カテゴリー「著作権国際動向(EU)」の12件の記事

2009年11月 9日 (月)

第197回:EU通信ディレクティブ妥協案

 既に「P2Pとかその辺のお話」で取り上げられているので、リンク先をご覧頂ければ十分とは思うが、フランスの最初の3ストライク法案を否定したEUの通信ディレクティブについて、新たな妥協案について合意されたということが話題になっており、ストライクポリシーを巡るEUレベルのせめぎ合いについては重要だと思うので、ここでも取り上げることにする。(また、このことは、cnetの記事ITproの記事にもなっている。)

 この合意を伝えるEUのリリースでは、合意案の主要な改正点として、

1. A right of European consumers to change, in 1 working day, fixed or mobile operator while keeping their old phone number.
2. Better consumer information.
3. Protecting citizens' rights relating to internet access by a new internet freedom provision.
4. New guarantees for an open and more "neutral" net.
5. Consumer protection against personal data breaches and spam.
6. Better access to emergency services, 112.
7. National telecoms regulators will gain greater independence.
8. A new European Telecoms Authority that will help ensure fair competition and more consistency of regulation on the telecoms markets.
9. A new Commission say on the competition remedies for the telecoms markets.
10. Functional separation as a means to overcome competition problems.
11. Accelerating broadband access for all Europeans.
12. Encouraging competition and investment in next generation access networks.

1.昔の電話番号を保持したまま固定あるいは携帯電話事業者を、1週間で変える、欧州消費者の権利。
2.消費者へのより良い情報開示。
3.新たなインターネットの自由の規定によるインターネットアクセスに関する市民の権利の保護。
4.オープンでより「中立的な」ネットの新たな保証。
5.個人情報流出とスパムに対する消費者保護。
6.緊急サービス112へのよりよいアクセス。
7.各国の通信規制当局はより独立性を得る。
8.新たな欧州通信当局による、通信市場における公平な競争とよりよい調和の促進。
9.通信市場における競争の改善について、委員会が発言できるようになる。
10.競争の問題を克服する手段としての機能的分離。
11.全ての欧州市民に対するブロードバンドアクセス提供の加速。
12.次世代のアクセスネットワークにおける競争と投資の促進。

という項目が並んでいる。他の部分についても言いたいことが無い訳ではないのだが、ここでは、最大の論争の種となっている3.のインターネットの自由の規定に関する項目の部分だけ訳出しておきたいと思う。

3. Protecting citizens' rights relating to internet access by a new internet freedom provision (full text: see Annex 1): Following  the strong request of the European Parliament, and after long negotiations on this point, the new telecoms rules now explicitly state that any measures taken by Member States regarding access to or use of services and applications through telecoms networks must respect the fundamental rights and freedoms of citizens, as they are guaranteed by the European Convention for the Protection of Human Rights and Fundamental Freedoms and in general principles of EU law. Such measures must also be appropriate, proportionate and necessary within a democratic society. In particular, they must respect the presumption of innocence and the right to privacy. With regard to any measures of Member States taken on their Internet access (e.g. to fight child pornography or other illegal activities), citizens in the EU are entitled to a prior fair and impartial procedure, including the right to be heard, and they have a right to an effective and timely judicial review.

Commissioner Reding said on this matter: "The new internet freedom provision represents a great victory for the rights and freedoms of European citizens. The debate between Parliament and Council has also clearly shown that we need find new, more modern and more effective ways in Europe to protect intellectual property and artistic creation. The promotion of legal offers, including across borders, should become a priority for policy-makers. 'Three-strikes-laws', which could cut off Internet access without a prior fair and impartial procedure or without effective and timely judicial review, will certainly not become part of European law."

3.新たなインターネットの自由の規定によるインターネットアクセスに関する市民の権利の保護(全文については付記1参照):EU議会の強い要請に従い、この点について長い交渉を経て、新たな通信規制には、通信ネットワークを通じたサービスとアプリケーションへのアクセスあるいはその利用に関して加盟国が取るどのような手段も、欧州人権条約とEU法の基本原則によって保障されているところの、市民の基本的な権利と自由を尊重しなければならないということが明示的に記載されることとなった。このような措置は、民主的な社会において、特に適切で必要なものである。特に、加盟国は、推定無罪の原則とプライバシーの権利を尊重しなければならない。インターネットアクセスに関して加盟国が取る手段(例えば、児童ポルノあるいは他の違法行為に対して取るもの)に関して、EU市民は、聴取される権利も含め、事前の公正で公平な手続きを受ける権利を有し、有効かつ時宜を得た司法審理を受ける権利も有する。

委員のレディングはこの点について次のように言った:「新たなインターネットの自由の規定は、欧州市民の権利と自由に関する重要な勝利を示すものである。議会と理事会の間の論争から、ヨーロッパにおいて知的財産権と芸術的創造を保護する、新しく、より現代的でより効果的な方法を我々が見つけたことは明らかである。越境取引を含む、合法提供の促進こそ、政策立案者の優先事項とされるべきである。事前の公平で公正な手続き、あるいは、有効かつ時宜を得た司法審査を伴わずに、インターネットアクセスの遮断を可能とする『3ストライク法』は、まずもって欧州法の一部とはならないだろう。」

 また、付記1に書かれている、インターネットの自由に関する規定の現時点の案は以下のようなものである。(なお、この訳については「P2Pとかその辺のお話」の訳も参照した。)

The new Internet Freedom Provision
Article 1(3)a of the new Framework Directive

"Measures taken by Member States regarding end-users' access to or use of services and applications through electronic communications networks shall respect the fundamental rights and freedoms of natural persons, as guaranteed by the European Convention for the Protection of Human Rights and Fundamental Freedoms and general principles of Community law.

Any of these measures regarding end-users' access to or use of services and applications through electronic communications networks liable to restrict those fundamental rights or freedoms may only be imposed if they are appropriate, proportionate and necessary within a democratic society, and their implementation shall be subject to adequate procedural safeguards in conformity with the European Convention for the Protection of Human Rights and Fundamental Freedoms and general principles of Community law, including effective judicial protection and due process. Accordingly, these measures may only be taken with due respect for the principle of presumption of innocence and the right to privacy. A prior fair and impartial procedure shall be guaranteed, including the right to be heard of the person or persons concerned, subject to the need for appropriate conditions and procedural arrangements in duly substantiated cases of urgency in conformity with the European Convention for the Protection of Human Rights and Fundamental Freedoms. The right to an effective and timely judicial review shall be guaranteed."

インターネットの自由に関する新規定
新フレームワーク指令第1条第3項a

「電気通信ネットワークを通じたサービスとアプリケーションへのエンドユーザーのアクセスとその利用に関して加盟国が取るどのような手段も、欧州人権条約とEU法の基本原則で保障されている通り、自然人の基本的な権利と自由を尊重しなければならない。

 エンドユーザーの基本的な権利あるいは自由を制約しかねない、電気通信ネットワークを通じたサービスとアプリケーションへのアクセスとその利用に関して加盟国が取るどのような手段も、それらが民主的社会において特に適切で必要なものである場合においてのみ、課され得るものであり、その手段の実施は、欧州人権条約とEU法の基本原則に則り、有効な司法手続きと正当な法に従う手続きを含む、適切な手続きの保障に適うものでなければならない。すなわち、これらの手段は、推定無罪の原理とプライバシーの権利を十分に尊重して取られなければならない。エンドユーザーあるいはその関係者の聴取される権利も含め、欧州人権条約に従い、十分立証された緊急のケースにおいて、適切な条件と手続きの方式を必須とする、事前の公正で公平な手続きが保障される。有効かつ時宜を得た司法審査を受ける権利も保障される。」

 「P2Pとかその辺の話」にも書かれているように、この合意案がフランスのいわゆる3ストライク法を否定するものであるかどうかは意見が錯綜しているのだが、努力の跡は見られるものの、残念ながら、この合意案はあくまで妥協の産物であり、フランスの今の3ストライク法第2案を明確に否定する形とはなっていない。(フランスの今の3ストライク法第2案の問題点については第191回第195回参照。なお、リリースによると、レディング情報社会・メディア担当欧州委員が、いわゆる「3ストライク法」について述べているようだが、これも一般的な話であり、特にフランスの今の3ストライク法第2案を念頭においた発言ではないだろう。)

 第116回で取り上げた以前の修正138条と比較しても、一見、規定の充実が図られ、後退していないようにも見えるが、この新条項は、「事前の公正で公平な手続き」(「司法」の語を含まない)と「有効かつ時宜を得た司法審査を受ける権利」についてわざと曖昧に書かれており、略式手続きだが、一応司法手続き利用型に変更された今のフランスの3ストライク法第2案はおろか、以前の完全に行政機関内のみでネット切断が完結し得る第1案すら否定しているかどうか怪しい完全に玉虫色の規定となっているのである。(第178回で取り上げたように、この第1案は、フランスの憲法裁判所によって完全に否定されているのだが。)

 恐らく、EU議会に新しく入った海賊党の議員も含め、情報の自由の重要性を理解しているEU議員は、フランスの今の3ストライク法第2案を否定するべく努力したことだろうが、EUの構造的な問題もあり、フランスとの政治力のせめぎ合いでこのような玉虫色の妥協案で合意せざるを得なくなったのだろう。(情報と法規制に関する話はまず問題点の理解からして難しいのだが、その理解さえきちんとできていれば、今のフランスの3ストライク法第2案を否定するのはそれほど難しくない。以前の修正138条に「対審を必要とする通常の手続きによる」という語を追加して、「対審を必要とする通常の手続きによる司法当局の事前の判決なくしてエンドユーザーの基本的な権利及び自由に対してはいかなる制限も課され得ない」とするだけである。)

 現時点ではまだ合意したという段階に過ぎず、本当に指令として成立するためには、今後6週間以内に予定されているEU議会とEU理事会の本会議において可決される必要がある。合意として公表されており、今の条項を見ても、これ以上のどんでん返しは考えにくいのだが、このレベルであったとしても、フランスの3ストライク法第2案の施行や他の国の検討に対するプレッシャーにはなるだろう。(また、これは指令なので、各国でその規定を国内法に組み入れる必要があるが、予定通り可決された場合、この期限は2011年5月までとなるようである。)

 しかし、何より重要なことは、インターネットへのアクセスは基本的な権利として位置づけられ、ネットにおける行き過ぎた著作権規制・情報規制は情報に関する基本的な権利を侵害するものとなるということが、欧州では、政策決定のレベルにおいても明確に認識されて来ているということである。また、このリリースにおいて、インターネットアクセスに対して国が取る手段の例として、児童ポルノ規制が明示的に挙げられていることも注目に値する。児童ポルノ規制に関する問題は、西洋諸国を支配するキリスト教道徳を直撃する問題だけに、著作権規制以上に厄介なのだが、問題の本質に対する理解が全く進んでいないということも無い。その行き過ぎた規制によって既に西洋諸国は混乱を来しており、相当時間がかかるかも知れないが、そのブロッキングや単純所持規制を含む児童ポルノ規制が情報に関する基本的な権利を侵害するものとなるという理解は、欧州においても次第に浸透して行くことになるだろう。(ただし、ストライクポリシーを明確に否定する形になっていないのと同様、プレッシャーにはなり得るだろうが、この新条項はサイトブロッキングを明確に否定する形にはなっていない。なお、フランスで騒がれた著作権規制としてのストライクポリシーと、ドイツで騒がれた児童ポルノ規制としてのサイトブロッキングについては、それなりに欧州でも理解が進んでいると思うが、それ以前の、著作権規制としてのダウンロード違法化と、児童ポルノ規制としての情報の単純所持規制の非人道性に関する理解は、残念ながら、世界的に見てもまだ不十分である。)

 情報と法規制に関する問題の理解は常に難しく、どこの国においてもこの手の話は一朝一夕に進むものではないが、例え少しずつだとしても、行き過ぎた規制に対する反動としてだとしても、世界的に確実に問題の理解が進んでいるということもまた事実である。この理解は今後も進んで行くと、情報に関する自由をその最大の基礎とする民主主義国家においては、情報に関する非人道的な規制は長い目で見れば確実に排除されて行くと私は常に確信している。

(2009年10月9日夜の追記:今日のinternet watchの記事でリンクが張られていたので気づいたが、EU議会によるリリースもあったので、そのリンクをここに追加しておく。このエントリで引用したリリースはEU委員会によるものである。)

(2009年10月10日夜の追記:私的録画補償金管理協会(SARVH)がアナログチューナー非搭載DVD録画機に対する補償金の支払いを求めて東芝を提訴したとのニュースがあった(internet watchの記事AV watchの記事ITproの記事Phile webの記事参照)。裁判がどうなるかはどうにも分からないが、どう転んでも、私的録音録画補償金問題はこれでほぼ詰みの状態となる。相変わらずの消費者無視をまずどうにかしてもらいたいと思うが、今度の裁判で制度のそもそもの意義が問い直されることになるだろうと私は期待している。

 また、来年の3月末で地デジ専用B−CASカードの登録制度を廃止するとB−CAS社が発表している(ITmediaの記事AV watchの記事参照)。この問題についてもこれで終わりではないが、無料の地上デジタル放送のB−CASシステムは実質これで完全にエンフォース不能となり死ぬことが確定した。)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年10月 5日 (月)

第192回:EU著作権指令に列挙されている権利制限

 第11回で、私的複製関連部分を取り上げているが、権利制限一般の話をする上で重要なので、ここで、2001年のEU著作権指令について、他も含め権利制限関連部分の全訳を作っておく。

Article 5 Exceptions and limitations

1. Temporary acts of reproduction referred to in Article 2, which are transient or incidental [and] an integral and essential part of a technological process and whose sole purpose is to enable:

(a) a transmission in a network between third parties by an intermediary, or

(b) a lawful use of a work or other subject-matter to be made, and which have no independent economic significance, shall be exempted from the reproduction right provided for in Article 2.

2. Member States may provide for exceptions or limitations to the reproduction right provided for in Article 2 in the following cases:

(a) in respect of reproductions on paper or any similar medium, effected by the use of any kind of photographic technique or by some other process having similar effects, with the exception of sheet music, provided that the rightholders receive fair compensation;

(b) in respect of reproductions on any medium made by a natural person for private use and for ends that are neither directly nor indirectly commercial, on condition that the rightholders receive fair compensation which takes account of the application or non-application of technological measures referred to in Article 6 to the work or subject-matter concerned;

(c) in respect of specific acts of reproduction made by publicly accessible libraries, educational establishments or museums, or by archives, which are not for direct or indirect economic or commercial advantage;

(d) in respect of ephemeral recordings of works made by broadcasting organisations by means of their own facilities and for their own broadcasts; the preservation of these recordings in official archives may, on the grounds of their exceptional documentary character, be permitted;

(e) in respect of reproductions of broadcasts made by social institutions pursuing non-commercial purposes, such as hospitals or prisons, on condition that the rightholders receive fair compensation.

3. Member States may provide for exceptions or limitations to the rights provided for in Articles 2 and 3 in the following cases:

(a) use for the sole purpose of illustration for teaching or scientific research, as long as the source, including the author's name, is indicated, unless this turns out to be impossible and to the extent justified by the non-commercial purpose to be achieved;

(b) uses, for the benefit of people with a disability, which are directly related to the disability and of a non-commercial nature, to the extent required by the specific disability;

(c) reproduction by the press, communication to the public or making available of published articles on current economic, political or religious topics or of broadcast works or other subject-matter of the same character, in cases where such use is not expressly reserved, and as long as the source, including the author's name, is indicated, or use of works or other subject-matter in connection with the reporting of current events, to the extent justified by the informatory purpose and as long as the source, including the author's name, is indicated, unless this turns out to be impossible;

(d) quotations for purposes such as criticism or review, provided that they relate to a work or other subject-matter which has already been lawfully made available to the public, that, unless this turns out to be impossible, the source, including the author's name, is indicated, and that their use is in accordance with fair practice, and to the extent required by the specific purpose;

(e) use for the purposes of public security or to ensure the proper performance or reporting of administrative, parliamentary or judicial proceedings;

(f) use of political speeches as well as extracts of public lectures or similar works or subject-matter to the extent justified by the informatory purpose and provided that the source, including the author's name, is indicated, except where this turns out to be impossible;

(g) use during religious celebrations or official celebrations organised by a public authority;

(h) use of works, such as works of architecture or sculpture, made to be located permanently in public places;

(i) incidental inclusion of a work or other subject-matter in other material;

(j) use for the purpose of advertising the public exhibition or sale of artistic works, to the extent necessary to promote the event, excluding any other commercial use;

(k) use for the purpose of caricature, parody or pastiche;

(l) use in connection with the demonstration or repair of equipment;

(m) use of an artistic work in the form of a building or a drawing or plan of a building for the purposes of reconstructing the building;

(n) use by communication or making available, for the purpose of research or private study, to individual members of the public by dedicated terminals on the premises of establishments referred to in paragraph 2(c) of works and other subject-matter not subject to purchase or licensing terms which are contained in their collections;

(o) use in certain other cases of minor importance where exceptions or limitations already exist under national law, provided that they only concern analogue uses and do not affect the free circulation of goods and services within the Community, without prejudice to the other exceptions and limitations contained in this Article.

4. Where the Member States may provide for an exception or limitation to the right of reproduction pursuant to paragraphs 2 and 3, they may provide similarly for an exception or limitation to the right of distribution as referred to in Article 4 to the extent justified by the purpose of the authorised act of reproduction.

5. The exceptions and limitations provided for in paragraphs 1, 2, 3 and 4 shall only be applied in certain special cases which do not conflict with a normal exploitation of the work or other subject-matter and do not unreasonably prejudice the legitimate interests of the rightholder.

第5条(例外と制限)

第1項
 次のことを可能とすることのみを目的とし、独立した経済的重要性を持たない、技術的なプロセスの必要不可欠な部分をなす、過渡的で付随的な一時的複製は、第2条に規定されている複製権から除外される。

(a)仲介としての第3者間のネットワーク通信、あるいは

(b)第2条で規定されている複製権の例外となるべき、独立の経済的重要性を持たない、著作物等の合法利用

第2項 加盟国は、次の場合について第2条で規定されている複製権の制限あるいは例外を規定することができる。

(a)公正な補償を権利者が受け取っているという条件で、楽譜を例外として、写真技術あるいは他の類似の効果を持つプロセスによって実行される、紙あるいは類似の媒体上の複製;

(b)第6条に規定される技術的保護手段の採用あるいは非採用を考慮に入れた公正な補償を権利者が受け取っているという条件で、直接的にも間接的にも商業的でない目的のために、自然人によって私的利用のためになされる、媒体への複製;

(c)直接的にも間接的にも経済的あるいは商業的利益を得ようとするものでない、公衆にアクセス可能とされた図書館、教育機関あるいは博物館による、又は、文書館によってなされる特別な複製行為;

(d)自身の装置によって、自身の放送のため、放送機関によってなされる、著作物の一時的録音録画;公的文書館におけるこの録音録画の保存も、その例外的な資料的性質のために、許される;

(e)公正な補償を権利者が受け取っているという条件で、病院あるいは監獄のような、非常業的目的を有する社会的機関によってなされる、放送の複製;

第3項 加盟国は、次の場合に第2条と第3条に規定されている権利の例外あるいは制限を規定することができる:

(a)教育あるいは科学研究における提示のみを目的とした利用、ただし、それが不可能でない限り、著作者の名前を含めて、元が示されなければならず、達成されるべき非商業的目的により正当化される範囲に限る;

(b)その特定の障害によって必要とされる範囲に限り、その障害に直接的に関係し、非商業的性質を有する、障害を有する人々の便益のための利用;

(c)それが不可能でない限り、著作者の名前を含めて、元が示される限りにおいて、そのような利用が明示的に留保されていない場合の、時事の経済、政治あるいは宗教的事項について出版された記事、あるいは、同じ性質を有する放送著作物等の、公衆伝達、公衆送信あるいは報道機関による複製、あるいは、それが不可能でない限り、著作者の名前を含めて、元が示される限りにおいて、その情報伝達目的によって正当化される範囲での、時事報道と結びついた形での著作物等の利用;

(d)その特定の目的によって必要とされる範囲に限り、その利用が公正な慣行と合致し、それが不可能でない限り、著作者の名前を含めて、元が示されることを、それが既に合法的に公衆に入手可能とされた著作物等に関するものであることを条件として、批評あるいは論評のような目的のための引用;

(e)公共の安全、あるいは、行政、立法あるいは司法手続きにおける報告の適正な実行を確保するための利用

(f)その情報伝達目的により正当化される範囲に限り、それが不可能でない限り、著作者の名前を含めて、元を示すことを条件として、政治的演説の利用、並びに、公共の演説あるいは類似の著作物等の抜粋;

(g)宗教的儀式あるいは公的な機関によって行われる公的な儀式における利用;

(h)建築物あるいは彫刻の著作物のような、公共の場所に永続的に置かれるために作られた著作物の利用;

(i)著作物等の偶然の入り込み

(j)芸術作品の展示あるいは販売の宣伝の目的での、他の商業的利用を除き、そのイベントのプロモーションに必要な限りでの利用;

(k)カリカチュア、パロディあるいはパスティーシュのための利用;

(l)機器のデモンストレーションあるいは修理と結びついた形での利用;

(m)
建築物の再建のための、建築物あるいは建築物のデッサンあるいは設計図の形の、美術的著作物の利用;

(n)そのコレクションに含まれている販売あるいはライセンス条項にかかわりなく、第2項(c)で規定されている機関の施設内の専用端末による、公衆の個々のメンバーへの、研究あるいは私的学習を目的とした伝達あるいは送信利用

(o)本条に含まれている他の例外と制限にかかわらず、それがアナログ利用のみに関係し、欧州共同体内における物とサービスの自由な流通に影響しないことを条件として、国内法で既に存在している例外あるいは制限での比較的重要性の低い他のケースにおける利用;

第4項 加盟国が、第2項と第3項を目的として複製権の例外あるいは制限を設ける場合、認められる複製行為の目的によって正当化される範囲で、第4条に規定されている頒布権にも例外あるいは制限を設けることができる。

第5項 第1、2、3、4項で規定されている例外と制限は、著作物等の通常の利用を害さず、権利者の正当な利益に不合理な損害を与えない特別な場合にのみ適用される。

 この著作権指令を作った時に、各国の権利制限規定をほぼ網羅するように作っているはずなので、ヨーロッパ全体として、2001年当時考えられていた権利制限の類型は大体この程度であったことが分かる。

 指令(ディレクティブ)であり、具体的な組み入れは各国の国内法に委ねられているので、今まで紹介して来ている通り、EUでも国毎に権利制限規定はかなりバラツキがあるが、このように一般条項を含まない列挙型の権利制限の国際的な取り決めを作ってしまったことが、EU全体にとって非常に大きな足かせとなってしまっている。

 新しい公正利用の類型が出てこないということが仮定できるなら、将来の対応を無視して、一般条項抜きで権利制限に関する国際的取り決めを作っても良いだろうが、常に技術の発展が考えられる中で、このような形を取るのは決して妥当なことでは無いだろう。

(列挙されている権利制限を作ることが「できる」とされているだけなので、強いて解釈すれば、挙げられている権利制限以外にも作ることができると考えられなくもないが、そうすると限定列挙自体意味をなさなくなるので、ここで挙げられている権利制限以外作ることはできないと考える方が妥当だろう。ただし、今のところこの指令の解釈について欧州司法裁判所で争われるといった大きな問題は発生していないので、最終的にどう解釈されるのかは良く分からない。

 また、指令中には強行規定的なものとするべき権利制限条項も含まれているが、必ずしも作ることを必要とされていない辺り、欧州レベルにおいても権利制限に関する考察がまだ深まっていなかったことを示している。)

 ヨーロッパにおいてもフェアユース導入の議論は皆無では無いが、こうした指令があるのでは、実際の導入は日本よりも遥かに困難だろうし、それ以前に、技術の発展・インターネットの普及によって新たに出て来た様々な公正利用の類型に対応して新たに個別の権利制限条項を作ることすら難しいだろう。

 この著作権指令についても、そのうち改正の機運が出て来ると思うが、それまでにおいて、欧州においてある種の権利制限の類型が存在していないことをもって、そのような権利制限を作ることが国際的に見て妥当でないという結論を導こうとするのは大きな間違いである。(文化庁と権利者団体は今後もそういった形で「国際動向」を作ろうとして来ることだろうが。)

 また、欧州ではほぼこの著作権指令の形のまま国内法にしている国もあるくらいであり、本来権利制限条項の規定はこれくらいシンプルであっても良いはずだろう。文化庁が権利者団体と癒着して、権利制限条項をわざと狭く使いづらいものとしている日本で、一般フェアユース条項導入の議論が始まったのは、ほとんど彼らの自業自得と言って良い。今後の議論がどうなるかは予断を許さないが、今の日本の状況では、一般フェアユース条項があった方が良いのは確かなことだろう。

 最後に、本家フランスが3ストライク制導入で揉める中、先に変形3ストライク制を導入してしまった韓国で、混乱が続いているということを伝える日経のネット記事があったのでリンクを張っておく。どこの国であれ、行き過ぎた著作権保護は混乱しかもたらさない。韓国もまた反面教師国の1つである。

 しばらく、著作権関連の各国動向紹介のシリーズを続けて行こうかと思っている。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年3月29日 (日)

第164回:フランスの3ストライクポリシーを否定する欧州議会のランブリニディス・レポート

 フランスで、3ストライク法案の審議が揉めるだけ揉める中、EU議会が、この3月26日に、またもストライクポリシーを否定するレポートを採決した(欧州議会のリリースレポート本文01netの記事ecransの記事参照)。

 第83回で紹介したボノ氏のレポート、第116回で紹介した通信ディレクティブ案の採決に加え、EU議会がストライクポリシーを否定するのは、これで3度目である。(通信ディレクティブ改正案のストライクポリシー否定条項は、フランスの多数派工作によって理事会レベルで一旦は取り除かれたが、第160回のついでに少し紹介したように、欧州議会によって再び取り入れられ、また採決を待つ状態になっているようである。)

 ギリシア出身の欧州議員ランブリニディス氏が中心になってまとめたこのレポートは、法的拘束力こそ無いものの、欧州議会のリリースにも書かれている通り、欧州議会の圧倒的多数の賛成(賛成481、反対25、棄権21)を得て採決されており、タイムリーにこのようなレポートが採決されたことは、フランスにおける3ストライク法案の審議をさらに困難なものとすることだろう。

 概要としては欧州議会のリリースでも良いのだが、このレポートには極めて重要な観点が非常に多く含まれているので、その内容の全てを以下に訳出する。

A. whereas the evolution of the Internet proves that it is becoming an indispensable tool for promoting democratic initiatives, a new arena for political debate (for instance e-campaigning and e-voting), a key instrument at world level for exercising freedom of expression (for instance blogging) and for developing business activities, and a mechanism for promoting digital literacy and the dissemination of knowledge (e-learning); whereas the Internet has also brought with it an increasing number of opportunities for people of all ages to communicate with people from different parts of the world, for example, and has thereby expanded the scope for people to familiarise themselves with other cultures and thus enhance their understanding of other people and cultures; whereas the Internet has also extended the diversity of news sources for individuals as they are now able to tap into the flow of news from different parts of the world,

B. whereas governments and public interest organisations and institutions should provide a suitable regulatory framework and appropriate technical means to allow citizens actively and efficiently to take part in administrative processes through e-government applications,

C. whereas the Internet gives full meaning to the definition of freedom of expression enshrined in Article 11 of the Charter of Fundamental Rights of the European Union, especially in terms of its 'regardless of frontiers' dimension,

D. whereas transparency, respect for privacy and an environment of trust amongst I-stakeholders should be considered indispensable elements in order to build a sustainable security vision for the Internet,

E. whereas on the Internet, freedom of expression and privacy can at the same time be both better enhanced and more exposed to intrusions and limitations by both private and public actors,

F. whereas, through the freedom that it provides, the Internet has also been used as a platform for violent messages such as the ones intentionally inciting terrorist attacks, as well as for websites which can specifically incite hate-based criminal acts, and whereas cybercrime threats more broadly have increased worldwide and are endangering individuals (including children) and networks,

G. whereas these crimes must be countered effectively and decisively, without altering the fundamental free and open nature of the Internet,

H. whereas, in a democratic society, it is the citizens who are entitled to observe and to judge daily the actions and beliefs of their governments and of private companies that provide them with services; whereas technologically advanced surveillance techniques, sometimes coupled with the absence of adequate legal safeguards regarding the limits of their application, increasingly threaten this principle,

I. whereas individuals have the right to express themselves freely on the Internet (for instance user-generated content, blogs and social networking) and whereas Internet search engines and service providers have made it considerably easier for people to obtain information about, for example, other individuals; whereas, however, there are situations in which individuals wish to delete information held in such databases; whereas, therefore, companies must be able to ensure that individuals can have person-related data deleted from databases;

J. whereas technological leaps increasingly allow for the secret surveillance, virtually undetectable to the individual, of citizens" activities on the Internet; whereas the mere existence of surveillance technologies does not automatically justify their uses, but whereas the overriding interest of protecting citizens" fundamental rights should determine the limits and precise circumstances under which such technologies may be used by public authorities or companies; whereas combating Internet crime and the threats to an open democratic society which certain persons and organisations constitute when they use the Internet to damage citizens' rights must not mean that Member States assume the right to intercept and monitor all data traffic on the Internet which occurs on their territory, whether that applies to their own citizens or data traffic from abroad; whereas the combating of crime must be proportionate to the nature of the crime;

K. whereas identity theft and fraud are an increasing problem that the authorities, individual citizens and companies are only beginning to recognise, leaving major security concerns in relation to the intensified use of the Internet for a wide range of purposes, including commerce and the exchange of confidential information,

L. whereas it should be recalled that, when dealing with rights such as freedom of expression or respect for private life, limitations to the exercise of such rights may be imposed by public authorities if they are in accordance with the law, necessary, proportionate, and appropriate in a democratic society,

M. whereas, on the Internet, there is a major power and knowledge divide between corporate and government entities on the one hand, and individual users on the other; whereas, therefore, a debate must be launched on necessary limitations to "consent," both in terms of what companies and governments may ask a user to disclose and to what extent individuals should be required to cede their privacy and other fundamental rights in order to receive certain Internet services or other privileges,

N. whereas due to its global, open, and participatory nature, the Internet enjoys freedom as a rule, but this does not preclude the need to reflect (at national and international levels, as well as in public and in private settings) upon how the fundamental freedoms of Internet users as well as their security are respected and protected,

O. whereas the host of fundamental rights that are affected in the Internet world include, but are not limited to, respect for private life (including the right to permanently delete a personal digital footprint), data protection, freedom of expression, speech and association, freedom of the press, political expression and participation, non-discrimination, and education; whereas the content of such rights, including their field of application and their scope, the level of protection provided by such rights and the prohibitions on abuse of such rights should be governed by the rules on the protection of human and fundamental rights guaranteed by the Constitutions of the Member States, international human rights treaties, including the ECHR, general principles of Community law and the Charter of Fundamental Rights of the European Union, and/or by other relevant rules of national, international and Community law, in their respective fields of application,

P. whereas all the actors involved and active on the Internet should assume their respective responsibilities and engage in fora where pressing and important issues relating to Internet activity are discussed in order to seek and promote common solutions,

Q. whereas e-illiteracy will be the new illiteracy of the 21st Century; whereas ensuring that all citizens have access to the Internet is therefore equivalent to ensuring that all citizens have access to schooling, and whereas such access should not be punitively denied by governments or private companies; whereas such access should not be abused in pursuit of illegal activities; whereas it is important to deal with emerging issues such as network neutrality, interoperability, global reachability of all Internet nodes, and the use of open formats and standards,

R. whereas the international, multicultural and especially multi-lingual character of the Internet is not yet fully supported by the technical infrastructure and protocols of the World Wide Web,

S. whereas in the on-going process of the "Internet Bill of Rights," it is important to take into account all relevant research and undertakings in the field, including recent EU studies on the topic,

T. whereas economic activity is important for the further dynamic development of the Internet, while the safeguarding of its economic efficiency should be ensured through fair competition and the protection of intellectual property rights, as necessary, proportionate and appropriate,

U. whereas the right balance should be maintained between the re-use of public sector information which opens unprecedented opportunities for creative and cultural experimentation and exchange, and the protection of intellectual property rights,

V. whereas throughout the world, companies in the information and communications technology (ICT) sector face increasing government pressure to comply with domestic laws and policies in ways that may conflict with the internationally recognised human rights of freedom of expression and privacy; whereas positive steps have been taken, among which that taken by a multi-stakeholder group of companies, civil society organisations (including human rights and press freedom groups), investors and academics who have created a collaborative approach with the aim of protecting and advancing freedom of expression and privacy in the ICT sector, and have formed the Global Network Initiative (GNI),

W. whereas strong data protection rules are a major concern for the EU and its citizens, and Recital 2 of Directive 95/46/EC on data protection clearly states that technology (i.e. data-processing systems) is "designed to serve man" and must respect "fundamental rights and freedoms, notably the right to privacy, and contribute to economic and social progress, trade expansion and the well-being of individuals",

1. Addresses the following recommendations to the Council:
Full and safe access to the Internet for all
a)
participate in efforts to make the Internet an important tool for the empowerment of users, an environment which allows the evolution of "bottom up" approaches and of e-democracy, while at the same time ensuring that significant safeguards are established as new forms of control and censorship can develop in this sphere; the freedom and protection of private life that users enjoy on the Internet should be real and not illusory;

b) recognise that the Internet can be an extraordinary opportunity to enhance active citizenship and that, in this respect, access to networks and contents is one of the key elements; recommend that this issue be further developed on the basis of the assumption that everyone has a right to participate in the information society and that institutions and stakeholders at all levels have a general responsibility to assist in this development, thus attacking the twin new challenges of e-illiteracy and democratic exclusion in the electronic age;

c) urge Member States to respond to a growing information-aware society and to find ways of providing greater transparency in decision-making through increased access by their citizens to information stored by governments in order to allow citizens to take advantage of that information; apply the same principle to its own information;

d) ensure together with other relevant actors that security, freedom of expression and the protection of privacy, as well as openness on the Internet, are approached not as competing goals, but instead are delivered simultaneously within a comprehensive vision that responds adequately to all these imperatives;

e) ensure that the legal rights of minors to protection from harm, as prescribed by the UN Convention on the Rights of the Child and as reflected in EU law, are fully reflected in and across all relevant actions, instruments or decisions relating to strengthening security and freedom on the Internet;

Strong commitment to combating cybercrime
f)
invite the Presidency of the Council and the Commission to reflect on and develop a comprehensive strategy to combat cybercrime, pursuant, inter alia, to the Council of Europe Convention on Cybercrime, including ways in which to address the issue of "identity theft" and fraud at EU level in cooperation with both Internet providers and user organisations, as well as the police authorities dealing with IT-related crime and to put forward a proposal on how to create awareness campaigns and prevent such crime, while at the same time ensuring that the use of the Internet is safe and free for all; call for the creation of an EU desk for assistance to victims of identity theft and identity fraud;

g) encourage reflection on the necessary cooperation between private-public players in this field and on the enhancement of law enforcement cooperation, along with appropriate training for law enforcement and judicial authorities, including training on issues of fundamental rights protection; recognise the need for shared responsibility and the benefits of co-regulation and self-regulation as efficient alternatives or complementary instruments to traditional legislation;

h) ensure that the work undertaken in the framework of the "Check the Web" project and the recent initiatives aimed at improving the circulation of information on cybercrime, including by the setting-up of national alert platforms and a European alert platform for reporting offences committed on the Internet (creation of a European platform for cybercrime by Europol) are necessary, proportionate and appropriate and accompanied by all the necessary safeguards;

i) urge Member States to update legislation to protect children using the Internet, in particular in order to criminalise grooming (online solicitation of children for sexual purposes), as defined in the Council of Europe Convention of 25 October 2007 on the Protection of Children against Sexual Exploitation and Sexual Abuse;

j) encourage programmes to protect children and educate their parents as set out in EU law with respect to the new e-dangers and provide an impact assessment of the effectiveness of existing programmes to date; in doing so, take particular account of the online games which primarily target children and young people;

k) encourage all EU computer manufacturers to pre-install child protection software that can be easily activated;

l) proceed to the adoption of the directive on criminal measures aimed at the enforcement of intellectual property rights, following an assessment, in the light of contemporary innovation research, of the extent to which it is necessary and proportionate, and while simultaneously prohibiting, in pursuit of that purpose, the systematic monitoring and surveillance of all users" activities on the Internet, and ensuring that the penalties are proportionate to the infringements committed; within this context, also respect the freedom of expression and association of individual users and combat the incentives for cyber-violations of intellectual property rights, including certain excessive access restrictions placed by intellectual property holders themselves;

m) ensure that the expression of controversial political beliefs through the Internet is not subject to criminal prosecution;

n) ensure that there are no laws or practices restricting or criminalising the right of journalists and the media to gather and distribute information for reporting purposes;

Constant attention to the absolute protection and enhanced promotion of fundamental freedoms on the Internet
o)
consider that "digital identity" is increasingly becoming an integral part of our "self" and in this respect deserves to be protected adequately and effectively from intrusions by both private and public actors - thus, the particular set of data that is organically linked to the "digital identity" of an individual should be defined and protected, and all its elements should be considered inalienable personal, non-economic and non-tradable rights; take due account of the importance of anonymity, pseudonymity and control of information flows for privacy and the fact that users should be provided with, and educated about, the means to protect it efficiently, for instance through various available Privacy-Enhancing Technologies (PETs);

p) ensure that Member States that intercept and monitor data traffic, regardless of whether that applies to their own citizens or to data traffic from abroad, do so under the strict conditions and safeguards provided for by law; call on Member States to ensure that remote searches, if provided for by national law, are conducted on the basis of a valid search warrant issued by the competent judicial authorities; note that simplified procedures for conducting remote searches in comparison with direct searches are unacceptable, as they infringe the rule of law and the right to privacy;

q) recognise the danger of certain forms of Internet surveillance and control aimed also at tracking every "digital" step of an individual, with the aim of providing a profile of the user and of assigning 'scores'; make clear the fact that such techniques should always be assessed in terms of their necessity and their proportionality in the light of the objectives they aim to achieve; emphasise also the need for an enhanced awareness and informed consent of users with respect to their e-activities involving the sharing of personal data (for instance in the case of social networks);

r) urge the Member States to identify all entities which use Net Surveillance and to draw up publicly accessible annual reports on Net Surveillance ensuring legality, proportionality and transparency;

s) examine and prescribe limits to the "consent" that can be requested of and extracted from users, whether by governments or by private companies, to relinquish part of their privacy, as there is a clear imbalance of negotiating power and of knowledge between individual users and such institutions;

t) strictly limit, define and regulate the cases in which a private Internet company may be required to disclose data to government authorities, and further ensure that the use of that data by governments is subject to the strictest data protection standards; establish effective control and evaluation of that process;

u) stress the importance of Internet users being able to enhance their right to obtain the permanent deletion of their personal data located on Internet websites or on any third party data storage medium; ensure that such a decision by users is respected by Internet service providers, e-commerce providers and information society services; ensure that Member States provide for the effective enforcement of citizens' right of access to their personal data, including, as appropriate, the erasure of such data or its removal from web sites;

v) condemn government-imposed censorship of the content that may be searched on Internet sites, especially when such restrictions can have a 'chilling effect' on political speech;

w) call on the Member States to ensure that freedom of expression is not subject to arbitrary restrictions from the public and/or private sphere and to avoid all legislative or administrative measures that could have a "chilling effect" on all aspects of freedom of speech;

x) recall that transfer of personal data to third countries must take place in accordance with the provisions laid down in, inter alia, Directive 95/46/EC and in Framework Decision 2008/977/JHA;

y) draw attention to the fact that the development of the 'Internet of things' and the use of Radio Frequency Identification (RFID) systems should not sidestep the protection of data and of citizens' rights;

z) call on the Member States to apply Directive 95/46/EC on personal data in relation to the Internet correctly; remind the Member States that this Directive, especially Article 8, applies regardless of the technology used for the processing of personal data and that its provisions call for Member States to provide the right to a judicial remedy and compensation for their infringement (Articles 22, 23, and 24);

aa) encourage the incorporation of fundamental principles of the "Internet Bill of Rights" into the research and development process of Internet-related instruments and applications and the promotion of the "privacy by design" principle according to which privacy and data protection requirements should be introduced as soon as possible in the life cycle of new technological developments, assuring citizens a user-friendly environment;

ab) support and request the active involvement of the European Data Protection Supervisor and of the Article 29 Working Party in the development of European legislation dealing with Internet activities with a potential impact on data protection;

International undertakings
ac)
exhort all Internet players to engage in the on-going process of the "Internet Bill of Rights," which builds on existing fundamental rights, promotes their enforcement, and fosters the recognition of emerging principles; in this respect the dynamic coalition on the Internet Bill of Rights has a leading role to play;

ad) ensure that, in this context, a multi-stakeholder, multi-level, process-oriented initiative and a mix between global and local initiatives are considered in order to specify and protect the rights of Internet users and thereby ensure the legitimacy, accountability and acceptance of the process;

ae) recognise that the global and open nature of the Internet requires global standards for data protection, security and freedom of speech; in this context call on Member States and the Commission to take the initiative for the drawing up of such standards; welcome the resolution on the urgent need for protecting privacy in a borderless world, and for reaching a Joint Proposal for setting International Standards on Privacy and Personal Data Protection of the 30th International Conference of Data Protection and Privacy Commissioners held in Strasbourg, on 15-17 October 2008; urge all EU stakeholders (public as well as private) to engage in this reflection;

af) stress the importance of developing a real Web E-agora where Union citizens can have a more interactive discussion with policy makers and other institutional stakeholders;

ag) encourage the active participation of the EU in different international fora dealing with global and localised aspects of the Internet, such as the Internet Governance Forum (IGF);

ah) take part together with all the relevant EU actors in the establishment of a European IGF that would take stock of the experience gained by national IGFs, function as a regional pole, and relay more efficiently Europe-wide issues, positions and concerns in the upcoming international IGFs;

A.インターネットの発展により、それが、民主的な取り組みを推進する上で必須のツールと、(例えば電子キャンペーンや電子投票など)政治的議論の新たな場と、表現の自由を世界レベルで実現するためのキーツールとなっていることを考え;例えば、インターネットが老若男女全ての物に世界の他の部分の人々と連絡し合う機会を増やし、そのことにより、人々が他の文化に触れる地平を拡大し、このようにして、人々の他の国民と文化の理解を高めたことを考え;インターネットがまた、個々人のニュース源の多様性を増し、世界の様々な部分から流れるニュースに触れることを可能としたことを考え、

B.政府と公的機関が、電子政府アプリを通じた、行政プロセスへの活発で効率的な市民参加を可能とする適切な技術的手段と法的枠組みを提供するべきであることを考え、

C.インターネットが、欧州基本的な権利条約第11条に銘記されている表現の自由の定義に、特に「国境なき」次元で、完全な意味を与えるものであることを考え、

D.インターネット関係者間の、透明性、プライバシーの尊重と信頼環境が、インターネットの持続的なセキュリティ展望に必要不可欠な要素であると考えられることを考え、

E.インターネットにおいて、表現の自由とプライバシーが両方ともより強化され得るにもかかわらず、同時に、公共部門と民間部門の両方プレイヤーによってさらに侵害され制限される危険に晒されていることを考え、

F.それが提供する自由を通じて、インターネットはまた、テロ攻撃の意図的な煽動のような暴力的なメッセージのためや、具体的な憎悪に基づく犯罪行為を助長し得るウェブサイトのために使われ得ること、サイバー犯罪の脅威がより広く世界で増大し、(子供を含め)個々人とネットワークを危険にしていることを考え、

G.これらの犯罪に対しては効果的かつ断固として反撃がなされなくてはならないが、インターネットの本質的に自由でオープンな性質を変えることはあってはならないということを考え、

H.民主主義社会においては、市民が、自身にサービスを提供する政府と民間企業の行動と方針について観察し判断する権利を有しているにもかかわらず、高度な技術による監視手法が、間々適切な法的防止手段を欠く形で、この原則をますます脅かしていることを考え、

I.個々人が、インターネットにおいて(例えばユーザー作成コンテンツやブログ、SNSなどにおいて)自由に自ら表現する権利を有していること、インターネットの検索エンジンとサービスプロバイダーが、インターネットで、例えば他の人の、情報を得ることを非常に容易化したことを考え;しかしながら、個々人がそのようなデータベースに保存された情報を削除することを望む状況があることを考え;したがって、企業は、各個人が、個人に関係する情報をデータベースから削除できることを確保しなければならないことを考え;

J.技術の飛躍によって、事実上その個人に知られない形で、インターネットにおける市民の活動を、秘密裏に監視することがますます可能となっていることを考え;監視技術の存在のみをもって自動的にその使用が正当化される訳ではなく、市民の基本的な権利を守るという最優先事項から、そのような技術が公的機関あるいは企業によって使用され得る状況を厳格に制限するべきであることを考え;ある者あるいは機関がインターネットを市民の権利を侵害するために使用し、なしているインターネット犯罪、オープンな民主主義社会への脅威への対策と称して、加盟国が、自国の市民間のものであれ、外国からのものであれ、その領土内のインターネット上の全てのデータトラフィックを傍受し、監視する権利を有していると考えることは許されないことを考え;犯罪対策はその犯罪の性質に対してバランスの取れたものでなくてはならないことを考え;

K.ID窃盗や詐欺の問題が増加しているが、当局、個々の市民と企業が認識し始めたばかりのこの問題については、機密情報の交換と取引も含む広い範囲の目的のためのインターネットの増大する利用に比して、主要なセキュリティに関する懸念がおきざりにされていることを考え、

L.表現の自由や私的生活の尊重のような権利を取り扱う際には、そのような権利の行使に対する制限は、民主主義社会において必要で、バランスが取れ、適切なものである法に一致する形でのみ、公的機関によって課され得るものであることを思い起こすべきであり、

M.インターネットにおいて、一方における企業や政府機関と、他方の個人ユーザーとの間で大きな力と知識の格差があることを考え;したがって、企業や政府がユーザーに開示するように求めるであろうことと、個人が、あるインターネットサービスあるいは他の恩恵を受けるために、プライバシー他の基本的な権利についてどこまで譲歩することが求められるかの両方の観点から、「同意」に対する必要な制限について議論が開始されるべきであることを考え、

N.そのグローバルで、オープンで、一般参加型の性質により、インターネットは自由をルールとして享受しているが、このことは、インターネットユーザーの基本的な権利並びにセキュリティがいかに尊重され、守られるべきかということを(各国レベルで、国際レベルで、公的及び民間の場で)検討する必要性を排除するものではないことを考え、

O.インターネットの世界に存在する基本的な権利には、(デジタル足跡を永遠に削除する権利を含む)私的生活の尊重、データ保護、表現、言論、集会の自由、出版、政治表現、政治参加の自由、平等と教育の権利が、これらに限られるものではないが、含まれることを考え;それぞれの適用分野と範囲を含む、このような権利の内容、このような権利によって守られる保護のレベルとこのような権利の濫用は、加盟国の憲法、欧州人権裁判所も含めた、各種の国際人権条約、共同体法と欧州人権憲章の一般原則、と/もしくは、それぞれの適用分野における、各国、国際、共同体法の関係規定によって保障されている人権と基本的な権利の保護ルールによって治められるべきであることを考え、

P.インターネットに活発に参加する全てのプレーヤーは、自身の責任を自覚し、共通の解を探し、推進するために、インターネット活動に関する緊急で重要事項を議論するフォーラムに参加するべきであることを考え、

Q.電子文盲が21世紀の新たな文盲となるだろうことを考え;全市民にインターネットへのアクセスを保障することは、全市民に学校へのアクセスを保障することに等しいことを、このようなアクセスは、政府あるいは民間企業によって罰として切断されてはならないことを考え;このようなアクセスが非合法活動の追求のために濫用されるべきではないことを考え;ネットワーク中立性、相互運用性、全インターネットノードに対するグローバルな到達性と、オープンフォーマット・スタンダードの使用といった新たに生じている問題の取扱いが重要であることを考え;

R.インターネットの、国際的な、多文化的、特に多言語的性格が、WWWプロトコルの技術的インフラによってまだ完全にサポートされていないことを考え、

S.「インターネット権利章典」進行プロセスにおいては、このトピックに関する最近のEUの研究も含め、この分野で全ての関係する研究と取り組みを考慮に入れることが重要であることを考え、

T.経済活動が、インターネットのさらなるダイナミックな発展のために重要である一方、経済効率性が、必要で、バランスが取れ、適切な、公正競争と知的財産権の保護を通じて、保障されるべきであることを考え、

U.創造的で文化的な挑戦と共有に対するかつてない機会を開くものである、公共部門の情報の2次利用と、知的財産権の保護の間で、正しいバランスが保持されるべきであることを考え、

V.世界中で、情報通信技術(ICT)部門の企業が、国際的に認められた表現の自由とプライバシーに関する人権と衝突する形で、国内の法律と政策に従うよう政府からの増大する圧力に晒されていることを考え;様々なポジティブな歩みがなされて来ているが、その中には、ICT分野における表現の自由とプライバシーの保護と推進のために共同アプローチを取り、グローバル・ネットワーク・イニシアティブ(GNI)をまとめた、企業、(人権と出版の自由推進グループを含む)市民社会組織、投資家と学者等からなる横断的グループによって取られた歩みがあることを考え、

W.強いデータ保護のルールは、EUとその市民の主要な関心事であり、データ保護に関するディレクティブ95/46/ECの前文2が、技術(つまり、データ処理システム)は、「人間の役に立つよう」設計され、「基本的な権利と自由、特にプライバシーの権利」を保護し、「経済と社会の発展、貿易の拡大と各個人の福祉に寄与しなければならない」と明確に述べていることを考え、

1.(欧州議会は)理事会に次のことを提案する:
あらゆる者に対するインターネットへの完全で安全なアクセス
a)
インターネットを、ユーザーに力を与える重要なツールとし、「ボトムアップ」アプローチと電子民主主義の発展を可能とする環境とする努力に参加し、この分野において新たな形式の管理と検閲が発達し得るだけに、同時に十分な保護を保障すること;インターネットにおいてユーザーが享受する私的生活の自由と保護は、現実のものであるべきであり、架空のものであってはならないのである;

b)インターネットは、積極的な市民運動を活性化するまたとない機会を与える場となり得るということと、この点において、ネットワークとコンテンツへのアクセスはそのキーとなる要素の一つであるということを認識すること;あらゆる者は情報社会に参加する権利を有し、あらゆるレベルの機関と関係者は、その発展を支援する一般的な責任を有しているという前提に基づいて、このことのさらなる発展を支援し、このようにして、電子時代における、民主主義からの排除と電子文盲という二つの新たな課題に対抗すること;

c)情報意識社会の成長に責任を持ち、市民によるさらなる情報活用のために、政府に蓄積されている情報により市民がアクセスできるようにすることを通じて、デシジョンメイキングの透明性を向上させる方法を見つけるよう、加盟国に要請すること;

d)他の関係するプレーヤーとともに、インターネットにおける表現の自由、プライバシーの保護並びにオープン性は、相反するゴールではなく、これらの全ての要請に適切に答える共通のビジョンの中で、全ての同時達成を保障すること;

e)国連子供の人権条約に規定され、EU法に反映されている通り、害から保護される未成年の法的権利は、インターネットにおける自由とセキュリティの強化に関係する、全ての行為、ツールあるいは決定を通じてかつその中に完全に反映されることを保障すること;

サイバー犯罪対策への強いコミットメント
f)
理事会と委員会の長に、サイバー犯罪対策としての包括的な戦略について検討し、それを発展させることを促すこと、特に、インターネットプロバイダーとユーザー団体並びにIT関係犯罪を取扱う警察当局と協力し、EUレベルで「ID窃盗」と詐欺の問題に当たることとしているサイバー犯罪に関する欧州理事会条約に従い、どのように、啓蒙キャンペーンを作り、そのような犯罪を予防するとともに、あらゆる者に対してインターネットの安全で自由な利用を確保するかについての提案作りを進めることを促すこと;ID窃盗とID詐欺の被害者を支援するための場をEUに設けるよう呼びかけること;

g)基本的な権利の問題に関する教育も含め、法執行と司法当局に対する適切な教育と並行して、この分野における官民のプレーヤーの間の必要な協力と、法執行協力の強化についての検討を促すこと;

h)「Check the Web」計画の枠組みの中でなされる仕事と、インターネットにおける違反通報のための国内通報プラットフォームと欧州通報プラットフォームの設置(欧州警察によるサイバー警察のための欧州通報プラットフォームの作成)を含む、サイバー犯罪に関する情報共有を改善することを目的とした最近の取り組みが、必要で、バランスが取れた、適切なものとされることを、それに必要なあらゆる保護措置を伴わせることを保障すること;

i)2007年10月25日の性的搾取と性的虐待に対する児童保護のための欧州理事会条約に規定されているように、インターネット上の児童保護のため、特にグルーミング(性的な目的でのオンライン児童勧誘)を犯罪化するための、法律改正を加盟国に要請すること;

j)新たな電子的危険性に関し、EU法に欠かれている通り、児童を保護し、親を教育するための計画を推進し、既存の計画の有効性の影響評価を提供すること;その際で、青少年を第一のターゲットにしているオンラインゲームのことを考慮に入れること;

k)容易に起動できるよう児童保護のためのプログラムをプリインストールするよう、全てのEU域内のコンピュータ製造業者に促すこと;

l)知的財産権の刑事エンフォースメントに関するディレクティブの採択を進め、最近のイノベーションに関する研究に照らし、それが必要でバランスの取れたものであることについて評価を引き続き行い、同時に、その目的の追求のためのインターネットにおける全ユーザーの系統立ったモニター・監視を禁じ、また、罰を侵害に対してバランスの取れたものとすることを保障すること;また、このコンテキストにおいて、個々のユーザーの表現と集会の自由を尊重し、知的財産の権利者によって提案されている過度のアクセス制限も含め、知的財産権のサイバー違反に対するインセンティブに対抗すること;

m)インターネットを通じた議論を呼びうる政治的信条の表現が、刑事訴追の対象とならないことを保障すること;

n)報道目的で情報を集め頒布するジャーナリストとメディアの権利を制限したり、犯罪かしたりするような法律や実務を作らないことを保障すること;

インターネットにおける基本的な自由の完全な保護と推進に関する継続的な注意
o)
「デジタルアイデンティティ」がますます我々の「自己」の必須の一部となって来ていると、この点で、官民のプレイヤーによる侵犯からの適切で有効な保護を受けるに値すると-このように、ある個人の「デジタルアイデンティティ」に元々結びついていたデータは定義され、保護されるべきであると、このような全ての要素は、奪うことのできない、非経済的かつ取引不可能な個人の権利と考えられるべきであると考えること;

p)加盟国が、自国内の市民間のものであるか、外国からのものに適用されるかにかかわらず、データトラフィックの傍受と監視は、法によって提供される厳格な条件と保護措置の下で行われるということを保障すること;遠隔捜査は、国内法によって規定されるとしても、管轄を有する司法当局が発行する有効な令状に基づきなされることを保障するよう加盟国に呼びかけること;直接捜査に比して遠隔捜査の遂行を容易にする手続きは、それが法規則とプライバシーの権利を侵害するものであることから、認容できるものではないことに注意すること;

q)ユーザーのプロファイルを提供し、スコアを付けることを目的としながら、ある個人の全ての「デジタル」ステップを追跡することも目的としたある種のインターネット監視と管理の危険性を認識すること;そのような技術は、それが達成しようとする目的に照らして、その必要性とバランスの面から常に評価されるべきであるという事実を明確にすること;個人データの共有も含め、その電子活動について、ユーザーの意識の向上とインフォームドコンセントの必要性も強調すること;

r)ネット監視を行っている全ての主体を特定し、合法性とバランスと透明性を保障するべく、広くアクセス可能な形のネット監視年次報告書を作成するよう加盟国に要請すること;

s)政府からであれ、民間企業からであれ、そのプライバシーの一部を断念するよう、ユーザーに求められ得、期待し得る「同意」に対して検討し、制限を規定すること;

t)インターネット私企業が、政府機関への情報開示を求められるケースを厳格に制限し、規定し、規制し、さらに、政府によるそのデータの使用は最も厳格な基準に服するということを保障すること;この手続きの有効な管理と評価を確立すること;

u)インターネットサイトあるいは第三者のデータ記録媒体上に置かれた自身の個人データを永遠に削除する、インターネットユーザーの権利の強化の重要性に力点を置くこと;ユーザーによるそのような決定が、インターネットサービスプロバイダー、電子商取引プロバイダーと情報社会サービスによって、尊重されることを保障すること;加盟国が、そのようなデータの削除あるいはそのウェブサイトからの除去も含め、自身の個人データに対してアクセスする市民の権利の有効な執行手段を提供することを保障すること;

v)インターネットサイトに関して行われ得る政府主導のコンテンツ検閲を、そのような制約が政治的言論に対して「萎縮効果」を発生させるときは特に、断罪すること;

w)表現の自由は、公的及び/あるいは民間部門からの恣意的な制約に服するものではなく、表現の自由のどの面であれ「萎縮効果」を発生させ得る法的あるいは行政的手段を排除するよう、加盟国に呼びかけること;

x)第3国への個人データの転送は、特に、ディレクティブ95/46/ECと枠組みの決定2008/977/JHA中の規定に一致する形でなされるべきことを想起すること;

y)「物のインターネット」と無線ICタグ(RFID)利用の発展によって、データと市民の権利の保護が回避されることがあってはならないという事実に注意を払うこと;

z)インターネットに関係する個人データに関するディレクティブ95/46/ECを正しく取り入れるよう加盟国に呼びかけること;このディレクティブ、特にその第8条は、個人データの取扱いに関して技術によらず適用されるものであることを、このディレクティブの規定は、その侵害に対する司法救済と補償への権利を提供することを各国に求めている(第22、23と24条)ことを、加盟国に思い起こさせること;

aa)市民にユーザーフレンドリーな環境を約束するとともに、「インターネット権利憲章」の基本原則を、インターネット関係のツールとアプリケーションの研究開発プロセスに組み込むことを促進し、プライバシーとデータ保護の要請が、新たな技術発展のライフサイクルの中に可能な限り早く取り入れられるべきであるという「プライバシー設計」の原則を推進すること;

ab)欧州データ保護監視局と、データ保護に対して潜在的な影響を与えるインターネット活動を取り扱う欧州法の展開について第29条ワーキングパーティの積極的な関与を支持し、求めること;

国際的取り組み
ac)
全インターネットプレイヤーに、存在している基本的な権利の上に作られる「インターネット権利憲章」の進行プロセスへの参加を要請し、その実行を推進し、新たに生まれつつある原則の認識を育てること;この点で、インターネット権利憲章におけるダイナミックな連合は、主要な役割を果たす;

ad)このコンテキストにおいて、多数の利害関係者、様々なレベル、プロセス主体の取り組みと、国際的なものと地域的な取り組みの混合が、インターネットユーザーの権利を特定し、守るために考慮されることを保障し、そして、このプロセスの正当性、説明責任と受け入れを保障すること;

ae)インターネットのグローバルでオープンな性質から、データ保護、セキュリティと表現の自由についてのグローバルスタンダードが求められることを認識すること;このコンテキストにおいて、そのようなスタンダードの起草への取り組みを加盟国と委員会に求めること;2008年10月15~17日にストラスブールで開催された、第30回データ保護とプライバシー委員国際会合における、国際スタンダード作成のための共同提案に達するための、ボーダーレス世界におけるプライバシーの保護のための緊急の必要性に対する決意を歓迎すること;

af)EU市民が、政策立案者や他の機関の利害関係者とよりインタラクティブな議論をすることのできる真のウェブ電子集会場の開発の重要性を強調すること;

ag)インターネット・ガバナンス・フォーラム(IGF)のような、インターネットの世界的な、そして地域的な側面を取り扱う様々な国際フォーラムにおける、EUの積極的な参加を促すこと;

ah)関係するEU域内の全プレーヤーとともに、各国のIGFによって得られた経験を蓄積する欧州IGFの立ち上げに参加し、地域の軸としての役を果たし、来るべき国際IGFにおいて、より効率的に欧州全域で課題、立場と関心を共有すること;

 具体的にストライクポリシーを否定しているのは、前文Qの「このようなアクセスは、政府あるいは民間企業によって罰として切断されてはならない」という箇所であるが、一通り読んで頂ければ分かる通り、このレポートは、教育などへのアクセスと同様、インターネットへのアクセスを基本的な権利として位置づけようとするものである。当然そこから、インターネットへの自由で安全なアクセスはあらゆる者に保障されるべきであり、ネット切断のような違法コピー対策はバランスを欠く非人道的なものとして否定されるべきということも導かれるのである。また、ネットにおける技術的検閲・監視の禁止・規制に触れている点も大きい。

 情報・表現の自由やプライバシーといった基本的な権利の本質に立ち帰って考えれば、これは当然の帰結だが、この観点を常にないがしろにし続ける、既得権益にまみれた既存のあらゆる政府と団体に対する私の憤りに果ては無い。

 規制派は常に自分たちに都合の良い動きだけを取り上げて国際動向を「作って」来るが、彼らが良く引き合いに出す欧米の動きも決して単純ではない。欧州においても、このように、インターネットにおける情報・表現の自由とプライバシーの保障に真正面から取り組み、インターネットへのアクセスを基本的な権利と位置づけようとする動きが確かに存在していることは無視されてはならない事実である。

 ただし、この点さえ除けばほとんど諸手を挙げて賛同するのだが、児童ポルノの単純所持規制を求めている狂った欧州理事会条約を引いていることからも分かるように、児童ポルノに関してのみは、その情報の単純所持・取得・ダウンロード・閲覧・アクセス罪の真の危険性が、キリスト狂道徳に髄まで毒されている欧州において、政治のレベルまでなかなか認識されるに至らないのは実に残念かつ愚かなことと言わざるを得ない。ことキリスト狂道徳に関する限り、彼らの合理性は完全な破綻を示すのである。

 何度でも繰り返すが、情報の種類・精神的要件の有無・取得回数の限定にかかわらず、情報の単純所持・取得・ダウンロード・アクセス罪の創設は、必然的に、インターネットのあらゆる利用者のアクセスに回避不能の危険性を作り出すことにつながるのである。情報の単純所持・取得・ダウンロード・アクセス罪とインターネットへの自由で安全なアクセスとは断じて両立し得ないのだ。

 児童ポルノを理由にした、欧米の狂った非人道的な情報・思想統制は、新たな宗教裁判・思想裁判、21世紀の火刑法廷として歴史に断罪される日がいつか来るだろう。宗教問題では無く利権問題に過ぎない著作権問題上の、ダウンロード違法化やストライクポリシーが、無用の混乱と社会的コストの浪費を招くだけのものとして断罪される日はもっと早く来るに違いない。

(ストライクポリシーに関しては、アメリカでAT&Tが著作権侵害警告を送り始めているよう(seattlepi.comの記事参照)だが、これも同断だろう。)

 今現在、日本において、ダウンロード違法化問題についても、児童ポルノ規制問題についても極めて危険な状態にあるのは残念でならないが、インターネットへの自由で安全なアクセスは情報に関する基本権の一つであり、長い時間がかかるかも知れないが、情報・表現の自由を謳う民主主義国家では、そう確立して行くものと私自身は確信している。

(追記:警察庁の「総合セキュリティ会議」が、「インターネット上での児童ポルノの流通に関する問題とその対策について」という報告書(pdf)をこの26日に公表している(時事通信のネット記事internet watchの記事cnetの記事も参照)。警察は、半官検閲センターのインターネットホットラインセンターとは別に、「児童ポルノ掲載アドレスリスト作成管理団体(仮称)」として、ブロッキング対象サイトリストを作る完全な検閲団体をもう一つ作りたいらしい。パブコメを取っていないので意見を言う機会すら与えられなかったが、警察なり、どこぞの団体なりの恣意的な判断で全国民がアクセスできなくなるサイトを発生させることは どこをどうやっても検閲にしかならず、絶対にやってはならないことである。日本の警察も、市民の自由と安全を脅かしてでも新たな利権を作ることに余念がないと見える。)

| | コメント (3) | トラックバック (0)

2008年10月 9日 (木)

第118回:PCを私的複製補償金の対象外とするドイツ最高裁の確定判決・フランスの3ストライクアウト法案の今後

(1)PCを私的複製補償金の対象外とするドイツ最高裁の確定判決
 前回、PCは補償金の対象外とする判決が確定したというニュース(ドイツのWELT ONLINEの記事PC WELTの記事参照)を紹介したが、今回は少しその補足をしておきたいと思う。

 ドイツの最高裁のHPには、判決文が載るはずのリンクがあるのだが、なかなか載りそうにないので、今のところは、最高裁のプレスリリースからその概要について紹介しておきたいと思う。(判決文が読めるようになって何かあればさらに補足するつもりである。)

 この「コンピューターは補償金の対象外(Keine Geratevergutung fur Computer)」というタイトルのプレスリリースによると、PCに対する補償金の支払いを求めて訴えていたのはVG Wort(ドイツの文芸著作権管理協会)であり、訴えられていたのは富士通ジーメンスであるが、この判決では、1台あたり12ユーロ(元々VG WORTが求めていたのは30ユーロ)の補償金支払いを命じた控訴審の判決を破棄し、上告を却下している。特に、その理由の概要の部分には、以下のように書かれている。(翻訳は拙訳。)

Der BGH hat entschieden, dass fur PCs keine Vergutungspflicht nach § 54a Abs. 1 Satz 1 UrhG a.F. besteht, weil diese Gerate nicht im Sinne dieser Bestimmung zur Vornahme von Vervielfaltigungen durch Ablichtung eines Werkstucks oder in einem Verfahren vergleichbarer Wirkung bestimmt sind. Mit einem PC konnen weder allein noch in Verbindung mit anderen Geraten fotomechanische Vervielfaltigungen wie mit einem herkommlichen Fotokopiergerat hergestellt werden. Soweit mit einem PC Vervielfaltigungen erstellt werden, geschieht dies auch nicht in einem Verfahren vergleichbarer Wirkung. Unter Verfahren vergleichbarer Wirkung im Sinne des § 54a Abs. 1 Satz 1 UrhG a.F. sind - wie der BGH bereits entschieden hat (BGHZ 174, 359 Tz. 16 ff. - Drucker und Plotter) - nur Verfahren zur Vervielfaltigung von Druckwerken zu verstehen. Soweit ein PC im Zusammenspiel mit einem Scanner als Eingabegerate und einem Drucker als Ausgabegerat verwendet wird, ist er zwar geeignet, Druckwerke zu vervielfaltigen. Innerhalb einer solchen, aus Scanner, PC und Drucker gebildeten Funktionseinheit, ist jedoch - wie der BGH gleichfalls bereits entschieden hat (BGHZ 174, 359 Tz. 9 ff. - Drucker und Plotter) - nur der Scanner im Sinne des § 54a Abs. 1 UrhG a.F. zur Vornahme von Vervielfaltigungen bestimmt und damit vergutungspflichtig. Eine entsprechende Anwendung des § 54a Abs. 1 UrhG a.F. auf PCs kommt - so der BGH - gleichfalls nicht in Betracht. Einer entsprechenden Anwendung dieser Regelung steht entgegen, dass der Urheber digitaler Texte oder Bilder anders als der Autor von Druckwerken haufig mit deren Vervielfaltigung zum eigenen Gebrauch einverstanden ist. Insofern besteht keine Veranlassung, dem Urheber einen Vergutungsanspruch zu gewahren, der lediglich einen Ausgleich fur Vervielfaltigungen schaffen soll, die ohne seine Zustimmung erfolgt sind. Es ware auch deshalb nicht gerechtfertigt, den Anwendungsbereich der Regelung uber ihren Wortlaut hinaus auf Drucker auszudehnen, weil ansonsten die Hersteller, Importeure und Handler sowie letztlich die Erwerber die wirtschaftliche Last der urheberrechtlichen Vergutung fur Gerate zu tragen hatten, die im Vergleich zu den von der gesetzlichen Regelung erfassten Geraten nur zu einem wesentlich geringeren Anteil fur urheberrechtsrelevante Vervielfaltigungen eingesetzt werden.

当裁判所は、PCについては、著作権法第54a条第1段落第1項以下に定められている補償金の支払い義務はないものと決定した。なぜなら、これらの機器は、この規定の意味において、ある作品の複写あるいは同じような働きの処理を通じてなされる複製の実行に特に用いられるものではないからである。PCによっては、単体でも、他の機器と合わさっても、通常のコピー機のように光学的な複製を作成することはできない。PCによって、複製が作成される場合、それは、複写と同じような働きの処理において生じたものではない。著作権法第54a条第1段落第1項以下の意味における、複写と同じような働きの処理を行っているとは-当裁判所が既に決定したように(BGHZ 174, 359 Tz. 16 ff.-プリンターとプロッターについての判決参照)-印刷物の複製処理のみを指すものと解される。PCは、入力装置としてのスキャナーと出力装置としてのプリンターと協働して使用されて始めて、それは印刷物を複写するのに適していると言える。スキャナー、PCとプリンターの中では-同様に、当裁判所が既に決定したように(BGHZ 174, 359 Tz. 16 ff.-プリンターとプロッターについての判決参照)-スキャナーのみが、著作権法第54a条第1段落第1項以下の意味における、複製の実行をしていると認められ、これのみが補償金の支払い義務の対象である。PCに関しては、著作権法第54a条第1段落第1項以下のふさわしい適用もまた無視されてはならないと当裁判所は判断する。印刷物の作者以外のデジタルの文章や写真の著作者は、個々の利用においてこのような複製がなされることに良く同意していると考えられることに、この規定をふさわしく適用することはできない。その同意がない限りにおいて、著作者には、その同意が無ければなされ得ない複製に対する補償として与えられる補償金請求権が認められているのである。したがって、そのことからも、法律の文言における規則の適用範囲をプリンターを超えて拡張することは妥当ではない。さもなければ、製造業者、輸入者、販売者はおろか終いには購入者まで、機器に対する著作権補償金の経済的負担をしなければしなければならなくなってしまうであろうからである。法の規定から把握される機器と比較して、その適用範囲は、著作物に関係する複製に対し、より少なく本質的な部分に限られるのである。

 プレスリリースの概要であるためか、論理的に少し分かりにくいところもあるが、ドイツも補償金に関するゴタゴタにうんざりしたのか、これだけでも、PCとプリンターとスキャナーの3重課金など、欲の皮の突っ張り過ぎもいい加減にしろという語気が伝わってくるようである。個人的にはスキャナー課金すらいかがなものかと思うが、よほどのことがない限りドイツでも少なくとも単体プリンターとPCは、今後も補償金の対象外とされて行くことだろう。(ドイツのプリンターに関する最高裁判決は、第38回で少し触れた。この判決は旧法の適用に関するものであるが、恐らく新著作権法(第15回参照)における補償金額決定においても尊重されることと思われる。)

(2)フランスの3ストライクアウト法案の今後
 第116回で紹介したように、EU議会によって、フランスの3ストライク法案は否定された訳だが、フランスとEUの間で今現在妙な緊張感が高まっているので、その後の話を少し書いておきたいと思う。

 第29回第30回で紹介したように、もともとこの3ストライク法案は大統領レベルで言い出した話なので、そのプライドから引くに引けなかったのか、サルコジ大統領は、先週の金曜日に、この件に関してEU委員会のバローゾ委員長に向けて、3ストライク法案を否定する修正条項の削除に対する助力を求める手紙を送っている。(フランスのecransの記事で手紙の全文が読める。この記事によると、大臣レベルでの交渉もあったらしいが不調に終わったので、このような非常手段に出たものらしい。)

 ところが、この手紙に対しては、この修正条項が88%の多数の議員の支持を受けて成立したものであり、委員会としてはこれを尊重するという断りの説明が、その後EU委員会から発表され、今現在サルコジ大統領としては面目丸つぶれの状態になっているのである。しかも、修正条項の文章は、プライバシーや所有権、情報と表現の自由といった様々な基本的権利の間で正しいバランスが取られる余地が各加盟国に残されるよう入念に書かれたものであり、フランスとしても受け入れられるだろうと思うが、どうしてもと言うなら、フランス政府として、EU理事会において他の26の加盟国の閣僚の前で、修正条項についてのその見解を議論にかけてはどうかと考えるとのだめ押しまでついている有様である。(やはりフランスのecransの記事Le Figaroの記事Nouvel Obsの記事参照。そもそも、記事中のEU委員会の情報とメディア担当スポークスマンのセルマイヤー氏の説明によると、EU議会の議決後は、EU自体のバランスが危うくなる場合しかEU委員会はディレクティブ等の拒否はできないそうであり、この大統領の手紙は実に奇怪なものと言わざるを得ない。)

 Numeramaの記事GNTの記事などを読むと、この修正条項を主導したEU議員のギュイ・ボノ氏も、このようなフランスの動きに対して、「フランス大統領は、欧州市民全体の共通の利益を代表し、推進するものと考えられるところ」、「その代わりに、魔法の杖の一振りで修正条項138を消し去ることを欧州委員会に求めるなど、サルコジはまたも民主主義の妨げとなった」、「自由を殺す法律を無理矢理押し通すために、ここまで民衆の代表を足蹴にするなど、人権の国の大統領に相応しいとは思えない」、「欧州委員会はサルコジの犬ではない」、「サルコジがフランスにおいて君主として振る舞うことに慣れているにせよ、ヨーロッパは彼の王国ではない。」と反発を強め、例えEU理事会で差し戻されたとしても、議会で同じ修正条項をまた入れるとしており、EUとフランスの間のこの件に関する緊張感は当面続くのではないかと思われる事態になっている。

 今後は、11月27日に開かれるEU理事会(各加盟国の閣僚級のメンバーで構成され、各々が拒否権を持っている)で、EU議会へのディレクティブの差し戻しがされるかどうかということが焦点になるが、フランス単独で拒否権を行使するのはかなり難しく、やはり、フランスの3ストライク法案はほぼ完全に葬られたと思って良いのではないかと私は思っている。ただし、EU委員会に直接手紙を書いてしかも拒絶されるというかなりの醜態をさらしたサルコジ大統領が何をやってくるかは想像がつかないところもあり、フランスとEUの動きからは今後も目は離せない。(11月18日にこの3ストライクアウト法案は、フランス上院に回される予定だったそうだが、その予定もどうなるか。そもそも足下の金融危機でEU全体がぐらついている中、マイナーな知財の話で緊張感を高めてどうするのかという気もするが。)

 次回こそ選挙向けの話をと思っているが、解散総選挙が延びそうな気もするので、別な話をまた挟むことになるかも知れない。

(10月20日の追記(第117回に書いたものと同じ):コメントでいろは様から教えて頂いたドイツのIT企業団体BITKOMの補償金裁判まとめ(pdf)によると、確かに、プリンター補償金裁判においてVG WORT側は憲法裁判所にさらに上告しているようであり、PCでも憲法裁判所へさらに上告される可能性があることを考えると、確定というのは言い過ぎだったかも知れない。ただ、憲法裁判所がこのレベルの問題をわざわざ取り上げてプリンターやPCに補償金を賦課しないのは憲法違反だと判断する可能性は相当低く、ほぼ確定していると言っても良いのではないかとも思うので、一応文章はそのままにしておく。(いろは様コメント・情報ありがとうございました。))

(10月30日の追記:いろは様から、この判決は旧法に関するものであり、新法には適用されないのではないかとするコメントを頂いたので、念のために、ドイツ最高裁のプレスリリースの最後の部分も以下に訳出しておく。(ドイツの最近の法改正については、第13回第15回をご覧頂ければと思う。)

Nach der seit dem 1. Januar 2008 geltenden Regelung, die im entschiedenen Fall noch nicht anzuwenden war, besteht ein Vergutungsanspruch hinsichtlich samtlicher Geratetypen, die zur Vornahme von bestimmten Vervielfaltigungen zum eigenen Gebrauch benutzt werden (§ 54 Abs. 1 UrhG). Der Vergutungsanspruch hangt demnach nicht mehr davon ab, dass die Gerate dazu bestimmt sind, ein Werk "durch Ablichtung eines Werkstucks oder in einem Verfahren vergleichbarer Wirkung" zu vervielfaltigen.

本件では適用されないが、2008年1月1日から施行される規定は、特定の用途のために、規定されている複製の実行に使用される、複合タイプの機器に関する補償金請求権を定めている(著作権法第54条第1項)。この補償金請求権はもはやこれに対しては認められない、そこで定められている機器は、「複写あるいは同じような働きの処理を通じて」作品を複製するものなのである。

 確かに判決は旧法の適用に関するもので、今後どうなるかは読みづらいところもあるのだが、今まさに新法の適用をどうするかということでもめている中、このような判決が出されたことはやはり大きいのではないかと私は考えている。)

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2008年9月30日 (火)

第116回:EU議会によるフランスの3ストライク法案の否定

 「P2Pとかその辺の話」で既に紹介されているので、リンク先の記事を読んでいただければ十分かとも思うが、EU議会とフランスの3ストライク法案の関係の話は、念のため、ここでも触れておきたいと思う。

 EU議会のプレスリリースに、この9月24日にEU議会を通過した通信に関するディレクティブ改正案の概要が載っているが、これによると、この改正案は、エマージェンシーコールの番号や機器などの制約条件などをより消費者に知らしめること、契約の最長期間は2年とし、1年後からはキャンセルができるようにすること、通信機器の技術仕様が域内貿易における制約とならないようにすること、プライバシーも含め情報保護に関する法制の域内統一を一層図ること、深刻な場合は自身の個人情報に対する侵害について知らされること、ユーザーには著作権侵害などの非合法行為に関する情報が知らされることなど様々な修正事項が含まれているようである。

 欧州における通信規制ということでは、これらの事項はかなり重要なことばかりなのだが、それはさておき、フランスの3ストライク法案との関係では、通過した改正案の内の一つの中に、

Amendment 138
Proposal for a directive  amending act
Article 1 - point 8 - point e a (new)
Directive 2002/21/EC Article 8 - paragraph 4 - point ga (new)

(ea)  In paragraph 4, point (ga) is added:
"(ga) applying the principle that no restriction may be imposed on the fundamental rights and freedoms of end-users without a prior ruling of the judicial authorities, notably in accordance with Article 11 of the Charter of Fundamental Rights of the European Union on freedom of expression and information, save when public security is threatened, in which case the ruling may be subsequent.

修正138(2002/21/EC第8条第4段落への新規追加)

”(ga)判決が事後のものとなるであろう、公共の安全が脅かされる場合を除き、特に、表現と情報の自由に関する欧州連合憲章第11条に従い、司法当局の事前の判決なくしてエンドユーザーの基本的な権利及び自由に対してはいかなる制限も課され得ないという原則を適用すること。”

という修正項目が入ったことが、決定的な意味を持っている。ディレクティブ自体山ほどあって非常に分かりにくいのだが、これは電気通信ネットワークとサービスの共通の枠組みに関するディレクティブの第8条の最後に追加される新規項目である。

(なお、欧州連合憲章第11条は、

ARTICLE 11 FREEDOM OF EXPRESSION AND INFORMATION
1. Everyone has the right to freedom of expression. This right shall include freedom to hold opinions and to receive and impart information and ideas without interference by public authority and regardless of frontiers.
2. The freedom and pluralism of the media shall be respected.

第11条 表現と情報の自由
1.あらゆる者は表現の自由に関する権利を有する。この権利は、公権力の干渉を受けず、国境に関わりなく、意見を持つ自由、情報を受け、伝える自由を含む。
2.メディアの自由と多様性も尊重される。

というものである。日本でも情報の自由は表現の自由の中にほぼ包含されているものと私は理解しているが、欧州では、EU憲章レベルで、情報の自由が表現の自由と一緒に明記されているということは大きい。)

 まだ、EU議会の可決が行われただけで、さらにディレクティブとして成立するためにはEU理事会を通過する必要があるが、議会で573対74の圧倒的多数によって可決されたこともあり、上の1文を理由にEU理事会がEU議会へ改正案差し戻しの判断をするとも考えがたい。結局、情報の自由に関する制限に関しては行政判断ではなく司法判断を必須とする上の1文がディレクティブ改正案に挿入されたおかげで、第104回などで紹介した、フランスの3ストライク法案のような、行政機関創設型の著作権検閲・ネット切断は欧州ではほぼ完全に息の根を止められたと見て良いだろう。フランスは、裁判所における司法判断を活用する形に大幅に修正をしてくるかも知れないが、それはもはや完全に別物の法案に違いない。(今のEU理事会議長国はフランスであるため、フランスがこのディレクティブ改正案にひどい難癖をつけてきたり、ディレクティブを解釈で無視してきたりする可能性はなきにしもあらずだが。)

 また、フランスの各種記事(le mondeのネット記事generation ntの記事leJDD.frの記事ZDnetの記事ギュイ・ボノ氏のサイトの記事)によると、この修正は、第83回で紹介したレポートに名を冠しているギュイ・ボノ氏が中心となって入れたようであるが、それにしても、この第83回で紹介したレポートの内容といい、今回のディレクティブ改正案に対するタイムリーな修正といい、ギュイ・ボノ氏の手腕は大したものである。ボノ氏のこのような活躍には心からの拍手を送りたいと思う。

 最後に、少し間が空いてしまったが、国内外の最近の動向の紹介もしておきたいと思う。

 まず、文化庁の文化審議会では、著作権の保護期間延長問題を先送りにした上で、権利制限を中心に法改正を行うべきとする報告書をまとめるようである(47newsの記事internet watchの記事1記事2参照)。本当に非常にタチの悪い話を全て先送りにして、権利制限を中心にするようなら、突っ込みどころは少なくなるだろうが、決して油断はできない。またパブコメにかかったところで中間整理の内容について取り上げるつもりである。

 知財本部では、日本版フェアユースの議論が続いている(ITproの記事参照)。先行きは不透明だが、この議論も法改正に向けて地道に続けてもらいたいものと思う。

 また、総務省の情報通信審議会では、B-CAS見直しの議論が続けられている(AV watchの記事参照)。この問題の本質もなかなか理解されないが、B-CAS問題というこの時限爆弾はいつか総務省の上でいつか破裂することになるだろう。

 アメリカでは、上院委員会を通過した知財エンフォース法に対して、9月23日には、司法省が反対意見の表明をしたものの、知財エンフォースコーディネータを作るといった変な修正を入れて上院は法案を通したようである(cnetの記事computerworldの記事PC MAGAZINEの記事参照)。やはり記事によると、下院は下院で別の法案を通しているそうであり、上院の奇妙な法案がそう簡単に通るとも思えず、当分揉めるだけ揉めることになるのだろう。

 アメリカでは、著作物を送信可能な状態にしただけでは必ずしも著作権侵害を構成しないとする判断が地裁で示されたり(cnetの記事参照)と、P2P関連訴訟でも当分混迷が続きそうである。

 次回は、アメリカにおけるフェアユースの話か、選挙に向けた話を書こうと思っている。

(9月30日の追記:修正が入ったのかどうか良く分からないが、wired visionの記事network worldの記事によると、残念ながら、上で書いた知財エンフォースメント法は下院も通過し、この日曜日に大統領に送られていたようである。司法省・ブッシュ政権が明示的に反対していることもあり、この法案に関しては、大統領が拒否権を行使するかどうか要注目である。また、この法案が成立した場合は、ここでもその内容の紹介をしたいと思う。

 なお、いわゆる孤児作品法(Orphan Works Act)が上院を通過したとするpdnの記事もあったので、念のためリンクを張っておく。)

(9月31日の追記:アメリカの知財エンフォースメント法については、さらに日本語版のcomputer worldの記事にもなっていた。)

(10月7日の追記:コメント欄に何故か書き込めないので、ここで匿名希望様のコメントへのコメントを。

「おっしゃる通り、抵触するでしょう。フランス国内でも批判されていますが、フランスでも、行政の権限が強く、一部の政治力の強い団体の声が反映され易いといった事情から、閣議決定までされたものと思います。ただ、まだ法律が成立した訳ではありませんし、EU議会の決定を受けて、法案成立のハードルはかなり高くなったものと思います。例え成立したとしても、裁判になった場合、表現の自由などとの関係から、法案そのものの是非が問われるでしょう。

ただ、確かにフランスの3ストライク法案はバランスを失していると思いますが、表現の自由や通信の秘密といった基本的な権利も無制限ではなく、他の権利とのバランスが取られなくてはならないものであるということもまたご承知おき下さい。

表現の自由については、また別途エントリーを立てて書きたいと思っているところです。」)

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2008年9月14日 (日)

第115回:EUでの私的複製補償金に関する関係者への新たな意見募集への回答

 第63回で紹介したEUでの私的複製補償金に関する関係者への新たな意見募集(質問状参考資料)の回答がEUのサイト公表されているので、遅ればせながら、今回はその紹介をしておきたいと思う。

 読んでみれば分かると思うが、別に欧州だからといって大した回答が出されている訳ではない。無論、域内統一経済圏の構成という日本にはない大目標・大論点があることを忘れてはならないが、それを除けば、補償金の対象・徴収・分配などについて日本と似たような論点に基づいて、各関係者がやはり似たようなことを言っているのである。

 著作権団体は、著作権神授説を振りかざして何でもかんでも補償金の世界が正しいと主張し、メーカーは、補償金が不要となる用途もあり、DRMの普及を推進して補償金は縮小廃止するべきと主張し、消費者は、現在の補償金は私的複製による実害に基づいて支払われているものでなくそもそも不当だと主張しているので、恐らく何らかの形で検討が進んだとしても、やはり同じ構図でデッドロックに入るものと思われる。

 欧州全域+αから130もの回答が提出されており、個別の国の話は今まで紹介してきたことと重なってしまうので、ここでは、著作権団体、メーカー、消費者からそれぞれ代表的と思われるところにリンクを張っておく。(なお、回答の数を見ると、ドイツ・フランス・スペインなど巨額の補償金が徴収され、かつ、そのことが問題になりつつある国からの関係者の回答が特に多い。)

 著作権団体の回答としては、欧州作詞者作曲者団体連合(GESAC: European Grouping of Societies of Authors and Composers)の回答や、欧州レコード協会(RIAE: Recording Media Industry Association of Europe)の回答などが代表的なものだろうか。内容も、補償金を正当化して責任をメーカーや消費者に転嫁している点では日本の著作権団体とあまり違いはない。ただ、RIAEなどが、ダウンロードの問題を強調し、インターネット補償金を提唱しているのは、即座に取り上げられるとは思わないのだが、今後非常に厄介なものとなる可能性があるだろう。

 また、メーカー代表は、EICTA(EU ICT Association)の回答になるだろう。やはり用途やDRMによって補償金不要となるケースがあり、補償金は見直されるべきなどと、日本のメーカーと同じ主張を展開している。

 消費者団体としては、欧州消費者組合(BEUC: European Consumers’Organisation)から、やはり力の入った回答が出されている。主な主張として、第12回で紹介した3点(補償金制度は、私的複製によってもたらされる実害を反映するべきであり、仮定に基づいていてはならない/消費者は明確に複製の権利を持つべき/違法ファイル交換の問題については、消費者のプライバシーを尊重する形での合理的な解決策を検討するべき)はそのままだが、さらに、消費者には技術的発展のあらゆる利益を受ける権利があることが明示的に確認されるべきという点も追加されている。

 これらの資料には様々なデータも付いているが、日本においても補償金問題の検討は完全にデッドロックにおちいっているので、残念ながら、このようなデータが日本の私的録音録画補償金委員会の俎上に上る可能性は低そうである。

(なお、日系企業としては、キャノンエプソン沖電気といったプリンター・コピー機メーカーからそれぞれ回答が出されており、欧州ではマルチファンクションプリンター・コピー機などへの補償金賦課が日系企業の大きな負担となっていることがうかがわれる。)

 繰り返しになるが、この資料をざっと見ただけでも、著作権団体・メーカー・消費者の各関係者は、日本と大体同じことを言っており、欧州でも、消費者やメーカーが納得して補償金を支払っているなどということは全くないということが分かるし、各関係者からの実にバラバラな回答を見たところでEUも困っているのだろう、今のところEUレベルでの補償金問題の検討がその後大きな動きになっているという話も聞かない。今後何かの動きがあれば紹介して行きたいと思うが、補償金制度に関する改革はEUレベルではほとんど不可能ではないかというのが私の正直な感想である。(なお、スペインやオーストリアなどの個別の国の私的複製規定の紹介はまた別途地道にやって行きたいと思っているので念のため。)

 最後に、著作権侵害の取り締まりを強化する法案がアメリカの上院委員会で審議されたというIP NEXTの記事があったので紹介しておく。英語版のcnetの記事によると、委員会レベルでは通ったらしい。この法案については、Public Knowledgeの記事などでも批判されており、アメリカの特殊な法事情に起因するところもあるだろうが、検察に侵害者への民事的な訴追を行う権利を与えるなど実に奇怪な点が多い。アメリカで変な法律が提出されては成立せずに消えて行くのは良くあることなので、今回は記事へのリンクを張るだけにしておくが、これもまた大きな話になるようなら別途取り上げたいと思っている。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年7月18日 (金)

第105回:欧州著作権関係動向2題(欧州委員会による著作権料徴収団体間の競争の決定・実演家保護期間延長の提案と、フランス行政裁判所による補償金に関する政府決定の一部破棄)

 また、少し間が空いてしまったが、今回は、欧州における著作権関係の動きを2つ紹介しておきたい。

(1)欧州委員会による著作権料徴収団体間の競争の決定と実演家保護期間延長の提案
 欧州委員会の動きについては日本語の記事にもなっている(ITmediaの記事Internet watchの記事など)ので、既に知っている方、読んでいる方も多いと思うが、欧州委員会は、欧州で国毎に別々に存在している著作権料徴収団体間で競争がなされなければならないとする決定と実演家の保護期間延長(50年から95年へ)の提案を、この水曜に同時に出したようである(EUのプレスリリース1AFPの記事(フランス語)PCINpactの記事(フランス語)tom's hardwareの記事(ドイツ語)など参照)。

 個別の記事にされていると分かりにくいのだが、この競争の決定と延長の提案が同時に出されていることには注意しておかなくてはならないだろう。これらは欧州なりのアメとムチの政策と考えられるのであって、延長の方だけを取り上げて国際動向を論じるなど欧州統一の大きな動きを無視して個別の動向のみを取り上げるのは、常に間違いの元である。

 実際には日本語の記事かEUのプレスリリースを直接読んでもらうのが早いと思うが、この競争の決定は、著作権団体における契約中で、他の国の著作権団体への著作権者の移動や選択を禁じる条項(著作権協会国際連合CISAC(International Confederation of Societies of Authors and Composers)に所属する欧州24団体中23団体がこのような契約をしているそうである)と、著作物の利用者に、国毎に各著作権団体との契約を強制する条項(24団体中17団体がこのような相互契約をしているそうである)を排除せよというもので、見方にもよるとは思うが、かなり大胆なものであると私は思う。

 実際には、欧州と一括りにされることが多いと言っても、言語・文化は国毎に違い、即座に競争が促進されるとも思えないが、欧州を単一の市場として機能させるためには、このような決定は必要なものであり、欧州市場に大きな影響を与えて行くのではないかと思われる。延長も提案されただけで成否は不明なので無論注視して行かなくてはならないが、このような欧州単一市場を目指した決定が今後どのような影響を生むのかは実に注目に値するだろう。

(2)フランス行政裁判所による補償金に関する政府決定の一部破棄
 また、先週11日には、フランスの行政裁判所(コンセイユ・デタ)で、補償金に関する政府決定の一部を破棄するという判決が出されているのでこれも一緒に紹介しておこう(Echo du Netの記事silicon.frの記事コンセイユ・デタのニュースリリース判決参照)。
)。

 記事などによると、要するに、コンセイユ・デタは、私的複製補償金は、合法の私的複製に対する補償に限られるのであって、非合法なコピーに関する補償まで含めて考えていた前回の料率決定は誤りであり破棄されるべきであるという決定をしたようである。

 これもよくよく考えれば当たり前の話であるが、私的録音録画補償金を非合法なコピーまで含めた補償だとする法律の主旨の誤認混同が欧州における高額な補償金額につながっている可能性があるのは見過ごせない。(日本でもたまにこの点を混同した主張を見かけるが、法律の主旨から言うとこれは誤認である。)

 ただし、これはあくまで6ヶ月の猶予つきの前回の料率決定の破棄でしかなく、この間に、またフランスの補償金委員会で新たな料率決定をしなければならず、著作権団体側も反対してもめることになると思われるので、特にこの判決でフランスの補償金がなくなる訳でもないだろう。しかし、このような判決が出されたことを考えると、フランスでもこれ以上の料率上げは難しくなるのではないかと思われる。

 日本でも、補償金問題など各種著作権問題について当分デッドロックが続きそうな状況だが、今後の検討において、文化庁や著作権団体が歪んだ形で国際動向を伝えることがないよう私は願っている。今回紹介したような動向からも、欧州各国がもはや著作権の保護強化のみを単純に考えている訳ではないと分かるはずである。知財政策の決定においても、競争政策的な観点を無視しては、常に独占は弊害も生み得るものであることを忘れてはならないのだ。

 次回は、特に大きな動きがなければ、IPアドレスはプライバシーかという問題について、私なりに考えたことを書いてみたいと思っている。

 少し紹介が遅れたが、総務省のダビング10に関する情報通信審議会答申が今パブコメにかかっている。私も今書く内容を考えているところだが、〆切は8月12日とまだ大分余裕があるので、地デジのコピー制御に関して政府にもの申したい人は是非提出することをお勧めする。

(7月21日の追記:他の知的財産権は、著作権問題ほど喫緊の問題をかかえている訳ではないので、上で書かなかったが、やはり同日にEUは特許他の工業所有権に関する戦略(pdf)も発表しているので念のためにここにリンクを張っておく。)

| | コメント (1) | トラックバック (1)

2008年4月10日 (木)

第83回:EU議会におけるボノ氏の文化産業レポートの採決

 今日、文化産業に関して、フランスの社会学者ギュイ・ボノ氏が中心になってまとめた報告が、EU議会で採決されるようである。

 電子フロンティア財団(EEF)の記事ZeroPaidの記事golemの記事(ドイツ語)Ecransの記事(フランス語)によると、この報告(3月版)には以下のような重要な修正が加えられ、票決がなされる見込みとのことである。

Christofer Fjellner氏他の修正案:
Paragraph 22 a (new)
Calls on the Commission and the Member States to recognise that the Internet is a vast platform for cultural expression, access to knowledge, and democratic participation in European creativity, bringing generations together through the information society; calls on the Commission and the Member States, therefore, to avoid adopting measures conflicting with civil liberties and human rights and with the principles of proportionality, effectiveness and dissuasiveness, such as the interruption of Internet access.

Michel Rocard, Guy Bono氏他の修正案:
Paragraph 22 a (new)
22a. Calls on the Commission and the Member States to recognise that the internet offers a vast arena for cultural expression, access to knowledge and democratic participation in European creativity, which builds bridges between generations in the information society, and, in consequence, to avoid the adoption of measures running counter to human rights, civic rights and the principles of proportionality, effectiveness and deterrent effect, such as interruption of access to the internet.

両方とも英語版から取ったが、これらの違いはほとんど翻訳の問題なので、一緒に訳してしまうと、

22a(追加)
(EU議会は、)インターネットは、ヨーロッパの創造性において、文化的な表現、知識へのアクセスと民主的な参加のための広大な場を提供し、情報社会における世代間の橋渡しをするものであると認めること、及び、その結果として、インターネットへのアクセスの停止のような、人権、市民権とバランス・有効性・抑止効果の原理に抵触するような手段を採用しないことを、EU委員会と各加盟国に求める

となる(赤字強調は無論私が付けたもの)。

 法的拘束力はないのかも知れないが、この採決は、ヨーロッパの今後の政策に影響を与えることになるだろう。スウェーデン議員のジークフリート氏のブログ記事によると、フランス型の違法コピー対策をスウェーデン政府は拒否したそうだが、同じ記事で氏が指摘しているように、確かに、EU議会でこのような決定を行うことは、フランスが、その著作権検閲型の違法コピー対策をヨーロッパ全土に広めようとすることを牽制し、インターネットの全体性を確保するために非常に重要なことであるに違いない。

 何度も繰り返して来たことだが、このことは何も著作権に限った話ではない。インターネット時代に本当に求められることは、このようなバランスの視点であり、著作権神授説に基づいて著作権を絶対視することでも、児童保護・青少年保護といった本来相対的に考えられるべきイデオロギーを絶対視することでもない。利権と、悪意よりタチの悪い善意によって歪み切った今の日本の政官に、このようなバランスの視点が完全に欠けていることは、いくら断罪してもしすぎではない

 本来相対的に考えられるべき価値判断・道徳判断を絶対視し、さらに自ら印象操作を用い、あるいは他者の印象操作に乗じて、有害無益な何らかの法規制を正当化しようとする者は全て、インターネットユーザーの、今の日本の文化と産業の最先端を担う者たちの、全日本の文化と産業の敵であると私は断言してはばからない。

 今騒がれている規制強化案など、何一つ固まっていないし、決まってもいない。今年の規制強化の動きは尋常ではないが、この動きを主導している、あるいはこの動きに乗じている規制強化派など、真の多数派では全くないと私は確信している。私が言いたいことなど、ほとんど上のEU議会の修正文一行に尽きているが、この一行を否定する者がいるだろうか。

 戦端を開いたのは規制強化派なのだ、もはや遠慮することはない。リアルの利権屋が牙を剥き、あらゆる常識と良識を踏みにじり、ネットで作り得ない利権を作ろうとしてくるなら、私は、ネットからリアルの利権を切り崩しにかかろう。売国奴の利権屋どもめ、インターネットに打ち倒されるのは貴様らの方だ。

 最後に、MIAUが、青少年ネット規制法についてプレスリリースを出しているので、リンクを張っておく。この異常な規制強化の波の中で、インターネットユーザーの団体であるMIAUの存在は極めて大きい。MIAUには、規制強化に対する防波堤として、またネットユーザーの前線基地として是非頑張ってもらいたい。私もMIAUには心からの期待と応援と協力を惜しまない。

 ついでに、今まで突っ込んで来たことをここで繰り返すことはしないが、総務省の「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討委員会」の中間取りまとめ骨子(案)と、警察庁の「総合セキュリティ対策会議」の報告書が公表されているのでリンクを張っておく。読んでいただければ分かると思うが、本当にロクなことは書かれていない。

 次回は、途中で止まっていたベルギーの著作権法の紹介の続きを書きたいと思っている。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年2月21日 (木)

第63回:欧州での私的複製補償金改革検討の参考資料の概要

 EUでの私的複製補償金に関する関係者への新たな意見募集(EUの補償金改革のHP参照)の質問状とセットになっている参考資料には、欧州各国の補償金制度の現状が最新の状況も含めていろいろと書かれているので、今回は、その内容について箇条書きでざっと紹介しておきたいと思う。(なお、2006年当時の改革検討については第12回でも取り上げた。)

(1)欧州各国の補償金制度の現状(第3~10ページ)
・EU加盟27カ国中、アイルランド、イギリス、マルタ、キプロス、ルクセンブルグの5カ国は、そもそも私的複製補償金制度がない。

・ノルウェーは、補償金を複製機器あるいは媒体から徴収しておらず、税金から支出している。

・ギリシャでは、補償金制度はあることにはあるが、1999年以来エンフォースされておらず、ICT企業の強い反対を受けて2003年に凍結された。

・補償金制度のある20カ国(2005年当時の調査なのでルーマニアとブルガリアが抜けている)中、機器に課金せず、メディアのみに課金している国は、オーストリア、デンマーク、フランス、リトアニア、オランダ、スエーデンの7カ国。他の国は、機器とメディアの両方に課金。

・ドイツでは、最高裁で、スキャナーに対して課金済みということからプリンターが課金の対象外とされたが、PCやCD焼き器については係争中で、今のところ下級審では課金対象とされている。

・ベルギーではCD焼き器は課金対象とは考えられていない。

・ギリシャ、ポルトガルとスペインでは、PCのHDDは法律で補償金の課金対象外とされている。

・オーストリアでは、2005年7月に、PCのHDDは多くの場合著作権で保護される作品のコピーに使われないとして、PCのHDDには課金しないとする最高裁判決が出されている。

・ドイツでは携帯電話に対しても補償金が要求されている。フィンランドでも権利者団体が携帯電話に対する課金を求めている。

・CD-RやDVD-Rなどの通常の録音録画メディアに加えて、オーストリア、チェコ、フランス、ハンガリー、ポーランドなど、汎用のメモリーカードに課金している国もかなりある。

・フランスとオーストリアは、MP3プレーヤーや録画器内に一体に組み込まれるHDDをメディアとみて課金している。つまり、個人用ビデオレコーダーはフランスとオーストリアではメディアとして課金され、チェコ、フィンランド、ハンガリーとポーランドでは機器として課金されている。

・料率もバラバラであり、2004年にEUの16カ国で集められた補償金額は5.67億ユーロである。(これは今はもっと増えているだろう。)

(2)補償金制度の問題点(第11~16ページ)
・国境を越える取引の場合、製造と輸出入でそれぞれ課金されることになるが、返還制度や輸出入のための例外が各国の国内法制に依存し、うまく機能していない。

・今の補償金システムは、プロユーザーのことを考えていない。ブランクメディアは、ソフトウェアコードやマニュアルのコピーなどの、私的複製とは全く関係ないプロフェッショナルユースにも使われるものである。

・現行の補償金制度の運用は、製造業者・輸入業者・エンドユーザーのコンプライアンスに大きく依存しており、これは誠実な業者にとって不利となり、課金を逃れるグレーマーケットを広げることにつながっている。

・今までのところ料率はメディアの容量によっているが、ブランクメディアの容量と、ユーザーの実際の私的複製の量には開きがある。様々な用途に使われる汎用媒体の場合、保護される著作物の私的複製に用いられないことも多い。

・合法ダウンロードサービスからダウンロードした著作物については、権利者が既に受けている対価との間で2重課金となる。

・クリエイティブコモンズライセンスのようなライセンスのもとで提供されている著作物を補償金のかかったメディア・機器でコピーする場合、無償でコピーが許されているにもかかわらず、補償金が賦課されていることになる。

・管理コストや基金への分配が国によって異なることも良くあり、分配が不透明で正当な比率になっていないと考えている権利者もいる。

(3)付録(第17~26ページ)
・欧州の消費者団体(BEUC)は、補償金は私的複製による経済的実害を反映すべきであると主張し、どこの国も単なる仮定にもとづいて補償金を決めており、この実害の評価をきちんと行っていないと非難している。

・スペインのユーザーグループ(Todos Contra El Canon)は、今の典型的なラフジャスティスの形はひどいもので、様々な2重課金の問題があり、補償金制度を拡大することはデジタルデバイドを広げることにつながるとして反対を表明している。このグループ主導の署名運動は、150万人を集めた。

 以上はあくまで私が勝手に作った概要なので、この問題に興味がある方がいれば、是非原文に当たって頂きたいと思う。(今までこのブログで取り上げ損ねていた話も資料には書かれており、調べられるものは調べて、また紹介して行きたいと思っている。)もうすぐ日本でも今年の私的録音録画小委員会が始まることと思うが、この資料を一読するだけでも、文化庁が持ち出して来る「国際潮流」が、いかに彼らにとって都合の良いことだけで塗り固められた嘘のかたまりであるかすぐに分かるはずである。

 とにかく、この補償金制度の世界的なちぐはぐさ、デタラメぶりには本当にあきれるばかりである。欧州でもこの問題があと半年や1年やそこらで片付く訳はない。

 日本でも、また文化庁なりが、今年の私的録音録画小委員会でこの問題の早期決着を図ろうと、無理を通しに来ることが容易く想像されるのだが、ここまで来た以上、中途半端な妥協は絶対に許されない。補償金の意味を曖昧にしたまま、中途半端な妥協をすることは、必ず将来に大禍根を残すことに、日本の文化政策史上に世紀の大汚点を刻むことになるだろう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年2月15日 (金)

第61回:カナダ、フランス、欧州連合(EU)における私的複製(私的録音録画)補償金問題関係の動き

 今回も、著作権関係の最近の海外動向の紹介である。

(1)カナダ
 まずはカナダについて、第48回のついでに、カナダのiPod税導入がカナダの連邦裁判所で否決された(追加でフランス語の記事1記事2へのリンクを張っておく。)というニュースを紹介したが、最近出たネット記事(フランス語)によると、最高裁への上告はあきらめられたらしく、カナダでのiPod課金は無期延期となったようである。

 ただ、この記事で紹介されている、カナダ補償金協会の、連邦裁判所のカナダの著作権委員会がiPod税を導入する権限がないという決定について上告を求めるつもりはないが、やはりカナダ国民によってなされている権利者の許諾を得ていない私的複製による権利者の損失は莫大なものであるというコメントは、著作権委員会に権限がないのなら、権限のあるところに言いに行くまでだという脅しとしか取れないので、これで本当に片付いたということでもないだろう。それでも、少なくとも、カナダでのiPod課金への道のりはこれで大分遠くなったと思われる。

(2)フランス
 第38回第53回のついでに少し取り上げたが、各種ネット記事(フランス語の記事1記事2記事3記事4記事5)によると、フランスの補償金委員会はこの1月23日に最初の投票を行い録音録画機能つき携帯電話へ課金する方針を固めたようであり、この2月19日に2回目の投票を行い最終的な意志決定を行うようである。やはり記事によると、128MB以上のメモリーを持ち、録音録画機能を有し、音楽機能専用のボタンがあるような携帯電話は全て、MP3プレーヤーと同じ料率で課金するということらしい。当然のことながら、メーカーと消費者は反対しているようであるが、この方針を見る限り、メーカーの主張も消費者の主張も完全に無視されているとしか思えない。

 だが、そもそも今の補償金についてですら消費者から既にフランス行政裁判所に訴えが提起されているほどに消費者の不信を招いていることを考えても、このような問答無用の対象拡大によってさらなる訴訟が起こされることも十分に考えられる。フランスも、この問題に関してはさらに手を焼くことになるだろう。(なお、フランスでは、ブルーレイとHD-DVDへの課金も、今年の検討課題としているようである。)

(3)EU
 各種ネット記事(フランス語の記事英語の記事1記事2記事3EUのプレス記事1記事2)によると、EUレベルでも著作権問題、特に私的複製補償金問題に関する検討を再開するようで、この6月くらいまでに関係者からのヒアリングを行い、8月くらいには何らかの提案を行いたいようである。また、どこからどういう関係で出てきた話かよく分からないが、やはり記事によると、実演家の権利を今の50年から95年に延長することも一緒に検討するようである。

 しかし、どのような検討をするにせよ、多国間でこのような検討をやり出すとどうしてもも上の保護レベル合わせることになるので、ロクな結果にならないのは目に見えている。保護期間延長を補償金切り下げのディールに使うつもりなのかも知れないが、大体、権利者団体側はその強大な政治力をフルに使って、補償金の切り下げの話には絶対に乗らずに、保護期間延長だけを取ろうとするであろうから、補償金問題については今の混乱の極みの中で以前と同じように暗礁に乗り上げる中、保護期間延長だけが決定されるというひどい結果になる危険性も高い。さらに、隣接権の話をするときには、必ずレコード製作者と放送事業者の権利もついて回るので、これらの権利まで一緒に延長された日には、もはや目も当てられない結果となるだろう。補償金問題を含め著作権問題は半年や1年やそこらで片付くような生やさしいものではないのであり、今後の検討において迷走することのないよう、EU当局の良識に期待したい。

 そして、権利者団体なり文化庁なりが、またぞろこのような動きを指して知財の保護強化が世界潮流だと言い出すことも十分予想されるのだが、EU統一という大きな流れを無視してそのようなことを言うのは、あまりにも浅はかであり、愚鈍の極みであるとここでは繰り返しておく。

 とにかく、著作権問題に関する限り、世界中でもめないことはないと言って良いくらいもめるのだが、権利者団体の政治力の強さと、「複製=対価」という著作権原理主義による洗脳工作が、世界中の政策当局の政策判断を狂わせていることには極めて強い憤りを覚える。「複製=対価」の概念で全てを塗りつぶし、権利者団体のみへ利益誘導を図ることは、インターネット時代の文化・産業政策として全く正しいものではない。

 なお、前回紹介したイギリスの違法コピー対策について、特に目新しいことが載っている訳ではないが、タイムズオンラインの記事を見つけたので、リンクを張っておく。また、他の関連英語記事によると、イギリスでは、インターネットサービスプロバイダーが、間違って告訴されたユーザーの訴訟費用負担のための拠出をレコード会社に求めていたりもするようである。レコード会社がそうそう金を出すとも思えないが、このようなユーザー保護策はもっといろいろなところで検討されても良いだろう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)