2012年12月29日 (土)

第284回:2012年の終わりに

 総選挙を経て、この12月26日に第2次安倍内閣が発足した。その閣僚名簿(首相官邸のHP参照)を見るだけで、来年以降どうしようもなく辛い状況が続くのは容易く想像がつくが、今後もやれることをやって行くしかない。

 役所も休みに入り、もうこれで一通り年内のイベントは片づいたと思うので、今年も最後にブログのエントリとして今まであまり取り上げて来られなかった話を中心にまとめておきたいと思う。

 まず、制度ユーザーにしか関係ないのでつい後回しになりがちになっているが、商標法と特許法に関して、特許庁から2つパブコメが募集されている。

 1つ目は2013年1月16日〆切で募集されている、産業構造審議会・知的財産政策部会・商標制度小委員会の報告書「商標制度の在り方について」(案)に対する意見募集(電子政府のHP参照)である。前回の報告書からかなり時間が経っているが、この今回の報告書案(pdf)に書かれていることは、要するに、特許庁が、やはり動き、ホログラム、輪郭のない色彩、位置、音の商標といった非伝統的商標の保護を導入しようとしているということである。どう考えても今後さらに検討すべき実務的な論点は多いが、第8ページで「石焼き芋の売り声や夜鳴きそばのチャルメラの音のように、商品又は役務の取引に際して普通に用いられている音、単音、効果音、自然音等のありふれている音、 又はクラシック音楽や歌謡曲として認識される音からなる『音』の商標については、原則として自他商品役務の識別力を有しないものとする」と書かれている点は重要である。実際の運用次第だが、このように識別性の要件を厳しく取ることができれば音の商標の導入における混乱は多く避けられるだろう。他にもこの報告書案では、地域団体商標の登録主体の範囲を商工会等まで拡大することなども書かれている。

 2つ目は1月18日〆切で募集されている、産業構造審議会・知的財産政策部会・特許制度小委員会の報告書「強く安定した権利の早期設定及びユーザーの利便性向上に向けて」(案)に対する意見募集(電子政府のHP参照)である。こちらもマニアックな話だが、この報告書案(pdf)に書かれていることは、特許庁が、平成15年法改正で無効審判制度に統合され廃止された特許の異議申立制度を多少の手直しを加えて付与後レビュー制度と称して復活させようとしているということである。制度ユーザーとしてはほぼ元々あった選択肢が復活するというだけの話なので別に悪い話でもないが、ただ、新制度も10年間それなりに問題なく運用されていた中で、本当にこのような法律の再改正が必要かと疑問に思うところもある。この報告書案では、特許出願審査請求の手続期間徒過に対する救済の導入や国内外で発生した大規模災害の被災者の救済規定の整備などについても書かれている。

 これらの特許庁報告書案に対応する法改正はいつになるのか不明だが、次の国会には法案が提出されるのだろうか。

 文化庁に目を向けると、予想通りほぼどうにもなっていないが、文化審議会・著作権分科会・法制問題小委員会で引き続き、間接侵害やパロディの問題について検討が行われている。(cnetの記事も参照。議事要旨だけを公開されても何が検討されているのかさっぱり分からないが、パロディに関してはパロディワーキングチームで検討が行われている。)今年度はもうどうにもならないだろうが、来年以降は、TPPや出版社への隣接権付与の問題もあれば、最高裁での私的録画補償金裁判のメーカー側勝訴確定(時事通信の記事参照)を受けて権利者団体側が補償金制度に関する圧力を強めて来ることも予想され、文化庁での検討がまたかなり荒れ出すのではないかと思う。(なお、文化庁の資料であることを常に念頭において読まなければならないが、国際小委員会の資料も国際的な状況の一部を知る上では一読の価値がある。)

 知財本部では、今年度最初の知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会コンテンツ強化専門調査会とがそれぞれ12月21日と25日に始まっている。今のところ何をしようとして来るのかさっぱり分からないが、自公政権下でまたロクでもないことを言い出すかも知れず、今後の知財本部の議論も要注意だろう。

 今年の7月には、総務省の情報通信審議会・デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会が、B−CAS問題についてほぼ様子見を決め込む形でひっそりと幕を閉じている。ただ、B−CASがほぼ完全にクラックされたこともあり、不正ユーザーの逮捕で表向き小康状態が保たれているようにも見えるが、何かでまた騒ぎになるのは火を見るよりも明らかであり、総務省はそのうち何かしらの形でB−CAS問題に関する検討を再開することを余儀なくされるのではないかと私は予想している。また、総務省では、利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会も引き続き開催されている。

 農水省では、地理的表示保護制度研究会が開催されており、8月に「我が国において、特別(sui generis)な地理的表示保護制度を新たに導入し、地理的表示を活用して、多くの経済的・社会的効果が発揮されるよう取り組んでいくべき」とまとめようとする報告書骨子案(pdf)を作っている。地理的表示保護制度が本当に導入されれば知財政策的にかなり大きな話になるが、商標法での地域団体商標制度との関係を含めまだまだ整理すべき課題が多いのはこの報告書骨子案にも書かれている通りだろう。農水省もそう簡単に整理をつけられなかったのか、この研究会の取りまとめが行われたという話は聞かないが、いつか検討を再開するのだろうか。

 警察庁では、総合セキュリティ対策会議で「サイバー犯罪捜査の課題と対策について」という検討テーマを追加して、遠隔操作ウィルスによる冤罪発生事件を受けた検討を11月から開始している。第1回の議事要旨(pdf)を見ると、検討の視点は「民間事業者との連携」、「国際連携の推進」、「広報啓発」の3点ということで、即座にネット規制強化案が出て来るとは見えないのだが、警察庁のことなので、自公政権が成立したのをいいことに、冤罪事件の反省もどこへやら、ロクでもない規制強化に全力で突っ走ることも考えられ、恐らく直近で最も注意すべきは警察庁の検討ではないかと私は考えている。

 今年はダウンロード犯罪化を含む著作権法改正の可決・施行や海賊版対策条約(ACTA)の可決・批准を筆頭に日本の知財政策面では惨憺たる一年だったが、上で書いた通り、今後もちょっと考えるだけで、TPP問題や出版社への隣接権付与の問題、私的録音録画補償金問題など様々な問題で権利者団体の圧力が強まるのは間違いなく、残念ながら来年も極めて辛い年になるだろう。そのため、今年も到底良い年をと言う気にはならないが、政官業に巣くう全ての利権屋と非人道的な規制強化派に悪い年を。そして、このつたないブログを読んで下さっている全ての人に心からの感謝を。

 国内では当分どうしようもない状態が続くだろうが、国外に目を転じれば、欧州議会での海賊版対策条約(ACTA)の否決やオランダ議会でのダウンロード違法化計画再否決(TorrentFreakの記事参照)などに端的に表れているように、世界的に見れば行き過ぎた規制強化によって知財政策が大きな岐路に立たされているのは間違いない。細々とした話はtwitterでも書き留めているが、詳しく書きたい話も多くあり、今後もこのブログは続けて行くつもりである。

(2013年1月3日の追記:上で書き忘れていたが、知財関係としては、他にも特許庁の産業構造審議会・知的財産政策部会・意匠小委員会で、意匠の国際出願に関するハーグ協定ジュネーブアクトへの加盟と画面デザインの保護の拡充についての検討も進められている。この意匠に関する検討についてだが、かなりややこしい論点を含む話なので、どこか切りの良いところでもう少し補足を書きたいと思っている。)

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2011年11月 4日 (金)

第258回:総務省・利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備に関する提言」

 この10月28日に、総務省から、利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備に関する提言~スマートフォン時代の青少年保護を目指して~」(pdf)概要(pdf))が公表された(総務省のリリース参照。)

 これまでの提言はかなり非道いものだったが、今回の提言は、総務省のリリースで、「本提言においては、主な内容として、青少年のインターネット環境整備について5つの基本方針を確立するとともに、スマートフォン等の多様なインターネット接続可能機器への対応等についてはフィルタリング提供義務規定を改正する等の法律による対応ではなく、民間による自主的な取組に期待するとされています」と書かれていることからも分かるように、全体的に表現の自由や通信の秘密を意識し、かなりまともで謙抑的な内容となっており、また、重要な論点を多く含んでいるので、ここでもざっとその内容を紹介しておきたいと思う。

 まず、この提言(pdf)の5つの基本方針は、以下のようなものである。(赤字強調は私が付けたもの。以下同様。)

1.リテラシー向上と閲覧機会の最小化のバランス
 青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境を整備するため、あらゆる機会を利用して、青少年のインターネットを適切に活用する能力の向上を図る施策を行う。これを補完するため、青少年がインターネットを利用して青少年有害情報を閲覧する機会をできるだけ少なくするための施策を行う。

2.受信者側へのアプローチ
 青少年がインターネットを利用して青少年有害情報を閲覧する機会をできるだけ少なくするための施策は、インターネット上の自由な表現活動を確保する観点から、受信者側へのアプローチを原則とする。

3.保護者及び関係者の役割
 青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境を整備する役割を担い、権利を持つのは、一義的にはその青少年を直接監護・教育する立場にある保護者である。ただし、保護者が単独でその役割を全うすることは困難なため、関係者は連携協力して保護者を補助する各々の役割を果たさなければならない。

4.民間主導と行政の支援
 青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備に当たっては、まずは、民間による自主的かつ主体的な取組を尊重し、これを更に行政が支援する。

5.有害性の判断への行政の不干渉
 いかなる情報が青少年有害情報であるかは、民間が判断すべきであって、その判断に国の行政機関等は干渉してはならない。

 この5つの基本方針はごくごく当たり前のことを書いているに過ぎないが、この当たり前のことすら守れず、国でも地方でも、自分の気に食わない情報を勝手に有害として、この自分の気に食わない情報を潰すために情報統制・検閲を正当化しようと暴走する馬鹿な議員や官僚、首長が跡を絶たないのは本当に残念と言う他ない。

 以下、さらにいくつか興味深い記載をピックアップして行くと、例えば、否定的な側面についても書いてはいるが、SNSについて、

SNSに代表されるCGMサービスは、青少年の自由な表現活動の場やコミュニケーション手段を提供するものであり、表現活動等の体験を通じて青少年の健全な育成にも寄与し得ると積極的に評価できる側面を有している。(第3ページ)

と、肯定的な側面も強調している点は、最近の行政の報告書としては珍しいように思う。

 また、リテラシーが十分でない保護者への対応として、

 リテラシーが十分でない保護者によって、安易なフィルタリングの不使用/解除がなされているとの指摘がある。こういった状況に対応するため、保護者の判断の制限(フィルタリング解除理由の制限や解除理由書の提出等)が検討され、一部地方公共団体の条例で規定されているところ、法律でも規定すべきとの指摘がある。
 こういった取組は、フィルタリング普及に一定の効果をあげていると考えられる。しかしながら、基本方針に沿えば、まずは保護者の判断を尊重すべきであり、保護者が自らの教育方針等に基づきフィルタリング解除が適切と判断しても解除ができない場合があり得るというデメリットが生じることを斟酌すれば、当該取組は各地方の実態に鑑みた例外的な措置として捉えるべきである。なお、たとえ各地方の実態に鑑みた例外的な措置であっても、保護者の判断を完全に制限する取組(フィルタリング完全義務化)は、過度に保護者の判断を制限しており、行うべきではない。

 もちろん、リテラシーが十分でない保護者が、十分な判断材料に基づかずにフィルタリングの解除を安易に判断するリスクへの対策は積極的に検討されるべきである。実際、フィルタリングをかけない場合の危険性についての認識やフィルタリングをかけた場合にもカスタマイズ等の選択肢があることについての認識がない事例はかなり多いと考えられる。しかしながら、対策は、保護者の判断権を必要以上に制限するのではなく、各関係者が保護者による判断を適切にサポートすることによって図られるべきである。(第22~23ページ)

と、逃げ道こそ残しているものの、最近、地方の青少年条例改正案で良く見かけるフィルタリング完全義務化について総務省がかなり否定的な見解を示している点は重要である。(総務省は地方自治も所管しており、各地方のパブコメなどでこの提言について言及して行くのも1つの手である。)

 保護者による、青少年のインターネットの利用履歴の閲覧についても、

 保護者には、法第6条において、青少年のインターネット利用状況を把握する責務が課せられているが、特に携帯電話インターネットについてはそのパーソナル性から、外出先や個室での利用等、保護者が利用状況を把握することが困難な場合がある。これを容易にするために、青少年本人の同意を前提として、保護者に対して、ウェブサイトの閲覧履歴やメールの送受信履歴を簡便に閲覧できるツールを利用可能にすべきとの指摘がある。
 しかしながら、当該ツールは利用状況の把握に強力な効果を持つ一方、青少年の携帯電話インターネット利用に強い制約をもたらし、青少年のプライバシーへの強い制限となるため、当該ツールを直ちに利用可能とすることや、保護者に対して利用履歴の確認を奨励することは、適当ではないと考えられる。
そもそも、保護者によるインターネット利用状況の把握は、青少年との会話によって本人から説明させることや、インターネット端末を利用している様子を家庭内で見守ることを基本とすることが適切である。(第23ページ)

と、否定的な見解を取り、ミニメール確認について、

通信の秘密の重要性、また通信の秘密の侵害に対する通信当事者の意思が通信ごとに変更しうる可能性に鑑みれば、通信の秘密の侵害に対する同意は、当事者が予測可能な範囲に限って有効である。これをミニメールという通信の形態について当てはめて考えてみれば、当事者の意思がミニメール一通毎に異なる可能性があること及びミニメールの内容確認が表現の自由やプライバシーに及ぼす影響にも鑑みて、ミニメールの内容確認に対する同意は、原則として通信ごと(ミニメール送信ごと)に取得する必要があると考えられる。よって、CGM運営者においては、ミニメール一通毎に発信時の画面表示にて通信当事者の有効な同意を取得した上で、ミニメールの内容確認を行うことが必要である。具体的には、ミニメール一通ごとに、ミニメールの内容確認により通信の秘密が侵害される態様の概要につき分かり易く通信当事者に対して表示した上で、同意を取得し、ミニメールの内容確認を行うことが望ましい。(第43ページ)

と、内容確認のためには原則としてメール1通毎に通信当事者の有効な同意を取得する必要があることを強調している点も評価できる。(第2次提言の整理に基づくデフォルトオンでのミニメール確認には問題があると私は考えてはいるが(第224回参照)。)

 青少年ネット規制法そのものの是非についてまで踏み込めておらず、個人的に残念に思うところもない訳ではないが、上で抜粋した部分以外にも重要な論点が多く含まれているので、青少年ネット規制法問題について関心のある方は、この報告書も是非全文を読んでもらいたいと思う。

 省庁にもよるが、ネットに関して行政が比較的まともな内容の報告書も出すようになって来ていることは、ネットの重要性が相対的に増して来たことを示しているのではないかと私は考えている。ネットと規制を巡る問題についてはおよそロクな動きがないが、必ずしも悪い話ばかりではない。全てはまだこれからである。

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2010年8月14日 (土)

第235回:総務省・ICTの利活用を阻む制度・規制等についての意見募集に対する提出パブコメ(その2:一般的な情報・表現・ネット規制関連)

 前回の続きで、8月20日〆切で、総務省からかかっているパブコメの「ICTの利活用を阻む制度・規制等についての意見募集」(総務省のリリース、電子政府HPの該当ページ参照。internet watchの記事ITproの記事も参照)に対する提出パブコメを載せる。ここに載せるのは、下の目次で、(10)の出会い系サイト規制から(19)携帯電話事業者による差別的なダウンロード容量制限までである。

 良いニュースは何もないが、一緒に少し最近の話も紹介しておくと、「チラシの裏(3周目)」や「表現規制について少しだけ考えてみる(仮)」で取り上げられているように、男女共同参画会議が8月31日〆切で再びパブコメを募集している(内閣府のHP参照)。この会議もいい加減何をどうしたいのだかさっぱり分からないが、このパブコメについては私も出すつもりでいる。

 また、京都では府知事が児童ポルノ単純所持条例の検討をすると言い出すなど(共同通信の記事参照)、相変わらず地方自治体での危険な動きも止まるところを知らず、地方自治体絡みでも当分キナ臭い日々が続きそうである。

 次回のエントリは、リオ宣言の話か、海賊版対策条約の話か、上の男女共同参画会議の話か、書けたものから載せたいと思っている。

(目次)
(1)ダウンロード違法化
(2)DRM回避規制
(3)コピーワンス・ダビング10・B-CAS
(4)私的録音録画補償金制度
(5)著作権保護期間
(6)一般フェアユース条項の導入による著作権規制の緩和
(7)著作権の間接侵害・侵害幇助
(8)著作権検閲・ストライクポリシー
(9)模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)
(10)出会い系サイト規制
(11)青少年ネット規制法・青少年健全育成条例・携帯フィルタリング義務化
(12)児童ポルノ規制・サイトブロッキング
(13)インターネット・ホットラインセンター・日本ガーディアン・エンジェルス・日本ユニセフ協会
(14)情報公開法
(15)国際組織犯罪防止条約・サイバー犯罪条約及びこれらの締結に必要な法改正・ウィルス作成罪
(16)公職選挙法
(17)天下り
(18)メール検閲・DPI技術を用いた広告
(19)携帯電話事業者による差別的なダウンロード容量制限

(以下、提出パブコメ)

(10)出会い系サイト規制
○項目
 出会い系サイト規制

○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
 出会い系サイト事業者の届け出の義務化を中心とする、出会い系サイト規制法の改正法が年の5月に成立し、同年12月から施行されている。その後、2009年の2月から3月にかけて、警視庁が、SNS各社に対して書き込みの削除要請をし、あるSNSでは内容の精査も無いまま「出会い」に関するコミュニティが全て削除されるということが起こった(http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0904/02/news085.html参照)。2009年5月には、やはり警視庁が、SNSサイトの年齢確認の厳格化を要請しており(http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20392643,00.htm参照)、2009年6月には、無届け出会い系サイト運営容疑で逮捕者まで出ている(http://journal.mycom.co.jp/news/2009/06/02/057/index.html参照)。

 警察による出会い系サイト規制法の拡大解釈・恣意的運用によって、ネット利用における不必要かつ有害な萎縮効果が既に発生していることは、一般サイト事業者に対する警察からの要請とその反応から明らかである。

 この出会い系サイト規制法の改正は、警察庁が、どんなコミュニケーションサイトでも人は出会えるという誰にでも分かることを無視し、届け出制の対象としては事実上定義不能の「出会い系サイト事業」を定義可能と偽り、改正法案の閣議決定を行い、法案を国会に提出したものであり、他の重要法案と審議が重なる中、国会においてもその本質的な問題が見過ごされて可決され、成立したものである。憲法上の罪刑法定主義や検閲の禁止にそもそも違反しており、表現の自由などの国民の最重要の基本的な権利をないがしろにするものである、今回の出会い系サイト規制法の改正については、今後、速やかに元に戻すことが検討されなくてはならない。

 既に逮捕者まで出ているが、出会い系サイト規制法は、その曖昧さから別件逮捕のツールとして使われ、この制度によって与えられる不透明な許認可権限による、警察の出会い系サイト業者との癒着・天下り利権の強化を招く恐れが極めて強い。出会い系サイト規制法を去年の改正前の状態に戻すまでにおいても、この危険な法律の運用については慎重の上に慎重が期されるべきである。

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
 出会い系サイト規制法(正式名称は「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」)

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
・出会い系サイト規制法を改正前の状態に速やかに戻す。

(11)青少年ネット規制法・青少年健全育成条例・携帯フィルタリング義務化
○項目
 青少年ネット規制法・青少年健全育成条例・携帯フィルタリング義務化

○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
 携帯電話におけるフィルタリングの義務化を中心とする、青少年ネット規制法が、2008年6月に成立し、2009年4月から施行されている。

 また、東京都等の地方自治体が、青少年保護健全育成条例の改正により、各自治体の定める理由によってしか子供のフィルタリングの解除を認めず、違反した事業者に対する調査指導権限を自治体に与え、携帯フィルタリングの実質完全義務化を推し進めようとしている。

 しかし、そもそも、フィルタリングサービスであれ、ソフトであれ、今のところフィルタリングに関するコスト・メリット市場が失敗していない以上、かえって必要なことは、不当なフィルタリングソフト・サービスの抱き合わせ販売の禁止によって、消費者の選択肢を増やし、利便性と価格の競争を促すことだったはずである。一昨年から昨年にかけて大騒動になったあげく、ユーザーから、ネット企業から、メディア企業から、とにかくあらゆる者から大反対されながらも、有害無益なプライドと利権の確保を最優先する一部の議員と官庁の思惑のみから成立した今の青少年ネット規制法による規制は、一ユーザー・一消費者・一国民として全く評価できないものであり、速やかに法律の廃止が検討されるべきである。

 フィルタリングに関する規制については、フィルタリングの存在を知り、かつ、フィルタリングの導入が必要だと思っていて、なお未成年にフィルタリングをかけられないとする親に対して、その理由を聞くか、あるいはフィルタリングをかけている親に対して、そのフィルタリングの問題を聞くかして、きちんと本当の問題点を示してから検討してもらいたいとパブコメ等で再三意見を述べているが、今に至るもこのような本当の問題点を示す調査はなされていない。繰り返しになるが、フィルタリングについて、一部の者の一方的な思い込みによって安易に方針を示すことなく、本当の問題点を把握した上で検討を進めるべきである。

 また、東京都等の地方自治体の推し進める携帯フィルタリングの実質完全義務化について、このような青少年ネット規制法の精神にすら反している行き過ぎた規制の推進は、地方自治体法第245条の5に定められているところの、都道府県の自治事務の処理が法令の規定に違反しているか著しく適正を欠きかつ明らかに公益を害していると認めるに足ると考えられるものであり、同じく不適切なその他の情報規制推進についても合わせ、総務大臣から各地方自治体に迅速に是正命令を出すべきである。

 なお、フィルタリングについては、その政策決定の迷走により、総務省は携帯電話サイト事業者に無意味かつ多大なダメージを与えた過去がある。携帯フィルタリングについて、ブラックリスト方式ならば、まずブラックリストに載せる基準の明確化から行うべきなので、不当なブラックリスト指定については、携帯電話事業者がそれぞれの基準に照らし合わせて無料で解除する簡便な手続きを備えていればそれで良く、健全サイト認定第3者機関など必要ないはずである。ブラックリスト指定を不当に乱発し、認定機関で不当に審査料をせしめ取り、さらにこの不当にせしめた審査料と、正当な理由もなく流し込まれる税金で天下り役人を飼うのだとしたら、これは官民談合による大不正行為以外の何物でもない。このようなブラックリスト商法の正当化は許されない。今までのところ、フィルタリングサービスであれ、ソフトであれ、今のところフィルタリングに関するコスト・メリット市場が失敗しているとする根拠はなく、かえって必要なことは、不当なフィルタリングソフト・サービスの抱き合わせ販売の禁止によって、消費者の選択肢を増やし、利便性と価格の競争を促すことだったはずであり、廃止するまでにおいても、青少年ネット規制法の規制は、フィルタリングソフト・サービスの不当な抱き合わせ販売を助長することにつながる恐れが強く、このような不当な抱き合わせ販売について独禁法の適用が検討されるべきである。

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
 青少年ネット規制法(正式名称は、「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」)
 各地方自治体の青少年健全育成条例の改正検討(東京都の条例の正式名称は、「東京都青少年の健全な育成に関する条例」)

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
・青少年ネット規制法を廃止する。

・廃止するまでにおいても、規制を理由にしたフィルタリングに関する不当な便乗商法に対する監視を政府において強め、フィルタリングソフト・サービスの不当な抱き合わせ販売について独禁法の適用を検討する。

・東京都等の地方自治体における青少年保護健全育成条例の改正の検討に対し、その不適切な情報規制推進について、地方自治体法第245条の5に基づき、総務大臣から各地方自治体に迅速に是正命令を出す。

(12)児童ポルノ規制・サイトブロッキング
○項目
 児童ポルノ規制・サイトブロッキング

○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
 現行の児童ポルノ規制法により、「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの 」という非常に曖昧な第2条第3項第3号の規定によって定義されるものも含め、児童ポルノの提供及び提供目的の所持まで規制されている。最近も、2009年4月に、アフィリエイト広告代理店社長が児童ポルノ規制法違反幇助容疑で送検され、、2009年5月に、児童ポルノサイトへのリンクを張ることについて、児童ポルノ公然陳列幇助容疑で2名が送検され(http://www.j-cast.com/2007/05/09007471.htmlhttp://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2007/05/09/15641.html参照)、2009年6月には、女子高生の水着を撮影したDVDを児童ポルノとして製造容疑でビデオ販売会社社長他が逮捕されるなど(http://www.47news.jp/CN/200907/CN2009071901000294.html参照)、警察による法律の拡大解釈・恣意的運用は止まるところを知らず、現行法の運用においてすら、インターネット利用の全てが極めて危険な状態に置かれている。

 このような全く信用できない警察の動きをさらに危険極まりないものにしようと、与党である自民党と公明党は、児童ポルノ規制法の規制強化を企て、「自身の性的好奇心を満たす目的で」という主観的要件のみで児童ポルノの所持を禁止する、いわゆる単純所持規制を含む法改正案を第171回国会に提出し、民主党はやはり危険な反復取得罪を含む法改正案を提出し、国会で審議が行われた。第171回国会の解散によって、これらの改正法案は一旦廃案となったが、自民公明両党によって再提出され、今なお継続審議とされているのであり、インターネットにおけるあらゆる情報利用を危険極まりないものとする法改正の検討が今後も続けられかねないという危うい状態にあることに変わりはない。

 2009年6月には、警察庁、総務省などの規制官庁が絡む形で、検閲にしかなりようがないサイトブロッキングを検討する児童ポルノ流通防止協議会が発足し、この協議会で児童ポルノ掲載アドレスリスト作成管理団体運用ガイドラインが作られ、さらに、警察庁からアドレスリスト作成管理団体の公募が行われ、2010年7月には、内閣府の児童ポルノ排除対策ワーキングチームと犯罪対策閣僚会議によって、2010年度中にサイトブロッキングを自主規制として導入するという目標を含む児童ポルノ排除総合対策がとりまとめられている。

1.単純所持規制及び創作物規制について
 閲覧とダウンロードと取得と所持の区別がつかないインターネットにおいては、例え児童ポルノにせよ、情報の単純所持や取得の規制は有害無益かつ危険なもので、憲法及び条約に規定されている「知る権利」を不当に害するものとなる。「自身の性的好奇心を満たす目的で」、積極的あるいは意図的に画像を得た場合であるなどの限定を加えたところで、エスパーでもない限りこのような積極性を証明することも反証することもできないため、このような情報の単純所持や取得の規制の危険性は回避不能であり、思想の自由や罪刑法定主義にも反する。繰り返し取得としても、インターネットで2回以上他人にダウンロードを行わせること等は技術的に極めて容易であり、取得の回数の限定も、何ら危険性を減らすものではない。

 児童ポルノ規制の推進派は常に、提供による被害と単純所持・取得を混同する狂った論理を主張するが、例えそれが児童ポルノであろうと、情報の単純所持ではいかなる被害も発生し得えない。現行法で、ネット上であるか否かにかかわらず、提供及び提供目的の所持まで規制されているのであり、提供によって生じる被害と所持やダウンロード、取得、収集との混同は許され得ない。そもそも、最も根本的なプライバシーに属する個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ることは、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の基本的な権利からあってはならないことである。

 アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現に対する規制対象の拡大も議論されているが、このような対象の拡大は、児童保護という当初の法目的を大きく逸脱する、異常規制に他ならない。アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現において、いくら過激な表現がなされていようと、それが現実の児童被害と関係があるとする客観的な証拠は何一つない。いまだかつて、この点について、単なる不快感に基づいた印象批評と一方的な印象操作調査以上のものを私は見たことはないし、虚構と現実の区別がつかないごく一部の自称良識派の単なる不快感など、言うまでもなく一般的かつ網羅的な表現規制の理由には全くならない。アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現が、今の一般的なモラルに基づいて猥褻だというのなら、猥褻物として取り締まるべき話であって、それ以上の話ではない。どんな法律に基づく権利であれ、権利の侵害は相対的にのみ定まるものであり、実際の被害者の存在しない創作物・表現に対する規制は何をもっても正当化され得ない。民主主義の最重要の基礎である表現の自由や言論の自由、思想の自由等々の最も基本的な精神的自由そのものを危うくすることは絶対に許されない。

 単純所持規制にせよ、創作物規制にせよ、両方とも1999年当時の児童ポルノ法制定時に喧々囂々の大議論の末に除外された規制であり、規制推進派が何と言おうと、これらの規制を正当化するに足る立法事実の変化はいまだに何一つない。

 児童ポルノ規制法に関しては、既に、提供及び提供目的での所持が禁止されているのであるから、本当に必要とされることは今の法律の地道なエンフォースであって有害無益な規制強化の検討ではない。児童ポルノ規制法に関して検討すべきことは、現行ですら過度に広汎であり、違憲のそしりを免れない児童ポルノの定義の厳密化のみである。

2.サイトブロッキングについて
 警察などが提供するサイト情報に基づき、統計情報のみしか公表しない不透明なリスト作成管理団体等を介し、児童ポルノアドレスリストの作成が行われ、そのリストに基づいて、インターネット・サービス・プロバイダー、検索サービス事業者あるいはフィルタリング事業者がブロッキング等を行うことは、実質的な検閲に他ならず、決して行われてはならないことである。いくら中間に団体を介そうと、一般に公表されるのは統計情報に過ぎす、児童ポルノであるか否かの判断情報も含め、アドレスリストに関する具体的な情報は、全て閉じる形で秘密裏に保持されることになるのであり、インターネット利用者から見てそのリストの妥当性をチェックすることは不可能であり、このようなアドレスリストの作成・管理において、透明性・公平性・中立性を確保することは本質的に完全に不可能である。このことは、このようなリストに基づくブロッキング等が、自主的な民間の取組という名目でいくら取り繕おうとも、どうして憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や通信の秘密、検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないかということの根本的な理由であり、小手先の運用や方式の変更などでどうにかなる問題では断じて無い。現時点でこの問題の克服は完全に不可能であり、アドレスリスト作成管理団体のガイドライン、公募、これに対する血税の投入等を全て白紙に戻し、このような非人道的なブロッキング導入の検討を行っている各種検討会を全て即刻解散するべきである。

 さらに言えば、このように自主規制と称しながら、内閣府の児童ポルノワーキングチームや犯罪閣僚会議といった官主導の会議で実質的な検閲に他ならないブロッキングの導入方針を決めるなど、異常極まりないことである。政府にあっては、速やかに自らの過ちを認め、閣議決定等により危険かつ有害無益な規制強化の方針決定の撤回を行うべきである。

 政府において、児童ポルノを対象とするものにせよ、いかなる種類のものであれ、情報の単純所持・取得規制・ブロッキングは極めて危険な規制であるとの認識を深め、このような規制を絶対に行わないこととして、前国会のような危険な法改正案が2度と与野党から提出されることが無いようにするべきである。

 違法コピー対策問題における権利者団体の主張、児童ポルノ法規制強化問題・有害サイト規制問題における自称良識派団体の主張は、常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。今後は、このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むべきである。同じく、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な著作権検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むべきである。

 なお、ブロッキングに関する広報・啓発を行う必要があるとすれば、現時点では、権力側によるその濫用の防止が不可能であり、表現の自由や通信の秘密といった憲法に規定された国民の基本的な権利に照らして問題のない運用を行うことが不可能であるという問題の周知にのみ努めるべきである。

3.プロバイダーのセーフハーバーについて
 警察の恣意的な運用によって、現行法においてすら児童ポルノ規制法違反幇助のリスクが途方もなく拡大し、甚大な萎縮効果・有害無益な社会的大混乱が生じかねないという非常に危険な状態にあることを考え、今現在民事的な責任の制限しか規定していないプロバイダー責任制限法に関し、刑事罰リスクも含めたプロバイダーの明確なセーフハーバーについて検討するべきである。

4.国際動向について
 児童ポルノの閲覧の犯罪化と創作物の規制まで求める「子どもと青少年の性的搾取に反対する世界会議」の根拠のない狂った宣言を国際動向として一方的に取り上げ、児童ポルノ規制の強化を正当化することなどあってはならないことである。児童ポルノ規制に関しては、最近、ドイツのバンド「Scorpions」が32年前にリリースした「Virgin Killer」というアルバムのジャケットカバーが、アメリカでは児童ポルノと見なされないにもかかわらず、イギリスでは該当するとしてブロッキングの対象となり、プロバイダーによっては全Wikipediaにアクセス出来ない状態が生じたなど、欧米では、行き過ぎた規制の恣意的な運用によって弊害が生じていることも見逃されるべきではない。アメリカだけを取り上げても、FBIが偽リンクによる囮捜査を実行し、偽リンクをクリックした者が児童ポルノがダウンロードしようとしたということで逮捕、有罪にされるという恣意的運用の極みをやっている(http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20080323_fbi_fake_hyperlink/参照)、単なる授乳写真が児童ポルノに当たるとして裁判になり、平和だった一家が完全に崩壊している(http://suzacu.blog42.fc2.com/blog-entry-52.html参照)、日本のアダルトコミックを所持していたとして、児童の性的虐待を何ら行ったことも無く、考えたことも無い単なる漫画のコレクターが司法取引で有罪とされている(http://wiredvision.jp/news/200905/2009052923.html参照)などの、極悪かつ非人道的な例が知られている。単純所持規制を導入している西洋キリスト教諸国で行われていることは、中世さながらの検閲と魔女狩りであって、このような極悪非道に倣わなければならない理由は全く無い。

 しかし、欧米においても、情報の単純所持規制やサイトブロッキングの危険性に対する認識はネットを中心に高まって来ており、アメリカにおいても、2009年1月に連邦最高裁で児童オンライン保護法が違憲として完全に否定され、2009年2月に連邦控訴裁でカリフォルニア州のゲーム規制法が違憲として否定されていることや、2009年のドイツ国会への児童ポルノサイトブロッキング反対電子請願(https://epetitionen.bundestag.de/index.php?action=petition;sa=details;petition=3860)に13万筆を超える数の署名が集まったこと、ドイツにおいても児童ポルノサイトブロッキング法は検閲法と批判され、既に憲法裁判が提起され(http://www.netzeitung.de/politik/deutschland/1393679.html参照)、去年与党に入ったドイツ自由民主党の働きかけで、法施行が見送られ、ドイツは政府としてブロッキング撤廃の方針を打ち出し、欧州レベルでのブロッキング導入にも反対していること(http://www.welt.de/die-welt/vermischtes/article6531961/Loeschung-von-Kinderpornografie-im-Netz.htmlhttp://www.zeit.de/newsticker/2010/3/29/iptc-bdt-20100328-736-24360866xml参照)なども注目されるべきである。スイスにおいて最近発表された調査でも、2002年に児童ポルノ所持で捕まった者の追跡調査を行っているが、実際に過去に性的虐待を行っていたのは1%、6年間の追跡調査で実際に性的虐待を行ったものも1%に過ぎず、児童ポルノ所持はそれだけでは、性的虐待のリスクファクターとはならないと結論づけており、児童ポルノの単純所持規制の根拠は完全に否定されているのである(http://www.biomedcentral.com/1471-244X/9/43/abstract参照)。欧州連合において、インターネットへのアクセスを情報の自由に関する基本的な権利として位置づける動きがあることも見逃されるべきではない(http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=MEMO/09/491&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en参照)。政府・与党内の検討においては、このような国際動向もきちんと取り上げるべきであり、一方的な見方で国際動向を決めつけることなどあってはならない。

 かえって、児童ポルノの単純所持規制・創作物規制といった非人道的な規制を導入している諸国は即刻このような規制を廃止するべきと、そもそも最も根本的なプライバシーに属し、何ら実害を生み得ない個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ること自体、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の国際的かつ一般的に認められている基本的な権利からあってはならないことであると、日本政府から国際的な場において各国に積極的に働きかけるべきである。

5.児童ポルノ排除対策ワーキングチームについて
 上で書いた通り、政府の会議で自主規制と称して実質的な検閲の導入方針が決定されること自体異常極まりないことであるが、このような危険かつ有害無益な規制強化の方針を含む児童ポルノ排除対策ワーキングチームは、ホームページなどを参照する限り、2回しか開かれておらず、議事録も不十分であり、有識者として呼ばれたと分かるのは、児童ポルノ規制について根拠無く一般的かつ網羅的な表現・情報弾圧を唱える非人道的な日本ユニセフ協会のアグネス・チャン氏1名のみである。その下のワーキンググループに至っては議事概要すら公開していない。児童ポルノ排除総合対策案に対するパブコメの期間も実質10日程度とあまりにも短く、到底国民の意見を聞く気があるとは思えない形で意見募集が行われている。パブコメの結果についても、運用以前の問題としてブロッキング等に反対する意見が圧倒的多数だったと思われるにもかかわらず、「運用面での配慮を求める意見が相当数寄せられた」と国民から寄せられた意見を勝手に歪曲し、結果概要にパブコメとは無関係の新聞記事を付けて印象操作を行うなど、到底許されざる恣意的操作を内閣府はパブコメ結果に加えた。

 このワーキングチームあるいはグループは議事録、議事の進め方、対策のとりまとめ方等あらゆる点で不透明であり、このような問題だらけのワーキングチームで表現の自由を含む国民の基本的権利に関わる重大な検討が進められることなど論外である。このような検討しかなし得ない出来レースの密室政策談合ワーキングチーム・ワーキンググループは即刻解散するべきである。

 このワーキングチームは即刻解散するべきであるが、さらに今後児童ポルノ規制について何かしらの検討を行うのであれば、その検討会は下位グループまで含めて全て開催の度数日以内に速やかに議事録を公表する、一方的かつ身勝手に危険な規制強化を求める自称良識派団体代表だけで無く、表現の自由に関する問題に詳しい情報法・憲法の専門家、児童ポルノ法の実務に携わりその本当の問題点を熟知している法律家、規制強化に慎重あるいは反対の意見を有する弁護士等も呼ぶ、危険な規制強化の結論ありきで報告書をまとめる前にきちんとパブコメを少なくとも1月程度の募集期間を設けて取る、提出されたパブコメは概要のみではなく全文を公開するなど、児童ポルノ規制の本当の問題点を把握した上で検討が進められるようにするべきである。

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
 児童ポルノ規制法(正式名称は「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」)

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
・違憲のそしりを免れない現行の児童ポルノ規制法について、速やかに児童ポルノの定義の厳格化のみの法改正を行う。

・児童ポルノを対象とするものにせよ、いかなる種類のものであれ、情報の単純所持・取得規制・ブロッキングは極めて危険な規制であるとの認識を深め、このような規制を絶対に行わないことと閣議決定する。

・憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むこと、及び、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な著作権検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むことを検討する。

・プロバイダー責任制限法に関し、被侵害者との関係において、刑事罰リスクも含めたプロバイダーの明確なセーフハーバーについて検討する。

・児童ポルノの単純所持規制・創作物規制といった非人道的な規制を導入している諸国は即刻このような規制を廃止するべきと、そもそも最も根本的なプライバシーに属し、何ら実害を生み得ない個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ること自体、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の国際的かつ一般的に認められている基本的な権利からあってはならないことであると、日本政府から国際的な場において各国に積極的に働きかける。

・児童ポルノ流通防止協議会、内閣府の児童ポルノ対策ワーキングチーム等を解散し、サイトブロッキングの導入に関する検討を完全に停止する。

(13)インターネット・ホットラインセンター・日本ガーディアン・エンジェルス・日本ユニセフ協会
○項目
 インターネット・ホットラインセンター・日本ガーディアン・エンジェルス・日本ユニセフ協会

○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
 単なる民間団体に過ぎないにもかかわらず、一般からの違法・有害情報の通知を受けて、直接削除要請を行っている、インターネット・ホットラインセンターという名の半官検閲センターが存在している。

 同じく民間団体に過ぎないにもかかわらず、日本ガーディアン・エンジェルスという団体が、犯罪に関する情報を匿名で受け付け、解決に結び付いた場合に情報料を支払うということを行っており、この7月からネットでの受理まで開始している。

 また、日本ユニセフ協会は、「なくそう!子どもポルノ」キャンペーン等の根拠無く一般的かつ網羅的な表現・情報弾圧を唱える危険な児童ポルノ規制強化プロパガンダに募金を流用し、さらに、2009年6月26日の衆議院法務委員会でも、感情論のみで根拠無く児童ポルノの単純所持規制の導入を訴えるなど、寄付行為に書かれた財団法人の目的を大きく逸脱し、明白に公益を害する行為を繰り返し行い、インターネットにおけるあらゆる情報利用を危険極まりないものとしようとしている。

 サイト事業者が自主的に行うならまだしも、何の権限も有しないインターネット・ホットラインセンターなどの民間団体からの強圧的な指摘により、書き込みなどの削除が行われることなど本来あってはならないことである。このようなセンターは単なる一民間団体で、しかもこの団体に直接害が及んでいる訳でもないため、削除を要請できる訳がない。勝手に有害と思われる情報を収集して、直接削除要請などを行う民間団体があるということ自体おかしいと考えるべきであり、このような有害無益な半官検閲センターは即刻廃止が検討されて良い。このような無駄な半官検閲センターに国民の血税を流すことは到底許されないのであって、その分できちんとした取り締まりと削除要請ができる人員を、法律によって明確に制約を受ける警察に確保するべきである。

 日本ガーディアン・エンジェルスについても同断であり、直接害が及んでいる訳でもない単なる一民間団体が、直接一般からの通報を受け付け、刑事事件に関与して、解決に結び付いた場合に情報料を支払うということ自体異常である。インターネット・ホットライン・センターにせよ、この日本ガーディアン・エンジェルスにせよ、警察の本来業務を外部委託することがそもそもおかしいのであり、日本ガーディアン・エンジェルスに無駄に国民の血税を流すべきでは無く、その分できちんとした情報受け付けと事件の解決ができる人員を、法律によって明確に制約を受ける警察に確保するべきである。また、このようなことに手を染めている日本ガーディアン・エンジェルスは、特定非営利活動法人あるいは認定特定非営利活動法人の名に値するものでは無く、その取り消しが検討されるべきである。

 また、日本ユニセフ協会は、「なくそう!子どもポルノ」キャンペーン等の根拠無く一般的かつ網羅的な表現・情報弾圧を唱える危険な児童ポルノ規制強化プロパガンダに募金を流用し、さらに、この6月26日の衆議院法務委員会でも、感情論のみで根拠無く児童ポルノの単純所持規制の導入を訴えているが、日本ユニセフの寄付行為(http://www.unicef.or.jp/about_unicef/about_kifu.html参照)において、根拠無く焚書と表現弾圧を叫ぶことは、ユニセフの趣旨には入っていないと考えられ、このようなことが事業としてあげられている訳も無く、このような行為は寄付行為違反である。さらに、民主主義の基礎中の基礎である表現の自由等の精神的自由の重要性を考えると、寄付行為違反を超えて、このような行為は明白に公益を害するものである。「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」第96条に基づいて、日本ユニセフ協会に対して、所管の外務省から改善命令を出すべきである。また、このような法人は、公益法人あるいは特定公益増進法人の名に値するものでは無く、新公益法人制度への移行申請において公益認定をしないとするか、あるいは、それ以前に、公益法人及び特定公益増進法人の認定取り消しをするべきである。(なお、日本ユニセフ協会は、そのHPhttp://www.unicef.or.jp/cooperate/coop_tax.htmlにおいて、募金の税法上の優遇について、特定公益増進法人への寄付が優遇措置を受けられると書いているが、公益法人改革の一環として、既に全ての公益法人に対する寄付に対して同等の優遇措置が認められているのであり(財務省HPhttp://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/koueki01.htmの注参照)、これもかなり悪質なミスリードである。)

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
 特定非営利活動促進法
 租税特別措置法第66条の11の2
 公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律
 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
・インターネット・ホットラインセンターを廃止する。

・日本ガーディアン・エンジェルスにおける警察の委託事業を停止する。また、同時に、日本ガーディアン・エンジェルスに対して、特定非営利活動促進法及び租税特別措置法第66条の11の2に基づく特定非営利活動法人及び認定特定非営利活動法人の認定の取り消しを検討する。

・日本ユニセフ協会に対して、所管の外務省から公益を害する活動を止めるよう改善命令を出す。また、日本ユニセフ協会に対して、新公益法人制度への移行申請において公益認定をしないとするか、あるいは、それ以前に、公益法人及び特定公益増進法人の認定を取り消す。

(14)情報公開法
○項目
 情報公開法

○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
 政策決定に関わる重要文書・資料の保存義務とその義務違反に対する罰則が不明確である。さらに、曖昧な理由に基づいて行政機関等が文書の不開示を決めることが可能である上、その後の客観的な事後救済制度の整備も不十分である。

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
 情報公開法(正式名称は、「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」である。)

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
・他省庁、議員、審議会等委員、関係団体とのやり取りに使用された政策決定に関わる文書は全て作成者と使用者の個人名と役職を付して最低10年保存を義務化し(メール、FAX、電話、面談等全てのやり取りの記録と保存を義務化するべき)、5年でHP上に全て自動公開されるシステムを法制化するべきである。

・全文書に適用される期限を法定し、それ以降は理由によらず必ず公開されるとするべきである。

・文書を廃棄する場合は、HP等による事前告知を義務化するべきである。

・文書管理責任者を明確にし、故意又は過失による廃棄又は虚偽主張に処分を加えられるとするべきである。

・開示の実施の方法は、原則として請求者の求める方法によらなければならないと法定し、オンライン開示、電子媒体による開示の促進を図るべきである。

・不開示情報である「公にすることにより、国の安全が害されるおそれ、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれ等がある情報」かどうかの判断に、行政機関等の裁量を大きく認めるべきでない。

・国等における審議・検討等に関する情報で、それを公にすることにより、「不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ」がある情報についても、行政機関の裁量が大きく入る余地があるため、原則開示とすべきである。

・情報公開法6条1項から「容易に」とただし書きを削除し、可能な限り情報は切り分けて開示しなければならないと明確化するべきである。

・情報公開法5条1号ハに公務員の氏名を加え、公務員の個人名も原則開示にし、5条5号・6号二を削除・修正し、省庁の検討情報と天下りも含め人事に関する情報も後に原則開示されるとするべきである。

・開示請求から開示決定等までの期限を短縮する。

・特例としての開示の無期限延長を見直す。

・実費と利用者の負担の両方のバランスを考慮し、手数料の減額を検討する。

・不服申立てがなされてから審査会への諮問を行うまでの法定期限を導入する。

・情報公開訴訟を、原告の普通裁判籍所在地の地方裁判所にも提起できるようにする

・裁判所が、行政機関の長等に対し、対象文書の標目・要旨・不開示の理由等を記載した書面(いわゆるヴォーン・インデックス)の作成・提出を求める手続を導入する・

・裁判所が対象文書を実際に見分し、不開示情報の有無等を直に検討できるインカメラ審理手続を導入する。

・衆議院事務局は申し訳程度に規定を設けているようだが、それだけではなく、参議院事務局、会派又は議員の活動に関する情報を含め、各議員も含め国会全体におけるきちんとした文書保存制度と情報公開制度を整え、立法府についても保存年限に応じた文書の自動公開システムの法制化を行うべきである。

(15)国際組織犯罪防止条約・サイバー犯罪条約及びこれらの締結に必要な法改正・ウィルス作成罪
○項目
 国際組織犯罪防止条約・サイバー犯罪条約及びこれらの締結に必要な法改正・ウィルス作成罪

○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
 国際組織犯罪防止条約の締結には、共謀罪の創設が必要とされているが、現状でも大規模テロなどについてはすでに殺人予備罪があるので共謀罪がなくとも対応でき、その他、個別の立法事実があればそれに沿った形で個別の犯罪についての予備罪の適否を論ずるべきであって、広範かつ一般的な共謀罪を創設する立法事実はない。実行行為に直接つながる行為によって、法益侵害の現実的危険性を引き起こしたからこそ処罰されるという我が国の刑法学の根幹を揺るがすものである共謀罪は、決して導入されてはならない。組織要件の厳密化にしても、今現在国会に提出されている修正案のような、その目的や意思のみによる限定は客観性を全く欠き、やはり恣意的な運用しか招きようのない危険なものである。このような危険な法改正を必要とする国際組織犯罪防止条約は日本として締結するべきものではない。

 サイバー犯罪条約は、通信記録や通信内容等の情報の保全・捜索・押収・傍受等について広範かつ強力な手段を法執行機関に与えることを求めているが、このような要請は、我が国の憲法に規定されている国民の基本的な権利に対する致命的な侵害を招くものであり、この条約も日本として締結するべきものではない。前国会に提出されていた法改正案中でも、差し押さえるべき物がコンピューターである場合には、このコンピューターと接続されているあらゆる記録媒体とそこに記録されている情報を差し押さえ可能であるとされていたが、昨今のインターネットの状況を考えると、差し押さえの範囲が過度に不明確になる懸念が強く、裁判所の許可無く捜査機関が通信履歴の電磁的記録の保全要請をすることが出来るとしていた点も、捜査機関による濫用の懸念が強く、このような刑事訴訟法の枠組みの変更は、通信の秘密やプライバシー、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がない限り、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利、といった我が国の憲法に規定されている国民の基本的な権利に対する致命的な侵害を招くものと私は考える。

 また、ウィルス作成等に関する罪についても、以前の法改正案の「人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える」電磁的記録という要件は、客観性のない人の意図を要件にしている点でやはり曖昧に過ぎ、このような客観性のない曖昧な要件でウィルス作成等に関する刑罰が導入されるべきではない。

 留保・解釈を最大限に活用しても、憲法に規定されている国民の基本的な権利に対する致命的な侵害を招くことになるだろう、これらの条約は、日本として締結するべきものではないものである。前国会に提出されていた法案は廃案のままにするとともに、条約からの脱退を検討し、今後、ウィルス作成等に関する刑罰の導入を検討するのであれば、その要件が十分に客観性のあるものとなるよう、慎重の上に慎重を期すべきである。

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
 国際組織犯罪防止条約(正式名称は、「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」)
 サイバー犯罪条約(正式名称は、「サイバー犯罪に関する条約」)
 刑法の改正検討

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
・前国会に提出されていた、国際組織犯罪防止条約及びサイバー犯罪条約の締結のための法改正案は廃案のままにすると閣議決定を行う。同時に、条約からの脱退を検討する。

・ウィルス作成等に関する刑罰の導入を検討するのであれば、その要件が十分に客観性のあるものとなるよう、慎重の上に慎重を期す。

(16)公職選挙法
○項目
 公職選挙法

○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
 公職選挙法によって、選挙運動期間中にネットを選挙運動に用いることが完全に禁止されている。2009年7月21日に閣議決定された答弁書(http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/171/toup/t171234.pdf参照)により、twitterの利用まで公職選挙法違反であるという政府見解が示されている。

 選挙運動期間中の選挙運動に関するネット上の掲示は全て、公職選挙法の第146条で規制の対象となっている文書図画の掲示とされ、完全に禁止されているが、これは、インターネットにおける正当な情報利用を阻害する一大規制となっている。

 第148条で、選挙の公正を害しない限りにおいて新聞・雑誌に対し報道・評論を掲載する自由を妨げるものではないと明文で規定しているが、新聞紙にあつては毎月三回以上、雑誌にあつては毎月一回以上、号を逐つて定期に有償頒布するものであり、第三種郵便物の承認のあるものであり、当該選挙の選挙期日の公示又は告示の日前一年以来そうであったもので、引き続き発行するものと、ブログ等は無論のこと、大手ネットメディアですら入らない、あまりにも狭い規定となっている。第151条の3で放送についても同様の規定があるが、放送法を参照しており、当然のことながら、動画サイトなどは入らないと考えられる。

 紙媒体であろうが、ネットだろうが、実名だろうが、匿名だろうが、報道・批評・表現の本質に変わりはない。表現の自由は、憲法に規定されている権利であり、民主主義を支える最も重要な自由として、その代表を選ぶ選挙において、その公平を害しない限りにおいて、あらゆる媒体に最大限認められなくてはならないものであることは言うまでもない。もし、公職選挙法が杓子定規に解釈され、各種ネットメディアに不当な規制の圧力がかけられるようなら、公職選挙法自体憲法違反とされなくてはならない。

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
 公職選挙法

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
・第142条と第143条の認められる文書図画の頒布・掲示の中に、電子メール・ブログ・動画サイト等様々なネットサービスの利用類型を追加すること等により、公職選挙法第146条の規制を緩和し、ネット選挙を解禁する。

・公職選挙法第148条の規制を緩和し、新聞等に加えてネットにおける報道及び評論の自由も明文で認め、民主主義を支える最も重要な自由として、その代表を選ぶ選挙において、その公平を害しない限りにおいて、ネットメディア、動画サイト、ブログ等における表現の自由を最大限確保する。

(17)天下り
○項目
 天下り

○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
 2007年6月23日号の週刊ダイヤモンドの「天下り全データ」という特集で、天下りとして2万7882人という人数が示されている。中には他愛のない再就職も含まれているだろうが、2万5千人を超える元国家公務員が各省庁所管の各種独立行政法人や特殊法人、公益法人、企業などにうごめき、このような天下り利権が各省庁の政策を歪めているというのが、今の日本のおぞましい現状である。2010年8月に公表されたの内閣府の特例民法法人調査でも、このような特例民法法人だけで6千人を超える天下り理事がいるとしており、これで1割程度減っているというものの、以前の調査と合わせて考えると、様々な団体・企業になお数万人規模の天下り役人がいるのではないかと考えられる。

 しかし、法改正によって得られる利権・行政による恣意的な許認可権を盾に、役に立たない役人を民間に押しつけるなど、最低最悪の行為であり、一国民として到底許せるものではない。さらに、このような天下り役人が国の政策に影響を及ぼし、国が亡んでも自分たちの利権のみ伸ばせれば良いとばかりに、国益を著しく損なう違憲規制を立法しようとするに至っては、単なる汚職の域を超え、もはや国家反逆罪を構成すると言っても過言ではない。

 知財・情報政策においても、天下り利権が各省庁の政策を歪めていることは間違いなく、政策の検討と決定の正常化のため、文化庁から著作権関連団体への、総務省から放送通信関連団体・企業への、警察庁から各種協力団体・自主規制団体への天下りの禁止を決定するべきである。これらの省庁は特にひどいので特に名前をあげたが、他の省庁も含めて決定するべきである。また、天下りの隠れ蓑に使われている特殊法人、公益法人、特定非営利活動法人、特定非営利活動法人等は全廃をベースとして検討を進めるべきであり、天下りを1人でも受け入れている団体・法人・企業は各種公共事業の受注・契約は一切できないという入札・契約ルールを全省庁において等しく導入するべきである。

 また、大臣の承認を受ければ良いとするような迂回天下りや、嘱託職員として再就職するような隠れ天下りや、人事院の「公務員の高齢期の雇用問題に関する研究会」などにおいて提案されている、60歳を過ぎてから公務員の身分のまま公益法人などに出向するといった新たな天下りルートも許されるべきでない。

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
 国家公務員法

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
・閣議決定により、国家公務員法で規定されている再就職等監視委員会を凍結し、大臣の承認を受ければ良いとするような迂回天下りや、嘱託職員として再就職するような隠れ天下りや、公務員の身分のまま公益法人などに出向するといった新たに提案されている天下りルートも含め、天下りを完全に禁止する。

(18)メール検閲・DPI技術を用いた広告
○項目
 メール検閲・DPI技術を用いた広告

○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
 総務省の「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」の提言において、通常のメールと同様SNSサービス中の「ミニメール」の内容が通信の秘密に該当するのは当然のこととしても、メッセージ交換サービスにおけるメールの内容確認を送信者に対しデフォルトオンで認める余地があるかの如き整理がなされている。同じく、DPI(ディープ・パケット・インスペクション)技術を用いた行動ターゲティング広告について、現状でも基準等の作成により導入が可能であるかの如き整理がなされている。

 しかし、メッセージ交換サービスにおけるメールの内容確認を送信者に対しデフォルトオンで認める余地があるとすることは、実質、送信者が受信者しか知り得ないだろうと思って送る情報の内容について、知らない内に事業者に検閲されているという状態をもたらす危険性が極めて高い。受信情報のフィルタリングに関する要件を一方的に拡大解釈し、送信者に対するデフォルトオンのメールの内容確認の余地を認めることは、実質的にメール・通信の検閲の余地を認めるに等しく、憲法にも規定されている通信の秘密をないがしろにすることにつながりかねない極めて危険なことである。これはデフォルトオンでメールの内容確認を行う場面が限定的であるか否かという問題ではなく、総務省にあっては、実質的なメールの検閲を是とするかの如き通信の秘密に関する歪んだ整理を速やかに改めるべきである。

 この部分において、DPI(ディープ・パケット・インスペクション)技術を用いた行動ターゲティング広告についても、利用者の同意がなければ通信の秘密を侵害するものとして許されないのは当然のこととして、DPI技術はネットワーク中のパケットに対して適用されるものであり、一旦導入されてしまうと、その存在と対象範囲について通常の利用者は全く意識・検証し得ないものである。DPI技術についても、利用者が知らない内に通信内容が事業者に検閲されているという状態をもたらす危険性が極めて高く、実質的な検閲をもたらしかねない危険なものとして安易な法的整理はされてはならない。契約書によったとしても、それだけでは、明確かつ個別の同意が十分に得られ、利用者からDPI技術の存在と対象範囲について十分に意識・検証可能となっているとすることはできない。DPI技術の利用については、通常の利用者の明確かつ個別の同意を得ることは現時点では不可能であり、この部分の記載は、現時点で、法的課題を克服することは困難であり、基準等の作成もされるべきではないとされなくてはならない。

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
 なし

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
・総務省において、SNSサービスにおけるメール監視やDPI技術を用いた広告のような実質的な検閲を是とするか如き歪んだ法的整理を早急に改め、大臣レベルでその見解を公表する。

(19)携帯電話事業者による差別的なダウンロード容量制限
○項目
 携帯電話事業者による差別的なダウンロード容量制限

○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
 総務省の「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」の提言によると、一部の携帯電話事業者が、公式サイト以外のサイトからダウンロードできるファイルの容量制限を行っているとのことであるが、携帯電話事業者による、このような容量制限は、公平性の観点からも、独禁法からも明らかに問題がある。

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
 なし

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
・携帯電話事業者による公式サイト以外のサイトからダウンロードできるファイルの容量制限を排除する。

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第234回:総務省・ICTの利活用を阻む制度・規制等についての意見募集に対する提出パブコメ(その1:知財・著作権規制関連)

 8月20日〆切で、総務省からかかっているパブコメの「ICTの利活用を阻む制度・規制等についての意見募集」(総務省のリリース、電子政府HPの該当ページ参照。internet watchの記事ITproの記事も参照)に対して、パブコメを提出したので、去年の7月の内閣官房への提出パブコメ(その1その2)や今年の1月のハトミミ.comへの提出パブコメ情報公開制度についての提出パブコメ)とあまり違いはないが、念のため、ここに載せておく。

 長すぎるので2つに分けるが、まず、その1として、下に書いた目次で(1)のダウンロード違法化から(9)の模倣品・海賊版対策条約までの知財・著作権規制関連の項目についての提出パブコメをここに載せる。

(8月17日の追記:(9)海賊版対策条約の項目中に誤記があったので訂正した(「法廷損害賠償」→「法定損害賠償」)。)

(目次)
(1)ダウンロード違法化
(2)DRM回避規制
(3)コピーワンス・ダビング10・B-CAS
(4)私的録音録画補償金制度
(5)著作権保護期間
(6)一般フェアユース条項の導入による著作権規制の緩和
(7)著作権の間接侵害・侵害幇助
(8)著作権検閲・ストライクポリシー
(9)模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)

(10)出会い系サイト規制
(11)青少年ネット規制法・青少年健全育成条例・携帯フィルタリング義務化
(12)児童ポルノ規制・サイトブロッキング
(13)インターネット・ホットラインセンター・日本ガーディアン・エンジェルス・日本ユニセフ協会
(14)情報公開法
(15)国際組織犯罪防止条約・サイバー犯罪条約及びこれらの締結に必要な法改正・ウィルス作成罪
(16)公職選挙法
(17)天下り
(18)メール検閲・DPI技術を用いた広告
(19)携帯電話事業者による差別的なダウンロード容量制限

(以下、提出パブコメ)

(1)ダウンロード違法化
○項目
 ダウンロード違法化

○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
 文化庁の暴走と国会議員の無知によって、 2009年の6月12日に、「著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合」は私的複製に当たらないとする、いわゆるダウンロード違法化条項を含む、改正著作権法が成立し、2010年1月1日に施行された。

 しかし、一人しか行為に絡まないダウンロードにおいて、「事実を知りながら」なる要件は、エスパーでもない限り証明も反証もできない無意味かつ危険な要件であり、技術的・外形的に違法性の区別がつかない以上、このようなダウンロード違法化は法規範としての力すら持ち得ない。このような法改正によって進むのはダウンロード以外も含め著作権法全体に対するモラルハザードのみであり、これを逆にねじ曲げてエンフォースしようとすれば、著作権検閲という日本国として最低最悪の手段に突き進む恐れしかない。改正法は未施行であるが、既に、総務省の「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」において、中国政府の検閲ソフト「グリーン・ダム」導入計画に等しい、日本レコード協会による携帯電話における著作権検閲の提案が取り上げられるなど、弊害は出始めている。

 そもそも、ダウンロード違法化の懸念として、このような著作権検閲に対する懸念は、文化庁へのパブコメ(文化庁HPhttp://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/houkoku.htmlの意見募集の結果参照。ダウンロード違法化問題において、この8千件以上のパブコメの7割方で示された国民の反対・懸念は完全に無視された。このような非道極まる民意無視は到底許されるものではない)や知財本部へのパブコメ(知財本部のHPhttp://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keikaku2009.htmlの個人からの意見参照)を見ても分かる通り、法改正前から指摘されていたところであり、このような著作権検閲にしか流れようの無いダウンロード違法化は始めからなされるべきではなかったものである。文化庁の暴走と国会議員の無知によって成立したものであり、ネット利用における個人の安心と安全を完全にないがしろにするものである、百害あって一利ないダウンロード違法化を規定する著作権法第30条第1項第3号を即刻削除するべきである。

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
 著作権法第30条第1項第3号

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
・著作権法第30条第1項第3号を削除する。

(2)DRM回避規制
○項目
 DRM回避規制

○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
 現状、不正競争防止法と著作権法でDRM回避機器等の提供等が規制され、著作権法でコピーコントロールを回避して行う私的複製まで違法とされている。

 DRM回避規制については、2010年4月に公開された海賊版対策条約(ACTA)案において、DRM回避規制の対象行為の拡大(製造及び回避サービスの提供)や対象の拡大(「のみ」要件の緩和)等が必要な条文案が選択肢を示さない形で提示されており、さらにこのような規制強化について知財計画2010においても具体的な制度改革案を2010年度中にまとめるとされている。

 しかし、2009年2月にDRM回避機器についてゲームメーカー勝訴の判決が出ていることなどを考えても、現時点で、現状の規制では不十分とするに足る根拠は全くない。

 かえって、著作権法において、私的領域におけるコピーコントロール回避まで違法とすることで、著作権法全体に関するモラルハザードとデジタル技術・情報の公正な利活用を阻む有害無益な萎縮効果が生じているのではないかと考えられる。

 デジタル技術・情報の公正な利活用を阻むものであり、そもそも、私的なDRM回避行為自体によって生じる被害は無く、個々の回避行為を一件ずつ捕捉して民事訴訟の対象とすることは困難だったにもかかわらず、文化庁の片寄った見方から一方的に導入されたものである、私的領域でのコピーコントロール回避規制(著作権法第30条第1項第2号)は撤廃するべきである。コンテンツへのアクセスあるいはコピーをコントロールしている技術を私的な領域で回避しただけでは経済的損失は発生し得ず、また、ネットにアップされることによって生じる被害は公衆送信権によって既にカバーされているものであり、その被害とDRM回避やダウンロードとを混同することは絶対に許されない。それ以前に、私法である著作権法が、私的領域に踏み込むということ自体異常なことと言わざるを得ない。

 ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ないこれ以上のDRM回避規制の強化は検討されるべきでないのは無論のこと、このような危険なものとしかなり得ない規制強化条項を含めた形での条約交渉を、何ら国民的なコンセンサスを得ない中で、一部の者の都合から政府が勝手に行うなどおよそ論外である。日本政府として、海賊版対策条約(ACTA)へのDRM回避規制関連条項の導入に反対し、同時に、DRM回避規制の強化による情報アクセスに関する国民の基本的な権利の侵害の危険性について国際的な場で議論を提起するべきである。

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
 著作権法第30条第1項第2号
 著作権法第120条の2
 不正競争防止法第2条第1項第10号、第11号
 海賊版対策条約(検討中)

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
・著作権法第30条第1項第2号を削除する。

・合わせ、DRM回避規制に関して、ユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ないこれ以上の規制強化をしないと閣議決定する。

・海賊版対策条約(ACTA)条約交渉においてDRM回避規制関連条項を取り除くよう日本政府から強く働きかける。

(3)コピーワンス・ダビング10・B-CAS
○項目
 コピーワンス・ダビング10・B-CAS

○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
 無料の地上放送の全てに、2008年まではコピーワンスというコピーを1個しか認めない異常に厳しいコピー制限がかけられていた。2008年からわずかに緩和されたが、やはりダビング10という不当に厳しいコピー制限が今も維持されている。このようなコピー制限を維持するためとして、無料の地上放送の全てにB-CASによりスクランブル・暗号化が施されているという状態が今もなお続いている。

 2009年の総務省の情報通信審議会の中間答申で、ようやく無料の地上放送へB-CASシステムとコピーワンス運用の導入を可能とした2002年6月の省令改正についての記載が加えられた。このように以前、無料の地上放送へのスクランブル・暗号化を禁じる省令が存在していた理由についての記載はやはり無いが、これは、無料地上放送は本来あまねく見られるべきという理念があったことの証左であろう。過去の検討経緯についてよりきちんとした情報開示を行い、このような過去の省令に表れている無料の地上放送の理念についても念頭においた上で再検討が進められなくてはならない。

 本来あまねく見られることを目的としていた無料地上波本来の理念をねじ曲げ、放送局と権利者とメーカーの談合に手を貸したという総務省の過去の行為は見下げ果てたものである。コピーワンス問題、ダビング10問題、B-CAS問題の検討と続く、無料の地上放送のスクランブルとコピー制御に関する政策検討の迷走とそれにより浪費され続けている膨大な社会的コストのことを考えても、このような省令改正の政策的失敗は明らかであり、総務省はこの省令改正を失策と明確に認めるべきである。

 B-CASシステムは談合システムに他ならず、これは、放送局・権利者にとっては、視聴者の利便性を著しく下げることによって、一旦は広告つきながらも無料で放送したコンテンツの市場価格を不当につり上げるものとして機能し、国内の大手メーカーとっては、B-CASカードの貸与と複雑な暗号システムを全てのテレビ・録画機器に必要とすることによって、中小・海外メーカーに対する参入障壁として機能している。

 以前は総務省令によって、無料の地上放送へのこのようなスクランブル・暗号化の導入は禁止されていたが、総務省は、平成14年6月にこの省令の改正を行い、 本来あまねく見られることを目的とする無料の地上放送へB-CASシステムとコピーワンス運用の導入を可能として、無料地上波本来の理念をねじ曲げ、放送局と権利者とメーカーの談合に手を貸すと見下げ果てた行為を行っている。コピーワンス問題、ダビング10問題、B-CAS問題の検討と続く、無料の地上放送のスクランブルとコピー制御に関する政策検討の迷走とそれにより浪費され続けている膨大な社会的コストのことを考えても、このような省令改正の政策的失敗は明らかであり、この省令改正を失策と総務省に明確に認めさせるべきである。

 昨年運用が開始されたダビング10に関しても、大きな利便性の向上なくして、より複雑かつ高価な機器を消費者が新たに買わされるだけの弥縫策としか言いようがなく、一消費者・一国民として納得できるものでは全くない。さらに、ダビング10機器に関しては、テレビ(チューナー)と録画機器の接続によって、全く異なる動作をする(接続次第で、コピーの回数が9回から突然1回になる)など、公平性の観点からも問題が大きい。

 現在の地上無料放送各局の歪んだビジネスモデルによって、放送の本来あるべき姿までも歪められるべきではない。そもそもあまねく視聴されることを本来目的とする、無料の地上放送においてコピーを制限することは、視聴者から視聴の機会を奪うことに他ならず、このような規制を良しとする談合業界及び行政に未来はない。

 コピー制限技術はクラッカーに対して不断の方式変更で対抗しなければならないが、その方式変更に途方もないコストが発生する無料の地上放送では実質的に不可能である。インターネット上でユーザー間でコピー制限解除に関する情報がやりとりされる現在、もはや無料の地上放送にDRMをかけていること自体が社会的コストの無駄であるとはっきりと認識するべきである。無料の地上放送におけるDRMは本当に縛りたい悪意のユーザーは縛れず、一般ユーザーに不便を強いているだけである。さらに、B-CASカードのユーザー登録の廃止(地上デジタル放送専用の青カードについては既にユーザー登録が廃止されており、BS・CS・地上共用の赤カードについても来年3月に登録が廃止される予定である。http://www.b-cas.co.jp/www/whatsnew/100325.htmlhttp://www.b-cas.co.jp/www/whatsnew/100705.html参照)により、B-CASカードによるユーザーに対するコピー制御の技術的なエンフォースは完全に不可能となっており、既に存在意義を完全に失っているB-CASカード・システムは速やかに完全に地上デジタル放送から排除されるべきである。

 2009年の情報通信審議会の中間答申において、現行のB-CASシステムと併存させる形でチップやソフトウェア等の新方式を導入することが提言されており、今も恐らく企業レベル等で検討が進められているものと思うが、無意味な現行システムの維持コストに加えて新たなシステムの追加で発生するコストまでまとめて消費者に転嫁される可能性が高く、このような弥縫策は、一消費者として全く評価できないものである。さらに言うなら、これらの新方式は、不正機器対策には全くならない上、新たに作られるライセンス発行・管理機関が総務省なりの天下り先となり、新方式の技術開発・設備投資コストに加え、天下りコストまで今の機器に上乗せされかねないものである。この審議会において同じく検討課題とされていた、制度的エンフォースメントにしても、正規機器の認定機関が総務省なりの天下り先となり、その天下りコストがさらに今の機器に上乗せされるだけで、しかも不正機器対策には全くならないという最低の愚策である。

 無料の地上放送の理念を歪め、放送局・権利者・国内の大手メーカーの談合を助長している、無料の地上放送にかけられているスクランブル・暗号化こそ問題なのであって、B-CAS類似の無意味なシステムをいくら併存させたところで、積み上げられるムダなコストが全て消費者に転嫁されるだけで何の問題の解決にもならず、同じことが繰り返されるだけだろう。基幹放送である無料地上波については、B-CASシステムを排除し、ノンスクランブル・コピー制限なしを基本とすること以外で、この問題の本質的な解決がもたらされることはない。

 法的にもコスト的にも、どんな形であれ、全国民をユーザーとする無料地上放送に対するコピー制限は維持しきれるものではない。このようなバカげたコピー制限に関する過ちを二度と繰り返さないため、無料の地上放送についてはスクランブルもコピー制御もかけないこととする逆規制を、政令や省令ではなく法律のレベルで放送法に入れることを私は一国民として強く求める。

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
 なし

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
1.無料地上波からB-CASシステムを排除し、テレビ・録画機器における参入障壁を取り除き、自由な競争環境を実現する。

2.あまねく見られることを目的とするべき、基幹放送である無料地上波については、ノンスクランブル・コピー制限なしを基本とする。

3.無料地上波については、ノンスクランブル・コピー制限なしとすることを、総務省が勝手に書き換えられるような省令や政令レベルにではなく、法律に書き込む。

(4)私的録音録画補償金制度
○項目
 私的録音録画補償金制度

○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
 私的複製によって生じる著作権者の経済的不利益を補償するため、MD、CD-R、DVD-R等の分離型録音録画専用デジタル録音録画機器・媒体に私的録音録画補償金が賦課されている。文化庁文化審議会において、数年に渡り縮小・廃止に向けた検討が行われ、補償金のそもそもの意義が問われた中で、その解決をおざなりにしたまま、2008年の6月にダビング10解禁のために文部科学大臣と経済産業大臣の間で暫定的な措置としてブルーレイ課金の合意がなされ、消費者不在の中、2009年の5月に著作権施行令の改正によってブルーレイへの課金まで実施された。さらには、この問題について、メーカーと補償金管理協会の間で訴訟が行われるにまで至っている。

 確かに今はコピーフリーのアナログ放送もあるが、ブルーレイにアナログ放送を録画することはまずもって無いと考えられるため、アナログ放送の存在もブルーレイ課金の根拠としては薄弱であり、そのアナログ放送も2011年には止められる予定となっている。

 特に、権利者団体は、ダビング10への移行によってコピーが増え自分たちに被害が出ると大騒ぎをしたが、移行後2年以上経った今現在においても、ダビング10の実施による被害増を証明するに足る具体的な証拠は全く示されておらず、ブルーレイ課金に合理性があったとは私には全く思えない。

 わずかに緩和されたとは言え、今なお地上デジタル放送にはダビング10という不当に厳しいコピー制限がかかったままである。こうした実質的に全国民に転嫁されるコストで不当に厳しい制限を課している機器と媒体にさらに補償金を賦課しようとするのは、不当の上塗りである。このような不当に厳しいコピー制限が維持される限り、私的録画補償金は廃止するべきである。

 文化庁の文化審議会著作権分科会における数年の審議において、補償金のそもそもの意義についての意義が問われたが、今に至るも文化庁は、天下り先である権利者団体のみにおもねり、この制度に関する根本的な検討を怠っている(文化庁は、基本問題小委員会を設けたが、始めからメンバーが権利者団体のみに片寄っており、このような腐った小委員会で著作権の根本に関わる問題など検討できないことは明白である。)。

 世界的に見ても、メーカーや消費者が納得して補償金を払っているということはカケラも無く、権利者団体がその政治力を不当に行使し、歪んだ「複製=対価」の著作権神授説に基づき、不当に対象を広げ料率を上げようとしているだけというのがあらゆる国における実情である。表向きはどうあれ、大きな家電・PCメーカーを国内に擁しない欧州各国は、私的録音録画補償金制度を、外資から金を還流する手段、つまり、単なる外資規制として使っているに過ぎない。

 この制度における補償金の対象・料率に関して、具体的かつ妥当な基準はどこの国を見ても無いのであり、この制度は、ほぼ権利者団体の際限の無い不当な要求を招き、莫大な社会的コストの浪費のみにつながっている。機器・媒体を離れ音楽・映像の情報化が進む中、「複製=対価」の著作権神授説と個別の機器・媒体への賦課を基礎とする私的録音録画補償金は、既に時代遅れのものとなりつつあり、その対象範囲と料率のデタラメさが、デジタル録音録画技術の正常な発展を阻害し、デジタル録音録画機器・媒体における正常な競争市場を歪めているという現実は、補償金制度を導入したあらゆる国において、問題として明確に認識されなくてはならないことである。

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
 著作権法第30条第2項
 著作権法第5章
 著作権法施行令第1章

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
1.そもそも、著作権法の様な私法が私的領域に踏み込むこと自体がおかしいのであり、私的領域での複製は原則自由かつ無償であることを法文上明確にする。また、刑事罰の有無に関わらず、外形的に違法性を判別することの出来ない形態の複製をいたずらに違法とすることは社会的混乱を招くのみであり、厳に戒められるべきである。

2.特に、補償金については、これが私的録音録画を自由にすることの代償であることを法文上明確にする。すなわち、私的録音録画の自由を制限するDRM(コピーワンスやダビング10ほどに厳しいDRM)がかけられている場合は、補償措置が不要となることを法文上明確にする。

3.また、タイムシフト、プレースシフト等は、外形的に複製がなされているにせよ、既に一度合法的に入手した著作物を自ら楽しむために移しているに過ぎず、このような態様の複製について補償は不要であることを法文上明確にする。実質権利者が30条の範囲内での複製を積極的に認めているに等しい、レンタルCDやネット配信、有料放送からの複製もこれに準じ、補償が不要であることを明確にする。

4.私的録音録画の自由の確保を法文上明確化するとした上で、私的録音録画を自由とすることによって、私的複製の範囲の私的録音録画によってどれほどの実害が著作権者に発生するのかについてのきちんとした調査を行う。
 この実害の算定にあたっては、補償の不必要な私的複製の形態や著作権者に損害を与えない私的複製の形態があることも考慮に入れ、私的録音録画の著作権者に与える経済的効果を丁寧に算出する。単に私的録音録画の量のみを問題とすることなど論外であり、その算定に当たっては入念な検証を行う。

5.この算出された実害に基づいて補償金の課金の対象範囲と金額が決められるべきである。特に、その決定にあたっては、コンテンツ産業振興として使われる税金や受信料・電波の割当といった各種の公的に与えられている既得権益も補償金の一種ととらえられることを念頭に置くべきである。この場合でも、将来の権利者団体による際限の無い補償金要求を無くすため、対象範囲と金額が明確に法律レベルで確定される必要がある。あらゆる私的録音録画について無制限の補償金要求権を権利者団体に与えることは、ドイツ等の状況を見ても、社会的混乱を招くのみであり、ユーザー・消費者・国民にとってきちんとセーフハーバーとして機能する範囲・金額の確定が行われなくてはならない。
 あるいは、実害が算出できないのであれば、原則にのっとり、私的録音録画補償金制度は廃止されるべきである。

6.集められた補償金は、権利者の分配に使用されることなく、全額違法コピー対策やコンテンツ産業振興などの権利者全体を利する事業へ使用されるようにするべきである。

 なお、天下り先の権利者団体のみにおもねり、国益を無視して暴走する腐り切った文化庁には、もはや、この問題の検討能力は完全に無い。上記のような方向性で検討する必要があると私は考えているが、無理なようであれば、この制度を現行のまま完全に凍結すると閣議決定することも、合わせ検討するべきである。

(5)著作権保護期間
○項目
 著作権保護期間

○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
 現行の日本の著作権法において、著作権の保護期間は著作者の死後50年とされている。実演、レコード及び放送に関する著作隣接権については、それぞれ実演を行った時、音を最初に固定した時、放送を行った時から50年とされている。文化庁の文化審議会において、延長の検討がなされて来ており、権利者団体と文化庁を除けば、延長を否定する結論が出そろっているにもかかわらず、文化庁は保護期間延長に関して継続して検討しようとし続けている。

1.著作権そのものの保護期間について
 著作権そのものに関しては、現行でも著作者の死後50年という極めて長い期間に渡って著作権が保護されることになっている。また、著作者人格権については保護期間が切れるということはない。

 文化的に、ひ孫の孫くらいのことまで考えて創作をしている人間がいるとも思われず、文化の多様化のためにはこれ以上の延長はほとんど何の役にも経たず、経済的にも、著作者の死後50年を経てなお権利処理コストを上回る財産的価値を保っている極めて稀な著作物のために、このコストを下回るほとんど全ての著作物の利用を阻害することは全く妥当でない。

 また、保護期間延長問題は金銭的な話でないとするリスペクト論もよく権利者側が持ち出すのだが、創作者が世に出したいと思う形のまま、創作者の名前を付けて著作物を流通させるために、同一性保持権や氏名表示権といった著作者人格権が、既に保護期間が切れることのない権利として規定されているのであり、人格権と財産権を混同した主張は取り上げるに値しない。延長問題は、あくまで権利の財産的な側面のみを考慮して考えられなくてはならない。

 これほど長期間に渡る著作権の保護期間は、過去の圧倒的多数の著作物の新たな技術による公共利用、 過去の大多数の著作物のデジタル情報としての公共利用に対する一大阻害要因となっており、著作権者の個々のメリットに比して社会的デメリットがあまりにも大きな有害な規制として機能している。このような著作権の保護期間については、短縮が検討されてしかるべきである。

 また、権利者団体と文化庁を除けば日本国内では、この点に関しては延長しないということでほとんど結論が出そろっているのであり、文化庁の保護期間延長に関する検討は完全に止められるべきである。

2.実演家の著作隣接権の保護期間について
 同一性保持権や氏名表示権などの実演家の人格権も特に保護期間と一緒に切れるということはないので、 実演家の著作隣接権の保護期間についても人格権と財産権をごっちゃにするリスペクト論は全く当てはまらない。

 実演から50年を超えて保護期間を延長することが、文化的な実演を多く生み出すためのインセンティブとなり、このインセンティブが、保護期間延長によって生じる公共利用に対するディスインセンティブを超えるという明確な論拠が示されるならばともかく、実演から50年という期間はかなり著名かつ長命の実演家でなければ切れることがない期間であり、今のところ、実演家の著作隣接権の保護期間延長についても、これを是とするに足る根拠は何一つなく、これも延長されるべきでない。

 なお、著作隣接権の中でも、実演家の権利と、レコード製作者・放送事業者の権利は大きく性質が異なっているものであり、これらを混同することは百害あって一利ないものである。

3.レコード製作者あるいは放送事業者の著作隣接権の保護期間について
 レコード製作者と放送事業者という創作者ではない流通事業者の著作隣接権は、単にレコード会社や放送局が強い政治力を持っていたことから無理矢理ねじ込まれた権利に過ぎず、その目的は流通コストへの投資を促すことのみにあったものである。インターネットという流通コストの極めて低い流通チャネルがある今、独占権というインセンティブで流通屋に投資を促さねばならない文化上の理由もほぼ無くなっているのであり、これらの保護期間は速やかに短縮することが検討されるべきである。

 なお、放送事業者の権利の保護期間については、今でもローマ条約及びTRIPS協定)で放送から20年と規定されているだけであり、短縮するのに国際的障害はない。合理的な理由無く決められた保護期間を短縮することが憲法上問題になる訳もない。

 なお、過去、保護期間の短縮を行った国としては、ポルトガルとスペインが存在しており、保護期間の短縮は国際的に見て完全に不可能とされるものでは無い。

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
 著作権法第2章第4節
 著作権法第4章第6節
 ベルヌ条約第7条
 万国著作権条約第4条
 ローマ条約第14条
 レコード製作者の保護に関する条約第4条
 実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約第17条
 TRIPS協定第12条及び第14条

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
・文化庁における著作権保護期間延長の検討を閣議決定により停止する。

・放送に関する著作隣接権に関しては、速やかに保護期間を放送を行った時から20年とする。

・合わせ、現行ですら余りに長い著作権及びレコード製作者あるいは放送事業者の著作隣接権の保護期間短縮のため、日本政府からベルヌ条約他の関係条約の改正提案を行うことを、政府レベルで検討する。

(6)一般フェアユース条項の導入による著作権規制の緩和
○項目
 一般フェアユース条項の導入による著作権規制の緩和

○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
 ほぼ全国民が利用者兼権利者となり得、考えられる利用形態が発散し、個別の規定では公正利用の類型を拾い切れなくなるインターネットのような場においては、現行の個別の権利制限規制を前提とする著作権法全体がデジタル技術・情報の公正な利活用を阻害するものとなっている。

 今現在、文化庁の文化審議会において著作権法における一般フェアユース条項の導入が検討されているが、2010年6月の法制問題小委員会「権利制限の一般規定に関する中間まとめ」で示された方針は、「A その著作物の利用を主たる目的としない他の行為に伴い付随的に生ずる当該著作物の利用であり、かつ、その利用が質的又は量的に社会通念上軽微であると評価できるもの」、「B 適法な著作物の利用を達成しようとする過程において合理的に必要と認められる当該著作物の利用であり、かつ、その利用が質的又は量的に社会通念上軽微であると評価できるもの」、「C 著作物の種類及び用途並びにその利用の目的及び態様に照らして、当該著作物の表現を知覚することを通じてこれを享受するための利用とは評価されない利用」のみを権利制限の一般規定の対象とするべきとその範囲は不当に狭い。確かに法的安定性を高めるという点ではこれらの類型について権利制限を設けることは重要であるものの、これほど限定したのでは、これはもはや権利制限の「一般」規定の名に値しない。これでは、既存の個別制限規定がことごとく不当に狭く使いにくいものとされているという現状から来る問題に対処する上では極めて不十分な、狭く使いにくい「個別」規定が新たに追加されるに過ぎず、著作権をめぐる今の混迷状況が変わることはない。

 インターネットのように、ほぼ全国民が利用者兼権利者となり得、考えられる利用形態が発散し、個別の規定では公正利用の類型を拾い切れなくなるところでは、フェアユースのような一般規定は保護と利用のバランスを取る上で重要な意義を持つものであり、著作物の公正利用には上記以外の変形利用もビジネス利用も考えられ、このような利用も含めて著作物の公正利用を促すことが、今後の日本の文化と経済の発展にとって真に重要であえることを考えれば、形式的利用、付随的利用あるいは著作物の知覚を目的とするのでない利用に限るといった形で不当にその範囲を狭めるべきでは無く障害者福祉、教育、研究、資料保存やパロディ等のための利用、個人の情報発信に伴う利用、ネットワークサービスに関連する利用、企業内における著作物の利用等、個別の権利制限規定による対処が不可能な全ての公正利用の類型が含まれるよう、その範囲・要件はアメリカ等と比べて遜色の無いものとして、権利制限の一般規定を可能な限り早期に導入するべきである。

 なお、個別の権利制限規定の迅速な追加によって対処するべきとする意見もあるが、文化庁と権利者団体がスクラムを組んで個別規定すらなかなか入れず、入れたとしても必要以上に厳格な要件が追加されているという惨憺たる現状において、個別規定の追加はこの問題における真の対処たり得ない。2009年6月に成立した法改正においても、図書館におけるアーカイブ化のための権利制限の対象を国立国会図書館のみに限り、検索エンジンの権利制限の対象も、「業として行う者」と業規制をかけた上で、政令でその基準を定めようとし、研究目的の権利制限についても、大量の情報の統計解析のみを対象としているなど、不当に厳しい制限が課されており、天下り先の権利者団体のみにおもねる腐り切った文化庁による法改正の検討の弊害は如実に現れている。

 また、権利を侵害するかしないかは刑事罰がかかるかかからないかの問題でもあり、公正という概念で刑事罰の問題を解決できるのかとする意見もあるようだが、かえって、このような現状の過剰な刑事罰リスクからも、フェアユースは必要なものと私は考える。現在親告罪であることが多少セーフハーバーになっているとはいえ、アニメ画像一枚の利用で別件逮捕されたり、セーフハーバーなしの著作権侵害幇助罪でサーバー管理者が逮捕されたりすることは、著作権法の主旨から考えて本来あってはならないことである。政府にあっては、著作権法の本来の主旨を超えた過剰リスクによって、本来公正として認められるべき事業・利用まで萎縮しているという事態を本当に深刻に受け止め、一刻も早い改善を図ってもらいたい。

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
 著作権法

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
・著作権法に、その範囲・要件はアメリカ等と比べて遜色の無いものとして、権利制限の一般規定を可能な限り早期に導入する。

 ただし、フェアユースの導入によって、私的複製の範囲が縮小されることはあってはならないことである。

(7)著作権の間接侵害・侵害幇助
○項目
 著作権の間接侵害・侵害幇助

○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
 動画投稿サイト事業者がJASRACに訴えられ、今なお係争中である「ブレイクTV」事件や、レンタルサーバー事業者が著作権幇助罪で逮捕され、検察によって姑息にも略式裁判で50万円の罰金を課された「第(3)世界」事件等を考えても、今現在、著作権の間接侵害や侵害幇助のリスクが途方もなく拡大し、甚大な萎縮効果・有害無益な社会的大混乱が生じかねないという非常に危険な状態にある。

 今現在、著作権の間接侵害・侵害幇助のリスクが途方もなく拡大し、甚大な萎縮効果・有害無益な社会的大混乱が生じかねないという非常に危険な状態にあり、民事的な責任の制限しか規定していないプロバイダー責任制限法に関し、被侵害者との関係において、刑事罰リスクも含めたプロバイダーの明確なセーフハーバーについて検討するべきである。

 さらに、著作権の間接侵害事件や侵害幇助事件においてネット事業者がほぼ直接権利侵害者とみなされてしまうことを考えると、プロバイダー責任制限法によるセーフハーバーだけでは不十分であり、間接侵害や著作権侵害幇助罪も含め、著作権侵害とならないセーフハーバーの範囲を著作権法上きちんと確定することが喫緊の課題である。

 セーフハーバーを確定するためにも間接侵害の明確化はなされるべきであるが、現行の条文におけるカラオケ法理や各種ネット録画機事件などで示されたことの全体的な整理以上のことをしてはならない。特に、今現在文化庁の文化審議会で検討されているように、著作権法に明文の間接侵害一般規定を設けることは絶対にしてはならないことである。確かに今は直接侵害規定からの滲み出しで間接侵害を取り扱っているので不明確なところがあるのは確かだが、現状の整理を超えて、明文の間接侵害一般規定を作った途端、権利者団体や放送局がまず間違いなく山の様に脅しや訴訟を仕掛けて来、今度はこの間接侵害規定の定義やそこからの滲み出しが問題となり、無意味かつ危険な社会的混乱を来すことは目に見えているからである。

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
 著作権法第7章及び第8章
 刑法第62条
 プロバイダー責任制限法(正式名称は、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」)

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
・プロバイダー責任制限法に関し、被侵害者との関係において、刑事罰リスクも含めたプロバイダーの明確なセーフハーバーについて検討する。

・合わせ、今現在の文化庁の文化審議会における、著作権法に間接侵害一般規定を設けることに関する検討を停止し、間接侵害や著作権侵害幇助罪も含め、著作権侵害とならないセーフハーバーの範囲を著作権法上きちんと確定するための検討を開始する。

 ただし、このセーフハーバーの要件において、標準的な仕組み・技術や違法性の有無の判断を押しつけるような、権利侵害とは無関係の行政機関なり天下り先となるだろう第3者機関なりの関与を必要とすることは、検閲の禁止・表現の自由等の国民の権利の不当な侵害に必ずなるものであり、絶対にあってはならないことである。

(8)著作権検閲・ストライクポリシー
○項目
 著作権検閲・ストライクポリシー

○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
 まだ実施されてはいないと思われるが、総務省の 「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」において、携帯電話においてダウンロードした音楽ファイルを自動検知した上でそのファイルのアクセス・再生制限を行うという、日本レコード協会の著作権検閲の提案が取り上げられている。

 同じく、著作権検閲に流れる危険性が極めて高い、フランスで今なお揉めているネット切断型のストライクポリシー類似の、ファイル共有ソフトを用いて著作権を侵害してファイル等を送信していた者に対して警告メールを送付することなどを中心とする電気通信事業者と権利者団体の連携による著作権侵害対策が、警察庁、総務省、文化庁などの規制官庁が絡む形で進められており、さらに、ストライクポリシーの導入の検討を著作権団体が求めている。

 しかし、通信の秘密という基本的な権利の適用は監視の位置がサーバーであるか端末であるかによらないものであること、特に、機械的な処理であっても通信の秘密を侵害したことには変わりはないとされ、通信の秘密を侵害する行為には、当事者の意思に反して通信の構成要素等を利用すること(窃用すること)も含むとされていることを考えると、日本レコード協会が提案している違法音楽配信対策は、明らかに通信の秘密を侵害するものであり、さらに、憲法に規定されている表現の自由(情報アクセス権を含む)や検閲の禁止に明らかに反するものとして、このような技術による著作権検閲に他ならない対策は決して導入されてはならないものである。

 また、本来最も基本的なプライバシーに属する個人端末中の情報について、内容を自動検知し、アクセス制限・再生禁止等を行うことは、それ自体プライバシー権を侵害するものであり、プライバシーの観点からも、このような措置は導入されるべきでない。

 付言すれば、日本レコード協会の携帯端末における違法音楽配信対策は、建前は違えど、中国でPCに対する導入が検討され、大騒ぎになった末、今現在導入が無期延期されているところの検閲ソフト「グリーン・ダム」と全く同じ動作をするものであるということを政府にははっきりと認識してもらいたい。このような検閲ソフトの導入については、日本も政府として懸念を表明しているはずであり、自由で民主的な社会において、このような技術的検閲が導入されることなど、絶対許されないことである。

 このような提案は、通信の秘密や検閲の禁止、表現の自由、プライバシーといった個人の基本的な権利をないがしろにするものである。日本レコード協会が提案している、検閲に該当するこのような対策は絶対に導入されるべきでなく、また技術支援・実証実験等として税金のムダな投入がなされるべきではない。

 警告メールの送付とネット切断を中心とする、著作権検閲機関型の違法コピー対策である3ストライクポリシーについても、2009年6月に、フランス憲法裁判所によって、インターネットのアクセスは、表現の自由に関係する情報アクセスの権利、つまり、最も基本的な権利の1つとしてとらえられるものであるとして、著作権検閲機関型の3ストライクポリシーは、表現の自由・情報アクセスの権利やプライバシーといった他の基本的な権利をないがしろにするものとして、真っ向から否定された。フランスでは今なおストライクポリシーに関して揉め続けているが、日本においては、このようなフランスにおける政策の迷走を他山の石として、このように表現の自由・情報アクセスの権利やプライバシーといった他の基本的な権利をないがしろにする対策を絶対に導入しないこととするべきであり、警察庁などが絡む形で検討が行われている違法ファイル共有対策についても、通信の秘密やプライバシー、情報アクセス権等の国民の基本的な権利をきちんと尊重する形で検討を進めることが担保されなくてはならない。

 これらの提案や検討からも明確なように、違法コピー対策問題における権利者団体の主張、児童ポルノ法規制強化問題・有害サイト規制問題における自称良識派団体の主張は、常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。今後は、このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むこと検討するべきである。同じく、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な著作権検閲やストライクポリシー、サイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むことを検討するべきである。

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
 なし

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
・憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むこと、及び、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な著作権検閲やストライクポリシー、サイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律レベルで明文で書き込むことを検討する。

・閣議決定により、日本レコード協会が提案している、日本版著作権グリーン・ダム計画について技術支援・実証実験等として税金のムダな投入を行わないこととする。

・同じく閣議決定により、警察庁などが絡む形で進められている違法ファイル共有対策についても、通信の秘密やプライバシー、情報アクセス権等の国民の基本的な権利をきちんと尊重する形で検討を進めることを担保する。

(9)模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)
○項目
 模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)

○既存の制度・規制等によってICT利活用が阻害されている事例・状況
 模倣品・海賊版拡散防止条約の検討・交渉が政府レベルで交渉が行われている。

 2010年4月に公開されたこの条約の条文案には、法定損害賠償に関する条項が含まれているが、この法定賠償制度は、アメリカで一般ユーザーに法外な損害賠償を発生させ、その国民のネット利用におけるリスクを不当に高め、ネットにおける文化と産業の発展を阻害することにしかつながっていないものであり、日本において導入されるべきとは到底思えない制度である。選択肢の形になってはいるが、このような不合理な制度の導入を求めている一部の者によって、国内法改正の検討の際に不当に利用される恐れもあり、法定賠償に関する条項については削除を求めるべきである。

 また、日本の現在の法制度と比較した時、DRM回避規制について今以上の規制強化を必要とする条項も条文案に含まれている。しかし、2009年2月に、DRM回避機器に対して、ゲームメーカー勝訴の判決が出ていることを考えても、今以上の規制を是とするに足る立法事実は何一つなく、かえって、今以上の規制強化はユーザーの情報アクセスに対するリスクを不必要に高める危険なものとしかなり得ない。このような危険なものとしかなり得ない規制強化条項を含めた形での条約交渉を、何ら国民的なコンセンサスを得ない中で、一部の者の都合から政府が勝手に行うなどおよそ論外である。日本政府として、海賊版対策条約(ACTA)へのDRM回避規制関連条項の導入に反対し、同時に、DRM回避規制の強化による情報アクセスに関する国民の基本的な権利の侵害の危険性について国際的な場で議論を提起するべきである。

 同じ条文案には、プライバシー保護に関する条項を入れることを検討すると書かれているものの、条文案には、インターネットにおけるプロバイダーの責任制限等についての条項も含まれており、この部分の法制化によりユーザーの情報アクセスに関する基本的な権利が不当な侵害を受ける恐れがあることを考えると、プライバシーの保護に関する条項だけでは不十分である。国際的・一般的に認められている個人の基本的な権利である情報アクセスの権利等の情報の自由に関する権利を守るということも、条約に書き込むべきであると日本から各国に積極的に働きかけるべきである。

 また4月時点での条約案こそ公開されたものの、依然として交渉に関しては日本政府は要領を得ない概要の公開のみでごまかしている。交渉会合に際しては、毎回速やかに自国の交渉スタンスと各国政府の反応について、議論の詳細を公開するべきである。このような情報の公開に他国の承認が必要であるとするなら、交渉の場で条約に関する詳細情報の公開についての議論を日本政府として積極的に提起し、他国の承認を得るようにするべきである。ほとんど全世界のインターネットユーザーつまり、全世界の全国民の情報アクセスに多大な影響を及ぼしかねないこの条約の交渉については、その交渉に関する全情報が公開されて良い。

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の根拠
 模倣品・海賊版拡散防止条約(検討中)

○ICT利活用を阻害する制度・規制等の見直しの方向性についての提案
・模倣品・海賊版拡散防止条約から、法定賠償とDRM回避規制に関する条項について日本政府として削除を求める。

・同時に、DRM回避規制の強化による情報アクセスに関する国民の基本的な権利の侵害の危険性について国際的な場で日本政府から議論を提起する。

・プライバシーの権利だけではなく、国際的・一般的に認められている個人の基本的な権利である情報アクセスの権利等の情報の自由に関する権利を守るということも、条約に書き込むべきであると日本から各国に積極的に働きかける。

・交渉会合に際し、毎回速やかに自国の交渉スタンスと各国政府の反応について、議論の詳細を公開する。

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2010年8月 2日 (月)

第233回:総務省・情報通信審議会第7次中間答申「地上デジタル放送の利活用の在り方と普及に向けて行政の果たすべき役割」に対する提出パブコメ

 主に地デジのコピー制御問題を検討していた総務省の情報通信審議会の「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」が今年は何故か止まっており、多少スジが悪いのだが、黙ってもいられないので、「地上デジタル放送推進に関する検討委員会」の方の第7次中間答申「地上デジタル放送の利活用の在り方と普及に向けて行政の果たすべき役割(pdf)」に対する意見募集(8月5日〆切。総務省のリリース、電子政府HPの該当ページ参照)に地上デジタル放送におけるコピー制御に関する意見を提出した。

 去年の提出パブコメとほとんど違いはないが、念のため、ここに載せておく。

 かなり間が空いてしまったが、合わせてここ半月ばかりの話も紹介しておくと、まず、著作権法への一般フェアユース条項の導入について、7月22日に、文化庁で、文化審議会の法制問題小委員会が開催され、検討の続きが行われ、追加のヒアリングをするものとされた(PC onlineの記事、文化庁HPの議事次第・資料、電子政府HPのパブコメ結果参照)。この8月3日・5日も開催が予定されており(開催案内参照)、いまさら何をするつもりか知らないが、文化庁のことなので、また権利者団体中心にヒアリングしてあのレベルのほとんどフェアユースといえないような日本版フェアユースすら潰しに来るつもりだろうか。

 7月23日には、内閣府が「第3次男女共同参画基本計画策定に当たっての基本的な考え方(答申)」についてを公表している(内閣府HPのパブコメ結果あるいは電子政府HPのパブコメ結果も参照)。「第9分野 女性に対するあらゆる暴力の根絶(pdf)」と「第13分野 メディアにおける男女共同参画の推進(pdf)」では、多少書きぶりが改められ、表現の自由を十分に尊重した上でといった記載が入ったが、創作物の規制も含め規制強化を検討するとの記載自体は残されており、次にどこから何が出て来るか分からないが、いつも通り規制ありきで検討が進むのは覚悟しておいた方が良いだろう。

 児童ポルノ規制絡みということでは、やはり、7月26日に内閣府で開催された児童ポルノ排除対策ワーキングチーム(議事次第参照)、翌7月27日に開催された犯罪対策閣僚会議議事次第参照)で、パブコメを完全に無視し、原案通り、「児童ポルノ排除総合対策(pdf)」(概要(pdf))が決定されている。ブロッキングの導入についてなど、日本では間々あることとは言え、民間の自主規制が大臣会議で決定されることなど異常以外の何物でもないと少し考えてみれば分かることだろう。パブコメ無視もいつも通りと言えばいつも通りだが、よほどあからさまに反対意見ばかりで格好がつかないと内閣府の官僚が思ったのか、児童ポルノワーキングチームで用いられたパブコメ結果概要(pdf)では、勝手に日弁連と日本ユニセフと京都市PTAの意見についてのマスコミ煽動記事を追加している。この話は「チラシの裏(3週目)」や「表現規制について少しだけ考えてみる(仮)」でも取り上げられており、私も今までパブコメではおよそ官僚による恣意的なまとめばかり見てきているが、これほどデタラメかつ恣意的な印象操作付きのパブコメ結果概要の公表は私の知る限りない。表に見えないところでのやりとりは良く分からないが、関係する部分の記載に変更がなかったことからしても前以上にブロッキングについて何か具体的なことが決まっている様子はない中、引き続きブロッキングの導入の検討についても危険な状態が続くことだろう。

 また、今度は京都府から、携帯・ネット規制を強化する内容の「青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例(案)」に対する意見募集が8月20日〆切でかかっているので(京都府のHP参照)、京都在住の方で、こうした問題に関心を寄せている方は、是非提出を検討頂ければと思う。

 「P2Pとかその辺の話」で取り上げられている、アメリカ著作権局によるにいくつかのDRMの解除の合法化の決定の話に関するコメントなども時間があれば書きたいと思っているが、次回のエントリは、8月20日〆切で、総務省からかかっているパブコメの「ICTの利活用を阻む制度・規制等についての意見募集」(総務省のリリース、電子政府HPの該当ページ参照。internet watchの記事ITproの記事も参照)についてか、MIAUから4月時点の条文案の翻訳が公表され(MIAUのリリース参照)、7月時点の条文案もリークされている(laquadrature.netの記事参照)、海賊版対策条約(ACTA)についてか、上の児童ポルノ排除総合対策でもプロパガンダに使うと明記しているリオ宣言についてか、書けたものから載せたいと思っている。

(以下、提出パブコメ)

氏名:兎園(個人・匿名希望)
連絡先:

(ページ)
全体

(意見)
 今年の情報通信審議会においては、去年までコピー制御の問題等を検討していた「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」による検討が今年は何故か止められ、今回の中間答申「地上デジタル放送の利活用の在り方と普及に向けて行政の果たすべき役割」でも、地上デジタル放送におけるコピー制御の問題は全く触れられていない。しかし、コピー制御のコピーワンスからダビング10への緩和も、到底評価できない弥縫策にすぎず、コピー制御に関する問題は、地上放送のデジタル化における重要な問題であり、決してなおざりにされるべきものではないことを考え、本中間答申への意見という形で、地上デジタル放送におけるコピー制御の問題について、以下の通り意見を提出する。

 私は一国民として、デジタル放送におけるコピー制御の問題について、以下の通りの方向性を基本として検討し直すことを強く求める。

1.無料地上波からB-CASシステムを排除し、テレビ・録画機器における参入障壁を取り除き、自由な競争環境を実現すること。
2.あまねく見られることを目的とするべき、基幹放送である無料地上波については、ノンスクランブル・コピー制限なしを基本とすること。
3.これは立法府に求めるべきことではあるが、無料地上波については、ノンスクランブル・コピー制限なしとすることを、総務省が勝手に書き換えられるような省令や政令レベルにではなく、法律に書き込むこと。
4.B-CASに代わる機器への制度的なエンフォースの導入は、B-CASに変わる新たな参入障壁を作り、今の民製談合を官製談合に切り替えることに他ならず、厳に戒められるべきこと。コンテンツの不正な流通に対しては現在の著作権法でも十分対応可能である。

 現行のB-CASシステムと併存させる形でのチップやソフトウェア等の新方式についても、無意味な現行システムの維持コストに加えて新たなシステムの追加で発生するコストまでまとめて消費者に転嫁される可能性が高く、このような弥縫策は、一消費者として全く評価できないものである。

 なお、補償金制度は、私的録音録画によって生じる権利者への経済的不利益を補償するものであって、メーカーなどの利益を不当に権利者に還元するものではない。上記1~4以外の方向性を取り、ダビング10のように不当に厳しいコピー制御が今後も維持され続けるようであれば、録画補償金は廃止しても良いくらいであり、全く議論の余地すらない。上記1~4が実現されたとしても、補償金の対象範囲等は私的な録音録画が権利者にもたらす「実害」に基づいて決められるべきであるということは言うまでもない。

 また、今回の平成22年5月の調査でようやくアンテナ問題の認識等も含めた調査が行われたが、地上デジタルへの移行において、今のままでは、アンテナ工事、共同受信施設・難視聴における対応、アナログテレビの廃棄の問題等を中心に非常に大きな混乱が予想される。移行まで1年を切っているが、今後、混乱回避のためアナログ停波の延期も含めて検討するべきである。

(理由)
 去年の中間答申「『デジタル・コンテンツの流通の促進』及び『コンテンツ競争力強化のための法制度の在り方』」へのパブコメでも書いたことだが、B-CASシステムは談合システムに他ならず、これは、放送局・権利者にとっては、視聴者の利便性を著しく下げることによって、一旦は広告つきながらも無料で放送したコンテンツの市場価格を不当につり上げるものとして機能し、国内の大手メーカーとっては、B-CASカードの貸与と複雑な暗号システムを全てのテレビ・録画機器に必要とすることによって、中小・海外メーカーに対する参入障壁として機能しているのである。

 前回の中間答申で、ようやく無料の地上放送へB-CASシステムとコピーワンス運用の導入を可能とした平成14年6月の省令改正についての記載が加えられた。このように以前、無料の地上放送へのスクランブル・暗号化を禁じる省令が存在していた理由についての記載はやはり無いが、これは、無料地上放送は本来あまねく見られるべきという理念があったことの証左であろう。過去の検討経緯についてよりきちんとした情報開示を行い、このような過去の省令に表れている無料の地上放送の理念についても念頭においた上で再検討が進められなくてはならない。

 本来あまねく見られることを目的としていた無料地上波本来の理念をねじ曲げ、放送局と権利者とメーカーの談合に手を貸したという総務省の過去の行為は見下げ果てたものである。コピーワンス問題、ダビング10問題、B-CAS問題の検討と続く、無料の地上放送のスクランブルとコピー制御に関する政策検討の迷走とそれにより浪費され続けている膨大な社会的コストのことを考えても、このような省令改正の政策的失敗は明らかであり、総務省はこの省令改正を失策と明確に認めるべきである。

 コピー制限なしとすることは認められないとする権利者の主張は、消費者のほとんどが録画機器をタイムシフトにしか使用しておらず、コンテンツを不正に流通させるような悪意のある者は極わずかであるということを念頭においておらず、一消費者として全く納得がいかない。消費者は、無数にコピーするからコピー制限を無くして欲しいと言っているのではなく、わずかしかコピーしないからこそ、その利便性を最大限に高めるために、コピー制限を無くして欲しいと言っているのである。消費者の利便性を下げることによって権利者が不当に自らの利潤を最大化しようとしても、インターネットの登場によって、コンテンツ流通の独占が崩れた今、消費者は不便なコンテンツを選択しないという行動を取るだけのことであり、長い目で見れば、このような主張は自らの首を絞めるものであることを権利者は思い知ることになるであろう。

 昨年運用が開始されたダビング10に関しても、大きな利便性の向上なくして、より複雑かつ高価な機器を消費者が新たに買わされるだけの弥縫策としか言いようがなく、一消費者・一国民として納得できるものでは全くない。さらに、ダビング10機器に関しては、テレビ(チューナー)と録画機器の接続によって、全く異なる動作をする(接続次第で、コピーの回数が9回から突然1回になる)など、公平性の観点からも問題が大きい。

 現在の地上無料放送各局の歪んだビジネスモデルによって、放送の本来あるべき姿までも歪められるべきではない。そもそもあまねく視聴されることを本来目的とする、無料の地上放送においてコピーを制限することは、視聴者から視聴の機会を奪うことに他ならず、このような規制を良しとする談合業界及び行政に未来はない。

 コピー制限技術はクラッカーに対して不断の方式変更で対抗しなければならないが、その方式変更に途方もないコストが発生する無料の地上放送では実質的に不可能である。インターネット上でユーザー間でコピー制限解除に関する情報がやりとりされる現在、もはや無料の地上放送にDRMをかけていること自体が社会的コストの無駄であるとはっきりと認識するべきである。無料の地上放送におけるDRMは本当に縛りたい悪意のユーザーは縛れず、一般ユーザーに不便を強いているだけである。さらに、B-CASカードのユーザー登録の廃止(地上デジタル放送専用の青カードについては既にユーザー登録が廃止されており、BS・CS・地上共用の赤カードについても来年3月に登録が廃止される予定である。http://www.b-cas.co.jp/www/whatsnew/100325.htmlhttp://www.b-cas.co.jp/www/whatsnew/100705.html参照)により、B-CASカードによるユーザーに対するコピー制御の技術的なエンフォースは完全に不可能となっており、既に存在意義を完全に失っているB-CASカード・システムは速やかに完全に地上デジタル放送から排除されるべきである。

 なお、前回の中間答申では、現行のB-CASシステムと併存させる形でチップやソフトウェア等の新方式を導入することが提言されており、今も恐らく企業レベル等で検討が進められているものと思うが、無意味な現行システムの維持コストに加えて新たなシステムの追加で発生するコストまでまとめて消費者に転嫁される可能性が高く、このような弥縫策は、一消費者として全く評価できないものである。さらに言うなら、これらの新方式は、不正機器対策には全くならない上、新たに作られるライセンス発行・管理機関が総務省なりの天下り先となり、新方式の技術開発・設備投資コストに加え、天下りコストまで今の機器に上乗せされかねないものである。制度的エンフォースメントにしても、正規機器の認定機関が総務省なりの天下り先となり、その天下りコストがさらに今の機器に上乗せされるだけで、しかも不正機器対策には全くならないという最低の愚策である。

 冒頭書いたように、無料の地上放送の理念を歪め、放送局・権利者・国内の大手メーカーの談合を助長している、無料の地上放送にかけられているスクランブル・暗号化こそ問題なのであって、B-CAS類似の無意味なシステムをいくら併存させたところで、積み上げられるムダなコストが全て消費者に転嫁されるだけで何の問題の解決にもならず、同じことが繰り返されるだけだろう。基幹放送である無料地上波については、B-CASシステムを排除し、ノンスクランブル・コピー制限なしを基本とすること以外で、この問題の本質的な解決がもたらされることはない。

 法的にもコスト的にも、どんな形であれ、全国民をユーザーとする無料地上放送に対するコピー制限は維持しきれるものではない。本来立法府に求めるべきことではあるが、このようなバカげたコピー制限に関する過ちを二度と繰り返さないため、無料の地上放送についてはスクランブルもコピー制御もかけないこととする逆規制を、政令や省令ではなく法律のレベルで放送法に入れることを私は一国民として強く求める。

 なお、付言すれば、本来、B-CASやコピーワンス、ダビング10のような談合規制の排除は公正取引委員会の仕事であると思われ、何故総務省及び情報通信審議会が、談合規制の緩和あるいは維持を検討していたのか、一国民として素直に理解に苦しむ。今後、立法府において、行政と規制の在り方のそもそも論に立ち返った検討が進むことを、私は一国民として強く望む。

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2010年5月 7日 (金)

第224回:総務省・「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」第二次提言(案)に対する提出パブコメ

 しばらく、パブコメエントリが続くと思うが、まず、総務省の「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」第2次提言案(pdf)に対するパブコメを(5月10日〆切。総務省のリリース意見公募要領(pdf)、電子政府HPの該当ページ参照。)を書いて提出したので、以下に載せておく。

 詳しくは、提出パブコメを読んでもらえればと思うが、相変わらず、この研究会は、利用者視点を踏まえているどころか、かえって利用者視点を踏みにじっていると言った方が良い無責任な提言を垂れ流している。前回の第1次提言案での最大の問題は、日本レコード協会の提案する日本版携帯著作権グリーン・ダム計画だったが(第183回参照)、今回の第2次提言案の最も大きな問題点は、青少年保護を理由として送信者に対しデフォルトオンでの送信メールの内容確認の実施が認られる余地があるとする、通信の秘密をないがしろにする法的整理と、商業目的でのDPI(ディープ・パケット・インスペクション)技術の実施の可能性が現時点であるとする、やはり通信の秘密を安易に考えすぎている法的整理の部分である。送信者・利用者にとってその存在と対象範囲について通常意識・検証し得ない送信メールの内容確認・DPI技術について、実施の余地があるとする法的整理を安易に認めることは、通信の秘密をないがしろにすることであり、実質的に事業者による検閲を是とするに等しい危険なことに他ならない。

 次回は、内閣府の男女共同参画局のパブコメ(内閣府のリリース参照)の話になると思っている。

(以下、提出パブコメ)

1.氏名及び連絡先
氏名:兎園(個人)
連絡先:

2.意見要旨
・事業者による実質的な検閲を是とするに等しい、送信者に対するデフォルトオンでの送信メールの内容確認の実施の余地を認める法的整理に反対する。
・やはり事業者による実質的な検閲を認めるに等しい、DPI技術を利用した行動ターゲティング広告の実施が現時点で可能であるとする法的整理に反対する。
・携帯フィルタリングの完全義務化に反対する。
・青少年ネット規制法の廃止及び出会い系サイト規制法の法改正前の形への再改正を求める。
・情報管理について、物理的な媒体の紛失等と情報の漏洩・滅失・毀損が混同されているが、情報と有体物は混同されるべきではない。
・今後は、前回と今回の提言案に見られるような利用者視点を無視した検討ではなく、真に利用者視点に立った地道な施策のみに注力する検討が進むことを期待する。

3.意見
(1)第2~3ページ「Ⅰ1.(2)青少年被害の拡大」について

 この項目において、項目タイトルが「青少年被害の拡大」とされ、項目中でも「青少年のCGMサービス利用に伴う被害も増加している」等と書かれている。しかし、用いられている警察庁の統計(「いわゆる出会い系サイトに関係した事件の検挙状況について」)は統計の分割と単年傾向の誇張による印象操作を含むものであり、同じく警察庁の統計(「少年非行等の概要(平成21年1~12月)」http://www.npa.go.jp/safetylife/syonen/syonenhikou_h21.pdf)によれば、福祉犯被害少年数は、平成12年から21年で、8291件、8153件、7364件、7456件、7627件、7258件、7375件、7014件、7170件となお減少傾向にあり、児童買春事件と児童ポルノ事件の被害児童総数の推移で見ても平成12年から21年で963名、1389件、1690件、1617件、1678件、1750件、1578件、1419件、1184件、1308件となお減少傾向にあり、全体として被害児童数等が増大傾向にあるという事実はない。
 これらのような警察庁の統計は検挙事件を取り上げているに過ぎず、被害の実態を表しているとは言い難いという問題点もあり、このような数字からせいぜい言えることは、児童買春事件の被害が減り、児童ポルノ事件によりリソースを割くことが可能となり、その結果が出ているのだろうということぐらいでしかない。統計を分割して一部の傾向のみ、しかも単年の傾向のみを誇張してあたかも被害が「拡大」しているとすることは悪質な印象操作を含むものであり、行政における報告書の記載としては極めて不適切である。
 この部分における記載は、上記のような平成12年以降の統計全体の数値をきちんとあげ、項目タイトルを「減少傾向にある青少年被害」、項目中の記載についても、「青少年の被害はなお減少傾向にある」等と統計全体に基づいた記載に全面的に書き直すべきである。

(2)第3~6ページ「Ⅰ1.(3)福祉犯被害の防止に向けた効果的な対策の方向性」について
 この項目において、出会い系サイト規制法の平成20年改正と青少年ネット規制法について言及されている。しかし、そもそも、青少年ネット規制法は、あらゆる者から反対されながら、有害無益なプライドと利権を優先する一部の議員と官庁の思惑のみで成立したものであり、速やかに廃止が検討されるべきものである。出会い系サイト規制法の改正も、警察庁が、どんなコミュニケーションサイトでも人は出会えるという誰にでも分かることを無視し、届け出制の対象としては事実上定義不能の「出会い系サイト事業」を定義可能と偽り、改正法案の閣議決定を行い、法案を国会に提出したものであり、他の重要法案と審議が重なる中、国会においてもその本質的な問題が見過ごされて可決され、成立したものである。憲法上の罪刑法定主義や検閲の禁止にそもそも違反している、今回の出会い系サイト規制法の改正についても、今後、速やかに元に戻すことが検討されるべきである。(出会い系と非出会い系というサイトの分け方自体不適切であり、(1)で取り上げた警察庁の各種統計は到底詳細な分析に耐えるものではないが、平成20年から平成21年の被害児童数の増加については、平成20年の出会い系サイト規制法改正の施行が児童が絡む事件の地道な取り締まりにかえって悪影響を及ぼした恐れなしとしない。今後の取り締まりの動向には十分以上に注意するべきである。)
 この部分ではこのような意見があることも書き加えるべきであり、啓発・教育等を中心とした地道な対策についてまで否定するつもりはないが、特に、可能な限り早期に、出会い系サイト規制法の改正前の形への再改正と青少年ネット規制法の廃止の検討を政府レベルで開始すると書くべきである。

(3)第6~7ページ「Ⅰ2.(1)フィルタリングサービスの普及改善」について
 ここで、「携帯電話フィルタリングの解除の抑制については、危険性を十分に認識しないことによる安易な解除を防ぐための取組が求められる」と書かれている。
 フィルタリングに関する規制については、フィルタリングの存在を知り、かつ、フィルタリングの導入が必要だと思っていて、なお未成年にフィルタリングをかけられないとする親に対して、その理由を聞くか、あるいはフィルタリングをかけている親に対して、そのフィルタリングの問題を聞くかして、きちんと本当の問題点を示してから検討してもらいたいとパブコメ等で再三意見を述べているが、今に至るもこのような本当の問題点を示す調査はなされていない。繰り返しになるが、フィルタリングについても、一部の者の一方的な思い込みによって安易に方針を示すことなく、本当の問題点を把握した上で検討を進めると書くべきである。
 また、東京都等の地方自治体が、青少年保護健全育成条例の改正により、各自治体の定める理由によってしか子供のフィルタリングの解除を認めず、違反した事業者に対する調査指導権限を自治体に与え、携帯フィルタリングの実質完全義務化を推し進めようとしているが、このような青少年ネット規制法の精神にすら反している行き過ぎた規制の推進は、地方自治体法第245条の5に定められているところの、都道府県の自治事務の処理が法令の規定に違反しているか著しく適正を欠きかつ明らかに公益を害していると認めるに足ると考えられるものであり、同じく不適切なその他の情報規制推進についても合わせ、総務大臣から各地方自治体に迅速に是正命令を出すべきである。
 なお、フィルタリングについては、その政策決定の迷走により、総務省は携帯電話サイト事業者に無意味かつ多大なダメージを与えた過去がある。携帯フィルタリングについて、ブラックリスト方式ならば、まずブラックリストに載せる基準の明確化から行うべきなので、不当なブラックリスト指定については、携帯電話事業者がそれぞれの基準に照らし合わせて無料で解除する簡便な手続きを備えていればそれで良く、健全サイト認定第3者機関など必要ないはずである。ブラックリスト指定を不当に乱発し、認定機関で不当に審査料をせしめ取り、さらにこの不当にせしめた審査料と、正当な理由もなく流し込まれる税金で天下り役人を飼うのだとしたら、これは官民談合による大不正行為以外の何物でもない。このようなブラックリスト商法の正当化は許されない。今までのところ、フィルタリングサービスであれ、ソフトであれ、今のところフィルタリングに関するコスト・メリット市場が失敗しているとする根拠はなく、かえって必要なことは、不当なフィルタリングソフト・サービスの抱き合わせ販売の禁止によって、消費者の選択肢を増やし、利便性と価格の競争を促すことだったはずであり、廃止するまでにおいても、青少年ネット規制法の規制は、フィルタリングソフト・サービスの不当な抱き合わせ販売を助長することにつながる恐れが強く、このような不当な抱き合わせ販売について独禁法の適用が検討されるべきである。

(4)第7~17ページ「Ⅰ2.(2)青少年向けの機能制限等」について
 この項目において、通信当事者ではないSNS等のCGMサービス運営者がそのサービス中の「ミニメール」内容確認を行うことが許されるかという点についての検討が行われているが、書かれている通り「ミニメール」の内容が通信の秘密に該当するのは当然のこととして、受信情報に関する自動的なフィルタリングについて受信当事者の同意があるとしてフィルタリングサービスのデフォルトオンが認められる要件を、「利用者」という語の一般化により送信者における送信情報の内容確認のデフォルトオンにまで拡大適用可能であるかの如き記載は通信の秘密との関係整理として不適切極まるものである。
 この点、未知の受信情報について主体的に遮断・選択する必要性があり、デフォルトでオンとされてもフィルタリングサービスの存在と対象範囲について通常意識し得る立場の受信者の場合と、送ろうとする既知の情報について遮断・選択の必要性がなく、一旦デフォルトで内容確認サービスをオンとされてしまうとその内容確認の存在と対象範囲について通常は意識し得ない立場の送信者の場合では、完全に前提が異なるとするべきである。メールの内容確認を送信者に対しデフォルトオンで認める余地があるとすることは、実質、送信者が受信者しか知り得ないだろうと思って送る情報の内容について、知らない内に事業者に検閲されているという状態をもたらす危険性が極めて高い。受信情報のフィルタリングに関する要件を一方的に拡大解釈し、送信者に対するデフォルトオンのメールの内容確認の余地を認めることは、実質的にメール・通信の検閲の余地を認めるに等しく、憲法にも規定されている通信の秘密をないがしろにすることにつながりかねない極めて危険なことである。
 これはデフォルトオンでメールの内容確認を行う場面が限定的であるか否かという問題ではなく、このような利用者視点とは到底思えない視点に基づいた、実質的な検閲を是とするかの如き通信の秘密に関する歪んだ整理の記載は、一切削除するべきである。

(5)第55~58ページ「Ⅱ6.(2)法的な課題」について
 この部分において、DPI(ディープ・パケット・インスペクション)技術を用いた行動ターゲティング広告について「DPI技術を活用した行動ターゲティング広告の実施は、利用者の同意がなければ通信の秘密を侵害するものとして許されない。利用者の同意が明確かつ個別のものであることが必要なことは、前記②記載のとおりであるから、同意に当たっての判断材料を提供するという意味で、利用者に対してサービスの仕組みや運用について透明性が確保されるべきである。よって、DPI技術を用いた行動ターゲティング広告については、各事業者は、透明性の確保に向けて運用に当たっての基準等を策定し、これを適用することが望ましい」という整理がなされている。

 書かれている通り、DPI(ディープ・パケット・インスペクション)技術を活用した行動ターゲティング広告の実施は、利用者の同意がなければ通信の秘密を侵害するものとして許されないのは当然のこととして、DPI技術はネットワーク中のパケットに対して適用されるものであり、一旦導入されてしまうと、その存在と対象範囲について通常の利用者は全く意識・検証し得ないものである。DPI技術についても、利用者が知らない内に通信内容が事業者に検閲されているという状態をもたらす危険性が極めて高く、実質的な検閲をもたらしかねない危険なものとして安易な法的整理はされてはならない。契約書によったとしても、それだけでは、明確かつ個別の同意が十分に得られ、利用者からDPI技術の存在と対象範囲について十分に意識・検証可能となっているとすることはできない。DPI技術の利用については、通常の利用者の明確かつ個別の同意を得ることは現時点では不可能であり、この部分の記載は、現時点で、法的課題を克服することは困難であり、基準等の作成もされるべきではないとされなくてはならない。

(6)第93~94ページ「Ⅲ4.(3)簡略化可能な手続」について
 この部分における整理で、物理的な媒体の紛失等と情報の漏洩・滅失・毀損が混同されているが、情報と有体物は混同されるべきではない。

 物理的な媒体が紛失等にあったとしても、技術的な保護措置が講じられていたことにより、情報の漏洩・滅失・毀損があったとは考えられない場合は確かにあるだろうが、例えば、暗号化がなされていたとしても、その紛失媒体に記録された情報のバックアップが取られていなかった場合など、やはり情報の滅失・毀損と評価されなければならない。また、真に利用者視点に立つならば、個人情報を記録した媒体が事業者の従業員等によりどのような状況で紛失されたか、またどのような手段によりその情報の漏洩等が防がれたかといった情報は、利用者が事業者のサービスを選択する上で極めて重要な情報となり得るものである。あくまでガイドラインレベルの話だが、ある手続きを一概に省略可能とすることはかえって硬直的な対応を招く恐れもある。

 この部分における整理は、情報と有体物の混同に基づくのではなく、物理的な媒体が紛失等にあったとしても、技術的な保護措置が講じられていたことにより、情報の漏洩・滅失・毀損があったとは考えられない場合があるとする整理にした上で、どのような形のガイドラインが真に望ましいのかについてさらに検討が行われるべきである。

 なお、経済産業省の「営業秘密の管理に関するワーキンググループ「営業秘密管理指針の再改訂(案)」に関する3月18日〆切の意見公募(http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=595210004&Mode=0参照)の「参考資料3:各種ガイドライン等について」中で、我が国における情報管理に関するものとして16にも及ぶガイドラインがあげられており、他にも例えば、消費者庁のホームページ(http://www.caa.go.jp/seikatsu/kojin/gaidorainkentou.html参照)で個人情報についてのみで39にも及ぶガイドラインがあげられているが、情報や事業毎に多少の違いが出て来るのはやむを得ないところもあるだろうが、同一分野に対してこの数はあまりにも多過ぎである。このようなガイドラインの過多から来るコンプライアンスの複雑化により正当な事業活動が妨げられている恐れもある。今後は、真の利用者視点に立ちつつ、このようなあまりにも多過ぎる各種ガイドラインの整理統合の検討が政府において進められることを期待する。

(7)その他・提言案全体について
 前回の第1次提言案と同じく、この提言案全体を通じて、真の意味で利用者視点が全く踏まえられておらず、かえって利用者視点を踏みにじっていることは、極めて残念なことと言わざるを得ない。また、前の提言案の内容について、その後何らフォローアップの公表もなく、今回、第2次提言案が出されたが、このような無責任な提言の垂れ流しは行政のあり方として極めて問題がある。これらの点については、一利用者として総務省に猛省を促したい。

 前回の提言案に対するパブコメで書いたことだが、特に、日本レコード協会が前回の第1次提言案中で提案していた日本版携帯著作権グリーン・ダム計画の検討の完全停止を再度求めるとともに、そのフォローアップの公表を求める。また、やはり前回の提言案に対するパブコメで書いたことだが、国民の基本的な権利を侵害する危険な著作権検閲にしか流れようのない著作権法中のダウンロード違法化条項の削除を総務省から文化庁に強く働きかけること、そして、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律のレベルで明文で書き込むこと、および、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術による著作権検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律のレベルで明文で書き込むことを求める。

 今後は、前回と今回の提言案に見られるような利用者視点を無視した検討ではなく、真に利用者視点に立った地道な施策のみに注力する検討が進むことを期待する。

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2009年7月17日 (金)

第184回:総務省・「『デジタル・コンテンツの流通の促進』及び『コンテンツ競争力強化のための法制度の在り方』」提出パブコメ

 総務省のB-CAS見直しに関する中間答申(pdf)概要(pdf)、正式名称は、「『デジタル・コンテンツの流通の促進』及び『コンテンツ競争力強化のための法制度の在り方』」、8月28日〆切、総務省のリリース、電子政府の該当ページITmediaの記事ITproの記事も参照)へのパブコメも提出したので、ここに載せておく。

(今回の中間答申で、ようやくB-CASシステムそのものの話にまで遡ったが、それでもなお総務省は、放送局・権利者・メーカー3者の談合システムに他ならない、現行のB-CASシステムを維持しようとしている。この話も進んでいるようで進んでいないので、去年提出したパブコメと内容はあまり変わらない。)

 さらに今、内閣官房・IT戦略本部から今「デジタル技術・情報の利活用を阻むような規制・制度・慣行等の重点点検」に関するパブリックコメントの募集が8月6日〆切で行われている(内閣官房のリリース、電子政府の該当ページ提出様式(doc))。およそ常に規制強化ありきでパブコメを行う性根の腐った日本政府において、このように明確に規制緩和を目的とするパブコメの機会は極めて貴重であり、最近の不合理極まるネット・情報規制の動きに憤りを感じている全ての個人・企業・団体に、このパブコメに対して意見を出すことを私はお勧めする。出会い系サイト規制、青少年ネット規制法、フィルタリング、児童ポルノ規制、ブロッキング、ダウンロード違法化、著作権規制、著作権検閲、B-CAS・ダビング10・コピーワンス等全てまとめて、私は意見を書くつもりであり、次回は、このパブコメへの提出意見を載せたいと思っている。

(以下、提出パブコメ)

氏名:兎園(個人・匿名希望)
連絡先:

(ページ)
第3ページ~第31ページ 第1章 コピー制御に係るルールの担保手段(エンフォースメント)の在り方

(意見)
 私は一国民として、デジタル放送におけるコピー制御の問題について、以下の通りの方向性を基本として検討し直すことを強く求める。

1.無料地上波からB-CASシステムを排除し、テレビ・録画機器における参入障壁を取り除き、自由な競争環境を実現すること。
2.あまねく見られることを目的とするべき、基幹放送である無料地上波については、ノンスクランブル・コピー制限なしを基本とすること。
3.これは立法府に求めるべきことではあるが、無料地上波については、ノンスクランブル・コピー制限なしとすることを、総務省が勝手に書き換えられるような省令や政令レベルにではなく、法律に書き込むこと。
4.B-CASに代わる機器への制度的なエンフォースの導入は、B-CASに変わる新たな参入障壁を作り、今の民製談合を官製談合に切り替えることに他ならず、厳に戒められるべきこと。コンテンツの不正な流通に対しては現在の著作権法でも十分対応可能である。

 現行のB-CASシステムと併存させる形でのチップやソフトウェア等の新方式の導入についても、無意味な現行システムの維持コストに加えて新たなシステムの追加で発生するコストまでまとめて消費者に転嫁される可能性が高く、このような弥縫策は、一消費者として全く評価できないものである。

 なお、補償金制度は、私的録音録画によって生じる権利者への経済的不利益を補償するものであって、メーカーなどの利益を不当に権利者に還元するものではない。上記1~4以外の方向性を取り、ダビング10のように不当に厳しいコピー制御が今後も維持され続けるようであれば、録画補償金は廃止しても良いくらいであり、全く議論の余地すらない。上記1~4が実現されたとしても、補償金の対象範囲等は私的な録音録画が権利者にもたらす「実害」に基づいて決められるべきであるということは言うまでもない。

 また、近年総務省が打ち出している放送関連施策には今なお国民本意の視点が全く欠けており、今のままでは地上デジタルへの移行など到底不可能であるとほとんどの国民が思っているであろうことを付言しておく。

(理由)
 去年のパブコメでも書いたことだが、B-CASシステムは談合システムに他ならず、これは、放送局・権利者にとっては、視聴者の利便性を著しく下げることによって、一旦は広告つきながらも無料で放送したコンテンツの市場価格を不当につり上げるものとして機能し、国内の大手メーカーとっては、B-CASカードの貸与と複雑な暗号システムを全てのテレビ・録画機器に必要とすることによって、中小・海外メーカーに対する参入障壁として機能しているのである。

 今年の中間答申で、ようやく無料の地上放送へB-CASシステムとコピーワンス運用の導入を可能とした平成14年6月の省令改正についての記載が加えられた。このように以前、無料の地上放送へのスクランブル・暗号化を禁じる省令が存在していた理由についての記載はやはり無いが、これは、無料地上放送は本来あまねく見られるべきという理念があったことの証左であろう。過去の検討経緯についてよりきちんとした情報開示を行い、このような過去の省令に表れている無料の地上放送の理念についても念頭においた上で再検討が進められなくてはならない。

 本来あまねく見られることを目的としていた無料地上波本来の理念をねじ曲げ、放送局と権利者とメーカーの談合に手を貸したという総務省の過去の行為は見下げ果てたものである。コピーワンス問題、ダビング10問題、B-CAS問題の検討と続く、無料の地上放送のスクランブルとコピー制御に関する政策検討の迷走とそれにより浪費され続けている膨大な社会的コストのことを考えても、このような省令改正の政策的失敗は明らかであり、総務省はこの省令改正を失策と明確に認めるべきである。

 コピー制限なしとすることは認められないとする権利者の主張は、消費者のほとんどが録画機器をタイムシフトにしか使用しておらず、コンテンツを不正に流通させるような悪意のある者は極わずかであるということを念頭においておらず、一消費者として全く納得がいかない。消費者は、無数にコピーするからコピー制限を無くして欲しいと言っているのではなく、わずかしかコピーしないからこそ、その利便性を最大限に高めるために、コピー制限を無くして欲しいと言っているのである。消費者の利便性を下げることによって権利者が不当に自らの利潤を最大化しようとしても、インターネットの登場によって、コンテンツ流通の独占が崩れた今、消費者は不便なコンテンツを選択しないという行動を取るだけのことであり、長い目で見れば、このような主張は自らの首を絞めるものであることを権利者は思い知ることになるであろう。

 昨年運用が開始されたダビング10に関しても、大きな利便性の向上なくして、より複雑かつ高価な機器を消費者が新たに買わされるだけの弥縫策としか言いようがなく、一消費者・一国民として納得できるものでは全くない。さらに、ダビング10機器に関しては、テレビ(チューナー)と録画機器の接続によって、全く異なる動作をする(接続次第で、コピーの回数が9回から突然1回になる)など、公平性の観点からも問題が大きい。

 現在の地上無料放送各局の歪んだビジネスモデルによって、放送の本来あるべき姿までも歪められるべきではない。そもそもあまねく視聴されることを本来目的とする、無料の地上放送においてコピーを制限することは、視聴者から視聴の機会を奪うことに他ならず、このような規制を良しとする談合業界及び行政に未来はない。

 コピー制限技術はクラッカーに対して不断の方式変更で対抗しなければならないが、その方式変更に途方もないコストが発生する無料の地上放送では実質的に不可能である。インターネット上でユーザー間でコピー制限解除に関する情報がやりとりされる現在、もはや無料の地上放送にDRMをかけていること自体が社会的コストの無駄であるとはっきりと認識するべきである。無料の地上放送におけるDRMは本当に縛りたい悪意のユーザーは縛れず、一般ユーザーに不便を強いているだけである。

 本中間答申では、現行のB-CASシステムと併存させる形でチップやソフトウェア等の新方式を導入することが提言されているが、無意味な現行システムの維持コストに加えて新たなシステムの追加で発生するコストまでまとめて消費者に転嫁される可能性が高く、このような弥縫策は、一消費者として全く評価できないものである。さらに言うなら、これらの新方式は、不正機器対策には全くならない上、新たに作られるライセンス発行・管理機関が総務省なりの天下り先となり、新方式の技術開発・設備投資コストに加え、天下りコストまで今の機器に上乗せされかねないものである。

 なお、審議会では、新方式における受信確認メッセージについても議論されているようだが、現行のB-CASシステムのようにまがりなりにも機器と分けられたカードとユーザーの1対1対応を前提とできるならいざ知らず(この現行システムの前提すら極めて危うく、もはや破綻していると見た方が良いだろうが)、全国民をユーザーとして転々流通する機器に完全に組み込まれるチップあるいはソフトウェア方式において、受信確認メッセージの機能を実装することは技術的に不可能である。このように技術的に不可能なことが審議会で今後の検討対象とされること自体、総務省と情報通信審議会のこの問題に対する技術的無知、検討能力の無さを露呈するものである。

 制度的エンフォースメントにしても、正規機器の認定機関が総務省なりの天下り先となり、その天下りコストがさらに今の機器に上乗せされるだけで、しかも不正機器対策には全くならないという最低の愚策である。

 冒頭書いたように、無料の地上放送の理念を歪め、放送局・権利者・国内の大手メーカーの談合を助長している、無料の地上放送にかけられているスクランブル・暗号化こそ問題なのであって、B-CAS類似の無意味なシステムをいくら併存させたところで、積み上げられるムダなコストが全て消費者に転嫁されるだけで何の問題の解決にもならず、同じことが繰り返されるだけだろう。基幹放送である無料地上波については、B-CASシステムを排除し、ノンスクランブル・コピー制限なしを基本とすること以外で、この問題の本質的な解決がもたらされることはない。

 法的にもコスト的にも、どんな形であれ、全国民をユーザーとする無料地上放送に対するコピー制限は維持しきれるものではない。本来立法府に求めるべきことではあるが、このようなバカげたコピー制限に関する過ちを二度と繰り返さないため、無料の地上放送についてはスクランブルもコピー制御もかけないこととする逆規制を、政令や省令ではなく法律のレベルで放送法に入れることを私は一国民として強く求める。

 なお、付言すれば、本来、B-CASやコピーワンス、ダビング10のような談合規制の排除は公正取引委員会の仕事であると思われ、何故総務省及び情報通信審議会が、談合規制の緩和あるいは維持を検討しているのか、一国民として素直に理解に苦しむ。今後、立法府において、行政と規制の在り方のそもそも論に立ち返った検討が進むことを、私は一国民として強く望む。

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2009年7月15日 (水)

第183回:総務省・「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」第一次提言案に対する提出パブコメ

 表現の自由に関するエントリも書いているところだが、衆議院で不信任案が提出され、参議院で問責決議が可決され、野党が審議拒否に入り、総理が来週の解散を明言する中、児童ポルノ規制法の改正案は今国会では廃案になることがほぼ確定したので、ここで、後2つ残っている総務省のパブコメを先に片付けておきたいと思う。(無論、今国会で廃案になったからと言って、次の国会で再提出される可能性も高いので、児童ポルノ規制法改正問題に関して、今回の選挙が極めて重要であることは言うまでも無く、選挙後も当分この問題については気は抜けないだろう。また、選挙関係のエントリも別途書きたいと思っているところである。)

 今回載せるのは、その内の1つ、「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」第一次提言案(pdf)に対する提出パブコメ(7月28日〆切。総務省のリリース意見募集要領(pdf)、電子政府の該当ページ参照)である。

 この研究会はストリートビュー問題に関する検討の方が注目されているが、この報告書案における最大の問題は、ストリートビュー問題に関する部分では無く、第24~38ページの「Ⅱ 違法音楽配信対策について」で書かれている、日本レコード協会(RIAJ)が提案している携帯電話における著作権検閲である。詳しくは報告書本文を読んでもらえればと思うが、要するに、ダウンロード違法化が通ったのを良いことに、RIAJが総務省に対して早速著作権検閲を提案し、支援を求めているのである。報告書案で、それなりにコストや法律の面で問題点をある程度あげているものの、悪質なお役所検討会の例に洩れず、利権団体には甘く、本質的な問題点をごまかし、権利者団体による著作権検閲を支援・正当化しようとする意図が見え透いている。だこのような技術による著作権検閲は、表現の自由・通信の秘密・検閲の禁止・プライバシーなどの国民の基本的な権利を侵害する危険なものとしかなり得ないのであり、決して導入されてはならないものだろう。このパブコメも決して見過ごすことのできないものである。

 もう1つ、総務省からは、B-CAS見直しに関する中間答申(pdf)概要(pdf)、正式名称は、「『デジタル・コンテンツの流通の促進』及び『コンテンツ競争力強化のための法制度の在り方』」)も8月28日〆切でパブコメにかかっているので(総務省のリリース、電子政府の該当ページITmediaの記事ITproの記事も参照)、次回は、この中間答申に対する提出パブコメを載せるつもりでいる。

(以下、提出パブコメ)

1.氏名及び連絡先
氏名:兎園(個人)
連絡先:

2.意見要旨
 日本レコード協会が提案している技術による著作権検閲に反対するとともに、特に、以下の5点を強く求める。
・この日本レコード協会が提案している対策は、憲法に規定されている、表現の自由・通信の秘密・検閲の禁止・プライバシーなどの国民の基本的な権利を侵害する危険なものであり、絶対に導入されるべきでないと提言に明記すること。
・国民の基本的な権利を侵害する危険な著作権検閲にしか流れようのない著作権法中のダウンロード違法化条項の削除を、総務省から文化庁に強く働きかけること。
・憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法にに法律のレベルで明文で書き込むこと、および、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術による著作権検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法に法律のレベルで明文で書き込むこと。
・青少年ネット規制法の廃止及び出会い系サイト規制法の法改正前の形への再改正。
・公平性の観点から及び独禁法上明らかに問題のある、携帯電話事業者による公式サイト以外のサイトからのダウンロード容量制限の排除。

 今後は、国民の基本的な権利を必ず侵害するものとなる危険な技術による著作権検閲の検討ではなく、ネットにおける各種問題は情報モラル・リテラシー教育によって解決されるべきものという基本に立ち帰り、より現実的かつ地道な施策のみに注力する検討が進むことを期待する。

3.意見
(1)第29~30ページ「Ⅱ 3.(1) フィルタリングの普及」について

 ここで、青少年ネット規制法やフィルタリングについて触れられているが、そもそも、青少年ネット規制法は、あらゆる者から反対されながら、有害無益なプライドと利権を優先する一部の議員と官庁の思惑のみで成立したものであり、速やかに廃止が検討されるべきものである。なお、付言すれば、出会い系サイト規制法の改正も、警察庁が、どんなコミュニケーションサイトでも人は出会えるという誰にでも分かることを無視し、届け出制の対象としては事実上定義不能の「出会い系サイト事業」を定義可能と偽り、改正法案の閣議決定を行い、法案を国会に提出したものであり、他の重要法案と審議が重なる中、国会においてもその本質的な問題が見過ごされて可決され、成立したものである。憲法上の罪刑法定主義や検閲の禁止にそもそも違反している、今回の出会い系サイト規制法の改正についても、今後、速やかに元に戻すことが検討されるべきである。

 フィルタリングについても、その過去の政策決定の迷走により、総務省は携帯電話サイト事業者に無意味かつ多大なダメージを与えた。この問題については、フィルタリングの存在を知り、かつ、フィルタリングの導入が必要だと思っていて、なお未成年にフィルタリングをかけられないとする親に対して、その理由を聞くか、あるいはフィルタリングをかけている親に対して、そのフィルタリングの問題を聞くかして、きちんと本当の問題点を示してから検討してもらいたい。また、フィルタリングで無意味に利権を作ろうとしている総務省と携帯電話事業者他の今の検討については、完全に白紙に戻されるべきである。携帯フィルタリングについて、ブラックリスト方式ならば、まずブラックリストに載せる基準の明確化から行うべきなので、不当なブラックリスト指定については、携帯電話事業者がそれぞれの基準に照らし合わせて無料で解除する簡便な手続きを備えていればそれで良く、健全サイト認定第3者機関など必要ないはずである。ブラックリスト指定を不当に乱発し、認定機関で不当に審査料をせしめ取り、さらにこの不当にせしめた審査料と、正当な理由もなく流し込まれる税金で天下り役人を飼うのだとしたら、これは官民談合による大不正行為以外の何物でもない。このようなブラックリスト商法の正当化は許されない。

(2)第31ページ「Ⅱ 3.(4)DRM、ダウンロード容量の制限」について
 ここで、「一部の携帯電話事業者では、公式サイト以外のサイトからダウンロードできるファイルの容量制限等も行っており」、「公式サイトとそれ以外のサイトに対して、提供する回線の水準を携帯電話事業者側で区別することは、公平性の観点からも議論を喚起する可能性がある」としているが、このような容量制限は、議論の可能性の問題では無く、公平性の観点からも、独禁法からも明らかに問題があるものである。このような容量制限は、公平性の観点からも、独禁法からも明確に問題があると、ここに明記するべきである。

(3)第32~35ページ「Ⅱ 4.(1)新たな技術的対策について」について
 この項目において、コンテンツの種類を、①正規コンテンツ、②個人コンテンツ、③違法コンテンツの3つに分類し、それぞれ、レコード会社と契約をした正規のコンテンツ配信業者から配信されたコンテンツ、一般個人が作曲、演奏した楽曲であり、著作権・著作隣接権を一般の作詞家、作曲者、演奏家が個人で保有するもの、権利者に無許諾で配信されたコンテンツと定義しているが、このような分類は適切でない。

 携帯で視聴されるコンテンツには、正規に購入した音楽CDからユーザーが私的に複製したコンテンツも含まれるのであり、配信のみを正規のコンテンツのソースとみなすような不適切な分類・定義を使用するべきでは無い。もし分類の定義を維持するのであれば、「①正規コンテンツ」の名称を「①正規配信コンテンツ」と変え、正規に購入したレコード会社の音楽CD等から私的に複製したコンテンツと定義される、「④正規の私的複製コンテンツ」という分類を追加するべきである。

 また、この項目において、音源識別やサービス識別によって正規コンテンツと違法コンテンツが識別できると書かれているが、正規の私的複製コンテンツと違法コンテンツは識別不可能であり、これらの識別技術によって正規コンテンツと違法コンテンツを一律に識別することはできないとの記載に改めるべきである。

 正規コンテンツとしてDRMのかかっていない音楽CDが存在している限り、このような対策が取られるべきではないことは自明のことである。

(4)第35~37ページ「Ⅱ 4.(2) 新たな技術的対策の課題」について
 この項目において、「携帯電話事業者のゲートウェイサーバにおいて直接ファイルの内容を監視するという方法でなければ、通信の秘密を直ちに侵害していることにはならないと考えられる」としているが、通信の秘密という基本的な権利の適用は監視の位置がサーバーであるか端末であるかによらないものであり、このような通信法を所管する官庁として余りにも浅墓な見解は削除するべきである。

 特に、機械的な処理であっても通信の秘密を侵害したことには変わりはないとされ、通信の秘密を侵害する行為には、当事者の意思に反して通信の構成要素等を利用すること(窃用すること)も含むとされているのであり、このようなことも含めて考えると、日本レコード協会が提案している対策は、通信の秘密を侵害するものと考える方が妥当であり、ここには、そうはっきり書いてもらいたい。

 この項目において、プライバシーの保護についても触れられているが、同意の取得や情報漏洩以前の問題として、本来最も基本的なプライバシーに属する個人端末中の情報について、内容を自動検知し、アクセス制限・再生禁止等を行うことは、それ自体プライバシー権を侵害するものであり、プライバシーの観点からも、このような措置は導入されるべきでないとはっきり書いてもらいたい。

 最も基本的なプライバシーに属する個人端末中の情報について、内容を自動検知し、アクセス制限・再生禁止等を行う日本レコード協会が提案している違法音楽配信対策は、技術による著作権検閲に他ならず、憲法に規定されている表現の自由(情報アクセス権を含む)や検閲の禁止に明らかに反するものである。ここで、表現の自由や検閲の禁止という観点からも、このような対策は決して導入されてはならないものであると明記してもらいたい。

 付言すれば、日本レコード協会の携帯端末における違法音楽配信対策は、建前は違えど、中国でPCに対する導入が検討され、大騒ぎになった末、今現在導入が無期延期されているところの検閲ソフト「グリーン・ダム」と全く同じ動作をするものであるということを政府にははっきりと認識してもらいたい。このような検閲ソフトの導入については、日本も政府として懸念を表明しているはずであり(日経のネット記事http://www.nikkei.co.jp/news/main/20090628AT3S2700A27062009.html参照)、自由で民主的な社会において、このような技術的検閲が導入されることなど、絶対許されないことである。

 また、正規の私的複製コンテンツは決して排除されるべきものでは無く、正規の私的複製コンテンツを全携帯端末において一律再生不能とすることは、独禁法上の問題が生じうるということについても、ここに明記されるべきである。

(5)第37~38ページ「5.今後の方向性」について
 この項目で、日本レコード協会の提案を検討の叩き台とするとしているが、上記の通り、この提案は、通信の秘密や検閲の禁止、表現の自由、プライバシーといった個人の基本的な権利をないがしろにするものであり、叩き台にすらなり得ない。日本レコード協会が提案している、検閲に該当するこのような対策は絶対に導入されるべきでなく、また技術支援・実証実験等として税金のムダな投入がなされるべきではないと、ここに明記するべきである。

 そもそも、ダウンロード違法化の懸念として、このような著作権検閲に対する懸念は、文化庁へのパブコメ(文化庁HPhttp://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/houkoku.htmlの意見募集の結果参照)や知財本部へのパブコメ(知財本部のHPhttp://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keikaku2009.htmlの個人からの意見参照)を見ても分かる通り、法改正前から指摘されていたところであり、このような著作権検閲にしか流れようの無いダウンロード違法化は始めからなされるべきではなかったものである。このような百害あって一利ない最低の法改正に基づいて対策がなされるべきでないのは無論のこと、文化庁の暴走と国会議員の無知によって成立したものであり、ネット利用における個人の安心と安全を完全にないがしろにするものである、ダウンロード違法化を規定する著作権法第30条第1項第3号を次回の法改正では削除するべきと総務省から文化庁に強く働きかけてもらいたい。

 この提言案からも明確なように、違法コピー対策問題における権利者団体の主張、児童ポルノ法規制強化問題・有害サイト規制問題における自称良識派団体の主張は、常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。今後は、このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、通信法に法律レベルで明文で書き込むことを是非検討してもらいたい。同じく、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な著作権検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を通信法にに法律レベルで明文で書き込むことを是非検討してもらいたい。

 この項目において、本年度中を目途として合意を得ることが望ましいと、平成22年度中に実施できるよう検討するという記載があるが、このような個人の基本的な権利に絡む大問題については極めて慎重な検討が必要であり、拙速な検討が行われるべきでは無く、期限に関する記載は削除するべきである。

 また、上の(2)でも書いたが、公式サイトとそれ以外のサイトに対して提供する回線の水準を携帯電話事業者側で区別することは、公平性の観点からも、独禁法からも明らかに問題があり、このような容量制限を明確に問題と認識し、これを排除する検討を進めることを、この「5.今後の方向性について」の項目に明記してもらいたい。

 違法音楽配信対策として、今後出てくるかも知れない対策まで完全に否定するつもりは無いが、国民の基本的な権利の侵害とならない範囲で対策が進められなくてはならないのは当然のことである。今後は、国民の基本的な権利を必ず侵害するものとなる危険な技術による著作権検閲の検討ではなく、ネットにおける各種問題は情報モラル・リテラシー教育によって解決されるべきものという基本に立ち帰り、公開情報の検索を行うクローリングと現行のプロバイダー責任制限法と削除要請を組み合わせた対策や、この「5.今後の方向性について」の(2)で示されているような、青少年側に立った施策などの、より現実的かつ地道な施策のみに注力する検討が進むことを期待する。

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2009年7月10日 (金)

第182回:総務省・「通信・放送の総合的な法体系の在り方」答申案に対する提出パブコメ

 総務省の「通信・放送の総合的な法体系の在り方」答申案(pdf)に対する意見募集(7月21日〆切。総務省のリリース電子政府の該当ページ概要(pdf)意見募集要領(pdf)も参照)に対してパブコメを提出したので、ここに載せておく。

 良いニュースは全く無いが、一緒に少し紹介しておくと、昨日の夜の密室政策談合で、自民・公明・民主の3党の間で、単純所持を原則禁止することで合意したとのニュースがあった(TBSの記事参照)。捜査機関に対する努力規定など何の意味も無い。あの喧々諤々の国会審議は一体何だったのか。所詮与党も民主党も、全て同じ穴のムジナであり、全てどこまで行っても、旧来の談合政治しかできない最低の妥協政党である。唯一この問題を正しく理解して下さっている社民党の保坂議員のブログ記事(その論点整理も非常に良くできているので、是非一読をお勧めする)によると、10日と14日は衆議院法務委員会が開催される予定は無いそうだが、この与野党の政策談合による合意でネットに対する死刑宣告は下ったに等しい。保坂議員には是非引き続き頑張ってもらいたいと思うし、個人的に最後まで諦めるつもりはないが、児童ポルノ規制問題については、最低最悪の状態をさらに下に突き抜け、主として流動的な国会情勢に賭けるしか無いという状況に落ち入りつつある。

 児童ポルノに関しては、リンクを張っただけの少年が児童ポルノ公然陳列幇助で逮捕され、書類送検された(internet watchの記事ITmediaの記事J-CASTの記事参照)。印象操作のための捜査としか思えないが、児童ポルノ規制法に関しては、このように現行法ですら危険極まりない、拡大解釈による恣意的な運用が行われているのである。単純所持規制が付け加わった日には、この現代日本で、あり得ない惨状が現出することだろう。

 また、一連の動きの中で関連してくる事件として、児童ポルノでは無いが、海外での騒動の種になった「レイプレイ」の無修正改造版をファイル共有ネットワーク上に流したことが猥褻物公然陳列に当たるとして、逮捕者が出ている(時事通信のネット記事産経のネット記事京都新聞のネット記事参照)。著作権法違反ならいざ知らず、どこまで行ってもCGに過ぎないものであり、このようなゲームが本当に猥褻物に当たるかどうかすら怪しいだろう。今の警察にとって事件は解決するものでは無く、規制強化のために作るもののようである。このように印象操作のためのあまりも露骨な恣意的な捜査を行う警察など、全く信用に値しない。

 最後に1つだけ海外のニュースを紹介しておくと、「P2Pとかその辺のお話」でも紹介されているように、第181回で取り上げた3ストライク法案の第2案が、フランスの上院を賛成189名、反対142名で通過した(Numeramaの記事AFPの記事PC INpactの記事も参照)。この法案もこれで下院での審議に移るが、上院通過版の法案を見ても、本質的な部分で修正が入った訳では無く、まだまだ揉め続けるだろう。

(7月10日夜の追記:保坂議員のブログ記事によると、児童ポルノ規制問題に関しては、与野党の間にまだ隔たりがあるようである。TBSの記事はかなり飛ばし気味だと分かったが、火の無いところに煙は立たないので、捜査機関に対する無意味な努力義務規定で単純所持規制をごまかして通そうとする危険極まりない折衷案が、与野党の密室政策談合で検討されているのだろう。この問題については、断頭台に首が載った状態が続くことに変わりはない。(?様、ぼるてっかー様、コメント・情報ありがとうございます。)

(7月17日の追記:入れ忘れていたので、タイトルに「総務省・」を追加した。)

 また、今日、MIAUが児童ポルノ法改正に関して声明解説)を出したので(internet watchの記事も参照)、これもリンクを張っておく。この声明も、問題点を良くとらえているものと思う。)

(以下、提出パブコメ)

1.氏名及び連絡先
氏名:兎園(個人)
連絡先:

2.意見要旨
 放送が放送法によって包括的な規制を受けている理由として、有限希少な周波数を占用するものであることもきちんとあげ、インターネットによる通信を、放送とともにコンテンツ規律の対象とする必要性は認められないとする考え方を私は強く支持する。今後の具体的な法制の検討においては、このような考え方を厳格に守り、現在の放送・通信法の対象外にまで不必要な規制が及ぼされることがないよう、くれぐれも慎重に進めてもらいたい。今後、危険な規制強化の検討では無く、現在の放送通信各法における不必要な規制の洗い出しと、特に放送がインターネットにおける情報流通と競争できるようにするための放送規制の緩和といった、真に国民全体を裨益する地道な検討のみが行われることを期待する。

 特に個別の論点として、以下の4点を私は強く求める。
・放送関連四法の集約に合わせ、無料の地上放送についてはスクランブルもコピー制御もかけないこととする逆規制を、政令や省令ではなく法律のレベルに入れること。
・現行の「電気通信事業法」を核とした伝送サービス規律に関わる制度の大括り化を図る際、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、法律レベルに明文で書き込むこと。
・同じく、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な著作権検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を法律レベルに明文で書き込むこと。
・青少年ネット規制法の廃止及び出会い系サイト規制法の法改正前の形への再改正。

3.意見
(1)第4ページ「(2)民間の創意工夫を生かした新技術導入の促進」について

 この項目において、技術基準について触れられているが、今現在無料の地上放送にコピー制限のための技術基準として導入されているB−CASシステムは談合システムに他ならない。これは、放送局・権利者にとっては、視聴者の利便性を著しく下げることによって、一旦は広告つきながらも無料で放送したコンテンツの市場価格を不当につり上げるものとして機能し、国内の大手メーカーとっては、B−CASカードの貸与と複雑な暗号システムを全てのテレビ・録画機器に必要とすることによって、中小・海外メーカーに対する参入障壁として機能している。情報通信審議会・デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会において、現行システムと併存させる形でチップやソフトウェア等の新方式を導入することが提言されているが、無意味な現行システムの維持コストに加えて新たなシステムの追加で発生するコストまでまとめて消費者に転嫁される可能性が高いこのような弥縫策は、一消費者として全く評価できないものである。

 総務省は過去の情報通信審議会において、コピーワンスの導入のために無料地上波にB−CASシステムを導入するのが適当という結論を出し、平成14年6月に省令改正(「標準テレビジョン放送等のうちデジタル放送に関する送信の標準方式の一部を改正する省令」)まで行って、その導入を推進している。無料の地上放送へのB−CASシステムの導入をもたらしたこの省令改正を、総務省は失策として認めるべきである。

 技術基準の柔軟性の向上も必要であるが、現在の地上無料放送各局の歪んだビジネスモデルによって、放送の本来あるべき姿までも歪められるべきではない。そもそもあまねく視聴されることを本来目的とする、無料の地上放送において暗号化を施しコピーを制限することは、視聴者から視聴の機会を奪うことに他ならず、このような規制を良しとする談合業界及び行政に未来はない。法的にもコスト的にも、どんな形であれ、全国民をユーザーとする無料地上放送に対するコピー制限は維持しきれるものではない。このようなバカげたコピー制限に関する過ちを二度と繰り返さないため、放送関連四法の集約に合わせ、無料の地上放送についてはスクランブルもコピー制御もかけないこととする逆規制を、政令や省令ではなく法律のレベルに入れることを、私は一国民として強く求める。

(2)第7ページ「(1)伝送サービス規律の再編」について
 ダウンロード違法化問題やプロバイダーにおける違法コピー対策問題における権利者団体の主張、児童ポルノ法規制強化問題・有害サイト規制問題における自称良識派団体の主張は、常に一方的かつ身勝手であり、ネットにおける文化と産業の発展を阻害するばかりか、インターネットの単純なアクセスすら危険なものとする非常識なものばかりである。

 また、児童ポルノに関するネット規制の1つとして検討されているサイトブロッキングについても、総務省なり警察なり天下り先の検閲機関・自主規制団体なりの恣意的な認定により、全国民がアクセスできなくなるサイトを発生させることなど、検閲にしかなりようが無く、絶対にやってはならないことである。例えそれが何であろうと、情報の単純所持や単なる情報アクセスではいかなる被害も発生し得えないのであり、自主的な取組という名目でいくら取り繕おうとも、憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないブロッキングもまた導入されてはならないものである。

 このような一方的かつ身勝手な規制強化の動きを規制するため、この項目において書かれている、現行の電気通信事業法を核とした伝送サービス規律に関わる制度の大括り化を図る際には、憲法の「表現の自由」に含まれ、国際人権B規約にも含まれている国民の「知る権利」を、あらゆる公開情報に安全に個人的にアクセスする権利として、法律レベルに明文で書き込むことを検討してもらいたい。同じく、憲法に規定されている検閲の禁止から、技術的な著作権検閲やサイトブロッキングのような技術的検閲の禁止を法律レベルに明文で書き込むことを検討してもらいたい。

(3)第11ページ「(1)メディアサービス(仮称)の範囲」について
 放送が放送法によって包括的な規制を受けている理由として、有限希少な周波数を占用するものであることもきちんとあげ、インターネットによる通信を、放送とともにコンテンツ規律の対象とする必要性は認められないとする考え方を私は強く支持する。今後の具体的な法制の検討においては、この考え方を厳格に守り、現在の放送・通信法の対象外にまで不必要な規制が及ぼされることがないよう、くれぐれも慎重に進めてもらいたい。

 なお、この項目において、プロバイダー責任制限法についても触れられているが、今後、プロバイダの責任の在り方について検討する際には、被侵害者との関係において、刑事罰リスクも含めたプロバイダーの明確なセーフハーバーについて検討してもらいたい。特に、このセーフハーバーの要件において、標準的な仕組み・技術や違法性の有無の判断を押しつけるような、権利侵害とは無関係の行政機関なり天下り先となるだろう第3者機関なりの関与を必要とすることは、検閲の禁止・表現の自由等の国民の権利の不当な侵害に必ずなるものであり、絶対にあってはならないことである。

(4)第17ページ「(4)「オープンメディアコンテンツ」に関する規律」について
 この項目において、青少年ネット規制法、フィルタリングサービスの導入促進及び改善、「e−ネットづくり!」宣言といった官製キャンペーンについて触れられている。

 しかし、そもそも、青少年ネット規制法は、あらゆる者から反対されながら、有害無益なプライドと利権を優先する一部の議員と官庁の思惑のみで成立したものであり、速やかに廃止が検討されるべきものである。なお、付言すれば、出会い系サイト規制法の改正も、警察庁が、どんなコミュニケーションサイトでも人は出会えるという誰にでも分かることを無視し、届け出制の対象としては事実上定義不能の「出会い系サイト事業」を定義可能と偽り、改正法案の閣議決定を行い、法案を国会に提出したものであり、他の重要法案と審議が重なる中、国会においてもその本質的な問題が見過ごされて可決され、成立したものである。憲法上の罪刑法定主義や検閲の禁止にそもそも違反している、今回の出会い系サイト規制法の改正についても、今後、速やかに元に戻すことが検討されるべきである。

 フィルタリングについても、その過去の政策決定の迷走により、総務省は携帯電話サイト事業者に無意味かつ多大なダメージを与えた。この問題については、フィルタリングの存在を知り、かつ、フィルタリングの導入が必要だと思っていて、なお未成年にフィルタリングをかけられないとする親に対して、その理由を聞くか、あるいはフィルタリングをかけている親に対して、そのフィルタリングの問題を聞くかして、きちんと本当の問題点を示してから検討してもらいたい。また、フィルタリングで無意味に利権を作ろうとしている総務省と携帯電話事業者他の今の検討については、完全に白紙に戻されるべきである。携帯フィルタリングについて、ブラックリスト方式ならば、まずブラックリストに載せる基準の明確化から行うべきなので、不当なブラックリスト指定については、携帯電話事業者がそれぞれの基準に照らし合わせて無料で解除する簡便な手続きを備えていればそれで良く、健全サイト認定第3者機関など必要ないはずである。ブラックリスト指定を不当に乱発し、認定機関で不当に審査料をせしめ取り、さらにこの不当にせしめた審査料と、正当な理由もなく流し込まれる税金で天下り役人を飼うのだとしたら、これは官民談合による大不正行為以外の何物でもない。このようなブラックリスト商法の正当化は許されない。

 官製キャンペーンについても、総務省への参加申請・登録の要請や総務省製のロゴマークの販促といった、ニーズを無視したいつもの官製キャンペーンに過ぎず、普通に考えて税金のムダ使いしかならない、「e−ネットづくり!」宣言のような官製キャンペーンに私は反対する。今以上に、規制よりにしかならないだろう官製「自主憲章」やガイドラインなども不要である。

 この点においては、恣意的な運用しか招きようのない危険な規制強化の検討ではなく、ネットにおける各種の問題は情報モラル・リテラシー教育によって解決されるべきものという基本に立ち帰り、地道な教育・啓発に関する施策のみに注力する検討が進むことを期待する。

(5)第19ページ「5.プラットフォーム規律」について
 コンテンツ規律の中に、既存のプラットフォーム規律である有料放送管理事業に係る規律を位置づけること自体に反対するものではないが、放送に関するコンテンツ規律の中に、異質なプラットフォーム規制を混ぜることによって、現在の放送・通信法の対象外にまで不必要な規制が及ぼされることがないよう、くれぐれも注意してもらいたい。

(6)報告書全体について
 放送が放送法によって包括的な規制を受けている理由として、有限希少な周波数を占用するものであることもきちんとあげ、インターネットによる通信を、放送とともにコンテンツ規律の対象とする必要性は認められないとする考え方を私は強く支持する。今後の具体的な法制の検討においては、このような考え方を厳格に守り、現在の放送・通信法の対象外にまで不必要な規制が及ぼされることがないよう、くれぐれも慎重に進めてもらいたい。

 従来、放送が勝手に相当部分を独占して来た情報流通が、インターネットの発展によって崩れてきたということこそ、通信と放送の関係における問題の本質である。今後は、危険な規制強化の検討では無く、現在の放送通信各法における不必要な規制の洗い出しと、特に放送がインターネットにおける情報流通と競争できるようにするための放送規制の緩和といった、真に国民全体を裨益する地道な検討のみが行われることを期待する。

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2008年12月16日 (火)

第142回:総務省・「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」最終取りまとめ(案)に対する提出パブコメ

 総務省の「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」最終取りまとめ(案)に対してパブコメを提出したので、ここに載せておく。

(以下、提出パブコメ)

1.氏名及び連絡先
氏名:兎園(個人)
連絡先:

2.意見要旨
(児童ポルノ規制について)
 児童ポルノ対策について今以上の規制は必要なく、児童ポルノを理由とした新たな規制、特に情報・表現に関する国民の基本的な権利の重大な侵害となる単純所持規制・創作物規制の検討に反対する。やはり情報・表現に関する国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないブロッキングについても、その実証実験すらするべきではない。
 児童ポルノの閲覧の犯罪化と創作物の規制まで求める「子どもと青少年の性的搾取に反対する世界会議」の根拠のない狂った宣言を国際動向として一方的に取り上げ、児童ポルノ規制の強化を正当化することなどあってはならない。かえって、児童ポルノの単純所持規制・創作物規制といった非人道的な規制を導入している諸国は即刻このような規制を廃止するべきと、そもそも最も根本的なプライバシーに属し、何ら実害を生み得ない個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ること自体、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の国際的かつ一般的に認められている基本的な権利からあってはならないことであると、日本政府から国際的な場において各国に積極的に働きかけてもらいたい。

(ネット規制について)
 青少年ネット規制法の廃止及び出会い系サイト規制法の法改正前の形への再改正を求める。
 半官天下り検閲センターに他ならないインターネット・ホットラインセンターの廃止を求める。
 「e-ネットづくり!」宣言について、そもそも民間が求めていない、「民間による自主的な取組」など取りやめるべきである。検討が必要であるとしたら、今ですら訳が分からないほど沢山ある各種ガイドラインの整理削減のみである。天下り利権の強化・税金のムダな浪費にしかつながらない、ニーズを無視した「相談センター」の拡充に反対する。「違法・有害情報通報受付」と称する、総務省版の半官天下り検閲センターをさらに作ることなど論外である。

(プロバイダーの責任制限について)
 プロバイダー責任制限法に関し、被侵害者との関係において、刑事罰リスクも含めたプロバイダーの明確なセーフハーバーについて検討することを求める。特に、著作権侵害について、最近の事件から考えて、間接侵害や著作権侵害幇助罪まで含めて、著作権法にきちんとした明確なセーフハーバーが早急に作られるべきである。特に、そのセーフハーバーの要件において、標準的な仕組み・技術や違法性の有無の判断を押しつけるような、権利侵害とは無関係の行政機関なり天下り先となるだろう第3者機関なりの関与を必要とすることは、検閲の禁止・表現の自由等の国民の権利の不当な侵害に必ずなるものであり、絶対にあってはならないことである。

(報告書案全体について)
 この狂った報告書案の危険性は小手先の修正では治癒不能であり、情報モラル・リテラシー教育に関する「4.利用者を育てる取組の促進」以外全て白紙に戻してゼロから検討し直されるべきである。今後は、恣意的な運用しか招きようのない危険な規制強化の検討ではなく、ネットにおける各種問題は情報モラル・リテラシー教育によって解決されるべきものという基本に立ち帰り、政府において、地道な施策のみに注力する検討が進むことを期待する。

3.意見及び理由
(1)「2.(1)安心ネット利用のための基本法制の整備等」(第9~47ページ)関連

意見:
 「社会的公益侵害」・「権利侵害」という意味不明の区別を用いた検討を白紙に戻し、プロバイダー責任制限法に関し、被侵害者との関係において、刑事罰リスクも含めたプロバイダーの明確なセーフハーバーについて検討するべきである。特に、著作権侵害について、最近の事件から考えて、間接侵害や著作権侵害幇助罪まで含めて、著作権法にきちんとした明確なセーフハーバーが早急に作られるべきである。特に、そのセーフハーバーの要件において、標準的な仕組み・技術や違法性の有無の判断を押しつけるような、権利侵害とは無関係の行政機関なり天下り先となるだろう第3者機関なりの関与を必要とすることは、検閲の禁止・表現の自由等の国民の権利の不当な侵害に必ずなるものであり、税金のムダな浪費と技術の発展の阻害につながるだけの危険かつ有害無益な規制強化であり、絶対にあってはならないことである。

理由:
 表現・情報の自由は民主主義の最重要の基礎であり、被害者を伴わない表現・情報に対する規制にほとんど正当化の余地はないのであり、そもそもここで社会的法益侵害と権利侵害という類型分けを使うこと自体不適切である。

 報告書案中で、プロバイダー責任制限法の適用範囲を拡大するニーズが多くないと勝手に決めつけているが、意味不明の社会的法益侵害と権利侵害の区別による是非や発信者との関係での責任の問題だけを取り上げているから奇妙なことになるので、プロバイダーの責任の問題においては、被侵害者との関係において、民事的な責任制限だけではなく、刑事罰リスクまで含め、明確なプロバイダーのセーフハーバーを作ることは非常に重要である。

 特に、そのセーフハーバーの要件において、標準的な仕組み・技術や違法性の有無の判断を押しつけるような、権利侵害とは無関係の行政機関なり天下り先となるだろう第3者機関なりの関与を必要とすることは、検閲の禁止・表現の自由等の国民の権利の不当な侵害に必ずなるものであり、税金のムダな浪費と技術の発展の阻害につながるだけの危険かつ有害無益な規制強化であり、絶対にあってはならないことである。

 さらに言えば、動画投稿サイト事業者がJASRACに訴えられた「ブレイクTV」事件や、レンタルサーバー事業者が著作権幇助罪で逮捕され、検察によって姑息にも略式裁判で50万円の罰金を課された「第(3)世界」事件等を考えても、今現在、間接侵害や著作権侵害幇助のリスクが途方もなく拡大し、甚大な萎縮効果・有害無益な社会的大混乱が生じかねないという非常に危険な状態にある。間接侵害事件や著作権幇助事件においてネット事業者がほぼ直接権利侵害者とみなされてしまうのでは、プロバイダー責任制限法によるセーフハーバーだけでは不十分であることを考え、間接侵害や著作権幇助罪も含め、著作権侵害とならない範囲を著作権法上きちんと確定することが喫緊の課題である。

 また、論外の印象操作等、ほとんど報告書案を全て白紙に戻すべきと私が思っている所以の記載を以下に指摘して行く。なお、以下で指摘して行くのは余りにも目に余る部分だけであるとも念を押しておく。

 そもそも、青少年ネット規制法は、あらゆる者から反対されながら、有害無益なプライドと利権を優先する一部の議員と官庁の思惑のみで成立したものであり、速やかに廃止が検討されるべきものである。また、出会い系サイト規制法の改正は、警察庁が、どんなコミュニケーションサイトでも人は出会えるという誰にでも分かることを無視し、届け出制の対象としては事実上定義不能の「出会い系サイト事業」を定義可能と偽り、改正法案の閣議決定を行い、法案を国会に提出したものであり、他の重要法案と審議が重なる中、国会においてもその本質的な問題が見過ごされて可決され、成立したものであり、憲法上の罪刑法定主義や検閲の禁止にそもそも違反している、今回の出会い系サイト規制法の改正についても、今後、速やかに元に戻すことが検討されるべきである。

 携帯フィルタリングによるブラックリスト商法を大臣要請で後押しするかのような書き方がされているが、ブラックリスト方式ならば、まずブラックリストに載せる基準の明確化から行うべきなので、不当なブラックリスト指定については、携帯電話事業者がそれぞれの基準に照らし合わせて無料で解除する簡便な手続きを備えていればそれで良く、健全サイト認定第3者機関など必要ないはずである。ブラックリスト指定を不当に乱発し、認定機関で不当に審査料をせしめ取り、さらにこの不当にせしめた審査料と、正当な理由もなく流し込まれる税金で天下り役人を飼うのだとしたら、これは官民談合による大不正行為以外の何物でもない。このようなブラックリスト商法の正当化は許されない。

 児童ポルノ規制については主に(5)で述べるが、第23~25ページで、海外からの声として、国会でも批判された根拠の無い米シーファー大使の発言などを取り上げ、一方的に児童ポルノ規制強化を正当化している点など行政の報告書として不当の極みである。児童ポルノ規制強化について、優先度が高く個別対処の検討を必要があるとする合理的根拠は何一つない。また、「権利侵害情報の例としては、名誉毀損情報、プライバシー侵害情報及び著作権や商標権を侵害する情報などがあり、社会的法益侵害情報の例としては児童ポルノ公然陳列罪、わいせつ物公然陳列罪(刑法第175条)、麻薬特例法違反、覚せい剤取締法違反など薬物関連法に係る情報などがある」(第18ページ)、「児童ポルノ関係の情報については、社会的法益侵害情報と整理されるが、被害児童が存在するため権利侵害の側面もある」(第24ページ)と、勝手に児童ポルノ規制の法益を、実在の児童の保護から、意味不明の「社会的法益」に勝手にすり替えようとしていることも、到底許されることではない。

 第30ページの「エ)刑罰法規の厳正な執行の必要性等」で、一方的な見方で刑罰法規による取り締まり強化を唱えている点も到底許せるものではない。レンタルサーバー管理者が著作権幇助罪で逮捕された「第(3)世界」事件のことを考えても、情報の違法性の本質的な相対性を忘れ、情報の流通という姑息な言葉で情報の提供者が誰かという最も重要な論点をごまかし、幇助といった曖昧な概念で刑罰法規の適用範囲を不当に広げることはインターネットの法的安定性を大きく揺るがす危険極まりないことである。

 第31ページ以下の「b)行政機関による措置制度」で書かれている、ほとんど青少年ネット規制法案の初期案の悪夢を彷彿とさせる、行政主導の検閲機関創設案は絶対に導入されてはならない論外の案である。このような問題が大き過ぎる検閲機関創設案が、役所で大真面目に検討されること自体異常なことと言わざるを得ない。

 第34ページの脚注で、憲法上の検閲の禁止について、過去の最高裁の判決を引いてあたかも狭く解釈ができるかの如きことが書かれているが、学説上は必ずしもそのような狭い解釈が取られている訳ではなく、この最高裁判決自体、昨今のインターネットの普及を踏まえたものでなく今日もなお通用するかどうか怪しいものである。今日ではインターネット上でしか発表・流通の機会を持たない表現物が既に多く存在しているのであり、例え事後規制だろうと、そのような表現物の発表・流通を完全に抑制しかねない規制は、やはり検閲に該当すると考える方が妥当である。

 第31ページ以下の「a)プロバイダ責任制限法の適用範囲の拡大」で、発信者の関係で責任制限範囲を拡大するニーズがないとしながら、第36ページ以下の「c)自主的取組にインセンティブを与える形での責任制限等の方策」では、発信者との関係のみで責任範囲を拡大することがインセンティブになるとしているところなど、天下り役人の考えは心底理解に苦しむ。また、現行のプロバイダー責任制限法でも、プロバイダーが、侵害の事実を知りながら、技術的に可能であるにも関わらず不特定の者に対する送信防止措置を取らなけらない場合、その責任追求を免れないのであり、被侵害者との関係で、違法な情報を放置した場合に、現行法よりも責任追及を容易にするとしている点も全く理解不能である。

 「c)自主的取組にインセンティブを与える形での責任制限等の方策」中で触れられているアクセスログの保存についても、プロバイダー責任制限との関係で検討されるべき話ではなく、それ自体で別途きちんと検討されなくてはならない話である。

 第45~46ページで、アメリカのDMCAのノーティス&テイクダウン制度に触れた上で、勝手に否定的な見解を述べているが、別にアメリカのノーティス&テイクダウン制度をそっくりそのまま日本に輸入しなければならない理由もなく、上であげた「ブレイクTV」事件や「第(3)世界」事件等を考えても、著作権について特に早急に手当をしておくべき十分な立法事実があると私は考えている。

(2)「2.(2)国際連携推進のための枠組の構築」(第47~54ページ)関連
意見:
 児童ポルノ規制に関して、児童ポルノの閲覧の犯罪化と創作物の規制まで求めている「子どもと青少年の性的搾取に反対する世界会議」の根拠のない狂った宣言を国際動向として一方的に取り上げ、規制強化を正当化することなどあってはならない。かえって、児童ポルノの単純所持規制・創作物規制といった非人道的な規制を導入している諸国は即刻このような規制を廃止するべきと、そもそも最も根本的なプライバシーに属し、何ら実害を生み得ない個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ること自体、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の国際的かつ一般的に認められている基本的な権利からあってはならないことであると、日本政府から国際的な場において各国に積極的に働きかけてもらいたい。

 また、青少年ネット規制法について国際的に紹介する場合には、この法律は、ほぼあらゆる者から反対されながら、有害無益なプライドと利権の保持に走った一部の議員と官庁の思惑のみによって成立したものであるという経緯や、そもそも成立するべきではなく今でも廃止するべきとする意見もあるということも含め紹介するべきである。

理由:
 例えそれが児童ポルノであろうと、情報の単純所持・アクセス・ダウンロード・収集・取得・閲覧等の規制・犯罪化は、恣意的にしか運用され得ず、利用者から見て回避不能の危険極まるものであり、新たな思想犯罪を作り出す非人道的なものとして絶対導入されるべきでない。そもそも最も根本的なプライバシーに属し、何ら実害を生み得ない個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ること自体、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の国際的かつ一般的に認められている基本的な権利からあってはならないことである。

 また、青少年ネット規制法は、有害無益なプライドと利権の保持に走った一部の議員と官庁の思惑のみによって成立したものであり、そもそも成立するべきではなく今でも廃止するべきとする意見もあるのであり、規制を一方的に是とすることなく、状況が正しく伝えられなくてはならない。

 なお、インターネット・ホットラインセンターについては主に(4)で述べるが、第47~48ページにおける、「2007年中に同センターにあった違法情報の通報のうち海外のサーバに蔵置されていたものは3,307件であるところ、同年3月から12月までの10か月間にわが国から海外の加盟ホットラインに対して行った通報は児童ポルノ情報及びわいせつ情報350件と一部に限られている。」等の印象操作も本当にひどいものである。350件以外は、インターネット・ホットラインセンターが他国に通報しないという判断をしただけだろうと考えられるにもかかわらず、勝手に全通報件数との比較を行って、海外対応に難があるかの如き記載をしているのは本当に許し難い。このような判断を勝手に行っていること自体、この半官天下り検閲センターの問題点を露骨に示している。

(3)「2.(3)様々な連携の推進」(第54~61ページ)関連
意見:

 ニーズの不明な新たな産学連携組織の検討に関しては全て白紙に戻して、そもそものニーズからきちんと再検討がなされるべきである。また、天下りへの国民の血税のムダな浪費はもはや到底許されることではなく、新たな産学連携組織を天下り先とすることなど絶対にあってはならない。

理由:
 「e-ネットづくり!」宣言プログラムの基本的受け皿として必要であると報告書案では書かれているが、、報告書案で書かれている産学連携組織の必要性に合理的根拠はない。このようなムダな産学連携組織は、役人の天下り先となり、国民の血税の天下りへのムダな浪費となる危険性が高く、一国民として到底賛同できるものではない。

(4)「3.(1)違法・有害情報対策の推進」(第63~90ページ)関連
意見:

 「e-ネットづくり!」宣言について、そもそも民間が求めていない、「民間による自主的な取組」など取りやめるべきである。検討が必要であるとしたら、今ですら訳が分からないほど沢山ある各種ガイドラインの整理削減のみである。天下り利権の強化・税金のムダな浪費にしかつながらない、ニーズを無視した「相談センター」の拡充などされるべきでない。インターネット・ホットラインセンターという警察庁の半官天下り検閲センター自体廃止が速やかに検討されるべきものであり、「違法・有害情報通報受付」と称して、総務省版の半官天下り検閲センターをさらに作ることなど論外である。

理由:
 「e-ネットづくり!」宣言は、総務省への参加申請・登録の要請や総務省製のロゴマークの販促といった、ニーズを無視したいつもの官製キャンペーンに過ぎず、普通に考えて税金のムダ使いしかならない。今以上に、規制よりにしかならないだろう官製「自主憲章」やガイドラインなども不要である。「ナレッジベース」について、そもそも今以上にどんなガイドラインについて必要なのか良く分からず、もし何か検討するのであれば、そもそも今ですら山のようにあって訳が分からないガイドライン群の整理削減のみを検討するべきである。

 さらに、「交流プラットフォーム」についても、そもそも現在の「違法・有害情報事業者相談センター」の相談実績が少ないことが、現実のニーズを如実に物語っており、天下り利権の強化・税金のムダ使いにしかならないだろうニーズを無視した相談センターの拡充もされるべきではない。さらに、権利侵害とは直接関係のない天下り先の半官検閲センターに違法性の判断を代替する機能を持たせることなど危険極まりないことであり、インターネット・ホットラインセンターという警察庁の半官天下り検閲センター自体廃止が速やかに検討されるべきものであり、「違法・有害情報通報受付」と称して、総務省版の半官天下り検閲センターをさらに作ることなど論外である。

 以下、やはり目に余る記載について指摘して行く。

 (1)で述べたプロバイダ責任制限法に関する部分では、「大手のプロバイダ等を中心に、既に自主的対応として違法情報の削除が進んで」いるとしながら、こちらでは、対策について民間にデータの蓄積がないとしているなど、この報告書案は矛盾・不合理だらけで到底読むに耐えない。

 第65ページの「近年、これらの情報の流通をきっかけに、マスコミに大きく取り上げられるような事案が頻発しており、インターネットの規制を強化すべきとの議論を拡大させる主な要因となっている。」のような記載は、マスコミの一方的な印象操作に悪乗りする形で、ネガティブな事件のみを取り上げ、ネット規制の強化が正当化されるかのような、ひどい印象操作を含む記載である。なお、第6ページの「さらに、硫化水素による自殺誘引サイトの問題や、2008年6月8日に起きた秋葉原での事件における電子掲示板上の犯罪予告など、インターネット上の違法・有害情報対策として、民間の自主的取組に任せるのではなく、むしろ規制を強化すべきとの声を後押しするような事案も引き続き発生している。」も同断である。

 第73ページの脚注で、プロバイダー責任制限法の「特定電気通信役務提供者」と、青少年ネット規制法の「特定サーバー管理者」を同義と考えて良いと断定している事もあまりにも軽率という他ない。それぞれの条文を読めば分かるが、「特定電気通信設備を用いて他人の通信を媒介し、その他特定電気通信設備を他人の通信の用に供する者」(「特定電気通信役務提供者」)と、インターネットを利用した公衆による情報の閲覧の用に供されるサーバーを用いて、他人の求めに応じ情報をインターネットを利用して公衆による閲覧ができる状態に置き、これに閲覧をさせる役務を提供する者(「特定サーバー管理者」)は同義では全くない。実際に法運用を行っているはずの官庁が公の報告書案にこのようなことを堂々と書くのだから本当に呆れる他ない。

 また、第75~76ページで、インターネット・ホットラインセンターについて、インターネット・ホットラインセンターの協力依頼通りに削除することが当然であり、このような検閲の強化が正当化されてしかるべきであるかの如き記載があるが、インターネット・ホットラインセンターは単なる一民間団体に過ぎず、しかもこの団体に直接害が及んでいる訳でもないため、本来削除を要請できる訳がないのである。勝手に有害と思われる情報を収集して、直接削除要請などを行う民間団体があるということ自体おかしいと考えるべきであるという最も基本的なことも忘れ、国民の基本的な権利をないがしろにしても自身の利権拡大のみ大事とばかりに、あらゆる者はこの半官検閲センターの言うなりに情報を削除しろという傲慢を示すとは、天下り役人の考えは気違い染みている。削除を依頼されたところで、自身のリスクで削除をしないという判断をすることは当然あって良いことである。

 インターネット・ホットラインセンターの事業が警察からの委託事業であるため、そこに蓄積された情報を柔軟に活用し、自主的取組の向上に役立てることは難しいと、インターネット・ホットラインセンターが、民間団体でありながら、ほぼ警察の下部組織であることを政府の報告書が公に認めている点など、完全に語るに落ちている。必要であれば、きちんとした取り締まりと削除要請ができる人員を、法律によって明確に制約を受ける警察に確保するべき話であり、通報受付についてもきちんと警察に設け、それを周知するべき話であって、それ以上の話ではなく、インターネット・ホットラインセンターのような半官天下り検閲センターは即刻廃止が検討されるべきである。

(5)「3.(2)児童ポルノの効果的な閲覧防止策の検討」(第91~100ページ~)関連
意見:

 児童ポルノ対策について今以上の規制は必要なく、児童ポルノを理由とした新たな規制、特に情報・表現に関する国民の基本的な権利の重大な侵害となる単純所持規制・創作物規制の検討に反対する。やはり情報・表現に関する国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないブロッキングについても、その実証実験すらするべきではない。

理由:
 上でも書いたことだが、例えそれが児童ポルノであろうと、情報の単純所持や単なる情報アクセスではいかなる被害も発生し得えない。現行法で、ネット上であるか否かにかかわらず、提供及び提供目的の所持まで規制されているのであり、提供によって生じる被害と所持やダウンロード、取得、収集との混同は許され得ないのである。そもそも、最も根本的なプライバシーに属する個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ること自体、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の基本的な権利からあってはならないことである。海外サーバーの児童ポルノコンテンツについても、児童ポルノの提供が罪になっていない主要国もないのであろうから、日本の警察なりが海外の捜査機関に協力すれば良いだけの話である。例え児童ポルノだろうが、新たな思想犯罪を作り、国民の情報・表現・思想等々の最も基本的な精神的自由と安全を脅かす理由には全くならない。児童ポルノ規制について何か検討することがあるとしたら、今ですら曖昧に過ぎる児童ポルノの定義の厳密化のみである。

 また、ブロッキングについても、総務省なり警察なり天下り先の検閲機関・自主規制団体なりの恣意的な認定により、全国民がアクセスできなくなるサイトを発生させるなど、絶対にやってはならないことである。例えそれが何であろうと、情報の単純所持や単なる情報アクセスではいかなる被害も発生し得えないのであり、自主的な取組という名目でいくら取り繕おうとも、憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利を含む)や検閲の禁止といった国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないブロッキングもまた導入されてはならないものである。

 対面調査で回答の誘導を行うなど有害かつ悪質な世論操作がそこら中で行われた、全く信用できない今年1月の内閣府の調査をあげ、国民の問題意識が高まっているとしたり、サイバー犯罪条約について未批准であることや児童ポルノ規制に関しては留保条項もあることを明記していなかったり、欧米キリスト教諸国の狂った規制のみを例に挙げていたり、インターネット・ホットラインセンターにおける通報件数のみを使って日本における児童ポルノ事件数が多いかの如き印象を与えようとしたりと、この部分における、悪辣な印象操作・欺瞞も枚挙にいとまがない。

 さらに、第92~93ページの、「1)現在の児童ポルノに対する取組」の、児童ポルノを思想犯罪化し、国民の情報・表現・思想等々の最も基本的な精神的自由と安全を脅かして良いかの如き記載に至ってはもはや絶句するしかない。この文章を書いた役人は完全に気が狂っているとしか思えない。

 なお、児童ポルノ規制に関しては、つい最近、ドイツのバンド「Scorpions」が32年前にリリースした「Virgin Killer」というアルバムのジャケットカバーが、アメリカでは児童ポルノと見なされないにもかかわらず、イギリスでは該当するとしてブロッキングの対象となり、プロバイダーによっては全Wikipediaにアクセス出来ない状態が生じたなど、欧米では、行き過ぎた規制の恣意的な運用によって、明らかな弊害が生じていることも見逃されるべきではない。

(6)「4.(5)違法・有害情報対策の基礎となる調査の実施」(第133~135ページ)関連
意見:

 役所の調査項目作成への関与を極力無くし、予断を与えないように調査項目の作成には細心の注意を払うべきである。複数の調査機関によって項目の偏向をチェックし、対面調査で直接規制の是非を問うような片寄りしか生まない手法を取らないようにし、ウェブ調査も含め、幅広く調査を行うべきである。

理由:
 今年の1月28日に公表された「インターネット上の安全確保に関する世論調査」は、例えば、インターネットホットラインセンターについて、知らない者が9割近くにも上るにも関わらず、その全員に対してその有効性について聞き、「インターネットホットラインセンターは安全を守るために有効と思う」と7割近くの人間に答えさせたり、対面調査によって回答の誘導を行ったりするなど、悪質かつ有害な印象操作・世論操作がそこら中で行われ、政策判断の材料として全く信用できない調査だった。

 このような非道極まる調査を二度と行わないようにするべきであり、特に、役所の調査項目作成への関与を極力無くし、予断を与えないように調査項目の作成には細心の注意を払うよう、複数の調査機関によって項目の偏向をチェックし、対面調査で直接規制の是非を問うような片寄りしか生まない手法を取らないよう、ウェブ調査も含め、幅広く調査を行うよう気をつけるべきである。

(7)報告書案全体について
 国民の基本的な権利をないがしろにしても自身の利権拡大のみ大事とばかりに、腐り切った天下り役人が好き勝手に膿んだ妄想を垂れ流しているこの報告書案は、随所に理解不能の論旨の混乱が見られ、矛盾・不合理だらけで到底読むに耐えないものである。もはや自身の怒りを表すのに十分な言葉を私は持たないが、このように天下り役人が厚顔にも踏みにじっている国民の本当の安全と安心を今すぐ返してもらいたいと私は心から言いたい。

 この狂った報告書案の危険性は小手先の修正では治癒不能であり、情報モラル・リテラシー教育に関する「4.利用者を育てる取組の促進」以外全て白紙に戻してゼロから検討し直されるべきである。

 インターネットの利用環境の整備は、法規制によるのではなく、民間の自主的取組によって推進することが最良の方策であるという言葉を自戒の言葉として、政府においても、今後は、恣意的な運用しか招きようのない危険な規制強化の検討ではなく、ネットにおける各種問題は情報モラル・リテラシー教育によって解決されるべきものという基本に立ち帰り、地道な施策のみに注力する検討が進むことを期待する。

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