2013年5月19日 (日)

第290回:インターネット・ホットラインセンターの権限強化を図りTorブロッキングを推奨する警察庁・総合セキュリティ対策会議の報告書

 既にガジェット通信の記事で84oca氏(twitter)が書かれているように匿名の検討会で匿名化技術がけしからんと言っている時点で噴飯ものなのだが、警察庁の昨年度の総合セキュリティ対策会議が取りまとめた2つの報告書がこの5月7日にようやく公開された。(internet watchの記事も参照。)

 無論前々回 前回と取り上げた児童ポルノ排除総合対策案の方が大問題だが、この総合セキュリティ対策会議の報告書の方もかなりの問題を含んでいる上にパブコメすら取っていないというあまりにもあまりなものなので、ここで突っ込んでおきたいと思う。(なお、この報告書については公表されたときにtwitterでもコメントを書いた。)

(1)「官民が連携した違法・有害情報対策の更なる推進について」
 1つ目の報告書は、主にインターネット・ホットラインセンターに関する話を扱っている、官民が連携した違法・有害情報対策の更なる推進について(pdf)資料編(pdf))というものである。

 まず、その「第1章 インターネット上の広告業界との連携の在り方及び自主的取組の促進について」では、

1 インターネット・ホットラインセンターからインターネット上の広告業界に対する悪質サイトの情報提供
 インターネット・ホットラインセンターは、警察庁の業務委託のもと、インターネット上における違法・有害情報に関する通報を受理し、警察への通報、サイト管理者等への削除依頼を行っているところ、インターネット上の違法・有害情報対策を更に推進するためには、広告料収入を目的とした悪質サイトの減少を期して、インターネット・ホットラインセンターが、削除依頼に応じず違法・有害情報を放置する悪質サイトの情報をインターネット上の広告業界に対して提供することが望ましい。
 この点に関しては、現在、インターネット・ホットラインセンターにおいては、フィルタリング事業者や児童ポルノブロッキング団体に対しても情報提供を行っているところ、インターネット上の広告業界に対しても、同種の情報提供を行うことが考えられる。

2 インターネット上の広告業界における悪質サイトへの広告配信停止等の措置
 インターネット上の広告業界においては、第2で述べたとおり、広告事業者各社が禁止事項を定めた契約約款や規約等を策定しており、違法・有害情報掲載サイトへの広告掲載を発見した場合には、当該契約約款や規約等に基づき、広告配信の停止、広告料の支払差止め、広告料の没収等の措置が採られている状況にあるところ、同業界はインターネット・ホットラインセンターから上記1 の情報提供を受け、広告事業者各社の契約約款や規約等に基づいて、自主的に悪質サイトへの広告配信停止等の措置を速やかに採ることが望ましい。

3 違法・有害情報に係る官民の情報交換
 インターネット上の広告業界の広告事業者各社においては、それぞれの運営基準等に基づいて、クローリングを用いた自動チェックの実施など、継続的に広告掲載サイトのコンテンツチェックを行っている。しかしながら、こうしたコンテンツチェック活動をすり抜けてしまう新たな用語、隠語等の出現が見られるため、違法・有害情報に係る官民の情報交換を行うことにより、新たな用語、隠語等を使用する悪質サイトの早期排除を促進することが望ましい。

という提言を出し、「第2章 匿名サイトにおける自主的管理強化の促進について」では、

1 電気通信事業関連4団体によるガイドライン及び契約約款モデル条項の普及促進のための啓発活動
 電気通信事業関連4団体においては、電子掲示板の管理者等が自ら違法性を判断して行う送信防止措置等の対応や、警察、インターネット・ホットラインセンター等の第三者機関からの送信防止措置依頼の対応手続等が定められたガイドラインを策定し、また、違法・有害情報に関する禁止事項や、当該情報等の削除等に関する規定、第三者からの連絡受付体制の整備に関する規定等が定められた契約約款モデル条項を策定するなど、インターネット上の違法・有害情報対策に努めているところである。
 しかしながら、前述のとおり、ガイドライン及び契約約款モデル条項のいずれも浸透していない状況がうかがえたことから、電気通信事業関連4団体が、電子掲示板管理者等に対して、ガイドライン及び契約約款モデル条項の普及促進のための啓発活動を強化することが望まれる。

2 ガイドラインの普及促進のための方策
 電気通信事業関連4団体においては、上記1に加え、ガイドラインの普及促進に資するため、必要に応じて契約約款モデル条項の改訂を行うことが望ましい。この場合において、例えば、ガイドラインに留意して対応することに関する規定を契約約款モデル条項に追加することが考えられる。

という提言を出しているが、この提言部分だけを読んでも分かるように、この報告書は、要するに、インターネット・ホットラインセンターの言う通り削除を行わないサイトから広告を締め出すことと、匿名サイト(と警察庁が称するサイト)に対する締めつけを厳しくすることを警察庁が関係業界に求めるというものであり、そのようにしてインターネット・ホットラインセンターの権限強化を図ろうとするものである。

 民間での自主ガイドラインの普及促進や各種の自主的な措置は進めてしかるべきだろうし、そのこと自体をどうこう言うつもりは全くないが、ここで、 いくらインターネット・ホットラインセンターが警察庁の予算で運営されており、実質的に警察の完全な下部機関として機能しているとは言え、民間団体による民間の自主規制として削除要請を行うという形を取っている以上、その削除要請に従わないからと言って必ずしも問題はないということを完全に失念しているのは非常に問題が大きい。この時点で、警察庁によって上のような権限強化のごり押しが行われるとしたら完全にアウトだろう。

 このような権限強化の根拠として平成24年8月6日から9月5日までの1ヶ月間の調査で、インターネット・ホットラインセンターからの削除依頼にサイト管理者が応じない違法・有害情報数が224件、インターネット・ホットラインセンターからこの違法・有害情報を受理後に警察庁において未だ削除されていないことが確認できた違法・有害情報数が95件、うち広告が確認できたものが44件(46.3%)、うち匿名サイトのものが63件(66.3%)があったという件数をあげているのだが、ここでも「違法情報」と「有害情報」をごっちゃにしている時点で論外である。さらに言えば、そもそも民間団体という建てつけのインターネット・ホットラインセンターに情報の違法性を判断する権限はないのであるから、警察庁としては本来ならばインターネット・ホットラインセンターからの要請のうちどれだけが本当に法律で規制されている違法情報に該当するのかといった妥当性の検証から行わなければならないはずであるが、そのような検証を行った気配は全くない。(警察庁が出している平成24年中の「インターネット・ホットラインセンター」の運用状況等について(pdf)でも、このような検証が行われた様子はない。ただし、この運用状況も含めて考えると、インターネット・ホットラインセンターの要請でも削除されない「違法・有害情報」のうち「違法情報」がおよそ6割、「有害情報」がおよそ4割程度ではないかとの推計はできる。)

 その上、この報告書の「匿名サイトとは、匿名で自由に書き込みや画像の投稿を行うことが可能な電子掲示板を運営しているサイトのことであり、国内のインターネット上の電子掲示板のほとんどは、匿名サイトと位置付けられるものである」という匿名サイトの定義もどうかと思うものである。これならほとんどあらゆるサイトが匿名サイトになってしまうに違いない。

 印象操作ということでは、検挙にまで至った最悪のケースである13件だけを取り上げてあたかも多くのサイト管理者が莫大な広告料を受け取っているかのような印象を与えようとしている点も問題だろう。

 さらに、将来的に民間に資金を出させた上で天下り先にでもしようとしているのか、「第3章 インターネット・ホットラインセンターの民間費用負担の在り方について」で、今現在税金で運営されているインターネット・ホットラインセンターへの民間から費用負担を警察庁が求めているのだが、このような明らかな警察業務のアウトソース機関に資金を出すことに対してはさすがに反発が強かったと見え、この点に関しては「インターネット・ホットラインセンターの民間費用負担の在り方については、国民の利便やインターネットの環境浄化の必要性にかんがみ、国民がインターネットを安全に安心して利活用できるよう、そのニーズを模索しつつ、引き続き検討を重ねるべきである」と継続検討ということになっている。

(2)「サイバー犯罪捜査の課題と対策について」
 2つ目の報告書は、サイバー犯罪捜査の課題と対策について(pdf)資料編(pdf))というものである。こちらの報告書は遠隔操作ウィルスによる冤罪事件に対応するものだが、これほど騒ぎになっているにもかかわらずその内容は非常に薄っぺらである。

 まず、Torなどの匿名化技術を扱っている、「第1章 高度匿名化技術の悪用への対策について」であげられている対策は、

(1) 高度匿名化技術に関する調査・研究の推進
 サイバー犯罪捜査においては、被害に係るコンピュータ端末等から得られる通信に係る記録を基に発信先を事後的に追跡することとなるが、高度匿名化技術はこの事後追跡を困難にするという点において極めて大きな障害となっている。Torについては、既に我が国においても犯罪に悪用されており悪用への対策の必要性が認められるものの、Torはあくまでも匿名化技術の一例であり、他にも多く匿名化技術の研究がなされ、また、ツール化されてきている。
 今後も、情報通信技術の発達に伴い、様々な高度匿名化技術が研究・開発され、ツール化されることが予想されることから、警察において、海外も含めて高度匿名化技術がサイバー犯罪に用いられた事例やそれへの対応策について情報収集に努めるとともに、最新の高度匿名化技術に係る研究、開発、実用化等の動向について調査・研究を推進していくことが求められる。

(2) Torからのアクセスを制限することについて
 Torが本事件を始め、国内外において犯罪に悪用されている状況に鑑みると、Torの犯罪への悪用を防ぐという観点からの対策が求められる。
 Torを用いて行われる通信を、例えば、下記の手法により技術的に制限することが可能であることから、Torによる通信により被害を受けるおそれのあるサイト等当該サイトの特性に応じ、サイト管理者等の判断によりTor を用いた通信を遮断することとすれば、犯罪抑止の観点から一定の効果があると考えられる。

というものであり、さすがにTorブロッキングを大々的に強要するのは無理があったと見え、「Torの犯罪への悪用を防ぐという観点からの対策が求められる(中略)サイト管理者等の判断によりTorを用いた通信を遮断することとすれば、犯罪抑止の観点から一定の効果があると考えられる」と思ったよりおとなしめの書き方になっているが、実際のところは、第3回検討会の発言要旨(pdf)で、

「高度匿名化技術の悪用への対策」の1つとして挙げられている「Torからのアクセスを制限することについて」については、民間でできることの1つとして、実現の可能性を探っていきたいと思っています。
 Torはそもそも表現の自由等の保護のために開発されたものだと思いますが、我が国において、Torを積極的に認めなければならない環境にはないのではないかと思っています。悪用のリスクがあるのであれば、サイバー空間の安全を保つためにこの対策が可能であるならやりたいと個人的には思っていますし、報告書に記載できるのであれば、ぜひ記載していただきたいと思っています。

と、誰だか知らないが、日本国民に表現の自由や通信の秘密など要らないと断言しているのが今の警察関係者の嘘偽らざる本心ではないかと私は疑っている。(これも、そこまで状況が悪くなっていることを示しているに過ぎないが、この発言の後で、さすがにまずいと思ったのか、あの前田雅英首都大学東京教授が委員長として「国でTorを禁止することを報告書に記載することはあり得ません。対策として挙げられているの は、サイト管理者の判断で制限をするということの働き掛けです」と押さえているのには少し驚いた。)

 インターネットの自由にとって極めて重大な意味を持つことなので、警察庁が働きかけを行ったところで、おいそれと従うサイト管理者はそうはいないと思うが、匿名化技術Torこそ諸悪の根源とばかりに上のように報告書に書いたのをいいことに警察庁がTorブロッキングの押しつけをして来ないかどうか十分に注意しておく必要があるだろう。

 また、「第2章 コンピュータ・ウイルス対策について」では、「1 民間事業者等の知見の活用」、「2 諸外国の捜査機関等との連携」、「3 最新の情報通信技術に係る調査研究」、「4 相談窓口の充実」、「5 部門間の連携」、「6 サイバー犯罪情勢に応じた捜査の推進」という項目があげられているが、これらはごく当たり前のことを書いているだけで、項目名で十分なほど具体的な中身がない。

 この報告書の「おわりに」で「なお、こうした対策を警察において主体的に講じていくためには人員、資機材及び予算を含めた警察のリソースの充実が不可欠であることを最後に付言する」としたり顔になお書きを書いているのだが、これこそ本来この検討会で検討し、大いに敷衍すべき点であるにもかかわらず、この一文だけで済ませているあたりがこの報告書の性質の全てを物語っている。

 あれだけの冤罪事件を起こしておきながら、自分たちの捜査手法の見直しや人・機材のリソースの拡充に関する具体的な言及がなく、Torのような価値中立的な技術に責任を転嫁するだけで後は調査研究などでその場をごまかそうとする、このような報告書を出して来るようでは、残念ながら、このような体たらくでは、警察の無茶なサイバー犯罪捜査で冤罪事件は起こり続けるだろうし、日本の警察はインターネット利用者に対する最大のセキュリティホールであり続けることだろう。今後も警察庁の動向に気をつけておくに如くはない。

(なお、最近、internet watchの記事にある通り、警察庁警備局が「サイバー攻撃分析センター」を設置するとの報道があった。上の報告書を作った生活安全局よりはあてになりそうな気もするが、ここで警備局が単に「サイバー犯罪」ではなく「サイバー攻撃」に対応するとしているあたりに役所の強い縦割り意識を感じる。通常のサイバー犯罪については今まで通り生活安全局が担当するのだろうし、報告書でいくら連携について書いたところで、どうにも縦割りのまま事が進められるのではないかという疑念は拭えない。)

(2013年5月20日夜の追記:1カ所誤記を直し、文章を少しだけ整えた。)

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2013年5月 7日 (火)

第289回:内閣府・「第2次児童ポルノ排除総合対策」(素案)に対する提出パブコメ

 前回取り上げた内閣府の「第2次児童ポルノ排除総合対策」(素案)(pdf)に対してパブコメを書いて提出した。2010年当時の前回の提出パブコメと比べても大きな違いがある訳ではないが、念のため、ここに載せておく。このパブコメは明日5月8日までともう〆切まで間がないが(内閣府の意見募集ページ参照)、とても重要な内容を含んでおり、このような情報規制問題について関心のある方でまだ出していない方がいれば今からでも是非提出を検討頂ければと思う。(なお、前回同様かなり長くなったので私は意見を分割して提出した。)

(以下、提出パブコメ。)

(1)「1① 協議会の開催」(第1ページ)について
 ここに記載されている協議会とは「児童ポルノ排除対策推進協議会」を指すものと思われる。この児童ポルノ排除対策推進協議会の規約等を見ると、その役員及び参加団体は各省庁及びその傘下団体に明らかに偏っている。しかし、児童ポルノ対策が国民の基本的な権利である表現の自由や通信の秘密等にも関わる非常に重大な問題であることから、表現の自由に関する問題に詳しい情報法・憲法の専門家、児童ポルノ法の実務に携わりその本当の問題点を熟知している法律家、規制強化に慎重あるいは反対の意見を有する弁護士・団体等も多く含む形に再編し、児童ポルノ規制問題について、様々な意見があることを広めるとともに多様な意見の取り入れを図るとここに明記するべきである。

(2)「1②  国民運動の効果的な推進」(第1ページ)について
 ここに記載されているシンポジウムとは「児童ポルノ排除対策公開シンポジウム」を指すものと思われる。公開されているその概要を見ると、警察官僚や日本ユニセフ協会など規制強化を主導又は主張する当局及び団体のみでほぼ登壇者を固めているなど、明らかに構成に偏りが見られる。しかし、上で書いたことと同じく、児童ポルノ対策が国民の基本的な権利である表現の自由や通信の秘密等にも関わる非常に重大な問題であることから、表現の自由に関する問題に詳しい情報法・憲法の専門家、児童ポルノ法の実務に携わりその本当の問題点を熟知している法律家、規制強化に慎重あるいは反対の意見を有する弁護士・団体等もシンポジウムに呼び、児童ポルノ規制問題について、様々な意見があることを広めるとともに多様な意見の取り入れを図るとここに明記するべきである。

(3)「1⑥ 『女性に対する暴力をなくす運動』における取組」(第1〜2ページ)について
 児童問題と女性問題を混同するべきではなく、この項目は削除するべきである。

(4)「1⑧ 国際的取組への参画」(第2ページ)」について
 この項目において、「児童ポルノを対象とするものにせよ、いかなる種類のものであれ、情報の単純所持・取得規制・ブロッキングは極めて危険な規制であるとの認識を深め、このような規制を絶対に行わないことと閣議決定し、児童ポルノの単純所持規制・創作物規制といった非人道的な規制を導入している諸国は即刻このような規制を廃止するべきと、そもそも最も根本的なプライバシーに属し、何ら実害を生み得ない個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ること自体、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の国際的かつ一般的に認められている基本的な権利からあってはならないことであると、日本政府から国際的な場において各国に積極的に働きかける。」との記載を追加してもらいたい。

(5)「2(1)① 青少年インターネット環境整備法に基づく総合的な被害防止対策の推進」(第2ページ)について
 この項目において言及されている青少年ネット規制法は、あらゆる者から反対されながら、有害無益なプライドと利権を優先する一部の議員と官庁の思惑のみで成立したものであり、速やかに廃止が検討されるべきものであるが、この項目に記載されている調査研究その他の対策の推進においては、総務省の「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」の「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備に関する提言」の内容も踏まえ、不当な規制強化とならないよう謙抑的な形で進めてもらいたい。
 なお、出会い系サイト規制法の改正も、警察庁が、どんなコミュニケーションサイトでも人は出会えるという誰にでも分かることを無視し、届け出制の対象としては事実上定義不能の「出会い系サイト事業」を定義可能と偽り、改正法案の閣議決定を行い、法案を国会に提出したものであり、他の重要法案と審議が重なる中、国会においてもその本質的な問題が見過ごされて可決され、成立したものである。憲法上の罪刑法定主義や検閲の禁止にそもそも違反している、出会い系サイト規制法の改正についても、今後、速やかに元に戻すことが検討されるべきである。

(6)「官民の情報共有、ポータルサイトによる情報提供の推進」について
 前回の総合対策にあった「2(1)③ 官民の情報共有、ポータルサイトによる情報提供の推進」という項目が削除されているが、このようなネットを利用した政府の情報提供は重要である。第2次対策素案では、この項目を復活させるとともに、例えば非常に重要なことを検討しているにもかかわらず今現在極めてお粗末な形でしか情報公開がなされていない児童ポルノ対策関連の各種会議の議事についてその詳細を即時公開するなど情報公開の充実を図ると記載してもらいたい。

(7)「3① 違法情報の排除に向けた取組の推進」(第4ページ)について
 この項目でインターネット・ホットラインセンターについて言及されているが、サイト事業者が自主的に行うならまだしも、何の権限も有しないインターネット・ホットラインセンターなどの民間団体からの強圧的な指摘により、書き込みなどの削除やブロッキングが行われることなど本来あってはならないことである。このようなセンターは単なる一民間団体で、しかもこの団体に直接害が及んでいる訳でもないため、削除などを要請できる訳がない。勝手に有害と思われる情報を収集して、直接削除要請などを行う民間団体があるということ自体おかしいと考えるべきであり、このような有害無益な半官検閲センターは即刻廃止が検討されて良い。このような無駄な半官検閲センターに国民の血税を流すことは到底許されないのであって、その分できちんとした取り締まりと削除要請ができる人員を、法律によって明確に制約を受ける警察に確保するべきであり、この項目においては、インターネット・ホットラインセンターの廃止を検討すると明記するべきである。

(8)「3 インターネット上の児童ポルノ画像等の流通・閲覧防止対策の推進」中のブロッキング関連項目(②、④、⑤)(第4〜6ページ)について
 既に、警察などが提供するサイト情報に基づき統計情報のみしか公表しない不透明な中間団体を介し、児童ポルノアドレスリストの作成が行われ、そのリストに基づいてブロッキングが行われているが、いくら中間に団体を介そうと、一般に公表されるのは統計情報に過ぎす、児童ポルノであるか否かの判断情報も含め、アドレスリストに関する具体的な情報は全て閉じる形で秘密裏に保持されることになるのであり、インターネット利用者から見てそのリストの妥当性をチェックすることは不可能であり、このようなアドレスリストの作成・管理において透明性・公平性・中立性を確保することは本質的に完全に不可能である。このようなリストに基づくブロッキング等は、自主的な取組という名目でいくら取り繕おうとも憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないのであり、小手先の運用変更などではどうにもならない。ファイル共有に対するブロッキングについても同様である。
 これらの項目については全て削除し、代わりにリスト作成・管理団体であるインターネットコンテンツセーフティ協会を即刻解散し、ブロッキングを止めるとここでは明記するべきである。
 なお、その透明性について管理団体のHPには統計情報すら掲載されていないという惨憺たる状況でブロッキングが有効だの成果だのと主張されても全くお話にならない。現状で本素案のようにブロッキングそのものを目的として全面的に推進することは、緊急避難として違法性阻却が認められる限界を超えているとしか言いようがない。このようなブロッキングを主導している警察官僚及びこれに加担している者には電気通信事業法第179条の通信の秘密侵害罪の適用が検討されて良いくらいである。
 またなお、ブロッキングに関する広報・啓発を行う必要があるとすれば、現時点では権力側によるその濫用の防止が不可能であり表現の自由や通信の秘密といった憲法に規定された国民の基本的な権利に照らして問題のない運用を行うことが不可能であるという問題の周知にのみ努めるべきである。

(9)「5② 悪質な関連事業者に対する責任追及の強化」(第8ページ)について
 この項目において、サイト管理者、サーバー管理者といった直接的な提供者ではない関連事業者に対する刑事責任等について書かれているが、インターネットにおいて例えば単なるリンク行為まで幇助罪を適用することなどは極めて大きな問題を含む。この項目において、幇助罪のインターネットにおける適用に問題があることを明確に認め、警察はインターネットの利用を萎縮させないような法運用に努めると明記してもらいたい。

(10)「6③ 児童ポルノに関わる規制についての検討に資するための調査 」(第9ページ)について
 ここでG8について言及されているが、児童ポルノはG8のみの問題ではなく、「G8を中心とした」という記載を削除するべきである。
 特に、民主主義の最重要の基礎である表現の自由に関わる問題において、一方的な見方で国際動向を決めつけることなどあってはならない。欧米においても情報の単純所持規制やサイトブロッキングの危険性に対する認識が高まって来ていることは決して無視されてはならない。例えば、欧米では既にブロッキングについてその恣意的な運用によって弊害が生じており、アメリカにおいても2009年に連邦最高裁で児童オンライン保護法が違憲として完全に否定され、2011年6月に連邦最高裁でカリフォルニア州のゲーム規制法が違憲として否定されており、ドイツでも児童ポルノサイトブロッキング法は検閲法と批判され、最終的に完全に廃止されている(http://www.zdnet.de/news/41558455/bundestag-hebt-zensursula-gesetz-endgueltig-auf.htm参照)。スイスの2009年の調査でも、児童ポルノ所持で捕まった者の追跡調査を行っているが、実際に過去に性的虐待を行っていたのは1%、6年間の追跡調査で実際に性的虐待を行ったものも1%に過ぎず、児童ポルノ所持はそれだけでは性的虐待のリスクファクターとはならないと結論づけており、児童ポルノの単純所持規制・ブロッキングの根拠は完全に否定されている(http://www.biomedcentral.com/1471-244X/9/43/abstract参照)。欧州連合において、インターネットへのアクセスを情報の自由に関する基本的な権利として位置づける動きがあることも見逃されてはならない。2012年6月にスウェーデンで漫画は児童ポルノではないとする最高裁判決が出されたことも注目されるべきである(http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_8111654_po_02550012.pdf?contentNo=1参照)。政府・与党内の検討においては、このような国際動向もきちんと取り上げるべきである。

(11)児童ポルノ排除対策ワーキングチームと本意見募集について
 本対策案を作った児童ポルノ排除対策ワーキングチームは議事録の公開が不十分であり、どのような議論からこのような総合対策の改定に至ったのか全く分からない。その下のワーキンググループに至っては議事概要すら公開していない。今回の対策案に対するパブコメの期間も実質10日程度とあまりにも短い上大型連休と完全に重なる形で募集されるなど、到底国民の意見を聞く気があるとは思えない形で行われている。このワーキングチームあるいはグループは議事録、議事の進め方、対策のとりまとめ方等あらゆる点で不透明であり、このような問題だらけのワーキングチームで表現の自由を含む国民の基本的権利に関わる重大な検討が進められることなど論外である。実際今回の意見募集の対象となっている第2次対策素案にも、ブロッキングを中心として有害無益かつ危険な規制強化の項目が含まれており、このような検討しかなし得ない出来レースの密室政策談合ワーキングチーム・ワーキンググループは即刻解散するべきである。
 このワーキングチームは即刻解散するべきであるが、さらに今後児童ポルノ規制について何かしらの検討を行うのであれば、その検討会は下位グループまで含めて全て開催の度数日以内に速やかに議事録を公表する、一方的かつ身勝手に危険な規制強化を求める自称良識派団体代表だけで無く、表現の自由に関する問題に詳しい情報法・憲法の専門家、児童ポルノ法の実務に携わりその本当の問題点を熟知している法律家、規制強化に慎重あるいは反対の意見を有する弁護士・団体等も呼ぶ、危険な規制強化の結論ありきで報告書をまとめる前にきちんとパブコメを少なくとも1月程度の募集期間を設けて取るなど、児童ポルノ規制の本当の問題点を把握した上で検討が進められるようにするべきである。

(12)児童ポルノの単純所持・取得規制等について
 閲覧とダウンロードと取得と所持の区別がつかないインターネットにおいては例え児童ポルノにせよ情報の単純所持や取得の規制は有害無益かつ危険なもので、憲法及び条約に規定されている「知る権利」を不当に害する。意図に関する限定を加えたところで、エスパーでもない限りこのような積極性を証明することも反証することもできないため、このような規制の危険性は回避不能であり、思想の自由や罪刑法定主義にも反する。インターネットで2回以上他人にダウンロードを行わせること等は技術的に極めて容易であり、取得の回数の限定も何ら危険性を減らすものではない。例えそれが児童ポルノであろうと情報の単純所持ではいかなる被害も発生し得えない。現行法で提供及び提供目的の所持まで規制されているのであり提供によって生じる被害と所持やダウンロード、取得、収集との混同は許され得ない。そもそも、最も根本的なプライバシーに属する個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ることは、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の基本的な権利からあってはならないことである。
 自民党及び公明党から、また危険極まりない単純所持規制を含む児童ポルノの改正法案が国会に提出されようとしているが、政府・与党においては、児童ポルノを対象とするものにせよ、いかなる種類のものであれ、情報の単純所持・取得規制・ブロッキングは極めて危険な規制であるとの認識を深め、このような規制を絶対に行わないこととして、危険な法改正案が2度と与野党から提出されることが無いようにするべきである。今後児童ポルノ法の改正を検討するのであれば、与野党の間で修正協議と称して密室協議に入ることなく、きちんと公開される国会の場で、現行法の問題点についても含め、徹底的な議論をするべきである。

(13)児童ポルノを理由とした創作物規制について
 さらに言えば、アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現に対する規制対象の拡大も議論されているが、このような対象の拡大は、児童保護という当初の法目的を大きく逸脱する、異常規制に他ならない。アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現において、いくら過激な表現がなされていようと、それが現実の児童被害と関係があるとする客観的な証拠は何一つない。いまだかつて、この点について、単なる不快感に基づいた印象批評と一方的な印象操作調査以上のものを私は見たことはないし、虚構と現実の区別がつかないごく一部の自称良識派の単なる不快感など、言うまでもなく一般的かつ網羅的な表現規制の理由には全くならない。アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現が、今の一般的なモラルに基づいて猥褻だというのなら、猥褻物として取り締まるべき話であって、それ以上の話ではない。どんな法律に基づく権利であれ、権利の侵害は相対的にのみ定まるものであり、実際の被害者の存在しない創作物・表現に対する規制は何をもっても正当化され得ない。民主主義の最重要の基礎である表現の自由や言論の自由、思想の自由等々の最も基本的な精神的自由そのものを危うくすることは絶対に許されない。
 単純所持規制にせよ、創作物規制にせよ、両方とも1999年当時の児童ポルノ法制定時に喧々囂々の大議論の末に除外された規制であり、規制推進派が何と言おうと、これらの規制を正当化するに足る立法事実の変化はいまだに何一つない。
 なお、実写と見紛うCGの規制については、確かに実在の児童が絡む事件の捜査の妨げになる可能性があるが、今の所捜査の妨げになっているとの事実はなく、その規制の検討も時期尚早である。

(14)その他報告書全体について
 最後に書いておくが、私が言いたいのは、民間の自主的な取り組みといった言葉で上辺を取り繕い、国民の情報の自由に関する基本的権利に対して重大な侵害を行ってでも利権を作ろうとすることは今後一切止めろということである。この点について私は誤解などしていないし、今後の検討の参考にするなどといった役人の遁辞などそれこそ全く求めていない。児童ポルノ規制法に関しては、既に、提供及び提供目的での所持が禁止されているのであるから、本当に必要とされることは今の法律の地道なエンフォースであって有害無益な規制強化の検討ではない。
 特に、児童ポルノ規制問題・有害サイト規制問題における自称良識派団体の主張は、常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。今後は、このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むべきである。同じく、憲法に規定されている検閲の禁止から、サイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むべきである。
 現行以上に規制を強化するべきとするに足る明確かつ具体的な根拠は何1つ示されておらず、児童ポルノ規制法に関して検討すべきことがあるとしたら、現行ですら過度に広汎であり、違憲のそしりを免れない児童ポルノの定義の厳密化、上で書いた通り、危険な規制強化を止める逆規制、リスクを考慮した幇助罪の適用の謙抑的運用、児童ポルノの単純所持規制・創作物規制といった非人道的な規制の排除の国際的な働きかけのみである。
 今後は、恣意的な運用しか招きようのない危険な規制強化の検討ではなく、情報に関する各種問題は情報モラル・リテラシー教育によって解決されるべきものという基本に立ち帰り、教育・啓発等に関する地道な施策のみに注力する検討が進められることを期待する。

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2013年4月28日 (日)

第288回:内閣府・「第2次児童ポルノ排除総合対策」(素案)に対するパブコメ募集(5月8日〆切)

 みんなの党の山田太郎議員(twitter)が非常にありがたいことにそのブログで反対の立場を表明して下さっているが、自民党の高市早苗政調会長が単純所持規制を含む児童ポルノ規制改正法を自ら説明して回っている。このような動きも大いに注意すべきなのは無論のことだが、直接の関係はないものの、内閣府からも「第2次児童ポルノ排除総合対策」(素案)に対するパブコメが5月8日〆切でかかったので、ここで取り上げておきたい。(内閣府の募集ページ、電子政府の募集ページ参照。)

 この「第2次児童ポルノ排除総合対策」(素案)(pdf)概要(pdf))について、意見募集要項(pdf)には、児童ポルノ排除総合対策ワーキンググループで平成22年の総合対策(pdf)を改定して新たに第2次素案を取りまとめたと書いている。大体内閣府の児童ポルノ排除総合対策のHPを見ても議事詳細は全く公開されておらず、どのような議論からこのような改定案に至ったのかというのがさっぱり分からないところからして人をバカにしているとしか思えないが、このパブコメも重要なものには違いないので、変更点に気をつけつつ、ざっとこの素案を見て行きたいと思う。(前回の児童ポルノ排除総合対策については第228回参照。その際の提出パブコメは第229回に載せた。)

 まず、「1 児童ポルノの排除に向けた国民運動の推進」で、第1ページに、

① 協議会の開催
 児童ポルノの排除に向けた国民運動を官民一体となって推進するため、関係府省庁、教育関係団体、医療関係団体、事業者団体、NPO等で構成する協議会を開催し、国民運動の推進方策について協議するとともに、相互の情報を交換して連携・協力を推進する。(内閣府)

と書かれている。児童ポルノ排除対策推進協議会の開催自体を中止しろというつもりもないが、その第3回(平成24年11月)の議事概要を読めば分かるように、そこでECPAT/ストップ子ども買春の会のような団体が単純所持規制の導入を求めているなど、このような場が要注意であるのは間違いないだろう。

 その次の、

② 国民運動の効果的な推進
 児童ポルノを排除するため、国民の理解を深めるための公開シンポジウムを開催するなどして国民運動の効果的な推進を図る。また、地方公共団体やNGO等関係団体が主催する児童ポルノ排除に向けた取組を積極的に支援する。
 さらに、法務省の人権擁護機関において、「子どもの人権を守ろう」を啓発活動の年間強調事項の一つとして掲げ、1 年を通して全国各地で、児童ポルノ問題を含む子どもの人権問題について、啓発冊子の配布等の啓発活動を実施する。(内閣府、警察庁、法務省等)

という項目は以前かなり簡単に書かれていたもので多少文章を増やしているが、ここで書かれているシンポジウムも、その概要(第1回第2回第3回)だけからでもすぐ分かるように、明らかに偏った人選がなされているという非道さである。

 また、「⑥ 「女性に対する暴力をなくす運動」における取組」という、児童の問題と女性の問題を混同している項目も残されたままとなっている。

 それに対し、第2ページの、

⑧ 国際的取組への参画
 我が国が2005年に締結した「児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書」の規定に基づき、児童の権利委員会に提出した政府報告に対する同委員会の最終見解の趣旨を踏まえ、同選択議定書の実施の確保に努める。(外務省、警察庁)

という項目は大分短くなり、リオ宣言に対する言及がなくなった。修正の経緯は不明だが、多少状況が変わったので文章を変えたのだろうか。(なお、国連児童の権利委員会からの最終見解などは外務省の児童の権利条約のHPに掲載されている。)

 第2ページからの「2 被害防止対策の推進」の「(1) 青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備」で、分かりにくいのだが、その「① 青少年インターネット環境整備法に基づく総合的な被害防止対策の推進」という項目では、その記載の中の「フィルタリング」の部分が「スマートフォンの無線LAN回線に係るフィルタリング等を含めたフィルタリング」とされ、スマホの無線LAN回線フィルタリングの話が明記された。同じく、「③ フィルタリングの普及促進等のための施策」でも、「フィルタリングの普及促進のため、関係団体等と連携し、携帯電話事業者・販売代理店等に対し、スマートフォンの無線LAN回線に係るフィルタリングやアプリの起動等を制限する機能制限アプリ等の情報を保護者に説明する取組を支援する。」という文章が追加されるなどしている。「(2) 情報モラル等の普及の促進」の「① インターネットの危険性及び適切な利用に関する広報・啓発活動」でも同様の記載が追加されている。児童ポルノ対策としては本筋ではないが、これは総務省が最近の取り組みの記載を追加したのだろう。(なお、このような修正は、総務省の利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会の提言(第258回参照)などを踏まえたものだろう。)

 また、ここから、前にはあった「官民の情報共有、ポータルサイトによる情報提供の推進」という項目が消えている。削除の理由は不明だが、このような大した利権にならない地道な取り組みには政府はあまり乗り気でないということだろうか。

 さらに、第4ページからの「3 インターネット上の児童ポルノ画像等の流通・閲覧防止対策の推進」で、

① 違法情報の排除に向けた取組の推進
 サイバーパトロールやインターネット・ホットラインセンターに寄せられた通報を通じ、児童ポルノに係る違法情報の把握に努め、取締りを推進するとともに、サイト管理者等に対し、警察及びインターネット・ホットラインセンターから削除依頼等を実施する。また、インターネットを利用した児童ポルノ事犯の被疑者を検挙した場合等に、当該違法情報が掲載された掲示板のサイト管理者等に対し、当該違法情報の削除の要請及び同種事案の再発防止に努めるよう申入れ又は指導を行うほか、非行防止教室や情報セキュリティに関する講習等の場において、インターネット・ホットラインセンターの取組を紹介するなどして、インタ ーネット上からの児童ポルノの削除の更なる促進を図る。(警察庁)

という、半官検閲センターであるインターネット・ホットラインセンターに関する項目もそのまま残されている。

 そして、前回の総合対策が児童ポルノ自主規制ブロッキング導入の契機になったことを考えても当然のことだが(その経緯は児童ポルノアドレスリスト作成・管理団体であるインターネットコンテンツセーフティ協会のHPに書かれている通りである)、この素案で最も大きく書き直されたのは、最大の問題点であるブロッキングに関する部分であり、以下のようになっている。

② 事業者団体によるガイドライン等の運用の支援
 事業者団体((社)電気通信事業者協会、(社)テレコムサービス協会、(社)日本インターネットプロバイダー協会及び(社)日本ケーブルテレビ連盟)により策定された、削除すべき児童ポルノの判断基準等を含む「インターネット上の違法な情報への対応に関するガイドライン」及び児童ポルノのブロッキングに関する規定等を含む「違法・有害情報への対応等に関する契約約款モデル条項」の適切な運用を支援する。(総務省)

(中略:③ 違法・有害情報相談センターの運営の支援)

④ ブロッキングの実効性向上に向けた諸対策の推進
 インターネット上の児童ポルノについては、児童の権利を著しく侵害するものであり、インターネット・ホットラインセンターが把握した画像について、サイト管理者等への削除要請や警察の捜査・被疑者検挙が行われた場合等でも、実際に画像が削除されるまでの間は画像が放置されるところであり、児童の権利を保護するためには、サーバーの国内外を問わず、画像発見後、速やかに児童ポルノ掲載アドレスリストを作成し、ISP等による閲覧防止措置(ブロッキング)を講ずる必要がある。平成23年4月から、ISP等の関連事業者が自主的にブロッキングを実施しているところであるが、このようなブロッキングについて、インターネット利用者の通信の秘密や表現の自由に不当な影響を及ぼさない運用にも配意しつつ、ISP等の関連事業者がブロッキングを自主的に導入するに当たってその実効性の向上が可能となるよう、下記の対策を講ずる。(警察庁、総務省、内閣府、経済産業省)

ⅰ ブロッキングの実効性向上に向けた環境整備
 警察庁及びインターネット・ホットラインセンターからの情報提供並びに児童ポルノ掲載アドレスリスト作成管理団体からのプロバイダ等へのアドレスリストの提供のプロセスがより迅速に行われ、実効性のあるブロッキングを実施できるよう支援する。
 また、現在、主として行われているブロッキング方式では、児童ポルノ画像以外のものに対してもブロッキングをしてしまうという問題(オーバーブロッキング)があるためにブロッキングが実施されない場合もある一方で、他の方式では事後的にブロッキングの回避が容易となる等の問題がある等、各ブロッキング方式には一長一短がある中で、ISP等がより実効的にブロッキングを実施できるよう、児童ポルノ掲載アドレスリスト作成管理団体と連携し、必要な環境整備に向けた取組を行う。

ⅱ ISPによる実効性のあるブロッキングの自主的導入の促進
 ISPに対し、インターネット上の児童ポルノの流通を防止するためのブロッキングの重要性、有効性等について理解を求め、実効性のあるブロッキングの自主的導入を一層促進する。

ⅲ 一般ユーザーに対するブロッキングの趣旨、重要性等についての広報・啓発
 インターネットの一般ユーザーに対し、ブロッキングの趣旨、重要性等について幅広く広報・啓発し、理解を求めるとともに、インターネット上の流通・閲覧防止対策に対する国民意識の醸成を図る。

⑤ ファイル共有ソフトネットワーク上の流通・閲覧防止対策の推進
 ファイル共有ソフト利用の児童ポルノ事犯が急激に増加しているが、ファイル共有ソフトにはブロッキングの効果が及ばないことから、通信の秘密に不当な影響を及ぼさない運用等にも配意しつつ児童の権利を保護するとの観点から、関連事業者と連携して、ファイル共有ソフトネットワーク上の流通・閲覧防止対策を検討し、取組を推進する。(警察庁、総務省)

 前の総合対策ではまだ押さえ気味だった記載がこの素案では大きく前のめりになり、自主規制という建前もどこへやら、導入を受けて警察庁が全力をあげてブロッキングの拡大を図っていると知れるのである。通信の秘密や表現の自由、オーバーブロッキングに関する問題なども認識していながら、そのことに関する具体的な検討は何らなく、問答無用でブロッキング実施前提で書いているあたり、日本の警察にとって市民の基本的な権利などどうでも良いのだろう。ブロッキングの問題をここで全て繰り返すことはしないが、インターネット利用者の通信の秘密や表現の自由に不当な影響を及ぼさないようにブロッキングを透明性・公平性・中立性を確保した形で運用することは不可能であり、自主規制と称しようがしまいが、現状でブロッキングはどこをどうやっても検閲にしかなりようがないのである。(なお、児童ポルノ自主規制ブロッキングの運用実態の透明性についてだが、2011年4月の導入後、2011年11月に一度統計情報がわずかに公表されているものの(internet watchの記事1記事2参照)、その後どうなっているのかは全く不明であり、管理団体であるはずのインターネットコンテンツセーフティ協会のHPには何一つ情報が(一度目の統計情報すら)掲載されていないという惨憺たる状況である。この有様でブロッキングが有効だの成果だのと主張されても全くお話にならないとしか言いようがない。)

 ここで、ファイル共有対策として流通を超えて「閲覧」の防止対策が謳われているのは極めて意味深である。詳細は不明だが、同じく警察庁の総合セキュリティ対策会議の方でTorブロッキングの話が出ているということも合わせて考えると(ガジェット通信の記事参照)、警察庁はファイル共有についてもブロッキングの導入を検討をしようとしているのではないだろうか。当然のように警察の目指すところはあらゆる情報を監視・統制下に置く一大ネット検閲国家にあるのだろうが、それが国全体にとって良いこととは私には到底思えない。(なお、これもその後の状況は不明であり、ここの記載とどう絡んでいるのかも分からないが、2012年2月にファイル共有に対して警告メールを送るという取り組みを始めたという報道があった(internet watchの記事3参照)。)

 第8ページの「5 児童ポルノ事犯の取締りの強化」で、その「② 悪質な関連事業者に対する責任追及の強化」という項目もそのままであり、幇助罪との関係は注意しておくべきだろう。

 最後の第9ページの「6 諸外国との協力体制の構築と国際連携の強化等」には、

③ 児童ポルノに関わる規制についての検討に資するための調査
 児童ポルノに関わる規制についての検討に資するよう、引き続き、我が国における児童ポルノ事犯の実態を調査するほか、G8を中心とした諸外国における児童ポルノ関連法規制について在外公館を通じて調査を行ってきているところ、法規制に関する動向等についての調査を継続し、定期的に結果を取りまとめる。(警察庁、外務省、法務省、内閣府)

と書かれているが、このようにG8にこだわり続けている点もやはり要注意である。いつものことだが、このような政府調査で恣意的に国を選択して国際動向を作り上げ、規制強化プロパガンダに使って来る可能性が高いのである。

 相変わらず意見募集期間が実質10日程度しかないと国民の意見を聞く気があるとは到底思えないものだが、このパブコメが非常に重大な内容を含んでいることは間違いないので、このような問題に関心のある方には是非提出を検討することを私はお勧めする。

(なお、私も他の問題と合わせてついでに法改正の動きにも触れるつもりではいるが、このパブコメは自民党の児童ポルノ規制法改正の動きとは直接関係ないことを念頭において書いた方が良いと思う。)

(2013年4月28日夜の追記:児童の権利委員会、総務省の研究会、ブロッキングの透明性、警告メールの取り組みについて、それぞれ括弧に入れ4つのなお書きを上の文章中に追加した。)

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2012年12月29日 (土)

第284回:2012年の終わりに

 総選挙を経て、この12月26日に第2次安倍内閣が発足した。その閣僚名簿(首相官邸のHP参照)を見るだけで、来年以降どうしようもなく辛い状況が続くのは容易く想像がつくが、今後もやれることをやって行くしかない。

 役所も休みに入り、もうこれで一通り年内のイベントは片づいたと思うので、今年も最後にブログのエントリとして今まであまり取り上げて来られなかった話を中心にまとめておきたいと思う。

 まず、制度ユーザーにしか関係ないのでつい後回しになりがちになっているが、商標法と特許法に関して、特許庁から2つパブコメが募集されている。

 1つ目は2013年1月16日〆切で募集されている、産業構造審議会・知的財産政策部会・商標制度小委員会の報告書「商標制度の在り方について」(案)に対する意見募集(電子政府のHP参照)である。前回の報告書からかなり時間が経っているが、この今回の報告書案(pdf)に書かれていることは、要するに、特許庁が、やはり動き、ホログラム、輪郭のない色彩、位置、音の商標といった非伝統的商標の保護を導入しようとしているということである。どう考えても今後さらに検討すべき実務的な論点は多いが、第8ページで「石焼き芋の売り声や夜鳴きそばのチャルメラの音のように、商品又は役務の取引に際して普通に用いられている音、単音、効果音、自然音等のありふれている音、 又はクラシック音楽や歌謡曲として認識される音からなる『音』の商標については、原則として自他商品役務の識別力を有しないものとする」と書かれている点は重要である。実際の運用次第だが、このように識別性の要件を厳しく取ることができれば音の商標の導入における混乱は多く避けられるだろう。他にもこの報告書案では、地域団体商標の登録主体の範囲を商工会等まで拡大することなども書かれている。

 2つ目は1月18日〆切で募集されている、産業構造審議会・知的財産政策部会・特許制度小委員会の報告書「強く安定した権利の早期設定及びユーザーの利便性向上に向けて」(案)に対する意見募集(電子政府のHP参照)である。こちらもマニアックな話だが、この報告書案(pdf)に書かれていることは、特許庁が、平成15年法改正で無効審判制度に統合され廃止された特許の異議申立制度を多少の手直しを加えて付与後レビュー制度と称して復活させようとしているということである。制度ユーザーとしてはほぼ元々あった選択肢が復活するというだけの話なので別に悪い話でもないが、ただ、新制度も10年間それなりに問題なく運用されていた中で、本当にこのような法律の再改正が必要かと疑問に思うところもある。この報告書案では、特許出願審査請求の手続期間徒過に対する救済の導入や国内外で発生した大規模災害の被災者の救済規定の整備などについても書かれている。

 これらの特許庁報告書案に対応する法改正はいつになるのか不明だが、次の国会には法案が提出されるのだろうか。

 文化庁に目を向けると、予想通りほぼどうにもなっていないが、文化審議会・著作権分科会・法制問題小委員会で引き続き、間接侵害やパロディの問題について検討が行われている。(cnetの記事も参照。議事要旨だけを公開されても何が検討されているのかさっぱり分からないが、パロディに関してはパロディワーキングチームで検討が行われている。)今年度はもうどうにもならないだろうが、来年以降は、TPPや出版社への隣接権付与の問題もあれば、最高裁での私的録画補償金裁判のメーカー側勝訴確定(時事通信の記事参照)を受けて権利者団体側が補償金制度に関する圧力を強めて来ることも予想され、文化庁での検討がまたかなり荒れ出すのではないかと思う。(なお、文化庁の資料であることを常に念頭において読まなければならないが、国際小委員会の資料も国際的な状況の一部を知る上では一読の価値がある。)

 知財本部では、今年度最初の知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会コンテンツ強化専門調査会とがそれぞれ12月21日と25日に始まっている。今のところ何をしようとして来るのかさっぱり分からないが、自公政権下でまたロクでもないことを言い出すかも知れず、今後の知財本部の議論も要注意だろう。

 今年の7月には、総務省の情報通信審議会・デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会が、B−CAS問題についてほぼ様子見を決め込む形でひっそりと幕を閉じている。ただ、B−CASがほぼ完全にクラックされたこともあり、不正ユーザーの逮捕で表向き小康状態が保たれているようにも見えるが、何かでまた騒ぎになるのは火を見るよりも明らかであり、総務省はそのうち何かしらの形でB−CAS問題に関する検討を再開することを余儀なくされるのではないかと私は予想している。また、総務省では、利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会も引き続き開催されている。

 農水省では、地理的表示保護制度研究会が開催されており、8月に「我が国において、特別(sui generis)な地理的表示保護制度を新たに導入し、地理的表示を活用して、多くの経済的・社会的効果が発揮されるよう取り組んでいくべき」とまとめようとする報告書骨子案(pdf)を作っている。地理的表示保護制度が本当に導入されれば知財政策的にかなり大きな話になるが、商標法での地域団体商標制度との関係を含めまだまだ整理すべき課題が多いのはこの報告書骨子案にも書かれている通りだろう。農水省もそう簡単に整理をつけられなかったのか、この研究会の取りまとめが行われたという話は聞かないが、いつか検討を再開するのだろうか。

 警察庁では、総合セキュリティ対策会議で「サイバー犯罪捜査の課題と対策について」という検討テーマを追加して、遠隔操作ウィルスによる冤罪発生事件を受けた検討を11月から開始している。第1回の議事要旨(pdf)を見ると、検討の視点は「民間事業者との連携」、「国際連携の推進」、「広報啓発」の3点ということで、即座にネット規制強化案が出て来るとは見えないのだが、警察庁のことなので、自公政権が成立したのをいいことに、冤罪事件の反省もどこへやら、ロクでもない規制強化に全力で突っ走ることも考えられ、恐らく直近で最も注意すべきは警察庁の検討ではないかと私は考えている。

 今年はダウンロード犯罪化を含む著作権法改正の可決・施行や海賊版対策条約(ACTA)の可決・批准を筆頭に日本の知財政策面では惨憺たる一年だったが、上で書いた通り、今後もちょっと考えるだけで、TPP問題や出版社への隣接権付与の問題、私的録音録画補償金問題など様々な問題で権利者団体の圧力が強まるのは間違いなく、残念ながら来年も極めて辛い年になるだろう。そのため、今年も到底良い年をと言う気にはならないが、政官業に巣くう全ての利権屋と非人道的な規制強化派に悪い年を。そして、このつたないブログを読んで下さっている全ての人に心からの感謝を。

 国内では当分どうしようもない状態が続くだろうが、国外に目を転じれば、欧州議会での海賊版対策条約(ACTA)の否決やオランダ議会でのダウンロード違法化計画再否決(TorrentFreakの記事参照)などに端的に表れているように、世界的に見れば行き過ぎた規制強化によって知財政策が大きな岐路に立たされているのは間違いない。細々とした話はtwitterでも書き留めているが、詳しく書きたい話も多くあり、今後もこのブログは続けて行くつもりである。

(2013年1月3日の追記:上で書き忘れていたが、知財関係としては、他にも特許庁の産業構造審議会・知的財産政策部会・意匠小委員会で、意匠の国際出願に関するハーグ協定ジュネーブアクトへの加盟と画面デザインの保護の拡充についての検討も進められている。この意匠に関する検討についてだが、かなりややこしい論点を含む話なので、どこか切りの良いところでもう少し補足を書きたいと思っている。)

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2012年6月18日 (月)

第274回:内閣府「青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための施策に関する基本的な計画(第2次)」(素案)に対する提出パブコメ

 もう〆切は過ぎているが、第272回で紹介した、内閣府の「青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための施策に関する基本的な計画(第2次)」(素案)に対するパブコメも提出しているので、今までに書いて来たものと大きくは変わらないが、念のため、資料としてここに載せておく。

(以下、提出パブコメ)

(1)5つの方針について
 本計画素案第4〜5ページの「第1 3.施策実施において踏まえるべき考え方」において、5つの考え方が記載されている。これらの考え方についてはネットにおける各種問題は情報モラル・リテラシー教育によって解決されるべきという基本に立つものとして高く評価できる。今後様々な施策を検討して行くにあたっては、この考え方を是非きちんと守ってもらいたい。

(2)リテラシー指標について
 本基本計画素案第8ページの「第2 2. (4)インターネットリテラシーに関する指標策定の取組」において、新たにインターネットリテラシー指標の策定について記載されている。ここで、情報リテラシーはそもそも情報の多様性を前提とした判断力の養成を問題にするものであることから、策定するにしてもこのような指標の適用がかえって画一的な見方の押し付けになるようなことが決してないよう、ユーザーやインターネット関連企業含め多くの関係者の意見を聞きつつ慎重に検討を進めてもらいたい。

(3)フィルタリングについて
 本計画素案の多くの項目においてフィルタリングに関する言及があり、特に、第10〜11ページの「第3 1.(3)望ましいフィルタリング提供の在り方を判断するための基準の普及」においてフィルタリングに関する基準に関する記載が加えられている。ここで、フィルタリングに関する各種検討について、一部の者の一方的な思い込みによって安易に方針を示すことなく本当の問題点を把握した上で検討を進めるべきであり、例えばこのような基準が強制的なものとして押し付けられるようなことがないよう、フィルタリングについてもユーザーやインターネット関連企業含め多くの関係者の意見を聞きつつ特に注意して検討を進めてもらいたい。

 また、東京都等の地方自治体が推し進めている携帯フィルタリングの実質完全義務化のような行き過ぎた規制強化は、青少年ネット規制法の精神に反するものであり、地方自治体法第245条の5に定められている都道府県の自治事務の処理が法令の規定に違反しているか著しく適正を欠きかつ明らかに公益を害していると認めるに足ると考えられ、同じく不適切なその他の情報規制推進についても合わせ、このような規制強化について総務大臣から各地方自治体に迅速に是正命令を出すべきである。

(4)インターネット・ホットラインセンターについて
 本基本計画素案第12ページの「第3 4.フィルタリング提供事業者による閲覧制限対象の把握の支援」及び第15ページの「第5 2.(1)インターネット・ホットラインセンターを通じた削除等の対応依頼推進」において、インターネット・ホットラインセンターについて記載されている。しかし、サイト事業者が自主的に行うならまだしも、何の権限も有しないインターネット・ホットラインセンターなどの民間団体からの強圧的な指摘により、書き込みなどの削除が行われることなど本来あってはならないことである。このようなセンターは単なる一民間団体で、しかもこの団体に直接害が及んでいる訳でもないため、削除を要請できる訳がない。勝手に有害・違法と思われる情報を収集して、直接削除要請などを行う民間団体があるということ自体おかしいと考えるべきであり、このような有害無益な半官検閲センターは即刻廃止が検討されて良い。このような無駄な半官検閲センターに国民の血税を流すことは到底許されないのであって、その分できちんとした取り締まりと削除要請ができる人員を、法律によって明確に制約を受ける警察に確保するべきである。

(5)児童ポルノサイトブロッキングについて
 本基本計画素案第15ページの「第5 2.(2)事業者や民間団体の効果的な閲覧防止策の支援」において、児童ポルノサイトブロッキングに関する言及がある。ここで、既に、警察などが提供するサイト情報に基づき、統計情報のみしか公表しない不透明な中間団体を介し、児童ポルノアドレスリストの作成が行われ、そのリストに基づいて、ブロッキング等が行われている。しかし、いくら中間に団体を介そうと、一般に公表されるのは統計情報に過ぎす、児童ポルノであるか否かの判断情報も含め、アドレスリストに関する具体的な情報は、全て閉じる形で秘密裏に保持されることになるのであり、インターネット利用者から見てそのリストの妥当性をチェックすることは不可能であり、このようなアドレスリストの作成・管理において、透明性・公平性・中立性を確保することは本質的に完全に不可能である。このようなリストに基づくブロッキングは、自主的な取組という名目でいくら取り繕おうとも、憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないのであり、小手先の運用変更などではどうにもならない。児童ポルノ規制法に関しては、既に、提供及び提供目的での所持が禁止されているのであるから、本当に必要とされることは今の法律の地道なエンフォースであって有害無益かつ危険極まりないブロッキングのような規制の推進ではない。海外サイトについても、速やかにその国の警察に通報・協力して対処すべきだけの話であって、それで対処できないとするに足る具体的根拠は全くない。例えそれが何であろうと、情報の単純所持や単なる情報アクセスではいかなる被害も発生し得ないのであり、自主的な取組という名目でいくら取り繕おうとも、情報に関する国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないサイトブロッキングは即刻排除するべきであり、そのためのアドレスリスト作成管理団体として設立された、インターネットコンテンツセーフティ協会は即刻その解散が検討されてしかるべきである。児童ポルノ規制法に関して真に検討すべきことは、現行ですら過度に広汎であり、違憲のそしりを免れない児童ポルノの定義の厳密化のみである。

(6)基本計画素案全体について
 青少年ネット規制法は、あらゆる者から反対されながら、有害無益なプライドと利権を優先する一部の議員と官庁の思惑のみで成立したものであり、速やかに廃止が検討されるべきものである。本基本計画素案で法改正の検討について言及している第19ページの「第6 4.基本計画の見直し等」において、今後、青少年ネット規制法の廃止を速やかに検討すると明記してもらいたい。

 また、出会い系サイト規制法の改正は、警察庁が、どんなコミュニケーションサイトでも人は出会えるという誰にでも分かることを無視し、届け出制の対象としては事実上定義不能の「出会い系サイト事業」を定義可能と偽り、他の重要法案と審議が重なる中、国会においてもその本質的な問題が見過ごされて可決され、成立したものである。憲法上の罪刑法定主義や検閲の禁止にそもそも違反している、この出会い系サイト規制法の改正についても、今後、速やかに元に戻すことが検討されるべきである。

 今後は、恣意的な運用しか招きようのない危険な規制強化の検討ではなく、ネットにおける各種問題は情報モラル・リテラシー教育によって解決されるべきものという基本に立ち、各種の地道な教育・啓発に関する施策のみに注力する検討が進むことを期待する。

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2012年6月10日 (日)

第272回:内閣府「青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための施策に関する基本的な計画(第2次)」(素案)に対するパブコメ募集(6月15日〆切)

 何と言っても目下の最大の懸念はダウンロード犯罪化問題をおいて他にないが、並行して内閣府から第2次青少年ネット基本計画に関するパブコメがかかっており、これも決して無視して良いものではないのでここでも取り上げておく。(内閣府の意見募集ページ、電子政府の該当ページ参照。internet watchの記事も参照。)

 第2次青少年ネット基本計画(素案)の概要(pdf)にも見直しの主なポイントが書かれているが、パブコメを書くにあたり、この新たな基本計画素案(pdf)が、3年前の前回の基本計画(内閣府の基本計画ページ参照)からどこがどう変わっているのかという一番重要な点がどうにも分かりにくいので、以下、両者の差を明確に示して行く。(なお、前回の基本計画に対する私のコメント及び提出パブコメは、第170回及び第172回に載せている。)

 この計画案は全体的な出来の面でやはり比較的良いと思うが、まず、第4ページから第5ページにかけて、以下のような項目が追加されている点は重要である。

3.施策実施において踏まえるべき考え方

 上記の基本的な方針に基づき各施策を推進するに際しては、青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備に向けた取組を通じて、青少年有害情報から青少年を守り、インターネットの恩恵を享受させるため、次の5つの考え方を踏まえて実施する。

① リテラシー向上と閲覧機会の最小化のバランス
 青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境を整備するため、あらゆる機会を利用してインターネットを適切に活用する能力の向上を図る施策を行う。これを補完するため、青少年有害情報を閲覧する機会をできるだけ少なくするための施策を行う。

② 保護者及び関係者の役割
 青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備に関する権利を持ち、役割を担うのは、一義的にはその青少年を直接監護・教育する立場にある保護者である。ただし、インターネットの利用環境はその急速な技術革新等により大きく変化するものであり、保護者が単独でその役割を全うすることは困難なため、関係者は連携協力して保護者を補助する各々の役割を果たさなければならない。

③ 受信者側へのアプローチ
 青少年がインターネットを利用して青少年有害情報を閲覧する機会をできるだけ少なくするための施策は、インターネット上の自由な表現活動の確保の観点から、受信者側へのアプローチを原則とする。

④ 民間主導と行政の支援
 青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境を整備するに当たって、まずは、民間による自主的かつ主体的な取組を尊重し、これを更に行政が支援する。

⑤ 有害性の判断への行政の不干渉
 いかなる情報が青少年有害情報であるかは、民間が判断すべきであって、その判断に国の行政機関等は干渉してはならない。

 この5項目は、総務省の「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備に関する提言」(第258回参照)中の基本方針をそのまま持って来ており、入れたのは総務省ではないだろうか。極めて当たり前のことながら、このような謙抑的かつ前向きな方針をこの基本計画案にも入れたことについて総務省の取り組みを私は高く評価したい。

 次に追加されているのは、第7ページの

(2)ポータルサイト等を活用した分かりやすく速やかな情報提供
 違法・有害情報対策のホームページ等のポータルサイトを活用し、違法・有害情報への具体的対策等について、分かりやすく利便性の高い情報の速やかな提供を実施する。
 また、青少年のインターネット環境整備のために各省庁が取り組んでいる施策の一覧、保有するデータ等を内閣府の青少年インターネット環境整備に関するポータルサイトを活用すること等により、一覧性を持たせて分かりやすく提供すると共に、各省庁の施策の連携を深める。

(3)サイバー防犯ボランティア育成・支援の推進
 既にサイバー防犯ボランティアとして活動している団体のノウハウを調査研究するなどして、新たなサイバー防犯ボランティアを育成・支援し、同ボランティアにより青少年のインターネットの適切な利用に関する教育や啓発活動を行って、国民参加の気運を醸成し、安全で安心なインターネット空間の実現に向けた取組を推進する。

(4)インターネットリテラシーに関する指標策定の取組
 スマートフォンを始めとする新たな機器の出現などにより、青少年が安全に安心してインターネットを活用するために必要なリテラシーが多様化しているところ、青少年のインターネットリテラシーに関する指標を策定し、これを青少年に適用することで、青少年のインターネットリテラシーを計測し、その分析結果に基づいたインターネットリテラシーの向上施策を推進する。

の部分であり、この(2)に後半部分が追加され、項目として(3)及び(4)が追加されるという変更が加えられている。そこまで規制的な話が出ている訳ではないが、ボランティアやリテラシー指標については多少注意が必要だろう。

 また、第8ページから第9ページにかけて、

(3)保護者に対する有効な普及啓発支援の検討
 普及啓発活動において、法の趣旨に沿ったフィルタリングの利用や家庭内でのルールづくりなどの取組を推進する上で、保護者に対する更なる理解及び自主的な取組促進が重要であることから、そのための効果的な普及啓発の支援策について、有識者による検討を行い、その検討結果に基づき普及啓発支援を実施する。

という項目が追加され、その後の第9ページで、「(2)保護者に対する効果的な啓発の在り方の検討・推進」という項目中に「これらの取組の効果を高めるため、利用実態の継続的な調査を実施する」という文章が、「(1)社会総がかりで取り組むための広報啓発の実施」という項目中に「青少年が使用する携帯電話・PHS等の購入が多く見込まれる進学・進級時期における集中的かつ効果的な活動などにより、総合的な広報啓発等を継続的に実施する」という文章が追加されている。なお、あまり本質的な修正ではないが、「(2)インターネット利用者・事業者の主体的な活動への支援」という項目から「チーム・マイナス6%」に関する言及が削除されている。

 第10ページでは、「(1)フィルタリング提供義務等の実施徹底」という項目中に「また、インターネットカフェ事業者に対して、青少年に対する有害情報の閲覧防止措置を講ずるなど青少年インターネット環境整備法の遵守等の働き掛けを継続的に推進する」という文章が追加されるとともに、「(2)保護者への説明等の推進」という項目で説明するものとして「利用方法」の語が追加されている。

 第10ページから第11ページにかけては、

(3)望ましいフィルタリング提供の在り方を判断するための基準の普及
 青少年のインターネットの利用環境が変化を続けている中、インターネット接続に際し用いられる携帯電話・PHS・ゲーム機やパーソナルコンピュータ等の端末について、関係事業者がどのように連携してフィルタリングを提供するのが望ましいかを判断できるように、フィルタリング提供の在り方を判断するための基準の周知・普及を進め、関係事業者による適切なフィルタリングサービス等の提供を促進する。

という項目が追加されているが、ここで言うフィルタリング基準についてはやはり画一的なものの押しつけにならないよう気をつけておいた方が良いだろう。

 第11ページでは、書く意味がなくなったのか、「(1)携帯電話・PHSのフィルタリングの多様化・改善の推進」の項目から、平成21年度中にという年度に関する記載が消え、第11ページから第12ページにかけて、

3.新たな機器及び伝送技術への対応

(1)フィルタリングの推進
 環境変化が激しいインターネット利用については、スマートフォンなどの新たな機器やWifiなどの伝送技術が普及することに対応して、民間団体の自主的な取組の在り方も踏まえて、今後の具体的なフィルタリングの実施方策等について、第三者機関の関与も含め、関係省庁が連携して継続的に検討する。
 また、保護者などにフィルタリングの内容や必要性及び利用方法を分かりやすく伝える事業者の自主的な取組を支援する。

(2)青少年保護・バイ・デザインを念頭に置いた新たな機器等の設計等の支援
 青少年を取り巻くインターネット環境においては、次々と新しい機器が出現し、青少年に普及するところ、新たな機器やサービスを提供する場合は、その設計段階から青少年が利用することを想定し、青少年に対するインターネット上の危険性をあらかじめできるだけ小さくしておくことが重要であることから、実効的な青少年保護を組み込んだ形で、機器の設計、サービスの設計、事業者内部及び事業者間の体制の整備等(青少年保護・バイ・デザイン)が行われるように民間の取組を支援する。

という項目が追加されている。

 第13ページの「(2)効率的かつ円滑な活動実現のための支援」という項目で、インターネット上の有害・違法情報検出技術の開発支援や、違法・有害情報選別業務従事者に対する精神的ケアに関する記載が消され、単に対策に関する調査とされたのも意味深い。前者の技術開発はやはり無理だったのだろうと推測するが、後者のケアは書くまでもないと考えたのだろうか。

 第14ページの「4.その他のインターネットの利用環境整備に向けた活動に対する支援」という項目では、安心ネットづくり促進協議会等の活動について、元は単に活動を支援するだけとあったのが、「取組強化、参加者相互間の連携強化を支援する」と強化を打ち出している。

 児童ポルノブロッキングが自主規制という形で導入されてしまったので、第15ページから第16ページにかけての、

(2)事業者や民間団体の効果的な閲覧防止策の支援
 インターネット上の児童ポルノについて、被害者である青少年の権利を保護するため、事業者及び民間団体における効果的な閲覧防止策を支援する。

という児童ポルノに関する項目では、閲覧防止策の検討支援から「検討」が消され、単に閲覧防止策の支援にされている。

 これもあまり本質的な変更ではないように思うが、第17ページの「(3)チェーンメール対策の周知啓発」という項目では、青少年がチェーンメールを受け取っているだけではなく、送ったりしているとの記載が追加された。

 第18ページの「1.国における推進体制」では、さすがにもう書く意味がなくなったのか、平成19年の「インターネット上の違法・有害情報に関する集中対策」に関する記載が削除された。

 同ページの「3.国際的な連携の促進3.国際的な連携の促進」という項目では、平成24年2月に採択された経済協力開発機構(OECD)のオンライン上の青少年保護勧告に関する言及が追加された。OECDのHPで公開されているこの勧告は、表現の自由などに関する言及もあり全体的にバランスの取れた良い勧告だと思うが、いずれにせよ、こうした国際機関における動きには注意しておくに越したことはないだろう。

 最後に第19ページの「4.基本計画の見直し等」で「法令改正も含めた必要な対応の検討を実施する」と法改正の検討に関する明示的な記載が入ったことも注意しておくべきだろう。法改正の方向性までは書かれていないが、書かれた以上は何かしらの検討がされて行くに違いないのである。

 この新たな計画案はやはり基本的に情報モラル・リテラシー教育/啓発運動とフィルタリングの導入促進を中心とした地道な取り組みを推進するとしており、省庁の基本計画としては前回同様かなりマシな出来である。総務省が5つの基本方針を入れてくれたお陰で内容のレベルは向上したと言って良いようにも思うが、新たに入った各種の検討項目も含め、前回の基本計画(第170回及び第172回参照)に含まれていたインターネット・ホットラインセンターや児童ポルノブロッキングなど問題のある施策に関する記載も残されているなど、やはり注意しておいた方が良いことに変わりはなく、私もパブコメを出すつもりでいる。パブコメ期間が5月29日から6月15日までの実質2週間と少しという非常に短い期間になっているが、折角の機会なので、ネット規制に関して関心を寄せている方には是非パブコメを出すことを検討してもらいたいと思う。

(2012年6月12日の追記:誤記を1つ修正した。)

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2010年8月27日 (金)

第236回:内閣府・第3次男女共同参画基本計画に盛り込むべき施策に関する提案募集に対する提出パブコメ

 今現在、内閣府の男女共同参画局から8月31日〆切でかかっている、第3次男女共同参画基本計画に盛り込むべき施策に関する提案募集(内閣府の意見募集ページ参照)に対してパブコメを書いて提出したので、内容としては以前出した中間整理に対する提出パブコメとあまり変わりはないが、念のため、ここにも載せておく。

 中間整理案と比べると、多少はマシになっているとは言え、「第3次男女共同参画基本計画策定に当たっての基本的な考え方(答申)」には問題はまだまだ多く残っている。直接読んで頂ければ分かると思うが、やはり、第9分野 女性に対するあらゆる暴力の根絶(pdf)第13分野 メディアにおける男女共同参画の推進(pdf)の2つは、印象操作を多く含み、根拠なく児童ポルノ規制の強化や創作物規制の推進を唱道しているなど問題だらけである。

 何故中間整理に対する意見募集の後で、こうも慌ただしくまたパブコメをかけるのだかさっぱり分からないが、折角の機会ではあるので、前回パブコメを出された方など、表現規制問題に関心のある方には今回も意見を出すことを検討することをお勧めしたい。

 一緒に最近の話も少し紹介しておくと、8月23日に、文化庁で文化審議会著作権分科会の基本問題小委員会の最終会合が開かれ、報告書がとりまとめられている(日経パソコンの記事、文化庁HPの議事次第・資料参照)。報告書自体は大したことは書かれていないが、とりあえず文化庁がこの小委員会を使って有害無益な規制強化のごり押しを図ってこなかったのは良いことである。

 また、8月24日には、内閣府の行政透明化検討チームも、とりまとめ案(pdf)概要(pdf))をまとめている(共同通信の記事、行政透明化検討チームのHP参照)。この報告書は個人的には踏み込みの点で物足りないところもあるが、情報公開法の改正は地道に進めるべきなのは間違いなく、混沌とする政治情勢の中でどうなるかは何とも分からないが、この法改正の今後には大いに注目している。

 次回は、また海賊版対策条約(ACTA)の話を書きたいと思っている。

(8月30日の追記:静岡県からも、他と同様の携帯・ネット規制を含む青少年条例改正案に関するパブコメが9月15日〆切でかけられている(静岡県のHP参照)。静岡県在住で、このような問題に関心のある方は、是非提出をご検討頂ければと思う。)

(以下、第8分野「女性に対するあらゆる暴力の根絶」に対する提出パブコメ)

○ページ番号:p.41~46

○項目番号:Ⅲ1(1)、(2)⑤、4(1)、(2)①~⑥、Ⅲ8(1)、(2)①~④

○提案内容
1.広報啓発等について(p.41、Ⅲ1(1)/p.45、Ⅲ8(1)、(2)①)
 これらの項目において、「一部メディアに氾濫する性・暴力表現は、男女が平等でお互いの尊厳を重んじ対等な関係づくりを進める男女共同参画社会の形成を大きく阻害する」、「女性をもっぱら性的ないしは暴力行為の対象として捉えたメディアにおける性・暴力表現は、男女共同参画社会の形成を大きく阻害するものであり、女性に対する人権侵害となるものもある」、「女性をもっぱら性的ないしは暴力行為の対象として捉えたメディアにおける性・暴力表現は、男女共同参画社会の形成を大きく阻害するものである」と根拠なく断言しているが、表現をどのようにとらえるかは人によるものであり、一部の者の一方的な見方を押し付けることにしかなりようのない、このような歪んだ観点からの広報啓発は行われてはならない。

2.公共の場における広告等に対する規制について(p.41、Ⅲ1(2)⑤)
 この項目において、「公共の場における女性をあからさまに性的な対象とする広告等に対する規制を含めた実効的な対策について、表現の自由を十分尊重した上で検討する」としているが、否応なく通行者の目に入る街中の広告等と、通常一人での利用が想定され、受信者による主体的な情報の遮断が可能であり、表現に接することを望まない人の自由と権利が既に確保されているインターネット等は混同されてはならない。広告等に対する新たな規制の検討の必要性自体疑問であるが、たとえ検討を進めるとしても、「公共の場」として現実の街中とインターネットのような場の混同を故意に惹起するような暴論に基づく議論は厳に慎むべきであり、各々の状況をきちんと区別し、問題の本質を理解した上で、現行の規制の必要性から問い直すことがまず行われるべきである。

3.児童ポルノ規制、ブロッキングについて(p.43、Ⅲ4(1)、4(2)③/p.46、Ⅲ8(2)③)
 閲覧とダウンロードと取得と所持の区別がつかないインターネットにおいては例え児童ポルノにせよ情報の単純所持や取得の規制は有害無益かつ危険なもので、憲法及び条約に規定されている「知る権利」を不当に害する。意図に関する限定を加えたところで、エスパーでもない限りこのような積極性を証明することも反証することもできないため、このような規制の危険性は回避不能であり、思想の自由や罪刑法定主義にも反する。現行法で既に規制されている提供によって生じる被害と所持等との混同は許され得ない。実際の被害者の存在しないアニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現への対象拡大も児童保護という法目的を大きく逸脱する異常規制に他ならない。利用者から見てアドレスリストの妥当性のチェックが不可能なブロッキングも、表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ない。児童ポルノ規制については、定義の厳密化、単純所持・創作物規制といった非人道的な規制の排除の国際的な働きかけ等のみを検討するべきである。
 なお、実写と見紛うCGの規制については、確かに実在の児童が絡む事件の捜査の妨げになる可能性があるが、今の所捜査の妨げの事実はなく、その規制の検討も時期尚早である。

4.出会い系サイト規制等について(p.44、Ⅲ4(2)④)
 出会い系サイト規制法の改正は、警察庁が、どんなコミュニケーションサイトでも人は出会えるという誰にでも分かることを無視し、届け出制の対象としては事実上定義不能の「出会い系サイト事業」を定義可能と偽り、改正法案の閣議決定を行い、法案を国会に提出したものであり、他の重要法案と審議が重なる中、国会においてもその本質的な問題が見過ごされて可決され、成立したものである。憲法上の罪刑法定主義や検閲の禁止にそもそも違反している、今回の出会い系サイト規制法の改正についても、今後、速やかに元に戻すことが検討されるべきである。
 なお、青少年ネット規制法についても、そもそも、あらゆる者から反対されながら、有害無益なプライドと利権を優先する一部の議員と官庁の思惑のみで成立したものであり、速やかに廃止が検討されるべきものである。

5.犯罪の前兆行為の規制について(p.44、Ⅲ4(2)⑤)
 この項目において、「性犯罪の前兆となり得るつきまとい等の行為に対する捜査・警告を積極的に実施するとともに、これらの前兆行為に関する対応の在り方を検討する」としているが、犯罪行為と犯罪の前兆行為は混同されるべきではなく、これらをきちんと区別した上で、国民の生活と安全に対し警察権力による不当な介入・侵害がなされないよう、単なる前兆行為への対応については、特に慎重に検討するべきである。

6.調査について(p.46、Ⅲ8(2)②)
 内閣府は対面調査で回答の誘導を行うなど有害かつ悪質な世論操作を行った前科がある。調査を行う場合は、役所の関与を極力無くし、複数の調査機関により項目の偏向をチェックし、ウェブ調査も含め幅広い調査にするべきである。

7.ゲーム等の一般メディア規制について(p.46、項目番号:Ⅲ8(1)、(2)④)
 ゲーム等の一般メディアについて、「国際的に重大な懸念が表明されるコンテンツの流通が現実問題となっている」としているが、文化の相違を無視し、他国の極一部の者の歪んだ主張を一方的に是とするが如き暴論に取るべきところは何一つない。一部の者の一方的な見方によって、民主主義の最重要の基礎である表現の自由や言論の自由、思想の自由等々の最も基本的な精神的自由そのものを危うくする規制強化が是とされるべきではない。今現在の日本において、メディア表現について規制強化をするに足る根拠は一切なく、DVD、ビデオ、パソコンゲーム等バーチャルな分野等における性・暴力表現のさらなる規制の検討に反対する。かえって、固定観念にとらわれない多様な男女両性の性表現を確保し、多様な価値観を互いに許容し合う真の男女共同参画社会を目指すため、既に時代遅れとなっている現行の猥褻物規制の緩和について、政府レベルでの検討を開始するべきである。

8.リテラシー教育等について(p.43、4(1)①、②、⑥)
 今後は、基本に立ち返り、メディアリテラシー教育の推進、現実の暴力の取り締まり等の地道な対策のみに注力した検討が進められることを期待する。

(以下、第13分野「メディアにおける男女共同参画の推進」に対する提出パブコメ)

○ページ番号:p.59~60

○項目番号:Ⅱ、Ⅲ1(1)、(2)①~⑥

○提案内容
1.広報啓発、メディアへの自主規制の働きかけ等について(p.59、Ⅱ/p.60、Ⅲ1(1)、Ⅲ1(2)②、③)
 これらの項目において、「女性や子どもをもっぱら性的ないしは暴力行為の対象として捉えたメディアにおける性・暴力表現は、男女共同参画社会の形成を大きく阻害するものであり、女性や子どもに対する『人権侵害』となるものもある」、「女性や子どもの人権を侵害するような違法・有害な情報」がある、「女性や子どもの人権を侵害するような表現」があるなどと根拠なく断言している。しかし、表現をどのようにとらえるかは人によるものである。また、特定の個人・個々の状況を超えて、一般的な創作表現による人権侵害があるとすることは、具体的な被害者がいない以上、公権力に表現内容の是非を恣意的に判断させる権限を与えるに等しく、実質表現の自由を殺すに等しい極悪非道の暴挙に他ならない。違法な情報と有害な情報を混同することも不当に規制の範囲を拡大することにつながる危険なことである。一部の者の一方的な見方を押し付けることにしかなりようのない、このような歪んだ観点からの啓発や自主規制等の働きかけは行われてはならない。
 特に広報啓発については、人権問題は単純でなく、その真の理解を周知することが重要であること、児童ポルノ規制等が国民の基本的な権利である表現の自由や通信の秘密等にも関わる非常に重大な問題であることを考え、表現の自由に関する問題に詳しい情報法・憲法の専門家、児童ポルノ法の実務に携わりその本当の問題点を熟知している法律家、規制強化に慎重あるいは反対の意見を有する弁護士等も各種の場に呼び、児童ポルノ規制問題等について、多様な意見の取り入れを図るとともに、様々な意見があることを広めるべきである。
 特に表現に関する自主規制について検討を行うのであれば、既存のメディアにおける各種自主規制が不当に萎縮的なものとなっていないかのチェックこそ行うべきであり、表現の自由を最大限確保し、固定観念にとらわれない多様な男女両性の性表現を確保し、多様な価値観を互いに許容し合う真の男女共同参画社会を目指すため、合理的な理由のない自主規制の排除の働きかけこそ行うべきである。

2.公共性の高い空間やメディアにおける規制について(p.59、Ⅱ)
 この項目において、「公共性の高い空間やメディアにおける性・暴力表現については、青少年やそのような表現に接することを望まない人の権利を守るため、情報の隔離を適切に行う取組が必要である。とりわけ、インターネット等の普及により、女性や子どもの人権を侵害するような違法・有害な情報の発信主体が多様化し、受信も容易となっている状況を踏まえ、対策を検討する」と書かれているが、「公共性の高い」といった語により、否応なく通行者の目に入る街中の広告等と、通常一人での利用が想定され、受信者による主体的な情報の遮断が可能であり、表現に接することを望まない人の自由と権利が既に確保されているインターネット等を混同することがあってはならない。また、電波という稀少な公的資源の有限性からある程度の規制が正当化される放送メディアとそのような有限性のないインターネット等でも状況は異なる。新たな規制の検討の必要性自体疑問であるが、たとえ検討を進めるとしても、「公共の高い空間」などとして現実の街中とインターネットのような場の混同を故意に惹起するような暴論に基づく議論は厳に慎むべきであり、各々の状況をきちんと区別し、問題の本質を理解した上で、現行の規制の必要性から問い直すことがまず行われるべきである。

3.国際発信について(p.60、Ⅲ1(2)①)
 特に国際的に日本のメディアに対する誤解があるようであれば、早急にその誤解を解くよう、実際の被害者の存在しない創作物に対する性あるいは暴力を理由とした根拠のない曖昧かつ広汎な表現規制はかえって表現の自由の不当な規制、非人道的な人権侵害となると、国際的な場で働きかけをするべきである。

4.調査について(p.60、Ⅲ1(2)④)
 内閣府は対面調査で回答の誘導を行うなど有害かつ悪質な世論操作を行った前科がある。調査を行う場合は、役所の関与を極力無くし、複数の調査機関により項目の偏向をチェックし、ウェブ調査も含め幅広い調査にするべきである。

5.ゲーム等の一般メディア規制について(p.60、Ⅲ1(2)⑤)
 一部の者の一方的な見方によって、民主主義の最重要の基礎である表現の自由や言論の自由、思想の自由等々の最も基本的な精神的自由そのものを危うくする規制強化が是とされてはならない。今現在の日本において、メディア表現について規制強化をするに足る根拠は一切なく、DVD、ビデオ、パソコンゲーム等バーチャルな分野等における性・暴力表現のさらなる規制の検討に反対する。かえって、固定観念にとらわれない多様な男女両性の性表現を確保し、多様な価値観を互いに許容し合う真の男女共同参画社会を目指すため、既に時代遅れとなっている現行の猥褻物規制の緩和について、政府レベルでの検討を開始するべきである。

6.リテラシー教育等について(p.60、Ⅲ1(2)⑥)
 今後は、基本に立ち返り、メディアリテラシー教育の推進、現実の暴力の取り締まり等の地道な対策のみに注力した検討が進められることを期待する。

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2010年6月 6日 (日)

第229回:内閣府・ 児童ポルノ排除総合対策案に対する提出パブコメ

 前回取り上げた内閣府の児童ポルノ排除総合対策案(pdf)に対してパブコメを書いて提出した。いつも書いていることと違いはないが、念のため、ここに載せておく。このパブコメは非常に重要なものと私も思っており、普段情報規制問題に疑問や懸念を抱いている方でまだ意見を出していない方がいれば、明日6月7日正午までと残り時間は少ないが、今からでも是非提出を検討頂ければと思う(パブコメについては、内閣府の該当ページ参照。かなり長くなったので私は意見を分割して提出した)。

(なお、internet watchの記事にもなっているが、児童ポルノサイトブロッキングについては、インターネットプロバイダー協会も片寄った報道姿勢に対して懸念表明(pdf)を行い、この対策案に対する意見書(pdf)も提出するなど、業界もかなり神経を尖らせていると知れる。個人的には業界の意見として多少踏み込みが浅いようには思うが、これらの意見書も参考になると思うので、ここにリンクを張っておく。)

 次回は、このパブコメのために少し後回しにした今年の知財計画の話を取り上げたいと思っている。

(以下、提出パブコメ)

(1)「1① 協議会の設置」(第1ページ)について
 ここで書かれている協議会について、児童ポルノ対策が国民の基本的な権利である表現の自由や通信の秘密等にも関わる非常に重大な問題であることから、表現の自由に関する問題に詳しい情報法・憲法の専門家、児童ポルノ法の実務に携わりその本当の問題点を熟知している法律家、規制強化に慎重あるいは反対の意見を有する弁護士等も多く含む形で構成し、児童ポルノ規制問題について、様々な意見があることを広めるとともに多様な意見の取り入れを図るとここに明記するべきである。

(2)「1②  国民運動の効果的な推進」(第1ページ)について
 ここで書かれているシンポジウムについて、上で書いたことと同じく、児童ポルノ対策が国民の基本的な権利である表現の自由や通信の秘密等にも関わる非常に重大な問題であることから、表現の自由に関する問題に詳しい情報法・憲法の専門家、児童ポルノ法の実務に携わりその本当の問題点を熟知している法律家、規制強化に慎重あるいは反対の意見を有する弁護士等もシンポジウムに呼び、児童ポルノ規制問題について、様々な意見があることを広めるとともに多様な意見の取り入れを図るとここに明記するべきである。なお、キャッチコピー、シンボルマーク等についてもそのニーズからまず検討を行い、必要が無ければそもそも公募しないとされるべきであり、特に、このような事業が、根拠無く一般的かつ網羅的な表現・情報弾圧を唱える非人道的な自称良識派団体や天下り団体に丸投げされるようなことがないようにするべきである。

(3)「1⑥ 『女性に対する暴力をなくす運動』における取組」(第1ページ)について
 児童問題と女性問題を混同するべきではなく、この項目は削除するべきである。

(4)「1⑧ 国際的取組への参画」(第2ページ)」について
 この項目において、「児童の性的搾取に反対する世界会議」の宣言について触れられているが、児童ポルノの閲覧の犯罪化と創作物の規制まで求める「子どもと青少年の性的搾取に反対する世界会議」の根拠のない狂った宣言を国際動向として一方的に取り上げ、児童ポルノ規制の強化を正当化することなどあってはならない。
 特に国際動向については(12)「6② 諸外国の児童ポルノ対策の調査」についてに、児童ポルノを理由とした単純所持・取得規制、創作物規制といった非人道的な規制の問題については(14)児童ポルノの単純所持・取得規制等についてに書くが、児童ポルノを理由とした非道な人権侵害を防ぐため、この項目において、リオデジャネイロ宣言に関する記載に代え、「児童ポルノを対象とするものにせよ、いかなる種類のものであれ、情報の単純所持・取得規制・ブロッキングは極めて危険な規制であるとの認識を深め、このような規制を絶対に行わないことと閣議決定し、児童ポルノの単純所持規制・創作物規制といった非人道的な規制を導入している諸国は即刻このような規制を廃止するべきと、そもそも最も根本的なプライバシーに属し、何ら実害を生み得ない個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ること自体、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の国際的かつ一般的に認められている基本的な権利からあってはならないことであると、日本政府から国際的な場において各国に積極的に働きかける。」との記載を追加してもらいたい。

(5)「2(1)① 青少年インターネット環境整備法に基づく総合的な被害防止対策の推進」(第2ページ)について
 フィルタリングに関する規制については、フィルタリングの存在を知り、かつ、フィルタリングの導入が必要だと思っていて、なお未成年にフィルタリングをかけられないとする親に対して、その理由を聞くか、あるいはフィルタリングをかけている親に対して、そのフィルタリングの問題を聞くかして、きちんと本当の問題点を示してから検討するべきである。
 また、この項目において、青少年ネット規制法について言及されているが、そもそも、青少年ネット規制法は、あらゆる者から反対されながら、有害無益なプライドと利権を優先する一部の議員と官庁の思惑のみで成立したものであり、速やかに廃止が検討されるべきものである。
 なお、出会い系サイト規制法の改正も、警察庁が、どんなコミュニケーションサイトでも人は出会えるという誰にでも分かることを無視し、届け出制の対象としては事実上定義不能の「出会い系サイト事業」を定義可能と偽り、改正法案の閣議決定を行い、法案を国会に提出したものであり、他の重要法案と審議が重なる中、国会においてもその本質的な問題が見過ごされて可決され、成立したものである。憲法上の罪刑法定主義や検閲の禁止にそもそも違反している、今回の出会い系サイト規制法の改正についても、今後、速やかに元に戻すことが検討されるべきである。

(6)「2(1)② 青少年保護に向けたメディアリテラシーの向上及び新たな取組に対する支援」(第2ページ)について
 総務省に対するパブコメでも書いたが、メッセージ交換サービスにおけるメールの内容確認を送信者に対しデフォルトオンで認める余地があるとすることは、実質、送信者が受信者しか知り得ないだろうと思って送る情報の内容について、知らない内に事業者に検閲されているという状態をもたらす危険性が極めて高い。受信情報のフィルタリングに関する要件を一方的に拡大解釈し、送信者に対するデフォルトオンのメールの内容確認の余地を認めることは、実質的にメール・通信の検閲の余地を認めるに等しく、憲法にも規定されている通信の秘密をないがしろにすることにつながりかねない極めて危険なことであり、この項目から、実質的な検閲につながりかねないメッセージ交換サービス監視に関する記載を削除するべきである。

(7)「2(1)④ フィルタリングの普及促進等のための施策」(第3ページ)について
 上の(5)でも書いた通り、フィルタリングに関する規制については、フィルタリングの存在を知り、かつ、フィルタリングの導入が必要だと思っていて、なお未成年にフィルタリングをかけられないとする親に対して、その理由を聞くか、あるいはフィルタリングをかけている親に対して、そのフィルタリングの問題を聞くかして、きちんと本当の問題点を示してから検討するべきである。

(8)「3① 違法情報の排除に向けた取組の推進」(第4ページ)について
 この項目でインターネット・ホットラインセンターについて言及されているが、サイト事業者が自主的に行うならまだしも、何の権限も有しないインターネット・ホットラインセンターなどの民間団体からの強圧的な指摘により、書き込みなどの削除が行われることなど本来あってはならないことである。このようなセンターは単なる一民間団体で、しかもこの団体に直接害が及んでいる訳でもないため、削除を要請できる訳がない。勝手に有害と思われる情報を収集して、直接削除要請などを行う民間団体があるということ自体おかしいと考えるべきであり、このような有害無益な半官検閲センターは即刻廃止が検討されて良い。このような無駄な半官検閲センターに国民の血税を流すことは到底許されないのであって、その分できちんとした取り締まりと削除要請ができる人員を、法律によって明確に制約を受ける警察に確保するべきであり、この項目においては、インターネット・ホットラインセンターの廃止を検討すると明記するべきである。

(9)「3④ 児童ポルノ掲載アドレスリスト作成管理団体との連携等を通じた児童ポルノ流通防止対策の推進」(第4ページ)について
 児童ポルノ掲載アドレスリスト作成管理団体のガイドライン案に対するパブコメ等でも書いたことだが、警察などが提供するサイト情報に基づき、統計情報のみしか公表しない不透明なリスト作成管理団体等を介し、児童ポルノアドレスリストの作成が行われ、そのリストに基づいて、インターネット・サービス・プロバイダー、検索サービス事業者あるいはフィルタリング事業者がブロッキング等を行うことは、実質的な検閲に他ならず、決して行われてはならないことである。いくら中間に団体を介そうと、一般に公表されるのは統計情報に過ぎす、児童ポルノであるか否かの判断情報も含め、アドレスリストに関する具体的な情報は、全て閉じる形で秘密裏に保持されることになるのであり、インターネット利用者から見てそのリストの妥当性をチェックすることは不可能であり、このようなアドレスリストの作成・管理において、透明性・公平性・中立性を確保することは本質的に完全に不可能である。このことは、このようなリストに基づくブロッキング等が、自主的な民間の取組という名目でいくら取り繕おうとも、どうして憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や通信の秘密、検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないかということの根本的な理由であり、小手先の運用や方式の変更などでどうにかなる問題では断じて無い。現時点でこの問題の克服は完全に不可能であり、アドレスリスト作成管理団体のガイドライン、公募等を全て白紙に戻し、このような非人道的なブロッキング導入の検討を行っている児童ポルノ流通防止協議会を即刻解散するとここでは明記するべきである。

(10)「3⑤ ブロッキングの導入に向けた諸対策の推進」(第4ページ)について
 上の(9)「3 ④ 児童ポルノ掲載アドレスリスト作成管理団体との連携等を通じた児童ポルノ流通防止対策の推進」についてで書いた通り、自主的な民間の取組という名目でいくら取り繕おうとも、現時点で、透明性・公平性・中立性を確保することが本質的に完全に不可能であり、権力側によるその濫用の防止が不可能な、実質的な検閲たらざるを得ないリストに基づくブロッキングについて、この項目において完全に導入前提の記載がされているのは一利用者として全く受け入れることができない。この項目は削除するか、さもなくば、ブロッキングについて、インターネット利用者の通信の秘密や表現の自由に不当な影響を及ぼさない運用は不可能であるとの認識を政府として深め、ブロッキング導入に関する政府レベルでの検討を止め、表現の自由や通信の秘密といった国民の基本的な権利を最大限尊重し、他のより地道な施策のみを行うとの記載に全面的に改めるべきである。なお、ブロッキングに関する広報・啓発を行う必要があるとすれば、現時点では、権力側によるその濫用の防止が不可能であり、表現の自由や通信の秘密といった憲法に規定された国民の基本的な権利に照らして問題のない運用を行うことが不可能であるという問題の周知にのみ努めるべきである。

(11)「5② 悪質な関連事業者に対する責任追及の強化」(第8ページ)について
 この項目において、サイト管理者、サーバー管理者といった直接的な提供者ではない関連事業者に対する刑事責任等について書かれているが、アフィリエイト広告代理店社長や児童ポルノサイトへのリンク行為について児童ポルノ規制法違反幇助罪が問われるケースが既に発生しており、警察の恣意的な運用によって、現行法においてすら児童ポルノ規制法違反幇助のリスクが途方もなく拡大し、甚大な萎縮効果・有害無益な社会的大混乱が生じかねないという非常に危険な状態にあることを考えるべきであり、今現在民事的な責任の制限しか規定していないプロバイダー責任制限法に関し、刑事罰リスクも含めたプロバイダーの明確なセーフハーバーについて検討するとここに明記するべきである。

(12)「6② 諸外国の児童ポルノ対策の調査」(第9ページ)について
 ここでG8について言及されているが、児童ポルノはG8のみの問題ではなく、「G8を中心とした」という記載を削除するべきである。
 特に、国際動向については、欧米においても、情報の単純所持規制やサイトブロッキングの危険性に対する認識がネットを中心に高まって来ていることなども見逃されてはならない。例えば、ドイツのバンド「Scorpions」が32年前にリリースしたアルバムのカバーが、アメリカでは児童ポルノと見なされないにもかかわらず、イギリスでは該当するとしてブロッキングの対象となり、プロバイダーによっては全Wikipediaにアクセス出来ない状態が生じたなど、欧米では、行き過ぎた規制の恣意的な運用によって弊害が生じていることや、アメリカにおいても、去年の1月に連邦最高裁で児童オンライン保護法が違憲として完全に否定され、同じく去年の2月に連邦控訴裁でカリフォルニア州のゲーム規制法が違憲として否定されていること、去年のドイツ国会への児童ポルノサイトブロッキング反対電子請願(https://epetitionen.bundestag.de/index.php?action=petition;sa=details;petition=3860)に13万筆を超える数の署名が集まったこと、ドイツにおいても児童ポルノサイトブロッキング法は検閲法と批判され、既に憲法裁判が提起され(http://www.netzeitung.de/politik/deutschland/1393679.html参照)、去年与党に入ったドイツ自由民主党の働きかけで、法施行が見送られ、ドイツは政府としてブロッキング撤廃の方針を打ち出し、欧州レベルでのブロッキング導入にも反対していること(http://www.welt.de/die-welt/vermischtes/article6531961/Loeschung-von-Kinderpornografie-im-Netz.htmlhttp://www.zeit.de/newsticker/2010/3/29/iptc-bdt-20100328-736-24360866xml参照)なども注目されるべきである。また、スイスにおいて去年発表された調査でも、2002年に児童ポルノ所持で捕まった者の追跡調査を行っているが、実際に過去に性的虐待を行っていたのは1%、6年間の追跡調査で実際に性的虐待を行ったものも1%に過ぎず、児童ポルノ所持はそれだけでは、性的虐待のリスクファクターとはならないと結論づけており、児童ポルノの単純所持規制・ブロッキングの根拠は完全に否定されている(http://www.biomedcentral.com/1471-244X/9/43/abstract参照)。欧州連合において、インターネットへのアクセスを情報の自由に関する基本的な権利として位置づける動きがあることも見逃されるべきではない(http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=MEMO/09/491&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en参照)。民主主義の最重要の基礎である表現の自由に関わる問題において、一方的な見方で国際動向を決めつけることなどあってはならないことであり、このような国際動向もきちんと取り上げるべきである。

(13)児童ポルノ排除対策ワーキングチームと本意見募集について
 本対策案を作った児童ポルノ排除対策ワーキングチームは、ホームページなどを参照する限り、1回しか開かれておらず、議事録も不十分であり、有識者として呼ばれたと分かるのは、児童ポルノ規制について根拠無く一般的かつ網羅的な表現・情報弾圧を唱える非人道的な日本ユニセフ協会のアグネス・チャン氏1名のみである。その下のワーキンググループに至っては議事概要すら公開していない。今回の対策案に対するパブコメの期間も実質10日程度とあまりにも短く、到底国民の意見を聞く気があるとは思えない形で意見募集が行われている。このワーキングチームあるいはグループは議事録、議事の進め方、対策のとりまとめ方等あらゆる点で不透明であり、このような問題だらけのワーキングチームで表現の自由を含む国民の基本的権利に関わる重大な検討が進められることなど論外である。実際今回の意見募集の対象となっている本対策案にも、ブロッキングを中心として有害無益かつ危険な規制強化の項目が含まれており、このような検討しかなし得ない出来レースの密室政策談合ワーキングチーム・ワーキンググループは即刻解散するべきである。
 このワーキングチームは即刻解散するべきであるが、さらに今後児童ポルノ規制について何かしらの検討を行うのであれば、その検討会は下位グループまで含めて全て開催の度数日以内に速やかに議事録を公表する、一方的かつ身勝手に危険な規制強化を求める自称良識派団体代表だけで無く、表現の自由に関する問題に詳しい情報法・憲法の専門家、児童ポルノ法の実務に携わりその本当の問題点を熟知している法律家、規制強化に慎重あるいは反対の意見を有する弁護士等も呼ぶ、危険な規制強化の結論ありきで報告書をまとめる前にきちんとパブコメを少なくとも1月程度の募集期間を設けて取るなど、児童ポルノ規制の本当の問題点を把握した上で検討が進められるようにするべきである。

(14)児童ポルノの単純所持・取得規制等について
 閲覧とダウンロードと取得と所持の区別がつかないインターネットにおいては例え児童ポルノにせよ情報の単純所持や取得の規制は有害無益かつ危険なもので、憲法及び条約に規定されている「知る権利」を不当に害する。意図に関する限定を加えたところで、エスパーでもない限りこのような積極性を証明することも反証することもできないため、このような規制の危険性は回避不能であり、思想の自由や罪刑法定主義にも反する。インターネットで2回以上他人にダウンロードを行わせること等は技術的に極めて容易であり、取得の回数の限定も何ら危険性を減らすものではない。例えそれが児童ポルノであろうと情報の単純所持ではいかなる被害も発生し得えない。現行法で提供及び提供目的の所持まで規制されているのであり提供によって生じる被害と所持やダウンロード、取得、収集との混同は許され得ない。そもそも、最も根本的なプライバシーに属する個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ることは、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の基本的な権利からあってはならないことである。
 児童ポルノ法によろうが他の法律によろうが、アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現に対する児童の描写を理由とした規制の拡大は、現実の児童保護という目的を大きく逸脱する、異常規制に他ならない。アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現において、いくら過激な表現がなされていようと、それが現実の児童被害と関係があるとする客観的な証拠は何一つない。いまだかつて、この点について、単なる不快感に基づいた印象批評と一方的な印象操作調査以上のものを私は見たことはないし、虚構と現実の区別がつかないごく一部の自称良識派の単なる不快感など、言うまでもなく一般的かつ網羅的な表現規制の理由には全くならない。アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現が、今の一般的なモラルに基づいて猥褻だというのなら、猥褻物として取り締まるべき話であって、それ以上の話ではない。どんな法律に基づく権利であれ、権利の侵害は相対的にのみ定まるものであり、実際の被害者の存在しない創作物・表現に対する規制は何をもっても正当化され得ない。民主主義の最重要の基礎である表現の自由や言論の自由、思想の自由等々の最も基本的な精神的自由そのものを危うくすることは絶対に許されない。
 なお、実写と見紛うCGの規制については、確かに実在の児童が絡む事件の捜査の妨げになる可能性があるが、今の所捜査の妨げになっているとの事実はなく、その規制の検討も時期尚早である。

(15)その他報告書全体について
 最後に書いておくが、私が言いたいのは、民間の自主的な取り組みといった言葉で上辺を取り繕い、国民の情報の自由に関する基本的権利に対して重大な侵害を行ってでも利権を作ろうとすることは今後一切止めろということである。この点について私は誤解などしていないし、今後の検討の参考にするなどといった役人の遁辞などそれこそ全く求めていない。児童ポルノ規制法に関しては、既に、提供及び提供目的での所持が禁止されているのであるから、本当に必要とされることは今の法律の地道なエンフォースであって有害無益な規制強化の検討ではない。
 特に、児童ポルノ規制問題・有害サイト規制問題における自称良識派団体の主張は、常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。今後は、このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むべきである。同じく、憲法に規定されている検閲の禁止から、サイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むべきである。
 現行以上に規制を強化するべきとするに足る明確かつ具体的な根拠は何1つ示されておらず、児童ポルノ規制法に関して検討すべきことがあるとしたら、現行ですら過度に広汎であり、違憲のそしりを免れない児童ポルノの定義の厳密化、上で書いた通り、危険な規制強化を止める逆規制、幇助リスクを考慮した刑事罰リスクも含めたプロバイダーの明確なセーフハーバー、児童ポルノの単純所持規制・創作物規制といった非人道的な規制の排除の国際的な働きかけのみである。
 今後は、恣意的な運用しか招きようのない危険な規制強化の検討ではなく、情報に関する各種問題は情報モラル・リテラシー教育によって解決されるべきものという基本に立ち帰り、教育・啓発等に関する地道な施策のみに注力する検討が進められることを期待する。

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2010年5月28日 (金)

第228回:内閣府・ 児童ポルノ排除総合対策案パブコメ募集(6月7日正午〆切)

 6月7日正午〆切で、内閣府から児童ポルノ排除総合対策案(pdf)に対するパブコメがかかった(内閣府の該当ページ参照)。既に「表現規制について少しだけ考えてみる(仮)」、「チラシの裏(3周目)」、「北へ。の国から」、「カルトvsオタクのハルマゲドン/カマヤンの虚業日記」等でも取り上げられているので、リンク先をご覧頂ければ十分と思うが、このパブコメは非常に重要なものと思うので、ここでも取り上げる。

 この対策案(pdf)は、内閣府の「児童ポルノ排除対策ワーキングチーム」という検討会で検討されたものだが、この検討会は、リンク先をご覧頂ければすぐに分かるように実質数回しか開かれていない上、有識者としてヒアリングしたと知れるのは児童ポルノ規制問題ではとにかく根拠なく規制強化をがなり立てるので悪名高い日本ユニセフ協会のアグネス・チャン氏のみ、その下のワーキンググループに至ってはどのような資料に基づいてどのような議論がされたかも一切不明であり、このようなたかが数回の検討でネット検閲にしかなりようのないサイトブロッキングをほとんど何の根拠も示さずに対策として打ち出すという出来レースにもほどがあるひどいものである。(このパブコメ自体実質期間が10日程度しかないと、人の意見を聞く気があるとは到底思えない取り方をされている。)

 この対策案(pdf)にはそれでも情報モラル教育などの地道な話も入っているが、このワーキングチームは超出来レースのため問題のある記載も山ほど入っており、特に問題のある部分を、以下に指摘して行きたいと思う。(例によって何故か、総務省で主に検討されているフィルタリングの話やメール検閲の話まで入っている。パブコメではこれらの問題についても指摘するつもりだが、ここでは省略する。)

 まず、「1 児童ポルノの排除に向けた国民運動の推進」で、第1ページに

① 協議会の設置
 児童ポルノの排除に向けた国民運動を官民一体となって推進するため、関係府省庁、教育関係団体、医療関係団体、事業者団体、NPO等で構成する協議会を設置し、国民運動の推進方策について協議するとともに、その周知を図る。(内閣府)

と書かれているが、この協議会からして、いつもの警察庁御用達の規制派団体メンバーが並ぶ可能性が高く、気を付ける必要があるだろう。また、次の、

② 国民運動の効果的な推進(第1ページ)
 児童ポルノを排除するため、キャッチコピー、シンボルマーク等を公募し、広報・啓発活動に活用するとともに、シンポジウムを開催するなどして国民運動の効果的な推進を図る。(内閣府、警察等)

についても、どうせどこかに丸投げで外注されるキャッチコピーやシンボルマークの公募が本当に必要なのかという点も疑問だが、それ以上に、ここで書かれているシンポジウムについても、例によって登壇者を警察が規制派団体から恣意的に選出して規制強化プロパガンダに使って来る可能性が高く、注意が必要ではないかと私は考えている。(地道な広報・啓発活動を否定するつもりはないが、個人的には今の警察はこの点で全く信用できない。次の「③ ホームページによる広報・啓発活動」で「内閣府のホームページにおいて、児童ポルノ排除対策ワーキングチームの活動状況について掲載する」と書かれているが、今のワーキングチームのあまりにデタラメな出来レースぶりと今のお粗末なホームページの有様だけを見ても、今後警察庁が広報・啓発活動と称してやって来るだろうことは大体想像がつく。今のようなやり方で「増進を図れる」のは今の「児童ポルノ排除対策」に対する国民の不信だけだろう。)

 さらに、同じ第1ページで、

⑥ 「女性に対する暴力をなくす運動」における取組
 毎年11月に実施している「女性に対する暴力をなくす運動」において、児童の性的搾取を含む女性に対する暴力を根絶するため、国、地方公共団体、女性団体その他の関係団体と連携・協力し、広報・啓発活動を推進する。 (内閣府等)

と書かれている部分も、男女共同参画会議(第225回の提出パブコメ参照)と同じく児童の問題と女性の問題を混同している点で注意が必要だろう。

 第2ページの、

⑧ 国際的取組への参画
 我が国が2005年に締結した「児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書」の規定に基づき、児童の権利委員会に提出した政府報告に対し、今後、同委員会の最終見解が示されることに留意しつつ、引き続き、同選択議定書の実施の確保に努める。また、2008年11月、リオデジャネイロで開催された「第3回児童の性的搾取に反対する世界会議」において取りまとめられた「児童の性的搾取を防止・根絶するためのリオデジャネイロ宣言及び行動への呼びかけ」について国内での周知に努める。(外務、警察、法務)

で周知する言及されているのは、児童ポルノの閲覧の犯罪化と創作物の規制まで求める「児童の性的搾取に反対する世界会議」(外務省HP警察庁の広報資料(pdf)参照)の狂った宣言だが、何度も書いているように、このような根拠のない宣言を国際動向として一方的に取り上げ、児童ポルノ規制の強化を正当化することなどあってはならないことである。

 そして、何と言ってもこの対策案の一番の問題は、「3 インターネット上の児童ポルノ画像等の流通・閲覧防止対策の推進」であり、この中で、最初の

① 違法情報の排除に向けた取組の推進
 サイバーパトロールやインターネット・ホットラインセンターに寄せられた通報を通じ、児童ポルノに係る違法情報の把握に努め、取締りを推進するとともに、サイト管理者等に対し、警察及びインターネット・ホットラインセンターから削除依頼等を実施する。また、インターネットを利用した児童ポルノ事犯の被疑者を検挙した場合等に、当該違法情報が掲載された掲示板のサイト管理者等に対し、当該違法情報の削除の要請及び同種事案の再発防止に努めるよう申し入れ又は指導を行うほか、非行防止教室や情報セキュリティに関する講習等の場において、インターネット・ホットラインセンターの取組を紹介するなどして、インターネット上からの児童ポルノの削除の更なる促進を図る (警察)。

では、いつも通り半官検閲センターであるインターネット・ホットラインセンターの問題点を指摘する必要があると思っているが、それ以上に問題があるのは、以下の第4ページから第5ページのブロッキングに関する記載である。

④ 児童ポルノ掲載アドレスリスト作成管理団体との連携等を通じた児童ポルノ流通防止対策の推進
インターネット・サービス・プロバイダ(ISP)、検索エンジンサービス事業者及びフィルタリング事業者に対して児童ポルノが掲載されているウェブサイトに係るアドレスリストの作成、維持・管理、提供等を民間のイニシアティブにて行うための児童ポルノ掲載アドレスリスト作成管理団体の設置に向けた作業を進め、同団体との官民連携した児童ポルノ流通防止対策を推進する。(警察、内閣官房、内閣府、総務、経産)

⑤ ブロッキングの導入に向けた諸対策の推進
 インターネット上の児童ポルノについては、児童の権利を著しく侵害するものであり、インターネット・ホットラインセンターが把握した画像について、サイト管理者等への削除要請や警察の捜査・被疑者検挙が行われた場合等でも、実際に画像が削除されるまでの間は画像が放置されるところであり、児童の権利を保護するためには、サーバーの国内外を問わず、画像発見後、速やかに児童ポルノ掲載アドレスリストを作成し、ISPによる閲覧防止措置(ブロッキング)を講ずる必要がある。そこで、このようなブロッキングについて、インターネット利用者の通信の秘密や表現の自由に不当な影響を及ぼさない運用に配慮しつつ、平成22年度中を目途にISP等の関連事業者が自主的に実施することが可能となるよう、下記の対策を講ずる。(警察、総務、内閣官房、内閣府、経産)

ⅰ アドレスリストの迅速な作成・提供等実効性のあるブロッキングの自主的な導入に向けた環境整備
 警察庁及びインターネット・ホットライン・センターからの情報提供により、児童ポルノ掲載アドレスリスト作成管理団体がプロバイダー等に対し迅速にアドレスリストを提供できるよう、実効性のあるブロッキング導入に向けた環境整備を実施する。

ⅱ ISPによる実効性のあるブロッキングの自主的導入の促進
 ISPに対し、インターネット上の児童ポルノの流通を防止するためのブロッキングの重要性、有効性等について理解を求め、実効性のあるブロッキングの自主的導入を促進する。

ⅲ 一般ユーザーに対する広報・啓発
 インターネットの一般ユーザーに対し、ブロッキングの重要性等について幅広く広報・啓発し、理解を求めるとともに、インターネット上の流通防止対策に対する国民意識の醸成を図る。

 ここで、「民間のイニシアティブ」、「インターネット利用者の通信の秘密や表現の自由に不当な影響を及ぼさない運用に配慮」、「関連事業者が自主的に実施」といった記載に多少の努力の跡が見られるものの、ブロッキングについて完全に導入前提の記載がされているのは全く受け入れることができない。警察庁又は半官検閲センターであるインターネット・ホットライン・センターの圧力でブロッキングがなされるのであれば、民間と称しようがしまいが全く同じことである。また、何度も繰り返し書いている通り、現状、インターネット利用者の通信の秘密や表現の自由に不当な影響を及ぼさないようにブロッキングを透明性・公平性・中立性を確保した形で運用することは不可能であり、ブロッキングはどこをどうやっても検閲にしかなりようがない。

 また、「5 児童ポルノ事犯の取締りの強化」で、第8ページに、

② 悪質な関連事業者に対する責任追及の強化
 児童ポルノの提供等に加担しているサイト管理者、サーバー管理者といった悪質な関連事業者について、当該関連事業者に対する指導・警告を徹底し、風営適正化法に基づく当該サーバー管理者等に対して勧告を行うほか、刑事責任の追及を図るなど、悪質な関連事業者に対する責任追及を強化する。(警察)

と書かれており、ここでもネットにおける幇助罪については特別な注意が必要であり、その適用範囲が不用意に広がりすぎないように気を付けるべきであるとやはり指摘する必要があるとも思っている。

 最後に、「6 諸外国における児童ポルノ対策の調査等」で、第9ページに、

② 諸外国の児童ポルノ対策の調査
 G8を中心とした諸外国における児童ポルノ関連法規制について、在外公館を通じて調査を行ってきているところ、法規制に関する動向及びインターネット上のブロッキング等の新たな規制を始めとする諸動向に関する調査を継続し、定期的に結果を取りまとめる。(外務、警察、法務)

と書かれているが、ここでも特にG8を取り上げようとしている点は全く頂けない。これも国際調査自体を否定するつもりはないが、例によってG8のみを取り上げて恣意的に国際動向を作り上げ、単純所持規制プロパガンダに使って来る可能性が高く、この部分の記載も要注意である。

 全体としてみれば、従前の報告書と比べこの対策案には、教育・啓発・被害児童のケア・取り締まりに関する地道な施策の項目もかなり入っているが、特にブロッキングに関する部分の問題を中心に決して見過ごすことのできない問題のある項目も数多く含まれており、6月7日正午〆切と非常にタイトなスケジュールではあるが、児童ポルノ規制問題ど真ん中の重要パブコメとして、普段情報規制問題に疑問や懸念を抱いている方には、是非提出を検討頂きたいと私も思っているものである。私自身もこのパブコメは出さなければならないと考えており、パブコメは提出し次第またここに載せたいと思っている。

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2010年5月13日 (木)

第226回:ハトミミ.com・情報公開制度の改正の方向性についての提出パブコメ

 今現在ハトミミ.comで5月14日〆切で行われている情報公開制度の改正についてのパブコメも書いて提出したので、以下に載せておく(募集要項参照)。

 他のパブコメと比べると地味かも知れないが、情報公開制度は国民の知る権利の根幹の1つをなす非常に重要な制度でありながら、曖昧な理由に基づいて行政機関が不開示を決めることができ、その後の客観的な事後救済制度もなお十分に整備されていないというかなり問題のある状態にある。(地方にも影響はじきに波及して行くだろうし、制度全般となるので地方の話を書いても別に構わないと思うが、今回のパブコメで主として念頭におかれているのは、国の情報公開法(正式名称は、「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」ではないかと思う。)

 ただ、行政透明化検討チームという検討会で4月20日に提出されている大臣案(pdf)概要(pdf)も より情報公開を進めるという方向性で書かれており、この大きな方向性において問題があるという話ではない。多少時間はかかるかも知れないが、情報公開制度については、その情報公開対象範囲の拡大・明確化と利便性の向上が地道に図られて行くことを個人的には大いに期待している。

 パブコメを離れて、情報公開制度そのものの話もどこかでまとめて書ければと思っているが、しばらくはまた著作権や表現の自由一般の話の続きなどを書くつもりでいる。

(神奈川県青少年保護育成条例の改正骨子案に対するパブコメも提出したが(5月20日〆切。神奈川県のリリース参照)、東京都に対する提出パブコメ(第202回参照)のフィルタリングに関する部分を少し手直ししただけのものなので、ここに載せるのは省略する。まだ〆切まで時間があるので、情報規制問題に関心がある神奈川県民の方は、是非パブコメの提出を検討することをお勧めしておく。)

(以下、提出パブコメ)

1.情報公開制度全般に関するご意見

1.「国民の知る権利」を保障するためには、情報公開制度の改正が必要だと思いますか?

◯はい

(その理由を下記に記載してください(任意・200文字以内))
政策決定に関わる重要文書・資料の保存義務とその義務違反に対する罰則が不明確である。さらに、曖昧な理由に基づいて行政機関等が文書の不開示を決めることが可能である上、その後の客観的な事後救済制度の整備も不十分である。

2.現行の情報公開制度全般についてのご意見等をお聞かせください(任意・400文字以内)
・他省庁、議員、審議会等委員、関係団体とのやり取りに使用された政策決定に関わる文書は全て作成者と使用者の個人名と役職を付して最低10年保存を義務化し(メール、FAX、電話、面談等全てのやり取りの記録と保存を義務化するべき)、5年でHP上に全て自動公開されるシステムを法制化するべき。
・全文書に適用される期限を法定し、それ以降は理由によらず必ず公開されるとするべき。
・文書を廃棄する場合は、HP等による事前告知を義務化するべき。
・文書管理責任者を明確にし、故意又は過失による廃棄又は虚偽主張に処分を加えられるとするべき。
・開示の実施の方法は、原則として請求者の求める方法によらなければならないと法定し、オンライン開示、電子媒体による開示の促進を図るべき。

2.情報公開制度の改正の方向性について

1.開示対象の拡大・明確化について改正が必要だと思うものにチェックしてください(複数回答可)
◯公務員等の職務の遂行に係る情報について、当該公務員等の氏名も原則として開示するべき
◯不開示情報である「公にすることにより、国の安全が害されるおそれ、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれ等がある情報」かどうかの判断に、行政機関等の裁量を大きく認めるべきでない
◯国等における審議・検討等に関する情報で、それを公にすることにより、「不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ」がある情報についても、行政機関の裁量が大きく入る余地があるため、原則開示とすべき

(その他、開示対象に拡大・明確化についてのご意見をお聞かせください(任意・200文字以内))
・情報公開法6条1項から「容易に」とただし書きを削除し、可能な限り情報は切り分けて開示しなければならないと明確化するべき。
・情報公開法5条1号ハに公務員の氏名を加え、公務員の個人名も原則開示にし、5条5号・6号二を削除・修正し、省庁の検討情報と天下りも含め人事に関する情報も後に原則開示されるとするべき。

2.開示手続きの迅速化・強化について改正が必要だと思うものにチェックしてください(複数回答可)
◯開示請求から開示決定等までの期限を短縮する
◯特例としての開示の無期限延長を見直す     

(そのほか、開示手続きの迅速化・強化についてのご意見をお聞かせください(任意・200文字以内))
実費と利用者の負担の両方のバランスを考慮し、手数料の減額を検討してもらいたい。

3.事後救済制度の強化について改正が必要だと思うものにチェックしてください(複数回答可)
◯不服申立てがなされてから審査会への諮問を行うまでの法定期限を導入する
◯情報公開訴訟を、原告の普通裁判籍所在地の地方裁判所にも提起できるようにする
◯裁判所が、行政機関の長等に対し、対象文書の標目・要旨・不開示の理由等を記載した書面(いわゆるヴォーン・インデックス)の作成・提出を求める手続を導入する
◯裁判所が対象文書を実際に見分し、不開示情報の有無等を直に検討できるインカメラ審理手続を導入する

3.その他

(その他、情報公開制度の改正全般についてのご意見・ご提案等をお聞かせください(任意・400文字以内))
衆議院事務局は申し訳程度に規定を設けているようだが、それだけではなく、参議院事務局、会派又は議員の活動に関する情報を含め、各議員も含め国会全体におけるきちんとした文書保存制度と情報公開制度を整え、立法府についても保存年限に応じた文書の自動公開システムの法制化を行うべきである。

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