また、グレースピリオドの6月から1年への延長は特許の極めてマニアックな話のため、今まで見逃していたが、確かに法改正が必要な点として最初のリーク文書の2013年8月時点から入っていたものである。)

 文化庁のHPに書かれている通り、TPP協定対応を検討する次回の著作権分科会の法制・基本問題小委員会は11月11日に開催されるが、TPP協定を取り巻く国際的な状況はまだまだ曲折が予想される中、文化庁がこれほど検討を急ぐ意味は私にはさっぱり分からない。今までさんざん書いて来ている通り、私は上記の法改正事項の全てに反対しているし、国内で拙速な検討がなされないことを心の底から願っている。

(なお、日本法との関係で問題となりそうな部分はほぼ全て訳出しているつもりだが、必要があればさらに翻訳を追加したいと思っている。またなお、第18.74条の第17項(b)は大きな意味のある条文ではなかったので今まで訳していなかったが、以前のリーク条文からあったものであり、グレースピリオドに関する第18.38条もそうだが、今回念のために初めて訳出したものとしては他に協定の適用に関する第18.10条もある。)

(2015年11月15日夜の追記:これも非常にマニアックな点なので見逃してたのだが、11月4日と11日の文化庁の小委員会の資料(文化庁のHP及びinternet watchの記事参照)を見ていて、配信音源の2次利用に対する使用料請求権の付与が抜けていることに気づいたので、上で項目を増やすとともに、下でも対応する第18.62条に対する翻訳を追加した。)

(以下、2015年11月時点のTPP協定知財章条文の部分訳と原文。内容は今までの翻訳のほぼ繰り返しなので今回は原文の方を後にした。)

第18章 知的財産

セクションA:一般規定

(略)

第18.10条:既存の事項及び以前の行為への本章の適用
第1項
 第18.64条(ベルヌ条約第18条の適用)及びTRIPS協定第14.6条も含め、本章で他のように規定されていない限りにおいて、本章は、加盟国における本協定の発行日において存在し、そこで保護が主張される加盟国の領土内においてその日に保護されていたか、本章の保護のためのクライテリアを満たすか、後に満たすことになった全ての事項に関して義務を発生させる。

第2項 第18.64条(ベルヌ条約第18条の適用)及びTRIPS協定第14.6条において規定されていない限りにおいて、加盟国は、その加盟国における本協定の発行日においてその領土内でパブリックドメインに落ちた事項に対する保護の回復を要求されない。

第3項 本章は、加盟国に対する本協定の発行日以前に生じた行為に関して義務を発生させない。

第18.11条:知的財産権の消尽
本協定のいずれも、その法制下でどのような条件において知的財産権の消尽が適用されるか又は適用されるかどうかを決定することを加盟国に妨げない。(原注:明確化のため、本条が、加盟国が加盟している国際協定における知的財産の消尽を対象とする規定に影響することはない。)

(略)

セクションB:協力

(略)

第18.15条:パブリックドメイン
第1項
 加盟国は、豊かでアクセス可能なパブリックドメインの重要性を認める。

第2項 加盟国は、パブリックドメインに落ちた対象を特定する助けとなる、登録された知的財産権の広くアクセス可能なデータベースのような情報マテリアルの重要性も認める。

第18.16条:伝統的知識の領域における協力
第1項
 加盟国は、伝統的知識が知的財産制度に関係しているとき、知的財産制度及び遺伝資源と結びついた伝統的知識の間の関連性を認める。

第2項 加盟国は、遺伝資源に結びついた伝統的知識及び遺伝資源に関連する事項の理解の強化のため、知的財産について責任を有する各官庁又はその他の関連機関を通じ、協力に努める。

第3項 加盟国は高品質な特許審査の追求に努める、これは以下のことを含み得る:
(a)先行技術の決定において、関連して一般的に利用可能な遺伝資源に結びついた伝統的知識に関係する資料情報が考慮に入れられ得ること;

(b)遺伝資源に結びついた伝統的知識に関係する先行技術の開示を含め、権限を有する審査当局に特許性に関わり得る先行技術の開示を書面で引用する第三者のための機会;

(c)適用可能で適切な場合に、遺伝資源と結びついた伝統的知識を含むデータベース又は電子図書館の利用;及び

(d)遺伝資源と結びついた伝統的知識に関係する特許出願の審査を行う特許審査官の訓練における協力。

(略)

セクションC:商標

第18.18条:商標として登録可能な標章のタイプ
どの加盟国も、登録の条件として、標章が視覚的に知覚可能であることを要求してはならず、加盟国は、音から構成される標章であることのみを理由として商標の登録を拒絶できない。追加的に、加盟国は匂いの商標を登録するため最大限の努力をしなければならない。加盟国は、商標について、適用可能なものとして、簡潔で正確な説明若しくは画像表示又はその両方を要求できる。

第18.19条:団体及び証明マーク
加盟国は、商標が団体及び証明マークを含むことを規定しなければならない。その様なマークが保護される限り、加盟国は、その国内法において証明マークを別カテゴリーのものとして扱うことを義務とされない。加盟国は、地理的表示となり得る標章を商標法制において保護可能とすることも規定しなければならない。(原注:第18.1条(定義)の定義に合致するあらゆる標章又は標章の組み合わせが地理的表示を保護する法的手段の1つ若しくは複数又はそのような手段の組み合わせの下で保護され得るものとしなければならない。)

(略)

セクションD:国名

(略)

セクションE:地理的表示

第18.30条:地理的表示の保護
加盟国は、地理的表示が商標若しくは独自法制又はその他の法的手段によって保護され得ることを認める。

(略)

セクションF:特許及び非開示テスト又はその他のデータ

サブセクションA:特許一般

第18.37条:特許の対象
第1項
 第3項及び第4項に従い、加盟国は、その発明が新規で、進歩性を含み、産業上の利用可能性がある限り、全技術分野において、物か方法かのあらゆる発明を特許され得るものとしなければならない。(原注:本セクションの目的のため、加盟国は「進歩性」及び「産業上利用可能」はそれぞれ「非自明」及び「有用」の同義語であるとみなし得る。進歩性(又は非自明性)に関する決定において、加盟国は、クレームされた発明が先行技術文献から見て当業者にとって自明かどうかを検討しなければならない。)

第2項 第3項及び第4項に従い、第1項に合致する形で、加盟国は、以下の発明の内少なくとも1つを特許の対象とすることを確認する:既知の物の新規利用、既知の物の新規利用方法又は既知の物を利用する新規プロセス。加盟国は、物の利用自体でないものにそのようなプロセスを限定できる。

第3項 加盟国は、そのような除外が、単にその利用がその国内法によって禁じられていることのみによってなされているのでない場合に限り、人、動物又は植物の生命又は健康を守るか自然又は環境に対する深刻な悪影響を避けることも含め、公序良俗を守るために必要なものの商業利用のその領土内における抑止を特許可能な発明から除外できる。加盟国は、以下を特許の対象から除外することもできる:
(a)人間又は動物の処置のための診断、治療及び手術方法;

(b)微生物以外の動物及び非生物的かつ微生物学的な複製プロセス以外の必然的に生物学的な動植物複製プロセス。

第4項 加盟国は微生物以外の植物も特許の対象から除外できる。しかしながら、第1項に合致する形で、第3項に従い、加盟国は、植物から派生する発明を少なくとも特許の対象とすることを確認する。

第18.38条:グレースピリオド
加盟国は、その公開が以下を満たす場合に、発明が新規かどうか又は進歩性を有するかどうかを決定するのに使われる公開に含まれる情報を少なくとも無視しなければならない:(原注:間違えて公開されたのでないか、その出願が発明者又はその権利承継者の同意なく発明者から直接的に又は間接的に情報を得た物によってなされたものでない限り、加盟国は、特許庁によって公衆に入手可能とされたか、公開された知的財産の出願又は登録に含まれる情報を無視することを要求されない。)(原注:明確化のため、加盟国は、本条の適用を発明者又は共同発明者によってなされたか、直接的に又は間接的に得たかによる開示に制限できる。明確化のため、加盟国は、本条の目的のため、特許出願人から直接的に又は間接的に得た情報は特許出願人によって許諾されたか、特許出願人に由来する公開に含まれる情報であり得ると規定できる。)
(a)その公開が特許州出願人か、特許出願人から直接的に又は間接的にその情報を得た者によってなされたものであり;かつ

(b)その加盟国の領土内における出願日より前の12月以内に生じた場合。

(略)

第18.46条:特許庁の遅延のための特許保護期間の調整
第1項
 加盟国は、不合理又は不必要な遅延を避けるべく効果的かつ時宜を得たやり方で特許の出願を処理するために最大の努力を払わなければならない。

第2項 加盟国は、その特許出願の審査の迅速化を求める特許出願のための手続きを規定しなければならない。

第3項 加盟国における特許発行において不合理な遅延がある場合、その加盟国は、そのための手段を規定し、特許権者の申請により、そのような遅延を補償するための特許の保護期間を調整しなければならない。(原注:付属18-D(訳注:ペルーに対する付属文書)が本項に適用される。)

第4項 本条の目的のため、不合理な遅延は少なくとも加盟国の領土内における提出の日から5年以上の特許の発行か、審査請求をされてから3年の内いずれか遅い方を含まなければならない。加盟国は、そのような遅延の決定において特許付与当局によるその特許出願の処理(原注:本項の目的のため、加盟国は、「処理」は初期の行政処理及び特許付与時の行政処理を意味すると解釈できる。)又は審査の間に生じたものでない期間;特許付与当局に直接的に起因しない期間(原注:加盟国は、「特許付与当局に直接的に起因しない期間」を特許付与当局の指揮又は管理外の遅延として扱うことができる。);並びに特許出願人に起因する期間を除外できる。(原注:第18.10条(既存の事項及び以前の行為に関する本章の適用)にかかわらず、本条は、本協定の加盟国における発効の日又は協定の署名後2年の日の内その加盟国にとっていずれか遅い日以降に提出された全ての特許出願に適用される。)

サブセクションB:農薬に関する措置

(略)

サブセクションC:医薬品に関する措置

第18.48条:不合理な短縮のための特許保護期間の調整
第1項
 加盟国は、不合理又は不必要な遅延を避けるべく効果的かつ時宜を得たやり方で販売認可の申請を処理するために最大の努力を払わなければならない。

第2項 特許の対象となっている医薬品(原注:加盟国は、本項の義務に医薬品に関してか、その代わりに医薬物質に関して合致することができる。)に関して、販売認可手続きの結果としての有効な特許期間の不合理な短縮を特許権者に補償する調整(原注:明確化のため、加盟国は、販売認可手続きの結果としての不合理な短縮の補償について追加の独自保護の期間を代わりに利用可能とすることもできる。この独自保護は第3項に定められたあらゆる条件及び制限に服しつつ、特許によって付与される権利を与えなければならない。)を利用可能としなければならない。(原注:第18.10条(既存の事項及び以前の行為への本章の適用)にかかわらず、本条はその加盟国における本項の発効日以降に申請された販売認可申請にのみ適用される。)(原注:付属18−Dが本号に適用される。)

第3項 明確化のため、本条の義務を実施するにあたり、その加盟国が本条に効力を与え続ける限り、加盟国は条件と制限を規定できる。

第4項 有効な特許保護期間の不合理な短縮を避ける目的で、加盟国は販売認可申請の審査を迅速化する手続きを採用又は維持できる。

(略)

第18.50条:非開示テスト又はその他のデータの保護(原注:付属18−B及び付属18−C(訳注:それぞれチリ及びマレーシアに対する付属文書)が本条に適用される。)
第1項(a)新しい医薬品のための販売認可の条件として、医薬品の安全性及び有効性に関する非開示テスト又はその他のデータの提出を要求する場合(原注:各加盟国は、本条及び第18.52条(バイオ医薬)の義務は(a)医薬品の安全性のみ、(b)医薬品の有効性のみ又は(c)その両方に関する非開示テスト又はその他のデータの提出を求める場合に適用されることを確認する。)、加盟国は、加盟国の領土内におけるその新しい医薬品の販売認可の日から少なくとも5年間(原注:明確化のため、加盟国は、第1項の保護期間を5年に、第18.52条第1項(a)(バイオ医薬)の保護期間を8年に制限できる。)は、そのような情報を以前に提出した者の同意なく、以下のものに基づいて第三者に同じ又は類似の(原注:明確化のため、本セクションの目的のため、その類似する医薬品の販売認可が、以前に認可された医薬品の安全性若しくは有効性に関する情報又は以前に認可された医薬品の以前の認可に基づく場合、医薬品は以前に認可された医薬品に「類似」する。)医薬品を販売することを認めてはならない:
(ⅰ)その情報;又は
(ⅱ)
そのような情報を提出した者への販売認可。

(b)新しい医薬品のための販売認可の条件として、他国における以前の販売認可の証拠の提出を許可する場合、加盟国は、加盟国の領土内における新しい医薬品の販売認可の日から少なくとも5年間は、安全性又は有効性に関するそのような情報を以前に提出した者の同意なく、その他国における以前の認可に関する証拠に基いて第三者に同じ又は類似の医薬品を販売することを認めてはならない。(原注:付属18−Dが本号に適用される。)

第2項 加盟国は以下のことをしなければならない:(原注:第1項に従い、8年以上の保護の期間を規定する加盟国が、第2項の適用を求められることはない。)
(a)第1項を、新しい適応症、新しい製剤又は新しい処方をカバーする、以前に認可された医薬品の販売認可の補強として要求され、提出された新しい臨床情報に関して少なくとも3年の期間準用すること;又はその代わりに、

(b)第1項を、その加盟国において以前に認可されていない化学成分を含む新しい医薬品に対して少なくとも5年の期間準用すること。(原注:第18.50条第2項(b)の目的のため、加盟国は、以前に認可されていない化学成分に関する安全性及び有効性に関係する非開示テスト又はその他のデータのみを保護することを選択できる。)

第3項 第1項及び第2項並びに第18.52条(バイオ医薬)にかかわらず、加盟国は以下のものに合致する形で公衆衛生を保護する措置を取ることができる:
(a)TRIPS協定及び公衆衛生に関する宣言(WT/MIN(01)/DEC2)(「宣言」);

(b)加盟国間で発行している宣言の実施についてのWTO協定に合致する形でWTO参加国によって認められたTRIPS協定の規定免除;及び

(c)加盟国に対して発効している宣言の実施についてのTRIPS協定の改正。

第18.51条:ある医薬品の販売に関する措置
第1項
 医薬品の販売認可の条件として、他国における以前の販売認可の証拠のような、以前に認可された製品のための安全性又は有効性に関する情報又は証拠に依拠することを、安全性又は有効性情報を元々提出した者以外の他の者に要求又は許可する場合には、加盟国は以下を規定しなければならない:
(a)認可医薬品又はその認可利用方法を対象とする特許の保護期間の間にそのような他の者が販売しようとするそのような医薬品の販売より前に特許権者(原注:明確化のため、本条の目的のため、加盟国は、「特許権者」が特許ライセンシー又は販売認可の許諾権者を含むことを規定できる。)に通知を送るか、特許権者に通知されることを許可する法制;

(b)侵害の疑いがある医薬品の販売(原注:加盟国は、「販売」を、第1項(b)の目的のため、加盟国は、加盟国によって運用され、付属26−A(医薬品及び医療機器についての透明性及び手続きの公平性)のスケジュールに記入された国内医療プログラムに従う医薬品の償還の目的のためのリスト化の時に始まると扱うことができる。)より前に、(c)の利用可能な救済措置を特許権者が求めるための適切な時間と機会;及び

(c)仮差止め又は同等の有効な仮の措置のような、認可医薬品又はその認可利用方法を対象とする特許の有効性又は侵害に関する争いの時宜を得た解決を可能とする司法又は行政等の手続き及び迅速な救済措置。

第2項 第1項の代替としては、加盟国は代わりに、特許権者又は販売認可申請者が販売認可当局に提出する特許に関する情報に基づき、又は販売認可当局及び特許庁間の直接協力に基づき、特許権者の同意又は承諾がない限り、その医薬品を対象とする特許に服する医薬品の販売を求める第三者への販売認可を排除する司法外の法制を採用又は維持しなければならない。

第18.52条:バイオ医薬(原注:付属18−B、付属18−C及び付属18−Dが本条に適用される。)
第1項 新しいバイオ医薬の保護に関して、加盟国は以下のいずれかをしなければならない:
(a)バイオ医薬であるか、バイオ医薬を含む新しい医薬品の加盟国における最初の販売認可に関して(原注:加盟国が、本項の保護を、(a)そのような医薬品の第二の若しくは後の販売認可、又は(b)以前に認可されたバイオ医薬であるか、以前に認可されたバイオ医薬を含む医薬にまで拡張をすることを求められることはない。)、(原注:医薬品の同じクラスにおけるその他の医薬品が本協定の発効前に第18.50条第1項(a)及び第18.50条第1項(b)(非開示データ又はその他のデータの保護)に規定された手続きの下で加盟国により認可された場合に、加盟国は、申請人は、第18.50条第1項(a)及び第18.50条第1項(b)に規定された手続きの下でのバイオ医薬である医薬の販売認可を本協定の発効後5年以内に求めることができると規定できる。)、加盟国におけるその医薬品の最初の販売認可から少なくとも8年の期間の第18.50条第1項(非開示データ又はその他のデータの保護)及び第18.50条第3項の準用実施により有効な市場保護を与えること;又はその代わりに、

(b)バイオ医薬であるか、バイオ医薬を含む新しい医薬品の加盟国における最初の販売認可に関して、市場において同等の結果を出すべく、以下により、有効な市場保護を与えること:
(ⅰ)加盟国におけるその医薬品の最初の販売認可から少なくとも5年の期間の第18.50条第1項(非開示データ又はその他のデータの保護)及び第18.50条第3項の準用実施により、
(ⅱ)その他の措置により、そして
(ⅲ)市場環境も有効な市場保護に寄与することを認めることにより。

第2項 本セクションの目的のため、加盟国は、本規定を、少なくとも、病気又は疾患の予防、治療又は治癒のために人に用いられる、バイオ技術プロセスを使って製造されたたんぱく質であるか、バイオ技術プロセスを使って製造されたたんぱく質を含む医薬品に適用しなければならない。

第3項 バイオ医薬であるか、バイオ医薬を含む新しい医薬品の国際及び国内規制は初期段階であり、市場環境は時を経るにつれて発展することを認識し、加盟国は、後のバイオ後続品の時宜を得た入手を容易にする観点、並びに、適用の範囲が、バイオ医薬であるか、バイオ医薬を含む新しい医薬品の追加のカテゴリーの認可に関する国際的発展と合致し続けることを確保する観点から、第1項に規定された排他期間及び第2項に規定された適用の範囲の見直しを10年後又はTPP委員会によって別に決められた通りに検討する。

(略)

セクションG:工業意匠

(略)

セクションH:著作権及び著作隣接権

(略)

第18.58条:複製権
加盟国は、著作者、実演家及び録音製作者(原注:「著作者、実演家及び録音製作者」という記載は、その利益承継者も指し示すものである。)に、電子形式も含むあらゆる形式におけるその著作物、実演及び録音の全ての複製を許諾又は禁止する権利を与えなければならない(原注:明確化のため、加盟国は、それがある物質的な形式に固定されない限り、著作物一般又は著作物、実演又は録音の特定のカテゴリーが著作権又は著作隣接権の保護を受けられないことを規定するのは各国法の事項であると理解する。)。

(略)

第18.62条:著作隣接権
第1項
 加盟国は、実演家及び録音製作者に関して本章で規定されている権利を以下の通り付与しなければならない:他の加盟国の国民(原注:本項における適格性のための条件を決定する目的のため、加盟国は、実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約条約(WPPT)の第3条の適格性の条件を満たす者を「国民」と扱うことができる。)である実演家及び録音製作者に;他の加盟国の領土内において最初に公開又は最初に固定(原注:本項の目的のため、固定はマスターテープ又はその同等物の最終化を意味する。)された実演及び録音について。(明確化のため、本項において加盟国の領土内で最初に公開又は最初に固定された実演又は録音に関して、加盟国は、公開の基準又は代わりに固定の基準若しくはその両方を適用することができる。明確化のため、第18.8条(内国民待遇)に合致する形で、加盟国は、他の加盟国で最初に公開又は最初に固定された実演又は録音にその自国の領土内で最初に公開又は最初に固定された実演又は録音に付与しするものに劣らない扱いを付与しなければならない。)その最初の公開から30日以内にその加盟国の領土内において公開されれば、実演又は録音はその加盟国の領土内において最初に公開されたと考えられなくてはならない。

第2項 加盟国は、以下を許諾又は禁止する排他権を実演家に与えなければならない:
(a)その実演が既に放送された実演でない限りにおいて、その固定されていない実演の放送及び公衆送信;及び

(b)その固定されていない実演の固定。

第3項(a)加盟国は、有線又は無線によるその実演又は録音の放送又は公衆送信、(原注:放送及び公衆送信に関して、加盟国は、第18.8条(内国民待遇)の下での加盟国の義務と合致するやり方でなされる限り、WPPTの第15条第1項及び第15項第4項(訳注:これらは報酬請求権に関する条項)を適用することで、義務を満たすことができる。)、(原注:明確化のため、本項の義務は、映画又は他の映像の著作物に組み入れられた音又は音の表現の有線又は無線による放送又は公衆送信を含まない。)、及び公衆の各人が個々に選んだ場所及び時にアクセスできるような形のその実演又は録音の公衆送信可能化を許諾又は禁止する排他権を実演家及び録音製作者に与えなければならない。

(b)(a)号及び第18.65条(制限及び例外)にかかわらず、(a)号に記載された権利のアナログ伝送及び非インタラクティブで無料の無線放送並びにこれらの活動に対するこの権利への例外又は制限は各国の国内法事項である。(原注:本号の目的のため、加盟国は、その再伝送が加盟国の政府の通信当局によって適法に認められている限り、非インタラクティブで無料の無線放送の再伝送について規定できる。この再伝送に従事する主体はその当局の関連規則、命令又は規制に合致する。そして、この再伝送はインターネット上での伝送及びアクセスによるものを含まない。明確化のため、本注は、本項を自身利用する加盟国の能力を制限しない。)

第18.63条:著作権及び著作隣接権の保護期間
各国は著作物、実演又は録音の保護期間を以下の通り算定するよう規定しなければならない:(原注:明確化のため、加盟国が、本条を実施するにあたり、第18.65条(制限及び例外)(訳注:3ステップテストをそのまま規定している条項)及びその加盟国の国際的義務に合致する形で、その保護期間中における著作物、実演又は録音の正当な利活用のための明確化を推進することを妨げられることはない。)
(a)自然人の生死に基づく場合、保護期間は著作者が生きている期間を下回らず、死後70年とし(原注:ある加盟国がその国民に著作者の人生プラス70年を超える保護期間を付与している場合、本条又は第18.8条(内国民待遇)のいずれによっても、本号の保護期間を超える期間に関してベルヌ条約の第7条第8項を他の加盟国の著作物に適用することを排除されることはないと加盟国は理解する。);そして、

(b)自然人の生死に基づかない場合、保護期間は、
(ⅰ)著作物、実演又は録音の許諾を受けた最初の公開(原注:明確化のため、(b)の目的のため、加盟国の国内法が、許諾を受けた最初の公開からより固定から保護期間を算定している場合、その加盟国は固定からの保護期間の算定を続けることができる。)から70年とするか、
(ⅱ)著作物、実演又は録音の創作から25年そのような許諾を受けた公開がないとき、著作物、実演又は録音の創作の暦年の終わりから70年を下回らないものとする(原注:明確化のため、加盟国が本条の下で求められる保護に対応する数値の保護期間を実施している限り、加盟国は、無名若しくは変名の著作物又は共同著作物の保護期間をベルヌ条約の第7条第3項又は第7条の2に沿う形で算定できる。)。

(略)

第18.68条:技術的保護手段(原注:本協定の何によっても、加盟国は、映画フィルムの合法的複製の市場分割をコントロールすることのみを目的とした技術的手段を有効化しない、他に法を侵害しない装置の輸入又は国内販売を制限することを要求されない。)
第1項 著作者、実演家及び録音製作者がその権利の行使に関連して利用し、その著作物、実演及び録音に関して不正利用を制限する有効な技術的手段の回避に対して適切な法的保護及び有効な法的救済措置を規定するため、加盟国は、以下を満たす者は責任を有し、第18.74条(民事及び行政手続き及び救済措置)で定められる救済措置の対象となることを規定しなければならない:
(a)保護を受ける著作物、実演、録音へのアクセスをコントロールするあらゆる有効な技術的手段の情を知っての、又はそうと知る合理的な理由があるときの(原注:本号の目的のため、加盟国は、侵害の疑いのある行為を取り巻く事実及び状況を考慮に入れ、そうと知る合理的な理由は合理的な証拠により示されると規定することができる。)権限のない回避;(原注:明確化のため、加盟国は、保護を受ける著作物、実演又は録音における著作権又は著作隣接権の排他的権利を保護するが、そのような著作物、実演又は録音へのアクセスをコントロールしない有効な技術的手段を回避する者に本号の民事又は刑事責任を課すことを求められない。)又は

(b)以下の装置、製品若しくはコンポーネントの製造、輸入、頒布(原注:加盟国は、製造、輸入及び頒布に関し、本号に記載された義務は、そのような活動が販売又は貸与のためになされる場合か、著作権者に不利な影響を及ぼす場合においてのみ適用されると規定できる。)、販売若しくは貸与のための公衆への提供の申し出、提供又は以下のサービスの公衆への提供の申し出、提供:
(ⅰ)何らかの有効な技術的手段の回避を目的としてその者(原注:この規定は、その者が第三者のサービスを通じて宣伝し、広告し、又は売り出す場合にも適用されると理解される。)によって宣伝されるか、広告されるか又は売り出されるか;
(ⅱ)何らかの有効な技術的手段の回避以外には制限された商業的に重要な目的又は利用しかもたないか;(原注:加盟国は、本号に記載された行動が何らかの有効な技術的手段の回避以外には制限された商業的に重要な目的又は利用をもたないとき、本項に合致し得る。)又は
(ⅲ)何らかの有効な技術的手段の回避を主たる目的として設計、生産又は実施されている物又はサービス。

加盟国は、ある者が故意に(原注:本条及び第18.69条(権利管理情報)の目的のため、故意性は知っているという要素を含むと理解される。)及び商業的利益又は経済的利益(原注:明確化のため、本条、第18.69条(権利管理情報)及び第18.77条第1項(刑事手続き及び罰)の目的のため、加盟国は、その国内法において「経済的利益」を「商業的目的」と取り扱うことができると理解される。)を目的として上のいずれかの活動に従事したとされた場合に適用される刑事手続き及び罰を規定しなければならない。(原注:明確化の目的のため、どの加盟国も、その加盟国によってか、その加盟国の認可又は同意とともに活動する第三者によってなされた行為について本条及び第18.69条(権利管理情報)の責任を課すことは求められない。 )

加盟国は、そのような刑事手続き及び罰が非営利の図書館、文書館、教育機関又は非商業放送主体に適用されないとすることができる。加盟国は、そのような行動が禁止されていることを知らず、上の活動が誠実に実行される限り、第18.74条(民事及び行政手続き及び救済措置)に定められた救済措置がこれらの主体に適用されないとすることも規定できる。

第2項 第1項を実施するにあたり、加盟国は、その製品が第1項の実施措置を他の形で侵害しない限り、家電、通信又はコンピュータ製品の設計又はそのコンポーネント及び部品の設計及び選択があらゆる特定の技術的手段への反応を与えることを求められることを義務とされない。

第3項 加盟国は、本項の実施措置の侵害は著作権および著作隣接権に関する加盟国の国内法上で発生する侵害とは独立であることを規定しなければならない。(原注:明確化のため、加盟国がそのような行為を他の方法により刑事罰化している場合、その加盟国は第1項(a)に定められた回避行為を独立の侵害として扱うことを要求されない。)

第4項 第1項を実施する措置に関して:
(a)加盟国は、その加盟国の国内法の下で受益者が著作権及び著作隣接権の制限及び例外を享受できるようにするために権利者によって適切かつ有効な措置が取られていたかどうかも含め、その手続において提供されたときの証拠を十分に考慮しつつ、その加盟国の国内法に沿い、その加盟国の法律、規則又は行政手続きを通じて決定される、非侵害利用に対しこれらの手段から実際の又はあり得る不利な影響がある場合の非侵害利用を可能とするために第1項(a)及び第1項(b)を実施する措置へのある例外及び制限を規定できる;(原注:明確化のため、この規定の何によっても、(ⅰ)加盟国間の効力を有する協定により以前から確立されている有効な技術的手段の法的保護;又は(ⅱ)そうでなくともそのような例外及び制限が本項に合致している限り、以前からその加盟国によって実施されている有効な技術的手段の法的保護への例外及び制限に関して法律、規則又は行政手続きを通じて新たな決定をすることを加盟国が求められることはない。)

(b)第1項(b)を実施する措置への例外及び制限は、目的とする受益者による本条の下で許され得る例外又は制限の正当な利用を可能とするためにのみ許されなければならず(原注:明確化のため、加盟国は、第1項(b)への例外が本号に規定されている第1項(b)への例外の範囲内である正当な利用を可能とすることに限られている限り、対応する第1項(b)への例外を規定することなく第1項(b)への例外を規定できる。)、そして、そのような目的とする受益者を超えて装置、製品、コンポーネント又はサービスを利用可能とすることを認めてはならない;(原注:第4項(b)のみの解釈の目的のため、第1項(a)は第5項で定義される通りの全ての有効な技術的手段に適用されると準用して読まれなければならない。)そして、

(c)第4項(a)及び第4項(b)の例外及び制限を規定するにあたり、加盟国は、本章で規定される通り、著作者、実演家又は録音製作者がその権利の行使と関連して用いられているか、その著作物、実演又は録音に関する不正行為を制限する有効な技術的手段の保護のための法制の適切性又はそのような手段の回避に対する法的救済措置の有効性を揺るがしてはならない。

第5項 有効な技術的手段とは、その通常の作用において保護を受ける著作物、実演又は録音へのアクセスをコントロールするか、著作物、実演又は録音に関する著作権又は著作隣接権を保護するあらゆる有効な(原注:明確化のため、通常の場合において偶然に回避され得る技術的手段は「有効な」技術的手段ではないと理解される。)技術、装置又はコンポーネントを意味する。

(略)

セクションI:エンフォースメント

(略)

第18.74条:民事及び行政的手続き及び救済措置
(略)
第6項 民事訴訟手続きにおいて、著作物、録音及び実演を保護する著作権又は著作隣接権の保護に関して、加盟国は以下の1つ以上を規定する制度を確立するか、維持しなければならない:
(a)権利者に選択可能なものとされるあらかじめ定められた賠償;又は

(b)追加の賠償(原注:明確化のため、追加の賠償とは警告的な又は懲罰的な賠償を含み得る。)。

第7項 民事訴訟手続きにおいて、商標権侵害に関して、加盟国は以下の一つ以上を規定する制度を確立するか、維持しなければならない:
(a)権利者に選択可能なものとされるあらかじめ定められた賠償;又は

(b)追加の賠償(原注:明確化のため、追加の賠償とは警告的な又は懲罰的な賠償を含み得る。)。

第8項 第6項及び第7項のあらかじめ定められた賠償は、将来の侵害を防ぐ目的も含め、侵害から発生した損害に対し権利者を十分に補償するであろう額として設定されなければならない。

第9項 第6項及び第7項の追加の賠償を認めるに当たっては、司法当局は、侵害行為の性質及び将来における類似の侵害を防ぐ必要性等のあらゆる関係事項を考慮に入れ、適切なものと考える、そのような追加の賠償を認める権限を有する。

(略)

第17項 第18.68条(技術的保護手段)及び第18.69条(権利管理情報)に書かれた行為に関する民事手続きにおいて:
(a)加盟国は、少なくともその司法当局が以下の権限を有することを規定しなければならない(原注:明確化のため、加盟国は、そのような救済措置がその著作権法において利用可能であれば、第18.68条(技術的保護手段)及び第18.69条(権利管理情報)に関する救済措置を別々の救済措置として整備することもできるが、そのようにすることを求められることはない。):
(ⅰ)禁止された活動に関与すると疑われる装置及び製品の没収又は他の保全を含め、仮の措置を課すこと;
(ⅱ)本条に沿ってその制度において規定される通り、著作権侵害に対して利用可能な型の損害賠償を命じること;(原注:加盟国の著作権制度があらかじめ定められた賠償と追加の賠償の両方を規定している場合に、加盟国は、賠償のこれらの形式の1つのみを規定することでこの項の要件に合致することができる。)
(ⅲ)第10項(訳注:敗訴者負担に関する条項)に規定される通り、裁判所の費用、料金又は出費を命じること;及び
(ⅳ)禁止された活動に関係するとされた装置及び製品の破壊を命じること。

(b)加盟国は、それがそのような行動が禁止されていることを知らないか、そう考える理由がないという証明の責任を負うならば、損害賠償が非営利の図書館、文書館、教育機関又は非商業放送主体に対して適用されないとすることができる。

(略)

第18.77条:刑事手続き及び罰
第1項
 加盟国は、少なくとも商業的な規模での故意の商標権侵害又は著作権侵害の場合に対して刑事手続き及び刑事罰を規定しなければならない。故意の著作権又は著作隣接権侵害に関して、「商業的規模の」とは少なくとも以下を含む:
(a)商業的利益か経済的利益のために行われた行為;そして

(b)商業的利益か経済的利益のために行われたのではないが、市場との関係で著作権者又は著作隣接権者の利益に対して実質的に不利な影響を有する重大な行為(原注:加盟国は、その国内法において、そのような重大な行為を、保護を受ける著作物、実演又は録音の不正利用として、刑事手続き及び罰の対象とすることにより、(b)に合致することができると理解される。)(原注:加盟国は、どのような行為が市場との関係で著作権者又は著作隣接権者の利益に対して実質的に不利な影響を有するかを決定するにあたり、侵害品の量及び価値を考慮に入れることができることを規定できる。)。

(略)

第6項 上記の第QQ.H.7条第1項から第5項に書かれた侵害に関して、加盟国は以下のことを規定しなければならない:
(略)
(g)権限を有する当局は、民間の関係者や権利者の形式的な告訴を必要とせず、自発的に法的行動を起こせる(原注:第1項(商業的規模)によって規定される著作権及び著作隣接権侵害に関して、加盟国は本項の適用を市場において権利者が著作物を利用する能力に対する影響がある場合に限定できる。)。

(略)

セクションJ:インターネットサービスプロバイダー(原注:付録18−Fが本セクションに適用される。)

第18.81条:定義
著作権という用語は著作隣接権を含む;そして

インターネットサービスプロバイダーは次のものを意味する:
(a)第18.82条第2項(a)(法的な救済措置及びセーフハーバー)の機能を引き受け、利用者によって特定される点の間又はその中での、利用者の選択によるマテリアルの伝達、ルーティング又はデジタルオンラインコミュニケーションの接続のためのオンラインサービスを提供する者;又は

(b)第18.82条第2項(c)若しくは(d)(法的な救済措置及びセーフハーバー)の機能を引き受け、オンラインサービスを提供する者。

明確化のため、「インターネットサービスプロバイダー」は、自動化された過程を通じて実行されるキャッシングを行う、上で列挙されたサービスの提供者を含む。

第18.82条:法的な救済措置及びセーフハーバー(原注:付録18−Eが第18.82条第3項及び第18.82条第4項(法的な救済措置及びセーフハーバー)に適用される。)
第1項 加盟国は、TRIPS協定の第41条と整合する形で、合法なオンラインサービスの継続的な開発を助成することの重要性を認め、オンライン環境における本章でカバーされる著作権侵害に対して権利者による有効な行動を可能とする行使手続きを規定する。すなわち、各加盟国は、法的救済措置をこのような侵害に対し権利者に利用可能とすることを確保しなければならず、仲介者として行動するインターネットサービスプロバイダーのための適切なセーフハーバーを確立又は維持しなければならない。この法的な救済措置及びセーフハーバーの枠組みは以下を含む:
(a)著作物の不正な蓄積及び伝達を抑止することにおいて著作権者と協力するか、その代わりに、著作物の不正な蓄積又は送信を抑止する行動を取るためのインターネットサービスプロバイダーのための法的なインセンティブ(原注:明確化のため、加盟国は、「法的なインセンティブ」は各加盟国の法制の下で異なる形式を取り得ることを認める。);及び

(b)それが管理も、開始も、指示もしていないが、それかその代理によって管理されるか、運用されるシステム又はネットワークを通じて発生する著作権侵害についての、インターネットサービスプロバイダーに対する金銭的救済措置を除外する効果を持つその国内法における制限。(原注:加盟国が、その国際的な法的義務と整合する形で、特定の行為が著作権侵害を構成しないと決定する限り、この行為との関係で制限を規定する義務はないと理解される。)

第2項 第1項(b)に書かれた制限は以下の機能をカバーするものでなければならない:
(a)その内容を改変せずに行われる(原注:このような改変は、パケットへの分割のような、技術的な過程の一部又は技術的な理由のみのために行われる改変を含まない。)、マテリアルの伝達、ルーティング又は接続の提供若しくはそのような技術的な過程におけるそのようなマテリアルの仲介及び一時的蓄積;

(b)自動化された過程を通じて実行されるキャッシング;

(c)サービスプロバイダーによって管理されるか運用されるシステム又はネットワークにおける利用者の指示に基づくマテリアルの蓄積(原注:明確化のため、加盟国は「蓄積」を「ホスティング」と解釈できる。);(原注:明確化のため、このマテリアルの蓄積はインターネットサービスプロバイダーのサーバーに蓄積される電子メール及びその添付並びにインターネットサービスプロバイダーのサーバーに存在するウェブページを含み得る。)及び

(d)ハイパーリンク及びディレクトリー等の情報ロケーションツールを使った利用者へのオンラインのロケーションの参照又はリンク。

第3項 侵害に対する有効な行為を促進するため、各加盟国は、第1項(b)に記載された制限のためにインターネットサービスプロバイダーが満たすべき条件を法律に規定するか、その代わりに、第1項(b)に記載された制限についてインターネットサービスプロバイダーが欠格とされる状況を法律に規定しなければならない:(原注:加盟国は、次の枠組みを維持することにより、第3項の義務に合致していると言える:(a)政府の関与とともに確立された、オンラインサービスプロバイダー及び権利者の両方の代表を含む、利害関係者の機関があること;(b)そのような利害関係者の機関が、そのように確かめられるべき通知を関係するインターネットサービスプロバイダーに回送する前に、通知が誤解又は誤った特定によるものでないことを確認することにより、著作権侵害の疑いの通知のそれぞれの有効性を遅滞なく確かめる、利害関係者の機関によって認証された主体のための、効果的で、有効で、速やかな手続きを開発し、維持すること;そして(c)そのようなインターネットサービスプロバイダーが、確かめられた通知を受け取ったことに基づき速やかに特定されたマテリアルを削除するか、そのアクセスを不可能化することが求められることを含め、第1項(b)に記載された制限を認められるためにインターネットサービスプロバイダーが守るべき適切なガイドラインがあり;そして、そのようなガイドラインに沿って誠実にそうした事によって責任を免除され;(d)インターネットサービスプロバイダーが実際の侵害を知るか、そこから侵害が明白である事実の状況に気づいた場合の責任を規定する適切な措置が取られていること。)(原注:第3及び4項の義務をなお実施しなければならない加盟国は、有効かつその加盟国の既存の憲法の規定と合致するやり方でそうすると加盟国は理解する。その目的のため、第3及び4項に規定された手続きの適時性を損なわないような政府のための適切な役割を確立することができる。)
(a)第2項(c)及び第2項(d)に記載された機能に関して、そのような条件は、権利者又はその代理として行動する権限を有する者から侵害の通知(原注:明確化のため、このような通知は、加盟国の国内法の下で規定され得ることとして、権利者を代理する者によって物理的に又は電子的に署名された書面の通知によるもので、(a)侵害されている疑いのある著作物、実演又は録音、侵害している疑いのあるマテリアル及び侵害の疑いのあるオンラインの場所をインターネットサービスプロバイダーが特定するのに合理的に十分であり;かつ(b)この通知を送付した者の権限に関する信頼性について十分な教示のある情報を含んでいなければならない。)を受け取ったこと等を通じ、侵害を実際に知ったか、侵害が明白である事実の状況に気づいたことに基づき、インターネットサービスプロバイダーが、そのネットワーク又はシステムに存在するマテリアルをマテリアルを迅速に削除するか、そのアクセスを不可能化するという要件を含まなければならず、

(b)(a)の下で、誠実にマテリアルを削除するか、アクセスを不可能化するオンラインサービスプロバイダーは、そのマテリアルを削除されるか、不可能化される者に前もってか即座に通知する合理的な段階を踏む限り、そうしたことに対する責任を免除される。(原注:第2項(b)の機能に関して、加盟国は、侵害マテリアルの削除又はアクセスの不可能化に関する第3項の要件を、キャッシュされたマテリアルが元のサイトにおいて削除されたか、そのアクセスが不可能化されたことに気づいたか、そう通知を受け取った状況に限定することができる。)

第4項 カウンターの通知についての制度が加盟国の国内法において規定されている場合、そして、第3項に従い、マテリアルが削除されるか、そのアクセスが不可能化された場合に、加盟国は、元の通知を出した者が合理的な期間内に司法救済を求めない限り、インターネットサービスプロバイダーにカウンターの通知の対象となったマテリアルを復元することを求めなければならない。

第5項 加盟国は、誤解に依拠してサービスプロバイダーがしたことの結果として利害関係者(原注:明確化のため、「利害関係者」は加盟国の国内法の下で法的な利害を有すると認められる者に制限され得ると理解される。)に損害をもたらした通知又はカウンターの通知において意図的に誤った具体的表示をした者に対する金銭的救済措置を規定しなければならない。

第6項 第1項の制限のための適格性は、そのサービスをインターネットサービスプロバイダーが監視すること又は積極的に侵害活動を示唆する事実を探すことを条件としないものであり得る。

第7項 加盟国は、司法的又は行政的のいずれかにより、その国の法制に沿い、デュープロセス及びプライバシーの原則と整合する形で、著作権侵害に対して法定に十分な主張をした著作権者に、そのような情報がその著作権を保護するか、行使する目的のために求められる場合に、インターネットサービスプロバイダーが所持する、侵害をしたとされる者を特定する情報をプロバイダーから迅速に入手することを可能とする手続きを規定しなければならない。

第8項 インターネットサービスプロバイダーが第1項(b)の制限を満たすべき条件を欠く事はそれ自体で責任をもたらすことはないと理解される。さらに、本条が、加盟国の法制における著作権に関する他の制限及び例外又はその他の抗弁の妨げとなることはない。

第9項 加盟国は、本条における義務を実施するにあたり、権利者及びインターネットサービスプロバイダーへの影響を考慮に入れることの重要性を認める。

(略)

付属18−E

セクションJ付属

第1項
 インターネットにおける著作権のエンフォースメントを容易にするため、そして、オンライン環境における不当な市場の分断を避けるため、本協定の発効の日に加盟国が次のことを続けていた場合には、第18.82条第3項及び第18.82条第4項(法的な救済措置及びセーフハーバー)は適用されない:
(a)どのような状況でインターネットサービスプロバイダーが第18.82条第1項(b)(法的な救済措置及びセーフハーバー)に記載された制限について欠格とされるのかをその国内法において定めること;

(b)次のようなあらかじめ定められた要素との関係で、ある者がインターネット又は他のデジタルネットワークを用いて、主として著作権侵害行為を可能とする目的でサービスを提供する場合の著作権侵害について二次責任を法定すること:
(ⅰ)著作権侵害行為を可能とするために使われ得るものとしてそのサービスを販売又は宣伝していたかどうか;
(ⅱ)その者が、そのサービスが数多くの著作権侵害行為に使われていた事を知っていたかどうか;
(ⅲ)そのサービスに著作権侵害行為を可能とする以外に大きな用途があったかどうか;
(ⅳ)その者の、そのサービスの提供の一部としての、著作権侵害行為を制限する能力、及びその者によってそうするためになされた行動;
(ⅴ)著作権侵害行為を可能としたことの結果としてその者が受け取った何らかの利益;及び
(ⅵ)それが著作権侵害行為を可能とするために使われなかったとした時のそのサービスの経済的持続可能性;

(c)第18.82条第2項(a)及び(c)(法的な救済措置及びセーフハーバー)に記載された機能を実行するインターネットサービスプロバイダーに、オンライン上のどこでマテリアルが入手可能とされているかを含む、侵害の疑いの通知を回送する制度に参加することを求めること、そして、そうすることを欠いた場合に、そのことのために彼らをあらかじめ定められた金銭的損害賠償の対象とすること;

(d)情報ロケーションツールの提供の一部として、侵害の疑いの通知を受け取ったことに基づき、その後元のマテリアルが通知に記載された電子的ロケーションから削除された場合に、情報ロケーションツールを提供するインターネットサービスプロバイダーに、彼らが作ったマテリアルの複製を特定期間内に削除し、公衆に通知することを促すこと;そして

(e)マテリアルを蓄積した者がそのマテリアルにおける著作権を侵害したという旨の裁判所の決定に気づいた事に基づいて、第18.82条第2項(c)(法的な救済措置及びセーフハーバー)に記載された機能を実行するインターネットサービスプロバイダーがそのマテリアルを削除するか、そのアクセスを不可能化することを促すこと。

第2項 本付属の第1項に従い、第18.82条第3項及び第18.82条第4項(法的な救済措置及びセーフハーバー)を適用されない加盟国に対しては、とりわけ本付属の第1項(b)に照らして、第18.82条第1項(a)の目的のため、法的インセンティブは、第18.82条第3項に定められている、第18.82条第1項(b)規定の制限のためにインターネットサービスプロバイダーが満たすべき条件を意味しない。

付属18−F

セクションJ付属

セクションJ(インターネットサービスプロバイダー)を実施する代替として、加盟国は、2003年6月6日にマイアミでなされた、アメリカ合衆国チリ間自由貿易協定(「米チリFTA」)の第17.11条第23項を実施でき、これは本協定に取り込まれ、本協定の一部をなす。(訳注:米チリFTAの第17.11条第23項の内容はTPP協定の内容とほぼ同様だが、その記載はやや単純なものとなっている。)

CHAPTER 18 INTELLECTUAL PROPERTY

Section A: General Provisions

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Article 18.10: Application of Chapter to Existing Subject Matter and Prior Acts
1. Unless otherwise provided in this Chapter, including in Article 18.64 (Application of Article 18 of the Berne Convention and Article 14.6 of the TRIPS Agreement), this Chapter gives rise to obligations in respect of all subject matter existing at the date of entry into force of this Agreement for a Party and that is protected on that date in the territory of a Party where protection is claimed, or that meets or comes subsequently to meet the criteria for protection under this Chapter.

2. Unless provided in Article 18.64 (Application of Article 18 of the Berne Convention and Article 14.6 of the TRIPS Agreement), a Party shall not be required to restore protection to subject matter that on the date of entry into force of this Agreement for that Party has fallen into the public domain in its territory.

3. This Chapter does not give rise to obligations in respect of acts that occurred before the date of entry into force of this Agreement for a Party.

Article 18.11: Exhaustion of Intellectual Property Rights
Nothing in this Agreement prevents a Party from determining whether or under what conditions the exhaustion of intellectual property rights applies under its legal system. (Footnote: For greater certainty, this Article is without prejudice to any provisions addressing the exhaustion of intellectual property rights in international agreements to which a Party is a party.)

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Section B: Cooperation

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Article 18.15: Public Domain
1. The Parties recognise the importance of a rich and accessible public domain.

2. The Parties also acknowledge the importance of informational materials, such as publicly accessible databases of registered intellectual property rights that assist in the identification of subject matter that has fallen into the public domain.

Article 18.16: Cooperation in the Area of Traditional Knowledge
1.
The Parties recognise the relevance of intellectual property systems and traditional knowledge associated with genetic resources to each other, when that traditional knowledge is related to those intellectual property systems.

2. The Parties shall endeavour to cooperate through their respective agencies responsible for intellectual property, or other relevant institutions, to enhance the understanding of issues connected with traditional knowledge associated with genetic resources, and genetic resources.

3. The Parties shall endeavour to pursue quality patent examination, which may include:
(a) that in determining prior art, relevant publicly available documented information related to traditional knowledge associated with genetic resources may be taken into account;

(b) an opportunity for third parties to cite, in writing, to the competent examining authority prior art disclosures that may have a bearing on patentability, including prior art disclosures related to traditional knowledge associated with genetic resources;

(c) if applicable and appropriate, the use of databases or digital libraries containing traditional knowledge associated with genetic resources; and

(d) cooperation in the training of patent examiners in the examination of patent applications related to traditional knowledge associated with genetic resources.

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Section C: Trademarks

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Article 18.18: Types of Signs Registrable as Trademarks
No Party shall require, as a condition of registration, that a sign be visually perceptible, nor shall a Party deny registration of a trademark only on the ground that the sign of which it is composed is a sound. Additionally, each Party shall make best efforts to register scent marks. A Party may require a concise and accurate description, or graphical representation, or both, as applicable, of the trademark.

Article 18.19: Collective and Certification Marks
Each Party shall provide that trademarks include collective marks and certification marks. A Party is not obligated to treat certification marks as a separate category in its law, provided that those marks are protected. Each Party shall also provide that signs that may serve as geographical indications are capable of protection under its trademark system. (Footnote: Consistent with the definition of a geographical indication in Article 18.1 (Definitions), any sign or combination of signs shall be eligible for protection under one or more of the legal means for protecting geographical indications, or a combination of such means.)

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Section D: Country Names

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Section E: Geographical Indications

Article 18.30: Recognition of Geographical Indications
The Parties recognise that geographical indications may be protected through a trademark or sui generis system or other legal means.

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Section F: Patents and Undisclosed Test or Other Data

Subsection A: General Patents

Article 18.37: Patentable Subject Matter
1.
Subject to paragraphs 3 and 4, each Party shall make patents available for any invention, whether a product or process, in all fields of technology, provided that the invention is new, involves an inventive step and is capable of industrial application. (Footnote: For the purposes of this Section, a Party may deem the terms "inventive step" and "capable of industrial application" to be synonymous with the terms "non-obvious" and "useful", respectively. In determinations regarding inventive step, or non-obviousness, each Party shall consider whether the claimed invention would have been obvious to a person skilled, or having ordinary skill in the art, having regard to the prior art.)

2. Subject to paragraphs 3 and 4 and consistent with paragraph 1, each Party confirms that patents are available for inventions claimed as at least one of the following: new uses of a known product, new methods of using a known product, or new processes of using a known product. A Party may limit those new processes to those that do not claim the use of the product as such.

3. A Party may exclude from patentability inventions, the prevention within their territory of the commercial exploitation of which is necessary to protect ordre public or morality, including to protect human, animal or plant life or health or to avoid serious prejudice to nature or the environment, provided that such exclusion is not made merely because the exploitation is prohibited by its law. A Party may also exclude from patentability:
(a) diagnostic, therapeutic and surgical methods for the treatment of humans or animals;

(b) animals other than microorganisms, and essentially biological processes for the production of plants or animals, other than non-biological and microbiological processes.

4. A Party may also exclude from patentability plants other than microorganisms. However, consistent with paragraph 1 and subject to paragraph 3, each Party confirms that patents are available at least for inventions that are derived from plants.

Article 18.38: Grace Period
Each Party shall disregard at least information contained in public disclosures used to determine if an invention is novel or has an inventive step, if the public disclosure: (Footnote: No Party shall be required to disregard information contained in applications for, or registrations of, intellectual property rights made available to the public or published by a patent office, unless erroneously published or unless the application was filed without the consent of the inventor or their successor in title, by a third person who obtained the information directly or indirectly from the inventor.), (Footnote: For greater certainty, a Party may limit the application of this Article to disclosures made by, or obtained directly or indirectly from, the inventor or joint inventor. For greater certainty, a Party may provide that, for the purposes of this Article, information obtained directly or indirectly from the patent applicant may be information contained in the public disclosure that was authorised by, or derived from, the patent applicant.)
(a) was made by the patent applicant or by a person that obtained the information directly or indirectly from the patent applicant; and

(b) occurred within 12 months prior to the date of the filing of the application in the territory of the Party.

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Article 18.46: Patent Term Adjustment for Patent Office Delays
1.
Each Party shall make best efforts to process patent applications in an efficient and timely manner, with a view to avoiding unreasonable or unnecessary delays.

2. A Party may provide procedures for a patent applicant to request to expedite the examination of its patent application.

3. If there are unreasonable delays in a Party's issuance of patents, that Party shall provide the means to, and at the request of the patent owner shall, adjust the term of the patent to compensate for such delays.(Footnote: Annex 18-D applies to this paragraph.)

4. For the purposes of this Article, an unreasonable delay at least shall include a delay in the issuance of a patent of more than five years from the date of filing of the application in the territory of the Party, or three years after a request for examination of the application has been made, whichever is later. A Party may exclude, from the determination of such delays, periods of time that do not occur during the processing (Footnote: For the purposes of this paragraph, a Party may interpret processing to mean initial administrative processing and administrative processing at the time of grant.) of, or the examination of, the patent application by the granting authority; periods of time that are not directly attributable (Footnote: A Party may treat "delays that are not directly attributable to the granting authority" as delays that are outside the direction or control of the granting authority.) to the granting authority; as well as periods of time that are attributable to the patent applicant.(Footnote: Notwithstanding Article 18.10 (Application of Chapter to Existing Subject Matter and Prior Acts), this Article shall apply to all patent applications filed after the date of entry into force of this Agreement for that Party, or the date two years after the signing of this Agreement, whichever is later for that Party.)

Subsection B: Measures Relating to Agricultural Chemical Products

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Subsection C: Measures Relating to Pharmaceutical Products

Article 18.48: Patent Term Adjustment for Unreasonable Curtailment
1.
Each Party shall make best efforts to process applications for marketing approval of pharmaceutical products in an efficient and timely manner, with a view to avoiding unreasonable or unnecessary delays.

2. With respect to a pharmaceutical product (Footnote: A Party may comply with the obligations of this paragraph with respect to a pharmaceutical product or, alternatively, with respect to a pharmaceutical substance.) that is subject to a patent, each Party shall make available an adjustment (Footnote: For greater certainty, a Party may alternatively make available a period of additional sui generis protection to compensate for unreasonable curtailment of the effective patent term as a result of the marketing approval process. The sui generis protection shall confer the rights conferred by the patent, subject to any conditions and limitations pursuant to paragraph 3.) of the patent term to compensate the patent owner for unreasonable curtailment of the effective patent term as a result of the marketing approval process. (Foonote: Notwithstanding Article 18.10 (Application of Chapter to Existing Subject Matter and Prior Acts), this Article shall apply to all applications for marketing approval filed after the date of entry into force of this Article for that Party.) (Foonote: Annex 18-D applies to this paragraph.)

3. For greater certainty, in implementing the obligations of this Article, each Party may provide for conditions and limitations, provided that the Party continues to give effect to this Article.

4. With the objective of avoiding unreasonable curtailment of the effective patent term, a Party may adopt or maintain procedures that expedite the processing of marketing approval applications.

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Article 18.50: Protection of Undisclosed Test or Other Data (Annex 18-B and Annex 18-C apply to paragraphs 1 and 2 of this Article.)
1. (a) If a Party requires, as a condition for granting marketing approval for a new pharmaceutical product, the submission of undisclosed test or other data concerning the safety and efficacy of the product, (Foonote: Each Party confirms that the obligations of this Article, and Article 18.52 (Biologics) apply to cases in which the Party requires the submission of undisclosed test or other data concerning: (a) only the safety of the product, (b) only the efficacy of the product or (c) both.) that Party shall not permit third persons, without the consent of the person that previously submitted such information, to market the same or a similar (Footnote: For greater certainty, for the purposes of this Section, a pharmaceutical product is "similar" to a previously approved pharmaceutical product if the marketing approval, or, in the alternative, the applicant's request for such approval, of that similar pharmaceutical product is based upon the undisclosed test or other data concerning the safety and efficacy of the previously approved pharmaceutical product, or the prior approval of that previously approved product.) product on the basis of:
(i) that information; or
(ii) the marketing approval granted to the person that submitted such information,
for at least five years (Footnote: or greater certainty, a Party may limit the period of protection under paragraph 1 to five years, and the period of protection under Article 18.52.1(a) (Biologics) to eight years.) from the date of marketing approval of the new pharmaceutical product in the territory of the Party.

(b) If a Party permits, as a condition of granting marketing approval for a new pharmaceutical product, the submission of evidence of prior marketing approval of the product in another territory, that Party shall not permit third persons, without the consent of a person that previously submitted such information concerning the safety and efficacy of the product, to market a same or a similar product based on evidence relating to prior marketing approval in the other territory for at least five years from the date of marketing approval of the new pharmaceutical product in the territory of that Party. (Foonote: Annex 18-D applies to this subparagraph.)

2. Each Party shall: (Foonote: A Party that provides a period of at least eight years of protection pursuant to paragraph 1 is not required to apply paragraph 2.)
(a) apply paragraph 1, mutatis mutandis, for a period of at least three years with respect to new clinical information submitted as required in support of a marketing approval of a previously approved pharmaceutical product covering a new indication, new formulation or new method of administration; or, alternatively,

(b) apply paragraph 1, mutatis mutandis, for a period of at least five years to new pharmaceutical products that contain a chemical entity that has not been previously approved in that Party. (Footnote: For the purposes of Article 18.50.2(b) (Protection of Undisclosed Test or Other Data), a Party may choose to protect only the undisclosed test or other data concerning the safety and efficacy relating to the chemical entity that has not been previously approved.)

3. Notwithstanding paragraphs 1 and 2 and Article 18.52 (Biologics), a Party may take measures to protect public health in accordance with:
(a) the Declaration on TRIPS and Public Health;

(b) any waiver of any provision of the TRIPS Agreement granted by WTO Members in accordance with the WTO Agreement to implement the Declaration on TRIPS and Public Health and that is in force between the Parties; or

(c) any amendment of the TRIPS Agreement to implement the Declaration on TRIPS and Public Health that enters into force with respect to the Parties.

Article 18.51: Measures Relating to the Marketing of Certain Pharmaceutical Products
1.
If a Party permits, as a condition of approving the marketing of a pharmaceutical product, persons, other than the person originally submitting the safety and efficacy information, to rely on evidence or information concerning the safety and efficacy of a product that was previously approved, such as evidence of prior marketing approval by the Party or in another territory, that Party shall provide:
(a) a system to provide notice to a patent holder (Footnote: For greater certainty, for the purposes of this Article, a Party may provide that a "patent holder" includes a patent licensee or the authorised holder of marketing approval.) or to allow for a patent holder to be notified prior to the marketing of such a pharmaceutical product, that such other person is seeking to market that product during the term of an applicable patent claiming the approved product or its approved method of use;

(b) adequate time and opportunity for such a patent holder to seek, prior to the marketing (Footnote: For the purposes of paragraph 1(b), a Party may treat "marketing" as commencing at the time of listing for purposes of the reimbursement of pharmaceutical products pursuant to a national healthcare programme operated by a Party and inscribed in the Schedule to Annex 26-A (Transparency and Procedural Fairness for Pharmaceutical Products and Medical Devices).) of an allegedly infringing product, available remedies in subparagraph (c); and

(c) procedures, such as judicial or administrative proceedings, and expeditious remedies, such as preliminary injunctions or equivalent effective provisional measures, for the timely resolution of disputes concerning the validity or infringement of an applicable patent claiming an approved pharmaceutical product or its approved method of use.

2. As an alternative to paragraph 1, a Party shall instead adopt or maintain a system other than judicial proceedings that precludes, based upon patent-related information submitted to the marketing approval authority by a patent holder or the applicant for marketing approval, or based on direct coordination between the marketing approval authority and the patent office, the issuance of marketing approval to any third person seeking to market a pharmaceutical product subject to a patent claiming that product, unless by consent or acquiescence of the patent holder.

Article 18.52: Biologics (Footnote: Annex 18-B, Annex 18-C and Annex 18-D apply to this Article.)
1. With regard to protecting new biologics, a Party shall either:
(a) with respect to the first marketing approval in a Party of a new pharmaceutical product that is or contains a biologic, (Footnote: Nothing requires a Party to extend the protection of this paragraph to: (a) any second or subsequent marketing approval of such a pharmaceutical product; or (b) a pharmaceutical product that is or contains a previously approved biologic.), (Footnote: Each Party may provide that an applicant may request approval of a pharmaceutical product that is or contains a biologic under the procedures set forth in Article 18.50.1(a) and Article 18.50.1(b) (Protection of Undisclosed Test or Other Data) within five years of the date of entry into force of this Agreement for that Party, provided that other pharmaceutical products in the same class of products have been approved by that Party under the procedures set forth in Article 18.50.1(a) and Article 18.50.1(b) before the date of entry into force of this Agreement for that Party.) provide effective market protection through the implementation of Article 18.50.1 (Protection of Undisclosed Test or Other Data) and Article 18.50.3, mutatis mutandis, for a period of at least eight years from the date of first marketing approval of that product in that Party; or, alternatively,

(b) with respect to the first marketing approval in a Party of a new pharmaceutical product that is or contains a biologic, provide effective market protection:
(i) through the implementation of Article 18.50.1 (Protection of Undisclosed Test or Other Data) and Article 18.50.3, mutatis mutandis, for a period of at least five years from the date of first marketing approval of that product in that Party,
(ii) through other measures, and
(iii) recognising that market circumstances also contribute to effective market protection
to deliver a comparable outcome in the market.

2. For the purposes of this Section, each Party shall apply this Article to, at a minimum, a product that is, or, alternatively, contains, a protein produced using biotechnology processes, for use in human beings for the prevention, treatment, or cure of a disease or condition.

3. Recognising that international and domestic regulation of new pharmaceutical products that are or contain a biologic is in a formative stage and that market circumstances may evolve over time, the Parties shall consult after 10 years from the date of entry into force of this Agreement, or as otherwise decided by the Commission, to review the period of exclusivity provided in paragraph 1 and the scope of application provided in paragraph 2, with a view to providing effective incentives for the development of new pharmaceutical products that are or contain a biologic, as well as with a view to facilitating the timely availability of follow-on biosimilars, and to ensuring that the scope of application remains consistent with international developments regarding approval of additional categories of new pharmaceutical products that are or contain a biologic.

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Section G: Industrial Designs

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Section H: Copyright and Related Rights

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Article 18.58: Right of Reproduction
Each Party shall provide (Footnote: For greater certainty, the Parties understand that it is a matter for each Party's law to prescribe that works, performances or phonograms in general or any specified categories of works, performances and phonograms are not protected by copyright or related rights unless the work, performance or phonogram has been fixed in some material form.) to authors, performers and producers of phonograms (Footnote: References to "authors, performers, and producers of phonograms" refer also to any of their successors in interest.) the exclusive right to authorise or prohibit all reproduction of their works, performances or phonograms in any manner or form, including in electronic form.

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Article 18.62: Related Rights
1.
Each Party shall accord the rights provided for in this Chapter with respect to performers and producers of phonograms: to the performers and producers of phonograms that are nationals (Footnote: For the purposes of determining criteria for eligibility under this Article, with respect to performers, a Party may treat "nationals" as those who would meet the criteria for eligibility under Article 3 of the WPPT.) of another Party; and to performances or phonograms first published or first fixed (Footnote: For the purposes of this Article, fixation means the finalisation of the master tape or its equivalent.) in the territory of another Party. (footnote: For greater certainty, in this paragraph with respect to performances or phonograms first published or first fixed in the territory of a Party, a Party may apply the criterion of publication, or alternatively, the criterion of fixation, or both. For greater certainty, consistent with Article 18.8 (National Treatment), each Party shall accord to performances and phonograms first published or first fixed in the territory of another Party treatment no less favourable than it accords to performances or phonograms first published or first fixed in its own territory.) A performance or phonogram shall be considered first published in the territory of a Party if it is published in the territory of that Party within 30 days of its original publication.

2. Each Party shall provide to performers the exclusive right to authorise or prohibit:
(a) the broadcasting and communication to the public of their unfixed performances, unless the performance is already a broadcast performance; and

(b) the fixation of their unfixed performances.

3. (a) Each Party shall provide to performers and producers of phonograms the exclusive right to authorise or prohibit the broadcasting or any communication to the public of their performances or phonograms, by wire or wireless means, (Footnote: With respect to broadcasting and communication to the public, a Party may satisfy the obligation by applying Article 15(1) and Article 15(4) of the WPPT and may also apply Article 15(2) of the WPPT, provided that it is done in a manner consistent with that Party's obligations under Article 18.8 (National Treatment).), (Footnote: For greater certainty, the obligation under this paragraph does not include broadcasting or communication to the public, by wire or wireless means, of the sounds or representations of sounds fixed in a phonogram that are incorporated in a cinematographic or other audiovisual work.) and the making available to the public of those performances or phonograms in such a way that members of the public may access them from a place and at a time individually chosen by them.

(b) Notwithstanding subparagraph (a) and Article 18.65 (Limitations and Exceptions), the application of the right referred to in subparagraph (a) to analog transmissions and non-interactive free over-the-air broadcasts, and exceptions or limitations to this right for those activities, is a matter of each Party’s law. (Footnote: For the purposes of this subparagraph the Parties understand that a Party may provide for the retransmission of non-interactive, free over-the-air broadcasts, provided that these retransmissions are lawfully permitted by that Party’s government communications authority; any entity engaging in these retransmissions complies with the relevant rules, orders or regulations of that authority; and these retransmissions do not include those delivered and accessed over the Internet. For greater certainty this footnote does not limit a Party’s ability to avail itself of this subparagraph.)

Article 18.63: Term of Protection for Copyright and Related Rights
Each Party shall provide that in cases in which the term of protection of a work, performance or phonogram is to be calculated: (Footnote: For greater certainty, in implementing this Article, nothing prevents a Party from promoting certainty for the legitimate use and exploitation of a work, performance or phonogram during its term of protection, consistent with Article 18.65 (Limitations and Exceptions) and that Party's international obligations.)
(a) on the basis of the life of a natural person, the term shall be not less than the life of the author and 70 years after the author's death; (Footnote: The Parties understand that if a Party provides its nationals a term of copyright protection that exceeds life of the author plus 70 years, nothing in this Article or Article 18.8 (National Treatment) shall preclude that Party from applying Article 7.8 of the Berne Convention with respect to the term in excess of the term provided in this subparagraph of protection for works of another Party.) and

(b) on a basis other than the life of a natural person, the term shall be:
(i) not less than 70 years from the end of the calendar year of the first authorised publication (Footnote: or greater certainty, for the purposes of subparagraph (b), if a Party's law provides for the calculation of term from fixation rather than from the first authorised publication, that Party may continue to calculate the term from fixation.) of the work, performance or phonogram; or
(ii) failing such authorised publication within 25 years from the creation of the work, performance or phonogram, not less than 70 years from the end of the calendar year of the creation of the work, performance or phonogram. (Footnote: For greater certainty, a Party may calculate a term of protection for an anonymous or pseudonymous work or a work of joint authorship in accordance with Article 7(3) or Article 7bis of the Berne Convention, provided that the Party implements the corresponding numerical term of protection required under this Article.)

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Article 18.68: Technological Protection Measures (TPMs) (Footnote: Nothing in this Agreement requires a Party to restrict the importation or domestic sale of a device that does not render effective a technological measure the only purpose of which is to control market segmentation for legitimate physical copies of a cinematographic film, and is not otherwise a violation of its law.)
1. In order to provide adequate legal protection and effective legal remedies against the circumvention of effective technological measures that authors, performers, and producers of phonograms use in connection with the exercise of their rights and that restrict unauthorised acts in respect of their works, performances, and phonograms, each Party shall provide that any person that:
(a) knowingly, or having reasonable grounds to know, (Footnote: For the purposes of this subparagraph, a Party may provide that reasonable grounds to know may be demonstrated through reasonable evidence, taking into account the facts and circumstances surrounding the alleged illegal act.) circumvents without authority any effective technological measure that controls access to a protected work, performance, or phonogram; (Footnote: For greater certainty, no Party is required to impose civil or criminal liability under this subparagraph for a person that circumvents any effective technological measure that protects any of the exclusive rights of copyright or related rights in a protected work, performance or phonogram, but does not control access to such that work, performance or phonogram.) or

(b) manufactures, imports, distributes, (Footnote: A Party may provide that the obligations described in this subparagraph with respect to manufacturing, importation, and distribution apply only in cases in which those activities are undertaken for sale or rental, or if those activities prejudice the interests of the right holder of the copyright or related right.) offers for sale or rental to the public, or otherwise provides devices, products, or components, or offers to the public or provides services, that:
(i) are promoted, advertised, or otherwise marketed by that person (Footnote: The Parties understand that this provision still applies in cases in which the person promotes, advertises, or markets through the services of a third person.) for the purpose of circumventing any effective technological measure;
(ii) have only a limited commercially significant purpose or use other than to circumvent any effective technological measure; (Footnote: A Party may comply with this paragraph if the conduct referred to in this subparagraph does not have a commercially significant purpose or use other than to circumvent an effective technological measure.) or
(iii) are primarily designed, produced, or performed for the purpose of circumventing any effective technological measure,
is liable and subject to the remedies provided for in Article 18.74 (Civil and Administrative Procedures and Remedies).

Each Party shall provide for criminal procedures and penalties to be applied if any person is found to have engaged wilfully (Footnote: For greater certainty, for purposes of this Article and Article 18.69 (RMI), wilfulness contains a knowledge element.) and for the purposes of commercialadvantage or financial gain (Footnote: For greater certainty, for purposes of this Article, Article 18.69 (RMI) and Article 18.77.1 (Criminal Procedures and Penalties), the Parties understand that a Party may treat "financial gain" as "commercial purposes".) in any of the above activities. (Footnote: For greater certainty, no Party is required to impose liability under this Article and Article 18.69 (RMI) for actions taken by that Party or a third person acting with the authorisation or consent of that Party.)

A Party may provide that the criminal procedures and penalties do not apply to a non- profit library, museum, archive, educational institution, or public non-commercial broadcasting entity. A Party may also provide that the remedies provided for in Article 18.74 (Civil and Administrative Procedures and Remedies) do not apply to any of the same entities provided that the above activities are carried out in good faith without knowledge that the conduct is prohibited.

2. In implementing paragraph 1, no Party shall be obligated to require that the design of, or the design and selection of parts and components for, a consumer electronics, telecommunications, or computing product provide for a response to any particular technological measure, provided that the product does not otherwise violate a measure implementing paragraph 1.

3. Each Party shall provide that a violation of a measure implementing this Article is independent of any infringement that might occur under the Party's law on copyright and related rights. (Footnote: For greater certainty, a Party is not required to treat the criminal act of circumvention set forth in paragraph 1(a) as an independent violation, where the Party criminally penalises such acts through other means.)

4. With regard to measures implementing paragraph 1:
(a) a Party may provide certain limitations and exceptions to the measures implementing paragraph 1(a) or paragraph 1(b) in order to enable non-infringing uses if there is an actual or likely adverse impact of those measures on those non-infringing uses, as determined through a legislative, regulatory, or administrative process in accordance with the Party's law, giving due consideration to evidence when presented in that process, including with respect to whether appropriate and effective measures have been taken by rights holders to enable the beneficiaries to enjoy the limitations and exceptions to copyright and related rights under that Party's law; (Footnote: For greater certainty, nothing in this provision requires a Party to make a new determination through the legislative, regulatory, or administrative process with respect to limitations and exceptions to the legal protection of effective technological measures: (i) previously established pursuant to trade agreements in force between two or more Parties; or (ii) previously implemented by the Parties, provided that such limitations and exceptions are otherwise consistent with this paragraph.)

(b) any limitations or exceptions to a measure that implements paragraph 1(b) shall be permitted only to enable the legitimate use of a limitation or exception permissible under this Article by its intended beneficiaries (Footnote: For greater certainty, a Party may provide an exception to subparagraph 1(b) without providing a corresponding exception to subparagraph 1(a), provided that the exception to paragraph 1(b) is limited to enabling a legitimate use that is within the scope of limitations or exceptions to 1(a) as provided under this subparagraph.) and does not authorise the making available of devices, products, components, or services beyond those intended beneficiaries; (Footnote: For the purposes of interpreting subparagraph 4(b) only, subparagraph 1(a) should be read to apply to all effective technological measures as defined in paragraph 5, mutatis mutandis.) and

(c) a Party shall not, by providing limitations and exceptions under paragraph 4(a) and paragraph 4(b), undermine the adequacy of that Party's legal system for the protection of effective technological measures, or the effectiveness of legal remedies against the circumvention of such measures, that authors, performers, or producers of phonograms use in connection with the exercise of their rights, or that restrict unauthorised acts in respect of their works, performances or phonograms, as provided for in this Chapter.

5. effective technological measure means any effective (Footnote: For greater certainty, a technological measure that can, in a usual case, be circumvented accidentally is not an "effective" technological measure.) technology, device, or component that, in the normal course of its operation, controls access to a protected work, performance, or phonogram, or protects copyright or related rights related to a work, performance or phonogram.

...

Section I: Enforcement

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Article 18.74: Civil and Administrative Procedures and Remedies
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6. In civil judicial proceedings with respect to the infringement of copyright or related rights protecting works, phonograms or performances, each Party shall establish or maintain a system that provides for one or more of the following:
(a) pre-established damages, which shall be available on the election of the right holder; or

(b) additional damages. (Footnote: For greater certainty, additional damages may include exemplary or punitive damages.)

7. In civil judicial proceedings with respect to trademark counterfeiting, each Party shall also establish or maintain a system that provides for one or more of the following:
(a) pre-established damages, which shall be available on the election of the right holder; or

(b) additional damages. (Footnote: For greater certainty, additional damages may include exemplary or punitive damages.)

8. Pre-established damages under paragraphs 6 and 7 shall be set out in an amount that would be sufficient to compensate the right holder for the harm caused by the infringement, and with a view to deterring future infringements.

9. In awarding additional damages under paragraphs 6 and 7, judicial authorities shall have the authority to award such additional damages as they consider appropriate, having regard to all relevant matters, including the nature of the infringing conduct and the need to deter similar infringements in the future.

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17. In civil judicial proceedings concerning the acts described in Article 18.68 (TPMs) and Article 18.69 (RMI):
(a) each Party shall provide that its judicial authorities have the authority at least to: (Footnote: For greater certainty, a Party may, but is not required to, put in place separate remedies in respect of Article 18.68 (TPMs) and Article 18.69 (RMI), if those remedies are available under its copyright law.)
(i) impose provisional measures, including seizure or other taking into custody of devices and products suspected of being involved in the prohibited activity;
(ii) order the type of damages available for copyright infringement, as provided under its law in accordance with this Article; (Footnote: If a Party's copyright law provides for both pre-established damages and additional damages, that Party may comply with the requirements of this subparagraph by providing for only one of these forms of damages.)
(iii) order court costs, fees or expenses as provided for under paragraph 10; and
(iv) order the destruction of devices and products found to be involved in the prohibited activity; and

(b) a Party may provide that damages shall not be available against a non-profit library, archive, educational institution, museum or public non- commercial broadcasting entity, if it sustains the burden of proving that it was not aware or had no reason to believe that its acts constituted a prohibited activity.

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Article 18.77: Criminal Procedures and Penalties
1.
Each Party shall provide for criminal procedures and penalties to be applied at
least in cases of wilful trademark counterfeiting or copyright or related rights piracy on a commercial scale. In respect of wilful copyright or related rights piracy, "on a commercial scale" includes at least:
(a) acts carried out for commercial advantage or financial gain; and

(b) significant acts, not carried out for commercial advantage or financial gain, that have a substantial prejudicial impact on the interests of the copyright or related rights holder in relation to the marketplace. (Footnote: The Parties understand that a Party may comply with subparagraph (b) by addressing such significant acts under its criminal procedures and penalties for non-authorised uses of protected works, performances and phonograms in its law.), (Footnote: A Party may provide that the volume and value of any infringing items may be taken into account in determining whether the act has a substantial prejudicial impact on the interests of the copyright or related rights holder in relation to the marketplace.)

...

6. With respect to the offences described in paragraphs 1 through 5, each Party shall provide the following:
...
(g) Its competent authorities may act upon their own initiative to initiate legal action without the need for a formal complaint by a third person or right holder. (Footnote: With regard to copyright and related rights piracy provided for under paragraph 1, a Party may limit application of this paragraph to the cases in which there is an impact on the right holder's ability to exploit the work, performance or phonogram in the market.)

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Section J: Internet Service Providers (Footnote: Annex 18-F applies to this Section.)

Article 18.81: Definitions
For the purposes of this Section:
the term copyright includes related rights;

and Internet Service Provider means:
(a) a provider of online services for the transmission, routing, or providing of connections for digital online communications, between or among points specified by a user, of material of the user's choosing, undertaking the function in Article 18.82.2(a) (Legal Remedies and Safe Harbours); or

(b) a provider of online services undertaking the functions in Article 18.82.2(c) or Article 18.82.2(d) (Legal Remedies and Safe Harbours).

For greater certainty, Internet Service Provider includes a provider of the services listed above that engages in caching carried out through an automated process.

Article 18.82: Legal Remedies and Safe Harbours (Footnote: Annex 18-E applies to Article 18.82.3 and Article 18.82.4 (Legal Remedies and Safe Harbours).)
1. The Parties recognise the importance of facilitating the continued development of legitimate online services operating as intermediaries and, in a manner consistent with Article 41 of the TRIPS Agreement, providing enforcement procedures that permit effective action by right holders against copyright infringement covered under this Chapter that occurs in the online environment. Accordingly, each Party shall ensure that legal remedies are available for right holders to address such copyright infringement and shall establish or maintain appropriate safe harbours in respect of online services that are Internet Service Providers. This framework of legal remedies and safe harbours shall include:
(a) legal incentives (Footnote: For greater certainty, the Parties understand that implementation of the obligations in paragraph 1(a) on "legal incentives" may take different forms.) for Internet Service Providers to cooperate with copyright owners to deter the unauthorised storage and transmission of copyrighted materials or, in the alternative, to take other action to deter the unauthorised storage and transmission of copyrighted materials; and

(b) limitations in its law that have the effect of precluding monetary relief against Internet Service Providers for copyright infringements that they do not control, initiate or direct, and that take place through systems or networks controlled or operated by them or on their behalf. (Footnote: The Parties understand that, to the extent that a Party determines, consistent with its international legal obligations, that a particular act does not constitute copyright infringement, there is no obligation to provide for a limitation in relation to that act.)

2. The limitations described in paragraph 1(b) shall include limitations in respect of the following functions:
(a) transmitting, routing or providing connections for material without modification of its content (Footnote: The Parties understand that such modification does not include a modification made as part of a technical process or for solely technical reasons such as division into packets.) or the intermediate and transient storage of that material done automatically in the course of such a technical process;

(b) caching carried out through an automated process;

(c) storage,(Footnote: For greater certainty, a Party may interpret "storage" as "hosting".) at the direction of a user, of material residing on a system or network controlled or operated by or for the Internet Service Provider; (Footnote: For greater certainty, the storage of material may include e-mails and their attachments stored in the Internet Service Provider's server and web pages residing on the Internet Service Provider's server.) and

(d) referring or linking users to an online location by using information location tools, including hyperlinks and directories.

3. To facilitate effective action to address infringement, each Party shall prescribe in its law conditions for Internet Service Providers to qualify for the limitations described in paragraph 1(b), or, alternatively, shall provide for circumstances under which Internet Service Providers do not qualify for the limitations described in paragraph 1(b): (Footnote: A Party may comply with the obligations in paragraph 3 by maintaining a framework in which: (a) there is a stakeholder organisation that includes representatives of both Internet Service Providers and right holders, established with government involvement; (b) that stakeholder organisation develops and maintains effective, efficient and timely procedures for entities certified by the stakeholder organisation to verify, without undue delay, the validity of each notice of alleged copyright infringement by confirming that the notice is not the result of mistake or misidentification, before forwarding the verified notice to the relevant Internet Service Provider; (c) there are appropriate guidelines for Internet Service Providers to follow in order to qualify for the limitation described in paragraph 1(b), including requiring that the Internet Service Provider promptly removes or disables access to the identified materials upon receipt of a verified notice; and be exempted from liability for having done so in good faith in accordance with those guidelines; and (d) there are appropriate measures that provide for liability in cases in which an Internet Service Provider has actual knowledge of the infringement or awareness of facts or circumstances from which the infringement is apparent.), (Footnote: The Parties understand that a Party that has yet to implement the obligations in paragraphs 3 and 4 will do so in a manner that is both effective and consistent with that Party's existing constitutional provisions. To that end, a Party may establish an appropriate role for the government that does not impair the timeliness of the process provided in paragraphs 3 and 4, and does not entail advance government review of each individual notice.)
(a) With respect to the functions referred to in paragraph 2(c) and paragraph 2(d), these conditions shall include a requirement for Internet Service Providers to expeditiously remove or disable access to material residing on their networks or systems upon obtaining actual knowledge of the copyright infringement or becoming aware of facts or circumstances from which the infringement is apparent, such as through receiving a notice (Footnote: For greater certainty, a notice of alleged infringement, as may be set out under a Party's law, must contain information that: (a) is reasonably sufficient to enable the Internet Service Provider to identify the work, performance or phonogram claimed to be infringed, the alleged infringing material, and the online location of the alleged infringement; and (b) has a sufficient indicia of reliability with respect to the authority of the person sending the notice.) of alleged infringement from the right holder or a person authorised to act on its behalf,

(b) An Internet Service Provider that removes or disables access to material in good faith under subparagraph (a) shall be exempt from any liability for having done so, provided that it takes reasonable steps in advance or promptly after to notify the person whose material is removed or disabled. (Footnote: With respect to the function in subparagraph 2(b), a Party may limit the requirements of paragraph 3 related to an Internet Service Provider removing or disabling access to material to circumstances in which the Internet Service Provider becomes aware or receives notification that the cached material has been removed or access to it has been disabled at the originating site.)

4. If a system for counter-notices is provided under a Party's law, and if material has been removed or access has been disabled in accordance with paragraph 3, that Party shall require that the Internet Service Provider restores the material subject to a counter-notice, unless the person giving the original notice seeks judicial relief within a reasonable period of time.

5. Each Party shall ensure that monetary remedies are available in its legal system against any person that makes a knowing material misrepresentation in a notice or counter-notice that causes injury to any interested party (Footnote: For greater certainty, the Parties understand that, "any interested party" may be limited to those with a legal interest recognised under that Party's law.) as a result of an Internet Service Provider relying on the misrepresentation.

6. Eligibility for the limitations in paragraph 1 shall not be conditioned on the Internet Service Provider monitoring its service or affirmatively seeking facts indicating infringing activity.

7. Each Party shall provide procedures, whether judicial or administrative, in accordance with that Party's legal system, and consistent with principles of due process and privacy, that enable a copyright owner that has made a legally sufficient claim of copyright infringement to obtain expeditiously from an Internet Service Provider information in the provider's possession identifying the alleged infringer, in cases in which that information is sought for the purpose of protecting or enforcing that copyright.

8. The Parties understand that the failure of an Internet Service Provider to qualify for the limitations in paragraph 1(b) does not itself result in liability. Further, this Article is without prejudice to the availability of other limitations and exceptions to copyright, or any other defences under a Party's legal system.

9. The Parties recognise the importance, in implementing their obligations under this Article, of taking into account the impacts on right holders and Internet Service Providers.

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Annex 18-E

Annex to Section J

1.
In order to facilitate the enforcement of copyright on the Internet and to avoid unwarranted market disruption in the online environment, Article 18.82.3 and Article 18.82.4(Legal Remedies and Safe Harbours) shall not apply to a Party provided that, as from the date of agreement in principle of this Agreement, it continues to:
(a) prescribe in its law circumstances under which Internet Service providers do not qualify for the limitations described in Article 18.82.1(b) (Legal Remedies and Safe Harbours);

(b) provide statutory secondary liability for copyright infringement in cases in which a person, by means of the Internet or another digital network, provides a service primarily for the purpose of enabling acts of copyright infringement, in relation to factors set out in its law, such as:
(i) whether the person marketed or promoted the service as one that could be used to enable acts of copyright infringement;
(ii) whether the person had knowledge that the service was used to enable a significant number of acts of copyright infringement;
(iii) whether the service has significant uses other than to enable acts of copyright infringement;
(iv) the person's ability, as part of providing the service, to limit acts of copyright infringement, and any action taken by the person to do so;
(v) any benefits the person received as a result of enabling the acts of copyright infringement; and
(vi) the economic viability of the service if it were not used to enable acts of copyright infringement;

(c) require Internet Service Providers carrying out the functions referred to in Article 18.82.2(a) and (c) (Legal Remedies and Safe Harbours) to participate in a system for forwarding notices of alleged infringement, including if material is made available online, and if the Internet Service Provider fails to do so, subjecting that provider to pre-established monetary damages for that failure;

(d) induce Internet Service Providers offering information location tools to remove within a specified period of time any reproductions of material that they make, and communicate to the public, as part of offering the information location tool upon receiving a notice of alleged infringement and after the original material has been removed from the electronic location set out in the notice; and

(e) induce Internet service providers carrying out the function referred to in Article 18.82.2(c) (Legal Remedies and Safe Harbours) to remove or disable access to material upon becoming aware of a decision of a court of that Party to the effect that the person storing the material infringes copyright in the material.

2.
For a Party to which Article 18.82.3 and Article 18.82.4 (Legal Remedies and Safe Harbours) do not apply pursuant to paragraph 1 of this Annex, and in light of, among other things, paragraph 1(b) of this Annex, for the purposes of Article 18.82.1(a), legal incentives shall not mean the conditions for Internet Service Providers to qualify for the limitations provided for in Article 18.82.1(b), as set out in Article 18.82.3.

Annex 18-F

Annex to Section J

As an alternative to implementing Section J (Internet Service Providers), a Party may implement Article 17.11.23 of the United States – Chile Free Trade Agreement, done at Miami, June 6, 2003, which is incorporated into and made part of this Annex.

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