カテゴリー「警察庁・内閣府・内閣官房(知財本部除く)パブコメ」の13件の記事

2009年11月20日 (金)

第199回:「新たな人身取引対策行動計画」(案)に対するパブコメ募集

 既に「チラシの裏(3周目)」で取り上げられているので、リンク先をご覧頂くだけでも十分だと思うが、内閣官房が「新たな人身取引対策行動計画」(案)(pdf)に対するパブコメの募集を12月3日〆切で開始した(内閣官房の募集ページ参照)。

 この計画案(pdf)のメインの対象が人身売買にあることには注意する必要があるが、児童ポルノに関しても、第3ページに、

③ 児童の性的搾取に対する厳正な対応
 児童に対する性的搾取について、「ゼロ・トレランス(不寛容)」の観点から対処することとし、児童買春・児童ポルノ事犯に対しては、国外犯規定の適用を含め、児童買春・児童ポルノ禁止法違反等により徹底的に取り締まるとともに、より一層厳正な科刑の実現に努める。また、児童ポルノ等の排除に向けた取組を強化する。

との記載がある。この記載は明確に今現在ざわついている法改正について言及しているものでは無いが、ここで、「ゼロ・トレランス(不寛容)」という語がここに入っていることは、決して看過できない

 「表現の自由で守られる法益と児童ポルノによって失われる人権というものとの比較をすれば、それは表現の自由という部分が大幅に削られて構わない」という鳩山邦夫元総務大臣の違憲発言が飛び出した今年2月18日の衆議院予算委員会(議事録参照)、自公議員による数々の違憲発言が飛び出した今年6月26日の衆議院法務委員会(議事録参照)で、感情論のみで根拠無く単純所持規制と創作物規制を求める公明党の丸谷佳織元議員がこの「ゼロトレランス」という語を連発していることからも分かるように、この「ゼロ・トレランス」という語は、規制派によって、極めて非人道的な単純所持規制・創作物規制を推進するための便利なキーワードとして使われているものである。

 このブログでは何度も繰り返していることだが、例えそれが児童ポルノに関するものであろうと、他のあらゆること以上に、情報そのものに対する「ゼロ・トレランス」はあり得ない。情報そのものに対して「ゼロ・トレランス」があり得るとすることは、新たに思想犯罪を作り、この現代に恐るべき思想警察・異端審問を復活させることを認めるに等しいのである。閲覧とダウンロードと取得と所持の区別がつかないインターネットにおいては、例え児童ポルノにせよ、情報の単純所持や取得の規制は有害無益かつ危険なもので、憲法及び条約に規定されている「知る権利」を不当に害するものとなる。「自身の性的好奇心を満たす目的で」、積極的あるいは意図的に画像を得た場合であるなどの限定を加えたところで、エスパーでもない限りこのような積極性を証明することも反証することもできないため、このような情報の単純所持や取得の規制の危険性は回避不能であり、思想の自由や罪刑法定主義にも反する。繰り返し取得としても、インターネットで2回以上他人にダウンロードを行わせること等は技術的に極めて容易であり、取得の回数の限定も、何ら危険性を減らすものではない。また、どんな法律に基づく権利であれ、権利の侵害は相対的にのみ定まるものであり、実際の被害者の存在しない創作物・表現に対する規制は何をもっても正当化され得ない。民主主義の最重要の基礎である表現の自由や言論の自由、思想の自由等々の最も基本的な精神的自由そのものを危うくすることは絶対に許されないことである。

(欧米を中心としたキリスト教国の単純所持規制を含む狂った児童ポルノ規制に関しては、つい最近も、ITmediaの記事ABC Newsの記事に書かれている通り、アメリカで、児童ポルノ所持罪で起訴され、有罪とされようとしていた男性が、逮捕・起訴から11ヶ月後にどうにか児童ポルノを勝手に保存するウィルスの存在を証明し、かろうじて人生の完全破壊を免れたという事件が起こっている。この場合はたまたまウィルスの存在が証明できたからまだ良かったようなものの、欧米主要キリスト教国の児童ポルノ裁判は既に推定有罪の魔女裁判と化しているので、一旦有罪とされたらどうしようもない。実際にこの手のウィルスによってなす術も無く有罪とされ、人生を完全に破壊された者も欧米ではかなりいるのではないかと私は思う。)

 以前の「人身取引対策行動計画」を見ると、この語は入っておらず、児童ポルノに関しては「児童買春・児童ポルノ事犯を始めとする少年の福祉を害する犯罪の実態について広報啓発を実施しているが、今後もあらゆる広報媒体を活用して、社会啓発・広報活動を積極的に推進する」、「児童買春・児童ポルノ事犯を始めとする少年の福祉を害する犯罪の被害に遭った児童の保護に関し、被害少年対策の必要性、被害少年に接する際の留意事項、少年の人権及び特性に配慮した活動について教育・訓練を実施する」等と書いてあるだけである。役所内の動きは分からないが、このように児童ポルノ規制に関する記載を変えたのは、まず間違いなく国民の生活と安全をないがしろにしても自己の権限強化のみが図れれば良いとばかりに、児童ポルノ規制の強化を強力に推進している警察庁だろう(警察庁と結びついている規制派の団体あるいは議員の働きかけもあったのではないか)。去年の、内閣官房の犯罪計画案(第133回参照)、あるいは、総務省の違法・有害報告書案(第135回参照)と比べれば、実にあっさりとした記載ではあるが、こうして役所の報告書にわざと分かりにくく規制強化のための文章を紛れ込ませ、短い期間でこっそりとパブコメを取って、それだけで民意を聞いたことにして、規制強化の既成事実化を図って行くのは、日本の役所のいつもの手口である。

 例によってこのパブコメも出す必要があると思っており、提出次第、私の書いたパブコメはここに載せたいとと思っている。

 相変わらず良いニュースは無いが、他の話も紹介しておくと、internet watchの記事時事通信の記事にもなっている、JASRACの創立70周年パーティでの鳩山首相の著作権保護期間の70年への延長に最大限努力するという発言が波紋を広げている。既に、「Copy & Copyright Diary」や「P2Pとかその辺のお話@はてな」などで取り上げられているので、リンク先をご覧頂ければ十分だと思うが、著作権保護期間延長問題に、今の時点で油を注ぐのは愚鈍の極みである。著作財産権の保護期間の延長は、単に国民から権利者団体への財の移動を意味するのであり、著作権の保護期間延長に、文化的にも経済的にも合理性が無いことはほぼ明らかになっているのである。(なお、この問題においては、既に永遠の保護となっている人格権の問題と混同している者、意図的に混同させようとしている者がいることに常に注意する必要がある。)

 また、第188回で紹介したように、ストライクポリシーに傾斜していたイギリス政府が、権利者団体の強力なロビー活動によるものだろう、やはり強硬な態度を崩さず、ネット切断型の違法コピー対策を可能とする法案の議論を開始しようとしているようである(BBCの記事Telegraphの記事Zeropaidの記事EFFの記事TorrentFreakの記事p2pnetの記事参照)。どうなるかは何とも言えないが、今のまま行けば、イギリスもフランス同様まず法案の審議から相当迷走することになるだろう。

 他に香港でも著作権法の改正提案がされているようである(crienglishの記事China Viewの記事7thspaceの記事THRの記事参照)。現時点の提案では、ストライクポリシーやダウンロード違法化は入っていないようであり、香港はイギリス系の私的複製のための権利制限の狭いフェアディーリング国だったと記憶しているが、特に補償金制度を導入すること無く、メディアシフトのために権利制限を広げようとしているらしいことは注目に値する。

 フィリピンで単純所持罪を含む改正児童ポルノ法がじきに発効する見込みとの毎日の記事もあったが、このようなニュースは、フィリピンがキリスト教国であるという背景を抜きにしては理解され得ない。フィリピンも、これで魔女狩り国の一員となり、児童ポルノに関しては欧米同様の混乱を極めると容易く予想される。

 イギリスや香港などの話も随時紹介したいと思っているが、次回は、提出パブコメエントリになるのではないかと思っている。

(2009年11月20日夜の追記:単純所持規制を含む児童ポルノ規制法改正案を自公が今臨時国会に提出した(毎日の記事参照)。保坂展人氏がそのブログ記事で書いているように、この臨時国会で急転直下成立へという可能性はかなり低いと見て良いのではないかとは思うが、「『社民党が表現の自由と立法事実の再確認』などと面倒なことを言わなければ、天ぷらをあげるように衆参両院を数日で弾丸通過したという危険性は相当にあった」とも書いている通り、この問題も引き続き危険な状態が続くことになるのだろう。この問題についてその危険性を党としてきちんと認識して頑張ってくれている社民党は本当に有り難い。

 保護期間延長問題に関しては、時事通信の記事にもあるように、鳩山首相に続き川端文科相も延長に意欲を見せるなど、この問題については閣僚レベルでの無理解が著しい。早速MIAUが反対声明internet watchの記事も参照)を出しているので、そのリンクも張っておく。この反対声明にもある通り、著作権の保護期間延長については、「『メリットは無いのに、デメリットは確実にある』というのが、国内外を問わず多くの専門家の意見が一致するところ」だろう。また、著作権保護期間の延長問題を考えるフォーラム(thinkC)も、同じく、反対意見を公表した。

 欧州におけるストライクポリシーとインターネットの自由を巡る動きについて、朝日が記事を載せているので合わせてリンクを張っておく。この記事では、イギリスのストライクポリシーに関しても少し触れられているが、TorrentFreakの記事にもあるように、イギリスでも、その自由民主党が、このストライクポリシーを酷評するなど、早速法案審議の荒れを予想させる展開となっている。)

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2009年7月25日 (土)

第186回:内閣官房・「デジタル技術・情報の利活用を阻むような規制・制度・慣行等の重点点検」に対する提出パブコメ(その2:一般的な情報・表現・ネット規制関連)

 前回に続き、内閣官房・IT戦略本部の「デジタル技術・情報の利活用を阻むような規制・制度・慣行等の重点点検」に関する意見募集(8月6日〆切。内閣官房のリリース、電子政府の該当ページ提出様式(doc)参照)に対する提出パブコメの残りを載せる。

 残りは一般的な情報・表現・ネット規制関連として、(10)出会い系サイト規制、(11)青少年ネット規制法・携帯フィルタリング義務化、(12)児童ポルノ規制・サイトブロッキング、(13)インターネット・ホットラインセンター・日本ガーディアン・エンジェルス・日本ユニセフ協会、(14)官製キャンペーン、(15)模倣品・海賊版拡散防止条約、(16)国際組織犯罪防止条約・サイバー犯罪条約及びこれらの締結に必要な法改正、(17)音の商標、(18)公職選挙法、(19)天下りに関するものである。

 前々回にも書いたが、常に規制強化ありきでパブコメを行う性根の腐った日本政府において、このように明確に規制緩和を目的とするパブコメの機会は極めて貴重であり、最近の不合理極まるネット・情報規制の動きに憤りを感じている全ての個人・企業・団体に、このパブコメに対して意見を出すことを重ねて私はお勧めしておきたいと思う。

(以下、提出パブコメ)

(10)出会い系サイト規制
(規制、制度、慣行、又は手続等の名称)
 出会い系サイト規制

(規制、制度、慣行、又は手続等の現状)
 出会い系サイト事業者の届け出の義務化を中心とする、出会い系サイト規制法の改正法が去年の5月に成立し、同年12月から施行されている。その後、今年の2月から3月にかけて、警視庁が、SNS各社に対して書き込みの削除要請をし、あるSNSでは内容の精査も無いまま「出会い」に関するコミュニティが全て削除されるということが起こった(http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0904/02/news085.html参照)。5月には、やはり警視庁が、SNSサイトの年齢確認の厳格化を要請しており(http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20392643,00.htm参照)、6月には、無届け出会い系サイト運営容疑で逮捕者まで出ている(http://journal.mycom.co.jp/news/2009/06/02/057/index.htmlhttp://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/090624/crm0906242247042-n1.htm参照)。

(具体的な問題点)
 警察による出会い系サイト規制法の拡大解釈・恣意的運用によって、ネット利用における不必要かつ有害な萎縮効果が既に発生していることは、一般サイト事業者に対する警察からの要請とその反応から明らかである。

 この出会い系サイト規制法の改正は、警察庁が、どんなコミュニケーションサイトでも人は出会えるという誰にでも分かることを無視し、届け出制の対象としては事実上定義不能の「出会い系サイト事業」を定義可能と偽り、改正法案の閣議決定を行い、法案を国会に提出したものであり、他の重要法案と審議が重なる中、国会においてもその本質的な問題が見過ごされて可決され、成立したものである。憲法上の罪刑法定主義や検閲の禁止にそもそも違反しており、表現の自由などの国民の最重要の基本的な権利をないがしろにするものである、今回の出会い系サイト規制法の改正については、今後、速やかに元に戻すことが検討されなくてはならない。

 既に逮捕者まで出ているが、出会い系サイト規制法は、その曖昧さから別件逮捕のツールとして使われ、この制度によって与えられる不透明な許認可権限による、警察の出会い系サイト業者との癒着・天下り利権の強化を招く恐れが極めて強い。出会い系サイト規制法を去年の改正前の状態に戻すまでにおいても、この危険な法律の運用については慎重の上に慎重が期されるべきである。

(問題により不利益を被っている、困っている人又は団体等)
 全インターネットユーザー

(改善提案)
 出会い系サイト規制法を改正前の状態に速やかに戻す。

(根拠法)
 出会い系サイト規制法(正式名称は「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」)

(関連府省等)
 警察庁

(11)青少年ネット規制法・携帯フィルタリング義務化
(規制、制度、慣行、又は手続等の名称)
 青少年ネット規制法・携帯フィルタリング義務化

(規制、制度、慣行、又は手続等の現状)
 携帯電話におけるフィルタリングの義務化を中心とする、青少年ネット規制法が、去年の6月に成立し、この4月から施行されている。

(具体的な問題点)
 そもそも、フィルタリングサービスであれ、ソフトであれ、今のところフィルタリングに関するコスト・メリット市場が失敗していない以上、かえって必要なことは、不当なフィルタリングソフト・サービスの抱き合わせ販売の禁止によって、消費者の選択肢を増やし、利便性と価格の競争を促すことだったはずである。一昨年から昨年にかけて大騒動になったあげく、ユーザーから、ネット企業から、メディア企業から、とにかくあらゆる者から大反対されながらも、有害無益なプライドと利権の確保を最優先する一部の議員と官庁の思惑のみから成立した今の青少年ネット規制法による規制は、一ユーザー・一消費者・一国民として全く評価できないものであり、速やかに法律の廃止が検討されるべきである。

 青少年ネット規制法の規制は、フィルタリングソフト・サービスの不当な抱き合わせ販売を助長することにつながる恐れが強く、廃止するまでにおいても、政府全体で、特に公正取引委員会において、規制を理由にした不当な便乗商法に対する監視を強めるべきであり、フィルタリングソフト・サービスの不当な抱き合わせ販売について独禁法の適用が検討されるべきである。

 フィルタリングについても、その過去の政策決定の迷走により、総務省は携帯電話サイト事業者に無意味かつ多大なダメージを与えた。この問題については、フィルタリングの存在を知り、かつ、フィルタリングの導入が必要だと思っていて、なお未成年にフィルタリングをかけられないとする親に対して、その理由を聞くか、あるいはフィルタリングをかけている親に対して、そのフィルタリングの問題を聞くかして、きちんと本当の問題点を示してから検討するべきである。

 フィルタリングで無意味に利権を作ろうとしている総務省と携帯電話事業者他の今の検討については、完全に白紙に戻されるべきである。携帯フィルタリングについて、ブラックリスト方式ならば、まずブラックリストに載せる基準の明確化から行うべきなので、不当なブラックリスト指定については、携帯電話事業者がそれぞれの基準に照らし合わせて無料で解除する簡便な手続きを備えていればそれで良く、健全サイト認定第3者機関など必要ないはずである。ブラックリスト指定を不当に乱発し、認定機関で不当に審査料をせしめ取り、さらにこの不当にせしめた審査料と、正当な理由もなく流し込まれる税金で天下り役人を飼うのだとしたら、これは官民談合による大不正行為以外の何物でもない。このようなブラックリスト商法の正当化は許されない。

(問題により不利益を被っている、困っている人又は団体等)
 全インターネットユーザー、全携帯ユーザー

(改善提案)
 青少年ネット規制法を廃止する。

 廃止するまでにおいても、規制を理由にしたフィルタリングに関する不当な便乗商法に対する監視を政府において強め、フィルタリングソフト・サービスの不当な抱き合わせ販売について独禁法の適用を検討する。

 合わせ、フィルタリングで無意味に利権を作ろうとしている総務省と携帯電話事業者他の今の検討については、完全に白紙に戻す。

(根拠法)
 青少年ネット規制法(正式名称は、「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」)

(関連府省等)
 総務省

(12)児童ポルノ規制・サイトブロッキング
(規制、制度、慣行、又は手続等の名称)
 児童ポルノ規制・サイトブロッキング

(規制、制度、慣行、又は手続等の現状)
 現行の児童ポルノ規制法により。「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの 」という非常に曖昧な第2条第3項第3号の規定によって定義されるものも含め、児童ポルノの提供及び提供目的の所持まで規制されている。最近も、この4月に、アフィリエイト広告代理店社長が児童ポルノ規制法違反幇助容疑で送検され(http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2009/04/01/22998.html参照)、5月に、児童ポルノサイトへのリンクを張ることについて、児童ポルノ公然陳列幇助容疑で2名が送検され(http://www.j-cast.com/2007/05/09007471.htmlhttp://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2007/05/09/15641.html参照)、6月には、女子高生の水着を撮影したDVDを児童ポルノとして製造容疑でビデオ販売会社社長他が逮捕されるなど(http://www.47news.jp/CN/200907/CN2009071901000294.html参照。なお、水着を撮影したDVDを児童ポルノとするケースは去年もあり、今も裁判が続いているようである)、警察による法律の拡大解釈・恣意的運用は止まるところを知らず、現行法の運用においてすら、インターネット利用の全てが極めて危険な状態に置かれている。

 このような全く信用できない警察の動きをさらに危険極まりないものにしようと、与党である自民党と公明党は、児童ポルノ規制法の規制強化を企て、「自身の性的好奇心を満たす目的で」という主観的要件のみで児童ポルノの所持を禁止する、いわゆる単純所持規制を含む法改正案を第171回国会に提出し、民主党はやはり危険な反復取得罪を含む法改正案を提出し、国会で審議が行われた。第171回国会の解散によって、これらの改正法案は一旦廃案となったが、選挙後の国会で再提出される可能性も高く、今なお、インターネットにおけるあらゆる情報利用を危険極まりないものとする法改正の検討が今後も続けられかねないという危うい状態にあることに変わりはない。

 また、児童ポルノ規制強化の一環として、この6月に、警察庁、総務省などの規制官庁が絡む形で、検閲にしかなりようがないサイトブロッキングを検討する児童ポルノ流通防止協議会が発足している(http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0906/02/news097.html参照)。

(具体的な問題点)
 閲覧とダウンロードと取得と所持の区別がつかないインターネットにおいては、例え児童ポルノにせよ、情報の単純所持や取得の規制は有害無益かつ危険なもので、憲法及び条約に規定されている「知る権利」を不当に害するものとなる。「自身の性的好奇心を満たす目的で」、積極的あるいは意図的に画像を得た場合であるなどの限定を加えたところで、エスパーでもない限りこのような積極性を証明することも反証することもできないため、このような情報の単純所持や取得の規制の危険性は回避不能であり、思想の自由や罪刑法定主義にも反する。繰り返し取得としても、インターネットで2回以上他人にダウンロードを行わせること等は技術的に極めて容易であり、取得の回数の限定も、何ら危険性を減らすものではない。

 児童ポルノ規制の推進派は常に、提供による被害と単純所持・取得を混同する狂った論理を主張するが、例えそれが児童ポルノであろうと、情報の単純所持ではいかなる被害も発生し得えない。現行法で、ネット上であるか否かにかかわらず、提供及び提供目的の所持まで規制されているのであり、提供によって生じる被害と所持やダウンロード、取得、収集との混同は許され得ない。そもそも、最も根本的なプライバシーに属する個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ることは、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の基本的な権利からあってはならないことである。

 アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現に対する規制対象の拡大も議論されているが、このような対象の拡大は、児童保護という当初の法目的を大きく逸脱する、異常規制に他ならない。アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現において、いくら過激な表現がなされていようと、それが現実の児童被害と関係があるとする客観的な証拠は何一つない。いまだかつて、この点について、単なる不快感に基づいた印象批評と一方的な印象操作調査以上のものを私は見たことはないし、虚構と現実の区別がつかないごく一部の自称良識派の単なる不快感など、言うまでもなく一般的かつ網羅的な表現規制の理由には全くならない。アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現が、今の一般的なモラルに基づいて猥褻だというのなら、猥褻物として取り締まるべき話であって、それ以上の話ではない。どんな法律に基づく権利であれ、権利の侵害は相対的にのみ定まるものであり、実際の被害者の存在しない創作物・表現に対する規制は何をもっても正当化され得ない。民主主義の最重要の基礎である表現の自由や言論の自由、思想の自由等々の最も基本的な精神的自由そのものを危うくすることは絶対に許されない。

 単純所持規制にせよ、創作物規制にせよ、両方とも1999年当時の児童ポルノ法制定時に喧々囂々の大議論の末に除外された規制であり、規制推進派が何と言おうと、これらの規制を正当化するに足る立法事実の変化はいまだに何一つない。

 サイトブロッキングにつても、総務省なり警察なり天下り先の検閲機関・自主規制団体なりの恣意的な認定により、全国民がアクセスできなくなるサイトを発生させるなど、絶対にやってはならないことである。例えそれが何であろうと、情報の単純所持や単なる情報アクセスではいかなる被害も発生し得えないのであり、自主的な取組という名目でいくら取り繕おうとも、憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないサイトブロッキングは導入されてはならないものである。

 児童ポルノ規制法に関しては、既に、提供及び提供目的での所持が禁止されているのであるから、本当に必要とされることは今の法律の地道なエンフォースであって有害無益な規制強化の検討ではない。児童ポルノ規制法に関して検討すべきことは、現行ですら過度に広汎であり、違憲のそしりを免れない児童ポルノの定義の厳密化のみである。

 警察の恣意的な運用によって、現行法においてすら児童ポルノ規制法違反幇助のリスクが途方もなく拡大し、甚大な萎縮効果・有害無益な社会的大混乱が生じかねないという非常に危険な状態にあることを考え、今現在民事的な責任の制限しか規定していないプロバイダー責任制限法に関し、刑事罰リスクも含めたプロバイダーの明確なセーフハーバーについて検討するべきである。

 違法コピー対策問題における権利者団体の主張、児童ポルノ法規制強化問題・有害サイト規制問題における自称良識派団体の主張は、常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。今後は、このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むべきである。同じく、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な著作権検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むべきである。

 また、児童ポルノの閲覧の犯罪化と創作物の規制まで求める「子どもと青少年の性的搾取に反対する世界会議」の根拠のない狂った宣言を国際動向として一方的に取り上げ、児童ポルノ規制の強化を正当化することなどあってはならない。児童ポルノ規制に関しては、最近、ドイツのバンド「Scorpions」が32年前にリリースした「Virgin Killer」というアルバムのジャケットカバーが、アメリカでは児童ポルノと見なされないにもかかわらず、イギリスでは該当するとしてブロッキングの対象となり、プロバイダーによっては全Wikipediaにアクセス出来ない状態が生じたなど、欧米では、行き過ぎた規制の恣意的な運用によって弊害が生じていることも見逃されるべきではない。アメリカだけを取り上げても、FBIが偽リンクによる囮捜査を実行し、偽リンクをクリックした者が児童ポルノがダウンロードしようとしたということで逮捕、有罪にされるという恣意的運用の極みをやっている(http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20080323_fbi_fake_hyperlink/参照)、単なる授乳写真が児童ポルノに当たるとして裁判になり、平和だった一家が完全に崩壊している(http://suzacu.blog42.fc2.com/blog-entry-52.html参照)、日本のアダルトコミックを所持していたとして、児童の性的虐待を何ら行ったことも無く、考えたことも無い単なる漫画のコレクターが司法取引で有罪とされている(http://news.goo.ne.jp/article/wiredvision/nation/2009news1-19920.html参照)などの、極悪かつ非人道的な例が知られている。単純所持規制を導入している西洋キリスト教諸国で行われていることは、中世さながらの検閲と魔女狩りであって、このような極悪非道に倣わなければならない理由は全く無い。

 しかし、欧米においても、情報の単純所持規制やサイトブロッキングの危険性に対する認識はネットを中心に高まって来ており、アメリカにおいても、この1月に連邦最高裁で児童オンライン保護法が違憲として完全に否定され、この2月に連邦控訴裁でカリフォルニア州のゲーム規制法が違憲として否定されていることや、つい最近からのドイツ国会への児童ポルノサイトブロッキング反対電子請願(https://epetitionen.bundestag.de/index.php?action=petition;sa=details;petition=3860)に13万筆を超える数の署名が集まったこと、ドイツにおいても児童ポルノサイトブロッキング法は検閲法と批判され、既に憲法裁判が提起されていること(http://www.netzeitung.de/politik/deutschland/1393679.html参照)なども注目されるべきである。スイスにおいて最近発表された調査でも、2002年に児童ポルノ所持で捕まった者の追跡調査を行っているが、実際に過去に性的虐待を行っていたのは1%、6年間の追跡調査で実際に性的虐待を行ったものも1%に過ぎず、児童ポルノ所持はそれだけでは、性的虐待のリスクファクターとはならないと結論づけており、児童ポルノの単純所持規制の根拠は完全に否定されているのである(http://www.biomedcentral.com/1471-244X/9/43/abstract参照)。
政府・与党内の検討においては、このような国際動向もきちんと取り上げるべきであり、一方的な見方で国際動向を決めつけることなどあってはならない。

 かえって、児童ポルノの単純所持規制・創作物規制といった非人道的な規制を導入している諸国は即刻このような規制を廃止するべきと、そもそも最も根本的なプライバシーに属し、何ら実害を生み得ない個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ること自体、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の国際的かつ一般的に認められている基本的な権利からあってはならないことであると、日本政府から国際的な場において各国に積極的に働きかけるべきである。

 選挙後の国会において、児童ポルノ規制法の改正案が再び提出される可能性も高いが、政府において、児童ポルノを対象とするものにせよ、いかなる種類のものであれ、情報の単純所持・取得規制・ブロッキングは極めて危険な規制であるとの認識を深め、このような規制を絶対に行わないこととして、前国会のような危険な法改正案が2度と与野党から提出されることが無いようにするべきである。

(問題により不利益を被っている、困っている人又は団体等)
 全国民

(改善提案)
 違憲のそしりを免れない現行の児童ポルノ規制法について、速やかに児童ポルノの定義の厳格化のみの法改正を行う。

 プロバイダー責任制限法に関し、被侵害者との関係において、刑事罰リスクも含めたプロバイダーの明確なセーフハーバーについて検討する。

 児童ポルノ流通防止協議会を解散し、サイトブロッキングに関する検討を完全に停止する。

 憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むこと、及び、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な著作権検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むことを検討する。

 児童ポルノの単純所持規制・創作物規制といった非人道的な規制を導入している諸国は即刻このような規制を廃止するべきと、そもそも最も根本的なプライバシーに属し、何ら実害を生み得ない個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ること自体、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の国際的かつ一般的に認められている基本的な権利からあってはならないことであると、日本政府から国際的な場において各国に積極的に働きかける。

 児童ポルノを対象とするものにせよ、いかなる種類のものであれ、情報の単純所持・取得規制・ブロッキングは極めて危険な規制であるとの認識を深め、このような規制を絶対に行わないことと閣議決定する。

(根拠法)
 児童ポルノ規制法(正式名称は「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」)

(関連府省等)
警察庁、総務省、厚生労働省

(13)インターネット・ホットラインセンター・日本ガーディアン・エンジェルス・日本ユニセフ協会
(規制、制度、慣行、又は手続等の名称)
 インターネット・ホットラインセンター・日本ガーディアン・エンジェルス・日本ユニセフ協会

(規制、制度、慣行、又は手続等の現状)
 単なる民間団体に過ぎないにもかかわらず、一般からの違法・有害情報の通知を受けて、直接削除要請を行っている、インターネット・ホットラインセンターという名の半官検閲センターが存在している。

 同じく民間団体に過ぎないにもかかわらず、日本ガーディアン・エンジェルスという団体が、犯罪に関する情報を匿名で受け付け、解決に結び付いた場合に情報料を支払うということを行っており、この7月からネットでの受理まで開始している(http://www.jiji.com/jc/zc?k=200907/2009070100378参照)。

 また、日本ユニセフ協会は、「なくそう!子どもポルノ」キャンペーン等の根拠無く一般的かつ網羅的な表現・情報弾圧を唱える危険な児童ポルノ規制強化プロパガンダに募金を流用し、さらに、この6月26日の衆議院法務委員会でも、感情論のみで根拠無く児童ポルノの単純所持規制の導入を訴えるなど、寄付行為に書かれた財団法人の目的を大きく逸脱し、明白に公益を害する行為を繰り返し行い、インターネットにおけるあらゆる情報利用を危険極まりないものとしようとしている。

(具体的な問題点)
 サイト事業者が自主的に行うならまだしも、何の権限も有しないインターネット・ホットラインセンターなどの民間団体からの強圧的な指摘により、書き込みなどの削除が行われることなど本来あってはならないことである。このようなセンターは単なる一民間団体で、しかもこの団体に直接害が及んでいる訳でもないため、削除を要請できる訳がない。勝手に有害と思われる情報を収集して、直接削除要請などを行う民間団体があるということ自体おかしいと考えるべきであり、このような有害無益な半官検閲センターは即刻廃止が検討されて良い。このような無駄な半官検閲センターに国民の血税を流すことは到底許されないのであって、その分できちんとした取り締まりと削除要請ができる人員を、法律によって明確に制約を受ける警察に確保するべきである。

 日本ガーディアン・エンジェルスについても同断であり、直接害が及んでいる訳でもない単なる一民間団体が、直接一般からの通報を受け付け、刑事事件に関与して、解決に結び付いた場合に情報料を支払うということ自体異常である。インターネット・ホットライン・センターにせよ、この日本ガーディアン・エンジェルスにせよ、警察の本来業務を外部委託することがそもそもおかしいのであり、日本ガーディアン・エンジェルスに無駄に国民の血税を流すべきでは無く、その分できちんとした情報受け付けと事件の解決ができる人員を、法律によって明確に制約を受ける警察に確保するべきである。また、このようなことに手を染めている日本ガーディアン・エンジェルスは、特定非営利活動法人あるいは認定特定非営利活動法人の名に値するものでは無く、その取り消しが検討されるべきである。

 また、日本ユニセフ協会は、「なくそう!子どもポルノ」キャンペーン等の根拠無く一般的かつ網羅的な表現・情報弾圧を唱える危険な児童ポルノ規制強化プロパガンダに募金を流用し、さらに、この6月26日の衆議院法務委員会でも、感情論のみで根拠無く児童ポルノの単純所持規制の導入を訴えているが、日本ユニセフの寄付行為(http://www.unicef.or.jp/about_unicef/about_kifu.html参照)において、根拠無く焚書と表現弾圧を叫ぶことは、ユニセフの趣旨には入っていないと考えられ、このようなことが事業としてあげられている訳も無く、このような行為は寄付行為違反である。さらに、民主主義の基礎中の基礎である表現の自由等の精神的自由の重要性を考えると、寄付行為違反を超えて、このような行為は明白に公益を害するものである。「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」第96条に基づいて、日本ユニセフ協会に対して、所管の外務省から改善命令を出すべきである。また、このような法人は、公益法人あるいは特定公益増進法人の名に値するものでは無く、新公益法人制度への移行申請において公益認定をしないとするか、あるいは、それ以前に、公益法人及び特定公益増進法人の認定取り消しをするべきである。(なお、日本ユニセフ協会は、そのHPhttp://www.unicef.or.jp/cooperate/coop_tax.htmlにおいて、募金の税法上の優遇について、特定公益増進法人への寄付が優遇措置を受けられると書いているが、公益法人改革の一環として、既に全ての公益法人に対する寄付に対して同等の優遇措置が認められているのであり(財務省HPhttp://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/koueki01.htmの注参照)、これもかなり悪質なミスリードである。)

(問題により不利益を被っている、困っている人又は団体等)
 全国民

(改善提案)
 インターネット・ホットラインセンターを廃止する。

 日本ガーディアン・エンジェルスにおける警察の委託事業を停止する。また、同時に、日本ガーディアン・エンジェルスに対して、特定非営利活動促進法及び租税特別措置法第66条の11の2に基づく特定非営利活動法人及び認定特定非営利活動法人の認定の取り消しを検討する。

 日本ユニセフ協会に対して、所管の外務省から公益を害する活動を止めるよう改善命令を出す。また、日本ユニセフ協会に対して、新公益法人制度への移行申請において公益認定をしないとするか、あるいは、それ以前に、公益法人及び特定公益増進法人の認定を取り消す。

(根拠法)
 特定非営利活動促進法
 租税特別措置法第66条の11の2
 公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律
 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律

(関連府省等)
 警察庁、外務省

(14)官製キャンペーン
(規制、制度、慣行、又は手続等の名称)
 官製キャンペーン

(規制、制度、慣行、又は手続等の現状)
 「e-ネットづくり!」宣言として、総務省への参加申請・登録の要請や総務省製のロゴマークの販促といった、ニーズを無視した官製キャンペーンを総務省が行おうとしているところである。

(具体的な問題点)
 総務省への参加申請・登録の要請や総務省製のロゴマークの販促といった、ニーズを無視したいつもの官製キャンペーンに過ぎない「e-ネットづくり!」宣言について、そもそも民間が求めていない、「民間による自主的な取組」など取りやめるべきである。検討が必要であるとしたら、今ですら訳が分からないほど沢山ある通信関係の各種ガイドラインの整理削減のみである。今以上に、規制よりにしかならないだろう官製「自主憲章」やガイドラインなども不要である。天下り利権の強化・税金のムダな浪費にしかつながらない、ニーズを無視した「相談センター」の拡充などされるべきでない。インターネット・ホットラインセンターという警察庁の半官検閲センター自体廃止が速やかに検討されるべきものであり、「違法・有害情報通報受付」と称して、総務省版の半官検閲センターをさらに作ることなど論外である。

(問題により不利益を被っている、困っている人又は団体等)
 全インターネットユーザー

(改善提案)
「e-ネットづくり!」宣言について、規制よりにしかならないだろう官製「自主憲章」やガイドラインも含め、そもそも民間が求めていない、「民間による自主的な取組」を取りやめる。

 今ですら訳が分からないほど沢山ある通信関係の各種ガイドラインの整理削減のみを行う。

(根拠法)
 なし

(関連府省等)
 総務省

(15)模倣品・海賊版拡散防止条約
(規制、制度、慣行、又は手続等の名称)
 模倣品・海賊版拡散防止条約

(規制、制度、慣行、又は手続等の現状)
 詳細は不明であるが、模倣品・海賊版拡散防止条約の検討が政府レベルで行われている。

(具体的な問題点)
 模倣品・海賊版拡散防止条約について、検討中であり、詳細は不明であるが、税関において個人のPCや携帯デバイスの内容をチェック可能とすることや、インターネットで著作権検閲を行う機関を創設することといった、個人の基本的な権利をないがしろにする条項が検討される恐れがある。他の国が、このような危険な条項をこの条約に入れるよう求めて来たときには、そのような非人道的な条項は除くべきであると、かえって、プライバシーや情報アクセスの権利といった国際的・一般的に認められている個人の基本的な権利を守るという条項こそ条約に盛り込むべきであると日本から各国に積極的に働きかけるべきである。

(問題により不利益を被っている、困っている人又は団体等)
 全国民

(改善提案)
 他の国が、税関において個人のPCや携帯デバイスの内容をチェック可能とすることや、インターネットで著作権検閲を行う機関を創設することといった、個人の基本的な権利をないがしろにするような危険な条項をこの条約に入れるよう求めて来たときには、そのような非人道的な条項は除くべきであると、かえって、プライバシーや情報アクセスの権利といった国際的・一般的に認められている個人の基本的な権利を守るという条項こそ条約に盛り込むべきであると日本から各国に積極的に働きかける。

(根拠法)
 なし

(関連府省等)
 警察庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省

(16)国際組織犯罪防止条約・サイバー犯罪条約及びこれらの締結に必要な法改正
(規制、制度、慣行、又は手続等の名称)
 国際組織犯罪防止条約・サイバー犯罪条約及びこれらの締結に必要な法改正

(規制、制度、慣行、又は手続等の現状)
 前国会に提出されていた、国民の基本的な権利に対する致命的な問題を抱えていると考えられる、国際組織犯罪防止条約及びサイバー犯罪条約の締結のための法改正案は、解散により一旦廃案となったが、選挙後の国会において、再提出される可能性は高い。また、法改正の問題以前に、締結が目指されているこれらの条約自体、やはり国民の基本的な権利に対する致命的な問題を抱えている。

(具体的な問題点)
 国際組織犯罪防止条約の締結には、共謀罪の創設が必要とされているが、現状でも大規模テロなどについてはすでに殺人予備罪があるので共謀罪がなくとも対応でき、その他、個別の立法事実があればそれに沿った形で個別の犯罪についての予備罪の適否を論ずるべきであって、広範かつ一般的な共謀罪を創設する立法事実はない。実行行為に直接つながる行為によって、法益侵害の現実的危険性を引き起こしたからこそ処罰されるという我が国の刑法学の根幹を揺るがすものである共謀罪は、決して導入されてはならない。組織要件の厳密化にしても、今現在国会に提出されている修正案のような、その目的や意思のみによる限定は客観性を全く欠き、やはり恣意的な運用しか招きようのない危険なものである。このような危険な法改正を必要とする国際組織犯罪防止条約は日本として締結するべきものではない。

 サイバー犯罪条約は、通信記録や通信内容等の情報の保全・捜索・押収・傍受等について広範かつ強力な手段を法執行機関に与えることを求めているが、このような要請は、我が国の憲法に規定されている国民の基本的な権利に対する致命的な侵害を招くものであり、この条約も日本として締結するべきものではない。前国会に提出されていた法改正案中でも、差し押さえるべき物がコンピューターである場合には、このコンピューターと接続されているあらゆる記録媒体とそこに記録されている情報を差し押さえ可能であるとされていたが、昨今のインターネットの状況を考えると、差し押さえの範囲が過度に不明確になる懸念が強く、裁判所の許可無く捜査機関が通信履歴の電磁的記録の保全要請をすることが出来るとしていた点も、捜査機関による濫用の懸念が強く、このような刑事訴訟法の枠組みの変更は、通信の秘密やプライバシー、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がない限り、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利、といった我が国の憲法に規定されている国民の基本的な権利に対する致命的な侵害を招くものと私は考える。また、ウィルス作成等に関する罪についても、「人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える」電磁的記録という要件は、客観性のない人の意図を要件にしている点でやはり曖昧に過ぎ、このような客観性のない曖昧な要件でウィルス作成等に関する刑罰が導入されるべきではない。

 留保・解釈を最大限に活用しても、憲法に規定されている国民の基本的な権利に対する致命的な侵害を招くことになるだろう、これらの条約は、日本として締結するべきものではないものである。前国会に提出されていた法案は廃案のままにするとともに、条約からの脱退を検討するべきである。

(問題により不利益を被っている、困っている人又は団体等)
 全国民

(改善提案)
 前国会に提出されていた、国際組織犯罪防止条約及びサイバー犯罪条約の締結のための法改正案は廃案のままにすると閣議決定を行う。同時に、条約からの脱退を検討する。

(根拠法)
 国際組織犯罪防止条約(正式名称は、「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」)
 サイバー犯罪条約(正式名称は、「サイバー犯罪に関する条約」)

(関連府省等)
 外務省、法務省、警察庁

(17)音の商標
(規制、制度、慣行、又は手続等の名称)
 音の商標

(規制、制度、慣行、又は手続等の現状)
 特許庁の新しいタイプの商標に関する検討ワーキンググループ報告書で、音の商標を新たな保護対象として追加する方針が示されているところである。

(具体的な問題点)
 音の商標は、他の視覚的な商標とは異なる特色を有しているということが考慮されるべきであり、音に、会社名を連呼するような音だけでは無く単なる旋律も含まれ得、音の商標の使用に、単なるBGMとしての使用も含まれ得ることから、音については特に慎重に検討するべきである。登録除外についても検討されているが、公益的な音だけでは不十分であり、余計な混乱を避けるため、音について、少なくとも、他人の著名な旋律・楽曲を登録から除外することを検討するべきである、パブリックドメインに落ちた著名な旋律・楽曲の登録のような不当な利得を得るための登録が排除されない限り、音について、その保護類型への追加は決してするべきでない。

(問題により不利益を被っている、困っている人又は団体等)
 全国民

(改善提案)
 音の商標について、少なくとも、他人の著名な旋律・楽曲を登録から除外することを検討する。パブリックドメインに落ちた著名な旋律・楽曲の登録のような不当な利得を得るための登録が排除されない限り、音について、その商標の保護対象への追加をしないこととする。

(根拠法)
 商標法改正(特許庁で検討中)

(関連府省等)
 特許庁

(18)公職選挙法
(規制、制度、慣行、又は手続等の名称)
 公職選挙法

(規制、制度、慣行、又は手続等の現状)
 公職選挙法によって、選挙運動期間中にネットを選挙運動に用いることが完全に禁止されている。7月21日に閣議決定された答弁書(http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/171/toup/t171234.pdf参照)により、twitterの利用まで公職選挙法違反であるという政府見解が示されたところである。

(具体的な問題点)
 選挙運動期間中の選挙運動に関するネット上の掲示は全て、公職選挙法の第146条で規制の対象となっている文書図画の掲示とされ、完全に禁止されているが、これは、インターネットにおける正当な情報利用を阻害する一大規制となっている。

 第148条で、選挙の公正を害しない限りにおいて新聞・雑誌に対し報道・評論を掲載する自由を妨げるものではないと明文で規定しているが、新聞紙にあつては毎月三回以上、雑誌にあつては毎月一回以上、号を逐つて定期に有償頒布するものであり、第三種郵便物の承認のあるものであり、当該選挙の選挙期日の公示又は告示の日前一年以来そうであったもので、引き続き発行するものと、ブログ等は無論のこと、大手ネットメディアですら入らない、あまりにも狭い規定となっている。第151条の3で放送についても同様の規定があるが、放送法を参照しており、当然のことながら、動画サイトなどは入らないと考えられる。

 紙媒体であろうが、ネットだろうが、実名だろうが、匿名だろうが、報道・批評・表現の本質に変わりはない。表現の自由は、憲法に規定されている権利であり、民主主義を支える最も重要な自由として、その代表を選ぶ選挙において、その公平を害しない限りにおいて、あらゆる媒体に最大限認められなくてはならないものであることは言うまでもない。もし、公職選挙法が杓子定規に解釈され、各種ネットメディアに不当な規制の圧力がかけられるようなら、公職選挙法自体憲法違反とされなくてはならない。

(問題により不利益を被っている、困っている人又は団体等)
 全国民

(改善提案)
 第142条と第143条の認められる文書図画の頒布・掲示の中に、電子メール・ブログ・動画サイト等様々なネットサービスの利用類型を追加すること等により、公職選挙法第146条の規制を緩和し、ネット選挙を解禁する。

 公職選挙法第148条の規制を緩和し、新聞等に加えてネットにおける報道及び評論の自由も明文で認め、民主主義を支える最も重要な自由として、その代表を選ぶ選挙において、その公平を害しない限りにおいて、ネットメディア、動画サイト、ブログ等における表現の自由を最大限確保する。

(根拠法)
 公職選挙法

(関連府省等)
 総務省

(19)天下り
(規制、制度、慣行、又は手続等の名称)
 天下り

(規制、制度、慣行、又は手続等の現状)
 一昨年の6月23日号の週刊ダイヤモンドの「天下り全データ」という特集で、天下りとして2万7882人という人数が示されている。中には他愛のない再就職も含まれているだろうが、2万5千人を超える元国家公務員が各省庁所管の各種独立行政法人や特殊法人、公益法人、企業などにうごめき、このような天下り利権が各省庁の政策を歪めているというのが、今の日本のおぞましい現状である。

(具体的な問題点)
 法改正によって得られる利権・行政による恣意的な許認可権を盾に、役に立たない役人を民間に押しつけるなど、最低最悪の行為であり、一国民として到底許せるものではない。さらに、このような天下り役人が国の政策に影響を及ぼし、国が亡んでも自分たちの利権のみ伸ばせれば良いとばかりに、国益を著しく損なう違憲規制を立法しようとするに至っては、単なる汚職の域を超え、もはや国家反逆罪を構成すると言っても過言ではない。

 知財・情報政策においても、天下り利権が各省庁の政策を歪めていることは間違いなく、政策の検討と決定の正常化のため、文化庁から著作権関連団体への、総務省から放送通信関連団体・企業への、警察庁から各種協力団体・自主規制団体への天下りの禁止を決定するべきである。これらの省庁は特にひどいので特に名前をあげたが、他の省庁も含めて決定するべきである。

 また、人事院の「公務員の高齢期の雇用問題に関する研究会」において提案されている、60歳を過ぎてから公務員の身分のまま公益法人などに出向するといった新たな天下りルートも許されるべきでない。

(問題により不利益を被っている、困っている人又は団体等)
 全国民

(改善提案)
 閣議決定により、国家公務員法で規定されている再就職等監視委員会を凍結し、60歳を過ぎてから公務員の身分のまま公益法人などに出向するといった新たに提案されている天下りルートも含め、天下りを完全に禁止する。

(根拠法)
 国家公務員法

(関連府省等)
 全省庁、特に、文化庁、総務省、警察庁などの規制官庁

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第185回:内閣官房・「デジタル技術・情報の利活用を阻むような規制・制度・慣行等の重点点検」に対する提出パブコメ(その1:著作権規制関連)

 前回少し紹介した、内閣官房・IT戦略本部の「デジタル技術・情報の利活用を阻むような規制・制度・慣行等の重点点検」に関する意見募集(8月6日〆切。内閣官房のリリース、電子政府の該当ページ提出様式(doc)参照)に対してパブコメを提出したので、ここに載せておく。

 内容は、今までのパブコメをまとめたようなものだが、量がかなり多くなったので、2回に分けたいと思う。まずは、著作権規制関連として、(1)ダウンロード違法化、(2)DRM回避規制、(3)コピーワンス・ダビング10・B-CAS、(4)私的録音録画補償金制度、(5)著作権保護期間、(6)一般フェアユース条項の導入による著作権規制の緩和、(7)著作権の間接侵害・侵害幇助、(8)著作権検閲・ストライクポリシー、(9)携帯電話事業者による差別的なダウンロード容量制限に関するものである。

(以下、提出パブコメ)

(1)ダウンロード違法化
(規制、制度、慣行、又は手続等の名称)
 ダウンロード違法化

(規制、制度、慣行、又は手続等の現状)
 文化庁の暴走と国会議員の無知によって、 今年の6月12日に、「著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合」は私的複製に当たらないとする、いわゆるダウンロード違法化条項を含む、改正著作権法が成立し、来年の1月1日の施行を待つ状態である。

(具体的な問題点)
 一人しか行為に絡まないダウンロードにおいて、「事実を知りながら」なる要件は、エスパーでもない限り証明も反証もできない無意味かつ危険な要件であり、技術的・外形的に違法性の区別がつかない以上、このようなダウンロード違法化は法規範としての力すら持ち得ない。このような法改正によって進むのはダウンロード以外も含め著作権法全体に対するモラルハザードのみであり、これを逆にねじ曲げてエンフォースしようとすれば、著作権検閲という日本国として最低最悪の手段に突き進む恐れしかない。改正法は未施行であるが、既に、総務省の 「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」第一次提言案において、中国政府の検閲ソフト「グリーン・ダム」導入計画に等しい、日本レコード協会による携帯電話における著作権検閲の提案が取り上げられるなど、既に弊害は出始めている。

 そもそも、ダウンロード違法化の懸念として、このような著作権検閲に対する懸念は、文化庁へのパブコメ(文化庁HPhttp://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/houkoku.htmlの意見募集の結果参照。ダウンロード違法化問題において、この8千件以上のパブコメの7割方で示された国民の反対・懸念は完全に無視された。このような非道極まる民意無視は到底許されるものではない)や知財本部へのパブコメ(知財本部のHPhttp://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keikaku2009.htmlの個人からの意見参照)を見ても分かる通り、法改正前から指摘されていたところであり、このような著作権検閲にしか流れようの無いダウンロード違法化は始めからなされるべきではなかったものである。文化庁の暴走と国会議員の無知によって成立したものであり、ネット利用における個人の安心と安全を完全にないがしろにするものである、百害あって一利ないダウンロード違法化を規定する著作権法第30条第1項第3号を即刻削除するべきである。

(問題により不利益を被っている、困っている人又は団体等)
 全インターネットユーザー

(改善提案)
 著作権法第30条第1項第3号を削除する。

(根拠法)
 著作権法第30条第1項第3号

(関連府省等)
 文化庁

(2)DRM回避規制
(規制、制度、慣行、又は手続等の名称)
 DRM回避規制

(規制、制度、慣行、又は手続等の現状)
 現状、不正競争防止法と著作権法でDRM回避機器等の提供等が規制され、著作権法でコピーコントロールを回避して行う私的複製まで違法とされている。

(具体的な問題点)
 昨年7月にゲームメーカーがいわゆる「マジコン」の販売業者を不正競争防止法に基づき提訴し、さらにこの2月にゲームメーカー勝訴の判決が出ていることなどを考えても、現時点で、現状の規制では不十分とするに足る根拠は全くない。

 かえって、著作権法において、私的領域におけるコピーコントロール回避まで違法とすることで、著作権法全体に関するモラルハザードとデジタル技術・情報の公正な利活用を阻む有害無益な萎縮効果が生じているのではないかと考えられる。

 デジタル技術・情報の公正な利活用を阻むものであり、そもそも、私的なDRM回避行為自体によって生じる被害は無く、個々の回避行為を一件ずつ捕捉して民事訴訟の対象とすることは困難だったにもかかわらず、文化庁の片寄った見方から一方的に導入されたものである、私的領域でのコピーコントロール回避規制(著作権法第30条第1項第2号)は撤廃するべきである。コンテンツへのアクセスあるいはコピーをコントロールしている技術を私的な領域で回避しただけでは経済的損失は発生し得ず、また、ネットにアップされることによって生じる被害は公衆送信権によって既にカバーされているものであり、その被害とDRM回避やダウンロードとを混同することは絶対に許されない。それ以前に、私法である著作権法が、私的領域に踏み込むということ自体異常なことと言わざるを得ない。

 また、知財計画2009で今年度にDRM回避規制に関する検討を行うこととされているが、ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ないこれ以上のDRM回避規制の強化は検討されるべきでない。

(問題により不利益を被っている、困っている人又は団体等)
 全国民

(改善提案)
 著作権法第30条第1項第2号を削除する。

 合わせて、DRM回避規制に関して、ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ないこれ以上の規制強化をしないと閣議決定する。

(根拠法)
 著作権法第30条第1項第2号
 著作権法第120条の2
 不正競争防止法第2条第1項第10号、第11号

(関連府省等)
 文化庁、経済産業省

(3)コピーワンス・ダビング10・B-CAS
(規制、制度、慣行、又は手続等の名称)
 コピーワンス・ダビング10・B-CAS

(規制、制度、慣行、又は手続等の現状)
 無料の地上放送の全てに、昨年まではコピーワンスというコピーを1個しか認めない異常に厳しいコピー制限がかけられていた。昨年からわずかに緩和されたが、やはりダビング10という不当に厳しいコピー制限が今も維持されている。このようなコピー制限を維持するためとして、無料の地上放送の全てにB-CASによりスクランブル・暗号化が施されているという状態が今もなお続いている。

今年の中間答申で、ようやく無料の地上放送へB-CASシステムとコピーワンス運用の導入を可能とした平成14年6月の省令改正についての記載が加えられた。このように以前、無料の地上放送へのスクランブル・暗号化を禁じる省令が存在していた理由についての記載はやはり無いが、これは、無料地上放送は本来あまねく見られるべきという理念があったことの証左であろう。過去の検討経緯についてよりきちんとした情報開示を行い、このような過去の省令に表れている無料の地上放送の理念についても念頭においた上で再検討が進められなくてはならない。

 本来あまねく見られることを目的としていた無料地上波本来の理念をねじ曲げ、放送局と権利者とメーカーの談合に手を貸したという総務省の過去の行為は見下げ果てたものである。コピーワンス問題、ダビング10問題、B-CAS問題の検討と続く、無料の地上放送のスクランブルとコピー制御に関する政策検討の迷走とそれにより浪費され続けている膨大な社会的コストのことを考えても、このような省令改正の政策的失敗は明らかであり、総務省はこの省令改正を失策と明確に認めるべきである。

(具体的な問題点)
 B-CASシステムは談合システムに他ならず、これは、放送局・権利者にとっては、視聴者の利便性を著しく下げることによって、一旦は広告つきながらも無料で放送したコンテンツの市場価格を不当につり上げるものとして機能し、国内の大手メーカーとっては、B-CASカードの貸与と複雑な暗号システムを全てのテレビ・録画機器に必要とすることによって、中小・海外メーカーに対する参入障壁として機能している。

 以前は総務省令によって、無料の地上放送へのこのようなスクランブル・暗号化の導入は禁止されていたが、総務省は、平成14年6月にこの省令の改正を行い、 本来あまねく見られることを目的とする無料の地上放送へB-CASシステムとコピーワンス運用の導入を可能として、無料地上波本来の理念をねじ曲げ、放送局と権利者とメーカーの談合に手を貸すと見下げ果てた行為を行っている。コピーワンス問題、ダビング10問題、B-CAS問題の検討と続く、無料の地上放送のスクランブルとコピー制御に関する政策検討の迷走とそれにより浪費され続けている膨大な社会的コストのことを考えても、このような省令改正の政策的失敗は明らかであり、この省令改正を失策と総務省に明確に認めさせるべきである。

 昨年運用が開始されたダビング10に関しても、大きな利便性の向上なくして、より複雑かつ高価な機器を消費者が新たに買わされるだけの弥縫策としか言いようがなく、一消費者・一国民として納得できるものでは全くない。さらに、ダビング10機器に関しては、テレビ(チューナー)と録画機器の接続によって、全く異なる動作をする(接続次第で、コピーの回数が9回から突然1回になる)など、公平性の観点からも問題が大きい。

 現在の地上無料放送各局の歪んだビジネスモデルによって、放送の本来あるべき姿までも歪められるべきではない。そもそもあまねく視聴されることを本来目的とする、無料の地上放送においてコピーを制限することは、視聴者から視聴の機会を奪うことに他ならず、このような規制を良しとする談合業界及び行政に未来はない。

 コピー制限技術はクラッカーに対して不断の方式変更で対抗しなければならないが、その方式変更に途方もないコストが発生する無料の地上放送では実質的に不可能である。インターネット上でユーザー間でコピー制限解除に関する情報がやりとりされる現在、もはや無料の地上放送にDRMをかけていること自体が社会的コストの無駄であるとはっきりと認識するべきである。無料の地上放送におけるDRMは本当に縛りたい悪意のユーザーは縛れず、一般ユーザーに不便を強いているだけである。

 情報通信審議会の今年の中間答申において、現行のB-CASシステムと併存させる形でチップやソフトウェア等の新方式を導入することが提言されているが、無意味な現行システムの維持コストに加えて新たなシステムの追加で発生するコストまでまとめて消費者に転嫁される可能性が高く、このような弥縫策は、一消費者として全く評価できないものである。さらに言うなら、これらの新方式は、不正機器対策には全くならない上、新たに作られるライセンス発行・管理機関が総務省なりの天下り先となり、新方式の技術開発・設備投資コストに加え、天下りコストまで今の機器に上乗せされかねないものである。この審議会において同じく検討課題とされていた、制度的エンフォースメントにしても、正規機器の認定機関が総務省なりの天下り先となり、その天下りコストがさらに今の機器に上乗せされるだけで、しかも不正機器対策には全くならないという最低の愚策である。

 無料の地上放送の理念を歪め、放送局・権利者・国内の大手メーカーの談合を助長している、無料の地上放送にかけられているスクランブル・暗号化こそ問題なのであって、B-CAS類似の無意味なシステムをいくら併存させたところで、積み上げられるムダなコストが全て消費者に転嫁されるだけで何の問題の解決にもならず、同じことが繰り返されるだけだろう。基幹放送である無料地上波については、B-CASシステムを排除し、ノンスクランブル・コピー制限なしを基本とすること以外で、この問題の本質的な解決がもたらされることはない。

 法的にもコスト的にも、どんな形であれ、全国民をユーザーとする無料地上放送に対するコピー制限は維持しきれるものではない。このようなバカげたコピー制限に関する過ちを二度と繰り返さないため、無料の地上放送についてはスクランブルもコピー制御もかけないこととする逆規制を、政令や省令ではなく法律のレベルで放送法に入れることを私は一国民として強く求める。

(問題により不利益を被っている、困っている人又は団体等)
 全国民(無料の地上放送の全ユーザー)

(改善提案)
1.無料地上波からB-CASシステムを排除し、テレビ・録画機器における参入障壁を取り除き、自由な競争環境を実現する。

2.あまねく見られることを目的とするべき、基幹放送である無料地上波については、ノンスクランブル・コピー制限なしを基本とする。

3.無料地上波については、ノンスクランブル・コピー制限なしとすることを、総務省が勝手に書き換えられるような省令や政令レベルにではなく、法律に書き込む。

(根拠法)
 なし

(関連府省等)
 総務省、公正取引委員会

(4)私的録音録画補償金制度
(規制、制度、慣行、又は手続等の名称)
 私的録音録画補償金制度

(規制、制度、慣行、又は手続等の現状)
 私的複製によって生じる著作権者の経済的不利益を補償するため、MD、CD-R、DVD-R等の分離型録音録画専用デジタル録音録画機器・媒体に私的録音録画補償金が賦課されている。文化庁文化審議会において、数年に渡り縮小・廃止に向けた検討が行われ、補償金のそもそもの意義が問われた中で、その解決をおざなりにしたまま、去年の6月にダビング10解禁のために文部科学大臣と経済産業大臣の間で暫定的な措置としてブルーレイ課金の合意がなされ、消費者不在の中、今年の5月に著作権施行令の改正によってブルーレイへの課金まで実施された。

(具体的な問題点)
 確かに今はコピーフリーのアナログ放送もあるが、ブルーレイにアナログ放送を録画することはまずもって無いと考えられるため、アナログ放送の存在もブルーレイ課金の根拠としては薄弱であり、そのアナログ放送も2011年には止められる予定となっている。

 特に、権利者団体は、ダビング10への移行によってコピーが増え自分たちに被害が出ると大騒ぎをしたが、移行後1年以上経った今現在においても、ダビング10の実施による被害増を証明するに足る具体的な証拠は全く示されておらず、ブルーレイ課金に合理性があったとは私には全く思えない。

 わずかに緩和されたとは言え、今なお地上デジタル放送にはダビング10という不当に厳しいコピー制限がかかったままである。こうした実質的に全国民に転嫁されるコストで不当に厳しい制限を課している機器と媒体にさらに補償金を賦課しようとするのは、不当の上塗りである。このような不当に厳しいコピー制限が維持される限り、私的録画補償金は廃止するべきである。

 文化庁の文化審議会著作権分科会における数年の審議において、補償金のそもそもの意義についての意義が問われたが、今に至るも文化庁は、天下り先である権利者団体のみにおもねり、この制度に関する根本的な検討を怠っている。(今年、文化庁は、基本問題小委員会を設けたが、始めからメンバーが権利者団体のみに片寄っており、このような腐った小委員会で著作権の根本に関わる問題など検討できないことは明白である。)

 世界的に見ても、メーカーや消費者が納得して補償金を払っているということはカケラも無く、権利者団体がその政治力を不当に行使し、歪んだ「複製=対価」の著作権神授説に基づき、不当に対象を広げ料率を上げようとしているだけというのがあらゆる国における実情である。表向きはどうあれ、大きな家電・PCメーカーを国内に擁しない欧州各国は、私的録音録画補償金制度を、外資から金を還流する手段、つまり、単なる外資規制として使っているに過ぎない。

 この制度における補償金の対象・料率に関して、具体的かつ妥当な基準はどこの国を見ても無いのであり、この制度は、ほぼ権利者団体の際限の無い不当な要求を招き、莫大な社会的コストの浪費のみにつながっている。機器・媒体を離れ音楽・映像の情報化が進む中、「複製=対価」の著作権神授説と個別の機器・媒体への賦課を基礎とする私的録音録画補償金は、既に時代遅れのものとなりつつあり、その対象範囲と料率のデタラメさが、デジタル録音録画技術の正常な発展を阻害し、デジタル録音録画機器・媒体における正常な競争市場を歪めているという現実は、補償金制度を導入したあらゆる国において、問題として明確に認識されなくてはならないことである。

(問題により不利益を被っている、困っている人又は団体等)
 デジタル録音録画機器・媒体の全ユーザー

(改善提案)
1.そもそも、著作権法の様な私法が私的領域に踏み込むこと自体がおかしいのであり、私的領域での複製は原則自由かつ無償であることを法文上明確にする。また、刑事罰の有無に関わらず、外形的に違法性を判別することの出来ない形態の複製をいたずらに違法とすることは社会的混乱を招くのみであり、厳に戒められるべきである。

2.特に、補償金については、これが私的録音録画を自由にすることの代償であることを法文上明確にする。すなわち、私的録音録画の自由を制限するDRM(コピーワンスやダビング10ほどに厳しいDRM)がかけられている場合は、補償措置が不要となることを法文上明確にする。

3.また、タイムシフト、プレースシフト等は、外形的に複製がなされているにせよ、既に一度合法的に入手した著作物を自ら楽しむために移しているに過ぎず、このような態様の複製について補償は不要であることを法文上明確にする。実質権利者が30条の範囲内での複製を積極的に認めているに等しい、レンタルCDやネット配信、有料放送からの複製もこれに準じ、補償が不要であることを明確にする。

4.私的録音録画の自由の確保を法文上明確化するとした上で、私的録音録画を自由とすることによって、私的複製の範囲の私的録音録画によってどれほどの実害が著作権者に発生するのかについてのきちんとした調査を行う。
 この実害の算定にあたっては、補償の不必要な私的複製の形態や著作権者に損害を与えない私的複製の形態があることも考慮に入れ、私的録音録画の著作権者に与える経済的効果を丁寧に算出する。単に私的録音録画の量のみを問題とすることなど論外であり、その算定に当たっては入念な検証を行う。

5.この算出された実害に基づいて補償金の課金の対象範囲と金額が決められるべきである。特に、その決定にあたっては、コンテンツ産業振興として使われる税金や受信料・電波の割当といった各種の公的に与えられている既得権益も補償金の一種ととらえられることを念頭に置くべきである。この場合でも、将来の権利者団体による際限の無い補償金要求を無くすため、対象範囲と金額が明確に法律レベルで確定される必要がある。あらゆる私的録音録画について無制限の補償金要求権を権利者団体に与えることは、ドイツ等の状況を見ても、社会的混乱を招くのみであり、ユーザー・消費者・国民にとってきちんとセーフハーバーとして機能する範囲・金額の確定が行われなくてはならない。
 あるいは、実害が算出できないのであれば、原則にのっとり、私的録音録画補償金制度は廃止されるべきである。

6.集められた補償金は、権利者の分配に使用されることなく、全額違法コピー対策やコンテンツ産業振興などの権利者全体を利する事業へ使用されるようにするべきである。

 なお、天下り先の権利者団体のみにおもねり、国益を無視して暴走する腐り切った文化庁には、もはや、この問題の検討能力は完全に無い。上記のような方向性で検討する必要があると私は考えているが、無理なようであれば、この制度を現行のまま完全に凍結すると閣議決定することも、合わせ検討するべきである。

(根拠法)
 著作権法第30条第2項
 著作権法第5章
 著作権法施行令第1章

(関連府省等)
 文化庁

(5)著作権保護期間
(規制、制度、慣行、又は手続等の名称)
 著作権保護期間

(規制、制度、慣行、又は手続等の現状)
 現行の日本の著作権法において、著作権の保護期間は著作者の死後50年とされている。実演、レコード及び放送に関する著作隣接権については、それぞれ実演を行った時、音を最初に固定した時、放送を行った時から50年とされている。文化庁の文化審議会において、延長の検討がなされて来ており、権利者団体と文化庁を除けば、延長を否定する結論が出そろっているにもかかわらず、文化庁は保護期間延長に関して継続して検討するとしているところである。

(具体的な問題点)
1.著作権そのものの保護期間について
著作権そのものに関しては、現行でも著作者の死後50年という極めて長い期間に渡って著作権が保護されることになっている。また、著作者人格権については保護期間が切れるということはない。

 文化的に、ひ孫の孫くらいのことまで考えて創作をしている人間がいるとも思われず、文化の多様化のためにはこれ以上の延長はほとんど何の役にも経たず、経済的にも、著作者の死後50年を経てなお権利処理コストを上回る財産的価値を保っている極めて稀な著作物のために、このコストを下回るほとんど全ての著作物の利用を阻害することは全く妥当でない。

 また、保護期間延長問題は金銭的な話でないとするリスペクト論もよく権利者側が持ち出すのだが、創作者が世に出したいと思う形のまま、創作者の名前を付けて著作物を流通させるために、同一性保持権や氏名表示権といった著作者人格権が、既に保護期間が切れることのない権利として規定されているのであり、人格権と財産権を混同した主張は取り上げるに値しない。延長問題は、あくまで権利の財産的な側面のみを考慮して考えられなくてはならない。

 これほど長期間に渡る著作権の保護期間は、過去の圧倒的多数の著作物の新たな技術による公共利用、 過去の大多数の著作物のデジタル情報としての公共利用に対する一大阻害要因となっており、著作権者の個々のメリットに比して社会的デメリットがあまりにも大きな有害な規制として機能している。このような著作権の保護期間については、短縮が検討されてしかるべきである。

 また、権利者団体と文化庁を除けば日本国内では、この点に関しては延長しないということでほとんど結論が出そろっているのであり、文化庁の保護期間延長に関する検討は完全に止められるべきである。

2.実演家の著作隣接権の保護期間について
 同一性保持権や氏名表示権などの実演家の人格権も特に保護期間と一緒に切れるということはないので、 実演家の著作隣接権の保護期間についても人格権と財産権をごっちゃにするリスペクト論は全く当てはまらない。

 実演から50年を超えて保護期間を延長することが、文化的な実演を多く生み出すためのインセンティブとなり、このインセンティブが、保護期間延長によって生じる公共利用に対するディスインセンティブを超えるという明確な論拠が示されるならばともかく、実演から50年という期間はかなり著名かつ長命の実演家でなければ切れることがない期間であり、今のところ、実演家の著作隣接権の保護期間延長についても、これを是とするに足る根拠は何一つなく、これも延長されるべきでない。

なお、著作隣接権の中でも、実演家の権利と、レコード製作者・放送事業者の権利は大きく性質が異なっているものであり、これらを混同することは百害あって一利ないものである。

3.レコード製作者あるいは放送事業者の著作隣接権の保護期間について
 レコード製作者と放送事業者という創作者ではない流通事業者の著作隣接権は、単にレコード会社や放送局が強い政治力を持っていたことから無理矢理ねじ込まれた権利に過ぎず、その目的は流通コストへの投資を促すことのみにあったものである。インターネットという流通コストの極めて低い流通チャネルがある今、独占権というインセンティブで流通屋に投資を促さねばならない文化上の理由もほぼ無くなっているのであり、これらの保護期間は速やかに短縮することが検討されるべきである。

 なお、放送事業者の権利の保護期間については、今でもローマ条約及びTRIPS協定)で放送から20年と規定されているだけであり、短縮するのに国際的障害はない。合理的な理由無く決められた保護期間を短縮することが憲法上問題になる訳もない。

(問題により不利益を被っている、困っている人又は団体等)
 全国民

(改善提案)
 文化庁における著作権保護期間延長の検討を閣議決定により停止する。

 放送に関する著作隣接権に関しては、速やかに保護期間を放送を行った時から20年とする。

 合わせ、現行ですら余りに長い著作権及びレコード製作者あるいは放送事業者の著作隣接権の保護期間短縮のため、日本政府からベルヌ条約他の関係条約の改正提案を行うことを、政府レベルで検討する。

 なお、過去、保護期間の短縮を行った国としては、ポルトガルとスペインが存在しており、保護期間の短縮は国際的に見て完全に不可能とされるものでは無い。

(根拠法)
 著作権法第2章第4節
 著作権法第4章第6節
 ベルヌ条約第7条
 万国著作権条約第4条
 ローマ条約第14条
 レコード製作者の保護に関する条約第4条
 実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約第17条
 TRIPS協定第12条及び第14条

(関連府省等)
 文化庁

(6)一般フェアユース条項の導入による著作権規制の緩和
(規制、制度、慣行、又は手続等の名称)
 一般フェアユース条項の導入による著作権規制の緩和

(規制、制度、慣行、又は手続等の現状)
 ほぼ全国民が利用者兼権利者となり得、考えられる利用形態が発散し、個別の規定では公正利用の類型を拾い切れなくなるインターネットのような場においては、現行の個別の権利制限規制を前提とする著作権法全体がデジタル技術・情報の公正な利活用を阻害するものとなっている。

(具体的な問題点)
 フェアユースのような一般規定は、ほぼ全国民が利用者兼権利者となり得、考えられる利用形態が発散し、個別の規定では公正利用の類型を拾い切れなくなるインターネットのような場における、現行の個別の権利制限規制を前提とする著作権法全体によるデジタル技術・情報の公正な利活用の阻害を解消し、保護と利用のバランスを取る上で重要な意義を持つものである。

 なお、個別の権利制限規定の迅速な追加によって対処するべきとする意見もあるが、文化庁と権利者団体がスクラムを組んで個別規定すらなかなか入れず、入れたとしても必要以上に厳格な要件が追加されているという惨憺たる現状において、個別規定の追加はこの問題における真の対処たり得ない。この6月に成立した法改正においても、図書館におけるアーカイブ化のための権利制限の対象を国立国会図書館のみに限り、検索エンジンの権利制限の対象も、「業として行う者」と業規制をかけた上で、政令でその基準を定めようとし、研究目的の権利制限についても、大量の情報の統計解析のみを対象としているなど、不当に厳しい制限が課されており、天下り先の権利者団体のみにおもねる腐り切った文化庁による法改正の検討の弊害は如実に現れている。

 また、権利を侵害するかしないかは刑事罰がかかるかかからないかの問題でもあり、公正という概念で刑事罰の問題を解決できるのかとする意見もあるようだが、かえって、このような現状の過剰な刑事罰リスクからも、フェアユースは必要なものと私は考える。現在親告罪であることが多少セーフハーバーになっているとはいえ、アニメ画像一枚の利用で別件逮捕されたり、セーフハーバーなしの著作権侵害幇助罪でサーバー管理者が逮捕されたりすることは、著作権法の主旨から考えて本来あってはならないことである。政府にあっては、著作権法の本来の主旨を超えた過剰リスクによって、本来公正として認められるべき事業・利用まで萎縮しているという事態を本当に深刻に受け止め、一刻も早い改善を図ってもらいたい。

(問題により不利益を被っている、困っている人又は団体等)
 全国民

(改善提案)
 著作権法に、一般フェアユース条項を導入する。

 ただし、フェアユースの導入によって、私的複製の範囲が縮小されることはあってはならないことである。

 なお、一般フェアユース条項を導入している国には、アメリカの他に台湾やイスラエルもあり、これらの国の条文等も参考になると考えられる。

(根拠法)
 著作権法

(関連府省等)
 文化庁

(7)著作権の間接侵害・侵害幇助
(規制、制度、慣行、又は手続等の名称)
 著作権の間接侵害・侵害幇助

(規制、制度、慣行、又は手続等の現状)
 動画投稿サイト事業者がJASRACに訴えられた「ブレイクTV」事件や、レンタルサーバー事業者が著作権幇助罪で逮捕され、検察によって姑息にも略式裁判で50万円の罰金を課された「第(3)世界」事件等を考えても、今現在、著作権の間接侵害や侵害幇助のリスクが途方もなく拡大し、甚大な萎縮効果・有害無益な社会的大混乱が生じかねないという非常に危険な状態にある。

(具体的な問題点)
 今現在、著作権の間接侵害・侵害幇助のリスクが途方もなく拡大し、甚大な萎縮効果・有害無益な社会的大混乱が生じかねないという非常に危険な状態にあり、民事的な責任の制限しか規定していないプロバイダー責任制限法に関し、被侵害者との関係において、刑事罰リスクも含めたプロバイダーの明確なセーフハーバーについて検討するべきである。

 さらに、著作権の間接侵害事件や侵害幇助事件においてネット事業者がほぼ直接権利侵害者とみなされてしまうことを考えると、プロバイダー責任制限法によるセーフハーバーだけでは不十分であり、間接侵害や著作権侵害幇助罪も含め、著作権侵害とならないセーフハーバーの範囲を著作権法上きちんと確定することが喫緊の課題である。

 セーフハーバーを確定するためにも間接侵害の明確化はなされるべきであるが、現行の条文におけるカラオケ法理や各種ネット録画機事件などで示されたことの全体的な整理以上のことをしてはならない。特に、今現在文化庁の文化審議会で検討されているように、著作権法に明文の間接侵害一般規定を設けることは絶対にしてはならないことである。確かに今は直接侵害規定からの滲み出しで間接侵害を取り扱っているので不明確なところがあるのは確かだが、現状の整理を超えて、明文の間接侵害一般規定を作った途端、権利者団体や放送局がまず間違いなく山の様に脅しや訴訟を仕掛けて来、今度はこの間接侵害規定の定義やそこからの滲み出しが問題となり、無意味かつ危険な社会的混乱を来すことは目に見えているからである。

(問題により不利益を被っている、困っている人又は団体等)
 全インターネットユーザー

(改善提案)
 プロバイダー責任制限法に関し、被侵害者との関係において、刑事罰リスクも含めたプロバイダーの明確なセーフハーバーについて検討する。

 合わせ、今現在文化庁の文化審議会における、著作権法に間接侵害一般規定を設けることに関する検討を停止し、間接侵害や著作権侵害幇助罪も含め、著作権侵害とならないセーフハーバーの範囲を著作権法上きちんと確定するための検討を開始する。

 ただし、このセーフハーバーの要件において、標準的な仕組み・技術や違法性の有無の判断を押しつけるような、権利侵害とは無関係の行政機関なり天下り先となるだろう第3者機関なりの関与を必要とすることは、検閲の禁止・表現の自由等の国民の権利の不当な侵害に必ずなるものであり、絶対にあってはならないことである。

(根拠法)
 著作権法第7章及び第8章
 刑法第62条
 プロバイダー責任制限法(正式名称は、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」)

(関連府省等)
 文化庁、総務省

(8)著作権検閲・ストライクポリシー
(規制、制度、慣行、又は手続等の名称)
 著作権検閲・ストライクポリシー

(規制、制度、慣行、又は手続等の現状)
 まだ実施されてはいないが、総務省の 「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」第一次提言案において、携帯電話においてダウンロードした音楽ファイルを自動検知した上でそのファイルのアクセス・再生制限を行うという、日本レコード協会の著作権検閲の提案が取り上げられており、今現在、このような著作権検閲の提案が政府レベルで検討されかねない非常に危険な状態にある。

 これも実施されていないと思うが、同じく、著作権検閲に流れる危険性が極めて高い、フランスで今なお揉めているネット切断型のストライクポリシー類似の、ファイル共有ソフトを用いて著作権を侵害してファイル等を送信していた者に対して警告メールを送付することなどを中心とする電気通信事業者と権利者団体の連携による著作権侵害対策の検討が、警察庁、総務省、文化庁などの規制官庁が絡む形で行われている。

(具体的な問題点)
 通信の秘密という基本的な権利の適用は監視の位置がサーバーであるか端末であるかによらないものであること、特に、機械的な処理であっても通信の秘密を侵害したことには変わりはないとされ、通信の秘密を侵害する行為には、当事者の意思に反して通信の構成要素等を利用すること(窃用すること)も含むとされていることを考えると、日本レコード協会が提案している著作権対策は、明らかに通信の秘密を侵害するものである。

 また、本来最も基本的なプライバシーに属する個人端末中の情報について、内容を自動検知し、アクセス制限・再生禁止等を行うことは、それ自体プライバシー権を侵害するものであり、プライバシーの観点からも、このような措置は導入されるべきでない。

 最も基本的なプライバシーに属する個人端末中の情報について、内容を自動検知し、アクセス制限・再生禁止等を行う日本レコード協会が提案している違法音楽配信対策は、技術による著作権検閲に他ならず、憲法に規定されている表現の自由(情報アクセス権を含む)や検閲の禁止に明らかに反するものである。ここで、表現の自由や検閲の禁止という観点からも、このような対策は決して導入されてはならないものである。

 付言すれば、日本レコード協会の携帯端末における違法音楽配信対策は、建前は違えど、中国でPCに対する導入が検討され、大騒ぎになった末、今現在導入が無期延期されているところの検閲ソフト「グリーン・ダム」と全く同じ動作をするものであるということを政府にははっきりと認識してもらいたい。このような検閲ソフトの導入については、日本も政府として懸念を表明しているはずであり(日経のネット記事http://www.nikkei.co.jp/news/main/20090628AT3S2700A27062009.html参照)、自由で民主的な社会において、このような技術的検閲が導入されることなど、絶対許されないことである。

 このような提案は、通信の秘密や検閲の禁止、表現の自由、プライバシーといった個人の基本的な権利をないがしろにするものである。日本レコード協会が提案している、検閲に該当するこのような対策は絶対に導入されるべきでなく、また技術支援・実証実験等として税金のムダな投入がなされるべきではない。

 フランスで導入が検討された、警告メールの送付とネット切断を中心とする、著作権検閲機関型の違法コピー対策である3ストライクポリシーについても、この6月に、憲法裁判所によって、インターネットのアクセスは、表現の自由に関係する情報アクセスの権利、つまり、最も基本的な権利の1つとしてとらえられるものであるとして、著作権検閲機関型の3ストライクポリシーは、表現の自由・情報アクセスの権利やプライバシーといった他の基本的な権利をないがしろにするものとして、真っ向から否定された。フランスでは今なおストライクポリシーに関して揉め続けているが、日本においては、このようなフランスにおける政策の迷走を他山の石として、このように表現の自由・情報アクセスの権利やプライバシーといった他の基本的な権利をないがしろにする対策を絶対に導入しないこととするべきであり、警察庁などが絡む形で検討が行われている違法ファイル共有対策についても、通信の秘密やプライバシー、情報アクセス権等の国民の基本的な権利をきちんと尊重する形で検討を進めることが担保されなくてはならない。

 これらの提案や検討からも明確なように、違法コピー対策問題における権利者団体の主張、児童ポルノ法規制強化問題・有害サイト規制問題における自称良識派団体の主張は、常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。今後は、このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むこと検討するべきである。同じく、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な著作権検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むことを検討するべきである。

(問題により不利益を被っている、困っている人又は団体等)
 全携帯ユーザー、全インターネットユーザー

(改善提案)
 総務省における日本レコード協会の著作権検閲の提案の検討を止め、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むこと、及び、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な著作権検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むことを検討する。

 閣議決定により、警察庁などが絡む形で検討が行われている違法ファイル共有対策についても、通信の秘密やプライバシー、情報アクセス権等の国民の基本的な権利をきちんと尊重する形で検討を進めることを担保する。

(根拠法)
 なし

(関連府省等)
 文化庁、総務省、警察庁

(9)携帯電話事業者による差別的なダウンロード容量制限
(規制、制度、慣行、又は手続等の名称)
携帯電話事業者による差別的なダウンロード容量制限

(規制、制度、慣行、又は手続等の現状)
 一部の携帯電話事業者が、公式サイト以外のサイトからダウンロードできるファイルの容量制限を行っている。(総務省の「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」第一次提言案による。)

(具体的な問題点)
 携帯電話事業者による、このような容量制限は、公平性の観点からも、独禁法からも明らかに問題がある。

(問題により不利益を被っている、困っている人又は団体等)
 一部の携帯電話事業者のユーザー

(改善提案)
 携帯電話事業者による公式サイト以外のサイトからダウンロードできるファイルの容量制限を排除する。

(根拠法)
 なし

(関連府省等)
 総務省、公正取引委員会

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2009年5月18日 (月)

第172回:内閣府・「青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための施策に関する基本的な計画(素案)」に対する提出パブコメ

 内容はほぼ今まで出して来た各種パブコメのまとめだが、第170回で取り上げた青少年ネット規制法の基本計画素案に対してパブコメを提出したので、念のために、ここに載せておく。

 次回は、フランスの3ストライクアウト法案の内容の紹介をしようかと思っている。

(5月19日夜の追記:フランスで、今日、3ストライク法案に対して憲法裁判所への訴えが提起された(01netの記事ZDNetの記事参照)。この裁判の結果次第で、また条文が変わってくる可能性があるのだが、次回は、現時点での条文の紹介をしたいと思っている。)

(以下、提出パブコメ)

(1)官製キャンペーンについて
 第8ページの「第2 5.(2)インターネット利用者・事業者の主体的な活動への支援」に書かれている、官製キャンペーンについて、総務省への参加申請・登録の要請や総務省製のロゴマークの販促といった、ニーズを無視したいつもの官製キャンペーンに過ぎず、普通に考えて税金のムダ使いしかならない、「e-ネットづくり!」宣言のような官製キャンペーンに反対する。今以上に、規制よりにしかならないだろう官製「自主憲章」やガイドラインなども不要である。

 また、このような官製キャンペーンの受け皿となるのであろう、第13ページの「第4 5.その他のインターネットの利用環境整備に向けた活動に対する支援」に書かれている「安心ネットづくり促進協議会」の全事業について、その必要性について、きちんとした再検討を行ってもらいたい。

(2)携帯電話フィルタリングについて
 第10ページの「第3 2.(2)携帯電話・PHSのフィルタリングの閲覧制限対象の適正化支援」において、健全サイト認定第3者機関を支援するとしているが、フィルタリングで無意味に利権を作ろうとしている総務省と携帯電話事業者他の今の方針については、完全に白紙に戻されるべきである。

 携帯フィルタリングについて、ブラックリスト方式ならば、まずブラックリストに載せる基準の明確化から行うべきなので、不当なブラックリスト指定については、携帯電話事業者がそれぞれの基準に照らし合わせて無料で解除する簡便な手続きを備えていればそれで良く、健全サイト認定第3者機関など必要ないはずである。ブラックリスト指定を不当に乱発し、認定機関で不当に審査料をせしめ取り、さらにこの不当にせしめた審査料と、正当な理由もなく流し込まれる税金で天下り役人を飼うのだとしたら、これは官民談合による大不正行為以外の何物でもない。このようなブラックリスト商法の正当化は許されない。

(3)インターネット・ホットラインセンターについて
 第10ページの「第3 3.フィルタリング提供事業者による閲覧制限対象の把握の支援」、及び、第14ページの「第5 2.(1)インターネット・ホットラインセンターを通じた削除等の対応依頼推進」に書かれている、インターネット・ホットラインセンターについて、その廃止を求める。

 サイト事業者が自主的に行うならまだしも、何の権限も有しないインターネット・ホットラインセンターなどの民間団体からの強圧的な指摘により、書き込みなどの削除が行われることなど本来あってはならないことである。このようなセンターは単なる一民間団体で、しかもこの団体に直接害が及んでいる訳でもないため、削除を要請できる訳がない。勝手に有害と思われる情報を収集して、直接削除要請などを行う民間団体があるということ自体おかしいと考えるべきであり、このような有害無益な半官検閲センターは即刻廃止が検討されて良い。このような無駄な半官検閲センターに国民の血税を流すことは到底許されないのであって、その分できちんとした取り締まりと削除要請ができる人員を、法律によって明確に制約を受ける警察に確保するべきである。

(4)児童ポルノ規制について
 第14~第15ページの「第5 2.(2)事業者や民間団体の効果的な閲覧防止策の検討支援」において、児童ポルノサイトブロッキングの検討を支援するとしているが、総務省なり警察なり天下り先の検閲機関・自主規制団体なりの恣意的な認定により、全国民がアクセスできなくなるサイトを発生させるなど、絶対にやってはならないことである。例えそれが何であろうと、情報の単純所持や単なる情報アクセスではいかなる被害も発生し得えないのであり、自主的な取組という名目でいくら取り繕おうとも、憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないサイトブロッキングは導入されてはならないものである。

 また、例えそれが児童ポルノであろうと、情報の単純所持・アクセス・ダウンロード・収集・取得・閲覧等の規制・犯罪化は、恣意的にしか運用され得ず、利用者から見て回避不能の危険極まるものであり、新たな思想犯罪を作り出す非人道的なものとして絶対導入されるべきでない。創作物の規制についても、ごく一部の国内団体等の根拠のない、保護法益すら無視した一方的な主張で、憲法で保障されている表現の自由が規制されることなどあってはならないことである。

 かえって、児童ポルノの単純所持規制・創作物規制といった非人道的な規制を導入している諸国は即刻このような規制を廃止するべきと、そもそも最も根本的なプライバシーに属し、何ら実害を生み得ない個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ること自体、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の国際的かつ一般的に認められている基本的な権利からあってはならないことであると、日本政府から国際的な場において各国に積極的に働きかけてもらいたい。

 児童ポルノの閲覧の犯罪化と創作物の規制まで求める「子どもと青少年の性的搾取に反対する世界会議」の根拠のない狂った宣言を国際動向として一方的に取り上げ、児童ポルノ規制の強化を正当化することなどあってはならない。児童ポルノ規制に関しては、最近、ドイツのバンド「Scorpions」が32年前にリリースした「Virgin Killer」というアルバムのジャケットカバーが、アメリカでは児童ポルノと見なされないにもかかわらず、イギリスでは該当するとしてブロッキングの対象となり、プロバイダーによっては全Wikipediaにアクセス出来ない状態が生じたなど、欧米では、行き過ぎた規制の恣意的な運用によって弊害が生じていることも見逃されるべきではない。アメリカにおいて、この1月に連邦最高裁で児童オンライン保護法が違憲として完全に否定され、この2月に連邦控訴裁でカリフォルニア州のゲーム規制法が違憲として否定されていることや、つい最近からのドイツ国会への児童ポルノサイトブロッキング反対電子請願(https://epetitionen.bundestag.de/index.php?action=petition;sa=details;petition=3860)に既に8万筆を超える数の署名が集まっていることなども注目されるべきである。政府・与党内の検討においては、このような国際動向もきちんと取り上げるべきであり、一方的な見方で国際動向を決めつけることなどあってはならない。

(5)基本計画素案全体について
 そもそも、フィルタリングサービスであれ、ソフトであれ、今のところフィルタリングに関するコスト・メリット市場が失敗していない以上、かえって必要なことは、不当なフィルタリングソフト・サービスの抱き合わせ販売の禁止によって、消費者の選択肢を増やし、利便性と価格の競争を促すことだったはずである。一昨年から昨年にかけて大騒動になったあげく、ユーザーから、ネット企業から、メディア企業から、とにかくあらゆる者から大反対されながらも、有害無益なプライドと利権の確保を最優先する一部の議員と官庁の思惑のみから成立した今の青少年ネット規制法による規制は、一ユーザー・一消費者・一国民として全く評価できないものであり、次の法改正の検討時には速やかに法律の廃止が検討されるべきであり、この基本計画において、今後、青少年ネット規制法の廃止を速やかに検討すると明記してもらいたい。

 また、出会い系サイト規制法の改正は、警察庁が、どんなコミュニケーションサイトでも人は出会えるという誰にでも分かることを無視し、届け出制の対象としては事実上定義不能の「出会い系サイト事業」を定義可能と偽り、改正法案の閣議決定を行い、法案を国会に提出したものであり、他の重要法案と審議が重なる中、国会においてもその本質的な問題が見過ごされて可決され、成立したものである。憲法上の罪刑法定主義や検閲の禁止にそもそも違反している、今回の出会い系サイト規制法の改正については、今後、速やかに元に戻すことが検討されるべきである。

 なお、青少年ネット規制法の規制は、フィルタリングソフト・サービスの不当な抱き合わせ販売を助長することにつながる恐れが強く、政府全体で、特に公正取引委員会において、規制を理由にした不当な便乗商法に対する監視を強めるべきであり、フィルタリングソフト・サービスの不当な抱き合わせ販売について独禁法の適用が検討されるべきである。出会い系サイト規制法は、その曖昧さから別件逮捕のツールとして使われ、この制度によって与えられる不透明な許認可権限による、警察の出会い系サイト業者との癒着・天下り利権の強化を招く恐れが極めて強い。これらの危険な法律の運用については慎重の上に慎重が期されるべきである。

 政府与党にあっては今までの行いを猛省し、今後は、これらの法律の廃止・元の形への再改正の検討とともに、恣意的な運用しか招きようのない危険な規制強化の検討ではなく、ネットにおける各種問題は情報モラル・リテラシー教育によって解決されるべきものという基本に立ち帰り、主として、基本計画素案の他の項目に書かれているような、各種の地道な教育・啓発に関する施策のみに注力する検討が進むことを期待する。

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2009年4月29日 (水)

第170回:内閣府・「青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための施策に関する基本的な計画(素案)」に対するパブコメ募集

 青少年ネット規制法第12条に書かれている「基本計画」の素案が5月25日〆切でパブコメにかかった。(電子政府の該当ページ意見募集要領(pdf)素案概要(pdf)基本計画素案本文(pdf)internet watchの記事参照。なお、パブコメの対象ではないようだが、基本計画の作成と推進のための「幹事会の設置について(pdf)」なるペーパーも一緒に公表されている。)

 対応する有識者会議が違うためか(この素案に対応している会議は「青少年インターネット環境の整備等に関する検討会」である)、児童ポルノの規制強化について既にデタラメな与野党案が両方とも国会に提出されている状態で安心しているのか、何かの空気を読んでいるのか、何故か良く分からないが、この基本計画素案(pdf)は、以前の、共謀罪早期導入や児童ポルノ規制強化を謳う内閣府の犯罪計画案(第133回参照)や、ロリコンを思想犯罪化し、国民の情報・表現・思想等々の最も基本的な精神的自由と安全を脅かすと宣言して来た総務省の違法有害報告書案(第135回参照)と比べると、危険な項目は少なく、格段に規制強化色は薄くなっている。基本的に情報モラル・リテラシー教育/啓発運動とフィルタリングの導入促進を中心とした地道な取り組みを推進するとしているもので、最近出された役所のネット規制絡みのペーパーとしては格段に出来が良い。(無論、比較の問題で今までが非道すぎただけの話であり、上の検討会の4月7日(第4回)の資料(pdf)によると、素案の後に本格的な案を作るようなので、次の案でより非道い項目を追加してくるという可能性も否定できないが。)

 出来が良いとは言っても、総務省関係では、第8ページの、

(2)インターネット利用者・事業者の主体的な活動への支援
 地球温暖化防止の国民運動として取り組まれている「チーム・マイナス6%」のように、インターネット利用者・事業者などが自らインターネットの利用環境整備に向け具体的に取り組むことを決め、ロゴマークなどを用いてそれを明らかにし、実践するなどの、取組主体の更なる広がりを促進する活動を支援する。

といった記載や、第13ページの、

5.その他のインターネットの利用環境整備に向けた活動に対する支援
 産学連携した自主的取組を推進する民間団体である安心ネットづくり促進協議会等のインターネットの利用環境整備に向けた活動を支援する。

といった記載で触れられている、安心ネットづくり(第137回参照)の話や、第10ページの、

(2)携帯電話・PHSのフィルタリングの閲覧制限対象の適正化支援
 携帯電話・PHSのフィルタリングサービスにより、青少年有害情報に該当しない情報まで閲覧を制限されることがないよう、民間の第三者機関による青少年保護に配慮した運営体制等をとるウェブサイトを認定する取組等を支援する。

というブラックリスト商法の正当化(第139回参照)の話については、繰り返し釘を差しておきたいと思うし、警察庁関係では、これもいつも通りだが、第10ページの、

3.フィルタリング提供事業者による閲覧制限対象の把握の支援
 フィルタリングによる閲覧制限対象の把握を支援するため、インターネット・ホットラインセンターが一般利用者から通報されたウェブサイトのURL情報を、フィルタリング提供事業者へ継続的に提供することを支援する。

といった記載や、第14ページの、

(1)インターネット・ホットラインセンターを通じた削除等の対応依頼推進
 インターネット上に氾濫する違法情報・有害情報への対策を進めるため、インターネット・ホットラインセンターを通じた、インターネット上の違法情報・有害情報の削除依頼を推進するとともに、いわゆる出会い系サイトや会員制サイト等における違法情報のインターネット・ホットラインセンターへの通報が促進されるよう、サイバーパトロール業務の民間委託を推進する。

といった記載で触れられている、半官検閲センターであるインターネット・ホットラインセンターについて、その存在自体に対する反対意見をまた出したいと思う。

 児童ポルノ規制に関しては、デタラメな与野党の案が既に両方とも国会に提出されてしまっているためか、大きくは第14ページで、

(1)取締り推進及び体制強化
 インターネットを通じた青少年等の犯罪被害の抑止に資する、いわゆる出会い系サイト上の禁止誘引行為、インターネット上の児童ポルノ事犯等サイバー犯罪の取締りを推進するとともに、これに必要な取締り体制を強化するほか、サイバー犯罪を犯した者に対する厳正な科刑を実現する。

と、単に取り締まり強化としか書かれていないものの、同ページの下から第15ページに、

(2)事業者や民間団体の効果的な閲覧防止策の検討支援
 インターネット上の児童ポルノについて、被害者である青少年の権利を保護するため、事業者及び民間団体における効果的な閲覧防止策の検討を支援する。

と、やはり、どこをどうやっても検閲にしかならないサイトブロッキングをまだ検討するとしている点は非常にタチが悪く、児童ポルノ規制強化・児童ポルノサイトブロッキングに対する反対意見も引き続き出して行く必要があると思っている。

(なお、警察が大手サイトへの閲覧防止措置要請を検討しているという話もあり(産経のネット記事参照)、青少年ネット規制法の第21条に書かれているサーバー管理者の閲覧防止措置努力義務(基本計画の第4ページでも触れられている)の運用にも注意しておいた方が良いかも知れない。)

 そもそも、これらの個別の各点以前に、本来主として情報モラル・リテラシー教育によって解決されるべきと、あらゆる者の反対を受けながら、一部の寄生議員と規制官庁の暴走のみによって成立した青少年ネット規制法など、一国民・一ユーザー・一消費者として全く評価できないものであり、基本計画において、今後、青少年ネット規制法の廃止を速やかに検討すると明記するべきであるという意見を出すつもりであるが、この基本計画の他の項目は各種の地道な教育・啓発・調査に関する取り組みが多く、どうして有害無益な法律を作る前にこうした地道な取り組みのみの推進ができなかったのかと非常に残念に思う。

 このパブコメについても、提出次第ここに載せるつもりである。

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2008年11月27日 (木)

第134回:内閣官房・「犯罪に強い社会の実現のための新たな行動計画(仮称)」(案)に対する提出パブコメ

内閣官房の「「犯罪に強い社会の実現のための新たな行動計画(仮称)」(案)に対して意見を提出したので、ここに載せておく。

(以下、提出パブコメ)

1.氏名及び連絡先
氏名:兎園(個人)
連絡先:

2.概要
(1)児童ポルノを理由とした新たな規制、特に単純所持規制・創作物規制の検討に反対する。
(2)青少年ネット規制法の廃止及び出会い系サイト規制法の法改正前の形への再改正を求める。
(3)インターネット・ホットラインセンターの廃止を求める。
(4)国際組織犯罪防止条約及びサイバー犯罪条約の締結のための法改正案に反対するとともに、これらの条約の締結に反対する。
(5)模倣品・海賊版拡散防止条約の検討において、プライバシーや情報アクセスの権利といった基本的権利を守るとする条項をこの条約に盛り込むよう日本から各国に積極的に働きかけることを求める。
(6)各種の重要政策に関するパブコメについて、必ず、十分な周知策と、最低でも1ヶ月ほどの期間を取るようにしてもらいたい。今後は、恣意的な運用しか招きようのない危険な規制強化の検討ではなく、地道な施策の検討が進むことを期待する。

3.意見及び理由
(1)児童ポルノ規制について
意見:
 児童ポルノを理由とした新たな規制、特に単純所持規制・創作物規制の検討に反対する。
 特に、児童ポルノに関して新たな規制は必要なく、第6ページの項目「第1-5-③ 児童ポルノ対策等の推進」中の「新たな規制を検討する」という記載を削除するべきである。もし検討に関する記載を残すのであれば、現行でも広すぎる児童ポルノの定義の厳格化のみを検討するとするべきである。

理由:
 児童ポルノ規制の推進派は常に、提供による被害と単純所持を混同する狂った論理を主張するが、例えそれが児童ポルノであろうと、情報の単純所持ではいかなる被害も発生し得えない。現行法で、ネット上であるか否かにかかわらず、提供及び提供目的の所持まで規制されているのであり、提供によって生じる被害と所持やダウンロード、取得、収集との混同は許され得ない。
 同じく推進派は「性的好奇心を満たす目的で」等の精神的要件で単純所持が限定できるとしきりに繰り返すが、一人しか行為に絡まない、個人的な情報の所持や情報アクセスに関する限り、「性的好奇心を満たす目的で」、「みだりに」などの精神的要件は、エスパーでもない限り、証明も反証もできないものであり、法律上の要件として客観性を全く欠き、恣意的な運用しか生みようがない危険極まりないものである。このような情報の単純所持規制の危険性は回避不能であり、罪刑法定主義にも反する。閲覧とダウンロードと所持の区別がつかないインターネットにおいては、例え児童ポルノにせよ、情報の単純所持規制はすることは有害無益かつ危険なもので、憲法及び条約に規定されている「知る権利」を不当に害するものである。そもそも、最も根本的なプライバシーに属する個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ることは、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の基本的な権利からあってはならないことである。
 また、アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現に対する規制対象の拡大は、児童保護という当初の法目的を大きく逸脱する、異常規制に他ならない。アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現において、いくら過激な表現がなされていようと、それが現実の児童被害と関係があるとする客観的な証拠は何一つない。いまだかつて、この点について、単なる不快感に基づいた印象批評と一方的な印象操作調査以上のものを私は見たことはないし、虚構と現実の区別がつかないごく一部の自称良識派の単なる不快感など、言うまでもなく一般的かつ網羅的な表現規制の理由には全くならない。アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現が、今の一般的なモラルに基づいて猥褻だというのなら、猥褻物として取り締まるべき話であって、それ以上の話ではない。どんな法律に基づく権利であれ、権利の侵害は相対的にのみ定まるものであり、実際の被害者の存在しない創作物・表現に対する規制は何をもっても正当化され得ない。民主主義の最重要の基礎である表現の自由や言論の自由、思想の自由等々の最も基本的な精神的自由そのものを危うくすることは絶対に許されない。
 単純所持規制にせよ、創作物規制にせよ、両方とも1999年当時の児童ポルノ法制定時に喧々囂々の大議論の末に除外された規制であり、規制推進派が何と言おうと、これらの規制を正当化するに足る立法事実の変化はいまだに何一つない。極めて危険な単純所持規制を含む上、創作物規制などさらなる規制強化の含みすら持たせてある、現国会で継続検討中の、与党から提出されている児童ポルノ規制法改正案は、速やかに廃案にされるべきである。
 警察なりの恣意的な認定により、全国民がアクセスできなくなるサイトを発生させるなど、絶対にやってはならないことであり、憲法で禁止されている検閲に該当するブロッキングのような規制も導入されるべきではない。
 児童ポルノ法に関しては、既に、提供・販売、提供・販売目的での所持が禁止されているのであるから、本当に必要とされることは今の法律の地道なエンフォースであって有害無益な規制強化の検討ではない。児童ポルノ規制法に関して検討すべきことがあるとしたら、現行ですら曖昧な児童ポルノの定義の厳密化のみである。

(2)青少年ネット規制法及び出会い系サイト規制法について
意見:

 青少年ネット規制法の廃止及び出会い系サイト規制法の法改正前の形への再改正を求める。
 特に、第6ページの項目「第1-5-④ 少年を取り巻く有害環境の浄化」において、青少年ネット規制法の運用に関し、政府全体で規制を理由にした不当な便乗商法に対する監視を強めると明記し、出会い系サイト規制法の運用について、「インターネット異性紹介事業」の定義を、サイトの運営方針及びシステムから出来る限り客観的に判断し、この法律を別件逮捕のツールとしないと明記するべきである。
 また、第25ページの項目「第5-1-② インターネット上の有害情報から青少年を守るための対策の推進」中の、基本的な計画について、きちんと十分な期間を取ってパブコメにかけてもらいたい。
 そして、第26ページの項目「第5-1-④ 違法・有害情報への対応の検討」において、制定・改正経緯におけるきちんとした立法事実の無検討・憲法違反の看過を踏まえ、青少年ネット規制法の廃止及び出会い系サイト規制法の法改正前の形への再改正の検討を速やかに行うと明記するべきである。

理由:
 そもそも、フィルタリングサービスであれ、ソフトであれ、今のところフィルタリングに関するコスト・メリット市場が失敗していない以上、かえって必要なことは、不当なフィルタリングソフト・サービスの抱き合わせ販売の禁止によって、消費者の選択肢を増やし、利便性と価格の競争を促すことだったはずである。去年から今年にかけて大騒動になったあげく、ユーザーから、ネット企業から、メディア企業から、とにかくあらゆる者から大反対されながらも、有害無益なプライドと利権の確保を最優先する一部の議員と官庁の思惑のみから成立した今の青少年ネット規制法による規制は、一ユーザー・一消費者・一国民として全く評価できないものであり、次の法改正の検討時には速やかに法律の廃止が検討されるべきである。
 また、出会い系サイト規制法の改正は、警察庁が、どんなコミュニケーションサイトでも人は出会えるという誰にでも分かることを無視し、届け出制の対象としては事実上定義不能の「出会い系サイト事業」を定義可能と偽り、改正法案の閣議決定を行い、法案を国会に提出したものであり、他の重要法案と審議が重なる中、国会においてもその本質的な問題が見過ごされて可決され、成立したものである。憲法上の罪刑法定主義や検閲の禁止にそもそも違反している、今回の出会い系サイト規制法の改正については、今後、速やかに元に戻すことが検討されるべきである。
 特に、青少年ネット規制法の規制は、フィルタリングソフト・サービスの不当な抱き合わせ販売を助長することにつながる恐れが強く、政府全体で、特に公正取引委員会において、規制を理由にした不当な便乗商法に対する監視を強めるべきであり、フィルタリングソフト・サービスの不当な抱き合わせ販売について独禁法の適用が検討されるべきである。出会い系サイト規制法は、その曖昧さから別件逮捕のツールとして使われ、この制度によって与えられる不透明な許認可権限による、警察の出会い系サイト業者との癒着・天下り利権の強化を招く恐れが極めて強い。これらの危険な法律の運用については慎重の上に慎重が期されるべきである。
 政府与党にあっては今までの行いを猛省し、法律の廃止・元の形への再改正の検討とともに、ネットにおける各種問題は情報モラル・リテラシー教育によって解決されるべきものという基本に立ち帰り、主として、第26ページの項目「第5-1-③ 情報モラル教育及び広報啓発活動の推進」に記載されていることに注力してもらいたい。

(3)インターネット・ホットラインセンターについて
意見:

 インターネット・ホットラインセンターの廃止を求める。
 特に、第26ページの項目「第5-2-① インターネット・ホットラインセンターの体制強化等の推進」中、「インターネット・ホットラインセンターの体制を強化し、サイバーパトロールの民間委託等を推進する」という記載を削除するべきである。もしインターネット・ホットラインセンターに関する記載を残すのであれば、その廃止を検討するとするべきである。

理由:
 サイト事業者が自主的に行うならまだしも、何の権限も有しないインターネット・ホットラインセンターなどの民間団体からの強圧的な指摘により、書き込みなどの削除が行われることなど本来あってはならないことである。このようなセンターは単なる一民間団体で、しかもこの団体に直接害が及んでいる訳でもないため、削除を要請できる訳がない。勝手に有害と思われる情報を収集して、直接削除要請などを行う民間団体があるということ自体おかしいと考えるべきであり、このような有害無益な半官検閲センターは即刻廃止が検討されて良い。
 インターネットホットラインセンターは警察庁からの受託金収入で運営されているとの話もあり、無駄な天下り団体として税金の浪費になっている可能性が高い。このような無駄な半官検閲センターに国民の血税を流すことは到底許されないのであって、その分できちんとした取り締まりと削除要請ができる人員を、法律によって明確に制約を受ける警察に確保するべきである。

(4)国際組織犯罪防止条約・サイバー犯罪条約及びこれらの締結に必要な法改正について
意見:

 現時点で国会に提出されている、国民の基本的な権利に対する致命的な問題を抱えていると考えられる、国際組織犯罪防止条約及びサイバー犯罪条約の締結のための法改正案に反対するとともに、やはり国民の基本的な権利に対する致命的な問題を抱えていると考えられる、これらの条約の締結に反対する。
 特に、第19ページの項目「第3-4-⑥ 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約の締結に向けた法整備」、第28ページの項目「第5-3-② サイバー犯罪に関する条約の締結に向けた法整備等の推進」の両項目は削除するべきである。もしこれらの条約及び法改正に関する記載を残すのであれば、憲法に規定されている国民の基本的な権利との関係から、現時点で国会に提出されている法改正案については廃案とすることを検討し、日本としてこれらの条約の締結をしないことを検討するとするべきである。

理由:
 国際組織犯罪防止条約の締結には、共謀罪の創設が必要とされているが、現状でも大規模テロなどについてはすでに殺人予備罪があるので共謀罪がなくとも対応でき、その他、個別の立法事実があればそれに沿った形で個別の犯罪についての予備罪の適否を論ずるべきであって、広範かつ一般的な共謀罪を創設する立法事実はない。実行行為に直接つながる行為によって、法益侵害の現実的危険性を引き起こしたからこそ処罰されるという我が国の刑法学の根幹を揺るがすものである共謀罪は、決して導入されてはならない。組織要件の厳密化にしても、今現在国会に提出されている修正案のような、その目的や意思のみによる限定は客観性を全く欠き、やはり恣意的な運用しか招きようのない危険なものである。このような危険な法改正を必要とする国際組織犯罪防止条約は日本として締結するべきものではない。
 サイバー犯罪条約は、通信記録や通信内容等の情報の保全・捜索・押収・傍受等について広範かつ強力な手段を法執行機関に与えることを求めているが、このような要請は、我が国の憲法に規定されている国民の基本的な権利に対する致命的な侵害を招くものであり、この条約も日本として締結するべきものではない。現国会に提出されている法改正案中でも、差し押さえるべき物がコンピューターである場合には、このコンピューターと接続されているあらゆる記録媒体とそこに記録されている情報を差し押さえ可能であるとされているが、昨今のインターネットの状況を考えると、差し押さえの範囲が過度に不明確になる懸念が強く、裁判所の許可無く捜査機関が通信履歴の電磁的記録の保全要請をすることが出来るとしている点も、捜査機関による濫用の懸念が強く、このような刑事訴訟法の枠組みの変更は、通信の秘密やプライバシー、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がない限り、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利、といった我が国の憲法に規定されている国民の基本的な権利に対する致命的な侵害を招くものと私は考える。また、ウィルス作成等に関する罪についても、「人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える」電磁的記録という要件は、客観性のない人の意図を要件にしている点でやはり曖昧に過ぎ、このような客観性のない曖昧な要件でウィルス作成等に関する刑罰が導入されるべきではない。
 現国会でも継続審議とされているが、このように危険な点が多く含まれている法改正案は廃案とするべきであり、留保・解釈を最大限に活用しても、憲法に規定されている国民の基本的な権利に対する致命的な侵害を招くことになるだろう、これらの条約は、日本として締結するべきものではない。

(5)模倣品・海賊版拡散防止条約について
意見:

 模倣品・海賊版拡散防止条約の検討において、プライバシーや情報アクセスの権利といった基本的権利を守るとする条項をこの条約に盛り込むよう日本から各国に積極的に働きかけることを求める。
 特に、第5ページの項目「第1-4-⑤ 模倣品・海賊版対策の推進」にこのことを明記するべきである。

理由:
 そのような条項がよもや真面目に検討されることはないと思うが、どこかの国が、税関において個人のPCや携帯デバイスの内容をチェック可能とすることや、インターネットで著作権検閲を行う機関を創設することといった、個人の基本的な権利をないがしろにする条項をこの条約に入れるよう求めて来る懸念がある。そのような非人道的な条項の検討による有害無益な混乱を避けるため、そのような条項は除くべきであると、かえって、プライバシーや情報アクセスの権利といった国際的・一般的に認められている個人の基本的な権利を守るという条項こそ条約に盛り込むべきであると日本から各国に積極的に働きかけてもらいたい。

(6)報告書全体・パブコメそのものについて
意見:

 各種の重要政策に関するパブコメについて、必ず、内容に関する十分な周知策と、最低でも1ヶ月ほどの期間を取るよう政府は厳に自戒してもらいたい。
 今後は、恣意的な運用しか招きようのない危険な規制強化の検討ではなく、地道な施策の検討が進むことを期待する。

理由:
 上で述べたように、このように危険な検討項目を多く計画に書き込み、その内容に関して十分な周知もしないままに、11日間という短期間でパブコメを終了し、その方向性を既成事実化しようとしたことは、あまりにも国民をないがしろにしており、到底許せるものではなく、私は、一国民として政府のこのような行為に対する猛省を求める。今後は、各種重要政策に関する計画について、必ず、その内容について十分な周知策が取られるとともに、最低でも1ヶ月ほどのパブコメ期間を取るよう、政府は厳に自戒してもらいたい。
 今後は、政府において、この計画において私が指摘した項目における検討のような、恣意的な運用しか招きようのない危険極まりない規制強化の検討ではなく、地道な施策の検討が進むことを期待する。
 最後に、「頂いたコメントを重く受け止めて推進する」などという官僚の遁辞を私は求めているのではないと、この意見中で反対すると書いた点については、その方向性に完全に反対しているのだと念を押しておく。

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2008年11月23日 (日)

第133回:内閣官房・「犯罪に強い社会の実現のための新たな行動計画(仮称)」(案)に対するパブコメ募集(11月28日〆切)

 内閣官房が「犯罪に強い社会の実現のための新たな行動計画(仮称)」(案)に対するパブコメを11月28日〆切で募集している(内閣官房のリリース本文(pdf)電子政府の該当HP)。

 既に、「表現の数だけ人生が在る」や「王様を欲しがったカエル」、「情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)2つめの関連エントリ)」、「チラシの裏(3週目)」、「カルトvsオタクのハルマゲドン/カマヤンの虚業日記」等でも取り上げられており、重なるところもあるが、このパブコメもまた政府に対して意見を言う重要な機会の一つと思うので、ここでも取り上げたいと思う。(taffy様、情報ありがとうございます。)

 この11日間という短期間で国民の意見を聞いたことにする姑息さもさることながら、その内容は、平成15年当時の「犯罪に強い社会の実現のための行動計画(pdf)」と比べても格段に危険な項目が増えている。対応会議は犯罪対策閣僚会議開催状況)となっているが、内容のメインライターは警察庁だろう。危険な規制強化を主導しているのが警察そのものであることに、不安は募るばかりである。

(1)表現・情報規制関係項目
 まず、第6ページに、以下のような児童ポルノ規制法に関する記載がある。(以下、全て赤字・強調は私が付けたもの。)

第1-5-③ 児童ポルノ対策等の推進(第6ページ)
 最新の技術を駆使した児童ポルノ事犯に対処するため、国際的な動向を踏まえ、捜査に携わる警察職員の技能水準の向上、体制や資機材の強化を図るとともに、インターネットを介して売買される児童ポルノの根絶を図るため、買受捜査を一層強化する。また、児童ポルノの排除に向けた国民運動を展開するとともに、国民の意識調査や諸外国の規制調査等を行い、児童ポルノに対する新たな規制について検討する

特に、児童ポルノに対する新たな規制について検討するとされていることは度し難い。児童ポルノについて新たな規制は必要ないのであり、ここについては、単純所持規制・創作物規制に対する反対とともに、新たな規制の検討をしないようにすること、かえって必要なことは児童ポルノの定義の厳格化であると釘を差しておきたい。

 また、同第6ページと、第25~26ページには、フィルタリング義務化を軸とする青少年ネット規制法や出会い系サイト規制法に関する以下のような言及がある。

第1-5-④ 少年を取り巻く有害環境の浄化(第6ページ)
 「青少年の非行問題に取り組む全国強調月間」や「全国青少年健全育成強調月間」において、「有害環境の浄化」を重点項目の一つとして、関係機関・団体と地域住民等とが相互に協力・連携を図りつつ各種取組を進めるとともに、有害環境の浄化を図るなどの各種取組を集中的に実施するよう広報・啓発活動を実施する。また、青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律に基づく取組を推進するとともに、出会い系サイトその他のサイトの利用に起因する児童の犯罪被害を防止するため、インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律の効果的な運用及びサイト事業者による自主的な取組を推進する。さらに、フィルタリング事業者、保護者等に対する犯罪情報の提供を促進する

第5-1-② インターネット上の有害情報から青少年を守るための対策の推進(第25ページ)
 青少年が安全に安心してインターネットを活用できる環境の整備等に関する法律に基づき、インターネット青少年有害情報対策・環境整備推進会議を設置し、青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための施策に関する基本的な計画を策定するとともに、同計画に基づき、フィルタリングの普及促進、インターネットの適切な利用に関する教育及び保護者等に対する広報啓発を推進する。また、フィルタリングの性能及び利便性の向上に向けた事業者の取組を支援し、青少年がインターネットを利用する場合におけるフィルタリングの更なる導入促進を図る。

第5-1-③ 情報モラル教育及び広報啓発活動の推進(第26ページ)
 地域、家庭及び学校における情報モラル教育の推進のため、保護者等を対象とした講座を通信事業者等と連携して全国で実施し、インターネット上の違法・有害情報の現状及びフィルタリングの重要性等に関する理解向上を図る。また、違法・有害情報対策に関する情報提供サイトの構築・充実化等を行い、効果的な情報提供に努める。さらに、小中学校の新学習指導要領において、各教科等の指導において、情報モラルを身に付けることを新たに規定するなど、義務教育において情報モラル教育の充実を図ることとし、各教科等における具体的な指導に当たって教員の参考となる手引きの作成、情報モラルの指導実践事例等を紹介する教員向けのウェブサイトの普及等により、新学習指導要領の円滑かつ確実な実施を図る。

第5-1-④ 違法・有害情報への対応の検討(第26ページ)
 青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律の施行状況等を踏まえ、インターネット上の違法・有害情報対策の在り方について検討する

本来主として情報モラル・リテラシー教育によって解決されるべきと、あらゆる者の反対を受けながら、一部の寄生議員と規制官庁の暴走のみによって成立した青少年ネット規制法など、一国民・一ユーザー・一消費者として全く評価できないものである。これらの法律の運用においては慎重の上に慎重を期すとともに、情報モラル・リテラシー教育にこそ注力し、今後の検討においては、青少年ネット規制法の廃止及び出会い系サイト規制法の改正前の形への再改正が速やかに検討されるべきであるとする意見を出すつもりである。また、裁判で有罪が確定した等の事情により公開情報となっているものであれば良いだろうが、通常役所が業務上知り得た情報を、そのまま外に流すことには法律とモラル上極めて大きな問題があるのであり、フィルタリング事業者等への犯罪情報の提供についても注意しておきたいところである。(この点については、青少年ネット規制法施行令案への提出パブコメ出会い系サイトに関する警察庁研究会報告書に対する提出パブコメ出会い系サイト規制法ガイドラインに対する提出パブコメなども参照頂ければと思う。)

 また、本当に自主的な取組の支援はともかく、やはり第26ページの「2 違法・有害情報を排除するための自主的な取組への支援」内の、

第5-2-① インターネット・ホットラインセンターの体制強化等の推進(第26ページ)
 インターネット上に氾濫する違法・有害情報により効果的に対応するため、インターネット・ホットラインセンターの体制を強化し、サイバーパトロールの民間委託等を推進するとともに、違法・有害情報の削除等の措置を講じるサイト管理者、サーバ管理者及び通信事業者に関する法的責任の負担軽減方策や自主的対応への支援の在り方について検討する。また、有害情報簡易通報システムの開発・実証等により、サイト管理者、インターネット関連事業者、NPO、利用者等が協力して、違法・有害情報を効率的に特定・選別できる環境の整備を図る。

というインターネットホットラインセンターの体制強化だけはいただけない。警察庁研究会提出パブコメでも書いたが、勝手に有害と思われる情報を収集して、直接削除要請などを行う民間団体があるということ自体おかしいと考えるべきであり、このような有害無益な半官検閲センターは即刻廃止が検討されて良いと私は考えているのである。

 また、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(翻訳条文(pdf)外務省の説明書(pdf)外務省の解説HP)と、サイバー犯罪に関する条約(翻訳条文(pdf)外務省の説明書(pdf))に関する話が、それぞれ第19ページと第28ページに載っている。

第3-4-⑥ 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約の締結に向けた法整備(第19ページ)
 近年急速に複雑化・深刻化している国際組織犯罪に適切に対処するため、平成15年9月に発効した国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約について、我が国においても、本条約の締結に伴う法整備を早期に完了させ、本条約の速やかな締結を目指す

第5-3-② サイバー犯罪に関する条約の締結に向けた法整備等の推進(第28ページ)
 情報技術分野の急速な発達に伴い急増したサイバー犯罪に適切に対処するため、平成16年7月に発効したサイバー犯罪に関する条約について、我が国においても、法整備を早期に完了させ、速やかな締結を目指す

国際組織犯罪防止条約は、Wiki(条約共謀罪)にも書かれているように、共謀罪の創設などが絡み、サイバー犯罪条約は、2004年の日弁連の意見書にも書かれているように、人権保障の観点から、国民のプライバシーや通信の秘密に対する重大な制約となる危険性が大きい。これらの条約を締結するための法改正は内閣提出法案として、第159回国会に提出された後、第163回国会に再提出され、今なお継続審議中概要(pdf)要綱(pdf)新旧対照条文(pdf)理由(pdf)法改正案(改め文pdf)修正案1修正案2修正案3)である。これらの条約や法案への突っ込みも書き出すと切りがないのだが、これらについては、刑法の根幹に関わる話であり、プライバシーや通信の秘密などの国民の基本的な権利が危うくなる懸念が非常に強く、今のまま法案が通され、条約を締結するべきではないと私も考えている。

(2)知財関係項目
 本来、このブログの主旨からすると、こちらの方がメインになるはずだが、第5ページには、模倣品・海賊版対策条約の話が出ている。

第1-4-⑤ 模倣品・海賊版対策の推進(第5ページ)
 模倣品・海賊版の氾濫による知的財産の侵害を阻止し、消費者の安心・安全が損なわれることを防ぐため、「模倣品・海賊版拡散防止条約(仮称)」構想の早期実現に向けた取組を加速するとともに、「知的財産推進計画2008」(平成20年6月18日知的財産戦略本部決定)に基づき、外国市場対策の強化、水際及び国内での取締りの強化、国民の理解促進、官民連携体制の強化等を図る。また、国境を越えて氾濫するインターネットを利用した模倣品・海賊版については、国内の取締りを強化するだけでなく、海外の模倣品・海賊版の通信販売サイト等の取締りを強化するよう国際社会への働き掛けを推進する。

この条約に関しては、具体的な話が良く分からないので、何とも言えないところがあるのだが、知財本部への提出パブコメに書いたように、プライバシーや情報アクセスの権利といった基本的権利を守るとする条項をこの条約に盛り込むよう日本から各国に積極的に働きかけてもらいたいということを、念のため、ここでも指摘しておきたいと思う。

(3)その他
 知財はおろか、表現・情報規制とも関係なくなってしまうが、ついでに、他にも最近騒がれていることと関連していくつか目に付いた項目をピックアップしておくと、第14ページには、「2 新たな在留管理制度による不法滞在者等を生まない社会の構築」として、以下のような項目が並んでいる。

① 新たな在留管理制度の創設
② 円滑かつ厳格な出入国審査の実施
③ 入国・在留審査等に際しての日本語能力の考慮
④ 不法滞在者の摘発強化と退去強制の効率化
⑤ 不法滞在者等の排除のための新たな在留管理制度の効果的な運用
⑥ 不法入国等及びこれらを助長する犯罪等の取締り強化及び関係法令の整備

 直接国籍法改正の話が書いてある訳ではないが、偽装認知をどう防ぐかということは法改正だけではなく法運用の問題でもあり、国籍法改正問題・在留管理制度問題に興味を持っている方は、ここにもパブコメを出しておいても良いのではないかと思う。

 また、第22ページには、

第4-3-① 厳格な銃砲刀剣類行政の推進(第22ページ)
 法制度の整備を含め、猟銃等の所持許可の厳格な審査及び不適格者の発見と排除を徹底するとともに、実包を含めた保管管理の適正化を図る。また、事故等を防止するため、所持者に対し、講習会等の機会を通じて、適切な使用、保管の指導を行う。さらに、厳格な銃砲刀剣類行政を推進する基盤を築くため、銃砲登録照会業務の高度化を図るとともに、銃砲刀剣類行政に携わる担当者の教育の充実等を図る。

と、銃砲刀類に関する法制度の整備の話が書かれ、さらに、知財の海賊でない本物の海賊対策について、第33ページに、

第6-7-② 海賊対策の強化(第33ページ)
 従来からの東南アジア周辺海域における海賊対策に加え、近年のソマリア沖・アデン湾等の被害の状況等を踏まえ、これを抑止し取り締まるため、法制度上の枠組みの検討を含め、関係省庁が連携して各種対策を推進する。

という項目がある。それぞれ、ダガー規制問題や自衛隊海外派遣問題などについて関心がある方も、この計画へパブコメを出しておいて損はないだろう。

 政府が山のように似たようなパブコメをロクな周知もなく極短期間で募集することにも怒りを覚えるが、安全な国を作ると称して、国民の基本的な権利まで危うくする不当な規制強化を押し進め、国をより危険にしようとして恬として恥じない天下り役人と寄生議員のやり口には、本当に憤りしか覚えない。

 また、提出次第、私のパブコメはここに載せたいと思っている。

(11月26日の追記:模倣品対策条約に関する項目番号が間違っていたことに気がついたので訂正した:第1-1-⑤→第1--⑤。)

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2008年11月14日 (金)

第131回:青少年インターネット規制法の施行令案に対する意見

 青少年ネット規制法の施行令案についても意見を提出したので、ここに載せておく。

(問い合わせてみたところ、インターネット提出フォームが再開された。フォームが一時停止していたのは、どうやら何かのミスだったらしい。)

(以下、提出パブコメ)

 意見募集の対象とされている「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律施行令(案)」では、法律で定められている各種義務の例外を定める要件の中に契約者数あるいは販売台数の要件が含まれており、インターネットサービスプロバイダーの場合で契約者数5万未満と、インターネット接続機器メーカーの場合で、経済産業省告示で定める種類毎の機器の前年度販売数1万台未満と定めているが、関連資料を読んでもこれらの数値の根拠は全く不明確である。

 まず、総務省の規制事前評価書には、この規制事前評価書には契約者5万という数字の根拠が書かれていない。さらに、利用者に追加コストが発生しないとしている点も全く賛同できない。プロバイダー等に「青少年有害情報フィルタリングソフトウェア又は青少年有害情報フィルタリングサービスを提供(紹介)することが求められるため、事務手続の見直しや適切なサポート体制構築のための費用が発生する。また、自ら青少年有害情報フィルタリングサービスを新たに提供する場合には、そのための費用も必要となる」のであれば、プロバイダー等も別に慈善事業ではないのだから、そのコストは必ず利用者に転嫁されるのである。

 経産省の規制事前評価書では、販売台数基準を10万台とする案と1万台とする案を比較して1万台という案を選択しているが、10万台としたときのカバー率がPCで9割としながら、1万台としたときのカバー率を書いておらず、また、フィルタリング容易化としてどこまで追加コストが発生するのかの詳細も不明であり、一体どういう評価をしたのだか、さっぱり良く分からない。また、この規制が、PCのみならず、ブラウザを組み込んだ各種携帯デバイスなども対象となるだろうことが考慮されておらず、このような不十分な評価で安易に規制の基準を定めることは危険極まりない。

 この規制の評価において、総務省のデタラメな携帯電話フィルタリング大臣要請や経産省のPSE法のデタラメな運用によって生じた無用の社会的混乱の教訓が何ら活かされていないとしか言いようが無く、これらの両省庁にあっては、今までの姿勢を猛省し、このフィルタリング等義務化に関する事前評価を完全にやりなおし、この規制を最小限に止めることを再検討してもらいたい。また、機器の使用が十八歳以上の者に監視される蓋然性が高いと認められる場合や、細かな機種指定やを行う告示もまた非常に重要であり、この経産省告示をきちんとパブコメにかけることも私は求める。

 このフィルタリング規制が具体的にどのような影響を及ぼすかは、実際に運用されて行かないと分からないところもあるが、フィルタリングソフト・サービスの不当な抱き合わせ販売を助長することにつながる恐れが強く、政府全体で、特に公正取引委員会において、規制を理由にした不当な便乗商法に対する監視を強め、フィルタリングソフト・サービスの不当な抱き合わせ販売について独禁法の適用を検討してもらいたい。

 しかし、そもそも、フィルタリングサービスであれ、ソフトであれ、今のところフィルタリングに関するコスト・メリット市場が失敗していない以上、かえって必要なことは、不当なフィルタリングソフト・サービスの抱き合わせ販売の禁止によって、消費者の選択肢を増やし、利便性と価格の競争を促すことだったはずである。去年から今年にかけて大騒動になったあげく、ユーザーから、ネット企業から、メディア企業から、とにかくあらゆる者から大反対されながらも、有害無益なプライドと利権の確保を最優先する一部の議員と官庁の思惑のみから成立した今の青少年ネット規制法による規制は、一ユーザー・一消費者・一国民として全く評価できないものであり、次の法改正の検討時には速やかに法律の廃止が検討されてしかるべきである。

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2008年10月22日 (水)

第121回:青少年ネット規制法の施行令案パブコメ募集

 大騒動になったあげく、ユーザーから、ネット企業から、メディア企業から、とにかくあらゆる者から大反対されながらも、有害無益なプライドと利権の確保を最優先する寄生議員と規制官庁の思惑のみから成立した法律が青少年ネット規制法(正式名称は、「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」)であるが、その施行令が11月16日〆切でパブコメにかかっている(電子政府の該当ページ総務省のリリース意見募集概要意見募集要領インターネット投稿フォームITmediaの参考記事参照)。

 施行令案概要)自体は、以下のような携帯電話フィルタリング義務、PC等のフィルタリング容易化義務等について以下のような例外を定める、シンプルなものである。

○携帯電話ネット接続フィルタリング義務の例外(法律第2条第7項):

  • ブラウザによる閲覧のために提供されていない場合
  • 企業や団体に提供される場合

○インターネットサービスプロバイダー(ISP)の、申し出に応じたフィルタリングソフトあるいはサービスの提供義務の例外(法律第18条):

  • 契約者数5万未満

○インターネット接続機器メーカーの、フィルタリング容易化義務の例外(法律第19条):

  • 機器にあらかじめブラウザが組み込まれていない場合
  • 機器の使用が十八歳以上の者に目視により監視される蓋然性が高いと認められる場合として経産省告示で定める場合
  • 機器が専ら事業のために使用されると認められる場合
  • 前年度の機器の販売数量1万台未満(機器の種類は、経産省告示で指定)

 総務省が、その規制事前評価書要旨)において、自分たちの大臣要請によって生じた混乱のことも忘れ、ぬけぬけと携帯電話におけるフィルタリングは既に概ね実施されており、携帯電話事業者に大きな追加費用は発生しないと書いていることも腹立たしいが、利用者に追加コストが発生しないとしている点はさらにいただけない。「青少年有害情報フィルタリングソフトウェア又は青少年有害情報フィルタリングサービスを提供(紹介)することが求められるため、事務手続の見直しや適切なサポート体制構築のための費用が発生する。また、自ら青少年有害情報フィルタリングサービスを新たに提供する場合には、そのための費用も必要となる」のであれば、ISPも別に慈善事業ではないのだから、そのコストは必ず利用者に転嫁されるのである。5万という数字の根拠も不明である。

 経産省の規制事前評価書要旨)では、販売台数基準を10万台とする案と1万台とする案を比較して1万台という案を選択しているが、10万台としたときのカバー率がPCで9割としながら、1万台としたときのカバー率を書いておらず、また、フィルタリング容易化としてどこまで追加コストが発生するのかの詳細も不明であり、一体どういう評価をしたのだか、さっぱり良く分からない。また、この規制には、PCのみならず、ブラウザを組み込んだ各種携帯デバイスなどの機器も含まれるだろうことも忘れてはならない。細かな機種指定を行うだろう経産省告示もまたこの規制において非常に重要な意味を持ってくることに注意が必要である。

 しかし大体、フィルタリングサービスであれ、ソフトであれ、今のところフィルタリングに関するコスト・メリット市場が失敗していない以上、かえって必要なことは、不当なフィルタリングソフト・サービスの抱き合わせ販売の禁止によって、消費者の選択肢を増やし、利便性と価格の競争を促すことだろう。今の法規制は、一部の寄生議員と規制官庁の暴走の結果としか思えず、一ユーザー・一消費者・一国民として私は全く評価できない。

 このフィルタリング規制が具体的にどのような影響を及ぼすかは、実際に運用されて行かないと分からないところもあるが、どこをどう運用しても、フィルタリングソフト・サービスの不当な抱き合わせ販売を助長し、その選択肢を潰して消費者・国民全体の不利益を拡大する方向にしか、例え大した利権とならないとしても、不当な規制による不競争利益を山分けにすることをその基本構造とする、政官業の不透明な癒着による腐敗をさらに押し進める方向にしか働きようはないのではないかと私は思う。

 本来政令レベルで言うことではないのだが、私は、次の法改正時に速やかに法律の廃止が検討されるべきであるということに加え、規制を理由にした不当な便乗商法に対する監視を強め、フィルタリングソフト・サービスの不当な抱き合わせ販売については独禁法の適用を検討すること、規制対象機種を指定する経産省告示もきちんとパブコメにかけることなどを意見として出そうと考えている。(私のパブコメは提出次第ここに載せるつもりである。)

 最後に少し最近のニュースの紹介もしておくと、まず、内閣府では、「青少年インターネット環境の整備等に関する検討会」なる検討会が始まった(internet watchの記事内閣府のHP参照)。何が出てくるのか知れないが、恐らくこの検討会が、青少年ネット規制法の第12条に規定されている「青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための施策に関する基本的な計画」のベースを作りに来ると思うので、注意しておくに越したことはないだろう。

 また、スペインのExpancion.comの記事delitosinformaticos.comの記事によると、スペインではバルセロナ地裁が、検索エンジンは著作権法上合法という判断を下したようである。

 次回は、デジタルフランス2012と称する、私的複製補償金の改革を含む通信政策提案(無論、補償金問題をメインポイントとしている訳ではないが)がフランス政府から昨日(10月20日)公表された(フランス政府の公表ページITR MANAGEMENTの記事NetEcoの記事clubic.comの記事参照)ので、この話を取り上げたいと思っている。

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2008年9月 4日 (木)

第113回・警察庁・出会い系サイト規制法ガイドライン案に対する提出パブコメ

 内容は前回書いたこととあまり変わらないが、警察庁の出会い系サイト規制法ガイドライン案へのパブコメ募集に対して、下記の通り、意見を提出したので、念のためにここに載せておく。

     記

1.氏名:兎園
2.連絡先:

3.意見:
 最初に、どんなコミュニケーションサイトでも人は出会えるという誰にでも分かることを無視し、届け出制の対象としては事実上定義不能の「出会い系サイト事業」を定義可能と偽り、出会い系サイト規制強化法案の閣議決定を行い、法案を国会に提出したことに対する猛省を私は警察庁に求めたい。また、他の重要法案と審議が重なる中、国会においてもその本質的な問題が見過ごされたことは残念でならないが、憲法上の罪刑法定主義や検閲の禁止にそもそも違反している、今回の出会い系サイト規制法の改正については、今後、速やかに元に戻すことが検討されるべきである。

 定義に関するガイドラインにおいて、法律に定義されている「インターネット異性紹介事業」における「相互の連絡」を一対一の連絡に限り、連絡がサービスの中に組み込まれている必要があり、また、サイト開設者がサイトの運営方針として「異性交際希望者」を対象としてサービスを提供している必要があると、ある程度限定的に解釈しているものの、サイトの運営方針の判断は常に難しい上、第2ページに記載されているように「異性交際目的での利用を禁ずる規約等に反して利用者が異性交際目的で利用している実態がある場合でも、サイト開設者が異性交際を求める書き込みの削除や当該投稿者の利用停止措置を行っていれば、当該サイトは、基本的には「インターネット異性紹介事業」に該当しませんが、当該書き込みを知りながら放置するなど、サイト開設者がその実態を許容していると認められるときは「インターネット異性紹介事業」に該当する場合があ」るともされているのでは、このガイドラインでも恣意的な出会い系サイトの認定がされる可能性はぬぐえない。

 書き込みを知って放置したか、知らずに放置したかは必ず水掛け論になるとなるところであり、また、第4~5ページに典型例としてあげられている、極めてありふれた書き込みを放置しただけで、出会い系サイトに該当するとされる可能性があり、さらに、新法の第32条に規定されているように届け出をせずに出会い系サイト事業を行ったとしてサイト管理者が処罰される可能性まで出てくるのは本来あってはならないことである。

 本来、このようなガイドラインによって届け出の必要性を判断すること自体ナンセンスであり、今回の改正法の実運用は非常に困難であると思われるが、最低限、定義に関するガイドラインから、「異性交際目的での利用を禁ずる規約等に反して利用者が異性交際目的で利用している実態がある場合でも、サイト開設者が異性交際を求める書き込みの削除や当該投稿者の利用停止措置を行っていれば、当該サイトは、基本的には「インターネット異性紹介事業」に該当しませんが、当該書き込みを知りながら放置するなど、サイト開設者がその実態を許容していると認められるときは「インターネット異性紹介事業」に該当する場合があ」るとする記載(及び同等の記載)を削除し、「インターネット異性紹介事業」の認定は、サイトの運営方針及びシステムから出来る限り客観的に判断されるということを明確にしてもらいたい。

 特に、この法律を別件逮捕のツールとすることがないよう、また、ガイドラインの変更等によって、これ以上「インターネット異性紹介事業」の定義を広げることがないよう、警察には厳に自戒して法運用を行ってもらいたい。

 これは本来立法府に求めるべきことであるが、今後は、そもそも出会い系サイトを定義して届け出制を課すこと自体に無理があるとの認識に立ち、今回の出会い系サイト規制法の改正については、速やかに元に戻されるべきであると私は考えているということを念のためもう一度繰り返しておく。

 最後に、今回の出会い系サイト規制法改正につながった警察庁の報告書「出会い系サイト等に係る児童の犯罪被害防止の在り方について」に対して私が提出したパブコメの最終部分を以下に引用する。今後、警察においても、今回の法改正のような有害無益な施策ではなく、地道な施策の検討が進むことを期待する。

「結局、届出制の導入の提言は、本当の問題解決につながる地道な取り組みをないがしろにして、このような制度によって与えられる許認可権限によって、インターネットホットラインセンターのような存在意義自体怪しい天下り団体を通じた不透明な行政指導を正当化し、出会い系サイト業者との癒着と天下り利権の強化を図ろうとする警察官僚の悪辣なたくらみを露骨に反映したものとしか思われない。このような社会全体にとって全く有害無益な規制の導入は、一国民として到底承伏することはできないものである。

 最後に、出会い系サイトの問題を放置するべきだなどということを言いたいがために、このパブコメを書いている訳ではないことを示すために、このような有害無益な報告書の提言の替わりに、以下のような地道な施策を私はここで提案する。

①現行の出会い系サイト規制法の運用においても、これが過度の規制とならないように気をつけること。そもそも出会い系サイトの定義が本質的には不可能であることを考え、現行法の事業規制すら、過剰規制となっているのではないかという観点から再点検を行うこと。
②有害無益な半官検閲センターであるインターネットホットラインセンターを廃止すること。
③ネット由来の犯罪に対する警察への通報窓口(ネット由来の犯罪なのであるから、警察でメールアドレスを一つ用意するだけでも良い。民間団体に過ぎないインターネットホットラインセンターへの通報など論外である。)を一元化し、この窓口を周知徹底すること。
④海外サーバーを経由して行われる事案に対応するため、海外現地警察との協力体制を構築すること
⑤警察官の弾力配置により、ネット由来の犯罪に対応する警察官を増員し、この警察官に対して技術と法律と情報リテラシーに関する教育を徹底すること
⑥法律によって明確に制限を受ける警察の権限による、児童の不正誘引と売春誘引の書き込みに対する取り締まりを強化すること
⑦未成年のフィルタリング原則導入に関しては、国民の選択肢を潰してまで導入しなければならないとする理由をまず明確にすること。(これを明確にできないようであれば、導入はしないこと。)
⑧(これは警察庁だけに言うことではないだろうが)ネットにおける情報を自ら取捨選択する能力を身につけるための、国民的な情報リテラシー教育を充実させること」

 パブコメは以上だが、「P2Pとかその辺のお話」で、いわゆる模倣品・海賊版対策条約(Anti-Counterfeiting Trade Agreement: ACTA)の議論がG8レベルで進んでいるという記事を取り上げているので、興味がある方はリンク先をご覧頂ければと思う。条約の内容の詳細が明らかにされていないのでコメントしづらいのだが、Wikiなどによると、税関におけるパーソナルデバイス内のデータの検査など、かなり危険な規定も含め議論されているようであり、注意しておくに越したことはないだろう。

 また、DRM回避規制やダウンロード違法化を含むカナダの著作権法改正案が、総選挙の実施によってひとまずお蔵入りになりそうだとするNational Postの記事もあった。カナダにおいて、今後の著作権法改正がどうなるかは、選挙における保守派とリベラル派の勝敗の如何にもよりそうである。

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