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2009年3月21日 (土)

第162回:民主党の児童ポルノ2ストライク法案全文の転載

 この19日に、民主党が児童ポルノ2ストライク法案を提出した(民主党のリリース概要(pdf)要綱(pdf)新旧対照条文(pdf)法律案(pdf)参照)。リンク先を見てもらえば良いことではあるが、ここにも、その全文を転載する。

 児童ポルノの定義の明確化は良いとしても、反復取得罪も、単純所持罪と同じく別件逮捕など警察権力の乱用につながり得るものであるとしか言いようがない。反復取得としても、インターネットで2回以上他人にダウンロード・アクセスを行わせること等は技術的に極めて容易であり、取得の回数の限定は何ら危険性を減らすものではない。また、「みだりに」といった精神的要件も、行為に一人しか絡まない情報の取得・ダウンロード・アクセスにおいては、エスパーでもない限り証明することも反証することもできない要件である

 繰り返しになるが、情報の種類・精神的要件の有無・取得の回数の限定にかかわらず、情報の単純所持・取得罪の創設は、必然的に、インターネットのあらゆる利用者のアクセスに回避不能の危険性を作り出すことにつながるのである。これは、ロリコンがどうとかいう次元の低い問題では無く、全情報産業、全ユーザー、全国民に関わる大問題である。

 この法案の提出で民主党も、情報とインターネットの特性を理解していないことを、党としては全く信頼できないことを露呈した。与党も民主党も問題の本質を全く理解していない以上、与野党協議が進めば、自公案(番外その14第96回参照)と民主案の中間の最低の案が出てくる可能性が高く、国会議員へ手紙を出す等個人的にできることはしたいと思うが、今現在、大きくは、選挙のタイミングとまともな国会審議に賭けるしかないという最悪の状況にある。

 
与野党協議も国会審議も進まないことを祈っているが、審議(与党案の経過)にかかるとしたら、衆議院法務委員会→衆議院本会議→参議院法務委員会→参議院本会議という形で進むことになるだろう。この問題についても決して目を離してはならない、立法プロセス自体の改革はまだまだ先のことになるだろうが、少なくとも常に国民の目が注がれていることを、立法に携わる人間に嫌でも分からせるようにして行かなくてはならないのである。

(3月21日昼の追記:コメント・情報を頂いたので、前回のエントリに追記する形で、アルゼンチンにおける私的複製補償金問題について少し書いた。今のところ、そこまで大きな動きにはならなそうではあるが、興味のある方はご覧頂ければと思う。)

(2009年7月4日の追記:より詳しくは目次6の追記を読んで頂ければと思うが、言われてみれば確かに、現行法・与党案の「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」と同じく、民主党の「殊更に児童の性器等が...強調されている児童の姿態」も、何をもって強調とするか主観的にしか判断され得ない規定である。児童ポルノ規制に関しては私も不勉強なところがあり、この可能性を見逃していたのは申し訳ないと思うが、いずれにせよ、表現の自由に関して合憲限定解釈を当てはめることは決して妥当では無く、このように過度に漠然とした曖昧な規定による表現規制はやはりそもそも違憲と考えるべきだろう。現行法についても、その運用で、警察・検察が容疑者の法律上の無知と心理的弱点につけ込んで違憲論を実務的に押さえ込んでいるに過ぎない。今の児童ポルノ規制すら極めて危ういバランスの上にかろうじて立っているのであり、この問題において安易に法改正を行うことは、あらゆる意味で危険極まりないことである。この児童ポルノ規制問題は、とにかくあらゆる点で危険性が増えこそすれ、決して減ることはないという非道い話である。)

(2009年7月20日の追記:毎日のネット記事で園田寿甲南大法科大学院教授が指摘しているように、民主党案では、第7条第4項で「姿態をとらせ」という要件を削り、「みだりに」という主観的要件のみで児童ポルノ製造罪を新たに規定している。民主党曰く盗撮に対応するための規定のようだが、園田氏の指摘の通り、これでは、規定内容が厳密ではないため、インターネットから知らずにパソコン内にダウンロードされた画像を後で別の記録媒体にコピーしたようなケースも「製造」だと解釈される余地があるだろうし、そもそも、インターネットからアクセス・ダウンロードしただけで「製造」と解釈される余地すらあるだろう。この論点についても見逃していたことについて申し訳なく思うが、児童ポルノ規制法改正案は与野党ともに本当に問題点だらけである。)

(1)理由
 児童ポルノに係る行為の実情、児童の権利の擁護に関する国際的動向等にかんがみ、児童ポルノの名称を児童性行為等姿態描写物に改め、その定義を明確化するとともに、みだりに児童性行為等姿態描写物を有償で又は反復して取得すること等を処罰する罰則を設け、及び罰則を引き上げることとし、あわせて心身に有害な影響を受けた児童の保護に関する施策を推進する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

(2)要綱
第一 「児童ポルノ」の名称の改正及び定義の明確化

 「児童ポルノ」の名称の改正(題名、第二条第三項等関係)
 本法が風俗犯に関する法律ではなく、あくまでも児童に対する性的搾取及び性的虐待に係る行為等の処罰に関する法律であることを明確にするため、その対象である「児童ポルノ」の名称を「児童性行為等姿態描写物」に改めること。

 児童性行為等姿態描写物(児童ポルノ)の定義の明確化(第二条第三項第二号及び第三号関係)
 児童性行為等姿態描写物の定義を明確にするため、第二号を「殊更に他人が児童の性器等を触り、若しくは殊更に児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態又は殊更に児童の性器等が露出され、若しくは強調されている児童の姿態」との客観的な要件に改めるとともに、第三号を削除すること。

第二 児童性行為等姿態描写物(児童ポルノ)等取得罪の新設等
 児童性行為等姿態描写物(児童ポルノ)等取得罪の新設(新第七条第一項及び第十条関係)
 みだりに、児童性行為等姿態描写物を有償で又は反復して取得した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処するものとすること。みだりに、これに係る電磁的記録等を有償で又は反復して取得した者も、同様とすること。
 1に係る国民の国外犯は、これを処罰するものとすること。

 児童性行為等姿態描写物(児童ポルノ)製造罪の処罰範囲の拡大(新第七条第四項関係)
 提供目的以外の児童性行為等姿態描写物の製造の罪について、意図的に児童に一定の姿態をとらせて製造した場合に限らず、盗撮等の場合にも処罰範囲を拡大すること。

 適用上の注意規定の明確化(第三条関係)
 一及び二の改正にかんがみ、この法律の適用に当たっては、児童に対する性的搾取及び性的虐待から児童を保護しその権利を擁護するとの本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあってはならない旨を明確にすること。

第三 罰則の法定刑の引上げ
 児童買春関係(第四条から第六条まで関係)
 児童買春罪の法定刑を七年以下の懲役又は五百万円以下の罰金(現行は五年以下の懲役又は三百万円以下の罰金)とする等、法定刑を引き上げること。

 児童性行為等姿態描写物(児童ポルノ)関係(新第七条第二項から第七項まで関係)
 児童性行為等姿態描写物等提供罪等の法定刑を五年以下の懲役又は五百万円以下の罰金(現行は三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金)に、児童性行為等姿態描写物等の不特定又は多数の者に対する提供等の罪等の法定刑を七年以下の懲役若しくは七百万円以下の罰金又はその併科(現行は五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金又はその併科)に引き上げること。

 児童買春等目的人身売買等(第八条関係)
 児童買春等目的人身売買罪の法定刑を一年以上十五年以下の懲役(現行は一年以上十年以下の懲役)にする等、法定刑を引き上げること。

第四 心身に有害な影響を受けた児童の保護に関する制度の充実及び強化
 心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置を講ずる主体及び責任の明確化(第十五条関係)
 心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置を講ずる主体として、厚生労働省、都道府県、児童相談所、福祉事務所及び市町村を例示し、措置を講ずる主体及び責任を明確化すること。

 心身に有害な影響を受けた児童の保護に関する施策の検証等(第十六条の二関係)
 社会保障審議会は、児童買春の相手方となったこと、児童性行為等姿態描写物に描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童の保護に関する施策の実施状況等について、当該児童の保護に関する専門的な知識経験を有する者の知見を活用しつつ、定期的に検証及び評価を行うものとすること。
 社会保障審議会の厚生労働大臣等に対する意見の具申及び厚生労働大臣等が講ずる措置に関する規定を置くこと。

第五 施行期日等
 施行期日(附則第一条関係)
 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行すること。

 その他その他所要の規定の整備を行うこと。

(3)改正法案(赤字強調が追加部分である)
児童買春、児童性行為等姿態描写物児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律

(目的)
第一条 この法律は、児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性にかんがみ、あわせて児童の権利の擁護に関する国際的動向を踏まえ、児童買春、児童性行為等姿態描写物児童ポルノに係る行為等を処罰するとともに、これらの行為等により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることにより、児童の権利を擁護することを目的とする。

(定義)
第二条
 この法律において「児童性行為等姿態描写物児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
 殊更に他人が他人が児童の性器等を触り、若しくは殊更に触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態又は殊更に児童の性器等が露出され、若しくは強調されている児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの

(適用上の注意)
第三条 この法律の適用に当たっては、国民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあっては留意しなければならない。

(児童買春)
第四条 児童買春をした者は、七年五年以下の懲役又は五百万円三百万円以下の罰金に処する。

(児童買春周旋)
第五条 児童買春の周旋をした者は、七年五年以下の懲役若しくは七百万円五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

 児童買春の周旋をすることを業とした者は、十年七年以下の懲役及び三千万円千万円以下の罰金に処する。

(児童買春勧誘)
第六条 児童買春の周旋をする目的で、人に児童買春をするように勧誘した者は、七年五年以下の懲役若しくは七百万円五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

 前項の目的で、人に児童買春をするように勧誘することを業とした者は、十年七年以下の懲役及び三千万円以下の罰金に処する。

児童性行為等姿態描写物取得、児童ポルノ提供等)
第七条 みだりに、児童性行為等姿態描写物を有償で又は反復して取得した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。みだりに、電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を有償で又は反復して取得した者も、同様とする。

 児童性行為等姿態描写物児童ポルノを提供した者は、五年三年以下の懲役又は五百万円三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。

 前項に掲げる行為の目的で、児童性行為等姿態描写物児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。

 前項に規定するもののほか、みだりに、、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童性行為等姿態描写物児童ポルノを製造した者も、第二項第一項と同様とする。

 児童性行為等姿態描写物児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、七年五年以下の懲役若しくは七百万円五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。

 前項に掲げる行為の目的で、児童性行為等姿態描写物児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。

 第五項第四項に掲げる行為の目的で、児童性行為等姿態描写物児童ポルノを外国に輸入し、又は外国から輸出した日本国民も、同項と同様とする。

(児童買春等目的人身売買等)
第八条 児童を児童買春における性交等の相手方とさせ又は第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を描写して児童性行為等姿態描写物児童ポルノを製造する目的で、当該児童を売買した者は、一年以上十五年十年以下の懲役に処する。

 前項の目的で、外国に居住する児童で略取され、誘拐され、又は売買されたものをその居住国外に移送した日本国民は、三年二年以上の有期懲役に処する。

(児童の年齢の知情)
第九条 児童を使用する者は、児童の年齢を知らないことを理由として、第五条、第六条、第七条第二項から第七項まで及び前条から前条までの規定による処罰を免れることができない。ただし、過失がないときは、この限りでない。

(国民の国外犯)
第十条 第四条から第六条まで、第七条第一項から第六項第五項まで並びに第八条第一項及び第三項(同条第一項に係る部分に限る。)の罪は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三条の例に従う。

(教育、啓発及び調査研究)
第十四条 国及び地方公共団体は、児童買春、児童性行為等姿態描写物の取得、児童ポルノの提供等の行為が児童の心身の成長に重大な影響を与えるものであることにかんがみ、これらの行為を未然に防止することができるよう、児童の権利に関する国民の理解を深めるための教育及び啓発に努めるものとする。

 国及び地方公共団体は、児童買春、児童性行為等姿態描写物の取得、児童ポルノの提供等の行為の防止に資する調査研究の推進に努めるものとする。

(心身に有害な影響を受けた児童の保護)
第十五条 厚生労働省、都道府県、児童相談所、福祉事務所、市町村その他の関係行政機関関係行政機関は、児童買春の相手方となったこと、児童性行為等姿態描写物児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童に対し、相互に連携を図りつつ、その心身の状況、その置かれている環境等に応じ、当該児童がその受けた影響から身体的及び心理的に回復し、個人の尊厳を保って成長することができるよう、相談、指導、一時保護、施設への入所その他の必要な保護のための措置を適切に講ずるものとする。

 前項の関係行政機関は、同項関係行政機関は、前項の措置を講ずる場合において、同項の児童の保護のため必要があると認めるときは、その保護者に対し、相談、指導その他の措置を講ずるものとする。

(心身に有害な影響を受けた児童の保護のための体制の整備)
第十六条 国及び地方公共団体は、児童買春の相手方となったこと、児童性行為等姿態描写物児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童について専門的知識に基づく保護を適切に行うことができるよう、これらの児童の保護に関する調査研究の推進、これらの児童の保護を行う者の資質の向上、これらの児童が緊急に保護を必要とする場合における関係機関の連携協力体制の強化、これらの児童の保護を行う民間の団体との連携協力体制の整備等必要な体制の整備に努めるものとする。

(心身に有害な影響を受けた児童の保護に関する施策の検証等)
第十六条の二 社会保障審議会は、児童買春の相手方となったこと、児童性行為等姿態描写物に描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童の保護に関する施策の実施状況等について、当該児童の保護に関する専門的な知識経験を有する者の知見を活用しつつ、定期的に検証及び評価を行うものとする。

2 社会保障審議会は、前項の検証及び評価の結果を勘案し、必要があると認めるときは、当該児童の保護に関する施策の在り方について、厚生労働大臣又は関係行政機関に意見を述べるものとする。

3 厚生労働大臣又は関係行政機関は、前項の意見があった場合において必要があると認めるときは、当該児童の保護を図るために必要な措置を講ずるものとする。

(4)附則
(施行期日)
第一条
 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。

(経過措置)
第二条 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

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2008年11月29日 (土)

第135回:総務省・「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」最終取りまとめ(案)に対するパブコメ募集(その1:児童ポルノ規制関連部分)

 次から次へと危険極まりない話が出てくるのは本当にどうにかして欲しいと思うが、今度は総務省から、12月17日〆切で、「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」最終取りまとめ(案)(本文1)に対するパブコメの募集がかかった(総務省のリリース意見募集要領電子政府の該当ページinternet watchの記事)。(内閣官房の犯罪計画案よりは長いが、パブコメ期間についてはおよそ20日間とやはり短いので注意が必要である。)

 この総務省の違法・有害報告書案は、危険度において、内閣官房の犯罪計画案に劣らないどころか、それを上回り、しかも、あまりにも長い上、随所に理解不能の論旨の混乱が見られ、ほとんど読むに耐えないというという非道極まるものである。そのため、ページ順に指摘して行くと訳が分からなくなるので、この報告書案についてはエントリを分けて、各論点毎に問題点を指摘して行きたい。最初に、今回は、今一番危険性が高いと考えられる児童ポルノ関連の記載についてである。

 まず、2.安心を実現する基本的枠組の整備中の第23~24ページの「(1)安心ネット利用のための基本法制の整備等」「3)自主的取組を促進する法制の在り方」で、

 主要な社会的法益侵害情報のうち、児童ポルノ公然陳列については、海外から対策を求める声が上がっており、国会においても児童ポルノ禁止法改正案が提出され、警察庁も2008年度の総合セキュリティ対策会議の検討課題として「インターネット上での児童ポルノの流通に関する問題とその対策」を取り上げるなど国内外で問題意識の高まりがみられる。児童ポルノ関係の情報については、社会的法益侵害情報と整理されるが、被害児童が存在するため権利侵害の側面もあることから、他の類型の社会的法益侵害情報と比較して、緊急に対処する必要性が高い場合が少なくないとの指摘もある

と根拠なく規制強化のニーズを騙り(海外からの声として、根拠のない米シーファー大使の発言など持ってくるあたりタチの悪さの極みである)、第25ページで、

 なお、社会的法益侵害情報といっても類型ごとに緊急性や問題性の度合いや内容は様々であり、社会的法益侵害情報全般でなく、例えば児童ポルノのような優先度の高いと考えられるものについて個別の対処を検討するという考え方もありうるのではないか

と一方的に児童ポルノ規制強化を正当化している点も看過できないが、具体的な児童ポルノ対策について書かれている3.民間における自主的取組の促進「(2)児童ポルノの効果的な閲覧防止策の検討」の内容と来たら、ほとんど狂っているとしか思われない記載のオンパレードである。

 まず、3の「(2)児童ポルノの効果的な閲覧防止策の検討」の第91ページ以下の前置きで、批准未了のサイバー犯罪条約(そもそも、児童ポルノの所持等に関しては留保条項もある)や欧米諸国の狂った規制のみを例に挙げ、内閣府の印象操作調査を引き、インターネット・ホットラインセンターにおける通報件数のみを使って日本における児童ポルノ事件数が多いかの如き印象操作を行っていることからして到底許せるものではないが、第92~93ページの、

1)現在の児童ポルノに対する取組
 インターネット上に児童ポルノ画像等をアップロードすることは、我が国の法律上児童ポルノ公然陳列罪(児童ポルノ規制法第7条第4項)に該当する犯罪行為であり、警察が当該行為者を検挙することが最も根本的な対策であることはいうまでもない。しかしながら、被害児童保護の見地からは、行為者の検挙と併せて、インターネット上での児童ポルノ情報の流通・拡散を可能な限り抑止することも重要である。

 インターネット上の児童ポルノ情報の流通・拡散の抑止という見地からは、アップロードされている情報を削除することが最も確実である。この点、これまで述べたとおり、児童ポルノ情報を含む社会的法益を侵害する違法な情報に対しては、違法情報ガイドラインやモデル条項の策定及びインターネット・ホットラインセンターの活動などを通して、プロバイダ等による自主的な削除が進められており、相応の成果を上げているところである。しかしながら、プロバイダ等による自主的な削除は、基本的に日本国内に存在するサーバに蔵置されている情報に限られ、海外のサーバに蔵置されている児童ポルノ情報については対応が困難である。上述のとおり、インターネット・ホットラインセンターに通報のあった児童ポルノ情報の約3分の1が海外のサーバに蔵置されていたことを考えれば、この点は大きな課題といえる。

 アップロードされた児童ポルノ情報を削除することの他に、ユーザーが閲覧できないようにすることによっても児童ポルノ情報の流通・拡散を抑止することが可能であるところ、大手のISPでは、閲覧防止の手段としてユーザーに対してフィルタリングサービスを提供している。フィルタリングとは、ユーザーがあるサイトにアクセスしようとする場合に、ユーザー側のハードやISP側の通信設備に設定されたフィルターにおいて、ユーザーからリクエストのあったURLと予め作成されている閲覧規制リストとを照合し、規制対象に該当する場合には、接続を拒否するという仕組みである。使用される規制リストについては、専門の業者が収集・分類して作成する方式が一般的であり、児童ポルノ情報についても、いわゆるアダルト系の情報の一内容として閲覧規制リストに載せられているのが通常である。規制リストは日々更新されてISPやユーザーに提供されている。

 この手法によれば、閲覧規制リストにさえ載せれば海外のコンテンツにも対応可能であり、また、閲覧規制リストに抵触するもののみ接続を拒否するものであるから、閲覧規制リストが正確である限り、問題のない情報まで接続拒否されるおそれは少ない。

 他方、通信の宛先をISPなどの媒介者が照合することになるので、通信の秘密と抵触するおそれがあり、利用に当たってはユーザーによる設定又は同意を前提とせざるをえない。そのため、児童ポルノ情報の閲覧を望まず、フィルタリングサービスを自ら設定し又は使用に同意するユーザーに対しては抑止効果があるが、児童ポルノ情報の閲覧を希望し、積極的にインターネット上の児童ポルノ情報を探索するようなユーザーは、フィルタリングサービスを提供されても利用も同意もしないのが通常と思われ、こうしたユーザーに対する抑止効果は期待できないという欠点を持つ。

 フィルタリング以外の閲覧防止策としては、検索エンジンを提供するプロバイダの画像検索におけるセーフサーチの機能がある。これは、画像検索において、ポルノ画像など一定の画像を自動的に解析するなどの方法で検出し、検索結果から除外するという手法であり、検索エンジンでは標準設定とされている場合が多い。この手法によれば、国内外を問わず、ポルノ画像として検出されれば検索結果に現れないため、アクセスがしづらくなり、情報流通を抑制する効果がある。しかし、フィルタリングと同様にセーフサーチ機能を利用するかどうかはあくまでもユーザーの意思に委ねられており、標準設定で適用されることとしていても、ユーザーが適用をオフにすれば機能しなくなるから、やはり閲覧を希望するユーザーに対しての抑止効果は期待できない

 このように、現在でも、さまざまな児童ポルノ対策の取組みがなされているが、現行の取組みは、海外のコンテンツへの対応が困難であり、ユーザーの設定や同意を必要とするため積極的に児童ポルノの閲覧を希望するユーザーに対する抑止効果が限定的であるといった課題を抱えている

という記載に至ってはもはや絶句するしかない。総務省は、ロリコンを思想犯罪化し、国民の情報・表現・思想等々の最も基本的な精神的自由と安全を脅かすと宣言して来たのだ。ここで、拡散・流通といった姑息な言葉による見え透いたごまかしに騙されてはいけない。内閣官房へのパブコメでも書いたし、何度も繰り返して来たことだが、例えそれが児童ポルノであろうと、情報の単純所持や単なる情報アクセスではいかなる被害も発生し得えない。現行法で、ネット上であるか否かにかかわらず、提供及び提供目的の所持まで規制されているのであり、提供によって生じる被害と所持やダウンロード、取得、収集との混同は許され得ないのである。そもそも、最も根本的なプライバシーに属する個人的な情報所持・情報アクセスに関する情報を他人が知ること自体、通信の秘密や情報アクセスの権利、プライバシーの権利等の基本的な権利からあってはならないことである。海外サーバーの児童ポルノコンテンツについても、児童ポルノの提供が罪になっていない主要国もないのであろうから、日本の警察なりが海外の捜査機関に協力すれば良いだけの話である。例え児童ポルノだろうが、新たな思想犯罪を作り、国民の情報・表現・思想等々の最も基本的な精神的自由と安全を脅かす理由には全くならない。

 さらに、第93ページ以下の「2)海外における児童ポルノ対策の現状」で狂ったキリスト教欧米諸国の規制のみを取り上げた上で、第96ページ以下の「3)今後とりうる手法」において、ブロッキングについて、

 DNSポイズニング方式、ハイブリッドフィルタリング方式のいずれも、今後の児童ポルノ情報の閲覧防止策として期待の持てる手法といえるが、どちらの方式にも一長一短あり、それぞれに解決すべき課題を抱えている。それらの課題の具体的な解決策については、今後の議論を待つ必要があるが、DNSポイズニング方式におけるオーバーブロッキングの点は、例えば特に悪質な児童ポルノ関係サイトに限定してブロックするなど、運用上の工夫によりある程度回避することが可能ではないかと考えられる。又はイブリッドフィルタリング方式については、現状では通信の秘密との関係の整理は容易ではないが、児童ポルノの単純所持が違法化される法改正の動向によっては、整理できる可能性もある

 なお、別の視点として、適法なサイトやファイルが誤ってブロッキングの対象となってしまった場合の扱いについても併せて考えておく必要がある。現行法の「児童ポルノ」の定義については、個別の事例において該当するか否かの判断が難しいという指摘がなされている。「児童ポルノ」の定義については立法措置等により可能な限り明確化・客観化が図られることが望ましいが、児童ポルノか否か判然としないコンテンツの出現は不可避であり、誤って適法な情報がブロッキングの対象となる事態は起こりうる。しかも、ブロッキングの対象とされた場合でも、自分のサイトがブロッキング対象となっているかどうかは、当然に知りうるわけではない。そのため、自分のサイト等がブロッキングされているかどうかを知りうる手段を用意するとともに、ユーザーからの反論を受け付け、必要に応じて規制対象リストから除外できるようにする仕組みが必要になると考えられる

と勝手に肯定的に評価し、検閲に該当するとしか思えないブロッキングの導入を既定路線としようとしている点も度し難い。総務省なり警察庁なりの下心はブロッキングサイト指定機関への天下りにあるのだろうが、総務省なり警察なり天下り先の検閲機関・自主規制団体なりの恣意的な認定により、全国民がアクセスできなくなるサイトを発生させるなど、絶対にやってはならないことである。例えそれが何であろうと、情報の単純所持や単なる情報アクセスではいかなる被害も発生し得えないのであり、自主的な取組という名目でいくら取り繕おうとも、憲法に規定されている表現の自由(知る権利・情報アクセスの権利)や通信の秘密、検閲の禁止と言った国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないブロッキングもまた導入されてはならない規制の一つである。

(なお、第34ページには、憲法上の検閲の禁止について、過去の最高裁の判決を引いてあたかも狭く解釈ができるかの如きことが書かれているが、学説上は必ずしもそのような狭い解釈が取られている訳ではなく、この最高裁判決自体、昨今のインターネットの普及を踏まえたものでなく今日もなお通用するかどうか怪しいものである。今日ではインターネット上でしか発表・流通の機会を持たない表現物が既に多く存在しているのであり、ブロッキングのような規制は、例え事後規制だろうと、そのような表現物の発表・流通を完全に抑制しかねないものであり、やはり検閲に該当すると考える方が妥当だと私は考えている。)

 そして最後に、第99~100ページで、このような破綻した論理展開の帰結として、

4)今後のインターネット上の児童ポルノ情報対策の方向性
 インターネット上の児童ポルノ情報についての対策としては、インターネット上に児童ポルノ情報をアップロードした者を検挙することが最も根本的な対策であり、また、流通・拡散の抑止の観点からは当該情報を削除することが最も確実な対策であるから、これらの方策の必要性はいささかも減じておらず、引き続き、警察による取締り強化とプロバイダ等による自主的な削除の促進が求められる。

 フィルタリングなど現在とられている閲覧防止策についても、更なる普及の促進と性能の向上を図る必要があるところ、フィルタリングの性能向上にあたっては、閲覧規制リストの精度の向上が重要である。現在、閲覧規制リストは個々のISPやフィルタリング事業者単位で作成しているが、精度の更なる向上のためには、事業者同士のほか、児童ポルノ問題に取り組んでいる国内外の団体、警察などの行政機関との連携を強め、情報の共有を図っていくことが不可欠である。

 また、ブロッキングについては、今後の閲覧防止策として期待できるものであるが、解決すべき課題を抱えている。ブロッキングを実効性と実現可能性を兼ね備えた方策とするためには、今後、海外における運用実態の調査研究をしつつ、これを踏まえて課題の解決方法について検討を深めること、趣旨に賛同するISPの協力を得て実証実験等を実施し、実際の効果や弊害を測定すること等の作業が不可欠である。

 今後、これまでも述べてきた民間の自主的取組を進める産学連携の新たな組織に、児童ポルノ情報対策を進める枠組みを設け、これに警察、総務省などが協力して検討を行っていくことが望ましい。できれば本年度中に、具体的な作業部会等を設置し、必要な調査を進めながら、2009 年度中には、例えば、実証事業への着手など、次のステップに進めるよう、関係者間で協力すべきである。

非常に危険な方向性を示しており、この違法・有害報告書案のパブコメにも、児童ポルノ対策については今以上の規制は必要ないこと、特に単純所持規制・創作物規制のような情報・表現に関する国民の基本的な権利を侵害する危険な規制は導入するべきでないこと、やはり情報・表現に関する国民の基本的な権利を侵害するものとならざるを得ないブロッキングについても、その実証実験すらするべきではないこと等の意見を出す必要があると私は思っている。

 既に「チラシの裏(3週目)」で突っ込まれている通り、「児童の性的搾取に反対する世界会議」が児童ポルノの閲覧まで犯罪化しろという狂った魔女狩り宣言をまとめようとしているなど、児童ポルノ規制関係は、今非常に危険な状態にあり、まずは、児童ポルノ関連部分を取り上げたが、この総務省の違法・有害報告書案は、全て白紙に戻して検討し直すべきだと思うくらい危険な点が山盛りなので、次のエントリも引き続きこの報告書案の話をする。

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2008年11月18日 (火)

番外その14:前通常国会・今臨時国会に提出されている自民党の児童ポルノ規制法改正案と関連請願

 今のところ、他の重要法案や事案でしばらく国会が空転してくれそうではあるが、解散総選挙がかなり伸びそうなこともあり、児童ポルノ規制法改正問題は今なお危険な情勢にある。自分用に作ったメモなのだが、衆議院参議院のHPの前通常国会と今臨時国会の児童ポルノ規制法改正関連の情報は、まとめて探すのが結構面倒なので、ここにも載せておきたいと思う。

 なお、第169回の通常国会で提出された児童ポルノ規制法改正法案の継続審議には、国会法の以下の第47条第2項と第68条で定められている閉会中の委員会審査による継続審議を使っている。今国会で議決されなかった場合も、また継続審議にされる可能性が高く、この問題に関しては法案が完全に廃案にされるまで気は抜けない。

第47条第2項 常任委員会及び特別委員会は、各議院の議決で特に付託された案件(懲罰事犯の件を含む。)については、閉会中もなお、これを審査することができる。

第68条 会期中に議決に至らなかつた案件は、後会に継続しない。但し、第47条第2項の規定により閉会中審査した議案及び懲罰事犯の件は、後会に継続する。

 参考までに、この関連資料中に出てくる議員の名前を最初にまとめておく。(この問題に関してきちんと反対をして下さる議員がいるのは本当に有り難い。ただし、第96回で書いたように民主党案の児童ポルノの取得罪も単純所持罪と同じく危険であることに変わりはなく、関係議員もこれだけではないので念のため。)

<改正法案提出者>
 森山眞弓wiki公式HP):自民・衆・栃木2区
 他2名

<単純所持及び創作物の規制に反対する請願の紹介議員>
 保坂展人wiki公式HP):社民・衆・東京ブロック(次回衆院選では東京8区で公認予定)
 鈴木 寛wiki公式HP):民主・参・東京都
 中村哲治wiki公式HP):民主・参・奈良県
 松浦大悟wiki公式HP):民主・参・秋田県

<単純所持の規制を求める請願の紹介議員>
 有村治子wiki公式HP):自民・参・比例19年
 亀井郁夫wiki公式HP):国民新・参・広島県
 島尻安伊子wiki公式HP):自民・参・沖縄県

<単純所持及び創作物規制を求める請願の紹介議員>
 自見庄三郎wiki公式HP):国民新・参・比例19年

<アダルトゲームの規制を求める請願の紹介議員>
 村井宗明wiki公式HP):民主・衆・北陸信越ブロック(次回衆院選では、富山1区で公認予定)
 下田敦子wiki公式HP):民主・参・比例16年
 円より子wiki公式HP):民主・参・比例16年

<日本を児童ポルノ大国と決めつける米シーファー大使の発言を批判した議員>
 吉田泉wiki公式HP):民主・衆・東北ブロック(次回衆院選では、福島5区で公認予定)

法律案は改め文で読みにくいので、現行法から、条文の形に書き直した。赤字強調部が追加部分である。変更のない条文は省略している。) 

(1)法律(提出者:森山眞弓(自民)他2名)
(適用上の注意)
第三条 この法律の適用に当たっては、国民の権利を不当に侵害しないように留意し、児童に対する性的搾取及び性的虐待から児童を保護しその権利を擁護するとの本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあってはならないなければならない

第六条の二(新規) 何人も、みだりに、児童ポルノを所持し、又は第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録を保管してはならない。

(児童ポルノ所持、提供等)
第七条 自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。自己の性的好奇心を満たす目的で、第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録を保管した者も、同様とする。
2 児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
 前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項第一項と同様とする。
 児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
 第五項第四項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを外国に輸入し、又は外国から輸出した日本国民も、同項と同様とする。

(児童の年齢の知情)
第九条 児童を使用する者は、児童の年齢を知らないことを理由として、第五条、第六条、第七条第二項から第七項まで及び前条から前条までの規定による処罰を免れることができない。ただし、過失がないときは、この限りでない。

(国民の国外犯)
第十条 第四条から第六条まで、第七条第一項から第六項第五項まで並びに第八条第一項及び第三項(同条第一項に係る部分に限る。)の罪は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三条の例に従う。

(両罰規定)
第十一条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第五条、第六条又は第七条第二項から第七項から第七条までの罪を犯したときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。

(捜査及び公判における配慮等)
第十二条 第四条から第六条まで、第七条及び第八条第八条までの罪に係る事件の捜査及び公判に職務上関係のある者(次項において「職務関係者」という。)は、その職務を行うに当たり、児童の人権及び特性に配慮するとともに、その名誉及び尊厳を害しないよう注意しなければならない。
2 国及び地方公共団体は、職務関係者に対し、児童の人権、特性等に関する理解を深めるための訓練及び啓発を行うよう努めるものとする。

(記事等の掲載等の禁止)
第十三条 第四条から第六条まで、第七条及び第八条第八条までの罪に係る事件に係る児童については、その氏名、年齢、職業、就学する学校の名称、住居、容貌等により当該児童が当該事件に係る者であることを推知することができるような記事若しくは写真又は放送番組を、新聞紙その他の出版物に掲載し、又は放送してはならない。

(教育、啓発及び調査研究)
第十四条 国及び地方公共団体は、児童買春、児童ポルノの所持、提供等の行為が児童の心身の成長に重大な影響を与えるものであることにかんがみ、これらの行為を未然に防止することができるよう、児童の権利に関する国民の理解を深めるための教育及び啓発に努めるものとする。
2 国及び地方公共団体は、児童買春、児童ポルノの提供等の行為の防止に資する調査研究の推進に努めるものとする。

(インターネットの利用に係る事業者の努力)
第十四条の二 インターネットを利用した不特定の者に対する情報の発信又はその情報の閲覧等のために必要な電気通信役務(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第三号に規定する電気通信役務をいう。)を提供する事業者は、児童ポルノの所持、提供等の行為による被害がインターネットを通じて容易に拡大し、これによりいったん国内外に児童ポルノが拡散した場合においてはその廃棄、削除等による児童の権利回復は著しく困難になることにかんがみ、捜査機関への協力、当該事業者が有する管理権限に基づき児童ポルノに係る情報の送信を防止する措置その他インターネットを利用したこれらの行為の防止に資するための措置を講ずるよう努めるものとする。

(国際協力の推進)
第十七条 国は、第四条から第八条までの規定に係る行為の防止及び事件の適正かつ迅速な捜査のため、国際的な緊密な連携の確保、国際的な調査研究の推進その他の国際協力の推進に努めるものとする。

(2)附則
(施行期日等)
第一条 この法律は、平成二十年十一月二十日から施行する。
2 この法律による改正後の第七条第一項の規定は、この法律の施行の日から一年間は、適用しない。

(検討)
第二条 政府は、漫画、アニメーション、コンピュータを利用して作成された映像、外見上児童の姿態であると認められる児童以外の者の姿態を描写した写真等であって児童ポルノに類するもの(次項において「児童ポルノに類する漫画等」という。)と児童の権利を侵害する行為との関連性に関する調査研究を推進するとともに、インターネットを利用した児童ポルノに係る情報の閲覧等を制限するための措置(次項において「インターネットによる閲覧の制限」という。)に関する技術の開発の促進について十分な配慮をするものとする。

2 児童ポルノに類する漫画等の規制及びインターネットによる閲覧の制限については、この法律の施行後三年を目途として、前項に規定する調査研究及び技術の開発の状況等を勘案しつつ検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。

(調整規定)
第三条 犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律(平成二十年法律第▼▼▼号)の施行の日がこの法律の施行の日後となる場合には、犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律の施行の日の前日までの間における児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律(平成十六年法律第百六号)附則第三条の規定の適用については、同条中「第七条第四項」とあるのは「第七条第五項」と、「第五項」とあるのは「第六項」と、「第六項」とあるのは「第七項」とする。

第四条 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和二十三年法律第百二十二号)の一部を次のように改正する。
 第四条第一項第二号ホ中「第八条まで」を「第六条まで、第七条又は第八条」に改める。
 第三十五条及び第三十五条の二中「第七条」を「第七条第二項から第七項まで」に改める。

(刑事訴訟法の一部改正)
第五条 刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の一部を次のように改正する。
 第百五十七条の四第一項第二号及び第二百九十条の二第一項第二号中「第八条まで」を「第六条まで、第七条若しくは第八条」に改める。

(3)理由
 児童ポルノに係る行為の実情、児童の権利の擁護に関する国際的動向等にかんがみ、児童ポルノをみだりに所持すること等を一般的に禁止するとともに、自己の性的好奇心を満たす目的での児童ポルノの所持等を処罰する罰則を設け、あわせて、インターネットの利用に係る事業者について児童ポルノの所持、提供等の行為の防止措置に関する規定を整備する等の必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

(4)法律案要綱
第一 適用上の注意規定の明確化
 この法律の適用に当たっては、国民の権利を不当に侵害しないように留意し、児童に対する性的搾取及び性的虐待から児童を保護しその権利を擁護するとの本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあってはならないものとすること。(第三条関係)

第二 児童ポルノ所持等の禁止等
 一 児童ポルノ所持等の禁止
   何人も、みだりに、児童ポルノを所持し、又はこれに係る電磁的記録を保管してはならないものとすること。(第六条の二関係)
 二 自己の性的好奇心を満たす目的での児童ポルノ所持等についての罰則
  1 自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処するものとすること。同様の目的で、これに係る電磁的記録を保管した者も、同様とすること。(新第七条第一項関係)
  2 1に係る国民の国外犯は、これを処罰するものとすること。(第十条関係)

第三 インターネットの利用に係る事業者の努力
 インターネットを利用した不特定の者に対する情報の発信又はその閲覧等のために必要な電気通信役務を提供する事業者は、児童ポルノの所持、提供等の行為による被害がインターネットを通じて容易に拡大し、これによりいったん国内外に児童ポルノが拡散した場合においてはその廃棄、削除等による児童の権利回復は著しく困難になることにかんがみ、捜査機関への協力、その管理権限に基づき児童ポルノに係る情報の送信を防止する措置その他インターネットを利用したこれらの行為の防止に資するための措置を講ずるよう努めるものとすること。(第十四条の二関係)

第四 その他
 一 施行期日等
  1 この法律は、平成二十年十一月二十日(国際連合において「世界の子どもの日」と定められている日)から施行するものとすること。(附則第一条第一項関係)
  2 第二の二の1(自己の性的好奇心を満たす目的での児童ポルノ所持等についての罰則)は、この法律の施行の日から一年間は、適用しないものとすること。(附則第一条第二項関係)
 二 検討
  1 政府は、児童ポルノに類する漫画等(漫画、アニメ、CG、擬似児童ポルノ等をいう。)と児童の権利を侵害する行為との関連性に関する調査研究を推進するとともに、インターネットによる児童ポルノに係る情報の閲覧の制限に関する技術の開発の促進について十分な配慮をするものとすること。(附則第二条第一項関係)
  2 児童ポルノに類する漫画等の規制及びインターネットによる児童ポルノに係る情報の閲覧の制限については、この法律の施行後三年を目途として、1の調査研究及び技術の開発の状況等を勘案しつつ検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとすること。(附則第二条第二項関係)
 三 その他
   その他所要の規定の整備を行うこと。

(5)関連請願
<第170回臨時国会>
(衆議院)

件名児童買春・児童ポルノ禁止法改正に当たり、拙速を避け、極めて慎重な取り扱いを求めることに関する請願
受理番号:40
紹介議員:保坂展人(社民)
署名者通数:255名
付託委員会:法務委員会

件名美少女アダルトアニメ雑誌及び美少女アダルトアニメシミュレーションゲームの製造・販売を規制する法律の制定に関する請願
受理番号:120/153
紹介議員:村井宗明(民主)
署名者通数:10,449名
付託委員会:法務委員会

(参議院)
件名:児童買春・児童ポルノ禁止法改正に当たって、拙速を避け、極めて慎重な取扱いを求めることに関する請願 
受理番号:303/328/378
紹介議員:中村哲治(民主)/松浦大悟(民主)/鈴木寛(民主)
受理年月日:H20.10. 30/H20.10.31/H20.11.10
付託年月日:H20.11. 7/H20.11.14
付託委員会:法務委員会
要旨
 「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」(以下「同法」)の改正に当たり、児童ポルノという法の呼称ゆえに誤解の多い同法をより適切な形に改めるよう求め、国民的議論と合意形成が十分でない現況での児童ポルノ単純所持罪の新設といった罰則の強化などに対して、慎重な取扱いを要請する。
 ついては、国民的な認識が不十分なまま、議論を尽くさない拙速な法改正とならないよう、次の事項について実現を図られたい。

一、「児童ポルノ」の定義を、精密かつ明確なものとすること。
二、画像・映像等の「所持、取得」に関して新たな罰則を設けないこと。
三、「イラスト」等の被害者の存在しない創作物を、同法の範囲に含めないこと。
四、法律名を「児童性虐待防止法」等の適切なものに改め、法律名に「児童ポルノ」の言葉を用いないこと。
五、「三年を目途」とする法改正検討の要請を削除し、必要が生じたときに改正を検討すること。

<第169回通常国会>
(衆議院)

件名児童買春、児童ポルノ禁止法改悪反対に関する請願
受理番号:4943
紹介議員:保坂展人(社民)
署名者通数:151名
付託委員会:青少年問題に関する特別委員会
審査結果:審査未了 

(参議院)
件名:美少女アダルトアニメ雑誌及び美少女アダルトアニメシミュレーションゲームの製造・販売を規制する法律の制定に関する請願
受理番号:2525/2550
紹介議員:円より子(民主)/下田敦子(民主)
受理年月日:H20. 5.14/H20. 5.15
付託年月日:H20. 5.23
付託委員会:内閣委員会
審査結果:審査未了
要旨
 街中に氾濫(はんらん)している美少女アダルトアニメ雑誌やゲームは、小学生の少女をイメージしているものが多く、このようなゲームに誘われた青少年の多くは知らず知らずのうちに心を破壊され、人間性を失っており、既に幼い少女が連れ去られ殺害される事件が起きている。これらにより、幼い少女たちを危険に晒(さら)す社会をつくり出していることは明らかで、表現の自由以前の問題である。社会倫理を持ち合わせていない企業利潤追求のみのために、幼い少女を危険に晒している商品を規制するため、罰則を伴った法律の制定を急ぐ必要がある。
 ついては、美少女アダルトアニメ雑誌及び、美少女アダルトアニメシミュレーションゲーム製造及び販売規制の罰則を伴った法律を制定されたい。

件名:青少年健全育成のための有害図書類・有害情報に関する法整備を求めることに関する請願
受理番号:3262/3422/3469
紹介議員:島尻安伊子(自民)/有村治子(自民)/亀井郁夫(民主)
受理年月日:H20. 6. 3/H20. 6. 4/H20. 6. 5
付託年月日:H20. 6. 6/H20. 6.10/H20. 6.10
付託委員会:内閣委員会
審査結果:審査未了
要旨
 インターネット上に有害情報(残虐サイト、犯罪や殺人、ポルノや自殺サイト等)が氾濫(はんらん)し、青少年が犯罪に巻き込まれる例が相次いでいる。有害図書類・有害情報をこれ以上放置しておくことはできない。
 ついては、次の事項について実現を図られたい。

一、児童ポルノの単純所持の禁止を始め、有害図書規制の法制化をすること。
二、インターネット上の有害情報を削除するシステムをつくること。
三、携帯電話会社等には、フィルタリングサービスの提供を義務付けること。
四、罰則規定を設け、法律の実効性を確実なものとすること。

件名:児童買春、児童ポルノ禁止法改悪反対に関する請願
受理番号:3557
紹介議員:松浦大悟(民主)
受理年月日:H20. 6. 5
付託年月日:H20. 6.10
付託委員会:法務委員会
審査結果:審査未了
要旨
 現在、自民、民主、公明党などにおいて児童ポルノの所持、取得を新たに規制・罰則化する、イラスト等の創作物も児童ポルノの範囲に含めるか議論されている。そもそも児童ポルノの厳密な定義を行うことは非常に難しく、その上所持、取得にまで規制・罰則を設けることは、多くの冤罪(えんざい)発生や、捜査権の濫用、プライバシーの侵害や、監視国家化が引き起こされる可能性が高く、市民生活が著しく脅かされることを危惧(きぐ)する。また、イラスト等の被害者の存在しない創作物も、規制・処罰範囲に含めるべきとの議論は、実在する児童を守る、本来の保護法益から外れ、憲法に定められた表現の自由を害する。
 ついては、次の事項について実現を図られたい。

一、「児童買春、児童ポルノ禁止法」を改正しないこと。

件名:子供ポルノ問題に関する請願
受理番号:3662
紹介議員:自見庄三郎(民主)
受理年月日:H20. 6. 6
付託年月日:H20. 6.10
付託委員会:内閣委員会
審査結果:審査未了
要旨
 児童買春・児童ポルノ等禁止法の施行以来、毎年数百件の児童ポルノ事件が摘発され、増加の一途をたどっており、子供に性的ポーズを取らせた映像がアダルトビデオとして、欧米では法律等で禁じられている子供への性的虐待を描いたアニメ・漫画やゲームソフト、また児童ポルノをタイトルとするビデオが販売されるなど、子供の性が成人向けの商品として取引されているが、現行法では、警察も有効な打つ手を持ち得ない。「子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議」で、日本は子どもポルノの一大生産国・輸出国であるばかりでなく、そうした状況に取り組んでいない加害国と非難され、その後、政府・市民で取り組んだ反子供買春・ポルノ・人身売買キャンペーンの成果として現行法が成立し、その取組と成果が国際的に評価された。しかし、昨今のインターネットや携帯電話の驚異的な発達や普及は、環境を激変させ、日本のみならず、世界の子供たちも子どもポルノという名の被害にさらされ続けている。
 ついては、次の事項について実現を図られたい。

一、児童買春・児童ポルノ等禁止法の処罰対象となるか否かを問わず、子供に対する性的虐待を性目的で描写した写真、動画、漫画、アニメーションなどを製造、譲渡、貸与、広告・宣伝する行為に反対すること。
二、メディア、各種通信事業、IT事業、ソフト・コンテンツ製造・制作・販売等の各業者、業界、並びに関連団体による上記一に示す著作物等の流布・販売を自主的に規制・コントロールする官民を挙げた取組を応援するとともに、より一層取り組むこと。

件名:子供ポルノ問題のための、児童買春・児童ポルノ等禁止法の改正、厳格な適用等に関する請願
受理番号:3663
紹介議員:自見庄三郎(民主)
受理年月日:H20. 6. 6
付託年月日:H20. 6.10
付託委員会:法務委員会
審査結果:審査未了
要旨
 児童買春・児童ポルノ等禁止法の施行以来、毎年数百件の児童ポルノ事件が摘発され、増加の一途をたどっており、子供に性的ポーズを取らせた映像がアダルトビデオとして、欧米では法律等で禁じられている子供への性的虐待を描いたアニメ・漫画やゲームソフト、また児童ポルノをタイトルとするビデオが販売されるなど、子供の性が成人向けの商品として取引されているが、現行法では、警察も有効な打つ手を持ち得ない。「子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議」で、日本は子どもポルノの一大生産国・輸出国であるばかりでなく、そうした状況に取り組んでいない加害国と非難され、その後、政府・市民で取り組んだ反子供買春・ポルノ・人身売買キャンペーンの成果として現行法が成立し、その取組と成果が国際的に評価された。しかし、昨今のインターネットや携帯電話の驚異的な発達や普及は、環境を激変させ、日本のみならず、世界の子供たちも子どもポルノという名の被害にさらされ続けている。
 ついては、次の事項について実現を図られたい。

一、政府・国会に対し、児童買春・児童ポルノ等禁止法の改正を含め、下記各点に対する早急な対応をすること。
 1 他人への提供を目的としない児童ポルノの入手・保有(単純所持)を禁止し処罰の対象とすること(第七条)。
 2 被写体が実在するか否かを問わず、児童の性的な姿態や虐待などを写実的に描写したものを、準児童ポルノとして違法化すること(第二条)。具体的には、アニメ、漫画、ゲームソフト及び一八歳以上の人物が児童を演じる場合もこれに含むこと。
 3 国及び地方公共団体による児童の権利に関する国民の理解を深めるための教育及び啓発を義務付けること(第一四条)。
 4 児童ポルノ等の被害から、心身に有害な影響を受けた児童の保護のための体制を整備すること。そのために具体的な計画の策定を国に義務付け、担当省庁に実施結果を国会に報告する義務を課すこと(第一六条)。
二、検察・裁判所始めすべての法曹・司法関係者に対し、子どもポルノが子供の人権並びに福祉に対する重大な侵害行為であるとの基本認識の下、児童買春・児童ポルノ等禁止法事犯に対し厳格に同法を適用し、刑を科すこと。

(6)第169回通常国会・平成20年4月10日の青少年問題に関する特別委員会における吉田泉議員(民主)の質問と井上美昭警察庁審議官・秋元義孝外務省審議官・上川陽子男女共同参画担当大臣の応答

○吉田(泉)委員 民主党の吉田泉です。

 私の方からは、最近、議論が始まりました児童買春、児童ポルノ禁止法、これに関連してお伺いをいたします。

 この法律は、制定されたのが平成の十一年、その後、平成十六年に改正をされました。それからもう四年が経過しましたので、いわゆる予定された見直しの時期に来ているという段階であります。

 そうしたところ、去る一月三十日、アメリカのシーファー駐日大使が、読売新聞でしたが、この件で投稿をされました。そして、そこで、日本の児童ポルノ法の所有を非合法化する方向で法改正をすべきだと。ここで大使が言っている所有というのはいわゆる単純所持ということだと思いますが、そういう方向で日本の法律を改正すべきだ、こういう主張をされたわけであります。それが一つのきっかけになったと思いますが、法改正の検討が始まっているという段階だと思います。

 私は、これは大変異例の展開だ、外国の大使から指摘を受けて法改正というのは異例の展開だなと思っているわけでございます。本格的な法改正論議はいずれされるわけですが、きょうはその前段ということで、いわゆる現状認識、特に日本はいまだに児童買春、児童ポルノ大国であるのか、もしそうだとしたら、我々は今すぐ何をやらなければならないのか、そういう問題意識から質疑をしていきたいというふうに思います。

 まず、全体の状況ですけれども、この問題に関して国際的な動きを振り返りますと、平成十二年、いわゆる議定書というものがニューヨークで策定されました。これは児童の売買、買春、ポルノに関する児童の権利条約の選択議定書という議定書であります。それによって、各国の法整備に関する共通の目標ができたということだと思います。それから八年たったわけでありますが、各国ともこの法整備に、そしてそれに基づく取り締まりに努力をしてまいりました。

 そこで、まず、八年たって、その間、児童の売買、買春、ポルノに関して、国内、海外ともにこの状況というのがどういうふうに改善されてきたのでしょうか。特に、日本はかつては、法の制定時には、児童ポルノ製造、販売の輸出国である、もしくは児童買春ツアーをアジアに送り出している加害国である、さらには、世界に出回っている児童ポルノの八〇%が日本製だ、そういう指摘を受けておりました。また、国内でも援助交際というのが大変大きな社会問題になっていた時期でありますが、十年近くたって、それらの状況は今全体としてどうなっているのか、お伺いいたします。

○井上政府参考人 お答えいたします。

 平成十一年十一月の児童買春、児童ポルノ禁止法施行後、平成十九年末までに検挙いたしました児童買春事件の検挙件数及び検挙人員は、一万二千二百三十五件、八千百三十七人、児童ポルノ事件の検挙件数及び検挙人員は、二千五百五十五件、千八百二十五人となっております。

 特に、児童ポルノ事件につきましては、平成十七年から検挙件数、検挙人員とも大幅に増加をし、現在まで高水準で推移をしております。この増加につきましては、平成十六年の同法の改正による取り締まりの強化などが要因の一つとして挙げられるものと認識をしております。

 また、国外犯の検挙状況につきましては、これまで、タイ、カンボジア、フィリピンでの日本人による児童買春、児童ポルノ禁止法違反事件で十件、十六名を検挙しております。その内訳は、児童買春事件が六件、六名、児童ポルノ事件が四件、十名となっております。

○吉田(泉)委員 できたら、世界全体の児童売買、買春の状況もお聞きしたかったんですが、手元のデータがないということであります。ことしはブラジルでまたこの国際会議があるということですから、何か世界全体の被害状況というのはあるんじゃないかとは思うんですが、きょうは残念ながらいただけませんでした。全体として世界の状況はよくわからない、日本については、取り締まりの強化もあって児童ポルノの検挙件数が高水準にある、そういうお話でした。

 次の質問ですけれども、この申し上げた選択議定書を日本は四年前に締結したわけであります。締結したということは、この議定書が要求している法整備を完了したという意味であります。よく議論になります日本のアニメーションについても、現行の法律では「その他の物」ということで、一応法の対象にした。そこまで日本は法整備をしたわけであります。

 一方、世界全体を見ますと、児童の権利条約に参加している国というのは百九十四カ国あるわけですが、この選択議定書を締結している国というのは今のところ百二十六カ国だそうであります。ということは、全体で六五%ぐらいの国しかまだこの法整備が済んでいないということだと思います。特に、G8の中でも、ドイツ、イギリス、こういう国がまだ締結をしていない、ロシアに至ってはまだその議定書に署名もしていない、こういう状況であります。

 外務省は、よその国のことですけれども、何か事情があると思うんですが、そういう事情をどう見ておられるのか、お伺いします。

○秋元政府参考人 委員御指摘の選択議定書は、児童の売買、児童買春及び児童ポルノに係る一定の行為の犯罪化、それから裁判権の設定をすること等を規定しているわけでございます。

 委員御指摘のとおり、現在百二十六カ国が締結しておりますけれども、この議定書をより多くの国が締結することは、議定書の実効性を高めていくという観点から大変望ましいことだというふうに考えております。

 ただ、個々の国がこれを締結するかどうかにつきましては、この議定書の意義と国内実施の可能性につきそれぞれの国が判断するということになっておりますために、委員がおっしゃいましたドイツそれから英国、ロシア、こういう国がこの議定書をなぜこれまで締結してこなかったのか、そういう具体的な理由は承知しておりません。

○吉田(泉)委員 事情はわからないということですね。

 各国いろいろな事情があるということしかわかりませんが、例えばアメリカも、この議定書の親条約というんですか、上位の条約である児童の権利条約、こちらに実はまだ参加していない。その中で、G8の中で日本とロシアだけが単純所持を禁じていない、大変この二つの国が法整備がおくれている、こういう印象を世界から持たれているんじゃないかということを、私、客観的に見て、日本はそれなりにきちんとやっておるんだというところをもう少しはっきりさせる必要があるんじゃないか、そんなふうに思っているところです。

 さらに、私の手元にある幾つかのデータを挙げてみたいんですが、各国の比較の数字ですね。一つは強姦数であります。これは児童も含めた、十八歳以上の人も含めた数字ではございますけれども、国連の犯罪統計によると、十万人当たりの強姦認知件数、一番多いのがカナダ七十八人、次がアメリカ三十二人。一方、日本は二人弱だというわけですね。G8の中で一番低い。しかも、日本の場合は四十年前と比べて十分の一ぐらいに減っているという数字が一つあります。

 それから、二つ目の数字は、児童ポルノの利用度。これの各国比較ですが、これはイタリアの児童保護団体の数字ですが、アメリカが全体の二三%を占める、ドイツが一五%、ロシアは八%。それに対して、日本は二%弱。これもまたG8で一番低い、児童ポルノの利用度ですね。

 三番目の数字は、今度は児童ポルノの発信度です。これは、英国のインターネット監視財団という半官半民の財団、これの数字によると、アメリカが全体の五四%、ロシアが二八%、ヨーロッパが八%、アジアが七%。日本はそのアジアの中に入っているわけですから、これも日本はせいぜい数%というデータがあります。

 何かこういう数字を見ますと、私は、日本は、性犯罪、そして児童ポルノの利用さらには発信、いずれもG8の中では一番低いレベルにあるんじゃないかというふうに推測したわけであります。ところが、シーファー大使の御発言に戻りますけれども、この新聞の投稿文の中で大使は、日本とアメリカが児童ポルノの二大消費国である、こういうふうに言っているわけであります。

 外務省に、これをどう見たらいいのか、一体、大使はどういう事実に基づいてこういうことを言っておられると推測されるのか、お伺いします。

○秋元政府参考人 委員御指摘のとおり、いろいろなNGOが出しています統計というのはありますけれども、国際的に認知された公的な統計というのは、残念ながらない。したがいまして、正確な国別の比較を行うことは難しいんだろうと思います。そういうことで、シーファー大使がいかなる統計に基づいて日米は児童ポルノの二大消費国だと述べているかということは、わかりません。

 他方、児童ポルノというのは、今日、インターネットの普及によりまして、国境に制約されることなく発信、流通されております。したがいまして、多くの国が協力して取り組むべきだということは言うまでもないことなんだと思います。

 シーファー大使の発言を私どもが解釈する立場にはございませんけれども、恐らくこの問題は、供給の側のみならず、需要の面からも取り組む必要があり、したがいまして、児童ポルノの国内での消費という問題を抱える日米両国が協力して取り組むべきだという考え方を述べたものだと理解しております。

○吉田(泉)委員 共通で取り組むべき課題であることは間違いないんですが、世界で二大消費国だ、こう言われたからには、やはりこちら側も、もし反論が必要なら反論する必要があるんじゃないか、そこだけ申し上げたいと思います。

 それから、シーファー大使の投稿文の中で、こういうことも言っているんですね。成人ポルノと違って、子供は自発的に当事者となったのではない、報酬も得ていない、児童ポルノの多くの被害者は十二歳未満である、小学生である、こう言っているんです。

 ただ、日本で一番問題になっているのは、中学校、高校生の援助交際ですよね。そういう意味では、この大使の指摘、大半が十二歳以下だという指摘は、日本ではちょっと事実と言えないのではないかと思うんですが、これは警察庁の方に国内の事情を伺います。

○井上政府参考人 平成十九年中に検挙いたしました児童ポルノ事件で保護した児童は三百四名であります。被害児童の年齢別の統計はとっておりませんが、学職別では、未就学が六名、小学生二十七名、中学生百七名、高校生百四十六名、有職少年六名、無職少年十二名となっております。

 お尋ねの十二歳未満の被害児童数は、最大限で、未就学に小学生を加えた三十三名、一〇・九%というふうな数字になっております。

 以上であります。

○吉田(泉)委員 そうしますと、日本の国内の状況には大使のこの発言はそぐわないんじゃないかと思うんですが、なぜこうなるかというと、やはり大使が考えている児童ポルノというものと我々が法律で考えている児童ポルノの何か定義の食い違いというようなものが背景にあるんじゃないか、そこをこれからの法改正論議の中でもう少しはっきりさせる必要があるんじゃないか、こんなふうに思うところであります。

 最後になりますけれども、上川大臣に最後に御所見をちょうだいしたいんですが、このシーファー大使の御発言の中にこういう言い方があるんですね。児童ポルノを見ることと子供への性的虐待というのは大きく関係しているんだと。見ること自体が虐待につながりやすいんだ、こういう発言があります。いわば、大使の主張である単純所持というのを禁止すれば性的虐待というのも減るはずだ、こういう大使の持論でありますが、実は、その両方の関係、根拠というのは、余り科学的に明らかにされていない、統計学的に明らかにされていないという指摘もございます。それから、先ほどから申し上げている国際的な議定書でも、この単純所持というのを禁止しなくちゃいけないということにはなっていないと私は思います。

 今後、この単純所持というものをどう扱うか、大きな議論になっていくと思いますが、上川大臣、青少年の健全育成担当大臣として、この児童買春、児童ポルノの問題に関して、今まで出たような被害の状況等を踏まえて、御所見をお伺いしたいと思います。

○上川国務大臣 児童買春そして児童ポルノにつきましては、児童の心身の健やかな成長を阻害するという意味で、極めて重大な問題であるというふうに思っております。大人が児童に対し性的な搾取やまた性的な虐待を行うという意味で、断じて許しがたいものであるというふうに認識をいたしております。

 児童買春や児童ポルノの被害の現状につきましては先ほど報告がありましたが、私は、数ということ、量ということではなくて、やはり質的な意味で、このことが起きているということ自体は大変許しがたいというふうに思っております。

 また同時に、海外からインターネットで情報が流通していくグローバルなネット社会でありまして、そういう中で、子供たちがその意味での犠牲になっていくということについては、やはり国際的な連携の中でしっかりと取り組んでいくべきことではないかというふうに思っております。

 この問題につきましては、先ほど委員からの御指摘のとおり、児童ポルノの単純所持の規制等につきまして、議員立法によっての改正ということで議論がされていると承知しておりまして、こうした議論の動向をしっかりと見守りたいというふうに思っております。

 また、児童買春、児童ポルノ法、この法律を所管する各関係の省庁が力を合わせて取り締まりや保護等の取り組みが行われている、このことがやはり青少年の健全な育成ということについて大変大事なことでございますので、こうした取り組みについての一層の連携をとって子供を守っていきたいというふうに思っております。

 世界的な子供をめぐる問題につきましては、最悪の状態の児童労働ということの中の一つとしてこの問題を取り上げられ、また、人身取引の一つの大きな消費というか、人身取引の目的がこの児童ポルノの問題にもかかわってくるということであります。そういう意味では、それにかかわる需要側のところを取り締まることによって供給のところの根をとめることができる、こういう相互の連関があるというふうに考えておりますので、そういった点もまず議論をしっかりとしていただきたいと思いますし、また、そういう中で、子供たちをしっかりと育てていく環境整備ということについてはさらに心を尽くしていきたいというふうに思っております。

○吉田(泉)委員 終わります。

 ありがとうございました。

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2008年6月 7日 (土)

第100回:児童ポルノ所持の取り締まりという現代の魔女狩り

 今、国会情勢が流動的なこともあり、これからどうなるかは分からないが、昨日(6月6日)は、ネット規制法が超スピードで衆議院で可決される(日経のネット記事ITmediaの楠正憲氏の記事参照)とともに、自民党の法務部会で単純所持罪を含む児童ポルノ規制強化法案(自民党のニュース記事マイコミジャーナルの記事参照)が強引にとりまとめられるという最低最悪の一日だった。

 6月6日の国会のネット中継を見ると分かるが、ネット規制法の審議は全部合わせても30分も無く、青少年問題特別委員会で、通り一遍の無意味な答弁が各政党から出され、異議なしとされて取りまとめられた後、委員長提出という形で即日本会議にかけられ、本会議では質疑すらされず委員長の説明だけで全会一致で可決されるという出来レースぶりである。

 青少年問題特別委員会で玄葉委員長が関係者からの意見を聴取しつつ取りまとめたという説明をしていたが、政官とこれに連なる規制強化派以外、これほど急いでネット規制をして欲しいなどと言っていたものは一人としていなかったと私は記憶している。前回書いた通り、このネット規制法には、総務省の携帯電話フィルタリング義務化要請以来の数々の混乱の種が全て含まれているのだ。個人的には、来週、国会審議が空転することに賭けたいが、非常に気分が悪い。時間がかかるだろうが、このように、実質的な国会審議を省く与野党談合が可能な立法システムこそ改められるべきだと私は言い続けるだろう。

 児童ポルノ規制強化に関しても、既にかなり騒がれており、単純所持規制の危険性も規制に対して慎重な国会議員には伝わっているものと思うが、規制強化派は全く聞く耳を持たずに、やはり規制ありきで全てを押し進めようとしているようである。自民党のニュース記事でも、背景として、単純所持が児童への性的虐待などを誘発しているという、いまだかつて証明されたことがなく、表現の快不快を規制の可不可と勘違いしている規制強化派の脳内妄想理論と、G8諸国で日本とロシアだけが単純所持規制を行っていないという、これもまた全く法改正の根拠たり得ない理屈を相変わらず持ち出しているというひどさである。

 児童ポルノ規制に関しては、つい最近も、国際刑事警察機構(ICPO)が、国際的ワンクリック捜査作戦を実行し、オーストラリアが70人以上を逮捕したと得々と発表する(AFP BBの記事参照)など、欧米を中心に完全に集団ヒステリーの状態に落ち入っている。このような取り締まりは、ほとんど、キリスト教道徳の押し売り、魔女狩りに近い。

 繰り返しになるが、どう考えても、いかなる情報についてであれ、情報の単純所持を規制するのは明らかに異常である。完全に個人・家庭内に閉じる情報の所持に関しては、「性的好奇心を満たす目的」や「みだりに」といった主観的な要件は証明も反証もできないものであり、法運用の恣意性・冤罪は絶対に避けられない。ICPOレベルですらロリコンを思想犯罪とみなしているフシがあるのでは、このような規制はなおさら危険なものとなるに違いない。

 児童保護は無論重要だが、インターネット時代にあっては、児童保護もまた相対的に考えられなくてはならないのである。欧米の児童ポルノ所持規制も必ず歴史に断罪されることになるだろう。政官の規制強化派は7月のサミットで欧米に自慢気に媚びを売れるネタが欲しいのかも知れないが、危険極まりない情報の単純所持規制など、将来的には国際的な恥になりこそすれ誇れるものでは全くない。キリスト教国を中心にまだ中世の暗黒は続いているのかも知れないが、このような現代の魔女狩りサークルに日本は絶対に参加してもらいたくないと私は思う。

(児童ポルノの単純所持規制問題については、法政大学社会学部の白田秀彰准教授が、「単純所持宣言 / その他、性規制について」という痛快な小論を発表されているので、是非一読をお勧めする。)

 来週も国会情勢から目が離せないが、ネット規制法・児童ポルノの単純所持規制法が成立しない・提出されないことを私は心から祈っている。

(6月8日の追記:白田先生の小論について、法政大学のHPへのアクセスが今非常に不安定なため、一時的な便宜のためににWeb魚拓へのリンクも張ったが、この魚拓へのリンクは、法政大学のリンクの方が安定し次第削除するつもりであることを、念のためお断りしておく。)

(6月9日の追記:Web魚拓へのリンクは削除した。

 また、ネット規制法について、ヤフーなどネット大手5社が再度懸念を表明し(ITmediaの記事ケータイwatchの記事参照)、新聞協会も再度懸念を表明した(ITmediaの記事internet watchの記事参照)というニュースがあったので、リンクを張っておく。)

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2008年5月25日 (日)

第96回:ネット規制法と児童ポルノ規制強化法の自民党案と民主党案の比較

 青少年ネット規制法の自民党案が明らかになったという報道があった(時事通信のネット記事読売のネット記事1記事2スポーツニッポンのネット記事毎日のネット記事参照)。

 自民党案は、報道だけでは詳細が良く分からないのだが、これで、ネット規制法と児童ポルノ規制強化法に関して、与野党の案が揃ったことになると思われるので、参考のために、分かる限りで比較してみたいと思う。(私には各種報道以上の情報ソースがないが、崎山伸夫氏のブログで最近の自民党案についてより細かく分析されているので、一読をお勧めする。)

(1)ネット規制法
 ネットに原案をきちんと載せている(民主党のHP原案)ので、民主党の方が印象が良いと言えば良いが、両党とも思考回路はそれほど変わらないので、当初の議論からするとかなりトーンダウンしているとはいえ、どちらの案でも、このままではかなり危険な規制となるだろうと私は踏んでいる。分かる限りでポイントを比較してみると、以下のようになるだろうか。

<有害情報の定義>
自民党:なし(恐らく例示はあるのではないか。)
民主党:例示あり

<携帯電話フィルタリング義務化>
自民党:あり(親によって解除可能)
民主党:あり(親によって解除可能)

<PCメーカーのフィルタリングソフトプリインストール義務化>
自民党:不明
民主党:あり

<インターネットサービスプロバイダー(ISP)のフィルタリングソフト提供義務化>
自民党:不明
民主党:あり

<フィルタリングソフト開発事業者>
自民党:技術支援(恐らく)
民主党:支援(財政支援含む)+利用者の選択に応じてきめ細かく設定でき、不必要な閲覧制限ができるだけ少なくするソフトを開発する努力義務

<フィルタリング基本計画>
自民党:あり
民主党:なし

<フィルタリング閣僚会議>
自民党:あり
民主党:なし

<サイト管理者とISPの義務>
自民党:不明
民主党:有害情報があると知ったとき、子どもにより有害情報の閲覧がされないようにする措置を講ずる努力義務

<民間の第3者機関>
自民党:有害サイト認定機関を政府が登録・指定・財政支援
民主党:有害情報通報機関、フィルタリング性能指針作成機関などへの支援(財政支援含む)

<罰則>
自民党:なし
民主党:なし

<ネット教育推進>
自民党:不明
民主党:あり

 両党とも、罰則を無くして、フィルタリングを中心に据えてきているあたりで、かなりのトーンダウンを感じるが、総務省の携帯フィルタリング義務化要請で混乱に次ぐ混乱が引き起こされている(今もなお実施は延期されている)ことも忘れ、平然と法案に義務化を組み込んでいるあたりで、不信感しか覚えない。大臣要請によってもたらされた今の混乱状態で、フィルタリング義務化を法律化することは、さらに混乱に拍車をかけるだけだろう。自民党案の基本計画や閣僚会議も予算のムダとしか思えないが、携帯電話の混乱を見る限り、民主党案の携帯電話以外のフィルタリングソフト提供義務化もかなりの混乱をもたらすのではないかと思われる。

 民主党案で、例示とは言え「著しく・・・する」といった表現で有害情報が定義可能と考えられているのも頭が痛い。罰則がないとしても、このような有害情報があると通知されたときのサイト管理者・ISPの対応はかなり難しく、努力義務を盾に、警察などの息がかかった民間の通報団体が事実上のネット検閲団体と化し、表現に対するかなりの萎縮効果が発生しかねない

 自民党案のように、政府が有害サイト認定機関を登録・指定・財政支援するなら、完全に半官のネット検閲センターが出来ることになる。このような登録検閲センターが天下り先となることは間違いないだろうし、自民党案ではネット表現における政府の関与は極めて強いものとなることは疑いない。フィルタリングとの関係も法律に書き込むことで利権を作るつもりかも知れないが、情報の有害性の判断は常に相対的なものであり、政府のお墨付きを得た天下り機関が一方的に特定のサイトを有害と決めつけることなど到底許されることではない

 情報の有害性の判断は常に相対的にしかなし得ないものであるから、本当の犯罪行為を除けば、本来、情報発信者と、情報によって被害を受けたと考える者、情報発信の場を提供している者の3者の間の調停に国が関与する余地はない。既に、各種インターネット関連法があり、プロバイダー責任制限法もある。これ以上に何が必要なのかが私には常に分からないのだ。これらの法律が使いにくいというなら、その法律を改正するべき話であって、青少年保護にかこつけて特別法を作る話ではない。法規制のための法規制など、私は全くして欲しいと思わない。

(2)児童ポルノ規制強化法
 ネット規制法に比べると、児童ポルノ規制強化法の論点は割と単純だが、刑罰をともなうだけにその影響は極めて大きい。与党案(47NEWSの記事参照)と民主党案(朝日のネット記事参照)を、分かる限りで比べてみると、以下のようになる。

<単純所持規制>
与党:あり(自己の性的好奇心を満たす目的で児童ポルノを所持・保管)
民主党:あり(みだりに収集)

<有償購入規制>
与党:なし(ただし、単純所持規制でカバーされるものと思われる)
民主党:あり

<ISPの協力・努力義務>
与党:あり
民主党:恐らくなし

<定義の厳格化>
与党:なし
民主党:「他人が児童の性器などを触る行為または児童が他人の性器などを触る行為に係る児童の姿態」との現行規定を「性器などをことさらに強調するなどして示す」ものに改め、「衣服の全部または一部を着けない児童の姿態」という規定をあいまいだとして削除

<創作物規制・インターネットブロッキング措置のための調査>
与党:あり
民主党:恐らくなし

 各党の単純所持規制へのこだわりは非常にタチが悪い。情報の単純所持は完全に個人に閉じる行為なので、「性的好奇心を満たす目的」かどうかなどは、証明も反証もできない要件であり、児童ポルノウィルスや電子メール、サイト管理などにおける問題も含め、国民視点で考えたとき、このような要件は全く冤罪防止とならない。民主党案の「みだりに収集」も同じであり、その収集行為が「みだりに」なされたものかどうかは、誰にも証明も反証もできないものである。

(ただ、定義の厳格化を行おうとしている点では、民主党案は高く評価したい。このように範囲を限定した上で、有償購入までを規制するというのなら、まだ理解できるのだが、「みだりに収集」することを規制対象としていることは全くいただけない。「収集」とすることで規制強化前に所持していたものについては規制の対象外となるのかも知れないが、ネットの特性を考えると、やはり収集規制も、単純所持規制と同じく危険なものと言わざるを得ない。)

 両法とも、民主党の方がマシと言えばマシだが、比較の問題だろう。与野党とも、規制のコスト・メリットをまじめに考えているとはあまり思えない。自民党も、民主党も、その思考回路はあまり変わらず、放っておくと必ず規制強化の方へ行くと思われるので、非常に厄介である。各党に意見を送るなど、私も地道に反対を続けて行く。

(2009年7月1日の追記:このエントリは去年の5月25日時点での情報で書いたものであり、今現在の与野党の児童ポルノ規制法の改正案については、それぞれ、番外その14第162回を参照頂ければと思う。)

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2008年3月12日 (水)

第70回:児童ポルノの単純所持規制、アニメ・漫画・ゲームへの規制対象拡大への反対

 児童ポルノに関連する規制推進の動きが盛り上がっている(日経ネットの記事ITmediaの記事マイコミジャーナルの記事読売新聞のネット記事)。今回はベルギーの著作権法の話の続きをしようかとも思っていたのだが、これほど明確に表現の自由と個人のプライバシーをないがしろにする動きに対して、反対の声は一つでも多いに越したことはないと思うので、今回は予定を変えて、この話を取り上げる。

 この最近の児童ポルノ規制強化運動で議論になっているのは、(1)児童ポルノの単純所持規制と(2)アニメ・漫画・ゲームなど架空の表現への規制対象の拡大であるが、両方とも1999年当時の児童ポルノ法制定時に喧々囂々の大議論の末に除外された規制であり、規制賛成派が何と言おうと、これらの規制を正当化するに足る立法事実の変化はいまだに何一つない。また、規制賛成派の中の、さらに虚構・現実混同派は、児童保護と、児童ポルノ規制と、架空表現の規制をすぐごっちゃにして、印象操作レトリックを用いた思考停止を強いるのだが、これもまた、いやしくも文化と表現を語る者は、絶対にしてはならないことである。

(1)児童ポルノの単純所持規制について
 児童ポルノの単純所持規制の追加であるが、第68回でも書いた通り、ネットで閲覧とダウンロードと所持の区別がつかない以上、単なるポルノサイトの閲覧だけでも逮捕の可能性が出てくるこのような法制は、インターネットが普及している今、非常に危険なものとなると言わざるを得ない。

 また、今朝の日経朝刊によると、上記のような単なる閲覧や、メールを勝手に送りつけられた場合などを考えてだろうか、単純所持規制を、積極的かつ継続的に所持している場合に限ることを考えているようだが、これも、ダウンロード違法化における「情を知って」と同じく、全く抗弁の役に立たない曖昧かつ恣意的な限定である

 ダウンロード違法化で、主に規制主体となると考えられるのは著作権団体だったが、こちらは警察であるだけにさらにタチが悪い。サイトの摘発によって得られるであろうアクセス履歴などでそれなりの疑いを抱くに至れば、何ら現実の被害が発生していなくとも、警察はプライバシーを蹂躙し、家宅捜索や身柄の拘束や証拠の押収をしてくるであろうし、1枚でもそれらしい写真なりがアルバムにでもPCにでも携帯電話にでも保存されていれば、彼らは鬼の首でも取ったように、法律を盾に被疑者に犯罪者のレッテルを貼り、一罰百戒を狙って立件を目指してくることだろう。ネットワークでは良くあるケースだと思うが、いろいろなサイトを見回る内にポルノサイトへのリンクを多く踏んでしまっていたとか、ボットに引っかかったのだとか、メールボックスは放置してしまっていたとかの抗弁が、規制を正義と考える者たちの耳に届くとは到底思えない

第50回で取り上げた出会い系サイト規制のパブコメを募集したあげく、その結果を公表もせずに閣議決定を行うほど、警察庁は、国民の安全と安心より天下り先確保を優先しており、現場は恐らく点数主義で摘発件数を競っているだろうという状況では、警察に抑制は全く期待できない。本当かどうか良く分からないが、ブログ記事によると、つい先日のビデオ倫理機構幹部の逮捕も実にきなくさいし、別にウィルス作成が良いことなどと言うつもりもないが、アニメ画像1枚の著作権侵害でウィルス作成者を別件逮捕するなど、私は最近の警察にどうにも信をおけない。)

 インターネット上での公開は海外からでも閲覧できるため、日本からの画像流出が問題視されているだとか、インターネットなどを通じて児童ポルノ事件の被害者が急増しているだとか言う意見もあるようだが、インターネットにおける児童ポルノの提供あるいは提供のための所持又は製造は、既に現行法(正式名称は「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」)の第7条で規制の対象になっており、そこに法的な穴など空いていない。児童ポルノ提供と児童売春は別物であるが、児童売春についても当然のことながら第4~6条で既に規制されており、法的な穴は空いていない。このような、インターネットに対する漠然とした不安に基づいた印象批評など、法改正の根拠たり得ない

 国際的に遅れているという意見についても、情報に関する限り、西洋主要国の法制は、ダウンロード違法化も含め正しいとは思われない場合が多くあると、私はこのブログで繰り返してきた。このようなモラルに関することで、そもそも道徳としてキリスト教道徳が今なお厳然として存在し、児童ポルノを思想犯として取り締まっても平然としていられる西洋主要国の法制を日本に導入しなければならない理由は何一つない。インターネットの普及によって、情報へアクセス機会が爆発的に増えた今、単純所持規制による危険はより高まっており、これを規制しない理由はかえって増えていると私は考えているくらいである。

 情報そのものの価値判断・道徳判断は常に相対的なものであって、それは児童ポルノであっても変わりはない。お前は児童ポルノを所持しているのか、児童ポルノが好きなのかという姑息な質問に対しては、好きであろうが嫌いであろうが、そんなことは国民の個人的な情報アクセスを危険たらしめる理由には全くならないと私は答える。個人的な情報アクセスによる被害は存在しない。国民には、インターネットであれ、どこであれ、児童ポルノも含めてあらゆる公開情報へ常に安心安全に個人的にアクセスする権利があるのだ。

(2)アニメ・漫画・ゲームなど架空の表現への規制対象の拡大について
 また、アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現に対する規制対象の拡大は、児童保護という当初の法目的を大きく逸脱する、異常規制に他ならない。アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現において、いくら過激な表現がなされていようと、それが現実の児童被害と関係があるとは全く思えない。いまだかつて、この点について、単なる不快感に基づいた印象批評と一方的な印象操作調査以上のものを私は見たことはないし、虚構と現実の区別がつかないごく一部の自称良識派の単なる不快感など、言うまでもなく一般的かつ網羅的な表現規制の理由には全くならない。

 虚構と現実を常に混同し、自らの価値判断・道徳判断のみを絶対として規制を主張するような者に、文化や表現の自由に関わる問題を軽々しく語ってもらいたくはない。児童への被害が存在しているのならば取り締まりも是認されるかも知れないが、規制賛成派は、わざわざ「準児童ポルノ」などという卑怯な造語を作り出して、印象操作のみによって法規制を正当化しようとしている時点で、そこに児童被害など存在していないということを、自ら規制を是認するに足る保護法益がないと告白しているに等しい。世の中に規制されるべき「準児童ポルノ」など存在していないと私は断言する

 規制を写実的なものに限り、少し漫画で子どもの裸を描いたからといって規制はありえないなどと言ったところで、どこまでを写実とし、どこからを写実ではないとするのか。また、少女の半裸像あるいは裸体画のような、写実的な美術作品は、どこの美術館にも飾られており、街角にも立っているし、それこそ有名な画家や作家の作品群をいくらでも列挙することもできるが、これをどうするのか、芸術であれば卑猥な感情や羞恥心を刺激しないから良いとでも言うのか。保護法益もない中で、芸術か児童ポルノかというバカバカしさ極まる法廷論争をまた最高裁まで繰り広げたいとでも言うのか。

 アニメ・漫画・ゲームなどの架空の表現が、今の一般的なモラルに基づいて猥褻だというのなら、猥褻物として取り締まるべき話であって、それ以上の話ではない。そして、もはや架空の表現については実質的に取り締まるべきとするモラルがほとんど無くなっている以上、これら架空の表現に対する一般的かつ網羅的な規制はほとんど何によっても是認され得ないと私は考えている。(各地のポルノショップにしたところで、売場は必ず18歳未満立ち入り禁止にしているだろうし、青少年保護ということではそれで十分である。)

 最近、やはり良く持ち出される内閣府の「有害情報に関する特別世論」調査(ITmediaの記事調査結果集計表)にしても、何の予備情報も与えずに規制するべきか否かと直接面談で聞くというひどいものである。このような、世論調査どころか世論操作といった方が良い結果に基づいて言えることは何一つない。

 この表現規制が刑事罰をともなう極めて執行力の強いものである以上、その文化と表現に対する影響は、ダウンロード違法化よりも甚大なものとなるだろう。自民党・公明党・民主党などの政党は全て、コンテンツ立国だの、コンテンツ振興だのと口では言いながら、その規制推進派がこのような規制強化策を打ち出してくる時点で、アニメ・漫画・ゲームのようなサブカルチャーに対する軽視を、その文化と表現に対する完全な無理解を露呈したのだ。

 架空の表現において、年齢の区別など意味をなさないことを思えば、このような規制強化は、アニメ・漫画・ゲームにおけるポルノ的な表現そのものの過剰規制として機能する他ない。どんな文化であれ、表現が人間精神の発露である以上、必ず陰の部分も存在する。今の日本のアニメ・漫画・ゲームなどのサブカルチャーの隆盛と、そのポルノ的な表現の隆盛が軌を一にしていることを忘れ、一方的に陰の部分を否定することは、文化の文化たる所以を否定することに等しい。このような表現規制は、今の日本のアニメ・漫画・ゲームなどに注がれる活力を削ぎ、これらのジャンルにおける文化と経済の衰退・全体的な地盤沈下を招くことだろう

 今の日本文化を愛するオタク諸氏よ、もしこのブログを読んでもらえているなら、このような動きに対して怒れ。今の日本文化、アニメ・漫画・ゲームも含めてあらゆる文化と表現をこよなく愛する者として、このような動きに対して私は心からの憤りを禁じ得ない。規制と天下りと補助金・献金で腐敗のトライアングルを構成している政官業に巣くう寄生虫どもは、その現実における無意味な規制強化によって官製不況をあらゆるところに撒き散らすだけでは飽きたらず、オタクから無害かつささやかな趣味までも奪おうとしているのだ。自分のブログなどで取り上げても良いだろうし、自分の選挙区の国会議員や大臣にメールや電話をしても良いだろうし、影響力の強そうな有名人の知り合いに連絡するのも良いだろうし、私にそのノウハウと技術力がないのが残念でならないが、ネットで反対の署名運動を始めても良いだろう。手段はどうあれ、良く分からずに単なる印象で規制に賛成している人間より、圧倒的多数の人間が明確に規制に反対していることを示さなくてはならない。

 ごく一部の人間の単なる不快感によって表現の自由と個人のプライバシーが蹂躙されることなど到底許されてはならない。ダウンロード違法化問題におけるパブコメが端的に示しているように、インターネットの登場によって、声なき声は、本当の声になりつつある。この危機に当たって、あらゆる公開情報に対して個人的なアクセスは自由になされるべきと考える全ての人に、サブカルチャーも含め全ての文化と表現は等しく守られるべきだと考える全ての人に、私は反対の声をあげてもらいたい。このような人々こそ本当の多数派だと私は信じている。

 本来、このブログは知財政策関係の話題を取り上げるために始めたものなので、こちらを本題にするべきだとは思うのだが、第56回で少し紹介したイタリアの著作権法改正について、少し面白いイタリア語の記事(PUBBLICA AMMINISTRAZIONEの記事Punto Informaticoの記事)があったので、最後に紹介しておく。この記事によると、イタリアのボローニャ大学の教授で、弁護士でもあるGuido Scorza氏などが、問題の、教育研究目的で無償非営利ならば低解像度・劣化版の映像・音楽の公開がネットで許されるとする新たな権利制限条項について、ジャーナリストや教授、弁護士といった人々の賛同を得て、その詳細を定める大臣令を政府と議会に対して提案したようである。

 この提案通りに大臣令が出されるのかどうか良く分からないが、この提案は、教育研究目的との限定はかかるものの、ネットワークを通じた提示、批評、議論などあらゆる利用形式が含まれるとするなど、かなり開明的なものとなっている。対象となるのは、画像なら72dpi、映像なら384kbps、音楽なら96kbpsを超えないものとするなど、低解像度・劣化版の定義を行っていることも興味深い。さらに、この提案に対して、wikiでの修正提案も受け付けているようである。このようにwikiで提案の修正を受け付けられるほど開明的な法学者が日本にいないことが、私は実に残念でならない。

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